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特表2023-518131神経損傷の治療のための血圧調節システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(54)【発明の名称】神経損傷の治療のための血圧調節システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20230420BHJP
【FI】
A61M25/10 546
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578945
(86)(22)【出願日】2021-03-06
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 US2021021264
(87)【国際公開番号】W WO2021178937
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/986,161
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/194,053
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399047002
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ユタ リサーチ ファウンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】504018057
【氏名又は名称】ウェイク・フォレスト・ユニバーシティ・ヘルス・サイエンシーズ
【氏名又は名称原語表記】Wake Forest University Health Sciences
(71)【出願人】
【識別番号】522354676
【氏名又は名称】サータス・クリティカル・ケア,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マイケル・オースティン
(72)【発明者】
【氏名】デ ハベノン,アダム
(72)【発明者】
【氏名】オアロー,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ネフ,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】マクウェード,メラニー
(72)【発明者】
【氏名】ポイズナー,デビッド
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267BB02
4C267BB27
4C267CC08
4C267DD01
4C267EE12
4C267EE13
(57)【要約】
開示されるのは、患者における血圧変動性を減少させるためのシステムおよび方法である。本システムは、拡張可能な要素および1つまたは複数の血圧センサを有する血管内カテーテル、ならびに血圧測定値を受信し、血圧変動性尺度を決定するように構成されるコンピュータ/処理ユニットを含む。血圧変動性尺度が所与の血圧変動性しきい値を超えること、または既定の範囲から外れることを決定すると、コンピュータ/処理ユニットは、カテーテルの拡張可能な要素のサイズを調節するようにカテーテル制御器に指示し、以て血圧を変調し、血圧変動性を減少させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における血圧変動性を減少させるためのシステムであって、
前記患者の大動脈内に位置付けられるように構成される拡張可能な要素、およびセンサを備える、血管内カテーテルと、
1つまたは複数のプロセッサと、
コンピュータ実行可能命令が記憶されている1つまたは複数のハードウェアストレージデバイスとを備え、前記コンピュータ実行可能命令は、少なくとも:
前記センサから複数の血圧測定値を獲得することと、
前記複数の血圧測定値に基づいて、血圧変動性尺度を決定することと、
前記血圧変動性尺度が、変動性しきい値を超えるか、または既定の変動性範囲から外れるかどうかを決定することと、
前記血圧変動性尺度が前記変動性しきい値を超えること、または前記既定の変動性範囲から外れることを決定すると、血圧変動性を減少させるように前記血管内カテーテルの前記拡張可能な要素のサイズを調節することと、を前記システムに行わせるために前記1つまたは複数のプロセッサによって実行可能である、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記コンピュータ実行可能命令は、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行されるとき、
前記複数の血圧測定値に基づいて血圧を決定することと、
前記血圧が上限しきい値を超えるか、下限しきい値を下回るか、または既定の血圧範囲から外れるかどうかを決定することと、
前記血圧が上限しきい値を超えること、前記下限しきい値を下回ること、または前記既定の血圧範囲から外れることを決定すると、血圧を減少または増加させるように薬剤を送達することとを前記システムにさらに行わせる、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記薬剤は、血管拡張性薬剤または血管収縮性薬剤である、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、前記血圧が上限しきい値を超えることを決定すると、前記システムは、血管拡張性薬剤を送達する、システム。
【請求項5】
請求項3に記載のシステムであって、前記血圧が下限しきい値を下回ることを決定すると、前記システムは、血管収縮性薬剤を送達する、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記コンピュータ実行可能命令は、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行されるとき、1つまたは複数のアラーム条件が存在するかどうかを決定し、1つまたは複数のアラーム条件が存在することを決定すると、ユーザインターフェースにおいてアラーム通知を開始することをシステムにさらに行わせる、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記拡張可能な要素は、形状変化材料から形成されるバルーンまたはフレームを備える、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記センサは、近位血圧センサまたは遠位血圧センサである、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、前記血管内カテーテルは、複数のセンサを備え、前記複数のセンサは、前記拡張可能な要素の両側に配設される近位血圧センサおよび遠位血圧を備える、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、前記患者の近くの環境パラメータを測定するように構成される環境センサをさらに備える、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記患者または患者支持物と連携するように構成される患者アクチュエータをさらに備え、前記患者アクチュエータは、前記患者の配向を調節するためのアクチュエータを備える、システム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記血圧変動性尺度は、収縮期圧の標準偏差もしくは標準誤差、拡張期圧の標準偏差もしくは標準誤差、所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の標準偏差もしくは標準誤差、収縮期圧の変動係数、拡張期圧の変動係数、所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の変動係数、収縮期圧の連続変動、拡張期圧の連続変動、所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の連続変動、収縮期立ち上がりの傾斜、収縮期ピークから重複切痕までの血圧波形の傾斜、前記重複切痕から拡張期谷までの波形の傾斜、前記拡張期谷の終わりから前記重複切痕までの血圧曲線の下の領域、前記収縮期のピークから前記重複切痕までの血圧曲線の下の領域、前記重複切痕から前記拡張期谷までの血圧波形の下の領域、前記収縮期ピークから前記拡張期谷までの差として計算されるような脈圧、またはそれらの組み合わせに少なくとも部分的に基づいて計算される、システム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、前記血圧変動性尺度は、収縮期圧の標準偏差もしくは標準誤差、拡張期圧の標準偏差もしくは標準誤差、または所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の標準偏差もしくは標準誤差に少なくとも部分的に基づいて計算される、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、前記血圧変動性尺度は、収縮期圧の変動係数、拡張期圧の変動係数、所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の変動係数に少なくとも部分的に基づいて計算される、システム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムであって、前記血圧変動性尺度は、収縮期圧の連続変動、拡張期圧の連続変動、または所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の連続変動に少なくとも部分的に基づいて計算される、システム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムであって、前記血圧変動性尺度は、収縮期立ち上がりの傾斜、または収縮期ピークから重複切痕までの血圧波形の傾斜、または前記重複切痕から拡張期谷までの波形の傾斜に少なくとも部分的に基づいて計算される、システム。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムであって、前記血圧変動性尺度は、前記拡張期谷の終わりから前記重複切痕までの血圧曲線の下の領域、前記収縮期のピークから前記重複切痕までの血圧曲線の下の領域、前記重複切痕から前記拡張期谷までの血圧波形の下の領域、前記収縮期ピークから前記拡張期谷までの差として計算されるような脈圧に少なくとも部分的に基づいて計算される、システム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムであって、前記システムは、標的近位圧、前記血圧変動性しきい値、血圧変動性計算設定、血圧上限しきい値、および血圧下限しきい値のうちの1つまたは複数を示すユーザ入力を受信するように構成される、システム。
【請求項19】
請求項1に記載のシステムであって、ユーザが自動モードまたは手動モードを選択することを可能にするように構成される自動調節トグルをさらに備える、システム。
【請求項20】
患者における血圧変動性を減少させるためのシステムであって、
前記患者の大動脈内に位置付けられるように構成される拡張可能な要素、前記拡張可能な要素の第1の側面に配設される近位血圧センサ、および前記拡張可能な要素の反対側の第2の側面に配設される遠位血圧センサを備える、血管内カテーテルと、
1つまたは複数のプロセッサと、
コンピュータ実行可能命令が記憶されている1つまたは複数のハードウェアストレージデバイスとを備え、前記コンピュータ実行可能命令は、少なくとも:
前記近位および遠位血圧センサから経時的に複数の血圧測定値を獲得することと、
前記複数の血圧測定値に基づいて、血圧変動性尺度および血圧を決定することと、
前記血圧変動性尺度が変動性しきい値を超えるかどうかを決定することと、
前記血圧変動性尺度が前記変動性しきい値を超えることを決定すると、血圧変動性を減少させるように前記血管内カテーテルの前記拡張可能な要素のサイズを調節することと、
前記血圧が上限しきい値を超えるか、下限しきい値を下回るか、または既定の血圧範囲から外れるかどうかを決定することと、
前記血圧が上限しきい値を超えること、前記下限しきい値を下回ること、または前記既定の血圧範囲から外れることを決定すると、血圧を減少または増加させるように薬剤を送達することと、を前記システムに行わせるために前記1つまたは複数のプロセッサによって実行可能である、システム。
【請求項21】
神経性の急病を患う患者における血圧変動性を減少させる方法であって、
センサおよび拡張可能な要素を備える血管内カテーテルの遠位端を、前記拡張可能な要素を前記神経性の急病を患う患者の大動脈内に位置付けるように前進させるステップと、
血圧変動性を減少させるように前記拡張可能な要素のサイズを調節するステップとを含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記神経性の急病は、くも膜下出血、硬膜下出血、硬膜外出血、虚血性脳卒中、出血性卒中、またはびまん性軸索損傷である、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、血圧変動性は、少なくとも約5mmHg減少される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連文献への相互参照
[0001]本出願は、“BLOOD PRESSURE REGULATION SYSTEM FOR THE TREATMENT OF NEUROLOGIC INJURIES”という表題の2021年3月5日に出願された米国特許出願第17/194,053号および“BLOOD PRESSURE REGULATION SYSTEM FOR THE TREATMENT OF NEUROLOGIC INJURIES”という表題の2020年3月6日に出願された米国仮特許出願第62/986,161号に対する優先権および利益を主張するものである。前述の出願の各々は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、概して、大動脈血流を調節するように構成される血管内システムに関する。特に、本開示は、大動脈内に位置付けられる選択的に拡張可能な要素を利用する大動脈流調節デバイス、ならびに/または神経損傷および循環虚脱を患う患者など、効果的な血圧変調から恩恵を受け得る患者において血圧および血圧変動性を調節するための薬剤送達に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]米国では毎年およそ795,000人が、脳卒中を経験しており、そのうち死者は140,000人である。生き延びた患者においても、神経損傷が広く認められ、年間の見積額は340億ドルである。脳卒中の85パーセントは、動脈を閉塞して脳の特定の領域への血流を制限する血栓または血小板によるものである。これらの“急性虚血性脳卒中”(AIS:Acute Ischemic Stroke)は、脳組織へのかん流を制限し、取り返しのつかない神経細胞死を引き起こす。薬物および脳神経血管内治療は、このタイプの脳卒中を治療するために用いられるが、残念ながら、様々な因子が、しばしばこれらの治療を限られたAIS患者のみに限定する。これらの患者は、注意深い医療管理、血圧減少、および時として、血栓を除去するための介入により治療される。“出血性卒中”と呼ばれる第2のタイプの脳卒中は、脳内の血管が崩壊して脳組織内での出血につながるときに発生する。
【0004】
[0004]脳卒中患者において、半影は、低下したかん流を有するがまだ取り返しがつかないくらいの損傷を受けていない脳組織であり、半影の結末が、脳卒中の後の神経学的転帰を決定づける。したがって、研究努力は、脳卒中のある患者のための最適血圧目標を含め、半影を救済するための方策を証明することに焦点を合わせてきた。これは、脳血管循環における血圧がしばしばそれらの領域へのかん流と同等であることから、介入のターゲットである。複数の大型多施設無作為試験にもかかわらず、個別的な血圧ターゲットを得るための介入は、転帰を改善することに繰り返し失敗してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]故に、脳卒中または同様の神経損傷を患う患者において血圧を効果的に変調し、および以て、そのような患者の転帰を潜在的に改善するための改善されたシステムおよび方法が現在必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]本明細書に開示されるのは、患者における血圧変動性(BVP)を変調するためのシステムおよび方法である。1つの実施形態において、血圧変動性変調システムは、拡張可能な要素および1つまたは複数の血圧センサを有する血管内カテーテル、ならびに血圧測定値を受信することと、血圧変動性尺度を決定することを上記システムに行わせるように構成されるコンピュータ/処理ユニットを含む。血圧変動性尺度が所与の血圧変動性しきい値を超えること、または既定の変動性範囲から外れることを決定すると、本システムは、カテーテルの拡張可能な要素のサイズを調節し、以て血圧を変調し、血圧変動性を減少させる。
【0007】
[0007]いくつかの実施形態において、システムおよび方法はまた、1つまたは複数の血圧変調薬剤を患者に提供するように構成される薬剤注入ユニットを含む。本システムは、受信した血圧測定値を使用し得る。血圧が上限しきい値を超えること、下限しきい値を下回ること、または既定の血圧範囲から外れることを決定すると、本システムは、血圧(例えば、平均血圧、収縮期血圧、または拡張期血圧)を減少または増加させるために1つまたは複数の薬剤を患者に送達するように医療用注入ユニットに指示する。
【0008】
[0008]患者に送達される薬剤は、血管拡張性薬剤および/または血管収縮性薬剤を含み得る。例えば、血圧が高すぎることが決定される(例えば、上限しきい値を超えることが決定されるか、または既定の範囲を上回る)場合、本システムは、血管拡張性薬剤を送達し得、その一方で、血圧が低すぎることが決定される(例えば、下限しきい値を下回ることが決定されるか、または既定の範囲未満である)場合、本システムは、血管収縮性薬剤を送達し得る。
【0009】
[0009]いくつかの実施形態において、システムまたは方法は、1つまたは複数のアラーム条件(例えば、過剰な時間量にわたってしきい値外に存在する心拍変動性、薬剤注入および/もしくはカテーテルの拡張可能な要素に対する調節による血圧の予期される変化に到達できないこと、しきい値よりも速い心拍変動性における変化、頭蓋内圧の急激な増加、または懸念もしくは追加のアクションを必要とする患者に対する他の生理学的変化)が存在するかどうかを決定し、1つまたは複数のアラーム条件が存在することを決定すると、ユーザインターフェースにおいてアラーム通知を開始する。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態において、拡張可能な要素は、1つもしくは複数のバルーンおよび/または膜の付いた1つもしくは複数のフレームを含む。フレームは、形状変化材料(例えば、ニチノール)から形成され得る。本システムに含まれる1つまたは複数のセンサは、拡張可能な要素の近位に配設される血圧センサおよび/またはセンサの遠位に配設される血圧センサを含み得る。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態において、本システムは、患者の近くの環境パラメータを測定するように構成される1つまたは複数の環境センサを含む。いくつかの実施形態は、患者または患者支持物と連携するように構成される1つまたは複数の患者アクチュエータを含み得る。患者アクチュエータは、例えば、患者の配向を調節するためのアクチュエータを含み得る。
【0012】
[0012]血圧変動性は、様々な技法を使用して計算され得る。例示的な方法は、収縮期圧の標準偏差もしくは標準誤差、拡張期圧の標準偏差もしくは標準誤差、所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の標準偏差もしくは標準誤差、収縮期圧の変動係数、拡張期圧の変動係数、所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の変動係数、収縮期圧の連続変動、拡張期圧の連続変動、所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の連続変動、収縮期立ち上がりの傾斜、収縮期ピークから重複切痕までの血圧波形の傾斜、重複切痕から拡張期谷までの波形の傾斜、拡張期谷の終わりから重複切痕までの血圧曲線の下の領域、収縮期のピークから重複切痕までの血圧曲線の下の領域、重複切痕から拡張期谷までの血圧波形の下の領域、収縮期ピークから拡張期谷までの差として計算されるような脈圧、またはそれらの組み合わせを使用することを伴う。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態において、本システムは、標的近位圧、血圧変動性しきい値、血圧変動性計算設定、血圧上限しきい値、または血圧下限しきい値のうちの1つまたは複数を示すユーザ入力を受信するように構成される。いくつかの実施形態において、本システムは、ユーザが自動モードまたは手動モードを選択することを可能にするように構成される自動調節トグルを含み得る。
【0014】
[0014]本明細書に開示されるのはまた、本明細書に説明される任意のシステム実施形態を使用する方法である。神経性の急病を患う患者における血圧変動性を減少させる1つの例示的な方法は、センサおよび拡張可能な要素を備える血管内カテーテルの遠位端を、拡張可能な要素を神経性の急病を患う患者の大動脈内に位置付けるように前進させるステップと、拡張可能な要素に近位の血管系の領域における血圧を変調し、以て血圧変動性を減少させるように、拡張可能な要素のサイズを調節するステップとを含む。神経性の急病は、例えば、くも膜下出血、硬膜下出血、硬膜外出血、虚血性脳卒中、出血性卒中、またはびまん性軸索損傷に関与し得る。
【0015】
[0015]この発明の概要は、発明を実施するための形態において以下にさらに説明される概念の集まりを簡略形式で紹介するために提供される。この発明の概要は、特許請求された主題の主な特徴または本質的な特徴を証明することは意図されず、特許請求された主題の範囲を示すものとして使用されることも意図されない。
【0016】
[0016]本発明の様々な目的、特徴、特性、および利点は、添付の図面および添付の特許請求の範囲と併せて、実施形態の以下の説明から明白であり、また容易に理解されるものとし、これらのすべてが本明細書の部分を形作る。図面において、同様の参照番号は、様々な図における対応する部分または同様の部分を指定するために利用され得、描写される様々な要素は、必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】[0017]血圧変動性を監視および変調するための例示的なシステムを例証する図である。
図2】[0018]血圧波形の異なる成分を例証する図である。
図3】[0019]血圧変動性を監視および変調するためのシステムの例示的な使用を例証する図である。
図4】[0020]患者における血圧変動性を監視および変調するための方法のフローチャートである。
図5】[0021]脳内出血のブタモデルにおける血圧変動性変調システムの試験中に得られるデータを例証し、大動脈に位置付けられる血管内バルーンの自動制御が近位血圧変動性を減少させることを例証する図である。
図6】脳内出血のブタモデルにおける血圧変動性変調システムの試験中に得られるデータを例証し、血圧量変化の関連した有益な変調を例証する図である。
図7】[0022]左基底核および視床における血腫の誘発の成功を示す、図5および図6と関連付けられた研究において使用される動物の磁気共鳴画像を例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
導入
[0023]血圧は、大動脈レベルで血管抵抗を操作することによりリアルタイムで制御され得る。本明細書で使用される場合、血圧は、平均血圧、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、拡張可能な要素より上もしくは下で参照される際の血圧、またはそれらの組み合わせを指し得る。血圧測定値は、説明されたタイプの血圧のうちの任意の1つまたは複数の分率または割合を含み得る。薬物介入と比較して、この直接操作は、安定した血圧を達成するより実行可能な方法である。本明細書に説明されるのは、自動部分大動脈遮断を達成することができ、患者の生理学的状態に応答するためにリアルタイムで動的に制御され得る新規の血管内技術である。単なる薬物介入とは異なり、部分大動脈遮断は、血圧の機械的増強を結果としてもたらし、ほぼ即時に行われる。
【0019】
[0024]自動血管内デバイスは、大動脈内の血流への抵抗において迅速な小変化を起こすことができ、このことが、拡張した要素から上(すなわち、上流)の血管系内の患者の血圧における迅速な小変化を結果としてもたらし得る。しかしながら、血管内デバイスだけにより変化され得る血圧の絶対量は限られる。重度の低血圧は、大動脈の完全遮断でさえも完全には補正されない場合がある。同様に、血管内デバイスの拡張可能な要素が完全にしぼんでいるが、血圧が上昇し続ける場合、血管内デバイスは、血圧を減少させるためにさらなる変化を起こすことができない。したがって、いくつかの状況において、血管内デバイスと併せた薬剤の使用が、より大きい範囲の変動にわたって安定した血圧を維持するためにより完璧な解決策を提供し得る。
【0020】
[0025]薬剤は、血管内デバイスが、減少した血流およびかん流に起因して、(遮蔽点に遠位の)器官に害を及ぼし得る遮断のレベルに到達しているとき、全身の血圧を増加させるために使用され得る。その一方で、代替の薬剤は、血管内デバイスからの機械的介入を最小限にしているにもかかわらず血圧が所望の範囲を上回り続けるとき、血圧を減少させるために使用され得る。本明細書に説明されるような血管内デバイスは、広範の圧力にわたって血圧変動性を最小限にすることを通じて血圧を最適化することができ、故に、薬剤の追加使用は、患者が治療され得る血圧の範囲を延ばし得る。
【0021】
[0026]この参照により本明細書に組み込まれるJohnsonらの国際特許第2018/132623号(“Johnson”)は、拡張可能な要素の遠位の地点における出血など、重症疾患およびショックの状態の間、血圧を変調するために薬剤送達サブシステムと連携することができる自動または部分自動の血管内デバイスについて説明する。Johnsonにおいて、バルーンより上(すなわち、近位)の低血圧、またはバルーンの遠位の過度の出血など、有害な生理学的状態が検出されると、バルーンが膨らんで、心臓に対する後負荷を増加させ、バルーンの地点より上の血圧を増加させることができる。バルーンカテーテルの効果はまた、患者の血圧を増加させるために薬剤ならびに静脈内輸液を提供し得る薬剤送達サブシステムによって増強され得る。
【0022】
[0027]しかしながら、血圧変動性を制御するためのシステムおよび方法は、例えば、神経性の急病(例えば、くも膜下出血、硬膜下出血、硬膜外出血、虚血性脳卒中、出血性卒中、びまん性軸索損傷、または外傷性脳損傷)を患う患者において特に望ましい。絶対レベルまたは標的血圧とは対照的に、血圧変動性、または血圧が刻一刻と変化している量は、実際の機能転帰に対してより大きい相関を有し得る。血圧において低変動を伴った血圧恒常性を確実にすることは、特定の目標血圧よりも重要な場合があり、半影への二次損傷を制限するのに役立ち得る。
【0023】
[0028]しかしながら、脳卒中後の患者における血圧を制御することは困難である。多くの薬理学的試験は、血圧変動性を最小限にすることは言うまでもなく、特定の血圧目標を標的にすることによって改善された転帰を達成することに失敗してきた。恒常性および減少した血圧変動性を達成するための薬理学的手段は、大半の血圧薬剤が数分または数時間もの半減期を伴う作用の開始遅延を有することから、より困難である。治療の開始および持続時間におけるそのような不正確さは、薬剤のみを使用して分刻みまたは秒刻みでより小さいがおそらくは重要な血圧変動を制御することを不可能にする。
【0024】
[0029]血圧変動性は、したがって、例えば、くも膜下出血、硬膜下出血、硬膜外出血、虚血性脳卒中、出血性卒中、びまん性軸索損傷、または外傷性脳損傷などの神経性の急病を患う患者のために分析および制御されるべき好適な血流力学パラメータである。本明細書に説明されるのは、比較的短い時間窓(例えば、すべての値および部分範囲を含め、約1時間~約12時間などの数時間、すべての値および部分範囲を含め、1日~7日などの数日)にわたって血圧変動性の量を減少させることなど、患者の生理機能における短期変化を減少させるために効果的に利用され得るシステムである。患者血圧変動性における効果的な減少は、したがって、神経性の急病患者のための改善された臨床転帰をもたらす。
【0025】
血圧変動性変調のためのシステムの概観
[0030]図1は、血圧変動性変調および管理のための例示的なシステム100を概略的に例証する。システム100は、カテーテル制御器130に動作可能に結合される血管内カテーテル110を含む。血管内カテーテル110は、例えば、1つまたは複数の膨張可能/収縮可能バルーンなど、1つまたは複数の拡張可能な要素(例えば、血管内カテーテルの細長本体部に結合される)を含む。カテーテル制御器130は、例えば、心臓に対する後負荷を制御するためにカテーテルの拡張可能な要素のサイズを制御し、以て、拡張可能な要素の遠位および近位の両方の血管系の部分において血圧を変調することを含め(図3と関連付けられた追加説明を参照のこと)、血管内カテーテル110の態様を制御するように機能する。
【0026】
[0031]例えば、血管内カテーテル110が膨張可能/収縮可能バルーンを含む場合、カテーテル制御器130は、バルーンの容積を制御するための流体リザーバおよびポンプを含み得る。代替的に、1つまたは複数の弁のセットが、COなどの生体適合性の加圧ガスの流れを制御するために利用され得る。他の実施形態において、拡張可能な要素は、追加的または代替的に、例えば、印加電流、電圧、温度、または圧力に応答して、制御可能に拡張および収縮するように構成される形状変化材料(例えば、ニチノール)を含み得る。そのような実施形態は、形状変化材料から形成されるフレームを含み得、上記形状変化材料は、フレームの選択的な形状変化に従って制御可能に開閉することができる“帆”を形成するために1つまたは複数の膜に装着される。そのような膜は、例えば、大動脈との接触に好適な高分子材料で作製され得る。
【0027】
[0032]例証されたシステム100は、1つまたは複数の生理学的センサ120も含む。例えば、1つまたは複数のセンサ120は、1つまたは複数のパラメータに関連した生理学的情報を提供するために、血管内カテーテル110(例えば、血管内カテーテル110の細長本体部に位置付けられるか、またはこれと統合される)に配設され得る。生理学的センサ120の例は、血圧センサ(拡張可能な要素に近位および/または遠位)、頭蓋圧力センサ、赤外線サインセンサ、視神経センサ、サーミスタ、血流センサ、組織かん流センサ、超音波トランデューサ、エミッタンス装置、および同様のものを含む。1つまたは複数の生理学的センサ120は、血管内カテーテル110とは別個であってもよい。例えば、1つまたは複数の生理学的センサ120は、心拍、呼吸数、血圧、頭蓋内圧、脳の酸素化、脳血流、または脳波上の結果を測定するように構成され得、必ずしもカテーテル110自体に結合される必要はない。
【0028】
[0033]中央処理ユニット140は、1つまたは複数のプロセッサおよびメモリ(作業メモリおよび1つまたは複数のハードウェアストレージデバイスを含む)を含む。処理ユニット140は、生理学的センサ120、カテーテル制御器130、および/または他のシステムコンポーネントから入力を受信するように、ならびに様々な入力を処理して、カテーテル制御器130、および/または、薬剤投与ユニット150、患者アクチュエータ180、ユーザインターフェース160、もしくは外部デバイスの外部通信インターフェース190などのシステム100の他のコンポーネントに送信するための通信および/または命令を形成するように機能する。処理ユニット140に関連した追加情報は、“追加のコンピュータシステム詳細事項”とタイトルの付いた章において以下に説明される。
【0029】
[0034]システム100は、薬剤投与ユニット150(本明細書では“薬剤注入サブシステム”とも称される)も含み得る。薬剤投与ユニット150は、1つまたは複数の薬剤を患者に投与するように構成される。1つまたは複数の薬剤は、例えば、血管収縮性および/もしくは血管拡張性薬剤、静脈内晶質液、ならびに/または虚血性もしくは代謝障害を減少させるための薬剤を含む、血圧を規制するための1つまたは複数の薬剤を含み得る。薬剤投与ユニット150は、各々の含まれる薬剤のための1つまたは複数のリザーバ、および患者への静脈内送達のための静脈内送達システムを含み得る。
【0030】
[0035]示されるように、薬剤投与ユニット150はまた、中央処理ユニット140に通信可能に結合される。以下により詳細に説明されるように、処理ユニット140は、薬剤投与ユニット150に、患者生理機能を調節するように1つまたは複数の薬剤を患者に送達させるように構成され得る。例えば、生理学的センサ120のうちの1つまたは複数が、所定の範囲外の、または所定のしきい値を上回る、もしくは下回る生理学的パラメータを測定する場合、処理ユニット140は、薬剤投与ユニット150に適切なタイプおよび量の薬剤を送達させる。
【0031】
[0036]例えば、いくつかの変異形において、処理ユニット140は、測定された収縮期血圧が100mmHg未満(または、約85mmHg~約115mmHg以内など、好適な範囲内の他の値)であるとき、および/または測定された収縮期血圧が180mmHg(または、約165mmHg~約195mmHg以内など、好適な範囲内の他の値)より大きいとき、薬剤投与ユニット150に薬剤を送達させる。特定の例において、血管内カテーテル110と関連付けられた血圧センサが、所定の範囲外であるか、上限しきい値を上回るか、または下限しきい値を下回る血圧値を測定するとき、処理ユニット140は、薬剤投与ユニット150に、血管拡張性または血管収縮性薬剤を患者に送達させ得る。
【0032】
[0037]いくつかの実施形態において、薬剤投与ユニット150が活性化する血圧しきい値はまた、カテーテル110の決定された状態に関連し得る。例えば、血管拡張性または血管収縮性薬剤などの薬剤の送達をトリガする血圧しきい値は、例えば、処理ユニット140もまた、カテーテル110の拡張可能な要素が既定の状態(例えば、拡張または崩壊)にあること、または既定の状態しきい値を満たす(例えば、特定の度合いを上回って拡張される)ことを決定する場合にのみ適用可能であり得る。いくつかの実施形態において、拡張可能な要素が状態しきい値を満たすかどうかを決定することは、遠位圧力センサと近位圧力センサとの間の勾配を決定すること、およびそれが所定の勾配しきい値を超えるかどうかを決定することを含む。いくつかの実施形態において、拡張可能な要素が状態しきい値を満たすかどうかを決定することは、拡張のレベルが、拡張可能な要素より下の血圧がしきい値を下回るという結果をもたらしたかどうかを決定することを含む。
【0033】
[0038]例えば、いくつかの変異形において、処理ユニット140が、遠位血圧から近位血圧への勾配(すなわち、差)が約10mmHg~約15mmHg以上(その中のすべての値および部分範囲を含む、例えば、10、11、12、13、14、または15mmHg、または先述の値のうちの任意の2つから選択される終点を伴う範囲)であることを決定し、測定された血圧が所定の範囲から外れる(または上限しきい値を上回る、もしくは下限しきい値を下回る)場合、処理ユニット140は、薬剤投与ユニット150に薬剤を送達させ得る。別の変異形において、処理ユニット140は、測定された血圧が、所定の範囲外である(または上限しきい値を上回る、もしくは下限しきい値を下回る)こと、および拡張可能な要素のさらなる膨張が、第2の測定された血圧、例えば、拡張可能な要素より下の血圧が、例えば、約65mmHg(または、約60mmHg~約70mmHgの範囲内などの他の所望のしきい値)を下回る平均動脈圧など、既定のしきい値を下回るという結果をもたらすことを決定する場合に、薬剤投与ユニット150に薬剤を送達させ得る。
【0034】
[0039]さらに別の例において、処理ユニット140は、測定された血圧が所定の範囲から外れる(または上限しきい値を上回る、もしくは下限しきい値を下回る)こと、および、拡張可能な要素のさらなる収縮が遠位血圧センサと近位血圧センサとの間の血圧勾配を減少させることに影響を及ぼさないように(例えば、近位センサから遠位センサへの勾配がすでにしきい値を下回るか、または0もしくは約0である場合)、拡張可能な要素が最小しきい値未満に崩壊されることを決定する場合、薬剤投与ユニット150に薬剤を送達させ得る。すなわち、処理ユニット140は、測定された生理学的パラメータ(例えば、血圧)が生理学的しきい値を上回る、もしくは下回り、かつ特定のカテーテル状態(例えば、拡張可能な要素の拡張または崩壊位置)が検出される場合に、特定の薬剤のみを送達するように構成され得る。
【0035】
[0040]より詳細には、例えば、遠位から近位への血圧勾配が本質的に0mmHgであるように、拡張可能な要素が完全に崩壊され、全身血圧が所望の患者血圧設定点を上回る(例えば、患者の血圧が約180mmHgの収縮期血圧を上回るか、またはユーザによって標的圧力として設定された血圧を上回る)場合、血管拡張薬(ニカルジピン、カルベジロール、エスモロール、または患者の血圧を下げることができる他の薬剤など)が、所望の全身血圧設定点まで、またはこれより下に全身血圧を効果的に下げるために導入され得る。いくつかの実装形態において、これは、次いで、拡張可能な要素が、活性化し、0mmHgを上回るが所定の勾配しきい値を下回る遠位から近位への血圧勾配を再確立するように拡張することを可能にし得る。
【0036】
[0041]逆に、拡張可能な要素が拡張され、その結果として、所定の遠位から近位への圧力勾配しきい値を超えるか、拡張可能な要素より下の血圧が既定のしきい値(約65mmHg未満の平均動脈圧、または他の所望のしきい値など)を下回り、患者の全身血圧が所望の患者血圧設定点を下回るとき、全身血圧を上昇させることが意図される薬剤(すなわち、ノルエピネフリンもしくはエピネフリン、またはドブタミン、またはバソプレシン、または他の昇圧性薬剤)が送達され得る。薬剤は、手動薬剤送達のためにシステムから医療提供者への通信に基づく(例えば、システムは、薬剤を、例えば、ユーザインターフェース160を介して手動で投与するように医療提供者にアラートまたは命令を提供し得る)か、または処理ユニット140および薬剤投与ユニット150の動作により自動的に、のいずれかで送達され得る。
【0037】
[0042]中央処理ユニット140はまた、ユーザインターフェース160に通信可能に結合され得る。ユーザインターフェース160は、LCDもしくはLEDディスプレイなどの視覚表示、音声入力(例えば、マイク)および/または出力(例えば、スピーカ)のための音声コンポーネント、当該技術分野において知られる他の出力デバイス、ならびに当該技術分野において知られる他の入力デバイス(例えば、タッチスクリーン、ボタン、マウスコントローラ、キーボードなど)を含み得る。中央処理ユニットは、データ(例えば、システム内のセンサのうちのいずれかからの測定値、それらの測定値に基づいた計算または決定、ユーザまたは医療提供者プロファイル、システム設定、および同様のもの)を受信および記憶することができる。例えば、測定値は、限定されるものではないが、測定された血圧(例えば、拡張可能な要素より上および下で測定される血圧)を含み得る。計算は、限定されるものではないが、血圧変動性尺度、圧力計算および/または予測(例えば、バルーンより下の血圧が変化している量、またはバルーン体積における変化に応答して変化することになる量)を含み得る。プロファイルは、限定されるものではないが、患者の血圧変動性の深刻度の分類(例えば、高/中/低、または所与の患者集団についての五分位値、四分位値、三分位値として)を含み得る。設定は、限定されるものではないが、拡張可能な要素より上の標的血圧、拡張可能な要素より上の許容血圧の範囲、拡張可能な要素より下の最小許容血圧、および/または治療の所望の持続時間を含み得る。このデータは、外部デバイス(例えば、モニタ、コンピュータ、タブレット、モバイルデバイス(例えば、スマートフォン)、または同様のものなどの外部ユニットインターフェースへの有線および/またはワイヤレスデータ転送を通じて、ユーザインターフェース160を介してユーザに伝送され得る。
【0038】
[0043]上で述べたように、ユーザインターフェースは、入力デバイスも備え得る。入力デバイスは、ユーザが中央処理ユニット140に情報を(例えば、手動で)提供することを可能にし得る。例えば、ユーザは、ユーザインターフェースの入力デバイスを介して、標的値および/または設定点(例えば、標的近位血圧、最小遠位血圧などの1つまたは複数の標的血圧など)を提供および/または選択し得る。ユーザはまた、入力デバイスを介して、システムがアクションを起こす(例えば、拡張可能な部材のサイズを変更する、薬剤を送達する)べきとき、ユーザにアクションを起こすように命令する(例えば、拡張可能な要素のサイズを手動で変更する、薬剤を手動で送達する)べきとき、またはアクションを起こすべきではないときに結び付けられる生理学的変数への制限(例えば、上限しきい値、下限しきい値、または血圧の範囲)を提供および/または選択し得る。生理学的変数への制限のさらなる例は、限定されるものではないが、最大の近位から遠位への圧力勾配、ならびに最大および/または最小血圧アラームなどのアラーム設定点を含む。
【0039】
[0044]システム100はまた、環境パラメータを測定するように構成される1つまたは複数の環境センサ170を含み得る。例えば、環境センサ170は、周囲気圧センサ、周囲温度センサ、位置センサ(例えば、患者および/または患者支持物の角度または傾きを検出するため)、および/または患者支持物の傾きの変化率を決定するための加速度計を含み得る。環境センサ170は、中央プロセッサ140に通信可能に結合される。これらのセンサによって行われる測定は、システム100の他のセンサを較正および/もしくは調節するために、ならびに/または、例えば患者アクチュエータ180を使用して、患者の位置を調節すべきかどうか(例えば、患者の頭部への血圧を減少させるために患者のベッドの角度を調節すべきかどうか)を決定するために利用され得る。
【0040】
[0045]本システムはまた、患者と、または患者ベッド、担架、ストレッチャ、もしくは同様のものなどの患者支持物と連携するように構成される1つまたは複数の患者アクチュエータ180を含み得る。いくつかの変異形において、患者アクチュエータ180は、例えば、機械アーム、ラチェット、空気式もしくは油圧式リフト、レバー、および/またはモータ、または同様のものなど、患者の配向を制御する(例えば、患者の胴体および/または脚に対して患者の頭部を上げるまたは下げる、患者の四肢のうちの1つまたは複数を上げるまたは下げる)アクチュエータを含み得る。追加的に、または代替的に、患者アクチュエータ180は、患者の体温を変更または維持し得る(例えば、患者の一部分を温める、または冷やす)。これらの患者アクチュエータ180の例は、限定されるものではないが、ファン、空調機、冷却ブランケットなどの冷却デバイス、およびヒータ、暖房ブランケットなどの加熱デバイスを含む。いくつかの変異形において、患者アクチュエータ180はまた、患者を落ち着かせるのを助けるために、患者の目に向けた光のパターンもしくは表示、または患者の耳に向けた音声出力を提供する、音声(例えば、スピーカ、ラジオなど)および/または視覚デバイス(例えば、テレビ、またはコンピュータモニタ、タブレット、モバイルデバイスなどのモニタ)を含み得る。いくつかの変異形において、患者アクチュエータ180のうちの1つまたは複数は、患者支持物(例えば、患者ベッド、担架、ストレッチャ、または同様のもの)に組み込まれ得る。
【0041】
[0046]いくつかの変異形において、複数の患者アクチュエータ180は、組み合わせて使用され得、本明細書に説明される患者アクチュエータ180の任意の組み合わせは、治療全体を通して、同時に、または異なる時間の間、使用され得る。例えば、1つの変異形において、システムは、患者の配向を制御する患者アクチュエータ180、および患者の体温を変更または維持する患者アクチュエータ180を備え得る。別の変異形において、システムは、患者の体温を変更または維持する複数の患者アクチュエータ180(例えば、患者の異なる部分または領域に位置付けられる複数の冷却および/または加熱デバイス)を備え得る。
【0042】
[0047]システム100はまた、処理ユニット140のデータ(測定値、計算、プロファイル、設定、および同様のもの)が他の接続されたコンピュータデバイスまたはシステム(近くの、および/または遠隔接続される)にエクスポートされることを可能にするように構成される外部通信インターフェース190を含み得る。インターフェースは、有線またはワイヤレスインターフェースを含み得る。好適な有線インターフェースは、802.3(イーサネット)、RS232、RS845、USB、HDMI(登録商標)、DVI、VGA、光ファイバ、DisplayPort、Lightningコネクタ、および同様のものを含む。好適なワイヤレスインターフェースは、802.11、極超短波電波(例えば、ブルートゥース(登録商標))、および同様のものを含む。通信インターフェース190は、例えば、セルラーネットワーク、ローカルエリアネットワーク(“LAN”)、広域ネットワーク(“WAN”)、またはインターネットなどのネットワークに接続するように構成され得る。追加のコンピュータシステム接続タイプおよびネットワーク詳細事項は、以下に説明される(“追加のコンピュータシステム詳細事項”とタイトルの付いた章を参照のこと)。
【0043】
[0048]例証された中央処理ユニット140は、決定エンジン195(すなわち、システム制御器)も含む。決定エンジン195は、システム100の様々なセンサ(例えば、生理学的センサ120および環境センサ170)のうちの1つまたは複数からの測定値を受信および統合し、計算を実施し(例えば、リアルタイムに測定された血圧と標的血圧との間の血圧差を決定すること、遠位から近位への血圧勾配を決定すること、および/または拡張可能な要素に遠位の全身血圧全体を決定すること)、次いで、それらの測定値および/または計算に基づいて様々な生理学的決定を導出する(例えば、平均血圧および血圧変動性尺度を決定し、それらの値をしきい値または範囲と比較する)ように機能する。決定エンジン195はさらに、生理学的決定に基づいて、システムの適切な作動可能コンポーネントに命令し得る、および/またはこれと通信し得る。結果として生じるアクションは、例えば、カテーテル制御器130がカテーテル110の拡張可能な要素のサイズを調節すること、薬剤注入サブシステム150が1つもしくは複数の薬剤を送達すること、および/または患者アクチュエータ180が患者の位置もしくは体温を調節することを含み得る)。
【0044】
[0049]中央処理ユニット140はまた、決定エンジン195と連動するアラームサブシステムを含み得る。アラームサブシステムは、システム100の様々なセンサのうちの1つまたは複数から測定値を受信するように、およびこれらの値を1つまたは複数のアラーム条件と比較するように機能する。アラーム条件が存在することが決定される場合、処理ユニット140は、(例えば、ユーザインターフェース160を介して)アラーム通知をユーザに送信するように動作することができる。アラーム条件は、例えば、過剰な時間量にわたってしきい値外に存在する心拍変動性、薬剤注入および/もしくはカテーテル110に対する調節による血圧の予期される変化に到達できないこと、しきい値よりも速い心拍変動性における変化、頭蓋内圧の急激な増加、または懸念もしくは追加のアクションを必要とする患者に対する他の生理学的変化を含み得る。
【0045】
[0050]図1に示される様々なサブシステムは、別個の構造体に収容され得るか、または単一の筐体内へ統合され得る。すなわち、様々なサブコンポーネント間の実際の構造的関係は、各々がその意図した機能に従って動作することができる限り様々であり得る。さらに、中央処理ユニット140の処理モジュールおよびコンポーネントは、単一のコンピュータデバイスにおいて組み合わされ得るか、または複数のコンピュータデバイス間に分割され得る。処理の一部は、遠隔で行われて、ネットワークまたは通信インターフェース190への他の接続を介して送達されることさえあり得る。
【0046】
血圧変動性変調システムの例示的な使用
[0051]図2は、標準収縮期ピーク233、重複切痕234、および拡張期谷236を示す、一連の血圧波形230を例証する。これらの血圧波形は、本明細書に説明される血管内カテーテル内の拡張可能な要素の両端に位置付けられる血圧センサなどの血圧センサから導出され得るデータの典型である。この血圧および圧力波形のすべての様々な成分は、感知および分析され得る。血圧変動性270は、血圧における変化の結果として発生し得る。血圧変動性尺度は、収縮期圧の標準偏差(または標準誤差)、拡張期圧の標準偏差(または標準誤差)、所与の心拍数または所与の時間期間にわたる平均動脈圧の標準偏差(または標準誤差)、収縮期圧の変動係数、拡張期圧の変動係数、所与の心拍数または所与の時間期間にわたる平均動脈圧の変動係数、収縮期圧の連続変動、拡張期圧の連続変動、所与の心拍数または所与の時間期間にわたる平均動脈圧の連続変動のうちの1つまたは複数を少なくとも部分的に使用して計算され得る。
【0047】
[0052]血圧における変動性は、血圧変動性の最小化を可能にするために、発生している生理学的変化およびデバイス変化を見ることによって、システムがアクティブである間に感知され得る。例えば、デバイスがアクティブであるとき、血圧変動性尺度は、標準偏差、または平均もしくは変動係数の標準、または拡張可能な要素より下の収縮期もしくは拡張期もしくは平均血圧の変動性の他の尺度を含み得る。追加的に、または代替的に、変動性は、拡張可能な要素の内側の容積変化の尺度、拡張可能な要素内の圧力における変化の尺度、ならびに/または偏差および/もしくは変動性の許容の統計的尺度に従う血圧変動性の他の好適な測定値の尺度を含み得る。
【0048】
[0053]血圧変動性尺度は、追加的または代替的に、例えば、収縮期立ち上がりの傾斜、収縮期ピーク233から重複切痕234までの血圧波形の傾斜、拡張期谷236の終わりから重複切痕234までの血圧曲線の下の領域、収縮期233のピークから重複切痕234までの血圧曲線の下の領域、重複切痕から拡張期谷までの血圧波形の下の領域、重複切痕から拡張期谷までの波形の傾斜、または収縮期ピークから拡張期谷までの差として計算される脈圧のうちの1つまたは複数を含む、血圧波形測定値の他の特徴を使用して計算され得る。
【0049】
[0054]いくつかの実施形態において、血圧変動性尺度は、前述の測定値のうちの2つ以上の固定の組み合わせを使用して演算され得る。複数の測定値が組み合わせて利用されるとき、各測定値/尺度は、別個に重み付けされ得る。いくつかの実施形態において、血圧変動性尺度は、時間ベースの組み合わせを使用して演算され得、この場合、いくつかの尺度は、特定の時間窓の間、または圧力(例えば、平均動脈圧)が何らかのしきい値を上回るか、もしくは下回るときに、使用され、他の尺度は、他の時間窓の間、または圧力が何らかのしきい値の反対側にあるとき、使用される。血圧変動性尺度を計算する異なる方法は、ユーザインターフェース160を通じて選択および/または制御され得る。
【0050】
[0055]図3は、図1に説明されるシステム100の例示的な使用のより詳細な図を例証する。示されるように、血管内カテーテル110は、好適な血管内ルートを介して大動脈(A)内へ挿入される。これは、典型的には、大腿動脈(FA)を通じて行われるが、橈骨アクセスなどの他の好適なルートも利用され得る。カテーテル110は、拡張可能な要素112が、大動脈の区域1、大動脈の区域2、または大動脈の区域3を含み得る大動脈(A)内の所望の場所に位置付けられるまで挿入される。代替的に、デバイスは、腸骨動脈内に挿入され得、大動脈内まで前進されない場合がある。
【0051】
[0056]例証された実施形態において、カテーテル110は、拡張可能な要素112の両側に配設される近位圧力センサ114および遠位圧力センサ116の形態で生理学的センサ120を含む。他のセンサは、拡張可能な要素112の内側の圧力を測定するための圧力センサを含み得る。他の実施形態は、カテーテル110に沿った他の場所における追加の圧力センサ、および/または上に説明される他のタイプの生理学的センサのうちのいずれかなど、追加のセンサおよび/または他のタイプのセンサを含み得る。
【0052】
[0057]用語“近位”および“遠位”は、センサおよび/または特定の局所的な血圧読み出しに関連して本明細書で使用される場合、心臓からの血流方向性を指すということに留意されたい。すなわち、“近位”は、心臓により近いが、“遠位”は、心臓から離れている。これは、カテーテルなどの医用デバイスの観点から説明されるときの用語の逆転使用と混乱されるべきではなく、医用デバイスの“遠位端”は、一般的に、カテーテル制御器130から最も離れた拡張可能な要素112を伴う端と理解され、“近位端”はオペレータにより近い端と理解される。
【0053】
[0058]ユーザは、ユーザインターフェース160を利用して、標的近位圧210、血圧変動性しきい値220、および自動調節トグル230などの入力を選択し得る。自動調節トグル230は、ユーザが自動モードまたは手動モードを選択することを可能にし、システムが自動モードで作動すべきか、手動モードで作動すべきかをシステムに示すスイッチまたは他の入力デバイスからなり得る。自動モードでは、中央処理ユニットは、拡張可能な要素のサイズを自動的に制御および調節し得るが、手動モードでは、拡張可能な要素のサイズに対する変更は、ユーザによって直接制御される。手動モードでは、処理ユニットは、拡張可能な要素をどのように調節するかに関してユーザに対して命令および/または提案を生成および提供し得る。これらの命令および/または提案は、例えば、ユーザインターフェースを介して、ユーザに表示され得る。本明細書にさらに説明されるように、特定の生理学的アラーム制限、血圧変動性尺度および/または計算設定、ならびに薬の送達が適切であるときを決定するための血圧上限および下限しきい値など、他の入力および選択可能なオプションも含まれ得る。本明細書に説明される他の処理ユニット140設定もまた、ユーザインターフェース160を使用して構成され得る。
【0054】
[0059]センサ114および116からの血圧センサ読み出し122は、処理ユニット140に送信され、処理ユニット140が、圧力変動性尺度124を決定し、血圧変動性を減少させるために血圧が瞬間的に増大または減少される必要があるかどうかを決定する。対応する命令が、カテーテル制御器130に送信され、カテーテル制御器130は、ガス、液体、または他の液状媒体を、バルーン構造体に追加すること、またはこれから除去することによって、拡張可能な要素112のワイヤフレームに形状の変化を引き起こすことによって、または別途拡張可能な要素112のサイズ/容積を制御することによってなど、拡張可能な要素112を調節するように動作する。
【0055】
[0060]処理ユニット140が、血圧変動性尺度124が変動性しきい値220よりも大きいことを決定し、自動調節トグル230が自動に設定される場合、処理ユニット140は、血圧変動性尺度124を変動性しきい値220より下にするという意図に従って拡張可能な要素112を調節するようにカテーテル制御器130に命令する。例えば、血圧変動性尺度が収縮期血圧標準偏差である1つの変異形において、変動性しきい値は、10mmHgであり得る。この変異形において、患者のリアルタイム収縮期血圧標準偏差が20mmHgであり、自動調節トグル230が自動に設定される場合、処理ユニット140は、拡張可能な要素のサイズの増大または減少を通じて収縮期血圧標準偏差を減少させるために拡張可能な要素112を調節するようにカテーテル制御器130に命令し得る。処理ユニット140が、血圧変動性尺度124が変動性しきい値220よりも大きいことを決定し、自動調節トグル230が自動に設定されない場合、処理ユニット140は、ユーザインターフェース160を介して、ユーザが拡張可能な要素112の手動調節を実施することを提案する通知240をユーザに提供し得る。
【0056】
[0061]処理ユニット140はまた、平均遠位血圧および/または平均近位血圧が、所定の範囲外であるか、上限しきい値を上回るか、または下限しきい値を下回ることを決定し、血圧を所望の範囲内にするための適切な薬剤を送達するように薬剤投与ユニット150に命令を提供し得る。カテーテル制御器130と同様に、これは、自動的に実行され得るか、または処理ユニット140は、提案したアクションを説明する通知240をユーザインターフェース160を介してユーザに送達し得る。上に説明されるように、そのような上限および/または下限血圧しきい値および範囲は、デバイス状態にも結び付けられ、その結果として、それらは、拡張可能な要素112もまた、必要とされる状態定義(例えば、しきい値程度まで拡張または崩壊される)を満たす場合にのみ適用可能である。
【0057】
[0062]例えば、処理ユニット140が、センサから測定値を受信するか、患者が180mmHgよりも高い収縮期血圧を有すること、および血圧を下げるための薬剤が必要とされることを、受信した測定値から別途決定する場合、処理ユニット140は、薬剤投与ユニット150に、そのような薬剤(例えば、ニカルジピン、ニフェジピン、カルベジロール、エスモロール、ニトロプルシド)を送達するように命令し得るか、または別途これを行わせることができる。別の例として、処理ユニット140が、測定値を受信するか、または患者患者のリアルタイム測定された収縮期血圧(例えば、100mmHg)が標的血圧を下回ることを別途決定する場合、処理ユニット140は、薬剤投与ユニット150に、患者の血圧を増加させるための薬剤(例えば、ノルエピネフリン、エピネフリン、バソプレシン)を送達するように命令し得るか、または別途これを行わせることができる。収縮期血圧を利用するものとして例において説明されるが、例えば、拡張期血圧または平均動脈圧に関連した生理的尺度など、本明細書に説明される生理的尺度のうちのいずれかが薬剤の投与をトリガするために利用され得るということを理解されたい。
【0058】
[0063]処理ユニット140はまた、標的近位圧210の変化に関して提案を行うように構成され得る。処理ユニット140はまた、計算された、もしくはユーザ選択された標的近位圧210に到達することを目的として、拡張可能な要素112に対して自動的に調節を行うか、または、薬剤投与を自動的に調節するように構成され得る。処理ユニット140は、アラーム通知を提供すること、および/または患者アクチュエータ180を調節することなど、しきい値血圧変動性、血圧上限しきい値、または血圧下限しきい値尺度のうちの1つまたは複数を超えたことを決定すると追加または代替のアクションを起こすように構成され得る。
【0059】
血圧変動性を減少させる例示的な方法
[0064]図4は、血圧変動性を減少させる方法300を例証する。方法300は、図1図3に関連して上に説明されるシステム100を使用して実行され得、故に、図1~3に関連する参照番号は、以下の説明において、対応する構造体の例として含まれる。方法300は、カテーテルの選択的に拡張可能な要素112が患者の大動脈内に位置付けられるように、血管内カテーテル110を患者内に位置付けることによって実行され得る(ステップ310)。患者は、例えば、神経性の急病を患っている場合がある。例示的な神経性の急病は、限定されるものではないが、くも膜下出血、硬膜下出血、硬膜外出血、虚血性脳卒中、出血性卒中、またはびまん性軸索損傷を含み得る。コンピュータシステム(例えば、処理ユニット140)は、血管内カテーテル110に配設され得るか、またはこれと別途統合され得る1つまたは複数のセンサ(例えば、センサ114、116、120)から、治療過程の間、複数の血圧測定値を、リアルタイムで、例えば、連続して、または所定の間隔で獲得し得る(ステップ320)。
【0060】
[0065]1つまたは複数の血圧測定値(例えば、収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧)に基づいて、コンピュータシステムは、血圧変動性を減少させるように拡張可能な部材のサイズを調節することができる。例えば、いくつかの変異形において、コンピュータシステムは、血圧変動性尺度を決定し(ステップ330)、血圧変動性尺度が変動性しきい値を超えるか、既定の変動性範囲から外れるかどうかを決定し得る(ステップ340)。血圧変動性尺度が変動性しきい値を超えない、または既定の変動性範囲から外れない場合、システムは、さらなる血圧測定値を獲得し続けてもよい。しかしながら、血圧変動性尺度が変動性しきい値を超えるか、既定の変動性範囲から外れる場合、本方法は、カテーテル110の選択的に拡張可能な要素112のサイズを調節することによってさらに実行され得る(ステップ350)。例えば、拡張可能な要素112がバルーンである変異形において、拡張可能な要素のサイズを調節することは、例えば、カテーテル制御器130を介して、バルーンを膨らませる/しぼませることを含み得る。故に、これらの変異形において、バルーンのサイズ(例えば、容積)は、血圧変動性を制御または変調する(例えば、減少させる)ために調節され得る。
【0061】
[0066]本方法は、追加的に、1つまたは複数の薬剤を患者に投与するかどうかを決定するために1つまたは複数の血圧測定値を分析するステップを含み得る(ステップ360)。例証した方法において、これは、血圧が上限しきい値を超えるか、下限しきい値を下回るか、または既定の範囲から外れるかどうかを決定することを含む(ステップ370)。血圧が、上限しきい値を超えないか、下限しきい値を下回らないか、または既定の範囲から外れない場合、本方法は、さらなる血圧測定値を獲得し続けてもよい。しかしながら、血圧が、上限しきい値を超えるか、下限しきい値を下回るか、または所定の範囲から外れる場合、本方法は、血圧を減少または増加させるために1つまたは複数の薬剤を送達することによってさらに実行され得る(ステップ380)。減少または増加されるべき血圧は、平均血圧、収縮期血圧、または拡張期血圧として測定され得る。
【0062】
[0067]追加的に、または代替的に、本方法は、血圧測定値および拡張可能な要素状態に基づいて、拡張可能な要素が、拡張可能な要素の調節(例えば、膨張/収縮、拡張/後退)を通じて患者の血圧が標的血圧を満たすようにさせることができるか、またはできるようになるかを決定することを含み得る。患者の血圧が拡張可能な要素の調節によって適切に制御され得ることが決定される場合、本システムは、患者の血圧および拡張可能な要素状態を監視し続けてもよく、患者の血圧を制御する(例えば、平均血圧を、標的範囲内に、標的下限しきい値より上に、または標的上限しきい値より下に維持する)ために必要に応じて拡張可能な要素を調節し得る。しかしながら、患者の血圧測定値および拡張可能な要素状態に基づいて、患者の血圧を拡張可能な要素を調節することだけでは制御することができないことが決定される場合、患者の血圧(例えば、平均血圧)を減少または増加させるための1つまたは複数の薬剤が投与され得る。
【0063】
[0068]本方法はまた、1つまたは複数のアラーム条件が存在するかどうかを決定し(ステップ390)、存在する場合、ユーザへの通信のためのアラーム通知を(例えば、ユーズインターフェースを介して、視覚的および/または聴覚的に)開始する(ステップ395)ステップを含み得る。上に説明されるように、アラーム通知は、過剰な時間量(例えば、総治療時間の10%超)にわたってしきい値外に存在する血圧変動性、薬剤注入および/もしくはカテーテル110に対する調節による血圧変動性の予期される変化に到達できないこと、しきい値よりも速い血圧変動性における変化、または懸念もしくは追加のアクションを必要とする患者に対する他の生理学的変化を含み得る。
【0064】
[0069]本明細書に説明される方法は、約5mmHg~約25mmHgの減少した血圧変動性を結果としてもたらし得、これはその中のすべての値および部分範囲を含む。例えば、本方法は、少なくとも約5mmHg、約6mmHg、約7mmHg、約8mmHg、約9mmHg、約10mmHg、約11mmHg、約12mmHg、約13mmHg、約14mmHg、約15mmHg、約16mmHg、約17mmHg、約18mmHg、約19mmHg、約20mmHg、約21mmHg、約22mmHg、約23mmHg、約24mmHg、もしくは約25mmHg、または前述の値のうちの任意の2つから選択される終点を有する範囲内の減少した血圧変動性を結果としてもたらし得る。いくつかの変異形において、本方法は、約5mmHg~約10mmHg、約5mmHg~約15mmHg、約5mmHg~約20mmHg、約10mmHg~約20mmHg、約10mmHg~約25mmHg、約15mmHg~約20mmHg、もしくは約15mmHg~約25mmHg、または前述の値のうちの任意の2つから選択される終点を有する範囲内の減少した血圧変動性を結果としてもたらし得る。本明細書に説明される方法は、追加的または代替的に、血圧変動性尺度のベースライン値(すなわち、医学的介入/治療前またはなしの測定値に基づいて決定される血圧変動性尺度)に対して使用される血圧変動性尺度の割合としての減少を結果としてもたらし得る。例えば、場合によっては、ここで説明される方法は、約25%~約85%の血圧変動性尺度の減少を結果としてもたらし得、これはその中のすべての値および部分範囲を含む。例えば、本明細書に説明される方法は、85%、75%、65%、55%、45%、35%、25%、もしくは15%程度の、または前述の値のうちの任意の2つから選択される終点を有する範囲内の血圧変動性尺度における減少を結果としてもたらし得る。
【0065】
追加のコンピュータシステム詳細事項
[0070]コンピュータシステムは、ますます広範な形態をとっているということを理解されたい。本説明において、および特許請求の範囲において、“制御器”、“コンピュータシステム”、“処理ユニット”、または“コンピューティングシステム”という用語は、少なくとも1つの物理および有形プロセッサ、ならびにプロセッサによって実行され得るコンピュータ実行可能命令を有することができる物理および有形メモリを含む任意のデバイスもしくはシステム、またはそれらの組み合わせを含むものとして広範に規定される。限定ではなく、例として、用語“コンピュータシステム”または“コンピューティングシステム”は、本明細書で使用される場合、パーソナルコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット、ハンドヘルドデバイス(例えば、携帯電話、PDA、ページャ)、マイクロプロセッサベースまたはプログラム可能な消費者家電製品、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、マルチプロセッサシステム、ネットワークPC、分散型コンピューティングシステム、データセンタ、メッセージプロセッサ、ルータ、スイッチ、およびウェアラブル(例えば、眼鏡)などの従来はコンピューティングシステムと考えられていなかったデバイスさえ、含むことが意図される。
【0066】
[0071]メモリは、任意の形態をとり得、コンピューティングシステムの性質および形態に依存し得る。メモリは、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはそれら2つの何らかの組み合わせを含む、物理システムメモリであり得る。用語“メモリ”はまた、物理記憶媒体などの不揮発性の大量ストレージを指すために本明細書では使用され得る。
【0067】
[0072]コンピューティングシステムはまた、多くの場合“実行可能なコンポーネント”と称される複数の構造体を有する。例えば、コンピューティングシステムのメモリは、実行可能なコンポーネントを含み得る。用語“実行可能なコンポーネント”は、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせであり得る構造体であるとして、コンピューティングの分野において当業者によく理解される構造体の名前である。
【0068】
[0073]例えば、ソフトウェアにおいて実装されるとき、当業者は、実行可能なコンポーネントの構造体が、コンピューティングシステム上の1つまたは複数のプロセッサによって実行され得るソフトウェアオブジェクト、ルーチン、方法などを含み得、これは、そのような実行可能なコンポーネントがコンピューティングシステムのヒープ内に存在するか、実行可能なコンポーネントがコンピュータ可読記憶媒体上に存在するかは問わないということを理解するものとする。実行可能なコンポーネントの構造体は、コンピューティングシステムの1つまたは複数のプロセッサによって実行されるとき、コンピューティングシステムに本明細書に説明される機能および方法などの1つまたは複数の機能を実施させるように動作可能である形式で、コンピュータ可読媒体上に存在する。そのような構造体は、実行可能なコンポーネントがバイナリであった場合のように、プロセッサによって直接的にコンピュータ可読であり得る。代替的に、構造体は、プロセッサによって直接解釈可能であるそのようなバイナリを生成するように、単一ステージもしくは複数ステージにかかわらず、解釈可能であるように、および/またはコンパイルされように、構造化され得る。
【0069】
[0074]用語“実行可能なコンポーネント”はまた、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラム特定標準製品(ASSP)、システムオンチップシステム(SOC)、コンプレックスプログラマブル論理デバイス(CPLD)、または任意の他の専用回路内など、ハードウェア論理回路コンポーネント内で排他的またはほぼ排他的に実装される構造体を含むものとして当業者によりよく理解される。したがって、用語“実行可能なコンポーネント”は、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせで実装されるかどうかにかかわらず、コンピューティングの分野において当業者によく理解される構造体の用語である。
【0070】
[0075]用語“コンポーネント”、“サービス”、“エンジン”、“モジュール”、“制御”、“生成装置”、または同様のものもまた、本説明において使用され得る。本説明において使用される場合、およびこの場合、これらの用語もまた、修飾節ありまたはなしで表現されるかどうかにかかわらず、用語“実行可能なコンポーネント”と同意語であることが意図され、故にコンピューティングの分野において当業者によく理解される構造体を有する。
【0071】
[0076]すべてのコンピューティングシステムがユーザインターフェースを必要とするわけではないが、いくつかの実施形態において、コンピューティングシステムは、ユーザから/ユーザに情報を通信することに使用するためのユーザインターフェースを含む。ユーザインターフェースは、出力機序ならびに入力機序を含み得る。本明細書に説明される原理は、正確な出力機序または入力機序に限定されず、そのようなものとしてデバイスの性質に依存する。しかしながら、出力機序は、例えば、スピーカ、ディスプレイ、触覚出力、投影、ホログラムなどを含み得る。入力機序の例は、例えば、マイクロフォン、タッチスクリーン、投影、ホログラム、カメラ、キーボード、スタイラス、マウス、または他のポインタ入力、任意のタイプのセンサなどを含み得る。
【0072】
[0077]したがって、本明細書に説明される実施形態は、特殊目的または汎用コンピューティングシステムを備え得るか、またはこれを利用し得る。本明細書に説明される実施形態はまた、コンピュータ実行可能命令および/またはデータ構造を保持または記憶するための物理または他のコンピュータ可読媒体を含む。そのようなコンピュータ可読媒体は、汎用または特殊目的コンピューティングシステムによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体であり得る。コンピュータ実行可能命令を記憶するコンピュータ可読媒体は、物理記憶媒体である。コンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ可読媒体は、伝送媒体である。故に、限定ではなく例として、本明細書において開示または想定される実施形態は、少なくとも2つの全く異なる種類のコンピュータ可読媒体:記憶媒体および伝送媒体を備え得る。
【0073】
[0078]コンピュータ可読記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、ソリッドステートドライブ(“SSD”)、フラッシュメモリ、相変化メモリ(“PCM”)、CD-ROMもしくは他の光学ディスクストレージ、磁気ディスクストレージもしくは他の磁気ストレージデバイス、または、コンピュータ実行可能命令またはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用され得、本発明の開示された機能性を実装するために汎用もしくは特殊目的コンピューティングシステムによってアクセスおよび実行され得る任意の他の物理および有形記憶媒体を含む。例えば、コンピュータ実行可能命令は、コンピュータプログラム製品を形成するために1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体上で具現化され得る。
【0074】
[0079]伝送媒体は、コンピュータ実行可能命令またはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを保持するために使用され得、汎用または特殊目的コンピューティングシステムによってアクセスおよび実行され得る、ネットワークおよび/またはデータリンクを含み得る。上記の組み合わせもまた、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるものとする。
【0075】
[0080]さらに、様々なコンピューティングシステムコンポーネントに到達する際、コンピュータ実行可能命令またはデータ構造の形態のプログラムコードは、伝送媒体から記憶媒体へ(またはその逆も然り)自動的に転送され得る。例えば、ネットワークまたはデータリンクを介して受信されるコンピュータ実行可能命令またはデータ構造は、ネットワークインターフェースモジュール(例えば、“NIC”)内のRAMにおいてバッファされ、その後最終的に、コンピューティングシステムRAMに、および/またはコンピューティングシステムにおける揮発性の低い記憶媒体に転送され得る。故に、記憶媒体が、伝送媒体も利用する、あるいは主に伝送媒体を利用するコンピューティングシステムコンポーネントに含まれ得ることを理解されたい。
【0076】
[0081]当業者は、コンピューティングシステムが、例えばネットワークを介してコンピューティングシステムが他のコンピューティングシステムと通信することを可能にする通信チャネルも含み得ることをさらに理解するものとする。したがって、本明細書に説明される方法は、多くのタイプのコンピューティングシステムおよびコンピューティングシステム構成を用いてネットワークコンピューティング環境において実践され得る。開示された方法はまた、ネットワークを通じて(ハードワイヤードのデータリンク、ワイヤレスデータリンク、またはハードワイヤードおよびワイヤレスデータリンクの組み合わせのいずれかによって)リンクされるローカルおよび/またはリモートコンピューティングシステムが共にタスクを実施する分散型システムにおいて実践され得る。分散型システム環境においては、処理能力、メモリ能力、および/またはストレージ能力も同様に分散され得る。
【0077】
[0082]当業者はまた、開示された方法がクラウドコンピューティング環境において実施され得ることを理解するものとする。クラウドコンピューティング環境は、分散され得るが、これは必須ではない。分散されるとき、クラウドコンピューティング環境は、組織内に国際的に分散され得、および/または複数の組織にわたって所有されるコンポーネントを有し得る。本説明および以下の特許請求の範囲において、“クラウドコンピューティング”は、構成可能なコンピューティングリソース(例えば、ネットワーク、サーバ、ストレージ、アプリケーション、およびサービス)の共有プールへのオンデマンドネットワークアクセスを有効にするためのモデルとして定義される。“クラウドコンピューティング”の定義は、適切に配備されるときそのようなモデルから得られ得る他の多数の利点のいずれかに限定されない。
【0078】
[0083]クラウドコンピューティングモデルは、オンデマンドセルフサービス、広範なネットワークアクセス、リソースプーリング、迅速な順応性、測定されたサービスなど、様々な特性からなり得る。クラウドコンピューティングモデルはまた、例えば、サービス型ソフトウェア(“SaaS”)、サービス型プラットフォーム(“PaaS”)、およびサービス型インフラストラクチャ(“IaaS”)など、様々なサービスモデルの形態でもたらされ得る。クラウドコンピューティングモデルはまた、プライベートクラウド、コミュニティクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドなどの異なる様々な配備モデルを使用して配備され得る。
【0079】
実施例
[0084]以下の実施例は、単に例証であり、本開示をいかようにも制限するものとして解釈されるべきではない。ここに提示されるのは、本明細書に説明されるような血圧を減少させるためのシステムの使用および方法の例である。実施例において、血管内カテーテルは、脳内出血(ICH)を伴うブタモデルにおいて血圧変動性を減少させるために使用される。
【0080】
[0085]研究の目的は、ICHを伴う患者において臨床的に見られるものと同じ高レベルの血圧変動性(BPV)を呈した動物を確実にするためにICHブタモデルを精緻化すること、ならびにバルーン膨張および収縮を自動化するために使用されるシステムおよび方法が血圧変動性を減少させることに成功し得るかどうかを試験することであった。好適なICHモデルは、理想的には、血管内デバイスによる介入前、ATACH-2研究において見られるような9~22mmHgの収縮期血圧(SBP)標準偏差(SD)を呈するべきである。3頭のヨークシャー交配ブタ(60~90kg)を試験した。すべての動物は、鎮静剤を打たれ、挿管され、次いで麻酔をかけられ、研究全体の間、麻酔状態に維持された。
【0081】
[0086]ベースライン時、すべての麻酔下のブタは、120mmHg未満のSBPを有した。これを克服するため、3頭すべての動物は、ベースラインSBPを120mmHgまで増加させるために低用量のノルエピネフリンを受けた。動物には、静脈および動脈構造体の両方へのアクセスを可能にするために機器が装着された。ICHは、複数ステッププロセスで動物において作り出された。まず、ブタの頭を剃り、無菌状態に準備した。次いで、前項が露出するまで頭皮切開が行われた。次いで前項の1cm前および1cm後ろに穿頭孔を開けた。穿頭孔を診察し、骨ろうを使用して出血を止めた。次いで硬膜内に切り目を入れ、5.5Fフォガティバルーンカテーテルを脳内へ1cm挿入した。次いでフォガティバルーンを1mLの生理食塩水で膨らませ、30秒間膨らませたままに保った。次いで、バルーンをしぼませた。次いで、カテーテルを1~2mm後退させ、血液を、フォガティカテーテルのワイヤアクセス腔を通じてこの空洞に入れた。最初は2mLの自己血液を1分にわたって注入し、その後1分停止した。次いで、5mLの血液を3分にわたって注入した。
【0082】
[0087]ICHの作成の後、3頭の動物のうちの1頭は、SBP>120mmHgを有し、残りの動物は、SBP<120mmHgを有した。シリーズ内の第1の動物には、特にBPVを誘発するために介入がなく、SBP SDは6.9mmHgであった。ICHにおけるBPVの臨床レベルを確実にモデル化するため、本発明者らは、次いで、単純な周期的(q15分)人工呼吸器変化を組み込み、これが心前負荷における高度に再現性のある変更を結果としてもたらし、全身血圧における結果として生じる変化を伴った。具体的には、吸気時間と呼気時間(I:E)の比は、2:1から1:2へ変化し、呼吸終末陽圧(PEEP)は、0cmH2Oから5cmH2Oへと同時に変化した。ヒトとは異なり、大きな動物の標準換気は、0cmH2OのPEEPで発生する。これらの人工呼吸器は、酸素供給または呼気終末CO2には影響を及ぼさないが、BPVを増加させる。
【0083】
[0088]次の2頭の動物は、人工呼吸器誘発性BPVを伴うICHのこの改定方法論を使用して試験した。本発明者らは、臨床的に関連のあるBPVレベルが19.9mmHgおよび21.4mmHgのSBP SDにより達成されることに気付いた。第3の動物において、自動バルーンカテーテルを用いた最初の4時間の治療は、SBP SDを3.3mmHgまで減少させ、続く1時間のカテーテルなしでの洗浄フェーズが、21.4mmHgのSBP SDを結果としてもたらした。これは、ベースラインBPVに対して6.7倍のSBP SD減少を結果としてもたらした。
【0084】
[0089]この動物において、研究のカテーテル介入部分の間の近位SBP(バルーンより上)は、比較的滑らかで一貫していた(図5-自動血管内バルーン支持が、T30~T240分まで動物4における近位(バルーンより上)BPVを減少させる)。逆に、遠位血圧は、バルーンが全身のSBP変化を補償するために部分的に膨らんだり/しぼんだりするため、繰り返しの変動を持続した(図5)。バルーンは、近位圧力標的をロックオンするために正確に変調することができるため、遠位血圧は、介入なしでのBPV深刻度の有用な指標である。治療の間、遠位血圧は、デバイスが能動的に制御しているBPVの量を計算するために、介入なしに近位血圧と同様のやり方で分析され得る。代替の方法もまた、近位血圧変動性を最小限にするために必要とされるバルーン容積変化の大きさならびにバルーン容積変化の速度を査定することによってアクティブなバルーンにより制御されている血圧変動性の本質的な量を計算およびまたは推測するために使用され得る(図6-血圧容積変化は、治療の間の根本的な血圧変動性の代替の尺度である)。
【0085】
[0090]X線アセスメント:ICH誘発の成功を確実にするために、動物の磁気共鳴画像を3Tスキャナ上で獲得した(図7-研究動物のうちの1頭からのコロナルFLAIR(A)、SWI(B)、およびDWI(C)MRIシーケンスが、左基底核および視床の中心にある血腫を実証する。虚血障害は、関わりのない構造体における他の場所では識別されない)。血腫体積は、1.25ml、0.45ml、および0.62mlで測定された。すべての動物は、磁化率強調画像(SWI:Susceptibility Weighted Imaging)上で確認される器具管に沿って微量脳室内出血および血液製剤を有していた。フレアー(FLAIR:Fluid Attenuated Inversion Recovery)画像は、心室サイズに変化がないことを明らかにした。血腫のすぐ隣の組織の外側のDWIにおいては梗塞は識別されなかった。
【0086】
[0091]結論:本発明者らのパイロットデータは、ブタモデルにおいてICHおよび臨床レベルのBPVを首尾よく誘発する本発明の能力を示す。さらには、本研究は、自動バルーンデバイスを用いてBPVを減少させる本発明の能力を実証した。
【0087】
追加の例示的な実施形態
[0092]以下の例示的な実施形態は、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法の特徴の異なる組み合わせを含む。実施形態は、本明細書に説明される他の実施形態において説明される性質、特徴(例えば、構成要素、部材、要素、部品、および/または部分)を含み得る。したがって、所与の実施形態の様々な特徴は、本開示の他の実施形態と組み合され得、および/またはそれに組み込まれ得るということを理解されたい。故に、本開示の特定の実施形態に関連した特定の特徴の開示は、上記特徴の適用または包含を特定の実施形態に限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、他の実施形態もそのような特徴を含み得ることを理解されたい。
【0088】
[0093]実施形態1:患者における血圧変動性を減少させるためのシステムであって、患者の大動脈内に位置付けられるように構成される拡張可能な要素、およびセンサを備える血管内カテーテルと、1つまたは複数のプロセッサと、コンピュータ実行可能命令が記憶されている1つまたは複数のハードウェアストレージデバイスとを備え、上記コンピュータ実行可能命令は、少なくとも:センサから複数の血圧測定値を獲得することと、複数の血圧測定値に基づいて血圧変動性尺度を決定することと、血圧変動性尺度が、変動性しきい値を超えるか、もしくは既定の変動性範囲から外れるかどうかを決定することと、血圧変動性尺度が変動性しきい値を超えるか、もしくは既定の変動性範囲から外れることを決定すると、血圧変動性を減少させるように血管内カテーテルの拡張可能な要素のサイズを調節することと、をシステムに行わせるために1つまたは複数のプロセッサによって実行可能である、システム。
【0089】
[0094]実施形態2:実施形態1に記載のシステムであって、コンピュータ実行可能命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されるとき、複数の血圧測定値に基づいて血圧を決定することと、血圧が上限しきい値を超えるか、下限しきい値を下回るか、または既定の血圧範囲から外れるかどうかを決定することと、血圧が上限しきい値を超えること、下限しきい値を下回ること、または既定の血圧範囲から外れることを決定すると、血圧を減少または増加させるように薬物を送達することと、をシステムにさらに行わせる、システム。
【0090】
[0095]実施形態3:実施形態2に記載のシステムであって、薬剤は、血管拡張性薬剤または血管収縮性薬剤である、システム。
【0091】
[0096]実施形態4:実施形態3に記載のシステムであって、血圧が上限しきい値を超えることを決定すると、システムは、血管拡張性薬剤を送達する、システム。
【0092】
[0097]実施形態5:実施形態3または実施形態4に記載のシステムであって、血圧が下限しきい値を下回ることを決定すると、システムは、血管収縮性薬剤を送達する、システム。
【0093】
[0098]実施形態6:実施形態1~5のいずれか1つに記載のシステムであって、コンピュータ実行可能命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されるとき、1つまたは複数のアラーム条件が存在するかどうかを決定することと、1つまたは複数のアラーム条件が存在することを決定すると、ユーザインターフェースにおいてアラーム通知を開始することと、をシステムにさらに行わせる、システム。
【0094】
[0099]実施形態7:実施形態1~6のいずれか1つに記載のシステムであって、拡張可能な要素は、形状変化材料から形成されるバルーンまたはフレームを備える、システム。
【0095】
[0100]実施形態8:実施形態1~7のいずれか1つに記載のシステムであって、センサは、近位血圧センサまたは遠位血圧センサである、システム。
【0096】
[0101]実施形態9:実施形態8に記載のシステムであって、血管内カテーテルは、複数のセンサを備え、複数のセンサは、拡張可能な要素の両側に配設される近位血圧センサおよび遠位血圧を備える、システム。
【0097】
[0102]実施形態10:実施形態1~9のいずれか1つに記載のシステムであって、患者の近くの環境パラメータを測定するように構成される環境センサをさらに備える、システム。
【0098】
[0103]実施形態11:実施形態1~10のいずれか1つに記載のシステムであって、患者または患者支持物と連携するように構成される患者アクチュエータをさらに備え、患者アクチュエータは、患者の配向を調節するためのアクチュエータを備える、システム。
【0099】
[0104]実施形態12:実施形態1~11のいずれか1つに記載のシステムであって、血圧変動性尺度は、収縮期圧の標準偏差もしくは標準誤差、拡張期圧の標準偏差もしくは標準誤差、所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の標準偏差もしくは標準誤差、収縮期圧の変動係数、拡張期圧の変動係数、所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の変動係数、収縮期圧の連続変動、拡張期圧の連続変動、所与の心拍数もしくは所与の時間期間にわたる平均動脈圧の連続変動、収縮期立ち上がりの傾斜、収縮期ピークから重複切痕までの血圧波形の傾斜、重複切痕から拡張期谷までの波形の傾斜、拡張期谷の終わりから重複切痕までの血圧曲線の下の領域、収縮期のピークから重複切痕までの血圧曲線の下の領域、重複切痕から拡張期谷までの血圧波形の下の領域、収縮期ピークから拡張期谷までの差として計算されるような脈圧、またはそれらの組み合わせに少なくとも部分的に基づいて計算される、システム。
【0100】
[0105]実施形態13:実施形態1~12のいずれか1つに記載のシステムであって、システムは、標的近位圧、血圧変動性しきい値、血圧変動性計算設定、血圧上限しきい値、および血圧下限しきい値のうちの1つまたは複数を示すユーザ入力を受信するように構成される、システム。
【0101】
[0106]実施形態14:実施形態1~13のいずれか1つに記載のシステムであって、ユーザが自動モードまたは手動モードを選択することを可能にするように構成される自動調節トグルをさらに備える、システム。
【0102】
[0107]実施形態15:神経性の急病を患う患者における血圧変動性を減少させる方法であって、センサおよび拡張可能な要素を備える血管内カテーテルの遠位端を、拡張可能な要素を神経性の急病を患う患者の大動脈内に位置付けるように前進させるステップと、血圧変動性を減少させるように拡張可能な要素のサイズを調節するステップとを含む、方法。
【0103】
[0108]実施形態16:実施形態15に記載の方法であって、神経性の急病は、くも膜下出血、硬膜下出血、硬膜外出血、虚血性脳卒中、出血性卒中、またはびまん性軸索損傷である、方法。
【0104】
[0109]実施形態17:実施形態15または実施形態16に記載の方法であって、血圧変動性は、少なくとも約5mmHg減少される、方法。
【0105】
[0110]実施形態18:実施形態15~17のいずれか1つに記載の方法であって、実施形態1~14のいずれか1つに記載のシステムを利用する、方法。
結び
【0106】
[0111]本開示の特定の実施形態は、特定の構成、パラメータ、構成要素、要素などを参照して、詳細に説明されているが、説明は、例証的であり、特許請求された発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0107】
[0112]さらに、説明された実施形態の構成要素の任意の所与の要素について、その要素または構成要素のために列挙される可能な代替案のいずれかは、別途暗示的または明示的に記載のない限り、全体的に、個々にまたは互いと組み合わせて使用され得る。
【0108】
[0113]加えて、別途示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、成分、距離、または他の測定値を表現する数字は、用語“約”またはその同意語によって任意選択的に修正されるものと理解されるべきである。用語“約”、“およそ”、“実質的に”、または同様のものが、述べられた量、値、または状態と併せて使用されるとき、それは、述べられた量、値、または状態の20%未満、10%未満、5%未満、または1%未満だけ逸脱する量、値、または状態を意味するものと捉えられ得る。最低限、また特許請求の範囲の均等物の原則の適用を制限する狙いとしてではなく、各々の数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮して、および通常の四捨五入を適用することによって、解釈されるべきである。
【0109】
[0114]本明細書で使用される見出しおよび小見出しは、整理の目的にすぎず、説明または特許請求の範囲を制限するために使用されることは意図されない。
【0110】
[0115]本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形“a(1つの)”、“an(1つの)”、および“the(その)”は、別途文脈が明確に示さない限り、複数指示対象を除外しない。故に、例えば、単数指示対象(例えば、“widget(ウィジェット)”)を参照する実施形態は、2つ以上のそのような指示対象も含み得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】