IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イノサイン べスローテン フェンノートシャップの特許一覧

特表2023-518472高リスク敗血症患者のための予後判定用経路
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】高リスク敗血症患者のための予後判定用経路
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20230424BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230424BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230424BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12N15/12
A61P31/04
A61P43/00 111
A61K45/00
A61K45/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556581
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2021056133
(87)【国際公開番号】W WO2021185660
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】20163627.1
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522369201
【氏名又は名称】イノサイン べスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】ビルベルト ヘンドリック バウマン
(72)【発明者】
【氏名】アンヤ ファン デ ストルペ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ53
4B063QR36
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB35
4C084ZC01
4C084ZC41
4C084ZC75
(57)【要約】
本発明は、敗血症を有する対象、敗血症を有することが疑われる対象又は敗血症を発症するリスクがある対象の血液試料に基づいて敗血症を有する対象を診断するために使用され得る手段及び方法に関する。方法は、予測、例えば対象が敗血症を発症する可能性があるかどうか、又は対象が敗血症の結果として高い死亡リスクを有するかどうかの予測を行うために更に使用され得る。本発明は、敗血症の処置又は予防における使用のための化合物を更に提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
敗血症を有する対象から得られた血液試料に基づいて前記対象を診断する方法であって、前記診断が、前記血液試料から抽出されたRNAに基づき、前記方法が、
3つ以上の遺伝子の発現レベルを決定するステップ
を含み、
前記3つ以上の遺伝子が群1及び2から選択され、
群1が、遺伝子ABCC4、APP、AR、CDKN1A、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FGF8、FKBP5、GUCY1A3、IGF1、KLK2、KLK3、LCP1、LRIG1、NDRG1、NKX3_1、NTS、PLAU、PMEPA1、PPAP2A、PRKACB、PTPN1、SGK1、TACC2、TMPRSS2、及びUGT2B15からなり、並びに
群2が、遺伝子ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CDKN2B、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP2、MMP9、NKX2_5、OVOL1、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI1、SNAI2、TIMP1及びVEGFAからなり、並びに
ABCC4、APP、FGF8、FKBP5、ELL2、DHCR24、NDRG1、LCP1、EAF2、PTPN1、CDC42EP3、CDKN2B、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IGF1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP9、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD6、SNAI2、TIMP1及びVEGFAの発現の増加、
又はCDKN1A、KLK2、KLK3、PMEPA1、TMPRSS2、NKX2_5、NKX3_1、NTS、PLAU、UGT2B15、PPAP2A、LRIG1、TACC2、CREB3L4、GUCY1A3、AR、ANGPTL4、MMP2、OVOL1、PDGFB、PRKACB、SMAD5、SMAD7及びSNAI1の発現の減少
が敗血症と相関し、並びに
前記対象が、前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルに基づいて、及び前記血液試料が得られた前記対象が、敗血症と関連付けられる少なくとも1つの臨床パラメーターを更に有する場合に、敗血症を有すると診断される、
前記方法。
【請求項2】
群1が、遺伝子AR、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、GUCY1A3、IGF1、KLK3、LCP1、LRIG1、NDRG1、NKX3_1、PMEPA1、PRKACB、TMPRSS2、好ましくはAR、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、LCP1、LRIG1、NDRG1、PMEPA1、PRKACB、TMPRSS2、より好ましくはDHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、LCP1、LRIG1、PMEPA1、PRKACBからなり、及び/又は群2が、遺伝子CDC42EP3、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP2、MMP9、NKX2_5、OVOL1、PDGFB、PTHLH、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、TIMP1、VEGFA、好ましくはCDC42EP3、GADD45A、GADD45B、ID1、JUNB、MMP9、PDGFB、SGK1、SKIL、SMAD5、SMAD6、TIMP1、VEGFA、より好ましくはCDC42EP3、GADD45A、GADD45B、ID1、JUNB、MMP9、PDGFB、SGK1、SMAD5、TIMP1、VEGFAからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記3つ以上の遺伝子が群1から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記3つ以上の発現レベルが、参照試料から得られた参照値又は参照発現レベルと比較され、好ましくは、前記参照試料が、敗血症を有する対象からの試料及び/又は健常対象からの試料を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
群1の前記遺伝子がAR標的遺伝子であり、AR細胞シグナル伝達経路活性を決定するために使用され、及び群2の前記遺伝子がTGFベータ標的遺伝子であり、TGFベータ細胞シグナル伝達経路活性を決定するために使用され、前記方法が、
AR及び/又はTGFベータ細胞シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の前記決定された発現レベルに基づいて、前記AR及び/又はTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性を決定すること
を更に含み、
増加したAR及び増加したTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性が敗血症と相関し、並びに
前記対象が、前記AR及び/又はTGFベータ細胞シグナル伝達経路に基づいて、並びに前記血液試料が得られた前記対象が、敗血症と関連付けられる少なくとも1つの臨床パラメーターを更に有する場合に、敗血症を有すると診断され、
前記1つ又は複数の細胞シグナル伝達経路活性が、血液試料から抽出されたRNAに基づいて前記1つ又は複数の経路について決定された前記3つ以上の発現レベルを前記1つ又は複数のシグナル伝達経路の前記1つ又は複数の活性に関連付ける軟正された数学的モデルを評価することに基づいて決定される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記血液試料が、敗血症を有する対象から得られるか、又は敗血症を有することが疑われる対象若しくは敗血症を発症するリスクがある対象若しくは敗血症から回復した対象から得られる、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルが、前記血液試料が得られた前記対象の死亡リスクの予測において使用され、
前記予測が、参照対象から得られた3つ以上の遺伝子の複数の参照発現レベルとの前記対象の前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルの比較に基づき、前記参照対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の前記複数の参照発現レベルが、非生存者である敗血症を有する対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の発現レベル及び生存者である敗血症を有する対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の発現レベルを含み、及び任意選択的に健常又は非敗血症対照対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の発現レベルを更に含み、
前記血液試料が得られた前記対象は敗血症を有することが確認され、並びに
敗血症を有する前記対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルが、生存者である敗血症を有する参照対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の発現レベルに類似しているか、又は敗血症を有する前記対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルが、少なくとも1の健常若しくは非敗血症対照対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルに類似している場合に、低い死亡リスクが予測され、並びに
敗血症を有する前記対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルが、非生存者である敗血症を有する前記参照対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルに類似している場合に、高い死亡リスクが予測される、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記血液試料が得られた前記対象が敗血症を有さず、及び前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルが、前記対象が敗血症を発症するリスクを決定するために使用され、
前記方法が、前記血液試料が得られた前記対象の前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルを、健常又は非敗血症対照対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の発現レベルと比較することを更に含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記血液試料が得られた前記対象が敗血症から回復しており、及び前記血液試料の前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルが、前記対象が敗血症を再発するリスクをモニターするために使用され、
前記方法が、前記血液試料が得られた前記対象の前記3つ以上の遺伝子の前記発現レベルを、健常又は非敗血症対照対象から得られた前記3つ以上の遺伝子の発現レベルと比較することを更に含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記血液試料が、全血試料、単離された末梢血単核細胞(PBMC)、単離されたCD4+細胞、単離されたCD8+細胞、制御性T細胞、混合されたCD8+及びT細胞、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、樹状細胞、単離された好中球、単離されたリンパ球又は単離された単球である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
3つ以上の遺伝子の発現レベルを決定するためのプライマー及び任意選択的にプローブを含む、パーツのキットであって、
前記3つ以上の遺伝子が群1及び群2から選択され、群1が、ABCC4、APP、AR、CDKN1A、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FGF8、FKBP5、GUCY1A3、IGF1、KLK2、KLK3、LCP1、LRIG1、NDRG1、NKX3_1、NTS、PLAU、PMEPA1、PPAP2A、PRKACB、PTPN1、SGK1、TACC2、TMPRSS2、及びUGT2B15からなり、並びに
群2が、ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CDKN2B、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP2、MMP9、NKX2_5、OVOL1、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI1、SNAI2、TIMP1及びVEGFAからなる、
前記キット。
【請求項12】
請求項11に記載のキットを使用して、対象が敗血症を有し、敗血症性ショックを有し、又は敗血症の結果として高い死亡リスクを有するか若しくは低い死亡リスクを有するかどうかをin vitro又はex vivoで診断又は予知する方法。
【請求項13】
感染症を患う対象における敗血症の予防における使用のためのAR経路阻害剤であって、好ましくは、前記対象が、前記対象から得られた血液試料において決定された場合に、上昇したAR細胞シグナル伝達経路活性を有し、
任意選択的に、前記AR細胞シグナル伝達経路活性が、前記対象から得られた血液試料において決定され、及び前記AR細胞シグナル伝達経路活性が、上昇しているか、又はある特定の閾値を上回っていることが見出された場合に、前記AR経路阻害剤が投与される、
前記使用のためのAR経路阻害剤。
【請求項14】
敗血症を患う対象の処置又は軽減における使用のためのAR経路阻害剤であって、前記対象が、前記対象から得られた血液試料において決定された場合に、上昇したAR細胞シグナル伝達経路活性又はある特定の閾値を上回るAR細胞シグナル伝達経路活性を有し、
任意選択的に、前記AR細胞シグナル伝達経路活性が、前記対象から得られた血液試料において決定され、及び前記AR細胞シグナル伝達経路活性が上昇しているか、又はある特定の閾値を上回っていることが見出された場合に、前記AR経路阻害剤が投与される、
前記使用のためのAR経路阻害剤。
【請求項15】
前記AR経路阻害剤がTGFベータ経路阻害剤と共に投与され、前記AR経路阻害剤及び前記TGFベータ経路阻害剤が同じ化合物又は異なる化合物である、請求項13又は14に記載の使用のためのAR経路阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液試料の機能的状態を決定する方法に関する。本発明は更に、血液試料の機能的状態を決定するコンピュータにより実行される方法及び本発明の方法を実行するために有用な診断キットに関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症は最近、臓器機能障害を有する感染症として再定義されている(10)。敗血症は、感染に対する脱調節された免疫応答である。敗血症は、概しては、細菌が血流中で増幅する重篤な細菌感染症の合併症である。この状態は全身炎症応答により特徴付けられ、全身炎症応答は、完全には理解されていない機序を通じて、輸液蘇生に対して難治性の低血圧及び高乳酸塩血症を伴う敗血症性ショックに繋がって、臓器不全及び結果的に死に進行し得る。敗血症からの死亡率は、重症敗血症について25%~30%、敗血症性ショックについて40%~70%の範囲に及ぶ。敗血症の臨床的症状は、病因、即ち、基礎疾患又は状態に依存して、高度に可変的である。感染の最も一般的な細菌供給源は、呼吸器系、泌尿生殖器系、及び胃腸系の他に、皮膚及び軟組織である。臨床的症状は可変的であり得るが、極度の振戦及び頻脈を伴う発熱は多くの場合に敗血症の最初の臨床的徴候であり、肺炎及び泌尿生殖器感染症は、敗血症に繋がる最も一般的な原因である。特有の処置は、血液循環を維持し、低酸素を予防するための標準的な措置に加えて、抗生物質を与えて感染症を処置することから主になる。しかしながら、感染症の原因となる細菌は多くの場合に未知であるため、原因となる細菌及び抗生物質に対するそれらの感受性/耐性パターンに関する情報が血液培養から利用可能となるまで、適切な抗生物質処置は、知識・経験に基づく推測である。この情報は、投与された抗生物質に対して細菌種が耐性であると判明した場合の療法の調整を可能にする。しかしながら、血液培養は長い時間(24~48時間)を要し、感染症を有する全ての患者のうちの約30%において陽性となるが、細菌性敗血症を有する患者について、有効な抗生物質の投与の1時間毎の遅延は死亡の相対リスクを増加させる。
【0003】
これらの理由から多くの患者は敗血症性ショックに進行し、この疾患についての非常に高い死亡率を結果としてもたらす。抗生物質の他に、敗血症性ショック対象の処置は、概しては、静脈内流体投与及び昇圧療法からなる。炎症性敗血症性ショック状態を逆転させるために多くの追加の処置、例えばコルチコステロイドが試みられているが、これまで同定できていない患者のサブセットに利益を与え得ることは除外できないとはいえ、臨床的利益が証明されたものはない(10)。
【0004】
その理由の1つは、いずれの細胞機構が敗血症性ショック及び臓器損傷への移行の原因となるのかが明確でないことである。敗血症の病態生理学に関する知識は、合理的な方式で敗血症を予防及び処置するための新規の薬物標的を提供することが予想される。
【0005】
全てのために有効な薬物を開発することの失敗の理由の1つは恐らく、敗血症を引き起こし得る多数の原因及び条件、並びにその進行に影響を及ぼすよりいっそう多くの数の既知及び未知の要因の結果としてもたらされる患者間の不均質性であり、全てが一緒になって薬物に対する応答又は耐性を決定する(例えば細菌種の種類、遺伝学、併存する他の疾患等)。
【0006】
微生物に対する炎症応答の連続体は、感染症、敗血症、及び敗血症性ショックとして現在分類されており、より古い順序:敗血症、重症敗血症、及び敗血症性ショックを置き換えている。追加的に、全身炎症反応症候群(SIRS)は、(証明された)感染症の非存在下での4つの基準:発熱、頻脈、頻呼吸、及び白血球増加症又は白血球減少症のうちの2つの存在により定義される状態であったが、より最近では、この診断は、感度及び特異性の欠如のために放棄されている。
【0007】
敗血症関連死の高いリスクにある病院における敗血症患者を同定するために使用される臨床基準は、(1)精神状態の変化;(2)<100mmHgの収縮期血圧、及び1分当たり22回を上回る呼吸速度である。これらの基準の使用は高リスク患者の同定の改善を可能にするが、低リスクの患者を同定することはできない。
【0008】
合理的には、敗血症からの死を低減させるための最良の方法は、敗血症を発症するリスクがある患者をできるだけ早く認識することである。そのような高リスク患者はその後に、より集中的なモニタリング(例えばICUにおけるもの)、感染巣の同定及び排除(例えばカテーテルの留置)、より頻繁な細菌培養の実行、予防的抗生物質の投与、並びに免疫抑制因子の排除のために層化され得る。
【0009】
尿道カテーテル、開放性創傷又はドレーンを伴う創傷、血管内ライン等は全て、何らかの程度の細菌コロナイゼーションとほぼ不変に関連付けられ、したがって感受性の患者における敗血症のリスクを示し得る。これらの条件は入院患者の大部分において存在し、そのため彼らは、敗血症及び敗血症性ショックのリスクの早期評価で臨床アウトカムが改善され得る患者集団となる。患者遺伝学及び免疫系の機能状態は、リスクを決定する関連する要因の可能性がある。
【0010】
敗血症の発症及び敗血症性ショックへの進行に対する、感染症を有する患者の感受性は、患者が感染性病原体に対して開始する免疫応答により部分的に決定される。
【0011】
免疫応答の機能性(免疫活性性と免疫抑制性との対比、炎症性免疫応答と適応T細胞媒介性応答との対比)は、複数の内因性の要因、例えば年齢、遺伝子バリエーション、併存症(例えば糖尿病のような慢性疾患)、過去の処置(例えば化学療法、骨髄移植、コルチコステロイド)、及び外因性の要因、例えば現行の免疫抑制処置により決定される。
【0012】
個々の患者における免疫系の機能に関する全てのこれらの要因の帰結は未だ評価することができていない。これにより、(1)感染症を有するいずれの患者が敗血症を発症するリスクがあるのか、(2)そのリスクの大きさはどれ程か、(3)敗血症性ショック及び最終的に死への進行のリスクはどれ程かを予測することは現在非常に困難である。免疫応答の状態は敗血症を発症するリスクの重要な決定因子であるという認識もまた、不全免疫機能の改善に基づく、感染症又は敗血症を有する患者のための新規の療法(即ち免疫療法)の開発を可能にし得る。
【0013】
しかしながら、免疫応答及び敗血症を発症する感受性の両方に影響を及ぼす遺伝子バリアントを含めて、患者の間の大きい不均質性に起因して、敗血症における機能不全免疫応答の分子的原因は個体毎に異なる。最小の副作用(例えばサイトカインストーム)を伴う最も有効な免疫標的化薬物を選択するために、個々の患者において機能的な免疫状態を決定する細胞機構の特徴付けに基づく個別化された処置アプローチが必要であることをこれは意味づける。患者の遺伝子プロファイルに基づく個別化された処置は有効であることが証明されていない。
【0014】
明確なことに、敗血症に対する感受性に関与する免疫機能障害表現型は、遺伝子プロファイルによってだけでなく、重要な程度まで患者の多くの環境キュー(例えば細菌種、負荷、併存症、医薬品等)によっても決定される。個人の機能的な免疫状態は、免疫機能を制御する細胞機構の活性である表現型レベルにおいて特徴付けられるべきであることをこれは含意する。
【0015】
免疫細胞機能は、TGFベータ、PI3K、MAPK、JAK-STAT、及びAR経路のようなシグナル伝達経路の間の高度に制御された相互作用により統制される。最近、ベイジアン計算モデルにより解釈され、経路活性スコアに翻訳される、標的遺伝子mRNA測定に基づく、細胞又は血液試料を含む組織試料中のシグナル伝達経路の活性を測定するための新規のアッセイが開発された(2)、(3)、(4)。これらの経路の活性の測定は、全ての種類の免疫細胞の機能的状態の特徴付けを可能とする(5)。
【0016】
敗血症の診断は、部分的に主観的な臨床基準に基づき、したがって主に患者における大きい多様性に起因して、あまり感度が高くなく、特異的でもない(1)。敗血症が臨床基準に基づいて疑われる場合、患者の看護及び処置プランを案出するために、診断を迅速に確認することが依然として重要である。例えば血液培養による確認は、数日を要し得る時間を消費するプロセスであり、待つことができない。
【0017】
より迅速な確認診断試験の他に、(主に病院における)感染症を有するいずれの患者が敗血症を発症するリスクがあるのかを予測するための試験、敗血症性ショックに進行するリスクを予測するため、及び死のリスクを予測するための試験が必要とされる。そのような試験に基づいて採られ得る臨床的な行為は、例えば、一般病棟に留めるのか、それとも集中治療室(ICU)に入院させるのかについて対象を層化すること、高リスク患者において感染症の供給源の外科的探索及び除去のために層化すること、特有の処置、例えば標的化免疫療法のために層化することであり得る。
【0018】
要約すると、迅速に行うことができ、(1)感染した病院内(又は家庭内)患者において敗血症リスクを予測するため、(2)敗血症を早期診断するため、並びに(3)敗血症性ショック及び死への進行のリスクを予測するため;並びに(4)療法、例えば(標的化)療法又は個々の患者を基準とする免疫療法(個別化された処置)に対する応答を予測するために使用することができる、追加の試験に対する大きな必要性が存在する。
【発明の概要】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、上記の課題は、対象から得られた血液試料に基づいて敗血症を有する対象を診断する方法であって、前記診断が、血液試料から抽出されたRNAに基づき、方法が、
3つ以上の遺伝子の発現レベルを決定するステップを含み、
前記3つ以上の遺伝子が群1及び2から選択され、
群1が、遺伝子ABCC4、APP、AR、CDKN1A、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FGF8、FKBP5、GUCY1A3、IGF1、KLK2、KLK3、LCP1、LRIG1、NDRG1、NKX3_1、NTS、PLAU、PMEPA1、PPAP2A、PRKACB、PTPN1、SGK1、TACC2、TMPRSS2、及びUGT2B15からなり、並びに
群2が、遺伝子ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CDKN2B、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP2、MMP9、NKX2_5、OVOL1、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI1、SNAI2、TIMP1及びVEGFAからなり、並びに
ABCC4、APP、FGF8、FKBP5、ELL2、DHCR24、NDRG1、LCP1、EAF2、PTPN1、CDC42EP3、CDKN2B、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IGF1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP9、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD6、SNAI2、TIMP1及びVEGFAの発現の増加、
又はCDKN1A、KLK2、KLK3、PMEPA1、TMPRSS2、NKX2_5、NKX3_1、NTS、PLAU、UGT2B15、PPAP2A、LRIG1、TACC2、CREB3L4、GUCY1A3、AR、ANGPTL4、MMP2、OVOL1、PDGFB、PRKACB、SMAD5、SMAD7及びSNAI1の発現の減少
が敗血症と相関し、並びに
前記対象が、3つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて、及び血液試料が得られた対象が、敗血症と関連付けられる少なくとも1つの臨床パラメーターを更に有する場合に、敗血症を有すると診断される、
方法により解決される。好ましくは方法はin vitro又はex vivoの方法である。
【0020】
好ましくは、3つ以上の遺伝子の発現レベルに基づく予測又は診断は、分類器を適用することにより行われる。好ましくは線形分類器が使用される。単純な分類器、好ましくは線形分類器の構築は当業者に周知である。例えば、遺伝子の発現レベルは、遺伝子が、試験されるべき特色と正の相関又は負の相関を有するかどうかに依存して、+1又は-1により個々に乗算される。そのため、ここでの例において、増加した発現を有するとして列記される遺伝子の発現レベルは+1で乗算され、減少した発現を有するとして列記される遺伝子の発現レベルは-1で乗算されることになる。発現レベルは、好ましくは、内部参照、例えばハウスホールド遺伝子の発現レベルを使用して最初に正規化される。好ましくは、発現レベル(又は正規化された発現レベル)のlog値が使用される。修飾係数を適用(例えば、相関に依存して+1又は-1で乗算)した後に、得られた値は単純に加算されてもよい。本発明の方法において代替的に適用されてもよい線形又は非線形分類器を構築する他の方法を当業者は認識している。
【0021】
実施形態において、群1は、遺伝子AR、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、GUCY1A3、IGF1、KLK3、LCP1、LRIG1、NDRG1、NKX3_1、PMEPA1、PRKACB、TMPRSS2、好ましくはAR、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、LCP1、LRIG1、NDRG1、PMEPA1、PRKACB、TMPRSS2、より好ましくはDHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、LCP1、LRIG1、PMEPA1、PRKACBからなり、及び/又は群2は、遺伝子CDC42EP3、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP2、MMP9、NKX2_5、OVOL1、PDGFB、PTHLH、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、TIMP1、VEGFA、好ましくはCDC42EP3、GADD45A、GADD45B、ID1、JUNB、MMP9、PDGFB、SGK1、SKIL、SMAD5、SMAD6、TIMP1、VEGFA、より好ましくはCDC42EP3、GADD45A、GADD45B、ID1、JUNB、MMP9、PDGFB、SGK1、SMAD5、TIMP1、VEGFAからなる。実施形態において、3つ以上の遺伝子は群1から選択される。実施形態において、3つ以上の発現レベルは、参照試料から得られた参照値又は参照発現レベルと比較され、好ましくは、前記参照試料は、敗血症を有する対象からの試料及び/又は健常対象からの試料を含む。
【0022】
更なる実施形態において、群1の遺伝子はAR標的遺伝子であり、AR細胞シグナル伝達経路活性を決定するために使用され、及び群2の遺伝子はTGFベータ標的遺伝子であり、TGFベータ細胞シグナル伝達経路活性を決定するために使用され、方法は、
AR及び/又はTGFベータ細胞シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、AR及び/又はTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性を決定すること
を更に含み、
増加したAR及び増加したTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性は敗血症と相関し、並びに
前記対象は、AR及び/又はTGFベータ細胞シグナル伝達経路に基づいて、及び血液試料が得られた対象が、敗血症と関連付けられる少なくとも1つの臨床パラメーターを更に有する場合に、敗血症を有すると診断され、
前記1つ又は複数の細胞シグナル伝達経路活性は、血液試料から抽出されたRNAに基づいて1つ又は複数の経路について決定された3つ以上の発現レベルを1つ又は複数のシグナル伝達経路の1つ又は複数の活性に関連付ける軟正された数学的モデルを評価することに基づいて決定される。
【0023】
実施形態において、前記血液試料は、敗血症を有する対象から得られるか、又は敗血症を有することが疑われる対象若しくは敗血症を発症するリスクがある対象から得られる。
【0024】
好ましくは、方法は、本明細書において定義される3つ以上の遺伝子、例えば3、4、5、6、7 8、9、10 11、12又はより多くの遺伝子の発現レベルを決定することに基づく。好ましくは、診断される対象又は敗血症を有することが疑われる対象は細菌感染症を有する。
【0025】
代替的な実施形態において、本発明の第1の態様は、血液試料から抽出されたRNAに基づいて、血液試料の機能的状態を決定する方法であって、
AR経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
ARシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、ARシグナル伝達経路活性を決定するステップ;
決定されたARシグナル伝達経路活性に少なくとも基づいて血液試料の機能的状態を決定するステップであって、前記血液試料の前記機能的状態が、決定されたARシグナル伝達経路活性を有するとして決定される、決定するステップ
を含み、
前記血液試料が、敗血症を有する対象から得られるか、又は敗血症を有することが疑われる対象若しくは敗血症を発症するリスクがある対象から得られる、
方法に関する。
【0026】
好ましい実施形態において、方法は、
TGFベータ経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取ること、
TGFベータシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいてTGFベータシグナル伝達経路活性を決定すること
を更に含み、
及び前記血液試料の前記機能的状態が、決定されたTGFベータシグナル伝達経路活性に更に基づき、前記機能的状態が、決定されたTGFベータシグナル伝達経路活性を有するとして更に決定される。
【0027】
好ましい実施形態において、方法は、
MAPK-AP1シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、若しくはその決定の結果を受け取ること、及びMAPK-AP1シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の前記発現レベルに基づいてMAPK-AP1シグナル伝達経路活性を決定すること、並びに/又は
JAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、若しくはその決定の結果を受け取ること、及びJAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の前記発現レベルに基づいてJAK-STAT3シグナル伝達経路活性を決定すること
を更に含み、
並びに前記血液試料の前記機能的状態は、決定されたMAPK-AP1シグナル伝達経路活性及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路活性に更に基づき、前記機能的状態は、決定されたMAPK-AP1シグナル伝達経路活性を有するとして更に決定され、及び/又は前記機能的状態は、決定されたJAK-STAT3シグナル伝達経路活性を有するとして更に決定される。
【0028】
更なる実施形態において、方法は、本明細書に開示される様々な使用の目的、例えば診断、感染症を有する患者において敗血症を発症するリスクを予測すること、敗血症から敗血症性ショックに進行するリスクを予測すること又は死亡リスクを予測することのために対象から得られた血液試料の機能的状態を提供することを更に含む。好ましくは、診断される対象又は敗血症を有することが疑われる対象は細菌感染症を有する。
【0029】
本発明は、シグナル伝達経路活性の分析を使用して、少なくともARシグナル伝達経路の活性を決定すること、並びに任意選択的に追加の経路、例えばTGFベータ経路、MAPK-AP1経路及びJAK-STAT3経路の1つ又は複数の活性を決定することに基づいて、血液試料、例えば少なくとも1つの免疫細胞種又は免疫細胞種の混合収集物からなる血液試料を特徴付けることができるという本発明者の革新に基づく。血液試料、例えば全血試料において決定された場合の、AR経路活性のみに基づいて、それは、敗血症を示唆する臨床基準を有する患者において敗血症の診断を確立又は確認するための試験として機能できることを本発明者らは実証する。しかしながら、低いAR経路活性が見出される場合、敗血症は依然として存在し得るが、患者は生存者となる可能性が高い。更に、AR経路活性のレベルを使用して、低い死亡リスクと高い死亡リスクとを区別することができ、つまり敗血症を有する対象から得られた血液試料に基づいて、AR経路活性に基づいて、高い死亡リスクを有する対象から得られた試料と低い死亡リスクを有する対象から得られた試料とを区別することができる。そして、経路活性と、対照と比べて敗血症との、又は高い死亡リスクと比べて低い死亡リスクとの相関はこれらの4つの経路に特異的であることが見出され、全血試料において敗血症の存在若しくは非存在又は敗血症の重症度(死亡リスクを含む)と相関することが見出された他のシグナル伝達経路はなかった(データ示さず)。
【0030】
本発明にとって重要なことは、AR、TGFベータ、MAPK-AP1、及びJAK-STAT3経路の活性は免疫抑制と関連付けられるということである。これらの経路、特にAR経路は、敗血症を有する患者において平均で異常に活性化されているという発見は重要であり、その理由は、この経路の正常な活性は恐らく正常な免疫機能と関連付けられることをそれは指し示すからである。感染症を有しない対照対象と類似して、正常なAR経路活性を有する少数の患者は、敗血症生存者であるという本発明者らの発見によりこれは実証されると思われる。正常な免疫機能が敗血症の生存のために要求されることをこれは示唆すると思われる。全体として、良好な免疫応答は、感染症の予防のため及び敗血症の発症のため、並びに敗血症関連死の予防のために決定的であることは明確である。これは全血において測定されたシグナル伝達経路活性において決定され得ることは驚くべきことであると再び強調される。
【0031】
血液試料における、又は全血試料からの細胞の特有のサブセットにおける経路活性の測定は、感染症を有する患者の免疫状態に関する情報を提供する。感染症、例えば膀胱カテーテルと関連付けられる泌尿生殖器感染症を有する患者は、免疫応答が抑制される場合に敗血症を発症するより高いリスクがあることが推測され得る。感染症を有する患者の血液試料におけるAR経路、そしてまたTGFベータ、MAPK-AP1、及びJAK-STAT3経路の活性の測定は、敗血症の発症のリスクに関する情報を提供し、該リスクは、これらの経路、特にAR経路の活性が増加している場合に高い。これは、感染症、特に細菌感染症を有する患者において敗血症リスクの時宜を得た予測を可能とする。
【0032】
経路活性の決定を使用して、患者において敗血症を診断すること及び対象から得られた血液試料を層化して例えば敗血症と敗血症性ショックとを区別することができることを本発明者らは初めて実証する。しかしながら、より驚くべきことは、この分析は血液試料、例えば全血試料において行われ得るという発見である。
【0033】
本発明は、健常な対照対象、回復した敗血症対象及び敗血症性ショックからの結果として死亡した敗血症対象から得られた血液試料において、いくつかのシグナル伝達経路、例えばARシグナル伝達経路、TGFベータ経路、MAPK-AP1経路及びJAK-STAT3シグナル伝達経路の活性を重点的に研究することにより達成された。
【0034】
次に、同定された関連する経路の標的遺伝子が予測(例えば対象が敗血症を有するか否か)を行うための基礎として使用され得るかどうかが評価された。相関(上方又は下方調節)についてのみ補正された遺伝子発現レベルに基づく単純なモデルを使用して、AR細胞シグナル伝達経路標的遺伝子、TGFベータ細胞シグナル伝達経路標的遺伝子、又はプールされたAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路標的遺伝子のいずれかからの3つの遺伝子の選択は、非常に高い特異性及び良好な感度で予測を行うために充分であることが見出された。予測の感度は、アッセイにおいて使用される遺伝子の量を増加させることにより又は遺伝子をより選択的に選択することにより(実施例9において実証される)、又は本明細書に記載されるように経路活性モデルにおいて3つ(若しくはより多く)の遺伝子を使用することにより増加され得る。
【0035】
本明細書に記載される予測(例えば敗血症を有する対象の診断、高い又は低い死亡可能性の予測、細菌感染症を有する対象について敗血症を発症するリスクの予測)は、本明細書に記載されるリストからの3つ以上の遺伝子の発現レベルに基づいて為され得ることを実施例9に提示されるデータは実証する。したがって、下記により詳細に記載される経路モデルが使用され得るが、そうすることは要求されない。
【0036】
本発明において想定される3つ以上の遺伝子は以下のように使用され得る:3つ以上の遺伝子の発現レベルは、試料(例えば対象から得られた血液試料)中のmRNAレベルに基づいて決定される。3つ以上の遺伝子の発現レベルは、1つ又は複数の参照、例えばハウスホールド遺伝子を使用して、正規化される。3つ以上の遺伝子の正規化された発現レベルは、経路活性とのそれらの相関に依存して、「1」又は「-1」のいずれかで乗算される(遺伝子発現がより高い経路活性と共に増加している場合は+1、遺伝子発現がより高い経路活性と共に減少している場合は-1;各々の遺伝子の相関もまた実施例9において指し示される)。次に、発現相関について補正された正規化された発現レベルが加算又は乗算される。3つ以上の発現レベルについて得られた値はここで、参照試料(例えば敗血症を有する対象若しくは健常対象)からの3つ以上の遺伝子の発現レベルから得られた値と比較され得るか、又はそれは複数の参照と比較され得る。代替的に、3つ以上の発現レベルについて得られた値は、1つ又は複数のセットの値と比較され得る。例えば、健常及び敗血症対象から得られた参照試料に基づいてカットオフ値を決定することができ、カットオフ値は非敗血症対象の上限及び敗血症対象の下限を定義する。非限定的な例:3つの遺伝子の発現レベルに基づいて、3人の健常対象において以下の値が算出され:5、8、4;3人の敗血症対象において以下の値が算出された:43、30、24。これらの結果に基づいて、閾値は19と算出される。ここで対象のために同じ3つの遺伝子がスコアを算出するために使用され、スコアが19を下回る場合、対象は非敗血症と考えられ、スコアが19を上回る場合、対象は敗血症と考えられる。
【0037】
したがって、AR及び/若しくはTGFベータ経路活性又は血液試料の機能的状態が、本明細書に記載される方法、予測又は診断において使用される場合、AR及び/若しくはTGFベータ経路活性又は血液試料の機能的状態は、方法、予測又は診断を、AR及び/若しくはTGFベータ経路標的遺伝子から選択される3つ以上の遺伝子に単純に基づかせることにより置き換えられてもよい。
【0038】
同じ原理が感染症、特には細菌感染症を有する患者に適用することができ、その場合、増加したAR(及びTGFベータ)シグナル伝達経路活性は、敗血症を発症する増加した可能性と相関する。本明細書に記載されるAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の標的遺伝子から選択される3つ以上の遺伝子はそのため、敗血症を発症する感染症(例えば細菌感染症)を有する患者のリスクを予測又は算出するために使用され得る。
【0039】
実施例9において、異なる遺伝子発現レベルと経路活性との相関を更に使用して、遺伝子のより選択的なリストのためのカットオフ値を提供している。これらはT値と共に指し示され、T=0は非選択(全ての標的遺伝子が使用される)を意味し、T=0.3は0.3の相関のカットオフ値を指す。各々のT値(T=0、T=0.3、T=0.4、T=0.5)についての遺伝子のそれぞれのリストは、AR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路について決定され、実施例9に列記される。群1及び2について実施形態及び好ましい実施形態に列記される遺伝子は、それぞれAR及びTGFベータ経路の選択された標的遺伝子に対応し、異なるT値のリストを表す。
【0040】
対象又は個体から得られた血液試料が、敗血症を有する対象又は個体から得られたものであるか否かを信頼性をもって決定する能力は、いくつかの理由から望ましい。現在、敗血症の診断は、呼吸速度、心拍数及び血圧のような臨床パラメーターに最初に基づき、該パラメーターは、単純かつ非特異的な臨床化学実験室測定、例えば乳酸、CRP、電解質、尿素、クレアチニンにより補完され得る。これはあまり正確な診断ではなく(充分な感度ではなく、特異的でない)、したがって敗血症が対象において疑われる場合、診断は、原因となる病原体を検出するため及びその抗生物質耐性をプロファイルするための血液病原体培養による確認を行う必要があり、これは、完了するために何日も要し得る時間を消費するプロセスである。対照的に、抽出されたmRNAに基づいて1つ又は複数の経路活性を決定することにより血液試料の機能的状態を決定することは、2~3時間もの短時間で達成され得る。
【0041】
敗血症の診断が、本明細書に記載される方法又は他の手段のいずれかにより一旦為されたら、対象が敗血症性ショックへの進行の高い又は低いリスクを有するかどうか、及び患者が高い又は低い死亡リスクを有するかどうかを決定することが有利である。現在、敗血症対象、特に敗血症性ショック患者は、概しては、集中又は緊急治療室において処置され、これはコストを要する。これは必ずしも必要でないことがあり、本明細書において定義される血液試料の機能的状態の考慮は、対象の敗血症性ショックへの進行のリスク及び死亡リスクを決定するために使用され得る。したがって、敗血症が一旦診断されたら、リスク評価を血液試料の機能的状態に基づいて、例えば決定されたAR経路活性に基づいて行って、対象が、敗血症性ショックへの進行の高い若しくは低いリスク又は高い若しくは低い死亡リスクを有するかどうかを決定することができる。対象が敗血症性ショックの低いリスク又は低い死亡リスクを有する場合、その後の処置は必ずしもICUにおいて行われる必要はないことがあり、そのため実質的なコストが削減される。更には、対象が高いリスクと決定された場合、ICUにおける処置は有益であり、追加のモニタリング又は処置が、リスクを更に軽減するために正当化され得、例えば原因となる病原体の探索が強化されて、出所が根絶され得る。
【0042】
記載される理由のため、血液試料の機能的状態は有用なツールである。本明細書において使用される場合、「血液試料の機能的状態」は、1つ又は複数の活性が決定された1つ又は複数の経路の決定された1つ又は複数の活性の組み合わせられた情報として定義される。概しては、経路の活性は、活性若しくは非活性であると決定され得るか、又は活性は対照試料を参照して決定され得る。対照試料は、健常対象から得られた血液試料であってもよいが、それはまた、経路活性を決定するために使用されるモデルを軟正するために使用される試料又はデータを指すことができる。そのため対照試料は必ずしも血液試料ではないが、経路の既知の機能的状態(即ち活性又は非活性)を有する異なる試料であってもよい。活性を参照、例えば対照試料と比較することにより、活性は二元値(即ち経路は活性若しくは非活性である)として表されてもよく、又はそれは、数により表される相対的な値として表されてもよい。したがって、例えばAR経路のみが血液試料において決定される場合、血液試料の機能的状態は、対照試料を参照して活性のAR活性又は不活性のAR活性のいずれかとして認定され得る。代替的に経路活性の相対的な値が数により表され、不活性の対照試料が0の値を有するとして定義され、活性の対照試料が1の値を有するとして定義される場合、対象から得られた血液試料において決定される経路活性は例えば0.81であってもよく、経路活性は不活性よりも活性に近いことを指す。
【0043】
したがって、決定された遺伝子発現レベルに基づく経路活性は好ましくは数値として表される。以下に記載されるモデルを使用して、経路の遺伝子発現レベルは、経路遺伝子の軟正された発現レベルを参照して及び/又は対照試料(例えば健常対象から得られた血液試料)を参照して経路活性を定量化するために使用され得る。この定量化は、単純な二元モデル(例えば不活性の経路について値0、活性の経路について値1)であり得るか、又は任意選択的に重み係数により乗算された、発現レベルが決定された各々の遺伝子の寄与を定量化することによってより複雑であり得る。したがって、本明細書に記載される「血液試料の状態」は、決定されたような経路活性の数値であるか、又は複数の経路活性が決定される場合、それは決定された経路に帰せられる組み合わせられた数値である。
【0044】
したがって、好ましくは、対象から得られた血液試料の状態はシグナル伝達経路の1つ又は複数の活性を含み、前記シグナル伝達経路活性は、好ましくは、ARシグナル伝達経路活性、AR及びTGFベータシグナル伝達経路活性、AR及びMAPK-AP1シグナル伝達経路活性、AR及びJAK-STAT3シグナル伝達経路活性、AR、TGFベータ、及びMAPK-AP1シグナル伝達経路活性、AR、TGFベータ及びJAK-STAT3シグナル伝達経路活性、AR、MAPK-AP1及びJAK-STAT3シグナル伝達活性並びに/又はAR、TGFベータ、MAPK-AP1及びJAK-STAT3シグナル伝達活性であり、前記シグナル伝達活性は、それぞれの経路の3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づく。
【0045】
これにしたがって、血液試料の機能的状態の決定が、それぞれの参照シグナル伝達経路活性又はシグナル伝達経路の参照活性の組合せに更に基づくことは本発明の実施形態である。同様に、診断又は死亡リスクの決定は、それぞれのシグナル伝達経路の参照活性に更に基づいてもよい。参照活性は、健常対象から得られた並びに既知の臨床アウトカム(例えば敗血症性ショックからの回復、敗血症性ショックにより死亡)を有する敗血症患者から得られた血液試料において見出されるそれぞれのシグナル伝達経路の活性を反映する。
【0046】
本発明の目的のために、抽出されたRNAに基づいて遺伝子又は標的遺伝子の発現レベルを決定することが方法の部分であってもよく、つまり、方法は、当業者に公知の又は本明細書に記載される方法を使用して患者から得られた血液試料から抽出されたRNAに対して遺伝子又は標的遺伝子の発現レベルを決定するステップを含んでもよい。方法は、RNAを抽出するために患者から血液試料を得るステップを更に含んでもよい。代替的に、発現レベルは別々に決定されたものであってもよく、(標的遺伝子の発現レベルの)決定ステップは、本発明の方法におけるアクティブなステップではない。そのような場合、発現レベルはインプット値、例えば1つ又は複数の対照遺伝子発現レベルに対する相対的な発現レベルとして提供される。
【0047】
診断される対象において、3つ以上の遺伝子発現レベルの各々を3つ以上の参照発現レベルと比較することにより、予測は対象の状態(例えば敗血症又は非敗血症、敗血症を発症する可能性、敗血症からの死亡の可能性)について為され得る。代替的に、参照経路活性の各々を診断される対象におけるそれぞれの経路活性の各々と比較することにより、それぞれの経路活性の各々を含む血液試料の状態が決定され得る。
【0048】
本明細書において使用される場合、「発現レベル」は、遺伝子から転写されるmRNAコピーの数を定量化することを指す。概しては、この数は絶対的な値ではなく相対的な値であり、したがって好ましくは例えば1つ又は複数のハウスキーピング遺伝子の発現を参照して正規化される。ハウスキーピング遺伝子は、細胞種及び/又は細胞の機能的状態(即ち疾患対象から若しくは健常対象から)とは独立して一定の発現レベルを有することが想定される遺伝子であり、したがって実験的に決定された相対的な発現レベルを正規化するために使用され得る。ハウスキーピング遺伝子は概しては当業者に公知であり、正規化のために使用されてもよいハウスキーピング遺伝子の非限定的な例は、ベータ-アクチン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及び転写因子IID TATA結合タンパク質(TBP)である。
【0049】
その発現レベルが好ましくは分析される細胞シグナル伝達経路標的遺伝子のセットは同定されており、代替的に好適な標的遺伝子を同定する方法は本明細書に記載されている。例えば数学的モデルにより、経路活性を決定するための使用のために、各々の評価される細胞シグナル伝達経路からの3つ以上の、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの、標的遺伝子は、経路活性を決定するために分析され得る。
【0050】
対象から得られた血液試料は任意の種類の血液試料であることができ、即ち、血液は、例えばカニューレを使用して採取されてもよく、全血又は血液の定義された画分、例えば単離されたPBMC、単離されたCD4+細胞、混合されたCD8+及びT細胞、単離された好中球若しくは単離された単球であってもよい。好ましくは試料は全血である。提示される発明は、全血は、それに含まれる細胞の多様性にもかかわらず、前記血液試料の機能的状態を決定するための経路分析のために使用することができ、前記血液試料の前記機能的状態は、例えば、血液試料が得られた敗血症を有するか、又は敗血症を有することが疑われる対象の診断及び予後のために使用することができるという驚くべき発見に基づく。
【0051】
1つ又は複数のシグナル伝達経路の活性は、そのため、血液試料の機能的状態を特徴付けるバイオマーカーとして使用することができ、感染症を有する患者における敗血症の発症の早期予測、対象における敗血症の診断、敗血症を有する対象の敗血症性ショックへの進行及び死亡リスクの予測、並びに敗血症を有する対象のための療法の選択のために有用である。
【0052】
実施形態において、シグナル伝達経路測定は、qPCR、マルチプルqPCR、マルチプレックスqPCR、ddPCR、RNAseq、RNA発現アレイ又は質量分析を使用して行われる。例えば、遺伝子発現マイクロアレイデータ、例えばAffymetrixマイクロアレイ、又はRNAシークエンシング方法、例えばIlluminaシークエンサーが使用され得る。
【0053】
「対象」という用語は、本明細書において使用される場合、任意の生物を指す。一部の実施形態において、対象は動物、好ましくは哺乳動物である。ある特定の実施形態において、対象は人間、例えば医学的対象である。本発明は特定の対象の群に必ずしも限定されないが、敗血症を有する対象又は敗血症を有することが疑われる対象又は敗血症を発症するリスクがある対象は、本明細書に記載される発明から最も利益を受けることは明らかである。したがって、血液試料が得られた対象は、敗血症が代替的な手段(例えば血液培養若しくはクレームされる方法)により既に確認されている場合、敗血症を有する対象であるか、又は敗血症を有することが疑われる対象若しくは敗血症を発症するリスクがある対象であることが好ましい。敗血症を有することが疑われる対象は、SIRS又は敗血症を定義する1つ又は複数の基準、例えば発熱、頻脈、頻呼吸、及び/又は白血球増加症若しくは白血球減少症の存在を満たす対象であってもよい。代替的に、敗血症を有することが疑われる対象は、敗血症を有する又は発症するリスクがある対象、例えば敗血症に繋がり得る感染症を有する対象又はがん、糖尿病、低減された免疫を有する対象、集中治療室において長時間過ごした対象、早産、低いAGPARスコアを有する対象等であってもよい。対象はまた、敗血症を発症するリスクがある対象であってもよく、本明細書において使用される場合、「敗血症を発症するリスクがある対象」は、現在は敗血症を有しないが、対象が敗血症を発症することに繋がり得る1つ又は複数の増加したリスク因子、例えば尿道カテーテル、開放性創傷又はドレーンを伴う創傷、血管内ラインの存在等を有する対象を指す。
【0054】
本明細書において使用される場合、「臨床パラメーター」という用語は、呼吸速度、心拍数、血圧を指す。「臨床パラメーター」という用語は、発熱、悪寒、非常に低い体温、通常よりも少ない排尿、吐き気、嘔吐、下痢、疲労、虚弱、染みだらけ若しくは変色した皮膚、発汗、冷たい皮膚又は重篤な疼痛から選択される症状を更に指すことができる。
【0055】
本発明にしたがって使用される血液試料は、抽出された試料、即ち、対象から抽出された試料であることができる。試料の例としては、全血試料、単離されたPBMC、単離されたCD4+細胞、混合されたCD8+及びT細胞、単離された好中球又は単離された単球が挙げられるがこれらに限定されない。単離されたPBMC、単離されたCD4+細胞、混合されたCD8+及びT細胞、単離された好中球又は単離された単球は、概しては、当業者に公知の方法により全血試料から得られる。更に、当業者は、従来の方法を使用して血液を採取して対象から全血試料を得る方法に精通している。「試料」という用語はまた、本明細書において使用される場合、例えば細胞、組織及び/又は体液が対象から採取されて、例えば、顕微鏡スライド又は固定液に置かれている場合、並びにクレームされた方法を行うためにこの試料の部分が、例えば、レーザー捕捉顕微解剖(LCM)の手段により、又はパンチングにより、又はスライドから関心対象の細胞を剥がし取ることにより、又は蛍光活性化細胞選別技術により抽出される場合を包含する。追加的に、「試料」という用語はまた、本明細書において使用される場合、例えば細胞、組織及び/又は体液が対象から採取されて、顕微鏡スライドに置かれており、クレームされた方法がスライド上で行われる場合を包含する。好ましくは、試料は体液、特には全血、又は全血試料から単離された1つ若しくは複数の細胞種である。
【0056】
「経路」、「シグナル伝達経路」(signal transduction pathway)、「シグナル伝達経路」(signaling pathway)及び「細胞シグナル伝達経路」という用語は本明細書において交換可能に使用される。
【0057】
「シグナル伝達経路の活性」は、試料におけるシグナル伝達経路に関連する転写因子(TF)エレメントの活性を指すことができ、TFエレメントは、標的遺伝子の発現への駆動、即ち、標的遺伝子が転写される速度において、例えば高い活性(即ち高い速度)若しくは低い活性(即ち低い速度)、又は他の規模、例えばそのような活性(例えば速度)に関するレベル、値若しくは同種のものの観点において、標的遺伝子の転写を制御する。よって、本発明の目的のために、「活性」という用語はまた、本明細書において使用される場合、本明細書に記載される「経路分析」の間に中間的結果として得られ得る活性レベルを指すことが意味される。
【0058】
「転写因子エレメント」(TFエレメント)という用語は、本明細書において使用される場合、好ましくは、活性転写因子の中間体若しくは前駆体タンパク質若しくはタンパク質複合体、又は指定される標的遺伝子発現を制御する活性転写因子タンパク質若しくはタンパク質複合体を指す。例えば、タンパク質複合体は、1つ又は複数の補因子と共に、それぞれのシグナル伝達経路タンパク質のうちの1つの少なくとも細胞内ドメインを含有してもよく、それにより標的遺伝子の転写を制御し得る。好ましくは、該用語は、細胞内ドメインを結果としてもたらすそれぞれのシグナル伝達経路タンパク質のうちの1つの切断によりトリガーされるタンパク質又はタンパク質複合体転写因子のいずれかを指す。
【0059】
「標的遺伝子」という用語は、本明細書において使用される場合、その転写がそれぞれの転写因子エレメントにより直接的又は間接的に制御される遺伝子を意味する。「標的遺伝子」は、(本明細書に記載される)「直接的な標的遺伝子」及び/又は「間接的な標的遺伝子」であってもよい。
【0060】
経路分析は、それぞれのシグナル伝達経路と関連付けられる転写因子のよく検証された直接的な標的遺伝子のmRNAレベルの測定からシグナル伝達経路の活性を推測することに基づく、血液細胞におけるシグナル伝達経路活性の定量的な測定を可能にする(例えばW Verhaegh et al., 2014、上掲;W Verhaegh, A van de Stolpe, Oncotarget, 2014, 5(14):5196を参照)。
【0061】
これにしたがって、血液試料の機能的状態の決定及び/又はそれのその後の使用、例えば患者の診断若しくは死亡リスクの予測が、シグナル伝達経路の参照活性のそれぞれの組合せに更に基づくことは本発明の実施形態である。同様に、シグナル伝達経路異常要因の決定は、それぞれのシグナル伝達経路の参照活性に更に基づいてもよい。参照活性は、健常対象の血液試料において見出されるそれぞれのシグナル伝達経路の活性を反映する。
【0062】
参照経路活性の各々を診断される対象におけるそれぞれの経路活性の各々と比較することにより、それぞれの経路の各々を含む血液試料の機能的状態が決定され得る。血液試料の機能的状態は、それぞれの経路の活性がそれぞれの経路の参照活性から(異常に)逸脱しているかどうかを指し示す。血液試料の機能的状態は次に診断又は死亡リスクに翻訳されてもよい。血液試料の機能的状態はまた経路活性の組合せから直接的に計算されてもよい。血液試料の機能的状態は、複数経路スコア(multi-pathway score)、MPSと考えることができ、これは対象が敗血症、又は敗血症の結果としての死亡のリスクを有する可能性を表す。よって、「血液試料の機能的状態」は、経路活性の組合せを、対象が敗血症、又は敗血症の結果としての死亡のリスクを有する可能性に関連付ける規模、例えばレベル又は値を指す。
【0063】
「敗血症」という用語は、本明細書において使用される場合、感染症に対する身体の応答がその組織及び臓器への傷害を引き起こす場合に生じる状態を指す。敗血症は、感染症によりトリガーされる炎症性免疫応答である。細菌感染症は最も一般的な原因であるが、真菌、ウイルス、及び原生動物感染症もまた敗血症に繋がり得る。一次感染の一般的な位置としては、肺、脳、尿路、皮膚、及び腹部臓器が挙げられる。
【0064】
血液試料の機能的状態は、単一の細胞シグナル伝達経路活性又は「細胞シグナル伝達経路の活性の組合せ」に基づく。血液試料の機能的状態は、1つ又は複数の細胞シグナル伝達経路の活性により影響されることをこれは意味する。1つ又は複数の細胞シグナル伝達経路の活性は、本明細書に記載される数学的モデルにより推測及び/又は組合せされ得る。好ましい実施形態において、血液試料の機能的状態は、2つより多くの細胞シグナル伝達経路の活性を含むシグナル伝達経路活性の組合せに基づく。シグナル伝達経路活性のそのような組合せは、3若しくは4つの、又は更には4つよりも多くの、例えば5、6、7若しくは8つの、又はよりいっそう多くの、異なるシグナル伝達経路の活性を含んでもよい。
【0065】
概しては、対象において2以上の細胞シグナル伝達経路の活性の組合せに基づく血液試料の機能的状態を決定するために多くの異なる式が考案可能であり、即ち:
MPS=F(Pi)+X(i=1...N)
式中、MPSは、血液試料の機能的状態及び/又はリスクスコアを表し(「MPS」という用語は、血液試料の機能的状態が2以上の細胞シグナル伝達経路の活性により影響され得ることを表すために「複数経路スコア」の略語として本明細書において使用される)、Piは細胞シグナル伝達経路iの活性を表し、Nは、血液試料の機能的状態を算出するために使用される細胞シグナル伝達経路の総数を表し、Xは、式に入り得る可能な更なる因子及び/又はパラメーターのためのプレースホールダーである。そのような式は、より特には、所与の変数におけるある特定の次数の多項式、又は変数の線形結合であってもよい。そのような多項式における重み係数及び累乗は、専門家の知識に基づいて設定されてもよいが、典型的には既知のグラウンドトゥルースを有するトレーニングデータセット、例えば、生存データを使用して、上記の式の重み係数及び累乗の概算値が得られる。活性は、上記の式を使用して組み合わせられてもよく、その後にMPSが生成される。次に、高いMPSが、患者が敗血症を有する及び/又は高い死亡リスクを有するより高い確率と相関し、その逆も成り立つようにスコア付け関数の重み係数及び累乗は最適化されてもよい。既知のデータとのスコア付け関数の相関の最適化は、数多くの分析技術、例えば、(好ましくは本明細書において使用されるような)コックス比例ハザード検定、ログランク検定、標準的な最適化技術、例えば最急降下法又は手動適合と組み合わせたカプラン-マイヤー推定量等を使用して行われ得る。
【0066】
本明細書において使用される場合、「リスクスコア」又は「リスク因子」という用語は、概しては、血液試料の機能的状態に基づく対象についての予測、リスク評価又は診断を指す。例えば、リスクスコアは、敗血症を有することについての対象の診断(対象が敗血症であるリスク)、敗血症対象の死亡リスク、及び/又は非敗血症対象について敗血症を発症するリスク、敗血症を有すると以前に診断された対象の再発のリスクであってもよい。
【0067】
好ましくは、シグナル伝達経路の1つ又は複数の活性、複数の経路活性の組合せ及びその応用の決定は、例えば、その各々がそれぞれのシグナル伝達経路の活性を決定する目的のために全体が本明細書に援用される以下の文献に記載されるように行われる:国際特許出願国際公開第2013011479号パンフレット(名称:「標的遺伝子発現の確率モデリングを使用する細胞シグナル伝達経路活性の評価」)、国際公開第2014102668号パンフレット(名称:「標的遺伝子発現の線形結合を使用する細胞シグナル伝達経路活性の評価」)、国際公開第2015101635号パンフレット(名称:「標的遺伝子発現の数学的モデリングを使用するPI3K細胞シグナル伝達経路活性の評価」)、国際公開第2016062891号パンフレット(名称:「標的遺伝子発現の数学的モデリングを使用するTGF-β細胞シグナル伝達経路活性の評価」)、国際公開第2017029215号パンフレット(名称:「標的遺伝子発現の数学的モデリングを使用するNFKB細胞シグナル伝達経路活性の評価」)、国際公開第2014174003号パンフレット(名称:「複数の細胞シグナル伝達経路活性を使用する処置応答の医学的予後判定及び予測」)、国際公開第2016062892号パンフレット(名称:「複数の細胞シグナル伝達経路活性を使用する処置応答の医学的予後判定及び予測」)、国際公開第2016062893号パンフレット(名称:「複数の細胞シグナル伝達経路活性を使用する処置応答の医学的予後判定及び予測」)、国際公開第2018096076号パンフレット(名称:「腫瘍抑制性FOXO活性を酸化ストレスから区別する方法」)、並びに特許出願国際公開第2018096076号パンフレット(名称:「腫瘍抑制性FOXO活性を酸化ストレスから区別する方法」)、国際公開第2019068585号パンフレット(名称:「標的遺伝子発現の数学的モデリングを使用するNotch細胞シグナル伝達経路活性の評価」)、国際公開第2019120658号パンフレット(名称:「標的遺伝子発現の数学的モデリングを使用するMAPK-MAPK-AP1細胞シグナル伝達経路活性の評価」)、国際公開第2019068543号パンフレット(名称:「標的遺伝子発現の数学的モデリングを使用するJAK-JAK-STAT3細胞シグナル伝達経路活性の評価」)、国際公開第2019068562号パンフレット(名称:「標的遺伝子発現の数学的モデリングを使用するJAK-STAT1/2細胞シグナル伝達経路活性の評価」)、及び国際公開第2019068623号パンフレット(名称:「免疫細胞種の機能的状態及び免疫応答の決定」)。
【0068】
モデルは、いくつかの細胞種においてER、AR、PI3K-FOXO、HH、Notch、TGF-β、Wnt、NFkB、JAK-STAT1/2、JAK-JAK-STAT3及びMAPK-MAPK-AP1経路について生物学的に検証されている。
【0069】
その発現レベルが好ましくは分析される細胞シグナル伝達経路標的遺伝子の独特のセットが同定されている。数学的モデルにおける使用のために、各々の評価された細胞シグナル伝達経路からの3つ以上の、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの、標的遺伝子が、経路活性を決定するために分析され得る。
【0070】
本明細書に開示される異なるシグナル伝達経路の活性を決定する経路分析方法に共通するのは、細胞、例えば血液試料中に存在する細胞におけるシグナル伝達経路の活性は、シグナル伝達経路の1つ又は複数の、好ましくは3つ以上の、標的遺伝子の発現レベルを受け取ること、試料中のシグナル伝達経路に関連付けられる転写因子(TF)エレメントの活性レベルを決定することであって、TFエレメントが、3つ以上の標的遺伝子の転写を制御し、決定することが、1つ又は複数の、好ましくは3つ以上の標的遺伝子の発現レベルをシグナル伝達経路の活性レベルに関連付ける軟正された数学的な経路モデルを評価することに基づく、決定すること、及び任意選択的にシグナル伝達経路に関連付けられるTFエレメントの決定された活性レベルに基づいて血液試料中に存在する細胞におけるシグナル伝達経路の活性を推測することにより決定可能であるという、好ましくは本発明の目的のために本明細書において適用可能な概念である。本明細書に記載されるように、活性レベルは、血液試料の機能的状態及び/又は診断及び/又はリスクスコアを決定するためのインプットとして直接的に使用することができ、これもまた本発明により想定される。
【0071】
TFエレメントの「活性レベル」という用語は、本明細書において使用される場合、その標的遺伝子の転写に関するTFエレメントの活性のレベルを表す。
【0072】
軟正された数学的な経路モデルは、確率モデル、好ましくは、シグナル伝達経路に関連付けられるTFエレメントの活性レベル及び3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを関連付ける条件付きの確率に基づく、ベイジアンネットワークモデルであってもよく、又は軟正された数学的な経路モデルは、3つ以上の標的遺伝子の発現レベルの1つ若しくは複数の線形結合に基づいてもよい。本発明の目的のために、軟正された数学的な経路モデルは、好ましくは、重心若しくは線形モデル、又は条件付きの確率に基づくベイジアンネットワークモデルである。
【0073】
特に、発現レベルの決定及び任意選択的に対象におけるシグナル伝達経路の活性の推測は、例えば、特に、(i)対象の試料において測定された細胞シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを含むインプットのセットについての細胞シグナル伝達経路を表す、軟正された確率的な経路モデル、好ましくはベイジアンネットワークの部分を評価すること、(ii)シグナル伝達経路に関連付けられる転写因子(TF)エレメントの対象における活性レベルを概算することであって、シグナル伝達経路に関連付けられるTFエレメントが、細胞シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の転写を制御し、概算することが、シグナル伝達経路に関連付けられるTFエレメントの活性レベル及び対象の試料において測定された細胞シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを関連付ける条件付きの確率に基づく、概算すること、及び任意選択的に(iii)対象の試料におけるシグナル伝達経路に関連付けられるTFエレメントの概算された活性レベルに基づいて細胞シグナル伝達経路の活性を推測することにより行われてもよい。これは、国際公開第2013/011479(A2)号パンフレット(「標的遺伝子発現の確率的なモデリングを使用する細胞シグナル伝達経路活性の評価」)において詳細に記載されており、該文献の内容は、その全体が本明細書に援用される。
【0074】
例示的な代替において、発現レベルの決定及び任意選択的に対象における細胞シグナル伝達経路の活性の推測は、特に、(i)対象の試料においてシグナル伝達経路に関連付けられる転写因子(TF)エレメントの活性レベルを決定することであって、シグナル伝達経路に関連付けられるTFエレメントが、細胞シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の転写を制御し、決定することが、細胞シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを、シグナル伝達経路に関連付けられるTFエレメントの活性レベルに関連付ける軟正された数学的な経路モデルを評価することに基づき、数学的な経路モデルが、3つ以上の標的遺伝子の発現レベルの1つ又は複数の線形結合に基づく、決定すること、及び任意選択的に(ii)対象の試料におけるシグナル伝達経路に関連付けられるTFエレメントの決定された活性レベルに基づいて対象における細胞シグナル伝達経路の活性を推測することにより行われてもよい。これは、国際公開第2014/102668(A2)号パンフレット(「標的遺伝子発現の線形結合を使用する細胞シグナル伝達経路活性の評価」)において詳細に記載されている。
【0075】
標的遺伝子発現の数学的モデリングを使用する細胞シグナル伝達経路活性の推測に関する更なる詳細は、W Verhaegh et al., 2014、上掲に見出され得る。
【0076】
参照の迅速な同定を促すために、上記の参照は、本明細書において関心対象の各々のシグナル伝達経路に割り当てられており、シグナル伝達経路の活性の決定のために好適な例示的に対応する標的遺伝子が指し示されている。これに関して、特定の参照はまた、上記の参照と共に提供される標的遺伝子の配列表に対して為される。
【0077】
AR:KLK2、PMEPA1、TMPRSS2、NKX3 1、ABCC4、KLK3、FKBP5、ELL2、UGT2B15、DHCR24、PPAP2A、NDRG1、LRIG1、CREB3L4、LCP1、GUCY1A3、AR及びEAF2(国際公開第2013/011479号パンフレット、国際公開第2014/102668号パンフレット);KLK2、PMEPA1、TMPRSS2、NKX3 1、ABCC4、KLK3、FKBP5、ELL2、UGT2B15、DHCR24、PPAP2A、NDRG1、LRIG1、CREB3L4、LCP1、GUCY1A3、AR、及びEAF2(国際公開第2014/174003号パンフレット);TGF-β:ANGPTL4、CDC42EP3、CDKNIA、CDKN2B、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、SERPINE1、INPP5D、JUNB、MMP2、MMP9、NKX2-5、OVOL1、PDGFB、PTHLH、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI1、SNAI2、TIMP1及びVEGFA(国際公開第2016/062891号パンフレット、国際公開第2016/062893号パンフレット);MAPK-AP-1:BCL2L11、CCND1、DDIT3、DNMT1、EGFR、ENPP2、EZR、FASLG、FIGF、GLRX、IL2、IVL、LOR、MMP1、MMP3、MMP9、SERPINE1、PLAU、PLAUR、PTGS2、SNCG、TIMP1、TP53及びVIM(国際公開第2019/120658号パンフレット);並びにJAK-JAK-STAT3:AKT1、BCL2、BCL2L1、BIRC5、CCND1、CD274、CDKN1A、CRP、FGF2、FOS、FSCN1、FSCN2、FSCN3、HIF1A、HSP90AA1、HSP90AB1、HSP90B1、HSPA1A、HSPA1B、ICAM1、IFNG、IL10、JunB、MCL1、MMP1、MMP3、MMP9、MUC1、MYC、NOS2、POU2F1、PTGS2、SAA1、STAT1、TIMP1、TNFRSF1B、TWIST1、VIM及びZEB1(国際公開第2019/068543号パンフレット)。
【0078】
実施形態において、シグナル伝達経路測定は、qPCR、マルチプルqPCR、マルチプレックスqPCR、ddPCR、RNAseq、RNA発現アレイ又は質量分析を使用して行われる。例えば、遺伝子発現マイクロアレイデータ、例えばAffymetrixマイクロアレイ、又はRNAシークエンシング方法、例えばIlluminaシークエンサーが使用され得る。
【0079】
軟正された数学的な経路モデルは、好ましくは、重心若しくは線形モデル、又は条件付きの確率に基づくベイジアンネットワークモデルである。例えば、軟正された数学的な経路モデルは、確率モデル、好ましくは、血液試料の機能的状態及び/若しくはリスクスコア及びシグナル伝達経路の活性を関連付ける条件付きの確率に基づく、ベイジアンネットワークモデルであってもよく、又は軟正された数学的な経路モデルは、シグナル伝達経路の活性の1つ若しくは複数の線形結合に基づいてもよい。
【0080】
その発現レベルが好ましくは分析される細胞シグナル伝達経路標的遺伝子の独特のセットが同定されている。数学的モデルにおける使用のために、各々の評価された細胞シグナル伝達経路からの3つ以上の、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの、標的遺伝子が、経路活性を決定するために分析され得る。
【0081】
非限定的な例として、シグナル伝達経路活性を決定するためのモデルを生成するために以下の方法が使用され得る:複数のデータセットにおいて異なる遺伝子の発現RNAレベルが、経路が活性であると推定される試料及び経路が活性でないと推定される試料において決定される。発現レベルは、例えばハウスキーピング遺伝子の発現レベルに基づいて、正規化される。経路が活性であると推定されるか、又は不活性であると推定される試料の正規化された発現レベルに基づいて、閾値は決定可能であり、試料における遺伝子の正規化された発現レベルが閾値を下回る場合、経路は不活性である可能性がより高く、発現レベルが閾値を上回る場合、経路は活性である可能性がより高い。この閾値に基づいて単純なモデルが構築可能であり、値は、敗血症を有するか、又は敗血症を有することが疑われる対象の血液試料において決定されたように、発現レベルに割り当てられ、経路活性は、発現レベルが決定される各々の遺伝子についてのこれらの値の和として決定される。代替的に、それぞれの経路の各々の遺伝子について得られた値は、健常対象(即ち敗血症を有しない対象)からの参照血液試料において前記遺伝子について得られた値と比較され得る。
【0082】
本発明の実施形態によれば、
ARシグナル伝達経路、TGFベータシグナル伝達経路、MAPK-AP1シグナル伝達経路及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを前記決定することは、
KLK2、PMEPA1、TMPRSS2、NKX3 1、ABCC4、KLK3、FKBP5、ELL2、UGT2B15、DHCR24、PPAP2A、NDRG1、LRIG1、CREB3L4、LCP1、GUCY1A3、AR及びEAF2からなるリストから選択されるARシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することを含み、好ましくはAR経路の標的遺伝子のセットは、ELL2、FKBP5、GUCY1A3、LRIG1、PLAU、PMEPA1、PRKACB、SGK1、NDRG1、CREB3L4、DHCR24若しくはPTPN1からなる群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12個の標的遺伝子を含み、並びに/又は;
TGFベータシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することは、ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、JUNB、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI2、VEGFAからなるリストから選択される3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することを含み、好ましくはTGFベータ経路の標的遺伝子のセットは、CDC42EP3、GADD45A、ID1、MMP9、SGK1、SMAD5、SMAD7、VEGFA、JUNB、TIMP1、SKIL及びCCKN1Aからなる群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12個の標的遺伝子を含み、並びに/又は;
MAPK-AP1シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することは、BCL2L11、CCND1、DDIT3、DNMT1、EGFR、ENPP2、EZR、FASLG、FIGF、GLRX、IL2、IVL、LOR、MMP1、MMP3、MMP9、SERPINE1、PLAU、PLAUR、PTGS2、SNCG、TIMP1、TP53、及びVIMからなるリストから選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することを含み、好ましくはMAPK-AP1経路の標的遺伝子のセットは、DNMT1、EGFR、ENPP2、GLRX、MMP9、PLAUR、TIMP1、LOR、EZR、DDIT3及びTP53からなる群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、若しくは11個の標的遺伝子を含み、並びに/又は;
JAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することは、AKT1、BCL2、BCL2L1、BIRC5、CCND1、CD274、CDKN1A、CRP、FGF2、FOS、FSCN1、FSCN2、FSCN3、HIF1A、HSP90AA1、HSP90AB1、HSP90B1、HSPA1A、HSPA1B、ICAM1、IFNG、IL10、JunB、MCL1、MMP1、MMP3、MMP9、MUC1、MYC、NOS2、POU2F1、PTGS2、SAA1、STAT1、TIMP1、TNFRSF1B、TWIST1、VIM、及びZEB1からなるリストから選択される3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することを含み、好ましくはJAK-STAT3経路の標的遺伝子のセットは、BCL2、BIRC5、CD274、FOS、HSPA1A、JUNB、MMP9、STAT1、TIMP1、BCL2L1、HSPA1B、HSP90AB1、HSP90B1、POU2F1及びICAM1からなる群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子を含む。
【0083】
したがって、実施形態において、本発明による方法は、血液試料が得られた対象を診断するステップを含み、
臨床パラメーター、及び
血液試料の機能的状態
に基づいて、前記対象は敗血症を有すると診断されるか、又は前記対象は敗血症を有しないと診断され、
方法は、対象の血液試料の機能的状態を、健常又は非敗血症対照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態と比較することを更に含む。好ましい実施形態において、血液試料の機能的状態がARシグナル伝達経路活性を含み、ARシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照から得られた対照血液試料において決定されたARシグナル伝達経路活性よりも高いと決定され、及び血液試料が得られた対象が、敗血症と関連付けられる少なくとも1つの臨床パラメーターを有する場合に、対象は敗血症を有すると診断される。対象から得られた血液試料において決定された経路活性を使用して、前記対象が敗血症を有するか否かを診断できることが本発明者らにより見出された。実験データに詳述されるように、ARシグナル伝達経路を決定することは、敗血症を有する対象から得られた血液試料と健常個体から得られた血液試料とを区別するために充分である。任意選択的に、他の経路活性、例えばTGFベータシグナル伝達経路活性、MAPK-AP1シグナル伝達経路活性、及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路活性が診断において含まれ得る。したがって、本明細書において決定される血液試料の機能的状態は、対象を迅速に診断するための診断ツールとして使用され得る。
【0084】
AR経路からの3つ以上の標的遺伝子の血液試料における発現レベルに基づいて、ARシグナル伝達経路活性、及びそのため血液試料の機能的状態が決定され得る。このARシグナル伝達経路は、定量的な値として表すことができ、健常対象又は既知の敗血症対象のいずれかから得られた血液試料において決定されたARシグナル伝達経路活性と比較することができる。したがって、対象を診断するステップは、好ましくは、対象の血液試料の機能的状態を、既知の敗血症患者から得られた血液試料の機能的状態と比較することを更に含む。診断ステップは血液試料の機能的状態に基づくので、このステップは、決定されたTGFベータ、MAPK-AP1、及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路活性を、それらが決定された場合に任意選択的に更に使用する。追加の経路を含むことにより、診断の確実性は更に向上され得る。
【0085】
血液試料の機能的状態は、少なくとも、数値として表されたARシグナル伝達経路活性を含む。そのため、対象からの血液試料の機能的状態を、健常対象から得られた対照血液試料の機能的状態と比較することにより、診断は、少なくともARシグナル伝達経路活性により表される数値の差異又は類似性に基づいて為され得る。したがって、前記比較は、好ましくは、正確性を増加させるために参照血液試料の複数の機能的状態を使用して行われる。より好ましくは、前記比較は、既知の敗血症対象から得られた血液試料の1つ又は複数の、好ましくは複数の、追加の参照機能的状態と比較することを更に含む。
【0086】
例えば、健常個体の複数の参照血液試料を使用する場合、ARシグナル伝達経路活性を各々の試料について算出することができ、平均値を決定することができる。診断される対象のARシグナル伝達経路活性は、平均参照ARシグナル伝達経路活性に類似したものであり得(例えば算出された平均活性の1又は2標準偏差以内)、その場合、対象は敗血症を有しないと診断される。代替的に、ARシグナル伝達経路は、算出された平均ARシグナル伝達経路活性と比較してより高いものであり得(例えば平均値よりも少なくとも1又は2標準偏差高い)、その場合、対象は敗血症を有すると診断される。任意選択的に、他の経路活性がこの比較に含まれ得る。同じ方法が診断される対象からの試料及び参照試料のために使用される限り、上記の方法は、シグナル伝達経路活性を算出するために使用される方法にかかわらず使用され得る。
【0087】
好ましくは、敗血症を有する対象を診断する目的のために、ARシグナル伝達経路、TGFベータシグナル伝達経路、MAPK-AP1シグナル伝達経路及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することは、
ARシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することであって、3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4若しくは5つが、FKBP5、LRIG1、PMEPA1、DHCR24及びLCP1からなる群から選択される、決定すること、並びに/又は;
TGFベータシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することであって、3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4若しくは5つが、MMP9、GADD45A、CDC42EP3、TIMP1及びSMAD5からなる群から選択される、決定すること、並びに/又は;
MAPK-AP1シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することが、MAPK-AP1経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することであって、3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4若しくは5つが、MMP9、TIMP1、DNMT1、FASLG及びPLAURからなる群から選択される、決定することを含み、並びに/又は;
JAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することであって、3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4若しくは5つが、MMP9、BCL2、TIMP2、HSPA1A及びHSPA1ABからなる群から選択される、決定すること
を含む。
【0088】
したがって、本発明は更に、対象から得られた血液試料から抽出されたRNAに基づいて対象を診断する方法に関し、方法は、
AR経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
ARシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、ARシグナル伝達経路活性を決定するステップ;
及び任意選択的に:
TGFベータ経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
TGFベータシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、TGFベータシグナル伝達経路活性を決定するステップ;
MAPK-AP1経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
MAPK-AP1シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、MAPK-AP1シグナル伝達経路活性を決定するステップ;
JAK-STAT3経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
JAK-STAT3シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、JAK-STAT3シグナル伝達経路活性を決定するステップ
を含み;
前記方法は、血液試料が得られた対象を診断するステップを更に含み、
臨床パラメーター、及び
血液試料における決定されたシグナル伝達経路の活性
に基づいて、前記対象は敗血症を有すると診断されるか、又は前記対象は敗血症を有しないと診断され、
方法は、対象の血液試料における決定されたシグナル伝達経路の活性を、健常又は非敗血症対照対象から得られた少なくとも1つの血液試料における決定されたシグナル伝達経路の活性と比較することを更に含み、
前記血液試料は、敗血症を有する対象から得られるか、又は敗血症を有することが疑われる対象若しくは敗血症を発症するリスクがある対象から得られる。好ましい実施形態において、ARシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照から得られた対照血液試料において決定されたARシグナル伝達経路活性よりも高いと決定され、及び血液試料が得られた対象が、敗血症と関連付けられる少なくとも1つの臨床パラメーターを有する場合に、対象は敗血症を有すると診断される。
【0089】
したがって、本発明の実施形態において、血液試料の機能的状態がARシグナル伝達経路活性を含み、ARシグナル伝達経路活性が、健常対象から得られた参照血液試料において決定されたARシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、対象は敗血症を有すると診断される。代替的に、診断は、直接的に3つ以上の遺伝子の発現レベルに基づき得る。代替的に、比較は、既知の敗血症対象から得られた参照血液試料を更に含むことができる。そのような場合、対象の3つ以上の遺伝子の発現レベル又は血液試料の機能的状態は、健常個体の3つ以上の遺伝子の発現レベル又は血液試料の機能的状態及び既知の敗血症対象の3つ以上の遺伝子の発現レベル又は血液試料の機能的状態の両方と比較され得る。そのような場合、ARシグナル伝達経路活性(及び決定される場合には他の経路活性)に割り当てられた数値は比較され得る。例えば、対象が、既知の敗血症対象の平均値に近い、例えば1若しくは2標準偏差以内の、ARシグナル伝達経路を有する場合、対象は敗血症を有すると診断され、又は値が健常対象の平均値に近い、例えば1若しくは2標準偏差以内にある場合、対象は非敗血症であると診断される。代替的に、統計的方法を使用して、対象が非敗血症群又は敗血症群のいずれにある可能性がより高いのか(つまり、ARシグナル伝達経路に割り当てられた数値が、正常(健常)の平均により近いのか、それとも敗血症の平均値により近いのか)を決定することができる。他のシグナル伝達経路活性がこの算出において任意選択的に含まれ得る。診断ステップのために複数のシグナル伝達経路活性、例えばARシグナル伝達経路活性及びTGFベータシグナル伝達経路活性の両方を使用する場合、クラスタリング方法を使用して、診断される対象が健常群又は敗血症群のいずれに入るのかを確立するために、経路活性に基づいて、健常対照対象、既知の敗血症対象及び診断される対象をクラスタリングしてもよい。本明細書において使用される場合、既知の敗血症対象からの参照血液試料は、後に敗血症の診断が、例えば血液培養により、確認された、対象から得られた血液試料である。
【0090】
本発明による方法の実施形態において、3つ以上の遺伝子の前記発現レベルは、血液試料が得られた対象の死亡リスクの予測において使用され、
前記予測は、参照対象から得られた3つ以上の遺伝子の複数の参照発現レベルとの対象の3つ以上の遺伝子の発現レベルの比較に基づき、参照対象から得られた3つ以上の遺伝子の前記複数の参照発現レベルは、非生存者である敗血症を有する対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベル及び生存者である敗血症を有する対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルを含み、及び任意選択的に健常又は非敗血症対照対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルを更に含み、
血液試料が得られた対象は敗血症を有することが確認され、並びに
敗血症を有する対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルが、生存者である敗血症を有する参照対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルに類似しているか、又は敗血症を有する対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルが、少なくとも1の健常若しくは非敗血症対照対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルに類似している場合に、低い死亡リスクが予測され、並びに
敗血症を有する対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルが、非生存者である敗血症を有する参照対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルに類似している場合に、高い死亡リスクが予測される。
【0091】
本発明の代替的な実施形態において、血液試料の機能的状態は、血液試料が得られた対象の死亡リスクの予測において使用され、
前記予測は、参照対象から得られた血液試料の複数の参照機能的状態との対象の血液試料の機能的状態の比較に基づき、参照対象から得られた血液試料の前記複数の参照機能的状態は、非生存者である敗血症を有する対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態及び生存者である敗血症を有する対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態を含み、及び任意選択的に健常又は非敗血症対照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態を更に含み、
血液試料が得られた対象は敗血症を有することが確認され、並びに
敗血症を有する対象から得られた血液試料の機能的状態が、生存者である敗血症を有する参照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態に類似しているか、又は敗血症を有する対象から得られた血液試料の機能的状態が、少なくとも1の健常若しくは非敗血症対照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態に類似している場合に、低い死亡リスクが予測され、並びに
敗血症を有する対象から得られた血液試料の機能的状態が、非生存者である敗血症を有する参照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態に類似している場合に、高い死亡リスクが予測される。
【0092】
実施形態において、対照対象から得られた血液試料の複数の機能的状態との対象から得られた血液試料の3つ以上の遺伝子又は機能的状態の前記比較は、決定された経路活性のクラスタリングを使用して、好ましくは階層的クラスタリングにより、行われる。
【0093】
死亡リスクに関する予測は、対象から得られた血液試料の3つ以上の標的遺伝子又は機能的状態に基づいて為され得ることが本発明者らにより見出された。対象からの血液試料の3つ以上の標的遺伝子の発現レベル又は機能的状態を、死亡した及び生存した敗血症対象の参照試料と比較することにより、対象が敗血症で死亡する可能性が算出され得る。この予測は、異なる決定されたシグナル伝達経路活性、例えばARシグナル伝達活性、又はARシグナル伝達活性とTGFベータシグナル伝達活性との組合せ)を表す数値を使用すること、及びこれらの値を、参照群について得られた値と比較することにより行われ得る。代替的に、この予測は、3つ以上の遺伝子の発現レベルに直接的に基づき得る。この比較は、統計的方法を使用して又は例えばクラスタリングを使用することにより行われ得る。クラスタリングを使用する場合、死亡した参照対象と共に対象がクラスタリングされる場合に対象は高い死亡リスクを有すると予測され、又は生存した参照対象と共にクラスタリングされる場合に低い死亡リスクを有すると予測される。
【0094】
好ましくは、予測は、本発明による方法において行われ、方法は、敗血症を有する患者から得られた血液試料に対して行われる。好ましくは、予測は、例えば本明細書に記載される方法により、敗血症を有することが既に確立された対象について為される。
【0095】
好ましくは、予測は、本発明による方法において行われ、対照対象から得られた血液試料の3つ以上の遺伝子の複数の発現レベル又は機能的状態との対象から得られた血液試料の3つ以上の遺伝子の発現レベル又は機能的状態の前記比較は、決定された経路活性のクラスタリングを使用して、好ましくは階層的クラスタリングにより、行われる。決定されたシグナル伝達活性に基づくクラスタリングにより、敗血症患者から得られた試料が、敗血症の結果として死亡したものと同定され得ることが本発明者らにより見出された。したがって、対象から得られた血液試料において決定された決定されたシグナル伝達活性を、既知の参照患者と比較することにより、それぞれのシグナル伝達活性が、死亡した患者とクラスタリングされる場合に、死亡リスクは高いとして予測することができ、又はそれぞれのシグナル伝達活性が、生存した患者とクラスタリングされる場合に、リスクは低いとして予測することができる。
【0096】
好ましくは、敗血症を有する対象の生存確率を予測する目的のために、ARシグナル伝達経路、TGFベータシグナル伝達経路、MAPK-AP1シグナル伝達経路及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することは、
ARシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することであって、3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4若しくは5つが、ELL2、FKBP5、EAF2、NDRG1及びDHCR24からなる群から選択される、決定すること、並びに/又は;
TGFベータシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することであって、3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4若しくは5つが、ID1、SKIL、GADD45A、HMGA2及びSMAD4からなる群から選択される、決定すること、並びに/又は;
MAPK-AP1シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することが、MAPK-AP1経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することであって、3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4若しくは5つが、BCL2L11、EZR、ENPP2、MMP3及びPLAURからなる群から選択される、決定することを含み、並びに/又は;
JAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはより多くの標的遺伝子の発現レベルを決定することであって、3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4若しくは5つが、BIRC5、HSP90B1、MMP3、IL10、HIF1Aからなる群から選択される、決定すること
を含む。
【0097】
したがって、実施形態において、本発明は、3つ以上の遺伝子の前記発現レベルが、血液試料が得られた対象の死亡リスクの予測において使用される、方法に関し、
前記予測は、参照対象から得られた3つ以上の遺伝子の複数の参照発現レベルとの対象の3つ以上の遺伝子の発現レベルの比較に基づき、参照対象から得られた3つ以上の遺伝子の前記複数の参照発現レベルは、非生存者である敗血症を有する対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベル及び生存者である敗血症を有する対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルを含み、及び任意選択的に健常又は非敗血症対照対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルを更に含み、
血液試料が得られた対象は敗血症を有することが確認され、並びに
敗血症を有する対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルが、生存者である敗血症を有する参照対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルに類似しているか、又は敗血症を有する対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルが、少なくとも1の健常若しくは非敗血症対照対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルに類似している場合に、低い死亡リスクが予測され、並びに
敗血症を有する対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルが、非生存者である敗血症を有する参照対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルに類似している場合に、高い死亡リスクが予測される。
【0098】
代替的な実施形態において、本発明は、対象からの血液試料から抽出されたRNAに基づいて対象の死亡リスクを決定する方法に関し、方法は、
AR経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
ARシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、ARシグナル伝達経路活性を決定するステップ;
及び任意選択的に:
TGFベータ経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
TGFベータシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、TGFベータシグナル伝達経路活性を決定するステップ;
MAPK-AP1経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
MAPK-AP1シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、MAPK-AP1シグナル伝達経路活性を決定するステップ;
JAK-STAT3経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
JAK-STAT3シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、JAK-STAT3シグナル伝達経路活性を決定するステップ
を含み;
血液試料におけるシグナル伝達経路活性が、血液試料が得られた対象の死亡リスクの予測において使用され、
前記予測は、参照対象から得られた複数の血液試料におけるシグナル伝達経路活性との対象の血液試料におけるシグナル伝達経路活性の比較に基づき、参照対象から得られた複数の血液試料における前記シグナル伝達経路活性は、非生存者である敗血症を有する対象から得られた少なくとも1つの血液試料及び生存者である敗血症を有する対象から得られた少なくとも1つの血液試料を含み、及び任意選択的に健常又は非敗血症対照対象から得られた少なくとも1つの血液試料を更に含み、
血液試料が得られた対象は敗血症を有することが確認され、並びに
敗血症を有する対象から得られた血液試料におけるシグナル伝達経路活性が、生存者である敗血症を有する参照対象から得られた少なくとも1つの血液試料におけるシグナル伝達経路活性に類似しているか、又は敗血症を有する対象から得られた血液試料におけるシグナル伝達経路活性が、健常若しくは非敗血症対照対象から得られた血液試料のうちの少なくとも1つにおけるシグナル伝達経路活性に類似している場合に、低い死亡リスクが予測され、並びに
敗血症を有する対象から得られた血液試料におけるシグナル伝達経路活性が、非生存者である敗血症を有する参照対象から得られた少なくとも1つの血液試料におけるシグナル伝達経路活性に類似している場合に、高い死亡リスクが予測される。
【0099】
実施形態において、対照対象から得られた複数の血液試料における3つ以上の遺伝子の発現レベル又はシグナル伝達経路活性との対象から得られた血液試料における3つ以上の遺伝子の発現レベル又はシグナル伝達経路活性の前記比較は、決定された経路活性のクラスタリングを使用して、好ましくは階層的クラスタリングにより、行われる。
【0100】
更なる実施形態において、血液試料が得られた対象は敗血症を有さず、及び3つ以上の遺伝子の発現レベルは、対象が敗血症を発症するリスクを決定するために使用され、
方法は、血液試料が得られた対象の3つ以上の遺伝子の発現レベルを、健常又は非敗血症対照対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルと比較することを更に含む。
【0101】
代替的な実施形態において、血液試料が得られた対象は敗血症を有さず、及び血液試料の機能的状態が、対象が敗血症を発症するリスクを決定するために使用され、
方法は、血液試料が得られた対象の血液試料の機能的状態を、健常又は非敗血症対照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態と比較することを更に含み、
好ましくは、血液試料の機能的状態がARシグナル伝達経路活性を含み、ARシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照対象から得られた対照血液試料において決定されたARシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、血液試料が得られた対象は、敗血症を発症するリスクがあると予測される。好ましい実施形態において、敗血症を有しない対象について敗血症を発症するリスクを予測することはTGFベータシグナル伝達経路活性に更に基づき、TGFベータシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照対象から得られた対照血液試料において決定されたTGFベータシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、対象は、敗血症を発症するリスクがある。より好ましい実施形態において、血液試料が得られた対象は敗血症を有さず、AR及びTGFベータシグナル伝達経路活性の両方が、健常又は非敗血症対照対象から得られた対照血液試料において決定されたAR及びTGFベータシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、敗血症を発症するリスクがあると決定される。好ましくは、敗血症を有しない対象は、細菌感染症を有する対象である。
【0102】
敗血症を有しないが、敗血症を発症するリスクがある患者、例えば細菌感染症を有する患者において、高いリスクは増加したAR及び任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路活性と相関するため、敗血症を発症する高いリスクを有する患者が同定され得ることが本発明者らにより見出された。
【0103】
したがって、本発明は更に、対象からの血液試料から抽出されたRNAに基づいて、非敗血症対象が敗血症を発症するリスクを決定する方法に関し、方法は、
AR経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
ARシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、ARシグナル伝達経路活性を決定するステップ;
並びに任意選択的に:
TGFベータ経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、若しくはその決定の結果を受け取るステップ;
TGFベータシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、TGFベータシグナル伝達経路活性を決定するステップ;及び/又は
MAPK-AP1経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、若しくはその決定の結果を受け取るステップ;
MAPK-AP1シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、MAPK-AP1シグナル伝達経路活性を決定するステップ;及び/又は
JAK-STAT3経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、若しくはその決定の結果を受け取るステップ;
JAK-STAT3シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、JAK-STAT3シグナル伝達経路活性を決定するステップ
を含み;
血液試料におけるシグナル伝達経路活性が、対象が敗血症を発症するリスクを決定するために使用され、
血液試料が得られた対象は敗血症を有さず、
方法は、血液試料が得られた対象の血液試料におけるシグナル伝達経路活性を、健常又は非敗血症対照対象から得られた少なくとも1つの血液試料におけるシグナル伝達経路活性と比較することを更に含む。
【0104】
好ましくは、敗血症を有しない対象は、細菌感染症を有する対象である。
【0105】
実施形態において、ARシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照対象から得られた対照血液試料において決定されたARシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、血液試料が得られた対象は、敗血症を発症するリスクがあると予測される。
【0106】
本発明の更なる実施形態において、血液試料が得られた対象は敗血症から回復しており、及び血液試料の3つ以上の遺伝子の発現レベルが、対象が敗血症を再発するリスクをモニターするために使用され、
方法は、血液試料が得られた対象の3つ以上の遺伝子の発現レベルを、健常又は非敗血症対照対象から得られた3つ以上の遺伝子の発現レベルと比較することを更に含む。
【0107】
代替的な実施形態において、血液試料が得られた対象は敗血症から回復しており、及び血液試料の機能的状態が、対象が敗血症を再発するリスクをモニターするために使用され、
方法は、血液試料が得られた対象の血液試料の機能的状態を、健常又は非敗血症対照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態と比較することを更に含み、
好ましくは、血液試料の機能的状態がARシグナル伝達経路活性を含み、ARシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照対象から得られた対照血液試料において決定されたARシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、血液試料が得られた対象は、敗血症を再発するリスクがあると予測される。好ましい実施形態において、敗血症から回復した対象について敗血症を再発するリスクを予測することはTGFベータシグナル伝達経路活性に更に基づき、TGFベータシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照対象から得られた対照血液試料において決定されたTGFベータシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、対象は敗血症を再発するリスクがある。より好ましい実施形態において、AR及びTGFベータシグナル伝達経路活性の両方が、健常又は非敗血症対照対象から得られた対照血液試料において決定されたAR及びTGFベータシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、敗血症から回復した対象は、敗血症を再発するリスクがあると決定される。
【0108】
敗血症の回復後に患者は、長期化された時間にわたり敗血症を再発しやすいままであることが見出された。再発のより高いリスクは、増加したAR及びTGFベータシグナル伝達経路活性と相関すること、並びに単独でARシグナル伝達経路活性に基づいて、又はTGFベータシグナル伝達経路活性と組み合わせた場合に、敗血症を再発するリスクを有する対象が同定され得ることを本発明者らは実証する。
【0109】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、対象からの血液試料から抽出されたRNAに基づいて、敗血症から回復した対象について再発のリスクを決定する方法に関し、方法は、
AR経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
ARシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、ARシグナル伝達経路活性を決定するステップ;
並びに任意選択的に:
TGFベータ経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、若しくはその決定の結果を受け取るステップ;
TGFベータシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、TGFベータシグナル伝達経路活性を決定するステップ;及び/又は
MAPK-AP1経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、若しくはその決定の結果を受け取るステップ;
MAPK-AP1シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、MAPK-AP1シグナル伝達経路活性を決定するステップ;及び/又は
JAK-STAT3経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、若しくはその決定の結果を受け取るステップ;
JAK-STAT3シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいて、JAK-STAT3シグナル伝達経路活性を決定するステップ
を含み;
血液試料が得られた対象は敗血症から回復しており、及び血液試料におけるシグナル伝達経路活性が、対象が敗血症を再発するリスクをモニターするために使用され、
方法は、血液試料が得られた対象の血液試料におけるシグナル伝達経路活性を、健常又は非敗血症対照対象から得られた少なくとも1つの血液試料におけるシグナル伝達経路活性と比較することを更に含む。
【0110】
実施形態において、ARシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照対象から得られた対照血液試料において決定されたARシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、血液試料が得られた対象は、敗血症を再発するリスクがあると予測される。
【0111】
本発明の好ましい実施形態によれば、血液試料は、全血試料、単離された末梢血単核細胞(PBMC)、単離されたCD4+細胞、単離されたCD8+細胞、制御性T細胞、混合されたCD8+及びT細胞、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、樹状細胞、単離された好中球、単離されたリンパ球又は単離された単球である。
【0112】
本発明の実施形態において、前記シグナル伝達経路活性又はシグナル伝達経路活性は、血液試料から抽出されたRNAに基づいて1つ又は複数の経路について決定された3つ以上の発現レベルを1つ又は複数のシグナル伝達経路の1つ又は複数の活性に関連付ける軟正された数学的モデルを評価することに基づいて決定される。
【0113】
本発明の好ましい実施形態によれば、血液試料の機能的状態は、血液試料におけるシグナル伝達経路の活性を数値に関連付ける軟正された数学的モデルを評価することに基づいて決定される。このモデルは、診断される対象の血液試料の機能的状態を決定するように経路活性の組合せを解釈するため、及び任意選択的にこの機能的状態を更に使用して診断又は死亡リスクを提供するためにプログラムされてもよい。特に、血液試料の機能的状態の決定は、(i)診断される対象の血液試料におけるそれぞれのシグナル伝達経路の活性を受け取ること、(ii)前記対象の血液試料の機能的状態を決定することであって、それぞれのシグナル伝達経路の活性を血液試料の機能的状態に関連付ける軟正された数学的モデルを評価することに基づく、決定することを含む。
【0114】
軟正された数学的な経路モデルは、好ましくは、重心若しくは線形モデル、又は条件付きの確率に基づくベイジアンネットワークモデルである。例えば、軟正された数学的な経路モデルは、確率モデル、好ましくは、血液試料の機能的状態及びシグナル伝達経路の活性を関連付ける条件付きの確率に基づく、ベイジアンネットワークモデルであってもよく、又は軟正された数学的な経路モデルは、シグナル伝達経路の活性の1つ若しくは複数の線形結合に基づいてもよい。
【0115】
数学的モデルにしたがって、シグナル伝達経路の活性は、診断に更に翻訳され得る、血液試料の機能的状態を提供するために解釈され、又は診断を直接的に提供するために解釈される。血液試料の機能的状態は、対象が敗血症を有する確率、及び/又は敗血症を有する対象が敗血症性ショックの帰結として死亡する確率を予測又は提供する。
【0116】
よって、診断の決定又は死亡リスクの決定は、血液試料における細胞シグナル伝達経路の活性の組合せに基づいて血液試料の機能的状態を決定すること及び機能的状態を診断又は死亡リスクに翻訳することを含んでもよい。本発明の好ましい実施形態によれば、それぞれのシグナル経路の活性は、本明細書に記載される経路分析により決定されるか、又は決定可能である。
【0117】
よって、本発明の好ましい実施形態において、方法は、対象から得られた血液試料を提供するステップ、及び前記血液試料からRNAを抽出するステップを含む。
【0118】
本発明の実施形態において、対象は小児対象である。
【0119】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様の方法及びその様々な実施形態を実行するためのコンピュータにより実行される方法に関する。
【0120】
第3の態様によれば、本発明は、血液試料の機能的状態を決定するため、及び/又は敗血症を有する対象を診断するため、及び/又は対象の死亡リスクを予測するための装置に関し、装置は、本発明の第1の態様の方法及びその様々な実施形態を行うために構成されたデジタルプロセッサーを含む。好ましい実施形態において、本発明は、血液試料の機能的状態を決定するための装置に関し、装置は、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法を行うために構成されたデジタルプロセッサーを含み、ARシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子についての標的遺伝子発現プロファイルの指標となるデータ、任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子についての標的遺伝子発現プロファイルの指標となるデータを受け取るように構成されたインプットを含む。
【0121】
第4の態様によれば、本発明は、血液試料の機能的状態を決定するため、及び/又は敗血症を有する対象を診断するため、及び/又は対象の死亡リスクを予測するための非一時的なストレージ媒体に関し、非一時的なストレージ媒体は、本発明の第1の態様の方法及びその様々な実施形態を行うためにデジタル処理デバイスにより実行可能な指示を記憶する。好ましい実施形態において、本発明は、プログラムがコンピュータにより実行された場合に、
ARシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子についての標的遺伝子発現プロファイルの指標となるデータを受け取ること、任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の標的遺伝子発現レベルの指標となるデータを更に受け取ること、
ARシグナル伝達経路及び任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の決定された発現レベルに基づいてARシグナル伝達経路活性、及び任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路活性及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路活性及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路活性を決定すること、
決定されたARシグナル伝達経路活性及び任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路活性及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路活性及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路活性に基づいて血液試料の機能的状態を決定することであって、前記血液試料の前記機能的状態が、決定されたARシグナル伝達経路活性及び任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路活性及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路活性及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路活性を有するとして決定される、決定すること、並びに
任意選択的に血液試料の機能的状態に基づいて診断又は予測を提供すること
を含む方法をコンピュータが実行することを引き起こす指示を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0122】
非一時的なストレージ媒体は、コンピュータ読取り可能なストレージ媒体、例えばハードドライブ若しくは他の磁気ストレージ媒体、光学ディスク若しくは他の光学ストレージ媒体、ランダムアクセスメモリー(RAM)、リードオンリーメモリー(ROM)、フラッシュメモリー、若しくは他の電子ストレージ媒体、ネットワークサーバー、又はその他であってもよい。デジタル処理デバイスは、携帯型デバイス(例えば、パーソナルデータアシスタント若しくはスマートフォン)、ノートブックコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ若しくはデバイス、リモートネットワークサーバー、又はその他であってもよい。
【0123】
第5の態様によれば、本発明は、血液試料の機能的状態を決定するため、及び/又は敗血症を有する対象を診断するため、及び/又は対象の死亡リスクを予測するためのコンピュータプログラムに関し、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムがデジタル処理デバイス上で実行された場合に、デジタル処理デバイスが本発明の第1の態様による方法及びその様々な実施形態を行うことを引き起こすためのプログラムコード手段を含む。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその部分として供給される好適な媒体、例えば光学ストレージ媒体又はソリッドステート媒体上に記憶/配給(ディストリビューション)されてもよいが、他の形態、例えばインターネット又は他の有線若しくは無線遠距離電子通信システムを介して配給されてもよい。
【0124】
第6の態様において、本発明は、3つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの、遺伝子の発現レベルを決定するためのプライマー及び任意選択的にプローブを含むパーツに関し、
3つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの、遺伝子は、群1及び群2から選択され、群1は、ABCC4、APP、AR、CDKN1A、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FGF8、FKBP5、GUCY1A3、IGF1、KLK2、KLK3、LCP1、LRIG1、NDRG1、NKX3_1、NTS、PLAU、PMEPA1、PPAP2A、PRKACB、PTPN1、SGK1、TACC2、TMPRSS2、及びUGT2B1 5からなり、及び
群2は、ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CDKN2B、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP2、MMP9、NKX2_5、OVOL1、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI1、SNAI2、TIMP1及びVEGFAからなる。
【0125】
プライマー及びプローブの設計は、遺伝子検出及び定量化の分野において常用の技術である。プライマーは、例えば、オンラインプログラム、例えばPrimer3(https://primer3.ut.ee/)により設計されてもよい。qPCR用のプローブは、典型的には、増幅産物に結合し、蛍光部分及び消光剤を有して結合状態と未結合状態とを区別することを可能とするように設計される。上記の遺伝子のためのゲノム配列は、ゲノムデータベース、例えばUCSC Genome Browser、Ensembl Genome Browser又はNCBI Genome Data Viewerにおいて容易に見出され得る。
【0126】
実施形態において、群1は、遺伝子AR、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、GUCY1A3、IGF1、KLK3、LCP1、LRIG1、NDRG1、NKX3_1、PMEPA1、PRKACB、TMPRSS2、好ましくはAR、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、LCP1、LRIG1、NDRG1、PMEPA1、PRKACB、TMPRSS2、より好ましくはDHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、LCP1、LRIG1、PMEPA1、PRKACBからなり、及び/又は群2は、遺伝子CDC42EP3、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP2、MMP9、NKX2_5、OVOL1、PDGFB、PTHLH、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、TIMP1、VEGFA、好ましくはCDC42EP3、GADD45A、GADD45B、ID1、JUNB、MMP9、PDGFB、SGK1、SKIL、SMAD5、SMAD6、TIMP1、VEGFA、より好ましくはCDC42EP3、GADD45A、GADD45B、ID1、JUNB、MMP9、PDGFB、SGK1、SMAD5、TIMP1、VEGFAからなる。実施形態において、3つ以上の遺伝子は群1から選択される。
【0127】
代替的な実施形態において、本発明は、パーツのキットに更に関し、該キットは、それぞれの細胞シグナル伝達経路の標的遺伝子の1つ又は複数のセットの発現レベルを決定することにより1つ又は複数の細胞シグナル伝達経路の活性を推測するためのプライマーを含み、細胞シグナル伝達経路は、AR経路を含み、及び任意選択的にTGFベータ経路、MAPK-AP1経路及びJAK-STAT3経路のうちの1つ又は複数を更に含み、
AR経路の標的遺伝子のセットは、KLK2、PMEPA1、TMPRSS2、NKX3_1、ABCC4、KLK3、FKBP5、ELL2、UGT2B15、DHCR24、PPAP2A、NDRG1、LRIG1、CREB3L4、LCP1、GUCY1A3、AR及びEAF2を含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの標的遺伝子を含み、好ましくは、AR経路の標的遺伝子のセットは、ELL2、FKBP5、GUCY1A3、LRIG1、PLAU、PMEPA1、PRKACB、SGK1、NDRG1、CREB3L4、DHCR24又はPTPN1からなる群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の標的遺伝子を含み、並びに
TGFベータ経路の標的遺伝子のセットは、ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、JUNB、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI2、VEGFAを含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの標的遺伝子を含み、好ましくは、TGFベータ経路の標的遺伝子のセットは、CDC42EP3、GADD45A、ID1、MMP9、SGK1、SMAD5、SMAD7、VEGFA、JUNB、TIMP1、SKIL及びCCKN1Aからなる群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の標的遺伝子を含み、並びに
MAPK-AP1経路の標的遺伝子のセットは、BCL2L11、CCND1、DDIT3、DNMT1、EGFR、ENPP2、EZR、FASLG、FIGF、GLRX、IL2、IVL、LOR、MMP1、MMP3、MMP9、SERPINE1、PLAU、PLAUR、PTGS2、SNCG、TIMP1、TP53、及びVIMを含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの標的遺伝子を含み、好ましくは、MAPK-AP1経路の標的遺伝子のセットは、DNMT1、EGFR、ENPP2、GLRX、MMP9、PLAUR、TIMP1、LOR、EZR、DDIT3及びTP53からなる群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、又は11個の標的遺伝子を含み、並びに
JAK-STAT3経路の標的遺伝子のセットは、AKT1、BCL2、BCL2L1、BIRC5、CCND1、CD274、CDKN1A、CRP、FGF2、FOS、FSCN1、FSCN2、FSCN3、HIF1A、HSP90AA1、HSP90AB1、HSP90B1、HSPA1A、HSPA1B、ICAM1、IFNG、IL10、JunB、MCL1、MMP1、MMP3、MMP9、MUC1、MYC、NOS2、POU2F1、PTGS2、SAA1、STAT1、TIMP1、TNFRSF1B、TWIST1、VIM、及びZEB1を含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの標的遺伝子を含み、好ましくは、JAK-STAT3経路の標的遺伝子のセットは、BCL2、BIRC5、CD274、FOS、HSPA1A、JUNB、MMP9、STAT1、TIMP1、BCL2L1、HSPA1B、HSP90AB1、HSP90B1、POU2F1及びICAM1からなる群から選択される3つ以上の標的遺伝子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの標的遺伝子を含む。
【0128】
本発明の好ましい実施形態において、パーツのキットは、本発明の第3の態様による装置、及び/又は本発明の第4の態様による非一時的なストレージ製品、及び/又は本発明の第5の態様によるコンピュータプログラムを更に含む。
【0129】
実施形態において、本発明は、第1の態様による方法における第6の態様によるキットの使用に関する。
【0130】
第7の態様において、本発明は、本発明の第6の態様によるキットを使用して対象が敗血症を有し、敗血症性ショックを有し、又は敗血症の結果として高い死亡リスクを有するかどうかをin vitro又はex vivoで診断又は予知する方法に関する。好ましくは、ABCC4、APP、FGF8、FKBP5、ELL2、DHCR24、NDRG1、LCP1、EAF2、PTPN1、CDC42EP3、CDKN2B、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IGF1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP9、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD6、SNAI2、TIMP1及びVEGFAの発現の増加;又はCDKN1A、KLK2、KLK3、PMEPA1、TMPRSS2、NKX2_5、NKX3_1、NTS、PLAU、UGT2B15、PPAP2A、LRIG1、TACC2、CREB3L4、GUCY1A3、AR、ANGPTL4、MMP2、OVOL1、PDGFB、PRKACB、SMAD5、SMAD7及びSNAI1の発現の減少は、敗血症と相関する。
【0131】
代替的な実施形態において、本発明は、キットを使用して対象が敗血症を有し、敗血症性ショックを有し、又は敗血症の結果として高い死亡リスクを有するかどうかをin vitro又はex vivoで診断又は予知する方法に関し、キットは、それぞれの細胞シグナル伝達経路の標的遺伝子の1つ又は複数のセットの発現レベルを決定することにより1つ又は複数の細胞シグナル伝達経路の活性を推測するためのプライマーを含み、細胞シグナル伝達経路は、AR経路を含み、及び任意選択的にTGFベータ経路、MAPK-AP1経路及びJAK-STAT3経路のうちの1つ又は複数を更に含み、
AR経路の標的遺伝子のセットは、KLK2、PMEPA1、TMPRSS2、NKX3_1、ABCC4、KLK3、FKBP5、ELL2、UGT2B15、DHCR24、PPAP2A、NDRG1、LRIG1、CREB3L4、LCP1、GUCY1A3、AR及びEAF2を含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含み、並びに
TGFベータ経路の標的遺伝子のセットは、ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、JUNB、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI2、VEGFAを含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含み、並びに
MAPK-AP1経路の標的遺伝子のセットは、BCL2L11、CCND1、DDIT3、DNMT1、EGFR、ENPP2、EZR、FASLG、FIGF、GLRX、IL2、IVL、LOR、MMP1、MMP3、MMP9、SERPINE1、PLAU、PLAUR、PTGS2、SNCG、TIMP1、TP53、及びVIMを含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含み、並びに
JAK-STAT3経路の標的遺伝子のセットは、AKT1、BCL2、BCL2L1、BIRC5、CCND1、CD274、CDKN1A、CRP、FGF2、FOS、FSCN1、FSCN2、FSCN3、HIF1A、HSP90AA1、HSP90AB1、HSP90B1、HSPA1A、HSPA1B、ICAM1、IFNG、IL10、JunB、MCL1、MMP1、MMP3、MMP9、MUC1、MYC、NOS2、POU2F1、PTGS2、SAA1、STAT1、TIMP1、TNFRSF1B、TWIST1、VIM、及びZEB1を含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含む。
【0132】
本発明者らは更に、以下に記載される発見に基づいて、経路阻害剤、特にAR経路阻害剤での処置は、敗血症を有するか、又は敗血症を発症する危険性がある対象のために有益であり得るという学説を立てた。AR阻害剤での敗血症を有するマウスの処置は、混合的な成功と共に以前に記載されている[16]。敗血症を有する雄マウスはAR阻害剤での処置から利益を受けるが、敗血症を有する雌マウスはそうではないことが見出された。しかしながら、敗血症に応答して強い性別ベースの差異がある(雄マウスにおいてはるかにより高い死亡率である)ことが留意されるべきであり、したがって、どの程度までこれらの結果がヒトに外挿され得るのかはあまり明確でない。
【0133】
発明者らの結果に基づけば、AR阻害剤での処置に応答した任意の差異は、全ての敗血症患者が高いAR経路活性を呈するわけではなく、したがって、強く増加したAR経路活性を有する者のみがAR経路阻害剤での処置から利益を受けるという事実により説明され得る。より重要なことに、感染症を発症するリスクがあり、高いAR経路活性を呈する、感染を伴う患者は、AR阻害剤での予防的処置から最も利益を受け得る。この仮定の背後にある理論的根拠は、活性のAR経路は免疫抑制を結果としてもたらすということである;例えばGubbels Bupp and Jorgensen, Androgen-Induced Immunosuppression, Front Immunol. 2018; 9: 794[11](参照により全体が援用される)を参照。
【0134】
ARは、好中球、マクロファージ、肥満細胞、単球、巨核球、B細胞、及びT細胞を含む多様な先天及び適応免疫細胞において発現されることが見出された。興味深いことに、ARはまた、造血幹細胞並びにリンパ球及び骨髄前駆細胞において発現される[13]。異なる研究に由来する証拠は、大抵は炎症促進性及び抗炎症性メディエーターの発現を低減及び/又は促進することにより異なる免疫細胞種におけるアンドロゲンのむしろ免疫抑制的な役割を指し示している。
【0135】
これまで、敗血症の予防又は処置のためにAR経路阻害剤から利益を受けるであろう患者を層化することはできなかったが、本明細書に記載される方法は、血液試料におけるAR経路活性の正確な評価を可能とする。これは、低いAR経路活性を有する患者と高いAR経路活性を有する患者とを単純に識別し、高いAR経路活性を有する患者にAR阻害剤を投与することを可能とする。
【0136】
この仮説を検証するために、単球がLPSで刺激され、その後に様々なAR経路阻害剤で処理されるin vitro実験を設計した。単球は、敗血症において大きな役割を果たすことが記載されているため選択した;例えばSukhacheva, The role of monocytes in the progression of sepsis, Clinical Laboratory Int. 26 August 2020 [14]又はHaverman et al., The central role of monocytes in the pathogenesis of sepsis: consequences for immunomonitoring and treatment, The Netherlands Journal of Medicine, Volume 55, Issue 3, September 1999, Pages 132-141 [15](両方は参照により全体が援用される)。(細菌)LPSは単球においてARシグナル伝達経路を刺激できること、及びこの効果は単球を刺激後にAR経路阻害剤とインキュベートすることにより大部分相殺され得ることを本発明者らは実証することができた。
【0137】
単球は敗血症において役割を果たす鍵となる細胞種の1つであること、ARシグナル伝達活性は単球において増加しており、この活性は測定可能であることが公知であり、ARシグナル伝達は、免疫抑制性の役割の他に炎症性の役割を有することが公知であるので、高いAR経路活性を有する患者の処置は敗血症の予防若しくは成功裏の処置に繋がり、又は少なくとも症状を軽減するということは完全に妥当である。
【0138】
したがって、第8の実施形態において、本発明は、感染症を患う対象における敗血症の予防における使用のためのAR経路阻害剤に関し、好ましくは、対象は、対象から得られた血液試料において決定された場合に、上昇したAR細胞シグナル伝達経路活性を有する。
【0139】
任意選択的に、AR細胞シグナル伝達経路活性は、対象から得られた血液試料において決定され、及びAR細胞シグナル伝達経路活性が上昇しているか、又はある特定の閾値を上回っていることが見出された場合に、AR経路阻害剤は投与される。AR細胞シグナル伝達経路は、本明細書に記載される方法、特には本発明の第1の態様において記載される方法を使用して決定されてもよい。
【0140】
現在、敗血症を予防する方法は、抗生物質の投与等、基礎となる感染症を低減させることを目的としている。本明細書に記載される方法の使用は、敗血症を発症するリスクがある感染症を有する患者を同定及び処置することが初めて可能である。血液試料における対象のAR活性を決定することにより、AR経路阻害剤処置の候補は今や容易に同定され得る。強い相関が、増加したAR経路活性及び感染症に起因する敗血症の発症で見出された。これは、例えば単球における、AR経路活性の免疫抑制作用により引き起こされる可能性がある。単球は先天免疫応答において強い炎症性の役割を有し、全身炎症は敗血症のホールマークである。したがって、AR経路活性は原因となり、そのためAR活性の阻害は、敗血症が予防又は軽減される可能性を増加させるということは妥当である。AR経路活性を決定する代わりに、AR経路阻害剤を投与するための決定はまた、群1から選択される3つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの、遺伝子の発現レベルを決定することに基づいてもよく、群は、遺伝子ABCC4、APP、AR、CDKN1A、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FGF8、FKBP5、GUCY1A3、IGF1、KLK2、KLK3、LCP1、LRIG1、NDRG1、NKX3_1、NTS、PLAU、PMEPA1、PPAP2A、PRKACB、PTPN1、SGK1、TACC2、TMPRSS2、及びUGT2B15、好ましくはAR、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、GUCY1A3、IGF1、KLK3、LCP1、LRIG1、NDRG1、NKX3_1、PMEPA1、PRKACB、TMPRSS2、より好ましくはAR、CREB3L4、DHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、LCP1、LRIG1、NDRG1、PMEPA1、PRKACB、TMPRSS2、よりいっそう好ましくはDHCR24、EAF2、ELL2、FKBP5、LCP1、LRIG1、PMEPA1、PRKACBからなる。
【0141】
本発明は更に、敗血症を患う対象の処置又は軽減における使用のためのAR経路阻害剤に関し、対象は、対象から得られた血液試料において決定された場合に、上昇したAR細胞シグナル伝達経路活性又はある特定の閾値を上回るAR細胞シグナル伝達経路活性を有する。
【0142】
任意選択的に、AR細胞シグナル伝達経路活性は、対象から得られた血液試料において決定され、及びAR細胞シグナル伝達経路活性が上昇しているか、又はある特定の閾値を上回っていることが見出された場合に、AR経路阻害剤は投与される。実施形態において、AR経路活性は、本明細書に記載される方法により決定される。
【0143】
TGFベータ経路活性もまた敗血症を有する患者において上昇していることが見出されるので、AR経路活性と共にTGFベータ経路活性を阻害することは有益であり得ると考えられる。これは、AR阻害剤及びTGFベータ阻害剤を2つの別個の化合物として投与することにより達成されてもよく、又はAR及びTGFベータの両方を阻害する単一の化合物が使用され得る。例えば、化合物A-458は、AR及びTGFベータ経路の両方を特異的に阻害することが見出されており、この目的のために有益に使用され得る。したがって、本発明による使用の実施形態において、更にTGFベータ経路活性が決定される。実施形態において、TGFベータ経路活性は、本明細書に記載される方法により決定される。
【0144】
TGFベータ経路活性を決定する代わりに、TGFベータ経路阻害剤を投与するための決定はまた、群2から選択される3つ以上の、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又はより多くの、遺伝子の発現レベルを決定することに基づいてもよく、群2は、遺伝子ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CDKN2B、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP2、MMP9、NKX2_5、OVOL1、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI1、SNAI2、TIMP1及びVEGFA、好ましくはCDC42EP3、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、INPP5D、JUNB、MMP2、MMP9、NKX2_5、OVOL1、PDGFB、PTHLH、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、TIMP1、VEGFA、より好ましくはCDC42EP3、GADD45A、GADD45B、ID1、JUNB、MMP9、PDGFB、SGK1、SKIL、SMAD5、SMAD6、TIMP1、VEGFA、よりいっそう好ましくはCDC42EP3、GADD45A、GADD45B、ID1、JUNB、MMP9、PDGFB、SGK1、SMAD5、TIMP1、VEGFAからなる。
【0145】
好ましい実施形態において、AR経路阻害剤はTGFベータ経路阻害剤と共に投与され、AR経路阻害剤及びTGFベータ経路阻害剤は同じ化合物又は異なる化合物である。
【0146】
AR経路阻害剤は、ステロイド性抗アンドロゲン、非ステロイド性抗アンドロゲン、アンドロゲン合成阻害剤、CYP17A1阻害剤、CYP11A1(P450scc)阻害剤、5α-レダクターゼ阻害剤及び抗ゴナドトロピンであってもよい。非限定的な例は、酢酸シプロテロン、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、酢酸メゲストロール、酢酸オサテロン、酢酸ノメゲストロール、ジエノゲスト、オキセンドロン、ドロスピレノン、スピロノラクトン、メドロゲストン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、エンザルタミド、プロキサルタミド、シメチジン、トピルタミド、酢酸アビラテロン、ケトコナゾール、セビテロネル、アミノグルテチミド、デュタステリド、アルファトラジオール、デュタステリド、エプリステリド、フィナステリド、A-485、ARCC-4、ARD-266、ノコギリヤシ抽出物、リュープロレリン、エストロゲン(例えば、エストラジオール(及びそのエステル)、エチニルエストラジオール、共役エストロゲン、ジエチルスチルベストロール)、GnRHアナログ、GnRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、リュープロレリン)、GnRHアンタゴニスト(例えば、セトロレリクス)、並びにプロゲストゲン(例えば、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、カプロン酸ゲストノロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール)である。
【0147】
したがって、実施形態において、AR阻害剤は、酢酸シプロテロン、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、酢酸メゲストロール、酢酸オサテロン、酢酸ノメゲストロール、ジエノゲスト、オキセンドロン、ドロスピレノン、スピロノラクトン、メドロゲストン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、アパルタミド、ダロルタミド、エンザルタミド、プロキサルタミド、シメチジン、トピルタミド、酢酸アビラテロン、ケトコナゾール、セビテロネル、アミノグルテチミド、デュタステリド、アルファトラジオール、デュタステリド、エプリステリド、フィナステリド、A-485、ARCC-4、ARD-266、ノコギリヤシ抽出物、リュープロレリン、エストロゲン(例えば、エストラジオール(及びそのエステル)、エチニルエストラジオール、共役エストロゲン、ジエチルスチルベストロール)、GnRHアナログ、GnRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、リュープロレリン)、GnRHアンタゴニスト(例えば、セトロレリクス)、並びにプロゲストゲン(例えば、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、カプロン酸ゲストノロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール)からなる群から選択され、好ましくは、AR阻害剤は、A-485、ARCC-4、ARD-266及びビカルタミドからなる群から選択され、より好ましくは、AR阻害剤はA-485である。
【0148】
TGFベータ経路阻害剤は、小分子キナーゼ阻害剤、抗TGF-βリガンド抗体、抗TβR受容体抗体又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。非限定的な例は、TEW-7197、ガルニセルチブ、LY2157299、フレソリムマブ、XPA681、XPA089、LY2382770、LY3022859、ISTH0036、ISTH0047及びピロール-イミダゾールポリアミドである。
【0149】
したがって、実施形態において、TGFベータ阻害剤は、TEW-7197、ガルニセルチブ、LY2157299、フレソリムマブ、XPA681、XPA089、LY2382770、LY3022859、ISTH0036、ISTH0047及びピロール-イミダゾールポリアミドを含むリストから選択される。
【0150】
本出願はいくつかの好ましい実施形態を記載する。修飾及び変更が、先行する詳細な説明を読んで理解した際に他者に想起され得る。添付の請求項又はその均等の範囲内に入る限り、本出願は全てのそのような修飾及び変更を含むとして解釈されることが意図される。
【0151】
開示される実施形態に対する他のバリエーションが、図面、本開示、及び添付の請求項の研究から、請求項の発明の実施において当業者により理解及び遂行され得る。
【0152】
第1の態様の方法、第2の態様のコンピュータにより実行される発明、第3の態様の装置、第4の態様の非一時的なストレージ媒体、第5の態様のコンピュータプログラム、第6の態様のキットは、特に従属請求項において定義されるような、類似及び/又は同一の好ましい実施形態を有することが理解される。
【0153】
請求項において、「含む」という語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。
【0154】
単一のユニット又はデバイスは、請求項に記載されるいくつかの項目の機能を果たしてもよい。ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが利点を得るために使用され得ないことを指し示さない。
【0155】
1つ又はいくつかのユニット又はデバイスにより行われる死亡リスクの決定のような算出は、任意の他の数のユニット又はデバイスにより行われ得る。
【0156】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその部分として供給される好適な媒体、例えば光学ストレージ媒体又はソリッドステート媒体上に記憶/配給されてもよいが、他の形態、例えばインターネット又は他の有線若しくは無線遠距離電子通信システムを介して配給されてもよい。
【0157】
本発明の好ましい実施形態はまた、それぞれの独立請求項との従属請求項又は上記の実施形態の任意の組合せであり得ることが理解される。
【0158】
本発明のこれら及び他の態様は、本明細書において後述される実施形態から明らかであり、該実施形態を参照して明らかにされる。

図面の簡単な説明
【0159】
全般:シグナル伝達経路分析スコアが描写される全ての図において、これらは、ベイジアン経路モデル分析により提供される経路活性の確率スコアに由来する、経路活性のlog2オッズスコアとして与えられる。log2オッズスコアは線形スケールでのシグナル伝達経路の活性のレベルを指し示す。
【0160】
分析された公共データセットはそれらのGSE番号(原則的に各々の図の下にある)と共に、及び個々の試料はそれらのGSM番号(原則的にクラスタリングダイアグラムの最も右列にある)と共に指し示される。
【0161】
シグナル伝達経路モデル又は免疫応答/システムモデルのための全ての検証試料は独立した試料であり、検証されるそれぞれのモデルの軟正のために使用されていない。
【図面の簡単な説明】
【0162】
図1図1は、データセットGSE26440からの敗血症性ショック患者及び健常対照対象についてのARシグナル伝達経路活性(上)及びTGFベータシグナル伝達経路活性(下)を示す。データは、敗血症性ショック患者(生存者)、敗血症性ショック患者(非生存者)、対照対象(健常対象)及び対照対象(非敗血症生存者)からの全血試料から得られたものである。グラフはそれぞれのシグナル伝達経路活性のlog2オッズを示し;統計的差異がバーの上に指し示され、「ns」(有意差なし)は5.00e^-02<p<=1.00e+00のp値を描写し、*は1.00e^-02<p<=5.00e-02のp値を描写し、**は1.00e^-03<p<=1.00e-02のp値を描写し、***は1.00e^-04<p<=1.00e-03のp値を描写し、****はp<=1.00e-04のp値を描写する。
図2図2は、データセットGSE26440からの敗血症性ショック患者及び健常対照対象についてのMPK-AP1シグナル伝達経路活性(上)及びJAK-STAT3シグナル伝達経路活性(下)を示す。データは、敗血症性ショック患者(生存者)、敗血症性ショック患者(非生存者)、対照対象(健常対象)及び対照対象(非敗血症生存者)からの全血試料から得られたものである。グラフはそれぞれのシグナル伝達経路活性のlog2オッズを示し;統計的差異がバーの上に指し示され、「ns」(有意差なし)は5.00e^-02<p<=1.00e+00のp値を描写し、*は1.00e^-02<p<=5.00e-02のp値を描写し、**は1.00e^-03<p<=1.00e-02のp値を描写し、***は1.00e^-04<p<=1.00e-03のp値を描写し、****はp<=1.00e-04のp値を描写する。
図3図3は、データセットGSE4607からの敗血症性ショック患者及び健常対照対象についてのARシグナル伝達経路活性(上)及びTGFベータシグナル伝達経路活性(下)を示す。データは、対照対象、敗血症性ショック患者(非生存者)及び敗血症性ショック患者(生存者)からの全血試料から得られたものである。グラフはそれぞれのシグナル伝達経路活性のlog2オッズを示し;統計的差異がバーの上に指し示され、「ns」(有意差なし)は5.00e^-02<p<=1.00e+00のp値を描写し、*は1.00e^-02<p<=5.00e-02のp値を描写し、**は1.00e^-03<p<=1.00e-02のp値を描写し、***は1.00e^-04<p<=1.00e-03のp値を描写し、****はp<=1.00e-04のp値を描写する。
図4図4は、データセットGSE4607からの敗血症性ショック患者及び健常対照対象についてのMPK-AP1シグナル伝達経路活性(上)及びJAK-STAT3シグナル伝達経路活性(下)を示す。データは、対照対象、敗血症性ショック患者(非生存者)及び敗血症性ショック患者(生存者)からの全血試料から得られたものである。グラフはそれぞれのシグナル伝達経路活性のlog2オッズを示し;統計的差異がバーの上に指し示され、「ns」(有意差なし)は5.00e^-02<p<=1.00e+00のp値を描写し、*は1.00e^-02<p<=5.00e-02のp値を描写し、**は1.00e^-03<p<=1.00e-02のp値を描写し、***は1.00e^-04<p<=1.00e-03のp値を描写し、****はp<=1.00e-04のp値を描写する。
図5図5は、データセットGSE66099からの敗血症性ショック患者及び健常対照対象についてのARシグナル伝達経路活性(上)及びTGFベータシグナル伝達経路活性(下)を示す。データは、対照対象、敗血症性ショック患者(非生存者)及び敗血症性ショック患者(生存者)からの全血試料から得られたものである。グラフはそれぞれのシグナル伝達経路活性のlog2オッズを示し;統計的差異がバーの上に指し示され、「ns」(有意差なし)は5.00e^-02<p<=1.00e+00のp値を描写し、*は1.00e^-02<p<=5.00e-02のp値を描写し、**は1.00e^-03<p<=1.00e-02のp値を描写し、***は1.00e^-04<p<=1.00e-03のp値を描写し、****はp<=1.00e-04のp値を描写する。
図6図6は、データセットGSE66099からの敗血症性ショック患者及び健常対照対象についてのMPK-AP1シグナル伝達経路活性(上)及びJAK-STAT3シグナル伝達経路活性(下)を示す。データは、対照対象、敗血症性ショック患者(非生存者)及び敗血症性ショック患者(生存者)からの全血試料から得られたものである。グラフはそれぞれのシグナル伝達経路活性のlog2オッズを示し;統計的差異がバーの上に指し示され、「ns」(有意差なし)は5.00e^-02<p<=1.00e+00のp値を描写し、*は1.00e^-02<p<=5.00e-02のp値を描写し、**は1.00e^-03<p<=1.00e-02のp値を描写し、***は1.00e^-04<p<=1.00e-03のp値を描写し、****はp<=1.00e-04のp値を描写する。
図7図7は、データセットGSE95233からの敗血症性ショック患者及び健常対照対象についてのARシグナル伝達経路活性(上)及びTGFベータシグナル伝達経路活性(下)を示す。データは、対照対象(CS=健常対照対象;PC=非敗血症患者対照)、敗血症性ショック患者(NS=非生存者)及び敗血症性ショック患者(SV=生存者)からの全血試料から得られたものである。グラフはそれぞれのシグナル伝達経路活性のlog2オッズを示し;統計的差異がバーの上に指し示され、「ns」(有意差なし)は5.00e^-02<p<=1.00e+00のp値を描写し、*は1.00e^-02<p<=5.00e-02のp値を描写し、**は1.00e^-03<p<=1.00e-02のp値を描写し、***は1.00e^-04<p<=1.00e-03のp値を描写し、****はp<=1.00e-04のp値を描写する。
図8図8は、データセットGSE95233からの敗血症性ショック患者及び健常対照対象についてのMPK-AP1シグナル伝達経路活性(上)及びJAK-STAT3シグナル伝達経路活性(下)を示す。データは、対照対象(CS=健常対照対象;PC=非敗血症患者対照)、敗血症性ショック患者(NS=非生存者)及び敗血症性ショック患者(SV=生存者)からの全血試料から得られたものである。グラフはそれぞれのシグナル伝達経路活性のlog2オッズを示し;統計的差異がバーの上に指し示され、「ns」(有意差なし)は5.00e^-02<p<=1.00e+00のp値を描写し、*は1.00e^-02<p<=5.00e-02のp値を描写し、**は1.00e^-03<p<=1.00e-02のp値を描写し、***は1.00e^-04<p<=1.00e-03のp値を描写し、****はp<=1.00e-04のp値を描写する。
図9図9は、AR及びTGFベータシグナル伝達経路に基づくデータセットGSE26440における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=敗血症性ショック患者(生存者);ライトグレー=敗血症性ショック患者(非生存者);ミディアムグレー=正常対照;ダークグレー=対照生存者。
図10図10は、AR、TGFベータ及びMAPK-AP1シグナル伝達経路に基づくデータセットGSE26440における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=敗血症性ショック患者(生存者);ライトグレー=敗血症性ショック患者(非生存者);ミディアムグレー=正常対照;ダークグレー=対照生存者。
図11図11は、AR、TGFベータ、MAPK-AP1及びJAK-STAT3シグナル伝達経路に基づくデータセットGSE26440における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=敗血症性ショック患者(生存者);ライトグレー=敗血症性ショック患者(非生存者);ミディアムグレー=正常対照;ダークグレー=対照生存者。
図12図12は、AR及びTGFベータシグナル伝達経路に基づくデータセットGSE4607における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=対照;ライトグレー=敗血症性ショック患者(非生存者);ダークグレー=敗血症性ショック患者(生存者)。
図13図13は、AR、TGFベータ及びMAPK-AP1シグナル伝達経路に基づくデータセットGSE4607における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=対照;ライトグレー=敗血症性ショック患者(非生存者);ダークグレー=敗血症性ショック患者(生存者)。
図14図14は、AR、TGFベータ、MAPK-AP1及びJAK-STAT3シグナル伝達経路に基づくデータセットGSE4607における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=対照;ライトグレー=敗血症性ショック患者(非生存者);ダークグレー=敗血症性ショック患者(生存者)。
図15図15は、AR及びTGFベータシグナル伝達経路に基づくデータセットGSE66099における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=敗血症性ショック患者;ライトグレー=敗血症患者;ダークグレー=対照対象。
図16図16は、AR、TGFベータ及びMAPK-AP1シグナル伝達経路に基づくデータセットGSE66099における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=敗血症性ショック患者;ライトグレー=敗血症患者;ダークグレー=対照対象。
図17図17は、AR、TGFベータ、MAPK-AP1及びJAK-STAT3シグナル伝達経路に基づくデータセットGSE66099における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=敗血症性ショック患者;ライトグレー=敗血症患者;ダークグレー=対照対象。
図18図18は、AR及びTGFベータシグナル伝達経路に基づくデータセットGSE95233における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=敗血症性ショック患者;ライトグレー=敗血症患者;ダークグレー=対照対象。
図19図19は、AR、TGFベータ及びMAPK-AP1シグナル伝達経路に基づくデータセットGSE95233における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=敗血症性ショック患者;ライトグレー=敗血症患者;ダークグレー=対照対象。
図20図20は、AR、TGFベータ、MAPK-AP1及びJAK-STAT3シグナル伝達経路に基づくデータセットGSE95233における個々の試料についてのクラスタリングダイアグラムを示す。グレースケールコーディングは個々の経路スコアの対数スケールを表す。階層的クラスタリングを使用した。左側の色コーディングは以下を描写する:黒=血液対照;ライトグレー=対照生存者;ミディアムグレー=非生存者 1日目;ダークグレー=生存者 1日目。
図21図21は、単離されたTHP-1細胞から得られた経路活性を描写する。THP-1細胞をH.ピロリ(H. pylori)細菌上清とインキュベートし、H.ピロリ細菌と直接的にインキュベートし、対照THP-1細胞と比較した。AR、ER、FOXO ヘッジホッグ及びTGFベータ経路の活性を決定し、相対的な値をプロットしている。
図22図22は、単離されたTHP-1細胞から得られた経路活性を描写する。THP-1細胞を異なる濃度の細菌生成物リポ多糖(LPS)とインキュベートし、対照THP-1細胞と比較した。AR、ER、FOXO ヘッジホッグ及びTGFベータ経路の活性を決定し、相対的な値をプロットしている。
図23図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図24図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図25図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図26図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図27図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図28図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図29図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図30図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図31図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図32図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図33図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図34図23図34は、箱ひげ図は遺伝子のサブセットの予測能力を示す。 各々の図は、AR細胞シグナル伝達経路(図23~26)、TGFベータ細胞シグナル伝達経路(図27~30)又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の組み合わせた標的遺伝子(図31~34)の異なるサブセットについてのN=1、2、3、4、5、又は6についてのN個の遺伝子のランダムな選択を描写する。標的遺伝子の全体セットを使用したか(T=0、図23図27及び図31)、又はカットオフを使用して、経路活性スコアに対する寄与に基づいて標的遺伝子のサブセットを選択した(T=0.3、0.4又は0.5、図24~26、図28~30、図32~34)。各々の選択された遺伝子のセットからN個の遺伝子のランダムな選択を1000回行い、それぞれの遺伝子選択を使用して、敗血症患者が健常対象から区別され得る(少なくとも2SDの差異)かどうかを決定した。結果をボックスプロットの形態でプロットしており、セット1は組み合わせたデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099を表し、セット2はデータセットGSE95233を表し、セット3はデータセットGSE57065を表す。メジアンはボックス中の太線により指し示され、25パーセンタイルはボックスの下の境界により指し示され、10パーセンタイルは点線により指し示される。
図35図35は、AR阻害剤実験の図式的な概要。AR阻害剤を使用して単球(THP1細胞)に対するLPSの効果を軽減できるかどうかを決定するための実験設計を描写する。簡潔に述べれば、単球細胞(THP1)を24時間LPSあり又はなしで培養し、その後に培地を交換し、両方の条件をその後にDHTあり又はなしで培養する。LPS及びDHTの両方はAR細胞シグナル伝達経路を活性化させることが予期される。並列の実験において、THP1細胞を最初に24時間LPSと培養し、その後に培地を交換し、細胞をARCC-4、ARD-266、A-458及びビカルタミドのうちの1つと培養する。
図36図36図39は、AR阻害剤実験において決定された経路活性。図36~39は、測定された細胞シグナル伝達経路活性の観点での図35に概説される異なる条件の実験的アウトカムを記載する。図は、異なる実験群においてそれぞれ決定されたAR、ER、HH(ヘッジホッグ)及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性を描写する。実験は3連で行い、測定された活性の標準偏差をグラフに指し示している。
図37図36図39は、AR阻害剤実験において決定された経路活性。図36~39は、測定された細胞シグナル伝達経路活性の観点での図35に概説される異なる条件の実験的アウトカムを記載する。図は、異なる実験群においてそれぞれ決定されたAR、ER、HH(ヘッジホッグ)及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性を描写する。実験は3連で行い、測定された活性の標準偏差をグラフに指し示している。
図38図36図39は、AR阻害剤実験において決定された経路活性。図36~39は、測定された細胞シグナル伝達経路活性の観点での図35に概説される異なる条件の実験的アウトカムを記載する。図は、異なる実験群においてそれぞれ決定されたAR、ER、HH(ヘッジホッグ)及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性を描写する。実験は3連で行い、測定された活性の標準偏差をグラフに指し示している。
図39図36図39は、AR阻害剤実験において決定された経路活性。図36~39は、測定された細胞シグナル伝達経路活性の観点での図35に概説される異なる条件の実験的アウトカムを記載する。図は、異なる実験群においてそれぞれ決定されたAR、ER、HH(ヘッジホッグ)及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性を描写する。実験は3連で行い、測定された活性の標準偏差をグラフに指し示している。
【発明を実施するための形態】
【0163】
実施形態の詳細な説明
以下の実施例は単に、特に好ましい方法及びそれとの繋がりで選択された態様の実例を示す。本明細書において提供される教示は、例えば、1つ又は複数の血液試料の機能的状態を検出、予測及び/又は診断するための、いくつかの試験及び/又はキットを構築するために使用されてもよい。更には、本明細書に記載される方法を使用することで、薬物処方は有利にガイド可能であり、薬物応答予測並びに薬物有効性(及び/又は有害効果)のモニタリングが為され得る。以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0164】
実施例1 - 方法及び試料の説明
Gene Expression Omnibus(GEO)データベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gds/)を使用し、全血試料における臨床及び前臨床研究からの試料からのAffymetrix HG-U133Plus2.0データ(GSE26440、GSE4607、GSE66099、GSE95233;試料の種類及び調製についての更なる情報について表1を参照)を使用した。経路分析を使用してシグナル伝達経路活性(AR、ER、PR、GR、HH、Notch、TGFベータ、WNT、JAK-STAT1/2、JAK-STAT3、NFkB、PI3K、MAPK)を決定した。階層的クラスタリングのためにクラスタリングツールSeaborn clustermapを使用した。
【0165】
分析のためにGEOデータベースからの公共Affymetrix U133P2.0データを使用した(GSE26440、GSE4607、GSE66099、GSE95233;試料の種類及び調製についての更なる情報について表1を参照)。データセットGSE26440、GSE4607、GSE66099及びGSE95233の経路分析は、正常(健常)対照対象と敗血症性ショック対象との間のマン-ホイットニー-ウィルコクソン両側検定を使用してAR及びTGFベータ経路活性を含む複数の経路において有意差を示した(経路及びp値について図1~8を参照)。
【0166】
有意な経路の組合せを使用して、対照から敗血症対象を同定/診断することができた。更には、AR及び又はTGFベータ経路活性に基づいて計算モデルを作製して、敗血症からの死亡及び生存のリスクに関してリスクスコアを算出した。階層的クラスタリングを用いて、生存する可能性がより高い対照/健常人の近くにクラスタリングする試料を同定した。
【0167】
【表1】
【0168】
実施例2:リスクスコアを算出するための計算モデル
更には、敗血症で死亡するリスクに関して、低、中及び高リスク敗血症対象を分類することができた。複数のシグナル伝達経路活性スコアの計算モデルベースの解釈を使用して低、中及び高リスク敗血症対象を分類した。
【0169】
経路活性スコアの解釈のための線形モデルを構築するために、1及び2標準偏差(SD)と共に平均経路活性を算出することにより、健常人における経路活性を評価した。経路活性が正常健常の2SDの境界の外側にある場合、これを異常に活性の経路と考え、つまりモデルにおいて1点とする。任意選択的に別の閾値、例えば平均の3SDが使用され得る。点を足し合わせることで、累積の異常な経路活性スコアが生成され、これはリスクの可能性を直接的に決定する。
【0170】
リスクスコアを算出するための他の計算モデルは、ベイジアンモデル、重心ベースのモデル等であり得る。
【0171】
実施例3:軟正及び検証セットを使用する線形モデル
このために、データセットGSE26440をトレーニングセットモデルとして使用し、データセットGSE4607を用いてモデルを検証した。AR及びTGFベータの両方の経路について、健常対照集団において測定された平均経路活性スコアよりも2SD上を分類モデルのために使用し、この同じ値を次に独立した検証データセットGSE4607に適用した。AR及びTGFベータの両方が対照試料よりも2SD高い場合、敗血症対象を高リスク(2点)として分類した。AR又はTGFベータのいずれかが対照よりも2SD高い場合、対象を中リスク(1点)として分類し、2SD未満の差異を低リスク(0点)として分類した。経路についての決定された平均、標準偏差及び2SD上方境界について表2を参照。
【0172】
予後判定モデルのために、低、中及び高リスク群を対象層化のために同定する。中群において経路のうちの1つは上方調節される一方、高群において両方の経路は上方調節される。
【0173】
表3において予後判定モデルの性能が示される。GSE 26440データセット(n=76、非生存者10%(n=8)、生存者68%(n=51)、対照22%(n=17))について非生存者群を高リスクとして3人、中リスクとして5人及び低リスクとして0人に分類することができた。検証セットGSE 4607(n=83、非生存者17%(n=14)、生存者65%(n=54)及び対照18%(n=15))について、上記されるモデルを使用して非生存者群を高として10人、中として2人及び低として2人に分類することができた。
【0174】
追加的に、AR及びTGFベータの組み合わせた経路の和スコアもまた予後マーカーのために使用することができ、その場合、組み合わせたAR及びTGFベータ経路のスコアが対照試料よりも2SD高い場合に高リスクに分類される(1点)。組み合わせたAR及びTGFベータのスコアが対照と比較して2SD未満の差異である場合、試料は低リスク(0点)として分類される(データ示さず)。
【0175】
他のデータセット(GSE66099、GSE95233及びGSE57064)についても低いAR及び/又はTGFベータ経路活性を有する試料が見られる。しかしながら、これらの対象が敗血症から生存するより高い変化を有することを証明するための生存データは欠如している。
【0176】
【表2】
【0177】
【表3】
【0178】
実施例4:データセット毎の上方境界を使用した線形モデル2
試験及び試料取得の間の差異に起因して、データセット毎に上方境界を決定することは恐らくより特異的である。表4において、GSE26440及びGSE4607のARの活性の平均値、標準偏差及びSD上方境界が列記される。表5において、上記の線形モデルが使用されるが、この実施例では、各々の別々のデータセットに基づいて2SD上方境界が使用される。全ての非生存者は中及び高リスク群に入れられる。対照試料は低群にのみ位置し、診断マーカーとして使用され得る。
【0179】
【表4】
【0180】
【表5】
【0181】
実施例5:データセット毎のAR経路及び上方境界のみを使用する線形モデル3
上記されるものと同じ原理がこの実施例において使用され、2DS上方境界のみが使用され、モデルはAR経路のみに基づく。リスク群はこの場合には敗血症での死亡の低又は高リスクである。モデルの性能は表6に見出され得る。対照試料は低群にのみ位置し、診断マーカーとして使用され得る。
【0182】
【表6】
【0183】
実施例6:クラスタリング方法:
階層的クラスタリング(seaborn clustermap)を使用して、経路活性に基づいて対象を分類できるかどうかを決定した。経路AR、TGFベータ、JAK-STAT3及びMAPK-AP1について対照群と敗血症群との間で有意なモデルを選択した。
【0184】
データセットGSE4607について、いくつかの敗血症試料は対照群(橙色)の近くにクラスタリングされる。これらの対象は恐らく、生存のより高い可能性を有する。これらの試料はまた、AR及びTGFベータに基づく上記されるモデルにおいて低リスク群にクラスタリングされる。しかしながら、敗血症性ショック生存者と非生存者との間の明確な区別は示されない。
【0185】
実施例7:H.ピロリでの細胞刺激
細菌又は細菌生成物が、敗血症を有する患者において観察されるものと同じ経路活性を誘導し得るかどうかを調べるために、血液中の単球のためのモデルシステムとして、細胞株からの単球性細胞に細菌又は細菌生成物LPSのいずれかを加えるin vitro実験を行った。
【0186】
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)(ATCC、33277)細菌を、製品の使用説明書を使用して脱水HBI(Oxoid、CM1032)を使用した嫌気性培養フード中で培養した。
【0187】
THP-1細胞を6ウェルプレート中4x105細胞/ウェルの密度で48時間培養した。48時間の細胞播種後に、細胞をPBSで洗浄し、1:100MOIの直接的な細菌を用いるか、又は37℃、5%CO2で4時間の細菌培養の20%の「上清」を使用して処理した。細胞を1:100のMOIで細菌に曝露し、20%の「上清」は、0.2uMのフィルターを使用して終夜の細菌培養物を濾過して全体細菌を除去し、その後に細胞培養培地中で20%の濃度に希釈することにより調製した。48時間の細胞播種後に、細胞をPBSで洗浄し、1:100MOIの直接的な細菌を用いるか、又は37℃、5%CO2で4時間の細菌培養の20%の「上清」を使用して処理した。その後、細胞をPBSで洗浄し、RNeasy mini kit lysis buffer(Qiagen、Cat No./ID:74104)中で溶解し、更なる処理まで-80℃で貯蔵した。RNeasy mini kit(Qiagen、74104)を使用してRNAを抽出した。Philips Research OncoSignal platformを使用してqPCRを行った。
【0188】
ヘリコバクター(Helicobacter)細菌がTHP-1細胞の経路活性に対して細菌特異的な効果を有するかどうかを決定するために、qRT-PCRを行った。細胞を直接的な細菌又は細菌培養の増殖培地のいずれかで処理した。図21に示されるように、経路活性は、AR、FOXO、TGFベータ及びWNT経路について増加した。しかしながら、敗血症試料において、FOXO及びWNT経路において有意差は検出されず、これは、単球は血液組成の4~8%のみを構成し、他の血液細胞種もまた重要な役割を果たすという事実に起因し得る。
【0189】
実施例8:LPSでの細胞刺激
炎症プロセスを研究するために、大腸菌(E. coli)を起源とする3つの異なる濃度のLPS(0ng/ml、10ng/ml、50ng/ml及び100ng/ml)をTHP-1の培養培地(10%のFBS、1%のglutamax及び1%のpen strepを補充した37℃、5%CO2のDMEM)中に24時間使用して単球性THP-1細胞(ATCC(登録商標) TIB-202(商標))を刺激した。刺激後に、細胞を採取し、RNeasy mini kit(Qiagen、74104)を使用してRNAを抽出した。Philips Research OncoSignal platformを使用してqPCRを行った。図22に示されるように、経路活性は、LPSで刺激された細胞において経路AR、FOXO、TGFベータ及びWNTについて増加した。AR及びTGFベータ経路の活性化もまた敗血症試料において見られ、炎症におけるこれらの経路の役割を裏付けた。しかしながら、敗血症試料において、FOXO及びWNT経路において有意差は検出されず、これは、単球は血液組成の4~8%のみを構成し、他の血液細胞種もまた重要な役割を果たすという事実に起因し得る。
【0190】
実施例9:標的遺伝子のサブセットの検証
経路標的遺伝子のサブセット(例えば全体から選択される3つの標的遺伝子)が依然として予測的であるかどうかを検証するために、N個の遺伝子のランダムな選択をAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路標的遺伝子について行い、リスト全体からのN個の遺伝子のランダムな選択が予測的である可能性を評価した。これを行うために、AR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路の個々の標的遺伝子を、以下に記載されるように経路スコア(T)に対するそれらの相対的な寄与に基づいて順位付けした。Tの異なる閾値(T=0は遺伝子セット全体に対応し、Tについてそれよりも大きい値はより厳密な選択に対応する)について、N個の遺伝子を無作為に1000回選択し、下記に指し示されるように非常に単純な線形モデルを使用してスコアを算出した。計算は、1~6の範囲内のNの値についてデータセットGSE26440、GSE4607及びGSE66099の組合せ(セット1)、又はGSE95233(セット2)、又はGSE57065(セット3)に対して行った。更に、算出をAR標的遺伝子、TGFベータ標的遺伝子並びにプールされたAR及びTGFベータ標的遺伝子に対して行った。
【0191】
プロトコールは以下のように行った:
1.関心対象の経路に対応する遺伝子のリストを取得し、それらのプローブセットを取得する。
2.遺伝子毎に、それが寄与する経路スコアとの最大の絶対相関を有するプローブセットを取得する(全ての敗血症及び対照試料に基づく;遺伝子は複数の経路に関与してもよい)。
3.閾値Tよりも高い絶対的なプローブセット-経路相関を有する全ての遺伝子を取得することにより候補遺伝子リストを選択する。
4.繰り返して(1000回)、候補遺伝子リストからのN個の遺伝子のランダムなサブリストを選ぶ。
5.プローブセット-経路相関の符号に依存して重み+1又は-1を割り当てることによりそれらのN個の遺伝子を用いて単純な線形分類器を作成する。
6.その線形分類器を全ての試料に適用してスコアを算出する。
7.各々の試験セット、GSE26440、GSE4607及びGSE66099の組合せ、又はGSE95233、又はGSE57065について:
a.正常試料におけるスコアの平均及び標準偏差を決定する
b.平均プラス標準偏差の2倍を取得することにより閾値を算出する
c.閾値よりも高い敗血症試料の比率、閾値よりも高い敗血症非生存者(与えられる場合)の比率、及び確認のために閾値よりも高い正常試料の比率も決定する
8.1000回のランダムな抽選にかけて決定された比率のボックスプロット分布を作成する。
【0192】
AR及びTGFB経路、相関閾値T=0.4、手動で選択される遺伝子と共に増大(図33)、並びにN=3遺伝子のランダムなセットを考慮する例について、組合せ試験セットGSE26440、GSE4607及びGSE66099における結果は以下を示す:
- 検出された敗血症試料のメジアン比率(ボックス中の太線)は約0.60であり、つまり、ランダムなリストの半分は60%又はより高い感度を与える、
- 検出された敗血症試料の25パーセンタイル(ボックスの下の境界)は約0.32であり、つまり、ランダムなリストの4分の3は32%又はより高い感度を与える、
- 検出された敗血症試料の10パーセンタイル(小さい点の水平線)は約0.12であり、つまり、ランダムなリストの90%は12%又はより高い感度を与える、
- 特異性は閾値(平均+2stdev)の選択により約97.5%であり、これは正常試料について観察される低い比率により裏付けられる。
【0193】
これらのサブセットの結果としてもたらされる箱ひげ図を図23~XXXに描写している。これらのデータセットから、使用されたデータセット及び標的遺伝子の選択基準に依存して、1つもの少ない標的遺伝子は、敗血症対象から得られた血液試料と非敗血症対象から得られた血液試料とを区別するために充分であり得るが、全ての場合において少なくとも3つの遺伝子のランダムな選択は高い特異性及び望ましい感度を有する遺伝子のセットを結果としてもたらすと結論付けることができる。したがって、AR細胞シグナル伝達経路、TGFベータ細胞シグナル伝達経路、又はAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路からのプールされた標的遺伝子の最小で3つの標的遺伝子(本明細書において定義される)は、敗血症を有する対象を診断するために充分であると結論付けられる。
【0194】
これらのデータから、本明細書において提示される様々な遺伝子のセットから選択される3つの遺伝子の発現レベルに基づいて敗血症診断が信頼性をもって為され得ると結論付けることができる。それぞれの遺伝子のセットが経路モデルを使用して成功裏に同定されたが、診断において経路モデルを使用する必要はないこと、及び診断は発現レベルのみに純粋に基づいて行われ得ることをこの実施例は実証する。
【0195】
分析において使用された遺伝子セットは以下の通りである(遺伝子名の前の記号は正又は負の相関を指し示す):

AR ‐ T = 0
AR : +ABCC4, +APP, -AR, -CDKN1A, -CREB3L4, +DHCR24, +EAF2, +ELL2, +FGF8, +FKBP5, -GUCY1A3, +IGF1, -KLK2, -KLK3, +LCP1, -LRIG1, +NDRG1, -NKX3_1, -NTS, -PLAU, -PMEPA1, -PPAP2A, -PRKACB, +PTPN1, +SGK1, -TACC2, -TMPRSS2, -UGT2B15

AR -- T = 0.3
AR : -AR, -CREB3L4, +DHCR24, +EAF2, +ELL2, +FKBP5, -GUCY1A3, +IGF1, -KLK3, +LCP1, -LRIG1, +NDRG1, -NKX3_1, -PMEPA1, -PRKACB, -TMPRSS2

AR -- T = 0.4
AR : -AR, -CREB3L4, +DHCR24, +EAF2, +ELL2, +FKBP5, +LCP1, -LRIG1,+NDRG1, -PMEPA1, -PRKACB, -TMPRSS2

AR -- T = 0.5
AR : +DHCR24, +EAF2, +ELL2, +FKBP5, +LCP1, -PMEPA1, -PRKACB

TGFB ‐ T = 0
TGFB : -ANGPTL4, +CDC42EP3, -CDKN1A, +CDKN2B, +CTGF, +GADD45A, +GADD45B, +HMGA2, +ID1, +IL11, +INPP5D, +JUNB, -MMP2, +MMP9, -NKX2_5, -OVOL1, -PDGFB, +PTHLH, +SERPINE1, +SGK1, +SKIL, +SMAD4, -SMAD5, +SMAD6, -SMAD7, -SNAI1, +SNAI2, +TIMP1 and +VEGFA

TGFB -- T = 0.3
TGFB : +CDC42EP3, +GADD45A, +GADD45B, +HMGA2, +ID1, +IL11, +INPP5D, +JUNB, -MMP2, +MMP9, -NKX2_5, -OVOL1, -PDGFB, +PTHLH, +SGK1, +SKIL, +SMAD4, -SMAD5, +SMAD6, +TIMP1, +VEGFA

TGFB -- T = 0.4
TGFB : +CDC42EP3, +GADD45A, +GADD45B, +ID1, +JUNB, +MMP9, -PDGFB, +SGK1, +SKIL, -SMAD5, +SMAD6, +TIMP1, +VEGFA

TGFB -- T = 0.5
TGFB : +CDC42EP3, + GADD45A, +GADD45B, +ID1, +JUNB, +MMP9, -PDGFB, -+SGK1, -SMAD5, +TIMP1, +VEGFA

AR;TGFB -- T = 0
AR : +ABCC4, +APP, -AR, -CDKN1A, -CREB3L4, +DHCR24, +EAF2, +ELL2, +FGF8, +FKBP5, -GUCY1A3, +IGF1, -KLK2, -KLK3, +LCP1, -LRIG1, +NDRG1, -NKX3_1, -NTS, -PLAU, -PMEPA1, -PPAP2A, -PRKACB, +PTPN1, +SGK1, -TACC2, -TMPRSS2, -UGT2B15
TGFB : -ANGPTL4, +CDC42EP3, -CDKN1A, +CDKN2B, +CTGF, +GADD45A, +GADD45B, +HMGA2, +ID1, +IL11, +INPP5D, +JUNB, -MMP2, +MMP9, -NKX2_5, -OVOL1, -PDGFB, +PTHLH, +SERPINE1, +SGK1, +SKIL, +SMAD4, -SMAD5, +SMAD6, -SMAD7, -SNAI1, +SNAI2, +TIMP1 and +VEGFA

AR;TGFB -- T = 0.3
AR : -AR, -CREB3L4, +DHCR24, +EAF2, +ELL2, +FKBP5, -GUCY1A3, +IGF1, -KLK3, +LCP1, -LRIG1, +NDRG1, -NKX3_1, -PMEPA1, -PRKACB, +SGK1, -TMPRSS2
TGFB : +CDC42EP3, +GADD45A, +GADD45B, +HMGA2, +ID1, +IL11, +INPP5D, +JUNB, -MMP2, +MMP9, -NKX2_5, -OVOL1, -PDGFB, +PTHLH, +SGK1, +SKIL, +SMAD4, -SMAD5, +SMAD6, +TIMP1, +VEGFA

AR;TGFB -- T = 0.4
AR : -AR, -CREB3L4, +DHCR24, +EAF2, +ELL2, +FKBP5, +LCP1, -LRIG1, +NDRG1, -PMEPA1, -PRKACB, +SGK1, -TMPRSS2
TGFB : +CDC42EP3, +GADD45A, +GADD45B, +ID1, +JUNB, +MMP9, -PDGFB, +SGK1, +SKIL, -SMAD5, +SMAD6, +TIMP1, +VEGFA

AR;TGFB -- T = 0.5
AR : +DHCR24, +EAF2, +ELL2, +FKBP5, +LCP1, -LRIG1, -PMEPA1, -PRKACB, +SGK1
TGFB : +CDC42EP3, +GADD45A, +GADD45B, +ID1, +JUNB, +MMP9, -PDGFB, +SGK1, -SMAD5, +TIMP1, +VEGFA
【0196】
実施例10:敗血症の処置オプションとしてのAR阻害剤の検証
上記のデータに基づいて、AR細胞シグナル伝達経路阻害剤を投与することにより、敗血症は処置され得るか、又は少なくともその症状は軽減され得るという学説が立てられた。実施例7及び8、並びに図21及び図22から導出され得るように、AR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性は、単球(THP-1細胞)においてHピロリ上清又はLPSでの刺激で増加する。この仮説を確認するために、本出願人は、このモデルシステムを使用して、敗血症を処置するためのAR経路阻害剤の医学的アウトカムを予測した。
【0197】
図35は、使用された実験設計を記載する。簡潔に述べれば、単球細胞(THP1)を24時間LPSあり又はなしで培養し、その後に培地を交換し、両方の条件をその後にDHTあり又はなしで培養する。LPS及びDHTの両方はAR細胞シグナル伝達経路を活性化させることが予期される。並列の実験において、THP1細胞を最初に24時間LPSと培養し、その後に培地を交換し、細胞をARCC-4、ARD-266、A-458及びビカルタミドのうちの1つと培養する。
【0198】
全ての実験条件を細胞シグナル伝達経路分析に供した。測定されたER、AR、HH、及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性を図36~39にそれぞれ示す。図36は、LPS又はDHTは単球においてAR細胞シグナル伝達経路活性を増加させ、それは小さい追加的な効果であるらしいことを実証する。更に、図36は、LPSにより誘導されるAR活性は、AR経路阻害剤の添加によりベースラインレベルまで少なくとも部分的に復帰し得ることを実証する。
【0199】
図37及び図38は、ER及びHH細胞シグナル伝達経路活性は、LPS、DHT又はAR経路阻害剤のいずれによっても実質的に影響されないことを実証し、したがって図36に示される効果は特異的であることを実証する。
【0200】
図39は、TGFベータシグナル伝達もまたLPSにより増加することを示し、これは、敗血症はAR及びTGFベータ経路の両方に影響することが実証される本明細書に示される他のデータと合致している。予想されたように、DHTはTGFベータ活性を増加させなかった。興味深いことに、A-458は、LPS誘導性TGFベータ活性の低減の他に、AR活性の低減を示し、それは二重AR/TGFベータ阻害剤として機能することを示唆する。予想されたように、残りのAR阻害剤は、TGFベータ細胞シグナル伝達経路活性に対するLPSの効果を軽減できなかった。
【0201】
これらのデータから、敗血症は血液細胞においてAR及びTGFベータ細胞シグナル伝達経路活性を上昇させ、これは患者の血液試料において検出可能であり、敗血症の迅速な診断又は敗血症を発症するリスクがある患者の予測のために使用可能であると結論付けることができる。更に、上昇したAR及びTGFベータは少なくとも部分的に単球に帰せられ得ること、及び効果は培養された単球にLPSを加えることにより再創出され得ることをこれらのデータは実証する。更に、単球を使用したin vitro実験により実証されるように、LPS誘導性の増加したARシグナル伝達経路活性はAR経路阻害剤により軽減され得ることをこれらのデータは実証する。患者は増加したAR経路活性又は敗血症関連遺伝子の異常な発現を有することを前提として、AR阻害剤は、敗血症を有する対象を処置し、又は少なくともその症状を低減(軽減)させるために使用され得るらしいことをこれは実証する。それは、AR阻害剤での処置から利益を受けるであろう敗血症を発症するリスクがある患者又は敗血症を有する患者を同定するためのコンパニオン試験の必要性を更に強調する。
【0202】
参考文献:
[1] N. L. Stanski and H. R. Wong, “Prognostic and predictive enrichment in sepsis,” Nature Reviews Nephrology. Nature Publishing Group, 01-Jan-2019.
[2] “Recommendations | Sepsis: recognition, diagnosis and early management | Guidance | NICE.”
[3] N. K. Patil, J. K. Bohannon, and E. R. Sherwood, “Immunotherapy: A promising approach to reverse sepsis-induced immunosuppression.,” Pharmacol. Res., vol. 111, pp. 688-702, 2016.
[4] R. S. Hotchkiss, G. Monneret, and D. Payen, “Sepsis-induced immunosuppression: from cellular dysfunctions to immunotherapy.,” Nat. Rev. Immunol., vol. 13, no. 12, pp. 862-74, Dec. 2013.
[5] M. R. Gubbels Bupp and T. N. Jorgensen, “Androgen-Induced Immunosuppression,” Front. Immunol., vol. 9, p. 794, Apr. 2018.
[6] A. Trigunaite and J. Dimo, “Suppressive effects of androgens on the immune system,” Cell. Immunol., vol. 294, no. 2, pp. 87-94, Apr. 2015.
[7] von Dipl Biochem Daniela Roll, “Androgen-regulation of sepsis response: Beneficial role of androgen receptor antagonists.”
[8] F. Fattahi and P. A. Ward, “Understanding Immunosuppression after Sepsis,” Nat. Rev. Mol. Cell Biol, vol. 42, pp. 51-65, 2017.
[9] A. Roquilly et al., “Local Modulation of Antigen-Presenting Cell Development after Resolution of Pneumonia Induces Long-Term Susceptibility to Secondary Infections,” Immunity, vol. 47, no. 1, pp. 135-147.e5, Jul. 2017.
[10] M. Cecconi et al., “Sepsis and septic shock”, Lancet 2018; 392: 75-87.
[11] Gubbels Bupp and Jorgensen, Androgen-Induced Immunosuppression, Front Immunol. 2018; 9: 794.
[12] Malinen et al., Crosstalk between androgen and pro-inflammatory signaling remodels androgen receptor and NF-κB cistrome to reprogram the prostate cancer cell transcriptome, Nucleic Acids Res. 2017 Jan 25; 45(2): 619-630.
[13] Ben-Batalla et al., Influence of Androgens on Immunity to Self and Foreign: Effects on Immunity and Cancer, Front. Immunol., 02 July 2020 | https://doi.org/10.3389/fimmu.2020.01184.
[14] Sukhacheva, The role of monocytes in the progression of sepsis, Clinical Laboratory Int. 26 August 2020.
[15] Haverman et al., The central role of monocytes in the pathogenesis of sepsis: consequences for immunomonitoring and treatment, The Netherlands Journal of Medicine, Volume 55, Issue 3, September 1999, Pages 132-141.
[16] Angele et al., Gender differences in sepsis, Virulence, 5:1, 12-19, DOI: 10.4161/viru.26982
【0203】
条項
条項1.血液試料から抽出されたRNAに基づいて、前記血液試料の機能的状態を決定する方法であって、
AR経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取るステップ;
ARシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の前記決定された発現レベルに基づいて、ARシグナル伝達経路活性を決定するステップ;
前記決定されたARシグナル伝達経路活性に少なくとも基づいて前記血液試料の前記機能的状態を決定するステップであって、前記血液試料の前記機能的状態が、前記決定されたARシグナル伝達経路活性を有するとして決定される、前記ステップ
を含み、
前記血液試料が、敗血症を有する対象から得られるか、又は敗血症を有することが疑われる対象若しくは敗血症を発症するリスクがある対象から得られる、
前記方法。
【0204】
条項2.TGFベータ経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、又はその決定の結果を受け取ること、
TGFベータシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の前記決定された発現レベルに基づいてTGFベータシグナル伝達経路活性を決定すること
を更に含み、
及び前記血液試料の前記機能的状態が、前記決定されたTGFベータシグナル伝達経路活性に更に基づき、前記機能的状態が、前記決定されたTGFベータシグナル伝達経路活性を有するとして更に決定される、
条項1に記載の方法。
【0205】
条項3.MAPK-AP1シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、若しくはその決定の結果を受け取ること、及びMAPK-AP1シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の前記発現レベルに基づいてMAPK-AP1シグナル伝達経路活性を決定すること、並びに/又は
JAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定するか、若しくはその決定の結果を受け取ること、及びJAK-STAT3シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子の前記発現レベルに基づいてJAK-STAT3シグナル伝達経路活性を決定すること
を更に含み、
並びに前記血液試料の前記機能的状態が、前記決定されたMAPK-AP1シグナル伝達経路活性及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路活性に更に基づき、前記機能的状態が、前記決定されたMAPK-AP1シグナル伝達経路活性を有するとして更に決定され、及び/又は前記機能的状態が、前記決定されたJAK-STAT3シグナル伝達経路活性を有するとして更に決定される、
先行する条項のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
条項4.ARシグナル伝達経路、TGFベータシグナル伝達経路、MAPK-AP1シグナル伝達経路及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを前記決定することが、
KLK2、PMEPA1、TMPRSS2、NKX3_1、ABCC4、KLK3、FKBP5、ELL2、UGT2B15、DHCR24、PPAP2A、NDRG1、LRIG1、CREB3L4、LCP1、GUCY1A3、AR及びEAF2からなるリストから選択されるARシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定すること、並びに/又は;
TGFベータシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することが、ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、JUNB、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI2、VEGFAからなるリストから選択される3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することを含み、並びに/又は;
MAPK-AP1シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することが、BCL2L11、CCND1、DDIT3、DNMT1、EGFR、ENPP2、EZR、FASLG、FIGF、GLRX、IL2、IVL、LOR、MMP1、MMP3、MMP9、SERPINE1、PLAU、PLAUR、PTGS2、SNCG、TIMP1、TP53、及びVIMからなるリストから選択される3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することを含み、並びに/又は;
JAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することが、AKT1、BCL2、BCL2L1、BIRC5、CCND1、CD274、CDKN1A、CRP、FGF2、FOS、FSCN1、FSCN2、FSCN3、HIF1A、HSP90AA1、HSP90AB1、HSP90B1、HSPA1A、HSPA1B、ICAM1、IFNG、IL10、JunB、MCL1、MMP1、MMP3、MMP9、MUC1、MYC、NOS2、POU2F1、PTGS2、SAA1、STAT1、TIMP1、TNFRSF1B、TWIST1、VIM、及びZEB1からなるリストから選択される3つ以上の標的遺伝子の発現レベルを決定することを含む、
先行する条項のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
条項5.前記方法が、前記血液試料が得られた対象を診断するステップを更に含み、
臨床パラメーター、及び
前記血液試料の前記機能的状態
に基づいて前記対象は敗血症を有すると診断されるか、又は前記対象は敗血症を有しないと診断され、
前記方法が、前記対象の前記血液試料の前記機能的状態を、健常又は非敗血症対照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態と比較することを更に含み、好ましくは、前記血液試料の前記機能的状態がARシグナル伝達経路活性を含み、前記ARシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照から得られた前記対照血液試料において決定された前記ARシグナル伝達経路活性よりも高いと決定され、及び前記血液試料が得られた前記対象が、敗血症と関連付けられる少なくとも1つの臨床パラメーターを有する場合に、前記対象は敗血症を有すると診断される、
先行する条項のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
条項6.前記血液試料の前記機能的状態が、前記血液試料が得られた前記対象の死亡リスクの予測において使用され、
前記予測が、参照対象から得られた前記血液試料の複数の参照機能的状態との前記対象の前記血液試料の前記機能的状態の比較に基づき、参照対象から得られた前記血液試料の前記複数の参照機能的状態が、非生存者である敗血症を有する対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態及び生存者である敗血症を有する対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態を含み、及び任意選択的に健常又は非敗血症対照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態を更に含み、
前記血液試料が得られた前記対象は敗血症を有することが確認され、並びに
敗血症を有する前記対象から得られた前記血液試料の前記機能的状態が、生存者である敗血症を有する参照対象から得られた前記血液試料の前記少なくとも1つの機能的状態に類似しているか、又は敗血症を有する前記対象から得られた前記血液試料の前記機能的状態が、前記少なくとも1の健常若しくは非敗血症対照対象から得られた前記血液試料の前記少なくとも1つの機能的状態に類似している場合に、低い死亡リスクが予測され、並びに
前記対象から得られた前記血液試料の前記機能的状態が、非生存者である敗血症を有する前記参照対象から得られた前記血液試料の前記少なくとも1つの機能的状態に類似している場合に、高い死亡リスクが予測される、
先行する条項のいずれか1つに記載の方法。
【0209】
条項7.対照対象から得られた前記血液試料の複数の機能的状態との前記対象から得られた前記血液試料の前記機能的状態の前記比較が、前記決定された経路活性のクラスタリングを使用して、好ましくは階層的クラスタリングにより、行われる、条項6に記載の方法。
【0210】
条項8.前記血液試料が得られた前記対象が敗血症を有さず、及び前記血液試料の前記機能的状態が、前記対象が敗血症を発症するリスクを決定するために使用され、
前記方法が、前記血液試料が得られた前記対象の前記血液試料の前記機能的状態を、健常又は非敗血症対照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態と比較することを更に含み、
好ましくは、前記血液試料の前記機能的状態がARシグナル伝達経路活性を含み、前記ARシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照対象から得られた前記対照血液試料において決定された前記ARシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、前記血液試料が得られた前記対象は、敗血症を発症するリスクがあると予測される、
条項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
条項9.前記血液試料が得られた前記対象が敗血症から回復しており、及び前記血液試料の前記機能的状態が、前記対象が敗血症を再発するリスクをモニターするために使用され、
前記方法が、前記血液試料が得られた前記対象の前記血液試料の前記機能的状態を、健常又は非敗血症対照対象から得られた血液試料の少なくとも1つの機能的状態と比較することを更に含み、
好ましくは、前記血液試料の前記機能的状態がARシグナル伝達経路活性を含み、前記ARシグナル伝達経路活性が、健常又は非敗血症対照対象から得られた前記対照血液試料において決定された前記ARシグナル伝達経路活性よりも高いと決定された場合に、前記血液試料が得られた前記対象は、敗血症を再発するリスクがあると予測される、
条項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0212】
条項10.前記血液試料が、全血試料、単離された末梢血単核細胞(PBMC)、単離されたCD4+細胞、単離されたCD8+細胞、制御性T細胞、混合されたCD8+及びT細胞、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、樹状細胞、単離された好中球、単離されたリンパ球又は単離された単球である、先行する条項のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
条項11.前記1つ又は複数のシグナル伝達経路活性が、血液試料から抽出されたRNAに基づいて前記1つ又は複数の経路について決定された前記3つ以上の発現レベルを前記1つ又は複数のシグナル伝達経路の前記1つ又は複数の活性に関連付ける軟正された数学的モデルを評価することに基づいて決定される、先行する条項のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
条項12.血液試料の機能的状態を決定するための装置であって、先行する条項のいずれか1つに記載の方法を行うために構成されたデジタルプロセッサーを含み、ARシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子についての標的遺伝子発現プロファイルの指標となるデータ、任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子についての標的遺伝子発現プロファイルの指標となるデータを受け取るように構成されたインプットを含む、前記装置。
【0215】
条項13.プログラムがコンピュータにより実行された場合に、
ARシグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子についての標的遺伝子発現プロファイルの指標となるデータを受け取ること、任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路の3つ以上の標的遺伝子の標的遺伝子発現レベルの指標となるデータを更に受け取ること、
ARシグナル伝達経路の前記3つ以上の標的遺伝子及び任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路の前記決定された発現レベルに基づいてARシグナル伝達経路活性、及び任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路活性及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路活性及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路活性を決定すること、
前記決定されたARシグナル伝達経路活性及び任意選択的にTGFベータシグナル伝達経路活性及び/又はMAPK-AP1シグナル伝達経路活性及び/又はJAK-STAT3シグナル伝達経路活性に基づいて血液試料の機能的状態を決定することであって、前記血液試料の前記機能的状態が、前記決定されたARシグナル伝達経路活性及び任意選択的に前記TGFベータシグナル伝達経路活性及び/又は前記MAPK-AP1シグナル伝達経路活性及び/又は前記JAK-STAT3シグナル伝達経路活性を有するとして決定される、前記決定すること、並びに
任意選択的に前記血液試料の前記機能的状態に基づいて診断又は予測を提供すること
を含む方法を前記コンピュータが実行することを引き起こす指示を含むコンピュータプログラム製品。
【0216】
条項14.それぞれの細胞シグナル伝達経路の標的遺伝子の1つ又は複数のセットの発現レベルを決定することにより1つ又は複数の前記細胞シグナル伝達経路の活性を推測するためのプライマーを含む、パーツのキットであって、前記細胞シグナル伝達経路が、AR経路を含み、及び任意選択的にTGFベータ経路、MAPK-AP1経路及びJAK-STAT3経路のうちの1つ又は複数を更に含み、
前記AR経路の標的遺伝子の前記セットが、KLK2、PMEPA1、TMPRSS2、NKX3_1、ABCC4、KLK3、FKBP5、ELL2、UGT2B15、DHCR24、PPAP2A、NDRG1、LRIG1、CREB3L4、LCP1、GUCY1A3、AR及びEAF2を含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含み、並びに
前記TGFベータ経路の標的遺伝子の前記セットが、ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、JUNB、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI2、VEGFAを含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含み、並びに
前記MAPK-AP1経路の標的遺伝子の前記セットが、BCL2L11、CCND1、DDIT3、DNMT1、EGFR、ENPP2、EZR、FASLG、FIGF、GLRX、IL2、IVL、LOR、MMP1、MMP3、MMP9、SERPINE1、PLAU、PLAUR、PTGS2、SNCG、TIMP1、TP53、及びVIMを含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含み、並びに
前記JAK-STAT3経路の標的遺伝子の前記セットが、AKT1、BCL2、BCL2L1、BIRC5、CCND1、CD274、CDKN1A、CRP、FGF2、FOS、FSCN1、FSCN2、FSCN3、HIF1A、HSP90AA1、HSP90AB1、HSP90B1、HSPA1A、HSPA1B、ICAM1、IFNG、IL10、JunB、MCL1、MMP1、MMP3、MMP9、MUC1、MYC、NOS2、POU2F1、PTGS2、SAA1、STAT1、TIMP1、TNFRSF1B、TWIST1、VIM、及びZEB1を含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含み、
任意選択的に、前記キットが、条項12に記載の装置及び/又は条項13に記載のコンピュータプログラム製品を更に含む、
前記キット。
【0217】
条項15.キットを使用して、対象が敗血症を有し、敗血症性ショックを有し、又は敗血症の結果として高い死亡リスクを有するかどうかをin vitro又はex vivoで診断又は予知する方法であって、前記キットが、それぞれの細胞シグナル伝達経路の標的遺伝子の1つ又は複数のセットの発現レベルを決定することにより1つ又は複数の前記細胞シグナル伝達経路の活性を推測するためのプライマーを含み、前記細胞シグナル伝達経路が、AR経路を含み、及び任意選択的にTGFベータ経路、MAPK-AP1経路及びJAK-STAT3経路のうちの1つ又は複数を更に含み、
前記AR経路の標的遺伝子の前記セットが、KLK2、PMEPA1、TMPRSS2、NKX3_1、ABCC4、KLK3、FKBP5、ELL2、UGT2B15、DHCR24、PPAP2A、NDRG1、LRIG1、CREB3L4、LCP1、GUCY1A3、AR及びEAF2を含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含み、並びに
前記TGFベータ経路の標的遺伝子の前記セットが、ANGPTL4、CDC42EP3、CDKN1A、CTGF、GADD45A、GADD45B、HMGA2、ID1、IL11、JUNB、PDGFB、PTHLH、SERPINE1、SGK1、SKIL、SMAD4、SMAD5、SMAD6、SMAD7、SNAI2、VEGFAを含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含み、並びに
前記MAPK-AP1経路の標的遺伝子の前記セットが、BCL2L11、CCND1、DDIT3、DNMT1、EGFR、ENPP2、EZR、FASLG、FIGF、GLRX、IL2、IVL、LOR、MMP1、MMP3、MMP9、SERPINE1、PLAU、PLAUR、PTGS2、SNCG、TIMP1、TP53、及びVIMを含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含み、並びに
前記JAK-STAT3経路の標的遺伝子の前記セットが、AKT1、BCL2、BCL2L1、BIRC5、CCND1、CD274、CDKN1A、CRP、FGF2、FOS、FSCN1、FSCN2、FSCN3、HIF1A、HSP90AA1、HSP90AB1、HSP90B1、HSPA1A、HSPA1B、ICAM1、IFNG、IL10、JunB、MCL1、MMP1、MMP3、MMP9、MUC1、MYC、NOS2、POU2F1、PTGS2、SAA1、STAT1、TIMP1、TNFRSF1B、TWIST1、VIM、及びZEB1を含む群から選択される3つ以上の標的遺伝子を含む、
前記方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
【国際調査報告】