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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(54)【発明の名称】T字型レーザー励起装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/0933 20060101AFI20230425BHJP
   H01S 3/06 20060101ALI20230425BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
H01S3/0933
H01S3/06
H01S3/10 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558165
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2021057467
(87)【国際公開番号】W WO2021191221
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】2002852
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2100384
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】522376313
【氏名又は名称】アンスティテュ・オプティーク・テオリク・アプリケ
(71)【出願人】
【識別番号】321004758
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バランボワ,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ピション,ピエール
【テーマコード(参考)】
5F172
【Fターム(参考)】
5F172AL04
5F172EE07
5F172NS04
(57)【要約】
レーザー励起アセンブリ(1)であって、
-水平面(xy)内で厚さeの板状をなし、吸収スペクトル帯域及び付随する吸収係数αを有する平行六面体固体レーザー媒質(ML)と、
-前記レーザー媒質を励起すべく意図された少なくとも1個の発光モジュール(ME)であって、厚さeの板状の集光器(CL)と呼ばれる蛍光平行六面体結晶を含む発光モジュールを含み、前記集光器が前記エレクトロルミネッセント放射(L)により照射される少なくとも1個の照射面(Sl,Sl)を有し、且つ前記エレクトロルミネッセント放射(L)を吸収して前記吸収スペクトル帯域と重複するスペクトル範囲で蛍光放射を発すべく構成されていて、前記集光器が発光面(SE)を有し、
前記集光器が、前記発光面(SE)を介して前記レーザー媒質の受光面(SR,SR1,SR2)と光学的に接触しており、前記集光器が、前記レーザー媒質の横方向励起を実行すべく前記1個以上の照射面(Sl,Sl)が前記受光面に垂直であるように前記レーザー媒質に垂直に配置されていて、
前記光学接触部が、全内部反射により前記集光器(CL)内に捕捉された前記蛍光放射の一部(L)が、前記発光面(SE)を貫通して前記レーザー媒質(ML)に入射し、全内部反射により前記レーザー媒質(ML)内に捕捉されるべく設計されていて、
前記レーザー媒質の前記厚さeがe≦Labs/5を満たし、Labs=1/αが前記レーザー媒質の吸収長である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー励起アセンブリ(1)であって、
-水平面(xy)内で厚さeの板状をなし、吸収スペクトル帯域及び付随する吸収係数αを有する平行六面体固体レーザー媒質(ML)と、
-前記レーザー媒質を励起すべく意図された少なくとも1個の発光モジュール(ME)であって、
-波長λでエレクトロルミネッセント放射(L)を発すべく構成された複数の発光ダイオード(LED)と、
-厚さeの板状の集光器(CL)と呼ばれる蛍光平行六面体結晶を含む発光モジュールを含み、前記集光器が前記エレクトロルミネッセント放射(L)により照射される少なくとも1個の照射面(Sl,Sl)を有し、且つ前記エレクトロルミネッセント放射(L)を吸収して前記吸収スペクトル帯域と重複するスペクトル範囲で蛍光放射を発すべく構成されていて、前記集光器が寸法e×wの発光面(SE)を有し、wが集光器の幅であり、
前記集光器が、前記発光面(SE)を介して前記レーザー媒質の受光面(SR,SR1,SR2)と光学的に接触しており、前記集光器が、前記レーザー媒質の横方向励起を実行すべく前記1個以上の照射面(Sl,Sl)が前記受光面に垂直であるように前記レーザー媒質に垂直に配置されていて、
前記光学接触部が、全内部反射により前記集光器(CL)内に捕捉された前記蛍光放射の一部(L)が、前記発光面(SE)を貫通して前記レーザー媒質(ML)に入射し、全内部反射により前記レーザー媒質(ML)内に捕捉されるべく設計されていて、
前記レーザー媒質の前記厚さeがe≦Labs/5を満たし、Labs=1/αが前記レーザー媒質の吸収長であるレーザー励起アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記レーザー媒質の受光面(SR)の表面積と前記集光器の発光面(SE)の表面積の比が5よりも大きく、前記集光器の照射面の表面積と前記集光器の発光面の表面積の比が100以上である、請求項1に記載のレーザー励起アセンブリ。
【請求項3】
前記発光面の反対側の集光器(FSC)の出射面に結合された少なくとも第1のリサイクリングミラー(MR1)及び/又は前記受光面の反対側のレーザー媒質(SR2)の面に結合された第2のリサイクリングミラー(MR2)を含んでいる、請求項1又は2に記載のレーザー励起アセンブリ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザー励起アセンブリと、前記アセンブリが配置されたレーザー共振器を形成すべく少なくとも2個の共振器ミラー(M1、M2)を含むレーザーシステム(2)であって、レーザービーム(FL)が、寸法e×w(wは横方向寸法と呼ばれる)を各々有するレーザー面(SL)と呼ばれる2個の対向面を貫通しながら前記レーザー媒質内を伝搬方向(Dp)に伝搬し、前記レーザー励起アセンブリの少なくとも1個の発光モジュールがレーザー媒質の横方向励起を実行するレーザーシステム(2)。
【請求項5】
前記レーザー共振器が、前記レーザービームの各レーザー面の水平方向寸法w及び垂直方向寸法wが各々、前記レーザー面の横方向寸法の半分及び前記レーザー面の水平方向寸法の半分よりも小さい、すなわち水平面内でw≦w/2及び垂直面内でw≦e/2であるように構成されている、請求項4に記載のレーザーシステム。
【請求項6】
前記レーザー共振器が、前記レーザー媒質内での前記レーザービームの伝搬方向(Dp)が前記集光器と平行であり、前記レーザービームが前記集光器の下方を伝搬するように構成されており、前記レーザービームがレーザー媒質内での全伝搬長にわたり増幅されるように前記集光器の幅wが前記レーザー媒質の長さLに等しい、請求項5に記載のレーザーシステム。
【請求項7】
レーザー面に各々結合された第1及び第2の結合プリズム(PR1、PR2)を更に含み、前記プリズムが、前記レーザー媒質内での全内部反射により前記レーザービームが前記受信面及び前記受信面の反対側の面へ誘導されるように前記レーザービームを屈折させるべく構成されていて、前記共振器が、前記レーザービームの垂直方向寸法wがw≦esinθνであるように設計されていて、θνが前記受光面内の前記レーザービームの入射角である、請求項4~6のいずれか1項に記載のレーザーシステム。
【請求項8】
前記レーザー媒質の受光面(SR)に結合された複数の発光モジュールを含んでいる、請求項4~8のいずれか1項に記載のレーザーシステム。
【請求項9】
前記複数が、互いに横並び且つほぼ平行に配置された第1及び第2の発光モジュールを含み、前記システムが更に、前記第1と第2の発光モジュールの間に配置されたLED冷却システム(CS)を含み、前記レーザービームが、前記第1及び第2の発光モジュールにより同時に励起された領域で増幅されるように前記第1及び第2の発光モジュールの集光器と平行にその下方を伝搬し、前記冷却システムが金属材料又は高光学品質の透明材料を含んでいる、請求項8に記載のレーザーシステム。
【請求項10】
-互いに平行に配置されていて、且つ互いに対向して配置されて前記レーザー媒質の第1の受光面(SR1)に結合された第1の複数の発光モジュールと、
-互いに平行に配置されていて、且つ互いに対向して配置されて前記レーザー媒質の第2の受光面(SR2)に結合された第2の複数の発光モジュールを含み、
前記第1の複数及び前記第2の複数のモジュールが更に互いにほぼ平行であり、前記レーザービームの伝搬方向(Dp)が前記発光モジュールに垂直であり、
前記第1の複数及び前記第2の複数のモジュールが五点形に配置されている、請求項8に記載のレーザーシステム。
【請求項11】
前記レーザー共振器が、前記レーザービームが前記レーザー媒質の複数の異なる領域を伝搬するべく設計されていて、複数の同一の発光モジュールが各領域の上方に配置されている、請求項4に記載のレーザーシステム。
【請求項12】
-各々がレーザー面に結合された第1及び第2のプリズムであって、前記レーザー媒質内で全内部反射により、寸法がe×Lの端部(Tr)と呼ばれる2個の面上へ誘導されるように前記レーザービームを屈折させるべく設計されているプリズムと、
-前記レーザー媒質の受光面(SR)に結合された好適には同一である第1の組の発光モジュール、及び前記レーザー媒質の共面励起を実行すべく前記水平面(xy)内のレーザー媒質上に配置されていて、且つ前記端部(Tr)に結合された第2の組の発光モジュール(MEL)を含み、
-前記レーザービームの水平方向寸法がw≦wsinθであり、θが前記レーザー端部に入射するビームの入射角である、請求項4に記載のレーザーシステム。
【請求項13】
前記第2の組の発光モジュールが、前記レーザー媒質へ誘導されるレーザービームの反射の領域に対応する仕方で前記端部に配置されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
レーザー増幅器であって、請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザー励起アセンブリを含み、前記レーザー励起アセンブリの少なくとも1個の発光モジュールが前記レーザー媒質の横方向励起を実行し、レーザービーム(FL)が前記レーザー増幅器に入射し、寸法e×wを各々有するレーザー面(SL)と呼ばれる2個の対向する面を貫通しながら前記レーザー媒質内を伝搬方向(Dp)に伝搬するレーザー増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)励起レーザーシステムの分野に関し、より具体的には発光型集光器を用いる発光ダイオード励起レーザーシステムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
可視領域で発光する発光ダイオード(LED)の開発は、新たな低コスト且つ堅牢なレーザー光源の励起に大いに関心が持たれている。しかし、LEDの出力密度は、パルスモード(μs)で4W/mm、定常状態で1W/mmを超えることはない。この値は、例えば遷移金属レーザー(アレキサンドライト、Cr:LiSAF、又はチタンドープサファイア)等、特定のレーザー媒質を励起するには不充分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光度を高める一解決策として、LED励起集光装置を用いる方法がある(例えば、Barbet,Adrien,et al.“Light-emitting diode pumped luminescent concentrators:a new opportunity for low-cost solid-state lasers.”Optica3.5(2016):465-468.参照)。当該集光器は例えば、LEDが極めて優れた性能を示す波長で(450nmまでの)青色光を吸収するCe:YAG等の可視領域(赤~橙)で蛍光を発する結晶である。結晶は、二つの主表面が数百(又は数千)個のLEDで覆われて端発光を行う平面の形状で寸法決めされる。
【0004】
図1A、1Bに、同図には示していないレーザー媒質Lasの励起に適した従来技術で公知の発光モジュールMEの一例を示す。図1A、1Bは各々、同一の発光モジュールMEの透視図及び側面図を模式的に示している。発光モジュールMEは、第1のスペクトル帯域での発光を意図されたLEDの組及び集光器CLを含んでいる。集光器CLは、蛍光平行六面体結晶であり、LEDが発光したエレクトロルミネッセント放射Lにより照射される少なくとも1個の照射面SI、SIを有している。
【0005】
集光器の結晶は、前記エレクトロルミネッセント放射線Lを吸収すべく構成されている。LEDから発せられて照射面に向けられた光束は、結晶の体積全体に分布しているため結晶内で蛍光放射線を発する蛍光結晶の発光団Lumにより吸収される。発せられる光線は3種類に分類される。
-Lと表記する捕捉光線。これらの光線は、結晶の様々な面からの全内部反射(TIR)に起因して結晶内に捕捉されている。これらの光線は、結晶が、対向するペア同士が平行で互いに垂直な6個の面を有する平行六面体である場合に存在する。捕捉光線は、結晶の欠陥によるもの以外は結晶の外に出ることは決してない。
-非捕捉光線は最終的に結晶から出射する光線である。これらは2種類、すなわちTIRに誘導されて集光器の一つの面から出射することを特徴とするLと表記する誘導光線、及びこれらの面から反射されずに集光器から直接出射するLoutと表記する非誘導光線に分けられる。
【0006】
集光器によってもたらされる照度の上昇はLEDと比較して極めて顕著であるが、例えばレーザーダイオードによる照度と比較すれば照度は依然として低いままである。このため集光器で縦方向の励起を行うのは極めて困難である。一方、Barbetらによる論文に示されているように横方向への励起は可能である。更に、集光器から発せられる放射は極めて発散しやすい。これにより、いかなる光学的結合システムを用いても効果的なく、従って一切の光学的介在無しに、励起対象の結晶の極めて近くに集光器があるように移動させることが奨励される。
【0007】
(フラッシュランプ又はレーザーダイオードを用いる)従来の横方向励起において、励起ビームPumpと呼ばれるビームが、レーザービームSigの伝搬方向と直交する平均伝搬方向でレーザー媒質Lasを照射する(図2Aの左側部分参照)。当該レーザー媒質Lasは吸収スペクトル帯域及び付随する吸収効率αを有している。励起ビームPumpは、レーザー媒質Lasに入射すると同時に、T=e-αLの形式の透過率で指数関数的に吸収され、ここでαは吸収係数である。単一光源による光励起の場合、レーザービームの体積を、吸収が生じる領域になるべく一致すべく増幅する必要がある。しかし、吸収が最も大きい領域にレーザー光を近づけることは困難である。実際、結晶側(励起側)での公知の回折効果によりレーザービームに損失や変形が生じる。レーザービームSigが円筒形であってレーザー媒質での直径をdと仮定すれば、レーザービームSigを励起入射面から距離d/2未満に近づけることは困難である。コリメートされた励起ビームの場合、単純計算により、一定値dに対して、ビーム全体の平均を求めたレーザーの利得G図2Aの右側部分の曲線で示す傾向を有することが分かる。これは積α・d=1で最大値に達する。これは、横方向励起の場合に吸収長Labs=1/αがビームの直径dと等しくなければならないと述べるに等しい。従って、レーザービームの直径dが大きいほど、レーザー結晶の吸収が少なくなる。信号ビームSigを結晶面から遠く離す(理想的にはd/2に)必要があるほど利得は低くなる。この点は特にレーザー結晶の入射面の光学損傷閾値を超え得る高エネルギービームの場合に問題となる。この場合、直径が数センチメートルまでの大きな表面積を有するビームを用いる必要がある。
【0008】
集光器を用いる第1の仕方は、集光器MEをレーザー媒質MLのなるべく近くに配置して、この種の励起に(図2Aのように)他の光源を使用する場合と同じ仕方で横方向励起を行うことである。この目的のため、横方向励起の実行に適した「レーザー+集光器」励起アセンブリを考え、その寸法を以下に示す(図2Bを参照)。
-集光器MEの場合:eは集光器の厚さ、wを幅、及びLを長さとする。
-レーザー媒質MLの場合:eを厚さ、wを幅、及びLを(レーザービームの伝搬軸と平行な)長さとする。
【0009】
図示する例において,2個の媒質を、集光器の幅がレーザー媒質の長さに等しく(w=L)なるよう合致させる。レーザー媒質に励起光を良好に結合できるよう、集光器をレーザー媒質に接触させる。LED励起の集光器の出力端でビームは大きく発散する。従来のように例えばレーザーダイオードの細片がレーザー媒質の近くに置かれ、レーザー媒質が集光器よりも厚い(e>ec)場合、励起光線がレーザー媒質の側面に接触する前に吸収され、励起体積は
【数1】
のオーダーになる。励起光は従ってレーザー媒質内で希釈されるが、これはΔnと表記する反転分布体積密度に依存するGと表記する高い利得を得るには好ましくない。これら二つの量は、次式で結ばれることを想起されたい。G=exp(σΔn)。従来技術による装置において、励起出力体積密度は従って、レーザー媒質の体積に依存し、レーザービームに対する当該装置の横方向の寸法はレーザー媒質から出射する前に励起ビームを吸収可能にするのに充分でなければならない。
【0010】
本発明は、従来技術のいくつかの問題点の克服を目的とし、集光器内に捕捉された光線の極めて特定の放射を適切な形態のレーザー結晶と組み合わせて使用することにより、励起体積を大幅に減少させるものである。より正確には、本発明は、励起出力体積密度を増大させることにより従来技術よりも強くレーザービームを増幅可能にすべく構成された、レーザー媒質を横方向に励起する集光器を含む発光モジュールを含むレーザーアセンブリを製造することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため、本発明の一主題は、以下を含むレーザー励起アセンブリである。
-水平面内で厚さeの板状をなし、吸収スペクトル帯域及び付随する吸収係数αを有する平行六面体固体レーザー媒質と、
-前記レーザー媒質を励起すべく意図された少なくとも1個の発光モジュールであって、
-波長λでエレクトロルミネッセント放射を発すべく構成された複数の発光ダイオードと、
-厚さeの板状の集光器と呼ばれる蛍光平行六面体結晶を含む発光モジュールを含み、前記集光器は前記エレクトロルミネッセント放射により照射される少なくとも1個の照射面を有し、且つ前記エレクトロルミネッセント放射を吸収して前記吸収スペクトル帯域と重複するスペクトル範囲で蛍光放射を発すべく構成されていて、前記集光器は寸法e×wの発光面を有し、wは集光器の幅であり、
前記集光器は前記発光面を介して前記レーザー媒質の受光面と光学的に接触しており、前記集光器は、前記レーザー媒質の横方向励起を実行すべく当該1個以上の照射面が前記受光面に垂直であるように前記レーザー媒質に垂直に配置されていて、
当該光学接触部は、全内部反射により前記集光器内に捕捉された前記蛍光放射の一部が、前記発光面を貫通して前記レーザー媒質に入射し、全内部反射により前記レーザー媒質内に捕捉されるべく設計されていて、
レーザー媒質の前記厚さeはe≦Labs/5を満たし、Labs=1/αはレーザー媒質の吸収長である。
【0012】
本発明のいくつかの特定のモードによれば、
-レーザー媒質の受光面の表面積と集光素子の発光面の表面積の比が5よりも大きく、集光素子の照射面の表面積と集光素子の発光面の表面積の比が100以上であり、
-レーザー励起アセンブリは少なくとも、前記発光面の反対側の集光器の出射面に結合された第1のリサイクリングミラー、及び/又は延期受光面の反対側のレーザー媒質の面に結合された第2のリサイクリングミラーを含み、
-レーザーシステムは、本発明によるレーザー励起アセンブリ、及びアセンブリが配置されたレーザー共振器を形成すべく少なくとも2個の共振器ミラーを含み、レーザービームが、寸法e×w(wは横方向寸法と呼ばれる)を各々有するレーザー面と呼ばれる2個の対向する面を貫通しながら前記レーザー媒質内を伝搬方向に伝搬し、少なくとも1個の発光モジュールがレーザー媒質の横方向励起を実行し、
-レーザー共振器は、レーザービームの各レーザー面上での水平寸法wと垂直方向寸法wが各々レーザー面の水平方向寸法の半分及びレーザー面の横方向寸法の半分よりも小さく、水平面内でw≦w/2及び垂直面内でw≦e/2であるように構成されていて、
-レーザー共振器は、レーザー媒質内のレーザービームの伝搬方向が集光器と平行であり、レーザービームが集光器の下方を伝搬すべく構成されていて、前記集光器の前記幅wは、レーザービームがレーザー媒質内を伝搬する全範囲にわたり増幅されるようにレーザー媒質の長さLと同じであり、
-前記レーザーシステムは、各々がレーザー面に結合された第1及び第2の結合プリズムを含み、前記プリズムは、前記レーザー媒質内で前記レーザービームが全内部反射により受信面及び前記受信面の反対側の面へ誘導されるように前記レーザービームを屈折すべく構成されていて、前記共振器は、前記レーザービームの垂直方向寸法wがw≦esinθνとなるべく設計されていて、θνは、前記受光面への前記レーザービームの入射角であり、
-レーザーシステムは、前記レーザー媒質の受光面に結合された複数の発光モジュールを含み、
-レーザー媒質の受光面に結合された複数の発光モジュールは、並んで配置されていて互いにほぼ平行な第1及び第2の発光モジュールを含み、前記システムは更に、第1及び第2の発光モジュールの間に配置されたLED冷却システムを含み、レーザービームが第1及び第2の発光モジュールにより同時に励起された領域で増幅されるように、第1及び第2の発光モジュールの集光器と平行に下方を伝搬し、冷却システムは金属材料又は高光学的品質の透明な材料を含み、
-レーザーシステムは、
-互いに平行に配置されていて、互いに対向して配置されていて、且つレーザー媒質の第1の受光面に結合された第1の複数の発光モジュールと、
-互いに平行に配置されていて、互いに対向して配置されていて、且つレーザー媒質の第2の受光面に結合された第2の複数の発光モジュールを含み、
-第1の複数及び第2の複数のモジュールは互いにほぼ平行であり、レーザービームの伝搬方向は発光モジュールに垂直であり、
-第1の複数及び第2の複数のモジュールは五点形に配置されていて、
-レーザー共振器は、レーザービームがレーザー媒質の複数の異なる領域を伝搬するべく設計されていて、複数の同一の発光モジュールが各領域の上方に配置されていて、
-レーザーシステムは、
-レーザー面に各々結合された第1及び第2のプリズムであって、全内部反射により前記レーザー媒質内で寸法がe×Lの端部と呼ばれる2個の面へ誘導されるように前記レーザービームを屈折させるべく設計されているプリズムと、
-レーザー媒質の受光面に結合された、第1の好適には同一の発光モジュールの組と、レーザー媒質の共面励起を実行すべく、水平面内でレーザー媒質上に配置され且つ前記端部に結合された第2の発光モジュールの組を含み、
-レーザービームの水平方向寸法はw≦wsinθであり、θは前記レーザー端部に入射するビームの入射角であり、
-第2の発光モジュールの組は、前記レーザー媒質へ誘導される前記レーザービームの反射領域に対応するように前記端部に配置されていて、
-レーザー増幅器は、本発明によるレーザー励起アセンブリと、レーザー媒質の横方向励起を実行する少なくとも1個の発光モジュールを含み、レーザービームは前記レーザー増幅器に入射し、寸法e×wを各々有するレーザー面と呼ばれる2個の対向する面を貫通しながら前記レーザー媒質を伝搬方向に伝搬する。
【0013】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、例示的に与える添付図面を参照しながら以下の説明を読解すれば明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】従来技術で公知の発光モジュールの一例を示す模式図を示す。
図1B】従来技術で公知の発光モジュールの一例を示す模式図を示す。
図2A】従来技術から公知のレーザー媒質の横方向励起の模式図を示す。
図2B】従来技術から公知の集光器を用いる発光モジュールによる横方向への励起の模式図を示す。
図3A】本発明によるレーザー励起アセンブリの模式図を示す。
図3B】集光器内の誘導光線の模式図を示す。
図3C】レーザー媒質に結合された捕捉光線を入射角の関数として示す。
図4】集光器の光学効率を集光器(n)の指数及び出射媒質(n)の指数の関数として示す。
図5】本発明によるレーザーアセンブリの模式図を示す。
図6A】一つが本発明によるものである、3個の異なる集光器及びレーザー媒質の構成の模式図である。
図6B】2個の異なる構成、すなわち本発明に対応する共面励起構成(E)及びT字励起構成(E)についてレーザー媒質内で得られた照射の比較を示す。
図6C】レーザープレート内での2個の異なるレーザー媒質幅wの3個の異なる構成の利得と励起信号重なりの比較を示す。
図7A】本発明の励起アセンブリのレーザー媒質で得られる照度をレーザー媒質の厚さの関数として示し、eL1=0.5mm、eL2=0.7mm、eL3=1mm、eL4=2mmである。集光器の厚さをe=3mmに設定している。
図7B】本発明の励起アセンブリのレーザー媒質に吸収励起出力(C)と、捕捉光線が無い平行な励起ビーム(C2)の比較をレーザー媒質の厚さの関数として示す。
図7C】本発明の励起アセンブリのレーザー媒質で得られる照度を集光器の厚さec1=1mm、ec2=2mm、ec3=3mmの関数として示す。レーザープレートの厚さをe=1mmに設定している。
図7D】本発明の励起アセンブリのレーザー媒質に吸収励起出力(C)と、捕捉光線が無い平行な励起ビーム(C)の比較をレーザー媒質の吸収係数の関数として示す。
図7E】捕捉光線を有するT字型励起構成における励起光線の平均伝搬長Lmoyと、捕捉光線が無い従来構成の比較を示す。比較のため吸収長Labsを示している。
図8】2個の結合プリズム(PR1、PR2)を含む本発明によるレーザーシステムの模式図を示す。
図9】2個のリサイクリングミラー(MR1、MR2)を含む本発明によるレーザーシステムの模式図を示す。
図10】本発明の別の実施形態によるレーザーシステムの模式図を示す。
図11】本発明の別の実施形態によるレーザーシステムの模式図を示す。
図12】本発明の別の実施形態によるレーザーシステムの模式図を示す。
図13A】本発明の別の実施形態によるレーザーシステムの二つの模式図を示す。
図13B】本発明の別の実施形態によるレーザーシステムの二つの模式図を示す。
図14】本発明の別の実施形態によるレーザーシステムの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
各要素は別途指定しない限り原寸大ではない。
【0016】
図3Aに、本発明によるレーザー励起アセンブリ1の模式図を示す。レーザー励起アセンブリは、水平面xyにおいて板状の平行六面体固体レーザー媒質MLを含んでいる。レーザー媒質は、吸収スペクトル帯域域及び付随する吸収係数αを有している。好適には、吸収スペクトル帯域域は可視又は近赤外域(350nm~950nm)にある。
【0017】
レーザーアセンブリは追加的に、図1A、1Bに示すものと同一のレーザー媒質MLを励起すべく意図された少なくとも1個の発光モジュールMEを含んでいる。この発光モジュールは、波長λでエレクトロルミネッセント放射Lを発すべく構成された複数の発光ダイオードLEDを含んでいる。
【0018】
発光モジュールは更に、集光器CLと呼ばれる厚さe、幅w及び長さLの板状の蛍光平行六面体結晶を含んでいる。
【0019】
集光器CLは、LEDからのエレクトロルミネッセント放射Lにより照射される少なくとも1個の照射面SI、SIを有している。LEDは、マトリクスを形成すべく、且つLEDマトリクスの全発光表面積と蛍光結晶CLの各照射面SI1,SI2の比を最適化すべく配置されている。
【0020】
集光器は、LEDが発したエレクトロルミネッセント放射Lを吸収して、レーザー媒質の吸収スペクトル帯域と重複するスペクトル領域で蛍光放射を発すべく構成されている。上述のように、照射面を貫通するLEDから発せられた光束は蛍光結晶の発光団Lumに吸収される。これらの発光団は、蛍光結晶の体積全体にわたり分布しており、蛍光結晶内で蛍光放射を等方的に発することにより脱励起する。
【0021】
この蛍光放射の捕捉された部分Lと称するものは集光器内でTIRにより捕捉されている。第2の部分は、集光器から出射した光を含み、一部Lが端部へ誘導され、一部Loutが直接出射する。図3Bに、集光器内に捕捉された光線を示す。左側に集光器の平面図(平面xy)を示し、照射面SI、SIを介した無誘導光線の脱出円錐を模式的に描いている。右側に、集光器から発せられた光線の透視図を示す。暗いキャップは非捕捉光線(誘導及び無誘導)に対応する角度を表し、明るい領域は捕捉光線に対応する角度を表している。同図において、例示的に、集光器結晶CLとして選択された媒質は、臨界角が33°のCe:YAG結晶である(指数n=1.84)。
【0022】
捕捉されない放射に対するTIRにより捕捉される放射の割合はスネルデカルトの法則により結晶の指数及び周囲媒質の指数により設定される。例えば、空気中のYAG等の指数1.84の媒質では、図3Bに示すように光線出射の臨界角は33°である。光線の48%が六面(Lout、Lg)を通る6個の脱出円錐を介して出射し、光線の52%が構造(Lp)内に捕捉されたままとなる。
【0023】
最重要な点として、本発明者らは光線追跡シミュレーションの結果、集光器L内にTIRにより捕捉された蛍光放射が、構造の外面を形成する六面が同一である限り、構造の形状に依らず捕捉されたままであることを認識した。従って、対向するペア同士が平行な六面を有する一定指数の構造は最終的内に捕捉された光で一様に満たされる。
【0024】
この構成に準拠するのに必要な1個の条件は、発光モジュールMEの集光器CLがレーザー媒質MLに垂直に配置されている、すなわち照射面SI、SIがレーザー媒質MLの受光面SR、SR1、SR2に垂直であることである。
【0025】
集光器CLは、発光面SEを介してレーザー媒質の受光面SR1、SR2に結合されている。発光面SEと受光面SRとの接触は、集光器CL内に捕捉された光線がレーザー媒質ML内へ進入可能になるのに適している。集光器CLとレーザー媒質MLが光学的に接触し、レーザー媒質MLの指数が集光器CLの指数以上であれば、捕捉光線は全てレーザー媒質ML内へ進入する。レーザー媒質ML及び集光器CLの指数とは異なる指数の接着剤がレーザー媒質MLと集光器CLの間で用いられていれば、捕捉光線の一部がレーザー媒質ME内へ進入する。
【0026】
レーザー媒質MLの端部Trが集光器CLの端部Trと平行ならば、集光器CL内に捕捉された光線のうちレーザー媒質ML内へ進入するものは全てレーザー媒質ML内でも捕捉される。しかし、この条件は、励起光の良好な閉じ込めを保証するには必ずしも有用ではない。実際,レーザー媒質MLでの吸収に起因して、レーザープレートの横方向寸法(w及びL)がLabsよりも大きい場合、励起光が吸収される前に端部Tに到達する可能性は殆ど無い。媒質MLに対して集光器CLが垂直である条件は従って、面SR1とSR2の間でのTIRの補足及びレーザー媒質MLの平面での吸収により、励起光線をレーザー媒質内に閉じ込めるのに充分である。TIRによりレーザー媒質内に捕捉された励起放射は吸収されるまで媒質内を伝搬する。この点が極めて重要なのは、平面SISIが平面SRに垂直なままである限り、本発明がレーザー媒質ML上での集光器CLの全ての可能な向きを考慮することを意味するからである。
【0027】
発明者らは、レーザー媒質内の励起出力体積密度を大幅に増大させながら、同時にレーザー媒質の厚さを大幅に減少させるべく、レーザー媒質ML内に捕捉された光線を閉じ込める当該概念を利用した。
【0028】
本発明は従って、e<<Labs(Labs=1/αはレーザー媒質の吸収長)となるようにレーザー媒質の厚さを選択可能にする。これは、レーザー媒質MLにおける吸収をSEに垂直な寸法(e)から分離する効果を有している。より正確には、発明者らは、多くのシミュレーション及び実験を通じて、レーザー媒質の厚さeがe≦Labs/5、好適にはe≦Labs/10である場合、励起出力体積密度が充分に高いことを突き止めた。この条件の妥当性を図6B~14の例により説明する。ここに、αはレーザー媒質MLの吸収スペクトル帯域と集光器CLの発光帯との重なりを考慮して平均を求めた吸収係数である。
【0029】
吸収長をはるかに下回るまでレーザー媒質の厚さを薄くする方式は特に直観に反する。実際、(図2Aのように)フラッシュランプ又はレーザーダイオードを用いてレーザー媒質の受光面SRを従来の仕方で励起する場合、レーザー媒質の厚さを薄くする際に励起光の吸収が小さくなるという問題がある。厚さe<<Labsのレーザープレートを考慮するに、励起光はレーザープレートに到達する前に空気中を伝搬するため、レーザープレート内に捕捉することができない。光線は従って、顕著には吸収されずにレーザープレートを厚さ分だけ貫通してしまう。
【0030】
「T字型」励起装置は、本発明のレーザー励起アセンブリ(図3A)の構成に本明細書で名付けたものであり、吸収長Labsを5で、好適には10で除算した値よりも薄い厚さeのレーザープレートMLを、レーザー媒質の主面(受光面)に垂直に配置されて結合された集光器を用いて横方向に励起する。励起出力体積密度の増大は、レーザープレートMLの厚さを薄くし、主にSR1とSR2との間でレーザー媒質ML内の励起光を多重反射させることにより得られる。
【0031】
図3Cに、捕捉蛍光放射Lのレーザー媒質を貫通する部分の光線の角度分布を示す。ここで、光線の角度θは表面SIの法線を基準としている。図3Cは追加的に、平面図(水平面xy)において、集光器内の蛍光放射の部分(グレーの領域)の捕捉光線の模式的表現を含んでいる。図3Cの例において、レーザー媒質は非限定的に、吸収長2cm-1に対応する0.22%のドーピングが施された厚さe=1mm、長さL=5mm、及び幅w=10mmのアレキサンドライト結晶(Cr3+:BeAl)製のプレートである。レーザープレートの指数は1.76であり、これは角度θcrit=34.6°に対応し、この角度を超える光線はTIRにより面へ反射される。このレーザープレートは、図3Aの「T字型」の構成に従いCe:YAG集光器により励起される。図3Cから分かるように、入射角0°とθcritの間には実質的に光線が存在しない。実際、これらの光線は、Ceイオン(集光結晶の発光団)の等方性発光を光源とし、集光器内に捕捉されず、既に集光器の二個の主面SI1、SI2を介して出射している(図3BのLout参照)。レーザープレート内を伝搬する光線は従って極めて大きい角度を有している。このため、集光器の下方の励起照射は、図6Bに示すように、垂直面内で大きく傾斜した光線の放射により、集光器の中心から横方向に離れる際に極めて顕著に減衰する。
【0032】
更に、発光面SEを貫通する誘導光線L及び非誘導光線Loutは、0°~θcritの入射角でレーザー媒質MLを貫通して、レーザープレートのみを貫通する。これが吸収長(Labs=5mm)よりも厚さがはるかに薄い(e=1mm)ため、これらの光線の吸収への寄与は極めて小さくなる。
【0033】
集光器の効率ηoptは、レーザー媒質MLを透過する蛍光放射の発光出力と、蛍光が発した全出力の比として定義される。この効率は、当業者には公知の多くのパラメータ、すなわちフォトルミネッセンス効率、全内部反射効率、蛍光結晶の吸収容量、蛍光結晶内での伝搬損失、発光面SEと受光面SRの界面での損失等に依存する。
【0034】
レーザー媒質MLに結合される光束を最大化すべく、集光器とレーザー媒質との間の指数の飛躍を制限することが有利である。従って、一実施形態によれば、集光器とレーザー媒質が同一材料又は同一指数及び同一の物理的性質の材料から作られることにより、分子接着結合(例:集光器にはCe:YAG、レーザー媒質にはNd:YAG)を実現できる。
【0035】
代替的に、別の実施形態によれば、集光器は、空気中の遷移と比較して指数の飛躍を抑制可能にする接着剤によりレーザー媒質に接着される。図4に、集光器の光学効率ηoptを集光器の指数(n2)、及び出射面SEが位置する媒質すなわち接着剤の指数(n3)の関数として示す。集光器とレーザープレートの界面が空気である場合、集光器内に捕捉されない光線のみが出射してレーザープレートに結合できる。集光器の効率を高めるべく、接着剤の指数を集光器の指数に近づけることが有利である。
【0036】
しかし、効率は比較的早く横ばいに向かう傾向がある点に注意されたい。代替的に、一実施形態によれば、接着剤は、中間的指数を有するように設計される。例えば、指数n=1.84のCe:YAG集光器、及び指数n=1.7のレーザー媒質の場合、指数n=1.5の接着剤が選択される。本実施形態により、MEとMLの間に空隙がある場合よりも約2.5倍多くの光をレーザー媒質MLに結合させることが可能になる。
【0037】
本発明のレーザーシステムはこのように高い増幅利得を得ることを可能にしながら同時に集光器により横方向に励起されるレーザー媒質の厚さを画期的に低減し、レーザー媒質内での励起放射のTIR誘導を利用することにより励起出力体積密度を高める。
【0038】
一実施形態によれば、レーザー媒質の受光面SRの表面積と集光器SEの発光面の表面積の比は5よりも大きい。これにより、励起光線を吸収によりレーザー媒質の平面xyに閉じ込めることができる。また、レーザービームの(y方向における)水平方向寸法を大きくすることができる。レーザービームの垂直方向寸法がレーザープレートの厚さeにより設定されるため、レーザービームは楕円になる傾向を示す。この特性により、図2Bに示す従来の構成とは対照的に、表面積が大きいビームを扱うことが可能になると同時に励起放射をレーザービーム内に極めて良好に閉じ込めることが保証される。
【0039】
一実施形態によれば、集光器SIの照射面の表面積と集光器SEの発光面の表面積の比は100以上である。これにより、照射面SIに配置されるLEDの個数を最大化できるため、励起出力を最大化できる。
【0040】
レーザー媒質及び集光器は、当業者に公知の材料、例えば文献FR3045965B1に引用されているもので作られている。以下のものがレーザー媒質の材料として非網羅的に挙げられる。アレキサンドライト(Cr3+:BeAl)、Nd:YVO、Cr:LiSAF、Ti:Sa、Nd:YAG、Er:Yb:ガラス、Er:Yb:YAG、Tm:YAG、Cr:ZnSe等。以下のものが集光器の材料として非網羅的に挙げられる。任意のシンチレータ結晶材料(Ce:YAG、Ce:LuAG、Ce:LiCAF、Ce:YLF、Eu:CsCaI、Na:CsI等)又は上で引用したレーザー材料。
【0041】
上のレーザー励起アセンブリは任意のレーザーシステムの基本ブロックである。当該アセンブリはレーザー共振器を形成すべく共振器のミラー間に挿入されてよい。当該アセンブリはまた、レーザービームを増幅して増幅器レーザー媒質内を1回以上通過させて、複数回幾何学的通過を行う増幅器、又は(再生的と言われる)複数回偏光通過を行う増幅器を実現するべく直接使用いてもよい。発振器又は増幅器のいずれの場合も、動作モードは連続的又は準連続的であっても、或いは1秒~1フェムト秒の周期で発生し得るパルスであってもよい。
【0042】
図5に、図1のレーザーアセンブリが配置されていて、且つレーザービームFLが伝搬するレーザー共振器を形成すべく少なくとも2個の共振器ミラーM1、M2を含む本発明の一実施形態によるレーザーシステム2を示す。レーザービームは、レーザープレートの端部に位置するレーザー面SLと呼ばれる2個の対向する面を貫通しながら共振器内及びレーザー媒質内を伝搬方向Dpに伝搬する。これらのレーザー面は各々寸法e×wを有し、ここでwはレーザー面の(方向yの)横方向寸法と呼ばれる。本実施形態において、好適には、レーザー媒質内のレーザービームDpの伝搬方向はレーザービームが集光器の下方を伝搬するように集光器の平面と平行である。好適には、集光器の幅wは、レーザービームがレーザー媒質内を伝搬する間に増幅されるようにレーザー媒質の長さLと同一である。
【0043】
一実施形態によれば、各レーザー面SL上のレーザービームwの水平方向寸法は、w≦w/2のようにレーザー面の横方向寸法の半分以下である。各レーザー面SL上のレーザービームの垂直方向寸法wは、w≦e/2のようにレーザー面の(方向zの)垂直方向寸法の半分以下である。これらの条件が必要な理由は、レーザープレートMLの端部を介したレーザービームFLの回折を回避するためである。
【0044】
以下、図6、7は、本発明の従来の構成との関連を理解させるべく設計されている。図8~14に、より高いビームエネルギーを実現する観点から本発明に基づくレーザーシステム(レーザー共振器又はレーザー増幅器)の他の配置を示す。
【0045】
図6A~6Cに、レーザープレートML上での発光モジュールMEの様々な配置の比較を示して、本発明の配置の優位性を説明する。構成Aは共面励起、すなわち、レーザープレートの端部に結合されていて、集光器の発光面と平行なレーザービームを有する集光器の構成である。構成Bは、集光器が結合されたレーザー媒質の端部にレーザービームが斜入射する共面励起に対応する。構成A、Bにおいて、レーザー媒質は集光器に合致されており、プレートの厚さは集光器の厚さに等しく、レーザー媒質の長さは集光器の幅に等しい。構成Cは本発明の一実施形態の構成、すなわち集光器の平面と平行なレーザー光でレーザー媒質の中心にT字型励起を実行する構成である。
【0046】
斜入射を行う構成Bが可能なのは集光器とレーザー媒質の間に顕著な指数の差があって全内部反射を可能にする場合に限られることに注意されたい。指数n=1.5の接着剤と指数n=1.7のレーザー媒質(アレキサンドライトの場合)を有する2個の媒質を接着する場合、全内部反射の角度は62°である。レーザービームは従って、集光器においてこの角度よりも大きい入射角度をなす必要がある。
【0047】
全ての構成が、レーザー「プレート」の幾何学的形状に適した断面を有するレーザービームの使用を必要とする。回折による制限を前提に、ビームのサイズをレーザーの伝搬軸に直交する平面内でレーザー結晶のサイズの半分に制限すべきであり、このためレーザービームの寸法がw×wとなり、z及びy方向で各々w=e/2、w=w/2である。図6B、6Cの計算は、非限定的な例として、厚さe=1mm、長さL=50mm及び幅w=10mmで0.22%Cr3+イオンがドーピングされたアレキサンドライトレーザー媒質上で実行された。計算を簡素化すべく、信号ビームの断面が矩形であると仮定(実際には楕円)している。集光器はCe:YAG製である。Ce:YAG集光器のスペクトル(550~650nm)に対するアレキサンドライトの最大吸収係数は2cm-1である。3種類の構成において、集光器は同一の励起出力を発する。
【0048】
図6Bにより、光線追跡ソフトウェアによるシミュレーションを利用して、従来の構成のレーザープレートA、B(曲線E)及びT字型励起構成 C(曲線E)で得られた励起放射の照射を比較することが可能になる。励起照射の分布が大きく異なることに注目すれば興味深い。共面励起(構成A)の場合、励起照射は3cm-1の値で減少し、本発明による励起(構成C)の場合、減少量は9cm-1である。最初に注目すべき点は、これら2個の値がレーザー材料の吸収係数(2cm-1)とは異なることである。この現象は、全ての励起光線が必ずしも一方向を向いているとは限らず、集光器における等方性発光(自然発光)に起因して多くの方向が可能であるという事実に由来する。二つの構成の違いは、プレートに吸収励起光線の性質により説明できる。共面の場合、吸収光線はゼロ入射角から分布している(プレートの平面内及び出射面に垂直な軸上の伝搬に対応する)。T字型励起の場合、図3Cに示すようにレーザープレートに吸収光線は捕捉光線だけに対応する。
【0049】
図6Cの左側のグラフはレーザービームの断面にわたり平均をとった利得Gを示すのに対し、右側のグラフはレーザービームと励起放射の重なりRp/sを示している。これらの計算は、各構成及び二つの異なるレーザー面の幅w=10mm及びw=20mmに対して実行される。ここで利得計算は、実際の状況(損失係数を7.10-3cm-1と推定)を近似すべくアレキサンドライト結晶の受動的損失を考慮している。横軸で選んだ変数パラメータは、結晶の吸収係数であり、Cr3+イオンへのレーザー媒質のドーピングに紐付けられ、利得に直接影響する。ビームの断面はここではレーザープレートの寸法の半分すなわちw=500μm、w=5mmに設定されている。
【0050】
図6Cの左側のグラフは構成Aの最大利得が最も小さいことを示している。これは2cm-1に近い値αに対応し、図2Aの計算で得られたように5mmの吸収長に対応しており、d=wとなる。構成Cに比べて構成Bの利得が大きいことは,ここで示すT字型励起の場合に励起体積とレーザービームの重なりが悪いためことで説明できる。実際、レーザービームは利得領域よりも大きい空間的広がり(w=5mm)を有している(図6B参照)。一方、構成Bは、ビーム全体が集光器の発光面SEと接触している端部からTIRにより反射されるため、ビームの断面全体にわたり最大利得が得られ、従って励起領域とレーザービームの重なりが良好であることが有利である。
【0051】
励起ビームとレーザービームの重なりRp/s図6Cの右側のグラフ)に関して、T字型励起(構成C)は他の構成よりもはるかに優れている。実際、本発明の構成において、集光器の下方に位置する励起領域全体をレーザービームが用いてもよい。重なりは、50%の値に近づく傾向がある。この上限は、回折により課される制限を前提に、レーザービームの垂直方向寸法がレーザープレートの厚さの半分(w=e/2)よりも大きくなり得ないという事実に基づいている。
【0052】
T字型励起は従って、ビームがSEと平行な共面励起構成(構成A)と、レーザービームの角度を制御する必要がある斜入射の共面励起構成(構成B)との利得の点で「中間点」と見なすことができる。また、T字型励起は、効率の良い増幅を可能して高エネルギーレーザービームFLを生成又は増幅するレーザー増幅器を取得可能にするための必須パラメータである重なりの観点から極めて明確な利点を有している。
【0053】
エネルギーが増大の見通しから、レーザー媒質の入射面の光学損傷閾値(e)に遭遇しないようにビームの表面積を増大させる必要がある。図6Cのグラフに、これら3種類の励起構成がレーザープレートの表面積の増大に対してどのように応答するかを示している。レーザープレートの幅がw=10mmからw=20mmに倍増された2種類の構成をここで比較する。両方の場合において同一励起出力、同一レーザープレートの厚さ集光器は同一のままである。レーザービームはレーザープレートに合致されており、第1のケースでwb=5mm、第2のケースでwb=10mmであってwは変更されないままである。
【0054】
レーザープレートの幅を拡張しても重なりに対する影響は小さい(図6Cの右側)。対照的に,励起光量を2倍にすることによる励起光量の低下に起因して利得にとり極めて不都合である(図6Cの左側)。レーザービームのエネルギー(従って損傷閾値を考慮すべくレーザー媒質を貫通する際の表面積)を増大させる観点からT字型励起のモジュール性は図8~14に示すように極めて有利である。
【0055】
図7A~7Dに、レーザープレートMLの様々なパラメータ、すなわちレーザープレートMLの厚さ(図7A、7B)、集光器CLの厚さ(図7C)、及びレーザープレートMLの吸収係数(図7D)の関数として図5に示すレーザーシステムの性能のモジュール性を示す。これらの図示する実施形態において、レーザー媒質は、現在幅がw=20mm及び長さがL=50mmであり、集光器の幅がw=Lである点を除いて図6A~6Cの媒質と同一である。これらの値は例として選択されたものであって限定を意図するものではない。
【0056】
図7Aに、集光器の下方の照射の(yに沿った)横方向での変化をレーザープレートの厚さeの関数として示す。曲線e|1~e|4は各々0.5mm、0.7mm、1mm、2mmの厚さに対応している。プレートの厚さが薄いほど照射が強いことが分かる。これは面同士が互いに近いほど励起光線をより多く捕捉する面SRからの多重反射に起因する。プレートの厚さがe=2mmからe=1mm=Labs/5に変化する場合、集光器の下方の照射はほぼ2倍になり、T字型励起の方が利点が大きいことをより具体的に示している。好適には、集光器の下方で最大の照射(約45W/mm)を得るために、レーザープレートの厚さは、Labs/10以下、すなわちe=0.5mmである。また、プレートの厚さが薄いほど照射領域の側面が急峻であることも興味深い。これは、集光器の出射面がレーザープレートの中心に近いことで説明できる。レーザーのプレートの厚さが薄いほど、励起光線が励起領域から離れるスペースが少なくなる。いずれの場合も、捕捉光線の角度が大きいため光線は集光器の下方で捕捉されたままである(図3C)。
【0057】
図7Bに、レーザープレートPabsに吸収された励起出力の変化を、T字型構成(曲線C1)及び集光器の全ての光線が捕捉されることなく単にレーザープレートを貫通する従来の励起構成(曲線C2)について、レーザープレートの厚さeの関数として示す。予想されるように、捕捉光線(曲線C1)に起因してT字型の構成では吸収率はほとんど変化しない。対照的に、光線がプレートを貫通するだけ(曲線C2)ならば、吸収される出力ははるかに低くなる(プレートの厚さに応じて3~6分の1に減少)。T字型励起の場合の吸収出力はレーザープレートの厚さの変化に対してはるかに耐性がある。T字型励起でプレートがe=2mmからeL=0.5mmに変化したならば、吸収出力は1.6分の1に減少するのに対し、従来の励起では吸収出力は3.5分の1に減少する。従来の励起と比較してレーザー媒質の厚さを薄くする本発明のモジュール性は特に直観に反する。
【0058】
図7Cに、レーザービームFLに生じる照射の変化を、集光器CLの厚さeの3個の異なる値について、距離の関数としての変化を示す。曲線e1~e3は各々厚さ1mm、2mm、3mmに対応する。集光器の厚さが厚くなるほど照度が低下することがわかる。照度は集光器の全範囲にわたり比較的均等である。
【0059】
T字型励起の場合、2種類の厚さeとeが独立であることに注目すれば興味深い。これらは、従来の共面励起構成(図6B参照)の最大値に近い照射値を維持しながら、大幅に異なる値(例えば、図7Aの曲線eL1に示すように6倍)を有するように選択できる。この照度の損失が無いモジュール性は本発明のレーザーアセンブリの構成の別の利点であり、照度を最大にすべく二つのプレートの厚さが類似してなければならない共面励起構成では不可能である。
【0060】
図7Dに、レーザープレートに吸収された励起出力の変化を、T字型構成(曲線C1)及び集光器の全ての光線が捕捉されずにレーザープレートを貫通する従来の励起構成(簡素化のためコリメートされた光線)について吸収係数の関数として示す。非捕捉光線による励起ビームの場合よりもT字型配置の場合の方が、吸収出力が吸収の関数として変化する速度がはるかに遅いことが観察される。この効果は、レーザープレート内での励起光線の捕捉に紐付けられる。これは、T字型配置が従来の励起配置よりもレーザー媒質の吸収に対する耐性が大きいことを示唆する。
【0061】
この効果をより正確に理解すべく、Lmoyは、励起光線がレーザープレート内を移動する平均距離を定義する。図7Eは、この値をT字型励起構成と捕捉光線が無い従来の励起構成とで比較したものである。従来の構成では、平均長はレーザー媒質内の伝搬長に対応する。光線は、ここでは厚さeが吸収長Labsよりも小さく選択されているプレートを単に貫通するため、Lmoyはeのオーダーの定数である。T字型励起の場合、光線はレーザープレート内に捕捉されているため、吸収がゼロならば移動距離は無限大になる筈である。吸収に起因してLmoyは変数であって、捕捉光線が吸収長Labsのオーダーの距離だけレーザー媒質ML内を移動した際に吸収されるためLabsに適合する。この点は、従来のレーザー材料のドーピングに適合させるのに極めて重要である。例えば、図6A~7Dの例で用いるアレキサンドライト結晶は0.22%ドーピングされた(Ce:YAG集光器の場合、吸収係数はα=2cm-1)。しかし、最も一般的に販売されているアレキサンドライト結晶の標準ドーピングは0.13%(Ce:YAG集光器の場合、吸収係数は α=1.2cm-1)。このドーピングに対してT字型励起装置を容易に適合させながら、同時に励起出力の良好な吸収(従来の構成での約45%に対してT字型構成では約65%、図7D参照)を保証するため、レーザープレートのコスト低減が可能になる。同様に、T字型励起は、例えばチタンドープサファイア又はドープガラス等、強力なドーピングが不可能な材料でも機能できる。
【0062】
図8に、レーザーシステムが更にレーザー面に各々結合された第1及び第2の結合プリズムPR1、PR2を含む本発明の別の実施形態を示す。当該2個のプリズムは、レーザービームFLが、レーザー媒質ML内での全内部反射により受光面SR及び当該受光面の反対側の面に、これら二つの平行な面に対して入射角θνで誘導されるようにレーザービームFLを屈折させるべく構成されている。本実施形態により、回折により課されるレーザービームと励起放射との重なり限度50%を超えることが可能になり(図6C参照)、且つ平面xz内で75%の重なりを実現することが可能となる。この重なりは、レーザープレート内のレーザービームの経路の面積に対応する自由表面積ZRと、プレートの全表面積ZR+ZNRの比を求めることにより計算される。
【0063】
本実施形態の別の利点は、垂直面内でのビームのサイズを2sinθν倍増大可能にすることにより、レーザー媒質の入射面で損傷閾値に達することなく、レーザー媒質内を伝搬するビームのエネルギーを増大させることが可能になる。ビームの断面形状の寸法は従って以前のようにw=e/2ではなく、w=esinθνである。指数1.5、θν=62°の接着剤によりMEに接着されているためwの値が0.88eとなるアレキサンドライトプレートMLの場合、レーザービームがレーザー媒質MLを直接貫通する構成と比較して2倍になる。
【0064】
図9に、レーザーシステムが更に、前記発光面の反対側の集光器FSCの出射面に結合されたリサイクリングミラーMR1と呼ばれる少なくとも1個の第1のミラー、及び/又はレーザー媒質の受光面の反対側のレーザー媒質SR2の面に結合されたリサイクリングミラーMR2と呼ばれる第2のミラーを含む、本発明の別の実施形態を示す。第1ミラーMR1により、集光器FSCの出射面を介して出射する励起光線をレーザープレートにリサイクルすることが可能となる。例えば、長さL=200mmのCe:YAG集光器の場合、このミラーMR1により、集光器の出射端における照射に1.5倍の利得が得られる。第2のリサイクリングミラーMR2により、面SR2を介して出射する非捕捉励起光線をレーザープレートにリダイレクトすることが可能になる。一例として、e=1mm、e=1mm、及び吸収率が2cm-1のシステムに載置されたミラー2により、集光器の下方の照度を64W/mmから73W/mmに変化させ、且つレーザープレート内での励起の吸収率を63%から77%に変化させることが可能になる。
【0065】
図9の実施形態の一変形例によれば、本アセンブリは追加的に、結合プリズムPR1、PR2を含んでいる。非限定的に与える一例において、100mJのエネルギーでビームを供給可能なレーザー増幅器を以下に提示する。レーザー媒質MLは、長さL=50mmで、集光器に関連付けられた吸収長がLabs=10mmであるe=500μmのプレートである。レーザープレートの主面に対する入射角がθν=65°の場合、垂直面内のビームのサイズはesin(65°)=450μmになる。損傷閾値を超えないように3J/cmの密度上限が設定されている。当該エネルギー密度上限に準拠すべく、表面積がw×wの矩形ビームで100mJのエネルギーは、水平面内でw=7mmのビームサイズを用いる。この値により、レーザープレートの幅をw=2w=14mmに設定することが可能になる。
【0066】
レーザープレートの充填レベルは、レーザープレート内のレーザービームの体積とレーザープレートの体積の比で定義される。上述のアプローチから、充填レベルは、水平面内のビームの寸法及び垂直面内での特定の伝搬を考慮して、Rplaque=0.5*0,75=0.38である。この量は、断面積が大きいビームでのエネルギー増大の観点から重要である。すなわち、レーザービームが大きいほどレーザープレートを大きくする必要がある。レーザー材料は高価であるため、どのようにレーザー媒質の体積をレーザービームで満たすかが重要である。図13、14の構成において、T字型励起のモジュール性を利用してこの充填レベルを高める仕方が分かる。
【0067】
ビームの水平方向サイズwを前提に、レーザービームを変形させ得るyに沿って過剰な局在化された利得を避けるために極めて厚い集光器(e=3mm)を選択する必要がある。より厚い集光器を採用することで集光器のコストが大幅に上昇するが、(励起の均質性は別として)性能に直接的な利益は無い。
【0068】
以下の表に、100mJのエネルギーを供給するレーザー増幅器を製造する観点から、各種パラメータに関するシミュレーションの結果を示す。図9の実施形態の変形例の3種類の構成を、2個のプレートの厚さ(0.5mm、1mm)及びLEDが発する2個の出力(2.5W、1W)を選択して比較する。この2個の出力の選択は、LEDに許容される最大周波数により示唆される。出力が2.5Wの場合、LEDに存在する熱効果により動作周波数が100Hzに制限される。対照的に、1LED当たりの出力が1Wの場合、LEDは定常状態で動作し得る。散逸する熱出力を制限すべく、LEDの周波数を1kHzに制限しており、これは約6kWの平均熱出力での平均励起出力2.9kWに対応する。レーザープレートに貯蔵されるエネルギーは、レーザープレートに吸収される出力にレーザー媒質の寿命を掛けた値に等しい。80°に加熱されたアレキサンドライト結晶の場合、寿命は150μsである。表に列挙された使用可能な貯蔵エネルギーは、レーザービームが貫通する領域に対応している。すなわち励起とレーザービームRp/sの重なりに紐付けられている。
【0069】
【表1】
【0070】
第1の構成(プレートの厚さe=0.5mm)の場合、計算された利得Gは「再生的」マルチパス増幅器の製造に満足すべきものである。貯蔵エネルギーの抽出効率が従来20%超であるため、当該装置により約100ミリジュールのレベルに到達可能である。
【0071】
第2の構成の場合、厚さを2倍(e=1mmに変更)にすることで上述のように励起照射が制限される。複数のパラメータを用いてこの影響を補償することにより利得が減少する。
-レーザープレートの長さを50mmから120mmに伸ばすことによりLEDの個数が2.4倍に増え、レーザービームをより長く増幅させることができる。
-ビームは水平方向により小さく(w=3.5mm)なり、集光器の厚さはビームのサイズに極めて近い(e=3mm)。これにより、第1の構成とは対照的に、線形利得をビームの断面全体にわたり実質的に最大値にすることができる。
【0072】
第2の構成で貯蔵されるエネルギーは、水晶に損傷を与えることなく発することができるエネルギーよりもはるかに大きい。この点で増幅器の効率が大幅に制限される。この問題を解決する別の方式は、反復周波数が1kHzに達する高エネルギーレーザー光源発信パルスを得るために第3の構成のように動作周波数を上げるものである。第3の構成の発想は、周波数を上げるために貯蔵されたエネルギー及び利得の一部を犠牲にすることである。この場合、利得の値(1.26)は許容範囲に留まり、10~15%のオーダーの効率(増幅器の低利得に紐づけられた)により、出力エネルギーを約100mJの所望のレベルにすることができる。
【0073】
図10~14に示す他の実施形態によれば、本発明のレーザーシステムは、レーザー媒質の受光面SRに結合された複数の発光モジュールMEを含んでいる。複数の発光モジュールを用いることにより、レーザービームの表面積を増大させ、且つ励起出力を増大させることにより、増幅されたビームのエネルギーを増大させることが可能になる。好適には、発光モジュールは、製造の複雑さ及びコストを低減すべく同一である。図10~14に示す実施形態が、図8の実施形態による結合プリズムPR1、PR2及び図9の実施形態による光束ミラーMR1、MR2の使用と互換性があることに注意されたい。
【0074】
図10に示す実施形態において、レーザーアセンブリは、互いに平行且つ互いに対向して配置されていて、レーザービームの伝搬方向と角度をなす2個の発光モジュールを含んでいる。T字型励起のモジュール性を前提に、当該角度は0°~90°の範囲で自由に選択できる。
-角度0°(図5のように集光器CLの平面がレーザービームの方向と平行)では、励起光を長い距離にわたりレーザービームに結合させることにより高い利得を保証することができる。しかしレーザープレートの平面内のレーザービームのサイズwはレーザープレート内の照射された領域により制限される(図6B又は7A或いは7C参照)。
-角度90°(レーザービームの方向に垂直な集光器CLの平面)では、大きいレーザービームw(wはwのオーダー)を扱うことが可能になる。対照的に、この構成では「集光器の下方」での伝搬長がeに制限されるため利得が制限される。
-中位の角度では、ビームのサイズwとビームで得られる利得との調整を実現することが可能になる。図10のように複数の傾斜した集光器を組み合わせることもビームサイズを大きくするための追加的な解決策である。
【0075】
代替的に、別の実施形態によれば、レーザーアセンブリは、互いに平行且つ互いに対向して配置されていて、レーザービームの伝搬方向と角度をなす2個以上の発光モジュールを含んでいる。従って、幅が太く、且つ長い距離にわたりビームの均質な照射を得ることが可能である。図11の実施形態において、レーザーアセンブリは、互いに平行且つ互いに対向して配置されていて、レーザー媒質の第1の受光面SR1に結合された第1の複数の発光モジュールを含んでいる。集光器の間隔は、主面を覆うLEDの嵩高の観点から機械的制約に紐付けられている。また、レーザーアセンブリは、互いに平行且つ互いに対向して配置されていて、レーザー媒質の第2の受光面SR2に結合された第2の複数の発光モジュールを含んでいる。非限定的に与える図11の例において、第1の複数及び第2の複数は3個の発光モジュールMEを含んでいる。第1の複数及び第2の複数のモジュールは更に、互いにほぼ平行であり、レーザービームDpの伝搬方向は発光モジュールに垂直である。本実施形態により、2個の受光面SR1、SR2を利用してレーザー媒質を励起することが可能になる。好適には、第1の複数及び第2の複数のモジュールは、レーザー媒質内で励起照射を可能な限り分散させるように、五点形に配置されている。
【0076】
図12の実施形態において、発光モジュールの主面の一つを犠牲することによりCSと呼ばれるシステムによる冷却を可能にする。本構成は、MEが定常状態で動作するならば温度上昇を制御するのに重要である。LEDの個数は、両側で励起するMEと比較して2分の1である。この損失を補償すべく、図12に、CSの反対側に配置された別のMEのためにCSをプールできることを示す。当該アセンブリME+CS+MEは従って、レーザービームの方に向けることが可能な新たな励起アセンブリとなる。CSは、集光器の全内部反射を阻害しないように画定される必要がある。CSは表面が研磨された金属製の冷却ブロックであってよい。CSは、光学研磨された指数が極めて低い透明な材料、例えば熱伝導率が高いCaF(n=1.4)で作られていてよい。後者の場合、2個の集光器からの光の一部がCSを介して結合される。プレートML上で照射される表面はこれにより均質性が増大し得る。
【0077】
図13A、13Bの実施形態において、レーザービームは、レーザー媒質の複数の異なる領域Z1、Z2及びZ3に伝搬するように2個のミラーM1、M2により折り返される。また、複数の発光モジュールMは、各領域Z1、Z2、Z3の上方に配置されている。好適には、本実施形態は、TIRによりレーザービームFLを受光面及びその対向面上に誘導すべく、図9の実施形態の結合プリズムPR1、PR2を用いる。この幾何学的形状において、レーザー媒質の充填レベル(Rplate)を、図9のものと比較して増大させることができる。本実施形態により、エネルギーが1Jのレーザービームを実現することが可能になる。
【0078】
1Jのエネルギーにより、光損傷閾値は、エネルギー密度を3J/cmに制限すべく水平方向サイズwb35mm及び垂直方向寸法wa=0.9mmのビームを課する。レーザープレートの厚さeは1mmである。TIRによりレーザービームFLを入射角θν=65°で誘導する結合プリズムPR1、PR2を用いる。非限定的に与える一例において、アレキサンドライトレーザー媒質は以下の寸法を有している。L=140mm、w=23mm及びe=1mm。集光器は、方向yに伝搬するレーザービームに幅(w)が垂直な状態で用いられる。これにより、ビームの断面全体にわたり極めて均質な励起を保証することが可能になる。大きいビームは欠陥に対して極めて敏感であるためこの点は極めて重要である。幅w=35mm、長さ200mmの9個の発光モジュールがレーザープレート上に、各領域毎に3個ずつ配置されている。レーザープレートMLの寸法を変更する際に、発光モジュールの個数及び配置を適合させることが期待される。
【0079】
図13Bに、回折の影響を制限すれば同時に媒質内のレーザービームの体積とレーザー媒質の全体積の重なりを最大化すべくレーザービームをレーザー媒質に合致させる仕方をより正確に示す。レーザー媒質の側面は常に所定の平面内のビームのサイズの2倍の値に設定されている。ここで充填レベルRplateは0.56であり、図9の実施形態よりはるかに良好である。Ce:YAG発光モジュール及びアレキサンドライトレーザーモジュールについて、使用可能な貯蔵エネルギーは2.7Jであり、当該レーザーアンプの利得は媒質を貫通した際に1.44に達することが計算から分かる。この利得は再生増幅器として充分である。この構成により1ジュールに達する出力エネルギーが考えられる。
【0080】
図14の実施形態における原理は、レーザー媒質の全内部反射によりレーザービームを(図8のような)垂直面と水平面にも伝搬させるものである。この目的のため、2対の結合されたプリズム、すなわち垂直面にPRv1とPRv2、及び水平面にPRh1とPRh2を用いる。図14に示す水平面内でプリズムは、レーザー媒質ML内での全内部反射によりレーザービームを寸法がe×Lである2個の端部Trへ、当該面への入射角θで誘導するようにレーザービームを屈折させるべく設計されている。従って、上述のように、レーザービームの水平方向寸法を、w≦wsinθ、好適にはw=wsinθであるように選択できる。垂直面内ではビームの入射角はθνである。上述のように、垂直面内でのビームのサイズはw=esinθνである。
【0081】
レーザーアセンブリは、T字型励起構成でレーザー媒質の受光面SRに結合された第1組の発光モジュールMEを含んでいる。また、レーザーアセンブリは、レーザー媒質の共面励起を実行すべく水平面xy内でレーザー媒質上に配置されていて、且つ前記端部Trに結合された第2の組の発光モジュールMELを含んでいる。好適には、第2の組の発光モジュールは、前記レーザー媒質へ誘導されるレーザービームの反射の領域に対応する仕方で前記端部に配置されている。この配置が有利なのは、励起領域内でのレーザービーム同士の水平面Rxy内での重なりを極めて大きくでき、且つビームが反射される位置で集光器に近い照射の極めて良好な局在化を可能にするからである。
【0082】
本実施形態において、励起は、一部が(第1の組の発光モジュールにより)T字型構成で、一部が(第2の組の発光モジュールMELにより)に共面的に実行されるため、「ハイブリッド」であると言われる。
【0083】
角度θνとθが同一で65°に等しいと仮定すれば、レーザー媒質の充填レベル(Rplate)が0.56に等しく、表に示す構成1~3よりも大きいと計算される。この角度値(65°)は無論レーザー媒質に依存し、相応に適合される。しかし、レーザー媒質が複屈折である場合、レーザービームは異なる4方向(垂直面に2方向、水平面に2方向)に伸長し、1/4波長プレート及びレーザー媒質内で正確に自身に戻るビームの2回通過を用いて偏光回転効果を補正する必要があることに注意されたい。
【0084】
図14に示す実施形態において、非限定的に、レーザー媒質はe=2mmのアレキサンドライトレーザープレートであり、発光モジュールの集光器からの蛍光放射に関連するレーザープレートの場合、幅はw=2mm、長さはL=120mm、吸収長はLabs=10mmである。プリズムPRv1、PRv2、PRh1及びPRh2において、ビームのサイズはw=1.8mm、w=18.5mmである。レーザービームの伝搬方向上方のレーザープレートの受光面で2種類の第1の組の発光モジュール、すなわちビームが折り返す位置に配置された幅10mmの3個の発光モジュールME’、及び受光面に配置された幅20mmの6個の集光器を用いる。シミュレーションにより、上部に(「T字型」に)配置された集光器は利得を2.1%増大させることが分かる。端部の反射領域の寸法に適合された同じ幅の共面ー集光器は利得を3.6%増大させる。これらの結果は、図6Cに示す計算と整合する。媒質内での伝搬時の損失を考慮して、総利得G0=1.3が得られる。使用可能な貯蔵エネルギーは2Jであり、結晶の寸法が小さいため図13A、13Bの例よりわずかに低い。この点は、レーザープレートの端部に突起を付加して結晶の長さを伸ばすことにより結晶の長さがL=130mm(アレキサンドライト結晶で実現可能)、利得G0が1.46、貯蔵エネルギーが3Jになるため容易に改善できることに注意されたい。上述のように、この利得値はジュールのオーダーのエネルギーを発するマルチパス「再生」アンプには充分である。
【0085】
図14の実施形態によるレーザーシステムと、図13A、13Bの実施形態によるレーザーシステムの性能が、幾何学的形状(励起種類、レーザービームのサイズ及びプレートの厚さ)が異なるにもかかわらず、かなり似ていることに注目すれば興味深い。これは本発明によるT字型集光器励起のモジュール性を証明するものである。
【0086】
代替的に、別の実施形態によれば、2個のプリズムPRh1、PRh2をアセンブリから取り外してもよい。次いでレーザービームを(図6Bのように)水平面に対して斜入射するように向ける。ハイブリッド励起により、利得とエネルギーを良好に調整可能にする。しかし本構成では重なりRplateが少なくなって0.38のオーダーになる。
【0087】
無論、図8~14の実施形態は、レーザー増幅器及びレーザー共振器に等価的に用いられてよい。すなわち、図8から図14のシステムは、別のレーザーにより生成されたレーザービームの増幅に使用されても、又はレーザー共振器を形成すべくレーザー共振器に挿入されてもよい。発振器又は増幅器のいずれの場合も、動作モードは連続的又は準連続的であっても、或いは1秒~1フェムト秒の周期で発生し得るパルスであってもよい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
【国際調査報告】