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特表2023-518483植物油から洗浄用製品を取得するための生成物、並びに、該生成物を取得するための方法および該生成物を使用するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】植物油から洗浄用製品を取得するための生成物、並びに、該生成物を取得するための方法および該生成物を使用するための方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 9/32 20060101AFI20230424BHJP
   C11D 9/14 20060101ALI20230424BHJP
   C11D 9/44 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
C11D9/32
C11D9/14
C11D9/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557091
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 ES2020070774
(87)【国際公開番号】W WO2021191478
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P202030237
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522371167
【氏名又は名称】サムサラプス,エス.エル.
【氏名又は名称原語表記】SAMSARAPPS,S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス フェルナンデス,セルジオ アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】バルファゴン コスタ,アルベルト
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003AB27
4H003BA01
4H003CA02
4H003DA05
4H003DA17
4H003EA08
4H003EB41
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA26
(57)【要約】
本発明の生成物は、使用されるべき生成物の量が最小限となるように油から石鹸への変換率を実質的に上昇させることにより、最小限のエネルギー使用と最大限の変換速度でもって、洗浄用製品の取得を可能にし、大体積の油を用いての製作を可能にするものである。この目的のために、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、重量%で以下の組成を含む、即ち:9~11%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、4.5~6%の無水リン酸三ナトリウムと、0.1~0.3%のステアリン酸ナトリウムと、0.5~0.7%のキサンタンガムと、任意選択で光沢剤および/または香料と、100%にするのに必要な量の水とを含む。
【選択図】(なし)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物油から洗浄用製品を取得するための生成物であって、重量%で以下の組成を含む、即ち:
9~11%の間のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、
4.5~6%の間の無水リン酸三ナトリウム、
0.1~0.3%の間のステアリン酸ナトリウム、
0.48~0.7%の間のキサンタンガム、
任意選択で、光沢剤および/または香料、並びに、
100%に達するのに必要な量の水、
を含む、ことを特徴とする生成物。
【請求項2】
無水リン酸三ナトリウムの含有量が4.5~5.5重量%の間である、請求項1に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物。
【請求項3】
キサンタンガムの含有量が0.58~0.68重量%の間である、請求項1~2のいずれか一項に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物。
【請求項4】
当該生成物が光沢剤および/または香料を含有しないとき、前記水の含有量は83~85%の間であり、当該生成物が光沢剤および/または香料を含有するとき、前記水の含有量は77~84%の間であり、但し、当該生成物の構成成分すべての合計が100%であることを前提とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物。
【請求項5】
重量%で以下の組成を含む、即ち:
83~85%の間の水と、
9~11%の間のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、
4.5~5.5%の間の無水リン酸三ナトリウムと、
0.15~0.17%の間のステアリン酸ナトリウムと、
0.58~0.68%の間のキサンタンガムと
を含むものであり、但し、当該生成物の構成成分すべての合計が100%になることを前提とする、請求項4に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物。
【請求項6】
香料を5%未満の重量パーセントで含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物。
【請求項7】
光沢剤を3%未満の重量パーセントで含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物。
【請求項8】
取得されるべき洗浄用製品の種類に応じて、洗浄用製品に、光沢剤および/または香料を4~5%の間の重量比で添加することができることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するための方法であって、当該方法は以下の操作工程を含む、即ち:
a)水を40~60℃の間の温度に加温する工程と、
b)キサンタンガムを、それが溶解するまで前記温度で撹拌しながら添加する工程と、
c)前記熱供給を中断する工程と、
d)ステアリン酸ナトリウムを撹拌しながら添加する工程と、
e)前記リン酸三ナトリウムを撹拌しながら添加する工程と、
f)SDSを撹拌しながら添加する工程と、
g)任意選択で、光沢剤および/または香料を添加する工程と、
h)室温に降温する工程と、
i)本プロセス中に蒸発した分の水の体積を添加する工程と
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記洗浄用製品を取得するための生成物が、芳香料および/または香料を含まない、請求項9に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するための方法。
【請求項11】
前記洗浄用製品を取得するための生成物が、芳香料および/または香料を含む、請求項9に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するための方法。
【請求項12】
50℃で実行される、請求項10~11のいずれか一項に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するための方法。
【請求項13】
植物油から洗浄用製品を取得するための方法であって、当該方法は以下の操作工程を含む、即ち:
a)90/127(油/生成物)ほどの重量比で、請求項1~8のいずれか一項に記載の生成物を室温で反応器に注ぎ入れる工程と、
b)対応する比率の油を激しく撹拌しながら注ぎ入れる工程と、
c)洗浄用製品を形成するのに必要な最小の時間にわたり激しく撹拌したままとする工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
工程c)の時間が10分である、請求項13に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための方法。
【請求項15】
光沢剤も香料も含有しない前記生成物が使用されると共に、
取得されるべき洗浄用製品の種類に応じて、工程c)の後、光沢剤を撹拌しながら添加すること、および/または、香料を撹拌しながら添加することを特徴とする、請求項13~14のいずれか一項に記載の植物油から洗浄用製品を取得するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照] 本願は、2020年3月23日出願のスペイン特許出願第P202030237号に基づく優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、有益かつ有効な形での再利用を可能とするために、植物油、好ましくは使用済の植物油から、石鹸、床用クリーナ、食器用洗剤、洗浄剤などの洗浄用製品を取得するように特別に設計された生成物、及び、この生成物を取得するための方法に関する。
【0003】
本発明の目的は、最小限のエネルギー使用をもって、使用対象となる生成物の量が最小限となるように油から石鹸への変換率を実質的に上昇させるのを可能にする手段を提供することである。
【0004】
本発明の別の目的は、このプロセスにて実行される変形速度を最大化することである。
【背景技術】
【0005】
ここ数年、手製の石鹸は、「Do it yourself(創作活動)」の流行の基本的な趣向およびその一部であると見なされてきており、その中で、個人向けで魅力的な独自のグリーン石鹸を作り出すための原材料として、使用済み植物油などの副産物を家庭で再利用できると同時に、数ユーロの購入費用を節約することができる。手製の石鹸は環境的側面の理由から社会的にも浸透しており、持続可能な有機生成物であることを考慮すると、この実施は必然的なものであり得る。平均的なスペイン人家庭では毎年平均10リットルの使用済み油が生じ、1リットルの油で1000リットルの水が汚染されることを念頭に置くと、この使用済み油を再利用することで、月に0.8mを超える水の汚染が止められる。
【0006】
鹸化は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または強塩基を使用して行われるが、これらの使用により、環境リスクと健康リスク(腐食、および有害気化物質の放出)が人々に及ぶおそれがあることが公知である。
【0007】
特許文献1にあるように、鹸化においてソーダとカリをリン酸のナトリウム塩に置き換えることも長きにわたり公知であるが、使用済み植物油とともに使用すると鹸化のパフォーマンスは制限され、その結果は望ましいものではない。
【0008】
特許文献2には、使用済み調理油から石鹸を取得するための方法が開示されている。この方法は、水酸化ナトリウムなどの強塩基を必要とせず、他の添加剤に加えてリン酸ナトリウムを構成成分とする製剤が使用されることから、消費者により容易に、高い安全性水準で実行することができる。この特許は、水および油と一体的に混合される固形生成物に関するものであり、石鹸を取得するには調理(cooking)が必要となる。
【0009】
特許文献3にも、使用済み植物油をリン酸ナトリウムで処理して鹸化するための方法が開示されている。この場合、石鹸を取得するには調理も必要となる。
【0010】
特許文献4には、天ぷら油から石鹸を製造するための組成物であって、数ある成分の中でもキサンタンガムを使用する組成物が開示されている。特許文献5には、ステアリン酸ナトリウムを構成成分とする美容石鹸が開示されている。
【0011】
上述の課題を回避する試みとして、本出願人が発明特許の所有者(特許権者)である特許文献6には、非毒性植物油を処理するための製剤が記載されており、石鹸を取得するための方法において油と鹸化製剤の混合物を加温する必要はないとされている。
【0012】
このようにして、混合物の加温の必要性、および調理中に放出される可能性のあるガスを回避することで、ユーザによる石鹸の取得は従来よりも明らかに容易となり、こうして家庭レベルでの管理がさらに容易となり、石鹸を使用しても人々の健康にいかなるリスクも生じない。
【0013】
しかし、この生成物には、改善が望まれるであろう多くの制限があり、その中でも言及すべき制限は以下である:
・処理対象となる植物油の体積に対して、使用対象となる生成物または製剤の比率が高く、これに関連して経済的コストが生じるため、変換率を上昇させることが望ましい。
・変形速度(変換速度)が遅い。
・体積の少ない植物油しか処理することができないため、2リットルを超える体積の石鹸を取得することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】スペイン特許第0184980号明細書
【特許文献2】米国特許第4806269号明細書
【特許文献3】旧ソ連特許第878779号明細書
【特許文献4】特開平06-322397号公報
【特許文献5】中国特許公開第101130719号明細書
【特許文献6】スペイン特許出願第P201730021号(スペイン特許第2650446号(B2)公報)
【発明の概要】
【0015】
本願に開示される、植物油から石鹸を取得するための方法および生成物は、上述の課題を十分に満足のいく形で解決して、生成物のパフォーマンス(油から石鹸への変換率)を実質的に上昇させ、体積の多い油の処理を可能とするものであり、これらはすべて、生産時間を最小限にするとともに室温で行うプロセスにて行われるものであり、運搬と包装の使用におけるコストと汚染が削減されるという点で産業レベルでの重要な利点を伴う。
【0016】
この製剤と、スペイン特許第2650446号明細書に記載の製剤との違いは、製剤が濃縮されているという事実以外に、リン酸ナトリウムの代わりに無水リン酸三ナトリウムと、より高いパーセントのキサンタンガムとをさらに含有するという点にもある。本発明者らが見出したところでは、製剤におけるこのような変更が石鹸の洗浄力パフォーマンスに多大な影響を及ぼすため、本発明の生成物は、使用済み油を、水酸化ナトリウムを用いて取得される石鹸に匹敵する効率の石鹸に変換することが可能である。実施例に例示されるように、本発明の製剤の洗浄力は、スペイン特許第2650446号明細書の実施例にある製剤により取得される洗浄力よりもはるかに大きい。
【0017】
本発明の生成物と方法の目的は、処理対象となる体積の少ない油と多い油の両方に対して区別なく適用可能である。
【0018】
従って、本発明の第1の態様は、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物であって、重量%で以下の組成物(を含む)、即ち:
9~11%の間のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、
4.5~6%の間の無水リン酸三ナトリウムと、
0.1~0.3%の間のステアリン酸ナトリウムと、
0.5~0.7%の間のキサンタンガム(Xanthan gum)と、
任意選択で光沢剤および/または香料と、
100%に達するのに必要な量の水と、
を含むことを特徴とする生成物に関する。
【0019】
指摘すべき重要なこととして、この製剤は、石鹸、床用クリーナ、食器用洗剤、洗浄剤などの様々な種類の洗浄用製品を取得する際に適用可能なものであり、この製剤には、特異的に意図した用途に応じて光沢剤および/または香料を添加することができ、これら構成成分はともに前述の生成物に添加することができ、あるいは、前述の生成物が光沢剤および/または香料を有していない場合、これら構成成分は、香料および/または光沢剤を含有していない生成物から洗浄用製品を調製する際に添加することができる。
【0020】
本発明の別の態様は、上記に規定される植物油から洗浄用製品を取得するための方法であって、以下の操作工程を含む、即ち:
a)水を40~60℃の間の温度に加温する工程と、
b)キサンタンガム(Xanthan gum)を、それが溶解するまで前述の温度で撹拌しながら添加する工程と、
c)熱供給を中断する工程と、
d)ステアリン酸ナトリウムを撹拌しながら添加する工程と、
e)リン酸三ナトリウムを撹拌しながら添加する工程と、
f)SDSを撹拌しながら添加する工程と、
g)任意選択で、光沢剤および/または香料を添加する工程と、
h)室温に降温する工程と、
i)本プロセス中に蒸発した分の水の体積を添加する工程と
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0021】
この製剤から、90/127=0.71の油/製剤の比で変換比を実質的に増加させることが可能であり、この値は製剤の最大変換限界であるが、この値を下回る比率すべてに対して高効率を呈する。
【0022】
最後に、本発明の別の態様は、植物油から洗浄用製品を取得するための方法であって、以下の操作工程を含む、即ち:
a)およそ90/127(油/生成物)の重量比で、上記に規定される洗浄用製品を取得するための生成物を室温で反応器に注ぎ入れる工程と、
b)対応する比率の油を激しく撹拌しながら注ぎ入れる工程と、
c)得られた生成物を、洗浄用製品を形成するのに必要な最小時間にわたり激しく撹拌しながら放置する(激しく撹拌したままとする)工程と、
を含むことを特徴とする方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上述のように、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、重量%で以下の組成物を含む、即ち:
9~11%の間のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、
4.5~6%の間の無水リン酸三ナトリウムと、
0.1~0.3%の間のステアリン酸ナトリウムと、
0.5~0.7%の間のキサンタンガムと、
任意選択で、総量が4~5%の間の光沢剤および/または香料と、
100%に達するのに必要な量の水と、
を含む。
【0024】
特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、無水リン酸三ナトリウムの含有量が4.5~5.5重量%の間である生成物である。別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、無水リン酸三ナトリウムの含有量が5.0~5.5重量%の間である生成物である。
【0025】
別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、キサンタンガムの含有量が0.5~0.7重量%の間である生成物である。別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、キサンタンガムの含有量が0.58~0.68重量%の間である生成物である。別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、キサンタンガムの含有量が0.65~0.68重量%の間である生成物である。
【0026】
別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、光沢剤および/または香料を含有せず、水の含有量は83~85%の間であるが、製剤の構成成分すべての合計が100%であることを前提とする。
【0027】
別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、光沢剤および/または香料を含有し、水の含有量は77~84%の間であるが、製剤の構成成分すべての合計が100%であることを前提とする。
【0028】
別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、重量%で以下の組成物を有する、即ち:
83~85%の間の水と、
9~11%の間のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、
4.5~5.5%の間の無水リン酸三ナトリウムと、
0.15~0.17%の間のステアリン酸ナトリウムと、
0.58~0.68%の間のキサンタンガムと
を有するが、製剤の構成成分すべての合計が100%に等しいことを前提とする。
【0029】
別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、香料を5%未満の重量パーセントで含有する生成物である。特定の実施形態では、香料の重量パーセントは3.0~4.7%の間である。
【0030】
別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、光沢剤を3%未満の重量パーセントで含有する生成物である。特定の実施形態では、光沢剤の重量パーセントは1.5~2.5%の間である。
【0031】
別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物は、取得対象となる洗浄用製品の種類に応じて、その洗浄用製品に、光沢剤および/または香料を4~5%の間の重量比で添加することができることを特徴とする生成物である。
【0032】
前述したように、上記に規定される植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するための方法は、本発明の一部であり、(当該方法は)以下の操作工程を含む、すなわち:
a)水を40~60℃の間の温度に加温する工程と、b)キサンタンガムを、それが溶解するまで前述の温度で撹拌しながら添加する工程と、c)熱供給を中断する工程と、d)ステアリン酸ナトリウムを撹拌しながら添加する工程と、e)リン酸三ナトリウムを撹拌しながら添加する工程と、f)SDSを撹拌しながら添加する工程と、g)任意選択で光沢剤および/または香料を添加する工程と、h)室温に降温する工程と、i)本プロセス中に蒸発した分の水の体積を添加する工程と、を含むことを特徴とする。
【0033】
工程h)を実行するために、工程g)の生成物を秤量し、本プロセスで蒸発した分の水の体積を添加することができる。その後、生成物は保存される。
【0034】
特定の実施形態では、上記に規定される植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するための方法は、上記で示した工程からなる方法である。
【0035】
特定の実施形態では、上記に規定される植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するための方法は、芳香料および/または香料を添加することなく実行される。
【0036】
別の特定の実施形態では、上記に規定される植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するための方法は、芳香料および/または香料を添加することにより実行される。
【0037】
別の特定の実施形態では、上記に規定される植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するための方法は、50℃で実行される。
【0038】
それゆえ、特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するには、水を50℃に加温し、キサンタンガムを、それが溶解するまで撹拌しながら添加し、熱供給を中断した時点で、ステアリン酸ナトリウムを撹拌しながら添加し、リン酸三ナトリウムを撹拌しながら添加し、SDSを撹拌しながら添加し、室温に降温する。その後、最終生成物を秤量し、本プロセス中に蒸発した分の水の体積を添加した後、最終生成物の保存に進む。
【0039】
別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための生成物を取得するには、水を50℃に加温し、キサンタンガムを、それが溶解するまで撹拌しながら添加し、熱供給を中断した時点で、ステアリン酸ナトリウムを撹拌しながら添加し、リン酸三ナトリウムを撹拌しながら添加し、SDSを撹拌しながら添加し、芳香料および/または光沢剤を撹拌しながら添加し、室温に降温する。その後、最終生成物を秤量し、本プロセス中に蒸発した分の水の体積を添加した後、最終生成物の保存に進む。
【0040】
上記の生成物または製剤は、再利用対象となる植物油と上述の比率で混合されて撹拌プロセスにかけられ、そうすると入熱を必要とすることなく変換プロセスが加速して濃縮石鹸が取得され、この石鹸に対しユーザは、個々の場合の特異的な必要性に応じて水を自身の好みで添加することができる。
【0041】
そのため、植物油から洗浄用製品を取得するための方法は、本発明の一部であり、以下の操作工程を含む、即ち:
a)およそ90/127(油/生成物)の重量比で、上記に規定される洗浄用製品を取得するための生成物を室温で反応器に注ぎ入れる工程と、b)対応する比率の油を激しく撹拌しながら注ぎ入れる工程と、c)得られた生成物を、洗浄用製品を形成するのに必要な最小時間にわたり激しく撹拌しながら放置する(激しく撹拌したままとする)工程とを含むことを特徴とする。
【0042】
特定の実施形態では、上記に規定される植物油から洗浄用製品を取得するための方法は、上記で示した工程からなる方法である。
【0043】
別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための方法は、光沢剤も香料も含有しない生成物が使用され、取得を意図される洗浄用製品の種類に応じて、工程c)の後、光沢剤が撹拌しながら添加され、および/または香料が撹拌しながら添加されることを特徴とする。
【0044】
無水リン酸三ナトリウムを使用すると、油を石鹸に変形させるプロセスの効率が上昇し、製剤に使用する水の体積が減少し、そうして、想定される撹拌プロセスとともに、体積がより多い油を処理することがさらに容易となり、反応率が上昇するが、上述のように、洗浄用製品を取得後、この洗浄用製品を水で希釈する必要がある。
【0045】
別の特定の実施形態では、植物油から洗浄用製品を取得するための方法は、工程c)の時間が、0.5´(0.5分)~30´(30分)の間、好ましくは10´(10分)である方法である。
【0046】
このように記載したプロセスの反応時間は、従来体積の油を用いて製作を行うときにおよそ20~30秒、すなわち、体積の多い油を用いて製作を行う場合に実質的に増加しない時間である。それにもかかわらず、この新規な製剤では、プロペラ撹拌器により乱流下で自動撹拌を行うことで、数秒、すなわちほぼ瞬時に変形を生じさせることが可能となる。
【0047】
本明細書に記載の製剤は、持続性に優れ、芳香料を非アレルギー性のもので代替することに加え、完成品の石鹸をいかなる芳香料も含まないものとする中和剤を有していることから、顧客は自身が望む独特の香りを提供することが可能になる。
【0048】
上記製剤は、一般的に3~10重量%の間の量で、消臭化合物などの他の構成成分を含有してもよい。この化合物は、石鹸を取得するのに使用される濃縮生成物に添加することができ、または、石鹸の調製中、具体的には濃縮製剤を油と混合させる前に添加することができ、あるいは、石鹸を調製した後に添加することができる。
【0049】
本明細書と特許請求の範囲の全体において、「含む(comprises)」という語、およびその変形は、他の技術的特徴、添加物、構成成分、または工程を排除することを意図するものではない。更に、「含む」という語は「からなる(consist of)」の場合を包含する。当業者であれば、本発明の他の目的、利点、および特徴を、本発明の説明と実施形態の両方から部分的に推定する場合がある。以下の実施例は、例示として提供されるものであり、本発明の限定を意図するものではない。さらに、本発明は、本明細書に示される特定の好ましい実施形態において考えられ得る組合せをすべて網羅する。
【実施例
【0050】
様々な製剤、並びに、製剤を製造する方法および石鹸を取得する方法を、以下に開示する。構成成分のパーセントは、組成物の総重量に対する重量によるものである。
【0051】
比較例1:本発明よりも希釈されている生成物から石鹸200リットルの調製
【0052】
この調製は、以下の構成成分に基づく:
・水(85.3%) 117.7kg(液体)
・SDS(6.4%) 8.8kg(固体)
・リン酸三ナトリウム(3.2%) 4.4kg(固体)
・ステアリン酸ナトリウム(0.1%) 0.14kg(固体)
・キサンタンガム(0.4%) 0.55kg(固体)
【0053】
以下の構成成分は、石鹸の調製中に添加する:
・香料(3%) 4.2kg(液体)
・光沢剤(1.6%) 2.21kg(液体)
・油62リットル(液体)
【0054】
生成物の調製方法。
1-水を50℃に加温する。
2-水を50℃に保温し、キサンタンガムを、それが溶解するまで撹拌しながら添加する。
3-加温を止め、残りの構成成分を添加する。
4-ステアリン酸ナトリウムを撹拌しながら添加する。
5-リン酸三ナトリウムを撹拌しながら添加する。
6-SDSを撹拌しながら添加する。
7-室温に降温する。
8-最終生成物を秤量し、蒸発した分の水を最終131.59キロ(kg)に達するまで添加する。
9-生成物を保存する。
【0055】
石鹸を取得するための方法。
1-室温で、調製生成物131.59キロを反応器に注ぎ入れる。
2-油62リットルを激しく撹拌しながら注ぐ。
3-得られた生成物を激しく撹拌しながら10分間攪拌したままとする。
4-光沢剤を撹拌しながら添加する。
5-香料を撹拌しながら添加する。
6-生成物を保存する。
【0056】
油/製剤の比:62/138=0.45
【0057】
実施例2:本発明による洗浄用製品(石鹸200リットル)を取得するための生成物の調製
【0058】
この調製は、以下の構成成分に基づく:
・水(83%) 67.7kg(液体)
・SDS(10.8%) 8.8kg(固体)
・リン酸三ナトリウム(5.4%) 4.4kg(固体)
・ステアリン酸ナトリウム(0.17%) 0.14kg(固体)
・キサンタンガム(0.67%) 0.55kg(固体)
濃縮生成物の合計:81.59kg
【0059】
以下の成分は、石鹸の調製中に添加する:
・香料(3%) 4.2kg(液体)
・光沢剤(1.6%) 2.21kg(液体)
・油62リットル(液体)。
【0060】
濃縮生成物(81.59キロ(kg))の調製方法
1-水を50℃に加温する。
2-水を50℃に保温し、キサンタンガムを、それが溶解するまで撹拌しながら添加する。
3-加温を止め、残りの構成成分を添加する。
4-ステアリン酸ナトリウムを撹拌しながら添加する。
5-リン酸三ナトリウムを撹拌しながら添加する。
6-SDSを撹拌しながら添加する。
7-室温に降温する。
8-最終生成物を秤量し、蒸発した分の水を最終81.59キロに達するまで添加する。
9-生成物を保存する。
【0061】
石鹸を取得するための方法:
1-室温で、濃縮生成物81.59キロを反応器に注ぎ入れる。
2-油62リットルを激しく撹拌しながら注ぐ。
3-得られた生成物を激しく撹拌しながら10分間攪拌したままとする。
4-光沢剤を撹拌しながら添加する。
5-香料を撹拌しながら添加する。
6-生成物を保存する。
【0062】
油/製剤の比:62/88=0.71
【0063】
濃縮石鹸(150リットル)を取得した後、使用前に、石鹸の正しい機能を取得するために水を添加する必要がある。添加する水の量は、濃縮石鹸3リットルにつき水1リットルである(濃縮石鹸が150リットルの場合、水50リットルを添加する必要があり、こうして合計200リットルの石鹸が得られる)。
【0064】
実施例3:本発明による洗浄用製品を取得するための生成物の調製
【0065】
この調製は、以下の構成成分に基づく:
・水(84.2%):36.88g(液体)
・SDS(10%):4.38g(固体)
・リン酸三ナトリウム(5.0%) 2.19g(固体)
・ステアリン酸ナトリウム(0.2%) 0.09g(固体)
・キサンタンガム(0.6%) 0.26g(固体)
濃縮生成物の合計:43.8g
この生成物は、実施例2に記載したものと同じ方法で調製される。
【0066】
石鹸の調製方法:
1-必要量の濃縮生成物を反応器に注ぎ入れる。
2-激しく撹拌を行う。
3-油を反応器に注ぎ入れ、室温で5分間撹拌しながら維持する。濃縮石鹸を取得する。
4-次いで、撹拌を維持しつつ、完成品の石鹸を取得するのに必要な量の水を添加する。
5-生成物を静置し、包装する。
【0067】
油/濃縮生成物の比は0.71である。
【0068】
使用前に、取得した石鹸に水25.1gを添加する。添加した水と取得した濃縮石鹸との比は、次のとおり、添加した水/濃縮石鹸:0.335である。
【0069】
実施例4:本発明による洗浄用製品を取得するための濃縮生成物から石鹸の調製
【0070】
この調製は、以下の構成成分に基づく:
・水(77%):36.88g(液体)
・SDS(10%):4.38g(固体)
・無水リン酸三ナトリウム(5.0%) 2.19g(固体)
・ステアリン酸ナトリウム(0.2%) 0.09g(固体)
・キサンタンガム(0.6%) 0.26g(固体)
濃縮生成物の合計:43.8g
【0071】
以下の成分は、石鹸の調製中に添加する:
・香料(4.7%)
・光沢剤(2.5%)
・油:31.1g
【0072】
石鹸を調製するための生成物、および石鹸は、実施例3に記載したものと同じ方法で調製される。
【0073】
実施例5:光沢剤を含む、本発明による洗浄用製品を取得するための濃縮生成物の調製
【0074】
この調製は、以下の構成成分とパーセントに基づく:
・水(81.7%)
・SDS(10%)
・無水リン酸三ナトリウム(5.0%)
・ステアリン酸ナトリウム(0.2%)
・キサンタンガム(0.6%)
・市販の光沢剤(2.5%)
【0075】
実施例6:芳香料を含む、本発明による洗浄用製品を取得するための濃縮生成物の調製
【0076】
この調製は、以下の構成成分とパーセントに基づく:
・水(79.5%)
・SDS(10%)
・無水リン酸三ナトリウム(5.0%)
・ステアリン酸ナトリウム(0.2%)
・キサンタンガム(0.6%)
・芳香料(4.7%)
【0077】
実施例7:本発明に従う様々な製剤と比較対象の製剤とにおける洗浄力の比較
【0078】
石鹸を調製するための生成物、および石鹸は、実施例3に記載したものと同じ方法で調製される。この調製は、以下の構成成分とパーセントに基づく:
【0079】
実施例7a キサンタンガム0.67%を含む場合
・水(83%)
・SDS(10.80%)
・無水リン酸三ナトリウム(5.40%)
・ステアリン酸ナトリウム(0.17%)
・キサンタンガム(0.67%)
【0080】
実施例7b キサンタンガム0.57%を含む場合
・水(83.10%)
・SDS(10.80%)
・無水リン酸三ナトリウム(5.40%)
・ステアリン酸ナトリウム(0.17%)
・キサンタンガム(0.57%)
【0081】
実施例7c キサンタンガム0.47%を含む場合
・水(83.20%)
・SDS(10.80%)
・無水リン酸三ナトリウム(5.40%)
・ステアリン酸ナトリウム(0.17%)
・キサンタンガム(0.47%)
【0082】
比較例7d(前述の実施例7cと同じであるが、リン酸一ナトリウムが含まれる)
・水(83.20%)
・SDS(10.80%)
・リン酸一ナトリウム(5.40%)
・ステアリン酸ナトリウム(0.17%)
・キサンタンガム(0.47%)
【0083】
例7d(濃縮製剤)は、スペイン特許第2650446号(B2)にある製剤に相当するが、水の量は減らされており、そのため、残りの構成成分が濃縮されている。石鹸を形成した後、使用前に水で希釈する必要があることを考慮すると、希釈後に洗浄力を評価した石鹸の希釈条件は、スペイン特許第2650446号(B2)にある実施例に記載のものと同じであり、具体的には、キサンタンガムのパーセントが0.2%である。
【0084】
パフォーマンスは、石鹸の洗浄力(溶解可能な油の体積)から算出される。そのため、パフォーマンスは、取得した石鹸によりどの程度の油を溶解できるかについて試験を行うことにより判定される。この判定は、ソーダを用いて取得した石鹸、すなわち最大量の油を溶解する石鹸(基準石鹸)による100%のパフォーマンス(洗浄力)に基づく。例えば、98%のパフォーマンスは、ソーダから取得した石鹸により溶解されるであろう油の98%を溶解することを意味する。
【0085】
ソーダを用いて取得した石鹸の洗浄力(基準):100%
比較例7dの製剤を用いて取得した石鹸の洗浄力パフォーマンス:47.5%
実施例7cの製剤を用いて取得した石鹸の洗浄力パフォーマンス:91.5%
実施例7bの製剤を用いて取得した石鹸の洗浄力パフォーマンス:93.2%
実施例7aの製剤を用いて取得した石鹸の洗浄力パフォーマンス:98.3%
【0086】
これらの結果が示すところでは、リン酸塩の変更による効果と様々なパーセントのキサンタンガムによる効果に起因して、パフォーマンスは、比較例7dの製剤(スペイン特許第2650446号(B2)にある実施例に相当)で47.5%であったのが90%超となり、本発明の製剤では98.3%にも達している。
【0087】
リン酸一ナトリウムを無水リン酸三ナトリウムに変更したときの効果を、比較例7d(リン酸一ナトリウム)と本発明の実施例7c(無水リン酸三ナトリウム)とを比較することにより例示する。鹸化のパフォーマンスは、47.5%から91.5%になる。
【0088】
キサンタンガムのパーセントによる効果を、本発明の実施例により例示する。主張された量では、鹸化のパフォーマンスは93%を超えるが、キサンタンガムの量を0.67%としたときはさらに98.30%に達する。
【0089】
同様に、本発明の製剤中のキサンタンガムのパーセントでは、製剤中の安定性も上昇する。そのため、比較例7dの製剤の安定性は数日間持続するが、一方で実施例7aの製剤を用いて調製した石鹸の安定性は数か月間持続する。
【0090】
[引用した文献のリスト]
特許文献:
ES0184980
US4806269A
SU878779B
JPH06322397
CN101130719
P201730021
【国際調査報告】