(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】硫化水素を水素ガス及び硫黄に変換する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20230424BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20230424BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20230424BHJP
B01D 71/06 20060101ALI20230424BHJP
C01B 17/04 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
C01B3/04 Z
B01D53/22
B01D71/02 500
B01D71/06
C01B17/04 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556586
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 US2020061311
(87)【国際公開番号】W WO2021188161
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522369326
【氏名又は名称】スタンダード・ハイドロゲン・カンパニー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ワサス,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ワサス,マリアビセンタ
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA21
4D006MA02
4D006MA06
4D006MB06
4D006MC03
4D006MC30
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB66
(57)【要約】
硫化水素を水素ガス及び硫黄に変換するための反応方法及びそのような方法を行うための反応器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に硫化水素を含む入力ガス流から水素を生成するための方法であって、
a.正に帯電されていてもよい導電性の反応器チャンバに前記入力ガス流を通過させることであって、
前記反応器チャンバが、内部チャンバを画定する外壁と、加熱ゾーンと、負に帯電されていてもよい導体を有する水素透過性の無機、有機又は複合材料の膜と、硫黄凝縮器とを含む前記内部チャンバとを有し、
前記反応器が、
i.前記入力ガス流を前記反応器チャンバに導入するための入口と、
ii.前記入力ガス流を加熱するために前記反応器チャンバの近く又は内部に配置された加熱素子と、
iii.前記反応器チャンバの低圧側から第1の出口に至る入口に配置され、水素を透過するが、硫化水素、硫黄蒸気及び入力ガス流に含有され得る他のガスを透過しない前記膜であって、前記第1の出口の方を向いた第1の面と、前記内部チャンバの方を向いた第2の面とを有する、前記膜と、
iv.流路に配置された負に帯電されていてもよい材料を含む前記膜と、
v.前記内部チャンバ内の硫黄凝縮器として機能する前記外壁の内面であって、凝縮した硫黄を第2の出口に向けてその中に導く、内面と、を含む、前記反応器チャンバに前記入力ガス流を通過させること、
b.摂氏約100度~摂氏約700度の温度で前記加熱素子を取り囲む領域で前記硫化水素を反応させることであって、硫化水素の水素ガス及び硫黄蒸気への変換が少なくとも約95%である、硫化水素を反応させること、
c.前記膜を通して前記水素ガスを連続的に直ちに取り出し、前記第1の出口から前記水素を引き出すこと、並びに、
d.前記反応器内に配置された前記外壁又は同様の凝縮面の内面で前記硫黄蒸気を連続的に凝縮させ、前記第2の出口を通して前記硫黄を取り出すこと、を含む方法。
【請求項2】
前記反応器チャンバが、直列の1つ以上の反応器チャンバを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応器チャンバが、準大気圧から3,000psi(20,684kPa)までの範囲の圧力で運転される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記膜が水素透過性有機ポリマー膜であり、前記膜の第2の面が、前記膜の第1の面の圧力よりも低い圧力に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記膜が水素透過性無機膜である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記膜が水素透過性であり、有機成分と無機成分の両方からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
2つ以上の膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記負に帯電した導体が、導電性熱電対、又は前記水素透過性膜の前記低圧の第2の側内に配置された他の組成の導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応器チャンバが正に帯電している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
硫化水素の変換が少なくとも約99%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器が、約10,000ppm未満の硫化水素を含む排出ガスを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱素子が前記膜に隣接して配置されることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記硫化水素ガスを加熱するためのマグネトロン又は他の電磁場発生器が、1又は複数の前記膜に隣接する前記加熱ゾーンに配置されることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記外壁の前記内面、又は1つ以上の熱交換凝縮器が、前記反応器から取り出すために硫黄蒸気を回収する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
1つ以上の正に帯電されていてもよい(1又は複数の)反応器チャンバ内で硫化水素を水素ガス及び硫黄に連続的に変換するための反応器であって、(1又は複数の)前記反応器チャンバが、内部チャンバを画定する内面を有する外壁と、(1又は複数の)加熱素子及び(1又は複数の)膜を含む(1又は複数の)前記内部チャンバとを有し、(1又は複数の)前記反応器チャンバが、
i.前記硫化水素流を前記内部チャンバに導入するための入口と、
ii.(1又は複数の)抵抗線又は(1又は複数の)電磁発生器を備え、前記硫化水素流を加熱するために前記内部チャンバ内に配置された(1又は複数の)前記加熱素子と、
iii.前記反応器チャンバ内に配置され、水素に対して透過性であるが、硫化水素、硫黄蒸気及び前記硫化水素中に存在し得る他のガスに対して不透過性である、(1又は複数の)前記膜と、
iv.第1の出口と連通する流路を画定する膜表面を有し、かかる流路内に配置された負に帯電されていてもよい導体を備える、(1又は複数の)前記膜と、
v.前記外壁の前記正に帯電されていてもよい内面、又は正に帯電されていてもよい熱交換凝縮器であって、前記内部チャンバ内の硫黄凝縮器として機能し、かかる内面が凝縮した硫黄を第2の出口に向けてその中に導く、内面又は熱交換凝縮器と、を有する、反応器。
【請求項16】
硫化水素の連続変換が少なくとも約99%を含む、請求項15に記載の反応器。
【請求項17】
熱伝導性の、導電性であってもよい管として具体化された1つ以上の硫黄凝縮器をさらに含む、請求項15に記載の反応器。
【請求項18】
前記加熱素子が前記水素透過性膜に近接して配置されることをさらに含む、請求項15に記載の反応器。
【請求項19】
前記内部チャンバから、酸素、メタン、及び他の望ましくない非反応性ガスを除去するための真空ポンプ又は他の手段をさらに備える、請求項15に記載の反応器。
【請求項20】
前記外壁に配置された内部熱交換コイルを含む断熱特性及び温度制御特性を有する被膜をさらに含む、請求項15に記載の反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月20日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/992,477号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発に関する記載
本発明の研究又は開発に連邦政府の資金は使用されなかった。
【0003】
共同研究契約の当事者の名称
該当なし。
【0004】
参照により本明細書に含まれ組み込まれる配列表
該当なし。
【0005】
本発明は、硫化水素を水素ガス及び硫黄に変換するためのプロセス及び反応器である。
【背景技術】
【0006】
水素は、非常に反応性であるため、自然界において元素形態で見出され得る水素は、典型的には微量である。水素は、その燃焼が水のみを生成し、地球上の任意の燃料の中で最も高いエネルギー密度を有するという点で、燃焼による大気汚染が少ないことから、望ましい燃料である。現在、水素の大量生産のために、メタンの水蒸気改質及び水の加水分解という、2つの大量生産法しか使用されていない。どちらの既知の方法も、高額な費用を要し、非効率的であり、また、多くの場合、望ましくない二酸化炭素を生成する。
【0007】
硫化水素は、地下井戸で天然の混入物質として発生し、石油製品を販売する前に石油及びガスから分離しなければならないことから、石油精製によって非常に大量に生成される。硫化水素の濃度は高すぎて利益が出るように精製することができないと考えられていたため、多くの天然ガス井は、掘削された後すぐに蓋をされていた。そのような井は、「サワーガス」井として知られており、90%もの硫化水素含有量を有する場合がある。
【0008】
硫化水素はまた、石油精製所でも、炭化水素から硫黄を除去し、それらを硫黄を含まない炭化水素に変換して、それらをクリーン燃焼させることができるようにするために用いられる水素化プロセス中に生成される。硫化水素は、製紙パルプ化、下水処理、硫黄と炭化水素との反応などの多くの工業プロセスによっても生成され、有機物の腐敗によって、また硫黄温泉でも、自然に生成される。
【0009】
硫化水素は、無色で腐食性があり、非常に有毒で、卵の腐ったような不快な臭気を有するガスである。硫化水素の臭気は低濃度で容易に検出可能であり、呼吸阻害剤であるが、その豊富さと高い燃焼性のために、燃焼中に生成される二酸化硫黄を除いて燃料として機能する。しかしながら、新興の水素経済を促進するために硫化水素を分解して水素を生成し、同時に使用可能な硫黄を生成する方法が非常に望ましい。
【0010】
ガスから硫化水素を除去するプロセスは公知である。例えば、硫化水素は、溶媒抽出、吸着、吸収又は他の手段によってガスから分離することができる。硫化水素から硫黄を回収するプロセスもまた公知である。例えば、クラウス法として知られる従来の硫黄回収法では、ガス中の硫化水素の最大約1/3が空気又は酸素で酸化されて二酸化硫黄になり、残りの硫化水素と反応して元素状の硫黄及び水を生成することができる。このプロセスの一部は、摂氏850度を超える温度で達成され、一部は、活性アルミナ又は二酸化チタンなどの触媒の存在下で達成される。クラウス法の化学反応は以下の通りである。
【0011】
2H.sub.2S+3O.sub.2.fwdarw.2SO.sub.2+2H.sub.2O
4H.sub.2S+2SO.sub.2.fwdarw.3S.sub.2+4H.sub.2O
多くの場合、生成された硫黄は低品質であり、商業的に販売又は使用する前に精製しなければならず、水は汚染される。
【0012】
別のプロセスは、米国特許出願公開第2005/0191237号明細書に開示されている。この公報は、供給ガスを分離して硫化水素の体積基準で少なくとも約90%の精製硫化水素留分を得、硫化水素留分中の硫化水素を解離して元素状の水素及び硫黄からなる精製硫化水素留分に変換し、解離した精製硫化水素留分を分離して元素状の水素からなる水素富化留分を得、元素状の水素からなる水素生成物を得ることによって、供給ガスから水素生成物及び硫黄生成物を得るためのプロセス及び装置を開示している。解離は、摂氏1500度~2000度の温度で行われる。
【0013】
米国特許出願公開第2002/0023538号明細書はまた、硫化水素及び他の混入物質を除去する方法を開示している。この2段階プロセスは、摂氏約20~60度の温度で動作する流動床内に配置された第1の吸着剤を使用して混入物質の少なくとも一部を除去すること、及び摂氏約100~300度の温度で動作する別の流動床内に配置された第2の吸着剤を使用してガスから混入物質の別の部分を除去すること、を含む。摂氏400度未満の温度で混入物質を元素状の硫黄及び水素に変換するための変換要素、すなわち非熱プラズマコロナ反応器も開示される。
【0014】
必要とされているのは、使用又は販売に適した燃料品質の水素ガス及び硫黄副生成物を生成するために硫化水素を分解する簡易で効率的かつ費用効果の高い方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0191237号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0023538号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
好ましい実施形態では、硫化水素の分解中に生成される実質的にすべての水素は、硫化水素が存在する膜の加熱された側の高圧の領域から水素透過膜を通って、水素が反応器から自由に出ることができる実質的に低圧の領域に移動する。硫化水素の水素及び硫黄からなるその成分部分への分解は吸熱性であるため、硫化水素の迅速な分解をもたらすためには、膜の加熱された領域において反応器に任意の形態の適切なエネルギーを供給しなければならない。硫化水素の分解中に遊離した硫黄は、反応器の実質的に低温の部分である凝縮ゾーンに引き込まれ、そこでは、温度が、液体として取り出すために硫黄の自由な流れのゾーン内に維持されるか、又は機械的手段によって取り出すために硫黄が粘性又は固体である温度に維持される。好ましい実施形態ではまた、凝縮ゾーン内に正電荷を維持し、水素透過性膜の低圧水素側内に負電荷を維持する。
【0017】
生産規模の実施形態では、反応器に入る硫化水素中の混入物質であるメタン、二酸化炭素、窒素、水蒸気などの、反応して水素を生成しないガスを反応器からパージするための通路が設けられる。混入物質を除去する能力なしで反応器を満たすことを許す場合、反応器は非反応性混入物質で満たされ、原料となる硫化水素が排出されるため、分解反応は遅くなり、最終的に停止する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
好ましい実施形態では、主に硫化水素を含む入力ガス流から水素を生成するための方法であって、a.正に帯電されていてもよい導電性の反応器チャンバに入力ガス流を通過させることであって、反応器チャンバが、内部チャンバを画定する外壁と、加熱ゾーンと、負に帯電されていてもよい導体を有する水素透過性の無機、有機又は複合材料の膜と、硫黄凝縮器とを含む上記内部チャンバとを有し、上記反応器が、i.入力ガス流を内部チャンバに導入するための入口と、ii.上記入力ガス流を加熱するために高圧内部チャンバの近く又は内部に配置された加熱素子と、iii.内部チャンバから第1の出口に至る入口に配置され、水素を透過するが、硫化水素、硫黄蒸気及び入力ガス流の成分であり得る他のガスを透過しない上記膜であって、低圧出口面及び内部チャンバ面を有する、上記膜と、iv.流路に配置された負に帯電されていてもよい材料を含む上記膜と、v.内部チャンバ内の硫黄凝縮器として機能する高圧外壁の内面であって、凝縮した硫黄を第2の出口に向けてその中に導く、内面と、を含む、反応器チャンバに入力ガス流を通過させること、b.摂氏約100度~摂氏約700度の温度で加熱素子を取り囲む領域で硫化水素を反応させることであって、硫化水素の水素ガス及び硫黄蒸気への変換が少なくとも約95%である、硫化水素を反応させること、c.膜を通して水素ガスを連続的に直ちに取り出し、第1の出口から水素を引き出すこと、並びに、d.反応器内に配置された外壁又は同様の凝縮面の内面で硫黄蒸気を連続的に凝縮させ、第2の出口を通して硫黄を取り出すこと、を含む方法。
【0019】
別の好ましい実施形態では、反応器チャンバが直列の1つ以上の反応器チャンバを含む、本明細書に記載の方法。
【0020】
別の好ましい実施形態では、反応器チャンバが、準大気圧から3,000psi(20,684kPa)までの範囲の圧力で運転される、本明細書に記載の方法。
【0021】
別の好ましい実施形態では、膜が水素透過性有機ポリマー膜であり、その片面が膜の硫化水素側の圧力より低い圧力に維持される、本明細書に記載の方法。
【0022】
別の好ましい実施形態では、膜が水素透過性無機膜であり、その片面が膜の硫化水素側の圧力より低い圧力に維持される、本明細書に記載の方法。
【0023】
別の好ましい実施形態では、膜が水素透過性であり、有機成分と無機成分の両方からなり、その片側が膜の硫化水素側の圧力より低い圧力に維持される、本明細書に記載の方法。
【0024】
別の好ましい実施形態では、2つ以上の膜を含む、本明細書に記載の方法。
【0025】
別の好ましい実施形態では、負に帯電した導体が、水素透過性膜の低水素側内に位置する導電性熱電対又は他の組成の導体である、本明細書に記載の方法。
【0026】
別の好ましい実施形態では、供給ガスが供給される反応器チャンバが正に帯電している、本明細書に記載の方法。
【0027】
別の好ましい実施形態では、硫化水素の変換が少なくとも約99%を含む、本明細書に記載の方法。
【0028】
別の好ましい実施形態では、反応器が約10,000ppm未満の硫化水素を含む排出ガスを含有する、本明細書に記載の方法。
【0029】
別の好ましい実施形態では、加熱素子が膜に隣接して配置されることをさらに含む、本明細書に記載の方法。
【0030】
別の好ましい実施形態では、硫化水素ガスを加熱するためのマグネトロン又は他の電磁エネルギー場発生器が、1又は複数の膜に隣接する加熱ゾーンに配置されることをさらに含む、本明細書に記載の方法。
【0031】
別の好ましい実施形態では、外壁の内面、又は1つ以上の熱交換凝縮器が、反応器から取り出すために硫黄蒸気を回収する、本明細書に記載の方法。
【0032】
1つ以上の正に帯電されていてもよい(1又は複数の)反応器チャンバ内で硫化水素を水素ガス及び硫黄に連続的に変換するための反応器であって(1又は複数の)上記反応器チャンバが、内部チャンバを画定する内面を有する外壁と、(1又は複数の)加熱素子及び(1又は複数の)膜を含む(1又は複数の)上記内部チャンバとを有し、(1又は複数の)上記反応器チャンバが、i.硫化水素流を内部チャンバに導入するための入口と、ii.(1又は複数の)抵抗線又は電磁エネルギー源を備え、上記硫化水素流を加熱するために内部チャンバ内に配置された(1又は複数の)加熱素子と、iii.内部チャンバ内に配置され、水素に対して透過性であるが、硫化水素、硫黄蒸気及び硫化水素中に存在し得る他のガスに対して不透過性である、(1又は複数の)上記膜と、iv.第1の出口と連通する流路を画定する膜表面を有し、かかる流路内に配置された負に帯電されていてもよい導体を備える、(1又は複数の)上記膜と、iv.外壁の正に帯電されていてもよい内面、又は正に帯電されていてもよい熱交換凝縮器であって、内部チャンバ内の硫黄凝縮器として機能し、かかる内面が凝縮した硫黄を第2の出口に向けてその中に導く、内面又は熱交換凝縮器と、を有する、反応器。
【0033】
別の好ましい実施形態では、硫化水素の連続変換が少なくとも約99%を含む、本明細書に記載の反応器。
【0034】
別の好ましい実施形態では、熱伝導管として具体化された1つ以上の硫黄凝縮器をさらに備える、本明細書に記載の反応器。
【0035】
別の好ましい実施形態では、加熱素子が水素透過性膜に近接して配置されることをさらに含む、本明細書に記載の反応器。
【0036】
別の好ましい実施形態では、酸素、メタン、及び他の望ましくない非反応性ガスを内部チャンバから除去するための真空ポンプ又は他の手段をさらに備える、本明細書に記載の反応器。
【0037】
別の好ましい実施形態では、外壁に配置された内部熱交換コイルを備える、断熱特性及び温度制御特性を有する被膜をさらに備える、本明細書に記載の反応器。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明の方法で使用される小型の例示的な反応器の斜視図を示す線図である。
【
図2】
図2は、本発明の方法で使用されるより大きな例示的な反応器の代替図を示す線図である。
【
図3】
図3は、吸熱分解反応に供給され、必要なエネルギーが電磁エネルギー源の一例であるマグネトロンマイクロ波発生器によって供給される例示的な反応器の代替図を示す線図である。
【
図4】
図4は、吸熱分解反応に供給され、必要なエネルギーが、大径水素透過膜内に正に帯電した硫黄凝縮器を配置したマグネトロンマイクロ波発生器によって供給される例示的な反応器の代替図を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、硫化水素(H2S)を分解して水素ガス(H2)及び硫黄(S8)の生成物を形成する方法を提供する。本発明の反応プロセスでは、硫化水素ガスは、1つ以上の工業的又は実用的なプロセスを介して既に単離され、別個の反応のために集められている。したがって、この廃棄物は、水素燃料を生成するための有用な反応物になる。
【0040】
硫化水素が単離されると、それは次に、小さなエネルギー入力を必要とする以下の吸熱化学反応によって簡単に反応させることができる。
【0041】
8H.sub.2S(g).fwdarw.8H.sub.2(g)+S.sub.8(s)
この反応において、生成物S8は、純粋な場合、黄色、無臭及び無味の無機化学物質である八硫黄である。八硫黄は、液体又は固体の形態で存在し得る。これは、硫黄の最も一般的な同素体であり、硫黄の最も一般的に使用される工業的及び医薬的形態である。硫黄は、他の同素体の形で存在し、それが生成される任意の同素体の形で生成し、反応器から取り出すことができる。
【0042】
反応器は、任意の材料、例えば、金属、セラミック、ガラス、ポリマー、又は温度、圧力、及び反応器内に含まれる化学物質に耐えることが知られている任意の他の材料で作製することができる。温度及び圧力は、適切な任意の手段によって測定することができる。生成物の液体硫黄は、反応器から排出されてもよく、より多くの硫化水素を生成するために反応器内で使用されてもよく、又は任意の手段によって反応器から回収して取り出すことができる固体に変換されてもよい。水素透過膜を通過する高温の水素ガスは、必要に応じて、反応器に入る硫化水素を予熱するために熱交換器を通過するか、又は他の目的のために使用され得る。機器は、本出願に記載されたものに限定されない。本方法の工程を実行する限り、任意の機器を使用することができる。
【0043】
加熱ゾーンを生じさせるために、反応器内に加熱素子が設けられる。加熱される素子は、熱エネルギー又は電磁エネルギーを供給する任意の要素又は装置であってもよいが、小規模使用のために抵抗線であることが好ましい。本反応には触媒は必要ないが、触媒は反応器の性能を改善し得る。
【0044】
好ましくは、反応器の圧力は、大気圧から3,000psi(20,684kPa)までの範囲である。適用可能な場合、反応を改善するために、より高い圧力を使用することもでき、また準大気圧でも功を奏する。反応器は、その最も単純な形態では、抵抗線がその周りに巻き付けられ、50C~700Cの温度の加熱領域を生成する一端が開放されたチューブとして具現化されていてもよい、水素透過性膜と加熱素子の組み合わせを備える。この実施形態では、ニクロム加熱素子は触媒として作用する。硫黄及び水素は、加熱された領域でガス流から分離する。ガス中の硫化水素の分解反応は、摂氏約50度から始まる広範囲の温度にわたって起こる。硫黄がその融点を超えると、反応器の壁が加熱領域よりも低温であるため、硫黄は、反応器の壁の側面に集まり、反応器の壁が、硫黄が自由流動性の液体である温度にある場合、反応器の壁の側面を流れ落ちる。
【0045】
ニクロム又は他の触媒材料で構成された抵抗線を使用することができ、抵抗線は硫化水素ガスを分解するための触媒として作用することができ、より高い温度が通常好ましい。好ましくは、加熱領域の温度は、反応器の圧力及び水素透過性膜の組成に応じて、100度から700度である。より高い温度又はより低い温度を使用することもできる。
【0046】
本発明のプロセス中、硫化水素は、水素及び硫黄に変換され、好ましくは元素状の水素及び元素状の硫黄に変換される。遊離した水素が硫黄と反応しないように、ガスから水素を迅速に分離することが好ましい。そのため、水素が通る水素透過膜を通過する圧力は、水素透過膜の硫化水素側の圧力よりも常に低くなければならない。
【0047】
本発明の方法によって生成された水素ガスは、従来の膜技術又は他の手段によって反応生成物から分離することができる。一反復では、膜は、第1の出口と連通する流路を画定し、かかる流路に配置された負に帯電した導体を備える膜内部を有する無機セラミック又はガラスである。そのような負に帯電した導体は、一実施形態では、ステンレス鋼熱電対、メッシュ、又はロッドであり、反応器の正に帯電した内壁と組み合わされると、反応器の水素透過性膜を通る新たに遊離した水素ガスの流れを実質的に増加させる。この流量の増加は、反応器の時間効率を増加させるとともに、水素ガスが反応器内で硫黄と反応する可能性を減少させる。
【0048】
好ましい実施形態では、低温反応のために、水素透過性膜は、スルホン酸基で末端化されたパーフルオロビニルエーテル基をPTFE骨格に組み込むことから生じるイオン特性を有する合成ポリマーであるNafion(登録商標)(スルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマー-コポリマーの商品名)などの有機ポリマーから構成される。Nafionは、優れた熱的及び機械的安定性を有することが知られており、様々なカチオン伝導率で製造することができる。他の同様のプロトン伝導性ポリマーを使用することもできる。
【0049】
あるいは、高温反応のために、水素透過性膜は、化石燃料産業の水素分離プロセスで知られているように、非常に限られた多孔度を有するセラミックなどの高密度無機材料で構成される。例えば、バリウムセレート、バリウムジルコネート及びストロンチウムセレートなどのアルカリ土類セレート及びジルコネートを含有するプロトン透過性セラミックも適切な無機膜材料であり、それらは単独で使用することができ、又は多孔質セラミック、金属若しくは他の支持フレームワークの基材上にコーティングすることができる。多孔質有機又は無機基材の基材上のNafion又は同様のプロトン伝導性有機ポリマーのハイブリッドも使用することができる。
【0050】
硫化水素の分解により生じた遊離水素ガスを空気又は酸素で酸化するプロセスは、以下の式で表される。
【0051】
2H.sub.2(g)+O.sub.2(g).fwdarw.2H.sub.2O(g)+energy
この水素酸化プロセスで放出されるエネルギーは、以下の表に見られるように、水素が硫黄とのその結合から放出される最初の反応で必要とされるエネルギーのほぼ12倍である。
【表1】
【0052】
開示された反応は、工業的及び商業的に有用で価値のある純水素ガス及び硫黄の生成をもたらす。開示された反応器の設計は、かかる生成を簡易かつ効率的にすることを可能にし、設計の簡潔さはまた、高度にスケーラブルな製造能力を可能にする。さらに、開示されたプロセスは、当分野で現在知られている方法と比較して安価であり、その結果、開示された設計に基づく複数の反応器を有する製造システムは、今日市場で入手可能な価格をはるかに下回る価格で商業使用のための大量の水素及び硫黄を生成することができる。
【0053】
図の詳細な説明
ここで図面を参照すると、
図1は、本発明の水素製造プロセスで使用される例示的な反応器1の斜視図である。この実施形態では、反応器は、硫化水素発生器若しくは容器(図示せず)の一部として含まれてもよく、又はホース若しくは他の装置によって発生器若しくは容器に取り付けられて硫化水素ガスを供給してもよい。硫化水素の流れは、バルブとしても作用する圧力計15を有する入口12を通過して、反応が起こる内部チャンバ4を画定する外壁の内面3Aを有する外壁3を備える反応器チャンバ2に入る。反応器チャンバは、水素、硫黄、硫化水素、硫化水素と共に入る可能性がある混入物質に対して耐性があって不透過性であり、正に帯電していてもよい導電体である。硫化水素が入口11を介して内部チャンバを満たすと、高圧領域11Aが形成され、一端開放管形状の水素透過性セラミック膜7として具現化される加熱素子5に接近し、その周りに抵抗線6が巻き付けられ、この線は第1の電気フィードスルー導体19及び第2の電気フィードスルー導体20の各々にまで延びている。加熱素子を囲む加熱される領域は、約100℃から約700℃以上の温度に上昇すると、内部チャンバ4内の硫化水素を分解し、それを水素ガスと硫黄とに分解するのに必要なエネルギーを提供する。好ましくは、加熱素子の温度は115℃から650℃であり、理想的な温度は140℃から600℃である。熱電対16Aもまた、加熱素子の近くの領域の温度を測定するために内部チャンバ4に挿入される。
【0054】
加熱素子は、好ましくは、水素透過性膜7の近くに配置されるか、又はその一部であり、この膜はまた、硫化水素、硫黄、及び硫化水素を汚染する可能性がある他のガスに対して不透過性である。次いで、高純度水素ガスは、水素透過性膜7を通って移動し、水素透過性膜7は、場合により、低圧13Aの領域内に配置され、中央に配置された負に帯電した材料8を含んでいてもよい。負電荷は、水素透過性膜の温度を測定するために膜内に配置された別の熱電対16Bによって、又は膜の内部に負電荷の電流を導く任意の他の手段によって伝えることができる。好ましい実施形態では、負電荷材料は、導電性メッシュ、焼結チューブ、多孔質グラファイト、又は同様の多孔質導体として具現化される。そのような材料からの負電荷は、反応器チャンバ自体が、熱、圧力及び化学反応に耐性のある金属、グラファイト又は同様の材料で作られた正に帯電した導体である場合、膜を介して反応器チャンバ2からより迅速に正に帯電した水素プロトンを引き付ける。膜7を通過すると、水素ガスは、反応器から出て、水素流出物の温度を検知するための圧力計15及び熱電対16Cを任意に備える第1の出口13を通って容器(図示せず)に進む。反応器を出る水素の温度を知ることにより、例えば、反応器に入る硫化水素を予熱するために、又は熱回収などの他の用途のために使用される水素ガスに含まれる熱エネルギーの使用が可能になる。DC電流は、18として示す従来の整流器によって提供することができ、これは、17によって、電池によって、水素燃料電池によって、又は任意の他の手段によってAC電源に接続されている。
【0055】
硫化水素と加熱素子との反応の他の生成物としての硫黄蒸気は、内部チャンバ4内に残り、外壁3の内面3A上で徐々に凝縮して液体硫黄になる。一反復では、液体又は固体硫黄を生成するのに望ましい範囲内で壁温度を安定させるために、外壁はシリコンパッド21(図示せず)に包まれ、壁は、より速い速度の硫黄凝縮をもたらすための加熱素子又は冷却素子を含むことができる。凝縮物が形成されると、重力によって凝縮物が内面3Aに沿って下方に第2の出口14に向かって引き寄せられ、かかる出口は反応器から液体硫黄を排出することを意図している。好ましい実施形態では、内面3Aの温度は、低温環境反応器の場合、約115℃~約135℃に維持され、又は高温環境反応器の場合、内面3Aの温度は、約380℃~約440℃に維持される。
【0056】
別の好ましい実施形態では、第2の出口14は、外壁3の傾斜領域10内に配置され、傾斜領域は、凝縮した液体硫黄を第2の出口14に導くのを助ける。硫黄は、一旦反応器から排出されると適切な容器(図示せず)に回収されるか、又は例えば、反応器内の余った炭化水素との反応で追加の硫化水素を生成するためにそのまま使用され得る。
【0057】
抵抗線6は、電気絶縁フィードスルー19及び20によって抵抗線6にもたらされるAC電流又はDC電流によって給電される。第2の水素透過性膜(図示せず)は、必要に応じて、硫化水素をさらに除去するために、場合により、第2のレベルの濾過に使用されてもよい。さらに、硫化水素吸収材料の床(図示せず)を、場合により、微量の硫化水素を除去するために使用されてもよい。
【0058】
反応のパフォーマンスは、入口におけるガス流入の圧力によって支配されるため、高圧環境においてより効率的であり得る。反応器内の最適圧力は、好ましくは、反応器の温度に応じて、準大気圧から3,000psi(20,684kPa)までの間である。
【0059】
図2は、
図1の反応器の代替バージョンであり、水平構成と、1分あたりのより大量の硫化水素の反応のためのより大きなスケールとを有する。
図1の特徴に加えて、
図2の実施形態は、入口11に圧力計15を含み、三方弁としても機能するこの圧力計は、高圧領域11Aを形成する。したがって、圧力計は、反応効率の低下をもたらす低レベルの、例えば、10,000ppm以下の硫化水素を含む場合、内部チャンバ4をパージすることができる。手動パージと自動パージの両方が開示されており、後者は流量センサ又は同様の構成によってトリガされるバルブ開放時にトリガされる。
【0060】
図2は、2つの別個の加熱素子5と水素透過性膜7の組み合わせをさらに含み、それぞれが第1の電気フィードスルー導体19及び第2の電気フィードスルー導体20に接続された抵抗線6を含む。2つの加熱素子は共に、硫化水素を水素ガスと硫黄に分解する反応を促進するための拡大された加熱領域、及び水素透過性膜の拡大された領域を提供する。この実施形態は、各加熱素子に対して別個の複数の膜7をさらに備え、これらは相互接続され、圧力計15に通じ、低圧領域13Aから第1の出口13に通じている(反応器を出る水素ガスの温度を検知するための熱電対は示されておらず、加熱素子付近のガスの温度を検知するための熱電対は示されていない)。圧力計は、反応器が停止したときに水素の流出を遮断するための弁としても機能する。反応器に入る硫化水素中の混入物質であるメタン、二酸化炭素、窒素、水蒸気などの水素を生成するために反応しないガスを反応器からパージするために、任意選択の真空ポンプ(図示せず)を反応器に配置又は接続することもできる。
【0061】
図2の実施形態には、反応器の外壁3の周りに巻き付けられた低温シリコンパッド21も存在する。シリコンパッド、又は内部熱交換コイル及び温度制御装置23を有する鉱物ウールなどの他の絶縁性の温度制御被膜は、硫黄凝縮内面を所望の温度範囲内に維持するように設計されている。
【0062】
反応器チャンバ2の水平構成により、水素ガス用の第1の出口13及び液体硫黄用の第2の出口14の各々は、反応器の側面に位置する。反応器の外壁3は内面3Aを備え、この内面は、出口13及び14が位置する反応器チャンバ2の端部に向かって少なくとも一方の側で傾斜している。この角度により、液体硫黄凝縮物が第2の出口14に向かって流れる。
【0063】
図3は、
図2の反応器の代替バージョンであり、硫化水素の吸熱分解に必要なエネルギーは、電磁気によって生成され、この場合は、高エネルギー領域5を生成し、ACコード17によって電力供給される従来のマグネトロン25の使用によって生成される。これにより、抵抗線6並びにその電気フィードスルー19及び20の使用が排除される。また、外壁の内面とは別の自立型硫黄凝縮器9も示されており、複数の凝縮器9は、複数の水素透過性膜を有し、それゆえに反応器の外壁のみよりもはるかに大きい凝縮面を必要とする典型的な大規模反応器のために、必要に応じて反応器内に設置することができ、大量の硫化水素を分解する強力な電磁エネルギー入力に起因して反応器内で生成される大量の硫黄ガスをサポートすることができる。これらの正に帯電していてもよい硫黄凝縮器9は、反応器内に存在する条件に耐性があり、熱交換液を循環させて凝縮面の温度を制御する熱伝導管として具現化される。
【0064】
図4は、同じく硫化水素の吸熱分解に必要なエネルギーが電磁気によって生成される
図3の反応器の代替バージョンであるが、この場合、マグネトロン25は、大径膜7内に配置され、ACコード17によって電力供給される高エネルギー領域5を形成し、高圧領域11Aを形成する。同じく膜の高圧硫化水素側に配置された自立型硫黄凝縮器9も示されており、複数の凝縮器9を、複数の水素透過性膜を有する典型的な大規模反応器のために、必要に応じて反応器内に設置することができる。これらの硫黄凝縮器9は、反応器内に存在する条件に耐性があり、熱交換液を循環させて凝縮表面の温度を制御し、電気的かつ熱的に加熱されたゾーンで生成された硫黄を引き付けるために同じく正電荷を帯びていてもよい導電性及び熱伝導性チューブとして具現化される。電磁エネルギー発生器(この場合はマグネトロン)は、従来のニクロム、又は他のタイプの抵抗線、加熱素子に置き換えることができる。膜の温度を検知するための熱電対16B及び反応器を出る水素ガスの温度を検知するための熱電対16Cは、示されていないが、通常は使用される。
【0065】
本発明のプロセスは、本明細書に記載のプロセスの各工程を実行することが可能であり、それに適した任意の装置又はシステムで実行することができるが、本プロセスは、好ましくは、本明細書に記載のシステムの好ましい実施形態を利用して実行される。したがって、1つのプロセス及びシステムに関して使用及び定義される用語は、別のプロセス及びシステムに関しても等しく適用可能である。
【0066】
本発明をその特定の実施形態を参照して詳細に説明してきたが、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び改変を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内に入る限り、本発明の改変及び変形を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 反応器
2 反応器チャンバ
3 外壁
3A 外壁の内面(帯電していてもよい)
4 内部チャンバ
5 加熱素子又は高エネルギー領域
6 抵抗線
7 膜
8 任意に負に帯電した膜内導体
9 硫黄凝縮器
10 傾斜領域
11 内部チャンバへの入口
11A 高圧領域
12 流路
13 第1の出口
13A 低圧領域
14 第2の出口
15 圧力計(複数)
16A 加熱素子付近のガスの温度を検知するための熱電対
16B 膜の温度を検知するための熱電対
16C 反応器を出る水素ガスの温度を検知するための熱電対
17 AC電源コード
18 整流器
18A 正電荷用導体
18B 負電荷用導体
19 第1の電気フィードスルー導体
20 第2の電気フィードスルー導体
21 シリコンパッド又は他の温度制御被膜
22 パージポート
23 温度制御
24 真空ポンプ
25 電磁エネルギー発生装置(マグネトロンなど)
本明細書に列挙される参考文献は、特に、それらが当業者のレベルの教示に関する場合に、また、特許請求される発明の主題のより一般的な理解に必要な任意の開示について、その全体が本明細書に組み込まれる。本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態を変更することができること、又は非本質的な変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等な均等物の範囲によって決定される。
【国際調査報告】