(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】雑草植物への除草剤の取込みを改善するための溶融石油アジュバントを配合する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20230421BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20230421BHJP
A01N 39/04 20060101ALI20230421BHJP
A01N 37/36 20060101ALI20230421BHJP
A01M 21/04 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01P13/00
A01N39/04 A
A01N37/36
A01M21/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556573
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 US2021023202
(87)【国際公開番号】W WO2021188927
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503403135
【氏名又は名称】オーエムエス・インヴェストメンツ・インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハロルド・イー・トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ベイカー
(72)【発明者】
【氏名】ダレル・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マーク・プリンスター
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121CC05
2B121CC25
2B121EA27
2B121FA20
4H011AB01
4H011BB06
(57)【要約】
雑草植物を制御するための除草剤アジュバント組成物が開示されている。除草剤アジュバント組成物は、フェノキシベースの除草剤及び石油ベースのアジュバントを含む。石油ベースのアジュバントは、C17~C29の範囲の脂環式炭化水素及び水素処理重ナフテン留分の混合物を含んでもよい。除草剤-アジュバント組成物は、粘度調整剤を含んでもよい。除草剤-アジュバント組成物でコーティングされた顆粒もまた開示されている。顆粒は、肥料顆粒又は担体顆粒であってもよい。除草剤-アジュバント組成物でコーティングされた複数の顆粒を雑草植物に散布すること含む、雑草植物を制御する方法。フェノキシベースの除草剤及び石油ベースのアジュバントを、一段階で、雑草植物に散布する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノキシベースの除草剤、及び
石油ベースのアジュバント
を含む、除草剤-アジュバント組成物。
【請求項2】
前記石油ベースのアジュバントを約10質量%~約20質量%の範囲で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記除草剤が、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、(2R)-2-(4-クロロ-2-メチルフェノキシ)プロピオン酸(MCPP-p)又は3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸(dicamba)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記石油ベースのアジュバントが、C17~C29の範囲の脂環式炭化水素及び水素処理重ナフテン留分の混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
脂環式炭化水素の前記混合物が、三環式、四環式及び五環式のナフテン化合物の混合物を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記石油ベースのアジュバントが、前記脂環式炭化水素を約50質量%~約95質量%の範囲で含み、かつ、前記水素処理重ナフテン留分を約5質量%~約50質量%の範囲で含む、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記石油ベースのアジュバントが、芳香族炭素分率を1%~4%の範囲で有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
250
oF~280
oFの範囲の温度で、前記石油ベースのアジュバントが、約150センチポイズ以下の粘度、かつ、約300
oF以上の引火点を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
粘度調整剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記粘度調整剤がジプロピレングリコールである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項の組成物でコーティングされた顆粒。
【請求項12】
肥料顆粒である、請求項11に記載の顆粒。
【請求項13】
担体顆粒である、請求項11に記載の顆粒。
【請求項14】
前記フェノキシベースの除草剤及び前記石油ベースのアジュバントを混合して、溶液を形成することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法。
【請求項15】
前記混合が、200
oF~280
oFの範囲の温度で起こる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~9いずれか一項に記載の前記組成物で、前記顆粒をコーティングすることを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の顆粒を調製する方法。
【請求項17】
請求項11~13のいずれか一項に記載の複数の顆粒を雑草植物に散布することを含む、雑草植物を制御する方法であって、前記フェノキシベースの除草剤及び前記石油ベースのアジュバントを、一段階で、前記雑草植物に散布する、方法。
【請求項18】
複数の前記顆粒の少なくとも一部分が肥料を含み、前記肥料、前記フェノキシベースの除草剤及び前記石油ベースのアジュバントを、一段階で、前記雑草植物に散布する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年3月20日に出願された米国仮特願62/992,218号に基づく優先権を主張し、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一般的に溶融石油アジュバント及び溶融石油アジュバントを製造する方法に関する。溶融石油アジュバントは、雑草植物への除草剤の取込みを改善する。
【背景技術】
【0003】
消費者の芝生産業で使用される粒状の雑草制御品は、典型的に、広葉の出芽後の雑草に葉面散布するための2,4-D、MCPP-p及びジカンバ等の浸透性の除草剤を含む。活性成分は、一般的に、粒状不活性担体又は肥料顆粒に、タックオン粉末として又は液状形態で塗布される。通常、得られた粒状材料は、その後、葉の表面に顆粒を散布するためのブロードキャストスプレッダを使用して、広葉雑草植物に散布される。粒子は、活性成分を溶解させるために湿った葉に付着し、したがって、雑草の細胞に入り込み、植物を枯らすことができる。
【0004】
大半の雑草植物は、保護ワックス表皮層を有し、水溶性の活性成分又はその他の材料が細胞構造内に入り込むことを防ぐ。作物油濃縮物(COC)及び植物油(たとえば、メチル化種子油、MSO)は、浸透剤に分類される石油ベースのアジュバントである。このタイプのアジュバントは、表皮ワックスを軟化、可塑化又は溶解させることによって、表皮の下に存在するより親水性な細胞領域内へ除草剤を移動させることができ、表皮浸透性を改善することができる。作物油濃縮物又は植物油の塗布は、液状溶液を使用することで達成される。この作用は、除草剤の有効性を改善し、結果として全体の除草剤の塗布率を減らすことができる。雑草植物への除草剤の取込みを改善し、かつ、アジュバント及び除草剤の塗布の労働コスト及び時間を削減する溶融石油ベースのアジュバントの提供が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、除草剤-アジュバント組成物は、フェノキシベースの除草剤及び石油ベースのアジュバントを含む。石油ベースのアジュバントは、C17~C29の範囲の脂環式炭化水素及び水素処理重ナフテン留分の混合物を含んでもよい。除草剤-アジュバント組成物は、粘度調整剤を含んでもよい。
【0006】
別の実施形態では、顆粒は、除草剤-アジュバント組成物でコーティングされている。顆粒は、肥料顆粒又は担体顆粒であってもよい。
【0007】
別の実施形態では、除草剤-アジュバント組成物を調製する方法は、フェノキシベースの除草剤及び石油ベースのアジュバントを混合して、溶液を形成することを含む。混合は、200oF~280oFの範囲の温度で行われてもよい。
【0008】
別の実施形態では、顆粒を調製する方法は、除草剤-アジュバント組成物で顆粒をコーティングすることを含む。
【0009】
別の実施形態では、雑草植物を制御する方法は、除草剤-アジュバント組成物でコーティングされた複数の顆粒を雑草植物に散布することを含む。フェノキシベースの除草剤及び石油ベースのアジュバントが、一段階で、雑草植物に散布される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の上述の及びその他の特徴及び利点並びにそれらを達成するための手段は、添付の図面と併せて取込まれる、本発明の実施形態を制限するものではない、次の説明を参照することによって、より明確になり、より理解されるであろう。
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態の実施例の組成物の後方散乱の検出画像である。
【
図2】
図2は、一実施形態の実施例の組成物の元素マップである。
【
図3】
図3は、一実施形態の実施例の組成物、除草剤処理を含む比較例の組成物、及びコントロール組成物の塩素の推定転流レベルを示すチャートである。
【
図4】
図4は、散布1か月後のタンポポコントロールのパーセンテージを示すグラフである。
【
図5】
図5は、比較例の組成物及び一実施形態の実施例の組成物の両方の電子画像及び元素マップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で、溶融石油アジュバントを配合する組成物及び方法を開示する。本発明の組成物及び方法は、溶剤やタンク溶液を使用しない1つの製造段階で、除草剤及びアジュバントを組合せることを含む。除草剤-アジュバントコーティングでコーティングされた肥料又は担体顆粒もまた、開示されている。したがって、粒状除草剤及び性能が向上した浸透剤は、別々の散布段階を要さずに、植物に散布されてもよい。本発明の組成物及び方法は、除草剤の有効性及び使いやすさを向上させる一方で、消費者の散布コストを削減する。
【0013】
実施形態の除草剤-アジュバント組成物は、フェノキシベースの除草剤及び石油ベースのアジュバントを含む。フェノキシベースの除草剤は、たとえば、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、(2R)-2-(4-クロロ-2-メチルフェノキシ)プロピオン酸(MCPP-p)、3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸(dicamba)及びそれらの混合物を含む。除草剤-アジュバント組成物は、約5質量%~約25質量%、約10質量%~約20%質量の石油ベースのアジュバントを含んでもよい。特定の実施形態では、除草剤-アジュバント組成物は、2,4-Dを79質量%、dicambaを6質量%及びアジュバントを15質量%含んでもよい。さらに、特定の実施形態では、除草剤-アジュバント組成物は、約50%~約95%の除草剤を含んでもよい。フェノキシベースの除草剤に加えて又は代替として、組成物は、天然の又は植物ベースの誘導体を含んでもよい。好適な誘導体には、限定されるものではないが、アビエチン酸、レボピマル酸、ピマル酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ロジン誘導体、松林樹脂誘導体又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0014】
石油ベースのアジュバントの実施形態には、C17~C29の範囲の脂環式炭化水素及び水素処理重ナフテン留分の混合物が含まれる。脂環式炭化水素には、三環式、四環式及び五環式のナフテン化合物の混合物が含まれる(構造を下に示す)。商業的に入手可能な石油ベースのアジュバントの例には、FL、MulberryのARR-MAZ Custom Chemicals社によって製造及び販売されているDUSTROL(登録商標) 3088が含まれる。
【0015】
【0016】
特定の実施形態では、石油ベースのアジュバントは、脂環式炭化水素を約50質量%~約95質量%の範囲で含み、かつ、水素処理重ナフテン留分を約5質量%~約50質量%の範囲で含む。石油ベースのアジュバントの全体の分子量は、室温(たとえば、65~80oF)で、半固体であるような分子量である。しかしながら、高温(たとえば、250oF~280oF)で、石油ベースのアジュバントは、約150センチポイズ以下の粘度及び約300oF以上の引火点を有する。水素処理重ナフテン留分は、石油ベースのアジュバントに、約1%~約4%の範囲の芳香族炭素分率を提供する。低いレベルの芳香族化合物含有量によって、石油ベースのアジュバントは高い安全性の特性を有することができる。さらに、このレベル芳香族化合物含有量は、石油ベースのアジュバントを、2,4-D、MCPP-p及びdicambaなどのフェノキシベースの除草剤に対する有効な溶剤とするために、十分に大きい。
【0017】
特定の実施形態では、除草剤-アジュバント組成物は、調整剤又は界面活性剤を含む。たとえば、ジプロピレングリコール(DPG)等の粘度調整剤が、除草剤-アジュバント組成物に加えられてもよい。粘度調整剤は、混合過程において除草剤が分解する可能性を減らす、低い処理温度を可能にする。たとえば、特定の実施形態では、粘度調整剤の引火点は、240oF以上である。さらに、粘度調整剤は、顆粒の表面の活性成分(AI)の分布を、改善してもよい。特定の実施形態では、除草剤-アジュバント組成物は、約24質量%の粘度調整剤を含んでもよい。
【0018】
除草剤-アジュバント組成物の調製の実施形態は、高い処理温度で、フェノキシベースの除草剤及び石油ベースのアジュバントを混合することを含む。このような高い処理温度は、たとえば、200oF~280oFの範囲であってもよい。処理温度は、アジュバントに対する除草剤の比及び組成物が調整剤を含むか否かに応じて変化させてもよい。フェノキシベースの除草剤は、石油ベースのアジュバントの溶液に溶解する。除草剤-アジュバント溶液は、その後、肥料又は担体顆粒の表面に塗布される。溶液は、冷却された時(たとえば、室温)に、コーティングとして固まる。
【0019】
使用では、除草剤-アジュバントでコーティングされた顆粒は、湿った雑草の葉に散布され、除草剤及びアジュバントは広がる。アジュバントの溶剤の特性は、コーティングされた顆粒から広がった活性成分のパーセンテージの増加に役立つ。アジュバントが表皮層を軟化させることで、高濃度の除草剤が葉の細胞構造に入り込み、かつ植物で転流される。高い活性成分の転流の結果、アジュバントを含まない配合の除草剤と比較して、より多くの割合の雑草を枯らすことができる。
【実施例】
【0020】
実施例1 除草剤-アジュバント組成物
典型的なフェノキシベースの除草剤の融液の実験室規模のバッチを用意した。DUSTROL(登録商標) 3088を、撹拌槽に最初に加え、265oFに加熱した。DUSTROL(登録商標) 3088が目標の温度に達した時点で、265oF~270oFの範囲の温度を保持しながら、2,4-Dをゆっくりと混合した。2,4-Dを完全に加えた時点で、265oF~270oFの範囲の温度で保持した速度で、槽にdicambaを加えた。dicambaを完全に加えた時点で、溶液を約275oFに加熱して、10分間保持した。この最初の溶液は、15質量%のアジュバント(DUSTROL(登録商標) 3088)、79質量%の2,4-D組成物(純度97%)及び6質量%のdicamba組成物(純度92%)を含有した。このバッチで、おおよそ200グラムの最終溶液が調合された。
【0021】
溶融液を、その後、バッチブレンダーで肥料ベースに散布して、1.21%の濃度の2,4-D(活性成分)及び0.08%の濃度のdicamba(活性成分)の最終的な除草剤を作製した。肥料ベースは、28-0-3のNPK比を有した。最終的な生成物を冷却し、保存袋に入れた。
【0022】
有効性の比較
除草剤-アジュバントでコーティングされた肥料の、活性成分を雑草葉中に輸送することについての有効性を、目標のアジュバントを含まない除草剤で処理された肥料基材と比較した。2つのタンポポ植物の3つのグループを、温室条件で成長させた。第一のグループは、肥料顆粒のコントロールであるが、除草剤又はアジュバント処理をしなかった(「コントロール例」)。第二のグループは、1.21%の2,4-D及び0.61%のMCPP-pを含むが、アジュバントを含まない除草剤並びに肥料で、1エーカーあたり1.5ポンドの2,4-Dの割合で処理した(「比較例1」)。第三のグループは、上で説明した除草剤-アジュバントでコーティングされた肥料顆粒で、1エーカーあたり1.5ポンドの2,4-Dの割合で処理した(「実施例1」)。これらの各例の肥料は、28-0-3のNPK比を有した。顆粒を、各グループの事前に湿らせたタンポポの葉の表面に塗布した。コントロールを含む、各グループを、除草剤のタンポポ細胞構造中への初期(initial)転流を可能にするために、処理後、約40時間温室で保持した。
【0023】
40時間の保持期間の後に、各タンポポ植物から約1cm2の標本サンプルを、次のプロトコルを使用して採取した。まず、葉の表面における粒子の溶解部分の視覚的な指標のために、各タンポポ植物を観察した。葉の表面に付着した粒子の数の違いによる不自然な結果を減らすために、溶解を確認した部分からのみ、標本サンプルを採取した。各標本に、追加の水和剤を供給し、走査型電子顕微鏡(SEM)チャンバーに設置して、‐27℃の温度、50Paの圧力に冷却した。葉の表面下に電子ビームを侵入させるために、21kVの加速電圧を使用した。電子ビームの侵入深さは、原子番号に依存する臨界励起エネルギーを有するX線光子を、非常に深い深さで発射させる。X線の脱出深さは、大半の元素に有用な、Anderson and Haslerの導出式を使用して、推定する。
【0024】
【数1】
式中、R
xは、X線の脱出深さでありμmの単位を有し、E
0は21kVの加速電圧であり、E
cは、2.824kVの塩素(Cl)の臨界励起エネルギーであり、ρは、1.0gm/cm
3と推定される葉の比重である。これらの数値を代入して、侵入又はX線の脱出深さを、葉の厚さを約20~30μmと推定して、約10.3μmと予測した。各除草剤化合物の組成に含まれているため、塩素を対象元素として選択した。
【0025】
その後、後方散乱検出器及び850X倍率並びに、エネルギー分散型X線分光法(EDS)検出器を使用して、電子画像を走査した。後方散乱検出画像の例を
図1に示し、表面の細胞構造は、領域辺に分布するいくつかの小さな表面結晶とともに、はっきりと見ることができる。サンプル標本領域に、大きい未溶解の粒子が存在した場合には、SEMチャンバーに置く前に、表面から取り除いた。EDS検出器を使用して、元素の塩素の表面下の位置をしめす元素マップを作成した。このマップは、40時間の保持時間の後に、本質的にどれだけの活性成分が植物に取り込まれたのか又は塩素の転流度の最適な予測を提供する。この元素マップの例を
図2に示し、グリーンの着色は、画像領域での塩素の比較的均一な分散を示す。
【0026】
最終的に、EDSシステムの定量分析機能を使用して、塩素の予測質量割合を、元素マップの情報から計算することができる。各塩素の質量割合を同様の基準を使用して確実に推定するために、植物細胞の大きさや数は画像ごとに様々であるため、塩素の濃度を、炭素の濃度比(C:Cl)として計算した。さらに、植物は塩素含有化合物を土壌から取り込むことができるので、コントロールグループから塩素含有量を測定し、それらの値を、データを標準化するために使用した。
図3に示す、これらの比較結果は、実施例1のサンプル標本は、平均値663.3のC:Cl比を有した比較例1に対して、平均値89.9の非常に低いC:Cl比を有したことを示す。対象のサンプル領域のC:Cl比が低いほど、サンプルの塩素濃度は高くなる。したがって、比較例1と比べて、実施例1では、多くの塩素及びその結果として多くの除草剤が、植物細胞に入り込んだ。
【0027】
実施例2
除草剤を加えたメチレン尿素ベースの肥料(比較例1)と除草剤及びアジュバントを加えた肥料(「実施例2」)とを比較する2つの除草剤制御効率試験を行った。実施例2のアジュバントは、実施例1と同じものである。両方の材料の肥料の塗布割合は、1000平方フィートあたり0.8ポンドの窒素であった。両方の材料の除草剤の割合は、1エーカーあたり1.5ポンドの2,4-Dであった。比較例1は、1エーカーあたり0.75ポンドのMCPP-pを含み、かつ、実施例2は、1エーカーあたり0.1ポンドのdicambaを含んだ。したがって、実施例2は、比較例1と比較した場合、約30%未満の除草剤を含む。材料を、タンポポが群がるKentucky bluegrass地帯に散布した(Taraxacum officinale)。
【0028】
処理剤を、正確な製品送達割合(product delivery rate)を維持するために、散布前にグラムで計量し、各試験プロット領域を覆う、標準化スクリーン分配ボックス(standardized screen distribution box)を使用して散布した。全ての処理剤を露で湿った葉面に散布した。
図4は、タンポポの制御を決定するために実施した試験の結果を示す。全ての試験は再現され、雑草制御評価は散布の1か月後に実施した。
【0029】
結果は、実施例2が、約30%未満の活性成分を使用する一方で、比較例1と等しい又はより優れた割合でタンポポを制御したことを示す。
【0030】
実施例3
調査は、2,4-D、dicamba及び15%DUSTROL(登録商標)混合物を、275oFに加熱することで効果的な雑草制御製品を作製する一方で、高い処理温度が原因で、除草制御に矛盾が生じる可能性があることを示した。275oF以上の温度で処理する場合、2,4-Dがある程度分解され、活性成分の溶解度の低下につながる可能性がある。2,4-Dの溶解度の減少は、植物による取込みを減らし、雑草制御のばらつきを生じる。
【0031】
製品の性能の均一性を向上させるために、DUSTROL(登録商標)を24%まで増やし、かつ、粘度調整剤、ジプロピレングリコール(DPG)を24%程度で含むことによって、処理温度を200
oFに低下させることができる。実施例3は、肥料ベース、48.4%の2,4-D、3.2%のdicamba、24%のDUSTROL(登録商標)及び24%のDPGを含んだ。200
oFの処理温度で、24%のDUSTROL(登録商標)及び24%のDPGの組み合わせは、分解の課題点を取り除き、かつ、顆粒表面での活性成分の分布を向上させる。
図5は、より高い温度を使用する工程で製造した比較例1と、24%のDUSTROL(登録商標)及び24%のDPGを配合して、かつ、より低い温度で処理した実施例3の比較を示す。
図5では、2つの試験のデータの平均を示し、ライトブルーの領域は、元素の塩素を示し、2,4-Dの存在も示す。DUSTROL(登録商標)/DPGサンプルのライトブルーの高い被覆率は、粒子の周囲に2,4-Dがより多く分布していることを示唆する。
【0032】
実施例1で説明したSEM/EDS方法を使用して、畑で育てたタンポポ植物を、1.21%の2,4-D及び0.61%のMCPP-p除草剤を含み、アジュバントを含まない肥料(「比較例1」)で、1エーカーあたり1.5ポンドの2,4-Dの割合で処理した。第二のグループは、1.21%の2,4-D、0.08%のdicamba並びにDUSTROL(登録商標)及びDPGの組み合わせのアジュバントを含む肥料(「実施例3」)で処理した。第三のグループは、コントロールであり、除草剤処理をしなかった(「コントロール例」)。SEM/EDS分析からの結果を表1に表示する。
【0033】
【0034】
結果は一貫して、実施例3が最も低いC:Cl比を有することを示し、サンプルに多くの塩素が存在することを示す。
【0035】
実施例4
選択された芝土プロットを、1エーカーあたり1.5ポンドの2,4-Dの割合で、1.21%の2,4-D及び0.61%のMCPP-p除草剤を含み、アジュバントを含まない肥料(比較例1)で、1エーカーあたり1.5ポンドの2,4-Dの割合で、1.21%の2,4-D、0.08%のdicamba及び15%のDUSTROL(登録商標)を含む肥料(実施例1)で、1エーカーあたり1.5ポンドの2,4-Dの割合で、1.21%の2,4-D、0.08%のdicamba、24%のDUSTROL(登録商標)及び24%のDPGを含む肥料(実施例3)で処理し、別の処理は除草剤を散布しないコントロールであった。結果を下の表2に示す。
【0036】
【0037】
結果は、実施例3の配合物が、最も高い3日後のタンポポ障害評価を示し、この配合物が、葉の表面への浸透がより速かった可能性を示唆する。葉へのより速い浸透の利点は、雨もしくは風または人の往来で粒子が葉の表面から叩き落とされる前に、より多くの活性成分が植物に取込まれ得ることである。これにより、優れた散布の一貫性及び性能が達成される。
【0038】
本明細書で、全てのパーセンテージ(%)は、総組成物の質量%であり、他の記載がない限り、質量/質量%、%(w/w)、w/w、w/w%又は、単に%として表現される。
【0039】
本明細書に開示されている寸法及び値は、記載されている正確な数値に厳密に限定するものとして、理解されるべきではない。代わりに、他の指定がない限り、このような各寸法は、記載された値及びその値の周辺の範囲の機能的に等しい値の両方を意味することを意図する。
【0040】
本明細書を通して与えられる全ての最大数値限定は、全てのより低い数値限定を含み、そのような低い数値限定が本明細書に明示的に記載されているものとして理解されるべきである。本明細書を通して与えられる全ての最小数値限定は、全てのより高い数値限定を含み、そのような高い数値限定が本明細書に明示的に記載されているものとして理解されるべきである。本明細書を通して与えられる全ての数値範囲は、そのような狭い数値範囲が、全て本明細書に明示的に記載されているものとして、そのような広い数値範囲に入る全ての狭い数値範囲を含む、と理解されるべきである。
【0041】
相互参照または関連する特許または出願を含む、本明細書で引用されるすべての文書は、明示的に除外または制限されない限り、参照によりその全体が本明細書に援用される。文書の引用は、それが本明細書で開示または請求されている発明に関する先行技術であること、またはそれが単独で、または他の参考文献と組み合わせて、そのような発明を教示、示唆、または開示していることを認めるものではない。さらに、本明細中の用語の定義又は意味が、参照により援用される文書中の同じ用語の定義又は意味と矛盾する範囲においては、その文書中の用語に付された定義又は意味によって支配されるもとする。
【0042】
実施形態及び実施例の上述の説明は、説明の目的で提示されたものである。それは、網羅的に又は説明された形態に限定することを意図していない。上記の教示に照らして、数多くの修正が可能である。当業者によって、これらの変更のいくつかは議論され、その他は理解されるであろう。実施形態は、様々な実施形態を例示するために、選択され及び説明された。その範囲は、もちろん、本明細書に記載された実施例又は実施形態に限定されず、当業者によって任意の数の適用及び等価品を採用することができる。むしろ、その範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲によって定義されることを意図する。
【国際調査報告】