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特表2023-518257真空支援電気穿孔装置、並びに関連するシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】真空支援電気穿孔装置、並びに関連するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/32 20060101AFI20230421BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
A61N1/32
A61N1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555995
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 US2021023344
(87)【国際公開番号】W WO2021189012
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】62/992,513
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509320254
【氏名又は名称】イノビオ ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ポール フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ケンメ
(72)【発明者】
【氏名】エリック シャーデ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ マッコイ
(72)【発明者】
【氏名】ケイト ブロデリック
(72)【発明者】
【氏名】アリソン エー.ジェネロッティ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB13
4C053BB32
4C053JJ02
4C053JJ11
4C053JJ21
4C053JJ24
4C053JJ32
4C053JJ40
(57)【要約】
組織の真空支援インビボ電気穿孔のための装置は、チャンバ及び該チャンバ内への少なくとも1つの開口を画定する筐体を含む。ポートは、筐体を通って延在し、少なくとも1つの開口から離れており、真空源に接続可能である。ポートは、真空源からチャンバに真空圧を伝達するように構成されている。複数の電極は、チャンバ内に位置付けられ、真空圧に応答して、開口を通って延在し、チャンバ内に保持されている組織の標的部分に、1つ以上の電気穿孔パルスを送達するように構成されている。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の真空支援インビボ電気穿孔のための装置であって、
チャンバ及び前記チャンバ内への少なくとも1つの開口を画定する筐体と、
前記筐体を通って延在する少なくとも1つのポートであって、前記少なくとも1つのポートは、前記少なくとも1つの開口から離れており、真空源に接続可能であり、それにより前記少なくとも1つのポートは、前記真空源から前記チャンバに真空圧を伝達するように構成されている、少なくとも1つのポートと、
前記チャンバ内に位置付けられた複数の電極であって、前記複数の電極は、前記真空圧に応答して、前記少なくとも1つの開口を通って延在し、少なくとも瞬間的に前記チャンバ内に保持されている組織の標的部分に、1つ以上の電気穿孔パルスを送達するように構成されている、複数の電極と、を備える、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの開口は単一の開口であり、前記開口は円形である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記チャンバを少なくとも部分的に画定する内面を画定する壁を有し、前記複数の電極は、前記内面に沿って延在する4つの電極を含み、前記4つの電極は90度の間隔で互いから離隔されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポートに加えて第2のポートを更に備え、前記第2のポートは、前記チャンバ内へのジェット注入装置又は皮下注入針の挿入のために構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記少なくとも1つの開口の反対側の端面と、前記端面から前記開口まで延在する壁とを有し、前記壁は、前記チャンバまでを少なくとも部分的に画定する内面を画定し、前記複数の電極のうちの少なくとも1つの第1の電極は、前記端面から延在し、前記複数の電極のうちの少なくとも1つの第2の電極は、前記内面に沿って延在し、前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極とは、互いに同心である、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の電極は、前記端面に対して中心に位置付けられた単一の電極であり、前記少なくとも1つの第2の電極は、前記内面の全周に沿って延在する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の電極は、前記チャンバ内で露出する電極面を有し、前記電極面のうちの少なくともいくつかは、テクスチャ加工されている、及び前記チャンバ内へと突出しているのうちの1つ以上である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記筐体は、可撓性である材料で構築され、前記材料は、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフタルアミド、ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリシロキサン(シリコーン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、架橋又は非架橋ゴム、ポリエステルのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の電極と電気的に連通し、前記1つ以上の電気穿孔パルスを前記複数の電極に送信するように構成されている、信号生成器と、
前記信号生成器及び前記チャンバ内に位置付けられた少なくとも1つのセンサと電気的に連通するプロセッサであって、前記少なくとも1つのセンサは、前記1つ以上の電気穿孔パルスの送達の間に前記組織の少なくとも1つのパラメータを感知し、前記少なくとも1つのパラメータのフィードバックデータを前記プロセッサに通信するように構成され、前記プロセッサは、前記フィードバックデータを利用して1つ以上のアルゴリズムを実行し、前記1つ以上のパルスの送達の間に前記1つ以上のパルスの少なくとも1つのパルスパラメータを調節するように構成されている、プロセッサと、を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の電極は、約2V~約1000Vの範囲の電位の大きさを有するパルスを印加するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の電極は、約0.01アンペア~約2.0アンペアの範囲の電流の大きさを有するパルスを印加するように構成され、前記パルスは、約0.1ミリ秒~約100ミリ秒の範囲のパルス継続時間を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのポートはポートのアレイを含み、前記ポートのアレイの各々は、前記筐体が前記ポートのアレイを画定するマニホールドを含むように、前記筐体を通って前記チャンバ内へと延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記組織の前記標的部分は、皮膚組織及び脂肪組織のうちの少なくとも一方である、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
対象の組織を電気穿孔する方法であって、
前記対象の組織に隣接してチャンバを置くことと、
前記チャンバに真空圧を加え、それにより前記組織を、前記チャンバの開口を通して引き込み、前記チャンバの内面に沿って延在する複数の電極に接触させることと、
前記複数の電極を通して1つ以上の電気穿孔パルスを前記組織に送達し、それにより前記組織内に電気穿孔場を生成することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記加えるステップは、前記組織を前記内面に貼付し、流体を前記電気穿孔場の前記組織内に分散させるのに十分なレベルで前記真空圧を加えることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記送達するステップの前に、前記組織に物質を注入することを更に含み、前記送達するステップは、前記電気穿孔場内の前記組織の細胞内に、前記電気穿孔場に応答して前記細胞の細胞膜に形成された可逆的な孔を通して、前記物質を移送することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記物質は、前記対象において免疫応答を誘発する核酸を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記加えるステップは、変動する真空圧のパルスを前記組織に加えることと、前記パルスの継続時間を変化させることとを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
第2のポートを通って前記チャンバ内へと延在する注入装置から前記組織内に流体を注入することを更に含み、前記注入するステップ及び前記加えるステップは、前記送達するステップの前に実行され、前記注入装置は、注入針及びジェット注入装置のうちの一方である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
組織の真空支援処置のための装置であって、
チャンバ及び前記チャンバ内への少なくとも1つの開口を画定する筐体と、
前記筐体を通って延在する第1のポートであって、前記第1のポートは、前記少なくとも1つの開口から離れており、真空源に接続可能であり、それにより前記第1のポートは、前記真空源から前記チャンバに真空圧を伝達するように構成されている、少なくとも1つのポートと、
第2のポートを通って前記チャンバ内へと延在するジェット注入装置であって、前記第2のポートは、前記少なくとも1つの開口の反対側にあり、前記ジェット注入装置は、前記真空圧に応答して、前記少なくとも1つの開口を通って延在し、少なくとも瞬間的に前記チャンバ内に保持されている組織の標的部分に、流体のジェット注入を送達するように構成されている、ジェット注入装置と、を備える、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月20日に出願された米国仮出願第62/992,513号の利益を主張するものであり、その内容全体が、この参照により本明細書に組み込まれたものとする。
【0002】
本発明は、真空圧を用いて組織を把持し、変形させ、組織に流体を注入し、電極を用いて組織を電気穿孔するための装置、並びに組織への流体の注入又は別様の送達及び組織の電気穿孔に関するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1970年代に、細胞に永久的な損傷を与えることなく、細胞内に孔を生成するために、電場を使用できることが発見された。電気穿孔(EP)と呼ばれるこの発見は、大きな分子、小さな分子、イオン及び水が、細胞壁を通して細胞の細胞質内に導入されることを可能とした。いくつかの例において、電気穿孔は、頭頸部がんのような局所処置において、化学物質及びその他の化合物を腫瘍に導入するために使用することができる。これらの処置の間、患者は全身麻酔下である場合とそうでない場合があるため、痛み及び不随意筋の動きが最小化される必要がある。
【0004】
皮膚は、容易にアクセスされ、DNAワクチンの送達に適した多様な免疫細胞を豊富に含んでいるため、EPのためによく使われる標的である。皮膚の自然な免疫機能及びその高い細胞回転率は、典型的に、EP増強DNAワクチン送達に対する、迅速で強力な体液性応答に導く。皮膚はまた、EP増強DNAワクチン送達に続いて、細胞性免疫応答を生成することが可能である。その表面的な性質により、皮膚は、低侵襲性又は非侵襲性のEPに適している。
【0005】
骨格筋もまた、インビボでのDNAの電気穿孔媒介(EP)送達のためのよく特徴付けられた標的である。筋細胞は、長期間にわたってタンパク質を産生及び分泌することが可能であり、筋肉へのEP増強DNAワクチン接種が免疫応答を生成することが可能であることが、繰り返し実証されている。しかしながら、筋肉へのEP DNA送達の適用は、皮下脂肪の厚さが異なるために複雑であり、異なる脂肪の厚さは筋肉組織への針の異なる侵入深さに帰着するため、「1つのサイズで全てに対応する」アプローチを妨げる。骨格筋は典型的には、特に大型動物及びヒトでは、絶縁体である皮下脂肪層及び電場を発生させるために必要な深さのため、低侵襲性又は非侵襲性のEP技術には適していない。それ故、筋肉においてEPを行うためには、貫通針電極が最も一般的に使用されている。
【0006】
歴史的に、脂肪組織(脂肪)は、主に脂質滴の形でエネルギーを貯蔵するために使用される不活性組織とみなされてきた。そのため、EP増強DNA処置が組織の脂肪層に向けられたのは、最近のことである。しかしながら、最近の研究は、皮下脂肪が実際には多くの動的な役割を担っていることを示している。脂肪組織は、多くの幹細胞及び免疫細胞を含み、多数のホルモンを分泌することにより内分泌器官として働き、多くの局所的信号を分泌し、精巧な毛細血管網を含む。脂肪組織のインビボのトランスフェクションを達成しようとする試みは、主に、管理者が患者の皮膚のサンプルを切り取って物理的に除去して、脂肪組織と直接接触することを可能にする必要がある、外科的手法に限られていた。これらの処置は極めて侵襲的であり、臨床的装置には適さない。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、組織の真空支援インビボ電気穿孔のための装置は、チャンバ及びチャンバ内への少なくとも1つの開口を画定する筐体を含む。ポートが、筐体を通って延在し、少なくとも1つの開口から離れており、真空源に接続可能である。ポートは、真空源からチャンバに真空圧を伝達するように構成されている。複数の電極は、チャンバ内に位置付けられ、真空圧に応答して、開口を通って延在し、少なくとも瞬間的にチャンバ内に保持されている組織の標的部分に、1つ以上の電気穿孔パルスを送達するように構成されている。
【0008】
本開示の別の実施形態によれば、対象の組織を電気穿孔する方法は、組織に隣接してチャンバを置くことと、チャンバに真空圧を加え、それにより組織を、チャンバの開口を通して引き込み、チャンバの内面に沿って延在する複数の電極に接触させることと、複数の電極を通して1つ以上の電気穿孔パルスを組織に送達し、それにより組織内に電気穿孔場を生成することと、を含む。
【0009】
本開示の更なる実施形態によれば、組織の真空支援処置のための装置は、チャンバ及びチャンバ内への少なくとも1つの開口を画定する筐体を含む。第1のポートは、筐体を通って延在し、少なくとも1つの開口から離れている。第1のポートは、真空源に接続可能であり、それにより第1のポートが、真空源からチャンバに真空圧を伝達するように構成されている。本装置は、第2のポートを通ってチャンバ内へと延在するジェット注入装置を含む。第2のポートは、少なくとも1つの開口の反対側にある。ジェット注入装置は、真空圧に応答して、少なくとも1つの開口を通って延在し、少なくとも瞬間的にチャンバ内に保持されている組織の標的部分に、流体のジェット注入を送達するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本特許出願は、少なくとも1枚のカラーで作成された図面を含む。カラー図面を含む本特許出願の写しは、請求及び必要な手数料の支払いに応じて、官庁から提供される。前述の概要、及び本出願の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面とともに読まれたときに、より良く理解されるであろう。本出願の構造を説明する目的で、図面には例示的な実施形態が示されている。しかしながら、本出願は、図示された正確な配置及び器具に限定されるものではないことは、理解されるべきである。
【0011】
図1】本開示の一実施形態による、針注入装置と組み合わせて真空支援電気穿孔カップ(又は「真空カップ」)を利用する電気穿孔システムの図式的な図である。
図2A】本開示の一実施形態による、カップの真空チャンバ、及びチャンバ内に位置する電極のアレイを示す、図1に示される真空カップの斜視図である。
図2B】電極が配列されるパターンを示す、図2Aに示される真空カップの底面図である。
図2C図2A~2Bに示される電極のうちの1つの平面立面図である。
図2D】カップの中心軸に沿ってとられた、図2Aに示される真空カップの断面側面図である。
図2E図2Dに示される領域2E-2Eの拡大断面図である。
図2F図2Dに示される領域2F-2Fの拡大断面図である。
図3A】電極を担持し、図2Aに示される真空チャンバ内に挿入可能である、スリーブの斜視図である。
図3B図3Aに示されるスリーブの底面図である。
図3C-3M】本開示の追加的な実施形態による、代替の電極アレイパターンを有するスリーブのそれぞれ底面図及び断面側面図である。
図4A-4E】真空支援電気穿孔処置において真空カップを利用する代表的な段階を示す、組織に隣接する図2Aに示される真空カップの断面側面図である。
図4F】真空カップが組織を真空チャンバ内に引き込むことができる様々な程度を示す、図2Aに示される真空カップの断面側面図である。
図5A】本開示の一実施形態による、可撓性の電極を有する真空カップの斜視図である。
図5B】カップの中心軸に沿ってとられた、図5Aに示される真空カップの断面側面図である。
図5C】中立の状態にある電極を示す、図5Bに示される領域5C-5Cの拡大断面図である。
図5D】撓んだ状態にある電極を示す、図5Bに示される領域5D-5Dの拡大断面図である。
図6A-6B】本開示の一実施形態による、突出部を画定する接触面を有する電極のそれぞれ斜視図及び側面立面図である。
図6C-6D】本開示の別の実施形態による、横方向に長細い突出部を画定する接触面を有する電極のそれぞれ斜視図及び側面立面図である。
図7A】本開示の一実施形態による、三角形の遠位開口及び真空チャンバの幾何学的形状を有する真空カップの斜視図である。
図7B図7Aに示された真空カップの底面図である。
図7C】カップの中心軸に沿ってとられた、図7Aに示される真空カップの断面斜視図である。
図7D図7Aに示される真空カップ内に位置付けられた電極アレイの立面平面図である。
図7E図7Dに示される電極アレイの側面図である。
図8A】本開示の一実施形態による、長方形の遠位開口及び真空チャンバの幾何学的形状を有する真空カップの斜視図である。
図8B図8Aに示される真空カップの底面図である。
図8C】カップの中心軸に沿ってとられた、図8Aに示される真空カップの断面斜視図である。
図9A】本開示の一実施形態による、針なし注入装置が受容されるレセプタクルを有する真空カップを含む電気穿孔アセンブリの断面側面図である。
図9B】真空チャンバに引き込まれた組織に薬剤を注入するために、図9Aに示される電気穿孔アセンブリを利用する代表的な段階を示す拡大断面側面図である。
図10A】針なし注入装置が受容されるレセプタクルを有する真空カップの別の実施形態の断面斜視図であり、真空カップは、電極に画定された対応する複数の開口を通して真空チャンバと流体連通する複数のポートを含むマニホールドを画定するカップ筐体を有する。
図10B図10Aに示される対応するポート及び開口の拡大斜視部分断面図である。
図10C】本開示の別の実施形態による、対応するポート及び開口の代替の構成の斜視部分断面図である。
図10D】脂肪組織に電気穿孔処置を提供するための使用の間の、図10Aに示される真空カップの一部の拡大断面側面図である。
図11A図2Aに示されるカップと同様に構成された真空カップを介した真空圧を加えられていない(左)及び真空圧を加えられた(右)、皮下ブタ組織におけるメチレンブルーの分布の視覚的表現である。
図11B-11C】メチレンブルーの注入後のモルモット脂肪組織における流体分布の並べられた比較を示し、図11Bにおける注入は、図9Aに示されるものと同様の針なし真空カップを用いて行われたものであり、図11Cにおける注入は、皮下針法で行われたものである。
図12】pGX2013(インフルエンザウイルス核タンパク質(NP)に対するDNAワクチン)による脂肪組織における電気穿孔処置後のモルモットにおける12週間の体液性免疫原性ELISAデータを示すグラフであり、特に、図2Aに示される真空カップを用いた電気穿孔処置後と、キャリパー電極電気穿孔装置を用いた電気穿孔処置後との、比較体液性免疫応答を示す。
図13】pGX2303(ヒト呼吸器合胞体ウイルス融合グリコール-タンパク質(RSV-F)に対するDNAワクチン)の処置後のモルモットにおける8週間の体液性免疫原性ELISAデータを示すグラフであり、特に、図2Aに示される真空カップを用いた脂肪組織の電気穿孔処置後と、先行技術の針アレイ電気穿孔装置を用いた皮膚中の電気穿孔処置後との、比較体液性免疫応答を示す。
図14A】pGX2013(インフルエンザウイルス核タンパク質(NP)に対するDNAワクチン)の処置後のモルモットにおける6週間の体液性免疫原性ELISAデータを示すグラフであり、特に以下を伴う処置後の比較体液性免疫応答を示す。(1)先行技術の針アレイ電気穿孔装置を使用した皮内組織の電気穿孔、(2)電気穿孔後真空圧を加える、図9Aに示される針なし真空カップを用いた脂肪組織の電気穿孔、(3)電気穿孔後真空圧を加えるが、電気穿孔は行わない、図2Aに示される針注入真空カップを用いた脂肪組織への注入、(4)及び電気穿孔後真空圧を加える、図2Aに示される針注入真空カップを用いた脂肪組織の電気穿孔。
図14B図14Aに示される同じ調査からの細胞性免疫応答を示すチャートである。
図15A】本開示の一実施形態による、皮内組織の真空支援電気穿孔のために構成された真空カップの斜視図である。
図15B図15Aに示される真空カップの断面側面図である。
図15C】使用の間の図15Aに示されるカップの真空チャンバの拡大断面図である。
図16A-16B】本開示の実施形態による、真空チャンバのそれぞれの遠位開口に対向するそれぞれの真空チャンバ内の端面上に電極が配設されている、真空電気穿孔アセンブリの断面側面図である。
図17A-17B】本開示の実施形態による、図16A~16Bに示されるアセンブリとともに使用するためのそれぞれの電極支持部材上に画定された電極アレイパターン及び真空ポートパターンの底面図である。
図18A】複数の遠位真空チャンバを有する真空電気穿孔装置の斜視図である。
図18B図18Aに示される真空電気穿孔装置の断面斜視図である。
図18C図18Aに示される真空電気穿孔装置の側面断面図である。
図18D図18Cに示される領域18D-18Dの拡大断面図である。
図18E図18Aに示される真空電気穿孔装置の底面図である。
図19A】本開示の一実施形態による中に真空ポートを有する電極の遠位アレイを有する真空電気穿孔装置の断面側面図である。
図19B】本開示の一実施形態による、電極アレイパターンの平面図を示す、図19Aに示される真空電気穿孔装置の底面図である。
図20図19Aに示されるものと同様の真空電気穿孔装置とともに使用するために構成された正方形の電極アレイを有する電極支持部材の平面図である。
図21A図20に示される電極支持部材に類似している、長方形の電極アレイを有する電極支持部材の平面図である。
図21B図21Aに示される電極支持部材の側断面図である。
図22】緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子をエンコードする様々な体積のプラスミドを皮内注入し、次いで様々な技術及び装置を用いて処置した後の、モルモットの皮膚における遺伝子発現を示す図である。
図23】HPV DNAワクチンの処置後のモルモットにおける8週間の体液性免疫原性ELISAデータを示すグラフであり、特に、先行技術の針アレイ電気穿孔装置と、図2Aに示される真空カップと、他の処置の3倍(3x)投与量を有する図2Aに示される真空カップと、を使用した皮膚におけるそれぞれの電気穿孔処置後の比較体液性免疫応答を示す。
図24A】HPV DNAワクチン(pGX3001&3002)の処置後の非ヒト霊長類モデルにおける11週間の体液性免疫原性ELISAデータを示すグラフであり、特に、先行技術の針アレイ電気穿孔装置と、図2Aに示される真空カップと、他の処置の3倍(3x)投与量を有する図2Aに示される真空カップと、を使用した皮膚におけるそれぞれの電気穿孔処置後の比較体液性免疫応答を示す。
図24B-24C】図24Aに示される同じ調査からの細胞性免疫応答を示すチャートである。
図25】先行技術のマントゥー注入から生じた一対のブレブの斜視図を示す断層画像であり、左に示されるブレブはヒアルロニダーゼ製剤と予め混合された薬剤を含み、右に示されるブレブはヒアルロニダーゼ製剤なしで注入されたものである。
図26図25に示されるブレブの上面図及び斜視図を示す合成画像である。
図27】MERSに対するDNAワクチン(pGX9101)を用いた皮内処置後のモルモットのエンドポイント力価の観点からの4週間の体液性免疫応答データを示すプロットであり、特に、ヒアルロニダーゼ製剤あり及びなしの先行技術の針アレイ電気穿孔装置と、15mmチャンバ直径を有する、ヒアルロニダーゼ製剤あり及びなしの両方の、図2Aに示される真空カップのバージョンと、を使用した皮膚におけるそれぞれの電気穿孔処置後の比較体液性免疫応答を示す。
図28】MERS DNAワクチン(pGX9101)を用いた皮内処置後のエンドポイント力価の観点からのモルモットにおける6週間の体液性免疫原性データを示すグラフであり、特に、先行技術の針アレイ電気穿孔装置と、15mm及び10mmのチャンバ直径を有する図2Aに示される真空カップのバージョンと、を使用した皮膚におけるそれぞれの電気穿孔処置後の比較体液性免疫応答を示す。
図29A】インフルエンザ核タンパク質に対するDNAワクチン(pGX2013)の皮内注入後のモルモットにおける平均エンドポイント力価の観点からの6週間の体液性免疫原性データを示すグラフであり、特に、先行技術の針アレイ電気穿孔装置と、15mmのチャンバ直径を有する図2Aに示される真空カップのバージョンと、を使用した皮膚におけるそれぞれの電気穿孔処置後の比較体液性免疫応答を示す。
図29B-29C】図29Aに示される同じ調査からの2週目(図29B)及び4週目(図29C)におけるスポット形成単位の観点からの細胞性免疫応答を示すチャートである。
図30A】脂肪組織を電気穿孔するために本開示の円形開口真空カップとともに使用するための、中心軸のまわりに90度の間隔で置かれた4つの電極を有する円形電極アレイの斜視図を示す。
図30B-30F】様々な電極サイズに従って脂肪組織に生成される様々な模擬電場強度を示す。
図31A】皮膚組織を電気穿孔するために使用するための、図30Aに示される円形電極アレイの斜視図を示す。
図31B-31F】様々な電極サイズに従って皮膚組織に生成される様々な模擬電場強度を示す。
図32A】脂肪組織を電気穿孔するために本開示の長方形開口真空カップとともに使用するための、中心軸のまわりに90度の間隔で置かれた4つの平面電極を有する長方形電極アレイの斜視図を示す。
図32B-32F】様々な電極サイズに従って脂肪組織に生成される様々な模擬電場強度を示す。
図33A】皮膚組織を電気穿孔するために使用するための、図32Aに示される長方形電極アレイの斜視図を示す。
図33B-33F】様々な電極サイズに従って皮膚組織中に生成される様々な模擬電場強度を示す。
図34A-34B】真空支援処置後のモルモット脂肪組織における細胞浸潤(青色)の並べられた比較を示し、図34Aにおける処置は、図2Aに示されるものと同様の真空カップを用いた真空のみの処置(すなわち電気穿孔なし)であり、図35Bにおける処置は、真空カップを使用した真空支援電気穿孔処置(すなわち真空圧+電気穿孔)であった。
図35A】MERSに対するDNAワクチンを用いた処置後のモルモットにおける6週間の体液性免疫原性データを示すグラフであり、特に、図2Aに示されるものと同様の真空カップを使用し、様々なチャンバ直径及び同じ電気穿孔パラメータを有する、皮膚におけるそれぞれの電気穿孔処置後の比較体液性免疫応答を示す。
図35B図35Aに示される同じ調査からの細胞性免疫応答を示すチャートである。
図36A】緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子をエンコードするプラスミドの皮内注入、次いで真空カップを使用して様々な真空圧及び電気穿孔電圧で処置した後の、モルモット皮膚における遺伝子発現を示す図である。
図36B図36Aに示されるGDF発現の結果からの皮膚蛍光信号の測定値を示すグラフである。
図37A】MERSに対するDNAワクチンを用いた処置後のモルモットにおける6週間の体液性免疫原性ELISAデータを示すグラフであり、特に、(1)先行技術の針アレイ電気穿孔装置及び(2)図2Aに示されるものと同様の真空カップ、を使用した皮膚におけるそれぞれの電気穿孔処置後の比較体液性免疫応答を示す。
図37B図37Aに示される同じ調査からの細胞性免疫応答を示すチャートである。
図38】再発性呼吸器乳頭腫症(RRP)に対するワクチンを用いた処置後の6週目におけるスポット形成単位の観点からの細胞免疫応答を示すチャートであり、特に、(1)先行技術の針アレイ電気穿孔装置及び(2)図2Aに示されるものと同様の真空カップ、を使用した皮膚におけるそれぞれの電気穿孔処置後の比較応答を示す。
図39A】MERSに対するDNAワクチンを用いた処置後のモルモットにおける4週間の体液性免疫原性データを示すグラフであり、特に、マントゥー注入のみと、真空圧に続くマントゥー注入と、真空圧に続くマントゥー注入及び図2Aに示されるものと同様の真空カップを使用した電気穿孔と、を使用した皮膚における処置後の体液性免疫応答を比較する。
図39B図39Aに示される同じ調査からの細胞性免疫応答を示すチャートである。
図40A図2Aに示される真空カップと同様に構成された真空カップに引き込まれた組織のマウンドにおいて生成されたときの、一対の対向電極を有する電極アレイによって生じる模擬電場の断面側面図を示す。
図40B図15Aに示される真空カップと同様に構成された真空カップに引き込まれた組織のマウンドにおいて生成されたときの、一対の環状リング電極及び中央の同心電極を有する電極アレイによって生じる模擬電場の断面側面図である。
図41A】MERSに対するDNAワクチンを用いた処置後のモルモットにおける8週間の体液性免疫原性データを示すグラフであり、特に、図40A~40Bに示される電極アレイを使用した電極パルスパターンに基づく、皮膚における真空支援電気穿孔処置後の体液性免疫応答を比較する。
図41B図41Aに示される同じ調査からの細胞性免疫応答を示すチャートである。
図42A】マントゥー注入後の、(1)真空圧を加えないものと、(2)図40Aに示される電極アレイを有する真空カップを使用して真空圧を加えたものと、(3)図40Bに示される電極アレイを有する真空カップを使用して真空圧を加えたものと、の比較注入物流体分散を示すグラフである。
図42B-42D】図42Aにおいてチャートで示された流体分散を示す写真である。
図43A-43B】図40Bに示される電極アレイを有する真空カップの下に位置付けられたモルモット皮膚に配設された注入物を示す蛍光透視画像であり、図43Aは、チャンバ内に真空圧を加える前の注入物を示し、図43Bは、チャンバ内に真空圧を加えている間の注入物を示す。
図43C】以下の分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)の発現を比較することを示すグラフである。(1)図43A~Bに示される真空カップを使用する単一の高注入量の真空支援電気穿孔処置及び(2)先行技術の針アレイ電気穿孔装置を使用する6回の注入、6回の電気穿孔イベント処置。
図44】pGX2013を用いた皮膚組織における電気穿孔処置後のモルモットにおける8週間の体液性免疫原性ELISAデータを示すチャートであり、特に、(1)図9Aに示されるものと同様のジェット注入真空カップ及び(2)先行技術の針アレイ電気穿孔装置、を利用した電気穿孔処置後の体液性免疫応答を比較することを示す。
図45A-47C】様々な真空圧設定及びノズル-皮膚オフセット距離設定において、図9Aに示されるものと同様のジェット注入真空カップを用いて行われたジェット注入の間及び後の、モルモットにおける組織の撓みを示す蛍光透視画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、本開示の一部を形成する添付の図及び例に関連して示される以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解され得る。本開示は、本明細書で説明される及び/又は示される特定の装置、方法、アプリケーション、条件又はパラメータに限定されるものではないこと、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を例として説明する目的のためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図されたものではないことは、理解されるべきである。また、添付の請求項を含む本明細書で使用される、単数形「a)、「an」及び「the」は複数形を含み、特定の数値への言及は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、少なくともその特定の値を含む。
【0013】
本明細書で使用される用語「複数」は、1つよりも多いことを意味する。値の範囲が表現される場合、別の実施形態は、ある特定の値から及び/又はその他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により、値が近似値として表現される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。全ての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。
【0014】
寸法、角度及びその他の幾何学的形状に関して本明細書で使用される用語「約」及び「実質的に」は、製造公差を考慮に入れている。更に、用語「約」及び「実質的に」は、記載された寸法又は角度より10%大きい又は小さいものを含み得る。更に、用語「約」及び「実質的に」は、記載された特定の値に等しく適用することができる。
【0015】
本明細書で使用される用語「薬剤」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、低分子、又はそれらの任意の組み合わせを意味する。薬剤は、抗体、そのフラグメント、その変異型、又はそれらの組み合わせをエンコードする組換え核酸シーケンスであってもよい。薬剤は、非限定的な例として、水又は生理食塩水-クエン酸ナトリウム(SSC)若しくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような緩衝液中に配合されてもよい。
【0016】
本明細書で使用される用語「皮内」は、表皮(すなわち角質層から基底層までの表皮層)及び真皮(すなわち真皮層)を含む皮膚の層内を意味する。
【0017】
本明細書で使用される用語「脂肪」は、皮下層に存在する含脂肪細胞(すなわち脂肪細胞)を含む層を意味する。
【0018】
本明細書で使用される用語「電気穿孔」は、組織内の細胞の細胞膜の透過性及び/又は多孔性を一時的かつ可逆的に増大させ、それにより、例えば、薬剤が細胞内に導入されることを可能にする、組織内の電場を利用することを意味する。
【0019】
本明細書で使用される用語「電気穿孔場」は、細胞を電気穿孔することが可能な電場を意味する。電場が、細胞を電気穿孔することが可能な部分と、細胞を電気穿孔することが可能ではない別の部分とを含む例においては、「電気穿孔場」は特に、細胞を電気穿孔することが可能な電場の部分を指す。したがって、電気穿孔場は、電場のサブセットであり得る。
【0020】
本明細書で使用される用語「ゾーン」は、組織内のある体積の空間のような、ある体積の空間を意味する。
【0021】
本明細書で使用される用語「トランスフェクションゾーン」は、トランスフェクションが生じるある体積の組織を意味し、用語「トランスフェクション体積」と同義に使用され得る。
【0022】
本明細書で使用される用語「細胞浸潤」は、ある体積の組織への細胞の移行を意味する。
【0023】
本明細書で使用される用語「皮内針電極電気穿孔装置」及び「ID針電極EP」は各々、皮内組織を電気穿孔するために三角形のパターンに配置された3つの針電極の電極アレイを利用する、先行技術の電気穿孔装置を指す。
【0024】
以下に説明される実施形態は、特に皮内組織又は脂肪組織のような組織の標的層といった組織の真空支援電気穿孔を行うシステム及び装置に関する。これらの実施形態は、組織の標的体積(又は「組織体積」)を真空圧(すなわち負圧)にさらして、組織を、組織層内の標的ゾーン内の細胞を電気穿孔するのに好適な態様で変形させる。特に、真空カップのような真空装置の開放端が、組織体積を覆う組織(例えば「皮膚」)の外面に接触して置かれ、真空圧がカップの内部に加えられ、それにより組織体積を真空カップ内に引き込み、それにより組織体積がカップに位置的に固定されて、真空カップ内に位置付けられた電極が組織体積内に予測可能で実質的に均一な電気穿孔場を生成することを可能にし、それにより組織体積内に予測可能で実質的に均一なトランスフェクションゾーンをもたらす。以下に説明される実施形態によって提供される真空圧はまた、組織体積内の注入物の好適なインビボの分散を含む、組織体積内の流体の好適な再分配、並びに標的ゾーン内への及び標的ゾーンからの流体の好適なインビボの出入りをもたらすことが観察されている。換言すれば、真空圧は、組織全体の注入物の分散を向上させて、トランスフェクションゾーンを拡大し、また、より多くのインビボ流体を標的ゾーンに引き込み、トランスフェクションされた細胞にさらされる細胞の量を増大させる。本発明者らは、本開示を通して説明される真空支援電気穿孔処置が、注入物に対する対象の増大した反応に帰着することを観察した。
【0025】
本発明者らはまた、驚くべきことに、また予想外にも、真空圧を加えることが、電気穿孔を行わなくても、組織体積内にトランスフェクションを引き起こし得ることを観察した。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、真空カップによって付与される真空圧が、組織体積内の細胞膜に機械的応力を付与し、細胞膜透過性を増大させて、かくして組織体積内で観察されるトランスフェクションを増大させると考えている。本発明者らはまた、前述の流体の再分配も、電気穿孔なしで観察されるトランスフェクションに少なくとも部分的に関与し得ると考えている。本発明者らは更に、前述の流体の再分配及び機械的応力が互いに相互作用して、細胞への外部の薬剤のトランスフェクションに好適な環境を組織体積内に生成する可能性が高いと考えている。
【0026】
更に、以下に説明される実施形態は、機械的な再構成なしで、使用と使用との間及び/又は使用の間に適合させることができる。例えば、使用の間及び/又は使用と使用との間に、電極の電気的パラメータは、好適な処置結果を達成するよう、組織体積中の電気穿孔場を操作するために、必要に応じて調節することができる。これに加えて又は代替として、真空圧は、好適な処置結果を達成するよう、組織体積を物理的に操作するために、使用の間及び/又は使用と使用との間に、必要に応じて調節することができる。例えば、より大きな組織体積を真空カップ内に引き込むために、より高い真空圧が加えることができ、より小さな組織体積を真空カップ内に引き込むために、より低い真空圧を加えることができる。このようにして、異なる組織層を電気穿孔場に選択的にさらすことにより、電気穿孔処置のための異なる組織層を標的にするために、同じ真空カップを利用することができる。これに加えて、組織内の流体再分配を向上させるためなど、標的組織の機械的挙動を操作するために、真空圧が使用の間にパルス状にされ得る。
【0027】
ここで図1を参照すると、本開示による患者を処置するための電気穿孔システム100は、真空支援電気穿孔装置2を含み、該装置は、内部真空チャンバ6を画定する筐体4と、チャンバ6内に位置付けられた複数の電極8(例えば、図2A~2Cを参照)とを含む。複数の電極8は、電極8のアレイ9に配置され、これは電極アレイ9とも称され得る。装置2は、「真空カップ」又は単に「カップ」とも称され得る。筐体4は、「カップ筐体」とも称され得る。真空カップ2は、医師が、真空カップ2の遠位端10を、電気穿孔処置の標的とされる組織102の外面101上に置き、真空チャンバ6に真空圧を加えて、組織102を真空チャンバ6内に引き込む、引っ張る又はその他の方法で誘導して、その中の電極8と接触させることができるように構成される。電極8は、真空圧によってチャンバ6内に引き込まれ、その中に保持された組織102に、1つ以上の電気穿孔パルスを送達するように構成される。組織102は、脂肪組織103(本明細書では「脂肪層」103とも称される)又は皮内組織104(本明細書では「皮膚層」104とも称される)のような、処置の標的とされる層を含む。
【0028】
真空カップ2は、1つ以上の外部構成要素への接続のための、ポートのような1つ以上の結合部を含む。例えば、真空カップ2は、真空チャンバ6と真空ポンプのような真空源106との間の流体連通を提供するための、第1のポート12を有する。真空カップ2はまた、電極8と発電機のようなエネルギー源110との間の電気的な連通を提供する回路108へのアクセスを提供するための、第2のポート14を有することができる。真空カップ2は、特に薬剤を含む注入物のような注入物を担持する注入装置18のような外部ツールに、真空チャンバ6へのアクセスを提供するための、第3のポート16を更に含むことができる。図示されるように、注入装置18は皮下注入針であり得るが、真空カップ2は、以下でより詳細に説明されるように、ジェット注入装置を含む他のタイプの注入装置18とともに使用するように適合することができる。また、真空カップ2は任意選択的に、薬剤が組織102に注入された後に利用され得ることは、理解されるべきである。
【0029】
エネルギー源110は、真空チャンバ6内の組織102内の細胞を電気穿孔するために、特定の電気的パラメータを有する1つ以上の電気パルスの形態の電気信号を生成して、電極8に送信するための、波形生成器のような信号生成器112と電気的に連通することができる。かかる電気的パラメータは、電位(電圧)、電流タイプ(交流(AC)又は直流(DC))、電流の大きさ(アンペア数)、パルス継続時間、パルス量(すなわち送達されるパルスの数)、及びパルス間の時間間隔又は「遅延」(複数パルス送達の場合)を含む。信号生成器112は、送達されたパルスの電気的パラメータを記録するための波形ロガーを含むことができる。信号生成器112は、信号生成器112の動作を含む電気穿孔システム100の動作を制御するように構成されたプロセッサ116を含むことができる、制御ユニット114(本明細書では「コントローラ」とも称される)と電気的に連通することができる。プロセッサ116は、コンピュータメモリ118と電子的に連通することができ、システム100の動作を制御するための1つ以上のアルゴリズムを含むソフトウェア及び/又はファームウェアを実行するように構成することができる。プロセッサ116は、ユーザインタフェース120と電気的に連通することができ、該ユーザインタフェースは、システム100の動作に関連する情報を提示するためのディスプレイ122と、医師のような操作者がシステム100の動作に関連するコマンドのような情報を入力することを可能にするキーパッド124とを含むことができる。ディスプレイ122は、操作者がディスプレイ122において直接情報を入力することを可能にする、タッチスクリーンディスプレイであり得ることは、理解されるべきである。また、インタフェース120は、テーブルトップコンピュータ若しくはラップトップコンピュータのようなコンピュータインタフェース、又はスマートフォンのようなハンドヘルド電子装置などであり得ることは、理解されるべきである。
【0030】
ここで図2A~2Bを参照すると、真空カップ2の遠位端10は、真空チャンバ6に通じる少なくとも1つの開口20を画定している。開口20は、図示されるように円形であり得るが、以下でより詳細に説明されるように、他の開口形状も本開示の範囲内である。真空カップ2の遠位端10(したがって開口20も)は、筐体の遠位端10からチャンバ6の近位端24まで延在する内面22を画定し得る、筐体4によって画定され得る。したがって、チャンバ6もまた、遠位端10から近位端24まで延在する。内面22は、真空チャンバ6の境界を少なくとも部分的に画定する。内面22は、好ましくは、ベル型又は「ベル曲線」の幾何学的形状を有する。遠位端10からチャンバ6内に至る内面22の遠位部分22aは、真空カップ2の使用の間の、遠位端10の周縁における組織への打撲のような損傷を低減又はその他の方法で緩和するための、先細の曲がった輪郭を有し得る。遠位部分22aは、内面22の「リードイン」部分22aと称され得る。真空チャンバ6の近位端24におけるような内面22の近位部分は、真空チャンバ6の「近位端面」又は単に「端面」と称され得る。
【0031】
電極8の少なくとも1つ及び最大で全ては、内面22と並んで延在する。図示されるように、電極8は、筐体4の中心軸Xに沿って配向された長手方向Lに関して、遠位端10と近位端24との間で内面22と並んで延在し得る。本実施形態の電極8は、好ましくは実質的に剛性であるが、他の実施形態においては、電極8は、多少の可撓性を有し得る。電極8は、プラスチック又はその他の好適な非導電性材料で構築され得る、関連する実質的に剛性の非導電性支持体に結合された(例えば、コーティング、堆積、結合及び/又は接着を介して)、導電性材料の薄層を含み得る。電極8は、内面22と実質的に共形の表面形状を有し得る。電極8は、長手方向Lに沿った方向成分を有する方向に沿って長細のものであり得る。電極8はまた、中心軸Xのまわりの円周方向Cに沿って内面22と並んで延在し得る。図2B~2Cに示されるように、電極8は各々、円周方向Cに沿って測定される円周方向寸法C1(又は「幅」C1)を画定し得る。電極8は、中心軸Xのまわりに一定の角度間隔A1で位置付けられ得る。角度間隔A1は、電極8のそれぞれの中心軸8xから測定され得る。図2Bに示されるように、電極8は、例えば、中心軸Xのまわりに90度の角度間隔A1で位置付けられ得る。したがって、電極8は、中心軸Xのまわりに対称的な間隔で置かれていると言える。以下でより詳細に説明されるように、電極8間の他の角度間隔A1も本開示の範囲内にあることは、理解されるべきである。更に、いくつかの実施形態においては、電極8間の角度間隔A1は、内面22に沿って変化し得る。すなわち、電極8は、中心軸Xのまわりに不規則な間隔で置かれ得る。更に、電極8は、中心軸Xのまわりに対称的な間隔で置かれる必要はない。
【0032】
図2Cに示されるように、各電極8は、中心電極軸8xに沿って互いから離隔された電極8の第1の端8aから第2の端8bまで測定される電極長L1を画定し得る。電極8はまた、円周方向Cに沿って電極幅C1を画定するように互いから離隔された第1及び第2の側面8c、8dを有し得る。各電極8は、1つ以上の電気穿孔パルスを送達するために組織表面101に接触するように構成された、内部電極面8zを有し得る。内部電極面8zは、電極8の第1の端8aから第2の端8bまで、及び第1の側面8cから第2の側面8dまで延在し得る。各電極8は、電極8の第2の電極端8bから第1の電極端8aに向かって延在し、また第1の側面8aから第2の側面8bに向かって延在する、一次又は「接触」部分8eを画定し得る。図示されるように、電極幅C1は、第1及び第2の電極側面8a、8bの間で測定され得、接触部分8eに沿って均一である必要はない。電極長L1及び幅C1は各々、約1.0mm~約30mmの範囲内、より詳細には約2mm~約25mmの範囲内、より詳細には約4mm~約20mmの範囲内にあり得る。電極8は、約0.0005mm~約2.000mmの範囲内の厚さT1(図2F参照)を画定し得る。電極長L1は、電極幅C1よりも大きいか、小さいか、又は同等であり得ることは、理解されるべきである。
【0033】
接触部分8e内の内部電極面8zの部分は、電極の「接触面」8zと称され得る。接触面8zは、中心軸Xに直交する基準面において、筐体4の内面22と円弧状にかつ同心に延在し得る(すなわち同じ中心点を共有し得る)。接触面8zはまた、中心電極軸8xに沿った方向において内面22と実質的に共形の、曲線状の輪郭を有し得る。接触面8zは、図示されるように滑らかである場合があるが、他の実施形態においては、接触面8zは、非限定的な例として、突出部、ディンプル、刻み目、マイクロ針及び/又は粗面などを有するように、組織102に対するグリップを向上させるためにテクスチャ加工される場合がある。追加的な実施形態においては、電極8と組織102との間のグリップ及び/又は導電性を改善するために、コーティング又は接着剤が接触面8zに適用され得る。電極8はまた、接触部分8eから第1の端8aまで延在する二次部分8fを画定し得、電極8に電気穿孔パルスを伝達するための回路108のそれぞれのリード線と接続するように構成され得る。
【0034】
ここで図2Dを参照すると、筐体4は、筐体本体26を含み得、該筐体本体は、非限定的な例として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド、ポリイミド、ポリシロキサン(シリコーン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、架橋又は非架橋のゴム(エラストマー)、ポリエステルを含む高分子材料のような、好ましくは多少の可撓性を有する材料から形成され得る。他の生物適合性及び/又は医療用材料が、筐体本体26に利用され得ることは、理解されるべきである。筐体本体26は、任意選択的に筐体4を画定するモノリシック構造である場合もあるが、筐体本体26がモノリシック構造である必要はなく、その代わりに、筐体4を画定するように一緒に結合された2つ以上の本体構成要素を含む場合がある。筐体本体26は、長手方向Lに沿って近位端28から遠位端10まで延在する。筐体本体26はまた、筐体4の内面22から外面32まで延在する壁30を画定する。壁30は、真空チャンバ6の全周のまわりを円周方向に延在する。
【0035】
筐体本体26は、ポート12、14、16を画定している。図示されるように、第1、第2及び第3のポート12、14、16の各々は、筐体本体26の近位端28に隣接し、遠位端10からは離れている場合がある。換言すれば、ポート12、14、16は、筐体4の遠位端10よりも近位端28の近くに位置し得る。「真空ポート」とも称され得る第1のポート12は、真空チャンバ6から、筐体本体26を通り、真空ポート12を真空源106と相互接続する取り付け部材36との接続のためのポート結合部34まで延在する。ポート結合部34は、座部38と、座部38から外側に延在し、座部38がレセプタクルの内端を画定するようにレセプタクルを画定する、管状延長部40とを含み得る。取り付け部材36は、取り付け部材結合部42と、そこから延在する挿管ステム44とを含み得る。取り付け部材結合部42は、管状延長部40によって画定されたレセプタクル内に嵌合する態様で延在することなどによって、ポート結合部34の管状延長部40と相互接続する管状延長部であり得る。一方向弁部材46が、座部38(「弁座部」と称され得る)上に位置付けられ得る。弁部材46は、弁座部38から、取り付け部材結合部42の内部空間内に延在し、それにより、真空ポート12と取り付け部材36の挿管ステム44との間の流体経路に介在し得る。弁部材46は、図示されるようにダックビル弁であり得、他の実施形態においては、非限定的な例として、弁46は、ボール弁又はアンブレラ弁であり得る。
【0036】
第2のポート14は、第1のポート12の反対側に延在し得、筐体4を通って真空チャンバ6内の電極8と接触する、ワイヤのような回路108のための通路を可能にするように構成され得る。第2のポート14はまた、1つ以上のツール及び/又は1つ以上のセンサのような1つ以上の追加的な構成要素のための、筐体4を通って真空チャンバ6内への通路を可能にするように構成され得る。真空チャンバ6内に位置付けられている間、かかるツール及び/又はセンサは、チャンバ6に供給される真空圧を介して、組織に対して位置的に固定され得る。第3のポート16は、チャンバ6の近位端24から、中心軸Xに沿って延在し得る。筐体4は、第3のポート16の外側端に装着形成部48を画定し得る。装着形成部48は、穿刺ストッパのようなキャップ50を第3のポート16上に装着するように構成され得る。装着形成部48及び穿刺ストッパ50は、穿刺ストッパ50と第3のポート16との間に気密封止を提供する、相補的な嵌合形状を有し得る。穿刺ストッパ50は、皮下注入針18によって突き刺すことができ、針18が真空チャンバ6内に引き込まれた組織102に薬剤を注入することを可能にする材料で、形成され得る。
【0037】
図2Dを引き続き参照すると、電極アレイ9は、チャンバ6内に位置し、筐体4の内面22に沿って延在する、スリーブのような挿入物52上に配設され得る。スリーブ52、又は少なくともその外面53は、筐体4の内面22と実質的に同じプロファイル形状を有し得る。スリーブ52は、非限定的な例として、ゴム、シリコーン及び熱可塑性エラストマーのような可撓性材料で構築され得る。図2Eに示されるように、スリーブ52の外面53は、摩擦嵌合を介して筐体4の内面22に直接付着し得るが、スリーブ52を内面22に取り付けるために1つ以上の接着剤が任意選択的に利用され得る。スリーブ52は、真空チャンバ6の近位端24に隣接する第1の又は近位端54から、筐体4の遠位端10に隣接する第2の又は遠位端56まで延在し得る。スリーブ52の遠位端56は、筐体4の内面22のリードイン部分22a内に延在し得る。第1の端54は、中心軸Xと同心であり得るスリーブ52の近位開口52a、及びスリーブ52の遠位開口52bを画定し得る。図2Fにより明確に示されるように、スリーブ52の第1の端54は、第1のポート12を部分的に閉塞し得、また、真空チャンバ6内への回路206のための通路を可能にしながら、第3のポート16も部分的に閉塞し得る。したがって、スリーブ52は、チャンバ6内の真空圧を制御するか又は少なくとも影響を与えるための機構として利用され得る。
【0038】
真空チャンバ6は、チャンバ6の近位端24から長手方向Lに沿って開口10まで画定され、長手方向Lに実質的に垂直な方向に沿うなどして、筐体本体26の内面22によって少なくとも部分的に画定され得るチャンバ体積Vを画定する。図示された例においては、長手方向Lに垂直な方向は、中心軸Xと交差する径方向Rである。チャンバ体積Vはまた、径方向Rに沿うなどして、スリーブ52によって少なくとも部分的に画定され得る。チャンバ6は、筐体4の遠位端10を囲む基準平面に対して、チャンバ6の近位端24から測定される深さL2を有し得る。チャンバ深さL2は、約1.0mm~約50.0mmの範囲内、より詳細には約3mm~約20mmの範囲内、より詳細には約5mm~約17mmの範囲内であり得る。チャンバ6はまた、スリーブ52の遠位端56において径方向Rに沿って測定され得るベース直径D1のようなベース幅を有する。チャンバ直径D1は、約1.0mm~約50.0mmの範囲内、詳細には約3.0mm~約20.0mmの範囲内、より詳細には約6.0mm~約17.0mmの範囲内であり得る。本実施形態においては、チャンバ直径D1は、その遠位端56におけるスリーブ52の内面55の対向する部分間で測定され得る。他の実施形態においては、スリーブ52は省略することができ、電極8は、例えば、筐体壁30内に埋め込まれるか又は少なくとも部分的に埋め込まれることによって、筐体4の内面22に直接取り付けられ得る。かかる実施形態においては、真空チャンバ6、したがってチャンバ体積Vは、筐体4の内面22及び電極8の内面8zによって少なくとも部分的に画定され得る。したがって、かかる実施形態においては、チャンバ直径D1は、電極8の遠位端8bにおける筐体4の内面22の対向する部分間で測定され得る。
【0039】
ここで図3A~3Bを参照すると、スリーブ52は、電極8、したがって電極アレイ9の各々を担持し得る。したがって、スリーブ52は、電極アレイベース、支持体、又は基板とも称され得る。図示された実施形態においては、電極アレイ9は、第1から第4の電極8-1、8-2、8-3、8-4がスリーブ52の中心軸X2(スリーブ52がそこに挿入されたときにカップ筐体4の中心軸Xと実質的に同延となる)のまわりに90度間隔A1で位置付けられるように、第1の電極8-1、第2の電極8-2、第3の電極8-3及び第4の電極8-4を含む電極パターンを画定している。本実施形態の電極アレイ9は、4つの電極8である、電極の総数8nを有するものとして特徴付けられ得る。電極の総数8nは、本明細書では、「総数」8n又は単に「全体」8nとも称され得る。スリーブ52はまた、真空チャンバ6に引き込まれた組織102内に異なる特性を有する電場を生成するためのような、異なる電極アレイ9パターン及び構成を有する他のスリーブ52と交換可能であり得る。例えば、図3C~3Dに示されるように、スリーブ52は、上述のように、スリーブ52の中心軸X2のまわりに90度間隔で離隔された4つの電極8を含む電極アレイ9を有し得るが、電極8は各々、上で説明された実施形態における電極8よりも狭い円周方向寸法C1、したがってより少ない累積表面積も有し得る。図3E~3Fに示されるように、スリーブ52は、中心軸X2のまわりに60度の間隔で離隔された6つの電極8を含む電極アレイ9を有し得る。図3G~3Hに示されるように、電極アレイ9は、中心軸X2のまわりに36度の間隔で離隔された10個の電極8を含み得る。
【0040】
図3I~3Jに示されるように、電極アレイ9は、長手方向Lに沿って互いに離隔されて、各々がスリーブ52の全周のまわりに延在する、7つの電極8を含み得る。かかるアレイ9の設計は、電極8が、真空カップ2によって把持された組織体積を通して、結果として生じる電気穿孔場を「上方」に及び/又は「下方」に駆動するシーケンスで、パルス化又は「発射」されることを可能にし得る。
【0041】
図3K~3Lに示されるように、電極アレイ9は、円周方向に長細い電極8の4つのサブセット9a~dを含む、複数の円周方向に長細い電極8を含み得る。各サブセット9a~d内の電極8は、互いに実質的に長手方向に整列させられ得、各サブセット9a~dは、電極8の各隣接するサブセット9a~dから円周方向に離隔され得る。本例においては、電極8の各サブセット9a~dは、5つの長手方向に離隔された電極8を含み得る。したがって、スリーブ52は、合計20個の円周方向に長細い電極8を含み得る。本実施形態においては、各サブセット9a~d内の電極8は、中心軸X2のまわりに約1度~約90度の範囲の角度スパンA2を有し、隣接するサブセット8a~dの間の約1度~約90度の範囲の電極間スパンA3を有し得る。サブセット9a~dを互いに円周方向に離隔することは、数ある中でも、サブセット9a~dが互いに独立して発射(又は電流源若しくは電圧源によって別様に駆動)させられることを可能にする。このことは、サブセット9a~dに隣接し、これらに関連する組織体積内の領域(この実施形態においては、かかる組織領域は、組織体積の「四分円」として特徴付けられ得る)の各々が、電気穿孔場の適用範囲を受け入れることを確実にすることを支援し得、このことは、より対称的な電気穿孔場に帰着し、組織体積内の組織の導電性の局所的差異が、組織体積内の領域のうちの1つ以上から離れる方向に電気穿孔場を付勢する事態を回避し得る。
【0042】
更に、図3K~3Lに示される円周方向に離隔されたサブセット9a~dは、後続のパルスにおいて複数の角度から細胞に電気パルスを当てる(すなわち細胞を異なる方向に沿った電気穿孔場の勾配にさらす)ためのような、組織体積内で固有の方向性の電気穿孔場を生成することも可能にし得、単一方向から細胞に電気パルスを当てるよりも効率良く細胞を電気透過させ得る。かかる多方向電気穿孔場は、図3A~3Hの様々なアレイ設計によっても生成され得ることは、理解されるべきである。しかしながら、図3K~3Lの円周方向に離隔されたサブセット9a~dはまた、電極8が、組織体積を横切って横方向及び/又は円周方向に発射させるだけでなく、組織体積を通して「上向き」及び/又は「下向き」にも発射させることを可能にする。アレイ9内の電極8の量を増大させることによって、可能な固有のパルスパターンの量も増大させることができ、電気穿孔場が電極8の接触面8zに集中することを考慮して、より均質な電気穿孔場の適用範囲も可能にする。
【0043】
以上に説明された様々な電極アレイ9のパターンは、非限定的な例として提供されたものであり、他の電極アレイ9の構成も本開示の範囲内であることは、理解されるべきである。例えば、以上に説明された電極アレイ9のパラメータの1つ以上は、必要に応じて調整することができ、これらパラメータは、限定するものではないが、各アレイ9における電極8の量、電極長L1及び幅C1、並びに電極間の間隔を含む。これらのパラメータは、電場の3次元(3D)形状に(したがって電気穿孔場の3D形状にも)影響を与え得る。換言すれば、電極8のサイズ、形状及び配置は、増強された電気穿孔処置を提供する態様で、組織102内の電場の分布を集中させるために、必要に応じて調整され得る。
【0044】
図4A~4Fを参照すると、脂肪組織103に電気穿孔処置を提供するために真空カップ2を使用する例示的な方法が、ここで説明される。
【0045】
図4Aに示されるように、医師は、真空カップ2の遠位端10を、脂肪組織103の標的ゾーン105を覆う位置に置いて、患者の皮膚104の外面101上に配置し得る。標的ゾーン105は、予め選択され得るか、又は真空カップ2の配置の結果であり得る。好ましくは、医師は、遠位端10の全周を皮膚104と接触させて置く。
【0046】
図4Bに示されるように、医師は、特に真空源を作動させて、組織102の体積又は「マウンド」140をチャンバ6内に引き込んで、電極8の接触面8zと接触させるのに十分な、真空チャンバ6内における約-0.1psi~約-14.7psiの範囲内、より好ましくは約-3psi~約-14.7psiの範囲内で、真空圧を生成することにより、真空チャンバ6に真空圧のパルス(本明細書では「真空パルス」とも称される)を適用し得る。本開示を通して含まれる真空圧の大きさは、海面で測定される大気圧に対するかかる圧力を指すことは、理解されるべきである。組織のマウンド140(特にその皮膚層104)とカップ2の内面22との間の接触圧は、約0.1psi~約200psiの範囲内であり得る。このようにして、真空カップ2は、標的ゾーン105の少なくとも一部を、カップ2によって画定される処置ゾーン107内に引き込む。本例においては、組織のマウンド140は、皮膚104及び脂肪組織103を含む。本開示の目的のため、処置ゾーン107は、電極8の間に延在する組織体積(組織のマウンド140のような)の部分として定義される。図示されるように、処置ゾーン107の底部境界107aは、電極8の第2の端8bに沿って及びそれらの間に延在する、仮想的な経路によって定義され得る。そのため、組織のマウンド140が真空チャンバ6に引き込まれた後、本実施形態の処置ゾーン107は、処置ゾーン107に組織のマウント140の少なくとも一部と、注入部位109(図4C参照)の少なくとも一部とを含むことになる。図示された実施形態においては、処置の間に処置ゾーン107内に位置付けられる組織は、皮膚層104及び脂肪層103に限定される。他の実施形態においては、処置ゾーン107は、平滑筋層111を含み得る。好ましくは、処置ゾーン107は、その中にいかなる骨格筋を含まない。以上に説明されたように、真空圧は、好ましくは、真空カップ2に組織のマウンド140に対する頑丈なグリップを提供し、それにより、真空カップ2と組織のマウンド140との間の相対位置を保持するのに十分である。図示された実施形態は、組織のマウンド140の皮膚104が電極8の接触面8zに直接接触して置かれることを示しているが、電極8と皮膚104との間の電気的な連通を改善するために、導電ゲルのような追加的な物質が利用され得ることは、理解されるべきである。
【0047】
図4Cに示されるように、医師は、マウンド140の脂肪組織103に薬剤を注入し得る。注入を実行するために、医師は、皮下注入針18を、穿刺ストッパ50を通り、第3のポート16に沿って、皮膚104を通り、チャンバ体積V内の脂肪組織103内へと貫通させることができる。医師は次いで、脂肪組織103内の注入部位に薬剤を注入し、続いて皮下注入針18を真空カップ2から引き抜き得る。本発明者らは、驚くべきことに、また予想外にも、皮下注入針18から脂肪組織103内に排出された注入物142が、脂肪組織103内にプールされたボーラス142aに残るのではなく、真空圧に応答して皮膚104に向かって分散することを観察した。したがって、医師は、注入物142を処置ゾーン107の近傍若しくは底部において、又は処置ゾーン107のわずかに下で注入し、真空圧が注入物142を処置ゾーン107内へと上向きに効果的に引き込むことを可能にし、注入物142が処置ゾーン107内で集中させられることさえ可能にし得る。本発明者らはまた、試験の間の観察に基づいて、注入物142をインビボ流体、細胞外成分、及び細胞と混合するのを支援し、注入物142を処置ゾーン107内において、そこでの注入物142の潜時を高める態様で保持し、それによりトランスフェクションを増大させるために、真空圧が操作され得ると考えている。
【0048】
いくつかの実施形態において、針18は、注入後に組織102に挿入されたままにすることができ、針18の少なくとも一部は、以下でより詳細に説明されるように、電気穿孔の間又は後に、電気的パラメータのような組織102のパラメータを検出するためのセンサ152を含み得ることは、理解されるべきである。
【0049】
図4Dに示されるように、医師は、1つ以上の電気穿孔パルスを組織のマウンド140に送達し得る。特に、医師は、信号生成器112に、1つ以上の電気穿孔パルスの形態の電気穿孔信号を電極8へと送達させることができ、この電極が次いで、電極8と接触する組織102に1つ以上の電気穿孔パルスを送達し、それにより、図示の実施形態においては、処置ゾーン107における脂肪組織103内に電気穿孔場144を生成する。電気穿孔場144は実質的に、処置ゾーン107内の細胞(例えば脂肪細胞)の細胞膜に可逆的な部分を生じさせ、一時的に多孔化された細胞への注入物のトランスフェクションを引き起こす。このようにして、電気穿孔場144は、処置ゾーン107内にトランスフェクションゾーンを生成する。本実施形態の電極8によって生成される電気穿孔場144は、実質的に球状の形状を有する。電気穿孔場144は、パルス送達の間に電極8によって生成される電場145のサブ領域であることは、理解されるべきである。
【0050】
電極8によって送達される1つ以上の電気穿孔パルスは、約5V~約1000V(1kV)の範囲内の電位(電圧)を有し得る。
【0051】
1つ以上の電気穿孔パルスは、約0.01Amp~約2.0Ampの範囲内の電流(アンペア数)を有し得る。
【0052】
1つ以上の電気穿孔パルスは各々、約100マイクロ秒~約500ミリ秒の範囲内の継続時間を有し得る。
【0053】
電気穿孔パルスの量は、1パルス~約10パルスの範囲内であり得る。
【0054】
マルチパルス送達の場合には、各電気穿孔パルスは、約1ミリ秒~約1秒の範囲内のパルス遅延によって、隣接するパルスから時間的に分離され得る。
【0055】
いくつかの実施形態においては、電気穿孔信号は、パルス間に200ミリ秒の遅延を有する、約100ミリ秒の継続時間の、約200Vの3つのパルスを含み得る。他の実施形態においては、電気穿孔信号は、パルス間に200ミリ秒の遅延を有する、約100ミリ秒の継続時間の、約50Vの3つのパルスを含み得る。更に他の実施形態においては、電気穿孔信号は、パルス間に1秒の遅延を有する、100ミリ秒の継続時間の、約50Vの10個のパルスをみ得る。更に他の実施形態においては、電気穿孔信号は、パルス間に約100ミリ秒の遅延を有する、約100ミリ秒の継続時間の、75Vの8つのパルスを含み得る。更に他の実施形態においては、電気穿孔信号は、パルス間に約100ミリ秒~約1秒の遅延を有する、約10マイクロ秒~約100マイクロ秒の継続時間の、約500V~約1000Vの間の3つのパルスを含み得る。前述の電気穿孔信号は、特に細胞へのDNA送達のための可逆的な孔形成のための非限定的な例として提供されていることは、理解されるべきである。また、本明細書に開示された実施形態は、非限定的な例として、細胞への小分子の送達、電気化学療法、及び不可逆的電気穿孔用のためのような、他のタイプの薬剤を細胞に送達することを含む、他のタイプの処置を提供するために適合され得ることは、理解されるべきである。
【0056】
複数の電気穿孔パルスを伴う処置において、パルスは、電極8によって、処置の最後の電気穿孔パルスまで及びそれを含めて、以下のパルスシーケンス又はパターンで送達され得る。第1の電気穿孔パルスが、組織102を通して電極8の第1の正のサブセットによって、電極8の第1の負のサブセットへ送達され、第2の電気穿孔パルスが、組織102を通して電極8の第2の正のサブセットによって、電極8の第2の負のサブセットへ送達されるなど。各電気穿孔パルスの間、電極8の各正及び負のサブセットは、単一の電極8から、アレイ9の電極8nの総数より少なくとも1つ少ない(すなわち8n-1個の)電極8の任意の組み合わせに及び得る。電気穿孔パルスパターンは、プログラムされたシーケンスに従って送達され得、該シーケンスは、ユーザによってコントローラ114に(ユーザインタフェース120を介するなどして)入力され得る。更に、電気穿孔パルスのシーケンスは任意選択的に、分散型パターンで送達され得る。かかる分散型パターンシーケンスにおいては、複数の電気穿孔パルスの各パルスは、電極8の少なくとも2つのセットの間で送達され得、複数の電気穿孔パルスの各後続パルスは、少なくとも2つの電極8の異なるセットにより送達される。分散型電気穿孔パルスパターンは、電気穿孔される組織102に対する電気穿孔に関連する熱応力の発生を最小限に抑え得るか、又は好ましくは排除し、組織102内に生成される電場の均質性を向上させ得る。
【0057】
真空カップ2は、電気穿孔パルス送達の間に組織102の1つ以上の電気的パラメータを感知、測定又はその他の方法で検出し、検出された情報を診断及びフィードバックのためにコントローラ114に中継して戻すように構成され得る。組織102において検出される電気的パラメータは、非限定的な例として、電圧、電流、インピーダンス及び/又は抵抗を含み得る。電気穿孔パルス送達の間にかかるパラメータを検出するための1つの手法は、電極8の少なくとも1つに、パルスの間の所望の電気的パラメータを測定させることである。かかる電極8は、感知電極8又は単に「センサ」として特徴付けられ得る。感知電極8は、パルスの間、中性であり得る。分散型電気穿孔パルスパターンシーケンスの非限定的な例として、複数の電気穿孔パルスの各パルスは、電極8の少なくとも2つのセット間で送達され得、少なくとも1つの他の電極8は、中性でありかつインピーダンスのような組織102の電気的パラメータを測定する感知電極8であり、複数の電気穿孔パルスの各後続パルスは、異なるセット少なくとも2つの電極8によって送達され、少なくとも1つの電極8は、中性でありかつ電気的パラメータを測定する感知電極8である。少なくとも1つの中性電極8は、パルスごとに交番し得るが、同じ電極8(又は電極8のセット)は連続するパルスにおいて中性のままであり得る。代替としては、電気穿孔パルスの間、アレイ9の少なくとも1つの電極8は、組織102の電気的パラメータを測定しながらも、パルスを能動的に送達し得る。
【0058】
電気穿孔パルス送達の間に電気的パラメータを検出するための別の任意の手法は、パラメータを検出するための少なくとも1つの別個のセンサを利用することである。別個のセンサは、例えば、図4Dに示されるように、接触センサ150のような非侵襲性センサ150であり得る。接触センサ150は、パラメータを測定し、測定されたパラメータについての情報をコントローラ114に伝達するように構成される。接触センサ150は、第2のポート14のようなポートを通して、真空チャンバ6に挿入され得る。医師は、接触センサ150を、皮膚104のような組織102と接触させるように置くことができ、そこで接触センサ150はパラメータを測定し得る。他の実施形態においては、別個のセンサは、プローブ型センサ152のような侵襲性センサ152であり得る。プローブ型センサ152のかかる例の1つにおいては、センサ152は、注入針18の一部、例えば、その遠位先端領域(図4C参照)であり得、測定パラメータについての情報をコントローラ114に関連付けるために、コントローラ114と電気的に連通し得る。組織102の単一の電気的パラメータ又は複数の電気的パラメータに関する情報をコントローラ114に中継するために、1つ以上の非侵襲性センサ150及び1つ以上のプローブ型センサ152を含む複数のセンサが処置の間に利用され得ることは、理解されるべきである。
【0059】
コントローラ114によって受信された電気的パラメータ情報は、性能診断目的のため、及び/又は電極8に送達され、したがって組織102に送達される電気穿孔信号のアクティブなフィードバック制御のために利用され得る。例えば、能動的なフィードバック制御を提供するために、1つ以上のセンサ8、150、152は、組織102における1つ以上のそれぞれの電気的パラメータを測定し、これらパラメータについての情報をコントローラ114に伝達し得る。プロセッサ116は、電気穿孔パルスを制御するための制御コマンドのような出力を処理するか又はその他の方法で導出するために、パラメータ情報を組み込む1つ以上のアルゴリズムを実行することなどにより、パラメータ情報を組み込んだソフトウェアを実行し得る。アルゴリズムはまた、コンピュータメモリ118から取得されたパラメータデータを利用し得る。アルゴリズムから導出された制御コマンドは、センサ8、150、152からのパラメータ情報に基づいて、電気穿孔目的のために実質的に瞬時になどのように、リアルタイムで電気穿孔パルスを調節し得ることは、理解されるべきである。このようにして、電気穿孔システム100は、標的組織102において所望の電気穿孔処置結果を達成するために、必要に応じて電気穿孔パルスの一定の制御及び調節のために、能動的なフィードバックループにおいてセンサ8、150、152を利用し得る。かかるフィードバック制御を実行するための技術及び/又は電子部品は、「Electroporation Devices and Methods of Using Same for Electroporation of Cells in Mammals」と題された2016年9月27日に発行された米国特許第9,452,285号(‘285参考文献)、及び「Variable Current Density Single Needle Electroporation System and Method」と題された2011年1月13日に発行された米国特許公開第2011/0009807A1号(‘807参考文献)により完全に開示されているように利用することができ、それらの各々の全体開示がここで参照によって本明細書に組み込まれたものとする。
【0060】
図4Eに示されるように、1つ以上の電気穿孔パルスに続いて、医師は、真空チャンバ6内の圧力を大気圧に戻し、真空カップ2が組織102を離すことを可能にし得、組織はその解剖学的形状に戻ることができる。トランスフェクトされた脂肪細胞は、脂肪層103にトランスフェクションゾーン105zを画定し得る。
【0061】
ここで図4Fを参照すると、本明細書に開示された真空カップ2の重要な利点の1つは、真空源106と関連して、医師が電気穿孔処置のために処置ゾーン107に引き込まれる組織102の体積(すなわちマウンド140のサイズ)を制御することを可能にすることである。したがって、標的ゾーン105が皮膚層104のみに存在する場合、医師は、皮膚層104をチャンバ体積V内に引き込み、その遠位端8bなどにおいて電極8と接触させるために必要な真空圧を、真空チャンバ6に加えることができる。標的ゾーン105が脂肪層103に存在する場合、医師は、脂肪層103を処置ゾーン107に引き込むのに必要な、増大させられた真空圧を加え得る。標的ゾーン105が平滑筋層のような筋肉層に存在する場合、医師は、更に増大させられた真空圧を加えることができ、標的ゾーン105が骨格筋層に存在する場合は、更により増大させられた真空圧を加えることができる。標的ゾーン105は、組織の単一層(例えば、皮膚層104又は脂肪層103)に存在し得、又は皮膚層104、脂肪層103、及び任意選択的に平滑筋層を含む複数の組織層に存在し得ることは、理解されるべきである。真空圧は、標的ゾーン105の深さに従って、必要に応じて制御され得る。
【0062】
本開示の真空カップ2の別の重要な利点は、真空カップ2が、真空源106と関連して、医師が、複数の真空パルスを組織102に適用して、以上に説明された好適なインビボ流体分散機構を含む、組織と注入物との間の相互作用を増強することを可能にすることである。真空パルスは、注入の前、注入の間、及び/又は注入後に適用され得、また電気穿孔の前、電気穿孔の間、及び/又は電気穿孔の後に適用され得る。真空パルスは、1パルス~20パルスの範囲内の量で付与され得、各パルスは、約0.1秒~約30秒の範囲内の継続時間を有し得る。真空パルスはまた、所望の結果を達成するために、真空圧及び/又は継続時間を変化させて(及び/又はパルス間の時間を変化させて)適用され得る。
【0063】
本発明者らは、本開示の真空カップ2に関連して、多くの驚くべき、予想外の観察を得た。例えば、本発明者らは、真空カップ2を使用して真空支援電気穿孔を用いて処置された試験対象における免疫応答において、予想外の驚くべき増大を観察した。この結果は、本発明者らの当初の目的が、先行技術のキャリパー型電気穿孔装置によってもたらされるグリップと比較して、対象組織においてより安全なグリップを達成するという主目的のために真空カップ2を利用することであったため、驚くべき予想外のものであった。本発明者らは、真空カップ2を用いて処置された試験対象において測定された増大した免疫応答を、単に真空カップ電極8と組織との間の増強された位置的安定性の結果として説明することができなかった。注目すべきことに、本発明者らはまた、真空カップ2を用いて処置された処置部位において、予想外の驚くべき量の細胞浸潤を観察した。真空カップ2を利用したいくつかの処置の後、本発明者らは、紅斑及び/又は血腫の特性である皮膚における打撲及び変色を観察し、後者は破裂した毛細管を通した血液の拡散を伴う。
【0064】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、免疫応答及び細胞浸潤の驚くべき増大は関連している見込みが高いと考えている。更に、本発明者らは、増大した細胞浸潤は、少なくとも部分的に、追加的な白血球のような追加的な細胞を引き寄せて処置ゾーンに反応的に移動させる、処置ゾーンにおける破裂毛細管及び近くの白血球からの化学的信号の自然分泌によって駆動されると考えている。本発明者らはまた、観察された細胞浸潤は、少なくとも部分的に、炎症反応によって駆動され得ると考えている。本発明者らは更に、真空圧に応答して組織を通る注入物の観察された分散に基づいて、処置ゾーン107の外側のインビボ流体が、真空圧に応答して処置ゾーン107に機械的に引き込まれると考えている。
【0065】
ここで図5A~5Dを参照しながら、可撓性電極508を利用した真空カップ502の一実施形態について説明する。本実施形態の真空カップ502は、以上に説明された真空カップ2と同様である。したがって、以上に用いられたような同様の参照番号は、本実施形態における共通の特徴を示している。簡潔さのため、以下の説明は、本実施形態の真空カップ502と以上に説明された真空カップ2との相違点に焦点を当てる。
【0066】
図5A~5Bに示されるように、真空カップ502は、真空チャンバ506を部分的に画定する内面522を画定する、筐体本体526を有する。筐体本体526はまた、筐体本体526の外面532から筐体本体526の内面522に画定された複数のチャネル562まで延在する、複数のリリーフポート560を画定する。チャネル562は、長手方向Lに沿って互いから離隔された近位チャネル562及び遠位チャネル562を含み得る。チャネル562は、それぞれ中心軸Xのまわりの全周に沿って環状に延在し得るが、他の実施形態においては、チャネル562の1つ以上は、中心軸Xのまわりの全周よりも短い範囲で環状に延在し得る。
【0067】
真空カップ502は、真空チャンバ506内に存在し、電極アレイ509に配置された複数の電極508を担持する、可撓性スリーブ552を含む。可撓性スリーブ552は、筐体本体526の内面522に取り付けられた外面553を有する。可撓性スリーブ552は、チャネル562と真空チャンバ6との間に可撓性の障壁又は膜を提供する態様で、チャネル562を覆っている。電極508は、スリーブ552の内面555上に配設される。スリーブ552はまた、電極508とコントローラ114との間の電気的な連通を提供するための、例えば、有線回路又は印刷回路のような回路を担持し得る。本実施形態の電極508は、図3K~3Lを参照して以上に説明された電極8と同様に、円周方向に長細いものであり得る。電極508の1つ以上及び最大で各々は、チャネル562の少なくとも1つを覆っており、可撓性材料で構築されている。電極材料は、非限定的な例として、銅、ステンレス鋼及び金のような金属であり得る。代替として又はこれに加えて、電極材料は、非限定的な例として、導電性ポリマー、又はカーボンナノチューブを含み得るグラフェンのような炭素同素体を含み得る。他の実施形態においては、電極508は、以上に説明されたもののような導電性材料で被覆された非導電性コアを有し得る。
【0068】
電極アレイ509は、電極508の4つのサブセット509a~dを含み得る。各サブセット509a~d内の電極508は、長手方向Lに沿って実質的に整列され得、各サブセット509a~dは、円周方向Cに沿って各隣接するサブセット509a~dから離隔され得る。サブセット509a~dは、中心軸Xのまわりに90度間隔などのように、互いから規則的に離隔され得る。図示される例においては、各サブセット9a~dは、互いから長手方向に離隔された近位電極508及び遠位電極508を含み、アレイ509に合計で8つの電極508を提供する。アレイ509の電極508はまた、近位チャネル562を覆う電極508の近位環状列と、遠位チャネル562を覆う電極508の遠位環状列とに配置されているものとして特徴付けられ得る。以上に説明されたように、電極508は、電極508とコントローラ114との間の電気的な連通を提供する回路に接続される。コントローラ114が、電極508の各サブセット509a~dに対する電気穿孔パルスのパラメータを個別に制御することができ、更に各サブセット509a~d内の各電極508に対する電気穿孔パルスのパラメータを個別に制御することができるように、電極アレイ509の回路が構成され得ることは、理解されるべきである。
【0069】
ここで図5C~5Dを参照すると、可撓性スリーブ552及び電極508は、チャンバ6内の真空圧を加えているときに、真空チャンバ6内へと内向きに(中心軸Xに向かって)撓むように構成され、電極508の接触面508zとチャンバ6内に引き込まれた組織の間の接触を増大させる。リリーフポート560は、チャネル562と真空カップ502の外部との間に流体連通をもたらし、それによりチャネル562内の圧力が実質的に大気圧に留まることを可能にする。このようにして、チャンバ内の真空圧は、チャンバ6とチャネル562との間のスリーブ552の壁に圧力勾配をもたらし、スリーブ552及びその上の電極508が、チャンバ6内へと内向きに撓むことを可能にする。
【0070】
ここで図6A~6Dを参照すると、真空カップ2、502の真空チャンバ6内に位置付けるための電極608は、電極608の接触面608zによって画定され得る複数の突出部664を含み得る。以上に説明された態様と同様に、電極608は、電極608の中心軸608xに沿って、第1の端608aから第2の端608まで延在する。電極608は、中心軸608xに沿って配向された方向に沿って長細ものであり得る。電極608はまた、電極608の横軸608yに沿って、第1の側面608cから第2の側面608dまで延在し得る。接触面608zは、実質的に滑らかなベース部分665を含み得、突出部664は、ベース部分665から外向きに(すなわちチャンバ6内へと内向きに)延在し得る。ベース部分665は、図示されるように、実質的に平面状であり得るが、他の実施形態においては、ベース部分665は、カップ筐体4の内面22と実質的に共形の曲線的な輪郭を有し得る。ベース部分665から外向きに延在することによって、突出部664は、電極608の接触面608zとチャンバ6内に引き込まれた組織との間の接触面積を増大させ得る。使用の間、突出部664は、皮膚104の最上層を破壊して、変化させる態様で組織102に押し込むことができ、標的組織内の電場分布を改善することができる。より具体的には、突出部664は、「Method and Device for Minimally Invasive In Vivo Transfection of Adipose Tissue Using Electroporation」と題された2018年3月29日に公開された国際(PCT)特許公開第WO2018/057900A1号(‘900参考文献)に更に完全に記載されているように、所与の入力電圧に対して組織102内に形成される電場の大きさを増大させ、この開示全体が参照により本明細書に組み込まれたものとする。
【0071】
図6A~6Bに示されるように、突出部664は、凸状、円弧状、ドーム状の幾何学的形状を有し得る。突出部664は、突出部664の列及び行に配置され得る。図6Cに示されるように、突出部は、横軸608yに沿って配向された方向に沿って長細であり得る。図6B及び6Dに示されるように、図6A及び図6Cに示される突出部608は、同様の側面プロファイルを有し得る。尖った形、円錐形、錐台形、ピラミッド形などを含む他の突出部の幾何学的形状も本開示の範囲内であることは、理解されるべきである。また、電極608は、真空カップ2の長手方向Lに沿って長細になるように、真空カップ2の円周方向Cに沿って長細になるように、又は長手方向及び円周方向L、Cに対して斜めの方向に沿って長細になるように、チャンバ6との位置付けのために構成され得ることは、理解されるべきである。
【0072】
チャンバ深さL2、チャンバ直径D1、並びに中心軸Xに直交する基準面における断面形状、及び/又は開口20の形状のようなカップ形状など、本明細書に記載された真空カップ2、502の様々なパラメータは、広範の哺乳類及び皮膚の生体構造にわたるような望ましい電気穿孔処置を達成するために、必要に応じて調整され得る。例えば、本開示の真空カップは、非限定的な例として、多角形の開口及び/又はチャンバの幾何学的形状のような、非円形の開口及び/又はチャンバの幾何学的形状を有し得る。図7A~7Eを参照しながら、三角形の開口及びチャンバの幾何学的形状を有する真空カップ702が説明される。図8A~8Cを参照しながら、長方形の開口及びチャンバの幾何学的形状を有する真空カップ802が説明される。かかる実施形態においては、チャンバ寸法D1は、「チャンバ幅」D1と称され得る。
【0073】
ここで図7A~7Cを参照すると、三角形の開口720を画定する遠位端710を有する真空カップ702が示されている。本実施形態の真空カップ702は、以上に説明された真空カップ2、502と同様である。したがって、以上で使用されたような同様の参照番号は、本実施形態における共通の特徴を示す。簡潔さのため、以下の説明は、本実施形態の真空カップ702と以上に説明された真空カップ2、502との相違点に焦点を当てる。
【0074】
真空カップ702は、真空カップ702の中心軸Xに直交する基準平面で見て、三角形のパターンに配置された3つの側壁730を画定する、筐体本体726を含む。したがって、筐体本体726は、直交する基準平面において、これも三角形の形状を有する真空チャンバ706を画定する。側壁730は、筐体本体726の3つの角735において互いに交差し、これらの角735は、好ましくは曲がっている。三角形のパターンは、図示されるように正三角形であり得るが、直角三角形、二等辺三角形、及び不等辺三角形を含む他の三角形のパターンも、本実施形態の範囲内である。
【0075】
側壁730の内面722は、遠位リードイン部分722aからチャンバ706の近位端724に向かって延在する主部分722bを画定し得る。主部分722bは、平面状であり得、それにより、直線状の表面プロファイルを画定し、この直線状の表面プロファイルに沿って測定されると、約1mm~約20mmの範囲内の長さL4を画定し得る。主部分722bは、代替として非平面状であってもよく、非直線状のプロファイルを有してもよいことは、理解されるべきである。主部分722bは、好ましくは、チャンバ706の近位端724に向かって、中心軸Xに向かって内向きに先細である。主部分722bは、中心軸Xと平行な軸に関して測定されるテーパ角A4を、約0度~約80度の範囲内、より詳細には約0.25度~約10度の範囲内、及びより詳細には約0.5度~約5度の範囲内で画定し得る。
【0076】
真空カップ702は、電極アレイ709に配置された複数の電極708を含み、このアレイは、電極708の3つのサブセット709a~cを含み得る。電極708の第1のサブセット709aは、第1の側壁730の内面722上に配設され得、電極708の第2のサブセット709bは、第2の側壁730の内面722上に配設され得、電極708の第3のサブセット709cは、第3の側壁730の内面722上に配設され得る。電極708のサブセット709a~cは、それぞれの基板又は「パッド」752によって担持され得、これらの基板は、非限定的な例として、シリコン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエチレン、ポリカーボネート及びポリエーテルイミド(PEI)のような電気絶縁材料で構築され得る。基板752は、可撓性であってもよいし、又は剛性であってもよい。基板752はまた、電極708とコントローラ114との間の電気的な連通を提供するための、例えば、有線回路又は印刷回路のような回路を担持し得る。したがって、基板752は、印刷回路基板(PCB)のような回路基板であり得る。以上に説明されたように、コントローラ114が、電極708の各サブセット709a~dに対する電気穿孔パルスのパラメータを個別に制御することができ、また各サブセット709a~cの各電極708のパルスパラメータを個別に制御することができるように、回路が構成され得る。基板752の外面753は、接着剤を介してそれぞれの側壁730の内面722に取り付けられ得るが、他の締結技術も本開示の範囲内である。
【0077】
電極708の各サブセット709a~cは、単一の電極708又は好ましくは複数の電極708を含み得る。図示された実施形態においては、各サブセット709a~cは、4つの電極708を有する。各サブセット709a~cは、単一の、電極、2つ、3つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、又は12個より多い電極708、例えば、100個以上の電極708のような、4つよりも少ない又は多い電極708を有し得ることは、理解されるべきである。微小電気機械システム(MEMS)技術及びナノ技術の進歩により、各離散電極708のサイズは、各サブセット709a~cが事実上無制限の量の離散電極708を有し得る程度まで縮小させられ得る。
【0078】
電極708は、図示されるように滑らかであり得る接触面708zを画定する。接触面708zの主要部分は、内面722の主部分722bを覆うそれぞれの部分のように、平面状であり得る。しかしながら、少なくとも1つ及び最大で全ての電極708の接触面708zは、以上に説明された態様と同様に、テクスチャ加工され得、及び/又は突出部を画定し得ることは、理解されるべきである。更に、基板752及び電極708は、可撓性であってもよく、図5A~5Dを参照しながら以上に説明された態様と同様に、真空圧がチャンバ706に加えられたときに電極708が内向きに撓むことを可能にするために、筐体本体726に画定されたチャネル及びリリーフポートを覆い得る。
【0079】
ここで図7Dを参照すると、各サブセット709a~cにおける電極708は、互いに平行であり得る。電極708は、その中心軸708xに沿って電極708の第1及び第2の端708a、bの間で測定される、電極長L1を定義し得る。電極長L1は、以上に説明された範囲内であり得る。電極708はまた、電極708の第1及び第2の側面708c、dの間で測定される、電極幅W1を定義し得る。電極幅W1は、以上に説明されたC1についての範囲内であり得る。各サブセット709a~cの電極708はまた、約1.0mm~約30mmの範囲内であり得る、電極間の離隔間隙W2を定義し得る。
【0080】
ここで図7Eを参照すると、電極708は、基板752から内向きに(真空チャンバ706内へと)延在し得る。電極708は、基板752の内面755から接触面708zまで測定される電極厚さT1を定義し得る。電極厚さT1は、約0.001mm~約2.000mmの範囲内であり得る。図示されるように、電極708の外面708wは、基板752の内面755に貼付され得る。他の実施形態においては、電極708の外面708wは、基板752に部分的に埋め込まれ得る。すなわち、電極708の外面708wは、基板752の外面及び内面753、755の間の深さで存在し得る。更なる実施形態においては、電極708の外面708wは、基板752に完全に埋め込まれ得る。すなわち、電極708の外面708wは、基板752の外面753と同延であり得る。
【0081】
本実施形態の電極アレイ709a~cは、真空圧が組織102を真空チャンバ内に引き込むと、組織102が接触面708zに接触するように、及び電極間の間隙W2内へと引き込まれて、それにより電極の側面708c、dにも接触し、それにより組織102と電極708との間の全体的な接触界面面積が増大するように構成される。
【0082】
本実施形態の真空チャンバ706の幾何学的形状及び電極アレイ709a~cの構成は、真空カップ702の側壁730に沿った実質的に平面状の電極708を可能にし、以上に説明された真空カップ2、502のものと比較して、組織102においてより柱状の電気穿孔場(すなわち中心軸Xに沿ってより長細の)をもたらす。本実施形態の三角形の形状はまた、有利にも、先行技術の電気穿孔装置よりも大きな程度に、三角形のパルスパターンによって画定される電気穿孔場の境界内に、組織を拘束し得る。これに加えて、本実施形態の三角形のアレイを含む多角形のアレイの幾何学的形状は、円形の設計を含む他のアレイ設計と比較して、角735の反対側の隣接電極間の鋭角すなわち「鋭い」角度により、より不均質な電気穿孔場を生成し得る。例えば、標的組織内で増大した電場の大きさ(増大した電流に帰着する)の領域を生成することが望ましい場合があり、「鋭い」すなわち鋭角の隣接電極端を有することは、かかる増大した電場/電流の領域を組織内に生成する1つの方法である。
【0083】
ここで図8A~8Cを参照すると、長方形開口820を画定する遠位端810を有する真空カップ802が示されている。本実施形態の真空カップ802は、以上に説明された真空カップ2、502、702と類似する。したがって、以上で使用されたような同様の参照番号は、本実施形態における共通の特徴を示す。簡潔さのため、以下の説明は、本実施形態の真空カップ802と以上に説明された真空カップ2、502、708との相違点、特に図7A~7Eを参照して以上に説明された真空カップ702との相違点に焦点を当てる。
【0084】
真空カップ802は、4つの壁、特に、長方形のパターンに配置された一対の対向する端壁831の間に延在する一対の対向する側壁830を画定する筐体本体826を含み、それにより直交基準面において、これも長方形形状を有する真空チャンバ806を提供する。図示された実施形態においては、側壁830は端壁831よりも長いが、他の実施形態においては、側壁830及び端壁831は、長方形が正方形となるように、同じ長さであっ得る。また、筐体本体826の壁は、他の四角形の幾何学的形状(すなわち非長方形)を画定し得ることは、理解されるべきである。
【0085】
壁830、321の内面822は、遠位リードイン部分822aからチャンバ806の近位端824に向かって延在する、主部分822bを画定し得る。側壁830及び/又は端壁831の主部分822bは、内側に向かって近位にテーパ角A4で先細であり得、該テーパ角は、以上に説明された範囲内であり得る。真空カップ802は、電極アレイ809に配置された複数の電極808を含み、該電極アレイは、側壁830の内面822上に配設された電極808の2つの対向するサブセット809a、bを含み得る。端壁831は、図示されるように、電極808を欠き得るが、他の実施形態においては、端壁831の一方又は両方は、電極808の追加的なサブセットを有し得る。更に他の実施形態においては、端壁831は電極を有してもよく、側壁839は電極を欠いていてもよい。更に他の実施形態においては、壁830、831の1つ以上及び最大で各々が、様々なサイズ及び形状に従って構成され得る、単一の電極を有し得る。
【0086】
上述したように、電極808のサブセット809a、bは、内面822に取り付けられたそれぞれの非導電性基板852によって担持され得る。各サブセット809a、bは、4つの電極808を有し得るが、各サブセット809a、bは、4つよりも多い又は少ない電極808を有し得る。以上に説明されたように、電極アレイ809は、コントローラ114が、電極808の各サブセット809a、bへの電気穿孔パルスのパラメータを個別に制御し、また各サブセット809a、b内の各電極808のパルスパラメータを個別に制御できるように構成された回路を含み得る。
【0087】
図示されるように、電極808の接触面808zは、滑らかであってもよく、その主要部分は、平面状であってもよい。しかしながら、他の実施形態においては、接触面808zは、以上に説明されたように、テクスチャ加工され得、及び/又は突出部を画定し得る。筐体本体826、基板852及び電極808はまた、図5A~5Dを参照しながら以上に説明された態様と同様に、電極808が真空圧に応答して内向きに撓むことを可能にするように協働的に構成され得る。電極808は、図7D~7Eを参照しながら以上に説明されたものと同様の長さL1、幅W1及び厚さT1を有し得、以上に説明されたものと同様に動作し得る。
【0088】
本実施形態の真空チャンバ806の長方形の幾何学的形状及び電極アレイ809a、bの構成は、以上に説明された真空カップ2、502、702のものと比較して、中心軸Xを横切る方向に沿って(特に端壁831に直交する方向に沿って)より長細である、球状の電気穿孔場を提供する。更に、本実施形態の長方形アレイは、互いに直接対向し、直接対向する電気パルスを発射することが可能な、実質的に平面状の電極を可能にする。この点に関して、本実施形態のアレイは、本技術分野で既知の対向プレート型又はキャリパー型電気穿孔装置と同様の方法で利用することができる。例えば、本実施形態の長方形アレイ設計は、医師が、キャリパー型電極構成と同様に、組織の長細いセクションを「つまむ」ことを可能にし得る。主に1つの軸に沿って組織を「把持」し、組織内に長細い処置ゾーンを形成するようにつまむことは、有利であり得る。例えば、アスペクト比を増大させると、長方形カップ802は、電極間の間隙を増大させずに、より大きな組織領域全体を処置することができる。このことは、例えば、同じ電圧で動作する円形アレイ設計よりも、低い電圧の使用及び大きな組織領域の処置を可能にし得る。
【0089】
これに加えて、以上に説明されたものと同様に、本実施形態のアレイを含む多角形アレイ形状は、カップ802の対向側壁830上の隣接電極間の鋭角(本実施形態においてはほぼ平行)により、より不均質な電気穿孔場を生成し得る。更に、以上に説明されたように、増大した電場の大きさの領域を組織内に生成するために、以上に説明されたように、アレイが利用され得る。
【0090】
他の実施形態の真空カップは、五角形、六角形、七角形、八角形などから、円形の幾何学的形状に至るまでの、他の多角形形状の開口及び/又はチャンバの幾何学的形状を有し得ることは、理解されるべきである。更に、かかる多角形形状は、等辺の構成を有する必要はない。更に他の実施形態においては、真空カップは、非限定的な例として、楕円形、長円形又は不規則な形状のような、他の形状の開口及び/又はチャンバの幾何学的形状を有し得る。楕円形のカップ形状は、主に1つの軸に沿って組織を「把持」し、それをつまんで、組織内に長細い処置ゾーンを形成し、それにより、より大きな組織領域を処置するための低電圧を可能にする能力を含む、上述の長方形カップ802と同様の利点を提供できることは、理解されるべきである。
【0091】
ここで図30A~33Fを参照しながら、脂肪組織103及び皮膚104に対する様々な4電極アレイ9の模擬試験結果を説明する。図30A~33Fの各々において、対向電極8は、15mmの距離(この距離はチャンバ直径D1に近い)で互いに離隔されており、電極間の印加電圧は同じである。したがって、図30A~33Fは、電場生成に対する電極の形状、サイズ及び離隔の効果を実証している。
【0092】
図30A~31Fは、電極の接触面が概ね円形の外周に沿って延在する、円形アレイ9を示す。図30A~31Fに示される電極の幅は、チャンバ直径の割合によって定義され、したがって、上部に向かって内向きに先細となるチャンバは、チャンバの内面に沿った任意の位置で常にチャンバの円周の同じ割合を占めながら、上部付近において薄い電極幅、及び底部付近において厚い電極幅を有することとなる。図30B及び図31Bにおける電極は各々、15度の角度スパンA2を有し、図30C及び図31Cにおける電極は各々、30度の角度スパンA2を有し、図30D及び図31Dにおける電極は各々、45度の角度スパンA2を有し、図30E及び図31Eにおける電極は各々、60度の角度スパンA2を有し、図30F及び図31Fにおける電極は各々、75度の角度スパンA2を有している。
【0093】
図32A~33Fは、電極の接触面が長方形の辺を画定する、長方形(具体的には正方形)アレイ9を示す。図32B及び33Bにおける電極は各々、2.5mmの幅を有し、図32C及び図33Cにおける電極は各々、5.0mmの幅を有し、図32D及び図33Dにおける電極は各々、7.5mmの幅を有し、図32E及び図33Eにおける電極は各々、10.0mmの幅を有し、図32F及び図33Fにおける電極は各々、12.5mmの幅を有している。図32A~33Fに示される電極の幅は、上部から底部まで一定である。したがって、上部に向かって内向きに先細であるチャンバは、このように構築された隣接する電極を、底部におけるよりも上部において互いに近くなるようにする。カップの寸法及び壁のテーパ角に応じて、このことは、チャンバの上部において、隣接する電極が互いに非常に接近するか又は互いに接触することさえ引き起こし得るため、これは好ましくない。
【0094】
これらの図から、正方形アレイ(図32A~33F)は、それらの円形アレイの対応物(図30A~31F)よりも、脂肪組織103及び皮膚104の両方において、不均質な電場を形成することがわかる。したがって、円形アレイは、それらの長方形アレイの対応物よりも、脂肪組織103及び皮膚104の両方において、より均質な電場を生成するとも言える。円形及び長方形のアレイによって生じる電場の不均質性/均質性におけるこれらの相違は、所望の処置に応じて、必要に応じて有益に利用され得る。例えば、特定の電気穿孔処置がより均質な電場から利益を得る場合には、医師は円形の真空カップ(及び電極アレイ)を選択することができる。特定の電気穿孔処置がより不均質な電場から利益を得る場合には、医師は多角形の真空カップ(及び電極アレイ)を選択することができる。電極の設計に関しては、特に図30A~31Fに示す設計のように、真空チャンバが上部において内向きに先細である場合、隣接する電極の間の適切な離隔を維持することが好ましいことは、理解されるべきである。
【0095】
ここで図9Aを参照すると、特にジェット注入を介した、薬剤の針なし注入のために構成された真空カップ902を含む、真空電気穿孔アセンブリの例900が示されている。したがって、真空カップ902は、「針なし」真空カップ902は又は「ジェット注入」真空カップ902と称され得る。本実施形態の真空カップ902は、以上に説明された真空カップ2、502、702、802、特に図1~4Fを参照しながら以上に説明された真空カップ2と同様である。したがって、以上で使用されたような同様の参照番号は、本実施形態における共通の特徴を示す。簡潔さのため、以下の説明は、本実施形態の真空カップ902と図1~4Fを参照しながら以上に説明された真空カップ2との間の相違点に焦点を当てる。
【0096】
上述したように、真空カップ902は、中に電極908が配設された真空チャンバ906と、それぞれが真空チャンバ906と連通する第1のポート912、第2のポート914及び第3のポート916とを画定する、筐体本体926を有する。上述したように、第1のポート912は、真空源106への接続のために構成され、第2のポート914は、数ある中でも、真空チャンバ906内への回路の通路のために構成される。しかしながら、本実施形態の第3のポート916は、真空チャンバ906に引き込まれた組織902に注入物142の小さなストリーム又は「ジェット」を注入するための、ジェット注入装置970を受容するように構成される。これに加えて、筐体本体926は、注入装置970との封止された結合を提供するように構成された、第3のポート916の外側端における、装着形成部948を画定する。装着形成部948は、装着形成部948に画定されたレセプタクル953内に存在し得、かつ注入装置970の外部との封止係合を提供するように構成された、封止Oリング951のような、1つ以上の封止部材を担持し得る。
【0097】
ジェット注入装置970は、薬剤を含む注入物142が貯蔵される流体チャンバ又は容器974を画定する、注入筐体972を含む。注入筐体972の外面975は、注入筐体972と真空チャンバ906との間の封止接続を提供するために、第3のポート916及び封止Oリング951と協働するサイズとされる。注入筐体972の遠位部分976は、容器974と流体連通しているノズル978を画定する。ノズル978は、容器974から真空チャンバ906に注入物142を排出するように構成される。遠位部分976はまた、ノズル978を少なくとも部分的に取り囲むシールド980を含み得る。シールド980は、ジェット注入の間に生成される注入物142の潜在的なはね止め又はリバウンドを含む、物理的な障壁として機能し得る。シールド980はまた、カップ902の回路を注入物142への露出から保護することができる。
【0098】
ノズル978の遠位端979は、好ましくは、シールド980の遠位端981を越えて遠位に延在する。ジェット注入装置970は、その遠位端にピストン984を担持するプランジャ982を含む。ピストン984の遠位先端986及びその遠位端990における容器974の内面988は、ピストン984の遠位端990への前進が、注入物142のジェットをノズル978から組織102の中に排出するように、相補的な幾何学的形状を有している。容器974は、注入物の予め測定された体積又は用量を担持するように構成され得ることは、理解されるべきである。更に、プランジャ982は、発射機構又はアクチュエータなどによって制御され、ノズル978を通って患者の組織102内へと所定の用量の注入物を排出し得る。かかる発射機構は、非限定的な例として、予め負荷をかけられた又は負荷をかけることが可能な1つ以上のばね、圧縮ガスキャニスタ、及び同様のものを含み得る。
【0099】
ジェット注入装置970は、「Intradermal Injection Device」と題された2018年8月14日に発行された米国特許第10,045,911号(「‘911文献」)、「Intradermal Jet Injection Electroporation Device」と題された2019年1月3日に公開された米国特許公開第2019/0000489A1号、及び「Needle-Free Injection Device with Nozzle Auto-Disable」と題された2009年5月28日に公開された米国特許公開第2009/0137949A1号(「‘949文献」)のいずれかに更に完全に開示されるように構築され得、これらの各々の開示全体が参照により本明細書に組み込まれたものとする。
【0100】
針なし真空カップ902及びジェット注入装置970は、それにより提供される電気穿孔処置を増強する相補的な特徴を有する。例えば、図9Bを参照すると、真空圧が組織102のマウンド140を真空チャンバ6内に引き込むと、マウンド140上の皮膚層104が堅く締まり、皮膚層104の弾力性を一時的に減少させ、これによりノズル978から出る注入物のジェット又はストリームが、注入物のリバウンドを少なくして皮膚層104をより効率的に穿刺することを可能にする。皮膚層104を堅く締めることを補助するために、医師は、皮膚層104がノズル978の遠位端979のまわりで変形し、それにより遠位端979との接触界面において皮膚層104に窪み104aを形成し、窪み104aにおいて皮膚層104を更に引き延ばすように、十分な真空圧を利用して、皮膚層104を引き込みノズル978の遠位端979に接触させ得る。ジェット注入装置970の使用と組み合わせた、皮膚層104におけるかかる引き締めは、排出される注入物142が、注入時に皮膚層104を穿刺して、針注入(図4Cと比較して)よりも大きな程度に、また真空圧によって補助されないジェット注入装置を用いる場合よりも大きな程度に、組織のマウンド140の全体に浸透することを可能にする。
【0101】
組織のマウンド140全体への注入物の浸透は、注入物が組織102、特に脂肪組織103の全体に強制的に浸透させられるので、加圧された注入物が組織102内に数千の微細な切れ目又は経路を形成し、組織を効果的に浸透性にするとして特徴付けることができる。更に、その後に組織102を真空圧にさらすことによって(すなわち組織のマウンド140をチャンバ906内に引き込んだ真空パルスの継続、及び任意選択的に後続する1つ以上の真空パルスなどにおいて)、既により広範囲に分散された注入物142は、以上に説明された流体分散機構に従って、真空圧に応答して組織のマウンド140全体に更に分散させられ得る。
【0102】
ここで図10A~10Dを参照しながら、針なし真空カップ1002の別の実施形態が説明され、ここで真空カップ1002は、そこに引き込まれた組織102が、真空チャンバ1006内の電極1008に画定された複数の開口1063内へと少なくとも部分的に引き込まれるように構成された、真空チャンバ1006を有する。本実施形態の真空カップ1002は、以上に説明された真空カップ、特に図9A~9Bを参照しながら以上に説明された真空カップ902と同様である。したがって、以上に使用されたような同様の参照番号は、本実施形態における共通の特徴を示す。簡潔さのため、以下の説明は、本実施形態の真空カップ1002と以上に説明された真空カップ902との相違点に焦点を当てる。
【0103】
ここで図10A~10Bを参照すると、本実施形態の真空カップ1002は、上述したように、真空源106への接続のための第1のポート1012と、真空チャンバ1006へのアクセスを回路に提供するための第2のポート(図示されていない)と、ジェット注入装置970との封止接続を提供するための第3のポート1016と、を画定する筐体本体1026を有する。本実施形態においては、第3のポート1016が真空チャンバ1006まで直接延在する代わりに、第3のポート1016は、筐体本体1026によって画定された環状チャネル1062まで内向きに延在する。環状チャネル1062は、少なくとも部分的に真空チャンバ1006を取り囲み、径方向Rに沿ってそこから外向きに離隔される。筐体本体1026は、環状チャネル1062から真空チャンバ1006に向かって内向きに延在する複数の筐体ポート1060を更に画定する。したがって、筐体本体1026は、複数の筐体ポート1060を画定するマニホールドを画定し得る。上述したように、電極1008は、筐体本体1026の内面1022に貼付されるスリーブ1052によって担持され得る。スリーブ1052は、筐体ポート1060と開口1063との間の流体連通を提供するスリーブポート1057を画定する。したがって、スリーブポート1057はまた、環状チャネル1062と真空チャンバ1006との間の流体連通を提供する。真空圧は、第3のポート1016、環状チャネル1062、筐体ポート1060、スリーブポート1057、及び電極開口1063を順に通って、真空チャンバ1006に供給される。電極1008が、筐体本体1026の内面1022に直接結合される実施形態においては、電極開口1063は、筐体ポート1060と直接連続し得る。環状チャネル1062は、中心軸のまわりの全周に沿って環状に延在し得るが、他の実施形態においては、チャネル1062は、中心軸Xのまわりの全周よりも小さい範囲に延在し得る。
【0104】
図10Aに示されるように、各電極1008は、円周方向Cに沿って長細であり得る開口1063の単一の列を画定し得る。各列は、図示されるように、開口1063の「5x1」(すなわち5行1列)のアレイ又は「開口アレイ」として特徴付けられ得る、5つの開口1063を含み得る。他の開口アレイも、本開示の範囲内である。例えば、図10Cに示されるように、各電極1008の開口1063は、スリーブポート1057の対応する行及び列並びに筐体ポート1060の対応する行及び列と整列させられた、開口1063の複数の行及び複数の列を有する開口アレイに配置することができる。開口アレイは、4x5アレイであり得るが、他の開口アレイ構成も本開示の範囲内である。
【0105】
図10Dに示されるように、開口1008は、真空チャンバ1006内に引き込まれた組織102が、ハイライト領域104aで示された開口1063の1つ以上内に少なくとも部分的に延在し得るように構成される。このことは、皮膚層104と電極1008との間の付着力を増大させ、また組織102と電極1006との間の接触表面積を増大させる。更に、皮膚層104のような組織102を、真空圧をチャンバ1006内に伝達する1つ以上の開口1063内に引き込むことによって、本実施形態の真空カップ1002は、例えば、中心軸Xから離れるように、マウンド140の皮膚層104を効果的に引き伸ばし、それにより注入物142のジェット注入されたストリームが、他の実施形態よりも効率的に組織102に浸透することを可能にし得る。例えば、真空ポート1060をチャンバ1006全体に分散させることによって、チャンバ1006内の真空圧が注入部位の組織から注入物を引き抜く見込みが低くなる。更に、開口1063内へと延在する皮膚層104の部分は、皮膚層104の上部を破壊して、変化させ、それにより、図6A~6Dの突出部664を参照しながら以上に説明された態様と同様に、組織のマウンド140内の電場分布を改善し得る。
【0106】
図10A~10Dを引き続き参照すると、真空カップ1002は、個々の開口1063内、個々のスリーブポート1057内、及び/又は個々の筐体ポート1060内の組織の存在及び/又は不在を感知するように構成され得ることは、理解されるべきである。例えば、各電極1008内の個々の開口1063の1つ以上及び最大で全ては、関連する開口1063内の組織の存在及び/又は不在を感知することができる個々のセンサを含み得る。かかる組織センサは、非限定的な例として、インピーダンスのような組織の存在/不在を示す電気的パラメータを感知するように構成され得る、別個の電極を含み得る。前述の例の別個の組織感知電極は、電気穿孔電極1008から電気的に絶縁されていてもよく、又は代替として電気穿孔電極1008とは別個のチャネル上に存在してもよい。他の実施形態においては、組織センサは、非限定的な例として、組織の直接接触を検出できる力タイプセンサ、又は個々の開口1063、スリーブポート1057及び若しくは筐体ポート1060が封止されたときに検出することができる圧力センサのような、別のタイプのものであり得る。
【0107】
組織センサは、コントローラ114と電気的に連通している有線回路又は印刷回路のような回路に接続され得る。例えば、かかる回路は、電極1008を制御するための回路と同じ印刷回路基板(PCB)上の印刷回路であり得る。組織センサは、チャンバ1006全体の組織付着をマッピングするために利用され得る。かかる組織付着マッピング情報は、データ収集目的のために利用されてもよく、これに加えて又は代替として、各開口におけるセンサ読み取り値に基づいて真空圧のレベルを上方又は下方に調節するための、能動的圧力フィードバック機構において利用され得る。かかる組織付着マッピングの実施形態においては、組織センサ回路は、好ましくは、各組織センサのための個別の回路を含む。組織付着マッピングに対する代替として、組織センサは、集合的に共有回路上にあり得、コントローラ114は、最初のベースライン測定値と比較した集合的なセンサ測定値の変化(すなわち全体の「デルタ」)を算出し、チャンバ壁への組織の付着がどの程度生じたかの全体的尺度を提供し得る。
【0108】
以上に説明されたカップ902、1002のようなジェット注入真空カップの追加的な実施形態においては、ノズル978の遠位端979は、アレイの電極を画定するように適合され得る。かかる実施形態の非限定的な例として、ノズル978の遠位端979は、導電性塗料、金属若しくはポリマーのような導電性材料で被覆されるか又はこれらから製造されてもよく、コントローラ114と電気的に連通し得る。この態様において、ノズル978の遠位端979は、真空チャンバの内面上の他の電極に及び/又はこれら電極から、電気穿孔パルスを送達するために利用され得る。かかる実施形態においては、他の電極は、図3I~3Lを参照して以上に説明されたもの、及び/又は図15A~15Cを参照して以下に説明されるもののような、環状リング型電極又は半環状電極であり得る。かかる実施形態は、以下により詳細に議論されるものを含む、同心円状の電気穿孔パルスパターン(「発射パターン」)を可能にする。本発明者らは、ウサギ及びモルモットに流体の皮内ジェット注入を実行し、その後に、注入部位において皮内組織の電気穿孔を実行するために、真空カップ内のかかる同心電極アレイをうまく使用した。
【0109】
上述したように、本発明者らは、以上に説明された真空カップを使用する真空支援電気穿孔処置に起因する、多くの有益な結果を発見した。皮下組織及び皮膚組織における注入物の増大した流体分散、並びに処置部位におけるインビボ流体の増大した浸潤を含む、かかる有益な結果である。
【0110】
ここで図11Aを参照すると、注入部位に対する真空圧の効果が見られる。本例においては、同じ皮下深さにおいて同じ注入手法を使用して、2つの部位においてブタ組織に等量のメチレンブルー注入物が注入された。左に示された注入部位は、真空圧にさらされなかった。右に示された注入部位は、約15mmのベース直径D1、約15mmのチャンバ深さL2、及び約4度の内壁テーパ角を有する、図2A~2Fを参照しながら以上に説明された真空カップ2を使用して、約-10.6psiの真空圧に15秒間さらされた。いずれの部位も、電気穿孔を用いて処置されなかった。本例においては、真空圧が効果的に流体を再分配し、続いて注入物をカップの下の領域内に保持した。このことは、電気穿孔が実行されていたならば、カップの処置ゾーン内でより高い注入物濃度をもたらしたであろう。
【0111】
ここで図11B~11Cを参照すると、流体分散に対する真空圧の比較調査が、モルモットに対して実行された。対象は、ともに脂肪組織へのメチレンブルーの注入を施された。図11Bにおける注入は、図9Aに図示したものと同様の針なし真空カップを用いて実行された。特に、組織は、ジェット注入の間、真空圧に応答する真空チャンバ内にあった。図11Cにおける注入は、皮下注入針法で実行され、真空圧は加えられなかった。この調査におけるいずれの対象も、電気穿孔を用いて処置されなかった。実証されたように、真空支援ジェット注入(図11B)は、真空圧を加えない皮下針注入(図11C)よりも、脂肪層中に著しく多い注入物の分散を引き起こした。
【0112】
ここで図34A~34Bを参照すると、脂肪組織における細胞浸潤に対する電気穿孔及び真空圧の累積効果の比較調査が、モルモットに対して実行された。緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子をエンコードするプラスミドが、29ゲージのインスリン注射器を使用して肩甲骨間脂肪パッドへの皮下注入を介して、脂肪組織に注入された。両方の対象の注入部位が、同じ真空圧で処置された。図34Bにおける対象は更に、図2Aに示されたものと同様の真空カップを使用して、注入部位における電気穿孔を介して処置された。図34Aにおける対象は、電気穿孔を介して処置されなかった。GFP発現(緑色蛍光として見える)及び細胞浸潤(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)染色後の青色蛍光として見える)の比較のために、処置部位において組織学的切片が採取された。図示されるように、GFPの発現(緑色)は、いずれの対象においても(すなわち処置部位が電気穿孔されたか否かにかかわらず)、真空圧後に検出可能である。しかしながら、真空圧のみを加えたもの(図34A)と比較して、真空圧と組み合わせた電気穿孔の更なる更適用(図34B)が、細胞浸潤(青色)を増大させた。これらの調査は、電気穿孔と組み合わせて真空圧を加えることが、免疫原性を増強し得ることを実証している。
【0113】
ここで図12を参照すると、対象のモルモットの体液性免疫応答を比較する12週間のELISA調査にわたって、図2Aに示された真空カップ2を用いて処置された対象(青色のプロット-「真空」)は、12週間の調査にわたって、キャリパー型電気穿孔装置を用いて処置した対象(赤色のプロット-「キャリパー」)よりも、増大した体液性免疫原性を示したことを、試験データが示している。いずれのグループの対象も、脂肪層に針注入を介して等量のpGX2013(インフルエンザウイルス核タンパク質(NP)に対するDNAワクチン)を注入され、電気穿孔を用いて処置された。
【0114】
ここで図13を参照すると、対象モルモットの体液性免疫応答を比較する8週間のELISA調査にわたって、脂肪組織へのpGX2303(ヒト呼吸器合胞体ウイルス融合糖タンパク質(RSV-F)に対するDNAワクチン)の注入及び図2Aに示された真空カップ2を使用した電気穿孔を処置された対象(青色のプロット-「真空」)は、該ワクチンの皮内注入及び皮内針電極電気穿孔装置(赤色のプロット-「ID針電極EP」)を使用した電気穿孔を処置された対象と、同等の体液性免疫原性を示した。注入は等量(20ug)であった。皮内注入は100uLであり、脂肪注入は300uLであった。真空カップ2は、4つの電極を有する15mmのチャンバ直径D1を有するものであった。
【0115】
ここで図14A~14Bを参照すると、6週間の調査は、インフルエンザ核タンパク質に対するDNAワクチン(pGX2013)を用いた処置(0、2及び4週目)後の、モルモットの体液性免疫原性データを比較している。図14Aは、ELISAデータを示し、図14Bは、同じ調査からのELISpotデータを示す。グラフにおいて、以下のグループが表されている。(1)「ID針電極EP」(赤色のプロット)-8ugのマントゥー注入に続いて、皮内針電極電気穿孔装置を用いた皮内電気穿孔、(2)「真空ジェット+EP」(青色のプロット)-脂肪組織への40ugジェット注入に続いて、図9Aに示されたものと同様の装置を使用した真空支援電気穿孔、(3)「真空針」(緑色のプロット)-脂肪組織への40ugの皮下注入に続いて、図2Aに示された装置を使用して、電気穿孔を行わずに、負の真空圧を加える、及び(4)「真空針+EP」(紫色のプロット)-脂肪組織への40ug皮下注入に続いて、図2Aに示された装置を使用した真空支援電気穿孔。
【0116】
これらの調査は、本明細書に記載の針注入、真空電気穿孔装置2及びジェット注入、真空電気穿孔装置902が、脂肪組織を処置するときに、皮内針電極電気穿孔装置を用いた処置によって生成される体液性応答に相当する体液性免疫応答を生成することを実証している。
【0117】
図15A~22を参照しながら、皮膚層104における電気穿孔を標的とするように構成された真空カップが、ここで説明される。
【0118】
ここで図15A~15Bを参照すると、1つ以上の環状リング電極1508及び真空カップ1502の中心軸Xに沿って延在する中心電極1511を有する電極アレイ1509を含む、真空カップ1502の例が示されている。本実施形態の真空カップ1502は、以上に説明された真空カップ2、502、702、802、902、1002、特に図9A~9Bを参照しながら以上に説明された真空カップ902と同様である。したがって、以上に使用されたような同様の参照番号は、本実施形態における共通の特徴を示す。簡潔さのため、以下の説明は、本実施形態の真空カップ1502と以上に説明された真空カップ902との相違点に焦点を当てる。
【0119】
本実施形態の真空カップ1502は、真空チャンバ1506を少なくとも部分的に画定する内面1522を画定する、筐体本体1526を有する。筐体本体1526はまた、中心軸Xに沿って真空チャンバ1506から近位に延在する第3のポート1516を画定する。中心電極1511は、第3のポート1516を通って、内面1522の端面部分から真空チャンバ1506内へと延在する。第3のポート1516はまた、中心電極1511との封止係合を提供するための装着形成部1548を通って延在する。以上に説明された態様と同様に、装着形成部1548は、中心電極1511の外面1513に封止係合する、封止Oリング1551のような、1つ以上の封止部材を担持し得る。中心電極1511の外面1513の遠位部分1513zは、真空チャンバ1506に引き込まれた組織102に接触するように構成される。したがって、遠位部分1513zは、中心電極1511の「接触面」1513zと称され得る。接触面1513zは、0.5mm~約10mmの範囲内、より詳細には約1mm~約7mmの範囲内、より詳細には約1mm~約4mmの範囲内の半径R1を有する、半球形プロファイルのような、丸いプロファイルを有し得る。真空カップ1502の中心軸Xは、好ましくは、接触面1513zの頂点を通って延在する。中心電極1511は、近位部分1518を有し、この近位部分は、封止Oリング1551と接触する中心電極1511の部分よりも狭くなり得る。したがって、近位部分1518は、中心電極1511の「ステム」と称され得る。
【0120】
ここで図15Cを参照すると、電極アレイ1509は、電気穿孔パルス送達の間に、中心電極1511が正又は負の電極として機能する一方、環状リング電極1508の一方又は両方が正又は負の電極の他方(すなわち中心電極1511の反対極性)として機能するように構成される。このようにして、中心電極1511は、パルスの間の電場145を効果的に上方に移動させ、皮膚層104に電気穿孔場144を集中させる。本実施形態の真空カップ1502は、例えば、マントゥー注入のような針注入、又は皮内ジェット注入などを介して、薬剤が皮膚層104に注入された後に、標的ゾーンにおいて組織102上に置かれ得る。他の実施形態においては、真空カップ1502は、中心電極1511の代わりに特徴部又は「ポスト」を利用し得ることは、理解されるべきである。ポストは、真空チャンバ1506内の表面1513zに類似する形状の表面を呈し得る。ポスト表面は、真空圧を介してチャンバ1506内に引き込まれた皮膚に接触するように構成される。例えば、ポストは、真空圧を加えている間に、組織をポスト表面の一部のまわりに適合させるか、又はそのまわりに湾曲させるように構成され得る。かかる組織-ポスト接触は、図42A及び42Dを参照しながら以下により詳細に議論されるように、真空圧を加えている間に、組織内の流体分散を有利に増強することが示されている。
【0121】
ここで図16Aを参照すると、各々がその遠位開口1620の反対側の真空チャンバ1606内の端面1624上に位置付けられた電極アレイ1609を有する真空カップ1602を含む、真空電気穿孔アセンブリ1600のバージョンが示されている。端面1624は、実質的に平坦であり得、チャンバ1606内に位置付けられた電極支持部材1652によって画定され得る。支持部材1652は、「挿入物」と称され得、アレイ1609の電極1608を担持し得る。例えば、支持部材1652は、上述のコントローラ114のような制御ユニットと電気的に連通する回路を有する、印刷回路基板(PCB)のような回路基板であり得る。支持部材1652はまた、真空チャンバ1606と真空源への接続の外部ポート1616との間の流体連通を提供する、該部材を通って延在する複数のポート1660を画定している。このようにして、支持部材1652におけるポート1660は、真空圧をチャンバ1606内に伝達し、組織102をそこに引き込み、電極1608に接触させる。電極1608は、組織のマウンド140の皮膚層104に押し込んでチャンバ1606内に引き込み、それにより皮膚104の最上層を破壊して、変化させ、以上に説明されたように、その中の電場分布を改善するための、円錐、ピラミッド型など、突出する及び/又は先端を持つ幾何学的形状を有し得る。
【0122】
真空電気穿孔アセンブリ1600は、以上に説明されたジェット注入装置970のような針なし注入装置のような注入装置を受容するように構成され得る。したがって、真空カップ1602は、そのノズル978が支持部材1652に画定された注入開口1617と整列させられるように、ジェット注入装置970の少なくとも遠位部分を受容するためのレセプタクル1616を画定し得る、筐体本体1626を有する。図示されるように、ノズル978及び注入開口は、真空カップ1602の中心軸と同心に整列させられ得る。
【0123】
筐体本体1626はまた、支持部材1652が真空チャンバ1606とスタンドオフチャンバ1607との間を分離する又はこれらの間に介在するように、真空チャンバ1606からオフセットされた二次又は「スタンドオフ」チャンバ1607も画定し得る。スタンドオフチャンバ1607は、注入物142の皮内分散の目的のため、ノズル978と組織102との間に注入物142のストリームの好適な形成を可能にするために、ノズル978の遠位端と端面1624との間にスタンドオフ距離L5をもたらすように構成される。特に、スタンドオフ距離L5は、液体ストリームが皮膚104に接近する際に、液体ストリームに不規則性を形成することを可能にし得る。例えば、かかる不規則性は、数百、数千、又は更に多数のマイクロ及び/又はナノサイズの液滴を含み得、その各々が、皮膚104の外面101における数百又は数千のマイクロ及び/又はナノサイズの切れ目に対してストリームを効果的に可能にするのに十分な速度で皮膚104に近づき、皮膚層104に局所化された増強された注入物拡散を提供する。スタンドオフ距離L5は、ジェット注入器のノズル形状及び注入器の力のような他の因子と組み合わせて、注入物の最大浸透深さを制御する手段としても使用できる。スタンドオフ距離L5はまた、使用の間に、ノズル978の遠位端と皮膚104の外面101との間の最小スタンドオフ距離として特徴付けられ得ることは、理解されるべきである。スタンドオフ距離L5は、約1.0mm~約20mmの範囲内であり得る。
【0124】
図16Bに示されるように、筐体本体1626は、スタンドオフチャンバ1607を通って延在し、シールド1685の挿管が支持部材1652の注入開口1617と流体連通するように、支持部材1652の後面1625に当接し得る、挿管シールド1685を任意選択的に画定し得る。このようにして、挿管されたシールド1685は、ノズル978の遠位端から真空チャンバ1606までの直線状の整列されたシールドされた通路を提供することができ、それにより、支持部材1652(及びその回路)を注入物のストリームに対する不慮の露出から保護する。
【0125】
ここで図17A~17Bを参照すると、電極1608及びポート1660が注入開口1617のまわりに異なるパターンで配置されている、支持部材1652の異なる実施形態が示されている。図17Aに示されるように、電極1608は、中心軸Xと同心の円周軸C2に沿って円形の又はリング状のパターンで配列され得る。電極1608は、単一の同心リングに配列されるか、又は図17Bに示されるように、中心軸Xと同心の又は代替として中心軸Xに対して偏心したものであり得る、複数のリングに配列され得る。引き続き図17Bを参照すると、ポート1660はまた、中心軸Xのまわりの1つ以上の環状リングに配列され得る。更に、電極1608及び/又はポート1660はまた(又は代替として)、中心軸Xから径方向外側に延在するそれぞれの軸R4、R5に沿って、スポーク状のパターンで配列することもできる。隣接する電極1608「スポーク」、及び隣接するポート1660スポークのそれぞれの軸R4、R5は、中心軸のまわりにそれぞれの角度間隔A5、A6で互いからオフセットされ得、この角度間隔は、約5度~約180度、より詳細には約15度~約120度の範囲であり得る。軸R4、R5は、図示されるように直線状であり得るが、他の実施形態においては、軸R4、R5は円弧状であり得る。電極1608及びポート1660のパターンの例は、非限定的な例として提供されるものであり、非対称及び/又は不規則なパターンを含む他のパターンも本開示の範囲内にあることは、理解されるべきである。
【0126】
ここで図18A~18Bを参照すると、更なる実施形態において、真空電気穿孔装置1802は中の組織、特に皮膚を誘導するための複数の遠位真空チャンバ1807を含み得る。電極1808は、電極支持部材1852によって担持され、該部材は、主真空チャンバ1806を画定する真空筐体本体1826の遠位端1810に取り付けることができる。このようにして、支持部材1852の遠位端面1824は、装置1802の遠位端を画定する。筐体本体1826は、主真空チャンバ1806に真空圧を提供するための主真空ポート1812を画定し、主真空チャンバ1806内及び支持部材1852に延在する回路のためのアクセスを提供するためのもののような、第2のポート1814を画定し得る。
【0127】
ここで図18Bを参照すると、本実施形態の電極1808は対に配置され、その各々は、互いに対して同心に位置する外側リング電極1808a及び内側リング電極1808bを含む。外側及び内側リング電極1808a、bは、長手方向Lに沿って長細く、支持部材1852を通ってその後面1825まで延在し、任意選択的に更に主真空チャンバ1806内まで延在する、管状部材であり得る。各対の外側及び内側リング電極1808a、bは、材料の電気絶縁性の環状層1894によって互いから径方向に離隔され、それにより内側及び外側リング電極1808a、bを互いから電気的に絶縁する。各同心の電極対において、外側リング電極1808aは、支持部材1852の遠位端面1824まで延在し、一方で、内側リング電極1808bは、遠位端面1824から近位で凹状になっている。このようにして、遠位真空チャンバ1807は、外側リング電極1808aの内側表面1808z、内側リング電極1808bの遠位端、及び絶縁層1894の遠位端面、更には任意選択的に外側リング電極1808aの任意の遠位引き込み表面1808yによって、協働的に画定される。
【0128】
図18C~18Dに示されるように、内側リング電極1808bの遠位端(及び任意選択的に絶縁層1894の遠位端も)は、遠位表面1824からオフセット距離L6で凹状であり得、これは約0.05mm~約5.0mmの範囲内、より詳細には約0.5mm~約2.0mmの範囲内、好ましくは約0.8mm~約1.2mmの範囲内であり得る。装置は、長手方向Lに沿って近位端1828から遠位端面1824まで測定される装置長L7を画定し得る。装置長L7は、約15.0mm~約200mmの範囲内、より詳細には約20mm~約40mmの範囲内であり得るが、15.0mmより小さい及び200mmより大きい長さL7も、本実施形態の範囲内である。
【0129】
上述したように、内側リング電極1808bは、特に、主真空チャンバ1806との流体連通を提供するポート1860を画定する態様で、管状であり得る。この態様においては、主真空チャンバ1806に加えられる真空圧は、内側リング電極1808bを通して遠位真空チャンバ1807に伝達され、それにより、装置1802が皮膚層104の一部を遠位真空チャンバ1807に引き込み、内側及び外側リング電極1808a、bと接触させることを可能にする。皮膚層104のかかる変形は、その上部を破壊し変化させることができ、したがって、以上に説明された態様と同様に、皮膚層104内の電場分布を改善することができる。
【0130】
各対の内側及び外側リング電極1808a、bは、好ましくは反対の極性のものであり、かかる電気穿孔パルスは、リング電極1808a、bの一方から、組織を通って、対のリング電極1808a、bの他方に送達される。
【0131】
図18に示されるように、電極アレイ1809は、中心電極対1808a、bと、中心電極対1808a、bのまわりに同心に円周軸C2に沿って配置された周縁電極対1808a、bの円形パターンとを含む、円形アレイであり得る。他のアレイパターンも本実施形態の範囲内であることは、理解されるべきである。周縁部の隣接する電極対1808a、bは、以上に説明された態様と同様に、それぞれの角度間隔A5で互いに離隔され得る。
【0132】
ここで図19A~19Bを参照すると、更なる実施形態において、真空電気穿孔装置1902は、上述した実施形態の装置1802と同様に、筐体本体1926の遠位端1910において電極支持部材1952を含み得る。本実施形態において、各電極1908は管状であり、支持部材1924を通ってその遠位端面1924からその後面1925まで延在し、それにより、筐体本体1926の真空チャンバ1906と流体連通しているポート1960を画定している。電極1908のポート1960は、皮膚層104の外側部分が真空チャンバ1906内の真空圧に応答してポート1960内へと延在し得るようなサイズとされる。本実施形態の各電極1908は、電気パルスの間、単極性(正又は負)である。電極1908は、電気パルスの間、電極1908の1つ以上が一方の極性(正又は負)であり、電極1908の他の1つ以上が反対の極性となるように、電気穿孔信号を送達することができる回路に接続される。例えば、図19A~19Bを引き続き参照すると、電極1908は、中心電極1908と、中心電極1908のまわりに同心円状に配置された周縁電極1908の円形パターンとを含む、円形電極アレイ1908に配置することができる。電気穿孔パルスの1つ以上及び最大で各々は、中心電極1908と周縁電極1908の少なくとも1つとの間で送達することができる。電気穿孔信号は、以上に説明された態様と同様に、電極1908の分散型パターンを利用したシーケンスで送達される複数の電気穿孔パルスを含み得る。
【0133】
ここで図20及び21A~21Bを参照すると、電極支持部材2052、2152は、非円形のパターンを有する電極アレイ2009、2109を担持することができる。図20に示されるように、支持部材2052は、互いに実質的に垂直である第1及び第2のアレイ方向AD1、AD2に沿って実質的に等距離である、正方形の電極アレイ2009を有し得る。図示された実施形態においては、アレイ2009は4x4アレイパターンを有するが、非限定的な例として、2x2、3x3、5x5、6x6、7x7、8x8、9x9、10x10などを含む、他の正方形アレイパターンも本開示の範囲内である。
【0134】
図21A~21Bに示されるように、支持部材2152は、第2のアレイ方向AD2に沿ってよりも第1のアレイ方向AD1に沿って長い、長方形の電極アレイ2109を有し得る。アレイ2109は、例えば、2x6(すなわち2行6列)のアレイ2109におけるように、電極の第1の列及び電極の対応する第2の列を含み得るが、非限定的な例として、1x2、1x3、1x4、2x3、2x4、2x5、2x7、2x8、2x9、2x10、3x4、3x5、3x6、3x7、3x8、3x9、3x10、4x5、4x6、4x7、4、8、4x9、4x10、5x6、5x7、5、8、5x9、5x10の電極アレイ2109を含む、他の長方形アレイ2109パターンも、本開示の範囲内である。
【0135】
以上に説明された正方形及び長方形の電極アレイ2009、2109は、それぞれのパターンに配置された実質的に任意の数の電極2008、2108を有し得ることは、理解されるべきである。かかる正方形及び長方形の電極アレイ2009、2109は、行又は列方向に活性化され得る概ね長方形の電場を生成し、所与の軸に沿って高度に順序付けられた電場を可能にし得る。例えば、注入物が組織の1つの軸方向に沿って意図的に注入されるか、又はたまたま蓄積される場合、電極2008、2108の追加的な行又は列が、所望の組織体積を処置するために容易に活性化され得る。この点に関し、これらの電極アレイ2009、2109は、モジュール式の活性化機能を提供すると特徴付けられ得る。これに加えて、長方形の電極アレイ2109は、第1のアレイ方向AD1(これに沿ってアレイは長細い)が、流体が意図的に注入された軸、又は繊維組織のような異方性の特徴の存在により流体が自然に分散させられる軸と実質的に整列するように、標的ゾーン上の皮膚104の上に置かれ、それにより、注入物が組織を通して分散するときに、より長い継続時間の間、注入物を電気穿孔場内にカプセル化し得る。更に、アレイ2109はまた、真空圧を加えている間に皮膚104の最上層を破壊する真空ポートのアレイを画定するため、長方形のアレイ2109はまた、更に電気穿孔場に沿って分散する注入物を流す皮内組織内の破壊経路も効果的に形成することができる。
【0136】
ここで図22を参照すると、緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子をエンコードする様々な体積のプラスミドを皮内注入し、その後に様々な装置を用いて電気穿孔処置を行った後の、モルモット皮膚における遺伝子発現が示されている。この調査においては、100uL、300uL、500uL及び900uLの注入量において、本明細書に記載の真空カップ2、902を使用した皮内組織の真空支援電気穿孔が、注入量に比例した態様で遺伝子発現を有意に増大させた。同様の調査において、本発明者らは、GFPの遺伝子発現もまた、真空圧の増大とともに増大することを見出した。一方、皮内針電極電気穿孔装置を使用した遺伝子発現は、注入量の増大に伴って増強されなかった。更に、真空を加えること又は電気穿孔のない、増大した注入量だけでは、遺伝子発現を増強しなかった。これらの調査は、真空圧及び注入量が遺伝子発現に影響を与えることを実証している。
【0137】
ここで図35A~35Bを参照すると、6週間の調査が、真空支援電気穿孔装置を使用して、所定の電気穿孔電圧及び電流における、モルモット皮膚における免疫原性に対するチャンバ直径D1の影響を評価している。図35Aは、8mm、10mm、12mm及び15mmのチャンバ直径D1を有する真空カップを使用する皮内真空支援電気穿孔処置後の、体液性免疫原性ELISAデータを比較している。各真空カップについての皮内処置は、MERS DNAワクチンの50ugのマントゥー注入、並びに後続する同じ電圧及び電流を使用した電気穿孔を含むものであった。図35Bは、図35Aに示された同じ調査の間の2及び4週目における細胞性免疫応答ELISpotデータを示す。この調査は、所与の電気穿孔電圧及び電流の限界における、体液性免疫応答と真空カップ直径との間の、直接的な逆相関を実証している。細胞性免疫応答の観点から、この調査はまた、8mm~12mmのチャンバ直径D1を有する真空カップが同様の結果をもたらし、直径D1が12mmから15mmまで増大したときに細胞応答の減少が起こることを実証している。
【0138】
ここで図36A~36Bを参照すると、調査が、モルモット皮膚における遺伝子発現に対する、真空圧及び電気穿孔電圧パラメータの好適な組み合わせを評価している。これらの調査は、緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子をエンコードするプラスミドの皮内注入(具体的にはマントゥー注入)を利用し、次いで、以上に説明されたカップ2と同様の真空カップを使用して、様々な真空圧及び電圧で電気穿孔処置を実行した。0kPa(真空なし)、40kPa及び70kPaの真空圧、並びに0V(電圧なし)、50V、100V及び200Vの電圧が、皮膚に加えられた。処置後3日目に、処置部位の反応及びGFPの発現が観察された。図36Aは、様々な真空圧及び電圧における処置部位の視覚的な観察結果を示す。図36Bにおいては、皮膚蛍光信号の測定値が、様々な電圧及び真空圧についてプロットされている。これらの調査は、真空圧と電圧とが独立してGFP発現を増大させることを実証している。これらの調査はまた、試験した各電圧において、より高い真空圧がGFPの発現を増強したことを実証している。
【0139】
ここで図23を参照すると、8週間の調査が、HPV DNAワクチンの皮内処置に続いて電気穿孔を行った後の、モルモットの体液性免疫原性ELISAデータを比較している。以下のグループが表されている。(1)「ID針電極EP」(黒色のプロット)-66.7ugのプラスミドの100uLのマントゥー注入後の皮内針電極電気穿孔装置を使用した処置、(2)「真空カップ」(赤色のプロット)-139U/mlのHylenexも用いて調製された66.7ugの相当量のプラスミドを1mL注入した後に、4つの壁電極からなる15mmの真空カップ電気穿孔装置を使用した処置(例えば図2A参照)、(3)「真空カップ3倍投与」(栗色のプロット)-「真空カップ」グループと同じ装置及び方法を用いた処置であるが、投与量は前述のグループの3倍、すなわち200ugのプラスミドに増大された。全てのグループは0、4及び7週目に処置された。
【0140】
ここで図24Aを参照すると、11週間の調査が、HPV DNAワクチン(pGX3001&3002)の皮内処置に続いて電気穿孔を行った後の、非ヒト霊長類における体液性免疫原性ELISAデータを比較している。以下のグループが表されている。(1)「ID針電極EP」(黒色のプロット)-皮内針電極電気穿孔装置を使用した処置、(2)「真空カップ」(赤色のプロット)-「ID針電極EP」と同等の用量を注入した後に図2Aに示された真空カップを使用した処置、(3)「真空カップ6倍投与」(茶色のプロット)-「真空カップ」グループと同じ装置及び方法を用いた処置であるが、用量は前述のグループの6倍まで増大させられた処置。全てのグループは、0、4及び9週目に処置された。ここで図24B図24Dを参照すると、図24Aに示された同じ調査の2、6及び11週目における細胞性免疫応答ELISpotデータが、各グループについてそれぞれ示されている。これらの調査は、大きな用量の真空支援電気穿孔処置(グループ3)が、ID針電極EP装置(グループ1)よりも迅速な体液及び細胞応答を生じ、一方で、同等の用量において、真空支援電気穿孔処置(グループ2)は、ID針電極EP装置(グループ1)と概して同様の性能を示したことを実証している。更に、大きな用量の真空支援電気穿孔処置(グループ3)は、11週目に、ID針電極EP装置(グループ1)の約10倍(10x)大きい細胞応答を生じた。
【0141】
ここで図37A図37Bを参照すると、6週間の調査が、真空支援電気穿孔装置の性能を、免疫原性の観点から皮内針電極電気穿孔装置と比較している。図37Aは、50ugのMERS DNAワクチンをマントゥー注入で皮内処置した後に電気穿孔を行った後の、モルモットの体液性免疫原性ELISAデータを比較している。グラフで表されるグループは、以下の通りである。(1)「ID-VEP」-図2Aに示したものと同様の真空カップを使用した処置及び(2)「ID-EP」-皮内針電極電気穿孔装置を使用した処置。両方のグループとも、0、2及び4週目に処置された。この調査は、真空カップが、皮内針電極電気穿孔装置と比較して、より迅速で強い体液性応答を生成することを実証している。図37Bは、図37Aに示された同じ調査の間の2及び4週目における細胞性免疫応答データを示す。
【0142】
図38は、マントゥー注入に続いて電気穿孔を介した100ugの再発性呼吸器乳頭腫症(RRP)DNAワクチンの皮内処置後の、モルモットの細胞性免疫応答データを比較する、6週間の調査を示す。図38に表されるグループは、以下を含む。(1)「ID-EP」皮内針電極電気穿孔装置を使用した処置及び(2)「ID-VEP」-図2Aに示されたものと同様の真空カップを使用する処置。
【0143】
図37B及び38に示される調査は、真空カップが、皮内針電極電気穿孔装置と比較して、実質的に同等の細胞性免疫応答を生成することを実証している。これに加えて、図37A~38に示される調査の間、処置後7~10日以内には、真空カップ処置部位に目に見える組織損傷がないことが観察された。
【0144】
ここで図39A~39Bを参照すると、4週間の調査が、皮膚における免疫原性に対する真空圧及び電気穿孔の累積効果を評価している。この調査は、マントゥー注入による50ugのMERS DNAワクチンの皮内処置後の、モルモットにおける体液性及び細胞性免疫応答を比較している。図39Aは、以下のグループについての0、2及び4週目の体液性免疫原性ELISAデータを示す。(1)「ID-VEP」-図2Aにおいて示されたものと同様の真空カップを使用した真空支援電気穿孔処置、(2)「ID-真空」-真空カップを使用した真空パルス非電気穿孔処置、及び(3)「ID」-マントゥー注入のみ。図39Bは、図39Aに示された同じ調査の4週目における細胞性免疫応答ELISpotデータを示す。これらの調査は、電気穿孔は、真空圧が免疫原性を引き起こすのに必須であるが、マントゥー注入の後、真空圧のみ(すなわち電気穿孔なし)で、少なくとも部分的な体液性応答を生成し得ることを実証している。本発明者らは、これらの調査はまた、前述の免疫応答が、DNAワクチンの表面トランスフェクションによっては部分的にしか説明されないことを示唆していると考えている。更なる調査は、電気穿孔電圧が、免疫原性に関して真空圧よりも強い推進力であることを確認した。
【0145】
ここで図40A~40Bを参照すると、真空チャンバに引き込まれた組織のマウンド内の2つの異なる電極アレイの例によって生成される比較電場の断面図が示されている。図40Aは、図2Aに示された真空カップ2のものと同様に構成された一対の対向電極を有する電極アレイによって生成される電場を示す。対向電極8間の電気穿孔パルス送達パターン(「発射パターン」とも称される)が、組織のマウンド140を横切って横方向に電流を電極間で移動させる。図40Bは、図15Aに示された真空カップ1502のものと同様に構成された2つの環状リング電極及び中心電極を有する電極アレイによって生成される電場を示す。本例における電気穿孔パルス発射パターンは、電流を環状リング電極と中心電極との間で同心円状に移動させ、それにより中心電極に隣接する皮膚層104に電場を集中させる。かくして、図40A~40Bは、対向する電極間の電気穿孔パルス発射パターン(図40A)が、環状リング電極と中心電極との間に生じる電場(図40B)と比較して、皮膚層104を通してより均質な電場を生じることを実証している。電場生成におけるこれらの違いは、所望される特定の電気穿孔処置に基づいて有利に利用され得る。
【0146】
ここで図41A~41Bを参照すると、8週間の調査が、電気穿孔パルス発射パターンの免疫原性への影響を評価している。この調査においては、モルモットの体液性及び細胞性免疫応答が、マントゥー注入によるMERS DNAワクチンの皮内処置、及びその後の図40A~40Bに示される電極アレイを有する真空カップを使用した真空支援電気穿孔の後に試験された。図41Aは、両方のアレイ構成について、0、2、4及び8週目における体液性免疫原性ELISAデータを示す。両方のグループとも、0、2及び4週目に処置された。図41Bは、図41Aに示された同じ調査の間の4週目及び4週目より後の細胞性免疫応答ELISpotデータをチャートで示す。この調査は、体液性応答の観点からはアレイ構成が同様の性能を示す一方、細胞応答の観点からは同心円アレイが対向アレイを有意に上回ったことを実証している。
【0147】
ここで図42A~42Dを参照すると、調査が、中心電極がモルモット皮膚における流体分散に及ぼす比較効果を評価している。着色された注入物の流体分散は、以下の3つのグループについて測定された。(1)マントゥー注入のみ(すなわち真空圧なし)、(2)中心電極を有さない対向電極を有するアレイ(図40A参照)、及び(3)中心電極を有するアレイ(図40B参照)。等量の注入物が、マントゥー注入を介して各グループに注入された。グループ2及び3には、真空圧が加えられた。この調査においては、電気穿孔は実行されなかった。図42B、42C及び42Dは、それぞれグループ1、2及び3についての組織内の流体分散を示す。結果は、着色された注入物の視覚的アスペクト比に従って、図42Aにチャートで示されている。この結果は、中心電極又は特徴の存在が、真空圧を加えているときに注入物の流体分散に影響を与え得ることを実証している。これらの結果は、真空チャンバの内部形状が、真空圧を加えているときに流体分散に影響を及ぼし得ることを、更に示唆している。
【0148】
以上に説明された皮内真空電気穿孔アセンブリ、装置及びカップは、真空支援電気穿孔処置を増強するための様々な製剤とともに利用できることは、理解されるべきである。例えば、注入物142は、好適な態様で薬剤の特性に影響を与えるための製剤との混合物を含み得る。かかる製剤の非限定的な例は、ヒアルロニダーゼ及びHylenex(ヒト組換えヒアルロニダーゼ)を含み、これらは、薬剤マトリックスを一時的に分解し、皮膚において小さく痛みの少ない塊又は少ない出血しか伴わない、より多い薬剤量での注入を可能にすることができる。図25~26に示されるように、ヒアルロニダーゼを含むマントゥー注入は、ヒアルロニダーゼを含まない注入よりも、高さ及び直径のいずれも小さい出血しか生じない(左図)。ヒアルロニダーゼ製剤は、「In Vivo Use of Chondroitinase and/or Hyaluronidase to Enhance Delivery of an Agent」(「’263文献」)と題された2019年9月19日に公開された米国特許公開第2019/0284263A1号に、より完全に記載されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれたものとする。本明細書に開示される真空電気穿孔装置を用いて実行される注入においてヒアルロニダーゼを利用することによって、薬剤は、皮内組織においてより大きな体積で注入されることができ、医師が、より大きな処置ゾーン107を有する本明細書の装置を用いて、より大きな組織体積を処置することを可能にする。例えば、本発明者らは、様々なチャンバ直径D1(例えば8mm、10mm及び12mm)を有する真空カップを、ヒアルロニダーゼを含む製剤(すなわち50%のOmnipaque350+50%の150U/mLのヒアルロニダーゼ(最終的に75U/mLのヒアルロニダーゼ))を有する注入物142と組み合わせて使用する多数の試験を通して、8mmの直径の真空カップは、実質的に全ての注入物が真空チャンバに引き込まれた状態で0.2mLの注入物体積に対応し得ること;10mmの直径の真空カップは、実質的に全ての注入物が真空チャンバに引き込まれた状態で約0.4mL量の注入物に対応し得ること;及び12mmの直径の真空カップは、実質的に全ての注入物が真空チャンバに引き込まれた状態で0.8mLの注入物に対応し得ること、を発見した。注入物の製剤におけるヒアルロニダーゼの存在は、注入物の皮膚層内での流体分散を劇的に促進することが観察された。これらの試験から得られたデータは、注入物の量が多いほど注入物の製剤内にヒアルロニダーゼを利用すべきであり、そうでなければ注入ブレブが大きくなり、皮膚を通して横方向に好適に拡散しないことを、強く示唆している。
【0149】
ここで図27を参照すると、4週間の調査が、MERsに対するDNAワクチン(pGX9101)を皮内処置し次いで電気穿孔を行った後の、エンドポイント力価の点での、モルモットの体液性免疫応答を比較している。全てのグループは、0週目及び2週目に、100uLのマントゥー注入で50ugのプラスミドを脇腹に受容した。グラフに表されたグループは、以下の通りである。(1)「ID針電極EP」(黒色のプロット)-皮内針電極電気穿孔装置を使用した処置、(2)「ID針電極EP+HYA」(灰色のプロット)-前のグループと同様に皮内針電極電気穿孔装置を使用した処置であるが、製剤は270U/mLのイントロファーマヒアルロニダーゼを含む処置、(3)「15mm真空カップ」(赤色のプロット)-15mmのチャンバ直径D1を有する図2Aに示された真空カップ2を使用した処置、(4)270U/mLのイントロファーマヒアルロニダーゼを含む製剤を使用した、「15mm真空カップ」プロットにおける同じ真空カップ。
【0150】
ここで図28を参照すると、6週間の調査が、MERsに対するDNAワクチン(pGX9101)を皮内処置した後、0、2及び4週目に電気穿孔を行った後の、エンドポイント力価の観点からのモルモットの体液性免疫応答を比較している。グラフ中に表されるグループは、以下の通りである:(1)「ID針電極EP」(青色のプロット)-50ugのプラスミドを100uL注入し、その後に皮内針電極電気穿孔装置で処置;(2)「15mm真空-500ug」(赤色のプロット)-500ugのプラスミドの1mLのマントゥー注入であり、ここで製剤は270U/mLのイントロファーマヒアルロニダーゼを含む。電気穿孔は、15mmのチャンバ直径L1を有する図2Aに示された真空カップによって送達された;(4)「15mm真空-ID注入500ug」(緑色のプロット)-500ugのプラスミドの1mLの深い真皮注入であるが、少なくとも2分の経過で注入され、製剤は270U/mLのイントロファーマヒアルロニダーゼを含む。電気穿孔は、先のグループと同じ真空カップ2によって送達された;(4)「10mm真空-50ug」(紫色のプロット)-50ugのプラスミドの100uLのマントゥー注入の後に、10mmのチャンバ直径Lを有する図2Aに示された真空カップ2による処置。
【0151】
ここで図29Aを参照すると、6週間の調査が、インフルエンザ核タンパク質に対するDNAワクチン(pGX2013)の皮内注入後、0、3及び6週目に電気穿孔を行ったモルモットの体液性免疫応答を、平均エンドポイント力価の観点から比較している。グラフで表されるグループは、以下の通りである。(1)「ID針電極EP 1ug」(赤色のプロット)-1ugのプラスミドを含むマントゥー注入、及び次いで皮内針電極電気穿孔装置を使用した電気穿孔による処置、(2)「HYA 10ugを伴う真空」(青色のプロット)-139.5U/mLのHylenexを含む製剤中の10ugのプラスミドの1mLのマントゥー注入が、15mmのチャンバ直径D1を有する図2Aに示される真空カップ2を用いて処置された、(3)「HYA 1ugを伴う真空」(緑色のプロット)-139.5U/mLのHylenexを含む1ugのプラスミドで100uLのマントゥー注入が次いで、先のグループと同じ真空カップ2を使用して電気穿孔された、(4)「HYA 1ugを伴わない真空」(紫色のプロット)-1ugのプラスミドを有する100uLのマントゥー注入が次いで、グループ(2)及び(3)と同じ真空カップ2を使用して電気穿孔された。図29B及び29Cは、図29Aの調査の2週目(図29B)及び4週目(図29C)における、スポット形成単位の観点からの細胞性免疫応答を示す。
【0152】
ここで図43A~43Cを参照すると、7日間の試験が、モルモットにおける、単回の大量注入及び真空支援電気穿孔処置と、皮内針電極電気穿孔装置を使用した複数回注入、複数回電気穿孔処置との比較効果を評価した。図15Aに示された真空カップと同様に、環状リング電極の対及び中心(同心)電極を有する直径15mmの真空カップを使用して、単回の高容量真空支援電気穿孔処置が実行された。単回の注入は、135U/mLのヒアルロニダーゼと共配合された分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)をエンコードするプラスミドの0.8mLのマントゥー注入であり、その後に真空支援電気穿孔を行うものであった。複数回注入、複数回電気穿孔処置は、6回の個別の0.1mLのマントゥー注入と、それぞれに後続する皮内針電極を使用した電気穿孔(合計0.6mLの注入物と6回の電気穿孔の適用)とを含むものであった。図43Aは、真空圧を加える前に注入物の上に位置付けられた真空カップを示す。図43Bは、真空圧を加えている間の真空カップ内の注入物を示し、組織内の注入物が中心電極のまわりに変形し、それにより注入物を電気穿孔場に集中させていることがわかる(図40Bを参照)。図43Cは、0、1、2、6及び7日目における両方の処置についてのSEAP発現(対象における全身性タンパク質産生の計測値として)を示す。この調査は、真空カップを使用する単回の、大量の、真空支援電気穿孔処置が、針電極装置を使用する6回の注入、6回の電気穿孔処置と実質的に同等に作用することを実証している。
【0153】
これらの調査は、本開示の装置及びアセンブリを使用する真空支援電気穿孔が、皮膚へのDNAの大量送達を可能にすることを実証している。更に、ヒアルロニダーゼ製剤(例えばHylenex)は、皮膚の真空支援電気穿孔に後続する免疫原性を増強する。更に、本明細書に記載の真空カップは、1000uL(1mL)以上の注入量を含むヒアルロニダーゼ製剤によって提供される、皮内組織における著しく高い注入量を利用するように適合されている。換言すれば、本開示の真空カップを用いてヒアルロニダーゼ製剤を利用することにより、真空カップはかなり大量の皮内組織を処置することができる。これに加えて、本開示の装置及びアセンブリは、皮内針電極電気穿孔装置よりも迅速な体液性応答と、皮内針電極電気穿孔装置と比較して同等の全体的な体液性免疫応答を生じる。更に、これらの調査は、細胞応答の動態及び大きさが、皮内組織の真空支援電気穿孔を通して増強され得ることを実証している。本発明者らはまた、ヒアルロニダーゼ製剤を皮内組織の真空支援電気穿孔とともに使用することが、表層より下の真皮層のトランスフェクションを効果的に可能にすることを見出した。
【0154】
ここで図44を参照すると、8週間の調査が、免疫原性に対する電気穿孔のパルス発射パターンの体液性免疫応答データ効果を比較している。この調査においては、モルモットの体液性及び細胞性免疫応答が、マントゥー注入によるMERS DNAワクチンの皮内処置、及び後続する図40A図40Bに示される電極アレイを有する真空カップを用いた真空支援電気穿孔後に試験された。図41Aは、両方のアレイ構成について、0、2、4及び8週目における体液性免疫原性ELISAデータを示す。両グループは、0、2及び4週目に処置された。図41Bは、図41Aに示された同じ調査の間の4週目及び4週目より後の細胞性免疫応答ELISpotデータをチャートで示す。この調査は、アレイ構成が体液性応答の点で同様の性能を示し、一方で同心アレイが細胞応答の点で対向アレイを著しく上回ったことを実証している。
【0155】
ここで図45A~47Cを参照すると、蛍光透視画像が、図9に示された真空カップ902と同様に構成されたジェット注入真空カップを使用した、様々な真空圧及びノズル-皮膚オフセット距離でのジェット注入の間のモルモットにおける比較の組織の撓みを示す。これらの画像において使用された注入物は、X線写真撮影を可能にするための50%のOmnipaque350溶液である。これらの画像の各々において、重ねられた横方向の基準線は、真空カップの遠位端(したがって真空チャンバの遠位端及び真空適用前の最初の皮膚-チャンバ界面)を示している。図45A~45Cは、チャンバ内に真空圧を加えずに実行されるジェット注入を示す。図46A~46Cは、チャンバ内に真空圧が加えられ、ノズル-皮膚オフセット距離なしで実行されるジェット注入を示す。図47A~47Cは、チャンバ内に真空圧を加え、ノズル-皮膚オフセット距離を3mmにして実行されたジェット注入を示す。図45A、46A及び47Aは、注入前の組織を示し、図45B、46B及び47Bは、ジェット注入の間の組織を示し、図45C、46C及び47Cは、注入後の組織を示すことに留意されたい。
【0156】
図45A~45Cに示されるように、チャンバ内に真空圧を加えないと、注入が組織の大きな撓みを引き起こし(図45B)、その後、注入物は真空チャンバの下に概ね存在するものの、組織は注入後にノズルに向かって跳ね返される(図45C)。
【0157】
図46A~46Cに示されるように、注入の間にチャンバ内に真空圧が加えられると(図46B)、組織の撓みは解消される。しかしながら、図46Cに示されるように、ノズル-皮膚オフセット距離の欠如は、注入後に注入物が真空チャンバの下に存在することに帰着する。
【0158】
ここで図47A~47Cを参照すると、ノズル-皮膚オフセット距離が3mmであり、チャンバ内に真空圧が加えられている間に注入が行われると、組織の撓みは、注入の間に実質的に解消される(図47B)。この調査におけるように、注入の前に皮膚が真空チャンバ内に引き込まれると、注入の間にジェットノズルと皮膚との間に密着が存在し、真空圧が組織の撓みを防ぐのに十分となる。更に、注入後(図47C)、注入物はチャンバ内に存在し、注入物がより小さい垂直スペースに圧縮される図46Cに示される非オフセット設定と比較して、より大きい垂直分布がある。これらの試験は、注入物流体分布の観点から、本明細書に開示されるジェット注入真空カップによって提供される重要な利点を実証している。
【0159】
本明細書に記載の実施形態は、皮内及び/又は皮下組織における電気穿孔を標的とするように構成されているが、真空カップ2、502、702、802、902、1002、1502、1602及び真空装置1802、1902の設計パラメータのいずれも、平滑筋層及び骨格筋層のような、皮膚内の特定の組織層又は筋肉層のような、より特定の及び/又は異なる組織層を標的とするよう、サイズを上下にスケーリングされ得ることは、理解されるべきである。更に、本明細書における真空カップ2、502、702、802、902、1002、1502、1602及び真空装置1802、1902の設計パラメータは、粘膜、器官などを含む他のタイプの組織の電気穿孔を標的とするよう、必要に応じて適合させられ得る。
【0160】
本開示が詳細に説明されたが、添付の請求項によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換及び代替が、本明細書でなされ得ることは、理解されるべきである。例えば、本明細書に記載された様々な実施形態の特徴は、本明細書に記載された他の実施形態のうちの1つ以上及び最大で全てに組み込まれ得る。更に、本開示の範囲は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されることを意図されるものではない。このことから当業者は容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行する又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在する又は後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法又はステップが、本開示に従って利用され得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24A
図24B
図24C
図24D
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図29C
図30A-30F】
図31A-31F】
図32A-32F】
図33A-33F】
図34A
図34B
図35A
図35B
図36A
図36B
図37A
図37B
図38
図39A
図39B
図40A
図40B
図41A
図41B
図42A
図42B
図42C
図42D
図43A
図43B
図43C
図44
図45A-47C】
【国際調査報告】