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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(54)【発明の名称】医療用電極及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/266 20210101AFI20230425BHJP
   A61B 5/265 20210101ALI20230425BHJP
   A61B 5/257 20210101ALI20230425BHJP
【FI】
A61B5/266
A61B5/265
A61B5/257
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557926
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 IN2021050306
(87)【国際公開番号】W WO2021191930
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】201941038749
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322008025
【氏名又は名称】インアクセル・テクノロジーズ・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィバウ・ジョシ
(72)【発明者】
【氏名】スメド・コールグード
(72)【発明者】
【氏名】アディティア・マートゥル
(72)【発明者】
【氏名】アダイッカッマイ・エス
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA03
4C127LL22
(57)【要約】
本発明は、電解質と、該電解質と接触している吸収性材料であって、複数のストランドを含み、各ストランドに前記電解質が注入されるようになっている吸収性材料と、該吸収性材料と接触している押圧手段であって、患者の標的皮膚領域の角質層を通して前記吸収性材料の前記ストランドを押圧するための複数の突出部を含む押圧手段と、該押圧手段に隣接して配置され、前記吸収性材料と接触している導電性手段と、を備える医療用電極である。本発明の医療用電極システムは、電極を設置した部位の皮膚インピーダンスを低減し、発生するベースラインノイズを低レベルとし、微弱な信号を正確に測定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用電極であって、
電解質と、
該電解質と接触している吸収性材料であって、複数のストランドを含み、各ストランドに前記電解質が注入されるようになっている吸収材料と、
該吸収性材料と接触している押圧手段であって、患者の標的皮膚領域の角質層を通して前記吸収性材料の前記ストランドを押圧するための複数の突出部を含む押圧手段と、
該押圧手段に隣接して配置され、前記吸収性材料と接触している導電性手段であって、電解質が注入された前記吸収性材料の各ストランドが、角質層への侵入部位から前記導電性手段への導電性チャネルとして機能する、導電性手段と、
前記電極を支持すると共に、前記電極を患者の標的皮膚領域と接触した状態に保持するための支持手段と、
を備えた医療用電極。
【請求項2】
前記吸収材料は、ガーゼ構造の複数のストランドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の医療用電極。
【請求項3】
前記吸収材料が綿繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の医療用電極。
【請求項4】
前記導電性手段は、前記吸収材料と接触する表面上を導電性金属層でコーティングされたプラスチック基板であり、前記表面は前記標的皮膚領域に面している、請求項1に記載の医療用電極。
【請求項5】
前記導電性金属層が銀/塩化銀であることを特徴とする、請求項4に記載の医療用電極。
【請求項6】
前記プラスチック基板は、可撓性プリント回路基板に接続されている、請求項4に記載の医療用電極。
【請求項7】
前記押圧手段は、前記電極上への圧力の印加を補助するために、前記電極の上面に更なる手段を有し、前記上面は、前記標的皮膚領域とは反対側を向いている表面である、請求項1に記載の医療用電極。
【請求項8】
前記電極によって検出された生体電位信号を測定し記録するための測定装置に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の医療用電極。
【請求項9】
測定装置と取り外し可能に係合する可撓性ベースに接続された、少なくとも1つの請求項1に記載の電極を含む、医療用電極システム。
【請求項10】
請求項1に記載の医療用電極または請求項9に記載の医療用電極システムを使用する方法であって、
前記電極を患者の標的皮膚領域上に直接設置するステップと、
前記電極を皮膚内に押し込んで、前記電解質が注入された前記吸収性材料のストランドを、角質層を通じて押圧するステップと、
前記電極によって検出された生体電位信号値を測定装置に表示するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用電極及びそのシステムに関する。本発明の医療用電極は、皮膚を剥離することなく設置部位の皮膚インピーダンスを低減することができると共に、発生するベースラインノイズを低レベルとし、胎児の(fetal)心電図(electrocardiogram:ECG)を含むがこれに限定されない微弱な信号を正確に測定することができる。
【背景技術】
【0002】
医療用電極は皮膚表面の電位を検出し、各種の健康診断を行うために使用される。微弱な電気信号を効果的に感知及び検出することができる医療用電極は、市場において依然として必要とされている。胎児モニタリング技術では、胎児ECGを用いて胎児心拍数モニタリングが行われる。湿潤ゲルまたは固体ゲルと共に表面電極を用いて、この信号をピックアップする。しかしながら、胎児ECGは5~20マイクロボルトの振幅であり、母親の腹部の表面から胎児ECG信号を取得することは困難である。更に、この信号は、母体のECG、母体の収縮による子宮の動きに起因する信号、及び周囲ノイズの複合体に隠れてしまう。この小さな信号を拾うことは、皮膚の最上層である角質層(stratum corneum)の高い電気インピーダンスによって一層困難になる。角質層は胎児ECGを減衰させ、電極皮膚界面でノイズを引き起こす。胎児心電図を測定する場合、電極は患者の腹部に設置される。電極が設置された部位における皮膚インピーダンスを減少させるために、弱研磨性の紙テープ(mildly abrasive paper tape)を使用して角質層を剥離する。モニカ電子胎児モニタ(Monica electronic fetal monitor)によって使用されるような従来技術の電極は、固定ゲル領域(fixed gel area)を有する電極を備え、一定範囲のサイズに亘って利用可能であり、各サイズは、皮膚関連インピーダンス及びノイズ信号を許容可能なレベルに減少させるために、研磨材料による最少数の剥離ストローク(exfoliation stroke)を必要とする。しかしながら、このアプローチは技能に負うところがあり、複数回の試みをしばしば必要とすることから、患者に不快感を引き起こし、瘢痕(scar)を残す。従って、電極が皮膚と接触する部位で皮膚の剥離を必要とすることなく、微弱な信号を検出するために、発生するベースラインノイズを低レベルとし、皮膚によって引き起こされるインピーダンスを低減することができる電極が必要とされている。
【0003】
アスペクト・メディカルシステムズ(Aspect Medical systems)による他の従来技術の電極は、皮膚の最上層を分離(part)し、それを分離した状態に保つために歯(tine)を使用する。スポンジに保持されたゲル電解質は、歯が押圧されると押し下げられ、このゲル電解質は、歯によって形成されたチャネル内にしみ込む(seep)。しかしながら、歯及びそれに接続された電気パッドを押圧する作用によってゲルの不均一な分布が生じ、皮膚-電極界面と電気パッドとの間にエアポケットが形成されるので、このアプローチには制約がある。スポンジは電解質ゲルを保持する複数のセルから構成される。しかしながら、スポンジセルのいくつかは空気を含む。スポンジが押し下げられると、空気がゲルと共に押し出され(squeezed out)、電極システム内に気泡を生成し、不均一な電解質分布及び高いベースラインノイズをもたらす。従って、加圧時に気泡を発生させることなく電解質を均一に分布させる電極が必要である。
【0004】
更に、このシステムは、電極が例えば腹部皮膚の下の骨構造を欠く皮膚の領域に設置される場合には特に効果的ではない。このような皮膚にスポンジを介して歯を押し込むと、皮膚の分離が不良になる。またエアポケットは、胎児ECGを含むがこれに限定されない微弱な信号をマスクする高い電気的ノイズをもたらす。従って、前記システムは、電極が母体の腹部皮膚上に設置されるので、胎児モニタリングには特に効果的ではない。また、母親は麻酔をかけられていないので、小さな胎児の信号を測定するために、電極で皮膚を分離するために何度も圧迫を試みると、母親にとって不快なものとなる。従って、身体の任意の部分、特に皮膚の骨構造を欠く部分の信号を測定することができる電極が必要とされている。
【0005】
また、市販の電極は高価であるため、低コストの電極が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4848345号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0232249号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、電極皮膚界面における皮膚インピーダンスを効果的に低減し、発生するベースラインノイズを低レベルとし、気泡無しで電解質の均等な分配を可能にし、身体の任意の部分に設置することができ、電極設置の際に患者の不快感を低減し、電極設置前の皮膚の剥離を回避する低コストの医療用電極が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本発明は、電解質と、該電解質と接触している吸収性材料であって、複数のストランドを含み、各ストランドに前記電解質が注入される(infused with)ようになっている吸収性材料と、該吸収性材料と接触している押圧手段であって、患者の標的皮膚領域(target skin area)の角質層を通して前記吸収性材料の前記ストランドを押圧するための複数の突出部(protrusion)を含む押圧手段と、該押圧手段に隣接して配置され、前記吸収性材料と接触している導電性手段であって、電解質が注入された前記吸収性材料の各ストランドが、角質層への侵入部位(site of ingress)から前記導電性手段への導電性チャネルとして機能する、導電性手段と、前記電極を支持すると共に、前記電極を患者の標的皮膚領域と接触した状態に保持するための支持手段と、を備える医療用電極である。
【0009】
一実施形態において、本発明は、少なくとも1つの電極を含む医療用電極システムであって、前記少なくとも1つの電極は、測定装置と取り外し可能に係合する可撓性ベースに接続されている医療用電極システムである。
【0010】
一実施形態では、本発明は、医療用電極または医療用電極システムを使用する方法であって、前記電極を患者の標的皮膚領域上に直接設置するステップと、前記電極を皮膚内に押し込んで、前記電解質が注入された前記吸収性材料のストランドを、角質層を通じて押圧するステップと、前記電極によって検出された生体電位信号値(biopotential signal value)を測定装置に表示するステップと、を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の医療用電極の一実施形態である。
図1B】標的皮膚領域に押し込まれる図1Aの医療電極を示す図である。
図1C】標的皮膚領域に押し込まれる図1Aの医療電極を示す図である。
図1D】標的皮膚領域に押し込まれる図1Aの医療電極を示す図である。
図1E】多電極システム(multi-electrode system)である実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を参照し、その例を添付図面に示すことができる。これらの図は例示を意図したものであり、限定するものではない。本発明は、これらの実施形態の文脈に即して一般的に説明されるが、本発明の範囲を、これらの特定の実施形態に限定することは意図していないことが理解されるべきである。
【0013】
本発明は、電解質と、該電解質と接触している吸収性材料であって、複数のストランドを含み、各ストランドに前記電解質が注入されるようになっている吸収性材料と、該吸収性材料と接触している押圧手段であって、患者の標的皮膚領域の角質層を通して前記吸収性材料の前記ストランドを押圧するための複数の突出部を含む押圧手段と、該押圧手段に隣接して配置され、前記吸収性材料と接触している導電性手段であって、電解質が注入された前記吸収性材料の各ストランドが、角質層への侵入部位から前記導電性手段への導電性チャネルとして機能する、導電性手段と、前記電極を支持すると共に、前記電極を患者の標的皮膚領域と接触した状態に保持するための支持手段と、を備える医療用電極を提供することにより、上記の技術的及び経済的な不利益に対処しようとするものである。
【0014】
本発明の電極は、押圧手段を介して圧力が加えられたときに、皮膚の最上部の壊死した皮膚層(角質層)に微小穿孔(micro perforation)を形成する。押圧作用により、ガーゼのストランドがこれらの穿孔内に押し込まれる。更に、ガーゼは薄く、容易に皮膚を貫通し、侵入部位に付着するので、最小限の加圧が必要である。これらの穿孔に押し込まれるストランドはまた、電極が設置される部位での予備的剥離工程(preparatory exfoliation step)の必要性を排除する。ゲルが注入されたストランドは、角質層の下の皮膚のより導電性の層と接触する。ゲルが注入されたストランドは、角質層の侵入部位と本電極の導電性手段との間に導電性チャネルを形成する。ゲルはガーゼストランドに注入されるので、不均一に広がったり、信号伝達を妨げる気泡が発生したりすることはない。このようにして、本電極は、皮膚を剥離することなく皮膚インピーダンスの低減を可能にし、発生するベースラインノイズを低レベルとし、胎児ECGを含むがこれに限定されない弱い信号の正確な取得を実現する。
【0015】
吸収性材料と接触する電解質ゲルは、皮膚表面と導電性手段との間のイオン交換を可能にする電解質媒体である。電解質は、生体電位測定が行われる媒体である。一実施形態では、電解質ゲルは液体であり、アルギン酸塩ベースである(alginate based)ため、わずかに粘着性または粘着性であり(slightly tacky or sticky)、流動性が高く、皮膚に優しい組成物である。液体の性質と粘着性が、ガーゼによる電解質の完全な吸収を確実にし、圧力が加えられたときに均一に広がることを可能にし、気泡の形成を回避する。
【0016】
医療用電極の一実施形態では、吸収材料は、網状の、好ましくはガーゼ構造の複数のストランドを含む。医療用電極の好ましい実施形態では、吸収材料は綿繊維(cotton fiber)である。従来技術のスポンジは、医療用電極に使用される吸収性材料であり、このスポンジは、電解質ゲルを保持する複数のセルから構成される。スポンジを押すと、セル内のゲルが押し出される。しかし、スポンジセルのいくつかは補足した空気を含み、気泡が系に導入されるので、電解質分布はしばしば不均一である。これらの気泡は、高いベースラインノイズを引き起こすので、避けるべきである。これに代えて本発明は、ガーゼ構造に配置された綿繊維を使用する。電解質ゲルはガーゼの個々のストランドに吸収され、ストランドが押圧されても絞り出されず、綿ストランド自体が導電性チャネルとなる。
【0017】
医療用電極の一実施形態では、押圧手段は、吸収性材料の複数のストランドと接触しているプラスチックの微小毛構造体(micro-bristle structure)である。別の実施形態では、押圧手段は、電極上への圧力の印加を補助するために電極の上面に更なる手段を有し、該上面は、標的皮膚領域とは反対側を向いている表面である。前記更なる手段は、電極に圧力を加える外部の機械的手段または電気機械的手段である。前記更なる手段は、物理的、電気的または化学的特性に起因する特定の時間範囲の圧力を付与する。一実施形態では、更なる手段は電極上の気泡であり、気泡内に標準量の空気がある。気泡を破裂させるためには、特定の量/範囲の圧力を加える必要がある。気泡が破裂するまで、内部に蓄積された圧力は、気泡の底面全体に均等に加えられ、この底面は、医療電極の上面上の押圧手段と位置合わせされており、前記表面は皮膚とは反対側を向いている。別の実施形態では、更なる手段は、一度特定量の圧力に達すると亀裂を生じ、その点まで圧力を均等に分散させるように設計されたプラスチックディスクである。
【0018】
医療用電極の一実施形態では、導電性手段は、押圧手段に隣接して配置される。この文脈において「隣接する(adjacent)」という用語は、導電性手段が押圧手段に近接して(near)設置され、隣に(next to)設置され、押圧手段の側部に(by the side)設置され、押圧手段の上に(on top of)設置され、または押圧手段に対してオフセットして(offset to)設置されることを含む。医療用電極の一実施形態では、導電性手段は、吸収材料と接触する表面上を導電性金属層でコーティングされたプラスチック基板であり、当該表面は標的皮膚領域に面している。医療用電極の一実施形態では、導電性金属層は銀/塩化銀である。医療用電極の一実施形態では、プラスチック基板は、可撓性プリント回路基板に電気的に取り付けられる。一実施形態では、導電性手段は、胎児または成人のECG装置、神経信号測定装置(例えば、EEG)等を含むがこれらに限定されない任意の測定装置との接続を形成するために標準心電図(standard electrocardiogram)ケーブルコネクタにインターフェース/ロックするステンレス鋼部品を上面に有している。ステンレス鋼部品は、スタッド、ワイヤ、クロコダイルクリップコネクタ、バナナスタッドコネクタ、またはユニバーサルスナップ及びタブコネクタを含むが、これらに限定されない。
【0019】
一実施形態において、医療用電極は、電極によって検出された生体電位信号を測定及び記録するための測定装置に接続される。この電極は、胎児及び成人のECG測定、神経信号測定等を含むがこれらに限定されない任意の生体電位信号を測定するために利用することができる。本発明は、皮膚インピーダンスを低減し、本電極の侵入部位で発生するベースラインノイズを低レベルとし、電極接触部位で皮膚を剥離することを必要としないので、皮膚を通る微弱な信号を検出し測定するように特に設計されている。
【0020】
一実施形態では、支持手段は、電極を支持し、電極を患者の標的皮膚領域に接触させて保持するためのものである。一実施形態では、支持手段は、電極構成要素が組み立てられた裏当てテープ(backing tape)、及び組み立てられた電極を患者の皮膚に接着するための発泡体ベースの感圧接着剤の2つのテープを含む。別の実施形態では、支持手段は更に、電極の上面に耐液体特性(liquid resistant characteristics)を有するシート、フィルム、または膜であるカバーからなり、該上面は患者の皮膚から離れている。
【0021】
一実施形態では、医療用電極は、少なくとも1つの電極を含む医療用電極システムを含み、前記少なくとも1つの電極は、測定装置と取り外し可能に係合する可撓性ベースに接続されている。少なくとも1つの電極システムは、多電極システムを形成するために可撓性ベースに接続された複数の電極を含み、前記多電極システムは測定装置に接続されている。
【0022】
一実施形態では、医療電極または複数の電極を備える医療電極システムを使用する方法であって、該方法は、前記電極を患者の標的皮膚領域上に直接設置するステップと、前記電極を皮膚内に押し込んで、前記電解質が注入された前記吸収性材料のストランドを、角質層を通じて押圧するステップと、前記電極によって検出された生体電位信号値を測定装置に表示するステップと、を含む方法である。
【0023】
図1Aは、本発明の医療用電極の一実施形態を示す。この図は、分解された形態の医療用電極(100)を示しており、電解液(6)が注入された軟質綿ガーゼまたはガーゼ様構造体(8)の単一層または複数層と、(組み立てられた形態で)綿ガーゼ(8)に接触し、ガーゼのストランドを複数の位置で皮膚に押し込むための押圧手段(7)と、導電性手段(3)とを備えている。本実施形態における押圧手段(7)は、垂直なプラスチック毛が形成されたプラスチックの微小毛構造体である。ガーゼ(8)のストランドは、角質層(10)への侵入部位(9)と導電性手段(3)との間に電気チャネルを形成している(図1C)。ガーゼ(8)、導電性手段(3)及び押圧手段(7)は、発泡体ベースの感圧接着剤(2)に封入された裏当てテープ(1)上に組み付けられている。感圧接着剤のキャビティ(5)は、導電性手段(3)との接合部にガーゼストランドが集中するような形状とされている。この実施形態では、導電性手段(3)は押圧手段(7)からオフセットされているので、ガーゼ(8)に直接圧力が加えられる。
【0024】
電極の組立は、導電性手段(3)を裏当てテープ(1)の接着剤側に設置することを含み、当該接着剤側は患者の皮膚に面している。微小毛付きの押圧手段(7)は、導電性手段(3)からオフセットされ、毛を皮膚側に向けてこの粘着面に貼り付けられている。この構造体は、フォームベース感圧接着剤(2)のキャビティ(5)内に組み立てられ、感圧接着剤の接着剤側が皮膚の方を向くようにされている。キャビティは裏当てテープによって閉じられるので、システムは上面から閉じられ、表面は皮膚に面していない。ガーゼ(8)はキャビティ(5)内に設置されてキャビティの残りの体積を占有すると共に、電解質ゲル(6)が添加される。ガーゼが電解質ゲルを吸収する。ゲルは電解質媒体であり、皮膚表面と、銀/塩化銀でコーティングされた導電性手段との間でイオン交換を可能にする。電解質は、生体電位測定が行われる媒体である。
【0025】
図1B図1C及び図1Dは、図1Aの医療用電極(100)が標的皮膚領域に押し込まれている様子を示す。押圧手段(7)のプラスチック毛(plastic bristles)は、吸収材(8)のストランドを、侵入部位(9)の角質層(10)に押し込む。図1Dは、押圧手段に圧力を加えた際(矢印は圧力の方向を示す)、毛、従って吸収性材料の電解質注入ストランドが角質層(10)に押し込まれる様子を示している。電極は、任意の測定装置との接続を形成するために標準心電図ケーブルコネクタにインターフェース/ロックするステンレス鋼部品(4)を上面に有する。この実施形態における電極は、電極への圧力の付与を補助するための更なる手段(11)を上面に有している。
【0026】
図1Eは、多電極システムである実施形態を示す。この実施形態では、多電極パッチは6つの電極を含む。電極は可撓性ベースに接続され、電極から母体及び/または胎児の電気生理学的信号(electrophysiological signal)を検出するための監視装置と取り外し可能に係合している。本実施形態における可撓性ベースは、可撓性基板(12)と、プラスチックユニット(13)と、多電極パッチのベースを患者の皮膚に取り付けるための感圧接着性発泡リング(15)とを備えている。モジュールは、監視装置との取り外し可能な機械的係合のための機構と、電極から読み出し装置への電気的接続を行うための電気接続ユニット(14)とを有する。パッチを監視装置に係合させることは、機械的モジュールユニット及び電気的モジュールユニットの両方を含む。
【0027】
以下の実験例は、本発明を例示するものであるが、その範囲を限定するものではない。
【0028】
[実施例1]
従来技術の電極に対する本発明の電極のノイズ特性を調べた。本発明の電極は綿ガーゼである吸収材料を含み、一方、従来技術の電極はスポンジベースのシステムを含む。2つの電極を互いに6cmの距離で腹部の異なる位置に適用した。3M(登録商標)の固体ゲル電極を用いて部位のノイズを測定し、等価であることが分かった。これらの値をスポンジまたはガーゼ電極を適用する前のノイズレベルのベースラインとして用いた。
【0029】
年齢、性別、皮膚のタイプの異なる40名を対象とした。5回のスキャンの結果を下表に示す。綿ガーゼ電極によって検出されるノイズは、スポンジベースの電極より少なくとも3分の1であり、被験者2は20分の1のノイズ低減を示している。
【0030】
【表1】
【0031】
従って、本発明は、電極皮膚界面における皮膚インピーダンスを効果的に低減し、発生するベースラインノイズを低レベルとし、電極を設置する前の皮膚の剥離を回避し、気泡無しで電解質の均等な分配を可能にする低コストの医療用電極であって、身体の任意の部分に設置することができ、電極設置時の患者の不快感を低減する医療用電極を含む。
【0032】
本発明を特定の実施形態に関して説明してきたが、当業者には、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正行うことができることが明らかであろう。
図1A
図1B-1C】
図1D
図1E
【国際調査報告】