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特表2023-518309糖尿病性網膜症の治療において使用するためのソルチリン拮抗薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】糖尿病性網膜症の治療において使用するためのソルチリン拮抗薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20230421BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20230421BHJP
   A61K 31/4402 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P9/10
A61K31/44
A61K31/505
A61K31/47
A61K31/4402
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556635
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2021057126
(87)【国際公開番号】W WO2021186054
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】20164345.9
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522369739
【氏名又は名称】インスセンセ アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キョルビー,マス フールサング
(72)【発明者】
【氏名】ニュケーア,アナス
(72)【発明者】
【氏名】リトル,ポウル
(72)【発明者】
【氏名】ユアガイト,アンドレーアス
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC28
4C086BC42
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA33
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA14
4C206GA22
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA33
(57)【要約】
本発明は、糖尿病性網膜症の治療又は予防における、ソルチリン拮抗薬、特に式(I)及び好ましくは式(II)の化合物の使用に関する。本明細書に開示されるソルチリン拮抗薬を含む医薬組成物及び治療又は予防を必要とする対象の糖尿病性網膜症の治療又は予防方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病性網膜症の予防又は治療に使用するためのソルチリン拮抗薬であって、前記ソルチリン拮抗薬は、式(I)の化合物:
【化1】

又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、幾何異性体、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/又はプロドラッグであり、
Yは、-O-、-NR-、及び-S-から成る群から選択され、
Zは、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、任意選択的に置換されたC~C10アリール、及び任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリールから成る群から選択され、
~C10アリール及びC~Cヘテロアリールは、-OR15、ハロ、及びC~Cアルキルからなる群から独立して選択される1つ若しくは複数の置換基で任意選択的に置換され、R15は、H、C~Cアルキル、若しくはCアルキルである、
並びに/又はアルキレン基が、C~C10アリール又はC~Cヘテロアリール基の2個の隣接する原子と結合して5又は6員環の部分的に飽和した若しくは飽和した環を形成し、任意選択的に前記アルキレン基は、1つ若しくは複数のハロ原子で置換され、
A、B、C及びDは各々独立して、H、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、ハロ、NO、任意選択的に置換されたC~C10アリール、任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリール、-OR、NR、-SR、-C(O)OR10、-C(O)NR1112、-C(O)SR13、C(O)SR14から成る群から選択され、
、R、R、R、R、R10、R13、及びR14は各々独立して、H及びC1~アルキル基から成る群から選択され、前記C~Cアルキルは、1つ又は複数のハロ原子で任意選択的に置換され、
、R、R、R、R11、及びR12は各々独立して、H及びC1~アルキルから成る群から選択され、前記C~Cアルキルは、1つ若しくは複数のハロ原子で任意選択的に置換され、又はR及びR、R及びR、並びに/若しくはR11及びR12は、R及びR、R及びR、並びに/若しくはR11及びR12が結合して、1つ又は複数のハロ原子で任意選択的に置換された、5又は6員環複素環を形成する、窒素原子とひとまとめにして考えることができる、
ソルチリン拮抗薬。
【請求項2】
(i) 前記ソルチリン拮抗薬は、ソルチリン若しくはソルチリン関連分子とプロニューロトロフィン分子との間の相互作用を破壊し、及び/又は
(ii) 前記ソルチリン拮抗薬は、ソルチリン若しくはソルチリン関連分子とp75NTR分子との間の相互作用を破壊する、
請求項1に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項3】
前記ソルチリンは成熟ソルチリンであるか、又は前記ソルチリン関連分子はSorCS2である、請求項2に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項4】
前記ソルチリン拮抗薬は、ソルチリン阻害剤である、請求項1~3のいずれか一項に記
載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項5】
前記ソルチリン拮抗薬は、2000Da未満の分子量を有し、好ましくは前記ソルチリン拮抗薬は、1000Da未満の分子量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項6】
Yは-NR-であり、好ましくはYは-NH-である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項7】
A及びDは、Hである、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項8】
B及びCは、H、ハロ、CF、NO、C~Cアルキル、及びCアルキルから成る群から独立して選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項9】
CはHである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項10】
Bは、ハロ及びCFから成る群から選択され、好ましくはBは、Br又はCFである、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項11】
Zは、任意選択的に置換されたC~C10アリール又は任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリールであり、より好ましくはZは、任意選択的に置換されたフェニル、任意選択的に置換されたピリジル、又は任意選択的に置換されたピリミジニルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項12】
Z基のC~C10アリール及びC~Cヘテロアリールは、Cl、-OMe、及びMeから成る群から選択される1つ若しくは複数の置換基で任意選択的に置換され、
並びに/又はアルキレン基が前記C~C10アリール若しくはC~Cヘテロアリール基の2個の隣接する原子と結合して5又は6員環の部分的に飽和した若しくは飽和した環を形成し、任意選択に前記アルキレン基は、1つ又は複数のハロ原子で置換される、
請求項1~11のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項13】
前記ソルチリン拮抗薬は、
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐メチル‐6‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐クロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(プロパン‐2‐イル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐ニトロ安息香酸;
・4‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐[1,1’‐ビフェニル]‐3‐カルボン酸;
・4‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4‐クロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐4‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・4,5‐ジクロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4,5‐ジメチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・3‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(ブタン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(プロパン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐(フェニルカルバモイル)安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(3‐メチルフェニル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(ピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐クロロピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(4‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(3‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐3‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリミジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メトキシピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(5,6‐ジメチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(5,6,7,8‐テトラヒドロキノリン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸、
又は化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/又はプロドラッグであり、好ましくは前記ソルチリン拮抗薬は、
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐クロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(プロパン‐2‐イル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐ニトロ安息香酸;
・4‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐4‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・4,5‐ジクロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4,5‐ジメチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(3‐メチルフェニル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(ピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐クロロピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(4‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリミジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メトキシピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(5,6‐ジメチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロ
メチル)安息香酸;
・2‐[(5,6,7,8‐テトラヒドロキノリン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【請求項14】
糖尿病性網膜症の治療又は予防に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に規定されるソルチリン拮抗薬及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬製剤であって、好ましくは前記製剤は、眼科製剤である、医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性網膜症の治療又は予防における、ソルチリン拮抗薬、特に式(I)及び好ましくは式(II)の化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性網膜症は、眼の網膜に対する損傷の結果として視力喪失及び失明を生じることができる糖尿病(DM)の合併症である。糖尿病性網膜症の原因は、網膜末梢における毛細血管の閉塞及び虚血並びに黄斑部における過灌流及び透過性亢進が関与すると考えられる。糖尿病性網膜症の現在の治療は、これらの変化の重要なメディエーターである、血管内皮増殖因子(VEGF)のシグナル伝達を遮断すること、レーザー凝固(局所又は汎網膜)又は硝子体切除術を含む。しかしながら、これらの治療は、症状を治療するのみであり、基礎疾患は治療しない
【0003】
ソルチリン(SORT1によりコードされる)は、選別受容体の液胞タンパク質選別10タンパク質(vacuolar protein sorting 10 protein)(VPS10P)ファミリーの1型膜受容体であり、中枢神経系で最も大量に発現される。ソルチリンは、配列番号1によるアミノ酸配列を有し、シグナルペプチド、プロペプチド、Vps10p領域、10CC領域(10CCa+10CCb)、膜貫通領域及び大きい細胞質側末端を含む。ソルチリンの管腔領域は、6個の潜在的なN結合型糖鎖結合部位を有する一方、細胞質側末端は、様々なアダプタータンパク質のリクルートメントを可能とする。
【0004】
ソルチリンは、膨大な数のリガンド及び膜受容体と結合し、結果として細胞シグナル伝達及び選別に重要であることが知られている機能に関与する。例えば、ソルチリンは、それぞれ神経成長因子の前駆形(proNGF)、脳由来神経栄養因子の前駆形(proBDNF)、及びニューロトロフィン-3の前駆形(proNT3)である、プロニューロトロフィンによるシグナル伝達に関与する。タンパク質p75NTRとの複合体において、ソルチリンは、細胞及び動物モデルの変性及び細胞死につながるプロニューロトロフィンが媒介するアポトーシス効果のための受容体を形成すると報告されてきた3,4,5。しかしながら、ソルチリンは、糖尿病によって誘導される網膜の疾患過程と関連づけられなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、症状だけでなく疾患の根底にある原因に取り組む、糖尿病性網膜症の、症状の進行を遅らせることによる治療、及び予防に有用な新規な物質の満たされていないニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ソルチリンが糖尿病性網膜症に関連づけられるという驚くべき発見に基づく。理論によって拘束されることを望むものではないが、タンパク質ソルチリンは、糖尿病患者の眼、特にミュラー細胞で増加すると考えられる。ソルチリンは、低親和性神経成長因子受容体(p75NTR)及びproNGF、proBDNF又はproNT3などのプロニューロトロフィンと三量体複合体を形成することができ、網膜細胞及び神経節細胞の細胞死を引き起こし、一方同時に前駆形の成熟及び栄養形への変換を防ぐ。本発明は、ソルチリンのプロニューロトロフィンに対する結合を妨害する物質を提供し、これにより1)ソルチリン、p75NTR及びプロニューロトロフィンの三量体アポトーシス複合体
が形成されることを防ぎ、及び2)プロニューロトロフィンのソルチリンが媒介するクリアランスを防ぎ、成熟及び栄養ニューロトロフィンへと変換される物質のプールを提供する。したがって、ソルチリンープロニューロトロフィン干渉を、眼を前述の細胞死に起因する損傷から保護するのに用いることができる。
【0007】
驚くべきことに、ソルチリン拮抗薬、特に式(I)及び(II)の化合物は、糖尿病性網膜症の治療及び予防に有用であり得ることが見出された。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、糖尿病性網膜症の予防又は治療に使用するためのソルチリン拮抗薬であって、このソルチリン拮抗薬は、式(I)の化合物:
【0009】
【化1】

【0010】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、幾何異性体、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/又はプロドラッグであり、
Yは、-O-、-NR-、及び-S-から成る群から選択され、
Zは、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、任意選択的に置換されたC~C10アリール、及び任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリールから成る群から選択され、
~C10アリール及びC~Cヘテロアリールは、-OR15、ハロ、及びC~Cアルキルからなる群から独立して選択される1つ若しくは複数の置換基で任意選択的に置換され、R15は、H、C~Cアルキル、若しくはCアルキルであり、
並びに/又はアルキレン基が、C~C10アリール若しくはC~Cヘテロアリール基の2個の隣接する原子と結合して5若しくは6員環の部分的に飽和した若しくは飽和した環を形成し、任意選択的にこのアルキレン基は、1つ若しくは複数のハロ原子で置換され、
A、B、C及びDは各々独立して、H、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、ハロ、NO、任意選択的に置換されたC~C10アリール、任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリール、-OR、NR、-SR、-C(O)OR10、-C(O)NR1112、-C(O)SR13、C(O)SR14から成る群から選択され、
、R、R、R、R、R10、R13、及びR14は各々独立して、H及びC~Cアルキル基から成る群から選択され、このC~Cアルキルは、1つ又は複数のハロ原子で任意選択的に置換され、
、R、R、R、R11、及びR12は各々独立して、H及びC~Cアルキルから成る群から選択され、このC~Cアルキルは、1つ若しくは複数のハロ原子で任意選択的に置換され、又はR及びR、R及びR、並びに/若しくはR11及びR12は、R及びR、R及びR、並びに/若しくはR11及びR12が結合して、1つ若しくは複数のハロ原子で任意選択的に置換された、5若しくは6員環複素環を形成する、窒素原子とひとまとめにして考えることができる、
ソルチリン拮抗薬を提供する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、糖尿病性網膜症の予防又は治療用の薬物の製造におけるソルチリン拮抗薬の使用であって、このソルチリン拮抗薬は、上で定義した式(I)の化合物である、ソルチリン拮抗薬の使用を提供する。
【0012】
本発明の別の態様によれば、糖尿病性網膜症を予防又は治療することを必要とする対象に治療有効量のソルチリン拮抗薬を投与することにより糖尿病性網膜症を予防又は治療する方法であって、このソルチリン拮抗薬は、上で定義した式(I)の化合物である、糖尿病性網膜症を予防又は治療する方法を提供する。
【0013】
本発明は、特に眼科医薬製剤である、本発明のソルチリン拮抗薬を含む医薬製剤も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、抗ソルチリンポリクローナル抗体を用いた糖尿病マウスモデル試験における、ベースラインと比較した糖尿病の誘発後8週間でのfERG反応の「a波」成分の減少を示す。
図2図2は、抗ソルチリンポリクローナル抗体を用いた糖尿病マウスモデル試験における、ベースラインと比較した糖尿病の誘発後8週間でのfERG反応の「b波」成分の減少を示す。
図3図3は、応用の実施例8を用いた糖尿病マウスモデル試験における、ベースラインと比較した糖尿病の誘発後8週間でのfERG反応の「a波」成分の減少を示す。
図4図4は、応用の実施例8を用いた糖尿病マウスモデル試験における、ベースラインと比較した糖尿病の誘発後8週間でのfERG反応の「b波」成分の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で用いられる場合、用語「ソルチリン」とは、配列番号1又は配列番号2によるアミノ酸配列を有する、シグナルペプチド、プロペプチド、Vps10p領域、10CC領域、膜貫通領域及び大きい細胞質側末端を含む、全長ソルチリン(未熟ソルチリンとも呼ばれる)を指してよく、又は用語「ソルチリン」とは、配列番号3によるアミノ酸配列を有する、Vps10p領域、10CC領域、膜貫通領域及び大きい細胞質側末端を含む、成熟ソルチリン、又は成熟ソルチリンの自然発生断片、ホモログ若しくは変異体を指してよい。本明細書で用いられる用語「ソルチリン」又は「ソルチリン分子」(本明細書で互換的に用いられる)はまた、ソルチリンと機能的に関連がある任意のタンパク質、すなわち、例えばSorCS2などの、ソルチリン関連分子を含んでよい。したがって、疑いを回避するために、本発明の使用、方法又は組成物における用語「ソルチリン」に対する任意の参照は、上で定義したソルチリンを指すのみでなくてよく、任意選択的に代わりにSorCS2などの機能的に関連するタンパク質を指すとみなしてよい。ソルチリンは、プロニューロトロフィン分子と相互作用してソルチリン/プロニューロトロフィン複合体を形成することができると理解される。このソルチリン/プロニューロトロフィン複合体は、p75NTR分子と相互作用してソルチリン、プロニューロトロフィン及びp75NTRを含む三量体複合体を形成することができてもできなくてもよい。この三量体複合体は、網膜細胞及び神経節細胞においてアポトーシスを刺激するなどの、有害な生体反応の原因であってよい。
【0016】
本明細書で用いられる場合、用語「プロニューロトロフィン」とは、タンパク質切断を受けて成熟形のニューロトロフィンをもたらす、ニューロトロフィンの大きな前駆体を指す。ニューロトロフィンは、ニューロンの生存、発生及び機能を誘導するタンパク質のファミリーであり、一般的に成長因子と呼ばれる。プロニューロトロフィンは、生物学的に活性であり、アポトーシス誘導など、ニューロトロフィン対応物と比べて異なる役割を有する。プロニューロトロフィンの例としては、proNGF、proBDNF、proN
T3、proNT4が挙げられ、好ましくはプロニューロトロフィンは、proNGF、proBDNF又はproNT3であり、さらにいっそう好ましくはプロニューロトロフィンは、proNGFである。
【0017】
本明細書で用いられる場合、用語「ソルチリン拮抗薬」とは、ソルチリンタンパク質がプロニューロトロフィン(例えばproNGF、proNT3、proBDNF)と結合する効果を妨害し、遮断し、又は減弱し、ソルチリンとp75NTRとプロニューロトロフィンとの間の三量体複合体の形成を妨げる物質(抗体、タンパク質、又は他の分子など)を指す。用語「ソルチリン拮抗薬」はまた、高親和性三量体複合体の形成を妨害する物質又は薬物も含む。後者のシナリオにおいては、ソルチリンはp75NTRと結合することができ(しかしproNGFとは結合できない)、p75NTRは同時にproNGFのNGF領域と結合することができるという点で三量体複合体を形成してよいと認識される。しかしながら、生じる三量体複合体は三量体複合体の受容体に対する親和性がより低くてよく、結果として上述した機構を介してアポトーシスを刺激する能力は著しく減少している。用語「ソルチリン拮抗薬」はまた、ソルチリンタンパク質がp75NTRと相互作用する効果を妨害する、遮断する、又は減弱する物質又は薬物も含む。この相互作用は完全に妨げられてよく、この場合三量体複合体の形成が妨げられ、又は部分的にのみ妨げられ、この場合三量体複合体は形成されてよいが、生物学的効力が減少してよい。
【0018】
したがって、ある実施形態において、本明細書により使用するためのソルチリン拮抗薬は、ソルチリン分子及びプロニューロトロフィン分子との相互作用を破壊してよく、又はソルチリン分子及びp75NTR分子との相互作用を破壊してよい。
【0019】
好ましくは、ソルチリン拮抗薬は、ソルチリン阻害剤である。本明細書で用いられる場合、用語「ソルチリン阻害剤」とは、ソルチリンタンパク質と結合し、これによりソルチリンタンパク質がプロニューロトロフィンと結合するのを妨げる、及び前述の三量体複合体の形成を妨げる、又は活性が弱い若しくは不活性な三量体複合体を形成する物質を指す。用語「ソルチリン阻害剤」とはまた、生物学的に利用可能なプロニューロトロフィンと競合的に結合できるが、有効な三量体複合体の形成を妨げることができる、ソルチリン又はソルチリン関連分子の可溶性断片を指してよい。結果として、ソルチリン阻害剤は、受容体活性化を阻害し、受容体活性化の阻害はそうでなければリガンド結合の結果として生じ及び/又は非結合の/生物学的に利用可能なプロニューロトロフィンにおける移行を可能にし、プロニューロトロフィンはプロニューロトロフィンの前駆形か成熟形のいずれかで、Trkファミリー受容体に限定されないが、2次経路/受容体を介して特異的に働くことができる。
【0020】
好ましくは、本発明のソルチリン拮抗薬は、ソルチリンタンパク質とプロニューロトロフィンとの間のタンパク質―タンパク質相互作用を阻害し、さらにソルチリンとプロニューロトロフィンとp75NTR受容体との間に通常形成されるアポトーシス性三量体複合体の形成を阻害する、又は生物学的活性が弱い若しくは不活性若しくは最小限の活性しか有さない低親和性三量体複合体を形成する。
【0021】
ソルチリン拮抗薬は「小分子」であることが非常に好ましい。この場合、ソルチリン拮抗薬は、2000Da未満の分子量を有する、好ましくは、ソルチリン拮抗薬は、1000Da未満の分子量を有する。
【0022】
式(I)の化合物は、ソルチリンと結合することによりソルチリン拮抗薬として働く。式(I)の化合物はしたがって、糖尿病性網膜症の治療又は予防に有用である。
【0023】
Yが-NR-であることは非常に好ましく、より好ましくはYは-NH-である。本
発明の特定の好ましい態様において、式(I)の化合物は、式(II)の化合物である。
【0024】
【化2】

【0025】
以下に詳述する、式(I)及び(II)の好ましい化合物は、ソルチリンに対する上昇した結合親和性を示してよく、したがって糖尿病性網膜症の治療又は予防に高い有効性を示してよい。
【0026】
本発明の好ましい態様において、A及びDは、Hである。
【0027】
本発明の別の好ましい態様において、B及びCは、H、ハロ、CF、NO、C~Cアルキル、及びCアルキルから成る群から独立して選択される。
【0028】
CがHであることはより好ましい。
【0029】
Bが、ハロ及びCFから成る群から選択されることもより好ましく、さらに好ましくはBは、Br又はCFである。
【0030】
本発明の別の好ましい態様において、Zは、任意選択的に置換されたC~C10アリール又は任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリールである。
【0031】
この任意選択的に置換されたC~C10アリールは、任意選択的に置換されたフェニルである。
【0032】
特に好ましい任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリール基は、この環原子の1~5個が炭素であり、この環原子の1つ又は複数がヘテロ原子である任意選択的に置換された5又は6員環ヘテロアリール基であり、より好ましくはこの環原子の1~5個が炭素であり、この環原子の1つ又は複数がヘテロ原子である任意選択的に置換された6員環ヘテロアリール基である。
【0033】
任意選択的に置換された6員環ヘテロアリール基の環原子は、炭素及び窒素から成る群から選択されることが好ましい。この場合、任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリール基の特に好ましい実施例は、任意選択的に置換されたピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、及びトリアジニルである。より好ましい任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリール基は、任意選択的に置換されたピリジル及びピリミジニルである。
【0034】
したがって、本発明の特に好ましい態様において、Zは、任意選択的に置換されたフェニル、任意選択的に置換されたピリジル、又は任意選択的に置換されたピリミジニルである。
【0035】
好ましくは、Z基のC~C10アリール及びC~Cヘテロアリールは、Cl、-
OMe及びMeから成る群から選択される1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換される。
【0036】
上述した好ましい任意選択的な置換基に加え、アルキレン基はC~C10アリール又はC~Cヘテロアリール基の2個の隣接する原子と結合して5又は6員環の部分的に飽和した又は飽和した環を形成してよく、任意選択的にこのアルキレン基は1つ又は複数のハロ原子で置換される。このような縮合した二環式環系の実施例は、Z基の以下の2個の実施例に示される。
【0037】
【化3】

【0038】
Z及びZの置換基の特定の組み合わせは、以下に詳述するように、特に好ましくてよい。
【0039】
本発明の特に好ましい態様において、Zは、C~C10アリール又はC~Cヘテロアリールである。C~C10アリール及びC~Cヘテロアリールの各々は、-OR15、ハロ、及びC-Cアルキルから成る群から独立して選択される1つ又は複数の置換基で独立して置換され、R15はH又はC-Cアルキルであり、好ましくはCl、-OMe、及びMeから成る群から独立して選択される1つ又は複数の置換基で独立して置換され、及び/又はアルキレン基は、Z基の2個の隣接する原子と結合して5又は6員環の部分的に飽和した又は飽和した環を形成し、任意選択的にこのアルキレン基は、1つ又は複数のハロ原子で置換される。
【0040】
本発明のさらにいっそう好ましい態様において、Zは、フェニル、ピリジル、又はピリミジニルである。フェニル、ピリジル、及びピリミジニルの各々は、-OR15、ハロ、及びC~Cアルキルから成る群から独立して選択される1つ又は複数の置換基で独立して選択され、R15は、H又はC~Cアルキルであり、好ましくはCl、-OMe、及びMeから成る群から独立して選択される1つ又は複数の置換基で独立して選択され、及び/又はアルキレン基は、Z基の2個の隣接する原子と結合して5又は6員環の部分的に飽和した又は飽和した環を形成し、好ましくはこのアルキレン基は、1つ又は複数のハロ原子で置換される。
【0041】
本発明により使用するための特定の化合物は、
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐メチル‐6‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐クロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(プロパン‐2‐イル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐ニトロ安息香酸;
・4‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐[1,1’‐ビフェニル]‐3‐カルボン酸;
・4‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4‐クロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐4‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・4,5‐ジクロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4,5‐ジメチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・3‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(ブタン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(プロパン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐(フェニルカルバモイル)安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(3‐メチルフェニル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(ピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐クロロピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(4‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(3‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐3‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリミジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メトキシピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(5,6‐ジメチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(5,6,7,8‐テトラヒドロキノリン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸,
又は化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/又はプロドラッグである。
【0042】
本発明により使用するための特に好ましい化合物は、
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐クロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(プロパン‐2‐イル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐ニトロ安息香酸;
・4‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐4‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・4,5‐ジクロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4,5‐ジメチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(3‐メチルフェニル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(ピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐クロロピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(4‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリミジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メトキシピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(5,6‐ジメチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(5,6,7,8‐テトラヒドロキノリン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
又は化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/又はプロドラッグである。
【0043】
本発明の別の態様によれば、糖尿病性網膜症の治療又は予防に使用するための、本発明によるソルチリン拮抗薬及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬製剤が提供される。
【0044】
本発明の好ましい態様において、この医薬製剤は、眼科製剤である。
【0045】
本発明により使用するための化合物は、同位体的に標識された及び/又は同位体的に濃縮された形態の化合物を含んでよい。本明細書の発明により使用するための化合物は、このような化合物を構成する原子のうち1つ又は複数で不自然な割合の原子同位体を含有してよい。開示される化合物に組み込まれることができる同位体の例としては、H、H、11C、13C、14C、13N、15O、17O、32P、35S、18F、36Clなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、塩素の同位体が挙げられる。
【0046】
本発明により使用するための化合物は、本発明により使用するための化合物の薬学的に許容される塩(酸又は塩基付加塩)のようなものとして、又は適切な場合、本発明により使用するための化合物の薬学的に許容される塩(酸又は塩基付加塩)として用いられてよい。上述した薬学的に許容される付加塩は、この化合物が形成することができる治療的に活性で無毒の酸及び塩基付加塩を含むことを表す。塩基性を有する化合物は、この塩基形を適切な酸で処理することにより塩基性を有する化合物の薬学的に許容される酸付加塩に変換することができる。例示的な酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素、硫酸、リン酸などの無機酸、及びギ酸、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、パモ酸(pamoic acid)、安息香酸、アスコルビン酸及び同種のものなどの有機酸が挙げられる。例示的な塩基付加塩形は、ナトリウム、カリウム、カルシウム塩、及び例えばアンモニア、アルキルアミン、ベンザチン、及び例えばアルギニン及びリジンなどのアミノ酸などの、薬学的に許容されるアミンとの塩である。本明細書で用いられる用語付加塩はまた、例えば水和物、アルコラート及び同種のものなどの、化合物又は化合物の塩が形成することができる溶媒和物も含む。
【0047】
本開示を通じて、与えられる化学式又は名称はまた、与えられる化学式又は名称の全ての薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、幾何異性体、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/又はプロドラッグ形も包含するものとする。本発明により使用するための化合物は、化合物の式の任意の及び全ての水和物及び/又は溶媒和物を含むと理解されるべきである。ヒドロキシ、アミノ、及び同様の基などの特定の官能基は、水及び/又は種々の溶媒と、化合物の種々の物理的形態の、複合体及び/又は配位化合物を形成すると理解される。したがって、上の式は、上の式の種々の水和物及び/又は溶媒和物を含み及び表すと理解されるべきである。
【0048】
本発明により使用するための化合物はまた、互変異性形も含む。互変異性形は、プロトンの同時移動を伴う単結合と隣接する二重結合との交換(swapping)に起因する。互変異性形は、同一の実験式及び全電荷を有するプロトン化の異性状態であるプロトン互変異性体(prototropic tautomers)を含む。プロトン互変異性体の例としては、ケトン-エノールの組み合わせ、アミド-イミド酸の組み合わせ、ラクタム-ラクチムの組み合わせ、アミド-イミド酸の組み合わせ、エナミン-イミンの組み合わせ、並びにプロトンが複素環系の2つ以上の位置を占有することができる環状形、例えば1H-及び3H-イミダゾール、1H-、2H-及び4H-1,2,4-トリアゾール、1H-及び2H-イソインドール、並びに1H-及び2H-ピラゾールが挙げられる。互変異性形は、平衡状態にあるか、又は適切な置換によって1つの形態へと立体的に固定(sterically lock)することができる。
【0049】
本明細書に記載される化合物は、不斉性であってよい(例えば、1つ又は複数の立体中心を有する)。鏡像異性体及びジアステレオマーなどの、全ての立体異性体が他に断りのない限り意図される。不斉に置換された炭素原子を含有する本発明により使用するための化合物は、光学活性形又はラセミ形で単離することができる。光学活性な出発物質から光学活性形を調製する方法は当該技術分野において公知であり、例えばラセミ混合物の分割又は立体選択的合成によるものがある。オレフィン、C=N二重結合、及び同種のものの多くの幾何異性体も本明細書に記載される化合物に存在することができ、全てのこのような安定な異性体は、本明細書において想定される。本発明により使用するための化合物のシス及びトランス幾何異性体が記載され、異性体の混合物として又は分離された異性体形として単離されてよい。
【0050】
1つの不斉炭素原子を含有する化合物の場合、本発明は、D形、L形、及びD、L混合物に関し、1つより多い不斉炭素原子が存在する場合はまた、ジアステレオマー形にも関する。不斉炭素原子を含有する、及び概してラセミ体として生じる本発明により使用するための化合物は、例えば光学活性酸を使用する、公知の方法で光学活性異性体に分離されることができる。しかしながら、最初から光学活性な出発物質を、対応する光学活性な又はジアステレオマー化合物とともに使用し、最終生成物として取得することも可能である。
【0051】
用語「プロドラッグ」とは、生理的条件下又は加溶媒分解により本発明により使用するための生物活性化合物に変換されてよい化合物を指す。プロドラッグは、それを必要とする対象に投与した場合不活性であってよいが、生体内で本発明の活性化合物に変換される。プロドラッグは典型的には、例えば血液中での加水分解などにより生体内で急速に変換されて本発明の親化合物を得る。プロドラッグ化合物は通常、溶解度、組織適合性又は哺乳類生物体中の時限放出(delayed release in a mammalian organism)という利点を提供する(Silverman, R. B.,
The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, 2nd Ed., Elsevier Academic Press (2004), page 498 to 549を参照する)。本発明により使用するための化合物のプロドラッグを、本発明により使用するための化合物に存在するヒドロキシ、アミノ又はメルカプト基などの官能基を、修飾物が通常操作又は生体内でかのいずれかで本発明により使用するための親化合物に切断されるように、修飾することにより調製してよい。プロドラッグの例としては、限定されないが、ヒドロキシ官能基の酢酸エステル、ギ酸エステル及びコハク酸エステル誘導体又はアミノ官能基のフェニルカルバミン酸誘導体が挙げられる。
【0052】
本明細書で用いられる用語「治療」は、言及された障害若しくは状態の予防、又は一度
確立した障害の改善若しくは消失を含んでよい。用語「予防」とは、言及された障害又は状態の予防を指す。
【0053】
本明細書で描写される方法は、対象が特定の述べられた治療を必要とすると明らかにされた方法を含む。このような治療を必要とする対象を明らかにすることは、対象又は医療専門家の判断であってよく、主観的(例えば意見など)又は客観的(例えば試験又は診断方法によって測定可能)であってよい。
【0054】
他の態様において、本明細書の方法は、治療投与に対する対象の反応を監視することをさらに含む方法を含む。このような監視は、定期的な画像診断又は治療計画のマーカー又は指標としての、対象の組織、液体、試料、細胞、タンパク質、化学マーカー、遺伝子材料の採取を含んでよい。他の方法においては、対象は、このような治療の適合性の関連するマーカー又は指標についての評価によってこのような治療を必要とするとあらかじめ選別される又は同定される。
【0055】
本発明は、治療の進捗を監視する方法を提供する。方法は、本明細書に描写される障害又は症状に苦しむ又はなりやすい対象の診断マーカー(Marker)(例えば本明細書の化合物によって調節された本明細書に描写される全ての標的又は細胞タイプ)又は診断測定(例えばスクリーニング、アッセイ)のレベルを決定するステップを含み、対象は、対象の疾患又は症状を治療するのに充分な治療量の本明細書の化合物を投与されている。対象の疾患状態を確立するために、本方法で決定されたMarkerのレベルを健常な正常対照群又は他の苦しめられる患者のいずれかの既知のレベルのMarkerと比較することができる。好ましい実施形態において、対象のMarkerの第2のレベルを第1のレベルの決定時より後の時点で決定し、2個のレベルを比較して疾患の経過又は治療の有効性を監視する。特定の好ましい実施形態において、対象の治療前のMarkerのレベルを本発明による治療を開始する前に決定し、この治療前のMarkerのレベルを、治療の有効性を判断するために、治療が始まった後の対象のMarkerのレベルと比較することができる。
【0056】
対象のMarkerのレベル又はMarker活性を少なくとも1回測定してよい。Markerレベルの、例えば同じ患者、別の患者、又は正常の対象からあらかじめ又は続けて取得したMarkerレベルの別の測定値との比較は、本発明の治療が望ましい効果を有しているかを判断するのに有用であってよく、これにより必要に応じた投与量レベルの調整を可能にする。Markerレベルの決定は、当該技術分野で公知の、又は本明細書に記載される任意の適したサンプリング/発現アッセイ方法を用いて実行されてよい。好ましくは、組織又は液体サンプルを、最初に対象から取り除く。適したサンプルの例としては、血液、尿、組織、口又は頬の細胞、及び毛根を含有する毛髪サンプルが挙げられる。他の適したサンプルは、当業者にとって公知であろう。サンプル中のタンパク質レベル及び/又はmRNAレベル(例えばMarkerレベル)の決定は、限定されないが、ELISAである、酵素免疫測定法、放射標識/アッセイ手法、ブロッティング/化学発光方法、リアルタイムPCR、及び同種のものを含む、当該技術分野において公知の任意の適した技術を用いて実行されることができる。
【0057】
臨床用途については、本明細書に開示される化合物は、各種投与方法用の医薬組成物(又は製剤)に処方される。本発明により使用するための化合物は、生理学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤とともに(すなわち、これらの1つ、2つ、又は3つ全て)投与されてよいと理解されるだろう。本明細書に開示される医薬組成物を、好ましくは経口、眼内(硝子体内を含む)、直腸、鼻腔、局所的(頬側及び舌下を含む)、舌下、経皮、髄腔内、経鼓膜、経粘膜又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与による、任意の適した経路により投与してよい。好ましくは、医薬組成物は、眼内に投与さ
れる。他の製剤は、例えば錠剤及び徐放カプセルなどの単位剤形、及びリポソームで好都合に示されてよく、薬学の技術分野において周知の任意の方法により調製されてよい。医薬製剤は通常、活性物質、又は活性物質の薬学的に許容される塩を通常の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに混合することにより調製される。賦形剤の例は、水、ゼラチン、アラビアガム(gum arabicum)、ラクトース、微結晶セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド状二酸化ケイ素、及び同種のものである。このような製剤はまた、他の薬理学的活性な薬剤、並びに安定化剤、湿潤剤、乳化剤、香味料、緩衝剤及び同種のものなどの従来の添加剤も含有してよい。通常、活性化合物の量は、調製物の0.1~95重量%、好ましくは非経口用途用の調製物の0.2~20重量%及びより好ましくは経口投与用の調製物の1~50重量%である。製剤はさらに、造粒、圧縮、マイクロカプセル化、スプレーコーティングなどの既知の方法により調製することができる。製剤は、錠剤、点眼剤、クリーム、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、坐剤又は注射剤の剤形で従来の方法により調製されてよい。液体の製剤は、活性物質を水又は他の適した溶媒に溶解又は懸濁することにより調製してよい。錠剤及び顆粒剤は、従来の方法で被覆してよい。長時間治療有効量の血漿中濃度を維持するために、本明細書に開示される化合物を緩効性製剤に組み込んでよい。
【0058】
特定の化合物の投与量レベル及び投与頻度は、利用する特定の化合物の効力、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与方法及び時間、排出率、薬物の組み合わせ、治療すべき状態の重症度、並びに患者が受けている治療に応じて変わるだろう。1日の投与量は、例えば、各々約0.01mg~約25mgの用量で単独で又は複合的に投与され、例えばキロの体重あたり約0.001mg~約100mgに及んでよい。通常、このような投与は経口的になされるが、非経口投与も選択されてよい。
【0059】
定義
「任意選択の」又は「任意選択的に」とは、続いて記載される事象又は状況が生じてもよいが、生じなくてもよいことを表し、記載が、事象又は状況が生じる場合の例及び事象又は状況が生じない例を含むことを表す。
【0060】
用語「C~Cアルキル」とは、1~6個の炭素原子、すなわち、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する直鎖、分岐又は環状若しくは部分的に環状のアルキル基を表す。環状部を含む「C~Cアルキル」基については、3~6個の炭素原子から形成されるべきである。範囲「C~Cアルキル」の部分については、「C~Cアルキル」の全てのサブグループは、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、Cアルキル、C~Cアルキル、C~Cアルキル、Cアルキル、C~Cアルキル、Cアルキル、及びCアルキルなどを想定される。「C~Cアルキル」の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、シクロプロピルメチル、及び直鎖、分岐又は環状若しくは部分的に環状のペンチル及びヘキシルなどが挙げられる。
【0061】
用語が範囲、例えば、C~Cアルキルの定義における「1~6個の炭素原子」を表す場合、各整数は、すなわち、1、2、3、4、5及び6が開示されるとみなされる。
【0062】
用語「ハロ原子」とは、ハロゲン原子を表し、好ましくは、F、Cl、Br又はIである。
【0063】
用語「C~C10アリール」とは、6~10個の環原子を含む単環式又は縮合二環式の芳香族炭化水素環系を表す。「C~C10アリール」基の例としては、フェニル、インデニル、ナフチル、及びナフタレンが挙げられる。
【0064】
用語「C~Cヘテロアリール」とは、5~10個の環原子を有し、5~10個の環原子のうち1~9個が炭素であり、5~10個の環原子のうち1つ又は複数が窒素、硫黄、及び酸素から選択される、芳香族の単環式又は縮合二環式の芳香族複素環系を表す。「C~Cヘテロアリール」の例としては、フリル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、テトラゾリル、キナゾリニル、インドリル、インドリニル、イソインドリル、イソインドリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリニル、キノキサリニル、チアジアゾリル、ベンゾフラニル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、1,3-ベンゾジオキソリル、1,4-ベンゾダイオキシニル(1,4-benzodioxinyl)、2,3-ジヒドロ1,4-ベンゾダイオキシニル(2,3-dihydro-1,4-benzodioxinyl)、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル及びクロマニルが挙げられる。
【0065】
「治療有効量」とは、治療される対象に治療効果を与える本発明により使用するための化合物の量を指す。治療効果は、客観的(すなわち、いくつかの試験又はマーカーにより測定可能)又は主観的(すなわち、対象は、効果の徴候を与える又は効果を感じる)であってよい。
【0066】
本明細書で用いられる場合、用語「投与」又は「投与する」とは、本明細書に開示される化合物の投与経路を表す。例示的な投与経路としては、限定されないが、経口、眼内(硝子体内など)、局所的、静脈内、腹腔内、動脈内、及び筋肉内が挙げられる。好ましい投与経路は、例えば、本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物の成分、可能性のある又は実際の疾患部位及び疾患の重症度などの様々な要因に応じて変化することができる。
【0067】
用語「対象」及び「患者」は、本明細書において互換的に用いられる。これらは、疾患又は障害に苦しむ又はなりやすくてよいが、この疾患又は障害を有しても有さなくてもよいヒト又は別の哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ又は霊長類)を指す。
【0068】
本発明により使用するための化合物は、名称又は化学構造により開示されてよい。化合物の名称及び化合物の関連する化学構造との間に矛盾が存在する場合、化学構造が優勢である。
【0069】
本発明の化合物の調製
本明細書に開示される式(I)及び(II)の化合物を、従来の方法により、又は類似して調製してよい。個別の反応ステップの適切な反応条件は、当業者にとって公知である。式(I)及び(II)の化合物を調製するために必要な出発物質は、商業的に利用可能であるか、又は当該技術分野において公知の方法によって調製されてよいかのいずれかである。
【0070】
式(I)及び(II)の化合物は、1つ又は複数の不斉炭素原子を持ってよく、したがってこれらを、例えば純粋なエナンチオマーとして、又はエナンチオマーの混合物として又はジアステレオマーを含有する混合物としてなどの、光学異性体の形で取得してよい。純粋なエナンチオマーを取得するための光学異性体の混合物の分離は、当該技術分野にお
いて周知であり、例えば光学活性な(キラルな)酸との塩の分別再結晶により又はキラルカラム上でのクロマトグラフィー分離により達成されてよい。
【0071】
例えば本発明の特定の実験操作は、以下に記載される。本発明の化合物を遊離塩基の形状で又は酸付加塩として提供するためにプロセスを実行してよい。薬学的に許容される酸付加塩を、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来の操作にしたがって、遊離塩基を適した有機溶媒に溶解し、この溶液を酸で処理することにより取得してよい。付加塩を形成する酸の例を上述する。本明細書において描写される合成経路で用いられる化学物質は、例えば溶媒、試薬、触媒、並びに保護基及び脱保護基試薬を含んでよい。保護基の例は、t-ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジル及びトリチル(トリフェニルメチル)である。以下に記載される方法はまた、最終的に化合物の合成を可能にする目的で、本明細書に具体的に記載されるステップの前又は後のいずれかに、適した保護基を付加する又は除去するためのステップをさらに含んでよい。さらに、各種合成ステップを代わりの順序又は順番で実行して望まれた化合物を提供してよい。
【0072】
適用可能な化合物を合成するのに有用な合成的化学変換及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は、当該技術分野において公知であり、例えばR. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and P.G.M.
Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,
John Wiley and Sons (1994); 及びL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)並びにこれらの次の版に記載されるものが含まれる。
【0073】
本発明を以下の非限定的な実施例によりさらに説明する。以下の特定の実施例は、単なる例示であり、本開示の残りをいかなる方法でも制限するものでは全くないと解釈されるべきである。さらなる説明なく、当業者は、本明細書の記載に基づいて、本発明を最大限利用することができると考えられる。本明細書に引用される全ての参考文献及び刊行物は、その全体を参照により本明細書に援用される。
【0074】
一般的な合成操作1
【0075】
【化4】

【0076】
一般的な合成操作1において、無水フタル酸1は、縮合―環化―脱水を受けてフタルイミド2を生成し、その後加水分解されてフタルアミド酸3を形成する。フタルアミド酸3の位置異性体をその後分取HPLCにより分離する。
【0077】
一般的な合成操作2
【0078】
【化5】

【0079】
一般的な合成操作2において、無水フタル酸4をt-ブタノールと反応させ、その後位置異性体のモノエステルを超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)により分離してフタル酸モノt-ブチルエステル5を生成する。フタル酸モノt-ブチルエステル5はその後、カップリング及び脱保護を受けてフタル酸6を生じる。
【0080】
フタル酸モノt-ブチルエステル5又はフタル酸6の臭素を代わりの置換基で置換するためにパラジウム触媒カップリングを用いることがある。
【実施例
【0081】
実施例1及び2
【0082】
【化6】

【0083】
フタルアミド6をアッセイ条件で(以下のニューロテンシン(NTS)シンチレーション近接アッセイ(SPA)の記載を参照する)分解して2個の対応するフタルアミド加水分解生成物、5‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸(実施例1)及び4‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸(実施例2)を提供する。
【0084】
あるいは、実施例1及び2を一般的な合成操作1及び/又は2にしたがって調製してよい。
【0085】
実施例3~30
実施例3~30を一般的な合成操作1及び/又は2にしたがって調製することができる。
【0086】
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】

【0087】
生物学的データ
ニューロテンシンシンチレーション近接アッセイ
本発明の例示される化合物を、ニューロテンシン(NTS)シンチレーション近接アッセイ(SPA)で試験し、IC50データを以下の表に示す。NTSは、13アミノ酸の神経ペプチドであり、ソルチリンのリガンドである。IC50は、NTSのソルチリンへの結合を50%阻害するために必要とされる化合物の量の測定値である。熟練者は、IC50値が低いほど、望まれる効果を達成するために必要とされる化合物が少なく、結果として、望ましくないオフターゲット効果の確率が低下する。
【0088】
化合物の親和性は、SPA形式で3H-ニューロテンシンのhソルチリンへの結合の置換を測定することにより決定された。100mM NaCl、2.0mM CaCl2、0.1%BSA及び0.1%Tween-20を含有する50゜mM HEPESpH7.4アッセイ緩衝液の総容積40μl。5nM[3H]ニューロテンシン及びNiキレートイメージングビーズ(Perkin Elmer)を加える前に化合物を150nMの6his-ソルチリンで30分間あらかじめインキュベートし、6時間後プレートを360秒の曝露時間でViewLuxにより読み取った。化合物の用量反応評価を10種類の濃度の薬物で実行した(10個3組を包含する)。IC50値を、Xlfit 4(IDBS,UK)を用いるS字状濃度反応(可変勾配)を用いて非線形回帰により算出した。報告される全ての値は、少なくとも4回の測定の平均値である。
【0089】
以下の表のデータから、本明細書に開示される化合物は、ソルチリン阻害剤であると示される。
【0090】
【表2】

【0091】
糖尿病マウスモデル
ストレプトゾシン(STZ)による糖尿病の誘発前(ベースライン)及び誘発の8週後の両方でマウス網膜の光受容細胞の電気的反応を測定するためにフラッシュ網膜電図検査(fERG)を使用した。マウスを高強度の光フラッシュに曝露し、振幅で測定した、生じる電気的反応を記録した。熟練者は、測定された振幅が大きい細胞は健康な細胞を示す一方、振幅が小さい細胞は、もはや最適に機能しない損傷された細胞を示すと認識するだろう。実験群において、マウスに抗ソルチリンポリクローナル抗体(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水の1μg/μl水溶液を2ul)を硝子体内投与(intravitrial administration)により投与する一方、対象群においてはマウスに溶媒のみを投与した(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)。食物摂取量、食事、運動レベル及び環境エンリッチメントへの曝露(exposure to environmental enrichment)などの、他の全ての変数は、2個の群間で同じに維持した。
【0092】
図1及び2は、実験群及び対照群の両方について、ベースラインと比較した誘発後8週間でのfERG反応の減少を示す。データから分かるように、実験群のfERG反応の減少量は、対象群のより少なかった。このことから、抗ソルチリンポリクローナル抗体を投与すると、溶媒対照群と比べてマウスの網膜細胞を損傷からより保護することができることが示され、したがって疾患の悪化の抑制が示唆される。理論によって拘束されることを望むものではないが、ポリクローナル抗体はp75NTRへの結合についてソルチリンと競合し、これによりこの受容体のソルチリンによる活性化を防ぐと考えられる。
【0093】
図1は、fERG反応の「a波」成分を示す。図2は、fERG反応の「b波」成分を示す。このデータから、p75NTR/ソルチリン/プロニューロトロフィン及び/又はソルチリン/プロニューロトロフィン複合体との干渉は、様々な光感受性細胞タイプにわたり効果的であることが実証される。この効果が単細胞タイプに限定されないという事実
は、複数の細胞タイプを同時に標的とすることができ、結果として糖尿病性網膜症に取り組むためのより効果的な治療をもたらすという点で有利である。
【0094】
本研究の結果から、ソルチリン拮抗薬は、糖尿病性網膜症の予防又は治療に有用であることが実証される。
【0095】
本研究を繰り返したが、対象群のマウスに、抗ソルチリンポリクローナル抗体よりむしろ、応用の実施例8(ソルチリン阻害剤)を硝子体内投与により(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水の1μg/μl水溶液を2ul)2回投与するよう修正した。
【0096】
図3及び4のデータから分かるように、ベースラインと比較した誘発後8週間のfERG反応の減少量は、実験群の方が対象群より小さかった。このことから、ソルチリン阻害剤を投与すると溶媒対照群と比べてマウスの網膜細胞を損傷からより保護することができることが示され、したがって疾患の悪化の抑制が示唆される。驚いたことに、小分子ソルチリン阻害剤(実施例8)の保護効果は、第1の研究で実証されたポリクローナル抗体のものより大きかった。
【0097】
本研究の結果から、本明細書に開示される式(I)及び(II)の化合物は、糖尿病性網膜症の予防又は治療に有用であることが実証される。
【0098】
番号付きの実施形態
番号付きの実施形態1. 糖尿病性網膜症の予防又は治療に使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0099】
番号付きの実施形態2.
(i) このソルチリン拮抗薬は、ソルチリン又はソルチリン関連分子とプロニューロトロフィン分子との間の相互作用を破壊し、及び/又は
(ii) このソルチリン拮抗薬は、ソルチリン又はソルチリン関連分子とp75NTR分子との間の相互作用を破壊する、
番号付きの実施形態1に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0100】
番号付きの実施形態3. このソルチリンは、成熟ソルチリンであるか又はこのソルチリン関連分子は、SorCS2である、番号付きの実施形態2に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0101】
番号付きの実施形態4. このソルチリン拮抗薬は、ソルチリン阻害剤である、番号付きの実施形態1~3に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0102】
番号付きの実施形態5. このソルチリン拮抗薬は、2000Da未満の分子量を有し、好ましくはこのソルチリン拮抗薬は、1000Da未満の分子量を有する、番号付きの実施形態1~4のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0103】
番号付きの実施形態6. このソルチリン拮抗薬は、式(I)の化合物、
【0104】
【化7】

【0105】
又は式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、幾何異性体、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/又はプロドラッグであり、
Yは、-O-、-NR-、及び-S-から成る群から選択され、
Zは、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、任意選択的に置換されたC~C10アリール、及び任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリールから成る群から選択され、
A、B、C及びDは各々独立して、H、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、ハロ、NO、任意選択的に置換されたC~C10アリール、任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリール、-OR、NR、-SR、-C(O)OR10、-C(O)NR1112、-C(O)SR13、C(O)SR14から成る群から選択され、
、R、R、R、R、R10、R13、及びR14は各々独立して、H及びC1~アルキル基から成る群から選択され、このC~Cアルキルは、1つ又は複数のハロ原子で任意選択的に置換され、
、R、R、R、R11、及びR12は各々独立して、H及びC1~アルキルから成る群から選択され、このC~Cアルキルは、1つ若しくは複数のハロ原子で任意選択的に置換され、又はR及びR、R及びR、並びに/若しくはR11及びR12は、R及びR、R及びR、並びに/若しくはR11及びR12が結合して、1つ若しくは複数のハロ原子で任意選択的に置換された、5又は6員環複素環を形成する、窒素原子とひとまとめにして考えることができる、
番号付きの実施形態1~5のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
番号付きの実施形態7. Yは-NR-であり、好ましくはYは-NH-である、番号付きの実施形態6に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0106】
番号付きの実施形態8. A及びDは、Hである、番号付きの実施形態6又は7に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0107】
番号付きの実施形態9. B及びCは、H、ハロ、CF、NO、及びC~Cアルキルから成る群から独立して選択される、番号付きの実施形態6~8のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0108】
番号付きの実施形態10. Cは、Hである、番号付きの実施形態6~9のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0109】
番号付きの実施形態11. Bは、ハロ及びCFから成る群から選択され、好ましくはBはBr又はCFである、番号付きの実施形態6~10のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0110】
番号付きの実施形態12. Zは、任意選択的に置換されたC~C10アリール又は任意選択的に置換されたC~Cヘテロアリールであり、より好ましくはZは、任意選
択的に置換されたフェニル、任意選択的に置換されたピリジル、又は任意選択的に置換されたピリミジニルである、番号付きの実施形態6~11のいずれか一項に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0111】
番号付きの実施形態13. Zは、-OR15、ハロ、及びC~Cアルキルから成る群から独立して選択される1つ又は複数の置換基で置換され、R15は、H、ハロ、及びC~Cアルキルであり、好ましくはZは、Cl、-OMe、及びMeから成る群から選択される1つ又は複数の置換基で置換され、
及び/又はアルキレン基が、このZ基の2個の隣接する原子と結合して5又は6員環の部分的に飽和した又は飽和した環を形成し、任意選択的にこのアルキレン基は、1つ又は複数のハロ原子で置換される、番号付きの実施形態12に記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0112】
番号付きの実施形態14. このソルチリン拮抗薬は、
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐メチル‐6‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐クロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(プロパン‐2‐イル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐ニトロ安息香酸;
・4‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐[1,1’‐ビフェニル]‐3‐カルボン酸;
・4‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4‐クロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐4‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・4,5‐ジクロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4,5‐ジメチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・3‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(ブタン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(プロパン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐(フェニルカルバモイル)安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(3‐メチルフェニル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(ピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐クロロピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(4‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(3‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐3‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリジン‐4‐イル)カルバモイル安息香酸;
・2‐[(6‐メトキシピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(5,6‐ジメチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロ
メチル)安息香酸;
・2‐[(5,6,7,8‐テトラヒドロキノリン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸、
又は化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/又はプロドラッグであり、好ましくはこのソルチリン拮抗薬は、
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐クロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐メチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(プロパン‐2‐イル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐ニトロ安息香酸;
・4‐ブロモ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐4‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・4,5‐ジクロロ‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・4,5‐ジメチル‐2‐[(6‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(3‐メチルフェニル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(ピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(6‐クロロピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(4‐メチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・5‐ブロモ‐2‐[(2‐メチルピリミジン‐4‐イル)カルバモイル]安息香酸;
・2‐[(6‐メトキシピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(5,6‐ジメチルピリジン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
・2‐[(5,6,7,8‐テトラヒドロキノリン‐2‐イル)カルバモイル]‐5‐(トリフルオロメチル)安息香酸;
又は化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/又はプロドラッグである、番号付きの実施形態1~13のいずれかに記載の使用するためのソルチリン拮抗薬。
【0113】
番号付きの実施形態15. 糖尿病性網膜症の治療又は予防に使用するための、番号付きの実施形態1~14のいずれか一項に規定されるソルチリン拮抗薬及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬製剤であって、好ましくはこの製剤は、眼科製剤である、医薬製剤。
【0114】
参考文献
1. Wong, T.Y., et al., Diabetic retinopathy. Nat Rev Dis Primers, 2016. 2: p. 16012. NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC). Worldwide trends in diabetes since 1980: a pooled analysis of 751 population-based studies with 4.4 million participants (vol 387, pg 1513, 2016). Lancet, 2017. 389(10068): p. E2-E2.

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3. Jansen, P., et al., Roles for the pro-neurotrophin receptor sortilin in neuronal development, aging and brain injury.Nature Neuroscience (2007), 10(11), pp.1449-1457.

4. Tenk, H.K., et al., ProBDNF induces neuronal apoptosis via activation of a receptor complex of p75NTR and sortilin. J Neuroscience (2005), 10(11), pp.1449-1457.

5. Nykjaer, A., et al., Sortilin is essential for proNGF-induced neuronal cell death.Nature (2004), 427(6977), pp.843-848.

6. T. J. Schroder et al. The identification of AF38469: An orally bioavailable inhibitor of the VPS10P family sorting receptor Sortilin, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 24 (2014) 177-180.
【0115】
本明細書を通じて参照され、説明の一部を形成する配列
配列番号1 (全長ソルチリン- アイソフォーム1)
1 MERPWGAADG LSRWPHGLGL LLLLQLLPPS TLSQDRLDAP PPPAAPLPRW
51 SGPIGVSWGL RAAAAGGAFP RGGRWRRSAP GEDEECGRVR DFVAKLANNT
101 HQHVFDDLRG SVSLSWVGDS TGVILVLTTF HVPLVIMTFG QSKLYRSEDY
151 GKNFKDITDL INNTFIRTEF GMAIGPENSG KVVLTAEVSG GSRGGRIFRS
201 SDFAKNFVQT DLPFHPLTQM MYSPQNSDYL LALSTENGLW VSKNFGGKWE
251 EIHKAVCLAK WGSDNTIFFT TYANGSCKAD LGALELWRTS DLGKSFKTIG
301 VKIYSFGLGG RFLFASVMAD KDTTRRIHVS TDQGDTWSMA QLPSVGQEQF
351 YSILAANDDM VFMHVDEPGD TGFGTIFTSD DRGIVYSKSL DRHLYTTTGG
401 ETDFTNVTSL RGVYITSVLS EDNSIQTMIT FDQGGRWTHL RKPENSECDA
451 TAKNKNECSL HIHASYSISQ KLNVPMAPLS EPNAVGIVIA HGSVGDAISV
501 MVPDVYISDD GGYSWTKMLE GPHYYTILDS GGI
IVAIEHS SRPINVIKFS
551 TDEGQCWQTY TFTRDPIYFT GLASEPGARS MNISIWGFTE SFLTSQWVSY
601 TIDFKDILER NCEEKDYTIW LAHSTDPEDY EDGCILGYKE QFLRLRKSSM
651 CQNGRDYVVT KQPSICLCSL EDFLCDFGYY RPENDSKCVE QPELKGHDLE
701 FCLYGREEHL TTNGYRKIPG DKCQGGVNPV REVKDLKKKC TSNFLSPEKQ
751 NSKSNSVPII LAIVGLMLVT VVAGVLIVKK YVCGGRFLVH RYSVLQQHAE
801 ANGVDGVDAL DTASHTNKSG YHDDSDEDLL E

配列番号2 (全長ソルチリン- アイソフォーム2)
1 MERPWGAADG LSRWPHGLGL LLLLQLLPPS TLSQDRLDAP PPPAAPLPRW
51 SGPIGVSWGL RAAAAGGAFP RGGRWRRSAP GEDEECGRVR DFVAKLANNT
101 HQHVFDDLRG SVSLSWVGDS TGVILVLTTF HVPLVIMTFG QSKLYRSEDY
151 GKNFKDITDL INNTFIRTEF GMAIGPENSG KVVLTAEVSG GSRGGRIFRS
201 SDFAKNFVQT DLPFHPLTQM MYSPQNSDYL LALSTENGLW VSKNFGGKWE
251 EIHKAVCLAK WGSDNTIFFT TYANGSCTDL GALELWRTSD LGKSFKTIGV
301 KIYSFGLGGR FLFASVMADK DTTRRIHVST DQGDTWSMAQ LPSVGQEQFY
351 SILAANDDMV FMHVDEPGDT GFGTIFTSDD RGIVYSKSLD RHLYTTTGGE
401 TDFTNVTSLR GVYITSVLSE DNSIQTMITF DQGGRWTHLR KPENSECDAT
451 AKNKNECSLH IHASYSISQK LNVPMAPLSE PNAVGIVIAH GSVGDAISVM
501 VPDVYISDDG GYSWTKMLEG PHYYTILDSG GIIVAIEHSS RPINVIKFST
551 DEGQCWQTYT FTRDPIYFTG LASEPGARSM NISIWGFTES FLTSQWVSYT
601 IDFKDILERN CEEKDYTIWL AHSTDPEDYE DGCILGYKEQ FLRLRKSSVC
651 QNGRDYVVTK QPSICLCSLE DFLCDFGYYR PENDSKCVEQ PELKGHDLEF
701 CLYGREEHLT TNGYRKIPGD KCQGGVNPVR EVKDLKKKCT SNFLSPEKQN
751 SKSNSVPIIL AIVGLMLVTV VAGVLIVKKY VCGGRFLVHR YSVLQQHAEA
801 NGVDGVDALD TASHTNKSGY HDDSDEDLLE

配列番号3 (成熟ソルチリン)
1 MTFGQSKLYR SEDYGKNFKD ITDLINNTFI R
TEFGMAIGP ENSGKVVLTA
51 EVSGGSRGGR IFRSSDFAKN FVQTDLPFHP LTQMMYSPQN SDYLLALSTE
101 NGLWVSKNFG GKWEEIHKAV CLAKWGSDNT IFFTTYANGS CTDLGALELW
151 RTSDLGKSFK TIGVKIYSFG LGGRFLFASV MADKDTTRRI HVSTDQGDTW
201 SMAQLPSVGQ EQFYSILAAN DDMVFMHVDE PGDTGFGTIF TSDDRGIVYS
251 KSLDRHLYTT TGGETDFTNV TSLRGVYITS VLSEDNSIQT MITFDQGGRW
301 THLRKPENSE CDATAKNKNE CSLHIHASYS ISQKLNVPMA PLSEPNAVGI
361 VIAHGSVGDA ISVMVPDVYI SDDGGYSWTK MLEGPHYYTI LDSGGIIVAI
401 EHSSRPINVI KFSTDEGQCW QTYTFTRDPI YFTGLASEPG ARSMNISIWG
451 FTESFLTSQW VSYTIDFKDI LERNCEEKDY TIWLAHSTDP EDYEDGCILG
501 YKEQFLRLRK SSVCQNGRDY VVTKQPSICL CSLEDFLCDF GYYRPENDSK
551 CVEQPELKGH DLEFCLYGRE EHLTTNGYRK IPGDKCQGGV NPVREVKDLK
601 KKCTSNFLSP EKQNSKSNSV PIILAIVGLM LVTVVAGVLI VKKYVCGGRF
651 LVHRYSVLQQ HAEANGVDGV DALDTASHTN KSGYHDDSDE DLLE
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023518309000001.app
【国際調査報告】