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特表2023-518525生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法およびデバイス
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  • 特表-生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法およびデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(54)【発明の名称】生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230424BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20230424BHJP
   G01N 1/40 20060101ALI20230424BHJP
【FI】
G01N33/48 D
G01N1/28 J
G01N1/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558095
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2021080829
(87)【国際公開番号】W WO2021190340
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】202010230413.4
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522375763
【氏名又は名称】康博医▲創▼股▲ふぇん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MICRONBRANE MEDICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】22F, No.99 Xinpu 6th Street, Taoyuan District, Taoyuan City, Taiwan 330007
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼雍
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼梦楚
(72)【発明者】
【氏名】▲鐘▼政峯
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼彦文
(72)【発明者】
【氏名】洪▲はう▼
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045AA28
2G045BA01
2G045BB12
2G045CA11
2G045CA25
2G045CB01
2G045CB21
2G045FA40
2G045FB02
2G052AA30
2G052AB20
2G052AD29
2G052EA03
2G052ED01
2G052ED03
2G052GA29
(57)【要約】
生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法およびデバイスが、本発明において提供され、その結果、生物学的サンプルは、有核細胞を捕捉または分離する高度に特異的な能力を有する高分子ポリマー改変基材によって濾過され得、微生物が、濾液へと、高分子ポリマー改変基材を通過または素通りし得、それによって、上記有核細胞を差し引き、従って、上記有核細胞(例えば、白血球)によって引き起こされる病原体検出の干渉を低減するというプロセスの間に、生物学的サンプル中の微生物(細菌、マイコプラズマ、真菌、ウイルス、芽胞などが挙げられる)を富化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法であって、前記方法は、a)前記生物学的サンプルを集める工程;b)前記サンプルを、Sterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)またはポリマー改変基材を通して濾過する工程であって、前記サンプル中のヒト由来有核細胞は、前記フィルターまたはポリマー改変基材によって捕捉または分離され、前記サンプル中の前記微生物は、濾液へと、前記フィルターまたはポリマー改変基材を通過または素通りする、工程;およびc)前記濾液に存在する前記微生物を検出する工程を包含し;ここで前記有核細胞は、赤芽球、白血球およびがん細胞のうちの1またはこれより多くを含み;前記ポリマーは、式(1)の構造:
【化14】
を有する1またはこれより多くのモノマーの重合によって調製され、ここでRは、水素、メチル、エチル、ヒドロキシル、C1-12アルキル、フェニルからなる群より独立して選択され;Rは、水素、メチル、エチル、C1-6アルキル、アミノ、フェニルからなる群より独立して選択され;そしてnは、1~5の整数である、方法。
【請求項2】
前記ヒト由来有核細胞は、白血球である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物は、細菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物は、真菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記濾液中の前記微生物の保持率は、65%を上回る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記濾液中の前記微生物の保持率は、80%を上回る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプル中の赤血球は、前記濾液へと、前記ポリマー改変基材を通過または素通りし、前記赤血球の保持率は、80%を上回る、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル中の血小板は、前記濾液へと、前記ポリマー改変基材を通過または素通りし、前記血小板の保持率は、80%を上回る、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプル中のフィブリノゲンは、前記濾液へと、前記ポリマー改変基材を通過または素通りし、前記フィブリノゲンの保持率は、80%を上回る、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記濾液中の前記微生物の検出率は、濾過なしの前記サンプルより2倍高い、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記濾液中の前記微生物の検出率は、濾過なしの前記サンプルより40倍高い、請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
式(1)のモノマーは、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、NHEMAA、およびN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、HEAAである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーは、さらなるモノマーをさらに含み、前記さらなるモノマーは、ブチルメタクリレートであり、式(1)のモノマーは、コポリマーを形成するための前記さらなるモノマーと共重合される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーは、式(2)の構造:
【化15】
を有し、ここでnは、10~50の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーは、式(4)の構造:
【化16】
を有し、ここでtは、50~90の整数であり、nは、10~50の整数であり、Rは、
【化17】
である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーは、セグメント化ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーは、被覆、スプレー、または含浸によって前記基材に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記基材は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、ポリブチレンテレフタレートである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記改変基材の表面元素は、炭素、酸素、および窒素を含み;炭素、酸素、および窒素の総モルパーセンテージは、100%として定義され、炭素のモルパーセンテージは、約76.22%~79.84%であり、酸素のモルパーセンテージは、約18.1%~21.04%であり、窒素のモルパーセンテージは、約2.05%~2.75%である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、生物学的サンプルの病原体検査のために使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記生物学的サンプルは、血液、脳脊髄液、細胞、細胞抽出物、組織サンプル、および組織生検材料からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
生物学的サンプル中の病原体の前記検査は、個体における敗血症を診断することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記濾液は、DNA精製に供され、PCR、qPCR、デジタルPCR、NGS、質量分析、またはNanoporeシーケンシングによって分析される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記濾液は、DNA精製に供され、シーケンシングライブラリーは、Oxford Nanopore迅速ライブラリー構築プロセスによって構築され、Oxford Nanopore GridIONシーケンサーでシーケンシングされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法において使用されるデバイスであって、前記デバイスは、上側ハウジング、フィルター、および下側ハウジングを含み;ここで前記フィルターは、前記上側ハウジングと前記下側ハウジングとの間に位置し、請求項1に記載のポリマー改変基材から作製される、デバイス。
【請求項26】
前記デバイスの前記上側ハウジングは、入り口とともに提供される一方で、前記下側ハウジングは、出口とともに提供され;前記生物学的サンプルは、前記上側ハウジングの前記入り口から前記デバイスに入り、前記フィルターを透過し、前記デバイスから前記下側ハウジングの前記出口を通って流れ出る、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記デバイスは、生物学的サンプルの病原体検査のために使用される、請求項26に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、微生物の検出という技術分野;特に、生物学的サンプル中のヒト由来有核細胞からの干渉を低減することによって、上記生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
関連分野の説明
分子検出法を使用して、生物学的サンプル中で病原性微生物(細菌、マイコプラズマ、真菌、ウイルス、芽胞などが挙げられる)を検出する場合、上記サンプル中のヒト細胞の細胞数およびゲノムサイズは、上記病原性微生物より遙かに大きく、ヒトDNAの量は通常、病原性微生物のDNAのものの数万倍またはさらには数百万倍である。従って、病原性微生物の分子検出のプロセスの間に、ヒトDNAのバックグラウンド干渉は、常に大きな難題となっている。現在、差次的溶解のための方法(例えば、QIAamp DNA Microbiome Kitおよび近年発表された改変法(Nanopore metagenomic enables rapid clinical diagnosis of bacterial lower respiratory infection. Charalampousら, Nature Biotechnology, 2019);およびヒトDNAを除去するメチル化改変法(例えば、NEBNext(登録商標) Microbiome DNA Enrichment Kit(New England Biolabs))が存在する。しかし、これらの方法は、複雑な操作および矛盾する効果という明確な欠点を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Nanopore metagenomic enables rapid clinical diagnosis of bacterial lower respiratory infection. Charalampousら, Nature Biotechnology, 2019
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本発明は、生物学的サンプル中のヒト由来有核細胞(例えば、白血球)からの干渉を低減することによって、生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法およびデバイスを提供する。
本発明は、生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法であって、上記方法は、a)上記生物学的サンプルを集める工程;b)上記サンプルを、Sterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)またはポリマー改変基材を通して濾過する工程であって、上記サンプル中のヒト由来有核細胞は、捕捉または分離される一方で、上記サンプル中の微生物は、濾液へと、上記フィルターまたはポリマー改変基材を通過または素通りする、工程;およびc)上記濾液に存在する上記微生物を検出する工程を包含する方法を提供する。上記有核細胞は、赤芽球、白血球およびがん細胞のうちの1またはこれより多くを含む。上記ポリマーは、式(1)の構造:
【化1】
を有する1またはこれより多くのモノマーの重合によって調製される。
【0005】
式(1)において、Rは、水素、メチル、エチル、ヒドロキシル、C1-12アルキル、フェニルからなる群より独立して選択され;Rは、水素、メチル、エチル、C1-6アルキル、アミノ、フェニルからなる群より独立して選択され;nは、1~5の整数である。
好ましくは、上記生物学的サンプル中の微生物は、細菌である。
好ましくは、上記生物学的サンプル中の微生物は、真菌である。
好ましくは、上記ヒト由来有核細胞は、白血球である。
【0006】
いくつかの実施形態において、上記濾液中の微生物の保持率は、65%を上回る。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記濾液中の微生物の保持率は、80%を上回る。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記赤血球は、上記濾液へと、上記ポリマー改変基材を通過または素通りし得、上記赤血球の保持率は、80%を上回る。
【0009】
いくつかの実施形態において、血小板は、上記濾液へと、上記ポリマー改変基材を通過または素通りし得、上記血小板の保持率は、80%を上回る。
【0010】
いくつかの実施形態において、フィブリノゲンは、上記濾液へと、上記ポリマー改変基材を通過または素通りし得、上記フィブリノゲンの保持率は、80%を上回る。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記濾液中の微生物の検出率は、濾過なしの上記サンプルより2倍高い。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記濾液中の微生物の検出率は、濾過なしの上記サンプルより40倍高い。
【0013】
いくつかの実施形態において、式(1)のモノマーは、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、NHEMAA、およびN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、HEAAを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記ポリマーは、さらなるモノマーをさらに含み、上記さらなるモノマーは、ブチルメタクリレートであり得、式(1)のモノマーは、コポリマーを形成するための上記さらなるモノマーと共重合される。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記ポリマーは、式(2)の構造:
【化2】
を有する。
【0016】
式(2)において、nは、10~50の整数である。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記ポリマーは、式(4)の構造:
【化3】
を有する。
【0018】
式(4)において、tは、50~90の整数であり、nは、10~50の整数であり、Rは、
【化4】
である。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記ポリマーは、セグメント化ポリマーである。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記ポリマーは、被覆、スプレー、または含浸のような様式で上記基材上に配置される。上記基材としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、ポリブチレンテレフタレートが挙げられるが、これらに限定されない。上記改変基材の表面の元素は、炭素、酸素、および窒素を含み;炭素、酸素、および窒素の総モルパーセンテージは、100%として定義され、炭素のモルパーセンテージは、約76.22%~79.84%であり、酸素のモルパーセンテージは、約18.1%~21.04%であり、窒素のモルパーセンテージは、約2.05%~約2.75%である。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記濾液は、DNA精製に供され、PCR、qPCR、デジタルPCR、NGS、質量分析、またはNanoporeシーケンシングによって分析される。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記濾液は、DNA精製に供され、シーケンシングライブラリーは、Oxford Nanopore迅速ライブラリー構築プロセスによって構築される。次いで、シーケンシングは、Oxford Nanopore GridIONシーケンサーで行われる。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記生物学的サンプルは、血液、脳脊髄液、細胞、細胞抽出物、組織サンプル、および組織生検材料からなる群より選択される。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明に従って生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法は、生物学的サンプルの病原体検査のために使用され得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するためのデバイスを提供する。上記デバイスは、以下の構成要素:上側ハウジング、フィルター、および下側ハウジングを含む。上記フィルターは、上側ハウジングと下側ハウジングとの間に位置する。上記フィルター材料は、上述のとおりのポリマー改変基材を含み;好ましくは、上記フィルターは、ポリマー改変基材から作製される。上記デバイスの上側ハウジングは、入り口とともに提供され得る一方で、下側ハウジングは、出口とともに提供され得る。上記生物学的サンプルは、上側ハウジングの入り口から上記デバイスに入り、上記フィルターを透過し、上記下側ハウジングの出口を通って上記デバイスから流れ出る。
【0026】
本発明によって提供される生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法およびデバイスは、上記サンプルが、ヒト由来有核細胞(例えば、白血球)を捕捉および分離するにあたって高度に特異的である、Sterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)またはポリマー改変基材を通って濾過されることを可能にする。他には、上記微生物は、濾液へと、Sterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)またはポリマー改変基材を通過することができるので、ヒト由来有核細胞を低減する間に、上記サンプル中の微生物(細菌、マイコプラズマ、真菌、ウイルス、芽胞などが挙げられる)を富化できる。このプロセスは、従って、病原体検査において上記ヒト細胞の干渉を低減し得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法およびデバイスは、個体における敗血症を診断することを包含する。
【0028】
用語「捕捉」およびその文法上のバリエーションは、上記サンプル中のヒト由来有核細胞が、上記基材の表面と接触し、上記基材と上記細胞との間の疎水性相互作用、水素結合、または静電的分子間力によって引きつけられ、種々のタイプのヒト由来有核細胞を上記改変基材の表面に直接接着させることを意味する。フィブリノゲンおよび血小板を含む小さなサイズの細胞は、他のより大きな細胞の前に結合され得る。これらのプロセスは、ヒト由来有核細胞の「捕捉」として定義される。
【0029】
用語「分離」およびその文法上のバリエーションとは、ヒト由来有核細胞を含むサンプルを、それらを分離するために使用される材料に通過させた後の、上記サンプルからのヒト由来有核細胞の分離をいう。それはまた、上記サンプル中のヒト由来有核細胞の含有量が、低減され得る、またはさらに有意に低減され得ることを意味する。上記プロセスは、その得られた濾液中のヒト由来有核細胞の濃度を、その元の有核細胞含有サンプルより少なくすることを可能にする。
【0030】
表現「有核細胞の低減」およびその文法上のバリエーションは、全てのまたは実質的に全ての有核細胞が、完全に除去されることを意味するとは意図されない。代わりに、ヒト由来有核細胞の細胞数は、分離または濾過の間に低減されることを広く示すために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1: 生物学的サンプルを、ポリマー改変基材を通して濾過するための本発明のプロセスの模式図。
図2図2: 生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための本発明の濾過デバイス。
図3図3: 本発明のモノマーおよびポリマーの構造式、ならびにその核磁気共鳴(NMR)スペクトルシグナルの化学シフトの理論的に推測される値。
図4図4: 本発明のモノマーおよびポリマーのNMRスペクトルの測定されたマップ。
図5図5: 本発明の基材、すなわち、B-r-HおよびB-r-Dで改変された、PP、PET、セルロース、およびPBTの被覆密度結果。[符合の説明]
【0032】
1.上側ハウジング; 2.フィルター; 3.下側ハウジング。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本明細書中で別段定義されなければ、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈によって別段要求されなければ、単数形の用語は、複数形を包含するものとし、複数形の用語は、単数形を包含するものとする。一般に、本明細書で記載される、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションと関連して使用される命名法およびこれらの技術は、当該分野で周知であり、一般に使用される。公知の方法および技術は一般に、当該分野で周知の従来技術に従って、ならびに別段示されなければ、本明細書全体を通じて考察される種々の一般的なおよびより具体的な参考文献に記載されるように行われる。精製およびDNAシーケンシング技術は、当該分野で一般に達成されるかまたは本明細書で記載されるように、製造業者の仕様書に従って行われる。本明細書で記載される実験手順および技術に関連して使用される命名法は、当該分野で周知かつ一般に使用されるものである。
本発明において、生物学的サンプルは、Sterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)またはポリマー改変基材を通して濾過され得る。上記フィルターおよび改変基材は全て、高度に特異的なヒト由来有核細胞捕捉または分離能力を有する。また、上記生物学的サンプル中の微生物は、上記フィルターまたはポリマー改変基材を通過し得、濾液の中に入る。ヒト由来有核細胞を低減する間に、高レベルの微生物(細菌、マイコプラズマ、真菌、ウイルス、芽胞など)が、上記サンプル中で富化され得るので、ヒト由来有核細胞からの干渉を低減する。微生物の効果的な富化を伴う上記生物学的サンプルは、DNA精製に供され得る。シーケンシングライブラリーは、Oxford Nanopore迅速ライブラリー構築プロセスに従って、適切な濃度の上記DNA精製サンプルで構築され、それは、Oxford Nanopore GridIONシーケンサーを使用してシーケンシングされる。シーケンシング結果は、Sterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)および上記改変基材が、ヒト由来有核細胞を特異的に除去し得、微生物を富化し得ることを示す。
【0034】
本発明において使用されるSterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filterは、PALLから提供される(カタログ番号AP-4951およびAP-4952)。上記フィルターは、赤血球(RBC)および血小板を、上記膜を素通りさせると同時に、白血球を全血サンプルから分離するように設計された証明された濾過デバイスである。
【0035】
本発明に従う生物学的サンプル中の微生物を富化および検出する方法は、第1に、上記生物学的サンプル(例えば、血液)を得る工程、第2に、上記サンプルを、ポリマー改変基材を通して濾過する工程を包含する。上記サンプル中のヒト由来有核細胞は、捕捉または分離される。その得られた濾液中の有核細胞の含有量は、大きく低減される。上記微生物は、ヒト由来有核細胞を低減する間に、上記改変基材を使用することによって、上記濾液中で富化され得る。
【0036】
本発明のポリマーは、式(1)の構造:
【化5】
を有する1またはこれより多くのモノマーの重合によって調製される。
【0037】
式(1)では、Rは、水素、メチル、エチル、ヒドロキシル、C1-12アルキル、およびフェニルからなる群より独立して選択され;Rは、水素、メチル、エチル、C1-6アルキル、アミノ、およびフェニルからなる群より独立して選択され;nは、1~5の整数である。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、式(1)におけるRは、水素であり、Rは、水素であり、nは、整数1である。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、アミド基およびヒドロキシル基含有モノマーは、N-ヒドロキシエチルアクリルアミドまたはN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドである。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記ポリマーは、式(1)のモノマーおよび少なくとも1種のさらなるモノマーの共重合によって調製されるコポリマーであり、上記さらなるモノマーは、ブチルメタクリレート(BMA)である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、上記ポリマーは、セグメント化ポリマーである。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、式(1)のモノマーによって調製されるポリマーは、式(2)の構造:
【化6】
を有し得る。
【0043】
式(2)において、nは、10~50の整数である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、式(1)のモノマーによって調製されるポリマーはまた、式(4)の構造:
【化7】
」を有し得る。
【0045】
式(4)において、tは、50~90の整数であり、nは、10~50の整数であり、Rは、
【化8】
である。
【0046】
上記ポリマーの調製は、公知の技術によって行われる。例えば、1種のモノマーは、上記基材の基部末端として使用され、別のモノマーは、機能性末端として使用される。その2種のモノマーは、ある特定の割合で混合され、開始剤ACVAの添加が続く。調製のために使用される溶媒は、エタノールである。次に、重合反応が70℃で行われ、それによって、所望のポリマーが得られる。反応が完了した後、その生成物は、沈殿剤として脱イオン水を使用して沈殿され、次いで乾燥される。
【0047】
本発明のポリマーは、上記基材を改変するという目的を達成するために、上記基材上で被覆、スプレー、または含浸される。具体的には、溶媒としてのエタノール中に一定量のポリマーを溶解して、ポリマー溶液を調製する;適切な基材を選択し、それを適切なサイズに切断し、それを上記ポリマー溶液中に約1分間浸漬させる;次いで、その基材表面を脱イオン水で洗浄し、乾燥させる。よって、上記ポリマーで被覆された表面-改変基材が得られ得る。上記基材を製造するために使用される材料は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロース、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などであり得る。上記改変基材の表面元素としては、炭素、酸素、および窒素が挙げられる一方で、それらの総モルパーセンテージは、100%として定義される。炭素のモルパーセンテージは、約76.22%~79.84%であり、酸素のモルパーセンテージは、約18.1%~21.04%であり、窒素のモルパーセンテージは、約2.05%~2.75%である。
【0048】
上記生物学的サンプルは、本発明のポリマー改変基材を通して濾過される。生物学的サンプルを、改変基材を通して濾過するための本発明のプロセスの模式図である図1を参照のこと。上記改変基材は、ヒト由来有核細胞(例えば、白血球)を捕捉および吸収、結合または接着し得、従って、それらを上記サンプル(例えば、全血)から分離する。より重要なことには、血漿タンパク質は、濾過プロセスの間にほぼ吸収されないと同時に、血小板接着はほぼ起こらず、このことは、血小板の保持率を改善する。他には、生物学的サンプル(例えば、血液)の残り(例えば、赤血球、血小板、細菌、ウイルス、および芽胞)は、精製効果を達成するために、上記改変基材を通過/素通りし得る。その試験結果は、濾過されたサンプル中の白血球の除去率が、70%より大きく、さらには90%超に達し得ることを示す。濾過後の上記サンプルの微生物検出率は、濾過前の上記サンプルのものの少なくとも2倍であり、それはさらに、より高い倍率(例えば、40倍)に達し得る。
【0049】
本発明はまた、上記ポリマー改変基材と適合した濾過デバイスを提供する。図2に示されるように、上記デバイスは、上側ハウジング1、フィルター2、下側ハウジング3を含む。上記フィルター2は、上記上側ハウジング1と上記下側ハウジング3との間に位置する。サンプル入り口は、上記上側ハウジング1に設けられ、サンプル出口は、上記下側ハウジング3に設けられる、上記サンプルは、上記上側ハウジング1の入り口から入り、上記フィルター2を透過する。その後、それは、上記下側ハウジング3の出口を通って流れ出る。上記フィルター2は、上記ポリマー改変基材から調製される。
【0050】
本発明の微生物を富化および検出するための方法は、上記濾過デバイスに適用され得る。第1に、生物学的サンプル(例えば、血液)が得られ;第2に、上記サンプルは、上記上側ハウジング1の入り口から導入され、上記フィルター2を通って濾過され、次いで、上記下側ハウジング3を通って流れ出る。上記サンプル中のヒト由来有核細胞(例えば、白血球)は、捕捉または分離され、上記濾液中の有核細胞の含有量は、大きく低減される。上記プロセスは、微生物を、上記フィルター2を通過または素通りさせることを可能にすると同時に、上記ヒト由来有核細胞を濾液から低減することを可能にする。さらに、このプロセスはまた、上記濾液中の微生物を富化し、ヒト由来有核細胞の干渉を低減する。有効な富化された微生物を有する上記濾液は、DNA精製のプロセスに供される。DNA精製サンプルは、適切な濃度において使用され、Oxford Nanopore迅速ライブラリー構築プロセスに従ってシーケンシングライブラリーが構築され、Oxford Nanopore GridIONシーケンサーが、シーケンシングのために使用される。そのシーケンシング結果は、上記改変基材が、ヒト由来有核細胞の干渉を特異的に除去し得、微生物の富化という目的を達成し得、微生物の割合において大きな増大をもたらすことを示す。
【0051】
本発明におけるDNAの決定は、PCR、qPCR、デジタルPCR、NGS、質量分析、またはNanoporeシーケンシングを含む一般的方法によって行われ得る。
【0052】
Nanoporeシーケンシングにおいて使用されるOxford Nanoporeシーケンシング技術は、増幅されたシグナルを要求するNGS第二世代技術と比較して、簡単なサンプル取り扱い、迅速かつ長いシーケンシング長(>10kbp)という利点を有する第三世代単一分子シーケンシング技術である。これらの利点は、臨床上未知である微生物病原体の迅速な同定に非常に適している。従って、この方法は、敗血症を検査する、病原体を検出するなどのために適用され得る。
【0053】
本発明は、図面および実施形態を参照しながら、以下でさらに明らかにされる。提供される以下の実施形態が例証目的に過ぎず、本発明を限定するとは意図されないことは、注記されるべきである。本発明を読んで理解した後に、当業者に自明なバリエーションに関しては、特許請求の範囲によって定義される発明の範囲内に含まれる。本発明の好ましい実施形態が、例証および記載されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更がその中で行われ得ることは、理解される。
【実施例
【0054】
実験法および材料
細胞株
全ての細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から得た。37℃、5% COのインキュベーター中で、TF1(ATCC(登録商標) CRL-2003TM)およびJurkatクローンE6-1(ATCC(登録商標) TIB-152TM)を、10% FBSを有するRPMI培地中で培養し、PC-3(ATCC(登録商標) CRL1435TM)を、10% FBSを有するF12K培地中で培養し、SK-BR-3(ATCC(登録商標) HTB30TM)を、10% FBSを有するMcCoy’s 5A(改変)培地中で培養し、K-562(ATCC(登録商標) CCL243TM)を、10% FBSを有するIMDM(イスコフ改変ダルベッコ培地)中で培養した。
【0055】
2.基材改変のための実験材料
本発明のモノマーの材料は、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)であり、これは、ヒドロキシル官能基およびアミド官能基の両方を有し、以下のとおりの化学構造を有する:
【化9】
【0056】
比較モノマーの物質は、正に荷電したN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)であり、これは、以下の化学構造を有する:
【化10】
【0057】
他に、ブチルメタクリレート(BMA)を、本発明のポリマーの基部末端として使用し、その結果、上記ポリマーは、基材の表面に物理的に吸収され得る。BMAは、以下の化学構造を有する:
【化11】
。4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(ACVA)は、開始剤として使用され、以下の化学構造を有する:
【化12】
【0058】
上記基材の材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロース、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。その化学構造は、それぞれ、以下のとおりである:
【化13】
【0059】
3.基材改変のためのポリマーの調製
基部末端としてのBMAおよび機能性末端としてのHEAAまたはDMAEMAを、所定の割合(基部末端が約70%および機能性末端が約30%)に従って混合し、開始剤としてACVAを、および溶媒としてエタノールを添加した。次に、重合反応を、70℃で24時間、行った。BMA-r-HEAAおよびBMA-r-DMAEMAポリマーを、それぞれ調製することができた。上記反応が完了した後に、その生成物を、沈殿剤として脱イオン水を使用して沈殿させ、次いで、乾燥させた。
【0060】
4.基材の表面改変
PP、PET、セルロース、およびPBTの各々を、改変させるべき基材として選択した。
【0061】
3.1 物理的吸着によるPP基材改変
BMA-r-HEAAポリマーおよびBMA-r-DMAEMAポリマーを、各々とり、溶媒としてエタノールを使用してポリマー溶液へと配合した。PP基材をとり、適切なサイズへと切断し、BMA-r-HEAAポリマー溶液中に1分間浸漬し、次いで、上記表面上の残留溶液を脱イオン水で洗い流し、次いで、上記PP基材を乾燥させた;上記と同様の作業を、PP基材およびBMA-r-DMAEMAポリマー溶液で出発して行った。よって、BMA-r-HEAAポリマーで被覆した表面改変PP基材およびBMA-r-DMAEMAポリマーで被覆した表面改変PP基材が、それぞれ得られ得る。
【0062】
3.2 物理的吸着によるPET基材改変
BMA-r-HEAAポリマーおよびBMA-r-DMAEMAポリマーを各々とり、溶媒としてエタノールを使用してポリマー溶液へと配合した。PET基材をとり、適切なサイズへと切断し、BMA-r-HEAAポリマー溶液中に1分間浸漬し、次いで、上記表面上の残留溶液を脱イオン水で洗い流し、次いで、上記PET基材を乾燥させた;上記と同様の作業を、PET基材およびBMA-r-DMAEMAポリマー溶液で出発して行った。よって、BMA-r-HEAAポリマーで被覆した表面改変PET基材およびBMA-r-DMAEMAポリマーで被覆した表面改変PET基材が、それぞれ得られ得る。
【0063】
3.3 物理的吸着によるセルロース基材改変
BMA-r-HEAAポリマーおよびBMA-r-DMAEMAポリマーを各々とり、溶媒としてエタノールを使用してポリマー溶液へと配合した。セルロース基材をとり、適切なサイズへと切断し、BMA-r-HEAAポリマー溶液中に1分間浸漬し、次いで、上記表面上の残留溶液を脱イオン水で洗い流し、次いで、上記セルロース基材を乾燥させた;上記と同様の作業を、セルロース基材およびBMA-r-DMAEMAポリマー溶液で出発して行った。よって、BMA-r-HEAAポリマーで被覆した表面改変セルロース基材およびBMA-r-DMAEMAポリマーで被覆した表面改変セルロース基材が、それぞれ得られ得る。
【0064】
3.4 物理的吸着によるPBT基材改変
BMA-r-HEAAポリマーおよびBMA-r-DMAEMAポリマーを各々とり、溶媒としてエタノールを使用してポリマー溶液へと配合した。PBT基材をとり、適切なサイズへと切断しBMA-r-HEAAポリマー溶液中に1分間浸漬し、次いで、上記表面上の残留溶液を脱イオン水で洗い流し、次いで、上記PBT基材を乾燥させた;上記と同様の作業を、PBT基材およびBMA-r-DMAEMAポリマー溶液で出発して行った。よって、BMA-r-HEAAポリマーで被覆した表面改変PBT基材およびBMA-r-DMAEMAポリマーで被覆した表面改変PBT基材が、それぞれ得られ得る。
【0065】
3.5 核磁気共鳴(NMR)の特定
上記のポリマーの各々10mgを秤量し、1mLのメタノール(d-MeOH)中に溶解して、それぞれ、10mg/mLの濃度を有する溶液を得た。上記溶液を、NMR試験管の中に入れ、測定を行うために、台湾のInstrumentation Center of National Central Universityに送付した。次いで、上記ポリマーの化学構造およびモノマー比を分析し、スペクトルの特徴的ピークによって計算した。
【0066】
3.6 表面改変の密度測定
改変前に、上記PP、PET、セルロースおよびPBT基材を、微量天秤によって秤量した。その表面を完全に改変した後に、上記基材を乾燥させ、表面改変基材の重量を、微量天秤によって測定した。上記基材の表面上で改変されたポリマーの重量は、各々の場合で、上記改変の前および後に、上記基材の重量差を計算することによって得られ得る。最後に、単位面積あたりの上記ポリマーの重量、すなわち、表面被覆密度は、変換によって得られ得る。
【0067】
3.7 血液濾過試験
上記改変されたPP、PET、セルロース、およびPBT基材を各々、直径2.6cmの円へと切断し、上記基材を20層積み重ねた。次いで、上記基材を、濾過デバイス(図2に示されるデバイスと同様)の中に入れ、ロックした。実験のこの部分は、2つの方法に分けられる:
方法1: 10mLの全血を、上記フィルター中の改変基材を通して濾過した。次いで、濾過前および濾過後の血液サンプルを、血球計算板を使用して調べて、白血球除去率および血小板保持率を計算した。
方法2: 1mLのE.coli液(6×10 細胞/mL)を、9mLの血液サンプルに添加し、血液試験管ミキサー中で5分間振盪した。次いで、その血液サンプルを取り出し、濾過した。血液サンプルおよび他の細菌(例えば、Staphylococcus aureus)または真菌(例えば、Aspergillus brasiliense)を含む混合物をまた、同じように調製した。
【0068】
3.8 酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)
実施形態3.7の方法1および方法2の濾過の前および後に得られた血液サンプルを、それぞれ、遠心分離機を使用して遠心分離した。その上清(すなわち、血漿)を抽出し、PBSで10倍希釈した。希釈後、そのサンプルのうちの0.25mLを取り出し、24ウェルプレート(24ウェル組織培養ポリスチレンプレート、24ウェルTCPSプレート)へと移した。そのサンプルに、フィブリノゲンに特異的な一次抗体(Monoclonal Anti-human Fibrinogen, Clone, Sigma Aldrich Co., cat: F4639)を0.25mL添加し、37℃のオーブンの中に30分間入れた。0.25mLの二次抗体(抗マウスIgG、ウサギIgG全体、HRP結合体化、Wako Co., cat: 014-1761)を添加した。この抗体は、上記一次抗体に特異的であり、その一次抗体に特異的に結合する。37℃のオーブンの中に30分間置いた後、0.25mLの発色剤(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン, TMB)を添加し、発色のために6分間静置し、次いで、0.25mLの1M 硫酸を各サンプルに添加して、その反応を停止させた。各サンプルからの200μlの溶液(TCPSの空のウェルを含む)を、96ウェルプレートへとピペットで移し、Bio-tekモデルPowerWare XSマイクロプレートリーダーを使用することによって、450nmのUV波長で分析した。濾過前および濾過後のサンプルのUV読み取りを得た後、そのタンパク質回収率が得られ得る。
【0069】
3.9 微生物濾過試験
種々の異なる微生物(真菌およびグラム陰性およびグラム陽性細菌(例えば、Aspergillus brasiliensis、E.Coli、Shewanella algae(SA)、Staphylococcus pseudintermedius(SP)、Staphylococcus aureus、Klebsiella pneumoniae(CRKP)、Imtechella halotolerans(I.Halo)、およびAllobacillus halotolerans(A.Halo)などを含む)を使用する。同量の微生物液を濾過したか、または濾過しなかった。Sterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)、改変されたPP、PET、セルロース、およびPBT基材を使用して、微生物濾過の能力を試験した。
グループ1: Shewanella algae(グラム陰性)、Staphylococcus pseudintermedius(グラム陰性)、およびKlebsiella pneumoniae(グラム陰性)。
グループ2: E.coli(グラム陰性)、Staphylococcus aureus(グラム陽性)、およびAspergillus brasiliensis(真菌)。
グループ3: Imtechella halotolerans(グラム陰性)およびAllobacillus halotolerans(グラム陽性)。
【0070】
3.10 DNA精製、濃縮および定量的シーケンシング
実施形態3.7の方法2の下で調製した細菌を添加した血液サンプルを、2つに分け、一方は濾過し、他方はコントロールとして濾過しなかった。そのサンプルを、各々遠心分離し、その上清(すなわち、血漿)を抽出した。実施形態3.9の上清および細菌濾過サンプルを、各々、DNeasy Blood and Tissue KitによってDNA精製に供した。精製DNAの濃度を、濾過前および濾過後の濃度の比較のために、ナノドロップ分光光度計によって測定し、半定量的リアルタイムPCRによって対応する細菌または真菌に関して分析した。適切な濃度のDNAをとり、シーケンシングライブラリーを、Oxford Nanopore迅速ライブラリー構築プロセスに従って構築した。Oxford Nanopore GridIONシーケンシングのシーケンシング結果は、上記改変基材が、宿主白血球およびヒトDNAを除去し、サンプル中の微生物DNAを富化することを証明する。
【0071】
5.基材改変の検出結果
4.1 核磁気共鳴(NMR)の分析
以下の表1に示されるように、さらなる説明の便宜のために、BMA-r-HEAAおよびBMA-r-DMAEMAのようなポリマー化合物は、それぞれ、B-r-HおよびB-r-Dと略される。図3は、構造式およびそれらの理論的に推定される、モノマー化合物およびポリマー化合物の各々1つの化学シフトの値を示す。図4は、モノマーおよびポリマー構造のNMRスペクトルの測定されたマップを示す。 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 13.21 (s, 1H), 10.25 (s, 1H), 9.10 (s, 1H), 8.66 (s, 1H), 8.25 (s, 1H), 8.12 (s, 1H), 8.10-7.82 (m, 5H), 7.17 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.14 (t, J = 74.7 Hz, 1H), 3.77- 3.73 (m, 4H), 3.04- 3.76 (m, 4H). その具体的実験条件および実際の試験値を、表1に列挙する。NMR分析によれば、HEAAの特徴的ピークは、部位「a」において主に出現し、DMAEMAの特徴的ピークは、部位「b」において主に出現する。この実験において使用されるポリマー化合物が成功裡に合成されたことは、NMRスペクトルによって示される。
表1
【表1】
【0072】
4.2 PP、PET、セルロース、およびPBT基材の被覆密度測定結果
図5は、PP、PET、セルロース、およびPBT基材(各々、B-r-HおよびB-r-Dのうちのいずれかで改変されている)の被覆密度結果を示す。改変前および改変後に上記基材の重量をそれぞれ秤量し、上記基材の表面積を測定することによって、上記基材の各々の表面上の各ポリマーの被覆密度が計算され得る。その密度は、約0.1~約0.3mg/cmの範囲に及んだ。
【0073】
4.3 血球の濾過試験結果
上記改変基材を使用して、血液、および上記血液濾過試験に関して記載されるとおりの細菌が添加された血液を濾過する。濾過前および濾過後の血液サンプル中の種々の血球の含有量を、血球計算板によって決定し得る。よって、白血球除去率および種々の血球の各々の保持率を計算し得る。フィブリノゲンを、ELISAによって検出した。細菌(例えば、E.Coli)を、吸光光度計を使用して検出する。
【0074】
RBCは、赤血球を指し、WBCは、白血球を指し、PLTは、血小板を指し、E.coliは、Escherichia coliを指し、フィブリノゲンは、血漿フィブリノゲンを指す。表2に示されるように、HEAAによって改変された基材は、少なくとも94%の白血球捕捉率を有し、赤血球のうちの93%超、血小板のうちの87%超、血漿フィブリノゲンのうちの93%超を保持する。従って、全血が上記改変基材を素通りする場合、白血球のうちの大部分は、上記基材に接着する一方で、赤血球、血小板、および血漿フィブリノゲンのうちの大部分は、濾液中に保持され得る。よって、本発明のB-r-H改変基材は、赤血球および血小板を捕捉または結合することなく、白血球を捕捉することに高度に特異的である。従って、上記改変基材は、全血サンプルの白血球低減のための良好な材料と考えられる。確かに、他の実施形態において、例えば、赤血球濃縮物または血小板濃縮物はまた、上述の改変基材を透過して、白血球を特異的に除去することが可能にされ得る。
【0075】
B-r-Hによって改変された基材を使用して白血球を捕捉、分離、または濾過する方法は、白血球の捕捉率を増大させるのみならず、赤血球、血小板、および血漿フィブリノゲンのうちの大部分をも保持する。従って、B-r-Hによって改変された基材を通して血液を濾過する方法が、ポリマー(例えば、B-r-DおよびDMAEMA)によって改変された基材を通して白血球を濾過する方法と比較して、異なる血液濾過機序によってもたらされることは明らかである。
【0076】
表3は、E.Coliを血液に添加した後の濾過の結果を示す。その結果は、HEAA-改変基材が、少なくとも95%の白血球捕捉率を有し、赤血球のうちの92%超、血小板のうちの87%超を保持することを示す。他に、E.Coliの保持率は、82%超である。これは、全血が上記改変基材を素通りする場合、白血球のうちの大部分が上記基材に接着し、その残りの濾液が、血液中の他の細胞および細菌を保持し得ることを意味する。よって、本発明のB-r-H改変基材は、ポリマー(例えば、B-r-DおよびDMAEMA)で改変された基材を通して白血球を捕捉、分離または濾過する従来の方法と比較して、白血球捕捉に関して非常に高い特異性を有する。さらに、上記B-r-H改変基材は、赤血球および血小板を捕捉も結合もしない。それは、赤血球、血小板、および血漿フィブリノゲンのうちの大部分を濾液中に保持し得、細菌のうちの大部分は、結合することなく上記改変基材を通過し得る。従って、白血球が特異的に除去された濾液を使用する場合、病原体検査の精度および効率が効果的に改善され得る。
表2
【表2】
表3
【表3】
【0077】
4.4 細菌濾過試験のDNA濃度結果
上述の細菌濾過試験法に従って、グループ1の細菌を、白血球捕捉に高度に特異的でありかつ他の細胞および細菌を保持し得るB-r-H改変基材を使用する濾過試験に供した。表4は、同量の細菌溶液(Shewanella algae(SA)、Staphylococcus pseudintermedius(SP)、Klebiella pneumoniae(CRKP)を含む)のデータを示す。B-r-H改変基材を通して濾過した後、その濾過したサンプル中で回収されたDNAの量は、濾過なしのサンプルの92%超に達し得る。この結果は、一般的な細菌の大部分が、上記高度に特異的な改変基材を透過することを許容されることを示す。
表4
【表4】
【0078】
4.5 血液模倣サンプルの半定量的リアルタイムPCRの半定量的比較結果
グループ2の微生物を、上記試験に供した。10 CFU/mLまたは10 CFU/mLの混合微生物(E.Coli: Staphylococcus aureus: Aspergillus brasiliensis=1:1:1)を、正常ヒト全血に添加した。上記サンプルのうちの5mLを、2,000gで15分間、遠心分離し、上側の血漿を取り出し、B-r-H改変基材で濾過したかまたは濾過しなかった。次いで、そのサンプルを、13,500rpmで10分間遠心分離して、その上清を除去し、底の生成物のDNAを精製した。その精製したDNAを、特定の細菌のプライマー(表5)を使用して、Light Cycler 96(Roche) PCR機器でのSYBR-green Semi-quantitative Real-Time PCR半定量法に従って半定量的比較に供した。上記半定量的分析結果を、表6に示した。W/Oフィルターは、未濾過サンプルを指す一方で、W/フィルターは、濾過したサンプルを指す。B-r-H 改変基材を通して濾過した血液サンプル中および未濾過血液サンプル中のE.coli(グラム陰性)、Staphylococcus aureus(グラム陽性)、およびAspergillus brasiliensis(真菌)の相当する濃度は、有意に異ならなかった。その結果は、B-r-H 改変基材を通した濾過後に、血液サンプル中の細菌および真菌のうちの大部分が、白血球捕捉において高度に特異的なこの基材を透過し得ることを示す。
表5
【表5】
表6
【表6】
【0079】
4.6 血液模倣サンプルのメタゲノムシーケンシング結果
4.6.1 インサイチュ陽性コントロール試験:
ZymoBIOMICSTM Spike-in Control I(High Microbial Load)(ZYMO RESEARCH, カタログ番号D6320 & D6320-10)を、インサイチュ陽性コントロールとして使用した。これは、2つの細菌株、Imtechella halotoleransおよびAllobacillus halotoleransの等しい細胞数からなる。正常ヒト全血サンプルに、それぞれ、1×10および1×10細胞/mLの全細菌を添加した。上記サンプルのうちの5mLを、2,000gで15分間遠心分離し、上側の血漿を取り出し、それぞれ、Sterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)、B-r-H 改変基材で濾過したか、または濾過しなかった。次いで、そのサンプルを、13,500rpmで10分間遠心分離して、上清を除去し、底の生成物中のDNAを、TANBead(登録商標) Nucleic Acid Extraction kit Blood Bacterial DNA Auto Plate(TAN Bead, CatM6BGA45)によって精製した。シーケンシングライブラリーを、Oxford Nanopore Technologies (ONT) SQK-RBK004 Rapid Barcoding Kitによって構築し、その精製DNAを、ONT FLOMIN106 (revD)フローセルを使用してシーケンシングした。その配列結果を表7に示した。W/Oは、未濾過サンプルを指し、W/f DevinおよびW/f PALLは、それぞれ、B-r-H改変基材およびSterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)で濾過したサンプルを指す。ΔAおよびΔIは、ヒト細胞が基底値である場合に、相対的な細菌量が、ヒト細胞より多いか否かに言及する。ΔAおよびΔI値が低いほど、相対的な細菌量がより多いことを意味する。その結果は、Sterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)またはB-r-H 改変基材を通して濾過した後に、それが実際に血液サンプル中の微生物を富化し得ることを示す。それらの中でも、試験グループ1×10 細胞/mLは、最も顕著な効果を有する。一般的なヒト身体中の病原性微生物の濃度はまた、極めて低いので、その結果は、本発明者らの予測と一致する。
表7
【表7】
【0080】
4.6.2 病原性微生物試験:
正常ヒト全血に、2.5×10 CFU/mLのE.coliおよび1ng/mLのKlebsiella pneumonia gDNAを添加した。上記サンプルのうちの5mLを、2,000gで15分間遠心分離し、上側の血漿を取り出し、B-r-H改変基材で濾過したかまたは濾過しなかった。次いで、そのサンプルを、13,500rpmで10分間遠心分離して、その上清を除去し、底の生成物のDNAを精製した。シーケンシングライブラリーを、Oxford Nanopore Technologies (ONT) SQK-RBK004 Rapid Barcoding Kitによって構築し、その精製DNAを、ONT FLOMIN106 (revD)フローセルを使用してシーケンシングした。その配列結果を表8に示した。W/Oフィルター-1およびW/Oフィルター-2は、未濾過サンプルを指し、W/フィルター-1およびW/フィルター-2は、濾過したサンプルを指す。B-r-H改変基材を通して濾過したサンプル中のK.Pneumoniaのパーセンテージは、未濾過サンプルと比較して、それぞれ、0.2%および0.3%から、10.6%および13.4%へと増大した。E.coliのパーセンテージは、それぞれ、0.05%および0.03%から2.8%および5.2%へと増大した。その結果は、B-r-H改変基材を通して濾過した後に、それが実際に、血液サンプル中の微生物を富化し、微生物の検出率を40倍を超えて増大させることができることを示す。
表8
【表8】
【0081】
1.ヒト由来有核細胞の濾過試験
5種のヒト有核細胞株(表9を参照のこと)を使用して、B-r-H改変基材のヒト由来有核細胞捕捉能力を試験した。上記細胞を採取し、5mL PBSで再懸濁し、次いで、計数のために10μLの細胞をとった。計数後、その細胞を、1×10 細胞/mLへと希釈し、上記サンプル(PBS中1×10 細胞/mL)の最終容積を>3mLにした。次いで、サンプルのうちの20μLをとり、LUNA-II Automated Cell Counter(Logos Biosystems)で3回計数した。1mLのサンプルを注射筒へ追加し、上記B-r-H改変基材を通して濾過した。最後に、細胞計数(3回反復)のためにその濾液のうちの20μLをとった。
【0082】
その結果は、上記改変基材が少なくとも99%という有核細胞捕捉率を有することを示す。これは、生物学的サンプルが上記改変基材を素通りする場合に、上記ヒト由来有核細胞のうちの大部分が、上記基材に接着することを意味する。その結果を表10に示す。上記サンプル中のヒト有核細胞は、B-r-H改変基材を通して濾過した後に、特異的に除去される。
表9
【表9】
表10
【表10】
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2023518525000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法であって、前記方法は、a)前記生物学的サンプルを集める工程;b)前記サンプルを、Sterile Acrodisc(登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)またはポリマー改変基材を通して濾過する工程であって、前記サンプル中のヒト由来有核細胞は、前記フィルターまたはポリマー改変基材によって捕捉または分離され、前記サンプル中の前記微生物は、濾液へと、前記フィルターまたはポリマー改変基材を通過または素通りする、工程;およびc)前記濾液に存在する前記微生物を検出する工程を包含し;ここで前記有核細胞は、赤芽球、白血球およびがん細胞のうちの1またはこれより多くを含み;前記ポリマーは、式(1)の構造:
【化14】

を有する1またはこれより多くのモノマーの重合によって調製され、ここでRは、水素、メチル、エチル、ヒドロキシル、C1-12アルキル、フェニルからなる群より独立して選択され;Rは、水素、メチル、エチル、C1-6アルキル、アミノ、フェニルからなる群より独立して選択され;そしてnは、1~5の整数である、方法。
【請求項2】
前記ヒト由来有核細胞は、白血球である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物は、細菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物は、真菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記濾液中の前記微生物の保持率は、65%を上回る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記濾液中の前記微生物の保持率は、80%を上回る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプル中の赤血球は、前記濾液へと、前記ポリマー改変基材を通過または素通りし、前記赤血球の保持率は、80%を上回る、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル中の血小板は、前記濾液へと、前記ポリマー改変基材を通過または素通りし、前記血小板の保持率は、80%を上回る、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプル中のフィブリノゲンは、前記濾液へと、前記ポリマー改変基材を通過または素通りし、前記フィブリノゲンの保持率は、80%を上回る、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記濾液中の前記微生物の検出率は、濾過なしの前記サンプルより2倍高い、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記濾液中の前記微生物の検出率は、濾過なしの前記サンプルより40倍高い、請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
式(1)のモノマーは、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、NHEMAA、およびN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、HEAAである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーは、さらなるモノマーをさらに含み、前記さらなるモノマーは、ブチルメタクリレートであり、式(1)のモノマーは、コポリマーを形成するための前記さらなるモノマーと共重合される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーは、式(2)の構造:
【化15】

を有し、ここでnは、10~50の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーは、式(4)の構造:
【化16】

を有し、ここでtは、50~90の整数であり、nは、10~50の整数であり、Rは、
【化17】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーは、セグメント化ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーは、被覆、スプレー、または含浸によって前記基材に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記基材は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、ポリブチレンテレフタレートである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記改変基材の表面元素は、炭素、酸素、および窒素を含み;炭素、酸素、および窒素の総モルパーセンテージは、100%として定義され、炭素のモルパーセンテージは、約76.22%~79.84%であり、酸素のモルパーセンテージは、約18.1%~21.04%であり、窒素のモルパーセンテージは、約2.05%~2.75%である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、生物学的サンプルの病原体検査のために使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記生物学的サンプルは、血液、脳脊髄液、細胞、細胞抽出物、組織サンプル、および組織生検材料からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
生物学的サンプル中の病原体の前記検査は、個体における敗血症診断を可能にする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記濾液は、DNA精製に供され、PCR、qPCR、デジタルPCR、NGS、質量分析、またはNanoporeシーケンシングによって分析される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記濾液は、DNA精製に供され、シーケンシングライブラリーは、Oxford Nanopore迅速ライブラリー構築プロセスによって構築され、Oxford Nanopore GridIONシーケンサーでシーケンシングされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法において使用されるデバイスであって、前記デバイスは、上側ハウジング、フィルター、および下側ハウジングを含み;ここで前記フィルターは、前記上側ハウジングと前記下側ハウジングとの間に位置し、請求項1に記載のポリマー改変基材から作製される、デバイス。
【請求項26】
前記デバイスの前記上側ハウジングは、入り口とともに提供される一方で、前記下側ハウジングは、出口とともに提供され;前記生物学的サンプルは、前記上側ハウジングの前記入り口から前記デバイスに入り、前記フィルターを透過し、前記デバイスから前記下側ハウジングの前記出口を通って流れ出る、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記デバイスは、生物学的サンプルの病原体検査のために使用される、請求項26に記載のデバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
表現「有核細胞の低減」およびその文法上のバリエーションは、全てのまたは実質的に全ての有核細胞が、完全に除去されることを意味するとは意図されない。代わりに、ヒト由来有核細胞の細胞数は、分離または濾過の間に低減されることを広く示すために使用される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
生物学的サンプル中の微生物を富化および検出するための方法であって、前記方法は、a)前記生物学的サンプルを集める工程;b)前記サンプルを、Sterile Acrodisc (登録商標) White Blood Cell Syringe Filter(PALL)またはポリマー改変基材を通して濾過する工程であって、前記サンプル中のヒト由来有核細胞は、前記フィルターまたはポリマー改変基材によって捕捉または分離され、前記サンプル中の前記微生物は、濾液へと、前記フィルターまたはポリマー改変基材を通過または素通りする、工程;およびc)前記濾液に存在する前記微生物を検出する工程を包含し;ここで前記有核細胞は、赤芽球、白血球およびがん細胞のうちの1またはこれより多くを含み;前記ポリマーは、式(1)の構造:
【化14】

を有する1またはこれより多くのモノマーの重合によって調製され、ここでR は、水素、メチル、エチル、ヒドロキシル、C 1-12 アルキル、フェニルからなる群より独立して選択され;R は、水素、メチル、エチル、C 1-6 アルキル、アミノ、フェニルからなる群より独立して選択され;そしてnは、1~5の整数である、方法。
(項目2)
前記ヒト由来有核細胞は、白血球である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記微生物は、細菌である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記微生物は、真菌である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記濾液中の前記微生物の保持率は、65%を上回る、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記濾液中の前記微生物の保持率は、80%を上回る、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記サンプル中の赤血球は、前記濾液へと、前記ポリマー改変基材を通過または素通りし、前記赤血球の保持率は、80%を上回る、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記サンプル中の血小板は、前記濾液へと、前記ポリマー改変基材を通過または素通りし、前記血小板の保持率は、80%を上回る、項目5に記載の方法。
(項目9)
前記サンプル中のフィブリノゲンは、前記濾液へと、前記ポリマー改変基材を通過または素通りし、前記フィブリノゲンの保持率は、80%を上回る、項目5に記載の方法。
(項目10)
前記濾液中の前記微生物の検出率は、濾過なしの前記サンプルより2倍高い、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記濾液中の前記微生物の検出率は、濾過なしの前記サンプルより40倍高い、項目10のいずれかに記載の方法。
(項目12)
式(1)のモノマーは、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、NHEMAA、およびN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、HEAAである、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記ポリマーは、さらなるモノマーをさらに含み、前記さらなるモノマーは、ブチルメタクリレートであり、式(1)のモノマーは、コポリマーを形成するための前記さらなるモノマーと共重合される、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記ポリマーは、式(2)の構造:
【化15】

を有し、ここでnは、10~50の整数である、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記ポリマーは、式(4)の構造:
【化16】

を有し、ここでtは、50~90の整数であり、nは、10~50の整数であり、R は、
【化17】

である、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記ポリマーは、セグメント化ポリマーである、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記ポリマーは、被覆、スプレー、または含浸によって前記基材に配置される、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記基材は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、セルロース、ポリブチレンテレフタレートである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記改変基材の表面元素は、炭素、酸素、および窒素を含み;炭素、酸素、および窒素の総モルパーセンテージは、100%として定義され、炭素のモルパーセンテージは、約76.22%~79.84%であり、酸素のモルパーセンテージは、約18.1%~21.04%であり、窒素のモルパーセンテージは、約2.05%~2.75%である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記方法は、生物学的サンプルの病原体検査のために使用される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記生物学的サンプルは、血液、脳脊髄液、細胞、細胞抽出物、組織サンプル、および組織生検材料からなる群より選択される、項目20に記載の方法。
(項目22)
生物学的サンプル中の病原体の前記検査は、個体における敗血症を診断することを含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記濾液は、DNA精製に供され、PCR、qPCR、デジタルPCR、NGS、質量分析、またはNanoporeシーケンシングによって分析される、項目19に記載の方法。
(項目24)
前記濾液は、DNA精製に供され、シーケンシングライブラリーは、Oxford Nanopore迅速ライブラリー構築プロセスによって構築され、Oxford Nanopore GridIONシーケンサーでシーケンシングされる、項目23に記載の方法。
(項目25)
項目1に記載の方法において使用されるデバイスであって、前記デバイスは、上側ハウジング、フィルター、および下側ハウジングを含み;ここで前記フィルターは、前記上側ハウジングと前記下側ハウジングとの間に位置し、項目1に記載のポリマー改変基材から作製される、デバイス。
(項目26)
前記デバイスの前記上側ハウジングは、入り口とともに提供される一方で、前記下側ハウジングは、出口とともに提供され;前記生物学的サンプルは、前記上側ハウジングの前記入り口から前記デバイスに入り、前記フィルターを透過し、前記デバイスから前記下側ハウジングの前記出口を通って流れ出る、項目25に記載のデバイス。
(項目27)
前記デバイスは、生物学的サンプルの病原体検査のために使用される、項目26に記載のデバイス。
【国際調査報告】