(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(54)【発明の名称】鋸歯状結腸直腸がんを処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230425BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230425BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230425BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230425BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K38/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556528
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 US2021023141
(87)【国際公開番号】W WO2021188887
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517006821
【氏名又は名称】サンフォード バーナム プレビーズ メディカル ディスカバリー インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】モスカト ホルヘ
(72)【発明者】
【氏名】ディアス-メコ マリア ティー.
(72)【発明者】
【氏名】デュラン アンヘレス
(72)【発明者】
【氏名】ナカニシ ユウキ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA53
4C084DC22
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC19
4C084ZC42
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE01
(57)【要約】
本明細書において、対象を、鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を有すると特定するための方法、およびヒト鋸歯状CRCのモデルを開示する。また、本明細書において、対象の鋸歯状CRCを処置するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で対象に投与することを含む、前記対象の鋸歯状腫瘍の処置方法であって、前記対象由来の生物学的試料が、鋸歯状腫瘍がない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを有する、方法。
【請求項2】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤が、低分子を含む、請求項2記載の方法。
【請求項3】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤が、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む、請求項1~2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤が、CD44のアンタゴニストを含む、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤が、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤が、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤が、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤が、外来性ヒアルロニダーゼを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤が、組換えヒアルロニダーゼを含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤が、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
PVHAの治療上有効な量が、0.01~0.5 mg/kgである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
PVHAの治療上有効な量が、0.02~0.4 mg/kgである、請求項10~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)が、単独療法として対象に投与される、請求項10~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量が、腫瘍形成を、前記対象において無処置個体と比べて少なくとも30%低減させるのに充分である、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記腫瘍形成が、鋸歯状のポリープおよび癌腫の計数を使用することによって定量される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量が、腫瘍量を、前記対象において無処置個体と比べて少なくとも20%低減させるのに充分である、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記腫瘍量が、腫瘍の総数、腫瘍の平均サイズまたは腫瘍細胞量のうちの少なくとも1つを用いて定量される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量が、前記腫瘍内のヒアルロナン沈着を低減させるのに充分である、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量が、前記腫瘍内のコラーゲン沈着を低減させるのに充分である、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記生物学的試料が、血液、血漿、血清または組織生検材料を含む、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルが、PKCζおよびPKCλ/ιの低い転写レベル、低い翻訳レベルまたは低い活性レベルを含む、請求項1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で対象に投与することを含む、前記対象の鋸歯状腫瘍の処置方法。
【請求項23】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤が、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)が、単独療法として前記対象に投与される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
PVHAの治療上有効な量が、0.01~0.5 mg/kgである、請求項23~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
PVHAの治療上有効な量が、0.02~0.4 mg/kgである、請求項23~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量が、腫瘍形成を、前記対象において無処置個体と比べて少なくとも30%低減させるのに充分である、請求項23~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記対象由来の生物学的試料が、鋸歯状腫瘍がない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを有する、請求項22~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量が、腫瘍形成を、前記対象において無処置個体と比べて少なくとも30%低減させるのに充分である、請求項22~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
前記腫瘍形成が、鋸歯状のポリープおよび癌腫の計数を使用することによって定量される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量が、腫瘍量を、前記対象において無処置個体と比べて少なくとも20%低減させるのに充分である、請求項22~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
前記腫瘍量が、腫瘍の総数、腫瘍の平均サイズまたは腫瘍細胞量のうちの少なくとも1つを用いて定量される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量が、前記腫瘍内のヒアルロナン沈着を低減させるのに充分である、請求項22~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量が、前記腫瘍内のコラーゲン沈着を低減させるのに充分である、請求項22~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
前記生物学的試料が、血液、血漿、血清または組織生検材料を含む、請求項28~34のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/992,819号に基づく恩典を主張する。米国特許法第119条に基づく優先権を主張する。上記の特許出願は、参照により、あたかも本明細書に完全に示されているかのごとく組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国立衛生研究所によって付与された助成金番号R01CA207177、R01CA172025、R01CA192642およびR01CA218254での政府の補助を伴ってなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
結腸直腸がん(CRC)の鋸歯状腺癌サブタイプは全CRCの15~30%を占め、侵攻性および処置抵抗性である。鋸歯状CRCは、近位結腸に最も一般的にみられる前駆病変を経由して発症する。鋸歯状CRCは通常、内視鏡による前駆病変の検出によって診断される。しかしながら、前駆病変は、技術または内視鏡医の限界のため患者において識別することが困難である。非限定的な一例において、粘液キャップによって被覆された右側結腸の平坦病変は識別することが特に困難であり、鋸歯状のポリープまたは腺腫の半数以上で報告されている。最後に、高リスク鋸歯状腺腫は低リスク過形成性ポリープと誤判別されることがよくある。したがって、適正な治療的および予防的処置レジメンを確実に行なうために患者の鋸歯状CRCを診断する、より正確な方法の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0004】
概要
鋸歯状CRCの発症における腫瘍微小環境の役割、すなわち間質の応答、炎症応答および免疫応答については、ほとんど知られていない。CRCは、従来経路または代替経路のいずれかにより発生する前駆病変を経由して発症すると考えられている。鋸歯状CRCは、子宮内膜上皮内癌(EIC)の前駆病変に由来するが、慣用的なバイオマーカー、例えばAPCまたはβ-カテニンの変化がない代替的なCRC経路で発生する。この代替経路は鋸歯状腺腫の形成によって始まり、鋸歯状腺腫は悪性EICへと徐々に進行する。EICは、時にはKRASまたはBRAFにおける活性化変異の結果としてのMAPKカスケード活性化と関連している。しかしながら、このような変異はすべての鋸歯状腺腫に存在するとは限らず、そのため、鋸歯状CRCの早期段階での検出におけるKRASまたはBRAFにおける変異の早期検出の使用は限定的となっている。
【0005】
鋸歯状前駆病変は、非常に不良な予後を有するCRCの転写性サブタイプと関連している。両者間の明白な機序の違いにもかかわらず、診療現場では、鋸歯経路から発生したCRCを、どのようにして通常のCRCとは異なる処置を行なうべきか、あるいは鋸歯経路から発生したCRCを通常のCRCとは異なる処置を行なうべきかどうかに関する明白な治療のコンセンサスはない。免疫療法は、鋸歯状CRCを有する患者に対して実行可能な選択肢であり得る。非限定的な一例において、プログラム細胞死1(PD-1)免疫チェックポイント阻害剤は、特定の亜臨床表現型の鋸歯状CRCには有望な治療的解決策であるが、そのすべてがそうというわけではない。そのため、鋸歯状腫瘍の免疫学的環境の理解は、より効果的な治療薬を同定するために極めて重要である。
【0006】
腸の慢性炎症性疾患はCRCに対する高リスクと関連している。非定型プロテインキナーゼC(aPKC)λ/ι(PKCλ/ι;PRKCI遺伝子によってコードされる)は、特に炎症性腸疾患(IBD)、例えばクローン病(CD)および潰瘍性大腸炎(UC)の状況における腸の炎症の調節因子である。PKCλ/ιはパネート細胞分化に必要とされ、腸上皮の細胞死の負の調節因子である。PKCλ/ιレベルは、CD患者のパネート細胞では、疾患進行と相関する様式で低下する。さらに、CRC患者のカプラン・マイヤー生存分析により、低いPKCλ/ιレベルは有意に悪い患者生存率と相関することが示された。なんら特定の理論に拘束されることを望まないが、PKCλ/ι欠損腸上皮のこの炎症促進環境が、パネート細胞分化の障害および腸管上皮細胞(IEC)死の増大によるバリア欠陥と関連している可能性がある。興味深いことに、慢性炎症が存在する場合であっても、腸上皮におけるPKCλ/ιの選択的遺伝子不活性化は、Apc欠損と組み合わさらない限り腫瘍形成をもたらさない。この場合、腸腺腫の数は、炎症およびマイクロバイオームに依存する機序によって有意に増加するが、この腺腫は侵攻性および浸潤性のステージまで決して進行しない。aPKCであるPKCζ(遺伝子PRKCZによってコードされる)は、がんのイニシエーションおよび進行を抑制し得る経路をPKCλ/ι欠損腸において維持することによってPKCλ/ιの減少を代償しているのかもしれないと考えられる。
【0007】
本開示により、両方のaPKC遺伝子不活性化により、進行CRCまで進行させる鋸歯経路によって、自然な腫瘍形成がもたらされることを示す。上皮のPKCλ/ι欠損は、腫瘍のイニシエーションを抑制した免疫原性細胞の死をもたらす。一方、PKCζの減少は、間質活性化および免疫抑制に付随するインターフェロンおよびCD8+ T細胞の応答の障害をもたらす。したがって、PKCζおよびPKCλ/ιは協調的に鋸歯状腫瘍形成を抑制する。そのため、対象から採取された試料で検出されたPKCζおよびPKCλ/ιのレベルが低いことは、該対象が鋸歯状CRCを有する、あるいは鋸歯状CRCを発症することを示し得る。
【0008】
本開示により、さらに、PKCζおよびPKCλ/ιの欠失を有するマウス細胞株由来のマウスの鋸歯状腫瘍は、ヒアルロナン(HA)ならびにHAおよびがん幹細胞マーカーの受容体であるCD44の発現の増大を示す。ヒアルロナンのこの増加は他の幹細胞マーカーの有意な減少に付随する。このような所見は、対象から採取された試料中にHAもしくはCD44のいずれか、またはHAとCD44の組合せが検出されることが、該対象が鋸歯状CRCを有する、あるいは鋸歯状CRCを発症することを示し得る、ということを示唆する。
【0009】
本明細書に開示の諸局面により、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で対象に投与することによる、該対象の疾患または病態のサブタイプの処置方法を提供し、該対象から採取された生物学的試料では、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルが検出されるものとする。いくつかの態様において、該対象から採取された生物学的試料では、該疾患または病態の該サブタイプを有していない個体のヒアルロナンの発現レベルと比べて高いヒアルロナンの発現レベルが検出される。いくつかの態様において、該高いヒアルロナンレベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって検出される。いくつかの態様において、該高いヒアルロナンの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPKCλ/ιの発現は、該疾患または病態の該サブタイプを有していない個体と比べて、該生物学的試料におけるヒアルロナン発現の増大を示す。いくつかの態様において、疾患または病態は、結腸直腸がん、膵臓がん、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維症、線維化狭窄(fibrostenosis)またはその組合せを含む。いくつかの態様において、疾患または病態のサブタイプは、該疾患または病態の該サブタイプを有していない個体と比べて、該対象から採取された生物学的試料中のヒアルロナンの増加を特徴とする、疾患または病態を含む。いくつかの態様において、疾患または病態のサブタイプは、該対象の腸内の鋸歯状ポリープを特徴とする疾患または病態を含む。いくつかの態様において、鋸歯状ポリープは無茎性鋸歯状腺腫(SSA)を含む。いくつかの態様において、疾患または病態のサブタイプは、鋸歯状腺癌を特徴とする疾患または病態を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-1抗体を含む。いくつかの態様において、該方法は、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、該方法は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1の受容体の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、ガルニセルチブを含む。いくつかの態様において、生物学的試料は、血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって検出される。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。
【0010】
本明細書に開示の諸局面により、疾患または病態に罹患している対象において、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現を阻害する、あるいは該活性または発現を低減させる方法であって:
a)該対象を、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを有する、と特定すること;ならびに
b)PD-L1の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること
を含む、方法、を提供する。いくつかの態様において、該方法は:該対象を、該疾患または病態を有していない個体のヒアルロナンの発現レベルと比べて高いヒアルロナンの発現レベルを有する、と特定すること、をさらに含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって確認される。いくつかの態様において、ヒアルロナンの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、該低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、該疾患または病態を有していない個体と比べて、該対象におけるヒアルロナン発現の増大を示す。いくつかの態様において、疾患または病態は、結腸直腸がん(CRC)、鋸歯状CRC、膵臓がん、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維症、線維化狭窄またはその組合せを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-1抗体を含む。いくつかの態様において、該方法は、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、該方法は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1の受容体の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、ガルニセルチブを含む。
【0011】
いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって確認される。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。
【0012】
本明細書に開示の諸局面により、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で対象に投与することによる、該対象の疾患または病態のサブタイプの処置方法を提供し、該対象から採取された生物学的試料では、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルが検出されるものとする。いくつかの態様において、該対象から採取された生物学的試料では、該疾患または病態の該サブタイプを有していない個体のヒアルロナンの発現レベルと比べて高いヒアルロナンレベルが検出される。いくつかの態様において、該高いヒアルロナンレベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって検出される。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルが検出され、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPCKλの発現は、該疾患または病態の該サブタイプを有していない個体と比べて、該生物学的試料におけるヒアルロナン発現の増大を示す。いくつかの態様において、疾患または病態は結腸直腸がん、膵臓がん、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維症、線維化狭窄またはその組合せを含む。いくつかの態様において、疾患または病態のサブタイプは、該疾患または病態の該サブタイプを有していない個体と比べて、該対象から採取された生物学的試料中のヒアルロナンの増加を特徴とする疾患または病態を含む。いくつかの態様において、疾患または病態のサブタイプは、該対象の腸内の鋸歯状ポリープを特徴とする疾患または病態を含む。いくつかの態様において、鋸歯状ポリープは無茎性鋸歯状腺腫(SSA)を含む。いくつかの態様において、疾患または病態のサブタイプは、鋸歯状腺癌を特徴とする疾患または病態を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、該方法は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1の受容体の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、ガルニセルチブを含む。いくつかの態様において、該方法は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-1抗体を含む。いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって検出される。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。
【0013】
本明細書に開示の諸局面により、疾患または病態に罹患している対象においてヒアルロナンの活性または発現を阻害する、あるいは該活性または発現を低減させる方法であって:
a)該対象を、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを有する、と特定すること;ならびに
b)ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること
を含む、方法、を提供する。いくつかの態様において、該方法は:該対象を、該疾患または病態を有していない個体のヒアルロナンの発現レベルと比べて高いヒアルロナンの発現レベルを有する、と特定すること、をさらに含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって確認される。いくつかの態様において、該高いヒアルロナンの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、該低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、該疾患または病態を有していない個体と比べて、該対象におけるヒアルロナン発現の増大を示す。いくつかの態様において、疾患または病態は結腸直腸がん(CRC)、鋸歯状CRC、膵臓がん、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維症、線維化狭窄またはその組合せを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、該方法は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1の受容体の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、ガルニセルチブを含む。いくつかの態様において、該方法は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-1抗体を含む。いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって確認される。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。
【0014】
本明細書に開示の諸局面により、鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を有する対象にヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で投与することによって、該対象において腫瘍形成を好転させる、あるいは抑制する方法を提供し、該対象から採取された生物学的試料では、鋸歯状CRCを有していない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルが検出されるものとする。いくつかの態様において、該対象から採取された生物学的試料では、該CRCを有していない個体のヒアルロナンの発現レベルと比べて高いヒアルロナンの発現レベルが検出される。いくつかの態様において、該高いヒアルロナンの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって検出される。いくつかの態様において、該高いヒアルロナンの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、該対象から採取された生物学的試料で検出される該低いPKCζおよびPCKλの発現レベルは、鋸歯状CRCを有していない個体と比べて、該生物学的試料におけるヒアルロナン発現の増大を示す。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、該方法は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1の受容体の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、ガルニセルチブを含む。いくつかの態様において、該方法は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-1抗体を含む。いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって検出される。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。
【0015】
本明細書に開示の諸局面により、鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を有する対象において腫瘍形成を好転させる、あるいは抑制する方法であって:
a)該対象を、鋸歯状CRCを有していない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを有する、と特定すること;ならびに
b)ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること
を含むことによるものである、方法、を提供する。いくつかの態様において、該方法は:該対象を、該CRCを有していない個体のヒアルロナンの発現レベルと比べて高いヒアルロナンの発現レベルを有する、と特定すること、をさらに含む。いくつかの態様において、該高いヒアルロナンの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって確認される。いくつかの態様において、ヒアルロナンの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、該低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、該疾患または病態を有していない個体と比べて、該対象におけるヒアルロナン発現の増大を示す。いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含むアッセイによって確認される。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、該方法は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1の受容体の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、ガルニセルチブを含む。いくつかの態様において、該方法は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること、をさらに含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-1抗体を含む。
【0016】
本明細書に開示の諸局面により、その必要のある対象において、結腸直腸がん(CRC)のサブタイプを診断する方法であって:
a)その必要のある対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
c)該対象を鋸歯状結腸直腸がん(CRC)と診断すること
を含む、方法、を提供し、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、該CRCを有していない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いものとする。いくつかの態様において、該方法は:
a)該生物学的試料を、染色体不安定性表現型(CCS1)、高頻度マイクロサテライト不安定性およびCpGアイランドメチル化表現型(MSI/CIMP+)またはマイクロサテライト安定性表現型(MSS)を含む結腸がんサブタイプ(CCS)を検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
b)該対象を鋸歯状CRCと診断すること
をさらに含み、検出されたCCSはMSS表現型を含んでいるものとする。いくつかの態様において、該低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、該疾患または病態を有していない個体と比べて、該対象におけるヒアルロナン発現の増大を示す。いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、該方法は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で投与することによって該対象を処置すること、をさらに含み、該対象は、鋸歯状CRCと診断されているものとする。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1の受容体の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、ガルニセルチブを含む。いくつかの態様において、該方法は、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で投与することによって該対象を処置すること、をさらに含み、該対象は、鋸歯状CRCと診断されているものとする。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、該方法は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で投与することによって該対象を処置すること、をさらに含み、該対象は、鋸歯状CRCと診断されているものとする。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-1抗体を含む。
【0017】
本明細書に開示の諸局面により:
a)結腸直腸がん(CRC)を有する対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
c)該CRCを、鋸歯状CRCと特性評価すること
を含む、対象の結腸直腸がん(CRC)のサブタイプを特性評価する方法を提供し、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、該CRCを有していない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いものとする。いくつかの態様において、該方法は:
a)該生物学的試料を、染色体不安定性表現型(CCS1)、高頻度マイクロサテライト不安定性およびCpGアイランドメチル化表現型(MSI/CIMP+)またはマイクロサテライト安定性表現型(MSS)を含む結腸がんサブタイプ(CCS)を検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
b)CRCの該サブタイプを鋸歯状CRCと特性評価すること
をさらに含み、検出されたCCSはMSS表現型を含んでいるものとする。いくつかの態様において、該低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、該疾患または病態を有していない個体と比べて、該対象におけるヒアルロナン発現の増大を示す。いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、該方法は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で投与することによって該対象を処置すること、をさらに含み、該CRCは鋸歯状CRCと特性評価されているものとする。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1の受容体の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、ガルニセルチブを含む。いくつかの態様において、該方法は、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で投与することによって該対象を処置すること、をさらに含み、該CRCは鋸歯状CRCと特性評価されているものとする。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、該方法は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で投与することによって該対象を処置すること、をさらに含み、該CRCは鋸歯状CRCであると特性評価されているものとする。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-1抗体を含む。
【0018】
本明細書に開示の諸局面により、炎症性腸疾患(IBD)に罹患している対象が鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を有するかどうか、あるいは鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を発症するかどうかを判定する方法であって:
a)該対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
c)該対象が鋸歯状CRCを有する、あるいは鋸歯状CRCを発症する、と判定すること
を含む方法を提供し、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、CRCを有していない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いものとする。いくつかの態様において、IBDはクローン病、潰瘍性大腸炎、薬物療法不応性の潰瘍性大腸炎、薬物療法不応性もしくは複合型のクローン病、大腸炎、線維症、線維化狭窄またはその組合せを含む。いくつかの態様において、該低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、該疾患または病態を有していない個体と比べて、該対象におけるヒアルロナン発現の増大を示す。いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、デオキシリボ核酸(DNA)シーケンシング、リボ核酸(RNA)シーケンシング、ジェノタイピングアレイ、免疫組織化学検査、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、単一分子アレイ(Simoa)またはその組合せを含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルは、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはタンパク質を含む。いくつかの態様において、該方法は、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で投与することによって該対象を処置すること、をさらに含み、該対象は、鋸歯状CRCを有する、あるいは鋸歯状CRCを発症すると判定されているものとする。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1の受容体の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、ガルニセルチブを含む。いくつかの態様において、該方法は、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で投与することによって該対象を処置すること、をさらに含み、該対象は、鋸歯状CRCを有する、あるいは鋸歯状CRCを発症すると判定されているものとする。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、該方法は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で投与することによって該対象を処置すること、をさらに含み、該対象は、鋸歯状CRCを有する、あるいは鋸歯状CRCを発症すると判定されているものとする。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-1抗体を含む。
【0019】
本明細書に開示の諸局面により:
a)PKCζおよびPKCλ/ιを発現しない、あるいはPKCζおよびPKCλ/ιを低発現する、ある量の細胞;
b)PKCζおよびPKCλ/ιを発現しない、あるいはPKCζおよびPKCλ/ιを低発現する、該量の細胞が注射されている動物;または
c)PrkciおよびPrkczのノックアウトもしくはノックダウンを含む導入遺伝子を有するトランスジェニック動物
を含む、鋸歯状結腸直腸がんモデルを提供する。いくつかの態様において、該量の細胞および該トランスジェニック動物は、マイクロサテライト安定性表現型をさらに特徴とする。いくつかの態様において、該量の細胞および該トランスジェニック動物は、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)経路および/またはYes関連タンパク質(YAP)経路内の1つまたは複数の遺伝子の発現についてエンリッチメントされる。いくつかの態様において、該量の細胞が示す細胞死は、PKCζまたはPKCλ/ιを発現しない、あるいはPKCζまたはPKCλ/ιを低発現するある量の細胞と比べて少ない。いくつかの態様において、該トランスジェニック動物が示す細胞死は、PrkciまたはPrkczのノックアウトまたはノックダウンを含む導入遺伝子を有するトランスジェニック動物と比べて少ない。いくつかの態様において、該量の細胞は、ヒアルロナンを過剰発現する。いくつかの態様において、該トランスジェニック動物は、該トランスジェニック動物の鋸歯状腫瘍の間質内においてヒアルロナンを過剰発現する。いくつかの態様において、該量の細胞は、CD44を過剰発現する。いくつかの態様において、該トランスジェニック動物は、CD44を過剰発現する。いくつかの態様において、該量の細胞は、Olfm4、Ascl2またはLgr5を含む幹細胞バイオマーカーを低発現する。いくつかの態様において、該トランスジェニック動物は、Olfm4、Ascl2またはLgr5を含む幹細胞バイオマーカーを低発現する。いくつかの態様において、該トランスジェニック動物は、Irf7、Oas1a、Isg15またはCxcl10を含むインターフェロン応答性遺伝子を低発現する。いくつかの態様において、該量の細胞は、Irf7、Oas1a、Isg15またはCxcl10を含むインターフェロン応答性遺伝子を低発現する。いくつかの態様において、該トランスジェニック動物は、哺乳動物を含む。いくつかの態様において、該トランスジェニック動物は、マウスを含む。いくつかの態様において、該トランスジェニック動物は、ラットを含む。いくつかの態様において、該トランスジェニック動物は、サルを含む。いくつかの態様において、該量の細胞は、オルガノイドを構成する。いくつかの態様において、該量の細胞は、3D培養物を構成する。いくつかの態様において、該トランスジェニック動物は、小腸および大腸の絨毛および陰窩上皮細胞内のユビキタスプロモーターに機能的に連結されたリコンビナーゼをコードしている導入遺伝子を含む第1の動物と、PrkciおよびPrkczを含むloxPに隣接した遺伝子を含む第2の動物とを交配し、小腸および大腸の絨毛および陰窩上皮細胞にそれぞれPrkciおよびPrkczのノックアウトまたはノックダウンを有するトランスジェニック動物を作製することにより作製される。いくつかの態様において、ユビキタスプロモーターはvasaプロモーター、c-kitプロモーター、Dnd1プロモーター、Dppa3プロモーター、Fkbp6プロモーター、Fragilisプロモーター、Fragilis-2プロモーター、GDF-3プロモーター、Mov10l1プロモーター、Nanogプロモーター、Nanos2プロモーター、Nanos3プロモーター、oct3/4プロモーター、Prdm1プロモーター、Prdm14プロモーター、Tex13プロモーター、TiarプロモーターまたはTNAPプロモーターを含む。
【0020】
本明細書に開示の諸局面により:
a)本明細書に開示の鋸歯状結腸直腸がんモデルを準備すること;
b)該モデルを腫瘍形成の推定モジュレーターと接触させること;および
c)該モデルにおいて1つまたは複数の腫瘍関連パラメータの1つまたは複数の変化を検出すること
を含む、鋸歯状腫瘍形成のモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。いくつかの態様において、腫瘍関連パラメータは、鋸歯状腫瘍へのCD8+ T細胞の動員、無茎性鋸歯状腺腫(SSA)の腺癌への進行、鋸歯状腫瘍の数、鋸歯状腫瘍のサイズ、鋸歯状腫瘍の総細胞量、アルファ-平滑筋アクチン(αSMA)の発現の増大もしくはコラーゲン沈着またはその組合せを含む。いくつかの態様において、鋸歯状腫瘍へのCD8+ T細胞の増加が観察されるならば、推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する。いくつかの態様において、SSAの腺癌への進行が観察されないならば、推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する。いくつかの態様において、推定モジュレーターと接触させる前の該モデルの鋸歯状腫瘍の数と比べて鋸歯状腫瘍の数の減少が観察されるならば、該推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する。いくつかの態様において、推定モジュレーターと接触させる前の該モデルの鋸歯状腫瘍のサイズと比べて鋸歯状腫瘍のサイズの縮小が観察されるならば、該推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する。いくつかの態様において、推定モジュレーターと接触させる前の該モデルの鋸歯状腫瘍の総細胞量と比べて鋸歯状腫瘍の総細胞量の減少が観察されるならば、該推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する。いくつかの態様において、推定モジュレーターと接触させる前の該モデルでのαSMAの発現と比べてαSMAの発現の増大が観察されないならば、該推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する。いくつかの態様において、該モデルにおいて推定モジュレーターと接触させる前の該モデルのコラーゲン沈着と比べてコラーゲン沈着の増大が観察されないならば、該推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する。いくつかの態様において、推定モジュレーターは、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤およびヒアルロナンの活性または発現の阻害剤からなる群より選択される。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-L1抗体を含む。いくつかの態様において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗PD-1抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1の受容体の低分子阻害剤を含む。いくつかの態様において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、ガルニセルチブを含む。
【0021】
本明細書に開示の諸局面により:
a)Prkci fl/flおよびPrkcz fl/flである動物を準備すること、ここで、該動物は、PrkciおよびPrkczを含む遺伝子に隣接しているloxP部位を有する;ならびに
b)Prkci fl/flおよびPrkcz fl/flである該動物を、小腸および大腸の絨毛および陰窩上皮細胞内のユビキタスプロモーターに機能的に連結されたCreリコンビナーゼを発現している動物と交配し、それにより、小腸および大腸の絨毛および陰窩上皮細胞においてPkcζおよびPKCλ/ιの欠失を有するトランスジェニック動物を作成すること
を含む、鋸歯状結腸直腸がんの動物モデルの作製方法を提供する。いくつかの態様において、該動物モデルは、哺乳動物を含む。いくつかの態様において、該動物モデルは、マウスを含む。いくつかの態様において、該動物モデルは、ラットを含む。いくつかの態様において、該動物モデルは、サルを含む。いくつかの態様において、該動物モデルは、マイクロサテライト安定性表現型を特徴とする。いくつかの態様において、該動物モデルは、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)経路および/またはYes関連タンパク質(YAP)経路内の1つまたは複数の遺伝子の発現についてエンリッチメントされる。いくつかの態様において、該動物モデルが示す細胞死は、PKCζまたはPKCλ/ιを発現しない、あるいはPKCζまたはPKCλ/ιを低発現する動物と比べて少ない。いくつかの態様において、該動物モデルが示す細胞死は、PrkciまたはPrkczのノックアウトまたはノックダウンを含む導入遺伝子を有する動物と比べて少ない。いくつかの態様において、該動物モデルは、該動物の鋸歯状腫瘍の間質内においてヒアルロナンを過剰発現する。いくつかの態様において、該動物モデルは、正常な動物と比べてCD44を過剰発現する。いくつかの態様において、該動物モデルは、正常な動物と比べてOlfm4、Ascl2またはLgr5を含む幹細胞バイオマーカーを低発現する。いくつかの態様において、該動物モデルは、正常な動物と比べてIrf7、Oas1a、Isg15またはCxcl10を含むインターフェロン応答性遺伝子を低発現する。
【0022】
また、本明細書に開示の諸局面により、対象の鋸歯状腫瘍の処置方法も提供する。該方法は、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で対象に投与する工程を含み、ここで、該対象由来の生物学的試料は、鋸歯状腫瘍がない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを有する。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナン-CD44間の結合またはアゴニスト作用の阻害剤を含む。代替的および/または付加的に、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44のアンタゴニストを含む。いくつかの場合において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の阻害剤抗体を含む。いくつかの場合において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、CD44の活性または発現の低分子阻害剤を含む。
【0023】
いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロニダーゼの活性または発現のアゴニストを含む。かかる態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む、あるいはヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、組換えヒアルロニダーゼを含む、あるいはヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。
【0024】
いくつかの態様において、PVHAの治療上有効な量は0.01~0.5 mg/kgである、あるいはPVHAの治療上有効な量は0.02~0.4 mg/kgである。いくつかの態様において、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)は、単独療法として対象に投与される。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍形成を、該対象において無処置個体と比べて少なくとも30%低減させるのに充分である。かかる態様において、腫瘍形成は、鋸歯状のポリープおよび癌腫の計数を使用することによって定量されることが好ましい。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍量を、該対象において無処置個体と比べて少なくとも20%低減させるのに充分である。かかる態様において、腫瘍量は、腫瘍の総数、腫瘍の平均サイズまたは腫瘍細胞量のうちの少なくとも1つを用いて定量されることが好ましい。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍内のヒアルロナン沈着を低減させるのに充分である。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍内のコラーゲン沈着を低減させるのに充分である。
【0025】
いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。いくつかの態様において、低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルはPKCζおよびPKCλ/ιの低い転写レベル、低い翻訳レベルまたは低い活性レベルを含む。
【0026】
本明細書に開示の諸局面により、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で対象に投与することによる、該対象の鋸歯状腫瘍の処置方法を提供する。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)を含む。いくつかの態様において、ペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)は、単独療法として対象に投与される。いくつかの態様において、PVHAの治療上有効な量は0.01~0.5 mg/kgである。いくつかの態様において、PVHAの治療上有効な量は0.02~0.4 mg/kgである。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍形成を、該対象において無処置個体と比べて少なくとも30%低減させるのに充分である。いくつかの態様において、該対象由来の生物学的試料は、鋸歯状腫瘍がない個体のPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPKCλ/ιの発現レベルを有する。
【0027】
いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍形成を、該対象において無処置個体と比べて少なくとも30%低減させるのに充分である。いくつかの場合において、腫瘍形成は、鋸歯状のポリープおよび癌腫の計数を使用することによって定量される。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍量を、該対象において無処置個体と比べて少なくとも20%低減させるのに充分であり、これは任意で、腫瘍の総数、腫瘍の平均サイズまたは腫瘍細胞量のうちの少なくとも1つを用いて定量される。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍内のヒアルロナン沈着を低減させるのに充分である。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍内のコラーゲン沈着を低減させるのに充分である。いくつかの態様において、生物学的試料は血液、血漿、血清または組織生検材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本特許出願は、カラーで作製された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(1つまたは複数)を含む本特許または特許出願書類の写しは、請求し、必要な費用を支払うと米国特許庁から提供される。
【0029】
開示の種々の局面は、具体的事項とともに添付の特許請求の範囲に示している。本開示の特徴および利点のよりよい理解は、本開示の原理が利用された例示的な態様を示す以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによって得られよう。
【0030】
【
図1】パネルA~Lに、PKCλ/ιおよびPKCζの同時不活性化によって小腸および結腸内に鋸歯状腫瘍形成が推進されることを例示する。パネルAに、野生型(WT)ならびにPkciおよびPkczノックアウト(DKO
IEC)の断面画像を例示する。矢印は膨張した腸を表す。パネルBに、WT(n=15)およびDKO
IECマウス(n-23)の体重を例示する。パネルCに、WT(n=20)およびDKO
IEC(n=22)マウスのカプラン・マイヤー生存曲線を例示する。パネルDに、WTおよびDKO
IECマウス(n=20)の、小腸および結腸の切片のヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色を例示する。スケールバー:100μm。パネルEに、WTおよびDKO
IECマウスの小腸の巨視的画像を例示する。矢印は腫瘍を表す。スケールバー:2mm。パネルFに、DKO
IECマウスの小腸および結腸内の、異なる齢数時の巨視的腫瘍の数を例示する。パネルGに、DKO
IECマウスの小腸および結腸内の、異なる腫瘍サイズ分布の巨視的腫瘍の数を例示する。各丸は1匹のマウスを表す(n-39)。パネルHに、DKO
IECマウスの結腸の肉眼的画像を例示する。矢印は上行結腸内の腫瘍を表す。点線の丸は腫瘍内のムチンを表す。スケールバー:2mm。パネルIに、DKO
IECマウスにおいて観察された管状腺癌の画像を例示する。パネルJに、DKO
IECマウスにおいて観察された低分化腺癌を例示する。パネルKに、DKO
IECマウスにおいて観察された印環細胞癌を例示する。パネルLに、DKO
IECマウスにおいて観察された線維形成性変化を例示する。矢印は浸潤性腫瘍先端を表す。スケールバー:100μm。結果を平均+/-平均の標準誤差(SEM)として示す。
【
図2】パネルA~Gに、DKO
IECマウス腫瘍が、ヒト鋸歯状腫瘍に似た、明瞭な分子シグネチャーを担持していることを例示する。パネルAおよびパネルBに、DKO
IECまたはApc
fl/+;LKO
IECマウス(n=3)の、表示した型の腸腫瘍におけるカテニン染色および定量を例示する。スケールバー:50μm。パネルCに、DKO
IEC腫瘍対野生型(WT)腸における、表示した遺伝子シグネチャーのエンリッチメントについての、遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)プロットを例示する。用語“NES”は、正規化したエンリッチメントスコアを示す。用語“FDR”は、偽発見率を示す。パネルDに、表示した遺伝子型のマウス(n=3)の小腸におけるホスホ-ERK、ホスホ-EGFRおよびYAP染色を例示する。スケールバー:25μm。パネルEに、DKO
IEC腫瘍対WT腸のGSEAプロットを例示する。パネルFに、DKO
IEC腫瘍対WT腸における、RNA-seqによるトランスクリプトミクスデータのGSEAを例示する。パネルGに、ヒト鋸歯状データセットにおける、DKO
IECマウス遺伝子セット(DKO_SIGNATURE)のエンリッチメントのGSEAを例示する。結果を平均+/-SEMとして示す。
【
図3】パネルA~Mに、DKO
IEC腫瘍における腸免疫抑制を例示する。パネルA~Cに、表示した遺伝子型および病変のマウスの小腸における、CD45、CD8およびCD45ならびにPD-L1についての染色ならびに定量を例示する(n=3)。ラインは腫瘍(T)の境界を示す。パネルD~Jに、表示した遺伝子型のマウス由来の免疫細胞集団のフローサイトメトリー解析を例示する。CD45+ 細胞中CD8+ T細胞(
図3D)、PD-L1+(パネルE)、Treg細胞(Foxp3+CD4+TCR-β+;パネルF)のパーセンテージ;CD8+ T細胞に対するTreg細胞の比(パネルG);CD4+ T細胞中IL-17A産生細胞のパーセンテージ(パネルH);CD45+ 細胞中CD11b+(パネルI)およびCD11b+Ly6ChighLy6G-およびCD11b+Ly6C+Ly6G+(J)細胞のパーセンテージ。(n:WT=7、LKO
IEC=8およびDKO
IEC腫瘍=4)。パネルK~M)表示した遺伝子型および病変のマウスの小腸における、αSMA(パネルK)およびマッソントリクローム(パネルL)染色ならびにEregのインサイチューハイブリダイゼーション(パネルM)(n=3)。結果を平均+/-SEMとして示す。スケールバー:25μm。
【
図4】パネルA~Mに、DKO
IECマウスの鋸歯状腫瘍形成におけるCD8+ T細胞の役割を例示する。パネルAおよびパネルBに、抗生物質(Abx)処置ありまたはなしの、WTおよびDKO
IECマウスの小腸におけるCD45+ 染色(
図4A)および定量(パネルB)を例示する(n=3)。パネルCに、Abx実験でのWTおよびDKO
IECマウス由来のCD45+ 細胞集団のフローサイトメトリー解析を例示する(n:WT対照=8、WT Abx処置=5、DKO
IEC対照=4およびDKO
IEC Abx処置=3)。パネルDに、Abx実験でのDKO
IECマウスにおける小腸および結腸内の腫瘍の総数定量ならびにサイズに基づいた小腸腫瘍数の層別化を例示する。(n:対照=6およびAbx処置=7)。パネルE~Gに、Abx実験でのDKO
IECマウスの小腸腫瘍のヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色(パネルE)ならびにKi67、ホスホ-ERKおよびYAP染色(パネルF)ならびにKi67染色の定量(パネルG)を例示する。スケールバー:100μm。パネルHに、WTマウス、およびαCD8抗体ありまたはなしで処置されたLKO
IECマウス由来の、CD8+ T細胞のフローサイトメトリー解析を例示する(n:WT=3、LKO
IEC=6およびLKO
IEC αCD8抗体処置=7)。パネルIに、CD8-枯渇実験で処置されたLKO
IEC小腸の巨視的画像を例示する。矢印は腫瘍を表す。スケールバー、2 mm。パネルJおよびパネルKに、CD8-枯渇実験での小腸腫瘍の発生率(パネルJ)および総数(パネルK)の定量を例示する(n=7)。パネルLおよびパネルMに、表示した遺伝子型および処置のマウス由来の小腸試料の、H&E、Ki67、切断型カスパーゼ3(C-カスパーゼ3)、TUNELおよびマッソントリクローム染色(パネルL)ならびに定量(パネルM)を例示する(n=3~5)。スケールバー:100μm。結果を平均+/-SEMとして示す。
【
図5】パネルA~Nに、PKCζの減少によるインターフェロン応答の抑制によって、CD8+依存性免疫監視機構が障害されることを例示する。パネルAに、RNA-seqデータによる、LKO
IEC対WT IECにおける表示した遺伝子のmRNAの発現を例示する。パネルBに、オキサリプラチン(20μM)で24時間処理されたsgCおよびsgPKCλ/ι MODE-K細胞における細胞外ATPレベルを例示する(n=3)。パネルCに、オキサリプラチン(20μM)、ボルテゾミブ(0.1μM)またはTNFα(10 ng/ml)+シクロヘキシミド(2.5μg/ml)で24時間処理されたsgCおよびsgPKCλ/ι/ι MODE-K細胞における、表示したタンパク質のウェスタンブロットを例示する。パネルDに、6時間、0.5μg/mlのポリ(I:C)を用いてトランスフェクトした、またはモックトランスフェクトした、表示した遺伝子型のMODE-KにおけるCxcl10、Oas1a、IfnbおよびNlrc5のmRNAレベルのqRT-PCR解析を例示する(n=3)。パネルEに、HBSS欠乏またはオキサリプラチン(20μM)で24時間の処理のいずれかの、表示した遺伝子型のMODE-K細胞におけるH-2KbおよびH-2Dkの表面発現(平均蛍光強度、MFI)を例示する(n=3)。パネルFに、表示したT:E比でのOT-I細胞-MC38OVA殺作用アッセイ(24時間)を例示する(左)。OT-I細胞との24時間の共培養後のshNTおよびsgPKCλ/ι MC38
OVA細胞におけるPI染色(右)(n=3)。パネルGに、ZKO
IEC対WT IECにおける、RNA-seqによるトランスクリプトミクスデータのGSEAを例示する。表示した遺伝子シグネチャーを解析に適用した。FDR:偽発見率。パネルHに、遺伝子型間で差次的に発現されるインターフェロン応答に関係している遺伝子を示すWTおよびZKO
IEC IECのRNA-seqデータのヒートマップを例示する。パネルIに、5AZA-CdR処理ありまたはなしの、表示した遺伝子型のオルガノイドにおけるIrf7、Oas1a、Isg15およびCxcl10のmRNAレベルのqRT-PCR解析を例示する。パネルJに、6時間、0.5μg/mlのポリ(I:C)を用いてトランスフェクトした、またはモックトランスフェクトした、表示した遺伝子型の293T細胞におけるCXCL10およびIFNBのmRNAレベルのqRT-PCR解析を例示する(n=3)。パネルKに、6時間、0.5μg/mlのポリ(I:C)を用いてトランスフェクトした、またはモックトランスフェクトした、表示した遺伝子型の293T細胞における表示したタンパク質のウェスタンブロットを例示する(n=3)。パネルLに、ZKO
IEC対WT IECにおいて差次的に発現される遺伝子のNextBio解析を例示する。ベン図は、両セット内の共通遺伝子およびユニーク遺伝子の数を示す。GOターム「抗原プロセッシングおよびMHCクラスlを介するペプチド抗原の提示」に対応する遺伝子シグネチャー。パネルMに、5-AZA-CdR処理ありまたはなしの、表示した遺伝子型のオルガノイドにおけるH-2Kb陽性細胞集団のフローサイトメトリー解析を例示する(n=3)。パネルNに、表示した遺伝子型のマウスの小腸におけるMHC I(H-2)染色を例示する(n=3)。スケールバー:50μm。結果を平均+/-SEMとして示す。
【
図6】パネルA~SにDKO
IECマウス腫瘍における治療介入を例示する。パネルAに、ガルニセルチブ(Gal)処置の実験デザインを例示する。パネルBおよびパネルCに、Gal実験でのDKO
IECマウスにおける小腸腫瘍の総数、平均サイズおよび量の定量(パネルB)ならびにがんおよび浸潤がんの発生率(パネルC)を例示する。(n:対照=8およびGal処置=6)。パネルDに、Gal実験でのDKO
IECマウス由来の小腸腫瘍におけるH&E、マッソントリクローム、ホスホ-Smad2およびCD45とPD-L1の二重染色を例示する。スケールバー=100μm。パネルEに、Gal実験でのAngptl2、Cdkn2b、Il11およびEregのmRNAレベルのqRT-PCR解析を例示する(n:WT=3、DKO
IEC対照=4およびDKO
IEC Gal処置=5)。パネルF~Jに、Gal実験でのDKO
IEC腫瘍における免疫細胞集団のフローサイトメトリー解析を例示する。CD4+ T細胞中IL-17A産生細胞のパーセンテージ(パネルF);CD45+ 細胞中CD8+ T細胞(パネルG)およびFoxp3+CD4+ Treg細胞(パネルH)細胞のパーセンテージ;CD8+ T細胞に対するTreg細胞の比(パネルI);ならびにCD45+ 細胞中CD11b+、CD11b+Ly6ChighLy6G-およびCD11b+Ly6C+Ly6G+ 細胞のパーセンテージ(パネルJ)。(n:対照=4およびGal処置=3匹のDKO
IECマウス)。パネルKおよびパネルLに、Gal実験でのDKO
IEC腫瘍におけるCD45/PD-L1染色の定量(パネルK)および画像(パネルL)を例示する。スケールバー:100μm。矢印:CD45+/PD-L1+。パネルMに、αPD-L1抗体とGalでの併用療法の実験デザインを例示する。パネルNおよびパネルOに、併用療法実験(パネルM)でのDKO
IECマウスにおける小腸腫瘍の総数、平均サイズおよび量の定量(パネルN)ならびにがんおよび浸潤がんの発生率(パネルO)を例示する。(n:対照=6およびαPD-L1+Gal処置=7匹のDKO
IECマウス)。パネルPに、併用療法実験(パネルM)でのDKO
IECマウス由来の小腸腫瘍におけるH&EおよびCD8染色を例示する。点線は腫瘍の輪郭である(
図6T)。スケールバー:100μm。
図6Q~
図6Sに、この併用療法実験でのDKO
IEC腫瘍における免疫細胞集団のフローサイトメトリー解析を例示する。CD45+ 細胞中CD8+ T(パネルQ);Foxp3+CD4+ Treg(パネルR);ならびにCD11b+、CD11b+Ly6ChighLy6G-およびCD11b+Ly6C+Ly6G+(パネルS)細胞のパーセンテージ。(n:対照=5およびαPD-L1+Gal処置=4匹のDKO
IECマウス)。結果を平均+/-SEMとして示す。
【
図7】パネルA~Jに、ヒト鋸歯状腫瘍は両方の非定型PKCの低発現を有することを例示する。パネルAおよびパネルBに、ヒト正常結腸(n=20)、無茎性鋸歯状腺腫/ポリープ(SSA/P;n=30)および管状腺腫(TA;n=30)のaPKCの免疫組織化学検査(パネルA)および定量(パネルB)を例示する。スケールバー:50μm。パネルCに、PRKCIおよびPRKCZの発現レベルに基づいて層別化されたTCGAのCRC患者試料におけるGSEAプロットを例示する。パネルDに、CCS分類によって層別化されたAMC-AJCCII-90セット(GSE33113)におけるPRKCIおよびPRKCZのmRNAレベルを例示する。パネルEに、aPKC mRNAの発現によるCCS1、CCS2またはCCS3のCRCサブタイプを有するCRC患者の割合を例示する(GSE33113)。パネルFに、aPKC発現レベルに基づいて層別化されたCRC患者(TCGA)のカプラン・マイヤー全生存曲線を例示する。パネルGに、aPKC発現レベルに基づいて層別化されたCRC試料(TCGA)のトランスクリプトミクスデータのGSEAを例示する。パネルHに、IBD患者の、表示したデータセットのトランスクリプトミクスデータのGSEAを例示する。正規化したエンリッチメントスコア(NES)を示す。クローン病(CD)対健常結腸(対照)または潰瘍性大腸炎(UC)対対照を比較するPRKCIおよびPRKCZの発現の変化倍数(FC)。FDR<0.1を有意とみなした。NS:有意でない。パネルIおよびパネルJに、ヒト近位CRCにおけるaPKCおよびCD8染色(パネルI)ならびに定量(パネルJ)を例示する(n:高aPKC=12、低aPKC=13)。スケールバー:50μm。結果を平均+/-SEMとして示す。
【
図8】パネルA~Jに、DKO
IECマウスには腸の鋸歯状腫瘍が発生することを例示する。パネルAに、DKO
IECマウスの小腸切片のアルシアンブルーおよびリゾチーム染色を例示する(n=3)。スケールバー:50.tm。パネルBに、DKO
IECマウスの小腸および結腸内の微小血管過形成性ポリープおよび杯細胞過形成性ポリープを例示する(n=6)。スケールバー:100.tm。パネルCに、異なる齢数(左)サイズ区分(右)での、LKO
IECおよびDKO
IEC小腸内の全巨視的腫瘍を例示する。各丸は1匹のマウスを表す。パネルDに、小腸(n=39)および結腸(n=27)内の腫瘍の分布の円グラフを例示する。パネルEに、WT由来の正常組織ならびにDKO
IECマウス由来のSSA/Pおよび癌腫についての5つのマイクロサテライトマーカー(Bat24、Bat26、Bat30、Bat37およびBat64)の電気泳動図の画像を例示する。パネルFに、WTおよびDKO
IECマウス組織のマイクロサテライト不安定状態を例示する(n=3~4)。各列は1つの試料を表す。対立遺伝子パターンを比較した。(パネルGおよびパネルH)RNA-seqデータによる、WTおよびDKO
IEC腫瘍組織におけるDNAミスマッチ修復(DNA-MMR、パネルG)およびCpGアイランドメチル化表現型(CIMP、パネルH)と関連している遺伝子のmRNAの発現。パネルIに、DKO
IEC非腫瘍組織および腫瘍組織におけるβ-ガラクトシダーゼ染色を例示する(n=3)。パネルJに、WTおよびDKO
IEC腫瘍由来の小腸組織におけるp53、p21およびp16の、染色および定量を例示する(n=3)。スケールバー:50.tm。結果を平均±SEMとして示す。
【
図9】パネルA~Cに、DKO
IEC腫瘍における細胞増殖の増大および細胞死の抑制を例示する。パネルA~Cに、表示した遺伝子型のマウスの小腸におけるKi67(パネルA)、切断型カスパーゼ3(C-カスパーゼ3)(パネルB)およびTUNEL(パネルC)染色と定量を例示する(n=3)。スケールバー:50μm。結果を平均±SEMとして示す。
【
図10】パネルA~Fに、DKO
IEC腫瘍における免疫抑制および間質活性化を例示する。パネルAに、DKO IEC腸のSSA/Pおよび癌腫におけるCD8染色を例示する(n=6)。スケールバー:50μm。赤線は腫瘍(T)と周囲(P)の境界を示す。パネルBに、表示した遺伝子型のマウス由来の免疫細胞集団のフローサイトメトリー解析を例示する。CD45+ 細胞中CD4+ T、B220+ BおよびNK1.1+ NK細胞のパーセンテージ。(n:WT=7、LKO
IEC=8およびDKO
IEC腫瘍=4)。結果を平均±SEMとして示す。パネルCに、コラーゲンに関する差次的発現遺伝子を示すWT腸およびDKO
IEC腫瘍のRNA-seqデータのヒートマップを例示する。パネルDに、DKO
IEC腫瘍対WT腸におけるTGF-β標的のエンリッチメントのGSEAプロットを例示する。パネルEに、間質活性化および間質の由来因子に関する差次的発現遺伝子を示すWT腸およびDKO
IEC腫瘍のRNA-seqデータのヒートマップを例示する。パネルFに、DKO
IEC腫瘍対WT腸におけるエンリッチメントのGSEAプロットを例示する。
【
図11】パネルA~Cに、LKO
IECマウスにおける陰窩細胞の増殖およびYAP/ERKシグナル伝達経路活性化が炎症に依存することを例示する。パネルAおよびパネルBに、抗生物質(Abx)処置ありまたはなしの、WTおよびLKO
IECマウスの小腸におけるH&E、Ki67、ホスホ-ERKおよびYAP染色(パネルA)ならびにKi67染色の定量(パネルB)を例示する(n=3)(パネルC)Abx処置ありまたはなしの、WTおよびLKO
IECマウス由来のCD45+ 細胞集団のフローサイトメトリー解析(n=3)。スケールバー=50μm。結果を平均±SEMとして示す。
【
図12】パネルA~Dに、DKO
IEC腫瘍およびIECにおけるインターフェロン応答の障害を例示する。パネルAに、HBSS欠乏またはオキサリプラチン(20μM)での24時間の処理後のsgCおよびsgPKCλ/ι MODE-K細胞における細胞生存(7-AAD+ 細胞)を例示する(n=3)。パネルBに、DKO
IEC腫瘍対WT腸における、MSigDBの表示した遺伝子シグネチャーにおけるエンリッチメントのGSEAプロットを例示する。パネルCに、DKO
IEC対LKO
IEC IECにおける、RNA-seq解析によるトランスクリプトミクスデータのGSEAを例示する。MSigDBのHallmarkコレクションからの表示した遺伝子シグネチャーを解析に適用した。FDR:偽発見率。パネルDに、インターフェロン応答に関する差次的発現遺伝子を示すDKO
IECおよびLKO
IEC IECのトランスクリプトミクス解析のヒートマップを例示する。
【
図13】パネルA~Iに、DKO
IECマウス腫瘍に対する抗PD-L1療法の影響を例示する。パネルAに、αPD-L1処置の実験デザインを例示する。パネルBに、αPD-L1処置ありまたはなしの、DKO
IECマウス由来の小腸腫瘍におけるH&EおよびCD8染色を例示する。スケールバー=100μm。パネルCおよびパネルDに、αPD-L1処置ありまたはなしの、DKO
IECマウスにおける小腸腫瘍の総数、平均サイズおよび量の定量(パネルC)ならびにがんおよび浸潤がんの発生率(パネルD)を例示する(n:対照=7およびαPD-L1処置=4)。パネルEに、αPD-L1処置の実験デザインを例示する(n:対照=7、αPD-L1処置=4)。パネルFに、αPD-L1処置ありまたはなしの、DKO
IECマウス由来の小腸腫瘍におけるH&EおよびCD8染色を例示する。パネルGおよびパネルHに、αPD-L1処置ありまたはなしの、DKO
IECマウスにおける小腸腫瘍の総数、平均サイズおよび量の定量(パネルG)ならびにがんおよび浸潤がんの発生率(パネルH)を例示する(n:対照=7およびαPD-L1処置=4)。パネルIに、DKO
IECマウス由来の小腸腫瘍におけるαSMAおよびマッソントリクローム染色を例示する(n=3/齢数)。スケールバー:100μm。結果を平均±SEMとして示す。
**p<0.01、
***p<0.005。
【
図14】パネルA~Lに、両方のaPKCの低発現を有するCRC患者は免疫抑制を伴うCCS3表現型および間葉系表現型を示すことを例示する。パネルAに、PKCζおよびPKCλ/ιの両方を認識する抗体を用いた、表示した遺伝子型由来の単離されたIEC試料におけるaPKCのイムノブロット解析を例示する。パネルBおよびパネルCに、TCGA(パネルB)およびKhambata-Fordデータセット(パネルC、GSE5851)におけるPRKCIおよびPRKCZのmRNAレベルを例示する。
図4Dおよび
図4Eに、TCGA(パネルD)およびGSE5851(パネルE)におけるaPKC mRNAの発現によるCCS1、CCS2またはCCS3のCRCサブタイプを有するCRC患者の割合を例示する。パネルFに、aPKC発現レベルに基づいて層別化されたCRC患者(GSE5851)のカプラン・マイヤー無増悪生存期間(PFS)曲線を例示する。パネルGに、TCGAデータによるBRAFおよびKRASの変異状態ならびにaPKC遺伝子発現プロフィールを例示する。グリーンおよびオレンジの四角は、それぞれBRAFおよびKRASにおける変異の存在を示す。FDR:偽発見率。パネルH~J)aPKC発現レベルに基づいて層別化されたCRC患者(TCGAの)のトランスクリプトミクスデータのGSEAならびにBRAFおよびKRAS:BRAF/KRAS WT(パネルH)、BRAF変異型(パネルI)またはKRAS変異型(パネル)の変異状態。パネルKに、表示した遺伝子についての発現量平均値を用いた、GSE33113およびTCGAにおけるCCS分類患者試料のトランスクリプトミクスデータ(各行に正規化された中央値)のヒートマップを例示する。パネルLに、CCS2とCCS3のサブグループ間のGSE33113およびTCGAにおける、表示した遺伝子のトランスクリプトミクスデータを比較するバイオリン図を例示する。結果を平均±SEMとして示す。
【
図15】疾患が進行すると、aPKC-DKO
IEC鋸歯状腫瘍の間質がヒアルロナン産生の増大を示すことを例示する。
【
図16】パネルA~Cに、aPKC-DKO
IECマウスの上皮腫瘍細胞が、ヒアルロナンの受容体であるCD44の発現の上方調節を有することを例示する。
【
図17】パネルA~Bは、PVHA処置によりaPKC-DKO
IECマウスにおいて鋸歯状腫瘍が低減されることを示唆するデータを示す。
【
図18】パネルA~Cは、PVHA処置によりaPKC-DKO
IEC腫瘍が低減されることを示唆するデータを示す。
【
図19】PVHAで処置すると鋸歯状aPKC-DKO
IEC腫瘍においてヒアルロナンが低減されることを示唆するデータを示す。
【
図20】PVHAで処置すると鋸歯状aPKC-DKO
IEC腫瘍においてコラーゲン沈着が低減されることを示唆するデータを示す。
【
図21】PVHA処置によりaPKC-DKO
IEC腫瘍内へのCD8 T細胞浸潤が増大することを示唆するデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の詳細な説明
特定の用語法の定義
別途定義される場合を除き、本明細書において使用するすべての技術用語および科学用語は、請求項に記載の主題が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は例示的かつ説明的であるにすぎず、請求項に記載の主題をなんら制限するものでないことは理解されよう。本願において、そうでないことを特別に記載していない限り、単数形の使用は複数形を包含している。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、本文中にそうでないことを明記していない限り、複数の指示対象物を含むことに注意されたい。本願において、「または(もしくは)」の使用は、そうでないことを記載していない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」ならびに他の形態、例えば「含む(include)」、「含む(includes)」および「含む(included)」の使用は非限定的である。
【0032】
用語「約」または「およそ」は、一部において値がどのようにして測定されるか、または求められるか、例えば測定システムの限界に依存する当業者によって求められる具体的な値に対する許容誤差の範囲内を意味する。例えば、「約」は、所与の値において慣例的に、標準偏差1以内または1超を意味し得る。用語「約」は厳密な量を包含する。例えば、「約5μL」は、「約5μL」および「5μL」もまた意味する。具体的な値が本願および特許請求の範囲に記載されている場合、そうでないことを記載していない限り、用語「約」は具体的な値に対する許容誤差の範囲を意味していると想定されたい。
【0033】
用語「任意の」または「任意で」は、続いて記載されている事象または状況が起こり得るが、起こる必要はないこと、およびその記載は、該事象または状況が起こる場合と起こらない場合を含むことを表す。
【0034】
用語「核酸」は、本明細書において使用する場合、一般的に、1つまたは複数の核酸塩基、ヌクレオシドまたはヌクレオチドを示す。例えば、核酸は、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)またはそのバリアントから選択される1つまたは複数のヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドは一般的に、ヌクレオシドと少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれより多くのリン酸(PO3)基を含む。ヌクレオチドは核酸塩基、五炭糖(リボースまたはデオキシリボースのいずれか)および1個または複数のリン酸基を含み得る。リボヌクレオチドは、糖がリボースであるヌクレオチドを含む。デオキシリボヌクレオチドは、糖がデオキシリボースであるヌクレオチドを含む。ヌクレオチドはヌクレオシド一リン酸、ヌクレオシド二リン酸、ヌクレオシド三リン酸またはヌクレオシドポリリン酸であり得る。
【0035】
本明細書において使用する場合、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」は互換的に使用され、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基のポリマーであって、2つ以上のポリペプチド鎖で構成されたものであり得るポリマーを示す。用語「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」は、アミド結合によって一体に連結された少なくとも2個のアミノ酸モノマーのポリマーを示す。アミノ酸はL-光学異性体であってもD-光学異性体であってもよい。より具体的には、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」は、2個以上のアミノ酸によって特定の順序、例えば、そのタンパク質をコードしている遺伝子またはRNAのヌクレオチドの塩基配列によって決定される順序で構成された分子を示す。いくつかの場合において、タンパク質は、該タンパク質の一部分、例えば該タンパク質のドメイン、サブドメインまたはモチーフであり得る。いくつかの場合において、タンパク質は、該タンパク質のバリアント(または変異体)であり得、この場合、該タンパク質の天然に存在する(または少なくとも既知の)アミノ酸配列に1つもしくは複数のアミノ酸残基が挿入されている、該アミノ酸配列から1つもしくは複数のアミノ酸残基が欠失している、および/または該アミノ酸配列に1つもしくは複数のアミノ酸残基の置換が含まれている。タンパク質またはそのバリアントは、天然に存在するか、または組換え型であり得る。
【0036】
本明細書において使用する場合、用語「生物学的試料」は、調製され、検査され得るポリヌクレオチド、ポリペプチド、バイオマーカーおよび/または代謝産物が由来する、任意の生物学的材料を意味する。非限定的な例には組織生検材料、全血、血漿、唾液、血清、口腔スワブ、検便試料、検尿試料、細胞塊または任意の他の体液もしくは組織が包含される。
【0037】
用語「投与する」、「投与すること」、「投与」などは、本明細書において使用する場合、化合物または組成物の所望の生物学的作用部位への送達を可能にするために使用され得る方法を示す。このような方法としては、限定するわけではないが、経口経路(p.o.)、十二指腸内経路(i.d.)、非経口注射(例えば、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、血管内もしくは輸注(inf.))、経表面(top.)および経直腸(p.r.)投与が挙げられる。いくつかの態様において、本明細書に記載の化合物および組成物は経口投与される。
【0038】
用語「共投与」などは、本明細書において使用する場合、選択された複数の治療用薬剤の、一人の患者への投与を包含していることを意味し、該複数の薬剤が同時に、または異なる時点で、同じ経路または異なる経路によって投与される処置レジメンを含むことを意図する。いくつかの態様において、選択された複数の治療用薬剤は単一の組成物を構成する。いくつかの態様において、選択された複数の治療用薬剤は別々の組成物である。
【0039】
用語「有効な量」または「治療上有効な量」は、本明細書において使用する場合、処置される疾患または病態の症状のうちの1つまたは複数が、ある程度、軽減されるのに充分な、例えば、疾患の1つもしくは複数の徴候、症状もしくは原因の低減および/もしくは緩和、または生物学的系の任意の他の所望の改変に充分な、投与される薬剤または化合物の量を示す。例えば、治療的使用のための「有効な量」は、1つまたは複数の疾患症状の臨床的に有意な低減がもたらされる薬剤量であり得る。適切な「有効な」量は、個々の症例において用量漸増試験などの手法を用いて決定され得る。いくつかの態様において、治療的使用のための「有効な量」は、腫瘍サイズ、腫瘍細胞量、腫瘍の数の臨床的に有意な低減、または腫瘍形成の抑制がもたらされる薬剤量である。
【0040】
用語「対象」または「患者」は哺乳動物を包含している。哺乳動物の例としては、限定するわけではないが、哺乳綱の任意の構成員:ヒト、非ヒト霊長類、例えばチンパンジーならびに他の類人猿およびサル種;家畜、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;飼養動物、例えばウサギ、イヌおよびネコ;実験動物、例えば齧歯類、例えばラット、マウスおよびモルモットなどが挙げられる。一局面において、哺乳動物はヒトである。用語「動物」は、本明細書において使用する場合、人間および非ヒト動物を含む。一態様において、「非ヒト動物」は哺乳動物、例えば齧歯類、例えばラットまたはマウスである。
【0041】
用語「処置する」、「処置すること」または「処置」は、本明細書において使用する場合、疾患または病態の少なくとも1つの症状を緩和すること、弱めること、または好転させること、さらなる症状を抑制すること、疾患または病態を抑止すること、例えば疾患または病態の発症を停止させること、疾患または病態を軽減させること、疾患または病態の消退を引き起こすこと、疾患または病態によって引き起こされる病態を軽減させること、あるいは疾患または病態の症状を予防的および/または治療的のいずれかで止めることを含む。
【0042】
疾患状態の「予防すること」または「予防」という用語は、該疾患状態に曝露され得る、あるいは該疾患状態に対する素因を有し得るがまだ該疾患状態の症状が起こっていない、あるいは該疾患状態の症状を示していない対象において該疾患状態の臨床症状が発現しないようにすることを表す。
【0043】
本明細書において使用する場合、用語「含む(comprise)」またはその語尾変化形、例えば「含む(comprises)」または「含む(comprising)」は、記載の任意の特徴を含むが任意の他の特徴を排除しないことを示すために書いてあるものとする。したがって、本明細書において使用する場合、用語「含む(comprising)」は包含的であり、記載されていない追加の特徴を排除しない。本明細書において提供する任意の組成物および方法のいくつかの態様において、「含む(comprising)」は「本質的に~からなる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」で置き換えられ得る。語句「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は本明細書において、明記された1つまたは複数の特徴ならびに請求項に記載の開示物の性質または機能に実質的に影響しない特徴を必要とするために使用される。本明細書において使用する場合、用語「からなる(consisting)」は、記載された特徴のみの存在を示すために使用される。本明細書において使用しているセクション見出しは構成上の目的のためにすぎず、本記載の主題を限定するものと解釈されるべきでない。
【0044】
本明細書において、対象から採取された生物学的試料における本明細書に開示のバイオマーカーの検出に基づいて、該対象を、鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を有する、あるいは鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を発症しやすい、と特定するための方法を提供する。また、鋸歯状CRCの微小環境内における間質活性化および免疫抑制が目標である一連の処置により対象の鋸歯状CRCを処置するための方法を提供する。さらに、ヒト鋸歯状CRCのモデル、例えば限定するわけではないが動物モデルおよび組織モデルならびに本明細書に開示のモデルの作製方法を提供する。また、鋸歯状CRCに対する治療的解決策として使用され得る腫瘍形成モジュレーターを同定するための本明細書に開示のモデルの使用方法を提供する。
【0045】
対象における鋸歯状結腸直腸がんの診断および予後予測の方法
本明細書に開示の諸局面により、対象において鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を診断、特性評価および/または予後予測する方法であって、該対象から採取された生物学的試料中に特定のバイオマーカーが検出されるものとする方法を提供する。生物学的試料は対象から直接または間接的に採取され得る。いくつかの態様において、生物学的試料は、腸、腫瘍、またはその両方に由来する組織生検材料を含む。いくつかの場合において、組織生検材料は、針生検材料、外科的生検材料または吸引生検材料である。いくつかの場合において、細針生検材料は、穿刺吸引物(fine need aspiration)(FNA)を含む。いくつかの態様において、生物学的試料は、全血、血清または血漿を含む。いくつかの場合において、対象は哺乳動物である。いくつかの場合において、対象は、マウス、ラット、サルまたはウサギである。いくつかの場合において、対象はヒトである。いくつかの場合において、対象は、疾患または病態に関連する症状に罹患している、あるいは疾患または病態に関連する症状を有する。いくつかの場合において、疾患または病態は炎症性疾患を含む。炎症性疾患の非限定的な例としては、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸炎、喘息、腸線維症、腸の線維化狭窄性疾患、関節炎系疾患、自己免疫疾患および肝炎が挙げられる。いくつかの場合において、疾患または病態は腸のがんを含む。腸のがんの非限定的な例としては、腺癌、肉腫、平滑筋肉腫、カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍およびリンパ腫が挙げられる。
【0046】
鋸歯状結腸直腸がんの診断および予後予測に使用されるバイオマーカー
非定型プロテインキナーゼC(aPKC)ζおよびλ/ιは、PKCのサブファミリーに属する。PKCλ/ιは、遺伝子PRKCI(Entrez Gene ID No.5584)によってコードされている。PKCζは遺伝子PRKCZ(Entrez Gene ID No.5590)によってコードされている。本明細書における開示により、腸上皮細胞におけるPKCζとPCKλ/ιの同時欠失によって、反応性が強く免疫抑制性の間質を有する進行鋸歯状結腸直腸がん(CRC)に進行する無茎性鋸歯状腺腫/ポリープ(SSA/P)の発生がもたらされることを示す。本明細書における開示により、MSS/鋸歯状CRC腫瘍の腸管上皮細胞(IEC)内における、CRC腫瘍形成に関与している増殖因子であるヒアルロナン(HA)とその受容体CD44の発現増大をさらに示す。本開示により、PKCζ、PCKλ/ι、HAおよび/またはCD44が、MSS/鋸歯状CRCに罹患している対象またはMSS/鋸歯状CRCを発症する対象を特定するための有用なバイオマーカーであり得ることを示す。PKCζおよびPCKλ/ιがない鋸歯状CRCならびにHAおよび/またはCD44の発現増大を有する対象は、多くの免疫療法ベースの戦略に抵抗性である。したがって、本明細書に開示のバイオマーカーは、鋸歯状CRCに罹患している、あるいは鋸歯状CRCを発症しやすい対象を特定するために有用であり、代替的な治療的解決策の発見および改善を可能にする。
【0047】
対象を鋸歯状CRCと診断する方法
本明細書に開示の諸局面により、その必要のある対象において、結腸直腸がん(CRC)のサブタイプを診断する方法であって:
a)その必要のある対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
c)該対象を鋸歯状結腸直腸がん(CRC)と診断すること
を含み、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、該CRCを有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いものとする、方法、を提供する。PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、遺伝子PKCZおよびPKCIの発現、または遺伝子PKCZおよびPKCIから発現される遺伝子産物を測定することにより検出され得る。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、リボ核酸(RNA)発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、デオキシリボ核酸(DNA)の発現を含む。「低い」PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に下の発現量である。いくつかの態様において、本発明の方法に従って鋸歯状CRCと診断された対象に、TGF-β1、PD-L1、ヒアルロナンもしくはCD44の阻害剤または該阻害剤の組合せが投与される。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、本明細書に開示の検出方法を用いてもたらされる。いくつかの場合において、対象から採取された生物学的試料で低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルが検出されることは、該対象が腸管上皮細胞(IEC)内のヒアルロナンおよび/またはCD44の発現増大を有することを示す。
【0048】
本明細書に開示の諸局面により、その必要のある対象において、結腸直腸がん(CRC)のサブタイプを診断する方法であって:
a)その必要のある対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
c)該対象を鋸歯状結腸直腸がん(CRC)と診断すること
を含み、該対象から採取された生物学的試料で検出されるヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、該CRCを有していない個体のヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルと比べて高いものとする、方法、を提供する。ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、遺伝子Hyaluronan Synthase 2(HAS2)および/またはCD44の発現、あるいは遺伝子HAS2およびCD44から発現される遺伝子産物を測定することにより、検出され得る。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、RNAの発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、DNAの発現を含む。「高い」ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に上の発現量である。いくつかの態様において、本発明の方法に従って鋸歯状CRCと診断された対象に、TGF-β1、PD-L1、ヒアルロナンもしくはCD44の阻害剤または該阻害剤の組合せが投与される。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、本明細書に開示の検出方法を用いてもたらされる。
【0049】
本明細書に開示の諸局面により、その必要のある対象において、結腸直腸がん(CRC)のサブタイプを診断する方法であって:
a)その必要のある対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;
c)該生物学的試料を、ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
d)該対象を鋸歯状結腸直腸がん(CRC)と診断すること
を含み、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、該CRCを有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いものとし、該対象から採取された生物学的試料で検出されるヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、該CRCを有していない個体のヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルと比べて高いものとする、方法、を提供する。PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、遺伝子PKCZおよびPKCIの発現、または遺伝子PKCZおよびPKCIから発現される遺伝子産物を測定することにより、検出され得る。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、RNAの発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、DNAの発現を含む。「低い」PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に下の発現量である。ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、遺伝子HAS2および/またはCD44の発現、あるいは遺伝子HAS2およびCD44から発現される遺伝子産物を測定することにより、検出され得る。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、RNAの発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、DNAの発現を含む。「高い」ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に上の発現量である。いくつかの態様において、本発明の方法に従って鋸歯状CRCと診断された対象に、TGF-β1、PD-L1、ヒアルロナンもしくはCD44の阻害剤または該阻害剤の組合せが投与される。いくつかの態様において、PKCζ、PCKλ/ι、ヒアルロナンおよびCD44の発現レベルは、本明細書に開示の検出方法を用いてもたらされる。
【0050】
結腸直腸がんのサブタイプの特性評価
本明細書に開示の諸局面により、対象の結腸直腸がん(CRC)のサブタイプを特性評価する方法であって:
a)対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
c)該対象のCRCを鋸歯状CRCと特性評価すること
を含み、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、該CRCを有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いものとする、方法、を提供する。PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、遺伝子PKCZおよびPKCIの発現、または遺伝子PKCZおよびPKCIから発現される遺伝子産物を測定することにより、検出され得る。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、RNAの発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、DNAの発現を含む。「低い」PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に下の発現量である。いくつかの態様において、本発明の方法に従って鋸歯状CRCと特性評価されたCRCを有する対象に、TGF-β1、PD-L1、ヒアルロナンもしくはCD44の阻害剤または該阻害剤の組合せが投与される。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、本明細書に開示の検出方法を用いてもたらされる。いくつかの場合において、対象から採取された生物学的試料で低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルが検出されることは、該対象が腸管上皮細胞(IEC)内のヒアルロナンおよび/またはCD44の発現増大を有することを示す。
【0051】
本明細書に開示の諸局面により、その必要のある対象において、結腸直腸がん(CRC)のサブタイプを特性評価する方法であって:
a)その必要のある対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
c)CRCを鋸歯状結腸直腸がん(CRC)と特性評価すること
を含み、該対象から採取された生物学的試料で検出されるヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、該CRCを有していない個体のヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルと比べて高いものとする、方法、を提供する。ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、遺伝子HAS2および/またはCD44の発現、あるいは遺伝子HAS2およびCD44から発現される遺伝子産物を測定することにより検出され得る。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、RNAの発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、DNAの発現を含む。「高い」ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に上の発現量である。いくつかの態様において、本発明の方法に従って鋸歯状CRCと特性評価されたCRCを有する対象に、TGF-β1、PD-L1、ヒアルロナンもしくはCD44の阻害剤または該阻害剤の組合せが投与される。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、本明細書に開示の検出方法を用いてもたらされる。
【0052】
本明細書に開示の諸局面により、対象において、結腸直腸がん(CRC)のサブタイプを特性評価する方法であって:
a)その必要のある対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;
c)該生物学的試料を、ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
d)CRCのサブタイプを鋸歯状CRCであると特性評価すること
を含み、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、該CRCを有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いものとし、該対象から採取された生物学的試料で検出されるヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、該CRCを有していない個体のヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルと比べて高いものとする、方法、を提供する。PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、遺伝子PKCZおよびPKCIの発現、または遺伝子PKCZおよびPKCIから発現される遺伝子産物を測定することにより検出され得る。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、RNAの発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、DNAの発現を含む。「低い」PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に下の発現量である。ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、遺伝子HAS2および/またはCD44の発現、あるいは遺伝子HAS2およびCD44から発現される遺伝子産物を測定することにより、検出され得る。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、RNAの発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、DNAの発現を含む。「高い」ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に上の発現量である。いくつかの態様において、本発明の方法に従って鋸歯状CRCと特性評価されたCRCを有する対象に、TGF-β1、PD-L1、ヒアルロナンもしくはCD44の阻害剤または該阻害剤の組合せが投与される。いくつかの態様において、PKCζ、PCKλ/ι、ヒアルロナンおよびCD44の発現レベルは、本明細書に開示の検出方法を用いてもたらされる。
【0053】
対象が鋸歯状結腸直腸がんを有するかどうか、あるいは鋸歯状結腸直腸がんを発症するかどうかの判定
本明細書に開示の諸局面により、対象が鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を有するかどうか、あるいは鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を発症するかどうかを判定する方法であって:
a)その必要のある対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
c)該対象が鋸歯状CRCを有する、あるいは鋸歯状CRCを発症すると判定すること
を含み、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、該CRCを有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いものとする、方法、を提供する。PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、遺伝子PKCZおよびPKCIの発現、または遺伝子PKCZおよびPKCIから発現される遺伝子産物を測定することにより検出され得る。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、リボ核酸(RNA)発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、デオキシリボ核酸(DNA)の発現を含む。「低い」PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に下の発現量である。いくつかの態様において、本発明の方法に従って鋸歯状CRCを有すると判定された、あるいは鋸歯状CRCを発症すると予測された対象に、TGF-β1、PD-L1、ヒアルロナンもしくはCD44の阻害剤または該阻害剤の組合せが投与される。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、本明細書に開示の検出方法を用いてもたらされる。いくつかの場合において、対象から採取された生物学的試料で低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルが検出されることは、該対象が腸管上皮細胞(IEC)内のヒアルロナンおよび/またはCD44の発現増大を有することを示す。
【0054】
本明細書に開示の諸局面により、対象が鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を有するかどうか、あるいは鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を発症するかどうかを判定する方法であって:
a)その必要のある対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
c)該対象が鋸歯状CRCを有する、あるいは鋸歯状CRCを発症すると判定すること
を含み、該対象から採取された生物学的試料で検出されるヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、該CRCを有していない個体のヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルと比べて高いものとする、方法、を提供する。ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、遺伝子Hyaluronan Synthase 2(HAS2)および/またはCD44の発現、あるいは遺伝子HAS2およびCD44から発現される遺伝子産物を測定することにより検出され得る。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、RNAの発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、DNAの発現を含む。「高い」ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に上の発現量である。いくつかの態様において、本発明の方法に従って鋸歯状CRCを有すると判定された、あるいは鋸歯状CRCを発症すると予測された対象に、TGF-β1、PD-L1、ヒアルロナンもしくはCD44の阻害剤または該阻害剤の組合せが投与される。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、本明細書に開示の検出方法を用いてもたらされる。
【0055】
本明細書に開示の諸局面により、対象が、該対象において鋸歯状CRCを有するかどうか、あるいは該対象において鋸歯状CRCを発症するかどうかを判定する方法であって:
a)その必要のある対象から生物学的試料を採取すること;
b)該生物学的試料を、PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;
c)該生物学的試料を、ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルを検出するのに適したアッセイに供すること;ならびに
d)該対象が鋸歯状CRCを有する、あるいは鋸歯状CRCを発症すると判定すること
を含み、該対象から採取された生物学的試料で検出されるPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、該CRCを有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いものとし、該対象から採取された生物学的試料で検出されるヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、該CRCを有していない個体のヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルと比べて高いものとする、方法、を提供する。PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、遺伝子PKCZおよびPKCIの発現、または遺伝子PKCZおよびPKCIから発現される遺伝子産物を測定することにより検出され得る。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、RNAの発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、PKCζおよびPCKλ/ιの発現は、DNAの発現を含む。「低い」PKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に下の発現量である。ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、遺伝子HAS2および/またはCD44の発現、あるいは遺伝子HAS2およびCD44から発現される遺伝子産物を測定することにより検出され得る。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、RNAの発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、タンパク質の発現を含む。いくつかの態様において、ヒアルロナンおよびCD44の発現は、DNAの発現を含む。「高い」ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現レベルは、正常個体または非疾患個体での発現レベルより、統計学的に有意に上の発現量である。いくつかの態様において、本発明の方法に従って鋸歯状CRCを有すると判定された、あるいは鋸歯状CRCを発症すると予測された対象に、TGF-β1、PD-L1、ヒアルロナンもしくはCD44の阻害剤または該阻害剤の組合せが投与される。いくつかの態様において、PKCζ、PCKλ/ι、ヒアルロナンおよびCD44の発現レベルは、本明細書に開示の検出方法を用いてもたらされる。
【0056】
本明細書に開示の諸局面により、対象から採取された生物学的試料を、HAS2、CD44、PKCZおよび/またはPKCIを含む遺伝子由来の核酸配列あるいはHAS2、CD44、PKCZおよび/またはPKCIを含む該遺伝子から発現される遺伝子産物の有無および/または量について評価する方法を提供する。いくつかの場合において、該核酸配列は、デオキシリボ核酸(DNA)を含む。いくつかの場合において、該核酸配列は、変性DNA分子またはその断片を含む。いくつかの場合において、該核酸配列は、ゲノムDNA、ウイルスDNA、ミトコンドリアDNA、プラスミドDNA、増幅されたDNA、環状DNA、循環DNA、無細胞DNAまたはエクソソームDNAから選択されるDNAを含む。いくつかの場合において、DNAは、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA、変性二本鎖DNA、合成DNAおよびその組合せである。環状DNAは、切断または断片化されてもよい。いくつかの場合において、該核酸配列は、リボ核酸(RNA)を含む。いくつかの場合において、該核酸配列は、断片化RNAを含む。いくつかの場合において、該核酸配列は、部分分解RNAを含む。いくつかの場合において、該核酸配列は、マイクロRNAまたはその一部分を含む。いくつかの場合において、該核酸配列は、マイクロRNA(miRNA)、pre-miRNA、pre-miRNA、mRNA、pre-mRNA、ウイルスRNA、ウイロイドRNA、ウイルソイドRNA、環状RNA(circRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、pre-tRNA、長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、循環RNA、無細胞RNA、エクソソームRNA、ベクター発現RNA、RNA転写物、合成RNAおよびその組合せから選択されるRNA分子または断片化RNA分子(RNA断片)を含む。
【0057】
本明細書において、いくつかの態様において、HAS2、CD44、PKCZおよび/またはPKCIを含む遺伝子由来の核酸配列あるいはHAS2、CD44、PKCZおよび/またはPKCIを含む該遺伝子から発現される遺伝子産物の有無および/または量の検出に有用な、核酸ベース検出アッセイを開示する。いくつかの場合において、該核酸ベース検出アッセイは、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、ゲル電気泳動(例えば、ノーザンブロットもしくはサザンブロットのためのものなど)、免疫化学検査、インサイチューハイブリダイゼーション、例えば蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)、細胞化学検査またはシーケンシングを含む。いくつかの態様において、シーケンシング手法は、次世代シーケンシングを含む。いくつかの態様において、該方法は、特異的プライマーペアを用いる核酸増幅反応を伴うハイブリダイゼーションアッセイ、例えば蛍光qPCR(例えば、TaqMan(商標)またはSYBRグリーン)、および標的核酸配列に特異的な検出可能な部分または分子を含む増幅核酸プローブのハイブリダイゼーションを伴う。追加の例示的な核酸ベース検出アッセイは、ビーズ、マルチウェルプレートまたは他の基材上にコンジュゲートされた、あるいは別の様式で固定化された核酸プローブの使用を含み、この場合、該核酸プローブは標的核酸配列とハイブリダイズするように構成される。いくつかの場合において、核酸プローブは、使用される本明細書に開示の1つまたは複数の遺伝子に特異的である。いくつかの場合において、核酸プローブは、HAS2、CD44、PKCZおよび/またはPKCIあるいはHAS2、CD44、PKCZおよび/またはPKCIを含む該遺伝子から発現される遺伝子産物に特異的である。
【0058】
本明細書において、いくつかの態様において、個体から採取された試料を核酸増幅アッセイに供することによる該個体の遺伝子の検出方法を開示する。いくつかの場合において、増幅アッセイは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、qPCR、自己持続型配列複製、転写増幅システム、Q-ベータレプリカーゼ、ローリングサークル型複製または任意の適当な他の核酸増幅手法を含む。好適な核酸増幅手法は、本明細書に開示の1つもしくは複数の遺伝子、またはその遺伝子発現産物を構成する核酸配列の一領域が増幅されるように構成される。いくつかの場合において、増幅アッセイにはプライマーが必要とされる。既知の、または本明細書において提供する遺伝子の核酸配列またはその遺伝子発現産物は、当業者が該遺伝子または遺伝子バリアントの任意の一部分を増幅するためのプライマーを選択するのを可能にするのに充分である。プライマーとして適しているDNA試料は、例えばゲノムDNA、ゲノムDNAの断片、アダプター配列またはクローン化配列にライゲートされたゲノムDNAの断片のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって得られ得る。当業者であれば、所望の特異性および最適な増幅特性を有するプライマーの設計のためにコンピュータプログラム、例えばOligoバージョン7.0(National Biosciences)を利用するであろう。制御ロボットシステムが核酸の単離および増幅に有用であり、使用できることは当業者に自明であろう。
【0059】
いくつかの態様において、HAS2、CD44、PKCZおよび/またはPKCIを含む遺伝子、あるいは遺伝子HAS2、CD44、PKCZおよび/またはPKCIから発現される遺伝子発現産物の有無および/または量の検出は、対象由来の生物学的試料から得られる遺伝物質のシーケンシングを含む。シーケンシングは、任意の適切なシーケンシング技術、例えば限定するわけではないが、一分子リアルタイム(SMRT)シーケンシング、ポロニー(Polony)シーケンシング、ライゲーションによるシーケンシング、可逆的ターミネーターシーケンシング、プロトン検出シーケンシング、イオン半導体シーケンシング、ナノポアシーケンシング、エレクトロニックシーケンシング、パイロシーケンシング、マキサム・ギルバートシーケンシング、鎖伸長停止(例えば、サンガー)シーケンシング、+Sシーケンシングまたは合成によるシーケンシングを用いて行なわれ得る。シーケンシング法としては、次世代シーケンシング、例えば最先端シーケンシング技術、例えばイルミナシーケンシング(例えば、Solexa)、Roche 454シーケンシング、イオントレントシーケンシングおよびSOLiDシーケンシングも挙げられる。いくつかの場合において、次世代シーケンシングはハイスループットシーケンシング法を伴う。また、当業者に利用可能な追加のシーケンシング法も使用され得る。
【0060】
いくつかの場合において、シーケンシングされるヌクレオチドの数は少なくとも5個、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、300、400、500、2000、4000、6000、8000、10000、20000、50000、100000個または100000個より多くのヌクレオチドである。いくつかの場合において、シーケンシングされるヌクレオチドの数は約1~約100000個のヌクレオチド、約1~約10000個のヌクレオチド、約1~約1000個のヌクレオチド、約1~約500個のヌクレオチド、約1~約300個のヌクレオチド、約1~約200個のヌクレオチド、約1~約100個のヌクレオチド、約5~約100000個のヌクレオチド、約5~約10000個のヌクレオチド、約5~約1000個のヌクレオチド、約5~約500個のヌクレオチド、約5~約300個のヌクレオチド、約5~約200個のヌクレオチド、約5~約100個のヌクレオチド、約10~約100000個のヌクレオチド、約10~約10000個のヌクレオチド、約10~約1000個のヌクレオチド、約10~約500個のヌクレオチド、約10~約300個のヌクレオチド、約10~約200個のヌクレオチド、約10~約100個のヌクレオチド、約20~約100000個のヌクレオチド、約20~約10000個のヌクレオチド、約20~約1000個のヌクレオチド、約20~約500個のヌクレオチド、約20~約300個のヌクレオチド、約20~約200個のヌクレオチド、約20~約100個のヌクレオチド、約30~約100000個のヌクレオチド、約30~約10000個のヌクレオチド、約30~約1000個のヌクレオチド、約30~約500個のヌクレオチド、約30~約300個のヌクレオチド、約30~約200個のヌクレオチド、約30~約100個のヌクレオチド、約50~約100000個のヌクレオチド、約50~約10000個のヌクレオチド、約50~約1000個のヌクレオチド、約50~約500個のヌクレオチド、約50~約300個のヌクレオチド、約50~約200個のヌクレオチドまたは約50~約100個のヌクレオチドの範囲である。
【0061】
いくつかの態様において、HAS2、CD44、PKCZおよび/またはPKCIを含む遺伝子、あるいはHAS2、CD44、PKCZおよび/またはPKCIを含む該遺伝子から発現される遺伝子発現産物の有無および/または量の検出は、プローブまたはレポーター配列を本明細書に記載の標的核酸にハイブリダイズさせることを含む。プローブとして利用される分子の例としては、限定するわけではないが、RNAおよびDNAが挙げられる。いくつかの態様において、核酸に関する用語「プローブ」は、意図された具体的な標的核酸配列に選択的に結合することができる、任意の分子を示す。いくつかの場合において、プローブは、例えば放射性標識、蛍光標識、酵素、化学発光タグ、比色分析用タグまたは当技術分野において公知の他の標識もしくはタグで標識されるように特異的に設計される。いくつかの場合において、蛍光標識はフルオロフォアを含む。いくつかの場合において、フルオロフォアは、芳香族または複素環式芳香族化合物である。いくつかの場合において、フルオロフォアは、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、ベンゾオキサアゾール(benzoxaazole)、インドール、ベンゾインドール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、カニン(canine)、カルボシアニン、サリチレート、アントラニレート、キサンテン系色素、クマリンである。例示的なキサンテン色素としては、例えばフルオレセイン色素およびローダミン色素が挙げられる。フルオレセイン色素およびローダミン色素としては、限定するわけではないが、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N;N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)が挙げられる。また、好適な蛍光プローブとしては、アルファ位またはベータ位にアミノ基を有するナフチルアミン色素が挙げられる。例えば、ナフチルアミノ化合物としては、1-ジメチルアミノナフチル-5-スルホネート、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホン酸および2-p-トルイジニル-6-ナフタレンスルホン酸、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)が挙げられる。例示的なクマリンとしては、例えば3-フェニル-7-イソシアナトクマリン;アクリジン、例えば9-イソチオシアナトアクリジンおよびアクリジンオレンジ;N-(p-(2-ベンゾオキサゾリル)フェニル)マレイミド;シアニン類、例えばインドジカルボシアニン3(Cy3)、インドジカルボシアニン5(Cy5)、インドジカルボシアニン5.5(Cy5.5)、3-(-カルボキシ-ペンチル)-3’-エチル-5,5’-ジメチルオキサカルボシアニン(CyA)など;1H,5H,11H,15H-キサンテノ[2,3,4-ij:5,6,7-i’j’]ジキノリジン-18-イウム、9-[2(もしくは4)-[[[6-[2,5-ジオキソ-1-ピロリジニル)オキシ]-6-オキソヘキシル]アミノ]スルホニル]-4(もしくは2)-スルホフェニル]-2,3,6,7,12,13,16,17-オクタヒドロ-分子内塩(TRもしくはTexas Red);またはBODIPYTM色素が挙げられる。いくつかの場合において、プローブはFAMを色素標識として含む。
【0062】
いくつかの場合において、標的核酸を検出するための本明細書に記載のプライマーおよび/またはプローブは増幅反応において使用される。いくつかの場合において、増幅反応はqPCRである。例示的なqPCRは、TaqMan(商標)アッセイを使用する方法である。
【0063】
いくつかの場合において、qPCRはインターカレーター性色素の使用を含む。インターカレーター性色素の例としては、SYBRグリーンI、SYBRグリーンII、SYBRゴールド、臭化エチジウム、メチレンブルー、ピロニンY、DAPI、アクリジンオレンジ、Blue Viewまたはフィコエリトリンが挙げられる。いくつかの場合において、インターカレーター性色素はSYBRである。
【0064】
いくつかの場合において、増幅アッセイで標的核酸を検出するための増幅サイクルの回数は約5~約30サイクルである。いくつかの場合において、標的核酸を検出するための増幅サイクルの回数は少なくとも約5サイクルである。いくつかの場合において、標的核酸を検出するための増幅サイクルの回数は多くて約30サイクルである。いくつかの場合において、標的核酸を検出するための増幅サイクルの回数は約5~約10、約5~約15、約5~約20、約5~約25、約5~約30、約10~約15、約10~約20、約10~約25、約10~約30、約15~約20、約15~約25、約15~約30、約20~約25、約20~約30または約25~約30サイクルである。
【0065】
一局面において、特定の遺伝子型に由来する核酸配列の有無および/または量を調べるための、本明細書において提供する方法は、増幅反応、例えばqPCRを含む。例示的な方法の一例では、遺伝物質は、対象の試料、例えば血液試料または血清試料から得られる。核酸が抽出される特定の態様において、核酸は、後続の解析に支障をきたさない任意の手法を用いて抽出される。特定の態様において、この手法は、エタノール、メタノールまたはイソプロピルアルコールを用いるアルコール沈殿を使用するものである。特定の態様において、この手法はフェノール、クロロホルムまたはその任意の組合せを使用するものである。特定の態様において、この手法は、塩化セシウムを使用するものである。特定の態様において、この手法は、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムもしくは酢酸アンモニウムまたはDNAを沈殿させるために一般的に使用される任意の他の塩を使用するものである。特定の態様において、この手法は、市販されているものなどのカラムまたは樹脂ベースの核酸精製スキームを利用するものであり、非限定的な一例は、Sigma Aldrichから入手可能なGenElute Bacterial Genomic DNA Kitであろう。特定の態様において、抽出後、核酸は、後続の解析まで、水、TrisバッファーまたはTris-EDTAバッファー中に保存される。例示的な一態様において、核酸物質は水中に抽出される。いくつかの場合において、抽出は核酸の精製を含まない。
【0066】
例示的なqPCRアッセイでは、核酸試料は、試料中に存在するかもしれないし存在しないかもしれない標的核酸に特異的なプライマーおよびプローブならびにDNAポリメラーゼと合わされる。増幅反応は、核酸増幅のために試料を加熱および冷却し、該試料に特定の波長で照光してプローブ上のフルオロフォアを励起させて蛍光発光を検出するサーマルサイクラーで行なわれる。TaqMan(商標)法では、プローブは、フルオロフォアとクエンチャーを含む加水分解性プローブであり得、標的核酸にハイブリダイズするとDNAポリメラーゼによって加水分解される。いくつかの場合において、標的核酸の存在は、閾値に達するまでの増幅サイクルの回数が30サイクル未満、29、28、27、26、25、24、23、22、21または20サイクルである場合に測定される。
【0067】
いくつかの態様において、対象から採取された生物学的試料のヒアルロナン、CD44、PKCζおよび/またはPCKλ/ιの可溶性タンパク質レベルを検出および定量することによる、該対象における前記レベルの検出および定量を提供する。ヒアルロナン、CD44、PKCζおよび/またはPCKλ/ιは、ヒアルロナン、CD44、PKCζおよび/またはPCKλ/ιに特異的な抗体(例えば、抗ヒアルロナン抗体、抗CD44抗体、抗PKCζ抗体および/または抗PCKλ/ι抗体)が利用される抗体ベースアッセイの使用によって検出され得る。抗体ベース検出法では、抗体はヒアルロナン、CD44、PKCζおよび/またはPCKλ/ιの任意の領域に結合し得る。例示的な解析方法は、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)を行なうことを含む。ELISAアッセイはサンドイッチELISAまたは直接ELISAであり得る。別の例示的な解析方法は単一分子アレイ、例えばSimoaを含む。他の例示的な検出方法としては、免疫組織化学検査およびラテラルフローアッセイが挙げられる。
【0068】
いくつかの場合において、ヒアルロナンおよび/またはCD44タンパク質は、ヒアルロナンおよび/またはCD44と、ヒアルロナンおよび/またはCD44の他の結合パートナーとの間の結合を検出することによって検出され得る。ヒアルロナンおよび/またはCD44と、他の結合パートナーとの間の結合の解析方法は、インビボまたはインビトロあるいはエクスビボでアッセイを行なうことを含む。いくつかの場合において、該アッセイは、共免疫沈降(co-IP)、プルダウン、架橋性タンパク質相互作用解析、ラベルトランスファータンパク質相互作用解析またはファーウェスタンブロット解析、FRETベースアッセイ、例えばFRET-FLIMなど、酵母ツーハイブリッドアッセイ、BiFCまたはスプリットルシフェラーゼアッセイを含み得る。
【0069】
鋸歯状結腸直腸がんの処置方法
本開示により、マイクロサテライト安定性(MSS)鋸歯状結腸直腸がん(CRC)を有する対象を、プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)のアンタゴニストで処置することによって、イニシエーション/腺腫段階で、鋸歯状腫瘍の消退が引き起こされたことを示す。一方、反応性が強く免疫抑制性の間質を特徴とする進行腺癌を有するMSS/鋸歯状CRC対象を、PD-L1のアンタゴニストで処置すると、鋸歯状腫瘍を抗PD-L1処置に対して感受性にする機能を果たす、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)受容体阻害剤である阻害剤の共投与を施行した場合でのみ、鋸歯状腫瘍の消退が引き起こされた。MSS/鋸歯状CRC腫瘍の腸管上皮細胞(IEC)における、腫瘍形成に関与している増殖因子であるヒアルロナン(HA)とその受容体CD44の発現の増大は、HAとCD44との間の相互作用の妨害によって、MSS/鋸歯状CRCを有する対象の腫瘍形成を好転させるための好適な治療的解決策がもたらされ得ることを示唆することをさらに開示する。
【0070】
本明細書に開示の諸局面により、治療上有効な量の1種または複数種の本明細書に開示の治療用薬剤を対象に投与することによる、対象の疾患もしくは病態、または該疾患もしくは病態のサブタイプの処置方法を提供する。いくつかの場合において、疾患または病態は、結腸直腸がん(CRC)、膵臓がん、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維症、線維化狭窄またはその組合せを含む。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの場合において、CRCのサブタイプは鋸歯状CRCを含む。いくつかの場合において、鋸歯状CRCは鋸歯状CRCのMSSサブタイプを含む。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は、マウス、ラット、サルまたはウサギである。
【0071】
治療用薬剤
本明細書に開示の諸局面により、治療上有効な量の本明細書に開示の治療用薬剤を対象に投与することによる、対象の疾患もしくは病態、または疾患もしくは病態のサブタイプの処置方法であって、該対象から採取された生物学的試料では、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルが検出されるものとする、方法、を提供する。いくつかの態様において、該治療用薬剤は、治療標的の活性または発現を、低減または増大させるために有効である。治療標的の非限定的な例としては、PD-L1、PD-1、TGF-β1、TGF-βR1、ヒアルロナン、CD44およびヒアルロニダーゼが挙げられる。治療用薬剤の非限定的な例としては、上記の治療標的のアゴニストおよびアンタゴニストが挙げられる。
【0072】
PDL-1の活性または発現の阻害剤
本明細書に開示の諸局面により、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で対象に投与することによる、対象の疾患もしくは病態、または疾患もしくは病態のサブタイプの処置方法であって、該対象から採取された生物学的試料では、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルが検出されるものとする、方法、を提供する。本明細書において、特定の態様では、疾患または病態に罹患している対象においてプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現を阻害する、あるいは該活性または発現を低減させる方法であって:
a)該対象を、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを有する、と特定すること;ならびに
b)PD-L1の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること
を含む、方法、を開示する。対象は、本明細書に開示の任意の検出方法を用いて、低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを有すると特定され得る。
【0073】
いくつかの場合において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、間接阻害剤である。いくつかの場合において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、直接阻害剤である。いくつかの場合において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、PD-L1もしくはプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)またはその両方の、アロステリック調節因子を含む。いくつかの場合において、PD-L1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗体断片を含む。いくつかの態様において、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合型Fv、scFv、シングルドメイン抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体、両(dual)特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体またはその組合せを含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片はIgG抗体を含む。いくつかの場合において、抗体または抗体断片は、PD-L1に結合する。いくつかの場合において、抗体または抗体断片は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)に結合する。いくつかの場合において、PD-L1活性の発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの場合において、PD-L1の低分子阻害剤は、PD-L1に特異的に結合する。いくつかの場合において、PD-L1の低分子阻害剤は、PD-1に特異的に結合する。PD-L1の活性または発現の阻害剤の非限定的な例としては、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ(例えば、テセントリク(登録商標))、アベルマブ(例えば、バベンチオ(登録商標))、デュルバルマブ(例えば、イミフィンジ(登録商標))、ニボルマブ(例えば、オプジーボ(登録商標))、eFT508、LY3300054、HMS-936559、CK-301、ピジルズマブ(pidilzumab)、AMP-224、AM P-514、PDR001、セミプリマブが挙げられる。
【0074】
TGF-β1の活性または発現の阻害剤
本明細書に開示の諸局面により、TGF-β1の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で対象に投与することによる、対象の疾患もしくは病態、または疾患もしくは病態のサブタイプの処置方法であって、該対象から採取された生物学的試料では、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルが検出されるものとする、方法、を提供する。本明細書において、特定の態様では、疾患または病態に罹患している対象においてTGF-β1の活性または発現を阻害する、あるいは該活性または発現を低減させるための方法であって:
a)該対象を、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを有する、と特定すること;ならびに
b)TGF-β1の活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること
を含む、方法、を開示する。対象は、本明細書に開示の任意の検出方法を用いて、低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを有すると特定され得る。
【0075】
いくつかの場合において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、間接阻害剤である。いくつかの場合において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、直接阻害剤である。いくつかの場合において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、TGF-β1もしくはTGF-β1受容体(TGF-βR1)またはその両方の、アロステリック調節因子を含む。いくつかの場合において、TGF-β1の活性または発現の阻害剤は、抗体または抗体断片を含む。いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合型Fv、scFv、シングルドメイン抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体、両特異性抗体、抗イディオタイプ抗体、二重特異性抗体またはその組合せを含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片はIgG抗体を含む。いくつかの場合において、抗体または抗体断片はTGF-β1に結合する。いくつかの場合において、抗体または抗体断片はTGF-βR1に結合する。いくつかの場合において、TGF-β1活性の発現の阻害剤は低分子を含む。いくつかの場合において、TGF-β1の低分子阻害剤はTGF-β1に特異的に結合する。いくつかの場合において、TGF-β1の低分子阻害剤はTGF-βR1に特異的に結合する。TGF-β1の活性または発現の阻害剤の非限定的な例としては、ガルニセルチブ(LY2157299)、フレソリムマブ(GC1008)、ルカニクス(lucanix)(ベラゲンプマツセル-L)LY550410、LY580276およびトラベデルセンが挙げられる。
【0076】
ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤
本明細書に開示の諸局面により、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で対象に投与することによる、対象の疾患もしくは病態、または疾患もしくは病態のサブタイプの処置方法であって、該対象から採取された生物学的試料では、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルが検出されるものとする、方法、を提供する。本明細書において、特定の態様では、疾患または病態に罹患している対象においてヒアルロナンの活性または発現を阻害する、あるいは該活性または発現を低減させるための方法であって:
a)該対象を、該疾患または病態を有していない個体のPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルと比べて低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを有する、と特定すること;ならびに
b)ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤を治療上有効な量で該対象に投与すること
を含む方法を開示する。対象は、本明細書に開示の任意の検出方法を用いて、低いPKCζおよびPCKλ/ιの発現レベルを有すると特定され得る。
【0077】
いくつかの場合において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、間接阻害剤である。いくつかの場合において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、直接阻害剤である。いくつかの場合において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、ヒアルロナンもしくはCD44またはその両方の、アロステリック調節因子を含む。
【0078】
いくつかの場合において、ヒアルロナン活性の発現の阻害剤はヒアルロニダーゼまたはヒアルロニダーゼの活性もしくは発現のアゴニストを含む。ヒアルロニダーゼの非限定的な一例としてはペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)が挙げられる。いくつかの場合において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、外来性ヒアルロニダーゼを含む。いくつかの場合において、外来性ヒアルロニダーゼは、組換えヒアルロニダーゼを含む。いくつかの場合において、組換えヒアルロニダーゼは、ヒト組換えヒアルロニダーゼを含む。
【0079】
いくつかの態様、ヒアルロナン活性の発現の阻害剤(例えば、PVHA)において、該阻害剤は、単独療法として対象に投与され得る。いくつかの態様において、ヒアルロナン活性の発現の阻害剤が投与される場合、対象に任意の他の治療用薬剤は投与されない。いくつかの態様において、ヒアルロナン活性の発現の阻害剤だけを単独療法として治療上有効な用量で使用することが、対象の鋸歯状腫瘍を処置するのに、他の組み合わせの処置方法と比べて充分に有効であることが想定される。
【0080】
いくつかの態様において、ヒアルロナン活性の発現の阻害剤、ヒアルロニダーゼまたはヒアルロニダーゼの活性もしくは発現のアゴニストの用量は、治療上有効な用量である。例えば、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤がPVHAである場合、PVHAの治療上有効な量は0.01~0.5 mg/kg、0.02~0.4 mg/kg、または0.05~0.3 mg/kgである。
【0081】
代替的および/または付加的に、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍形成を、該対象において無処置個体と比べて、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%低減させるのに充分である。いくつかの態様において、腫瘍形成は、鋸歯状のポリープおよび癌腫の計数を使用することによって定量される。
【0082】
代替的および/または付加的に、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍量を、該対象において無処置個体と比べて少なくとも20%低減させるのに充分である。いくつかの態様において、腫瘍量は、腫瘍の総数、腫瘍の平均サイズまたは腫瘍細胞量のうちの少なくとも1つを用いて定量される。代替的および/または付加的に、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍内のヒアルロナン沈着を低減させるのに充分である。いくつかの態様において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の治療上有効な量は、腫瘍内のコラーゲン沈着を低減させるのに充分である。
【0083】
いくつかの場合において、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤は、アンタゴニスト、抗体または抗体断片を含む。いくつかの場合において、アンタゴニスト、抗体または抗体断片は、ヒアルロナンに結合する。いくつかの場合において、抗体または抗体断片は、70%、80%、90%または100%のヒアルロナン分子に結合する。いくつかの場合において、抗体または抗体断片は、CD44に結合する。いくつかの場合において、抗体または抗体断片は、ヒアルロナンとCD44との間の結合および/またはアゴニスト作用を阻害する。
【0084】
いくつかの場合において、ヒアルロナン活性の発現の阻害剤は、低分子を含む。いくつかの場合において、ヒアルロナン活性の発現の阻害剤は、ヒアルロナンとCD44との間の結合および/またはアゴニスト作用を阻害するのに有効な低分子を含む。いくつかの場合において、ヒアルロナンの低分子阻害剤は、ヒアルロナンに特異的に結合する。いくつかの場合において、ヒアルロナンの低分子阻害剤は、CD44に特異的に結合する。ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤の非限定的な例としては、4-メチルウンベリフェロン(4-MU)、ヒアルロニダーゼPH20(rHuPH20)、組換えヒトヒアルロニダーゼ、PEG化組換えヒトヒアルロニダーゼが挙げられる。
【0085】
いくつかの場合において、ヒアルロナンの間接阻害剤は、CD44の直接阻害剤を含む。いくつかの場合において、CD44の直接阻害剤は、抗CD44抗体または抗体断片を含む。いくつかの場合において、CD44の直接阻害剤は、DNAワクチンを含む。いくつかの場合において、CD44の直接阻害剤は、CD44siRNAを含む。いくつかの場合において、ヒアルロナンの間接阻害剤は、CD44の直接阻害剤を含む。いくつかの場合において、CD44の直接阻害剤は、抗CD44コンジュゲート細胞療法薬を含む。CD44の活性または発現の阻害剤の非限定的な一例としては、AMC303およびRG7356が挙げられる。
【0086】
薬学的組成物
PD-L1の活性もしくは発現の阻害剤、TGF-β1の活性もしくは発現の阻害剤および/またはヒアルロナンの活性もしくは発現の阻害剤、別の治療用薬剤あるいはその任意の組合せを含む薬学的組成物を、本開示のいくつかの態様において提供する。いくつかの態様において、薬学的組成物は、PD-L1の活性または発現の阻害剤を含む。いくつかの態様において、薬学的組成物は、TGF-β1の活性または発現の阻害剤を含む。いくつかの態様において、薬学的組成物は、PD-L1の活性または発現の阻害剤と、TGF-β1の活性または発現の阻害剤とを含む。いくつかの態様において、薬学的組成物は、PD-L1の活性または発現の阻害剤と、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤とを含む。いくつかの態様において、薬学的組成物は、TGF-β1の活性または発現の阻害剤と、ヒアルロナンの活性または発現の阻害剤とを含む。いくつかの態様において、薬学的組成物は、ヒアルロナンの阻害剤を含む。いくつかの態様において、本開示の薬学的組成物は、液剤、グリセロール、液状ポリエチレングリコール中の分散剤、および油中のその任意の組合せとして、固体投薬形態で、吸入可能な投薬形態、鼻腔内投薬形態、リポソーム製剤、ナノ粒子を構成する投薬形態、マイクロ粒子を構成する投薬形態、高分子投薬形態またはその任意の組合せとして調製される。いくつかの態様において、本明細書に記載の薬学的組成物は、賦形剤を含む。賦形剤は、いくつかの例において、Handbook of Pharmaceutical Excipients,American Pharmaceutical Association(1986)に記載されている賦形剤である。好適な賦形剤の非限定的な例としては、緩衝剤、防腐剤、安定剤、結合剤、圧密化剤、滑沢剤、キレート剤、分散向上剤、崩壊剤、着香添加剤、甘味料、着色剤が挙げられる。
【0087】
いくつかの態様において、賦形剤は、緩衝剤である。好適な緩衝剤の非限定的な例としては、ヒスチジン、クエン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムおよび重炭酸カルシウムが挙げられる。緩衝剤として、ヒスチジン、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化マグネシウム、乳酸マグネシウム、マグネシウムグルコメート(glucomate)、水酸化アルミニウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、メタリン酸カリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウムおよび他のカルシウム塩またはその組合せが、本開示の薬学的組成物のいくつかの態様において使用される。
【0088】
いくつかの態様において、賦形剤は、防腐剤を含む。好適な防腐剤の非限定的な例としては、抗酸化剤、例えばアルファ-トコフェロールおよびアスコルベートならびに抗菌薬、例えばパラベン、クロロブタノールおよびフェノールが挙げられる。いくつかの例において、抗酸化剤としては、限定するわけではないが、EDTA、クエン酸、アスコルビン酸、酪酸(butylated)ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル(butylated)ヒドロキシアニソール(BHA)、亜硫酸ナトリウム、p-アミノ安息香酸、グルタチオン、没食子酸プロピル、システイン、メチオニン、エタノールおよびN-アセチルシステインがさらに挙げられる。いくつかの場合において、防腐剤としては、バリダマイシンA、TL-3、オルトバナジン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、N-a-トシル-Phe-クロロメチルケトン、N-a-トシル-Lys-クロロメチルケトン、アプロチニン、フッ化フェニルメチルスルホニル、フルオロリン酸ジイソプロピル、キナーゼ阻害剤、ホスファターゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、グランザイム阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞分裂阻害剤、細胞周期阻害剤、脂質シグナル伝達阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、還元剤、アルキル化剤、抗菌剤、オキシダーゼ阻害剤または他の阻害剤が挙げられる。
【0089】
いくつかの態様において、本明細書に記載の薬学的組成物は、賦形剤として、結合剤を含む。好適な結合剤の非限定的な例としては、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキソアゾリドン、ポリビニルアルコール、C12~C18脂肪酸アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、糖類、オリゴ糖およびその組合せが挙げられる。薬学的製剤中に使用される結合剤は、いくつかの例において、デンプン、例えばイモデンプン、コーンスターチ、小麦デンプン;糖質、例えばスクロース、グルコース、デキストロース、ラクトース、マルトデキストリン;天然および合成のガム;ゼラチン;セルロース誘導体、例えば微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース;ポリビニルピロリドン(ポビドン);ポリエチレングリコール(PEG);ワックス;炭酸カルシウム;リン酸カルシウム;アルコール、例えばソルビトール、キシリトール、マンニトールおよび水またはその任意の組合せから選択される。
【0090】
いくつかの態様において、本明細書に記載の薬学的組成物は、賦形剤として、滑沢剤を含む。好適な滑沢剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水添植物油、ステロテックス(sterotex)、ポリオキシエチレンモノステアレート、タルク、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムおよび軽油が挙げられる。薬学的製剤中に使用される滑沢剤は、いくつかの態様において、ステアリン酸金属塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、脂肪酸エステル(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸)、脂肪族アルコール、ベヘン酸グリセリル、鉱物油、パラフィン、水添植物油、ロイシン、ポリエチレングリコール(PEG)、ラウリル硫酸金属塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム)、塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよびタルクまたはその組合せから選択される。
【0091】
いくつかの態様において、薬学的製剤は、賦形剤として、分散向上剤を含む。好適な分散剤の非限定的な例としては、いくつかの例において、デンプン、アルギン酸、ポリビニルピロリドン、グアーガム、カオリン、ベントナイト、精製木材セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、イソアモルファス(isoamorphous)シリケート、および高HLB乳化剤界面活性剤として微結晶セルロースが挙げられる。
【0092】
いくつかの態様において、本明細書に記載の薬学的組成物は、賦形剤として、崩壊剤を含む。いくつかの態様において、崩壊剤は、非発泡性崩壊剤である。好適な非発泡性崩壊剤の非限定的な例としては、デンプン、例えばコーンスターチ、イモデンプン、そのアルファ化デンプンおよび加工デンプン、甘味料、クレイ、例えばベントナイト、微結晶セルロース、アルギネート、デンプングリコール酸ナトリウム、ガム、例えば寒天、グアー、イナゴマメ、カラヤ、ペクチンならびにトラガカントが挙げられる。いくつかの態様において、崩壊剤は、発泡性崩壊剤である。好適な発泡性崩壊剤の非限定的な例としては、クエン酸との組合せの重炭酸ナトリウムおよび酒石酸との組合せの重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0093】
いくつかの態様において、賦形剤は、着香添加剤を含む。外層中に組み込まれる着香添加剤は、いくつかの例において、合成フレーバーオイルおよび着香芳香族化合物;天然油;植物、葉、花および果実のエキス;ならびにその組合せから選択される。いくつかの態様において、着香添加剤は、桂皮油;ウィンターグリーン油;ハッカ油;クローバー油(clover oil);ヘイオイル(hay oil);アニス油;ユーカリ;バニラ;柑橘油、例えばレモン油、オレンジ油、グレープオイルおよびグレープフルーツ油;ならびにリンゴ、モモ、洋ナシ、イチゴ、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップルおよびアプリコットなどのフルーツエッセンスからなる群より選択され得る。
【0094】
いくつかの態様において、賦形剤は甘味料を含む。好適な甘味料の非限定的な例としては、グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトースおよびその混合物(担体として使用されない場合);サッカリンおよびその種々の塩、例えばナトリウム塩;ジペプチド甘味料、例えばアスパルテーム;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;ステビア(Stevia Rebaudiana)(ステビオシド);スクロースのクロロ誘導体、例えばスクラロース;ならびに糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、シリトール(sylitol)などが挙げられる。
【0095】
いくつかの場合において、本明細書に記載の薬学的組成物は、着色剤を含む。好適な着色剤の非限定的な例としては、食品、医薬品および化粧品用色素(FD&C)、医薬品および化粧品用色素(D&C)、ならびに医薬品および化粧品用外添色素(Ext.D&C)が挙げられる。着色剤は、色素またはその対応するレーキとして使用され得る。
【0096】
いくつかの場合において、本明細書に記載の薬学的組成物は、キレート剤を含む。いくつかの場合において、キレート剤は、殺真菌性キレート剤である。例としては、限定するわけではないが:エチレンジアミン-N,N,N',N'-四酢酸(EDTA);EDTAの二ナトリウム塩、三ナトリウム塩、四ナトリウム塩、二カリウム塩、三カリウム塩、二リチウム塩および二アンモニウム塩;バリウム、カルシウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、ユウロピウム、鉄、インジウム、ランタン、マグネシウム、マンガン、ニッケル、サマリウム、ストロンチウムもしくは亜鉛のEDTAキレート;trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N',N'-四酢酸一水和物;N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン;1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N',N'-四酢酸;1,3-ジアミノプロパン-N,N,N',N'-四酢酸;エチレンジアミン-N,N'-二酢酸;エチレンジアミン-N,N'-ジプロピオン酸二塩酸塩;エチレンジアミン-N,N'-ビス(メチレンホスホン酸)ヘミ水和物;N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N',N'-三酢酸;エチレンジアミン-N,N,N',N'-テトラキス(メチレンホスポン(phosponic)酸);O,O'-ビス(2-アミノエチル)エチレングリコール-N,N,N',N'-四酢酸;N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸;1,6-ヘキサメチレンジアミン-N,N,N',N'-四酢酸;N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸;イミノ二酢酸;1,2-ジアミノプロパン-N,N,N',N'-四酢酸;ニトリロ三酢酸;ニトリロトリプロピオン酸;ニトリロトリス(メチレンリン酸)の三ナトリウム塩;7,19,30-トリオキサ-1,4,10,13,16,22,27,33-オクタアザビシクロ[11,11,11]ペンタトリアコンタンヘキサヒドロブロミド;またはトリエチレンテトラミン-N,N,N',N”,N'”,N'”-六酢酸が挙げられる。
【0097】
また、1種または複数種の本明細書に開示の免疫療法剤と、1種または複数種の他の抗菌剤または抗真菌剤、例えば、ポリエン、例えばアムホテリシンB、アムホテリシンB脂質複合体(ABCD)、アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)およびリポソームナイスタチン、アゾールおよびトリアゾール、例えばボリコナゾール、フルコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ポサコナゾールなど;グルカン合成酵素阻害剤、例えばカスポファンギン、ミカファンギン(FK463)およびV-エキノキャンディン(LY303366);グリセオフルビン;アリルアミン、例えばテルビナフィン;フルシトシンまたは他の抗真菌剤、例えば本明細書に記載のものとを含む、併用製剤品が想定される。また、ペプチドが、経表面抗真菌剤と、例えばシクロピロックスオラミン、ハロプロジン、トルナフテート、ウンデシレネート、経表面ナイサチン(nysatin)、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィンおよび他の経表面薬剤と合わされ得ることが想定される。いくつかの場合において、薬学的組成物は、追加の薬剤を含む。いくつかの場合において、追加の薬剤は、薬学的組成物中に治療上有効な量で存在する。
【0098】
通常の保存条件および使用条件下において、本明細書に記載の薬学的組成物は、微生物の増殖を抑制するための防腐剤を含む。特定の例において、本明細書に記載の薬学的組成物は、防腐剤を含んでいない。注射用途に適した医薬形態としては、滅菌された水性の液剤または分散剤および滅菌された注射用の液剤または分散剤の即時調製のための滅菌された粉末剤が挙げられる。薬学的組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコールなど)ならびに/もしくは植物油またはその任意の組合せを含む溶媒または分散媒である担体を含む。適正な流動性は、例えばコーティング、例えばレシチンの使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持される。微生物の作用の抑制は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされる。多くの場合、等張剤、例えば糖質または塩化ナトリウムが含められる。注射用組成物の長期吸収は、該組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによってもたらされ得る。
【0099】
水性液剤での非経口投与のためには、例えば、液状投薬形態は、必要であれば適切に緩衝され、液状の希釈剤は、充分な生理食塩水またはグルコースで等張性にされたものである。液状投薬形態は、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内および腹腔内投与に特に適している。これとの関連において、使用され得る滅菌された水性媒体は、本開示に鑑みると当業者には明らかである。例えば、1回分の投薬量は、特定の場合において、1mL~20 mLの等張性NaCl溶液中に溶解され、100 mL~1000 mLの流体、例えば重炭酸ナトリウム緩衝生理食塩水に添加されるか、または提案された輸注部位に注射されるかのいずれかである。
【0100】
特定の態様において、滅菌された注射用液剤は、治療用薬剤を必要とされる量で適切な溶媒中に、必要に応じて、上記に列挙した種々のその他の成分とともに組み込んだ後、滅菌濾過することによって調製される。一般的に、分散剤は、滅菌された種々の活性成分を、ベース分散媒と、上記に列挙したものからの必要とされるその他の成分とを含む、滅菌されたビヒクル中に組み込むことによって、調製される。本明細書に開示の組成物は、いくつかの場合において、中性形態または塩形態に製剤化される。薬学的に許容される塩としては、例えば、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基とともに形成される)および無機酸、例えば塩酸もしくはリン酸など、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成されるものなどが挙げられる。遊離カルボキシル基とともに形成される塩は、いくつかの場合において、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄など、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基などから誘導される。製剤化されたら、薬学的組成物は、いくつかの態様において、投薬製剤と適合性の様式で治療上有効であるような量で投与される。
【0101】
特定の態様において、本開示の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体と合わされた、有効な量の本明細書に開示の治療用薬剤を含む。「薬学的に許容される」とは、本明細書において使用する場合、任意の担体が、活性成分の生物学的活性の有効性に支障をきたさないこと、および/または担体が投与される患者に毒性でないことを含む。好適な医薬用担体の非限定的な例としては、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、種々の型の湿潤剤および滅菌溶液が挙げられる。薬学的に適合性の担体の非限定的な追加の例としては、ゲル、生体吸着性マトリックス材料、免疫療法剤を含む留置用要素または任意の他の好適なビヒクル、送達もしくは施薬の手段もしくは材料が挙げられ得る。かかる担体は、例えば慣用的な方法によって製剤化され、対象に有効な量で投与される。
【0102】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、免疫療法剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤、調節薬または活性化薬)および緩衝剤を含む製剤である。いくつかの態様において、免疫療法剤は約10~約50 mg/mL、約15~約50 mg/mL、約20~約45 mg/mL、約25~約40 mg/mL、約30~約35 mg/mL、約25~約35 mg/mLまたは約30~約40 mg/mL、約15 mg/mL、約20 mg/mL、約25 mg/mL、約30 mg/mL、約33.3 mg/mL、約35 mg/mL、約40 mg/mL、約45 mg/mLまたは約50 mg/mLの濃度で存在する。いくつかの態様において、製剤は、ヒスチジンを含む緩衝剤(例えば、ヒスチジンバッファー)を含む。特定の態様において、緩衝剤(例えば、ヒスチジンバッファー)は約1 mM~約20 mM、約2 mM~約15 mM、約3 mM~約10 mM、約4 mM~約9 mM、約5 mM~約8 mMまたは約6 mM~約7 mM、約1 mM、約2 mM、約3 mM、約4 mM、約5 mM、約6 mM、約6.7 mM、約7 mM、約8 mM、約9 mM、約10 mM、約11 mM、約12 mM、約13 mM、約14 mM、約15 mM、約16 mM、約17 mM、約18 mM、約19 mMまたは約20 mMの濃度で存在する。いくつかの態様において、緩衝剤(例えば、ヒスチジンバッファー)は約6 mM~約7 mM、約6.7 mMの濃度で存在する。他の態様において、緩衝剤(例えば、ヒスチジンバッファー)は約4~約7、約5~約6、約5.5または約6のpHを有する。
【0103】
いくつかの態様において、製剤は糖質をさらに含む。特定の態様において、糖質はスクロースである。いくつかの態様において、糖質(例えば、スクロース)は約50 mM~約150 mM、約25 mM~約150 mM、約50 mM~約100 mM、約60 mM~約90 mM、約70 mM~約80 mMまたは約70 mM~約75 mM、約25 mM、約50 mM、約60 mM、約70 mM、約80 mM、約90 mM、約100 mMまたは約150 mMの濃度で存在する。
【0104】
いくつかの態様において、製剤は界面活性剤をさらに含む。特定の態様において、界面活性剤はポリソルベート20である。いくつかの態様において、界面活性剤またはポリソルベート20)は約0.005%~約0.025%(w/w)、約0.0075%~約0.02%または約0.01%~0.015%(w/w)、約0.005%、約0.0075%、約0.01%、約0.013%、約0.015%または約0.02%(w/w)の濃度で存在する。特定の態様において、製剤は再構成された製剤である。例えば、再構成された製剤は、いくつかの場合において、凍結乾燥製剤を希釈剤中に、免疫療法剤が該再構成された製剤中に分散されるように溶解させることによって調製される。いくつかの態様において、凍結乾燥製剤は、約0.5 mL~約2 mL、例えば約1 mLの注射用水または注射用バッファーを用いて再構成される。特定の態様において、凍結乾燥製剤は、1 mLの注射用水を用いて臨床現場で再構成される。
【0105】
併用療法
特定の態様において、本開示の方法は、本明細書に開示の治療用薬剤を投与すること、続いて、その後に1つまたは複数のさらなる治療を行なうこと、あるいは本明細書に開示の治療用薬剤を、1つまたは複数のさらなる治療と併用して投与することを含む。該さらなる治療の例としては、限定するわけではないが、化学療法、放射線、抗がん剤またはその任意の組合せが挙げられ得る。該さらなる治療は、本免疫療法の施行と並行して、または逐次施行され得る。特定の態様において、本開示の方法は、本明細書に開示の免疫療法を施行すること、続いて、その後に1種または複数種の抗がん剤の投与またはがん治療の施行を行なうこと、あるいは本明細書に開示の免疫療法を、1種または複数種の抗がん剤またはがん治療と併用して施行することを含む。抗がん剤としては、限定するわけではないが、化学療法剤、放射線療法剤、サイトカイン、免疫チェックポイント阻害剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、抗がん抗体および/または抗サイクリン依存性キナーゼ剤が挙げられる。特定の態様において、がん治療としては、化学療法、生物学的治療、放射線療法、免疫療法、細胞療法、ホルモン療法、抗血管新生療法、凍結療法、毒素療法および/または手術またはその組合せが挙げられる。特定の態様において、本開示の方法は、本明細書に開示の免疫療法を施行すること、続いて、その後に1種または複数種のさらなる免疫調節剤を投与すること、あるいは本明細書に開示の免疫療法を、1種または複数種のさらなる免疫調節剤と併用して施行することを含む。免疫調節剤としては、いくつかの例において、腫瘍またはがんと関連している抗ウイルス免疫を抑制することができる任意の化合物、分子または物質が挙げられる。該さらなる免疫調節剤の非限定的な例としては、抗CD33抗体またはその可変領域、抗CD11b抗体またはその可変領域、COX2阻害剤、例えばセレコキシブ、サイトカイン、例えばIL-12、GM-CSF、IL-2、IFN3および1FNyならびにケモカイン、例えばMIP-1、MCP-1およびIL-8が挙げられる。
【0106】
特定の例において、該さらなる治療が細胞療法である場合、例示的な細胞療法としては、限定するわけではないが、免疫エフェクター細胞療法、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法、ナチュラルキラー細胞療法およびキメラ抗原受容体ナチュラルキラー(NK)細胞療法が挙げられる。NK細胞またはCAR-NK細胞またはNK細胞とCAR-NK細胞の両方の組合せのいずれかが、本明細書に開示の方法と併用して使用され得る。いくつかの態様において、NK細胞およびCAR-NK細胞は、ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)、臍帯血または細胞株に由来する。いくつかの態様において、NK細胞およびCAR-NK細胞はサイトカイン受容体および自殺遺伝子を含む。いくつかの態様において、NK細胞およびCAR-NK細胞はCD56の存在およびCD3表面マーカーの非存在を特徴とする。いくつかの態様において、NK細胞およびCAR-NK細胞は、腫瘍細胞(例えば、充実性腫瘍)および/またはウイルスを有する細胞を標的化する。いくつかの態様において、NK細胞およびCAR-NK細胞はヒアルロナンの阻害剤と併用して投与される。いくつかの態様において、NK細胞およびCAR-NK細胞は抗PD-L1療法薬と併用して投与される。
【0107】
特定の例において、該さらなる治療が放射線である場合、例示的な線量は5,000ラド(50 Gy)~100,000ラド(1000 Gy)もしくは50,000ラド(500 Gy)または記載の範囲内の他の適切な線量である。あるいはまた、放射線線量は約30~60 Gy、約40~約50 Gy、約40~48 Gyもしくは約44 Gyまたは記載の範囲内の他の適切な線量であり、線量は、例えば上記のような線量測定試験によって測定される。“Gy”は、本明細書において使用する場合、100ラドの放射線に対する比吸収線量の単位を示し得る。Gyは“Gray(グレイ)”の略号である。
【0108】
特定の例において、該さらなる治療が化学療法である場合、例示的な化学療法剤としては、限定するわけではないが、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード誘導体、エチレンイミン、アルキルスルホネート、ヒドラジンおよびトリアジン、ニトロソウレアならびに金属塩)、植物アルカロイド(例えば、ビンカアルカロイド、タキサン、ポドフィロトキシンおよびカンプトテカン(camptothecan)アナログ)、抗腫瘍抗生物質(例えば、アントラサイクリン系、クロモマイシン類など)、代謝拮抗薬(例えば、葉酸代謝拮抗薬、ピリミジン拮抗薬、プリン拮抗薬およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤)、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤ならびに多種多様な抗新生物薬(例えば、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、副腎皮質ステロイド阻害剤、酵素、抗微小管剤およびレチノイド)が挙げられる。例示的な化学療法剤としては、限定するわけではないが、アナストロゾール(Arimidex(登録商標))、ビカルタミド(Casodex(登録商標))、硫酸ブレオマイシン(Blenoxane(登録商標))、ブスルファン(Myleran(登録商標))、ブスルファン注射液(Busulfex(登録商標))、カペシタビン(Xeloda(登録商標))、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、シスプラチン(Platinol(登録商標))、クラドリビン(Leustatin(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)またはNeosar(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(Cytosar-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射液(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、ダクチノマイシン(Actinomycin D、Cosmegan)、ダウノルビシン塩酸塩(Cerubidine(登録商標))、ダウノルビシンクエン酸塩リポソーム注射液(DaunoXome(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、ドキソルビシン塩酸塩(Adriamycin(登録商標)、Rubex(登録商標))、エトポシド(Vepesid(登録商標))、リン酸フルダラビン(Fludara(登録商標))、5-フルオロウラシル(Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(Eulexin(登録商標))、テザシチビン(tezacitibine)、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標))、イダルビシン(Idamycin(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(Camptosar(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(Alkeran(登録商標))、6-メルカプトプリン(Purinethol(登録商標))、メトトレキサート(Folex(登録商標))、ミトザントロン(Novantrone(登録商標))、マイロターグ、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、フェニックス(phoenix)(Yttrium90/MX-DTPA)、ペントスタチン、カルムスチンを有するポリフェプロサン20留置用剤(Gliadel(登録商標))、タモキシフェンクエン酸塩(Nolvadex(登録商標))、テニポシド(Vumon(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(Tirazone(登録商標))、注射用トポテカン塩酸塩(Hycamptin(登録商標))、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))およびビノレルビン(Navelbine(登録商標))、イブルチニブ、イデラリシブならびにブレンツキシマブベドチンが挙げられ得る。
【0109】
例示的なアルキル化剤としては、限定するわけではないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル類、ニトロソウレアおよびトリアゼン):ウラシルマスタード(Aminouracil Mustard(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、Uracil nitrogen Mustard(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、chlormethine(Mustargen(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、Endoxan(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(Alkeran(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、ピポブロマン(Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標))、トリエチレンメラミン(Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標))、トリエチレンチオホスホラミン、テモゾロミド(Temodar(登録商標))、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(Busilvex(登録商標)、Myleran(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))ならびにダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))が挙げられる。追加の例示的なアルキル化剤としては、限定するわけではないが、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));テモゾロミド(Temodar(登録商標)およびTemodal(登録商標));ダクチノマイシン(アクチノマイシン-Dとしても公知、Cosmegen(登録商標));メルファラン(L-PAM、L-サルコリシンおよびフェニルアラニンマスタードとしても公知、Alkeran(登録商標));アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)としても公知、Hexalen(登録商標));カルムスチン(BiCNU(登録商標));ベンダムスチン(Treanda(登録商標));ブスルファン(Busulfex(登録商標)およびMyleran(登録商標));カルボプラチン(Paraplatin(登録商標));ロムスチン(CCNUとしても公知、CeeNU(登録商標));シスプラチン(CDDPとしても公知、Platinol(登録商標)およびPlatinol(登録商標)-AQ);クロラムブシル(Leukeran(登録商標));シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)およびNeosar(登録商標));ダカルバジン(DTIC、DICおよびイミダゾールカルボキサミドとしても公知、DTIC-Dome(登録商標));アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)としても公知、Hexalen(登録商標));イホスファミド(Ifex(登録商標));プレドヌムスチン(Prednumustine);プロカルバジン(Matulane(登録商標));メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、ムスチンおよびメクロロエタミン塩酸塩としても公知、Mustargen(登録商標));ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標));チオテパ(チオホスホアミド、TESPAおよびTSPAとしても公知、Thioplex(登録商標));シクロホスファミド(Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標));ならびにベンダムスチンHCl(Treanda(登録商標))が挙げられる。
【0110】
例示的なアントラサイクリン系としては、限定するわけではないが、例えば、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)およびRubex(登録商標));ブレオマイシン(Lenoxane(登録商標));ダウノルビシン(ダウオルビシン(dauorubicin)塩酸塩、ダウノマイシンおよびルビドマイシン塩酸塩、Cerubidine(登録商標));ダウノルビシンリポソーム製剤(ダウノルビシンクエン酸塩リポソーム製剤、DaunoXome(登録商標));ミトザントロン(DHAD、Novantrone(登録商標));エピルビシン(Ellence(商標));イダルビシン(Idamycin(登録商標)、Idamycin PFS(登録商標));マイトマイシンC(Mutamycin(登録商標));ゲルダナマイシン;ハービマイシン;ラビドマイシン;ならびにデスアセチルラビドマイシンが挙げられ得る。
【0111】
例示的なビンカアルカロイドとしては、限定するわけではないが、ビノレルビン酒石酸塩(Navelbine(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))およびビンデシン(Eldisine(登録商標)));ビンブラスチン(ビンブラスチン硫酸塩、ビンカロイコブラスチンおよびVLBとしても公知、Alkaban-AQ(登録商標)およびVelban(登録商標));ならびにビノレルビン(Navelbine(登録商標))が挙げられる。
【0112】
例示的なプロテオソーム阻害剤は、限定するわけではないが、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標));カルフィルゾミブ(PX-171-007、(S)-4-メチル-N-((S)-1-(((S)-4-メチル-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソペンタン-2-イル)アミノ)-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)-4-フェニルブタンアミド)-ペンタンアミド);マリゾミブ(NPI-0052);クエン酸イキサゾミブ(MLN-9708);デランゾミブ(CEP-18770);およびO-メチル-N-[(2-メチル-5-チアゾリル)カルボニル]-L-セリル-O-メチル-N-[(1S)-2-[(2R)-2-メチル-2-オキシラニル]-2-オキソ-1-(フェニルメチル)エチル]-L-セリンアミド(ONX-0912)であり得る。
【0113】
「~と併用して」とは、本明細書において使用する場合、治療用薬剤と該さらなる治療薬が対象に、処置レジメンまたは処置計画の一部として投与されることを意味する。特定の態様において、併用して使用されることは、本免疫療法薬と該さらなる治療薬が投与前に物理的に合わされること、あるいはこれらが同じ時間枠において投与されることを必要としない。例えば、限定するわけではないが、本免疫療法薬と該1種または複数種の薬剤は、処置される対象に並行して投与される、あるいは同時に、または任意の順序で逐次、または異なる時点で投与される。
【0114】
該さらなる治療薬は、種々の態様において、液状投薬形態、固形投薬形態、座剤、吸入可能な投薬形態、鼻腔内投薬形態で、リポソーム製剤、ナノ粒子を構成する投薬形態、マイクロ粒子を構成する投薬形態、高分子投薬形態またはその任意の組合せで投与される。特定の態様において、該さらなる治療薬は、約1週間~約2週間、約2週間~約3週間、約3週間~約4週間、約4週間~約5週間、約6週間~約7週間、約7週間~約8週間、約8週間~約9週間、約9週間~約10週間、約10週間~約11週間、約11週間~約12週間、約12週間~約24週間、約24週間~約48週間、約48週間もしくは約52週間またはそれより長い期間にわたって投与される。該さらなる治療薬の投与頻度は、特定の場合において、1日1回、1日2回、1週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回(あるいは1ヶ月に1回)、8週間毎に1回(あるいは2ヶ月毎に1回)、12週間毎に1回(あるいは3ヶ月毎に1回)または24週間毎に1回(6ヶ月毎に1回)である。
【0115】
ヒト鋸歯状結腸直腸がんモデル
モデル
本明細書に開示の諸局面により、ヒト鋸歯状結腸直腸がん(CRC)のモデルを提供する。いくつかの場合において、該モデルは組織モデルである。いくつかの場合において、組織モデルはオルガノイドを含む。いくつかの場合において、該モデルは動物モデルを含む。いくつかの場合において、該モデルは、PKCλ/ιおよびPKCζが発現されないように、PRKCIおよびPRKCZの発現を特異的に阻害する遺伝情報を含む。いくつかの場合において、該モデルは、PRKCIおよびPRKCZの発現を特異的に低減させ、PKCλ/ιおよびPKCζの発現の低減をもたらす遺伝情報を含む。
【0116】
本明細書において、いくつかの態様において、ヒト鋸歯状CRCの動物モデルを開示する。いくつかの場合において、該動物モデルは、PRKCIおよびPRKCZのノックアウトまたはノックダウンを含む。いくつかの場合において、該ノックアウトまたはノックダウンは、相同組換え、ヌクレアーゼベース遺伝子編集(例えば、CRISPR/Cas9)、部位特異的組換え(例えば、組換え媒介性カセット交換、フリップ切除スイッチ(flip-excisionswitch)、Cre-loxP組換えシステム)、テトラサイクリンベースシステム(例えば、Tet-On/Off)、内部リボソーム進入部位またはその組合せを用いて作出する。いくつかの場合において、該動物モデルは、哺乳動物を含む。いくつかの場合において、該動物モデルは、マウス、ラット、サルを含む。いくつかの場合において、
【0117】
本明細書において、いくつかの態様において:
a)Prkci fl/flおよびPrkcz fl/flである動物を準備することであって、該動物が、PrkciおよびPrkczを含む遺伝子に隣接しているloxP部位を有する、該動物を準備すること;ならびに
Prkci fl/flおよびPrkcz fl/flである該動物を、小腸および大腸の絨毛および陰窩上皮細胞内のユビキタスプロモーターに機能的に連結されるCreリコンビナーゼを発現している動物と交配することであって、それにより、小腸および大腸の絨毛および陰窩上皮細胞においてPkcζおよびPkcλの欠失を有するトランスジェニック動物を作成すること
を含む、鋸歯状結腸直腸がんの動物モデルの作製方法を開示する。
【0118】
本明細書に開示の諸局面により、ヒト鋸歯状CRCのPKCλ/ιおよびPKCζの欠失を有するヒト鋸歯状CRCの動物モデルを提供する。該動物モデルは、小さい体サイズおよび低体重ならびに野生型(WT)動物より悪い生存率を特徴とし得る(
図1、パネルA~C)。いくつかの場合において、該動物モデルの腸は膨張して充満状態であり、腸機能の改変が示唆される(
図1、パネルA)。該動物モデルは、腸陰窩内のパネート細胞の数の減少および/またはパネート細胞の異常な局在化を特徴とし得る(
図8、パネルA)。いくつかの場合において、該動物モデルは、小腸および結腸の両方にヒト鋸歯状表現型に似ている変形した過形成性外観を含む(
図1、パネルD)。いくつかの場合において、該動物モデルは、代替経路を経由してCRCに進行し得る前がん病変である、ヒトの微小血管細胞または杯細胞高含有鋸歯状過形成と類似した細胞形態学的特色を含む(
図8、パネルB)。いくつかの場合において、該動物モデルは、膨張してねじれた陰窩を有する結腸および腸内に自然な無茎性鋸歯状腺腫/ポリープ(SSA/P)が発生している(
図1、パネルDおよびE)。いくつかの場合において、SSA/Pは腸腫瘍に進展し、これは動物が老化するにつれて数が増える(
図1、パネルFおよび
図9、パネルC)。いくつかの場合において、腫瘍は結腸の近位の箇所に局在する(
図1、パネルG、
図1、パネルHおよび
図8、パネルD)。いくつかの場合において、腫瘍は粘膜内腺癌(
図1、パネルD)および/または浸潤性腺癌(
図1、パネルI)に進行する。いくつかの場合において、該動物モデルは、表7から選択される複数の遺伝子を含むDKO
IECトランスクリプトミクスシグネチャーを特徴とし得る。いくつかの場合において、トランスクリプトミクスプロフィールは、表7の2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または30個の遺伝子を含む。
【0119】
本明細書に開示の諸局面により、明瞭ながん幹細胞トランスクリプトミクスプロフィールを特徴とするPKCλ/ιおよびPKCζの欠失を有するヒト鋸歯状CRCの動物モデルを提供する。いくつかの場合において、該動物モデルは、PKCλ/ιおよびPKCζの欠失を有しない動物と比べて、ヒアルロナン発現の増大(例えば、過剰発現)を特徴とし得る。いくつかの場合において、ヒアルロナンの過剰発現は該動物モデルの鋸歯状腫瘍の間質に局在化している。いくつかの場合において、該動物モデルは、CD44発現の増大を特徴とし得る。いくつかの場合において、CD44の過剰発現は腸管上皮細胞に局在化している。いくつかの場合において、ヒアルロナンおよび/またはCD44の発現は、鋸歯状CRCが過形成から無茎性鋸歯状腺腫/ポリープ(SSA/P)に、およびSSA/Pから癌腫に進行するにつれて、増大する。いくつかの場合において、該動物モデルは、PKCλ/ιもしくはPKCζのいずれかの欠失を有する動物と比べて;および/または野生型(WT)動物と比べて、Irf7、Oas1a、Isg15および/またはCxcl10を含むインターフェロン応答性遺伝子の発現の減少を特徴とする。いくつかの場合において、該動物モデルは、Olfm4、Ascl2および/またはLgr5を含む幹細胞バイオマーカーの発現の減少を特徴とし得る。
【0120】
本明細書に開示の諸局面により、転写レベルでヒトMMS鋸歯状腫瘍との類似性が高い腫瘍を発生させるPKCλ/ιおよびPKCζの欠失を有するヒト鋸歯状CRCの動物モデルを提供する。いくつかの場合において、動物モデルは、鋸歯状CRCのマイクロサテライト安定性(MSS)トランスクリプトミクスプロフィールをさらに特徴とする(
図8、パネルEおよび
図8、パネルF)。CRCのMSS表現型と関連している遺伝子の非限定的な例としては、FLNB、GLCE、CCDC146、GTF2IRD2、GTF2IRD2B、GTF2IRD2P1、INADL、DOCK5、MACF1、AKAP7、TTC19、MAP1B、PTK7、BIK、SHROOM3、KLK7、RHBDL2、PLK2、EPM2AIP1、AHNAK、PSTPIP2、NMU、EPB41L4A、ACTA2、PHLDB2、ISM1、KITLG、PTPRD、SLC7A8、RASGRF1、YPEL1、UBASH3B、VSIG2、MYCL1、IL8、TCF7、TLR4、ACAA2、TET2、ENPP3、ST6GAL2、CFTR、MYCN、PALLD、ARAP2、MYOF、ARHGAP29、MT1E、BICC1、ABCC3、NRXN3、C19orf45 SFRP5、REN、NEDD9、APCDD1、CXCL6、C6orf15、INPP4B、SGPL1、KIT、TMEM211、CCDC3、CXCL14、UCA1、C16orf62、HSPA2、SPATA18、MPZL2、FHL2、CSGALNACT1、LOC100506403、RUNX1、ID4、ACTG1P4、AMY1A、AMY1B、AMY1C、AMY2A、AMY2B、NDP、CD200、PDE9A、SLCO1B3、TUBA1A、ANXA3、IL17RD、PTCHD4、NTRK2、LPAR6、CHRNB1、ANXA1、CAPN8、EDN1、TSPAN2、KLK10、PDE4D、CYP4X1、ATP8A1、TWSG1、MYLK、TGFB3、TRIM22およびFSTL1が挙げられる。いくつかの場合において、該動物モデルは、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)経路および/またはYes関連タンパク質(YAP)経路内の1つまたは複数の遺伝子の発現についてエンリッチメントされる。いくつかの場合において、1つまたは複数の遺伝子のエンリッチメントが腸上皮細胞(IEC)内に検出される。該動物モデルにおいてエンリッチメントされ得るERK経路内の遺伝子の非限定的な例としては、ARAF、DLK1、MAP3K1(MEKK1)、MAP3K2(MEKK2)、MAP3K3(MEKK3)、MAP3K4(MEKK4)、MAP4K1(HPK1)、MOS、PAK1、RAF1、MAP2K1(MEK1)、MAP2K2(MEK2)、MAP2K3(MEK3)、MAP2K4(MKK4、JNKK1)、MAP2K5(MEK5)、MAP2K6(MEK6、MKK6)、MAP2K7(JNKK2)、MAPK1(ERK2)、MAPK3(ERK1)、MAPK6(ERK3)、MAPK7(ERK5)、MAPK8(JNK1)、MAPK9(JNK2)、MAPK10(JNK3)、MAPK11(P38BETA)、MAPK12(P38GAMMA)、MAPK13(SAPK4、SERK4)、MAPK14(P38ALPHA)、ATF2(CREB2)、CREB1、CREBBP(CBP)、EGFR、ELK1、ETS1、ETS2、JUN、KCNN1(KCA2.1)、MAPKAPK2、MAPKAPK5、MAX、MEF2C、MKNK1、MYC、NFATC4(NFAT3)、SMAD4(MADH4)、TRP53(P53).COL1A1、EGR1、FOS、HSPA5(GRP78)、HSPB1(HSP27)、JUN、MYC、TRP53(P53)、HRAS、KRAS、KSR1、MAP2K1(MEK1)、MAP2K2(MEK2)、NRAS、CDC42、CHUK(IKBKA)、GRB2、HRAS、KCNN1(KCA2.1)、KRAS、MAP2K1(MEK1)、MAP2K2(MEK2)、MAP2K4(MKK4、JNKK1)、MAP4K1(HPK1)、NRAS、RAC1、SFN(14-3-3Σ)、LAMTOR3(MP1)、MAP3K1(MEKK1)、MAPK8IP1(JIP1)、MAPK8IP2(JIP2)、MAPK8IP3(JIP3)、CCNA1、CCNA2、CCNB1、CCNB2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CDK2、CDK4、CDK6、CDKN1A(P21CIP1、WAF1)、CDKN1B(P27KIP1)、CDKN1C(P57KIP2)、CDKN2A(P16INK4A)、CDKN2B(P15INK4B)、CDKN2C(P18INK4C)、CDKN2D(P19INK4D)、AND E2F1、RB1またはそのアナログが挙げられる。該動物モデルにおいてエンリッチメントされ得るYAP経路内の遺伝子の非限定的な例としては、ACTG1、AMOT、AMOTL1、AMOTL2、CASP3、CRB1、CRB2、CRB3、CSNK1D、CSNK1E、DCHS1、DCHS2、DIAP2、DLG1、DVL2、FAT1、FAT2、FAT3、FAT4、FJX1、AJUBA、LIMD1、LIX1L、LLGL1、LLGL2、LPP、NF2、RASSF2、RASSF4、SCRIB、WTIP、WWC1、ZDHHC18、LATS2、MOB1B、MOB1A、SAV1、STK3、STK4、TAZ、YAP1、MST1、WWTR1、HIPK2、MAPK10(JNK3)、MEIS1、PRKCI、PRKCZ、SMAD1(MADH1)、TEAD1、TEAD2、TEAD3、TEAD4、TRP63(TP73L)、TSHZ1、TSHZ2、TSHZ3、WNT1、CASP3、CCNE1、CCNE2、MYC、PPP2CB、PPP2R1A、PPP2R2D、PTPN14、RERE、NF2、TAZ、YAP1、CRB1、CRB2、CRB3、DCHS1、DCHS2、FAT1、FAT2、FAT3、FAT4、LATS1、LATS2、MST1、SCRIB、STK3、STK4、GPC5、HMCN1、POTEG、TAOK1、TAOK2、TAOK3、TJP1、TJP2、MPDZ、MPP5、NPHP4、PARD3、PARD6G、YWHAB、YWHAE、YWHAQおよびYWHAZまたはそのアナログが挙げられる。
【0121】
本明細書に開示の諸局面により、ヒト鋸歯状CRCと同様の免疫抑制性腫瘍環境を発生させるPKCλ/ιおよびPKCζの欠失を有するヒト鋸歯状CRCの動物モデルを提供する。いくつかの場合において、該動物モデルは、PKCλ/ιおよびPKCζの欠失を有しない動物と比べて;ならびにPKCλ/ιまたはPKCζのいずれかの欠失を有する動物と比べて、CD45+ 細胞の増加を特徴とし得る(
図3、パネルA)。いくつかの場合において、該動物モデルは、WT動物のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現レベルと比べて、PD-L1発現レベルの増大を特徴とし得る。いくつかの場合において、CD45+ 細胞において検出可能なPD-L1発現レベルの増大。いくつかの場合において、該動物モデルは、WT動物と比べて、CD8+ 細胞の減少を特徴とし得る。いくつかの場合において、該動物モデルは、インターフェロン応答の障害を特徴とし得る。インターフェロン応答に関与している遺伝子の非限定的な例としては、IRF7、OAS1A、ISG15およびCXCL10が挙げられる。
【0122】
本明細書に開示の諸局面により、ヒト鋸歯状CRCと同様の間質の応答の活性化を発生させるPKCλ/ιおよびPKCζの欠失を有するヒト鋸歯状CRCの動物モデルを提供する。いくつかの場合において、該動物モデルは、アルファ-平滑筋アクチン(αSMA)の増大を特徴とし得る(
図3、パネルK)。いくつかの場合において、該動物モデルは、コラーゲン沈着の増大を特徴とし得る(
図3、パネルLおよび
図10、パネルC)。いくつかの場合において、該動物モデルは、上皮成長因子受容体(EGFR)、アンフィレグリン(Areg)およびエピレグリン(Ereg)のリガンドを含む間質由来増殖因子の増大を特徴とし得る。
【0123】
ヒト鋸歯状結腸直腸がんモデルの使用方法
本明細書に開示の諸局面により、本明細書に開示のモデルを用いた鋸歯状腫瘍形成のモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。鋸歯状腫瘍形成のモジュレーターとしては、本明細書に開示の治療用薬剤またはさらなる治療薬が挙げられ得る。本明細書において、いくつかの態様において、鋸歯状腫瘍形成のモジュレーターのスクリーニング方法であって:
a)本明細書に開示のヒト鋸歯状結腸直腸がん(CRC)モデルを準備すること;
b)該モデルを腫瘍形成の推定モジュレーターと接触させること;および
c)該モデルにおいて1つまたは複数の腫瘍関連パラメータの1つまたは複数の変化を検出することを含む、方法、を開示する。腫瘍関連パラメータの非限定的な例としては、鋸歯状腫瘍へのCD8+ T細胞の動員、無茎性鋸歯状腺腫(SSA)の腺癌への進行、鋸歯状腫瘍の数、鋸歯状腫瘍のサイズ、鋸歯状腫瘍の総細胞量、アルファ-平滑筋アクチン(αSMA)の発現の増大もしくはコラーゲン沈着またはその組合せが挙げられる。どのようにして腫瘍関連パラメータが本発明の方法に従って使用され得るかの非限定的な例において、鋸歯状腫瘍へのCD8+ T細胞の増加が観察されるならば、推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する;SSAの腺癌への進行が観察されないならば、推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する;推定モジュレーターと接触させる前の該モデルの鋸歯状腫瘍の数と比べて鋸歯状腫瘍の数が減少していることが観察されるならば、該推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する;推定モジュレーターと接触させる前の該モデルの鋸歯状腫瘍のサイズと比べて鋸歯状腫瘍のサイズが小さくなっていることが観察されるならば、該推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する;推定モジュレーターと接触させる前の該モデルの鋸歯状腫瘍の腫瘍細胞量と比べて鋸歯状腫瘍の総細胞量が減少していることが観察されるならば、該推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する;推定モジュレーターと接触させる前の該モデルのαSMAの発現と比べてαSMAの発現の増大が観察されないならば、該推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する;推定モジュレーターと接触させる前の該モデルのコラーゲン沈着と比べてコラーゲン沈着の増大が観察されないならば、該推定モジュレーターは腫瘍形成を負に調節する;推定モジュレーターは、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の活性または発現の阻害剤、トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)の活性または発現の阻害剤、およびヒアルロナン活性の発現の阻害剤からなる群より選択される。
【実施例】
【0124】
以下の実施例は、請求項に記載の発明をより充分に例示するために示しており、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。具体的な材料が記載されている限りにおいて、それは例示の目的のためにすぎず、本発明を限定することは意図されない。当業者は、発明能力を発揮しなくても本発明の範囲から逸脱することなく等価な手段または反応物を開発し得よう。
【0125】
実施例1. 両方のaPKCの消失により、小腸および結腸内に鋸歯状腫瘍の発生がもたらされる
腸上皮におけるPKCλ/ιとPKCζの複合消失が、他の発がん性傷害の非存在下で腫瘍形成を推進するのに充分であるかどうかを試験するため、Prkci
fl/flおよびPrkcz
fl/flマウスをVillin-creマウスと交配し、IECにおいてPKCλ/ιの欠失(LKO
IEC)、PKCζの欠失(ZKO
IEC)または両方のaPKCの欠失を有するマウス系統(DKO
IEC)を作成した。DKO
IECマウスは、予想されたメンデル比で生まれたが、小さい体サイズおよび低体重、ならびに野生型(WT)マウスより悪い生存率を示した(
図1、パネルA~C)。DKO
IEC腸は膨張して充満状態に見えることが多く、腸機能の改変および閉塞が示唆され(
図1、パネルA)、リゾチーム免疫組織化学検査(IHC)による測定時、陰窩内のパネート細胞の数の深刻な減少を有した(
図8、パネルA)。残存しているパネート細胞は陰窩上部および絨毛に異常な局在化を示し、また、パネート細胞(リゾチーム)と杯細胞(アルシアンブルー)の両方のマーカーについての染色が陽性の、未熟な分化細胞の集団もみられた(
図8、パネルA)。DKOIECマウスは、小腸および結腸の両方に、ヒト鋸歯状表現型に似た変形した「ノコ歯形」過形成性外観を示した(
図1、パネルD)。この類似性を、DKO
IEC腸内における、通常型の「腺腫-癌腫」シーケンスへの代替経路を経由してCRCに進行し得る前がん病変である、ヒトの微小血管細胞または杯細胞高含有鋸歯状過形成と同様の細胞形態学的特色の存在に拡張した(
図8、パネルB)。7週齢後、DKO
IECマウスの小腸および結腸の両方に、膨張してねじれた陰窩を有する自然な無茎性鋸歯状腺腫/ポリープ(SSA/P)が発生した(
図1、パネルDおよび
図1、パネルE)。ほぼ全く腫瘍が発生しなかった単一aPKC欠損マウス(LKO
IECおよびZKO
IEC)(
図8、パネルC)とはかなり対照的に、DKO
IECマウスは、効率的で進行性の腸腫瘍発生を示し、これは、マウスが老化するにつれて増大した(
図1、パネルFおよび
図8、パネルC)。小腸の相違する領域間で腫瘍分布に有意差はみられなかったが、結腸では近位箇所に優先性がみられ(
図1、パネルG、
図1、パネルHおよび
図8、パネルD)、これはヒト鋸歯状CRCの挙動をしっかり反映している。結腸腫瘍は、場合によってはムチン含有物が付随した(
図1、パネルH)。また、陰窩の側方出芽の形態の異常な陰窩形成および細胞異型も観察され、付随する形成異常変化の存在が示された(
図1、パネルD)。さらに、DKOIEC腸腫瘍の大きなサブセットは粘膜内腺癌(
図1、パネルD)および浸潤性腺癌にまで(
図1、パネルI)進行した。すなわち、それぞれ72.2%(13匹/18匹)および81.3%(13匹/16匹)のマウスの小腸および結腸に腺癌が発生した。
【0126】
浸潤性腺癌は、管状腺癌成分だけでなく場合によっては、Ki67およびアルシアンブルーの二重陽性細胞によって示されるような、核を周囲に押しやる大量の細胞質内ムチンを形態学的特徴とする低分化癌(
図1、パネルJ)または印環細胞癌(
図1、パネルK)も含む。また、本発明者らは、該腫瘍の高い侵攻性を示す重度の線維形成性変化も観察した(
図1、パネルL)。低分化型の粘液性の印環細胞の出現がヒト鋸歯状腫瘍のMSSおよび侵攻性の表現型と関連していることを考慮すると、DKOIECマウス腫瘍がMSS鋸歯状ヒト疾患を形態学的に模倣することが強く示唆される。実際、マイクロサテライトリピートマーカーの解析により、DKOIEC腫瘍はMSSであることが示された(
図8、パネルEおよび
図8、パネルF)。この腫瘍の代表的なDNA-MMR遺伝子のmRNAの発現(
図8、パネルG)に変化は観察されなかった。ヒト鋸歯状腫瘍におけるMSS/MSI-LとCpGアイランドメチル化表現型(CIMP)-低/CIMP-陰性プロフィール間の正の関連性に一致して、CIMPを規定するマーカーはいずれも改変されなかった(
図8、パネルH)。さらに、DKO
IECマウスの腸において老化は検出されなかった(
図8、パネルI)。KRASまたはBRAFによって推進される鋸歯状腫瘍において報告されていることと同様、およびSSA/Pは充分に形質転換されていない前がん病変であるという見解と整合して、本発明者らは、SSA/Pにおけるp53、p21およびp16の発現の増大を観察し、これらはすべて、腫瘍が癌ステージに達したら元に戻った(
図8、パネルJ)。総合的に、このような結果は、腸上皮におけるPKCλ/ιとPKCζの同時消失が、高度に線維形成性の侵攻性表現型を有するMSS浸潤癌にさらに進行するSSA/Pの発生をもたらすことを示す。
【0127】
実施例2. DKO
IEC腸上皮においてERKシグナル伝達は活性化されるがWnt/β-カテニンシグナル伝達は活性化されない
鋸歯経路を経由して発生した結腸直腸がん(CRC)は通常型の腺腫-癌腫表現型と形態学的に異なるだけでなく、シグナル伝達および遺伝子の観点からも異なる。この遺伝子の違いはWnt/β-カテニンシグナル伝達経路内における変異を特徴とし、これは鋸歯状ポリープの方がずっと頻度が低い。注目すべきことに、DKO
IEC腫瘍においてSSA/P細胞でも腺癌細胞でも核のβ-カテニン染色の蓄積は示されなかった。しかしながら、Apc
fl/+;LKO
IECマウスの腫瘍では核のβ-カテニン染色の蓄積が観察された(
図2、パネルAおよび
図2、パネルB)。DKO
IEC腸の表現型の原因となるシグナル伝達経路を調べるため、これらのマウス由来の腸試料のバイアスのないトランスクリプトミクス解析(RNA-seq)を行なった。DKO
IEC腫瘍のトランスクリプトミクスデータのインテロゲーションにより、MEK、EGFRおよびKRASシグネチャーの陽性エンリッチメントが明らかになった(
図2、パネルC)。DKO
IEC腸組織の免疫組織化学検査(IHC)により、ホスホ-ERKおよびホスホ-EGFRについての染色の増大によって測定されるように、ERK経路の強い活性化が示された(
図2、パネルD)。ターゲットゲノムシーケンシングでは、鋸歯状腫瘍形成と関連している、マウスBraf(B637E)ならびにKras(G12D、G12VおよびG13D)遺伝子内の変異の潜在的コードホットスポットになんら改変は確認されなかった。これは、両方のaPKCの同時不活性化により、BrafまたはKrasの遺伝子改変とは独立してERK経路が活性化されることを強く示唆している。注目すべきことに、DKO
IEC腸組織のトランスクリプトミクスデータの遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)によりYAP経路の活性化もまた明らかになり(
図2、パネルE)、これはIHCによって確認された(
図2、パネルD)。鋸歯状病変、管状腺腫または管状絨毛腺腫およびMSIまたはMSSのCRC由来のヒトオルガノイドで得られた遺伝子シグネチャーを用いたこれらのトランスクリプトミクスデータの比較により、DKO
IEC腫瘍において上方調節される遺伝子は鋸歯状CRCおよびMSS CRCの遺伝子シグネチャーと正に相関していることが示された(
図2、パネルF)。同様に、DKO
IEC IECの遺伝子シグネチャーは、ヒト鋸歯状腫瘍を通常型の癌腫、管状腺腫、腺腫性ポリープまたは正常結腸と比較した場合、有意に上方調節されていた(
図2、パネルG)。このような2つの補完的なアプローチにより、DKO
IEC腫瘍は転写レベルでヒトMSS鋸歯状腫瘍との類似性が高いことが明らかになった。
【0128】
実施例3. DKO
IECマウスにおける腸内の免疫抑制および間質活性化
IEC内における両方のaPKCの複合消失によって、Ki67染色により測定されるように、鋸歯状腫瘍の自然発生と相関する細胞増殖の相乗的増大が促進された(
図9、パネルA)。また、LKO
IEC腸上皮では、切断型カスパーゼ3およびTUNELについての染色によって示されるように、細胞死の増大が示されたが、細胞死は、DKO
IEC腫瘍ではLKO
IEC腫瘍より有意に少なかった(
図9、パネルBおよび
図9、パネルC)。DKO
IEC腫瘍での細胞死が少ないことが、なぜ、これらのマウスにがんが発生したが、LKO
IECマウスには発生せず、新生物発生前のステージから先にいくことができなかったかの説明となるかもしれない。注目すべきことに、LKO
IEC組織にはCD45
+ 細胞のロバストな浸潤がみられたが、ZKO
IEC組織にはみられなかった(
図3、パネルA)。重要なことに、この浸潤はDKO
IEC SSA/Pおよび癌腫において相乗的に増大し(
図3、パネルA)、これは、腸上皮における両方のaPKCの同時消失により、DKO
IECマウスの腫瘍形成表現型に決定的であり得る免疫学的応答が誘発されることを示す。特定の理論に拘束されないが、このような所見は、DKO
IECマウスにおける免疫性微小環境が自然な鋸歯状CRCの発生に対して許容性であることを示唆する。LKO
IEC腸組織では、WT組織より有意に高いCD8
+ T細胞浸潤が示され(
図3、パネルB)、PKCλ/ιの消失によってCD8+推進性免疫応答の活性化がもたらされることが示唆された。しかしながら、CD8+ T細胞はDKO
IECマウスのSSA/Pおよび癌腫領域から排除された(
図3、パネルBおよび
図10、パネルA)。両方のaPKCの同時消失は、おそらくがん誘導性の強い免疫抑制性の環境をもたらすという見解と一致して、DKOIEC腫瘍内のCD45+ 細胞におけるプログラム死-リガンド1(PD-L1)の劇的な発現が観察された(
図3、パネルC)。免疫細胞集団のフローサイトメトリー解析により、CD8+ T細胞の割合はLKO
IEC腸組織では増大しており、DKOIEC腫瘍では標準値まで減少している(
図3、パネルD)が、PD-L1+/CD45+ 細胞の割合はDKOIEC腫瘍において特異的に増大している(
図3、パネルE)ことが示された。さらに、DKO
IEC腫瘍はFoxp3+ Treg細胞の割合の有意な増大も示し(
図3、パネルF)、これにより、該腫瘍においてTreg/CD8+比のロバストな向上がもたらされた(
図3、パネルG)。また、IL-17A産生CD4+ T細胞(Th17細胞)の割合の有意な増大もDKO
IEC腫瘍において観察された(
図3、パネルH)。さらに、この腫瘍では、Ly6ChighLy6G- 単球性細胞およびLy6C+Ly6G+多形核細胞(
図3、パネルJ)の両方を含むCD11b+ 骨髄系細胞(
図3I)の劇的な蓄積が示された。これらの集団は、それぞれ、単球性(M-MDSC)および顆粒球性(G-MDSC)骨髄由来抑制細胞を連想させる。しかしながら、全CD4+ T細胞、B220+ B細胞およびNK1.1+ NK細胞の割合は変化しなかった(
図10、パネルB)。このようなデータは、CD8+ T細胞応答を阻害し、したがたって、新生物発生前の細胞が鋸歯経路を経由して悪性腫瘍に進行することを可能にする免疫抑制性の微小環境をDKO
IEC腫瘍が示すことを強く示唆する。
【0129】
DKO
IEC腸の病変では、がん関連線維芽細胞の真のマーカーであり、癌腫において最も高発現するαSMAの発現の向上が示された(
図3、パネルK)。この間質の応答には腫瘍領域におけるコラーゲンの発現および沈着の増大(
図3、パネルLおよび
図10、パネルC)ならびにTGF-β依存性転写物の濃縮(
図10、パネルD)が付随した。さらに、DKO
IEC腫瘍では、間質活性化に関連する転写物ならびに間質由来増殖因子、例えばEGFR、AregおよびEregのリガンドの上方調節がみられ(
図10、パネルE)、これはEregに関するインサイチューハイブリダイゼーションによって確認された(
図3、パネルM)。DKO
IEC腫瘍の活性化された間質/間葉表現型を裏付けるように、DKO
IEC腫瘍の転写物のGSEAにより上皮間葉転換(EMT)遺伝子シグネチャーが陽性にエンリッチメントされることが明らかになった(
図10、パネルF)。このような結果は、DKOIEC腫瘍における免疫抑制表現型の増大およびCD8+ T細胞浸潤の阻害と併せると、IEC内における両方のaPKCの消失によってがん誘導性の腸内微小環境の誘導がもたらされることを示す。この微小環境は鋸歯経路を経由して推進され、強い線維形成性および間葉系の応答を有する。
【0130】
実施例4. 腸の炎症により鋸歯状腫瘍形成が推進される
DKO
IECマウスを、腸の炎症および免疫応答を無効にする複合広域スペクトル抗生物質で処置すると、IHCおよびFACS解析によって示されるように、CD45
+ 細胞の浸潤が大きく低減された(
図4、パネルA~C)。より重要なことには、この処置によって腫瘍形成が有意に抑制された(
図4、パネルD~E)。この効果にはKi67
+ 細胞の数の減少およびホスホ-ERKおよびYAP染色の低減が付随した(
図4、パネルF~G)。DKO
IECマウスと同様、LKO
IECマウスは、陰窩細胞の増殖およびCD45
+ 細胞浸潤の増大ならびにホスホ-ERKおよびYAPの発現増大を有し、これは抗生物質処置によって正常レベルに戻った(
図11、パネルA~C)。しかしながら、DKO
IECマウスには自然な鋸歯状腫瘍が発生し、LKO
IECマウスには発生しなかった(
図1、パネルA~L)。したがって、鋸歯状腫瘍形成は炎症によって推進されるプロセスに大きく依存するものの、炎症は充分ではない。DKO
IEC腸上皮におけるPKCζの欠損は、腫瘍発生に必要とされる追加の改変をもたらす。
【0131】
実施例5. 鋸歯経路によって推進される腫瘍形成におけるCD8
+ T細胞の役割
CD8
+ T細胞の蓄積が多いことがLKO
IECマウスに自然な腫瘍が発生できないことの説明となるならば、インビボでのCD8
+ 枯渇によってLKO
IECマウスでもDKO
IECと同等程度に鋸歯状腫瘍形成が促進されるはずである。中和抗CD8抗体の投与によって浸潤CD8
+ T細胞のおよそ70%が有効に枯渇され(
図4、パネルH)、重要なことには、DKO
IECマウスの鋸歯状腫瘍表現型が再現された(
図4、パネルI~K)。DKO
IEC腫瘍と同様、CD8
+ T細胞の枯渇によって誘導されたLKO
IEC腫瘍は、SSA/Pの細胞形態学的特色、例えば腺癌の発生(
図4、パネルL)ならびに増殖の増大、細胞死の低減および間質活性化の向上(
図4、パネルL~M)を示した。したがって、DKO
IEC IECにおけるCD8
+T細胞応答の欠如が腸の鋸歯状腫瘍の自然なイニシエーションの下地となっている。これとの関連において、CD8
+ T細胞浸潤がないDKO
IEC腫瘍では細胞死が少ないという事実は、細胞死およびその後の炎症の増大はおそらく腫瘍のイニシエーションに重要ではあるが、腫瘍がより悪性のステージに進行するためには細胞死は低減されなければならないことを示唆する。したがって、免疫監視機構の破綻はDKO
IEC腫瘍における細胞死の低減に寄与し、これにより、DKO
IECマウスは、新生物発生前のステージから先にいくことができないLKO
IECマウスより効率的にがんを発症することが可能になる。
【0132】
実施例6. DKO
IEC腸管上皮細胞におけるインターフェロン応答の障害
DKO
IEC IECがCD8
+ T細胞応答を障害して鋸歯状腫瘍のイニシエーションを推進する機序をよりよく理解するため、IEC内におけるPKCλ/ιの消失によってCD8
+ T細胞応答が促進される経路を探索した。PKCλ/ι欠損IECのカギとなる特徴の1つは、CD8
+ T細胞応答を起始させている可能性がある、免疫原性細胞死(ICD)と関連する細胞死の増大である。RNA-Seqデータにより、ICD応答と整合するいくつかの危険信号の上方調節(
図5、パネルA)がATP分泌(
図5、パネルB)とともに示された。このようなデータと一致して、PKCλ/ι欠損腸上皮MODE-K細胞では、いくつかのICD刺激に応答したアポトーシスの増大が示され(
図5、パネルCおよび
図12、パネルA)、IECは、PKCλ/ιの非存在下の方がICDを受けやすいことが示唆された。
【0133】
また、インターフェロン経路もCD8+ T細胞媒介性抗腫瘍免疫を担う極めて重要なカスケードである。したがって、ポリ(I:C)での刺激時のMODE-K細胞のインターフェロン応答におけるPKCλ/ιの役割を探索した。興味深いことに、PKCλ/ιが欠損しているMODE-K細胞では、インターフェロン関連転写物、例えばCD8
+ 動員に必須のケモカインであるCxcl10のより強い誘導が示された(
図5、パネルD)。インターフェロン応答は抗原提示を調節するため、MHCクラスIタンパク質の発現をフローサイトメトリーによって解析した。一貫して、PKCλ/ιの消失により、MODE-K細胞の表面におけるH-2K
k重鎖とH-2D
k重鎖の両方の発現が有意に増大する(
図5、パネルE)。これらのデータはすべて、PKCλ/ιの非存在下の方がCD8
+ T細胞応答が高いことを指摘する。このような結果を補強するため、CD8
+ T細胞媒介性細胞傷害性アッセイを、モデル抗原オボアルブミン(OVA)を発現しているMC38細胞を標的細胞として、およびOT-Iマウスから単離したCD8
+ T細胞を特異的エフェクター細胞として用いて行なった。重要なことに、MC38細胞にPKCλ/ιがないとOT-I細胞媒介性殺作用が有意に増大し(
図5、パネルF)、腸管上皮細胞内におけるPKCλ/ιの消失により、腫瘍のイニシエーションを抑制するための助けになるCD8
+ T細胞応答が促進されることが示された。
【0134】
PKCλ/ιの消失によって誘導されたCD8
+ T細胞応答が、どのようにしてPKCζの消失によって損なわれるかを調べるため、トランスクリプトミクスデータの解析を行なった。この解析により、インターフェロンアルファおよびインターフェロンガンマ応答遺伝子が、DKO
IEC腫瘍においてWT組織と比べて高度に下方調節される遺伝子シグネチャーであることが明らかになった(
図12、パネルB)。しかしながら、この解析では、インターフェロン経路の欠陥がIEC内におけるaPKCの欠失の直接的帰結であるかどうか、またはこれは該腫瘍において別の浸潤細胞型を伴うのかどうかは確立されなかった。WT、LKO
IEC、ZKO
IECおよびDKO
IECマウス由来のIEC試料のトランスクリプトミクス解析により、インターフェロンガンマ応答に関与している遺伝子がDKO
IECにおいて最も下方調節される遺伝子シグネチャーであることが示された。さらに、この2つのシグネチャーは、WT IECと比較した場合、ZKO
IEC IECにおいても最も下方調節されていた(
図5、パネルG)。また、インターフェロン応答性遺伝子の減少は、WTと比較した場合、ZKO
IEC IECにおいて、およびLKO
IECと比べてDKO
IECにおいて観察された(
図5、パネルHおよび
図12、パネルD)。このようなデータにより、PKCζの消失は、インターフェロン細胞応答が細胞自律的様式で抑制されることによって鋸歯状腫瘍形成に寄与することが確立される。
【0135】
PKCζが含まれている(WT)か、欠損している(ZKO)かのいずれかであるオルガノイドの3D培養物を用いた一連のエクスビボ実験を行なった。最近、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(DNMTi)が、I型およびIII型インターフェロン応答の刺激に至る二本鎖RNA検知経路のヒト内在性アクチベータを転写的に上方調節するために使用されている。両方の型のオルガノイドをDNMTiである5-アザ-2-デオキシシチジン(5-AZA-CdR)とともに24時間インキュベートした後、この薬物の非存在下で細胞培養を行なった。重要なことに、5-AZA-CdR処理により、WTオルガノイドでは、カギとなるインターフェロン応答性遺伝子Irf7、Oas1a、Isg15およびCxcl10の発現がロバストに誘導され、この発現はZKOオルガノイドでは大幅に抑制された(
図5、パネルI)。このような結果は、IEC内においてPKCζがインターフェロン経路のエクスビボでの内因性活性化に必要とされることを示す。重要なことに、PKCλ/ι欠損細胞の状況におけるPKCζの遺伝子欠失によって、インターフェロン転写物の発現(
図5、パネルJ)およびPKCλ/ι欠損細胞において過剰活性化される、インターフェロンシグナル伝達カスケードにおいてカギとなるエレメント(
図5、パネルK)の発現が大きく阻害された。また、ZKO
IEC IECにおける“ALLOGRAFT_REJECTION”シグネチャーの陰性エンリッチメント(
図5、パネルG)も観察された。ZKO
IEC IECにおいて下方調節される遺伝子のNextBio解析により、GOターム「抗原プロセッシングおよびMHCクラスIを介するペプチド抗原の提示」との有意な相関が明らかになった(
図5、パネルL)。したがって、5-AZA-CdRでの刺激によってWTオルガノイドの表面上のMHCクラスI長鎖H-2K
bが上方調節されたがZKOオルガノイドではそうではなく(
図5、パネルM)、PKCζ欠損条件下での抗原提示の欠陥が示された。さらに、IHC解析により、腸組織において、LKO
IECマウスではMHCクラスIマーカーの上方調節が示され、これはDKO
IECマウスでは完全に抑制された(
図5、パネルN)。
【0136】
総合的に、このような結果により、PKCζがIEC内におけるインターフェロン応答の制御に極めて重要な奏効因子であることが確立され、DKOIECマウスにおけるインターフェロン応答の障害がCD8+ 浸潤の欠陥および腸の鋸歯状腫瘍の自然発生の説明となるという見解が裏付けられる。
【0137】
実施例7. aPKC消失によって推進される鋸歯状腫瘍における治療介入
DKO
IEC腫瘍へのPD-L1
+/CD45
+ 細胞による浸潤の増大を治療的に利用するため、DKO
IECマウスを、10週齢から開始して3週間、抗PD-L1抗体で処置した(
図13、パネルA)。この処置によって腫瘍の数、平均サイズおよび総細胞量ならびにがん発生率のロバストな低減がもたらされ、これは、腫瘍領域内へのCD8
+細胞の動員の併存的増大と相関した(
図13、パネルB~D)。しかしながら、マウスの処置を13週齢で開始した場合、抗PD-L1処置では、なんら治療効果は示されず(
図13、パネルE)、この時点で、これらのマウスはより進行した腫瘍量および腫瘍侵攻性の増大を示した(
図13、パネルF~H)。したがって、鋸歯状腫瘍はいったん確立されて、より侵攻性になると抗PD-L1療法に対して抵抗性になる。進行DKO
IEC腫瘍の特徴の1つは高度な線維形成応答であり、これは、高悪性度腫瘍および浸潤ならびに不良な患者生存率へとCRCが進行する極めて重要な機序であることが提案されている。注目すべきことに、16週齢のDKO
IECマウスの腫瘍は、13週齢のマウスの腫瘍と比較した場合、αSMAの発現およびコラーゲン沈着の増大を示し(
図13、パネルI)、DKO
IEC腫瘍の治療抵抗性に対する活性化された間質の寄与の可能性が示唆された。
【0138】
次に、鋸歯状DKO
IEC腫瘍の強い間質応答が腫瘍進行およびより侵攻性の表現型の獲得の中核となっているのかどうかの可能性を調べた。CRCにおける間質活性化はTGF-βシグナル伝達に依存するため、本発明者らは、10週齢のDKO
IECマウスをTGF-βR1特異的阻害剤ガルニセルチブ(LY2157299)で処置した(
図6、パネルA)。この処置ではDKO
IECマウスの腫瘍の数、サイズまたは量は低減されなかったが(
図6、パネルB)、SSA/Pの腺癌ステージへの進行は抑制され、特に、浸潤がんの発生率が低減された(
図6、パネルCおよび
図6、パネルD)。間質活性化におけるTGF-βの充分に確立された役割と整合して、ガルニセルチブでの処置によって間質内のホスホ-SMAD2およびコラーゲン沈着の阻害(
図6、パネルD)ならびにTGF-β応答性遺伝子、例えばAngptl2、Cdkn2b、Il11およびEregの発現の低減(
図6、パネルE)がもたらされた。さらに、フローサイトメトリー解析により、この処置を受けると腫瘍内のTh17細胞の割合の低減が示され(
図6F)、これは、Th17細胞分化におけるTGF-βの極めて重要な役割と整合する。しかしながら、この処置では、CD8
+ T、TregまたはCD11b
+骨髄系細胞の割合は有意に変化しなかった(
図6、パネルG~J)。
【0139】
DKO
IEC腫瘍に浸潤しているPD-L1
+/CD45
+細胞の割合はガルニセルチブによって影響されず(
図6、パネルK~L)、これは、なぜ、この処置によってCD8
+ T細胞の浸潤が回復しなかったかの説明となり得よう。また、活性化された間質は、腫瘍進行を促進させることによってDKO
IECマウスの腫瘍形成に寄与するが、CD8
+ T細胞応答の不活性化によって媒介されている可能性が非常に高い鋸歯状腫瘍のイニシエーションには極めて重要ではないことが示唆される。治療の観点から重要であり得ることには、23週齢のDKO
IECマウスのパラレルコホートをガルニセルチブと抗PD-L1の組合せで処置した場合(
図6、パネルM)、腫瘍の数、サイズ、量および侵攻性の劇的な低減がみられ(
図6、パネルN~O)、腫瘍内へのCD8
+ T細胞浸潤の併存的増大を伴った(
図6、パネルPおよび
図6、パネルQ)。しかしながら、CD11b
+骨髄系細胞に有意な低減がみられたが(
図6、パネルRおよび
図6、パネルS)、Treg細胞の割合に変化はなかった。このような結果は、抗PD-L1療法は、より進行した線維形成性の鋸歯状がんには有効でないが、TGF-βシグナル伝達が抑制されることによってSSA/Pの腺癌への進行が鈍化されると、このがんは、抗PD-L1処置に感受性となることを示す。
【0140】
実施例8. ヒト鋸歯状腫瘍は低いaPKC発現を示す
ヒト鋸歯状腫瘍におけるaPKC消失の関連性を確立するため、SSA/Pまたは管状腺腫(TA)として病理学的に分類されたポリープを解析した。SSA/Pは、鋸歯状結腸直腸がん(CRC)へと進行する上皮の前駆病変であるとみなされており、一方、TAは通常のCRCに従う。両方のaPKCを認識する抗体(
図14、パネルA)を使用し、30例のSSA/P試料および30例のTA試料ならびに健常個体由来の20例の対照を免疫染色した。aPKCレベルはSSA/P試料のみが有意に低く、TA試料ではそうではなく(
図7、パネルAおよび
図7、パネルB)、これにより、ヒト鋸歯状腫瘍におけるaPKC消失の関連性が確立された。
【0141】
両方のaPKCのレベルが低いことがCRC試料における鋸歯状の特色と相関しているかどうかを調べるため、バイオインフォマティクスを使用し、結腸直腸腺癌を有する患者の大規模データセットのインテロゲーションをThe Cancer Genome Atlas Network(TCGA)において行なった。このようなCRC試料は遺伝学的および形態学的に不均一系であり、鋸歯状経路または通常型経路を経由したその前駆起源についてアノテーションされていないため、患者をまず、aPKC発現に基づいて患者層別化し、鋸歯状または古典的腺腫の遺伝子シグネチャーを用いてGSEAを行なった。患者は、PRKCIおよびPRKCZの発現中央値に従って分類した。この解析により、PRKCI
LowPRKCZ
Low群において、PRKCI
HiPRKCZ
Hi群と比べて鋸歯状遺伝子シグネチャーの有意な陽性エンリッチメントが示された(
図7、パネルC)。
【0142】
次に、CRC患者を分子プロフィールに基づいて、CCS(結腸がんサブタイプ)分類を用いて分類した。この分類は3つのサブグループを含む:CCS1は染色体不安定性を表し;CCS2はMSI/CIMP
+であり;CCS3は主としてMSSであり、鋸歯状腫瘍、例えば間質系遺伝子およびEMT遺伝子の上方調節を有するものに関し、最も悪い生存率を有する患者サブセットを規定する。両方のaPKCのmRNAレベルはCCS3サブタイプが有意に低かった(
図7、パネルD、
図14、パネルBおよび
図14、パネルC)。また、両方のaPKCの発現によって層別化した試料では、CCS分類による患者の著しい分離が示された。CCS3サブタイプは主にPRKCI
LowPRKCZ
Low群で構成され(
図7、パネルE、
図14、パネルDおよび
図14、パネルE)、これは、CCS3患者と関連する好ましくない予後と一致して、PRKCI
HiPRKCZ
Hiサブグループより不良な予後と関連していた(
図7、パネルFおよび
図14、パネルF)。また、aPKCレベルによるTCGA患者の層別化により、EMTならびにKRASおよびYAP経路の負の調節ならびにTGF-βシグナル伝達の活性化におけるこれらのキナーゼの極めて重要な役割が検証された(
図7、パネルG)。さらに、KRASまたはBRAFの変異状態によるCRC患者の解析によって、PRKCI
LowPRKCZ
Lowと特性評価されるサブセットの存在が明らかになり、これもBRAFおよびKRASについてWTであった(
図14、パネルG)。このような患者のトランスクリプトームのGSEAでは、DKO
IEC腫瘍の表現型と非常によく一致して、鋸歯状シグネチャーの上方調節および腺腫シグネチャーの下方調節との正の相関ならびにEMTシグネチャーおよび炎症性シグネチャーの陽性エンリッチメントが示された(
図14、パネルH)。KRASまたはBRAFのいずれかに変異も有するPRKCI
LowPRKCZ
Low試料は、この2つのがん遺伝子のいずれかについて変異型であるがPRKCI
HiPRKCZ
Hiであるものより、間葉系で炎症性の表現型を示した(
図14、パネルIおよび
図14、パネルJ)。このような結果は、ヒトCRCにおける両方のaPKCの同時消失により、間質応答および炎症応答を特徴とするKRASまたはBRAFが変異型の鋸歯状群のものに対して追加の表現型が生じることを示す。したがって、PRKCI
LowPRKCZ
Low患者の予後の方が不良であること(
図7、パネルFおよび
図14、パネルF)は、両方のaPKCの不活性化によって創出されるEMT/炎症性環境によって説明され得る可能性がある。
【0143】
PRKCI
LowPRKCZ
Low群のCRC患者におけるaPKCレベルと炎症応答間の負の相関(
図7、パネルGおよび
図14、パネルH~J)により、ヒト腸の炎症と鋸歯状腫瘍形成との関連の可能性が示唆された。クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)の両方の患者のデータを含むヒト炎症性腸疾患(IBD)データセットのインテロゲーションを行なった。データセットの大部分において、両方の型のIBD患者で健常個体と比べて、両方のaPKC転写物のレベル低下ならびに鋸歯状、EMTおよび炎症性の遺伝子シグネチャーのエンリッチメントの増大が示された(
図7、パネルH)。対照的に、CCS3サブタイプでは、ともに低PRKCIおよびPRKCZレベルと関連している低い免疫賦活性分子レベル(特に、CCS2[MSI/CIMP
+]サブタイプと比較した場合)および高い免疫阻害分子レベルを特徴とする免疫抑制表現型が示された(
図14、パネルKおよび
図14、パネルL)。上記のDKO
IEC腫瘍の結果により、DKO
IECマウスモデルにおける鋸歯状腫瘍のイニシエーションが説明され、かつDKO
IEC腫瘍からのCD8
+ T細胞の排除と特徴とする免疫監視機構の欠陥が示された。この表現型をヒト患者において検証するため、本発明者らは抗CD8
+抗体および抗aPKC抗体を使用し、SSA/Pおよび鋸歯状がんが高頻度で存在することが充分に確立されている近位結腸から採集したヒトCRC試料のコホートを免疫染色した。注目すべきことに、低レベルのaPKCを有するCRC試料では、高いaPKC発現レベルを有するものより有意に少ないCD8+ T細胞浸潤が示された(
図7、パネルIおよび
図7、パネルJ)。総合的に、このような結果は、慢性炎症が鋸歯経路を経由するCRCの発症に極めて重要であり、また、aPKCの消失が発症過程および免疫抑制表現型の発生における中核的事象であるという見解を強く裏付ける。
【0144】
実施例9. 一般方法論
マウス
Prkcz
fl/fl、Prkci
fl/fl、Apc
fl/fl、Villin-creおよびLgr5-EGFP-ires-creERT2(Lgr5-creERT2)マウスを、(Llado et al.,Repression of Intestinal Stem Cell Function and Tumorigenesis through Direct Phosphorylation of β-catenin and Yap by PKCζ.Cell Reports(2015)10,740-754;Nakanishi et al.,Control of Paneth Cell Fate,Intestinal Inflammation, and Tumorigenesis by PKCλ/ι.Cell Reports(2016)16,3297-3310に示された手順に従って得た。CD8+ T細胞媒介性細胞傷害性アッセイ(
図5、パネルA~N)には、8~12週齢のOT-I TCR Tg(OT-I)マウス(Jackson Laboratory)を使用した。マウス系統はすべてC57BL/6バックグラウンドで作成され、病原体フリーの条件下で出生し、維持された。マウスを屠殺し、解析のために小腸および結腸を採集した。動物の取り扱いおよび実験手順は施設のガイドラインに準拠し、サンフォードバーナムプレビス医学研究所の研究施設内動物実験委員会(Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute Institutional Animal Care and Use Committee)に承認されたものであった。ジェノタイピングはすべてPCRによって行なった。すべての実験で、齢数および性別がマッチしたマウスを使用した。抗生物質処置では、10週齢のDKO
IECまたはLKO
IECマウスに、飲用水に含めたアンピシリン(1 g/l)、ネオマイシン(1 g/l)、メトロニダゾール(1 g/l)およびバンコマイシン(0.5 g/l)の組合せを、屠殺するまでそれぞれ6週間または4週間投与した。
【0145】
CD8+ T細胞枯渇(
図4、パネルA~L)では、10週齢のLKO
IECマウスに200μgの抗CD8抗体(クローン2.43)または対照IgGを週2回、屠殺するまで5週間、腹腔内注射した。TGF-βR1特異的阻害実験では、10週齢のDKO
IECマウスを1日2回、10 mgの用量の経口ガルニセルチブ(Tauriello et al.,2018)で屠殺するまで6週間処置した。対照マウスはビヒクルで処置した。チェックポイント免疫療法では、10週齢または13週齢のいずれかのDKO
IECマウスに、10 mg/kg(体質量)の用量の抗PD-L1抗体(クローン6E11)を週2回、屠殺するまで3週間、腹腔内注射した。抗PD-L1抗体とTGF-βR1特異的阻害剤の併用療法では、23週齢のDKO
IECマウスを1日2回、10 mgの用量の経口ガルニセルチブで処置し、10 mg/kg(体質量)の用量の抗PD-L1抗体を週2回、屠殺するまで3週間、腹腔内注射した。抗PD-L1抗体はde Sauvage FJ氏(Genentech)によりご提供頂いた。
【0146】
ヒト試料
組織試料は、大腸内視検査または手術中に20例の正常健常個体の結腸、30例の無茎性鋸歯状腺腫/ポリープ、30例の管状腺腫、25例の近位結腸がんから採集されたものであった。すべての患者から書面でのインフォームドコンセントを得、プロトコルはScrippsのGreen Hospitalの倫理委員会によって承認されたものであった。匿名化された試料がサンフォードバーナムプレビス(SBP)医学研究所に送付され、組織学的解析のために使用された。試験はSBP医学研究所のIRB委員会によって承認されたものであった。
【0147】
細胞培養実験
MODE-K細胞、293TおよびMC38OVA細胞を、10%FBS、2 mMのグルタミンおよび100 U/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシンを補給したDMEM(Cellgro,#15-017-CV)中で、95%空気および5%CO2の雰囲気下で培養した。ATP測定および免疫原性細胞死ウェスタンブロットでは、細胞をオキサリプラチン(20μM)、ボルテゾミブ(0.1μm)または10 ng/mlのTNFα(Sigma)と2.5μg/mlのCHX(Sigma)で24時間処理した。細胞外ATPレベルをルシフェリンベースATPlite Assay(例えば、Perkin Elmer)により、Varioskan Luxリーダー(例えば、Thermo Fisher、製造業者の指示どおりに)を用いて測定した。ポリ(I:C)処理では、細胞を、0.5μg/mlのポリ(I:C)(例えば、InVivoGen)を使用してLipofectamine 2000(例えば、Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。タンパク質解析用の細胞を、ホスファターゼ/プロテアーゼ阻害剤を有するRIPAバッファー(20 mM Tris-HCl、37 mM NaCl、2 mM EDTA、1%Triton-X、10%グリセロール、0.1%SDSおよび0.5%デオキシコール酸ナトリウム)中で溶解させた。細胞抽出物を変性させ、SDS-PAGEに供し、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)膜(例えば、GE Healthcare)に転写し、STAR法の試薬の表に列記されている特異的抗体を用いてイムノブロットした。
【0148】
293T sgPKCλ/ι細胞においてPKCζを、およびMC38OVA細胞においてPKCλ/ιをノックダウンするため、ヒトPKCζ(TRCN0000001219)を標的化するTRCレンチウイルスshRNAおよびマウスPKC?/ι(TRCN000022757)を標的化するTRC shRNAをOpen Biosystemsから入手した。shRNAコードプラスミドをpsPAX2(例えば、Addgeneプラスミド番号12260)およびpMD2.G(例えば、Addgeneプラスミド番号12259)パッケージングプラスミドとともに用いて、活発に増殖している293T細胞を、XtremeGene HPトランスフェクション試薬(例えば、Roche)を使用することによってコトランスフェクトした。ウイルス含有上清みをトランスフェクション後48時間目に採集し、濾過して細胞を排除し、次いで、標的細胞を感染させるために8μg/mlのポリブレン(例えば、Millipore)の存在下で使用した。細胞をピューロマイシン選択(1μg/ml)後に解析し、ノックダウンを確認した。293T sgPKCλ/ι細胞においてPKCζをノックアウトするため、ヒトPKCζ(BRDN0001149519)を標的化するレンチウイルスガイドRNAプラスミドおよびCas9およびブラストサイジン耐性を発現するレンチウイルスベクターをAddgeneから入手した。細胞をウイルス含有上清みで処理し、ピューロマイシンおよびブラストサイジンにより選択した。単一細胞のコロニーを拡大増殖させ、PKCζについてイムノブロッティングによってスクリーニングした。MODE-K細胞においてPKCλ/ιをノックアウトするため、マウスPKCλ/ιを標的化する20ヌクレオチドのシングルガイドRNA(sgRNA)配列を、CRISPRデザインツールを用いて設計した。このsgRNAをlentiCRISPR v2ベクター内にクローニングし、MODE-K細胞を形質導入した。細胞をピューロマイシンにより選択し、単一細胞のコロニーを拡大増殖させ、PKCλ/ιについてイムノブロッティングによってスクリーニングした。
【0149】
組織学、免疫組織化学検査、免疫蛍光法およびインサイチューハイブリダイゼーション
器官を分離し、氷冷PBS中ですすぎ洗浄し、10%中性緩衝ホルマリン中で4℃にて一晩固定し、脱水し、パラフィン中に包埋した。切片(5μm)をヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色した。免疫組織化学検査では、切片を脱パラフィン処理し、再水和させ、次いで抗原賦活化のために処理した。タンパク質ブロック無血清(Protein Block Serum-Free)溶液(DAKO)中でブロックした後、組織を一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした後、ビオチン化二次抗体とともにインキュベーションした。内因性ペルオキシダーゼを、3%H2O2含有水中で室温にて10分間クエンチした。抗体を、アビジン/ビオチン複合体(例えば、Vectastain Elite;Vector Laboratories)により、ジアミノベンジジンをクロマゲン(chromagen)として用いて可視化した。免疫蛍光法では、新鮮凍結器官をTissue-Tek OCT化合物(例えば、Sakura)中に包埋し、10μm切片をメタノール中で固定し、PBSで洗浄し、次いで一次抗体とともにインキュベートした。洗浄した切片をAlexaコンジュゲート二次抗体(例えば、Life Technologies)とともにインキュベートし、Zeiss LSM 710 NLO共焦点顕微鏡で検査した。マウスEregのインサイチューハイブリダイゼーションを、RNAscope Multiplex Fluorescent Assayキット(Advanced Cell Diagnostics)を、製造業者の指示書に従って用いて行なった。マウスEregのCDS領域に対応するプローブ(アクセッション番号:NM_007950.2、プローブ領域:116-1496;Advanced Cell Diagnostics;カタログ番号:437981)。細胞死を、In-Situ Cell Death Detectionキット、TUNEL用のTMRレッド(Thermo)を用いて解析した。マッソントリクローム染色を製造業者の指示書(Sigma HT15-1KT)に従って行なった。
【0150】
フローサイトメトリー解析
フローサイトメトリー実験を、新鮮小腸組織およびオルガノイド調製物を用いて行なった。小腸組織の解析では、十二指腸の半分、空腸および回腸を固有層の免疫細胞集団の定量フローサイトメトリー解析に使用した。簡単には、小腸を冷PBS中ですすぎ洗浄し、細かく切って細片にし、EDTA(5 mM)を含むHBSS中でインキュベートし、コラゲナーゼ(0.05 mg/ml)により37℃で30分間消化させた後、不連続Percoll分離法(40および75%)により免疫細胞を精製した。界面に濃縮された細胞を採集し、冷PBS中で洗浄した。溶解バッファー(BD Pharm Lyse)を用いて赤血球を除去し、トリパンブルーを用いて生細胞を計数し、次いで、マウスFc Block(精製抗マウスCD16/CD32;1:50;クローン2.4G2;BD Pharmingen)を用いて4℃で30分間飽和させた後、色素含有特異的抗体とともにインキュベートした。
【0151】
IL-17A細胞内染色では、細胞を50 ng/mlの酢酸ミリスチン酸ホルボールと500 ng/mlのイオノマイシンで、10μg/mlのブレフェルジンAの存在下で37℃、5%CO2にて3時間、前処理した。次いで細胞を特異的細胞外抗体で染色し、固定/透過処理(Fixation/Permeabilization)溶液キット(例えば、BD Cytofix/Cytoperm)を製造業者の指示書に従って用いて透過処理し、最後に、抗IL-17A(クローンTC11-18H10;BD Pharmingen)特異的抗体とともにPerm/Washバッファー中で4℃にて一晩インキュベートした。FOXP3細胞内染色では、細胞を特異的細胞外抗体で染色し、同じBD Cytofix/Cytopermキットを用いて透過処理し、最後に、抗FOXP3(クローンFJK-16s)特異的抗体を用いてPerm/Washバッファー中で4℃にて一晩染色した。
【0152】
小腸オルガノイドの作成では、オルガノイドを氷冷TrypLE溶液(例えば、Life Technologies)中で採集してマトリゲルを除去し、次いで5サイクルのピペッティングを行ない、37℃で5分間インキュベートし、単一細胞懸濁液を得た。細胞をPBS 3%FBS中で2回洗浄し、100μg/mlのDNase Iを含むPBSを用いて室温で10分間、再懸濁させた後、抗H-2Kb(クローンAF6-88.5.5.3;eBioscience)で染色した。MODE-K細胞における抗原提示では、細胞をPBS中で洗浄し、トリプリン処理し、加温培地で洗浄した。次いで、細胞を再懸濁させ、抗H-2Kk(クローン36-7-5;BioLegend)と抗H-2Dk(クローン15-5-5;BD Pharmingen)で染色した。7-AAD染色後、死細胞を排除した。フローサイトメトリー実験はすべて、BD LSRFortessa 14色アナライザーで、サンフォードバーナムプレビス医学研究所の共同研究FACS施設(Shared FACS Facility)にて行ない、フローサイトメトリーデータを、FlowJoソフトウェア(Tree Star Inc.)を用いて解析した。
【0153】
MC38OVA細胞のT細胞殺作用アッセイでは、CD8+ T細胞をOT-Iマウスの脾臓から磁気ソーティングにより、EasySep Mouse CD8+ T Cell Isolation Kit(例えば、Stemcell Technologies)を製造業者の指示書に従って用いて単離した。エフェクター細胞を作成するため、ナイーブT細胞を106/mLで、固定化抗CD3(10μg/mL)および可溶性抗CD28(5μg/mL)(Bio X Cell)を用いて3日間培養した。3日後、エフェクターCD8+ T細胞を1×104のOVA発現MC38標的細胞(shNTおよびshλ/ι)またはMC38標的細胞とともに異なる比(2:1;1:1;1:2;1:10;1:20;1:50)で37℃、5%CO2で24時間、共培養した。MC38細胞株は陰性対照として使用した。上清みを収集し、Pierce LDH Cytotoxicity Assay Kit(Thermo Scientific)を用いて解析し、特異的細胞傷害性を製造業者の指示書に従って調べた。PI染色では、OT-I細胞を添加するときに100μMのヨウ化プロピジウムを培養培地に添加した。OT-I細胞との共培養後24時間目に、Varioskan LUXマルチモードマイクロプレートリーダー(例えば、ThermoFisher Scientific)を用いてPIシグナルを測定した。
【0154】
腸上皮細胞の単離および小腸オルガノイド培養
腸上皮細胞(IEC)単離は、いくらかの変更を伴ってLlado et al.,Repression of Intestinal Stem Cell Function and Tumorigenesis through Direct Phosphorylation of β-catenin and Yap by PKCζ.Cell Reports(2015)10,740-754に既報のとおりに行なった。簡単には、小腸を取り出し、塩化マグネシウムおよびカルシウムを含まない冷PBS(PBS-/-)で洗浄し、長手方向に開き、5 mm断片に切断し、次いで、きれいになるまで冷PBS-/-で数回洗浄した。切断組織断片を、10%FBSを含むPBS-/- EDTA(5 mM)を用いて4℃で40~60分間インキュベートした。次いで、激しく振ることによってIECを結合組織から機械的に分離し、次いで、100μmメッシュに通して50 ml容コニカルチューブ内に濾過し、組織断片を除去した。単離したIECをペレット化し、次いでRNAまたはタンパク質の抽出のために溶解させた。小腸オルガノイド培養では、本発明者らは、タモキシフェン(例えば、Sigma)を腹腔内注射したLgr5-creERT2;Apcfl/fl(WT)またはLgr5-creERT2;Apcfl/fl;Prkczfl/fl(ZKO)マウスから小腸腺腫組織を採集した。単離した腺腫組織を細かく切って細片にし、消化バッファー(10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、1 mg/ml Xl型コラゲナーゼ、0.1 mg/ml DNase l、10μM Y-27632を含むダルベッコ改変イーグル培地)中で37℃にて15~20分間インキュベートした。消化された腺腫断片をPBS-/-で洗浄し、次いで100μmメッシュに通して50ml容コニカルチューブ内に濾過し、間質系断片を除去した。単離後に腺腫断片を計数し、合計250~500個の断片を100μlのグロースファクターリデュースト-マトリゲルと混合し、12ウェルプレートまたは24ウェルプレート内にプレーティングした。マトリゲルの重合後、1 mlの培養培地(10 mM HEPES、1×Glutamax、1×B27サプリメント、50 ng/ml EGFおよび10μM Y-27632を含むAdvanced DMEM/F12)を添加した。インターフェロン応答を試験するための実験では、オルガノイドを3μMの5-AZA-CdR(Sigma)で処理した。24時間のインキュベーション後、培地を薬物無含有の新鮮培地と交換し、次いで、オルガノイドを、RNA解析またはフローサイトメトリー解析のためにさらに3日間培養した。
【0155】
マイクロサテライト不安定性y(MSI)解析
マイクロサテライト不安定性(MSI)の試験のため、5つのマイクロサテライトリピートマーカーをPCRにより、WTおよびDKOIECマウス組織から単離したDNAを用いて増幅させた。10 ngのDNAを、先に検証済のマウスマイクロサテライトマーカーBat24、Bat26、Bat30、Bat37、Bat64に特異的な表1に示したFAM標識したフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いて増幅させた。Hi-DiおよびLIZサイズスタンダードを試料に添加し、増幅断片の分離および検出を3730xl DNA Analyzer(Eton Bioscience)で行なった。データを、Applied Biosystems製のPeak Scanner(商標)Softwareを用いて解析し、各マーカーについて対立遺伝子パターンを同定した。正常組織と腫瘍組織の対立遺伝子パターンを比較し、優勢な対立遺伝子のサイズおよび対立遺伝子バリアントの存在に基づいてスコア化した。40%またはそれ以上のMSIを有する腫瘍試料をMSI-high(MSI-H)、40%未満をMSI-low(MSI-L)と分類し、改変なしの試料をマイクロサテライト安定性(MSS)と分類した。
【0156】
【0157】
RNAの抽出および解析
マウス組織由来の全RNAおよび培養オルガノイドを、TRIZOL試薬(例えば、Invitrogen)およびRNeasy Mini Kit(例えば、Qiagen)を用いて抽出した後、DNase処理した。Nanodrop 1000分光光度計(例えば、Thermo Scientific)を用いた定量後、RNAを、RNA-seqのために加工処理するか、またはランダムプライマーおよびMultiScribe Reverse Transcriptase(例えば、Applied Biosystems)を用いて逆転写するかのいずれかとした。CFX96 Real Time PCR Detection Systemを使用し、SYBR Green Master Mix(BioRad)および表2に記載したプライマーを用いて20 ngの相補的DNAを増幅させることにより遺伝子発現を解析した。増幅パラメータは95℃で30秒、58℃で30秒および72℃で30秒(計40サイクル)に設定した。各試料での遺伝子発現の値を18S RNAに対して正規化した。
【0158】
(表2)qRT-PCR解析用の例示的なプライマー配列
【0159】
RNAシーケンシング(RNA-seq)
全小腸組織のRNA-seqでは、全RNAを3例のWT空腸、3例のDKOIEC非腫瘍空腸および3例のDKOIEC腫瘍から抽出した。腸管上皮細胞(IEC)のRNA-seqでは、全RNAを3匹のWTマウス、4匹のLKOIECマウス、3匹のZKOIECマウスおよび4匹のDKOIECマウスの正常空腸IECから抽出した。各試料は独立したマウスから抽出し、RNA-seq試験は、SBP医学研究所のゲノミクスコア(Genomics Core)にて行なった。簡単には、ポリ(A)RNAを、NEBNext(登録商標)Poly(A)mRNA Magnetic Isolation Moduleを用いて単離し、Illumina(登録商標)(NEB、Ipswich MA)用のNEBNext(登録商標)UltraTM Directional RNA Library Prep Kitを用いてバーコード化ライブラリーを作製した。ライブラリーをプールし、Illumina NextSeq 500でHigh output V2キット(Illumina)を用いてシングルエンドシーケンシングを行なった(1×75)。Sequencing FastqファイルをBaseSpaceにアップロードし、RNAexpress App(Illumina)を用いて処理し、各遺伝子について生のリード数カウントを得た。RNAexpress Appを用いて遺伝子マトリックスファイルを作成し、T-検定比較およびクラスのlog2比を用いて比較した。
【0160】
バイオインフォマティクス解析
鋸歯状腫瘍(GSE4045、GSE76987、GSE79460、GSE43841、GSE36758、GSE46513、GSE45270)、CRC(GSE5851、GSE33113)の生の遺伝子発現データおよび炎症性腸疾患試料のデータセット(GSE36807、GSE59071、GSE 10616、GSE10714、GSE52746、GSE6731、およびGSE9386)にGene Expression Omnibus(GEO)から直接アクセスした。Cancer Genome Atlas(TCGA)Colorectal Adenocarcinoma(Tumor Samples with mRNA data(RNA Seq V2)、379人の患者由来の382例の腫瘍試料)のRNS-seqデータをcBioportalからダウンロードした。GenePatternを使用し、遺伝子マトリックスファイルをコラプス(collapse)するか、または、差次的遺伝子発現の統計学的有意性を評価した。GENE-Eソフトウェア遺伝子発現のヒートマップ画像を作成した。遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)は、GSEA 3.0ソフトウェアを使用し、変異1つあたり1000個の遺伝子セットで、遺伝子ランキングメトリック(gene-ranking metric)T-検定を使用して、コレクションh.all.v6.1.symbols(H)、c2.all.v6.1.symbols(C2)、c6.all.v6.1.symbols(C6)またはカスタマイズ遺伝子セットを用いて行なった。表3は、マイクロサテライト安定性結腸直腸がん表現型(MSS CRC)と関連している遺伝子を含む遺伝子リストを示す。表4には、MSS CRC、鋸歯状病変および管状腺腫または管状絨毛腺腫において上方調節される遺伝子を含む遺伝子シグネチャーを示す。表5には、MSS CRC、鋸歯状病変および管状腺腫または管状絨毛腺腫において下方調節される遺伝子を含む遺伝子シグネチャーを示す。表6には、RNA-seqによる、鋸歯状のポリープ症患者の無茎性鋸歯状ポリープ(SSA/P)において対照と比べて増大している上位50個の遺伝子転写物のリストに基づいて作成された遺伝子シグネチャーを示す。表7には、RNA-seqによる、DKOIEC IECにおいてWT IECと比べて有意に増大している遺伝子転写物のリストに基づいて作成されたジェネット(genet)シグネチャーを示す(logFC>1、FDR<0.01)。
【0161】
(表3)マイクロサテライト安定性(MSS)結腸直腸がん(CRC)の遺伝子シグネチャー
【0162】
(表4)MSS-CRC、鋸歯状病変および管状腺腫または管状絨毛腺腫において上方調節される遺伝子シグネチャー
【0163】
(表5)MSS-CRC、鋸歯状病変および管状腺腫または管状絨毛腺腫において下方調節される遺伝子シグネチャー
【0164】
(表6)無茎性鋸歯状ポリープ(SSA/P)において上方調節されるRNA-seqによる遺伝子シグネチャー
【0165】
(表7)DKO腸管上皮細胞のトランスクリプトミクスシグネチャー
【0166】
生存分析
CRC患者試料(GSE5851、GSE33113、TCGA)を、PRKCIおよびPRKCZの発現に基づいて4つのサブグループ:PRKCILowPRKCZLow、PRKCIHiPRKCZLow、PRKCILowPRKCZHiおよびPRKCIHiPRKCZHiに分離した。各遺伝子の発現量中央値をカットオフ値として使用した。PRKCILowPRKCZLow群とPRKCIHiPRKCZH群をGSEAまたは生存分析によって比較した。TCGA患者のカプラン・マイヤー曲線を作成するため、完全な全生存期間(OS)情報を有する369人の患者の臨床データおよび遺伝子発現データを処理し、PRKCILowPRKCZLow(n=88)とPRKCIHiPRKCZH i(n=87)の群間で5年OS率を比較した。GSE5851について、PRKCILowPRKCZLow(n=27)とPRKCIHiPRKCZH(n=27)の群間で無病生存(DFS)率を比較した。
【0167】
統計解析
データは平均±SEMとして示す。統計解析は、GraphPad Prism 7を用いて行なった。群間の有意差は、データがダゴスティーノ検定による検定で正規分布を示す場合、スチューデントのt検定(両側対応なし)を用いて求めた。データがこの検定に適合しない場合はマンホイットニー検定を使用した。腫瘍発生率の差をカイ二乗検定によって解析した(
図4J)。カプラン・マイヤープロットの差をログランク(マンテル・コックス)検定によって解析した(
図1C、7F、S7E)。ヒト試料のaPKC染色の差(
図7B)を、ANOVA多重比較(クラスカル・ウォリス)を行なうことによって解析した。p値は、正常、SSA/PおよびTAにおけるシグナル強度同士の差(強/中対弱/陰性)を示す。aPKC mRNAの発現によるCCS1、CCS2またはCCS3のCRCサブタイプのCRC患者の割合の差をCCS3対CCS1/CCS2のフィッシャーの正確確率検定によって解析した(
図7、パネルE、
図14、パネルC、
図14、パネルD)。統計学的検定の有意性レベルをp<0.05に設定した。
【0168】
実施例10. 結腸直腸がんの新規マウスモデルにおけるPVHAヒアルロニダーゼの効果の特性評価
鋸歯状(DKOIEC)マウスモデルの上皮腫瘍細胞は、CD44および間質、すなわち高度に活性化された発現ヒアルロナン(HA)のレベル上昇を示す。HAは、幹細胞受容体であるCD44のリガンドである。HAは間質のバリア的役割に寄与し、これにより一部の患者には免疫療法が奏効しない。さらなる処置なしで、または抗PD-L1療法と共処置すると腫瘍形成が阻害されるかどうかを調べるためにDKOIECマウスモデルにおけるHAの阻害剤の効果を理解するための実験を行なう。
【0169】
Prkczfl/fl、Prkcifl/fl、Apcfl/fl、Villin-creおよびLgr5-EGFP-ires-creERT2(Lgr5-creERT2)マウスを得る。Prkcifl/flおよびPrkczfl/flマウスをVillin-creマウスと交配し、IEC内において両方のaPKCに欠失を有する(DKOIEC)マウス系統を作成する。DKOIECマウスの遺伝子型を調べる。遺伝子型を判定するための例示的な方法としてはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。
【0170】
DKOIECマウスをペグボルヒアルロニダーゼアルファ(PVHA)および/または抗PD-L1処置(例えば、抗PD-L1モノクローナル抗体)で週2回、16週齢から開始して4週間処置する。対照DKOIECマウスはビヒクルで週2回、16週齢から開始して4週間処置する。PVHAと抗PD-L1処置の共処置を施行する場合、PVHAはDKOIECマウスに、抗PD-L1処置の施行の24時間前に投与する。表8は、6つの群のDKOIECマウスに対する例示的な処置レジメンを示す。
【0171】
【0172】
DKOIECマウスを安楽死させ、種々の抗腫瘍活性エンドポイントを最後の処置後のある期間の時点で評価する。好適な期間としては、限定するわけではないが、最後の処置後1時間目、2時間目、3時間目、4時間目、5時間目、10時間目、15時間目、20時間目、1日目、1.5日目、2日目または3日目が挙げられる。抗腫瘍活性エンドポイント、例えば腫瘍のスコアリング(例えば、数、サイズ、病理学的特徴、浸潤の発生)、H&E、HA染色、CD44染色、CD8染色の測定値を解析する。5つのマイクロサテライトリピートマーカーの有無を検出することによりマイクロサテライト不安定性(MSI)の検査を行なう。この5つのマイクロサテライトリピートマーカーの有無を検出するための好適なアッセイとしてはPCRが挙げられる。DKOIECマウスから血漿試料を得、HA/バイオマーカーの有無について評価する。
【0173】
実施例11. 結腸直腸がんの新規マウスモデルにおけるPVHAヒアルロニダーゼの効果の特性評価
PVHAでのマウスの処置: ヒアルロニダーゼ特異的阻害実験では、11週齢のaPKC-DKOIECマウスに週2回、低用量の0.0375 mgまたは高用量の0.2 mg/KgのPVHA(Halozyme)を、屠殺するまで3週間、静脈内注射した。対照マウスはビヒクルで処置した。
【0174】
組織学検査、免疫組織化学検査: 器官を分離し、氷冷PBS中ですすぎ洗浄し、10%中性緩衝ホルマリン中で4℃にて一晩固定し、脱水し、パラフィン中に包埋した。マッソントリクローム染色では、切片(5μm)を脱パラフィン処理し、再水和させ、次いでTrichrome Stain(Masson)Kit(Sigma-Aldrich、#HT15)で製造業者の指示書に従って染色した。ヒアルロナン染色では、切片(5μm)を脱パラフィン処理し、再水和させ、次いで、ビオチン化ヒアルロナン結合タンパク質(Millipore Sigma、#385911)とともに4℃で一晩インキュベートした後、ストレプトアビジンHRPコンジュゲート(Invitrogen、#434323)とともにインキュベーションした。染色はジアミノベンジジンを用いて発色させた。CD8染色では、切片(5μm)を脱パラフィン処理し、再水和させ、次いで、抗原賦活化(クエン酸液、pH6)のために熱処理した。タンパク質ブロック無血清溶液(DAKO)中でブロックした後、組織一次抗体(抗マウスCD8(BD、#557654)とともに4℃で一晩インキュベートした後、ビオチン化二次抗体とともにインキュベーションした。内因性ペルオキシダーゼを、3%H2O2含有水中で室温にて10分間クエンチした。抗体をアビジン/ビオチン複合体(Vectastain Elite;Vector Laboratories)により、ジアミノベンジジンをクロマゲンとして用いて可視化した。
【0175】
aPKC-DKO
IECマウスの鋸歯状腫瘍は間質活性化の増大を示し、主な間質成分の1つはヒアルロナンである。
図17、パネルAは、aPKC-DKO
IECマウスに対して11週目から開始するPVHA処置の実験デザインを示す。14週目、処置したマウスを屠殺し、鋸歯状のポリープおよび癌腫の総数ならびに浸潤がんの発生率を定量した。
図17、パネルBに示されるように、これらのマウスをヒアルロニダーゼ(PVHA、Halozyme)で処置するとSSA/Pの腺癌ステージへの進行が抑制され、浸潤がんの発生率が低用量PVHAおよび高用量PVHAの両方で特に低下した(n:ビヒクル=10、低用量-PVHA処置=12、高用量-PVHA処置=9)。
【0176】
また、PVHA処置により、aPKC-DKO
IECマウスの腫瘍の数、サイズおよび量も低減された。
図18、パネルAに示されるように、PVHA実験で処置されたaPKC-DKO
IEC小腸の巨視的画像を得、腫瘍の数、平均サイズおよび腫瘍細胞量について解析した。矢印は腫瘍を表す(
図18、パネルA)。
図18、パネルB~Cは、腫瘍の総数、平均サイズおよび腫瘍細胞量の定量(
図18、パネルB)ならびにPVHA実験におけるサイズに基づいた小腸腫瘍数の層別化(
図18、パネルC;n:ビヒクル=10、低用量-PVHA処置=12、高用量-PVHA処置=9)を示すグラフを示す。低用量および高用量のPVHA処置はどちらも、腫瘍量をかなり、および統計学的に有意な様式で低減させるのに有効であった。
【0177】
また、aPKC-DKO
IECマウスに対するPVHAでの処置により、腫瘍内のヒアルロナン(
図19)およびコラーゲン(
図20)の沈着の低減ももたらされた。
図19は、低用量のPVHA(0.0375 mg/kg)(n=5)またはビヒクル(n=5)で処置されたDKO
IECマウスの小腸腫瘍のヒアルロナン染色を示し、
図20は、PVHA(n=5)またはビヒクル(n=5)で処置されたDKO
IECマウスの小腸腫瘍のマッソントリクローム染色を示す。
【0178】
さらに、この腫瘍に対するPVHA処置により腫瘍内へのCD8+ T細胞の浸潤が回復し得る可能性がある。
図21は、PVHA(n=5)またはビヒクル(n=5)で処置されたDKO
IECマウスの小腸腫瘍の小腸の小腸CD8染色を示す。腫瘍組織中の染色されたCD8+ T細胞の数は、PVHAで処置された組織ではビヒクル処置試料と比べてかなり増加しており、PVHA処置すると腫瘍へのCD8+ T細胞の浸潤が増大することが示唆されることは認識されよう。総合的に、このような結果は、鋸歯状がんは、ヒアルロナン阻害剤PVHAを用いてヒアルロナン沈着を抑制することにより鈍化され得ることを示す。
【0179】
本開示全体を通して、種々の態様を範囲形式で提示している。範囲形式での説明は、便宜上、略しているにすぎず、任意の態様の範囲に対する柔軟性のない限定と解釈されるべきでないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、本文中にそうでないことを明記していない限り、可能なすべての部分範囲ならびに該範囲内の任意の分割可能な数値が下限の単位の10分の1まで具体的に開示されているとみなされたい。例えば、1~6などの範囲の記載は、例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲ならびに該範囲内の任意の分割可能な値、例えば、1.1、2、2.3、5および5.9が具体的に開示されているとみなされたい。これは、範囲の幅に関係なく適用される。このような介在する範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲に含まれ得、また本発明にも包含され、記載の範囲において具体的には除外されている任意の限界値の対象となる。記載の範囲が限界値の一方または両方を含む場合、本文中にそうでないことを明記していない限り、含まれた限界値のいずれかまたは両方を除外した範囲もまた本明細書に示した開示内容に包含される。
【0180】
本明細書において使用される用語法は、具体的な態様を説明する目的のためにすぎず、任意の態様の限定を意図するものではない。本明細書において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は本文中にそうでないことを明示していない限り、複数形も同様に含むことを意図している。用語「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、本明細書において使用する場合、記載の特色、整数、工程、操作、要素および/または成分の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特色、整数、工程、操作、要素、成分および/またはその群の存在または追加を除外するものでないことはさらに理解されよう。本明細書において使用する場合、用語「および/または」は、関連する記載の事項の1つまたは複数のありとあらゆる組合せを包含する。
【0181】
本発明の好ましい態様を本明細書において図示し、記載したが、かかる態様は一例として示されているにすぎないことは当業者には明らかであろう。今や当業者は、本発明を逸脱することなく、数多くの変形、変更および置き換えが思い浮かぶであろう。本明細書に記載の本発明の諸態様に対する種々の代替物が本発明の実施に使用され得ることは理解されよう。本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって規定されること、およびこの特許請求の範囲の範囲に含まれる方法および構造ならびにその均等物が本特許請求の範囲によってカバーされることを意図する。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】