(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(54)【発明の名称】波エネルギー変換器制御
(51)【国際特許分類】
F03B 13/12 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
F03B13/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557918
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2021057105
(87)【国際公開番号】W WO2021191080
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521412319
【氏名又は名称】ボンボラ ウェイブ パワー ヨーロッパ エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】BOMBORA WAVE POWER EUROPE LTD
【住所又は居所原語表記】The Offices Cleddau Reach Pembroke Dock Pembrokeshire SA72 6UJ United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラドフスキ,マルシン アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィガース,ポール
(72)【発明者】
【氏名】アルジー,キャンベル ロバート
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074BB10
3H074BB21
3H074CC03
3H074CC50
(57)【要約】
本開示は、長手方向軸と薄膜を有する少なくとも1つのセルとを有する薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)に関するエネルギー変換および/または加えられる波浪負荷を制御する方法に関する。該方法は、WECのところの局所的な海面状態またはWECのWEC状態に関するデータを取得することおよび値を決定することを含む。取得したデータから決定される値に応じて、静止水での自由表面に対する少なくとも1つのWECセルの垂直位置および/またはWECの入射角のうちの一方または両方が調節される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸と薄膜を有する少なくとも1つのセルとを有する薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)のためのエネルギー変換および/または加えられる波浪負荷を制御する方法であって、
前記WECのところの局所的な海面状態および/または前記WECのWEC状態に関するデータを取得するステップおよび値を決定するステップと、
前記取得したデータから決定した前記値に応じて、静止水での自由表面に対する前記少なくとも1つのWECセルの垂直位置および/または前記WECの前記長手方向軸と入射波方向との間の角度とのうちの一方または両方を調節するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記WECが、それぞれの薄膜を各々が有する複数のセルを備え、前記方法が、水平方向に対する前記薄膜の傾きを実質的に変えずに同時に前記複数のセルの水没度を調節するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
潮汐状態、気象条件、波浪高さ、波浪周期、波浪方向、波エネルギー、海流強度/方向、前記WEC上の波浪負荷、WEC深さ、WEC内部の流体圧/体積/流量、WEC弁位置および負荷、WEC薄膜位置、負荷および形状、タービン/発電機速度/トルクならびにWECのエネルギー変換のうちの1つまたは複数に関するデータを取得することにより、局所的な海面状態値を決定するためにデータを取得するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記垂直位置に関する最適値もしくは最適範囲および/または前記決定した局所的な海面状態値に対する前記入射角に関する最適値もしくは最適範囲を識別するステップと、現在の垂直位置および/または現在の入射角を比較するステップと、これらが前記最適値/最適範囲からはずれている場合に、前記最適値に一致するようにまたは前記最適範囲内になるように前記垂直位置および/または前記入射角のうちの一方または両方を調節するステップとを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
測定した負荷および/またはWECエネルギー変換に基づいて訂正した最適値または訂正した最適範囲を用いて前記垂直位置および/または入射角に関する前記最適値または最適範囲を上書きするステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
セル体積、薄膜負荷、構造的負荷、セル流体圧力、WEC弁位置、セル薄膜位置および形状、タービン/発電機速度/トルクのうちの1つまたは複数に関するデータを取得することによりWEC状態値を決定するためのデータを取得するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記WEC状態値が最適WEC状態値を有するかまたは最適WEC状態値範囲内であるかを判断するステップと、前記WEC状態値が前記最適WEC状態値からはずれるかまたは前記最適WEC状態値範囲の外である場合に、前記垂直位置および/または前記入射角のうちの一方または両方を調節するステップとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記垂直位置および/または入射角は、前記WEC状態値が前記最適WEC状態値に一致するまでまたは前記最適WEC状態値範囲内になるまで調節される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
長手方向軸と薄膜を有する少なくとも1つのセルとを有する薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)であって、静止水での自由水面に対して前記少なくとも1つのWECセルの垂直位置を調節するためおよび/または前記WECの前記長手方向軸と入射波方向との間の角度を調節するための調節アクチュエータをさらに備える、薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)。
【請求項10】
それぞれの薄膜を各々が有する複数のセルを備え、前記調節アクチュエータが水平方向に対する前記薄膜の傾きを実質的に変えずに前記複数のセルの前記垂直位置を同時に調節するように構成される、請求項9に記載のWEC。
【請求項11】
前記調節アクチュエータが、内部チャンバを有する少なくとも1つの浮力素子を備え、使用中には、前記内部チャンバ内の水の体積が変えられる、請求項9または10に記載のWEC。
【請求項12】
前記または各々の調節アクチュエータが、前記浮力素子の内部チャンバの内側の空気および水の相対的な体積を調節するために少なくとも1つのポンプおよび/または少なくとも1つの弁を備える、請求項11に記載のWEC。
【請求項13】
前記少なくとも1つの調節アクチュエータが、長さを変えられるテザーを備える、請求項9から12のいずれか一項に記載のWEC。
【請求項14】
前記少なくとも1つの調節アクチュエータが、前記テザーの長さの変化をもたらすためのウィンチまたは水圧ラムを備える、請求項13に記載のWEC。
【請求項15】
前記テザーが、弾性的である、請求項13に記載のWEC。
【請求項16】
前記少なくとも1つの調節アクチュエータが、非浮揚性テザーを備える、請求項9から12のいずれか一項に記載のWEC。
【請求項17】
前記調節アクチュエータが、少なくとも1つのラックおよびピニオンを備える、請求項9から11のいずれか一項に記載のWEC。
【請求項18】
請求項9から17のいずれか一項に記載のWECと、エネルギー変換および/または加えられた波浪負荷を制御するための制御システムとを備えるWECシステムであって、前記制御システムが、
データを取得するためのデータ源と、
前記WECのところの局所的な海面状態または前記WECのWEC状態に関する値を決定するために前記取得したデータを使用するためのコントローラと
を備え、
前記コントローラが、前記取得したデータから決定される前記値に応じて、前記垂直位置および/または前記入射角のうちの一方または両方を調節するために前記調節アクチュエータへ信号を送るように構成される、
WECシステム。
【請求項19】
前記データ源が、前記局所的な海面状態値を決定するためにデータを取得するための少なくとも1つのセンサであり、前記データが、潮汐状態、気象条件、波浪高さ、波浪周期、波浪方向、波エネルギー、海流強度/方向、前記WEC上の波浪負荷、WEC深さ、WEC内部の流体圧/体積/流量、WEC弁位置および負荷、WEC薄膜位置、負荷および形状、タービン/発電機速度/トルクならびに前記WECのエネルギー変換のうちの1つまたは複数に関係する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記コントローラが、前記決定した局所的な海面状態値に対する前記垂直位置に関する最適値もしくは最適範囲および/または前記入射角に関する最適値もしくは最適範囲を含むデータセットを記憶するメモリを備えることができる、請求項18または19に記載のシステム。
【請求項21】
現在の垂直位置および/または現在の入射角を決定するための少なくとも1つの深さセンサおよび/または入射角センサを備え、前記コントローラが、メモリ内の前記最適値/範囲と前記現在の垂直位置および/または現在の入射角とを比較するように、ならびにこれらが前記最適値/範囲からはずれている場合に、前記最適値に一致するようにまたは前記最適範囲内になるように前記垂直位置および/または前記入射角のうちの一方または両方を調節するために前記調節アクチュエータへ信号を送るように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
前記データ源が、前記局所的なWEC状態値を決定するためにデータを取得するための少なくとも1つのセンサであり、前記データが、セル体積、薄膜負荷、構造的負荷、セル流体圧力、WEC弁位置、セル薄膜位置および形状、タービン/発電機速度/トルクのうちの1つまたは複数に関する、請求項11に記載のシステム。
【請求項23】
最適WEC状態値および/または最適WEC状態値範囲を記憶するメモリを備え、前記コントローラは、前記WEC状態値が前記最適WEC状態値からはずれるまたは前記最適WEC状態値範囲の外である場合に、前記垂直位置および/または入射角を調節するために前記調節アクチュエータへ信号を送るように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
前記制御システムが、閉ループ制御システムまたはフィードバック制御システムであり、前記WEC状態値が前記最適WEC状態値に一致するまでまたは前記最適WEC状態値範囲内になるまで垂直位置および/または入射角を制御するように構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項25】
少なくとも1つのセル薄膜を空気に定期的に曝すことにより、薄膜を有する少なくとも1つのセルを備える薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)の生物付着を減少させる方法。
【請求項26】
前記WECが、それぞれのセル薄膜を各々が有する複数のセルを備え、前記方法が、前記複数のセルを同時に露出させるステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、6時間より長い予め定められた期間にわたって前記少なくとも1つのセル薄膜を空気に定期的に曝すステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記WECのところの局所的な状態に関するデータを取得するステップおよび値を決定するステップと、前記局所的な状態値に応じて、前記少なくとも1つのセル薄膜を空気に曝すステップを含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項29】
波浪状態および/または気象条件に関するデータを取得するステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
薄膜を有する少なくとも1つのセルを有する薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)であって、前記少なくとも1つのセル薄膜を空気に定期的に曝すための調節アクチュエータをさらに備える、薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)。
【請求項31】
それぞれの薄膜を各々が有する複数のセルを備え、前記調節アクチュエータが水平方向に対する前記薄膜の傾きを実質的に変えずに前記複数の薄膜を同時に露出させるように構成される、請求項30に記載のWEC。
【請求項32】
請求項30または31に記載のWECと、生物付着削減を制御するための制御システムとを備えるWECシステムであって、前記制御システムが、
データを取得するためのデータ源と、
前記WECのところの局所的な状態に関する値を決定するために前記取得したデータを使用するためのコントローラと
を備え、
前記コントローラが、前記取得したデータから決定される前記値に応じて前記セル薄膜を露出させるために前記調節アクチュエータへ信号を送るように構成される、
WECシステム。
【請求項33】
前記データ源が、波浪状態および/または気象条件のうちの1つまたは複数に関するデータを取得するように構成された少なくとも1つのセンサであり、前記コントローラが、局所的な波浪状態値および/または局所的な気象条件値を決定するように構成される、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記コントローラが、しきい値局所的状態値を記憶するメモリを備え、前記コントローラが、前記局所的な状態値を前記しきい値局所的状態値と比較するように、および前記局所的な状態値が前記しきい値局所的状態値より低い値を有する場合に、セル露出を実行するために前記調節アクチュエータへ信号を送るように構成される、請求項32または33に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波エネルギー変換器(WEC)の性能およびWECに加えられる波浪負荷を制御する方法ならびに関連する制御システムに関する。特に、本開示は、タービンを備えた圧力差波エネルギー変換器システムのための垂直位置および入射角制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波エネルギーから電気エネルギーを発生するための波エネルギー変換システムは良く知られている。数多くの異なるシステムが、圧力差変換器を含め提案されてきている。
【0003】
水中に沈められた圧力差変換器(そのいくつかはまた、薄膜パワー変換デバイス/変換器または薄膜-空気圧パワー変換デバイス/変換器としても知られる)は、閉パワーテイクオフシステムに接続されたセル内に圧力差を生成するために(変換器の上方の水の垂直高さに応じて)波の下方の異なる場所での流体力学的圧力の差を使用する。圧力差は、タービンおよび発電機へエネルギーを伝達する閉パワーテイクオフシステム内の低慣性、低摩擦エネルギー伝達流体(例えば、空気)の流れをもたらす。
【0004】
WECセル薄膜をはさんで波が誘起する流体力学的圧力変動の大きさは、水面下のWECセルの深さに依存する。水面下の深さが増加するにつれて、波が誘起する水の軌道運動そしてしたがって流体力学的圧力変動は減衰する。結果として、WECのエネルギー変換は、一般に深さとともに低下する。
【0005】
同様に、WECセルに加えられる潜在的に大きな非線形の波浪負荷は、一般に深さとともに減少する。
【0006】
Bombora社のmWave(商標)システムは、水中に沈められた圧力差変換器の例であり、そして海底に載置された一連の空気充填型セルを特徴とする。
【0007】
海底に載置されると、例えば、コンクリートプラットフォーム上にまたは高くしたパイル上に載置されると、WECセルにより経験される流体力学的圧力変動および波浪負荷は、上に説明したようにセルの上方の水の深さに依存する。WECが潮汐水中にまたは顕著な気象が誘起する水深の揺らぎを受ける水中に載置されるところでは、WECセルの上方の水の深さ、したがって、セルが受ける流体力学的圧力変動/波浪負荷は、著しく変わることがある。WECセルにより経験される流体力学的圧力変動のこの変動では、WECの性能(すなわち、エネルギー変換)の変動になる。
【0008】
本明細書の
図1に示したように、直線的な(長手方向)軸を有するWECは、「ヘッディング」hを有すると言われ、ここでは、ヘッディングは、長手方向軸が入射波の方に向けられた方向である。入射角αは、波が到来する方向とヘッディングhとの間の内角であり、そしてこの角度は、WECの波長比および露出される幅Wを決定することによりWECに加えられる波浪負荷に影響を及ぼす。波長比(L’/λ)は、波が到来する方向に合わせられた方向のWECの長さL’を波の波長λで割り算したものである。露出される幅Wは、波伝播方向に垂直な方向のWECの大きさである。
【0009】
波長比が(入射角を減少させることによって)増加するので、WEC効率は増加する。しかしながら、波長比を増加させることは、露出される幅を減少させる効果を持ち、これが変換のために利用可能な入射波エネルギーを減少させる。したがって、ヘッディング/入射角は、入射波エネルギー曝露とWEC効率をバランスさせるために競合する要求を最適化するように選択されなければならない。
【0010】
海底に載置されるWECは、優勢な波方向に対して固定された向き/ヘッディングを有し、したがって、変化する局所的な状態に対するヘッディングの最適化は不可能である。
【0011】
浅い海水の(例えば、深さ20m未満のところの)海底に載置されたまたはつながれたWECは、水の容易な光侵入の結果として生物付着を受け易い傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
WECの性能およびWECに加えられる波浪負荷を制御する方法を提供する要望がある。また、WEC上の生物付着を減少させる方法を提供する要望もある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様では、長手方向軸と薄膜を有する少なくとも1つのセルとを有する薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)のためのエネルギー変換および/または加えられる波浪負荷を制御する方法が提供され、前記方法は、
WECのところの局所的な海面状態および/またはWEC状態値に関するデータを取得しそして値を決定することと、
上記取得したデータから決定される上記値に応じて、静止水での自由表面に対する少なくとも1つのWECセルの垂直位置および/または上記WECの上記長手方向軸と入射波方向との間の角度とのうちの一方または両方を調節することと
を含む。
【0014】
本発明者らは、局所的な海面状態(すなわち、現在のもしくは予測される局所的な海面状態)および/またはWEC状態に基づいてWECのセルの垂直位置(例えば、水没度)を調節することが、WEC効率と過大な波浪負荷からの保護との間のバランスを最適化できること、すなわち、WEC効率が波浪負荷限度内で最大化されることが可能であることを見出した。同様に、現在のまたは予測される局所的な海面状態に基づいてWEC変換器の入射角を調節することが、WEC効率と入射波エネルギー曝露との間のバランスを最適化できる。
【0015】
任意選択の特徴が、ここで述べられる。これらは、別々でもまたはいずれかの態様との任意の組み合わせでも適用可能である。
【0016】
WECが直線的なWECであるまたは少なくとも1つの直線部分を含む場合に、WECの長手方向軸は、直線的なWECの直線延長線(長さ次元)とまたは直線部分のうちの少なくとも1つの直線的な延長線(長さ次元)と実質的に一直線になる。多数の直線部分がある場合には、長手方向軸は、最も長い直線部分の軸を含むことがある。
【0017】
WECが湾曲したWECである場合には、長手方向軸は、WECにより形成される弧を横切ることがある。例えば、長手方向軸は、弧を横に切断するように弧の半径に沿って延びることがある。長手方向軸は、(実質的に等しい角度に各々が対する)2つの実質的に等しい部分へと弧を横に切断することがある。例えば、WECが半円形の弧を形成する場合には、長手方向軸は、半円形の半径に沿って延びることがあり、そして実質的に等しい角度(例えば、90度付近の角度)に各々が対する2つの部分へとWECを分割するようにWECにより形成された弧を横に切断することがある。
【0018】
垂直位置は、時間平均した垂直位置、例えば、静止水での平均自由表面より下のWECセルの時間平均した水没深さまたは静止水での平均自由表面より上のWECの時間平均した離水高さである。
【0019】
好ましい実施形態では、セルの垂直位置(例えば、水没度/離水度)を調節することは、海底の方へまたは海底から遠くへセル全体を上昇させることまたは下降させることを含む。例えば、セルの垂直位置を調節することは、水平方向に対して薄膜の傾きを実質的に変えずに海底の方へまたは海底から遠くへセルを上昇させることまたは下降させることを含むことができる。
【0020】
WECが、複数のセル、例えば、長手方向軸に平行な方向に互いに隣り合う複数のセルを備える場合には、方法は、複数のセルについての垂直位置を調節すること(例えば、好ましい水没深さ/離水高さを維持すること)を含むことができる。方法は、複数のセルについて垂直位置(水没度/離水度)を同時に調節すること/維持することを含むことができる。例えば、複数のセルの水没度/離水度を調節することは、水平方向に対する薄膜の傾きを実質的に変えずに海底の方へまたは海底から遠くへ複数のセルを同時に上昇させることまたは下降させることを含むことができる。
【0021】
疑義を避けるために、長手方向軸が水平軸であってもよい一方で、長手方向軸は、縦方向に傾いたWEC(WECの一方の長手方向端部部分がWECの他方の長手方向端部部分よりも垂直方向に高いまたは低い場合)の垂直位置(および/または入射角)を調節することもまたこの開示の範囲内に含まれるように、水平から傾けられることもあることが認識される。
【0022】
さらにその上、WECは横方向に傾けられることがある、すなわち、WECの長手方向軸に対して垂直に延びる横方向軸は、WECの一方の横方向部分/辺/端部が対向する横方向部分/辺/端部よりも垂直方向に高いように、水平から傾けられることがある。縦方向に傾いたおよび/または横方向に傾いたWECに関して、垂直位置は、縦方向に傾いた/横方向に傾いたWECの平均垂直位置である。
【0023】
垂直位置および/または入射角の調節は、WECの縦方向の傾きおよび/または横方向の傾きの調節がないことが好ましい。
【0024】
「WEC」への言及は、WECのセルにだけ言及することがある、またはパワーテイクオフシステム(例えば、タービン)を任意選択で含むことがある。
【0025】
WECは、完全に水中に沈められたWECであってもよいし、または(WECの少なくとも一部(例えば、パワーテイクオフシステムもしくは上記/各々のセル薄膜の一部分)が少なくとも部分的に設置後の静止水における平均表面より上の状態で)半分水中に沈められたWECであってもよい。
【0026】
WECのところの局所的な海面状態値および/またはWEC状態値を決定するために、方法は、
潮汐状態、気象条件、波浪高さ、波浪周期、波浪方向、波エネルギー、海流強度/方向、WEC上の波浪負荷、WEC深さ、WEC内部の流体圧/体積/流量、WEC弁位置および負荷、WEC薄膜位置、負荷および形状、タービン/発電機速度/トルクならびにWECのエネルギー変換のうちの1つまたは複数に関係するデータを取得することを含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、方法は、WEC上にまたは近くに載置された少なくとも1つのセンサからデータを取得することを含む。これらの実施形態では、取得したデータから直接的に局所的な海面状態値を決定することが可能なことがある。
【0028】
あるいは(または加えて)、方法は、WECから遠くの場所のところに設けられた少なくとも1つのセンサからおよび/またはインターネット天気予報データからデータを取得することを含むことができる。これらの実施形態では、局所的な海面状態値を決定するために遠隔場所のところで取得したデータ/インターネットデータに伝達関数を適用することが必要なことがある。伝達関数は、遠隔センサとWECとの間の距離を少なくとも補償する。
【0029】
方法は、例えば、ルックアップテーブルなどのデータセットを使用して決定した局所的な海面状態値に対する垂直位置(水没度/離水度)に関する最適値もしくは最適範囲および/または入射角に関する最適値もしくは最適範囲を識別することを含むことができる。データセットは、物理的に試験することを背景にして較正されることがあるWEC性能の数値モデルを使用して始めは生成されることがある。これらの実施形態では、方法は、WECの現在の垂直位置および/または現在の入射角を決定することを含み、これらが最適値/最適範囲からはずれる場合には、方法は最適値に一致するようにまたは最適範囲内になるように垂直位置および/または入射角のうちの一方または両方を調節することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、方法は、測定した負荷および/またはWECエネルギー変換に基づいて訂正した最適値または訂正した最適範囲を用いて垂直位置(水没度/離水度)および/または入射角に関する最適値または最適範囲を上書きすることをさらに含む。例えば、測定した負荷がしきい値負荷値を超える場合には、最適水没度/離水度もしくは最適範囲の下限(最小の水没度)が増加される(WECが海底の方へ下げられる)ことがあるおよび/または最適入射角もしくは入射角の上限が許容可能な限度内に負荷を減少させるために減少される(WEC軸は波が来る方向の方へ動かされる)ことがある。訂正した最適値/範囲は、既存の値/範囲を上書きする。
【0031】
同様に、測定したWEC性能(エネルギー変換)がしきい値性能値よりも低い場合には、最適垂直位置(水没度/離水度)もしくは最適範囲の上限(最大深さ)が、減少されることがある(WECが海底から遠くへ上昇される)および/または最適入射角もしくは最適入射角範囲の下限(最小角度)が、(波浪負荷許容範囲内で)パワー変換を増加させるように調節されることがある。訂正した最適値/範囲は、既存の値/範囲を上書きする。
【0032】
このようにして、最適値/範囲のデータセットが、観測される動作条件に基づいて経時的に更新されることが可能である。
【0033】
方法がWEC状態値を決定するためにデータを取得することを含むいくつかの実施形態では、方法は、セル体積、薄膜負荷、構造的負荷、セル流体圧力、WEC弁位置、セル薄膜位置および形状、タービン/発電機速度/トルクのうちの1つまたは複数に関するデータを(例えば、セル/WEC上に載置された少なくとも1つのセンサから)取得することを含むことができる。
【0034】
取得されたデータは、パワー変換WEC状態値および/または負荷WEC状態値を決定するために使用されることがある。
【0035】
方法は、WEC状態値が最適WEC状態値(例えば、最適パワー変換WEC状態値および最適負荷WEC状態値)を有するかまたは最適(例えば、パワー変換および負荷)WEC状態値範囲内であるかを判断することと、WEC状態値が最適(例えば、パワー変換および負荷)WEC状態値からはずれるかまたは最適(例えば、パワー変換および負荷)WEC状態値範囲の外である場合に、垂直位置(水没度/離水度)および入射角のうちの一方または両方を調節することとを含むことができる。
【0036】
例えば、取得したデータが最適パワー変換WEC状態値および最適パワー変換WEC状態値範囲よりも低いパワー変換WEC状態値を決定する場合に、垂直位置(水没度/離水度)は、パワー変換を増加させるために減少されることがあるおよび/または入射角は、波浪負荷許容範囲内でパワー変換を最適化するように調節されることがある。
【0037】
同様に、取得したデータが、最適負荷WEC状態値または最適負荷WEC状態値範囲よりも上である負荷WEC状態値を決定する場合に、水没度が増加されることがあるおよび/または入射角が過大な負荷を減少させるために減少されることがある。
【0038】
いくつかの実施形態では、水没度および/または入射角は、WEC状態値(例えば、パワー変換および/または負荷WEC状態値)が最適(例えば、パワー変換/負荷)WEC状態値に一致するまでまたは最適(例えば、パワー変換/負荷)WEC状態値範囲内になるまで調節される。これは、水没度/入射角を調節した後でさらなるデータを取得することと、訂正したWEC状態値(例えば、パワー変換および/または負荷WEC状態値)を決定することと、最適(例えば、パワー変換および/または負荷)WEC状態値/範囲に対して訂正した(例えば、パワー変換および/または負荷)WEC状態値を比較することとにより確かめられることがある。これは、訂正した(例えば、パワー変換および/または負荷)WEC状態値が最適(例えば、パワー変換および/または負荷)WEC状態値と一致するまでまたは最適(例えば、パワー変換および/または負荷)WEC状態値範囲内になるまで繰り返されることがある。
【0039】
第2の態様では、長手方向軸と薄膜を有する少なくとも1つのセルとを有する薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)が提供され、静止水での自由水面に対して少なくとも1つのWECセルの垂直位置(例えば、水没度/離水度)を調節するためおよび/または上記WECの上記長手方向軸と入射波方向との間の入射角を調節するための調節アクチュエータをさらに備える。
【0040】
調節アクチュエータは、海底の方へおよび海底から遠くへセル全体を上昇させそして下降させるように構成されることがある。例えば、調節アクチュエータは、水平方向に対する薄膜の傾きを実質的に変えずに海底の方へおよび海底から遠くへセルを上昇させそして下降させるように構成されることがある。
【0041】
WECは、それぞれの薄膜を各々が有する複数のセル、例えば、長手方向軸に平行な方向に互いに隣り合う複数のセルを備えることができ、調節アクチュエータが、複数のセルに関する垂直位置(水没度/離水度(例えば、好ましい水没深さの維持))を調節するように構成されることがある。調節アクチュエータは、複数のセルに関する垂直位置(水没度/離水度)を同時に調節する/維持するように構成されることがある。例えば、調節アクチュエータは、水平方向に対する薄膜の傾きを実質的に変えずに海底の方へまたは海底から遠くへ複数のセルを同時に上昇させそして下降させるように構成されることがある。
【0042】
「WEC」への言及は、WECのセルに言及するだけであっても、またはパワーテイクオフシステム(例えば、タービン)を任意選択で含むこともできる。
【0043】
WECは、完全に水中に沈められたWECであってもよく、または(据え付けの後で静止水の自由表面よりも少なくとも部分的に上方のWECの少なくとも一部(例えば、パワーテイクオフシステムまたは上記/各々のセル薄膜を有する))半分水中に沈められたWECであってもよい。
【0044】
一般に、垂直安定位置は、すべての垂直な力(すなわち、上向き方向または下向き方向)の和がゼロに等しいときに実現されることが可能である。1つの垂直な力が垂直位置の関数であるときに、垂直な力のうちの別の1つを変えることにより垂直位置を制御することが可能である場合がある。例えば、位置の関数である1つの力は、表面を突き抜ける構造物に対する浮力である。例えば、垂直位置の関数ではない1つの力は質量である。
【0045】
いくつかの実施形態では、調節アクチュエータは、内部チャンバを有する少なくとも1つの浮力素子を備える。内部チャンバ内の水の体積は、WECの浮力または重量の変化をもたらすために可変であってもよく、したがってWECの垂直位置の変化をもたらす。
【0046】
いくつかの実施形態では、上記または各々の調節アクチュエータは、浮力素子の内部チャンバの内側の空気および水の相対的な体積を調節するために少なくとも1つのポンプおよび/または少なくとも1つの弁を備えることができる。
【0047】
例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの浮力素子は、解放下端部(海底に最も近い端部である下端部)を有する。これらの実施形態では、調節アクチュエータは、空気に曝される浮力素子の(封じられた)上端部に載置されたポンプおよび弁を備える。弁は、静水圧下で内部チャンバから空気を抜き取るために使用されることがあり、したがって内部チャンバ内の水位が上昇することを可能にする。このことは、内部チャンバ内の空気の体積を減少させ、したがってWECの浮力を小さくさせ、そしてしたがってWECを海底に向けて移動させる。ポンプは、浮力素子の内部チャンバの中へと空気を注入するために使用されることがあり、したがってチャンバ内の空気の体積を増加させ、そしてWECが海底から遠くへ移動するようにWECの浮力を大きくする。
【0048】
他の実施形態では、上記/各々の浮力素子は、露出し封じられた上端部に載置された弁および水中に沈められ封じられた下端部に載置されたポンプまたは弁を有する封じられた内部チャンバを備える。上側弁は、内部チャンバの中へのおよび外への空気の流れを可能にするために使用されることがあり、一方で、ポンプまたは下側弁は、浮力素子(したがってWEC)の質量の変化をもたらすように内部チャンバの中への水の流れを可能にするために使用されることがある。浮力素子内の水(バラスト)の体積が増加するにつれて、質量が増加し、そしてWECが海底の方へ移動する。浮力素子内の水(バラスト)の体積は、内部チャンバ内の水の高さを静止水の平均自由表面よりも上に上昇させ得ることに留意すべきである。
【0049】
いくつかの実施形態では、調節アクチュエータは、一方の端部でWECに取り付けられそして他方の端部で海底(または係留部/いかり)に取り付けられた少なくとも1つのテザーを備える。少なくとも1つのテザーは、長さを変えられることがある。
【0050】
いくつかの実施形態では、テザーは、弾性的であってもよく、例えば、弾力性のあるばねであってもよい。静的平衡状態では、弾力性のあるテザー内部の引張りの下向きの力(海底に向けて作用する)は、浮力素子の浮力に等しい。海底に向けてWECを動かすために、内部チャンバ内のバラスト(例えば、水)が、(例えば、水ポンプおよびエア抜き弁を使用して)増加される。
【0051】
いくつかの実施形態では、テザーは、テザーの重量と(浮力素子の内部のバラスト(水)の量の変動を介して変えることができる)WECの重量との間のバランスがWECの水没深さを制御するために使用されてもよいように、非浮揚性テザーを備える。垂直位置は、浮力素子から水を取り除くことによって大きくされることがあり、これは浮力素子内に蓄えられたガスを膨張させることがある。任意選択で、ガスは、ガス源(例えば、圧縮ガス源)から浮力素子へと導入されてもよい。
【0052】
テザーが非浮揚性テザーである場合に、テザーの一方の端部がWECに取り付けられることがあり、反対の端部の動きは、海底上のテザーの端部の重量により海底上に不動化されることがある。
【0053】
いくつかの実施形態では、垂直の力のいずれもが位置の関数でないことがあり、そして他の手段が垂直位置を制御するために使用されることがある。
【0054】
テザーは、テザーの長さの変化をもたらすために(例えば、WEC/浮力素子に取り付けられた)ウィンチまたは水圧ラムと関係付けられることがある。
【0055】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの調節アクチュエータが、少なくとも1つのラックおよびピニオンを備える。ピニオンは、浮力素子またはWEC上に載置されることがあり、例えば、海底から垂直に延びるラックをともなう。他の実施形態では、ピニオンまたはラックのいずれかが、WECまたは浮力素子のうちの一方に載置され、ピニオン/ラックのうちの他方が、WECまたは浮力素子のうちの他方に載置される。これが、浮力素子に対するWECの垂直位置の調節を可能にする。これらの実施形態では、浮力素子は、上に説明したような1つまたは複数のテザーをさらに備えることができる。このように、調節アクチュエータは、少なくとも1つのテザー(例えば、少なくとも1つの浮力素子に取り付けられ、海底に対する浮力素子およびWECの垂直位置の調節を可能にする)および少なくとも1つのラックおよびピニオン(浮力素子に対するWECの高さ調節を可能にする)の両方を備えることができる。
【0056】
調節アクチュエータは、入射角を調節するためであってもよい。調節アクチュエータは、WECを係留部に接続するテザーの長さを制御するウィンチを備えることができる。ウィンチは、WEC上に、例えば、WECの端部部分の角などのWECの端部部分上に設けられることがある。係留部は、WECの入射角がウィンチによるテザーの長さの変化で調節されるように設置されることがある。テザーの長さが調節されるにつれて、WECは、海底に(直接または間接的に)取り付けられた回転軸の回りを回転する。
【0057】
調節アクチュエータは、入射角の調節のための複数の係留部、ウィンチおよびテザーを備えることができる。
【0058】
第3の態様では、第2の態様に関して説明したようなWECならびにエネルギー変換および/または加えられた波浪負荷を制御するための制御システムを備えるWECシステムが提供され、前記制御システムが、
データを取得するためのデータ源と、
上記WECのところの局所的な海面状態または上記WECのWEC状態に関する値を決定するために上記取得したデータを使用するためのコントローラと
を備え、
上記コントローラが、上記取得したデータから決定した上記値に応じて、上記WECの垂直位置および/または入射角のうちの一方または両方を調節するために上記調節アクチュエータへ信号を送るように構成される。
【0059】
上記データ源は、潮汐状態、気象条件、波浪高さ、波浪周期、波浪方向、波エネルギー、海流強度/方向、WEC上の波浪負荷、WEC深さ、WEC内部の流体圧/体積/流量、WEC弁位置および負荷、WEC薄膜位置、負荷および形状、タービン/発電機速度/トルクならびにWECのエネルギー変換のうちの1つまたは複数に関するデータを取得するように構成されることがある少なくとも1つのセンサであってもよい。
【0060】
少なくとも1つのセンサは、WEC上にまたは近くに載置されることがある。これらの実施形態では、コントローラは、取得したデータから直接的に局所的な海面状態を決定することができる。
【0061】
あるいは(または加えて)、データ源は、WECから遠くの場所に設けられた少なくとも1つのセンサおよび/またはインターネット天気予報データを備えることがある。これらの実施形態では、コントローラは、局所的な海面状態値を決定するために、遠隔場所のところで取得したデータ/インターネットデータに伝達関数を適用することがある。伝達関数は、少なくとも遠隔センサとWECとの間の距離を補償する。
【0062】
コントローラは、垂直位置(例えば、水没度/離水度)に関する最適値もしくは最適範囲および/または決定した局所的な海面状態値に関する入射角の最適値もしくは最適範囲を含む(例えば、ルックアップテーブルの形態での)データセットを記憶するメモリを備えることができる。
【0063】
制御システムは、初期据え付け位置に対する垂直位置/入射角の変化を追跡するために慣性測定ユニット(IMU)を使用して現在の垂直位置(水没度/離水度)および/または現在の入射角を決定できる。しかしながら、好ましくは、制御システムは、現在の垂直位置(水没度/離水度)および/または現在の入射角を決定するための(例えば、WEC上に載置された)少なくとも1つの垂直位置センサおよび/または入射角センサを備えることができる。
【0064】
垂直位置センサは、外部圧力センサまたは超音波ドップラー流速計(ADCP:Acoustic Doppler Current Profiler)であってもよい。入射角センサは、フラックスゲートコンパスまたはADCP(例えば、垂直位置センサおよび入射角センサの両方として作動することがある単一ADCPセンサ)であってもよい。
【0065】
さらにその上、ADCPセンサはまた、海面状態データを取得するためのセンサとしても作動することがある。
【0066】
コントローラは、現在の垂直位置(水没度/離水度)および/または入射角をメモリ内の最適値/範囲と比較するように、ならびにこれらが最適値/範囲からはずれる場合に、最適値と一致するようにまたは最適範囲内になるように垂直位置(水没度/離水度)および/または入射角のうちの一方または両方を調節するために調節アクチュエータへ信号を送るように構成されることがある。
【0067】
いくつかの実施形態では、コントローラは、測定した負荷および/またはWECエネルギー変換に基づいて訂正した最適値または訂正した最適範囲を用いて垂直位置(例えば、水没深さ/離水高さ)および/または入射角に関する最適値または最適範囲を上書きするように構成される。このようにして(第1の態様に関して上に述べたように)、最適値/範囲のデータセットは、観測される動作条件に基づいて経時的に更新されることがある。制御システムは、少なくとも1つの負荷センサおよび/またはパワー変換センサを備えることができる。
【0068】
コントローラがWEC状態値を決定するためにデータ源において取得したデータを使用するように構成されるいくつかの実施形態では、データ源は、セル上に載置されそしてセル体積、薄膜負荷、構造的負荷、セル流体圧力、WEC弁位置、セル薄膜位置および形状、タービン/発電機速度/トルクのうちの1つまたは複数に関するデータを取得するように構成された、少なくとも1つのセンサを備えることができる。
【0069】
コントローラは、パワー変換WEC状態値および/または負荷WEC状態値を決定するように構成されることがある。
【0070】
コントローラは、最適WEC状態値(例えば、最適パワー変換WEC状態値および/もしくは最適負荷WEC状態値)ならびに/または最適(例えば、パワー変換および/もしくは負荷)WEC状態値範囲を記憶するメモリを備えることができる。コントローラは、WEC状態値が最適(例えば、パワー変換および/もしくは負荷)WEC状態値に一致するかまたは最適(例えば、パワー変換および/もしくは負荷)WEC状態値範囲内であるかを判断するように、ならびにWEC状態値が最適値からはずれるかまたは最適範囲の外である場合に、垂直位置(水没度/離水度)および/または入射角のうちの一方または両方を調節するために調節アクチュエータへ信号を送るように構成されることがある。
【0071】
いくつかの実施形態では、制御システムは、閉ループ制御システムまたはフィードバック制御システムであり、そしてWEC状態値(例えば、パワー変換および/または負荷WEC状態値)が最適(例えば、パワー変換/負荷)WEC状態値に一致するまでまたは最適(例えば、パワー変換/負荷)WEC状態値範囲内になるまで(調節アクチュエータを介して)垂直位置(水没度/離水度)および/または入射角を制御するように構成される。
【0072】
第4の態様では、本発明は、少なくとも1つのセル薄膜を空気に定期的に曝すことによって、薄膜を有する少なくとも1つのセルを備える薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)の生物付着を減少させる方法を提供する。
【0073】
本発明者らは、少なくとも1つのセル薄膜を空気に定期的に曝すことによって、大部分の生物付着種は(潮間帯に存在するものでさえ)水よりも上の長い露出で生き残ることができないので生物付着を減少させることを見出した。
【0074】
WECが、それぞれの薄膜を各々が有する複数のセル、例えば、長手方向軸に平行な方向に互いに隣り合う複数のセルを備える場合に、方法は、複数のセル薄膜を露出させることを含むことができる。方法は、複数のセル薄膜を同時に露出させることを含むことができる。
【0075】
WECは、完全に水中に沈められたWECであってもよいし、または(WECの少なくとも一部(例えば、パワーテイクオフシステム)が少なくとも部分的に設置後の静止水の自由表面より上の状態で)半分水中に沈められたWECであってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも6時間、例えば、少なくとも15時間または20時間または24時間などの少なくとも10時間または12時間であってもよい予め定められた期間にわたって少なくとも1つのセル薄膜を空気に定期的に曝すことを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも3か月毎に、例えば、2か月毎にまたは毎月セル薄膜を空気に曝すことを含むことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも毎月少なくとも6時間にわたりセル薄膜を露出させることを含む。
【0079】
他の実施形態では、方法は、少なくとも3か月毎に少なくとも24時間にわたりセル薄膜を露出させることを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、方法は、WECのところでの(現在のまたは予測される)局所的な状態に関するデータを取得することおよび値を決定することと、局所的な状態値に応じて、少なくとも1つのセル薄膜を空気に曝すことを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、方法は、局所的な状態値をしきい値状態値と比較することと、局所的な状態値がしきい値局所的状態値よりも小さい場合に、セル露出を実行するために調節アクチュエータへ信号を送ることとを含む。
【0082】
局所的な状態値がしきい値状態値よりも大きい場合には、垂直位置(水没深さ)が維持され、そしてデータ取得、局所的な状態値の決定、およびしきい値局所的状態値との比較のステップは、局所的な状態値がしきい値局所的状態値よりも低くなるまで予め定められた遅延の後で繰り返される。
【0083】
いくつかの実施形態では、取得したデータは、波浪状態(例えば、波浪高さおよび/または波浪負荷)に関するデータであってもよく、局所的な波浪状態値が穏やかな波浪状態を示しているしきい値波浪状態値(例えば、しきい値(最大)波浪高さおよび/またはしきい値(最大)波浪負荷)よりも低い値を有する場合に、セル露出が実行されることがある。このことは、損傷を与える波浪負荷を表している波浪状態の間中のセル薄膜の露出の防止に役立つ。
【0084】
いくつかの実施形態では、取得したデータは、気象条件に関するデータであってもよく、そして局所的な気象条件値が最大雲量レベルを示しているしきい値気象条件値よりも低い値を有する場合に、セル露出が実行されることがある。このことは、最小雲量の間中、すなわち、生物付着種の駆除を加速する日当たりの良い条件の間中のセル薄膜の露出を確実にする。
【0085】
いくつかの実施形態では、WEC上にまたは近くに載置された少なくとも1つのセンサからデータを取得することを含む。これらの実施形態では、取得したデータから直接的に局所的な(波浪および/または気象)状態値を決定することが可能な場合がある。
【0086】
あるいは(または加えて)、方法は、WECから遠くの場所に設けられた少なくとも1つのセンサからおよび/またはインターネット天気予報データからデータを取得することを含むことができる。これらの実施形態では、局所的な(波浪および/または気象)状態値を決定するために遠隔場所において取得したデータ/インターネットデータに伝達関数を適用することが必要なことがある。伝達関数は、遠隔センサとWECとの間の距離を少なくとも補償する。
【0087】
第5の態様では、薄膜を有する少なくとも1つのセルを有する薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)が提供され、上記少なくとも1つのセル薄膜を空気に定期的に曝すための調節アクチュエータをさらに備える。
【0088】
調節アクチュエータは、第2の態様に関して上に説明したようなものであってもよい。
【0089】
調節アクチュエータは、セル薄膜を露出させるために海底から遠くへセル全体を上昇させるように構成されることがある。例えば、調節アクチュエータは、水平方向に対して薄膜の傾きを実質的に変えずに海底から遠くへセルを上昇させるように構成されることがある。
【0090】
WECは、それぞれの薄膜を各々が有する複数のセル、例えば、長手方向軸に平行な方向に互いに隣り合う複数のセルを備えることができ、そして調節アクチュエータが複数のセルを上昇させるように構成されることがある。調節アクチュエータは、複数のセル薄膜を同時に露出させるために複数のセルを同時に上昇させるように構成されることがある。例えば、調節アクチュエータは、水平方向に対する薄膜の傾きを実質的に変えずに海底から遠くへ複数のセルを同時に上昇させるように構成されることがある。
【0091】
第6の態様では、第5の態様に関して説明したようなWECと、生物付着削減を制御するための制御システムとを備えるWECシステムが提供され、前記制御システムが、
データを取得するためのデータ源と、
上記WECのところの局所的な状態に関する値を決定するために上記取得したデータを使用するためのコントローラと
を備え、
上記コントローラが、上記取得したデータから決定される上記値に応じて上記セル薄膜を露出させるために上記調節アクチュエータへ信号を送るように構成される。
【0092】
データ源は、波浪状態(例えば、波浪高さ、波浪負荷)および/または気象条件のうちの1つまたは複数に関するデータを取得するように構成されることがある少なくとも1つのセンサであってもよい。コントローラは、局所的な波浪状態値および/または局所的な気象条件値を決定するように構成されることがある。
【0093】
少なくとも1つのセンサは、WEC上にまたは近くに載置されることがある。これらの実施形態では、コントローラは、取得したデータから直接的に局所的な(例えば、波浪および/または気象)状態値を決定することがある。
【0094】
あるいは(または加えて)、データ源は、WECから遠くの場所に設けられた少なくとも1つのセンサおよび/またはインターネット天気予報データを含むことがある。これらの実施形態では、コントローラは、局所的な(例えば、波浪および/または気象)状態値を決定するために、遠隔場所のところで取得したデータ/インターネットデータに伝達関数を適用することがある。伝達関数は、遠隔センサとWECとの間の距離を少なくとも補償する。
【0095】
コントローラは、しきい値局所的(例えば、波浪および/または気象)状態値を記憶するメモリを備えることができる。
【0096】
コントローラは、局所的な状態値をしきい値状態値と比較するように、および局所的な状態値がしきい値局所的状態値より低い値を有する場合に、セル露出を実行するために調節アクチュエータへ信号を送るように構成されることがある。
【0097】
しきい値波浪状態値は、穏やかな波浪状態を示している値(例えば、最大波浪高さおよび/または最大波浪負荷)であってもよい。コントローラは、局所的な波浪状態値をしきい値波浪状態値と比較するように、および局所的な波浪状態値がしきい値波浪状態値より低い値を有する場合に、セル露出を実行するために調節アクチュエータへ信号を送るように構成されることがある。
【0098】
しきい値気象条件値は、最大雲量レベルを示している値であってもよい。コントローラは、局所的な気象条件値をしきい値気象条件値と比較するように、および局所的な気象条件値がしきい値気象条件値より低い値を有する場合に、セル露出を実行するために調節アクチュエータへ信号を送るように構成されることがある。
【0099】
相互に排他的な場合を除いて、上記の態様のうちのいずれか1つに関係して説明した特徴またはパラメータが、いずれかの他の態様に適用される場合があることを当業者なら認識する。さらにその上、相互に排他的な場合を除いて、本明細書において説明したいずれかの特徴またはパラメータは、いずれかの態様に適用されてもよいおよび/または本明細書において説明したいずれかの他の特徴またはパラメータと組み合わせられてもよい。
【0100】
実施形態が、図を参照して、ここで単に例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図2】
図2は、方法/システムの開ループ例を示す図である。
【
図3】
図3は、方法/システムの閉ループ例を示す図である。
【
図4】
図4は、生物付着を減少させるための例を示す図である。
【
図5】
図5aおよび
図5bは、調節アクチュエータの第1の例を示す図である。
【
図6】
図6aおよび
図6bは、調節アクチュエータの第2の例を示す図である。
【
図7】
図7aおよび
図7bは、調節アクチュエータの第3の例を示す図である。
【
図8】
図8aおよび
図8bは、調節アクチュエータの第4の例を示す図である。
【
図9】
図9aおよび
図9bは、調節アクチュエータの第5の例を示す図である。
【
図11】
図11は、入射角を変えるための調節アクチュエータの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
図2は、長手方向軸とそれぞれの薄膜を各々が有する複数のセルとを有する完全に水中に沈めた薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)に関するエネルギー変換および/または波浪負荷を制御するための開ループ例を示す。WECは、コントローラを有する制御システムに関係付けられる。
【0103】
第1のステップでは、方法は、WEC上に載置されたセンサのところの波浪負荷に関するデータを取得すること1を含む。この実施形態では、さらなるステップが、遠隔場所のところのインターネットソースから潮汐データを所得すること2を含む。
【0104】
制御システムのコントローラは、WECのところの現在の潮汐高さを決定するためにインターネット潮汐データに伝達関数3を適用できる。コントローラはそのときには、WECのところの局所的な海面状態値を決定する4ために波浪負荷データおよび現在の波浪高さデータを使用する。
【0105】
コントローラは、各々の決定した局所的な海面状態値に対しての水没深さに関する最適範囲および入射角に関する(すなわち、入射波方向とWECの長手方向軸との間の入射角に関する)最適範囲を含むデータセット(ルックアップテーブル)を含むメモリを備える。
【0106】
方法は、現在の水没度および(例えば、深さセンサ/入射角センサを使用してまたはメモリに記憶された過去のデータから)現在の入射角を決定すること5を含み、そしてこれらが最適範囲内でない場合には、方法は、WECに関係付けられた調節アクチュエータを使用して最適範囲内になるように水没度および入射角を調節すること6を含む。
【0107】
図2には示されないが、方法は、測定した負荷およびWECエネルギー変換に基づいて訂正した最適範囲を用いて水没深さおよび/または入射角に関する最適範囲を上書きすること(例えば、範囲の上限および/または下限を上書きすること)をさらに含む。
【0108】
例えば、(波浪負荷センサを使用して測定される)測定した負荷がしきい値負荷値を超える場合には、許容可能な限度内まで負荷を減少させるために、最適水没範囲の下限(最小深さ)が大きくされることがある(すなわち、WECが海底の方に下げられる)。このようにして、最適範囲のデータセットが、観測される動作条件に基づいて経時的に更新されることがある。
【0109】
図3は、長手方向軸とそれぞれの薄膜を各々が有する複数のセルとを有する部分的に水中に沈められた薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)に関するエネルギー変換および/または加えられる波浪負荷を制御するための閉ループ例を示す。WECのパワーテイクオフシステムが露出される。WECは、コントローラを有する制御システムに関係付けられる。
【0110】
方法は、薄膜を装着したセンサを使用して薄膜負荷に関するデータを取得すること7、およびパワー変換WEC状態値を決定する8ために制御システムコントローラを使用することを含む。
【0111】
方法は、パワー変換WEC状態値が最適パワー変換WEC状態値範囲内であるかを判断すること9を含む。値が所望の範囲内である場合には、WECの深さおよび入射角が維持される10。しかしながら、パワー変換WEC状態が最適WEC状態値範囲の外である場合には、方法は、WECに関係付けられた調節アクチュエータを使用して水没度と入射角とのうちの一方または両方を調節すること11を含む。
【0112】
水没度および/または入射角は、パワー変換WEC状態値が最適パワー変換WEC状態値範囲内になるまで調節される。このことは、訂正したパワー変換WEC状態値を決定するために水没度/入射角を調節した後でさらなるデータを取得すること12により、そして訂正したパワー変換WEC状態値が所望のパワー変換WEC状態値範囲内であるかを判断すること9’により確認できる。これは、訂正したパワー変換WEC状態値が最適パワー変換WEC状態値範囲内になるまで繰り返される。
【0113】
図4は、それぞれの薄膜を各々が有する複数のセルを備える薄膜パワー変換波エネルギー変換器(WEC)の生物付着を減少させる方法を示す。
【0114】
方法は、WEC上に載置されたセンサを使用して波浪負荷に関するデータを取得すること13、および局所的な気象条件についてのデータを取得することを含む。このデータは、局所的な波浪状態値および局所的な気象条件値を決定する14ために使用される。
【0115】
局所的な波浪状態および局所的な気象条件値が、しきい値(最大波浪負荷)波浪状態値およびしきい値(最大雲量)気象条件値と比較され15、そして値の両方がしきい値の値より低い場合に、調節アクチュエータは、セル薄膜が6時間よりも長い予め定められた期間にわたって露出されるようにWECを上昇させる16ために使用される。
【0116】
局所的な波浪状態および局所的な気象条件値がしきい値の値よりも大きい場合には、水没深さは維持され、そして方法は、少なくとも局所的な波浪状態値がしきい値波浪状態値より小さくなるまで予め定められた遅延の後で繰り返される。
【0117】
露出方法は、1か月間隔で繰り返される。3か月毎に、予め定められた期間は、24時間まで延長される。
【0118】
図5以降は、
図2~
図4に示した例示の方法で使用されることが可能である調節アクチュエータの例を示す。
【0119】
図5aは、WEC20上の調節アクチュエータの第1の例を示す。調節アクチュエータは、内部チャンバ22a、22bを各々が有する対向する1つの浮力素子21a、21bを備える。
【0120】
各々の浮力素子21a、21bは、解放下端部23a、23b(海底に最も近い端部である下端部)を有し、そして調節アクチュエータは、空気に曝される浮力素子21a、21bの(封じられた)上端部26a、26bに載置されたポンプ24a、24bおよび弁25a、25bを備える。
【0121】
弁25a、25bは、静水圧下で内部チャンバ22a、22bから空気を抜き取るために使用され、したがって内部チャンバ22a、22b内の水位が(
図5bに示したように)上昇することを可能にする。このことは、内部チャンバ22a、22b内の空気の体積を減少させ、したがってWECの浮力を小さくさせ、そしてしたがってWECを海底に向けて移動させる。ポンプ24a、24bは、浮力素子21a、21bの内部チャンバ22a、22bの中へと空気をポンプで注入するために使用されることがあり、したがって内部チャンバ22a、22b内の空気の体積を増加させ、そして(
図5aに示したように)WECが海底から遠くへ移動するようにWECの浮力を大きくする。
【0122】
図6aおよび
図6bに示した例は、浮力素子21a、21bの下端部23a’、23b’が封じられそしてポンプ24a’、24b’が封じられた下端部23a’、23b’上に載置されることを除いて
図5aおよび
図5bに示したものと同様である。
【0123】
弁25a、25bは、内部チャンバ22a、22bの中へのおよび外への空気の流れを可能にするために使用されることがあり、一方でポンプ24a’、24b’は、浮力素子21a、21b(そしてしたがってWEC)の質量の変化を生じさせるように、内部チャンバ22a、22bの中への水の流れを可能にするために使用されることがある。浮力素子21a、21b内の水(バラスト)の体積が増加するにつれて、質量は増加しそしてWECは(
図6bに示したように)海底に向けて移動する。浮力素子21a、21bの内部チャンバ22a、22b内の水(バラスト)の高さが静止水での平均自由表面の上に上昇されてもよいことに留意すべきである。
【0124】
調節アクチュエータの第3の例が、
図7aおよび
図7bに示される。浮力素子21a、21bは、封じられそして空気で満たされる。各々の浮力素子は、テザー29a、29bが周囲に巻き付けられるウィンチ28a、28bを備える。テザー29a、29bの反対の端部は、係留部30a、30bに取り付けられる。テザー29a、29bは、WECの垂直位置を調節するためにウィンチをスイーングして長くされる(
図7a)または短くされる(
図7b)ことが可能である。
【0125】
図8aおよび
図8bに示した第4の例では、テザー29a’および29b’は、弾力性のあるばねで形成される。静的平衡状態では、弾性テザー29a’、29b’内部の引張りの下向きの力(海底に向けて作用する)は、(
図8aに示したように)浮力素子21a、21bの浮力に等しい。海底に向けてWECを動かすために、内部チャンバ22a、22b内のバラスト(水)が、
図8bに示したように(例えば、水ポンプおよびエア抜き弁-図示せず-を使用して)増加される。
【0126】
図9aおよび
図9bに示した第5の例では、テザー29a”、29b”は、チェーンであってもよい非浮揚性テザーを備える。(チェーンが海底で支えられている-
図9b参照-ときには小さい)テザー29a”、29b”の重量と(浮力素子21a、21b内部のバラスト(水)の量の変動を介して変わり得る)WECの重量との間のバランスは、WECの水没深さを制御するために使用されることが可能である。
【0127】
図10aおよび
図10bに示した最後の例では、調節アクチュエータは、海底から垂直に延びるそれぞれのラック32a、32bと協働する対向しているピニオンギア31a、31bを備える。
【0128】
調節アクチュエータは、水平方向に対して薄膜の傾きを実質的に変えることなく、海底の方へまたは海底から遠くへ複数のセルを同時に上昇させそして下降させるように構成される。
【0129】
図7a、
図7b、
図8a、
図8b、
図9aおよび
図9bに示したテザー実施形態は、テザーでつながれた浮力素子上のそれぞれのラックと協働するピニオンギアを有するWECを提供するために
図10a~
図10bに示したピニオン/ラック実施形態と組み合わせられてもよいことに留意すべきである。
【0130】
図11は、WEC20の入射角を調節するための調節アクチュエータを示す。この実施形態では、WEC20は、ピボット33のところで海底に結び付けられる。ウィンチ34が、WEC20の側端部の角に取り付けられる。ウィンチ34は、固定された係留部36にさらに結び付けられるテザー35に結び付けられる。テザー35は、入射角を大きくするためにウィンチにより短くされるまたは入射角を小さくするために長くされることがある。
【0131】
他の実施形態では、固定されたピボットの代わりに、第2のウィンチ/テザー/係留部配置が、反対の角のところの対向する側端部のところに設けられ、そして一方のテザーが長さを短くするにつれて、他方が長くなる。
【0132】
本開示は、上に説明した実施形態に限定されず、そして様々な修正および改善が本明細書において説明した概念から逸脱せずに行われ得ることが理解される。相互に矛盾する場合を除き、特徴のいずれかが、いずれかの他の特徴とは別々にまたは組み合わせて利用されてもよく、そして本開示は、本明細書において説明した1つまたは複数の特徴のすべての組み合わせおよび部分的組み合わせに拡張しそして含む。
【国際調査報告】