IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特表-官能化シリカ粒子とその使用 図1
  • 特表-官能化シリカ粒子とその使用 図2
  • 特表-官能化シリカ粒子とその使用 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】官能化シリカ粒子とその使用
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/08 20060101AFI20230421BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20230421BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230421BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C09C3/08
C09D17/00
C09D7/62
C09D201/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555089
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2021055875
(87)【国際公開番号】W WO2021180694
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】20163031.6
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512135078
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials GmbH
【住所又は居所原語表記】Chempark,Gebaeude V7,51368 Leverkusen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】フェルダー,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ホフミューラー,グンナル
(72)【発明者】
【氏名】ウィトゼック,アニータ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン,イェルク-ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ホイゼラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルハルド,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド,マックス
(72)【発明者】
【氏名】フリードリッヒ,モニカ
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA18
4J037CB23
4J038EA011
4J038HA446
4J038NA05
4J038NA06
4J038PB05
4J038PB07
(57)【要約】
本発明は、シリカ粒子の表面との縮合反応を可能にする末端基と、シリカ粒子の特性を改変するための少なくとも1つのさらなる末端基とを含む1つまたは複数のシランで官能化されたシリカ粒子に関する。本発明はまた、シランによるシリカ粒子の官能化のための方法、本発明によるシリカ粒子の官能化のために適用されるシラン、シランによるシリカの官能化のための方法、官能基を含むシリカ粒子、本発明によるシリカ粒子の使用、および本発明によるシリカ粒子を含むコーティング組成物に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の1つまたは複数のシランで官能化されたシリカ粒子であって、
HN[-SiR -A] (1)
および/または
3-xSi-A (2)
ここで
は、非加水分解性残基、好ましくはヒドロカルビル基、より好ましくはアルキル基から独立して選択され、最も好ましくはRはメチルであり、
は、加水分解性残基から独立して選択され、好ましくは水素、ヒドロキシ、アシルオキシ基などのヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン基、アミノ基、アルコキシまたはアリールオキシ基などのヒドロカルビルオキシ基、より好ましくはアルコキシ基からなる群から選択され、
xは0、1、または2であり、そして
Aは下記式の基であり、
-M-F、
ここで
Mは、Lまたは下記式の基から選択され、
-{L-[SiR O]-SiR -L-、ここで
Lは、1つまたは複数の-O-、-NR-C(O)-、および/または-NR-、-OC(O)NR-、-NR-C(O)-NR-部分によって中断され得、そして1つまたは複数のOH基で置換され得る、少なくとも2個の炭素原子を有する二価のアルキレン基からなる群から独立して選択され、ここでRは水素、MeSi-またはC1-C8-アルキルであり、好ましくは、Lは二価のC2-C12-アルキレン基、より好ましくは二価のC2-C4アルキレン基であり、最も好ましくはLは-(CH-および/または-(CH-であり、
は前記で定義したとおりであり、
p=1から約9、好ましくはp=1または4、より好ましくはp=4、
m=1から約20、好ましくはm=1、
および
Fは、約100個までの炭素原子を有し、そして-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-C(S)-、第三級アミノ基、
【化1】

または第四級アンモニウム基
【化2】

から選択される1つまたは複数の基を任意選択で含み、そしてOH基、SH基、ハライド基、オルガノシリル基、またはトリオルガノシロキシ基で置換され得る、任意選択で置換された、直鎖、環状または分岐の、飽和、不飽和または芳香族ヒドロカルビル基からなる群から選択され、
但し式(2)のシランについて、
(i)Aは下記式の基であり、
-{L-[SiR O]-SiR -L-F、ここでL、R、p、m、およびFは前記で定義したとおりであり、
または
(ii)Aは下記式の基であり、
-L-F、ここでLは少なくとも1つのエーテル基(-O-)を含み、そして任意選択で少なくとも1つのヒドロキシ置換基(-OH)を含み、そしてここでFは前記で定義したとおりであり、但し少なくとも1つのエステル基(-OC(=O)-または-C(=O)-O-)を含むという条件である、
という条件である、シリカ粒子。
【請求項2】
式(1)において、MがLである場合、基Fが、N、O、P、S、Si、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素などのハロゲン原子などの少なくとも1つのヘテロ原子を含む、請求項1に記載のシリカ粒子。
【請求項3】
Fは、ポリエーテル部分、エステル部分、およびコーティングマトリックス反応性部分、例えば、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ基、1,3-ジカルボキシ基、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、ならびにマイケル付加反応におけるドナー基およびアクセプター基からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含み、
またはここでFは、
- アルキル、
- アルケニル、
- アルキルカルボニルオキシ、
- ポリアルキレンオキシド基、好ましくは下記一般式のもの、
[-OC[-OC[-OC-R
ここで
[-OC]はエチレンオキシ単位を表し、
[-OC]はプロピレンオキシ単位を表し、そして
[-OC]はブチレンオキシ単位を表し、
q=0から約40、好ましくは0から約20、より好ましくは1から約15、
r=0から約30、好ましくは0から約20、より好ましくは0から約10、
s=0から約20、好ましくは0から約15、より好ましくは0から約10、
ここでq+r+s>2、
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、ヒドロキシアルキル、シロキシ基、例えば、トリオルガノシロキシ基、オルガノシリル、グリシジルおよびグリシジルオキシ基からなる群から選択され、
- グリシジルおよびグリシジルオキシ基、
- -SiR などのオルガノシリル基、ここでRは、式(1)および(2)について前記で定義した基から独立して選択され、および-OSi(Rなどのシロキシ基、ここでRは、式(1)および(2)について前記で定義した基から独立して選択される、からなる群から選択される、請求項1または2に記載のシリカ粒子。
【請求項4】
式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、疎水性シランから(すなわち、水とオクタノールの50/50混合物中のシランのL-F基を含む化合物H-L-Fの分配係数Poct/watのlogP値が、0.5以上であるシランから)排他的に選択される、前記請求項のいずれかに記載のシリカ粒子。
【請求項5】
式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、親水性シランから(すなわち、水とオクタノールの50/50混合物中のシランのL-F基を含む化合物H-L-Fの分配係数のlogP値が、0.5未満であるシランから)排他的に選択される、前記請求項のいずれかに記載のシリカ粒子。
【請求項6】
シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の2つ以上の異なるシランで官能化される、前記請求項のいずれかに記載のシリカ粒子。
【請求項7】
各シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の1つまたは複数の疎水性シランによって、および式(1)および/または(2)の1つまたは複数の親水性シランによって官能化される、請求項6に記載のシリカ粒子。
【請求項8】
式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランにおいて、基Fは、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基を含み、そしてここで式(1)および/または(2)の1つまたは複数のさらなるシランは、排他的に親水性シラン、または排他的に疎水性シランのいずれかであり、ここで好ましくは
1つまたは複数の親水性シランの基Fは、ポリヒドロキシル化アルキル基、ポリエーテル基、第四級アンモニウム基を含む炭化水素基、カルボキシレート基を含む炭化水素基、および1つまたは複数のアミノ基を含む炭化水素基からなる群から選択される1つまたは複数の親水性基を含み、またはここで好ましくは、1つまたは複数の疎水性シランの基Fは、直鎖状または分岐状の非置換アルキル基、ジフルオロメチレンおよび/またはトリフルオロメチル基を含むアルキル基、特にペルフルオロ化アルキル基、トリオルガノシリル基を有するアルキル基、オルガノシロキシ基、アルケニル基またはヘテロ原子を含む置換基を含まない芳香族基、特にアルカリール基およびアラルキル基からなる群から選択される1つまたは複数の親水性基を含む、請求項6に記載のシリカ粒子。
【請求項9】
請求項2で定義したとおりの式(1)のシラン。
【請求項10】
官能化シリカ粒子の製造のための方法であって、
- シリカ粒子を式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランと接触させることを含み、
HN[-SiR -A] (1)
および/または
3-xSi-A (2)
請求項1で定義した通りである、
ここで好ましくは、シリカ粒子は、Rがアルコキシ基である式(2)の1つまたは複数のシランと接触され、そして
ここで任意選択にて、シリカ粒子と式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとを接触させることは、溶媒の存在下であり、そして
任意選択にて、シリカ粒子と、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとは、約40℃を超える温度、より好ましくは約50℃を超える温度、最も好ましくは約55℃から約120℃の範囲内の温度で接触され、
さらに任意選択にて、シリカ粒子と式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとを接触させることは、有機スズ、有機亜鉛、有機チタンおよび有機ホウ素化合物、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、アンモニウム化合物、環状アミン、脂肪族アミン、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、アンモニアおよびそれらの組み合わせ、好ましくは有機スズおよび有機チタン化合物からなる群から選択される縮合触媒の存在下であり、そして
さらに任意選択にて、シリカ粒子は、式(1)の1つまたは複数のシランのモル量に基づいて、少なくとも約0.5当量の水の存在下で、式(1)の1つまたは複数のシランのモル量に基づいて、好ましくは少なくとも約1.0当量の水の存在下で、最も好ましくは少なくとも約1.5当量の水の存在下で、式(1)の1つまたは複数のシランと接触される、方法。
【請求項11】
式(1)および/または(2)のシランにおいて、Fは、
- アルキル、
- アルケニル、
- アルキルカルボニルオキシ、および
- ポリアルキレンオキシド基、好ましくは下記一般式のもの、
[-OC[-OC[-OC-R
ここで
[-OC]はエチレンオキシ単位を表し、
[-OC]はプロピレンオキシ単位を表し、そして
[-OC]はブチレンオキシ単位を表し、
q=0から約40、好ましくは0から約20、より好ましくは1から約15、
r=0から約30、好ましくは0から約20、より好ましくは0から約10、
s=0から約20、好ましくは0から約15、より好ましくは0から約10、
ここでq+r+s>2、
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、ヒドロキシアルキル、シロキシ基、例えば、トリオルガノシロキシ基、オルガノシリル、グリシジルおよびグリシジルオキシ基からなる群から選択され、
- グリシジルおよびグリシジルオキシ基、
- -SiR などのオルガノシリル基、ここでRは、式(1)および(2)について前記で定義した基から独立して選択され、および-OSi(Rなどのシロキシ基、ここでRは、式(1)および(2)について前記で定義した基から独立して選択される、からなる群から選択され、
またはここで式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランの基Fは、ポリエーテル部分、エステル部分およびコーティングマトリックス反応性部分、例えば、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノ、アルコキシシリルおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ基、1,3-ジカルボキシ基、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、ならびにマイケル付加反応におけるドナー基およびアクセプター基からなる群から選択される、少なくとも1つの部分を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1で定義したとおりの式(1)および/または(2)の2つ以上のシランを1工程でシリカ粒子と接触させ、またはここで式(1)および/または(2)の2つ以上のシランを2以上の工程でシリカ粒子と接触させ、そしてここで好ましくはシリカ粒子は、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性部分を含む式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランと接触され、そして式(1)および/または(2)の親水性シランの非存在下で、式(1)および/または(2)の1つまたは複数の疎水性シランと接触される、または
ここで好ましくはシリカ粒子は、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性部分を含む式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランと接触され、そして式(1)および/または(2)の疎水性シランの非存在下で、式(1)および/または(2)の1つまたは複数の親水性シランと接触される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数の一価基Aを含む官能化シリカ粒子であって、
ここでAは下記式の基であり、
-M-F、
ここで
Mは、Lまたは下記式の基から選択され、
-{L-[SiR O]-SiR -L-、ここで
Lは、1つまたは複数の-O-、-NR-C(O)-、および/または-NR-、-OC(O)NR-、-NR-C(O)-NR-部分によって中断され得、そして1つまたは複数のOH基で置換され得る、少なくとも2個の炭素原子を有する二価のアルキレン基からなる群から独立して選択され、ここでRは水素、MeSi-またはC1-C8-アルキルであり、好ましくは、Lは二価のC2-C12-アルキレン基、より好ましくは二価のC2-C4アルキレン基であり、最も好ましくはLは-(CH-および/または-(CH-であり、
は、非加水分解性残基、好ましくはヒドロカルビル基、より好ましくはアルキル基から独立して選択され、最も好ましくはRはメチルであり、
p=1から約9、好ましくはp=1または4、より好ましくはp=4、
m=1から約20、好ましくはm=1、
および
Fは、約100個までの炭素原子を有し、そして-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-C(S)-、第三級アミノ基、
【化3】

または第四級アンモニウム基
【化4】

から選択される1つまたは複数の基を任意選択で含み、そしてOH基、SH基、ハライド基、オルガノシリル基、またはトリオルガノシロキシ基で置換され得る、任意選択で置換された、直鎖、環状または分岐の、飽和、不飽和または芳香族ヒドロカルビル基からなる群から選択され、
そして基Aは、1つまたは複数の酸素原子を介してシリカ粒子の二酸化ケイ素ネットワークに連結されたケイ素原子を介してシリカ粒子に結合され、ここで基-Aまたは酸素原子によって占められていない前記ケイ素原子の原子価は、前記で定義した置換基Rによって占められている、官能化シリカ粒子。
【請求項14】
コーティング組成物の製造のための、好ましくは、コーティング組成物中の、海洋防汚添加剤、一般防汚添加剤、防氷添加剤、防泥添加剤、防曇添加剤、自己洗浄添加剤、防付着、防塵、防指紋、および防落書き添加剤、特に一般防汚添加剤または防曇添加剤としての、請求項1から8のいずれかに記載のシリカ粒子、請求項13に記載のシリカ粒子、または請求項10から12のいずれかに記載の方法によって製造されたシリカ粒子の使用。
【請求項15】
請求項1から8のいずれかに記載のシリカ粒子、請求項13に記載のシリカ粒子、または請求項10から12のいずれかに記載の方法によって製造されたシリカ粒子を含む、好ましくはコーティング組成物の総重量に基づいて、約0.1から約80重量%、より好ましくは約0.5から約70重量%、なおより好ましくは約1から約60重量%、またより好ましくは約20から約55重量%、最も好ましくは約25から約50重量%のシリカ粒子を含む、コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数のシランで官能化されたシリカ粒子、および例えば、防汚または防曇コーティングの用途におけるそれらの使用、シリカ粒子の官能化方法、およびシリカ粒子の官能化に使用される特定のシランに関する。本発明は、そのような官能化シリカ粒子を含むコーティング組成物にも関する。防汚プロジェクトは、「助成金契約」03SX370Hに基づき、ドイツ連邦経済・エネルギー省から資金提供を受けている。
【背景技術】
【0002】
親水性材料を含むコーティング、例えば、EP3325540A1に開示されているようなポリエーテル官能化シリコーン誘導体は、海洋生物の表面への付着強度の著しい低下を実証している。さらに、サーマルアクリルクリアコートに配合されたこれらの添加剤は、防曇剤として有効であることが実証されている。
【発明の概要】
【0003】
解決される問題
しかし、官能化された分岐の少ない長鎖シリコーン誘導体またはポリエーテルをコーティング配合物に添加すると、コーティングの硬度が徐々に低下し、したがって耐衝撃性および耐引掻性が低下することがあり得る。このような特性は、船舶の防汚や自動車のヘッドライトのハードコートやクリアコートなどの分野でコーティング配合生成物の成功裏の適用のための前提条件である。添加剤の硬度低下効果を緩和するために、充填剤材料、例えば、表面処理されたシリカまたは他の粒子種を添加することもできるが、配合混合物がより複雑になることがあり得るため、望ましくない。
【0004】
上記の問題は、特定の構造的特徴を有する1つまたは複数のシランで官能化されたシリカ粒子を提供すること、例えば、シリカ粒子をそれぞれ防汚添加剤または防曇添加剤でコーティングすることによって解決される。
【0005】
添加剤自体によるコーティングの軟化効果は、シリカ粒子の硬度特性によって直接相殺される。さらに、粒子と防汚添加剤の組み合わせにより、最終的なコーティング配合の複雑さが軽減されるため、全体的な適用性が向上する。したがって、必要な硬度と防汚/防曇特性を同時にコーティング配合物に導入することができる。さらに、前述の利点に加えて、本発明によるシリカ粒子は、コーティングマトリックスに組み込むことができ、同時にシリカ粒子を疎水性、親水性にする官能基を有し、またコーティングに特定の特性、例えば防汚または抗菌特性をもたらす。本発明によれば、シリカ粒子は、以下の実施形態に記載されるように官能化することができる。
【0006】
一態様において、本発明は、下記式の1つまたは複数のシランで官能化されたシリカ粒子に関し、
HN[-SiR -A] (1)
および/または
3-xSi-A (2)
ここで
は非加水分解性残基、好ましくはヒドロカルビル基、より好ましくはアルキル基から独立して選択され、最も好ましくはRはメチルであり、
は加水分解性残基から独立して選択され、好ましくは水素、ヒドロキシ、アシルオキシ基などのヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン基、アミノ基、アルコキシまたはアリールオキシ基などのヒドロカルビルオキシ基、より好ましくはアルコキシ基からなる群から選択され、
xは0、1、または2であり、そして
Aは下記式の基であり、
-M-F、
ここで
Mは、Lまたは下記式の基から選択され、
-{L-[SiR O]-SiR -L-、ここで
Lは、1つまたは複数の-O-、-NR-C(O)-、および/または-NR-、-OC(O)NR-、-NR-C(O)-NR-部分によって中断され得、そして1つまたは複数のOH基で置換され得る、少なくとも2個の炭素原子を有する二価のアルキレン基からなる群から独立して選択され、ここで、Rは水素、MeSi-またはC1-C8-アルキルであり、好ましくは、Lは二価のC2-C12-アルキレン基、より好ましくは二価のC2-C4アルキレン基であり、最も好ましくはLは-(CH-および/または-(CH-であり、
は上記で定義したとおりであり、
p=1から約9、好ましくはp=1または4、より好ましくはp=4、
m=1から約20、好ましくはm=1、
および
Fは、最大約100個の炭素原子を有し、そして-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-C(S)-、第三級アミノ基
【化1】

または第四級アンモニウム基
【化2】

から選択される1つまたは複数の基を任意選択で含み、そしてOH基、SH基、ハライド基、オルガノシリル基またはトリオルガノシロキシ基で置換され得る、任意選択で置換された、直鎖、環状または分岐の、飽和、不飽和または芳香族ヒドロカルビル基からなる群から選択され、
但し式(2)のシランについて、
(i)Aは下記式の基であり、
-{L-[SiR O]-SiR -L-F、ここでL、R、p、m、およびFは上記で定義したとおりであり、
または
(ii)Aは下記式の基であり、
-L-F、ここでLは少なくとも1つのエーテル基(-O-)を含み、そして任意選択で少なくとも1つのヒドロキシ置換基(-OH)を含み、そしてここでFは上記で定義したとおりであり、但し少なくとも1つのエステル基(-OC(=O)-または-C(=O)-O-)を含むという条件である、
という条件である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、硬化コーティング配合物1上の水滴接触角経時変化を表す。
図2図2は、硬化コーティング配合物2上の水滴接触角経時変化を表す。
図3図3は、硬化コーティング配合物3上の水滴接触角経時変化を表す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、一般に、1つまたは複数のシランで官能化されたシリカ粒子に関する。本発明によれば、「シリカ粒子」という用語は、コロイドシリカの粒子またはヒュームドシリカの粒子を含むがこれらに限定されない二酸化ケイ素の粒子を指す。一般に、本発明によるシリカ粒子は、約1から約300nm、好ましくは約1から約150nm、より好ましくは約5から約50nmのD50平均一次粒子サイズを有し得、そして凝集体が形成された場合、約1から約800μm、好ましくは約5から約600μm、より好ましくは約5から約400μm;なおより好ましくは約5から約200μm、またより好ましくは約5から約150μm;最も好ましくは約5から約75μmのD50平均凝集粒子サイズを有し得る。シリカ粒子は、これに限定されないが、ヒュームド(すなわち、焼成)シリカまたは沈降シリカを含み得、そして結晶性または非晶質シリカ粒子を含み得る。一実施形態では、シリカ粒子は、好ましくはヒュームドシリカの粒子である。
本発明によれば、粒子サイズは、特に、ISO13320-1に従って(http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamic_light_scatteringも参照)、光子相関分光法または準弾性光散乱としても知られる方法であるマルバーン・ゼータサイザーを用いたレーザー動的光散乱法によって、平均粒子サイズD50を測定することによって決定することができる。この方法は、特に非硬化組成物において最適な決定方法であるが、場合によっては、透過型電子顕微鏡法(TEM)によって平均粒子サイズD50を決定することも十分であり得る。
【0009】
本発明によれば、用語「官能化」は、シリカ粒子が1つまたは複数の官能化シランと接触することによって修飾され、官能化前の粒子の特性に関して、粒子の表面に他の官能基が存在するため、粒子の特性の変化をもたらすことを示す。通常、シランによるシリカ粒子の官能化は、シランまたはオルガノシリルエーテルとシリカ粒子の表面に存在する1つまたは複数のOH基との縮合反応によるシロキサン単位の形成によって行われる。このモードの官能化によれば、シランはケイ素原子上に1つまたは複数の加水分解性基、例えばクロロ基を含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、式(2)のシラン中に存在することができるいくつかの加水分解性基Rが定義され、例えば、シリカ表面に存在するシラノールSiOH基と縮合反応を受けやすいアルコキシ基またはアシロキシ基である。同様に、式(1)のジシラザンによるシリカ表面上のシラノールSiOH基の官能化について想定される機構は、システムに存在するかまたは反応システムに添加される水によるシラザン基の最初の加水分解を含み、これはシラノール官能化シランにつながる。シランのこれらのシラノール基は、シリカ表面に存在するシラノール基と縮合することができる。式(1)および(2)で定義されるシリルベース構造により末端化されたシリルエーテルの形成により、さまざまな官能基をシリカ粒子表面に取り付けることができ、粒子を疎水性、親水性、コーティングマトリックス反応性にする、または粒子に必要な他のさらなる特性を提供する。
【0011】
本発明によれば、R基は非加水分解性残基、好ましくはヒドロカルビル基、より好ましくはアルキル基から独立して選択され、最も好ましくはRはメチルである。ここで、「非加水分解性」という用語は、特に酸性または塩基性条件下で、水、水酸化物アニオンの添加によって、またはそれと完全に類似して、アルコールまたはアルコキシドアニオンの添加によって、基が容易に開裂できないことを示す。「非加水分解性」という用語は、基が好ましくはC-Si結合によってケイ素原子に結合していることを示し、したがって、非加水分解性基は好ましくはオルガニル基である。
【0012】
本発明によれば、非加水分解性R基は、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカリール基、アラルキル基およびアリール基、例えばフェニル、ベンジルまたはトリル基からなる群から選択され得る、特に、1から約22個の炭素原子を有するそのような基から選択され得る、任意選択でフッ素化されたヒドロカルビル基である。
【0013】
より好ましくは、非加水分解性R基は、非置換の直鎖状、分岐状および環状アルキル基、または直鎖状および環状アルキルモチーフを組み合わせた基、または分岐状および環状構造を組み合わせた構造から選択され得るアルキル基から、特に、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルまたはn-オクチル基などの直鎖C1-C22アルキル基、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチルおよび2-エチルヘキシル基などの分岐C1-C22アルキル基から、およびシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基などの環状C3-C22アルキル基から選択される。
【0014】
さらにより好ましくは、非加水分解性基Rはメチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル基から選択され、最も好ましくはRはメチルである。
【0015】
本発明によれば、R基は、加水分解性残基から独立して選択され、好ましくは水素、ヒドロキシ、ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、例えばアシルオキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ヒドロカルビルオキシ基、例えばアルコキシまたはアリールオキシ基からなる群から選択され、より好ましくはアルコキシ基である。
【0016】
ここで、「加水分解性」という用語は、水、ヒドロキシドアニオンの添加により、または水またはアルコールの場合、特に酸性または塩基性条件下でのアルコールまたはアルコキシドアニオンの添加により容易に開裂できることを意味する。「加水分解性」という用語は、基がC-Si結合によってではなく、Si-X結合によってケイ素原子に結合していることを示し、ここでXは、Cl、BrまたはIであり、またはRがヒドロキシ、ヒドロカルビルカルボニルオキシおよびヒドロカルビルオキシ基から選択される場合のように、Si-O結合、Si-N結合、Si-S結合またはSi-H結合である。
【0017】
本発明によれば、加水分解性基Rは、好ましくは、水素、ヒドロキシル基、ヒドロカルビルカルボニルオキシ基からなる群から独立して選択され、ここでヒドロカルビル残基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカリール基、アラルキル基およびアリール基、特に直鎖C1-C22アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルまたはn-オクチル基、分岐C1-C22アルキル基、例えば、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチルおよび2-エチルヘキシル基、および環状C3-C22アルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基、ヒドロカルビルオキシ基を表すことができ、ここでヒドロカルビル残基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルカリール基、アラルキル基およびアリール基、特に直鎖C1-C22アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルまたはn-オクチル基、分岐C1-C22アルキル基、例えば、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチルおよび2-エチルヘキシル基、および環状C3-C22アルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基、ハロゲン基、ならびに第一級、第二級および第三級アミノ基を含むアミノ基を表すことができる。
【0018】
より好ましくは、加水分解性基Rはアルコキシ基であり、なおより好ましくは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、イソ-プロポキシ、イソ-ブトキシ、tert-ブトキシ、ネオペントキシ、シクロペントキシまたはシクロヘキソキシ基、またより好ましくはメトキシ、エトキシまたはイソプロポキシ基、最も好ましくはメトキシ基から選択される基である。
【0019】
本発明によれば、式(2)において、xは0、1または2であり、好ましくはxは0または1であり、最も好ましくはxは0である。3つの加水分解性基を持つシランは、シリカ粒子の官能化に有益に適用されることが実証されており、都合よく調製できる。
【0020】
上記で定義したように、本発明によれば、Aは下記式の基であり、
-M-F、
ここでMは、Lまたは下記式の基から選択され、
-{L-[SiR O]-SiR -L-
Lは、1つまたは複数の-O-、-NR-C(O)-、および/または-NR-、-OC(O)NR-、-NR-C(O)-NR-部分によって中断され得、そして1つまたは複数のOH基で置換され得る、少なくとも2つの炭素原子を有する二価のアルキレン基からなる群から独立して選択され、ここでRは水素、MeSi-またはC1-C8-アルキルである。
【0021】
本発明によれば、Lは、好ましくは、直鎖二価C2-C12アルキレン、例えば、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン、n-ヘプチレン、n-オクチレン、n-ノニレン、およびn-デシレン、分岐二価C2-C12アルキレン、例えば、イソプロピレン、イソブチレン、tert-ブチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、メチルペンチレン、メチルヘキシレン、エチルヘキシレン、メチルヘプチレン、エチルヘプチレン、メチルオクチレンおよびエチルオクチレン、および環状二価C2-C12アルキレン、例えば、シクロペンチレン、シクロヘキシレンおよびシクロヘプチレンが含まれる、二価のC2-C12-アルキレン基からなる群から独立して選択される。
【0022】
より好ましくは、Lは、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、イソ-プロピレン、イソ-ブチレンおよびtert-ブチレンなどの二価のC2-C4アルキレン基からなる群から独立して選択され、そして最も好ましくは、Lは独立して-(CH-および/または-(CH-、すなわちエチレン基またはn-プロピレン基から選択される。
【0023】
本発明によれば、式-{L-[SiR O]-SiR -L-中のRは上記で定義した通りであり、好ましくは下記式
-{L-[SiR O]-SiR -L-中のRは、
1つまたは複数のフルオロ置換基によって任意選択で置換された一価のC1-C22-アルキル、C6-C22-アリール、C8-C22-多環式アリール、C7-C22-アルキルアリール、およびC7-C22-アリールアルキル基からなる群から選択される飽和炭化水素置換基であり、より好ましくは下記式
-{L-[SiR O]-SiR -L-中のRは、
メチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、フェニル、スチリル、フェニルプロピル、およびナフチルからなる群から選択され、なおより好ましくはここでのRは、メチル、フェニル、3,3,3-トリフルオロプロピルから選択され、最も好ましくは下記式
-{L-[SiR O]-SiR -L-中のRは、
メチルである。
【0024】
本発明によれば、p=1から約9、好ましくはp=1から4、より好ましくはp=4である。これは、シリカ粒子の官能化に適用される式(1)および/または(2)のシランの添え字pの平均が、これらの端点を含めて1から約9の範囲内にあるという方法で理解されるべきであり、ここで平均は、これらの端点を含めて1から4の範囲内であることが好ましく、最も好ましくは添え字pの平均は4である。
【0025】
本発明によれば、pが1から約9である場合がさらに好ましく、ここでシリカ粒子の官能化に適用される式(1)および/または(2)のすべてのシランの添え字pは、1から9の範囲の整数、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8または9であり、より好ましくは、添え字pは1から4の範囲の整数、すなわち1、2、3および4であり、最も好ましくはpは4である。
【0026】
これは、下記式で表される基Mに存在するジシロキサンブロックからデカシロキサンブロックまでの範囲に相当する。
-{L-[SiR O]-SiR -L-.
パラメータpを4に設定すると、基Mにペンタシロキサンブロックが存在することに対応する。このようなブロックの前駆体はHMeSi-O-[MeSiO]-SiMeHであり、これはヘキサメチルシクロトリシロキサンとHMeSi-O-SiMeHの非平衡反応によって(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるJP11158188Bに従って)簡便にすでに高純度で合成することができる。追加の蒸留の後、ガスクロマトグラフィーによると、90重量%を超えるペンタシロキサン含有量が達成可能である。上記の非平衡ポリオルガノシロキサンの合成方法は、ヘキサメチルシクロトリシロキサンおよびHMeSi-O-SiMeH以外のテトラオルガノジシロキサンおよびヘキサオルガノシクロトリシロキサンにも適用可能である。
【0027】
本発明によれば、m=1から約20、好ましくは1から約10、さらにより好ましくは1から5、最も好ましくはm=1である。
これは、シリカ粒子の官能化に適用される式(1)および/または(2)のシランの添え字mの平均が、これらの端点を含めて1から約20の範囲内にある方法であることを理解され、ここでmの平均は、これらの端点を含めて1から約10までの範囲内であることが好ましく、mの平均が、これらの端点を含めて1から5の範囲内にあることがさらにより好ましく、添え字mの平均が1であることが最も好ましい。
【0028】
本発明によれば、mが1から約20である場合、さらに好ましく、ここで、シリカ粒子の官能化に適用される式(1)および/または(2)のすべてのシランの添え字mは、1から20の範囲の整数、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20であり、より好ましくは添え字mは1から10の範囲の整数であり、より好ましくは添え字mは1から5の範囲の整数であり、最も好ましくはmは1である。
単一のシロキサンブロックを有する、すなわちm=1の基Mが、本発明によれば好ましいが、上記で定義した二価基Lを介して共に結合した、約20まで、特に2、3、4または5個のシロキサンブロックを有する、すなわちm=約20まで、特にm=2、3、4または5であるポリオルガノシロキサンは、対称置換および非対称置換シロキサンブロック、好ましくはジ、ペンタまたはデカシロキサンブロック、最も好ましくはペンタシロキサンブロックの段階的付加反応によって合成される。
【0029】
本発明によれば、基Aは、上記のように基Mに結合している基-Fによって終端している。
【0030】
本発明によれば、Fは、約100個までの炭素原子を有し、そして-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-C(S)-、第三級アミノ基、
【化3】

および第四級アンモニウム基
【化4】

から選択される1つまたは複数の基を任意選択で含み、そしてOH基、SH基、ハライド基、オルガノシリル基、およびトリオルガノシロキシ基で置換され得る、任意選択で置換された、直鎖、環状または分岐の、飽和、不飽和または芳香族ヒドロカルビル基からなる群から選択される。
シリカ粒子の官能化では、基Fの性質は、末端基Fとその官能基化のモードによって、粒子が全体的に疎水性か親水性か、または粒子が示すその他の特性が決まるため、修飾シリカ表面の特性に大きな影響を与える。特に、反応性官能基の存在により、基Fは、組成物の他の成分と相互作用して結合することができ、したがって硬化組成物のポリマーマトリックスに結合することができる。
【0031】
本発明によるFの上記の定義に沿って、Fは、好ましくは、C8-C22-アルキルアリールアルキル、C6-C22-アリールエーテル、C6-C22-シクロアルキル、C7-C22-シクロアルキルアルキレン、C7-C22-ビシクロアルキル、C5-C12-ヘテロ-N,O,-アリール、C1-C20-アルキルアルデヒドおよびC7-C20-アルキルアリールアルデヒド、ここでこれらの基のすべては、C1-C8-アルキル、OH、Cl、またはBr、およびシリルエーテル基R Si-O-で任意選択にて置換されており、ここでRは、式(1)および(2)について上記で定義したとおりであり、そしてここでRは、好ましくはC1-C8アルキル基であり、最も好ましくはメチル基である、からなる群から選択されることができ、そしてFは、好ましくは、OH末端またはC1-C8オキシアルキル末端またはC1-C8オキシカルボニルアルキル末端であり得る、ポリ(C2-C4アルキレン)オキシドからなる群から選択され得、Fは、ビニル、アリル、ヘキセニル、オクテニル、アリルオキシプロピル、-CHC≡CH、-C(O)C≡CH、-C(O)(CHCH=CH、シクロヘキセニルエチル、リモニル、ノルボルネニルエチル、ビニルフェニルエチル、アリルオキシフェニルオキシプロピル、-(OCHCHO)-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-OCH=CH、または-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-OH、-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-O-C1-C4アルキル、または-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-O-C(O)-C1-C4アルキル、ここでa、b、cが0から20であり、そしてa+b+c=1から20であり、
-[Si(CHOSi(CH]CH=CH、および
【化5】

からなる群から選択され得、
そして式(2)において、Fは(X) 3-xSi-であり得、ここでRは、式(1)および(2)について上記で定義したとおりであり、x=1-3、およびXは=OH、OR、-NR 、R-C(O)-O-;
式(1)および式(2)中のFは、好ましくは、下記式の非置換または置換オキシフェニル部分からさらに選択され得、
【化6】

ここでR10、R14は水素または式(1)または(2)で定義されたRであり、R11、R12、R13は-ORから選択され、ここでR=HまたはC1-C8アルキルであり、
ここでR11からR13の基の少なくとも1つはOHであり、そしてFは、好ましくはオイゲノリル、ビスフェノールエーテル、クミルフェノールエーテル、またはグリシジルプロピルエーテルラジカル、エポキシリモニル、エポキシシクロヘキサンエチル、エポキシノルボルニル、
【化7】

およびこれらのエポキシドのカーボネート誘導体、テトラヒドロ-2H-チオピラニル、カルバゾール、インドール、トリスフェニルシリル、およびRMeSi-、ここでR=C6-C10-アリール、C7-C12-アリールアルキル、C6-C12-シクロアルキル、C7-C16-ビシクロアルキル、C6-C12-シクロチオアルキル、C5-C12-N-またはC5-C12-O-アリールであって、任意選択でC1-C8-アルキル、OH、Cl、CN、およびシリルエーテル基RSi-O-で置換されたものである、からなる群から選択され得、
Fは、好ましくは、フェニル、フェニルプロピル、スチリル、ナフチル、オイゲノール、ビスフェノールエーテル、クミルフェノールエーテル、ノルボルニル、ビニル、アリル、アリルオキシプロピル、ヘキセニル、ノルボルネニル、シクロヘキセニルエチル、リモニル、およびグリシジルプロピルエーテル、エポキシリモニル、エポキシシクロヘキサンエチル、エポキシノルボルニル、およびこれらのエポキシドのカーボネート誘導体、
(X) 3-xSi-またはR 3-xSi-、ここでx=1-3、ここでX=OH、OR、-NR -、R-C(O)-O-、そしてここでR=フェニル、ナフチル、フェニルエチル、フェニルプロピル、オイゲノール、リモニル、エポキシリモニル、グリシジルプロピルエーテルエポキシシクロヘキシルエチル、ノルボルネニルエチル、エポキシノルボルネニルエチル、カルバゾール、インドール、から選択され得る。ここで、上記のヒドロカルビルオキシシリル基およびヒドロカルビルカルボニルオキシシリル基は、式(1)の化合物のFを構成することはできない。
【0032】
本発明によれば、基Fは、好ましくはC1-C24非置換アルキル基、具体的には直鎖C1-C24アルキル基、C2-C24アルキレンオキシドおよびポリ(アルキレンオキシド)基、ここでアルキレンオキシド単位は、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位またはこれらの単位の組み合わせであり、C2-C24オキシカルボニルヒドロカルビル基、特にC2-C24オキシカルボニルアルキル基、C1-C24オキシアルキル基、C1-C24アルカノイル基、またはC1-C24アルカノイルエステル基を表し、ここでアルカノイルエステル基のアルコキシド基は、C1-C12アルコキシド基である。
ここでFは、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシルまたはn-ドデシル基、特にメチルおよびエチル基からなる群から選択されるC1-C24非置換アルキル基を表す。非置換炭化水素基、特に非置換アルキル基は非常に非極性、すなわち疎水性官能基であり、したがって式(1)および/または(2)のシランによるシリカ粒子の官能化であり、ここで基Fは記載の通りであり、粒子を疎水性にする。
【0033】
本発明によれば、基FがC2-C24ポリ(アルキレンオキシド)基を表す場合、それは好ましくは、約2から約12個のエチレンオキシド反復単位を有するポリ(エチレンオキシド)基、または約2から約8個のプロピレンオキシド反復単位を有するポリ(プロピレンオキシド)基を表す。ここでポリ(アルキレンオキシド)基は、好ましくは、OH基、メトキシ基、またはトリメチルシロキシ基によって末端化されている。
より好ましくは、Fによって表されるポリ(アルキレンオキシド)基は、構造-(O-CHCHz1-OHの残基から選択され、ここでz1は、約3から約12の範囲であり、より好ましくは約5から約11であり、さらに好ましくは約6から約10.5の範囲である。
ここで、z1は、これらの繰り返し単位の少なくとも1つを含む式(1)および/または(2)のシランの基Fに含まれる繰り返し単位(O-CHCH)の平均数を指し、しかしながら、最も好ましくは、z1は、約3から約12の範囲、より好ましくは約5から約11の範囲、さらにより好ましくは約6から約10の範囲の整数である。
またより好ましくは、Fによって表されるポリ(アルキレンオキシド)基は、構造-(O-CHCHz2-OMeの残基から選択され、ここでz2は、約3から約12の範囲であり、より好ましくは約5から約11であり、さらに好ましくは約6から約10.5の範囲である。
ここで、z2は、これらの繰り返し単位の少なくとも1つを含む式(1)および/または(2)のシランの基Fに含まれる繰り返し単位(O-CHCH)の平均数を指し、しかしながら、最も好ましくは、z2は、約3から約12の範囲、より好ましくは約5から約11の範囲、さらにより好ましくは約6から約10の範囲の整数である。
同様に、より好ましくは、Fによって表されるポリ(アルキレンオキシド)基は、構造-(O-CHCHz3-OSiMeの残基から選択され、ここでz3は、約3から約12の範囲であり、より好ましくは約5から約11の範囲であり、さらにより好ましくは約6から約10.5の範囲である。
ここで、z3は、これらの繰り返し単位の少なくとも1つを含む式(1)および/または(2)のシランの基Fに含まれる繰り返し単位(O-CHCH)の平均数を指し、しかしながら、最も好ましくは、z3は、約3から約12の範囲、より好ましくは約5から約11の範囲、さらにより好ましくは約6から約10の範囲の整数である。
最も好ましくは、Fによって表されるポリ(アルキレンオキシド)基は、-(O-CHCH-OH、-(O-CHCH-OH、-(O-CHCH-OH、-(O-CHCH10-OH、-(O-CHCH11-OH、-(O-CHCH12-OH、-(O-CHCH-OMe、-(O-CHCH-OMe、-(O-CHCH-OMe、-(O-CHCH10-OMe、-(O-CHCH11-OMe、-(O-CHCH12-OMe、-(O-CHCH-OSiMe、-(O-CHCH-OSiMe、-(O-CHCH-OSiMe、-(O-CHCH10-OSiMe、-(O-CHCH11-OSiMe、および-(O-CHCH12-SiMeからなる群から選択される。
Fのポリ(アルキレンオキシド)基は、シリカ粒子の表面に結合したシラン残基を極性、つまり親水性にし、したがって、シリカ粒子の表面は、このような官能化によって親水性になる。ポリ(アルキレンオキシド)基がOH基、メトキシ基またはトリメチルシロキシ基によって末端化されている場合が特に好ましい。
【0034】
基FがC2-C24オキシカルボニルアルキル基を表す場合、本発明によれば、オキシカルボニル基のアルキル基が、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘキシル、n-ヘプチルまたはn-オクチル基、分岐C1-C22アルキル基、例えば、イソ-プロピル、イソ-ブチル、tert-ブチル、イソ-ペンチル、tert-ペンチル、ネオ-ペンチルおよび2-エチルヘキシル基、および環状C3-C22アルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基からなる群から選択される場合が好ましい。本発明によれば、オキシカルボニルアルキル基のアルキル基が、3つのC1-C8アルキル置換基で置換された炭素原子によってオキシカルボニル基に結合している場合も好ましい。そこでは、3つすべてのアルキル置換基の炭素原子の合計が約10以下である場合が特に好ましく、アルキル置換基の1つがメチル基であり、2つのさらなるアルキル置換基の炭素原子の合計が約8以下である場合がさらにより好ましい。
【0035】
基FがC1-C24オキシアルキル基を表す場合、本発明によれば、C1-C24オキシアルキル基のアルキル基は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルまたはn-オクチル基、分岐C1-C22アルキル基、例えば、イソ-プロピル、イソ-ブチル、tert-ブチル、イソ-ペンチル、tert-ペンチル、ネオ-ペンチルおよび2-エチルヘキシル基、ならびに環状C3-C22アルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基からなる群から選択される。
【0036】
基FがC1-C24アルカノイル基を表す場合、本発明によれば、C1-C24アルカノイル基は、好ましくは、カルボン酸残基-COOH、-CHCOH、-(CHCOH、-(CHCOH、-(CHCOH、-(CHCOH、-(CHCOH、-(CHCOH、-(CHCOH、-(CHCOH、または(CH10COHからなる群から選択される。
【0037】
基FがC1-C24アルカノイルエステル基を表す場合、ここでアルカノイルエステル基のアルコキシ基は、C1-C12アルコキシ基であり、本発明によれば、アルカノイル基は、好ましくはアルカノイル残基-CO、-CHCO、-(CHCO、-(CHCO、-(CHCO、-(CHCO、-(CHCO、-(CHCO、-(CHCO、-(CHCO、または(CH10COからなる群から選択され、そしてエステルのアルコキシ基は、好ましくは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソ-ペントキシ、ネオ-ペントキシまたはn-ヘキソキシ元から選択される。
本発明による特に好ましいアルカノイルエステル基は、-COOMe、-COOEt、-COOtBu、-CHCOMe、-CHCOEt、-CHCOtBu、-(CHCOMe、-CHCOEt、-(CHCOtBu、-(CHCOMe、-(CHCOEt、-(CHCOtBu、-(CHCOMe、-(CHCOEt、-(CHCOtBu、-(CHCOMe、-(CHCOEt、-(CHCOtBu、-(CHCOMe、-(CHCOEt、および-(CHCOtBu、ここでBu=ブチル、tBu=tert-ブチル、Me=メチル、およびEt=エチル、からなる群から選択される。
【0038】
本発明によれば、基Fは、好ましくは、硬化性組成物の硬化前、硬化中、または硬化後にコーティングマトリックスのポリマーマトリックスと相互作用または結合できる官能基である1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基を含む。これらの基は、コーティングポリマーマトリックスまたはその前駆体と相互作用することができる任意の種類の基、特に、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノ、アルコキシシリルおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ、1,3-ジカルボキシ、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、および共有結合の形成によってポリマーマトリックスに組み込まれるマイケル付加反応のドナーおよびアクセプター基からなる群から選択される官能基であり得る。
【0039】
本発明によれば、上記に与えられた定義は、本発明を説明し、
但し式(2)のシランに関して、
(i)Aは下記式の基であり、
-{L-[SiR O]-SiR -L-F、ここでL、R、p、m、およびFは上記で定義したとおりであり、
または
(ii)Aは下記式の基であり、
-L-F、ここで、Lは少なくとも1つのエーテル基(-O-)を含み、そして任意選択で少なくとも1つのヒドロキシ置換基(-OH)を有し、ここでFは上記で定義した通りであり、但しそれが少なくとも1つのエステル基(-O-C(=O)-または-C(=O)-O-)を含むという条件である、
という条件である。
【0040】
本発明による好ましい実施形態では、シリカ粒子は、式(1)および/または式(2)の1つまたは複数のシランで官能化され、ここで式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、下記式の基Mを含む1つまたは2つの基Aを含み、
-{L-[SiR O]-SiR -L-
ここでL、R、p、およびmは上記で定義された通りであり、
ここで式-{L-[SiR O]-SiR -L-の1つまたは複数の基Mは、ジシロキサン、ポリオルガノペンタシロキサン、またはポリオルガノデカシロキサンブロックのいずれかからなる1つまたは複数の定義されたポリシロキサンブロックから本質的に構成され、ここで「から本質的に構成される」という用語は、この実施形態による基Mの数で約50%を超える数が同じ鎖長を有することを意味し、上記式の添え字pは、p=1、4、または約9である。
本明細書において、pは平均値を指すことができないが、1、4または約9から選択される整数であるpの別個の値を指すことは明らかである。
【0041】
本発明によるさらに好ましい実施形態では、数で約80%を超える式-{L-[SiR O]-SiR -L-(ここでL、R、およびmは上記で定義したとおり)の基Mは、もっぱら1、またはもっぱら4、またはもっぱら約9の添え字pを有する。
特に好ましくは、数で約90%を超える式-{L-[SiR O]-SiR -L-(ここでL、R、およびmは上記で定義したとおり)の基Mは、もっぱら1、またはもっぱら4、またはもっぱら約9の添え字pを有する。
約1に近い多分散性指数を有するそのような高度の均一基Mは、本発明による前駆体の精製プロセスによって達成することができる。したがって、単峰性鎖長分布を有する基Mを有するといわれる。
前駆体、すなわち、二置換テトラオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノシクロトリシロキサン、および非平衡反応のそれらの反応生成物のような化合物は、異なる沸点を有しており、そして、例えば、末端基付加のその後の工程のそれぞれにおいて、例えば蒸留または結晶化によって、濃縮および精製することができるため、この特徴を達成することができる。
例えば、p=4の好ましいペンタシロキサン単位の1つは、すでに高純度である、ヘキサメチルシクロトリシロキサンとHMeSi-O-SiMeHの非平衡反応により合成される(例えば、JP11158188Bによる)、HMeSi-O-[MeSiO]-SiMeHから誘導することができる。追加の蒸留の後、ガスクロマトグラフィーによると、約90重量%を超えるペンタシロキサン含有量を達成することができる。
【0042】
非平衡化ポリオルガノシロキサンを合成するための前述のプロセスは、他の二置換テトラオルガノジシロキサン、およびヘキサオルガノシクロトリシロキサンにも適用可能である。
*H*H構造(ここで「M*H」は、構造のヒドリド置換シロキサンモノ単位を表す)を有する精製ペンタシロキサンは、末端SiH単位とのヒドロシリル化反応を受けることができる反応性基を含むさらなる化合物の付加に供される。したがって、L基の導入に適用される試薬は、例えば末端C-C二重結合を含むことによって、水素化シロキサンによるヒドロシリル化ステップを受けるために適切に官能化される必要がある。ヒドロシリル化に使用される試薬はさらに、基F、およびMの他方の末端でAに結合したシラン構造をそれぞれすでに十分に含んでいてもよい。例えば、式(3a)の前駆体の一方の末端をアリル末端ポリエーテルとヒドロシリル化反応で反応させ、こうして得られた中間体を(MeO)SiViとヒドロシリル化反応で反応させることにより、シラン末端が3つの加水分解性メトキシ基を有する式(2)の化合物が得られ、シラン部分をポリシロキサン部分に連結する最初のL基はエチレン基であり、ポリシロキサン基を基Fに連結するL基はプロピレン基であり、そしてFはポリエーテル基である。
【0043】
本発明によるシリカ粒子の官能化に使用される式(1)および/または(2)の化合物は、末端基に対称的に反応性の置換基を提供する出発物質として、任意の適切なポリオルガノシロキサンから誘導することができる。特に適切なポリオルガノシロキサンには、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【化8】

ここでLおよびRは、式-{L-[SiR O]-SiR -L-Fについて上記で定義した通りである。
【0044】
好ましい実施形態では、式(3a)で表される前駆体のポリオルガノシロキサン部分の置換基は、以下のように定義される:
Rは、メチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、フェニル、スチリル、フェニルプロピル、ナフチルから独立して選択され、Rは上記で定義した通りであり、好ましくはメチルである。
【0045】
本発明によるさらに別の好ましい実施形態では、数で60%未満の式-{L-[SiR O]-SiR -L-(L、R、およびmは上記で定義したとおり)の基M、そして特に好ましくは数で50%未満の式-{L-[SiR O]-SiR -L-(L、R、およびmは上記で定義したとおり)の基Mは、同じ鎖長を有し、ここで添え字pの数平均は、約2から約8、より好ましくは約3から約7、最も好ましくは約3.5から約6.5の範囲である。
【0046】
オリゴまたはポリ(アルキレンオキシド)またはオリゴまたはポリシロキサン構造単位中の反復単位の反復数の範囲を示すすべての下付き文字は、一般に、それぞれの反復単位の少なくとも1つを含むシリカ粒子の官能化に適用される式(1)および/または(2)のシランについて得られた平均値を指す。これは、そのような構造モチーフを提供するための出発物質が、平均鎖長によって定義される混合物であることが多いという事実によるものであり、しかしながら、一般に、下付き文字は所与の範囲の整数を表すことが好ましく、すなわち、反復単位の数は、示されたそれぞれの反復単位の1つまたは複数を含むシリカ粒子の官能化に適用される式(1)および/または(2)のすべてのシランにおいて示された範囲内である。
【0047】
本発明による好ましい実施形態では、式(1)において、MがLである場合、基Fは、少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、N、O、P、S、Si、またはハロゲン原子、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を含むシリカ粒子が提供される。
好ましくは、式(1)においてMがLであり、基FがN、O、Siなどの少なくとも1つのヘテロ原子、またはフッ素もしくは塩素などのハロゲン原子を含むシリカ粒子が提供される。
より好ましくは、式(1)において、MはLであり、基Fは1つまたは複数の酸素原子を含み、より好ましくは、Fは、1つまたは複数の酸素原子を含み、ここで少なくとも1つの酸素原子がエーテルまたはエステル部分の酸素原子であり、なおさらに好ましくは、基Fは3つ以上の酸素原子を含み、ここで少なくとも3つの酸素原子はオリゴまたはポリ(アルキレンオキシド)基の酸素原子であり、またさらに好ましくは、基Fは5個以上の酸素原子を含み、ここで少なくとも5個の酸素原子はオリゴまたはポリ(アルキレンオキシド)基の酸素原子であり、そしてなおより好ましくは、基Fは、5個以上の酸素原子を含むポリ(エチレンオキシド)またはポリ(プロピレンオキシド)単位を含む。
最も好ましくは、式(1)の化合物において、MはLであり、そして
F=-(O-CHCH4-12-OH、または
F=-(O-CHCH4-12-OMe、または
F=-(O-CHCH4-12-OSiMe
【0048】
本発明のこの実施形態による式(1)の化合物は、例えば、下記式
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-CHCH4-12-OH)、特に
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH10-OH)およびHN(-SiMe-(CH-(O-CHCH10-OH)
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-CHCH4-12-OMe)、特に
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OMe)およびHN(-SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OMe)、または
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-CHCH4-12-OSiMe、特に
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH10-OSiMe、および
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH10-OSiMe
によって表される化合物である。
【0049】
この実施形態によれば、MはLであり、そしてFは下記式のオキシカルボニルアルキル基を含むか、または下記式のオキシカルボニルアルキル基であることも好ましく、
-OC(O)-アルキル、
ここでアルキル基は直鎖状、分岐状または環状のC1-C12アルキル基であり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシル基から選択される直鎖状アルキル基、または、イソプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチルから、または式-CRのアルキル基から、
ここで残基R、RおよびRは、直鎖アルキル基および水素から選択され、そしてR、RおよびRの2つ以上がアルキル基であり、より好ましくは、アルキル基は、エチルまたはメチルから選択される直鎖アルキル基であり、または式-CR、ここでRは水素またはメチルであり、RおよびRは合計で3から11個の炭素原子の直鎖アルキル基である、から選択される分岐状アルキル基である。
【0050】
本発明のこの実施形態による式(1)のさらなる化合物は、例えば、下記式によって表される化合物であり、
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-C(O)アルキル))、具体的には
HN(-SiMe-(CH-(O-C(O)アルキル))およびHN(-SiMe-(CH-(O-C(O)アルキル))、なおより具体的にはHN(-SiMe-(CH-(O-C(O)-CMeR))およびHN(-SiMe-(CH-(O-C(O)-CMeR))、ここでRおよびRは、直鎖アルキル基であり、3から約9までのC原子の総数を有する。
【0051】
本発明によるまた好ましい実施形態では、シリカ粒子が提供され、ここで式(1)において、MはLであり、そして基Fは1つまたは複数のケイ素原子を含み、より好ましくは基Fは1つまたは複数のケイ素原子を含み、ここで、ケイ素原子の1つは、末端トリオルガノシリル基のケイ素原子であり、例えば、-SiMe-CH=CH、-SiMe、-SiEt、-Si(iPr)、-SiPh、-Si(cyHex)、-SitBuMe、-SitBuPh、なおより好ましくは、Fの末端トリオルガノシリル基は、SiMeCH=CH、SiMeまたはSiEtから選択され、そして酸素原子に結合され、そしてまたより好ましくは、末端トリオルガノシリル基は-SiEtまたはSiMeから選択され、ポリ(エチレンオキシド)基、ポリ(プロピレンオキシド)基、または混合ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)基から選択される基のエンドキャッピング基を構成し、またはC1-C12直鎖アルキル基またはC1-C12アルケニル基の末端基を構成する。
最も好ましくは、式(1)の化合物において、MはLであり、そして
F=-(O-CHCH4-12-OSiMe、または
F=-(O-CHCHCH4-12-OSiMe、または
F=-(O-CHCH4-12-OSiEt、または
F=-(O-CHCHCH4-12-OSiEt
【0052】
本発明のこの実施形態による式(1)の化合物は、例えば、下記式によって表される化合物であり、
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-CHCHCH4-12-OSiMe、具体的には
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCHCH10-OSiMeおよびHN(-SiMe-(CH-(O-CHCHCH10-OSiMe、または
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-CHCH4-12-OSiEt、具体的には
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OSiEtおよびHN(-SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OSiEt、または
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-CHCHCH4-12-OSiEt、具体的には
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCHCH10-OSiEtおよびHN(-SiMe-(CH-(O-CHCHCH10-OSiEt
【0053】
本発明による別の好ましい実施形態では、シリカ粒子が提供され、ここで式(1)において、ヒドロカルビルラジカルFの置換基は、ヒドロキシル、チオール、アルコキシ、シロキシ、ペルフルオロアルキル、カルボキシル、エステル、アミノアルキル、チオアルキル、またはポリエーテル基、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノ、アルコキシシリルおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ、1,3-ジカルボキシ、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、およびマイケル付加反応におけるドナー基およびアクセプター基からなる群から選択される。
【0054】
好ましくは、ヒドロカルビルラジカルFの置換基は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、特にメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブチオキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソ-ペントキシ、ネオ-ペントキシ、n-ヘキソキシ、シクロペントキシまたはシクロヘキソキシ基、シロキシ基、特に、-SiMe-O-SiMe-CH=CH、-OSiMe、-OSiEt、-OSi(iPr)、-OSiPh、-OSi(cyHex)、-OSitBuMe、-OSitBuPh、ペルフルオロアルキル基、特に、トリフルオロメチル、一般式-C2x+1の直鎖ペルフルオロアルキル基、ここでx=2から約24、ペンタフルオロフェニル、エステル基、特に、下記式を有するエステル基、-COOMe、-COOEt、-COOtBu、-CHCOMe、-CHCOEt、-CHCOtBu、-(CHCOMe、-(CHCOEt、-(CHCOtBu、-(CHCOMe、-(CHCOEt、-(CHCOtBu、-(CHCOMe、-(CHCOEt、-(CHCOtBu、-(CHCOMe、-(CHCOEt、-(CHCOtBu、-(CHCOMe、-(CHCOEt、および-(CHCOtBu、およびアルコキシ基が第三級C4-C25アルコキシ基であるエステル基、および式-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-OH、-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-O-C1-C4アルキル、-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-O-C(O)-C1-C4アルキル、および-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-O-SiR、ここでR=C1-C8アルキル、a、b、cは0から20であり、そしてa+b+c=1から20である、で表される化合物の群から選択されるポリエーテル基から選択され;より好ましくは、ヒドロカルビルラジカルFは、ポリエーテル基と末端ヒドロキシル基の両方、ポリエーテル基と末端アルコキシ基の両方、またはポリエーテル基と上記定義の末端シロキシ基を同時に含む。
【0055】
また好ましくは、ヒドロカルビルラジカルFの置換基は、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノ、アルコキシシリルおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ、1,3-ジカルボキシ、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、およびマイケル付加反応のドナー基とアクセプター基から選択される。
【0056】
ヒドロカルビルラジカルFが、構造-(OC(O)-アルキルの1つまたは複数の基を含む場合、特に好ましく、ここでアルキル基は、式CMeRのアルキル基であり、そしてここでRおよびRは合計7個の炭素原子を含むアルキル基であり、またはここでRおよびRは合計6個の炭素原子を含むアルキル基であり、ヒドロカルビルラジカルFが1つまたは複数のポリエーテル構造、好ましくはOCH、OHまたはOSiMe基を末端とするポリエーテル構造を含む場合、またはヒドロカルビルラジカルFが1つまたは複数のブチル基を含む場合も特に好ましい。
【0057】
本発明によるさらに別の好ましい実施形態では、シリカ粒子が提供され、ここでFは、ポリエーテル部分、エステル部分、およびコーティングマトリックス反応性部分、例えば、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ、1,3-ジカルボキシ、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、およびマイケル付加反応におけるドナー基およびアクセプター基からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む。
【0058】
Fが、官能化シリカ粒子に親水性を提供するポリエーテル部分を含むことは好ましく、そしてFが1つまたは複数のコーティング反応性部分を含むことも好ましい。
【0059】
基Fに含まれる好ましいポリエーテル部分は、式-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-OH、-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-O-C1-C4アルキル、-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-O-C(O)-C1-C4アルキル、および-(OCHCH-(OCHCH(CH))-(OCHCHCH(CH))-O-SiR、ここでR=C1-C8アルキル、a、b、cは0から約20であり、a+b+c=1から約20である、によって表される化合物の群から選択され、式-(OCHCH3-10-OCH、-(OCHCH3-10-OH、および(OCHCH(CH))3-10-OCH-、(OCHCH(CH))3-10-OHによって表される基がより好ましい。
【0060】
本発明による「コーティングマトリックス反応性部分」という用語は、コーティング組成物の重合または硬化反応中にコーティングマトリックスへの組み込みをもたらす反応によって、すなわち、共有結合の形成によってコーティングマトリックスと相互作用する任意の官能基に関する。そこでは、コーティングマトリックスは、コーティング組成物中に存在する重合性および/または硬化性化合物の重合および/または硬化によって形成されるポリマー足場(scaffold)として定義される。
【0061】
したがって、官能化粒子が適用されるコーティング組成物のタイプは、官能部分がコーティングマトリックス反応性であるかどうかに依存する。例えば、アクリレートまたはメタクリレート基は、硬化性ポリアクリレートまたはポリメタクリレートに基づくコーティング組成物中のコーティングマトリックス反応性化合物であり、アルケニル基は、オレフィンまたはポリオレフィンのラジカル重合に適した系を含むコーティング組成物において、またはエン反応を受けることができる基を含む、すなわち、チオール基またはヒドロキシル基などの親エン性基を含む組成物においてコーティングマトリックス反応性となりえる。したがって、様々な官能基がコーティングマトリックス反応性であると考えることができ、当業者は、特定のタイプのコーティング組成物に対してどの官能基がコーティングマトリックス反応性であるかを周知している。
【0062】
本発明によれば、コーティングマトリックス反応性部分、例えば、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノ、アルコキシシリルおよびイソシアネート、ケトン、ジケトン、CH-酸性基、例えば、1,3-ジケトン、1,3-ジカルボキシ基、1,3-ジエステル、メチレンニトロ(-NO)基、メチレンニトリル基、マイケルドナーおよびアクセプター基が最も好ましい。
【0063】
アルケニル基の群から選択される好ましいコーティングマトリックス反応性部分は、少なくとも1つの末端C-C二重結合および環状C5-およびC6-アルケニル基を有する直鎖または分岐アルケニル基であり、より好ましくは、少なくとも1つの末端C-C二重結合を有する直鎖状または分岐状C2-C30アルケニル基であり、さらにより好ましいのは、末端C-C二重結合である単一のC-C二重結合を有するC2-C30直鎖状または分岐状アルケニル基であり、そして最も好ましいのは、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニルおよびオクテニル基である。
【0064】
エポキシ基の群から選択される好ましいコーティングマトリックス反応性部分は、グリシジル基およびグリシジルオキシ基、特にプロピレングリシジルエーテル、フェニレングリシジルエーテル、C3-C12-エポキシアルキル、C6-C12-エポキシシクロアルキル、C7-C16-エポキシビシクロアルキル、エポキシリモニル、エポキシシクロヘキサンチル、エポキシノルボルニル、
【化9】

モノエポキシポリエーテル基またはアセチレンエポキシエーテル基、例えば、プロパルギルグリシジルエーテル基、1,4-ブチンジオール-ジ-グリシジルエーテル基、一般に末端エポキシド基を有する基である。
【0065】
アミノ基の群から選択される好ましいコーティングマトリックス反応性部分には、第一級アミノ基-NH、第二級アミノ基-NHRおよび第三級アミノ基-NR が含まれ、ここでRはC1-C8直鎖状、分岐状または環状アルキル基であり、および複素環式アミノ化合物が含まれ、-NH、NHMe、NHEt、NHnBu、-NHcyHex、-NMe、-NEt、NcyHex(cyHexはシクロヘキシル)がより好ましい。
【0066】
ジケトンの群から選択される好ましいコーティングマトリックス反応性部分は、1,3-ジケトンまたは1,4-ジケトン部分、より好ましくは1,3-ジケトン部分を含むすべての種類のアルキル基である。
【0067】
ジエステルの群から選択される好ましいコーティングマトリックス反応性部分は、1,3-ジエステルまたは1,4-ジエステル部分、より好ましくは1,3-ジエステル部分を含むすべての種類のアルキル基である。
【0068】
さらに好ましいコーティングマトリックス反応性部分は、β-ジケト基、β-ケトエステル基、β-ジエステル基、またはニトロ基またはニトリル基に対するα位のC-H結合を含む部分である。
【0069】
好ましいコーティングマトリックス反応性部分は、チオレート、アルコキシド、特にフェノレート、アミン、およびアルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ、1,3-ジカルボキシ、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基からなるマイケルドナー、ならびにマイケル付加反応におけるアクセプター基の群から選択される。その中で、チオレートおよびアルコキシドは、中性条件下で対応するチオールおよびアルコールとして本発明によるシラン中に存在する。同様に、カルボキシ基はまた、対応するカルボキシレート基として存在し得る。
【0070】
マイケルアクセプタ基の群から選択される好ましいコーティングマトリックス反応性部分は、α,β-不飽和アルデヒド基、α,β-不飽和ケト基、α,β-不飽和エステル基、α,β-不飽和アミド基、およびα,β-不飽和ニトリル基であり、α,β-不飽和エステル基およびアミド基、特にα,β-不飽和メチルエステル基およびα,β-不飽和エチルエステル基、ならびにα,β-不飽和-C(O)NH、C(O)NMeおよび-C(O)NEt基がより好ましい。さらに好ましいコーティングマトリックス反応性部分は、マロン酸のエステル、1,3-ジエステル部分および1,4-ジエステル部分である。
【0071】
本発明によるさらに好ましい実施形態では、シリカ粒子が提供され、ここでFは、
- アルキル、
- アルケニル、
- アルキルカルボニルオキシ、
- ポリアルキレンオキシド基、好ましくは下記一般式のもの:
[-OC[-OC[-OC-R
ここで
[-OC]はエチレンオキシ単位を表し、
[-OC]はプロピレンオキシ単位を表し、そして
[-OC]はブチレンオキシ単位を表し、
q=0から約40、好ましくは0から約20、より好ましくは1から約15、
r=0から約30、好ましくは0から約20、より好ましくは0から約10、
s=0から約20、好ましくは0から約15、より好ましくは0から約10、
ここでq+r+s>2、
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、ヒドロキシアルキル、シロキシ基、例えばトリオルガノシロキシ基、オルガノシリル、グリシジルおよびグリシジルオキシ基からなる群から選択され、
- グリシジルおよびグリシジルオキシ基、
- オルガノシリル基、例えば-SiR 、ここでRは、式(1)および(2)について上記で定義した基から独立して選択され、およびシロキシ基、例えば、-OSi(R、ここでRは、式(1)および(2)について上記で定義した基から独立して選択される、
からなる群から選択される。
【0072】
本発明のこの実施形態によれば、基Fが選択される好ましいアルキル基は、直鎖状、分岐状および環状アルキル基、または直鎖状および環状アルキルモチーフを組み合わせた基、または分岐状および環状構造を組み合わせた構造からなる群から、特に、直鎖C1-C22アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルまたはn-オクチル基、分岐C1-C22アルキル基、例えば、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチルおよび2-エチルヘキシル基から、および、環状C3-C22アルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基から選択される。最も好ましくは、基Fが選択されるアルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル基から選択され、最も好ましくはメチルから選択される。
【0073】
本発明のこの実施形態によれば、基Fが選択される好ましいアルケニル基は、少なくとも1つの末端C-C二重結合を有する直鎖状または分岐状アルケニル基および環状C5-およびC6-アルケニル基からなる群から選択され、より好ましくは、少なくとも1つの末端C-C二重結合を有する直鎖状または分岐状C2-C30アルケニル基であり、なおより好ましいのは、末端C-C二重結合である単一C-C二重結合を有するC2-C30直鎖状または分岐状アルケニル基であり、そして最も好ましいのは、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニルおよびオクテニル基である。
【0074】
本発明のこの実施形態によれば、基Fが選択される好ましいアルキルカルボニルオキシ基は、アルキルカルボニルオキシ基からなる群から選択され、ここでアルキルは、直鎖C1-C22アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチルまたはn-オクチル基、分岐C1-C22アルキル基、例えば、イソ-プロピル、イソ-ブチル、tert-ブチル、イソ-ペンチル、tert-ペンチル、ネオ-ペンチルおよび2-エチルヘキシル基、ならびに環状C3-C22アルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチル基、最も好ましくは、メチル、エチル、tert-ブチル基、および3つの直鎖C1-C8アルキル基に結合された第三級炭素原子を含むさらなる分岐アルキル基であって、カルボニルオキシ基に結合されたものを表す。
【0075】
本発明のこの実施形態によれば、Fが下記一般式のポリアルキレンオキシド基から選択される場合が好ましい。
[-OC[-OC[-OC-R
ここで、q+r+sが2から約15の範囲にある場合が好ましく、そしてqは2から約15の範囲で、rおよびs=0である場合、またはrは2から約15の範囲で、qおよびs=0である場合、またはsは2から約15の範囲で、qおよびr=0である場合が、特に好ましい。
【0076】
ヒドロキシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、メチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、-OSiMe、-SiMe-O-SiMe-CH=CH、グリシドキシ基または-SiMe、SiPh、-SiEt、-SitBuMe、-SiMeビニル、または-SiMeアリルからなる群からRが選択される場合も好ましい。その中で、Rがグリシジルまたはグリシドキシ基を表す場合、基は、好ましくは、グリシジル基、グリシジルプロピルエーテル、またはアリルグリシジルエーテル基から選択されることもまた好ましい。本発明のこの実施形態によれば、基Fが選択される好ましいグリシジルまたはグリシジルオキシ基は、グリシジル基、プロピレングリシジルエーテルおよびフェニレングリシジルエーテル基からなる群から選択される。
【0077】
本発明のこの実施形態によれば、Fがオルガノシリル基-SiR またはシロキシ基-OSi(Rから選択される場合も好ましく、ここでRは、式(1)または(2)のRについて上記で定義したヒドロカルビル基である。オルガノシリル基SiR またはシロキシ基-OSi(RのRは、C1-C8アルキル基、C2-C8アルケニル基、C6-C20アリール基、C7-C20アラルキルまたはアルキルアリール基からなる群から独立して選択されることがより好ましい。Fが、-SiMe、SiPh、-SiEt、-Si(iPr)、-SitBuMe、-SiMeビニル、または-SiMeアリル、-OSiMe、-SiMe-O-SiMe-CH=CHからなる群から選択されるシロキシ基、または-OSiPh、-OSiEt、-OSi(iPr)、-OSitBuMe、-OSiMeビニル、または-OSiMeアリルからなる群から選択されるシロキシ基であることは、最も好ましい。
【0078】
本発明による別の好ましい実施形態では、シリカ粒子が提供され、ここで式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランが疎水性シランから排他的に選択される。
【0079】
本発明によれば、水とオクタノールの50/50混合物中のシランの-L-F-基を含む化合物H-L-Fの、下記のように定義される分配係数Poct/wat
logPoct/wat=log((溶質)非イオン化オクタノール/(溶質)非イオン化水)
のlogP値が約0.5と等しいまたはそれよりも大きい場合、式(1)または(2)のシランは疎水性であると考えられる。
本発明によれば、シランの基Aが下記式の場合、
-L-F
だけでなく、シランの基Aが下記式の場合でも、
-{L-[SiR O]-SiR -L-F
この定義が適用されることが留意される。
後者の場合、末端構造基「-L-F」は上記で定義したように考慮される。
式(1)のシランが2つの異なる基-L-Fを有する場合、2つの化合物H-L-Fの分配係数の平均から決定されるlogP値が約0.5以上である場合、それは疎水性であると考えられる。
実験的に、分配係数は水/n-オクタノール混合物(水:50ml、オクタノール:50ml)で決定される。この混合物に、H-L-Fを測定する物質1mLを25℃で加える。各層におけるH-L-Bの濃度は、定量分析分光法または分光法によって決定される。方法には、とりわけ、例えば、核磁気共鳴分光法(NMR)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)、高速液体クロマトグラフィー質量分析法(HPLC/MS)、赤外分光法(IR)、紫外可視分光法(UV-VIS)および滴定法などが含まれる。
【0080】
好ましくは、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランのlogP値は、約0.5から約10の範囲、より好ましくは約1.0から約7の範囲、なおより好ましくは約1.5から約6の範囲、またより好ましくは約2.0から約5.0の範囲、最も好ましくは約2.5から約4.5の範囲である。
【0081】
本発明のこの実施形態によれば、式(1)および/または(2)の疎水性シランは、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、特にペルフルオロ化アルキル基、アルケニル基、トリオルガノシリル末端アルキル基、トリオルガノシロキシ末端エステル基、およびオキシカルボニルアルキル基、特に直鎖C1-C12アルキル基およびオキシカルボニルアルキル基、ここでオキシカルボニルアルキル基のアルキル基は、C1からC12の直鎖または分岐のアルキル基である、から選択される、1つのタイプの疎水性官能基によって排他的に官能化されている。
【0082】
本発明によるさらに好ましい実施形態では、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランが親水性シランから排他的に選択されるシリカ粒子が提供される。
【0083】
本発明によれば、水とオクタノールの50/50混合物中のシランの-L-F-基を含む化合物H-L-Fの分配係数Poct/wat(上記のように定義される)のlogP値が約0.5未満である場合、式(1)または(2)のシランは、親水性であると考えられる。
式(1)のシランが2つの異なる基-L-Fを有する場合、シランの-L-F基に対応する2つの化合物H-L-Fの分配係数の平均から決定されるlogP値が約0.5未満の場合、疎水性と考えられる。
【0084】
好ましくは、本発明によれば、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランのlogP値は、約0.5未満から約-10までの範囲、より好ましくは約0.0から約-5までの範囲、なおより好ましくは約-0.5から約-3.0の範囲、またより好ましくは約-1.0から約-2.5の範囲、最も好ましくは約-1.0から約-2.0の範囲である。
【0085】
本発明のこの実施形態によれば、式(1)および/または(2)の親水性シランが、ポリエーテル基、CHエンドキャップされたポリエーテル基、SiMeエンドキャップされたポリエーテル基またはOH末端ポリエーテル基、ヒドロキシル化アルキル残基、または-L-F基に存在するポリヒドロキシル化アルキル残基から選択される、1つのタイプの親水性官能基によって排他的に官能化されていることも好ましい。
【0086】
本発明による好ましい実施形態において、シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の2つ以上の異なるシランで官能化される。
【0087】
この実施形態によるシリカ粒子は、シリカ粒子を、式(1)および/または(2)の2つ以上の異なるシランの混合物との官能化のための反応に供することによって、または2つ以上のその後のステップ(ここで、各ステップにおいて、シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとの官能化のための反応にかけられる)を行うことによって得ることができる。したがって、本発明のこの実施形態によるシリカ粒子は、異なって官能化された残基を有し、これによりシリカ粒子に新しい非常に特異的に調整された特性を提供することが可能になる。特性の調整は、特定の官能基を含む式(1)または(2)のシランの選択だけでなく、2つ以上の特定のシランの組み合わせによって、およびシリカ粒子と式(1)および/または(2)の異なるシランとの反応によって導入される前記官能基を有する異なる鎖の比率を調節することによって達成され得る。例えば、シリカ粒子は、基Fが10個を超えるC原子を有する直鎖状アルキル鎖または10個を超えるC原子を有するペルフルオロ化アルキル鎖である式(1)または(2)のシランを使用する官能化によって疎水性にすることができ、そして同時に、基Fが1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基、例えば、硬化プロセスにおいてシリカ粒子がコーティングマトリックスに取り込まれる結果となる、アクリレート基、メタクリレート基、またはイソシアネート基を有する式(1)または(2)のシランを使用して官能化することにより、シリカ粒子をコーティングマトリックスに組み込むことができるようにすることができる。本発明によれば、シリカ粒子の官能化に使用される式(1)および/または(2)の少なくとも2つのシランのlogP値の差が約0.8以上である場合、より好ましくは、logP値の差は約1.5以上である場合、なおより好ましくは約2.5以上、またさらに好ましくは約3.5以上、最も好ましくは約5.0以上である場合が好ましい。
ここで、より高いlogP値を有する式(1)または(2)のシランが疎水性シラン(すなわち、logP≧約0.5)であり、一方、より低いlogP値を有するシランが親水性シラン(すなわち、logP<約0.5)である場合が好ましい。
上記で定義した異なるシランのlogP値の差は、考慮しているシランのより高いlogP値からより低いlogP値を差し引くことによって得られることに留意されたい。
【0088】
本発明によるさらに好ましい実施形態では、各シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の1つまたは複数の疎水性シランによって、および式(1)および/または(2)の1つまたは複数の親水性シランによって官能化される。
【0089】
ここで、「疎水性シラン」および「親水性シラン」の定義は上記と同じである。この定義は、本発明によるすべての実施形態に有効である。
【0090】
この実施形態では、各シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の1つまたは複数の疎水性シラン、例えば、基Fが6個を超えるC原子を有する非置換アルキル基、3個を超えるC原子を有するペルフルオロ化アルキル基、またはアルキル鎖に6個を超えるC原子を有する置換基としてトリオルガノシリル基のみを有するアルキル基であるシランによって、および1つまたは複数の親水性シラン、例えば、基Fがヒドロキシル末端ポリ(アルコキシオキシド)、ヒドロキシル化もしくはポリヒドロキシル化アルキル基、または1つまたは複数のカルボキシレート基によって置換されたアルキル基であるシランによって、官能化される。基Fおよびシリカ粒子の官能化に使用されるそれぞれのシランの量を適切に選択することにより、シリカ粒子を含むコーティングの表面特性を特別に調整することができる。同様に、他の成分との適合性やレオロジー特性など、コーティング組成物の配合に関するさまざまな特性と要件は、シリカ粒子の官能化に使用される疎水性シランと親水性シランを適切に選択することで対処できる。
【0091】
本発明による別の好ましい実施形態では、シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の2つ以上の異なるシランで官能化され、ここで式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランにおいて、基Fは、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基を含み、そしてここで式(1)および/または(2)の1つまたは複数のさらなるシランは、排他的に親水性シラン、または排他的に疎水性シランのいずれかである。
【0092】
この実施形態によれば、式(1)および(2)のシランの基Fに含まれる1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基は、好ましくは、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ基、1,3-ジカルボキシ基、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、およびマイケル付加反応におけるドナーおよびアクセプター基からなる群から選択される。
官能化のためのシランのそのような選択により、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基の反応を介して硬化コーティング組成物のコーティングマトリックスに組み込むことができ、同時に式(1)および/または(2)のそれぞれのシランによる官能化によって導入される1つまたは複数の親水性基または1つまたは複数の疎水性基の存在によって引き起こされる親水性または疎水性を示すシリカ粒子が提供される。
【0093】
好ましくは、1つまたは複数のさらなる親水性シランは、カルボン酸、ヒドロキシル基、アミノ基、ポリエーテル基およびチオール基からなる群から選択される親水性官能基、およびそうでなければそのような部分を有する非官能化アルキル基を排他的に含む基Fを有する。
【0094】
同様に、好ましくは、1つまたは複数のさらなる疎水性シランは、エステル基、アルキル基、アルケニル基、ハライド基およびトリオルガノシリル基からなる群から選択される疎水性官能基を排他的に含む基F、およびそうでなければそのような部分を有する非官能化アルキル基を有する。
【0095】
本発明によるまたさらに好ましい実施形態では、シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の2つ以上の異なるシランで官能化され、ここで式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランにおいて、基Fは1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基を含み、そして式(1)および/または(2)の1つまたは複数のさらなるシランは、排他的に親水性シランであり、ここで1つまたは複数の親水性シランの基Fは、ポリヒドロキシル化アルキル基、ポリエーテル基、第四級アンモニウム基を含む炭化水素基、カルボキシレート基を含む炭化水素基、および1つまたは複数のアミノ基を含む炭化水素基からなる群から選択される1つまたは複数の親水性基を含む。
【0096】
この実施形態によるシリカ粒子の官能化に使用される式(1)および/または(2)の親水性シランの基Fに存在するコーティングマトリックス反応性基および親水性基の好ましい組み合わせは、メタクリレート基またはアクリレート基と組み合わせた、ポリエーテル基、特に、OH末端ポリエーテル基、アルキルでエンドキャップされたポリエーテル基、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびブトキシ末端ポリエーテル基、およびトリアルキルシロキシでエンドキャップされたポリエーテル基、具体的には、-OSiMe、-OSiEt、-OSi(iPr)基、イソシアネート基と組み合わせた、この実施形態にて上記で特定されたポリエーテル基、およびエポキシ基またはアルケニル基と組み合わせた、この実施形態にて上記で特定されたポリエーテル基である。
【0097】
本発明によるさらに別の好ましい実施形態では、シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の2つ以上の異なるシランで官能化され、ここで式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランにおいて、基Fは、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基を含み、そして式(1)および/または(2)の1つまたは複数のさらなるシランは、排他的に疎水性シランであり、そしてここで1つまたは複数の疎水性シランの基Fは、直鎖状または分岐状の非置換アルキル基、ジフルオロメチレンおよび/またはトリフルオロメチル基を含むアルキル基、特にペルフルオロ化アルキル基、トリオルガノシリル基を有するアルキル基、オルガノシロキシ基、アルケニル基またはヘテロ原子を含む置換基を含まない芳香族基、特にアルカリール基およびアラルキル基からなる群から選択される1つまたは複数の親水性基を含む。
【0098】
この実施形態によるシリカ粒子の官能化に使用される式(1)および/または(2)の親水性シランの基Fに存在するコーティングマトリックス反応性基および疎水性基の好ましい組み合わせは、非置換アルキル基またはフッ素化アルキル基と組み合わせたイソシアネート基、非置換アルキル基またはフッ素化アルキル基と組み合わせたアクリレートまたはメタクリレート基、または非置換アルキル基またはフッ素化アルキル基と組み合わせたエポキシ基である。
【0099】
本発明による別の好ましい実施形態では、シリカ粒子は、式(1)および/または(2)のシランで官能化された少なくとも2種類の異なるシリカ粒子を含む。
【0100】
この実施形態によれば、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランでシリカ粒子を官能化するための出発物質として、異なるタイプのシリカ粒子が使用される。
例えば、約50から約150μmの範囲の凝集体のD50平均粒子サイズを有するヒュームドシリカの粒子を、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランで官能化し、約1から約150nmの範囲のD50平均粒子サイズを有するコロイドシリカの粒子を、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランで個別に官能化し、そして次にこのように得られた官能化シリカ粒子を混合することによってシリカ粒子が提供される場合、本発明による。
【0101】
好ましくは、2つ以上の異なる種類のシリカ粒子はそれぞれ、異なるシランまたは異なるシラン混合物によって官能化される。
【0102】
本発明によれば、異なるシランで別々に官能化することによって得られる2種類以上の異なるタイプのシリカ粒子を含むシリカ粒子の混合物が、
- 他のシリカ粒子前駆体の官能化に使用される特定の単数または複数のシランの少なくとも1つとは異なる、前述の実施形態で定義された式(1)および/または(2)の特定のシランまたはシランの混合物でそれぞれ別々に官能化される、前駆体として使用される1つの一般的なタイプのシリカ粒子の官能化によって得られる少なくとも2つの異なるタイプの官能化シリカ粒子を混合することにより、または代替的に、
- 他のシリカ粒子前駆体の官能化に使用される特定の単数または複数のシランの少なくとも1つとは異なる、前述の実施形態で定義した式(1)および/または(2)の特定のシランまたはシランの混合物でそれぞれ別々に官能化されている、前駆体として使用される異なるタイプのシリカ粒子から得られる少なくとも2つの異なるタイプの官能化シリカ粒子を混合することにより、
提供されることが好ましい。
【0103】
本発明によれば、一般的なタイプのシリカ粒子前駆体を、2つの異なるタイプのシランまたは2つの異なるシラン混合物で別々に官能化することによって、または、2つの異なるタイプのシリカ粒子前駆体を2つの異なるタイプのシランまたは2つの異なるシラン混合物で別々に官能化した後、それぞれ異なる種類のシリカ粒子を特定の重量比で混合することによって得られる、提供されるシリカ粒子が2つの異なる種類のシリカ粒子を含む場合、一般に好ましい。
【0104】
本発明によれば、異なるシランで官能化された少なくとも2つの異なる種類のシリカ粒子は、各種類のシリカ粒子の官能化に適用される式(1)および/または(2)のシランの基Fが異なることがさらに好ましい。
シリカ粒子が、基Fがポリエーテル基を表す式(1)および/または(2)の1つまたは複数のタイプのシランによって官能化された1つまたは複数のタイプの粒子、および基がアルキル基を表す一般式(1)および/または(2)の1つまたは複数のタイプのシランによって官能化された1つまたは複数の他のタイプの粒子を含む場合が好ましい。
1つまたは複数の種類のシリカが、ポリエーテル基を含む基Fを有する式(1)および/または(2)のシランで官能化され、一方で1つまたは複数のさらなる種類のシリカ粒子が、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基を含む基Fを有する式(1)および/または(2)のシランで官能化されている場合、または、1つまたは複数のタイプのシリカ粒子が、1つまたは複数のエステル基、アルキル基またはフッ素含有部分を含む基Fを有する式(1)および/または(2)のシランで官能化され、一方で、1つまたは複数のさらなるタイプのシリカ粒子が、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基を含む基Fを有する式(1)および/または(2)のシランで官能化される場合、好ましい。
異なるタイプの官能基による式(1)および/または(2)のシランの基Fの官能化は、官能化に使用されるシランの異なる極性をもたらし、したがって、こうして得られる官能化シリカ粒子の異なる極性をもたらす。
【0105】
本発明によるさらに好ましい実施形態では、異なる極性を有する異なるシランで官能化された少なくとも2種類のシリカ粒子を含むシリカ粒子が提供される。
「異なる極性を有するシラン」という用語は、シランの親水性または疎水性の決定について上記で定義したように、シランの構造単位-L-Fに対応する基H-L-Fの分配係数Pの異なるlogP値を有するシランを指す。
【0106】
本発明によれば、少なくとも2種類のシリカの官能化に使用される少なくとも2つのシランのlogP値の差が約0.8以上である場合が好ましく、logP値の差が約1.5以上であることがより好ましく、約2.5以上であることがさらにより好ましく、またさらに好ましくは約3.5以上、最も好ましくは約5.0以上である。
そこでは、より高いlogP値を有する式(1)または(2)のシランは疎水性シラン(すなわち、logP≧約0.5)であり、一方、より低いlogP値を有するシランは親水性シラン(すなわち、logP<約0.5)である場合、好ましい。一般に、差は、考慮されたシランについて得られたより高いlogP値からより低いlogP値を差し引くことによって得られる。
【0107】
本発明による好ましい実施形態では、シリカ粒子が提供され、ここで式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、
3-xSi-L-[SiR O]-SiR -L-[-OC[-OC[-OC-R
3-xSi-L-[SiR O]-SiR -L-R
HN{-SiR -L-[SiR O]-SiR -L-[-OC[-OC[-OC-R
HN{-SiR -L-[SiR O]-SiR -L-R
3-xSi-L-[SiR O]-SiR -L-R
ここで、R、R、R、L、p、q、r、sはそれぞれ上記で定義したとおりであり、そしてRは、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、グリシジル、グリシジルオキシ、オルガノシリル、例えば、-SiMe-O-SiMe-CH=CH、-SiMe、-SiEt、-Si(iPr)、-SiPh、-Si(cyHex)、-SitBuMe、および-SitBuPhからなる群から選択される。
【0108】
本発明によれば、q+r+sが約2から約15の範囲にある場合が好ましく、そしてqは約2から約15の範囲にあり、一方でrおよびs=0である場合、またはrは約2から約15の範囲にあり、一方でqおよびs=0である場合、またはsは約2から約15の範囲にあり、一方でqおよびr=0である場合が特に好ましい。
【0109】
本発明によれば、Rは、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、tert-ブトキシ、メチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ、-OSiMe、-SiMe-O-SiMeCH=CH、グリシドキシ基または-SiMe、SiPh、-SiEt、-SitBuMe、-SiMeビニル、または-SiMeアリルからなる群から選択される場合も好ましく、そしてRは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、tertブチルカルボニルオキシ、グリシジル、グリシジルオキシ、-SiMe-O-SiMeCH=CH、SiMe、SiEt、-Si-(iPr)または、SitBuMeからなる群から選択される場合、最も好ましくは、Rは、メチル、グリシドキシ、-SiMeまたは-SiMe-O-SiMeCH=CHから選択される場合、好ましい。
【0110】
本発明によればここでLが二価のC2-C12-アルキレン基、より好ましくは二価のC2-C4アルキレン基であり、最も好ましくは、Lは-(CH-および/または-(CH-であって、いずれの場合も酸素原子を介してFに任意選択で結合する場合もまた好ましい。
【0111】
本発明による別の好ましい実施形態では、Rがアルコキシであるシリカ粒子が提供される。
【0112】
基Rは加水分解性基として定義され、式(2)のシラン中のその存在は、シリカ表面の1つ、2つ、または3つのシラノールOH基とシランのシリル基と縮合してシロキサン単位が形成されることによる、シリカ粒子の表面へのケイ素原子を介した基Aの結合を可能にするために必要とされる。その中で、1つ、2つまたは3つの加水分解性R基が切断される。よって、シリカ表面との縮合のためのシランの能力、したがってシリカ粒子の官能化のために結合するための能力、特にそのような反応の速度は、加水分解性基Rの種類に依存する。これらの基がOH基の存在下で加水分解される条件は当業者によく知られているので、アルコキシ基は本発明による好ましい加水分解性基Rである。さらに、いずれかのヒドリドアルコキシシランと、不飽和C-C結合を含む任意の化合物、特にアルケニルポリオルガノシロキサン、アルケニルカルボシランまたはアルケニルカルボシロキサン、ここでアルケニル基は好ましくはビニル基である、とのヒドロシリル化反応により、または、アルコキシアルケニルシラン、好ましくはアルコキシビニルシランとヒドリドシリル化合物、特にヒドリドポリオルガノシロキサン、ヒドリドカルボシランまたはヒドリドカルボシロキサンとのヒドロシリル化反応により、1つ、2つまたは3つのアルコキシ基を有するシリル基を目的化合物に容易に導入することができる。多くのヒドリドアルコキシシランおよびアルケニルアルコキシシランが市販されていることから、これらの化合物の製造方法および取り扱い方法は当業者に周知である。
【0113】
この実施形態によれば、式(2)のシランが2つまたは3つのアルコキシ基Rを有することが好ましく、式(2)のシランが加水分解性基Rとして3つのアルコキシ基を有することがより好ましい。
【0114】
ここで、アルコキシ基は、直鎖C1-C22アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、n-ヘプトキシまたはn-オクチル基、分岐C1-C22アルコキシ基、例えば、イソプロポキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、イソペントキシ、tert-ペントキシ、ネオペントキシおよび2-エチルヘキシオキシ基、ならびに環状C3-C22アルコキシ基、例えば、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペントキシ、シクロヘキソキシおよびシクロヘプトキシ基から独立して選択され、好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、イソ-プロポキシ、イソ-ブトキシ、tert-ブトキシ、ネオ-ペントキシ、シクロペントキシまたはシクロヘキソキシ基からなる群から選択され、またより好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ、エトキシまたはイソプロポキシ基から選択され、最も好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ基から選択される。
【0115】
本発明はまた、特定のシラン、特にシリカ粒子の官能化のための上記で定義した式(1)のシランに関する。本発明による好ましい実施形態では、下記式のシラン化合物が提供され、
HN[-SiR -A] (1)
上記で定義した通りであり、ここでMがLである場合、基Fは、少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、N、O、P、S、Si、またはハロゲン原子、例えば、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素を含む。
これらのシランは、官能化シリカ粒子の製造において特に有用である。
【0116】
好ましくは、式(1)の化合物が提供され、ここでMはLであり、基Fは、少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、N、O、P、S、Si、またはハロゲン原子、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を含む。
【0117】
より好ましくは、式(1)の化合物において、MはLであり、基Fは1つまたは複数の酸素原子を含み、より好ましくはFは1つまたは複数の酸素原子を含み、ここで少なくとも1つの酸素原子がエーテルまたはエステル部分の酸素原子であり、なおより好ましくはFは3以上の酸素原子を含み、ここで少なくとも3つの酸素原子がオリゴまたはポリ(アルキレンオキシド)基の酸素原子であり、またより好ましくはFは5以上の酸素原子を含み、ここで少なくとも5つの酸素原子がオリゴまたはポリ(アルキレンオキシド)基の酸素原子であり、そしてなおまたより好ましくは、基Fは、5つ以上の酸素原子を含むポリ(エチレンオキシド)またはポリ(プロピレンオキシド)単位を含む。
【0118】
最も好ましくは、式(1)の化合物において、MはLであり、そして
F=-(O-CHCH4-12-OH、
そして具体的には、化合物は下記式で表され、
HN(-SiMe-(CH2-4-(O-CHCH4-12-OH)
より具体的には、化合物は下記式で表され、
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH4-12-OH)、またはHN(-SiMe-(CH-(O-CHCH4-12-OH)、最も好ましくは式HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH10-OH)で表され、または
F=-(O-CHCH4-12-OMe、そして具体的には、化合物は下記式で表され、
HN(-SiMe-(CH2-4-(O-CHCH4-12-OMe)、より具体的には、化合物は下記式で表され、
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH4-12-OMe)、またはHN(-SiMe-(CH-(O-CHCH4-12-OMe)、そして最も具体的には式HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OMe)によって表され、または
F=-(O-CHCH4-12-OSiMe、そして具体的には、化合物は下記式で表され、
HN(-SiMe-(CH2-4-(O-CHCH4-12-OSiMe、より具体的には、化合物は下記式で表され、
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH4-12-OSiMe、または
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH4-12-OSiMe、そして最も具体的には式
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH10OSiMeによって表される。
【0119】
本発明によれば、この実施形態による式(1)の化合物において、基Fは、下記構造のオキシカルボニルアルキル基を含むことも好ましく、
F=-(OC(O)-アルキル、
ここでアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のC1-C12アルキル基、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシル基から選択される直鎖アルキル基、または、iso-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、neo-ペンチルから選択される分岐アルキル基、または式-CRのアルキル基から選択され、ここで残基R、RおよびRは、直鎖アルキル基および水素から選択され、そしてR、RおよびRの2つ以上がアルキル基であり、より好ましくは、アルキル基は、エチルまたはメチルから選択される直鎖アルキル基、または式-CRから選択され、ここでRは水素またはメチルであり、そしてRおよびRは合計で約3から約11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である。最も好ましくは、式-CRのアルキル基において、Rはメチル基であり、RおよびRは合計で9または10個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である。
【0120】
本発明のこの実施形態による式(1)のさらに好ましい化合物は、例えば、下記式によって表される化合物であり、
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-C(O)アルキル))、具体的には、
HN(-SiMe-(CH-(O-C(O)アルキル)およびHN(-SiMe-(CH-(O-C(O)アルキル)、なおより具体的には、HN(-SiMe-(CH-(O-C(O)-CMeR))およびHN(-SiMe-(CH-(O-C(O)-CMeR))、ここでRおよびRは直鎖アルキル基であり、約3から約9までのC原子の総数を有する。
【0121】
本発明によるまた好ましい実施形態では、式(1)の化合物が提供され、ここでMはLであり、そして基Fは1つまたは複数のケイ素原子を含み、より好ましくは基Fは1つまたは複数のケイ素原子を含み、ここでケイ素原子の1つは、末端トリオルガノシリル基または末端トリオルガノシロキシ基、例えば、-SiMe-CH=CH、-SiMe、-SiEt、-Si(iPr)、-SiPh、-Si(cyHex)、-SitBuMe、-SitBuPhのケイ素原子であり、さらにより好ましくは、Fの末端トリオルガノシリル基は、-SiMeCH=CH、-SiMe、または-SiEtから選択され、そして酸素原子に結合され、または末端トリオルガノシロキシ基は、-OSiMe、-OSiEt、および-OSi(iPr)から選択され、そして炭素原子に結合され、そしてまたより好ましくは、末端トリオルガノシリル基は-SiEtまたはSiMeから選択され、ポリ(エチレンオキシド)基、ポリ(プロピレンオキシド)基、または混合ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)基から選択される基のエンドキャッピング基を構成し、またはC1-C12直鎖状アルキル基またはC1-C12アルケニル基の末端基を構成する。
最も好ましくは、式(1)の化合物において、MはLであり、そして
F=-(O-CHCH4-12-OSiMe、または
F=-(O-CHCHCH4-12-OSiMe、または
F=-(O-CHCH4-12-OSiEt、または
F=-(O-CHCHCH4-12-OSiEt
【0122】
この実施形態による式(1)の特に好ましい化合物は、下記式の化合物であり、
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-CHCHCH4-12-OSiMe、具体的には、
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCHCH10-OSiMe、およびHN(-SiMe-(CH-(O-CHCHCH10-OSiMe、または
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-CHCH4-12-OSiEt、具体的には、
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OSiEt、およびHN(-SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OSiEt、または
HN(-SiMe-(CH2-3-(O-CHCHCH4-12-OSiEt、具体的には、
HN(-SiMe-(CH-(O-CHCHCH10-OSiEt、およびHN(-SiMe-(CH-(O-CHCHCH10-OSiEt
【0123】
本発明による別の好ましい実施形態では、上記で定義した一般式(1)のシランが提供され、ここでヒドロカルビルラジカルFの任意選択の置換基は、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノ、アルコキシシリルおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ、1,3-ジカルボキシ、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、およびマイケル付加反応におけるドナーおよびアクセプター基からなる群から選択される。
【0124】
本発明はまた、官能化シリカ粒子の製造方法、特に上記の官能化シリカ粒子の製造方法にも関する。
本発明によれば、本発明は、官能化シリカ粒子の製造方法であって、
- シリカ粒子を式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランと接触させること
HN[-SiR -A] (1)、
および/または
3-xSi-A (2)
上記で定義した通り、
を含む方法が提供される。
【0125】
この実施形態によれば、適用されるシリカ粒子のD50平均粒子サイズは、動的光散乱(DLS)またはTEM(透過型電子顕微鏡)によって決定されるように、最大約1000μmであり得る。しかしながら、シリカ粒子は、約800μm未満のD50平均粒子サイズを有することが好ましく、約500μm未満であることがさらにより好ましく、そしてシリカ粒子は、ヒュームドシリカ粒子またはコロイドシリカ粒子のいずれかであり、特に懸濁液中のコロイドシリカ粒子であることが好ましい。
【0126】
この実施形態によれば、シリカ粒子の官能化のために適用される式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランで官能化されたシリカ粒子に向けられた上記の実施形態で定義されるとおりである。
【0127】
本発明によれば、シリカ粒子を上記で定義した式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランと接触させる方法は、特定の方法に限定されず、そのような方法は当業者に知られている。
【0128】
シリカ粒子と、官能化に使用される1つまたは複数のシランとを、開放または閉鎖反応容器内で接触させることが好ましく、さらに、混合装置を使用する場合、均質な反応混合物が形成されることが好ましく、そして適用される単数または複数のシランに応じて、反応容器を冷却または加熱され得ることも好ましい。そのような混合装置は、ミキサーまたはスターラーであってもよく、ここでリボンミキサー、ツインシャフトミキサー、垂直ミキサー、混合反応器、またはドラムブレンダーなど、すべての既知のタイプの工業用反応器、ブレンダー、およびミキサーを適用することができ、また、ニーダー、ボールミル、スクリュー式押出機を用いて原料を接触させることもできる。適用される単数または複数のシランに応じて、出発物質を少なくとも約40℃の高温で接触させることが好ましい。
【0129】
シリカ粒子と式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとを接触させることによって行われる反応は、1つまたは複数の溶媒の存在下で行うことができ、そして減圧下または加圧下で行うことができ、ここで前述の反応相手と接触する場合、不活性雰囲気を適用することができる。
【0130】
接触は、バッチ式プロセスまたは連続プロセスで行うことができる。
【0131】
シリカ粒子と式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとを接触させる時間は、特定の様式に限定されないが、しかしながら、好ましくは、バッチ処理が適用される場合、約6時間未満、より好ましくは約4時間未満、さらにより好ましくは約2時間未満の反応時間内にシリカ粒子の表面の所望の程度の官能基化を得る条件が選択される。
【0132】
本発明による好ましい実施形態では、官能化シリカ粒子の製造方法が提供され、ここでシリカ粒子と式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとを接触させることは、溶媒の存在下である。
【0133】
概して、官能化シリカ粒子の製造方法は、1つまたは複数の溶媒の存在下または非存在下で行うことができ、ここでこの方法は、1つまたは複数の溶媒の存在下で実施することが好ましく、化合物の混合物ではなく単一の化合物である1つの溶媒の存在下で実施することがさらに好ましい。
本発明によれば、「溶媒」という用語は、反応条件下で液体状態にある任意の化合物またはその混合物を指し、そして、シリカ粒子を式(1)および/または(2)の1つまたは複数の化合物と接触させることによってシリカ粒子の官能化を行うための媒体として適している。好ましくは、溶媒は有機化合物または有機化合物の混合物である。
【0134】
したがって、溶媒は、反応条件下で、出発物質として使用されるシリカ粒子および本発明による式(1)および/または(2)のシラン化合物に対して不活性であることが好ましい。さらに、式(1)および(2)の出発物質は、好ましくは、それぞれ溶媒に可溶であるか、または溶媒と完全に混和性である。
好ましくは、溶媒は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ジオルガノカーボネート、エーテル、ケトン、アルコール、エステルおよびそれらの組み合わせからなる有機溶媒の群から選択される。
【0135】
本発明によれば、好ましい脂肪族炭化水素は、直鎖状および分岐鎖状のC5-C24アルキル、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびそれらの混合物、例えば高沸点または低沸点石油エーテルから選択され;
好ましい脂環式炭化水素は、C5-C24シクロアルカン、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンまたはシクロヘプタンから選択され;
好ましい芳香族炭化水素は、トルエン、キシレン、メシチレン、tert-ブチルベンゼンおよびエチルベンゼンなどのベンゼンに基づくアルキル置換アリール化合物であり;
好ましいジオルガノカーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートであり;
好ましいエーテルは、tert-アミルエチルエーテル、シクロペンチルエチルメチルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール、メチルtert-ブチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、モルホリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロピラン、そして2,2,5,5-テトラメチルテトラヒドロフランであり;
好ましいケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、またはメチルアミルケトンであり;
好ましいアルコールは、1-メトキシ-2-プロパノールまたはtert-ブチルアルコールなどの第2級または第3級アルコールであり;好ましいエステルは、直鎖状または分岐状C2-C24アルコールのアセテート、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシルまたはトリアセチンである。
【0136】
その中で、適用される溶媒が高沸点を有することがさらに好ましく、本発明によれば、それは標準圧力下で約100℃を超える沸点であり、これは例えばトルエン、オルト-、メタ-、パラ-キシレン、ジオキサン、そして1-メトキシ-2-プロパノールの場合である。
この実施形態によれば、1つまたは複数の溶媒が、トルエン、キシレン、ジオキサンおよび1-メトキシ-2-プロパノールからなる群から選択される場合が好ましい。
反応混合物の均質性および反応中の熱輸送に関して官能基化反応を向上するために、溶媒を含めることができる。
【0137】
本発明によるさらに好ましい実施形態では、シリカ粒子の製造方法は、約40℃を超える温度で、より好ましくは約50℃を超える温度で、最も好ましくは約55℃から約120℃の範囲の温度で行われる。
【0138】
高温を適用することにより、シリカ粒子の官能化で起こる縮合反応の反応速度を増加させることができる。しかしながら、望ましくない副反応を防ぐために、温度は、好ましくは約250℃未満、より好ましくは約180℃未満、さらにより好ましくは約150℃未満、最も好ましくは約120℃以下に維持される。
【0139】
本発明による別の好ましい実施形態では、官能化シリカ粒子の製造方法において出発物質として使用されるシリカ粒子は、動的光散乱(DLS)によって測定される約1から約300nm、好ましくは、約1から約150nmの範囲の平均粒子サイズを有するコロイドシリカ粒子から、または、DLSまたは透過型電子顕微鏡法(TEM)によって測定される約1から約600μm、好ましくは約20から約400μmの範囲の平均粒子サイズを有するヒュームドシリカから選択される。
【0140】
上述のように、シリカ粒子は、コロイド形態で、すなわち一次粒子として、典型的には分散液中に存在するシリカ粒子から、または例えば典型的には、ヒュームドシリカ粒子に該当する一次粒子の凝集体であるシリカ粒子から選択することができる。本発明による式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランによって官能化された官能化シリカ粒子を得るために、すべてのタイプのシリカ粒子を本発明による官能化シリカ粒子の製造方法に供することができる一方で、シリカ粒子は、約1nmから約800μmの範囲の動的光散乱によって測定されるD50平均粒子サイズを有することが好ましく、ここでコロイドシリカ一次粒子のD50平均粒子サイズが約1から約300nmの範囲にある場合がより好ましく、約2から約150nmがさらにより好ましく、約5から約50nmが最も好ましく、またはここでシリカ凝集粒子のD50平均粒子サイズが約1から約800μmの範囲にある場合がより好ましく、約10から約300μmがなおより好ましく、約50から約150μmが最も好ましい。あるいは、粒子サイズは、TEMによって決定することができ、しかしながら、DLSはD50粒子サイズ値を測定するための好ましい手段である。
【0141】
本発明による官能化シリカ粒子の製造方法のさらに別の好ましい実施形態では、シリカ粒子と式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとを接触させることは、有機スズ、有機亜鉛、有機チタンおよび有機ホウ素化合物、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、アンモニウム化合物、環状アミン、脂肪族アミン、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、アンモニアおよびそれらの組み合わせ、好ましくは有機スズおよび有機チタン化合物からなる群から選択される縮合触媒の存在下である。
【0142】
縮合触媒は、縮合反応の速度を増加させるために、特に適度な反応温度で適切な反応速度を達成するために使用することができる。
【0143】
本発明による好ましい実施形態では、式(1)のシランにおいて、基MはLである。
【0144】
この実施形態によれば、式(1)のシランは、オリゴまたはポリシロキシ部分を含まない。
【0145】
本発明による官能化シリカ粒子の製造方法の別の好ましい実施形態では、式(1)および/または(2)のシランにおいて、Fは、
- アルキル、
- アルケニル、
- アルキルカルボニルオキシ、
- ポリアルキレンオキシド基、好ましくは下記一般式のもの、
[-OC[-OC[-OC-R
ここで
[-OC]はエチレンオキシ単位を表し、
[-OC]はプロピレンオキシ単位を表し、そして
[-OC]はブチレンオキシ単位を表し、
q=0から約40、好ましくは0から約20、より好ましくは1から約15、
r=0から約30、好ましくは0から約20、より好ましくは0から約10、
s=0から約20、好ましくは0から約15、より好ましくは0から約10、
ここでq+r+s>2、
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、ヒドロキシアルキル、シロキシ基、例えば、トリオルガノシロキシ基、オルガノシリル、グリシジルおよびグリシジルオキシ基からなる群から選択され、
- グリシジルおよびグリシジルオキシ基、
- オルガノシリル基、例えば、-SiR 、ここでRは、式(1)および(2)について上記で定義した基から独立して選択され、およびシロキシ基、例えば、-OSi(R、ここでRは、式(1)および(2)について上記で定義した基から独立して選択される、
からなる群から選択される。
【0146】
本発明による官能化シリカ粒子の製造方法のさらに好ましい実施形態では、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランの基Fは、ポリエーテル部分、エステル部分およびコーティングマトリックス反応性部分、例えば、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノ、アルコキシシリルおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ、1,3-ジカルボキシ、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、およびマイケル付加反応におけるドナー基とアクセプター基からなる群から選択される、少なくとも1つの部分を含む。
【0147】
概して、官能化シリカ粒子の提供に好ましいとして上記に記載された式(1)または(2)のすべてのシランは、本発明による官能化シリカ粒子の製造方法においても同様に好ましい。
【0148】
本発明によるまたさらに好ましい実施形態では、官能化シリカ粒子の製造方法において、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、疎水性シランから排他的に選択され、または式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、親水性シランから排他的に選択される。
【0149】
この実施形態によれば、上記でもたらされた「疎水性シラン」および「親水性シラン」の同じ定義が適用され、水とオクタノールの50/50混合物中のシランの-L-F-基を含む化合物H-L-Fの分配係数Poct/watのlogP値に基づいており、これは以下のように定義される。
logPoct/wat=log((溶質)非イオン化オクタノール/(溶質)非イオン化水)
【0150】
1つまたは複数の疎水性シランの場合、logP値が約0.5から約10の範囲、より好ましくは約1.0から約7の範囲、なおより好ましくは約1.5から約6の範囲、またより好ましくは約2.0から約5.0の範囲、最も好ましくは約2.5から約4.5の範囲である場合、好ましい。
【0151】
1つまたは複数の親水性シランの場合、logP値が約0.5から約-10の範囲、より好ましくは約0.0から約-5の範囲、なおより好ましくは約-0.5から約-3.0の範囲、またより好ましくは約-1.0から約-2.5の範囲、最も好ましくは約-1.0から約-2.0の範囲にある場合が好ましい。
【0152】
本発明のこの実施形態によれば、式(1)および/または(2)の疎水性シランは、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、特にペルフルオロ化アルキル基、アルケニル基、トリオルガノシリル末端アルキル基、エステル基、およびオキシカルボニルアルキル基、特に直鎖C1-C12アルキル基およびオキシカルボニルアルキル基であって、オキシカルボニルアルキル基のアルキル基が、C1からC12の直鎖状または分岐状のアルキル基ある、から選択される、1つのタイプの疎水性官能基によって排他的に官能化されていることは好ましい。
【0153】
本発明のこの実施形態によれば、式(1)および/または(2)の親水性シランは、ポリエーテル基、CHエンドキャップされたポリエーテル基、SiMeエンドキャップされたポリエーテル基またはOH-末端ポリエーテル基、ヒドロキシル化アルキル残基、またはポリヒドロキシル化アルキル残基であって-L-F基に存在するものから選択される、1つのタイプの親水性官能基によって排他的に官能化されていることも好ましい。
【0154】
本実施形態による官能化シリカ粒子の製造方法の別の好ましい実施形態では、シリカ粒子は、Rがアルコキシ基である式(2)の1つまたは複数のシランと接触される。
【0155】
この実施形態によれば、式(2)のシランが2つまたは3つのアルコキシ基Rを有することが好ましく、式(2)のシランが加水分解性基Rとして3つのアルコキシ基を有することがより好ましい。
そこでは、アルコキシ基は、直鎖C1-C22アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、n-ヘキソキシ、n-ヘプトキシまたはn-オクトキシ基、分岐C1-C22アルコキシ基、例えば、イソ-プロポキシ、イソ-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソ-ペントキシ、tert-ペントキシ、ネオ-ペントキシおよび2-エチルヘキシオキシ基、および環状C3-C22アルコキシ基、例えば、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペントキシ、シクロヘキソキシおよびシクロヘプトキシ基から独立して選択される場合が好ましく、より好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、イソ-プロポキシ、イソ-ブトキシ、tert-ブトキシ、ネオ-ペントキシ、シクロペントキシ、またはシクロヘキソキシ基からなる群から選択され、またより好ましくは、アルコキシ基は、メトキシ、エトキシまたはイソプロポキシ基から選択され、最も好ましくは、アルコキシ基はメトキシ基から選択される。
【0156】
本発明による官能化シリカ粒子の製造方法の好ましい実施形態では、上記で定義した式(1)および/または(2)の2つ以上のシランを1工程でシリカ粒子と接触させる、または式(1)および/または(2)の2つ以上のシランを2以上の工程でシリカ粒子と接触させる。
【0157】
本実施形態によるプロセスにより、すでに上記で説明したように、シリカ粒子に新しく非常に特別に調整された特性を与えることを可能にする、異なる官能化残基を有するシリカ粒子が得られる。この実施形態によれば、シリカ粒子は、疎水シリカ粒子に対応する表面特性を提供する疎水性または親水性のいずれかである少なくとも1つまたは複数のシランと接触させ、そしてコーティングマトリックスへのシリカ粒子の組み込みを可能にするコーティングマトリックス反応性官能基を有する少なくとも1つのタイプのシランと接触させることが好ましい。
【0158】
本発明による官能化シリカ粒子の製造方法のさらに好ましい実施形態では、シリカ粒子を、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性部分を含む式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランと接触させ、そして式(1)および/または(2)の親水性シランの非存在下で、式(1)および/または(2)の1つまたは複数の疎水性シランと接触させる、または
ここでシリカ粒子を、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性部分を含む式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランと接触させ、そして式(1)および/または(2)の疎水性シランの非存在下で、式(1)および/または(2)の1つまたは複数の親水性シランと接触させる。
【0159】
シリカ粒子と接触する2つ以上のシランのこのような好ましい選択によって、シリカ粒子の優れた表面特性を提供することができる。
【0160】
本発明による官能化シリカ粒子の製造方法のさらに好ましい実施形態では、式(1)の1つまたは複数のシランのモル量に基づいて、少なくとも約0.5当量の水の存在下で、式(1)の1つまたは複数シランのモル量に基づいて、好ましくは少なくとも約1.0当量の水の存在下、最も好ましくは少なくとも約1.5当量の水の存在下で、シリカ粒子を式(1)の1つまたは複数のシランと接触させる。
【0161】
シランおよび/または単数または複数のシランに存在する加水分解性基の官能化に応じて、水の存在は、官能化されるシリカ粒子とのシランの縮合反応を促進する。
【0162】
別の態様では、本発明は、1つまたは複数の一価基Aを含む官能化シリカ粒子に関し、
ここでAは式-M-Fの基であり、
ここでMは、Lまたは下記式の基から選択され、
-{L-[SiR O]-SiR -L-、ここで
Lは、1つまたは複数の-O-、-NR-C(O)-、および/または-NR-、-OC(O)NR-、-NR-C(O)-NR-部分によって中断され得、そして1つまたは複数のOH基で置換され得る、少なくとも2個の炭素原子を有する二価のアルキレン基からなる群から独立して選択され、ここでRは水素、MeSi-またはC1-C8-アルキルであり、好ましくは、Lは二価のC2-C12-アルキレン基、より好ましくは二価のC2-C4アルキレン基であり、最も好ましくはLは-(CH-および/または-(CH-であり、
は非加水分解性残基、好ましくはヒドロカルビル基、より好ましくはアルキル基から独立して選択され、最も好ましくはRはメチルであり、
p=1から約9、好ましくはp=1または4、より好ましくはp=4、
m=1から約20、好ましくはm=1、および
Fは、約100個までの炭素原子を有し、そして-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-C(S)-、第三級アミノ基、
【化10】

または第四級アンモニウム基
【化11】

から選択される1つまたは複数の基を任意選択で含み、そしてOH基、SH基、ハライド基、オルガノシリル基、またはトリオルガノシロキシ基で置換され得る、任意選択で置換された、直鎖、環状または分岐の、飽和、不飽和または芳香族ヒドロカルビル基からなる群から選択され、
そして基Aは、1つまたは複数の酸素原子を介してシリカ粒子の二酸化ケイ素ネットワークに連結されたケイ素原子を介してシリカ粒子に結合され、ここで、基-Aまたは酸素原子によって占められていない前記ケイ素原子の原子価は、上記で定義した置換基Rによって占められている。
【0163】
当業者には明らかであるように、そのようなシリカ粒子は、上記の実施形態に記載のシリカ粒子に対応し、一般式(1)および/または(2)のシランによる官能化に限定されない。したがって、上記の特定の選択および好ましい実施形態は、上記の実施形態で説明したように、基Aとその構成要素-M-、-F、R、およびMを表し得る式-{L-[SiR O]-SiR -L-に存在するパラメータmおよびpもまた、適用可能であり、そして本発明による1つまたは複数の一価基Aを含む官能化シリカ粒子に好ましい。
【0164】
類似の方法で式(1)および(2)のシランについて上記で定義した通り、「疎水性基A」という用語は、水とオクタノールの50/50混合物中の基Aの末端L-F基を含む化合物H-L-Fの分配係数Poct/watのlogP値が0.5以上である基Aを指し、一方で、「親水性基A」という用語は、水とオクタノールの50/50混合物中の基AのL-F基を含む化合物H-L-Fの分配係数のlogP値が0.5未満である基Aを指す。
【0165】
本発明はさらに、コーティング組成物を製造するための、前述の実施形態のいずれかによるか、またはそこに記載された方法によって得られたシリカ粒子の使用に関する。
【0166】
そこでは、「コーティング組成物」という用語は特に限定されず、通常は基材と呼ばれる物体の表面に適用されるカバーとして使用される任意の組成物を指す。コーティング組成物を適用する目的は、装飾的、機能的、またはその両方であり得る。コーティング組成物自体の適用から得られるコーティングは、基材を完全に覆う全面コーティングであってもよいし、基材の一部のみを覆ってもよい。塗料とラッカーは、主に基材の保護と装飾の2つの用途を持つコーティングであるが、装飾のみ、または例えば腐食防止による保護機能のみに使用されることがあり得る。
【0167】
機能性コーティング組成物を適用して、基材の表面特性、例えば接着性、湿潤性、耐食性、汚れに対する感受性、引っ掻き抵抗、光沢、耐摩耗性を変えることができる。他の場合、例えば半導体デバイスの製造(基材がウエハである場合)では、コーティング組成物の適用により得られるコーティングは、磁気応答や導電性などのまったく新しい特性を追加し、最終製品の重要な部分を形成する。
【0168】
本発明によれば、コーティング組成物は、好ましくは保護コーティング組成物であり、すなわち、その適用により、基材を少なくともある程度保護するコーティングまたは塗料が得られ、これは、木材をシーリングおよび防水するためのコーティング組成物、コンクリートの表面をシーリングするためのコーティング組成物、フィルム形成シーラーおよび床用塗料、シームレスのポリマーまたは樹脂床材、堤防の壁または封じ込めライニング、コンクリート壁の防水および防湿のためのコーティング組成物、屋根のコーティング組成物、石造建築のシーリングおよび防水のためのコーティング組成物、機械、装置および構造物を保存するためのコーティング組成物、金属、合金およびコンクリート用のメンテナンスコーティング組成物および塗料、耐薬品性コーティング組成物、耐摩耗性を改善するためのコーティング組成物、特に、転がり軸受用の耐摩擦性、耐摩耗性および耐スカッフィング性コーティング組成物、引っかき傷および摩耗損失を低減するためのプラスチックおよびその他の材料上の硬質耐スクラッチ性コーティング組成物、浸食/摩耗攻撃を受けるコンクリート、金属および合金上のバリアコーティング組成物、防食コーティング組成物、特に、自動車用アンダーボディシーラント、設備および構造用鋼を劣化から保護するための防食コーティング組成物、構造用鋼の断熱および耐火保護のためのコーティング組成物、受動的防火のためのコーティング、絶縁のためのコーティング組成物、防水紙および防水布へのコーティング組成物、落書き防止コーティング組成物、防曇コーティング組成物、防氷コーティング組成物、防塵コーティング組成物、清掃が容易なコーティング組成物、抗菌表面を得るための抗菌コーティング組成物、および例えば船体の表面の汚損除去および防汚特性を改善するためのコーティング組成物からなる群から選択される。
コーティングの形成をもたらすコーティング組成物は、それらが本発明による官能化シリカ粒子を含有する限り、それらの配合に関して特に限定されない。
【0169】
本発明による好ましい実施形態では、本発明による官能化シリカ粒子を使用して製造されるコーティング組成物は、硬化性コーティング組成物である。
本発明による硬化性コーティング組成物は、化学プロセスによるポリマー鎖の架橋によるポリマー材料の強靭化または硬化を指す、硬化可能な任意のコーティング組成物であり得る。前述の硬化プロセスは、熱、放射線、電子線、または化学添加物によって影響を受けることがあり得、これはまた周囲空気からの水分または酸素との接触を含み、粘度または硬度の増加を特徴的に伴う。この用語は、組成物中に存在するモノマーが重合のための複数の部位を有し、モノマーの重合および架橋が同時に起こる場合にも使用される。これは例えば、重合および架橋のための部位として機能するいくつかのアクリレート部分を含むポリアクリレートモノマーの場合である。
【0170】
さらに、本発明による「硬化性コーティング組成物」という用語は、様々な有機ポリマー、有機ポリマーと有機モノマーとの混合物、または有機モノマーを含む多様なタイプの組成物を指す。
本発明によるシリカ粒子が使用される好ましい硬化性コーティング組成物のタイプは、
- エポキシ/アミン組成物
- マイケル付加硬化組成物
- ラジカル重合硬化組成物
- 縮合硬化組成物、および
- 付加硬化組成物である。
【0171】
本発明によれば、「エポキシ/アミン組成物」という用語は、エポキシコーティング組成物を指し、ここで硬化工程にアミンベース硬化剤を使用し、これは脂肪族アミン、ポリアミドおよびアミドアミン、脂環式アミン、芳香族アミン、メルカプタン、無水物、芳香族無水物、脂環式無水物、脂肪族無水物から選択される。多くの場合、追加の硬化触媒は、そのような組成物中に存在し、主にルイス塩基触媒、例えば三級アミンまたはルイス酸触媒、例えばホウ素ベースの触媒、四級アンモニウム塩、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、ホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン、有機亜鉛、有機スズ、有機ホウ素、有機チタン化合物、V族元素の化合物、たとえばWCl、金属酸化物、およびアミンから選択される。このような組成物は、周囲温度で反応することができることが多いため、高温に感受性の任意の用途にしばしば選択される。
アミン硬化エポキシコーティングは、エポキシ樹脂を適切なアミン硬化剤と組み合わせることによって調製される。第一級または第二級アミン基は、3員エポキシド環の炭素原子を攻撃し、アミン基とヒドロキシル基を持つ開環をもたらす。第一級アミンは第二級アミンを形成し、これは再び反応して第三級アミンを形成するが、速度は遅い。硬化剤単位は、2つ以上のアミン官能基を有し、硬化剤が複数のエポキシ樹脂分子にわたって架橋することを可能にし、得られるエポキシの架橋密度および様々な耐性を増加させる。脂肪族アミンは、脂環式アミンよりも容易に反応し、芳香族アミンよりもはるかに容易に反応するが、後者の反応性の低いアミンは、はるかに高い温度抵抗力のエポキシを形成する傾向がある。芳香族アミンは、対応する化合物を取り扱うことによる健康への悪影響のため、もはやあまり使用されない。
アミン硬化剤の各クラスには、硬化速度、耐薬品性、耐溶剤性、温度適合性、柔軟性、粘度、機械的強度、架橋密度、色、および毒性の点で、その固有の長所と短所を有する。さらに各クラスは、これらの特性をさらに変化させるさまざまな硬化剤のファミリー全体を含む。
【0172】
本発明によれば、「マイケル付加硬化組成物」という用語は、その硬化がマイケル付加反応、すなわち、電子求引性置換基を有する(共役)不飽和化合物への様々な求核剤の付加を伴うコーティング組成物を指す。比較的穏やかな条件下で、しばしば量的な収率で非常に効率的な方法で、広範囲の非常に複雑な高分子の合成を可能にする。基本的に、α,β-不飽和アルデヒドまたはケトン、ビニルエステル、ビニルスルホン、イミダゾール、およびマレイミドなどの活性化二重結合を有する任意のモノマーは、チオール、アミンまたは任意の安定化されたカルバニオンなどの求核剤によるマイケル付加を受ける。
マイケル付加反応は、さまざまな構造のポリマーを調製するためにも使用できる。このタイプの逐次重合のモノマーは、通常、共役ビスジエンおよびビスジエノフィル(A-AタイプおよびB-Bタイプのモノマーまたはコモノマー、この点で、「A」という用語は、「A-A型モノマー」に存在する反応性基、例えば「B-B型モノマー」と反応する共役ビスジエン、例えば、「(A-A-B-B)-ポリマー」を得るためのビスジエノフィルを指し、式(1)および(2)のシラン中に存在する基「A」ではない)を含む分子である。
【0173】
本発明による「ラジカル重合硬化組成物」という用語は、フリーラジカル重合によって硬化される組成物を指す。フリーラジカル重合は、開始、成長、および停止の3つの基本的なステップで構成される。開始は、ラジカルの形成とそれに続くラジカルのビニルモノマーとの反応を含み、成長は、活性中心の変化なしに、成長するポリマー鎖へのモノマーの迅速かつ漸進的な付加であり、停止は、通常、2つの成長するポリマー鎖のラジカルの結合またはカップリング、または不均化による、成長活性中心の破壊である。これらの3つのプロセスに加えて、連鎖移動が発生することがあり得、これは、成長活性部位が活性鎖から不活性(休止)部位、モノマー、または溶媒分子(移動剤)に移動することである。
【0174】
本発明によれば、「縮合硬化性組成物」という用語は、逐次重合の形態である縮合重合によって硬化される組成物を指す。小さな分子は互いに反応してより大きな構造単位を形成する一方で、水やメタノールなどの副産物として小さな分子を放出する。縮合反応のよく知られた例は、カルボン酸とアルコールのエステル化である。両方の部分が二官能性である場合、縮合生成物は直鎖ポリマーであり、部分の少なくとも1つが三官能性または四官能性である場合、得られるポリマーは架橋ポリマー(すなわち、三次元ネットワーク)である。反応性基が1つだけのモノマーを追加すると、成長している鎖が停止し、その結果(平均)分子量が低下する。したがって、平均分子量および架橋密度は、縮重合に関与する各モノマーの官能基および混合物中のその濃度に依存する。
【0175】
最後に、本発明によれば、「付加硬化組成物」という用語は、有機ジイソシアネートまたはポリイソシアネートとジオールまたはポリオール化合物とから形成されるポリウレタンベースの組成物を指し、これは、主鎖にウレタン結合(-NH-C(=O)-O-)をもたらす。
【0176】
本発明によるさらに好ましい実施形態では、本発明による硬化性コーティング組成物は、有機ポリマー、有機ポリマーと有機モノマーとの混合物、またはポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオルガノシロキサン、種々のタイプのエポキシ樹脂、例えば、グリシジルベースのエポキシ樹脂、ノボラックベースのエポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂から選択される有機モノマー、ならびに様々なコポリマーおよびポリマー化合物の混合物、および対応するモノマー、すなわちモノ(メタ)アクリレート、ジメチルカーボネートおよびジオール、特にジフェニルメタン誘導体、オレフィン、およびポリイソシアネート、またはそれらの混合物を含む。
【0177】
本発明によるコーティング組成物、特に本発明による硬化性コーティング組成物は、さらなる添加剤、例えばさらなる光開始剤、光安定剤、充填剤、特にカーボンブラック、本発明によらない金属酸化物粒子およびシリカ粒子、本発明によるもの以外の官能化シリカ化合物、難燃剤、溶媒、硬化触媒、反応性界面活性剤、着色剤、安定剤、防腐剤、光安定剤、界面活性剤、レベリング剤、およびその他のレオロジー剤を任意選択で含むこともまた好ましい。
【0178】
本発明によれば、上記の実施形態で定義された本発明によるシリカ粒子は、シリカ粒子を最終配合物に添加して混合するか、他の成分をシリカ粒子に添加して混合するか、またはコーティング組成物の製造中の任意の時点でシリカ粒子を添加して混合するかのいずれかにより本発明によるシリカ粒子をコーティング組成物の他の成分と混合することにより、コーティング組成物、好ましくは硬化性コーティング組成物の製造に使用される。製造されるコーティング組成物のタイプおよび製造に使用される装置に応じて適切な、任意の混合手段を適用することができる。
【0179】
本発明による好ましい実施形態では、本発明によるシリカ粒子は、海洋防汚添加剤、一般防汚添加剤、防氷添加剤、防泥添加剤、防曇添加剤、自己洗浄添加剤、防付着、防塵、防指紋、および防落書き添加剤、特にコーティング組成物中の一般的な防汚添加剤または防曇添加剤として使用される。
【0180】
好ましくは、本発明によるシリカ粒子は、一般的な防汚添加剤として、特に海洋防汚添加剤として使用される。上記の実施形態で定義された本発明によるシリカ粒子を使用して製造されたコーティング組成物は、表面、特に海洋環境にさらされる表面に優れた防汚特性を提供することが実証されている。これにより、本発明によるシリカ粒子の使用は、船舶、船体、船、海上コンクリート構造物、海中コンクリート構造物、木製海上構造物、海中木製構造物、海上プラスチック構造物、海中プラスチック構造物、および海洋環境にさらされるすべての種類の建物、石造建築、構造物、および設備用の硬化性コーティングの製造において非常に望ましいものとなる。
【0181】
また好ましくは、本発明によるシリカ粒子は、防曇添加剤として、より好ましくは、プラスチック基材、特にポリカーボネート基材またはPMMA(ポリメチルメタクリレート)基材をコーティングするためのコーティング組成物を製造するための防曇添加剤として使用される。上記の実施形態で定義された本発明によるシリカ粒子を使用して製造されたコーティング組成物は、特にコーティング組成物がポリカーボネートまたはメタクリレートまたはアクリレート基材、特にPMMA基材の表面に適用される場合に、表面に優れた防曇特性を提供することが実証されている。これにより、光学装置、スクリーンおよびシールドまたは外部ランプ、特に自動車のヘッドランプ用の硬化性コーティングの製造における本発明によるシリカ粒子の使用が非常に望ましいものとなる。
【0182】
本発明はまた、上記の実施形態に記載の本発明によるシリカ粒子を含むコーティング組成物にも関する。
【0183】
上述のように、本発明によるコーティング組成物は、本発明によるシリカ粒子を含むことを特徴とする。コーティング組成物は、装飾的、機能的、またはその両方であり得、基材を完全に覆う全面コーティングとして適用され得るか、または基材の一部のみをカバーし得る。塗料とラッカーは、主に基材の保護と装飾の2つの用途を持つコーティングであるが、装飾のみ、または腐食防止などの保護機能のみに使用されることがあり得る。したがって、本発明によるシリカ粒子を含む塗料およびラッカーは、本発明のこの実施形態に含まれる。
本発明による機能性コーティング組成物は、基材の表面特性、例えば接着性、湿潤性、耐食性、汚れに対する感受性、引っ掻き抵抗、光沢、および耐摩耗性などを変えるために適用することができる。他の場合、例えば半導体デバイスの製造(基材がウエハである場合)では、コーティング組成物を適用して得られるコーティングは、磁気応答や導電性などのまったく新しい特性を追加し、最終製品の重要な部分を形成する。
【0184】
本発明によれば、コーティング組成物は、好ましくは上記で定義した保護コーティング組成物であり、最も好ましくは硬化性保護組成物である。コーティングの形成をもたらすコーティング組成物は、それらが本発明による官能化シリカ粒子を含有する限り、それらの配合に関して特に限定されない。
【0185】
本発明によれば、本発明による官能化シリカ粒子を使用して製造されるコーティング組成物は、硬化性コーティング組成物、特に硬化性エポキシ/アミンコーティング組成物、マイケル付加硬化コーティング組成物、ラジカル重合硬化コーティング組成物、縮合硬化コーティング組成物、および付加硬化コーティング組成物であることが好ましい。
【0186】
本発明による硬化性コーティング組成物は、化学プロセスによるポリマー鎖の架橋によるポリマー材料の強靭化または硬化を指す、硬化可能な任意のコーティング組成物であり得る。前述の硬化プロセスは、熱、放射線、電子線、または化学添加物によって影響を受けることがあり得、これはまた、周囲空気からの水分または酸素との接触を含み、粘度または硬度の増加を特徴的に伴う。この用語は、組成物中に存在するモノマーが重合のための複数の部位を有し、モノマーの重合および架橋が同時に起こる場合にも使用される。これは、例えば、重合および架橋のための部位として機能するいくつかのアクリレート部分を含むポリアクリレートモノマーの場合である。
【0187】
さらに、本発明による硬化性コーティング組成物は、多様なタイプの組成物、好ましくは硬化性エポキシコーティング組成物、マイケル付加硬化コーティング組成物、ラジカル重合硬化コーティング組成物、縮合硬化コーティング組成物、および様々な有機ポリマー、有機ポリマーとモノマーの混合物、またはモノマー、例えばすべての種類のポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオルガノシロキサン、様々な種類のエポキシ樹脂、例えば、グリシジルベースのエポキシ樹脂、ノボラックベースのエポキシ樹脂または脂肪族エポキシ樹脂を含む付加硬化コーティング組成物、ならびに様々なコポリマーおよびポリマー化合物の混合物、および対応するモノマー、すなわちモノ(メタ)アクリレート、ジメチルカーボネートおよびジオール、特にジフェニルメタン誘導体、オレフィン、およびポリイソシアネートを含む。
【0188】
本発明によるコーティング組成物、特に本発明による硬化性コーティング組成物は、さらなる添加剤、例えばさらなる光開始剤、光安定剤、充填剤、特にカーボンブラック、本発明によらない金属酸化物粒子およびシリカ粒子、本発明によるもの以外の官能化シリカ化合物、難燃剤、溶媒、硬化触媒、反応性界面活性剤、着色剤、安定剤、防腐剤、光安定剤、界面活性剤、レベリング剤、およびその他のレオロジー剤を任意選択で含むこともまた好ましい。
【0189】
本発明による好ましい実施形態では、本発明によるシリカ粒子を含むコーティング組成物は、アルコキシシラン類を硬化性成分として含む縮合硬化塗料組成物、硬化性成分としてポリ(メタ)アクリレートを含むラジカル重合硬化性コーティング組成物、または硬化システムとして1つまたは複数のエポキシ化合物および1つまたは複数のアミン化合物を含有する硬化性エポキシコーティング組成物である。
【0190】
本発明による別の好ましい実施形態では、本発明によるシリカ粒子を含むコーティング組成物は、硬化性成分として、アクリレート、ポリオルガノシロキサン、アルコキシシラン、エポキシド、アミン、ヒドロキシアクリレート、イソシアネート、またはそのような硬化性モノマー、オリゴマーもしくはポリマーの1つまたは複数の組み合わせを含む硬化性コーティング組成物である。
好ましくは、本発明によるシリカ粒子を含むコーティング組成物は、OH末端シリコーン油を含み、より好ましくは、本発明によるシリカ粒子を含むコーティング組成物は、OH末端シリコーン油と、部分Fにポリエーテル基を含む本発明による1つまたは複数のシリカ粒子とを含み、そして最も好ましくは、本発明によるシリカ粒子を含むコーティング組成物は、1から約400の範囲の鎖長(主鎖中のケイ素原子の数)を有するOH末端シリコーン油と、部分Fにポリエーテル基を含む本発明による1つまたは複数のシリカ粒子とを含む。
【0191】
また好ましくは、本発明によるシリカ粒子を含むコーティング組成物は、1つまたは複数のアクリレートまたはメタクリレート樹脂、より好ましくは、1つまたは複数のアクリレートまたはメタクリレート樹脂、および部分Fにポリエーテル基またはアミノ基を含む本発明による少なくとも1つの官能化シリカ粒子を含み、最も好ましくは、本発明によるシリカ粒子を含むコーティング組成物は、2つ以上のアクリレート樹脂またはメタクリレート樹脂と、部分Fにポリエーテル基またはアミノ基を含む本発明による少なくとも1つの官能化シリカ粒子とを含む。
【0192】
本発明によるさらに別の実施形態では、本発明によるシリカ粒子を含むコーティング組成物は、
- 硬化性ポリマー、オリゴマーまたはモノマーまたは結合剤から選択される1つまたは複数の硬化性成分
- 本発明による1つまたは複数のタイプの官能化シリカ粒子
- 任意選択で、1つまたは複数の光安定剤
- 任意選択で、1つまたは複数の溶媒
- 任意選択で、1つまたは複数の着色剤
- 任意選択で、1つまたは複数の界面活性剤またはその他のレオロジー添加剤
- 任意選択で、1つまたは複数の充填剤
- 任意選択で、1つまたは複数の硬化触媒
を含む。
【0193】
好ましくは、1つまたは複数の硬化性成分および/または結合剤は、アクリレート、メタクリレート、ヒドロキシアクリレート、エステル、芳香族、フェノール、エポキシド、シロキサンまたはシランからなる群から選択され、そしてコーティング組成物の全重量の約20.0から約99.9重量%、好ましくは約30.0から約99.5重量%、より好ましくは約40.0から約99.0重量%を構成する。
【0194】
好ましくは、本発明による1つまたは複数のタイプの官能化シリカ粒子は、コーティング組成物の総重量の約90重量%まで、より好ましくは約0.1から約80重量%、好ましくは約0.5から約70重量%、より好ましくは約1から約60重量%を構成する。
【0195】
好ましくは、光安定剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、レゾルシノール誘導体、およびトリオルガノホスファイト化合物からなる群から選択され、そしてコーティング組成物の約15重量%まで、より好ましくはコーティング組成物の総重量の約0.2から約10重量%、なおより好ましくは約0.5から約8重量%、最も好ましくは約1から約5重量%を構成する。
【0196】
好ましくは、溶媒は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ジオルガノカーボネート、エーテル、ケトン、アルコール、エステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、そしてコーティング組成物の約95重量%まで、より好ましくはコーティング組成物の総重量の0から約90重量%、なおより好ましくは0から約80重量%を構成する。
【0197】
好ましくは、着色剤はコーティング組成物の約5重量%まで、より好ましくはコーティング組成物の総重量の約0.01から約4.0重量%、さらにより好ましくは約0.05から約2.0重量%、最も好ましくは約0.1から約1.5重量%を構成する。
【0198】
好ましくは、硬化触媒は、有機スズ、有機亜鉛、有機チタンおよび有機ホウ素化合物、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、アンモニウム、環状アミン、脂肪族アミン、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、アンモニアおよびその組み合わせからなる群から選択され、そしてコーティング組成物の約20重量%まで、より好ましくはコーティング組成物の総重量の約0.1から約20.0重量%、さらにより好ましくは約0.2から約5.0重量%、最も好ましくは約1.0から約2.0重量%を構成する。
【0199】
好ましくは、充填剤は、未変性シリカ、本発明以外の変性シリカ、マイカ、タルク、カーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムから選択される群から選択され、そしてコーティング組成物の約50重量%まで、より好ましくはコーティング組成物の総重量の約0.5から約30.0重量%、なおより好ましくは約1.0から約20.0重量%、最も好ましくは約2.0から約15.0重量%を構成する。
【0200】
好ましくは、界面活性剤または他のレオロジー添加剤は、コーティング組成物の約0.01から約5.0重量%、より好ましくはコーティング組成物の総重量の約0.05から約1.0重量%、なおより好ましくは約0.1から約0.5重量%を構成する。
【0201】
本発明による好ましい実施形態では、本発明によるコーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、上記の実施形態で定義された本発明によるシリカ粒子を、約0.1から約80重量%、好ましくは約0.5から約70重量%、より好ましくは約1から約60重量%、またより好ましくは約20から約55重量%、最も好ましくは約25から約50重量%含む。
【0202】
本発明によるコーティング組成物は、約1重量%を超えるシリカ粒子を含むことが好ましく、これは、より少ない含有量のシリカ粒子が適用されると、多くの場合、所望の効果が十分に達成されないためであり、その一方で、コーティング組成物は、本発明によるシリカ粒子を約80重量%より低く含むことが好ましく、シリカの含有量が高いと、亀裂および疲労耐性に悪影響を与えることがあり得るからであり、これらは参照により本明細書にそのすべてが取り込まれる、the Handbook of Fillers (4th Edition) - 8. The Effect of Fillers onthe Mechanical Properties of Filled Materials, by ChemTec Publishing、に記載されているとおりである。コーティング組成物が3から60重量%のシリカ粒子を含むことがより好ましく、コーティング組成物が25から50重量%のシリカ粒子を含むことがなおより好ましい。コーティング組成物中の本発明によるシリカ粒子の最適含有量は、コーティング組成物の特定のタイプおよびコーティングの特定の用途にも依存することに留意されたい。
【0203】
本発明による好ましい実施形態のリスト
以下に、本発明による好ましい実施形態を要約する。
1.下記式の1つまたは複数のシランで官能化されたシリカ粒子であって、
HN[-SiR -A] (1)
および/または
3-xSi-A (2)
ここで
は、非加水分解性残基、好ましくはヒドロカルビル基、より好ましくはアルキル基から独立して選択され、最も好ましくはRはメチルであり、
は、加水分解性残基から独立して選択され、好ましくは水素、ヒドロキシ、アシルオキシ基などのヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ハロゲン基、アミノ基、アルコキシまたはアリールオキシ基などのヒドロカルビルオキシ基、より好ましくはアルコキシ基からなる群から選択され、
xは0、1、または2であり、そして
Aは下記式の基であり、
-M-F、
ここで
Mは、Lまたは下記式の基から選択され、
-{L-[SiR O]-SiR -L-、ここで
Lは、1つまたは複数の-O-、-NR-C(O)-、および/または-NR-、-OC(O)NR-、-NR-C(O)-NR-部分によって中断され得、そして1つまたは複数のOH基で置換され得る、少なくとも2個の炭素原子を有する二価のアルキレン基からなる群から独立して選択され、ここでRは水素、MeSi-またはC1-C8-アルキルであり、好ましくは、Lは二価のC2-C12-アルキレン基、より好ましくは二価のC2-C4アルキレン基であり、最も好ましくはLは-(CH-および/または-(CH-であり、
は上記で定義したとおりであり、
p=1から約9、好ましくはp=1または4、より好ましくはp=4、
m=1から約20、好ましくはm=1、
および
Fは、約100個までの炭素原子を有し、そして-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-C(S)-、第三級アミノ基、
【化12】

または第四級アンモニウム基
【化13】

から選択される1つまたは複数の基を任意選択で含み、そしてOH基、SH基、ハライド基、オルガノシリル基、またはトリオルガノシロキシ基で置換され得る、任意選択で置換された、直鎖、環状または分岐の、飽和、不飽和または芳香族ヒドロカルビル基からなる群から選択され、
但し式(2)のシランについて、
(i)Aは下記式の基であり、
-{L-[SiR O]-SiR -L-F、ここでL、R、p、m、およびFは上記で定義したとおりであり、
または
(ii)Aは下記式の基であり、
-L-F、ここでLは少なくとも1つのエーテル基(-O-)を含み、そして任意選択で少なくとも1つのヒドロキシ置換基(-OH)を含み、そしてここでFは上記で定義したとおりであり、但し少なくとも1つのエステル基(-OC(=O)-または-C(=O)-O-)を含むという条件である、
という条件である、シリカ粒子。

2.式(1)において、MがLである場合、基Fが、N、O、P、S、Si、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素などのハロゲン原子などの少なくとも1つのヘテロ原子を含む、実施形態1に記載のシリカ粒子。

3.式(1)において、ヒドロカルビルラジカルFの置換基は、ヒドロキシル、チオール、アルコキシ、シロキシ、ペルフルオロアルキル、カルボキシル、エステル、アミノアルキル、チオアルキル、またはポリエーテル基、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノ、アルコキシシリルおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ基、1,3-ジカルボキシ基、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、ならびにマイケル付加反応におけるドナー基およびアクセプター基からなる群から選択される、実施形態1または2に記載のシリカ粒子。

4.Fは、ポリエーテル部分、エステル部分、およびコーティングマトリックス反応性部分、例えば、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ基、1,3-ジカルボキシ基、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、ならびにマイケル付加反応におけるドナー基およびアクセプター基からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む、前記実施形態のいずれかに記載のシリカ粒子。

5.Fは、
- アルキル、
- アルケニル、
- アルキルカルボニルオキシ、
- ポリアルキレンオキシド基、好ましくは下記一般式のもの、
[-OC[-OC[-OC-R
ここで
[-OC]はエチレンオキシ単位を表し、
[-OC]はプロピレンオキシ単位を表し、そして
[-OC]はブチレンオキシ単位を表し、
q=0から約40、好ましくは0から約20、より好ましくは1から約15、
r=0から約30、好ましくは0から約20、より好ましくは0から約10、
s=0から約20、好ましくは0から約15、より好ましくは0から約10、
ここでq+r+s>2、
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、ヒドロキシアルキル、シロキシ基、例えば、トリオルガノシロキシ基、オルガノシリル、グリシジルおよびグリシジルオキシ基からなる群から選択され、
- グリシジルおよびグリシジルオキシ基、
- オルガノシリル基、例えば、-SiR 、ここでRは、式(1)および(2)について上記で定義した基から独立して選択され、およびシロキシ基、例えば、-OSi(R、ここでRは、式(1)および(2)について上記で定義した基から独立して選択される、
からなる群から選択される、前記実施形態のいずれかに記載のシリカ粒子。

6.式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、疎水性シランから(すなわち、水とオクタノールの50/50混合物中のシランのL-F基を含む化合物H-L-Fの分配係数Poct/watのlogP値が、0.5以上であるシランから)排他的に選択される、前記実施形態のいずれかに記載のシリカ粒子。

7.式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、親水性シランから(すなわち、水とオクタノールの50/50混合物中のシランのL-F基を含む化合物H-L-Fの分配係数のlogP値が、0.5未満であるシランから)排他的に選択される、前記実施形態のいずれかに記載のシリカ粒子。

8.シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の2つ以上の異なるシランで官能化される、前記実施形態のいずれかに記載のシリカ粒子。

9.各シリカ粒子は、式(1)および/または(2)の1つまたは複数の疎水性シランによって、および式(1)および/または(2)の1つまたは複数の親水性シランによって官能化される、実施形態8に記載のシリカ粒子。

10.式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランにおいて、基Fは、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基を含み、そしてここで式(1)および/または(2)の1つまたは複数のさらなるシランは、排他的に親水性シラン、または排他的に疎水性シランのいずれかである、実施形態8に記載のシリカ粒子。

11.式(1)および/または(2)の1つまたは複数のさらなるシランは、排他的に親水性シランであり、そしてここで1つまたは複数の親水性シランの基Fは、ポリヒドロキシル化アルキル基、ポリエーテル基、第四級アンモニウム基を含む炭化水素基、カルボキシレート基を含む炭化水素基、および1つまたは複数のアミノ基を含む炭化水素基からなる群から選択される1つまたは複数の親水性基を含む、実施形態10に記載のシリカ粒子。

12.式(1)および/または(2)の1つまたは複数のさらなるシランは、排他的に疎水性シランであり、そしてここで1つまたは複数の疎水性シランの基Fは、直鎖状または分岐状の非置換アルキル基、ジフルオロメチレンおよび/またはトリフルオロメチル基を含むアルキル基、特にペルフルオロ化アルキル基、トリオルガノシリル基を有するアルキル基、オルガノシロキシ基、アルケニル基またはヘテロ原子を含む置換基を含まない芳香族基、特にアルカリール基およびアラルキル基からなる群から選択される1つまたは複数の親水性基を含む、実施形態10に記載のシリカ粒子。

13.式(1)および/または(2)のシランで官能化された少なくとも2種類の異なるシリカ粒子を含む、前記実施形態のいずれかに記載のシリカ粒子。

14.異なる極性を有する異なるシランで官能化された少なくとも2種類のシリカ粒子を含む、前記実施形態のいずれかに記載のシリカ粒子。

15.式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、
3-xSi-L-[SiR O]-SiR -L-[-OC[-OC[-OC-R
3-xSi-L-[SiR O]-SiR -L-R
HN{-SiR -L-[SiR O]-SiR -L-[-OC[-OC[-OC-R
HN{-SiR -L-[SiR O]-SiR -L-R、および
3-xSi-L-[SiR O]-SiR -L-R
ここで、R、R、R、L、p、q、r、sはそれぞれ前記実施形態で定義したとおりであり、そしてRは、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、グリシジル、グリシジルオキシ、オルガノシリル、例えば、-SiMe-O-SiMe-CH=CH、-SiMe、-SiEt、-Si(iPr)、-SiPh、-Si(cyHex)、-SitBuMe、および-SitBuPhからなる群から選択される、前記実施形態のいずれかに記載のシリカ粒子。

16.Rがアルコキシである、前記実施形態のいずれかに記載のシリカ粒子。

17.実施形態2で定義されるとおりの式(1)のシラン。

18.官能化シリカ粒子の製造のための方法であって、
- シリカ粒子を式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランと接触させること、
HN[-SiR -A] (1)
および/または
3-xSi-A (2)
実施形態1で定義した通りである、
を含む方法。

19.シリカ粒子と式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとを接触させることは、溶媒の存在下である、実施形態18に記載の方法。

20.シリカ粒子と、式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとは、約40℃を超える温度、より好ましくは約50℃を超える温度、最も好ましくは約55℃から約120℃の範囲内の温度で接触される、実施形態18または実施形態19に記載の方法。

21.シリカ粒子は、動的光散乱(DLS)によって測定される約1から約300nm、好ましくは、約1から約150nmの範囲の平均粒子サイズを有するコロイドシリカ粒子、または、DLSまたは透過型電子顕微鏡法(TEM)によって測定される約1から約600μm、好ましくは約20から約400μmの範囲の平均粒子サイズを有するヒュームドシリカから選択される、実施形態18から20のいずれかに記載の方法。

22.シリカ粒子と式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランとを接触させることは、有機スズ、有機亜鉛、有機チタンおよび有機ホウ素化合物、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、アンモニウム化合物、環状アミン、脂肪族アミン、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、アンモニアおよびそれらの組み合わせ、好ましくは有機スズおよび有機チタン化合物からなる群から選択される縮合触媒の存在下である、実施形態18から21のいずれかに記載の方法。

23.式(1)のシランにおいて、基MがLである、実施形態18から22のいずれかに記載の方法。

24.式(1)および/または(2)のシランにおいて、Fは、
- アルキル、
- アルケニル、
- アルキルカルボニルオキシ、および
- ポリアルキレンオキシド基、好ましくは下記一般式のもの、
[-OC[-OC[-OC-R
ここで
[-OC]はエチレンオキシ単位を表し、
[-OC]はプロピレンオキシ単位を表し、そして
[-OC]はブチレンオキシ単位を表し、
q=0から約40、好ましくは0から約20、より好ましくは1から約15、
r=0から約30、好ましくは0から約20、より好ましくは0から約10、
s=0から約20、好ましくは0から約15、より好ましくは0から約10、
ここでq+r+s>2、
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、ヒドロキシアルキル、シロキシ基、例えば、トリオルガノシロキシ基、オルガノシリル、グリシジルおよびグリシジルオキシ基からなる群から選択され、
- グリシジルおよびグリシジルオキシ基、
- オルガノシリル基、例えば、-SiR 、ここでRは、式(1)および(2)について上記で定義した基から独立して選択され、およびシロキシ基、例えば、-OSi(R、ここでRは、式(1)および(2)について上記で定義した基から独立して選択される、からなる群から選択される、実施形態18から23のいずれかに記載のシリカ粒子。

25.式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランの基Fは、ポリエーテル部分、エステル部分およびコーティングマトリックス反応性部分、例えば、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノ、アルコキシシリルおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ基、1,3-ジカルボキシ基、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、ならびにマイケル付加反応におけるドナー基およびアクセプター基からなる群から選択される、少なくとも1つの部分を含む、実施形態18から24のいずれかに記載の方法。

26.式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、疎水性シランから排他的に選択され、または式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、親水性シランから排他的に選択される、実施形態18から25の何れかに記載の方法。

27.シリカ粒子は、Rがアルコキシ基である式(2)の1つまたは複数のシランと接触される、実施形態18から26のいずれかに記載の方法。

28.前記実施形態で定義したとおりの式(1)および/または(2)の2つ以上のシランを1工程でシリカ粒子と接触させ、またはここで式(1)および/または(2)の2つ以上のシランを2以上の工程でシリカ粒子と接触させる、実施形態18から27のいずれかに記載の方法。

29.シリカ粒子は、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性部分を含む式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランと接触され、そして式(1)および/または(2)の親水性シランの非存在下で、式(1)および/または(2)の1つまたは複数の疎水性シランと接触される、または
ここでシリカ粒子は、1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性部分を含む式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランと接触され、そして式(1)および/または(2)の疎水性シランの非存在下で、式(1)および/または(2)の1つまたは複数の親水性シランと接触される、実施形態18から28のいずれかに記載の方法。

30.シリカ粒子は、式(1)の1つまたは複数のシランのモル量に基づいて、少なくとも約0.5当量の水の存在下で、式(1)の1つまたは複数のシランのモル量に基づいて、好ましくは少なくとも約1.0当量の水の存在下で、最も好ましくは少なくとも約1.5当量の水の存在下で、式(1)の1つまたは複数のシランと接触される、実施形態18から28のいずれかに記載の方法。

31.1つまたは複数の一価基Aを含む官能化シリカ粒子であって、
ここでAは下記式の基であり、
-M-F、
ここで
Mは、Lまたは下記式の基から選択され、
-{L-[SiR O]-SiR -L-、ここで
Lは、1つまたは複数の-O-、-NR-C(O)-、および/または-NR-、-OC(O)NR-、-NR-C(O)-NR-部分によって中断され得、そして1つまたは複数のOH基で置換され得る、少なくとも2個の炭素原子を有する二価のアルキレン基からなる群から独立して選択され、ここでRは水素、MeSi-またはC1-C8-アルキルであり、好ましくは、Lは二価のC2-C12-アルキレン基、より好ましくは二価のC2-C4アルキレン基であり、最も好ましくはLは-(CH-および/または-(CH-であり、
は、非加水分解性残基、好ましくはヒドロカルビル基、より好ましくはアルキル基から独立して選択され、最も好ましくはRはメチルであり、
p=1から約9、好ましくはp=1または4、より好ましくはp=4、
m=1から約20、好ましくはm=1、
および
Fは、約100個までの炭素原子を有し、そして-O-、-S-、-NH-、-C(O)-、-C(S)-、第三級アミノ基、
【化14】

または第四級アンモニウム基
【化15】

から選択される1つまたは複数の基を任意選択で含み、そしてOH基、SH基、ハライド基、オルガノシリル基、またはトリオルガノシロキシ基で置換され得る、任意選択で置換された、直鎖、環状または分岐の、飽和、不飽和または芳香族ヒドロカルビル基からなる群から選択され、
そして基Aは、1つまたは複数の酸素原子を介してシリカ粒子の二酸化ケイ素ネットワークに連結されたケイ素原子を介してシリカ粒子に結合され、ここで、基-Aまたは酸素原子によって占められていない前記ケイ素原子の原子価は、上記で定義した置換基Rによって占められている、官能化シリカ粒子。

32.MがLであり、そして基Fが、N、O、P、S、Si、またはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素などのハロゲン原子などの少なくとも1つのヘテロ原子を含む、実施形態31に記載の官能化シリカ粒子。

33.ヒドロカルビルラジカルFの置換基は、ヒドロキシル、チオール、アルコキシ、シロキシ、ペルフルオロアルキル、カルボキシル、エステル、アミノアルキル、チオアルキル、またはポリエーテル基、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノ、アルコキシシリルおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ基、1,3-ジカルボキシ基、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、ならびにマイケル付加反応におけるドナー基およびアクセプター基からなる群から選択される、実施形態31または32に記載のシリカ粒子。

34.Fは、ポリエーテル部分、エステル部分、およびコーティングマトリックス反応性部分、例えば、アルケニル、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、チオール、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシ(-COOH)、アミノおよびイソシアネート基、ケトン、ジケトン、1,3-ジケトン、ジカルボキシ基、1,3-ジカルボキシ基、ジエステル、1,3-ジエステル、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、アルキルスルホニルフルオリド基、ならびにマイケル付加反応におけるドナー基およびアクセプター基からなる群から選択される少なくとも1つの部分を含む、実施形態31から33のいずれかに記載のシリカ粒子。

35.Fは、
- アルキル、
- アルケニル、
- アルキルカルボニルオキシ、および
- ポリアルキレンオキシド基、好ましくは下記一般式のもの、
[-OC[-OC[-OC-R
ここで
[-OC]はエチレンオキシ単位を表し、
[-OC]はプロピレンオキシ単位を表し、そして
[-OC]はブチレンオキシ単位を表し、
q=0から約40、好ましくは0から約20、より好ましくは1から約15、
r=0から約30、好ましくは0から約20、より好ましくは0から約10、
s=0から約20、好ましくは0から約15、より好ましくは0から約10、
ここでq+r+s>2、
は、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、ヒドロキシアルキル、シロキシ基、例えば、トリオルガノシロキシ基、オルガノシリル、グリシジルおよびグリシジルオキシ基からなる群から選択され、
- グリシジルおよびグリシジルオキシ基、
- オルガノシリル基、例えば、-SiR 、ここでRは、上記で定義した基から独立して選択され、およびシロキシ基、例えば-OSi(R、ここでRは、上記で定義した基から独立して選択される、からなる群から選択される、実施形態31から34のいずれかに記載のシリカ粒子。

36.1つまたは複数の基Aは、疎水性基から(すなわち、水とオクタノールの50/50混合物中の基AのL-F-基を含む化合物H-L-Fの分配係数Poct/watのlogP値が、0.5以上である基Aから)排他的に選択される、実施形態31から35のいずれかに記載のシリカ粒子。

37.式(1)および/または(2)の1つまたは複数の基Aは、親水性基から(すなわち、水とオクタノールの50/50混合物中の基AのL-F-基を含む化合物H-L-Fの分配係数のlogP値が、0.5未満である基Aから)排他的に選択される、実施形態31から36のいずれかに記載のシリカ粒子。

38.シリカ粒子は、2つ以上の異なる基Aで官能化されている、実施形態31から37のいずれかに記載のシリカ粒子。

39.各シリカ粒子は、1つまたは複数の疎水性基Aによって、および1つまたは複数の親水性基Aによって官能化されている、実施形態38に記載のシリカ粒子。

40.1つまたは複数の基Aにおいて、基Fは1つまたは複数のコーティングマトリックス反応性基を含み、そしてここで1つまたは複数のさらなる基Aは、排他的に親水性基Aまたは排他的に疎水性基Aのいずれかである、実施形態38に記載のシリカ粒子。

41.1つまたは複数のさらなる基Aは排他的に親水性基Aであり、そしてここで1つまたは複数の親水性基Aの基Fは、ポリヒドロキシル化アルキル基、ポリエーテル基、第四級アンモニウム基を含む炭化水素基、カルボキシレート基を含む炭化水素基、および1つまたは複数のアミノ基を含む炭化水素基からなる群から選択される1つまたは複数の親水性基を含む、実施形態40に記載のシリカ粒子。

42.1つまたは複数のさらなる基Aは排他的に疎水性シランであり、そしてここで1つまたは複数の疎水性基Aの基Fは、直鎖状または分岐状の非置換アルキル基、ジフルオロメチレンおよび/またはトリフルオロメチル基を含むアルキル基、特にペルフルオロ化アルキル基、トリオルガノシリル基を有するアルキル基、オルガノシロキシ基、アルケニル基またはヘテロ原子を含む置換基を含まない芳香族基、特にアルカリール基およびアラルキル基からなる群から選択される1つまたは複数の親水性基を含む、実施形態40に記載のシリカ粒子。

43.基Aで官能化された少なくとも2種類の異なるシリカ粒子を含む、実施形態31から42のいずれかに記載のシリカ粒子。

44.異なる極性を有する異なる基Aで官能化された少なくとも2種類のシリカ粒子を含む、実施形態31から43のいずれかに記載のシリカ粒子。

45.式(1)および/または(2)の1つまたは複数のシランは、
-L-[SiR O]-SiR -L-[OC[-OC[-OC-R
-L-[SiR O]-SiR -L-R
からなる群から選択され、
ここでR、R、L、p、q、r、sは、それぞれ前記実施形態で定義したとおりであり、そしてRは、アルキル、アルキルカルボニルオキシ、グリシジル、グリシジルオキシ、オルガノシリル、例えば-SiMe-O-SiMe-CH=CH、-SiMe、-SiEt、-Si(iPr)、-SiPh、-Si(cyHex)、-SitBuMe、および-SitBuPh、からなる群から選択される、実施形態31から44のいずれかに記載のシリカ粒子。

46.コーティング組成物の製造のための、実施形態1から16、31から45のいずれかに記載のシリカ粒子、または実施形態18から30のいずれかに記載の方法によって製造されたシリカ粒子の使用。

47.コーティング組成物中の、海洋防汚添加剤、一般防汚添加剤、防氷添加剤、防泥添加剤、防曇添加剤、自己洗浄添加剤、防付着、防塵、防指紋、および防落書き添加剤、特に一般防汚添加剤または防曇添加剤としての、実施形態1から16、31から45のいずれかに記載のシリカ粒子、または実施形態18から30のいずれかに記載の方法によって製造されたシリカ粒子の使用。

48.実施形態1から16、31から45のいずれかに記載のシリカ粒子、または実施形態18から30のいずれかに記載の方法によって製造されたシリカ粒子を含むコーティング組成物。

49.コーティング組成物の総重量に基づいて、約0.1から約80重量%、好ましくは約0.5から約70重量%、より好ましくは約1から約60重量%、またより好ましくは約20から約55重量%、そして最も好ましくは 約25から約50重量%のシリカ粒子を含む、前記実施形態48に記載のコーティング組成物。
【実施例
【0204】

以下の略語および商品名は、実施例セクションで使用される。
Me=メチル(-CH
Aerosil300(BET270-330m/g;SiO含有量>99.8%;粒子サイズ:5-50nm一次粒子サイズ,100μm平均凝集サイズ);Breox AA E450H(BASF),Lamoreaux触媒(abcr) VeoVa9(Versatic(商標)酸9のビニルエステル,10個の炭素原子を含む高度に分岐した構造の合成飽和モノカルボン酸,Hexion);AkzoNobel製のLevasil EXP 310(シリカの水中分散液;シリカ含有量:30重量%;粒子サイズ:10nm;シリカのBET:200m-1);Epikote 828EL(ビスフェノールAおよびエピクロロヒドリンから調製されたエポキシ樹脂,Hexion);Silopren E0.5(20℃で0.5Pa.sの粘度を有するジ-ヒドロキシ-末端化直鎖ポリシロキサンベースポリマー;Momentive Performance Materials);Silopren E2(20℃で2Pa.sの粘度を持つジ-ヒドロキシ-末端直鎖ポリシロキサンベースポリマー;Momentive Performance Materials)。
【0205】
例1(出発物質)
NH(SiMe-(CH-SiMe(OSiMe-O-SiMe-(CHMe)の調製
150.5gのn-ブチル水素ペンタシロキサン(HSiMe(OSiMe-SiMe-(CHMe)、および58.5gのジメチルビニルクロロシランを、N下、100℃で3時間、0.06gのLamoreaux触媒(3重量%Pt溶液)を添加して反応させた。
反応混合物をさらに80℃に加熱し、反応フラスコを脱気した。デジタル圧力センサーを使用することによる圧力上昇が、HClの遊離による反応の完了を示すまで、反応物にNHの流れをゆっくりと加えた。反応混合物を50℃および100mbarのNH高圧で1.5時間さらに撹拌した。その後、反応フラスコを50℃で1時間脱気した(<30mbarまで)。PALL製のSeitz(登録商標)Kシリーズ等級EKフィルターパッド(1400質量/単位面積g/m、厚さ3.8mm)を使用して生成物を濾過した。
【0206】
例2(出発物質)
NH(SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OMe)の調製
900gのアリルメチルキャップされたポリエーテル(CH=CH-CH-(O-CHCH7.5-OCH)を270mLのキシレンに溶解し、80℃に加熱した。約0.5gの白金触媒(Lamoreaux)を添加し(合計10ppmのPt)、450mLのキシレン中の261gのジメチルクロロシランの混合物を滴下した。反応混合物を100℃で12時間攪拌した後、残っているジメチルクロロシランを真空下40℃で除去した。
得られたヒドロシリル化生成物170gをキシレン100mLに溶解した。反応フラスコを脱気し、クロロ原子をアミノ基で置換する置換反応の完了が圧力上昇によって示されるまで、NHの流れをゆっくりと加えた。反応混合物を50℃および100mbarのNH高圧で1.5時間さらに撹拌した。その後、反応フラスコを50℃で1時間脱気した(<30mbarまで)。PALLのSeitz(登録商標)Kシリーズ等級EKフィルターパッド(1400質量/単位面積g/m、厚さ3.8mm)を使用して生成物を濾過した。
【0207】
例3(出発物質)
NH(SiMe-(CH-(OCHCH10-OSiMeの調製
200gのアリルポリエーテルBreox AA E450H(CH=CH-CH-(O-CHCH10-OH)を400mLのキシレンに溶解した。14.3gのトリメチルクロロシランと21.3gのヘキサメチレンジシラザン(両方ともアリルポリエーテルのOHキャッピング剤として使用)の混合物を室温で滴下した。次に反応混合物を室温で3時間撹拌した。沈殿したNHClを濾過により除去した。溶媒を真空下、60℃で除去した。得られた生成物58gを80℃に加熱し、約64mgの白金触媒(Lamoreaux、合計10ppmのPt)を添加した。11.4gのジメチルクロロシラン(HSi(Me)Cl)を滴下した。次いで、反応混合物を120℃に加熱し、4時間撹拌した。
このように得られた生成物220gをキシレン100mLに溶解した。反応フラスコを脱気し、圧力上昇が反応の完了を示すまでNHの流れをゆっくりと加えた。反応混合物を50℃および100mbarのNH高圧で1.5時間さらに撹拌した。その後、反応フラスコを50℃で1時間脱気した(<30mbarまで)。PALLのSeitz(登録商標)Kシリーズ等級EKフィルターパッド(1400質量/単位面積g/m、厚さ3.8mm)を使用して生成物を濾過した。
【0208】
例4
NH(SiMe-(CH-SiMe(OSiMe-O-SiMe-(CHMe)(例1)を用いたシリカの官能化
20gのAerosil(登録商標)300を200mlのジオキサンに分散させた後、4.31gの脱イオン水および36.9gのNH(SiMe-(CH-SiMe(OSiMe-O-SiMe-(CHMe)(例1)を添加した。混合物をアルゴン雰囲気下で100℃に加熱した。1時間の反応時間で、反応スラリーがより少ない粘性とより少ない濁りとなり、これはSiMe-(CH-SiMe(OSiMe-O-SiMe-(CHMeによるSiOH表面基の表面官能化反応が生じたことを示している。分散液はさらに精製することなく使用され、約8重量%のシリカを含んでいた。
【0209】
例5
ポリエーテルペンタシロキサン官能化シリカの調製
単分散ポリエーテルペンタシロキサン(MeO)Si-(CH-SiMe(OSiMe-SiMe-(CH-(OCHCH10-OH)は、WO2017/012714A1の例6に従って調製した。10gのAerosil(登録商標)300を250gのトルエンに分散させ、続いて0.12gのジイソプロポキシビス(エチルアセトアセタト)チタネートを添加した。混合物を80℃に加熱し、2.0gの(MeO)Si-(CH-SiMe(OSiMe-SiMe-(CH-(OCHCH10-OH)をゆっくりと添加した。その後、スラリーを6時間加熱還流した。溶媒を真空下(50℃/<1mbar)で除去して、淡黄色の粉末(約12g)を得た。
【0210】
例6
ポリエーテル官能化シリカの調製
20gのAerosil(登録商標)300を200mlのジオキサンに分散させた後、4.31gの脱イオン水および36.9gのNH(SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OMe)(例2)を添加した。混合物をアルゴン雰囲気下で100℃に加熱した。1時間の反応時間により、反応スラリーは粘性が低くなり、濁りが少なくなり、表面官能化反応を示した。分散液はさらに精製することなく使用され、約8重量%のシリカを含んでいた。
【0211】
例7
VeoVa9ペンタシロキサン官能化シリカの調製
この例は、単分散(MeO)Si-(CH-SiMe(OSiMe-O-SiMe-(CH-OC(O)-C(Me)R、ここでR、Rはそれぞれ全部で6個のC原子を有するアルキルである、によるAerosil(登録商標)300の官能化に関する。
およびR=アルキル、ここでRおよびRは全部で6個のC原子を有する、単分散VeoVa9ペンタシロキサン(MeO)Si-(CH-SiMe(OSiMe-SiMe-(CH-OC(O)-C(CH)Rは、WO2017/012714A1の例7に従って、VeoVa9[Hexion製]をM-D-Mと反応させ、続いてビニルトリメトキシシランと反応させることにより調製した。
10gのAerosil(登録商標)300を250gのトルエンに分散させ、続いて0.12gのジイソプロポキシビス(エチルアセトアセタト)チタネートを添加した。混合物を80℃に加熱し、2.0gの単分散(MeO)Si-(CH-SiMe(OSiMe-SiMe-(CH-OC(O)-C(CH)R(ここでR+R=合計6個のC原子を持つアルキル)をゆっくりと加えた。その後、スラリーを還流下で6時間加熱した。溶媒を真空(50℃/<1mbar)で除去して、淡黄色の粉末(10.5g)を得た。
【0212】
例8
1-メトキシ-2-プロパノールに分散したコロイドシリカナノ粒子
水中のシリカナノ粒子の分散液(AkzoNobelのLevasil EXP310、30重量%シリカ)100gに、44gの1-メトキシ-2-プロパノール(Dowanol PM)を添加した。ロータリーエバポレーターを使用して、溶媒混合物の約20-25重量%を除去した。この手順を2回繰り返し、1-メトキシ-2プロパノール中に分散したシリカナノ粒子を得た。混合物は、KarlFischer法で測定して、まだ10-15重量%の水を含んでいる。
【0213】
例9
NH(SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OMe)-官能化コロイドシリカナノ粒子
1-メトキシ-2-プロパノール(例8)中のシリカナノ粒子の分散液60gを、約517gの1-メトキシ-2-プロパノール(Dowanol PM)と混合し(最終的なSiO含有量:3重量%)、還流およびN不活性雰囲気下で80℃に加熱した。次いで、15mLの1-メトキシ-2-プロパノール中の15gのNH(SiMe-(CH-(O-CHCH7.5-OMe)(例2)の溶液を、漏斗を通して滴加した。混合物を還流下で8時間撹拌した。次いで、溶媒の一部を真空下で除去して、シリカ含有量が40重量%の液体生成物を得た。
【0214】
例10
NH(SiMe-(CH-(OCHCH10-OSiMe官能化コロイドシリカナノ粒子
1-メトキシ-2-プロパノール中のシリカナノ粒子の分散液(例8)60gを、約517gの1-メトキシ-2-プロパノールと混合し(最終SiO含有量:3重量%)、80℃に加熱した。次いで、15mLの1-メトキシ-2-プロパノール中の15gのNH(SiMe-(CH-(OCHCH10-OSiMe(例3)の溶液を滴下した。混合物を還流下で8時間撹拌した。次いで、溶媒の一部を真空下で除去して、シリカ含有量が15重量%の液体生成物を得た。
【0215】
適用例
防汚コーティング配合物の調製
官能化シリカ粒子の活性を試験するために、コーティング配合物を調製し、コーティングされた試験パネルを海(北海、ノルダーナイ港)に浸漬した。調製されたコーティング配合物の代表的な例は、以下のように作成された。
【0216】
適用例1(防汚試験)
本発明の例4、5、6および7による官能化Aerosil300(登録商標)粒子を使用して、以下のコーティング組成物を調製した。
Epikote828EL(HexionのビスフェノールAとエピクロロヒドリンから調製したエポキシ樹脂)とシランA-1100を34/47の重量比で反応させて付加物を調製した。
34.0gのEpikote82ELと47.0gのシランA-1100を70gのキシレンに溶解し、80℃で6時間加熱した。
シランA-1100はガンマアミノトリエトキシシランである。
【化16】

*SiPEGはWO2014/126599A1に記載されているように調製され、下記式で表される。
【化17】

【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

プライマー処理された(コーティング厚50μm)PVC試験(Simona)パネルは、以下のプライマー組成物を使用して調製された。
- 成分A:Epikure3292-FX-60(エポキシコーティング用の脂肪族アミン硬化剤)、キシレン、SF1706(シリコーン流体は、アミン官能基とジメチルポリシロキサン単位を含む硬化性ポリマー)の重量比60:19:0.95の混合物
- 成分B:Epon Resin828(二官能性ビスフェノールA/エピクロロヒドリン由来の液体エポキシ樹脂)
ここで成分Aと成分Bは10:7.2の重量比で混合される。
プライマー処理されたパネルを室温で24時間硬化させた。
次に、上記に示したコーティング配合物990-Gから1103-Gを、コーティングナイフ(コーティング厚さ300μm)を用いて、上記のプライマー処理されたPVC試験パネル(SimonaAGから購入)に適用した。コーティングを室温で1日硬化させた後、ノルダーナイ港の北海に浸漬した(Dr.Brill+Partner GmbHによる)。
国際ASTM規格ASTM D6990-05(2011)(コーティングされた試験パネルにおける海洋生物付着の評価のための標準試験方法)に従って、汚損脱離評価を行った。
【0217】
以下の結果が観察された(汚れ等級100=汚れなし、0=汚れで覆われた表面):
【表6】

PVC-4を基準として使用した(表面処理なしのPVC)。
参照PVCパネルと比較して、例4、5、6、および7で防汚/汚損脱離効果が観察でき、これは例5と例7の混合物(50/50重量)の場合でも、ほぼ2年間持続することが結果として示されている。
【0218】
適用例2(防曇試験)
防曇配合物の調製
官能化粒子の防曇性能を試験するために、粒子をUV硬化コーティング配合物に添加した。防曇性能と同様に接触角が測定され、評価されている。
【0219】
コーティング組成物の説明
コーティング配合物は、(i)2-アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)30質量部、ジメチルアクリルアミド(DMAA)50質量部、メチルメタクリレート(MMA)10質量部、ブチルメタクリレート(BMA)10質量部に基づく総分子量Mw30.000の(メタ)アクリレート樹脂;(ii)アクリレートオリゴマージペンタエリスリトールペンタ/ヘキサアクリレート(DPHA);(iii)触媒としての1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU);および(iv)レベリング剤としてのポリエーテル-シロキサンコポリマーから構成される。メトキシプロパノールを溶媒として使用する。
コーティング配合物は、すべての成分を室温で混合することによって調製し、ポリカーボネート試験プレート上にフローコーティングして、コーティング厚さ2-8μmを得た。室温で約5分間のフラッシュオフ期間の後、コーティングされたパネルを120℃のオーブンに約20分間入れた。
【表7】

*防曇試験acc. GMW 16508; 3.3.6(この仕様は、外部ランプアセンブリの外側レンズの内側表面に使用される透明な結露防止コーティングの認定要件をカバーしている)。
配合物1(本発明による例9の官能化シリカ粒子を含む)および配合物2(本発明による例10の官能化シリカ粒子を含む)は、表面処理されたシリカ粒子のない基準と比較して防曇特性の改善を示した。
【0220】
防曇性能評価
接触角測定
水接触角測定は、静滴法を用いて滴形状分析器Kruess DAS100で行った。脱イオンおよびろ過(0.2μmフィルター)水を使用した。
分析された液滴量は3.5μLであった。
配合物1、2および3についての60秒後の水接触角測定の結果を以下の表に示す。
【表8】
【0221】
図1から3では、配合物1から3による接触角測定の結果が示されている。より低い接触角、特に配合物1の接触角は、表面の親水性の増加を示しており、これは防曇性能の向上によって裏付けられている。
【0222】
防曇試験
試験プレートを60℃に加熱した水浴上に15cm離して置き、そして防曇性能をGMW16508仕様、セクション3.3.6に従って90秒間評価した。
【0223】
【表9】


図1
図2
図3
【国際調査報告】