IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアルの特許一覧

<>
  • 特表-電界検出器 図1
  • 特表-電界検出器 図2a
  • 特表-電界検出器 図2b
  • 特表-電界検出器 図2c
  • 特表-電界検出器 図2d
  • 特表-電界検出器 図2e
  • 特表-電界検出器 図3
  • 特表-電界検出器 図4
  • 特表-電界検出器 図5
  • 特表-電界検出器 図6a
  • 特表-電界検出器 図6b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(54)【発明の名称】電界検出器
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20230425BHJP
   G01N 5/02 20060101ALN20230425BHJP
【FI】
G01R29/08 F
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558144
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 FR2021050388
(87)【国際公開番号】W WO2021191520
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】2003001
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ピエール,トマ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴニュ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ゲラール,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ゴディノ,ヴァンサン
(57)【要約】
電界検出器(20)は電気機械発振器を備え、その一部は、圧電素子(1)と、発振周波数を測定するように電気機械発振器に結合された周波数測定装置(4)と、電気マスク集合体(5)とを備える。電気マスク集合体は、圧電素子(1)の近くに配置され、その結果、電界検出器の使用中に圧電素子が電気マスク集合体に対して振動することによって移動する。したがって、圧電素子の可変な部分は、測定対象電界に曝される。発振周波数(f)の変化は、電界測定結果を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界検出器(20)であって、
その少なくとも一部が、前記電界検出器の使用中に発振周波数で振動するように意図された圧電素子(1)から構成される、電気機械発振器と、
前記発振周波数を測定するために前記電気機械発振器に結合された周波数測定装置(4)と、
電気マスク集合体(5)であって、前記圧電素子と接触することなく前記圧電素子(1)の近くに配置され、その結果、前記電界検出器の使用中に前記圧電素子が前記電気マスク集合体に対して振動することによって移動する、電気マスク集合体(5)と、
を有し、
さらに、前記電界検出器(20)の使用中に測定対象電界(E)に曝される前記圧電素子(1)の部分が、前記電気マスク集合体によって制限されながら、前記電気機械発振器の各発振中に変化するように、前記電気マスク集合体(5)が配置され、
前記測定対象電界(E)は、前記電界検出器(20)の使用中に前記圧電素子(1)の曝された可変な前記部分に作用し、それによって、前記周波数測定装置(4)により測定される前記発振周波数(f)の変化を生成し、前記発振周波数は電界強度測定結果を形成することを特徴とする、電界検出器(20)。
【請求項2】
前記圧電素子(1)は、結晶水晶の一部分、窒化アルミニウムの一部分、リン酸ガリウムの一部分、または化学式LaGa5.5Ta0.514を有する結晶の一部分であることを特徴とする、請求項1に記載の電界検出器(20)。
【請求項3】
前記圧電素子(1)は、前記電界検出器の使用中に曲げることによって振動するように意図されたビーム、特に、固定された第1の端部と、前記第1の端部の反対側の自由な別の端部とを有するビームを備え、
または、前記圧電素子は、前記電界検出器(20)の使用中に曲げることによってそれぞれ振動するように意図された2つの平行なビーム(11、12)を備え、両方のビームは、前記2つのビームのそれぞれにおけるそれぞれの第1の端部によって互いに接続され、同じビームの第1の端部とは反対側にある各ビームの別の端部は自由であり、
または、前記圧電素子(1)は、それぞれが前記電界検出器(20)の使用中に曲げることによって振動するように意図された2つの平行なビーム(11、12)を備え、両方のビームは、一方では、前記ビームの2つのそれぞれの第1の端部によって互いに接続され、他方では、2つの前記第1の端部とは反対側にある、前記ビームの2つのそれぞれの別の端部によって互いに接続されることを特徴とする、請求項1または2に記載の電界検出器(20)。
【請求項4】
前記電気マスク集合体(5)は少なくとも1つの金属部分を備え、前記金属部分の縁は、各発振中の少なくとも1つの瞬間に、前記測定対象電界(E)に対して前記圧電素子を部分的にマスクするように、前記圧電素子(1)の前に配置されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電界検出器(20)。
【請求項5】
前記電気マスク集合体(5)は2つの金属部分(51、52)を備え、前記金属部分(51、52)は、2つの前記金属部分が前記測定対象電界に対して垂直になるように前記検出器が配向されたときに、前記圧電素子の2つの一方の側とそれとは反対の側に、対称的に、前記測定対象電界(E)に対して前記圧電素子(1)の同一の部分的マスクを生成することを特徴とする、請求項4に記載の電界検出器(20)。
【請求項6】
前記電気機械発振器は、前記圧電素子(1)に加えて、前記圧電素子と接触する電極(61、62)に電気的に接続された少なくとも1つの電子増幅器(3)を備えて、その結果、損失補償発振器ループ構造を形成することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電界検出器(20)。
【請求項7】
前記電極(61、62)の一方は、前記電界検出器の使用中に前記圧電素子(1)に励起電圧(V)を伝達するために、前記電子増幅器(3)の出力に電気的に接続され、
前記電極の他方は、前記圧電素子から生じる応答電流(I)を検出するために、電流検出システム(2)の入力に接続され、
前記電流検出システムの出力は、前記電子増幅器の入力に接続されることを特徴とする、請求項6に記載の電界検出器(20)。
【請求項8】
前記電極(61、62)のうちの1つ、好ましくは各電極は、前記電界検出器の使用中に前記測定対象電界(E)に対して前記電気マスク集合体(5)によってマスクされる前記圧電素子の位置において、前記圧電素子(1)上に配置されることを特徴とする、請求項6または7に記載の電界検出器(20)。
【請求項9】
電界検出集合体(30)であって、
それぞれが請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電界検出器である、2つの電界検出器(20a、20b)を備え、
前記2つの電界検出器は、同一である各圧電素子(1a、1b)と、異なる各電気マスク集合体(5a、5b)とを有し、その結果、前記測定対象電界が0でないときに、前記測定対象電界(E)が、両方の電界検出器間で異なる前記発振周波数(f、f)の変化を生成し、
さらに、前記電界検出集合体(30)は、両方の電界検出器(20a、20b)の前記周波数測定装置(4a、4b)によって測定された前記発振周波数(f、f)の間の差異を特徴付けるように配置された減算ユニット(21)を備え、前記差異は、別の電界(E)強度測定結果を形成し、この結果は、2つの前記電界検出器のそれぞれによって別々に送出される測定結果よりも、周囲温度の変動に対して感度が低いことを特徴とする、電界検出集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも1つの電極と可動マスクとを備える電界検出器が知られている。可動マスクは、導電性材料から作製され、1つまたは複数の電極の前に配置され、測定対象電界から1つまたは複数の電極を部分的にマスクする。したがって、この(1つまたは複数の)電極の1つまたは複数の可変な部分は、測定対象電界に曝され、(1つまたは複数の)電極を電流検出器にリンクさせる1つまたは複数の接続部内に電流を生成する。検出される電流は、電界の測定値を構成する。しかし、そのような検出器は嵩張り、高価であり、エネルギーを消費するので、多くの用途、特に、航空機、無人機、または衛星に搭載される静電界測定のための用途には適していない。
【0003】
これらの欠点を克服するために、最近、シリコン製のMEMS(「Micro Electro-Mechanical Systems」)装置に基づく電界検出器が開発された。しかしながら、各測定中にMEMS装置を振動させるために電界を利用すると、測定結果にバイアスが生じる。加えて、測定は、高分解能アナログ-デジタル変換器の使用を必要とする、ある量の電荷を評価することによって進行する。このようなコンバータはそれ自体高価であり、著しいエネルギー消費の原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、小型、安価、低電力であり、測定結果が正確かつ信頼性のある、新しい電界検出器を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的または他の目的を少なくとも部分的に達成するために、本発明の第1の態様は、以下を含む電界検出器を提案する:
その少なくとも一部が、電界検出器の使用中に発振周波数で振動するように意図された圧電素子から構成される、電気機械発振器と、
発振周波数を測定するために電気機械発振器に結合された周波数測定装置と、
電気マスク集合体であって、この圧電素子と接触することなく圧電素子の近くに配置され、その結果、電界検出器の使用中に圧電素子が電気マスク集合体に対して振動することによって移動する、電気マスク集合体。
【0006】
本発明によれば、さらに、電気マスク集合体は、電界検出器の使用中に測定対象電界に曝される圧電素子の部分が、この電気マスク集合体によって制限されながら、電気機械発振器の各発振中に変化するように配置される。測定対象電界は、電界検出器の使用中に圧電素子の曝された可変な部分に作用し、周波数測定装置により測定される発振周波数の変化を生成する。それによって、発振周波数は、電界強度測定結果を形成する。
【0007】
したがって、本発明は、圧電発振器を使用することによって、従来技術の検出器の欠点を解決する。このような発振器は、実際、安価で、軽量で、小型である。さらに、それらの使用は、測定結果にバイアスを生成する可能性のある電界を生成することを必要としない。
【0008】
一般に、本発明では、圧電素子の材料は様々な化学組成を有することができる。特に、この圧電素子は、結晶水晶の一部分、窒化アルミニウム(AlN)の一部分、リン酸ガリウム(GaPO4)の一部分、または、頭字語LGTによって一般に指定されて化学式LaGa5.5Ta0.514に対応するランガテート(langatate)結晶の一部分であってもよく、式中、Laはランタン元素を示し、Gaはガリウム元素を示し、Taはタンタル元素を示し、Oは酸素元素を示す。このような結晶性材料は、薄いスライス、すなわち「ウエハ」の形態で利用可能であり、これは、この元素に対する所望の形状を有する圧電素子を得るために化学的にエッチングすることができる。
【0009】
再び一般に、圧電素子は、発振器の動作に必要な振動を生成するのに適した様々な形状を有することができる。したがって、本発明の様々な可能な実施形態では、圧電素子は、以下の構造のうちの1つを備えることができる:
電界検出器の使用中に曲げることによって振動するように意図されたビーム、特に、固定された第1の端部と、第1の端部の反対側の自由な別の端部とを有するビーム、
電界検出器の使用中に曲げることによってそれぞれ振動するように意図された2つの平行なビームであって、両方のビームは、前記2つのビームのそれぞれにおけるそれぞれの第1の端部によって互いに接続され、同じビームの第1の端部とは反対側にある各ビームの別の端部は自由であるような、2つの平行ビーム、
それぞれが電界検出器の使用中に曲げることによって振動するように意図された2つの平行なビームであって、両方のビームは、一方では、これらのビームの2つのそれぞれの第1の端部によって互いに接続され、他方では、第1の端部とは反対側にあるそれらの別の端部によって互いに接続されるような、2つの平行なビーム。
【0010】
電気マスク集合体は少なくとも1つの金属部分を備えることができ、この金属部分の縁は、各発振中の少なくとも1つの瞬間に、測定対象電界に対して圧電素子を部分的にマスクするように、圧電素子の前に配置される。しかしながら、好ましくは、この電気マスク集合体は2つの金属部分を備えてもよく、この金属部分は、電界検出器が両方の金属部分が測定対象電界に対して垂直になるように検出器が配向されたときに、圧電素子の2つの一方の側とそれとは反対の側に、対称的に、測定対象電界に対して圧電素子の同一の部分的マスクを生成する2つの金属部分である。
【0011】
一般に、電気機械発振器は、圧電素子に加えて、圧電素子と接触する電極に電気的に接続された少なくとも1つの電子増幅器を備えて、その結果、損失補償発振器ループ構造を形成してもよい。そのような場合、電界検出器の使用中に圧電素子に励起電圧を伝達するために、電極のうちの一方を電子増幅器の出力に電気的に接続することができ、圧電素子から生じる応答電流(response electrical current)を検出するために、電極のうちの他方を電流検出システムの入力に接続することができる。次いで、電流検出システムの出力は、ループ構造を形成するために、電子増幅器の入力に接続される。
【0012】
有利には、電極のうちの1つ、好ましくは、各電極は、電界検出器の使用中に測定対象電界に対して電気マスク集合体によってマスクされる位置において、圧電素子上に配置され得る。したがって、各電極によって引き起こされ得る測定バイアスを低減または除去することができる。
【0013】
最後に、本発明の第2の態様は、それぞれが第1の態様による電界検出器である、2つの電界検出器を備える、電界検出集合体を提案する。これらの2つの電界検出器は、同一の圧電素子と、それぞれ異なる電気マスク集合体とを有する。したがって、測定対象電界が0でない(ゼロでない、非ゼロである)ときに、測定対象電界が、両方の電界検出器間で異なる発振周波数の変化を生成する。さらに、電界検出集合体は減算ユニットを備え、減算ユニットは、両方の電界検出器のそれぞれの周波数測定装置によって測定された発振周波数間の差異を特徴付けるように配置される。次に、この差異は、別の電界強度測定結果を形成し、この結果は、2つの電界検出器のそれぞれによって別々に送出される測定結果よりも、周囲温度の変動に対して感度が低い。実際、両方の電界検出器の圧電素子が同一であるので、周囲温度の変動は、測定対象電界がない場合に両方の電界検出器について同一である発振周波数のシフトを生じる。しかし、測定対象電界が0でないとき、それは、それらの異なるそれぞれの電気マスク集合体に起因して、両方の電界検出器間で異なる発振周波数の変化を作り出す。次いで、減算ユニットは、電界測定結果から、周囲温度の変動からの寄与を排除することを可能にする。
【0014】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照して、いくつかの非限定的な例示的な実施形態の以下の詳細な説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による電界検出器のブロック図である。
図2a図1の電界検出器に用いることができる圧電素子の斜視図である。
図2b図2aの圧電素子の正面図であり、圧電素子上に配置された電極を示す。
図2c図2bに対応する断面図である。
図2d】代替実施形態についての図2bに対応する。
図2e図2dに対応する断面図である。
図3図1の電界検出器に代替的に使用され得る別の圧電素子の斜視図である。
図4図1の電界検出器の動作原理を示す断面図である。
図5】本発明による電界検出集合体のブロック図である。
図6a図5の検出集合体のための第1の可能な変形例を示す。
図6b図5の検出集合体のための第2の可能な変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
明確にするために、これらの図に示される要素の寸法は、実際の寸法にも、実際の寸法比にも対応しない。さらに、これらの要素のいくつかは象徴的にのみ表され、異なる図に示される同一の参照番号は同一であるか、または同一の機能を有する要素を示す。
【0017】
図1によれば、本発明による電界検出器20は、電気機械発振器と、周波数測定装置と、電気マスク集合体とを備える。図1では見えない電気マスク集合体について、図2aを参照して説明する。電気機械発振器は一対の電極61、62を備えた圧電素子1を備え、これは、圧電素子1に励起電圧Vを印加し、この圧電素子1で生成した応答信号、例えば応答電流Iを収集する。公知の方法では、電気機械発振器は、圧電素子1に加えて、符号2で示される応答電流Iを検出するための検出システムと、符号3で示されるAMPL.で示される増幅器とを含むループ構造によって形成される。電流検出システム2は、反転入力と、非反転入力と、出力とを有するオペアンプ21と、電気抵抗器22とに基づいて形成されてもよい。オペアンプ21の非反転入力は電界検出器20のグランドに接続され、反転入力は、圧電素子1からの電流Iを送出する電極62に接続され、抵抗器22はオペアンプ21の反転入力と出力との間に接続される。このとき、電流検出システム2は、応答電流Iに比例した電圧を出力する。電流検出システム2には他の電気構造が可能であり、当業者に知られている。電流検出システム2の出力は増幅器3の入力に接続され、増幅器3の出力は、電極61に印加される励起電圧Vを供給する。このようなループ構造は、エネルギー損失を補償すること、および、自発発振の存在に必要な位相条件を満たすことを可能にする。これらの発振は圧電素子1の振動を引き起こし、それらの周波数は、オープンループ回路および正弦波駆動モードで使用されるときの電気機械発振器の共振周波数である。周波数測定装置は、符号4で示され、FREQで示される。周波数測定装置は、電極61と並列に、増幅器3の出力に接続されてもよい。それは、市販の標準的な電子周波数計であってもよい。
【0018】
圧電素子1は図2aに示すように、結晶水晶音叉であってもよい。したがって、圧電素子1は、固定ベース部10を介して、それらのそれぞれの端部の一方のみによって互いに堅固に接続された、互いに平行で離間した2つのビーム11および12から構成される。このようなビームモデルは、1つの自由端部および1つの埋め込み端部を有すると言われている。破線の輪郭は、両方のビーム11および12の曲げ変形を示す。基本的に、ベース部10に堅固に接続された各ビーム11、12の端部は、圧電素子1の振動ノードに対応する。ビーム11および12の長手方向は、圧電素子1を形成するために使用される結晶水晶の結晶学(crystallographic)方向Yに平行であり、音叉の平面は、結晶(crystalline)方向Xに垂直である。図2aは、2つの金属板51および52から構成される電気マスク集合体5も示す。符号Eは、金属板51、52を越えて突出するビームの側部において、圧電素子1のビーム11、12を通過する測定対象電界を示す。電界検出器20を適切に使用するために、電界Eは、金属板51および52に対して実質的に垂直になるように配向される。
【0019】
図2bおよび図2cは、圧電素子1上の電極61および62のための第1の可能な配置を示す。電極は、ビームの全長またはほぼ全長に沿って、同一平面上にあるビーム面上に、および、音叉の中心軸に最も近いビームの縁に対して、各ビーム11、12上に長手方向に配置される。したがって、電極61は、音叉の同じ側で、一方のセグメントがビーム11上に、他方のセグメントがビーム12上に配置された、2つの電極セグメントを有する。同様に、電極62も、電極61から見て音叉の他方の側で、一方のセグメントがビーム11上に、他方のセグメントがビーム12上に配置された、2つの電極セグメントを有する。このように配置された電極61および62は、振動の各瞬間において同一である2つのビーム11および12の内部縁の伸長または収縮を引き起こす。このように配置されたすべての電極セグメントは、測定対象電界Eに対して金属板51、52によってマスクされている。
【0020】
図2dおよび図2eは、電極61および62のための第2の可能な配置を示す。電極はここでは、ベース部10に近い各ビーム11、12の部分に限定され、各電極61、62は、各ビーム11、12の足において、各ビームの内側と外側との間に、互いに反対側を向いた電界を生成するように配置されて接続された二対の電極セグメントを備えるが、各電極61、62は依然として2つのビーム11、12の間で対称的である。音叉の圧電励起のそのようなモードはベース部10に対する各ビーム11、12の「蝶番運動」(hinging)を引き起こし、次いで、各ビームは、このヒンジから曲げることによって振動する。
【0021】
図3は、圧電素子1の別の可能なモデルを示す。圧電素子1は依然として、同一かつ平行な2つのビーム11および12から構成されるが、ビーム11および12はここでは、それらの2つのそれぞれの端部によって互いに接続され、2つの固定ベース部10’および10”に接続される。このような圧電素子のモデルは、当業者の専門用語ではヒンジ式(ヒンジ-ヒンジ)(hinged-hinged)であると言われる。ビーム11、12のそれぞれは、圧電素子1の平面に平行な方向に曲げることによって、2つのビームの瞬間的な曲げ方向が互いに反対側方向を向き、2つのビームの瞬間的な偏向値の絶対値が同一であるようにして、依然として振動する。別の可能なモデルとしてあげた圧電素子1のこのモデルでは、電極61および62は、ビーム11および12の両方上で図2bおよび図2cの構成と同様の構成を有し得るが、電極61および62は、ビームの長さに沿った中央部分に限定される。
【0022】
圧電素子1の他のモデル、特に、単一の振動ビームを有するモデルも可能であり、このビームの一方の端部は自由であり、他端部は、「埋め込まれる」と呼ばれ、素子の固定ベース部に堅固に接続される。公知の方法では、上述したような圧電素子は、結晶水晶ウエハからの化学エッチングまたは反応性イオンエッチングによって製造することができる。
【0023】
図4によれば、例えば図2a~図2cの圧電素子1は、2つの電気マスク51および52の間に挿入され、電気マスク51および52は、圧電素子1における2つの一方の側とそれとは反対の側で互いに対して平行に、ただし互いとは接触しないように配置されている。電気マスク51および52の両方が、電気マスク集合体5を形成する。電気マスク51および52は、外部電界Eから圧電素子1の一部をマスクするために対称である。この外部電界Eは、電界検出器20の最適な使用中、両方のマスク51および52に対して垂直である。言い換えると、2枚の金属板51、52は、これらの板に平行な共通の投影面に重ねられている。また、両金属板51、52は、圧電素子1の限られた部分をマスクする大きさとなっており、この限られた部分は、振動毎に変化する。図2aおよび図3に示される圧電素子1のモデルの場合、金属板51および52の両方は、ビーム11、12における、圧電素子の中心に向かって配置されたそれぞれの部分をマスクすることができ、これらの板の縁は、図に示されるように、平行であり、ビームの長手方向の中央の領域上に重ねられている。このようにして、各ビーム11、12における、その外部縁に近い長手方向部分、すなわち、各ビームの複数の面のうちで他方のビームとは反対側の面に近い長手方向部分だけが、電界Eに曝される。加えて、この曝される部分は、ビームの振動の瞬間的な状態に応じて変化する体積を有する。金属板51、52のいくつかの可能な実施形態では、金属板は例えば、ガラス板のような平坦な基材上に堆積された銀(Ag)または金(Au)からなる金属層部分から構成されてもよい。金属板51、52は互いに電気的に接続されており、浮遊電位のままでもよいし、電位基準端子に接続されていてもよい。本発明のいくつかの簡略化された実施形態では、電気マスク集合体5は、圧電素子1の側面のうちの1つのみに、単一の金属板のみを備えてもよい。
【0024】
ここで、図4を参照して、電界検出器20の動作原理について説明する。励起電圧Vは、圧電素子1内に、圧電素子1の振動を引き起こす応力の分配を生じさせる。外部電界がない場合、電気機械発振器の自発発振は、その固有発振周波数である周波数値fを有する。この値fは主に、圧電素子1の寸法、固有パラメータ、圧電物質の弾性パラメータの値、および発振器全体の電気パラメータに依存する。そのような電気機械発振器の固有発振周波数値fでの動作は、当業者に知られている。特に、この固有発振周波数値fでの発振中には、励起電圧Vは、圧電素子1の変形に対して直角位相である。実際に、励起電圧Vは、周囲気体中の圧電素子1の粘性摩擦による損失のような散逸損失を正確に補償する。しかしながら、このような損失は、圧電素子1の瞬間的な変形速度に比例する。より正確には、励起電圧Vは、それぞれのビーム11、12において、発振の定常状態において圧電素子1の振動を維持する、Fexciと表される圧電励起力を生成する。固有発振周波数値fは、外部電界が存在しない場合には、周波数測定装置4によって実験的に測定することができる。
【0025】
Eで示される外部電界は、測定対象電界である。電界Eが0でないとき、電界Eは、圧電素子1のうち、電気マスク集合体5によってマスクされていない部分を通過する。このマスクされていない部分、すなわち電界Eに曝された部分は、図の実施例のように両方のビーム11と12との間で分割されていてもよく、このマスクされていない部分において、電界Eは、電界Eによって通過される圧電素子1の瞬間的な部分(fraction)に比例する、Fpiezoで示される追加の圧電力を引き起こす。したがって、この追加の圧電力Fpiezoは、圧電素子1の瞬間的な変形に比例する。
【0026】
測定対象電界Eの存在下では、圧電素子1内の励起電圧Vによって生成される圧電励起力Fexciが、追加の圧電力Fpiezoよりもはるかに大きい。このため、圧電励起力Fexciと圧電素子1の変形との位相差値は、あまり変化しない。その結果、力FpiezoおよびFexciの両方が、互いに対して直角位相である。この直角位相相関のおかげで、電界Eの存在下で電気機械発振器の発振周波数について追加の圧電力Fpiezoによって引き起こされる値の変化は最大であり、一方、電気機械発振器の他のすべてのパラメータは変化しないままである。そして、ΔF=(Fpiezo/Fexci)・f/(2・Q)であり、ここで、ΔFは、電界Eによって生じる発振周波数の変動であり、Qは、オープンループ共振器として使用され、正弦波駆動モードで使用されるときの圧電素子1のクオリティファクタ(quality factor)である。変動Δfは差f-fに等しく、ここで、fは、電界Eの存在下で周波数測定装置4によって測定される発振周波数である。発振周波数Δfの変動は電界Eに比例し、Δf=K・Eであり、比例係数Kは、特に、圧電素子1の幾何学的特徴および電気機械的特徴、ならびにマスク集合体5の幾何学的特徴に依存する。比例係数Kは、電気機械発振器のデジタルモデリングによって、または電界検出器20の較正によって決定することができる。単結晶水晶であって図2aに従う圧電素子1について、Kは、ビーム11および12の両方がそれぞれ、3mm(ミリメートル)に等しい長さL、200μm(マイクロメートル)に等しい音叉の平面内の幅e、および30μmに等しい音叉の平面に垂直に測定された厚さhを有している場合であって、ビーム11および12の両方が100μmに等しい距離dだけ離間している場合には、約4μHz/(V/m)(マイクロヘルツ毎ボルト毎メートル)に等しい。したがって、周波数測定装置4によって送出される発振周波数値fは、電界Eの測定値を構成し、E=(f-f)/Kである。
【0027】
しかし、電界Eが0(ゼロ)のときに周波数測定装置4によって測定される固有発振周波数fは、圧電素子1の温度、すなわち電界検出器20が使用される周囲温度に応じて変化し得る。上記のような電界検出器20は、発振周波数fの変化内で、周囲温度の変動に起因する固有発振周波数fの変動の寄与を、測定対象電界Eによって生成される寄与から分離することができない。図5に関してここで説明される検出集合体は、固有発振周波数fに影響を及ぼす熱寄与を除去することを可能にし、その結果、そのような検出集合体によって送出される測定結果は、測定対象電界のみを特徴付け、また、この結果は、周囲温度にかかわらず、同じであるか、または実質的に同じである。このような改良は、例えば人工衛星に搭載されている場合のように、周囲温度が著しく変化する可能性がある場合に特に有益であり得る。
【0028】
図5によれば、電界Eの検出集合体は、一般的に符号30で示され、図1の電界検出器20にそれぞれ従う2つの電界検出器20aおよび20bを備える。これらの2つの電界検出器20aおよび20bは、それらの電気マスク集合体を除いて、互いに同一である。特に、電界検出器20aおよび20bの両方は、同一であり、かつ同一に配向された各圧電素子1aおよび1bを有しており、各圧電素子は、図2aに示されるような単結晶水晶音叉タイプとすることができる。したがって、これらの圧電素子は同じ固有発振周波数fを有し、この固有発振周波数fは、電界検出器20aおよび20bの両方について同じように周囲温度によって変化する。これらの2つの圧電素子1aおよび1bは、検出集合体30内で、同じ測定対象電界Eに曝されるように、互いに十分近くに固定されて配置される。一方、電界検出器20aおよび20bの両方は、異なる各電気マスク集合体を有し、その結果、上で定義された係数Kは、異なる2つの値、すなわち、電界検出器20a用のKおよび電界検出器20b用のKを有する。符号4aおよび4bは、電界検出器20aおよび20bの発振周波数を測定するためのそれぞれの周波数測定装置を示す。したがって、測定対象電界Eの存在下で、周波数測定装置4aは、第1の発振周波数値f=f+K・Eを提供し、周波数測定装置4bは、第2の発振周波数値f=f+K・Eを提供する。これらの2つの値は減算ユニット21に伝達され、減算ユニットは、DIFF.と表され、差分値f-f=(K-K)・Eを計算する。この差分値は、電界Eの新たな測定値を構成するものであり、両電界検出器20a、20bの各電気機械発振器の固有発振周波数fに依存しない。したがって、この測定値は、この固有発振周波数fを介して周囲の気温に依存することがなくなる。周囲温度に対する差f-fの残留依存性は、係数KおよびKを通して依然として生じ得るが、残留依存性は、温度の関数としての発振周波数f、fおよびfの別々の変動よりも小さい。
【0029】
第1の可能性によれば、符号5bで示される電界検出器20bの電気マスク集合体は、電界Eに対して、変動中に電界検出器20bの圧電素子1bを完全かつ連続的にマスクするような寸法および位置で選択され得る。したがって、電界検出器20bは電界Eに感度がなく、係数Kは0であり、周波数測定装置4bによって測定される周波数fは固有発振周波数fに常に等しい。図2a~図4を参照して説明したように、符号5aで示される電界検出器20aの電気マスク集合体は、対応する圧電素子1aを部分的にマスクする。図6aは、電界検出器20a(あるいは20b)内における圧電素子1a(あるいは1b)に対する電気マスク集合体5a(あるいは5b)のそのような構成を示す。そして、電界Eに対して減算ユニット21によって送出される測定結果は、f-f=K・Eとなる。
【0030】
別の可能性によれば、検出器20bの電気マスク集合体5bは、電界検出器20bの圧電素子1bの限られた部分をマスクすることができ、この部分は、電界検出器20aの圧電素子1aに対して電界検出器20aの電気マスク集合体5aによってマスクされた部分と相補的である。図6bは、このような他の構成の場合の図6aに対応する。ここで、K=-Kであり、電界Eに対して減算ユニット21によって送出される測定結果は、f-f=2・K・Eである。
【0031】
上記で詳述した実施形態の二次的な態様を修正しながら、引用された効果の少なくともいくつかを依然として保持しながら、本発明を再現してもよいことが理解される。特に、図2aおよび図3に示されるものとは異なる形状を有する圧電素子を使用してもよい。さらに、記載されたものとは異なるが、同等の機能を有する電子モジュールが、記載されたものの代わりに使用されてもよい。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3
図4
図5
図6a
図6b
【国際調査報告】