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特表2023-518390ウイルス感染症の治療若しくは予防又はウイルス感染症の発生を制限するための方法及び組成物
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  • 特表-ウイルス感染症の治療若しくは予防又はウイルス感染症の発生を制限するための方法及び組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】ウイルス感染症の治療若しくは予防又はウイルス感染症の発生を制限するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/353 20060101AFI20230424BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 31/4525 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
A61K31/353
A61P31/14
A61P43/00 111
A61K31/7048
A61K31/4525
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555887
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 US2021022538
(87)【国際公開番号】W WO2021188520
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】62/990,168
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518407593
【氏名又は名称】グローバル バイオライフ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL BIOLIFE INC.
【住所又は居所原語表記】4800 Montgomery Lane, Suite 210, Bethesda, MD 20814, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ダリル リー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BC21
4C086EA11
4C086GA03
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC41
(57)【要約】
治療有効量の、ACE2活性部位を標的する医薬組成物を投与することにより、ウイルス感染症を治療又はウイルス感染症の発生を制限するための方法及び医薬組成物。医薬組成物は、式I、式II、式III(式IIIa及びIIIbを含む)のものを含み、ウイルス感染症は、呼吸器ウイルス及びウイルス感染に関連する病状及び症候群を含むがこれらに限定されない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の、下記式(I):
【化1】

(式中、
R及びR5は、各々独立して、水素、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ルチノシル基及びラムノシル基であり;R1=OH、R2=OH、R3=H、R4=OH及びR6=OH;並びに
aは単結合又は二重結合であり;ただし、R及びR5の少なくとも一方は、アルデヒド、ハロアルカン、アルケン、ブチリル、フルオロフェノール、スルホンアミド及びフルオロフェニルスルホキシドから選択されれる求電子性基を含む)
を含む医薬組成物を投与することを含み、前記ウイルス感染症がCOVID-19により引き起こされる、ウイルス感染症を治療し又はウイルス感染症の発生を制限する方法。
【請求項2】
前記組成物が、感染症の治療若しくは予防又は感染症の発生の制限のためのアンジオテンシン変換酵素(ACE2)活性部位を標的とすることにより、ウイルスの治療に有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルス感染症がCOVID-19により引き起こされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
治療有効量の、下記式II:
【化2】

を含む医薬組成物を投与することを含む、ウイルス感染症を治療し又はウイルス感染症の発生を制限する方法。
【請求項5】
前記組成物が、感染症の治療若しくは予防又は感染症の発生の制限のためのアンジオテンシン変換酵素(ACE2)活性部位を標的とすることにより、ウイルスの治療に有効である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルス感染症がCOVID-19により引き起こされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
治療有効量の、下記式(III):
【化3】

(式中、
R、R1、R2、R4、R5及びR6はヒドロキシル基又は塩素であり、
R3は水素であり;ここで、R、R1、R2、R4、R5及びR6の少なくとも1つは塩素である)
を含む医薬組成物を投与することを含み、前記ウイルス感染症がCOVID-19により引き起こされる、ウイルス感染症を治療し又はウイルス感染症の発生を制限する方法。
【請求項8】
前記組成物が、感染症の治療若しくは予防又は感染症の発生の制限のためのアンジオテンシン変換酵素(ACE2)活性部位を標的とすることにより、ウイルスの治療に有効である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルス感染がCOVID-19により引き起こされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式3が下記の化合物:
【化4】

式(IIIa)及び
【化5】

式(IIIb)
から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記医薬組成物が、ヘスペリジン及びピペリンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ミリセチン及びヘスペリチンを含む治療有効量の医薬組成物からなる組成物を、ウイルス感染症の危険があるか又はウイルス感染症と診断された患者に投与することを含む、ウイルス感染症の発生を制限するか又はウイルス感染症のリスク若しくは重症度を低減させるか又はウイルス感染症を治療する方法であって、前記組成物がウイルス感染症の治療若しくは予防又はウイルス感染症の発生の制限のためのアンジオテンシン変換酵素(ACE2)活性部位を標的する、方法。
【請求項13】
前記ウイルス感染症がコロナウイルスによって引き起こされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コロナウイルスがCOVID-19である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
約300~約700mgのミリセチン及び約100~約500mgのヘスペリチンが前記組成物中に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
約450~約600mgのミリセチン及び約250~約400mgのヘスペリチンが前記組成物中に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物の全重量に基づいて、約55~約75重量%のミリセチン及び約30~約50重量%のヘスペリチンが前記組成物中に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物中に存在するミリセチン対ヘスペリチンの比が、約(30~60):(30~60)である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年3月16日に出願された米国仮出願第62/990,168号(参照により本明細書に組み込まれる)に基づく優先権の利益を主張するものである。
【0002】
発明の分野
[0002] 本発明は、ウイルス感染症を治療するための方法及び組成物に関し、宿主又は患者のアンジオテンシン変換酵素(ACE2)活性部位を標的とすることによりウイルス感染症の治療若しくは予防又はウイルス感染症の発生を制限する方法及び組成物を含む。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
[0003] 多くのヒト疾患は、ウイルスと呼ばれる微小生物の感染に起因する。ウイルス感染は、軽度から重度までのさまざまな症状を生じることがある。ウイルス感染症は、多数の死亡をもたらすことがある。このようなパンデミックの例としては、約4000万人が死亡した1918~1919年のスペイン風邪及び約200万人が死亡したHIV/AIDSの流行が挙げられる。
【0004】
[0004] ウイルスは、複製するために宿主生物を必要とし、ウイルスは幾らかのメカニズムにより感染宿主から非感染宿主に伝染する。ウイルスは先ず宿主細胞に付着する。次いで、ウイルスは細胞に入り、その遺伝子コード(すなわち、RNA又はDNA)を放出する。ウイルスは、複製するために、宿主細胞の機能タンパク質及び酵素を利用する。最終的に、宿主細胞は死滅し得る。なぜならば、宿主細胞が生存し続けるために必要とするメカニズムがウイルスに制御されるからである。細胞の死後、複製ウイルスが放出されることにより、新たな宿主細胞を攻撃して複製プロセスの継続が可能になる。ウイルスには、癌に至らせる宿主細胞の改変を引き起こすものもあれば、宿主内で長期間潜伏し続けた後に感染の症状を発症するものもある。
【0005】
[0005] ウイルス感染に起因する症状は、ウイルスごとに異なることがある。なぜならば、1つのウイルスは、典型的には、或る特定のタイプの細胞にのみ感染するからである。この知見はまた、特定のウイルスは代表的には或る特定の種にのみ感染するけれども、変異により、1つのウイルスが感染し得る種の数が拡大することがあることも意味する。
【0006】
[0006] 宿主種は、ウイルス感染から保護する幾つかの防御メカニズムを発達させてきた。防御の最前線は、宿主へのウイルスの侵入を防ぐメカニズムである。皮膚は、侵入に対する不透過性障壁をもたらす。ウイルスは、代表的には、体腔を通って身体に侵入し、体腔を覆う粘膜面を通過することができる。ウイルスが身体内で免疫システムにより検出されると、血液中のリンパ球及び単球が侵入者を攻撃する方法を学習する。侵入された細胞は、サイトカイン、例えばインターフェロン(例えば、IL1、IL6、IL12、IL16)、腫瘍壊死因子(TNF-α)及びインターフェロン(代表的には、インターフェロンa及びg)を放出する。これらサイトカインの役割は、侵入しようとするウイルスに対する他の宿主細胞の抵抗力を高めることである。宿主が経験する、ウイルス感染の症状の多くは、一般にサイトカインストームと呼ばれる、サイトカインの大量放出に起因する。
【0007】
[0007] 白血球は、以前に身体に侵入してきたことがあるウイルスに対抗する方法を記憶することができる。よって、宿主がウイルスの初回攻撃を生き延びれば、免疫システムは、同じウイルスのその後の感染に対して遥かにより迅速に応答することができる。身体は、当該ウイルスに対する免疫を発達させたのである。このような免疫は、免疫化として知られるプロセスにおいて、ウイルスの代替物(ワクチン)を免疫システムに提示することによっても誘導することができる。
【0008】
[0008] 抗ウイルス薬は、当該分野において、患者がウイルス感染に打ち勝つために免疫システムを補助することが知られている。多くの抗ウイルス薬は、感染患者の体内でのウイルス複製を緩徐にして、疾患症状が重度でないときに身体の免疫システムが有効な応答を開始することによって作用する。抗ウイルス薬は、1又は2以上のウイルスに特異的に作用し得るか、又は、幅広いスペクトルのウイルスにわたって有効であり得る。抗ウイルス薬がウイルス複製を緩徐にし得る多くの既知のメカニズムが存在する。1つの抗ウイルスストラテジは、例えば、ウイルスが標的細胞に入るために必要とする当該細胞上の受容体に結合することにより又はウイルスをコーティングして標的受容体に結合する能力を妨げることにより、ウイルスが標的細胞に浸潤するのを緩徐にするか又は防止することである。他の抗ウイルス剤は、ウイルス粒子が標的細胞に侵入したとき、ウイルス複製を緩徐にし得る。このようなメカニズムは当該分野において周知である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
[0009] 本発明は、感染症の治療若しくは予防又は感染症の発生を制限するためのアンジオテンシン変換酵素(ACE2)活性部位を標的とする医薬組成物を含む組成物を用いて、ウイルス感染症を治療するため又はウイルス感染症の発生を制限するための方法及び組成物に関する。有利には、感染症並びに疾患の状態及び症候群は、ウイルスによって引き起こされ、本発明の治療法は、ウイルス感染によって生じる疾患の状態及び症候群に対処する。ACE2活性部位を標的とすることで治療が可能なウイルス感染症(及びその関連疾患状態/症候群)としては、限定されないが、呼吸器系ウイルス及びその関連疾患状態/症候群、例えばCOVID-19を含むがこれに限らないコロナウイルスによって引き起こされるものが挙げられる。
【0010】
[0010] さらに、本発明は、米国特許第8,034,838号、第10,123,991号及び第10,383,842号、並びに係属中の米国出願第16/302,292及び16/544,308(全てが参照により本明細書に組み込まれる)のものを含むがこれらに限定されない種々の処方物を用いてウイルス疾患を治療する方法及び組成物に関する。
【0011】
[0011] 本発明は、ウイルス(例えば、インフルエンザ、ライノウイルス及びコロナウイルスを含むがこれらに限定されない)が関与する種々の感染疾患を治療若しくは予防し又はその発生を制限する有効な抗ウイルス剤である組成物、医薬などの使用に関する。
【0012】
[0012] 治療は、前記の米国特許及び係属中の出願(上記段落[0010]参照)の種々の組成物及び化合物を含み得るが、1又は2以上のコロナウイルス(COVID-19コロナウイルスを含む)の感染を患っている個体の治療的処置には、ACE2活性部位を標的とする医薬(化合物及び組成物)を含む。上記特許/特許出願に開示された化合物及び組成物を用いる本発明の方法及び治療は、現在理解されている、コロナウイルスが病原性である様式に基づいて、個体を、ACE2を介するコロナウイルス感染に罹患し難くすることに特に好適である。
【0013】
[0013] 現在認識されている個々のコロナウイルスの感染の病理に言及すると、コロナウイルスは、インフルエンザ及びライノウイルスに非典型的である、ヒト細胞膜への「握手」ドッキング部位を利用しているようである点で、独特な課題を提起する。インフルエンザは、ICAM又は細胞間接着分子を利用して宿主(例えば、ヒト)の細胞膜に付着し、遺伝物質をダウンロード(挿入)する。コロナウイルスの現行株(すなわち、COVID-19)が、ACE2又はアンジオテンシン変換酵素経路をハイジャックして同じ目的を達成していることが今や明らかになりつつある。問題又は課題は、ACE2が肺システムの健康維持に必須であり、単純な阻害標的ではない可能性があることである。
【0014】
[0014] 上記段落[0010]の特許及び係属中の出願における化合物及び組成物(前記特許及び係属中の出願のそれぞれの特許請求の範囲に記載の化合物を含む)は、改変することで、個々のACE2をコロナウイルス感染し難くする分子プローブの形態で治療薬として使用することが可能である。
【0015】
[0015] 前記特許及び係属中の出願の化合物は、高度計算モデルにおいて、ACE2を阻害し、スパイクタンパク質、ヘリカーゼ及びプロテアーゼ部位でACE2のコンフォメーション変化を引き起こすことが示された。このことにより、コロナウイルスと相互作用をし難くなる。
【0016】
[0016] 種々の有利な形態において、医薬組成物は、以下のような化学構造を有する式I、式II及び式III(式IIIa及び式IIIbを含む)の化合物を含んでなる:
式I:
【化1】

(式中、
R及びR5は、各々独立して、水素、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ルチノシル基及びラムノシル基であり;R1=OH、R2=OH、R3=H、R4=OH及びR6=OH;並びに
aは単結合又は二重結合であり;ただし、R及びR5の少なくとも一方は、アルデヒド、ハロアルカン、アルケン、ブチリル、フルオロフェノール、スルホンアミド及びフルオロフェニルスルホキシドから選択されれる求電子性基を含む)
【0017】
式(II):
【化2】

【0018】
式(III)
【化3】

(式中、
R、R1、R2、R4、R5及びR6はヒドロキシル基又は塩素であり、
R3は水素であり;ここで、R、R1、R2、R4、R5及びR6の少なくとも1つは塩素である)
【0019】
式(IIIa)
2-(3-クロロ-4,5-ジヒドロキシフェニル)-3,5,7-トリヒドロキシ-4H-クロメン-4-オン
【化4】

式(IIIb)
【化5】
【0020】
[0017] 本発明は、1つの有利な形態において、ウイルス感染症を治療し又はウイルス感染症の発生を制限する方法に関し、治療有効量の、式Iの化合物を含む医薬組成物を投与することを含む。
[0018] 1つの有利な形態の方法は、感染症の治療若しくは予防又は感染症の発生の制限のためのアンジオテンシン変換酵素(ACE2)活性部位を標的とすることによってウイルスを処置するために有効な量を有する組成物を含む。1つの更に有利な形態では、ウイルス感染症は、COVID-19により引き起こされる。
【0021】
[0019] 本発明は、別の有利な形態において、治療有効量の、式IIを含む医薬組成物を投与することにより、ウイルス感染を処置若しくは予防し又はウイルス感染の発生を制限する方法に関する。
[0020] 本発明は、更に別の有利な形態において、治療有効量の、式IIIを含む医薬組成物を投与することにより、ウイルス感染を処置若しくは予防し又はウイルス感染の発生を制限する方法に関する。
【0022】
[0021] 本発明は、1つの有利な形態において、式IIIa及び式IIIbから選択される化学構造を有する式IIIを含んでなる。
[0022] 本発明は、ない更に別の形態において、式I、式II、式III、式IIIa及び式IIIbからなる群より選択される化合物を含み、ヘスペリジン及びピペリンを更に含む、治療上有効な組成物でウイルス感染を治療する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】唯一の図は、選択化合物のACE2活性部位への結合に関するΔG(kcal/mol)値についての表1である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
[0024] 以下、治療有効量の、選択された化合物を投与することを含む、本発明の医薬組成物を用いる処置の具体例を参照しながら、本発明を説明する。
【0025】
[0025] 本明細書で用いられる次の用語は、下記に定める意味を有するものとする。
【0026】
[0026] 化合物に言及するときの「天然に存在する」との句は、天然に見出すことができる形態にある化合物を意味する。例えば、化合物が精製されており、自然界で該化合物と共に見出される他の分子の少なくとも一部と分離されている場合、当該化合物は天然に存在する形態ではない。「天然に存在する化合物」とは、自然界に見出すことができる化合物、すなわち、人為的に創り出されても、改変されてもいない化合物をいう。
【0027】
[0027] 病的状態又は疾患を「処置する」とは、該病的状態又は疾患を治療すること及び該病的状態又は疾患の少なくとも1つの症状改善することをいう。
【0028】
[0028] 「治療効果」との用語は、当該技術分野において認識されており、薬理活性物質によって引き起こされる、動物、特に哺乳動物、より詳細にはヒトにおける局所的又は全身的な効果をいう。「治療有効量」とは、任意の処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で、幾らかの望ましい局所的又は全身的な効果をもたらす物質の量を意味する。このような物質の治療有効量は、治療される患者及び疾患又は病的状態、患者の体重及び年齢、疾患又は病的状態の重症度、投与様式などに依存して変化するが、当業者は容易に決定することができる。例えば、本明細書に記載される或る特定の組成物は、その処置に適用可能な合理的な利益/リスク比で所望の効果をもたらすに十分な量で投与され得る。
【0029】
[0029] 例えば、本開示で提供される治療方法に関して、治療有効量は、感染症(COVID-19を含むコロナウイルスにより引き起こされるウイルス感染症を含むが、これに限定されない)の治療若しくは予防又は感染症の発生の制限のためのアンジオテンシン変換酵素(ACE2)活性部位を標的とする量である。
【0030】
[0030] 用語「薬学的に許容されるキャリア」とは、生物に刺激を与えず、投与された化合物の性質及び生理活性を破壊しないキャリア又は希釈剤を意味する。
【0031】
[0031] 本発明の方法及び組成物は、ヒトアンジオテンシン変換酵素関連カルボキシペプチダー(ACE2)を標的とする、すなわちACE2に結合するか又はACE2の阻害剤として作用する化合物を決定するための研究及び実験を通じて同定された。ACE2活性部位への化合物の結合に関するΔGの予測値及び経験値により、ウイルス感染症を治療及び制限する本化合物の有効性が証明された。ΔG値はkcal/molで測定し、ΔG値が負になるほど、予測される結合親和性は高くなることに留意すべきである。表1(図)は、開示されたウイルス感染症治療法に従うウイルス感染症の治療に有効な選択された化合物のΔG値をまとめたものである。
【0032】
[0032] 表1にまとめたデータから、ヘスペリジン、塩素化ミリセチン(化合物式3(a))及びミリセチンは、ACE2結合部位を標的とするので、ウイルス性疾患の処置に有効であることが実証された。ACE2の更なる阻害剤、すなわちACE2結合部位を標的とする阻害剤は、同様の研究を行い、上記表1び下記表2にまとめたΔG値を決定することによって同定することができる。
【0033】
[0033] 表2
【表1】
【0034】
[0034] 本化合物が、ACE2活性部位に結合するACE2阻害剤として作用することにより、種々のウイルス感染症の治療に有効であることは、当業者に明らかである。本明細書に開示された化合物及び医薬組成物に関連する更なる化合物が、ACE2活性部位に対して親和性を有する化合物を同定することにより、ウイルス感染症の治療に使用することができ、容易に適応させることができる。
【0035】
[0035] 上記では、本発明を好適な実施形態に関して説明したが、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、これら好適な実施形態において変形及び改変をなし得ることを、当業者は理解する。
図1
【国際調査報告】