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特表2023-518184高フェニルアラニン血症を軽減するように遺伝子改変された微生物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】高フェニルアラニン血症を軽減するように遺伝子改変された微生物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/60 20060101AFI20230421BHJP
   C12N 9/88 20060101ALI20230421BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20230421BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230421BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230421BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230421BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20230421BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20230421BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20230421BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 38/51 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 35/66 20150101ALI20230421BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20230421BHJP
【FI】
C12N15/60
C12N9/88 ZNA
C12N15/31
C12N1/21
C12N1/15
C12N1/19
C12N15/63 Z
A61K35/744
A61K35/745
A61K35/742
A61P13/02
A61P7/00
A61P3/00
A61P1/16
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K38/51
A61K35/66
A61K35/74
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554871
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 US2021023003
(87)【国際公開番号】W WO2021188819
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】62/992,637
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/017,755
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】517196203
【氏名又は名称】シンロジック オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン アドルフセン
(72)【発明者】
【氏名】ペル グレイセン
(72)【発明者】
【氏名】イゾルデ キャラハン
(72)【発明者】
【氏名】アダム ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ スプーナモア
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ コニエツカ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050LL01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA01
4C084DC26
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC211
4C084ZC212
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC30
4C087BC33
4C087BC34
4C087BC56
4C087BC59
4C087BC61
4C087BC68
4C087CA08
4C087CA12
4C087MA52
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA51
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZC02
4C087ZC21
(57)【要約】
遺伝子組換えされた細菌、その医薬組成物、及び高フェニルアラニン血症に関連する疾患を調整または治療する方法について開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突然変異型フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)ポリペプチドであって、野生型PALと比較して、92位、133位、167位、432位、470位、433位、263位、366位及び396位から選択されるアミノ酸において1つ以上の突然変異を含む、前記突然変異型フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)ポリペプチド。
【請求項2】
野生型PALと比較して、S92位、H133位、I167位、L432位、V470位、A433位、A263位、K366位、及び/またはL396位から選択されるアミノ酸において1つ以上の突然変異を含む、請求項1に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項3】
前記野生型PALは、Photorhabdus luminescens PALである、請求項1または2に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項4】
前記Photorhabdus luminescens PALは、配列番号を含む、請求項3に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項5】
前記突然変異は、S92G;H133M;I167K;L432I;V470Aを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項6】
前記突然変異は、S92G;H133F;A433S;V470Aを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項7】
前記突然変異は、S92G;H133F;A263T;K366K(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異);L396L(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異);V470Aを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドは、前記野生型PALと比較してフェニルアラニンを代謝する強化された能力を示す、請求項1~7のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項9】
前記ポリペプチドは、前記野生型PALと比較して、少なくとも2倍の、フェニルアラニンを代謝する能力の強化を示す、請求項1~8のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドは、前記野生型PALと比較して、少なくとも3倍の、フェニルアラニンを代謝する能力の強化を示す、請求項1~9のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項11】
前記ポリペプチドは、前記野生型PALと比較して、少なくとも4倍の、フェニルアラニンを代謝する能力の強化を示す、請求項1~10のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドは、前記野生型PALと比較して、少なくとも5倍の、フェニルアラニンを代謝する能力の強化を示す、請求項1~11のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項13】
前記野生型PALと比較した前記フェニルアラニンを代謝する能力の強化は、フェニルアラニン、馬尿酸塩、及び/またはトランス-ケイ皮酸のレベルを検出することによって測定される、請求項8~12のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチド。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項14に記載のポリヌクレオチドを含む遺伝子発現システム。
【請求項16】
前記突然変異型PALをコードする前記ポリヌクレオチドは、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項15に記載の遺伝子発現システム。
【請求項17】
前記プロモーターは、誘導性プロモーターである、請求項16に記載の遺伝子発現システム。
【請求項18】
前記誘導性プロモーターは、IPTG誘導性プロモーターである、請求項17に記載の遺伝子発現システム。
【請求項19】
前記誘導性プロモーターは、温度調節されたプロモーターまたは酸素レベル依存性プロモーターである、請求項17に記載の遺伝子発現システム。
【請求項20】
前記酸素レベル依存性プロモーターは、フマル酸塩及び硝酸還元酵素調節因子(FNR)プロモーター、アルギニンデイミナーゼ及び硝酸還元(ANR)プロモーター、ならびに異化型硝酸呼吸調節因子(DNR)プロモーターを含む、請求項19に記載の遺伝子発現システム。
【請求項21】
野生型PALをコードする遺伝子をさらに含む、請求項15~20のいずれか1項に記載の遺伝子発現システム。
【請求項22】
前記野生型PALは、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項21に記載の遺伝子発現システム。
【請求項23】
L-アミノ酸デアミナーゼ(LAAD)をコードする遺伝子をさらに含む、請求項15~22のいずれか1項に記載の遺伝子発現システム。
【請求項24】
前記LAADをコードする遺伝子は、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項23に記載の遺伝子発現システム。
【請求項25】
フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子をさらに含む、請求項15~24のいずれか1項に記載の遺伝子発現システム。
【請求項26】
前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子は、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項25に記載の遺伝子発現システム。
【請求項27】
請求項1~13のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子(複数可)または請求項15~26のいずれか1項に記載の遺伝子発現システムを含む遺伝子組換えされた微生物。
【請求項28】
請求項1~13のいずれか1項に記載の突然変異型PALをコードする1つ以上の遺伝子(複数可)を含む遺伝子組換えされた微生物であって、前記突然変異型PALは、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、前記遺伝子組換えされた微生物。
【請求項29】
前記プロモーターは、誘導性プロモーターである、請求項28に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項30】
前記誘導性プロモーターは、IPTG誘導性プロモーターである、請求項29に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項31】
前記誘導性プロモーターは、温度調節されたプロモーターまたは酸素レベル依存性プロモーターである、請求項29に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項32】
前記酸素レベル依存性プロモーターは、FNR、ANR、及びDNRプロモーターを含む、請求項31に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項33】
野生型PALをコードする遺伝子をさらに含む、請求項28~32のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項34】
前記野生型PALをコードする遺伝子は、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項33に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項35】
LAADをコードする遺伝子をさらに含む、請求項28~34のいずれかに記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項36】
前記LAADは、自然界における遺伝子と関連のない誘導性プロモーターに操作可能に連結される、請求項35に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項37】
フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子をさらに含む、請求項28~36のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項38】
前記フェニルアラニン輸送体は、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項37に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項39】
遺伝子組換えされた微生物であって、
(a)請求項1~13のいずれか1項に記載の突然変異型PALポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子(複数可)であって、前記ポリペプチドは、自然界における遺伝子(複数可)と関連のないIPTG誘導性プロモーター、温度調節されたプロモーター、または酸素レベル依存性プロモーターに操作可能に連結される、前記1つ以上の遺伝子(複数可)と、
(b)フェニルアラニン輸送体をコードする1つ以上の遺伝子(複数可)であって、前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)は、自然界における遺伝子(複数可)と関連のない誘導性プロモーターに操作可能に連結される、前記1つ以上の遺伝子(複数可)と、任意選択で、
(c)L-アミノ酸デアミナーゼ(LAAD)をコードする1つ以上の遺伝子(複数可)であって、前記LAADをコードする遺伝子(複数可)は、自然界における遺伝子(複数可)と関連のない誘導性プロモーターに操作可能に連結される、前記1つ以上の遺伝子(複数可)と、を含む、前記遺伝子組換えされた微生物。
【請求項40】
前記PALをコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーター及び前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーターは、同じプロモーターの別々のコピーである、請求項38または39に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項41】
前記PALをコードする遺伝子(複数可)及び前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)は、同じプロモーターの同じコピーに操作可能に連結される、請求項38または39に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項42】
前記LAADをコードする遺伝子(複数可)は、前記PALをコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーター、及び前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーターとは異なるプロモーターに操作可能に連結される、請求項36~41のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項43】
前記PALをコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーター、前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーター、及び前記LAADをコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーターは、外因的な環境条件によって誘導される、請求項36~42のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項44】
前記PALをコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーター、及び前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーターは、哺乳動物の腸内で見られる外因的な環境条件によって誘導される、請求項38~43のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項45】
前記PALをコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーター、及び前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーターは、哺乳動物の小腸内で見られる外因的な環境条件によって誘導される、請求項44に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項46】
前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーターは、低酸素環境または嫌気的条件下で誘導されるプロモーター、温度調節されたプロモーター、及びアラビノース、IPTG、テトラサイクリン、またはラムノースによって誘導されるプロモーターからなる群から選択される、請求項38~45のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項47】
前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)に操作可能に連結された前記プロモーターは、FNR応答性プロモーターである、請求項46に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項48】
前記LAADをコードする遺伝子は、哺乳動物の腸内で天然に存在する環境因子によって誘導されるプロモーターの制御下にある、請求項36~47のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項49】
前記LAADをコードする遺伝子は、哺乳動物の腸内で天然に存在しない環境因子によって誘導されるプロモーターの制御下にある、請求項36~47のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項50】
前記LAADをコードする遺伝子は、アラビノース、IPTG、テトラサイクリン、またはラムノースによって誘導されるプロモーターの制御下にある、請求項49に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項51】
前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)は、前記微生物内の染色体上に位置する、請求項37~50のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項52】
前記フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子(複数可)は、前記微生物内のプラスミド上に位置する、請求項37~50のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項53】
前記PALをコードする遺伝子(複数可)は、前記微生物内のプラスミド上に位置する、請求項28~52のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項54】
前記PALをコードする遺伝子(複数可)は、前記微生物内の染色体上に位置する、請求項28~52のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項55】
前記LAADをコードする遺伝子(複数可)は、前記微生物内のプラスミド上に位置する、請求項35~54のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項56】
前記LAADをコードする遺伝子(複数可)は、前記微生物内の染色体上に位置する、請求項35~54のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項57】
前記フェニルアラニン輸送体は、PhePである、請求項37~56のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項58】
前記微生物は、前記微生物が哺乳動物の腸内に存在する際に補完される遺伝子における栄養要求体である、請求項27~57のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項59】
前記哺乳動物の腸は、ヒトの腸である、請求項58に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項60】
前記微生物は、ジアミノピメリン酸またはチミジン生合成経路内の酵素の栄養要求体である、請求項59に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項61】
前記微生物は、前記微生物にとって有毒な物質をコードする遺伝子を含むようにさらに遺伝子改変され、前記遺伝子は、哺乳動物の腸内で天然に存在しない環境因子によって誘導されるプロモーターの制御下にある、請求項27~60のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項62】
前記温度調節されたプロモーターは、37℃~42℃の温度で誘導される、請求項30及び33~61のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項63】
前記温度調節されたプロモーターは、ラムダCI誘導性プロモーターである、請求項62に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項64】
温度感受性CI抑制因子突然変異をコードする1つ以上の遺伝子(複数可)をさらに含む、請求項62または63に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項65】
前記温度感受性CI抑制因子突然変異は、CI857である、請求項64に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項66】
前記温度感受性CI抑制因子突然変異をコードする1つ以上の遺伝子(複数可)は、FNR応答性プロモーター、またはアラビノース、IPTG、テトラサイクリンもしくはラムノースによって誘導されるプロモーターの制御下にある、請求項64または65に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項67】
温度感受性CI抑制因子突然変異をさらに含み、前記LAADをコードする遺伝子(複数可)及び前記温度感受性CI抑制因子突然変異をコードする遺伝子は、同じプロモーターの制御下にある、請求項36~63のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項68】
前記プロモーターは、アラビノース、IPTG、テトラサイクリン、またはラムノースの存在によって直接的または間接的に誘導される、請求項67に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項69】
前記LAADをコードする遺伝子(複数可)は、FNR応答性プロモーターの制御下にある、請求項36~48及び51~67のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項70】
前記温度感受性CI抑制因子突然変異をコードする遺伝子(複数可)は、前記微生物内のプラスミド上に位置する、請求項64~69のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項71】
前記温度感受性CI抑制因子突然変異をコードする遺伝子(複数可)は、前記微生物内の染色体上に位置する、請求項64~69のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項72】
請求項1~13のいずれか1項に記載の突然変異型PALをコードする1つ以上の遺伝子(複数可)を含む遺伝子組換えされた微生物を含む医薬組成物。
【請求項73】
前記突然変異型PALは、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項72に記載の医薬組成物。
【請求項74】
前記プロモーターは、誘導性プロモーターである、請求項73に記載の医薬組成物。
【請求項75】
前記誘導性プロモーターは、IPTG誘導性プロモーターである、請求項74に記載の医薬組成物。
【請求項76】
前記プロモーターは、温度調節されたプロモーターまたは酸素レベル依存性プロモーターである、請求項75に記載の医薬組成物。
【請求項77】
前記酸素レベル依存性プロモーターは、FNR、ANR、及びDNRプロモーターを含む、請求項76に記載の医薬組成物。
【請求項78】
野生型PALをコードする遺伝子をさらに含む、請求項72~77のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項79】
前記野生型PALをコードする遺伝子は、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項80】
LAADをコードする遺伝子をさらに含む、請求項72~79のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項81】
前記LAADは、自然界における遺伝子と関連のない誘導性プロモーターに操作可能に連結される、請求項80に記載の医薬組成物。
【請求項82】
フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子をさらに含む、請求項72~81のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項83】
前記フェニルアラニン輸送体は、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項82に記載の医薬組成物。
【請求項84】
経口投与用に製剤化される、請求項72~83のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項85】
高フェニルアラニン血症を軽減するか、高フェニルアラニン血症に関連する疾患を治療する方法であって、請求項1~13のいずれか1項に記載の突然変異型PALをコードする1つ以上の遺伝子(複数可)を含む遺伝子組換えされた微生物を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項86】
前記突然変異型PALは、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記プロモーターは、誘導性プロモーターである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記誘導性プロモーターは、IPTG誘導性プロモーターである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記誘導性プロモーターは、温度調節されたプロモーターまたは酸素レベル依存性プロモーターである、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記酸素レベル依存性プロモーターは、FNR、ANR、及びDNRプロモーターを含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
野生型PALをコードする遺伝子をさらに含む、請求項85~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記野生型PALをコードする遺伝子は、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
LAADをコードする遺伝子をさらに含む、請求項85~92のいずれかに記載の方法。
【請求項94】
前記LAADは、自然界における遺伝子と関連のない誘導性プロモーターに操作可能に連結される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
フェニルアラニン輸送体をコードする遺伝子をさらに含む、請求項85~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記フェニルアラニン輸送体は、自然界における遺伝子と関連のないプロモーターに操作可能に連結される、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記疾患は、フェニルケトン尿症、古典的または典型的なフェニルケトン尿症、非定型フェニルケトン尿症、永久的軽症高フェニルアラニン血症、非フェニルケトン尿症の高フェニルアラニン血症、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ欠損症、補因子欠損症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠損症、テトラヒドロプテリンシンターゼ欠損症、瀬川病、及び肝疾患からなる群から選択される、請求項85~96のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記微生物は、細菌である、請求項27~97のいずれか1項に記載の遺伝子組換えされた微生物。
【請求項99】
前記細菌は、1つ以上のファージゲノム(複数可)を含み、前記ファージは、溶菌増殖、水平遺伝子移入、細胞溶解、ファージ構造、ファージ構築、ファージパッケージング、組換え、複製、翻訳、ファージ挿入、及びこれらの組み合わせに関連する1つ以上のファージ遺伝子において1つ以上の突然変異を含む、請求項98に記載の細菌。
【請求項100】
前記1つ以上のファージ遺伝子は、タンパク質分解酵素をコードする遺伝子、溶解素をコードする遺伝子、毒素をコードする遺伝子、抗生物質耐性遺伝子、ファージ翻訳関連タンパク質をコードする遺伝子、構造的タンパク質遺伝子、プレートタンパク質遺伝子、バクテリオファージ構築遺伝子、ポータルタンパク質遺伝子、組換え遺伝子、インテグラーゼをコードする遺伝子、インベルターゼをコードする遺伝子、トランスポザーゼをコードする遺伝子、複製関連タンパク質をコードする遺伝子、プライマーゼをコードする遺伝子、tRNA関連タンパク質をコードする遺伝子、ファージ挿入遺伝子、結合部位遺伝子、パッケージング遺伝子、ターミナーゼをコードする遺伝子、テイロシンをコードする遺伝子、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項99に記載の細菌。
【請求項101】
前記突然変異は、リピドA生合成(KDO)2-(ラウロイル)リピドIVAアシルトランスフェラーゼ、ペプチダーゼ、亜鉛ABC輸送体基質結合タンパク質、亜鉛ABC輸送体ATPアーゼ、高親和性亜鉛輸送体膜成分、ATP依存性DNAヘリカーゼRuvB、ATP依存性DNAヘリカーゼRuvA、ホリディー連結リゾルバーゼ、ジヒドロネオプテリン三リン酸ピロホスファターゼ、アスパルチル-tRNAシンテターゼ、加水分解酵素、DNAポリメラーゼV、MsgA、ファージ尾部タンパク質、尾部タンパク質、宿主特異性タンパク質、ペプチダーゼP60、尾部タンパク質、尾部ファイバータンパク質、マイナー尾部タンパク質U、DNA切断-再結合タンパク質、ペプチダーゼS14、カプシドタンパク質、DNAパッケージングタンパク質、ターミナーゼ、リゾチーム、ホリン、DNAアデニンメチラーゼ、セリンタンパク質分解酵素、抗転写終結タンパク質、抗抑制因子、交差結合部エンドデオキシリボヌクレアーゼ、アデニンメチルトランスフェラーゼ、DNAメチルトランスフェラーゼECOLIN_10240、GntRファミリー転写調節因子ECOLIN_10245、cI抑制因子、未知の機能のドメイン(DUF4222);DNA組換え酵素、複数の抗生物質耐性調節因子(MarR)、P22における未知のead類似タンパク質、未知の機能のタンパク質(DUF550);3’-5’エキソヌクレアーゼ、除去酵素、インテグラーゼ、tRNAメチルトランスフェラーゼ、及びこれらの組み合わせをコードする遺伝子内にある、請求項99または100に記載の細菌。
【請求項102】
前記1つ以上の突然変異は、
a.前記ファージゲノム内の1つ以上のファージ遺伝子の配列の一部または全配列の1つ以上の欠失(複数可)、
b.前記ファージゲノム内の1つ以上のファージ遺伝子への1つ以上のヌクレオチドの1つ以上の挿入(複数可)、
c.前記ファージゲノム内の1つ以上のファージ遺伝子の配列の一部または全配列の1つ以上の置換(複数可)、
d.前記ファージゲノム内の1つ以上のファージ遺伝子の配列の一部または全配列の1つ以上の反転(複数可)、及び
e.a、b、c、及びdのうち2つ以上の組み合わせ、から選択される、請求項99~101のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項103】
前記1つ以上のファージゲノム(複数可)は、プロバイオティック細菌の天然の状態で存在する、請求項99~102のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項104】
前記1つ以上のファージゲノム(複数可)は、1つ以上の溶原性ファージ(複数可)、欠損もしくは潜在ファージ(複数可)、またはサテライトファージ(複数可)をコードする、請求項99~103のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項105】
前記1つ以上の突然変異は、前記1つ以上のファージゲノムにおいて1つ以上の目的の突然変異を有していない同じ細菌と比較して、前記細菌からのファージ粒子の放出を低減または防止する、請求項99~104のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項106】
前記細菌は、Bacteroides、Bifidobacterium、Clostridium、Escherichia、Escherichia coli Nissle株、Lactobacillus、及びLactococcusからなる群から選択されるプロバイオティック細菌である、請求項99~105のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項107】
前記1つ以上のファージゲノム(複数可)は、E.coli Nissleファージ1ゲノム、E.coli Nissleファージ2ゲノム、及びE.coli Nissleファージ3ゲノムのうち1つ以上から選択される、請求項106に記載の細菌。
【請求項108】
前記ファージゲノムは、E.coli Nissleファージ3ゲノムであり、前記突然変異は、ECOLIN_09965、ECOLIN_09970、ECOLIN_09975、ECOLIN_09980、ECOLIN_09985、ECOLIN_09990、ECOLIN_09995、ECOLIN_10000、ECOLIN_10005、ECOLIN_10010、ECOLIN_10015、ECOLIN_10020、ECOLIN_10025、ECOLIN_10030、ECOLIN_10035、ECOLIN_10040、ECOLIN_10045、ECOLIN_10050、ECOLIN_10055、ECOLIN_10065、ECOLIN_10070、ECOLIN_10075、ECOLIN_10080、ECOLIN_10085、ECOLIN_10090、ECOLIN_10095、ECOLIN_10100、ECOLIN_10105、ECOLIN_10110、ECOLIN_10115、ECOLIN_10120、ECOLIN_10125、ECOLIN_10130、ECOLIN_10135、ECOLIN_10140、ECOLIN_10145、ECOLIN_10150、ECOLIN_10160、ECOLIN_10165、ECOLIN_10170、ECOLIN_10175、ECOLIN_10180、ECOLIN_10185、ECOLIN_10190、ECOLIN_10195、ECOLIN_10200、ECOLIN_10205、ECOLIN_10210、ECOLIN_10220、ECOLIN_10225、ECOLIN_10230、ECOLIN_10235、ECOLIN_10240、ECOLIN_10245、ECOLIN_10250、ECOLIN_10255、ECOLIN_10260、ECOLIN_10265、ECOLIN_10270、ECOLIN_10275、ECOLIN_10280、ECOLIN_10290、ECOLIN_10295、ECOLIN_10300、ECOLIN_10305、ECOLIN_10310、ECOLIN_10315、ECOLIN_10320、ECOLIN_10325、ECOLIN_10330、ECOLIN_10335、ECOLIN_10340、及びECOLIN_10345から選択される1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを含む、請求項107に記載の細菌。
【請求項109】
前記突然変異は、ECOLIN_10110、ECOLIN_10115、ECOLIN_10120、ECOLIN_10125、ECOLIN_10130、ECOLIN_10135、ECOLIN_10140、ECOLIN_10145、ECOLIN_10150、ECOLIN_10160、ECOLIN_10165、ECOLIN_10170、及びECOLIN_10175の完全な欠失または部分的欠失を含む、請求項108に記載の細菌。
【請求項110】
前記欠失は、ECOLIN_10110、ECOLIN_10115、ECOLIN_10120、ECOLIN_10125、ECOLIN_10130、ECOLIN_10135、ECOLIN_10140、ECOLIN_10145、ECOLIN_10150、ECOLIN_10160、ECOLIN_10165、及びECOLIN_10170の完全な欠失、ならびにECOLIN_10175の部分的欠失である、請求項108または109に記載の細菌。
【請求項111】
1つ以上の別の遺伝子修飾を含む、請求項99~110のいずれか1項に記載の細菌。
【請求項112】
前記1つ以上の別の遺伝子修飾は、1つ以上の内因性遺伝子内の1つ以上の突然変異を含む、請求項111に記載の細菌。
【請求項113】
前記1つ以上の別の遺伝子修飾は、1つ以上の非天然遺伝子の付加を含む、請求項111または112に記載の細菌。
【請求項114】
前記細菌は、抗生物質耐性をさらに含む、請求項99~113のいずれか1項に記載の細菌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年3月20日に出願の米国仮出願第62/992,637号、及び2020年4月30日に出願の米国仮出願第63/017,755号に対する優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、高フェニルアラニン血症を軽減するための組成物及び治療方法に関する。特定の態様では、本開示は、哺乳動物における高フェニルアラニン血症を軽減することができる遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌に関する。特定の態様では、本明細書にて開示する組成物及び方法は、高フェニルアラニン血症、例えば、フェニルケトン尿症に関連する疾患を治療するために使用することができる。
【0003】
フェニルアラニンは、主に食事タンパク質に含まれる必須アミノ酸である。通常は、少量がタンパク質合成に利用され、残りは、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)及び補因子テトラヒドロビオプテリンを必要とする酵素的経路でチロシンにヒドロキシル化される。高フェニルアラニン血症は、過剰レベルのフェニルアラニンに関連する疾患群であり、毒性があり、脳障害を引き起こす場合がある。原発性高フェニルアラニン血症は、PAH遺伝子の突然変異及び/または補因子代謝の阻害に起因するPAH活性の欠乏によって引き起こされる。
【0004】
フェニルケトン尿症(PKU)は、PAH遺伝子の突然変異が原因の重度の高フェニルアラニン血症である。PKUは、常染色体劣性遺伝病であり、世界中で最も多い先天性代謝異常(出生3,000件につき1件)にランクされており、米国ではおよそ13,000人の患者が罹患している。400を超える異なるPAH遺伝子の突然変異がこれまでに同定されている(Hoeks et al.,2009)。血中のフェニルアラニン(phe)の蓄積は、小児及び成人の中枢神経系に重大な損傷を引き起こす可能性がある。新生児のうちに治療しないと、PKUは、回復不能な脳障害を引き起こす可能性がある。PKUの治療は、現在、フェニルアラニンを食事から完全に排除することを伴う。ほとんどの天然のタンパク質源は、必須アミノ酸であり、成長に必要なフェニルアラニンを含んでいる。PKUの患者においては、これは、患者らが成長にとって十分なだけのフェニルアラニンを提供するアミノ酸の補給と共に、医療食品及びpheを含んでいないタンパク質補給に依存することを意味する。この食事は、患者にとって困難なものであり、生活の質に影響を及ぼす。
【0005】
論じたように、現在のPKU治療は、タンパク質制限からなる大幅に改質された食事を必要とする。出生時からの治療は、一般的に脳障害及び精神発達障害を軽減する(Hoeks et al.,2009;Sarkissian et al.,1999)。しかし、タンパク質制限食は、注意深く監視する必要があり、必須アミノ酸だけでなくビタミンも食事に補充する必要がある。さらに、低タンパク質食品を入手することは、対応物である非改質の高タンパク質食品よりもコストがかかるため難題である(Vockley et al.,2014)。
【0006】
PKUの小児においては、低フェニルアラニン食に基づく成長遅延がよく見られる(Dobbelaere et al.,2003)。成人期では、骨粗鬆症、母体のPKU、及びビタミン欠乏症などの新たな問題が発生する可能性がある(Hoeks et al.,2009)。血液脳関門を自由に通過する場合がある血中の過剰レベルのフェニルアラニンもまた、神経性機能障害、行動障害(例えば、過敏性、疲労)及び/または理学的症状(例えば、痙攣、皮膚の発疹、かび臭い体臭)を引き起こす可能性がある。国際的なガイドラインでは、生涯にわたる食事のフェニルアラニン制限が推奨されているが、これは、非常に困難かつ非現実的であると見なされており(Sarkissian et al.,1999)、かつ「PKUと共に生きる上での最大の課題である生涯にわたる低phe食の遵守を克服するためには、継続的な努力が必要である」(Macleod et al.,2010)。
【0007】
PAH活性が残っている一部の患者においては、補因子テトラヒドロビオプテリン(THB、BH4、Kuvanまたはサプロプテリンとも呼ばれる)の経口投与が、血中のフェニルアラニンレベルを下げるために食事制限と共に用いられることがある。しかし、補因子療法は、コストがかかり、軽症フェニルケトン尿症にのみ適している。例えば、Kuvanの年間コストは、患者1人につき$57,000になる場合がある。加えて、Kuvanの副作用には、胃炎及び重度のアレルギー反応(例えば、喘鳴、めまい、悪心、皮膚充血)が含まれる場合がある。
【0008】
酵素フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)は、フェニルアラニンを非毒性レベルのアンモニア及びトランス-ケイ皮酸に代謝することができる。PAHとは異なり、PALは、フェニルアラニンを代謝するのにTHB補因子活性を必要としない。PALを使用する経口酵素療法の研究が行われているが、「妥当なコストで十分な量のPALが入手できなかったため、ヒトだけでなく動物でさえも研究は継続されなかった」(Sarkissian et al.,1999)。ペグ化形態の組換えPAL(PEG-PAL)もまた、注射可能な治療形態として開発中である。しかし、PEG-PALを投与されたほとんどの被検者は、注射部位の反応に悩まされ、及び/またはこの治療用酵素に対する抗体が発現した(Longo et al.,2014)。したがって、PKUを含む高フェニルアラニン血症に関連する疾患に対する、効果的で、信頼性が高く、及び/または長期的な治療に関する重要な要求が満たされていない。患者における血中のPheレベルを制御しながら、より多くの天然のタンパク質の消費を可能にする治療法に対する要求は満たされていない。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの実施形態において、本開示は突然変異型PALポリペプチド及びポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、強化された安定性、及び/またはフェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された能力を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALポリペプチドは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、92位、133位、167位、432位、470位、433位、263位、366位及び/または396位のアミノ酸において1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、突然変異型PALポリペプチドは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、S92位、H133位、I167位、L432位、V470位、A433位、A263位、K366位及び/またはL396位のアミノ酸において1つ以上の突然変異を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、本開示は、突然変異型PALを産生する遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変微生物は、フェニルアラニン輸送体、例えば、PhePをコードする遺伝子をさらに含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変微生物はまた、L-アミノ酸デアミナーゼ(LAAD)をコードする遺伝子を含む場合がある。遺伝子改変微生物はまた、バイオセーフティ及び/または生物学的封じ込めに関する1つ以上の遺伝子配列を含む場合がある。遺伝子発現システムにおける任意のこれらの遺伝子配列(複数可)の発現は、適切なプロモーターまたはプロモーターシステムを使用して調節することができる。
【0011】
特定の実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、非病原性であり、かつフェニルアラニンの毒性レベルを低減するために腸に導入され得る。本開示はまた、遺伝子組換えされた微生物を含む医薬組成物、及び高フェニルアラニン血症に関連する障害を調整及び治療する方法も提供する。いくつかの実施形態では、突然変異型PALを含む遺伝子組換えされた細菌は、1つ以上のファージゲノム(複数可)を含み、ここで、ファージゲノムのうち1つ以上は、例えば、溶菌性ファージが産生されないように欠損している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】TCAによって判定した、mPAL1、mPAL2及びmPAL3によるフェニルアラニン代謝を示す。
図2】野生型PAL3と比較した、mPAL1、mPAL2及びmPAL3によるフェニルアラニン代謝を示す。
図3A】野生型PAL3、mPAL1、mPAL2及びmPAL3のミカエリス-メンテングラフを示す。
図3B】野生型PAL3、mPAL1、mPAL2及びmPAL3のミカエリス-メンテングラフを示す。
図4A】カニクイザルモデルにおける突然変異型PAL効果のin vitro研究を示す。PAL変異体の活性を、血漿TCAのレベル及び尿中馬尿酸塩を評価することによって測定した。
図4B】カニクイザルモデルにおける突然変異型PAL効果のin vitro研究を示す。PAL変異体の活性を、血漿TCAのレベル及び尿中馬尿酸塩を評価することによって測定した。
図4C】カニクイザルモデルにおける突然変異型PAL効果のin vitro研究を示す。PAL変異体の活性を、血漿TCAのレベル及び尿中馬尿酸塩を評価することによって測定した。
図5A】全細胞及び細胞溶解物アッセイを介して判定した野生型PAL3活性のTCAフィードバック阻害を示す。
図5B】全細胞及び細胞溶解物アッセイを介して判定した野生型PAL3活性のTCAフィードバック阻害を示す。
図5C】全細胞及び細胞溶解物アッセイを介して判定した野生型PAL3活性のTCAフィードバック阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、とりわけ突然変異型PALポリペプチド及びポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、強化された安定性、及び/またはフェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された能力を示す。本開示はまた、突然変異型PALを含む遺伝子組換えされた微生物、その医薬組成物、及び高フェニルアラニン血症、例えば、PKUに関連する障害を調整及び治療する方法も含む。
【0014】
本開示をより容易に理解できるように、特定の用語をまず定義する。これらの定義は、本開示のこれ以降の記載に照らして、当業者によって理解されるように読まれるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門的及び科学的用語は、当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。他の定義についても、詳細な説明の全体を通して説明する。
【0015】
「高フェニルアラニン血症」、「高フェニルアラニン血」、及び「過剰なフェニルアラニン」は、本明細書では同じ意味で用いられ、身体におけるフェニルアラニンの濃度の増加または濃度が異常に高いことを指す。いくつかの実施形態では、高フェニルアラニン血症の診断上の徴候は、少なくとも2mg/dL、少なくとも4mg/dL、少なくとも6mg/dL、少なくとも8mg/dL、少なくとも10mg/dL、少なくとも12mg/dL、少なくとも14mg/dL、少なくとも16mg/dL、少なくとも18mg/dL、少なくとも20mg/dL、または少なくとも25mg/dLの血中フェニルアラニンレベルである。本明細書で使用される場合、高フェニルアラニン血症に関連する疾患には、フェニルケトン尿症、古典的または典型的なフェニルケトン尿症、非定型フェニルケトン尿症、永久的軽症高フェニルアラニン血症、非フェニルケトン尿症の高フェニルアラニン血症、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ欠損症、補因子欠損症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠損症、テトラヒドロプテリンシンターゼ欠損症、及び瀬川病が含まれるが、これらに限定されない。罹患者は、進行性及び回復不能な神経脱落症候、精神発達障害、脳疾患、てんかん、湿疹、成長低下、小頭症、振戦、手足の痙縮、及び/または低色素症を患う可能性がある(Leonard 2006)。高フェニルアラニン血症はまた、その他の病態、例えば、肝疾患に続発する場合もある。
【0016】
「フェニルアラニンアンモニアリアーゼ」及び「PAL」とは、フェニルアラニンをトランス-ケイ皮酸及びアンモニアに変換または処理するPMEを指すために使用される。トランス-ケイ皮酸は、毒性が低く、かつ哺乳動物において肝酵素によって馬尿酸に変換され、その馬尿酸は尿中に分泌される。過剰なフェニルアラニンを代謝するために、酵素PAHの代わりにPALが用いられる場合がある。PAL酵素活性は、THB補因子活性を必要としない。いくつかの実施形態では、PALは、原核生物種からのまたは原核生物種に由来するPAL遺伝子によってコードされる。代替の実施形態では、PALは、真核生物種に由来するまたは真核生物種からのPAL遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、PALは、Achromobacter xylosoxidans、Pseudomonas aeruginosa、Photorhabdus luminescens、Anabaena variabilis、及びAgrobacterium tumefaciensを含むがこれらに限定されない細菌種からのまたは細菌種に由来するPAL遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、PALは、Anabaena variabilisに由来するPAL遺伝子によってコードされ、本明細書では「PAL1」と呼ばれる(Moffitt et al.,2007)。いくつかの実施形態では、PALは、Photorhabdus luminescensに由来するPAL遺伝子によってコードされ、本明細書では「PAL3」と呼ばれる(Williams et al.,2005)。いくつかの実施形態では、PALは、酵母種、例えば、Rhodosporidium toruloidesに由来するPAL遺伝子によってコードされる(Gilbert et al.,1985)。いくつかの実施形態では、PALは、植物種、例えば、Arabidopsis thalianaに由来するPAL遺伝子によってコードされる(Wanner et al.,1995)。PALの任意の好適なヌクレオチド及びアミノ酸配列、またはその機能的フラグメントが使用される場合がある。
【0017】
本明細書で使用される場合、PALは、野生型の天然に存在するPALに加えて、突然変異型の天然に存在しないPALを包含する。本明細書で使用される場合、「突然変異型PAL」または「PAL突然変異体」とは、野生型の天然に存在するPALポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して、修飾された、例えば、突然変異誘発された、天然に存在しないPAL及び/または合成PALを指す。いくつかの実施形態では、修飾は、サイレント突然変異、例えば、対応するポリペプチド配列の変化を伴わないポリヌクレオチド配列の変化である。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PALと比較して、強化された安定性、及び/またはフェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された能力を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、Photorhabdus luminescens PALに由来する。いくつかの実施形態では、突然変異型PALポリペプチドは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、92位、133位、167位、432位、470位、433位、263位、366位及び/または396位のアミノ酸において1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、突然変異型PALポリペプチドは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、S92位、H133位、I167位、L432位、V470位、A433位、A263位、K366位及び/またはL396位のアミノ酸において1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、突然変異型PALポリペプチドは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALのアミノ酸位と比較して、S92G位、H133F位、I167K位、L432I位、V470A位、A433S位、A263T位、K366K位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、及び/またはL396L位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)のアミノ酸において1つ以上の突然変異を含む。いくつかの実施形態では、突然変異型PALポリペプチドは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALのアミノ酸位と比較して、S92G位;H133M位;I167K位;L432I位;V470A位を含む。いくつかの実施形態では、突然変異型PALポリペプチドは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALのアミノ酸位と比較して、S92G位;H133F位;A433S位;V470A位を含む。いくつかの実施形態では、突然変異型PALポリペプチドは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALのアミノ酸位と比較して、S92G位;H133F位;A263T位;K366K位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異);L396L位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異);V470A位を含む。
【0018】
「フェニルアラニンヒドロキシラーゼ」及び「PAH」とは、ヒトの体内で補因子テトラヒドロビオプテリンと連動して、フェニルアラニンの芳香族側鎖のヒドロキシル化を触媒し、チロシンを産生する酵素を指すために使用される。PAHをコードするヒト遺伝子は、12番染色体の長腕(q)の22番と24.2番の間に位置している。PAHのアミノ酸配列は、哺乳動物間で高度に保存されている。ヒト及び哺乳動物PAHの核酸配列は、良く知られており、広く入手可能である。PAHの完全長ヒトcDNA配列は、1985年に報告された(Kwok et al.,1985)。PAHの活性フラグメントも良く知られている(例えば、Kobe et al.,1997)。
【0019】
「L-アミノ酸デアミナーゼ」及び「LAAD」は、L-アミノ酸の立体特異性酸化的脱アミノ反応を触媒し、それらの対応するケト酸、アンモニア、及び過酸化水素を生成する酵素を指すために使用される。例えば、LAADは、フェニルアラニンのフェニルピルビン酸への変換を触媒する。複数のLAAD酵素が、当技術分野において既知であり、その多くは、Proteus、Providencia、及びMorganella、などの細菌、または毒液に由来する。LAADは、フェニルアラニン分解の反応速度が速いことを特徴とする(Hou et al.,Appl Microbiol Technol.2015 Oct;99(20):8391-402;「Proteus mirabilis由来のL-アミノ酸デアミナーゼを使用したL-フェニルアラニンからのフェニルピルビン酸の産生:酵素的及び全細胞生体内変換アプローチの比較」)。ほとんどの真核生物及び原核生物のL-アミノ酸デアミナーゼは、細胞外にあるが、Proteus種のLAADは、形質膜(内膜)に局在し、酵素活性が存在する細胞周辺腔の外側に向いている。この局在化の結果として、Proteus LAADが媒介するフェニルアラニン分解には、内膜を通過する細胞質へのフェニルアラニンの輸送は必要ない。フェニルアラニンは、輸送体なしで外膜を通過して周辺質に容易に取り込まれるため、輸送体の必要性を排除し、基質の利用可能性が改善される。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、Proteus、Providencia、及びMorganella細菌を含むがこれらに限定されない細菌種に由来するLAAD遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、細菌種は、Proteus mirabilisである。いくつかの実施形態では、細菌種は、Proteus vulgarisである。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物によってコードされるLAADは、形質膜に局在し、細胞周辺腔に面し、細胞周辺腔で起こる触媒活性を有する。
【0020】
「フェニルアラニン代謝酵素」または「PME」は、フェニルアラニンを例えば非毒性代謝産物に分解することができる酵素を指すために使用される。当技術分野において知られている任意のフェニルアラニン代謝酵素は、本開示の遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌によってコードされ得る。PMEとしては、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)、アミノ基転移酵素、L-アミノ酸デアミナーゼ(LAAD)、及びフェニルアラニン脱水素酵素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、フェニルアラニン脱水素酵素またはアミノ基転移酵素との反応には、補因子が必要であるが、LAAD及びPALの場合は、いかなる別の補因子も必要ではない。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物によってコードされるPMEは、補因子を必要とする。いくつかの実施形態では、この補因子は、遺伝子組換えされた微生物の投与と同時にまたは連続して提供される。その他の実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、補因子を産生することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼをコードする。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、フェニルアラニン脱水素酵素をコードする。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、アミノ基転移酵素をコードする。理論に拘束されることを望まないが、補因子を必要としないということは、酵素によるフェニルアラニン分解速度は、基質の利用可能性に依存するが、補因子の利用可能性には制限されないことを意味する。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物によって産生されるPMEは、PALである。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物によって産生されるPMEは、LAADである。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、PMEの組み合わせをコードする。
【0022】
いくつかの実施形態では、PMEの触媒活性は、酸素レベルに依存する。いくつかの実施形態では、PMEは、微好気性条件下で触媒的に活性化する。非限定的例として、LAAD触媒活性は、酸素に依存する。いくつかの実施形態では、LAADは、微好気性条件などの低酸素条件下で活性化する。いくつかの実施形態では、PMEは、例えば、結腸で見られような、酸素のレベルが非常に低い状態で、または酸素の不在下で機能する。
【0023】
「フェニルアラニン代謝産物」とは、フェニルアラニンの分解の結果として産生される代謝産物を指す。代謝産物は、フェニルアラニンを基質として用いる酵素によってフェニルアラニンから直接的に産生されるか、フェニルアラニン代謝産物基質に作用する代謝経路の下流の異なる酵素によって間接的に産生され得る。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン代謝産物は、PMEをコードする遺伝子組換えされた細菌によって産生される。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン代謝産物は、例えば、遺伝子組換えされた微生物によって産生されるPALからのPAL作用によって直接的または間接的に生じる。このようなPAL代謝産物の非限定的例には、トランス-ケイ皮酸及び馬尿酸がある。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン代謝産物は、例えば、遺伝子組換えされた微生物によって産生されるLAADからのLAAD作用によって直接的または間接的に生じる。このようなLAAD代謝産物の例には、フェニルピルビン酸及びフェニル乳酸がある。
【0024】
「フェニルアラニン輸送体」は、フェニルアラニンを細菌細胞に輸送することができる膜輸送タンパク質を指すために使用される(例えば、Pi et al.,1991を参照されたい)。Escherichia coliでは、pheP遺伝子が、フェニルアラニン輸送を担う高親和性フェニルアラニン特異的透過酵素をコードする(Pi et al.,1998)。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン輸送体は、Acinetobacter calcoaceticus、Salmonella enterica、及びEscherichia coliを含むがこれらに限定されない細菌種に由来するpheP遺伝子によってコードされる。その他のフェニルアラニン輸送体としては、aroP遺伝子によってコードされるAageneralアミノ酸透過酵素が挙げられ、フェニルアラニンを含む3つの芳香族アミノ酸を高親和性で輸送し、フェニルアラニン取り込みにPhePと共に最も関与していると考えられている。さらに、低レベルのフェニルアラニン輸送活性は、2つの周辺質結合タンパク質であるLIV結合タンパク質(LIV-I系)及びLS結合タンパク質(LS系)、ならびに膜成分のLivHMGFからなる分岐鎖アミノ酸輸送体であるLIV-I/LS系の活性に由来することが分かっている。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン輸送体は、細菌種に由来するaroP遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン輸送体は、細菌種に由来するLIV結合タンパク質及びLS結合タンパク質、ならびにLivHMGF遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、pheP、aroP、及びLIV-I/LS系から選択されるフェニルアラニン輸送体のうち2つ以上のタイプを含む。例示的なフェニルアラニン輸送体は、当技術分野において既知であり、例えば、PCT/US2016/032562及びPCT/US2016/062369を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
「フェニルアラニン」及び「Phe」は、式CCHCH(NH)COOHのアミノ酸を指すために使用される。フェニルアラニンは、チロシン、ドーパミン、ノルエピネフィリン、及びエピネフィリンの前駆体である。L-フェニルアラニンは、主として食事タンパク質に含まれている必須アミノ酸及びフェニルアラニンの形態であり、立体異性体D-フェニルアラニンは、食事タンパク質中に少量で含まれており、DL-フェニルアラニンは、その両方の形態の組み合わせである。フェニルアラニンは、L-フェニルアラニン、D-フェニルアラニン、及びDL-フェニルアラニンのうち1つ以上を指す場合がある。
【0026】
本明細書で使用される場合、「遺伝子発現システム」とは、遺伝子発現を可能にするかまたは調節する遺伝子(複数可)及び調節要素(複数可)の組み合わせを指す。遺伝子発現システムは、例えば、遺伝子発現を促進するために、1つ以上のプロモーター、ターミネーター、エンハンサー、インシュレーター、サイレンサー及び他の調節配列と共に、突然変異型PALポリペプチドをコードする遺伝子(複数可)を含む場合がある。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、突然変異型PAL及び遺伝子発現を促進するためにその突然変異型PALが操作可能に連結されているプロモーターをコードする遺伝子を含む場合がある。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、遺伝子発現を促進するために、1つ以上のプロモーターに操作可能に連結された複数の遺伝子を含む場合がある。いくつかの実施形態では、複数の遺伝子は、例えば、シス形で、同じプラスミドまたは染色体上にあり、かつ同じプロモーターに操作可能に連結されている場合がある。いくつかの実施形態では、複数の遺伝子は、異なるプラスミド(複数可)または染色体(複数可)上にあり、かつ異なるプロモーターに操作可能に連結されている場合がある。
【0027】
「操作可能に連結された」とは、核酸配列の発現を可能にするように、例えば、シス形で作用する、調節領域配列に連結された核酸配列、例えば、PALをコードする遺伝子を指す。調節領域は、目的の遺伝子の転写を指示することができ、かつプロモーター配列、エンハンサー配列、応答性要素、タンパク質認識部位、誘導性要素、プロモーター制御要素、タンパク質結合配列、5′及び3′非翻訳領域、転写開始点、終止配列、ポリアデニル化配列、及び介在配列を含み得る核酸である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「非天然」核酸配列とは、微生物に通常存在しない核酸配列、例えば、内因性配列の追加のコピー、または微生物の異なる種、菌株、もしくは亜系由来の配列などの異種配列、あるいは、同じ亜型の微生物からの未修飾配列と比べて、修飾及び/または突然変異された配列を指す。いくつかの実施形態では、非天然核酸配列は、合成配列、天然に存在しない配列である(例えば、Purcell et al.,2013を参照されたい)。非天然核酸配列は、調節領域、プロモーター、遺伝子、及び/または遺伝子カセット内の1つ以上の遺伝子であり得る。いくつかの実施形態では、「非天然」とは、自然界で互いに同じ関係では見られない2つ以上の核酸配列を指す。非天然核酸配列は、プラスミドまたは染色体上に存在し得る。加えて、任意の調節領域、プロモーター、遺伝子、及び/または遺伝子カセットの複数のコピーが、微生物中に存在する場合があり、ここで、調節領域、プロモーター、遺伝子、及び/または遺伝子カセットの1つ以上のコピーは、本明細書に記載するように突然変異されるか、または改変され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、コピー数を増やすために同じ調節領域、プロモーター、遺伝子、及び/または遺伝子カセットの複数のコピーを含むか、または複数の異なる機能を実行する遺伝子カセットの複数の異なる成分を含むように遺伝子改変される。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子組換えされた微生物は、自然界における上記遺伝子と関連のない誘導性プロモーター、例えば、PALをコードする遺伝子に操作可能に連結されたFNRプロモーター、またはLAADに操作可能に連結されたParaBADプロモーターに操作可能に連結されたフェニルアラニン代謝酵素をコードする遺伝子を含む。
【0029】
「誘導性プロモーター」とは、1つ以上の遺伝子に操作可能に連結された調節領域を指し、ここで、遺伝子(複数可)の発現は、上記調節領域の誘導因子の存在下で増加する。
【0030】
「外因的な環境条件(複数可)」または「環境条件」とは、本明細書に記載のプロモーターが誘導される環境または状況を指す。この語句は、遺伝子改変微生物に対して外部の環境条件ではあるが、宿主対象環境に対しては内因的なまたは天然の環境条件を意味する。したがって、「外因的な」及び「内因的な」は、同じ意味で用いられることがあり、環境条件を指し、ここで、この環境条件とは、哺乳動物の身体に対しては内因的ではあるが、無傷の微生物細胞に対しては外部のまたは外因的なものである。いくつかの実施形態では、外因的な環境条件は、哺乳動物の腸に特有なものである。いくつかの実施形態では、外因的な環境条件は、哺乳動物の上部消化管に特有のものである。いくつかの実施形態では、外因的な環境条件は、哺乳動物の下部消化管に特有のものである。いくつかの実施形態では、外因的な環境条件は、哺乳動物の小腸に特有のものである。いくつかの実施形態では、外因的な環境条件は、哺乳動物の腸の環境など、低酸素、微好気性条件、または嫌気的条件である。いくつかの実施形態では、外因的な環境条件は、健康または疾患状態の哺乳動物の腸に特有な分子または代謝産物、例えば、プロピオン酸塩の存在を指す。いくつかの実施形態では、外因的な環境条件は、組織特有または疾患特有の代謝産物または分子(複数可)である。いくつかの実施形態では、外因的な環境条件は、低pH環境である。いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子組換えされた微生物は、pH依存性プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子組換えされた微生物は、酸素レベル依存性プロモーターを含む。いくつかの態様では、細菌は、酸素レベルを感知することができる転写因子を進化させている。異なるシグナル伝達経路が、異なる酸素レベルによって引き起こされ、異なる反応速度で発生する場合がある。
【0031】
本明細書で使用される場合、「外因的な環境条件」または「環境条件」とは、微生物のin vitro培養条件に関する、遺伝子改変微生物にとって外部の状況または環境条件も指す。「外因的な環境条件」はまた、生物の増殖、生成、及び製造中の条件を指す場合もある。このような条件には、好気性培養条件、嫌気性培養条件、低酸素培養条件、及び設定された酸素濃度下のその他の条件が含まれる。このような条件には、培養物中の、テトラサイクリン、アラビノース、IPTG、ラムノースなどの化学的及び/または栄養上の誘導因子の存在も含まれる。このような条件には、in vivo投与前に微生物が増殖する温度も含まれる。例えば、ある特定のプロモーターシステムを使用すると、ペイロードの発現に対して、ある特定の温度は許容されるが、他の温度は許容されない。酸素レベル、温度、及び培地組成物は、このような外因的な環境条件に影響を与える。このような条件は、増殖速度、PME(例えば、PALもしくはLAAD)の誘導速度、輸送体(例えば、PheP)及び/またはその他の調節因子(例えば、FNRS24Y)の誘導速度、ならびに株生成中の株の全体的な生存率及び代謝活性に影響を及ぼす。
【0032】
「酸素レベル依存性プロモーター」または「酸素レベル依存性調節領域」とは、1つ以上の酸素レベル感知転写因子が結合することができる核酸配列を指し、ここで、対応する転写因子の結合及び/または活性化が、下流遺伝子発現を活性化する。酸素レベル依存性転写因子の例としては、FNR、ANR、及びDNRが挙げられるが、これらに限定されない。対応するFNR応答性プロモーター、ANR応答性プロモーター、及びDNR応答性プロモーターが、当技術分野において既知である(例えば、Castiglione et al.,2009;Eiglmeier et al.,1989;Galimand et al.,1991;Hasegawa et al.,1998;Hoeren et al.,1993;Salmon et al.,2003を参照されたい)。表1に、非限定的例を示す。非限定的例では、プロモーター(PfnrS)は、環境酸素が少ないかまったくない条件下で発現することが知られている、E.coli Nissleフマル酸塩及び硝酸還元酵素遺伝子S(fnrS)から発生させた(Durand and Storz,2010;Boysen et al,2010)。PfnrSプロモーターは、Nissleで自然に見られるグローバル転写調節因子FNRによって嫌気的条件及び/または低酸素条件下で活性化される。嫌気的条件下及び/または低酸素条件では、FNRは二量体を形成し、特定の遺伝子がその制御下にあるプロモーター内の特定の配列に結合し、それによりそれらの発現を活性化させる。ただし、好気性条件下では、酸素が、FNR二量体内の鉄-硫黄クラスターと反応し、それらを不活性形態に変換する。このように、PfnrS誘導性プロモーターは、タンパク質またはRNAの発現を調節するために取り入れられる。PfnrSは、本出願ではFNRS、fnrS、FNR、P-FNRSプロモーター、及びプロモーターPfnrSを指す他の関連する名称と同じ意味で用いられる。
【表1】
【0033】
例示的な酸素レベル依存性プロモーター、例えば、FNRプロモーターは、当該技術分野において既知であり、例示的なFNRプロモーターを表2に提示する。例えば、PCT/US2016/032562及びPCT/US2016/062369を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「低酸素」とは、大気中に存在する酸素のレベル、量、または濃度よりも低い、酸素(O)のレベル、量、または濃度を指すことを意味する(例えば、21%未満のO;160トル未満のO)。したがって、用語「低酸素条件もしくはその複数の条件」または「低酸素環境」とは、大気中に存在するよりも低レベルの酸素を含む条件もしくは環境を指す。いくつかの実施形態では、用語「低酸素」は、哺乳動物の腸内、例えば、内腔、胃、小腸、十二指腸、空腸、回腸、大腸、盲腸、結腸、末端S状結腸、直腸及び肛門管で見られる酸素(O)のレベル、量、または濃度を指すことを意味する。いくつかの実施形態では、用語「低酸素」は、0~60mmHgのO(0~60トルのO)(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45,46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59及び60mmHgのO)であり、例えば、その増分小部分(複数可)のいずれか及び全て(例えば、0.2mmHg、0.5mmHgのO、0.75mmHgのO、1.25mmHgのO、2.175mmHgのO、3.45mmHgのO、3.75mmHgのO、4.5mmHgのO、6.8mmHgのO、11.35mmHgのO、46.3mmHgのO、58.75mmHgなど、ただし、これらは説明の目的で列挙した例示的小部分であり、いかなる形であれ制限することを意図したものではない)を含む、Oのレベル、量、または濃度を指すことを意味する。いくつかの実施形態では、「低酸素」とは、約60mmHg以下のO(例えば、0~約60mmHgのO)を指す。用語「低酸素」とは、0~60mmHg(両端を含む)のOの範囲のOレベル、量、または濃度、例えば、0~5mmHgのO、1.5mmHg未満のO、6~10mmHg、8mmHg未満、47~60mmHgなど指す場合があるが、これらは説明の目的で列挙した例示的範囲であり、いかなる形であれ制限することを意図したものではない。例えば、Albenberg et al.,Gastroenterology,147(5):1055-1063(2014);Bergofsky et al.,J Clin.Invest.,41(11):1971-1980(1962);Crompton et al.,J Exp.Biol.,43:473-478(1965);He et al.,PNAS(USA),96:4586-4591(1999);McKeown,Br.J.Radiol.,87:20130676(2014)(doi:10.1259/brj.20130676)を参照されたく、それぞれの文献は種々の種の哺乳動物の腸内で見られる酸素レベルについて説明しており、またそれぞれはその全体が参照により本明細書と共に組み込まれる。いくつかの実施形態では、用語「低酸素」とは、哺乳動物の臓器または腸以外の組織、例えば、尿生殖路、腫瘍組織などで見られる酸素(O)のレベル、量、または濃度を指すことを意味し、ここで、酸素は、例えば、低酸素または無酸素レベルなどの低下したレベルで存在する。いくつかの実施形態では、「低酸素」とは、部分的に好気性、準好気性、微好気性、微小好気性、微有酸素、低酸素、無酸素、及び/または嫌気的条件で存在する酸素(O)のレベル、量、または濃度を指すことを意味する。種々の臓器及び組織で存在する酸素量の要約については、PCT/US2016/062369に記載されており、その内容はその全体が参照として本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、酸素(O)のレベル、量、または濃度は、溶存酸素(「DO」)の量として表現され、これは、液体中に存在する遊離非化合物酸素(O)のレベルを意味し、通常は1リットルあたりのミリグラム(mg/L)、百万分率(ppm;1mg/L=1ppm)、またはマイクロモル(uモル)(1uモルのO=0.022391mg/LのO)で報告される。Fondriest Environmental,Inc.,“Dissolved Oxygen”,Fundamentals of Environmental Measurements,19 Nov 2013,<www.fondriest.com/environmental-measurements/parameters/water-quality/dissolved-oxygen/>。いくつかの実施形態では、用語「低酸素」は、約6.0mg/L以下、例えば、6.0mg/L、5.0mg/L、4.0mg/L、3.0mg/L、2.0mg/L、1.0mg/L、または0mg/LのDO、及びその小部分、例えば、3.25mg/L、2.5mg/L、1.75mg/L、1.5mg/L、1.25mg/L、0.9mg/L、0.8mg/L、0.7mg/L、0.6mg/L、0.5mg/L、0.4mg/L、0.3mg/L、0.2mg/L及び0.1mg/LのDO(ただし、これらは説明の目的で列挙した例示的小部分であり、いかなる形であれ制限することを意図したものではない)である、酸素(O)のレベル、量、または濃度を指すことを意味する。液体または溶液中の酸素のレベルもまた、空気飽和のパーセンテージまたは酸素飽和のパーセンテージ(安定平衡下で特定の温度、圧力及び塩度で溶液中に溶解する、酸素の最大量に対する溶液中の溶存酸素(O)の濃度の比率)として報告される場合がある。酸素生産物または消費物がない状態で十分に通気した溶液(例えば、混合及び/または撹拌された溶液)は、100%空気飽和している。いくつかの実施形態では、用語「低酸素」は、40%以下の空気飽和、例えば、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、及び0%の空気飽和であり、例えば、その増分小部分(複数可)のいずれか及び全て(例えば、30.25%、22.70%、15.5%、7.7%、5.0%、2.8%、2.0%、1.65%、1.0%、0.9%、0.8%、0.75%、0.68%、0.5%、0.44%、0.3%、0.25%、0.2%、0.1%、0.08%、0.075%、0.058%、0.04%、0.032%、0.025%、0.01%など)及び0~40%(両端を含む)の空気飽和レベルの任意の範囲(例えば、0~5%、0.05~0.1%、0.1~0.2%、0.1~0.5%、0.5~2.0%、0~10%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%、25~30%など)を含む空気飽和を指すことを意味する。本明細書に列挙した例示的小部分及び範囲は、説明の目的のものであり、いかなる形であれ制限することを意図したものではない。いくつかの実施形態では、用語「低酸素」は、9%以下のO飽和、例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、及び0%のO飽和であり、例えば、その増分小部分(複数可)のいずれか及び全て(例えば、6.5%、5.0%、2.2%、1.7%、1.4%、0.9%、0.8%、0.75%、0.68%、0.5%、0.44%、0.3%、0.25%、0.2%、0.1%、0.08%、0.075%、0.058%、0.04%、0.032%、0.025%、0.01%など)及び0~9%の(両端を含む)のO飽和レベルの任意の範囲(例えば、0~5%、0.05~0.1%、0.1~0.2%、0.1~0.5%、0.5~2.0%、0~8%、5~7%、0.3~4.2%のOなど)を含む空気飽和を指すことを意味する。本明細書に列挙した例示的小部分及び範囲は、説明の目的のものであり、いかなる形であれ制限することを意図したものではない。
【0035】
「構成的プロモーター」とは、その制御下でコード配列または遺伝子の連続的な転写を促進することができる、及び/またはコード配列または遺伝子に操作可能に連結されたプロモーターを指す。
【0036】
構成的プロモーター、誘導性プロモーター、及びその変異体は、当技術分野において既知であり、PCT/US2016/032562及びPCT/US2016/062369に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
「腸」とは、食物の運搬及び消化、栄養素の吸収、及び老廃物の排泄を担う臓器、腺、管、及び系を指す。ヒトでは、腸は、口から始まり肛門で終わる消化(GI)管を含み、さらに、食道、胃、小腸、及び大腸を含む。腸はまた、脾臓、肝臓、胆嚢、及び膵臓などの副器官及び副腺も含む。上部消化管は、食道、胃、及び小腸の十二指腸を含む。下部消化管は、残りの小腸、すなわち空腸及び回腸、ならびに大腸の全て、すなわち盲腸、結腸、直腸、及び肛門管を含む。細菌は、腸全体で、例えば、消化管で、及び特に腸管で見られる。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、腸内で活発化する(例えば、1つ以上のPMEを発現する)。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、大腸内で活発化する(例えば、1つ以上のPMEを発現する)。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、小腸内で活発化する(例えば、1つ以上のPMEを発現する)。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、小腸及び大腸内で活発化する。理論に拘束されることを望まないが、アミノ酸吸収、例えば、フェニルアラニン吸収は小腸で起こるので、フェニルアラニン分解は、小腸においてあらゆる効果がある可能性がある。血液へのフェニルアラニンの取り込みを阻害または低減することによって、レベルの上昇及び結果として起こるPhe毒性を回避することができる。さらに、腸と身体の間のアミノ酸の広範囲な腸再循環により、PKUの全身フェニルアラニンの除去が可能になる可能性がある(例えば、ChangらによってPKUのラットモデルにおいて説明されている(Chang et al.,A new theory of enterorecirculation of amino acids and its use for depleting unwanted amino acids using oral enzyme-artificial cells, as in removing phenylalanine in phenylketonuria;Artif Cells Blood Substit Immobil Biotechnol.1995;23(1):1-21))。血液中のフェニルアラニンは、小腸に循環し、そこで活発化している微生物によって除去され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、小腸を通過する。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、小腸における滞留時間が長い。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、小腸でコロニー形成する。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、小腸でコロニー形成しない。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、腸における滞留時間が長い。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、腸でコロニー形成する。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、腸でコロニー形成しない。
【0038】
「微生物」とは、通常、単一の細胞からなる、微視的、限外顕微的、または超顕微鏡的なサイズの生物または微生物を指す。微生物の例としては、細菌、酵母、ウイルス、寄生生物、真菌、特定の藻類、及び原生動物が挙げられる。いくつかの態様では、微生物は、1つ以上の治療用分子または目的のタンパク質を産生するように遺伝子改変される(「遺伝子改変微生物」)。特定の態様では、微生物は、その環境、例えば、腸から特定の代謝産物またはその他の化合物を取り込んで、異化するように遺伝子改変される。特定の態様では、微生物は、特定の有益な代謝産物またはその他の化合物(合成または天然に存在する)を合成して、それらをその環境に放出するように遺伝子改変される。特定の実施形態では、遺伝子改変微生物は、遺伝子改変細菌である。特定の実施形態では、遺伝子改変微生物は、遺伝子改変ウイルスである。
【0039】
「非病原細菌」とは、宿主に疾患または有害な反応を引き起こす能力がない細菌を指す。いくつかの実施形態では、非病原細菌は、グラム陰性菌である。いくつかの実施形態では、非病原細菌は、グラム陽性菌である。いくつかの実施形態では、非病原細菌は、腸内の常在微生物叢中に存在する共生細菌である。非病原細菌の例としては、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Brevibacteria、Clostridium、Enterococcus、Escherichia、Lactobacillus、Lactococcus、Saccharomyces、及びStaphylococcus、例えば、Bacillus coagulans、Bacillus subtilis、Bacteroides fragilis、Bacteroides subtilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Clostridium butyricum、Enterococcus faecium、Escherichia coli、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus,Lactococcus lactis、及びSaccharomyces boulardiiが挙げられるが、これらに限定されない(Sonnenborn et al.,2009;Dinleyici et al.,2014;米国特許第6,835,376号;米国特許第6,203,797号;米国特許第5,589,168号;米国特許第7,731,976号)。天然の病原細菌が、病原性を低減または排除するように遺伝子組換えされてもよい。
【0040】
「プロバイオティック」は、生きている非病原微生物、例えば、適切な量の微生物を含む、宿主生物に健康上の利益を与えることができる細菌を指すために使用される。いくつかの実施形態では、宿主生物は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、宿主生物はヒトである。非病原細菌のいくつかの種、菌株、及び/または亜型は、現在プロバイオティックとして認識されている。プロバイオティック細菌の例としては、Bifidobacteria、Escherichia、Lactobacillus、及びSaccharomyces、例えば、Bifidobacterium bifidum、Enterococcus faecium、Escherichia coli、Escherichia coli株Nissle、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、及びSaccharomyces boulardiiが挙げられるが、これらに限定されない(Dinleyici et al.,2014;米国特許第5,589,168号;米国特許第6,203,797号;米国特許第6,835,376号)。プロバイオティックは、細菌の変異体または突然変異株であり得る(Arthur et al.,2012;Cuevas-Ramos et al.,2010;Olier et al.,2012;Nougayrede et al., 2006)。非病原細菌は、所望の生物学的特性、例えば、生存性を強化または改善するように遺伝子組換えされ得る。非病原細菌は、プロバイオティック特性を提供するように遺伝子組換えされ得る。プロバイオティック細菌は、プロバイオティック特性を強化または改善するように遺伝子組換えされ得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「安定した」微生物とは、例えば、特定の条件下で非天然遺伝物質が維持、発現及び/または増殖されるように、宿主ゲノムに組み込まれるか、または自己複製染色体外プラスミド上で増殖する非天然遺伝物質、例えば、PAL遺伝子を有する微生物宿主細胞を指すために使用される。安定した微生物は、in vitro、例えば培地で、及び/またはin vivo、例えば腸内で、生存及び/または増殖することができる。例えば、安定した微生物は、PALが宿主細胞で発現でき、宿主細胞がin vitro及び/またはin vivoで生存及び/または増殖することができるように、PAL遺伝子を有するプラスミドまたは染色体が宿主細胞内で安定に維持されている、PAL遺伝子、例えば、突然変異型PALを含む遺伝子操作された細菌であり得る。いくつかの実施形態では、コピー数は、非天然遺伝物質、例えば、PAL遺伝子またはPAH遺伝子の発現の安定性に影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、コピー数は、非天然遺伝物質、例えば、PAL遺伝子またはPAH遺伝子の発現のレベルに影響を及ぼす。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「調整する」及び「治療する」、ならびにそれらと同類の語は、疾患、障害、及び/または病態、あるいはそれらの少なくとも1つの認識可能な症状の改善を指す。別の実施形態では、「調整する」及び「治療する」とは、必ずしも患者によって認識可能とは限らない、少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。別の実施形態では、「調整する」及び「治療する」とは、物理的に(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)のいずれかで、またはその両方で、疾患、障害、及び/または病態の進行を阻害することを指す。別の実施形態では、「調整する」及び「治療する」とは、疾患、障害、及び/または病態の進行を遅らせること、または進行を逆転させることを指す。本明細書で使用される場合、「予防」及びそれと同類の語は、所与の疾患、障害、及び/または病態、あるいは、そのような疾患、障害、及び/または病態に関連する症状の発症を遅らせること、または罹患するリスクを低減することを指す。治療の必要な個人には、特定の医学的疾患をすでに患っている個人、ならびに、そのリスクがある個人、または最終的に疾患を患う可能性がある個人が含まれる。治療の必要性は、例えば、疾患の発症、疾患の存在もしくは進行、または疾患を患っている対象の治療に対する適当な受容性に関する1つ以上のリスク因子の存在によって評価される。原発性高フェニルアラニン血症、例えば、PKUは、先天性の遺伝子突然変異が原因であり、既知の治療法がない。高フェニルアラニン血症はまた、その他の病態、例えば、肝疾患に続発する場合もある。高フェニルアラニン血症の治療は、過剰なフェニルアラニン及び/または関連する症状を軽減または除去することを含み得るが、必ずしも基礎疾患の排除を含むわけではない。
【0043】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」とは、本発明の遺伝子組換えされた細菌と、生理学的に好適な担体及び/または賦形剤などの他の成分との調製物を指す。
【0044】
同じ意味で用いられる場合がある用語「生理学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される担体」とは、生物に重大な炎症を引き起こさず、かつ投与される細菌化合物の生物活性及び特性を抑止しない担体または希釈剤を指す。これらの語句には、アジュバントも含まれる。
【0045】
用語「賦形剤」とは、活性成分の投与をより促進するために医薬組成物に添加される不活性な物質を指す。例としては、重炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及びデンプンの類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、及び、例えばポリソルベート20などの界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
用語「治療的有効量」及び「治療上有効な量」は、症状の発症の予防、遅延、または病態の症状、例えば、高フェニルアラニン血症の寛解をもたらす化合物の量を指すために使用される。治療上有効な量は、例えば、過剰なフェニルアラニンレベルと関係した疾患または病態の、重症度を治療、予防、低減し、発症を遅延し、及び/または1つ以上の症状の発症のリスクを低減するのに十分な量であり得る。治療上有効な量、ならびに、治療上有効な投与頻度は、当技術分野において知られておる方法、及び下記にて説明する方法によって決定することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「1つのポリペプチド」に加えて「複数のポリペプチド」を含み、かつ、アミド結合(すなわち、ペプチド結合)によって直線的に連結されたアミノ酸モノマーで構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の任意の1つの鎖もしくは複数の鎖を指すが、産物の特定の長さを指すものではない。したがって、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「オリゴペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または任意の他の用語は、2つ以上のアミノ酸の1つの鎖もしくは複数の鎖を指すために使用され、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、かつ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語の代わりに使用されるか、またはこれらの用語のいずれかと同じ意味で使用されることがある。用語「ジペプチド」とは、2つの連結されたアミノ酸のペプチドを指す。用語「トリペプチド」とは、3つの連結されたアミノ酸のペプチドを指す。用語「ポリペプチド」はまた、例えば、限定はされないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、誘導体化、タンパク質分解切断、または天然に存在しないアミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾の産物を指すことが意図される。ポリペプチドは、天然の生物源に由来するか、または組換え技術によって産生され得る。その他の実施形態では、ポリペプチドは、本発明の遺伝子組換えされた微生物によって産生される。
【0048】
用語「ファージ」及び「バクテリオファージ」は、本明細書では同じ意味で用いられる。どちらの用語も、細菌に感染して細菌内で増殖するウイルスを指す。本明細書で使用される場合、「ファージ」または「バクテリオファージ」とは、プロファージ、溶原性ファージ、休眠ファージ、テンペレートファージ、無傷ファージ、欠損ファージ、潜在ファージ、及びサテライトファージ、ファージ尾部状バクテリオシン、テイロシン(tailiocin)、ならびに遺伝子導入剤の総称を意味する。
【0049】
本明細書で使用される場合、「プロファージ」とは、宿主細胞のレプリコンに組み込まれ、宿主ともに増殖するバクテリオファージのゲノム材料を指す。プロファージは、特異的に活性化される場合、ファージを産生する能力がある場合がある。場合によっては、プロファージは、ファージを産生する能力がないか、または産生したことがない(すなわち、欠損プロファージまたは潜在プロファージ)。場合によっては、プロファージはまた、サテライトファージを指す。用語「プロファージ」及び「内因性ファージ」は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0050】
「内因性ファージ」または「内因性プロファージ」はまた、細菌(及びその親株)の天然の状態で存在するファージを指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「ファージノックアウト」または「不活性ファージ」とは、ファージ粒子をそれ以上産生及び/またはパッケージしないか、または野生型ファージ配列よりも少ないファージ粒子しか産生できないように修飾されているファージを指す。いくつかの実施形態では、不活性ファージまたはファージノックアウトとは、溶原性状態のテンペレートファージの不活化、すなわち、プロファージを指す。このような修飾は、ファージ内の突然変異を指し、そのような突然変異には、ファージゲノム内の1つ以上の位置における、例えば、ファージゲノム内の1つ以上の遺伝子内の挿入、欠失(ファージゲノムの部分的なまたは完全な欠失)、置換、反転が含まれる。
【0052】
本明細書で使用される場合、形容詞「ファージフリー」、「ファージを含まない」及び「ファージレス」は、同じ意味で用いられ、1つ以上のプロファージを含み、そのうちの1つ以上が修飾されている細菌または株の特性を示す。修飾により、誘導されるプロファージの能力、またはファージ粒子の放出の喪失がもたらされる場合がある。あるいは、修飾を受けていない同遺伝子型株と比較して、修飾により、誘導効率の低下もしくは誘導頻度の低下、またはファージ放出効率の低下、またはファージ放出頻度の低下がもたらされる場合がある。ファージを誘導及び放出する能力は、本明細書に記載されるようなプラーク検定法を使用して測定することができる。
【0053】
本明細書で使用される場合、ファージ誘導とは、溶菌性ファージ遺伝子が活性化して、ファージ粒子が産生され、溶解が起きる溶原性プロファージの生活環の一部を指す。
【0054】
PAL突然変異体
本開示は、突然変異型PALポリペプチド及びそれをコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、原核生物種に由来する遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、真核生物種に由来する遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、Achromobacter xylosoxidans、Pseudomonas aeruginosa、Photorhabdus luminescens、Anabaena variabilis、及びAgrobacterium tumefaciensを含むがこれらに限定されない細菌種に由来するPAL遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、Anabaena variabilisに由来するPAL遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、Photorhabdus luminescensに由来するPAL遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、酵母種、例えば、Rhodosporidium toruloidesに由来するPAL遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、植物種、例えば、Arabidopsis thalianaに由来するPAL遺伝子によってコードされる。PALの任意の好適なヌクレオチド及びアミノ酸配列、またはその機能的フラグメントを使用して、突然変異型PALを誘導することができる。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PALと比較して、強化された安定性及び/または活性を示す。PAL遺伝子の非限定的例を表3に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0055】
いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1に由来するPAL遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、92位、133位、167位、432位、470位、433位、263位、366位及び396位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異を含む。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92位、H133位、I167位、L432位、V470位、A433位、A263位、K366位及び/またはL396位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸突然変異は、サイレント突然変異、例えば、アミノ酸コード配列の対応する変化を伴わないポリヌクレオチド配列の変化である。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133M位、H133F位、I167K位、L432I位、V470A位、A433S位、A263T位、K366K位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、及び/またはL396L位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133M位、I167K位、L432I位、及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異を含む。この突然変異は、本明細書において「mPAL1」と呼ばれる(配列番号2;表4)。
【0057】
いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133F位、A433S位及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異を含む。この突然変異は、本明細書において「mPAL2」と呼ばれる(配列番号3;表4)。
【0058】
いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133F位、A263T位、K366K位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、L396L位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異を含む。この突然変異は、本明細書において「mPAL3」と呼ばれる(配列番号4;表4)。
【表4-1】
【表4-2】
【0059】
いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、強化された安定性を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%を超える強化された安定性を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、約2倍、3倍、4倍、または5倍強化された安定性を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、フェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された活性または能力を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%を超える、フェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された活性または能力を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、約2倍、3倍、4倍、または5倍、フェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された活性または能力を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALと比較して、少なくとも2倍の活性の強化を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALと比較して、少なくとも3倍の活性の強化を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALと比較して、少なくとも4倍の活性の強化を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALと比較して、少なくとも5倍の活性の強化を示す。いくつかの実施形態では、フェニルアラニンを代謝するPAL能力の強化は、in vitroまたはin vivoにて、フェニルアラニン、馬尿酸塩、及び/またはトランス-ケイ皮酸のレベルを検出することによって測定される。
【0060】
遺伝子発現システム
いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、例えば、遺伝子発現を促進するために、1つ以上のプロモーター、ターミネーター、エンハンサー、インシュレーター、サイレンサー及び他の調節配列と共に突然変異型PALポリペプチドをコードする遺伝子(複数可)を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示は、PAL、例えば、突然変異型PALをコードする遺伝子の1つ以上のコピーを含む遺伝子発現システムを提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、野生型Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1に由来する突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、92位、133位、167位、432位、470位、433位、263位、366位及び396位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92位、H133位、I167位、L432位、V470位、A433位、A263位、K366位及び/またはL396位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133F位、H133M位、I167K位、L432I位、V470A位、A433S位、A263T位、K366K位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、及び/またはL396L位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133M位、I167K位、L432I位及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133F位、A433S位及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133F位、A263T位、K366K位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、L396L位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、mPAL1を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、mPAL2を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、mPAL3を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子発現システムと比較して、強化された安定性を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALを含む遺伝子発現システムは、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子発現システムと比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%を超える強化された安定性を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALを含む遺伝子発現システムは、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子発現システムと比較して、約2倍、3倍、4倍、または5倍強化された安定性を示す。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子発現システムと比較して、フェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された活性または能力を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALを含む遺伝子発現システムは、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子発現システムと比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%を超える、フェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された活性または能力を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALを含む遺伝子発現システムは、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子発現システムと比較して、約2倍、3倍、4倍、または5倍、フェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された活性または能力を示す。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALを含む遺伝子発現システムと比較して、少なくとも2倍の活性の強化を示す。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALを含む遺伝子発現システムと比較して、少なくとも3倍の活性の強化を示す。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALを含む遺伝子発現システムと比較して、少なくとも4倍の活性の強化を示す。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALを含む遺伝子発現システムと比較して、少なくとも5倍の活性の強化を示す。
【0065】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、別のPME(複数可)、例えば、PAH、LAADをさらに含む。例示的なPME及びこれらの組み合わせは、当技術分野において既知であり、例えば、PCT/US2016/032562及びPCT/US2016/062369を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、突然変異型PAL及び野生型PALを含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、フェニルアラニン輸送体に加えて、1つ以上のPMEをコードする1つ以上の遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン輸送体は、Acinetobacter calcoaceticus、Salmonella enterica、及びEscherichia coliを含むがこれらに限定されない細菌種に由来するpheP遺伝子によってコードされる。フェニルアラニン輸送体の例としては、aroP遺伝子によってコードされるAageneralアミノ酸透過酵素が挙げられ、フェニルアラニンを含む3つの芳香族アミノ酸を高親和性で輸送し、フェニルアラニン取り込みにPhePと共に最も関与していると考えられている。さらに、低レベルのフェニルアラニン輸送活性は、2つの周辺質結合タンパク質であるLIV結合タンパク質(LIV-I系)及びLS結合タンパク質(LS系)、ならびに膜成分のLivHMGFからなる分岐鎖アミノ酸輸送体であるLIV-I/LS系の活性に由来することが分かっている。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン輸送体は、細菌種に由来するaroP遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン輸送体は、細菌種に由来するLIV結合タンパク質及びLS結合タンパク質、ならびにLivHMGF遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌は、pheP、aroP、及びLIV-I/LS系から選択されるフェニルアラニン輸送体のうち2つ以上のタイプを含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、転写調節因子、例えば、転写因子をコードする1つ以上の遺伝子を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子は、プロモーターに操作可能に連結される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子は、誘導性プロモーターに操作可能に連結される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子は、本明細書に記載されるような外因的な環境条件によって誘導されるプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子は、哺乳動物の腸に特有な分子または代謝産物の存在下など、外因的な環境条件によって誘導されるプロモーターの制御下にある。一実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子は、低酸素条件、微好気性条件、または嫌気的条件によって誘導されるプロモーターの制御下で発現され、ここで、遺伝子の発現は、哺乳動物の腸の環境など低酸素環境または嫌気性環境下で活性化される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、FNR、ANR、またはDNRプロモーターである。FNRプロモーター配列の非限定的例を、表2に提示する。その他の実施形態では、1つ以上のPME(複数可)、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子は、転写活性化因子、例えば、CRPの結合部位に融合された酸素レベル依存性プロモーターの制御下で発現される。CRP(サイクリックAMP受容タンパク質、もしくはカタボライト活性化タンパク質すなわちCAP)は、グルコースなどの急速に代謝可能な炭水化物が存在する場合に、細菌において、不利な炭素源の取り込み、代謝、及び同化を担う遺伝子を抑制することによる重要な調節の役割を果たす(Wu et al.,2015)。
【0069】
代替の実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子は、糖アラビノースの存在下で活性化するParaBADプロモーターの制御下にある。一実施形態では、LAAD発現は、ParaBADプロモーターの制御下にある。一実施形態では、LAADの発現は、好気性または微好気性条件下で起こる。一実施形態では、PAL発現は、ParaBADプロモーターの制御下にある。一実施形態では、PAL発現は、好気性または微好気性条件下で起こる。一実施形態では、PAL発現は、嫌気性または低酸素条件で起こり、LAAD発現は、好気性または微好気性条件下で起こる。一実施形態では、PAL発現は、嫌気性または低酸素条件下で起こり、LADD発現は、ParaBADプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME及び/またはフェニルアラニン輸送体遺伝子は、化学的及び/または栄養上の誘導因子に曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、テトラサイクリンに曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、アラビノースに曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、IPTGまたは他のLacI誘導因子に曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、ラムノースに曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、テトラサイクリンに曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、例えば、PAL及びLAAD遺伝子などの2つ以上のPME遺伝子が発現され、それぞれの遺伝子は、本明細書に記載するプロモーターのいずれかなどの異なるプロモーターの制御下で発現される。
【0070】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムは、その発現が温度感受性メカニズムによって制御される1つ以上の遺伝子配列(複数可)を含む。温度調節因子は、外部化学物質または専用の媒体を使用することなく強力な転写制御を行うため有利である(例えば、Nemani et al.,Magnetic nanoparticle hyperthermia induced cytosine deaminase expression in microencapsulated E. coli for enzyme-prodrug therapy;J Biotechnol.2015 Jun 10;203:32-40、及び本明細書の参考文献を参照されたい)。突然変異型cI857抑制因子ならびにpL及び/またはpRファージλプロモーターを使用した温度調節されたタンパク質の発現が、組換え細菌株を遺伝子改変するために使用されてきた。次に、λプロモーターの下流でクローニングされた目的の遺伝子は、バクテリオファージλの突然変異熱不安定性cI857抑制因子によって効率的に調節することができる。37℃を下回る温度で、cI857は、pRプロモーターのoLまたはoR領域に結合し、RNAポリメラーゼによる転写を阻害する。例えば、37~42℃の高温では、機能的cI857二量体は、不安定になり、oLまたはoR DNA配列への結合が抑止され、mRNA転写が開始される。ParaBadによる誘導性発現は、本明細書に記載されるように、リボソーム結合部位(RBS)の最適化を介して制御するか、またはさらに微調整することができる。
【0071】
一実施形態では、1つ以上のPME(複数可)及び/またはPhe輸送体、例えば、PheP及び/または転写調節因子(複数可)の発現は、1つ以上の温度調節されたプロモーター(複数可)によって誘導される。一実施形態では、PALの発現は、温度調節されたプロモーターによって誘導される。一実施形態では、PhePの発現は、温度調節されたプロモーターによって誘導される。一実施形態では、LAADの発現は、温度調節されたプロモーターによって誘導される。
【0072】
いくつかの実施形態では、例えば、PAL及びLAAD遺伝子などの2つ以上のPME遺伝子が発現され、それぞれの遺伝子は、本明細書に記載するプロモーターのいずれかなどの同じプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、PME遺伝子(複数可)、及び/またはフェニルアラニン輸送体遺伝子、及び/または転写調節因子は、本明細書に記載するプロモーターのいずれかなどの異なるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、PME遺伝子(複数可)、、及び/またはフェニルアラニン輸送体遺伝子、及び/または転写調節因子は、本明細書に記載するプロモーターのいずれかなどの同じプロモーターの制御下で発現される。
【0073】
別の実施形態では、1つ以上の誘導性プロモーター(複数可)、例えば、温度調節されたプロモーター、アラビノース誘導性プロモーター、tet誘導性プロモーター、及びIPTG誘導性プロモーターは、1つ以上のバイシストロン性メッセージ(複数可)の発現を誘導する。バイシストロン性メッセージは、1つ以上のPME(複数可)、例えば、PALもしくはLAAD、、及び/または1つ以上のPhe輸送体(複数可)、例えば、PheP、及び/または1つ以上の転写調節因子(複数可)を含む場合がある。一実施形態では、1つ以上の誘導性プロモーター(複数可)は、トリシストロン性メッセージの発現を誘導する。トリシストロン性メッセージは、1つ以上のPME(複数可)、例えば、PALもしくはLAAD、、及び/または1つ以上のPhe輸送体(複数可)、例えば、PheP、及び/または1つ以上の転写調節因子(複数可)を含む場合がある。一実施形態では、1つ以上の誘導性プロモーター(複数可)は、マルチシストロン性メッセージの発現を誘導する。誘導されたマルチシストロン性メッセージは、1つ以上のPME(複数可)、例えば、PALもしくはLAAD、、及び/または1つ以上のPhe輸送体(複数可)、例えば、PheP、及び/または1つ以上の転写調節因子(複数可)を含む場合がある。
【0074】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現システムはまた、バイオセーフティ及び/または生物学的封じ込め、例えば、キルスイッチ、遺伝子ガードシステム、及び/または栄養要求性に関する1つ以上の遺伝子配列も含む場合がある。これらの遺伝子配列(複数可)の発現は、本明細書に記載のプロモーターまたはプロモーターシステムを使用して調節され得る。プロモーターは、1つ以上の異なる遺伝子を調節する同じプロモーターであり得るか、異なる遺伝子を調節する同じプロモーターの異なるコピーであり得るか、または異なる遺伝子の発現を調節するために組み合わせて使用される異なるプロモーターの使用を伴う場合がある。遺伝子発現を制御するための異なる調節システムまたはプロモーターシステムの使用により、柔軟性(例えば、異なる環境条件下で遺伝子発現を特異的に制御する能力、及び/または一時的に遺伝子発現を特異的に制御する能力)が提供され、また、遺伝子発現を「微調整する」能力も提供され、その調節のいずれかまたはその全ては、遺伝子発現及び/または微生物の成長を最適化するように作用する。具体例及び組み合わせは、当技術分野において既知であり、例えば、PCT/US2016/032562及びPCT/US2016/062369を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
高フェニルアラニン血症を軽減するように遺伝子改変された微生物
過剰なフェニルアラニンを低減することができる遺伝子組換えされた微生物を本明細書にて提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、非病原細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、共生細菌である。いくつかの実施形態では、細菌は、プロバイオティック細菌である。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌は、病原性を低減または排除するように修飾または突然変異された天然の病原細菌である。いくつかの実施形態では、非病原細菌は、グラム陰性菌である。いくつかの実施形態では、非病原細菌は、グラム陽性菌である。例示的な細菌としては、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Brevibacteria、Clostridium、Enterococcus、Escherichia coli、Lactobacillus、Lactococcus、Saccharomyces、及びStaphylococcus、例えば、Bacillus coagulans、Bacillus subtilis、Bacteroides fragilis、Bacteroides subtilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Clostridium butyricum、Enterococcus faecium、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus,Lactococcus lactis、及びSaccharomyces boulardiiが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、遺伝子組換えされた細菌は、Bacteroides fragilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides subtilis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Clostridium butyricum、Escherichia coli Nissle、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、及びLactococcus lactisからなる群から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌は、Escherichia coli Nissle1917株(E.coli Nissle)であり、最も特徴的なプロバイオティクスの1つに進化した腸内細菌科ファミリーのグラム陰性菌である(Ukena et al.,2007)。この菌株は、完全に無害であることが特徴であり(Schultz,2008)、GRAS(一般に安全であると認識されている)のステータスを有している(Reister et al.,2014、重要視されている)。
【0077】
当業者であれば、本明細書にて開示する遺伝子修飾が、細菌の他の種、菌株、及び亜型に適合され得ることを理解されるであろう。さらに、1つ以上の異なる種からの遺伝子は、互いに導入することができ、例えば、Rhodosporidium toruloides由来のPAL遺伝子は、Escherichia coliで発現させることができ(Sarkissian et al.,1999)、かつ原核生物フェニルアラニンアンモニアリアーゼと真核生物フェニルアラニンアンモニアリアーゼとは、配列相同性を有する(Xiang and Moore,2005)ことが知られている。
【0078】
未修飾E.coli Nissle及び本発明の遺伝子組換えされた細菌は、例えば、腸内または血清中の防御因子によって(Sonnenborn et al.,2009)、または投与後数時間また数日間活性化するキルスイッチによって破壊される場合がある。したがって、遺伝子組換えされた細菌は、持続投与を必要とする場合がある。いくつかの実施形態では、滞留時間は、ヒト対象に関して計算される。in vivoでの滞留時間は、遺伝子組換えされた細菌に関して計算される。
【0079】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、PAL、例えば、突然変異型PALをコードする1つ以上の遺伝子(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、原核生物種に由来するPALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、真核生物種に由来するPALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、Achromobacter xylosoxidans、Pseudomonas aeruginosa、Photorhabdus luminescens、Anabaena variabilis、及びAgrobacterium tumefaciensを含むがこれらに限定されない細菌種に由来するPALを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、野生型Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1に由来する突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、92位、133位、167位、432位、470位、433位、263位、366位及び396位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92位、H133位、I167位、L432位、V470位、A433位、A263位、K366位及び/またはL396位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133M位、H133F位、I167K位、L432I位、V470A位、A433S位、A263T位、K366K位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、及び/またはL396L位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133M位、I167K位、L432I位及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133F位、A433S位及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133F位、A263T位、K366K位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、L396L位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、mPAL1を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、mPAL2を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、mPAL3を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌と比較して、強化された安定性を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%を超える強化された安定性を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌と比較して、約2倍、3倍、4倍、または5倍強化された安定性を示す。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌と比較して、フェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された活性または能力を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌と比較して、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%を超える、フェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された活性または能力を示す。いくつかの実施形態では、突然変異型PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌と比較して、約2倍、3倍、4倍、または5倍、フェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された活性または能力を示す。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌と比較して、少なくとも2倍の活性の強化を示す。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌と比較して、少なくとも3倍の活性の強化を示す。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌と比較して、少なくとも4倍の活性の強化を示す。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、突然変異型PALを含み、適切な対照、例えば、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALを含む遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌と比較して、少なくとも5倍の活性の強化を示す。
【0083】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、別のPME(複数可)、例えば、PAH、LAADを含む。例示的なPME及びこれらの組み合わせは、当技術分野において既知であり、例えば、PCT/US2016/032562及びPCT/US2016/062369を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、突然変異型PAL及び野生型PALを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、本明細書に記載されるような突然変異型PAL、及び本明細書に記載されるようなフェニルアラニン輸送体、例えば、PhePを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、本明細書に記載されるような突然変異型PAL、本明細書に記載されるようなLAAD、及び本明細書に記載されるようなフェニルアラニン輸送体、例えば、PhePを含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌は、転写調節因子、例えば、本明細書に記載されるような非天然転写調節因子を含む。
【0086】
これらの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌中に存在するPME、例えば、突然変異型PAL、フェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子は、1つ以上のプロモーターに操作可能に連結され得る。プロモーターは、各遺伝子または各遺伝子のそれぞれのコピーに対して同じまたは異なるものであってもよい。いくつかの実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、外因的な環境条件によって誘導される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、哺乳動物の腸に特有な分子または代謝産物の存在下など、外因的な環境条件によって誘導される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、低酸素条件、微好気性条件、または嫌気的条件によって誘導され、ここで、遺伝子の発現は、哺乳動物の腸の環境など低酸素環境または嫌気性環境下で活性化される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、FNR、ANR、またはDNRプロモーターである。いくつかの実施形態では、酸素レベル依存性プロモーターは、転写活性化因子、例えば、CRPの結合部位に融合される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、糖アラビノースの存在下で活性化するParaBADプロモーターである。一実施形態では、LAAD発現は、ParaBADプロモーターの制御下にある。一実施形態では、LAADの発現は、好気性または微好気性条件下で起こる。一実施形態では、PAL発現は、ParaBADプロモーターの制御下にある。一実施形態では、PAL発現は、好気性または微好気性条件下で起こる。一実施形態では、PAL発現は、嫌気性または低酸素条件で起こり、LAAD発現は、好気性または微好気性条件下で起こる。一実施形態では、PAL発現は、嫌気性または低酸素条件下で起こり、LAAD発現は、ParaBADプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、化学的及び/または栄養上の誘導因子に曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、テトラサイクリンに曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体遺伝子、及び/または転写調節因子は、アラビノースに曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体遺伝子、及び/または転写調節因子は、IPTGまたは他のLacI誘導因子に曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、ラムノースに曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、テトラサイクリンに曝されることで誘導されるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、例えば、PAL及びLAAD遺伝子などの2つ以上のPME遺伝子が発現され、それぞれの遺伝子は、本明細書に記載するプロモーターのいずれかなどの異なるプロモーターの制御下で発現される。
【0087】
いくつかの実施形態では、PME、例えば、突然変異型PAL、フェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子発現は、温度感受性メカニズム、例えば、突然変異型cI857抑制因子、pL及び/またはpRファージλプロモーターによって制御される。いくつかの実施形態では、37℃を下回る温度で、cI857は、pRプロモーターのoLまたはoR領域に結合し、RNAポリメラーゼによる転写を阻害する。例えば、37~42℃の高温では、機能的cI857二量体は、不安定になり、oLまたはoR DNA配列への結合が抑止され、mRNA転写が開始される。ParaBadによる誘導性発現は、本明細書に記載されるように、リボソーム結合部位(RBS)の最適化を介して制御するか、またはさらに微調整することができる。
【0088】
一実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌における1つ以上のPME(複数可)、及び/またはPhe輸送体(複数可)、例えば、PheP、及び/または転写調節因子(複数可)の発現は、1つ以上の温度調節されたプロモーター(複数可)によって誘導される。一実施形態では、PALの発現は、温度調節されたプロモーターによって誘導される。一実施形態では、PhePの発現は、温度調節されたプロモーターによって誘導される。一実施形態では、LAADの発現は、温度調節されたプロモーターによって誘導される。
【0089】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌において2つ以上のPME遺伝子が発現され、それぞれの遺伝子は、本明細書に記載するプロモーターのいずれかなどの同じプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌において2つ以上のPME遺伝子が発現され、それぞれの遺伝子は、本明細書に記載するプロモーターのいずれかなどの同じプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌におけるPME遺伝子(複数可)、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、本明細書に記載するプロモーターのいずれかなどの異なるプロモーターの制御下で発現される。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌におけるPME遺伝子(複数可)、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子は、本明細書に記載するプロモーターのいずれかなどの同じプロモーターの制御下で発現される。
【0090】
別の実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌における1つ以上の誘導性プロモーター(複数可)、例えば、温度調節されたプロモーター、アラビノース誘導性プロモーター、tet誘導性プロモーター、及びIPTG誘導性プロモーターは、1つ以上のバイシストロン性メッセージ(複数可)の発現を誘導する。バイシストロン性メッセージは、1つ以上のPME(複数可)、例えば、PALもしくはLAAD、及び/または1つ以上のPhe輸送体(複数可)、例えば、PheP、及び/または1つ以上の転写調節因子(複数可)を含む場合がある。一実施形態では、1つ以上の誘導性プロモーター(複数可)は、トリシストロン性メッセージの発現を誘導する。トリシストロン性メッセージは、1つ以上のPME(複数可)、例えば、PALもしくはLAAD、及び/または1つ以上のPhe輸送体(複数可)、例えば、PheP、及び/または1つ以上の転写調節因子(複数可)を含む場合がある。一実施形態では、1つ以上の誘導性プロモーター(複数可)は、マルチシストロン性メッセージの発現を誘導する。誘導されたマルチシストロン性メッセージは、1つ以上のPME(複数可)、例えば、PALもしくはLAAD、及び/または1つ以上のPhe輸送体(複数可)、例えば、PheP、及び/または1つ以上の転写調節因子(複数可)を含む場合がある。
【0091】
1つ以上のPME、フェニルアラニン輸送体、及び転写調節因子遺伝子(複数可)は、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌内のプラスミドまたは染色体上に存在し得る。いくつかの実施形態では、染色体からの発現は、PME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子の発現の安定性を強化させるのに有用である場合がある。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子(複数可)は、遺伝子組換えされた微生物内の1つ以上の組み込み部位で微生物の染色体に組み込まれる。いくつかの実施形態では、1つ以上のPME、及び/またはフェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子遺伝子(複数可)は、プラスミド上で発現される。いくつかの実施形態では、プラスミドは、低コピープラスミドである。その他の実施形態では、プラスミドは、高コピープラスミドである。
【0092】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌はまた、バイオセーフティ及び/または生物学的封じ込め、例えば、キルスイッチ、遺伝子ガードシステム、細胞増殖及び/または生存に関する必須遺伝子、thyA、dapA、及び/または栄養要求性に関する1つ以上の遺伝子配列も含む場合がある。これらの遺伝子配列(複数可)の発現は、本明細書に記載のプロモーターまたはプロモーターシステムを使用して調節され得る。プロモーターは、1つ以上の異なる遺伝子を調節する同じプロモーターであり得るか、異なる遺伝子を調節する同じプロモーターの異なるコピーであり得るか、または異なる遺伝子の発現を調節するために組み合わせて使用される異なるプロモーターの使用を伴う場合がある。遺伝子発現を制御するための異なる調節システムまたはプロモーターシステムの使用により、柔軟性(例えば、異なる環境条件下で遺伝子発現を特異的に制御する能力、及び/または一時的に遺伝子発現を特異的に制御する能力)が提供され、また、遺伝子発現を「微調整する」能力も提供され、その調節のいずれかまたはその全ては、遺伝子発現及び/または微生物の成長を最適化するように作用する。具体例及び組み合わせは、当技術分野において既知であり、例えば、PCT/US2016/032562及びPCT/US2016/062369、米国仮出願第62/184,811号、PCT/US2016/062369を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、細胞外環境において細胞質から分子を分泌することができる天然の分泌メカニズムまたは非天然の分泌メカニズムをさらに含む。多くの微生物は、細胞エンベロープを越えて基質を輸送する精巧な分泌系を進化させている。小分子、タンパク質、及びDNAなどの基質は、細胞外空間または周辺質(例えば、腸管内腔またはその他の空間)に放出されるか、標的細胞に注入されるか、または微生物の膜に結合される場合がある。分泌系の例は、PCT/US2016/062369に開示されている。
【0094】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、細菌であり、本開示は、1つ以上のファージゲノム(複数可)を含む細菌を提供し、ここで、該ファージゲノムのうち1つ以上は、欠損している。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上のファージゲノム(複数可)を含む細菌を提供し、ここで、該ファージゲノムのうち1つ以上は、溶菌性ファージが産生されないように欠損している。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上のファージゲノム(複数可)を含む細菌を提供し、ここで、該ファージゲノムのうち1つ以上は、1つ以上のファージ遺伝子が発現しないという点で欠損している。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上のファージゲノム(複数可)を含む細菌を提供し、ここで、該1つ以上のファージゲノム(複数可)内の1つ以上のファージ遺伝子は、1つ以上の突然変異を含んでいる。いくつかの実施形態では、1つ以上のファージゲノム(複数可)は、プロバイオティック細菌の天然の状態で存在する。いくつかの実施形態では、細菌は、1つ以上の溶原性ファージ(複数可)をコードする。いくつかの実施形態では、細菌は、1つ以上の欠損もしくは潜在ファージ(複数可)、またはサテライトファージ(複数可)をコードする。いくつかの実施形態では、細菌は、1つ以上のテイロシンまたは遺伝子導入剤をコードする。いくつかの実施形態では、1つ以上の突然変異は、ファージの溶菌サイクルを経る能力に影響を及ぼし、例えば、所与の個体群における溶菌段階を経ることができる細菌の頻度または数を減らす。いくつかの実施形態では、1つ以上の突然変異は、ファージが他の細菌に感染するのを防止する。いくつかの実施形態では、1つ以上の突然変異は、細菌の適応度を変化、例えば、増加または減少させる。
【0095】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌のファージゲノムのうち1つ以上は、突然変異される。このような突然変異は、1つ以上のファージ遺伝子の配列の一部または全配列の1つ以上の欠失(複数可)を含み得る。あるいは、突然変異は、1つ以上のファージ遺伝子への1つ以上のヌクレオチドの1つ以上の挿入(複数可)を含み得る。別の例では、突然変異は、1つ以上のファージ遺伝子の配列の一部または全配列の1つ以上の置換(複数可)を含み得る。別の例では、突然変異は、ファージゲノム内の1つ以上のファージ遺伝子の配列の一部または全配列の1つ以上の反転(複数可)を含む。さらに、突然変異は、1つ以上の欠失、挿入、置換、または反転の任意の組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、1つ以上の突然変異は、1つ以上のファージゲノムにおいて1つ以上の目的の突然変異を有していない同じ細菌と比較して、細菌からのファージ粒子の産生及び放出を低減または防止する。いくつかの実施形態では、細菌は、Escherichia coli株Nissleである。いくつかの実施形態では、突然変異したファージゲノムは、E.coli Nissleファージ1ゲノム、E.coli Nissleファージ2ゲノム、及び/またはE.coli Nissleファージ3ゲノムである。一実施形態では、突然変異したファージゲノムは、E.coli Nissleファージ3ゲノムである。一実施形態では、突然変異は、ECOLIN_09965、ECOLIN_09970、ECOLIN_09975、ECOLIN_09980、ECOLIN_09985、ECOLIN_09990、ECOLIN_09995、ECOLIN_10000、ECOLIN_10005、ECOLIN_10010、ECOLIN_10015、ECOLIN_10020、ECOLIN_10025、ECOLIN_10030、ECOLIN_10035、ECOLIN_10040、ECOLIN_10045、ECOLIN_10050、ECOLIN_10055、ECOLIN_10065、ECOLIN_10070、ECOLIN_10075、ECOLIN_10080、ECOLIN_10085、ECOLIN_10090、ECOLIN_10095、ECOLIN_10100、ECOLIN_10105、ECOLIN_10110、ECOLIN_10115、ECOLIN_10120、ECOLIN_10125、ECOLIN_10130、ECOLIN_10135、ECOLIN_10140、ECOLIN_10145、ECOLIN_10150、ECOLIN_10160、ECOLIN_10165、ECOLIN_10170、ECOLIN_10175、ECOLIN_10180、ECOLIN_10185、ECOLIN_10190、ECOLIN_10195、ECOLIN_10200、ECOLIN_10205、ECOLIN_10210、ECOLIN_10220、ECOLIN_10225、ECOLIN_10230、ECOLIN_10235、ECOLIN_10240、ECOLIN_10245、ECOLIN_10250、ECOLIN_10255、ECOLIN_10260、ECOLIN_10265、ECOLIN_10270、ECOLIN_10275、ECOLIN_10280、ECOLIN_10290、ECOLIN_10295、ECOLIN_10300、ECOLIN_10305、ECOLIN_10310、ECOLIN_10315、ECOLIN_10320、ECOLIN_10325、ECOLIN_10330、ECOLIN_10335、ECOLIN_10340、及びECOLIN_10345から選択される1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを含む。一実施形態では、突然変異、例えば、1つ以上の欠失は、ECOLIN_10110、ECOLIN_10115、ECOLIN_10120、ECOLIN_10125、ECOLIN_10130、ECOLIN_10135、ECOLIN_10140、ECOLIN_10145、ECOLIN_10150、ECOLIN_10160、ECOLIN_10165、ECOLIN_10170、及びECOLIN_10175から選択される1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを含む。本明細書にて開示する細菌及び薬学的に許容される担体を含む薬学的に許容される組成物。
【0096】
ファージゲノムの修飾は、当技術分野において既知であり、例えば、PCT/US18/38840を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
いくつかの実施形態では、突然変異は、溶菌遺伝子をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上のタンパク質分解酵素または溶解素をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上の毒素をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上の抗生物質耐性関連タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つまたはファージ翻訳関連タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、1つ以上の突然変異は、構造的タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。このような構造的遺伝子には、頭部、尾部、カラー、またはコートのポリペプチドをコードする遺伝子が含まれる。いくつかの実施形態では、1つ以上の突然変異は、頭部構造体のポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、1つ以上の突然変異は、尾部構造体のポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、1つ以上の突然変異は、カラー構造体のポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、1つ以上の突然変異は、尾部タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、1つ以上の突然変異は、コート構造体のポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上のプレートタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、バクテリオファージの構築に必要な1つ以上のタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上のポータルタンパク質をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、組換えに関与する1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上のインテグラーゼをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上のインベルターゼをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上のトランスポザーゼをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、複製または翻訳に関与する1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上のプライマーゼをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上のtRNA関連タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、ファージ挿入に関与する1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、結合部位をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、パッケージングに関与する1つ以上のポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上のターミナーゼをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上のテイロシンをコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、溶菌増殖、水平遺伝子移入、細胞溶解、ファージ構造、ファージ構築、ファージパッケージング、組換え、複製、翻訳、ファージ挿入、またはこれらの組み合わせに関連する1つ以上の遺伝子内に位置する。いくつかの実施形態では、突然変異は、1つ以上の宿主遺伝子をコードする1つ以上の遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。いくつかの実施形態では、突然変異は、リピドA生合成(KDO)2-(ラウロイル)リピドIVAアシルトランスフェラーゼ、ペプチダーゼ、亜鉛ABC輸送体基質結合タンパク質、亜鉛ABC輸送体ATPアーゼ、高親和性亜鉛輸送体膜成分、ATP依存性DNAヘリカーゼRuvB、ATP依存性DNAヘリカーゼRuvA、ホリディー連結リゾルバーゼ、ジヒドロネオプテリン三リン酸ピロホスファターゼ、アスパルチル-tRNAシンテターゼ、加水分解酵素、DNAポリメラーゼV、MsgA、ファージ尾部タンパク質、尾部タンパク質、宿主特異性タンパク質、ペプチダーゼP60、尾部タンパク質、尾部ファイバータンパク質、マイナー尾部タンパク質U、DNA切断-再結合タンパク質、ペプチダーゼS14、カプシドタンパク質、DNAパッケージングタンパク質、ターミナーゼ、リゾチーム、ホリン、DNAアデニンメチラーゼ、セリンタンパク質分解酵素、抗転写終結タンパク質、抗抑制因子、交差結合部エンドデオキシリボヌクレアーゼ、アデニンメチルトランスフェラーゼ、DNAメチルトランスフェラーゼECOLIN_10240、GntRファミリー転写調節因子ECOLIN_10245、cI抑制因子、未知の機能のドメイン(DUF4222);DNA組換え酵素、複数の抗生物質耐性調節因子(MarR)、P22における未知のead類似タンパク質、未知の機能のタンパク質(DUF550);3’-5’エキソヌクレアーゼ、除去酵素、インテグラーゼ、tRNAメチルトランスフェラーゼ、及びこれらの組み合わせをコードする遺伝子内にある。
【0098】
いくつかの実施形態では、突然変異は、細胞溶解、ファージ構造、ファージ構築、ファージパッケージング組換え、複製もしくが翻訳、ファージ挿入、または宿主タンパク質、及びこれらの組み合わせのうち1つ以上に関与する1つ以上のポリペプチドをコードする遺伝子内に位置するか、またはそれらを包含する。
【0099】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌は、遺伝子改変されたEscherichia coli Nissle1917株である。PCT/US2018/038840(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているバイオインフォマティクス評価により、E.coli Nissleゲノムにおける3つの信頼の高い予測されるプロファージ配列(本明細書においては、ファージ1、ファージ2、及びファージ3と呼ばれる)が発見されている。E.coli Nissleにおいて最も長い予測されるファージ(ファージ3)は、合計68個のタンパク質を含んでおり、ファージ尾部、頭部、ポータル、ターミナーゼ、溶解素、カプシド、及びインテグラーゼを含み、またそれら全ては、無傷であるように見える。ファージ2は、合計69個のタンパク質を含んでおり、ファージトランスポザーゼ、溶解、ターミナーゼ、頭部、ポータル、カプシド、及び尾部タンパク質を含む。ファージ2を詳しく調べたところ、int/xis遺伝子ペアが、可動性の遺伝性要素によって破壊され、cI抑制因子が、別々のDNA結合及びセンシングペプチドに断片化されたことが明らかとなり、これにより、このファージの誘導が阻止されることが予想される。E.coli Nissleで予測される最も短い無傷ファージであるファージ1は、合計32個のタンパク質を含んでおり、溶解及びトランスポザーゼ機能を含む。しかし、ファージ1と呼ばれる推定プロファージ要素内に多くの構造的遺伝子が存在しないことから、生存可能なファージ粒子を放出するその能力は疑問視されている。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌は、1つ以上のE.coli Nissleバクテリオファージ、例えば、ファージ1、ファージ2、及びファージ3を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌は、E.coli Nissleバクテリオファージのファージ3を含む。例示的なファージの遺伝子については、PCT/US18/38840(その内容は本明細書に参考として組み込まれる)に記載されている。
【0100】
医薬組成物
遺伝子組換えされた微生物、例えば、本明細書にて開示する突然変異型PALを含む遺伝子組換えされた細菌を含む医薬組成物を使用して、高フェニルアラニン血症、例えば、PKUに関連する疾患を、治療、管理、緩和、及び/または予防することができる。1つ以上の遺伝子組換えされた微生物を含む本発明の医薬組成物は、単独で、または予防剤、治療剤、及び/または薬学的に許容される担体と組み合わせて提供される。特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の遺伝子修飾を含むように遺伝子改変された微生物の1つの種、菌株、または亜型を含む。代替の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の遺伝子修飾を含むようにそれぞれが遺伝子改変された微生物の2つ以上の種、菌株、及び/または亜型を含む。
【0101】
本明細書に記載の医薬組成物は、薬学的使用向けの組成物への活性成分の加工を促進する賦形剤及び補助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の方式で製剤化され得る。医薬組成物を製剤化する方法は、当技術分野において既知である(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,PAを参照されたい)。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、錠剤化、凍結乾燥、直接圧縮、従来の混合、溶解、顆粒化、水簸、乳化、カプセル化、封入、または噴霧乾燥に供して、錠剤、顆粒、ナノ粒子、ナノカプセル、マイクロカプセル、マイクロ錠剤、ペレット、もしくは粉末を形成し、これらは、腸溶的にコーティングしてもよいし、腸溶的にコーティングしなくてもよい。適切な製剤化は、投与経路に依存する。
【0102】
本明細書に記載の遺伝子組換えされた微生物は、任意の好適な剤形(例えば、経口投与向けの液剤、カプセル剤、サシェ、ハードカプセル、ソフトカプセル、錠剤、腸溶性コーティング錠剤、懸濁粉末、顆粒、またはマトリックス徐放性形成物)で、及び任意の好適なタイプの投与(例えば、経口、局所、注射用、即時放出、脈動放出、遅延放出、または持続放出)向けに、医薬組成物へと製剤化され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、細菌である。遺伝子組換えされた細菌の好適な投薬量は、約10~1012個の細菌、例えば、およそ10個の細菌、およそ10個の細菌、およそ10個の細菌、およそ10個の細菌、およそ10個の細菌、およそ1010個の細菌、およそ1011個の細菌、またはおよそ1011個の細菌の範囲で変動し得る。組成物は、1日に、1週間に、または1月に1回以上投与されてよい。組成物は、食事の前、最中、または後に投与されてよい。一実施形態では、医薬組成物は、対象が食事をとる前に投与される。一実施形態では、医薬組成物は、食事と同時に投与される。一実施形態では、医薬組成物は、対象が食事をとった後に投与される。
【0103】
遺伝子組換えされた微生物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、緩衝剤、表面活性剤、中性もしくはカチオン性脂質、脂質複合体、リポソーム、浸透増強剤、担体化合物、及びその他の薬学的に許容される担体または薬剤を含む医薬組成物へと製剤化される。例えば、医薬組成物は、重炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、様々な糖及びデンプンの類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、及び、例えばポリソルベート20などの界面活性剤の追加を含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子組換えされた微生物は、(例えば、胃などの酸性細胞環境を緩衝するために)重炭酸ナトリウムの溶液中で、例えば、重炭酸ナトリウムの1モル溶液中で製剤化され得る。遺伝子組換えされた微生物は、中性または塩の形態として投与及び製剤化されてよい。薬学的に許容される塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導される、アニオンの形態のもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導される、カチオンの形態のものが含まれる。
【0104】
本明細書にて開示する遺伝子組換えされた微生物は、局所投与されてよく、かつ軟膏、クリーム、経皮パッチ、ローション、ゲル、シャンプー、スプレー、エアロゾル、溶液、エマルション、または当業者に良く知られている他の形態で製剤化され得る。例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,PAを参照されたい。一実施形態では、噴霧できない局所用剤形の場合、局所適用と相溶性があり、かつ水よりも高い動的粘度を有する担体または1つ以上の賦形剤を含む粘性体から半固体または固体形態が使用される。適切な製剤としては、溶液、懸濁液、エマルション、クリーム、軟膏、粉末、塗布薬、軟膏剤などが挙げられるが、これらに限定されず、これらは、滅菌されるか、または例えば、浸透圧などの種々の特性に影響を与える補助的な薬剤(例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤、緩衝剤、または塩類)と混合されてよい。他の好適な局所用剤形としては、噴霧できるエアロゾル調製物が挙げられ、この際、固形物または液体不活性担体と組み合わされる活性成分は、加圧揮発性物質(例えば、フレオンなどのガス状噴霧剤)と組み合わせた混合物で、または圧縮ボトルに包装される。保湿剤または潤湿剤もまた、医薬組成物及び剤形に加えることができる。そのような追加の成分の例は、当該技術分野において周知である。一実施形態では、本発明の組換え微生物を含む医薬組成物は、衛生用製品として製剤化され得る。例えば、衛生用製品は、抗菌製剤、または発酵ブロスなどの発酵製品などであってもよい。衛生用製品は、例えば、シャンプー、コンディショナー、クリーム、ペースト類、ローション、及びリップバームであってもよい。
【0105】
本明細書にて開示する遺伝子組換えされた微生物は、経口投与されてよく、かつ錠剤、丸剤、糖剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、懸濁剤などとして製剤化される。経口使用向けの薬理学的組成物は、錠剤または糖衣コアを得るために、固形の賦形剤を用いて、所望する場合補助剤を加えた後に、必要に応じて得られた混合物を研磨し、顆粒の混合物を加工して作ることができる。好適な賦形剤としては、ラクトース、ショ糖、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などのフィラー;トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなどのセルロース組成物;及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの生理学的に許容されるポリマー類が挙げられるが、これらに限定されない。架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩であるアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤も、添加されてよい。
【0106】
錠剤またはカプセル剤は、従来の方法によって、薬学的に許容される賦形剤、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ショ糖、グルコース、ソルビトール、デンプン、ゴム、カオリン、及びトラガカント);フィラー(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、またはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、安息香酸ナトリウム、L-ロイシン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、デンプン、ジャガイモデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、糖、セルロース誘導体、シリカ粉末)、あるいは湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて調製することができる。錠剤は、当該技術分野において周知の方法でコーティングされ得る。コーティングシェルも検討され得、一般的な薄膜としては、ポリラクチド、ポリグリコール酸、ポリ無水物、その他の生分解性ポリマー、アルギン酸-ポリリジン-アルギン酸(APA)、アルギン酸-ポリメチレン-co-グアニジン-アルギン酸(A-PMCG-A)、アクリル酸ヒドロキシメチル-メタクリル酸メチル(HEMA-MMA)、多層HEMA-MMA-MAA、ポリアクリロニトリルビニルクロライド(PAN-PVC)、アクリロニトリル/メタリルスルホン酸ナトリウム(AN-69)、ポリエチレングリコール/ポリペンタメチルシクロペンタシロキサン/ポリジメチルシロキサン(PEG/PD5/PDMS)、ポリN,N-ジメチルアクリルアミド(PDMAAm)、ケイ酸含有カプセル類、硫酸セルロース/アルギン酸ナトリウム/ポリメチレン-co-グアニジン(CS/A/PMCG)、酢酸フタル酸セルロース、アルギン酸カルシウム、k-カラギーナン-イナゴマメゴムゲルビーズ、ゲラン-キサンタンビーズ、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、カラギーナン、デンプンポリ無水物類、デンプンポリメタクリレート、ポリアミノ酸、及び腸溶性コーティングポリマー、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、腸、または腸の特定の領域、例えば、大腸への放出向けに腸溶的にコーティングされる。胃から結腸までの典型的なpHプロファイルは、約1~4(胃)、5.5~6(十二指腸)、7.3~8.0(回腸)、及び5.5~6.5(結腸)である。一部の疾患では、pHプロファイルは変更される場合がある。いくつかの実施形態では、コーティングは、放出部位を特定するために、特定のpH環境で分解される。いくつかの実施形態では、少なくとも2種のコーティングが使用される。いくつかの実施形態では、外側コーティング及び内側コーティングは、異なるpHレベルで分解される。
【0108】
経口投与向けの液体調製物は、溶液、シロップ、懸濁液、または使用前に水またはその他の好適なビヒクルを用いて液体調製される乾燥生成物の形態をとってもよい。このような液体調製物は、従来の方法によって、薬学的に許容される薬剤、例えば、沈殿防止剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素添加食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンもしくはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、もしくは分留植物油);及び保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を用いて調製することができる。調製物はまた、必要に応じて、緩衝塩、着香剤、着色剤、及び甘味剤を含有していてもよい。経口投与向けの調製物は、本明細書に記載の遺伝子組換えされた微生物の徐放、制御放出、または持続放出向けに適切に製剤化され得る。
【0109】
特定の実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体と共に経口投与されてもよい。化合物はまた、ハードまたはソフトシェルゼラチンカプセルに封入されるか、錠剤に圧縮されるか、または対象の食事に直接混合されてもよい。経口治療投与の場合、化合物は、賦形剤と混合され、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの形態で使用され得る。非経口投与以外の方法で化合物を投与するためには、その不活性化を阻止する物質で化合物をコーティングするか、またはその物質と共に化合物を同時投与する必要がある場合がある。
【0110】
別の実施形態では、本発明の組換え微生物を含む医薬組成物は、食用に適した製品、例えば、食品である場合がある。一実施形態では、食品は、牛乳、濃縮乳、発酵乳(ヨーグルト、サワーミルク、冷凍ヨーグルト、乳酸菌発酵飲料)、粉ミルク、アイスクリーム、クリームチーズ、ドライチーズ、豆乳、発酵豆乳、野菜フルーツジュース、フルーツジュース、スポーツドリンク、菓子、キャンディ、幼児用食品(幼児用ケーキなど)、栄養食品、動物の飼料、または栄養補助食品である。一実施形態では、食品は、発酵乳製品などの発酵食品である。一実施形態では、発酵乳製品は、ヨーグルトである。別の実施形態では、発酵乳製品は、チーズ、牛乳、クリーム、アイスクリーム、ミルクセーキ、またはケフィアである。別の実施形態では、本発明の組換え微生物は、プロバイオティックとして機能することを目的とした他の生細菌細胞を含有する調製物に組み合わされる。別の実施形態では、食品は、飲料である。一実施形態では、飲料は、フルーツジュースベースの飲料か、または植物もしくは薬草抽出物を含有する飲料である。別の実施形態では、食品は、ゼリーまたはプディングである。本発明の組換え微生物の投与に適した他の食品は、当該技術分野において周知である。例えば、US2015/0359894及びUS2015/0238545を参照されたく、これらのそれぞれの全内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。さらに別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、パン、ヨーグルト、またはチーズなどの食品に注入されるか、噴霧されるか、または振りかけられる。
【0111】
いくつかの実施形態では、組成物は、腸溶的にコーティングされるか、または腸溶的にコーティングされていないナノ粒子、ナノカプセル、マイクロカプセル、もしくはマイクロ錠剤を介した腸内投与、空腸内投与、十二指腸内投与、回腸内投与、胃シャント投与、または結腸内投与向けに製剤化される。医薬組成物はまた、例えば、カカオバターまたはその他のグリセリドなど従来の坐薬を使用する、坐薬または停留浣腸など直腸組成物の状態で製剤化され得る。組成物は、油性または水性ビヒクルに懸濁、溶解、乳濁していてもよく、また懸濁剤、安定化剤、及び/または分散剤を含有していてもよい。
【0112】
本明細書に記載の遺伝子組換えされた微生物は、鼻孔内投与され、エアロゾル形態、スプレー、ミストで、または、滴の形態で製剤化され、かつ好適な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフロロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の好適な気体)の使用を伴う加圧パックもしくは噴霧器からのエアロゾルスプレー状の形態で好適に送達され得る。加圧エアロゾル投薬量単位は、計量された量を送達する弁を設けることによって確定され得る。吸入器または注入器で使用するためのカプセル及びカートリッジ(例えば、ゼラチンの)は、化合物とラクトースもしくはデンプンなどの適切な粉末ベースとの粉末混合物を含有するように製剤化され得る。
【0113】
遺伝子組換えされた微生物は、デポー調製物として投与及び製剤化され得る。このような長時間作用型製剤は、移植によって、または静脈内注射、皮下注射、局所注射、直接注射もしくは点滴を含む注射によって投与され得る。例えば、組成物は、好適な高分子もしくは疎水性物質(例えば、許容可能な油中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂を用いて、あるいは、やや難溶な可溶性誘導体として(例えば、やや難溶な可溶性塩として)製剤化され得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、単回使用製剤での薬学的に許容される組成物について本明細書にて開示する。単回使用製剤は、液体または固体形態であり得る。単回使用製剤は、改質することなく直接患者に投与されるか、または投与前に希釈もしくは溶液調製される場合がある。特定の実施形態では、単回使用製剤は、ボーラス形態で、例えば、単回注射で、複数の錠剤、カプセル、丸剤などを含む経口量を含む単回経口量で投与され得る。代替の実施形態では、単回使用製剤は、例えば、点滴によってある期間にわたって投与され得る。
【0115】
その他の実施形態では、組成物は、制御放出または持続放出装置で送達される場合がある。一実施形態では、制御放出または持続放出を実現するためにポンプが使用される場合がある。別の実施形態では、本開示の療法剤の制御放出または持続放出を実現するために高分子材料が使用される場合がある(例えば、米国特許第5,989,463号を参照されたい)。持続放出製剤で使用されるポリマーの例としては、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、及びポリオルトエステルが挙げられるが、これらに限定されない。持続放出製剤で使用されるポリマーは、非活性で、浸出性不純物を含まず、貯蔵時に安定であり、無菌であり、かつ生分解性のものであってよい。いくつかの実施形態では、制御放出または持続放出装置は、予防的または治療的標的の近くに配置することができ、したがって、全身用量のほんの一部しか必要としない。当業者に既知の任意の好適な技術が使用されてよい。
【0116】
投薬計画は治療応答を提供するように調整することができる。投薬は、疾患の重症度及び応答性、投与経路、治療の時間経過(数日から数ヶ月から数年)、及び疾患の寛解までの時間など、いくつかの要因に依存する可能性がある。例えば、単回ボーラスが一度に投与されてもよく、複数回に分割した用量で予め決められた期間にわたって投与されてよもよく、または、その用量は治療状況に応じて減量または増量されてよい。投薬量の基準値は、活性化合物の固有の特性、及び達成されるべき特定の治療効果によって決定される。投薬量の値は、緩和されるべき病態の種類及び重症度によって変化し得る。任意の特定の対象に対して、特定の投薬計画が、個々のニーズ及び治療を行う臨床医の専門的判断に従って、経時的に調整されてよい。本明細書に記載の化合物の毒性及び治療効果は、細胞培養または動物モデルにおける標準的な薬学的手法によって決定することができる。例えば、LD50、ED50、EC50、及びIC50が決定されてよく、かつ毒作用と治療効果との間の用量比(LD50/ED50)が治療指数として計算されてもよい。潜在的な損傷を最小限に抑えて副作用を低減するように慎重に改質した状態で、有毒性の副作用を呈する組成物を使用することもできる。投薬は、細胞培養アッセイ及び動物モデルから最初に推定されてもよい。in vitro及びin vivoアッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトで使用するための投薬量の範囲を算出する際に使用することができる。
【0117】
医薬組成物は、薬剤の量を示したアンプルまたはサシェなどの密閉容器に包装され得る。一実施形態では、医薬組成物のち1つ以上は、密閉容器内の乾燥した滅菌凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として供給され、かつ対象への投与に適切な濃度に溶液調製する(例えば、水または生理食塩水を用いて)ことができる。一実施形態では、予防的もしくは治療的薬剤、または医薬組成物のうち1つ以上は、2℃~8℃で保管される密閉容器内の乾燥した滅菌凍結乾燥粉末として供給され、溶液調製された後、1時間以内、3時間以内、5時間以内、6時間以内、12時間以内、24時間以内、48時間以内、72時間以内、または1週間以内に投与される。凍結乾燥剤形には、凍結防止剤、主に0~10%のショ糖(最適には0.5~1.0%)を含めることができる。その他の適切な凍結防止剤には、トレハロース及びラクトースが含まれる。その他の適切な充填剤には、それぞれが0~0.05%の濃度で含まれる場合があるグリシン及びアルギニン、及びポリソルベート80(最適には0.005~0.01%の濃度で含まれる)が含まれる。追加の界面活性剤としては、ポリソルベート20及びBRIJ界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物は、注射用溶液として調製され得、補助剤として有用な薬剤、例えば、吸収または分散を増加させるために使用されるもの、例えば、ヒアルロニダーゼをさらに含めることができる。
【0118】
治療の方法
本開示の別の態様は、高フェニルアラニン血症に関連する疾患または高フェニルアラニン血症に関連する症状(複数可)を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書にて開示する遺伝子改変微生物、例えば、細菌を含む組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、高フェニルアラニン血症に関連する疾患または高フェニルアラニン血症に関連する症状(複数可)を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、突然変異型PAL、PAH、及び/またはLAADを含む1つ以上のPME、例えば、PALをコードする遺伝子配列を含む遺伝子改変微生物を含む組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、高フェニルアラニン血症に関連する疾患または高フェニルアラニン血症に関連する症状(複数可)を治療する方法を提供する。
【0119】
いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1に由来する突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、92位、133位、167位、432位、470位、433位、263位、366位及び396位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92位、H133位、I167位、L432位、V470位、A433位、A263位、K366位及び/またはL396位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133M位、H133F位、I167K位、L432I位、V470A位、A433S位、A263T位、K366K位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、及び/またはL396L位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133M位、I167K位、L432I位、及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133F位、A433S位及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PAL、例えば、配列番号1のアミノ酸位と比較して、S92G位、H133F位、A263T位、K366K位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、L396L位(例えば、ポリヌクレオチド配列におけるサイレント突然変異)、及びV470A位から選択される1つ以上のアミノ酸において突然変異のある突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、治療方法は、mPAL1を含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、mPAL2を含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、mPAL3を含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、強化された安定性を示す突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、P.luminescens PALと比較して、フェニルアラニンを代謝し及び/または高フェニルアラニン血症を軽減する強化された活性または能力を示す突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALと比較して、少なくとも2倍の活性の強化を示す突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALと比較して、少なくとも3倍の活性の強化を示す突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALと比較して、少なくとも4倍の活性の強化を示す突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療方法は、野生型PAL、例えば、Photorhabdus luminescens PALと比較して、少なくとも5倍の活性の強化を示す突然変異型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、治療方法は、別のPME(複数可)、例えば、PAH、LAAD、及び/またはフェニルアラニン輸送体(複数可)をさらに含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。例示的なPME及びこれらの組み合わせは、当技術分野において既知であり、例えば、PCT/US2016/032562及びPCT/US2016/062369を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、治療方法は、突然変異型PAL及び野生型PALを含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、治療方法は、転写調節因子、例えば、本明細書に記載されるような非天然転写調節因子をさらに含む微生物、例えば、細菌を投与することを含む。これらの実施形態では、PME、例えば、突然変異型PAL、フェニルアラニン輸送体、及び/または転写調節因子は、本明細書にて開示するような1つ以上のプロモーター、例えば、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、温度調節されたプロモーター、酸素レベル依存性プロモーターなどに操作可能に連結され得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物、例えば、細菌はまた、本明細書に記載されるようなバイオセーフティ及び/または生物学的封じ込め、例えば、キルスイッチ、遺伝子ガードシステム、細胞増殖及び/または生存に関する必須遺伝子、thyA、dapA、栄養要求性などに関する1つ以上の遺伝子配列も含む場合がある。
【0126】
いくつかの実施形態では、疾患は、フェニルケトン尿症、古典的または典型的なフェニルケトン尿症、非定型フェニルケトン尿症、永久的軽症高フェニルアラニン血症、非フェニルケトン尿症の高フェニルアラニン血症、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ欠損症、補因子欠損症、ジヒドロプテリジンレダクターゼ欠損症、テトラヒドロプテリンシンターゼ欠損症、及び瀬川病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、高フェニルアラニン血症は、他の病態、例えば、肝疾患に続発するものである。いくつかの実施形態において、本発明は、これらの疾患に関連する、神経脱落症候、精神発達障害、脳疾患、てんかん、湿疹、成長低下、小頭症、振戦、手足の痙縮、及び/または低色素症を含むがこれらに限定されない1つ以上の症状(複数可)を軽減、緩和、または排除する方法を提供する。いくつかの実施形態では、治療される対象は、ヒト患者である。
【0127】
特定の実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、高フェニルアラニン血症、例えば、PKUに関連する疾患または障害を治療するために、食事中のフェニルアラニンを代謝することができる。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、食事タンパク質と同時に投与される。その他の実施形態では、遺伝子組換えされた細菌は、食事タンパク質と同時に投与されない。研究により、腸への膵臓及びその他の腺分泌物には、高レベルのタンパク質、酵素、及びポリペプチドが含まれ、かつそれらの異化作用の結果として産生されるアミノ酸が、「腸再循環」として知られている過程で血液に再吸収されることが示されている(Chang,2007;Sarkissian et al.,1999)。したがって、フェニルアラニンの腸内レベルの高さは、食物摂取とは部分的に無関係である可能性があり、PALによって分解され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物及び食事タンパク質は、ある期間の絶食またはフェニルアラニン制限食後に投与される。これらの実施形態では、高フェニルアラニン血症に罹患している患者は、実質的に通常の食事、またはフェニルアラニンを含まない食事に比べて制限の少ない食事を再開することができる可能性がある。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、高フェニルアラニン血症、例えば、PKUに関連する疾患を治療するために、別の供給源、例えば、血液からのフェニルアラニンを代謝することができる可能性がある。これらの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、食事タンパク質と同時に投与されることを必要とせず、例えば、血液から腸へのフェニルアラニン勾配が発生し、かつ、遺伝子組換えされた微生物は、フェニルアラニンを代謝し、高フェニルアラニン血症を軽減する。
【0128】
この方法は、本明細書に記載の微生物、例えば、細菌の少なくとも1つの遺伝子組換えされた種、菌株、または亜型を含む医薬組成物を調製することと、該医薬組成物を治療上有効な量で対象に投与することと、を含む場合がある。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子組換えされた微生物は、例えば、懸濁液の状態で経口投与される場合がある。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子組換えされた微生物は、ゲルキャップ内に凍結乾燥されて、経口投与される。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子組換えされた微生物は、栄養管または胃シャントを介して投与される。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子組換えされた微生物は、例えば、浣腸によって直腸内に投与される。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子組換えされた微生物は、局所、腸内、空腸内、十二指腸内、回腸内、及び/または結腸に投与される。
【0129】
特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、対象におけるフェニルアラニンレベルを低下させるために投与される。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、治療していない対象または対照対象におけるレベルよりも、対象におけるフェニルアラニンレベルを少なくとも約10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上低下させる。いくつかの実施形態では、低下は、医薬組成物の投与前後の対象におけるフェニルアラニンレベルを比較することによって測定される。いくつかの実施形態では、高フェニルアラニン血症を治療または緩和する方法は、病態または障害の1つ以上の症状が少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またそれ以上改善することを可能にする。
【0130】
医薬組成物の投与前、投与中、及び投与後、対象におけるフェニルアラニンレベルは、血液、血清、血漿、尿、腹腔液、脳脊髄液、糞便、腸内粘膜切屑などの生体サンプル、組織から採取したサンプル、及び/または胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、直腸、及び肛門管のうち1つ以上の部分から採取したサンプルで測定することができる。いくつかの実施形態では、方法は、フェニルアラニンを低減するために、本発明の組成物の投与を含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、対象におけるフェニルアラニンを検出不可能レベルまで低下させるために、本発明の組成物の投与を含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、フェニルアラニン濃度を検出不可能レベルまで、あるいは、治療前の対象のフェニルアラニンレベルの約1%、2%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、または80%未満に低下させるために、本発明の組成物の投与を含み得る。
【0131】
対象における馬尿酸塩レベルは、血液、血清、血漿、尿、腹腔液、脳脊髄液、糞便、腸内粘膜切屑などの生体サンプル、組織から採取したサンプル、及び/または胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、直腸、及び肛門管のうち1つ以上の部分から採取したサンプルで測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、フェニルアラニンを低減して、それにより馬尿酸塩産生のレベルを増加させるために、本発明の組成物の投与を含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、対象におけるフェニルアラニンを検出不可能レベルまで低下させて、同時に、それに比例して、例えば、尿中の馬尿酸塩レベルを増加させるために、本発明の組成物の投与を含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、馬尿酸塩濃度を、治療前の対象の尿中の馬尿酸塩レベルの約1%、2%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%超、もしくは最大99%、または最大100%まで上昇させることをもたらす、本発明の組成物の投与を含み得る。
【0132】
いくつかの実施形態では、PAL、例えば、突然変異型PALを発現する遺伝子組換えされた微生物の活性(例えば、フェニルアラニン分解活性)は、哺乳動物対象、例えば、動物モデルまたはヒトの尿中で、産生された馬尿酸塩の量及びその蓄積速度を測定することによって、検出することができる。馬尿酸塩は、PAL固有の分解生成物であり、通常ヒトの尿中に低濃度で存在する。馬尿酸塩は、PAL経路を介したフェニルアラニンの代謝の最終生成物である。フェニルアラニンアンモニアリアーゼは、フェニルアラニンのケイ皮酸への変換を媒介する。ケイ皮酸は、腸内で産生されると、吸収され、肝臓で馬尿酸塩に急速に変換され、肝臓で排泄される(Hoskins JA and Gray Phenylalanine ammonia lyase in the management of phenylketonuria:the relationship between ingested cinnamate and urinary hippurate in humans.J Res Commun Chem Pathol Pharmacol.1982 Feb;35(2):275-82)。フェニルアラニンは、1:1の比で馬尿酸塩に変換され、言い換えると、1モルのPheは、1モルの馬尿酸塩に変換される。したがって、このメカニズムを利用する治療の効果の非観血的測定として尿中の馬尿酸塩レベルの変化を用いることができる。
【0133】
したがって、馬尿酸は、PALベースの養生法を受けている患者における食事療法の遵守及び治療効果のモニタリングを可能にするバイオマーカーとして機能する能力を有する。これは、患者の管理の際に血中のPheレベルの測定に対する補助剤として使用することができ、かつ尿中バイオマーカーであるため、成長に伴ってニーズが変更するために困難な場合がある小児のタンパク質摂取調整に対して特に利点がある可能性がある。
【0134】
このセクションにおいて、用語「PALベースの薬物」とは、PAL活性、例えば、PEG-PAL、Kuvan、本開示の微生物、例えば、PAL及び任意選択でPheP輸送体をコードする微生物を含む組成物を有する、任意の薬物、ポリペプチド、生物材料、または治療法を指す。いくつかの実施形態において、本開示は、対象、例えば、哺乳動物対象にPALベースの薬物を投与して、PAL活性の尺度として対象において産生される馬尿酸塩の量を測定することによってin vivoにおけるPAL活性を測定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、対象、例えば、哺乳動物対象にPALベースの薬物を投与して、PALの治療的活性の尺度として対象において産生される馬尿酸塩の量を測定することによってPALベースの薬物の治療的活性をモニタリングする方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、対象、例えば、哺乳動物対象にPALベースの薬物を投与して、PAL活性を判定するために対象において産生される馬尿酸塩の量を測定し、それにより対象におけるPAL活性を強化または低減するために薬物の投薬量を調整する(例えば、増やすまたは減らす)ことによって、PALベースの薬物の投薬量を調整する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、対象にPALベースの薬物を投与することと、対象において産生される馬尿酸塩の量を測定することと、対象におけるPAL活性を強化または低減するためにタンパク質摂取量を調整する(例えば、増やすまたは減らす)か、または対象の食事を調整することとを含む、高フェニルアラニン血症を患っている対象のタンパク質摂量及び/または食事を調整する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、対象にPALベースの薬物を投与することと、対象において産生される馬尿酸塩の量を測定することと、対象におけるPAL活性を測定することとを含む、高フェニルアラニン血症を患っている対象のタンパク質摂取量及び/または食事療法の遵守を確認する方法を提供する。
【0135】
本明細書にて開示される方法のいくつかの実施形態では、血中フェニルアラニンレベル及び尿中馬尿酸塩レベルの両方を、対象においてモニタリングする。いくつかの実施形態では、血中フェニルアラニン及び尿中馬尿酸塩を複数の時点で測定して、フェニルアラニン分解速度を判定する。いくつかの実施形態では、尿中馬尿酸塩レベルを使用して、動物モデルにおけるPAL活性または菌株活性を評価する。
【0136】
いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて使用して、菌株の作用機序を検査する。いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて、菌株におけるPAL活性とLAAD活性とを見分け、菌株全体の活性に対する各酵素の働きを判定することを可能にする手段として使用する。
【0137】
いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて使用して、動物モデル及びヒト対象における安全性を評価する。いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて、所望の薬理学的効果及び安全性のための用量反応及び最適レジメンの評価時に使用する。いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて、効果及び/または毒性の代替評価項目として使用する。いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて使用して、治療用菌株を含むレジメンに対する患者の応答を予測する。いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて、薬物療法に応答する可能性の高い特定の患者集団を特定するために使用する。いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて使用して、特異的有害事象を回避する。いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値は、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて、患者選択に有用である。
【0138】
いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて、PALを発現する治療用PKU株の投与を含む、レジメンに基づいてPKU患者のタンパク質摂取量/食事を調整するための一方法として使用する。
【0139】
いくつかの実施形態では、馬尿酸の尿中レベル測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて使用して、組換えPALの活性を測定及び/またはモニタリングする。いくつかの実施形態では、馬尿酸の尿中レベル測定値を使用して、組換えペグ化PAL(Peg-PAL)の活性を測定及び/またはモニタリングする。いくつかの実施形態では、馬尿酸の尿中レベル測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて使用して、本明細書に記載されるような治療用菌株と組み合わせて投与した組換えPALの活性を測定及び/またはモニタリングする。
【0140】
いくつかの実施形態では、尿中の馬尿酸測定値を、単独で、または血中フェニルアラニン測定値と組み合わせて、他のバイオマーカー、例えば、臨床安全性バイオマーカーと組み合わせて使用する。このような安全性マーカーの非限定的例としては、身体検査、バイタルサイン、及び心電図(ECG)が挙げられる。その他の非限定的例としては、当技術分野において知られている肝臓安全性検査、例えば、血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、及びビリルビンが挙げられる。このようなバイオセーフティマーカーとしては、例えば、当技術分野において知られている腎臓安全性検査、例えば、血中尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン、糸球体濾過速度(GFR)、クレアチニンクリアランス、血清電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物、及び重炭酸塩)及び総合的な尿検査(血液、白血球、キャストに対する色、pH、比重、グルコース、タンパク質、ケトン体、及び微視的検査)、ならびにシスタチン-c、β2-ミクログロブリン、尿酸、クラステリン、N-アセチル-ベータ-d-グルコサミニダーゼ、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)、Nアセチル-β-d-グルコサミニダーゼ(NAG)、及び腎臓損傷分子-1(KIM-1)も挙げられる。その他の非限定的例としては、当技術分野において知られている血液学安全性バイオマーカー、例えば、全血球計算値、総ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン、赤血球分布幅%、平均赤血球ヘモグロビン濃度、総白血球数、白血球分画算定値(好中球、リンパ球、好塩基球、好酸球及び単球)、ならびに血小板が挙げられる。その他の非限定的例としては、当技術分野において知られている骨安全性マーカー、例えば、血清カルシウム及び無機リン酸塩が挙げられる。その他の非限定的例としては、当技術分野において知られている基本的な代謝安全性バイオマーカー、例えば、血糖、トリグリセリド(TG)、総コレステロール、低比重リポタンパクコレステロール(LDLc)、及び高比重リポタンパクコレステロール(HDLc)が挙げられる。当技術分野において知られているその他の特定の安全性バイオマーカーとしては、例えば、血清免疫グロブリンレベル、C反応性タンパク質(CRP)、フィブリノゲン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、チロキシン、テストステロン、インシュリン、乳酸脱水素酵素(LDH)、クレアチンキナーゼ(CK)及びそのアイソエンザイム、心筋トロポニン(cTn)、ならびにメトヘモグロビンが挙げられる。
【0141】
本発明の方法は、医薬組成物を、単独で、または1つ以上の別の治療剤と組み合わせて投与することを含む場合がある。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、補因子テトラヒドロビオプテリン(例えば、Kuvan/サプロプテリン)、大きなアミノ酸(例えば、チロシン、トリプトファン)、グリコマクロペプチド、プロバイオティック(例えば、VSL3)、酵素(例えば、ペグ化PAL)、及び/またはフェニルケトン尿症の治療で使用される他の薬剤と組み合わせて投与される(Al Hafid and Christodoulou,2015)。
【0142】
いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物は、1つ以上の組換え的に産生されたPME酵素、例えば、組換えPAL、LAAD、またはPAHと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、組換えPALは、突然変異型PALである。いくつかの実施形態では、組換え酵素は、向上した安定性及び/または送達向けにさらに製剤化される。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌と組み合わせて投与される1つ以上のPME酵素は、ペグ化される。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌と組み合わせて投与される1つ以上のPME酵素は、融合タンパク質として送達される。このような融合タンパク質の非限定的例は、細胞への取り込みのためのPMEと形質導入ドメインの間の融合である。このような形質導入ドメインまたは細胞透過性ペプチドの非限定的例は、TATペプチドである。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌と組み合わせて投与される1つ以上のPME酵素は、ナノ粒子の状態で製剤化される。このようなナノ粒子の非限定的例は、硫酸デキストラン/キトサンPMEナノ粒子である。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた細菌と組み合わせて投与される1つ以上のPME酵素は、PMEミクロスフィアとして送達される。このようなミクロスフィアの非限定的例は、バリウムアルギナートPMEミクロスフィアである。いくつかの実施形態では、遺伝子組換えされた微生物と組み合わせて投与される1つ以上のPME酵素は、非晶質シリカPME粒子として送達される。
【実施例
【0143】
実施例1.PALプラスミド及び形質転換細菌の構築
Escherichia coli NissleでのPALの誘導産生を促進するために、Anabaena variabilisまたはPhotorhabdus luminescensのPAL遺伝子、ならびに転写要素及び翻訳要素を、を合成して(Gen9、Cambridge,MA)、ベクターpBR322にクローニングした。PAL遺伝子を、誘導性プロモーターの制御下に置いた。低コピー及び高コピープラスミドを、誘導性FNRプロモーターまたはTetプロモーターの制御下でPAL1及びPAL3のそれぞれに対して生成した。例示的プロモーターについては、本明細書に記載されている。
【0144】
本明細書に記載の研究のために以下のステップに従って、本明細書に記載のプラスミドのそれぞれを、E.coli Nissleに形質転換した。全てのチューブ、溶液、及びキュベットを、事前に4℃に冷却した。E.coli Nissleを一晩培養した培養物を、アンピシリンを含有する5mLの溶原性ブロス(LB)中で1:100に希釈し、0.4~0.6のOD600に達するまで増殖させた。次いで、E.coli細胞を2,000rpmで、4℃で5分間遠心分離にかけ、上澄液を取り除き、細胞を、1mLの4℃の水に再懸濁させた。E.coliを、再度、2,000rpmで、4℃で5分間遠心分離にかけ、上澄液を取り除き、細胞を、0.5mLの4℃の水に再懸濁させた。E.coliを、再度、2,000rpmで、4℃で5分間遠心分離にかけ、上澄液を取り除き、最終的に、細胞を、0.1mLの4℃の水に再懸濁させた。電気穿孔器を2.5kVに設定した。プラスミド(0.5μg)を細胞に加え、ピペット操作によって混合し、ピペットを用いて冷却した滅菌キュベットに移した。乾燥したキュベットをサンプルチャンバーに入れ、電気パルスを印加した。1mLの室温のSOC培地を直ちに添加し、混合物を培養チューブに移して、37℃で1時間インキュベートした。アンピシリンを含有するLBプレートに細胞を分注し、一晩インキュベートした。
【0145】
突然変異の誘導産生を促進するために、mPAL1、mPAL2、及びmPAL3を、無水テトラサイクリン(aTc)-応答性プロモーターの制御下で低コピープラスミド(pSC101複製起点)にクローニングし、Nissle細菌に移入した。
【0146】
実施例2.mPAL1、mPAL2、及びmPAL3の特定を含むスクリーニングプロセス
菌株においてPAL活性を起こすために、野生型PAL3、mPAL1、mPAL2、及びmPAL3発現するプラスミドを含有する培養物を、最初に一晩増殖させた。翌朝、一晩培養した培養物を使用して、OD600=0.1で新鮮な培地に逆希釈して、培養物を初期対数期まで増殖させた。初期対数期に入った時点で、PALの誘導のために、aTcを200ng/mLの濃度で添加し、5時間その誘導を続行させた。誘導段階の最後に、培養物を遠心分離にかけ、上澄液を廃棄し、ペレットを15%グリセロールに再懸濁させた。細胞材料を、in vitroでのPAL活性(TCA産生)の検査日まで-80℃で保存した。
【0147】
活性化した細胞からのPAL活性を検査するために、凍結細胞アリコートを解凍し、5.0×10CFU/mLで重炭酸ナトリウム緩衝液に再懸濁させた。次に、この溶液を、等量のシミュレート胃液(SGF)と混合し、振とうさせながら37℃で2時間インキュベートした。2時間後、サンプルを取り出し、細胞を遠心分離によってペレット化した。上澄液を回収し、トランス-ケイ皮酸(TCA)について分析した(図1及び図2を参照)。
【0148】
Shimadzu HPLC-PDAシステムを使用してトランス-ケイ皮酸(TCA)の定量化を行った。TCA標準物質を、0.005、0.03、0.1、0.7、3.4、6.7、16.9、33.7、50.6mMの濃度のアッセイ培地内で調製した。細菌の上澄液サンプルを解凍して、4000rpmで5分間遠心分離にかけた。5μLの標準物質及びサンプルを96ウェルプレートに移し、続いて195μLの水を添加した。プレートを、ClearSealカバーでヒートシールし、混合した。
【0149】
用いた注入量は20μLであり、実行時間は10分、流速は0.35mL/分であった。移動相Aは、水中の0.1%トリフルオロ酢酸であり、移動相Bは、アセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸であった。Thermo Scientific Hypersil Gold、100×21mm、1.9μ、部品番号25002-102130を使用してクロマトグラフ分離を実行し、勾配は、移動相Bの5%から開始し、0~2分で移動相Bが35%、2~4分で移動相Bが35%、4.01~4.50分で移動相Bが90%、4.51~6分で移動相Bが5%であり、10分の時点で終了した。TCAの保持時間は、6.05分であり、315nmで吸収した。(図1及び図2)。
【0150】
実施例3.PKUのマウスモデルにおける突然変異型PALの効果
in vivo研究のために、BTBR-Pahenu2マウスをJackson Laboratoryから入手し、PKUのモデルとして使用するために交配してホモ接合体にする。本明細書に記載のPAL突然変異体を保有する細菌を増殖させる。細菌をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁させ、経口強制飼養によってマウスに投与する。投与の2時間前に、ATCによって細菌を誘発してもよい。
【0151】
研究の開始時に、マウスに、100マイクログラム/mLのATC及び5%のショ糖が補充された水を与える。固形飼料を取り除くことによってマウスを一晩(10時間)絶食させ、翌朝、血液サンプルを下顎部から採血して、ベースラインフェニルアラニンレベルを決定する。ヘパリンを加えたチューブに血液サンプルを採取し、2Gで20分間回転させ、血漿を生成し、続いてそれを取り出して、-80℃で保管する。マウスに固形飼料を再度与え、1時間後、ATCによって事前に2時間かけて誘導された100μL(5×10CFU)の細菌を強制飼養する。マウスを、2時間、固形飼料給餌に戻す。血漿サンプルを上述のように調製する。摂食前後のフェニルアラニンレベルを測定し、対照と比較する。
【0152】
皮下フェニルアラニンチャレンジの場合、研究の少なくとも3日前(すなわち、-6日目から-3日目)に開始し、ホモ接合体BTBR-Pahenu2マウス(およそ6~12週齢)に、フェニルアラニンを含まない固形飼料及び0.5グラム/Lのフェニルアラニンが補充された水を継続的に与える。1日目に、マウスを治療グループに無作為に分け、血液サンプルを下顎下皮膚穿刺によって採取し、ベースラインフェニルアラニンレベルを決定する。マウスの体重を測定して、グループごとの平均体重を決定する。続いて、グループの平均体重に従って、体重1グラムあたり0.1mgのフェニルアラニンを皮下注射によってマウスに単回投与する。注射の30分後と90分後に、200μLのHO(n=30)、対照細菌、または突然変異型PALを含む細菌を、経口強制飼養によってマウスに投与する。フェニルアラニンチャレンジの2時間後と4時間後に血液サンプルを採取し、血中のフェニルアラニンレベルを質量分析法を使用して測定する。
【0153】
PAL活性、例えば、突然変異型PAL活性の別のアッセイが、当技術分野において既知であり、例えば、PCT/US2016/032562及びPCT/US2016/062369を参照されたく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
実施例4.PAL変異体の反応速度測定
野生型PAL3、mPAL1、mPAL2、及びmPAL3に関して、Phe濃度[Phe](mM)に相関する速度V(μM TCA/分)を含むミカエリス-メンテングラフを作成した。飽和した一晩前培養物からの細菌を1:100で接種し、2時間後に200ng/mLのATCで誘導した。誘導の4時間後、細胞をペレット化し、PBSで洗浄し、PBS中でOD600=50に正規化し、50%グリセロール中に2倍に希釈し、-80℃で保存した。マイクロチップを備えたBranson Digital Sonifierを使用して、各菌株からの溶解物を、超音波で処理して調製した。溶解物サンプルの可溶性画分を反応速度アッセイに使用した。溶解物サンプル内の総タンパク質を、Bradford Assayを介して測定し、反応速度アッセイ用に、全てのサンプルをウェルあたり10μg総タンパク質負荷量に正規化した。溶解物サンプルを、2倍希釈で40mMのPheから39μMのPhe濃度範囲にした状態で1X M9 0.5%のグルコース中でインキュベートした。反応速度アッセイを、BioTek Synergy H1マイクロプレートリーダーを使用して、37℃の静的インキュベーションに設定し、毎分A290測定によって定量化したTCAを用いてUV-star96ウェルマイクロプレート(Greiner)で実施した。各フラフのデータポイントは、試験したPhe濃度ごとの活性の最初の1時間から計算した速度(μM TCA/分のV)である(この際、活性は直線的に推移した)。(図3)。
【0155】
実施例5.カニクイザルモデルにおける突然変異型PALの効果
本明細書に記載の突然変異型PALのin vivoにおける効果を評価するために、mPAL2(SYN7262)を含む遺伝子組換えされたE.coli Nissleを、米国特許第10,610,546号(その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように経鼻胃強制飼養を介して投与した。簡単に述べると、SYNB1618及びSYN7262株を、バイオリアクターで増殖し、それぞれ、嫌気生活/IPTGまたはATC/IPTGを加えることによってPAL発現を誘導した。発酵の最後に、細胞を、遠心沈殿させ、-80℃で15%グリセロール中に保管した。投与の日に、動物のそれぞれに、ペプトンの形態の5.5gのタンパク質、及び250mgのD5-Phe、続いて、SYNB1618またはSYN7262のいずれかを1×1011個の生細胞用量で投与した。6時間にわたって血液及び尿を採取した。Thermo TSQ Quantum Maxトリプル四重極質量分析計を使用したタンデム型質量分析に連結された液体クロマトグラフィー(LC-MS/MS)によって、血漿TCA曲線下面積に加えて、尿中馬尿酸塩の排泄を分析した。(図4)。
【0156】
実施例6.PKU株の全細胞活性
野生型PAL3の異なるコピー数を含む細菌株を、本明細書に記載のように調製した。続いて、各菌株からの細胞の一部を溶解させた。溶解物サンプルの可溶性画分を活性アッセイに使用した。無傷の細菌及び溶解物のPAL3活性を前述の通り測定した。PAL3のコピー数(発現)の増加によるTCA産生の全細胞比率への影響はほとんど見られなかった。対照的に、同じ細胞材料を溶解した場合、コピー数(発現)の増加は、活性の増加と相関する。d-Pheからd-TCAへの変換によって測定された溶解物PAL活性は、増加する外因的非標識TCAの存在下で低下し、これにより、酵素がその産生物によってフィードバック阻害されることが実証された。E.coliの排出ポンプの誘導因子であるサリチル酸の添加により、PALの誘導中にin vitroにおける全細胞PAL活性の比率が増加した。(図5)。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
【配列表】
2023518184000001.app
【国際調査報告】