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特表2023-518379標的配列の切断のための最適化された方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】標的配列の切断のための最適化された方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20230424BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
C12N15/09 110
A01K67/027 ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/55
C12N15/63 Z
C12N9/16 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555852
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 GB2021050650
(87)【国際公開番号】W WO2021186163
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】2003814.7
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598176569
【氏名又は名称】キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル,イアン アラスデア
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD02
4B050LL01
4B050LL10
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA31
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、ガイドRNA配列を選択する方法、および標的配列のCRISPR-Cas遺伝子編集におけるそのような配列の使用を提供する。特に、本発明は、ある場合には低いモザイク現象をもたらし、別の場合には大規模な欠失またはノックアウトをもたらす、編集結果の決定された頻度に基づく、ガイドRNA配列を選択する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸配列のCRISPR-Cas編集における使用のための1つ以上のガイドRNA配列を選択する方法であって、
- 前記核酸配列を標的化する複数のガイドRNA配列を特定すること、
- 前記複数のガイドRNA配列のそれぞれについて編集結果の頻度を決定すること、および
- 最も豊富な編集結果の頻度が、2番目に豊富な編集結果の頻度の少なくとも2倍を超えると決定される、1つ以上のガイドRNA配列を選択すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数のガイドRNA配列のそれぞれについての編集結果の頻度が、コンピュータモデルを使用して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸配列が遺伝子配列であり、前記方法が、前記複数のガイドRNA配列を特定する前に、遺伝子の1つまたは複数の一次転写物を特定することをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
遺伝子の最初の約50%に位置する領域を標的化するガイドRNA配列を選択することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
遺伝子のすべての主要な転写物中に存在しないオーファンエクソンを標的化するあらゆるガイドRNA配列を除外することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、フレームシフティング変異をもたらすと予測されるガイドRNA配列を選択することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
各ガイドRNA配列にオフターゲットスコアを割り当て、スコアが予め定めた閾値未満のあらゆるガイドRNA配列を除外することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
各ガイドRNA配列にオンターゲット活性スコアを割り当て、スコアが予め定めた閾値未満のあらゆるガイドRNA配列を除外することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を使用して選択されたガイドRNA配列を含むガイドRNA分子を生成することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ガイドRNA分子がシングルガイドRNAである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
選択された1つ以上のガイドRNA配列を含む1つ以上のガイドRNA分子を使用して細胞の試験集団中の標的配列を編集し、前記細胞における各ガイドRNA配列と関連する編集結果を決定することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
予測される最も豊富な結果を前記試験集団の細胞中に最も一貫して引き起こすガイドRNA分子を、前記1つ以上のガイドRNA分子から選択することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
核酸配列のCRISPR-Cas編集における使用のための一対のガイドRNA配列を選択する方法であって、
- 前記核酸配列を囲む5’フランクと3’フランクを標的化する複数のガイドRNA配列を特定すること、
- 前記複数のガイドRNA配列のそれぞれについて編集結果の頻度を決定すること、および
- 前記5’フランクを標的化する第1のガイドRNAおよび前記3’フランクを標的化する第2のガイドRNAを含む一対のガイドRNA配列であって、それぞれのガイドRNAについて最も豊富な編集結果の頻度が2番目に豊富な編集結果の頻度の4倍未満であると決定される一対のガイドRNA配列、を選択すること、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項2から12に記載のいずれかの特徴をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
生物、細胞または細胞の集団あるいはセルフリー発現システムにおいて核酸配列を編集するための方法であって、前記方法が、前記核酸配列を含む二本鎖(dsDNA)を、Casエンドヌクレアーゼおよび前記Casエンドヌクレアーゼを前記核酸配列内の標的配列に誘導することができるガイドRNA分子に曝露することを含み、ここで、前記ガイドRNA分子は、CRISPR-Cas編集において使用された場合に、2番目に豊富な編集結果の少なくとも2倍を超える頻度を有する主要な編集結果をもたらす(またはもたらすと予測される、例えばコンピュータモデルによってもたらすと予測される)ガイドRNA配列を含む、方法。
【請求項16】
ガイドRNA分子が、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法に従って選択されたガイドRNA配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ガイドRNA分子およびDNAエンドヌクレアーゼを細胞または複数の細胞に導入することをさらに含む、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記Casエンドヌクレアーゼが、前記核酸配列内の標的配列を切断して二本鎖切断末端を生じさせる、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
Casエンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記生物、細胞または細胞の集団が真核生物である、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
生物、細胞または細胞の集団が動物、真菌または植物由来であり、好ましくは前記生物、細胞または細胞の集団が哺乳動物である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
細胞が接合体または接合体を形成する細胞の集団である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、胚をレシピエントの雌の動物に移植して妊娠させることをさらに含み、移植前に前記胚を発生のより後期にまで適宜培養する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
非モザイクのトランスジェニック動物を生成するためのものである、請求項13から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
動物が、げっ歯類、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ニワトリまたは霊長類である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
生物、細胞または細胞の集団あるいはセルフリー発現システムにおいて核酸配列を編集するための方法であって、前記方法が、前記核酸配列を含む二本鎖(dsDNA)を、Casエンドヌクレアーゼおよび前記Casエンドヌクレアーゼを前記核酸配列を囲む5’フランクと3’フランクを標的化させるように誘導することができる一対のガイドRNA分子に曝露することを含み、ここで、前記一対のガイドRNA分子は、CRISPR-Cas編集において使用された場合に、2番目に豊富な編集結果の頻度の4倍未満である頻度を有する主要な編集結果をもたらす(またはもたらすと予測される、例えばコンピュータモデルによってもたらすと予測される)第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、方法。
【請求項27】
請求項16から25に記載のいずれかの特徴をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項15から27のいずれか一項に記載の方法によって取得される、細胞、細胞集団およびヒト以外の生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的核酸配列中の切断のための部位であって、例えばエンドヌクレアーゼによる切断のための部位を選択する方法に関する。本発明は、ガイドRNA配列を選択する方法、および標的配列のCRISPR-Cas遺伝子編集におけるそのような配列の使用を提供する。特に、本発明は、例えばガイドRNA配列を選択することによる、編集結果の決定された頻度に基づく、切断のための部位を選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子編集は、目的の核酸配列中に切断末端(break)を導入するヌクレアーゼを使用して実施することができる。それらの切断末端の修復中に、自然な修復プロセスによってその配列中に誤りが導入される可能性があり、それによって配列が編集される。例えば、そのようなヌクレアーゼシステムの1つであるCRISPR-Cas9遺伝子編集は、世界中で遺伝子修飾動物の作製に大きな改革をもたらした。しかし、ヌクレアーゼ、例えばCRISPRの技法を使用して作製される細胞集団および遺伝子修飾動物はモザイクであり、細胞集団または動物の組織全体にわたって、意図された標的部位にさまざまな遺伝子編集を含有する。モザイク現象は、ヌクレアーゼ、例えばCas9が意図された標的DNAを特定し、切断した後に起こるセミランダムな修復に由来する。加えて、多細胞集団、例えば1細胞期(one-cell stage)胚の後に起きるゲノム編集は、新たに形成される編集が、細胞集団、例えば動物全体にわたって一様に分布しないため、さらにモザイク現象の原因となる。要するに、モザイク現象は、個々の二本鎖DNA切断末端(DSB)の修復が確率的結果を伴う独立したプロセスであるために起こる。従って、複数のDSBが同じ様に修復される見込みは、単細胞中の異なるアレル間であれ、異なる細胞においてであれ、概して非常に少ない。遺伝子が純粋でないとデータの混乱につながるため、モザイク細胞集団または動物は、実験に使用することができない。動物全体にわたって純粋な編集を有するマウスを生成するために、動物中のモザイク現象を複数回の繁殖および戻し交配によって除去する。これはコストがかかり、時間を要するプロセスであり、新規のマウスモデルを作製するごとに、平均で170匹のマウスが無駄になる。他の種、例えば非ヒト霊長類および家畜では、繁殖させてモザイク現象を取り去るプロセスに何年もかかる。細胞集団の状況では、単細胞クローニングおよび個々のクローンの拡大のプロセスにより、モザイク現象は除去される。
【0003】
モザイク現象を低減させるための既知の戦略は、起こる独立した編集の総数を制限することを中心に展開している。胚の状況では、これは1細胞期において編集することを意味し、そこでは総編集の数は、正常細胞中では普通1アレルにつき1編集(すなわち二倍体生物中では2編集)に制限される。これを細胞集団において実現するためには、個々に単離された細胞を編集できるか、または編集した集団からの単細胞由来クローニングが必要になるかのいずれかである。どちらの状況でも、編集は1細胞期に限定する必要がある。これまでに試みられたアプローチは、モザイク現象を含有するまたは抑えることに重点を置いている。例えば、編集のプロセスを高速化することによって(例えば、編集が起こり得る前に転写および翻訳の細胞内プロセスが必要な、メッセンジャー(m)RNAまたはDNAプラスミド中にコードされた編集コンポーネントを有するよりも、インビトロ(in vitro)で転写されたgRNAおよび組換えCas9タンパク質を使用することにより);1細胞期(one-cell phase)においてより早期に編集することによって[例えば、CRISPR-Cas9コンポーネントを極初期の接合体、特にインビトロ受精(IVF)によって作製されたものに導入して、2細胞期よりも前の早期に編集を「完了させる」ことを可能にすることにより、または代替的なマイクロインジェクションプロトコール(Lamas-Torazo et al., Nature Scientific Reports, Volume 9, Article number: 14900 (2019))を使用することにより];編集ウインドウを積極的に短くカットすることによって(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼの分解を加速して2細胞期における編集を回避することにより);あるいは1細胞期の前に編集することによって(例えば、精原幹細胞、卵母細胞または一倍体のESCを編集することによる生殖細胞系列修飾);あるいは、最終的に、正確なゲノム編集の効率を高めることによって(例えば、従来型の効率性に劣る手段よりも長いssDNAを修復ドナーとして使用することにより)(Mehravar et al., Dev Biol.2019 Jan 15;445(2):156-162)。
【0004】
全般的に、これらの戦略は、すべての編集が1細胞期または単細胞内で起こるように、ヌクレアーゼの「活性ウインドウ」を制限することに重点を置いている。これは独立した編集イベントの総数を低減させることを意味するが、モザイク現象の基盤である所与のDSBがどのように修復されるかについての課題には取り組まれていない。そのため、これらの既存のアプローチはいずれも、偶然以外に、モザイク現象を広範に取り除くことはない。
【0005】
モザイク現象の問題はトランスジェニック動物の創出だけに限られるものではなく、治療的状況における課題でもあり、そこでは細胞の集団またはプールにおける異なる変異が、異なる表現型の帰結(例えばインフレーム欠失または意図されない機能獲得変異)を有し得る。その結果、編集された細胞プールの均一性(すなわち、すべての細胞における同じ編集結果)を確実にするためには、プールは、単細胞クローニングした後に個々のクローンを拡大したものでなくてはならない。これは極めてリソースを消費するプロセスであり、さらに、多くの初代細胞タイプ、例えばT細胞との適合性がない。これは特定の治療法の作製、例えばCAR-T細胞の作製において著しい障害となるが、そのような医薬品の安全性プロファイルにとっては不可欠であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの課題を念頭に置いて考案された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、本発明は、核酸配列における切断のための部位または標的配列を特定する方法を提供する。部位は、例えば、編集された配列の均一性をより良く制御するための、および/または編集された細胞の集団のモザイク現象を低減するための、最適化された切断部位と考えることができる。核酸配列は、例えば、遺伝子配列を含んでもよい。切断は、核酸配列中に二本鎖切断末端、例えば平滑末端化された二本鎖切断末端を生じさせることのできるヌクレアーゼによるものであってもよい。
【0008】
方法は、
- 核酸配列中で複数の標的配列を特定することであって、切断、例えばヌクレアーゼによる切断に対して標的化することができる標的配列を特定すること、
- 複数の標的配列のそれぞれについて編集結果の頻度を決定すること、および
- 切断後に主要な編集結果をもたらすと予測される1つ以上の標的配列を選択すること、
を含む。
【0009】
方法は、遺伝子編集のCRISPR-Casシステムを最適化することにおいて特に役立つ。これらの実例ではガイドRNA配列が標的配列に結合し、それによって標的配列がCasエンドヌクレアーゼによる切断に対して標的化されるため、標的配列はCRISPR-Casシステム中で使用されるガイドRNA配列によって定義されると理解することができる。従って、CRISPR-Cas編集における核酸配列の使用のために1つ以上のガイドRNA配列を選択する方法であって、
- 核酸配列を標的化する複数のガイドRNA配列を特定すること、
- 複数のガイドRNA配列のそれぞれについて編集結果の頻度を決定すること、および
- 主要な編集結果をもたらすと予測される1つ以上のガイドRNA配列を選択すること、
を含む、方法を提供する。
【0010】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、主要な編集結果をもたらすと予測される1つ以上の標的(例えばガイドRNA)配列を選択する工程は、最も豊富な(すなわち主要な)編集結果の頻度が、2番目に豊富な編集結果の頻度の少なくとも2倍を超えると決定される1つ以上の標的(例えばガイドRNA)配列を選択することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、CRISPR-Cas9編集における1つを超える核酸配列の使用のための、1つを超えるガイドRNA配列を選択する工程を含んでもよい。そのような実施形態では、適切には、1つを超える核酸配列を標的化し、編集することができる。適切には、1つを超える核酸配列を、同じ方法において、適切には同時に、編集することができる。そのような実施形態では、方法は、複数の核酸配列を標的化する複数のガイドRNA配列を特定する工程を含んでもよい。適切には(Sutiably)、そのような実施形態は、ガイドRNA配列のスタッキング(stacking of guide RNA sequences)と称することができる。
【0012】
本明細書で使用される場合、「編集結果」という用語は、編集プロセス、例えばCRISPR-Cas9編集プロセスによってもたらされる遺伝子型(すなわちDNA配列)のことを指す。
【0013】
以下において、「ガイドRNA配列」または類似物が言及される場合、それは標的化された核酸切断のための好ましい部位として同様にかつ対応して特定された標的配列に、等しく適用できることは認識されるであろう。従って、「ガイドRNA配列」が、それがそれ用にデザインされたところのCRISPR-Cas酵素またはシステムと組み合わせて言及される場合、これは対応する「標的配列」および「標的配列」を切断する関連ヌクレアーゼを指すと、等しく考えることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、方法は、最も豊富な(すなわち主要な)編集結果の頻度が、2番目に豊富な編集結果の頻度の少なくとも2倍、例えば少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍または少なくとも20倍を超えると決定される1つ以上の標的またはガイドRNA配列を選択することを含む。
【0015】
本発明の方法は、従って、主要な(最も豊富な)遺伝子型の頻度と2番目に豊富な遺伝子型の頻度との間の差を最大化する選択プロセスに基づく。これは、以下の式を使用して計算することができる:
[最も豊富な(主要な)編集結果の頻度]/(2番目に豊富な編集結果の頻度)。
【0016】
例えば、所与のガイドRNA配列を使用する標的配列のCRISPR-Cas編集によってもたらされる主要な(最も豊富な)編集結果は7塩基対欠失であり、54.4%の頻度を有すると決定する(例えば予測する)ことができる。2番目に豊富な編集結果はシトシンヌクレオチドの1塩基対挿入であり、4.3%の頻度を有すると決定する(例えば予測する)ことができる。この場合、最も豊富な編集結果の頻度は、2番目に豊富な編集結果の頻度の12.7倍(54.4/4.3)を超える。
【0017】
好ましい方法では、最も豊富な編集結果(遺伝子型頻度)は、所望の結果、例えば以下でさらに説明する特定のフレームシフト変異である。従って、方法は、主要な編集結果に基づいて選択を決定することにより、所望の結果と2番目に可能性の高い編集の結果との間の倍率変化の差を最大化することができる。
【0018】
本発明者らは、切断のための標的配列を選択する際、例えばCRISPR-Cas遺伝子編集のためのガイドRNA配列をデザインする際に、倍率変化メトリックを初めて利用した。特に、細胞集団、例えば多細胞生物中のモザイク現象を低減するまたは取り除くためのガイドRNA配列の選択において、本メトリックを初めて適用した。本発明者らは、モザイク現象を低減するまたは取り除くには、同じ編集結果が単細胞中の各アレル上で起こるだけでなく、複数の細胞にわたって各アレル上で起こることも必要であると認識している。倍率変化の使用により、均一に編集された細胞の集団の確実な生成が可能となり、これによりモザイク現象を低減するまたは取り除くことができるようになる。
【0019】
複数のガイドRNA配列のそれぞれについての編集結果の頻度は、コンピュータモデル(例えばマシンラーニングアルゴリズム)を使用して決定することができる。コンピュータモデルは、所与のガイドRNA配列に対して、編集結果と、各結果の相対的な頻度を予測するように構成することができる。適したコンピュータモデルには、FOREcasT(Allen, Nature Biotechnology, Volume 37, Pages 64-72, 2019)、inDelphi(Shen et al., Nature volume 563, page 646, 2018)およびLindel(Nucleic Acids Research, Volume 47, Pages 7989-8003, 2019)が含まれる。FOREcasTモデルはウェブツール(https://www.forecast.app)として利用可能であり、ローカルでも走らせることができる(例えばRプログラミング言語を使用して)。inDelphiモデルもウェブツールを介して利用可能(https://indelphi.giffordlab.mit.edu/において利用可能)であり、ローカルでも走らせることができる(例えばPythonプログラミング言語において)。Lindelモデルもウェブツール(https://lindel.gs.washington.edu/Lindel/docs/)として利用可能であり、ローカルでも走らせることができる(例えばPythonプログラミング言語を使用して)。加えて、Lindelモデルは、CRISPOR guide design tool(http://www.crispor.orgにおいて利用可能)中に適合されている。
【0020】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、切断部位周囲のマイクロホモロジーの度合が、その部位における切断がどのように修復されるかを決定するのに重要な役割を果たすことを特定した。代替の標的部位のCRISPR-Cas9切断がどのように修復されるかについての重要な情報が、上記で特定したようなコンピュータモデルの形態で現在利用可能であり、本発明の方法によれば、その情報を使用して、所望の編集結果を予測し、選択することができる。しかし、それらの部位における切断がどのように修復されるかを決定するために重要であるのは切断部位の性質であるため、本発明の方法は、代替の方法、例えばTALENまたはZFNを含む代替のヌクレアーゼを使用する方法によって実施される切断にも関し得る。代替のヌクレアーゼを使用するそのような方法では、CRISPR-Cas9切断に基づくコンピュータモデル、例えば上記のものを、例えば、主要な編集結果を有する標的配列を特定するために使用することができ、その後、それらの配列をCRISPR-Cas9:ガイドRNAシステムを使用して切断する代わりに、配列を、代替のヌクレアーゼ、例えば、それらの配列を標的化するようにデザインされたTALENまたはZFNを使用して、切断することができる。所与の標的配列がどのように修復されるかについての決定は、これらの配列を切断のために標的化し、編集結果を配列決定することによって、細胞中での直接的な実験法を介して実験的にも決定することができることは認識されるであろう。
【0021】
従って、いくつかの実施形態では、方法は、コンピュータモデルを使用して、複数の標的配列すなわちガイドRNA配列のそれぞれの編集結果を予測することを含む。コンピュータモデルを使用する方法および関連する計算は、単一の場所にある1台以上のコンピュータ、例えば単一の場所にあるデスクトップ・コンピュータまたはサーバ上で実施してもよく、あるいはコンピュータモデルを使用する方法および関連する計算は、例えばインターネットを使用するまたはクラウドベースのサーバ上で計算を実施するなどして、異なる場所にわたって実施してもよい。コンピュータモデル、例えばマシンラーニングツールからの利益は、望ましい修復結果パターンをもたらすであろう標的配列すなわちガイドRNAの選択をそれらが加速することである。しかし、例えば、複数の標的配列において細胞を編集するかまたは目的の核酸配列を標的化する複数のガイドRNA配列を使用して細胞を編集し、得られたDNAを配列決定して編集結果の幅を決定し、配列決定したアウトプットに基づいて標的配列またはガイドを選ぶことにより、同じ結果を実験的に得ることができるであろうことは認識されるであろう。編集結果の幅は、異なる起源の細胞間で高度に類似することが一般的に認識されている。DNA修復経路の忠実度に違いが存在する細胞タイプ、例えば、基本的なDNA修復遺伝子が変異していたり、または化学的手段による撹乱を受けていたりする細胞タイプでは、検討中の特定の細胞タイプにおいてDNA修復結果を決定する必要があり得ることは認識されるであろう。
【0022】
従って、いくつかの実施形態では、複数の標的配列のそれぞれについて編集結果の頻度を決定する工程は、目的のヌクレアーゼを使用して複数の標的配列のそれぞれにおいて編集を実施すること、および各編集プロセスによってもたらされるDNAを配列決定すること、を含む。同様に、複数のガイドRNA配列のそれぞれについて編集結果の頻度を決定する工程は、複数のガイドRNA配列のそれぞれを使用して核酸配列のCRISPR-Cas編集を実施すること、および各編集プロセスによってもたらされるDNAを配列決定すること、を含んでもよい。
【0023】
当分野において知られているように、モザイク現象は、エンドヌクレアーゼ、例えばCasエンドヌクレアーゼによるDNAの切断後に二本鎖切断末端(DSB)を修復する働きをする細胞機構の作用に由来する。ドナーテンプレート非存在下では、これらの修復機構[非相同末端結合(NHEJ)およびマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)を含む]は不完全であり、多くの場合1つ以上のヌクレオチドの欠失または挿入(まとめて「インデル」と称する)につながり、結果として変異をもたらす。カット部位は必ずしも同様に修復されるとは限らず、所与の部位の切断は、さまざまな相対頻度を伴って出現するさまざまな遺伝子型を生じ得る。ガイドRNAは、それらの標的部位のCas切断後に、特徴的なパターンの編集結果を生じさせることが知られている。これらのパターンはランダムでなく、ガイドがどのような細胞において使用されようとも、所与のガイド配列からは同じ分布の編集が通常は生じることになる。例えば、所与のガイドRNA配列が、編集結果の40%において7塩基対欠失、編集結果の20%において1塩基対欠失、編集結果の20%において1塩基対欠失、編集結果の10%において2塩基対挿入、および残りの10%において別の編集結果または編集結果なしのいずれか、の結果を与えると見出される場合がある。よって、CRISPR-Cas編集を細胞の集団に適用する場合、修復プロセスによって異なる細胞中に異なる変異がもたらされる可能性があり、集団にわたって編集結果のモザイクが生じ得る。DSB修復における誤りが、カット部位周囲のDNA配列のマイクロホモロジーによって影響されることが最近見出された。ホモロジーの低いDNA配列は、全体として幅広い編集結果を与えるように修復されるが、ホモロジーの高いエリアは、全体としてより幅の狭い編集結果へと修復される。本発明者らは、驚くべきことに、この結果を利用してモザイク現象を低減するまたは取り除くことができることを見出した。
従って、最も豊富な(主要な)遺伝子型(すなわち編集結果)の頻度と2番目に豊富な遺伝子型(すなわち編集結果)の頻度との間の比率を最大化することにより、単一の主要な編集結果を達成することができる。
【0024】
モザイク現象を低減させることに対する既存のアプローチは、所与のDSBがどのように修復されるかを規定する局所的なDNAアーキテクチャおよびDNAの特徴を考慮していない。これらのアプローチは、局所的なDNAアーキテクチャおよび特徴によって情報が与えられるDSBの解消(resolution)よりも、ヌクレアーゼ作用およびDSBの生成のタイミングに重点を置いている。対照的に、本発明は、DBSの解消は局所的なDNAの特徴に影響されるという理解に基づき、DSBがどのように解消されるかに重点を置いている。本発明は、より独立したDSBを同じ様式で形成し、修復することを可能にする(同じ細胞内または分離した複数の細胞内において)。実際面では、DSBがどのように修復されるかを制御するということは、編集がもはや単細胞集団、例えば胚発生の1細胞期または個々に単離された細胞に限られなくなることを意味する。
【0025】
核酸配列を標的化する複数のガイドRNA配列は、当業者に知られている任意の適した技術によって特定することができる。潜在的なCRISPR-Cas標的領域(およびそれに対応するガイド配列)は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)への近接性によって特定することができる。例えば、所与の遺伝子を標的化する、可能性のあるすべてのガイドRNA配列は、公的に利用可能なソフトウェア、例えばUCSC Genome Browser、Deskgen、CRISPORまたはLindelを使用して特定することができる。同様に、可能性のある標的配列は、切断機構の特徴、例えば切断のために使用されるヌクレアーゼに従って特定することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、方法は、遺伝子のコード配列を標的化する複数の標的配列すなわちガイドRNA配列を特定することを含む。
【0027】
モザイク現象を取り除く代替手段として、局所的なホモロジーが編集結果に影響を及ぼすという知見を、大規模な欠失または「ノックアウト」を実行するために利用することもできる。マイクロホモロジーの高いエリアを標的化するgRNAを選んで幅の狭い編集を確実にしてモザイク現象を低減するのではなく、本発明者らは、マイクロホモロジーの低い領域を標的化するgRNAのペアを選ぶことが、欠失を実行するために使用できることを見出した。そのような欠失は、遺伝子配列の一部を切除し、モザイク現象が低減したモデルと等しく有用なノックアウトモデルを作製するために使用することができる。そのような方法は、本明細書における本発明の第2の態様において記載される。
【0028】
従って、いくつかの実施形態では、方法は、遺伝子の非コード配列を標的化する複数の標的配列すなわちガイドRNA配列を特定することを含む。例えば、エクソン全体を切除してノックアウトを引き起こすために、エクソンの両側のイントロンを標的化することが望ましい場合がある。方法は、遺伝子間領域または他の非コード「遺伝子」、例えばmiRNAまたは他の非コードRNAクラス(lncRNA、snoRNA、piRNA)を標的化することを含んでもよい。方法は、基本的な調節エレメント、例えばエンハンサー領域を標的化することを含んでもよい。
【0029】
標的配列すなわちガイドRNA配列を特定することの前に、方法は、標的化すべき遺伝子の1つまたは複数の一次転写物を特定することをさらに含んでもよい。所与の遺伝子の1つまたは複数の一次転写物は、公的に利用可能なゲノミクスツール、例えばEnsemblを使用して決定することができる。
【0030】
いくつかの実施形態で、方法は、遺伝子(またはそのコード配列)の最初の40%~70%または最初の50~60%に位置する領域を標的化する(すなわち、に相補的な)標的配列すなわちガイドRNA配列を選択することをさらに含む。遺伝子の残りの部分を標的化する標的配列すなわちガイドRNA配列は除外してもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、遺伝子(またはそのコード配列)の最初の40%~70%(例えば最初の約50%)を標的化する標的配列すなわちガイドRNA配列を選択する工程は、便宜上、標的配列すなわちガイドRNA配列の編集結果を決定する工程より前に実施されてもよい。遺伝子の上流部分(例えば前半)を標的化すると、遺伝子によってコードされるタンパク質の基本的な機能ドメインを取り除ける可能性が増加する。
【0032】
いくつかの実施形態では、方法は、フレームシフティング変異をもたらすと決定または予測される標的配列すなわちガイドRNA配列を選択することをさらに含む。タンパク質は、RNA/DNAのトリプレットからコードされているため、編集が3の倍数になる確率は3回中1回あり、その場合は遺伝子のフレームは変化しない。これにより、場合によっては機能タンパク質の発現がもたらされる。従って、カット部位の下流のDNAが元の配列のフレームとは合わないように、フレームシフティングを引き起こす標的配列すなわちガイドRNAを選択することが有利であり得る。
【0033】
最も豊富な(すなわち主要な)編集結果が、3の倍数となる複数のヌクレオチドの挿入または欠失と決定されないまたは予測されない配列を選択することにより、フレームシフティングを選択することができる。
【0034】
フレームシフティングを回避することが望ましい場合があることは認識されるであろう。例えば、タンパク質の機能を消失させるために、タンパク質からいくつかのアミノ酸を欠失させることが望ましい場合もある。従って、いくつかの実施形態では、方法は、フレームシフティング変異を回避すると決定または予測される標的配列すなわちガイドRNA配列を選択することを含む。最も豊富な編集結果が、3の倍数となる複数のヌクレオチドの挿入または欠失と決定または予測される標的配列すなわちガイドRNA配列を選択することにより、非フレームシフティング変異を選択することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、方法は、コンピュータモデルを使用して、標的配列すなわちガイドRNA配列のそれぞれにフレームシフティングスコアを割り当てることを含んでもよい。次いで、最も望ましいフレームシフティングスコアを有する配列が選択されてもよい。
【0036】
例えば、コンピュータモデルのLindelを使用して、所与のガイドRNA配列について「フレームシフト%」スコアを決定することができる。フレームシフト%スコアは、編集が、非フレームシフティング変異、1ヌクレオチドのフレームシフトまたは2ヌクレオチドのフレームシフトのいずれかをもたらす確率を示す。例えば、+0=33.3%、+1=33.3%、+2=33.3%の比率は、編集が、配列を、それぞれインフレーム、1塩基対ずれたフレーム、または2塩基対ずれたフレームのいずれかに動かす機会が等しいことを意味する。いくつかの実施形態では、方法は、選択されたガイドRNAが、結果をフレームシフティング編集に偏らせると予測されるように、非フレームシフト%スコアが約33%未満(例えば33.3%未満)のガイドRNAを選択することを含む。一部の他の実施形態では、例えば、インフレーム欠失が望ましい場合には、方法は、非フレームシフト%スコアが約33%を超える(例えば33.3%を超える)ガイドRNAを選択することを含んでもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、方法は、すべての主要な転写物中に存在しないオーファンエクソンを標的化するあらゆる標的配列すなわちガイドRNA配列を除外することをさらに含む。真核細胞では、一部の遺伝子は、エクソンのすべてを真に共有する複数の転写物を有する。従って、真核細胞中で目的の遺伝子のノックアウトを創出することが望まれる実施形態では、遺伝子の発現が完全に取り除かれるのを確実にするために、すべての転写物に共通する遺伝子のエリアを標的化することが有利な場合がある。これに対する例外は、オーファンエクソンの存在によって特徴付けられる特定のアイソフォームをノックアウトすることが望ましい場合であり、従って、一部の実施形態は、遺伝子の転写物から、オーファンエクソンまたはその一部を除外することを促進する標的配列すなわちガイドRNA配列を選択することを含んでもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、方法は、各標的配列すなわちガイドRNA配列にオフターゲットスコアを割り当てること、およびスコアが予め定めた閾値未満のあらゆる配列を除外することをさらに含む。これは、標的配列以外の部位におけるゲノムの望まれない編集を回避する助けとなる。
【0039】
標的配列およびガイドRNA配列に、コンピュータモデルまたはアルゴリズムを使用してオフターゲットスコアを割り当てることができる。適したモデルが当業者に知られており、それにはUCSC Genome Browser、CRISPORおよびDeskgenが含まれる。これらのモデルは、Hsu et al., Nature Biotechnology volume 31, pages 827-832 (2013)によって記載されるアルゴリズムに基づく。
【0040】
いくつかの実施形態では、各ガイドRNA配列には、1~100のオフターゲットスコアが割り当てられ、ここで、スコア1は何百、または何千ものオフターゲットを表し、スコア100はオフターゲットがないことを表す。方法は、スコアが80未満、70未満、60未満、50未満または40未満のガイドRNA配列を除外することを含んでもよい。オフターゲットスコアは、本明細書に記載のコンピュータモデルまたはアルゴリズムを使用して計算することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、方法は、各標的配列すなわちガイドRNA配列にオンターゲット活性スコアを割り当てること、およびスコアが予め定めた閾値未満のあらゆる配列を除外することをさらに含む。オンターゲット活性スコアは、ガイド配列が、所与の部位においてどれだけうまくカットしそうであるかを予測するために使用される。
【0042】
コンピュータモデルまたはアルゴリズムを、例えばウェブプラットフォーム上で使用して、ガイドRNA配列にオンターゲット活性スコアを割り当てることができる。適したウェブプラットフォームが当業者に知られており、それにはUCSC Genome Browser、CRISPOR、Deskgenが含まれる。適したモデルは、Doench et al., Nature Biotechnology volume 34, pages 184-191(2016)またはMoreno-Mateos et al, Nature Methods volume 12, pages 982-988 (2015)によって記載されるメトリックに基づいてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、各ガイドRNA配列には、1~100のオンターゲット活性スコアが割り当てられ、ここで、スコア100はヌクレオチド配列に基づいて予測される最高活性を表し、スコア1は予測される最低活性を表す。方法は、スコアが50未満、40未満、30未満または20未満のあらゆるガイドRNA配列を除外することを含んでもよい。オンターゲットスコアは、本明細書に記載のコンピュータモデルまたはアルゴリズムを使用して計算することができる。
【0044】
本発明の第1の態様に従ってガイドRNA配列を使用する方法は、以下のすべての工程またはそれらの任意の組合せを含んでもよい:目的の遺伝子(またはそのコード配列であってもよい)の最初の40~70%(例えば50%)に位置する領域を標的化するガイドRNA配列を選択すること;フレームシフティング変異をもたらすまたは回避すると決定または予測されるガイドRNA配列を選択すること;すべての主要な転写物中に存在しないオーファンエクソンを標的化するあらゆるガイドRNA配列を除外すること;各ガイドRNA配列にオフターゲットスコアを割り当て、スコアが予め定めた閾値未満のあらゆるガイドRNA配列を除外すること;ならびに各ガイドRNA配列にオンターゲット活性スコアを割り当て、スコアが予め定めた閾値未満のあらゆるガイドRNA配列を除外すること。これらの工程を、任意の順番で実施することができることは認識されるであろう。複数のガイドRNA配列のそれぞれについて編集結果の頻度を決定する工程の前または後に、これらの工程の一部またはすべてを実施してもよい。各工程が実施されることにより、それに続く工程における分析から一部のガイドRNA配列の除外がもたらされ得ることがさらに認識されるであろう。よって、遺伝子またはコード配列を標的化するとして特定されるすべてのガイドRNA配列が、必ずしも方法の各工程において分析されるとは限らない。潜在的な分析されるガイドRNA配列の数は、追加の工程が実施されるごとに減少し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、遺伝子のCRISPR-Cas編集における使用のための1つ以上のガイドRNA配列を選択する方法は、
- 遺伝子(またはそのコード配列)を標的化する複数のガイドRNA配列を特定すること、
- 適宜、遺伝子(またはそのコード配列)の最初の約50%に位置する領域を標的化するガイドRNA配列を選択すること(これらの実施形態では、遺伝子の次の約50%を標的化するガイドRNA配列は、それに続く分析から除外される)、
- 適宜、すべての主要な転写物中に存在しないオーファンエクソンを標的化するあらゆるガイドRNA配列を除外すること、
- 複数のガイドRNA配列のそれぞれについて編集結果の頻度を決定すること、および
- 最も豊富な(すなわち主要な)編集結果の頻度が、2番目に豊富な編集結果の頻度の少なくとも2倍を超えると決定される、1つ以上のガイドRNA配列を選択すること、
- 適宜、フレームシフティング変異をもたらすと決定または予測されるガイドRNA配列を選択すること(インフレーム変異をもたらすと決定または予測されるガイドRNA配列はそれに続く分析から除外される)、
- 適宜、各ガイドRNA配列にオフターゲットスコアを割り当て、スコアが予め定めた閾値未満のあらゆるガイドRNA配列を除外すること、ならびに
- 適宜、各ガイドRNA配列にオンターゲット活性スコアを割り当て、スコアが予め定めた閾値未満のあらゆるガイドRNA配列を除外すること、
を含む。
【0046】
第2の態様では、本発明の方法は、2つの標的部位の間のDNAストレッチの欠失を生成するための改善されたシステムをデザインするために、使用することができる。そのような方法は、欠失を意図するDNA配列の5’フランクと3’フランクを標的化する上記のCRISPR-CasシステムのためのガイドRNAを選ぶことを含み得るが、2つの切断部位の間に介在するDNA配列の欠失によって切断が優先的に修復されるように、多くの編集結果を伴うガイドを特定することを含む(切断に対して標的化される配列が全体として低いマイクロホモロジーによって特徴付けられるように)。欠失させるべきDNAに隣接する標的配列は、20bp、200bp、2000bpを超えても、または2Mbを超える距離で分離されていてもよい。
【0047】
そのような、大きなDNA配列のストレッチを欠失させるための改善された方法では、標的配列の切断からの最も豊富な結果の頻度は、2番目に豊富な結果の頻度の4倍未満、3倍未満、2倍未満、1.5倍未満であってもよく、最も豊富な結果の頻度は、3番目、4番目または5番目に豊富な結果の2倍未満であってもよく、例えば2.5倍未満であっても、3倍未満であってもまたは4倍未満であってもよい。一実施形態では、最も豊富な結果の頻度は、2番目に豊富な結果の2倍未満であってもよい。一実施形態では、最も豊富な結果の頻度は、3番目に豊富な結果の2倍未満であってもよい。
【0048】
それらの方法は、各ガイドRNA配列にオフターゲットスコアを割り当てることおよびスコアが予め定めた閾値未満のあらゆるガイドRNA配列を除外すること、例えば、オフターゲットスコアが50未満、40未満、30未満または20未満のあらゆるガイドRNA配列を除外することをさらに含んでもよい。さらに、それらの方法は、各ガイドRNA配列にオンターゲットスコアを割り当てることおよびスコアが予め定めた閾値未満のあらゆるガイドRNA配列を除外すること、例えば、オンターゲットスコアが80未満、70未満、60未満、50未満、40未満または30未満のあらゆるガイドRNA配列を除外することを含んでもよい。当然ながら、フレームシフティングスコア、および切断部位の位置が遺伝子の前半部分にあることは、大きなDNA配列のストレッチを欠失するためのそのような方法においては、あまり重要でなくてもよい。
【0049】
従って、一実施形態では、本発明は、CRISPR-Cas編集における核酸配列の使用のために一対のガイドRNA配列を選択する方法であって、
- 核酸配列を囲む5’フランクと3’フランクを標的化する複数のガイドRNA配列を特定すること、
- 複数のガイドRNA配列のそれぞれについて編集結果の頻度を決定すること、および
- 5’フランクを標的化する第1のガイドRNAおよび3’フランクを標的化する第2のガイドRNAを含む一対のガイドRNA配列であって、それぞれのガイドRNAについて最も豊富な編集結果の頻度が2番目に豊富な編集結果の頻度の4倍未満であると決定される一対のガイドRNA配列、を選択すること、
を含む方法、を含んでもよい。
【0050】
一実施形態では、本方法は、核酸配列のCRISPR-Cas欠失における使用のための一対のガイドRNA配列を選択する方法である。適切には、核酸配列を欠失させることを意図している。
【0051】
一実施形態では、方法は、核酸配列の5’フランクを標的化する複数のガイドRNA配列を特定すること、および核酸配列の3’フランクを標的化する複数のガイドRNA配列を特定することを含む。
【0052】
さらなる実施形態では、本発明は、生物、細胞または細胞の集団あるいはセルフリー発現システムにおいて核酸配列を編集するための方法であって、方法が、核酸配列を含む二本鎖(dsDNA)を、CasエンドヌクレアーゼおよびCasエンドヌクレアーゼを核酸配列を囲む5’フランクと3’フランクを標的化させるように誘導することができる一対のガイドRNA分子に曝露することを含み、ここで、一対のガイドRNA分子は、CRISPR-Cas編集において使用された場合に、2番目に豊富な編集結果の頻度の4倍未満である頻度を有する主要な編集結果をもたらす(または、例えばコンピュータモデルによってもたらすと予測される)第1のガイドRNAおよび第2のガイドRNAを含む、方法を含む。
【0053】
一実施形態では、両方のガイドRNA分子が、2番目に豊富な編集結果の頻度の4倍未満である頻度を有する主要な編集結果をもたらす(または例えばコンピュータモデルによってもたらすと予測される)。
【0054】
一実施形態では、核酸配列を1つを超えるCasエンドヌクレアーゼ、適切には少なくとも2つのCasエンドヌクレアーゼに曝露する。いくつかの実施形態では、核酸配列を、例えば細胞内で、複数のCasエンドヌクレアーゼに曝露してもよい。
【0055】
適切には、一対のガイドRNA分子が、Casエンドヌクレアーゼまたは各Casエンドヌクレアーゼを、核酸配列を囲む5’フランクと3’フランクを標的化させて切断させるように誘導することができる。
【0056】
適切には、一対のガイドRNA分子が、Casエンドヌクレアーゼまたは各Casエンドヌクレアーゼを、核酸配列を囲む5’フランクと3’フランクを標的化させて切断させて2つの二本鎖切断末端を生じさせるように誘導することができる。適切には、二本鎖切断末端を、核酸配列を囲む5’フランクと3’フランク内に生じさせる。適切には、二本鎖切断末端を、核酸配列の両側において生じさせる。
【0057】
適切には核酸配列は除去される。適切には、Casエンドヌクレアーゼまたは各Casエンドヌクレアーゼが、核酸配列を囲む5’フランクと3’フランクを標的化し、切断した後に、核酸配列は除去される。
【0058】
一実施形態では、方法は、生物、細胞または細胞の集団あるいはセルフリー発現システムにおいて核酸配列を欠失させるための方法である。
【0059】
適切には、そのような実施形態における核酸配列は、欠失させることが望ましい配列である。適切には、欠失させることが望ましい配列は任意の配列であってもよい。適切には、配列はコード領域または非コード領域内にあってもよい。適切には、配列は、遺伝子配列の全体または一部、あるいは調節エレメントを含んでもよい。適した調節エレメントには、シスまたはトランスの調節エレメントが含まれる。欠失させてもよい適したシス調節エレメントには、エンハンサー、サイレンサー、プロモーター、インスレーターをコードする核酸配列が含まれる。欠失させてもよい適したトランス調節エレメントには、転写因子、siRNA、lncRNA、miRNA、RNP、SRタンパク質、DNA編集タンパク質をコードする核酸配列が含まれる。
【0060】
一実施形態では、欠失させることが望ましい核酸配列には、エクソンが含まれる。適切には、エクソンはコードエクソンであってもよい。適切には、エクソンは、前記エクソンの除去がその遺伝子のコード配列中にフレームシフトを引き起こすことになる「クリティカルなエクソン」であってもよい。適切には、そのような実施形態では、一対のgRNAが、Casエンドヌクレアーゼまたは各Casエンドヌクレアーゼを、クリティカルなエクソンを囲む5’フランクと3’フランクを標的化させるように誘導する。適切には、クリティカルなエクソンとは、除去された場合に、核酸配列の残りの部分におけるコドンのフェージング(codon phasing)を破壊し、フレームシフト変異を引き起こす1つ以上のエクソンのことを指す。適切には、結果として生じるフレームシフト変異は、核酸の残りの部分のコード配列の破壊をもたらす。
【0061】
一実施形態では、そのような配列には、有害または病的核酸配列が含まれていてもよい。適切には、そのような配列には、疾患を引き起こすまたはそれに関与する分子をコードする核酸配列が含まれていてもよい。例えば、核酸配列は、遺伝性障害を引き起こすタンパク質の突然変異型をコードしていてもよく、または核酸配列は、遺伝性障害をもたらすタンパク質の発現を増加させるように作用するエンハンサーエレメントをコードしていてもよい。あるいは、配列には、その欠失が研究の対象となる核酸配列が含まれていてもよい。適切には、核酸配列の欠失は疾患を引き起こす。適切には、そのような配列を欠失させることにより、疾患モデルを創出する。
【0062】
一実施形態では、そのような配列は、修飾すべき細胞または生物に対して内在性または外来性であってもよい。適切には、欠失させることが望ましい核酸配列は、修飾すべき細胞または生物に対して外来性であってもよい。適切には、外来性の核酸配列は、トランスジェニックまたは異種の核酸配列であってもよい。適切には、そのような実施形態では、異種またはトランスジェニック核酸配列はそれ以前のプロセスによってDNA中に組み込まれていてもよく、それがその後の段階において除去されることが望ましい。
【0063】
適切には、5’フランクを標的化する第1のガイドRNAは、5’フランク内の配列を標的化し、適切には、3’フランクを標的化する第2のガイドRNAは、3’フランク内の配列を標的化する。「5’フランク」は、欠失させるべき核酸配列の前にあるヌクレオチド配列を意味する。「3’フランク」は、欠失させるべき核酸配列の後にあるヌクレオチド配列を意味する。適切には、5’から3’の順において。適切には直前または直後において。適切には、5’フランクおよび3’フランクは、それぞれ、核酸配列の5’末端および3’末端から最大1kb、最大500bp、最大400bp、最大300bp、最大200bp、最大100bp、最大50bp、最大40bp、最大30bp、最大20bp、最大10bpを含むと考えることができる。適切には、第1のガイドRNAによって標的化される配列は、核酸配列の5’末端から最大1kb、最大500bp、最大400bp、最大300bp、最大200bp、最大100bp、最大50bp、最大40bp、最大30bp、最大20bp、最大10bpを含む5’フランク内にある。適切には、第2のガイドRNAによって標的化される配列は、核酸配列の3’末端から最大1kb、最大500bp、最大400bp、最大300bp、最大200bp、最大100bp、最大50bp、最大40bp、最大30bp、最大20bp、最大10bpを含む3’フランク内にある。適切には、5’フランクおよび3’フランクは、核酸配列の両端に隣接していてもよく、適切には、それぞれ核酸配列の5’末端および3’末端に隣接していてもよい。
【0064】
欠失させるべき核酸配列は、20bp、200bp、2000bpの長さを超えても、または2Mbの長さを超えてもよい。
【0065】
一実施形態では、5’フランクおよび3’フランクには、マイクロホモロジーの低い配列が含まれる。一実施形態では、第1のガイドRNAは、5’フランク内のマイクロホモロジーが低い配列を標的化する。一実施形態では、第2のガイドRNAは、3’フランク内のマイクロホモロジーが低い配列を標的化する。
【0066】
一実施形態では、それぞれのガイドRNAについて、最も豊富な編集結果の頻度は、2番目に豊富な編集結果の頻度の4倍未満である、3倍未満である、2.5倍未満である、2倍未満である、1.5倍未満であると決定される。一実施形態では、それぞれのガイドRNAについて、最も豊富な編集結果の頻度は、2番目に豊富な編集結果の頻度にほぼ等しいと決定される。
【0067】
一実施形態では、それぞれのガイドRNAについて、最も豊富な編集結果の頻度は、その他の編集結果の頻度の4倍未満である、3倍未満である、2.5倍未満である、2倍未満である、1.5倍未満であると決定される。一実施形態では、それぞれのガイドRNAについて、最も豊富な編集結果の頻度は、その他の編集結果の頻度にほぼ等しいと決定される。
【0068】
本発明は、本第2の態様に従ってデザインされたシステムも提供する。
【0069】
第3の態様では、本発明の方法は、異種配列を標的DNAのストレッチ内に組み入れるための改善されたシステムをデザインするために使用することができる。すなわちそれらを「ノックイン」実験のために使用することができる。そのような方法は、(i)DNA配列を標的化する上記のCRISPR-CasシステムのためのガイドRNAを選ぶが、多くの編集結果を伴うガイドを特定すること(切断に対して標的化される配列が全体として低いマイクロホモロジーによって特徴付けられるように)、および(ii)ドナー配列の組入れによって切断が優先的に修復されるように、標的領域に導入されるべきドナー配列の各末端にマイクロホモロジーを設計し、カット部位とノックイン鋳型との間にマイクロホモロジーの高い人工領域を創出すること、を含んでもよい。
【0070】
そのような、異種配列を標的DNAのストレッチ内に組み入れるための改善された方法では、最も豊富な結果の頻度は、2番目に豊富な結果の頻度の1.5倍未満であってもよく、最も豊富な結果の頻度は、5番目に豊富な結果の2倍未満であってもよく、例えば2.5倍未満であっても、3倍未満であっても、または4倍未満であってもよい。それらの方法は、各ガイドRNA配列にオフターゲットスコアを割り当てることおよびスコアが予め定めた閾値未満のあらゆるガイドRNA配列を除外すること、例えば、オフターゲットスコアが50未満、40未満、30未満または20未満のあらゆるガイドRNA配列を除外することをさらに含んでもよい。さらに、それらの方法は、各ガイドRNA配列にオンターゲットスコアを割り当てることおよびスコアが予め定めた閾値未満のあらゆるガイドRNA配列を除外すること、例えば、オンターゲットスコアが80未満、70未満、60未満、50未満、40未満または30未満のあらゆるガイドRNA配列を除外することを含んでもよい。当然ながら、フレームシフティングスコアおよび切断部位の位置が遺伝子の前半部分にあることは、異種配列を標的DNAのストレッチ内に組み入れるためのそのような方法においては、あまり重要でなくてもよい。
【0071】
インデル形成よりも、DSBにおけるドナー核酸分子の組込みに偏らせるために、人工のマイクロホモロジーをドナー分子中に設計してもよい。ドナー分子の配列をジヌクレオチド、トリヌクレオチドまたはより長いマイクロホモロジーのストレッチを含むように変えてもよく、それはDSBの30bp上流(5’)または下流(3’)内である。マイクロホモロジーのストレッチを、ドナー分子内の任意の位置に組み入れてもよい。これらの方法は、それらが組み入れられる遺伝子のコード配列が保存されるマイクロホモロジー領域の包含を、さらに含んでもよい。これらの場合、ドナー配列によって目的を持って導入される意図的な変化(例えば、疾患を引き起こす変異、活性化変異または不活性化変異)以外に、タンパク質配列を意図的でなく破壊することはない。
【0072】
天然のDNAのフランクおよび人工的に設計されたマイクロホモロジーを有するDNAのフランクから成る、カット部位において新たに形成された配列は、切断された場合、上記で述べたのと同様に、2番目に多く予測される編集結果の2倍以上の主要な編集結果を生成すると予測される。設計されたマイクロホモロジーのストレッチの予測される編集結果を決定するために、コンピュータモデル、例えばLindelなどを使用することができる。これは、設計されたマイクロホモロジーを細胞に導入し、これを標的化して切断し、編集結果を配列決定することによる細胞内での直接的な実験法を介して、実験的にも決定できることは認識されるであろう。
【0073】
本発明は、本第3の態様に従ってデザインされたシステムも提供する。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載の方法を使用して選択されたガイドRNA配列を含むガイドRNA分子を生成することをさらに含む。本明細書に記載のガイドRNA配列を選択する方法は、選択プロセスにおいて適用されるクライテリアを満たしかつCRISPR-Cas遺伝子編集において使用することができる可能性のあるいくつかのガイドRNA配列をもたらし得る。従って、いくつかの実施形態では、方法は、複数の(例えば2、3、4、5、8、10またはそれを超える)ガイドRNA分子を生成することを含んでもよい。次に、ガイドRNA分子を試験してもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、方法は、選択された1つまたは複数のガイドRNA配列を含む1つ以上のガイドRNA分子を試験して、標的配列のCRISPR-Cas編集によってもたらされる1つまたは複数の編集結果すなわち遺伝子型を決定することをさらに含む。ガイドRNA分子を使用して標的配列のCRISPR-Cas編集を実施し(例えば適した細胞株、例えばマウスES細胞において)、次いで編集された配列を配列決定することにより、ガイドRNA分子を試験することができる。
【0076】
CRISPR-Cas遺伝子編集および/またはそれに続く配列決定は、本明細書に記載のプロトコールを使用して実施してもよい。編集プロセスの後に、ゲノムのDNAを、標準的な技術を使用して細胞から抽出してもよい。標的遺伝子座を囲む領域は、例えばPCRを使用して、配列決定の前に増幅してもよい。配列決定を、任意の適した技術、例えばサンガー配列決定を使用して実施してもよい。試験済みの各ガイドRNA分子の編集結果を決定するために、ソフトウェア、例えばサンガー配列決定トレースのデコンボリューションウェブツール(ICE、Synthego社から入手可能)を使用して、配列決定データを分析してもよい。各ガイドRNA分子について、生成された各遺伝子型の頻度をそれによって決定することができる。ガイドRNA分子ごとに取得される編集効率、すなわち予測される切断部位において編集されるDNA分子の総数のパーセンテージも評価することができる。好ましくは、さらなる使用のために選択されるガイドRNA分子の編集効率は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%である。30%編集効率のカットオフとは、例えば調べた胚または細胞プールにおいて、利用可能なすべての標的部位のうちの30%が標的DNA中で編集されることを意味する。
【0077】
本発明の好ましい方法は、上記で詳述したように、標的配列すなわちガイドRNAを、それらを使用して生じた遺伝子型の数および頻度に従って評価および選択し、その後に25%の編集効率を有するそれらの標的配列すなわちガイドRNAを選択することを含む。少なくとも25%の編集効率を有するガイドRNAを選択することは、非ヒト動物モデル、例えばマウスモデルを生成する方法において特に好ましい。
【0078】
以下の試験では、選択されたガイドRNA分子を使用して細胞(例えば接合体)または細胞の集団を編集することができる。以下の試験では、選択された標的配列をヌクレアーゼによって標的化させて細胞(例えば接合体)または細胞の集団を編集することができる。
【0079】
「ガイドRNA分子」という用語は、CRISPR-Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成することができ、複合体を標的核酸配列に対する配列特異的な結合に誘導する核酸分子のことを指すと理解されたい。ガイドRNA分子は、本明細書に記載の方法を使用して選択されたガイドRNA配列(「標的化する配列」と称される場合もある)を含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNA分子は化学的に修飾されていても、核酸アナログであってもよい。ガイドRNAは、RNAおよび/またはDNA配列を含んでもよい。
【0080】
ガイドRNA分子は、当業者に一般に知られている技術を使用して生成することができる。例えば、ガイドRNA分子は、化学合成を使用して生成することができる。別の方法はインビトロ転写を使用することであり、ここではガイドRNA分子はDNA鋳型を使用して転写される。あるいは、ガイドRNA分子は、宿主細胞中にトランスフェクトされたベクター、例えばプラスミドまたはウイルスベクターによって発現してもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、ガイドRNA分子はシングルガイドRNA(sgRNA)である。「シングルガイドRNA」という用語は、足場となるtracrRNA配列と融合させたcrRNA配列(標的化する配列を含む)を含む、CRISPR-Cas9システムにおける使用のための単一のRNA分子のことを指す。しかし、本発明はまた、2分子からなるcrRNA:tracrRNAシステムまたは従来とは異なるtracrRNA配列を使用するシステムを使用して実行することもできることは、認識されるであろう。
【0082】
ガイドRNA配列の「標的」(当分野においては「標的遺伝子座」とも称される)とは、ガイドRNA配列を含む分子が、例えばワトソン・クリック塩基対形成を介して結合する(「ハイブリダイズする」)ことができる核酸配列の領域であることが、当業者によって認識されるであろう。その標的に結合するガイドRNA配列の能力は、ガイドRNA配列と標的配列との間の相補性のレベルを基準にして記載することができる。相補性のレベルは、ガイドRNA配列とその標的配列との間の同一性パーセンテージとして表すことができ、同一性パーセンテージとは、第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン・クリック塩基対形成)を形成することができる、核酸分子中の残基のパーセンテージのことである(例えば10個中5個、6個、7個、8個、9個、10個は、50%、60%、70%、80%、90%および100%の同一性である)。
【0083】
ガイドRNA配列は、標的核酸配列にハイブリダイズするために、その標的核酸配列に対して十分な相補性を有していなければならない。従って、いくつかの実施形態では、ガイドRNA配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、少なくとも約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%または100%であり得る。RNA配列のオフターゲットスコアを低減させるために相補性の程度がより高いことが好ましい場合があり、RNA配列の特定の領域、例えばPAM配列に近い領域においては、相補性の程度がより高いことが必要な場合がある。ガイドRNA配列とその標的配列との間のアライメントは、例えばSmith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、Clustal W、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies社;www.novocraft.comにおいて入手可能)、ELAND(イルミナ社、San Diego、CA)、SOAP(soap.genomics.org.cnにおいて入手可能)およびMaq(maq.sourceforge.netにおいて入手可能)のいずれかを使用して決定することができる。
【0084】
本発明の第4の態様によれば、生物、細胞または細胞の集団あるいはセルフリー発現システムにおいて核酸配列を編集するための方法が提供される。方法は、切断後に主要な編集結果をもたらすと予測される、核酸配列内の標的配列に対して標的化させられるヌクレアーゼに、核酸配列を含む二本鎖(ds)DNAを曝露することを含んでもよい。標的配列は、例えば、上記で説明したように、標的遺伝子にあっても、または非コード領域内にあってもよい。標的配列は、上記の方法を使用して選択してもよく、従って、本第4の態様の方法は、第1の態様の工程または方法をさらに含んでもよい。
【0085】
好ましくは、ヌクレアーゼはCasエンドヌクレアーゼ、例えばCas9エンドヌクレアーゼであり、Casエンドヌクレアーゼは、Casエンドヌクレアーゼを標的配列、例えば標的遺伝子の標的配列に誘導することができるガイドRNA分子によって標的化させられる。ガイドRNAは、上記の方法を使用して選択してもよく、従ってガイドRNA配列の使用を必要とする本第4の態様の方法は、ガイドRNA配列に関係する第1の態様の工程または方法をさらに含んでもよい。
【0086】
第4の態様による方法は、第2または第3の態様に従ってデザインされたシステムを使用することを含んでもよく、従って、第2または第3の態様の工程または方法を含んでもよい。
【0087】
本発明の第4の態様は、生物、細胞または細胞の集団あるいはセルフリー発現システムにおいて核酸配列を編集するための方法であって、核酸配列を含む二本鎖(dsDNA)を、CasエンドヌクレアーゼおよびCasエンドヌクレアーゼを核酸配列内の標的配列に誘導することができるガイドRNA分子に曝露することを含む、方法を提供する。
【0088】
いくつかの実施形態では、ガイドRNA分子は、CRISPR-Cas編集において使用された場合に、2番目に豊富な編集結果の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍または少なくとも20倍を超える頻度を有する主要な編集結果をもたらす(または、例えばコンピュータモデルによってもたらすと予測される)ガイドRNA配列を含む。あるいは、いくつかの実施形態では、第2の態様において記載されるように、ガイドRNA分子は、CRISPR-Cas編集において使用された場合に、他の編集結果の4倍未満である豊富さを有する主要な編集結果をもたらすことができる。
【0089】
ガイドRNA分子は、本明細書に記載の方法に従って生成されていてもよい。ガイドRNA分子は、本明細書に記載の方法に従って選択されたガイドRNA配列を含んでもよい。
【0090】
一実施形態では、本明細書において上述されるように、1つを超えるガイドRNAが、第4の態様のそのような方法において使用されてもよい。従って、適切には、第4の態様の方法は、生物、細胞または細胞の集団あるいはセルフリー発現システムにおいて、1つを超える核酸配列を編集するための方法を含んでもよい。
【0091】
一実施形態では、従って、生物、細胞または細胞の集団あるいはセルフリー発現システムにおいて、1つを超える核酸配列を編集するための方法であって、方法が、各核酸配列を含む二本鎖(dsDNA)を、Casエンドヌクレアーゼおよび1つを超えるガイドRNA分子に曝露することを含み、ここで各ガイドRNA分子は、Casエンドヌクレアーゼを核酸配列のうちの1つの内部の標的配列に誘導することができる、方法を提供する。
【0092】
例えば、生物、細胞または細胞の集団あるいはセルフリー発現システムにおいて、2つの核酸配列を編集するための方法であって、方法が、第1および第2の核酸配列を含む二本鎖(dsDNA)を、Casエンドヌクレアーゼおよび2つのガイドRNA分子に曝露することを含み、ここで第1のガイドRNA分子は、Casエンドヌクレアーゼを第1の核酸配列内の標的配列に誘導することができ、第2のガイドRNA分子は、Casエンドヌクレアーゼを第2の核酸配列内の標的配列に誘導することができる、方法を提供する。
【0093】
方法は、例えばノックアウト変異、例えばフレームシフト変異を創出することによって、標的遺伝子の発現を抑制するためのものであってもよい。適切には、これは、クリティカルなエクソンの欠失によって達成されてもよい。
【0094】
方法が細胞または細胞の集団において標的配列を編集するためのものである実施形態では、方法は、ガイドRNA分子およびDNAエンドヌクレアーゼを細胞または複数の細胞に導入することを含んでもよい。方法が細胞または細胞の集団において1つを超える標的配列を編集するためのものである実施形態では、方法は1つを超えるガイドRNA分子、および適宜1つを超えるDNAエンドヌクレアーゼを、細胞または複数の細胞に導入することを含んでもよい。
【0095】
ガイドRNA分子およびCasエンドヌクレアーゼを、細胞または集団内の各細胞に、別々に(逐次的または同時に)、あるいは組合せにおいて、導入してもよい。例えば、ガイドRNA分子およびCasエンドヌクレアーゼは、1つまたは複数の細胞への投与のための単一の組成物において提供されてもよい。ガイドRNA分子およびCasエンドヌクレアーゼの細胞への導入は、当業者に知られているウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクターを介して、遂行されてもよい。
【0096】
ガイドRNA分子およびCasエンドヌクレアーゼを、任意の適した技術によって、1つまたは複数の細胞内に導入することができる。そのような技術は当業者に知られており、リポフェクション、ウイルスベクター(例えばレンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルスベクター)、ウイルス様粒子、ナノ粒子、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、ならびに他のトランスフェクション手段または形質導入手段が含まれる。
【0097】
いくつかの実施形態では、ガイドRNA分子およびCasエンドヌクレアーゼは、1つまたは複数の細胞にエレクトロポレーションによって導入される。エレクトロポレーションの前に、ガイドRNA分子とCasエンドヌクレアーゼを複合体形成させてもよい。適したエレクトロポレーション法が、当分野において知られており、本明細書においてさらに記載され得る。
【0098】
本発明の方法における使用のための適したヌクレアーゼには、クラスII CRISPR-Casシステムが含まれる。好ましくは、本明細書に記載の方法は、CRISPR-Casシステム、例えばクラスII、特にクラスIIB(例えばCas9)またはクラスV-A(例えばCas12a)に属するCRISPR-Casシステムを使用する核酸配列編集を利用してもよく、またはそのために構成されていてもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、標的配列を切断して、平滑末端化された二本鎖切断末端を生じさせる。他の実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、標的配列を切断して、8ヌクレオチド未満、例えば6ヌクレオチド未満または4ヌクレオチド未満または2ヌクレオチド未満の切断部位におけるオーバーハングを伴う、ねじれ型の二本鎖切断末端(staggered double strand break)を生じさせる。
【0100】
好ましい実施形態では、CasエンドヌクレアーゼはCas9エンドヌクレアーゼである。例えば、Cas9は、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(SpCas9)から単離された天然に存在するCas9であってもよい。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、天然に存在するCas9、例えばSpCas9に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する、天然に存在するCas9の変異体またはホモログである。
【0101】
適している可能性のある他のCas9エンドヌクレアーゼには、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(SaCas9)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)(StCas9)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(NmCas9)、Francisella novicida(FnCas9)およびカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)(CjCas9)およびストレプトコッカス・カニス(Streptococcus canis)(ScCas9)から単離されたCas9、ならびにこれらの天然に存在するCas9酵素のエンドヌクレアーゼ変異体またはホモログが含まれる。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、Casエンドヌクレアーゼ以外の酵素を用いて遂行されてもよい。適切には、本発明の方法は、DNA中に標的化された二本鎖切断末端を生じさせることができる任意の酵素を用いて遂行されてもよい。例えば、本発明の方法は、任意のヌクレアーゼまたはエンドヌクレアーゼ、適切には制限エンドヌクレアーゼを使用して遂行されてもよい。
【0103】
細胞または細胞の集団は、原核生物、例えば古細菌であっても、または真核生物であってもよい。従って、いくつかの実施形態では、細胞または細胞の集団は原核生物であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞または細胞の集団は細菌であってもよく、いくつかの実施形態では細胞または細胞の集団は古細菌であってもよい。いくつかの実施形態では、生物、細胞または細胞の集団は真核生物、例えば動物界、真菌類または植物界であってもよい。
【0104】
適切には、生物、細胞または細胞の集団は、哺乳動物、鳥類、無脊椎動物、魚類、爬虫類、両生類に由来してもよい。いくつかの実施形態では、生物、細胞または細胞の集団は哺乳動物である。生物あるいは1つまたは複数の細胞は、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、霊長類、ニワトリまたはヒトであってもよい。
【0105】
細胞の集団は、生物から、例えば哺乳動物の体から取得してもよい(または以前に取得していてもよい)。あるいは、集団は、生物から取得した細胞または複数の細胞を培養液中で拡大することによって得てもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、細胞は免疫細胞である。適している免疫細胞は、リンパ球、例えばT細胞、B細胞、NK細胞であってもよく、または骨髄系細胞、例えば好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、樹状細胞、単球またはマクロファージであってもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の細胞はT細胞である。適切には、T細胞はキラーT細胞、ヘルパーT細胞または調節性T細胞であってもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の細胞はCAR-T細胞である。従って、いくつかの実施形態では、遺伝子編集されたT細胞を生成する方法であって、本発明の方法に従って標的配列すなわちガイドRNAを特定し、その後、T細胞集団のゲノムを、標的配列すなわちガイドRNAによって特定された部位において編集することを含む、方法を提供する。好ましくは、T細胞集団のゲノムは、本発明の方法に従って選択されたガイドRNAを使用して、CRISPR-Casエンドヌクレアーゼ、例えばCas9をT細胞ゲノム中の標的配列に対して標的化させることによって、編集される。
【0107】
いくつかの実施形態では、細胞は前駆細胞または幹細胞である。適した幹細胞には、初代幹細胞または不死化幹細胞が含まれる。一実施形態では、細胞は誘導多能性幹細胞である。適切には、前駆細胞または幹細胞はヒトのものである。
【0108】
いくつかの実施形態では、生物、細胞または細胞の集団は、修飾された生物、細胞または細胞の集団であってもよい。いくつかの実施形態では、生物、細胞または細胞の集団は、遺伝子修飾されていてもよい。従って、適切には、本発明の方法は、既に修飾されている生物、細胞または細胞の集団、すなわちトランスジェニックの生物、細胞または細胞の集団上で実施されてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、生物から細胞を取得する工程を含む方法は、本発明の範囲から除外される。
【0110】
従って、いくつかの実施形態では、方法は、エクスビボ(ex vivo)で、細胞の集団の各細胞中の標的配列を編集するためのものである。方法は、エクスビボで、細胞の集団の各細胞中の標的遺伝子を編集するためのものであってもよい。一部の代替の実施形態では、方法は、インビボ(in vivo)で標的配列を編集するためのものであり、例えば、インビボで標的遺伝子を編集するためのものである。インビボでの編集は治療法の一部としてであってもよく、あるいはインビボでの編集は治療ではない方法の一部としてであってもよい。例えば、編集は、実験的使用のための組織または生物を生成するために、非ヒト真核細胞においてインビボで実施されてもよい。従って、好ましい方法は、モデル生物、例えばマウスモデルまたはラットモデルを生成する方法である。
【0111】
いくつかの実施形態では、集団の細胞中にガイドRNA分子およびCasエンドヌクレアーゼを導入した後に、集団内の細胞の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または実質上すべてが、同じ遺伝子型(編集結果)を有するように、標的配列のCRISPR-Cas編集が起こる。
【0112】
いくつかの実施形態では、細胞は接合体である。いくつかの実施形態では、接合体は非ヒトのものである。本発明の好ましい方法には、ヒトの生殖系列の遺伝的同一性を修飾するための工程は包含されない。適切には、本明細書で言及された胚または接合体は、非ヒトの胚または接合体であり得る。
【0113】
従って、本発明は、非ヒトの、哺乳動物であってもよいトランスジェニック動物を作製する方法であって、方法が、Casエンドヌクレアーゼ、好ましくはCas9エンドヌクレアーゼおよびガイドRNA分子を胚に導入することを含み、ここでガイドRNA分子は、CRISPR-Cas編集において使用された場合に、2番目に豊富な編集結果の少なくとも2倍を超える頻度を有する主要な編集結果をもたらす(または、例えばコンピュータモデルによってもたらすと予測される)ガイドRNA配列を含む、方法を提供することができる。好ましくは、ガイドRNAは、上記に詳述される、本発明に従ってガイドRNAを選択する方法を使用して選択される。あるいは、本発明は、非ヒトのトランスジェニック動物を作製する方法であって、Casエンドヌクレアーゼまたは各Casエンドヌクレアーゼ、好ましくはCas9エンドヌクレアーゼならびにガイドRNA分子または各ガイドRNA分子を胚に導入し、第2の態様の工程を遂行することを含む、方法を提供することができる。
【0114】
一実施形態では、本発明は、キメラ動物を作製する方法を提供することができる。適切には、キメラ動物は、種間キメラであっても、または種内キメラであってもよい。適切には、そのような方法は、本発明の方法を実施することにより、第1の生物に由来する細胞または細胞の集団中の核酸配列を修飾し、第2の生物中に、細胞または細胞の集団を移植することを含んでもよい。適切には、移植すると、修飾された細胞または細胞の集団は、増殖し、拡大する可能性がある。適切には、第1の生物はヒトであってもよく、第2の生物は異なる哺乳動物、例えばブタであってもよい。いくつかの実施形態では、細胞または細胞の集団は、非ヒトの胚であってもよい。いくつかの実施形態では、細胞または細胞の集団は、幹細胞、多能性幹細胞または前駆細胞であってもよい。好ましくは、そのような方法は、ヒトおよび動物の生殖細胞または全能性細胞からキメラを作製する工程は包含しない。
【0115】
方法は、胚をレシピエントの雌の動物に移植して妊娠させることをさらに含んでもよい。
【0116】
CasエンドヌクレアーゼおよびガイドRNA分子を、1細胞期(すなわち接合体)において、胚の中に導入してもよい。接合体は、移植前に、発生の後期(例えば、2細胞期、4細胞期または8細胞期)にまで培養してもよい。
【0117】
従って、いくつかの実施形態では、本発明の第4の態様の方法は、胚において、1つまたは複数の核酸配列、例えば遺伝子、を編集するためのものである。方法は、ガイドRNA分子または各ガイドRNA分子ならびにCasエンドヌクレアーゼを胚の各細胞に導入すること含んでもよい。ガイドRNA分子または各ガイドRNA分子ならびにCasエンドヌクレアーゼは、2細胞期、4細胞期または8細胞期、あるいはより後期における胚の細胞中に導入してもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、複数の胚を、単一のレシピエントの雌中にトランスファーする。例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも10または少なくとも15個の胚を、一匹のレシピエントの雌にトランスファーしてもよい。これは、複数の生きた子孫の誕生をもたらし得る。有利には、25%を超える子孫が非モザイクであり得る。いくつかの実施形態では少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%の子孫が非モザイクである。「非モザイク」により、個々の動物内の実質上すべての細胞(実質上すべての組織における)が、同じ遺伝子型を有することが理解されるであろう。
【0119】
従って、本発明は、その後の繁殖工程を必要としない、単一世代における、トランスジェニック動物中のモザイク現象を低減させるまたは取り除く方法を提供する。よって、本発明の方法は、非モザイクのトランスジェニック動物を生成するために使用することができる。
【0120】
動物は、哺乳動物であってもよい。動物は、げっ歯類、例えばマウスまたはラットであってもよい。あるいは、動物はウサギ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ニワトリまたは霊長類であってもよい。霊長類は非ヒトであってもよい。
【0121】
従って、さらにさらなる態様では、本明細書に記載の方法によって取得可能な、細胞(例えば胚)、細胞集団および非ヒト生物(例えばトランスジェニック動物)が提供される。適切には、そのような細胞、細胞集団および非ヒト生物は、修飾された細胞集団および修飾された非ヒト生物である。
【0122】
次に、本発明の実施形態を、例を挙げ、添付の図を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1図1Aは、Vsig4遺伝子の二本鎖切断末端(dsb)修復における精度に対してプロットした、マイクロホモロジー強度を示すグラフである。精度は、修復結果の予測可能性として理解することができる。図1Bは、Vsig4遺伝子の最も頻度の高い遺伝子型(M.F.gt)に対してプロットした、マイクロホモロジー強度を示すグラフである。マイクロホモロジーが高いと、修復結果の幅および複雑さが低減され、より一貫性のある結果が生じる。
図2図2Aは、Vsig4のCRISPRデザインの予測される編集結果に対する各編集の頻度を示すグラフである。7bpの欠失の頻度が圧倒的に最も高い。図2B(A)は、標的部位におけるマイクロホモロジーに留意せず生成された、代表的なCRISPRマウスモデル創出例についての結果を示すチャートである。生まれた子の半分は未編集、半分はモザイクであった。図2B(B)は、マイクロホモロジーの知見が適用された場合のCRISPRマウスモデル創出の結果を示すチャートである。生まれたマウスの半分未満が未編集またはモザイクであった。大部分(21/38)は非モザイクであり、実験用となった。図2Cは、代表的な3匹の遺伝子修飾マウスにおける個々の組織のDNA配列分析の結果を示す。全く異なる発生系譜に由来する異なる組織全体にわたって、同じ挿入および欠失(7bpの欠失、2bpの挿入、1bpの欠失)が観察された。図2Dは、直接的な、編集の生殖細胞系伝達の代表データを示す。編集された雌由来の卵母細胞を、野生型(WT)の雄によって受精させ、溶解および配列分析前に、胚盤胞期まで培養した。胚盤胞は、どの場合においても、遺伝子修飾の遺伝形質を示した。予想された通り、遺伝形質は、伴性遺伝子に特徴的なパターンに従った。
図3図3は、生殖細胞系伝達を評価するための、1匹の野生型雄およびVsig4修飾を伴う2匹の非モザイクの雌から成る3匹のマウスの繁殖の結果を表す。結果として得られた子はすべて、X連鎖遺伝子に一致するパターンの編集を含有した。すべての雄は完全な編集を示した一方、雌の遺伝子編集はヘテロ接合性であった。重要なことに、同腹仔において完全な野生型マウスまたは予想外の遺伝子編集はなく、ゲノム修飾の完全な伝播性が示された。
図4図4は、Vsig4に関して遂行される本発明の方法は、他の遺伝子に対して反復可能および一般化可能であることを示す。円グラフは、遺伝子Vsig4、Ccr1およびPrdm14における、局所的なDNA配列を活用する本発明の方法の遂行から得られた集計データを示し、遺伝子Hmga1、HMga1-psおよびHmga2における、局所的なDNA配列の特徴を無視する伝統的な方法についてのデータを示すチャートと比較する。
図5図5は、表現効果のあるPrdm14ノックアウトの機能分析を示す。(A)遺伝子型を同定したPrdm14-/-マウスから、精巣および卵巣組織を切除し、秤量した。スチューデントt検定を使用して統計学的解析を遂行し、P=9.4×10-9(精巣)およびP=2.2×10-4(卵巣)を得た。(B)精巣組織の可視化。(C)Prdm14-/-の雄ではないwtにおける精子細胞(赤色のアステリスク)の顕微鏡観察。
図6図6は、本発明の方法を使用して、DNAマイクロホモロジーを分析することにより大規模な欠失を亢進させる能力を示す。(A)局所的なマイクロホモロジーが低い領域を標的化することにより、ホモ接合性の大規模な欠失を亢進させることができ、それが非モザイクの動物を生む。(B)遺伝子Ddx3yを使用した予備データは、マイクロホモロジーの低い領域は、マイクロホモロジーの高い領域を標的化することと比較して、より高頻度に両アレル性の大規模な欠失をもたらすことを示し、(C)および(D)の円グラフは、遺伝子Gata1における同じ方法論の遂行についての生データを示す。(C)では、左から右にかけて:Gata1モデルのモザイク現象全体についての円グラフ、「非モザイク」は、単一の編集結果が両編集部位に存在した場合である。これらの編集結果には、インデルおよび所望の欠失が含まれる;マイクロホモロジーの低いガイドRNAのペアにのみ注目した場合の、Gata1モデルのモザイク現象についての円グラフ。これらの編集結果には、インデルおよび所望の欠失が含まれる;マイクロホモロジーの高いガイドRNAのペアにのみ注目した場合の、Gata1モデルのモザイク現象についての円グラフ。これらの編集結果には、インデルおよび所望の欠失が含まれる。(D)では、左から右にかけて:すべてのGata1編集マウス中に存在する大規模な欠失についての円グラフ。大規模な欠失、インデルおよび未編集のマウスを比較する(モザイク現象を示すものではない);マイクロホモロジーの低いガイドRNAのペアを使用して生成したGata1マウス中に存在する大規模な欠失についての円グラフ;マイクロホモロジーの高いガイドRNAのペアを使用して生成したGata1マウス中に存在する大規模な欠失についての円グラフ;
図7図7は、生存率の減少を伴わない、ヒト初代T細胞の効率的なCas9編集を示す。HEK293Tおよびヒト初代T細胞を、本発明の方法を使用して、CTLA4に対してデザインしたガイドを用いて編集した(A)HEK293T細胞およびヒト初代T細胞中のCTLA4を標的化する増量を伴うCas9:sgRNAの編集効率(n=3、技術的反復(technical replicate)、エラーバー=SD、ns=有意でない)。未編集対照と比較して、タンパク質のコード領域中にフレームシフトをもたらすインデルを有する細胞の率を決定することにより、効率を測定した。(B)編集の3日後に記録したT細胞生存率。%生存率を、総細胞数/mLに対する、生きている細胞数/mLのパーセンテージとして計算した。
図8図8は、(A)CTLA4を標的化するsgRNAを用いて編集した健康なドナーT細胞の配列決定トレースを示す。sgRNAの標的配列に黒で下線を引く。編集された細胞のプール内の特定の編集の寄与を示す。(B)プール内の編集結果の分布を示す。70%を超える編集は純粋であり、モザイク現象のレベルが30%未満に低減したことを示す。
図9図9は、(A)初代T細胞中のCTLA4、PD-1、LAG-3、PTPN2、DGKおよびHAVCR2(TIM3としても知られる)に対する、本発明の方法(接合性)を使用してデザインされたgRNAとサンガー法(Sanger)でデザインされた(ベンチマーク)gRNAsとの間の編集効率の比較を示す。初代T細胞を編集したとき、本発明に従ってデザインされたgRNAは、6遺伝子にわたってより効率的であった(P<0.005)(B)初代T細胞中のCTLA4、PD-1、LAG-3、PTPN2、DGKおよびHAVCR2に対する、本発明の方法(接合性)を使用してデザインされたgRNAとサンガー法でデザインされた(ベンチマーク)gRNAとの間のノックアウト効率の比較を示す。サンガー法でデザインされたガイドと比較した場合、本発明の方法を使用してデザインされたgRNAは、初代T細胞中の遺伝子をより高い割合でノックアウトした(P<0.006)(C)初代T細胞中のCTLA4、PD-1、LAG-3、PTPN2、DGKおよびHAVCR2に対する、本発明の方法(接合性)を使用してデザインされたgRNAとサンガー法でデザインされた(ベンチマーク)gRNAとの間のモザイク現象の度合の比較を示す。サンガー法でデザインされたガイドと比較した場合、本発明の方法を使用してデザインされたgRNAは、初代T細胞中にモザイク現象の低下(純度(%)の増加によって示される)をもたらした(P<0.006)。
図10図10は、ガイドの性能(オンターゲット、予測されるフレームシフト頻度)を記述する計算的に導き出された多様なメトリックと、編集のサンガー配列決定に由来する編集結果との間の相関を示す。本データにより、遺伝子ノックアウト効率の最良の予測因子は、本発明で使用されるフレームシフトメトリックであることが示される。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0124】
本発明の方法に従って選択されたガイドRNA配列を使用するCRISPR編集は、以下のプロトコールを使用して実施することができる。
胚を編集するためのプロトコール例
1.合成修飾されたシングルガイドRNA(sgRNA)として、ガイドRNA配列を注文する(例えばMerck社に)、
2.sgRNAを水中に再懸濁する、
3.インビトロで受精させたマウスの接合体を、精子注入3時間後のエレクトロポレーションに備えて調製しておく、
4.60μLのOpti-MEM(Thermofisher社)中で、4.5μgのsgRNAと20μgのCas9タンパク質(TrueCut V2、Invitrogen社)を、室温で20分間、複合体形成させる、
5.50μlの複合体溶液を、NEPA21エレクトロポレーターのCUY520P5電極にトランスファーする、
6.インピーダンスが0.48~0.52kWの範囲になるまで、容量を調整する、
7.Opti-MEMで洗浄した接合体を、エレクトロポレーションチャンバーに移す、
8.インピーダンスを再度確認する、
9.表1に略述したパラメータを使用してエレクトロポレーションする、
10.接合体を、エレクトロポレーションチャンバーから取り出し、KSOM溶液に30分間入れる、
11.接合体をKSOM溶液で3回洗浄する、
12.接合体を新しいKSOM溶液に戻し、少なくとも2細胞期、場合によっては胚盤胞期まで培養する、
13.偽妊娠レシピエント雌マウスにトランスファーする。
【0125】
【表1】

細胞を編集するためのプロトコール例
1.合成修飾されたシングルガイドRNA(sgRNA)として、ガイドRNA配列を注文する(例えばMerck社に)、
2.sgRNAを水中に再懸濁する、
3.80pmolのsgRNAと4μgのCas9タンパク質(TrueCut V2、Invitrogen社)を複合体形成させる、
4.細胞(~400,000)を回収し、沈殿物を1×PBSで洗浄し、20μLの適切なエレクトロポレーション緩衝液中に再懸濁する、
a.細胞数および容量は、Lonza社の16ウェルカセットを用いた使用に適していること。異なるエレクトロポレーション容器を使用する場合にはスケールアップし、キットの手順に従う、
b.Amaxa 4D nucleofectorを使用し、エレクトロポレーション容器および緩衝液をLonzaを介して購入する。異なる緩衝液を、さまざまな細胞タイプを用いた異なる使用に対して最適化する、
c.細胞をエレクトロポレーション緩衝液と混合したら、できるだけ速やかにエレクトロポレーションを完了させる、
5.細胞を、複合体形成させたsgRNAとCas9タンパク質と混合し、エレクトロポレーション容器にトランスファーする、
6.Lonzaが推奨する、細胞タイプに特異的なプログラムに従ってエレクトロポレーションする、
7.80μlの細胞培地をエレクトロポレーションカセットに添加し、インキュベーター内に10分間置いて細胞を回復させる、
8.細胞を、1mLの予熱した培地を含有する12ウェルプレート中に載せる、
9.必要に応じて培養する。
【0126】
[実施例1]
Cas9切断によって誘発される標的配列の二本鎖DNA切断末端(DSB)の修復は、かつてランダムだと考えられていたが、ランダムではないことが最近示された。Cas9カット部位周囲の、短い反復DNA配列(マイクロホモロジー)エリアは、DSBがどのように修復されるかにおいて主要な役割を果たす。図1に示されるように、局所的なマイクロホモロジーと標的配列のランダムではない修復、すなわち精度との間には、直接的な関係性がある(図1A)。直接的な関係性は、我々が編集結果を新たに理解し、予測することを可能とする。マイクロホモロジーの低いDNA配列は、予測が困難な様式で修復されて、幅広い編集結果を与える。高いマイクロホモロジーは、修復結果の幅の減少に相関する(図1B)。さらに、編集イベントは標的配列の再カットによって時間とともに進み、モザイク現象につながる可能性がある。本発明者らは、編集結果を偏らせ、モザイク現象を低減させるまたは取り除くために、二本鎖切断末端修復とマイクロホモロジーとの間の関係性を活用することができると仮定した。
【0127】
胚において、マイクロホモロジーと、精度および一貫性の両方との間の直線的な関係性を利用することにより、驚くべきことに、編集の幅を1つの主要な結果に限定することが可能であることが見出された。編集の幅を限ることで、編集が偏って単一の遺伝子型を生じることにより、再カットベースのモザイク現象が無くなる。これら2つのアプローチを組み合わせることにより、非モザイクの実験用マウスを一工程で作製することが可能になる。
【0128】
材料と方法
CRISPRガイドのデザイン
Vsig4(ENSMUSG00000044206)に対するSpCas9シングルガイドRNAを、以下のプロトコールに従って選択した。
1.一次転写物を、公的に利用可能なゲノムツールのenseumble.orgを使用して特定した、
2.Vsig4のコード配列を標的化する可能性のあるすべてのガイドRNAを、公的に利用可能なソフトウェアのFOREcasT、InDelphiまたはLindelを使用して特定した。他の適したソフトウェアには、UCSC Genome Browser、Deskgen.comおよびCRISPORが含まれる、
3.遺伝子の次の50%を標的化するガイドRNA配列を取り除いた、
4.Lindelを使用し、「最も頻度の高い遺伝子型(MF gt)」のメトリックを使用してガイドRNA配列を分析し、最も豊富な編集結果と2番目に豊富な編集結果との間の倍率変化を各ガイドRNA配列について計算した。上位10個に順位付けされたガイド配列を選択した、
5.Lindelを使用し、「フレームシフト%」のメトリックを使用してガイドRNA配列を順位付けした。主要な編集結果が3の倍数でないガイドを選択した、
6.ガイドRNA配列に、ウェブツールのDeskgenを使用してオフターゲットスコアを割り当てた。他の適したツールには、UCSC Genome BrowserおよびCRISPORが含まれる。Deskgenおよび他のほとんどのツールによって使用されるアルゴリズムは、Hsuら(Nature Biotechnology volume 31, pages 827-832(2013))のものである。ウェブツールのDeskgenでは、スコアは0(多くのオフターゲット)~100(オフターゲットなし)の範囲である。スコアが70未満のガイドは除いた、
7.望ましくないオンターゲットプロファイルを有するガイドRNA配列を、Deskgenを使用して除いた。Deskgenにより、Doenchら(Nature Biotechnology volume 34, pages 184-191(2016))によって記載されたメトリックに基づく0~100のスコアが割り当てられる。スコアが35を超えるガイド(インビトロおよびインビボにおいてうまく機能することが見出されている)を選択した、
8.上位3位に順位付けされたガイドRNA配列を、マウスES細胞中でCRISPR遺伝子編集を実施することにより試験した。Vsig4に対する、合成ホスホロチオエート修飾sgRNAを、Merck社(UK)から購入した。次いで、編集後にゲノムDNAを抽出し、標準的な技術を使用して編集領域全体を配列決定して、編集パーセンテージおよび編集の分布を決定した。情報を、ICE v2 CRISPR Analysis Tool(Synthego社)を使用して分析した。
9.次いで、最小のモザイク現象をもたらすことが見出されたガイドRNA配列を使用して、トランスジェニックマウスを生成した。
【0129】
過剰排卵
10~14週齢の雌のC57Bl6/J(Charles River社、UK)を、7.5IUの妊馬血清性ゴナドトロピン(National Veterinary Services社、859448)の腹腔内(ip)投与により過剰に排卵させ、その48時間後に、7.5IUのヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)(National Veterinary Services社、804745)のip注射を続けて行った。hCG注射の14~16時間後に、過剰に排卵させた雌から卵母細胞を採取した。
【0130】
インビトロ受精(IVF)
ヒト卵管液(HTF)培地を、表2にリストされた試薬を使用して水で調製し、滅菌ろ過(0.2μm)した。
【0131】
【表2】

10μLの凍結保存精子を、4ウェル組織培養皿中の、1.25mMの還元L-グルタチオン(rGSH)(Merck社、G-4251)を含有する490μLのHTF培地に添加し、45分間プレインキュベートした。過剰に排卵させた雌から卵母細胞を採取し、解凍した精子を含有する培地中にトランスファーし、2時間インキュベートした。明らかに第二極体を示す接合体を収集し、事前調製したKSOM溶液(KSOM培地(Merck Millipore社、MR-107-D)および3mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)(sigma-Aldrich社、A-3311))中で3回洗浄した。接合体を1mLのKSOM溶液中で、エレクトロポレーションまで培養した。
【0132】
胚のエレクトロポレーション
以下に示すsgRNA標的配列(5’-3’):
Vsig4ガイド:ATGATCCCCTGAGAGGCTAC(配列番号1)
60μLのOpti-MEM(ThermoFisher社)中で、4.5μgのsgRNAと20μgのTrueCut Cas9タンパク質v2(Invitrogen社)を、室温で20分間、複合体形成させた。この溶液の50μlをNEPA21エレクトロポレーターのCUY520P5電極(Nepa Gene社)にトランスファーし、インピーダンスが0.48~0.52kΩの範囲内になるまで容量を調整した。Opti-MEMで洗浄した接合体をエレクトロポレーションチャンバーに添加し、インピーダンスを再度評価してそれが範囲内であることを確認した。NEPA21を使用するエレクトロポレーション用のパラメータを、上記の表1に示す。
【0133】
接合体をエレクトロポレーションチャンバーから取り出し、KSOM溶液中に30分入れた。接合体をKSOM溶液で3回洗浄し、新しいKSOM溶液に戻し、それらが2細胞期に達するまで培養した。
【0134】
胚のトランスファー
雌のCD1マウス(Charles River社、UK)を、精管切除術を施した雄と交配した。2細胞期胚を、偽妊娠レシピエントの雌の卵管に外科的にトランスファーし、1つの卵管につき10個の胚、1匹の雌につき20個の胚をトランスファーした。
【0135】
編集結果の遺伝子型同定およびデコンボリューション
接合体をKSOM溶液中で胚盤胞期にまで培養し、タイロード液(sigma-Aldrich社、T-1788)を使用して透明帯を除去し、試料を抽出試薬(Quanta社、84158)中で溶解した。E.Z.N.A.Tissue DNAキット(Omega社、D3396-01)を使用して、組織(耳生検、肺、心臓、肝臓または精巣)からDNAを抽出した。Vsig4 sgRNAの標的部位を囲む領域のPCR増幅を、以下のプライマー(5’-3’)を使用して遂行した:
Vsig4-F:CCTAACTCTCACATAATATT(配列番号2)
Vsig4-R:ATTACAGAGAACCTATGTAC(配列番号3)
【0136】
組織試料からのPCR増幅を、Q5 High Fidelity DNAポリメラーゼおよびmaster mix(NEB社)を使用して遂行した。Vsig4サイクリング条件:98℃で30秒間、(98℃で10秒間、50℃で30秒間および72℃で45秒間)を35サイクル、ならびに72℃で5分間。
【0137】
胚盤胞試料からのPCR増幅を、PhusionポリメラーゼおよびHF緩衝液(NEB社)を使用して遂行した。Vsig4サイクリング条件:98℃で3分間、(98℃で30秒間、50℃で30秒間および72℃で45秒間)を35サイクル、ならびに72℃で5分間。
【0138】
PCR試料を、QIAquick PCR精製キット(Qiagen社)を使用して浄化し、サンガー配列決定を行った(Eurofins Genomics社)。サンガートレースの配列デコンボリューションを、Inference of CRISPR Edits(ICE)ツール(Sythego社)を使用して決定した。
【0139】
結果
CRISPR活性をX連鎖遺伝子内のマイクロホモロジーの高い領域、V-set and immunoglobulin containing 4(Vsig4)に限定することによって、モザイク現象を取り除くことができることを実証した。シングルガイドRNA(sgRNA)を化膿性連鎖球菌のCas9(SpCas9)タンパク質と事前に複合体形成させ、複合体を、インビトロで受精させた接合体に、精子注入の3時間後にエレクトロポレーションした。接合体を、生児出生のために、偽妊娠雌レシピエントマウスにトランスファーした。標的化したカット部位周囲のPCR増幅、サンガー配列決定およびデコンボリューションにより、子の遺伝子型を耳生検から同定して、モザイク現象を特定した。半分を超える(21/38、55%)子が非モザイクであった。それと比較して、研究室で行われた他の試験では、モザイクまたは非編集動物のみがもたらされた(図2A)。全く異なる組織における編集の度合を、異なる発生系譜に由来する臓器からDNAを抽出することによって決定した。組織を、内胚葉、外胚葉、中胚葉および生殖細胞にそれぞれ起源をもつ肝臓、表皮、心臓および精巣から抽出した。臓器全体を消化し、DNAを抽出して分析した。分析したすべての動物(N=7)が組織全体にわたって同一の編集結果を有し、これにより、すべての発生系譜(linages)にわたってモザイク現象が効率的に取り去られたことが示された(図2B(B))。
【0140】
誘発された遺伝子修飾を次の世代に伝達する非モザイクの初代動物を創出することは、迅速な繁殖を創出するために不可欠である。これを試験するために、7塩基対(bp)欠失を含有する非モザイクの雌由来の卵母細胞をインビトロで野生型雄由来の精子と受精させ、得られた接合体を胚盤胞期にまで培養した。7つの胚盤胞を個別に収集し、溶解し、遺伝子修飾の存在について分析した。7つの胚盤胞のうちの2つは50%が野生型で50%が7bp欠失の遺伝子型を有したが、残りの5つは7bp欠失のみを含有した(図2C)。Vsig4のように、遺伝形質パターンは伴性遺伝子に特徴的である。生殖細胞系伝達を、1匹の野生型雄および2匹の編集された雌から成る3匹の繁殖をセットアップすることにより、さらに特徴付けた(図3)。調べたすべての動物が、それらの遺伝子修飾を次の世代に伝えることができた。
【0141】
[実施例2]
上記の、Vsig4遺伝子において使用した同じ方法論を、他の遺伝子:Ccr1およびPrdm14において繰り返した。Ccr1およびPrdm14用のSpCas9シングルガイドRNAを、上記のようにデザインした。本発明の方法を他のモデルに拡張することにより、方法論の一般化が可能であることを実証する。方法が試験された各例において、非モザイクの実験コホートを作製した。
【0142】
重要なことには、Ccr1の実験は、複雑な遺伝的背景(Trp53R172H/Pdx1-Cre)上で遂行したものであり、本アプローチが、野生型遺伝子の状況においてだけではなく、事前に確立された疾患モデル上でも機能することを実証した。Prdm14は、始原生殖細胞(PGC)が備える特性において基本となる役割を果たしており、変異は不妊をもたらす。従って、Prdm14-/-系統を確立して繁殖させることはできないが、非モザイクのPrdm14-/-系統のコホートを、本発明の方法を使用してオンデマンドに作製することはできる。これらの実験の結果を図4に示す。表現型に関するPrdm14-/-の結果を図5に示す。
Ccr1 sgRNA:CTCTCTGGGTTTTATTACCT(配列番号4)
Prdm14 sgRNA:GGTCAATGCCAGCGAAGTGA(配列番号5)
【0143】
【表3】
【0144】
[実施例3]
さらに、本発明者らは、単一の編集結果を亢進するためにどのガイドRNAを使用するかを予測するだけでなく、大規模な欠失を達成させるためにどのガイドRNAのペアを使用すべきか予測するための本発明の方法の使用について検討した。
【0145】
欠失させた領域の機能を探索するために、または遺伝子ノックアウトを生成する代替のアプローチとして、大規模なゲノムの欠失を担持するモデルを生成することが望ましい場合がある。発明者らは、単一の優占的な編集結果(非モザイク)へと修復するDNA領域と比較して、多くの編集結果(モザイク)へと修復するDNA領域は、細胞が損傷を修復するために適合する(局所的な)配列を探すために、修復工程中に遅延を招くと考える。この提案された修復遅延を活用する、所望のゲノム領域に隣接する2つのガイドRNAの使用は、大規模な欠失イベントの効率性を亢進するはずである。
【0146】
Y連鎖精子形成レギュレーター(Y-linked spermatogenesis regulator)、Ddx3y、をノックアウトに対して標的化した。エクソンの除去によってコード配列のフレームがずれるように、Ddx3yのクリティカルなエクソンを囲む領域にCRISPRデザインを限定した。少数または多数の編集結果をそれぞれもたらすと予測されるマイクロホモロジーの高いまたは低い領域を標的化するガイドRNAのペアを、上記のガイドデザインプロトコールを使用してデザインした(図6A)。マイクロホモロジーの高い領域を標的化するgRNAを選択するために、上記と同じ方法を使用した。マイクロホモロジーの低い領域を標的化するガイドRNAを選択するために、上記のデザイン法における工程4に下位10個のgRNAを選択することを含め、工程5を外し、工程8に下位3個のgRNAを選択することを含め、最終工程に最も高いモザイク現象をもたらすことが見出されたgRNAを選択することを含めた。これを、欠失させるべきDNA配列を囲む5’フランクおよび3’フランク領域の両方に対して行った。
【0147】
欠失させるべき介在DNA配列の3’フランクを標的化するgRNAおよび5’フランクを標的化するgRNAの両方を使用して、接合体を上記に説明したようにインビトロで編集し、上記で説明したPCRおよび個々の胚盤胞の配列決定により分析した。データは、両条件で欠失イベントが生成したが、マイクロホモロジーの低い群においてより多くの欠失イベントが生成したことを示す(63%対28%)(図6B)。これらのデータは、マイクロホモロジーの低いガイドRNAの隣接ペアが、介在DNA配列の切除を亢進することを示す。
【0148】
マイクロホモロジーの低い領域を標的化して欠失を亢進させるgRNAのペアを使用することのコンセプトを、遺伝子Gata1の状況においてさらに検討した。結果を図6Cおよび図6Dに示す。図6Dは、マイクロホモロジーの低い領域に対して標的化させたgRNAのペアを使用すると、gRNAのペアをマイクロホモロジーの高い領域に対して標的化させるよりも高い率で、大規模な欠失が生成することを特に示す。
DDX3y_5’_HMH sgRNA:TCCAGTGTCTATCACTGTAC(配列番号10)
DDX3y_3’_HMH sgRNA:TAGTAAATTCTTAGGTAAGT(配列番号11)
DDX3y_5’_LMH sgRNA:CCCAGTACAGTGATAGACAC(配列番号12)
DDX3y_3’_LMH sgRNA:AATCTTAACTTAGCAAAGTC(配列番号13)
Gata1_5’_HMH sgRNA:GCCGCAGTAACAGGCTGTCT(配列番号14)
Gata1_3’_HMH sgRNA:ACGCCAGCTCTGGCCTGCTC(配列番号15)
Gata1_5’_LMH sgRNA:CTGTCTTGGGGCTGGGGGGC(配列番号16)
Gata1_3’_LMH sgRNA:CCAGAGCTGGCGTAAGCCCC(配列番号17)
【0149】
【表4】
【0150】
[実施例4]
CAR-T細胞のCRISPR-Cas9編集は、全般的な非効率性/毒性およびモザイク現象を喫する。この状況では、これらの両要素が、これらの次世代治療法の治療可能性および安全性プロファイルを制限する役目を果たす。本発明の方法を、CTLA4中のイントロンに対するSpCas9シングルガイドRNAを生成するためにさらに使用し、HEK293Tおよびヒト初代T細胞中で試験した。
CTLA4_intron sgRNA:TGAGGATCTGGATAACTAAG(配列番号22)
【0151】
【表5】
【0152】
PBMC細胞を刺激するための方法
抗CD3抗体(Biolegend社)を、滅菌PBS中に、5μg/mLの最終濃度で希釈し、3枚の96ウェルプレートに対して、1ウェルにつき50μlを添加した。プレートを37℃で2時間インキュベートする。各プレートを200μLのPBSで3回洗浄する。PBMC細胞(Cambridge Bioscience社)を、7mLの温めた培地(RPMI glutamax 21875-034、10% HI-FBS、1.75μL BME)中で復活させる。425gにおいて、5分の遠心を3回行う。最終的に得られた沈殿物を10mLの培地中に再懸濁し、細胞数をカウントする。60,000細胞/200μLの濃度の細胞、5μg/mlの最終濃度の抗CD28抗体(BioLegend社)および20ng/mLの最終濃度のIL2(Biolegend社)を含有する細胞懸濁液を作る。細胞懸濁液を、準備した96ウェルプレートに、60,000細胞/ウェルおよび200μL/ウェルで分注する。インキュベーター内に72時間置く。
【0153】
刺激した細胞をエレクトロポレーションするための方法
細胞数をカウントし、生存率を記録する。生存率が65%を超えた場合にのみエレクトロポレーションを進める。3μgのTrueCut Cas9タンパク質v2(Invitrogen社)と60pmolの合成ガイドRNA(Synthego社)を、室温で20分間、複合体形成させる。細胞をペレット化し、PBSで洗浄し、再度ペレット化する。1サンプルにつき200,000細胞で細胞をP3+緩衝液(Lonza社)中に再懸濁し、Cas9/ガイドRNA複合体と混合し、このうちの20μLをエレクトロポレーションキュベットに添加する。プログラムEO 115を使用してエレクトロポレーションし、37℃で10分間インキュベートし、20ng/mLのIL2を含む培地の溶液を1ウェルにつき1mL含有する予熱した24ウェルプレートにトランスファーする。細胞をインキュベーター内に72時間置いた後、分析のために回収する。
【0154】
発明者らは、生成したガイドRNAが、広範な濃度範囲でかつ2つの細胞タイプにわたって、遺伝子編集において非常に効率的であったことを見出した。生成したガイドRNAは、患者由来初代T細胞に対して、ユビキタスなHEK293Tがん細胞株に匹敵するレベルの90%の遺伝子編集効率を有し(図7A)、細胞の生存率は、濃度範囲にわたって維持された(図7B)。さらに、ガイドRNAは、大部分の編集(70%)が+1bp挿入であったために初代T細胞におけるモザイク現象も低減させ、モザイク現象のレベルは30%未満に低減した(図8Aおよび図8B)。
【0155】
さらに、本発明の方法を使用して、初代T細胞中の遺伝子CTLA4(上記)、PD-1(PDCD1)、LAG-3、PTPN2、DGKおよびHAVCR2に対するガイドRNAをデザインし、それらの編集効率、ノックアウト効率および純度を、先行する方法;Tzelepis et al. Cell Reports, Volume 17, Issue 4, 18th October 2016において記載されるサンガー(図9A図9Bおよび図9C)法によってデザインされたgRNAと比較した。本発明の方法によってデザインされたgRNAはより効果的であった。
【0156】
本発明の方法または従来のサンガー法のいずれかを使用してデザインされたsgRNAの表:
【0157】
【表6-1】

【表6-2】

【表6-3】
【0158】
各遺伝子に対して使用したプライマーの表:
【表7-1】

【表7-2】
【0159】
従って、本発明の方法は、患者由来T細胞の効率的な編集を可能にする一方で、モザイク現象を低減させることができる。
【0160】
本発明者らは、ガイドRNAの合理的デザインにより、モザイク現象を制御する能力を実証した。有利には、これは、すべての組織全体にわたって均一な編集を有しかつ設計された編集を次の世代に伝える能力を有する動物の直接的な創出を可能にする。最小限の動物を使用して、わずかの時間において実験用のマウス疾患モデルを迅速に創出するために、本方法を使用することができる。本発明者らは、治療上重要なヒト細胞におけるモザイク現象を制御する能力をさらに実証した。特に、本発明者らは、ここで本方法を使用して、制御された様式でヒト初代T細胞を編集し、それによって治療のために直接使用することができる均一な細胞集団を迅速に創出した。
【0161】
加えて、発明者らは、均一な編集を創出する能力だけではなく、マイクロホモロジーの低い領域を標的化することによってマウス中に所望の大規模な欠失を創出するために本方法を使用する能力も実証した。それにより、遺伝子ノックアウトモデルを生成するための効率的な代替アプローチを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
【配列表】
2023518379000001.app
【国際調査報告】