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特表2023-518513水簸による廃水からの一定サイズの栄養分回収のための方法及び装置
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  • 特表-水簸による廃水からの一定サイズの栄養分回収のための方法及び装置 図1
  • 特表-水簸による廃水からの一定サイズの栄養分回収のための方法及び装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】水簸による廃水からの一定サイズの栄養分回収のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20230101AFI20230424BHJP
【FI】
C02F1/58 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557693
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 CA2021050395
(87)【国際公開番号】W WO2021189148
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】16/832,507
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522373183
【氏名又は名称】ロバノフ セルゲイ
【氏名又は名称原語表記】LOBANOV Sergey
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ロバノフ セルゲイ
【テーマコード(参考)】
4D038
【Fターム(参考)】
4D038AA08
4D038AB24
4D038AB28
4D038AB43
4D038AB48
4D038AB81
4D038AB90
4D038BA02
4D038BA06
4D038BB13
4D038BB17
4D038BB18
(57)【要約】
水簸によって一定サイズの沈殿物の形態で、廃水流から溶存種を回収するための方法及び装置が提供される。これらの方法は例えば、回収される一定サイズの固体が、ストルバイトのような、比較的溶けにくい植物栄養分の形態になるように制御することができる。抽出される栄養分は例えばリン、及び/又は窒素、及び/又はカリウムの固体種を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶存窒素及び/又は溶存リン及び/又は溶存カリウム種を含む溶存種を、水性流入流から除去するための方法であって、
前記水性流入流を複数の反応器流入流に分離し、前記複数の反応器流入流を上向きに反応器容器内の反応管セグメントの基部内へ向けて、それにより前記反応管内に上向き乱流を生み出すステップと、
前記反応管内で維持される条件下で前記反応管の前記基部内へ沈殿剤を注入して、それにより前記溶存種と反応する前記沈殿剤の反応生成物の過飽和濃度を提供し、前記反応生成物について少なくとも2の飽和指数を提供するステップであって、前記反応生成物が、上向き反応管流体流に取り込まれる固体沈殿剤種を形成する、前記ステップと、
前記上向き反応管流体流を前記反応器の隣接する浄化器セグメントに向けるステップであって、前記反応器の前記浄化器セグメントが、前記上向き反応管流体流の上向き流量を減少させるような寸法である、前記ステップと、取り込まれた固体沈殿剤種が前記反応器の前記浄化器セグメント内で下降して前記反応管に戻る一方、浄化排出流体流が前記反応器の前記浄化器セグメントから上向きに流れ続けることが可能になるよう、前記浄化器内の上向き浄化流体流量を維持するステップと、
前記沈殿剤種の漸進的な凝集を可能にして凝集顆粒を形成し、その大きさ及び密度が、前記上向き乱流反応管流体流の存在下で前記凝集顆粒を前記反応管の前記基部に向かって沈降させるのに十分である前記反応器内の条件を維持するステップと、
前記反応管の前記基部と流体連通する流路を通して上向き流路流体流を注入するステップであって、前記流路が、選択された大きさ及び密度の凝集顆粒が前記流路を通って下降する一方、非選択の沈殿剤種を上向きに前記反応管に戻すことが可能になるよう、前記上向き流路流体流の計量が可能になるような寸法であり、これによって、一定サイズの固体顆粒生成物の沈降体積を収容するような大きさである隣接するペレットホッパ内へ前記流路を通って下降する、前記一定サイズの固体顆粒生成物を水簸によって分離する、前記ステップと
を含む、
前記方法。
【請求項2】
流路内の上向き流路流体流を周期的に制限し、ホッパの内容物を下向きに放出して、所望の固体顆粒生成物を収集するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
浄化流体流の一部を浄化器からホッパへ再循環させて、流路を通る上向き流路流体流を仲介するステップをさらに含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
流路内の上向き流路流体流を仲介する上向きホッパ流体流をホッパ内に提供するステップと、前記ホッパを、前記上向きホッパ流体流が前記上向き流路流体流よりも少なくなるような大きさにするステップとをさらに含む、
請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
反応管と流体連通するマニホールド内で水性流入流を複数の反応器流入流に分離するステップをさらに含む、
請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
沈殿剤が、アルカリ、マグネシウム塩、MgCl、MgSO、MgO、Mg(OH)、マグネサイト、ブルーサイト、燃焼ボトムアッシュ又はフライアッシュを含む、
請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
所望の固体顆粒生成物が、ストルバイト、K-ストルバイト、リン酸カルシウムアンモニウムCaNHPO、及び/又はヒドロキシアパタイトCa(PO(OH)、ブルシャイトCaHPO・2HO、ニューベリアイトMgHPO・3HO、及び/又はリン酸マグネシウムMg(PO、のうちの1又は2以上を含む、
請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
流入流が、重量で1%、2%、3%、4%、又は5%までの懸濁固体を含み、前記流入流中の前記懸濁固体の50~95%が反応器を通過して浄化排出流体流に至ってもよい、
請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
流路が平均流路断面積CXareaを有し、ペレットホッパが平均ペレットホッパ断面積PHXareaを有し、反応管が平均管断面積RCXareaを有し、CXarea<PHXarea、及びCXarea<RCXareaである、
請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
一定サイズの固体顆粒生成物をふるい上で収集するステップと、前記一定サイズの固体顆粒生成物を前記ふるい上でさらに洗浄する任意のステップと、前記一定サイズの固体顆粒生成物を前記ふるい上で乾燥させる任意のステップと、をさらに含む、
請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
所望の固体顆粒生成物の純度が少なくとも70%、75%、80%、90%、又は95%である、
請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
上向き流路流体流量が、上向き反応管流体流量の約10%、任意で5~50%の範囲に維持される、
請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
反応生成物についての反応管の基部での初期飽和指数SIが、2.0~3.0の範囲、任意で約2.5に維持される、
請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
上向き反応管流体流量が、20~80cm/分の間、任意で約50cm/分に維持される、
請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
反応管内の水理学的滞留時間が、1~10分の間、任意で2~5分の間に維持される、
請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
上向き浄化流体流量が、約1~5cm/分の間、任意で約2cm/分に維持される、
請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
浄化器が錐台形浄化器であり、前記錐台形浄化器が、約45~85°、任意で約60~70°の傾斜角を有する傾斜壁を含んでもよい、
請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
浄化排出流体流を提供する水性流入流からの溶存種のうちの1又は2以上の除去が、少なくとも60%、70%、80%、又は89%である、
請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
一定サイズの固体顆粒生成物が平均生成物サイズを有し、前記平均生成物サイズが約1~2mmである、
請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
一定サイズの固体顆粒生成物が、少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は96%の生成物純度を有する、
請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
溶存窒素及び/又は溶存リン及び/又は溶存カリウム種を含む溶存種を、水性流入流から除去するように動作可能な反応器システムであって、
水性流入流を複数の反応器流入流に分離するマニホールドであって、前記マニホールドと流体連通する反応器容器内の反応管セグメントの基部内へ上向きに前記複数の反応器流入流を向けて、それにより前記反応管内に上向き乱流を生み出す、前記マニホールドと、
前記反応管内の条件を維持するように適合された反応器システムコントロールの制御下で前記反応管の前記基部内へ沈殿剤を注入するように適合された、前記反応管の前記基部と流体連通する沈殿剤入口ポートであって、それにより前記溶存種と反応する前記沈殿剤の反応生成物の過飽和濃度を提供し、前記反応生成物について少なくとも2の飽和指数を提供し、前記反応生成物が、上向き反応管流体流に取り込まれる固体沈殿剤種を形成する、前記沈殿剤入口ポートと、
前記反応セグメントと上向きに隣接する、前記反応器の浄化器セグメントであって、取り込まれた固体沈殿剤種が前記反応器の前記浄化器セグメント内で下降して前記反応管に戻る一方、浄化排出流体流が前記反応器の前記浄化器セグメントから上向きに流れ続けることが可能になるよう、前記浄化器内の上向き浄化流体流量を維持するように動作可能な浄化器システムコントロールの制御下で、前記反応セグメントに対して、前記反応セグメントから前記浄化器内へ向けられる上向き反応管流体流の上向き流量を減少させるような寸法である、前記反応器の前記浄化器セグメントとを備え、
前記反応器システムコントロールが、前記沈殿剤種の漸進的な凝集を可能にして凝集顆粒を形成し、その大きさ及び密度が、前記上向き乱流反応管流体流の存在下で前記凝集顆粒を前記反応管の前記基部に向かって沈降させるのに十分である前記反応器内の条件を維持するように動作可能であり、
前記反応器システムがさらに、
流路を通して前記反応管の前記基部内へ上向き流路流体流を提供する流路流体源を有する、前記反応管の前記基部と流体連通する流路であって、選択された大きさ及び密度の凝集顆粒が前記流路を通って下降する一方、非選択の沈殿剤種を上向きに前記反応管に戻すことが可能になるよう、前記上向き流路流体流の計量が可能になるような寸法であり、これによって、一定サイズの固体顆粒生成物の沈降体積を収容するような大きさである隣接するペレットホッパ内へ前記流路を通って下降する、前記一定サイズの固体顆粒生成物を水簸によって分離する、前記流路
を備える、
前記反応器システム。
【請求項22】
加圧水性流入流を提供するためにマニホールドの上流に取水ポンプをさらに備える、
請求項21に記載の反応器システム。
【請求項23】
浄化排出流体流を収集するように構成された浄化器上のジャケットをさらに備える、
請求項21又は22に記載の反応器システム。
【請求項24】
複数の反応器流入流を上向きに反応管の基部内へと向ける注入ノズルをさらに備え、前記注入ノズルが前記反応管の底部の上方に上昇していてもよく、少なくとも2、3、4、5、又は6の注入ノズルがあってもよく、前記注入ノズルが前記反応管の前記基部での断面積全体にほぼ均一に分布していてもよく、5~15m/sの間、又は約10m/sの表面上昇流速度が各ノズル内部で提供されてもよい、
請求項21~23のいずれかに記載の反応器システム。
【請求項25】
水性流入流がマニホールドに入る前の前記水性流入流に配置されたスクリーンをさらに備え、前記スクリーンが注入ノズルの直径よりも小さなメッシュを有してもよい、
請求項21~24のいずれかに記載の反応器システム。
【請求項26】
沈殿剤が注入ノズルに近接して投入される、
請求項21~25のいずれかに記載の反応器システム。
【請求項27】
請求項1~20のいずれかに記載の方法を実行する際に使用するための、
請求項21~26のいずれかに記載の反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
廃水から溶存種を一定サイズの沈殿物として除去するための方法及び装置を含む、水性化学の分野における技術革新が開示されている。
【背景技術】
【0002】
溶存リン、窒素、及びカリウム種が、しばしば廃水、特に農業起源の廃水に排出される。これは、藻類及び他の生物の水中での成長を促進するという有害な影響を与える可能性があり、これはひいては自然の水域の環境に有害な富栄養化につながる可能性がある。この栄養サイクルの逆の構成要素は、農業における肥料としてのリン、窒素、及びカリウム種の計量使用を伴う。したがって、廃水から肥料への栄養分の効果的なリサイクルの必要が満たされていない。
【0003】
結晶化プロセスに基づく多くの栄養分回収技術が存在する。これらの技術のいくつかは、リン及び他の栄養分を、ストルバイト、リン酸カルシウム、又は他の難溶性化合物のいずれかとして、微細結晶又は粉末の形態で抽出する。これにより、廃水及び他の懸濁固体からの回収生成物の分離に問題が生じる。微細材料は、脱水、乾燥、及び処理が難しく、コストがかかることがある。粉末として回収された物質の多くは、肥料として使用することができる前にさらに処理する必要がある。したがって、後で使用するのに便利な物理的形態で貴重な材料を廃水から回収するための代替プロセスが依然として求められている。
【0004】
ストルバイトのようないくつかの難溶性リン酸化合物は、溶解度が比較的低いため、効果的な徐放性肥料である。これは、リン酸モノアンモニウム及び二アンモニウムのような、典型的な水溶性肥料とは対照的であり、これらは作物によって部分的に吸収され得るのみである一方、このような肥料のかなりの部分が土壌から環境内へ洗い流される可能性がある。ストルバイトは非常にゆっくりと溶解し、これによって土壌からの栄養分の損失を改善し、植物に効果的な栄養を提供する。このような肥料は溶解度が比較的低く、より水に溶けやすい肥料によって引き起こされる可能性のある高塩分によって植物の根が「やけど」するのを防止することにも役立つ。多くの農業、都市、及び産業廃水流は、大量の栄養分、特にリン及び窒素を含むため、ストルバイトがこれらの廃棄物の流れから回収される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ストルバイト及び他のリン酸化合物の形態で廃棄物の流れからリンを回収するための多くのプロセスがある。多くの既存のストルバイト回収プロセスは、乾燥させて不純物から分離するのが非常に難しい小さな粉末状の粒子の形態でこれを抽出し、これは最終的な肥料製品にとって重大な欠点である。したがって、廃水及び他の不純物から容易に分離することができ、容易に乾燥、輸送、及び保管することもできる、小さな顆粒又はペレットの形態の高品質ストルバイト肥料製品を製造することができるプロセスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一定サイズの沈殿物の形態で、廃水流から溶存種を回収するための方法及び装置が開示されている。例えば、溶存種を水性流入流から除去するための方法が提供され、溶存種は溶存窒素及び/又は溶存リン及び/又は溶存カリウム種を含む。これらの方法は、反応器内へ向けられる流れに水性流入を分離するステップを含むことができ、沈殿剤も反応器内へ注入される。沈殿剤は例えば別個の材料流で、例えば固体又は液体として提供することができ、又は沈殿剤は水性流入流のうちの1又は2以上に存在することができる。
【0007】
水性流入流は、例えば反応管と流体連通するマニホールド内で、例えば複数の反応器流入流に分離することができる。複数の反応器流入流は、反応器容器内の反応管セグメントの基部内へと上向きに向けて、反応管内に上向き乱流を生み出すことができる。
【0008】
例えば反応管内で維持される条件下で、反応管の基部内へ沈殿剤を注入して、溶存種と反応する沈殿剤の反応生成物の過飽和濃度を提供することもできる。沈殿剤(例えば固体又は液体のいずれか)は例えば、アルカリ(苛性ソーダ、苛性カリ、灰汁、アンモニア)、マグネシウム塩(MgCl、MgSO、MgO、Mg(OH))、マグネサイト、ブルーサイト、燃焼ボトムアッシュ、又はフライアッシュのうちの、任意の1又は2以上とすることができる。これらの反応器条件は例えば、反応生成物について所望の、例えば少なくとも2(任意で2.0~3.0、任意で2.5)の飽和指数を提供するように制御することができ、反応生成物は、上向き反応管流体流に取り込まれる固体沈殿剤種を形成する。
【0009】
上向き反応管流体流は次いで、反応器の隣接する浄化器セグメントに向けることができる。上向き反応管流体流量は例えば、20~80cm/分の間、任意で約50cm/分に維持することができる。反応器の浄化器セグメントは例えば、上向き反応管流体流の上向き流量を減少させるような寸法にすることができる。浄化器は例えば錐台形浄化器とすることができ、例えば錐台形浄化器は、約45~85°、任意で約60~70°の傾斜角を有する傾斜壁を含む。
【0010】
上向き浄化流体流量は、取り込まれた固体沈殿剤種が反応器の浄化器セグメント内で下降して反応管に戻る一方、浄化排出流体流が反応器の浄化器セグメントから上向きに流れ続けることが可能になるよう、浄化器内で維持することができる。上向き浄化流体流量は例えば、約1~5cm/分の間、任意で約2cm/分に維持することができる。例えば、水性流入流から溶存種を実質的に除去して浄化排出流体を提供するための条件を反応器内で維持することができ、例えば入力から排出までの溶存種の除去が、少なくとも60%、70%、80%、又は89%になるようにする。
【0011】
沈殿剤種の漸進的凝集を可能にして、例えば凝集顆粒を形成し、その大きさ及び密度が、凝集顆粒を反応管の基部に向かって沈降させるのに十分である条件を反応器内で維持することができ、驚くべきことに上向き乱流反応管流体流の存在下でこの沈降が起こるように条件を調整することができるということが実証されている。反応管内の水理学的滞留時間は例えば、1~10分の間、任意で2~5分の間に維持することができる。
【0012】
反応管の基部と流体連通する流路を通して反応器内へ、上向き流路流体流を注入することができる。流路は例えば、選択された大きさ及び密度の凝集顆粒が流路を通って下降する一方、非選択の沈殿剤種を上向きに反応管に戻すことが可能になるよう、上向き流路流体流の計量が可能になるような寸法にすることができる。上向き流路流体流量は例えば、上向き反応管流体流量の約10%、任意で5~50%の範囲に維持することができる。
【0013】
流路は例えば、平均流路断面積CXareaを有するような寸法にすることができる一方、ペレットホッパは同様に平均ペレットホッパ断面積PHXareaを有し、反応管も平均管断面積RCXareaを有し、これらの寸法は、CXarea<PHXarea、及びCXarea<RCXareaとなるように調整することができる。
【0014】
このように、一定サイズの固体顆粒生成物が水簸によって分離され、この生成物はしたがって流路を通って下降する。この一定サイズの生成物は、例えば一定サイズの固体顆粒生成物の沈降体積を収容するような大きさである、隣接するペレットホッパ内へ収集することができる。選択した実施形態において、この方法は、流路内の上向き流路流体流を周期的に制限し、ペレットホッパの内容物を下向きに放出して、所望の固体顆粒生成物を収集することを伴い得る。一定サイズの固体顆粒生成物は例えば、ふるい上で収集することができ、ふるい上で洗浄することができ、次いで乾燥させることができる。一定サイズの固体顆粒生成物は例えば平均生成物サイズを有することができ、平均生成物サイズは例えば約1~2mmとすることができる。顆粒生成物は、例えば少なくとも約60%、70%、80%、90%、又は96%の所望の生成物純度を例えば有することができる。
【0015】
所望の固体顆粒生成物は例えば、ストルバイト、K-ストルバイト、リン酸カルシウムアンモニウムCaNHPO、及び/又はヒドロキシアパタイトCa(PO(OH)、ブルシャイトCaHPO・2HO、ニューベリアイトMgHPO・3HO、及び/又はリン酸マグネシウムMg(PO、のうちの1又は2以上とすることができる。選択した代替実施形態において、所望の固体顆粒生成物の純度は例えば少なくとも70%、75%、80%、90%、又は95%とすることができる。
【0016】
一態様において、方法が、浄化流体流の一部を浄化器からホッパへ再循環させ、この再循環流体流を使用して、流路を通る上向き流路流体流を仲介することを伴い得る。例えば、流路内の上向き流路流体流を仲介する、ホッパ内の上向きホッパ流体流を提供することができ、ホッパは、上向きホッパ流体流が上向き流路流体流よりも少なくなるような大きさにすることができる。
【0017】
本方法の選択した実施形態の一態様は、比較的高レベルの懸濁固体を有する流入流に対処する能力である。例えば、流入流は、重量で1%、2%、3%、4%、又は5%までの懸濁固体を含むことができる。いくつかの実施形態において、流入流中の懸濁固体の50~95%が反応器を通過して浄化排出流体流に至る。
【0018】
本方法は、溶存種(溶存窒素及び/又は溶存リン及び/又は溶存カリウム種を含む溶存種)を水性流入流から除去するように動作可能な反応器システムを構成する、制御システムを備えた反応器内で実行することができる。水性流入流がマニホールドに入る前に、1又は2以上のスクリーンを水性流入流に配置することができ、これらのスクリーンは例えば、反応器内部に配置される注入ノズルの直径よりも小さなメッシュを有することができる。
【0019】
この反応器システムは、水性流入流を複数の反応器流入流に分離し、反応器容器内の反応管セグメントの基部内へ上向きに複数の反応器流入流を向けて、例えば反応管内に上向き乱流を生み出すためのマニホールドを含むことができる。取水ポンプを例えばマニホールドの上流に配置して、加圧水性流入流を提供することができる。反応管の基部と流体連通する沈殿剤入口ポートを設けることができ、これは例えば溶存種と反応する沈殿剤の反応生成物の過飽和濃度を提供するように反応管内の条件を維持するように適合された反応器システムコントロールの制御下で、反応管の基部内へ沈殿剤を注入するように適合されている。沈殿剤は、入力流体を反応器内へ向ける注入ノズルに近接して投入することができる。このように、反応生成物について、上述のように、例えば少なくとも2の飽和指数を維持することができる。反応生成物はしたがって、上向き反応管流体流に取り込まれる固体沈殿剤種を形成する。
【0020】
反応セグメントと上向きに隣接する、反応器の浄化器セグメントは、例えば取り込まれた固体沈殿剤種が反応器の浄化器セグメント内で下降して反応管に戻る一方、浄化排出流体流が反応器の浄化器セグメントから上向きに流れ続けることが可能になるよう、浄化器内の上向き浄化流体流量を維持するように動作可能な浄化器システムコントロールの制御下で、反応セグメントに対して、反応セグメントから浄化器内へ向けられる上向き反応管流体流の上向き流量を減少させるような寸法にすることができる。浄化排出流体流を収集するように構成されたジャケットを浄化器上に設けることができる。
【0021】
反応器システムコントロールは、沈殿剤種の漸進的な凝集を可能にして凝集顆粒を形成し、その大きさ及び密度が、上向き乱流反応管流体流の存在下で凝集顆粒を反応管の基部に向かって沈降させるのに十分である反応器内の条件を維持するように動作可能であるように作製することができる。
【0022】
反応管の基部と流体連通する流路を流路流体源に接続して、流路を通って反応管の基部内へと至る上向き流路流体流を提供することができる。流路は、選択された大きさ及び密度の凝集顆粒が流路を通って下降する一方、非選択の沈殿剤種を上向きに反応管に戻すことが可能になるよう、上向き流路流体流の計量が可能になるような寸法であり、これによって、一定サイズの固体顆粒生成物の沈降体積を収容するような大きさである隣接するペレットホッパ内へ流路を通って下降する、一定サイズの固体顆粒生成物を水簸によって分離することができる。
【0023】
複数の反応器流入流を上向きに反応管の基部内へと向ける注入ノズルを設けることができる。注入ノズルは例えば反応管の底部の上方に上昇させることができる。例えば少なくとも2、3、4、5、又は6の注入ノズルがあってもよい。注入ノズルは反応管の基部での断面積全体にほぼ均一に分布させることができる。選択した実施形態において、5~15m/sの間、又は約10m/sの表面上昇流速度を各ノズル内部で維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本明細書に開示される方法を実行するための装置の概略立面図である。
図2】本明細書に開示される方法を実行するための代替装置の概略立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
水簸によって一定サイズの沈殿物の形態で、廃水流から溶存種を回収するための方法及び装置が開示されている。いくつかの実施形態において、回収される固体は例えば植物栄養分であり得る。抽出される栄養分は例えば、リン(P)、及び/又は窒素(N)、及び/又はカリウム(K)の固体種を含むことができる。これらの方法は、例えば、農業(糞尿)、都市(下水)、又は他の産業起源のような、様々な起源の廃水流からの広範囲の水性供給物上で実行することができる。
【0026】
選択した実施形態において、栄養分は、難溶性化合物を含むリン酸塩の結晶化プロセスを通じて抽出される。このような化合物は例えば、ストルバイト(リン酸マグネシウムアンモニウム、MAP)、K-ストルバイト(リン酸マグネシウムカリウム、MKP)、及び他の難溶性リン酸化合物を含むことができるが、これらに限定されない。プロセスの一態様において、栄養分は、沈殿剤と溶存種の反応生成物、すなわち水性流入流から抽出されるべき化合物の廃水中で過飽和を生み出す結果として、水性液体(例えば廃水)から固体(例えば結晶)へ移行する。過飽和の条件によって結晶化プロセスが引き起こされる。過飽和は、沈殿剤を廃水に添加することによって、又は沈殿剤がこれらの流れの1つに提供されている、異なる廃水流を一緒に混合することによって、を含む、多くの方法で生み出すことができる。沈殿プロセス中に得られる固体材料を次いで液体から分離することができる。
【0027】
本明細書に開示される方法は、抽出される化合物が比較的大きな球形の顆粒(ペレット)として提供され得る形態で、廃水から栄養分を回収することを提供する。これらの顆粒は概して、結晶化装置(反応器)において生成されるより小さな結晶の凝集体を表す。ここに開示されるように、反応器内部の化学的及び流体力学的条件は、結晶凝集の速度が比較的高くなるような方法で制御することができる。この結果、顆粒が速く成長し、廃水からの栄養分のより効率的な抽出が可能になる。同時に、廃水及び他の懸濁固体から分離されるのに十分な大きさに顆粒を成長させることができるように本方法を制御することができるということが実証されている。選択した実施形態において、本方法はこれによって液体流からの高純度生成物の回収を促進し、これは、例えば重量で2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%までの比較的多量の懸濁固体、又は代替の一実施形態において重量で5%までの懸濁固体を有する流入流で例えば達成することができる。選択した実施形態において、本処理プロセスの比較的高い効率により、プラント設置面積をより小さくすることが可能になり、経済的なエネルギー消費が促進される。
【0028】
図示の一実施形態において、本方法を実施するために使用される装置の2つの主要構成要素、すなわち結晶化反応器及び廃水注入システムがある。図示のような結晶化反応器は、図1に示すように、直立した流動床反応器である。反応器は、3つの主要部分、すなわち反応管(1)、浄化器(2)、及びペレットホッパ(3)からなる。浄化器は反応管と連続してこれに直接隣接し、その上方に配置されている。浄化器の断面積は、図示の実施形態において、底部から頂部へと徐々に増加し、したがって、浄化器は錐台の形をしている。反応管及び浄化器の断面輪郭は例えば円形、矩形、又は多角形とすることができる。浄化器の頂部は開いていてもよく、反応管の底は、様々な入力ポートが配置されている場所を除いて閉じられている。回収された生成物のバルクペレットのための容器を提供するペレットホッパ(3)を反応管の下方に配置することができ、これは有利には、回収された生成物をホッパの底で排出することが容易になるように下向きに先細りさせることができる。ペレットホッパの頂部は反応管の底に垂直パイプ又は任意の他の流路を通して接続され、これは、図示のように、ペレットホッパ並びに反応管よりも実質的に小さい断面積を有することができる。
【0029】
現在開示されている装置により特定の廃水注入プロセスが促進される。図示のように、注入システムは次の、ポンプ(4)、マニホールド(5)、及び注入ノズル(6)のうちの1又は2以上のセットからなる。各セットは、装置内で処理されるべき別個の廃水流のために利用可能である。これは、個別の廃水流が処理プロセスの前に互いに混合されるべきではない場合に特に有利であり得る。各セットにおいて、ポンプは処理されるべき廃水をマニホールド内へ搬送し、これによってその内側に上昇圧力を生じさせる。マニホールド(5)は例えば、これに接続されているノズル(6)間で廃水をほぼ均等に分配するように適合することができる。ノズル出口は反応管(1)の底又は基部に配置されている。これらは実質的に上向きに向け、反応管の底の表面の上方にわずかに上昇させることができる。すべての注入セットからのノズルの総数は例えば少なくとも3つとすることができ、ノズルは反応管の底での断面積全体に均等に分布させることができる。
【0030】
図示の装置において、廃水は、各ノズル内部の表面上昇流速度が5~15m/sの間、好ましくは10m/sとなるような方法で、ノズル(6)を通して反応管(1)の底で反応器内へ注入される。これにより実質的に上向きの多数の噴射が生み出され、噴射は反応管の底で非常な乱流を生じさせる。ノズルの大きさ(又は直径)はこれらの数及び廃水の流量に依存し、当業者の誰でもが決定することができる。ノズル(6)は通常円形の断面積を有するが、矩形、多角形などとすることもできる。マニホールドに入る前、廃水流は、あり得るノズルの詰まりを防止するためにノズルの大きさ(直径)よりも大きいいかなる粒子状材料をも分離するために任意のスクリーンを通過することができる。
【0031】
図示のような反応器は連続上昇流モードで動作する。動作中、廃水から抽出されている化合物の結晶で反応器のすべての部分を満たすことができ、反応器の様々な部分が異なる大きさの結晶を含む。上述のように、処理されるべき廃水は、底から注入ノズル(6)を通して反応管(1)内へ注入される。同時に、反応管(1)の底で注入ノズル(6)に近接して沈殿剤を投入することができ、ここでこれは即座に廃水と混合され、こうして過飽和の化学的条件を生み出す。
【0032】
沈殿剤は通常、抽出される物質の廃水中の溶解度を低下させる物質である。例えば、抽出される物質がストルバイトであれば、沈殿剤は、アルカリ、マグネシウム塩、又はこれらの任意の組合せとすることができる。沈殿剤は、垂直に、水平に、又は斜めに設置される、1又は2以上の入口ポートを通して注入することができる。沈殿剤は例えば液体又はスラリーのいずれかとすることができ、これは、廃水から抽出されるべき化合物に対して反応管内の特定レベルの過飽和を維持するため、定量ポンプ、pHコントローラなどを使用して制御される方法で連続的に投入することができる。あるいは、過飽和は、沈殿剤を加えることなく、代わりに廃水流のそれぞれについて設定される別個の注入システムを使用することによって様々な廃水流を一緒に混合して所望の過飽和を達成することによって生み出すことができる。
【0033】
選択した実施形態において、反応器内でpH値を制御することができ、例えば所望の飽和指数を達成するように維持される。同様に、ここでも所望の飽和指数を達成するように反応器内の温度を設定する見込みで、反応器内の温度を制御することができる。選択した実施形態において、ストルバイトが所望の生成物である場合、反応器のpHを例えば7~10の間に制御することができ、見込まれる温度範囲は例えば10~40℃、あるいは60℃までであろう。
【0034】
過飽和は反応器内部の結晶の形成を引き起こし、これらの成長及び凝集を促進する。結晶は反応器のすべてのセクションにおいて液体上昇流に懸濁して留まる。結晶が形成されると、栄養分は液相から抽出される。比較的小さな結晶が次いで浄化器(2)内で下向きに沈降して反応管に戻る一方、浄化された廃水が浄化器の頂部から流出するように条件を維持することができ、流入流に元々存在する懸濁固体も浄化器の頂部から流出するように条件を調整することもできる。反応器流出物はしたがって大幅に減少した量の栄養分を含み、処理された廃水流を表す。同時に、反応管(1)内部で結晶が凝集し、これは驚くべきことに、噴射によって生じさせられる乱流によって促進され、これによって顆粒、又はペレット(これは例えばほぼ球形であり得る)を形成する。本明細書の実施例に示すように、所望の又は選択された大きさに成長したペレットが反応管(1)の底へ、次いでペレットホッパ(3)内へさらに沈降するように条件を調整することができるということが発見された。
【0035】
ペレットホッパ(3)は、まだ所望の大きさに達しておらず、したがって反応器から抽出されるように選択されていない凝集物及び結晶(「非選択」沈殿物)からペレットを連続的に分離することを促進する。同時に、反応管(1)からペレットを連続的に除去することにより、プロセスに悪影響を及ぼす可能性がある管の底での結晶の過密が防止される。
【0036】
水簸の原理を通してペレットの分離が達成される。上述のように、反応管(1)の底はペレットホッパ(3)の頂部にパイプ又は流路(7)を通して接続され、これは、反応管とペレットホッパの両方よりも小さい断面積のチューブとすることができる。流路(7)の断面積は例えば円形、矩形、又は多角形とすることができる。ペレットの沈降方向とは反対である、液体の上昇流、すなわち上向き流路流体流が流路内に生じさせられる。上昇流は、より大きなペレットが沈降するか、又はその中に懸濁することが可能になる一方、より小さなペレット及び他の結晶が上昇流で上向きに運ばれて反応管内へ戻るように維持される。より大きな粒子は最終的にペレットホッパ(3)内へ沈降し、ここでホッパは流路(7)よりも大きな断面積を有し、したがって上昇流速度はペレットを懸濁させ続けるのに十分に高い速度ではなくなるため、懸濁したままではなくなる。
【0037】
遮断弁(8)を使用すると同時にペレットホッパ(3)の底で排出弁(9)を開いて反応管からペレットホッパ(3)を隔離することによってペレットがペレットホッパ(3)から周期的に排出される。ペレットはふるい上で排出することができ、ここで液体並びにその中のいかなる懸濁固体も、ふるい上に残っているペレットを通して容易に排出される。ホッパからペレットを取り出した後、排出弁(9)を閉じ、ホッパを液体で満たし、その後遮断弁(8)を再び開いて、次のペレットのバッチを収集することができるようにする。ペレットホッパ(3)は通常、頻繁に排出する必要を回避するため大量のバルクペレットを収容することができるように大容量を有する。ふるい上のペレットは、水で洗浄してこれらの表面からあらゆる不純物を除去し、次いで空気中で、低温のオーブン内で、又は当該技術において知られている任意の他の手段によって乾燥させることができる。肥料ペレットは、いかなるさらなる処理の必要なく市場用に準備ができている最終製品を表す。選択した実施形態において、最終肥料製品の純度は例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を超えることができる。
【0038】
ペレットホッパ(3)を反応管(1)と接続する流路(7)内の液体上昇流は例えば、追加のポンプ(10)を使用して浄化器(2)からペレットホッパ内へ反応器流出物の一部を圧送することによって達成することができる。反応器流出物を使用することには、ペレットを母液中に保持し、これによってこれらの溶解を防止すると同時に、その目的のために追加の外部液体を使用すれば普通なら増加するであろう廃水の体積を一定に維持するという利点がある。流路(7)内の上昇流速度の制御により、特定のペレットサイズを選択的に分離し、収穫されたペレットの所望の結晶サイズ分布を維持することが可能になる。流路(7)を通る断面積及び流量は例えば、反応管(1)内部の所望の流体力学的及び化学的条件に著しく影響を及ぼさないように選択することができる。流量は例えば反応管内の総流量の約10%に維持することができる。
【0039】
本方法の一態様において、この方法は、反応管(1)内の抽出化合物に関して特定の、比較的一定のレベルの初期過飽和を維持しながら実施される。この動作パラメータは、プロセス効率を制御するのに有利である。過飽和は例えば、沈殿剤の流量を制御することによって維持することができる。あるいは、装置内で1より多くの廃水流が処理される実施形態において、過飽和は例えば、廃水流の混合比を制御することによって維持することができる。
【0040】
本明細書において、物質に対する液体の過飽和が飽和指数SIとして表され、これは物質を構成するイオン種の活量積と物質の熱力学的溶解度積との間の比の常用対数である。例えば、ストルバイト(リン酸マグネシウムアンモニウム、MgNHPO・6HO)では、SIは次のように表されるであろう。
【0041】
【数1】
【0042】
ここで、{Mg2+}、{NH }、{PO 3-}はそれぞれマグネシウム、アンモニウム、及びオルトリン酸イオンの活量であり、
sp(struvite)はストルバイトの熱力学的溶解度積である。
【0043】
飽和指数は、本方法の制御システムの一部としてこの式を使用することによって決定することができる。関連するイオン種の活量を、標準的な分析方法を使用することによって、直接測定するか、又は関連するイオン種の測定濃度から数学的に導出するか、のいずれかを行うことができる。種の活量係数、並びに抽出化合物の溶解度積は、広く利用可能な文献ソースから入手可能であろう。
【0044】
抽出化合物に関する反応管(1)の底での初期飽和指数SIは例えば2.0~3.0の範囲、任意で2.5に維持することができる。反応管内の非常な乱流に伴うこの飽和指数は驚くべきことに、高速の結晶核形成を引き起こすことが見出された。同時に、これは驚くべき高い結晶凝集速度も提供し、そのため新しく形成される小さな結晶がより大きな顆粒(ペレット)へと急速に凝集することができる。結晶凝集速度が結晶形成速度以上であるような条件を確立及び維持することによって、小さな結晶の数を減少させることができ、より大きな凝集物の数及び大きさを増加させることができる。これにより反応器内の結晶サイズ分布及び個体群密度の制御、及び、最終的に、抽出化合物の大きな顆粒の急速な形成が可能になる。これに加えて、廃水流中に存在する他の懸濁固体に対してよりもむしろ互いに対する結晶同士の親和性を促進するように反応管(1)内の特定の流体力学的及び化学的条件を選択することができるということが見出された。この結果、廃水中の固体不純物による汚染が比較的なく、高純度の抽出化合物が得られることが示されている。選択した実施形態において、本方法は、回収肥料製品の品質を実質的に損なうことなく、総懸濁固体の2%もの高い液体流を処理することが可能であることが見出された。
【0045】
上の飽和指数を有するプロセスの実施は、おそらく廃水流が反応器を出る前に化学反応を実質的に完了させることによって、反応器流出物中の栄養分の比較的低い残留濃度を提供することが見出された。選択した実施形態において、反応管(1)内で反応が起こると、飽和指数は0.1~1.0のレベルまで急速に減少する。これはしたがって新しい結晶の形成を妨げ、代わりに既存のものの成長を促進する可能性がある。この条件は、反応管の上部セクションで起こるように調整することができる。特に、大きなペレットが概して反応管の底に沈降する一方、はるかに小さな結晶のいくつかがその容積全体に懸濁したままとなるような条件を提供することができるということが見出された。結晶が十分に大きく成長し、上昇流によって懸濁したままではなくなるとすぐに、これらは反応管の底部内へと沈降してペレットへと凝集する。
【0046】
選択した実施形態において、小さな及び中サイズの結晶の沈降を促進するため、反応管(1)内の表面上昇流速度を例えば、20~80cm/分の間、又は約50cm/分に維持することができる。反応管内の水理学的滞留時間は例えば1~10分の間、又は2~5分の間に維持することができ、ここでこれらの条件は、化学反応が実質的に完了するのに十分な時間を提供する。反応管(1)の物理的寸法はこれらの要件に基づいて設計することができる。
【0047】
反応管(1)内に留まるには小さすぎる結晶、並びに廃水中に元々存在する懸濁固体が、上昇流によって浄化器(2)内へ運ばれる。図示の実施形態において、浄化器は、その中の流体、すなわち上向き浄化流体流の上昇流速度を徐々に減少させる、徐々に増加する断面積を有する。結果として、選択した実施形態において、流出物に伴う抽出化合物のいかなる実質的な損失なく、例えば50ミクロン程度の小さな結晶を反応器内部に保持することができる。結晶を浄化器(2)内部に保持するために浄化器の頂部での表面上昇流速度は例えば1~5cm/分の間、任意で約2cm/分に維持することができる。選択した実施形態における浄化器錐台の傾斜角は例えば45~85°の間、任意で60~70°の間とすることができる。浄化器(2)の物理的寸法は例えばこれらの要件に基づいて設計することができる。例示的な実施形態において、浄化器の錐台形状は、流れとは反対の浄化器から沈降するバルク結晶とともに、浄化器と反応管(1)との間の取り付け点で小さな乱流を生じさせる。これは、新しいものを生じさせるのではなく、既存の結晶の成長を促進するのにさらに役立ち得る。前述の条件を実施して、浄化器(2)は、小さな結晶の懸濁床を含むように作製することができる。この床は、反応管(1)と連続的に結晶を交換するため、概して動的であり、十分に大きく成長する結晶は沈降するが、新たに形成される微細結晶のいくつかは流れとともに運び上げられる。結果的に、床は、微細結晶をつかまえてこれらが反応器から逃げるのを防止する「フィルタ」として機能する。同時に、廃水流中に元々存在する懸濁固体は通常、結晶よりもはるかに小さな大きさ及び低い密度を有する。結果として、これらは自由に床を通過し、流出物流によって浄化器から運び去られ、これによって浄化器(2)内でのこれらの蓄積を防止することができる。床の一定容積は、初期飽和指数及び反応管の底での流体力学的条件によって制御することができる。動作パラメータを正確に制御することにより、床がオーバーフローして微細結晶を流出物とともに失うことが防止される。浄化器の頂部は、図1に示すように、沈降した結晶の再懸濁を最小化するために広い表面積にわたって流出を均一に分散させるためのオーバーフロー堰(11)を有していてもよい。反応器からの流出物は次いで、反応器浄化器のジャケットとして設計された外部浄化器(12)内へオーバーフローすることになる。ジャケット(12)は、流出物に伴う微細結晶の損失をさらに最小化することができる。
[実施例]
【0048】
例示された方法を図2に示すような装置において実施した。処理されるべき廃水流は、固体分離プロセスを受けた嫌気性消化鶏糞であった。廃水は平均で次の特徴、すなわち総懸濁固体-2.0%、pH-8.4、伝導率-18mS/cm、アルカリ度-CaCOとして30,000mg/L、可溶性オルトリン酸塩P-PO-205mg/L、可溶性アンモニア態窒素N-NH-5050mg/L、可溶性マグネシウムMg-5mg/L、可溶性カルシウムCa-50mg/Lを有した。ポンプによって200m/日の平均流量で貯蔵タンクからマニホールド内へ廃水を連続的に圧送した。マニホールドに入る前に、廃水は5mmの開口を備えたスクリーンを通過する。マニホールド内の差圧は0.1MPaに維持される。マニホールドは廃水を4つの同一の円形ノズル間で分配する。各ノズル内部の表面上昇流速度は9m/sに維持された。
【0049】
廃水は円筒形の反応管に入り、ここで反応管の底に投入される沈殿剤と即座に混合される。沈殿剤は水溶性マグネシウム塩の濃縮溶液である。塩溶液は、反応管内の可溶性マグネシウムと可溶性オルトリン酸塩との間のモル比が約1になる制御された方法で計量ポンプによって連続的に投入される。沈殿剤が廃水と混合されると、マグネシウム、アンモニア、及びオルトリン酸塩の間の反応が本質的にすぐ起こり、ストルバイトの結晶が反応管内に形成される。反応管内のストルバイトの初期飽和指数は約2.3である。反応管内の表面上昇流速度は47cm/分であった。反応管の頂部でのpH値をpHメータによって監視し、これは約8.3の値を示した。浄化器の頂部での表面上昇流速度は5cm/分であった。浄化器はオーバーフロー堰及びジャケットを有した。処理された廃水(流出物)はジャケット内へオーバーフローし、ジャケットに設置されたポートを通じて反応器を出る。
【0050】
流出物は平均で次の濃度、すなわち可溶性オルトリン酸塩P-PO-22mg/L、可溶性アンモニア態窒素N-NH-4800mg/L、可溶性マグネシウムMg-14mg/L、可溶性カルシウムCa-48mg/Lを有した。可溶性オルトリン酸塩の除去効率はしたがって89%であった。ジャケットからの流出物の一部が追加ポンプによって23m/日の流量でペレットホッパ内へ圧送される。反応管内で形成されたストルバイトのペレットは垂直パイプを通ってペレットホッパ内へ連続的に沈降する。パイプ内の表面上昇流速度は415cm/分に維持された。この上昇流速度により、大きさが1mmよりも大きなストルバイトペレットを反応管内の結晶の残りから分離することが可能になった。反応管とペレットホッパとの間の遮断弁を閉じてペレットホッパの底で排出弁を開くことによってペレットを2日に1回ペレットホッパから排出した。その底にふるいを備えた容器内へペレットを液体とともに排出した。ふるいの開口サイズは0.5mmであった。ふるいを通して液体が排出された一方、ストルバイトペレットはその上に残った。ペレットを次いできれいな水ですすぎ、戸外で乾燥させた。収穫ごとに抽出された乾燥ストルバイト結晶の重量は約500kgであった。ストルバイトペレットサイズは1~2mmの間の範囲であった。ストルバイト生成物の純度は約96%である。
【0051】
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本明細書における参考文献の引用は、このような参考文献が本発明に対する先行技術であることを認めるものではない。本明細書において引用される特許及び特許出願を含むがこれらに限定されないあらゆる優先権書類及びすべての刊行物、並びにこのような文献及び刊行物において引用されるすべての文献は、あたかも個々の刊行物が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれると示されているかのように、そして本明細書に完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態が本明細書に開示されているが、当業者の共通の一般的な知識にしたがって本発明の範囲内で多くの適合及び修正を行うことができる。このような修正は、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するために本発明の任意の態様を既知の均等物で置き換えることを含む。「例示的な」又は「例示された」のような用語は本明細書では「一例、実例、又は例示として役立つ」ことを意味するために使用される。本明細書で「例示的な」又は「例示された」として説明される任意の実施形態はしたがって、他の実施形態に対して必ずしも好ましい又は有利であると解釈されるべきではなく、すべてのこのような実施形態は独立した実施形態である。特に明記しない限り、数値範囲は範囲を定義する数字を含み、数値は必ず所与の小数の近似値である。「含む(comprising)」という言葉は本明細書では、「含むが、限定されない」という語句と実質的に同等の、オープンエンドの用語として使用され、「含む(comprises)」という言葉は対応する意味を有する。本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「あるもの」への言及は1より多くのこのようなものを含む。本発明は、実質的に前述したような、そして例及び図面を参照したすべての実施形態及び変形を含む。
図1
図2
【国際調査報告】