(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】神経疾患又は状態を治療するための新しい治療レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 38/06 20060101AFI20230421BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230421BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20230421BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230421BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230421BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230421BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
A61K38/06
A61P25/00
A61P25/00 171
A61P27/06
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/16
A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525237
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2020080404
(87)【国際公開番号】W WO2021084013
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521559599
【氏名又は名称】アキュア セラピューティクス,エセ.エレ.
【氏名又は名称原語表記】ACCURE THERAPEUTICS,S.L.
【住所又は居所原語表記】C.Baldiri Reixac 4-8,Torres I,planta 5,B7,08028 BARCELONA(ES)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビジョスラド ディアス,パブロ
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA15
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZC611
4C084ZC612
(57)【要約】
神経疾患又は状態を治療するための新しい治療レジメン。本発明は、ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経疾患又は状態の治療又は予防に使用するための、式(I)の化合物、又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩、或いは式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩のいずれかの立体異性体若しくは立体異性体の混合物に関し、式中、R
1、R
2及びR
3は本明細書で定義される通りであり、治療は、a)化合物がそれを必要とする対象に1回又は数回投与される1~7日間の第1の期間、及びb)化合物が投与されず、第1の期間の後に行われ、化合物の次の投与の前に行われる13日間以上の第2の期間を含む。(I)
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経疾患又は状態の治療又は予防に使用するための、式(I)の化合物、又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩、又は式(I)の化合物若しくはその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩のいずれかの立体異性体若しくは立体異性体の混合物:
【化1】
式中、
R
1は、ハロゲン又はトリフルオロメチルで置換され、更にハロゲン、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、及びハロ(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で置換されてもよいフェニルであり、或いは、R
1は、ピロリジン-1-イルであり、
R
2は、2-オキソ-ピロリジン-1-イルメチル又はスルファモイルフェニルであり、
R
3は、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、2-メチルプロピル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル及び1-メチルペンチルからなる群から選択され、
前記治療が、
a)前記化合物がそれを必要とする対象に1回又は数回投与される1~7日間の第1の期間、及び
b)前記化合物が投与されず、第1の期間の後に行われ、前記化合物の次の投与の前に行われる13日間以上の第2の期間を含む。
【請求項2】
前記式(I)の化合物において、R
3が2-メチルプロピルであり、R
1及びR
2が請求項1に定義される通りである、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、以下からなる群から選択される、請求項2に記載の使用のための化合物。
【化2】
【請求項4】
前記ステップa)の第1の期間が3~7日間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記第1の期間が7日間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
ステップa)において、前記式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩、或いは前記式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩のいずれかの任意の立体異性体若しくは立体異性体の混合物が、3時間ごと、4時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、12時間ごと、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日ごと、2日ごと、又は3日ごとに投与される、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
ステップa)において、前記式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩、或いは前記式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩のいずれかの任意の立体異性体若しくは立体異性体の混合物が、1日1回投与される、請求項6に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記第2の期間が13日間~89日間である、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記第2の期間が21日間である、請求項8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩、或いは前記式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩のいずれかの任意の立体異性体若しくは立体異性体の混合物が静脈内投与される、請求項1から9のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩、或いは前記式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩のいずれかの任意の立体異性体若しくは立体異性体の混合物が腹腔内投与される、請求項1から9のいずれかに記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩、或いは前記式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩のいずれかの任意の立体異性体若しくは立体異性体の混合物が、それを必要とする対象に、5~75mg/Kg/日のマウスにおける投与量と同等の投与量で投与される、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
前記疾患又は状態が、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、バロ病、シルダー病、横断性脊髄炎、急性出血性白質脳炎、マールブルク病、緑内障、前部虚血性視神経症、視神経炎、レーバー病、優性視萎縮症、中毒性視神経症、外傷性視神経症、腫瘍関連視神経症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、レビー小体病、遺伝性運動失調及び緑内障からなる群から選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
前記疾患又は状態が、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、前部虚血性視神経症及び緑内障からなる群から選択される、請求項13に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経学的又は状態の治療又は予防に使用するための、治療有効量の請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物を、1種又は複数の薬学的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体と共に含む医薬組成物又は獣医学組成物であって、前記治療が請求項1から14のいずれか一項に定義される通りである、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2019年10月30日に出願された欧州特許出願第19382950.4号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、薬学の分野に適用される。より具体的には、本発明は、ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経疾患又は状態の治療のための不連続な治療レジメンの開発に関する。
【背景技術】
【0003】
ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす炎症性神経疾患又は状態としては、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、バロ病、シルダー病、横断性脊髄炎、急性出血性白質脳炎(すなわち、ハースト病)、及びマールブルク病(すなわち、急性MS)などの様々な中枢神経系(CNS)疾患を挙げることができるが、これらに限定されない。神経変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、遺伝性運動失調、又は緑内障が挙げられる。視神経症は、視神経炎、前虚血性視神経症、レーバー病、優性視萎縮症又は緑内障、及び中毒、外傷性、腫瘍関連視神経症を含む、視神経を損傷する疾患である。
【0004】
MSは、中枢神経系(CNS)変性自己免疫疾患であり、免疫系が、軸索、及び神経線維を取り囲むミエリン保護鞘を攻撃して損傷し、著しい障害をもたらす。MSは、脱髄、多巣性炎症、反応性神経膠症、並びに乏突起膠細胞及び軸索喪失を特徴とする。
【0005】
NMO(デビック病又はデビック症候群としても知られている)又はNMOスペクトル障害(NMOSD)は、免疫系細胞及び抗体が視神経、脳及び脊髄の星状膠細胞を誤って攻撃し、破壊し、二次的な脱髄及び軸索喪失を誘発するCNSの自己免疫障害である。視神経の損傷は視神経炎を引き起こし、これは腫脹及び炎症を引き起こし、疼痛及び視力喪失を引き起こす。脊髄の損傷は、脚又は腕の脱力又は麻痺、感覚の喪失、並びに膀胱及び腸の機能の問題を引き起こす。両疾患は類似の症状を有し、視神経炎及び脊髄炎の発作を引き起こす可能性があるため、NMOはMSと混同される可能性があり、最近までMSの重篤な変異体であると考えられていた。しかし、最近の研究は、NMO及びMSが別個の疾患であることを示唆している。
【0006】
視神経炎は、多くの異なる状態によって引き起こされる可能性がある視神経の脱髄性炎症であるが、MS及びNMOに関連して起こることが多い。炎症は、しばしば視神経を覆うミエリン鞘の腫脹及び破壊のために、視力の喪失又は失明さえ引き起こす可能性がある。視神経炎の症状としては、かすみ目、色の減光、眼を動かしたときの痛み、盲点及びコントラスト感度の喪失が挙げられる。
【0007】
MS及び他の脱髄性疾患(視神経炎、脊髄炎、視神経脊髄炎を含む)の治療は、以下の3種類の治療を含む。1)疾患修飾薬(DMD):疾患の病因を停止させ、障害の蓄積を変化させることを意図したもの、2)再発の治療:再発期間を短縮し、残存障害を減少させることを目的とするもの、3)対症療法:MS障害による症状(例えば、疼痛、痙縮、膀胱症状など)を改善することを目的としたもの。
【0008】
MSのためのDMDに関して、現在承認されている全ての治療は、薬物又は投与方法に応じて異なる投与プロトコルを必要とする慢性(長期)投与のためのものである。1)経口薬物(フィンゴリモド、シポニモド、オザニモド、フマル酸ジメチル及びテリフルノミド)を毎日投与するが、化学療法(ミトキサントロン及びクラドリビン)は数日間投与し、その後数年間保留し、2)皮下薬(インターフェロンβ、酢酸グラチラマー)を毎日又は数日ごとに投与し、3)静脈内薬(ナタリズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、オファツムマブ)を作用機序(MoA)に応じて数ヶ月ごと(1~6~12)に投与する。それらは全て、免疫細胞集団を枯渇させるか又はT細胞遊走を防止することによって作用するモノクローナル抗体(mab)である。これらの薬物は全て免疫調節療法であり、いずれも明確に実証された一次神経保護活性を有さない(二次神経保護は、中枢神経系(CNS)損傷を防ぐその免疫調節活性によって炎症を止める結果である)。一部の薬物が慢性的に投与されない理由(化学療法及びmab)は、それらのMoAが曝露をはるかに超えて広がるからである(例えば、骨髄からの回復に数ヶ月を要する特異的免疫細胞集団を減少させることによって)。
【0009】
再発の治療に関して、現在のところ、再発を治療するために承認されている薬物はないが、標準治療(SoC)は、静脈内メチルプレドニゾロン又は経口プレドニゾンのいずれかを高用量(1g/日で3~5日間)で使用することである。コルチコステロイド治療は、炎症を終結させる免疫調節活性を発揮するが、神経保護効果は示されていない。このため、身体障害は改善されない。
【0010】
対症療法に関しては、MS症状を改善するためにいくつかの薬物が使用されている。そのような症状を予防するために慢性的に(毎日)投与される経口薬がほとんどである。そのような薬物のいくつか(フェニトイン、アミロライド、アミノピリジン、没食子酸エピガロカテキン)は、神経保護薬(慢性投与において)と同様に研究されてきたが、経過を変えることができる神経保護薬(MSの障害又はその再発)としてこれまで検証されていない。
【0011】
したがって、現在のところ、MSのために承認された、又はSoCとして使用される神経保護薬はない。現在の薬物は免疫調節性である(神経保護に関する請求項は、二次的な神経保護活性によるものであり、すなわち、炎症が少ないことは損傷が少ないことを意味する)。パルス型薬物は、コルチコステロイド又は化学療法のいずれかを含み、それらは、それらのMoAのために曝露を超えて拡張された効果を有する。
【0012】
更に、現在の治療法は、免疫有害反応又は重度の日和見感染などの重大な副作用に関連している。
【0013】
一方、ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらすこれらの疾患又は状態は、一般に、損傷が短期間(例えば、虚血、炎症、外傷)存在するが、損傷は数週間から数ヶ月にわたって発生し、患者の障害を増加させ、生活の質を低下させる「ヒットアンドラン」モデルに従う。このため、長期持続的な有効性をもたらす治療が望まれている。
【0014】
特許文献1は、ニューロン及び軸索喪失を防止し、ミエリンを保存するインビトロ及び動物モデルにおいて有効性を示す神経保護性ペプトイドを開示しており、これは、例えば多発性硬化症、視神経炎及び緑内障のモデルにおけるより良好な臨床転帰に関連する。しかし、この文献は、化合物の経時的なインビボ効果については言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開WO2012/028959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、副作用を低減しながら持続的な有効性を有するこれらの種類の神経疾患又は状態を治療する新しい方法が当技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、脱髄の増加、視神経の軸索喪失の増加、及び眼の網膜の網膜神経節細胞数の有意な減少を特徴とする急性視神経炎の動物モデル(AON)において、特許文献1に開示される神経保護ペプトイドを短期間(例えば約5~7日間)投与すると、予想されるように短期間での有効性だけでなく、長期(最大1ヶ月)での驚くべき有効性も示すことを見出した。
【0018】
これは、以下の例(
図6~8)に示されている。特に、結果は、ペプトイドBN201(すなわち、([N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)グリシル]-N-[3-(2’-オキソピロリジニル)-プロピル]グリシンアミド)を10~70mg/Kg/日の用量範囲で6日間腹腔内(IP)又は静脈内(IV)のいずれかで短期投与することにより、短期間(7日、
図5)及び長期間(損傷後28日目まで、
図8)の両方で軸索を損傷から保護することができることを示している。実際、そのような有効性は、後の時点で更に増加した。更に、BN201治療は、未治療群と比較した場合、短期間(
図3~4)及び長期間(
図6~7)の両方で網膜神経節細胞、及び脱髄スコアの有意な改善をもたらした。
【0019】
上述したように、これらの疾患では損傷が数週間から数ヶ月にわたって発生するので、これらの結果は臨床的観点から極めて重要である。したがって、特許文献1に開示されている神経保護ペプトイドによって示される長期持続有効性は、薬物が投与される短期間と、その後に薬物を投与しない長期間(薬物の半減期(8時間)をはるかに超えて延びる)とを含む不連続な治療レジメンを可能にする。
【0020】
障害が発生している全期間にわたって同じ薬物に曝露される場合と比較して、薬物への曝露が減少すると、副作用が低下し、安全性の改善につながり、治療レジメンの患者コンプライアンスが改善する。
【0021】
更に、次の薬物投与の前に薬物が投与されない長期間を有する本発明の不連続治療レジメンはまた、治療患者のコンプライアンスを改善し、したがって、患者のアドヒアランス及び治療有効性の増加をもたらす。多くの場合、患者は、追加の注射又は投与を必要とせずに、病院にいる間に急性損傷の時点で治療を受け、その期間の後に利益を得る。
【0022】
リン酸化事象は非常に一時的(10~30分)であり、受容体への結合は、受容体が内在化され分解されるため、1日未満の延長に使用され、それに加えて、標的結合は多くの場合永久的ではなく、解離定数は非常に短くなり得る。
【0023】
BN201は、Foxo3又はNDRG1などのその標的のいくつかのリン酸化を含めて、血清糖質コルチコイド(SGK)経路を活性化することが示されている。このような活性化は、栄養因子経路を誘因し、次の数日間、遺伝子発現パターンの変化をもたらす。BN201の半減期は、健康なボランティアにおける第1相試験で見られるように、ヒトでは最大8時間である。同じ第1相試験において観察されたCNSへの能動的輸送、薬物蓄積の欠如、及び薬物の迅速なクリアランスを仮定すると、BN201曝露が最後の投与(6日目)後1日を超えて延長した可能性は低いと考えられた。
【0024】
理論に束縛されるものではないが、予想外の結果は、SGK経路の活性化が数週間にわたる変化を引き起こし、薬物によって引き起こされる特異的分子事象をはるかに超えて細胞の表現型を変化させることを示唆している。そのような効果はおそらく、タンパク質に翻訳し、ニューロン、星状膠細胞、乏突起膠細胞及び/又はミクログリアにおいてそのような有益な細胞表現型を作り出す、SGK経路に関連するいくつかの遺伝子の発現によって媒介される。
【0025】
したがって、本発明の第1の態様は、ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経疾患又は状態の治療又は予防に使用するための、式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩、或いは式(I)の化合物又はその薬学的若しくは獣医学的に許容される塩のいずれかの任意の立体異性体若しくは立体異性体の混合物に関し、
【化1】
式中、
R
1は、ハロゲン又はトリフルオロメチルで置換され、更にハロゲン、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、及びハロ(C
1~C
6)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で置換されてもよいフェニルであり、或いは、R
1は、ピロリジン-1-イルであり、
R
2は、2-オキソ-ピロリジン-1-イルメチル又はスルファモイルフェニルであり、
R
3は、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、2-メチルプロピル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル及び1-メチルペンチルからなる群から選択され、
前記治療は、
a)化合物がそれを必要とする対象に1回又は数回投与される1~7日間の第1の期間、及び
b)化合物が投与されず、第1の期間の後に行われ、化合物の次の投与の前に行われる13日間以上の第2の期間を含む。
【0026】
したがって、この態様は、ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経疾患又は状態を治療するための医薬品を製造するための、上で定義した式(I)の化合物又はその誘導体の使用に関し、治療は、
a)化合物がそれを必要とする対象に1回又は数回投与される1~7日間の第1の期間、及び
b)化合物が投与されず、第1の期間の後に行われ、化合物の次の投与の前に行われる13日間以上の第2の期間を含む。
【0027】
或いは、この態様はまた、ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経疾患又は状態を治療する方法として製剤化することができ、方法は、
a)化合物が、哺乳動物、特にヒトを含む、それを必要とする対象に1回又は数回投与される1~7日間の第1の期間、及び
b)化合物が投与されず、第1の期間の後に行われ、化合物の次の投与の前に行われる13日間以上の第2の期間を含む。
【0028】
本発明の化合物は、賦形剤又は担体を含む組成物に製剤化することができる。したがって、本発明の第2の態様は、1種又は複数の薬学的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体と共に、治療有効量の先に定義した式(I)の化合物又はその誘導体を含む医薬組成物又は獣医学組成物に関し、
ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経疾患又は状態の治療又は予防に使用するためのものであって、治療は、
a)化合物がそれを必要とする対象に1回又は数回投与される1~7日間の第1の期間、及び
b)化合物が投与されず、第1の期間の後に行われ、化合物の次の投与の前に行われる13日間以上の第2の期間を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】異なる用量(10、25及び70mg/Kg)でラットに6日間毎日BN201を腹腔内(IP)投与した後7日目に評価した血漿薬物濃度を示す図である。
【
図2】25mg/Kgでラットに6日間BN201を静脈内(IV)投与した後7日目に評価した血漿薬物濃度を示す図である。
【
図3】偽(健常)及び病理学的(疾患、未治療)対照群、並びに異なる用量(mpk=mg/Kg)で6日間にわたって毎日BN201を腹腔内(IP)又は静脈内(IV)処置した病理学的群について7日目に評価した急性視神経炎(AON)の動物モデルにおける網膜神経節細胞の数を示す図である。(
*)P値0.05、(
***)P値0.001。
【
図4】偽(健常)及び病理学的(疾患、未治療)対照群、並びに異なる用量(mpk=mg/Kg)で6日間にわたって毎日BN201を腹腔内(IP)又は静脈内(IV)処置した病理学的群について7日目に評価したAONの脱髄スコア(スケール:0~4)を示す図である。
【
図5】偽(健常)及び病理学的(疾患、未治療)対照群、並びに異なる用量(mpk=mg/Kg)で6日間にわたって毎日BN201を腹腔内(IP)又は静脈内(IV)処置した病理学的群について7日目に評価したAONの軸索喪失スコア(スケール:0~4)を示す図である。(
*)P値0.05、(
***)P値0.001。
【
図6】偽(健常)及び病理学的(疾患、未治療)対照群、並びに異なる用量(mpk=mg/Kg)で6日間にわたって毎日BN201を腹腔内(IP)又は静脈内(IV)処置した病理学的群について、7、14、及び28日目に評価したAONの網膜神経節細胞の数を示す図である。RGC数は、プラセボよりも28日目までに25mpk群で有意に高かった(p<0.05)。
【
図7】偽(健常)及び病理学的(疾患、未治療)対照群、並びに異なる用量(mpk=mg/Kg)で6日間にわたって毎日BN201を腹腔内(IP)又は静脈内(IV)処置した病理学的群について、7、14、及び28日目に評価したAONの脱髄スコア(スケール:0~4)を示す図である。脱髄スコア数は、プラセボよりも28日目までに10及び25mpk群で有意に低かった(p<0.05)。
【
図8】偽(健常)及び病理学的(疾患、未治療)対照群、並びに異なる用量(mpk=mg/Kg)で6日間にわたって毎日BN201を腹腔内(IP)又は静脈内(IV)処置した病理学的群について、7、14、及び28日目に評価したAONの軸索喪失スコア(スケール:0~4)を示す図である。軸索喪失スコア数は、プラセボよりも28日目までに10及び25mpk群で有意に低かった(p<0.05)。
【
図9】異なる倍率である10×(左)及び20×(右)下で脱髄を評価するために、セット1-病理学的(疾患、未治療)対照群、及び10又は25mg/Kgで6日間にわたって毎日BN201を腹腔内(IP)処置したセット1病理群について、14日目に評価したAON中のルクソール-ファストブルー(LFB)で染色した視神経の組織病理学的画像を示す図である。
【
図10】異なる倍率である10×(左)及び20×(右)下で脱髄を評価するために、セット1-病理学的(疾患、未治療)対照群、及び10又は25mg/Kgで6日間にわたって毎日BN201を腹腔内(IP)処置したセット1病理群について、28日目に評価したAON中のルクソール-ファストブルー(LFB)で染色した視神経の組織病理学的画像を示す図である。
【
図11】異なる倍率である10×(左)及び20×(右)下で軸索密度を評価するために、セット1-病理学的(疾患、未治療)対照群、及び10又は25mg/Kgで6日間にわたって毎日BN201を腹腔内(IP)処置したセット1病理群について、14日目に評価したAON中のビルショウスキー銀染色(BSS)で染色した視神経の組織病理学的画像を示す図である。
【
図12】異なる倍率である10×(左)及び20×(右)下で軸索密度を評価するために、セット1-病理学的(疾患、未治療)対照群、及び10又は25mg/Kgで6日間にわたって毎日BN201を腹腔内(IP)処置したセット1病理群について、28日目に評価したAON中のビルショウスキー銀染色(BSS)で染色した視神経の組織病理学的画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、特に明記しない限り、当技術分野で知られている通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用される特定の用語の他のより具体的な定義は、以下に示されるとおりであり、特に明示的に記載された定義がより広い定義を提供しない限り、明細書及び特許請求の範囲を通して均一に適用することを意図している。
【0031】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、特定の値の±10%の範囲の値を指す。例えば、「約10」又は「およそ10」という表現は、10の±10%、すなわち9から11を含む。
【0032】
式(I)の化合物
【0033】
上述のように、本発明は、本明細書で言及される式(I)の化合物又はその誘導体の投与を含む新しい治療レジメンに関する。
【0034】
本発明の目的のために、(C1~Cn)アルキルという用語は、1~n個の炭素原子及び単結合のみを含む飽和分枝又は直鎖炭化水素鎖を指す。
【0035】
(C1~Cn)アルキルの非限定的な例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピルなどが挙げられる。
【0036】
(C1~Cn)アルコキシという用語は、酸素原子を介して分子の残りの部分又は別の基に結合している、先に定義した(C1~Cn)アルキルを指す。(C1~Cn)アルコキシの非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシなどが挙げられる。
【0037】
ハロ(C1~Cn)アルキルという用語は、水素原子の一部又は全部がフッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素で置き換えられている、先に定義した(C1~Cn)アルキルを指す。ハロ(C1~Cn)アルキルの非限定的な例としては、クロロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチルなどが挙げられる。
【0038】
ハロゲン置換基は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。
【0039】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1はフルオロフェニル、より具体的には2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル又は4-フルオロフェニル、更により具体的には2-フルオロフェニルである。
【0040】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、ハロゲン、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、及びハロ(C1~C6)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたフルオロフェニルであり、具体的には、R1は、ハロゲン、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)アルコキシ、及びハロ(C1~C4)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたフルオロフェニルであり、更により具体的には、R1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたフルオロフェニルである。
【0041】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、クロロフェニル、より具体的には、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル又は4-クロロフェニルであり、更により具体的には、R1は、2-クロロフェニルである。
【0042】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、ハロゲン、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、及びハロ(C1~C6)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたクロロフェニルであり、具体的には、R1は、ハロゲン、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)アルコキシ、及びハロ(C1~C4)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたクロロフェニルであり、更により具体的には、R1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたクロロフェニルである。
【0043】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、ブロモフェニル、より具体的には、2-ブロモフェニル、3-ブロモフェニル又は4-ブロモフェニルであり、更により具体的には、2-ブロモフェニルである。
【0044】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、ハロゲン、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、及びハロ(C1~C6)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたブロモフェニルであり、具体的には、R1は、ハロゲン、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)アルコキシ、及びハロ(C1~C4)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたブロモフェニルであり、更により具体的には、R1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたブロモフェニルである。
【0045】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、ヨードフェニル、より具体的には、2-ヨードフェニル、3-ヨードフェニル又は4-ヨードフェニルであり、更により具体的には、2-ヨードフェニルである。
【0046】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、ハロゲン、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、及びハロ(C1~C6)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたヨードフェニルであり、具体的には、R1は、ハロゲン、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)アルコキシ、及びハロ(C1~C4)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたヨードフェニルであり、更により具体的には、R1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたヨードフェニルである。
【0047】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、トリフルオロメチルフェニル、より具体的には、2-トリフルオロメチルフェニル、3-トリフルオロメチルフェニル又は4-トリフルオロメチルフェニル、更により具体的には、2-トリフルオロメチルフェニルである。
【0048】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、ハロゲン、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、及びハロ(C1~C6)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたトリフルオロメチルフェニルであり、具体的には、R1は、ハロゲン、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)アルコキシ、及びハロ(C1~C4)アルキルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたトリフルオロメチルフェニルであり、更により具体的には、R1は、ハロゲン、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、フルオロメチル及びトリフルオロメチルからなる群から選択される1つ又は2つの置換基で更に置換されたトリフルオロメチルフェニルである。
【0049】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、ピロリジン-1-イルである。
【0050】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R2は、2-オキソ-ピロリジン-1-イル-メチルである。
【0051】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R2は、スルファモイルフェニル、より具体的には、2-スルファモイルフェニル、3-スルファモイルフェニル、又は4-スルファモイルフェニル、更により具体的には、4-スルファモイルエチルである。
【0052】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R3は、2-メチルプロピルである。
【0053】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物において、R1は、2-フルオロフェニル又はピロリジン-1-イルであり、R2は、2-オキソ-ピロリジン-1-イルメチル又は4-スルファモイルフェニルである。
【0054】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、式(I)の化合物は、G79([N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)-グリシル]-[N-(2-メチルプロピル)-グリシル]-N-[3-(2’-オキソピロリジニル)-プロピル]グリシンアミド、BN201、化学式:C25H38FN5O4、分子量491.5987)、G-80([N-(2-(2’-フルオロフェニル)エチル)-グリシル]-[N-(2-メチル-プロピル)グリシル]-N-[2-(4’-スルファモイル-フェニル)エチル]グリシンアミド、BN119、化学式:C26H36FN5O5S、分子量549.658)及びG81([N-(2-(1-ピロリジニル)エチル)-グリシル]-[N-(2-メチル-プロピル)グリシル]-N-[2-(4’-スルファモイル-フェニル)エチル]グリシンアミド、BN120、化学式:C24H40N6OS、分子量524.6766)からなる群から選択され、式(I)の化合物は、特許文献1に開示されるように調製することができる。
【0055】
【0056】
使用することができる式(I)の化合物の塩の種類に制限はないが、ただし、これらが治療目的で使用される場合、薬学的又は獣医学的に許容されることを条件とする。「薬学的又は獣医学的に許容される塩」という用語は、アルカリ金属塩を形成し、遊離酸又は遊離塩基の付加塩を形成するために一般的に使用される塩を包含する。式(I)の化合物の薬学的又は獣医学的に許容される塩の調製は、当技術分野で公知の方法によって行うことができる。例えば、それらは、従来の化学的方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から調製することができる。一般に、そのような塩は、例えば、式(I)の化合物の遊離酸又は遊離塩基形態を、化学量論量の適切な薬学的又は獣医学的に許容される塩基又は酸と、水中又は有機溶媒中又はそれらの混合物中で反応させることによって調製される。式(I)の化合物及びそれらのそれぞれの塩は、いくつかの物理的特性において異なっていてもよいが、本発明の目的のためには同等である。
【0057】
本発明の化合物は、遊離溶媒和化合物又は溶媒和物(例えば、水和物)のいずれかとしての結晶形態であってもよく、両方の形態が本発明の範囲内であることが意図される。溶媒和の方法は、当技術分野において一般に公知である。一般に、水、エタノールなどの薬学的、化粧品的又は獣医学的に許容される溶媒との溶媒和形態は、本発明の目的のための非溶媒和形態と同等である。
【0058】
本発明のいくつかの化合物は、種々の立体異性体を生じ得るキラル中心を有することができる。本明細書中で使用される「立体異性体」という用語は、空間における原子の配向のみが異なる個々の化合物の全ての異性体のことを指す。立体異性体という用語は、鏡像異性体(エナンチオマー)、鏡像異性体の混合物(ラセミ体、ラセミ混合物)、幾何(シス/トランス又はシン/アンチ又はE/Z)異性体、及び互いに鏡像ではない2つ以上のキラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオ異性体)を含む。本発明は、これらの立体異性体の各々及びそれらの混合物に関する。
【0059】
ジアステレオ異性体及びエナンチオマーは、クロマトグラフィ又は分別結晶などの従来の技術によって分離することができる。光学異性体を、光学分割の従来の技術によって分割して、光学的に純粋な異性体を得ることができる。この分割は、任意のキラル合成中間体又は本発明の化合物に対して行うことができる。光学的に純粋な異性体は、エナンチオ特異的合成を用いて個別に得ることもできる。
【0060】
式(I)の化合物、その薬学的又は獣医学的に許容される塩、並びに式(I)の化合物のいずれか又はそれらの薬学的に許容される塩のいずれかの立体異性体又は立体異性体の混合物に言及する本発明の全ての実施形態では、それらが具体的に言及されていなくても常に企図される。
【0061】
医薬組成物及び獣医学組成物
【0062】
式(I)の化合物は、医薬組成物又は獣医学組成物の一部を形成することができる。本発明で使用される医薬組成物又は獣医学組成物は、治療有効量の先に定義した式(I)の化合物、又はその医薬的若しくは獣医学的に許容される塩、或いは式(I)の化合物又はその医薬的若しくは獣医学的に許容される塩のいずれかの任意の立体異性体又は立体異性体の混合物を、1種又は複数の医薬的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体と共に含む。
【0063】
本明細書で使用される「治療有効量」という表現は、投与された場合に、対処される疾患の症状の1つ又は複数の発症を予防するか、又はある程度軽減するのに十分である化合物の量を指す。治療上の利益を得るための本発明の化合物の具体的な用量は、とりわけ、患者の背格好、体重、年齢及び性別、疾患の性質及び病期、疾患の侵攻性、並びに投与経路を含む個々の患者の特定の状況に応じて様々である可能性がある。
【0064】
「薬学的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体」という表現は、薬学的又は獣医学的に許容される材料、組成物、又は媒体を指す。各成分は、医薬組成物又は獣医学組成物の他の成分と適合性であるという意味で、医薬的又は獣医学的に許容されなければならない。また、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性又はその他の問題や合併症がなく、合理的な利益/リスク比に見合った、ヒト及び動物の組織又は器官と接触させて使用するのに適していなければならない。
【0065】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、医薬組成物又は獣医学組成物は、生理食塩水(NaCl)中での先に定義した式(I)の化合物の溶液である。より具体的には、生理食塩水(NaCl)中での先に定義した式(I)の化合物の2mg/mL又は5mg/mL溶液である。
【0066】
治療レジメン
【0067】
上述のように、本発明の治療レジメンは、先に定義した式(I)の化合物又はそれを含有する組成物を、それを必要とする対象に1~7日間の第1の期間にわたって1回又は数回投与し、次いで13日間以上の期間にわたって投与を停止することを含む。
【0068】
本発明の目的のために、「数回」という用語は2回以上を指す。
【0069】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、数回という用語は、2回~42回、より具体的には、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、16、18、20、21、22、24、26、27、28、30、32、34、36、38、40又は42回を意味する。
【0070】
「1日1回(once per day)」、「1日1回(once a day)」、「1日1回(once daily)」という表現は互換的に使用され、1日に1用量の薬物のみが投与されることを意味する。
【0071】
本発明の治療レジメンは、第1の期間(薬物が投与される、すなわち薬物投与期間)、及び薬物を再び投与する前の第2の期間(薬物が投与されない、すなわち薬物のない期間)を含む。したがって、薬物が投与されない第2の期間が終了すると、薬物は少なくとももう一度投与される。一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、本発明の治療レジメンは、2回以上、より具体的には2、3、4、5、6、7、8、9又は10回の薬物投与期間を含み、それらの間に対応する薬物のない期間がある。
【0072】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、本発明の治療レジメンは、ステップa)及びb)を繰り返すことを含む周期的治療である。
【0073】
本発明の目的のために、ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経疾患又は状態の「治療」という用語は、疾患発症の症状又は徴候を示すか又は示した対象において薬物が使用される場合、疾患/状態の進行を低減、安定化又は阻害することを指す。治療という用語はまた、疾患又は状態の臨床歴のない患者、例えば磁気共鳴画像法(MRI)で脳病変を示すRadiologically Isolated Syndrome(RIS)に罹患している患者、又は計画された脳手術、動脈内膜切除術若しくは他の血管内処置を受けている患者において本格的な疾患を発症するリスクが高い症例を含む。例えば、治療は、それを必要とする対象における障害の蓄積の低減を指すことができる。いくつかの実施形態では、治療はまた、神経保護効果、免疫調節応答、又はそれらの何らかの組合せを提供することを指すことができる。
【0074】
「予防」という用語は、「予防的治療」という用語と互換的に使用することができ、式(I)の化合物又はその組成物の対象への予防的投与を指し、疾患若しくは障害、又はその1つ若しくは複数の症状の発症、再発若しくは拡散の予防を含む。
【0075】
本発明において、「患者」及び「対象」という用語は互換的に使用される。
【0076】
先に定義した式(I)の化合物又は組成物を1~7日の期間にわたって1回又は数回投与するという条件で、本発明に従って使用することができるステップa)の投与スケジュールに制限はない。したがって、例えば、先に定義した式(I)の化合物又は組成物は、1回だけ投与されてもよく、或いは、異なる投与スケジュールに従って1~7日の期間にわたって2回以上投与されてもよい。そのような投与スケジュールの非限定的な例としては、3時間ごと(Q3h)、4時間ごと(Q4h)、6時間ごと(Q6h)、8時間ごと(Q8h)、12時間ごと(Q12h)、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日ごと、2日ごと、3日ごとなどが挙げられる。
【0077】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、ステップa)の第1の期間は、2~7日、3~7日、4~7日、5~7日、又は6~7日である。
【0078】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、ステップa)において、先に定義した化合物又はそれを含有する組成物は、1、2、3、4、5、6、又は7日の第1の期間にわたって数回投与され、より具体的には、期間は6又は7日である。
【0079】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、ステップa)において、先に定義した式(I)の化合物又はそれを含有する組成物は、数回投与される。より具体的には、化合物は、3時間ごと(Q3h)、4時間ごと(Q4h)、6時間ごと(Q6h)、8時間ごと(Q8h)、12時間ごと(Q6h)、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日ごと、2日ごと、又は3日ごとに投与される。
【0080】
より特定の実施形態では、化合物は、毎日、より具体的には、1日1回、3時間ごと(Q3h)、4時間ごと(Q4h)、6時間ごと(Q6h)、8時間ごと(Q8h)、又は12時間ごと(Q12h)に投与される。
【0081】
別のより特定の実施形態では、化合物は、2日ごと又は3日ごとに投与される。更により具体的には、投与日において、式(I)の化合物又はそれを含有する組成物は、1日1回、3時間ごと(Q3h)、4時間ごと(Q4h)、6時間ごと(Q6h)、8時間ごと(Q8h)又は12時間ごと(Q12h)に投与される。
【0082】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、先に定義した式(I)の化合物又は組成物を、1日1回、6又は7日間投与する。
【0083】
上述のように、化合物が投与されないステップb)の第2の期間は、13日以上である。一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、化合物が投与されない第2の期間は、13日間~1年間(12ヶ月)である。
【0084】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、化合物が投与されない第2の期間は、13日間~3ヶ月間である。
【0085】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、化合物が投与されない第2の期間は、13日間~1ヶ月間である。
【0086】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、化合物が投与されない第2の期間は、13、14、15、16、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、37、41、44、48、51、55、58、62、69、76、83、84、85、86、87、88、89、又は90日間以上である。より具体的には、第2の期間は、21又は22日間である。
【0087】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、化合物が投与されない第2の期間は、13~20日間、13~21日間、13~22日間、13~23日間、13~24日間、13~25日間、13~26日間、13~27日間、13~28日間、13~29日間、13~30日間、13~34日間、13~41日間、13~48日間、13~55日間、又は13~62日間、13~69日間、13~76日間、13~83日間、13~84日間、13~85日間、13~86日間、13~87日間、13~88日間、13~89日間、又は13~90日間である。
【0088】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、化合物が投与されない第2の期間は、13~358日間、13~359日間、13~360日間、13~361日間、13~362日間、13~363日間、13~364日間又は13~365日間である。
【0089】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、化合物が投与されない第2の期間は、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、12週間、15週間、20週間、24週間、28週間、32週間、36週間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、又は12ヶ月間に等しい。
【0090】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、第1の期間は、2~7日間、3~7日間、4~7日間、5~7日間、6~7日間又は7日間であり、化合物が投与されない第2の期間は、13、14、15、16、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、32、34、37、41、44、48、51、55、58、62、69、76、83、84、85、86、87、88、89又は90日間以上であり、より具体的には、第2の期間は21又は22日間である。
【0091】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、第1の期間は、2~7日間、3~7日間、4~7日間、5~7日間、6~7日間又は7日間であり、化合物が投与されない第2の期間は、13~20日間、13~21日間、13~22日間、13~23日間、13~24日間、13~25日間、13~26日間、13~27日間、13~28日間である。
【0092】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、第1の期間は、2~7日間、3~7日間、4~7日間、5~7日間、6~7日間又は7日間であり、化合物が投与されない第2の期間は、13日間に等しく、これは、先に定義した式(I)の化合物又はその組成物が2週間ごとに投与されることを意味し、或いは、第1の期間は、2~7日間、3~7日間、4~7日間、5~7日間、6~7日間又は7日間であり、化合物が投与されない第2の期間は、20日間に等しく、これは、先に定義した式(I)の化合物又はその組成物が3週間ごとに投与されることを意味し、或いは、第1の期間は、2~7日間、3~7日間、4~7日間、5~7日間、6~7日間又は7日間であり、化合物が投与されない第2の期間は、27日間に等しく、これは、先に定義した式(I)の化合物又はその組成物が4週間ごとに投与されることを意味し、或いは、第1の期間は、2~7日間、3~7日間、4~7日間、5~7日間、6~7日間又は7日間であり、化合物が投与されない第2の期間は、34日間に等しく、これは、先に定義した式(I)の化合物又はその組成物が5週間ごとに投与されることを意味し、或いは、第1の期間は、2~7日間、3~7日間、4~7日間、5~7日間、6~7日間又は7日間であり、化合物が投与されない第2の期間は、41日間に等しく、これは、先に定義した式(I)の化合物又はその組成物が6週間ごとに投与されることを意味する。より特定の実施形態では、化合物又は組成物は、毎日、より具体的には、1日1回、3時間ごと(Q3h)、4時間ごと(Q4h)、6時間ごと(Q6h)、8時間ごと(Q8h)、又は12時間ごと(Q12h)に投与される。別のより特定の実施形態では、第1の期間において、化合物又は組成物は、2日ごと又は3日ごとに投与される。更により具体的には、投与日において、化合物又は組成物は、1日1回、3時間ごと(Q3h)、4時間ごと(Q4h)、6時間ごと(Q6h)、8時間ごと(Q8h)又は12時間ごと(Q12h)に投与される。
【0093】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、第1の期間は、2~7日間、3~7日間、4~7日間、5~7日間、6~7日間又は7日間であり、化合物が投与されない第2の期間は、27~30日間であり、これは、先に定義した式(I)の化合物又はその組成物が月に1回投与されることを意味し、或いは、第1の期間は、2~7日間、3~7日間、4~7日間、5~7日間、6~7日間又は7日間であり、化合物が投与されない第2の期間は、89~91日間であり、これは、先に定義した式(I)の化合物又はその組成物が3ヶ月ごとに投与されることを意味し、或いは、第1の期間は、2~7日間、3~7日間、4~7日間、5~7日間、6~7日間又は7日間であり、化合物が投与されない第2の期間は、364~365日間であり、これは、先に定義した式(I)の化合物又はその組成物が年に1回投与されることを意味する。より特定の実施形態では、化合物又は組成物は、毎日、より具体的には、1日1回、3時間ごと(Q3h)、4時間ごと(Q4h)、6時間ごと(Q6h)、8時間ごと(Q8h)、又は12時間ごと(Q12h)に投与される。別のより特定の実施形態では、第1の期間において、化合物又は組成物は、2日ごと又は3日ごとに投与される。更により具体的には、投与日において、化合物又は組成物は、1日1回、3時間ごと(Q3h)、4時間ごと(Q4h)、6時間ごと(Q6h)、8時間ごと(Q8h)又は12時間ごと(Q12h)に投与される。
【0094】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、先に定義した式(I)の化合物又は組成物を静脈内投与する。
【0095】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、先に定義した式(I)の化合物又は組成物を腹腔内投与する。
【0096】
式(I)の化合物は、本発明の治療レジメンに従って、マウスにおいて0.5~200mg/Kgの投与量で投与することができ、これは0.04mg/Kg~16.26mg/Kg[成人健常ボランティアにおける治療薬の初期臨床試験における最大安全開始用量を推定する業界のガイダンスに基づく本明細書全体にわたるHED計算;FDA、CDER、2005年7月]のヒト等価用量(HED)に相当する。
【0097】
したがって、一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、先に定義した式(I)の化合物又は組成物は、マウスにおける投与量に等しいヒトにおける投与量で、0.5~200mg/Kg、より具体的には2~100mg/Kg、更により具体的には5~75mg/Kg、更により具体的には10~70mg/Kgの式(I)の化合物で、1回のみ又は代替的に毎日投与される。
【0098】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、先に定義された式(I)の化合物又は組成物は、約200mg/Kg、約175mg/Kg、約150mg/Kg、約125mg/Kg、約100mg/Kg、約75mg/Kg、約70mg/Kg、約60mg/Kg、約55mg/Kg、約50mg/Kg、約45mg/Kg、約40mg/Kg、約35mg/Kg、約30mg/Kg、約25mg/Kg、約20mg/Kg、約15mg/Kg、約10mg/Kg、約5mg/Kg、約2.5mg/Kg、約2mg/Kg、約1.5mg/Kg、約1.0mg/Kg、及び約0.5mg/Kgの式(I)の化合物からなる群から選択されるマウスにおける投与量に等しいヒトにおける投与量で、1回のみ又は代替的に毎日投与される。より具体的には、先に定義した式(I)の化合物又は組成物は、約70mg/Kg、約25mg/Kg及び約10mg/Kgの式(I)の化合物からなる群から選択されるマウスにおける投与量に等しいヒトにおける投与量で投与される。
【0099】
本発明の治療レジメンでは、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の短期間の投与は、一定の曲線下面積(AUCLast)及びCmax値を提供することができる。
【0100】
「曲線下面積(AUCLast)」という用語は、上述の第1の期間について、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の投与時から最後の測定可能な濃度までの曲線下面積を指す。投与された薬物の最大測定血漿濃度は、「Cmax」と呼ばれる。
【0101】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、上述の第1の期間について、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の投与は、1~100,000h*ng/mL、より具体的には500~80,000h*ng/mL、更により具体的には6,000~66,000h*ng/mLの曲線下面積(AUCLast)を提供することができる。
【0102】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、上述の第1の期間について、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の投与は、6,000~9,000h*ng/mLの曲線下面積(AUCLast)を提供することができる。
【0103】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、上述の第1の期間について、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の投与は、12,000~16,000h*ng/mLの曲線下面積(AUCLast)を提供することができる。
【0104】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、上述の第1の期間について、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の投与は、60,000~66,000h*ng/mLの曲線下面積(AUCLast)を提供することができる。
【0105】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、上述の第1の期間について、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の投与は、1~100000ng/mL、より具体的には500~80,000ng/mL、より具体的には3,000~40,000ng/mLのCmax値を提供することができる。
【0106】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、上述の第1の期間について、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の投与は、3,000~5,000ng/mLのCmax値を提供することができる。
【0107】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、上述の第1の期間について、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の投与は、6,000~9,000ng/mLのCmax値を提供することができる。
【0108】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、上述の第1の期間について、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の投与は、12,000~16,000ng/mLのCmax値を提供することができる。
【0109】
別の実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、上述の第1の期間について、先に定義した式(I)の化合物又は組成物の投与は、30,000~36,000ng/mLのCmax値を提供することができる。
【0110】
血漿濃度AUC及びCmaxは、例えば、自動又は手動免疫測定法、液体クロマトグラフィ又は液体クロマトグラフィ質量分析などの当技術分野で周知の標準的な分析方法によって決定することができる。
【0111】
神経疾患又は状態
【0112】
本発明は、ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経疾患又は状態、例えばMS、NMO、横断性脊髄炎、再発性視神経炎又は中枢神経系に影響を及ぼす全身性(リウマチ性)疾患を治療するための新しい治療レジメンに関する。これらの神経疾患としては、炎症性疾患、視神経症などの非炎症性神経疾患、及び神経変性疾患が挙げられる。
【0113】
中枢神経系の炎症性疾患は、免疫系の活性化によって引き起こされ、中枢神経系を損傷する炎症性浸潤物又は免疫分子の存在を特徴とする疾患である。そのような損傷としては、ニューロン及び軸索喪失、並びにミエリン及び乏突起膠細胞及びにそれらの前駆体の喪失が含まれる。ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす炎症性神経疾患又は状態の非限定的な例としては、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、バロ病、シルダー病、横断性脊髄炎、急性出血性白質脳炎、及びマールブルク病などの脱髄性疾患が挙げられる。
【0114】
視神経症は、損傷が視神経に特異的に生じ、視力障害をもたらす疾患である。視神経症の非限定的な例としては、緑内障、前虚血性視神経症、及び視神経炎、遺伝性視神経症、例えばレーバー病及び優性視萎縮症、中毒性視神経症、外傷性視神経症、及び腫瘍関連視神経症が挙げられる。
【0115】
神経変性疾患は、ニューロン及び軸索の進行性喪失を特徴とし、低レベルの反応性炎症を伴う。そのような喪失は、タンパク質沈着及び栄養因子支持体の喪失などの異なる毒性機構によって生じる。神経変性疾患の例としては、とりわけ、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、レビー小体病、遺伝性運動失調、緑内障が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
一実施形態では、場合により全ての説明を通して上記又は以下に記載される様々な実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせて、ニューロン、軸索又はミエリンの破壊又は変性をもたらす神経疾患又は状態は、脱髄疾患、視神経症及び神経変性疾患からなる群から選択される。より具体的には、神経疾患又は状態は、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、バロ病、シルダー病、横断性脊髄炎、急性出血性白質脳炎、マールブルク病、緑内障、前部虚血性視神経症、レーバー病、優性視萎縮症、中毒性視神経症、外傷性視神経症、腫瘍関連視神経症、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、レビー小体病、遺伝性運動失調、及びそれらの組合せからなる群から選択される。更により具体的には、神経疾患又は状態は、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、緑内障、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0117】
全体を通して、説明及び特許請求の範囲の単語「含む」及びその変形は、他の技術的特徴、添加物、構成要素、又はステップを除外することを意図するものではない。更に、単語「含む」は、「からなる」の場合を包含する。本発明の追加の目的、利点、及び特徴は、説明を検討することで当業者に明らかになるか、又は本発明の実施によって学ぶことができる。以下の実施例及び図面は、例示として提供されており、本発明を限定することを意図するものではない。更に、本発明は、本明細書に記載の特定の好ましい実施形態の全ての可能な組合せをカバーする。
【実施例】
【0118】
スプラーグドーリーラットのリゾレシチン誘発急性視神経炎モデルにおけるいくつかの用量でのBN201の評価
【0119】
1.試験の目的
【0120】
試験は2つのブロックで実施した。
【0121】
ブロック1の目的は、SDラットでのリゾレシチン誘発視神経炎における、様々な用量(10mg/Kg、25mg/Kg、70mg/Kg)で腹腔内投与したBN201、及び25mg/Kgで静脈内投与したBN201の有効性を決定することであった(7日間試験)。
【0122】
ブロック2の目的は、SDラットでのリゾレシチン誘発視神経炎の長期モデルにおける、BN201の有効性を決定することであった(14及び28日間試験)。
【0123】
2.一般プロトコル
【0124】
・動物(雄スプラーグドーリーラット、年齢:12~13週、試験開始時の体重範囲:306.8~385.2g)の受領及び少なくとも1週間の期間にわたる動物の順応
・0日目:視神経にリゾレシチンを投与
・試験化合物(BN201)の様々な用量(10mg/Kg、25mg/Kg、70mg/Kg)での毎日(0日目~6日目=合計7用量)の腹腔内(IP)投与及びブロック1についての2時間にわたる静脈内投与(注入25mg/Kg)。
・6日目に、PKのための所定の時点(8~9時点)での血漿についてのブロック1からの血液のサンプリング及び組織病理学的評価のための組織採取(眼及び視神経)。
・LC-MS/MSによるBN201の血漿レベルの決定
・WinNonlin分析によるBN201の薬物動態パラメータの決定
・ブロック2のための試験化合物投与(10及び25mg/KgでIP)1日1回(0日目~6日目=合計7回)、組織病理学的評価のための14及び28日目の組織採取(試験終了時の眼及び視神経の採取)。
【0125】
3.動物の条件付け
【0126】
動物を、22±3℃の温度、50±20%の湿度、それぞれ12時間の明/暗サイクル及び1時間当たり15~20回の新鮮な空気の交換の制御された環境で維持した。動物を個別の換気ケージ(IVC)に群ごとに(ケージ当たり3匹の動物)収容し、オートクレーブしたトウモロコシ穂軸を床敷材料として使用した。動物には、認定された照射実験用げっ歯類飼料を自由に与えた。
【0127】
4.試験実施計画
【0128】
動物を以下のスキームに従って異なる群に分けた。
【数1】
【0129】
5.実験群
【0130】
【0131】
【0132】
6.試験項目の調製
【0133】
BN201を室温で生理溶液(NaCl0.9%)に溶解した。ストック溶液を100mg/mLの強度で調製し、複数のアリコートで20℃で保存した。実験の当日に、上記溶液を解凍し、更なる希釈のために十分な量を抜き取った。第3~5群用の5mg/mlの希釈標準溶液を、原液を生理食塩水で希釈することによって調製した。IV注入のために、2mg/mlを毎日調製した(0日目~6日目)。
【0134】
7.疾患誘導手順
【0135】
動物を麻酔し、剃毛した皮膚を75%エタノールで消毒した。眼の眼窩上の皮膚に1cmの切開を行った。手術顕微鏡下で3mmの視神経を露出させるために、涙腺及び外眼筋を切除した。視神経周囲の硬膜及びくも膜を縦方向に開いた。微量注入部位を示すために、少量の色素を硬膜上に置いた。これは、組織学の焦点病変を識別するために行われる。微小注入は、ハミルトンシリンジに取り付けられたガラスマイクロピペットを用いて行った。ピペットを眼球の2mm後方の可能な限り表面の視神経に挿入し、0.8μLの1%リゾレシチン(0.02%エバンスブルーを含む)を約30秒かけてゆっくりと神経に加圧注入した。偽対照ラット(疾患を有さない動物)に、リゾレシチンを含まない0.8μL生理食塩水中0.02%エバンスブルーを注入した。注入後、皮膚切開部を縫合し、感染を防ぐために抗生物質溶液を投与した。
【0136】
8.処置手順
【0137】
・1群及び2群はそれぞれ偽対照及び病理学的対照として機能し、生理食塩水のみを投与した
・試験化合物を、各群においてIP又はIV注入によって様々な用量(上述のように)で1回送達した。第1の投与量をリゾレシチン注射の1時間後に投与し、実験終了まで1日1回繰り返した。
・6日目に、薬物濃度測定用試験品の投与後の各時点で採血した。
・第3~5群(IP群):投与前、0.25、0.5、1、4、8時間、12時間及び24時間(8時点)
・第6群(IV注入群):投与前、次いで注入後次の時間:0時間(注入終了)、0.25時間、0.5時間、1時間、4時間、8時間、12時間及び24時間(9時点)
・K2EDTA採血管中の全ての時点について、1時点当たり約200μLの血液を頸静脈から採取し、30分以内に血漿が分離するまで4℃で保存した。血漿分離後、全ての時点が完了するまで、全ての血漿試料を2つのアリコートで-80℃で保存した。更に、血漿試料の1つのアリコートを薬物濃度分析のためにDMG/KGに一緒に提出した。
【0138】
9.観察及び読み出し
【0139】
9.1 体重
【0140】
体重測定を0日目から7日目まで毎日朝に行った。全ての動物を臨床徴候について定期的に観察した。
【0141】
9.2 組織病理学
【0142】
・7日目に動物をCO2で安楽死させ、生理食塩水及び4%パラホルムアルデヒドを経心臓的に灌流した。視神経(眼球から視交差まで)及び眼を取り出し、1%パラホルムアルデヒド中で一晩固定した。全ての動物の眼をデビットソン固定液に回収した。
・全ての組織を自動組織処理装置で処理し、パラフィンに包埋した。回転式ミクロトームを使用して、注入部位(色素の場所)に5マイクロメートル厚(5μm)の横断面を作製した。
・各視神経の連続切片を得た(4~6切片)。スライドをH&E、LFB及びBielschowsky銀含浸染色(BSS)で染色して、視神経の炎症、脱髄及び軸索病変を評価した。網膜(眼)切片をH&E染色で染色し、網膜神経節細胞(RGC)計数に使用した。
【0143】
10.スコアリング基準
【0144】
・脱髄領域を(ルクソールファストブルー染色切片で)測定し、観察スコアリングを以下の基準を用いて行った。
0.5 血管周囲又は軟膜下の脱髄の痕跡
1 顕著な血管周囲又は軟膜下の脱髄
2 集密的な血管周囲又は軟膜下の脱髄
3 大量の集密的な脱髄(脊髄の半分)
4 広範な脱髄
【0145】
・軸索喪失の重症度(銀含浸染色切片で)を評価するために使用される0~4の観察スコアリング尺度は以下の通りである。
0 銀含浸による軸索の正常染色
0.5 軸索の血管周囲又は軟膜下喪失の痕跡
1 軸索の顕著な血管周囲又は軟膜下喪失の痕跡
2 軸索の集密的な血管周囲又は軟膜下喪失
3 大量の集密的な軸索喪失
4 広範囲の軸索喪失
【0146】
・炎症の評価に使用したスコアリング基準(H&E切片):
0 正常:浸潤なし
0.5 血管周囲又は軟膜下浸潤の痕跡
1 顕著な血管周囲又は軟膜下浸潤の痕跡
2 集密的な血管周囲又は軟膜下浸潤の痕跡
3 大量の集密的な浸透
4 広範囲の浸潤
【0147】
Nikon Eclipse 80i顕微鏡に取り付けられたLeica DFC425Cカメラを使用して、代表的な写真(10倍及び20倍)を撮影した。
網膜神経節細胞(RGC)数を、眼のH&E染色切片(動物1匹当たり6高倍率視野[40x])において実施して、処置群間の神経節細胞密度を比較した。
【0148】
11.生物学的分析手順
【0149】
11.1 試料調製
【0150】
試験試料を、冷アセトニトリルを使用するタンパク質沈殿法によって処理した。簡単に記載すると、10μLの血漿を、内部標準として100ng/mLのベラパミルを含有する200μLのアセトニトリルと混合した。内容物をボルテックスして確実に混合し、沈殿したタンパク質を4000rpmで15分間、4℃で遠心分離することによって除去した。上清を回収し、生物学的分析に供した。
【0151】
【0152】
12.結果
【0153】
12.1 体重(ブロック1及び2)
【0154】
生存期間中のそれぞれの試験日にt検定によって比較した場合、偽対照群と病理学的対照群との間でラットの体重に有意な変化はなかった。BN201による処置は、病理学的対照群と比較した場合、体重を有意に変化させなかった。
【0155】
12.2 薬物動態パラメータ(ブロック1)
【0156】
IP及びIV群の薬物動態パラメータを以下の表1及び2並びに
図1及び2に示す。
【表1】
【0157】
【0158】
12.3 組織病理学的評価
【0159】
12.3.1 網膜神経節細胞数(RGC)
【0160】
(6高倍率視野)についての眼におけるRCG数の結果を
図3(ブロック1)及び
図6(ブロック2)に示す。
【0161】
RGC(ブロック1)
【0162】
病理学的対照群は、偽対照群(94±3.6)と比較して、6つのランダムな高倍率において有意に低いRGC数(73.6±2.2)を示した。BN201での処置は、RGC数の増加傾向を示した。IV注入群(25mg/Kg)は、病理学的対照と比較してRGC数の統計学的に有意な改善を示した。25及び70mg/KgでのBN201のIP群もRGC数の改善を示し、それぞれ網膜神経節細胞喪失に対して48%及び69%の保護を示した。
【0163】
RGC(ブロック2)
【0164】
病理学的対照群(14日及び28日群)は、6つのランダムな高倍率において有意に低いRGC数を示した。BN201での処置は、28日目に改善を示した(25mg/Kg群)。
【0165】
12.3.2 脱髄(視神経のルクソールファストブルー染色切片における)
【0166】
脱髄スコアの結果を
図4(ブロック1)及び
図7(ブロック2)に示す。脱髄を評価するために14及び28日目に評価したLFBで染色した視神経の組織病理学的画像を、それぞれ
図9及び10に示す。
【0167】
脱髄(ブロック1)
【0168】
病理学的対照群は、1.6±0.4の平均脱髄スコアを示した。10、25及び70mg/KgでのBN201のIPによる処置は、脱髄スコアの減少傾向を示し、それぞれ13%、15%及び44%の保護を示した。25mg/KgのIV注入群は脱髄に対して22%の保護を示した
【0169】
脱髄(ブロック2)
【0170】
14及び28日目に病理学的対照群で中程度の脱髄が認められた。
【0171】
12.3.3 軸索喪失(視神経のBSS染色切片における)
【0172】
軸索喪失スコア(銀含浸切片、スケール:0~4)を、ブロック1については
図5に示し、ブロック2については
図8に示す。軸索密度を評価するために14及び28日目に評価したBSSで染色した視神経の組織病理学的画像を、それぞれ
図11及び12に示す。
【0173】
軸索喪失(ブロック1)
【0174】
病理学的対照群は、軸索喪失スコアの有意な増加を示した(2.4±0.3)(BSS染色された視神経切片で観察された)。10、25及び70mg/KgでのBN201のIPによる処理は、スコアの減少を示した(36~39%の保護)。IV注入は、軸索喪失に対する有意な保護(62%)をもたらした。
【0175】
軸索喪失(ブロック2)
【0176】
病理学的対照群では、14日目及び28日目に進行性の軸索喪失が観察された(14日目及び28日目にそれぞれ1.9及び2.2のスコア)。10及び25mg/KgでのBN201は、28日目に軸索喪失の有意な減少を示した。
【0177】
13.結論
【0178】
視神経炎及び網膜神経節細胞喪失の有意な誘導が病理学的対照群において観察された(7日目(ブロック1)、14及び28日目(ブロック2))。視神経炎は、病理学的対照群において、視神経における炎症細胞浸潤(H&E染色で観察される)、脱髄(LFB染色)及び軸索喪失(BSS染色)の増加、並びに眼の網膜における網膜神経節細胞数の有意な減少を特徴とした。BN201処置は、網膜神経節細胞の有意な改善並びに炎症、軸索喪失及び脱髄の減少をもたらした。25mg/KgでのBN201の毎日のIV投与(2時間の注入)は、10、25及び70mg/KgでのBN201のIP投与と比較した場合、視神経炎に対する優れた保護をもたらした。
【国際調査報告】