(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-28
(54)【発明の名称】放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲート及び使用
(51)【国際特許分類】
C07D 403/14 20060101AFI20230421BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20230421BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230421BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20230421BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230421BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
A61K51/04 200
A61K51/04 100
A61K47/54
A61K31/395
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557142
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2022072567
(87)【国際公開番号】W WO2022156679
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202110070726.2
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522371802
【氏名又は名称】徳珍(中国)医療科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】鍾 維国
(72)【発明者】
【氏名】王 若翔
(72)【発明者】
【氏名】張 驛
(72)【発明者】
【氏名】程 宇平
(72)【発明者】
【氏名】余 波
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB09
4C063CC47
4C063DD06
4C063EE01
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
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4C085KB11
4C085KB12
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4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
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4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲート及び使用を提供する。本発明は、放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートを開示し、リジン架橋剤を介してDOTA基にカップリングしたヘプタメチルカルボシアニン色素基を含み、ここで、DOTA基は放射性金属Mと複合し、前記放射性金属Mはルテチウム-177、イットリウム-90及びガリウム-68のうちの1つ以上の放射性金属基を用い、本発明はまた、放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの使用を開示し、これは、改善されたイメージング、改善された治療、改善された画像誘導治療、改善された血清安定性、改善された腫瘍(特に固形腫瘍)の浸透性及び/又は治療診断ペアの親和性を含む。上記の解決手段により、DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの技術分野で高い実用的価値と普及価値を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲート及び放射性金属の複合体であって、前記DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートは、リジン架橋剤を介してDOTA基にカップリングしたヘプタメチルカルボシアニン色素基を含み、前記複合体の分子式は、
【化1】
であり、
ここで、DOTA基は放射性金属Mと複合し、
前記放射性金属Mは、ルテチウム-177、イットリウム-90及びガリウム-68のうちの1つ以上の放射性金属基を用いることを特徴とするDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲート及び放射性金属の複合体。
【請求項2】
前記複合体及び1つ以上の薬学的賦形剤を使用して1つ以上の医薬製剤を形成することを特徴とする請求項1に記載の複合体の使用。
【請求項3】
癌の画像誘導治療を提供するために1つ以上の医薬製剤を第1の複合体と第2の複合体の協調的投与に使用し、前記第1の複合体の放射性金属はガリウム-68であり、第2の複合体の放射性金属はルテチウム-177又はイットリウム-90であることを特徴とする請求項2に記載の複合体の使用。
【請求項4】
1つ以上の試薬を薬物処方の組み合わせで提供し、第1の複合体及び第2の複合体を投与形態で再処方することを特徴とする請求項3に記載の複合体の使用。
【請求項5】
分子構造FIIを有するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートから1つ以上の複合体が形成され、その分子式は、
【化2】
であり、
前記複合体は、1つ以上のコンジュゲート及びルテチウム-177、イットリウム-90及びガリウム-68基から選択される1つ以上の放射性金属を、1つ以上の試薬、緩衝剤又は賦形剤と混合及び錯化することを特徴とする請求項4に記載の複合体の使用。
【請求項6】
第1の複合体及び第2の複合体を協調的に投与するように複数の複合体を形成するために用いられ、そのうち、第1の複合体の放射性金属はガリウム-68であり、第2の複合体の放射性金属はルテチウム-177又はイットリウム-90であることを特徴とする請求項1に記載の複合体の使用。
【請求項7】
分子構造FIを有する第1の複合体及び第2の複合体を、癌に罹患した被験者に協調的に投与して、癌の画像誘導治療カップリングを提供し、
前記第1の複合体の放射性金属はガリウム-68であり、
前記第2の錯体の放射性金属はルテチウム-177又はイットリウム-90であることを特徴とする請求項1に記載の複合体の使用。
【請求項8】
前記癌は、前癌及び癌細胞又は組織、腫瘍及びその転移性腫瘍、原発性腫瘍及び二次腫瘍を含むことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記癌は、脳癌、脳腫瘍及びその転移性腫瘍を含むことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記癌の治療方法は放射線治療を含むことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記放射線治療時の複合体の放射能量は50μCi未満であることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記放射線治療時の複合体の線量は250kBq/kg未満であることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項13】
前記放射線治療は、陽電子放出断層撮影又はSPECTとのペアリングによって、及び/又は画像誘導治療を提供することを特徴とすることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項14】
薬物であって、1つ以上の複合体又はその塩、溶媒和物、代謝物又は誘導体、並びに1つ以上の薬学的に許容可能な担体及び/又は1つ以上の賦形剤及び/又は1つ以上の他の活性物質を含み、前記複合体は請求項1に記載の複合体であることを特徴とする薬物。
【請求項15】
前記薬物の投与経路には、経口、静脈内注射、間質注射、腹腔内注射、皮下注射又は筋肉内注射、及び/又はブラキセラピーを含むが、これらに限定されないことを特徴とする請求項14に記載の薬物。
【請求項16】
前記薬物は0.01%~99%の活性化合物を含むことを特徴とする請求項14に記載の薬物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年01月19日に中国特許庁へ出願された、出願番号CN202110070726.2、発明名称「放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲート及び使用」の中国特許出願の優先権を主張し、その内容全体は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの技術分野に関し、特に、放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲート及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
癌又は腫瘍のイメージング又は治療に使用できる診断用又は治療用放射性医薬品の数は限られている。イメージングは、検出に必要な非常に低い濃度、例えば、陽電子放出断層撮影(PET)を使用して陽電子放出体を検出する。内部放射線治療は、放射線源を被験者の体内に置いて癌を治療する治療法である。内部放射線治療は、全身的であり得、即ち、血液とともに全身の組織に入ることにより治療を行い、放射性金属の近くの細胞が受ける放射線によって癌細胞を死滅させる。放射性金属は、キレート化又は様々なキレート化合物との錯化、及び標的リガンドとのカップリングによって送達できる。
【0004】
同じ標的リガンドをペアリングする治療法を含む、様々な標的リガンド、キレート剤及び放射能の組み合わせが、イメージング、放射線治療又はその両方のために試みられている。しかし、その受容体に対する標的リガンドの親和性は、使用するキレート剤及び放射性金属に強く依存することがわかっているため、その有効性は予測できない。放射性金属の保持は、標的リガンド、キレート剤又はそれらの組み合わせ、並びに所望の放射性金属との組み合わせによって影響される可能性があるため、同様の予測不可能性は放射性金属錯体の安定性に適用される。同じファルマコフォア(異なる放射性金属であるが同じ担体)を使用するペア治療の特別な問題は、ペア使用に適するようにレポーター遺伝子(イメージング剤)及び治療剤が、非常に類似した薬物動態学を示す必要があるが、個々の金属キレート剤コンジュゲートが親和性及び/又は安定性に有意な影響を与える可能性があるため、そうではない場合があることである。
【0005】
現在、このような標的放射線治療に使用される放射性核種複合体は、ほとんど診断的で、治療使用が限られている。後者には、様々な抗体、タンパク質及びいくつかの小さな化合物、特にあるタイプの癌を標的とすることができるポリペプチドが含まれる。
【0006】
放射線治療での使用と比較して、放射線核種及び放射性金属は、腫瘍イメージング、又は標的抗癌薬にイメージング機能を追加するためにより多く使用されている。WO2016106324及びUS10,307,489から、標的抗癌薬の治療及びイメージングに使用するある色素コンジュゲートが知られており、これには、2つの特定のダブルカップリング色素-薬物-キレート剤コンジュゲートが含まれ、色素はa)抗癌薬ゲムシタビン及びb)イメージング基にカップリングし、イメージング基は64Cu-DOTA放射性金属又はGd3+-DOTA非放射性金属である。キレート/複合された放射性金属は、抗癌薬コンジュゲートにイメージング機能を提供するために使用される。
【0007】
同様に、肖らは、『核医学と生物学』第40号,351~360頁(2013年)において、リジン架橋ヘプタメチルカルボシアニン色素とDOTA放射化学複合体Cu-64(DZ-1-Lys-DOTA-Cu-64)のコンジュゲートが癌イメージングに使用することを記載している。
【0008】
放射性金属複合体の既知の問題は、インビボ(例えば、血液及び/又は血清)での安定性の欠如であり、これは、性能の低下、特に小さな二次腫瘍又は転移性腫瘍を検出しようとするイメージング性能、並びに非効率的かつ不必要な高放射線曝露につながる可能性がある。
【0009】
放射線治療は、イメージング使用のみよりも難しいため、放射線治療による治療の選択肢はより限られている。親和性、安定性及び薬物動態学を含む所望の特性を提供するために、適切な放射性核種を適切なキレート剤及び適切な標的リガンドと慎重に組み合わせる必要がある。特定の放射性金属は、特定の異なる百分率で1つ以上のタイプの粒子又は放射物質を放出する可能性があり、適切な標的について、標的癌を効果的に破壊するのに十分なほど複合体を安定に保つために、担体と所定の放射性金属を慎重に調整する必要があるが、身体の他の部位並びにその臓器及び組織に付随する放射線損傷を引き起こすことなく標的位置に到達する。
【0010】
ある治療法は、ある程度治療と診断イメージングを同時に提供できるが、各治療剤の性能を向上させるために治療診断用試薬が一般に使用されている。「真の」治療診断用試薬は、同じペアであり、即ち、治療診断用放射性金属を使用して腫瘍を破壊し、イメージング放射性金属を使用して診断及び/又は誘導治療を行うための同じ担体を持っている。
【0011】
しかし、キレート剤及び放射性金属は、重要な性能特性及び薬物動態学に影響を与えるため、所定の担体は、所望の放射性金属の組み合わせに適切な特性、安定性及び有効性を有する同じペアを提供できない。オプションとして、結合力に臨床的に有意な差がない場合、非類似のペアを使用して特性を調整できる。
【0012】
このようなポリペプチド放射性医薬品の非類似のペアを使用してソマトスタチン受容体(SSTR)陽性の神経内分泌腫瘍(NET)を治療する一例は、Lu-177-DOTA-TATEをGa-68-DOTA-TOCとともに使用することであり、各ポリペプチドリガンドは異なる親和性で腫瘍細胞にカップリングするが、その差は臨床的意義がないと言われている。
【0013】
放射性化学物質の特殊な問題は、ある臓器(例えば、腎臓であるがこれに限定されない)で観察された強烈で持続的な放射性局在であり、これは、腎臓領域における腫瘍の可視性を損ない、特に腎臓腫瘍及び該領域に局在する腫瘍に対する治療可能性を制限する。したがって、腎臓の放射能レベルを低下させることは有益であるが、標的組織の放射能レベルを低下させない。放射性核種複合体はまた、腎近位尿細管の再吸収及び/又は細胞、特に腎細胞又は他の臓器細胞における放射性代謝産物の有害な長時間滞留に遭遇する可能性があり、これは、望ましくない持続的放射能につながる可能性がある。
【0014】
放射性化学物質の他の問題には、1つ以上の癌治療に対する適用性に欠如であり、感度が不十分であり、癌細胞に対する選択性が不十分であり、腫瘍と非癌組織との間の経時的変化のコントラストが不十分であり、生体内分布が不十分であり、腫瘍標的性が不十分であり、組織及び/又は腫瘍浸透性が不十分であり、腫瘍組織における分布が不均一であり、腫瘍蓄積率が不十分であり、腫瘍における滞留が不十分であり、投与後の血液からのクリアランスが遅く、組織及び臓器の放射線照射が低く、腎臓、肝臓、心臓などの重要な臓器のクリアランスが低く、非標的組織又は臓器、特に腫瘍組織、特に石灰化腫瘍組織を含む臓器及び緻密組織などの被包性組織が心臓、肝臓、肺及び腎臓を含む身体及び臓器における定常状態分布の確立が遅く、腎臓及び/又は肝臓を含む1つ以上の臓器において放射能が継続的に存在し、1つ以上の放射性金属と安定な複合体を形成していないか又は形成しにくく、複合体の形成率が低く、1つ以上の放射性金属との標識効率が低く、水溶液での溶解度が不十分であり、水溶液での安定性が低く、生理的pH値での安定性が低く、インビボでの安定性が低く、放射性金属と複合体との解離率が高く、特にインビボでの解離率が高く、腫瘍特異的標的性が遅く、臓器の蓄積性が高く(例えば腎臓、脾臓、肝臓、心臓)、クリアランスが遅く(例えば血液、肝臓、腎臓などの臓器からのクリアランス)、合成が困難で、又はコストがかかることの1つ以上が含まれ得る。
【0015】
したがって、改善されたイメージング、改善された治療又はその両方を提供するための治療診断用放射性医薬品が緊急に必要とされている。同じ親和性、十分な有効性及び安定性を備えたより良好に適合した治療ペアを必要とし、改善された画像誘導治療を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の問題に対し、本発明の目的は、放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲート及び使用を提供することにあり、本発明が使用する技術的解決手段は以下のとおりである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートであって、前記DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートは、リジン架橋剤を介してDOTA基にカップリングしたヘプタメチルカルボシアニン色素基を含み、その分子式は、
【化1】
であり、
ここで、DOTA基は放射性金属Mと複合し、
前記放射性金属Mは、ルテチウム-177、イットリウム-90及びガリウム-68のうちの1つ以上の放射性金属基を使用する。
【0018】
放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの使用であって、DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートを賦形剤として、1つ以上の薬学的賦形剤を1つ以上の医薬製剤として使用する。
【0019】
放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの使用であって、癌の画像誘導治療を提供するために1つ以上の医薬製剤を第1の複合体と第2の複合体の協調的投与に使用し、前記第1の複合体の放射性金属はガリウム-68であり、第2の複合体の放射性金属はルテチウム-177又はイットリウム-90である。
【0020】
放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの使用であって、1つ以上の試薬を薬物処方の組み合わせで提供し、第1の複合体及び第2の複合体を投与形態で再処方する。
【0021】
放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの使用であって、分子構造FIIを有するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートから1つ以上の複合体が形成され、その分子式は、
【化2】
であり、
前記複合体は、1つ以上のコンジュゲート及びルテチウム-177、イットリウム-90及びガリウム-68基から選択される1つ以上の放射性金属を、1つ以上の試薬、緩衝剤(即ち、薬物を溶解して注射剤に調製するために使用される)又は賦形剤と混合及び錯化する。
【0022】
放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの使用であって、第1の複合体及び第2の複合体を協調的に投与するように複数の複合体を形成するために用いられ、そのうち、第1の複合体はガリウム-68であり、第2の複合体はルテチウム-177又はイットリウム-90基である。
【0023】
放射性金属と複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの使用であって、分子構造FIを有するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの第1の複合体及び第2の複合体を、癌に罹患した被験者に協調的に投与して、癌の画像誘導治療カップリングを提供し、
前記第1の複合体の放射性金属はガリウム-68であり、
前記第2の複合体の放射性金属は、ルテチウム-177又はイットリウム-90基である。
【発明の効果】
【0024】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明は、ヘプタメチンカルボシアニン色素(HMCD)-キレート剤放射性金属複合体のコンジュゲート、このような複合体を含む放射性薬物処方及びその使用を巧みに使用し、ルテチウム-177、イットリウム-90又はガリウム-68又はそれらの組成物と複合してなるDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートを提供する。本発明は、改善されたイメージング、改善された治療、改善された画像誘導治療、改善された血清安定性、改善された腫瘍(特に固形腫瘍)浸透性及び/又は治療診断ペアの親和性を含み、DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの技術分野で高い実用的価値と普及価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】γ線検出器によってDZ-1-Lys-DOTA-
68Gaを検出する放射性HPLCクロマトグラムである。
【
図2】放射性TLCによってDZ-1-Lys-DOTA-
177Luを検出する放射性HPLCクロマトグラムである。
【
図3】放射性TLCによってDZ-1-Lys-DOTA-
90Yを検出する放射性HPLCクロマトグラムである。
【
図4】DZ-1-Lys-DOTA-
68Gaの37℃での血清安定性及び放射化学的純度データのグラフである。
【
図5】DZ-1-Lys-DOTA-
177Luの37℃での血清安定性及び放射化学的純度のグラフである。
【
図6】DZ-1-Lys-DOTA-
90Yの37℃での血清安定性及び放射化学的純度データである。
【
図7】DZ-1-Lys-DOTA-
68GaのBalb/Cマウスにおける血液クリアランス曲線である。
【
図8】DZ-1-Lys-DOTA-
177LuのBalb/Cマウスにおける血液クリアランス曲線である。
【
図9】DZ-1-Lys-DOTA-
90Y細胞毒性データのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本出願の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下に実施例を参照して本発明をさらに説明し、本発明の実施形態は以下の実施例を含むが、これらに限定されない。本出願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を要さずに想到し得る他の実施例は、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0027】
本実施例は、ヘプタメチンシアニン色素(HMCD)-キレート剤放射性複合体のコンジュゲート、このような錯体を含む放射性医薬製剤及びその使用、特に癌の内部放射線治療及び/又はイメージングに関する。具体的には、実施例では、ルテチウム-177、イットリウム-90又はガリウム-68又はそれらの組み合わせと複合するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートが提供される。いくつかの実施形態は、ルテチウム-177又はイットリウム-90の複合体を使用する改善された放射線治療を提供する。さらなる実施形態は、改善されたガリウム-68の複合体の放射性イメージングを提供する。しかし、さらなる実施形態は、このようなコンジュゲートの治療診断ペアの使用を通じて、改善された画像誘導治療を提供し、治療目的のために、放射性金属はルテチウム-177及びイットリウム-90のうちの1つ以上から選択され、ここで、イメージングに使用される金属のそれぞれは、改善された画像誘導放射線治療のためにガリウム-68とペアリングすることができる。本発明はまた、複合体を形成する方法、複合体を含む医薬組成物、複合体又は医薬組成物を使用する方法、癌細胞、組織、軟性腫瘍及び固形腫瘍及び/又はその転移性腫瘍をイメージング及び/又は放射線治療する方法、イメージング及び/又は放射線治療のための薬物処方の組み合わせなどに関する。実施形態の利点には、腫瘍イメージングなどの改善された癌イメージング、改善された癌、腫瘍及び転移性腫瘍(前癌病変を含む)の治療、並びに改善された画像誘導治療、改善された血清安定性、改善された腫瘍(特に固形腫瘍)の浸透性、及び/又は治療診断ペアの親和性が含まれ得る。
【0028】
実施例で提供されるDZ1-Lys-DOTA放射性金属複合体は、本明細書では「カップリング複合体」、「色素複合体」、「DOTA複合体」、「色素-DOTA複合体」、「HMCD-DOTA複合体」、「DZ1-DOTA複合体」、「放射性金属複合体」又は単に「複合体」と呼ぶことができる。
【0029】
本実施例では、DZ-1-Lys-DOTA-177ルテチウム複合体は、小さな腫瘍又は転移性腫瘍、例えば、幅/高さ及び長さが約5mm以下、2mm以下、1mm以下、又は約0.5mm以下の腫瘍に特に有益である。DZ-DOTA-177ルテニウムは、複合体の高い安定性でより高い吸収線量を提供することができ、これは、解離した放射性金属の吸収から健康な組織を保護するのに役立つ。
【0030】
本実施例におけるDZ-1-Lys-DOTA-90Y複合体は、血液循環からの十分に迅速なクリアランスを可能にしながら、その良好な血清安定性及び長い浸透範囲により、大きな腫瘍、例えば、長さ、高さ及び/又は幅が約1mm以上、約2mm以上、5mm以上、10mm以上又は12mm以上である腫瘍に特に有益に使用され得る。
【0031】
本実施例におけるDZ-1-Lys-DOTA-68Ga複合体は、例えば銅-64複合体と比較して、血清中での安定性が高いため、特に有益であり得る。
【0032】
実施形態では、画像誘導放射線治療のための方法が提供され、ここで、治療のための放射性金属はルテチウム-177、イットリウム-90基から選択され、イメージングを増強するための放射性金属はガリウム-68である。実験により、既知の複合体と比較して、Lu-177、Y-90及びGa-68は、例えば銅(Cu-64)の同じ複合体と比較して、血清中でより安定しているように見えることが分かった。同時に、これらの複合体は、腫瘍標的治療、腫瘍縮小又は癌細胞死滅において少なくとも同等の効果があるようである。
【0033】
実施例では、リジン架橋剤を介してDZ-1、ヘプタメチルカルボシアニン色素(HMCD)にカップリングしたDOTAキレート剤の放射性金属複合体(以下に示す分子式Iを参照)、これらの複合体を含む組成物又はこれらの複合体を調製するための組成物、並びに癌放射線治療のためのこれらの組成物又は複合体の使用が提供される。本発明はまた、コンジュゲート及び複合体を調製する方法、複合体を含む医薬組成物、コンジュゲート、複合体又は医薬組成物を使用する方法、癌細胞、組織、腫瘍及び/又はその転移性腫瘍のイメージング及び/又は放射線治療の方法、イメージング及び/又は放射線治療のための薬物処方の組み合わせなどに関する。また、本発明は、インビボでの複合体の非侵襲的イメージング(特に、PET又はSPECTイメージング)で使用するための組成物及びそれに関連する方法を含む。HMCD-DOTA放射性複合体は、固形腫瘍を含む癌細胞及び組織の放射線治療に使用できる。これらの化合物は、腫瘍の浸透性の改善を含む様々な利点を有する。
【0034】
実施形態では、リジン架橋剤を介してDOTAにカップリングしたヘプタメチンカルボシアニン色素(HMCD)基を含み、複合体放射性金属Mも含むDZ1-Lys-DOTA放射性金属複合体が提供され、ここで、Mはルテチウム-177、イットリウム-90及びガリウム-68から選択され、FIの分子式を以下に示す。
【化3】
【0035】
実施形態では、放射性金属複合体を形成するためのDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートが提供され、FIIの分子式を以下に示す。
【化4】
【0036】
前記複合体は、固形腫瘍であっても低い毒性及び良好な腫瘍浸透性を有する効果的な癌治療法を提供できる非常に安定な放射性金属複合体を含む1つ以上の利点を提供することができる。特に、該複合体は、イメージングだけではなく治療使用に適しており、またPET又はSPECTプローブ及び/又は任意の近赤外蛍光(NIRF)によるより正確な定量分析、腫瘍と非癌組織との間のより高いコントラスト、より高い感度、癌細胞に対するより良好な選択性、インビボ、特に心臓、肝臓、肺及び腎臓を含む臓器における迅速な定常状態分布、迅速な腫瘍標的性、腫瘍組織における均一な分布、1つ以上の臓器(腎臓及び/又は肝臓を含む)における持続的な放射活性の欠如という1つ以上の利点を提供できる。また、これらの複合体は、有益には、より容易に及び/又はより安価に形成でき、放射性金属で容易に標識でき、1つ以上の放射性金属と安定な複合体を形成でき、複合体形成率が高く、放射化学的収率が高く、1つ以上の放射性金属の標識効率が良好であり、水溶液中での溶解性が良好であり、水溶液での高い安定性が、約7.4(例えば、7.2~7.6)の生理学的pHでの安定性が高く、インビボでの安定性が高く、放射性金属と複合体の解離率が低く、特にインビボでの解離率が低く、生体内分布が良好であり、癌組織に対する複合体の標的性が十分であり、癌特異的標的化が迅速であり、腫瘍及び/又は転移性腫瘍に対する標的性が十分であり、大きな腫瘍に対する標的性が十分であり、臓器蓄積率(例えば、腎臓、脾臓、肝臓、心臓)が低く、組織及び臓器の放射線曝露がなく又は減少し、投与後の重要な又は敏感な臓器(例えば、血液、肝臓、腎臓及び他の臓器)からのクリアランスが迅速であり、組織及び腫瘍に十分に浸透し、腫瘍組織、特に石灰化腫瘍組織を含む高密度組織を含む臓器などの被包性組織に十分に浸透し、腫瘍における滞留時間を改善及び/又は延長する。
【0037】
特定の元素同位体の放射化学的収率は、放射化学的分離の収率を指し、元々存在していた活性の分数又は百分率として表される。回収率とも呼ばれる。放射化学では、吸収エネルギー1eVあたりの放射線によって変換された種の数は、記号Gで表され、即ちG値となる。放射化学的収率は、当業者によって理解される方法で決定できる。
【0038】
本実施例では、前記複合体は、より容易かつより深く腫瘍内に浸透できる。したがって、これらの放射性医薬品は、固形腫瘍、特に密度が大きい及び/又はさらに大きい及び/又は部分的に石灰化した腫瘍により適している可能性がある。これは、DZ-1-Lys-DOTA-90Yに特に適用でき、体積の大きな、例えば5~15cm3以上の腫瘍に改善された治療を提供すると考えられている。
【0039】
本実施例の複合体は、血液脳関門(BBB)浸透を提供できるため、脳腫瘍及び転移性脳腫瘍の治療に使用できる。
【0040】
本実施例の複合体は、より高い腫瘍凝集率及び/又は迅速な血液クリアランスを提供できる。動物における分布は、その臓器における好ましい時間依存性クリアランスとともに、腫瘍における特異的蓄積(例えば、マウス異種移植腫瘍、実施例3及び7を参照)を示すことができる。
【0041】
当業者には明らかであるように、本実施例の複合体は、例えば、
図FI(20μg/kg)の注射用量(ID)の百分率及び時点(例えば、4、8、16及び/又は24時間)での腫瘍対血液比によって測定される、改善された腫瘍取り込みの百分率及び/又は速度を提供できる。
【0042】
本実施例の複合体は、増加した線量選択及びより少ない蓄積及び/又は腎臓、肝臓及び心臓内の1つ以上の臓器を含む臓器の改善されたクリアランス効果を提供できる。腎臓などの臓器は、通常、放射線治療における線量制限臓器である。当業者には明らかであるように、吸収線量を例えば、約15グレイ(Gy)以下、例えば、10、5、2、1グレイ以下で測定できる。
【0043】
本実施例の複合体は、臓器及び/又は軟組織(例えば、腎臓、脾臓、肝臓)及び/又は血液毒性(例えば、血小板減少症、好中球減少症)に低減した吸収線量を提供できる。
【0044】
本実施例の複合体は、低い放射線量でより良好な抗癌効果を提供できる。例えば、50μCi未満、例えば20、5又は2μCi未満が必要である。
【0045】
本実施例の複合体は、癌を治療し、及び/又は腫瘍体積を有意に(例えば、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100%)減少させ得るのに十分な用量で毒性の減少を確実にすることができ、これにより、LD50及び/又は臓器毒性、例えば、腎臓、脾臓、肝臓、骨髄、脳、心臓又は肺の毒性を減少させ、及び/又は複合体は、治療中及び治療後にしばしば起こる体重減少の回避又は改善を可能にし得る。
【0046】
本実施例の複合体は、癌を治療し、及び/又は腫瘍体積を有意に減少させ得るのに十分な用量で低い毒性を提供する同時に、疼痛スコア、骨痛スコア及び生存期間中央値のうちの1つ以上を改善することができる。
【0047】
本実施例の複合体は、減少した総用量、例えば250kBq/kg未満、例えば200、150、50及び25kBq/kg未満で十分な抗癌/抗腫瘍効果を提供できる。
【0048】
本実施例の複合体は、癌を治療し、及び/又は腫瘍体積を有意に減少させ得るのに十分な有効性を提供する同時に、疼痛、めまい、吐き気、消化管への影響、胃痛、便秘、下痢、脱毛などの1つ以上の副作用を回避することができる。
【0049】
実施形態では、放射性金属複合体は、放射性金属の崩壊による治療を提供でき、該崩壊は、標的細胞又は組織に又はその近くに放射エネルギーを堆積させ、その線量は、標的細胞又は組織、特に腫瘍細胞又は組織又はその転移性腫瘍を殺すことができる。特に、Lu-177及びY-90は陽電子を放出するβ放射性金属である。Lu-177、Y-90及び/又はGa-68は、本明細書に記載のDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートと安定な複合体を形成でき、これらの複合体は血清中で安定であり、このような治療用複合体は、有益な治療効果を提供し、癌の放射線治療にも使用できる。
【0050】
実施形態では、本実施例の放射線治療は、このような治療と陽電子放出断層撮影(PET)又はコンピュータ断層撮影(CT)をペアリングすることによって、特にGa-68を使用して原発性腫瘍、二次性腫瘍及びさらなる腫瘍及び/又は転移性腫瘍の検出及び/又は局在を改善することによって、改善された画像誘導治療を提供する(以下の実施例、特に実施例3を参照)。PETは、陽電子放出体を検出し、CTイメージングと選択的に組み合わせると、PET/CTになる。CTでは、X線が様々な角度から走査し、異なるスライスがコンピュータで3Dに配列され、マップとしてPETで検出した信号と重ね合わせることができる。
【0051】
実施例では、放射線治療は、インビボで行われ得、即ち、放射線源は、癌治療のために被験者の体内に提供され得る。内部放射線治療は全身的に行われ得るため、治療は、血流中で全身の組織に広がり、標的方式で放射性金属に近い細胞が受ける放射線によって癌細胞を死滅させる。当業者には明らかであるように、実施例では、治療は、全身的又は局所的/部位特異的に、例えば全身的投与のための経口又は静脈内注射によって、又は局所注射又は沈着によって、例えば腫瘍にアクセス可能なブラキセラピーにおけるシードの使用によって投与され得る。提供する安定な複合体を用いて、放射性金属を標的方式で腫瘍及び転移巣に送達できる。
【0052】
実施例では、1つ以上の放射性複合体は、協調的投与レジメンで投与され得る。特に、Lu-177、Y-90から選択される複合体はGa-68複合体とともに、例えば、順次投与することができ、Ga-68は、その前及び/又は後に、又は同時に投与することができる。
【0053】
本実施例では、DZ-1-Lys-DOTAとLu-177、Y-90及びGa-68は、高い熱力学的安定性及び動力学的不活性を有する複合体を形成し、室温(約20DEG C、又は例えば25、30、35、40、45、50、55、60、65、70又は75DEG C未満)で、中性に近いpH(約7、例えば約5以上、約6以上、約8以下、約7.5以下)で、及び低いDZ-1-Lys-DOTA濃度、例えば0.1~100μmol又はnmol、例えば約1~約20μmol、例えば約1~約10μmol、例えば約5~8μmolで、放射性医薬製剤を容易に提供することを可能にする。
【0054】
本実施例のガリウム-68(68Ga)を含む複合体は、例えば、PET、特により良好な信号対雑音比、より強い信号及びより良好な分解能のうちの1つ以上を含む、検出中に優れたイメージングを提供できる。
【0055】
本実施例のルテチウム-177(177Lu、Lu-177)を含む複合体は、様々なサイズの腫瘍に適用でき、その効果には腫瘍の縮小が含まれ、約5cm3以下、約4cm3以下、約3cm3以下、約2cm3以下、約1cm3以下、約0.5cm3以下、約0.1cm3以下などの約5~約0.1cm3以下の積体を有する小さな腫瘍又は転移巣の破壊に特に効果的である。他に示されない限り、腫瘍の体積は通常、体重約140~200lb(例えば、約170lb)のヒト患者に適用される。ヒト以外の被験者では、腫瘍の体積の減少又は増加は、体重に依存する。利点には、転移性腫瘍の有意な減少又は除去、高い吸収線量及び/又は低い組織浸透範囲が含まれ得る。
【0056】
本実施例のイットリウム(90Y、Y-90)を含む複合体は、様々なサイズの腫瘍に適しており、その効果には腫瘍の縮小が含まれる。利点には、転移性腫瘍の有意な減少又は除去、高い吸収線量及び/又は低い組織浸透範囲が含まれ得る。
【0057】
実施例では、陽電子放出断層撮影(PET)は、放射性金属の崩壊によって生成されたガンマ光子を検出することによって、標的組織内の放射性金属分布に関するデータを提供するために使用できる。高空間分解能を備えた一般的なPETスキャナーは、放射性金属の崩壊過程を視覚的にマッピングできるため、投与後のインビボでの放射性金属複合体の分布を反映した画像を提供する。このような画像は、医療診断を支援し、進行の追跡及び放射線治療の調整も支援するための解剖学的及び機能的情報を提供する。
【0058】
実施例では、本明細書で言及される癌は、前癌及び癌細胞又は組織、腫瘍及びその転移性腫瘍、原発性腫瘍及び二次腫瘍を含む。本明細書に記載のコンジュゲート及び方法は、脳癌、脳腫瘍及びその転移性腫瘍に特に適用可能である。理論に束縛されることを望まないが、DOTAは、記載された放射性金属、即ちルテチウム-177、イットリウム-90及びガリウム-68にカップリングし、リジン架橋剤を介してカップリングすると、放射性コンジュゲートが血液脳関門を通過することを可能にし、通常は局在できず又は他の方法で効果的に局在できず、手術不能な深部脳腫瘍を含む脳全体にわたるイメージング及び治療も可能にする。
【0059】
実施例では、複合体で治療される癌には、脳癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膵臓癌、腎臓癌、リンパ種、大腸癌、皮膚癌、肝臓癌及び乳癌、扁平上皮肺癌、肛門癌、頭頸部の上皮性腫瘍、骨癌、子宮頸癌、皮膚癌、メラノーマ、造血細胞癌、リンパ種及び骨髄腫、又はそれらのいずれかの転移性腫瘍が含まれ、転移性腫瘍には、脳、骨又は他の臓器に生じる転移性腫瘍、脳腫瘍又はその転移性腫瘍、脳腫瘍及びその脳、骨、肺又は他の臓器の転移性腫瘍、骨腫瘤又はその脳、骨、肺又は他の転移性腫瘍、前立腺腫瘍又はその脳、骨、肺又は他の転移性腫瘍、前立腺腫瘍及びその脳、骨、肺又は他の転移性腫瘍、肺腫瘍及びその脳、骨、肺又は他の転移性腫瘍などが含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
実施例では、癌は、中枢神経系(CNS)又は脳腫瘍、又はその転移性腫瘍であり得、聴神経腫、星状細胞腫、脊索腫、CNSリンパ種、頭蓋咽頭腫、神経膠腫、膠芽腫、髄芽腫、髄膜腫、乏突起細胞腫、下垂体腫瘍、原始神経外胚葉性腫瘍、神経鞘腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、若年性毛様細胞性星細胞腫、視神経膠腫、松果体腫瘍、横紋筋腫、成人低悪性度(WHO悪性度I又はII)神経膠腫/毛細血管腫、浸潤性上樹神経膠腫、再生神経膠腫/膠芽腫、成人頭蓋内精巣上体腫瘍、成人髄芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性脊髄腫瘍、限局性脳転移性腫瘍、広汎性脳転移性腫瘍、髄膜上転移性腫瘍及び転移性脊椎腫瘍であり得る。
【0061】
実施例では、癌は、扁平上皮癌、腺癌(粘液性嚢胞腺癌)、大細胞肺癌、ラブドイド癌、肉腫様癌、カルチノイド癌、唾液腺様癌、腺扁平上皮癌、乳頭腺癌、巨細胞癌から選択される非小細胞肺癌であり得る。また、該癌は、混合型小細胞癌を含む小細胞肺癌であり得る。あるいは、該癌は、肉腫、リンパ腫、未熟奇形腫及びメラノーマを含む非肺癌であり得る。
【0062】
実施例では、放射性金属複合体を含む、又はこのような複合体を形成するための医薬組成物が提供される。該医薬組成物は、ヒト又は獣類に使用でき、本発明の1つ以上のコンジュゲート又は複合体(又はその塩、溶媒和物、代謝産物又は誘導体)及び1つ以上の薬学的に許容可能な担体及び/又は1つ以上の賦形剤及び/又は1つ以上の活性物質を含む。1つ以上の担体、賦形剤及び/又は活性剤は、製剤の他の成分と相溶し、かつそのレシピエントに不適切な有害性がないように選択され得る。このような担体は、当技術分野で知られており、当業者によって容易に選択される。
【0063】
実施例では、化合物及び医薬組成物の投与経路には、経口(例えば、丸剤状)、静脈内注射(即ち、被験者の静脈内への注射)、間質注射(即ち、体内空間への挿入)、腹腔内注射、皮下注射又は筋肉内注射、及び/又はブラキセラピー(影響を受けた組織、例えば、腫瘍部位又はその近傍への放射性インプラント又はシードの直接挿入)が含まれるが、これらに限定されない。投与は、全身的(例えば、血液循環を介して)又は局所的(例えば、身体の特定の臓器又はその一部に局在する)であり得る。いくつかの実施例では、本発明の医薬組成物は、化合物又は混合物を上記の投与経路を介して投与するのに適した薬学的に許容可能な賦形剤を含む。
【0064】
実施形態では、活性成分を従来の、薬学的に許容可能な賦形剤又は担体と混合又は配合することができる。当業者によって理解されるように、投与方法、ビヒクル、賦形剤又は担体は、通常、活性剤に対して基本的に不活性である。このような方法、担体、賦形剤及び担体の例は、例えば、『レミントン:薬学の科学及び実践』(2020),ISBN-10:0128200073又は『医薬賦形剤のハンドブック』、第9版(2020)、ISBN-10:0857113755に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。賦形剤は、「許容可能な」、即ち、製剤の他の成分と相溶し、レシピエントに無害でなければならない。
【0065】
実施例では、医薬製剤は、医薬分野で周知の任意の方法によって線量単位で都合よく提供され得る。一般的に言えば、このような調製方法は、製剤を適切な形態で、例えば水性懸濁液として提示することを含む。該剤形は、製剤に使用される1つ以上の補助剤又は補助的な医薬成分、例えば混合物、緩衝剤及び可溶化剤を任意に含み得る。
【0066】
本発明の1つの実施例によれば、医薬製剤の非経口剤形(即ち、胃腸管を迂回する剤形)には、注射の準備ができている溶液、薬学的に許容可能な注射用担体中の溶解又は懸濁の準備ができている乾燥品、注射用懸濁液及びエマルジョンが含まれるが、これらに限定されない。また、制御放出非経口剤形はまた、投与剤形及び用量ダンピングを含むがこれらに限定されない、患者への投与のために調製され得る。
【0067】
実施例では、本発明の化合物の非経口剤形を提供するために使用できる適切な担体には、滅菌水、注射用水(USP)、生理食塩水溶液、グルコース溶液、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、グルコース注射液、グルコース及び塩化ナトリウム注射液及び乳酸リンゲル注射液などであるがこれらに限定されない水性担体、エタノール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールなどであるがこれらに限定されない水溶性担体、並びにコーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及びベンジルベンゾエートなどであるがこれらに限定されない非水性担体が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に開示されている本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩の溶解度を変更又は修正する化合物はまた、従来の制御放出非経口剤形を含む、本発明の非経口剤形に組み入れることができる。
【0068】
実施例では、非経口投与のための製剤は、水性及び非水性の滅菌注射溶液を含み、これはまた、製剤を標的レシピエントの血液と等張にするためのさらなる試薬、例えば抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び溶質を含む。該製剤は、懸濁剤及び増粘剤を含む水性及び非水性の滅菌懸濁液を含み得る。
【0069】
実施例では、注射可能な製剤、例えば滅菌の注射可能な水性又は油性懸濁液は、既知の技術に従って、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して調製することができる。滅菌注射製剤はまた、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液としての、非毒性の親が許容可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌注射溶液、懸濁液又はエマルジョンであり得る。使用できる許容可能な担体及び溶媒には、水、リンゲル溶液、U.S.P.及び等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。また、滅菌固定油は、通常、溶媒又は懸濁媒体として使用される。このために、合成モノトリグリセリド又はジトリグリセリドを含む任意の穏やかな固定油を使用できる。また、オレイン酸などの脂肪酸は注射剤の調製に使用される。
【0070】
実施例では、経口投与に適した形態には、当該技術分野で認められた手順によって調製された錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、薬物含有シロップ、ウエハーなどが含まれる。このような治療上有用な組成物又は製剤中の活性化合物の量は、適切な用量が得られるようなものである。シロップ製剤は、一般に、エタノール、グリセリン又は水などの液体担体中の化合物又は塩の懸濁液又は溶液を含み、香味剤又は着色剤が添加される。
【0071】
実施例では、経口投与用の固体剤形は、カプセル、錠剤、丸剤、粉剤及び顆粒を含む。このような固体剤形において、活性化合物は、少なくとも1つの不活性物質、及び/又はa)充填剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシルメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴム、c)保湿剤、例えばグリセリン、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウム、e)溶液凝結遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム、g)湿潤剤、例えばセタノール及びモノステアリン酸グリセリン、h)吸収剤、例えばカオリン及びベントナイト、及びi)潤滑剤、例えばタルク粉末、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物と混合する。カプセル、錠剤及び丸剤を服用する場合、剤形はまた、緩衝剤を含み得る。
【0072】
実施例では、同様のタイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖及び高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を軟質及び硬質ゼラチンカプセルの充填剤として使用できる。錠剤、製剤、カプセル、丸剤及び顆粒剤の固体剤形は、コーティング及びシェル、例えば、腸溶コーティング及び薬物処方技術で周知の他のコーティングを用いて調製できる。それらは、不透明化剤を選択的に含有してもよく、また腸管のある部分のみにおいて又は優先的に腸管のある部分において遅延方法で活性成分を選択的に放出するような構成を有してもよい。使用できる埋め込み成分の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトース又は乳糖及び高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を軟質充填及び硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用できる。
【0073】
実施例では、活性化合物-コンジュゲート又は複合体は、上記のように、1つ以上の賦形剤とともにマイクロカプセル化され得る。錠剤、製剤、カプセル、丸剤及び顆粒剤の固体剤形は、コーティング及びシェル、例えば腸溶コーティング、制御放出コーティング及び医薬製剤技術で周知の他のコーティングを用いて調製できる。このような固体剤形において、活性化合物は、スクロース、ラクトース及びデンプンのような少なくとも1つの不活性希釈剤と混合できる。このような剤形はまた、通常のやり方と同様に、不活性賦形剤以外の追加の物質、例えば錠剤化潤滑剤及び他の錠剤化補助剤、例えばステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロースを含み得る。カプセル、錠剤及び丸剤を調製する場合、剤形はまた、緩衝剤を含み得る。それらは、乳濁剤を選択的に含有してもよく、また腸管のある部分のみにおいて又は優先的に腸管のある部分において遅延方法で活性成分を選択的に放出するような構成を有してもよい。使用できる埋め込み成分の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0074】
実施形態では、活性化合物、コンジュゲート又は複合体は、塩の形態で存在でき、これは癌の治療に特に適している。本発明の塩は、投与経路、関与する塩及び治療される癌に応じて、様々な形態で患者に投与できる。例えば、塩の水性組成物又は懸濁液は、注射によって投与され得るか、又は注射又は外科的移植によって所望の部位で薬学的マトリックスの形態で投与され得る。例えば、マトリックスを投与するために使用される特定の技術は、関与するマトリックスの形状及びサイズに依存し得る。いくつかの実施例では、腫瘍内の冷たい(未治療)領域の発生を最小限にするために、塩を腫瘍内に実質的に均一に導入する。ある実施例では、塩は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせて投与される。「薬学的に許容可能な担体」とは、本発明の組成物に含まれ得、患者に重大な有害な毒物学的効果を引き起こさない賦形剤を指す。当業者には明らかであるように、様々な薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を提供でき、本発明の塩と組み合わせることができる。
【0075】
本発明の1つの実施例によれば、活性化合物コンジュゲート又は複合体の有効量、毒性及び治療効果は、例えばLD50(集団の50%に対する致死用量)及びED50(集団の50%に対する治療有効用量)を測定するための標準的な製薬手順によって、細胞培養物又は実験動物において決定され得る。用量は、使用する剤形及び投与経路に応じて変化し得る。毒性と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。いくつかの実施例では、組成物及び方法は、大きな治療指数を示す。治療有効用量は、細胞培養アッセイによって最初に推定することができる。また、細胞培養又は適切な動物モデルにおいて測定されたIC50(即ち、症状の半分最大阻害を達成する本発明の化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、用量を動物モデルにおいて配合することができる。例えば、血漿中の濃度は、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。任意の特定の用量の影響は、適切なバイオアッセイによって監視できる。用量は、医師によって決定され、観察された治療効果に適するように必要に応じて調整できる。
【0076】
実施例では、本明細書に記載の医薬製剤の用量は、医師によって決定され、観察された治療効果に適するように必要に応じて調整できる。治療の持続時間及び頻度に関して、熟練した臨床医は、通常、被験者を監視して治療効果を決定し、用量を増加又は減少させるか、投与の頻度を増加又は減少させるか、治療を中止するか、治療を再開するか、又は治療レジメンに他の変更を加えるかを決定する。投与スケジュール/レジメンは、各活性化合物に対する被験者の感受性などの多くの臨床的要因に応じて、例えば、1週間に1回、1日に1回又は特定の所定の間隔で変更し得る。
【0077】
実施例では、有効用量の放射性複合体を含む組成物を患者に1回投与し得る。あるいは、有効用量の放射性複合体を含む組成物を患者に繰り返し投与し得る。放射性複合体は、ある期間、例えば5~60分にわたって、また例えば約30分にわたって投与し得る。必要に応じて、定期的に、例えば1時間に、1日に、2週間に又は1週間に1回、例えば適切な時間間隔で、例えば約6、12、24、48又は72時間で繰り返し投与し得る。ある場合において、最初の治療レジメン後に治療の頻度を減らし得る。例えば、初回投与後、1週間に1回、1ヶ月に1回、6ヶ月に1回、又は1年以上に1回投与を繰り返し得る。
【0078】
実施例では、医薬組成物中の活性化合物、コンジュゲート又は複合体の量は、重量、モル又は体積に依存する。いくつかの実施例では、医薬組成物は、少なくとも0.0001%、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%又は10%の活性物質を含む。いくつかの実施例では、医薬組成物は、0.01%~99%の活性、例えば0.05%~90%、0.1%~85%、0.5%~80%、1%~75%、2%~70%、3%~65%、4%~60%又は5%~50%活性を含む
【0079】
本実施例の組成物の用量は、医師によって決定され、必要に応じて、観察された治療効果に適するように調整し得る。治療の持続時間及び頻度に関して、熟練した臨床医は、通常、被験者を監視して治療効果を決定し、用量を増加又は減少させるか、投与頻度を増加又は減少させるか、治療を中止するか、治療を再開するか、又は治療レジメンに他の変更を加えるかを決定する。投与スケジュールは、本発明の化合物に対する被験者の感受性などのいくつか臨床的要因に応じて、1週に1回から1日に1回まで変化し得る。
【0080】
実施例では、治療を必要とする被験者の癌(前癌又は癌細胞及び腫瘍)を治療することに加えて、このような癌を同定、イメージング及び/又は局在する必要がある。該方法は、放射性金属複合体を提供することと、該複合体を被験者に投与することと、放出された放出体を検出するためにPETイメージングなどのイメージングを選択的に実行することとを含み得る。これは、腫瘍の成長及び/又は収縮を視覚的に追跡すること、例えば最適用量を確認又は個別化すること、及び/又は腫瘍及び/又は転移性腫瘍の位置を決定することを可能にする。様々な実施例では、例えば、投与後約6~48時間以内にイメージングを行うことができる。イメージングを正常組織/細胞と比較して、癌/腫瘍組織と正常組織の異なる取り込み率を決定できる。
【0081】
実施例では、腫瘍又は正常な細胞又は組織においてインサイチュの薬物動態学的解析及び薬力学的分析を行うことができる。該方法は、前記複合体を提供することと、それを癌細胞、腫瘍又は正常な細胞又は組織と接触させることと、癌細胞、腫瘍又は正常な細胞又は組織をイメージングし、続いて薬物動態学的解析及び/又は薬力学的解析を行い、例えば、信号(放射能及び/又は近赤外蛍光及びその変化を含む)が、ある期間にわたる1つ以上の時点で、例えば投与の前後及び投与後の1つ以上の時点で、経時的に変化するように決定されることとを含み得る。
【0082】
実施例では、放射性金属複合体を含む放射性医薬製剤を提供又は調製するための薬物処方の組み合わせが提供される。一般的に言えば、放射性医薬製剤の非放射性金属成分を含有するバイアルは通常、滅菌された検証済み製品の形態であり、使用前に適切な放射性物質を添加又は希釈する。1つ以上の薬物処方の組み合わせ成分は、任意の緩衝溶液の形態で提供され得、又は任意の緩衝溶液に溶解するように提供され得る。例えば、薬物処方の組み合わせは、単回用量又は複数回用量のバイアルであり得、放射性医薬製剤は、限定されないが、沸騰、加熱、濾過及び/又は緩衝などの追加のステップを必要とし得る。薬物処方の組み合わせから抽出された放射性医薬製剤は、通常、調製の直後、例えば調製後約12時間以内などの6~24時間以内に使用される。
【0083】
当業者には明らかであるように、薬物処方の組み合わせはまた、従来の薬物処方の組み合わせアセンブリ、例えば、組成物を注射するための針、組成物成分を混合するための1つ以上のバイアルなどを含む。また、成分の量、成分の混合ガイド及び投与レジメンを示す挿入物又はラベルとしての説明書が、薬物処方の組み合わせに含まれる。
【0084】
医薬組成物に使用される複合体の濃度及び/又は患者又は被験者に投与される量は、例えば、使用される特定の複合体及び/又は薬学的に許容可能な担体、治療される特定の疾患、疾患の程度、病人の年齢及び体重などの様々な要因に応じて変化し得る。通常、複合体は、前記医薬組成物に使用され得、組成物は、所望の治療効果が達成されるまで増加され得る初期の低いレベルの放射線量を患者に提供し得る。一般的に言えば、複合体は、約4mbq/ml(約0.1mci/ml)以下~約370mbq/ml(約10mci/ml)、並びにその範囲の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせの範囲の絶対放射能濃度を提供するために、水性担体を含む医薬組成物に使用され得る。実施例では、医薬組成物中の錯体の濃度は、約37MBq/ml(約1mci/ml)~約370mbq/ml(約10mci/ml)であり得る。また、組成物は、約1KSv(約1×105Rem)~約74KSv(約7.4MRem)、並びにその範囲の全ての組み合わせ及び部分的組み合わせの範囲の用量で患者に投与され得る。実施例では、前記組成物は、約7.4KSv(約7.4×105Rem)~約74KSv(約7.4MRem)の放射線量を提供するように患者に投与され得る。これらの量は、本明細書では有効量又は治療有効量と呼ばれる。実施例では、薬学的に許容可能な担体は、増粘剤も含むべきである。
【0085】
増粘剤とは、本発明の組成物に組み込まれる場合に粘度調整剤、乳化剤及び/又は可溶化剤、懸濁剤及び/又は増強剤として作用し得る、様々な一般に親水性の材料のいずれかを指す。本放射性医薬組成物での使用に適した増粘剤には、例えば、ゼラチン、デンプン、ガム、ペクチン、カゼイン、及びカラギーナン、アルギネートと寒天を含むアルギン、半合成セルロース誘導体、ポリビニルアルコール及びカルボキシビニル、ベントン、ケイ酸塩並びにコロイダルシリカが含まれる。他の増粘剤は当業者に明らかである。
【0086】
増粘剤の濃度は、医薬組成物1mlあたり約0.1ミリグラム(mg)~約500ミリグラム(mg)の範囲であり得る。ある実施例では、増粘剤の濃度は、約1~約400mg/ml、例えば約5~約300mg/ml、例えば約10~約200mg/ml、例えば約20~約100mg/ml、又は例えば約25~約50mg/mlであり得る。複合体、薬学的に許容可能な担体、及び任意の増粘剤から調製できる組成物には、例えば、懸濁液、エマルジョン及び分散液が含まれる。いくつかの実施例では、複合体を製剤化して、懸濁液として患者に投与し得る。
【0087】
懸濁液は、液体中の微細に分散したコロイド粒子の混合物、分散体又はエマルジョンを指し得る。例えば、錯体を不活性固体担体材料と組み合わせることによって懸濁液を得ることができる。本発明の組成物の不活性固体担体として使用するのに適し得る粒子担体材料には、例えば、カーボンブラック(油煙)及び/又は活性炭と一般に呼ばれる形態の炭素を含む炭素由来の材料、並びに微粉末酸化物、珪藻土及び珪藻土が含まれる。いくつかの実施例では、支持材料は、カーボンブラック又は活性炭を含む。粒子担体材料の粒子のサイズは、使用される特定の担体材料、複合体、増粘剤などに応じて変化し得、また例えば、約0.5~約25mmなどの約0.1ミリメートル(mm)~約50mm、約2mm~約5mmなどの約1mm~約10mmの範囲のサイズを有する粒子を含み得る。
【0088】
複合体の治療上有効な活性の送達は、該複合体の治療上有効な活性又は用量を含む医薬組成物を投与することによって得ることができ、即ち、本明細書に記載の方法に従って所望の治療効果又はイメージング効果をもたらすのに十分な濃度で送達する。有効な治療活性は、癌組織又は前癌組織の成長を阻害又は遅延させるか、又は癌組織又は前癌組織の生存率を低下させるなど、癌を治療するのに有効な活性であり得る。治療上有効な用量は、患者によって異なり、患者の病状及び投与経路に依存する。被験者の体重、性別、年齢、病歴によって異なる。有効用量に影響を及ぼす他の要因としては、患者の症状の重篤度、治療されている疾患又は障害、複合体の安定性及び(該当する場合)複合体とともに投与される任意の追加の抗腫瘍治療剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。治療効果及び用量を決定する方法は、当業者に既知である。
【0089】
実施例1 DZ-1-Lys-DOTA結合放射性金属複合体の合成
【0090】
DZ-1色素及びその誘導体の合成は、例えばUS 10307489に以前に記載されており、現在、その全体が本明細書に組み込まれ、以下の実施例1aに詳細に記載されているように操作され得る。次いで、実施例1bに記載されているように、コンジュゲートを放射性金属と錯化させ得る。以下の化学物質及び試薬を使用できる。DOTAは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸とも呼ばれ、DOTAトリ(tert-ブチルエステル)は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ-tert-ブチル酢酸-10-酢酸とも呼ばれ、Macrocyclics(アーリントンハイツ,IL)から入手可能である。当業者には明らかであるように、DOTA及び本明細書で言及される全ての他の化学物質は、例えば、示される反応スキームにおいて、VWR国際公司(Radnor,PA)又はサーモフィッシャーサイエンティフィック(Waltham,MA)などの様々な標準的な供給源からも購入できる。脱イオン超純水(18.2MΩ)を使用して溶液を調製でき、該溶液はミリポア公司(Billerica,MA,USA)のMilli-Q直接超純水系から入手可能である。分析的逆相(RP)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、Agilentシステムで、例えば1260無限ダイオードアレイ検出器を使用して、例えばApollo C18 RPカラム(5μm、150×4.6mm)を使用して行うことができる。例えば、移動相は、60%の溶媒A(例えば、80%水中の0.1%トリフルオロ酢酸)及び40%の溶媒B(例えば、80%アセトニトリル水溶液中の0.1%トリフルオロ酢酸)から、例えば約254nm及び約780nmで監視しながら、例えば約30分にわたって、約1ml/分の流速で100%の溶媒Bに変化し得る。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)は、合成化合物、例えばThermo LTQ Orbitrap Elite質量分析計システムで行うことができる。
【0091】
実施例1a DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートの合成
【0092】
以下に示す解決手段1は、DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲート、即ち本明細書では「DZ-1」とも呼ばれる化合物4を形成するカップリングの第1のステップを説明し、他の合成経路は当業者に明らかである。次に、DZ-1をリジン架橋体(以下の解決手段2に示す)にカップリングし、さらにDOTA(以下の解決手段3及び4、又は代替解決手段5における解決手段4に示す)にカップリングし得る。
【0093】
解決手段1 化合物4(DZ-1)の合成:
【化5】
【0094】
化合物1aの合成(上記解決手段1と比較):2,3,3-トリメチルインドレニン(5g、31.4mmol)及び1,4-ブタンスルトン(5.1g、37.7mmol)の混合物を、アルゴン保護下で120°Cで5時間撹拌・加熱できた。得られた反応混合物を室温(例えば約20℃)に冷却し、固体を十分な体積の溶媒、例えば有機溶媒、例えば約50mlのメタノールに溶解できた。約200mlのエーテルをメタノール溶液に添加して沈殿させ、沈殿物を収集し、十分な体積及び十分な回数の酢酸エチル(例えば15ml、3回)で洗浄し、例えば真空下で乾燥させて、所望の生成物6.8g(収率73%)を白色の固体として得た。
【0095】
化合物1bの合成(上記解決手段1と比較):6-ブロモヘキサン酸(2.5g、13.0mmol)に2,3,3-トリメチルインドレニン(2.5g、15.7mmol)を添加した。反応混合物を十分に高い温度で、例えば約110℃で保護ガス(例えばアルゴン)下で8時間撹拌・加熱した。得られた暗赤色の固体を50mlのメタノールに溶解できた。150mlのエーテルを添加した。沈殿物を濾過し、エーテル(例えば15ml、3回)で十分な回数洗浄し、次いでアセトン(例えば15ml、3回)で十分な回数洗浄した。得られた生成物は白色の固体(2.7g、58%)であった。
【0096】
化合物3の合成(上記解決手段1と比較):エタノール(100ml)中の1a(2g、6.78mmol)及び化合物2(3g、8.36mmol)の混合物に、酢酸ナトリウム(0.28g、3.39mmol)を添加し、得られた混合物は十分な温度及び持続時間、例えば約60℃で約18時間加熱できた。沈殿物を濾過し、冷エタノール(例えば、20ml、3回)で十分に洗浄できた。生成物を真空下で乾燥させて、所望の生成物3(2.1g、収率58%)を濃青色固体として得た。質量スペクトル(ESI)525.19[M+H]+。
【0097】
本明細書ではDZ-1とも呼ばれるヘプタメチルカルボシアニン色素である化合物4の合成(上記解決手段1と比較):エタノール(20ml)中の1b(0.67g、1.9mmol)及び化合物3(1.0g、1.9mmol)の混合物に、酢酸ナトリウム(156mg、1.9mmol)を添加して、得られた混合物を十分な時間、例えば3時間加熱還流できた。次いで、混合物を沈殿させ、例えば100mlの氷水を薬物処方の組み合わせに注いだ。固体を濾過し、メタノール-水から結晶化して、所望の暗緑色の固体物質4(0.99g、収率74%)を得た。質量スペクトル(ESI)705.31[M+H]+。
【0098】
以下の解決手段2は、適切なリンカー基にカップリングした色素の合成カップリングを示し、ここではDZ-1-Lysである。
【化6】
【0099】
DZ-1-Lysの合成(上記解決手段2と比較):DZ-1 4(200mg、0.28mmol)を5mlの無水CH2Cl2に溶解した。クロロギ酸エチル(ClCOOC2H5)(46mg、0.42mmol)及びトリエチルアミン(57mg、0.57mmol)を添加できた。混合物を十分な時間(例えば、約2時間)撹拌した後、十分な体積(例えば、2mlのDMF)のN-α-Boc-Lys 5(70mg、0.28mmol)を添加し、さらに十分な時間(例えば、室温(RT)で約2時間)撹拌できた。粗物質を冷ジエチルエーテル(40ml)中で沈殿させ得た。十分な時間及び回転速度(例えば、約3500rpmで約5分)の遠心分離により、精製可能な粒子の回収が可能になり、例えば、C18-逆シリカゲルクロマトグラフィーにより、重炭酸アンモニウム水溶液(20mM)でアセトニトリルで溶出して所望の生成物DZ-1-(N-α-Boc)-Lysを109mg(42%)の暗緑色の固体として得た。DZ-1-(N-α-Boc)-LysをTFA(95%)5mlに溶解し、該混合物を、例えば周囲温度で約3時間、例えば室温(約20°C)で十分に撹拌できた。十分な量、例えば40mlのエーテルを添加できた。懸濁液を十分な時間で遠心分離して分離を達成することにより、エーテルのデカンテーションを達成できた。生成物を、例えば、高真空下で十分な時間、例えば一晩放置することにより、乾燥させ得た。得られた生成物6をさらに精製せずに下記ステップで使用できた。
【0100】
解決手段3及び4(又は代替解決手段5は、活性化キレート剤化合物の合成を示し(ここではDOTAスルホNHS、解決手段3と比較)、その後、DZ-1-Lys化合物とカップリングできた(比較解決手段4は第1の方法、代替解決手段5は第2の方法)。
【0101】
以下の解決手段3は、活性化キレート剤化合物の合成を示し、ここで、DOTAスルホNHS
【化7】
【0102】
DOTAスルホNHSの合成(上記解決手段3と比較):DOTA 7は、適切なpH値、例えば約5.5のpH値、適切な時間、例えば約30分(4°C)で、適切なモル比(例えば、DOTA:EDC:Sulfo-NHS)約10:5:4のモル比でEDCで活性化できた。DOTA(24.2mg、48μmol)を、適量の水及び溶媒、例えば約500μLの水に溶解し、約4.6mgのEDC(24μmol)を、適切な体積の水(例えば、約130μLの水)に溶解して混合し、次いで、冷却後(例えば、氷浴中)、撹拌混合物にチオ-NHS(4.2mg、19.2μmol)を添加し、0.1NのNaOHをさらに添加して、pHを適切に調整し、例えば、最終的なpHを約5.5とした。反応は、適切な時間、例えば約4℃で約40分継続できた。
【0103】
以下の解決手段4は、DZ-1-Lys-DOTAの合成(方法1)を示した。
【化8】
【0104】
DZ-1-Lys-DOTA 10の合成(上記解決手段4と比較):200μLの50%アセトニトリル水溶液中のDZ-1-Lys 6(10mg、12μmol)をDOTAスルホNHS 9反応混合物に添加し、pHを適切なアルカリ性pH、例えば0.1NのNaOHで約8.5に調整できた。反応は、十分に低い温度、例えば約4℃で、適切な時間、例えば一晩インキュベートできた。DZ-1-DOTAコンジュゲートは、適切な分離方法、例えばHPLCによって、例えばApollo C18半分取カラム(例えば、5μm、250×10mm)を使用して精製できた。HPLCは、溶媒A(水中の0.1%TFA)及び溶媒B(80%アセトニトリル水溶液中の0.1%TFA)という2つの移動相を使用できた。移動相勾配は、約3ml/minの流速で約30分以内に40%Bから100%Bまで変化し、254及び780nmの二重波長で監視できた。生成物を収集してから凍結乾燥できた(4mg、収率28%)。質量スペクトル(ESI)1219.585[M+H]+。
【0105】
以下の解決手段5は、DZ-1-Lys-DOTAの別の合成(方法2)を示した。
【化9】
【0106】
あるいは、DZ-1-Lys-DOTA 10の合成は、以下の方法(方法2)で行うことができる。DOTA-トリ(tert-ブチルエステル)11(50mg、0.087mmol)N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(25mg、0.13mmol)及び1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(15mg、0.11mmol)の混合物を3mlのDMFに溶解できた。該混合物を40分撹拌した後、DZ-1-Lys 6(73mg、0.087mmol)を添加し、適切な時間、例えば室温でさらに約5時間撹拌できた。生成物を例えば冷エーテル(例えば約40ml)中で沈殿させ得た。回収は、十分な回転速度で十分な時間、例えば3500RPMで5分遠心分離することによって行うことができた。該顆粒は、適切な体積の適切な溶媒、例えば約2mlのTFA(95%)に溶解し、十分な時間、例えば約3時間撹拌できた。粗生成物を、例えば冷エーテル(例えば約40ml)中で沈殿させ、例えばC18-逆相半分取剤によって精製して、DZ-1-Lys-DOTA 10を暗緑色の固体(33mg、31%)として得た。
【0107】
実施例1b DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートを標識して、DZ-1-Lys-DOTA-M(ここで:Lu-177)を形成した。
【0108】
DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートは、当業者に明らかな任意の好都合な方法で放射性金属(「M」)で標識、即ちキレート化することができ、例えば、放射性金属Mはイオン形態で導入でき、カチオン性放射性金属(Mは、例えば177Lu3+、90Y3+、68Gd3+から選択されるが、これらに限定されない)は、塩化物などのアニオン性薬剤(即ちMn+Cln)とペアリングして、例えば、以下の解決手段6に示すように、限定されないが、177LuCl3、90YCl3、68GaCl3を形成した。
【0109】
解決手段6 標識してDZ-1-Lys-DOTA-Mを形成した。
【化10】
【0110】
放射性標識については、DZ1-Lys-DOTAコンジュゲートに適量の放射能の放射性金属、例えば約2~約200MBq/μg(放射性金属:コンジュゲート)、約4~約100MBq/μg又は約8~約50MBq/μg、例えば約20MBq/μgの割合で添加できる。例えば、100MBq(2.7mCi)の177LuCl3を5μgのDZ-1-Lys-DOTAに添加し、0.1Nの酢酸アンモニウム(pH5.5)緩衝液に添加し、混合物を適切な温度、例えば約20°C~約60°C又は約30°C~約50°C、例えば約40°Cで、約10~約60分又は約20~約40分、例えば約30分などの十分な時間インキュベートして、完全な標識を達成できる。
【0111】
例えば、放射性標識は、0.1Nの酢酸アンモニウム(pH5.5)緩衝液中の5μgのDZ-1-Lys-DOTAに100MBq(2.7mCi)177LuCl3を添加し、約40°Cで約30分インキュベートすることによって達成できる。DZ-1-Lys-DOTA-177LuCl3複合体は、逆相HPLCによってApollo C18 RPカラム(5μ、250×10mm)を使用して精製できる。カラム溶出液は、254nmでの紫外吸光度及びNaI結晶検出器で監視できる。移動相は、40%溶媒A(0.1%トリフルオロ酢酸を80%水に溶解)及び60%溶媒B(0.1%トリフルオロ酢酸を80%アセトニトリル水溶液に溶解)から、3ml/minの流速で30分以内に100%溶媒Bに変化できる。HPLCから得られたDZ-1-Lys-DOTA-M3+複合体の純粋な画分は、窒素の正の流れを穏やかに吹くことによって乾燥及び濃縮できる。濃縮後にチューブに残った残存物は、さらなる試験又は投与状況に応じて、適切な緩衝液、例えば1XPBS緩衝液(1.0ml)中で再構成できる。
【0112】
90Y3+及び68Ga3+DZ-1-Lys-DOTA複合体が、同様の解決手段を使用して、例えば90YCl3又は68GaCl3を使用して形成及び標識することは、当業者に明らかな技術である。
【0113】
68Ga放射性標識
【0114】
図1に示すように、
68GaでDZ-1-Lys-DOTAを標識し、具体的には、DZ-1-Lys-DOTA(50μg)の酢酸ナトリウム溶液(0.1N、pH=3~4)に新鮮な溶出液
68GaCl
3(0.1M、1~3mCi)を添加して、得られた反応混合物を95℃で15分インキュベートし、液体クロマトグラフィー半分取カラム(5μm、250×10mm)で精製した後、放射性HPLCによってDZ-1-Lys-DOTA-
68Gaの放射化学的純度(93.25±0.98%)を測定した。
【0115】
177Lu放射性標識
【0116】
図2に示すように、
177LuでDZ-1-Lys-DOTAを標識し、具体的には、DZ-1-Lys-DOTA(50μg)の酢酸ナトリウム溶液(0.1N、pH=4~5)に
177LuCl
3(1~3mCi、0.1M、200μL)を添加して、得られた反応混合物を95℃で15分インキュベートし、展開剤として0.1Mのクエン酸を使用して、放射性TLCによって標識された放射化学的純度(92.06±1.17%)を検出した。
【0117】
90Y放射性標識
【0118】
図3に示すように、
90YでDZ-1-Lys-DOTAを標識し、具体的には、DZ-1-Lys-DOTA(50μg)の酢酸ナトリウム溶液(0.1M、pH=4~5)に
90YCl
3(1~3mCi、0.1M、200μL)を添加して、得られた反応混合物を95℃で30分インキュベートし、展開剤として0.1Mのクエン酸を使用して、放射性TLCによって標識された放射化学的純度(86.69±1.17%)を検出した。
【0119】
例2:マウスの標的放射線治療、腫瘍減量及び体重保持
【0120】
177Lu-DZ-1-Lys-DOTAの治療効果、有効性及び毒性を評価するために、ヒト脳癌細胞(例えば、ATCCから公開されている神経芽細胞腫、星状細胞腫又は膠芽腫細胞)をヌードマウスの皮下に接種できる。その後、皮下腫瘍のサイズが約100mm3ヌードマウスを無作為にいくつかの群に分けることができる(例えば、1群あたりn=5匹のマウス)。治療群については、腫瘍を有するマウスに、例えば、約0.2mlの177Lu-DZ-1-Lys-DOTA(5.55GBq/kg)Lysを(例えば、尾静脈を介して)静脈内注射した。治療は、定期的に、例えば1日又は1週間に1回、数日又は数週間、例えば1週間に1回、4週間行うことができる。同じ治療レジメン下で、対照群には、尾静脈を介して溶媒(例えば、等量の生理食塩水、例えば0.2ml)を注射できる。治療後、12週間などの期間にわたってマウスを再飼育できる。研究のエンドポイントは、治療群と対照群との間の腫瘍成長の差である。体重を過程全体にわたって監視できる。
【0121】
あるいは、177Lu-DZ-1-Lys-DOTAの治療効果、有効性及び毒性は、上記のヌードマウス実験により基本的に決定することができ、違いはヒト脳癌細胞の接種が頭蓋内で行われることである。研究のエンドポイントは治療群と対照群との間の死亡の差である。体重を過程全体にわたって監視できる。
【0122】
177Lu-DZ-1-Lys-DOTAの腫瘍特異的標的は、1つ以上の方法、例えば1)腫瘍におけるDZ-1部分の蓄積を検出するための近赤外蛍光腫瘍イメージング、及び2)同じ腫瘍における177LuのSPECT/CT核イメージングによって決定できる。腫瘍のサイズは、適切な方法を使用して、デジタルキャリパーなどのキャリパーを使用して、1日又は1週間に1回又は2回など、定期的に測定でき、腫瘍体積は、体積=1/2(長さ×幅×幅)を使用して計算できる。潜在的な毒性を監視するために、体重を測定できる。腫瘍の体積が1500mm3を超えるか、又は体重減少が20%を超える場合、マウスを安楽死させ得る。本実施例の複合体は、腫瘍重量の減少、有効性、体重の維持、毒性の欠如を有益に示し得る。
【0123】
177Lu-DZ-1-Lys-DOTAを除いて、90Y-DZ-1-Lys-DOTAを上記解決手段で使用できる。
【0124】
実施例3:PET/MicroPETイメージング
【0125】
本実施例では、PET(又はマイクロPET)は、画像誘導治療を提供するために、治療前、治療後、又は治療中に177Lu又は90Y-複合体を使用して行うことができる。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、177Lu、90Y、又は両方と組み合わせて、よく適合した真の治療ペアが提供され、治療用放射性金属がイメージング放射性金属の誘導下で腫瘍を破壊し、これは、それらに類似の結合力、腫瘍取り込み及び臓器クリアランスを含む薬物動態学、安定性及び有効性を有するためであることが考えられる。
【0126】
当業者には明らかであるように、マイクロPETイメージングは、小動物に対して行われるPETイメージングである。Ga-68で標識されたDZ-1-Lys-DOTAは、例えば約300~500μCiの複合体を、例えば5匹のマウスの群で静脈内注射できる。トランスアキシャルマイクロPET画像は、適切な時間間隔、例えばプローブ注射後1、2及び3時間(pi)の時点で収集できる。標準化取り込み値(SUV)分析は、CTスキャンによって定義されるように、腫瘍異種移植片及び個々のマウスの骨格筋に対して行うことができ、これらの時点での各群の腫瘍と筋肉の比を計算できる。血液クリアランス及び臓器分布:麻酔した後(例えばイソフルラン2~3%で)、例えば尾静脈を介して1群のマウス(例えば5匹)に放射性標識68Ga-DZ-1-Lys-DOTA複合体(約5μCi)を注射できる。眼窩後血液サンプル(25μl)を注射後5、15、30、60及び180分などの異なる時点で収集でき、ガンマカウンター(例えば、1480Wizard,Perkin-Environment)で全てのサンプルの放射能をカウントし、注射時間に対するクロマトグラムを正規化してプロットし、続いて非線形回帰分析を行って、血液中の半減期時間を得る(例えば、PrismTMソフトウェア、例えばPrism9バージョンにより、カリフォルニア州サンディエゴGraphPadTMから公的に入手可能である)。最後の採血直後にマウスを殺すことができる。腫瘍及び臓器(心臓、肝臓、肺、腎臓、小腸、胃、骨、筋肉、脾臓及び皮膚など)をガンマカウンターで収集し、放射能をカウントできる。マウスにおけるDZ-1-Lys-DOTA複合体の臓器の分布データは、複数の時点(例えば、1時間、2時間及び3時間などの3つの時点)で二重に得ることができる。画像レジストレーション及び分析は、以下のように行うことができる。PET/CT画像は、当業者に明らかな標準プロトコルに従って、例えば製造業者のガイドラインに従ってドイツのErlangenシーメンスHealthineersTMのASIProTMソフトウェアなどの標準ソフトウェアを使用して処理できる。PETのピクセルレベルの標準化取り込み値(SUV)は、ピクセルレベル活性を注射用量と体重の積で割った値として計算できる。腫瘍標的は、SUV最大値の40%で描かれ、ソフトウェア画像レジストレーションによってCT画像と解剖学的に重ね合わせることができる。本実施例の複合体は、有益には、腫瘍内における高い取り込みを特徴とする特定の分布を示すことができる。腫瘍と骨格筋の分配比は、例えば、24時間後に約8:1であってもよく、例えば、68Ga-DZ-1-Lys-DOTAの投与の48時間後に20:1より高くてもよい。
【0127】
実施例4:Lu-177、Y-90及びGa-68複合体の血清安定性の測定
【0128】
本明細書に記載の複合体の血清安定性は、以下の方法によって測定することができる。適量、例えば50μCiの本明細書に記載の複合体、例えばDZ-1-Lys-DOTA放射性金属複合体及びLu-177、Y-90、又はGa-68の複合体を、適量、例えば100μlのウシ胎仔血清(Invitrogen,Grand Island,NY)のLysに添加できる。適切な時間間隔(例えば、1、3及び6時間)で37℃でインキュベートした後、混合物を取り出して等分し、例えば0.2μMのマイクロスピンフィルターを通して濾過できる。得られた濾液は、適切な分離及び検出方法によって、例えばBioscan流量計数無線HPLC検出器を備えた逆相HPLCによって分析できる。元のピークは、分画されていない安定な複合体(ここでは、Lu-177、Y-90又はGa-68を有するDZ-1-Lys-DOTA複合体、例えば、上記の化合物12と比較)を示す。元のγピークに加えて、任意の新たに形成されたγピークの検出は分解産物を決定できるため、血清における複合体の安定性が不足している。Ga-68、Lu-177又はY-90複合体と比較して、Cu-64を有する対応する複合体の分析により、Cu-64複合体、特にDZ-1-Lys-DOTA-Lu-177、DZ-1-Lys-DOTA-Y-90及びDZ-1-Lys-DOTA-Ga-68の安定性が不足していることを示した。したがって、Lu-177、Y-90及びGa-68複合体は、優れた血清安定性を提供できる。
【0129】
DZ-1-Lys-DOTA-68Gaの血清安定性
【0130】
DZ-1-Lys-DOTA-
68Gaをウシ胎児血清(FBS)と共に37℃でインキュベートし、展開剤として0.1Mクエン酸を使用して、放射性TLCによりDZ-1-Lys-DOTA-
68Gaの安定性を分析した。
図4に示すように、サンプルの放射化学的純度を4つの半減期にわたって監視した。
【0131】
DZ-1-Lys-DOTA-177Luの血清安定性
【0132】
図5に示すように、DZ-1-Lys-DOTA-
177Luをウシ胎児血清(FBS)と共に37°Cでインキュベートし、展開剤として0.1Mクエン酸を使用して、放射性TLCによりプローブを分析した。
【0133】
DZ-1-Lys-DOTA-90Yの血清安定性
【0134】
図6に示すように、DZ-1-Lys-DOTA-
90Yをウシ胎児血清(FBS)(V:V=2:1)と共に37°Cでインキュベートし、展開剤として0.1Mのクエン酸を使用して、放射性TLCによりプローブを分析した。
【0135】
実施例5:前立腺癌の画像誘導治療
【0136】
4~6週齢の雄ヌードマウスにヒト前立腺癌細胞を皮下接種することができ、例えば、C4-2B(ATCC(R)CRL-3315とも呼ばれる)TMはバージニア州マナサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)又はARCaPMから入手可能であり、バーミンガム、ALのNovicureTMから公的に入手可能なARCaPM細胞は、カタログ番号3422で、親の混合ARCaP細胞集団から確立されたヒト前立腺癌細胞であり、マウスで高い骨転移傾向を持つ。骨腫瘍の病理組織学は、主に骨芽細胞病変であり、それは前立腺癌の骨転移を再現する。ARCapM(紡錘形間葉形態)は、親ARCaP細胞の単一細胞クローニングによって得られたものである。ARCapMは、侵襲性が高い前立腺癌転移細胞である。ある研究では、ARCaPM細胞の心臓内注射後の骨転移の発生率は100%(9/9)であり、潜伏期間はそれぞれ71日及び61日であると測定された。ARCapM細胞は、NovicureTMが提供したMCaP培地を用いて培養・成長させ得る。ARCapM細胞は、前立腺癌の骨転移及び腫瘍転移におけるEMTの効果を研究するために使用できる。MCaP培地は、必須及び非必須アミノ酸、ビタミン、有機及び無機化合物、ホルモン、成長因子及び微量元素を含み、インビトロでのARCaP細胞の最適な成長に重要ないくつかの因子を補充した、Dulbeccosで修飾したeagle及びF12K培地で調製された。培地は無血清であり、5%の熱不活化ウシ胎児血清を補充する必要がある。それは、インキュベーター(5%CO2/95%空気を含む)中で平衡化した場合、pH値が7.4になる重炭酸緩衝液である。
【0137】
腫瘍が約100mm3の体積に形成されるように、マウスを適切な期間、例えば2週間保存できる。注射用プローブ溶液は、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で調製される(プローブDZ-1-Lys-DOTA68Ga複合体の放射性線量)。当業者に見られるように、適切な体積(例えば、100μl~150μlの体積)のイメージングプローブを使用して(例えば、尾静脈を介して)マウスを静脈内注射し、続いて吸入麻酔(酸素中の2%イソフルラン)下で採血、プローブ生体内分布並びに蛍光及びPETイメージングを行う手順は、当業者には明らかである。
【0138】
第1の任意のステップとして、本実施例のGa-68-DZ-1-Lys-DOTA複合体は、本実施例では、原発性腫瘍を検出するために投与でき、及び/又は原発性腫瘍の外科的切除後など、その任意の残存転移性腫瘍又は二次腫瘍を検出するために使用できる。
【0139】
本明細書に記載のLu-177又はY-90複合体を使用して、第1の及び/又は1つ以上の二次腫瘍又は第1の又は1つ以上の二次腫瘍の転移性腫瘍を治療でき、任意に、Ga-68を用いて残存転移性腫瘍/腫瘍を並行して検出でき、続いて第1の腫瘍治療を行い、又は第1の腫瘍治療が実施された場合に第2の又はさらなる腫瘍治療を行い、本実施例のLu-177又はY-90複合体を用いて画像誘導放射線治療を行うことができる。本明細書に記載の複合体は、例えば改善された血清安定性、低下された毒性及び有意に低下された転移性骨腫瘍の形成を含む、前立腺癌のイメージング、治療及び/又は画像誘導治療に特に有益である。
【0140】
実施例6:膠芽腫を含む脳腫瘍の画像誘導治療
【0141】
腫瘍阻害効果及び/又は動物生存率及び/又は体重などを決定するために、基本的に上記の実施例2に記載のように実験を行うことができる。例えば、腫瘍阻害効果を評価するために、ヌードマウスにヒト脳癌細胞(例えば、神経芽細胞腫、星状細胞腫又は膠芽腫細胞、ATCCから公的に入手可能)を皮下接種できる。続いて、皮下腫瘍のサイズが約100mm3ヌードマウスを無作為にいくつかの群に分けることができる(例えば、1群あたりn=5匹のマウス)。動物の生存に対する有効性を評価するために、ヒト脳腫瘍細胞(例えば、ATCCに開示されている神経芽細胞腫、星状膠細胞腫、又は膠芽腫細胞)をヌードマウスの脳内に接種することにより、治療効果、有効性及び毒性を決定できる。接種の1週間後、試験マウスを無作為にいくつかの群に分ける(例えば、1群あたりn=5匹のマウス)。
【0142】
注射用プローブ溶液は、滅菌PBS緩衝剤中で調製できる。採血、プローブ生体内分布、蛍光及びPETイメージングのために、イメージングプローブ(PBS体積、例えば100~150μl)を(尾静脈を介して)マウスに静脈内注射することができ、例えばマウスの尾静脈を介して、例えば吸入麻酔(酸素中2%イソフルラン)下で注射器(例えば1/2cc U-100インシュリン注射器)を使用して注射する。プローブとも呼ばれる放射性線量は、DZ-1-Lys-DOTA68Ga複合体であってもよく、その形成は当業者には明らかであり、上記のとおりである。
【0143】
1つ以上の治療的投与(任意に、1つ以上のイメージングステップの投与の前又は後に)は、通常は上記の実施例5に記載のように行うことができ、また注射用プローブ溶液が滅菌PBS緩衝液中で調製できるように調整する。マウスは、イメージングプローブ(PBS体積100~150μl)を使用して採血、プローブ生体内分布、蛍光及びPETイメージングを行うことができ、例えば、静脈内注射、例えばマウスの尾静脈を介して、例えば吸入麻酔下(酸素中2%イソフルラン)下で注射器(例えば1/2cc U-100インシュリン注射器)を使用して注射する。プローブの放射性線量は、DZ-1-Lys-DOTA68Ga複合体であり得る。
【0144】
第1のステップでは、皮下空間に接種された脳腫瘍を、本明細書に記載のGa-68複合体を使用して検出した後、任意に外科的に切除する。第2のステップでは、本実施例のGa-68複合体を使用して再発を検出するために、術後及び/又は術後間隔内に残存疾患を決定できる。Lu-177又はY-90複合体による治療は、残存又は再発した転移性腫瘍又は腫瘍の検出後に開始できる。
【0145】
頭蓋内脳腫瘍のある動物において、第1のステップは、本明細書に記載のGa-68複合体を使用して腫瘍の形成を検出し、複合体が血液脳関門を通過することを確実にする。第2のステップは、腫瘍の成長を防止又は遅延させ、動物の死を防止又は遅延させ、及び/又は腫瘍の縮小を引き起こすために、脳腫瘍をLu-177又はY-90複合体で治療できる。
【0146】
本実施例の複合体は、動物の生存率を向上させるために血液脳関門を通過する能力を維持しながら血清安定性を向上させるなどを含む、膠芽腫のイメージング、治療、及び/又は画像誘導治療に特に有益である。
【0147】
実施例7:PET等のイメージング方法による複合体の特異性及び腫瘍組織浸透性の試験
【0148】
当業者には明らかであるように、必要とする被験者に投与する前に、本明細書に記載の色素キレート剤複合体の特異性及び腫瘍組織浸透性は、例えば、適切なモデルを使用して、PET/CTイメージングなどを含む任意の適切な従来の方法によって決定することができる。例えば、マウスモデルなどの哺乳動物モデル、特にマウス前立腺癌異種移植モデルなどの関心のある癌を伴う異種移植哺乳動物モデルは、イメージング、特にPETイメージングによってコンジュゲートを試験するために使用できる。当業者には明らかであるように、他の哺乳動物モデル(例えば、ラット、ウサギ、イヌ、サルなど)を使用できる。
【0149】
本実施例の放射性複合体は、当業者に明らかな方法で投与きる。例えば、限定されないが、個々の哺乳動物(マウス)に、例えば5匹の群で300~500μCiの複合体を注射することによって腹腔内投与できる。トランスアキシャルマイクロPET画像は、定期的に、例えばプローブ注射の12、24及び48時間後に、即ち、複合注射(pi)時点で取得できる。当業者には明らかであるように、標準化取り込み値(SUV)分析は、CTスキャンによって決定された個々のマウスの異種移植癌及び筋肉に対して行うことができ、これらの時点で各群の腫瘍対筋肉比を計算できる。
【0150】
複合体は、PETイメージングによって示されるように、腫瘍における標準化取り込み値(SUV)の増加、PET/CTによって示されるように、腫瘍保持及び/又は腫瘍浸透性の強化などの特異性の強化を含む1つ以上の利点を提供できる。例えば、約24時間の投与後の腫瘍対筋肉比は、約8:1となり得、約36~約48時間の投与後又はそれ以上で、腫瘍組織がコンジュゲートを保持する時間が長くなることにより、約20%以上(10:1)、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上、約120%以上(20:1)有意に増加できる。
【0151】
実施例8:PET/CT画像の画像レジストレーション及び分析、SUVの決定
【0152】
当業者には明らかであるように、PET/CT画像が標準プロトコルに従って処理できる。PETのピクセルレベルの標準化取り込み値(SUV)は、ピクセルレベル活性を注射用量と体重の積で割った値として計算できる。画像レジストレーションにより、腫瘍を対応するCT画像と解剖学的に重ね合わせると、腫瘍の標的領域をSUV最大値の40%として描写できる。
【0153】
実施例9:血液クリアランス及び複合体の臓器分布の決定
【0154】
麻酔後(例えば、2~3%イソフルランの投与による)、適切なサイズの1群の哺乳動物:適切なサイズの哺乳動物群の5匹のマウスに、適切な投与方法によって、1つ以上の複合体、例えば放射性標識DZ-1-Lys-DOTA(DZ-1-Lys-DOTA-177LuCl3、DZ-1-Lys-DOTA-90YCl3、DZ-1-Lys-DOTA-68GaCl3)を注射することができ、各マウスの線量は約5μCiであり、適切な静脈、例えば尾静脈を介して注射する。血液サンプル、例えば十分なサイズの眼窩後血液サンプル(例えば、約25μL)を、適切な時点、例えば複合体の注射の5、15、30、60、180、360分及び24時間後に定期的に採取することができる。全てのサンプルの放射能は、当業者が理解できる程度、例えばガンマカウンター(例えば、1480WizardTM、Perkin-ElmerTM、Waltham,MA)でカウントでき、その後、結果を正規化し、注射時間曲線をプロットし、その後、非線形回帰分析を行い、例えば時間単位で、血液中の半減期時間を得ることができる。最後の採血直後に実験動物マウスを殺すことができる。腫瘍及び臓器(例えば、心臓、肝臓、肺、腎臓、小腸、胃、骨、筋肉、脾臓、及び皮膚)を別々に収集でき、臓器特異的放射能及び/又は半減期及び/又は臓器滞留時間を基本的に上記のように測定できる。その結果は、DZ-1-Lys-DOTA-Lu-177、DZ-1-Lys-DOTA-Y-90、DZ-1-Lys-DOTA-Ga-68が良好な血液及び臓器クリアランスを有することを示した。これらの複合体を他の複合体、特にDZ-1-Lys-DOTA-Cu-64複合体と比較すると、優れたクリアランス率が示された。
【0155】
DZ-1-Lys-DOTA-68Gaの血液クリアランス
【0156】
DZ-1-Lys-DOTA-
68Ga(50μCi)をBalb/Cマウス(n=6、約20g)の尾静脈に注射し、プローブ注射の2分、5分、15分、30分、1時間、2時間及び4.5時間後に側尾静脈から約10μLの血液を毛細血管に収集し、毛細血管を予め秤量したチューブに入れて、採取した血液の重量及び放射能を測定した。各サンプルの放射能をガンマカウンターで測定し、放射能をプローブ注射時間とともに減衰させ、注射用量及び血液重量で標準的に表現し、血液1gあたりの注射用量の百分率で表し、結果を
図7に示す(各動物に50μCi/プローブを静脈内注射)。
【0157】
DZ-1-Lys-DOTA-177Luの血液クリアランス
【0158】
DZ-1-Lys-DOTA-
177Lu(50μCi)をBalb/Cマウス(n=6、約20g)の尾静脈に注射し、プローブ注射の2分、5分、15分、30分、1時間、2時間及び6時間後に側尾静脈から約10μLの血液を毛細血管に収集し、毛細血管を予め秤量したチューブに入れて、採取した血液の重量及び放射能を測定し、各サンプルの放射能をガンマカウンターで測定し、放射能をプローブ注射時間とともに減衰させ、注射用量及び血液重量で標準的に表現し、血液1gあたりの注射用量の百分率で表し、結果を
図8に示す(各動物に50μCi/プローブを静脈内注射)。
【0159】
DZ-1-Lys-DOTA-90Y細胞毒性
【0160】
MDA-MB-231乳癌細胞を96ウェルプレート(10
4細胞/ウェル)に予め接種し、細胞が完全に付着するまで37°C、5%CO
2のインキュベーター中に置き、連続的に希釈したDZ-1-Lys-DOTA-
90Y(100μL)を各ウェルに添加し、3つの複製ウェルを各濃度点に提供し、48時間の処理後、上清を廃棄し、10μLのCCK-8溶液及び100μLの培地を各ウェルに添加し、インキュベーター内で1時間培養を続け、マイクロプレートリーダーを使用して各ウェルの450nmでの吸光度を測定し、結果を
図9に示す。DZ-1-Lys-DOTA-
90Yは、MDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌細胞を殺すことができ、
90Yと比較して、DZ-1-Lys-DOTA-DOTA-
90Yは、乳癌細胞をより効果的に殺すことができる。
【0161】
本明細書に記載の複合体を調製又は使用するための多くの適切な方法は、当該分野で既知である。本発明の実施例によれば、前記複合体は、上記の癌の治療に使用できる。当業者には明らかであるように、多くの異なる投与及び治療レジメンは利用可能であり、個々の被験者及び決定された治療レジメンに従って選択及び適用することができる。本明細書に明示的に記載されていなくても、当業者が認識するように、一実施形態の特徴は他の実施形態とともに使用することができる。実施例をより簡単に理解するために、周知のデバイス及び処理技術の説明を省略することができる。
【0162】
複数の実施例が開示されているが、本発明の他の実施例は、上記の詳細な説明から当業者に明らかである。本発明は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な明らかな態様において様々な修正を行うことができる。したがって、これらの説明は、制限的なものではなく、例示的なものであると考えるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲート及び放射性金属の複合体であって、前記DZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートは、リジン架橋剤を介してDOTA基にカップリングしたヘプタメチルカルボシアニン色素基を含み、前記複合体の分子式は、
【化1】
であり、
ここで、DOTA基は放射性金属Mと複合し、
前記放射性金属Mは、ルテチウム-177、イットリウム-90及びガリウム-68のうちの1つ以上の放射性金属基を用いることを特徴とするDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲート及び放射性金属の複合体。
【請求項2】
前記複合体及び1つ以上の薬学的賦形剤を使用して1つ以上の医薬製剤を形成することを特徴とする請求項1に記載の複合体の使用。
【請求項3】
癌の画像誘導治療を提供するために1つ以上の医薬製剤を第1の複合体と第2の複合体の協調的投与に使用し、前記第1の複合体の放射性金属はガリウム-68であり、第2の複合体の放射性金属はルテチウム-177又はイットリウム-90であることを特徴とする請求項2に記載の複合体の使用。
【請求項4】
1つ以上の試薬を薬物処方の組み合わせで提供し、第1の複合体及び第2の複合体を投与形態で再処方することを特徴とする請求項3に記載の複合体の使用。
【請求項5】
分子構造FIIを有するDZ-1-Lys-DOTAコンジュゲートから1つ以上の複合体が形成され、その分子式は、
【化2】
であり、
前記複合体は、1つ以上のコンジュゲート及びルテチウム-177、イットリウム-90及びガリウム-68基から選択される1つ以上の放射性金属を、1つ以上の試薬、緩衝剤又は賦形剤と混合及び錯化することを特徴とする請求項4に記載の複合体の使用。
【請求項6】
第1の複合体及び第2の複合体を協調的に投与するように複数の複合体を形成するために用いられ、そのうち、第1の複合体の放射性金属はガリウム-68であり、第2の複合体の放射性金属はルテチウム-177又はイットリウム-90であることを特徴とする請求項1に記載の複合体の使用。
【請求項7】
分子構造FIを有する第1の複合体及び第2の複合体を、癌に罹患した被験者に協調的に投与して、癌の画像誘導治療カップリングを提供し、
前記第1の複合体の放射性金属はガリウム-68であり、
前記第2の錯体の放射性金属はルテチウム-177又はイットリウム-90であることを特徴とする請求項1に記載の複合体の使用。
【請求項8】
薬物であって、1つ以上の複合体又はその塩、溶媒和物、代謝物又は誘導体、並びに1つ以上の薬学的に許容可能な担体及び/又は1つ以上の賦形剤及び/又は1つ以上の他の活性物質を含み、前記複合体は請求項1に記載の複合体であることを特徴とする薬物。
【請求項9】
前記薬物の投与経路には、経口、静脈内注射、間質注射、腹腔内注射、皮下注射又は筋肉内注射、及び/又はブラキセラピーを含むが、これらに限定されないことを特徴とする請求項
8に記載の薬物。
【請求項10】
前記薬物は0.01%~99%の活性化合物を含むことを特徴とする請求項
8に記載の薬物。
【国際調査報告】