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  • 特表-ヒアルロン酸架橋体、及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸架橋体、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/08 20060101AFI20230421BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20230421BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/728 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
A61L27/20
A61L27/54
A61K31/728
A61P19/02
A61P13/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554482
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 KR2021001989
(87)【国際公開番号】W WO2021182763
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0029805
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513243723
【氏名又は名称】メディトックス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イム, チョン ス
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ヨン チョル
(72)【発明者】
【氏名】リー, チャン フン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB11
4C076BB32
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC17
4C076DD67
4C081AB36
4C081AB37
4C081AB38
4C081BB06
4C081BB07
4C081CC05
4C081CD08
4C081DA12
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA28
4C084MA66
4C084MA67
4C084NA14
4C084ZA21
4C084ZA81
4C084ZA96
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA25
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZC75
4C090AA02
4C090BA67
4C090BB18
4C090BB22
4C090BB53
4C090BB92
4C090BD01
4C090BD10
4C090CA35
4C090CA36
4C090DA22
4C090DA23
(57)【要約】
ヒアルロン酸架橋体、及びその用途を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨界変形率が0.1%ないし8%であり、粘着力が3Nないし15Nである、ヒアルロン酸架橋体。
【請求項2】
弾性係数(G’)が、400Paないし2,000Paである、請求項1に記載のヒアルロン酸架橋体。
【請求項3】
粘性係数(G”)が、100Paないし600Paである、請求項1または2に記載のヒアルロン酸架橋体。
【請求項4】
圧縮力が15N・sないし100N・sである、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載のヒアルロン酸架橋体。
【請求項5】
注入力が、1Nないし50Nである、請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載のヒアルロン酸架橋体。
【請求項6】
二作用性エポキシ基を有する架橋剤によって架橋されたものである、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載のヒアルロン酸架橋体。
【請求項7】
前記二作用性エポキシ基を有する架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(テトラメチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、トリエチレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、エチレンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル及び1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルからなる群から選択される1以上のものである、請求項6に記載のヒアルロン酸架橋体。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載のヒアルロン酸架橋体を含む、充填剤組成物。
【請求項9】
ヒアルロン酸架橋体の濃度が、10mg/mLないし30mg/mLである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
架橋されていないヒアルロン酸をさらに含まない、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
局所麻酔剤をさらに含む、請求項8ないし10のうちいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
注射器に充填されているものである、請求項8ないし11のうちいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
顔面部整形、しわ改善、顔面輪郭術、乳房整形、乳房増大術、性器増大、亀頭増大、尿失禁治療及び関節炎治療からなる群から選択される1以上の用途に使用するためのものである、請求項8ないし12のうちいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸架橋体、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸(HA)は、一般的に高い平均分子量を有する線形多糖類である。該ヒアルロン酸は、D-グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンとの重合体であり、負電荷を帯びる。ヒアルロン酸は、主に、細胞外基質及び細胞間基質で発見されるが、細胞内にも存在する。そのように、該ヒアルロン酸は、身体内にすでに存在する物質であるために、生体適合性を有し、架橋剤などを利用して架橋されたヒアルロン酸ヒドロゲルを製造するのに容易である特性も有している。従って、架橋されたヒアルロン酸を利用したフィラ製品がガルデルマ(Galderma)でレスチレン(Restylane)製品を1990年代に初めて製品化した後、全世界的に汎用されている。
【0003】
架橋されたヒアルロン酸ゲルを利用したフィラ製品は、単一相(monophasic)または二相性(biphasic)を有するものに区分されると知られている。単一相の架橋されたヒアルロン酸ゲルは、粘性係数(viscous modulus)が高く、弾性係数(elastic modulus)が低い。二相性の架橋されたヒアルロン酸ゲルは、粘性係数が低く、弾性係数が高い。単一相と二相性との架橋されたヒアルロン酸ゲルがそのように異なる特性を示す理由は、相により、フィラに含有されている架橋されたヒアルロン酸ゲルが、水をさらに担持することができる状態であるか否かということが異なるためである。単一相架橋されたヒアルロン酸ゲルの場合、水をさらに担持することができる状態であるために、粘性特性及び凝集力特性が高い均質なゲルに形成されるのに対し、二相性架橋されたヒアルロン酸ゲルは、水をさらに担持することができない状態であるために、均質な1つのゲルではなく、ヒドロゲル粒子の形態と架橋されたゲルに吸収されていない溶液に形成され、それにより、単一相に比べ、低い粘性及び凝集力(cohesiveness)の特性を有することになる。二相性架橋されたヒアルロン酸ゲルは、そのように、粒子形態に製造されるために、注射器針を介して注入されるとき、注入力が高く、注入力をさらに低くするために、潤滑剤として、架橋されていないヒアルロン酸を添加すると知られている。
【0004】
単一相架橋されたヒアルロン酸ゲルと、二相性架橋されたヒアルロン酸ゲルとの異なる特性により、従来架橋されたヒアルロン酸ゲルは、体内においても、異なる特性を有することができた。例えば、弾性係数が低く、粘性係数が高い単一相架橋されたヒアルロン酸ゲルの場合、凝集力にすぐれ、注入された部位から離脱する可能性が低いが、追加して水を担持することができる特性を有しているために、体内においても、続けて周辺の水分を吸収しようとする性質を有する。それにより、単一相架橋されたヒアルロン酸ゲルは、一般的に、体内注入時、注入初期段階に注入された本来の形態を維持することができず、既存で注入された体積に比べ、体積が増大してしまうという短所がある。それと反対に、弾性係数は高いが、粘性係数が低い二相性架橋されたヒアルロン酸ゲルは、注入された形態を、小さい体積変化で長期間維持することができるが、注入された部位から容易に離脱したり、注入部位に等しく分布することができなかったりするという特性を有している。
【0005】
WO2017-213404 A1は、単一相と二相性との特性を同時に有するヒアルロン酸架橋体を提供し、それを製造するための方法として、粒子化された単一相ヒアルロン酸架橋体の製造方法を開示している。従来技術によるとしても、単一相架橋されたヒアルロン酸ゲルと類似して、高い凝集力特性を有すると共に、二相性架橋されたヒアルロン酸ゲルと類似して、水を担持することができない特性を有する架橋されたヒアルロン酸、及びその用途に対する要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様は、臨界変形率が0.1%ないし8%であり、粘着力が3Nないし15Nであるヒアルロン酸架橋体を提供する。
他の態様は、前記ヒアルロン酸架橋体を含む充填剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様は、臨界変形率(critical strain)が0.1%ないし8%であり、粘着力(tack force)が3Nないし15Nであるヒアルロン酸架橋体を提供する。
【0008】
本明細書において、用語「ヒアルロン酸(hyaluronica cid)」は、式1の化学式を有するヒアルロナン(hyaluronan)、ヒアルロネート(hyaluronate)、またはその薬剤学的に許容可能な塩を示す。
【化1】
化学式1で、nは、反復単位(repeating unit)数である。バクテリア起源及び鳥類起源を含む、全ての起源のヒアルロン酸が有用である。
【0009】
本明細書に言及された用語「架橋された(cross-linked)」は、架橋剤(cross-linking agent)を介して共有結合されたヒアルロン酸の2以上のポリマー鎖を称する。そのような架橋は、単一ポリマー(single polymer)内または2以上の鎖内において、ラクトン、無水物(anhydride)またはエステルを生じさせる、分子間または分子内の脱水とも分別される。分子内架橋も、本明細書に言及された組成物に含まれうる。
【0010】
用語「架橋剤」は、2以上の分子間において、共有結合を生成する2以上の反応性官能基(at least two reactive functional groups)を含む。該架橋剤は、ホモ二管能性またはヘテロ二管能性でもある。本明細書で使用される架橋剤は、ヒアルロン酸の官能基と相補的な官能基を含んでおり、架橋反応を進めさせるのである。
【0011】
本明細書において、用語「ヒアルロン酸架橋体」は、架橋されたヒアルロン酸を意味するものであり、「ヒアルロン酸架橋体」、「架橋されたヒアルロン酸」、「架橋ヒアルロン酸」は、相互交換可能に使用される。
【0012】
本発明の一態様は、単一相(monophasic))でもなく、二相性(biphasic)でもない、「中間相(semiphasic)」ヒアルロン酸架橋体を提供するものである。
【0013】
本発明の一態様による「中間相」ヒアルロン酸架橋体は、臨界変形率及び粘着力の2つのパラメータ組み合わせによって定義されうるが、その根拠は、以下で記述する通りである。
【0014】
ヒドロゲルは、親水性であり、水に溶けうる高分子が、架橋などの理由により、溶媒である水に溶けない状態で存在しているときの物質を示す。このとき、親水性を有する高分子は、溶媒である水分子を、高分子近辺に引き寄せようとするが、水に完全に溶解されていない状態であるために、さまざまな特性を有することになる。当該特性のうち、最も注目すべき点は、該ヒドロゲルは、高分子量対比で、非常に多量の水を担持することができるという特性である。水を担持することができる量は、高分子の種類、高分子の長さ、高分子の分子量のように、該ヒドロゲルが固有に保有した特性、溶媒のpH、溶媒の浸透圧のように、該ヒドロゲルが露出されている溶媒の環境や状態などによって異なり、他の条件が同一であるならば、該ヒドロゲルをなしている高分子の構造がどれほど稠密になされているかということによって異なる。構造の稠密度は、該ヒドロゲルをなしている高分子と高分子との平均距離でもって主に定義され、当該平均距離が短いほど、該ヒドロゲルが稠密であると表現することができる。該ヒドロゲルが、稠密な構造をなしているほど、高分子間が短いために、水分子が、親水性高分子間に存在する空間が狭くなり、それにより、さらに少量の水分しか担持することができなくなる(Ganji, Fariba & Vasheghani Farahani, Samira & Vasheghani-Farahani, Ebrahim. (2010). Theoretical Description of Hydrogel Swelling: A Review. Iranian Polymer Journal. 19. 375-398)。それは、当該特性のヒアルロン酸を架橋したヒドロゲルを利用して製造されたフィラにおいて確認することができる。一般的に、現在販売されているフィラは、架橋後、20mg/mL前後の濃度を有するように希釈されたヒアルロン酸架橋ゲルである。もし互いに異なる稠密度を有するヒアルロン酸架橋ヒドロゲルを、同一濃度を有するように希釈するならば、各ヒドロゲルが担持することができる水分量が異なるので、希釈後の様子も異なると推論することができ、従来知られた相の概念も、先に敍述したヒドロゲルが有している特性によるものであると予想することができる。もしヒアルロン酸架橋ゲルを20mg/mL濃度を有するように希釈したとき、当該ヒドロゲルが追加して担持することができる水分量(swelling capacity)があるならば、ヒアルロン酸架橋ゲル内に、全ての溶液が吸収されているために、架橋ゲル以外の水分が見えない性状(monophasic)を有することになり、ヒアルロン酸が架橋ゲルがすでに担持することができる水分量を超えた場合には、架橋ゲル以外に、溶液が共に存在する形態になり、二相性のような性状を有することになる。そうであるならば、架橋ゲルだけ存在する性状である単一相と、架橋ゲルと溶液とが共に存在する性状である二相性は、物質構造が異なり、該物質構造内部に作用している力も異なると見られる。該物質内部構造に起因する力であると予想されるのは、内部構造を作る相互作用(interaction)の総合と見ることができる。ヒアルロン酸架橋ゲル、またはヒアルロン酸架橋ゲルと溶液とからなっており、それを介して確認することができる相互作用は、ゲル・ゲル相互作用、ゲル・溶液相互作用、溶液・溶液相互作用に分類することができる。該溶液の場合、分子の流動性が、ゲルに比べて高く、接触面積が、ゲルに比べて小さいために、相互作用の大きさは、ゲル・ゲル>ゲル・溶液>溶液・溶液と見ることができる。従って、架橋ゲルだけ存在する性状である単一相性状が、架橋ゲルと溶液とが共に存在する性状である二相性性状よりさらに大きい内部相互作用力があると予想することができる。
【0015】
臨界変形率は、剪断変形率を物質に加えたとき、線形粘弾性的(linear viscoelastic)性質を含む物質内部構造の破壊を起こすのに必要な変形率値を確認する測定指標である。超過溶媒なしに、ヒアルロン酸架橋ゲルだけ存在する単一相の場合、物質内部に存在する相互作用は、ゲル・ゲル相互作用が、物質内部力をなす最大の力と見ることができ、ゲル・溶液相互作用及び溶液・溶液相互作用は、非常に小さいと見ることができるために、さらに高い相互作用を有するので、さらに高い変形率で内部構造が破壊されると予想することができる。一方、二相性の場合、ヒアルロン酸架橋ゲル対比で、溶液が物質外部に存在するために、ゲル・ゲル相互作用は、低減されることになり、一方、ゲル・溶液相互作用及び溶液・溶液相互作用がさらに大きくなるために、内部構造の相互作用総合が、単一相と比較したとき、小さくなると予想されるので、さらに低い変形率で内部構造が破壊されると予想することができる。従って、さらなる水をさらに担持することができる単一相架橋ゲルが、さらなる水をさらに担持することができない二相性架橋ゲルに比べ、高い臨界変形率値を有することになる。
【0016】
また、類似した現象の結果として、一般的な単一相フィラ製品の場合、凝集力が強い特性を有することになり、二相性フィラ製品の場合、凝集力が、単一相フィラ対比で、相対的に弱い様子を見せると予想することができる。凝集力特性は、生体内において、注入物がいかほどに良好に固まっているかということに係わる予想指標としても使用される特性である。それを検証すべく、二相性フィラ製品と単一相フィラ製品との凝集力程度を測定する指標である粘着力数値でもって比較した結果、単一相製品が、二相性製品に比べ、高い粘着力数値を示していることを確認した。
【0017】
先に敍述した事項を介して生体内挙動について予測すれば、単一相製品の場合、二相性製品に比べ、凝集力特性は、強いが、追加して水をさらに担持することができる特性を有しているために、追って、生体内注入時、注入された体積よりさらに大きくなり、体積調節が困難であるという短所を内包する。二相性製品は、追加して水をさらに担持することができないために、生体内注入された体積が続けて維持されうるという長所を有しているが、単一相製品に比べ、低い凝集力により、注入部位に不均質に分布し、塊(lump)になったり、注入部位が凹状に入り込んだりするというように、皮膚表面が不自然な様子を示しうるという短所を有すると予想される。
【0018】
本発明の一態様による中間相特性は、既存に存在した二相性及び単一相が有している特徴をいずれも含む特性を有している点を確認した。既存二相性製品のように、水をさらに担持することができない特性を有することを、生体内注入試験及び低い臨界変形率を介して確認した。同時に、以前の単一相製品が有していた特性である高い凝集力特性を共に有しているという点を、粘着力テストを利用して確認した。従って、本明細書においては、中間相特性を、臨界変形率及び粘着力の2つのパラメータの組み合わせによって定義する。
【0019】
前記ヒアルロン酸架橋体は、臨界変形率が、0.1%ないし8.0%、例えば、0.5%ないし7.0%、1.0%ないし7.0%、または3.0%ないし7.0%でありながら、粘着力が、3Nないし15N、例えば、4Nないし15N、または4Nないし12Nでもある。
【0020】
また、前記ヒアルロン酸架橋体は、弾性係数(G’)が、400Paないし2,000Pa、例えば、500Paないし1,900Pa、600Paないし1,800Pa、または600Paないし1,700Paでもある。
【0021】
また、前記ヒアルロン酸架橋体は、粘性係数(G”)が100Paないし600Pa、例えば、120Paないし500Pa、150Paないし450Pa、または160Paないし350Paでもある。
【0022】
また、前記ヒアルロン酸架橋体は、圧縮力(compression)が、15N・sないし100N・s、例えば、20N・sないし90N・s、25N・sないし80N・s、または30N・sないし75N・sでもある。
【0023】
また、前記ヒアルロン酸架橋体は、平均注入力が、1Nないし50N、例えば、3Nないし45N、4Nないし40N、または7Nないし35Nでもある。前記平均注入力は、1mLガラス注射器に充填された前記架橋体を、27ケージ(G)、13mm長の針を利用し、12mm/分速度で測定した場合の平均注入力でもある。
【0024】
また、前記ヒアルロン酸架橋体は、平均粒子サイズ(μm)が、30μmないし900μm、例えば、50μmないし750μm、70μmないし650μm、100μmないし600μm、150μmないし500μm、200μmないし450μm、250μmないし400μm、または250μmないし350μmでもある。
【0025】
一具体例において、前記ヒアルロン酸架橋体は、臨界変形率が0.1%ないし8.0%であり、粘着力が3Nないし15Nでありながら、i)弾性係数(G’)が400Paないし2,000Pa、ii)粘性係数(G”)が100Paないし600Pa、iii)圧縮力が15N・sないし100N・s、iv)注入力が1Nないし50N、v)平均粒子サイズ(μm)が30μmないし900μmのうち、1つ、2つ、4つ、または5つの要件を満たす充足するものでもある。
【0026】
他の一具体例において、前記ヒアルロン酸架橋体は、臨界変形率が0.5%ないし7.0%であり、粘着力が3Nないし15Nでありながら、i)弾性係数(G’)が500Paないし1,900Pa、ii)粘性係数(G”)が120Paないし500Pa、iii)圧縮力が20N・sないし90N・s、iv)注入力が3Nないし45N、v)平均粒子サイズ(μm)が50μmないし750μmのうち、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの要件を充足するものでもある。
【0027】
他の一具体例において、前記ヒアルロン酸架橋体は、臨界変形率が1.0%ないし7.0%であり、粘着力が4Nないし15Nであり、弾性係数(G’)が600Paないし1,800Paであり、粘性係数(G”)が150Paないし450Paであり、圧縮力が25N・sないし80N・sであり、注入力が5Nないし40Nであり、平均粒子サイズ(μm)が70μmないし650μmであるものでもある。
【0028】
他の一具体例において、前記ヒアルロン酸架橋体は、臨界変形率が3.0%ないし7.0%であり、粘着力が4Nないし12Nであり、弾性係数(G’)が600Paないし1,700Paであり、粘性係数(G”)が160Paないし350Paであり、圧縮力が30N・sないし75N・sであり、注入力が7Nないし35Nであり、平均粒子サイズ(μm)が100μmないし600μmであるものでもある。
【0029】
前記ヒアルロン酸架橋体において、架橋される前記ヒアルロン酸は、任意の起源に由来するものでもある。架橋される前記ヒアルロン酸は、例えば、非動物体に由来するものでもある。架橋される前記ヒアルロン酸は、バクテリアに由来するものでもある。前記バクテリアは、Streptococcus属由来のものでもある。前記Streptococcus属バクテリアはStreptococcus equi、S.pyogenesまたはS.zooepidemicusでもある。架橋さ前、前記ヒアルロン酸は、また商業的に購入されたものでもある。架橋前、前記ヒアルロン酸の極限粘度(intrinsic viscosity)は、1.0m/kgないし4.0m/kgであるものでもある。
【0030】
前記架橋されたヒアルロン酸は、架橋剤とヒアルロン酸とを含む反応混合物をインキュベーションさせ、架橋反応を進める段階を含む方法によって製造されたものでもある。前記架橋剤は、多官能基を有するものでもある。前記架橋剤は、二作用性エポキシ基を有するものでもある。前記二作用性エポキシ基を有する架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(テトラメチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、トリエチレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、エチレンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル及び1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルからなる群から選択される1以上のものでもある。
【0031】
前記ヒアルロン酸架橋体は、0.5ないし7%の架橋率(cross-link rate)を有するものでもある。前記架橋率は、例えば、0.6ないし7%、0.7ないし7%、0.8ないし7%、0.9ないし7%、1.0ないし7%、1.5ないし7%、2.0ないし7%、2.5ないし7%、3.0ないし7%、1.5ないし4.5%、3.0ないし4.0%、3.2ないし4.0%、3.4ないし3.8%、1.0ないし4.0%、または1.5ないし4.0%でもある。
【0032】
本明細書において、用語「架橋率(cross-link rate(%))」は、ヒアルロン酸のジサッカライド反復単位当たり、共有結合されたヒアルロン酸ジサッカライド反復単位の比率を示す。前記ジサッカライド反復単位は、D-グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンとによってなる。該架橋率は、知られた方法によっても確認される。例えば、イオン交換クロマトグラフィ(IEC:ion exchange chromatography)またはNMRによっても確認される。該イオン交換クロマトグラフィは、固定相と移動相との間で可逆的なイオン交換を行い、試料イオンの固定相に対する親和性の差を利用し、分離して分析する方法である。IECを使用する場合、該架橋率の算式は、次の通りである。
【0033】
架橋率(%)=Σ(ピーク面積xヒアルロン酸のジサッカライド反復単位の数x架橋されたジサッカライド反復単位の比率)x100/Σ(ピーク面積xヒアルロン酸のジサッカライド反復単位の数)
前記ヒアルロン酸架橋体は、単一相でもなく、二相性でもない中間相特性を有するものでもある。前記ヒアルロン酸架橋体は、単一相架橋されたヒアルロン酸架橋体と類似して、高い凝集力特性を有すると共に、二相性架橋されたヒアルロン酸と類似して、水をさらに担持することができない特性を有するものでもある。
【0034】
他の態様は、前述のヒアルロン酸架橋体を含む充填剤(filler)組成物を提供する。
【0035】
前記組成物において、前記架橋されたヒアルロン酸ゲルの最終濃度は、10mg/ml以上、15mg/ml以上、18mg/ml以上または19mg/ml以上でもある。例えば、前記架橋されたヒアルロン酸の濃度は、10ないし30mg/ml、12ないし28mg/ml、14ないし26mg/ml、16ないし24mg/ml、18ないし22mg/ml、または約20mg/mlであるものでもある。
【0036】
前記組成物は、個体において、組織修復のために使用されるものでもある。
【0037】
前記組成物において、前記個体は、哺乳動物でもある。前記哺乳動物は、ヒト、犬、猫、牛、豚、ラットまたは羊でもある。
【0038】
前記組成は、架橋されていないヒアルロン酸を追加して含まないのである。架橋されていないヒアルロン酸を「さらに含む」というのは、ヒアルロン酸架橋体に架橋されていないヒアルロン酸を人為的にさらに添加することを意味するものであり、架橋されていないヒアルロン酸をさらに含まないというのは、ヒアルロン酸架橋体に架橋されていないヒアルロン酸を人為的にさらに添加しないことを意味する。
【0039】
前記組成物は、麻酔剤をさらに含むものでもある。前記麻酔剤は、局所麻酔剤でもある。前記麻酔剤は、アンブカイン(ambucaine)、アモラノン(amolanone)、アミロカイン(amylocaine)、ベノキシネート(benoxinate)、ベンゾカイン(benzocaine)、ベトキシカイン(betoxycaine)、ビフェナミン(biphenamine)、ブピバカイン(bupivacaine)、ブタカイン(butacaine)、ブタンベン(butamben)、ブタニリカイン(butanilicaine)、ブテタミン(butethamine)、ブトキシカイン(butoxycaine)、カルチカイン(carticaine)、クロロプロカイン(chloroprocaine)、コカエチレン(cocaethylene)、コカイン(cocaine)、シクロメチカイン(cyclomethycaine)、ジブカイン(dibucaine)、ジメチソキン(dimethysoquin)、ジメトカイン(dimethocaine)、ジペロドン(diperodon)、ジシクロニン(dycyclonine)、エクゴニジン(ecgonidine)、エクゴニン(ecgonine)、エチルクロリド(ethylchloride)、エチドカイン(etidocaine)、ベータ-オイカイン(beta-eucaine)、ユープロシン(euprocin)、フェナルコミン(fenalcomine)、ホルモカイン(formocaine)、ヘキシルカイン(hexylcaine)、ヒドロキシテトラカイン(hydroxytetracaine)、イソブチルp-アミノベンゾエート(isobutyl p aminobenzoate)、ロイシノカインメシレート(leucinocaine mesylate)、レボキサドロール(levoxadrol)、リドカイン(lidocaine)、メピバカイン(mepivacaine)、メプリルカイン(meprylcaine)、メタブトキシカイン(metabutoxycaine)、メチルクロリド(methylchloride)、ミルテカイン(myrtecaine)、ナエパイン(naepaine)、オクタカイン(octacaine)、オルトカイン(orthocaine)、オキセサゼイン(oxethazaine)、パレトキシカイン(parethoxycaine)、フェナカイン(phenacaine)、フェノール(phenol)、ピペロカイン(piperocaine)、ピリドカイン(piridocaine)、ポリドカノール(polidocanol)、プラモキシン(pramoxine)、プリロカイン(prilocaine)、プロカイン(procaine)、プロパノカイン(propanocaine)、プロパラカイン(proparacaine)、プロピオカイン(propipocaine)、プロポキシカイン(propoxycaine)、シュードコカイン(psuedococaine)、ピロカイン(pyrrocaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、サリチルアルコール(salicyl alcohol)、テトラカイン(tetracaine)、トリカイン(tolycaine)、トリメカイン(trimecaine)、ゾラミン(zolamine)、及びそれらの塩からなる群から選択されるもののうち1種以上でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0040】
前記組成物は、タンパク質、ヒアルロン酸と異なるグリコサミノグリカン及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される薬剤学的に活性である物質は、含まないのである。
【0041】
前記組成物は、注射器に充填されているものでもある。
【0042】
前記組成物は、顔面部整形、しわ改善、顔面輪郭術、乳房整形、乳房増大術、性器増大、亀頭増大、尿失禁治療及び関節炎治療からなる群から選択される1以上の用途に使用するためのものでもある。
【0043】
前記組成物において、1ml注射器に充填された前記組成物を、27ケージ(G)、13mmの針を利用し、12mm/分速度で測定した場合、注入力が50N以下のものでもある。前記注入力は、例えば、1ないし50N、3ないし45N、4ないし40N、または5ないし35Nでもある。
【0044】
前記組成物は、薬剤学的に許容可能な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むものでもある。前記担体は、例えば、水またはバッファを含むものでもある。前記バッファは、溶液のpHが、前記組成物の成分の添加と共に、ほとんど変化しないようにするものでもある。前記組成物は、水性液体組成物でもある。前記組成物は、水性緩衝された組成物でもある。前記水性緩衝された組成物のpHは、生理的pH範囲、例えば、約6.0から8.0までの間でもある。前記pHは、HCl、NaCOまたはNaOHのような適切な酸または塩基を添加することによっても調整される。一具体例において、前記水性緩衝された組成物は、リン酸緩衝食塩水(PBS:phosphate buffered saline)を含むものでもある。他の具体例において、前記水性緩衝された組成物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)を含むものでもある。一部具体例において、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化カリウムのようなさらなる溶質(solutes)が、オスモル濃度(osmolarity)及びイオン濃度を調整するためにも添加される。
【0045】
前記組成物は、前記架橋されたヒアルロン酸が、水性溶媒内に懸濁されたものでもある。前記水性溶媒は、PBSのようなバッファ、水または塩水でもある。前記組成物は、滅菌されたものでもある。
【0046】
前記組成物は、容器に含まれたものでもある。前記容器は、注射器でもある。前記組成物は、使用前、事前に注射器に充填されたものでもある。前記組成物は、事前充填された注射器によって投与されるものでもある。
【0047】
他の態様は、前述の組成物を含む装置を提供する。前記装置は、事前充填された注射器でもある。前記装置は、滅菌されたものでもある。
【0048】
他の態様は、前述の事前充填された注射器を含むキットを提供する。前記キットは、前記組成物を投与することに係わる情報を含むマニュアルを含むものでもある。
【0049】
他の態様は、治療学的に有効な量の前述の組成物を個体に投与する段階を含む、個体の組織を充填する方法を提供する。前記方法は、個体の組織の増強、修復または強化、あるいは体腔充填のためのものでもある。該観点において、体積増強(volume augmentation)は、フィラ組成物を形成する成分による体積が長く持続される増大でもある。前記フィラ組成物を形成する成分は、迅速な拡散を経ないものでもある。前記方法において、「組成物」及び「個体」については、前述の通りである。前記投与は、真皮内のような皮膚、または関節腔内に投与するものでもある。前記方法において、前記投与は、注射器、例えば、事前充填された注射器を介し、皮膚、例えば、真皮内に投与するものでもある。前記方法において、前記投与は、1回当り0.1ないし50ml、0.5ないし30ml、0.5ないし20ml、0.5ないし15ml、または0.8ないし12mlを投与するものでもある。前記方法において、前記投与は、前記組成物を3ヵ月以上の期間当たり1回、4ヵ月以上の期間1回、5ヵ月以上の期間1回、6ヵ月以上の期間当たり1回、12ヵ月以上の期間当たり1回、または18ヵ月以上の期間当たり1回投与するものでもある。
【発明の効果】
【0050】
単一相架橋されたヒアルロン酸ゲルと類似して、高い凝集力特性を有すると共に、二相性架橋されたヒアルロン酸ゲルと類似して、水を担持することができない特性を有する架橋されたヒアルロン酸、及びその用途が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】架橋されたヒアルロン酸を、無毛マウスに注入して測定された注入部位の最大体積を、初期注入部位体積に対比させて示した図面である。
図2】架橋されたヒアルロン酸試料が、無毛マウスに注入された後、注入されたヒアルロン酸ゲルの体積を、注入以後に経過した時間によって示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明について、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0053】
材料及び方法
下記実施例において、以下の材料及び方法を使用した。
【0054】
(1)材料:架橋されたヒアルロン酸製品
対照群として、下記のような市販されている架橋されたヒアルロン酸製品を使用した。単一相ヒアルロン酸(monophasic hyaluronic acid)として、アラガン(Allergan)社のジュビダーム・ボリューマ・リドカイン(Juvederm Voluma Lidocaine)、韓米薬品社のググフィル、及びメディトックス社のニューラミス・ボリューム・リドカイン(Neuramis Volume Lidocaine)を購入した。また、二相性ヒアルロン酸(biphasic hyaluronic acid)として、ガルデルマ(Galderma)社のレスチレン・リフト・リドカイン(Restylane Lyft Lidocaine)を購入した。
【0055】
(2)方法
(2.1)臨界変形率(critical strain)測定方法
臨界変形率は、変形スウィープテスト(strain-sweep test)によって測定した。具体的には、DHR-2レオメータ機器(TA Instruments社)を駆動させた。該変形スウィープテストは、機器温度を25℃に設定し、直径25mmジオメトリを装着し、補正(calibration)を行った。適切な量の試料を、前記機器のペルチェプレートの上部及び下部のジオメトリ間中央に積載した。試料は、不足しないように、十分な量を過積載(over-loading)し、ジオメトリ下部面積外の残余物を削り取るにしても、ジオメトリの横面及び上面に付かないほどの適切な量を積載した。ジオメトリを設定した間隔まで下げた後、試料がジオメトリ下に良好に充填されているか否かということを確認した後、ジオメトリ外にある残余試料を削り取って除去した(trimming)。その後、ジオメトリを利用し、試料に0.1ないし1,000%までの変形(strain)を加えたとき、各変形率で測定される弾性係数値を測定した。変形率%(strain %)にlogを取った値をx軸に、弾性係数をy軸にし、セミロググラフを描いた。該グラフ値を微分したグラフを描いたときに生ずる最小値yを有する変形率%値うち、最も低い変形率%値を臨界変形率と定義した。
【0056】
(2.2)粘着力測定方法
粘着力は、下記のように測定した。DHR-2レオメータ機器(TA Instruments)を駆動させた。該粘着力テストは、機器温度を25℃に設定し、直径40mmジオメトリを装着して補正を行った。適切な量の試料を、前記機器のペルチェプレートの上部及び下部のジオメトリ間中央に積載した。試料は、不足しないように十分な量を過積載し、ジオメトリの横面及び上面に付かないほどの適切な量を積載した。ジオメトリを設定した間隔まで下げた後、ジオメトリ下に試料が良好に充填されているか否かということを確認した後、ジオメトリ外にある残余試料を削り取って除去した。その後、ジオメトリギャップを1,000μm高にし、下部ペルチェプレートから垂直軸方向に、100.0μm/sの一定した速度で180秒間引っ張るとき、ジオメトリにかかる力を測定した。ジオメトリとペルチェプレートとの間にある試料が有している粘着力により、初期試料が落ちる瞬間、最大の力が測定されることになり、当該力を粘着力と定義した。
【0057】
(2.3)粘弾性測定方法
DHR-2レオメータ機器(TA Instruments)を駆動させた。粘弾性テストは、機器温度を25℃に設定し、直径40mmジオメトリを装着して補正を行った。適切な量の試料を、前記機器のペルチェプレートの上部及び下部のジオメトリ間中央に積載した。試料は、不足しないように十分な量を過積載し、ジオメトリの横面及び上面に付かないほどの適切な量を積載した。ジオメトリを設定した間隔まで下げた後、ジオメトリ下に試料が充填されているか否かということを確認した後、ジオメトリ外にある残余試料を削り取って除去した。その後、ジオメトリを、一定変形率でもって、特定周波数(frequency)により、周期的に剪断変形率(shear strain)を試料に加え、そこから得られる弾性率(modulus)値のうち、約0.1Hz周波数時の保存弾性率(storage modulus)値及び損失弾性率(loss modulus)値をそれぞれ弾性及び粘性と定義した。
【0058】
(2.4)注入力測定方法
注入力測定は、MecmesinのMultitest 2.5-i Universal Testing Machineを使用して測定した。機器に加えられる力を測定するロードセル(load cell)は、注入力測定範囲より高い許容値を有する適切なロードセルを装着して使用した。機器ロードセルの下部分に、試料が入っている注射器を置き、当該注射器に、27G 1/2”注射針を結合した。該注射器には、終端部分が平たいプランジャを置き、ロードセルが力を加えるとき、一定に力が加えられうるようにした。該ロードセル部分がプランジャの終端部分に達する直前まで、距離を調節した後、12mm/分の速度で、ロードセルを利用してプランジャ部分を押し、加えられる力を測定した。測定値の初期部分及び終り部分の場合、試料が注射針に流れて入るときに生ずる圧力値が、注射器を入れるときに生じる圧力より低い。また、注入物の注入がほとんど完了したときには、試料がないにもかかわらず、続けて力を加える場合が生じ、そのときには、加えられる力が試料の注入力とは関係ない力である。従って、試料が注射針に流れる部分、及び注入がほとんど完了した部分に該当する値は除き、測定される値の初期注入力値及び末期注入力値を除いた注射器充填液の中間部分で測定した注入力値の平均を注入力として定義した。
【0059】
(2.5)圧縮力測定方法
DHR-2レオメータ機器(TA Instruments)を駆動させた。圧縮力テストは、機器温度を25℃に設定し、直径25mmジオメトリを装着して補正を行った。1mLほどの試料を、前記機器のペルチェプレートの上部及び下部のジオメトリ間中央に積載した。ジオメトリを設定した間隔まで下げた後、ジオメトリを遅い速度で回転させ、試料がジオメトリ基準で真ん中に来ることができるように調節した。その後、13.33μm/sの一定した速度で、2,500μmで900μm位置になるまで、ジオメトリを下に下げながら、ジオメトリに加えられる力を測定した。圧縮力は、試験開始から最後まで測定された力をY軸に、動いた時間をX軸にしたグラフを描いたとき、グラフの積分値であるグラフ下の面積値に該当する値を圧縮力と定義した。
【0060】
(2.6)粒度測定方法
粒度測定は、Microtrac社のParticle Size Analyzer S3500を利用して行う。該粒度測定は、溶媒に試料を添加して行い、レーザ回折分析法を利用して行う。該溶媒は、蒸溜水を利用して測定する。遂行前、試料投入口を、十分に蒸溜水を利用して洗浄した後、蒸溜水の屈折率、及び試料の屈折率を、それぞれ1.33、1.37として入力し、試料の類型を、透明であって不規則な様相を有する粒子と設定する。測定前、機器試料投入口に蒸溜水を充填した後、試料をチューブなどに投入した後、過量の蒸溜水を入れて希釈した後、ボルテックス(vortex)などを利用し、試料を十分に分散させた後、機器に投入して測定を実施する。測定結果値のうち、平均粒子サイズ(D50)をデータとして使用した。
【0061】
実施例:架橋されたヒアルロン酸の製造及び物性の確認
1.架橋されたヒアルロン酸の製造
臨界変形率が0.1%ないし8%であり、粘着力が3Nないし15Nであるヒアルロン酸架橋体(以下、「実験群」と言う)を次のように製造した。
【0062】
実験群1:
まず、1%(w/w)NaOH溶液を製造した。製造された1% NaOH溶液に、5gのヒアルロン酸ナトリウム(IV 1.7ないし1.9)を14.50%(w/w)になるように混合した後で撹拌し、十分に溶解させた。ここで、IVは、固有粘度(intrinsic viscosity)を示す。該溶液に、0.528gのブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE:butanediol diglycidyl ether)(Sigma-Aldrich)を入れ、追加して撹拌し、良好に混じるようにした後、取り出し、25℃で18時間架橋反応を進め、架橋されたヒアルロン酸ゲルを製造した。次に、得られた架橋されたゲルを透析膜に入れた後で密封し、1mol/kg NaCl水溶液及び1x PBS水溶液を透析液にし、透析を進めた。透析完了後、架橋及び透析が完了したヒアルロン酸ナトリウムの重さを、損失率を勘案して計算して算出し、総ヒアルロン酸ナトリウムの濃度が2%(w/w)になるように、1x PBSを利用して含量補正を進め、このとき、リドカイン塩酸塩水和物の場合、0.3%(w/w)になるように含量補正を進めた。その結果、架橋されたヒアルロン酸が2%(w/w)含有され、リドカインが0.3%含有されたPBS溶液を製造した。製造された架橋されたヒアルロン酸含有溶液1mlを、ガラス注射器に充填を実施した後、高温蒸気滅菌を実施した。
【0063】
実験群2:
まず、1%(w/w)NaOH溶液を製造した。製造された1% NaOH溶液に、5gのヒアルロン酸ナトリウム(IV 1.7ないし1.9)が14.0%(w/w)になるように混合した後で撹拌し、6時間溶解させた。該の溶液に、0.428gのブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)(Sigma-Aldrich)を入れ、10分間追加して撹拌し、良好に混じるようにした後で取り出し、25℃で18時間放置し、架橋反応を進め、架橋されたヒアルロン酸ゲルを製造した。次に、実験群1と同一に、透析及び含量補正を進めた後、ガラス注射器に充填した。
【0064】
実験群3:
まず、1%(w/w)NaOH溶液を製造した。製造された1% NaOH溶液に、5gのヒアルロン酸ナトリウム(IV1.7ないし1.9)が、15.0%(w/w)になるように混合した後で撹拌し、6時間溶解させた。該溶液に、0.251gのブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)(Sigma-Aldrich)を入れ、10分間追加して撹拌し、良好に混じるようにした後で取り出し、40℃で18時間放置し、架橋反応を進め、架橋されたヒアルロン酸ゲルを製造した。次に、実験群1と同一に、透析及び含量補正を実施した後、ガラス注射器に充填した。
【0065】
比較群1ないし3:
比較群1ないし3の架橋されたヒアルロン酸は、ヒアルロン酸溶解濃度、BDDE添加量、架橋温度及び架橋時間を、下記表1に記載された通りにしたことを除いては、実験群1と同一に製造した。表1は、実験群1ないし3、及び比較群1ないし3の架橋されたヒアルロン酸製造に使用された物質及び条件を示す。BDDE濃度の場合、投入されたヒアルロン酸(HA)の単一体(monomer)のモル数対比で投入されたBDDEモルの%を示す。
【表1】
当該の実験群及び比較群の製造サンプルにつき、触覚を介する官能評価を実施した。すなわち、製造された物質がいかなる相を有しているかということにつき、触覚を介して確認し、単一相の場合、粒子に触れることができず、二相性の場合、粒子が砂粒のように触られることを、触覚を介して確実に確認することができた。該官能評価において、実験群1ないし3の架橋されたヒアルロン酸ゲルは、単一相でもなく、二相性でもないゲル形状を有していた。一方、比較群1ないし3の架橋されたヒアルロン酸ゲルは、単一相を有すると、官能評価を介して確認された。
【0066】
比較群4ないし7:
比較群4ないし6として、単一相架橋されたヒアルロン酸であるアラガン(Allergan)社のジュビダーム・ボリューマ・リドカイン(Juvederm Voluma Lidocaine)(比較群4)、韓米薬品社のググフィル(比較群5)、及びメディトックス社のニューラミス・ボリューム・リドカイン(Neuramis Volume Lidocaine)(比較群6)をそれぞれ使用した。また、比較群7として、二相性架橋されたヒアルロンであるガルデルマ(Galderma)社のレスチレン・リフト・リドカイン(Restylane Lyft Lidocaine)(比較群7)を使用した。
【0067】
2.製造された架橋されたヒアルロン酸の物理的特性分析
1.で製造された架橋ヒアルロン酸ゲルの物理的特性を分析した。製造された架橋されたヒアルロン酸実験群1ないし3、及び比較群1ないし7について測定された物性は、表2に示した通りである。
【表2】
表2において、注入力は、取り立てて言及がない限り、27Gの13mm注射針を使用した場合の注入力を示す。
【0068】
3.製造された架橋されたヒアルロン酸を動物に適用するときの上昇及び体積増加の影響測定:上昇及び体積増加の試験(lifting and volumizing test)
実験群2及び3、比較群1,2,3,4、5,6及び7の架橋されたヒアルロン酸、及び陰性対照群としての塩水(saline)を動物に注入し、注入部位の高さ、最大長及び体積を測定した。該動物は、無毛マウス(SKH1-hr)6週齢メス(18.0~24.0gで平均22.3g)総84匹を使用した。1試料当たり8匹を使用し、対照群である塩水については、4匹を使用した。
【0069】
具体的には、前述の架橋されたヒアルロン酸試料それぞれを、前記無毛マウス1匹当たり、1つの背中側領域部位(dorsal region site)の皮下に、0.1mlをガラス注射器を使用して投与した。注入後、指定された日付により、Primose装置(Primos 5.8E(Canfield Scientific Inc, NJ, 米国))を使用し、注入部位の高さ、注入物の最大長及び体積を測定した。同時に、注入部位を肉眼で観察し、写真撮影を行った。肉眼観察の結果、比較群1,2,3,4,5及び6が腫れ(swelling)を示した。
【0070】
図1は、架橋されたヒアルロン酸を、無毛マウスに注入して測定された注入部位の最大体積を、初期注入部位体積に対比させて示した図面である。図1に示されているように、実験群2,3及び比較群7の体積増加が、比較群1,2,3,4及び5より小さいということを確認した。それは、実験群2及び3の架橋されたヒアルロン酸ゲルが、注入部位において、腫れ(swelling)を小さく引き起こすということを示す。
【0071】
図2は、ヒアルロン酸架橋ゲルを皮内に注入した後、180日まで体積変化を観察したものである。図2に示されているように、単一相の場合、注入後4週で、比較群2及び5の架橋されたヒアルロン酸の体積は、初期体積対比で、それぞれ168%及び143%増大した。図2に示されているように、注入後180日で、実験群2及び3の架橋されたヒアルロン酸は、体積が異なる比較群及び対照群に比べ、大きいか、あるいはそれらと同等であった。それは、実験群2及び3の架橋されたヒアルロン酸が180日が経過する間、損失が相対的に少ないということを示す。すなわち、実験群2及び3の架橋されたヒアルロン酸は、他の比較群及び対照群に比べ、生体内持続性にすぐれている。
【0072】
結論として、実験群2及び3は、比較群1,2,3,4,5及び6に比べ、注入後、腫れ(swelling)現象が小さく示されるので、注入後の体積変化が小さいということを確認し、注入後180日までの体積が、比較群1,2,3,4,5及び6と同等であり、比較群7に比べ、すぐれていると確認し、生体内持続性にすぐれていることを確認した。
【0073】
4.製造された架橋ヒアルロン酸ゲルを動物に適用するときの刺激性測定:刺激試験(irritation test)
実験群2及び3、比較群1,2,3,4,5,6及び7の架橋されたヒアルロン酸、及び陰性対照群としての塩水(saline)を動物に注入し、注入部位において、刺激誘発程度につき、紅斑及び浮腫を測定して確認した。該実験は、ISO 109993-10「Tests for irritation and skin sensitization」に記載されたガイドラインにより、(株)Knotus(韓国)に委託して行った。動物は、ニュージーランド白兎(New Zealand White Rabbit)オスをISO 10993-10に基づいて選定し、総12匹使用した。1つの試料当たり3匹を使用した。具体的には、前述の架橋されたヒアルロン酸試料それぞれを、前述の兎1匹当たり200μlを、背中側領域部位(dorsal region site)の皮下5ヵ所に投与し、45日間観察した。注入後、前記ガイドラインにより、紅斑及び浮腫を評価して点数化した。各試料に係わる点数を、塩水を使用した対照群との評価点数の差を、累積合算値に係わる部位(site)別に平均を求めた。その結果、試料が投与された全ての動物において、紅斑は観察されていない。表3は、兎に、架橋されたヒアルロン酸試料を投与し、3日及び45日目に観察された浮腫点数(erythema score)を示した表である。試料が投与された動物において、投与群間における浮腫点数(erythema score)は、統計的に有意な違いは、なかった。
【表3】
前記ISO 109993-10ガイドラインによれば、3日までの紅斑及び浮腫の形成を測定した結果、実験群2,3及び比較群5,6の試料が、前記ガイドラインの基準に適した。従って、注入3日目の浮腫形成結果から、実験群2及び3の試料は、他の比較群試料に対比し、同等であるか、あるいはすぐれた効果を示した。
【0074】
前述の実施例において、実験群2及び3の架橋されたヒアルロン酸ゲルが、動物注入時、体積上昇抵抗性及び低刺激性の側面において、他の比較群の架橋されたヒアルロン酸ゲルに比べ、すぐれた特性を有するということを確認した。
図1
図2
【国際調査報告】