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特表2023-518565肺送達のためのドライパウダー製剤及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(54)【発明の名称】肺送達のためのドライパウダー製剤及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20230425BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230425BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230425BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P43/00 111
A61P37/08
A61P29/00
A61P11/06
A61P11/14
A61P37/06
A61P25/00
A61P11/00
A61P27/02
A61K9/72
A61K47/26
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557859
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2021057903
(87)【国際公開番号】W WO2021191416
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/000,533
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】フォルスター,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルテル,マッツ
(72)【発明者】
【氏名】グレメル,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC01
4C076CC05
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC15
4C076DD67A
4C076FF02
4C076FF36
4C076FF68
4C076GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC70
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA56
4C086NA03
4C086NA10
4C086ZA02
4C086ZA33
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZC20
(57)【要約】
JAK阻害剤の経肺投与のための医薬組成物及び例えばJAK阻害剤と凝集ラクトース担体とを含むドライパウダー製剤が提供される。医薬組成物を作製及び使用する方法並びにキット及び剤形も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経肺投与のための医薬組成物であって、約10重量%(wt%)のJAK阻害剤及び薬学的に許容される凝集ラクトース担体を含むドライパウダー製剤を含み、前記担体は、約100μm~約350μmのd50及び約250μm~約450μmのd90を有し、及び前記JAK阻害剤は、式I:
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記JAK阻害剤は、前記ドライパウダー製剤の約10重量%~約50重量%を構成する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記JAK阻害剤は、微粒子化されている、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記微粒子化JAK阻害剤は、約1μm~約10μmのd90を有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
約10%~約70%の微細粒分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
篩い分けされた凝集ラクトース担体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記篩い分けされたラクトース担体は、約130μm~約310μm又は約170μm~約270μmのd50を有するα-一水和物ラクトースを含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記篩い分けされたラクトース担体は、約290μm~約400μmのd90を有するα-一水和物ラクトースを含む、請求項6又は7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
結晶化凝集ラクトース担体を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記結晶化凝集ラクトース担体は、篩い分けされていない、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記薬学的に許容される塩は、式I:
【化2】
の前記化合物のフマル酸塩又はヘミフマル酸塩を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
75%の相対湿度で30℃において少なくとも3ヶ月間にわたって安定である、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物の単位投与量であって、約1mg~約5mgの前記JAK阻害剤を含む単位投与量。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物を含むドライパウダー吸入器。
【請求項15】
約1.5mg~約5mgの前記JAK阻害剤に相当する単回投与で前記医薬組成物を提供する、請求項14に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項16】
複数回投与吸入器を含む、請求項14又は15に記載のドライパウダー吸入器。
【請求項17】
対象においてJAK関連疾患を治療する方法であって、治療有効量の、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物の経肺投与を含む方法。
【請求項18】
前記JAK関連疾患は、炎症、アレルギー、喘息、移植拒絶反応、T細胞媒介自己免疫疾患、II型炎症性疾患、中枢神経系の疾患、肺疾患、遅延IV型過敏反応及び眼疾患から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
約1.5mg~約5.0mgのJAK阻害剤に相当する用量の経肺投与を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物の、JAK関連疾患の治療における使用。
【請求項21】
前記JAK関連疾患は、炎症、アレルギー、喘息、移植拒絶反応、T細胞媒介自己免疫疾患、II型炎症性疾患、中枢神経系の疾患、肺疾患、遅延IV型過敏反応及び眼疾患から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
経肺投与のためのドライパウダー医薬組成物を調製する方法であって、前記組成物は、薬学的に許容される凝集ラクトース担体を含む担体と、式I:
【化3】
の化合物又はその薬学的に許容される塩を含むJAK阻害剤とを含み、前記方法は、
a.前記ラクトース担体の総量の少量部分を篩い分けして、約100μm~約350μmのd50及び約250μm~約450μmのd90を有する篩い分けされた担体を得ることと;
b.前記ラクトース担体及び前記JAK阻害剤の総量の大部分を低剪断ブレンドして、第1のブレンドを得ることと;
c.前記第1のブレンドを篩い分けして、約100μm~約350μmのd50及び約250μm~約450μmのd90を有する篩い分けされたブレンドを得ることと;
d.前記篩い分けされた担体と、前記篩い分けされたブレンドとを低剪断ブレンドして、前記ラクトース担体の前記総量の重量に基づいて少なくとも約10重量%(wt%)のJAK阻害剤を含むドライパウダーを含む第2のブレンドを得ることと
を含む、方法。
【請求項23】
前記ラクトース担体の前記総量の前記大部分を低剪断ブレンドすることは、篩い分けされていないラクトース担体を低剪断ブレンドすることを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記篩い分けされていないラクトース担体は、約125μmのd10、約220μmのd50及び約345μmのd90を有するα-一水和物ラクトースを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2のブレンドは、前記ラクトース担体が約10重量%~約30重量%のJAK阻害剤で覆われている規則混合物を含む、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のブレンドを調整することを更に含む、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
調整することは、更なる加工に対して前記第2のブレンドを開放保管することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項22~27のいずれか一項に記載の方法によって調製される、経肺投与のためのドライパウダー組成物。
【請求項29】
ドライパウダー吸入器デバイスと、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物とを含むキット。
【請求項30】
投与のための説明書を更に含む、請求項29に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年3月27日出願の米国仮特許出願第63/000,533号明細書に対する優先権を主張し、この出願の内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
JAK阻害剤の経肺投与のための医薬組成物、例えばJAK阻害剤とラクトース担体とを含むドライパウダー製剤、医薬組成物を作製及び使用する方法並びにキット及び剤形が本明細書に提供される。
【背景技術】
【0003】
医薬品有効成分(API)の肺送達は、より低い全身性副作用及びより高い局所濃度で肺に薬物送達を向ける方法であり、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫及び鼻炎などの呼吸器疾患の治療のために広く使用されている。ここ数年において、他の適応症のための様々な他の医薬品の全身送達のための経肺投与に対する関心が高まっている。
【0004】
肺気道に薬物粒子を局所的に送達するために一般的に使用される吸入システムとしては、ドライパウダー吸入器(DPI)、定量吸入器(MDI)及び噴霧器が挙げられる。肺内の良好な粒子付着を達成するために、薬物粒子は、呼吸に適したサイズ範囲の空気動力学径、典型的には約10μm未満及び一般に約1μm~約5μmを有する。APIは、多くの場合、微粒子化されて、10μm未満又は5μm未満の粒径を得る。
【0005】
しかしながら、10μm未満の直径を有する粒子の場合、静電気力及びファンデルワールス力は、一般に、重力よりも大きく、そのため、原末材料は、凝集し、大きい粒塊を除いて重力下の流れに抵抗する。これは、原末を取り扱って処理することを難しくし、分散させることを困難にし得る。非特許文献1。
【0006】
薬物粒子の原末特性を改善するための1つの方法は、薬物粒子をかなり大きい粒径(典型的には約40μm~約100μm又は更にそれを超える)の担体粒子と組み合わせて、流動性、投与精度及び分散性を改善することである。一般に、薬物粒子及び担体は、組成物が担体粒子の原末特性を受け入れるように、微細な薬物粒子が担体粒子に固着した規則混合物を形成する。薬物粒子と担体との間の固着力は、ブレンド及び製品保管中に分離に耐えるのに十分に強いが、エアロゾル化時に担体表面からの薬物粒子の分離を可能にするのに十分に弱い必要がある。ラクトース担体の粒子のサイズ、サイズ分布、形態、表面粗さ、表面積、流動性及び表面エネルギーは、得られるドライパウダー製剤の性能に影響を及ぼし得る。非特許文献2。
【0007】
一般に、担体は、患者の上気道に付着し、微粒子化薬物は、吸収のために肺内に付着する。非特許文献3。最も一般的に使用される担体は、ラクトースである。
【0008】
高用量APIの肺送達には、独自の課題がある。一般に、高濃度では、複数の薬物層が担体表面上に形成される場合があり、担体核を含まない薬物ペレット又は粒塊が形成される可能性があり、これは、機械的に不安定であり、用量の再現性に悪影響を与える場合がある。一般的な問題として、薬物濃度は、用量の不一致のリスクを低減するために約0.1~4%に制限されている。非特許文献4。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Kinnunen et al.(2014)“An Investigation into the Effect of Fine Lactose Particles on the Fluidization Behaviour and Aerosolization Performance of Carrier-Based Dry Powder Inhaler Formulations.”AAPS Pharm.Tech.Sci.15(4):898-909.
【非特許文献2】Du et al.(2014)“Evaluation of Granulated Lactose as a Carrier for DPI Formulations 1:Effect of Granule Size.”AAPS Pharm.Sci.Tech.15(6):1417-1428.
【非特許文献3】Srichana et al.(1998)“On the relationship between drug and carrier deposition from dry powder inhalers in vitro”,Int.J.of Pharm.167:13-23.
【非特許文献4】Sibum et al.(2018)“Challenges for pulmonary delivery of high powder doses.”Int.J.Pharm.548:325-336.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
JAK阻害剤の経肺投与のための医薬組成物、例えばJAK阻害剤及び吸入に好適な担体材料と、API又は担体材料の表面特性を制御するための更なる任意選択の賦形剤とを含むドライパウダー製剤が本明細書に記載される。更に、医薬組成物を作製及び使用する方法並びにキット及び単位投与量が提供される。
【0011】
一態様では、経肺投与に好適な医薬組成物が提供される。一態様では、医薬組成物は、JAK阻害剤と、薬学的に許容されるラクトース担体とを含有するドライパウダー製剤を含む。一態様では、ラクトース担体は、凝集ラクトース担体である。一態様では、医薬組成物は、約10重量%(wt%)のJAK阻害剤を含む。一態様では、医薬組成物は、約10重量%~約50重量%のJAK阻害剤を含む。一態様では、医薬組成物は、約10重量%~約40重量%のJAK阻害剤を含む。一態様では、薬学的に許容される凝集ラクトース担体は、約100μm~約350μmのd50及び約250μm~約450μmのd90を有する。
【0012】
一態様では、JAK阻害剤は、式I:
【化1】
の化合物又は薬学的に許容される塩を含む。
【0013】
一態様では、薬学的に許容される塩は、式Iの化合物のフマル酸塩又はヘミフマル酸塩を含む。
【0014】
一態様では、JAK阻害剤は、微粒子化される。一態様では、微粒子化JAK阻害剤は、約1μm~約10μmのd90を有する。一態様では、微粒子化JAK阻害剤は、約5μm未満のd90を有する。
【0015】
一態様では、医薬組成物は、約10%~約80%の微細粒分を含む。一態様では、医薬組成物は、約40%~約70%の微細粒分を含む。
【0016】
一態様では、ラクトース担体は、篩い分けされた凝集ラクトース担体を含む。一態様では、篩い分けされた粒状ラクトース担体は、α-一水和物ラクトースを含む。一態様では、篩い分けされた凝集粒状ラクトース担体は、約130μm~約310μm又は約170μm~約270μmのd50を有する。一態様では、篩い分けされた凝集粒状ラクトース担体は、約290μm~約400μmのd90を有する。
【0017】
一態様では、ラクトース担体は、結晶化凝集ラクトース担体を含む。一態様では、結晶化凝集ラクトース担体は、篩い分けされていない。
【0018】
一態様では、医薬組成物は、75%±5%の相対湿度で30℃±2℃及び75%±5%の相対湿度で40℃±2℃において少なくとも6ヶ月間にわたって安定である。一態様では、医薬組成物は、60%±5%の相対湿度で25℃±2℃において少なくとも12ヶ月間にわたって安定である。
【0019】
一態様では、本明細書に記載の医薬組成物の単位投与量が提供される。一態様では、単位投与量は、約1mg~約5mgのJAK阻害剤を含む。
【0020】
一態様では、経肺投与のための本明細書に記載される医薬組成物を含むドライパウダー吸入器が提供される。一態様では、ドライパウダー吸入器は、本明細書に記載のJAK阻害剤を含有するドライパウダー製剤を含む。一態様では、ドライパウダー吸入器は、少なくとも約1mgのJAK阻害剤に相当する単回投与で医薬組成物を提供する。一態様では、ドライパウダー吸入器は、約1mg~約10mgのJAK阻害剤に相当する単回投与で医薬組成物を提供する。一態様では、ドライパウダー吸入器は、約1.0mg~約5mgのJAK阻害剤に相当する単回投与で医薬組成物を提供する。
【0021】
一態様では、ドライパウダー吸入器は、複数回投与ドライパウダー吸入器である。
【0022】
一態様では、吸入器は、単回投与吸入器である。
【0023】
一態様では、対象においてJAK関連疾患を治療する方法が提供される。一態様では、本方法は、治療有効量の、本明細書に記載されるJAK阻害剤を含有するドライパウダー製剤を含む医薬組成物の経肺投与を含む。一態様では、JAK関連疾患は、炎症、アレルギー、喘息、移植拒絶反応、T細胞媒介自己免疫疾患、II型炎症性疾患、中枢神経系の疾患、肺疾患、遅延IV型過敏反応及び眼疾患から選択される。一態様では、本方法は、約1.0~約5.0mgのJAK阻害剤に相当する用量の経肺投与を含む。一態様では、用量は、2回以下の作動で投与される。
【0024】
一態様では、本明細書に記載されるJAK阻害剤を含有するドライパウダー製剤を含む医薬組成物の、JAK関連疾患の治療における使用が本明細書で提供される。一態様では、JAK関連疾患は、炎症、アレルギー、喘息、移植拒絶反応、T細胞媒介自己免疫疾患、II型炎症性疾患、中枢神経系の疾患、肺疾患、遅延IV型過敏反応及び眼疾患から選択される。
【0025】
一態様では、経肺投与のための医薬組成物を調製する方法が提供される。一態様では、担体及びJAK阻害剤を含むドライパウダー製剤を含む医薬組成物を調製する方法が提供される。一態様では、担体は、薬学的に許容される凝集ラクトース担体を含む。一態様では、JAK阻害剤は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0026】
ラクトース担体及びJAK阻害剤を一段階又は多段階で低剪断ブレンドして、ラクトース担体の総量の重量に基づいて少なくとも約10重量%(wt%)のJAK阻害剤を含有する均一なパウダーブレンド(<10%のRSD含量均一性試験)を得ることを含む方法が本明細書に開示される。
【0027】
例えば、一態様では、本方法は、
a.ラクトース担体の総量の少量部分を篩い分けして、約100μm~約350μmのd50及び約250μm~約450μmのd90を有する篩い分けされた担体を得ることと;
b.ラクトース担体及びJAK阻害剤の総量の大部分を低剪断ブレンドして、第1のブレンドを得ることと;
c.第1のブレンドを篩い分けして、約100μm~約350μmのd50及び約250μm~約450μmのd90を有する篩い分けされたブレンドを得ることと;
d.篩い分けされた担体と、篩い分けされたブレンドとを低剪断ブレンドして、ラクトース担体の総量の重量に基づいて少なくとも約5重量%(wt%)のJAK阻害剤を含むドライパウダーを含む第2のブレンドを得ることと
を含む。
【0028】
本方法の一態様では、JAK阻害剤は、微粒子化される。一態様では、微粒子化JAK阻害剤は、約1μm~約10μmのd90を有する。一態様では、微粒子化JAK阻害剤は、約5μm未満のd90を有する。
【0029】
本方法の一態様では、粒状ラクトース担体は、α-一水和物ラクトースを含む。
【0030】
本方法の一態様では、少量部分は、ラクトース担体の総量の約50%、40%、30%、20%、10%又は5%未満を含む。本方法の一態様では、大部分は、ラクトース担体の総量の約50%、60%、70%、80%、90%又は95%からのものを含む。
【0031】
本方法の一態様では、篩い分けされた担体は、約130μm~約310μm又は約170μm~約270μmのd50を有する。本方法の一態様では、篩い分けされた担体は、約290μm~約400μmのd90を有する。本方法の一態様では、篩い分けされたブレンドは、約130μm~約310μm又は約170μm~約270μmのd50を有する。本方法の一態様では、篩い分けされたブレンドは、約290μm~約400μmのd90を有する。
【0032】
本方法の一態様では、ラクトース担体の総量の大部分を低剪断ブレンドすることは、篩い分けされていないラクトース担体を低剪断ブレンドすることを含む。一態様では、篩い分けされていないラクトース担体は、約125μmのd10、約220μmのd50及び約345μmのd90を有するα-一水和物ラクトースを含む。
【0033】
一態様では、低剪断ブレンドは、自由落下ブレンドを含む。一態様では、自由落下ブレンドは、機械的タンブルミキサーで行われる。一態様では、自由落下ブレンドは、約5rpm~約60rpm、16rpm~約45rpm、25rpm~約35rpm、約30~約35rpm又は33rpm近辺の回転速度で行われる。一態様では、自由落下ブレンドは、約5分~約30分、約10分~約15分又は約10分行われる。一態様では、自由落下ブレンドは、装置寸法及び利用可能な設定によって定義される回転速度及び持続時間で行われる。
【0034】
一態様では、第2のブレンドは、ラクトース担体が約10重量%~約40重量%のJAK阻害剤で覆われた規則混合物を含む。一態様では、本方法は、ブレンドを調整することを含む。一態様では、調整することは、更なる加工前にブレンドを開放保管することを含む。
【0035】
一態様では、経肺投与のためのドライパウダー製剤が提供される。一態様では、ドライパウダー製剤は、本明細書に記載の方法によって調製される。
【0036】
一態様では、ドライパウダー吸入器デバイスと、本明細書に記載される医薬組成物とを含むキットが提供される。一態様では、ドライパウダー吸入器は、複数回投与ドライパウダー吸入器である。一態様では、複数回投与の吸入器は、医薬組成物の約1回投与~約200回投与又は医薬組成物の約15回投与~約40回投与を提供する。一態様では、医薬組成物は、ドライパウダー吸入器のリザーバに含まれる。一態様では、キットは、約1mg~約5mgのJAK阻害剤の医薬組成物の1つ以上の単位投与量を含む。一態様では、吸入器は、単回投与吸入器である。一態様では、キットは、投与及び/又は保管のための説明書を含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本明細書に記載される肺送達のためのドライパウダーを作製する方法の概要を提供するフローチャートである。
図2】ラクトース担体を有する医薬組成物の粒子を示す光学顕微鏡画像を例示する。図で見ることができるように、医薬組成物中に遊離医薬品有効成分(API)はない。APIは、ラクトース担体によって完全に収集されている。
図3】30℃、75%の相対湿度で2週間開放保管された後、複数回投与リザーバ吸入器を使用する医薬組成物の1回の作動の送達用量(DD)を示すグラフである(n=9、エラーバーは、標準偏差を示す)。目標のDDは、2.5mgであった。測定されたDDは、およそ2133μg(24.2%の薬物負荷)、2374μg(27.6%の薬物負荷)及び2459μg(30.2%の薬物負荷)であり、ドライパウダーが、吸入のために好適なエアロゾル中に再現可能に分散されたことを示している。比較の目的のため、医薬組成物のDDは、およそ3%の薬物負荷での複数回投与リザーバ吸入器中の市販の製品についてのDDよりも7~8倍高い。
図4】24%の薬物負荷を有する組成物及び30%の薬物負荷を有する組成物について、30℃、75%の相対湿度において、t=0、1週間、2週間、4週間、3ヶ月及び6ヶ月開放保管した後の医薬組成物の1回の作動についての微細粒子含量(FPD)を示すグラフである(n=3、エラーバーは、標準偏差を示す)。目標FPD(<5μm)は、1.6mgであった。測定されたFPDは、高く、一定であった。比較の目的のため、医薬組成物のFPDは、およそ3%の薬物負荷での複数回投与リザーバ吸入器中の市販の製品についてのFPDよりも9~10倍高い。
図5】24%の薬物負荷を有する組成物及び30%の薬物負荷を有する組成物について、30℃、75%の相対湿度において、t=0、1週間、2週間、4週間、3ヶ月及び6ヶ月開放保管した後の医薬組成物の1回の作動についての微細粒子含量(FPD)を示すグラフである(n=3、エラーバーは、標準偏差を示す)。送達用量の約70%が肺に達すると想定することができ(微細粒分(FPF))、規則混合物の優れた分散を示している。比較の目的のため、医薬組成物のFPFは、およそ3%の薬物負荷を有する複数回投与リザーバ吸入器中の市販の製品についてのFPFよりも1.5~1.8倍高い。
【発明を実施するための形態】
【0038】
JAK阻害剤の経肺投与のための医薬組成物及び例えばラクトース担体と組み合わせた少なくとも約10重量%(wt%)のJAK阻害剤を含むドライパウダー製剤が本明細書に記載される。医薬組成物の作製及び使用方法並びにキット及び剤形が提供される。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、例えば、本開示の説明に利用される組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力及びそれらの範囲を修飾するために使用される。「約」という用語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物又は製剤の製造に使用される典型的な測定及び取扱いの手順により;これらの手順での偶発的エラーにより;方法を実施するために使用される出発材料又は成分の製造、供給源又は純度及び他の類似の要件の差により生じる可能性のある数値量の変動を意味する。「約」という用語は、特定の初期濃度又は初期混合を有する製剤のエージングに起因して異なる量及び特定の初期濃度又は初期混合を有する製剤の混合又は処理に起因して異なる量も包含する。「約」という用語により修飾された場合、本明細書に添付された特許請求の範囲は、そのような均等物を含む。
【0040】
「薬物負荷」とは、ドライパウダー製剤の総質量の質量基準でAPI(本明細書では、JAK阻害剤)のパーセンテージを指す。一態様では、ドライパウダー製剤は、少なくとも10%、20%、30重量%のAPIの薬物負荷を含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、担体粒子がAPIで覆われている規則混合物を含む。「遊離API」という用語は、担体粒子に固着していないドライパウダー製剤中のAPIを指す。一態様では、ドライパウダー製剤中のAPIの実質的に全ては、ラクトース担体に視覚的に固着されており、例えば、APIのおよそ80%、90%又は95%は、ラクトース担体に固着されている。一態様では、薬物負荷は、APIの用量の総含有量に対する比として提供することができる。一態様では、ドライパウダー製剤は、約10:90、20:80又は30:70のAPI:担体比を含む。
【0041】
一態様では、ドライパウダー製剤は、ラクトース担体がJAK阻害剤で覆われている規則混合物を含み、ドライパウダー製剤は、少なくとも10重量%、20重量%、30重量%のJAK阻害剤の薬物負荷を有する。一態様では、ドライパウダー製剤中のJAK阻害剤の実質的に全ては、ラクトース担体に視覚的に固着されている。一態様では、JAK阻害剤のおよそ80%、90%又は95%は、ラクトース担体に固着されている。
【0042】
一態様では、ドライパウダー製剤は、ラクトース担体がピリミジン2,4-ジアミンJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩で覆われている規則混合物を含み、ドライパウダー製剤は、少なくとも10重量%、20重量%、30重量%のピリミジン2,4-ジアミンJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩の薬物負荷を有する。一態様では、ドライパウダー製剤中のピリミジン2,4-ジアミンJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩の実質的に全ては、ラクトース担体に視覚的に固着されており、例えば、ドライパウダー製剤中のピリミジン2,4-ジアミンJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩のおよそ80%、90%又は95%は、ラクトース担体に固着されている。
【0043】
一態様では、ドライパウダー製剤は、ラクトース担体が式IによるJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩で覆われている規則混合物を含み、ドライパウダー製剤は、少なくとも10重量%、20重量%、30重量%の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩の薬物負荷を有する。一態様では、ドライパウダー製剤中の式IによるJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩の実質的に全ては、ラクトース担体に視覚的に固着されており、例えば、ドライパウダー製剤中の式IによるJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩のおよそ80%、90%又は95%は、ラクトース担体に固着されている。
【0044】
一態様では、ドライパウダー製剤は、ラクトース担体が式IによるJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩で覆われている規則混合物を含み、ドライパウダー製剤は、少なくとも10重量%、20重量%、30重量%の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩の薬物負荷を有する。一態様では、ドライパウダー製剤中の式IによるJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩の実質的に全ては、ラクトース担体に視覚的に固着されており、例えば、ドライパウダー製剤中の式IによるJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩のおよそ80%、90%又は95%は、ラクトース担体に固着されている。一態様では、ラクトース担体は、α-ラクトース一水和物を含む。一態様では、薬学的に許容される塩は、フマル酸塩又はヘミフマル酸塩である。
【0045】
ドライパウダー製剤の「定量」(MD)は、ドライパウダー吸入器の投薬容器若しくはリザーバ又は単回投与単位で計量されるJAK阻害剤の総質量である。「公称用量」(ND)は、目標用量である。MDは、「送達用量」(DD)又は「放出用量」(ED)と称される患者に送達される薬物の量と異なる。一態様では、DDは、目標とされるNDの少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%又は95%である。
【0046】
「送達用量」(DD)又は「放出用量」(ED)は、作動後にドライパウダー吸入器から放出されるAPIの総質量である。DDは、デバイスの内面若しくは外面上又は計量システム内に残る材料を含まない。DDは、投与量均一サンプリング装置(DUSA)などの装置内のデバイスから放出された総質量を回収することによって決定され得る。
【0047】
「微細粒子含量」(FPD)は、定義された限界よりも小さい空気動力学粒径、一般に約5μm、4μm、3μm、2μm又は1μm未満で存在する、作動後にデバイスから放出されるAPIの総質量であり、「吸入性画分」とも称され得、すなわち患者の肺深部に達することができるAPIのパーセンテージである。FPDは、例えば、ツインステージインピンジャ(TSI)、マルチステージインピンジャ(MSI)、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)又は次世代インパクタ(NGI)などのインパクタ又はインピンジャを使用することを含む、既知の技術を使用して測定することができる。
【0048】
「微細粒分」(FPF)は、微細粒子含量(FPD)を放出用量(ED)で割ったものであり、FPF(ED)=(FPD/ED)×100%で計算されたパーセンテージとして表される。
【0049】
粒径分布について、d50値は、粒径分布中央値を指すことができ、例えばレーザー回折によって既知の方法を使用して決定することができる。別の実施形態では、d10及びd90値は、例えば、それぞれ粒径分布の10%がd10値よりも下にあり、粒径分布の90%がd90値よりも下にある体積分布を指すことができる。代わりに、d10及びd90値は、例えば、それぞれ粒径分布の10%がd10値よりも下にあり、粒径分布の90%がd90値よりも下にある数値的分布を指すことができる。
【0050】
「薬学的に許容される塩」は、様々な周知の有機又は無機対イオンから誘導され、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム及びテトラアルキルアンモニウムを挙げることができるが、これらに限定されない化合物の塩を指す。薬学的に許容される塩は、無機酸又は有機酸によって形成することもでき、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、ブロミド/臭化水素酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、カンファースルホン酸塩、クロリド/塩酸塩、クロロテオフィリン酸塩、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、馬尿酸塩、ヨウ化水素酸塩/ヨージド、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフトエ酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パルモエート(palmoate)、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、次サリチル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩及びトリフルオロ酢酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。塩が由来し得る無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。塩が由来し得る有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸及びスルホサリチル酸が挙げられるが、これらに限定されない。(例えば、S.M.Berge,et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977;66:1-19を参照されたく、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0051】
「有効量」、「薬学的有効量」又は「治療有効量」は、特定された疾患若しくはその症状の1つ以上を治療し、且つ/又は疾患の発生を予防するのに十分な化合物の量を指す。一態様では、用語「有効量」は、対象における生物学的又は医学的な応答、例えばJAKに関連する酵素若しくはタンパク質活性の減少若しくは阻害、及び/又はJAK関連疾患の症状の改善、及び/又はJAK関連疾患の進行の緩徐化若しくは遅延を引き出す、式Iの化合物又はその薬学的な塩の量を指す。「治療有効量」を構成する化合物の量は、疾患を治療するために使用される化合物並びにその重症度及び治療される患者の年齢が挙げられるが、これらに限定されない因子に依存して変化し得る。更に、効果は、客観的であるか(すなわち何らかの試験又はマーカーにより測定可能)又は自覚的であり得る(すなわち対象が効果の徴候を与えるか又は効果を感じる)。当業者は、治療有効量を決定することができる。
【0052】
「患者」又は「対象」は、哺乳動物及び他の動物、特にヒトを指し、本明細書に記載の方法は、ヒトの治療及び獣医学的用途の両方に適用可能である。一態様では、患者又は対象は、哺乳動物である。別の態様では、患者又は対象は、ヒトである。一態様では、対象は、JAK関連疾患を患っている。
【0053】
「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、JAKに関連する酵素若しくはタンパク質の活性の減少若しくは阻害及び対象のJAK関連疾患の1つ以上の症状の改善又は対象のJAK関連疾患の進行の緩徐化若しくは遅延を指す。本明細書に記載の医薬組成物は、JAK関連疾患の治療的及び/又は予防的治療の両方に好適である。「治療する」、「治療すること」及び「治療」は、疾患を有する哺乳動物、例えばヒトの疾患の治療を包含し、例えば、
1.哺乳動物において、疾患が発生することを予防すること(例えば、そのような哺乳動物が疾患を患う傾向にあるが、それを有すると依然として診断されていない場合);
2.疾患を阻害すること、例えばその発症を阻止又は緩徐化すること;
3.疾患を緩和すること、例えば疾患又はその症状の退行を引き起こすこと;
4.疾患を安定化させること;又は
それらの組み合わせ
を含む。
【0054】
本明細書で用いられる場合、「疾患」、「障害」及び「状態」は、互換的に使用され、対象の病的状態を指す。本明細書で用いられる場合、「JAK関連」疾患は、タンパク質キナーゼのヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーの1つ以上のメンバーの活性と関連する疾患を指す。一態様では、「JAK関連」疾患は、JAK:JAK1、JAK2、JAK3、TYK2又はそれらの組み合わせの1つ以上の活性と関連する疾患を指す。一態様では、「JAK関連」疾患は、JAK1の活性と関連する疾患を指す。一態様では、「JAK関連」疾患は、JAK2の活性と関連する疾患を指す。一態様では、「JAK関連」疾患は、JAK3の活性と関連する疾患を指す。一態様では、「JAK関連」疾患は、TYK2の活性と関連する疾患を指す。本明細書に記載の医薬組成物で治療又は予防され得るJAK関連疾患の非限定的な例としては、炎症;アレルギー;喘息;全身性自己免疫疾患、移植拒絶反応(例えば、腎臓、心臓、肺、肝臓、膵臓、皮膚;宿主対移植片反応(HVGR)及び移植片対宿主反応(GVHR))、関節リウマチ及び筋萎縮性側索硬化症を含む自己免疫疾患;糖尿病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群などのT細胞媒介自己免疫疾患;血管の炎症(血管炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症及び冠動脈疾患を含む)などのII型炎症性疾患;脳卒中などの中枢神経系の疾患;閉塞性気管支炎及び原発性肺高血圧症などの肺疾患;固形、遅延型IV型過敏反応;白血病及びリンパ腫などの血液悪性腫瘍;並びに眼疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
タンパク質キナーゼ(PK)は、細胞増殖、生存、分化、臓器形成、形態形成、心血管形成、組織修復及び再生が挙げられるが、これらに限定されない多様な生物学的プロセスを調節する。サイトカイン、低分子量ポリペプチド又は糖タンパク質は、敗血症に対する宿主の炎症性反応に関与する多くの経路を調節する。サイトカインは、細胞分化、増殖及び活性化に影響を与え、炎症誘発性及び抗炎症性反応の両方を調整し、宿主が病原体に対して適切に反応することを可能にし得る。広範囲のサイトカインのシグナル伝達は、タンパク質チロシンキナーゼのヤヌスキナーゼファミリー(JAK)及びシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)に関与する。
【0056】
4つの既知の哺乳動物JAKがある:JAK1(ヤヌスキナーゼ-1)、JAK2、JAK3(ヤヌスキナーゼ、白血球;JAKL;及びL-JAKとしても知られる)並びにTYK2(タンパク質-チロシンキナーゼ2)。JAKのそれぞれは、特定のサイトカインの受容体に選択的であるが、複数のJAKが特定のサイトカイン又はシグナル伝達経路により影響され得る。
【0057】
JAK/STAT経路及び例えば全ての4つのJAKは、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎及び下気道の他の関連する炎症性疾患などの多くの疾患の病因において重要な役割を果たすと考えられる。JAKを通してシグナル伝達する複数のサイトカインは、古典的なアレルギー反応であるかどうかに関わらず、鼻及び副鼻腔を冒すもの(例えば、鼻炎及び副鼻腔炎)などの上気道の炎症性疾患/状態に関連している。JAK/STAT経路は、眼の炎症性疾患/状態及び慢性アレルギー反応にも関与している。
【0058】
本明細書には、医薬品有効成分(API)、例えばJAK阻害剤の肺送達のための医薬組成物が記載される。一態様では、医薬組成物は、JAK阻害剤と担体粒子とを含むドライパウダー製剤を含む。一態様では、担体粒子は、JAK阻害剤で覆われている規則混合物を含む。医薬組成物の作製及び使用方法並びに医薬組成物のキット及び単位剤形も提供される。
【0059】
一態様では、医薬組成物は、JAK阻害剤と担体粒子とを含むドライパウダー製剤を含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、担体粒子がJAK阻害剤などのAPIで覆われている規則混合物を含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、約10重量%(wt%)のJAK阻害剤と、凝集ラクトース担体などの薬学的に許容される担体とを含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%又は30重量%のJAK阻害剤及び最大で約30重量%、40重量%又は50重量%のJAK阻害剤を含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、約10重量%~約50重量%又は約10重量%~約30重量%のJAK阻害剤を含む。一態様では、ドライパウダー製剤中のJAK阻害剤の実質的に全ては、ラクトース担体に視覚的に固着されており、例えば、JAK阻害剤のおよそ80%、90%又は95%は、ラクトース担体に固着されている。
【0060】
一態様では、ドライパウダー製剤は、ラクトース担体が約10重量%(wt%)のJAK阻害剤で覆われている規則混合物を含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、ラクトース担体が少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%又は30重量%のJAK阻害剤及び約30重量%、40重量%又は50重量%のJAK阻害剤で覆われている規則混合物を含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、ラクトース担体が約10重量%~約50重量%又は約10重量%~約30重量%のJAK阻害剤で覆われている規則混合物を含む。一態様では、ドライパウダー製剤中のJAK阻害剤の実質的に全ては、ラクトース担体に視覚的に固着されており、例えば、ドライパウダー製剤中のJAK阻害剤のおよそ80%、90%又は95%は、ラクトース担体に固着されている。一態様では、ドライパウダー製剤は、約20%、10%又は5%未満の遊離JAK阻害剤を含む。
【0061】
一態様では、ドライパウダー製剤は、ラクトース担体が約10重量%(wt%)の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩で覆われている規則混合物を含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、ラクトース担体が少なくとも約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%又は30重量%及び最大で約30重量%、40重量%又は50重量%の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩で覆われている規則混合物を含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、ラクトース担体が約10重量%~約50重量%又は約10重量%~約30重量%の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩で覆われている規則混合物を含む。一態様では、ドライパウダー製剤中の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩の実質的に全ては、ラクトース担体に視覚的に固着されており、例えば、ドライパウダー製剤中の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩のおよそ80%、90%又は95%は、ラクトース担体に固着されている。
【0062】
一態様では、ドライパウダー製剤は、α-一水和物ラクトースを含む担体粒子が10重量%(wt%)の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩で覆われている規則混合物を含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、α-一水和物ラクトース担体を含む担体粒子が少なくとも10重量%、15重量%、20重量%、25重量%又は30重量%及び最大で約30重量%、40重量%又は50重量%の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩で覆われている規則混合物を含む。一態様では、ドライパウダー製剤は、α-一水和物ラクトースを含む担体粒子が約10重量%~約50重量%又は約10重量%~約30重量%の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩で覆われている規則混合物を含む。一態様では、ドライパウダー製剤中の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩の実質的に全ては、ラクトース担体に視覚的に固着されており、例えば、ドライパウダー製剤中の式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩のおよそ80%、90%又は95%は、ラクトース担体に固着されている。一態様では、ドライパウダー製剤は、約20%、10%又は5%未満の式Iによる遊離化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0063】
一態様では、医薬組成物は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%又は60%及び最大で約70%、80%又は90%の微細粒分(FPF)を含む。一態様では、医薬組成物は、約10%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%又は約40%~約70%のFPFを含む。一態様では、FPFは、JAK阻害剤を含む。一態様では、FPFは、4つの既知の哺乳動物JAK:JAK1、JAK2、JAK3、TYK2又はそれらの組み合わせの1つ以上の活性を阻害するAPIを含む。一態様では、FPFは、JAK1の活性を阻害するAPIを含む。一態様では、FPFは、JAK2の活性を阻害するAPIを含む。一態様では、FPFは、JAK3の活性を阻害するAPIを含む。一態様では、FPFは、TYK2の活性を阻害するAPIを含む。
【0064】
一態様では、医薬組成物は、式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%又は60%及び最大で約70%、80%又は90%を含む微細粒分(FPF)を含む。一態様では、医薬組成物は、式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩の約10%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%又は約40%~約70%のFPFを含む。
【0065】
一態様では、医薬組成物は、式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%又は60%及び最大で約70%、80%又は90%を含む微細粒分(FPF)を含む。一態様では、医薬組成物は、式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩の約10%~約80%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%又は約40%~約70%のFPFを含む。一態様では、薬学的に許容される塩は、フマル酸塩又はヘミフマル酸塩である。
【0066】
一態様では、医薬組成物は、単位用量当たり少なくとも約0.5mg、1mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2mg又は2.5mg及び最大で約5mg、6mg、7mg、8mg、9mg又は10mgのJAK阻害剤を含む。一態様では、医薬組成物は、単位用量当たり約1mg~約10mg、約1.5mg~約5mg又は約1mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2mg若しくは2.5mgのJAK阻害剤を含む。一態様では、医薬組成物は、単位用量当たり約1.4mg、1.6mg、1.8mg又は2.0mgのJAK阻害剤を含む。一態様では、単位用量は、定量(MD)である。一態様では、単位用量は、送達用量(DD)である。一態様では、単位用量は、微細粒子含量(FPD)である。
【0067】
一態様では、医薬組成物は、単位用量当たり少なくとも約0.5mg、1mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2mg又は2.5mg及び最大で約5mg、6mg、7mg、8mg、9mg又は10mgの式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。一態様では、医薬組成物は、単位用量当たり約1mg~約10mg、約1.5mg~約5mg又は約1mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2mg又は2.5mgの式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。一態様では、医薬組成物は、単位用量当たり約1.4mg、1.6mg、1.8mg又は2.0mgの式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。一態様では、単位用量は、定量(MD)である。一態様では、単位用量は、送達用量(DD)である。一態様では、単位用量は、微細粒子含量(FPD)である。
【0068】
一態様では、医薬組成物は、単位用量当たり少なくとも約0.5mg、1mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2mg又は2.5mg及び最大で約5mg、6mg、7mg、8mg、9mg又は10mgの式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。一態様では、医薬組成物は、単位用量当たり約1mg~約10mg、約1.5mg~約5mg又は約1mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2mg若しくは2.5mgの式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。一態様では、医薬組成物は、単位用量当たり約1.4mg、1.6mg、1.8mg又は2.0mgの式Iによる化合物又はその薬学的に許容される塩を含む。一態様では、単位用量は、定量(MD)である。一態様では、単位用量は、送達用量(DD)である。一態様では、単位用量は、微細粒子含量(FPD)である。
【0069】
一態様では、医薬組成物は、長期保管条件下で安定である。本明細書で用いられる場合、「安定な」は、観察可能な変化がないことを意味し、例えば約1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月又は1年後、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)又は赤外分光法(IR)によって決定されるもの並びに微細粒子含量(FPD)、微細粒分(FPF)及び送達用量(DD)の決定の医薬組成物の1つ以上の物理的特性及び医薬品性能パラメータにおける例えば約10%、5%、4%、3%、2%、1%又は0.5%未満の変化である。一態様では、医薬組成物は、例えば、25℃±2℃及び60%±5%、又は30℃±2℃及び75%±5%、又は40℃±2℃及び75%±5%の相対湿度で少なくとも約6ヶ月又は少なくとも約9ヶ月保管される場合、長期保管条件下で安定である。
【0070】
一態様では、医薬品有効成分(API)は、JAK阻害剤を含む。一態様では、APIは、例えば、1つ以上のJAKを阻害することによってJAK経路の活性を調整する。一態様では、APIは、4つの既知の哺乳動物JAK:JAK1、JAK2、JAK3、TYK2又はそれらの組み合わせの1つ以上の活性を阻害する。一態様では、APIは、JAK1の活性を阻害する。一態様では、APIは、JAK2の活性を阻害する。一態様では、APIは、JAK3の活性を阻害する。一態様では、APIは、TYK2の活性を阻害する。
【0071】
一態様では、JAK阻害剤は、式Iの化合物であり、JAK阻害剤は、N2-(3,4,5-トリメチル)フェニル-5-メチル-N4-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンズオキサゾール-5-イル)-2,4-ピリミジンジアミン又はその薬学的に許容される塩である。
【0072】
一態様では、薬学的に許容される塩は、無機酸又は有機酸から形成される。一態様では、薬学的に許容される塩は、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、ブロミド/臭化水素酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、カンファースルホン酸塩、クロリド/塩酸塩、クロロテオフィリン酸塩、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、馬尿酸塩、ヨウ化水素酸塩/ヨージド、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフトエ酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パルモエート、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、次サリチル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩及びトリフルオロ酢酸塩から選択される無機酸又は有機酸によって形成される。一態様では、薬学的に許容される塩は、フマル酸塩又はヘミフマル酸塩を含む。
【0073】
一態様では、医薬製剤中のAPIは、結晶形である。一態様では、医薬製剤中のAPIは、非晶質形である。
【0074】
一態様では、API粒子は、約10μm、9μm、8μm、7μm、6μm未満又は約5μm未満のd90を有する。一態様では、API粒子は、少なくとも約0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、1μm又は2μmのd90を有する。一態様では、API粒子は、約0.1μm~約10μm、約0.1μm~約5μm、約0.5μm~約5μm、約1μm~約5μm、約2μm~約5μm又は約3μm~約5μmのd90を有する。
【0075】
一態様では、APIは、少なくとも約0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、1μm又は2μm及び約10μm、9μm、8μm、7μm、6μm又は5μm未満のd90を達成するために微粒子化される。一態様では、APIは、約0.1μm~約10μm、約0.1μm~約5μm、約0.5μm~約5μm、約1μm~約5μm、約2μm~約5μm又は約3μm~約5μmのd90を達成するために微粒子化される。
【0076】
用語「微粒子化」は、平均粒子直径がマイクロメートルの範囲又はそれを下回って低減される方法を指す。「微粒子化された」は、例えば、医薬有効成分(API)の粒子であり、その平均直径が数ミクロン以下に低減された粒子を指す。微粒子化粒子は、研削;沈殿;例えばボールミリング、ジェットミリング又は媒体ミリングを含むミリング;高圧均質化;噴霧乾燥;噴霧凍結乾燥;例えば急速膨張及び逆溶剤技術を含む超臨界流体技術;テンプレート法;微細加工;リソグラフィ;及び他の粒子沈殿技術が挙げられるが、これらに限定されない。用語「微粒子化された」は、所望のサイズ及び/又は形状を有する粒子を提供するために使用される任意の物理的、化学的、機械的又は他のプロセスを含む。
【0077】
一態様では、医薬組成物は、担体と組み合わせたAPIを含むドライパウダー製剤を含む。一態様では、担体粒子は、不活性且つ生理学的に許容される賦形剤材料から形成される。一態様では、担体粒子は、糖アルコール、ポリオール及び結晶糖から選択される1つ以上の材料から形成される。一態様では、担体粒子は、結晶糖、例えばマンニトール、トレハロース、メレジトース、デキストロース又はラクトースから形成される。一態様では、担体粒子は、マンニトールから形成される。
【0078】
一態様では、担体粒子は、ラクトースから形成される。本明細書で用いられる場合、用語「ラクトース」は、α-ラクトース、β-ラクトース又はそれらの組み合わせを含むラクトース含有成分を指す。ラクトースは、例えば、無水物、一水和物、脱水物又はそれらの混合物を含む様々な水和状態にあり得る。一態様では、ラクトース担体は、α-ラクトース一水和物、β-ラクトース一水和物、α-ラクトース無水物、β-ラクトース無水物、非晶質ラクトース又はそれらの組み合わせを含む。一態様では、ラクトース担体は、α-ラクトース一水和物を含む。
【0079】
一態様では、担体は、粒状ラクトース担体である。一態様では、担体は、凝集ラクトース担体である。本明細書で用いられる場合、用語「凝集」は、互いに会合して、単一の凝集粒子を形成する1つ以上のラクトース粒子を有する粒子を指す。一態様では、凝集粒子は、2つ以上の会合ラクトース粒子を含む。一態様では、担体は、篩い分けされている。「篩い分け」は、例えば、所望の粒径を得るように選択された開口サイズを有するメッシュを使用して、粒子がサイズによって分離されるプロセスを指す。「篩い分けされた」は、組成物、例えばラクトース担体粒子を含有し、所望の粒径分布を得るために、粒径に基づいて分離された粉末を指す。「ミリング」は、ラクトース担体粒子を含有する組成物、例えば粉末の平均粒径が、粒子を所望のサイズ分布を有する粒子に破断させる機械的プロセスによって低減されるプロセスを指す。一態様では、担体は、篩い分けされた凝集ラクトース担体である。一態様では、担体は、凝集ラクトース担体である。一態様では、担体は、結晶化凝集ラクトース担体を含む。一態様では、担体は、結晶化凝集ラクトース担体を含む。一態様では、結晶化凝集ラクトース担体は、篩い分けされていない。一態様では、結晶化凝集ラクトース担体は、単結晶を含有する。
【0080】
一態様では、担体粒子は、APIが互いに粘着するのではなく、担体粒子の表面に固着するようにAPI粒子よりも大きい。一態様では、担体粒子の平均直径は、API粒子の平均直径よりも少なくとも約5倍、10倍、20倍、30倍、40倍又は50倍大きい。
【0081】
一態様では、担体粒子は、例えば、微粒子化、篩い分け、ミリング、圧縮、凝塊形成又は噴霧乾燥によって加工される。一態様では、担体粒子は、篩い分けによって加工される。篩い分けのための様々な方法が既知であり、例えばエアジェット篩い分け機を使用する、例えば機械的振動機及び減圧篩い分け機を使用する、例えば機械的篩い分けが挙げられる。
【0082】
一態様では、ラクトース担体は、少なくとも約100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm又は200μm及び最大で約250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm又は350μmのd50を有する。一態様では、ラクトース担体は、約100μm~約350μm、約130μm~約310μm又は約170μm~約270μmのd50を有する。
【0083】
一態様では、ラクトース担体は、少なくとも約250μm、260μm、270μm、280μm、290μm又は300及び最大で約350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm又は450μmのd90を有する。一態様では、ラクトース担体は、約250μm~約450μm又は約290μm~約400μmのd90を有する。
【0084】
一態様では、ラクトース担体は、少なくとも約100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm又は200μm及び最大で約250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm又は350μmのd50を有する凝集α-一水和物ラクトース担体である。一態様では、ラクトース担体は、約100μm~約350μm、約130μm~約310μm又は約170μm~約270μmのd50を有するα-一水和物ラクトース担体である。
【0085】
一態様では、ラクトース担体は、少なくとも約250μm、260μm、270μm、280μm、290μm又は300及び最大で約350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm又は450μmのd90を有する凝集α-一水和物ラクトース担体である。一態様では、ラクトース担体は、約250μm~約450μm又は約290μm~約400μmのd90を有するα-一水和物ラクトース担体である。
【0086】
肺疾患及び/又は非肺疾患を治療するために、経肺投与が医薬品有効成分(API)の局所及び/又は全身送達に使用することができる。一態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、経肺投与を通して投与される。一態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、「ドライパウダー吸入器」を使用して投与される。用語「ドライパウダー吸入器」(DPI)は、対象の肺にドライパウダーを投与するためのデバイス、例えば呼吸作動デバイスを指す。DPIは、デバイスが行うことができる投与の回数によって分類することができる。一態様では、DPIは、単回単位用量リザーバを含む。一態様では、DPIは、複数回単位用量リザーバを含む。一態様では、DPIは、複数回投与リザーバを含む。様々なDPIデバイスが市販されている。
【0087】
一態様では、DPIは、少なくとも約1mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg.1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2.0mg又は2.5mg及び最大で約5mg、6mg、7mg、8mg、9mg又は10mgのJAK阻害剤に相当する単回投与で医薬組成物を提供する。一態様では、DPIは、約1mg~約10mg又は約1.5mg~約5mgのJAK阻害剤に相当する単回投与で医薬組成物を提供する。
【0088】
一態様では、DPIは、少なくとも約1mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg.1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2.0mg若しくは2.5mg及び最大で約5mg、6mg、7mg、8mg、9mg若しくは10mgのJAK阻害剤又は約1mg~約10mg若しくは約1.5mg~約5mgのJAK阻害剤に相当する単回投与を提供する。一態様では、用量は、1回の作動で提供される。一態様では、用量は、2回以下の作動で提供される。用語「作動」は、1回の起動によるドライパウダー吸入器からのAPIの放出を指す。一態様では、ドライパウダー吸入器は、呼吸作動される。
【0089】
一態様では、DPIは、複数回投与吸入器である。一態様では、複数回投与吸入器は、医薬組成物の少なくとも約2、3、4、5、10、15又は20回投与及び最大で約30、40、50、60、70、80、90又は100回投与を提供する。一態様では、複数回投与吸入器は、医薬組成物の約1回投与~約200回投与又は約15回投与~約40回投与を提供する。
【0090】
一態様では、医薬組成物の作製方法が提供される。一態様では、JAK阻害剤と担体粒子とを含むドライパウダー製剤を含む医薬組成物を作製する方法が提供される。一態様では、約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%又は30重量%のJAK阻害剤と、ラクトース担体などの薬学的に許容される担体とを含むドライパウダー製剤を含む医薬組成物を作製する方法が提供される。一態様では、ドライパウダーは、担体粒子がJAK阻害剤で覆われている規則混合物を含む。一態様では、ラクトース担体粒子が約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%又は30重量%のJAK阻害剤で覆われている規則混合物を含むドライパウダー製剤を含む医薬組成物を作製する方法が提供される。
【0091】
一態様では、JAK阻害剤粒子は、微粒子化されている。一態様では、JAK阻害剤は、微粒子化されて、少なくとも約0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、1μm又は2μm及び約10μm、9μm、8μm、7μm、6μm又は5μm未満のd90を達成する。一態様では、JAK阻害剤は、微粒子化されて、約0.1μm~約10μm、約0.1μm~約5μm、約0.5μm~約5μm、約1μm~約5μm、約2μm~約5μm又は約3μm~約5μmのd90を達成する。一態様では、ラクトース担体は、α-一水和物ラクトースを含む。一態様では、ラクトース担体は、凝集ラクトース担体である。
【0092】
本方法の一実施形態の概要が図1に提供されている。
【0093】
一態様では、方法は、ラクトース担体が篩い分けされ、所望の粒子分布を有する篩い分けされた担体を得る第1の篩い分けステップ(篩い分けステップ1)を含む。一態様では、本方法で使用されるラクトース担体の総量の少量部分は、第1の篩い分けステップで篩い分けされる。一態様では、ラクトース担体の少量部分は、ラクトース担体の総量の約50%、40%、30%、20%又は10%未満である。
【0094】
一態様では、ラクトース担体は、篩い分けされて、少なくとも約100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm又は200μm及び最大で約250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm又は350μmのd50を有する篩い分けされた担体を得る。一態様では、ラクトース担体は、篩い分けされて、約100μm~約350μm、約130μm~約310μm又は170μm~約270μmのd50を有する篩い分けされた担体を得る。一態様では、ラクトース担体は、篩い分けされて、少なくとも約250μm、260μm、270μm、280μm、290μm又は300μm及び最大で約400μm、410μm、420μm、430μm、440μm又は450μmのd90を有する篩い分けされた担体を得る。一態様では、ラクトース担体は、篩い分けされて、約250μm~約450μm又は約290μm~約400μmのd90を有する篩い分けされた担体を得る。
【0095】
一態様では、方法は、機械的ブレンダー中において、JAK阻害剤が篩い分けされていないラクトース担体と組み合わされて、第1のブレンド(ブレンド1)を形成する第1のブレンドステップ(ブレンドステップ1)を含む。一態様では、本方法で使用されるラクトース担体の総量の大部分は、JAK阻害剤と組み合わされて第1のブレンドを形成する。一態様では、大部分は、本方法で使用されるラクトース担体の総量の約50%、60%、70%、80%、90%又は95%を含む。一態様では、篩い分けされていないラクトース担体は、約125μmのd10、約220μmのd50及び約345μmのd90を有する。
【0096】
様々な機械的ブレンダーが既知であり、JAK阻害剤とラクトース担体とを組み合わせるために使用することができる。一態様では、JAK阻害剤とラクトース担体とは、低剪断ブレンダー中で組み合わされる。低剪断ブレンダーの例としては、タンブルブレンダー、プラネタリーブレンダー、二重円錐型ブレンダー、コニカルスクリューブレンダー及びリボンブレンダーが挙げられる。一態様では、低剪断ブレンダーは、自由落下ブレンダー又はタンブルブレンダーである。市販の低剪断自由落下又はタンブルブレンダーの例としては、バインドブレンダー、V形ブレンダー及び二重円錐型ブレンダーが挙げられる。一態様では、JAK阻害剤とラクトース担体とは、装置寸法及び利用可能な設定によって定義される回転速度及び持続時間でブレンドされる。
【0097】
別の態様では、JAK阻害剤とラクトース担体とは、高剪断ブレンダー中で組み合わされる。一態様では、高剪断ブレンダーは、インペラ又はパドルの回転により、JAK阻害剤とラクトース担体とを組み合わせる。一態様では、高剪断ブレンドは、約100rpm~約1000rpm、300rpm~約700rpm又は約350rpm~約650rpmの回転速度で行われる。一態様では、高剪断ブレンドは、約10秒~約10分、約30秒~約5分又は約1分~約2分で行われる。一態様では、JAK阻害剤とラクトース担体とは、装置寸法及び利用可能な設定によって定義される回転速度及び持続時間でブレンドされる。
【0098】
一態様では、低剪断ブレンドは、バッチ処理によって実施され、「ラクトース担体の総量」は、バッチに含まれるラクトース担体の総量の量を指す。
【0099】
一態様では、第1のブレンド(ブレンド1)は、篩い分けされて(篩い分けステップ2)、少なくとも約100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm又は200μm及び最大で約250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm又は350μmのd50を有する篩い分けされたブレンドを得る。一態様では、第1のブレンドは、篩い分けされて、約100μm~約350μm、約130μm~約310μm又は170μm~約270μmのd50を有する篩い分けされたブレンドを得る。一態様では、第1のブレンドは、篩い分けされて、少なくとも約250μm、260μm、270μm、280μm、290μm又は300μm及び最大で約400μm、410μm、420μm、430μm、440μm又は450μmのd90を有する篩い分けされたブレンドを得る。一態様では、第1のブレンドは、篩い分けされて、約250μm~約450μm又は290μm~約400μmのd90を有する篩い分けされたブレンドを得る。
【0100】
一態様では、篩い分けステップ1からの篩い分けされたラクトース担体は、篩い分けステップ2からの篩い分けされたブレンドと組み合わされて(ブレンドステップ2)、ドライパウダー(第2のブレンド)を形成する。一態様では、篩い分けされたラクトース担体と、篩い分けされたブレンドとが組み合わされる前に、篩がステップ1からの篩い分けされたラクトース担体で濯がれる。一態様では、篩い分けされたラクトース担体と、篩い分けされたブレンドとは、低剪断ブレンダー、例えばタンブルブレンダー、プラネタリーブレンダー、二重円錐型ブレンダー、コニカルスクリューブレンダー又はリボンブレンダー中で組み合わされる。一態様では、低剪断ブレンダーは、自由落下ブレンダー又はタンブルブレンダーである。一態様では、篩い分けされたラクトース担体と、篩い分けされたブレンドとは、約5分~約30分の範囲の一定時間、例えば少なくとも約10分、15分又は20分及び最大で約25分又は30分の一定時間ブレンドされる。場合によっては、一定時間は、約5rpm~約60rpmの範囲の回転速度、例えば約30rpm~約35rpm又は31rpm、32rpm、33rpm、34rpm若しくは35rpmの回転速度で約25分~約35分、例えば約30分~約35分又は約30分である。一態様では、篩い分けされたラクトース担体と、篩い分けされたブレンドとは、自由落下タンブルブレンダー内で33rpmにおいて30分間ブレンドされる。
【0101】
一態様では、ドライパウダーは、約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%又は30重量%のJAK阻害剤と、約90重量%、85重量%、80重量%、75重量%又は70重量%未満のラクトース担体とを含む。一態様では、ドライパウダーは、ラクトース担体が約10重量%~約40重量%のJAK阻害剤で覆われている規則混合物を含む。
【0102】
ドライパウダーは、製造及び保管中に静電気を帯びる可能性があることが知られている。一態様では、パウダーブレンドは、静電荷の量を低減することを助けるために「調整される」。用語「調整すること」は、パウダー中の静電荷の量を低減することを助けるために、温度及び相対性が制御される環境でドライパウダーが保管されることを意味する。一態様では、パウダーブレンドは「調整されて」、安定な微細粒子含量(FPD)プラトーに達することを助ける。用語「安定な」は、FDAガイドラインにより10%未満の変化/差異を意味する。用語「調整すること」は、ドライパウダーが、温度及び相対性が制御されて、安定な微細粒子含量(FPD)プラトーに達するのを助ける環境において保管されることを意味する。
【0103】
一態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、タンパク質キナーゼのヤヌスキナーゼ(JAK)ファミリーの1つ以上のメンバーの活性を阻害するために使用される。一態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、JAK活性及び/又はJAK活性に関して関連するタンパク質活性を阻害するために使用され、したがってそのような阻害が望ましい及び/又は必要とされる状態の治療で有用であり得る。一態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、4つの既知の哺乳動物JAK:JAK1、JAK2、JAK3又はTYK2の1つ以上の活性を阻害するために使用される。一態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、JAK3の活性を阻害するために使用される。
【0104】
一態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、JAK関連疾患を治療又は予防するために使用される。本明細書に記載の医薬組成物で治療又は予防され得るJAK関連疾患の非限定的な例としては、炎症;アレルギー;喘息;全身性自己免疫疾患、移植拒絶反応(例えば、腎臓、心臓、肺、肝臓、膵臓、皮膚;宿主対移植片反応(HVGR)及び移植片対宿主反応(GVHR))、関節リウマチ及び筋萎縮性側索硬化症を含む自己免疫疾患;糖尿病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群などのT細胞媒介自己免疫疾患;血管の炎症(血管炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症及び冠動脈疾患を含む)などのII型炎症性疾患;脳卒中などの中枢神経系の疾患;閉塞性気管支炎及び原発性肺高血圧症などの肺疾患;固形、遅延型IV型過敏反応;白血病及びリンパ腫などの血液悪性腫瘍;並びに眼疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
一態様では、方法は、1つ以上の状態を治療するために、本明細書に記載の医薬組成物の経肺投与を含む。
【0106】
一態様では、方法は、本明細書に記載されるように、式IによるJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩とラクトース担体とを含む医薬組成物の経肺投与を含む。一態様では、方法は、本明細書に記載されるように、式IによるJAK阻害剤又はその薬学的に許容される塩とラクトース担体とを含む医薬組成物の経肺投与を含む。一態様では、JAK阻害剤は、N2-(3,4,5-トリメチル)フェニル-5-メチル-N4-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,3-ベンズオキサゾール-5-イル)-2,4-ピリミジンジアミン又はその薬学的に許容される塩を含む。一態様では、薬学的に許容される塩は、フマル酸塩又はヘミフマル酸塩を含む。
【0107】
一態様では、本方法は、医薬組成物の微細粒分(FPF)の約50%、55%、60%、65%~70%及び最大で約70%。75%、80%、85%若しくは90%又は約50%~約90%、約60%~約80%、約65%~約75%又は約70%が肺に送達される経肺投与を含む。
【0108】
一態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、単独で投与される。別の態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、1つ以上の他の医薬品又は療法と組み合わせて投与される。
【0109】
一態様では、本方法は、予防的に実行される。例えば、本明細書に記載の医薬組成物は、疾患又は障害の発症前に投与され得る。
【0110】
一態様では、JAKの活性を阻害する方法が提供される。一態様では、本方法は、有効量の本明細書に記載されるJAK阻害剤をJAKの活性を阻害するのに有効な量で含む医薬組成物の経肺投与を含む。
【0111】
一態様では、JAK関連疾患を治療する方法が提供される。一態様では、本方法は、本明細書に記載されるJAK阻害剤を、JAK関連疾患を治療又は予防するのに有効な量で含む医薬組成物の経肺投与を含む。一態様では、JAK関連疾患は、宿主対移植片反応(HVGR)又は移植片対宿主疾患(GVHD)である。
【0112】
一態様では、移植レシピエントにおける急性又は慢性のいずれかの同種異系移植片拒絶反応を治療又は予防する方法が提供される。一態様では、本方法は、本明細書に記載されるJAK阻害剤を、同種異系移植片拒絶反応を治療又は予防するのに有効な量で含む医薬組成物の経肺投与を含む。
【0113】
別の態様では、T細胞媒介自己免疫疾患を治療する方法が提供される。一態様では、本方法は、本明細書に記載されるJAK阻害剤を、T細胞媒介自己免疫疾患を治療するのに有効な量で含む医薬組成物の経肺投与を含む。一態様では、自己免疫疾患は、多発性硬化症(MS)、乾癬又はシェーグレン症候群である。
【0114】
一態様では、IV型過敏反応を治療する方法が提供される。一態様では、本方法は、本明細書に記載のJAK阻害剤を、過敏反応を治療又は予防するのに有効な量で含む医薬組成物の経肺投与を含む。
【0115】
一態様では、JAKが、役割を果たすシグナル伝達カスケードを阻害する方法が提供される。一態様では、本方法は、本明細書に記載されるJAK阻害剤を、シグナル伝達カスケードを阻害するのに有効な量で含む医薬組成物の経肺投与を含む。
【0116】
一態様では、眼疾患を治療する方法が提供される。一態様では、本方法は、本明細書に記載されるJAK阻害剤を、眼疾患を治療するのに有効な量で含む医薬組成物の経肺投与を含む。一態様では、投与される量は、未処置の涙液産生量と比べて、涙液産生量を増加させるのに有効であり、それによってドライアイ症候群の症状を改善する。
【0117】
一態様では、キットが提供される。一態様では、キットは、本明細書に記載される医薬組成物と容器とを含む。一態様では、キットは、ドライパウダー吸入器と本明細書に記載される医薬組成物とを含む。一態様では、キットは、投与及び/又は保管のための説明書を含む。
【0118】
一態様では、本命明細書に記載の医薬組成物は、ドライパウダー吸入器のリザーバ中に含まれる。一態様では、ドライパウダー吸入器は、本明細書に記載される医薬組成物の1つ以上の単位用量を含有する。一態様では、キットは、本明細書に記載の医薬組成物の少なくとも約1、2、3、4、5、10、15又は20回投与及び最大で約30、40、50、60、70、80、90、100又は200回投与を提供する複数回投与ドライパウダー吸入器を含む。一態様では、キットは、本明細書に記載の医薬組成物の約2回投与~約100回投与又は本明細書に記載の医薬組成物の約15回投与~約40回投与を提供する複数回投与ドライパウダー吸入器を含む。
【0119】
一態様では、医薬組成物の単位投与量は、約1mg~約5mgのJAK阻害剤を含む。一態様では、ドライパウダー吸入器は、少なくとも約1mg、1.1mg、1.2mg、1.3mg、1.4mg、1.5mg、1.6mg、1.7mg、1.8mg、1.9mg、2.0mg又は2.5mg及び最大で約5mg、6mg、7mg、8mg、9mg又は10mgのJAK阻害剤に相当する単回投与で医薬組成物を提供する。一態様では、単位用量は、定量(MD)である。一態様では、単位用量は、送達用量(DD)である。一態様では、単位用量は、微細粒子含量(FPD)である。
【0120】
本明細書に引用される全ての参考文献、例えば特許、特許出願、論文、教科書など、及びこれらに引用される参考文献は、それらが既に引用されていない限り、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【実施例
【0121】
実施例1.ドライパウダーの調製
ドライパウダーを以下のように調製した。
【0122】
JAK阻害剤(N2-(3,4,5-トリメチル)フェニル-5-メチル-N4-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1,3-エンゾキサゾール-5-イル)-2,4-ピリミジンジアミンヘミフマル酸塩)を、PCT公開国際公開第2010/085684号パンフレットの実施例1に記載されるように本質的に調製し、ジェットミル微粒子化装置を使用して微粒子化し、5μm未満のd90を有する粒径を得た。
【0123】
粗凝集結晶ラクトース担体及びJAK阻害剤を一段階又は多段階でブレンドし、一部分を低剪断ブレンダー中で装置寸法及び利用可能な設定によって定義された回転速度及び持続時間でブレンドし、均質なドライパウダーブレンド(RSD<10%)を得る。
【0124】
100部(重量%)の微粒子化JAK阻害剤及び80部(重量%)のアルファ-ラクトース一水和物を、低剪断タンブルブレンダーに添加し、31~35rpmで10~30分間タンブルして、第1のブレンドを形成した。
【0125】
第1のブレンドを篩い分けして、およそ170μm~270μmのd50及びおよそ290μm~400μmのd90を有する篩い分けされたブレンドを得た。
【0126】
篩を、20部(重量%)のアルファ-ラクトース一水和物を使用して濯ぎ、低剪断タンブルブレンダー内で第1のブレンドと組み合わせて、31~35rpmで10~30分間タンブルして、ドライパウダーを形成した。
【0127】
ドライパウダーを、光学顕微鏡を使用して検査した。図2に示されるように、JAK阻害剤は、粒状ラクトース担体と会合しており(すなわち遊離JAK阻害剤が観察されず、すなわち遊離APIが観察されなかった)、平均30%の薬物負荷を有するドライパウダーをもたらした。
【0128】
実施例2.ドライパウダー状ブレンドの調整
実施例1に記載されるように調製されたドライパウダーを、様々な条件下において、すなわち30℃及び75%の相対湿度で7~14日間更に加工する前に、制御された温度及び湿度で調整した:
1.ドライパウダーをガラス容器内で250mL~10Lの容量で保管し;
2.ドライパウダーを10Lのボーレコンテナ内で保管し;
3.ドライパウダー状ブレンドをボーレコンテナの10Lプロトタイプ内で保管し;及び
4.ドライパウダー状ブレンドを20Lのステンレス鋼蓋付きドラム内で保管した。
【0129】
得られたドライパウダーブレンドは、最大で6ヶ月間の保管時間にわたり、安定な微細粒子含量及び微細粒分を有するAPI含量(RSD<10%)に関して均質であった。
【0130】
実施例3.ドライパウダーブレンドの送達用量
調整されたドライパウダー製剤(実施例2)の複数回投与リザーバ吸入器からの1回の作動の送達用量(DD)を決定した(3つの異なるデバイスからの9回投与、1デバイス当たり3回投与、1投与当たり1回の作動)。
【0131】
目標のDDは、2.5mgであった。図3に示すように、測定されたDDは、およそ2133μg(24.2%の薬物負荷)、2374μg(27.6%の薬物負荷)及び2459μg(30.2%の薬物負荷)であり、ドライパウダーが吸入に好適なエアロゾルに再現可能に分散されたことを示した。
【0132】
比較の目的のため、医薬組成物のDDは、約3%の薬物負荷を有する複数回投与リザーバデバイスでの市販の製品についてのDDよりも7~8倍高い。
【0133】
実施例4.微細粒分(>10%)の決定
調整されたドライパウダー製剤(実施例2)の複数回投与リザーバ吸入器からの1回の作動についての微細粒子含量(FPD)を決定した(3つのデバイス、1デバイス当たり1回の作動(投与))。
【0134】
目標のFPD(<5μm)は、1.6mgであった。図4に示すとおりである。測定されたFPDは、約1300~1600(24.2%の薬物負荷)及び1600~1900(30.2%の薬物負荷)で一貫していた。送達用量の約70%が肺に達する(FPF)と想定することができ、図5に示すような規則混合物の十分な分散を示している。
【0135】
実施例5.安定性試験
充填済み複数回投与リザーバ吸入器を25℃±2℃及び60%±5%若しくは30℃±2℃及び75%±5%で少なくとも9ヶ月間又は40℃±2℃及び75%±5%で少なくとも6ヶ月間保管した。UV-VIS検出を備えた液体クロマトグラフィーによって決定されたように、ドライパウダーブレンド中のAPIの観察可能な分解が観察されなかった。微細粒子含量及び微細粒分は、FDAガイドラインによって定義されるとおり安定であった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】