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2023-518427ハプテン化コロナウイルススパイクタンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】ハプテン化コロナウイルススパイクタンパク質
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/215 20060101AFI20230424BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230424BHJP
   C07K 14/165 20060101ALN20230424BHJP
【FI】
A61K39/215
A61P31/14
A61P37/04
C07K14/165 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556083
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 US2021023310
(87)【国際公開番号】W WO2021188991
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】62/992,722
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521121709
【氏名又は名称】バイオヴァクシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベード,ディヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】パッシン,ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC21
4C085DD51
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA01
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA31
(57)【要約】
本開示は、コロナウイルス由来のハプテン化スパイクタンパク質(Sタンパク質)又はその断片、及び少なくとも1つの薬学的に許容できる担体を含む免疫原性組成物であって、コロナウイルスが重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を含む、免疫原性組成物を提供する。対象をコロナウイルス感染に対して免疫化するために、コロナウイルス由来のハプテン化Sタンパク質を使用する方法がさらに開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス由来のハプテン化スパイクタンパク質(Sタンパク質)又はその断片、及び少なくとも1つの薬学的に許容できる担体を含む免疫原性組成物。
【請求項2】
前記Sタンパク質が、SARS-CoV-2由来である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記その断片が、前記Sタンパク質のS1ドメインを含む、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記Sタンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
ハプテン化Sタンパク質が、60~240μgの量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記ハプテンが、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記ハプテンが、トリニトロクロロベンゼン(TNCB)、2,4-ジフルオロニトロベンゼン(DNFB)、N-ヨードアセチル-N’-(5-スルホニック-1-ナフチル)エチレンジアミン(AED)、スルファニル酸(SA)、トリニトロフェノール(TNP)、及び2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
アジュバントをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記アジュバントが、水中油型エマルジョンである、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記油が、スクアレン油である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記アジュバントが、M59である、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
ヒト対象をコロナウイルスに対して免疫化する方法であって、前記ヒト対象に請求項1~11のいずれか一項に記載の免疫原性組成物を投与することを含む方法。
【請求項13】
前記免疫原性組成物が、週1回、少なくとも3週間投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
初回注射の約12か月後、前記免疫原性組成物の少なくとも1回のブースター注射を投与することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫原性組成物が、前記ヒト対象においてコロナウイルス中和抗体応答が検出されるまで、投与される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒト対象が、Covid-19を患っている、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ヒト対象が、Covid-19を患っていない、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[001] 本明細書に記載の本発明は、一般に、コロナウイルス由来のハプテン化スパイクタンパク質(Sタンパク質)、及びヒト対象をハプテン化スパイクタンパク質で免疫化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[002] コロナウイルスは、動物及びヒトにおいて疾患を引き起こすプラス鎖RNAウイルスである。新規動物由来感染症コロナウイルスの大流行は、2019年に中国武漢で開始した。このパンデミック疾患は、現在、新型コロナウイルス疾患2019(Covid-19)として定義されており、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって長期間続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[003] かかる新しい疾患により、Covid-19の病原体の伝播の方法でさえも含む多くの未解決の課題が残っている。SARS-CoV-2ウイルスの伝播についての主要なリスクは、液滴曝露及び密接な個人的接触によるようであり、したがって、このコロナウイルスの伝播を低下させる戦略は、他の呼吸器感染症を制限するために使用されるものと同等であるか又はそれを模倣すべきである、すなわち、直接接触を低下させ、液滴への曝露に対する防護的予防策を使用すべきである。しかし、潜伏期間が7~14日続き、非特異的な初期症状がインフルエンザなどの他の呼吸器感染症のものと類似しているので、Covid-19の広がりについての最大のリスクは、検出されないケースである。そのため、ヒトにおいて見られるもの(例えば、Covid-19をもたらすSARS-CoV-2感染)などのコロナウイルス感染を治療又は予防する代替の予防的戦略又は療法についての必要性が存在する。例えば、防御免疫応答を誘発することができるコロナウイルス感染に対する免疫原性組成物及びワクチン組成物を同定及び開発することについての必要性が存在する。さらに、治療有効性を最大化するために、感染部位に直接、又はそれに近接して送達することができる免疫原性組成物及びワクチン製剤が必要とされている。
【0004】
[004] ハプテン化タンパク質は、抗体の力価及び親和性の測定のために、定義されたエピトープを提供するために広く使用されている。いくつかのタンパク質-ハプテン化が、B細胞認識のためのエピトープを作り出しているにすぎないと考えられ、他は、特定のハプテン化タンパク質が、ネイティブタンパク質がかかる応答を誘導することができない条件下で適応免疫応答を誘導することができることを示しており、したがって、ハプテン化は、抗原受容体認識のためのエピトープを単に作り出しているのにとどまらない(Palm, Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2000)106:4782)。本発明は、かかる必要性を満たし、他の関連する利点をさらに提供する。本発明は、コロナウイルスのためのハプテン化免疫原を提供し、ヒト対象における防御免疫応答を最大化するために、感染部位に直接、又はそれに近接して送達することができる免疫原性組成物及びワクチン製剤についての必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
[005] 本明細書で開示される実施形態は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を含むコロナウイルス由来のハプテン化Sタンパク質を含む免疫原性組成物又はワクチン、及びヒト対象を免疫原性組成物又はワクチンで免疫化する方法である。
【0006】
図面の簡単な説明
[006] 前述の概要とともに本発明の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて解釈されるとき、より十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[007]CF-1マウスにおけるBVX-0320の皮下投与後に応答した抗スパイクタンパク質抗体を示す図である。
【0008】
図2】[008]BVX-0320に対するT細胞(ガンマインターフェロン)応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
[009] 特に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての科学技術用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されている場合と同じ意味を有する。本明細書で参照されるすべての特許及び刊行物は、それら全体が参照により援用される。
【0010】
定義
[0010] 「免疫原性組成物」又は「ワクチン」は、本明細書で用いられるとき、適応(特異的)免疫応答を、プライミング、強化、活性化、誘発、刺激、増大、ブースト、増幅、又は増強することができる、任意の1つ以上の化合物又は薬剤又は免疫原を指し、細胞性(T細胞)若しくは液性(B細胞)、又はそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、適応免疫応答は防御的であり、コロナウイルスの中和(ウイルス感染性を減少させるか又は除去する)を含み得る。免疫原の代表的な例は、ウイルス抗原(例えば、1つ以上のコロナウイルス抗原)である。本説明において、特に指示されない限り、任意の濃度の範囲、百分率の範囲、比の範囲、又は整数の範囲は、列挙された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合にはそれらの分数(例えば、整数の10分の1及び100分の1など)を含むことが理解される。
【0011】
[0011] 本明細書で用いられるとき、「約」又は「から本質的になる」は、±10%を意味する。本明細書で用いられるとき、「a」又は「an」などの不定冠詞の使用は、単数及び複数の名詞又は名詞句を指すことが理解されるべきである(すなわち、列挙された要素又は構成要素の「1つ以上」又は「少なくとも1つ」を意味する)。選択肢の使用(例えば、「又は」)は、選択肢のいずれか一方、両方又はそれらの任意の組み合わせを意味することが理解されるべきである。さらに、本明細書に記載の配列、構造及び置換の様々な組み合わせに由来する個々の化合物又は化合物の群が、各化合物又は化合物の群が個々に示された場合と同じ程度に本出願に開示されていることが理解されるべきである。したがって、特定の配列、構造又は置換の選択は、本発明の範囲内である。
【0012】
[0012] 用語「有効量」又は「治療有効量」は、限定はされないが、疾患治療を含む意図される適用をもたらすのに十分である、本明細書に記載のような化合物又は化合物の組み合わせの量を指す。治療有効量は、意図される適用(インビトロ又はインビボ)、又は治療されている対象及び病状(例えば、対象の体重、年齢及び性別)、病状の重症度、投与様式などに応じて変化してもよく、当業者によって容易に測定され得る。該用語は、標的細胞における特定の応答(例えば、血小板粘着及び/又は細胞遊走の減少)を誘導することになる用量にも適用される。具体的用量は、選択される特定の化合物、従うべき投与計画、該化合物が他の化合物と組み合わせて投与されるか否か、投与のタイミング、それが投与される対象組織、及び化合物が運搬される場合の物理的送達系に応じて変化することになる。
【0013】
[0013] 用語「免疫原性」は、コロナウイルスに対する免疫応答を惹起するSタンパク質免疫原の能力を意味する。ハプテン化Sタンパク質調製物が免疫原性であるか否かは、例えばDTHアッセイ又は実験動物モデルにおけるインビボアッセイによって試験され得る。
【0014】
[0014] 「治療効果」は、この用語が本明細書で用いられるとき、治療的利益及び/又は予防的利益を包含する。予防効果は、コロナウイルス感染の出現を遅延させるか若しくは除去すること、コロナウイルス感染の症状の発症を遅延させるか若しくは除去すること、コロナウイルス感染の進行を緩徐化、停止、若しくは逆転させること、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0015】
[0015] 「薬学的に許容できる担体」又は「薬学的に許容できる賦形剤」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、並びに不活性成分を含むことが意図される。活性医薬成分のためのかかる薬学的に許容できる担体又は薬学的に許容できる賦形剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の通常の薬学的に許容できる担体又は薬学的に許容できる賦形剤が活性医薬成分に適合しない限りは、本発明の治療組成物におけるその使用が検討される。追加的な活性医薬成分、例えば他の薬剤もまた、記載される組成物及び方法に組み込むことが可能である。
【0016】
[0016] 例えば、分子量又は化学式などの物理的又は化学的特性を記載するための範囲が本明細書で用いられるとき、そこでの範囲及び具体的な実施形態のすべての組み合わせ及び部分的組み合わせは、含めることが意図される。数又は数値範囲を参照するときの用語「約」の使用は、参照される数又は数値範囲が実験的変動性以内(又は統計学的実験誤差以内)の近似であり、ひいては数又は数値範囲が変化することがあることを意味する。変動は、典型的には指定の数又は数値範囲の0%~15%、好ましくは0%~10%、より好ましくは0%~5%である。用語「含む(comprising)」(及び「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」又は「有する」又は「含む(including)」などのその関連用語)は、例えば、説明された特徴「からなる」又は「から本質的になる」物質の任意の組成物、方法又はプロセスの一実施形態などの実施形態を含む。
【0017】
[0017] 本明細書で用いられるとき、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。哺乳類では、5つの抗体アイソタイプ:IgA、IgD、IgG、IgM及びIgEが存在する。ヒトでは、IgGアイソタイプの4つのサブクラス:IgGl、IgG2、IgG3及びIgG4、並びにIgAアイソタイプの2つのサブクラス:IgA1及びIgA2が存在する。
【0018】
[0018] 用語「配列同一性」及び「配列パーセント同一性」は、2以上の核酸又はポリペプチドの文脈で、配列同一性の一部としての任意の保存的アミノ酸置換を考慮せずに、最大対応について(必要に応じてギャップを導入して)比較及び整列されるとき、同じであるか又は同じであるヌクレオチド若しくはアミノ酸残基の特定の百分率を有する2以上の配列又は部分配列を指す。パーセント同一性は、配列比較ソフトウェア若しくはアルゴリズムを用いて、又は外観検査により、評価され得る。アミノ酸又はヌクレオチド配列の整列を得るために使用可能である様々なアルゴリズム及びソフトウェアは、当該技術分野で公知である。パーセント配列同一性を判定するのに適したプログラムとして、例えば、米国政府の国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)BLASTウェブサイトから入手可能なプログラムのBLASTスイートが挙げられる。2つの配列間の比較は、BLASTN又はBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して実施され得る。BLASTNは、核酸配列を比較するために使用される一方で、BLASTPは、アミノ酸配列を比較するために使用される。DNASTARから入手可能であるALIGN、ALIGN-2(Genentech、South San Francisco、California)又はMegAlignは、配列を整列するために使用可能である、追加的な公的に利用可能なソフトウェアプログラムである。当業者は、特定の整列化ソフトウェアにより、最大整列化に適したパラメータを決定することができる。特定の実施形態では、整列化ソフトウェアのデフォルトパラメータが使用される。
【0019】
[0019] 疑いを回避するため、本明細書では、本発明の特定の態様、実施形態又は実施例と併記される特定の特徴(例えば、整数、特性、値、使用、疾患、処方、化合物又は基)が、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態又は実施例に、それらに不適合でない限り、適用可能と理解されるべきであることが意図される。それ故、かかる特徴は、本明細書で定義される定義、特許請求の範囲又は実施形態のいずれかと組み合わせて適切である場合、使用されてもよい。(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)本明細書で開示される特徴のすべて、及び/又は開示される通りの任意の方法若しくはプロセスのステップのすべては、特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である場合の組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせてもよい。本発明は、いかなる開示される実施形態のいかなる詳細に限定されない。本発明は、(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)本明細書で開示される特徴の、任意の新規なもの、若しくは新規な組み合わせ、又は開示される通りの任意の方法若しくはプロセスのステップの、任意の新規なもの、若しくは任意の新規な組み合わせに拡張される。
【0020】
ハプテン化Sタンパク質を調製する方法
[0020] 単一のハプテン試薬を使用しての自己ワクチンの調製は、当業者に公知である。ある実施形態では、本発明は、ハプテン化Sタンパク質コロナウイルスワクチンを提供し、かかるワクチンは、Sタンパク質又はその断片を組換え的に産生させること、及びハプテン化試薬でハプテン化することを含んで調製され得る。
【0021】
[0021] ハプテン化するステップは、組換えSタンパク質をDNPで、ハプテン化試薬2,4-ジフルオロニトロベンゼン(DNFB)との30分インキュベーションにより修飾することで実施されてもよい。ハプテン化Sタンパク質は、HBSSで洗浄される。好ましいハプテン化試薬は、アミノ酸のε-アミノ基を標的にしてもよい。
【0022】
[0022] いくつかの実施形態では、ハプテン化試薬は、トリニトロクロロベンゼン(TNCB)、2,4-ジフルオロニトロベンゼン(DNFB)、N-ヨードアセチル-N’-(5-スルホニック-1-ナフチル)エチレンジアミン(AED)、スルファニル酸(SA)、トリニトロフェノール(TNP)、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0023】
[0023] ハプテン化Sタンパク質免疫原(及び対応する免疫原性エピトープ)並びにその断片及び変異体は、合成的に又は組換え的に生成され得る。コロナウイルスに対する免疫応答を誘導するエピトープを含有するコロナウイルスSタンパク質断片は、自動化された手順による合成を含む標準的な化学方法によって合成されてもよい。一般に、免疫原性ペプチドは、カップリング剤としてHATUを用いる標準的な固相Fmoc保護戦略に基づいて合成される。免疫原性ペプチドは、適した捕捉剤を含有するトリフルオロ酢酸で固相の樹脂から切断され、これは、側鎖官能基も脱保護する。粗免疫原性ペプチドは、分取逆相クロマトグラフィーを使用してさらに精製されてもよい。分配クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル電気泳動又はイオン交換クロマトグラフィーなどの他の精製方法が使用されてもよい。当該技術分野で公知の他の合成技術、例えばtBoc保護戦略、異なるカップリング試薬の使用などを用いて、類似の免疫原性ペプチドを生成してもよい。さらに、D-アミノ酸又はL-アミノ酸及びそれらの組み合わせを含む任意の天然に存在するアミノ酸又はその誘導体が使用されてもよい。特定の実施形態では、合成Sタンパク質免疫原は、配列番号2と同一であるか又は配列番号2と少なくとも85%同一である(少なくとも90%若しくは95%、又は85%~100%内の任意のパーセントを含む)アミノ酸配列を有する。
【0024】
[0024] 本明細書に記載の通り、ハプテン化Sタンパク質免疫原は組換えであってもよく、所望されるSタンパク質免疫原は、核酸発現構築物中で発現制御配列(例えば、プロモーター)に作動可能に連結されたポリヌクレオチドから個々に又は組み合わせて発現される。特定の実施形態では、組換えSタンパク質抗原は、配列番号2と同一であるか又は配列番号2と少なくとも85%同一である(少なくとも90%若しくは95%、又は80%~100%内の任意のパーセントを含む)アミノ酸配列を含むことになる。別の実施形態では、組換えSタンパク質免疫原は、配列番号2に示されるようなアミノ酸配列からなる。他の実施形態では、組換えSタンパク質免疫原及びその変異体は、配列番号2の断片である。いくつかの実施形態では、変異体は、異なるSARS-CoV-2株で見出されるSARS-CoV-2スパイクタンパク質変異体である。これらの異なる株由来のスパイクタンパク質の例示的な変異体は表1に示される。変異体として、限定はされないが、B.1.1.7株、B.1.351株、P.l株、CAL 20株由来のスパイクタンパク質又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0025】
[0025]
【0026】
【表1】
【0027】
[0026] 一実施形態では、Sタンパク質はハプテン化される。本発明の目的のために、単独で投与されたときに免疫応答を誘導することができない事実上任意の小型タンパク質又は他の小分子は、ハプテンとして機能し得る。完全に異なる化学構造の各種のハプテン、例えばTNP(Kempkes, J. Immunol.(1991)147:2467);ホスホリルコリン(Jang, Eur. J. Immunol.(1991)21:1303);ニッケル(Pistoor, J. Invest.Dermatol.(1995)105:92)及びヒ酸塩(Nalefski, J. Immunol.(1993)150:3806)は、類似の種類の免疫応答を誘導することが示されている。免疫応答を誘発するハプテンの細胞へのコンジュゲーションは、好ましくは、リジンのε-アミノ基又は-COOH基を介したコンジュゲーションによって達成され得る。このハプテンの群として、多くの化学的に多様な化合物:ジニトロフェニル、トリニトロフェニル、N-ヨードアセチル-N’-(5-スルホニック1-ナフチル)エチレンジアミン、トリニトロベンゼンスルホン酸、ジニトロベンゼンスルホン酸、フルオレセインイソチオシアネート、ヒ酸ベンゼンイソチオシアネート及びジニトロベンゼン-S-マスタードが挙げられる(Nahas, Cellular Immunol.(1980)54:241)。本開示により用意されたら、当業者は、本発明における使用のためにハプテンを選択することが可能であろう。
【0028】
[0027] 一般に、ハプテンは、抗体と相互作用する基である「認識基」を含む。認識基は、ハプテン反応性基と不可逆的に会合する。したがって、ハプテン反応性基が標的分子上の官能基にコンジュゲートされると、ハプテン認識基は抗体と結合するために利用可能になる。異なるハプテン認識基の例として、限定はされないが、ジニトロフェニル、トリニトロフェニル、フルオレセイン、他の芳香族化合物、ホスホリルコリン、ペプチド、終末糖化産物(AGE)、炭水化物などが挙げられる。
【0029】
[0028] ハプテンは、タンパク質又はポリペプチドのアミノ酸側鎖上の置換基へのコンジュゲーションのための官能基も含む。ハプテンにコンジュゲートされ得るアミノ酸側鎖基として、例えば、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸の遊離カルボン酸基;リシンのε-アミノ基;システインのチオール部分;セリン若しくはチロシンのヒドロキシル基;ヒスチジンのイミダゾール部分;又はトリプトファン、チロシン若しくはフェニルアラニンのアリール基が挙げられる。特定のアミノ酸側鎖と反応できるハプテン官能基は次のように記載される。
【0030】
[0029] 第1級アミンと反応性の官能基。アミノ酸側鎖上に存在する第1級アミンと共有結合を形成するハプテン反応性基として、限定はされないが、酸塩化物、無水物、反応性エステル、α,β-不飽和ケトン、イミドエステル及びハロニトロベンゼンが挙げられる。第1級アミンなどの求核基と反応する能力を有する様々な反応性エステルが市販されている。カルボン酸と反応性の官能基。EDCなどのカルボジイミドの存在下でカルボン酸は活性化され得、第1級アミン及び第2級アミンを含む様々な求核剤と相互作用することが可能になる。安定なエステルを形成するカルボン酸のアルキル化は、硫黄若しくはナイトロジェンマスタード、又はアルキル若しくはアリールアジリジン部分のいずれかを含有するハプテンとの相互作用によって達成され得る。
【0031】
[0030] 芳香族基と反応性の官能基。特定のアミノ酸と会合する芳香族部分の相互作用は、タンパク質又はペプチドの存在下でのアリールジアゾニウム化合物の光活性化によって達成され得る。したがって、ヒスチジン、トリプトファン、チロシン及びフェニルアラニン、特にヒスチジン及びトリプトファンのアリール側鎖の修飾は、かかる反応性官能基の使用によって達成され得る。
【0032】
[0031] スルフヒドリル基と反応性の官能基。アミノ酸の側鎖上に存在するスルフヒドリル基とカップリングされ得るいくつかの反応性基がある。マレイミドなどのα,β-不飽和ケトン又はエステル部分を含有するハプテンは、スルフヒドリル基だけでなくアミノ基と相互作用し得る反応性官能基を提供する。さらに、2-ピリジルジチオ基又は5’,5-ジチオ-ビス-(2-ニトロ安息香酸)基などの反応性ジスルフィド基も利用可能である。反応性ジスルフィド結合を含有する試薬のいくつかの例として、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジル-ジチオ)プロピオネート(Carlsson, Biochem J.(1978)173:723-737)、S-4-スクシンイミジルオキシカルボニル-アルファ-メチルベンジル-チオ硫酸ナトリウム及び4-スクシンイミジルオキシカルボニル-アルファ-メチル-(2-ピリジルジチオ)-トルエンが挙げられる。チオール基と反応する二重結合を有する反応性基を含む試薬のいくつかの例として、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン(cyclohexahe)-1-カルボキシレート及びスクシンイミジルm-マレイミドベンゾエートが挙げられる。
【0033】
[0032] 他の機能性分子として、スクシンイミジル3-(マレイミド)-プロピオネート、スルホスクシンイミジル4-(p-マレイミド-フェニル)ブチレート、スルホ-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル-シクロヘキサン)-1-カルボキシレート、マレイミドベンゾリル-N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステルが挙げられる。
【0034】
[0033] 本発明の組成物において、任意のハプテン又は異なるハプテンの組み合わせを使用することができる。例えば、一実施形態では、同じハプテン認識基が、Sタンパク質上の異なる官能基を通して異なるアミノ酸にカップリングされる。例えば、試薬のジニトロベンゼンスルホン酸、ジニトロフェニルジアゾニウム及びジニトロベンゼンSマスタード、ジニトロフェニルハプテンのすべての形態は、それぞれ、アミノ基、芳香族基及びカルボン酸基にカップリングした。同様に、アルソン酸ハプテンは、アルソン酸ベンゼンイソチオシアネートをアミノ基と、又はアゾベンゼンアルソネートを芳香族基と反応させることによってカップリングされ得る。
【0035】
免疫原性組成物及びワクチン
[0034] コロナウイルス感染を治療及び/又は予防するために有用な本明細書に記載のような免疫原性組成物又はワクチンは、Sタンパク質、その断片及び変異体などの免疫原性のハプテン化コロナウイルスポリペプチドを含み、他のペプチド若しくはポリペプチド(例えば、疎水性アミノ酸配列若しくはヒスチジンタグ若しくは非Sタンパク質コロナウイルスポリペプチド、又はそれらの断片)へのコロナウイルス免疫原の融合、又は他の修飾(例えば、グリコシル化)も含む。特定の実施形態では、免疫原性Sポリペプチドは、コロナウイルス感染に対して防御免疫応答を誘発する(例えば、中和抗体の産生を誘発する及び/又は細胞媒介免疫応答を刺激する)ことができるエピトープを有するSタンパク質の任意の部分を含み得る。本明細書に記載のような免疫原性ポリペプチドは、直鎖状形態で配列、組み合わせ又は融合されてもよく、各免疫原は反復されてもよく又は反復されなくてもよく、反復は、1回又は複数回起こってもよく、免疫原性S又は他のコロナウイルスポリペプチド免疫原の直鎖状配列のN末端、C末端又は内部に位置してもよい。さらに、複数の異なるコロナウイルス免疫原性ポリペプチド(例えば、多数のコロナウイルス種由来の他のSタンパク質、Nタンパク質、Mタンパク質又は他のコロナウイルスポリペプチド、及びそれらの変異体又は断片)が選択され、カクテル組成物に混合又は組み合わせて、有害な若しくはそうでなければ望ましくない関連する免疫応答又は副作用なく、防御免疫応答を誘発するのに使用される多価ワクチンを提供することができる。また、融合タンパク質を含むハプテン化された合成又は組換え多価コロナウイルスポリペプチド免疫原を生成するための方法が本明細書に提供される。例えば、Sタンパク質免疫原をコードする核酸発現構築物を含有する宿主細胞は、培養されて、組換えSタンパク質免疫原又はその変異体(例えば、C末端膜貫通ドメインを欠く欠失変異体又はSポリペプチド断片)を産生し得る。また、Sタンパク質免疫原若しくはその変異体又はポリペプチドの組み合わせ(融合タンパク質を含む)を使用して、コロナウイルス感染を治療若しくは予防するための方法又は免疫応答を誘発するための方法が検討される。
【0036】
[0035] コロナウイルスは、少なくとも18個のウイルスタンパク質(例えば、非構造タンパク質(NSP)1~13、構造タンパク質E、M、N、S、及びRNA依存性RNAポリメラーゼ)をコードするプラス鎖の非分割型一本鎖RNAゲノムを有する。コロナウイルスは、3つの主要な表面糖タンパク質(S、E及びMと指定される)を有し、いくつかのコロナウイルスは、SARSウイルスにおいて見られない赤血球凝集素エステラーゼ(HE)と称される別の表面糖タンパク質を有し、N(ヌクレオカプシド)タンパク質は、通常ゲノムと会合し、抗原性であると報告されている塩基性リンタンパク質である(Holmes, Fields Virology, 34章, 2013)。コロナウイルスの主要な抗原であるS(スパイク)タンパク質は、2つのドメイン:受容体結合に関与すると考えられるSI、及びウイルスと標的細胞との間の膜融合を媒介すると考えられるS2を有する。
【0037】
[0036] S(スパイク)タンパク質は、非共有結合的に連結されたホモ三量体(オリゴマー)を形成してもよく、受容体結合及びウイルス感染性を媒介し得る。Sタンパク質のホモ三量体は、受容体結合ドメインの正しいネイティブコンフォメーションを提示するため、及び中和抗体応答を誘発するために必要である可能性がある。さらに、Sタンパク質の細胞内プロセシングは、大きな影響を与える翻訳後オリゴ糖修飾に関連する。N-グリカンモチーフ分析によって予想される翻訳後オリゴ糖修飾(グリコシル化)は、Sタンパク質がかかる修飾のために23もの部位を有することを示す。さらに、C末端システイン残基はまた、タンパク質フォールディング及びネイティブ(機能的)Sタンパク質コンフォメーションを保つことに関与し得る。いくつかのコロナウイルス(例えば、グループII及びIIIウイルスのいくつかの株)のSタンパク質は、ゴルジ装置におけるトリプシン様プロテアーゼによって、又はN末端SIポリペプチド及びC末端S2ポリペプチドを含有するポリペプチドに連結された細胞外に局在化する酵素によって、Sタンパク質の中心の近くでタンパク分解的にプロセシングされ得る。コロナウイルスのII型グループ及びグループIのウイルスのいくつかのメンバーは、そのようにプロセシングされない場合がある。コロナウイルスのようなSARS関連ウイルス性因子の特徴付けまで、コロナウイルスは、血清学的及び遺伝的特性に基づいて3つのグループに分けられ、そのグループは、当該技術分野及び本明細書でグループI、グループII及びグループIIIとも称されるグループ1、グループ2及びグループ3と称されていた(例えば、Holmes, Fields Virology、上掲; Stadler, Nat. Rev. Microbiol.(2003)209-18; Holmes, J Clin. Invest.(2003)111 :1605-609を参照されたい)。現在、コロナウイルスは、グループ1、グループ2、グループ3、及びSARS-CoV(SARS-CoV-2を含むSARS関連コロナウイルス)に細分化されている。
【0038】
[0037] 例示的なSタンパク質は、12アミノ酸のシグナル配列、アミノ酸12~672のSIドメイン及びアミノ酸673~1192のS2ドメインを有する1,255アミノ酸を有する(配列番号2である図1を参照されたい)。特定の実施形態では、1つ以上のエピトープを有し(すなわち、免疫原である)、且つ中和(例えば、IgA又はIgG抗体)又は細胞媒介免疫応答を誘発することができるコロナウイルスSポリペプチド及びその変異体は、コロナウイルス感染を治療又は予防するのに使用するための組成物中に含まれる。また、グリコシル化されておらず、中和免疫応答を誘発することができるSタンパク質免疫原(1つ以上の免疫原性エピトープを含有する)の同定が本明細書に記載される。一実施形態では、Sタンパク質免疫原は全長Sタンパク質の一部分又は断片である。例えば、配列番号2の417~560位のアミノ酸を含むSタンパク質免疫原の一部分は、N-グリカン置換部位を含有せず、親水性領域である。この領域は、細胞受容体結合に関わると考えられるSIドメインの領域にも対応する。したがって、配列番号2の417~560位のアミノ酸を含む断片又はその一部分は、免疫原性であり得、この配列内の1つ以上のエピトープに特異的な免疫応答は、標的細胞へのコロナウイルスの侵入を防止し得る。さらに、グリコシル化部位を含有しないSタンパク質のかかる免疫原性断片の同定は、断片が、哺乳類細胞と同じ様式で、タンパク質をグリコシル化できない細菌などの細胞中で作製及び産生され得るという利点を提供する。
【0039】
[0038] 本明細書に記載の通り、Sタンパク質免疫原は、それぞれ、全長Sタンパク質又は野生型Sタンパク質内に含有される少なくとも1つのエピトープを保持又は有し、コロナウイルスに対する、好ましくはSARSコロナウイルスに対する防御免疫応答を誘発する、Sタンパク質の断片又はSタンパク質変異体(本明細書に記載のような全長Sタンパク質又はS断片の変異体であり得る)を含む。Sタンパク質断片又はSタンパク質変異体は、全長若しくは野生型(天然)Sタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性若しくは機能(例えば、受容体結合又は細胞融合活性)を有するか、又は多数のSタンパク質特異的な生物学的活性若しくは機能を有する。例えば、Sタンパク質変異体は、免疫応答を誘導する(例えば、野生型又は全長Sポリペプチドに特異的に結合する抗体の産生を誘導する)エピトープを含有し得るか、又はSタンパク質受容体結合活性を有し得る。一実施形態では、Sタンパク質断片は、配列番号2の1~1200位に示されるアミノ酸セットを含む短縮型Sタンパク質である。欠失されるSタンパク質の部分は膜貫通領域である。Sタンパク質免疫原性断片は、Sタンパク質の前述のアミノ酸断片のより小さな部分又は断片も含む。免疫応答を刺激、誘導又は誘発するエピトープを含むSタンパク質断片は、配列番号2の8アミノ酸~150アミノ酸(例えば、8、10、12、15、18、20、25、30、35、40、50以上のアミノ酸)のアミノ酸の任意の数の範囲の連続アミノ酸の配列を含み得る。関連する実施形態では、コロナウイルスSポリペプチド変異体は、配列番号2に示されるような全長Sタンパク質(SARS-CoV-2株由来;配列番号1は配列番号2のアミノ酸配列をコードする核酸配列である)のアミノ酸配列と少なくとも85%~100%のアミノ酸配列同一性(すなわち、少なくとも85%、90%、95%又は99%の配列同一性)を有する。かかるSタンパク質変異体及び断片は、少なくとも1つのSタンパク質特異的生物学的活性又は機能、例えば(1)防御免疫応答(すなわち、防御免疫応答を誘導又は誘発するエピトープを含有するSポリペプチド変異体)、例えばSARS-CoV-2などのコロナウイルスに対する中和応答及び/又は細胞媒介免疫応答を誘発する能力;(2)受容体結合を介してウイルス感染を媒介する能力;ならびに(3)ビリオンと宿主細胞との間の膜融合を媒介する能力を保持する。全長SARSコロナウイルスS(スパイク)ポリペプチド配列のさらなる例は当該技術分野において利用可能である。
【0040】
[0039] 本明細書に記載の通り、本明細書に記載のSタンパク質免疫原、その断片及び変異体は、液性応答及び/又は細胞媒介免疫応答であり得る免疫応答、好ましくは防御免疫応答を誘発又は誘導するハプテン化エピトープを含有する。防御免疫応答は、以下の少なくとも1つによって顕在化され得る:コロナウイルスによる宿主の感染を予防すること;感染を修飾すること又は制限すること;感染からの宿主の回復を支援すること、改善すること、増強すること又は刺激すること;及びコロナウイルスによるその後の感染を予防又は制限する免疫学的記憶を生成すること。液性応答は、感染性を中和し、ウイルス及び/又は感染細胞を溶解し、宿主細胞によるウイルスの除去を促進し(例えば、食作用を促進する)、並びにウイルス抗原物質に結合し、その除去を促進する、抗体の産生を含み得る。液性応答は、特異的粘膜IgA応答を誘発すること又は誘導することを含む粘膜の応答も含み得る。
【0041】
[0040] 本明細書に記載のハプテン化Sタンパク質、断片又は変異体による対象又は宿主(ヒト又は非ヒト動物)における免疫応答の誘導は、本明細書に記載の方法及び当該技術分野で通常実施される方法によって決定及び特徴付けられ得る。これらの方法として、インビボアッセイ、例えば動物免疫化研究(例えば、ウサギ、マウス又はアカゲザルモデルを使用する)、及びいくつかのインビトロアッセイのいずれか1つ、例えば、ウエスタン免疫ブロット分析、ELISA、免疫沈降、ラジオイムノアッセイなど、及びそれらの組み合わせを含む抗体の検出及び分析のための免疫化学法が挙げられる。例として、動物モデルは、動物において防御的である免疫応答を誘発及び誘導するコロナウイルス抗原の能力を決定するために使用され得、特定のモデルに関連するエンドポイントによって決定され得る。
【0042】
[0041] 免疫応答を分析する及び特徴付けるために使用され得る他の方法及び技術として、ハプテン化Sタンパク質免疫原又はその変異体が、免疫応答、特に中和免疫応答を誘発することができるか否かを評価する中和アッセイ(例えば、プラーク低下アッセイ又は細胞変性効果(CPE)を測定するアッセイ又は当業者によって実施される任意の他の中和アッセイ)が挙げられる。
【0043】
[0042] ハプテン化Sタンパク質免疫原(全長タンパク質、その変異体、断片及び融合タンパク質)は、単離された形態で提供され、特定の実施形態では、均一に精製されている。本明細書で用いられるとき、用語「単離された」は、ポリペプチドがその元の環境又は天然の環境から取り出されていることを意味する。
【0044】
[0043] ある実施形態では、本発明は、ヒト対象をコロナウイルスに対して免疫化する方法であって、SARS-CoV-2コロナウイルスを含むコロナウイルス由来のハプテン化Sタンパク質を有効量で投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、Sタンパク質は、SARS-CoV-2コロナウイルスに由来し、図1に示されるようなアミノ酸配列を有する。
【0045】
[0044] いくつかの実施形態では、ハプテン化Sタンパク質は、隔週で少なくとも8週間投与される。いくつかの実施形態では、ハプテン化Sタンパク質は、週1回、少なくとも6週間投与される。いくつかの実施形態では、該方法は、初回注射の約6か月後の、ハプテン化Sタンパク質の少なくとも1回のブースター注射をさらに含む。いくつかの実施形態では、ブースター注射は、6か月ごとに、又はヒト対象においてコロナウイルスに対する免疫原性応答が起こるまで、継続する。
【0046】
[0045] いくつかの実施形態では、有効量のハプテン化Sタンパク質は、遅延型過敏症の診断検査が陽性であるまで、又は中和抗体応答が検出される(例えば、抗Sタンパク質抗体がヒト対象の血液又は血清中で検出される)まで、隔週投与される。
【0047】
[0046] ある実施形態では、本発明は、SARS-CoV-2コロナウイルスを含むコロナウイルスに対するヒト対象における免疫原性応答を生成する方法であって、SARS-CoV-2コロナウイルスを含むコロナウイルス由来のハプテン化Sタンパク質を有効量で投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、Sタンパク質は、SARS-CoV-2コロナウイルスに由来し、図1に示されるようなアミノ酸配列(配列番号2)を有する。
【0048】
免疫化の方法
[0047] コロナウイルス感染を治療及び/又は予防するための方法であって、それを必要とする対象に、少なくとも1つのハプテン化コロナウイルスSタンパク質免疫原並びに薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤を含む組成物を投与することを含み、Sタンパク質免疫原が、配列番号2と同一であるか又は配列番号2と少なくとも85%同一である(少なくとも90%若しくは95%、又は85%~100%内の任意のパーセントを含む)アミノ酸配列を含み、ハプテン化Sタンパク質免疫原が、液性免疫応答(例えば、粘膜IgA、全身IgA、IgG、IgM応答を含む)及び/又は細胞媒介免疫応答である防御免疫応答を誘発するエピトープを有する、方法も本明細書に記載される。ハプテン化Sタンパク質免疫原性組成物は、投与されるハプテン化Sタンパク質免疫原又はその免疫原若しくは変異体に特異的な免疫応答を誘発するのに十分な用量で投与される。特定の実施形態では、予防又は治療される感染は、グループ1コロナウイルス、グループ2コロナウイルス、グループ3コロナウイルス、SARSグループコロナウイルス(SARS-CoV-2を含む)、又はそれらの組み合わせによって引き起こされ得る。
【0049】
[0048] コロナウイルス免疫原性組成物又は製剤による治療に適するヒト対象又は宿主は、Covid-19などの疾患を発生するリスクについての十分に確立された指標によって、又は既存のコロナウイルス疾患の十分に確立された特質によって同定され得る。例えば、感染の指標として、発熱、乾性咳、呼吸困難(息切れ)、頭痛、低酸素血症(低い血中酸素濃度)、リンパ球減少症(lymphopaenia)(リンパ球数の低下)、軽度に上昇したアミノトランスフェラーゼレベル(肝臓損傷を示す)、微生物陽性培養物、炎症などが挙げられる。本明細書に記載のようなハプテン化コロナウイルスSタンパク質免疫原ワクチンで治療又は予防され得る感染として、感染が原発性、二次性又は日和見性であるか否かに関わらず、コロナウイルスによって引き起こされるか又はそれに起因する感染が挙げられる。コロナウイルスの例として、SARS-CoV-2などのSARSコロナウイルスを含むこれらのウイルスの任意のサブタイプ、株、抗原性変異体などが挙げられる。例として、SARS感染は、高熱、筋肉痛、乾性咳及び非乾性咳、リンパ球減少症、並びに胸部X線における浸潤を含むインフルエンザ様の症状によって特徴付けられる。
【0050】
[0049] 本発明の1つ以上のハプテン化コロナウイルスSタンパク質免疫原を含有する免疫原性組成物は、ヒト又は非ヒト動物などの対象に組成物を投与するのを可能にする任意の形態であり得る。例えば、ハプテン化Sタンパク質免疫原は、液状の溶液として調製及び投与されてもよく、又は固体形態(例えば、凍結乾燥されたもの)として調製され、固体形態で投与されてもよく、若しくは投与で併用される溶液に再懸濁されてもよい。ハイブリッドポリペプチド組成物は、そこに含有される活性成分が、対象若しくは患者への組成物の投与の際に生物学的に利用可能であるように、又は持続放出を介して生物学的に利用可能であるように、調製又は製剤化される。対象又は患者に投与される組成物は、1つ以上の投薬量単位の形態を取り、例えば、錠剤は、単回投薬量単位であり得、エアロゾル形態の本発明の1つ以上の組成物の容器は、複数の投薬量単位を保持し得る。特定の好ましい実施形態では、本発明のハプテン化コロナウイルスSタンパク質免疫原を含む前述の免疫原性組成物又はワクチンのいずれかは、容器中、好ましくは無菌容器中にある。
【0051】
[0050] 一実施形態では、免疫原性組成物又はワクチンは経鼻的に投与され、ハプテン化コロナウイルスSタンパク質免疫原は、細胞、例えば鼻関連リンパ系組織に位置する細胞によって取り込まれ得る。投与の他の典型的な経路として、限定はされないが、非経口的、経皮/経粘膜、経鼻的及び吸入が挙げられる。用語「非経口的」は、本明細書で用いられるとき、消化管を迂回する投与経路を表し、動脈内、皮内、筋肉内、鼻腔内、眼内、腹腔内、静脈内、皮下、粘膜下及び膣内の注射又は注入技術を含む。用語「経皮/経粘膜」は、本明細書で用いられるとき、免疫原性組成物が局所を含む皮膚を通して又は皮膚を経由して投与される投与の経路である。用語「経鼻」及び「吸入」は、免疫原性組成物が肺内又は肺内外を含む呼吸樹に導入される投与の技術を包含する。一実施形態では、本発明の組成物は経鼻的に投与される。
【0052】
[0051] いくつかの実施形態では、免疫原性組成物又はワクチンは、用量あたり約60μg~約240μgのハプテン化コロナウイルスSタンパク質の量を含有する。いくつかの実施形態では、用量あたりに投与されるハプテン化コロナウイルスSタンパク質の量は、約1μg~約240μgである。いくつかの実施形態では、用量あたりに投与されるハプテン化Sタンパク質の量は、約1μgから、3μg、5μg、10μg、25μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、110μg、120μg、130μg、140μg、150μg、160μg、170μg、180μg、190μg、200μg、210μg、220μg、230μg、240μg以上である。いくつかの実施形態では、ハプテン化コロナウイルスSタンパク質の量は、投薬スケジュールに応じて変化する。例えば、初期用量は、ブースター免疫化用量を含む任意のその後の免疫化用量と同じ、それよりも低い又はそれよりも高くあり得る。任意のヒト対象に対する用量あたりの投与されるハプテン化Sタンパク質の量は、ヒト対象の年齢、体重及び健康状態に従って調整され得る。
【0053】
アジュバント
[0052] いくつかの実施形態では、本発明は、ワクチンアジュバントをさらに含む注射のためのハプテン化Sタンパク質を含む免疫原性組成物又はワクチンを提供する。
【0054】
[0053] 一実施形態では、コロナウイルス感染を治療及び/又は予防するための免疫原性組成物として有用である組成物は、免疫応答を誘発することができる本明細書に記載のような少なくとも1つのコロナウイルス抗原(免疫原)、及びプロトリン又はプロテオソームアジュバントを含有する(例えば、米国特許第5,726,292号を参照されたい)。当該技術分野において理解されるように、アジュバントは免疫原の免疫原性を増強又は改善し得(すなわち、免疫刺激剤として作用し得る)、多くの抗原は、アジュバントと組み合わされ、又は混ぜられ、又は混合されない限り、不十分な免疫原性である。生弱毒化ウイルス、死滅ウイルス、分割抗原調製物、サブユニット抗原、組換え又は合成ウイルス抗原、及びそれらの組み合わせなどの各種の起源を抗原の起源として使用することができる。サブユニットワクチン、組換えワクチン又は合成ワクチンの有効性を最大化するために、抗原は強力な免疫刺激剤又はアジュバントと組み合わされ得る。他の例示的なアジュバントとして、ミョウバン(水酸化アルミニウム、REHYDRAGEL);リン酸アルミニウム;ビロソーム;リピドAあり若しくはなしのリポソーム;又は他の水中油型エマルジョン型アジュバント、例えば、MF-59(Novartis)、また例えばナノエマルジョン(例えば、米国特許第5,716,637号を参照されたい)若しくはサブミクロンエマルジョン(例えば、米国特許第5,961,970号を参照されたい);並びにフロイント完全及び不完全アジュバントが挙げられる。
【0055】
[0054] プロテオソーム系アジュバント(すなわち、プロトリン又はプロテオソーム)は、本明細書に記載のような各種のコロナウイルス抗原(免疫原)の起源の任意の1つ以上を含み得るワクチン組成物又は製剤において使用することができる。プロテオソームは、典型的にはナイセリア種由来であるが、他のグラム陰性細菌に由来することができる外膜タンパク質(OMP)から構成される(例えば、米国特許第5,726,292号を参照されたい)。プロテオソームは、20~800nmの小胞又は小胞様OMPクラスターに自己集合する能力、及びタンパク質抗原、特に疎水性部分を有する抗原を非共有結合的に取り込み、配位し、会合し、又はそうでなければ協同する能力を有する。プロテオソームは、疎水性であり、ヒトでの使用のために安全であり、特定のウイルスのサイズと同等である。背景として、理論に縛られることを望まないが、プロテオソームをタンパク質抗原などの抗原と混合することにより、抗原とプロテオソームとの間の非共有結合的な会合又は配位を含む組成物を提供し、この会合又は配位形態は、界面活性剤が可溶化する場合に、例えば透析によって、選択的に除去されるか又は濃度が低下される。
【0056】
[0055] 1つ以上のOMPのモルテングロビューラー様OMP組成物を含む小胞状又は小胞様形態の外膜タンパク質構成要素をもたらす任意の調製方法は、プロテオソームの範囲内に含まれる。一実施形態では、プロテオソームは、ナイセリア種由来、及び髄膜炎菌由来である。特定の他の実施形態では、プロテオソームは、アジュバント及び抗原送達組成物であり得る。ある実施形態では、免疫原性組成物は、1つ以上のコロナウイルス抗原及びアジュバントを含み、アジュバントは、プロジュバント又はプロトインを含む。本明細書に記載の通り、コロナウイルス抗原は、ウイルス粒子、コロナウイルスに感染した細胞、又は組換え起源から単離されていてもよい。特定の実施形態では、免疫原性組成物は、リポサッカリドなどの第2の免疫刺激剤をさらに含む。すなわち、アジュバントは、追加的な免疫刺激剤を含むように調製されてもよい。例えば、プロジュバントはリポサッカリドと混合されて、OMP-LPSアジュバントを提供し得る。したがって、OMP-LPS(プロトリン)アジュバントは2つの構成要素から構成され得る。第1の構成要素は、髄膜炎菌などのグラム陰性細菌から調製されたプロテオソーム(すなわち、プロジュバント)の外膜タンパク質調製物を含み、第2の構成要素は、リポサッカリドの調製物を含む。第2の構成要素が、脂質、糖脂質、糖タンパク質、小分子など、及びそれらの組み合わせを含み得ることも検討される。本明細書に記載の通り、OMP-LPSアジュバントの2つの構成要素は、構成要素間の相互作用を最適化するために特定の初期比で組み合わされ(混ぜられ又は製剤化され)てもよく、免疫原性組成物の調製において使用するための構成要素の安定な会合及び製剤をもたらす。プロセスは、一般に、選択された界面活性剤溶液(例えば、Empigen BB、Triton x-100又はMega-10)中で構成要素を混合すること、及び次いで、透析によって又は透析濾過/限外濾過方法論によって界面活性剤の量を所定の好ましい濃度まで低下させながら、OMP及びLPS構成要素の複合体形成を生じさせることを含む。2つの構成要素の混合、共沈又は凍結乾燥は、適切で安定な会合、組成物又は製剤を生じさせるためにも使用され得る。一実施形態では、免疫原性組成物は、1つ以上のコロナウイルスハプテン化Sタンパク質抗原及びアジュバントを含み、アジュバントは、プロジュバント(すなわち、プロテオソーム)及びリポサッカリドを含む。
【0057】
[0056] ある実施形態では、総プロテオソームタンパク質の百分率としての重量での最終リポサッカリド含有量は、約1%~約500%の範囲内、また約10%~約200%の範囲内、又は約30%~約150%の範囲内であり得る。別の実施形態はアジュバントを含み、プロテオソームは髄膜炎菌から調製され、リポサッカリドはシゲラ・フレックスネリ又はプレジオモナス・シゲロイデスから調製され、最終リポサッカリド含有量は、重量で、総プロテオソームタンパク質の50%~150%である。別の実施形態では、プロテオソームは、総OMPの約0.5%から最大で約5%までの範囲の内因性リポオリゴサッカリド(LOS)含有量で調製される。別の実施形態では、プロテオソームは、約12%~約25%の範囲の内因性リポサッカリドを有し、さらに別の実施形態では、内因性リポサッカリドは、総OMPの約15%~約20%である。本開示はまた、プロテオソームの起源である同じグラム陰性細菌種由来であり得るか、又は異なる細菌種由来であり得る任意のグラム陰性細菌種に由来するリポサッカリドを含有する免疫原性組成物を提供する。特定の実施形態では、免疫原性組成物中のプロテオソーム又はプロトリンとコロナウイルス抗原の比は、1:1超、2:1超、3:1超又は4:1超である。他の実施形態では、免疫原性組成物中のプロテオソーム又はプロトリンとハプテン化コロナウイルスSタンパク質抗原の比は、約1:1、2:1、3:1又は4:1である。比は8:1以上であり得る。他の実施形態では、免疫原性組成物中のプロテオソーム又はプロトリンのハプテン化コロナウイルスSタンパク質抗原に対する比は、約1:1~約1:500の範囲であり、少なくとも1:5、少なくとも1:10、少なくとも1:20、少なくとも1:50、少なくとも1:100、又は少なくとも1:200である。プロリンとハプテン化コロナウイルスSタンパク質抗原の比が1:2~1:200の範囲の利点は、プロテオソーム系アジュバントの量が、免疫応答を誘発するコロナウイルス抗原の能力に対する有意な効果なしで劇的に低下させることができることである。別の実施形態では、免疫原性組成物は、プロテオソーム又はプロトインと組み合わされた(混ぜられた又は製剤化された)1つ以上のハプテン化コロナウイルスSタンパク質免疫原を含み、Sタンパク質免疫原は、配列番号2又はその断片と同一であるか又はそれと少なくとも85%同一である(少なくとも90%若しくは95%、又は85%~100%内の任意のパーセントを含む)アミノ酸配列を含み、ハプテン化Sタンパク質免疫原又はその断片は、コロナウイルス感染に対する防御免疫応答を誘発するエピトープを有する。例示的なハプテン化Sタンパク質免疫原は、配列番号2に示されるようなアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2からなる。他の実施形態では、Sタンパク質免疫原は、配列番号2の断片であり、この断片は、配列番号2から選択されるアミノ酸と同一であるか又はそれと少なくとも85%同一である(少なくとも90%若しくは95%、又は85%~100%内の任意のパーセントを含む)アミノ酸配列を含む。
【0058】
[0057] 或いは、本明細書に記載のような任意のハプテン化Sタンパク質免疫原は、リポソームを有する免疫原性組成物中で組み合わされ(混ぜられ又は製剤化され)得る。好ましくは、1つ以上のコロナウイルス免疫原を含有するリポソームは、ディノコッカス・ラディオデュランス脂質又はα-ガラクトシルホスホチジルグリセロールアルキルアミンをさらに含む。リポソームにおけるかかる脂質の添加は、防御免疫を増加させることによって、コロナウイルスワクチン組成物の有効性を増強し得る。本発明のハプテン化コロナウイルスSタンパク質免疫原は、共有結合的に付着される疎水性部分をさらに含んでいてもよい。疎水性部分は、例えば、米国特許第5,726,292号に開示されるように、アミノ酸配列又は脂質であり得る。配列番号2に示される配列を有する天然に存在するコロナウイルスSタンパク質及び組換え的に発現されるSタンパク質は、疎水性膜貫通ドメイン(配列番号2のアミノ酸約1195~約1240)を含有し、これは、Sタンパク質免疫原断片とともに疎水性部分として機能し得る。特定の他の実施形態では、ハプテン化Sタンパク質免疫原は、第2のアミノ酸配列をさらに含有して、融合タンパク質を形成してもよく、ここで、第2のアミノ酸配列は、本明細書に記載のようなタグ、担体又は酵素である。
【0059】
[0058] 他の実施形態では、免疫原性組成物は、(プロテイン又はプロトリン)を含んでいてもよく、又はワクチンレシピエントの1つ以上の宿主細胞により産生される特定の受容体(例えば、トール様受容体又は「TLR」)と相互作用することによって宿主の免疫応答を刺激することができる構成要素(例えば、受容体リガンド)をさらに含んでいてもよい。一実施形態によれば、コロナウイルスタンパク質の免疫原性エピトープを含む組成物は、トール様受容体と相互作用することができるポリペプチドエピトープを含有し、それによって自然免疫応答を促進してもよく、これは、その後の適応免疫応答を惹起してもよく、又は惹起しなくてもよい。
【0060】
[0059] 自然免疫応答は、特異的な抗原依存性又は抗体依存性応答ではない(すなわち、T細胞及び/又はB細胞のクローン拡大増殖を含まない)非特異的な防御免疫応答であり、本明細書に記載の多数の抗原、免疫原又はコロナウイルスのいずれか1つによって誘発され得る。本明細書に記載の免疫刺激性組成物は、プロテオソーム及びリポサッカリド(プロトリン)を含み、それらのいずれか一方又は両方は、非特異的な防御応答を誘発し得る。理論に縛られることを望まないが、本明細書に開示のワクチン組成物又は製剤の1つ以上の構成要素は、ワクチンレシピエントの自然免疫応答又は適応免疫応答に関連するトール様受容体と相互作用し得る。特定のTLRと相互作用し、その後活性化する1つ以上のリガンドは、TLR8及びTLR10を除いて同定されている。髄膜炎菌、例えばOMP2(PorBとも称される)の特定の外膜タンパク質はTLR2と相互作用する一方で、すべてのグラム陰性細菌ではないがほとんどのLPSはTLR4と相互作用する。したがって、本明細書に記載のワクチン組成物又は製剤の1つの活性は、TLR2及びTLR4の一方又は両方の活性化を含む生物学的効果に寄与し得る。他のTLR(TLR2及びTLR4以外)の活性化は、類似の機能を果たし得るか、又は発現されたサイトカインの質的若しくは量的なプロファイルをさらに増強し得、宿主のTh1/Th2免疫応答に関連し得る。LPS及びPorB以外のTLRリガンドがTLR2又はTLR4を活性化するために単独で又は組み合わされて使用され得ることも検討される。1つ以上のTLRの質的又は量的な活性化は、付随する液性抗体応答を伴って又は伴わずに、Th1又はTh2免疫応答の相対的刺激(バランス又はアンバランス)を誘発する、生じる又は影響を及ぼすと予想される。本明細書に記載のワクチン組成物において、TLR2及びTLR4以外のTLRと相互作用するリガンドも使用され得る。かかるワクチン構成要素は、単独で又は組み合わされて、本明細書に示されるように、ウイルス感染を治療又は保護するのに十分な宿主の免疫応答の発生に影響を及ぼすために使用され得る。
【0061】
[0060] 本明細書に記載の組成物において、当業者に公知の他の構成要素が使用されてもよい。ハプテン化Sタンパク質免疫原のいくつかの実施形態は、免疫応答を非特異的に刺激し、ワクチンに対する免疫応答の有効性を増強するため、アジュバント、例えばカルメット-ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin)(BCG)、サイトカイン(非限定例として、顆粒球マクロファージコロニー刺激(GM-CSF))、アルミニウムゲル剤若しくはアルミニウム塩、又は当業者に公知の他のアジュバントをさらに含んでもよい。少なくとも1つの好ましい実施形態では、アジュバントは、BCG Ticeである。
【0062】
[0061] ハプテン化Sタンパク質免疫原組成物又はワクチンは、当業者に公知の保存剤、例えば限定はされないが、ホルムアルデヒド、抗生物質、グルタミン酸ナトリウム、2-フェノキシエタノール、フェノール、及び塩化ベンゼトニウムをさらに含んでもよい。ハプテン化Sタンパク質免疫原組成物又はワクチンは、注射用滅菌水、注射用平衡塩類溶液をさらに含んでもよい。
【0063】
[0062] 本発明のいくつかの実施形態が本明細書に示され、説明される一方で、かかる実施形態は、あくまで例として提示され、本発明の範囲を限定することは意図されない。本発明を実施する場合、本発明の説明された実施形態に対する様々な選択肢が利用されてもよい。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書中に含まれる好ましいバージョンの説明に限定されるべきではない。
【0064】
[0063] 本明細書と同時に出願され、且つ本明細書とともに一般縦覧に公開されたすべての論文及び文書は、読者の関心の的である。すべてのかかる論文及び文書の内容は参照により本明細書中に援用される。(いずれかの添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)本明細書で開示されたすべての特徴は、特に明記されない限り、同一、相当又は類似する目的に寄与する代替的特徴によって置き換えられてもよい。したがって、特に明記されない限り、開示される各特徴は、あくまで一般的な一連の相当又は類似する特徴の一例である。
【実施例
【0065】
[0064] 本明細書に包含される実施形態は、ここで以下の実施例を参照して説明される。これらの実施例は、あくまで例示を目的として提示され、本明細書に包含される開示内容は、決してこれらの実施例に限定されているものとして解釈されるべきでないばかりか、本明細書に提供される教示内容の結果として明白になるありとあらゆるバリエーションを包含するように解釈される必要がある。
【0066】
実施例1.ハプテン化Sタンパク質の調製
[0065] 以下の手順は例示的なハプテン化手順を示す。
【0067】
[0066] DNP修飾。DNP又は別のハプテンによる調製された細胞の修飾は、公知の方法によって、例えば、Miller,J.Immunol.(1976)117:151の方法によって実施することができ、これは、無菌条件下でのSタンパク質のDNFBとの30分のインキュベーションとそれに続く無菌生理食塩水又はHBSS-HSAによる洗浄を含む。例えば、DNFB(Sigma Chemical)約100mgを70%のエタノール約0.5mlに溶解することができる。PBS約99.5mlを添加する。溶液を37℃の水浴中で終夜撹拌する。溶液の有効期間は約4週間である。Sタンパク質をハンクス平衡塩類溶液に懸濁させる。DNFB溶液約0.1mlをSタンパク質の各試料に添加し、室温で約30分間インキュベートする。
【0068】
[0067] SA修飾。SAによるSタンパク質の修飾は、公知の方法によって実施することができる。例えば、一実施形態では、スルファニル酸(SA)を、飽和量の亜硝酸ナトリウムを添加することによってジアゾニウム塩に変換する。氷冷した無菌濾過された(0.2μm)10%の亜硝酸ナトリウム溶液を、飽和まで、0.1NのNCl 10mlに溶解された無水SA 100mgのSA溶液に滴下添加する(飽和点は、約40mMのスルファニル酸ジアゾニウム塩の最終濃度におよそ対応する)。次に、SAジアゾニウム塩溶液を、無菌濾過し(0.2μm膜)、HBSS(HSAなし)に1:8(v/v)希釈する。必要な場合、pHを、1NのNaOHの滴下添加によって7.2に調整する。次に、SAジアゾニウム塩-HBSS溶液を、濾過(0.2μm膜)によって滅菌する。Sタンパク質を、ジアゾニウム塩-HBSS溶液に懸濁させる。混合物を、室温で5分間インキュベートする。5分のインキュベーション時間の後、ハプテン化反応を、25%のHAS-HBSS溶液0.5mlの混合物への添加によって停止する。
【0069】
実施例2.臨床研究
[0068] この実施例は、ハプテン化Sタンパク質による免疫化のための臨床研究の概要を述べる。
【0070】
[0069] ハプテンのジニトロフェニル(DNP)で修飾されたSARS-CoV-2由来の組換えSタンパク質からなるヒトコロナウイルスワクチンを、実施例1に従って調製した。
【0071】
[0070] 4つの投薬量レベルを試験するCovid-19の患者におけるハプテン化ワクチンのフェーズI試験を行う。主要なエンドポイントは、DNP修飾Sタンパク質、SA修飾Sタンパク質及び未修飾Sタンパク質に応答する中和抗体の存在である。また、Covid-19の進行も評価する。その後、フェーズI試験において免疫学的に有効であることが見出された最低用量を使用するフェーズII試験を行う。
【0072】
実施例3.投与スケジュール
[0071] 下表は、ハプテン化Sタンパク質における例示的な投与スケジュールを示す。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例4.ジニトロフェニルで修飾されたSARS-CoV-2 Sタンパク質(BVX-0320)の調製
【0075】
【化1】

以下の調製は、ハプテン化Sタンパク質を調製するために使用されるプロセスの代表である。以前の調製のスケールは挿入句的に示される。濾過ステップを、無菌製品を生成するために加えた。水は低エンドトキシン水(ヌクレアーゼフリー又はWFIグレード)でなければならない。
1.水(ヌクレアーゼフリー又はWFIグレード)中の0.1Mの炭酸水素ナトリウム pH8.2緩衝液を調製する。0.2ミクロンフィルター(Sigma s6014)を通して濾過する。
2.必要な量のSタンパク質(5mg)を解凍する(必要な場合、0.2ミクロンフィルターを通して濾過する)。
3.炭酸水素塩緩衝液でSタンパク質を緩衝液交換する。
4.Sタンパク質の濃度を決定する(A280、1.14ml/mg×cm、標的濃度1mg/mL)。
5.0.1Mの炭酸水素ナトリウム緩衝液中の0.35Mのジニトロベンゼンスルホネート(Sigma 556971)を調製する。0.2ミクロンのフィルターを通して濾過する。
6.適切なサイズの容器中で(元の調製物を材料の10個のバイアルに分割する)、Sタンパク質(5mL)及びジニトロベンゼンスルホネート(0.375mL、2000当量)溶液を合わせ、30℃で18時間穏やかに撹拌する。
7.pHが0.8以上であることを確実にする。
8.Zebaカラム(0.1Mの炭酸水素塩緩衝液で平衡化)を使用してPBS(pH 7.4)に反応混合物を精製する。このステップの目的は、過剰の試薬を除去すること及び緩衝液交換を実施することの両方である。溶液は、すべてのジニトロベンゼンスルホネートが除去されると無色になる。無菌容器に0.2ミクロン膜を通して濾過する。
9.BCAアッセイを使用して最終濃度を決定する。
10.純度(280nmでのSEC)、遊離ハプテン(235nmでのRP-HPLC)、LALによるエンドトキシン、ハプテン負荷量(ネイティブタンパク質とのMS比較)について最終材料を分析する。
【0076】
実施例5.CF-1マウスにおける皮下注射によるBVX-0320の毒性研究
CF-1マウス(Charles River)に、皮下注射によってBVX-0320を最大で10μg投与した。死亡率は毒性の評価であった。すべての動物は、予定された剖検まで生存した。普通でないBVX-0320関連の臨床的/獣医学的観察はなかった。さらなる臨床的観察は、この年齢、性別及び種の収容された動物の群について正常な所見の範囲内であったか、又は手順関連であり、被験物質投与に関連するとは考えられなかった。体重及び体重増加。BVX-0320関連の体重の効果はなかった。平均及び個々の体重の間でのさらなる小変動は散発的であると考えられ、生物学的変動及び/又は無視できる大きさと一致し、被験物質投与に関連しなかった。BVX-0320関連の食物摂取効果はなかった。平均及び個々のケージ食物摂取の間での小変動は散発的であると考えられ、生物学的変動及び/又は無視できる大きさと一致し、被験物質投与に関連しなかった。普通でない肉眼的病理所見はなかった。
【0077】
結論として、体重、食物摂取又は臨床徴候に対するBVX-0320関連の効果はなかった。これらの所見に基づいて、BV-0320は、最高試験用量である10μg/用量まで十分に耐容性を示すと判定された。
【0078】
実施例6.CF-1マウスにおける皮下注射によるBVX-0320の免疫学的研究
CF-1マウス(Charles River)に、皮下注射によってBVX-0320 0.3、1又は3μgを投与し、それに続いて第2の注射を行い、エンドポイントを6週間で得た(図1~2を参照されたい)。1μg群について、1頭のマウスがベースライン抗体力価1:5を有していた。3μg群について、得られた力価は1:120,000であった。異なる群間の統計分析は以下の結果を与えた:0.3μg群対3μg群、p=0.002、1μg群対3μg群、p=0.041、3μg群対10μg群、p=0.522。
【0079】
したがって、BVX-0320の2回の注射は、(1)SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のS1サブユニットに対する抗体を誘導した(図1)。4つの用量すべてで抗体を誘導したが、力価は、2つの最高用量(3μg、10μg群)において有意に高かった。アジュバント単独(用量=0μg)は抗体応答を誘導しなかった。ワクチン前の血清は、単一試料において検出された非常に低い力価を除いて、陰性であった。(2)脾臓T細胞は、S1サブユニットに由来するペプチドのプールによるインビトロ再刺激の際にI型サイトカインのガンマインターフェロンを産生した(図2)。4つの用量すべてが有効であった。アジュバント単独(用量=0μg)は測定可能な応答を誘導しなかった。(3)脾臓T細胞のCD4+(表2及び4)及びCD8+(表3及び5)は両方ともペプチドプールによるインビトロの再刺激の際に活性化した。活性化は、CD25(表4及び5)及びCD69(表2及び3)の発現によって示された。4つのパラメータのうちの3つについて、2つの最高用量(3μg、10μg)のみが活性化を誘導した。アジュバント単独(用量=0μg)はT細胞活性化を誘導しなかった。これらの結果は、BVX-0320、ハプテン(DNP)修飾されたスパイクタンパク質のS1サブユニットによる免疫化が、未修飾のネイティブスパイクタンパク質に対して、抗体及びT細胞応答の両方を誘導したことを示す。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
本発明を特定の選択された実施形態に関連して説明したが、これは、特許請求の範囲に記載される発明がかかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、生化学及び生命工学又は関連する分野の当業者に自明である本発明を実施するための記載される様式の様々な改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
図1
図2
【配列表】
2023518427000001.app
【国際調査報告】