(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(54)【発明の名称】パーキンソン病を治療する方法及び薬剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20230425BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230425BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230425BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20230425BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61P25/16
C07K16/18 ZNA
C12N5/071
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557660
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 CN2021082715
(87)【国際公開番号】W WO2021190561
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】202010212922.4
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李季男
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AC14
4B065CA44
4C084AA02
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4C084ZA151
4C084ZA152
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
被験者に治療有効量のプラスミノーゲン活性化経路の成分を投与することを含む、パーキンソン病を予防及び治療する方法が提供される。また、プラスミノーゲン活性化経路の成分を含む、上記の状態を治療するための薬剤、医薬組成物、製品及びキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の治療有効量の化合物をパーキンソン病の被験者に投与することを含む、パーキンソン病を予防及び治療する方法。
【請求項2】
前記プラスミノーゲン活性化経路の成分が、プラスミノーゲン、組換えヒトプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンとプラスミンの1つ以上のkringleドメイン及びプロテアーゼドメインを含むプラスミノーゲン及びプラスミン変異体並びに類縁体、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)、ミニプラスミン(mini-plasmin)、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、マイクロプラスミン(micro-plasmin)、delta-プラスミノーゲン、delta-プラスミン(delta-plasmin)、プラスミノーゲン活性化剤、tPA、及びuPAから選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記線維素溶解阻害剤の拮抗剤が、PAI-1、補体C1阻害剤、α2抗プラスミンまたはα2マクログロブリンの阻害剤、例えば、抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が、パーキンソン病の被験者に対して、記憶機能の回復促進、認知能力の改善、黒質におけるDTAの発現促進、線条体ニッスル小体の回復促進、黒質におけるGLP-1Rの発現促進、黒質におけるTH陽性細胞の増加、線条体ミエリン鞘の修復促進、脳組織におけるα-シヌクレインの分解促進、線条体NF発現の促進、軸索損傷修復の促進、線条体GFAP発現の低減、線条体ニューロン損傷の緩和、BDNFの形成のための脳組織におけるPro-BDNFの切断促進、うつ病や不安の症状の緩和から選択される1つまたは複数の効果を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物がプラスミノーゲンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスミノーゲンが、ヒト全長プラスミノーゲンまたはその保存的置換変異体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記プラスミノーゲンが、配列2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲンのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プラスミノーゲンが、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ依然としてプラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を有するタンパク質を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プラスミノーゲンが、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、delta-プラスミノーゲン、またはそれらの、プラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を保持した変異体から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プラスミノーゲンが、配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列の保存的置換変異体を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が、1つまたは複数の他の治療方法または薬剤と組み合わせて使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記他の治療方法が、細胞療法(幹細胞療法を含む)及び物理的療法を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記他の薬剤が、パーキンソン病の治療のための他の薬剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈を介して)、または筋肉内に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床症状及び徴候を改善するために、被験者に有効量のプラスミノーゲン活性化経路の成分または関連化合物、例えば、プラスミノーゲン、を投与することを含む、パーキンソン病を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(Parkinson’s disease、PD)は一般的な神経変性疾患であり、高齢者に多く、平均発症年齢は60歳前後であり、40歳未満で発症する若年性パーキンソン病はまれである。パーキンソン病患者のほとんどは散発性であり、家族歴がある患者は10%未満である。パーキンソン病における最も重要な病理学的変化は、中脳黒質のドーパミン(dopamine,DA)作動性ニューロンの変性及び死であり、その結果、線条体DA含有量が大幅に減少し、疾患が引き起こされる。この病理学的変化の正確な原因はまだ不明であるが、遺伝的要因、環境要因、老化、酸化ストレスなど、いずれもPDドーパミン作動性ニューロンの変性と死に関与している可能性がある。
【0003】
パーキンソン病の顕著な病理学的変化は、中脳黒質のドーパミン(dopamine,DA)作動性ニューロンの変性及び死、線条体DA含有量の顕著な減少、及び黒質の残りのニューロンの細胞質における好酸球封入体、すなわちレビー小体(Lewy body)の出現である。パーキンソン病患者では、ドーパミン作動系に加えて、非ドーパミン作動系も著しく損なわれている。例えば、メイナート(Meynert)基底核のコリン作動性ニューロン、青斑核のノルアドレナリン作動性ニューロン、脳幹の縫線核のセロトニン作動性ニューロン、ならびに大脳皮質、脳幹、脊髄、及び末梢自律神経系のニューロンなどの損傷が挙げられる。線条体のドーパミンレベルの大幅な低下は、パーキンソン病における運動症状の出現と密接に関連している。中脳-辺縁系及び中脳-皮質系におけるドーパミン濃度の有意な低下は、パーキンソン病患者の知能低下及び情動障害と密接に関連している。
【0004】
パーキンソン病の発症は潜行性であり、進行は遅い。最初の症状は、通常、片方の手足の振戦または不器用さであり、その後反対側の手足に影響を与える可能性がある。主な臨床症状は、安静時振戦、運動緩慢、硬直及び姿勢歩行障害である。近年、うつ病、便秘、睡眠障害などの非運動症状もパーキンソン病患者の一般的な愁訴であることがますます注目されており、それらが患者の生活の質に与える影響は、運動症状よりも大きくなっている。
【0005】
パーキンソン病の主な治療法は薬物療法であり、ある程度症状を改善することはできるが、病気の進行を止めることはできず、他の治療法や薬剤を見つける必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は研究によって、プラスミノーゲンがパーキンソン病被験者の記憶機能の回復を促進し、認知能力を改善し、黒質におけるDTAの発現を促進し、線条体ニッスル小体の回復を促進し、黒質におけるGLP-1Rの発現を促進し、黒質におけるTH陽性細胞を増加させ、線条体ミエリン鞘の修復を促進し、脳組織におけるα-シヌクレインの分解を促進し、線条体NF発現を促進し、軸索損傷の修復を促進し、線条体GFAP発現を低減し、線条体ニューロン損傷を緩和し、BDNFの形成のための脳組織におけるPro-BDNFの切断を促進し、うつ病や不安の症状を改善することができるため、パーキンソン病の治療薬として開発される可能性があることを発見した。
【0007】
具体的には、本発明は下記のことに係る。
【0008】
1、一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤(Fibrinolytic inhibitor)の拮抗剤から選択される1つ以上の治療有効量の化合物をパーキンソン病の被験者に投与することを含む、パーキンソン病を予防及び治療する方法に関する。
【0009】
一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の化合物の、パーキンソン病を治療する薬剤の調製における使用に関する。
【0010】
一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の化合物を含む、パーキンソン病を治療する薬剤または医薬組成物に関する。
【0011】
2、前記プラスミノーゲン活性化経路の成分が、プラスミノーゲン、組換えヒトプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンとプラスミンの1つ以上のkringleドメイン及びプロテアーゼドメインを含むプラスミノーゲン及びプラスミン変異体並びに類縁体、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)、ミニプラスミン(mini-plasmin)、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、マイクロプラスミン(micro-plasmin)、delta-プラスミノーゲン、delta-プラスミン(delta-plasmin)、プラスミノーゲン活性化剤、tPA、及びuPAから選択されるものである、項1に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0012】
3、前記線維素溶解阻害剤の拮抗剤が、PAI-1、補体C1阻害剤、α2抗プラスミンまたはα2マクログロブリンの阻害剤、例えば、抗体である、項1に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0013】
4、前記化合物が、パーキンソン病の被験者に対して、記憶機能の回復促進、認知能力の改善、黒質におけるDTAの発現促進、線条体ニッスル小体の回復促進、黒質におけるGLP-1Rの発現促進、黒質におけるTH陽性細胞の増加、線条体ミエリン鞘の修復促進、脳組織におけるα-シヌクレインの分解促進、線条体NF発現の促進、軸索損傷修復の促進、線条体GFAP発現の低減、線条体ニューロン損傷の緩和、BDNFの形成のための脳組織におけるPro-BDNFの切断促進、うつ病や不安の症状の緩和から選択される1つまたは複数の効果を有する、項1~3のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0014】
5、前記化合物がプラスミノーゲンである、項1~4のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0015】
6、前記プラスミノーゲンが、ヒト全長プラスミノーゲンまたはその保存的置換変異体である、項1~5のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0016】
7、前記プラスミノーゲンが、配列2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲンのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有する、項1~5のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0017】
8、前記プラスミノーゲンが、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ依然としてプラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を有するタンパク質を含む、項1~5のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0018】
9、前記プラスミノーゲンがGlu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、delta-プラスミノーゲンまたはそれらの、プラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を保持した変異体から選択されるものである、項1~5のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0019】
10、前記プラスミノーゲンが、配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列の保存的置換変異体を含む、項1~5のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0020】
11、前記化合物が、1つまたは複数の他の治療方法または薬剤と組み合わせて使用される、項1~10のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0021】
12、前記他の治療方法が、細胞療法(幹細胞療法を含む)及び物理的療法を含む、項11に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0022】
13、前記他の薬剤が、パーキンソン病の治療のための他の薬剤である、項11に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0023】
14、前記化合物が、鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈を介して)、及び筋肉内に投与される、項1~13のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。本願の上記いずれか1つの実施形態において、前記プラスミノゲンが配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有し得る。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に基づいて、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換され、かつ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質である。
【0024】
一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲンフラグメントを含み、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性、例えば、タンパク質加水分解活性を保持した変異体である。上記実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、または依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸は配列2、6、8、10または12に示される。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンである。
【0025】
一部の実施形態において、前記被験者はヒトである。一部の実施形態において、前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している。一部の実施形態において、前記不足または欠乏は、先天的、継発的及び/または局所的である。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、薬学的に許容される担体と、前述の方法で使用するプラスミノーゲンとを含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、(i)前述の方法で使用するプラスミノーゲン、及び(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための部材(means)を含む、予防または治療キットであり得る。いくつかの実施形態では、前記部材は注射器またはバイアルである。いくつかの実施形態では、前記キットは、前述の方法のいずれかを実施するために前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するためのラベルまたはプロトコルをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記製品は、ラベルを含む容器と、(i)前述の方法で使用するためのプラスミノーゲンまたはプラスミノーゲンを含む医薬組成物とを含み、前記ラベルは、前述の方法のいずれかを実施するために前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記キットまたは製品は、他の薬剤を含む1つまたは複数の追加の部材または容器をさらに含む。
【0029】
前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは全身または局所にて投与され、好ましくは、静脈内、筋肉内、皮下投与によってプラスミノーゲンを投与することで治療する。前記方法のいくつかの実施形態では、前記プラスミノーゲンは、適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与される。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001~2000mg/kg、0.001~800mg/kg、0.01~600mg/kg、0.1~400mg/kg、1~200mg/kg、1~100mg/kg、10~100mg/kg(体重1キロあたりで計算)または0.0001~2000mg/cm2、0.001~800mg/cm2、0.01~600mg/cm2、0.1~400mg/cm2、1~200mg/cm2、1~100mg/cm2、10~100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量で投与し、好ましくは一回以上繰り返し、好ましくは少なくとも毎日投与する。
【0030】
本発明は、本発明の実施形態に属する技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカバーし、これらの組み合わせ後の技術構成は、上記の技術構成が別個に明確に開示されたのと同様に、本出願において明確に開示された。さらに、本発明はまた、各実施形態とそれらの要素との間の組み合わせを明確にカバーし、組み合わせ後の技術構成は、本明細書に明確に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド試験における総移動距離の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは実験中に一定の距離を移動し、プラスミノーゲン投与群のマウスの総運動距離は溶媒対照群よりも有意に短く、その差は統計的に有意であり(*P<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの総運動距離は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図2】
図2は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド試験の境界ゾーンにおける休憩時間率の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは境界ゾーンで一定の休憩時間の割合を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの休憩時間の割合は溶媒対照群より有意に大きく、統計学的な差は非常に有意であり(**はP<0.01を表す)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンでの休憩時間の割合はブランク対照群の値に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図3】
図3は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド試験の境界ゾーンにおける移動距離の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスが境界ゾーンで一定の移動距離を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの移動距離は溶媒対照群よりも有意に小さく、統計的差は有意に近く(P=0.05)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンの移動距離は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図4】
図4は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド試験の境界ゾーンにおける移動距離の割合(%)の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群が境界ゾーンで一定の移動距離の割合を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの移動距離の割合は、溶媒対照群より有意に大きく、統計的に差は極めて有意であり(**はP<0.01を表す)、プラスミノーゲン投与群マウスの境界ゾーンでの移動距離の割合がブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図5】
図5は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスの境界ゾーンにおける徐行時間の割合の計算結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは境界ゾーンで一定の徐行時間の割合を持っており、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの徐行時間の割合は、溶媒対照群よりも有意に低く、統計的差は極めて有意であり(**はP<0.01を表す)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンの徐行時間の割合は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図6】
図6は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド試験における境界ゾーン時間の割合の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスが一定の境界ゾーン時間の割合を持っており、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの時間の割合は溶媒対照群よりも高く、統計的差は有意に近く(P=0.06)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンでの時間の割合は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避行動のレベルを高め、不安を緩和できることを示している。
【
図7】
図7は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド試験における境界ゾーンエントリ回数の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは一定の境界ゾーンエントリ回数を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンエントリ回数は溶媒群に比べて有意に少なく、統計学的な差は有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界エントリ回数は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図8】
図8は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド実験における中心ゾーンの移動距離の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは中央ゾーンで一定の移動距離を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの中央ゾーンの移動距離は溶媒対照群のマウスよりも有意に低く、その差は統計学的に有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの中央ゾーンの移動距離は、ブランク対照群の移動距離に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図9】
図9は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド実験における中心ゾーンの移動距離の割合(%)の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは中央ゾーンで一定の移動距離の割合を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの中央ゾーンの移動距離の割合は溶媒対照群のマウスよりも有意に低く、その差は統計学的に有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの中央ゾーンの移動距離の割合はブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図10】
図10は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスの中心ゾーンにおける最大移動速度の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは中心ゾーンで一定の最大移動速度を持っており、プラスミノーゲン投与群のマウスの中心ゾーンでの最大移動速度は、溶媒対照群よりも有意に低く、統計的差は極めて有意であり(**はP<0.01を表す)、プラスミノーゲン投与群の中心ゾーンの最大移動速度は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図11】
図11は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド試験における中心ゾーン時間の割合の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスが一定の中心ゾーン滞在時間の割合を持っており、プラスミノーゲン投与群のマウスの中心ゾーンでの時間の割合は溶媒対照群よりも有意に低く、統計的差は有意に近く(P=0.06)、プラスミノーゲン投与群の中心ゾーンでの滞在時間の割合は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避行動のレベルを高め、不安を緩和できることを示している。
【
図12】
図12は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド試験における中心ゾーンエントリ回数の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは一定の中心ゾーンエントリ回数を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの中心ゾーンエントリ回数は溶媒群より有意に少なく、統計学的差は有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの中心ゾーンエントリ回数は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図13】
図13は、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスのオープンフィールド試験における移動軌跡の代表的な写真である。その結果、ブランク対照群のマウスは中心ゾーンの活動がほとんどなく、プラスミノーゲン投与群のマウスは溶媒対照群に比べて中心ゾーンの活動が有意に減少し、ブランク対照群のマウスに近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【
図14】
図14A~Cは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスにおける黒質のDTA免疫組織化学的結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒対照群、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブランク対照群のマウスの黒質のドーパミンニューロンは一定量のDTAを発現し(矢印でマーク)、溶媒群のマウスの黒質のDTAの発現量はブランク対照群よりも低く、プラスミノーゲン投与群のマウスの黒質のDTAの発現量は溶媒群より高く、しかもブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるDTAの発現を促進できることを示している。
【
図15】
図15A~Dは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスの線条体タールバイオレット染色結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒対照群、Cはプラスミノーゲン投与群、Dは線条体ニッスル小体の数の分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの線条体ニューロンに一定数のニッスル小体が存在し(矢印でマーク)、溶媒対照群のマウスの線条体ニューロンにあるニッスル小体の数はブランク対照群よりも有意に多く、統計学的差は有意に近く(P=0.085)、プラスミノーゲン投与群のマウスの線条体ニューロンのニッスル小体の数は、ブランク対照群に比べて有意な差はなかったが、溶媒対照群より有意に低く、しかもその差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体ニッスル小体の数に影響を与える可能性があることを示している。
【
図16】
図16A~Cは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスの黒質のタールバイオレット染色結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒対照群、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブランク対照群のマウスの黒質に一定量のニッスル小体が存在し(矢印でマーク)、溶媒対照群のマウスの黒質にあるニッスル小体の数はブランク対照群より少なく、プラスミノーゲン投与群のマウスの黒質におけるニッスル小体の数は溶媒群よりも高かった。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるニッスル小体の回復を促進できることを示している。
【
図17】
図17A~Cは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるGLP-1Rの免疫組織化学的結果を示す図である。Aは溶媒PBS群、Bはプラスミノーゲン投与群、Cは平均光学密度の定量解析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群のマウスの黒質におけるGLP-1Rの発現量(矢印でマーク)は、溶媒PBS対照群よりも有意に多く、その差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるGLP-1Rの発現を促進できることを示している。
【
図18】
図18A~Dは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるTH免疫組織化学的結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS群、Cはプラスミノーゲン投与群、Dは定量解析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの黒質には一定量のTH陽性細胞(矢印でマーク)が存在し、溶媒群のマウスの黒質のTH陽性細胞の数が減少し、プラスミノーゲン投与群のマウスの黒質におけるTH陽性細胞の数は溶媒群よりも有意に高かった。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質においてTH陽性細胞を回復できることを示している。
【
図19】
図19A~Cは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるIba-1の免疫組織化学的結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS群、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブランク対照群のマウスの黒質に一定量のミクログリアが存在し(矢印でマーク)、溶媒群のマウスの黒質にあるミクログリアの数がブランク対照群よりも多く、プラスミノーゲン投与群のマウスの黒質におけるミクログリアの数は溶媒対照群より有意に少なく、ブランク対照群に近かった。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるミクログリアの回復を促進できることを示している。
【
図20】
図20A~Cは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスにおける線条体LFBの免疫組織化学的結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒PBS群、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブランク対照群のマウスの線条体に一定量のミエリンが存在し、溶媒群のマウスの線条体のミエリンの数がブランク対照群よりも少なく、プラスミノーゲン投与群のマウスの線条体におけるミエリンの数は溶媒群より有意に高かった。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体のミエリンを回復できることを示している。
【
図21】
図21A~Dは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるα-シヌクレイン(α-synuclein)の免疫組織化学的結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒群、Cはプラスミノーゲン投与群、Dは平均光学密度の定量解析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの黒質には少量のα-シヌクレインしかなく、溶媒群のマウスの黒質中のα-シヌクレインの量は、ブランク対照群のマウスよりも有意に高かく(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの黒質中のα-シヌクレインの量は溶媒群よりも有意に低く、その差は統計学的に有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの黒質中のα-シヌクレインの量は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるα-シヌクレインの発現を低下させ、神経損傷変性を改善できることを示している。
【
図22】
図22A~Dは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスにおける線条体NFの免疫組織化学的結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒群、Cはプラスミノーゲン投与群、Dは平均光学密度の定量解析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの線条体に一定量のNFが存在し(矢印でマーク)、溶媒群のマウスの線条体におけるNF量は、ブランク対照群よりも低く、プラスミノーゲン投与群のマウスの線条体中のNF量は溶媒群よりも有意に高く、統計学的な差は極めて有意であった(**はP<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体におけるNF発現の回復を促進し、パーキンソン病の線条体軸索損傷を改善できることを示している。
【
図23】
図23A~Cは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスの線条体GFAP免疫組織化学的結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒群、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブランク対照群のマウスの線条体に少量のGFAP発現があり(矢印でマーク)、溶媒群のマウスの線条体におけるGFAPの発現がブランク対照群より有意に高かく、プラスミノーゲン投与群のマウスの線条体におけるGFAPの発現は溶媒群より低かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体におけるGFAPの発現を低下させ、線条体の損傷を軽減できることを示している。
【
図24】
図24A~Dは、マウスの脳ホモジネートにおけるα-シヌクレインに対するプラスミノーゲンの効果の結果を示す図である。AはTricine-page、B、C、Dはそれぞれα-シヌクレイン、重合体a、重合体bのバンドスキャンの定量分析結果である。その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のα-シヌクレイン量が溶媒対照群に比べて有意に低く(***はP<0.001を表す)、その重合体a、bの量はいずれも溶媒対照群より有意に低く(**はP<0.01、***はP<0.001を表す)、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のα-シヌクレインの量は溶媒対照群よりも有意に低く(***はP<0.001を表す)、その重合体a及びbの量は溶媒対照群よりも有意に低かった(*はP<0.05を表し、**はP<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウス及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、ヒトα-シヌクレイン及びその重合体の分解を効果的に促進できることを示している。
【
図25】
図25A~Cは、マウスの脳ホモジネート中の組換えヒトα-シヌクレインに対するプラスミノーゲンの効果の結果を示す図である。Aはウェスタンブロット図、B及びCはそれぞれα-シヌクレイン及び重合体のバンドスキャンの定量分析結果である。その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のα-シヌクレイン量が溶媒対照群に比べて有意に低く(**はP<0.01を表す)、その重合体の量はいずれも溶媒対照群より有意に低く(***はP<0.001を表す)、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のα-シヌクレインの量は溶媒対照群よりも有意に低く(**はP<0.01を表す)、その重合体の量は溶媒対照群よりも有意に低かった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウス及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、組換えヒトα-シヌクレイン及びその重合体の分解を効果的に促進できることを示している。
【
図26】
図26A~Bは、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネート中の組換えヒトPro-BDNFに対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。AはSDS-PAGEの画像、BはSDS-PAGEバンドの定量分析の結果である。その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量が溶媒対照群に比べて有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて組換えヒトPro-BDNFの切断を促進できることを示唆している。
【
図27】
図27A~Cは、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおける組換えヒトPro-BDNFに対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。Aはウエスタンブロットの画像であり、BはウエスタンブロットにおけるPro-BDNFバンドの光学密度(OD)値の分析結果であり、CはウェスタンブロットにおけるBDNFバンドの光学密度(OD)値の分析結果である。その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量が溶媒対照群に比べて有意に低く、その差が有意であり(*はP<0.05、***はP<0.001を表す)、プラスミノーゲン投与群のBDNF量は溶媒対照群よりも有意に高く、その差は極めて有意であった。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、組換えヒトPro-BDNFの切断及び成熟BDNFの形成を促進できることを示唆している。
【発明の詳細な説明】
【0032】
線維素溶解系(Fibrinolytic system)は、線溶系とも呼ばれ、線維素溶解(線溶)の過程に関与する一連の化学物質からなる系であり、主にプラスミノーゲン(PLG)、プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子、及び線維素溶解阻害剤を含む。プラスミノーゲン活性化因子には、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)、及びウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(u-PA)が含まれる。t-PAはセリンプロテアーゼであり、血管内皮細胞によって合成される。t-PAはプラスミノーゲンを活性化し、このプロセスは主にフィブリンで行われる。ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(u-PA)は、尿細管上皮細胞と血管内皮細胞によって産生され、補因子としてフィブリンを必要とすることなくプラスミノーゲンを直接活性化することができる。プラスミノーゲン(PLG)は肝臓で合成される。血液が凝固すると、PLGはフィブリンネットに大量に吸着され、t-PAまたはu-PAの作用によりプラスミンに活性化されて線維素溶解を促進する。プラスミナーゼ(PL)はセリンプロテアーゼであり、フィブリンとフィブリノーゲンを分解し、様々な凝固因子V、VIII、X、VII、XI、IIなどを加水分解し、プラスミノーゲンをプラスミンに変換し、補体を加水分解するなどの作用がある。線維素溶解阻害剤には、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI)、及びα2-抗チプラスミン(α2-AP)が含まれる。PAIには主にPAI-1とPAI-2の2つの形態があり、t-PAに1:1の比率で特異的に結合することによってt-PAを不活性化すると同時にPLGを活性化することができる。α2-APは肝臓で合成され、PLと1:1の比率で結合して複合体を形成し、それによってPL活性を阻害する。FXIIIはα2-APをフィブリンと共有結合させ、それによってPLに対するフィブリンの感受性を弱める。インビボでの線維素溶解系の活性を阻害する物質としては、PAI-1、補体C1阻害剤、α2抗プラスミン、及びα2-マクログロブリンが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される「プラスミノーゲン活性化経路の成分」という用語は、
1、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、delta-プラスミノーゲン、それらの変異体または類縁体;
2、プラスミン及びそれらの変異体または類縁体;及び
3、プラスミノーゲン活性化剤、例えば、tPA及びuPA、ならびにtPAまたはuPAの1つ以上のドメイン(1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメインなど)を含むtPAまたはuPA変異体及び類縁体をカバーする。
【0034】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」は、すべての天然に存在するヒトの遺伝的変異体及びこれらのタンパク質の他の哺乳動物型、並びに、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換されてかつ依然としてプラスミノーゲン活性、プラスミン活性、tPAまたはuPA活性を有するタンパク質を含む。例えば、プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの「変異体」は、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個の保存的アミノ酸によって置換されて得られるこれらのタンパク質の突然変異体を含む。
【0035】
本発明の「プラスミノゲン変異体」は、配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質をカバーする。例えば、本発明の「プラスミノーゲン変異体」は、配列2、6、8、10または12に基づいて、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質であり得る。具体的には、本発明のプラスミノーゲン変異体は、すべての天然に存在するヒトの遺伝的変異体及びこれらのタンパク質の他の哺乳動物型、並びに、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を保存的置換によって得られるこれらのタンパク質の突然変異体を含む。
【0036】
本発明のプラスミノーゲンは、霊長類動物またはげ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を保持した変異体、例えば、配列2、6、8、10または12に示されるプラスミノーゲン、例えば、配列2に示されるヒト天然プラスミノーゲンであり得る。
【0037】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「類縁体」はそれぞれ、プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAと実質的に同様の効果を与える化合物を含む。
【0038】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のドメイン(例えば、1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むプラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」及び「類縁体」をカバーする。例えば、プラスミノーゲンの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のプラスミノーゲンドメイン(例えば、1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むプラスミノーゲン変異体及び類縁体、例えば、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)をカバーする。プラスミンの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のプラスミンドメイン(例えば、1つまたは複数のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むミニプラスミン(mini-plasmin)やδ-プラスミン(delta-plasmin)などのプラスミンの「変異体」及び「類縁体」をカバーする。
【0039】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの「変異体」または「類縁体」がそれぞれプラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの活性を有するかどうか、またはそれらがプラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAと実質的に同様の効果をそれぞれ与えるかどうかは、当技術分野で知られている方法、例えば、ザイモグラフィー(enzymography)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)及びFACS(蛍光活性化細胞ソーティング法)を使用して、活性化されたプラスミン活性のレベルによって測定できる。例えば、次の文献に記載されている方法を参照して測定することができる。Ny,A.,Leonardsson,G.,Hagglund,A.C,Hagglof,P.,Ploplis,V.A.,Carmeliet,P. and Ny,T. (1999). Ovulation inplasminogen-deficient mice. Endocrinology 140,5030-5035;Silverstein RL, Leung LL, Harpel PC, Nachman RL (November 1984). “Complex formation of platelet thrombospondin with plasminogen. Modulation of activation by tissue activator”. J. Clin. Invest. 74 (5): 1625-33;Gravanis I, Tsirka SE (February 2008). “Tissue-type plasminogen activator as a therapeutic target in stroke”. Expert Opinion on Therapeutic Targets. 12 (2): 159-70;Geiger M, Huber K, Wojta J, Stingl L, Espana F, Griffin JH, Binder BR (Aug 1989). “Complex formation between urokinase and plasma protein C inhibitor in vitro and in vivo”. Blood. 74 (2): 722-8。
【0040】
本発明の一部の実施形態において、本発明の「プラスミノーゲン活性化経路の成分」はプラスミノーゲンである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト全長プラスミノーゲン、またはそのプラスミノーゲン活性(例えば、そのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性)を保持した保存的突然変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性(例えば、そのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性)を保持した変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、または依然としてプラスミノーゲン活性(例えば、そのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性)を保持した保存的突然変異体若しくはそのフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然としてプラスミノーゲン活性を保持した保存的突然変異体若しくはそのフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に示されるようなアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列の保存的置換配列を含む。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸は配列2、6、8、10または12に示される。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に示されるプラスミノーゲンの保存的置換変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンまたはその保存的変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2に示されるヒト天然プラスミノーゲンまたはその保存的変異体である。
【0041】
「プラスミノーゲンを直接活性化できる、若しくはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによってプラスミノーゲンを間接に活性化できる化合物」とは、プラスミノーゲンを直接活性化できる、若しくはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによってプラスミノーゲンを間接に活性化できる任意の化合物を指し、例えば、tPA、uPA、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、及びスタフィロキナーゼが挙げられる。
【0042】
本発明の「線維素溶解阻害剤の拮抗薬」は、線維素溶解阻害剤の作用に拮抗し、その作用を弱め、遮断し、阻止する化合物である。前記線維素溶解阻害剤は、例えば、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミン、及びα2-マクログロブリンである。前記拮抗剤は、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの抗体、または、例えばPAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの発現を遮断またはダウンレギュレートするアンチセンスRNAもしくはミニRNA、または、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンまたはα2-マクログロブリンの結合部位を占めるが、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンまたはα2-マクログロブリンの機能を持たない化合物、または、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの結合ドメイン及び/または活性ドメインをブロックする化合物である。
【0043】
プラスミンはプラスミノゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含む。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro-MMPs)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である。プラスミンはプラスミノゲンが二種類の生理性のPA:組織型プラスミノゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPAs)をタンパク質加水分解することで形成されるものである。プラスミノゲンは血漿及び他の体液中において、相対的レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAsの合成及び活性レベルよって実現されると考えられている。PA系成分の合成は異なる要素によって厳格な調節を受け、例えばホルモン、成長因子及びサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAsの特定の生理的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミン(α2-antiplasmin)である。PAsの活性は、uPAとtPAのプラスミノーゲン活性化剤阻害剤-1(PAI-1)に同時に阻害され、uPAを主に阻害するプラスミノーゲン活性化剤阻害剤-2(PAI-2)によって調節される。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)がある。
【0044】
プラスミノゲンは単一鎖の糖タンパクであり、791個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDaである。プラスミノゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノゲンは組織及び体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的な由来である。プラスミノゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸-プラスミノゲン(Glu-plasminogen)及びリジン-プラスミノゲン(Lys-plasminogen)である。天然的に分泌され及び分解していない形のプラスミノゲンは一つのアミノ基末端(N-末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸-プラスミノゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸-プラスミノゲンはLys76-Lys77においてリジン-プラスミノゲンに加水分解される。グルタミン酸-プラスミノゲンと比較して、リジン-プラスミノゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAsによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノゲンのArg560-Val561ペプチド結合はuPAまたはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって連結された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす。プラスミノゲンのアミノ基末端部分は五つの相同三環を含み、即ちいわゆるkringlesであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringlesはプラスミノゲンとフィブリン及びその阻害剤α2-APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたプラスミノゲンは38kDaのフラグメントであり、kringlel-4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントはアンギオスタチン(Angiostatin)と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノゲンから生成される。
【0045】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理性血栓の形成を予防するキーポイントである。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらの成分はラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及びゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している。間接的に、プラスミンはさらにMMP-1、MMP-2、MMP-3及びMMP-9を含むいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解する。そのため、プラスミンは細胞外タンパク加水分解の重要な上流調節因子であることを提唱する人がいる。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する。インビトロで、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
【0046】
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解する。
【0047】
「プラスミノーゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドを含む天然ヒト由来プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列4)として計算すれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約90kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノーゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメイン及び5つのKringleドメイン(Kringle1-5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1-Gly19を含み、PApは残基Glu20-Val98を含み、Kringle1は残基Cys103-Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184-Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275-Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377-Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481-Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581-Arg804を含む。
【0048】
Glu-プラスミノーゲンは天然のフルサイズのヒトプラスミノーゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)。該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。生体内において、さらにGlu-プラスミノーゲンの76-77番目のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys-プラスミノーゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。Delta-プラスミノーゲン(δ-plasminogen)はフルサイズのプラスミノーゲンにKringle2-Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1及びセリンプロテアーゼドメインしか含有せず(プロテアーゼドメイン(protease domain、PD)とも呼ばれる)、δ-プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7である。ミニプラスミノーゲン(Mini-plasminogen)はKringle5及びセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノーゲン(Micro-plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531-Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許出願において、マイクロプラスミノーゲンの配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0049】
全長プラスミノーゲンの構造は、Aisinaらの論文にも記載されている(Aisina R B,Mukhametova L I.Structure and function of plasminogen/plasmin system[J].Russian Journal of Bioorganic Chemistry,2014,40(6):590-605)。Aisinaらの前記文章によれば、プラスミノーゲンにはKringle 1、2、3、4、5ドメインとセリンプロテアーゼドメイン(プロテアーゼドメイン(protease domain、PD)とも呼ばれる)が含まれ、Kringlesは、プラスミノーゲンが低分子量及び高分子量のリガンドに結合する役割(すなわち、リジン結合活性)を担っており、その結果、プラスミノーゲンがよりオープンな構成に変換され、より活性化しやすくなり、プロテアーゼドメイン(PD)は、残基Val562-Asn791であり、tPAとUPAはプラスミノーゲンのArg561-Val562位活性化結合を特異的に切断し、それによってプラスミノーゲンがプラスミンを形成できる。したがって、プロテアーゼドメイン(PD)は、プラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を付与する領域である。
【0050】
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノーゲン」と「フィブリンプラスミノーゲン」、「繊維タンパクプラスミノーゲン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
【0051】
本願において、前記プラスミノーゲンの「不足」とは、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より低く、被験者の正常な生理学的機能に影響を及ぼすのに十分に低いことをいう。前記プラスミノーゲンの「欠乏」の意味は、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より明らかに低く、活性または発現が極微量であり、外部供給によってのみ正常な生理学的機能を維持できることである。
【0052】
当業者は以下のように理解できる。本発明のプラスミノーゲンのすべての技術構成はプラスミンに適用でき、そのため、本発明に記載の技術構成はプラスミノーゲン及びプラスミンをカバーするものである。循環プロセスにおいて、プラスミノーゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションをとるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノーゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解させ、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノーゲンのPApドメインはプラスミノーゲンを非活性閉鎖コンフォメーションに維持する重要なエピトープを含み、一方KRドメインは受容体及び基質上のリジン残基と結合できる。プラスミノーゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)、カリクレイン及び凝結因子XII(ハーゲマン因子)などを含む。
【0053】
「プラスミノーゲン活性フラグメント」とは、基質のターゲット配列中のリジンに結合する活性(リジン結合活性)フラグメント、またはタンパク質加水分解機能を発揮する活性(タンパク質加水分解活性)フラグメント、またはタンパク質加水分解活性とリジン結合活性との両方を有するフラグメントを指す。本発明のプラスミノーゲンに関する技術構成は、プラスミノーゲンをプラスミノーゲン活性フラグメントに置き換える技術構成を包含する。いくつかの実施形態では、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、プラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むか、またはプラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインからなる。一部の実施形態において、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、配列14を含むか、または配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列14からなり、あるいは配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。一部の実施形態において、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、Kringle 1、Kringle 2、Kringle 3、Kringle 4、及びKringle 5から選択される1つ以上のドメインもしくはその保存的置換変異体を含むか、またはKringle 1、Kringle 2、Kringle 3、Kringle 4、及びKringle 5から選択される1つ以上のドメインまたはその保存的置換変異体からなる。いくつかの実施形態では、本発明のプラスミノーゲンは、上記のプラスミノーゲンの活性フラグメントを含むタンパク質を含む。
【0054】
現在、血液中のプラスミノーゲン及びその活性測定方法は組織プラスミノーゲン活性化剤の活性に対する測定(t-PAA)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤抗原に対する測定(t-PAAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノーゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン-抗プラスミン複合物に対する測定(PAP)を含む。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象(被験者)の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のPLGはSKの作用下においてPLMとなり、後者は発光基質に作用し、それから分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノーゲンの活性と正比例の関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のプラスミノーゲン活性に対して測定を行うことができる。
【0055】
「オーソログまたはオルソログ(ortholog)」とは異なる種どうしのホモログであり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含み、直系遺伝子ともいう。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノーゲン活性を有するプラスミノーゲンのオーソログまたはオルソログを含む。
【0056】
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの所定のアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーション及び機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、アルカリ性、疎水性など)のアミノ酸で親タンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジン及びリジンは親水性のアルカリ性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%~99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換バリアント」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素を含み、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然または親タンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0057】
「分離された」プラスミノーゲンとは天然環境から分離及び/または回収されたプラスミノーゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノーゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になるまで精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノーゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造され、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノーゲンを含む。
【0058】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコードされた及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、及び修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するあるいは有しない)を含む融合物;等々である。
【0059】
参照ペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要に応じてギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的としたアライメントは本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は配列をアライメントするための適切なパラメータを決めることができ、該パラメータが比較対象の配列のフルサイズに対して最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN-2により得られるものである。
【0060】
ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、所定のアミノ酸配列Aの所定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bに対して、と、またはについてのある%のアミノ酸配列同一性を有する又は含む所定のアミノ酸配列Aともいう)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0061】
ここで、Xは配列アライメントプログラムALIGN-2において該プログラムのA及びBのアライメントにおいて同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。特に断りのない限り、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0062】
本文において使用されているように、用語の「治療」は期待される薬理及び/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状の発生、発症を完全または一部予防すること、あるいは疾患及び/またはその症状を一部または完全軽減すること、及び/または疾患及び/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾患が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況であること;(b)疾患を抑制し、その形成を阻害すること;及び(c)疾患及び/またはその症状を減軽し、即ち疾患及び/またはその症状の減退または消失を引き起こすこと。
【0063】
用語の「個体」、「被験者」及び「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
【0064】
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与して疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防及び/または治療を実現できるプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)の量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)、治療しようとする被験者の疾患及び/または症状の重症度及び年齢、体重などに従って変化するものである。
【0065】
本発明のプラスミノーゲンの調製
プラスミノーゲンは治療の用途に用いられるために、自然界から分離及び精製されるものでもよく、標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することでもよい。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノーゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノーゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖が構築されている機能性ユニットにより小さい不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンとN保護を受けている単一のアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と連結する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、その後それを切除する。
【0066】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノーゲンを生産する。例えば、プラスミノーゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に連結させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント及び転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーターシステムとすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現及びプラスミノーゲンの収集及び精製に適した条件下において宿主を維持する。
【0067】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において遊離体または宿主染色体DNAの組み込む部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、インビトロで所望のDNA配列によって形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
【0068】
大腸菌(Escherichia coli)は目的抗体をコードするポリヌクレオチドをクローンするための原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と相容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、β-ラクタマーゼプロモーターシステム、またはファージλ由来のプロモーターシステムである。プロモーターは一般的に発現を制御し、必要に応じてオペレーター遺伝子配列において、転写及び翻訳を起動するために、さらにリボソームの結合位置配列などを有してもよい。
【0069】
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えばサッカロミセス(S.cerevisiae))及びピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列など含む。典型的なプロモーターは3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及びその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母プロモーターには特にアルコール脱水素酵素、イソチトクロムC、及びマルトースとガラクトースの利用のための酵素由来のプロモーターを含む。
【0070】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えばインビトロ細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明の抗-Tau抗体(例えばかかる目的抗-Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)の発現及び生成に用いることができる。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、及び形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、及び必要とされる加工情報サイト、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写ターミネーター配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなど由来のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
【0071】
一旦(化学または組み換え的に)合成されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノーゲンを精製することができる。該プラスミノーゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%~90%の純度で、少なくとも約90%~95%の純度で、または98%~99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、かかる目的生成物以外の大分子などである。
【0072】
薬物配合剤
所望の純度のプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)と必要に応じた薬用担体、賦形剤、または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定化剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(約10個より少ない残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましい凍結乾燥された抗VEGF抗体製剤は、WO97/04801に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。
【0074】
本発明のプラスミノーゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に内包ことができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子及びナノカプセル)中に入れまたは粗エマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセル及びポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術はRemington′s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0075】
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)は必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥及び再度配合する前または後に除菌濾過膜で濾過することで容易に実現できる。
【0076】
本発明のプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)は徐放製剤を調製できる。徐放製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過マトリックスを含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。徐放性マトリックスの実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982))またはポリ(ビニールアルコール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983)),分解できないエチレン-ビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体及びリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、及びポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン-酢酸エチル及び乳酸-ヒドロキシ酢酸は、持続的に分子を100日間以上放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S-S結合を形成することであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、及び特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現できる。
【0077】
投与及び使用量
異なる方式、例えば鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬や点眼薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内(例えば、頸動脈を介して)、筋肉内、及び直腸内投与により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。
【0078】
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルのような植物油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、食塩水及び緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガ―デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体及び栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
【0079】
医療関係者は各種臨床的要素により用量案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数及び経路、全体の健康度、及び同時に投与するその他の薬物を含む。本発明が含有するプラスミノーゲンの薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001~2000mg/kgであり、または約0.001~500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)とすることができる。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1-50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってに従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量のスケジュール表は連続数日0.01~100mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において治療効果及び安全性をリアルタイムに評価する必要がある。
【0080】
製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は、プラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)を含む製品または薬物キットに係るものである。前記製品は好ましくひとつの容器、ラベルまたはプロトコールを含む。適切な容器はボトル、バイアル、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたはバイアルであり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)である。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の病症の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液及びグルコース溶液を含む。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するプロトコルを含み、これには例えば前記組成物の使用者にプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)の組成物及び疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示することを含む。
【実施例】
【0081】
以下の実施例で使用されるヒトプラスミノーゲンは、ドナーの血漿に由来し、以下の文書:KennethC Robbins,Louis Summaria,David Elwyn et al.Further Studies on the Purification and Characterization of Human Plasminogen and Plasmin.Journal of Biological Chemistry,1965,240(1):541-550;Summaria L,Spitz F,Arzadon L et al.Isolation and characterization of the affinity chromatography forms of human Glu- and Lys-plasminogens and plasmins.J Biol Chem.1976 Jun 25;251(12):3693-9;HAGAN JJ,ABLONDI FB,DE RENZO EC.Purification and biochemical properties of human plasminogen.J Biol Chem.1960 Apr;235:1005-10に記載された方法に基づき、プロセスを最適化し、ヒトドナー血漿から精製して得られた。プラスミノーゲン単体の純度は98%を上回った。
【実施例】
【0082】
実施例1は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの自発活動及び回避行動を改善することに関するものである。
10~12週齢のC57BL/6Jオスマウス28匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で20匹とした。ブランク対照群のマウスには生理食塩水溶液200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine,MPTP)溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[1]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、すべてのマウスの体重測定及びオープンフィールド行動試験を実施した。モデル群のマウスを体重及びオープンフィールドの結果に応じてランダムに2群に分け、投与群10匹、溶媒群10匹とし、投与を開始し、投与開始日を1日目として記録した。投与群マウスに1mg/100μl/匹でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒群に100μl/匹で溶媒溶液(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を注射し、連続して14日間投与し、投与の15日目にオープンフィールド試験を行った。
MPTPは特定の強力な黒質毒素であり、その代謝産物であるMPP+(1-メチル-4-フェニルピリジニウム)はミトコンドリア複合体I阻害剤であり、血液脳関門を通過し、ミトコンドリアの酸化的呼吸鎖やその他の損傷経路をブロックし、黒質と線条体のドーパミンニューロンを損傷し、ヒトパーキンソン病の症状を模倣することができる
[2]。
オープンフィールド実験
実験時、オープンフィールド(40×40×40cm)の底面中央にマウスを置き、撮影と計時を同時に行い、持続して5分間観察し、各マウスは3回の実験を行った。記録するパラメーターは、総移動距離、境界休憩時間率、境界ゾーンの移動距離、境界ゾーンの移動距離の割合、境界ゾーンの徐行時間率、境界ゾーン時間率、境界ゾーンエントリ回数、中心ゾーン移動距離、中心ゾーン移動距離の割合、中心ゾーンの最大移動速度、中心ゾーン時間率、中央ゾーンエントリ回数、及び移動軌跡を含む。各実験後、匂いの好みを防ぐために70%のアルコールを使用してボックスを拭いた。
オープンフィールド実験の設計原理は、マウスの回避に基づいている。これは、マウスが開けた場所、未知の場所、潜在的に危険な場所を恐れているため、「壁に張り付く」性質を持っていることを指す。総距離と平均速度は、マウスの自発活動を反映する主なデータと見なされ、回避は、フィールドの周辺領域(4つのコーナーと4つの側面)でのマウスの活動によって評価された。回避を反映した周囲での活動時間から判断すると、時間が短縮することは、マウスがより「冒険的」な傾向にあることを示し、中央ゾーンでの活動時間が大幅に長くなることは、回避と不安(うつ病)のレベルが低いことを示す。
全体的な移動状況
総運動距離
総移動距離は、指定された試験時間内の移動軌跡の長さを指す。
その結果、ブランク対照群のマウスは実験中に一定の距離を移動し、プラスミノーゲン投与群のマウスの総運動距離は溶媒対照群よりも有意に短く、その差は統計的に有意であり(*P<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの総運動距離は、ブランク対照群に近かった(
図1)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの自発活動の行動を回復させることができることを示している。
境界ゾーンでの移動状況
境界ゾーン休憩時間率
境界ゾーンとは、オープンフィールドの周囲(四隅と四つの辺)のことである。境界ゾーン休憩時間率とは、境界ゾーンでの休憩時間と総休憩時間(境界ゾーン休憩時間と中心ゾーン休憩時間とを含む)との比である。その結果、ブランク対照群のマウスは境界ゾーンで一定の休憩時間の割合を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの休憩時間の割合は溶媒対照群より有意に大きく、統計学的な差は非常に有意であり(**はP<0.01を表す)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンでの休憩時間の割合はブランク対照群の値に近かった(
図2)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
境界ゾーンの移動距離
境界ゾーンの移動距離は、指定された試験時間内における境界ゾーンでの移動軌跡の長さである。その結果、ブランク対照群のマウスが境界ゾーンで一定の移動距離を有し、溶媒対照群マウスの境界ゾーンでの移動距離はプラスミノーゲン投与群よりも長く、統計的差は有意に近く(P=0.05)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンの移動距離は、ブランク対照群に近かった(
図3)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
境界ゾーンの移動距離の割合(%)
境界ゾーンの移動距離の割合とは、境界ゾーンの移動距離と総移動距離(境界ゾーンの移動距離と中央ゾーンの移動距離とを含む)との比である。
その結果、ブランク対照群が境界ゾーンで一定の移動距離の割合を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの移動距離の割合は、溶媒対照群より有意に大きく、統計的に差は極めて有意であり(**はP<0.01を表す)、プラスミノーゲン投与群マウスの境界ゾーンでの移動距離の割合がブランク対照群に近かった(
図4)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
境界ゾーンの徐行時間率
境界ゾーンの徐行時間率とは、試験時間内の境界ゾーンの徐行時間と総試験時間との比である。
その結果、ブランク対照群のマウスは境界ゾーンで一定の徐行時間の割合を持っており、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの徐行時間の割合は、溶媒対照群よりも有意に低く、統計的差は極めて有意であり(**はP<0.01を表す)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンの徐行時間の割合は、ブランク対照群に近かった(
図5)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
境界ゾーン時間率(%)
境界ゾーン時間率とは、境界ゾーンの時間と総試験時間との比である。
その結果、ブランク対照群のマウスが一定の境界ゾーン時間の割合を持っており、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの時間の割合は溶媒対照群よりも高く、統計的差は有意に近く(P=0.06)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンでの時間の割合は、ブランク対照群に近かった(
図6)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避行動のレベルを高め、不安を緩和できることを示している。
境界ゾーンエントリ回数
その結果、ブランク対照群のマウスは一定の境界ゾーンエントリ回数を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンエントリ回数は溶媒対照群に比べて有意に少なく、統計学的な差は有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界エントリ回数は、ブランク対照群に近かった(
図7)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
中心ゾーンの移動状況
中心ゾーンの移動距離
中心ゾーンの移動距離とは、試験時間内の中心ゾーンの移動軌跡の長さのことである。
その結果、ブランク対照群のマウスは中央ゾーンで一定の移動距離を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの中央ゾーンの移動距離は溶媒対照群のマウスよりも有意に低く、その差は統計学的に有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの中央ゾーンの移動距離は、ブランク対照群の移動距離に近かった(
図8)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
中心ゾーンの移動距離の割合(%)
中心ゾーンの移動距離の割合とは、試験時間内の中心ゾーンの移動軌跡の長さと総移動距離軌跡の長さとの比である。
その結果、ブランク対照群のマウスは中央ゾーンで一定の移動距離の割合を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの中央ゾーンの移動距離の割合は溶媒対照群のマウスよりも有意に低く、その差は統計学的に有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの中央ゾーンの移動距離の割合はブランク対照群に近かった(
図9)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
中心ゾーンの最大移動速度
中心ゾーンの最大移動速度とは、試験時間内の中心ゾーンの最速の移動速度を指す。
その結果、ブランク対照群のマウスは中心ゾーンで一定の最大移動速度を持っており、プラスミノーゲン投与群のマウスの中心ゾーンでの最大移動速度は、溶媒対照群よりも有意に低く、統計的差は極めて有意であり(**はP<0.01を表す)、プラスミノーゲン投与群の中心ゾーンの最大移動速度は、ブランク対照群に近かった(
図10)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
中心ゾーン時間率(%)
中心ゾーン時間率とは、中心ゾーンの移動時間と総試験時間との比である。
その結果、ブランク対照群のマウスが一定の中心ゾーン滞在時間の割合を持っており、プラスミノーゲン投与群のマウスの中心ゾーンでの時間の割合は溶媒対照群よりも有意に低く、統計的差は有意に近く(P=0.06)、プラスミノーゲン投与群の中心ゾーンでの滞在時間の割合は、ブランク対照群に近かった(
図11)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避行動のレベルを高め、不安を緩和できることを示している。
中心ゾーンエントリ回数
その結果、ブランク対照群のマウスはほとんど中央ゾーンに入らず、回避傾向が正常であり、プラスミノーゲン投与群のマウスの中心ゾーンエントリ回数は溶媒群より有意に少なく、統計学的差は有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの中心ゾーンエントリ回数は、ブランク対照群に近かった(
図12)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
移動軌跡
その結果、オープンフィールド試験中、ブランク対照群のマウスは一定の総移動距離を有し、中心ゾーンの活動がほとんどなく、プラスミノーゲン投与群のマウスは溶媒対照群に比べて総移動距離及び中心ゾーンの活動が有意に減少する傾向があり、ブランク対照群のマウスに近かった(
図13)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの回避を強化し、不安を緩和できることを示している。
【実施例】
【0083】
実施例2は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるDTAの発現を促進できることに関するものである。
10~12週齢のC57BL/6Jオスマウス40匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で32匹とした。ブランク対照群のマウスには溶媒溶液200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine,MPTP)溶液を40mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[1]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデル群のマウスを体重に応じてランダムに2群に分け、溶媒群と投与群でそれぞれ16匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。投与群マウスに1mg/100μl/匹でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒群に100μl/匹で溶媒溶液(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を注射し、連続して14日間投与し、投与の15日目にマウスを殺処分し、マウスの黒質を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定された黒質組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗マウスドーパミントランスポーター(DAT)抗体(ab7260、Abcam)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
パーキンソン病(Parkinson disease,PD)は神経変性疾患であり、その病理学的特徴として、黒質線条体ドーパミン作動性ニューロンの進行性死、残存ドーパミン作動性ニューロンの細胞質におけるレビー小体の形成、及び大脳基底核におけるドーパミンの欠乏、さらに引き起こすPDの典型的なジスキネジア症状の発生を含む。ドーパミントランスポーター(dopamine transporter,DAT)は、ドーパミンニューロンのシナプス前膜に位置し、ドーパミンニューロンのシナプス前機能を反映して、シナプス間隙に放出されたドーパミン伝達物質を再取り込みできる。DATの減少は、PDの発生と密接に関連している
[3]。
その結果、ブランク対照群(
図14A)のマウスの黒質のドーパミンニューロンは一定量のDTAを発現し(矢印でマーク)、溶媒群(
図14B)のマウスの黒質のDTAの発現量はブランク対照群よりも低く、プラスミノーゲン投与群(
図14C)マウスの黒質のDTAの発現量は溶媒群より高かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるDTAの発現を促進できることを示している。
【実施例】
【0084】
実施例3は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体ニッスル小体の回復を促進できることに関するものである。
10~12週齢のC57BL/6Jオスマウス40匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で32匹とした。ブランク対照群のマウスには溶媒溶液200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine,MPTP)溶液を40mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[1]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデル群のマウスを体重に応じてランダムに2群に分け、溶媒群と投与群でそれぞれ16匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。投与群マウスに1mg/100μl/匹でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒群に100μl/匹で溶媒溶液(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を注射し、連続して14日間投与し、投与の15日目にマウスを殺処分し、マウスの線条体を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定された線条体組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。0.4%タールバイオレット染色液(pH=3)で染色させた。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
PDの主な病理学的変化は、黒質線条体ドーパミン作動性ニューロンの進行性変性及び壊死であり、線条体ドーパミン伝達物質のレベルが低下し、それによって大脳基底核回路全体の機能不全が引き起こされる
[3]。クロマチンとも呼ばれるニッスル小体は、神経細胞に特有の構造であり、多くの粗面小胞体とその間に存在する遊離リボソームから構成され、タンパク質を合成する機能を持っており、ニッスル小体の数と分布はニューロンの機能状態と密接に関係しており、神経細胞の生存の指標と見なされている
[4]。その結果、ブランク対照群(
図15A)のマウスの線条体ニューロンに一定数のニッスル小体が存在し(矢印でマーク)、溶媒対照群(
図15B)のマウスの線条体ニューロンにあるニッスル小体の数はブランク対照群よりも有意に多く、統計学的差は有意に近く(P=0.085)、プラスミノーゲン投与群(
図15C)のマウスの線条体ニューロンのニッスル小体の数は、ブランク対照群に比べて有意な差はなかったが、溶媒対照群より有意に低く、しかもその差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)(
図15D)。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体ニッスル小体の回復を促進できることを示している。
【実施例】
【0085】
実施例4は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるニッスル小体の回復を促進できることに関するものである。
10~12週齢のC57BL/6Jオスマウス28匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で20匹とした。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[5]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデル群のマウスを体重に応じてランダムに2群に分け、溶媒群と投与群でそれぞれ10匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。投与群マウスに1mg/100μl/匹でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒群に100μl/匹で溶媒溶液(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を注射し、連続して14日間投与し、投与の15日目にマウスを殺処分し、マウスの黒質を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定された黒質組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。0.4%タールバイオレット染色液(pH=3)で染色させた。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
その結果、ブランク対照群(
図16A)のマウスの黒質に一定量のニッスル小体が存在し(矢印でマーク)、溶媒対照群(
図16B)のマウスの黒質におけるニッスル小体の数が減少し、プラスミノーゲン投与群(
図16C)のマウスの黒質におけるニッスル小体の数は溶媒群よりも高かった。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるニッスル小体の回復を促進できることを示している。
【実施例】
【0086】
実施例5は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるGLP-1Rの発現を促進できることに関するものである。
9週齢のC57オスマウス12匹を取り、モデリングの1日前にマウスの体重を測定し、マウスには30mg/kg体重で毎日5mg/ml MPTP溶液を腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[6~7]。MPTP溶液の調製:シリンジを使用して10mlの脱イオン水を吸引し、それを100mgのMPTP粉末(sigma、M0896)に加え、10mg/mlの母液を調製し、母液1mlをアンプルに吸引し、次に1mlの脱イオン水を加え、最終濃度が5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、マウスをランダムに2群に分け、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群でそれぞれ6匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹/日でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同量のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して14日間投与した。投与の15日目にマウスを殺処分し、脳を速やかに採取して4%パラホルムアルデヒドで24~48時間固定した。固定された脳組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の黒質を位置付け、切片の厚さは4μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗マウスGLP-1R抗体(NOVUS,NBP1-97308)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
グルカゴン様ペプチド1受容体(glucagon-like peptide 1 receptor,GLP-1R)は、グルカゴン受容体ファミリーのメンバーの1つであり、インスリン分泌を促進することによって血糖値を調節するGタンパク質共役受容体である
[8~9]。パーキンソン病は、GLP-1Rも発現する黒質線条体ニューロンにおけるドーパミン作動性シグナル伝達の喪失を特徴としている
[10]。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図17B)のマウスの黒質におけるGLP-1Rの発現量(矢印でマーク)は、溶媒PBS対照群(
図17A)よりも有意に多く、その差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)(
図17C)。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるGLP-1Rの発現を促進できることを示している。
【実施例】
【0087】
実施例6は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるTHの発現を促進できることに関するものである。
9週齢のC57オスマウス12匹を取り、モデリングの1日前にマウスの体重を測定し、マウスには30mg/kg体重で毎日5mg/ml MPTP溶液を腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[6~7]。MPTP溶液の調製:シリンジを使用して10mlの脱イオン水を吸引し、それを100mgのMPTP粉末(sigma、M0896)に加え、10mg/mlの母液を調製し、母液1mlをアンプルに吸引し、次に1mlの脱イオン水を加え、最終濃度が5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、マウスをランダムに2群に分け、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群でそれぞれ6匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹/日でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同量のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して14日間投与した。投与の15日目にマウスを殺処分し、マウスの黒質を採取して4%パラホルムアルデヒドで24~48時間固定した。固定された黒質をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の黒質を位置付け、切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗マウスTH抗体(Proteintech,25859-1-AP)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
チロシンヒドロキシラーゼ(tyrosine hydroxylase,TH)は、L-ドーパ(L-dopa)のチロシン合成の律速酵素であり、細胞質でのみ発現し、ドーパミンニューロンに豊富に存在する。黒質のTH陽性ニューロンのほとんどはドーパミン作動性であるため、THは黒質のドーパミン作動性ニューロンのマーカーとして使用でき、黒質でのTHの発現量はPDを検出するための指標になる
[11]。
その結果、ブランク対照群(
図18A)のマウスの黒質には一定量のTH陽性細胞(矢印でマーク)が存在し、溶媒群(
図18B)のマウスの黒質のTH陽性細胞の数が減少し、プラスミノーゲン投与群(
図18C)のマウスの黒質におけるTH陽性細胞の数は溶媒群よりも有意に高かった。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質においてTH陽性細胞の数を増加させることができることを示している。
【実施例】
【0088】
実施例7は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるミクログリアの数に影響を与えることに関するものである。
9週齢のC57オスマウス12匹を取り、モデリングの1日前にマウスの体重を測定し、マウスには30mg/kg体重で毎日5mg/ml MPTP溶液を腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[6~7]。MPTP溶液の調製:シリンジを使用して10mlの脱イオン水を吸引し、それを100mgのMPTP粉末(sigma、M0896)に加え、10mg/mlの母液を調製し、母液1mlをアンプルに吸引し、次に1mlの脱イオン水を加え、最終濃度が5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、マウスをランダムに2群に分け、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群でそれぞれ6匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹/日でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同量のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して14日間投与した。投与の15日目にマウスを殺処分し、マウスの中脳の黒質を採取して4%パラホルムアルデヒドで24~48時間固定した。固定された黒質をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の黒質を位置付け、切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗マウスIba-1抗体(Abcam)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
ミクログリアは、中枢神経系に固有の自然免疫細胞であり、脳の病変や損傷によって活性化される。活性化されたミクログリアは損傷部位に移動し、死細胞の食作用、炎症誘発性サイトカインの増加などのさまざまな機能を発揮し、さまざまな中枢神経系疾患に関与している
[12~14]。Iba-1(イオン化カルシウム結合アダプター分子1(Ionized calcium binding adapter molecule 1))は約17kDaのカルシウム結合タンパク質であり、中枢神経系ミクログリアで特異的に発現し、ミクログリアマーカーとして広く使用されている
[15~17]。
その結果、ブランク対照群(
図19A)のマウスの黒質に一定量のミクログリアが存在し(矢印でマーク)、溶媒対照群(
図19B)のマウスの黒質にあるミクログリアの数がブランク対照群よりも多く、プラスミノーゲン投与群(
図19C)のマウスの黒質におけるミクログリアの数は溶媒対照群より有意に少なく、ブランク対照群に近かった。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるミクログリアの数に影響を与えることを示している。
【実施例】
【0089】
実施例8は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体ミエリンの回復を促進できることに関するものである。
9週齢のC57オスマウス12匹を取り、モデリングの1日前にマウスの体重を測定し、マウスには30mg/kg体重で毎日5mg/ml MPTP溶液を腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[6~7]。MPTP溶液の調製:シリンジを使用して10mlの脱イオン水を吸引し、それを100mgのMPTP粉末(sigma、M0896)に加え、10mg/mlの母液を調製し、母液1mlをアンプルに吸引し、次に1mlの脱イオン水を加え、最終濃度が5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、マウスをランダムに2群に分け、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群でそれぞれ6匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹/日でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同量のPBSを尾静脈注射により投与し、連続して14日間投与した。投与の15日目にマウスを殺処分し、マウスの線条体を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定された線条体をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。0.1%LFB色素溶液を使用して染色し、シールして8~16時間浸漬した。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
神経変性疾患とは、脳と脊髄のニューロンまたはそのミエリンの喪失によって引き起こされる疾患を指す。LFB(Luxol fast blue)は、ミエリン損傷を反映できるミエリン特異的染色法である
[18~19]。
その結果、ブランク対照群(
図20A)のマウスの線条体に一定量のミエリンが存在し、溶媒群(
図20B)のマウスの線条体のミエリンの染色がブランク対照群よりも少なく、プラスミノーゲン投与群(
図20C)のマウスの線条体におけるミエリンの染色は溶媒群より有意に高く、しかもブランク対照群に近かった。この結果は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体のミエリンをある程度回復させることができることを示している。
【実施例】
【0090】
実施例9は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質α-シヌクレインの発現を減少させることができることに関するものである。
10~12週齢のC57BL/6Jオスマウス28匹を取り、モデリングの1日前に体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で20匹とした。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[5]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデル群のマウスを体重に応じてランダムに2群に分け、溶媒群と投与群でそれぞれ10匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。投与群マウスに1mg/100μl/匹でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒群に100μl/匹で溶媒溶液(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を注射し、連続して14日間投与し、投与の15日目にマウスを殺処分し、マウスの黒質を採取して4%パラホルムアルデヒドで24~48時間固定した。固定された黒質(脳組織)をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の黒質を位置付け、切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗マウスα-シヌクレイン抗体(α-synuclein)(Proteintech,10842-1-AP)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
パーキンソン病は、現在、中脳黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの欠如及びレビー小体の出現によって引き起こされると考えられている。α-シヌクレイン(α-synuclein)は、140アミノ酸残基から構成されるニューロンタンパク質であり、神経細胞の損傷を引き起こし、中枢神経系の神経変性のプロセスに関与する可能性がある。研究では、神経細胞のレビー小体と神経シナプス内で凝集したα-シヌクレインは、パーキンソン病における脳病変の特徴であることが明らかになった
[20]。
その結果、ブランク対照群(
図21A)のマウスの黒質には少量のα-シヌクレインしかなく、溶媒群(
図21B)のマウスの黒質中のα-シヌクレインの量は、ブランク対照群のマウスよりも有意に高かく(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群(
図21C)のマウスの黒質中のα-シヌクレインの量は溶媒群よりも有意に低く、ブランク対照群に近く、その差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)(
図21D)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるα-シヌクレインの発現を低下させ、神経損傷変性を改善できることを示している。
【実施例】
【0091】
実施例10は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体軸索損傷を改善できることに関するものである。
10~12週齢のC57BL/6Jオスマウス28匹を取り、モデリングの1日前に体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で20匹とした。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[5]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデル群のマウスを体重に応じてランダムに2群に分け、溶媒群と投与群でそれぞれ10匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。投与群マウスに1mg/100μl/匹でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒群に100μl/匹で溶媒溶液(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を注射し、連続して14日間投与し、投与の15日目にマウスを殺処分し、マウスの黒質を採取して4%パラホルムアルデヒドで24~48時間固定した。固定された黒質をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の黒質を位置付け、切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗マウスNF抗体(Abcam,ab207176)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam,ab6721)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
パーキンソン病患者の疾患過程には軸索損傷があり、軸索損傷の重症度は疾患経過の延長とともに増加し続ける可能性がある。ニューロフィラメント(Neurofilaments,NF)は神経軸索の主要な骨格タンパク質であり、正常なニューロンの形態と軸索輸送を維持する上で重要な役割を果たし、軸索損傷の関連するバイオマーカーとして使用できる
[21]。
その結果、ブランク対照群(
図22A)のマウスの線条体に一定量のNFが存在し(矢印でマーク)、溶媒群(
図22B)のマウスの線条体におけるNF量は、ブランク対照群よりも低く、プラスミノーゲン投与群(
図22C)のマウスの線条体中のNF量は溶媒群よりも有意に高く、統計学的な差は極めて有意であった(**はP<0.01を表す)(
図22D)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体におけるNF発現の回復を促進し、パーキンソン病の線条体軸索損傷を修復できることを示している。
【実施例】
【0092】
実施例11は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体GFAP発現を減少させることができることに関するものである。
10~12週齢のC57BL/6Jオスマウス28匹を取り、モデリングの1日前に体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で20匹とした。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[5]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデル群のマウスを体重に応じてランダムに2群に分け、溶媒群と投与群でそれぞれ10匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。投与群マウスに1mg/100μl/匹でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒群に100μl/匹で溶媒溶液(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を注射し、連続して14日間投与し、投与の15日目にマウスを殺処分し、マウスの黒質を採取して4%パラホルムアルデヒドで24~48時間固定した。固定された黒質をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の黒質を位置付け、切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗マウスGFAP抗体(Abcam,ab7260)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam,ab6721)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
グリア線維性酸性タンパク質(gilaI fibrillary acid protein,GFAP)は、アストロサイトの細胞体コラーゲンを構成する重要な成分であり、アストロサイトのグリア線維中間径フィラメントにのみ存在し、アストロサイト活性化の特徴的なマーカーであり
[22]、ニューロンに炎症性損傷効果をもたらし、ニューロン変性を引き起こし
[23]、それによってパーキンソン病の発生を引き起こす。
その結果、ブランク対照群(
図23A)のマウスの線条体に少量のGFAP発現があり(矢印でマーク)、溶媒群(
図23B)のマウスの線条体におけるGFAPの発現量がブランク対照群より有意に高かく、プラスミノーゲン投与群(
図23C)のマウスの線条体におけるGFAPの発現量は溶媒群より低かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの線条体におけるGFAPの発現を低下させ、線条体ニューロンの損傷を軽減できることを示している。
【実施例】
【0093】
実施例12は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおけるα-シヌクレインの分解を促進することに関するものである。
11~12週齢、18~25gのC57BL/6Jオスマウス8匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で4匹、モデル群で4匹とした。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[5]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデリングが成功したかを確認するために、すべてのマウスについてオープンフィールド試験を行なった。全てのマウスを殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清を取り、新しいEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク対照群、(2)溶媒対照群、(3)プラスミノーゲン投与群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL α-シヌクレイン溶液(上海強耀生物科技有限公司(ChinaPeptides Co., Ltd.,)、custom-expressed human α-synuclein,UniProtKB-P37840,1.0mg/mL)、4.6μL溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン投与群に21.5mL α-シヌクレイン溶液(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
Tris-Tricine-SDS-PAGEゲル調製キット(Solarbio、P1320)の説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで1.5時間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、1‰のクーマシーブリリアントブルー染色液(1gのクーマシーブリリアントブルーR250を、エタノール:氷酢酸:精製水の体積比が5:2:13の混合液1000mlに溶解した)に置いて30分間染色した後、脱色液(精製水:氷酢酸:無水エタノール=17:2:1の体積比で混合)を用いてきれいに脱色した。ゲルを生体分子イメージャーで写真を撮って定量的にスキャンした。
その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のα-シヌクレイン量が溶媒対照群に比べて有意に低く(***はP<0.001を表す)、その重合体a、bの量はいずれも溶媒対照群より有意に低く(**はP<0.01、***はP<0.001を表す)、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のα-シヌクレインの量は溶媒対照群よりも有意に低く、その差は極めて有意であり(***はP<0.001を表す)、その重合体a及びbの量は溶媒対照群よりも有意に低く、その差は有意であった(*はP<0.05を表し、**はP<0.01を表す)(
図24)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウス及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、ヒトα-シヌクレイン及びその重合体を効果的に分解できることを示している。
【実施例】
【0094】
実施例13は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおけるα-シヌクレインの分解を促進することに関するものである。
11~12週齢、18~25gのC57BL/6Jオスマウス8匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で4匹、モデル群で4匹とした。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[5]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデリングが成功したかを確認するために、すべてのマウスについてオープンフィールド試験を行なった。全てのマウスを殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清を取り、新しいEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン投与群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL α-シヌクレイン溶液(上海強耀生物科技有限公司(ChinaPeptides Co., Ltd.,)、custom-expressed human α-synuclein,UniProtKB-P37840,1.0mg/mL)、4.6μL溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン投与群に21.5mL α-シヌクレイン溶液(1.0mg/mL)(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
Tris-Tricine-SDS-PAGEゲル調製キット(Solarbio、P1320)の説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で均一に混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで1.5時間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、PVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗ヒトα-シヌクレイン抗体(Proteintech、10842-1-AP)を加えて室温で3時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jで定量的に分析した。
その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のα-シヌクレイン量が溶媒対照群に比べて有意に低く(**はP<0.01を表す)、その重合体の量はいずれも溶媒対照群より有意に低く(***はP<0.001を表す)、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のα-シヌクレインの量は溶媒対照群よりも有意に低く、その差は極めて有意であり(**はP<0.01を表す)、その重合体の量は溶媒対照群よりも有意に低く、その差は有意であった(***はP<0.001を表す)(
図25)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウス及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、ヒトα-シヌクレイン及びその重合体を効果的に分解できることを示している。
【実施例】
【0095】
実施例14は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおけるPro-BDNFの分解を促進することに関するものである。
11~12週齢、18~25gのC57BL/6Jオスマウス4匹を取った。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[5]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデリングが成功したかを確認するために、すべてのマウスについてオープンフィールド試験を行なった。全てのマウスを殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清、すなわち脳ホモジネートを取り、新しいEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン投与群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Pro-BDNF(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd.,custom-expressed human Pro-BDNF,UniProtKB-P23560,1.0mg/mL)、4.6μL溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン投与群に21μL Pro-BDNF(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで45分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、1‰のクーマシーブリリアントブルー染色液(1gのクーマシーブリリアントブルーR250を、エタノール:氷酢酸:精製水の体積比が5:2:13の混合液1000mlに溶解した)に置いて30分間染色した後、脱色液(精製水:氷酢酸:無水エタノール=17:2:1の体積比で混合)を用いてきれいに脱色した。ゲルを生体分子イメージャーで写真を撮って定量的にスキャン・分析した。
脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor,BDNF)は、分子量12.3kDの塩基性タンパク質であり、119個のアミノ酸残基からなり、3対のジスルフィド結合を含み、生体内で二量体化した形で存在し、BDNF前駆体の形で合成し、BDNF前駆体(Pro-BDNF)は、酵素加水分解によって切断され、成熟したBDNFを形成する。Pro-BDNFは、切断されて形成した成熟BDNFと相反の効果を有することが文献で報告されている。Pro-BDNFはニューロンのアポトーシスを促進し、シナプス可塑性を低下させる。成熟したBDNF及びその受容体は、中枢神経系に広く分布しており、中枢神経系の発達中のニューロンの生存、分化、成長、発達に重要な役割を果たし、ニューロンが損傷を受けて死滅することを防ぎ、ニューロンの病理学的状態を改善し、損傷したニューロンの再生や分化などの生物学的効果を促進することができ、成熟した中枢神経系及び末梢神経系におけるニューロンの生存と正常な生理学的機能に必要である
[24]。
その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量が溶媒対照群に比べて有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)(
図26)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断を促進できることを示唆している。
【実施例】
【0096】
実施例15は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断及び成熟BDNFの形成を促進することに関するものである。
11~12週齢、18~25gのC57BL/6Jオスマウス8匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で4匹、モデル群で4匹とした。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した
[5]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデリングが成功したかを確認するために、すべてのマウスについてオープンフィールド試験を行なった。全てのマウスを殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズした後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清、すなわち脳ホモジネートを取り、新しいEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン投与群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Pro-BDNF(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human Pro-BDNF,UniProtKB-P23560,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液(クエン酸-クエン酸ナトリウム溶液)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン投与群に21μLのPro-BDNF(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで45分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、活性化したPVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗ヒトBDNF抗体(Boster Biological Technology、PB9075)を加えて室温で3時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jで定量的に分析した。
その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量が溶媒対照群に比べて有意に低く、その差が有意であり(*はP<0.05、***はP<0.001を表す)、プラスミノーゲン投与群のBDNF量は溶媒対照群よりも有意に高く、その差は極めて有意であった(
図27)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、組換えヒトPro-BDNFの切断及び成熟BDNFの形成を促進できることを示唆している。
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【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の治療有効量の化合物を含む、パーキンソン病を予防及び治療する薬剤。
【請求項2】
前記プラスミノーゲン活性化経路の成分が、プラスミノーゲン、組換えヒトプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンとプラスミンの1つ以上のkringleドメイン及びプロテアーゼドメインを含むプラスミノーゲン及びプラスミン変異体並びに類縁体、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)、ミニプラスミン(mini-plasmin)、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、マイクロプラスミン(micro-plasmin)、delta-プラスミノーゲン、delta-プラスミン(delta-plasmin)、プラスミノーゲン活性化剤、tPA、及びuPAから選択されるものである、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記線維素溶解阻害剤の拮抗剤が、PAI-1、補体C1阻害剤、α2抗プラスミンまたはα2マクログロブリンの阻害剤、例えば、抗体である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項4】
前記化合物が、パーキンソン病の被験者に対して、記憶機能の回復促進、認知能力の改善、黒質におけるDTAの発現促進、線条体ニッスル小体の回復促進、黒質におけるGLP-1Rの発現促進、黒質におけるTH陽性細胞の増加、線条体ミエリン鞘の修復促進、脳組織におけるα-シヌクレインの分解促進、線条体NF発現の促進、軸索損傷修復の促進、線条体GFAP発現の低減、線条体ニューロン損傷の緩和、BDNFの形成のための脳組織におけるPro-BDNFの切断促進、うつ病や不安の症状の緩和から選択される1つまたは複数の効果を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項5】
前記化合物がプラスミノーゲンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項6】
前記プラスミノーゲンが、ヒト全長プラスミノーゲンまたはその保存的置換変異体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項7】
前記プラスミノーゲンが、配列2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲンのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項8】
前記プラスミノーゲンが、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、且つ依然としてプラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を有するタンパク質を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項9】
前記プラスミノーゲンが、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、delta-プラスミノーゲン、またはそれらの、プラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を保持した変異体から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項10】
前記プラスミノーゲンが、配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列の保存的置換変異体を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬剤。
【請求項11】
前記化合物が、1つまたは複数の他の治療方法または薬剤と組み合わせて使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項12】
前記他の治療方法が、細胞療法(幹細胞療法を含む)及び物理的療法を含む、請求項11に記載の薬剤。
【請求項13】
前記他の薬剤が、パーキンソン病の治療のための他の薬剤である、請求項11に記載の薬剤。
【請求項14】
前記化合物が、鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈を介して)、または筋肉内に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬剤。
【国際調査報告】