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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】鼻腔内mRNAワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20230424BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230424BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61P43/00 121
A61K39/02
A61K39/12
A61K39/00 K
A61K9/51
A61K47/34
A61P31/04
A61P31/12
A61K48/00
A61K31/7115
A61P31/14
A61P11/00
A61K9/127
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022548838
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2021053633
(87)【国際公開番号】W WO2021160881
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】20157300.3
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520265930
【氏名又は名称】イーザアールエヌーエー イムノセラピーズ エンヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】ティエスト,ウィム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン フーリック,ダイアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076AA99
4C076BB25
4C076CC06
4C076CC32
4C076CC35
4C076EE25
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA13
4C084DA25
4C084MA38
4C084MA59
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC75
4C085AA03
4C085BA07
4C085BA49
4C085BA51
4C085BB11
4C085EE03
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086EA17
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA38
4C086MA59
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、概して鼻腔内mRNAワクチンに関し、より詳しくは、1つ以上の免疫賦活分子と、1つ以上の病原性抗原と、特異的に設計された送達システムとを含む鼻腔内mRNAワクチンに関する。具体的には、上記免疫賦活分子及び病原性抗原は、かかる分子及び抗原をコードするmRNA分子の形態で提供され、より詳しくは、CD40L、caTLR4及び/又はCD70をコードするmRNA分子と、細菌、ウイルス又は真菌の抗原をコードする1つ以上のmRNA分子との組合せで提供される。具体的に言えば、送達は、鼻におけるワクチンの保護及び沈着、並びに抗原提示細胞へのターゲティングを可能にする化学物質の混合物である。特に、本発明は、アウトブレイク状況において迅速に応答するワクチンの開発によく適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組合せであって、
-CD40L、caTLR4、及びCD70を含むリストから選択される機能性免疫賦活タンパク質をコードする1つ以上のmRNA分子と、
-細菌、ウイルス、又は真菌の抗原をコードする1つ以上のmRNA分子と、
を含み、前記組合せが、鼻腔内製剤の形態である、組合せ。
【請求項2】
前記1つ以上のmRNA分子が、前記機能性免疫賦活タンパク質CD40L、caTLR4及びCD70の全てをコードする、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
前記抗原が気道病原体由来の抗原である、請求項1又は2に記載の組合せ。
【請求項4】
前記抗原が、M(マトリックス)、N(ヌクレオカプシド)若しくはS(スパイク)抗原、T細胞刺激エピトープを含み、T調節性エピトープを抑制するように設計された人工抗原、又は抗体応答を誘導するように設計された表面抗原である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項5】
前記気道病原体がコロナウイルスである、請求項3に記載の組合せ。
【請求項6】
前記mRNA分子が、脂質ベースのナノ粒子等のナノ粒子の形態で製剤化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項7】
前記mRNA分子が、リポプレックス、デンドリマー、ポリプレックス又はハイブリッドリポポリプレックスの形態で製剤化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項8】
前記mRNA分子が、ポリエチレンイミンを使用してポリプレックスの形態で製剤化される、請求項7に記載の組合せ。
【請求項9】
1つ以上の前記mRNA分子が5'CAP-1構造を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項10】
1つ以上の前記mRNA分子が、1つ以上の修飾ヌクレオシド、特にN1-メチル-シュードウリジンを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の組合せを含むワクチン。
【請求項12】
ヒト医学又は獣医学において使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
感染性疾患の予防及び/又は治療に使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組合せ、又は請求項11に記載のワクチン。
【請求項14】
感染性疾患を予防又は治療する方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項11に記載のワクチンを、予防又は治療を必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して鼻腔内mRNAワクチンに関し、より詳しくは、1つ以上の免疫賦活分子と、1つ以上の病原性抗原と、特異的に設計された送達システムとを含む鼻腔内mRNAワクチンに関する。具体的には、上記免疫賦活分子及び病原性抗原は、かかる分子及び抗原をコードするmRNA分子の形態で提供され、より詳しくは、CD40L、caTLR4及び/又はCD70をコードするmRNA分子と、細菌、ウイルス又は真菌の抗原をコードする1つ以上のmRNA分子との組合せで提供される。具体的に言えば、送達は、鼻におけるワクチンの保護及び沈着、並びに抗原提示細胞へのターゲティングを可能にする化学物質の混合物である。特に、本発明は、アウトブレイク状況において迅速に応答するワクチンの開発によく適している。
【背景技術】
【0002】
SARS及びMERSのようなアウトブレイク感染性疾患をめぐるワクチンに関する過去の取り組みは、流行のピーク後にワクチンが発生したため、影響が限定的であり、使用された技術では、その後のアウトブレイクでの広範な適用及び再利用はできなかった。COVID-19(nCoV-2019)ワクチン設計のための現在の取り組みは、高レベルの全身性中和抗体を誘導する技術を利用している。しかしながら、SARS又はMERS感染から回復した患者の抗体応答は、本質的に短命であり、関連する株に対する交差反応性が限られていると報告されている。対照的に、コロナウイルスに対するT細胞応答は長寿命のようであり、有意な交差反応性を示す。
【0003】
粘膜、特に鼻腔内のT細胞免疫は、下気道感染症及び幾つかの空中浮遊ウイルス病原体による疾患を予防するための重要なツールとして進歩している。mRNAの鼻腔内投与は、非常に特殊な状況下でマウスにおいてかかる強力な免疫を誘導することが示されている。T細胞免疫を一次防御として使用することで、体液性免疫応答の標的となるウイルスタンパク質の既知の変動に対してアプローチがより堅牢になり、株ドリフト(straindrift)、更には将来のコロナ変異に対する防御に期待がかかる。mRNAによる鼻腔内ワクチン接種は、かかる粘膜T細胞応答を誘導する可能性がある。さらに、鼻腔内送達は、市場でFluMist(商標)を使用した実証済みのワクチン技術である。
【0004】
免疫賦活タンパク質CD40L、CD70、及び構成的に活性型のTLR4(caTLR4)をコードする3つのmRNAの混合物であるTriMixは、皮内、静脈内及び節内のmRNAワクチン投与の際に、治療用癌ワクチンに関連して、同時送達されるmRNAにコードされる抗原に対するT細胞応答の規模及び質を高めることが実証されている。ここで、本発明者らは、TriMixmRNAと抗原をコードするmRNAとの同時投与が、呼吸器ウイルスに対する鼻腔内ワクチン接種の有効性を高め得ることを実証する。
【0005】
ヒトコロナウイルス(HCoV)は長い間、取るに足らない病原体であり、他の点では健康な人に「感冒」を引き起こすと考えられてきた。しかしながら、21世紀には、2つの高病原性HCoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV))が動物の保有宿主から出現し、驚くべき罹患率及び死亡率を伴って世界的な流行を引き起こした。
【0006】
コロナウイルスはエンベロープをもつRNAウイルスであり、ヒト、他の哺乳類及び鳥類に広く分布しており、呼吸器、腸、肝臓及び神経の疾患を引き起こす。6つのコロナウイルス種がヒトの疾患を引き起こすことが知られている。229E、OC43、NL63、及びHKU1の4種のウイルスが蔓延しており、典型的には免疫力のある個人に感冒の症状を引き起こす。他の2つの株、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)及び中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は人獣共通感染症を起源とし、時には致命的な疾患に関連している。SARS-CoVは、2002年及び2003年に中国の広東省で発生した重症急性呼吸器症候群の病因であった。MERS-CoVは、2012年に中東で発生した重度の呼吸器疾患の原因となった病原体であった。
【0007】
SARSの一般的な症状としては、発熱、咳、呼吸困難、時には水様性下痢が挙げられる。感染した患者のうち、20%~30%が人工呼吸器を必要とし、10%が死亡し、高齢の患者及び併存疾患のある患者では致死率が高くなった。ヒトからヒトへの感染は、主に医療現場で報告されている。この院内拡散は、基本的なウイルス学によって説明される可能性がある。SARSS糖タンパク質の主要なヒト受容体であるヒトアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、上気道ではなく主に下気道に見られる。受容体の分布は、上気道症状の欠如と、個人が既に入院している場合に疾病の後期(約10日目)にウイルス排出のピークが発生したという知見の両方を説明する可能性がある。SARSのケアでは、挿管等のエアロゾルを生成する手技が必要になることが多く、これも顕著な院内感染拡大の一因となった可能性がある。
【0008】
MERSは、重度の非定型肺炎等の多くの臨床的特徴をSARSと共有しているが、重要な違いは明らかである。MERSを有する患者は顕著な胃腸症状、多くの場合急性腎不全を有し、これは、MERS-CoVS糖タンパク質が下気道と並んで、腎臓及び消化管に存在するジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)に結合することによって説明される可能性がある。MERSは50%~89%の患者で人工呼吸器を必要とし、致死率は36%である。
【0009】
2019年12月、原因不明の肺炎を有する患者のクラスターが、中国の武漢にある海鮮卸売市場とつながりがあった。これまで知られていなかったベータコロナウイルスが、肺炎を有する患者の試料において公平なシーケンシングを使用して発見された。ヒト気道上皮細胞を使用して、COVID-19という名前の新型コロナウイルスが単離され、これは、サルベコウイルス亜属であるオルトコロナウイルス亜科内の別のクレードを形成した。MERS-CoVとSARS-CoVのいずれとも異なり、COVID-19は、ヒトに感染するコロナウイルスのファミリーの7番目のメンバーである。
【0010】
コロナウイルスに対するヒトワクチンは登録されておらず、第I相開発よりも先には進んでいない。多くの(弱毒化された)獣医用コロナワクチン(イヌ、ネコ)は存在している。
【0011】
アウトブレイクが発生するたびに、加速されたワクチン開発が開始された。しかしながら、開発期間が長いため、ワクチン候補が第I相を通過するまでに、その発生率(したがって、ワクチンの有効性を試験する可能性)は既に低いレベルにまで低下している。その後のアウトブレイクは異なるウイルスのサブタイプであるため、以前の取り組みを使用することはできない。
【0012】
SARSの発生に基づいて、米国、欧州、及びアジアの多くのワクチン開発者が候補を前臨床開発に移行させ、幾つかは実際に第I相で試験された(非特許文献1)。2003年に採用されたワクチン技術は、幾つかの弱毒生ウイルス、少数のサブユニットワクチン、一部のアデノベースのワクチン、及び一部のDNAワクチンを含む。
【0013】
データは、強力な全身抗体応答(例えば、スパイクタンパク質に対する)の誘導が中和を保証するものではないことを教示する。非特許文献1は、強力なIgA応答を誘導することにより、鼻腔内ワクチン接種が伝播の予防に最適な経路である可能性が高いことを示している。
【0014】
呼吸器疾患の発生時に、これらの長い新規ワクチンの開発プロセスに対する答えを提供するために、本発明者らは、ここで、鼻腔内製剤の形で、CD40L、caTLR4、及びCD70を含むリストから選択される機能性免疫賦活タンパク質をコードする1つ以上のmRNA分子と、細菌、ウイルス、又は真菌の抗原をコードする1つ以上のmRNA分子とを含む、新規なワクチンプラットフォームを開発した。かかるプラットフォームアプローチは、新規又は更には既存の呼吸器病原体の発生時にワクチンを迅速に開発するのに非常に適している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Roper,R. L., & Rehm, K. E. (2009). Expert Review of Vaccines, 8(7), 887-898.
【発明の概要】
【0016】
第1の態様において、本発明は、組合せであって、
-CD40L、caTLR4、及びCD70を含むリストから選択される機能性免疫賦活タンパク質をコードする1つ以上のmRNA分子と、
-細菌、ウイルス、若しくは真菌の抗原をコードする1つ以上のmRNA分子、又はT細胞刺激エピトープを含み、T調節性エピトープを抑制するように設計された人工抗原と、
を含み、上記組合せが、鼻腔内製剤の形態である、組合せを提供する。
【0017】
特定の実施の形態において、上記1つ以上のmRNA分子は、上記機能性免疫賦活タンパク質CD40L、caTLR4及びCD70の全てをコードする。
【0018】
更に別の実施の形態において、上記抗原は、コロナウイルス等の気道病原体由来の抗原である。
【0019】
別の特定の実施の形態において、上記抗原は、M(マトリックス)、N(ヌクレオカプシド)、S(スパイク)抗原、又はウイルスにコードされた非構造タンパク質(NSP)、特に、M(マトリックス)、N(ヌクレオカプシド)、S(スパイク)抗原である。
【0020】
別の特定の実施の形態において、上記抗原は、病原体のゲノムからの幾つかのエピトープで構成される人工的に構成された免疫原である。
【0021】
本発明の更に別の実施の形態において、上記mRNA分子は、脂質ベースのナノ粒子、又はデンドリマー、ポリプレックス、リポプレックス、ハイブリッドリポポリプレックス若しくはポリリポプレックス製剤(脂質ベースのナノ粒子、又はリポプレックス若しくはポリリポプレックス製剤等)を含む脂質ベース又はポリマーベースのナノ粒子の形態で製剤化される。
【0022】
更なる態様において、本発明は、本明細書に定義される組合せを含むワクチンも提供する。
【0023】
本発明全体は、適切な送達装置との組合せ、並びに鼻への送達及び暴露を最大化し、肺への暴露を最小化するプロトコルを使用することを含む。
【0024】
また、本発明は、ヒト医学又は獣医学において使用され、特に感染性疾患の予防及び/又は治療に使用される、本明細書に定義される組合せ又はワクチンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】肺におけるA/Puerto Rico/08/34のETA202003ウイルス力価(D48)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書において上記で既に詳述したように、本発明は、組合せであって、
-CD40L、caTLR4、及びCD70を含むリストから選択される機能性免疫賦活タンパク質をコードする1つ以上のmRNA分子と、
-細菌、ウイルス、又は真菌の抗原をコードする1つ以上のmRNA分子、特に抗体応答の誘導のために設計されたmRNA分子、或いは、T細胞刺激エピトープを含み、T調節性エピトープを抑制するように設計された人工抗原と、
を含み、上記組合せが、鼻腔内製剤の形態である、組合せを提供する。
【0027】
具体的な実施形態において、上記組合せは、TriMix、すなわち上記CD40L、caTLR4及びCD70免疫賦活タンパク質の全てをコードするmRNA分子を含む。
【0028】
本発明全体を通して、「TriMix」という用語は、CD40L、CD70及びcaTLR4免疫賦活タンパク質をコードするmRNA分子の混合物を意味する。CD40LとcaTLR4との組合せの使用は、可溶性CD40L及びLPSの付加によるCD40及びTLR4のライゲーションについて示されているように、成熟したサイトカイン/ケモカイン分泌性DCを生じる。DCへのCD70の導入は、活性化T細胞アポトーシスを阻害し、T細胞増殖を支持することによってCD27+ナイーブT細胞に対する共刺激シグナルをもたらす。caTLR4の代替として、他のToll様受容体(TLR)が使用され得る。それぞれのTLRについて構成的活性型が知られ、宿主免疫応答を惹起するためにDCに導入され得る可能性がある。しかしながら、本発明者らの見解では、caTLR4が最も強力な活性化分子であり、したがって好ましい。
【0029】
本明細書全体を通して使用される「標的」という用語は、本明細書に記載され得る具体的な例に限定されない。ウイルス、細菌又は真菌等の任意の感染因子を標的とすることができる。
【0030】
本明細書全体を通して使用される「標的特異的抗原」という用語は、本明細書に記載され得る具体的な例に限定されない。本発明が、提示される標的特異的抗原にかかわらず、APCにおける免疫賦活の誘導に関することが当業者には明らかである。提示される抗原は、被験体において免疫応答を惹起することを意図する標的の種類によって決まる。標的特異的抗原の典型的な例は、細菌及び真菌細胞、又は特定のウイルスタンパク質若しくはウイルス構造に特異的な発現又は分泌されたマーカーである。
【0031】
標的特異的抗原は、好ましくは、病原性ゲノム中のかなり安定な(すなわち、同じ病原性種の異なる株間でほとんど変化が観察されない)領域から選択される。短期的な解決策、すなわち既に感染しているか又は感染するリスクが高い被験体のためのワクチンの開発では、最良の標的抗原は、おそらく「M」(マトリックス)及び/又は「N」(ヌクレオカプシド)タンパク質、並びに非構造タンパク質である。リスクの高い地域及び濃厚接触個体における拡散を防ぐために使用することが意図されるリングフェンス緊急ワクチンでは、興味深い組合せは、鼻腔内送達されるS(スパイク)及びM/N標的を含むmRNAワクチンである。予防ワクチン接種等の長期的な解決策の場合、最善の解決策は、次の事例で迅速に展開することができる「ユニバーサル」ワクチンである。スパイクタンパク質の高い変動性、使用される様々な受容体、及び中和する可能性への疑問により、ユニバーサル抗体ベースワクチンはありそうにもない。その場合、主要な病原性株にわたる保存領域に対するT細胞ベースのワクチンは、はるかに実現可能である。特定の一実施形態において、病原体のゲノムからの強力なT細胞刺激エピトープからなり、任意のT抑制エピトープを除去する人工的に構築された免疫原は、かかる強力で広範な防御を付与する。或いは、抗原は、被験体において抗体応答を誘導するように設計され得る。
【0032】
本明細書を通して使用される「感染性疾患」又は「感染症」という用語は、本明細書で例示された可能性のある感染症の種類に限定されることを意図していない。したがって、この用語は、ワクチン接種が被験体にとって有益となり得る全ての感染因子を包含する。非限定的な例は、以下のウイルスによる感染症又は障害である:後天性免疫不全症候群-アデノウイルス感染症-アルファウイルス感染症-アルボウイルス感染症-ベル麻痺-ボルナ病-ブニアウイルス感染症-カリシウイルス感染症-水痘-感冒-尖圭コンジローム-コロナウイルス感染症-コクサッキーウイルス感染症-サイトメガロウイルス感染症-デング熱-DNAウイルス感染症-伝染性膿瘡-脳炎-脳炎、アルボウイルス-脳炎、単純ヘルペス-エプスタイン・バーウイルス感染症-感染性紅斑-突発性発疹-疲労症候群、慢性-ハンタウイルス感染症-出血熱、ウイルス性-肝炎、ウイルス性、ヒト-口唇ヘルペス-単純ヘルペス-帯状疱疹-耳帯状疱疹-ヘルペスウイルス感染症-HIV感染症-感染性単核球症-鳥インフルエンザ-インフルエンザ、ヒト-ラッサ熱-はしか-髄膜炎、ウイルス性-伝染性軟属腫-サル痘-おたふくかぜ-骨髄炎-パピローマウイルス感染症-パラミクソウイルス感染症-サシチョウバエ熱-灰白髄炎-ポリオーマウイルス感染症-ポリオ後症候群-狂犬病-呼吸器合胞体ウイルス感染症-リフトバレー熱-RNAウイルス感染症-風疹-重症急性呼吸器症候群-遅発性ウイルス感染症-天然痘-亜急性硬化性全脳炎-ダニ媒介性疾患-腫瘍ウイルス感染症-いぼ-西ナイル熱-ウイルス病-黄熱病-人獣共通感染症等。ウイルスの特異的抗原は、HIV-gag、HIV-tat、HIV-rev、若しくはHIV-nef、又はC型肝炎抗原であり、特に好ましいウイルスに起因する感染症又は障害は、コロナウイルス229E、コロナウイルスOC43、SARS-CoV、HcoVNL63、HKU1、MERS-CoV又はCOVID-19に起因する感染症等のコロナウイルス感染症である。
【0033】
更なる非限定的な例は、以下の細菌又は真菌によって引き起こされる感染症又は障害である:膿瘍-放線菌症-アナプラズマ症-炭疽菌-関節炎、反応性-アスペルギルス症-菌血症-細菌感染症及び真菌症-バルトネラ感染症-ボツリヌス症-脳膿瘍-ブルセラ症-バークホルデリア感染症-カンピロバクター感染症-カンジダ症-カンジダ症、外陰腟-猫ひっかき病-蜂窩織炎-中枢神経系感染症-軟性下疳-クラミジア感染症-クラミジア類感染症-コレラ-クロストリジウム感染症-コクシジオイデス症-角膜潰瘍-交差感染症-クリプトコッカス症-皮膚真菌症-ジフテリア-エーリキア症-膿胸、胸膜-心内膜炎、細菌性-眼内炎-腸炎、偽膜性-丹毒-大腸菌感染症-筋膜炎、壊死性-フルニエ壊疽-フルンケル症-フソバクテリウム感染症-ガス壊疽-淋病-グラム陰性菌感染症-グラム陽性菌感染症-鼠径肉芽腫-化膿性汗腺炎-ヒストプラスマ症-麦粒腫-膿痂疹-クレブシエラ感染症-レジオネラ症-ハンセン病-レプトスピラ症-リステリア感染症-口腔底蜂窩織炎-肺膿瘍-ライム病-鼠径リンパ肉芽腫症-マズラ菌症-類鼻疽-髄膜炎、細菌性-マイコバクテリウム感染症-マイコプラズマ感染症-真菌症-ノカルジア感染症-爪真菌症-骨髄炎-爪周囲炎-骨盤内炎症性疾患-ペスト-肺炎球菌感染症-シュードモナス感染症-オウム病-産褥感染症-Q熱-鼠咬熱-回帰熱-気道感染症-咽後膿瘍-リウマチ熱-鼻硬化腫-リケッチア感染症-ロッキー山紅斑熱-サルモネラ感染症-猩紅熱-ツツガムシ病-敗血症-性感染症、細菌性-性感染症、細菌性-ショック、敗血症性-皮膚疾患、細菌性-皮膚疾患、感染性-ブドウ球菌感染症-連鎖球菌感染症-梅毒-梅毒、先天性-破傷風-ダニ媒介性疾患-白癬-癜風-トラコーマ-結核-結核、脊髄-野兎病-腸チフス-チフス、シラミ媒介性-尿路感染症-ウィップル病-百日咳-ビブリオ感染症-イチゴ腫-エルシニア感染症-人畜共通感染症-接合菌症等。
【0034】
本発明のワクチンの好ましい実施形態において、mRNA又はDNA分子(複数の場合もある)が、CD40L及びCD70免疫賦活タンパク質をコードする。本発明のワクチンの特に好ましい実施形態において、mRNA又はDNA分子(複数の場合もある)は、CD40L、CD70及びcaTLR4免疫賦活タンパク質をコードする。
【0035】
免疫賦活タンパク質をコードする上記のmRNA又はDNA分子は、単一mRNA又はDNA分子の一部であってもよい。好ましくは、上記の単一mRNA又はDNA分子は、2つ以上のタンパク質を同時に発現することが可能である。更なる実施形態において、免疫賦活タンパク質をコードする2つ以上のmRNA又はDNA分子は、単一のmRNA又はDNA分子の一部である。この単一のmRNA又はDNA分子は、好ましくは、2つ以上のタンパク質を独立して発現することができる。好ましい実施形態において、免疫賦活タンパク質をコードする2つ以上のmRNA又はDNA分子は、内部リボソーム侵入部位(IRES)によって単一のmRNA又はDNA分子に連結され、2つ以上のmRNA配列のそれぞれを1つのアミノ酸配列に別々に翻訳することを可能にする。或いは、異なる免疫賦活因子のコード配列の間に自己切断型2aペプチドコード配列を組み込む。このようにして、2つ以上の因子を1つの単一のmRNA又はDNA分子によってコード化することができる。IRES配列又は自己切断型2aペプチドによって連結されたCD40L及びCD70をコードするmRNAで細胞を電気穿孔した予備データは、このアプローチが実際に実現可能であることを示している。
【0036】
したがって、本発明は、2つ以上の免疫賦活因子をコードするmRNA分子を更に提供し、ここで、2つ以上の免疫賦活因子は、2つ以上のコード配列間のIRESの使用によって単一のmRNA分子から別々に翻訳される。或いは、本発明は、翻訳後に2つのタンパク質配列の切断を可能にする、自己切断型2aペプチドコード配列によって分離された2つ以上の免疫賦活因子をコードするmRNA分子を提供する。
【0037】
いずれかの実施形態において、上記標的特異的抗原は、以下からなる群から選択される:標的細胞(複数の場合がある)から単離された全mRNA、1つ以上の特定の標的mRNA分子、標的細胞(複数の場合がある)のタンパク質溶解物、標的細胞(複数の場合がある)からの特定のタンパク質、合成標的特異的ペプチド又はタンパク質、及び標的特異的抗原又はその派生ペプチド(複数の場合がある)をコードする合成mRNA又はDNA。上記標的は、ウイルス、細菌又は真菌、タンパク質又はmRNA、特に抗体応答の誘導のために設計されたmRNA分子であり得る。
【0038】
本明細書において使用又は言及されるmRNA又はDNAは、裸のmRNA若しくはDNAであっても又は保護されたmRNA若しくはDNAであってもよい。DNA又はmRNAの保護は、その安定性を増大させた上で、mRNA又はDNAをワクチン接種目的で使用する能力を維持する。mRNA及びDNAの両方の保護の非限定的な例は、リポソームカプセル化、プロタミン保護、(カチオン性)脂質リポプレックス化(Lipoplexation)、脂質のカチオン性又はポリカチオン性組成物、マンノシル化リポプレックス化、バブルリポソーム化(Bubble Liposomation)、ポリエチレンイミン(PEI)保護、リポソーム負荷マイクロバブル保護、脂質ナノ粒子等であり得る。
【0039】
幾つかの好ましい実施形態において、本発明の方法で使用されるmRNAは、いわゆるCAP-1構造を有する5'キャップ構造を有し、これは、キャップヌクレオチドに対して末位から2番目のヌクレオチド中のリボースの2'ヒドロキシルがメチル化されていることを意味する。
【0040】
別の特定の実施形態において、上記mRNA分子は、自己増幅又はトランス増幅mRNA分子である。自己増幅mRNA分子は典型的には、抗原、並びに細胞内RNA増幅及び豊富なタンパク質発現を可能にするウイルス複製機構をコードする。トランス増幅mRNA分子は同様の原理を使用するが、抗原及びウイルスの複製機構は異なるmRNA分子からコードされる。
【0041】
別の特定の実施形態において、本発明の使用されるmRNA分子の2つ、3つ、4つ…又は全ては、いわゆるCAP-1構造を有する5'キャップ構造を有する。
【0042】
更なる実施形態において、本発明のmRNA分子の1つ以上は、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを更に含み得る。別の特定の実施形態において、本発明の使用されるmRNA分子の2つ、3つ、4つ…又は全ては、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを有する。
【0043】
本発明の別の特定の実施形態において、上記mRNA分子は、シュードウリジン、5-メトキシ-ウリジン、5-メチル-シチジン、2-チオ-ウリジン及びN6-メチルアデノシンを含むリストから選択されるような少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを更に含む。
【0044】
本発明の特定の実施形態において、上記少なくとも1つの修飾ヌクレオシドは、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン及び4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジンのリストから選択されるようなシュードウリジンであり得る。非常に特定の実施形態において、上記の少なくとも1つの修飾ヌクレオシドは、N1-メチル-シュードウリジンである。
【0045】
本発明の文脈内で使用するのに適した代替的なヌクレオシド修飾としては、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン及び4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジンが挙げられる。幾つかの実施形態において、mRNAは、5-アザ-シチジン、シュードイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-シュードイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-シュードイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-シュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-シュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-シュードイソシチジン及び4-メトキシ-1-メチル-シュードイソシチジンからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。幾つかの実施形態において、mRNAは、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン及び2-メトキシ-アデニンからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。幾つかの実施形態において、mRNAは、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン及びN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシンからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。
【0046】
本発明で使用されるmRNA分子は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得て、特定の実施形態においては、特定の種類のヌクレオチドの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%は、修飾されたものにより置き換えられ得る。同じmRNA分子内に異なるヌクレオチド修飾が含まれることも除外されない。本発明の非常に特定の実施形態において、上記mRNA分子中の約100%のウリジンが、N1-メチル-シュードウリジンによって置き換えられている。
【0047】
特定の実施形態において、上記の本発明のmRNA分子の1つ以上が翻訳エンハンサー及び/又は核内係留要素(nuclearretention element)を更に含有し得る。好適な翻訳エンハンサー及び核内係留要素は、国際公開第2015071295号に記載されているものである。
【0048】
本発明の組合せ及びワクチンは、特に鼻腔内投与用に製剤化される。
【0049】
本発明に関連して、「鼻腔投与」又は「鼻腔内投与」という用語は、本発明の組成物/ワクチンが鼻腔に適用される投与経路であることを意味する。鼻粘膜は、成分の非侵襲的な局所又は全身投与に使用することができる。より具体的には、本発明に関連して、かかる鼻腔内投与形態を使用して、本発明のmRNA分子を上気道の抗原提示細胞と直接接触させ、常在記憶CD8+T細胞のような幾つかの防御性T細胞を誘導し、それによって気道感染症に対する局所免疫を誘導することができる。これにより、病原体が下気道に広がるリスクも軽減され、病気の病理も軽減される。
【0050】
かかる鼻腔内投与を可能にする任意の製剤は、本発明に関連する使用に適している。特に、幾つかの具体的で非限定的な例を以下に提供する。
【0051】
非常に簡単な構成では、本発明の組成物/ワクチンは、1つ以上のmRNA分子を含む治療上許容される溶液を、スポイト等の形態で口腔咽頭腔に単に注入することによって投与することができる。或いは、具体的には投与が正確な投薬を必要とする場合、単回/2回用量(unit/bidose)システムを使用することができる。これらのシステムは、すぐに投与できる1つ又は2つの分割された半用量を含む。
【0052】
鼻腔内投与のための治療上許容され得る溶液は、好ましくは、それらがその中に包含されるmRNAの安定性に影響を与えないように選択される。さらに、かかる溶液は、好ましくは、口腔咽頭腔の抗原提示細胞におけるRNA取り込みを増加させる。したがって、jetPEI(商標)、Lipofectamine(商標)、RiboJuice(商標)又はStemfect(商標)等の従来のRNAトランスフェクション緩衝液/成分を使用することができる。
【0053】
jetPEI(商標)トランスフェクション剤は直鎖状ポリエチレンイミン誘導体(特にポリプレックス)である。したがって、具体的な実施形態において、鼻腔内投与は、ポリエチレンイミン及び/又はその誘導体の存在下で行うことができる。
【0054】
リポフェクタミンは、DOSPA(2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパニミニウムトリフルオロアセテート)とDOPE(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン)の3:1混合物で構成される。
【0055】
或いは、本発明の組成物/ワクチンは、エアロゾルスプレー、鼻スプレー、複数回投与スプレーポンプ等の形態で処方され得る。複数回投与スプレーポンプでは、組成物/ワクチンを、ガラス又はプラスチック材料で作られたボトルに充填することができ、浸漬チューブを含む鼻スプレーポンプを取り付けることによってこれを閉じる。鼻スプレーポンプは置換型ポンプであり、アクチュエーターをボトルに向けて押してポンプを作動させると、ピストンが計量チャンバー内で下方に移動する。計量チャンバーの底にあるバルブ機構は、浸漬チューブへの逆流を防ぐ。そのため、ピストンの下向きの動きは、計量チャンバー内に圧力を発生させ、アクチュエーターを介して空気又は液体を外側に押し出し、スプレーを生成する。作動圧力が取り除かれると、スプリングがピストン及びアクチュエーターを初期位置に戻す。これにより計量チャンバー内に負圧が生じ、計量チャンバーの底にある浸漬チューブの上のボールシートからボールが持ち上げられ、容器から液体が引き出される。計量チャンバーは適切な投薬を保証し、アクチュエーターの先端にある開いた旋回チャンバーが計量された用量をエアロゾル化する。
【0056】
ほとんどの鼻スプレーポンプでは、作動あたりの分注量は50 μl~150 μlに設定されており、量が多いと滴り落ちる傾向があるため、大人の場合、鼻孔あたり約100μlの投与量が最適である。したがって、予想される用量は、両方の鼻孔に噴霧した場合、およそ100 μl~200 μlの容量に収まることが望ましい。
【0057】
意図する目的に応じて、鼻腔内組成物は、特定の投与スキームに従って、例えば、1日に1回、2回、又は3回投与することができる。或いは、鼻腔内投与は、2日、3日、4日、5日、6日又は7日ごとに、例えば1週間に1回、或いは2週間に1回投与され得る。上記投与のそれぞれについて、治療の開始時にはより高い用量、治療の終わりに向かってより低い用量等、投薬量も変化し得る。使用プロトコルは、投与後に息を止めたり息を吐いたりする等、肺による取り込みを最小限に抑えるための具体的な指示を含む。
【0058】
本発明の組成物を、予防用組成物(症状の発現前等)として、或いは治療用組成物(症状が既に現れている場合等)として使用することができる。
【0059】
mRNA分子の不安定な性質を考えると、これらは、好ましくは、本明細書で上に定義されたような保護された形式であり、より具体的には、mRNA分子は例えば脂質ナノ粒子に含まれ得る。したがって、本発明はまた、本明細書に定義される組合せ又は組成物を提供し、1つ以上の上記mRNA分子がナノ粒子(脂質ベースのナノ粒子又はポリプレックス、リポプレックス及びポリリポプレックス等)に包含される。
【0060】
本明細書において使用される「ナノ粒子」という用語は、粒子を特に核酸の全身投与、特に静脈内投与に適したものにする直径を有し、通例1000ナノメートル(nm)未満の直径を有する任意の粒子を指す。
【0061】
本発明の特定の実施形態において、ナノ粒子は、脂質ナノ粒子及びポリマーナノ粒子を含むリストから選択される。
【0062】
脂質ナノ粒子(LNP)は、異なる脂質の組合せで構成されるナノサイズ粒子として一般に知られている。多くの異なる種類の脂質がかかるLNPに含まれ得るが、本発明のLNPは例えば、イオン性脂質、リン脂質、ステロール及びPEG脂質の組合せで構成され得る。
【0063】
ポリマーナノ粒子は、典型的には、ナノスフェア又はナノカプセルであり得る。ポリマーナノ粒子の調製には2つの主要な戦略、すなわち「トップダウン」アプローチ及び「ボトムアップ」アプローチが使用される。トップダウンアプローチでは、事前に形成されたポリマーの分散によりポリマーナノ粒子が生成されるが、ボトムアップアプローチでは、モノマーの重合がポリマーナノ粒子の形成をもたらす。トップダウン法及びボトムアップ法はいずれも、ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(シアノアクリル酸エチル)、ポリ(シアノアクリル酸ブチル)、ポリ(シアノアクリル酸イソブチル)、及びポリ(シアノアクリル酸イソヘキシル)のような合成ポリマー/モノマー;ポリ(ビニルアルコール)及び臭化ジデシルジメチルアンモニウムのような安定剤;並びにジクロロメタン及び酢酸エチル、ベンジルアルコール、シクロヘキサン、アセトニトリル、アセトンのような有機溶媒等を使用する。最近、科学界は、天然高分子及び毒性の少ない溶媒を用いる合成方法を使用して、合成高分子の代替品を見つけようとしている。
【0064】
本発明はまた、ヒト医学又は獣医学において使用され、特に病原性感染症、より詳しくはウイルス感染等の呼吸器感染症の治療において使用される、本明細書に定義される組合せ及びワクチンを提供する。
【0065】
最後に、本発明は、治療を必要とする被験体に本発明の組合せ又はワクチンを投与する工程を含む、病原性感染症を治療する方法を提供する。
【0066】
上記組成物は獣医学分野においても価値がある可能性があり、本明細書における目的では、動物における疾患の予防及び/又は治療だけでなく、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、魚等の経済的に重要な動物の場合には、動物の成長及び/又は体重、及び/又は動物から得られる肉又は他の製品の量及び/又は品質を高めることも含む。
【0067】
治療される被験体は、好ましくは、細菌、ウイルス又は真菌の感染症を含む群から選択される疾患又は障害に罹患している。
【0068】
本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、感染のリスクを軽減すること、又は病原性感染症に関連する症状を軽減することを意味する。
【実施例
【0069】
実施例1:短期的な危機
危機が実際に世界的なパンデミックに発展するという(ありそうもない)シナリオでは、非常用製品の敷居は急に低くなる。(差し迫った)インフルエンザのパンデミックに言及すると、全く新しいアジュバント技術による幾つかのワクチンが、その状況で迅速に試験される機会を得た。
【0070】
かかる場合、次の選択肢のいずれかに従うことができる:
A)「キラー」T細胞ベースのワクチン-汚染又は感染した個体のリスクが高い場合に使用される。最良の標的は、おそらく「M」(マトリックス)及び/又は「N」(ヌクレオカプシド)タンパク質である。
B)リングフェンス緊急ワクチン-リスクの高い地域及び濃厚接触個体での拡散を防ぐために使用される。かかる場合、興味深い組合せは、おそらくは、鼻腔内に送達されるS(スパイク)及びM/N標的を含むmRNAワクチンである。Stemgent製のStemfect(商標)トランスフェクションキットから研究者が適合させた鼻腔内送達プロトコルを用いたマウス腫瘍モデルにおいて、驚くほど良い結果が得られる(Phua,Leong, & Nair, 2013; Phua, Staats, Leong, & Nair, 2014)。
【0071】
実施例2:長期的な解決策
考えられる全てのコロナ又は他の種類の病原体に対する大規模な予防ワクチン接種は行われそうにない。株の変動性だけでなく、攻撃のタイミング及び場所が予測できないため、誰が危険に晒されているかを定義することは不可能である。
【0072】
したがって、最善の解決策は、次の事例で迅速に展開することができる「ユニバーサル」ワクチンである。スパイクタンパク質の高い変動性、使用される様々な受容体、及び広域中和の可能性への疑問により、ユニバーサル抗体ベースワクチンはありそうにもない。主要な病原性株全体の保存領域に対するT細胞ベースのワクチンは、はるかに実現可能と思われる。病原性ファミリーの遺伝子構造の徹底的な分析と、エピトープ予測及び融合コンストラクトを使用したスマートな設計により、可能な限り最善の候補が得られる。
【0073】
実施例3:開発概要
工程1:探索的マウス実験(生体内分布、概念及び安全性):
・鼻腔内Fluc生体内分布研究
・Trimix-モデル抗原(例えば、E7)-鼻腔内-免疫の読み取り及び鼻/気道の組織病理学
M、N、及びSのmRNA、並びに構造タンパク質及び非構造タンパク質をコードするmRNAの研究グレードでの生産
迅速な科学的アドバイス:イノベーションオフィス、sFDA
【0074】
工程2:免疫及び毒性学(immunoand tox)を可能にするマウス:
・Trimix-M/S-鼻腔内-nCoV免疫の読み取り及び全毒性病理組織学(fulltox histopath)
必要に応じてStemFectを調整し、供給する(少なくともGMP程度の品質で)
チャレンジ研究のための研究グレードでの生産-M*及びS*
M/S mRNA(及びTrimix)のGMPグレードでの生産
臨床試験の提出
【0075】
工程3:健康なボランティアでの第I相から第II相への試験:
・スケジュール0日目(任意に、7日目)。第I相において25人の被験体
・最小で250人の被験体まで段階的に増加
・安全性パラメーター及び免疫の読み取り(Sを使用する場合はIgAを含む)
動物チャレンジモデル:
・Trimix-M*(+S*)-鼻腔内-免疫化0日目(任意に7日目)種特異的コロナ株によるチャレンジ-防御/免疫相関の確立(動物50匹)
商業生産及び一貫性
緊急使用ファイル提出
【0076】
実施例4:前臨床製品開発アプローチ
前臨床プログラムは4つの工程からなる:
1.気道発現及び分布の評定。生物発光によってin vivoでFLUC mRNAの発現をモニタリングする独自の可能性を使用して、マウスでの最初の実験は、2~3の潜在的な鼻送達システム(裸のmRNA、StemFect、及び社内LNP)を評価し、鼻腔での送達及び発現、並びに肺における発現の不在又は低発現を確認する。送達システムは、このアッセイでの性能及びその一般的な製造特性に基づいて選択される。
【0077】
2.T細胞免疫応答の誘導を、2回目のマウス実験で評定する。ここでは、本発明者らが社内での経験及び公開された経験、並びに免疫学的ツールを持っている2つのモデル抗原を2つの投薬計画(0日目、8日目、及び0日目、-22日目)で投与する。全てのT細胞コンパートメント(粘膜、肺、リンパ節、全身)の完全な評価、並びに気道及び選択された臓器の安全性評価により、免疫学的仮説及びプラットフォームの予想される安全性プロファイルを確認する。
【0078】
3.GLP反復投与毒性研究により、ワクチンの臨床使用への移行が可能になる。mRNAワクチンに関する以前の経験に基づいて、本発明者らは、単一の種を選択することを選ぶ。この研究により、ワクチン設計中に予測された応答に従って、COVID-19標的による関連する免疫応答の誘導を確認することができる。非経口投与用のTriMix+抗原mRNAは、既に毒性評価が行われてきた。この評価の主な焦点は、送達システムにある。さらに、遺伝毒性研究及び薬理学的研究を支持することを、送達システムの選択された構成要素の計画に追加する。実験1の調査結果に応じて、肺における二次的影響に対して特別な注意が必要になる。第I相の開始と並行して、幾つかの追加の試験を実施することができる。
【0079】
4.動物におけるチャレンジと疾病予防研究。この段階は、臨床試験と並行して提案される。関連する動物種及びウイルス株の選択は、コロナワクチンの取り組みに対する貢献者のネットワーク内で協力の対象となる。この研究は、ワクチンが本発明者らの製品でワクチン接種され、免疫後にウイルスでチャレンジされた動物の下気道疾患の発症を防ぐことを示す。免疫評定により、この防御を免疫応答と関連付けることができ、次いでヒト被験体で観察された応答と比較することができる。動物チャレンジを使用することで、ワクチンの可能性を探ることができ、株のドリフト又は新たなコロナファミリーメンバーから防御する幅広い反応を生み出すことができる。
【0080】
実施例5:臨床開発アプローチ
臨床開発に対する本発明者らのアプローチは、安全性及び免疫原性に焦点を当て、期待される有効性を裏付けるために動物のチャレンジモデルとの相関関係を引き出すことである。緊急ワクチンとしての使用に対応するために、第I相から第II相への流動的な移行により、必要なデータの最速の生成が可能になる。同じ理由で、本発明者らは、短い誘導スケジュールを選択する。体液性応答の誘導とは対照的に、かかる短い投与スケジュールは、T細胞免疫において良好な結果をもたらす。
【0081】
製品の安全性は、次の3段階で評定される。
1.鼻粘膜のT細胞免疫を測定することは比較的新しいアプローチであり、幾つかの論文でしか発表されていない。ワクチン接種を受けた個人からの鼻の試料は、前述のように低侵襲の掻爬を使用して長期的に収集される(Jochems et al., 2018 & 2019)。確立された凍結保存プロトコルにより、バッチ分析が可能になる。これにより、本発明者らは、i)フェノタイピングによるワクチン接種に対するinvivo応答、及びii)抗原特異的応答を並行して測定することができるようになる。組織常在性メモリーT細胞、B細胞、及びDC応答を含むin vivo T細胞を、鼻の免疫系を標的としたパネルを用いたマスサイトメトリーを使用して詳細に特性評価した。このアッセイは現在、鼻掻爬試料を分析するためにLUMCで小型化されている。鼻における抗原特異的免疫の確立は、鼻細胞を、同じ個体のPBMCからのワクチン活性化単球由来樹状細胞と共培養することによって評定される。社内プロトコルは、粘膜応答を評定することができるように適合されている。サイトカイン産生(IFNγ、TNFα等)は上清中で測定されるが、T細胞でのCD40L及びCTLA-4誘導は、抗原特異的刺激を測定するためにフローサイトメトリーによってフェノタイピングされる。ヒトの鼻粘膜から収集された長期的な低侵襲試料を使用した細胞の表現型と機能の同時特性評価は、ワクチンの成功を迅速に予測する大きな可能性を秘めている。これらの方法を特定のプロトコルに適合させることは、プログラムの前臨床段階と並行して行われる。
【0082】
2.健康なヒトボランティアにおける第I相複数用量漸増試験。前臨床結果に基づいて、本発明者らは、この研究の開始及び標的用量/スケジュールを選択する。研究の最初の部分は、開始から主に安全性を評価する標的レジメンへの急速なステップアップ(例えば、1段階あたり3人の被験体)である。この研究のエンドポイントは、安全性(臨床評価、患者報告、及び血液分析)、全身(PBMC)及び粘膜(鼻サンプリング)免疫評定である。約40人の被験体がこの研究に含まれ、そのうち最低25人には標的用量/スケジュールで投与される。ワクチン接種前(-5日目及び-1日目)、ワクチン接種後早期(3日目及び7日目)、及びより長期間の追跡調査(2週目、3週目、4週目及び8週目)のため鼻試料を収集する。
【0083】
3.この最初の第I相に続いて、これも健康なボランティアにおいて、第II相免疫原性研究へと拡張する。選択されたワクチンスケジュールに含まれる被験体数の増加(n=100)により、誘導された免疫応答、その変動性、長期的なダイナミクス、及び動物モデルと防御との相関関係の堅牢な評定が可能になる。同じセットアップ及びネットワーク内で研究を続けると、データ生成の一貫性及び速度に明らかな利点がある。
【0084】
実施例6:マウスにおけるin vivo鼻腔内投与
材料及び方法
マウス
合計48匹のマウス(ハツカネズミ(Musmusculus))をCharles Riverから入手し、研究開始前に14日間順応させた。順応の間、動物を体重に基づいて群に割り当て、尾の入れ墨によって識別した。
【0085】
コンストラクト設計
インフルエンザNPタンパク質(インフルエンザA/NL/18/94 H3N2)の全長コード配列を、MHC複合体でのプロセッシング及び提示を最適化するために、シグナル配列及びDCランプ配列にインフレームでクローニングした。発現を改善し、mRNAコンストラクトに対する免疫原性応答を低減するために、N1メチルシュードウリジン修飾を使用した。
【0086】
TriMix mRNAと組み合わせて、免疫原性コンストラクトを1:1の固定比率で使用した。
【0087】
投与
0日目、7日目、14日目に、以下に詳述するように群の属性に従って、候補及び対照の投与を鼻腔内で行った(1群あたり16匹のマウス)
【0088】
42日目に、NP/TriMixmod(in vivo jetPEI)(群1)、NP-mod(in vivo jetPEI)(群2)又はPBS(群3)からの全ての動物に鼻腔内チャレンジを行った(1 LD50、10 μl)。
【0089】
最終時点(48日目)で、安楽死の5分前に動物にCD45.2-BV605抗体(Biolegend、クローン104、3μg)を静脈内注射した。肺を収集し、肺浸潤免疫(左葉)をウイルス力価測定に使用した。
【0090】
0日目、7日目及び14日目の免疫:
0日目に、マイクロピペットを用いて、30 μL(鼻孔あたり15 μL)の候補調製物(群1及び群2)又はPBS(群3)を全ての動物に鼻腔内投与した。7日目及び14日目に、30マイクロリットル(30μL)(鼻孔あたり15 μL)の候補調製物(群1及び群2)又はPBS(群3)をマイクロピペットで鼻腔内投与した。麻酔下で動物に投与した。
【0091】
0日目、7日目及び14日目に3.75 μg/3.75 μgのNP/TriMix mod(in vivojetPEI)(群1)又は7.5 μgのNP-mod(in vivo jetPEI)(群2)を用いて鼻腔内免疫(鼻孔あたり15 μL)を行った。
【0092】
ウイルス感染:
NP/TriMix mod(in vivo jetPEI)(群1)、NP-mod(in vivo jetPEI)(群2)、又はビヒクル(群3)で処理した群の全ての動物に、42日目にインフルエンザA PR8を鼻腔内でチャレンジした(1 LD50、10 μl)。
【0093】
肺の分離:
終末期(48日目)に、動物を二酸化炭素による窒息死により安楽死させ、臓器採取前に肉眼的剖検を行った。
【0094】
肺(左葉)を無菌的に収集し、計量し、Precellysチューブ内の4℃の0.5 mLの収集培地(49%DMEM(Gibco、カタログ番号11965-084)及び49%Medium199(Gibco、カタログ番号11150-059)、0.1%FBS(Gibco、カタログ番号26140-079)を添加)に入れた。Precellysチューブ内の肺をホモジナイズし、等分し、ウイルス力価測定のために凍結した。
【0095】
肺組織試料におけるインフルエンザウイルス量の推定:(TCID50)
ウイルス量の推定(48日目)のために収集された肺試料を、5000 rpmで20秒のサイクルを2回行い、サイクル間に5秒の休止を入れて破壊した。0.5mlのDMEM/Medium-199、0.1%FBSをチューブに添加する前後に、組織ホモジネートを数秒間ボルテックスした。組織ホモジネートから3200×g、4℃で10分間の遠心分離により組織断片を除去した。清澄な上清を回収し、ウイルス滴定のために等分して凍結した。
【0096】
肺試料を、Spin-Xチューブ(Corning、カタログ番号8160)を使用してフィルター滅菌した(14000×g、4℃で5分間)。滅菌マイクロタイターポリプロピレンチューブ内で1/2の開始希釈で、濾過した肺試料の10倍希釈液を滴定培地(49%DMEM(Gibco、カタログ番号11965-084)及び49%Medium199(Gibco、カタログ番号11150-059)、0.1%のFBS(Gibco、カタログ番号26140-079)、1×GlutaMax(Gibco、カタログ番号35050-061)及び0.1%ゲンタマイシン(Gibco、カタログ番号15750-060)を添加)中に作製した。MDCK細胞をトリプシン処理し、プールして、滴定培地に2.4×105細胞/mLで再懸濁した。50μLの連続希釈試料を96ウェルプレートの適切なウェル(8連)に加え、2.4×104個のMDCK細胞(100 μL)を全てのウェルに加えた。総量200μLの試料を37℃、5%CO2で7日間インキュベートして、ウイルスを複製させた。
【0097】
TCID50を血球凝集によって評価し、これは50 μLのウイルス上清を50 μLの0.5%ニワトリ赤血球とV底96ウェルプレートにおいて混合することにより達成された。プレートを室温で1時間インキュベートし、血球凝集を読み取った。
【0098】
結果
肺試料におけるウイルス量の推定:
肺におけるTCID50によるインフルエンザウイルスの定量は、NP/Trimix mod(in vivojetPEI)(群1)の16匹の動物のうち10匹が定量限界未満のウイルス力価を有し、NP mod(in vivo jetPEI)で処理された群(群2)及び未処理のままの群(群3)では4匹の動物のみが定量限界未満のウイルス力価を有することを示した(図1)。
【0099】
したがって、本発明の組成物は、鼻腔内に投与された場合、チャレンジしたマウスのウイルス量を減少させることができる。
【0100】
参照文献
Jochems SP, deRuiter K, Solorzano C, VoskampA, Mitsi E, Nikolaou E, Carniel BF, Pojar S, German EL, Reine J, Soares-SchanoskiA, Hill H, Robinson R, Hyder-Wright AD, Weight CM, Durrenberger PF, Heyderman RS,Gordon SB, Smits HH, Urban BC, Rylance J, Collins AM, WilkieMD, Lazarova L, Leong SC, YazdanbakhshM, Ferreira DM. Innate and adaptive nasal mucosal immune responses followingexperimental human pneumococcal colonization. J Clin Invest. 2019 Jul30;130:4523-4538
Jochems SP, MarconF, Carniel BF, Holloway M, Mitsi E, Smith E, Gritzfeld JF, Solorzano C, ReineJ, Pojar S, Nikolaou E, German EL, Hyder-Wright A, Hill H, Hales C, de SteenhuijsenPiters WAA, Bogaert D, Adler H, Zaidi S, Connor V,Gordon SB, Rylance J, Nakaya HI, Ferreira DM.Inflammation induced by influenza virus impairs human innate immune control ofpneumococcus. Nat Immunol. 2018 Dec;19(12):1299-1308
Phua, K. K. L.,Leong, K. W., & Nair, S. K. (2013). Transfection efficiency and transgeneexpression kinetics of mRNA delivered in naked and nanoparticle format. Journalof Controlled Release, 166(3), 227-233.https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2012.12.029
Phua, K. K. L., Staats, H. F., Leong, K. W., & Nair, S. K. (2014).Intranasal mRNA nanoparticle vaccination induces prophylactic and therapeuticanti-tumor immunity. Scientific Reports, 4, 4-10.https://doi.org/10.1038/srep05128
Roper,R. L., & Rehm, K. E. (2009). SARS vaccines: Where are we? Expert Review ofVaccines, 8(7), 887-898. https://doi.org/10.1586/erv.09.43
【0101】
図面訳
図1
ETA202003 Viral Titer for A/Puerto Rico/08/34 in Lung (D48) 肺におけるA/Puerto Rico/08/34のETA202003ウイルス力価(D48)
Vehicle ビヒクル
MDCK cells 7 days MDCK細胞 7日間
Mean with 95% CI 95%信頼区間を伴う平均
図1
【図
【手続補正書】
【提出日】2021-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組合せであって、
-CD40L、構成的に活性型のTCR4(caTLR4、及びCD70を含むリストから選択される機能性免疫賦活タンパク質をコードする1つ以上のmRNA分子と、
-細菌、ウイルス、又は真菌の抗原をコードする1つ以上のmRNA分子と、
を含み、前記組合せが、鼻腔内製剤の形態である、組合せ。
【請求項2】
前記1つ以上のmRNA分子が、前記機能性免疫賦活タンパク質CD40L、caTLR4及びCD70の全てをコードする、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
前記抗原が気道病原体由来の抗原である、請求項1又は2に記載の組合せ。
【請求項4】
前記抗原が、M(マトリックス)、N(ヌクレオカプシド)若しくはS(スパイク)抗原、T細胞刺激エピトープを含み、T調節性エピトープを抑制するように設計された人工抗原、又は抗体応答を誘導するように設計された表面抗原である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項5】
前記気道病原体がコロナウイルスである、請求項3に記載の組合せ。
【請求項6】
前記mRNA分子が、脂質ベースのナノ粒子等のナノ粒子の形態で製剤化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項7】
前記mRNA分子が、リポプレックス、デンドリマー、ポリプレックス又はハイブリッドリポポリプレックスの形態で製剤化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項8】
前記mRNA分子が、ポリエチレンイミンを使用してポリプレックスの形態で製剤化される、請求項7に記載の組合せ。
【請求項9】
1つ以上の前記mRNA分子が5'CAP-1構造を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項10】
1つ以上の前記mRNA分子が、1つ以上の修飾ヌクレオシド、特にN1-メチル-シュードウリジンを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項11】
ヒト医学又は獣医学において使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組合せ
【請求項12】
感染性疾患の予防及び/又は治療に使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組合せ
【請求項13】
感染性疾患を予防又は治療する方法であって、請求項1~10のいずれか一項に記載の組合せ、予防又は治療を必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【国際調査報告】