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特表2023-518222高純度アルミニウム一水和物およびα-アルミナの製造方法
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  • 特表-高純度アルミニウム一水和物およびα-アルミナの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】高純度アルミニウム一水和物およびα-アルミナの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/447 20220101AFI20230421BHJP
   C01F 7/441 20220101ALI20230421BHJP
【FI】
C01F7/447
C01F7/441
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555630
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021056339
(87)【国際公開番号】W WO2021180924
(87)【国際公開日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】20162967.2
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522363494
【氏名又は名称】アルマティス ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Almatis GmbH
【住所又は居所原語表記】Giulinistrasse 2, 67065 Ludwigshafen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トビアス フリュー
(72)【発明者】
【氏名】マリウス バウアー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフラム ヨット. リンゲンベアク
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA21
4G076AB02
4G076AB06
4G076BA12
4G076BA38
4G076BB01
4G076BB08
4G076BC07
4G076BC08
4G076BD01
4G076BD02
4G076BD04
4G076CA02
4G076CA26
4G076CA36
4G076FA02
4G076FA08
(57)【要約】
本発明は、アルミニウム一水和物の製造方法であって、i)アルミナ原料をエチレンジアミン四酢酸と混合して、原料混合物を得る工程、およびii)該原料混合物を水熱処理に付す工程を含み、その際、該原料混合物のpHが少なくとも8である、方法に関する。得られたアルミニウム一水和物は、低純度の原料から出発しているが、優れた純度を示し、か焼して高純度のα-アルミナを得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
- アルミナ原料をエチレンジアミン四酢酸と混合して、原料混合物を得る工程、および
- 前記原料混合物を水熱処理に付す工程
を含み、その際、前記原料混合物のpHが少なくとも8である、アルミニウム一水和物の製造方法。
【請求項2】
前記原料混合物のpHが、少なくとも9、より好ましくは少なくとも10、特に10~12の範囲、最も好ましくは10~11の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記原料混合物が、アンモニアを含有し、その際、前記アルミナ原料とアンモニアとの質量比が、100:1~10:1、特に50:1~10:1である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記原料混合物が、アンモニアを含有し、その際、前記アルミナ原料の含有量に対するアンモニアの含有量が、1.25質量%~3.70質量%の範囲である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記アルミナ原料が、製錬グレードアルミナ、前処理(浸出)製錬グレードアルミナ、化学グレードアルミナ、前処理(浸出)化学グレードアルミナ、遷移アルミナ、およびアルミニウム三水和物から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記アルミナ原料と前記エチレンジアミン四酢酸との質量比が、50:1~20:1、任意に40:1~20:1である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記原料混合物が、水酸化アンモニウムをさらに含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記原料混合物が、過酸化水素、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをさらに含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記原料混合物の固体化合物と前記原料混合物の液体化合物との質量比が、1:1~1:2の範囲であり、かつ/または前記水熱処理中の温度が、150℃~260℃の範囲であり、かつ/または前記水熱処理中の水熱圧力が、1バール~300バール、特に1バール~50バールの範囲であり、かつ/または前記水熱処理が、1~100時間行われ、かつ/または前記原料混合物が、前記水熱処理中に撹拌される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法に従ってアルミニウム一水和物を調製し、次いで前記アルミニウム一水和物をか焼してα-アルミナを得ることを含む、α-アルミナの製造方法。
【請求項11】
前記アルミニウム一水和物の不純物レベルが、99.9質量%~99.99質量%である、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
アルミニウム一水和物の製造における、特に水熱処理における、エチレンジアミン四酢酸の使用。
【請求項13】
前記アルミニウム一水和物が、水熱処理に付される原料混合物から得られ、その際、前記水熱処理前の前記原料混合物のpHが、少なくとも8であり、好ましくは少なくとも9であり、より好ましくは10~11の範囲にあり、前記原料と前記エチレンジアミン四酢酸との質量比が、50:1~20:1、任意に40:1~20:1である、請求項12記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、水熱処理を使用して低純度アルミナ原料から高純度アルミニウム一水和物(例えば、ベーマイトおよび/またはダイアスポア)および高純度α-アルミナを製造する方法に関する。さらに、錯化剤の使用が記載されている。
【0002】
水熱処理を用いたベーマイトの製造は、当該技術分野で公知である。欧州特許第0304721号明細書には、pH5以下またはpH8以上の水性媒体中で、0.02μmより細かいベーマイト種粒子の存在下で、ベーマイトに水熱的に変換可能な前駆体化合物を自生圧力下で加熱することを含む、微結晶ベーマイト製品の製造方法が開示されている。前駆体として、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたはアルミニウムアルコキシドを使用することができる。水熱処理後、微結晶のベーマイトが得られる。中国特許出願公開第110357135号明細書には、水酸化アルミニウムおよび超微細な水酸化アルミニウムの種結晶を使用して、これらをアンモニアと混合するリチウム電池セパレータ用アルミナを製造する方法が教示されている。しかしながら、双方の方法とも技術的に複雑であり、高価な種粒子を多量に必要とする。
【0003】
先行技術に鑑み、本発明の基礎となる課題は、低純度(不純物)、したがって、より安価な原料および最小量の技術装置を用いて高純度のアルミニウム一水和物を製造する、より安価で容易に制御可能な方法を提供することである。本発明のさらなる課題は、錯化剤の特定の使用を提供することである。
【0004】
上記見出しの問題に対する解決策は、独立請求項に記載されている。従属請求項は、本発明の有利な実施形態を含む。
【0005】
したがって、上記見出しの課題は、ベーマイトおよび/またはダイアスポアなどのアルミニウム一水和物の製造方法であって、アルミナ原料を、窒素含有錯化剤、酢酸およびクエン酸から選択される錯化剤と混合して原料混合物を得る工程と、原料混合物を水熱処理に付す工程とを含む方法により解決される。驚くべきことに、水熱処理前のアルミナ原料への特定の錯化剤の添加のために、製造されたアルミニウム一水和物の純度が著しく改善され得ることが見出された。
【0006】
したがって、本発明の重要な第1の態様は、以下の工程:
- アルミナ原料をエチレンジアミン四酢酸と混合して、原料混合物を得る工程、および
- 該原料混合物を水熱処理に付す工程
を含み、その際、該原料混合物のpHが少なくとも8である、アルミニウム一水和物の製造方法に関する。
【0007】
先行技術では、簡単かつ効率的な方法において、(低純度の)原料を使用して、高純度のアルミニウム一水和物(またはアルミニウム一水和物のか焼時にα-アルミナ)を製造することができ、その際、水熱処理に付された原料混合物中でエチレンジアミン四酢酸が使用され、その原料混合物のpHが少なくとも8であるということは認識されていなかった。
【0008】
特に、純度99.8%以下、特に純度99.6%以下のアルミナ原料を使用する場合、本発明の方法を実施した後のアルミニウム一水和物の純度は、少なくとも99.90%、好ましくは99.99%までである。アルミナ原料に含まれ、本発明の方法で除去できる代表的な不純物としては、NaO、CaO、Fe、ZnO、LiO、MnO、CuO、GaおよびBeOが挙げられる。このような不純物は、しばしばアルミナ原料の粒子や凝集体に吸蔵されている。本発明では、99.8%以下の純度、特に99.6%以下の純度を有するアルミナ原料を、「低純度」アルミナ原料と呼ぶ。本発明の好ましい実施形態では、処理前の原料の純度(例えば、製錬所グレードのアルミナまたはアルミニウム水和物)と本明細書に記載の方法によって得られるアルミニウム一水和物生成物とを比較できるようにするために、すべての純度値は、Alベースで報告されている。
【0009】
このように、「アルミナ原料をエチレンジアミン四酢酸と混合し、原料混合物を得る」という工程によって、本明細書の開示から明らかな通り、アルミナ原料を含むだけでなく、エチレンジアミン四酢酸、さらに任意で他の成分も含む原料混合物が調製される。原料混合物(すなわち、水熱処理に付す前)のpHは、少なくとも8である。
【0010】
水熱処理中、これは典型的には圧力および昇温下でオートクレーブ中で行われ、アルミナ原料は、再結晶化して、熱力学的により安定な相を形成する。本発明の錯化剤を用いる場合、水熱処理中に錯形成および任意で溶解を行うことによって不純物の除去が可能になり、そしてこの不純物は、水熱処理が終了し、反応混合物が冷却された後に得られた生成物を、濾過、洗浄、乾燥することによって容易に分離することができ、それによって少なくとも99.90%の純度を有する高純度アルミニウム一水和物が得られることが認められた。高純度アルミニウム一水和物は、最終的に乾燥することができる。
【0011】
本発明の方法は、特定の追加の方法工程を必要とせず、単に、アルミナ原料に窒素含有錯化剤、酢酸およびクエン酸から選択される錯化剤を添加し、水熱処理を行うことによって原料混合物を調製することを必要とするのみであり、その際、錯化剤は単独で使用してもよいし、または2種以上の錯化剤を組み合わせて使用することもできる。上記見出しの錯化剤、特に窒素含有錯化剤は、当該技術分野でよく知られており、低コストで入手可能である。窒素含有錯化剤は、概して無毒であるため、その使用は容易であり、特定の予防措置を必要としない。本発明の方法は、容易に制御可能であり、短い処理時間で実施することができるので、本発明の方法のコストは低い。
【0012】
原料混合物のpHは、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも9、さらにより好ましくは少なくとも10に設定され、それによって驚くべきことに、得られるアルミニウム一水和物の純度を高めることができる。99.99%という並外れた高純度を得る観点から、原料混合物のpHは、特に10~12の範囲に設定され、最も好ましくは10~11の範囲に設定される。本明細書で使用される「原料混合物のpH」とは、水熱処理前、すなわち原料混合物を水熱処理に付す前の原料のpHを指す。
【0013】
不純物の溶解性を改善し、水熱処理中のアルミナ原料の再結晶化を促進するために、原料混合物は、好ましくはアンモニアを含有し、その際、アルミナ原料とアンモニアとの質量比は、好ましくは100:1~10:1、特に50:1~10:1である。アンモニアは、水溶液として使用することができる。例として、25質量%のアンモニア水溶液を調製して、原料混合物に添加することができる。アンモニアは、好ましくは、100gのアルミナ原料に対して22gの純粋なアンモニアの量で使用することができる。
【0014】
驚くべきことに、原料混合物がアンモニアを含有し、アルミナ原料の含有量に対するアンモニアの含有量が1.25質量%~3.70質量%の範囲であると好ましいことがさらに判明した。
【0015】
アルミナ原料は、低コストで容易に入手できることから、好ましくは、製錬グレードアルミナ、化学グレードアルミナ、遷移アルミナ(すなわち、λ-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、κ-アルミナ、ρ-アルミナおよびχ-アルミナ)、ならびにアルミニウム三水和物から選択される。これらのうち、製錬グレードアルミナ、化学グレードアルミナ、遷移アルミナ(すなわち、λ-アルミナ、δ-アルミナ、η-アルミナ、θ-アルミナ、κ-アルミナ、ρ-アルミナおよびχ-アルミナ)ならびにアルミニウム三水和物、特に製錬グレードアルミナまたはアルミニウム三水和物が、特に好ましい。上記見出しの原料の粉砕物を使用することは、処理時間の短縮の観点から特に好ましい。また、これらの粉砕物を使用することは、純度の向上にも寄与し得る。したがって、粉砕後の上記見出しの原料の粉砕物のD50粒子径は、好ましくは0.1μm~100μmの範囲、より好ましくは1μm~45μmの範囲である。「アルミナ原料」という用語は、本明細書では、アルミニウム三水和物を含む、上記の原料を包含するように用いられている。したがって、「アルミナ原料」という用語は、本明細書では、アルミニウム一水和物(およびアルミニウム一水和物のか焼時のα-アルミナ)の調製に適した任意の原料を定義するために、「原料」または「アルミニウム一水和物の調製のための原料」の同義語として用いられている。
【0016】
本発明では、本明細書に記載のアルミニウム一水和物の調製方法において、好ましくは少なくとも1つの電子供与性窒素を含む少なくとも窒素含有錯化剤の群からの特定の錯化剤の使用が、非常に有利であることが判明した。
【0017】
したがって、窒素含有錯化剤は、好ましくはエチレンジアミン四酢酸であり、このことは、驚くべきことに、低純度の出発物質(アルミナ原料)から出発する場合であっても、Na(NaOとして計算)、Fe(Feとして計算)および/またはCa(CaOとして)などの不純物の量が非常にわずかな、本明細書に記載の、極めて高いレベルの純度を有するアルミニウム一水和物(またはα-アルミナ)の調製方法において特に有利であることが判明している。驚くべきことに、エチレンジアミン四酢酸は、原料混合物の酸性とアルカリ性とのバランスをとるようであり、本明細書に記載されているように、低純度のアルミナ原料から出発する単純で直接的な方法で高純度のアルミニウム一水和物を得ることを可能にしている。エチレンジアミン四酢酸の二ナトリウム塩は、最も一般的に使用されている錯化剤の1つであるが、純粋なエチレンジアミン四酢酸は、特に少なくともpH8、好ましくは少なくともpH9で、より好ましくはpH10~12、最も好ましくはpH10~11の範囲内で、より良い結果をもたらし、総NaO濃度を増加させないことが判明した。
【0018】
さらに、不純物は、アルミナ原料と錯化剤(特にエチレンジアミン四酢酸)との質量比が、50:1~20:1である場合に、原料混合物から最もよく分離され得ることが判明した。アルミニウム一水和物の不純物レベルの改善に関しては、錯化剤の量が多いほど、著しく良好な結果が得られるというものではなかった。しかしながら、錯化剤の量が少ないほど、不純物レベルは高くなる。1000gのアルミナ原料に対して20~30gの錯化剤を使用することが、特に好ましいことが判明した。上記のように、本発明の好ましい実施形態によれば、錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸である。本発明の一実施形態によれば、アルミナ原料と錯化剤(特にエチレンジアミン四酢酸)との質量比は、原料混合物(水熱処理に付される)に使用されるアルミナ原料の乾燥質量および原料混合物中に存在する錯化剤(特にエチレンジアミン四酢酸)の乾燥質量に基づいて(すなわち、好ましくは、一般に1質量%未満、例えば、約0.5質量%以下である材料の残存水分を比率計算に入れずに)算出される。
【0019】
さらなる好ましい実施形態によれば、原料混合物は、水酸化アンモニウムを含む。理論に束縛されるものではないが、水酸化アンモニウムは、特にアンモニアと組み合わせると緩衝剤として機能するようであり、水酸化アンモニウムを添加をすることで、所望のpH値を容易に維持することができる。これにより、不純物の溶解性が高まり、アルミナの再結晶化が高速で進行しやすくなる。
【0020】
原料混合物は、原料混合物のpH値を(pH8超またはpH9超に、特にpH10~11の範囲内に)バランス/調整するために、必要に応じて、さらに酸を含んでもよく、その際、酸は、特に、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、フッ化水素酸およびカルボン酸からなる群から選択され、カルボン酸は、好ましくは、炭酸、ギ酸およびプロピオン酸から選択される。驚くべきことに、これらの酸のうちの1種またはそれらの混合物の添加が、NaOおよびCaOのより効率的な還元に寄与することが判明した。
【0021】
原料混合物は、さらに好ましくは、過酸化水素、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含む。それにより、pH値をより容易に調整することができる。
【0022】
調製されるアルミニウム一水和物の純度を向上させる観点から、原料混合物の固体化合物と原料混合物の液体化合物との質量比が1:1~1:2の範囲であると、さらに有利である。
【0023】
製造されるアルミニウム一水和物の高純度の観点から、水熱処理中の温度を150℃~260℃の範囲内に設定することが、さらに好ましい。より高い温度でも効果はあるが、温度を高く設定するほど、よりコストがかかる方法となる。温度を低く設定するほど、再結晶化が遅くなる。温度を150℃~260℃の範囲内に設定すると、すべての有利な効果のバランスがとれ、製品の純度の観点から良い結果が得られる。
【0024】
水熱処理中の圧力は、特に制限されず、最大値は、使用される容器の安定性に依存することになる。しかしながら、水熱処理中の水熱圧力が1バール~300バール、特に1バール~50バールの範囲であると、良好な反応速度およびコスト効率を達成することができる。
【0025】
より好ましくは、水熱処理は1~100時間実施される。
【0026】
水熱処理中の反応は、好ましくは水熱処理中に原料混合物を撹拌することによって加速することができる。
【0027】
本発明のさらなる態様として、上記の方法に従って得られたアルミニウム一水和物をか焼する、α-アルミナの製造方法が提供される。か焼は、700℃超、より具体的には800℃超、最も具体的には900~1500℃の間の温度で実施することができる。加えて、か焼は、電気、ガスまたは他の燃焼炉/キルン(連続または周期的)で行うことができ、滞留/保持時間は柔軟である。か焼パラメータは、好ましくは、α-アルミナの特定の結晶サイズおよび表面積を調整するために設定される。製造される所望の製品に応じて、一次結晶サイズは、好ましくは0.1~6μmであり、比表面積は、0.1~50m/gであり、その際、粒度分布は、DIN EN 725/T5に従って測定され、表面積は、ISO 9227に従って測定される。高純度アルミニウム一水和物の使用により、α-アルミナも高純度を示す。
【0028】
本発明のさらなる態様は、アルミニウム一水和物の調製における、特に水熱処理におけるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の使用に関する。本発明のさらなる態様は、アルミニウム一水和物が、水熱処理に付される原料混合物から得られ、水熱処理前の原料混合物のpHが、少なくとも8、好ましくは少なくとも9、より好ましくは10~12の範囲、最も好ましくは10~11の範囲にあり、原料とエチレンジアミン四酢酸との質量比が、50:1~20:1、任意に40:1~20:1である、前述の使用に関する。
【0029】
本発明のさらなる態様として、ベーマイトおよび/またはダイアスポアなどのアルミニウム一水和物の製造における、特に水熱処理における、窒素含有錯化剤、酢酸およびクエン酸から選択される錯化剤とアンモニアとの組み合わせの使用が開示されている。特定の錯化剤をアンモニアと組み合わせて使用すると、製造されるアルミニウム一水和物の純度が向上する。
【0030】
本発明の以下の実施形態も、本明細書に開示されている:
1. アルミニウム一水和物の製造方法であって、以下の工程:
- アルミナ原料を、窒素含有錯化剤、酢酸およびクエン酸から選択される錯化剤と混合して、原料混合物を得る工程、および
- 該原料混合物を水熱処理に付す工程
を含む、方法。
2. 原料混合物のpHが、少なくとも5、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも9、さらにより好ましくは少なくとも10であり、その際、原料混合物のpHが、最も好ましくは10~11の範囲である、実施形態1記載の方法。
3. 原料混合物が、アンモニアを含有し、その際、アルミナ原料とアンモニアとの質量比が、100:1~10:1である、実施形態1または2記載の方法。
4. 原料混合物が、アンモニアを含有し、その際、アルミナ原料の含有量に対するアンモニアの含有量が、1.25質量%~3.70質量%の範囲である、実施形態1から3までのいずれかに記載の方法。
5. アルミナ原料が、製錬グレードアルミナ、前処理(浸出)製錬グレードアルミナ、化学グレードアルミナ、前処理(浸出)化学グレードアルミナ、遷移アルミナ、およびアルミニウム三水和物から選択される、実施形態1から4までのいずれかに記載の方法。
6. 窒素含有錯化剤が、少なくとも1つの電子供与性窒素を含み、その際、窒素含有錯化剤が、特にニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、1,2-シクロヘキシレンジアミン四酢酸、ジ-エチレントリアミン五酢酸、ビス(アミノエチル)-グリコールエーテル-N,N,N’N’-四酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N’-三酢酸三ナトリウム塩、トリエチレンテトラミン六酢酸、N,N-ビス(カルボキシメチル)-L-グルタミン酸四ナトリウム、L-グルタミン酸、N-N-二酢酸四ナトリウム塩GLDA、エチレンジアミン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシフェニル酢酸)、エチレンジアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ジエチレントリアミン、ジエチレンテトラミン、イミノジアセテート、トリエチレンテトラミン、トリアミノトリエチルアミン、ビス(サリチリデン)エチレンジアミン、エチレンジアミノトリアセテート、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラアセテート、ジメチルグリオキシム、8-ヒドロキシキノリン、2,2’-ビピリジンおよび1,10-フェナンスロリンから特に選択される、実施形態1から5までのいずれかに記載の方法。
7. 窒素含有錯化剤が、エチレンジアミン四酢酸である、実施形態1から6までのいずれかに記載の方法。
8. アルミナ原料と窒素含有錯化剤との質量比が、50:1~20:1である、実施形態1から7までのいずれかに記載の方法。
9. 原料混合物が、水酸化アンモニウムをさらに含む、実施形態1から8までのいずれかに記載の方法。
10. 原料混合物が、酸をさらに含み、その際、酸が、特に、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、フッ化水素酸およびカルボン酸からなる群から選択され、その際、カルボン酸が、好ましくは、炭酸、ギ酸およびプロピオン酸から選択される、実施形態1から9までのいずれかに記載の方法。
11. 原料混合物が、過酸化水素、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをさらに含む、実施形態1から10までのいずれかに記載の方法。
12. 原料混合物の固体化合物と原料混合物の液体化合物との質量比が、1:1~1:2の範囲であり、かつ/または水熱処理中の温度が、150℃~260℃の範囲であり、かつ/また水熱処理中の水熱圧力が、1バール~300バール、特に1バール~50バールの範囲であり、かつ/または水熱処理が、1~100時間行われ、かつ/または原料混合物が、水熱処理中に撹拌される、実施形態1から11までのいずれかに記載の方法。
13. 実施形態1から12までのいずれか1つに記載の方法に従って得られた、アルミニウム一水和物をか焼する工程を含む、α-アルミナの製造方法。
14. α-アルミナの純度レベルが、99.8質量%~99.99質量%である、実施形態13記載の方法。
15. アルミニウム一水和物の製造における、特に水熱処理における、窒素含有錯化剤、酢酸およびクエン酸から選択される、錯化剤の使用。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施例1、2、3および5の不純物レベルに関する試験結果を示す図である。
図2】実施例4~10の不純物レベルに関する試験結果を示す図である。
図3】pHの関数としての不純物濃度の依存性を示す図である。
【0032】
実施例
実施例1
オートクレーブ内で、約0.25質量%の不純物(NaO、Fe、SiO、MgO、TiO、CaO、LiOおよびZnO)濃度を有する50gの水酸化アルミニウム(Al(OH))(詳細は表1を参照)を、0.5gのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、1.5mlの純NHおよび50gのHOと混合した。水熱処理を、撹拌しながら、190℃、12バールの水蒸気圧で48時間行った。反応混合物を濾過し、濾液を洗浄して乾燥させた後に、高純度のベーマイトが、41.75gの量で得られた。
【0033】
不純物の低減に関する結果を、以下の表1に示し、その際、2行目は、各不純物の初期量を示す。他に定義されていない場合、表1に表示された数値は、質量%で示されている。処理前の原料(例えば、製錬グレードアルミナまたはアルミニウム水和物)の純度を、アルミニウム一水和物生成物と比較できるようにするために、すべての純度値を、Al基準で報告する。
【表1】
【0034】
不純物NaO、Fe、MgO、CaOおよびLiOについて、不純物レベルの大幅な低減が達成されたことが分かる。
【0035】
実施例2~10
実施例2~10は、EDTAおよびNHの量を上記表1に示すように調整した以外は、実施例1と同様にして調製した。不純物NaO、Fe、MgO、CaO、LiOおよびZnOについて、不純物レベルの大幅な低減が達成されたことが分かる。
【0036】
上記の表1より、さらに、アンモニア含有量を6mlから10mlに増加させても(実施例9および10を参照)、さらなる改善、すなわち不純物のさらなる低減には至らず、代わりに、いくつかの不純物(NaO、CaO、LiO)がわずかに増加したことが分かる。
【0037】
図1では、実施例1、2、3および5の不純物レベルに関する試験結果が比較されており、EDTAの量の影響の概要が示されている。実施例1は、EDTA含有量が最も少ない(50gのアルミナ原料-Al(OH)当たり0.5gのEDTA:アルミナ原料:EDTA質量比=100:1)である。実施例2は、50gのアルミナ原料当たり1gのEDTAを含有し、これは50:1のアルミナ原料:EDTA質量比に相当する。実施例3は、50gのアルミナ原料当たり1.2gのEDTAを含有し、これは42.7:1のアルミナ原料:EDTA質量比に相当する。実施例5は、50gのアルミナ原料当たり1.5gのEDTAを含有し、これは33.3:1のアルミナ原料:EDTA質量比に相当する。アルミナ原料と窒素含有錯化剤との質量比が50:1~20:1の範囲であれば、最良の試験結果が得られることが分かる。EDTAの量が多くなると著しくコストが増加するが、不純物レベルはさらに著しく低下しない。
【0038】
図2では、実施例4~10の不純物レベルに関する試験結果が比較されており、NHの量の影響の概要が示されている。実施例4では、アンモニア含有量は最も少ない(1.5gのアンモニアに相当する2mlのアンモニア:アルミナ原料:アンモニア質量比=32.4:1)。実施例5では、2.3gのアンモニアに相当する3mlのアンモニアが含有されている:アルミナ原料:アンモニア質量比=21.6:1。実施例6では、2.7gのアンモニアに相当する3.5mlのアンモニアが含有されている:アルミナ原料:アンモニア質量比=18.5:1。実施例7では、3.1gのアンモニアに相当する4mlのアンモニアが含有されている:アルミナ原料:アンモニア質量比=16.2:1。実施例8では、3.5gのアンモニアに相当する4.5mlのアンモニアが含有されている:アルミナ原料:アンモニア質量比=14.4:1。実施例9では、4.6gのアンモニアに相当する6mlのアンモニアが含有されている:アルミナ原料:アンモニア質量比=10.8:1。実施例10では、7.7gのアンモニアに相当する6mlのアンモニアが含有されている:アルミナ原料:アンモニア質量比=6.5:1。
【0039】
アルミナ原料とアンモニアとの質量比が100:1~10:1の範囲であれば、不純物の優れた低減効果が得られることが分かる。アンモニアの量が多くなっても、不純物レベルにさらに大きな影響を与えない。
【0040】
実施例11
8μmのD50を有する出発物質としてアルミニウム三水和物を用いて、実施例1と同様にして、実施例11を調製した。アルミニウム三水和物を、1.1gのEDTAおよび4.5mlのNHと混合した。水熱処理を、撹拌しながら、190℃、12バールの水蒸気圧で24時間行った。高純度のベーマイトが得られ、これを濾過し、洗浄し、乾燥させた。
【0041】
不純物の低減に関する結果を、以下の表2に示し、その際、2行目は、各不純物の初期量を示し、最終行は、水熱処理後の不純物測定の結果を示す。他に定義されていない場合、表2に表示された数値は、質量%で示されている。処理前の原料(例えば、製錬グレードアルミナまたはアルミニウム水和物)の純度を、アルミニウム一水和物生成物と比較できるようにするために、すべての純度値を、Al基準で報告する。
【表2】
【0042】
不純物NaO、Fe、MgO、CaO、LiO、ZnO、CuO、GaOおよびBeOについて、不純物レベルの大幅な低減が達成されたことが分かる。
【0043】
実施例12
84μmの粒子径を有し、出発物質として5μmの粒子径を有する製錬グレードアルミナ(SGA)原料を用いて、実施例1と同様にして、実施例12を調製した。製錬グレードアルミナを、1.5gのEDTAおよび6mlのNHと混合した。水熱処理を、撹拌しながら、190℃、12バールの水蒸気圧で60時間行った。高純度のベーマイトが得られ、これを濾過し、洗浄し、乾燥させた。
【0044】
不純物の低減に関する結果を、以下の表3に示す。他に定義されていない場合、表3に表示された数値は、質量%で示されている。処理前の原料(例えば、製錬グレードアルミナまたはアルミニウム水和物)の純度を、アルミニウム一水和物生成物と比較できるようにするために、すべての純度値を、Al基準で報告する。
【表3】
【0045】
不純物NaO、Fe、MgOおよびCaOについて、不純物レベルの大幅な低減が達成されたことが分かる。
【0046】
実施例13
製錬グレードアルミナ(SGA)原料を用いて、実施例12と同様にして、実施例13を調製した。試料Aは、浸出しなかった。試料Bは、HCl/水混合液で浸出した。EDTAを1.5gの量で添加し、NHを6mlの量で非浸出の製錬グレードアルミナ試料Aおよび浸出した製錬グレードアルミナ試料Bに添加した。水熱処理を、撹拌しながら、190℃、12バールの水蒸気圧で48時間行った。得られたベーマイトを、濾過し、洗浄し、乾燥させた。
【0047】
不純物の低減に関する結果を、以下の表4に示す。他に定義されていない場合、表4に表示された数値は、質量%で示されている。処理前の原料(例えば、製錬グレードアルミナまたはアルミニウム水和物)の純度を、アルミニウム一水和物生成物と比較できるようにするために、すべての純度値を、Al基準で報告する。
【0048】
実施例14
同じ製錬グレードアルミナ(SGA)原料を用いて、実施例13と同様にして、実施例14を調製した。試料Cは、浸出しなかった。試料Dは、HCl/水混合液で浸出した。EDTAを添加しなかったが、NHを6mlの量で非浸出の製錬グレードアルミナ試料Cに添加し、製錬グレードアルミナ試料Dを浸出させた。水熱処理を、撹拌しながら、190℃、12バールの水蒸気圧で48時間行った。得られたベーマイトを、濾過し、洗浄し、乾燥させた。
【0049】
不純物の低減に関する結果を、以下の表4に示す。他に定義されていない場合、表4に表示された数値は、質量%で示されている。処理前の原料(例えば、製錬グレードアルミナまたはアルミニウム水和物)の純度を、アルミニウム一水和物生成物と比較できるようにするために、すべての純度値を、Al基準で報告する。
【0050】
実施例15
同じ製錬グレードアルミナ(SGA)原料を用いて、実施例13と同様にして、実施例15を調製した。試料Eは、浸出しなかった。試料Fは、HCl/水混合液で浸出した。EDTAを1.5gの量で添加したが、NHは添加しなかった。水熱処理を、撹拌しながら、190℃、12バールの水蒸気圧で48時間行った。得られたベーマイトを、濾過し、洗浄し、乾燥させた。
【0051】
不純物の低減に関する結果を、以下の表4に示す。他に定義されていない場合、表4に表示された数値は、質量%で示されている。処理前の原料(例えば、製錬グレードアルミナまたはアルミニウム水和物)の純度を、アルミニウム一水和物生成物と比較できるようにするために、すべての純度値を、Al基準で報告する。
【表4】
【0052】
表4の試験結果から分かるように、EDTAおよびNHを添加することで(試料AおよびB)、不純物の低減の観点から最も良好な試験結果が得られる。しかしながら、EDTAのみの添加でも(試料EおよびF)、表4に示した不純物の低減は良好である。試料FのFeの不純物レベルが、わずかに増加しているだけである。しかしながら、NaOおよびCaOの不純物濃度は、著しく低減されている。NHの添加により(試料CおよびDを参照)、NaOは低減するが、FeおよびCaOの不純物レベルは高い。
【0053】
実施例16
実施例16は、EDTAを1.5gの量で添加し、NHを6mlの量で添加した製錬グレードアルミナ原料の試料G~Vのソーダ不純物レベルの試験結果を示す。水熱処理を、撹拌せずに、190℃、12バールの水蒸気圧で行った。得られたベーマイトを、濾過し、洗浄し、乾燥させた。試料G~Vは、したがって同じ温度であるが、異なる時間にわたり処理されていた。加えて、製錬グレードアルミナ原料試料G~VのD50は、以下の表5に概略を示すように変化した。
【表5】
【0054】
表5から、EDTAおよびNHの添加は、ソーダ不純物レベルの低減に有利な効果があったことが分かる。また、D50が高いほど、ソーダ不純物レベルの低減効果が低いことも分かる。ソーダ低減の特別な改善は、2~15μmの範囲のD50に対して得られる可能性がある。また、表5の試験結果から、18~48時間の水熱処理によってソーダ不純物レベルの優れた低減効果が得られ、60時間の処理時間では、さらなる有利な効果が得られなかったことも分かる。
【0055】
実施例17
出発物質として4.5μmの粒子径(D50)を有する製錬グレードアルミナ(SGA)原料を用いて、実施例1と同様にして、実施例17を調製した。50gの製錬グレードアルミナを、100mlの水ならびに異なる量のEDTAおよびNHと、表6に示すように混合した。水熱処理を、撹拌しながら、190℃、12バールの水蒸気圧で48時間行った。高純度のベーマイトが得られ、これを濾過し、洗浄し、乾燥させた。
【0056】
不純物の低減に関する結果を、以下の表6に示す。他に定義されていない場合、表6に表示された数値は、質量%で示されている。処理前の原料(例えば、製錬グレードアルミナまたはアルミニウム水和物)の純度を、アルミニウム一水和物生成物と比較できるようにするために、すべての純度値を、Al基準で報告する。
【表6】
【0057】
実施例18
出発物質として8μmの粒子径を有するアルミニウム水和物原料を用いて、実施例1と同様にして、実施例18を調製した。50gのアルミニウム水和物を、100mlの水ならびに異なる量のEDTAおよびNHと、表7に示すように混合した。水熱処理を、撹拌しながら、190℃、12バールの水蒸気圧で24時間行った。高純度のベーマイトが得られ、これを濾過し、洗浄し、乾燥させた。
【0058】
不純物の低減に関する結果を、以下の表7に示す。他に定義されていない場合、表7に表示された数値は、質量%で示されている。処理前の原料(例えば、製錬グレードアルミナまたはアルミニウム水和物)の純度を、アルミニウム一水和物生成物と比較できるようにするために、すべての純度値を、Al基準で報告する。
【表7】
【0059】
材料の精製における原料混合物のpH(すなわち水熱処理前に測定)の重要性は、SGAおよびアルミニウム水和物について、それぞれ表6および表7から分かる。8以下の低いpHの混合物は、ある程度まで精製されるが、重大な不純物、特にNaO、Fe、およびCaOを効果的に低減するためには、少なくとも8、好ましくは少なくとも9のpHが必要である。さらに、表6は、異なる量の錯化剤の存在の効果を示す。すべての不純物の好ましいレベルへの最適な低減(すなわち、この例では<0.010%のNaO、<0.005%のFeおよび<0.0015%のCaO)が、(アルミナ)原料とEDTAとの質量比について50:1~20:1以内の範囲、任意に40:1~20:1に相当する、1.5gのEDTAを添加する場合のみ認められる。
【0060】
pHの関数としての不純物濃度の依存性を、上記の表7の試料18/1~18/4について図3にグラフで示す。FeおよびCaOの不純物については、全体の濃度が低いため、異なるスケールが使用されている(図の右側)。EDTAを含有する原料混合物のpHが8超であることの非常に有利な効果は、図3から容易に分かる。
【0061】
異なる量のEDTAの効果を、以下の表8に示すように、NaO不純物レベルへの効果について追加の実験/試料でさらに試験した。このように、EDTAの量は、試料18/5では0.5gのみ、試料18/6では1gのみであった。その結果、1.5gのEDTAを有する試料18/4との比較から分かるように、NaO不純物レベルの低減は劣っていた。
【表8】
図1
図2
図3
【国際調査報告】