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特表2023-518393芳香族ビニル系誘導体の結晶形及びその製造方法と使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】芳香族ビニル系誘導体の結晶形及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 229/22 20060101AFI20230424BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230424BHJP
   C07C 227/42 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
C07C229/22 CSP
A61K31/198
A61P35/00
A61P35/02
C07C227/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555895
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 CN2021078640
(87)【国際公開番号】W WO2021185072
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】202010185597.7
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517373343
【氏名又は名称】グアンジョウ マキシノベル ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワン イーグアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ノン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ピンジン
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206AA04
4C206FA53
4C206KA01
4C206KA16
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA03
4C206ZB26
4C206ZB27
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB28
4H006AD15
4H006BB11
4H006BB14
4H006BB16
4H006BB20
4H006BB31
4H006BC51
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM71
4H006BN10
4H006BS10
4H006BU32
4H006NB19
(57)【要約】
本発明は、芳香族ビニル系誘導体の結晶形及びその製造方法と使用を開示する。本発明は、具体的には、式Iで表される化合物のA型結晶、B型結晶及びC型結晶を開示する。本発明の結晶形は良好な安定性を有し、水分を吸収しにくく、容易に製造でき、医薬品の最適化と開発に大きな価値がある。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2θ角で表される粉末X線回折パターンが、9.923±0.2°、10.883±0.2°及び17.357±0.2°において特徴的なピークを有し、
又は、3.979±0.2°、9.923±0.2°、10.883±0.2°、17.357±0.2°、18.607±0.2°及び19.294±0.2°において特徴的なピークを有し、
又は、3.979±0.2°、4.991±0.2°、9.923±0.2°、10.883±0.2°、14.251±0.2°、16.210±0.2°、17.357±0.2°、18.607±0.2°、19.294±0.2°、19.594±0.2°及び20.792±0.2°において特徴的なピークを有し、
又は、3.979±0.2°、4.991±0.2°、7.113±0.2°、8.135±0.2°、9.923±0.2°、10.883±0.2°、11.613±0.2°、14.251±0.2°、14.866±0.2°、16.210±0.2°、17.357±0.2°、18.607±0.2°、19.294±0.2°、19.594±0.2°、20.792±0.2°、21.272±0.2°、24.437±0.2°、25.257±0.2°、26.2295±0.2°、27.870±0.2°、28.631±0.2°、29.126±0.2°、29.943±0.2°において特徴的なピークを有する、ことを特徴とする式Iで表される化合物のA型結晶。
【化1】
【請求項2】
2θ角で表される粉末X線回折パターンにおける2θ値は下記の表に示される通りであり、
【表1】
及び/又は、前記A型結晶の偏光顕微鏡分析において、前記結晶形は顆粒状又は棒状であり、前記A型結晶の粒子径は好ましくは10~100μmであり、
及び/又は、前記A型結晶の示差走査熱量分析において、247℃に吸熱ピークを有し、その融解熱は好ましくは118.0J/gであり、
及び/又は、前記A型結晶の熱重量分析において、試料は26.76℃から119.97℃までの重量損失は0.1447%であり、前記「%」は重量パーセンテージであり、
及び/又は、前記A型結晶の動的水分吸着分析において、相対湿度80%のときの吸湿重量増加は0.310%であり、相対湿度95%のときの吸湿重量増加は0.409%である、ことを特徴とする請求項1に記載の式Iで表される化合物のA型結晶。
【請求項3】
2θ角で表される粉末X線回折パターンが、3.424±0.2°、6.576±0.2°及び19.297±0.2°において特徴的なピークを有し、
又は、3.424±0.2°、6.576±0.2°、18.217±0.2°、19.297±0.2°、20.901±0.2°及び26.379±0.2°において特徴的なピークを有し、
又は、3.424±0.2°、6.576±0.2°、14.467±0.2°、16.406±0.2°、17.567±0.2°、18.217±0.2°、19.297±0.2°、20.557±0.2°、20.901±0.2°、22.460±0.2°、25.084±0.2°、25.878±0.2°、26.379±0.2°及び28.983±0.2°において特徴的なピークを有し、
又は、3.424±0.2°、6.576±0.2°、9.732±0.2°、11.304±0.2°、12.905±0.2°、13.918±0.2°、14.467±0.2°、16.406±0.2°、17.567±0.2°、18.217±0.2°、19.297±0.2°、20.557±0.2°、20.901±0.2°、22.460±0.2°、23.872±0.2°、25.084±0.2°、25.878±0.2°、26.379±0.2°、28.983±0.2°、29.531±0.2°、30.459±0.2°、32.171±0.2°、34.297±0.2°、37.676±0.2°及び38.902±0.2°において特徴的なピークを有する、ことを特徴とする式Iで表される化合物のB型結晶。
【化2】
【請求項4】
2θ角で表される粉末X線回折パターンにおける2θ値は下記の表に示される通りであり、
【表2】
及び/又は、前記B型結晶の示差走査熱量分析において、243℃に吸熱ピークを有し、その融解熱は好ましくは93.73J/gであり、
及び/又は、前記B型結晶の熱重量分析において、試料は25.3℃から92.5℃まで加熱すると5.2%の重量損失があり、前記「%」は重量パーセンテージであり、
及び/又は、前記B型結晶の動的水分吸着分析において、相対湿度0%から相対湿度95%まで試料の重量増加は7.235%である、ことを特徴とする請求項3に記載の式Iで表される化合物のB型結晶。
【請求項5】
2θ角で表される粉末X線回折パターンが、6.250±0.2°、18.458±0.2°及び19.302±0.2°において特徴的なピークを有し、
又は、6.250±0.2°、8.779±0.2°、13.720±0.2°、18.458±0.2°及び19.302±0.2°において特徴的なピークを有し、
又は、6.250±0.2°、8.779±0.2°、12.635±0.2°、13.720±0.2°、16.525±0.2°、18.458±0.2°及び19.302±0.2°において特徴的なピークを有し、
又は、6.250±0.2°、6.979±0.2°、8.779±0.2°、12.635±0.2°、13.720±0.2°、16.525±0.2°、18.458±0.2°、19.302±0.2°、20.852±0.2°、22.345±0.2°、24.772±0.2°、25.230±0.2°、27.285±0.2°において特徴的なピークを有し、
又は、6.250±0.2°、6.979±0.2°、8.779±0.2°、12.635±0.2°、13.720±0.2°、15.285±0.2°、16.525±0.2°、18.458±0.2°、19.302±0.2°、20.852±0.2°、22.345±0.2°、24.772±0.2°、25.230±0.2°、25.996±0.2°、27.285±0.2°、28.303±0.2°、28.829±0.2°、29.699±0.2°、30.703±0.2°、33.133±0.2°、34.655±0.2°、36.829±0.2°、37.967±0.2°において特徴的なピークを有する、ことを特徴とする式Iで表される化合物のC型結晶。
【化3】
【請求項6】
2θ角で表される粉末X線回折パターンにおける2θ値は下記の表に示される通りであり、
【表3】
及び/又は、前記C型結晶の示差走査熱量分析において、243℃に吸熱ピークを有し、その融解熱は好ましくは99.33J/gであり、
及び/又は、前記C型結晶の熱重量分析において、24.0℃から58.0℃まで加熱すると0.62%の重量損失があり、58.0℃から162.3℃まで加熱すると2.5%の重量損失があり、前記「%」は重量パーセンテージであり、
及び/又は、前記C型結晶の動的水分吸着分析において、相対湿度0%から相対湿度95%まで試料の重量増加は4.767%である、ことを特徴とする請求項5に記載の式Iで表される化合物のC型結晶。
【請求項7】
前記A型結晶の偏光顕微鏡写真は図1に示される通りであり、
及び/又は、前記A型結晶の示差走査熱量測定分析パターンは図2に示される通りであり、
及び/又は、前記A型結晶の熱重量分析パターンは図3に示される通りであり、
及び/又は、前記A型結晶の粉末X線回折パターンは図4に示される通りであり、
及び/又は、前記A型結晶の動的水分吸着分析パターンは図5に示される通りであり、
及び/又は、前記B型結晶の粉末X線回折パターンは図6に示される通りであり、
及び/又は、前記B型結晶の示差走査熱量測定分析パターンは図7に示される通りであり、
及び/又は、前記B型結晶の熱重量分析パターンは図8に示される通りであり、
及び/又は、前記B型結晶の動的水分吸着分析パターンは図9に示される通りであり、
及び/又は、前記C型結晶の粉末X線回折パターンは図10に示される通りであり、
及び/又は、前記C型結晶の示差走査熱量分析パターンは図11に示される通りであり、
及び/又は、前記C型結晶の熱重量分析パターンは図12に示される通りであり、
及び/又は、前記C型結晶の動的水分吸着分析パターンは図13に示される通りである、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の式Iで表される化合物の結晶形。
【請求項8】
溶媒において、式Iで表される化合物を結晶化させるステップを含み、前記結晶化法が懸濁液平衡法、溶液加熱-徐冷法又は反溶媒法であり、前記溶媒がエタノールであり、前記結晶化法が反溶媒法である場合、反溶媒がアルカン系溶媒である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の式Iで表される化合物のA型結晶の製造方法。
【請求項9】
前記結晶化温度は20℃~60℃であり、例えば、室温又は50℃であり、
及び/又は、前記結晶化法が反溶媒法である場合、前記アルカン系溶媒はC1-10アルカン系溶媒であり、好ましくはn-ヘプタンであり、
及び/又は、前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は5mg/mL~20mg/mLであり、例えば7.7mg/mL~20mg/mLであり、
及び/又は、前記結晶化時間は1h~20dであり、例えば1h~2h、5h~6h又は10d~20dであり、
及び/又は、前記結晶化法が反溶媒法である場合、前記反溶媒と前記溶媒との質量比は5:1~8:1であり、例えば6.5:1である、ことを特徴とする請求項8に記載の式Iで表される化合物のA型結晶の製造方法。
【請求項10】
溶媒において、式Iで表される化合物を結晶化させるステップを含み、前記結晶化法は懸濁液平衡法又は反溶媒法であり、前記結晶化法が懸濁液平衡法である場合、前記溶媒は水、又はエタノールと水であり、前記結晶化法が反溶媒法である場合、前記溶媒はエタノール又はテトラヒドロフランであり、前記反溶媒は水である、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の式Iで表される化合物のB型結晶の製造方法。
【請求項11】
前記水は、蒸留水、脱イオン水、精製水、水道水及びミネラルウォーターのうちの一つ又は複数であり、
及び/又は、前記結晶化温度は20℃~60℃であり、例えば室温又は50℃であり、
及び/又は、前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は5mg/mL~40mg/mLであり、例えば、7.7mg/mL、11.1mg/mL、20mg/mL又は33.3mg/mLであり、
及び/又は、前記結晶化時間は1h~20dであり、例えば1h~2h、1d又は17dであり、
及び/又は、前記結晶化法が懸濁液平衡法であり、前記溶媒がエタノールと水である場合、前記エタノールと前記水との体積比は1:3~1:5であり、例えば1:4であり、
又は、前記結晶化方法が反溶媒法である場合、前記反溶媒と前記溶媒との体積比は1:1~4:1であり、例えば1:1又は2.7:1である、ことを特徴とする請求項10に記載の式Iで表される化合物のB型結晶の製造方法。
【請求項12】
溶媒において、式Iで表される化合物を懸濁液平衡法で結晶化させるステップを含み、前記溶媒はイソプロパノール、N,N-ジメチルアセトアミド、又はアセトンと水である、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の式Iで表される化合物のC型結晶の製造方法。
【請求項13】
前記水は、蒸留水、脱イオン水、精製水、水道水及びミネラルウォーターのうちの一つ又は複数であり、
及び/又は、前記溶媒がアセトン及び水である場合、前記アセトンと前記水との体積比は7:1~10:1であり、例えば8:1であり、
及び/又は、前記結晶化の温度は室温であり、
及び/又は、前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は10mg/mL~50mg/mLであり、例えば、20mg/mL、40mg/mL又は44.4mg/mLであり、
及び/又は、前記結晶化時間は1d~20dであり、例えば1d、7d、10d又は20dである、ことを特徴とする請求項12に記載の式Iで表される化合物のC型結晶の製造方法。
【請求項14】
前記薬物は好ましくは、癌の予防、緩和及び/又は治療のための薬物であり、前記癌は好ましくは、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、鼻咽頭癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、血液癌及び骨癌の一つ又は複数である、薬物の製造における請求項1~6のいずれか1項に記載の結晶形の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、出願日が2020年3月17日である中国特許出願CN2020101855977の優先権を主張する。本出願は、当該中国特許出願の全文を引用する。
[技術分野]
本発明は、芳香族ビニル系誘導体の結晶形及びその製造方法と使用に関する。
【0002】
[背景技術]
ヒトのプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、B7-H1とも呼ばれ、B7ファミリーの一員に属し、末梢組織や造血細胞に広く分布している。PD-L1qの全長cDNAは870bpであり、290個のアミノ酸を含むI型膜貫通タンパク質をコードし、PD-L1は、主に成熟CD4T細胞、CD8T細胞、B細胞、単核細胞、樹状細胞(Dendritic Cells、DCs)、マクロファージなどの造血細胞、及び内皮細胞、膵島細胞、マスト細胞等のいくつかの非造血系細胞の膜表面で発現している。その中でもPD-L1は例えば肺がん、胃がん、多発性骨髄腫、メラノーマと乳がんなどの様々な腫瘍で高発現している。プログラム細胞死タンパク質1(Programmed Death-1、PD-1)はPD-L1の主な受容体であり、主にT細胞、B細胞とNK細胞などの免疫関連細胞に分布し、自己免疫疾患、腫瘍、感染症、臓器移植、アレルギー、免疫特権などの免疫応答プロセスに重要な役割を果たしている。
【0003】
PD-L1は、その受容体であるプログラム細胞死タンパク質1と相互作用することにより、T細胞の活性化を阻害し、あるいは成熟T細胞のアポトーシスを誘導して、免疫反応を阻害する。腫瘍の発生過程で、がん細胞はPD-L1の発現を上昇させることでT細胞のアポトーシスを誘導し、免疫系がそれに対するクリアランスを回避する。PD-L1標的抗体薬物は、PD-1/PD-L1相互作用を特異的にブロックすることにより、腫瘍の免疫寛容を破壊し、腫瘍細胞に対する腫瘍特異的T細胞の殺傷機能を回復させ、腫瘍のクリアランスを達成することができる。
【0004】
PD-1/PD-L1は負の免疫調節の役割を果たしている。PD-1/PD-L1シグナルはT細胞の活性化と増殖を阻害し、同時にサイトカインのインターロイキン2(IL2)、インターフェロンγ、IL-10の分泌も減少させる(Eur.J.Immunol.,2002,32(3),634-643.)。また、PD-1/PD-L1シグナルはB細胞に対する免疫機能がT細胞に似て、PD-1がB細胞抗原受容体と架橋した後、PD-1の細胞質領域がプロテインチロシナーゼ2結合部位を含むチロシナーゼと相互作用することにより、最終的にB細胞の活性化を阻害する。腫瘍の免疫逃避における免疫陰性調節因子PD-1/PD-L1の役割は、ますます注目されている。腫瘍微小環境における腫瘍細胞表面のPD-L1が増加すると、同時に活性化T細胞上のPD-1と結合し、負の調節シグナルを伝達して、腫瘍抗原特異的T細胞のアポトーシス又は免疫不全をもたらし、それによって免疫反応を阻害し、腫瘍細胞の逃避を促進することが多数の研究により証明された。
【0005】
現在市販されているPD-1/PD-L1抗体阻害剤には、BMS社のNivolumab(2014)、Merck社のLambrolizumab(2014)、Junshi Bio社のToripalimab、Innovent社のSintilimab、Roche社のAtezolizumab、及びAstraZeneca社のDurvalumabがある。生物高分子と比較して、低分子化合物は細胞膜を通過し、細胞内の標的に作用することができ、低分子化合物は化学修飾の後、しばしばより優れたバイオアベイラビリティとコンプライアンスを持ち、消化管での酵素の分解不活性を効果的に回避する。
【0006】
現在、使いやすく経口で有効な低分子PD-1/PD-L1阻害剤はまだ市販されていなく、特許CN109988144Aは、芳香族エチレン系PD-L1低分子化合物を開示し、化学構造式が
【0007】
【化1】
であり、それはPD-1とPD-L1の結合に対して強力な効果を有し、腫瘍細胞に対する腫瘍特異的T細胞の殺傷機能を回復させ、PD-1/PD-L1関連癌等に関連する疾患を効果的に緩和及び治療することができる。
【0008】
キナーゼに対する優れた阻害活性に加えて、医薬品有効成分の結晶構造が薬物の化学的安定性に影響を与えることが多く、結晶形、製造方法、保存条件によって化合物の結晶構造が変化することがあり、時には他の形の結晶形の生成を伴うことがある。一般に、非晶質の医薬品は規則的な結晶構造を持たず、製品の安定性が低い、結晶化が細かい、ケーキングしやすい、流動性が悪いなどの欠点を持つことが多く、これらの違いが生産のスケールアップを困難にしていることが多い。また、結晶形は、薬物の生産、加工、貯蔵、輸送時の安定性と治療時でのバイオアベイラビリティに決定的な影響を与え、さらに、商業的に可能な製造方法を得る観点又は活性化合物を含む医薬組成物を製造する観点から、活性成分の化学的安定性、固体安定性及び保存期間はすべて重要な要素であり、したがって、望ましい性質を持つ薬物の適切な形態を提供することは、薬物の製造、貯蔵のために非常に重要である。
【0009】
[発明の概要]
本発明は、芳香族ビニル系誘導体の結晶形及びその製造方法と使用を提供する。本発明の結晶形は、安定性がよく、吸湿しにくく、製造が容易であり、薬物の最適化と開発に重要な価値を有する。
【0010】
本発明は、2θ角で表される粉末X線回折パターンが、9.923±0.2°、10.883±0.2°及び17.357±0.2°において特徴的なピークを有する式Iで表される化合物のA型結晶を提供する。
【0011】
又は、3.979±0.2°、9.923±0.2°、10.883±0.2°、17.357±0.2°、18.607±0.2°及び19.294±0.2°において特徴的なピークを有する。
【0012】
又は、3.979±0.2°、4.991±0.2°、9.923±0.2°、10.883±0.2°、14.251±0.2°、16.210±0.2°、17.357±0.2°、18.607±0.2°、19.294±0.2°、19.594±0.2°及び20.792±0.2°において特徴的なピークを有する。
【0013】
又は、3.979±0.2°、4.991±0.2°、7.113±0.2°、8.135±0.2°、9.923±0.2°、10.883±0.2°、11.613±0.2°、14.251±0.2°、14.866±0.2°、16.210±0.2°、17.357±0.2°、18.607±0.2°、19.294±0.2°、19.594±0.2°、20.792±0.2°、21.272±0.2°、24.437±0.2°、25.257±0.2°、26.2295±0.2°、27.870±0.2°、28.631±0.2°、29.126±0.2°、29.943±0.2°において特徴的なピークを有する。
【0014】
【化2】
【0015】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記A型結晶は、2θ角で表される粉末X線回折パターンにおける2θ値が表1に示される通りである。
【0016】
【表1】
【0017】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記A型結晶の偏光顕微鏡分析において、結晶形状は好ましくは粒状又は棒状であり、粒子径は好ましくは10~100μmであり、前記A型結晶の偏光顕微鏡分析は、以下の条件で行うことができる:前記顕微鏡は好ましくは10倍対物レンズであり、前記顕微鏡は好ましくは交差偏光子である。前記A型結晶の偏光顕微鏡写真は好ましくは、図1に示される通りである。
【0018】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記A型結晶の示差走査熱量分析において、247℃に吸熱ピークを有し、その融解熱は好ましくは118.0J/gであり、前記A型結晶の示差走査熱量分析は、以下の条件で行うことができる:好ましくは非密閉アルミトレイで行われ、好ましくは窒素ガス流(例えば流速50mL/分の窒素ガス流)で行われ、好ましくは25℃において平衡され、好ましくは10℃/分の加熱速度で昇温され、好ましくは25℃から300℃までに加熱される。前記A型結晶の示差走査熱量分析パターン(DSC)は好ましくは図2に示される通りである。
【0019】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記A型結晶の熱重量分析において、試料は26.76℃から119.97℃までの重量損失はわずか0.1447%であり、前記「%」は重量パーセンテージであり、前記A型結晶の熱重量分析は、以下の条件下で行うことができる:好ましくは白金サンプルパン中で行われ、好ましくは窒素ガス流(例えば流速60mL/分の窒素ガス流)中で行われ、好ましくは10℃/分の加熱速度で昇温され、好ましくは25℃から300℃までに加熱される。前記A型結晶の熱重量分析(TGA)パターンは好ましくは図3に示される通りである。
【0020】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記A型結晶のX線回折分析において、前記A型結晶のX線回折分析は以下の条件で行うことができる:好ましくはCuKの光源で行われ、好ましくはX線強度が40KV/40mAであり、好ましくはスキャンモードがTheta-Thetaであり、好ましくは角度範囲が2°~40°(例えば、4°~40°)であり、好ましくはステップサイズが0.05°であり、好ましくはスキャン速度が0.5秒/ステップである。前記A型結晶の粉末X線回折パターン(XRPD)は好ましくは図4に示される通りである。
【0021】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記A型結晶の動的水分吸着分析において、湿度80%RHでの吸湿重量増加は0.310%であり、湿度95%RHでの吸湿重量増加は0.409%であり、A型結晶がわずかな吸湿性を有していることを示しており、前記A型結晶の動的水分吸着分析は以下の条件で行うことができる:好ましくは温度25℃で行われ、好ましくは湿度0%RHで60分間間乾燥された後で行われる。前記A型結晶の動的水分吸着分析パターン(DVS)は好ましくは図5に示される通りである。
【0022】
本発明は、2θ角で表される粉末X線回折パターンが、3.424±0.2°、6.576±0.2°及び19.297±0.2°において特徴的なピークを有する式Iで表される化合物のB型結晶を提供する。
【0023】
又は、3.424±0.2°、6.576±0.2°、18.217±0.2°、19.297±0.2°、20.901±0.2°及び26.379±0.2°において特徴的なピークを有する。
【0024】
又は、3.424±0.2°、6.576±0.2°、14.467±0.2°、16.406±0.2°、17.567±0.2°、18.217±0.2°、19.297±0.2°、20.557±0.2°、20.901±0.2°、22.460±0.2°、25.084±0.2°、25.878±0.2°、26.379±0.2°及び28.983±0.2°において特徴的なピークを有する。
【0025】
又は、3.424±0.2°、6.576±0.2°、9.732±0.2°、11.304±0.2°、12.905±0.2°、13.918±0.2°、14.467±0.2°、16.406±0.2°、17.567±0.2°、18.217±0.2°、19.297±0.2°、20.557±0.2°、20.901±0.2°、22.460±0.2°、23.872±0.2°、25.084±0.2°、25.878±0.2°、26.379±0.2°、28.983±0.2°、29.531±0.2°、30.459±0.2°、32.171±0.2°、34.297±0.2°、37.676±0.2°及び38.902±0.2°において特徴的なピークを有する。
【0026】
【化3】
【0027】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記B型結晶は、2θ角で表される粉末X線回折パターンにおける2θ値が表2に示される通りである。
【0028】
【表2】
【0029】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記B型結晶のX線回折分析において、前記B型結晶のX線回折分析は以下の条件で行うことができる:好ましくはCuKの光源で行われ、好ましくはX線強度が40KV/40mAであり、好ましくはスキャンモードがTheta-Thetaであり、好ましくは角度範囲が2°~40°(例えば、4°~40°)であり、好ましくはステップサイズが0.05°であり、好ましくはスキャン速度が0.5秒/ステップである。前記B型結晶の粉末X線回折パターン(XRPD)は好ましくは図6に示される通りである。
【0030】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記B型結晶の示差走査熱分析において、243℃に吸熱ピークを有し、その融解熱は好ましくは93.73J/gであり、前記B型結晶の示差走査熱分析は、以下の条件で行うことができる:好ましくは非密閉アルミトレイで行われ、好ましくは窒素ガス流(例えば流量50mL/minの窒素ガス流)で行われ、好ましくは25℃において平衡され、好ましくは10℃/minの加熱速度で昇温され、好ましくは25℃から300℃までに加熱される。前記B型結晶の示差走査熱量分析パターン(DSC)は好ましくは図7に示される通りである。
【0031】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記B型結晶の熱重量分析において、25.3℃から92.5℃までに加熱されると5.2%の重量損失があり、前記「%」は重量パーセンテージであり、前記B型結晶の熱重量分析は、以下の条件下で行われることができる:好ましくは白金サンプルパン中で行われ、好ましくは窒素ガス流(例えば流量60mL/分の窒素ガス流)中で行われ、好ましくは10℃/分の加熱速度で昇温し、好ましくは25℃から300℃までに加熱される。前記B型結晶の熱重量分析(TGA)パターンは好ましくは図8に示される通りである。
【0032】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記B型結晶の動的水分吸着分析において、相対湿度(RH)0%から95%RHまでの試料の重量増加は7.235%であり、B型結晶が吸湿性を有することを示しており、前記B型結晶の動的水分吸着分析は以下の条件で行われることができる:好ましくは温度25℃で行われ、好ましくは湿度0%RHで60分間乾燥させた後で行われる。前記B型結晶の動的水分吸着分析(DVS)は好ましくは図9に示される通りである。
【0033】
本発明は、2θ角で表される粉末X線回折パターンが、6.250±0.2°、18.458±0.2°及び19.302±0.2°において特徴的なピークを有する式Iで表される化合物のC型結晶を提供する。
【0034】
又は、6.250±0.2°、8.779±0.2°、13.720±0.2°、18.458±0.2°及び19.302±0.2°において特徴的なピークを有する。
又は、6.250±0.2°、8.779±0.2°、12.635±0.2°、13.720±0.2°、16.525±0.2°、18.458±0.2°及び19.302±0.2°において特徴的なピークを有する。
【0035】
又は、6.250±0.2°、6.979±0.2°、8.779±0.2°、12.635±0.2°、13.720±0.2°、16.525±0.2°、18.458±0.2°、19.302±0.2°、20.852±0.2°、22.345±0.2°、24.772±0.2°、25.230±0.2°、27.285±0.2°において特徴的なピークを有する。
【0036】
又は、6.250±0.2°、6.979±0.2°、8.779±0.2°、12.635±0.2°、13.720±0.2°、15.285±0.2°、16.525±0.2°、18.458±0.2°、19.302±0.2°、20.852±0.2°、22.345±0.2°、24.772±0.2°、25.230±0.2°、25.996±0.2°、27.285±0.2°、28.303±0.2°、28.829±0.2°、29.699±0.2°、30.703±0.2°、33.133±0.2°、34.655±0.2°、36.829±0.2°、37.967±0.2°において特徴的なピークを有する。
【0037】
【化4】
【0038】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記C型結晶は、2θ角で表される粉末X線回折パターンにおける2θ値が表3に示される通りである。
【0039】
【表3】
【0040】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記C型結晶のX線回折分析において、前記C型結晶の粉末X線回折パターン(XRPD)は、好ましくは図10に示される通りである。
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記C型結晶の示差走査熱分析において、243℃に吸熱ピークを有し、融解熱は好ましくは99.33J/gであり、前記C型結晶の示差走査熱分析は、以下の条件で行われることができる:好ましくは非密閉アルミトレイで行われ、好ましくは窒素ガス流(例えば流量50mL/分の窒素ガス流)で行われ、好ましくは25℃において平衡され、好ましくは10℃/分の昇温速度で昇温され、好ましくは25℃から300℃までに加熱される。前記C型結晶の示差走査熱量分析パターン(DSC)は好ましくは図11に示される通りである。
【0041】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、C型結晶の熱重量分析において、24.0℃から58.0℃までに加熱されると0.62%の重量損失があり、58.0℃から162.3℃までに加熱されると2.5%の重量損失があり、前記「%」は重量パーセンテージであり、前記C型結晶の熱重量分析は、以下の条件下で行われることができる:好ましくは白金サンプルパン中で行われ、好ましくは窒素ガス流(例えば流量60mL/分の窒素ガス流)中で行われ、好ましくは10℃/分の昇温速度で昇温され、好ましくは25℃から300℃までに加熱される。前記C型結晶の熱重量分析(TGA)パターンは好ましくは図12に示される通りである。
【0042】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、前記C型結晶の動的水分吸着分析において、0%RHから95%RHまでの試料の重量増加は4.767%であり、C型結晶が吸湿性を有していることを示しており、前記C型結晶の動的水分吸着分析は以下の条件で行われることができる:好ましくは温度25℃で行われ、好ましくは湿度0%RHで60分間乾燥させた後で行われる。前記C型結晶の動的水分吸着分析パターン(DVS)は好ましくは図13に示される通りである。
【0043】
本発明において、前記粉末X線回折スペクトルに使用されスペクトルはKαスペクトルである。
本発明において、前記粉末X線回折スペクトルに使用されるターゲットの種類はCuターゲットである。
【0044】
また、本発明は、式Iで表される化合物のA型結晶の製造方法を提供し、下記の溶媒において、式Iで表される化合物を結晶化させるステップを含み、前記結晶化法は懸濁液平衡法、溶液加熱-徐冷法又は反溶媒法であり、前記溶媒はエタノールであり、前記結晶化法が反溶媒法である場合、反溶媒はアルカン系溶媒である。
【0045】
前記A型結晶の製造方法において、前記結晶化法が反溶媒法である場合、前記アルカン系溶媒は、当該技術分野における通常のアルカン系溶媒であってもよく、前記アルカン系溶媒は、好ましくはC1-10アルカン系溶媒であり、より好ましくはn-ヘプタンである。
【0046】
前記A型結晶の製造方法において、前記結晶化の温度は、当該技術分野における通常の温度であってもよく、前記結晶化の温度は、好ましくは20℃~60℃(例えば、室温(20℃~25℃)又は50℃)である。
【0047】
前記A型結晶の製造方法において、前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は、当該技術分野における通常の比率であってもよく、好ましくは5mg/mL~20mg/mL(例えば、7.7mg/mL~20mg/mL)である。
【0048】
前記A型結晶の製造方法において、前記結晶化の時間は結晶を析出させることができれば特に限定されず、前記結晶化の時間は好ましくは1h~20d(例えば、1h~2h、5h~6h又は10d~20d)である。
【0049】
前記A型結晶の製造方法において、前記結晶化法が反溶媒法である場合、前記反溶媒と前記溶媒との質量比は、当該技術分野における通常の比率であってもよく、好ましくは5:1~8:1(例えば、6.5:1)である。
【0050】
前記A型結晶の製造方法において、好ましくは下記のステップを含む:前記溶媒と前記式Iで表される化合物を混合し、超音波処理、回転、遠心分離により目的の結晶形を得る。前記回転は、好ましくは暗所で行われる。前記回転は、好ましくは室温で行われる。前記回転は、好ましくは、Labquaker回転装置で行われる。前記回転は、好ましくは10d~20d行われる。前記遠心分離終了後、さらに乾燥する操作を含むことが好ましい。前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は、好ましくは、5mg/mL~20mg/mL(例えば、7.7mg/mL~20mg/mL)である。
【0051】
前記A型結晶の製造方法において、好ましくは下記のステップを含む:前記溶媒と前記式Iで表される化合物を混合し、加熱溶解させ、室温まで徐冷させ、遠心分離して標的の結晶形を得る。前記加熱溶解の温度は、好ましくは50℃~60℃である。前記加熱溶解は、好ましくは水浴加熱である。前記加熱溶解は同時に攪拌操作を含むことが好ましく、前記攪拌の速度は好ましくは200rpmである。前記加熱溶解終了後、保温操作を含むことが好ましく、前記保温時間は好ましくは15分である。前記加熱溶解終了後、さらに熱時濾過操作を含むことが好ましく、前記濾過は好ましくは0.45μmのフィルター膜を採用する。前記徐冷速度は、好ましくは6℃/hである。前記遠心分離終了後、さらに溶媒の蒸発乾燥操作を含むことが好ましい。前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は、好ましくは5mg/mL~20mg/mL(例えば、7.7mg/mL~20mg/mL)である。
【0052】
前記A型結晶の製造方法において、好ましくは下記のステップを含む:上記溶媒と上記式Iで表される化合物を混合し、加熱溶解させ、前記反溶媒を滴下した後、自然冷却させ、遠心分離して目的の結晶形を得る。前記加熱溶解の温度は、好ましくは50℃~60℃である。前記加熱溶解は同時に攪拌操作を含むことが好ましく、前記攪拌の速度は好ましくは200rpmである。前記加熱溶解終了後、保温操作を含むことが好ましく、前記保温時間は好ましくは15分である。前記加熱溶解終了後、さらに熱時濾過操作を含むことが好ましく、前記濾過は好ましくは0.45μmのフィルター膜を採用する。前記反溶媒を滴下すると同時に、攪拌操作を含むことが好ましい。前記反溶媒と前記溶媒との体積比は、好ましくは5:1~8:1(例えば6.5:1)である。前記反溶媒の滴下が終了した後、保温操作を含むことが好ましく、前記保温時間は好ましくは10分である。前記遠心分離終了後、さらに溶媒の蒸発乾燥操作を含むことが好ましい。前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は、好ましくは5mg/mL~20mg/mL(例えば、7.7mg/mL~20mg/mL)である。
【0053】
また、本発明は、式Iで表される化合物のB型結晶の製造方法を提供し、下記の溶媒において、式Iで表される化合物を結晶化させるステップを含み、前記結晶化法は懸濁液平衡法又は反溶媒法であり、前記結晶化法が懸濁液平衡法である場合、前記溶媒は水、又はエタノールと水であり、前記結晶化法が反溶媒法である場合、前記溶媒はエタノール又はテトラヒドロフランであり、前記反溶媒は水である。
【0054】
前記B型結晶の製造方法において、前記水は、蒸留水、脱イオン水、精製水、水道水及びミネラルウォーターのうちの一つ又は複数であってもよい。
前記B型結晶の製造方法において、前記結晶化の温度は、当該技術分野における通常の温度であってもよく、前記結晶化の温度は、好ましくは20℃~60℃(例えば、室温(20℃~25℃)又は50℃)である。
【0055】
前記B型結晶の製造方法において、前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は、当該技術分野における通常の比率であってもよく、好ましくは5mg/mL~40mg/mL(例えば7.7mg/mL、11.1mg/mL、20mg/mL又は33.3mg/mL)である。
【0056】
前記B型結晶の製造方法において、前記結晶化法が懸濁液平衡法であり、前記溶媒はエタノール及び水である場合、前記エタノールと前記水との体積比は好ましくは1:3~1:5(例えば、1:4)である。
【0057】
前記B型結晶の製造方法において、前記結晶化法が反溶媒法である場合、前記反溶媒と前記溶媒との体積比は好ましくは1:1~4:1(例えば、1:1又は2.7:1)である。
前記B型結晶の製造方法において、前記結晶化の時間は結晶を析出させることができれば特に限定されず、前記結晶化の時間は好ましくは1h~20d(例えば、1h~2h、1d又は17d)である。
【0058】
前記B型結晶の製造方法において、前記結晶化法が懸濁液平衡法である場合、好ましくは下記のステップを含む:前記溶媒と前記式Iで表される化合物を混合し、スラリー化し、固体を分離して標的の結晶形を得る。前記スラリー化は好ましくは室温で行われる。前記スラリー化は好ましくは攪拌下で行われる。前記攪拌は好ましくは磁気攪拌である。前記スラリー化は、好ましくは1d~17d行われる。前記固体の分離は好ましくは遠心分離又は濾過である。前記固体の分離が終了した後、さらに乾燥を含む操作が好ましく、前記乾燥は好ましくは40℃で行われ、前記乾燥は好ましくは4h行われる。前記式Iで表される化合物と前記溶剤との質量体積比は、好ましくは5mg/mL~40mg/mL(例えば、7.7mg/mL、11.1mg/mL、20mg/mL又は33.3mg/mL)である。
【0059】
前記B型結晶の製造方法において、前記結晶化法が反溶媒法である場合、好ましくは下記のステップを含む:前記溶媒と前記式Iで表される化合物を混合し、加熱溶解させ、前記反溶媒を滴下した後、自然冷却させ、遠心分離して標的の結晶形を得る。前記加熱溶解の温度は好ましくは50℃~60℃である。前記加熱溶解は同時に攪拌操作を含むことが好ましく、前記攪拌の速度は好ましくは200rpmである。前記加熱溶解終了後、保温操作を含むことが好ましく、前記保温時間は好ましくは15分である。前記加熱溶解終了後、熱時濾過操作を含むことが好ましく、前記濾過は好ましくは0.45μmのフィルター膜を採用する。前記反溶媒の滴下は好ましくは攪拌の時に滴下する。前記反溶媒の滴下が終了した後、保温操作を含むことが好ましく、前記保温時間は好ましくは10分である。前記遠心分離終了後、さらに溶媒の蒸発乾燥操作を含むことが好ましい。前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は、好ましくは5mg/mL~40mg/mL(例えば、7.7mg/mL、11.1mg/mL、20mg/mL又は33.3mg/mL)である。
【0060】
また、本発明は、式Iで表される化合物のC型結晶の製造方法を提供し、下記の溶媒において、式Iで表される化合物を懸濁液平衡法で結晶化させるステップを含み、前記溶媒はイソプロパノール、N,N-ジメチルアセトアミド又はアセトンと水である。
【0061】
前記C型結晶の製造方法において、前記溶媒がアセトンと水である場合、前記アセトンと前記水との体積比は、好ましくは7:1~10:1(例えば8:1)である。
前記C型結晶の製造方法において、前記水は、蒸留水、脱イオン水、精製水、水道水及びミネラルウォーターのうちの一つ又は複数であってもよい。
【0062】
前記C型結晶の製造方法において、前記結晶化の温度は、当該技術分野における通常の温度であってもよく、前記結晶化の温度は好ましくは室温である。
前記C型結晶の製造方法において、前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は、当該技術分野における通常の比率であってもよく、前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は好ましくは10mg/mL~50mg/mL(例えば20mg/mL、40mg/mL又は44.4mg/mL)である。
【0063】
前記C型結晶の製造方法において、前記結晶化の時間は特に限定されないが、結晶を析出させることができれば限定されなく、前記結晶化の時間は好ましくは1d~20d(例えば、1d、7d、10d又は20d)である。
【0064】
前記C型結晶の製造方法において、好ましくは下記の前記溶媒と前記式Iで表される化合物を混合し、スラリー化又は回転し、固体を分離して標的の結晶形を得るステップを含む。前記混合終了後、さらに超音波操作を含むことが好ましく、前記超音波は好ましくは1分間行われる。前記C型結晶の製造方法がスラリー化を含む場合、前記スラリー化は好ましくは1d間行われ、前記スラリー化は好ましくは攪拌下で行われ、前記攪拌は好ましくは磁気撹拌である。前記C型結晶の製造方法が回転を含む場合、前記回転は好ましくは10d~20d行われ、前記回転は好ましくは、Labquaker回転装置で行われ、前記回転は好ましくは暗所で行われる。前記固体の分離は好ましくは遠心分離又は濾過である。前記固体の分離が終了した後、さらに乾燥を含む操作が好ましい。前記乾燥は好ましくは70℃で行われ、前記乾燥は好ましくは4h行われる。前記式Iで表される化合物と前記溶媒との質量体積比は、好ましくは10mg/mL~50mg/mL(例えば、20mg/mL、40mg/mL又は44.4mg/mL)である。
【0065】
また、本発明は薬物の製造における式Iで表される化合物の結晶形の使用を提供する。当該化合物は癌による関連する疾患を予防、緩和及び/又は治療のための薬物の製造に使用され、前記癌は好ましくは肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、鼻咽頭癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、血液癌及び骨癌の一つ又は複数である。前記薬物は好ましくは治療有効量を含む前記式Iで表される化合物のA型結晶、B型結晶又はC型結晶である。
【0066】
本明細書に使用される用語「d」は日を指し、用語「h」は時を指し、用語「min」は分を指す。
当分野の常識に基づいて、上記各好ましい条件を任意に組み合わせれば、本発明の各好ましい実例が得られる。
【0067】
本発明で用いられる試薬及び原料はいずれも市販品として得られる。
本発明の積極的な進歩効果は下記の通りである。
1.先行技術には式Iで表される化合物の結晶形は記載されておらず、本出願はその複数の新しい結晶形を初めて発見した。広範な実験とスクリーニングを通じて、A型結晶、B型結晶及びC型結晶が候補として選択された。
【0068】
2.本発明により製造されたA型結晶、B型結晶及びC型結晶は、良好な安定性を有し、吸湿しにくく、製造が容易であり、薬物の開発又は製造中のトランスクリスタル化のリスクを回避でき、バイオアベイラビリティ及び薬物の効能変化を回避し、臨床使用に適した剤形に開発でき、高い経済的価値を有する。
【0069】
3.本発明はまた、式Iで表される化合物の新規な結晶形の製造方法を提供し、操作が簡単で容易であり、再現性が高く、溶媒が容易に残留せず、環境にやさしく、異なる規模での製造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1図1は、式Iで表される化合物のA型結晶の偏光顕微鏡写真である。
図2図2は、式Iで表される化合物のA型結晶のDSC図である。
図3図3は、式Iで表される化合物のA型結晶のTGA図である。
図4図4は、式Iで表される化合物のA型結晶のXRPD図である。
図5図5は、式Iで表される化合物のA型結晶のDVS図である。
図6図6は、式Iで表される化合物のB型結晶のXRPD図である。
図7図7は、式Iで表される化合物のB型結晶のDSC図である。
図8図8は、式Iで表される化合物のB型結晶のTGA図である。
図9図9は、式Iで表される化合物のB型結晶のDVS図である。
図10図10は、式Iで表される化合物のC型結晶のXRPD図である。
図11図11は、式Iで表される化合物のC型結晶のDSC図である。
図12図12は、式Iで表される化合物のC型結晶のTGA図である。
図13図13は、式Iで表される化合物のC型結晶のDVS図である。
図14図14は、式Iで表される化合物のV型結晶のXRPD図である。
図15図15は、式Iで表される化合物のV型結晶のDSC図である。
図16図16は、式Iで表される化合物のV型結晶のTGA図である。
図17図17は、式Iで表される化合物のVII型結晶のXRPD図である。
図18図18は、式Iで表される化合物のVII型結晶のDSC図である。
図19図19は、式Iで表される化合物のVII型結晶のTGA図である。
図20図20は、式Iで表される化合物のVIII型結晶のXRPD図である。
図21図21は、式Iで表される化合物のVIII型結晶のDSC図である。
図22図22は、式Iで表される化合物のVIII型結晶のTGA図である。
図23図23は、式Iで表される化合物のIX型結晶のXRPD図である。
図24図24は、式Iで表される化合物のIX型結晶のDSC図である。
図25図25は、式Iで表される化合物のIX型結晶のTGA図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
[具体的な実施形態]
以下では、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明を前記実施例に限定するものではない。以下の実施例において、特定の条件が示されていない実験方法は、従来の方法及び条件に従うか、又は取引説明書に従って選択される。
【0072】
以下の結晶形の製造方法において、添加する溶媒の体積(mL)=試料質量×体積倍数(mL)であり、例えば実施例1の製造方法一におけるエタノールの体積は:0.02×50mL=1mLである。
【0073】
非晶質化合物I(式Iで表される化合物)の製造:
室温で化合物5-a(化合物5-aの製造は特許CN109988144Aの方法を参考にして得た)と(S)-2-メチルセリン(65mg、0.54mmol)のメタノール(10mL)とジクロロメタン(10mL)の混合溶液に、氷酢酸(32.8mg、0.54mmol)を加え、反応液を室温で1時間撹拌した。次にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(85.8mg、1.36mmol)を加え、16時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残留物を酢酸エチル(50mL)に溶解させ、水(20mL)と飽和食塩水(20mL)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮し、残留物をジクロロメタン:メタノール=10:1の移動相を用いてシリカゲル薄層クロマトグラフィー分取プレートで分離し、化合物Iを含むシリカゲルをメタノール(20mL×3)で洗浄し、洗浄液を減圧濃縮して、非晶質化合物I(24mg、収率18.7%)を得た。LC-MS(ESI):m/z=468[M-H]
【0074】
H NMR (500MHz, CD3OD)?: 8.17 (s, 1H), 7.81-7.79 (d, J= 8.5Hz, 1H), 7.68-7.62 (m, 2H), 7.57-7.55 (d,J= 8.0Hz, 1H), 7.46-7.43 (m, 2H), 7.39-7.28 (m, 5H), 7.20-7.19 (d, J= 7.0Hz, 1H), 4.36-4.28 (q,2H), 4.03-4.00 (d, J= 12.5Hz, 1H), 3.86-3.84 (d, J= 12.5Hz, 1H), 2.33 (s,3H), 1.57 (s,3H) ppm.
【0075】
実施例1:A型結晶の製造方法:
製造方法一:式Iで表される化合物20mgを4mLのガラス瓶に秤量し、50倍体積のエタノール(EtOH)をガラス瓶に加え、1分間超音波処理して試料の懸濁液を得、懸濁液試料バイアルをアルミホイルで包んで光を避け、Labquaker回転装置に載せ、室温(約20~25℃)で360度回転し平衡化開始し、試料をそれぞれ10日目と20日目に採取し、遠心分離し、乾燥後にXRPDで特性評価し、特性評価した結果はA型結晶であった。
【0076】
製造方法二:式Iで表される化合物約20mgを10mLのガラスバイアルに秤量し、130倍体積のエタノール(EtOH)をガラスバイアルに加え、試料を磁気加熱スターラーに置き、水浴温度が約50℃であり、回転速度は200rpmであり、加熱により試料の溶解を促進し、15分間保温した後、溶液を熱いうちに0.45μmフィルターでろ過し、ろ液を新しいガラス瓶に移し、6℃/hの速度で温度を室温(20~25℃)までゆっくりと下げ、固体が沈殿した溶媒系を遠心分離し、固体を取り出し、溶媒を蒸発乾固させた後でXRPDで特性評価し、特性評価した結果はA型結晶であった。
【0077】
製造方法三:(反溶媒法):式Iで表される化合物試料約80mgを20mlのガラスバイアルに秤量し、130倍体積の良溶媒エタノール(EtOH)をバイアルに加え、試料バイアルを磁気加熱スターラーに置き、水浴温度は約50℃であり、回転速度は200rpmであり、加熱により試料の溶解を促進し、15分間保温した後、溶液を熱いうちに0.45μmのフィルターでろ過し、ろ液を新しいガラス瓶に移し、攪拌しながら各バイアルにゆっくりと850倍の反溶媒n-ヘプタンを加え、10分間保温した後、自然温度を下げ、次に固体が沈殿した溶媒系を遠心分離して固体を取り出し、溶媒を蒸発乾固させた後XRPDで特性評価し、特性評価した結果はA型結晶であった。
【0078】
実施例2:B型結晶の製造方法:
製造方法一:式Iで表される化合物200mgをバイアルに秤量し、バイアルに10倍のエタノールと40倍の水を加え、室温で1日間磁気で撹拌してスラリー化させ、溶液を遠心分離し、固体を収集して40℃で4時間乾燥させ、乾燥した固体を特性評価し、特性評価した結果はB型結晶であった。
【0079】
製造方法二:式Iで表される化合物100mgをガラスバイアルに秤量し、ガラスバイアルに30倍体積の水を加え、室温で17日間磁気で撹拌してスラリー化させ、減圧ろ過し、40℃で4時間乾燥させ、XRPDにより特性評価し、特性評価した結果はB型結晶であった。
【0080】
製造方法三(反溶媒法):式Iで表される化合物の試料約80mgを20mLのガラスバイアルに秤量し、下記の表に従って適切な体積の良溶媒をバイアルに加え(具体的な体積は表4を参照)、試料バイアルを磁気加熱スターラーに置き、水浴温度は約50℃であり、回転速度は200rpmであり、水浴の温度は試料の溶解を促進するために維持され、15分間保温し、各溶液を熱いうちに0.45μmフィルターでろ過し、ろ液を新しいバイアルに移し、攪拌しながら各バイアルに順次に異なる反溶媒をゆっくりと滴下し、10分間保温した後、自然に温度を下げ、次に固体を沈殿させた溶媒系を遠心分離して固体を取り出し、溶媒が乾固した後、XRPDにより特性評価し、特性評価した結果はB型結晶であった。
【0081】
【表4】
【0082】
実施例3:C型結晶の製造方法:
製造方法一:式Iで表される化合物試料200mgを秤量し、20倍のアセトン及び2.5倍の水を加え、室温の条件下で1日間磁気攪拌してスラリー化させ、次に溶液を遠心分離し、固体を収集し、収集した固体を70℃で4時間乾燥させ、乾燥した後の固体をXRPDにより特性評価し、特性評価した結果はC型結晶であった。
【0083】
製造方法二:式Iで表される化合物200mg+25倍のイソプロパノール(IPA)を室温で7日間磁気攪拌してスラリー化させ、減圧濾過し、固体を70℃で4時間乾燥させ、固体試料をXRPDにより特性評価し、特性評価した結果はC型結晶であった。
【0084】
製造方法三:式Iで表される化合物20mgを4mLのガラスバイアルに秤量し、50倍体積のN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)をガラスバイアルに加え、1分間超音波処理して試料の懸濁液を得、懸濁液試料バイアルをアルミホイルで包んで光を避け、Labquaker回転装置に置き、室温(約20~25℃)で360度回転して平衡化を開始し、試料をそれぞれ10日目と20日目にサンプリングし、遠心分離し、乾燥後にXRPDで特性評価し、特性評価した結果はC型結晶であった。
【0085】
粉末X線回折パターン(XRPD)、示差走査熱量分析(DSC)、熱重量損失分析装置(TGA)又は動的水分吸着分析装置(DVS)などによって前記化合物のA型結晶、B型結晶、C型結晶に対して構造決定を行い、結晶形研究などを行った。
【0086】
実施例4:A型結晶の偏光顕微鏡特性評価(図1
式Iで表される化合物のA型結晶の試料を少量取り、目盛り付きのガラススライド上に置き、適量の流動パラフィンを加えて分散させ、カバーガラスで覆い、10倍の対物レンズを備えた顕微鏡下に置き、粒子形態、サイズ及び結晶特性を観察し、直交偏光顕微鏡で試料の複屈折性及び結晶性を示し、デジタルカメラで撮影した。
【0087】
結果は、偏光顕微鏡下で試料に明らかな複屈折があり、粒状と棒状を示し、粒子径が10~100μmであることを示している。
実施例5:A型結晶の示差走査熱量測定分析(DSC)(図2に示される通りである)
式Iで表される化合物のA型結晶の試料3.1820mgを秤量し、非密封アルミニウムトレイに置き、窒素ガス流(50mL/分)雰囲気で試料を25℃で平衡化させ、その後10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱し、結果は表5に詳細に示される。
【0088】
【表5】
【0089】
実施例6:A型結晶の熱重量分析(TGA)(図3
式Iで表される化合物のA型結晶の試料15.3240mgを秤量し、白金サンプルパンに置き、試料窒素ガス流(60mL/分)雰囲気で10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱し、試料の26.76℃から119.97℃までの重量損失はわずか0.1447%であり、試料にはほとんど水又は溶媒が含まれていないことを示し、結果は表6に詳細に示される。
【0090】
【表6】
【0091】
実施例7:A型結晶の粉末X線回折分析(XRPD)(図4
光源はCuKであり、X線強度は40KV/40mAであり、スキャンモードはTheta-Thetaであり、スキャン角度範囲は4°~40°であり、ステップサイズは0.05°であり、スキャン速度は0.5秒/ステップであり、結果は表7に詳細に示される。
【0092】
【表7】
【0093】
実施例8:A型結晶の動的水分吸着分析(DVS)(図5
適量の式Iで表される化合物のA型結晶の試料を秤量し、温度25℃、湿度0%RHの条件下で60分間乾燥させた後、湿度が0%RH~95%RHに変化した時の試料の吸湿特性、及び湿度が95%RH~0%RHに変化した時の試料の除湿特性を測定した。各ステップの湿度変化は5%RHであり、平衡基準は10分以内の重量変化率は0.01%/分未満であり、最長平衡時間は2時間であり、DVSの試験結果は、A型結晶が25℃、80%RH湿度での吸湿重量増加は0.310%であり、95%RH湿度での吸湿重量増加は0.409%であり、試料がやや吸湿性があることを示した。
【0094】
実施例9:B型結晶の粉末X線回折分析(XRPD)(図6
光源はCuKであり、X線強度は40KV/40mAであり、スキャンモードはTheta-Thetaであり、スキャン角度範囲は4°~40°であり、ステップサイズは0.05°であり、スキャン速度は0.5秒/ステップであり、結果は表8に詳細に示される。
【0095】
【表8】
【0096】
実施例10:B型結晶の示差走査熱量測定分析(DSC)(図7
式Iで表される化合物のB型結晶の試料1.5330mgを秤量し、非密封アルミニウムトレイに置き、窒素ガス流(50mL/分)の雰囲気で試料を25℃で平衡化させ、その後10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱し、結果は表9に詳細に示される。
【0097】
【表9】
【0098】
実施例11:B型結晶の熱重量分析(TGA)(図8
式Iで表される化合物のB型結晶の試料1.7310mgを秤量し、白金サンプルパンに置き、試料を窒素ガス流(60mL/分)雰囲気で10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱し、開始試料は25.3℃から92.5℃まで加熱すると5.2%の重量損失があった。
【0099】
実施例12:B型結晶の動的水分吸着分析(DVS)(図9
式Iで表される化合物のB型結晶の試料適量を秤量し、温度25℃、湿度0%RHの条件下で60分間乾燥させた後、湿度が0%RH~95%RHに変化した時の試料の吸湿特性、及び湿度が95%RH~0%RHに変化した時の試料の除湿特性を測定した。各ステップの湿度変化は5%RHであり、平衡基準は5分以内の重量変化率が0.01%/分未満であり、最長平衡時間は2時間であり、結果は、0%RHから95%RHまでの試料重量増加が7.235%であり、試料が吸湿性を有していることを示した。
【0100】
実施例13:C型結晶の粉末X線回折分析(XRPD)(図10
光源はCuKであり、X線強度は40KV/40mAであり、スキャンモードはTheta-Thetaであり、スキャン角度範囲は4°~40°であり、ステップサイズは0.05°であり、スキャン速度は0.5秒/ステップであり、結果は表10に詳細に示される。
【0101】
【表10】
【0102】
実施例14:C型結晶の示差走査熱量測定分析(DSC)(図11
式Iで表される化合物のC型結晶の試料を1.550mg秤量し、非密封アルミニウムトレイに置き、窒素ガス流(50mL/分)雰囲気で試料を25℃で平衡化させ、その後10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱し、結果は表11に詳細に示される。
【0103】
【表11】
【0104】
実施例15:C型結晶の熱重量分析(TGA)(図12
式Iで表される化合物のC型結晶の試料5.3570mgを秤量し、白金サンプルパンに入れ、試料を窒素ガス流(60mL/分)雰囲気で10℃/分の昇温速度で25℃から300℃まで加熱し、試料は24.0℃から58.0℃まで加熱した場合は0.62%の重量損失があり、58.0℃から162.3℃まで加熱した場合は2.5%の重量損失があった。試料を200℃に加熱し、C型結晶がA型結晶に変換され、結果は表12に詳細に示される。
【0105】
【表12】
【0106】
実施例16:C型結晶の動的水分吸着分析(DVS)(図13
式Iで表される化合物のC型結晶の試料適量を秤量し、温度25℃、湿度0%RHの条件下で60分間乾燥させた後、湿度が0%RH~95%RHに変化した時の試料の吸湿特性、及び湿度が95%RH~0%RHに変化した時の試料の除湿特性を測定した。各ステップの湿度変化は5%RHであり、平衡基準は5分以内の重量変化率が0.01%/分未満であり、最長平衡時間は2時間であり、結果は、0%RHから95%RHまでの試料重量増加が4.767%であり、試料が吸湿性を有していることを示した。
【0107】
実施例17:A型結晶、B型結晶、C型結晶の平衡溶解度及び溶解速度の比較
A型結晶、B型結晶、C型結晶の純水と生体内の生理的関連媒体での平衡溶解度と溶解速度に違いがあるかどうかをさらに調べるため、4つの結晶形試料の平衡溶解度と溶解速度をそれぞれ水、模擬胃液(SGF)、模擬空腹時腸液(FaSSIF)及び模擬摂食腸液(FeSSIF)でテストした。試料A、B、Cの約20mgを4mLのガラスバイアルに秤量し、それぞれに培地3mLを順次に加え、15秒間超音波処理を行い、37℃、回転速度200rpmのシェーカーに入れ、0.5h、2h、24hで約1mLの懸濁液をとり、遠心分離し、回転速度が12000rpmであり、時間が5分間であり、必要に応じて上澄み液(希釈液:メタノール/水=9/1)を適切な倍率で希釈した後、又はHPLCで直接濃度を測定することにより各サンプルの溶解度の値を算出した。各時点での溶解度試験の結果は表13に示される通りである。
【0108】
【表13】
【0109】
実施例18:A型結晶、B型結晶、C型結晶の固体安定性実験
A型結晶、B型結晶、C型結晶の試料をそれぞれ20mLの無色透明ガラスバイアルに秤量し、試料バイアルをそれぞれ対応する影響因子及び加速条件下に置き(湿度条件下のバイアルは錫箔で密閉し、小さな穴を入れて置き、他の試料はキャップをしっかりと閉じて置いた)、それぞれ1週間と2週間置いた後に取り出し、HPLCにより様々な条件下で試料の含有量と関連物質を検出し、上記と同じ方法に従って、それぞれ試料を秤量し、対応する影響因子と加速条件下に置き、2週間置いた後取り出し、各試料の外観とXRPD特性を観察して、各結晶形の物理的安定性を考察し、試験方法は表14及び表15に詳細に示され、同時に、式Iで表される化合物のA型結晶、B型結晶、C型結晶の試料を2部ずつ20mLの無色透明ガラスバイアルに正確に秤量し、しっかりと蓋をし、-20℃の冷蔵庫に入れて保存し、2週間目でHPLC分析用の標準試料として取り出し、試験結果は表16及び表17に詳細に示される。
【0110】
【表14】
【0111】
【表15】
【0112】
【表16】
【0113】
【表17】
【0114】
結論:
高温、高湿、光照射、加速の4つの条件に2週間置いたA型結晶、B型結晶、C型結晶の試料の外観は、初期試料と同じで、いずれもオフホワイトであり、A型結晶及びC型結晶は初期試料と比較して顕著な差がなく、物理的安定性が良かったが、B型結晶は高温(60℃)でトランスクリスタル化が見られ、物理的安定性は劣った。
【0115】
A型結晶、B型結晶、C型結晶は光照射の影響を大きく受け、2週間後の総関連物質量はそれぞれ11.18%、1.28%及び1.56%増加し、光照射がA型結晶、B型結晶、C型結晶に顕著な影響を与えることを示し、光を避けて保管するように注意する必要がある。
【0116】
比較例1:V型結晶の製造(懸濁液平衡法)
式Iで表される化合物の試料100mgを秤量してバイアルに入れ、20倍のメタノールをバイアルに加え、室温で14日間磁気攪拌してスラリー化させ、溶液を遠心分離し、固体を収集し、40℃で4時間乾燥させ、乾燥した後の固体を特性評価し、当該結晶形をV型結晶と定義し、V型結晶のXRPDパターンは図14に示される通りであり、V型結晶のDSCパターンは図15に示される通りであり、V型結晶を85℃に加熱すると、V型結晶がA型結晶に変換された。
【0117】
図16はV型結晶のTGA図である(図16のように、試料は24.8℃から82.7℃に加熱すると、3.690%の重量損失があることを示す)。
比較例2:VII型結晶の製造(溶液加熱-徐冷法)
式Iで表される化合物の試料100mgを秤量してガラスバイアルに入れ、100倍体積の酢酸エチル(EA)と20倍体積のメタノール(MeOH)をバイアルに加え、試料を磁気加熱スターラーに置き、50℃の水浴温度で磁気攪拌により溶解させ、濾過し、ろ液を6℃/hの速度で室温までゆっくりと冷却させ、一晩後、減圧ろ過し、固体を70℃で4時間乾燥させ、乾燥した固体を特性評価し、当該結晶形をVII型結晶と定義し、VII型結晶のXRPDパターンは図17に示される通りであり、試料を200℃に加熱し、室温に冷却させてXRPDを特性評価した結果、VII型結晶がA型結晶に変換された。
【0118】
図18は、VII型結晶のDSC図である(図18のように、DSC熱流曲線は、その初期融点が241.9℃であり、200℃より前に複数の吸発熱ピークがあることを示す)。
図19は、VII型結晶のTGA図である(図19のように、試料は26.2℃から112℃まで0.75%の重量損失があり、112℃から200℃まで1.69%の重量損失があることを示す)。
【0119】
比較例3:VIII型結晶の製造(懸濁液平衡法)
式Iで表される化合物の試料100mgを秤量してバイアルに入れ、30倍のアセトニトリル(ACN)(試料の質量(g)×体積倍数)をバイアルに加え、室温で2日間磁気攪拌してスラリー化させ、減圧ろ過し、固体を収集して40℃で4時間乾燥させた後、乾燥した固体を特性評価し、当該結晶形をVIII型結晶と定義し、VIII型結晶のXRPD図は図20に示される通りである。試料を180℃に加熱すると、VIII型結晶試料がA型結晶に変換された。
【0120】
図21は、VIII型結晶のDSC図である(図21のように、DSC熱流曲線は、その初期融点が239.0℃であり、100℃より前に広い吸熱ピークがあることを示す)。
図22は、VIII型結晶のTGA図である(図22のように、試料は26.1℃から85.2℃まで3.409%の重量損失があることを示す)。
【0121】
比較例4:IX型結晶の製造(溶液加熱-徐冷法)
式Iで表される化合物の試料100mgを秤量してガラスバイアルに入れ、30倍体積のN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)をバイアルに加え、試料を磁気加熱スターラーに置き、50℃の水浴温度で磁気攪拌により溶解させ、濾過し、ろ液を6℃/hの速度で室温までゆっくり冷却させ、減圧ろ過し、固体を70℃で4時間乾燥させ、乾燥した固体を特性評価し、当該結晶形をIXと定義し、IX型結晶のXRPD図は図23に示される通りである。試料を180℃に加熱し、IX型結晶試料がA型結晶に変換された。
【0122】
図24は、IX型結晶のDSC図である(図24のように、DSC熱流曲線は、その初期融点が241.8℃であり、200℃より前に複数の吸発熱ピークがあることを示す)。
図25は、IX型結晶のTGA図である(図25のように、試料は27.4℃から95℃までわずか0.035%の重量損失があり、95℃から200℃まで0.841%の重量損失があることを示す)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
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【国際調査報告】