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特表2023-518480粒子排出物を削減するための水素化ジエンスチレンポリマーの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】粒子排出物を削減するための水素化ジエンスチレンポリマーの使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 143/12 20060101AFI20230424BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230424BHJP
   C10N 40/26 20060101ALN20230424BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230424BHJP
【FI】
C10M143/12
C10N40:25
C10N40:26
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557068
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2021057439
(87)【国際公開番号】W WO2021191210
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】2002902
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522232558
【氏名又は名称】トタルエナジーズ ワンテク
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ビュレット,ゴーティエ
(72)【発明者】
【氏名】パオロニ,フランソワ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104CA12C
4H104DA02A
4H104LA20
4H104PA42
4H104PA44
4H104PA45
(57)【要約】
本出願は、エンジンの粒子排出物を削減するための、基油および水素化ジエンスチレンポリマーを含む潤滑組成物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの粒子排出物を削減するための、基油および水素化スチレンジエンポリマーを含む潤滑組成物の使用。
【請求項2】
水素化ジエンユニットが、水素化ブタジエンユニットまたは水素化イソプレンユニットである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
水素化ジエンユニットが、水素化イソプレンユニットである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
本発明に係る水素化スチレン/ジエンポリマーが、線形または星形コポリマーのいずれか、好ましくは星形コポリマーから選択可能である、請求項1から3のいずれか一つに記載の使用。
【請求項5】
水素化ジエンユニットの含有量が、ポリマーの重量との関係において、50~98重量%、好ましくは60~98重量%、より好ましくは70~97重量%、さらに一層好ましくは75~96重量%である、請求項1から4のいずれか一つに記載の使用。
【請求項6】
スチレンユニットの含有量が、ポリマーの重量との関係において、2~50重量%、好ましくは2~40重量%、より好ましくは3~30重量%、さらに一層好ましくは4~25重量%である、請求項1から5のいずれか一つに記載の使用。
【請求項7】
水素化スチレンジエンポリマーが、潤滑組成物の総重量との関係において、0.1~15重量%の量で使用される、請求項1から6のいずれか一つに記載の使用。
【請求項8】
粒子排出物を削減することを目的とするエンジン潤滑組成物中における水素化スチレンジエンポリマーの使用。
【請求項9】
基油および水素化スチレンジエンポリマーを含む潤滑組成物の使用を含む、エンジン内の粒子排出物削減方法。
【請求項10】
前記潤滑組成物に対する水素化スチレンジエンポリマーの添加を含む、潤滑組成物で潤滑されるエンジン内の粒子排出物削減方法。
【請求項11】
粒子が23nm以上のサイズを有する、請求項1から8のいずれか一つに記載の使用または請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
粒子排出物の削減が、WLTCおよび/または全WLTCにより定義された市街地、都市部周辺および道路タイプのサイクルに関連する、請求項1から8または11のいずれか一つに記載の使用もしくは請求項9または10に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両からの粒子排出物を削減するための水素化スチレンジエンポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼機関を伴う車両からの排出物についての最初の欧州規格は、1992年に導入された。新規に認証された車両について2014年9月1日に施行され2015年9月1日から全ての新車に適用されたユーロ6排出物規格(EC規格715/2007、改正692/2008)は、ガソリンおよびディーゼルの両方のエンジンに関するものである。この規格は、詳細には、一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、煤を含めた粒子の重量(PM)および粒子数(PN)という4つの汚染物質に関連するものであり、最後の2つは、現代のエンジンの汚染制御システムにとって最も問題になっているものである。
【0003】
COを追求することによりメーカーは、COの消費を低下させるために効率化を進めるよう促されることになった。この目的で、多くの場合選択されたのは、希薄燃焼運転(燃料の重量に比べて余剰の空気)であった。残念なことに、このようなプロセスは、窒素酸化物および粒子の排出物を大幅に増大させる。
【0004】
過去において、メーカーは、大気中に排出される粒子の数および重量を減少させるために粒子フィルタシステムを導入することも選択してきた。大部分の場合、このようなシステムの動作は、フィルタの入口における排気ガスの温度上昇に起因する煤の燃焼で構成されている。このような動作には、触媒反応の存在が求められる。
【0005】
粒子の排出に対して直接的影響を有する潤滑組成物および潤滑組成物用の添加剤をさらに発見することが、有利であると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、粒子排出物に対して直接的影響を有する潤滑組成物用の添加剤を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、粒子排出物に対して直接的影響を有する潤滑組成物を提供することにある。
【0008】
さらなる目的は、本発明についての以下の説明を読んだ時点で明らかになるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、エンジンからの粒子排出物を削減するための、基油および少なくとも1つの水素化ジエンスチレンを含む潤滑組成物の使用に関する本出願によって達成される。
【0010】
本発明において、「粒子」なる用語は、自動車両の排気が排出する粒子を意味する。それは、微細粒子全体(ほぼミクロン以下のサイズ)を意味する。このような物質は、多様であり、燃料の燃焼に由来する車両の排気ガス中に含まれている。このような物質は、固体または液体のいずれでもあり得る。粒子なる用語には、形成され、酸化され、未燃炭化水素、含酸素誘導体(ケトン、エステル、アルデヒド、ラクトン、エーテル、有機酸)および多環芳香族炭化水素(有名なPAHs)をそのニトロ化誘導体、含酸素誘導体などと共に含有する、煤なる用語が含まれる。さらに、無機物(SO、硫酸塩など)および金属誘導体も存在する。
【0011】
極めて有利には、本発明は、23nm以上のサイズを有する粒子排出物を削減するために使用可能である。
【0012】
本発明の枠内で、「粒径」なる用語は、23~100nm、好ましくは23~60nm、より好ましくは23~40nmに含まれるサイズを有する粒子または粒子の凝集体を意味する。
【0013】
粒径は、例えばCambustionによりDMS500という品番で製造されている分光計を用いて分光分析によって測定可能である。
【0014】
粒子排出物の削減は、詳細には、粒子、特に23nm以上のサイズを有する粒子の数の削減を意味する。WLTCサイクル中に排出される粒子の数を削減することが、特に論述される。削減は、主として走行キロメートル数の関数として決定される。
【0015】
粒子数は、詳細には、AVL APC 489という品番で存在する装置などの粒子計数器装置によって測定可能である。
【0016】
好ましくは、本出願は、煤排出物の削減に関する。
【0017】
好ましくは、本発明は、WLTC(またはWLTP)(国際調和排出ガス・燃費試験法)によってかつ全WLTCを横断して定義される市街地(低速)、都市部周辺(中速)および道路(高速)サイクル中の粒子、好ましくは23nm以上のサイズの粒子、好ましくは煤の排出物の削減に関する。
【0018】
本発明に係る水素化ジエンスチレンポリマー(または水素化スチレン/イソプレンポリマー)は、スチレンとジエンの水素化されたコポリマーである。これは、粘度指数を改善する添加剤に分類される化合物の1つである。
【0019】
本発明に係る水素化スチレン/ジエンコポリマーは、線形または星形コポリマーのいずれか、好ましくは星形コポリマーから選択可能である。
【0020】
水素化スチレン/ジエンコポリマーは、ブロックコポリマーまたは統計コポリマーから選択可能である。
【0021】
好ましくは、水素化ジエンユニットの含有量は、コポリマーの重量との関係において、50~98重量%、好ましくは60~98重量%、より好ましくは70~97重量%、さらに一層好ましくは75~96重量%である。
【0022】
好ましくは、スチレンユニットの含有量は、コポリマーの重量との関係において、2~50重量%、好ましくは2~40重量%、より好ましくは3~30重量%、さらに一層好ましくは4~25重量%である。
【0023】
一実施形態において、本発明に係る水素化スチレン/ジエンコポリマーは、100,000~800,000Da、好ましくは200,000~700,000Da、より好ましくは300,000~600,000Da、さらに一層好ましくは400,000~500,000Daの重量平均分子量Mwを有する。
【0024】
本発明の一実施形態において、本発明に係る水素化スチレン/ジエンコポリマーは、50,000~800,000Da、好ましくは75,000~600,000Da、より好ましくは100,000~500,000Da、さらに一層好ましくは100,000~200,000Daの数平均分子量Mnを有する。
【0025】
数および重量平均分子量(MnおよびMw)の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって行なわれる。
【0026】
本発明の一実施形態において、本発明に係る水素化スチレン/ジエンコポリマーは、1~4、好ましくは1.2~3.5、より好ましくは1.5~3.5、さらに一層好ましくは2~3の分散度指数を有する。
【0027】
好ましくは、水素化スチレンジエンコポリマーは、潤滑組成物の総重量との関係において、0.1~15重量%の量で使用される。
【0028】
量は、活性ポリマー材料(乾燥抽出物)の量として理解される。実際、本発明において使用されるスチレンとジエンの水素化コポリマーは、鉱油または合成油中そしてより詳細にはAPI分類にしたがったIII群の油中の分散の形態を取ることができる。
【0029】
好ましくは、水素化ジエンユニットは、水素化ブタジエンユニットまたは水素化イソプレンユニットであり、この場合それは、水素化スチレン/ブタジエンポリマーまたは水素化スチレン/イソプレンポリマーと称される。
【0030】
好ましくは、水素化ジエンユニットは、水素化イソプレンユニットであり、この場合それは水素化スチレン/イソプレンポリマーと称される。
【0031】
本発明の潤滑組成物中で使用される基油は、API分類によって定義された等級にしたがって、I~V群に属する鉱物または合成由来の油(またはATIEL分類にしたがったその等価物(表1))またはそれらの混合物であり得る。
【0032】
【表1】
【0033】
本発明の鉱物基油には、原油の常圧蒸留および真空蒸留とそれに続く精製作業、例えば溶媒抽出、脱歴、溶剤脱ろう、水素化処理、水素化分解、水素異性化および水素化仕上げによって得られるあらゆるタイプの基油が含まれる。
【0034】
合成油および鉱油の混合物をさらに使用することができる。
【0035】
本発明に係る潤滑組成物の基油はさらに、カルボン酸とアルコールの特定のエステルおよびポリアルファオレフィンなどの合成油から選択可能である。基油として使用されるポリアルファオレフィンは、例えばASTM D445規格により100℃で1.5~15mm/sの粘度を有し、4~32個の炭素原子を含むモノマー、例えばオクテンまたはデセンから得られる。その平均モル重量は概して、ASTM D5296規格に準じて250~3,000の間に含まれる。
【0036】
本発明に係る潤滑組成物は、組成物の総重量との関係において、少なくとも50重量%の基油を含み得る。より有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の総重量との関係において、少なくとも60重量%、さらには少なくとも70重量%の基油を含む。より好ましくは、本発明に係る潤滑組成物は、組成物の総重量との関係において、75~97重量%の基油を含む。
【0037】
本発明の組成物は、さらに、少なくとも1つの添加剤を含むことができる。
【0038】
本発明に係る潤滑組成物中には、多くの添加剤を使用することができる。
【0039】
本発明に係る潤滑組成物のための好ましい添加剤は、洗浄剤添加剤、上記で定義したモリブデン化合物とは異なる摩擦調整添加剤、極圧添加剤、分散剤、流動点活性化剤、消泡剤、増粘剤およびそれらの混合物から選択される。
【0040】
好ましくは、本発明に係る潤滑組成物は、少なくとも1つの極圧添加剤または混合物を含む。
【0041】
耐摩耗添加剤および極圧添加剤は、表面上に吸着される保護膜を形成することによって、表面摩擦に対して保護する。
【0042】
多種多様な耐摩耗添加剤が存在する。好ましくは、本発明の潤滑組成物用として、耐摩耗添加剤は、アルキルチオリン酸金属、詳細にはアルキルチオリン酸亜鉛そしてより厳密にはジアルキルジチオリン酸亜鉛すなわちZnDTPなどの、リンおよび硫黄を含む添加剤から選択される。好ましい化合物は、Zn((SP(S)(OR)(OR’))なる式を有し、ここで、同一のまたは異なるものであるRおよびR’は、独立してアルキル基、好ましくは1~18個の炭素原子を含むアルキル基を表わす。
【0043】
リン酸アミンも、本発明の潤滑組成物中で使用可能な耐摩耗添加剤である。しかしながら、このような添加剤が提供するリン原子は、灰分を生成させるので、自動車の触媒系内では毒として作用し得る。このような効果は、ポリスルファイドなど非リン添加剤、詳細には含硫オレフィンでリン酸アミンの一部を置換することによって最小限に抑えることができる。
【0044】
有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の総重量との関係において、0.01~6重量%、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは0.1~2重量%の耐摩耗添加剤および極圧添加剤を含むことができる。
【0045】
有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の総重量との関係において、0.01~6重量%、好ましくは0.05~4重量%、より好ましくは0.1~2重量%の耐摩耗添加剤(または耐摩耗化合物)を含む。
【0046】
有利には、本発明に係る組成物は、本発明のモリブデン化合物とは異なる少なくとも1つの摩擦調整添加剤を含むことができる。摩擦調整添加剤は詳細には、金属元素を提供する化合物および無灰化合物から選択可能である。金属元素を提供する化合物は、配位子が、酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含む炭化水素であり得る、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znなどの遷移金属の錯体が含まれる。無灰摩擦調整添加剤は概して、有機由来のものであるか、または脂肪酸およびポリオールモノエステル、アルコキシル化アミン、アルコキシル化脂肪族アミン、脂肪族エポキシド、脂肪族エポキシドボレート、脂肪族アミンまたはグリセロール酸エステルから選択可能である。本発明によると、脂肪族化合物は、10~24個の炭素原子を含む少なくとも1つの炭化水素基を含む。
【0047】
有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の総重量との関係において、0.01~2重量%または0.01~5重量%、好ましくは0.1~1.5重量%または0.1~2重量%の、本発明に係るモリブデン化合物とは異なる摩擦調整添加剤を含むことができる。
【0048】
有利には、本発明に係る潤滑組成物は、少なくとも1つの酸化防止剤添加剤を含むことができる。
【0049】
酸化防止剤添加剤は概して、潤滑組成物の劣化を遅延させる。このような劣化は、最も多くの場合、沈着物形成、スラッジの存在、または潤滑組成物の粘度の増大によって表わされる。
【0050】
酸化防止剤添加剤は概して、ラジカル阻害剤またはヒドロペルオキシドデストラクタ阻害剤として作用する。一般に使用される酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン酸化防止剤、硫黄およびリンを含有する酸化防止剤が含まれる。酸化防止剤のいくつか、例えば硫黄およびリンを含有する酸化防止剤は、灰分を生成し得る。フェノール系酸化防止剤添加剤は、灰分を含まないかまたは中性あるいは塩基性金属塩の形態をしている可能性がある。酸化防止剤添加剤は詳細には、立体障害性フェノール、立体障害性フェノールエステル、チオエーテル架橋を含む立体障害性フェノール、ジフェニルアミン、少なくとも1つのC~C12のアルキル基で置換されたジフェニルアミン、N,N’-ジアルキル-アリール-ジアミンおよびそれらの混合物から選択可能である。
【0051】
好ましくは、本発明によると、立体障害性フェノールは、アルコール官能基を担持する炭素原子の近傍で炭素原子のうちの少なくとも1つが少なくとも1つのC~C10のアルキル基、好ましくはC~Cのアルキル基、好ましくはCのアルキル基、好ましくはtert-ブチル基によって置換されているフェノール基を含む化合物から選択される。
【0052】
アミン化合物は、任意にはフェノール系酸化防止剤添加剤と組合せた形態で使用可能な別の部類の酸化防止剤添加剤である。アミン化合物の例としては、芳香族アミン、例えばNRaRbRcなる化学式の芳香族アミンであり、ここで、Raは、脂肪族基または任意に置換された芳香族基を表わし、Rbは、任意に置換された芳香族基を表わし、Rcは、水素原子、アルキル基、アリール基、またはRdS(O)zReなる化学式の基を表わし、ここでRdはアルキレンまたはアルケニレン基を表わし、Reはアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表わし、zは0、1または2を表わす。
【0053】
含硫アルキルフェノールまたはそのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩も、酸化防止剤添加剤として使用可能である。
【0054】
他の部類の酸化防止剤添加剤は、銅を含む化合物、例えばチオリン酸銅またはジチオリン酸銅、銅塩およびカルボン酸、ジチオカルバメート、スルホネート、フェネート、アセチルアセトン酸銅である。銅塩(I)および銅塩(II)、コハク酸塩または無水コハク酸塩も使用可能である。
【0055】
本発明に係る潤滑組成物はさらに、当業者にとって公知のあらゆるタイプの酸化防止剤を含むことができる。
【0056】
有利には、潤滑組成物は、少なくとも1つの無灰酸化防止剤添加剤を含む。
【0057】
さらに有利には、本発明に係る潤滑組成物は、組成物の総重量との関係において、0.1~2重量%の少なくとも1つの酸化防止剤添加剤を含む。
【0058】
本発明に係る潤滑組成物は、さらに、少なくとも1つの洗浄剤添加剤を含むことができる。
【0059】
洗浄剤添加剤は概して、酸化および燃焼副産物を溶解させることによって、金属部品の表面上の沈着物の形成を削減する。
【0060】
本発明に係る潤滑組成物中で使用可能な洗浄剤添加剤は、当業者には一般的に公知のものである。洗浄剤添加剤は、親油性炭化水素長鎖および疎水性頭部を含むアニオン性化合物であり得る。付随するカチオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属カチオンであり得る。
【0061】
洗浄剤添加剤は、好ましくは、カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、スルホネート、サリチレート、ナフテネートならびにフェネート塩から選択される。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、好ましくはカルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたはバリウムである。
【0062】
このような金属塩は概して、化学量論量で、または余剰量で、すなわち化学量論濃度よりも高い濃度で金属を含む。このときこれらの金属塩は、過塩基化洗浄剤であり、洗浄剤添加剤の過塩基化性に関与する余剰の金属は、概して不油溶性金属塩、例えばカーボネート、ヒドロキシド、オキサレート、アセテート、グルタメートの形態、好ましくはカーボネートの形態をしている。
【0063】
有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の総重量との関係において、0.5~8重量%または2~4重量%の過塩基化洗浄剤添加剤を含むことができる。
【0064】
さらに有利には、本発明に係る潤滑組成物はさらに、流動点を降下させる添加剤を含むことができる。
【0065】
パラフィン結晶の形成を減速させることにより、流動点降下添加剤は概して、本発明に係る低温条件下の潤滑組成物の挙動を改善する。
【0066】
流動点を降下させる添加剤の例としては、アルキルポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、アルキルポリスチレンが含まれる。
【0067】
有利には、本発明に係る潤滑組成物はさらに、分散剤を含むことができる。
【0068】
分散剤は、マンニッヒ塩基、スクシンイミドおよびその誘導体から選択可能である。
【0069】
さらに有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の総重量との関係において、0.2~10重量%の分散剤を含むことができる。
【0070】
有利には、本発明に係る潤滑組成物はさらに、粘度指数を向上する少なくとも1つの他の追加のポリマーを含むことができる。粘度指数を向上する追加のポリマーの例としては、水素化もしくは非水素化ポリマーエステル、スチレンもしくはブタジエンとイソプレンのホモポリマーまたはコポリマー、ポリメタクリレート(PMA)を挙げることができる。さらに有利には、本発明に係る潤滑組成物は、潤滑組成物の総重量との関係において、1~15重量%の、粘度指数を向上する添加剤を含むことができる。
【0071】
本発明に係る潤滑組成物はさらに、少なくとも1つの増粘剤を含むことができる。
【0072】
本発明に係る潤滑組成物はさらに、消泡剤および解乳化剤を含むことができる。
【0073】
好ましくは、本発明の潤滑組成物はさらに、少なくとも1つの耐摩耗剤、詳細には亜鉛を含有する作用物質、詳細にはZnDTPを含む。
【0074】
本発明はさらに、エンジンの機械的部品、非晶質炭素コーティング、好ましくは水素化非晶質炭素コーティングを含む部品のうちの少なくとも1つの摩擦を削減するための、本発明に係る潤滑組成物の使用にも関する。
【0075】
本発明はさらに、粒子排出物を削減することを目的とする、エンジン潤滑組成物中における水素化スチレンジエンポリマーの使用に関する。
【0076】
本発明はさらに、基油および水素化スチレンジエンポリマーを含む潤滑組成物の使用を含む、エンジン、好ましくはガス、ガソリン、ディーゼルまたはハイブリッドエンジン内の粒子の排出を削減するための方法にも関する。
【0077】
本発明はさらに、潤滑組成物に対する水素化スチレンジエンポリマーの添加を含む前記潤滑組成物により潤滑されるエンジン、好ましくはガス、ガソリン、ディーゼルまたはハイブリッドエンジン内の粒子の排出を削減するための方法にも関する。
【0078】
水素化スチレンジエンポリマー、粒子、基油および潤滑組成物は、上記で定義された通りである。
【0079】
本発明は、全ての自動車両、詳細には2ストロークまたは4ストロークエンジン、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドまたはガスエンジンを含む車両に適用される。
【0080】
本発明は、好ましくは少なくとも1つの燃焼機関を含む全ての自動車両、詳細には大型車両または小型車両に適用される。
【発明を実施するための形態】
【0081】
ここで、本発明について非限定的な実施例を用いて説明する。
【0082】
実施例1:潤滑組成物
下表2にしたがって、以下の潤滑組成物を調製した。
【0083】
【表2】
【0084】
潤滑組成物の特性は、下表3に列記されている。
【0085】
【表3】
【0086】
実施例2:排出された粒子の数の測定
実施例1の組成物をWLTC試験に付し、各サイクルの終りで排出された23nm以上のサイズを有する走行キロメートルあたりの粒子の数量を測定した。
【0087】
ターボチャージャ付き直列4気筒エンジンに対して、エンジン試験を実施した。同じエンジン始動温度で試験を実施した。他のテストベンチ条件もまた全て恒常に保った。排気ガス測定のための試料採取を、排気システムの前方、ただし処理システムの後方の生排気ガスから実施した。したがって、観察された効果は、実際に潤滑組成物の使用ひいては水素化スチレン/ジエンポリマーの使用のみに起因するものであり、ドライバーの存在、車両の重量、温度、相対湿度などの他のいずれの基準にも起因するものではない。
【0088】
並行してCambustion示差移動度分光計(DMS500)によって粒径分布を測定した。これには表面積と正比例して全ての粒子を帯電させるために高圧放電が使用される。荷電粒子を、強い径方向電場を伴う分類区分の中に導入する。このような電場は、カラム内部の流れを通して粒子を電位計検出器に向かってドリフトさせる。粒子の空力抗力/電荷比に応じて、カラム内で異なる距離をおいて粒子を検出する。22台の電位計の出力を、スペクトルデータおよび他の測定値を提供するように、10Hzでリアルタイムで処理する。
【0089】
【表4】
【0090】
結果は、潤滑組成物中の水素化スチレンイソプレンポリマーの添加により、23nm以上のサイズを有する粒子の(排気から放出される)量が減少することを示している。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの粒子排出物を削減するための、基油および水素化スチレンジエンポリマーを含む潤滑組成物の使用。
【請求項2】
水素化ジエンユニットが、水素化ブタジエンユニットまたは水素化イソプレンユニットである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
水素化ジエンユニットが、水素化イソプレンユニットである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
素化スチレン/ジエンポリマーが、線形および星形コポリマーから選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
水素化スチレン/ジエンポリマーが、星形コポリマーから選択可能である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
水素化ジエンユニットの含有量が、ポリマーの重量との関係において、50~98重量%である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
スチレンユニットの含有量が、ポリマーの重量との関係において、2~50重量%である、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
水素化スチレンジエンポリマーが、潤滑組成物の総重量との関係において、0.1~15重量%の量で使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
粒子排出物を削減することを目的とするエンジン潤滑組成物中における水素化スチレンジエンポリマーの使用。
【請求項10】
基油および水素化スチレンジエンポリマーを含む潤滑組成物の使用を含む、エンジン内の粒子排出物削減方法。
【請求項11】
前記潤滑組成物に対する水素化スチレンジエンポリマーの添加を含む、潤滑組成物で潤滑されるエンジン内の粒子排出物削減方法。
【請求項12】
粒子が23nm以上のサイズを有する、請求項1または8に記載の使用または請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
粒子排出物の削減が、WLTCおよび/または全WLTCにより定義された市街地、都市部周辺および道路タイプのサイクルに関連する、請求項1、8、11のいずれか一つに記載の使用もしくは請求項9または10に記載の方法。
【国際調査報告】