(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(54)【発明の名称】繊維を個別化するための装置およびこのような装置を備えた紡績装置
(51)【国際特許分類】
D01H 1/115 20060101AFI20230425BHJP
【FI】
D01H1/115 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557919
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2021057376
(87)【国際公開番号】W WO2021191184
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】102020108257.6
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー キストナー
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン キュパース
(72)【発明者】
【氏名】ピア ゼンドラー
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA18
4L056AA19
4L056BA01
4L056BA03
4L056BD12
4L056CA02
4L056CA04
4L056DA01
(57)【要約】
本発明は、供給されたスライバ端部の繊維を個別化するための装置(1)およびこのような装置(1)を含む紡績装置(2)に関する。装置(1)は、下流側に接続された開繊通路セグメント(6)の方向に向かって、供給されたスライバ端部を、流体を伴って収容しガイドするための入口通路セグメント(3)を備えた、圧力を加えることができる第1の中空体部分と、入口通路セグメント(3)に連通し、該入口通路セグメント(3)の下流側に配置された、流体を伴って供給されたスライバ端部を個別繊維に開繊するための開繊通路セグメント(6)とを有している。開繊通路セグメント(6)は、入口通路セグメント(3)に連通する環状の通路(10)を形成している。環状の通路(10)は、第1の貫通部幅を備えた通路入口(11)と、該通路入口(11)から離間した、第2の貫通部幅を備えた通路出口(12)とを有しており、環状の通路(10)の貫通部幅は、第1の貫通部幅から、通路入口(11)と通路出口(12)との間に配置された通路中心の中間の貫通部幅に至るまでの部分において、中間の貫通部幅が第1の貫通部幅よりも小さくなるように連続的に、または段階的に先細りしている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されたスライバ端部の繊維を個別化する装置(1)であって、該装置(1)が、
下流側に接続された開繊通路セグメント(6)の方向に向かって、供給されたスライバ端部を、流体を伴って収容しガイドするための入口通路セグメント(3)を備えた、圧力を加えることができる第1の中空体部分と、
前記入口通路セグメント(3)に連通し、該入口通路セグメント(3)の下流側に配置された、流体を伴って供給された前記スライバ端部を個別繊維に開繊するための前記開繊通路セグメント(6)と
を含んでおり、
前記開繊通路セグメント(6)が、前記入口通路セグメント(3)に連通する環状の通路(10)を形成しており、該通路(10)が、第1の貫通部幅を備えた通路入口(11)と、該第1の通路入口(11)から離間した、第2の貫通部幅を備えた通路出口(12)とを有しており、前記環状の通路(10)の前記貫通部幅は、前記第1の貫通部幅から、前記通路入口(11)と前記通路出口(12)との間に配置された通路中心の中間の貫通部幅に至るまでの部分において、前記中間の貫通部幅が前記第1の貫通部幅よりも小さくなるように連続的に、または段階的に先細りしている、装置(1)。
【請求項2】
前記入口通路セグメント(3)が、前記スライバのための円錐形に延びる収容部分(4)を有している、請求項1記載の装置(1)。
【請求項3】
前記入口通路セグメント(3)が、前記スライバ端部を前記通路入口(11)に引き渡すための、前記円錐形に延びる収容部分(4)に接続する円筒形の貫通部分(5)を有している、請求項2記載の装置(1)。
【請求項4】
前記環状の通路(10)は、前記通路入口(11)の内径が、前記通路中心の、前記通路入口(11)の前記内径に対応している内径よりも小さいように形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項5】
前記開繊通路セグメント(6)の貫通部内に、前記環状の通路(10)を形成するためにコアエレメント(8)が支持されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項6】
前記コアエレメント(8)が、前記開繊通路セグメント(6)を前記コアエレメント(8)に結合する少なくとも1つの支持エレメント(9)を介して、かつ/または磁気的な支持力を介して前記開繊通路セグメント(6)内に支持されており、前記コアエレメント(8)は、磁気的な支持力により支持されている場合、前記開繊通路セグメント(6)内において前記コアエレメントを定義して支持するために前記磁気的な支持力に反応する材料を有している、請求項5記載の装置(1)。
【請求項7】
磁気的に支持された前記コアエレメント(8)が、周方向で回転可能に支持されている、請求項6記載の装置(1)。
【請求項8】
糸を紡績する紡績装置(2)であって、
請求項1から7までのいずれか1項記載の繊維を個別化する装置(1)が設けられており、環状の通路の貫通部幅が、中間の貫通部幅から第2の貫通部幅に至るまでの部分において、前記中間の貫通部幅が前記第2の貫通部幅より小さくなるように連続的に、または段階的にエッジなしに拡張されており、
かつ供給された個別繊維から糸を紡績するための紡績セグメント(13)を含む、圧力を加えることができる第2の中空体部分(20)が設けられており、該紡績セグメント(13)は、前記スライバ端部もしくは個別繊維のガイド方向で前記開繊通路セグメント(6)の下流側に、前記個別繊維を受け取るために前記開繊通路セグメントに連通して配置されており、前記紡績セグメント(13)には、糸を紡績するための、前記個別繊維を互いに渦動させる渦流を形成するための渦動手段が対応配置されている、紡績装置(2)。
【請求項9】
前記通路中心が、前記通路出口に対してよりも前記通路入口に対して近傍に配置されている、請求項9記載の紡績装置(2)。
【請求項10】
前記コアエレメント(8)が、前記通路中心の貫通部平面の近傍、または前記貫通部平面内に一致する底面を備えた、前記通路入口と前記通路出口との間に延びる二重円錐を形成する、請求項9または10記載の紡績装置(2)。
【請求項11】
前記渦動手段が、回転可能な前記コアエレメント(8)により形成されている、請求項7と組み合わせた請求項3記載の紡績装置(2)。
【請求項12】
前記紡績セグメント(13)が、前記渦動手段の構成部材として、または前記渦動手段として、前記紡績セグメント(13)内で渦動流を形成するために、該紡績セグメント(13)の内壁に環状に配置された少なくとも2つのインジェクタノズル(14)を有している、請求項9から11までのいずれか1項記載の紡績装置(2)。
【請求項13】
前記紡績装置(2)と、前記装置(1)または前記紡績セグメント(13)とが、一体的に、または多部分から、特に切削製造法および/または付加製造法により形成されている、請求項9から12までのいずれか1項記載の紡績装置(2)。
【請求項14】
個別化された繊維から糸を紡ぐ方法であって、
請求項9から13までのいずれか1項記載の紡績装置(2)が設けられており、
当該方法が、入口通路セグメント(3)内にスライバ端部を流体、特に圧縮空気を伴って供給するステップと、前記紡績セグメント(13)内に、開繊通路セグメント(6)を介して供給された個別繊維から糸を紡績するための渦動を形成するために渦動手段を作動させるステップとを有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給されたスライバ端部の繊維を個別化するための装置と、このような装置を含む紡績装置と、紡績装置を用いて糸を紡績する方法とに関する。
【0002】
繊維の個別化は、特にオープンエンド紡績法において、個別化された繊維から糸を紡績するために重要な予備段階である。オープンエンド紡績法は、たとえばリング紡績のような別の紡績法に対して、平行化された繊維から成るスライバが個別繊維へと開繊され、これらの個別繊維が、紡績糸の開繊された端部に継がれることによって特徴付けられている。このようなオープンエンド紡績法は、たとえばロータ紡績法によって示されている。ロータ紡績法では、平行化された繊維から成るスライバ端部が、回転している開繊ローラに供給され、この開繊ローラは、個別繊維をスライバ端部から分離し、連行し、かつ紡績ロータに通じる繊維ガイド通路に供給する。繊維ガイド通路を介して紡績ロータに供給された個別繊維は、紡績ロータのロータカップにより形成された繊維滑り壁に沿って、回転する紡績ロータのロータ溝内へと滑り、このロータ溝内で繊維は集められ、所望の糸繊度を形成するためにダブリングされ、かつロータ溝を介して繊維の集合体が、糸を紡績するために糸端へと供給される。このようなオープンエンドロータ紡績法は、たとえば独国特許出願公開第102008050071号明細書に基づいて公知である。
【0003】
オープンエンド紡績法には、さらに空気紡績法が含まれる。空気力学的な原理に基づくロータ紡績法とは異なり、空気紡績法は、空気動力学的な原理に基づいている。空気紡績法では、空気紡績ノズルユニットに、定義されてドラフトされたスライバが供給される。ドラフトは、長さ単位毎の繊維量の減少を引き起こす。空気紡績ノズルユニットは、渦流チャンバ内で渦流を形成するための下流側に接続されたインジェクタノズルを備えたスライバ入口を含んでおり、渦流チャンバ内に、糸形成エレメントの円錐部が突入し、この円錐部を糸ガイド通路が貫通しており、この糸ガイド通路を通じて、紡績された糸を空気ノズル紡績ユニットから導出することができる。渦流チャンバ内に形成された渦流を用いて、平行化された繊維から成る供給されたスライバの縁部繊維が、繊維複合体から完全に分離することなしに、円錐部の周囲に巻き付く。コア繊維は、糸ガイド通路内にガイドされる。糸ガイド通路の入口領域において、糸ガイド通路内へのコア繊維の搬送運動が、円錐体の周囲に延びる縁部繊維の連行を引き起こし、これらの縁部繊維が、平行化されたコア繊維の周囲に巻き付き、いわゆる巻付き繊維を成形し、これにより、平行化されたコア繊維と巻付き繊維とから糸が紡績されるようになっている。このような空気紡績法は、たとえば欧州特許出願公開第1584715号明細書に基づいて公知である。しかし、空気紡績法では、供給されたスライバの完全な個別化は達成されない。
【0004】
完全にロータ紡績法であろうとも、または部分的に空気紡績法であろうとも、繊維を個別化する工程は紡績糸の達成可能な品質に関して重要である。ロータ紡績法で開繊ローラにより達成可能な繊維の個別化は、相応の構造スペースを占める、複雑に構成された多数の構成要素を有する開繊ローラ装置を必要とする。同じことは、空気紡績法における空気紡績ノズルユニットにも当てはまる。
【0005】
本発明によって、特に、あまり複雑でない構成要素を備えた、繊維を個別化するための代替的な単純化された装置、紡績装置およびこの装置もしくは紡績装置を使用しながら糸を紡績する方法が提案される。
【0006】
本発明により提案された、繊維を個別化する装置は、下流側に接続された開繊通路セグメントの方向に向かって、供給されたスライバ端部を、流体を伴って収容しガイドするための入口通路セグメントを備えた、圧力を加えることができる中空体部分と、入口通路セグメントに連通し、この入口通路セグメントにスライバ端部のガイド方向で下流側に配置され、かつ流体を伴って供給されたスライバ端部を個別繊維に開繊するために形成されている開繊通路セグメントとを含んでいる。本発明によれば、開繊通路セグメントは、入口通路セグメントに連通する環状の通路を形成しており、この通路は、第1の貫通部幅を備えた通路入口と、この通路入口からスライバのガイド方向で離間した、第2の貫通部幅を備えた通路出口とを有しており、環状の通路の貫通部幅は、第1の貫通部幅から、通路入口と通路出口との間に配置された通路中心の中間の貫通部幅に至るまでの部分において、中間の貫通部幅が第1の貫通部幅よりも小さくなるように連続的に、または段階的に先細りしている。換言すると、環状の通路は、通路入口から、特に連続的にまたは段階的に、通路中心に向かう方向に狭まっている。開繊通路セグメントの本発明による幾何学的な構成は、通路中心に向かう方向でスライバ端部に随伴する流体の流速を、特に次第に上昇させることを可能にし、これにより、特に平行化された繊維から成る供給されたスライバを、個別繊維に開繊することができる。さらに、有利には、通路入口と通路中心との間の環状の通路が、層状の流体流の形成に適している内側表面を有している場合、分離し開繊された個別繊維の延伸を達成することができる。特に好適には、この環状の通路部分を画定する内側表面は、エッジなしに構成されている。エッジなしとは、本発明の趣旨において、乱流を十分に回避することができる、2つの表面部分間の移行部であると理解されたい。たとえば、これは、通路入口と通路中心との間の環状の通路の、特に通路入口から通路中心に至るまでの環状の通路の貫通部幅のできるだけ連続的な減少により得ることができる。
【0007】
本発明の好適な1つの実施形態によれば、入口通路セグメントは、スライバのための円錐形に延びる収容部分を有している。これによって、スライバを確実に供給することができ、既に環状の通路の方向で上昇する流速でガイドすることができる。このことは、スライバの供給時の潜在的な繊維玉を回避するために十分である、スライバの僅かな予備延伸を可能にする。入口通路セグメントの、ガイド方向に延びる長さは、開繊すべき繊維材料に応じて適切に選択することができる。
【0008】
さらに好適には、入口通路セグメントが、スライバ端部を通路入口に引き渡すための、円錐形に延びる収容部分に接続する、同一の直径を有する円筒形の貫通部分を含んでいる。同一の直径を有する円筒形の貫通部分の、ガイド方向に延びる長さに関連して、流速の増大を、需要に応じて、開繊すべき繊維材料に適合させることができる。さらに好適な構成では、少なくとも、装置の円筒形の貫通部分を含む構成部材、または代替的に入口通路セグメントが、交換可能な構成部材を形成することができ、これによって、開繊すべき種々異なる繊維材料に関する装置の可変性を保証することができる。
【0009】
好適には、通路入口の内径が、通路中心の、通路入口の内径に対応している内径よりも小さく形成されている。環状の通路の内側領域は、通路入口の領域における円錐先端部と、通路中心の領域における円錐底面とを備えた横断面での円錐形状をとっている。このような円錐形状は、通路入口内へスライバ端部の進入によりスライバからの個別繊維の分離を促進する。
【0010】
好適には、開繊通路セグメントの貫通部内に、環状の通路を形成するためにコアエレメントが支持されている。したがってコアエレメントは、開繊通路セグメントの内側の表面もしくは内壁と、コアエレメントの外側の表面もしくは外壁との間に、上述のような貫通部幅を備えた、環状の通路を形成するリングギャップが形成され、このリングギャップを通ってスライバもしくは開繊された個別繊維を、流体を伴ってガイドすることができるような外形を有している。
【0011】
さらに好適には、コアエレメントは、開繊通路セグメントをコアエレメントに結合する少なくとも1つの支持エレメントを介して支持される。したがって、支持エレメントは、開繊通路セグメントの貫通部の内壁から、コアエレメントの、対峙する外壁にまで延びている。支持エレメントは、環状の通路内において所望の箇所に配置されていてよい。支持エレメントは、流体流への不都合な影響を低減するために、好適には空気動力学的な形状を有している。本発明の趣旨において、空気動力学的な形状とは、流体流中の乱流を回避するためにできるだけ僅かな渦流しか引き起こさないか、または渦流を引き起こさないように適している形状であると理解される。たとえば、支持エレメントが、できるだけ空気動力学的なウェブにより形成されていてよい。たとえば支持エレメントは、横断面で見て、スライバもしくは個別繊維のガイド方向に延びる滴形を占めることができ、この滴形状は、さらに好適には、滴形先端部がスライバもしくは個別繊維のガイド方向とは逆に向いていて、かつ球形の滴側がガイド方向に向いているように構成されかつ配置されている。好適には、支持エレメントの滴状の構成は、代替的または付加的には、ガイド方向に対して横方向に、つまりコアエレメントと開繊通路セグメントとの間に延びていてよい。この場合、滴先端部が、コアエレメントに結合されており、滴形底部が、開繊通路セグメントの貫通部の内壁に結合されている。支持エレメントの滴状の構成は、開繊通路セグメントの詰まりをもたらし得る、支持エレメントへの繊維の巻付きの恐れを低減する。さらに好適には、支持エレメントの、ガイド方向に延びる延在長さは、供給されるスライバの開繊すべき個別繊維の最大の繊維長さよりも大きい。このことは、繊維巻付きのリスクのさらなる減少を可能にする。
【0012】
支持エレメントは、好適には、入口通路セグメントの方向に向いた端面側の端部を有していてよく、この端部は、入口通路セグメントの貫通部領域に配置されており、支持エレメントは、ガイド方向に沿って開繊通路セグメント内にまで延びている。換言すれば、支持エレメントは、装置の半径方向で、入口通路セグメントの貫通部の内壁からも、開繊通路セグメントの貫通部の内壁からも、コアエレメントの対峙する外壁にまで延びている。これに対して代替的には、支持エレメントの端面側の端部は、通路入口を含む平面からガイド方向に延びていてよく、支持エレメントは、専ら開繊通路セグメントの貫通部領域に配置されている。さらに好適には、支持エレメントは、コアエレメントに供給すべきスライバのための、入口通路セグメントおよび/または開繊通路セグメントの貫通部の内壁からコアエレメントの外側表面へと通じる斜面として形成されていてよい。したがって、この斜面は、ガイド方向に沿って、入口通路セグメントおよび/または開繊通路セグメントの内壁の表面側を、コアエレメントの外壁の表面側に結合し、これにより、ガイド方向に沿った、開繊すべきスライバのための定義されたガイド面部分を提供することができる。さらに、これによって同時に、コアエレメントを確実に支持することができる。
【0013】
入口通路セグメントの内壁からコアエレメントの外壁へと形成された斜面の好適な実施形態では、斜面によって形成されたガイド面部分が、好適にはスライバのガイドに適した形状を有していてよい。したがって、ガイド面部分は、たとえばガイド方向に沿って、かつ/またはガイド面部分に対して横方向に、平坦に、湾曲して、かつ/または段状に構成されていてよい。ガイド面部分は、さらに好適には、ガイド方向に沿って、斜面とコアエレメントの外壁との間でのスライバガイドのなだらかな移行部を可能にする勾配角を有していてよい。好適には、ガイド面部分の勾配角は、コアエレメントの、入口通路セグメントに面した前端部を起点として中間の貫通部幅に向かう方向で形成されたコアエレメントの外壁部分の勾配角よりも大きいか、同一であるか、または小さい。両勾配角間の差が小さければ小さいほど、斜面からコアエレメントの外壁へのスライバガイドの移行をよりなだらかに行うことができる。当然ながら、ガイド面部分が、種々異なる勾配角を備えて形成されていることも可能であり、互いに移行し合う少なくとも2つのガイド面中間部分の勾配角は、一方のガイド面中間部分が他方の勾配角より大きいかまたは他方のガイド面中間部分よりも小さくなるように互いに異なっていてもよい。好適には、ガイド面中間部分の勾配角は、ガイド方向での外壁部分の勾配角に対する量的な差が減少するように形成されており、これにより、なだらかな移行を可能にすることができる。
【0014】
特に好適な形式では、コアエレメントのより確実な支持のために1つよりも多くの支持エレメントが設けられている。たとえば、2つまたは3つ以上の支持エレメントが設けられていてよく、これらの支持エレメントは、コアエレメントの全周にわたって、特に円形または螺旋形の配置方向で、さらに好適には均等に分配されて配置されていてよい。
【0015】
支持エレメントに対して代替的または付加的に、コアエレメントを、好適には磁気的な支持力を介して開繊通路セグメント内に保持することができる。このことは、たとえば制御可能な電磁石によって実現されていてよく、この電磁石を介して、形成可能な磁力に反応するコアエレメントを開繊通路セグメント内において定義して、もしくは需要に応じて、かつ特に安定的に支持することができる。このためには、コアエレメントは、磁力に反応する材料を有しており、この材料は、コアエレメント内に、またはコアエレメントに接触して配置されており、磁力の作用を受けながら開繊通路セグメント内においてコアエレメントを安定的に支持することを可能にする。たとえば、コアエレメントは、このような材料から形成されていてもよいし、対応する材料を適切な場所に有していてもよい。
【0016】
さらに好適には、コアエレメントは、特に開繊通路セグメント内におけるその純粋に磁気的な支持中に、周方向で回転可能に支持されている。このことは、たとえば電磁石の対応する構成および制御により行うことができる。
【0017】
代替的に好適には、少なくとも1つの支持エレメントにより保持されたコアエレメントが、機械的な駆動手段を介して、または磁気的に作用する回転力を介して回転可能な部分エレメントを含んでいてよく、この部分エレメントは、コアエレメントの、通路入口とは反対の側に配置されていて、コアエレメントの別の部分エレメントによって回転可能に保持されており、この別の部分エレメントは、少なくとも1つの支持エレメントによって保持されている。機械的な駆動手段は、別の部分エレメント内に配置されていてよい。磁気回転駆動装置の場合、部分エレメントは、作用する磁気的な回転力と協働するために対応して構成されている。
【0018】
本発明の有利な1つの実施形態によれば、装置は、1つまたは複数の部分から形成されていてよく、装置の少なくとも一部は、さらに好適には、切削製造法および/または付加製造法によって形成されている。特に、付加製造法は、分離箇所および接続箇所を回避するために適している。可能な付加製造法は、たとえば、特にそれぞれ金属製の材料による、3D印刷、選択的レーザ溶融(SLM)、電子ビーム溶融(EBM)、結合剤噴射(BJ)、熱溶解積層法(FDM)、またはレーザ焼結であってよい。付加的にまたは代替的に、焼結および/または表面処理または表面加工も、需要に応じた品質を達成するために行うことができる。
【0019】
装置または少なくとも1つの装置部分が、セラミックから、かつ/またはステレオリソグラフィ(SLA)を用いて形成される方法が特に有利である。これに対して、装置または少なくとも1つの装置部分が金属から形成されることが望ましい場合、レーザ焼結、特に選択的レーザ焼結(SLS)による製造が好ましい。しかし代替的には、装置または少なくとも1つの装置部分を、別の形式で、特に金属から形成し、その後に焼結することもできる。さらに、少なくとも2つの装置部分、特に入口通路セグメントおよび開繊通路セグメントを、焼結によって、または別の形式で分離箇所なしに、かつ/または材料結合式に互いに結合することによって、複数の装置部分から成る装置を形成することが可能である。
【0020】
本発明の別の1つの態様によれば、上述の好適な1つの実施形態による繊維を個別化する装置を有する紡績装置であって、環状の通路の貫通部幅が、中間の貫通部幅もしくは通路中心から第2の貫通部幅もしくは通路出口に至るまでの部分において、中間の貫通部幅が第2の貫通部幅よりも小さくなるように連続的に、または段階的に拡張されている、紡績装置が提案される。換言すれば、中間の貫通部幅が、第2の貫通部幅より小さく形成されることにより、環状の通路は、通路中心から、特に連続的に、または段階的に通路出口に向かう方向で再び拡張する。さらに好適には、この環状の通路部分を画定する内壁は、上述の好適な形式でエッジなしに構成されている。このことは、分離された個別繊維の、定義され、かつ制御されたガイドを、付随する流体流における不都合な渦流を回避しながら可能にする。
【0021】
有利には、紡績装置はさらに、供給された個別繊維から糸を紡績するための紡績セグメントを有する、圧力を加えることができる第2の中空体部分を有しており、紡績セグメントは、スライバ端部もしくは個別繊維のガイド方向で開繊通路セグメントの下流側に、分離され、特に延伸された個別繊維を受け取り、ダブリングするために、この開繊通路セグメントに連通して配置されており、紡績セグメントには、本撚りされた紡績糸を形成するための、個別繊維を互いに渦動させる渦流を形成するための渦動手段が対応配置されている。リング紡績およびロータ紡績のような既に全面的に知られている紡績法に対して代替的に、紡績装置を用いて同様に、本撚りされた糸もしくは本撚りされた紡績糸が形成され、糸製造もしくは紡績糸製造を受け持つ装置は、あまり複雑でない構成部材で比較的簡単に構成されている。
【0022】
本発明の好適な1つの実施形態によれば、通路中心は、通路出口に対してよりも通路入口に対して近傍に配置されている。換言すると、環状の通路は、通路入口から通路中心へのスライバもしくは個別繊維の区間が、通路中心から通路出口へのスライバもしくは個別繊維の区間よりも短いように、構成されている。これにより、開繊された個別繊維を、制御して確実に環状の通路から、たとえば本撚りされた紡績糸を形成するための渦動流体流の作用下での撚りのような、後続の処理プロセスおよび/または加工プロセスのために導出することができる。
【0023】
本発明の好適な1つの実施形態によれば、コアエレメントは、通路中心の貫通部平面の近傍に、または通路中心の貫通部平面において一致する底面を備えた、通路入口と通路出口との間に延びる二重円錐を形成している。したがって、コアエレメントは、正確に、つまり小さな誤差で構造スペースを減じることができ、かつ廉価に形成可能である。
【0024】
好適には、環状の通路の構成は、以下の数式に従う。
【数1】
【0025】
ここで、
Daussen:環状の通路の外径
A:(ガイド方向に沿った環状の通路の各位置における)環状の通路の横断面積
Dinnen:環状の通路の内径
ASteg:支持エレメントが存在していない箇所における、ASteg=0の条件を有する、(ガイド方向に沿った支持エレメントの各位置における)支持エレメントの横断面積
である。
【0026】
この数式を考慮することにより、空気動力学的にできるだけ最適化されて構成された環状の通路が可能になる。
【0027】
好適には、渦動手段は、磁気的に支持された回転可能なコアエレメントによって、または部分エレメントによって形成されている。コアエレメントもしくは部分エレメントの定義された回転により、流体流内で、個別繊維から紡績糸を形成するために必要な渦動を特別な形式で形成することができる。
【0028】
これに対して代替的に、コアエレメントは、純粋に供給された流体流により、装置の第1の中空体部分内において支持されていてよい。換言すると、コアエレメントは、装置の流体のない状態において、重力に基づいて開繊通路セグメントの下側の内壁上に置かれる。流体流の供給後に、コアエレメントは、開繊通路セグメントの貫通部内においてほぼ中央または中央の安定的な位置に持ち上げられ、保持される。このために、コアエレメントは、対応した適切な形状、たとえば二重円錐としての上述の好適な形状を有している。上昇のために重要であるのは、コアエレメントの、ガイド方向もしくは流体流方向とは逆方向に形成された円錐先端部であり、これによって、流体流の供給時に真ん中の位置へのコアエレメントの流体流側の浮揚を保証することができる。
【0029】
さらに好適には、流体流側で支持されたコアエレメントが、回転可能に支持されていてよく、これにより、コアエレメントは、同様に渦動手段を形成することができる。回転は特に、たとえば上述の好適な1つの実施形態による磁気的な力作用により発生させることができる。
【0030】
特に代替的な好適な1つの実施形態によれば、紡績セグメントは、その内壁に環状に配置された少なくとも2つのインジェクタノズルを、渦動手段の構成部材として、または渦動手段として有しており、インジェクタノズルは、紡績セグメントの中心軸線を中心として循環し、かつこの中心軸線に沿って延びる渦動流を導入するために配置され、かつ形成されている。これによって、紡績セグメント内において、この紡績セグメント内に供給された個別繊維から本撚りされた紡績糸を製造するために渦流が形成可能である。たとえば、インジェクタノズル開口内で終端する定義されたインジェクタノズル通路部分は、紡績セグメントの内壁の周方向に対して角度を成して、かつ個別繊維のガイド方向もしくは紡績セグメントの貫通部方向に対して角度を成して形成されていてよく、これにより、第2の紡績セグメントの内壁に沿ってガイド方向もしくは貫通部方向に向けられた、特に制御可能な渦流をもたらすことができる。
【0031】
好適な1つの実施形態によれば、インジェクタノズルは、単独で、または紡績セグメント内において定義された渦流を引き起こすためのコアエレメントの回転可能な設計との組み合わせで設けられていてよく、これに基づいて本撚りされた紡績糸が形成可能である。
【0032】
好適には、紡績装置または紡績装置の構成部材は、上述のように切削製造法および/または付加製造法により製造されていてよい。この場合、紡績装置もしくは装置の第1の中空体部分および第2の中空体部分は、好適な別の1つの実施形態によれば、需要に応じて一体的に、または複数の部分から形成されていてよい。
【0033】
本発明の別の1つの態様によれば、上述の好適な実施形態のうちの好適な1つの実施形態による紡績装置を使用しながら個別化された繊維から紡績するための方法が提案される。方法は、入口通路セグメント内にスライバ端部を流体、特に空気を伴って供給するステップと、紡績セグメント内に、開繊通路セグメントを介して供給された個別繊維から糸を紡績するための渦動手段を作動させるステップとを有している。空気を伴う供給は、好適には、入口通路セグメントに対応配置された圧縮空気ノズルを介した圧縮空気供給により行うことができる。圧縮空気ノズルは、スライバ供給経路に沿って、入口通路セグメントの上流側に配置されていてよい。代替的にまたは付加的には、空気を伴う供給は、インジェクタノズルを介して入口通路セグメント内に吸込み空気流を形成することにより行うことができ、インジェクタノズルは、入口通路セグメント内に、またはスライバ供給方向に沿って入口通路セグメントの下流側に配置されている。たとえばインジェクタノズルは、同時に渦動手段を形成することができる。
【0034】
好適な1つの実施形態によれば、方法は、スライバ供給、スライバに随伴する流体流および/または渦動手段の作動を制御するステップを有しており、これによって、需要に応じた紡績糸を形成することができる。したがって、たとえばスライバの供給速度および/またはスライバに随伴する流体流を調節することができる。代替的または付加的には、紡績プロセスを適切に適合させることができるようにするために、渦動手段の作動は定義して調節可能であるように規定されていてよい。それぞれのシステムの調節および/または制御は、好適には、それぞれのシステムの適切な測定データを検出するためのセンサ機器から伝送することができる測定値に基づいて行うことができる。センサ機器が、紡績装置の対応する適切な場所に設けられていてよい。このことは、他方では自動化された、平ループ制御可能かつ/または開ループ制御可能な紡績プロセスを促進する。
【0035】
本発明の別の特徴および利点は、本発明にとって重要な詳細を示す図面や符号に基づく本発明の好適な1つの実施例の以下の説明および特許請求の範囲から明らかである。個々の特徴は、単独でも、複数個で任意の組み合わせにおいても本発明の好適な実施形態において実現されていてよい。
【0036】
本発明の好適な実施例を以下に添付図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】1つの実施例による紡績装置を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1に示した紡績装置を切断平面A-Aに沿って概略的に示す斜視縦断面図である。
【
図3】
図1に示した紡績装置を切断平面B-Bに沿って概略的に示す斜視横断面図である。
【
図4】
図1に示した紡績装置を概略的に示す正面図である。
【
図5】
図1に示した紡績装置を概略的に示す背面図である。
【
図6】代替的な実施例による、
図1に示した紡績装置を切断平面A-Aに沿って概略的に示す斜視縦断面図である。
【0038】
図1には、1つの実施例による紡績装置2を概略に示す側面図が示されている。紡績装置2は、その長手方向の延在方向LEに沿って、機能的に複数の部分に区分けされており、
図1で左側に図示された端部側の部分が、供給されたスライバ端部を、流体を伴って収容しガイドするための入口通路セグメント3を規定している。入口通路セグメント3に隣接している中間の部分は、開繊通路セグメント6として構成されており、開繊通路セグメント6を介在させて入口通路セグメント3とは端部側で反対側に位置している部分は、インジェクタノズル14を備えた紡績セグメント13を規定している。これらの3つの機能的な部分は、本実施例による紡績装置2にとって重要である。図示されていない別の1つの実施例によれば、機能的に需要に応じて構成された別の部分が設けられていてもよい。したがって、たとえば紡績セグメント13には、紡績された糸を導出するための機能的に独立した出口セグメントまたは紡績された糸を引き出すための機能的に独立した引出し部分が設けられていてよい。図示した実施例では、少なくとも出口部分および以下で詳細に説明するような出口部分の構成部材が、紡績セグメント13に対応配置されている。
【0039】
図2は、
図1に示した紡績装置2を切断平面A-Aに沿って概略的に示す斜視縦断面図を示している。紡績装置2は、圧力を加えることができる中空体から一体的に、この中空体の、長手方向延在方向LEに沿って延びている長手方向中心軸線LMに対して対称的に構成されている。端部側に配置された入口通路セグメント3は、長手方向延在方向LEに沿って、開繊通路セグメント6の方向に向かって円錐形に先細りする収容部分4を有しており、この収容部分4は、円筒形の貫通部分5に移行しており、これによって収容部分4を介して収容されたスライバもしくはスライバ端部を、開繊通路セグメント6の方向に確実に流体を伴ってガイドすることができる。流体として、好適には、気体状の媒体、たとえば周囲空気が使用される。これにより、周囲空気に対する紡績装置2の封止を省略することができる。スライバの流体を伴うガイドを支援するために、入口通路セグメント3は、好適には、円筒形の貫通部分5の領域において、下流側に配置された開繊通路セグメント6の方向に向けられたノズルを含んでいてよく、このノズルを介して、流体が円筒形の貫通部分5内に進入可能である。これによって吸込み流を、収容部分4の領域に形成することができ、これによってスライバは、より確実に入口通路セグメント3もしくは紡績装置2内に導入可能である。
【0040】
これに対して代替的には、図示されていない1つの実施例によれば、ノズルを紡績装置2の外側で収容部分4の上流側に、これらのノズルが収容部分4の方向に向くように配置することが可能である。
【0041】
さらに代替的には、図示した実施例におけるように、このようなノズルの配置を省略することができ、この場合いずれにせよ存在する周囲空気が、供給されたスライバに紡績装置2内において随伴し、かつ定義された流体流は、紡績装置2内で少なくとも紡績セグメント13内に配置されたインジェクタノズル14を介して、長手方向延在方向LEに沿って変化する貫通横断面により支援されて形成可能である。スライバのガイド方向は、この実施例では、実質的に紡績装置2の長手方向延在方向LEに沿って位置調整されている。
【0042】
入口通路セグメント3には、供給可能なスライバのガイド方向で、流体を伴って供給されたスライバ端部を個別化された繊維に開繊するための開繊通路セグメント6が接続している。このためには、開繊通路セグメント6は、この好適な実施例によれば、二重円錐の形状のコアエレメント8を有しており、二重円錐は、長手方向中心軸線LMに対して対称的に、かつ長手方向中心軸線LMに対して垂直に延びる1つの共通の横断面に対して非対称に構成されており、該横断面平面内では、二重円錐を形成する両円錐の底面が配置されている。コアエレメント8は、端部側に、それぞれ丸み付けられた第1の円錐先端部8aと第2の円錐先端部8bとを有している。コアエレメント8は、本実施例では、開繊通路セグメント6の貫通部分内において、長手方向延在方向LEに沿ってコアエレメント8の各位置において均一に形成された環状の通路10を形成するために中心に配置されており、コアエレメント8の周囲を取り囲んで均一に分配されて配置された3つの支持エレメント9を介して保持されている(
図3および
図4)。支持エレメント9は、入口通路セグメント3に向けられた第1の円錐先端部8aの近傍に配置されていて、長手方向延在方向LEに対して横方向に延びる形状の空気動力学的な滴形の構造を有しており、この滴形先端部は、コアエレメント8に配置されており、かつ滴形底部は内壁7に配置されている。コアエレメント8の周方向に延びる滴幅は、長手方向延在方向LEに沿ってほぼ変わらない。空気動力学的な態様を考慮して、それぞれの支持エレメント9は、
図3に図示されているように、入口通路セグメント3の方向に向かって、本実施例によれば先細りして延びるように、同様に滴状に形成されている。これにより、さもなければ起こり得る乱流の流体流を回避することができる。さらに
図3に示唆されているように、長手方向延在方向LEに沿って滴幅に対して垂直に延びる滴奥行きは、コアエレメント8が、入口通路セグメント3とは反対側の第2の円錐先端部8bにおいて確実に、かつできるだけ回避運動および/または振動なしに保持され得るように選択されている。同時に滴奥行きは、開繊すべき繊維材料の最大の繊維長さよりも大きく選択されており、これにより支持エレメント9における繊維巻付きの恐れを減じることができる。
【0043】
開繊通路セグメント6の貫通部分とコアエレメント8とは、第1の貫通部幅を有する第1の円錐先端部8aにおける通路入口11と、この通路入口11から離間した、第2の貫通部幅を有する第2の円錐先端部8bにおける通路出口12とを有している均一に環状の通路10が形成されるように互いに調整されており、環状の通路10の貫通部幅は、第1の貫通部幅から、通路入口11と通路出口12との間に配置された通路中心の中間の貫通部幅に至るまでの1つの部分において、連続的にまたは段階的に先細になっていて、中間の貫通部幅は、第1の貫通部幅よりも小さくなっている。先細りする構成は、通路中心に向かう方向での流速の上昇を引き起こす。
【0044】
これに対して、この実施例では、貫通部幅は(特に連続的または段階的に)通路中心から通路出口12に至るまで増大する。これにより、流速の定義された低下が引き起こされる。環状の通路10の延在長さにわたる貫通部幅の先細りの程度および拡大の程度は、需要に応じて個別化されるべきスライバに合わせて選択することができる。本実施例による環状の通路10の構成は、以下の数式に従う。
【数2】
【0045】
ここで、
Daussen:環状の通路の外径
A:(ガイド方向に沿った環状の通路の各位置における)環状の通路の横断面積
Dinnen:環状の通路の内径
ASteg:支持エレメントが存在していない箇所における、ASteg=0の条件を有する、(ガイド方向に沿った支持エレメントの各位置における)支持エレメントの横断面積
である。
【0046】
環状の通路10の外径は、本実施例では開繊通路セグメント6の貫通部の内径に対応している。環状の通路10の内径は、この実施例ではコアエレメント8の外径に対応している。環状の通路10の横断面は、環状の通路10の外径および内径により取り囲まれた面積部分に基づいて一貫して論理的に得られる。支持エレメントの横断面積は、支持エレメントが設けられている箇所において、支持エレメント9の個別の横断面積の合計から成る。
【0047】
この数式を考慮することにより、空気動力学的にできるだけ最適化されて構成された環状の通路が可能にされる。
【0048】
したがって、この実施例により例示的に形成された、開繊通路セグメント6を備えた入口通路セグメント3は、供給されたスライバ端部の繊維を個別化するための装置1を形成する。これらの部分の組み合わせによって、種々異なるスライバ材料のために、供給されたスライバ端部の繊維を定義して個別化するための、材料に適合された適切なそれぞれの装置1を提供することができる。
【0049】
装置1がこの実施例により一体に形成されている場合でも、装置1は、図示されていない実施例により複数の部分から構成されていてよく、例示的にそれぞれ入口通路セグメント3および開繊通路セグメント6は、独立して形成された部分を成形しており、これらの部分は相応に、通常の取付け/結合手段により互いに結合されている。複数部分から成る構成の場合、個々の部分は、さらに好適には破壊されることなしに交換可能に設けられていてよく、これにより可変性を高めることができる。
【0050】
開繊通路セグメント6には、長手方向延在方向に沿って、入口通路セグメント3とは反対側に位置する側において、紡績セグメント13が続いている。紡績セグメント13は、別の貫通部分15を有しており、この貫通部分15は、通路出口12に連通するように結合されていて、かつこの通路出口12から、紡績装置2の、入口通路セグメント3とは反対側に位置している端部の方向に延びている。紡績セグメント13は、別の貫通部分15の周囲に均一に配置された、渦流、特に圧縮空気渦流を供給するための3つのインジェクタノズル14を有しており、インジェクタノズル14は、紡績装置2の、入口通路セグメント3とは反対側に位置している端部の方向に向いている。これにより、開繊通路セグメント6で吸込み流が生じ、この吸込み流は、入口通路セグメント3内にまで続く。吸込み流は、一方では、流速の増大を引き起こし、これによって個別化すべき繊維を延伸することができる。他方では、インジェクタノズル14の環状の配置および配向が、別の貫通部分15内における渦流を可能にする。この渦流は、環状の通路10の通路中心と通路出口12との間の貫通部分に至るまで続く。これによって、開繊通路セグメント6内で個別化された繊維は、渦動パルスを受け、この渦動パルスによって、繊維は第2の円錐先端部8bの周りに巻き付き、開繊通路セグメント6の端部において互いにまとめられて、本撚りされた紡績糸を形成することができる。
【0051】
流体の供給は、インジェクタノズル14を介して公知の形式で閉ループ制御かつ開ループ制御して行うことができる。インジェクタノズル14を介して、供給された流体に、紡績されるべき糸に付着するための添加剤のような材料を供給することもでき、これにより糸特性に必要に応じて影響を与えることができる。このような材料供給部は、代替的または付加的には、対応する供給部を設けることにより、紡績装置2の別の箇所に、または入口通路セグメント3の上流側に配置されていてよい。
【0052】
紡績セグメント13は、紡績方向でインジェクタノズル14の下流側に配置されるように出口部分16を有しており、この出口部分16を介して、紡績された糸を、紡績装置2から出し、かつ糸走路において紡績装置2の下流側に配置された糸処理機構に供給することができる。たとえば紡績装置2には、紡績装置2から紡績された糸を引き出す引出し装置またはたとえば毛羽立ち、太い箇所および細い箇所等のような糸特性を検出するセンサ装置のような別の装置または紡績された糸を一時的に貯蔵する糸貯蔵部が、すぐ下流側に配置されていてよい。出口部分16は、インジェクタノズル14を備えた部分に対して拡張された貫通部分を有しており、これにより、流速および渦流を、紡績された糸を適切に導出するために緩めることができる。
【0053】
本実施例による紡績装置2をそれぞれ正面図および背面図で概略に示している、特に
図4および
図5に示したように、コアエレメント8の長手方向中心軸線は、コアエレメント8を取り囲む中空体もしくは開繊通路セグメント6の長手方向中心軸線LMに一致しており、支持エレメント9は、環状の通路10の第1の円錐先端部8aもしくは通路入口11の近傍に配置されている。これにより、スライバ端部の拡開を環状の通路10内への進入時に達成することができ、この拡開が、個別の繊維へのスライバの開繊に有利に影響を及ぼす。さらにスライバの供給後に、装置1の長手方向延在方向LEに沿って通路中心に至るまで、本実施例により構造的に制限して流速を増大させることにより、個別の繊維をスライバから確実に分離すると同時に延伸することができる。インジェクタノズル14は、運転中に、本実施例では、必要となる渦流を引き起こし、これにより分離した、もしくは引き出された個別繊維を、環状の通路10内のコアエレメント8の、通路中心の下流側に続く円錐形の部分の周囲でガイドすることができ、これにより、この繊維を、第2の円錐先端部8bの領域で、または第2の円錐先端部8bのすぐ下流側で渦動もしくは紡績して本撚りされた紡績糸を形成することができる。この紡績糸は、出口部分16を介して最終的に紡績装置2から引き出すことができる。
【0054】
図示されていない実施例では、渦動手段が、コアエレメント8自体によって、またはコアエレメント8の、通路中心の下流側に続く円錐形の部分によって形成されている。第1には、特に、たとえば磁気的な支持装置を介して実現可能であり、さらに好適には、コアエレメント8が定義された回転運動を行うことができるようにコアエレメント8と協働する、開繊通路セグメント6の貫通部内でのコアエレメント8の非接触の支持を行うことができる。これに対して代替的には、非接触の支持は、供給された流体流により行うことができ、この流体流により、コアエレメント8は、流体流の供給後に、このコアエレメント8が重力に基づいて開繊通路セグメント6の貫通部の下側の内壁上に置かれている静止位置から、コアエレメント8が流体流により開繊通路セグメント6の貫通部内のほぼ真ん中または真ん中に保持もしくは支持されている運転位置へと持ち上げられる。供給された流体流内にさらに渦流がもたらされる限り、コアエレメント8を回転させることができ、これによって、渦動手段を形成することができる。
【0055】
図示しない別の1つの実施例では、コアエレメント8の、通路中心の下流側に続く円錐形の部分が、渦動手段を形成している。この円錐形の部分は、コアエレメント8の、先行する円錐形の部分により回転可能に支持されている。先行する円錐形の部分は、上記で例示的に説明したように、支持エレメント9を介して開繊通路セグメント6の貫通部内に保持されている。後続の円錐形の部分の回転は、磁気的に作用する回転装置により、導入された回転流により、または先行する円錐状の部分により含まれる回転駆動装置により、需要に応じて開ループ制御および/または閉ループ制御されて引き起こされる。
【0056】
図6は、代替的な実施例による、
図1に示した紡績装置2を切断平面A-Aに沿って概略的に示す斜視縦断面図を示している。この代替的な実施例は、
図2に示された実施例とは、専ら代替的に構成された支持エレメント9’ならびに第2の円錐先端部8bの領域における付加的な支持エレメント9により相違している。付加的な支持エレメント9は、スライバのガイド方向でこの第2の円錐先端部8bの上流側に配置されている。その他の構成は、
図2に示した実施例の構成と同一であり、同一の参照符号は、紡績装置2の、対応して上述した構成要素に対応しており、これらの構成要素の説明が、代替的な実施例のために参照される。
【0057】
代替的に構成された支持エレメント9’は、コアエレメント8の前端部8a’の領域に配置されており、この前端部8a’は、入口通路セグメント3に面している。代替的な支持エレメント9’は、入口通路セグメント3の方向に向けられた端面側の端部9a’を有しており、この端部9a’は、入口通路セグメント3の貫通部領域に配置されており、代替的な支持エレメント9’は、ガイド方向に沿って開繊通路セグメント6内にまで延びている。代替的な支持エレメント9’は、装置1の半径方向で、入口通路セグメント3の貫通部の内壁から、かつ開繊通路セグメント6の貫通部の内壁7から、コアエレメント8の対峙する外壁に至るまで延びていて、コアエレメント8に供給すべきスライバのための斜面17を形成する。したがって斜面17は、ガイド方向に沿って入口通路セグメント3の内壁の表面側を、コアエレメント8の外壁の表面側に接続し、これにより、開繊すべきスライバのための定義されたガイド面部分18が、ガイド方向に沿って提供される。ガイド面部分18は、ガイド方向に沿って平坦であり、かつガイド方向に対して横方向で凹状に構成されており、ガイド方向で、コアエレメント8の外壁の、ガイド面部分18に隣接する表面部分の勾配角度よりも5°大きい勾配角度を有している。
【0058】
好適には、紡績装置2は、別の実施例(図示せず)によれば、たとえばスライバ供給、繊維個別化プロセス、紡績プロセスおよび/または紡績装置2からの糸引出しを監視するためのセンサ機器を有している。センサ機器は、装置1および/または紡績セグメント13の適切な箇所において、対応する第1の中空体部分または第2の中空体部分内に、または第1の中空体部分または第2の中空体部分に接して配置されている。これに対して代替的または付加的には、紡績装置2の、監視すべき環状の通路部分を含む部分は、透明に形成されていてよい。これにより、センサ機器が紡績装置2の外側に配置可能であり、これによりセンサ機器を廉価かつ簡単に設けることができる。
【0059】
記載し、図面に示した実施例は、単に例示的に選択されている。種々異なる実施例を、完全に、または個別の特徴に関して互いに組み合わせることができる。1つの実施例を別の実施例の特徴によって補足することもできる。
【0060】
1つの実施例が第1の特徴と第2の特徴との間において「および/または」という接続詞を含んでいる場合には、このことは、この実施例が、1つの実施形態によれば第1の特徴と第2の特徴の両方を有しており、かつ別の実施形態によれば第1の特徴だけ、または第2の特徴だけを有していると理解することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 繊維を個別化する装置
2 紡績装置
3 入口通路セグメント
4 収容部分
5 円筒形の貫通部分
6 開繊通路セグメント
7 内壁
8 コアエレメント
8a 第1の円錐先端部
8a’ コアエレメントの前端部
8b 第2の円錐先端部
9 支持エレメント
9’ 代替的な支持エレメント
10 環状の通路
11 通路入口
12 通路出口
13 紡績セグメント
14 インジェクタノズル
15 別の貫通部分
16 出口部分
17 斜面
18 ガイド面部分
LE 長手方向延在方向
LM 長手方向中心軸線
【手続補正書】
【提出日】2022-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されたスライバ端部の繊維を個別化する装置(1)であって、該装置(1)が、
下流側に接続された開繊通路セグメント(6)の方向に向かって、供給されたスライバ端部を、流体を伴って収容しガイドするための入口通路セグメント(3)を備えた、圧力を加えることができる第1の中空体部分と、
前記入口通路セグメント(3)に連通し、該入口通路セグメント(3)の下流側に配置された、流体を伴って供給された前記スライバ端部を個別繊維に開繊するための前記開繊通路セグメント(6)と
を含んでおり、
前記開繊通路セグメント(6)が、前記入口通路セグメント(3)に連通する環状の通路(10)を形成しており、該通路(10)が、第1の貫通部幅を備えた通路入口(11)と、該第1の通路入口(11)から離間した、第2の貫通部幅を備えた通路出口(12)とを有しており、前記環状の通路(10)の前記貫通部幅は、前記第1の貫通部幅から、前記通路入口(11)と前記通路出口(12)との間に配置された通路中心の中間の貫通部幅に至るまでの部分において、前記中間の貫通部幅が前記第1の貫通部幅よりも小さくなるように連続的に、または段階的に先細りしている、装置(1)。
【請求項2】
前記入口通路セグメント(3)が、前記スライバのための円錐形に延びる収容部分(4)を有している、請求項1記載の装置(1)。
【請求項3】
前記入口通路セグメント(3)が、前記スライバ端部を前記通路入口(11)に引き渡すための、前記円錐形に延びる収容部分(4)に接続する円筒形の貫通部分(5)を有している、請求項2記載の装置(1)。
【請求項4】
前記環状の通路(10)は、前記通路入口(11)の内径が、前記通路中心の、前記通路入口(11)の前記内径に対応している内径よりも小さいように形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項5】
前記開繊通路セグメント(6)の貫通部内に、前記環状の通路(10)を形成するためにコアエレメント(8)が支持されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項6】
前記コアエレメント(8)が、前記開繊通路セグメント(6)を前記コアエレメント(8)に結合する少なくとも1つの支持エレメント(9)を介して、かつ/または磁気的な支持力を介して前記開繊通路セグメント(6)内に支持されており、前記コアエレメント(8)は、磁気的な支持力により支持されている場合、前記開繊通路セグメント(6)内において前記コアエレメントを定義して支持するために前記磁気的な支持力に反応する材料を有している、請求項5記載の装置(1)。
【請求項7】
磁気的に支持された前記コアエレメント(8)が、周方向で回転可能に支持されている、請求項6記載の装置(1)。
【請求項8】
糸を紡績する紡績装置(2)であって、
請求項1から7までのいずれか1項記載の繊維を個別化する装置(1)が設けられており、環状の通路の貫通部幅が、中間の貫通部幅から第2の貫通部幅に至るまでの部分において、前記中間の貫通部幅が前記第2の貫通部幅より小さくなるように連続的に、または段階的にエッジなしに拡張されており、
かつ供給された個別繊維から糸を紡績するための紡績セグメント(13)を含む、圧力を加えることができる第2の中空体部分(20)が設けられており、該紡績セグメント(13)は、前記スライバ端部もしくは個別繊維のガイド方向で前記開繊通路セグメント(6)の下流側に、前記個別繊維を受け取るために前記開繊通路セグメントに連通して配置されており、前記紡績セグメント(13)には、糸を紡績するための、前記個別繊維を互いに渦動させる渦流を形成するための渦動手段が対応配置されている、紡績装置(2)。
【請求項9】
前記通路中心が、前記通路出口に対してよりも前記通路入口に対して近傍に配置されている、請求項
8記載の紡績装置(2)。
【請求項10】
前記コアエレメント(8)が、前記通路中心の貫通部平面の近傍、または前記貫通部平面内に一致する底面を備えた、前記通路入口と前記通路出口との間に延びる二重円錐を形成する、請求項
8または
9記載の紡績装置(2)。
【請求項11】
前記渦動手段が、回転可能な前記コアエレメント(8)により形成されている、請求項7と組み合わせた請求項
8記載の紡績装置(2)。
【請求項12】
前記紡績セグメント(13)が、前記渦動手段の構成部材として、または前記渦動手段として、前記紡績セグメント(13)内で渦動流を形成するために、該紡績セグメント(13)の内壁に環状に配置された少なくとも2つのインジェクタノズル(14)を有している、請求項9から11までのいずれか1項記載の紡績装置(2)。
【請求項13】
前記紡績装置(2)と、前記装置(1)または前記紡績セグメント(13)とが、一体的に、または多部分から、特に切削製造法および/または付加製造法により形成されている、請求項9から12までのいずれか1項記載の紡績装置(2)。
【請求項14】
個別化された繊維から糸を紡ぐ方法であって、
請求項9から13までのいずれか1項記載の紡績装置(2)が設けられており、
当該方法が、入口通路セグメント(3)内にスライバ端部を流体、特に圧縮空気を伴って供給するステップと、前記紡績セグメント(13)内に、開繊通路セグメント(6)を介して供給された個別繊維から糸を紡績するための渦動を形成するために渦動手段を作動させるステップとを有する、方法。
【国際調査報告】