(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】癌治療用の多標的siRNA
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230420BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230420BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20230420BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230420BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230420BHJP
C12N 15/47 20060101ALI20230420BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230420BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230420BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230420BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230420BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230420BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230420BHJP
C07K 14/145 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
C12N15/113 140Z
C12N15/113 110Z
C12N15/113 130Z
C12N15/63 Z
C12N15/85 Z
C12N15/62 Z
C12N15/11 Z
C12N15/47
A61K48/00
A61P35/00
A61K31/7105
C12N15/12
C07K19/00
C07K14/705
C07K14/145
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561432
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 CN2020135814
(87)【国際公開番号】W WO2021121166
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】201911304349.3
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張辰宇
(72)【発明者】
【氏名】陳熹
(72)【発明者】
【氏名】付正
(72)【発明者】
【氏名】李菁
(72)【発明者】
【氏名】張翔
(72)【発明者】
【氏名】梁宏偉
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
第1標的遺伝子の発現を低下させる第1siRNA分子と、必要に応じて、標的化ペプチドエレメントのコード配列と、必要に応じて、第2標的遺伝子の発現を低下させる第2siRNA分子とを含み、前記第1標的遺伝子は、EGFR、KRAS、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記siRNA組成物は2つ以上の遺伝子の発現を低下させる癌治療用の多標的siRNA組成物、具体的には、siRNA組成物を提供する。提供されるsiRNA組成物又はベクターは体内に直接注射して癌治療に用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1標的遺伝子の発現を低下させる第1siRNA分子と、
必要に応じて、標的化ペプチドエレメントのコード配列と、
必要に応じて、第2標的遺伝子の発現を低下させる第2siRNA分子とを含み、
前記第1標的遺伝子は、EGFR、KRAS、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記siRNA組成物は2つ以上の遺伝子の発現を低下させる、ことを特徴とするsiRNA組成物。
【請求項2】
前記第2標的遺伝子は、EGFR、TNC、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載のsiRNA組成物。
【請求項3】
前記第1標的遺伝子と第2標的遺伝子とが異なる、ことを特徴とする請求項1に記載のsiRNA組成物。
【請求項4】
前記第1siRNA分子はSEQ ID NO.:1又は2で示される配列を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のsiRNA組成物。
【請求項5】
前記第2siRNA分子はSEQ ID NO.:3で示される配列を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のsiRNA組成物。
【請求項6】
プロモータエレメントと、
第1標的遺伝子の発現を低下させる第1siRNA分子と、
必要に応じて、標的化ペプチドエレメントのコード配列と、
必要に応じて、第2標的遺伝子の発現を低下させる第2siRNA分子とを含み、
前記第1標的遺伝子は、EGFR、TNC、KRAS、又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記siRNA分子は2つ以上の遺伝子の発現を低下させる、ことを特徴とするベクター。
【請求項7】
前記ベクターは5’-3’の式Iで示される構造を有する、ことを特徴とする請求項6に記載のベクター。
Z0-Z1-Z2-Z3(I)
(ここで、Z0はプロモータエレメントであり、
Z1は必要に応じて標的化ペプチドエレメントのコード配列であり、
Z2は第1標的遺伝子の発現を低下させる第1siRNA分子であり、
Z3は必要に応じて第2標的遺伝子の発現を低下させる第2siRNA分子である。)
【請求項8】
前記第2標的遺伝子は、EGFR、TNC、KRAS、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項6に記載のベクター。
【請求項9】
癌を治療する薬物又は製剤の調製に用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載のsiRNA組成物又は請求項6に記載のベクターの使用。
【請求項10】
(a)請求項6に記載のベクターと、
(b)薬学的に許容される担体とを含む、ことを特徴とする医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物の技術分野に属し、癌治療用の多標的siRNAに関する。
【背景技術】
【0002】
siRNAはmRNAに特異的に結合し、転写後のレベルで遺伝子の発現を干渉することができる。したがって、siRNA薬物を所定の標的細胞、標的組織や標的器官に直接送達するためには、血液循環系を介して薬物送達を行わなければならない。しかし、インビボでどのようにsiRNAを安全、有効かつ安定的に標的細胞又は標的器官に送達するかはsiRNA薬物を開発する最も重要な課題である。現在siRNA薬物のインビボ送達策略は主に裸siRNA直接送達、ウイルスベクター、化学修飾、ナノ粒子、リポソームなどのいくつの種類に分けることができる。合成した未修飾の裸siRNAを例とすると、静脈注射後、siRNAは血液循環とともに標的細胞に到達するまで流動する。この間、siRNAの大部分は腎臓で濾過されて除去され、一部は食細胞で処理される。しかし、化学修飾、ナノ、リポソーム又はウイルスベクターを用いた送達方式には、それぞれの安全性上の問題が存在する。
【0003】
近年、急速に進展しているもう一つの送達方式はエキソソームに基づくsiRNA送達技術であり、エキソソームがmiRNA(siRNA類似体)を被覆して保護し、細胞膜と生物バリアを自由に通過して受容体細胞に送達することができ、細胞間、組織間でmiRNAを伝達する天然ベクターであるような利点がある。この方法は多くの疾患モデルで成功したことが広く報告されているが、これらの実験はしばしばコストや代価を犠牲しているが、実際の操作過程において、siRNAをエキソソームにパッケージするには大規模な細胞培養が必要であり、時間や手前がかかり、しかも非常に高価であり、また、エキソソームを分離精製するにも大量の人力と物力が必要であるため、エキソソームsiRNAを大量生産するのは現実的ではない。一方、エキソソームsiRNAの生産過程は複雑であり、細胞状態、分離過程、人員操作に対して高い要求があり、ロット間の一致性を保証することが困難であるため、生産品質管理の要求を満たすことが難しく、工業化生産を実現することができない。
【0004】
合成生物学とは、工学的概念とシステム設計理論を用いてエレメント(parts)、デバイス(devices)やモジュール(modules)を設計・作成することをいい、特定の産物を目標とし、各種の標準化された機能性エレメントを一緒に組み立てると同時に、全体経路の最適化調整を経て、所定の機能を持つ全く新しい人工生物系を形成し、化学品、医薬、重大疾患の診断・治療、農業、エネルギー、環境などの分野における合成生物系の大規模応用を実現する。薬物研究開発分野において、合成生物学は新しい生物医薬技術の開発に安全、高効率、制御可能な実験ツール及び検証方法を提供し、すでにインビボライブラリー構築、薬物発見、薬物合成、薬物送達や薬物最適化などの分野に応用されている。
【0005】
したがって、当該分野では、人工的に設計されたプラスミドシステムを直接利用したインビボ治療方法の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、人工的に設計されたプラスミドシステムを直接利用したインビボ治療方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様では、
第1標的遺伝子の発現を低下させる第1siRNA分子と、
必要に応じて、標的化ペプチドエレメントのコード配列と、
必要に応じて、第2標的遺伝子の発現を低下させる第2siRNA分子とを含み、
前記第1標的遺伝子は、EGFR、KRAS、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記siRNA組成物は2つ以上の遺伝子の発現を低下させるsiRNA組成物を提供する。
【0008】
別の好適例では、前記第2標的遺伝子は、EGFR、TNC、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
別の好適例では、前記第1標的遺伝子と第2標的遺伝子とが異なる。
【0010】
別の好適例では、前記第1siRNA分子はSEQ ID NO.:1又は2で示される配列を有する。
【0011】
別の好適例では、前記第1siRNA分子の配列はSEQ ID NO.:1又は2で示される。
【0012】
別の好適例では、前記第2siRNA分子はSEQ ID NO.:3で示される配列。
【0013】
別の好適例では、前記第2siRNA分子の配列はSEQ ID NO.:3で示される。
【0014】
別の好適例では、前記標的化ペプチドエレメントは、RVG、LAMP2B、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
別の好適例では、前記標的化ペプチドエレメントはRVGとLAMP2Bとからなる融合タンパク質である。
【0016】
別の好適例では、前記標的化ペプチドエレメントの配列はSEQ ID NO.:4で示される。
【0017】
本発明の第2態様では、
プロモータエレメントと、
第1標的遺伝子の発現を低下させる第1siRNA分子と、
必要に応じて、標的化ペプチドエレメントのコード配列と、
必要に応じて、第2標的遺伝子の発現を低下させる第2siRNA分子とを含み、
前記第1標的遺伝子は、EGFR、TNC、KRAS、又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記siRNA分子は2つ以上の遺伝子の発現を低下させるベクターを提供する。
【0018】
別の好適例では、前記ベクターは5’-3’の式Iで示される構造を有する。
【0019】
Z0-Z1-Z2-Z3 (I)
(ここで、Z0はプロモータエレメントであり、
Z1は、必要に応じて標的化ペプチドエレメントのコード配列であり、
Z2は、第1標的遺伝子の発現を低下させる第1siRNA分子であり、
Z3は、必要に応じて第2標的遺伝子の発現を低下させる第2siRNA分子である。)
別の好適例では、前記プロモータエレメントは構成的プロモータである。
【0020】
別の好適例では、前記プロモータエレメントは、CMV、U6、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
別の好適例では、前記第2標的遺伝子は、EGFR、TNC、KRAS、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0022】
別の好適例では、前記第1標的遺伝子と第2標的遺伝子とが異なる。
【0023】
別の好適例では、前記第1siRNA分子はSEQ ID NO.:1又は2で示される配列を有する。
【0024】
別の好適例では、前記第2siRNA分子はSEQ ID NO.:3で示される配列を有する。
【0025】
別の好適例では、前記標的化ペプチドエレメントは、RVG、LAMP2B、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0026】
別の好適例では、前記標的化ペプチドエレメントは、RVGとLAMP2Bとからなる融合タンパク質である。
【0027】
別の好適例では、前記標的化ペプチドエレメントの配列はSEQ ID NO.:4で示される。
【0028】
別の好適例では、前記ベクター的配列はSEQ ID NO.:5で示される。
【0029】
別の好適例では、前記発現ベクターはウイルスベクター、非ウイルスベクターを含む。
【0030】
別の好適例では、前記ウイルスベクターはレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、腺関連ウイルスベクターを含む。
【0031】
別の好適例では、前記発現ベクターはプラスミドである。
【0032】
本発明の第3態様は、癌を治療する薬物又は製剤の調製に用いられる、本発明の第1態様に記載のsiRNA組成物又は本発明の第2態様に記載の前記ベクターの使用を提供する。
【0033】
別の好適例では、前記治療は、本発明の第1態様に記載のsiRNA組成物又は本発明の第2態様に記載の前記ベクターを体内に直接注射することで行われる治療である。
【0034】
別の好適例では、前記癌は、肺癌、膠芽腫、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の好適例では、前記製剤は液体製剤である。
【0035】
別の好適例では、前記薬物又は製剤では、前記siRNA組成物又は前記ベクターの濃度は、0.5mg/kg~20mg/kg、好ましくは、1mg/kg~10mg/kg、より好ましくは、5mg/kg~10mg/kgである。
【0036】
本発明の第4態様は、
(a)本発明の第2態様に記載のベクターと、
(b)薬学的に許容される担体とを含有する医薬製剤を提供する。
【0037】
別の好適例では、前記製剤は液体剤形である。
【0038】
別の好適例では、前記製剤は注射剤である。
【0039】
別の好適例では、前記ベクターはプラスミドを含む。
【0040】
別の好適例では、前記ベクター又はプラスミドはプロモータ、複製開始点及びマーカー遺伝子を含有する。
【0041】
別の好適例では、前記医薬製剤中、前記ベクターの濃度は0.5mg/kg~20mg/kg、好ましくは、1mg/kg~10mg/kg、より好ましくは、5mg/kg~10mg/kgである。
【0042】
別の好適例では、前記医薬製剤は癌治療用の他の薬物を含む。
【0043】
別の好適例では、前記癌治療用の他の薬物はゲフィチニブを含む。
【0044】
本発明の第5態様は、
本発明の第1態様に記載のsiRNA組成物、本発明の第2態様に記載のベクター又は本発明の第4態様に記載の医薬製剤をこれを必要とする対象に直接注射することを含む、癌治療方法を提供する。
【0045】
別の好適例では、前記投与量は0.5mg/kg~20mg/kg、好ましくは、1mg/kg~10mg/kg、より好ましくは、5mg/kg~10mg/kgである。
【0046】
別の好適例では、前記投与はプラスミドの注射を含む。
【0047】
なお、本発明の範囲内では、本発明の上記の各技術的特徴と、以下(例えば実施例)に具体的に説明する各技術的特徴とは、互いに組み合わされて、新しい又は好ましい技術的解決手段を構成することができる。紙幅に限りがあるので、ここでは繰り返して説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明の遺伝子エレメントで構成されるプラスミド分子の概略図である。
【
図2】プラスミド分子のインビトロ干渉効率の検出を示す。
図1に示す方法によって干渉配列の異なるプラスミドを構築し、細胞実験を用いて干渉効率を検証する。A-C:CMV-siR
Eプラスミド分子をLLC細胞にトランスフェクションし、siRNAの発現レベル(A)、及びEGFR遺伝子mRNA(B)とタンパク質(C)の発現に対する阻害を検出する。D-F:CMV-RVG-siR
E+Tプラスミド分子をU87MG細胞にトランスフェクションし、siRNAの発現レベル(D)、及びEGFR、TNC遺伝子mRNA(E)及びタンパク質(F)の発現に対する阻害を検出する。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.005を表す。
【
図3】CMV-siR
Eプラスミドが発現するsiRNAの各組織における分布を示す。プラスミド注射1、3、6、9、12、24、48時間後、マウスを殺して、マウス組織を採取する。A:肝臓組織ではsiRNA発現エレメントと成熟siRNAレベルを検出する。B:肺、腎臓、脾臓、脳、心臓、膵臓、筋肉、CD4
+T細胞などの組織では、それぞれsiRNAレベルを検出する。C:上記の時点で、マウス血漿中のsiRNA発現量、及び血漿エキソソーム中の含有量を検出する。
【
図4】CMV-siR
Eプラスミド分子によるLLCインサイチュ移植肺癌マウスモデルの治療効果及び生存の統計を示す。LLCインサイチュ移植肺癌マウスモデルを平均的に群分けし、PBS、コントロールプラスミド(CMV-scrR)、ゲフィチニブ又はCMV-siR
Eプラスミドを2日に1回、計2週間注射し、治療前後にそれぞれCTスキャンによりマウスの腫瘍の大きさを検出し、生存を統計する。A:代表的なCTスキャン3Dイメージングの結果;B:マウス腫瘍体積の変化;C:生存統計。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.005を表す。
【
図5】CMV-siR
Kプラスミド分子によるKrasG12D;p53fl/fl遺伝子組換え肺癌マウスモデルの治療効果及び生存の統計を示す。KrasG12D;p53fl/fl遺伝子組換え肺癌マウスモデルを平均的に群分けし、PBS、コントロールプラスミド(CMV-scrR)又はCMV-siR
Kプラスミドを2日に1回、計2週間注射し、治療前後にそれぞれCTスキャンによりマウスの腫瘍の大きさを検出し、生存を統計する。A:代表的なCTスキャン3Dイメージングの結果;B:マウス腫瘍体積の変化;C:生存統計。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.005を表す。
【
図6】CMV-RVG-siR
E+Fプラスミド分子によるインサイチュ膠芽腫マウスモデルの治療効果及び生存の統計を示す。膠芽腫インサイチュ移植マウスモデルを平均的に群分けし、PBS、コントロールプラスミド(CMV-scrR)、又はCMV-RVG-siR
E+Tプラスミドを2日に2回注射し、siRNA及びタンパク質のレベルを検出することにより、CMV-RVG-siR
E+TプラスミドがsiRNAを脳に効率的に送達し、EGFR及びTNC遺伝子の発現を阻害することを確認する。マウスモデルに2週間の治療を行い、生体イメージング技術によりマウスの腫瘍の大きさの変化を検出し、生存を統計する。A:代表的な生体イメージングスキャンの結果;B:マウス腫瘍体積の変化;C:生存統計。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.005を表す。
【
図7】プラスミド投与の安全性の検出を示す。A-F:プラスミド投与によるマウス血清中のアラニンアミノ基転移酵素、アラニンアミノ基転移酵素、総ビリルビン、尿素、アルカリホスファターゼやクレアチニンなどの生化学指標への影響、G:プラスミド投与によるマウス組織構造への影響。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明者らは、広く深く研究した結果、(a)第1標的遺伝子の発現を低下させる第1siRNA分子と、(b)必要に応じて、標的化ペプチドエレメントのコード配列と、(c)必要に応じて、第2標的遺伝子の発現を低下させる第2siRNA分子とを含有し、第1標的遺伝子は、EGFR、KRAS、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、第2標的遺伝子は、EGFR、TNC、又はこれらの組み合わせから群から選択されるsiRNA組成物又はベクターを初めて開発した。また、前記siRNA組成物は、2つ以上の遺伝子の発現を低下させることができる。本発明はまた、本発明のsiRNA組成物又はベクターを体内に直接注射して、エクソソームを直接形成し、癌を治療することができることを意外にも発見した。これに基づいて、本発明者らは発明を完成させた。
【0050】
用語
本開示をより容易に理解するために、まず、いくつかの用語を定義する。本願で使用される場合、以下の用語の各々は、本願において別段の明示的な規定がない限り、以下に示す意味を有するものとする。その他の定義は、出願全体にわたって説明されている。
【0051】
「約」という用語は、当業者によって決定された特定の値又は組成の許容可能な誤差の範囲内の値又は組成を意味し、その値又は組成がどのように計量又は測定されるかに部分的に依存する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現は、99と101との間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、「含有」又は「含む(包含)」という用語は、オープン、半クローズド、及びクローズドであってもよい。言い換えれば、前記用語は、「実質的に…から構成される」、又は「…から構成される」をも含む。
【0053】
本明細書で使用される場合、「宿主」、「被験者」、「所望の対象」という用語は、任意の哺乳類又は非哺乳類を指す。哺乳類には、ヒト;齧歯類などの脊椎動物;ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ラット、マウス、野ウサギ、家ウサギなどの非ヒト霊長類が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
第1siRNA分子
本発明では、第1siRNA分子とは、第1標的遺伝子(例えばEGFR、KRAS)の発現を低下させ得るsiRNA分子を指す。
【0055】
1つの好適な実施形態では、第1siRNAの配列はSEQ ID NO.:1又は2で示される。
【0056】
SEQ ID NO.1:UGUGGCUUCUCUUAACUCCU(EGFR siRNA);
SEQ ID NO.2:GCAAAUACACAAAGAAAGCCC(KRAS siRNA)。
【0057】
第2siRAN分子
本発明では、第2siRNA分子とは、第2標的遺伝子(例えばEGFR、TNC)の発現を低下させ得るsiRNA分子を指す。
【0058】
1つの好適な実施形態では、第2siRNAの配列はSEQ ID NO.:3で示される。
【0059】
SEQ ID NO.3:CACACAAGCCAUCUACACAUG(TNC siRNA)。
【0060】
siRNA組成物
本発明では、
第1標的遺伝子の発現を低下させる第1siRNA分子と、
必要に応じて、標的化ペプチドエレメントのコード配列と、
必要に応じて、第2標的遺伝子の発現を低下させる第2siRNA分子とを含み、
前記第1標的遺伝子は、EGFR、KRAS、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるsiRNA組成物を提供する。
【0061】
1つの好適な実施形態では、前記第2標的遺伝子は、EGFR、TNC、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0062】
1つの好適な実施形態では、前記第1標的遺伝子と第2標的遺伝子とが異なる。
【0063】
本発明では、本発明のsiRNA組成物は2つ以上の遺伝子の発現を低下させ得る。また、本発明のsiRNA組成物は、体内に直接注射して、インビボでエクソソームを直接形成して、癌を治療することができる。
【0064】
ベクター
本発明はまた、本発明の前記siRNA組成物を含有するベクターを提供する。前記発現ベクターは、通常、プロモータ、複製開始点及び/又はマーカー遺伝子などをさらに含有する。当業者によく知られている方法は、本発明に必要な発現ベクターを構築するために使用されてもよい。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、DNA合成技術、インビボ組換え技術などが含まれる。前記発現ベクターは、好ましくは、形質転換される宿主細胞を選択するための表現型形質、例えば、カナマイシン、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、アンピシリン耐性を提供するための1つ又は複数の選択的マーカー遺伝子を含む。
【0065】
本発明では、代表的なプロモータは、CMVプロモータ、U6、T7プロモータ、又はこれらの組み合わせ(限定されるわけではないが)を含む。
【0066】
標的化ペプチドエレメント
本発明では、標的化ペプチドエレメントは、RVG-、LAMP2Bを含むが、これらに限定されるものではない。好ましい実施形態では、本発明の標的化ペプチドエレメントは、狂犬病ウイルス糖タンパク質を含む。狂犬病ウイルス糖タンパク質(RVG:rabies virus glycoprotein)は神経細胞が発現するアセチルコリン受容体に結合し得る好神経性のタンパク質である。狂犬病ウイルスはラブドウイルス科狂犬病ウイルス属であり、嚢膜を有する一本鎖マイナス鎖RNAウイルスである。このウイルスは主に糖タンパク質Gをコードし、Gタンパク質は三量体の形でウイルスの嚢膜表面にアンカーされ、また、細胞表面の受容体と結合して、膜融合を媒体してウイルスを細胞に侵入させる。また、Gタンパク質は狂犬病ウイルスの主要な抗原タンパク質であり、生体を刺激して中和抗体を産生させる。RVGペプチドはニューロンが発現するコリン体に特異的に結合し、RVG標的は細胞膜外に発現し、エクソソームを血液脳関門を介して神経細胞に送達するように誘導する。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明の標的化ペプチドエレメントは、RVGとLAMP2Bとの融合タンパク質であるRVG-LAMP2bである。
【0068】
治療方法
本発明はまた、本発明のsiRNA組成物又はベクター又は医薬製剤を安全な有効量で所望の対象に投与して、癌を治療することを含む、癌治療方法を提供する。
【0069】
本発明の主要な利点は以下を含む。
【0070】
(1)本発明は、初めて上記の合成生物学設計理念と生体自身のmiRNA分泌や循環メカニズムとを組み合わせて、先駆的に哺乳類自身の組織器官(主に肝臓)を天然生物細胞シャーシとして、人工的に設計されたプラスミドシステムを直接利用してインビボ治療を行う。
【0071】
(2)本発明は、置換可能な合成生物学的エレメントを用いて完全な機能を有する遺伝子ループを構築することを代表的な特徴とするインビボsiRNA標的送達方法を初めて確立した。ここで、生物学的エレメントはコアエレメントと置換可能なエレメントの2つの部分を含む。コアエレメントはプロモータエレメントと第1siRNA発現エレメントからなり、置換可能なエレメントは、標的化エレメントと第2siRNA発現エレメントを含む。siRNA発現エレメントは、インビボで1つ又は複数のsiRNAを効果的に発現し、エクソソームに自動的に組み入れられる。標的化エレメントは、エクソソームが特定の細胞又は組織を標的化する能力を有するようにエクソソーム膜表面に自発的に発現する標的化機能を有するペプチドセグメントを発現することができ、プロモータエレメントは、上記標的化ペプチドセグメントとsiRNA発現とを同時に起動させることができる。
【0072】
(3)本発明では、異なる機能を有するエレメントをプラスミドベクター骨格上に構築し、プロモータエレメントとsiRNA発現エレメントを個別に直列に接続することにより、エクソソームに包まれたsiRNAをインビボで発現することを可能とする。プロモータエレメントを複数のsiRNA発現エレメントとを直列に接続することにより、複数種のsiRNAを包み込んだエクソソームを発現することができる。プロモータエレメント、標的化エレメント、siRNA発現エレメントを直列に接続することにより、siRNAを包み込んだ、特定の組織又は細胞を標的化する能力を有するエクソソームを発現することができる。
【0073】
(4)本発明では、siRNAを発現するプラスミドを尾静脈注射した結果、siRNAは、肝臓、肺、腎臓、脾臓、胃などの複数の組織で検出可能であるが、その前駆分子は肝臓組織でのみ検出可能であり、これは、プラスミド分子が肝臓細胞で発現し、siRNAを他の組織に分泌する可能性があることを示唆している。血漿と血漿エキソソーム中のsiRNA含量を検出したところ、血漿中のsiRNA分子はほとんど全て血漿エキソソームに集中していることがわかった。プロモータエレメント、RVG標的化エレメント、第1siRNA発現エレメント、第2siRNA発現エレメントを有するプラスミドを尾静脈注射により体内に導入すると、siRNAは血液脳関門を通過して脳組織に到達し、2種類の異なる遺伝子の発現を阻害することができる。
【0074】
(5)本発明により設計されたプラスミド分子は、インビボで加工発現され、siRNAを産生し、siRNA分子をエクソソームの形態で他の組織器官に分泌することができる。また、血液脳関門を通過して脳組織に到達し機能を発揮させるような標的送達を実現する。このシステムを用いてEGFR、KRAS遺伝子を阻害するsiRNAを送達することは、それぞれ肺癌のインサイチュ移植腫瘍及び遺伝子組換え動物腫瘍モデルにおいて良好な治療効果を得る。血液脳関門を通過して脳組織に到達するTNCとEGFR遺伝子を阻害するsiRNAを併用して標的送達することにより、膠芽腫のインサイチュ移植腫瘍モデルにおいて良好な治療効果が得られる。
【0075】
(6)siRNAの自家生産と輸送を実現する本発明の技術及び方法は、siRNAの生産コストが高く、分解しやすいという現在の問題を効果的に解決し、低コストで高効率なsiRNA薬物の生産・送達手段である。また、本発明は、この遺伝子治療モデルに基づく安全性を証明する。
【0076】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例に詳細な条件が示されていない実験方法は、通常、Sambrookらによる通常の条件に従って行われることが多い。分子クローニングは、実験室ハンドブック(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されている条件、又はメーカが推奨する条件に従うことが多い。特に断らない限り、パーセンテージと部数は重量換算である。以下の実施例で使用される実験材料及び試薬は、特に断らない限り、市販品として入手することができる。
【0077】
通常の方法
(1)プラスミドの構築
1. 二重酵素消化実験
BamH Ι(New England Biolab、品番:#R0136)、Xho Ι(Biolabs、品番:#R0146)二重酵素消化実験を例とする場合。
【0078】
【0079】
反応工程:
37℃、60分間インキュベート
アガロースゲル電気泳動(1%アガロース)
ゲルを回収して、骨格を-20℃の冷蔵庫に仮保存。
【0080】
2. アニーリング
2対の合成したオリゴ一本鎖DNAをddH2Oで100μMに溶解し、相補的一本鎖を5μlずつ準備して、2つずつ混合し、表2に示した系に従ってアニーリングを行う。2つのoligo混合物を95℃で5分間加熱した後、室温で20分間放置して二本鎖DNAを形成する。
【0081】
【0082】
3. ライゲーション
アニーリングした二本鎖DNAを10nM濃度に希釈し続け、表3に示した系に従って室温で30分間ライゲーションする。
【0083】
【0084】
4.形質転換
ライゲーション産物10μLをコンピテント細胞DH5α 100μLに形質転換し、30分間氷浴処理し、42℃で90~120秒熱ショックし、5min氷浴処理する。
【0085】
LBプレート(50μg/mlスペクタマイシンを含む)に塗布した後、37℃で一晩インキュベートした。無耐性LB培地を加え、37℃で1時間振とう培養する。
【0086】
500μLをプレート(スペクタマイシン含有)に塗布し、37℃で16時間培養する。
【0087】
5.シーケンシング検証
各形質転換プレートから3つのクローンを選び、振とうさせてプラスミドを抽出した後にシーケンシングを行い、組み換えクローンに挿入したフラグメント配列が設計したオリゴ一本鎖DNA配列と一致するかどうかを検証する。
【0088】
(2)細胞トランスフェクション:
1. 細胞を培養プレート(実験目的に応じて適切な規格を選択)に接種し、約50~80%の細胞密度まで培養する。
【0089】
2. Lipofectamine 2000トランスフェクションの説明書に従って、Lipofectamine 2000をOPTI-MEMで希釈し、ピペッティングして均一に混合し、静置しておく(A液)。
【0090】
3. 同様にトランスフェクションの説明書を参照して、適量のプラスミドを吸引し、OPTI-MEMで希釈してB液にしておく。
【0091】
4. A液とB液を混合し、10~15回ピペッティングし、20min静置する。トランスフェクションされる細胞培養液をOPTI-MEMに交換する。
【0092】
5. 混合したAB混合液を細胞に均一に滴下して、軽く振る。
【0093】
6. トランスフェクション6時間後に培地を2%胎児ウシ血清培地に交換し、36h後に細胞を収集して後続の実験分析に用いる。
【0094】
(3)RNA抽出
1. 細胞107個又は組織10mgあたり1mLを加える割合でTrizolを加え(ベント操作)、激しく振とうさせてよく混ぜ合わせ、室温で10分間静置する。
【0095】
2. Trizolの体積に対して1/5のトリクロロメタンを加え(ベント操作)、激しく振とうさせてよく混ぜ合わせ、室温で5分間静置した後、12000gを20分間遠心分離する。
【0096】
3. タンパク層に触れないように上清を慎重に吸引して、上清の体積の2倍のイソプロピルアルコール(予冷)を加えて、-20℃で少なくとも1時間静置する。
【0097】
4. 12000gを4℃で20分間遠心分離し、Trizolと等体積のDEPC水で調製した75%エタノールを加えて洗浄した。
【0098】
5. 12000gを4℃で15分間遠心分離し、上清を全て捨てて、室温で10minを超えないように乾燥する。
【0099】
6. 25μLのDEPC水で溶解する。
【0100】
(4)エンドトキシンフリープラスミドの大量抽出
6L菌液を例にする場合、
1. 振とう:各2L三角フラスコに1L LBを投入し、6本で合計菌液6Lを振とうさせる。振とう時間を16時間以内にする。
【0101】
2. 菌液を3本の遠心瓶に入れ、中心対称にトリミングし(国産瓶は1/2以下、輸入瓶は2/3以下)、5000rpmで10min遠心分離し、上清を捨てて菌体を収集する。
【0102】
3. 各遠心瓶に75mLのSolution 1を加え、塊状物質が見えないほど激しく振とうさせる。
【0103】
4. 3つの遠心瓶にそれぞれ150mLのSolution 2を加え、綿状粘性物質が現れると、あまり激しくないように軽く揺れ、分解過程を10min以下にする。
【0104】
5. 3つの遠心瓶にそれぞれ112.5mLの予冷Solution 3を加え、沈殿が分散するまで十分に軽く振ったところ、白色沈殿が見られる。
【0105】
6. トリミング後、5000rpm、4℃で20min遠心分離する。キットのCSIフィルターで上清を国産遠心瓶にろ取する。
【0106】
7. 輸入瓶を洗って、乾かして、国産瓶の中の濾液を輸入瓶に移する。
【0107】
8. 3つの遠心瓶にそれぞれ210mLのイソプロパノールを加え、約20回逆さにしてよく混ぜ合わせる。-20℃で1時間以上沈殿させる。
【0108】
9. 上記で得られた溶液を5000rpm、4℃で20min遠心分離し、上清を捨てる。
【0109】
10. 1つの瓶に60mLのP1を加えて激しく混ぜた後、30mLずつを他の2つの遠心瓶に量り、それぞれ30mLのP1を入れた2つの遠心瓶を得て、激しく振って沈殿物を溶解させる。
【0110】
11. 37℃で10min静置し、2つの遠心瓶にそれぞれ30mLのP2を加え、軽く数回逆さにし、7~9min静置する。
【0111】
12. 2つの遠心瓶にそれぞれ30mLのP2を加え、溶液に白色分散綿状沈殿が出現するまで、軽く数回逆さにして、7~9min静置する。
【0112】
13. 5000rpm、4℃で10min遠心分離する。
【0113】
14. キットのCSIフィルターで上清を1つの遠心瓶にろ取する。
【0114】
15. 赤色のエンドトキシンフリー溶液ERを19mL加えて、逆さにしてよく混ぜ合わせる。
【0115】
16. 60mLのイソプロパノールを加え、よく混ぜ合わせて、-20℃で1時間以上沈殿させる。
【0116】
17. カラム平衡化:6つの吸着カラムを準備して、それぞれ2.5mLのBLを加え、8000rpmで2min遠心分離し、廃液を捨てる。(アングルロータ、丸底、平衡化液で処理した吸着カラムはすぐに使用するのが望ましい)。
【0117】
18. カラム通過:6つの吸着カラムにそれぞれ10mLの液体を注入し、8000rpmで2min遠心分離し、廃液を捨て、全てろ過する。
【0118】
19. 6つの吸着カラムにそれぞれ10mLの緩衝液EDを注入し、8000rpmで2min遠心分離し、廃液を捨てる。
【0119】
20. 6つの吸着カラムにそれぞれ10mLのリンス液PW(無水エタノールをあらかじめ添加)を注入し、8000rpmで2min遠心分離し、廃液を捨てる。
【0120】
21. 20を繰り返した。
【0121】
22. 各吸着カラムにそれぞれ2mLのddH2Oを加え、5min静置し、7000rpmで2min遠心分離する。液体を再び吸着カラムに戻して再度分離する。
【0122】
23. 液体をよく混ぜて、濃度を測定して、-20℃で保存する。
【0123】
(5)LLCインサイチュ肺癌モデル
インサイチュ肺癌モデルを作製するために、5×106LLC細胞をヌードマウスに尾静脈注射する。30日後、非侵襲的Micro-CTスキャンを用いてマウスを監視し、肺で腫瘍が形成されたことを確認する。その後、担癌マウスを無作為に4群に分け、2日毎にPBS又は5mg/kg CMV-scrR又はCMV-siRE遺伝子ループを静脈注射し、1群に5mg/kgゲフィチニブを胃内投与し、計7回治療した。治療期間は2週間とする。
【0124】
特定の時点でマウスを殺して分子生物学的な分析のために組織を採取する必要があるので、腫瘍移植に成功したマウスを無作為に群分けし、生存期間と腫瘍の進行を評価するために用いる。生存分析用マウスは、治療後に、さらなる処理を行うことなく、マウスを常時監視する。腫瘍進行分析では、Micro-CTを用いて2週間の治療期間終了後に生存したマウスのみを分析する。Micro-CTスキャン後、マウスを殺して、肺組織を採取し、組織病理学的染色と免疫組織化学法を用いて分析して用いる。
【0125】
(6)KRASSLL-G12D;p53fl/f1遺伝子組換え肺癌モデル
1. 6週齢のKRASSL-G12D;p53fl/f1マウスに5%水和クロラールを適量投与して麻酔した。
【0126】
2. Creを発現するアデノウイルスAdeno-Creをマウス1匹あたり5×106PFUの用量で吸引し、マウス1匹あたり50μLの体積をPBSで希釈して使用に備える。
【0127】
3. マウスの頸部外皮で毛を脱毛し、頸部の腹面の中軸に沿って小さな開口を縦方向に切り、主気管を露出させる。
【0128】
4. エルボピンセットで気道の位置を固定し、動脈監視針を案内して口腔から気管に挿入した後、注射器でアデノウイルスの希釈液を注射する。
【0129】
5. 外皮を縫合し、感染症を防ぐようにエリスロマイシン軟膏で傷口を処理する。
【0130】
この方法によれば、Adeno-Creを口腔や気道に滞留することなくマウスの肺に正確かつ特異的に送達することができる。吸入後の様々な時点(30、40、及び50日)にmicro-CTにより監視して腫瘍形成を確認する。Adeno-Cre投与50日後、マウスを無作為に2群に分け、尾静脈を通してCMV-scrR又はCMV-siRK 5mg/kgで2週間(7回注射)治療する。その後、マウスを監視して生存時間を決定するか、腫瘍の成長を評価する。
【0131】
(7)小動物のMicro-CTによる肺の腫瘍の進行の監視
造影剤がなくても、Micro-CT画像は肺の腫瘍と周囲組織を明確に区別し、再構成された3D肺画像は腫瘍の肺組織内の実際の位置をより直感的に示すことができるので、本明細書では、小動物Micro-CT分析を用いて肺の腫瘍の成長を評価する。Micro-CTスキャンはBruker社のSkyScan 1176型Micro-CTアナライザを用い、このアナライザは、35μMの分解能で180°の領域をスキャンし、回転ステップは0.800である。このシステムは、2つのサーメット管を含み、固定された0.5mmアルミフィルタと1280×1024ピクセルの2つのデジタルX線カメラとが装備されている。50kVと500μAでX線画像を得る。仰臥位でマウスをスキャンする。
【0132】
メーカー(Bruker社)の使用説明書に従って、N-Reconプログラムを使用してmicro-CTデータを一括分類、処理、再構成する。その後、DataViewerを用いて再構成したデータを画像化し、腫瘍の位置を識別し、さらにCTanプログラムを用いて腫瘍の体積を計算し、CTVolプログラムを用いて全肺の再構成を行う。
【0133】
(8)エクソソームの分離
マウスから静脈血サンプルを採取し、血漿分離チューブに入れる。室温、800×gで10分間遠心分離して血漿を分離し、室温、10,000×gで15分間遠心分離して、細胞断片を除去する。上清血漿を回収し、Total Exosome Isolationキットを使用してメーカの指示に従ってエクソソームを分離する。
【0134】
実施例1 異なる交換可能なエレメントの検証及び完全プラスミドの干渉効率検出
EGFR、TNC遺伝子に対するプラスミド分子をそれぞれ構築し、プロモータエレメントとsiRNA発現エレメントとを直列に接続し、CMV-siR
Eを構築し、それぞれ骨格ベクターに連結し(
図1)、プラスミド分子をマウス肺癌細胞株LLCにトランスフェクションし、36時間後にqRT-PCR及びWestern blotting実験を用いて、細胞内のEGFR遺伝子のmRNA(
図2A-B)とタンパク質(
図2C)の発現レベルを検出した。プロモータエレメント、標的化エレメント及びEGFR、TNC遺伝子に対する2種類のsiRNA発現エレメントを直列に接続し、CMV-RVG-siR
E+Tを構築し(
図1)、プラスミド分子を膠芽腫細胞株U87MGにトランスフェクションし、36時間後にqPCR及びwestern実験を用いて細胞内のEGFR、TNC遺伝子のmRNA(
図2D-E)及びタンパク質(
図2F)の発現レベルを検出した。その結果、人工的に構築されたsiRNA発現プラスミド分子は細胞系において各遺伝子の発現を効果的に阻害できることが分かった。
【0135】
実施例2 プラスミドが発現するsiRNAの肝臓での発現及び体内分布
siRNAを発現するプラスミドを10mg/kgの用量で正常マウスに尾静脈注射した。それぞれ1、3、6、9、12、24、48時間後、マウスを殺して、マウスの肝臓、肺、腎臓、脾臓、脳、心臓、膵臓、筋肉、CD4
+T細胞などの組織を採取し、それぞれsiRNAレベルを検出した。その結果、マウスの肝臓組織では、siRNAが多く分布しており(
図3A)、siRNAを発現するエレメントは肝臓でしか検出できないことがわかった。血漿では、siRNAは検出され(
図3C)、主にマイクロ小胞に包まれた形で存在する。一方、肺、腎臓、脾臓、膵臓、及び及びCD4
+T細胞では、大量のsiRNA発現が検出され(
図3B)、その他の組織では、発現量が低かったりシグナルがなかったりした。
【0136】
実施例3 プラスミド分子による肺の腫瘍モデルの治療効果
プラスミドのインビボでの治療効果をさらに確認するために、LLC肺癌インサイチュ移植マウスモデルを実験対象として、CMV-siR
Eプラスミドの肺の腫瘍に対する治療効果を確認した。インサイチュ移植に成功したマウスを無作為に4群に分け、それぞれ10mg/kgの用量でPBS、コントロールプラスミド、CMV-siR
Eプラスミドを注射し、ゲフィチニブを胃内投与した。2日に1回、計2週間の治療を行い、治療前後にそれぞれCTイメージングを用いて肺の腫瘍の変化を検出し(
図4A)、マウスの生存を統計した。その結果、治療前後では、CMV-siR
Eプラスミド注射群のマウスでは、肺の腫瘍の体積が著しく減少し、一部のマウスでは完全に消失したのに対し、他の3群のマウスでは、腫瘍が著しく増大したことが分かった(
図4B)。また、CMV-siR
Eプラスミド注射群のマウスは、生存期間が大幅に延長された(
図4C)。
【0137】
さらに、CMV-siR
KプラスミドによるKrasG12D;p53fl/fl遺伝子組換え肺癌マウスモデルの治療効果を検討し、siRNA発現エレメントの置換性を検証した。CTイメージングを用いてこの遺伝子組換えマウスのモデルに成功したことを検証した後、マウスを無作為に3群に分け、それぞれ10mg/kgの用量でPBS、コントロールプラスミド(CMV-scrR)及びCMV-siR
Kプラスミドを注射した。2日に1回、計2週間の治療を行い、治療前後にそれぞれCTイメージングを用いて肺の腫瘍の変化を検出し(
図5A)、マウスの生存を統計した。その結果、治療前後では、CMV-siR
Kプラスミド注射群のマウスでは、肺の腫瘍の進行が著しく緩和され、一部のマウスでは完全に消失したのに対し、他の2群のマウスでは、腫瘍が著しく増大したことが分かった(
図5B)。また、CMV-siR
Kプラスミド注射群のマウスは、生存期間が大幅に延長された(
図5C)。
【0138】
実施例4 標的化ペプチドエレメントを有する二重siRNAプラスミド分子による膠芽腫マウスモデルの治療効果
プロモータエレメントとsiRNA発現エレメントのみを有するプラスミドでは、siRNAを効率的に脳に送達することができないため、狂犬病ウイルスを発現するペプチドセグメントRVGのエレメントをプラスミドベクターに組み込むとともに、より好ましい阻害効果を達成させるために、EGFR遺伝子とTNC遺伝子を阻害するsiRNA発現エレメントをプラスミドベクターに組み込むことで、CMV-RVG-siR
E+Tプラスミド分子を構築し、脳組織におけるsiRNAの発現を検出することにより(
図6A-B)、このように設計すると、siRNAを効率的に脳組織に送達できることを明らかにした。次に、マウス膠芽腫のインサイチュモデルを用いて、このプラスミドの治療効果を検証した。マウスを無作為に3群に分け、PBS、コントロールプラスミド(CMV-scrR)、及びCMV-RVG-siR
E+Tプラスミドをそれぞれ10mg/kgの投与量で2日に1回、計2週間投与し、生体イメージングで腫瘍の体積を追跡検出した(
図6C)。その結果、CMV-RVG-siR
E+Tプラスミドを注射することで、膠芽腫を効果的に阻害できることが証明され、実験群のマウスでは、腫瘍の体積が著しく減少し、生存期間が著しく延長された(
図6D-E)。
【0139】
実施例5 インビボ安全性検出
本治療方法の安全性を調べるために、対照群のマウスとプラスミド分子を注射した実験群のマウスの血清中のアラニンアミノ基転移酵素(
図7A)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(
図7B)、総ビリルビン(
図7C)、尿素(
図7D)、アルカリホスファターゼ(
図7E)やクレアチニン(
図7F)などの生化学的指標のレベルも調べた。その結果、プラスミド分子を注射した実験群のマウスでは、上記の指標は対照群と有意な差はなく、肝臓、肺、腎臓、脾臓の切片から、プラスミド尾静脈注射が組織損傷を引き起こさず、安全な投与方法であることを示している(
図7G)。
【0140】
本発明において言及されている全ての文献は、各文献が個別に引用により参照されていると同程度に、本出願において引用により参照されている。さらに、当業者は本発明の上記内容に基づいて本発明に様々な変更又は修正を加えることができ、これらの等価な形態は、全て本願に添付された特許請求の範囲によって定められた範囲に含まれるものとする。
【配列表】
【国際調査報告】