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特表2023-518162デシタビンとセダズリジンとの組み合わせの固形経口剤形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】デシタビンとセダズリジンとの組み合わせの固形経口剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7068 20060101AFI20230421BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230421BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230421BHJP
   A61K 9/56 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
A61K31/7068
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/706
A61P43/00 121
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/06
A61K47/20
A61K47/34
A61K9/56
A61K9/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550210
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 US2021019310
(87)【国際公開番号】W WO2021173598
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/981,304
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】オガネシアン,アラム
(72)【発明者】
【氏名】デイバー,ニップン
(72)【発明者】
【氏名】コウ,ジム ワイチャー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA42
4C076AA53
4C076AA60
4C076BB01
4C076CC26
4C076CC27
4C076DD05C
4C076DD24
4C076DD26
4C076DD28C
4C076DD29
4C076DD34C
4C076DD38
4C076DD41C
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE16B
4C076EE23C
4C076EE31
4C076EE32B
4C076EE36
4C076EE38B
4C076EE42
4C076EE47B
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF09
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086EA17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明の実施態様は、固体経口剤形であって、ここで、該固体経口剤形は、対象への毎日の投与により、デシタビンの5日間の曲線化面積(AUC)を有するデシタビンの血漿レベルを提供し、該曲線化面積(AUC)は、1時間(1h)の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内用量についての5日間の曲線下面積と同等である上記の固体経口剤形を提供する。本発明の実施態様に従うと、固形経口剤形であって、ここで、該固体経口剤形は、対象への毎日の投与により、1時間(1h)の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内用量についての薬力学的効果と同等である薬力学的効果を提供する上記の固体経口剤形がまた提供される。本発明の実施態様に従う固体経口剤形を使用する処置の方法がまた提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セダズリジン及びデシタビンを含む固体経口剤形であって、ここで、該固体経口剤形は、ヒトへの毎日の投与により、デシタビンの5日間の曲線化面積(AUC)を有するデシタビンの血漿レベルを提供し、該曲線化面積(AUC)は、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内用量についての5日間の曲線下面積と同等である、前記固体経口剤形。
【請求項2】
ヒトへの毎日の投与により、2日目対1日目におけるデシタビンについてのAUCの比が、約1.5:1~約2:1である、請求項1に記載の固体経口剤形。
【請求項3】
前記固体経口剤形が、ヒトへの毎日の投与により、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内用量についての薬力学的効果と同等である薬力学的効果を提供する、請求項1又は2に記載の固体経口剤形。
【請求項4】
前記薬力学的効果がDNA脱メチル化である、請求項3に記載の固体経口剤形。
【請求項5】
前記固体経口剤形が錠剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項6】
前記固体経口剤形がカプセルである、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項7】
約30:100~約40:100の重量比でデシタビンとセダズリジンとを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項8】
約35:100の重量比でデシタビンとセダズリジンとを含む、請求項7に記載の固体経口剤形。
【請求項9】
約100mgのセダズリジンを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項10】
約35mgのデシタビンを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項11】
希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤又は滑剤のうちの1以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項12】
希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤及び滑剤を更に含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項13】
前記希釈剤が、乳糖、ラクトース一水和物、セルロース、ソルビトール、リン酸水素カルシウム脱水物及び硫酸カルシウム脱水物のうちの少なくとも1つを含む、請求項11又は12に記載の固体経口剤形。
【請求項14】
前記結合剤が、ゼラチン、グルコース、乳糖、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、及びアカシアのうちの少なくとも1つを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項15】
前記崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、及びデンプンのうちの少なくとも1つを含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項16】
前記流動化剤が、コロイド状二酸化ケイ素、トウモロコシ澱粉及びタルクのうちの少なくとも1つを含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項17】
前記滑剤が、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、パラフィン、ラウリル硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム及びポリエチレングリコールのうちの少なくとも1つを含む、請求項11~16のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項18】
前記固体経口剤形が、ラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項19】
コーティングをさらに含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の固体経口剤形。
【請求項20】
前記コーティングが、カラーコーティングである、請求項19に記載の固体経口剤形。
【請求項21】
デシタビンで処置可能な障害を処置することを必要とする対象において、該障害を処置する方法であって、請求項1~20のいずれか1項に記載の固体経口剤形を前記対象に投与し、それによって前記障害を処置することを含む前記方法。
【請求項22】
デシタビンで処置可能な障害が過剰増殖性疾患である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
デシタビンで処置可能な障害が癌である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記癌が、血液癌及び固形癌から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記血液癌が、骨髄異形成症候群(MDS)、白血病及びリンパ腫から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記白血病が、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患又は慢性骨髄単球性白血病である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記リンパ腫が、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫又はT細胞リンパ腫である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記髄異形成症候群(MDS)が、低リスクMDS(例えば、IPSS低及び/又はIPSS中間1)である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記固形癌が、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌、乳癌、神経外胚葉性腫瘍、及び肉腫から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記固体経口剤形が、28日周期当たり約1日~約28日(例えば、28日周期当たり、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、又は28日)投与される、請求項21~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記固体経口剤形が、28日周期で連続する日数(例えば、3日間のMTW、TWTh、WThF等;5日間のMTWThF等;7日間のMTWThFSS);14日(例えば、2週間連続);21日(例えば、3週間連続)で投与される、請求項21~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記固体経口剤形が、28日周期で連続しない日数(例えば、3日間のMWF;10日間(5日間の投与、2日間の非投与、5日間の投与);14日間(7日間の投与、7日間の非投与、7日間の投与)で投与される、請求項21~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記固体経口剤形が、28日周期当たり1週間投与される、請求項21~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記固体経口剤形が、28日周期当たり2週間(例えば連続、例えば非連続)で投与される、請求項21~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記固体経口剤形が、28日周期当たり3週間(例えば連続、例えば非連続)で投与される、請求項21~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記固体経口剤形が、28日周期当たり4週間で投与される、請求項21~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
DNAメチル化を減少させることを必要とする対象において該DNAメチル化を減少させる方法であって、請求項1~20のいずれか1項に記載の固体経口剤形を前記対象に投与し、それによって前記対象においてDNAメチル化を減少させる前記方法。
【請求項38】
デシタビンの分解を阻害することを必要とする対象において該分解を阻害する方法であって、請求項1~20のいずれか1項に記載の固体経口剤形を前記対象に投与し、それによって前記対象においてデシタビンの分解を阻害する前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の宣言
本特許出願は、2020年2月25日に出願された米国仮出願番号62/981,304の利益を主張し、その内容全体が参照によって本明細書内に取り込まれている。
【0002】
本発明は、セダズリジン及びデシタビンを含む固形経口剤形に関する。特に、本発明は、セダズリジンとデシタビンの固定された用量の組み合わせを含む固形経口剤形であって、静脈内のデシタビンで得られる薬物動態学的効果、薬力学的効果又はそれらの組み合わせと同等の薬物動態学的効果、薬力学的効果又はそれらの組み合わせを提供する上記固形経口剤形に関する。
【背景技術】
【0003】
酵素アデノシンデアミナーゼ(ADA,EC 3.5.4.4)及びシチジンデアミナーゼ(CDA,EC 3.5.4.5)は、ヒト及び他の生物において、それぞれ天然のアミノプリン及びアミノピリミジンヌクレオシドを脱アミノ化するように機能する。それらはまた、活性なヌクレオシドベースの薬剤を不活性な代謝物に転化しうる。CDAは、ピリミジン・サルベージ経路の構成要素である。それは、加水分解脱アミノ化により、シチジン及びデオキシシチジンをそれぞれウリジン及びデオキシウリジンに転化する(Arch.Biochem.Biophys.1991,290,285-292;Methods Enzymol.1978,51,401-407;Biochem.J.1967,104,7P)。それはまた、臨床的に有用な薬剤である多くの合成シトシン類似体を脱アミノ化する(Cancer Chemother.Pharmacol.1998,42,373-378;Cancer Res.1989,49,3015-3019;Antiviral Chem.Chemother.1990,1,255-262)。シトシン化合物のウリジン誘導体への転化は、通常、治療活性の喪失又は副作用の追加を与える。シトシン類似体薬剤に対する耐性を獲得した癌はしばしばCDAを過剰発現することがまた示されている(Leuk.Res.1990,14,751-754)。高レベルのCDAを発現する白血病細胞は、シトシン代謝拮抗物質に対する耐性を示し、それによってそのような治療薬の抗腫瘍活性を制限する可能性がある(Biochem.Pharmacol.1993,45,1857-1861)。CDAは腸及び肝臓において高度に発現しており、従って、治療用シチジン類似体のバイオアベイラビリティ(bioavailability)に影響を与える可能性がある。
【0004】
シチジン類似体であるデシタビン(5-アザ-2’-デオキシシチジン)は、骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndromes)の処置の為の抗腫瘍剤及び低メチル化剤(HMA:hypomethylating agent)であり、同じように、急性骨髄性白血病及び慢性骨髄性白血病の処置の為に有用でありうる可能性がある。デシタビンは、CDAによる急速な不活性化の為に、経口投与された場合に、容易に生物学的に利用可能でない。
【0005】
【化1】
【0006】
下記に示すセダズリジン((4R)-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-3,4,5,6-テトラヒドロウリジン;E7727としてまた知られている)は、最近開発されたCDA阻害剤である。セダズリジン、並びにその製造方法及び/又はその使用方法は、米国特許第8,268,800号及び米国特許第9,834,576号にさらに開示されており、これらの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0007】
【化2】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
デシタビンは経口投与されるとバイオアベイラビリティが不足する故に、現在、デシタビンを使用する処置法は、数か月又は数年にわたって毎日5~7日間、非経口注射を行う必要がある。経口で生物学的に利用可能なデシタビン剤形は、クリニック訪問の為の長距離移動を伴うことがある、毎月、複数日の静脈内注入又は皮下注射の負担を軽減するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、デシタビン及びセダズリジンの固形経口剤形の開発に部分的に基づいており、ここで、該固体経口剤形は、対象への毎日の投与により、デシタビンの5日間の曲線化面積(AUC:area under the curve)を有するデシタビンの血漿レベルを提供し、該曲線化面積(AUC)は、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内(IV)用量についての5日間のAUCと同等である。幾つかの実施態様において、そのような固体経口剤形の対象への毎日の投与により、2日目対1日目のデシタビンのAUCの比は、約1.5:1~約2:1である。
【0010】
本発明の他の観点は、デシタビン及びセダズリジンを含む固形経口剤形であって、ここで、該固体経口剤形は、対象への毎日の投与により、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内用量についての薬力学的効果と同等である薬力学的効果を提供する上記の固体経口剤形に関する。特定の実施態様に従うと、該薬力学的効果はDNA脱メチル化である。
【0011】
本発明の追加の観点は、障害を処置することを必要とする対象において、該障害を処置する方法であって、本発明の実施態様に従う固体経口剤形を該対象に投与することを含み、それによって該対象における癌を処置する上記の方法に関する。幾つかの実施態様において、該障害が癌である。
【0012】
本発明の更なる観点は、デシタビンの分解を阻害することを必要とする対象において該分解を阻害する方法であって、本発明の実施態様に従う固体経口剤形を該対象に投与することを含み、それによって前記対象においてデシタビンの分解を阻害する上記の方法に関する。
【0013】
本発明の他の観点は、DNAメチル化(例えば、LINE-1メチル化)を必要とする対象において該DNAメチル化を減少させる方法であって、本発明の実施態様に従う固体経口剤形を該対象に投与することを含み、それによって前記対象においてDNAメチル化を減少させる上記の方法に関する。
【0014】
本発明の追加の観点は、障害を処置する方法、デシタビンの分解を阻害する方法、及びDNAメチル化((例えば、LINE-1メチル化)を減少させる方法における、本発明の実施態様に従う固形経口剤形の使用方法に関する。
【0015】
本発明のこれら及び他の観点は、下記の本発明の詳細な説明の記載においてより詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、セダズリジン及びデシタビンの推奨用量を確立する為に設計された第1相用量漸増試験(Phase 1 dose escalation study)を説明する図である。
図2図2は、図1に記載された第1相試験におけるいくつかの投薬レジメンの為の、経時(時間)的平均デシタビン濃度(ng/mL)のグラフである。
図3図3は、図1の第1相試験において特定されたセダズリジン及びデシタビンの投与量を確認する為に設計された第2相の無作為化されたクロスオーバー試験を説明するグラフである。
図4図4は、図3に記載されている第2相試験における経口デシタビン/セダズリジンについての及びIVデシタビンについての1、2及び5日目の平均デシタビンAUC0~24(時間・ng/mL)を示す。
図5A図5Aは、図3に記載された第2相試験における、IVデシタビン(2周期)に対するASTX727(1周期)の配列の為の相対的なLINE-1脱メチル化(%)を示す。図5Aは、相対的なLINE-1進行をASTX727コースに提供する。
図5B図5Bは、図3に記載された第2相試験における、IVデシタビン(2周期)に対するASTX727(1周期)の配列についての相対的なLINE-1脱メチル化(%)を示す。図5Bは、相対的なLINE-1進行をIVデシタビン・コースに提供する。
図6A図6Aは、図3に記載された第2相試験における、IVデシタビン(1周期)からASTX727(2周期)までの配列についての相対的なLINE-1脱メチル化(%)を示す。図6Aは、相対的なLINE-1進行をIVデシタビン・コースに提供する。
図6B図6Bは、図3に記載された第2相試験における、IVデシタビン(1周期)からASTX727(2周期)までの配列についての相対的なLINE-1脱メチル化(%)を示す。図6Bは、相対的なLINE-1進行をASTX727コースに提供する。
図7図7は、IVデシタビンとの同等性、ASTX727経口剤形の為の、有効性、安全性及び最大LINE-1脱メチル化を確立する為に設計された第3相の無作為化されたクロスオーバー試験を説明するグラフである。
図8図8は、図7において記載された第3相試験における経口ASTX727及びIVデシタビンの為のPK分析を示す。図8は、1日目、2日目及び5日目での経口ASTX727についての血漿デシタビンAUC0~24(時間・ng/mL)、並びに1日目及び5日目におけるIVデシタビンについてのAUC0~24(時間・ng/mL)を示す。
図9図9は、図7に記載されているように、1周期と2周期との間の経口ASTX727及びIVデシタビンの両方の最大LINE-1脱メチル化LSM(95% CI)を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明が、以下に、より詳細に説明される。この説明は、本発明が実装されうる全ての異なる方法の詳細なカタログ、又は本発明に追加されうる全ての特徴の詳細なカタログが意図されるものでない。例えば、一つの実施態様に関して示された特徴は他の実施態様に取り込まれてもよく、及び特定の実施形態に関して示された特徴はその実施態様から削除されてもよい。加えて、本明細書において提案される様々な実施態様に対する多数の変形及び追加が、本発明から逸脱しない本開示に照らして、当業者には明らかであろう。従って、以下の明細書は、本発明の幾つかの特定の実施態様を説明することが意図されており、その全ての置換、組み合わせ及び変形を網羅的に指定することが意図されていない。
【0018】
文脈が別段の指示をしていない限り、本明細書に記載された本発明の様々な特徴が任意の組み合わせにおいて使用されることができることが特に意図されている。その上、本発明はまた、本発明の幾つかの実施態様において、本明細書に記載された任意の特徴又は特徴の組み合わせが除外され又は省略されることができることを企図する。例えば、複合体が成分A、B及びCを含むことと本明細書が記載している場合に、A、B若しくはCのいずれか、又はそれらの組み合わせが特に意図されており、単独で又は任意の組み合わせで省略され又は放棄されることができることが特に意図されている。
【0019】
別段の定義がされていない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における本発明の詳細な説明において使用される用語は、特定の実施態様を説明することのみを目的としており、本発明を限定することが意図されものでない。
【0020】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、ヌクレオチド配列、アミノ酸配列、及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれている。
【0021】
定義
【0022】
本発明の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲で使用されている場合、単数形「1つ」(a)、「1つ」(an)及び「該」(the)は、文脈が他のことを明らかに示さない限り、複数形を同様に含むことが意図されている。
【0023】
本明細書において使用される場合、「及び/又は」は、関連するリストされた項目の1以上のありとあらゆる可能な組み合わせ、並びに代替(「又は」)で解釈される場合の組み合わせの欠如を云い、且つそれらを包含する。
【0024】
その上、本発明はまた、本発明の幾つかの実施態様において、本明細書に記載された任意の特徴又は特徴の組み合わせが除外されることができること又は省略されることができることを企図する。
【0025】
その上、本明細書において使用される場合、語「約」が、測定可能な値、例えば本発明の化合物又は薬剤の量、用量、時間、温度等、に言及される場合に、指定された量の、±10%、±5%、±1%、±0.5%又はさらには±0.1%の変動を包含することが意味されている。
【0026】
本明細書において使用される場合、移行句「本質的に~からなる」は、特許請求される本発明の基本的且つ新規の1以上の特徴に実質的に影響を及ぼさない記載された物質又は工程を包含すると解釈されるべきである。従って、本明細書において使用される語「本質的にからなる」は、「含む」と同等であると解釈されるべきでない。
【0027】
「有効量」とは、所望の効果(例えば、CDA基体薬剤の半減期、バイオアベイラビリティ、又は有効性を高めること、対象において癌を処置すること、対象におけるDNAメチル化を減少させること、対象におけるシチジンデアミナーゼを阻害すること、又はシチジンデアミナーゼによるCDA基体薬剤の分解を阻害すること)を生み出す為に必要な量を云う。
【0028】
「AUC」は、活性剤、例えばデシタビン、の濃度時間曲線下面積を云う。
【0029】
「半減期」は、対象における化合物の濃度又は量が所与の濃度又は量の正確に半分に減少する為に必要とされる期間を云う。
【0030】
「医薬的に許容される」は、薬理学的観点及び/又は毒物学的観点から患者に、及び/又は組成、製剤、安定性、患者の受け入れ、バイオアベイラビリティ、及び他の成分との適合性に関して物理的観点及び/又は化学的観点から製薬化学者に、許容される特性及び/又は物質を云う。
【0031】
「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の酸塩又は塩基塩を云い、該塩は、所望の薬理学的活性を有し、且つ生物学的若しくはその他の点で望ましくないものでない。該塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸酪酸、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミスル酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタン硫酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩を包含するが、これらに限定されない酸で形成されることができる。塩基塩の例は、アンモニウム塩;アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩;有機塩基との塩、例えば、ジシクロヘキシルアミン塩、N-メチル-D-グルカミン、及びアミノ酸、例えばアルギニン及びリジン、との塩、を包含するが、これらに限定されない。幾つかの実施態様において、塩基性窒素含有基は、ハロゲン化低級アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物;硫酸ジアルキル、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジブチル硫酸、ジアミル硫酸;長鎖ハロゲン化物、例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル、ステアリルの塩化物、臭化物及びヨウ化物;並びに、ハロゲン化アラルキル、例えば臭化フェネチル、を包含する薬剤で四級化されることができる。
【0032】
「単位剤形」は、ヒト又は他の動物対象の為の単位用量として適した物理的に別個の単位を云う。各単位剤形は、所望の効果をもたらすように計算された所定量の活性物質(例えば、本発明の化合物又は組成物、CDA基体薬剤及び/又は他の治療剤)を含みうる。
【0033】
「任意の」又は「任意的な」は、その後に記述されたイベント又は状況が生じてもよく又は生じなくてもよいことを意味する。例えば、「置換されていてもよい」アルキルは、置換されていないアルキルと置換されているアルキルとの両方を包含する。
【0034】
語「高める」又は「増加させる」は、少なくとも約1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、12倍、15倍等の特定パラメータにおける増加を云う。
【0035】
本明細書において使用される場合、語「阻害する」若しくは「低減する」又はそれらの文法的変形は、少なくとも約15%以上、約25%以上、約35%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約75%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上の特定のレベル又は活性における減少(decrease)又は低減(diminishment)を云う。特定の実施態様に従うと、阻害又は低減は、検出可能な活性をほとんど又は本質的に全くもたらさない(せいぜい、わずかな量、例えば、約10%未満又は5%未満でさえある)。
【0036】
「対象」は、イン・ビトロ(in vitro)若しくは(in vivo)イン・ビボにおける細胞若しくは組織、又は動物若しくはヒトを云う。動物又はヒト対象はまた、「患者」として言及されうる。
【0037】
「動物」は、感覚及び随意運動の力を持ち、その存在の為に酸素及び有機食物を必要とするところの生きている有機体を云う。
【0038】
「哺乳類」は、毛又は毛皮を持つ温血脊椎動物を云う。例は、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、ネズミ、イヌ、又はネコの種のメンバーを包含するが、これらに限定されない。
【0039】
語「処置する」(treat)、「処置している」(treating)、又は「の処置」(treatment of)(又はそれらの文法的に同等の語)は、対象の状態の重症度が軽減されるか、又は少なくとも部分的に改善されること(improved)又は和らげること(ameliorated)、及び/又は何らかの軽減、緩和、又は少なくとも1つの臨床症状の減少が達成されることが意味される。疾患、障害又は状態に関する「処置」は、下記を言及しうる:(i)疾病、障害又は状態を阻害する、例えば、その発症を阻止する;及び/又は(ii)疾病、障害又は状態を緩和する、例えば、臨床症状の退行を引き起こす。
【0040】
疾病、障害又は状態に関して「予防する」(Preventing)とは、疾病、障害又は状態を予防すること、例えば、疾病、障害又は状態の臨床症状を発症させないことを云う。本明細書において使用される場合、用語「予防する」(prevent)、「予防する」(prevents)、又は「予防」(prevention)(及びそれらの文法上の等価物)はまた、疾病若しくは障害の発症の遅延、又は疾病若しくは障害の発症時の症状の軽減を云いうる。これらの語は、疾病の完全な廃止を意味するものではなく、状態の発生率を低下させる、又は状態の発症及び/又は進行(progression)を遅らせるあらゆるタイプの予防的治療を包含する。
【0041】
本発明の化合物及び/又は組成物の対象への「投与すること」又は「投与」という語は、化合物を対象に導入又は送達してその意図された機能を実行する経路を含む。本発明の固体経口剤形については、投与方法は経口であることが意図されている。該固体経口剤形の薬物動態及び薬力学は、典型的には注入によって提供されるデシタビンの静脈内投与によって得られるものと比較される。該注入が1時間にわたって投与されると言われる場合、規定濃度のデシタビンを含む溶液がその期間にわたって投与されることを意味することが意図されている。投与は、自己管理と他者による管理とを包含する。
【0042】
「癌」は、制御不能な方法で増殖し、場合によっては転移する(広がる)傾向がある細胞の異常増殖を云う。特定の癌は、米国出願公開第2006/0014949号明細書において特定されている癌及び下記を包含するが、これらに限定されない:心臓:肉腫(例えば、血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫等)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫;肺:気管支原性癌(例えば、扁平上皮癌、未分化小細胞癌、未分化大細胞癌、腺癌等)、肺胞癌(例えば、細気管支癌等)、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(例えば、扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫等)、胃(例えば、癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫など)、膵臓(例えば、管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ等)、小腸(例えば、腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫等)、大腸(例えば、腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫等);泌尿生殖器:腎臓(例えば、腺癌、ウィルムス腫瘍腎芽腫、リンパ腫、白血病等)、膀胱及び尿道(例えば、扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌等)、前立腺(例えば、腺癌、肉腫等)、精巣(例えば、セミノーマ、奇形腫、胎児性癌腫、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫等);肝臓:肝癌(例えば、肝細胞癌等)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(例えば、骨肉腫等)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(例えば、細網細胞肉腫等)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫、骨軟骨腫(例えば、骨軟骨性外骨腫等)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨性骨腫、及び巨細胞腫;神経系:頭蓋骨(例えば、骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎等)、髄膜(例えば、髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫等)、脳(例えば、星細胞腫、髄芽腫など)、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形膠芽腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍等)、脊髄(例えば、神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫等);婦人科:子宮(例えば、子宮内膜癌等)、子宮頸部(例えば、子宮頸癌、前腫瘍性子宮頸部異形成等)、卵巣(例えば、卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類癌]、顆粒膜-髄膜細胞腫瘍、セルトリ-ライディッヒ(Sertoli-Leydig)細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫等)、外陰部(例えば、扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫等)、膣(例えば、明細胞癌、扁平上皮癌、ボトロイド肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫)等);血液学:血液(例えば、骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群等)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫;皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、形成異常母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬等;並びに、副腎:神経芽細胞腫。
【0043】
固体経口剤形処方
【0044】
本発明は、デシタビン及びセダズリジンを含む固形経口剤形を提供する。前記固体経口剤形は、ASTX727として言及され、及び骨髄異形成症候群の処置の為にINQOVI(登録商標)として販売されている。以前に、経口用量のデシタビンを投与する前に経口用量のセダズリジンを投与すると、デシタビンの曝露が高められることが示されている。しかしながら、デシタビンのバイオアベイラビリティが低く、静脈内投与に比べて経口投与のバイオアベイラビリティが低下することを考えると、デシタビン及びセダズリジンを含む固形経口剤形は、静脈内デシタビンよりも有意に低いバイオアベイラビリティを有すると予想された。驚くべきことに、本発明の発明者等は対象(例えば、ヒト)への毎日の投与により、デシタビンについての5日間の曲線下面積(AUC)を有するデシタビンの血漿レベルを提供し、該曲線下面積(AUC)は、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内(IV)用量についての5日間の曲線下面積と同等であることを発見した。加えて、本発明の発明者等は、IPSS低(IPSS-low)及び/又はIPSS中間1)(IPSS-intermediate-1)骨髄異形成症候群(MDS)癌患者において、IVデシタビンで得られたものと比較して、同等又は改善されたエピジェネティック効果(例えば、LINE-1脱メチル化、例えば、%F細胞増殖)及び/又は減少した骨髄抑制効果(例えば、好中球減少症)を有する、デシタビンとセダズリジンとの組み合わせの固形経口剤形を発見した。本明細書において使用される場合、語「同等の」は、基準値から10%未満、例えば、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満、の値を云う。
【0045】
従って、本発明の実施態様に従うと、デシタビン及びセダズリジンの両方を含む固形経口剤形が提供される。本明細書において使用される場合、語「デシタビン」及び「セダズリジン」は、化合物それ自体およびその医薬的に許容される塩を包含する。本発明の幾つかの実施態様において、デシタビン及びセダズリジンを含む固形経口剤形が提供され、ここで、該固形経口剤形は、対象への毎日の投与により、デシタビンの5日間の曲線化面積(AUC)を有するデシタビンの血漿レベルを提供し、該曲線化面積(AUC)は、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日のIV用量についての5日間の曲線下面積と同等である。本発明の幾つかの実施態様において、対象への毎日の投与時に、2日目対1日目のデシタビンのAUC(AUC0~24)の比は、約1.5:約1~約2:約1、例えば、約1.5:約1~約1.8:約1、例えば、約1.7:約1~約2:約1、例えば、約1.5:約1、約1.6:約1、約1.7:約1、約1.8:約1、約1.9:約1又は約2:約1、である。
【0046】
主要評価項目PK分析セット(Primary Endpoint PK Analysis Set)は、固形剤形の投与後のデシタビンの5日間の累積AUC0~t曝露を計算するために使用されます。下記の仮定が使用される:
1) 該固形剤形の投与2日目に定常状態に達する;
2) 2日目の定常状態の達成に基づくと、2日目と5日目のデシタビンAUC0~tは、固体剤形の推定5日間投与における2日目から5日目までの1日当たりのAUC0~tを表す。
【0047】
それ故に、3日間の連続PKサンプリングからのPKデータを使用して、5日間の経口デシタビンAUC0~t総暴露量を計算する為に、1日目のAUC0~t(最初の固形剤形の用量)に(2日目のAUC0~t+5日目のAUC0~t)×2が加えられる。2日目のAUC0~tが利用できない場合、5日目のAUC0~tに置き換えられる;逆がまた真である。
【0048】
IVデシタビン後の5日間のAUC0~t曝露を計算する為に、5日間の注入では1日目と比較して5日目に蓄積がなかったというDACOGEN(登録商標)処方情報に基づいて、(1日目のAUC0~t+5日目のAUC0~t)/2に5を掛けられる。1日目のAUC0~tが利用できない場合は、5日目のAUC0~tに置き換えられる。逆がまた真である。t=24時間であるので、AUC0~tはAUC0~24であることに留意されたい。
【0049】
本発明の幾つかの実施態様において、固体経口剤形は、対象への毎日の投与により、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内用量についての薬力学的効果と等価である。薬力学的効果のタイプは、現在知られているか、又は後に発見される任意の効果を含む。特定の実施態様に従うと、薬力学的効果は、DNA脱メチル化である。
【0050】
デシタビン及びセダズリジンを含む薬学的組成物(例えば、化合物、組成物、薬剤、及び/又は治療剤)は、固体経口剤形として提供され、これは、該医薬組成物が固体形態であり、経口投与用に処方されることを意味する。任意の適切な固体経口剤形が使用されうる。本発明の実施形態に従う固形経口剤形の例は、錠剤(例えば、頬、舌下及び全身吸収を対象とするもの)、カプレット、ボーラス、粉末、顆粒、舌への適用のためのペースト、カプセル、例えばハードゼラチンカプセル及びソフトゼラチンカプセルを包含する該カプセル、マウススプレー、トローチ、ロゼンジ(lozenges)及びペレットを包含する。医薬組成物は、即時放出、持続放出、又は制御放出の為に処方されうる。
【0051】
本発明の薬学的組成物は、既知の物質及び技術を使用して調製されることができ、それはデシタビン及びセダズリジンを医薬的に許容される添加剤とともに混合及び/又はブレンドすることを含みうるがこれらに限定されない。
【0052】
本発明の幾つかの実施態様において、該固体経口剤形は、約30:約100~約40:約100、例えば約35:約100、の範囲の重量比でデシタビンとセダズリジンとを含む。
【0053】
本発明の幾つかの実施態様において、前記固体経口剤形は、約35mgのデシタビンを含む単位剤形である。本発明の幾つかの実施態様において、前記固体経口剤形は、約100mgのセダズリジンを含む単位剤形である。その上、幾つかの実施態様において、前記固体経口剤形は、約35mgのデシタビン及び約100mgのセダズリジンを含む単位剤形である。本発明の幾つかの実施態様において、該単位剤形は、約35mgのデシタビン及び約100mgのセダズリジン、並びに少なくとも1つの医薬的に許容される添加剤を含む。
【0054】
「医薬的に許容される添加剤」は、対象への治療剤の送達の為の担体、希釈剤、アジュバント、結合剤及び/又はビヒクルとして使用されるか、又はその取り扱い或いは保管特性を改善する為に、若しくは化合物或いは組成物の投与の為の単位剤形への形成を可能にする若しくは容易にする改善の為に、医薬組成物に添加される、それ自体が治療剤でない任意の物質を意味しうる。医薬的に許容される添加剤は、医薬分野で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa(例えば、第2版、2000年)、及びHandbook of Pharmaceutical Excipients,American Pharmaceutical Association,ワシントンD.C.(例えば、1st,2nd及び3rd Eds.,それぞれ1986年,1994年及び2000年)。当業者に知られているであろうとおり、添加剤は様々な機能を提供し得、例えば、湿潤剤、緩衝剤、懸濁剤、潤滑剤、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香味料、及び甘味料として記載されうる。医薬的に許容される添加剤の例は、以下を包含するが、これらに限定されない:(1)糖類、例えば乳糖、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシ澱粉及びジャガイモ澱粉;(3)セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、及びヒドロキシプロピルセルロース;(4)トラガント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)添加剤、例えばカカオバター及び座薬ワックス;(9)油類;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ごま油、オリーブ油、とうもろこし油及び大豆油;(10)グリコール類、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール;例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル類、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;並びに、(22)医薬製剤において使用されるその他の非毒性の適合物質。
【0055】
希釈剤の例は、乳糖、ラクトース一水和物、セルロース、微結晶性セルロース、ソルビトール、リン酸水素カルシウム脱水物、及び硫酸カルシウム脱水物を包含する。結合剤の例は、ゼラチン、グルコース、乳糖、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、及びアカシアを包含する。崩壊剤の例は、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム及びデンプンを包含する。流動化剤の例は、コロイド状二酸化ケイ素、トウモロコシ澱粉、及びタルクを包含する。滑剤の例は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、パラフィン、ラウリル硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、及びポリエチレングリコールを包含する。
【0056】
幾つかの実施態様において、該固体経口剤形は、希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤及び滑剤の1以上を含む。幾つかの実施態様において、該固体経口剤形は、希釈剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤及び滑剤を含む。特定の本発明の実施態様に従うと、該固体経口剤形は、下記の添加剤を含む:希釈剤としてのラクトース一水和物;結合剤としてのヒドロキシプロピルメチルセルロース;崩壊剤としてのクロスカルメロースナトリウム;流動化剤としてのコロイド状二酸化ケイ素;及び、滑剤としてのステアリン酸マグネシウム。本発明の幾つかの実施態様において、そのような成分は錠剤に形成される。幾つかの実施態様において、該錠剤は即時放出錠剤である。加えて、特定の実施態様に従うと、該錠剤は、着色されていてもよいフィルムでコーティングされる。任意の医薬的に許容されるコーティングが使用されうるが、幾つかの実施態様において、該錠剤はOPADRY(登録商標)コーティングでコーティングされる。
【0057】
幾つかの実施態様において、セダズリジンは、約17~約22w/w%、例えば、約17.0、約17.2、約17.4、約17.6、約17.8、約18.0、約18.2、約18.4、約18.6、約18.8、約19.0、約19.2、約19.4、約19.6、約19.8、約20.0、約20.2、約20.4、約20.6、約20.8、約21.0、約21.2、約21.4、約21.6、約21.8、若しくは約22w/w%、又はそれらの中に入る任意の数値、例えば約19.4w/w%の量で固体経口剤形中に存在する。
【0058】
幾つかの実施態様において、デシタビンは、約4~約8w/w%、例えば、約4.0、約4.2、約4.4、約4.6、約4.8、約5.0、約5.2、約5.4、約5.6、約5.8、約6.0、約6.2、約6.4、約6.6、約6.8、約7.0、約7.2、約7.4、約7.6、約7.88、若しくは約8.0w/w%、又はそれらの中に入る任意の数値、例えば約6.8w/w%の量で固体経口剤形中に存在する。
【0059】
幾つかの実施態様において、該希釈剤(例えば、ラクトース一水和物)は、約55~70w/w%、例えば、約55、約56、約57、約58、約59、約60、約61、約62、約63、約64、約65、約66、約67、約68、約69、若しくは約70w/w%、又はそれらの中に入る任意の数値、例えば約62.62w/w%の量で固体経口剤形中に存在する。
【0060】
幾つかの実施態様において、該結合剤(例えば、ヒプロメロース)は、約1~約3w/w%、例えば、約1.0、約1.2、約1.4、約1.6、約1.8、約2.0、約2.2、約2.4、約2.6、約2.8、若しくは約3.0w/w%、又はそれらの中に入る任意の数値、例えば約1.94w/w%の量で固体経口剤形中に存在する。
【0061】
幾つかの実施態様において、該崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)は、約3~約7w/w%、例えば、約3.0、約3.2、約3.4、約3.6、約3.8、約4.0、約4.2、約4.4、約4.6、約4.8、約5.0、約5.2、約5.4、約5.6、約5.8、約6.0、約6.2、約6.4、約6.6、約6.8、若しくは約7.0w/w%、又はそれらの中に入る任意の数値、例えば約4.85w/w%の量で固体経口剤形中に存在する。
【0062】
幾つかの実施態様において、該流動化剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)は、約0.5~2w/w%、例えば、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、若しくは約2.0w/w%、又はそれらの中に入る任意の数値、例えば約0.97w/w%の量で固体経口剤形中に存在する。
【0063】
幾つかの実施態様において、該滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)は、約0.1~2w/w%、例えば、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、若しくは約2.w/w%、又はそれらの中に入る任意の数値、例えば約0.49w/w%の量で固体経口剤形中に存在する。
【0064】
幾つかの実施態様において、該固体経口剤形は、表2に列挙された成分を含む。
【0065】
【表1】
【0066】
幾つかの実施態様において、該固体経口剤形、表2に列挙された成分を含む。
【0067】
【表2】
【0068】
本発明の他の観点は、単位剤形、及び少なくとも1つの単位剤形を含むキットに関し、ここで、単位剤形は、デシタビン及びセダズリジンを含む。幾つかの実施態様において、該キットは、単位剤形を提供し、対象(例えば、ヒト)への毎日の投与により、デシタビンについての5日間の曲線下面積(AUC)を有するデシタビンの血漿レベルを提供し、該曲線下面積(AUC)は、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日のIV用量についての5日間の曲線下面積と同等である。代替的に又は加えて、幾つかの実施態様において、デシタビンおよびセダズリジンを含む単位剤形を含むキットが提供され、対象(例えば、ヒト)への毎日の投与により、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内用量についての薬力学的効果と同等である薬力学的効果を提供する。従って、該キットは、本発明の一つの実施態様に従う1、2、3、4、5、又はそれ以上の固形経口剤形を備えうる。幾つかの実施態様において、該キットは、約35mgのデシタビン及び約100mgのセダズリジン、並びに少なくとも1つの医薬的に許容される添加剤を含む5、6又は7単位用量錠剤を備えている。
【0069】
該キットはさらに、商業販売に適した容器及び/又は包装を備えうる。該容器は、医薬的に許容される材料、例えば、紙又はボール紙の箱、ガラス又はプラスチックのボトル又はジャー、又は治療スケジュールに従ってパックから押し出すための個々の投与量を有する再密封可能なパック、で作られた、当技術分野で知られている任意の慣用的な形状又は形態であることができる。1つのパッケージで複数のコンテナーが一緒に使用されることができる。例えば、錠剤はブリスターパックに入れられ得、該ブリスターパックは箱に入れられる。2以上の容器が、1つの包装で一緒に使用されることができる。幾つかの実施態様において、該容器は、ボトル、例えば、単位剤形(例えば、約5単位剤形)を含む30ccの白色高密度ポリエチレンボトルである。該ボトルはさらに、乾燥剤、例えばシリカ乾燥剤キャニスター、を含みうる。幾つかの実施態様において、該容器はブリスターパックであり、例えば、1つの穴当たり1つの錠剤を含む、ホイル蓋上のアルミニウムホイルによって形成されるブリスターパックである。該ブリスターパックは、1つのカートン中に存在していてもよい。
【0070】
該キットはさらに情報を含みうる。該情報は、可読媒体で提供されうる。該可読媒体は、ラベルを含みうる。該情報は、医師、薬剤師、又は患者に対して向けられうる。該情報は、単位剤形が1以上の悪影響を引き起こす可能性があることを示しうる。該情報は、本明細書に記載の方法、単位剤形を投与する為の指示を含みうる。これらの指示は、様々な方法で提供されうる。
【0071】
該情報は、例えば以下のようにして容器に関連付けられることができる:容器に貼り付けられたラベル(例えば、処方箋ラベル又は別のラベル)に書かれている;書面による添付文書として容器の中に含まれている;該容器に直接的に適用される、例えば、箱又はブリスターパックの壁に印刷される;又は、ひも、コード若しくは他のライン、ランヤード(lanyard)或いはテザータイプ(tether type)のデバイスを介してボトルの首に取り付けられた指示カードなど、結ぶか又はテープで取り付けることによって取り付けられる。
【0072】
本発明の固形経口剤形を使用する方法
【0073】
本発明の実施態様に従って提供されるのは、セダズリジン及びデシタビンを含む固形経口剤形を対象に投与する方法である。特定の実施態様に従うと、セダズリジン及びデシタビンを含む固体経口剤形を対象に投与する方法が提供され、ここで、該固体経口剤形は、対象(例えば、ヒト)への毎日の投与により、デシタビンについての5日間の曲線下面積(AUC)を有するデシタビンの血漿レベルを提供し、該曲線下面積(AUC)は、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内(IV)用量についての5日間の曲線下面積と同等である。幾つかの実施態様において、対象への毎日の投与により、2日目対1日目におけるデシタビンについてのAUCの比が、約1.5:1~約2:1である。本発明の幾つかの実施態様において、該方法は、デシタビン及びセダズリジンを含む固体経口剤形を対象に、投与することを含み、ここで、固体経口剤形は、対象への毎日の投与により、1時間の注入として投与される20mg/m2のデシタビンの毎日の静脈内用量についての薬力学的効果と同等である薬力学的効果を提供する。特定の実施態様に従うと、該薬力学的効果がDNA脱メチル化である。使用される該固体経口剤形は、本明細書において記載された任意の固体経口剤形でありうる。
【0074】
その上、デシタビンで処置可能な障害を処置することを必要とする対象において、該障害を処置する方法であって、本発明の実施態様に従う固体経口剤形を前記対象に投与することを含み、それによって前記障害を処置することを含む上記方法が提供される。幾つかの実施態様において、デシタビンで処置可能な障害が過剰増殖性疾患、例えば癌、である。該方法は、デシタビンが処置において有効であることが知られている又は後に発見される任意の癌を処置する為に使用されることができる。特定の実施態様に従うと、該障害が、血液癌及び固形癌から選択される癌である。血液癌の例は、骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndromes)、白血病(例えば、急性リンパ球性白血病(ALL:acute lymphocytic leukemia)、急性骨髄性白血病(AML:acute myelogenous 白血病)、慢性骨髄性白血病(CML:chronic myelogenous leukemia)、骨髄増殖性疾患(MPN:myeloproliferative neoplasms)、又は慢性骨髄単球性白血病(CMML:chronic myelomonocytic leukemia))、及びリンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、又はT細胞リンパ腫)を包含する。幾つかの実施態様において、該固形癌が、膵臓癌、卵巣癌、腹膜癌、非小細胞肺癌、乳癌、神経外胚葉性腫瘍、及び/又は肉腫から選択される。
【0075】
幾つかの実施態様において、過剰増殖性疾患、例えば癌、を処理する為の方法であって、該癌がMDSである上記方法を提供する。MDSは、骨髄由来の血液細胞の不適切な成熟を共有する癌疾患のグループであり、症状は変わる場合がある。国際予後スコアリングシステム(IPSS:International Prognostic Scoring System)は、患者のヘモグロビンレベル、絶対好中球数(ANC:absolute neutrophil count)、血小板数、及び骨髄芽球の割合に基づいて、MDSの重症度を幾つかの危険グループにスコア付けする。危険グループは、「低」(low)、「中間-1」(intermediate-1)、「中間-2」(intermediate-2)及び「高」(high)を含む。他の危険グループスコアリング方法、例えば、NCCN Guidelines for Patients,Myelodysplastic Syndromes,2018において記載されているように、改訂されたIPSS(IPSS-R:Revised IPSS)及びWHO分類ベースの予後スコアリングシステム(WPSS:WHO classification-based Prognostic Scoring System)、が存在する。本発明の方法は、過剰増殖性疾患、例えば、任意のスコアリング法に基づいてMDSの任意の危険グループと診断された対象(例えば、ヒト患者)における癌、を処置する為に使用されうる。幾つかの実施態様において、本発明を必要とする対象は、低リスクMDS(IPSS低及び/又は中間-1として定義される)と診断された対象を含みうる。
【0076】
本発明の幾つかの実施態様において、デシタビンの分解を必要とする対象においてデシタビンの分解を阻害するための方法が提供され、この方法は、本発明の一つの実施態様に従う固形経口投薬量を該対象に投与することを含み、それによって、該対象におけるデシタビンの分解を阻害する。
【0077】
幾つかの実施態様において、本発明は、DNAメチル化を減少させることを必要とする対象において該DNAメチル化を減少させる方法であって、本発明の一つの実施態様に従う固形経口投薬量を該対象に投与することを含み、それによって該対象においてDNAメチル化を減少させる(例えば、それによってCDA基質剤によるDNAメチル化における減少を可能にする)上記方法が提供される。該DNAメチル化は、処置前の該対象メチル化レベルと比べて減少されうる。幾つかの実施態様において、LINE-1のDNAメチル化が減少する。LINE-1は、当技術分野において知られているヒトDNA(例えば、該対象)に見られる長く散在する核エレメントであり、及びそのメチル化レベルは、当技術分野における標準的な技術を使用して測定され、低メチル化剤、例えばCDA基質剤(例えば、デシタビン)、の遺伝的効果を決定することができる。
【0078】
必要とする対象に本発明の実施態様に従う固体経口剤形を投与することは、該対象に複数の有益な応答を提供することが本発明の発明者等によって示されている。例えば、幾つかの実施態様において、該投与は、該対象におけるDNAメチル化を、投与前の対照測定と比較して、例えば、該対照におけるDNAメチル化(例えば、対象「ベースライン」DNAメチル化)と比較して、少なくとも5%(例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15%、或いはそれ以上、又はその中の任意の値若しくは範囲)減少させる。該対象におけるDNAメチル化は、例えば、対照と比較した相対的な全体的メチル化のマーカーによって測定される場合に、例えば、対照と比較したLINE-1メチル化によって測定される場合に、当技術分野における任意の標準的な技術によって定量的及び/又は定性的に評価されうる。例えば、幾つかの実施態様において、該投与は、該対象におけるLINE-1メチル化を、対照測定と比較して、例えば、投与前の該対象におけるLINE-1メチル化(例えば、対象ベースラインLINE-1メチル化)と比較した場合、少なくとも5%(例えば、少なくとも5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、又は15%以上)減少させる。例えば、幾つかの実施態様において、該投与は、該対象におけるLINE-1メチル化を少なくとも5%、少なくとも8%、少なくとも10%、又は少なくとも15%、又はそれ以上低下させうる。幾つかの実施態様において、該投与は、該対象におけるLINE-1メチル化を約5%~約20%、約6%~約15%、又は約8%~約10%、減少させうる。
【0079】
幾つかの実施態様において、該投与は、該対象における絶対好中球数(ANC:absolute neutrophil count)が、2週間以内(例えば、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2の連続した日を超えない、又はその中の任意の値若しくは範囲)、引き続き28日周期、で、血液の1L当たり0.5x109細胞/L未満に減少させうる。幾つかの実施態様において、該投与は、該対象における絶対好中球数(ANC)が、処置の間の2週間以内(例えば、2週間以上、3週間以上、4週間以上、5週間以上、6週間以上等)の間、血液の1L当たり0.5x109細胞/L未満に減少させる(例えば、複数回繰り返される28日周期の間)。
【0080】
幾つかの実施態様において、該投与は、任意的にサンプル(例えば、患者の血液サンプル中)当たりF細胞/赤血球で測定された場合に、「ベースライン」対照のF細胞/赤血球%と比較して(例えば、処置前の患者のF細胞/赤血球%と比較した場合、例えば、処置を受けていない患者集団(例えば、健康な患者集団)の平均F細胞/赤血球%と比較した場合、ヘモグロビンF-発現細胞(すなわち、F細胞)を少なくとも5%(例えば、少なくとも5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、又は30%以上)までヘモグロビンF-発現細胞(すなわち、F細胞)を拡大する。例えば、幾つかの実施態様において、該投与は、ベースライン対照と比較して、少なくとも5%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、若しくは少なくとも23%、又はそれ以上、該対象におけるF細胞%を拡大しうる。幾つかの実施態様において、該投与は、ベースライン対照と比較して、約5%~約30%、約6%~約24%、又は約8%~約20%まで、対象におけるF細胞%を拡大しうる。
【0081】
幾つかの実施態様において、該投与は、サンプル(例えば、患者の血液サンプル中)当たり全赤血球の少なくとも10%から少なくとも30%、又はそれ以上(例えば、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、若しくは少なくとも30%、或いはそれ以上、又はその中の任意の値若しくは範囲のF細胞/赤血球)の総量にF細胞を拡大する。例えば、幾つかの実施態様において、該投与は、サンプル中の全赤血球の少なくとも20%、少なくとも23%、少なくとも35%、或いはそれ以上の総量にF細胞を拡大しうる。幾つかの実施態様において、該投与は、サンプル中の全赤血球の約15%~約30%、約18%~約25%又は約15%~約35%、の総量にF細胞を拡大する。
【0082】
本発明の方法の幾つかの実施態様において、該対象は哺乳動物でありうる。本発明の方法の幾つかの実施態様において、該対象はヒトでありうる。
【0083】
薬物送達のタイミング及び順序を調節する為の当業者に周知の任意の投与計画が使用され、必要に応じて繰り返して、本発明の方法において処置を行うことができる。例えば、本発明の固形経口剤形は、1日に1回、2回、3回又は4回、単回投与、複数回の個別投与、又は連続注入によって投与されうる。特定の実施態様に従うと、該固形経口剤形は、1日に1回投与される。
【0084】
本発明の幾つかの実施態様において、本発明の実施態様に従う固形経口剤形の投与は、28日周期当たり、約1日~約28日(例えば、28日周期当たり、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、約27日、又は約28日)で行われうる。特定の実施態様に従うと、固形経口剤形の投与は、28日周期当たり、1日1回、5日間(例えば、5日連続)実行されうる。幾つかの実施態様において、本発明の実施態様に従う固形経口剤形の投与は、28日周期で連続する日数において実行されうる。例えば、本発明の実施態様に従う固形経口剤形は、5日連続で投与されうる。幾つかの実施態様において、本発明の実施態様に従う固形経口剤形は、任意の3日連続(例えば、月曜日(Monday)、火曜日(Tuesday)及び水曜日(Wednesday)、すなわち「MTW」、において;火曜日(Tuesday)、水曜日(Wednesday)及び木曜日(Thursday)、すなわち「TWTh」、において;水曜日(Wednesday)、木曜日(Thursday)及び金曜日(Friday)、すなわち「WThF」、において;木曜日(Thursday)、金曜日(Friday)及び土曜日(Saturday)、すなわち「ThFS」において;金曜日(Friday)、土曜日(Saturday)及び日曜日(Sunday)、すなわち「FSS」、において;土曜日(Saturday)、日曜日(Sunday)及び月曜日(Monday)、すなわち「SSM」において;及び/又は、日曜日(Sunday)、月曜日(Monday)及び火曜日(Tuesday)、すなわち「SMT」において等)で投与されうる。幾つかの実施態様において、本発明の実施態様に従う固形経口剤形の投与は、28日周期当たり、5日連続(例えば、MTWThF又は任意の他の組み合わせの5日連続)で、7日連続(MTWThFSS又は任意の他の組み合わせの7日連続)で、14日連続(例えば、2週間連続)で;21日連続(例えば、3週間連続)で、及び/又は28日連続(例えば、4週間連続)で実行されうる。連日処置は、28日周期当たり、例えば1回又は複数回、例えば毎週、隔週で繰り返されうる。
【0085】
幾つかの実施態様において、本発明の実施態様に従う固形経口剤形の投与は、28日周期で連続しない日数、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26若しくは27、又はそれ以上の連続しない日数、で実行されうる。連続しない日数は、28日周期で、1日おき(例えば、MWF)、2日おき、3日おき、4日おき、5日おき、6日おき、7日おき等のスケジュールを構成することができる。連続しない日数は、28日周期内で、連続して数日間投与し(例えば、「オン」)、続いて数日間投与せず(例えば、「オフ」)、続いて数日間連続して投与する等を繰り返す。例えば、幾つかの実施態様において、該投与は、連続しない2日(例えば、毎週月曜日と金曜日、又は連続しない2日の任意の組み合わせ)において実施されうる。幾つかの実施態様において、該投与は、連続しない3日(例えば、MWF又は任意の他の組み合わせの連続しない3日)において実施されうる。連続しない処置は、28日周期当たり、例えば毎週、隔週で、1回以上繰り返されうる。
【0086】
幾つかの実施態様において、0~31日、又はそれ以上の期間(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、又はそれ以上)は、本発明の複数の28日処置周期の間を通りうる。処置を行わない期間は、本発明の対象(例えば、ヒト患者)が処置を継続するのに十分な健康状態を維持できるようにするために望ましい場合がある。処置周期の期間は、当技術分野の標準的な技術を使用して医師によって決定されることができ、例えば、適切な血球数、例えば、好中球減少症の適切な欠如(例えば、該対象における絶対好中球数(ANC)が少なくとも0.5x109細胞/L又は0.5x109細胞/L以上)であり、及び投与する医師の判断に基づいて処置の過程で調整されうる。幾つかの実施態様において、処置周期の間の期間が最小限、例えば、期間なし、例えば、次の28日間の期間からすぐに開始、でありうる。幾つかの実施態様において、処置周期の間の期間は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、又はそれ以上でありうる。
【0087】
幾つかの実施態様において、該投与は、例えば、28日周期当たり合計10日間実施され得、ここで、該10日間の投与は、28日周期当たり、5日連続間の投与(例えば、5日間「オン」)、引き続き、2日連続投与なし(例えば、2日間「オフ」)、引き続き、5日連続の投与(例えば、5日間の「オン」)を含む。幾つかの実施態様において、該投与は、例えば、合計14日間実施され得、ここで、該14日間の投与は、28日周期当たり、7日間の「オン」、引き続き、7日間の「オフ」、引き続き、7日間の「オン」を含む。幾つかの実施態様において、該投与は、例えば、合計9日間実施され得、ここで、該9日間の投与は、28日周期当たり、連続3日間の「オン」、引き続き、連続4日間の「オフ」、引き続き、連続3日間の「オン」、引き続き、連続4日間の「オフ」、引き続き、連続3日間の「オン」を含む。幾つかの実施態様において、該投与は、例えば、合計9日間実施され得、ここで、該9日間の投与は、28日周期当たり、連続しない3日間の「オン」(例えば、MWF)、引き続き、1日間の「オフ」、引き続き、連続しない3日間の「オン」(例えば、MWF)、引き続き、1日「オフ」、引き続き、連続しない3日間の「オン」を含む
【0088】
幾つかの実施態様において、本発明の実施態様に従う固形経口剤形を投与することは、28日周期当たり、1週間以上、例えば、28日周期当たり、1週間、2週間、3週間又は4週間、実施されうる。該週は、連続していてもよく及び/又は連続していなくてもよい。
【0089】
投与レジメンは、前処置及び/又は少なくとも1つの追加の治療剤との同時投与を含み得る。そのような場合、デシタビン及びセダズリジンを含む固体経口剤形は、少なくとも1つの追加の治療薬と同時に、別々に、又は連続して投与されうる。該追加の治療剤はまた、固体経口剤形内に含まれうる。
【0090】
化学療法剤の例は、アルキル化剤(例えば、該アルキル化剤は、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エストラムスチン、カルムスチン、マイトマイシン、ブレオマイシン等を包含しうる);代謝拮抗剤(例えば、該代謝拮抗剤は、5-フルオロ-ウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、ネララビン、フルダラビン、メトトレキサート等を包含しうる);白金化剤(例えば、該白金化剤は、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン等を包含しる);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、該トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカン、イリノテカン、エトポシド等を包含しうる);チューブリン剤(例えば、該チューブリン剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、他のタキサン、エポチロン等を包含しうる);シグナリング阻害剤(例えば、キナーゼ阻害剤、抗体、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤等を包含しうる);並びに、他の化学療法剤(例えば、タモキシフェン;抗有糸分裂剤、例えば、ポロ様キナーゼ阻害剤又はオーロラキナーゼ阻害剤、等を包含しうる)を包含するが、これらに限定されない。
【0091】
幾つかの実施態様において、本発明は、デシタビンの1日用量当たり約35mgを企図し、従って、例えば、5日間の投薬スケジュールの場合、デシタビンの処置の28日周期当たり、累積約175mg程度の累積用量であることが企図される。用量レベル、投与様式、及び投与レジメンは、対象(例えば、患者)にとって必要であると判断される既知の技術を使用して、当業者によって変更されうる。
【0092】
幾つかの実施態様において、本発明は、セダズリジンの1日用量当たり約100mgを企図し、5日間の投薬スケジュールの場合、28日周期当たり、累積約500mg程度の累積用量であることが企図される。用量レベル、投与様式、及び投与レジメンは、対象(例えば、患者)にとって必要であると判断される既知の技術を使用して、当業者によって変更されうる。
【0093】
幾つかの実施態様において、本発明の方法は、本発明の固形経口剤形において見られるのと同じ量及び/又は比でセダズリジン及びデシタビンを別々に(例えば、別々の剤形で)投与し、且つ同じ投与レジメンを使用することによって行われることができる。
【0094】
本発明の特定の実施態様は、上記で特定された観点並びに他の観点のうちの1つ、複数、又は全てに向けられうること、及び、上記に特定されている実施態様且つ下記に特定されている実施態様並びに他の実施態様のうちの1つ、複数、又は全てを包含しうることは当業者にとって明らかであろう。
【0095】
実施例以外、又は別段の指示がある場合を除いて、明細書及び特許請求の範囲で使用されている成分の量、反応条件等を表す全ての数字は、用語「約」によって修飾されていることが理解されるべきである。従って、そうでないと示されない限り、そのような数値は、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化しうる近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、有効桁数と通常の丸め技法とに照らして構成されるべきである。
【0096】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは概算であるが、実施例において示されている数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、それぞれのテスト測定において見つけられた標準偏差から必然的に生じる或る誤差を本質的に含む。
【0097】
本発明を説明してきたが、以下の実施例においてより詳細に本発明が説明されているが、これらは例示の目的のみの為に本明細書に含まれており、且つ本発明を限定することが意図されていない。
【0098】
実施例
【0099】
実施例1:ASTX727第1相試験
ASTX727第1相試験は、標準用量のデシタビンIV(デシタビン 20mg/m2 IV)と同等のAUCを達成する可能性が高い、セダズリジン及びデシタビンの推奨用量を確立するように設計された用量漸増(dose escalation)であった。図1は、試験設計の概要を提供する。1周期において、各患者は、-3日目にコホートで定義された用量の経口デシタビン、1日目にデシタビン20mg/m2の1時間の静脈内注入、そして、2~5日目に経口デシタビンとセダズリジンのコホートで定義された用量を与えられた。2周期及びそれ以降において、経口デシタビン及びセダズリジンが、1~5日目に与えられた。セダズリジンの用量が最初に漸増され、そして、セダズリジンによるCDA阻害が最大効果に近づいたら、デシタビンが漸増された。1つの薬剤のみがコホート毎に漸増された。固定された用量が、体重又は体表面積を調整せずに与えられた。デシタビンの-3、1、2及び5日目に、終日の薬物動態分析が含まれていた。開始用量は、経口デシタビンについて20mg、セダズリジンについて40mgであった(カニクイザルにおいて観察されていない有害作用レベルよりも約100倍大きな安全マージンを有するヒトと同等の用量)。経口薬剤の平均デシタビンAUCがコホートにおけるIVデシタビンについての平均デシタビンAUCの90%未満であり且つ用量制限毒性が観察されなかった場合、各薬剤の漸増(Escalation)が行われた。用量制限毒性は、グレード4の血液毒性又はグレード3が14日以上持続し、基礎疾患とは無関係であると定義された。主要評価項目として設定され且つIVデシタビンで確立されたところのデシタビンAUC目標範囲が、安全であると見なされる用量に達すると、IVデシタビン暴露に最も近いコホートが評価可能な18人の患者に拡大された。以前に低用量を与えられた患者についての用量漸増は、患者が最初に割り当てられた用量に耐性であった場合、治験責任医師の裁量で許可された。
【0100】
デシタビンの薬物動態プロファイルは、EDTA(エデト酸)で処理された血漿を、安定化の為にテトラヒドロウリジン(Santa Cruz Biotechnology,Dallas,TX)を用いて検証済みの液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法で分析することを通じて、且つデシタビンの0.5~100ng/mLの線形アッセイ範囲で特徴付けられた。連続の血漿サンプル(投与前から投与後24時間まで)が、最初の周期の-3、1、2及び5日目(また、3日目及び4日目の投与直前)に収集された。特には、薬物動態サンプルが、投与前、及び投与後、0.25時間、0.5時間、1.0時間(IVのみ、1.083時間)、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間及び24時間で得られた。
【0101】
患者は、疾病の進行、許容できない毒性、患者の要求、同意の撤回、又は利益の欠如による治験責任医師の裁量により、処置を中止するか、又は試験から除外される可能性があった。
【0102】
第1相試験の結果が、下記の表3において且つ図2において示されている。
【0103】
【表3】
【0104】
CED=セダズリジン;DEC=デシタビン;gCV%=幾何変動係数
a 経口投与は、体重又は体表面積が調整されなかった。IV用量が、全てのコホートにおいて、20mg/m2であった。
b コホート1の1人の対象は、極端な外れ値として除外された。
c 18人の患者らのIVデータ及び1人の患者か、極端な異常値として除外された。
d 総IV集団について計算された総5日間のIV AUC0~tの幾何平均(N=41)
【0105】
図2において、強調された2つの曲線は、100mgのセダズリジン及び30mgと40mgの経口デシタビンからの曝露を示す(表3中のコホート4及び5)。これらの用量では、経口デシタビン曝露が、IVデシタビン曝露の81%~128%であった。これに基づいて、30~40mgのデシタビンの中間用量、すなわち35mg、がIVに最も近いと予測された。
【0106】
実施例2:ASTX727第2相試験の用量確認
ASTX727第2相試験が、1周期で、デシタビンの20mg/m2のIV毎日(5日間)対 経口デシタビン/セダズリジン1日1回(5日間)投与する無作為化されたクロスオーバー設計であり、ここで、患者は2周期で他の薬剤にクロスオーバーされた(図3参照)。3周期以降、全ての患者は経口デシタビン/セダズリジンを1日1回(5日間)、28日周期ごとに、進行するまで継続した。
【0107】
第2相における患者についてのベースライン特性が表4中に示されている。
【0108】
【表4】
【0109】
デシタビン及びセダズリジンは、第1相の用量漸増段階と用量拡大段階において、及び第2相の最初の用量確認段階において、デシタビン(35mg)とCED(100mg)の個々のカプセルとして与えられ、そして次に、デシタビン(35mg)とセダズリジン(100mg)の両方の単回固定用量配合(FDC:single fixed-dose combination)錠剤(ASTX727)として、第2相の第2段階において且つ第3相において組み合わせられる。第3相臨床試験で使用されたASTX727 FDC錠剤の組成が表5において示されている。
【0110】
【表5】
【0111】
デシタビン(35mg)及びセダズリジン(100mg)の個々のカプセルの血漿デシタビン5日間のAUC0~tが表6Aに示され、且つ単一ASTX727錠剤1錠についての血漿デシタビン5日目のAUC0~tが表6Bに示されている。
【0112】
【表6A】
【0113】
IV=デシタビンの20mg/m2 IV注入(1時間)。経口=100mgのセダズリジン及び35mgのデシタビンカプセル
CI=信頼区間(Confidence Interval);IV=静脈内(Intravenous);Geo.LSM=幾何学的最小二乗平均(Geometric Least Squares Means);CV=変動係数(coefficient of variation)
【0114】
【表6B】
【0115】
IV=デシタビンの20mg/m2 IV注入(1時間)。経口=ASTX727 FDC錠(100/35mgのセダズリジン/デシタビン)
CI=信頼区間(Confidence Interval);IV=静脈内(Intravenous);Geo.LSM=幾何学的最小二乗平均(Geometric Least Squares Means);CV=変動係数(coefficient of variation)
【0116】
図4は、経口100mgのセダズリジン及び35mgのデシタビン対デシタビン20mg/m2の単回注入後の個々の及び幾何平均血漿デシタビンAUC0~24を提供する。
5日間の経口のデシタビン暴露は、IVデシタビンの約98%であり、錠剤中のセダズリジンとデシタビンの為に選択された用量がIVデシタビンとほぼ一致したことが確認された。
【0117】
血液学及び全体的なDNAメチル化が、最初の周期の1、8、15、22及び29日目に、長い散在核要素1(LINE-1:long interspersed nuclear element-1)メチル化亜硫酸水素塩シーケンスアッセイで評価された(Yang,AS,Koshi KD,Choi SW,et al.DNA methylation changes after 5-aza-2-deoxycytidine therapy in patients with leukemia.Can.Res.2006;66;5495-503)。処置後のDNAメチル化における変化は、相対変化(%)として表され、下記の通りに計算された:100x([所与の処置日後のメチル化-処置日]-[ベースラインのメチル化]。各周期の1日目(最初の2周期における血液学の為に毎週)の処置前に、身体検査と実験室モニタリング(血液学、代謝プロファイル及び肝酵素)を通じて有害事象の評価が行われた。処置中、患者は、血液学、代謝プロファイル、肝酵素、指示された身体検査、バイタルサイン、輸血記録及び投薬記録を包含する有害事象と臨床反応について評価された。処置が中止されると、患者は、生存、及び急性骨髄性白血病への移行について追跡調査された。研究者の裁量で用量の減量又は遅延が、薬物関連の骨髄抑制からの回復を可能にする為に許可された。
【0118】
LINE-1試験の結果が図5A図5B及び図6A図6Bにおいて示されている。試験の為の第2相の有効性及び安全性の日付が、それぞれ表7及び表8において示されている。
【0119】
【表7】
【0120】
aIWG 2006 criteria;bベースラインで依存していた患者における少なくとも8週間の輸血非依存
【0121】
【表8】
【0122】
実施例3:第3相試験
第3相は、デシタビンの投与に適格なMDS及びCMML患者がシーケンスAに無作為化された無作為クロスオーバー設計であり、ここで、該患者は1周期でASTX727を投与され、次に2周期でIVデシタビンを投与するか、逆の順序でシーケンスBを投与された。全ての患者は、長期的な有効性及び安全性を評価する為に、3周期以降からASTX727を与えられた。経口投与とIV投与と間のAUCが同等であることを示すには、評価可能な118人の患者が必要であった。図7を参照。対象の為の主要なエントリー基準は下記の通りである:1) IVデシタビンの為の候補;2) ECOG PS 0-2;3) 少なくとも3ヶ月の平均余命;4) 適切な臓器機能;5) HMAの1つ前の周期が許可されていること。主要評価項目は、5日間のデシタビンAUCの総血漿レベルを含んでいた(経口/IV90% CI 80%~125%)。副次評価項目は有効性、例えば、応答率、輸血非依存性、応答期間、無白血病、全生存期間、ASTX727の安全性;並びにMax LINE-1脱メチル化を包含する有効性、であった。
【0123】
第3相において処置された133人の患者のうち、123人がIVと5日間の経口周期の両方を完了し、両方のデシタビンAUCを評価した。経口/IVに対する血漿5日間デシタビンAUCの比は約99%であり、90%の信頼区間は約93%~106%であった。
PK評価で処置された全ての患者の感度及び二次分析は全て、一次分析結果を確認した(表9を参照)。
【0124】
【表9】
【0125】
1対にされた患者集団:無作為化された最初の2周期で、ASTX727及びIVデシタビンの両方を与えられ、十分なPKサンプルを使用した患者
【0126】
該試験は、高い信頼度でその主要評価項目を達成した:経口/IV血漿の5日間デシタビン AUC約99%(90%CIの約93~106%を有する)。全ての感度及び二次PK AUC分析により、一次分析からの知見が確認された。
【0127】
図8は、1日目、2日目及び5日目でのASTX727と1日目及び5日目のIVデシタビンとの両方についての個々の患者の曝露を示す。見てわかるように、経口デシタビン又はIVデシタビンのいずれかで処置された患者の個々の曝露は、体表面積に基づいてIVが投与されている間、経口デシタビンが固定された用量で与えられているにもかかわらず、互いに大きく重複する。1日目のデシタビンについてのAUCは、2~5日目のAUC及びIV投与についてのAUCよりもわずかに低い。2日目対1日目のデシタビンについてのAUCの比は、約1.5:1~約2:1である。
【0128】
図9は、LINE-1アッセイによって測定された場合の包括的なDNA脱メチル化の薬力学的効果は、経口が1周期及び2周期におけるIVと比較された場合にまたほぼ同一であった。経口投与とIVとの間のDNAメチル化における差は1%未満であり、有意でなかった。
【0129】
要約すると、経口ASTX727の固定された用量錠剤(セダズリジン/デシタビン100/35mg)は、IVデシタビ20mg/m2(主要評価項目)と比較して、血漿デシタビン5日間のAUC全身曝露の約99%を達成した。その上に、堅牢な結果が、全てのAUC感度及び二次分析において確認された。その上、経口ASTX727は、IVデシタビンとほぼ同じ薬力学的効果を達成した(LINE-1%DNA脱メチル化において、1%未満の差)。加えて、長期フォローアップを伴う第2相で観察された持続的な臨床反応、50%の輸血非依存性、及び18.3か月の生存中央値は、IVデシタビンと一致している。その上、無作為化された最初の2周期において、経口ASTX727とIVデシタビンとの間で有害事象、例えばGI有害事象を包含する有害事象、に有意差はなかった。
【0130】
上記は本発明の例示であり、本発明を限定するものと解釈されるべきでない。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物がそこに含まれている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
【国際調査報告】