(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】コレステロール関連疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230424BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230424BHJP
C07K 16/40 20060101ALN20230424BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230424BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P3/06
C07K16/40 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556102
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 CN2021081705
(87)【国際公開番号】W WO2021185344
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】202010194665.6
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519126343
【氏名又は名称】スゥジョウ サンカディア バイオファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU SUNCADIA BIOPHARMACEUTICALS CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMA CEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲連▼山
(72)【発明者】
【氏名】朱 波
(72)【発明者】
【氏名】夏 晶
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA27
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、コレステロール関連疾患の治療方法を提供する。具体的には、プロタンパク質転換酵素スブチリシン/kexin9型(PCSK9)に対する抗体又は抗原結合フラグメントを使用して、コレステロール関連疾患を治療又は予防する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1回に最大600mgの投与量で、4週以上の投与間隔で患者に少なくとも1つのPCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号4、配列番号5と配列番号6で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3及びそれぞれ配列番号1、配列番号2と配列番号3で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を有し、前記投与間隔は、好ましくは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16週である、患者の血清LDLコレステロールレベルを低下させ、又は患者の高脂血症を治療及び/又は予防し、又はコレステロール関連疾患を治療及び/又は予防する方法。
【請求項2】
前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号8で示される軽鎖可変領域と、配列番号7で示される重鎖可変領域を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号10で示される軽鎖と、配列番号9で示される重鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記投与量は、70~200mgから選択され、好ましくは、70~150mgであり、投与間隔は、4、5、6、7、8、9又は10週から選択され、好ましくは、4週又は8週である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記投与量は、100~300mgから選択され、好ましくは、150~300mgであり、投与間隔は、6週以上であり、好ましくは、6、7、8、9、10、11、12、13又は14週であり、より好ましくは、8週又は12週である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記投与量は、250~550mgから選択され、好ましくは、300~550mgであり、投与間隔は、8週以上であり、好ましくは、8、9、10、11、12、13、14、15又は16週であり、より好ましくは、8週又は12週である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与量は、a)60~550mg、b)70mg、c)75mg、d)100mg、e)120mg、f)130mg、g)140mg、h)150mg、i)210mg、j)280mg、k)300mg、l)350mg、m)400mg、n)450mg、o)500mg又はp)550mgから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与間隔は、4、8、12又は16週から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与方法は、75mg Q4W、150mg Q8W、300mg Q12W、150mg Q4W、300mg Q8W又は450mg Q12Wから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
血清LDLコレステロールレベルを低下させる量が少なくとも10%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
血清LDLコレステロールレベルを低下させる量が、a)少なくとも15%、b)少なくとも20%、c)少なくとも30%、d)少なくとも50%、e)少なくとも50%、f)少なくとも55%、g)少なくとも60%、又は、h)少なくとも65%から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記高脂血症は、高コレステロール血症又は混合性高脂血症から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コレステロール関連疾患は、原発性高コレステロール血症であり、好ましくは、ヘテロ接合型家族性高コレステロール血症又はホモ接合型家族性高コレステロール血症である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記患者は以前に、少なくとも1つのコレステロール合成阻害剤及び/又はコレステロール吸収阻害剤で治療されており、
好ましくは、前記コレステロール合成阻害剤はスタチンであり、より好ましくは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン又はシンバスタチンであり、
好ましくは、前記コレステロール吸収阻害剤はエゼチミブである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者は以前に、少なくとも1つのコレステロール合成阻害剤又はコレステロール吸収阻害剤で少なくとも4週間治療されている、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2020年3月19である中国特許出願CN202010194665.6の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本開示は、プロタンパク質転換酵素スブチリシン/kexin9型(PCSK9)に対する抗体又は抗原結合フラグメントを使用して、コレステロール関連疾患(高脂血症、高脂血症又は脂質異常症)を治療又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心血管疾患は現在、ヒトの健康を脅かす主要な疾患である。2016年、ヨーロッパ心臓病学会及びヨーロッパアテローム性動脈硬化症学会(ESC/EAS)は共同で「2016ESC/EAS脂質異常症管理ガイドライン」を発表し、ガイドラインは、ヨーロッパでは400万人以上が心血管疾患(CVD)で亡くなっていることを指摘した。2009年のCVD関連医療費は合計1060億ユーロに達し、EUの総医療予算の約9%を示した。米国では、2010年~2030年の間にCVDの年間直接費用は3倍増加すると予想されている。中国には、現在約3億人が心臓血管疾患を患っており、毎年約350万人が様々な心血管疾患で死亡しており、直接医療支出は1300億元に達し、また年々増加の傾向を表している。研究により、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)又は総コレステロール(TC)の上昇を特徴とする脂質異常症が、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の重要な危険因子であり、LDL-C又はTCレベルを下げることにより、ASCVDの発症及び死亡率を有意に減少することができると指摘された。研究では、LDL-Cが1.0mmol/L減少するごとに、心臓発作、血行再建術、虚血性脳卒中の年間発生率が20%以上減少することを発現した。
【0004】
現在、中国の脂質異常症の治療率及び治療遵守率はまだ低いレベルにある。臨床で主流のコレステロール低下剤は、スタチン(コレステロール合成阻害剤)及びエゼチミブ(コレステロール吸収阻害剤)である。スタチンはHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であり、主にコレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoAレダクターゼを阻害し、コレステロール合成を低下させることで、脂質を低下させる目的を達成する。臨床試験では、スタチンはCVD及び高リスク群の死亡率を低下させ得るとが実証された。スタチンは、疾患の初期段階(二次予防)とリスクは高くなっているがCVDのない(一次予防)治療に有効がある。心血管疾患の低リスク群における適用効果については、さらなる研究が必要である。しかし、スタチンは臨床使用において、筋肉痛、筋炎、肝機能障害及び横紋筋融解症などの副作用があるため、スタチンの長期使用は、新規発症糖尿病のリスクを高める危険性があり、発病率は約10%~12%であり、スタチン効果に属し;コレステロール吸収阻害剤エゼチミブは、主に頭痛及び消化器症状として現れ、スタチンと併用する場合、トランスアミナーゼの上昇や筋肉痛などの副作用が起こる可能性があり、またコレステロールを下げる効果が弱い。スタチンの長期使用により、より多くの患者に薬剤耐性が現れた。統計によると、60%のリスクの高い患者は、スタチン又はその他の市販の脂質低下剤を服用しても依然としてLDL-Cレベルを十分にコントロールすることができず、非常にリスクの高い患者群では、当該割合は80%を超えている。特に、心血管疾患のリスクが高いヘテロ接合型家族性高コレステロール血症(HeFH)又はホモ接合型家族性高コレステロール血症(HoFH)の患者、スタチン不耐症又は第一選択薬又は第二選択薬の耐容量が最も高い脂質低下剤を使用して治療してもLDL-Cレベルが目標値に達していない患者に対しては、新しい機序によるコレステロール低下剤が臨床的に急務となっている。
【0005】
PCSK9(Proprotein convertase subtilin/kexin type9、ヒトサブチリシン変換酵素9)はプロタンパク質転換酵素ファミリーの9番目のメンバーである。PCSK9は主に肝臓で発現しているが、腸、腎臓、膵臓、脳を含む他の臓器でも検出されている。肝臓から循環系に分泌されたPCSK9は、肝細胞表面のLDLRと結合し、形成した複合体がエンドサイトーシスされ、リソゾームでのLDLR分解を促進することにより、細胞膜へのLDLR再循環を阻害してLDLR再利用率を減らし、肝細胞膜中のLDLRレベルを低下させ、LDL-C排出の減少をもたらしている。PCSK9は、肝臓表面のLDLR濃度を低下させることにより、コレステロールのバランスに重要な役割を果たしている。最近、当該メカニズムに対して、新たな医薬のPCSK9モノクローナル抗体が登場し、PCSK9の循環レベルを低下させ、細胞表面のLDLRの発現を増加させ、LDL-Cクリアランスを増加させて、循環LDL-Cレベルを低下させている。作用機序の観点から見て、これらの医薬は、肝臓の表面にLDLRを発現できるすべての患者のLDL-Cレベルを低下させのに効果的である。従って、これらの医薬は大多数の患者、特にスタチン不耐症の患者又はスタチンの最大用量で治療を受けてもLDL-Cレベルを効果的に制御できない患者に有効である。
【0006】
現在販売されている主なPCSK9モノクローナル抗体は、Amgen社が開発したEvolocumab(Repatha)、及びSanofi社とRegenon社が共同開発したAlirocumab(Praluent)である。市販されている2種類のPCSK9モノクローナル抗体は、スタチンとの併用する時LDL-Cを約50%~60%低下させる。PCSK9モノクローナル抗体の安全性、良好な忍容性及び有効性は、数多くの試験で実証されている。臨床試験の被験者には、原発性高コレステロール血症(ヘテロ接合体の家族性及び非家族性高コレステロール血症を含む)及び混合型高コレステロール血症の被験者が含まれ、これらの被験者にはスタチン療法不耐症の患者、スタチン及び/又は他の脂質低下薬がLDL-Cに対する低下が標準以下の患者を含み、また、ホモ接合型家族性高コレステロール血症の患者を対象とした臨床試験も実施されており、所定の治癒効果を得た。Evolocumabの投与方法は、140mg Q2W又は420mg Q4Wである。Alirocumabの投与方法の推奨投与量は75mg Q2Wであり、選択可能な開始投与量はまた300mg Q4Wを含み、調整可能な最大投与量は150mg Q2Wである。
【0007】
WO2017114230A、WO2017118307A、WO2018228406、WO2019001560には、Evolocumab及びAlirocumabと異なる新規なPCSK9抗体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2017114230A号
【特許文献2】国際公開第2017118307A号
【特許文献3】国際公開第2018228406号
【特許文献4】国際公開第2019001560号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、患者の血清LDLコレステロールレベルを低下させ、又は患者の高脂血症を治療及び/又は予防し、又はコレステロール関連疾患を治療及び/又は予防する方法を提供し、前記方法はスキームが簡単であり、投与頻度が低く、投与量が少ないため、患者の治療負担を効果的に軽減し、患者の治療コンプライアンスを向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一形態は、1回に最大600mgの投与量で、4週以上の投与間隔で患者に少なくとも1つのPCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントを患者に投与することを含む、患者の血清LDLコレステロールレベルを低下させ、又は患者の高脂血症を治療及び/又は予防し、又はコレステロール関連疾患を治療及び/又は予防する方法を提供し、前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号4、配列番号5と配列番号6で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3及びそれぞれ配列番号1、配列番号2と配列番号3で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3であり、前記投与間隔は、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16週である。
【0011】
ここで、前記記載の各CDR配列は下記の表に示された通りである。
【0012】
【0013】
本開示の実施形態において、患者が本開示の方法による治療を受けた後、血清LDLコレステロール(LDL-C)レベルの低下量は、a)少なくとも15%、b)少なくとも20%、c)少なくとも30%、d)少なくとも40%、e)少なくとも50%、f)少なくとも55%、g)少なくとも60%、h)少なくとも65%、i)少なくとも70%、j)少なくとも75%、k)少なくとも80%、l)少なくとも85%又はm)少なくとも90%から選択される。いくつかの実施形態において、患者が本開示の方法による治療を受けた後、血清LDLコレステロールレベルの低下は、7~84日間持続することができ、例えば、7~14日間、14~21日間、21~28日間、28~35日間、35~42日間、42~49日間、49~56日間、56~63日間、63~70日間、70~77日間、77~84日間である。
【0014】
選択可能な実施形態において、前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体から選択される組換え抗体又はその抗原結合フラグメントである。
選択可能な実施形態において、ヒト化抗体の軽鎖及び重鎖可変領域上の軽鎖及び重鎖フレームワーク領域配列は、ヒト生殖系列軽鎖及び重鎖フレームワーク領域配列又はその変異配列である。
【0015】
選択可能な実施形態において、前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、それぞれ配列番号8で示される軽鎖可変領域、及び配列番号7で示される重鎖可変領域を有する。
【0016】
重鎖可変領域
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYWMHWVRQAPGQGLEWMGYINPSSGFTKYHQNFKDRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARQYDYDEDWYFDVWGQGTTVTVSS
配列番号7
【0017】
軽鎖可変領域
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLNSRTRKNFLAWYQQKPGKAPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSFNLFTFGQGTKLEIK
配列番号8
【0018】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソタイプの重鎖定常領域を含み、好ましくは、IgG1アイソタイプの重鎖定常領域を含む。
【0019】
もう一つの選択可能な実施形態において、前記PCSK9抗体又はその抗原結合断片は、κ又はλの軽鎖定常領域の軽鎖定常領域を含む。
【0020】
いくつかの選択可能な実施形態において、前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号10で示される配列を有する軽鎖、及び配列番号9で示される配列を有する重鎖を含む。
【0021】
選択可能な実施形態において、前記PCSK9抗体は抗体h001-4-YTEである。前記h001-4-YTE抗体の軽鎖配列は配列番号10で示された通りであり、h001-4-YTE抗体の重鎖配列は配列番号9で示された通りである。
【0022】
重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYWMHWVRQAPGQGLEWMGYINPSSGFTKYHQNFKDRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARQYDYDEDWYFDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号9
【0023】
軽鎖
DIVMSQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLNSRTRKNFLAWYQQKPGKSPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCKQSFNLFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号10
【0024】
WO2019001560Aの内容は、全てを引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0025】
選択可能な実施形態において、PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与量は、70~200mgから選択され、例えば、70~150mgであり、投与間隔は、4、5、6、7、8、9又は10週から選択され、例えば、4週又は8週である。
【0026】
選択可能な実施形態において、PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与量は、100~300mgから選択され、例えば、150~300mgであり、投与間隔は、6週以上であり、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13又は14週であり、例えば、8週又は12週である。
【0027】
選択可能な実施形態において、PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与量は、250~550mgから選択され、例えば、300~450mgであり、投与間隔は、8週以上であり、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15又は16週であり、例えば、8週又は12週である。
【0028】
選択可能な実施形態において、PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与量は、a)60~550mg、b)70mg、c)75mg、d)100mg、e)120mg、f)130mg、g)140mg、h)150mg、i)210mg、j)280mg、k)300mg、l)350mg、m)400mg、n)450mg、o)500mg又はp)550mgから選択される。
【0029】
選択可能な実施形態において、PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与間隔は、1、2、4、8、12又は16週から選択される。
【0030】
選択可能な実施形態において、PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与方法は、75mg Q4W、150mg Q8W、300mg Q12W、150mg Q4W、300mg Q8W又は450mg Q12Wから選択される。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態において、前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、非経口の方法で投与される。本開示のいくつかの実施形態において、前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、静脈内で投与される。本開示のいくつかの実施形態において、前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは、皮下で投与される。例えば、抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの注射可能な形態は、抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメント、緩衝液、安定剤を含み、任意選択で界面活性剤を更に含む注射剤又は凍結乾燥粉末である。緩衝液はヒスチジン-塩酸塩系であり、安定剤は例えば、スクロース、ラクトース、トレハロース、マルトースなどの二糖類の糖又はアミノ酸から選択されることができる。界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択され、例えば、前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリソルベート20、40、60又は80であり、例えば、ポリソルベート20である。例えば、PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの注射可能な形態は、抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメント、ヒスチジン塩酸塩緩衝液、スクロース及びポリソルベート80を含む。
【0032】
選択可能な実施形態において、前記抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは30mg~70mgの投与量で、2週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、7~14日間持続し、30mgの投与量で、2週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、7~14日間持続し、35mgの投与量で、2週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、7~14日間持続し、70mgの投与量で、2週ごとに患者に皮下投与し、ここで患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、7~14日間持続し、50mg~280mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、75mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、105mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、120mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、150mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、210mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、280mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、100mg~500mgの投与量で、8週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、50~56日間持続し、150mgの投与量で、8週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、50~56日間持続し、300mgの投与量で、8週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、50~56日間持続し、450mgの投与量で、8週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、50~56日間持続し、150mg~500mgの投与量で、12週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、80~84日間持続し、300mgの投与量で、12週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%低下し、80~84日間持続し、450mgの投与量で、12週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも15%~少なくとも50%に低下し、80~84日間持続する。
【0033】
選択可能な実施形態において、前記抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントは30mg~70mgの投与量で、2週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、7~14日間持続し、30mgの投与量で、2週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、7~14日間持続し、35mgの投与量で、2週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、7~14日間持続し、70mgの投与量で、2週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、7~14日間持続し、50mg~280mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、75mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、105mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、120mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、300mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、210mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、280mgの投与量で、4週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、21~31日間持続し、100mg~500mgの投与量で、8週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、50~56日間持続し、300mgの投与量で、8週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、50~56日間持続し、300mgの投与量で、8週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、50~56日間持続し、450mgの投与量で、8週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、50~56日間持続し、300mg~500mgの投与量で、12週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、80~84日間持続し、300mgの投与量で、12週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、80~84日間持続し、450mgの投与量で、12週ごとに患者に皮下投与し、ここで、患者の血清LDLコレステロールレベルは少なくとも30%~少なくとも50%低下し、80~84日間持続する。
【0034】
選択可能な実施形態において、PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントをコレステロール関連疾患を有する患者に投与し、投与方法は、75mg Q4W、150mg Q8W、300mg Q12W、150mg Q4W、300mg Q8W又は450mg Q12Wから選択され、コレステロール関連疾患を効果的に治療でき、患者の血清LDLコレステロールレベルを低下させることができる。前記患者の前記血清LDLコレステロールレベルが低下する量は、a)少なくとも15%、b)少なくとも30%、c)少なくとも40%、d)少なくとも50%又はe)少なくとも60%から選択される。
【0035】
選択可能な実施形態において、PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントを必要とする患者に投与し、投与方法は、75mg Q4W、150mg Q8W、300mg Q12W、150mg Q4W、300mg Q8W又は450mg Q12Wから選択され、必要とする患者の血清LDLコレステロールレベルを効果的に低下させることができる。前記患者の前記血清LDLコレステロールレベルが低下する量は、a)少なくとも15%、b)少なくとも30%、c)少なくとも40%、d)少なくとも50%又はe)少なくとも60%から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記患者は以前に、少なくとも1つのコレステロール合成阻害剤及び/又はコレステロール吸収阻害剤で治療されたことがある。いくつかの実施形態において、前記患者は以前に、少なくとも1つのコレステロール合成阻害剤又はコレステロール吸収阻害剤で4週間以上治療されたことがある。
【0037】
いくつかの実施形態において、コレステロール合成阻害剤はスタチンである。いくつかの実施形態において、コレステロール吸収阻害剤はエゼチミブである。
【0038】
本開示の選択可能な実施形態において、前記少なくとも1つの抗PCSK9抗体は、少なくとも1つのスタチンの使用前、使用後又は使用と同時に患者に投与される。スタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチンなどを含むが、これらに限定されない。
【0039】
本開示において、高脂血症は、血液中に異常に高いレベルの脂質が存在する疾患又は病症を指す。高脂血症は、(1)高コレステロール血症、即ち上昇したコレステロールレベル、(2)高トリグリセリド血症、即ち上昇したトリグリセリドレベル、及び(3)複合型高脂血症、即ち高コレステロール血症及び高トリグリセリド血症の組み合わせから選択される形態で出現する。
【0040】
本開示において、高脂血症の意味は、高脂血症関連病症にも及ぼし、例えば、アテローム性動脈硬化症、狭心症、頸動脈疾患、脳動脈硬化症、黄色腫、冠動脈疾患、虚血性脳卒中、血管形成術後の再狭窄、末梢血管疾患、間欠性跛行、心筋梗塞後の壊死の減少、脂質異常症、食後脂血症、膵炎である。
【0041】
高脂血症はまた、原発性高脂血症及び続発性高脂血症に分けられる。例示的な原発性高脂血症には、1)家族性高カイロミクロン血症、2)家族性高コレステロール血症、3)家族性複合性高脂血症、4)家族性高脂血症アポリポタンパク質B-100欠乏症、5)家族性異常ベータリポタンパク質血症、及び6)家族性高トリグリセリド血症などを含むが、これらに限定されない。
【0042】
続発性高脂血症の危険因子は、1)例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能低下症、胆汁うっ滞及び特定の種類の腎不全の病歴などの疾患の危険因子;2)避妊薬、エストロゲン及びコルチコステロイドなどのホルモン、特定の利尿薬、各種β-遮断薬を含む医薬危険因子、3)食事脂肪摂取量が総カロリーの40%以上、飽和脂肪摂取量が総カロリーの10%以上、1日のコレステロール摂取量が300mg以上、習慣的で過度のアルコール摂取、食欲亢振、神経性食欲不振症及び肥満症を含む食事危険因子などを含むが、これらに限定されない。
【0043】
本開示において、前記コレステロール関連疾患には、高コレステロール血症、心臓病、メタボリックシンドローム、糖尿病、冠動脈疾患、脳卒中、心血管疾患、アルツハイマー病及び一般的な脂質異常症などを含むが、これらに限定されない。
【0044】
いくつかの実施形態において、コレステロール関連疾患は高コレステロール血症である。いくつかの実施形態において、高コレステロール血症は、原発性高コレステロール血症及び続発性高コレステロール血症から選択される。いくつかの実施形態において、原発性高コレステロール血症は、ヘテロ接合型家族性高コレステロール血症及びホモ接合型家族性高コレステロール血症から選択される。
【0045】
選択可能な実施形態において、PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントを安定したスタチン治療を受けている高脂血症患者へ投与することにより、必要とする患者の血清LDLコレステロールレベルを効果的に低下させることができる。前記患者の前記血清LDLコレステロールレベルの低下量は、a)少なくとも15%、b)少なくとも30%、c)少なくとも40%、d)少なくとも50%又はe)少なくとも60%から選択される。
【0046】
本開示は、患者の血清LDLコレステロールレベルを低下させ、又は患者の高脂血症を治療及び/又は予防し、又はコレステロール関連疾患を治療及び/又は予防する方法を提供し、1回に300mg未満の投与量で、4週以上の投与間隔で患者に少なくとも1つの抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することを含み、前記投与間隔は、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16週である。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記投与量は70~250mgであり、例えば、75~150mgであり、及び/又は前記投与間隔は、4週、8週、12週又は16週から選択され、例えば、4週である。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与量は、a)75mg、b)100mg、c)150mg、d)200mg、又はe)250mgから選択され、例えば、150mgである。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与方法は、75mg Q4W、150mg Q4W又は150mg Q8Wから選択される。
【0050】
本開示は、患者の血清LDLコレステロールレベルを低下させ、又は患者の高脂血症を治療及び/又は予防し、又はコレステロール関連疾患を治療及び/又は予防する方法を提供し、1回に300~600mg投与量で、4週以上の投与間隔で患者に少なくとも1つの抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む。
【0051】
選択可能な実施形態において、投与量は300~500mgから選択され、例えば、300mg又は450mgである。
【0052】
選択可能な実施形態において、投与間隔は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16週から選択される。
【0053】
選択可能な実施形態において、投与間隔は、8、12又は16週から選択される。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記抗PCSK9抗体又はその抗原結合フラグメントの投与方法は、300mg Q8W、300mg Q12W又は450mg Q12Wから選択される。
【0055】
いくつかの実施形態において、治療周期は、少なくとも4週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも20週間、少なくとも24週間、少なくとも28週間、少なくとも32週間、少なくとも36週間、少なくとも40週間、少なくとも44週間、少なくとも48週間、少なくとも52週間、少なくとも56週間、少なくとも1年、少なくとも2年、又はそれ以上である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、全治療期間のLDL-C濃度の平均変化率を示す。
【
図2】
図2は、全治療期間のTC濃度の平均変化率を示す。
【
図3】
図3は、全治療期間のnon-HDL-C濃度の平均変化率を示す。
【
図4】
図4は、全治療期間のApoB濃度の平均変化率を示す。
【
図5】
図5は、全治療期間のLp(a)濃度の平均変化率を示す。
【
図6】
図6は、全治療期間の遊離PCSK9濃度の平均変化率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
1.用語
本開示で使用されるアミノ酸の3文字コード及び1文字コードは、J. biol. chem、243、p3558(1968)に記載された通りである。
【0058】
本開示に記載の「抗体」は、免疫グロブリンを指し、2本の同一の重鎖及び2本の同一の軽鎖が鎖間ジスルフィド結合によって連結されたテトラペプチド鎖構造である。
【0059】
本開示において、本開示に記載の抗体軽鎖は、更に軽鎖定常領域を含むことができ、前記軽鎖定常領域は、ヒト又はマウスのκ、λ鎖又はその変異体を含む。
【0060】
本開示において、本開示に記載の抗体重鎖は、更に重鎖定常領域を含むことができ、前記重鎖定常領域は、ヒト又はマウスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はその変異体を含む。
【0061】
抗体の重鎖及び軽鎖のN末端付近の約110個のアミノ酸の配列は大きく異なり、可変領域(Fv領域)であり、C末端付近の残りのアミノ酸配列は比較的安定しており、定常領域である。可変領域には、3つの超可変領域(HVR)と4つの比較的保存された配列を有するフレームワーク領域(FR)が含まれる。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる。各軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)は、3つのCDR領域及び4つのFR領域で構成され、アミノ末端からカルボキシ末端の順で、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4である。軽鎖の3つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。本開示に記載の抗体又は抗原結合フラグメントのLCVR領域及びHCVR領域のCDRアミノ酸残基の数及び位置は、既知のKabat番号付け規則(LCDR1-3、HCDR1-3)に従う。
【0062】
本開示の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体を含み、好ましくは、ヒト化抗体である。
【0063】
用語「マウス抗体」は本開示において、当技術分野の知識及び技術に従って製造されたヒトPCSK9のノクローナル抗体を指す。製造の際は、試験対象にPCSK9抗原を注射し、次に目的の配列又は機能特性を持つ抗体を発現するハイブリドーマを分離する。
【0064】
用語「キメラ抗体(chimeric antibody)」は、マウス抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を融合させて形成された抗体を指し、マウス抗体によって誘導される免疫応答を低下させることができる。キメラ抗体を構築するには、まずマウス特異的モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを構築し、次にマウスハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子をクローニングし、必要に応じてヒト抗体の定常領域遺伝子をクローニングし、マウス可変領域遺伝子及びヒト定常領域遺伝子を連結してキメラ遺伝子を形成し、ヒトベクターに挿入し、最後的にキメラ抗体分子を真核産業又は原核産業で発現させる。本開示の一つの選択可能な実施形態において、前記PCSK9キメラ抗体の抗体軽鎖は、更にヒトκ、λ鎖又はその変異体の軽鎖定常領域を含む。前記PCSK9キメラ抗体の抗体重鎖は、更にヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はその変異体の重鎖定常領域を含む。ヒト抗体の定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4又はその変異体の重鎖定常領域から選択されてもよく、例えば、ヒトIgG2又はIgG4重鎖定常領域を含み、又はアミノ酸変異後のADCC(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、抗体依存性細胞介性細胞傷害)毒性を持たないIgG4を使用する。
【0065】
用語「ヒト化抗体(humanized antibody)」は、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)とも呼ばれ、マウスCDR配列をヒト抗体可変領域フレームワークに移植して製造した抗体、即ち異なるタイプのヒト生殖系抗体フレームワーク配列から生成された抗体を指す。キメラ抗体が多くのマウスタンパク質成分を搭載するによって誘導される強い抗体可変抗体応答を克服することができる。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベース又は公開した参考文献から入手することができる。例えば、ヒトの重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(インターネットでwww.mrccpe.com.ac.uk/vbaseから入手可能)、及びKabat、E.A.et al.1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th editionから見つけることができる。免疫原性を低下とそれによって生じる活性の低下を回避するために、前記ヒト抗体可変領域フレームワーク配列は、活性を維持するために、最小限の逆突然変異又は復帰変異を施することができる。本開示のヒト化抗体には、ファージディスプレイによりCDRに更に親和性成熟させたヒト化抗体も含まれる。
【0066】
「PCSK9抗体」は、PCSK9に特異的に結合する抗体であり、PCT/CN2016/111053のh001シリーズのPCSK9ヒト化抗体を含むが、これらに限定されない。ここで、h001シリーズのPCSK9ヒト化抗体は、マウスをヒトPCSK9で免疫することによってスクリーニングし、ヒト化形質転換によって得られる。
【0067】
本開示に記載の「抗原結合フラグメント」は、抗原結合活性を有するFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab´)2フラグメント、及びヒトPCSK9と結合するScFvフラグメントと他のヒトPCSK9と結合することができる抗体のVH及びVL領域を使用して形成されたヒトPCSK9と結合することができるフラグメントを指し、本開示に記載の抗体の配列番号7又は配列番号8から選択される1つ又は複数のCDR領域を含む。Fvフラグメントは、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を含むが、定常領域を含まず、すべての抗原結合部位の最小の抗体フラグメントを有する。一般に、Fv抗体はまた、VHドメイン及びVLドメインの間にポリペプチドリンカーも含み、且つ抗原結合に必要な構造を形成することができる。また、異なるリンカーを使用し、2つの抗体の可変領域を単鎖抗体(single chain antibody)又は単鎖Fv(sFv)と呼ばれる単一のポリペプチド鎖に結合することもできる。本開示における用語「PCSK9と結合する」とは、ヒトPCSK9と相互作用できることを指す。本開示における用語「抗原結合部位」は、PCSK9抗体又は抗原結合フラグメントによって認識される抗原上の連続又は不連続な三次元空間部位を指す。
【0068】
「治療」は、患者に内部又は外部治療剤を投与することを指し、例えば、本開示のいずれかの抗体含む組成物であり、前記患者は1つ又は複数の疾患症状を有し、前記治療剤はこれらの症状に治療効果があることは知られている。通常、治療される患者又は集団に1つ又は複数の疾患症状を効果的に緩和する量で治療薬を投与して、そのような症状の退行を誘発し、又はそのような症状が臨床的に測定可能な程度まで進行することを阻害する。任意の特定の疾患の症状を緩和するのに有効な治療薬の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、例えば、患者の病状、年齢と体重、及び薬の患者に望ましい効果をもたらす能力などの様ざな要因によって変化することができる。症状の重症度又は進行状況を評価するために医師又は他の医療専門家が一般に使用する任意の臨床検出方法を通じて、疾患の症状が緩和されたかどうかを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、各標的疾患の症状を軽減するのに効果がない可能性はあるが、当技術分野で公知の任意の統計的試験方法、例えば、Student t検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定及びWilcoxon検定によって確認でき、統計的に有意な数の患者で標的疾患の症状を軽減する必要があると判断する。
【0069】
「有効量」には、医学的疾患の症状又は病症を改善又は予防するのに十分な量は含まれる。有効量はまた、診断を可能にさせるか又は促進するのに十分な量を意味する。特定の患者又は獣医対象に対する有効量は、例えば、治療される病症、患者の健康状態、投与の方法、経路及び投与量、ならびに副作用の重症度に応じて変化してもよい。有効量は、有意な副作用又は毒性作用を回避するための最大用量又は投与方法であってもよい。
【0070】
実例として、「Q4W」は4週ごとに1回投与されることを意味し、「Q8W」は8週ごとに1回投与されることを意味する。「150mg Q8W」は8週ごとに投与され、1回当たりの投与量は150mgであることを表す。
【0071】
家族性高カイロミクロン血症は、脂肪分子を分解する酵素、即ちLPリパーゼの欠陥を引き起こす稀な遺伝性疾患である。LPリパーゼの欠陥は、血中の脂肪又はリポタンパク質の大量の蓄積につながる可能性がある。
【0072】
家族性高コレステロール血症は、比較的一般的な遺伝性疾患であり、その潜在的欠陥はLDL受容体遺伝子の一連の突然変異であり、LDL受容体の機能異常及び/又はLDL受容体の欠陥を引き起こす。これにより、LDL受容体によるLDLのクリアランスが無効になるため、血漿においてのLDL及び総コレステロールレベルが上昇する。
【0073】
家族性複合高脂血症は、複合リポタンパク型高脂血症とも呼ばれ、患者とその影響を受けた第一度近親者が異なる時期に高コレステロールと高トリグリセリドを示す遺伝性疾患である。HDLコレステロールレベルは、しばしば適度に低下する。
【0074】
家族性アポリポタンパク質B-100欠陥は、比較的一般的な常染色体優性の遺伝子異常である。この欠陥は、アルギニンがグルタミンに置き換えた単一ヌクレオチドの変異によって引き起こされ、LDL受容体に対するLDL粒子の親和性が低下する。その結果、血漿LDL及び総コレステロールレベルが高くなる。
【0075】
家族性異常βリポタンパク血症は、III型高リポタンパク血症とも呼ばれ、中等度から重度の血清TG及びコレステロールレベルの上昇とアポリポタンパクEの機能異常をもたらす稀な遺伝性疾患である。HDL値は正常であることが多い。
【0076】
家族性高トリグリセリド血症は、血漿中のVLDL濃度が上昇する一般的な遺伝性疾患である。その結果、トリグリセリドレベルが軽度から中等度に上昇し(通常、コレステロール値は上昇しない)、多くの場合、血漿HDLレベルの低下を伴う。
【実施例】
【0077】
実施例1:高脂血症患者を対象としたh001-4-YTE皮下複数回注射の安全性、忍容性及び有効性研究-無作為化、二重盲検、プラセボ平行対照第Ib/II相臨床試験
【0078】
1.試験医薬
h001-4-YTE
【0079】
2.登録された被験者
本試験に参加するためには、被験者は下記のすべての参加基準を満たす必要がある。
(1)スクリーニング時にスタチン療法を受けているか、又はスタチン療法の適応があり、無作為化前の28日以上安定した量のスタチン療法を受けることが可能で、本試験において安定したスタチン療法を維持する意思がある被験者(本試験で認められるスタチンの種類及び用量:アトルバスタチン10~40mg/d)(Lipitor(R)、ファイザー製薬株式会社)、
(2)スクリーニング時にスタチン及び/又は他の脂質改善薬の投与を受けている被験者の血清LDLC≧2.6mmol/L、スクリーニング時に脂質改善薬の投与を受けていない被験者の血清LDL-C?3.4mmol/L、且つ無作為化前にLDL-C?2.6mmol/Lの条件を満たしている被験者。
(3)空腹時トリグリセリド?4.5mmol/L;
(4)体格指数(BMI)が18以上で且つ35kg/m2以下である必要がある。
【0080】
3、投与方法
試験には、75mg Q4W(群1)、150mg Q8W(群2)、300mg Q12W(群3)、150mg Q4W(群4)、300mg Q8W(群5)、450mg Q12W(群6)の6つの群を計画して皮下注射し、Q4W及びQ8Wのスキームは16週間投与し、Q12Wスキームは24週間投与された。
【0081】
4.有効性データ
臨床試験には110名の被験者が参加し、無作為に群を分け、H001-4-YTE及びプラセボをそれぞれ5:1の比で投与された。すべての患者は、無作為化前の少なくとも28日間及び試験期間全体を通じて、アトルバスタチン(10~40mg/日)の安定した治療スキームを受けた。プラセボ群と比較して、H001-4-YTE群のすべての用量及び時間スキームは、ベースラインから投与間隔の完了までLDL-Cの有意な減少を達成した。表1より、H001-4-YTEの75mg Q4W、150mg Q4W、150mg Q8W、300mg Q8W、300mg Q12W及び450mg Q12Wの各群の投与スキームにおいて、LDL-CのLS平均減少率はそれぞれ-48.63%(95%CI:-59.795、-37.455)、-55.06%(-62.956、-47.172)、-52.02%(-63.188、-40.859)、-48.38%(-56.321、-40.440)、-43.93%(-55.097、-32.769)及び-52.77%(-60.487、-45.054)であるが、プラセボ群は4.44%(-3.688、12.570)(すべてのp値<0.0001)増加したことが分かる。プラセボ群に対する各H001-4-YTE群のLDL-CのLS平均減少率範囲は、-48.33%~-59.00%であった。プラセボ群に対する各H001-4-YTE群のLDL-CのLS平均絶対減少率範囲は、-1.59mmol/L~-1.92mmol/Lであった。
【0082】
【0083】
図1は、全治療期間のLDL-C濃度の平均変化率を示している。最初の投与後(第0週)、H001-4-YTE群のLDL-Cはいずれも急速に減少した。最初のサイクルでは、LDL-Cレベルの最大の低下は、75mg Q4Wの第3週目(-48.182%)及び150mg Q4Wの第4週目(-56.744%)で発生し、その後、H001-4-YTEの75mg Q4W群のLDL-C変化率は、-54.916%~-42.108%を維持し、H001-4-YTEの150mg Q4W群のLDL-C変化率は、-64.527%~-54.579%を維持した。最初のサイクルでは、LDL-Cの最大の低下は、150mg Q8W(-73.519%)及び300mg Q8W(-59.274%)の第4週目及び300mg Q12W(-65.721%)及び450mg Q12W(-65.522%)の第3週目で発生し、その後、再投与により小さなリバウンドが起こったが、大きな減少傾向は依然として存在し、150mg Q8W群のLDL-C変化率は、-52.050%~-69.323%であり、300mg Q8W群のLDL-C変化率は、-46.133%~-60.476%であり、300mg Q12W群のLDL-C変化率は、-43.909%~-63.108%であり、450mg Q12W群のLDL-C変化率は、-44.491%~-59.556%であった。
【0084】
表2は、他の脂質及びアポリポタンパク質測定値における減少率をまとめたものである。すべてのH001-4-YTE群において、TC、non-HDL-C、ApoB及びLp(a)の持続的で急速な減少が観察された(
図2~
図5)。H001-4-YTE群でベースラインから投与間隔の完了までのTC変化率の範囲は、-31.263%~-37.760%であったが、プラセボ群では3.534%~-3.065%であった。H001-4-YTE群でベースラインから投与間隔の完了までのnon-HDL-C変化率の範囲は-39.920%~-52.349%であったが、プラセボ群では7.412%~-5.957%であった。H001-4-YTE群でベースラインから投与間隔の完了までのApoB変化率の範囲は、-35.592%~-47.687%であったが、プラセボ群では12.565%~-6.623%であった。H001-4-YTE群でベースラインから投与間隔の完了までのLp(a)変化率の範囲は、-31.263%~-35.339%であったが、プラセボ群では1.578%~-3.065%であった。
【0085】
H001-4-YTE治療後、投与直後に遊離PCSK9の急激な減少及び投与量依存的な減少率が検出された(
図6)。第2日目において、H001-4-YTEの75mg Q4W群の遊離PCSK9は-31.60%(SE、7.462%)減少し、H001-4-YTEの150mg Q4W群の遊離PCSK9は-37.09%(5.645%)減少し、プラセボQ4W群の遊離PCSK9は-9.44%(11.048%)減少し、H001-4-YTEの150mg Q8W群の遊離PCSK9は-39.12%(5.760%)減少し、H001-4-YTEの300mg Q8W群の遊離PCSK9は-63.88%(4.079%)減少し、プラセボQ8W群の遊離PCSK9は10.17%(8.691%)上昇し、;H001-4-YTEの300mg Q12W群の遊離PCSK9は-61.59%(4.507%)減少し、H001-4-YTEの450mg Q12W群の遊離PCSK9は-68.56%(4.554%)減少し、プラセボQ12W群の遊離PCSK9は16.57%(28.585)上昇した。
【0086】
また、研究過程において、重篤な治療上薬物有害事象(TEAE)はなく、治療を中止するか又は死亡に至るまでのTEAEはなく、注射部位反応も報告されていなかった。
【0087】
【配列表】
【国際調査報告】