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▶ イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティドの特許一覧

特表2023-518434インターロイキン2変異体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】インターロイキン2変異体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230424BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20230424BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230424BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230424BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230424BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230424BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230424BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230424BHJP
   C07K 1/22 20060101ALN20230424BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/55 ZNA
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N5/10
C12P21/02 K
C12P21/08
A61P37/02
A61P35/00
A61P37/04
A61K38/20
A61K47/68
A61K39/395 N
A61K39/395 L
C07K16/18
C07K1/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556114
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2021081840
(87)【国際公開番号】W WO2021185361
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】202010197740.4
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110266549.5
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519274183
【氏名又は名称】イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ホー カイチエ
(72)【発明者】
【氏名】フー フォンケン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ショアイシアン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ウェイウェイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG05
4B064AG27
4B064CA06
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF63
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA18
4C084DA14
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA14
4C085AA15
4C085AA21
4C085BB36
4C085BB41
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA04
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、新規インターロイキン2(IL-2)変異タンパク質に関する。本発明は、当該IL-2変異タンパク質を含む融合タンパク質、二量体分子、免疫複合体、およびそれらをコードする核酸、当該核酸を含むベクターおよび宿主細胞、ならびにそれらを含む医薬組成物と治療的使用をさらに提供する。本発明は、当該IL-2変異タンパク質、融合タンパク質、二量体分子、免疫複合体の調製方法をさらに提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-2変異タンパク質であって、
前記変異タンパク質は、野生型IL-2(好ましくはヒトIL-2で、より好ましくは配列番号1配列を含むIL-2)と比較して、以下の変異を含む:
(i)IL-2のIL-2Rαとの結合界面に、特に位置35、37、38、41、42、43、45、61、68および72から選択される少なくとも1つの位置に、IL-2Rα受容体に対する結合親和性を変化(例えば排除または低減)させる変異、
および/または
(ii)短縮されたB’C’ループ領域(即ち、アミノ酸残基aa72とaa84を連結する配列)、好ましくは、10、9、8、7、6、または5未満のアミノ酸長を有し、且つ好ましくは7アミノ酸長を有し、好ましくは、前記短縮されたB’C’ループ領域はタンパク質の発現量および/または純度の改善をもたらす、前記短縮されたループ領域、
且つ以下の変異を含む:
(iii)IL-2のIL-2Rβγとの結合界面に、特に位置12、15、16、19、20、84、87、88、91、92、95、および126から選択される少なくとも1つの位置に、IL-2Rβγ受容体に対する結合を弱体化する変異、
ここで、前記アミノ酸の位置は配列番号1に従って番号付けされ、
好ましくは、前記変異タンパク質は、変異(i)と(iii)を含むか、または変異(ii)と(iii)を含むか、または変異(i)、(ii)と(iii)を含み、
より好ましくは、前記変異タンパク質は、変異(ii)と(iii)を含むが、変異(i)を含まない、
前記IL-2変異タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の変異タンパク質であって、
前記IL-2Rβγ結合界面の変異(iii)は、
L12R、L12K、L12E、L12Q、E15Q、E15R、E15A、E15S、H16N、H16T、H16Y、H16A、H16E、H16D、H16R、L19D、L19E、L19R、L19S、D20N、D20Q、D20E、D20A、D20R、D20S、D84N、D84E、D84Q、D84T、D84S、D84R、D84G、D84M、D84F、D84L、D84K、D84H、S87T、S87R、S87K、S87L、S87M、S87H、N88D、N88T、N88Q、N88R、N88E、N88K、N88H、N88M、N88S、N88L、V91I、V91L、V91D、V91E、V91N、V91Q、V91S、V91H、I92E、I92T、I92K、I92R、I92L、E95Q、E95G、E95D、E95N、Q126E、Q126D、Q126A、Q126S、D84N+E95Q、D84E+E95Q、D84T+E95Q、D84Q+E95Q、D84T+H16T、D84N+V91I、D84T+Q126E、D84N+Q126E、H16T+D84Q、H16T+V91Iから選択される変異を含み、
好ましくは、前記IL-2Rβγ結合界面の変異(iii)は、
D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、V91Iから選択される変異を含み、
さらに好ましくは、前記IL-2Rβγ結合界面の変異(iii)は、
-D84N、E95Q、H16Nから選択される変異、または
-D84Q、H16T+V91Iから選択される変異、または
-D84T、Q126E、D84N+V91I、およびD84N+E95Qから選択される変異、または
-N88D、N88R、D20N、D84N、D84N+E95Q、D84T+H16T、D84T+Q126E、D84N+Q126E、およびH16T+D84Qから選択される変異、または
-D84NおよびD84N+E95Qから選択される変異、を含み、
さらに好ましくは、前記IL-2Rβγ結合界面の変異(iii)は、N88DまたはD20NまたはN88Rを含む、
請求項1に記載の変異タンパク質。
【請求項3】
前記変異(i)は、変異の組み合わせK35E+T37E+R38E+F42A、または変異の組み合わせK35E+T37E+R38E、または変異F42Aを含み、
好ましくは、前記変異(i)は、変異の組み合わせK35E+T37E+R38E+F42Aを含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の変異タンパク質。
【請求項4】
前記変異(ii)は、以下を含む:
(a)B’C’ループ領域のaa74~aa83に対する置換、例えば、IL15のB’C’ループ配列など、4ヘリックス短鎖サイトカインのILファミリーのメンバーからの短いB’C’ループ配列による置換、好ましくは配列GDASIHによる置換、または
(b)B’C’ループ領域のaa74~aa83に対する切断、例えばC末端からの1、2、3または4個のアミノ酸の切断、好ましくは配列(Q/G)SKN(F/I)Hを形成するための切断、より好ましくは以下から選択される配列を形成するための切断:
前記請求項のいずれか1項に記載の変異タンパク質。
【表1】
【請求項5】
野生型IL-2と比較して、
(i)変異の組み合わせK35E+T37E+R38E+F42A、
(ii)B’C’ループ領域配列AQSKNFHまたはAGDASIHまたはSGDASIH、
(iii)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異を含み、
より好ましくは、前記IL-2Rβγ結合界面の変異は、
-D84N、E95Q、H16Nから選択されるか、または
-D84T、Q126E、D84N+V91I、およびD84N+E95Qから選択されるか、または
-N88D、N88R、D20N、D84N+E95Q、D84T+H16T、D84T+Q126E、D84N+Q126E、およびH16T+D84Qから選択され、
および、場合により、(iv)変異T3Aを含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の変異タンパク質。
【請求項6】
野生型IL-2と比較して、IL-2Rα受容体に対する結合が維持され、且つ
(ii)B’C’ループ領域配列AQSKNFHまたはAGDASIHまたはSGDASIH、特にAGDASIH、
(iii)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
より好ましくは、前記IL-2Rβγ結合界面の変異は、D20N、N88DおよびN88Rから選択され、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含む、
前記請求項のいずれか1項に記載の変異タンパク質。
【請求項7】
野生型IL-2と比較して、0~5個以下のアミノ酸変異をさらに含み、好ましくは、前記変異タンパク質はC125SまたはC125A変異を含む、請求項1~6に記載の変異タンパク質。
【請求項8】
-配列番号37-638(特に配列番号148もしくは197または配列番号489、513、516)から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または98%の同一性を有するアミノ酸配列、
-配列番号37-638(特に配列番号148もしくは197または配列番号489、513、516)から選択されるアミノ酸配列、を含む、
請求項1~7に記載の変異タンパク質。
【請求項9】
変異(iii)を導入して弱体化する前のタンパク質と比較して、低減されたIL-2Rβγ受容体に対する結合親和性を有し、
且つ前記変異タンパク質は、以下から選択される少なくとも1項または2項の特性を有する:
-野生型IL-2と比較して、IL-2Rα結合を維持すること、または
-野生型IL-2と比較して、哺乳動物細胞(例えば293細胞またはCHO細胞)で発現される場合、例えばFc融合タンパク質の形態で発現される場合における改善された発現量および/またはより高い純度に精製されやすいこと(例えば、ワンステップアフィニティークロマトグラフィー後、SEC-HPLC検出により、より高い純度を有する)、
請求項1~8に記載の変異タンパク質。
【請求項10】
請求項1~9に記載のIL2変異タンパク質を含む、IL-2変異タンパク質融合タンパク質。
【請求項11】
前記IL-2変異タンパク質は、Fc抗体断片(例えばヒトIgG1 Fc)と融合され、
好ましくは、前記IL-2変異タンパク質は、リンカーを介してFcと融合され、前記リンカーは、好ましくはGSGSであり、より好ましくは(G4S)2であり、
好ましくは、前記Fc断片は、L234A+L235Aなど、FcとFcγRとの結合を低減または排除する変異を含み、
好ましくは、前記Fc断片は、配列番号12と少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも96%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、
請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記Fc断片は、変異T366WとS354CなどのKnob変異を含み、または前記Fc断片は、変異Y349C、T366S、L368A、Y407VなどのHole変異を含む、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
IL-2-Fc二量体タンパク質であって、
請求項11もしくは12に記載のIL-2変異タンパク質融合タンパク質を含み、
好ましくは、前記二量体タンパク質は、野生型IL-2-Fc融合タンパク質を含む対応する二量体タンパク質と比較して、以下の特性の1項または複数項を有する:
-哺乳動物細胞(例えばCHOまたはHEK293細胞)で発現される場合における発現量および/または純度の増加、
-例えば、投与後の動物の体重または体重変化の測定により決定される、インビボで投与される場合における低い毒性、
-より優れた抗腫瘍効果、
IL-2-Fc二量体タンパク質。
【請求項14】
ホモ二量体であり、そのうち、第1のモノマーと第2のモノマーは、N末端からC末端まで、i)IL-2変異タンパク質、ii)リンカー、およびiii)Fc断片を含み、
好ましくは、各モノマーは、C末端でリンカー(G4S)2を介して配列番号12アミノ酸配列に連結する、配列番号37-638から選択されるIL-2変異タンパク質を含む、
請求項13に記載のIL-2-Fc二量体タンパク質。
【請求項15】
ヘテロ二量体であり、
a)N末端からC末端まで、i)IL-2変異タンパク質、ii)リンカー、およびiii)第1のFc断片を含む第1のモノマーと、
b)第2のFc断片および場合によりIgG1ヒンジ領域を含む第2のモノマーと、を含み、
好ましくは、第1のFc断片と第2のFc断片はそれぞれ、第1のモノマーと第2のモノマーがヘテロ二量体を形成することを促進する第1と第2のヘテロ二量体化変異を含み、
好ましくは、第1と第2のヘテロ二量体化変異は、Knob:Hole変異の組み合わせT366W/S354C:Y349C/T366S/L368A/Y407Vを含み、
好ましくは、第1のFc断片における第1のヘテロ二量体変異はKnob変異を含み、第2のFc断片における第2のヘテロ二量体変異はHole変異を含み、または、第1のFc断片における第1のヘテロ二量体変異はHole変異を含み、第2のFc断片における第2のヘテロ二量体変異はKnob変異を含み、
好ましくは、第1のモノマーは、C末端でリンカー(G4S)2を介して配列番号9アミノ酸配列に連結する、配列番号37-638から選択されるIL-2変異タンパク質を含み、且つ第2のモノマーは、配列番号10のアミノ酸配列を含む、
請求項13に記載のIL-2-Fc二量体タンパク質。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載のIL-2変異タンパク質と抗原結合分子とを含み、好ましくは、前記抗原結合分子は、免疫グロブリン分子、特にIgG分子、または抗体もしくは抗体断片、特にFab分子もしくはscFv分子である、免疫複合体。
【請求項17】
請求項1~9のいずれか一項に記載のIL-2変異タンパク質または請求項10~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質または請求項13~15のいずれか一項に記載のIL-2-Fc二量体タンパク質または請求項16に記載の免疫複合体をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項17に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項19】
請求項17に記載のポリヌクレオチドまたは請求項18に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、哺乳動物細胞であり、特にHEK293細胞またはCHO細胞、または酵母である、前記宿主細胞。
【請求項20】
前記IL-2変異タンパク質または融合タンパク質またはIL-2-Fc二量体タンパク質または免疫複合体の発現に適した条件下で、請求項19に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のIL-2変異タンパク質または請求項10~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質または請求項13~15のいずれか一項に記載のIL-2-Fc二量体タンパク質または請求項16に記載の免疫複合体を製造するための方法。
【請求項21】
請求項1~9のいずれか一項に記載のIL-2変異タンパク質または請求項10~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質または請求項13~15のいずれか一項に記載のIL-2-Fc二量体タンパク質または請求項16に記載の免疫複合体および薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項1~9のいずれか一項に記載のIL-2変異タンパク質または請求項10~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質または請求項13~15のいずれか一項に記載のIL-2-Fc二量体タンパク質または請求項16に記載の免疫複合体または請求項21に記載の医薬組成物を前記被験者に投与するステップを含む被験者の疾患を治療する方法であって、好ましくは、前記疾患はがんまたは自己免疫疾患である、被験者の疾患を治療する方法。
【請求項23】
有效量の請求項1~9のいずれか一項に記載のIL-2変異タンパク質または請求項10~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質または請求項13~15のいずれか一項に記載のIL-2-Fc二量体タンパク質または請求項16に記載の免疫複合体または請求項21に記載の医薬組成物を前記被験者に投与するステップを含む、被験者の免疫系を刺激する方法。
【請求項24】
IL-2変異タンパク質を得るための方法であって、
-IL-2のB’C’ループ領域で変異により当該ループ領域配列を短縮させ、および、場合によりIL-2のIL-2Rβγとの結合界面に1つもしくは複数の変異を導入し、および/またはIL-2のIL-2Raとの結合界面に1つもしくは複数の変異を導入するステップと、
-哺乳動物細胞(例えばHEK293またはCHO細胞)において、IL-2変異タンパク質を、例えばFc融合体(例えばFcLALA融合体)の形態で発現するステップと、を含み、
または、前記方法は
-IL-2のIL-2Rβγとの結合界面に1つもしくは複数の変異を導入し、および、場合によりIL-2のB’C’ループ領域で変異により当該ループ領域配列を短縮させ、および/またはIL-2のIL-2Raとの結合界面に1つもしくは複数の変異を導入し、好ましくはIL-2のIL-2Raとの結合界面に変異を導入しないステップと、
-哺乳動物細胞(例えばHEK293またはCHO細胞)において、IL-2変異タンパク質を、例えばFc融合体(例えばFcLALA融合体)の形態で発現するステップと、を含み、
好ましくは、前記短縮されたループ領域は10、9、8、7、6、または5未満のアミノ酸長を有し、且つ好ましくは7アミノ酸長を有し、
より好ましくは、前記B’C’ループ領域の変異は、以下を含む:
(a)B’C’ループ領域のaa74~aa83に対する置換、例えば、IL15のB’C’ループ配列など、4ヘリックス短鎖サイトカインのILファミリーのメンバーからの短いB’C’ループ配列による置換、好ましくは配列GDASIHによる置換、または
(b)B’C’ループ領域のaa74~aa83に対する切断、例えばC末端からの1、2、3または4個のアミノ酸の切断、好ましくは配列(Q/G)SKN(F/I)Hを形成するための切断、より好ましくは以下から選択される配列を形成するための切断:
【表2】
好ましくは、前記IL-2Rβγ結合界面の変異は、請求項1もしくは2に記載のIL-2Rβγ結合界面の変異を含み、
好ましくは、前記IL-2Rα結合界面の変異は、請求項1もしくは3に記載のIL-2Rα結合界面の変異を含み、
好ましくは、前記変異タンパク質は、(i)改善された発現量および/またはタンパク質の純度(例えば、SEC-HPLC検出による、ワンステップアフィニティークロマトグラフィー後の純度)、(ii)弱体化されたIL2Rβ結合および/または(iii)変化したIL-2Ra結合という改善された特性の1つまたはその任意の組み合わせを有し、好ましくは(i)と(ii)の特性を有する、
前記方法。
【請求項25】
IL-2タンパク質B’C’ループ領域の改造方法であって、
(a)B’C’ループ領域のaa74~aa83に対する置換、例えば、IL15のB’C’ループ配列など、4ヘリックス短鎖サイトカインのILファミリーのメンバーからの短いB’C’ループ配列による置換、好ましくは配列GDASIHによる置換、または
(b)B’C’ループ領域のaa73~aa83に対する置換、例えば、IL15のB’C’ループ配列など、4ヘリックス短鎖サイトカインのILファミリーのメンバーからの短いB’C’ループ配列による置換、好ましくは配列AGDASIHによる置換、または
(c)B’C’ループ領域のaa74~aa83に対する切断、例えばC末端からの1、2、3または4個のアミノ酸の切断、好ましくは配列(Q/G)S(K/A/D)N(F/I)Hを形成するための切断、より好ましくは以下から選択される配列を形成するための切断、を含む、
前記方法。
【表3】
【請求項26】
請求項25に記載の方法によって改造して得られる、IL-2タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規インターロイキン2(IL-2)変異タンパク質およびその使用に関する。具体的には、本発明は、野生型IL-2と比較して、改善された特性、例えば、改善されたIL-2受容体結合特性および改善された創薬可能性を有するIL-2変異タンパク質に関する。本発明は、当該IL-2変異タンパク質を含む融合タンパク質、二量体、免疫複合体、および当該IL-2変異タンパク質、二量体、免疫複合体をコードする核酸、当該核酸を含むベクターおよび宿主細胞をさらに提供する。本発明は、当該IL-2変異タンパク質、融合タンパク質、二量体および免疫複合体の調製方法、それを含む医薬組成物および治療的使用をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
T細胞成長因子(TCGF)とも呼ばれるインターロイキン-2(IL-2)は、主に活性化T細胞、特にCD4+Tヘルパー細胞によって産生される多能性サイトカインである。真核細胞において、ヒトIL-2(uniprot:P60568)は153個のアミノ酸の前駆体ポリペプチドとして合成され、N末端の20個のアミノ酸を除去した後、成熟した分泌性IL-2を産生する。他の種のIL-2の配列も開示されており、NCBI Ref Seq No.NP032392(マウス)、NP446288(ラット)またはNP517425(チンパンジー)を参照されたい。
【0003】
インターロイキン2は、その機能に不可欠な4次構造を形成する4つの逆平行両親媒性αヘリックスを有する(Smith,Science 240,1169-76(1988);Bazan,Science257,410-413(1992))。ほとんどの場合、IL-2は、インターロイキン2受容体α(IL-2Rα;CD25)、インターロイキン2受容体β(IL-2Rβ;CD122)、およびインターロイキン2受容体γ(IL-2Rγ;CD132)の3つの異なる受容体を介して作用する。IL-2RβおよびIL-2RγはIL-2のシグナル伝達に非常に重要であるが、IL-2Rα(CD25)はシグナル伝達に必須ではないが、IL-2の受容体への高親和性結合を与えることができる(Krieg et al.,Proc Natl Acad Sci 107,11906-11(2010))。IL-2Rα、β、γを組み合わせて形成される三量体受容体(IL-2αβγ)はIL-2高親和性受容体(KDが約10pM)であり、βとγからなる二量体受容体(IL-2βγ)は中間親和性受容体(KDが約1nM)であり、αサブユニットのみから形成されるIL-2受容体は、低親和性受容体である。
【0004】
免疫細胞は二量体または三量体IL-2受容体を発現する。二量体受容体は細胞傷害性CD8+T細胞とナチュラルキラー(NK)細胞で発現され、三量体受容体は主に活性化リンパ球とCD4+CD25+FoxP3+抑制性制御性T細胞(Treg)で発現される(Byman,O.およびSprent.J.Nat.Rev.Immunol.12,180-190(2012))。静止状態のエフェクターT細胞およびNK細胞は、細胞表面上にCD25を持たないので、IL-2に対して比較的非感受性である。一方、Treg細胞は一貫してインビボで最高レベルのCD25を発現しているため、通常IL-2はTreg細胞の増殖を優先的に刺激する。
【0005】
IL-2は、異なる細胞上のIL-2受容体との結合を介して、免疫応答において多重作用を媒介する。一方では、IL-2は免疫系刺激作用を有し、T細胞とナチュラルキラー(NK)細胞の増殖と分化を刺激することができる。したがって、IL-2は、免疫治療剤としてがんや慢性ウイルス感染の治療に使用されることが承認されている。他方では、IL-2は、免疫抑制性CD4+CD25+制御性T細胞(即ち、Treg細胞)の維持を促進することもでき(Fontenot et al、Nature Immunol 6,1142-51(2005);D’CruzおよびKlein,Nature Immunol 6,1152-59(2005);MaloyおよびPowrie,Nature Immunol 6,1171-72(2005))、患者において活性化Treg細胞による免疫抑制を引き起こす。
【0006】
なお、長年の臨床実践経験により、高用量のIL-2は、黒色腫や腎臓がんなどのがんの治療において有意な臨床効果をもたらすことができるが、同時に、血管漏出症候群や低血圧などの心血管系毒性を含む薬物関連の重度の毒性と副作用を引き起こす可能性もあることが見出された。研究によると、これらの毒性は、リンパ球(特にT細胞とNK細胞)に対するIL-2の過剰な活性化によって、炎症性因子の放出を刺激することが原因である可能性が高いことが示されている。例えば、これは血管内皮細胞を収縮させ、細胞間の隙間を大きくし、組織液の流出を引き起こし、それにより血管漏出の副作用を引き起こす可能性がある。
【0007】
IL-2の臨床使用に関する別の制限的な問題は、その半減期が非常に短いため、投与が困難になることである。IL-2の分子量はわずか15KDaであるため、主に糸球体の濾過作用によって除去され、ヒト半減期はわずか1時間程度である。十分に高いヒトへの曝露量を達成するために、臨床的には8時間ごとに高用量のIL-2を注入する必要がある。しかし、頻繁な投与は、患者に大きな負担をかけるだけでなく、さらに重要なことにIL-2の高用量注入は非常に高いピーク血中濃度(Cmax)を引き起こし、これは薬物毒性を引き起こす別の要因である可能性が高い。Rodrigo Vazquez-Lombardi et al.(Nature Communications,8:15373,DOI:10.1038/ncomms15373)は、インターロイキン2-Fc融合体を調製することにより、インターロイキンの薬力学的特性を改善することを提案しているが、当該融合タンパク質の発現量が低く、且つ凝集体を形成しやすい。
【0008】
IL-2の生産において、天然のIL-2分子は、そのアミノ酸配列の特性のため、哺乳動物細胞(CHOまたはHEK293)における発現が非常に困難であり、分子の安定性も比較的悪い。したがって、現在市販が承認されたIL-2分子Proleukinは、原核細菌発現系において生産されている。しかし、IL2-Fc融合タンパク質は細菌系で発現することができない。したがって、当該分野では、哺乳動物細胞におけるIL-2分子およびIL-2-Fc分子の発現を改善する必要がある。
【0009】
当該分野では、IL-2分子の操作方法が提案されている。例えば、Helen R.Mott et alは、排除されたIL-2Rα結合能力を有するヒトIL-2の変異タンパク質F42Aを開示している。Rodrigo Vazquez-Lombardi et al(Nature Communications,8:15373,DOI:10.1038/ncomms15373)は、排除されたIL-2Rα結合能力を有する三重変異ヒトIL-2変異タンパク質IL-23Xも提案し、当該タンパク質はアミノ酸残基位置38、43および61にそれぞれ残基変異R38D+K43E+E61Rを有する。CN1309705Aは、IL-2とIL-2Rβγとの結合の低下をもたらす、位置D20、N88およびQ126の変異を開示している。これらの変異タンパク質は、薬物動態学的および/または薬力学的特性に依然として欠陥があり、且つ哺乳動物細胞で発現される場合、発現量が低い、および/または分子安定性が比較的悪いという問題も存在する。
【0010】
IL-2免疫治療および生産に関連する上記の問題を鑑み、当該分野は、依然として、改善された特性を有する新規IL-2分子、特に生産、精製に役立つことを示し、改善された薬物動態学的および薬力学的特性を有するIL-2分子をさらに開発する必要がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、改善された創薬可能性および/または改善されたIL-2受容体結合特性を有する長時間作用型IL-2変異タンパク質分子を提供することにより、上記の要件を満たす。
【0012】
したがって、一態様において、本発明は、新規IL-2変異タンパク質を提供する。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、以下の1つまたは複数の特性を有し、好ましくは少なくとも性質(i)および(ii)を有する:
(i)改善された創薬可能性、特に哺乳動物細胞で発現される場合における改善された発現量および/または精製性能、
(ii)IL-2Rβγとの結合の弱体化、
(iii)IL-2Rαとの結合の低減または排除。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、特性(i)および(ii)を有し、野生型IL-2タンパク質と比較して、IL-2Rαとの結合が維持されている。他のいくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、特性(i)~(iii)を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、IL-2Rβγ結合界面の変異を含み、且つIL-2Rα結合界面の変異および/または短縮されたB’C’ループ領域をさらに含むIL-2変異タンパク質を提供する。いくつかの好ましい実施形態において、本発明は、IL-2Rβγ結合界面の変異および短縮されたB’C’ループ領域を含むが、IL-2Rα結合界面の変異を含まないIL-2変異タンパク質を提供する。
【0015】
なお、本発明は、IL-2変異タンパク質を含む融合タンパク質、二量体タンパク質、免疫複合体、医薬組成物および組み合わせ製品、それらをコードする核酸、前記核酸を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに本発明のIL-2変異タンパク質、融合タンパク質、二量体タンパク質および免疫複合体の産生方法を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、本発明のIL-2変異タンパク質、融合タンパク質、二量体タンパク質および免疫複合体を用いて疾患を治療する方法、ならびに被験者の免疫系を刺激する方法および使用も提供する。
【0017】
以下、図面および具体的な実施形態を参照して本発明をさらに説明する。しかし、これらの図面および具体的な実施形態は、本発明の範囲を限定するものと考えられるべきではなく、当業者が容易に思いつく変更は、本発明の精神および添付される特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】IL-2とIL-2Rαの複合物の結晶構造(PDB:1Z92)を示す。
図2A】IL-2結晶構造(PBD:2ERJ)(A)、ヒトIL-2およびヒトIL15のB’C’loop構造superpose(B)を示す。
図2B】IL-2結晶構造(PBD:2ERJ)(A)、ヒトIL-2およびヒトIL15のB’C’loop構造superpose(B)を示す。
図3】変異ライブラリーIBYDL029からスクリーニングされたIL-2変異タンパク質およびその配列を示す。
図4】IL-2とIL-2Rβγの結晶構造(PBD:2ERJ)およびそれらの接触界面を示す。
図5】IL-2-Fc二量体タンパク質の分子模式図を示す。
図6】本発明のいくつかの例示的なIL-2弱体化分子の構造を示す。
図7A】選択および構築されたIL-2mutant-Fc二量体タンパク質が活性化されていない正常なTリンパ球CD4+T細胞とCD8+T細胞(A-E)で、および活性化されたTリンパ球CD4+CD25+T細胞(F)でp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図7B】選択および構築されたIL-2mutant-Fc二量体タンパク質が活性化されていない正常なTリンパ球CD4+T細胞とCD8+T細胞(A-E)で、および活性化されたTリンパ球CD4+CD25+T細胞(F)でp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図7C】選択および構築されたIL-2mutant-Fc二量体タンパク質が活性化されていない正常なTリンパ球CD4+T細胞とCD8+T細胞(A-E)で、および活性化されたTリンパ球CD4+CD25+T細胞(F)でp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図7D】選択および構築されたIL-2mutant-Fc二量体タンパク質が活性化されていない正常なTリンパ球CD4+T細胞とCD8+T細胞(A-E)で、および活性化されたTリンパ球CD4+CD25+T細胞(F)でp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図7E】選択および構築されたIL-2mutant-Fc二量体タンパク質が活性化されていない正常なTリンパ球CD4+T細胞とCD8+T細胞(A-E)で、および活性化されたTリンパ球CD4+CD25+T細胞(F)でp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図7F】選択および構築されたIL-2mutant-Fc二量体タンパク質が活性化されていない正常なTリンパ球CD4+T細胞とCD8+T細胞(A-E)で、および活性化されたTリンパ球CD4+CD25+T細胞(F)でp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図8A】対照rhIL-2タンパク質と比較して、弱体化IL-2mutant-Fc二量体タンパク質が異なるリンパ球サブセットでp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図8B】対照rhIL-2タンパク質と比較して、弱体化IL-2mutant-Fc二量体タンパク質が異なるリンパ球サブセットでp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図8C】対照rhIL-2タンパク質と比較して、弱体化IL-2mutant-Fc二量体タンパク質が異なるリンパ球サブセットでp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図8D】対照rhIL-2タンパク質と比較して、弱体化IL-2mutant-Fc二量体タンパク質が異なるリンパ球サブセットでp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図8E】対照rhIL-2タンパク質と比較して、弱体化IL-2mutant-Fc二量体タンパク質が異なるリンパ球サブセットでp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図8F】対照rhIL-2タンパク質と比較して、弱体化IL-2mutant-Fc二量体タンパク質が異なるリンパ球サブセットでp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図8G】対照rhIL-2タンパク質と比較して、弱体化IL-2mutant-Fc二量体タンパク質が異なるリンパ球サブセットでp-STAT5を活性化するシグナル曲線を示す。
図9A】担がんC57マウスへ投与する場合における、CD25結合親和性が低減された弱体化IL-2mutant分子により構築されたIL-2-Fc二量体タンパク質の、腫瘍の体積に対する影響(A)、および動物の体重と体重変化に対する影響(BとC)を示す。
図9B】担がんC57マウスへ投与する場合における、CD25結合親和性が低減された弱体化IL-2mutant分子により構築されたIL-2-Fc二量体タンパク質の、腫瘍の体積に対する影響(A)、および動物の体重と体重変化に対する影響(BとC)を示す。
図9C】担がんC57マウスへ投与する場合における、CD25結合親和性が低減された弱体化IL-2mutant分子により構築されたIL-2-Fc二量体タンパク質の、腫瘍の体積に対する影響(A)、および動物の体重と体重変化に対する影響(BとC)を示す。
図10A】担がんC57マウスへ投与する場合における、CD25結合親和性が維持された弱体化IL-2mutant分子により構築されたIL-2-Fc二量体タンパク質の、腫瘍の体積に対する影響(A)、および動物の体重と体重変化に対する影響(BとC)を示す。
図10B】担がんC57マウスへ投与する場合における、CD25結合親和性が維持された弱体化IL-2mutant分子により構築されたIL-2-Fc二量体タンパク質の、腫瘍の体積に対する影響(A)、および動物の体重と体重変化に対する影響(BとC)を示す。
図10C】担がんC57マウスへ投与する場合における、CD25結合親和性が維持された弱体化IL-2mutant分子により構築されたIL-2-Fc二量体タンパク質の、腫瘍の体積に対する影響(A)、および動物の体重と体重変化に対する影響(BとC)を示す。
図11A】IL-2mutantFc二量体タンパク質の投与前および投与後の3日目と7日目におけるマウスの体重と体重変化の検出結果(A和B)、および血液中Treg、NK、CD4+、およびCD8+T細胞の検出結果(C-F)を示す。
図11B】IL-2mutantFc二量体タンパク質の投与前および投与後の3日目と7日目におけるマウスの体重と体重変化の検出結果(A和B)、および血液中Treg、NK、CD4+、およびCD8+T細胞の検出結果(C-F)を示す。
図11C】IL-2mutantFc二量体タンパク質の投与前および投与後の3日目と7日目におけるマウスの体重と体重変化の検出結果(A和B)、および血液中Treg、NK、CD4+、およびCD8+T細胞の検出結果(C-F)を示す。
図11D】IL-2mutantFc二量体タンパク質の投与前および投与後の3日目と7日目におけるマウスの体重と体重変化の検出結果(A和B)、および血液中Treg、NK、CD4+、およびCD8+T細胞の検出結果(C-F)を示す。
図11E】IL-2mutantFc二量体タンパク質の投与前および投与後の3日目と7日目におけるマウスの体重と体重変化の検出結果(A和B)、および血液中Treg、NK、CD4+、およびCD8+T細胞の検出結果(C-F)を示す。
図11F】IL-2mutantFc二量体タンパク質の投与前および投与後の3日目と7日目におけるマウスの体重と体重変化の検出結果(A和B)、および血液中Treg、NK、CD4+、およびCD8+T細胞の検出結果(C-F)を示す。
図12】野生型IL-2タンパク質IL-2WT(配列番号1)のアミノ酸配列およびそのアミノ酸残基番号付けを示し、且つ変異タンパク質IL-23Xとの配列アラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
別に定義しない限り、本明細書に用いられる全ての技術と科学用語はいずれも、当業者に通常に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の目的のために、以下、下記用語を定義する。
【0020】
「約」という用語は、数字または数値とともに使用される場合、下限として指定された数字または数値より5%小さく、上限として指定された数字または数値より5%大きい範囲内の数字または数値をカバーすることを意味する。
【0021】
「および/または」という用語は選択可能オプションのうちのいずれか1項または選択可能オプションのいずれか2項または複数項の組み合わせを指すと理解すべきである。
【0022】
本明細書で使用されるように、「包含する」または「含む」という用語は、記載される要素、整数またはステップを含むが、任意の他の要素、整数またはステップを排除しないことを意味する。本明細書において、「包含する」または「含む」という用語を用いる場合、特記しない限り、言及される要素、整数またはステップからなる場合も含まれる。例えば、ある変異または変異の組み合わせを「包含する」または「含む」IL-2変異タンパク質に言及する場合、前記変異または変異の組み合わせのみを有するIL-2変異タンパク質を包含することも意図される。
【0023】
本明細書において、野生型「インターロイキン-2」または「IL-2」とは、本発明の変異または変異の組み合わせを導入するテンプレートとしての親IL-2タンパク質、好ましくは天然に存在するIL-2タンパク質、例えば、未処理(例えば、シグナルペプチドが除されていない)の形態および処理済み(例えば、シグナルペプチドが除去された)の形態を含む、ヒト、マウス、ラット、非ヒト霊長類由来の天然IL-2タンパク質を指す。シグナルペプチドを含む全長の天然ヒトIL-2配列は配列番号2に示され、その成熟タンパク質の配列は配列番号3に示される。なお、この表現には、天然に存在するIL-2対立遺伝子変異体およびスプライス変異体、アイソタイプ、相同体、および種相同体も含まれる。この表現には、天然IL-2の変異体も含まれ、例えば、前記変異体は、天然IL-2と少なくとも95%~99%もしくはそれ以上の同一性を有してもよく、または1~10個以下もしくは1~5個以下のアミノ酸変異(例えば、保存的置換)を有してもよく、且つ好ましくは、天然IL-2タンパク質と基本的に同一のIL-2Rα結合親和性および/またはIL2Rβγ結合親和性を有する。したがって、いくつかの実施形態において、野生型IL-2は、天然IL-2タンパク質と比較して、IL-2受容体へのその結合に影響を及ぼさないアミノ酸変異を含んでもよく、例えば、変異C125Sを125位に導入した天然ヒトIL-2タンパク質(uniprot:P60568)は、本発明の野生型IL-2に属する。C125S変異を含む野生型ヒトIL-2タンパク質の1つの実例は配列番号1に示される。いくつかの実施形態において、野生型IL-2配列は、配列番号1または配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%、95%、さらには少なくとも96%、97%、98%、または99%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有する。
【0024】
本明細書において、アミノ酸変異は、アミノ酸置換、欠失、挿入および付加であってもよい。置換、欠失、挿入および付加の任意の組み合わせを行うことで、所望の特性(例えば、低減されたIL-2Rα結合親和性および/または改善された創薬可能性および/または弱体化されたIL-2Rβγ)を有する最終的な変異タンパク質構築物を得ることができる。アミノ酸の欠失および挿入は、ポリペプチド配列のアミノ基および/またはカルボキシ基末端での欠失および挿入を含むとともに、ポリペプチド配列内での欠失および挿入も含む。例えば、全長ヒトIL-2位置1でアラニン残基を欠失するか、またはB’C’ループ領域で1つまたは複数のアミノ酸を欠失することで、当該ループ領域の長さを短縮することができる。いくつかの実施形態において、好ましいアミノ酸変異は、単一アミノ酸置換の組み合わせまたはアミノ酸配列セグメントの置換など、アミノ酸置換である。例えば、野生型IL-2のB’C’ループ領域配列の全体または一部を異なる配列で置換することができ、好ましくは、長さが短縮されたB’C’ループ領域配列を得ることができる。
【0025】
本発明において、IL-2タンパク質またはIL-2配列セグメントにおけるアミノ酸位置に言及する場合、野生型ヒトIL-2タンパク質(IL-2WTとも呼ばれる)のアミノ酸配列配列番号1を参照することによって決定される(図8に示す)。配列番号1とのアミノ酸配列アラインメントによって、他のIL-2タンパク質またはポリペプチド(全長配列または切断断片を含む)上の対応するアミノ酸位置を同定することができる。したがって、本発明において、特記しない限り、IL-2タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸位置は、配列番号1に従って番号付けされるアミノ酸位置である。例えば、「F42」に言及する場合は、配列番号1の第42位のフェニルアラニン残基F、または他のIL-2ポリペプチド配列上にアラインメントされた対応する位置のアミノ酸残基を指す。アミノ酸位置決定のために実施される配列アラインメントは、https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiから得ることができるBasic Local Alignment Search Toolを使用して、デフォルトパラメータを用いて行うことができる。
【0026】
本明細書において、IL-2変異タンパク質に言及する場合、以下のように単一アミノ酸置換を説明する:[元のアミノ酸残基/位置/置換のアミノ酸残基]。例えば、グルタミン酸による位置35のリジンの置換は、K35Eと表すことができる。1つの所定の位置(例えば、K35位)に複数の選択可能なアミノ酸置換方式(例えば、D、E)があり得る場合、当該アミノ酸置換は、K35D/Eと表すことができる。対応的に、個々の単一アミノ酸置換は、プラス記号「+」または「-」によって連結されて、複数の所定の位置での組み合わせ変異を表すことができる。例えば、位置K35E、T37E、R38EおよびF42Aの組み合わせ変異は、K35E+T37E+R38E+F42A、またはK35E-T37E-R38E-F42Aと表すことができる。
【0027】
本明細書において、「配列同一性パーセント」は、比較ウィンドウ内で2つの最適アラインメント配列を比較することによって決定することができる。好ましくは、配列同一性は、参照配列(例えば、配列番号1)の全長にわたって決定される。比較のための配列アラインメント方法は、当該分野において周知である。配列同一性パーセントを決定するのに適用されるアルゴリズムは、例えば、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムを含む(Altschul et al.,Nuc.Acids Res.25:3389-402,1977およびAltschul et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990を参照)。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、アメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)から公的に入手可能である。本願の目的のため、同一性パーセントは、https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiから得ることができるBasic Local Alignment Search Toolを使用して、デフォルトパラメータを用いて決定することができる。
【0028】
本明細書で使用されるように、「保存的置換」という用語は、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの生物学的機能に悪影響を及ぼさない、または変化させないアミノ酸置換を意味する。例えば、保存的置換は、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発などの当該分野で既知の標準的な技術によって導入することができる。典型的な保存的アミノ酸置換は、1つのアミノ酸を、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する別のアミノ酸に置換することを指す。機能的に類似するアミノ酸の保存的置換表は、当該分野でよく知られているものである。本発明において、保存的置換残基は、以下の保存的置換表X、特に表Xにおける好ましい保存的アミノ酸置換残基に由来する。
【0029】
【表1】
【0030】
例えば、野生型IL-2タンパク質は、配列番号1-3の1つに対して保存的アミノ酸置換を有してもよく、または保存的アミノ酸置換のみを有してもよく、且つ1つの好ましい実施形態において、保存的置換は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の残基など、10個以下のアミノ酸残基を有する。さらに例えば、本発明の変異IL-2タンパク質は、本明細書に具体的に示されるIL-2変異タンパク質配列(例えば配列番号37-638のいずれか1つ)に対して保存的アミノ酸置換を有してもよく、または保存的アミノ酸置換のみを有してもよく、且つ1つの好ましい実施形態において、保存的置換は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個の残基など、10個以下のアミノ酸残基を有する。
【0031】
「親和性」または「結合親和性」は、結合対のメンバー間の相互作用の内部結合能力を反映するために使用することができる。分子Xのその結合パートナーYに対する親和性は、平衡解離定数(KD)によって示されてもよく、平衡解離定数は、解離速度定数と結合速度定数(それぞれkdisとkonである)との比率である。結合親和性は当該分野で既知の常用方法で測定されてもよい。親和性を測定するための1つの具体的な方法は、本明細書のForteBio親和性測定技術である。
【0032】
本明細書において、抗原結合分子は、抗原に特異的に結合し得るポリペプチド分子、例えば免疫グロブリン分子、抗体または抗体断片、例えばFab断片およびscFv断片である。
【0033】
本明細書において、抗体Fc断片とは、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC-末端領域であり、且つ天然配列Fc断片および変異体Fc断片を含むことができる。天然配列Fc断片は、様々なIgサブタイプおよびそのアロタイプのFc領域など、天然に存在する様々な免疫グロブリンFc配列を含む(Gestur Vidarsson et al,IgG subclasses and allotypes:from structure to effector functions,20 October 2014,doi:10.3389/fimmu.2014.00520.)。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc断片は、重鎖のCys226から、またはPro230からカルボキシ基末端まで延びる。他の実施形態において、Fc-断片のC-末端リジン(Lys447)が存在してもよく、存在しなくてもよい。他のいくつかの実施形態において、Fc断片は変異を含む変異体Fc断片であり、例えば、L234A-L235A変異を含む。本明細書に特記しない限り、Fc断片におけるアミノ酸残基の番号付けは、EU番号付けシステムによるものであり、EUインデックスとも呼ばれる。例えば、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th editon,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991),NIH Publication 91-3242に記載される。いくつかの実施形態において、抗体Fc断片は、N末端にIgG1ヒンジ配列またはIgG1ヒンジ配列の一部、例えばEU番号付けによる配列E216からT225または配列D221からT225を有することができる。前記ヒンジ配列に変異が含まれ得る。
【0034】
IL-2タンパク質は、4つのαヘリックスバンドル(A、B、C、D)構造を有する短鎖I型サイトカインファミリーのメンバーに属する。本明細書において、「B’C’Loop」または「B’C’ループ領域」または「B’C’ループ配列」という用語は互換的に使用されてもよく、IL-2タンパク質のBヘリックスとCヘリックスとの間の連結配列を指す。IL-2の結晶構造の分析(例えばPDB:2ERJ)により、1つのIL-2タンパク質のB’C’ループ配列を決定することができる。本発明の目的のために、配列番号1の番号付けによれば、当該B’C’ループ配列は、IL-2ポリペプチドにおける位置72の残基と位置84の残基を連結する配列を指す。配列番号1、2および3の野生型IL-2タンパク質において、当該連結配列は、A73-R83の合計11個のアミノ酸を含む。対応的には、本明細書において、「短縮されたループ領域」または「短縮されたB’C’ループ領域」という用語は、野生型IL-2タンパク質と比較して、長さが短縮されたB’C’ループ配列を有する変異タンパク質を指し、即ち、配列番号1の番号付けによると、アミノ酸残基aa72とaa84との間の連結配列の長さが短縮されている。「短縮されたループ領域」は、ループ配列の置換または切断によって実現することができる。前記置換または切断は、B’C’ループ配列の任意の領域または部分で発生することができる。例えば、置換または切断は、ループ領域A73-R83配列の置換または当該配列C末端の1つまたは複数のアミノ酸残基からの切断であってもよい。さらに、例えば、置換または切断は、ループ領域Q74-R83配列の置換または当該配列C末端の1つまたは複数のアミノ酸残基からの切断であってもよい。前記置換または切断の後、必要に応じて、創薬可能性などの変異タンパク質の特性をさらに改善するために、グリコシル化を排除するためのアミノ酸置換などの単一アミノ酸置換、および/または逆変異をさらにループ領域配列に導入することができる。したがって、本明細書において、変異後の短縮されたB’C’ループ領域は、変異の導入後、位置72の残基と位置84の残基との間の配列を連結することにより説明することができる。
【0035】
本明細書において、「IL-2Rα結合界面」変異は、IL-2とIL-2Rα(即ち、CD25)が相互作用するアミノ酸部位で発生する変異を指す。IL-2およびその受容体複合物の結晶構造(例えばPDB:1Z92)を分析することにより、これらの相互作用部位を決定することができる。いくつかの実施形態において、前記変異は、特にIL-2のアミノ酸残基35-72領域での変異を指し、特にアミノ酸部位35、37、38、41、42、43、45、61、62、68、72での変異を指す。好ましくは、前記変異を導入する前の対応するタンパク質と比較して、前記変異を含むIL-2タンパク質は、低減または排除されたIL-2Rα結合を有する。
【0036】
本明細書において、「IL-2βγ結合界面」変異は、IL-2とIL-2Rβγ(即ち、CD122とCD132)が相互作用するアミノ酸部位で発生する変異を指す。IL-2およびその受容体複合物の結晶構造(例えばPDB:2ERJ)を分析することにより、これらの相互作用部位を決定することができる。いくつかの実施形態において、前記変異は、特にIL-2のアミノ酸残基12-20、アミノ酸残基84-95、おおびアミノ酸残基126領域での変異を指し、特にアミノ酸部位12、15、16、19、20、84、87、88、91、92、95、126での変異を指す。好ましくは、前記変異を導入する前の対応するタンパク質と比較して、前記変異を含むIL-2タンパク質は、弱められたIL-2Rβγ結合を有する。
【0037】
本明細書において、IL-2Rβγ受容体結合に関しては、IL-2タンパク質分子の「弱体化」は、IL-2Rβγ結合界面に変異を導入することを指し、ここでこの変異の導入前の対応するIL-2タンパク質と比較して、上記変異は、IL-2Rβγ受容体に対する結合親和性の低減をもたらす。さらに好ましくは、対応するタンパク質と比較して、前記弱体化分子は、低減されたT細胞(例えばCD25-T細胞またはCD25+T細胞)および/またはNK細胞を活性化する活性を有する。例えば、前記弱体化分子と対応するタンパク質のT細胞pSTAT5シグナルを活性化するEC50値の比率を検出することにより、減少する倍数は例えば5倍以上、例えば10倍以上、または50倍以上、または100倍以上、またはさらに1000倍以上に達することができる。例えば、対応するタンパク質と比較して、弱体化分子のT細胞を活性化する活性は、10~50倍、または50~100倍、または100~1000倍、またはそれ以上の倍数減少することができる。したがって、本発明において、いくつかの実施形態において、本発明の弱体化分子は、「弱体化」したIL-2Rβγ受容体への結合親和性および「弱体化」したT細胞活性化活性を有する。
【0038】
本発明の種々の態様は、以下の各セクションにおいてさらに詳細に説明される。
【0039】
1.本発明のIL-2変異タンパク質
【0040】
本発明のIL-2変異タンパク質の有利な生物学的特性
【0041】
本発明者らは、長期の研究を通じて、以下の分子変異および改造を組み合わせて実施することにより、同時にIL-2の薬効を改善し、IL-2の毒性と副作用を低減し、および良好な生産性能を実現することができることを見出した。
【0042】
(i)IL-2のIL-2Rβγ受容体との結合界面に特定の残基変異を導入し、IL-2Rβγ受容体との結合を弱体化し、IL-2の活性をある程度ダウンレギュレートする。IL-2Rβγ受容体結合を弱体化するこのような変異を含むことにより、本発明のIL-2変異タンパク質はリンパ球を活性化して腫瘍を殺傷すると同時に、リンパ球の過剰な活性化によって引き起こされる大量の炎症性因子の放出、およびそれによってもたらした薬物関連毒性を回避することができる。なお、当該弱体化変異は、本発明のIL-2変異タンパク質の、リンパ球に広く存在するIL-2受容体との結合親和性を低減することにより、IL-2受容体によって媒介されるIL-2変異タンパク質のクリアランスを減少させ、IL-2変異タンパク質の作用持続時間を遅延することができる。
【0043】
(ii)本発明の変異IL-2タンパク質をIL-2-Fc二量体に構築する。当該二量体の形成は、本発明のIL-2変異タンパク質の分子量を増加させ、腎クリアランスを大幅に減少させ、且つインビボでのFcRn媒介リサイクルを通じて、IL2-Fc融合タンパク質の半減期をさらに延長することができる。それにより、IL-2の短い半減期および高頻度と高用量の投与によって引き起こされる高いピーク血中濃度の問題を克服する。
【0044】
(iii)IL-2のB’C’loop構造を改造し、例えば、それぞれIL-15分子のloopで置換するまたはIL-2分子B’C’loopを切断する。当該B’C’ループ変異は、本発明のIL-2変異タンパク質におけるB’C’loop構造の安定性を有意に増強し、有意に向上した発現量と純度などの、IL-2変異タンパク質およびそれによって構築されるIL-2-Fc二量体分子の生産性能を有意に向上させることができる。
【0045】
また、本発明者らは、本発明の変異タンパク質において、上記優れた特性を維持すると同時に、抗腫瘍または自己免疫疾患の治療などの多くの側面におけるIL-2の異なる薬物形成要件を満たすために、必要に応じて、IL-2変異タンパク質のIL-2Rαとの結合活性を調節することもでき、それにより、本発明の変異タンパク質に優れた薬力学的特性をさらに付与することを見出した。
【0046】
例えば、本発明の変異タンパク質は、野生型IL-2と実質的に同等のIL-2Rα結合活性を保持することができるか、または、(iv)IL-2のIL-2Rα受容体との結合界面での1つまたは複数の特定の変異をさらに組み合わせて、IL-2変異タンパク質のIL-2Rαへの結合性能を変化させることができる。
【0047】
それにより、本発明のIL2-Fcシリーズ分子は、配列を改造することにより、その受容体IL2Rβ/γへの結合親和性を弱体化し、より優れた薬物動態学実験結果および薬効結果を達成する一方で、タンパク質の発現量と純度などの創薬可能性の面で大幅に向上する。
【0048】
したがって、本発明は、改善された創薬可能性および改善されたIL-2受容体結合特性を有するIL-2変異タンパク質を提供する。本発明のIL-2変異タンパク質を含むIL-2-Fc分子は、リンパ球の強力な刺激によって引き起こされる炎症性因子の過剰な放出を効果的に回避することができ、より安定して長時間作用する薬物動態特性を有する。したがって、比較的低い単回投与量によって、Cmaxが高すぎることによる薬物関連毒性を回避するのに十分に高いヒト薬物曝露量を達成することができる。なお、より有意義なことに、本発明の長時間作用型IL-2-Fc分子は、天然IL-2と比較して弱体化したリンパ球免疫刺激活性を有するが、薬物動態特性が有意に改善されるため、本発明の分子のインビボ有効薬物濃度の持続時間がより長く、リンパ球に対する比較的長時間の連続刺激を発揮し、天然IL-2分子と同等であるか、またはそれよりも優れた薬力学的効果を達成し、動物において、より優れた抗腫瘍効果と耐性を達成することができる。
【0049】
改善された創薬可能性
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、改善された創薬可能性を有する。例えば、HEK293またはCHO細胞などの哺乳動物細胞で発現される場合、特にFc融合タンパク質で発現される場合、以下から選択される1項または複数項の特性を有する。(i)野生型IL-2タンパク質より優れる発現量、および(ii)より高いタンパク質の純度に精製されやすいこと。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して発現レベルの増加を示す。本発明のいくつかの実施形態において、発現の増加は哺乳動物細胞発現系で起こる。発現レベルは、細胞培養上清(好ましくはワンステップアフィニティークロマトグラフィー精製後の上清)中の組換えIL-2タンパク質の量を定量的または半定量的に分析することを可能にする任意の適切な方法によって測定することができる。例えば、試料中の組換えIL-2タンパク質の量は、ウェスタンブロットまたはELISAによって評価することができる。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、哺乳動物細胞における発現量が少なくとも1.1倍、または少なくとも1.5倍、または少なくとも2倍、3倍もしくは4倍以上、または少なくとも5、6、7、8もしくは9倍、またはさらに約10、15、20、25、30および35倍など、10倍以上増加している。
【0052】
いくつかの実施形態において、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー後の精製タンパク質の純度を測定することによって示されるように、本発明のIL-2変異タンパク質-Fc融合体は、野生型IL-2タンパク質融合体と比較して、高い純度を示す。いくつかの実施形態において、タンパク質の純度は、SEC-HPLC技術によって検出される。いくつかの好ましい実施形態において、ワンステップタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー精製後、本発明のIL-2変異タンパク質-Fc融合体の純度は、70%、または80%、または90%以上、好ましくは92%、93%、94%、95%、98%もしくは99%以上に達することができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー後の精製タンパク質の純度を測定することによって示されるように、本発明のIL-2-Fc二量体タンパク質は、野生型IL-2タンパク質によって形成された対応するIL-2-Fc二量体タンパク質と比較して、より高い純度を示す。いくつかの実施形態において、タンパク質の純度は、SEC-HPLC技術によって検出される。いくつかの好ましい実施形態において、ワンステップタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー精製後、本発明のIL-2-Fc二量体タンパク質の純度は、70%、または80%、または90%以上、好ましくは92%、93%、94%、95%、98%もしくは99%以上に達することができる。
【0054】
弱体化したIL-2βγ受容体結合性
【0055】
いくつかの実施形態において、IL-2Rβγ結合界面に変異を導入することにより、本発明のIL-2変異タンパク質は、前記変異を導入する前の対応するタンパク質と比較して、弱体化したIL-2βγ結合親和性を有する。
【0056】
いくつかの実施形態において、IL-2Rβγ結合界面の変異を導入して弱体化する前のタンパク質と比較して、本発明のIL-2変異タンパク質は、IL-2Rβおよび/またはIL-2Rβγ受容体への結合親和性が低減している。いくつかの実施形態において、弱体化する前のタンパク質と比較して、本発明のIL-2変異タンパク質は、IL-2Rβ受容体への結合親和性が低減し、例えば、いくつかの実施形態におけるIL-2Rβ受容体への結合の除去を含めて、1~20倍またはそれ以上低減する。いくつかの実施形態において、弱体化する前のタンパク質と比較して、本発明のIL-2変異タンパク質は、IL-2Rβγ受容体への結合親和性が低減し、例えば1~100倍またはそれ以上低減する。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、IL-2Rβ受容体と結合しないが、それでもIL-2Rβγ受容体と結合することができ、好ましくは、前記IL-2Rβγ受容体との結合は、弱体化する前のタンパク質と比較して、例えば、約20~80倍など、1~100倍低減することができる。ForteBio親和性測定技術により、Fc断片と融合された本発明のIL-2変異タンパク質またはその二量体分子などの本発明のIL-2変異タンパク質と受容体IL-2RβまたはIL-2Rβγ受容体の平衡解離定数(KD)を測定することで、結合親和性を決定することができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、IL-2Rβγ結合界面に変異を導入することにより、本発明のIL-2変異タンパク質は、前記変異を導入する前の対応するタンパク質と比較して、以下の少なくとも1項から選択されるIL-2活性など、弱体化したIL-2活性を有する:
-弱体化する前のタンパク質と比較して、T細胞(例えばCD4+とCD8+T細胞、例えばCD4+/CD8+CD25-T細胞、CD4+CD25+T細胞)に対する活性化の低減、
-弱体化する前のタンパク質と比較して、NK細胞に対する活性化の低減、
-弱体化する前のタンパク質と比較して、IL-2によって刺激されるT細胞/NK細胞の炎症性因子の放出の低減。
【0058】
一実施形態において、弱体化する前のタンパク質と比較して、本発明のIL-2変異タンパク質は、IL-2により媒介されるリンパ球(例えばT細胞および/またはNK細胞)の活性化および/または増殖の低下をもたらす。一実施形態において、リンパ球は、CD25-T細胞などのCD4+とCD8+T細胞である。一実施形態において、STAT5リン酸化測定試験において、CD4+とCD8+T細胞を活性化するIL-2変異タンパク質の能力は、IL-2変異タンパク質によるT細胞またはNK細胞などのリンパ球におけるSTAT5リン酸化シグナルの活性化を検出することによって同定される。例えば、最大半量有効濃度(EC50)は、本出願の実施例に記載されるように、フローサイトメトリーによって細胞中のSTAT5リン酸化を分析することによって決定することができる。例えば、前記の本発明のIL-2弱体化分子と対応するタンパク質の、T細胞のSTAT5リン酸化シグナルを活性化するEC50値の比率を検出することにより、本発明のIL-2変異分子は「弱体化」したT細胞活性化活性を有する。当該比率に基づき、本発明のIL-2変異分子のT細胞活性化活性は、例えば5倍以上、例えば10倍以上、または50倍以上、または100倍以上、またはさらに1000倍以上減少することができる。例えば、対応するタンパク質と比較して、本発明のIL-2変異分子のT細胞活性化活性は、10~50倍、または50~100倍、または100~1000倍、またはそれ以上の倍数減少することができる。いくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、低減された細胞表面IL-2受容体により媒介されるIL-2のクリアランスを有し、増加したインビボ半減期を示す。
【0059】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、低減されたIL-2およびその受容体により媒介されるインビボ毒性を有する。
【0060】
維持または変化したIL-2Rα受容体結合
【0061】
IL-2タンパク質は、IL-2受容体と相互作用することによってシグナル伝達を開始し、機能を発揮する。野生型IL-2は、異なるIL-2受容体に対して異なる親和性を示す。野生型IL-2との親和性が低いIL-2βおよびγ受容体は、静止エフェクター細胞(CD8+T細胞およびNK細胞を含む)上で発現される。野生型IL-2との親和性が高いIL-2Rαは、制御性T細胞(Treg)細胞および活性化エフェクター細胞上で発現される。高い親和性のために、野生型IL-2は、細胞表面のIL-2Rαに優先的に結合し、さらにIL-2Rβγを動員し、IL-2Rβγを介して下流のp-STAT5シグナルを放出し、Treg細胞および活性化エフェクター細胞を刺激する。理論にされることなく、IL-2のIL-2Rα受容体に対する親和性を変化させると、CD25+細胞を優先的に活性化するIL-2の偏向性を変化させ、IL-2により媒介されるTreg細胞の免疫ダウンレギュレート作用を変化させる。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、維持または変化したIL-2Rα受容体結合能力を有する。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rα受容体に対する結合が維持される。本明細書において、「IL-2Rα受容体に対する結合の維持」という表現は、IL-2変異タンパク質が野生型IL-2タンパク質と比較してIL-2Rα受容体と同等の結合活性を有することを指す。好ましくは、「同等の結合活性」は、同じ測定方法によって測定する場合、IL-2変異タンパク質と野生型IL-2タンパク質との結合活性の値(例えば結合親和性KD)の間の比率が1:20~20:1の間にあり、好ましくは、1:10~10:1の間にある。好ましくは、IL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rα結合界面の変異を有さない。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、弱体化IL-2変異分子であり、且つIL-2Rα受容体に対する結合が維持される。さらなるいくつかの実施形態において、本発明の弱体化IL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rα結合界面の変異を有さない。好ましくは、前記弱体化IL-2変異分子は、改善されたTreg選択性および/または改善されたNK細胞(例えば、CD3-CD56+NK細胞)選択性を有する。一実施形態において、STAT5リン酸化測定試験において、リンパ球に対するIL-2変異タンパク質の選択性は、IL-2変異タンパク質によるTreg細胞、NK細胞、CD4+およびCD8+エフェクターT細胞など、異なるリンパ球におけるSTAT5リン酸化シグナルの活性化を検出することによって同定される。一実施形態において、STAT5リン酸化測定試験において、IL-2変異タンパク質の選択性は、他のリンパ球を実質的に活性化することなく、特定(1種または複数種)のリンパ球を選択的に活性化するIL-2変異タンパク質用量ウィンドウによって反映することができる。例えば、いくつかの実施形態において、本発明の弱体化IL-2変異タンパク質は、CD25-/lowCD4+および/またはCD8+エフェクターTリンパ球などのエフェクターT細胞と比較して、改善されたTreg選択性および/または改善されたNK細胞(CD3-CD56+NK細胞)選択性を示すことができる。さらなるいくつかの実施形態において、改善された選択性は、IL-2変異タンパク質の低い薬物関連毒性によって反映することができる。
【0065】
他のいくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2変異タンパク質がIL-2Rα受容体結合を低減または排除するIL-2Rα結合界面の変異を導入する。
【0066】
さらなるいくつかの実施形態において、本発明の当該IL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、CD25+細胞を優先的に活性化するIL-2の偏向性を低減する。さらなるいくつかの実施形態において、本発明の当該IL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2により媒介されるTreg細胞の免疫ダウンレギュレート作用を低減する。
【0067】
他のいくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、免疫ダウンレギュレート作用を有する。さらなるいくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、自己免疫疾患の治療に用いることができる。
【0068】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、例えば、以下の1項または複数項から選択される改善された特性を有する:
-野生型IL-2と比較して、高い親和性IL-2R受容体(IL-2Rαβγ)に対する結合親和性の維持または変化(例えば、低減または増加)、
-野生型IL-2と比較して、CD25+細胞(例えばCD8+T細胞とTreg細胞)に対する活性化の維持または変化(例えば、低減または増加)、
-野生型IL-2と比較して、CD25+細胞(例えばTreg細胞)を優先的に活性化するIL-2の偏向性の維持または変化(例えば、除去もしくは低減、または増加)、
-野生型IL-2と比較して、IL-2により誘導されるTreg細胞による免疫反応のダウンレギュレート作用の維持または変化(例えば、低減または増加)。
【0069】
いくつかの実施形態において、野生型IL-2(例えば、配列番号1に示されるIL-2WT)と比較して、本発明のIL-2変異タンパク質は、IL-2Rα受容体に対する結合親和性が少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも25倍、特に少なくとも30倍、50倍もしくは100倍以上低減した。好ましい実施形態において、本発明の変異タンパク質はIL-2受容体αに結合しない。ForteBio親和性測定技術により、Fc断片と融合された本発明のIL-2変異タンパク質またはその二量体分子などの本発明のIL-2変異タンパク質と受容体IL-2Rα受容体の平衡解離定数(KD)を測定することで、結合親和性を決定することができる。
【0070】
一実施形態において、野生型IL-2と比較して、本発明のIL-2変異タンパク質は、IL-2により媒介されるCD25+細胞の活性化および/または増殖の低下をもたらす。一実施形態において、CD25+細胞はCD25+CD8+T細胞である。別の実施形態において、CD25+細胞はTreg細胞である。一実施形態において、STAT5リン酸化測定試験において、CD25+細胞を活性化するIL-2変異タンパク質の能力は、IL-2変異タンパク質によるCD25+細胞におけるSTAT5リン酸化シグナルの活性化を検出することによって同定される。例えば、最大半量有効濃度(EC50)は、本出願の実施例に記載されるように、フローサイトメトリーによって細胞中のSTAT5リン酸化を分析することによって決定することができる。
【0071】
一実施形態において、野生型IL-2と比較して、本発明のIL-2変異タンパク質は、CD25+細胞を優先的に活性化するIL-2の偏向性を排除または低減する。一実施形態において、CD25+細胞はCD25+CD8+T細胞である。別の実施形態において、CD25+細胞はTreg細胞である。一実施形態において、STAT5リン酸化測定試験において、CD25-細胞を活性化するIL-2変異体の能力は、それぞれCD25-細胞およびCD25+細胞においてSTAT5リン酸化シグナルを活性化するIL-2変異タンパク質のEC50値を検出することによって同定される。例えば、CD25+細胞に対するIL-2変異タンパク質の活性化偏向性は、CD25-およびCD25+T細胞でSTAT5リン酸化シグナルを活性化するEC50値の比率を計算することによって決定される。好ましくは、野生型タンパク質と比較して、CD25+に対する変異タンパク質の偏向性は、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍、150倍、200倍、300倍またはそれ以上低減した。
【0072】
本発明の変異タンパク質
【0073】
一態様において、本発明は、野生型IL-2(好ましくはヒトIL-2で、より好ましくは配列番号1配列を含むIL-2)と比較して、以下の変異を含むIl-2変異タンパク質を提供する:
(i)IL-2のIL-2Rαとの結合界面に、特に位置35、37、38、41、42、43、45、61、68および72から選択される少なくとも1つの位置に、IL-2Rα受容体に対する結合親和性を排除または低減する変異、
および/または
(ii)短縮されたB’C’ループ領域(即ち、アミノ酸残基aa72とaa84を連結する配列)、好ましくは、10、9、8、7、6、または5未満のアミノ酸長を有し、且つ好ましくは7アミノ酸長を有し、好ましくは、前記短縮されたB’C’ループ領域はタンパク質の発現量および/または純度の改善をもたらす、前記短縮されたループ領域、
且つ以下の変異を含む:
(iii)IL-2のIL-2Rβγとの結合界面に、特に位置12、15、16、19、20、84、87、88、91、92、95、および126から選択される少なくとも1つの位置に、IL-2Rβγ受容体に対する結合を弱体化する変異、
ここで、アミノ酸の位置は配列番号1に従って番号付けされ、
好ましくは、前記変異タンパク質は、変異(i)と(iii)を含むか、または変異(ii)と(iii)を含むか、または(i)、(ii)と(iii)を含む。
【0074】
IL-2Rβγ結合界面の変異
【0075】
本発明の変異タンパク質に適用されるIL-2Rβγ結合界面の変異は、本発明の他の変異と組み合わせるとともに、IL-2Rβγ結合親和性の弱体化および/またはリンパ球(例えばT細胞/NK細胞)を活性化する活性の弱体化をもたらすことができる任意の変異であってもよい。
【0076】
このような変異の例は、IL-2のIL-2Rβγとの結合界面で、特に位置12、15、16、19、20、84、87、88、91、92、95、126から選択される少なくとも1つの位置に、IL-2Rβγ受容体結合の弱体化をもたらす変異を含むが、これらに限定されない。
【0077】
いくつかの実施形態において、IL-2Rβγ結合界面の変異は、
L12R、L12K、L12E、L12Q、E15Q、E15R、E15A、E15S、H16N、H16T、H16Y、H16A、H16E、H16D、H16R、L19D、L19E、L19R、L19S、D20N、D20Q、D20E、D20A、D20R、D20S、D84N、D84E、D84Q、D84T、D84S、D84R、D84G、D84M、D84F、D84L、D84K、D84H、S87T、S87R、S87K、S87L、S87M、S87H、N88D、N88T、N88Q、N88R、N88E、N88K、N88H、N88M、N88S、N88L、V91I、V91L、V91D、V91E、V91N、V91Q、V91S、V91H、I92E、I92T、I92K、I92R、I92L、E95Q、E95G、E95D、E95N、Q126E、Q126D、Q126A、Q126S、D84N+E95Q、D84E+E95Q、D84T+E95Q、D84Q+E95Q、D84T+H16T、D84N+V91I、D84T+Q126E、D84N+Q126E、H16T+D84Q、H16T+V91Iから選択される変異を含む。
【0078】
いくつかの好ましい実施形態において、前記IL-2Rβγ結合界面の変異は、
D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88R、N88D、N88Q、N88T、Q126E、V91Iから選択される変異を含む。
【0079】
さらなるいくつかの好ましい実施形態において、前記IL-2Rβγ結合界面の変異は、
-D84N、E95Q、H16Nから選択される変異、または
-D84Q、H16T+V91Iから選択される変異、または
-D84T、Q126E、D84N+V91I、およびD84N+E95Qから選択される変異、または
-N88D、N88R、D20N、D84N+E95Q、D84T+H16T、D84T+Q126E、D84N+Q126E、およびH16T+D84Qから選択される変異、または
さらなるいくつかの好ましい実施形態において、前記IL-2Rβγ結合界面の変異は、D20N、N88DおよびN88Rから選択される変異を含む。
【0080】
B’C’ループ領域の変異
【0081】
一態様において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、B’C’ループ領域の変異を含み、好ましくは前記変異はB’C’ループ領域の安定性の向上をもたらし、より好ましくは前記変異は本発明のIL-2変異タンパク質が増加された発現量および/または純度など、改善された創薬可能性を有することをもたらす。
【0082】
いくつかの実施形態において、導入された変異は、野生型IL-2(好ましくはヒトIL-2、より好ましくは配列番号1配列を含むIL-2)と比較して、変異タンパク質が短縮されたB’C’ループ領域(即ち、アミノ酸残基aa72とaa84との間の連結配列長が短縮された)を含むことをもたらす。
【0083】
好ましくは、前記短縮されたループ領域は、10、9、8、7、6または5未満のアミノ酸長を有し、且つ好ましくは7アミノ酸長を有し、ここで、アミノ酸残基は配列番号1に従って番号付けされる。
【0084】
本明細書において、本発明に適用されるB’C’ループ領域の変異はB’C’ループ領域の切断および置換を含む。一実施形態において、前記変異は、A(Q/G)SKN(F/I)Hを形成するための切断、またはSGDASIHによる置換など、B’C’ループ領域のアミノ酸残基aa73~aa83の切断または置換を含む。他の実施形態において、前記変異は、(Q/G)SKN(F/I)Hを形成するための切断、またはGDASIHによる置換など、B’C’ループ領域のアミノ酸残基aa74~aa83の切断または置換を含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、B’C’ループキメラ変異を含む。野生型IL-2と比較して、前記変異タンパク質は、他の4ヘリックス短鎖サイトカインファミリーのメンバーからの短いB’C’ループ配列による置換など、aa72~aa84を連結する配列のすべてまたは一部に対する置換を含む。IL-15、IL-4、IL-21などの他の4ヘリックス短鎖サイトカインILファミリーのメンバー、または非ヒト種(例えば、マウス)由来のILファミリーのメンバーから、結晶構造のsuperposeにより、野生型IL-2を置換するのに適用される短いB’C’ループを同定することができる。一実施形態において、置換のための配列は、インターロイキンIL-15(特にヒトIL-15)由来のB’C’ループ配列である。一実施形態において、前記置換は、B’C’ループ領域のアミノ酸残基aa73~aa83の置換を含む。他の実施形態において、前記置換は、B’C’ループ領域のアミノ酸残基aa74~aa83の置換を含む。好ましくは、置換後、本発明のIL-2変異タンパク質は、SGDASIHまたはAGDASIHから選択されるB’C’ループ配列(即ち、aa72~aa84を連結する配列)を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、B’C’ループ切断変異を含む。野生型IL-2と比較して、前記変異タンパク質は、aa72~aa84を連結する配列に対する切断を含む。一実施形態において、前記切断は、B’C’ループ領域のアミノ酸残基aa73~aa83の切断を含む。他の実施形態において、前記切断は、B’C’ループ領域のアミノ酸残基aa74~aa83の切断を含む。例えば、C末端から1、2、3または4個のアミノ酸を切断することができる。好ましくは、切断後、本発明のIL-2変異タンパク質のB’C’ループ領域は配列A(Q/G)SKN(F/I)Hを有する。好ましくは、切断後、本発明のIL-2変異タンパク質は以下から選択されるB’C’ループ配列(即ち、aa72~aa84を連結する配列)を有する:
【0087】
【表2】
【0088】
1つの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、AQSKNFHまたはSGDASIHまたはAGDASIHから選択されるB’C’ループ領域配列(即ち、aa72~aa84を連結する配列)を含む。
【0089】
本発明に適用されるB’C’ループ変異については、本出願人の同時係属中の出願PCT/CN2019/107054を参照することもできる。当該出願は、全て参照として本明細書に組み込まれている。
【0090】
IL-2Rα結合界面の変異
【0091】
一態様において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rα結合界面で、好ましくは位置35、37、38、41、42、43、45、61、68および72で、1つまたは複数の変異を含む。好ましくは、前記変異は、IL-2Rα受容体に対する結合親和性を排除または低減する。
【0092】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2Rα結合界面の変異は、以下の組み合わせ(1)~(9)の1つから選択される変異の組み合わせを含む:
【0093】
【表3】
【0094】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2Rα結合界面の変異は、変異の組み合わせK35E+T37E+R38E+F42Aを含むか、または前記変異の組み合わせからなる。
【0095】
他のいくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2Rα結合界面の変異は、変異の組み合わせK35E+T37E+R38Eを含むか、または前記変異の組み合わせからなる。
【0096】
他のいくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2Rα結合界面の変異は、変異F42Aを含むか、または前記変異からなる。
【0097】
他のいくつかの実施形態において、本発明のIL-2Rα結合界面の変異を含む本発明のIL-2変異タンパク質は、ForteBio親和性測定による変化したIL-2Rα結合など、変化したIL-2Rα結合を有する。
【0098】
本発明に適用されるIL-2Rα結合界面の変異については、本出願人の同時係属中の出願PCT/CN2019/107055を参照することもできる。当該出願は、全て参照として本明細書に組み込まれている。
【0099】
好ましい例示的な変異の組み合わせ
【0100】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、弱体化したIL-2Rβγ結合を有し、且つ(i)低減された(または排除された)IL-2Rα結合、および(ii)改善された発現レベルと純度の1項またはすべて2項から選択される改善された特性を有する。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明は、野生型IL-2と比較して、
(a)変異の組み合わせK35E+T37E+R38E+F42A、
(b)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含むIL-2変異タンパク質を提供する。
【0102】
いくつかの実施形態において、本発明は、野生型IL-2と比較して、
(a)変異の組み合わせK35E+T37E+R38E、
(b)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含むIL-2変異タンパク質を提供する。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明は、野生型IL-2と比較して、
(a)変異F42A、
(b)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含むIL-2変異タンパク質を提供する。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明は、野生型IL-2と比較して、
(a)B’C’ループ領域配列AQSKNFH、
(b)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含むIL-2変異タンパク質を提供する。好ましくは、前記IL-2変異タンパク質は、野生型IL-2タンパク質と比較して、IL-2Rα受容体結合能力が維持される。
【0105】
いくつかの実施形態において、本発明は、野生型IL-2と比較して、
(a)B’C’ループ領域配列SGDASIHまたはAGDASIH、
(b)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含むIL-2変異タンパク質を提供する。好ましくは、前記IL-2変異タンパク質は、野生型IL-2タンパク質と比較して、IL-2Rα受容体結合が維持される。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、
(i)変異の組み合わせK35E+T37E+R38E+F42A、または変異の組み合わせK35E+T37E+R38E、または変異F42A、
(ii)B’C’ループ領域配列AQSKNFHまたはSGDASIHまたはAGDASIH、
(iii)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、
(i)変異の組み合わせK35E+T37E+R38E+F42A、
(ii)B’C’ループ領域配列AQSKNFH、
(iii)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、
(i)変異の組み合わせK35E+T37E+R38E+F42A、
(ii)B’C’ループ領域配列SGDASIHまたはAGDASIH、
(iii)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含む。
【0109】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、
(i)変異の組み合わせK35E+T37E+R38E、
(ii)B’C’ループ領域配列AQSKNFH、
(iii)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、
(i)変異の組み合わせK35E+T37E+R38E、
(ii)B’C’ループ領域配列SGDASIHまたはAGDASIH、
(iii)D20N、D84E、D84N、D84N+E95Q、D84N+Q126E、D84N+V91I、D84Q、D84T、D84T+H16T、D84T+Q126E、E15Q、E95N、E95Q、H16N、H16N+D84N、H16T、H16T+D84Q、H16T+V91I、N88D、N88R、N88Q、N88T、Q126E、およびV91Iから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含む。
【0111】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、
(i)変異の組み合わせK35E+T37E+R38E+F42A、
(ii)B’C’ループ領域配列SGDASIHまたはAGDASIH、
(iii)IL-2Rβγ結合界面の変異D84NまたはD84N+E95Q、
および、場合により、(iv)変異T3A、を含む。より好ましくは、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、(i)変異の組み合わせK35E+T37E+R38E+F42A、(ii)B’C’ループ領域配列AGDASIH、(iii)IL-2Rβγ結合界面の変異D84N+E95Qを含む。
【0112】
さらなるいくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2タンパク質と比較して、IL-2Rα受容体に対する結合が維持され、且つ
(i)B’C’ループ領域配列AQSKNFH、SGDASIHまたはAGDASIH、
(ii)D20N、N88R、およびN88Dから選択されるIL-2Rβγ結合界面の変異、
および、場合により、(iii)変異T3A、を含む。好ましくは、IL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rα結合界面の変異を有さない。
【0113】
他のいくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2タンパク質と比較して、IL-2Rα受容体に対する結合が維持され、且つ
(i)B’C’ループ領域配列SGDASIHまたはAGDASIH、
(ii)IL-2Rβγ結合界面の変異D20N、またはN88R、またはN88D、
および、場合により、(iii)変異T3A、を含む。好ましくは、IL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rα結合界面の変異を有さない。
【0114】
他のいくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2タンパク質と比較して、IL-2Rα受容体に対する結合が維持され、且つ
(i)B’C’ループ領域配列AGDASIH、
(ii)IL-2Rβγ結合界面の変異D20N、またはN88R、またはN88D、
および、場合により、(iii)変異T3A、を含む。好ましくは、IL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rα結合界面の変異を有さない。
【0115】
さらなるいくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、野生型IL-2(例えば配列番号1)と比較して、IL-2Rα受容体に対する結合が維持され、且つ
(i)B’C’ループ領域配列AGDASIH、
(ii)IL-2Rβγ結合界面の変異N88R、
および、(iii)変異T3A、を含む。好ましくは、IL-2変異タンパク質は、野生型IL-2と比較して、IL-2Rα結合界面の変異を有さない。一実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、アミノ酸配列において配列番号1-3の1つに列挙された野生型IL-2タンパク質の成熟領域と少なくとも85%または90%の同一性を有する成熟領域を有する。
【0116】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、配列番号37-638(特に配列番号469-553または554-638、好ましくは配列番号148または197、より好ましくは配列番号489、513、516)の1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、前記変異タンパク質は、配列番号37-638から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異タンパク質は、配列番号469-553または554-638、好ましくは配列番号148または197、より好ましくは配列番号489、513、516から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはこれらからなる。
【0117】
その他の変異
【0118】
上記「IL-2Rβγ結合界面の変異」、「B’C’ループ領域の変異」および「IL-2Rα結合界面変異」を除いて、本発明のIL-2変異タンパク質の上記の1つまたは複数の有益な特性を保持すれば、本発明のIL-2変異タンパク質は、他の領域または位置に1つまたは複数の変異をさらに有してもよい。例えば、本発明のIL-2変異タンパク質は、発現または均質性または安定性の改善などのさらなる利点を提供するために、位置125での置換、例えばC125S、C125A、C125T、またはC125Vをさらに含むことができる(例えば、米国特許第4,518,584号参照)。さらに、例えば、本発明のIL-2変異タンパク質は、IL2のN末端でのO糖修飾を除去するために、T3Aなど、位置3での置換をさらに含むことができる。当業者は、本発明のIL-2変異タンパク質に組み込むことができる追加の変異をどのように決定するかを知っている。
【0119】
IL-2変異タンパク質と野生型タンパク質との間の配列の相違は、配列同一性によって、または両者の間の異なるアミノ酸の数によって表すことができる。一実施形態において、IL-2変異タンパク質と野生型タンパク質との間に少なくとも85%、86%、87%、88%、89%の同一性、好ましくは90%以上の同一性、好ましくは95%であるが、好ましくは97%以下、より好ましくは96%以下の同一性を有する。他の実施形態において、本発明の上記の3種類の変異を除いて、IL-2変異タンパク質と野生型タンパク質との間に、15個以下、例えば1~10個、または1~5個の変異、例えば、0、1、2、3、4個の変異を有してもよい。一実施形態において、前記残りの変異は保存的置換であってもよい。
【0120】
2.融合タンパク質とIL-2-Fc二量体タンパク質
【0121】
一態様において、本発明は、本発明のIL-2変異タンパク質を含む融合タンパク質をさらに提供する。1つの好ましい実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質は、改善された薬物動態特性を付与することができる別のポリペプチド、例えばアルブミン、より好ましくは抗体Fc断片と融合される。
【0122】
一実施形態において、本発明は、抗体Fc断片と融合される本発明のIL-2変異タンパク質を含むIL-2変異タンパク質融合タンパク質を提供する。
【0123】
本発明に使用されるFc断片は、エフェクター機能を低減または排除する変異を含むことができる。1つの好ましい実施形態において、Fc断片は、低減されたFc領域により媒介されるエフェクター機能を有し、例えば低減または排除されたADCCまたはADCPまたはCDCエフェクター機能を有する。例えば、いくつかの特別な実施形態において、本発明に使用されるFc断片は、Fcγ受容体に対する結合を低減するL234A/L235A変異またはL234A/L235E/G237Aを有する。
【0124】
さらなる好ましい実施形態において、Fc断片は、血清半減期を増加する変異、例えばFc断片とFcRnとの結合を改善する変異を有してもよい。
【0125】
いくつかの実施形態において、IL-2変異タンパク質と融合されるFc断片は、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG2 FcまたはヒトIgG4 FcなどのヒトIgG Fcである。一実施形態において、Fc断片は、アミノ酸配列配列番号12を含むか、またはそれと少なくとも90%の同一性、例えば95%、96%、97%、99%またはそれ以上の同一性を有する。
【0126】
いくつかの実施形態において、IL-2変異タンパク質は、リンカーによってFc領域と融合される。いくつかの実施形態において、CD25-T細胞に対するFc融合タンパク質の活性化作用を向上させるために、リンカーを選択することができる。一実施形態において、リンカーはGSGSであり、より好ましくは(G4S)2である。
【0127】
さらなる態様において、本発明はまた、Fc断片と融合される本発明のIL-2変異タンパク質を含む二量体分子を提供する。このような二量体分子は、分子量を60~80KDaに増加させ、腎クリアランスを大幅に減少させ、且つインビボでのFcRn媒介リサイクルを通じて、IL2-Fc融合タンパク質の半減期をさらに延長することができる。好ましくは、前記二量体分子は、野生型IL-2-Fc融合タンパク質を含む対応する二量体分子と比較して、以下の特性の1項または複数項を有する:
-哺乳動物細胞(例えばCHOまたはHEK293細胞)で発現される場合における発現量および/または純度の増加、
-IL-2によるリンパ球の過剰な活性化および/または炎症性因子の放出の低減または回避、
-例えば遅延するインビボ半減期など、より優れた薬物動態特性、
-低い心血管系毒性(例えば、低い血管漏出の副作用)など、インビボで投与される時の低毒性。
【0128】
好ましくは、本発明のIL-2変異タンパク質の二量体分子は、動物において投与される場合、良好な抗腫瘍効果と耐性を示す。抗腫瘍効果は、実施例に記載されている担がん動物実験での腫瘍抑制率の測定によって決定することができる。耐性は、実施例に記載されている投与後の動物モデルの体重およびその体重変化状況の検出によって決定することができる。
【0129】
いくつかの実施形態において、本発明により提供されるIL-2-Fc二量体タンパク質は、ホモ二量体であり、そのうち、第1のモノマーと第2のモノマーは、N末端からC末端まで、i)IL-2変異タンパク質、ii)リンカー、およびiii)Fc断片を含む。
【0130】
他のいくつかの実施形態において、本発明により提供されるIL-2-Fc二量体タンパク質は、ヘテロ二量体であり、
a)N末端からC末端まで、i)IL-2変異タンパク質、ii)リンカー、およびiii)第1のFc断片を含む第1のモノマーと、
b)第2のFc断片を含む第2のモノマーと、を含む。
【0131】
いくつかの実施形態において、第1のFc断片と第2のFc断片はそれぞれ、第1のモノマーと第2のモノマーがヘテロ二量体を形成することを促進する第1と第2のヘテロ二量体化変異を含む。いくつかの好ましい実施形態において、第1と第2のヘテロ二量体化変異は、例えば変異の組み合わせT366W/S354C:Y349C/T366S/L368A/Y407Vなど、Knob:Hole変異の組み合わせを含む。
【0132】
いくつかの好ましい実施形態において、第1のFc断片における第1のヘテロ二量体変異はKnob変異を含み、第2のFc断片における第2のヘテロ二量体変異はHole変異を含み、または、第1のFc断片における第1のヘテロ二量体変異はHole変異を含み、第2のFc断片における第2のヘテロ二量体変異はKnob変異を含む。
【0133】
当業者に理解されるように、本発明に適用される融合タンパク質と二量体分子のFc断片は任意の抗体Fc断片であってもよい。一実施形態において、本発明のFc断片は、エフェクター機能サイレントである。
【0134】
一実施形態において、Fc領域のエフェクター機能とFc領域の補体活性化機能から選択される1つまたは複数の特性でFc断片を修飾する。一実施形態において、前記エフェクター機能または補体活性化機能は、同じアイソタイプの野生型Fc領域と比較して、低減または排除されている。一実施形態において、Fc領域のグリコシル化を低減すること、低減または排除されたエフェクター機能を天然に有するFcアイソタイプを使用すること、およびFc領域を修飾することなどの方法によって、エフェクター機能を低減または排除する。
【0135】
一実施形態において、Fc領域のグリコシル化を低減することによってエフェクター機能を低減または排除する。一実施形態において、野生型のグリコシル化を許容しない環境で本発明の融合タンパク質または二量体分子を生産すること、Fc領域ですでに存在する炭水化物基を除去すること、および野生型のグリコシル化が起こらないようにFc領域を修飾することなどの方法によって、Fc領域のグリコシル化を低減する。一実施形態において、野生型のグリコシル化が起こらないように修飾する方法によって、Fc領域のグリコシル化を低減し、例えば、下記位置の野生型アスパラギン残基が当該位置のグリコシル化に干渉する別のアミノ酸で置換されるように、Fc領域の位置297で変異、例えばN297A変異を含む。
【0136】
一実施形態において、少なくとも1つのFc領域の修飾によって、エフェクター機能を低減または排除する。一実施形態において、少なくとも1つのFc領域の修飾は、位置238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、292、293、294、295、296、297、298、301、303、322、324、327、329、333、335、338、340、373、376、382、388、389、414、416、419、434、435、437、438および439から選択され、1つまたは複数のFc受容体との結合を破壊するFc領域の点変異、位置270、322、329および321から選択され、C1qとの結合を破壊するFc領域の点変異、およびCH1構造ドメインの位置132の点変異から選択される。一実施形態において、前記修飾は、位置270、322、329および321から選択され、C1qとの結合を破壊するFc領域の点変異である。別の実施形態において、前記修飾は、いくつかのFc領域を排除する。
【0137】
当業者に理解されるように、本発明のヘテロ二量体の形成を促進するために、本発明の二量体分子のFc断片は、第1のモノマーと第2のモノマーの二量体化に有利な変異を含むことができる。好ましくは、Knob-in-Hole技術に基づいて、第1のモノマーと第2のモノマーに対応するKnob変異とHole変異を導入する。
【0138】
したがって、一実施形態において、本発明の二量体分子は以下を含む:
i)場合により、変異P329G、L234AおよびL235Aを有する、ヒトIgG1サブクラスのホモ二量体Fc-領域、または
ii)場合により、変異P329G、S228PおよびL235Eを有する、ヒトIgG4サブクラスのホモ二量体Fc-領域、または
iii)ヘテロ二量体Fc-領域であって、そのうち
a) 1つのFc-領域ポリペプチドは変異T366Wを含み、別のFc-領域ポリペプチドは変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、または
b) 1つのFc-領域ポリペプチドは変異T366WおよびY349Cを含み、別のFc-領域ポリペプチドは変異T366S、L368A、Y407VおよびS354Cを含み、または
c) 1つのFc-領域ポリペプチドは変異T366WおよびS354Cを含み、別のFc-領域ポリペプチドは変異T366S、L368A、Y407VおよびY349Cを含む、ヘテロ二量体Fc-領域、
または
iv)ヒトIgG4サブクラスのヘテロ二量体Fc-領域であって、そのうち、2つのFc-領域ポリペプチドはいずれも、変異P329G、L234AおよびL235Aを含み、且つ
a) 1つのFc-領域ポリペプチドは変異T366Wを含み、別のFc-領域ポリペプチドは変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、または
b) 1つのFc-領域ポリペプチドは変異T366WおよびY349Cを含み、別のFc-領域ポリペプチドは変異T366S、L368A、Y407VおよびS354Cを含み、または
c) 1つのFc-領域ポリペプチドは変異T366WおよびS354Cを含み、別のFc-領域ポリペプチドは変異T366S、L368A、Y407VおよびY349Cを含む、ヒトIgG4サブクラスのヘテロ二量体Fc-領域、
または
v)ヒトIgG4サブクラスのヘテロ二量体Fc-領域であって、そのうち、2つのFc-領域ポリペプチドはいずれも、変異P329G、S228PおよびL235Eを含み、且つ
a) 1つのFc-領域ポリペプチドは変異T366Wを含み、別のFc-領域ポリペプチドは変異T366S、L368AおよびY407Vを含み、または
b) 1つのFc-領域ポリペプチドは変異T366WおよびY349Cを含み、別のFc-領域ポリペプチドは変異T366S、L368A、Y407VおよびS354Cを含み、または
c) 1つのFc-領域ポリペプチドは変異T366WおよびS354Cを含み、別のFc-領域ポリペプチドは変異T366S、L368A、Y407VおよびY349Cを含む、ヒトIgG4サブクラスのヘテロ二量体Fc-領域。
【0139】
いくつかの実施形態において、Fc領域は、ヘテロ二量体の精製に有利な他の変異をさらに含む。例えば、タンパク質Aを使用したヘテロ二量体の精製を容易にするために、H435R変異(Eric J.Smith,Scientific Reports 5:17943 DOI:10.1038/srep17943)をヘテロ二量体のFc領域の1つ(例えば、Hole変異を持つFc領域)に導入することができる。他のいくつかの実施形態において、ヒンジ領域を含むヘテロ二量体モノマーに関しては、ヘテロ二量体の形成を容易にするために、ヒンジ領域にC220Sなどの変異を導入することもできる。
【0140】
当業者には明らかなように、本発明に適用される融合タンパク質と二量体分子においてIL-2変異タンパク質とFc断片を連結するリンカーは、当該分野で既知の任意のリンカーであってもよい。いくつかの実施形態において、リンカーはIgG1ヒンジを含んでもよく、または(GS)n、(GSGGS)n、(GGGGS)n、and(GGGS)nから選択されるリンカー配列を含んでもよく、そのうち、nは少なくとも1の整数である。好ましくは、リンカーは、(G4S)2、即ちGGGGSGGGGSを含む。
【0141】
したがって、1つの好ましい実施形態において、本発明の二量体における各モノマーはいずれも、C末端でリンカー(G4S)2を介して配列番号12アミノ酸配列に連結する、配列番号37-638(特に配列番号469-553または554-638、好ましくは配列番号489、513、516)から選択されるIL-2変異タンパク質を含む。いくつかの好ましい実施形態において、二量体分子の第1のモノマーは、C末端でリンカー(G4S)2を介して配列番号9アミノ酸配列に連結する、配列番号37-638(特に配列番号469-553または554-638、好ましくは配列番号489、513、516)から選択されるIL-2変異タンパク質を含み、且つ第2のモノマーは配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0142】
3.免疫複合体
【0143】
本発明は、本発明のIL2変異タンパク質および抗原結合分子を含む免疫複合体をさらに提供する。好ましくは、抗原結合分子は、免疫グロブリン分子、特にIgG分子、または抗体もしくは抗体断片、特にFab分子およびscFv分子である。いくつかの実施形態において、前記抗原結合分子は、腫瘍細胞上または腫瘍環境中に存在する抗原、例えば、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、テネイシンCのA1ドメイン(TNC A1)、テネイシンCのA2ドメイン(TNC A2)、フィブロネクチンの外部ドメインB(Extra Domain B、EDB)、がん胎児抗原(CEA)、および黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)から選択される抗原に特異的に結合する。したがって、本発明の免疫複合体は、被験者への投与後に腫瘍細胞または腫瘍環境を標的にすることができ、さらなる治療上の利点、例えば、より低い用量での治療の可能性およびそれによる副作用の低減、抗腫瘍効果の増強などを提供する。
【0144】
本発明の免疫複合体において、本発明のIL-2変異タンパク質は、別の分子または抗原結合分子に直接またはリンカーを介して結合することができ、且ついくつかの実施形態において、タンパク質加水分解切断部位が両者の間に含まれる。
【0145】
4.ポリヌクレオチド、ベクターと宿主
【0146】
本発明は、前記の任意のIL-2変異タンパク質または融合タンパク質または二量体分子または複合体をコードする核酸を提供する。本発明の変異タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、当該分野で周知の方法により、新規固相DNA合成、または野生型IL-2をコードする既存の配列のPCR変異誘発によって産生することができる。なお、本発明のポリヌクレオチドおよび核酸は、分泌シグナルペプチドをコードするセグメントを含んでもよく、本発明の変異タンパク質をコードするセグメントに操作可能に連結されて、本発明の変異タンパク質の分泌発現を誘導することができる。
【0147】
本発明はまた、本発明の核酸を含むベクターを提供する。一実施形態において、ベクターは、例えば真核発現ベクターなどの発現ベクターである。ベクターは、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージまたは酵母人工染色体(YAC)を含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、本発明の発現ベクターはpYDO_017発現ベクターである。
【0148】
本発明はまた、前記核酸または前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。変異IL-2タンパク質または融合体または二量体または免疫複合体の発現を複製および支持するのに適用される宿主細胞は、当該分野で周知である。特定の発現ベクターでこのような細胞をトランスフェクションまたは形質導入することができるとともに、ベクターを含む多くの細胞を大規模な発酵槽に接種するために増殖させることができ、臨床的使用のための十分な量のIL-2変異体または融合体または二量体または免疫複合体が得られる。一実施形態において、宿主細胞は真核細胞である。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えばCHO細胞もしくは293細胞)から選択される。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系(COS-7)、ヒト胎児腎臓系(例えばGraham et al.,JGenVirol36,59(1977)に記載された293または293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ(sertoli)細胞(例えばMather,BiolReprod23,243-251(1980)に記載されたTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、buffaloラット肝臓細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(HepG2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT060562)、TRI細胞(例えばMather et al.,AnnalsN.Y.AcadSci383,44-68(1982)に記載された)、MRC5細胞およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、dhfr-CHO細胞(Urlaub et al.,ProcNatlAcadSciUSA77,4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、およびYO、NS0、P3X63およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。一実施形態において、宿主細胞は真核生物細胞であり、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、またはリンパ球(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)などの哺乳動物細胞である。
【0149】
5.調製方法
【0150】
さらなる態様において、本発明は、本発明のIL-2変異タンパク質または融合体または二量体または複合体を調製する方法を提供し、前記方法は、IL-2変異タンパク質または融合体または二量体または複合体の発現に適した条件下で、前記タンパク質または融合体または二量体または複合体をコードする核酸を含む上記で提供されるような宿主細胞を培養するステップと、場合により前記宿主細胞(または宿主細胞培地)から前記タンパク質または融合体または二量体または複合体を回収するステップとを含む。
【0151】
6.測定方法
【0152】
当該分野で既知の様々な測定方法を利用して、本明細書により提供されるIL-2変異タンパク質に対して同定、スクリーニング、またはその物理的/化学的特性および/または生物学的活性の特性評価を行うことができる。
【0153】
一態様において、本発明のIL-2変異タンパク質に対してIL-2受容体へのその結合活性を測定することができる。例えば、ELISA、Westernブロットなどのような当該分野で既知の方法、または本明細書の実施例に開示されている例示的な方法によって、ヒトIL-2Rαまたはβタンパク質またはIL-2RβγまたはIL-2Rαβγとの結合を測定することができる。例えば、細胞表面上で変異タンパク質を発現するようにトランスフェクションされた酵母ディスプレイ細胞などの細胞を、標識された(例えばビオチン標識された)IL-2Rαまたはβタンパク質またはIL-2RβγまたはIL-2Rαβγ複合物と反応させるフローサイトメトリーによって測定することができる。あるいは、結合動力学(例えばKD値)を含めて、変異タンパク質の受容体への結合は、IL-2-Fc融合体または二量体分子の形態を使用してForteBio測定法において測定することができる。
【0154】
さらなる態様において、受容体結合の下流で起こるシグナル伝達および/または免疫賦活効果を測定することによって、IL-2変異タンパク質のIL-2受容体に結合する能力を間接的に測定することができる。
【0155】
したがって、いくつかの実施形態において、生物学的活性を有する変異IL-2タンパク質を同定するための測定法を提供する。生物学的活性は、例えば、IL-2受容体を有するTおよび/またはNK細胞および/またはTreg細胞の増殖を誘導する能力、IL-2受容体を有するTおよび/またはNK細胞および/またはTreg細胞におけるIL-2シグナル伝達を誘導する能力、低下したT細胞におけるアポトーシスを誘導する能力、腫瘍の退縮を誘導するおよび/または生存を改善する能力、ならびに低下した血管透過性などの低下したインビボ毒性特性を含んでもよい。本発明は、インビボおよび/またはインビトロにこのような生物学的活性を有する変異IL-2タンパク質、そのFc融合体およびそれを含む二量体分子も提供する。
【0156】
当該分野で周知の様な方法は、IL-2の生物学的活性を測定するために使用することができる。例えば、(例えば、二量体分子の形態で)NK細胞によるIFN-γの生成を刺激する本発明のIL-2変異タンパク質の能力を試験するための適切な測定法は、培養されたNK細胞を本発明の変異IL-2タンパク質とインキュベートし、その後、ELISAによって培地中のIFN-γ濃度を測定するステップを含むことができる。IL-2シグナル伝達は、いくつかのシグナル伝達経路を誘導し、JAK(Janusキナーゼ)およびSTAT(シグナル伝達物質および転写活性化因子)シグナル伝達分子に関与する。
【0157】
IL-2と受容体βおよびγサブユニットとの相互作用は、受容体およびJAK1とJAK3(βおよびγサブユニットとそれぞれ結合する)のリン酸化をもたらす。次に、STAT5はリン酸化受容体と結合し、それ自体が非常に重要なチロシン残基上でリン酸化される。これによりSTAT5が受容体から解離し、STAT5が二量体化され、STAT5二量体が細胞核に移行し、当該位置に標的遺伝子の転写を促進する。したがって、IL-2受容体を介してシグナル伝達を誘導する変異体IL-2ポリペプチドの能力は、例えばSTAT5のリン酸化を測定することによって評価することができる。この方法の詳細は、実施例に開示されている。例えば、PBMCを本発明の変異体IL-2ポリペプチドまたは融合体または二量体または免疫複合体で処理し、リン酸化STAT5のレベルをフローサイトメトリーによって測定することができる。
【0158】
さらに、腫瘍成長および生存に対する変異IL-2の影響は、当該分野で既知の様々な動物腫瘍モデルにおいて評価することができる。例えば、がん細胞系の異種移植片を免疫不全マウスに移植し、本発明の変異体IL-2ポリペプチドまたは融合体または二量体または免疫複合体で処理することができる。腫瘍抑制率(例えば、アイソタイプ対照抗体と比較して計算される)に基づいて、本発明の変異体IL-2ポリペプチド、融合体、二量体および免疫複合体のインビボ抗腫瘍効果を検出することができる。なお、動物の体重変化(例えば、投与前と比較して、絶対体重の変化または体重変化パーセント)に基づいて、本発明の変異体IL-2ポリペプチド、融合体、二量体分子および免疫複合体のインビボ毒性を測定することができる。死亡率、生存期間観察(行動、体重、体温などの有害作用の目に見える症状)および臨床的および解剖学的病理学(例えば、血液化学値の測定および/または組織病理学的分析)に基づいて、前記インビボ毒性を測定することもできる。
【0159】
さらなる態様において、当該分野で既知の方法によって、発現量と製品の純度などの本発明の変異タンパク質の創薬可能性を特徴付けることができる。発現量の測定について、変異タンパク質が培養細胞から分泌され、培養上清で発現される場合、遠心分離により収集された細胞培養液のタンパク質含有量を測定することができる。あるいは、収集された細胞培養液のワンステップの精製後に、例えばワンステップアフィニティークロマトグラフィー精製後に、測定することができる。製品純度の測定について、得られた生産細胞の培養上清に対してワンステップアフィニティークロマトグラフィー精製を実施した後、純度を測定して、変異タンパク質の精製性能を検出することができる。好ましくは、本発明の変異タンパク質は、このワンステップアフィニティークロマトグラフィーによる精製後、野生型タンパク質よりも有意に優れた純度を有し、本発明の変異タンパク質がより良好な精製性能を有することを示している。純度測定法は、SEC-HPLC法を含むが、これに限定されない、当該分野で既知の任意の従来の方法であってもよい。
【0160】
さらなる態様において、当該分野で既知の方法によって、本発明の変異タンパク質、融合体および二量体分子の半減期などの薬物動態特性を特徴付けることができる。
【0161】
7.IL-2タンパク質の改造方法
【0162】
一態様において、本発明は、改善された特性を有するIL-2変異タンパク質を得るための方法およびこの方法により得られたIL-2変異タンパク質を提供する。
【0163】
一実施形態において、本発明の方法は、
(1)IL-2のB’C’ループ領域で変異により当該ループ領域配列を短縮させ、および、場合によりIL-2のIL-2Rβγとの結合界面に1つまたは複数の変異を導入し、および/またはIL-2のIL-2Raとの結合界面に1つまたは複数の変異を導入するステップと、
(2)哺乳動物細胞(例えばHEK293またはCHO細胞)において、IL-2変異タンパク質を、例えばFc融合体(例えばFcLALA融合体)の形態で発現するステップ、を含む。
【0164】
さらなる実施形態において、本発明の方法は、
(1)IL-2のIL-2Rβγとの結合界面に1つまたは複数の変異を導入し、および、場合によりIL-2のB’C’ループ領域で変異により当該ループ領域配列を短縮させ、および/またはIL-2のIL-2Raとの結合界面に1つまたは複数の変異を導入し、好ましくは一実施形態において、IL-2のIL-2Raとの結合界面に変異を導入しないステップと、
(2)哺乳動物細胞(例えばHEK293またはCHO細胞)において、IL-2変異タンパク質を、例えばFc融合体(例えばFcLALA融合体)の形態で発現するステップ、を含む。
【0165】
上記の任意の実施形態において、好ましくは、前記短縮されたループ領域は10、9、8、7、6、または5未満のアミノ酸長を有し、且つ好ましくは7アミノ酸長を有し、
より好ましくは、前記B’C’ループ領域の変異は、以下を含む:
(a)B’C’ループ領域のaa74~aa83に対する置換、例えば、IL15のB’C’ループ配列など、4ヘリックス短鎖サイトカインのILファミリーのメンバーからの短いB’C’ループ配列による置換、好ましくは配列GDASIHによる置換、または
(b)B’C’ループ領域のaa74~aa83に対する切断、例えばC末端からの1、2、3または4個のアミノ酸の切断、好ましくは配列(Q/G)SKN(F/I)Hを形成するための切断、より好ましくは以下から選択される配列を形成するための切断:
【0166】
【表4】
【0167】
好ましくは、前記IL-2Rβγ結合界面の変異は、上記IL-2Rβγ結合界面の変異を含み、
好ましくは、前記IL-2Rα結合界面の変異は、上記IL-2Rα結合界面の変異を含み、
好ましくは、前記変異タンパク質は、(i)改善された発現量および/またはタンパク質の純度(例えば、SEC-HPLC検出による、ワンステップアフィニティークロマトグラフィー後の純度)、および、場合により、(ii)弱体化されたIL2Rβ結合および/または(iii)変化したIL-2Ra結合という改善された特性を有する。
【0168】
一実施形態において、本発明の方法は、ステップ(1)と(2)の後に、(i)発現量および/または精製後のタンパク質の純度(例えば、SEC-HPLC検出による、ワンステップアフィニティークロマトグラフィー後の純度)、および、場合により、(ii)弱体化されたIL2Rβ結合、および/または(iii)変化したIL2Rα結合という変異タンパク質の特性を同定するステップをさらに含む。さらなる実施形態において、本発明の方法は、ステップ(1)と(2)の後に、(i)発現量および/または精製後のタンパク質の純度(例えば、SEC-HPLC検出による、ワンステップアフィニティークロマトグラフィー後の純度)、および(ii)弱体化されたIL2Rβ結合、且つ好ましくは維持されたIL2Rα結合という変異タンパク質の特性を同定するステップをさらに含む。
【0169】
一実施形態において、前記方法は、ステップ(1)の変異の組み合わせを行う前に、創薬可能性(例えば、発現量および/または製品安定性および/または均質性、例えば、ワンステップFcアフィニティークロマトグラフィー純度)が改善されたIL-2変異を同定するステップを含む。1つの好ましい実施形態において、B’C’loopループを短縮されたB’C’loopループに置換または切断することにより、変異タンパク質の創薬可能性を改善する。
【0170】
一実施形態において、前記方法は、ステップ(1)の変異の組み合わせを行う前、野生型IL-2と比較して、弱体化されたIL2Rβ結合および/または変化したIL-2Ra結合の能力を付与するIL-2Rβγ結合界面の変異および/またはIL-2Rα結合界面の変異を同定するステップを含む。
【0171】
当業者には明らかなように、これらの変異を、さらに改善された創薬可能性または他の改良された特性を付与する変異と組み合わせて、複数の改良された特性を有するIL-2変異タンパク質を得ることができる。
【0172】
一実施形態において、(例えば既知の)IL-2Rβγ結合の弱体化をもたらすIL-2Rβγ結合界面の変異を、(例えば既知の)創薬可能性が改善されたB’C’ループ領域の変異と組み合わせて、IL-2タンパク質に導入して特性を同定する。1つの好ましい実施形態において、前記同定は、野生型IL-2と比較して、弱体化されたIL-2Rβγ結合および改善された創薬可能性(例えば改善された発現および/または純度、および/または製品安定性および/または均質性)、場合により、基本的に変化しないかまたは弱体化されたか増強されたIL-2Rα結合親和性を含む。
【0173】
いくつかの実施形態において、変異テンプレートとして使用される親野生型IL-2タンパク質は、好ましくは、配列番号1と少なくとも85%、または少なくとも90%もしくは95%の同一性を有し、より好ましくは、ヒト由来のIL-2タンパク質である。
【0174】
8.医薬組成物と医薬製剤
【0175】
本発明は、IL-2変異タンパク質またはその融合体または二量体または免疫複合体を含む組成物(医薬組成物または医薬製剤を含む)、およびIL-2変異タンパク質またはその融合体または二量体または免疫複合体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物をさらに含む。これらの組成物はまた、当該分野で既知の薬学的に許容可能な担体、緩衝剤を含む薬学的に許容可能な賦形剤などの適切な薬学的に許容可能な補助材料を必要に応じて含んでもよい。
【0176】
9.組み合わせ製品
【0177】
一態様において、本発明は、本発明の変異タンパク質またはその融合体または二量体または免疫複合体、および1種または複数種の他の治療剤(例えば、化学療法剤、他の抗体、細胞傷害剤、ワクチン、抗感染症剤など)を含む組み合わせ製品をさらに提供する。本発明の組み合わせ製品は、本発明の治療方法において使用できる。
【0178】
いくつかの実施形態において、本発明は、組み合わせ製品を提供し、ここで、前記他の治療剤が、例えば、免疫応答を刺激して被験者の免疫応答をさらに増強、刺激または上方制御するのに有効な、抗体などの治療剤である。
【0179】
いくつかの実施形態において、前記組み合わせ製品はがんの予防または治療に用いられる。いくつかの実施形態において、がんは、例えば、直腸がん、結腸がん、結腸直腸がんなどの胃腸管のがんである。いくつかの実施形態において、前記組み合わせ製品は、例えば細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、原生動物感染などの感染の予防または治療に用いられる。
【0180】
10.治療方法と使用
【0181】
本明細書において、「個体」または「被験者」という用語は、互換的に使用されてもよく、哺乳動物を指す。哺乳動物は、家畜(例えば、乳牛、綿羊、ネコ、イヌとウマ)、霊長類(例えば、ヒトとサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギおよびげっ歯類(例えば、マウスとラット)を含むが、これらに限定されない。特に、被験者はヒトである。
【0182】
本明細書において、「治療」という用語は、治療を受けている個体における疾病の天然過程を変化させようとする臨床的介入を指す。所望の治療效果は、疾病の発生または再発の防止、症状の軽減、疾病の如何なる直接的または間接的な病理学的結果の減少、転移の防止、病状進展速度の低減、疾病の状態の改善または緩和、および予後の緩和または改善を含むが、これらに限定されない。
【0183】
一態様において、本発明は、有効量の本発明のIL-2変異タンパク質または融合体または二量体または免疫複合体を含む医薬組成物を被験者に投与するステップを含む、被験者の免疫系を刺激する方法を提供する。
【0184】
本発明の弱体化されたIL-2-Fc分子は、リンパ球の強力な刺激によって引き起こされる炎症性因子の過剰な放出を効果的に回避することができ、より安定して長時間作用する薬物動態特性を有する。したがって、一実施形態において、比較的低い単回投与量によって、Cmaxが高すぎることによる薬物関連毒性を回避するのに十分に高いヒト薬物曝露量を達成することができる。
【0185】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、有効量の本明細書に記載の任意のIL-2変異タンパク質、またはその融合体または免疫複合体を被験者に投与するステップを含む、被験者の身体の免疫応答を増強する方法に関する。いくつかの実施形態において、本発明のIL-2変異タンパク質またはその融合体または免疫複合体を、腫瘍を有する被験者に投与し、抗腫瘍免疫応答を刺激する。別のいくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合部分を、感染を有する被験者に投与し、抗感染免疫応答を刺激する。
【0186】
別の態様において、本発明は、有効量の本明細書に記載の任意のIL-2変異タンパク質、またはその融合体または免疫複合体を前記被験者に投与するステップを含む、がんなどの被験者の疾患を治療する方法に関する。がんは、早期、中期もしくは末期にあるがんまたは転移性がんであってもよい。いくつかの実施形態において、がんは、例えば、直腸がん、結腸がん、結腸直腸がんなどの胃腸管のがんであってもよい。
【0187】
別の態様において、本発明は、有効量の本明細書に記載の任意のIL-2変異タンパク質またはその断片、または前記抗体もしくは断片を含む免疫複合体、多重特異性抗体、または医薬組成物を前記被験者に投与するステップを含む、慢性感染などの被験者の感染性疾患を治療する方法に関する。一実施形態において、前記感染はウイルス感染である。
【0188】
別の態様において、本発明は、有効量の本明細書に記載の任意のIL-2変異タンパク質またはその断片、または前記抗体もしくは断片を含む免疫複合体、多重特異性抗体、または医薬組成物を前記被験者に投与するステップを含む、対象におけるTreg調節関連疾患の治療方法に関する。一実施形態において、前記疾患は、IL-2により媒介されるTreg細胞を介する免疫ダウンレギュレートに関連する。一実施形態において、前記疾患は、自己免疫性疾患である。
【0189】
本発明の変異タンパク質(およびそれを含む医薬組成物またはその融合体または二量体または免疫複合体、任意の他の治療剤)は、非経口投与、肺内投与、鼻腔内投与を含む任意の適切な方法により投与されてもよく、且つ、局所治療に必要な場合、病巣内に投与されてもよい。非経口注入は、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与または皮下投与を含む。投与が短期であるか長期であるかによってある程度決まり、投与は、例えば、静脈内注射投与または皮下注射投与などの注射を含む任意の適切な経路によることができる。本明細書において、非限定的であるが、単回投与または複数の時刻での複数回投与、ボーラス投与、パルス注入などの様々な投与スケジュールが含まれる。
【0190】
疾患を予防または治療するために、本発明の変異タンパク質の適切な用量(単独で投与される場合または1種または複数種の他の治療剤と組み合わせて投与される場合)が、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度とその進行、予防目的の投与か治療目的の投与か、過去の治療、患者の臨床病歴および前記抗体に対する応答、主治医の判断によって決定される。前記抗体は、単回の治療で、または一連の治療にわたって患者に適切に投与される。
【0191】
さらなる態様において、本発明はまた、上記の方法に使用される(例えば治療のため)薬物の調製における、本発明のIL-2変異タンパク質、組成物、免疫複合体、融合体、二量体分子の使用を提供する。
【0192】
本発明の理解を補助するために、以下の実施例を説明する。如何なる方法によっても、実施例を、本発明の請求範囲を制限するものと解釈する意図はなく、そうすべきでもない。
【実施例
【0193】
実施例1:インターロイキン2のIL-2Rα結合界面変異体の設計と構築
【0194】
インターロイキン2変異ライブラリーの設計と構築
【0195】
変異ライブラリーの設計
【0196】
インターロイキン2(Interleukin-2、IL-2と略称)とそのα受容体CD25(IL-2Rαと略称)複合物の結晶構造(PDB:1Z92)(図1に示す)に基づいて、相互作用部位のIL-2残基を表1に示されるように変異させた。野生型IL-2(uniprot:P60568,aa21-153,C125S、IL-2WTと略称)は、変異ライブラリー構築のテンプレートとした。各部位の元のアミノ酸は50%の割合を占め、残りの50%の割合は、表1の「変異アミノ酸」で均等に分割されるように、IL-2とIL-2Rαの相互結合部位に対する酵母ベースの、IBYDL029(Innoventbio Yeast Display Library)と命名されたIL-2mutantディスプレイライブラリーを設計および産生した。フローサイトメトリーFACSにより、ライブラリーからIL-2Rαと結合しないIL-2変異体をスクリーニングした。
【0197】
【表5】
【0198】
IL-2WTの配列は、本出願において、ジスルフィド架橋IL-2二量体の形成を回避するために125位にC125S変異が導入された配列番号1に示されている。
【0199】
既存の文献によると、IL-2変異体IL-23XはIL-2Rαに結合せず、IL-2Rβへの結合力が一定に維持された(Rodrigo Vazquez-Lombardi et al,Nature Communications,8:15373,DOI:10.1038/ncomms15373)。IL-23Xを酵母表面にディスプレイし、対照として使用した。IL-23Xの配列は配列番号4に示され、当該タンパク質はIL-2WTと同様に、C125S変異も含む。
【0200】
IL-2Rα結合界面変異体の同定
【0201】
IL-2受容体の発現と精製
【0202】
ベクターの構築
【0203】
IL-2受容体IL-2Rα(Uniprot:P01589,aa22-217)およびIL-2Rβ(Uniprot:P14784,aa27-240)は配列のC末端にaviタグ(GLNDIFEAQKIEWHE、当該タグペプチドはBirA酵素によって触媒されてビオチン化することができる)および6つのヒスチジンタグ(HHHHHH)を連結し、pTT5ベクター(Addgene)にそれぞれ構築した。構築によって産生された受容体の配列は配列番号5および6に示されている。
【0204】
IL-2受容体βγ複合物はKnobs in holesに基づいたFcヘテロ二量体であり、IL-2Rβの配列はFc-KnobのN末端(配列番号7)に構築され、IL-2Rγの配列はFc-HoleのN末端(配列番号8)に構築され、それぞれpcDNA3.1ベクターに構築された後、Expi293細胞で共発現された。
【0205】
プラスミドのトランスフェクション
【0206】
必要なトランスフェクション体積に応じて、Expi293細胞(Invitrogen)を継代し、トランスフェクションの前日に細胞密度を1.5×106個の細胞/mLに調整した。トランスフェクションの当日に細胞密度は約3×106個の細胞/mLであった。最終体積の1/10(v/v)のOpti-MEM培地(Gibco製品番号:31985-070)をトランスフェクション緩衝液として、上記で構築した発現プラスミドを加え、均一に混合し、0.22μmのフィルターヘッドで濾過して使用に備えた。前のステップのプラスミドに適量のポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences,23966)を加え(プラスミドとPEIの質量比率が1:3)、均一に混合してから室温で10minインキュベートし、DNA/PEI混合物を得た。DNA/PEI混合物をHEK293細胞に緩やかに注入して均一に混合し、37℃、8%のCO2の条件下で24h培養した後、最終濃度が2mMおよび2%(v/v)のFeed(1g/L Phytone Peptone+1g/L Difco Select Phytone)になるまでVPA(Sigma,製品番号:P4543-100G)を追加し、引き続き6日間培養した。
【0207】
IL-2Rα-HisとIL-2Rβ-Hisタンパク質の精製
【0208】
精製前に、収集した培地を4500rpmで30min遠心分離して、細胞を捨てた。次に上清を0.22μmのフィルターで濾過した。精製に使用したニッケルカラム(5mL Histrap excel,GE,17-3712-06)を0.1MのNaOHで2h浸漬した後、5~10倍カラム体積の超純水ですすぎ、アルカリ液を除去した。精製前に5倍カラム体積の結合緩衝液(20mMのTris pH 7.4,300mMのNaCl)で精製カラムを平衡化し、細胞上清を平衡化したカラムに通し、10倍カラム体積の洗浄緩衝液(20mMのTris 7.4,300mMのNaCl,10mMのimidazole)をカラムに通し、非特異的に結合するヘテロタンパク質を除去し、次いで目的のタンパク質を3~5倍カラム体積の溶出液(20mMのTris 7.4,300mMのNaCl,100mMのimidazole)で溶出した。収集したタンパク質を限外濾過によって濃縮してPBS(Gibco,70011-044)に交換した後、superdex200 increase(GE,10/300GL,10245605)でさらに単離して精製し、単量体の溶出ピークを収集し、カラムの平衡化および溶出緩衝液はPBS(Gibco,70011-044)であった。100μgの精製後のタンパク質試料を取り、ゲル濾過クロマトグラフィーカラムSW3000(TOSOH製品番号:18675)でタンパク質の純度を測定した。
【0209】
IL-2受容体βγタンパク質の精製
【0210】
細胞を培養した後、13000rpmで20min遠心分離し、上清を収集し、プレ充填カラムHitrap Mabselect Sure(GE,11-0034-95)で上清を精製した。操作は以下のとおりである。精製前に5倍カラム体積の平衡液(0.2MのTris,1.5MのNaCl,pH7.2)で充填カラムを平衡化し、収集した上清をカラムに通し、さらに10倍カラム体積の平衡液で充填カラムを洗浄し、非特異的に結合するタンパク質を除去し、5倍カラム体積の溶出緩衝液(1Mのsodium citrate,pH3.5)で充填剤をすすぎ、溶出液を収集し、収集したタンパク質を限外濾過によって濃縮してPBS(Gibco,70011-044)に交換し、その後superdex200 increase(GE,10/300GL,10245605)を用いてさらに単離して精製し、単一の溶出ピークを収集し、カラムの平衡化および溶出緩衝液はPBS(Gibco,70011-044)であった。100μgの精製後のタンパク質試料を取り、ゲル濾過クロマトグラフィーカラムSW3000(TOSOH製品番号:18675)でタンパク質の純度を測定した。
【0211】
IL-2Rα、IL-2RβおよびIL-2Rβγタンパク質のビオチン化標識
【0212】
酵素触媒法によるビオチンの標識方法は、以下のとおりである。上記のように発現および精製された適量のIL-2Rα、IL-2RβおよびIL-2Rβγタンパク質溶液の各々に、1/10(m/m)質量のHis-BirAタンパク質(uniprot:P06709)を加え、同時に最終濃度が2mMのATP(sigma製品番号:A2383-10G)、5mMのMgCl2、0.5mMのD-ビオチン(AVIDITY製品番号:K0717)を加え、30℃で1hインキュベートし、Superdex200 increase(GE,10/300GL,10245605)により精製し、余分なビオチンとHis-BirAを除去し、精製後の試料をFortebioのStreptavidin(SA)センサ(PALL、18-5019)により検証し、ビオチン標識の成功を確認した。
【0213】
IL-2mutant-FC融合タンパク質の発現、精製および同定
【0214】
発現プラスミドの構築
【0215】
フローサイトメトリーFACSを使用して、酵母ベースのIL-2mutantディスプレイライブラリーIBYDL029からIL-2Rαに結合しないIL-2mutantをスクリーニングした。IL-2mutant-FC融合タンパク質を発現するために、ライブラリーからスクリーニングされたIL-2mutant配列を2つのGGGGSを介してFcLALAに連結するとともに、pCDNA3.1(Addgene)のベクターに構築した。
【0216】
なお、対照として、IL-2WT-FCおよびIL-23X-FC融合タンパク質を発現するために、IL-2WT、IL-23X遺伝子配列を2つのGGGGSを介してFcLALAに連結するとともに、pCDNA3.1に構築した。本実施例で使用されるFcは、変異L234AおよびL235Aを有するヒトIgG1のFc(FcLALAと略称、配列番号12)を指す。
【0217】
IL-2およびFC融合タンパク質の発現および精製
【0218】
化学トランスフェクション法によって融合タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターをHEK293細胞に導入した。化学トランスフェクション試薬PEIを使用して、製造業者によって提供されたプロトコルに従って培養されたHEK293細胞を一過性トランスフェクションした。まず超クリーンベンチでプラスミドDNAとトランスフェクション試薬を準備し、3mLのOpti-MEM培地(Gibco製品番号:31985-070)を50mLの遠心管に入れ、対応するプラスミドのDNAを30μg加え、プラスミドを含むOpti-MEM培地を0.22μmのフィルターヘッドで濾過し、続いて90μgのPEI(1g/L)を加え、20min静置した。DNA/PEI混合物を27mLのHEK293細胞に緩やかに注入して均一に混合し、37℃、8%のCO2の条件下で20h培養した後、最終濃度が2mMおよび2%(v/v)のFeedになるまでVPAを追加し、引き続き6日間培養した。
【0219】
細胞培養後、13000rpmで20min遠心分離し、上清を収集し、プレ充填カラムHitrap Mabselect Sureを用いて上清を精製した。操作は以下のとおりである。精製前に5倍カラム体積の平衡液(0.2MのTris, 1.5MのNaCl,pH7.2)で充填カラムを平衡化し、収集した上清をカラムに通し、さらに10倍カラム体積の平衡液で充填カラムを洗浄し、非特異的に結合するタンパク質を除去し、5倍カラム体積の溶出緩衝液(1Mのsodium citrate,pH3.5)で充填剤をすすぎ、溶出液を収集し、溶出液1mLあたり80μLのTris(2MのTris)を加え、限外濾過濃縮管を用いてPBS緩衝液に交換し、濃度を測定した。100μgの精製後のタンパク質を濃度が1mg/mLになるまで調整し、ゲル濾過クロマトグラフィーカラムでIL-2-Fc二量体タンパク質の純度を測定した。結果は表2に示される。図3は、表2にリストされた本発明のIL-2変異体の配列を示す。
【0220】
【表6】
【0221】
IL-2mutant-FCとその受容体との親和性測定
【0222】
バイオレイヤー干渉(ForteBio)測定法を使用して本発明のIL-2mutant-FCとその受容体の平衡解離定数(KD)を測定した。
【0223】
ForteBio親和性測定は従来の方法(Estep,P et al.,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs,2013.5(2):p.270-8)に従って行われた。簡単に言えば、候補IL-2mutant-FCのIL-2Rα、IL-2Rβのそれぞれとの親和性を次のように測定した。センサを分析緩衝液でオフラインで20min平衡化し、次にオンラインで120秒検出してベースラインを確立した。ヒトビオチン化標識されたIL-2RαまたはIL-2RβをSAセンサ(PALL,18-5019)にロードしてForteBio親和性測定を行った。プラトー段階になるまで、ビオチン化標識されたIL-2RαまたはIL-2Rβをロードしたセンサを、100nMのIL-2mutant-FCを含む溶液に配置した後、結合と解離速度を測定するために、センサを分析緩衝液に移して少なくとも2min解離した。1:1結合モデルを利用して動力学的分析を行った。
【0224】
上記の測定法で行われた実験において、HEK293-Fで発現されたIL-2mutant-FCとその受容体との親和性KD値は表3に示される。対照として、同じ方法で測定されたIL-2WT-FCおよびIL-23X-FC融合タンパク質の親和性KD値も表3に示される。
【0225】
【表7】
【0226】
親和性データから分かるように、IBYDL029ライブラリーから得られた上記変異体は、いずれもIL-2Rαへの結合を遮断する。
【0227】
実施例2:IL-2キメラおよび切断変異体の構築、スクリーニングおよび同定
【0228】
IL-2 B’C’loopキメラ体と切断体の設計
【0229】
B’C’loop:IL-2のB helixとC helixとの連結配列(図2A)であり、A73-R83の合計11個のアミノ酸を含む。
【0230】
IL-2モノマー(PDB:1M47)と複合物の結晶構造(PDB:2ERJ)を比較したところ、B’C’loopが溶液中で非常に活発であり、比較的安定したコンフォメーションを形成できないため、IL-2モノマーの結晶構造でB’C’loopが欠失していることが見出された。
【0231】
B’C’loopを遺伝子操作することによって、B’C’loopの安定性を向上させ、IL-2の安定性を向上させた。したがって、ヒトIL15結晶構造(PDB:2Z3Q)をアラインメントし、そのB’C’loopが短くて安定であることを見出した(図2B)。したがって、1つのIL-2キメラ分子(L017)と4つの切断分子(L057~L060)を設計した(表4に示す)。
【0232】
【表8】
【0233】
発現プラスミドの構築
【0234】
野生型IL-2(uniprot:P60568,aa21-153,C125S,IL-2WTと略称)、およびIL-2変異体IL-23X(R38D、K43E、E61R)、B’C’loopキメラ体および切断体を、GSGS連結配列を介してヒトIgG1のFc(L234A、L235A,FcLALAと略称され,配列番号12)に連結するとともに、pTT5のベクターに構築し、以下のタンパク質を発現した:
【0235】
【表9】
【0236】
B’C’loopキメラ体(Y017)または切断体(Y057)をライブラリーからスクリーニングして得られた変異体Y30E1(K35E、T37E、R38E、F42A)と組み合わせて、2つのGGGGSを介してFcLALAに連結するとともに、pCDNA3.1のベクターに構築し、以下のタンパク質を発現した。ここで、Y092は、キメラB’C’loopループ配列AGDASIHを有し、Y144は、IL-2のN末端のO糖修飾を除去するために、Y092をもとにT3Aアミノ酸置換を増加した。
【0237】
【表10】
【0238】
なお、IL-2WTおよびIL-23Xを2つのGGGGSを介してFcLALAに連結するとともに、pCDNA3.1のベクターに構築し、以下のタンパク質を発現した。
【0239】
【表11】
【0240】
上記タンパク質分子の具体的な配列情報は配列表に示す。
【0241】
融合タンパク質の発現および精製
【0242】
上記タンパク質分子は、それぞれ293細胞とCHO細胞で発現された。HEK293細胞での発現は、IL-2-Fc融合タンパク質の発現に用いられる実施例1の方法に従って行われた。CHO細胞での発現は、以下のように行われた。
【0243】
必要な細胞体積に応じて、ExpiCHO細胞(Invitrogen)を継代し、トランスフェクションの前日に細胞密度を3.5×106個の細胞/mLに調整した。トランスフェクションの当日に細胞密度(約8~10×106個の細胞/mL)を検出し、生存率は95%以上に達した。ExpiCHOTM Expression Medium(Gibco製品番号:A29100-01)で細胞密度を6×106個の細胞/mLに調整した。最終体積の8%(v/v)のOptiPROTM SFM(Gibco製品番号:12309-019)をトランスフェクション緩衝液として、対応する量(0.8μg/mL細胞)のプラスミドを加え、均一に混合し、0.22μmの濾過膜で濾過して除菌し、3.2μL/mLの細胞比でExpiFectamineTM CHO Transfection Kit(Gibco,製品番号:A29130)におけるreagentを加えた。トランスフェクション試薬とプラスミドDNAによって形成された複合物を室温で1~5minインキュベートした後、細胞に徐々に加え、37℃、8%のCO2の条件下で18h培養した後、0.6%(v/v)のEnhancerおよび30%(v/v)のFeedを加え、引き続き6日間培養した。
【0244】
細胞を培養した後、細胞培養液を13000rpmで20min遠心分離し、上清を収集し、プレ充填カラムHitrap Mabselect Sure(GE,11-0034-95)で上清を精製した。操作は以下のとおりである。精製前に5倍カラム体積の平衡液(20mMのTris,150mMのNaCl,pH7.2)で充填カラムを平衡化し、収集した上清をカラムに通し、さらに10倍カラム体積の平衡液で充填カラムを洗浄し、非特異的に結合するタンパク質を除去し、5倍カラム体積の溶出緩衝液(100mMのsodium citrate,pH 3.5)で充填剤をすすぎ、溶出液を収集した。溶出液1mLあたり80μLのTris(2MのTris)を加え、限外濾過濃縮管(MILLIPORE、製品番号:UFC901096)を用いてPBS緩衝液(Gibco、製品番号:70011-044)に交換し、濃度を測定した。100μgの精製後のタンパク質を濃度が1mg/mLになるまで調整し、ゲル濾過クロマトグラフィーカラムSW3000(TOSOH製品番号:18675)でタンパク質の純度を測定した。
【0245】
B’C’loopキメラ体(Y017)および切断体(Y057/058/059)の融合タンパク質は、野生型IL-2の融合タンパク質(Y001)と比較して、HEK293細胞での発現量およびワンステップアフィニティークロマトグラフィー純度がすべて有意に向上した。結果は下記の表5に示される。
【0246】
【表12】
【0247】
B’C’loopキメラ体(Y092とY144)、切断体(Y089)およびさらなる変異Y30E1を含む融合タンパク質は、野生型IL-2の融合タンパク質(Y045)と比較して、CHO細胞での発現量およびワンステップアフィニティークロマトグラフィー純度も有意に向上した。結果は下記の表6に示される。
【0248】
【表13】
【0249】
上記データをまとめて分かるように、1)酵母ライブラリーからスクリーニングされたY30E1などの点変異分子は、IL-2Rαへの結合を遮断することができる。2)B’C’loopキメラ分子と切断分子は、分子の発現量と純度を増加させた。3)Y30E1とB’C’loop変異体との組み合わせ分子は、IL-2Rαを遮断するとともに、分子の発現量と純度を向上させた。
【0250】
変異体のインビトロ機能実験
【0251】
各IL-2mutant-FCによる初代ヒトCD8+T細胞におけるp-STAT5シグナルの活性化を検出することにより、各変異体のCD25+細胞とCD25-細胞に対する活性化を確認した。具体的なステップは以下のとおりである:
【0252】
1. PBMC細胞の蘇生:
a) 液体窒素からPBMC細胞(Allcells製品番号:PB005F,100M装)を取り出し、37℃の水浴釜中にすばやく入れ、PBMC細胞を蘇生させた。
b) 細胞を予熱した5%のヒトAB血清(GemCell製品番号:100-512)と1‰のDNA酵素(STRMCELL製品番号:07900)を含む10mLのX-VIVO15(Lonza製品番号:04-418Q)培地に加え、400G、25℃で10min遠心分離して(その後の遠心分離はいずれもこの条件)1回洗浄した。
c) 20mLの培地を加えて細胞を再懸濁し、37℃の二酸化炭素インキュベーターに入れて静置して一晩培養した。
【0253】
2. ヒトCD8+T細胞の精製:
a) ステップ1の懸濁細胞液を吸引し、遠心分離して上清を捨てた。
b) 1mLのRobosep緩衝液(STEMCELL 製品番号:20104)と100μLのヒトAB血清および100μLのヒトCD8+T細胞精製キット(Invitrogen 製品番号:11348D)に加えて抗体混合液を陰性スクリーニングして細胞を再懸濁した。
c) 均一に混合した後、4℃で20minインキュベートし、5minごとに1回振とうした。
d) インキュベートした後、10mLのRobosep緩衝液を加え、遠心分離して2回洗浄した。
e) 同時に、1mLの磁性微小球(ヒトCD8+T細胞精製キット)に7mLのRobosep緩衝液を加えて磁気スタンドに1min置いて上清を捨て、磁性微小球を予備洗浄した。
f) それぞれ1mLのRobosep緩衝液を加えてそれぞれ微小球と細胞を再懸濁し、均一に混合した後に室温で30min回転インキュベートした。
g) インキュベートした後、6mLのRobosep緩衝液を加え、磁気スタンドに1min置き、上清を収集した。
h) 収集液を再び磁気スタンドに1min置き、上清を収集した。
i) 遠心分離して上清を捨て、予熱したT培地で再懸濁し、密度を1×106/mLに調整した。
j) 細胞の1/3を採取して後に必要の場合にCD25発現を刺激し、残りの細胞を37℃の二酸化炭素インキュベーターに入れて静置して一晩培養した。
【0254】
3. CD8+T細胞を、CD25を発現するように刺激した:
a) ステップ2で精製したCD8+T細胞の1/3に抗ヒトCD3/CD28抗体の磁性微小球(GIBCO製品番号:11131D)を加え、細胞と微小球の割合は3:1であった。
b) 37℃の二酸化炭素インキュベーターに入れて3日間静置した。
c) 10mLの培地を加えて2回洗浄した。
d) 培地を加え、細胞密度が1×106/mLになるまで調整し、37℃の二酸化炭素インキュベーターに入れて静置して2日間培養した。
【0255】
4. 細胞の純度と発現レベルの検出:
a) 抗ヒトCD8-PE(Invitrogen製品番号:12-0086-42)、抗ヒトCD25-PE(eBioscience製品番号:12-0259-42)、アイソタイプ対照抗体(BD製品番号:556653)を用いて細胞のCD8とCD25を検出した。
b) ステップ2における細胞はCD8+CD25-T細胞であり、ステップ3における細胞はCD8+CD25+T細胞であった。
【0256】
5. 各IL-2mutant-FCによるCD8+CD25-T細胞に対するp-STAT5シグナル活性化のEC50の検出:
a) CD8+CD25-T細胞を1ウェルあたり1×105細胞で96ウェルU底培養プレート(Costar製品番号:CLS3799-50EA)に敷いた。
b) 100μLの各IL-2mutant-FC、市販IL-2(R&D製品番号:202-IL-500)、IL-2WT-FC、IL-23X-FCを加え、最高濃度は266.7nMから始めて4倍勾配希釈し、合計12個の勾配であり、37℃のインキュベーターで20minインキュベートした。
c) 4.2%のホルムアルデヒド溶液を55.5μL加え、室温で10min固定した。
d) 遠心分離して上清を捨て、200μLの氷メタノール(Fisher製品番号:A452-4)を加えて細胞を再懸濁し、4℃の冷蔵庫で30minインキュベートした。
e) 上清を遠心分離し、200μLの染色緩衝液(BD製品番号:554657)で3回洗浄した。
f) 抗p-STAT5-AlexFlour647(BD製品番号:562076、1:200希釈)を含む透過処理/固定用緩衝液(BD製品番号:51-2091KZ)を200μL加え、室温で遮光で3hインキュベートした。
g) 染色緩衝液で3回洗浄し、100μLの染色緩衝液で細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー検出を行った。
h) IL-2分子の濃度を横軸として、AlexFlour647中間蛍光値を縦軸として、p-STAT5シグナルのEC50値を作成し、結果は下記の表7に示される。
【0257】
6. 各IL-2mutant-FCによるCD8+CD25+T細胞に対するp-STAT5シグナル活性化のEC50の検出:
a) CD8+CD25+T細胞を1ウェルあたり1×105細胞で96ウェルU底培養プレートに敷いた。
b) ステップ5におけるb-hと同様にして、p-STAT5シグナルのEC50値を作成し、結果は表7に示される。
【0258】
【表14】
【0259】
実施例3:IL-2弱体化変異体の設計
【0260】
IL-2弱体化分子の設計
【0261】
IL-2変異体の薬物動態(PK)をさらに改善し、分子の半減期を延長すると同時に、分子の毒性を低減した。IL-2複合物の結晶構造の分析(図4)(PDB:2ERJ)に基づいて、IL-2とIL-2Rβの接触界面のアミノ酸を選択して変異させ、それらの間の親和性を低下させた。
【0262】
IL-2Rαの結合界面のアミノ酸変異、IL-2B’C’loopの最適化およびIL-2Rβγの結合界面のアミノ酸変異に基づいて、且つ2つのformatフォーマットに基づいて検証し、分子の設計は表8に示される。場合により、これらの分子は、IL2のN末端のO糖修飾を除去するために、T3A変異をさらに含んでもよい。
【0263】
【表15】
【0264】
上記設計に基づいて、Format 1分子を発現および産生するために、具体的に以下の配列構造(N末端からC末端まで)を有するIL-2mutantを構築した:
-アミノ酸配列配列番号37-638を有するIL-2変異配列、
-リンカー配列GGGGSGGGGS、
-配列番号12のFc配列。
【0265】
上記設計に基づいて、Format 2分子を発現および産生するために、具体的に以下の配列構造(N末端からC末端まで)を有するIL-2mutant-Fc.KnobおよびFc.Holeを構築した:
(1)IL-2mutant-Fc.Knob
-アミノ酸配列配列番号37-638を有するIL-2変異配列、
-リンカー配列GGGGSGGGGS、
-配列番号9のFc.Knob配列、および
(2)Fc.Hole
-配列番号10のFc.Hole配列。
【0266】
IL-2弱体化変異体の発現と精製およびその受容体との親和性の測定
【0267】
Format1は、IL-2変異体を2つのG4Sを介してIgG1FcLALAのN末端に連結し、二価のIL-2変異体分子を構築することであった。Format2は、Knob in holeのIgG1FcLALAに基づいたヘテロ二量体であり、ここで、IL-2変異体分子は2つのG4Sを介してIgG1FcLALA-KnobのN末端に連結し、一価のIL-2変異体分子を構築する。すべての配列はpcDNA3.1のベクターに構築した。
【0268】
タンパク質の発現および精製:実験方法は実施例2と同じであった。
【0269】
バイオレイヤー干渉(ForteBio)測定法を使用して本発明の上記IL-2変異体とその受容体の平衡解離定数(KD)を測定した。
【0270】
ForteBio親和性測定は従来の方法(Estep,P et al.,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.Mabs,2013.5(2):p.270-8)に従って行われた。候補分子のIL-2Rα、IL-2RβおよびIL-2Rβγのそれぞれとの親和性の測定:センサを分析緩衝液でオフラインで20min平衡化し、次にオンラインで120秒検出してベースラインを確立した。ヒトビオチン化標識されたIL-2RαまたはIL-2RβまたはIL-2RγをSAセンサ(PALL,18-5019)にロードしてForteBio親和性測定を行った。プラトー段階になるまで、IL-2受容体をロードしたセンサを、100nMのIL-2変異体分子を含む溶液に配置した後、結合と解離速度を測定するために、センサを分析緩衝液に移して少なくとも2min解離した。1:1結合モデルを利用して動力学的分析を行った。
【0271】
実験結果は表9に示される。野生型(Y045)と比較して、IL-2変異体は発現量と純度がいずれも向上し、同時にIL-2Rβγ結合界面のアミノ酸変異を導入することにより、IL-2RβおよびIL-2Rβγとの親和性は異なる程度で低減した。下記の表中の分子構造は図6に示される。
【0272】
【表16-1】
【表16-2】
注:「-」は未検出を表し、「N.B.」は非結合を表す
【0273】
実施例4:IL-2変異体のインビトロ機能実験
【0274】
ヒトTリンパ球におけるIL-2変異体のpSTAT5シグナルの検出
【0275】
IL-2のT細胞表面IL-2receptorとの結合は、ヒトTリンパ球のJAK-STATシグナル経路を活性化し、ここで、STAT5リン酸化レベルは、当該シグナル経路の活性化レベルを評価する重要な指標であった。正常なTリンパ球は基本的にIL-2Rαを発現しなかった。Tリンパ球に対するIL-2変異体分子のpSTAT5シグナルを検出することにより、異なるIL-2変異体分子のヒトT細胞を活性化する活性の強弱を評価した。
【0276】
実験材料と方法:
【0277】
実験方法:
【0278】
1.PBMC細胞の蘇生
【0279】
(1)、液体窒素でPBMC細胞(All Cells,製品番号PB004F-C,番号LP191011A/LP190529)を凍結保存し、37℃ですばやく振って融解した。
【0280】
(2)、細胞を10mLのCTS培地(Gibco,製品番号A3021002,ロット番号1989823,37℃で予熱し、100ulのDNA酵素を含有)に緩やかに加えた。
【0281】
(3)、300g/8minで遠心分離し、上清を除去した。
【0282】
(4)、10mLのCTSで再懸濁し、T75培養フラスコ(NUNC,製品番号156499)に移し、37℃で5%のインキュベーターで一晩安定した。
【0283】
2.pSTAT5実験
【0284】
(1)、PBMCで懸濁細胞を一晩培養し、細胞を96ウェルU型プレート(Cornning,製品番号CLS3799-50EA)に敷いて、細胞数は5×105cells/wellであった。
【0285】
(2)、異なる希釈した検出抗体をそれぞれ96ウェルプレートに加え、検出抗体を細胞とともに37℃で30minインキュベートした。
【0286】
(3)、400g/5minで遠心分離し、上清を除去した。
【0287】
(4)、200ul/ウェルで、4%の組織細胞固定液(Solarbio,製品番号:P1110)を加え、常温で400g/30minで遠心分離した。
【0288】
(5)、200ul/ウェルで、透過化溶液(BD,製品番号:558050)を加え、4℃で30min静置し、400g/10minで遠心分離した。
【0289】
(6)、200ul/ウェルで、perm/wash Buffer(BD,製品番号558050,ロット番号7271605)を加え、細胞を合計2回洗浄した。
【0290】
(7)、抗体染色液を調製し、pSTAT5抗体(BD,製品番号562076,ロット番号9141872)の量は3ul/100ulのperm/wash Buffer/wellであり、BV421 anti-human CD3抗体(Biolegend,製品番号300434,ロット番号:B271302)、FTIC anti-human CD4抗体(Biolegend,製品番号300506,ロット番号:B283935)およびAF700 anti-human CD8a(Biolegend,製品番号300924,ロット番号:B253967)はそれぞれ1ul/100ulのperm/wash Buffer/wellであり、室温で1.5hインキュベートし、perm/wash Bufferで2回洗浄した。
【0291】
(8)、150ulのperm/wash Buffer/wellで再懸濁し、フローサイトメトリーを行った。
【0292】
実験結果:
【0293】
正常なTリンパ球(CD4+T cells,CD8+T cells)におけるIL-2変異分子のpSTAT5有効性の検出結果は、図7A図7B図7C図7Dおよび図7Eに示される。
【0294】
CD4+とCD8+T細胞のリン酸化レベルは、細胞の増殖能力と細胞の活性を表した。図7および表10から分かるように、変異IL-2Rβ結合界面の1つまたは複数のアミノ酸によって、IL-2変異体は、IL-2Rβ結合界面の変異していない分子Y-144(format1)および2688(format2)と比較して、T細胞に対するリン酸化レベルが異なる程度で低減した。
【0295】
【表17】
【0296】
活性化Tリンパ球におけるIL-2変異体のpSTAT5シグナルの検出
【0297】
IL-2のT細胞表面IL-2受容体との結合は、Tリンパ球のJAK-STATシグナル経路を活性化し、ここで、STAT5リン酸化レベルは、当該シグナル経路の活性化程度を評価する重要な指標であった。Tリンパ球が活性化された後、T細胞表面のIL-2Rα(CD25)存在度は有意に増加した。
【0298】
実験方法:
【0299】
1.PBMC細胞の蘇生
【0300】
(1)、液体窒素でPBMC細胞(All Cells,製品番号PB004F-C,番号LP191011A)を凍結保存し、37℃ですばやく振って融解した。
【0301】
(2)、細胞を10mLのCTS培地(Gibco,製品番号A3021002,ロット番号1989823,37℃で予熱し、100ulのDNA酵素を含有)に緩やかに加えた。
【0302】
(3)、300g/8minで遠心分離し、上清を除去した。
【0303】
(4)、10mLのCTSで再懸濁し、T75培養フラスコ(NUNC,製品番号156499)に移し、37℃で5%のインキュベーター(Thermo,製品番号3111)で一晩安定した。
【0304】
2.Tリンパ球の活性化と静止
【0305】
(1)、一晩培養したPBMCから懸濁細胞を取り出し、細胞をカウントし、細胞の数と同等のCD3/CD28 Beads(Invitrogen,製品番号11131D、ロット番号:00783216)を加え、48h活性化して刺激した。
【0306】
(2)、Beadsと培地を除去し、活性化細胞を洗浄した。
【0307】
(3)、活性化細胞をT75培養フラスコに移し、37℃、5%で48h静止した。
【0308】
3.pSTAT5実験
【0309】
(1)、細胞を96ウェルU型プレート(Cornning,製品番号CLS3799-50EA)に敷いて、細胞数は5×105cells/wellであった。
【0310】
(2)、異なる希釈した検出抗体をそれぞれ96ウェルプレートに加え、検出抗体を細胞とともに37℃で30minインキュベートした。
【0311】
(3)、400g/5minで遠心分離し、上清を除去した。
【0312】
(4)、200ul/ウェルで、4%の組織細胞固定液(Solarbio,製品番号:P1110)を加え、常温で400g/30minで遠心分離した。
【0313】
(5)、200ul/ウェルで、透過化溶液(BD、製品番号:558050)を加え、4℃で30min静置し、400g/10minで遠心分離した。
【0314】
(6)、200ul/ウェルで、perm/wash Buffer(BD,製品番号558050,ロット番号7271605)を加え、細胞を合計2回洗浄した。
【0315】
(7)、抗体染色液を調製し、pSTAT5抗体(BD、製品番号562076,ロット番号9141872)の量は3ul/100ulのperm/wash Buffer/wellであり、BV421 anti-human CD3抗体(Biolegend,製品番号300434,ロット番号:B271302)、FTIC anti-human CD4抗体(Biolegend,製品番号300506,ロット番号:B283935)およびAF700 anti-human CD8a(Biolegend,製品番号300924,ロット番号:B253967)はそれぞれ1ul/100ulのperm/wash Buffer/wellであり、室温で1.5hインキュベートし、perm/wash Bufferで2回洗浄した。
【0316】
(8)、150ulのperm/wash Buffer/wellで再懸濁し、フローサイトメトリーを行った。
【0317】
実験結果
【0318】
CD8+T細胞、CD4+CD25-T細胞、NK細胞(CD3-CD56+)およびTreg細胞(CD3+CD4+CD25+)におけるIL-2変異分子のpSTAT5有効性の検出結果は、図8A~Gおよび表11~12に示される。結果から分かるように、リンパ球に対する本研究のIL-2変異体のpSTAT5活性は、いずれもヒト野生型IL-2(rhIL-2,R&D systems,製品番号:202-IL)より弱く、同時に他のリンパ球と比較して、本研究のIL-2変異体分子はTreg細胞に対して非常に大きい選択性が示した。
【0319】
【表18】
【0320】
【表19】
【0321】
実施例5:IL-2変異分子のインビボ抗腫瘍効果
【0322】
IL-2変異分子のインビボ抗腫瘍効果を証明するために、MC38細胞を使用してC57マウスに接種し、本発明のIL-2変異分子(Y144、2113、2162)の抗腫瘍効果を測定した(分子2113と2162の構造は図6に示す)。実験にはSPFグレードの雌C57マウス(14~17g,北京維通利華実験動物技術有限公司から購入)を使用し、合格証明書の番号はNO.110011201109499961であった。
【0323】
MC38細胞を定期的に継代培養してその後のインビボ実験に使用した。遠心分離により細胞を収集し、PBS(1×)でMC38細胞を分散させ、細胞濃度が5×106個の細胞/mLの細胞懸濁液を調製した。0日目に0.2mLの細胞懸濁液をC57マウスの右腹部に皮下接種してMC38担がんマウスモデルを確立した。
【0324】
腫瘍細胞接種の7日後に、各マウスの腫瘍体積を検出し、群分けを行い(1群あたり6匹のマウス)、投与量および投与方式は表14に示される。接種後の7日目、14日目、21日目にそれぞれ投与し、図9Aおよび9Bに示すように、マウスの腫瘍体積と体重を週に2~3回モニタリングし、25日後にモニタリングを終了する。接種後の25日目に、相対腫瘍抑制率(TGI%)を計算した。計算式は、TGI%=100%×(対照群腫瘍体積-治療群腫瘍体積)/(対照群腫瘍体積-対照群投与前腫瘍体積)であった。腫瘍体積の測定:ノギスを用いて腫瘍の最大長軸(L)と最大幅軸(W)を測定し、腫瘍体積は下記式:V=L×W2/2に従って計算された。電子天びんを用いて体重を測定した。
【0325】
【表20】
【0326】
腫瘍体積の検出は図9Aに示される。接種後の25日目に、h-IgGと比較して、弱体化IL-2分子2113(3mg/kg)、2162(3mg/kg)の単剤抑制率はそれぞれ71.4%、33.8%であった。結果から、改造後のIL2分子(2113、2162)は抗腫瘍作用を有し、且つ用量効果を有することが示された。同時にマウスの体重を検出し、結果は図9B、9Cに示され、分子2113(1mg/kg)、2162(1mg/kg)、2162(3mg/kg)群のマウスの体重は有意差がなかった。対照的に、弱体化されていない分子Y144を投与した群では、マウスはそれに不耐性を示し、25日間のモニタリング期間が終了する前に死亡した。
【0327】
別の1つのMC38腫瘍モデルでは、他のいくつかのIL-2変異分子(Y045、2478、2454)のインビボ抗腫瘍効果を証明した(分子2478と2454の構造は図6に示す)。この実験MC38担がんマウスの実験にはSPFグレードの雌C57マウス(14~17g,北京維通利華実験動物技術有限公司から購入)を使用し、合格証明書の番号はNO.110011201109499826であった。実験は基本的に上記のように行われた。
【0328】
腫瘍細胞接種の7日後に、各マウスの腫瘍体積を検出し、群分けを行い(1群あたり7匹のマウス)、投与量および投与方式は表13、14に示される。接種後の7日目、14日目、21日目にそれぞれ投与し、図10Aおよび10Bに示すように、マウスの腫瘍体積と体重を週に2回モニタリングし、25日後にモニタリングを終了する。接種後の25日目に、相対腫瘍抑制率(TGI%)を計算した。計算式は、TGI%=100%×(対照群腫瘍体積-治療群腫瘍体積)/(対照群腫瘍体積-対照群投与前腫瘍体積)であった。腫瘍体積の測定:ノギスを用いて腫瘍の最大長軸(L)と最大幅軸(W)を測定し、腫瘍体積は下記式:V=L×W2/2に従って計算された。電子天びんを用いて体重を測定した。
【0329】
【表21】
【0330】
腫瘍抑制率の結果は表15に示される。接種後の25日目に、h-IgGと比較して、分子Y045(1mg/kg)、2478(1mg/kg)、2454(1mg/kg)、Y045(3mg/kg)、2478(3mg/kg)、2454(3mg/kg)の単剤抑制率はそれぞれ5.3%、39.1%、15.6%、19.8%、52.6%、23.0%であった。結果から、改造されていないIL2分子(Y045)は抗腫瘍作用を有するとともに用量効果を有し、改造された弱体化IL2分子(2478、2454)は抗腫瘍効果を有するとともに用量効果を有するが、薬効は改造されていないIL2分子(Y045)より優れることが示された。同時にマウスの体重を検出し、結果は図10B、10Cに示され、マウスの体重は有意差がなかった。
【0331】
【表22】
【0332】
実施例6:自己免疫におけるIL-2変異体分子のインビボ研究
【0333】
自己免疫におけるIL-2弱体化分子の潜在力を証明するために、C57マウスを使用して、投与前および投与後の3日目、7日目に採血し、本発明のIL-2弱体化分子の免疫細胞に対する影響を測定した。実験にはSPFグレードの雌C57マウス(14~17g,北京維通利華実験動物技術有限公司から購入)を使用し、合格証明書の番号はNO.110011201109500076であった。
【0334】
30匹のC57マウスをランダムに群分けを行い(1群あたり6匹のマウス)、投与量および投与方式は表16に示される。単回投与し、図11Aおよび11Bに示すように、マウスの体重を週に2回モニタリングし、7日後にモニタリングを終了する。投与前、投与後の3日目、7日目にマウスを採血し、CD45+Tリンパ球の総数における血液中のTreg、NK、CD4T conv(CD4+Foxp3-)、CD8+T細胞の割合変化状況を検出し、図11c、11d、11e、11fに示される。
【0335】
測定される分子2602は、野生型IL-2WT配列配列番号1を含むFormat 2型IL-2-Fc二量体分子であり、弱体化分子3079、3055および3082の構造は図6に示し、いずれもFormat 2型IL-2-Fc二量体分子であった。
【0336】
結果から分かるように、この研究のIL-2変異分子はIL-2Rβへの結合を弱めることにより、IL-2変異分子による炎症誘発性NK細胞の増殖の刺激が野生型IL-2分子2602(IL-2WT)より弱いが、依然として免疫抑制細胞であるTreg細胞の増幅が維持され、Tregに対するIL-2変異分子の増殖の幅が類似した。また、IL-2変異分子は、CD4T convおよびCD8T細胞に対して、明らかな増殖作用をもたらさなかった。この結果は、IL-2とIL-2Rβの結合部位を変異させることにより、Tregと他の免疫細胞への選択性を大幅に向上させることができることを示唆した。
【0337】
【表23】
【0338】
配列表の説明
【0339】
【表24-1】
【表24-2】
【0340】
本発明が構築するIL-2二量体分子の具体的な説明は下記の表に示される。ここで、「IL-2配列SEQ ID NO」欄は分子のIL-2部分のアミノ酸配列を示し、「IL-2部分の注釈」欄は「SEQ ID NO:」欄のアミノ酸配列および「変異」欄の変異によって、前記分子のIL-2アミノ酸配列が前記変異を有する前記SEQ ID NO:アミノ酸配列からなることを説明した。「format 1」は、分子がホモ二量体であり、各モノマー(N末端からC末端まで)が示されたIL-2アミノ酸配列、リンカー配列(G4S)2および配列番号12により順に連結して形成されることを表した。「format 2」は、分子がヘテロ二量体であり、1つのモノマー(N末端からC末端まで)が示されたIL-2アミノ酸配列、リンカー配列(G4S)2および配列番号9により順に連結して形成され、別のモノマーが配列番号10からなることを表した。
【0341】
【表25-1】
【表25-2】
【0342】
【表26-1】
【表26-2】
【表26-3】
【0343】
【表27-1】
【表27-2】
【0344】
【表28】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12
【配列表】
2023518434000001.app
【国際調査報告】