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特表2023-518205酸化ストレスと関連した障害の処置およびこの処置のための化合物
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  • 特表-酸化ストレスと関連した障害の処置およびこの処置のための化合物 図1
  • 特表-酸化ストレスと関連した障害の処置およびこの処置のための化合物 図2
  • 特表-酸化ストレスと関連した障害の処置およびこの処置のための化合物 図3
  • 特表-酸化ストレスと関連した障害の処置およびこの処置のための化合物 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】酸化ストレスと関連した障害の処置およびこの処置のための化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/357 20060101AFI20230421BHJP
   C07C 69/738 20060101ALI20230421BHJP
   C07C 235/70 20060101ALI20230421BHJP
   C07C 327/02 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 11/16 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230421BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230421BHJP
   C07D 207/408 20060101ALI20230421BHJP
   C07D 211/14 20060101ALI20230421BHJP
   C07D 231/12 20060101ALI20230421BHJP
   C07D 233/64 20060101ALI20230421BHJP
   C07D 263/32 20060101ALI20230421BHJP
   C07D 317/32 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/4409 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/421 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20230421BHJP
   C07D 295/15 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
A61K31/357
C07C69/738 Z CSP
C07C235/70
C07C327/02
A61P9/00
A61P9/10
A61P3/06
A61P9/04
A61P9/12
A61P35/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P3/10
A61P29/00
A61P25/04
A61P25/00
A61P13/12
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P31/04
A61P11/16
A61P43/00 111
A61P11/00
C07D207/408
C07D211/14
C07D231/12 C
C07D233/64 106
C07D263/32
C07D317/32
A61K31/4409
A61K31/415
A61K31/4164
A61K31/421
A61K31/4015
A61K31/5375
A61K31/495
C07D295/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555070
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 AU2021050217
(87)【国際公開番号】W WO2021179049
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】62/989,324
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504265042
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ アデレード
(71)【出願人】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】エイブリー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】アベル,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ディオン
(72)【発明者】
【氏名】グレース,ピーター・エム
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジアヒー
【テーマコード(参考)】
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA12
4C086BC08
4C086BC17
4C086BC36
4C086BC38
4C086BC50
4C086BC69
4C086BC73
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA16
4C086ZA36
4C086ZA37
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA60
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC41
4H006AA01
4H006AB20
(57)【要約】
本発明は、神経障害性疼痛を含む酸化ストレスと関連する障害の処置およびこのような障害を処置するための、合成によって得られる小さい化合物に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ストレスと関連する障害を処置する方法であって、式(I):
【化1】
(式中、
は、C~Cアルキルから選択され、
は、
【化2】
を表し、
式中、Xは、OH、OX、CHC(O)X、C(O)X、CHCHC(O)X、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアミノ、および置換されていてもよいチオから選択され、
式中、Xは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアミノ、および置換されていてもよいチオから選択され、
式中、Xは、OH、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアミノ、および置換されていてもよいチオから選択される)
の化合物
または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、もしくは異性体を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
前記処置が、血管疾患(アテローム性動脈硬化のような)、高コレステロール、脳卒中、心不全、および高血圧、癌、神経変性疾患(パーキンソン病(PD)またはアルツハイマー病(AD)など)、糖尿病、疼痛障害、特に炎症性疼痛に関連する疼痛障害、多発性硬化症、腎疾患、関節リウマチ、敗血症、呼吸窮迫症候群、ならびにミトコンドリア病、脂質代謝障害、およびDNA修復欠損障害のような代謝障害、COPD、ならびにCKDを処置することから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化ストレスと関連する障害の処置が、NRF2経路の部位特異的標的エンゲージメントを介する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処置が、疼痛、好ましくは神経障害性疼痛の処置である、請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
神経障害性疼痛の処置が、末梢神経障害性疼痛の処置である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の化合物が、式(Ia):
【化3】
(式中、Rは、C~Cアルキルであり、
式中、Rは、
【化4-1】
【化4-2】
から選択され、
式中、Rは、OH、CI、F、CF、CN、OCF、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、置換されていてもよいアルケニルオキシ、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルオキシ、置換されていてもよいスルフィニル、および置換されていてもよいスルホニルから選択され、
nは、0~3から選択される整数であり、
は、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択され、
は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、置換されていてもよいアルケニルオキシ、および置換されていてもよいシクロアルキルから選択され、
およびRは、H、置換されていてもよいC~Cアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいアリールアルキルから独立して選択され、
は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいアリールアルキルから選択される)
によって表記される通りである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(a~e)の化合物から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(a)の化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(b)の化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(c)の化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(d)の化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(e)の化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(f)の化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(g)の化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(h)の化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(i)の化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
式(Ia)の化合物が、式(Ia)(e):
【化5】
の化合物
または薬学的に許容されるその塩
(式中、Rは、C~Cアルキルであり、
式中、Rは、
【化6】
であり、
式中、Rは、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択される)
である、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
が、H、C~C置換されているアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
が、HおよびC~Cアルキルから選択されるか、またはRが、HおよびC~Cアルキルから選択されるか、またはRが、HもしくはC~Cアルキルであるか、またはRが、C~Cアルキルであるか、またはRが、Cアルキルであるか、またはRが、Cアルキルであるか、またはRが、Hである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
が、K、Li、Naから選択される塩の形態である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
式(I)の化合物が、
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式(II)
【化8】
の化合物
または薬学的に許容されるその塩
(式中、R1’は、C~Cアルキルであり、
式中、R2’は、
【化9-1】
【化9-2】
から選択され、
式中、R3’は、OH、CI、F、CF、CN、OCF、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、置換されていてもよいアルケニルオキシ、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルオキシ、置換されていてもよいスルフィニル、および置換されていてもよいスルホニルから選択され、
mは、1~3から選択される整数であり、
mが1である場合、R3’は、メチル、OH、NO、およびメトキシではなく、
4’は、置換されていてもよいC~Cアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択され、
5’は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいC~Cアルコキシ、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、置換されていてもよいアルケニルオキシ、および置換されていてもよいシクロアルキルから選択され、
6’およびR7’は、H、置換されていてもよいC~Cアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいアリールアルキルから独立して選択され、R6’およびR7’のうちの1つがHである場合、もう1つはベンジルではなく、
8’は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいアリールアルキルから選択される)。
【請求項23】
式(II)(e’)(式中、R4’は、置換されていてもよいC~Cアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択される)の化合物から選択される、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
式(II)(e’)(式中、R4’は、置換されていてもよいアリールから選択される)の化合物から選択される、請求項22に記載の化合物。
【請求項25】
式(II)(e’)(式中、R4’は、置換されていてもよいヘテロアリールから選択される)の化合物から選択される、請求項22に記載の化合物。
【請求項26】
式(II)(e’)(式中、R4’は、置換されていてもよいヘテロシクリル(heterocycyl)から選択される)の化合物から選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項27】
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
から選択される、請求項22に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経障害性疼痛を含む酸化ストレスと関連する障害の処置およびこのような障害を処置するための、合成によって得られる小さい化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ストレスは、細胞および組織における活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)の形成と調節の間に不均衡が存在し、ROSおよびRNSの蓄積を引き起こした場合に生じる。この不均衡は、重要な生体分子および細胞の損傷であって、その生物体全体に対する潜在的影響を有する損傷に繋がる。酸化ストレスは、免疫系および細胞コミュニケーションを含む多くの生理的過程に影響を及ぼし、多くの慢性疾患と同様に、激しい運動、不適切な食事、加齢、およびいくつかの加齢に伴う障害に関連付けられている。酸化ストレスの上昇したレベルと関連することが示されている慢性疾患のうちのいくつかには、アテローム性動脈硬化、高コレステロール、脳卒中、心不全、および高血圧のような血管疾患を含む心血管疾患、癌、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病、疼痛障害、多発性硬化症、腎疾患、関節リウマチ、敗血症、呼吸窮迫症候群、ならびにミトコンドリア病、脂質代謝障害、およびDNA修復欠損障害のような代謝障害が含まれる。他の状態には、肺気腫、慢性気管支炎、および慢性喘息の状態を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)ならびに慢性腎疾患(CKD)が含まれてもよい。
【0003】
例として、神経障害性疼痛も、酸化ストレスに関連付けられる障害であり、神経系の病変または疾患によって引き起こされる。これは、一般集団における推定有病率が7~10%であり、経済および患者の生活の質に対する多大な負担である。このような疼痛の薬理学的処置は、主にモノアミン再取り込み阻害剤、抗痙攣剤、およびオピオイドに頼っている。第一選択処置には、アミトリプチリン、デュロキセチン、ガバペンチン、およびプレガバリンが含まれる。このような薬物は、僅かな有効性を有するのみであり、有害作用ならびに誤用および濫用のリスクによる苦悩も有する。慢性疼痛に対する新規の非中毒性の処置を実現するため、いくつかの戦略が提案されており、これには内因性疼痛解消メカニズムを標的とし、同時に、疼痛の根底にある複数の病態生理学的メカニズムを修正する薬物の開発が含まれている。これまでに、慢性疾患状態(例として、疼痛)における酸化ストレスを薬理学的に管理するための多くの試みがなされてきたが、臨床で使用されているものはない。個々の抗酸化物質の補充は、好ましくない薬物動態が原因であるだけでなく、活性酸素種を協調して異化することによってホメオスタシスを回復させるためには、数多くの抗酸化物質が必要とされるため、機能しなかった可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、先行技術の治療法の欠点のうちのいくつかについて対処することに努め、具体的なクラスの化合物であって、抗酸化応答の特定の調節因子を標的とし、疼痛、例として、神経障害性疼痛の軽減のような、酸化ストレスと関連する障害の処置において有用であることを、今や初めて示された具体的なクラスの化合物に関する。
【0005】
一態様において、本発明は、酸化ストレスと関連する障害を処置する方法であって、
式(I):
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、
は、C~Cアルキルから選択され、
は、
【0008】
【化2】
【0009】
を表し、
式中、Xは、OH、OX、CHC(O)X、C(O)X、CHCHC(O)X、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアミノ、および置換されていてもよいチオから選択され、
式中、Xは、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアミノ、および置換されていてもよいチオから選択され、
式中、Xは、OH、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアミノ、および置換されていてもよいチオから選択される)
の化合物
または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物、もしくは異性体を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0010】
ある実施形態において、前記方法は、アテローム性動脈硬化、高コレステロール、脳卒中、心不全、虚血再潅流障害、および高血圧のような血管疾患、癌、神経変性疾患(パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など)、糖尿病、疼痛障害、特に炎症性疼痛、神経障害性疼痛、内臓痛、片頭痛、または原因不明(複合性局所疼痛症候群、線維筋痛など)に関連する疼痛障害、多発性硬化症、腎疾患、関節リウマチ、敗血症、呼吸窮迫症候群、ならびにミトコンドリア病、脂質代謝障害、およびDNA修復欠損障害のような代謝障害の処置に関する。
【0011】
ある実施形態において、前記方法は、虚血再潅流障害の処置に関する。
ある実施形態において、前記方法は、疼痛、および特に神経障害性疼痛の処置に関する。
【0012】
ある実施形態において、前記方法は、末梢神経障害性疼痛の処置に関する。
ある実施形態において、前記方法は、肺気腫、慢性気管支炎、および慢性喘息の状態を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)または慢性腎疾患(CKD)の処置に関する。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、酸化ストレスと関連する障害を処置するための式(I)の化合物の使用を提供する。
またさらなる態様において、本発明は、酸化ストレスと関連する障害を処置するための薬剤の製造における、式(I)の化合物の使用を提供する。
【0014】
特定の実施形態において、上記使用は、虚血再潅流障害の処置に関する。
特定の実施形態において、上記使用は、疼痛、および特に神経障害性疼痛の処置に関する。
【0015】
特定の実施形態において、上記使用は、末梢神経障害性疼痛の処置に関する。
特定の実施形態において、上記使用は、肺気腫、慢性気管支炎、および慢性喘息の状態を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)または慢性腎疾患(CKD)の処置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明で説明される化合物の例のin vitro特性評価を示す図である。(a~c)NRF2/AREルシフェラーゼレポーターHEK293細胞を、培地、H(10μM)、またはONOO(10μM)で処理し、続いてMMFまたは1,2-ジカルボニル化合物で処理した。MMFは、濃度依存的にルシフェラーゼ活性を増強し(P<0.001)、活性は、HまたはONOOによる影響を受けなかった(P=0.256)。(a)1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートは、HまたはONOOの存在下で、培地対照に比べてNRF2活性を増強し、MMFと同程度のレベルであった。(b)メチル(2E)-4-(ベンジルカルバモイル)-4-オキソブタ-2-エノアートは、MMFよりも大幅にNRF2を活性化したが、メチル(2E)-4-(ベンジルカルバモイル)-4-オキソブタ-2-エノアートは、HまたはONOOと共インキュベートされた場合、培地に比べてNRF2活性を選択的に増強しなかった(P=0.288)。50μMを上回るメチル(2E)-4-(ベンジルカルバモイル)-4-オキソブタ-2-エノアートは、細胞毒性でもあった。(c)メチル(2E)-4,5-ジオキソ-5-フェニルペンタ-2-エノアートは、HまたはONOOの存在下で、培地対照に比べてNRF2活性を増強したが、MMFよりも低いレベルであった。有意差なし(n.s.)、**P<0.01、***P<0.001。
図2】本発明で説明される化合物の例の行動評価を示す図である。(a、b)神経障害性疼痛が確立された時点で、雄および雌マウスに、1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート(350μmol/kg)、フマル酸ジロキシメル(350μmol/kg)、または媒体を、3日間毎日経口投与した(灰色のボックス)。(a)触覚異痛および(b)動的異痛が評価された。(c)神経障害性疼痛が確立された時点で、雄および雌マウスに、1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート(350μmol/kg)または媒体を、7日間毎日経口投与した。1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート処置の7日後に、条件付け場所嗜好性試験によって自発痛を測定した。Y軸は、処置前と処置の7日後の明るいチャンバー内で過ごした時間の間の差異を示す。媒体に対して:P<0.05、**P<0.01、***P<0.0001。1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート対フマル酸ジロキシメル:##P<0.05、###P<0.01、####P<0.0001。(d、e)神経障害性疼痛が確定された時点で、雄および雌マウスに、(3E)-5-メトキシ-2,5-ジオキソペンタ-3-エン酸(350μmol/kg)または媒体を、3日間毎日経口投与し(灰色のボックス)、(d)触覚異痛および(e)動的異痛を評価した。媒体に対して:**P<0.01、****P<0.0001。
図3】本発明で説明される化合物の例のin vivo部位特異的切断の評価を示す図である(a、b)。(a)対象の障害部位および組織の概略図。(b)神経障害性疼痛が確定された時点で、雄および雌マウスに、1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート(350μmol/kg)、フマル酸ジロキシメル(350μmol/kg)、または媒体を3日間毎日経口投与した。3匹のマウス由来のL4/5DRGを、処置の3日後にプールし、核抽出物を、NRF2に対してプローブした(n=雄2匹、n=雌2匹)。同側の媒体に対して:****P<0.0001、反対側の媒体および1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートに対して:††††P<0.0001。
図4】絶対白血球数を示す図である。未処置の雄および雌マウスに、1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート(350μmol/kg)、フマル酸ジロキシメル(350μmol/kg)、または媒体を10日間毎日経口投与した。心臓穿刺によって血液を採取し、白血球を手作業で数えた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、本明細書に開示される特定の化合物(式(I)の化合物)が、in vivoにおいて、内因性ペルオキシド(または他のROS/RNS種)、例えば、過酸化水素(HP)および/またはペルオキシ亜硝酸(PN)の存在下で、活性な薬物分子であるフマル酸モノメチル(MMF)またはそのRアルキルエステルを生成するために、効率的に切断され得ることを確認した。
【0018】
本発明者らは、HPおよびPNに対する応答として、NRF2経路の活性化因子、すなわちフマル酸モノメチル(MMF)を遊離する新規1,2-ジカルボニルまたは1,2,3-トリカルボニル分子骨格を考案した。例えば、1,2-ジカルボニル系(以下のスキーム1参照)は、本発明者らによって、HPおよびPNを用いた処理で、最も高い転位能を有する2種の潜在的なアシリウム中間生成物に起因する副生成物が認められないバイヤービリガー様反応において、高い変換率で反応して無水物を形成することが示されている(HPLC分析)。形成された一時的な無水物は、水性/生理的環境で加水分解を非常に受けやすい。本発明者らは、pH7.4のリン酸緩衝液系中における、HPを用いた処理において、複数の化学的サブクラスを伴う高収率でのMMFの遊離を示している。この骨格は、強固で、検証可能であり、その共役的性質に起因する1,2-ジカルボニル系の反応性の電子的調整に対する許容度をもたらす。
【0019】
酸化ストレスと関連する障害において、本発明者らは、HPおよびPNのようなペルオキシド酸化体が、特定の細胞、組織、および生物学的区画において高まり、このため、式(I)の循環する化合物が、化学量論的に酸化体の量と一致したMMFを遊離することになり、したがって、特に酸化ストレス下の領域における酸化還元バランスを回復させることによって前記障害の寛解をもたらすために最適な部位で、NRF2経路を活性化することを認識している。この組織標的化コンセプトは、本発明者らによって、神経障害性疼痛の有効性モデルにおいて初めて証明された。さらに、MMFの全身的送達が、特定の問題を引き起こすことが認識されており、それらのうちの1つはリンパ球数の減少である。本発明者らは、本明細書に開示される化合物が、リンパ球数の減少をもたらさないことを示すデータを得ている。
【0020】
【化3】
【0021】
本発明のさらなる態様において、酸化ストレスと関連する障害を処置するための医薬組成物であって、有効量の、本明細書で定義される式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩ならびに任意選択で、担体または希釈剤を含む前記組成物が提供される。
【0022】
特定の実施形態において、本明細書に開示される治療方法および使用は、式(Ia):
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、Rは、C~Cアルキルであり、
式中、Rは、
【0025】
【化5-1】
【0026】
【化5-2】
【0027】
から選択され、
式中、Rは、OH、CI、F、CF、CN、OCF、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、置換されていてもよいアルケニルオキシ、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルオキシ、置換されていてもよいスルフィニル、および置換されていてもよいスルホニルから選択され、
nは、0~3から選択される整数であり、
は、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択され、
は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、置換されていてもよいアルケニルオキシ、および置換されていてもよいシクロアルキルから選択され、
およびRは、H、置換されていてもよいC~Cアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいアリールアルキルから独立して選択され、
は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいアリールアルキルから選択される)
によって表記される式(I)の化合物を利用する。
【0028】
本明細書に開示される処置方法における使用が見込まれる代表的な化合物には、
【0029】
【化6-1】
【0030】
【化6-2】
【0031】
【化6-3】
【0032】
【化6-4】
【0033】
が含まれる。
またさらなる態様において、本発明は、式(II)
【0034】
【化7】
【0035】
の化合物
または薬学的に許容されるその塩
(式中、R1’は、C~Cアルキルであり、
式中、R2’は、
【0036】
【化8-1】
【0037】
【化8-2】
【0038】
から選択され、
式中、R3’は、OH、CI、F、CF、CN、OCF、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、置換されていてもよいアルケニルオキシ、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルオキシ、置換されていてもよいスルフィニル、および置換されていてもよいスルホニルから選択され、
mは、1~3から選択される整数であり、
mが1である場合、R3’は、メチル、OH、NO、またはメトキシではなく、
4’は、置換されていてもよいC~Cアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択され、
5’は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいC~Cアルコキシ、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアシル、置換されていてもよいヘテロシクリル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、置換されていてもよいアルケニルオキシ、および置換されていてもよいシクロアルキルから選択され、
6’およびR7’は、H、置換されていてもよいC-Cアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいアリールアルキルから独立して選択され、R6’またはR7’のうちの1つがHである場合、もう1つはベンジルではなく、
8’は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいアリールアルキルから選択される)
を提供する。
定義
「アルキル」は、直鎖状であるか、または分枝鎖状であってよく、好ましくは1~10個の炭素原子、またはより好ましくは1~6個の炭素原子を有する一価アルキル基を指す。
【0039】
このようなアルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシルなどが含まれる。
「アリール」は、好ましくは6~14個の炭素原子を有する単環(例えば、フェニル)または縮合多環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する不飽和芳香族炭素環基を指す。アリール基の例には、フェニル、ナフチルなどが含まれる。
【0040】
「アリールオキシ」は、アリール基が上記の通りである、アリール-O-基を指す。
「アリールアルキル」は、好ましくはアルキレン部分に1~10個の炭素原子およびアリール部分に6~10個の炭素原子を有する-アルキレン-アリール基を指す。このようなアリールアルキル基は、ベンジル、フェネチルなどによって例示される。
【0041】
「アリールアルコキシ」は、アリールアルキル基が上記の通りである、アリールアルキル-O-基を指す。このようなアリールアルコキシ基は、ベンジルオキシなどによって例示される。
【0042】
「アルコキシ」が、アルキル基が上記の通りである、アルキル-O-基を指す。例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、1,2-ジメチルブトキシなどが含まれる。
【0043】
「アルケニル」は、直鎖状であるか、または分枝鎖状であってよく、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは2~6個の炭素原子を有し、少なくとも1個、好ましくは1~2個の炭素-炭素二重結合を有する一価アルケニル基を指す。例には、エテニル(-CH=CH)、n-プロペニル(-CHCH=CH)、イソプロペニル(-C(CH)=CH)、ブタ-2-エニル(-CHCH=CHCH)などが含まれる。
【0044】
「アルケニルオキシ」は、アルケニル基が上記の通りである、アルケニル-O-基を指す。
「アルキニル」は、好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは2~6個の炭素原子を有し、少なくとも1個、好ましくは1~2個の炭素-炭素三重結合を有するアルキニル基を指す。アルキニル基の例には、エチニル(-C≡CH)、プロパルギル(-CHC≡CH)、ペンタ-2-イニル(-CHC≡CCH-CH)などが含まれる。
【0045】
「アルキニルオキシ」は、アルキニル基が上記の通りである、アルキニル-O-基を指す。
「アシル」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、H-C(O)-、アルキル-C(O)-、シクロアルキル-C(O)-、アリール-C(O)-、ヘテロアリール-C(O)-、およびヘテロシクリル-C(O)-基を指す。
【0046】
「オキシアシル」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、HOC(O)-、アルキル-OC(O)-、シクロアルキル-OC(O)-、アリール-OC(O)-、ヘテロアリール-OC(O)-、およびヘテロシクリル-OC(O)-基を指す。
【0047】
「アミノ」は、各R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、-NR’’R’’基を指す。
【0048】
「アミノアシル」は、各R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、-C(O)NR’’R’’基を指す。
【0049】
「アシルアミノ」は、各R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、-NR’’C(O)R’’基を指す。
【0050】
「アシルオキシ」は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、-OC(O)-アルキル、-OC(O)-アリール、-C(O)O-ヘテロアリール、および-C(O)O-ヘテロシクリル基を指す。
【0051】
「アミノアシルオキシ」は、R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、-OC(O)NR’’-アルキル、-OC(O)NR’’-アリール、-OC(O)NR’’-ヘテロアリール、および-OC(O)NR’’-ヘテロシクリル基を指す。
【0052】
「オキシアシルアミノ」は、R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、-NR’’C(O)O-アルキル、-NR’’C(O)O-アリール、-NR’’C(O)O-ヘテロアリール、およびNR’’C(O)O-ヘテロシクリル基を指す。
【0053】
「オキシアシルオキシ」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、-OC(O)O-アルキル、-O-C(O)O-アリール、-OC(O)O-ヘテロアリール、および-OC(O)O-ヘテロシクリル基を指す。
【0054】
「アシルイミノ」は、各R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、-C(NR’’)-R’’基を指す。
【0055】
「アシルイミノキシ」は、各R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、-O-C(NR’’)-R’’基を指す。
【0056】
「オキシアシルイミノ」は、各R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、-C(NR’’)-OR’’基を指す。
【0057】
「シクロアルキル」は、好ましくは3~11個の炭素原子を組み込んでいる単環式環または縮合多環を有する、環状アルキル基を指す。このようなシクロアルキル基には、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどのような単環構造、またはアダマンタニル、インダニル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレニル(tetrahydronapthalenyl)などのような多環構造が含まれる。
【0058】
「シクロアルケニル」は、好ましくは4~11個の炭素原子を組み込んでいる単環式環または縮合多環、および少なくとも1箇所の内部不飽和を有する、環状アルケニル基を指す。適当なシクロアルケニル基の例には、例として、シクロブタ-2-エニル、シクロペンタ-3-エニル、シクロヘキサ-4-エニル、シクロオクタ-3-エニル、インデニルなどが含まれる。
【0059】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを指す。
「ヘテロアリール」は、芳香族性に関するHuckel判定基準を満たし(すなわち、4n+2π電子を含有する)、その環内に、好ましくは2~10個の炭素原子ならびに酸素、窒素、セレン、および硫黄から選択される1~4個のヘテロ原子を有する(さらに硫黄、セレン、窒素の酸化物を含む)、一価芳香族複素環基を指す。このようなヘテロアリール基は、単環(例えば、ピリジル、ピロリル、もしくはそれらのN-酸化物、またはフリル)または縮合多環(例えば、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、クマリニル、キノリニル、イソキノリニル、またはベンゾチエニル)を有し得る。例として、RまたはR’が、1つまたは複数の環ヘテロ原子を有する置換されていてもよいヘテロアリールである場合、このヘテロアリール基は、C-CまたはC-ヘテロ原子結合、特にC-N結合を介して本発明の化合物のコア分子に結合され得ることが理解されるであろう。
【0060】
「ヘテロシクリル」は、単環または縮合多環を有し、その環内に、好ましくは1~8個の炭素原子および窒素、硫黄、酸素、セレン、またはリンから選択される1~4個のヘテロ原子を有する、一価飽和基または一価不飽和基を指す。最も好ましいヘテロ原子は窒素である。例として、RまたはR’が、1つまたは複数の環ヘテロ原子を有する置換されていてもよいヘテロシクリルである場合、このヘテロシクリル基は、C-CまたはC-ヘテロ原子結合、特にC-N結合を介して本発明の化合物のコア分子に結合され得ることが理解されるであろう。
【0061】
ヘテロシクリル基およびヘテロアリール基の例には、以下に限定されないが、オキサゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソキサゾール、イソチアゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、テトラゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルホリノ、ピペリジニル、ピロリジン、テトラヒドロフラニル、トリアゾールなどが含まれる。
【0062】
「チオ」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、H-S-、アルキル-S-、シクロアルキル-S-、アリール-S-、ヘテロアリール-S-、およびヘテロシクリル-S-基を指す。
【0063】
「チオアシル」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、H-C(S)-、アルキル-C(S)-、シクロアルキル-C(S)-、アリール-C(S)-、ヘテロアリール-C(S)-、およびヘテロシクリル-C(S)-基を指す。
【0064】
「オキシチオアシル」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、HO-C(S)-、アルキルO-C(S)-、シクロアルキルO-C(S)-、アリールO-C(S)-、ヘテロアリールO-C(S)-、およびヘテロシクリルO-C(S)-基を指す。
【0065】
「オキシチオアシルオキシ」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、HO-C(S)-O-、アルキルO-C(S)-O-、シクロアルキルO-C(S)-O-、アリールO-C(S)-O-、ヘテロアリールO-C(S)-O-、およびヘテロシクリルO-C(S)-O-基を指す。
【0066】
「ホスホリルアミノ」は、R’’が、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、またはアリールを表し、R’’’が、OR’’’’を表すか、またはヒドロキシもしくはアミノであり、R’’’’が、アルキル、シクロアルキル、アリール、またはアリールアルキルであり、アルキル、アミノ、アルケニル、アリール、シクロアルキル、およびアリールアルキルが本明細書に記載の通りである、-NR’’-P(O)(R’’’)(OR’’’’)基を指す。
【0067】
「チオアシルオキシ」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、H-C(S)-O-、アルキル-C(S)-O-、シクロアルキル-C(S)-O-、アリール-C(S)-O-、ヘテロアリール-C(S)-O-、およびヘテロシクリル-C(S)-O-基を指す。
【0068】
「スルフィニル」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、H-S(O)-、アルキル-S(O)-、シクロアルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、ヘテロアリール-S(O)-、およびヘテロシクリル-S(O)-基を指す。
【0069】
「スルホニル」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルが本明細書に記載の通りである、H-S(O)-、アルキル-S(O)-、シクロアルキル-S(O)-、アリール-S(O)-、ヘテロアリール-S(O)-、およびヘテロシクリル-S(O)-基を指す。
【0070】
「スルフィニルアミノ」は、R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、H-S(O)-NR’’-、アルキル-S(O)-NR’’-、シクロアルキル-S(O)-NR’’-、アリール-S(O)-NR’’-、ヘテロアリール-S(O)-NR’’-、およびヘテロシクリル-S(O)-NR’’-基を指す。
【0071】
「スルホニルアミノ」は、R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、H-S(O)2-NR’’-、アルキル-S(O)2-NR’’-、シクロアルキル-S(O)2-NR’’-、アリール-S(O)2-NR’’-、ヘテロアリール-S(O)2-NR’’-、およびヘテロシクリル-S(O)2-NR’’-基を指す。
【0072】
「オキシスルフィニルアミノ」は、R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、HO-S(O)-NR’’-、アルキルO-S(O)-NR’’-、シクロアルキルO-S(O)-NR’’-、アリールO-S(O)-NR’’-、ヘテロアリールO-S(O)-NR’’-、およびヘテロシクリルO-S(O)-NR’’-基を指す。
【0073】
「オキシスルホニルアミノ」は、R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、HO-S(O)-NR’’-、アルキルO-S(O)-NR’’-、シクロアルキルO-S(O)-NR’’-、アリールO-S(O)-NR’’-、ヘテロアリールO-S(O)-NR’’-、およびヘテロシクリルO-S(O)-NR’’-基を指す。
【0074】
「アミノチオアシル」は、各R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、R’’R’’N-C(S)-基を指す。
【0075】
「チオアシルアミノ」は、R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、H-C(S)-NR’’-、アルキル-C(S)-NR’’-、シクロアルキル-C(S)-NR’’-、アリール-C(S)-NR’’-、ヘテロアリール-C(S)-NR’’-、およびヘテロシクリル-C(S)-NR’’-基を指す。
【0076】
「アミノスルフィニル」は、各R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、R’’R’’N-S(O)-基を指す。
【0077】
「アミノスルホニル」は、各R’’が、独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルのそれぞれが本明細書に記載の通りである、R’’R’’N-S(O)2-基を指す。
【0078】
本明細書において、「置換されていてもよい」は、ある基が、ヒドロキシル、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、アルキニルオキシ、アミノ、アミノアシル、チオ、アリールアルキル、アリールアルコキシ、アリール、アリールオキシ、カルボキシル、アシルアミノ、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ホスホノ、スルホ、ホスホリルアミノ、ホスフィニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、オキシアシル、オキシム、オキシムエーテル、ヒドラゾン、オキシアシルアミノ、オキシスルホニルアミノ、アミノアシルオキシ、トリハロメチル、トリアルキルシリル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメタンチオ、トリフルオロエテニル、モノ-およびジ-アルキルアミノ、モノ-およびジ-(置換アルキル)アミノ、モノ-およびジ-アリールアミノ、モノ-およびジ-ヘテロアリールアミノ、モノ-およびジ-ヘテロシクリルアミノ、ならびにアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択される異なる置換基を有する非対称ジ-置換アミンなどから選択される1つまたは複数の基でさらに置換されるか、もしくは置換されないか、または(縮合多環基を形成するために)縮合されるか、もしくは縮合されない場合があることを意味すると解される。例として、「置換されていてもよいアミノ」基は、アミノ酸およびペプチド残基を含むことがある。
【0079】
特定の実施形態において、「置換されていてもよい」という用語は、前記基が、オキソ/ヒドロキシ、ハロゲン(特にCl、Br、F)、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6ハロアルキル(特に-CF)、C1~6ハロアルコキシ(-OCFなど)、C2~6アルケニルオキシ、C2~6アルキニルオキシ、アリールアルキル(ここで、アルキルはC1~6である)、アリールアルコキシ(ここで、アルキルはC1~6である)、アリール、シアノ、ニトロ、ヘテロアリール、C1~6ヘテロアリールアルキル(ここで、アルキルはC1~6である)、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル(ここで、アルキルはC1~6である)、ヘテロシクリルオキシ、オキシアシル、トリアルキルシリル、トリフルオロメタンチオ、トリフルオロエテニル、アミノ、モノ-およびジ-アルキルアミノ、モノ-およびジ-(置換アルキル)アミノ、モノ-およびジ-アリールアミノ、モノ-およびジ-ヘテロアリールアミノ、モノ-およびジ-ヘテロシクリルアミノ、ならびにアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択される異なる置換基を有する非対称ジ-置換アミンからなる群から独立して選択される基で1~3回置換される場合があることを意味すると解される。
【0080】
他の実施形態において、「置換されていてもよい」という用語は、前記基が、ヒドロキシ、ハロゲン(特にCl、Br、F)、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C2~6アルケニル、C1~6ハロアルキル(特に-CF)、C1~6ハロアルコキシ(-OCFなど)、アリールアルキル(ここで、アルキルはC1~6である)、アリールアルコキシ(ここで、アルキルはC1~6である)、アリール、シアノ、ニトロ、ヘテロアリール、トリアルキルシリル、アミノ、モノ-およびジ-アルキルアミノ、モノ-およびジ-(置換アルキル)アミノ、ならびにモノ-およびジ-アリールアミノからなる群から独立して選択される基で1~3回置換される場合があることを意味すると解される。
【0081】
またさらなる実施形態において、「置換されていてもよい」という用語は、前記基が、ヒドロキシ、ハロゲン(特にCl、Br、F)、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、メチル、メトキシ、シアノ、ピリジニル、ピリジニルメチル、ピラジニル、メチルフェニル、ベンジル、トリメチルシリル、フェニル、メチルピラゾイル、ジメチルアミノ、フルオロフェニル、tert-ブチルオキシカルボニル、アミノ、またはモルホリニルからなる群から独立して選択される基で1~3回置換される場合があることを意味すると解される。
【0082】
本発明の化合物の塩は、好ましくは薬学的に許容されるが、薬学的に許容されない塩も、薬学的に許容される塩の調製における中間生成物として有用であるため、本発明の範囲内に含まれることが理解されるであろう。
【0083】
薬学的に許容される塩には、酸付加塩、塩基付加塩、ならびに四級アミンおよびピリジニウムの塩が含まれる。前記酸付加塩は、本発明の化合物と、以下に限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、クエン酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、サリチル酸、スルファミン酸、または酒石酸を含む、薬学的に許容される無機酸または有機酸から形成される。四級アミンおよびピリジニウムの対イオンには、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、クエン酸、酢酸、マロン酸、フマル酸、スルファミン酸、および酒石酸が含まれる。前記塩基付加塩には、以下に限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、アンモニウム、およびアルキルアンモニウムのような塩が含まれる。また、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物のようなハロゲン化低級アルキル、硫酸ジメチルおよび硫酸ジエチルのような硫酸ジアルキルなどのような薬剤で四級化されることがある。前記塩は、既知の方法、例えば、適当な溶媒の存在下で適切な酸または塩基を用いて前記化合物を処理することによって作製される場合がある。
【0084】
本発明の化合物は、結晶形態および/または溶媒和物(例えば、水和物)である場合があり、いずれの形態も本発明の範囲内であることが意図される。「溶媒和物」という用語は、溶質(本発明において、本発明の化合物)と溶媒によって形成される可変化学量論の複合体である。このような溶媒は、前記溶質の生物学的活性に干渉するべきではない。溶媒は、以下に限定されず、例として、水、エタノール、または酢酸であってもよい。溶媒和の方法は、当該技術分野内で一般的に知られている。
【0085】
本発明の化合物は、少なくとも1つの不斉中心を有することがあり、このため2つ以上の立体異性体で存在する能力があることは理解されるであろう。本発明は、これらの形態のそれぞれ個別にまで及び、ラセミ体を含むそれらの混合物にまで及ぶ。前記異性体は、従来、クロマトグラフィー法または分割剤を使用することによって分離されることがある。代替として、前記個別の異性体は、キラル中間生成物を使用した不斉合成によって調製されることがある。
【0086】
本発明の別の態様において、治療上有効な量の1つもしくは複数の前述の化合物または薬学的に許容されるそれらの誘導体を含む薬学的に許容されるそれらの塩、および任意選択で、薬学的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0087】
「組成物」という用語は、有効成分(他の担体を伴うか、または伴わない)が担体で囲まれるカプセルを得るために、担体としてカプセル化材料を伴う有効成分の製剤を含むことが意図される。例として、活性物が小腸内に放出されるように、好ましい製剤形態の1つは、腸溶コーティング錠形態である。
【0088】
前記医薬組成物または製剤には、経口、直腸、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣内、髄腔内、もしくは非経口(筋肉内、皮下、および静脈内を含む)投与に適したもの、または吸入もしくは吹送による投与に適した形態のものが含まれる。
【0089】
このため、本発明の化合物は、従来のアジュバント、担体、または希釈剤と共に、医薬組成物およびその単位投与量の形態中に納められてもよく、このような形態で、錠剤もしくは充填されたカプセルのような固体、または溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル、もしくはそれらが充填されたカプセルのような液体として、全て経口使用のために採用されること、直腸投与のための坐剤の形態で採用されること、または非経口(皮下を含む)使用のための滅菌注射液の形態で採用されることがある。
【0090】
このような医薬組成物およびその単位投与形態は、追加の活性化合物または活性成分を伴うか、または伴わずに、従来の成分を従来の割合で含んでよく、またこのような単位投与形態は、採用される所定の1日投与量範囲と同等の任意の適当な有効量の有効成分を含有してもよい。錠剤あたり10(10)ミリグラムまたはより広義には、0.1~100(100)ミリグラムの有効成分を含有する製剤は、したがって、適当な代表的単位投与形態である。
【0091】
本発明の化合物は、多種多様な経口投与形態および非経口投与形態で投与され得る。次の投与形態が、活性成分として、本発明の化合物または本発明の化合物の薬学的に許容される塩のいずれかを含む場合があることは当業者には明白であろう。
【0092】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するための、薬学的に許容される担体は、固体または液体のいずれかであり得る。固体形態の調製物には、散剤、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤、坐剤、および調剤可能な(dispensable)顆粒が含まれる。固体担体は、希釈剤、香料、可溶化剤、滑沢剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても働くことがある1種または複数の物質であり得る。
【0093】
散剤において、担体は、微粉化された活性成分との混合物中にある微粉化された固体である。
錠剤において、活性成分は、適当な割合で不可欠な結合能力を有する担体と混合され、望ましい形状およびサイズに圧縮される。
【0094】
好ましくは、前記散剤および錠剤は、5または10~約70パーセントの活性化合物を含有する。適当な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどである。「調製物」という用語は、担体を伴うか、または伴わない活性成分が担体で囲まれるカプセルを形成する担体であって、このため、活性成分と併用される担体として、カプセル化材料を伴う活性化合物の製剤を含むことを意図される。同様に、カシェ剤およびトローチが含まれる。錠剤、散剤、カプセル、丸薬、カシェ剤、およびトローチは、経口投与に適した固形形態として使用され得る。
【0095】
坐剤の調製においては、脂肪酸グリセリドまたはココアバターの混合物のような低融点ワックスをまず融解し、活性成分を撹拌などによって、その中に均質に分散させる。次に、融解された均質の混合物を、都合の良いサイズの型に流し込み、冷却させ、それによって固める。
【0096】
膣内投与に適した製剤は、前記有効成分に加えて、適切であると当該技術分野で知られているような担体を含有する膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレーとして提供されることがある。
【0097】
液体形態の調製物には、溶液、懸濁液、およびエマルジョン、例えば、水溶液または水-プロピレングリコール溶液が含まれる。例えば、非経口注射液の調製物は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液として製剤化され得る。
【0098】
滅菌液体形態の組成物には、滅菌溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、およびエリキシルが含まれる。前記有効成分は、滅菌水、滅菌有機溶媒、または両方の混合物のような薬学的に許容される担体に溶解され得るか、または懸濁され得る。
【0099】
このため、本発明による化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または持続注入によって)のために製剤化されることがあり、アンプル、充填済みシリンジ、小容量点滴中の単位用量形態で、または保存剤を添加された複数回用量容器で提供されることがある。前記組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンのような形態をとってよく、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤のような製剤化剤を含有してもよい。代替として、有効成分は、滅菌固体の無菌単離(aseptic isolation)または溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態であって、使用前に、適当な媒体、例えば、発熱物質を含まない滅菌水で構成するための粉末形態であってよい。
【0100】
経口使用に適した水溶液は、水に活性成分を溶解し、所望通りに、適当な着色剤、香料、安定化剤、および増粘剤を加えることによって調製され得る。
経口使用に適した水性懸濁液は、天然もしくは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、または他の公知の懸濁化剤のような粘性物質を含む水に微粉化された活性成分を分散することによって作成され得る。
【0101】
使用直前に、経口投与のための液体形態の調製物に変換されることを意図される固体形態の調製物も含まれる。このような液体形態には、溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれる。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色剤、香料、安定化剤、緩衝液、人工および天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有してもよい。
【0102】
表皮への局所投与のために、本発明による化合物は、軟膏、クリーム、もしくはローションとして、または経皮パッチとして製剤化されることがある。軟膏およびクリームは、例えば、適当な増粘剤および/またはゲル化剤を添加した水性または油性基剤を用いて製剤化されることがある。ローションは、水性または油性基剤で製剤化されることがあり、一般に、1つまたは複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤も含有するであろう。
【0103】
口内の局所投与に適した製剤には、風味を付けた基剤、通常はスクロースおよびアカシアゴムまたはトラガカント中に活性薬剤を含むトローチ、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアゴムのような不活性基剤中に有効成分を含む香錠、ならびに適当な液体担体中に有効成分を含む口腔洗浄液が含まれる。
【0104】
溶液または懸濁液は、従来の手段によって、例えば、点滴器、ピペット、またはスプレーを用いて、鼻腔に直接適用される。前記製剤は、単回形態または複数回用量形態で提供され得る。点滴器またはピペットの後者の場合、これは、適切な所定の量の溶液または懸濁液を投与する患者によってなし得る。スプレーの場合、これは、例えば、計量噴霧スプレーポンプを用いてなし得る。鼻送達および維持の改善のため、本発明による化合物は、シクロデキストリンを用いてカプセル化され得るか、または鼻粘膜における送達および維持を向上させることが期待される他の薬剤を用いて製剤化され得る。
【0105】
気道への投与は、有効成分が、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、もしくはジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適当なガスのような適当な噴霧剤を用いた加圧パックで提供されるエアロゾル製剤を用いてもなし得る。前記エアロゾルは、好都合にも、レシチンのような界面活性剤を含有してもよい。薬物の用量は、定量バルブを備えることで管理され得る。
【0106】
代替として、有効成分は、乾燥粉末、例えば、ラクトース、デンプン、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドン(PVP)のようなデンプン誘導体のような適当な粉末基剤中の前記化合物の粉末混合物の形態で提供され得る。好都合にも、前記粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成するであろう。前記粉末組成物は、例えば、ゼラチン、またはブリスターパックであって、前記粉末が吸入器を用いて、それから投与され得るブリスターパックのカプセルまたはカートリッジなどの単位用量形態で提示され得る。
【0107】
鼻腔内製剤を含む、気道への投与を目的とする製剤において、前記化合物は、例えば、5~10ミクロン以下のオーダーと、一般的に粒径が小さいであろう。このような粒径は、当該分野で知られている手段、例えば、微粉化によって得られることがある。
【0108】
望ましい場合、有効成分の持続放出を得るために適した製剤が採用されてもよい。
前記医薬調製物は、好ましくは、単位投与形態である。このような形態において、前記調製物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に小分けされる。前記単位投与形態は、包装された調製物であって、小包化された錠剤、カプセル、およびバイアルまたはアンプル中の散剤のような、個別の量の調製物を含有する包装物であり得る。また、前記単位投与形態は、カプセル、錠剤、カシェ剤、またはトローチそれ自体であり得るか、または包装された形態中に適切な数で入っているそれらのうちのいずれかであり得る。
【0109】
本発明は、担体の非存在下にある前記化合物であって、単位投与形態中に存在する前記化合物も含む。
投与される本発明の化合物の量は、前記化合物の活性度および処置される疾患に応じて、1日あたり約10mg~2000mgの範囲内であり得る。
【0110】
鼻腔内投与のための液剤または散剤、経口投与のための錠剤またはカプセル、および静脈内投与のための液剤は、好ましい組成物である。
本発明による化合物の医薬調製物は、組合せ療法における1種または複数の他の活性薬剤と併用投与されてもよい。例えば、前記活性化合物の医薬調製物は、疼痛を処置するために使用される1種または複数の他の薬剤と、(例えば、個別に、同時に、または順次に)併用投与されてもよい。
【0111】
本発明の化合物は、酸化ストレスと関連する障害および特に、NFE2L2;NRF2を標的とすることが役立つであろう障害を処置することにおいて有益であることが示されている。この点に関して、本発明者らは、転写因子である核因子赤血球2関連因子2(NFE2L2;NRF2)に重点を置いた。生理的条件下において、NFE2L2は、細胞質基質内でKelch様ECH関連タンパク質1(Keap1)によって隔離され、分解のためにユビキチン化される。しかし、酸化体および求電子体は、Keap1からのNFE2L2の放出、核への移行、および抗酸化応答配列への結合を誘発し、これによって200を超える抗酸化関連遺伝子の転写が開始される。このため、NFE2L2は、同時に一連の活性酸素種を中和するために必要とされる複数の抗酸化物質の内因性産生を刺激するための興味深い治療標的であるとみなされた。ここで、本発明者らは、神経障害性疼痛の神経枝結紮損傷(SNI)マウスモデルにおいて、フマル酸ジメチル(DMFまたはテクフィデラ)および本発明で説明される化合物の例の治療作用を評価した。これらの化合物が、例として、神経障害性疼痛行動から回復させ、NFE2L2を活性化し、神経障害性疼痛および他の種類の慢性疼痛を継続させる機構経路を消失させる能力を有することが認められた。NRF2経路のアップレギュレーションは、酸化ストレスを受けた細胞において認められる。したがって、経路の調節は、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化、神経変性疾患(ADおよびPDを含む)、慢性疼痛、特に炎症性疼痛に関連する慢性疼痛、不妊症、加齢、および代謝障害のような酸化ストレスと関連するそれらの状態であって、全てがROS/RNS過剰産生によるそれらの促進および伝播を裏付ける根拠を有する、状態にとって有益であろう。
【0112】
例えば、神経障害性疼痛(神経痛)は、外傷、手術、疾患、または化学療法による神経の障害、損傷、または機能不全によって生じる。これは、灼熱感、痛み、冷感、または電気ショックに類似した感じと描写されることが多く、ピリピリ感、針で刺されるようなチクチク感、しびれ感、またはムズムズ感と共に現れることがある。神経障害性疼痛は、癌、複合性局所疼痛症候群、またはヘルペス後神経痛のような特定の状態または病態の初期症状であり得る。これは、骨盤痛、線維筋痛、および口腔顔面痛を含む他の病状または疼痛の他の形態とも関連し得る。肢切断後の幻肢痛も神経障害性疼痛の1種である。
【0113】
神経障害性疼痛(neuropthatic)という用語は、中枢神経障害性疼痛に加えて、末梢の体性感覚系に影響を及ぼす病変または疾患の直接的または間接的帰結として生じる疼痛として一般的に定義される「末梢神経障害性疼痛」も包含することも見込まれる。末梢神経障害性疼痛には、例として、末梢糖尿病性ニューロパチー1型または2型によって生じる、アルコールのような種々の有害物質によって誘発される、ビタミンB1、B6、および/またはB12欠乏のような種々の欠乏、ビタミンB6過剰症のような種々の中毒によって生じる、甲状腺機能低下症、化学療法誘発性多発ニューロパチー(CIPN)(アルキル化剤、cis-白金(II)-ジアミンジクロリド(platinolまたはシスプラチン)、オキサリプラチン(EloxatinまたはOxaliplatin Medac)、およびカルボプラチン(パラプラチン)など、ドキソルビシン(Adriamycin、Rubex)のようなアントラサイクリン系を含む群から選択されるものを含む抗腫瘍抗生物質、5-フルオロウラシル(Fluoruracil、5-FU)のようなピリミジン類似体のような葉酸類似体、ゲムシタビン(ジェムザール)、またはヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDI)、例として、ボリノスタット(rINN)を含む代謝拮抗剤、パクリタキセル(タキソール)を含む天然アルカロイド、ソラフェニブ(ネクサバール)、エルロチニブ(タルセバ)、ダサチニブ(BMS-354825またはスプリセル)を含むタンパク質チロシンキナーゼおよび/またはセリン/スレオニンキナーゼの阻害剤のような化学療法剤による)、薬物誘発性ニューロパチー、感染症の処置のためのいくつかの化合物(例えば、ストレプトマイシン、ジダノシン、またはザルシタビン)、または他の生理的に有毒な化合物によって生じる末梢神経障害性疼痛の全ての種類が含まれる。末梢神経障害性疼痛を引き起こし得る他の末梢性ニューロパチーには、小径線維ニューロパチー(SFN)、遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、三叉神経痛、ヘルペス後神経痛、肋間神経痛、絞扼性ニューロパチー(例えば、手根管症候群、足根管症候群、腹部皮神経絞扼性症候群)、坐骨神経痛、慢性特発性軸索多発ニューロパチー(CIAP)、外陰部痛、肛門周囲痛、ポリオ後症候群のような感染症状態によるニューロパチー、AIDSまたはHIV関連ニューロパチー、ライム関連ニューロパチー、シェーグレン関連ニューロパチー、リンパ腫性ニューロパチー、骨髄腫性ニューロパチー、癌性ニューロパチー、血管性/虚血性ニューロパチー、ならびに他の単ニューロパチーおよび多発ニューロパチーが含まれる。
【0114】
ある実施形態において、本発明は、固形腫瘍を処置する際の副作用であることが多い、化学療法と関連する神経障害性疼痛の処置を検討する。固形腫瘍の例には、副腎皮質癌、肛門腫瘍/癌、膀胱腫瘍/癌、骨腫瘍/癌(骨肉腫など)、脳腫瘍、乳房腫瘍/癌、カルチノイド腫瘍、癌腫、子宮頚部腫瘍/癌、結腸腫瘍/癌、子宮内膜腫瘍/癌、食道腫瘍/癌、肝外胆管腫瘍/癌、ユーイングファミリーの腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、眼腫瘍/癌、胆嚢腫瘍/癌、胃腫瘍/癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍、頭部および頚部腫瘍/癌、下咽頭腫瘍/癌、膵島細胞癌、腎腫瘍/癌、喉頭腫瘍/癌、平滑筋肉腫、白血病、口唇および口腔内腫瘍/癌、肝腫瘍/癌(肝細胞癌など)、肺腫瘍/癌、リンパ腫、悪性中皮腫、メルケル細胞癌、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性障害、鼻咽頭腫瘍/癌、神経芽腫、口腔腫瘍/癌、中咽頭腫瘍/癌、骨肉腫、卵巣上皮腫瘍/癌、卵巣胚細胞腫瘍、膵腫瘍/癌、副鼻腔および鼻腔腫瘍/癌、副甲状腺腫瘍/癌、陰茎腫瘍/癌、下垂体腫瘍/癌、形質細胞新生物、前立腺腫瘍/癌、横紋筋肉腫、直腸腫瘍/癌、腎細胞腫瘍/癌、腎盂および尿管の移行細胞腫瘍/癌、唾液腺腫瘍/癌、セザリー症候群、皮膚腫瘍(皮膚T細胞リンパ腫、カポジ肉腫、肥満細胞腫瘍、および黒色腫など)、小腸腫瘍/癌、軟部組織肉腫、胃腫瘍/癌、精巣腫瘍/癌、胸腺腫、甲状腺腫瘍/癌、尿道腫瘍/癌、子宮腫瘍/癌、膣腫瘍/癌、外陰腫瘍/癌、ならびにウィルムス腫瘍が含まれる。一実施形態において、前記疼痛は、次の癌を処置することと関連する:膀胱癌、乳房癌、結腸癌、消化器癌、腎癌、非小細胞肺癌を含む肺癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、近位もしくは遠位胆管癌、または黒色腫。
【0115】
別の実施形態において、本発明は、細菌、真菌、またはウイルス感染症のような感染症から生じる疼痛合併症と関連する神経障害性疼痛の処置を検討する。例には、帯状疱疹、HIV/AIDSなどが含まれる。
【0116】
またさらなる実施形態において、本発明は、背部痛、関節リウマチ、三叉神経痛、または糖尿病性ニューロパチーと関連する神経障害性疼痛の処置を検討する。
別のさらなる実施形態において、本発明は、神経圧迫(絞扼された神経)によって生じる神経障害性疼痛の処置を検討する。例には、手根管症候群または坐骨神経痛が含まれる。
【0117】
別のさらなる実施形態において、本発明は、脳卒中または脊髄損傷と関連する中枢神経障害性疼痛の処置を検討する。
上記の状態のうちのいくつかに対して、前記化合物は、症状の軽減に加えて予防的に使用されることがあることは明らかである。このため、本明細書で「処置」または同様のものへの言及は、治療効果のある処置に加えてこのような予防的処置を含むと理解されるべきである。
【0118】
本発明の化合物は、以下の一般スキームA~Oに従って調製されてもよい:
【0119】
【化9】
【0120】
本発明のα-ケトエステル化合物は、スキームAに示す通りの合成手順を介して調製され得る。α-ケトエステル2は、Chem.Pharm.Bull.47(9)1284~1287頁(1999)に記載される通り、α-ケトグルタル酸1と置換されているハロゲン化アルキル(R4L、式中、Lは任意の脱離基を表し、この場合はハロゲン化物である)から合成され得る。2のカルボン酸の続くメチル化は、エステル3を得るために、Steglichエステル化条件下でのメタノールの使用を介して達成され得る。ルボン酸からのメチルエステルの形成は、ジアゾメタンとの反応またはカルボン酸の酸塩化物への変換およびメタノールとのカップリングのような代替条件を介して達成されてもよいことは、当業者には理解されるであろう。3のブロム化によって臭化物4を得ることは、適当な溶媒、この場合はジクロロメタン(DCM)中、臭素を用いた処理を介して達成され得る。式(1a)(e)の化合物は、アミン塩基、この場合はトリエチルアミン(TEA)の使用を介した臭化物の除去によって生成され得る。
【0121】
【化10】
【0122】
式(1a)(h)のα-ケトアミド化合物は、スキームBに示す通りの合成手順を介して調製され得る。α-ケトアミド7は、J.Org.Chem.、77、8294~8302頁(2012)に記載される通り、2-オキソグルタル酸(oxoglatarate)ジメチル6とアミン5を適当な溶媒中で反応させることで合成され得る。7のブロム化によって臭化物8を得ることは、適当な溶媒、この場合はDCM中、臭素を用いた処理を介して達成され得る。式(1a)(h)の化合物は、アミン塩基、この場合はTEAの使用を介した臭化物の除去によって生成され得る。
【0123】
【化11】
【0124】
式(1a)(a~d)の1,2-ジケトン化合物は、スキームCに示す通りの合成手順を介して調製され得る。イリド10は、商業的供給源から入手され得るか、または90℃でクロロ酢酸メチル9とトリフェニルホスフィンから合成され得、続いてその固体ホスホニウム塩生成物を水酸化ナトリウム水溶液で処理する。標準的なWittig反応条件を利用して、安定化されたイリド10は、アルデヒド11と反応し、cis/transオレフィン生成物12および13の分離可能な混合物を生成し得る。代替として、Horner-Wadsworth-Emmons反応化学が、ホスホン酸カルボアニオンの使用を介して、オレフィン13を得るために使用され得る。WittigまたはHorner-Wadsworth-Emmonsオレフィン化反応は、広範囲の条件下および例えば、トルエンまたは水のような広範囲の溶媒中で生じ得ることは、当業者には理解されるであろう。得られたcis/transオレフィン生成物12および13の分離は、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、および分取HPLCのような種々のクロマトグラフィー法を介して達成され得る。純粋なオレフィン13の選択的還元によってアリルアルコール14を得ることは、適切な溶媒、この場合はトルエン中、DIBALを用いた純粋なオレフィン13の処理を介して達成され得る。アリル型アルコール14の酸化によって置換されているアクロレイン誘導体15を生成することは、適切な溶媒、この場合はDCM中、活性化二酸化マンガンを用いた処理を介して達成される。当業者は、この酸化が、Swern酸化または重クロム酸ピリジニウムまたはDess-Martinペルヨージナンまたは2-ヨードキシ安息香酸(IBX)を用いた酸化のような代替方法によって影響され得ることを理解するであろう。多くの置換されているアクロレイン誘導体15は、市販業者から入手され得る。置換されているアクロレイン誘導体15は、標準的なWittig反応条件を採用し、安定化されたイリド10を用いてtrans,trans1,3-ブタジエン誘導体17に変換され得る。代替として、Horner-Wadsworth-Emmons反応化学が、ホスホン酸カルボアニオンの使用を介して、trans,trans1,3-ブタジエン誘導体17を得るために使用され得る。得られたcis/transオレフィン生成物16および17の分離は、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、および分取HPLCのような種々のクロマトグラフィー法を介して達成され得る。純粋なtrans,trans1,3-ブタジエン誘導体17のジヒドロキシ化は、Chem.Eur.J.、11、4667~4677頁(2005)に記載される通り、K.Barry Sharplessによって開発された条件を採用して達成され得る。当業者は、このジヒドロキシ化が、四酸化オスミウムまたはアルカリ性過マンガン酸カリウムを用いた処理のような代替方法によって影響され得ることを理解するであろう。得られた1,2-ジオール18および19の混合物の分離は、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、および分取HPLCのような種々のクロマトグラフィー法を介して達成され得る。純粋な1,2-ジオール19の還元によって式(1a)(a~d)の1,2-ジケトン化合物を得ることは、溶媒の非存在下で、Dess-Martinペルヨージナンを用いた処理を介して達成され得る。この技術は、代替の酸化的切断反応経路からのアルデヒド副生成物の生成を制限する。前記反応が速やかに開始し、発熱を伴うため、注意を払う必要がある。
【0125】
cis/transオレフィン生成物16および17の代替的な合成は、安定化されたイリドであるメチル(2E)-4-(トリフェニルホスホラニリデン)-2-ブテノアートとアルデヒド11のWittig反応を介して達成され得る。
【0126】
式(1a)(a~d)の1,2-ジケトン化合物の代替的な合成は、Org.Lett.、13、2274~2277頁(2011)に概説される通り、前記ジエン17のルテニウムで触媒された酸化を介して、その1,2-ジケトン部分を直接生成することであり得る。
【0127】
【化12】
【0128】
スキームDは、フェノール官能基を含有する芳香族1,2-ジケトンの合成の概要を示すが、この基は保護/脱保護戦略を必要とする。これは、4-ヒドロキシ-3-メトキシシンナムアルデヒド(フェルルアルデヒド/コニフェリルアルデヒド)の具体的な例を用いて実証されている。アルデヒド22は、上記の通り、安定化されたイリド10を用いたWittig反応を介してジエン23および24の混合物に変換され得る。ジエン23および24の分離不可能な混合物は、適当な溶媒、この場合はそれぞれDIPEAおよびDCM中、TBDMSClおよび塩基を用いた処理を介して、保護されたフェノール25および26の混合物に変換され得る。純粋なtrans,trans1,3-ブタジエン26は、ヘキサンと共に25および26の結晶混合物を粉砕することで得られ得る。他の誘導体は、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、および分取HPLCのような種々のクロマトグラフィー法を介して分離される可能性があり得る。式(1a)(a)の化合物は、上記の通り、ジヒドロキシ化およびジオール酸化を介して合成され得る。シラン保護基の除去は、適当な溶媒、この場合はTHF中、TBAFを使用して達成され、29から30が生成され得る。シラン脱保護は、KFのような他のフッ化物塩を用いた処理を介しても達成され得る。恐らく、他の保護基は、Wuts P G M、New Jersey、John Wiley&Sons,Inc.2014によるGreene’s Protective Groups in Organic Synthesis第5版に記載の通り、前記フェノールを保護するために使用され得る。
【0129】
【化13】
【0130】
式(1a)(f)の1,2,3-トリカルボニル化合物は、スキームEに示す通りの合成手順を介して調製され得る。安定化されたリンイリド31は、J.Org.Chem.、60、8231~8235頁(1995)に概説される通り、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDC)カップリング条件を採用してフマル酸モノメチル32と反応することで、式(1a)(f)の化合物をもたらし得る。当業者は、この種のカップリングが、カルボン酸基を活性化する他の方法を介して生じ得ることを理解するであろう。これらの方法には、酸塩化物への変換、NHSエステルへの変換、またはN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドのような他のカップリング剤の使用が含まれ得る。イリド33は、J.Org.Chem.、60、8231~8235頁(1995)に概説される通り、アセトン中、蒸留されたジメチルジオキシラン(DMDO)を使用した炭素リン結合の酸化を介してトリカルボニル系に変換され得る。
【0131】
【化14】
【0132】
代替経路は、上記の通り、安定化されたリンイリド31をコハク酸モノメチル34にカップリングさせて不飽和イリド35をもたらすスキームFに概要が示される。次に、イリド35は、適切な溶媒、この場合はDCM中、オゾンを用いた酸化を介してトリカルボニル化合物36に変換され得る。イリド酸化のために、一重項酸素またはDMDOのような他の酸化体が使用され得る。36のブロム化によって臭化物37を得ることは、適当な溶媒、この場合はDCM中、臭素を用いた処理を介して達成され得る。式(1a)(f)の化合物は、アミン塩基、この場合はTEAの使用を介した臭化物37の除去によって生成され得る。Rがエステル誘導体38を付与する場合、例えば、pH7.4のリン酸緩衝液を使用した選択的加水分解は、カルボン酸誘導体39、スキームG式(1a)(f)の化合物の例の形成をもたらすであろう。
【0133】
【化15】
【0134】
【化16】
【0135】
1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート(40)のような式(1a)(e)の化合物は、例えば、pH7.4のリン酸緩衝液を使用して加水分解され、α-ケト酸41、スキームH式(1a)(e)の化合物の例をもたらし得る。
【0136】
【化17】
【0137】
α-ケト酸41の塩は、例として、WO2015/172083、スキームIに概要が示される方法論を利用して、THF中、水素化ナトリウムのような適当な金属水素化物(MH)との反応を介して合成され得る。当業者は、カルボン酸の他の塩には、カリウムもしくはリチウムのような他のI族(アルカリ)金属またはマグネシウムもしくはカルシウムのようなII族(アルカリ土類)金属の塩が含まれ得ることを理解するであろう。これらは、適切な溶媒中、適切な金属水素化物または金属炭酸塩との反応を介して得られ得る。銀のような他の金属のカルボン酸塩は、炭酸銀との反応によって、同様に得られ得る。トリエチルアミンのようなアミン塩基もカルボン酸の塩を生成するために使用され得る。
【0138】
【化18】
【0139】
α-ケトチオエステル44、式(1a)(i)の化合物の例は、Chem.Eur.J.20、662~667頁(2014)、スキームJに概要が示される方法論を利用し、酸化的ブロム化およびKornblum酸化条件下で、トリフェニルホスフィンヒドロブロミドおよびDMSOを用いて、メチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エノアート(43)から合成され得る。
【0140】
【化19】
【0141】
より広義には、式(1a)(i)のα-ケトチオエステル化合物は、スキームKに示される合成手順を介して調製され得る。α-ケト酸塩化物45は、DCM中、塩化オキサリルを用いた処理によってか、または適切な溶媒中、塩化チオニルを使用して、(3E)-5-メトキシ-2,5-ジオキソペンタ-3-エン酸(41)から合成され得る。次に、式(1a)(i)のα-ケトチオエステル化合物は、Adv.Synth.Catal.、358、3212~3230頁(2016)に概説される通り、適切な溶媒、この場合はDCM中、TEAの存在下で、酸塩化物45をチオールで処理することによって合成され得る。
【0142】
この方法論は、スキームLで、ジエチルエーテルのような適切な溶媒およびTEAのような塩基中、アルコールおよびアミンの酸塩化物45との反応を介して、式(1a)(e)および(h)のα-ケトエステルおよびα-ケトアミド化合物を入手することも可能にするであろう。
【0143】
【化20】
【0144】
式(1a)(e)のα-ケトエステル化合物の入手は、スキームMに概要が示される通り、α-ケトエステル1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート(40)の選択的エステル交換を介して達成され得る。当業者は、エステルのエステル交換が、Org.Lett.2016、18、2208~2211頁に詳述される通り、N-複素環オレフィンのような触媒によって促進され得ることを認識するであろう。
【0145】
【化21】
【0146】
メチル(2E)-5-(メチルスルファニル)-4,5-ジオキソペンタ-2-エノアート(44)のような式(1a)(i)の化合物は、加水分解され、α-ケト酸41、スキームNの式(1a)(e)の化合物の例をもたらし得る。
【0147】
【化22】
【0148】
Steglichエステル化条件は、α-ケト酸(3E)-5-メトキシ-2,5-ジオキソペンタ-3-エン酸(41)をエステル化し、式(1a)(e)の化合物を入手するために利用され得る。当業者は、多くの代替カップリング試薬および条件が、α-ケト酸41をアルコールとカップリングさせて、式(1a)(e)のα-ケトエステル化合物を得るために使用され得ることを知っているであろう。これらには、以下に限定されないが、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDAC)、(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、およびプロピルホスホン酸無水物(T3P)が含まれる。
【0149】
【化23】
【0150】
別の変形例は、前記生成物の置換基を付け加えるか、除去するか、または修飾することで、新規の誘導体を形成することである。これもまた、Larock R C、New York、VCH Publishers、Inc.1989によるComprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparationsに記載されているもののような、当該業界で公知の官能基相互交換のための標準的な技術を使用することによって達成され得る。
【0151】
好ましい実施形態において、本発明は、酸化ストレスと関連する障害を処置する方法であって、(Ia):
【0152】
【化24】
【0153】
の化合物
または薬学的に許容されるその塩
(式中、Rは、C~Cアルキルであり、
式中、Rは、
【0154】
【化25】
【0155】
から選択され、
式中、Rは、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択される)
を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法を提供する。
【0156】
上記の実施形態に関して、Rは、H、C~C置換されているアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、および置換されていてもよいヘテロシクリルから選択されてもよい。
【0157】
他の実施形態において、Rは、HおよびC~Cアルキルから選択される。
他の実施形態において、Rは、HおよびC~Cアルキルから選択される。
別の実施形態において、Rは、HまたはC~Cアルキルである。
【0158】
別の実施形態において、Rは、C~Cアルキルである。
別の実施形態において、Rは、Cアルキルである。
別の実施形態において、Rは、Cアルキルである。
【0159】
別の実施形態において、Rは、Hである。
理論に束縛されるものではないが、本発明者らからのin vivoにおける結果は、式(1a)(e)の化合物からのMMFの放出であって、ROS/RNSによって活性化された放出を使用して、酸化ストレスを受けた組織における特定の生化学的経路(NRF2)の部位特異的標的エンゲージメントを介した病態の寛解を明示した。Hおよび13CのNMR試験から、本発明者らは、α-ケト酸、(3E)-5-メトキシ-2,5-ジオキソペンタ-3-エン酸(41、例J)が、全身に循環する1,2-ジカルボニル化合物であって、in vivoで酸化ストレスを受けた組織にMMFを送達する1,2-ジカルボニル化合物であり得ると考えている。
【0160】
フマル酸(fumrarate)ジメチル(テクフィデラ(登録商標))およびフマル酸ジロキシメル(Vumerity(商標))は、患者に経口投与され、エステラーゼ媒介性の自発的加水分解を介して、小腸でフマル酸モノメチル(MMF)に、ほぼ完全に変換される。MMFは、そのアニオン形態においてグルタチオンとの反応性が制限され、CYP酵素と反応することなく、小腸から肝臓を介して血流へと通過し、そこで、治療剤として全身に送達される。肝臓でエステラーゼ加水分解が制限されることによって、いくらかのMMFがフマル酸に変換されてトリカルボン酸回路に取り込まれ、最終的に二酸化炭素として呼気中に排出される。全身に送達されたMMFは、他の細胞および組織のエステラーゼによって開始され、同様に代謝される。
【0161】
本発明者らは、胃管である媒体中の化合物をマウスの胃内に経口投与する方法を利用したが、胃および/または小腸内における前記化合物のα-ケトエステル部分の選択的な自発的加水分解は、対応するα-ケト酸をもたらすことがある。選択的加水分解は、類似のカルボン酸エステルよりも自発的加水分解をはるかに受けやすいα-ケトエステルによってもたらされると考えられる。前記α-ケト酸は、小腸からの体循環前の血液供給中に吸収される化学種であると考えられている。
【0162】
フマル酸エステルを基にした薬物は、フマル酸の形成を引き起こし得る胃酸への曝露を回避するために腸溶コーティング製剤として投与されることが多い。フマル酸は治療効果を持たないため、フマル酸へのこの分解も望ましくない。特定の実施形態において、本発明の化合物(および特に、式(1a)(e)の化合物)は、この化合物を小腸に送達することが意図される腸溶コーティング形態を用いて、経口で送達されることが意図されている。小腸において、対応するα-ケト酸をもたらすα-ケトエステル部分の選択的で自発的なエステラーゼ媒介性加水分解が生じるであろうと予想される。さらに、前記α-ケト酸は、小腸から体循環前の血液供給中に吸収される化学種であると予想される。
【0163】
α-ケト酸の分子モデリング(例J)である表1は、α-ケト酸が、特に、小腸の中性に近いpHから塩基性pHならびに血液および肝臓の中性pHにおいて、ほぼ完全にイオン化されるであろうが、そのアニオン形態においては、その親α-ケトエステル(例A)およびMMFよりも求電子性が著しく低い(wがより陰性であるほど、その炭素はより求電子性が高い)であろうことを示している。我々は、α-ケト酸(例J)のpKaを約1.56±0.54と推測し(ACD Labs prediction-Scifinder)、これは、他の関連するα-ケト酸の経験的測定値によって支持される(J.Pharm.Sci.2016、105(2)、664~672頁)。これは、pH7.4の平衡状態におけるイオン化傾向が794,328:1であることを意味し、これとは対照的に、MMF(測定されたpKa=3.63、Arch Dermatol Res.2010、302(7)、531-8)の平衡状態におけるイオン化傾向は5,888:1である。
【0164】
【表1】
【0165】
求核試薬に対する相対反応性は、特定のpHの水性環境における前記1,2-ジカルボニルとそのジェミナルジオールの平衡状態の状況によっても異なるであろう。中性に近いpHでは、前記α-ケト酸は、主に脱プロトン化され、NMRによって測定される通り、ケト形態となる(4:1ケト酸:gemジオール)。
【0166】
【化26】
【0167】
小腸から吸収されると、電荷を帯びた非求電子形態が優位となる結果として、α-ケト酸が、小腸から肝臓までの前体循環を介して移動しつつ、グルタチオンと抱合体を形成する可能性は低い。肝臓において、我々は、α-ケト酸が効率的な鉄キレート剤ではなく(Eur Food Res Technol 2016、242、179~188頁)、MMFがCYPと相互作用することなく、CYP誘導物質ではないという知見に基づいて、例JのCYPとの相互作用は最小限であると予想する。例Jのいくらかのエステラーゼ媒介性加水分解から対応する二酸を生成することは、肝臓においてエステラーゼがより広範囲のエステル基質を受容するため、恐らく生じるであろう。前記二酸は、酸化的脱炭酸を介して、フマル酸および二酸化炭素までさらに代謝を受けることがある。
【0168】
α-ケトエステルである例Aおよび式(1a)(e)の他の化合物に対する初回通過代謝過程の最終的な結果として、治療用量のMMFを、特異的に酸化ストレス下の細胞および組織へと効果的に送達するために十分な高用量でα-ケト酸である例Jが血流へと全身送達されると思われる。
【0169】
いずれの特定の理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、代謝産物である例Jが、細胞のホメオスタシスを回復させるために、酸化ストレス下の組織へのMMFの標的化送達を誘導している1,2-ジカルボニル化合物である可能性があるという見解である。組織および血液の生理的pHにおいて優位を占める電荷を帯びた状態の例Jの(本発明者らのモデリングによって予測される)極端に低い求電子性は、過酸化水素またはペルオキシ亜硝酸によってMMFへの酸化的切断が活性化されるまで、例Jを不活性のまま留めるといったこの標的化において重要であると考えられる。これは、NRF2経路の低下した全身的活性化ならびに他のタンパク質の反応性アミンおよびチオールとの制限された相互作用を介したオンターゲットおよびオフターゲット副作用の軽減においても重要であると考えられる。例Aの例Jへの変換は、胃および/または小腸で生じると思われる。
【0170】
α-ケト酸である例Jは、全身に送達されると、酸化ストレス代謝産物である過酸化水素およびペルオキシ亜硝酸の存在下で、MMFへの局所的な切断によって、その部位選択的治療効果を生じると考えられている。MMFの治療作用には、細胞の抗酸化、抗炎症、および解毒機能を作動させるNRF2経路の活性化、阻害物資であるタンパク質脱アセチル化酵素サーチュイン-1(SIRT1)の活性化を介したNFκB活性化の下流阻害を介してその効果を発揮するヒドロキシカルボン酸2(HCA2)受容体(ヒトではGPR109Aとしても知られている)の活性化、ならびにガスダーミン-Dの活性なチオールをコハク酸エステル化することによる炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン-1βの放出の防止を含むNRF2およびHCA2に依存しない他の抗炎症作用が含まれる。非コハク酸エステル化ガスダーミン-Dは、通常、インターロイキン-1βの細胞外放出を可能にする膜孔を形成する。
【0171】
本発明がより容易に理解されるために、我々は、次の非限定的な例を提供する。
合成例
全ての無水溶媒は、市販で入手され、窒素下でSure-Sealボトルに保存されるか、またはInert Corporationの溶媒精製システムに移され、そこから分配された。他の全ての試薬および溶媒は、必要とされる最も高いグレードのものが購入され、さらに精製することなく使用された。全ての有機抽出液は、無水硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥された。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Merckからのシリカゲル60 F254でコーティングされたアルミニウムシートを使用し、紫外線を使用して視覚化された。融点は、Reichert Thermovar Kofler装置で測定され、補正されていない。赤外線スペクトルは、特に明記しない限り、neatサンプルとしてPerkin Elmer Spectrum 400 FT-IR/FT-FIR分光計に記録された。H NMRおよび13C NMRスペクトルは、Agilent 500 MHz分光計で取得された。高分解能質量分析(HRMS)は、Agilent 6230 ESI-TOF LCMSで実施された。報告された全ての収率は、TLCおよびNMR分光検査によって均質であると判定された単離物質を指す。
【0172】
以下の例において、構造が、1つまたは複数の立体中心(cetres)を含有する場合、それぞれの構造は、任意の立体配置で描出される。これらの構造は、全ての比率におけるエナンチオマーの混合物および/または全ての比率におけるジアステレオマーの混合物に加えて、単一のエナンチオマーを表す。
一般的手順
一般的手順A:α-ケトエステルの合成
α-ケトグルタル酸(2当量)とジシクロヘキシルアミン(1当量)の混合物を、窒素雰囲気下にて50℃で、無水DMF(40mL/6.8mmolのα-ケトグルタル酸)に溶解した。次に、ハロゲン化アルキル(1当量)を加えて、この混合物を、50℃で反応が完了するまで撹拌した。反応が完了した時点で、反応混合物を水に注ぎ込み、ジエチルエーテルで分液した。この有機層を分離し、水層をジエチルエーテルでさらに抽出した。次に、有機物を合わせてブラインで抽出し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得て、それをさらに精製することなく使用した。
一般的手順B:メチルエステルの形成
カルボン酸(1当量)の無水DCM(5mL/1mmolのカルボン酸)溶液に、不活性雰囲気下で、DIC(1.1当量)およびMeOH(3当量)を加え、続いてDMAP(0.1当量)を加えた。この混合物を、室温で反応が完了するまで撹拌した。反応が完了した時点で、前記混合物を、ジエチルエーテルで希釈し、水を加えた。この水層を、ジエチルエーテルで抽出し(2×)、次に、合わせた有機物を、水およびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。
一般的手順C:α-ケトグルタル酸誘導体のブロム化
無水DCM(15mL/1mmolのα-ケトグルタル酸誘導体)にα-ケトグルタル酸誘導体(1.0当量)を溶解した溶液に、臭素(1.5当量)を滴下して加えた。この混合物を、不活性雰囲気下にて35℃で反応が完了するまで撹拌した。反応が完了した時点で、揮発性物質を減圧下で除去し、この粗生成物を、さらに精製することなく使用した。
一般的手順D:HBrの除去
トリエチルアミン(2当量)を、臭化物(1当量)の無水THF(10mL/1mmolの臭化物)溶液に加え、この混合物を、不活性雰囲気下にて遮光し、室温で反応が完了するまで撹拌した。反応が完了した時点で、揮発性物質を減圧下で除去し、この粗残留物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。
一般的手順E:α-ケトアミドの合成
2-オキソグルタル酸ジメチル(1.0当量)の無水THF(2.5mL/1.5mmolの2-オキソグルタル酸(oxogluatarte)ジメチル)溶液に、アミン(1.5当量)を加え、この混合物を、不活性雰囲気下にて室温で反応が完了するまで撹拌した。反応が完了した時点で、揮発性物質を減圧下で除去し、この粗残留物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。
一般的手順F:Wittig反応
適切な溶媒(1mL/1mmolのアルデヒド)中のアルデヒド(1当量)と安定化されたイリド(1.1当量)の懸濁液を、マグネチックスターラーバーを備えた圧力容器に入れた。このバイアルを密封し、150℃の油浴に10分間留置した。この反応混合物を冷却し、次に、丸底フラスコに移して揮発性物質を減圧下で除去した。ヘキサンまたはヘキサン中10%の酢酸エチルの混合物を加え、この混合物を10分間撹拌した後、Celite(登録商標)を通して濾過し、トリフェニルホスフィンオキシド副生成物の大半を除去した。この濾液を減圧下で濃縮し、この粗残留物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。
一般的手順G:アルコールへのエステル還元
0℃のエステル(1当量)の無水トルエン(10mL/2.2mmolのエステル)溶液に、DIBAL-H(トルエン中1.0M、2当量)を滴下して加え、この混合物を、不活性雰囲気下にて0℃で反応が完了するまで撹拌した。反応が完了した時点で、この反応混合物を、酢酸エチルで希釈し、ガスが発生しなくなるまでロッシェル塩の飽和溶液を滴下して加えた。形成された固体物質を、Celite(登録商標)を通す濾過によって除去した。次に、この濾液を水で洗浄し、この水層を、酢酸エチルでさらに抽出した。合わせた有機物を、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。
一般的手順H:アルコールのアルデヒドへの酸化
活性化された二酸化マンガン(10当量)を、室温でアルコール(1当量)の無水DCM(3mL/1mmolのアルコール)溶液に加え、不活性雰囲気下で反応が完了するまで撹拌した。反応が完了した時点で、DCMをこの反応混合物に加え、固体物質をCelite(登録商標)を通す濾過によって除去した。次に、揮発性物質を減圧下で除去し、望ましいアルデヒドを得て、それをさらに精製することなく使用した。
一般的手順I:Sharplessジヒドロキシ化
t-BuOHと水(8mL/1mmolのオレフィン)が1:1の溶液に、AD-mix β(1.4g/1mmolのオレフィン)を加え、この混合物を、下層が明黄色の2つの澄明な層が明確になるまで撹拌した。この混合物に、t-BuOHと水(2mL/1mmolのオレフィン)が1:1の溶液に溶解されたメタンスルホンアミド(1当量)とオレフィン(1当量)の溶液を加えるが、オレフィンを溶解するために加熱が必要となる場合があることに留意されたい。次に、この反応混合物を、室温で反応が完了するまで撹拌した。いくらかのオレフィンは、それを可溶化させるために、反応混合物を30℃~50℃の間に加熱することを必要とする。反応が完了した時点で、亜硫酸ナトリウム(1.5g/1mmolのオレフィン)を加え、この混合物を、室温で30分間撹拌した。この反応混合物に、ジエチルエーテル(10mL/1mmolのオレフィン)を加え、層の分離後に、水層を、有機物のジエチルエーテル(3×5mL/1mmolのオレフィン)でさらに抽出した。合わせた有機抽出物を、乾燥し(MgSO)、濾過し、減圧下で濃縮して、カラムクロマトグラフィーによって精製される粗ジオールを得た。
一般的手順J:ジオールの酸化
氷浴で冷却されたジオール(1当量)に、Dess-Martinペルヨージナン(2.1当量)を加え、この混合物を、ガラス攪拌棒で反応が完了するまで撹拌した。反応が完了した時点で、この粗残留物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。
一般的手順K:α-ケトエステルのエステル交換
例A(1当量)のアルコール溶液に濃硫酸を加え、この混合物を、不活性雰囲気下にて室温で反応が完了するまで一晩撹拌した。反応が完了した時点で、揮発性物質を減圧下で除去し、この粗残留物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。
中間生成物A:5-(ベンジルオキシ)-4,5-ジオキソペンタン酸
【0173】
【化27】
【0174】
α-ケトグルタル酸を、一般的手順Aに記載される通りに反応させて、淡青色半固体として表題化合物(956mg、収率65%)を得た。特性データは、文献報告値に一致したChem.Pharm.Bull.、47、1284~1287頁(1999)。
中間生成物B:1-ベンジル5-メチル2-オキソペンタンジオアート
【0175】
【化28】
【0176】
中間生成物Aを、一般的手順Bに記載される通りに反応させて、無色油状物として表題化合物(108mg、収率41%)を得た。R=0.38(ヘキサン中20%EA);1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.45 - 7.32 (m, 5H), 5.29 (s, 2H), 3.68 (s, 3H), 3.17 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.67 (t, J = 6.5 Hz, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 192.35, 172.51, 160.41, 134.54, 128.98, 128.86, 128.81, 68.30, 52.17, 34.45, 27.54;IR(neat)2955、1728、1606、1588、1499、1456、1438cm-1
中間生成物C:1-ベンジル5-メチル3-ブロモ-2-オキソペンタンジオアート
【0177】
【化29】
【0178】
中間生成物Bを、一般的手順Cに記載される通りに反応させて、橙色油状物として表題化合物を得て、これをさらに精製することなく使用した。
中間生成物D:メチル4-(ベンジルカルバモイル)-4-オキソブタノアート
【0179】
【化30】
【0180】
2-オキソグルタル酸(oxoglatarate)ジメチルを、一般的手順Eに記載される通りにベンジルアミンと反応させて、無色油状物として表題化合物(251mg、収率70%)を得た。特性データは、文献報告値に一致したJ.Org.Chem.、77、8294~8302頁(2012)。
中間生成物E:メチル4-(ベンジルカルバモイル)-3-ブロモ-4-オキソブタノアート
【0181】
【化31】
【0182】
中間生成物Dを、一般的手順Cに記載される通りに反応させて、橙色油状物として表題化合物を得て、これをさらに精製することなく使用した。
中間生成物F:(トリフェニルホスホラニリデン)酢酸メチル
【0183】
【化32】
【0184】
クロロ酢酸メチル(4g、36.9mmol)とトリフェニルホスフィン(8.7g、33.2mmol)を合わせて、窒素雰囲気下にて90℃に加熱しつつ撹拌した。ガラスが形成された時点で、このガラスを、砕いて、潰し、トルエンで洗浄して全ての非反応出発物質を除去した。次に、ホスホニウム塩をDCMに溶解し、この溶液に2N NaOH水溶液(38.7mL)を加え、これを室温で1時間撹拌した。次に、この反応混合物を分離し、有機層を、水およびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して表題化合物(9.45g、収率77%)を得た。特性データは、文献報告値に一致したJ.Org.Chem.、79、1467~1472頁(2014)。
中間生成物G:メチル(2E,4E)-5-フェニルペンタ-2,4-ジエノアート
【0185】
【化33】
【0186】
trans-シンナムアルデヒドを、一般的手順Fに記載される通りにトルエン中の中間生成物Fと反応させて、無色固体として表題化合物(1.541g、収率82%)を得た。
特性データは、文献報告値に一致したEur.J.Org.Chem.、5204~5213頁(2017)。
中間生成物H:メチル(2E)-4,5-ジヒドロキシ-5-フェニルペンタ-2-エノアート
【0187】
【化34】
【0188】
中間生成物Gを、一般的手順Iに記載される通りに反応させて、無色油状物として表題化合物(403mg、収率34%)を得た。R=0.5(ヘキサン中50%EA);1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 7.37-7.31 (m, 5H), 6.74 (dd, J = 16.0, 4.0 Hz, 1H), 6.09 (dd, J = 16.0, 1.5 Hz, 1H), 4.55-4.53 (m, 1H), 4.41 (brs, 1H), 3.70 (s, 3H), 2.84 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 2.78 (d, J = 2.5 Hz, 1H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 166.6, 145.6, 139.6, 128.7, 128.6, 126.8, 122.0, 77.0, 75.3, 51.6;IR(neat)3425、1705、1660、1495、1449、1437、1391、1311、1277cm-1
中間生成物I:メチル(2E,4E)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ペンタ-2,4-ジエノアート
【0189】
【化35】
【0190】
4-ヒドロキシ-3-メトキシシンナムアルデヒドを、一般的手順Fに記載される通りにトルエン中の中間生成物Fと反応させて、cis異性体であるメチル(2Z,4E)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ペンタ-2,4-ジエノアート(315mg)と分離不可能な混合物として表題化合物を得た。
【0191】
メチル(2Z,4E)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ペンタ-2,4-ジエノアート:R=0.43(ヘキサン中30%EA);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 8.00 (ddd, J = 15.6, 11.4, 1.1 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.02 (dd, J = 8.2, 2.0 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 11.3 Hz, 1H), 5.76 (s, 1H), 5.68 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 3.94 (s, 3H), 3.76 (s, 3H).
中間生成物I:R=0.37(ヘキサン中30%EA);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.44 (dd, J = 15.2, 10.9 Hz, 1H), 7.02 - 6.96 (m, 2H), 6.90 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 15.5 Hz, 1H), 6.73 (dd, J = 15.5, 10.8 Hz, 1H), 5.95 (d, J = 15.2 Hz, 1H), 5.75 (s, 1H), 3.94 (s, 3H), 3.77 (s, 3H).
中間生成物J:メチル(2E,4E)-5-{4-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-3-メトキシフェニル}ペンタ-2,4-ジエノアート
【0192】
【化36】
【0193】
無水DCM(2mL)中の中間生成物Iとメチル(2Z,4E)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)ペンタ-2,4-ジエノアート(315mg、1.67mmol)の混合物に、DIPEA(872μL、5.01mmol)を加え、続いてt-ブチルジメチルシリルクロリド(503mg、3.34mmol)を加えた。この混合物を、不活性雰囲気下にて室温で7.5時間撹拌した。この粗反応混合物を、水で分液し、DCMで2回抽出した。合わせた有機物を、水およびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して粗生成物を得て、これを、ヘキサンと共に粉砕することによって精製し、黄色結晶性固体として表題化合物(165mg、収率28%)を得た。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.44 (dd, J = 15.2, 10.8 Hz, 1H), 6.98 - 6.92 (m, 2H), 6.87 - 6.80 (m, 2H), 6.78 - 6.69 (m, 1H), 5.95 (d, J = 15.2 Hz, 1H), 3.84 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 0.99 (s, 9H), 0.16 (s, 6H); 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 167.80, 151.33, 146.65, 145.35, 140.86, 130.13, 124.48, 121.26, 121.16, 119.77, 110.38, 77.41, 77.16, 76.91, 55.58, 51.59, 25.80, 18.62, -4.48;IR(neat)3033、2931、2887、2858、1707、1624、1590、1566、1507、1473、1459、1420、1386、1352cm-1;HRMS(ESI):C1929Siの計算値349.1835[M+H]、実測値349.1843。
中間生成物K:メチル(2E)-5-{4-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-3-メトキシフェニル}-4,5-ジヒドロキシペンタ-2-エノアート
【0194】
【化37】
【0195】
中間生成物Jを、一般的手順Iに記載される通りに反応させて、30℃に加熱し、無色油状物として表題化合物(113mg、収率42%)を得た。R=0.4(ヘキサン中40%EA);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 6.85 - 6.82 (m, 2H), 6.78 (dd, J = 8.1, 2.0 Hz, 1H), 6.74 (dd, J = 15.7, 4.4 Hz, 1H), 6.07 (dd, J = 15.7, 1.8 Hz, 1H), 4.48 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 4.39 (ddd, J = 6.8, 4.6, 1.8 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.70 (s, 3H), 2.67 (s, 1H), 2.55 (s, 1H), 0.99 (s, 9H), 0.15 (s, 6H). 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ166.79, 151.26, 145.94, 145.36, 133.09, 121.92, 121.07, 119.38, 110.65, 77.16, 75.54, 55.67, 51.77, 25.83, 18.57, -4.50;IR(neat)3420、2959、2930、2887、2858、1725、1707、1660、1585、1514、1464、1436、1419、1391cm-1。HRMS(ESI):C1930NaOSiの計算値405.1709[M+Na]、実測値405.1703。
中間生成物L:メチル(2E)-3-(4-フルオロフェニル)プロパ-2-エノアート
【0196】
【化38】
【0197】
4-フルオロベンズアルデヒドを、一般的手順Fに記載される通りにトルエン中の中間生成物Fと反応させて、無色固体として表題化合物(1.005g、収率40%)を得た。特性データは、文献報告値に一致したJ.Org.Chem.、69、4216~4226頁(2004)。
中間生成物M:(2E)-3-(4-フルオロフェニル)プロパ-2-エン-1-オール
【0198】
【化39】
【0199】
中間生成物Lを、一般的手順Gに記載される通りに反応させて、無色固体として表題化合物(619mg、収率62%)を得た。特性データは、文献報告値に一致したJ.Am.Chem.Soc.、135、12690~12693頁(2013)。
中間生成物N:(2E)-3-(4-フルオロフェニル)プロパ-2-エナール
【0200】
【化40】
【0201】
中間生成物Mを、一般的手順Hに記載される通りに反応させて、無色固体として表題化合物(394mg、収率94%)を得た。特性データは、文献報告値に一致したOrg.Lett.、13、992~994頁(2011)。
中間生成物O:メチル(2E,4E)-5-(4-フルオロフェニル)ペンタ-2,4-ジエノアート
【0202】
【化41】
【0203】
中間生成物Nを、一般的手順Fに記載される通りにトルエン中の中間生成物Fと反応させて、無色固体として表題化合物(95mg、収率24%)を得た。特性データは、文献報告値に一致したOrg.Chem.Front.、6、796~800頁(2019)。
中間生成物P:メチル(2E)-5-(4-フルオロフェニル)-4,5-ジヒドロキシペンタ-2-エノアート
【0204】
【化42】
【0205】
中間生成物(Intermedate)Oを、一般的手順Iに記載される通りに反応させて、無色固体として表題化合物(21mg、収率19%)を得た。R=0.36(ヘキサン中50%酢酸エチル);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.36 - 7.30 (m, 2H), 7.11 - 7.03 (m, 2H), 6.73 (dd, J = 15.7, 4.5 Hz, 1H), 6.09 (dd, J = 15.7, 1.8 Hz, 1H), 4.56 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 4.43 - 4.35 (m, 1H), 3.72 (s, 3H), 2.62 (s, 2H); 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ166.59, 162.92 (d, J = 247.0 Hz), 145.30, 135.45 (d, J = 3.3 Hz), 128.68 (d, J = 8.1 Hz), 122.51, 115.82 (d, J = 21.5 Hz), 76.61, 75.56, 51.84;IR(neat)3459、3275、2958、1712、1663、1608、1511、1474、1431、1414、1373;Mp105~107℃。
中間生成物Q:メチル(2E,4E)-5-(4-メトキシフェニル)ペンタ-2,4-ジエノアート
【0206】
【化43】
【0207】
(2E)-3-(4-メトキシフェニル)プロパ-2-エナールを、一般的手順Fに記載される通りにトルエン中の中間生成物Fと反応させて、無色固体として表題化合物(139mg、収率21%)を得た。特性データは、文献報告値に一致したOrg.Chem.Front.、6、796~800頁(2019)。
中間生成物R:メチル(2E)-4,5-ジヒドロキシ-5-(4-メトキシフェニル)ペンタ-2-エノアート
【0208】
【化44】
【0209】
中間生成物(Intermedate)Qを、一般的手順Iに記載される通りに反応させて、黄色油状物として表題化合物(40mg、収率28%)を得た。R=0.23(ヘキサン中50%酢酸エチル);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.32 - 7.23 (m, 2H), 6.93 - 6.87 (m, 2H), 6.73 (dd, J = 15.7, 4.3 Hz, 1H), 6.10 (dd, J = 15.7, 1.8 Hz, 1H), 4.50 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 4.40 (ddd, J = 6.7, 4.4, 1.8 Hz, 1H), 3.81 (s, 3H), 3.71 (s, 3H), 2.71 (s, 1H), 2.51 (s, 1H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 166.75, 159.96, 145.71, 131.73, 128.18, 122.11, 114.32, 76.92, 75.54, 55.47, 51.77;IR(neat)3416、3003、2953、2902、2839、1709、1659、1611、1585、1513、1459、1437、1391cm-1
中間生成物S:メチル4,5-ジオキソ-5-(ピペリジン-1-イル)ペンタノアート
【0210】
【化45】
【0211】
2-オキソグルタル酸(oxoglatarate)ジメチルを、一般的手順Eに記載される通りにピペリジンと反応させて、無色油状物として表題化合物(44mg、収率13%)を得た。R=0.26(ヘキサン中30%酢酸エチル);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 3.68 (s, 3H), 3.58 - 3.52 (m, 2H), 3.41 - 3.36 (m, 2H), 3.07 - 3.01 (m, 2H), 2.71 - 2.65 (m, 2H), 1.71 - 1.64 (m, 2H), 1.64 - 1.57 (m, 5H); 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 199.72, 173.06, 165.46, 52.03, 46.86, 42.62, 34.84, 27.13, 26.50, 25.51, 24.53;IR(neat)2941、2860、1736、1715、1634、1446、1440、1369、1350、1321cm-1;HRMS(ESI):C1118NOの計算値228.1236[M+H]、実測値228.1232。
例A:1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート
【0212】
【化46】
【0213】
2-オキソグルタル酸ジメチルを、加熱することなく、一般的手順Cに記載される通りに反応させて、続いてこの生成物である臭化物を、一般的手順Dに記載される通りに反応させて、表題化合物(1.999g、収率80%)を得た。特性データは、商業的供給源から購入された標準品に一致した。
例B:5-ベンジル1-メチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート
【0214】
【化47】
【0215】
中間生成物Cを、一般的手順Dに記載される通りに反応させて、黄色油状物として表題化合物(11mg、収率12%)を得た。R=0.35(DCM);1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.60 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 7.47 - 7.30 (m, 5H), 6.95 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 5.34 (s, 2H), 3.83 (s, 3H); 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 182.42, 165.24, 160.59, 135.56, 134.32, 134.29, 129.13, 128.94, 128.92, 68.61, 52.72;IR(neat)3086、3067、3037、2959、1734、1722、1698、1637、1499、1456、1439、1384cm-1;HRMS(ESI):C1312の計算値249.0763[M+H]、実測値249.0769;Mp45~47℃。
例C:メチル(2E)-4-(ベンジルカルバモイル)-4-オキソブタ-2-エノアート
【0216】
【化48】
【0217】
中間生成物Eを、一般的手順Dに記載される通りに反応させて、黄色固体として表題化合物(173mg、収率73%)を得た。特性データは、文献報告値に一致したJ.Org.Chem.、77、8294~8302頁(2012)。
例D:メチル(2E)-4,5-ジオキソ-5-フェニルペンタ-2-エノアート
【0218】
【化49】
【0219】
中間生成物Hを、一般的手順Jに記載される通りに反応させて、黄色油状物として表題化合物(318mg、収率71%)を得た。R=0.55(DCM);1H NMR (CDCl3, 500 MHz) δ 8.00 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.68 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 7.54-7.49 (m, 3H), 6.90 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 3.85 (s, 3H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz) δ 191.0, 190.9, 165.2, 135.4, 135.3, 135.1, 130.3, 129.0, 52.6;HRMS(ESI):C1210の計算値219.0657[M+H]、実測値219.0648;IR(neat)3067、2955、1727、1670、1622、1596、1450、1437、1310cm-1
例E:メチル(2E)-5-{4-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]-3-メトキシフェニル}-4,5-ジオキソペンタ-2-エノアート
【0220】
【化50】
【0221】
中間生成物Kを、一般的手順Jに記載される通りに反応させて、黄色油状物として表題化合物(23mg、収率74%)を得た。R=0.22(ヘキサン中60%DCM);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.55 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.50 - 7.43 (m, 2H), 6.92 - 6.84 (m, 2H), 3.87 (s, 3H), 3.83 (s, 3H), 1.00 (s, 9H), 0.20 (s, 6H); 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 191.68, 190.02, 165.48, 152.50, 151.73, 135.99, 135.11, 126.23, 125.96, 120.82, 112.12, 55.70, 52.70, 25.71, 18.66, -4.39;IR(neat)2953、2931、2858、1732、1691、1661、1588、1508、1464、1436、1420cm-1
例F:メチル(2E)-5-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-4,5-ジオキソペンタ-2-エノアート
【0222】
【化51】
【0223】
例E(27mg、0.07mmol)の無水THF(1mL)溶液に、TBAF(19mg、0.07mmol)を加え、この溶液を、不活性雰囲気下にて室温で6時間撹拌した。この反応混合物に、酢酸エチルおよび飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、有機層を分離した。この水層を、酢酸エチル(×3)でさらに抽出し、合わせた有機物を、水およびブラインで洗浄した。次に、この有機物を、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で濃縮して粗生成物を得て、これを、カラムクロマトグラフィーによって精製して黄色固体として表題化合物(3mg、収率14%)を得た。R=0.22(ヘキサン中60%DCM);Mp91~94℃;1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.61 - 7.54 (m, 2H), 7.47 (dd, J = 16.2, 0.8 Hz, 1H), 6.98 (dd, J = 8.2, 0.8 Hz, 1H), 6.86 (dd, J = 16.2, 0.8 Hz, 1H), 6.26 (s, 1H), 3.98 (s, 3H), 3.83 (s, 3H); 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 191.53, 189.77, 165.48, 152.63, 147.19, 135.97, 135.14, 127.30, 125.00, 114.63, 110.96, 56.39, 52.71;IR(neat)3337、2920、2850、1731、1672、1644、1585、1513、1453、1433、1381cm-1
例G:メチル(2E)-5-(4-フルオロフェニル)-4,5-ジオキソペンタ-2-エノアート
【0224】
【化52】
【0225】
中間生成物Pを、一般的手順Jに記載される通りに反応させて、黄色固体として表題化合物(12mg、収率58%)を得た。R=0.6(DCM);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 8.15 - 8.01 (m, 2H), 7.54 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 7.24 - 7.15 (m, 2H), 6.90 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 3.84 (s, 3H); 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ190.38, 189.10, 167.10 (d, J = 258.9 Hz), 165.34, 135.50, 135.28, 133.42 (d, J = 10.0 Hz), 128.60 (d, J = 2.9 Hz), 116.56 (d, J = 21.9 Hz), 52.75;IR(neat)3083、3070、2960、1720、1677、1631、1595、1507、1435、1412、1324、1308cm-1;Mp53~54℃。
例H:メチル(2E)-5-(4-メトキシフェニル)-4,5-ジオキソペンタ-2-エノアート
【0226】
【化53】
【0227】
中間生成物Rを、一般的手順Jに記載される通りに反応させて、黄色固体として表題化合物(20mg、収率50%)を得た。R=0.44(DCM);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 8.00 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.49 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.87 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 3.90 (s, 3H), 3.83 (s, 3H); 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 191.47, 189.60, 165.49, 165.37, 135.87, 135.08, 133.00, 125.11, 114.55, 55.82, 52.68;IR(neat)2953、2844、1723、1688、1666、1648、1592、1566、1508、1458、1427、1303cm-1;HRMS(ESI):C1313の計算値249.0763[M+H]、実測値249.0770;Mp69~71℃。
例I:メチル(2E)-5-(メチルスルファニル)-4,5-ジオキソペンタ-2-エノアート
【0228】
【化54】
【0229】
PPh3・HBr(7.48g、21.8mmol)を、窒素雰囲気下で、コンデンサー付き三口丸底フラスコに入れた。このフラスコを水浴で冷却し、無水DMSO(60mL)を、撹拌しつつ滴下して加えた。5分後に、メチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エノアート(1.396g、10.9mmol)を、この反応混合物に入れ、得られた混合物を、不活性雰囲気下にて50℃で反応が完了するまで撹拌した。この反応の完了(約2.5時間、TLCで評価、ヘキサン中20%酢酸エチル)後に、飽和塩化アンモニウム溶液(300mL)を加え、この生成物を、酢酸エチルで抽出した(1×150mLおよび2×100mL)。合わせた有機物を、水(75mL)で洗浄し、次に、ブライン(3×75mL)で洗浄して分離させ、この有機物を、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で濃縮して粗残留物を得た。これを、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中20%酢酸エチルで溶出するスクワットカラム(squat column))によって精製して、黄色結晶性固体として表題化合物(1.221g、収率59%)を得た。R=0.6(ヘキサン中20%酢酸エチル);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.68 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 3.84 (s, 3H), 2.41 (s, 3H); 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 191.52, 183.08, 165.23, 135.95, 132.26, 52.73, 11.56;IR(neat)3077、3061、2957、2848、1716、1688、1667、1638、1437、1306、1288、1205、1182、1154cm-1;Mp37~42℃。
例J:(3E)-5-メトキシ-2,5-ジオキソペンタ-3-エン酸
【0230】
【化55】
【0231】
1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートである例A(200mg、1.16mmol)を、pH7.4の100mMリン酸緩衝液(20mL)に溶解し、室温で一晩撹拌して遮光した。次に、この溶液を、0.1M HCl(60mL)で希釈し、溶液がpH1に達するまで、1M HClを加えた。次に、この混合物を、3:1クロロホルム/イソプロパノール(5×40mL)で抽出した。合わせた有機物を、乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で濃縮した。次に、得られた物質を、DCM中に取り、再び濾過して黄色固体として表題化合物(114mg、収率62%)を得た。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.75 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 7.19 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.63 (brs, 1H), 3.86 (s, 3H); 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 183.06, 165.05, 159.42, 137.43, 132.38, 52.94;IR(neat)3536、3344、3084、3067、2967、1770、1732、1687、1452、1440、1370、1314、1263、1217cm-1;Mp44~45℃。
例K:(3E)-5-メトキシ-2,5-ジオキソペンタ-3-エン酸、ナトリウム塩
【0232】
【化56】
【0233】
室温で無水THF(3mL)中に(3E)-5-メトキシ-2,5-ジオキソペンタ-3-エン酸である例J(110mg、0.70mmol)が撹拌された溶液に、油中60%水素化ナトリウム(27mg、0.69mmol)を1度に加えた。添加後、この混合物を、不活性雰囲気下にて60℃に3時間加熱し、次に、室温まで冷却した。この固体析出物を、濾過によって採取し、無水THFで洗浄し、さらに減圧下で乾燥させて、淡黄色固体として表題化合物(84mg、収率67%)を得た。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 6.99 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.56 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 3.73 (s, 4H); 13C NMR (125 MHz, DMSO-d6) δ195.31, 167.05, 165.74, 138.64, 130.61, 52.12;IR(neat)3102、1723、1662、1624、1438、1402、1300、1268、1215、1193、1166cm-1;Mp>190℃。
例L:5-[2-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)エチル]1-メチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート
【0234】
【化57】
【0235】
(3E)-5-メトキシ-2,5-ジオキソペンタ-3-エン酸である例J(77mg、0.49mmol)とDMF(1滴)の無水DCM(5mL)溶液に、不活性雰囲気下にて0℃で塩化オキサリル(54μL、0.63mmol)を滴下して加え、この反応物を遮光した。次に、この溶液を、室温でさらに1時間撹拌した後、次に、揮発性物質を減圧下で除去して粗酸塩化物を得て、それをさらに精製することなく使用した。粗酸塩化物を、無水ジエチルエーテル(5mL)とDCM(3mL)中に取り、これに、室温でN-(2-ヒドロキシエチル)スクシンイミド(70mg、0.49mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(67μL、0.49mmol)を加えた。この反応混合物を室温で撹拌し、TLCによって反応完了をモニターした。45分後、揮発性物質を減圧下で除去し、この粗混合物を、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン中70%酢酸エチル)によって精製して淡黄色油状物として表題化合物(28mg、収率20%)を得た。R=0.4(ヘキサン中70%酢酸エチル);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.58 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 16.3 Hz, 1H), 4.48 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 3.91 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 3.84 (s, 3H), 2.74 (s, 4H); 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 181.89, 177.13, 165.25, 160.35, 135.64, 134.13, 63.33, 52.70, 37.34, 28.25;IR(neat)2956、1695、1625、1433、1399、1367、1303、1248、1186cm-1;HRMS(ESI):C1214NOの計算値284.0770[M+H]、実測値284.0784。
例M:メチル(2E)-4,5-ジオキソ-5-(ピペリジン-1-イル)ペンタ-2-エノアート
【0236】
【化58】
【0237】
中間生成物Sを、一般的手順Cに記載される通りに反応させて、その臭化物を生成し、次に、一般的手順Dに記載される通りに反応させて、黄色油状物として表題化合物(27mg、収率63%)を得た。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.22 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 16.2 Hz, 1H), 3.82 (s, 3H), 3.64 - 3.58 (m, 2H), 3.36 - 3.30 (m, 2H), 1.74 - 1.55 (m, 6H). 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 189.90, 165.44, 164.02, 136.95, 134.89, 52.68, 47.11, 42.77, 26.49, 25.52, 24.45.IR(neat)2943、2860、1730、1685、1635、1446、1370、1309、1281、1254、1180cm-1;HRMS(ESI):C1116NOの計算値226.1079[M+H]、実測値226.1076。
例NおよびO:5-エチル1-メチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートおよび1,5-ジエチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート
【0238】
【化59】
【0239】
1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートである例A(25mg、0.15mmol)を、一般的手順Kに記載される通りに1滴の濃硫酸を含有するエタノール(0.25mL)と反応させて、黄色油状物として例N(10mg、収率37%)、R=0.54(ヘキサン中20%酢酸エチル);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.61 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 4.38 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.84 (s, 3H), 1.39 (t, J = 7.1 Hz, 3H). 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 182.76, 165.30, 160.79, 135.42, 134.39, 63.15, 52.72, 14.13,および黄色油状物として例O(1mg、収率3%)を得た。R=0.64(ヘキサン中20%酢酸エチル);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.60 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 4.39 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.29 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.40 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.34 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
例PおよびQ:1-メチル5-プロパン-2-イル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートおよび1,5-ビス(プロパン-2-イル)(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート
【0240】
【化60】
【0241】
1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートである例A(50mg、0.29mmol)を、一般的手順Kに記載される通りに1滴の濃硫酸を含有するプロパン-2-オール(0.5mL)と反応させて、黄色油状物として例P(19mg、収率33%))、R=0.44(ヘキサン中20%酢酸エチル);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.60 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 5.20 (七重線, J = 6.3 Hz, 1H), 3.84 (s, 3H), 1.37 (d, J = 6.3 Hz, 6H). 13C NMR (125 MHz, クロロホルム-d) δ 183.12, 165.35, 160.44, 135.25, 134.50, 71.59, 52.71, 21.72,および黄色油状物として例Q(4mg、収率6%)を得た。R=0.57(ヘキサン中20%酢酸エチル);1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 7.55 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 16.0 Hz, 1H), 5.21 (七重線, J = 6.3 Hz, 1H), 5.13 (七重線, J = 12.5, 6.3 Hz, 1H), 1.38 (d, J = 6.3 Hz, 6H), 1.31 (d, J = 6.3 Hz, 6H). 13C NMR (125 MHz, cdcl3) δ 183.36, 164.42, 160.61, 136.45, 134.07, 71.54, 69.64, 21.88, 21.75.
【0242】
生物学的例
細胞培養
4.5g/Lグルコース(HyClone、Pittsburgh、USA)(10%ウシ胎児血清(FBS)(ThermoFisher Scientific、Waltham、USA)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、Waltham、USA))を含有する補充ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中のNRF2/ARE応答性ルシフェラーゼレポーターHEK293細胞(Signosis、Santa Clara、USA)を、48ウェルプレート(Corning、Tewksbury、USA)に1×10細胞/ウェルで播種し、加湿環境下にて5%CO、37℃で一晩培養した。翌朝、この培地を、補充DMEM(1%FBS(ThermoFisher Scientific)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco))で置き換えた。次に、細胞を、10μM過酸化水素(H)(Sigma Aldrich、St Louis、USA)、10μMペルオキシ亜硝酸(PN)(Sigma-Aldrich)、または補充培地(陰性対照)と共に、本発明で説明される濃度範囲の化合物の各例またはフマル酸モノメチル(0~100μM)で処理した。tert-ブチルヒドロキノン(tBHQ;10μM)(Sigma-Aldrich)を陽性対照として使用した。各条件で3回実施し、少なくともさらに2回の再現の観察によって確認した。
【0243】
ルシフェラーゼアッセイ
本発明で説明される化合物の例およびROS/RNSと共に16時間インキュベートした後、細胞を、500μLのPBS(Sigma-Aldrich)で緩やかに洗浄し、次に、40μLの受動的溶解緩衝液(Promega、Madison、USA)中にて室温でインキュベートした。20分後、30μLを、各ウェルから96ウェルクリアボトム白壁プレート(Corning)に移した。ルシフェラーゼ基質(Signosis、150μL)を各ウェルに加えて緩やかに混合した。発光(Luminesence)を、Synergy HTXマルチモードマイクロプレートリーダー(BioTek、Winooski、USA)で速やかに読み取った。
【0244】
動物
無菌の成体雄および雌C57BL/6Jマウス(到着時8週齢、The Jackson Laboratory、Bar Harbor、USA)を使用した。マウスを、明度および温度管理された室内(12:12時間の明暗サイクル、午前7時に点灯)のケージあたり5匹ずつ飼育し、自由に餌および水を与えた。全ての手順は、MD Anderson Cancer Center Animal Care and Use Committeeによって承認された。
【0245】
神経枝結紮損傷(SNI)手術
SNIを吸入イソフルラン麻酔下で実施した。脛骨および総腓骨神経を単離し、6-0シルクできつく結紮して、結紮部直近の遠位を切断した。腓腹神経を傷つけずに残した。術後、ホームケージに戻す前に十分歩行できるようになるまで、動物をモニターした。
【0246】
薬物投与
化合物を、メチルセルロース(粘度15cP、水中2%w/v)で懸濁し、胃管によって経口投与した。SNI抗侵害受容に対し、化合物を、SNIの7日後に開始して3日間(350μmol/kg/日)投与し、さらに3日間(反射試験)または7日間(条件付け場所嗜好性試験)の投与を継続した。白血球減少評価のために、化合物を、未処置マウスに10日間(350μmol/kg/日)投与した。等体積メチルセルロース(2%w/v)を、全ての化合物に対する媒体対照として使用した。行動試験を実施する他の治験責任医師において、処置群に対する盲検性を維持するために、独立した治験責任医師がマウスに投与した。
【0247】
触覚異痛
試験は、群割付に対して盲検的に行われた。マウスには、行動試験前に試験環境への60分間の馴化を少なくとも3回行った。マウスを、メッシュスタンド上の小さなプレキシガラス製のケースに入れた。触覚異痛を、von Frey試験を使用して測定した。50%足引っ込め閾値を、「アップダウン」方法を使用して決定した。
【0248】
動的異痛
試験は、von Frey試験の完了後、速やかに行われた。動的な機械的痛覚過敏を、絵筆を用いて、損傷した後足の外側面を、踵から趾の方向で軽く撫でることによって(速度は約2cm/秒)測定した。足引っ込め反応は、次の判定基準に従って採点された。スコア=0:歩いて離れるまたは時折極めて短時間足を上げる(≦1秒)、スコア=1:刺激された足を体の方に持続的に上げる(>2秒)、スコア=2:体より高い位置に足を強く外側に上げる、スコア=3:たじろぐまたは影響を受けた足を舐める。各マウスの平均スコアを、少なくとも3分間の間隔をあけた3回の刺激から得た。
【0249】
条件付け場所嗜好性アッセイ
自発痛は、疼痛を短期間緩和するための条件刺激としてレチガビンを用いた条件付けパラダイムを使用して試験された。最初に、廊下で繋げた2つのチャンバー(1つは暗く、1つは明るい)からなる条件付け場所嗜好性装置をマウスに15分間自由に探索させた。明るいチャンバーで過ごした時間を記録した。条件付け期間の間、最初に、マウスに生理食塩水を投与し(腹腔内注射)、暗いチャンバーに20分間留置した。3時間後に、鎮痛薬であるレチガビンを投与し(10mg/kg、腹腔内注射)、10分後に、マウスを明るいチャンバーに20分間留置した。この条件付けを、連続4日間にわたって完了させた。5日目に、レチガビン/生理食塩水を全く注射することなく、前記装置をマウスに再度15分間自由に探索させた。データは、5日目の薬物非投与試験中に明るい(レチガビンと結びつけられた)チャンバーで過ごした時間から、ベースライン(条件付け期間前)における明るいチャンバーで過ごした時間を差し引いた差異として示された。
【0250】
ウエスタンブロッティング
最終投与の4時間以内に、Beuthanasia-Dを用いてマウスに深く麻酔をかけ、次に、氷冷した生理食塩水を用いて経心的に灌流した。いくつかの実験において、灌流前に、血液を心臓穿刺によって採取した。同側および反対側のL4/5後根神経節(DRG)を単離し、次の分析のため、速やかに凍結した。3匹のマウスからのDRGを、群(処置、側性化、性別)内でプールし、分析のために十分なタンパク質を確実に得られるようにした。製造業者の使用説明書に従って、NE-PER Nuclear and Cytoplasmic Extraction Kitを用いて核画分を単離した。以前に記載した通りに、ウエスタンブロッティングを実施した。核タンパク質を、還元条件下のNuPAGE Bis-Tris(4~12%)ゲル電気泳動に供した。ニトロセルロース膜に移した後、Superblock緩衝液を用いて、非特異的結合部位を、室温で1時間ブロッキングした。膜を、抗NRF2一次抗体(1:1000、ウサギポリクローナルIgG)および抗ヒストンH3抗体(1:2000、ウサギポリクローナルIgG)(負荷対照)と共に、4℃で一晩インキュベートした。次に、この膜を、0.1%Tween-20を含有するリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、0.1%Tween-20を含有するブロッキング緩衝液中のホースラディシュペルオキシダーゼ二次抗体(1:5,000、ヤギポリクローナルIgG)を用いて、室温で1時間プローブした。0.1%Tween-20を含有する1×PBSで洗浄し、膜を、増強化学発光基質で展開した。ImageQuant LAS4000を使用して画像を入手した。ImageQuant TLソフトウェアを使用してデンシトメトリー分析を実施した。データは、負荷対照(ヒストンH3)に対して正規化された。
【0251】
白血球計数
心臓血液からの白血球を、製造業者の使用説明書に従って、チュルク液を用いて染色し、処置条件に対して盲検下の実験者が手作業で、血球計算盤上で計数した。
【0252】
統計
in vitro濃度応答関係の間の差異は、共有のパラメータに関する近似関数の傾きを比較することによって求められた。試験された薬理学的に妥当な濃度が、この濃度応答関数の線形範囲内であったため、線形モデルが選択された。補間された50%閾値(絶対閾値)として、機械的異痛を解析した。一元配置ANOVAを使用して、処置群間の絶対閾値または動的スコアのベースラインにおける差異はなかったことを確認した。行動に関する処置群間の差異は、反復測定二元配置ANOVAを使用し、続けてTukeyまたはSidaksの事後検定を使用して求められた。生化学的データは、一元配置または二元配置ANOVA、続くTukeyの事後検定によって解析された。結果は、平均±標準偏差(SD)で表記される。P<0.05は、統計的に有意であると考えられた。
【0253】
結果
in vitroアッセイからの結果は、図1に示される。MMFは、濃度依存的にルシフェラーゼ活性を増強し(P<0.001)、活性は、HまたはONOO-による影響を受けなかった(P=0.256)(図1)。1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート(例A)は、HまたはONOO-の存在下で、培地対照に比べてNRF2活性を増強した(P<0.001)(図1a)。さらに、切断された1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートは、MMFと同様の活性を有した(図1a)。メチル(2E)-4-(ベンジルカルバモイル)-4-オキソブタ-2-エノアート(例C)は、MMFよりも大幅にNRF2を活性化したが、HまたはONOO-と共インキュベートされた場合、培地に比べてNRF2活性を選択的に増強しなかった(P=0.288)(図1b)。メチル(2E)-4,5-ジオキソ-5-フェニルペンタ-2-エノアート(例D)は、HまたはONOO-の存在下で、培地対照に比べてNRF2活性を増強したが、MMFよりも低いレベルであった(P<0.001)。
【0254】
1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート(例A)は、過酸化水素およびペルオキシ亜硝酸の両方に反応し、試験された濃度範囲において毒性がなく、メチル(2E)-4,5-ジオキソ-5-フェニルペンタ-2-エノアート(例D)よりも高い有効性を有するため、in vivoでの初回試験のために選択された。神経障害性疼痛の神経枝結紮損傷(SNI)モデルにおいて、1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートは、触覚異痛(図2a、時間×処置:F4,66=71.05、P<0.0001;時間:F1.48,48.98=162.70、P<0.0001;処置:F2,33=124.50、P<0.0001)および動的異痛(図2b、時間×処置:F4,66=107.50、P<0.0001;時間:F1.70,56.08=356.60、P<0.0001;処置:F2,33=164.80、P<0.0001)を回復したが、媒体は足引っ込め反応に変化をもたらさなかった。いずれの測定においても、1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートは、フマル酸ジロキシメルよりも高い有効性を有していた(P<0.01)。いずれの化合物も、反対側肢における足反応に変化をもたらさなかった。図2cの結果は、神経損傷マウスが、レチガビンと結びつけられた明るいチャンバーで過ごした時間が増加していることを示し、これは、疼痛が持続していることを示唆する。偽手術されたマウスは、継続して暗いチャンバーに対する選好性を示す。1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアートまたはフマル酸ジロキシメルで処置された神経損傷マウスは、レチガビンと結びつけられた明るいチャンバーに対する選好性を示さず、これは、これらのマウスがもはや自発痛を感じていないことを示唆する。(3E)-5-メトキシ-2,5-ジオキソペンタ-3-エン酸(例J)も、触覚異痛(図2d、時間×処置:F3,30=32.03、P<0.0001;時間:F1.82,18.20=117.5、P<0.0001;処置:F1,10=44.35、P<0.0001)および動的異痛(図2e、時間×処置:F3,30=82.36、P<0.0001;時間:F1.70,17.00=196.3、P<0.0001;処置:F1,10=218.4、P<0.0001)を回復したが、媒体は足引っ込め反応に変化をもたらさなかった。
【0255】
片側末梢神経損傷は、この同側後根神経節におけるニトロ-酸化ストレスを誘発する。このため、我々は、部位特異的切断(図3a)の証拠として、1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート(例A)が、この同側DRGにおけるNRF2経路を選択的に活性化するかを試験した。ウエスタンブロットによって測定されるNRF2の核内移行は、この同側DRGにおいてのみ生じた(図3b)。これに対し、フマル酸ジロキシメルは、同側および反対側DRGの両方においてNRF2の核内移行を非選択的に誘導した(図3b)。
【0256】
標的としたNRF2経路の活性化と連携して、1,5-ジメチル(2E)-4-オキソペンタ-2-エンジオアート(例A)が、絶対白血球数の減少を引き起こすことはなかった、図4
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】