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特表2023-518607透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(54)【発明の名称】透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイル
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230425BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20230425BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20230425BHJP
   D06M 17/00 20060101ALI20230425BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20230425BHJP
   B32B 3/22 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
B32B5/26
B32B5/02 A
D06M17/00 B
D06M17/00 H
D04H1/728
B32B3/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558167
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021056902
(87)【国際公開番号】W WO2021191037
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】20164999.3
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.KEVLAR
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522376324
【氏名又は名称】イーエムピーエー アイドゲネッシッシェ マテリアルプルファングス-ウント フォルシュングスアンシュタルト
(71)【出願人】
【識別番号】522375936
【氏名又は名称】エコール ポリテクニーク フェデラル デ ローザンヌ(イーピーエフエル)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バラナ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】フォルトゥナート,ジュゼッピーノ
(72)【発明者】
【氏名】グエックス,アン ジェラルディン
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,ルネ
(72)【発明者】
【氏名】ペレ,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】シェーネンベルガー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シジャンスキー,サシャ
(72)【発明者】
【氏名】バアタード,ダイアン
【テーマコード(参考)】
4F100
4L032
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AJ09A
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DC12C
4F100DC16C
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DG12A
4F100DG12B
4F100DG12C
4F100GB71
4F100JB16C
4F100JL12A
4F100JL12B
4F100YY00A
4F100YY00B
4L032AA05
4L032AB04
4L032AC01
4L032AC02
4L032BA05
4L032BD01
4L032BD03
4L032DA00
4L032EA03
4L047AA12
4L047AB02
4L047AB08
4L047BA08
4L047CA02
4L047CA04
4L047CA05
4L047CA09
4L047CA10
4L047CB08
4L047CC03
4L047CC12
4L047EA10
(57)【要約】
100nmを下回る直径のナノファイバーを有する少なくとも1つのナノファイバー層(11)および3ミクロンを下回る直径のマイクロファイバーを有する1つの支持層(12)を備える複合多層テキスタイル(1)であって、層(11、12)は、エレクトロスピニングによって生成されており、多層テキスタイル(1)が60%より大きいλ=550nmでの一般透過率(T%)を示す、複合多層テキスタイル(1)が開示される。それは、透過性、通気性、および頑強性に関して向上した性質を示す。このことは、少なくとも1つのナノファイバー層(11)と支持層(12)が融合され、生成プロセスで用いられたパターンの閉領域で、多層テキスタイル(1)における固体領域(Ds)を形成することにより達成されるものであり、固体領域(Ds)は、互いから分離されまたは接続され、規則的なまたは不規則な空間分散を有する画定形状を示し、一方ナノファイバー層(11)のナノファイバーおよび支持層(12)のマイクロファイバーのファイバー形状は固体領域(Ds)の横の開領域の上部で保たれ、個々の層(11、12)の合計によって与えられる透過率よりも大きい一般透過率を達成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100nmを下回る直径のナノファイバーを有する少なくとも1つのナノファイバー層(11)および5ミクロンを下回る直径のマイクロファイバーを有する1つの支持層(12)を備える複合多層テキスタイル(1)であって、前記層(11、12)は、エレクトロスピニングによって生成されており、前記多層テキスタイル(1)は、50%より大きいλ=555nmでの全体透過率(T%)を示す、前記複合多層テキスタイル(1)において、
前記少なくとも1つのナノファイバー層(11)と前記支持層(12)は融合され、生成プロセスで用いられたパターンの閉領域に、前記多層テキスタイル(1)における固体領域(Ds)を形成し、前記固体領域(Ds)は、互いから分離されまたは接続され、規則的なまたは不規則な空間分散を有する画定形状を示し、前記ナノファイバー層(11)のナノファイバーおよび支持層(12)のマイクロファイバーのファイバー形状は、前記固体領域(Ds)の横の開領域の上部で保たれ、前記個々の層(11、12)の合計によって与えられる透過率よりも大きい、前記多層テキスタイル(1)全体の全体透過率を達成することを特徴とする、前記複合多層テキスタイル(1)。
【請求項2】
請求項1による複合多層テキスタイル(1)であって、前記多層テキスタイル(1)が、前記二重層(11、12)の上部または底部に、閉領域および開領域のパターン(130)を有するパターン層(13)を備え、前記固体領域(Ds)が、前記ナノファイバー層(11)、前記支持層(12)、および前記パターン化層(13)の接触位置に形成される、前記複合多層テキスタイル(1)。
【請求項3】
請求項1による複合多層テキスタイル(1)であって、前記多層テキスタイル(1)が、2つの外側支持層(12、12’)の間に挟まれたナノファイバー層(11)を備え、全3層(11、12、12’)の融合位置に固体領域(Ds)を示す、前記複合多層テキスタイル(1)。
【請求項4】
請求項2による複合多層テキスタイル(1)であって、前記パターン化層(13)が、2対のナノファイバー層(11、11’)と支持層(12、12’)の間に挟まれ融合される、前記複合多層テキスタイル(1)。
【請求項5】
先行請求項の1項による複合多層テキスタイル(1)であって、前記固体領域(Ds)が、ナノファイバー層(11、11’)、支持層(12、12’)、そして利用可能であれば前記パターン化層(13)を接続し、1μm~100μmの厚さを示す接触領域として形成される、前記複合多層テキスタイル(1)。
【請求項6】
先行請求項の1項による複合多層テキスタイル(1)であって、前記固体領域(Ds)が、その最大幅ポイントで10μm~100μmの最大横幅を示す、前記複合多層テキスタイル(1)。
【請求項7】
先行請求項の1項による複合多層テキスタイル(1)であって、前記多層テキスタイル(1)上の固体領域(Ds)の前記パターンが、前記多層テキスタイル(1)の全表面の30%~70%の値を有する、前記複合多層テキスタイル(1)。
【請求項8】
請求項2~7の1項による複合多層テキスタイル(1)であって、前記パターン化層(13)の横方向厚さが1μm~100μmの間で変わり、前記パターン化層(13)が織られた高分子メッシュに基づく、前記複合多層テキスタイル(1)。
【請求項9】
請求項2~7の1項による複合多層テキスタイル(1)であって、前記パターン化層(13)の横方向厚さが1μm~100μmの間で変わり、開口としてのいくつかの貫通孔および接続ウェブとしての格子状構造を有する熱可塑性材料によって形成され、前記熱可塑性材料の全表面の少なくとも30%が開いている、前記複合多層テキスタイル(1)。
【請求項10】
先行請求項の1項による複合多層テキスタイル(1)であって、前記ナノファイバー層(11、11’)が、キトサン/ポリカプロラクトンのナノファイバーを備え、前記支持層(12、12’)が、ポリエステル/ポリウレタンのマイクロファイバーを備える、前記複合多層テキスタイル(1)。
【請求項11】
50%より大きいλ=555nmでの全体透過率(T%)を示す光学的透過性多層テキスタイル(1)の生成方法であって、
-どちらも開領域および閉領域を示す、エレクトロスピニング装置のパターン化コレクタ上または供給されたパターン化層/多孔質基体層(13)上のいずれかでの、エレクトロスピニングステップ(I)における生成セットアップ(0)のベルト(2)上のナノファイバー層(11、11’)および支持層(12、12’)の、続くエレクトロスピニングステップと、
-被覆された多層と共に前記ベルト(2)の、熱プレスまたはカレンダー(3)への搬送ステップと、それに続く、
-室温より高い上昇温度(T1)かつ圧力(p1)で最小時間間隔(Δt)の間の熱機械処理ステップ(II)の実装ステップであって、前記層(11、11’、12、12’、13)は、前記コレクタパターンまたは前記パターン化層/多孔質基体層(13)のパターン(130)のいずれかの閉領域で融合され、前記多層テキスタイル(1)に様々な固体領域(Ds)を形成する、前記実装ステップと、その後の、
-低下した温度(T2<T1)かつ圧力(pat<p1)で実行される冷却ステップ(III)とを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
請求項11による透過性多層テキスタイル(1)の生成方法であって、
前記熱機械処理ステップ(II)が、少なくとも1000N/cm2、最も好ましくは1500N/cm2以上の圧力(p1)、少なくとも70℃、最も好ましくは80℃以上の温度(T1)で実行される、前記方法。
【請求項13】
請求項11または12による透過性多層テキスタイル(1)の生成方法であって、
少なくとも最大1桁の秒数、好ましくは10秒以上、最も好ましくは30秒の時間間隔(Δt)が選択される、前記方法。
【請求項14】
請求項11~13の1項による透過性多層テキスタイル(1)の生成方法であって、
前記エレクトロスピニング装置の前記パターン化コレクタが、金属メッシュまたは穴あき金属シートで形成され、前記ベルト(2)の一部を構成または前記ベルト(2)に一体化される、前記方法。
【請求項15】
請求項11~13の1項による透過性多層テキスタイル(1)の生成方法であって、
前記パターン化層/多孔質基体層(13)が、織られた高分子メッシュに基づきまたは開口としてのいくつかの貫通孔および接続ウェブとしての格子状構造を有する熱可塑性箔によって形成され、表面の少なくとも30%が開いている、前記方法。
【請求項16】
請求項11~15の1項による透過性多層テキスタイル(1)の生成方法であって、
2つの支持層(12、12’)が、1つのナノファイバー層(11)に、パターン化されて融合され、前記用いられたパターンの前記閉領域に前記固体領域(Ds)を形成する、前記方法。
【請求項17】
請求項11~15の1項による透過性多層テキスタイル(1)の生成方法であって、
2対のナノファイバー層(11、11’)および支持層(12、12’)が、前記パターン化層/多孔質基体層(13)の前記パターン(130)の前記閉領域で融合される、前記方法。
【請求項18】
請求項11~17の1項による透過性多層テキスタイル(1)の生成方法であって、
前記冷却ステップ(III)後、適時に、得られた多層テキスタイル(1、1’、1’’、1’’’)がロール(4)上にロールされる、前記方法。
【請求項19】
医療デバイスとしてかつ/または個人用の保護装置としての顔マスクの一部としての請求項1~10の1項による多層テキスタイル(1、1’、1’’、1’’’)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、100nmを下回る直径のナノファイバーを有する少なくとも1つのナノファイバー層および5ミクロンを下回る直径のマイクロファイバーを有する1つの支持層を備える複合多層テキスタイルであって、層は、エレクトロスピニングによって生成されており、多層テキスタイルは、60%より大きいλ=555nmでの全体透過率を示す複合多層テキスタイル、透過性多層テキスタイルの生成方法、および顔マスクの一部としての多層テキスタイルの使用を記載する。
【背景技術】
【0002】
多層テキスタイルは、様々な用途において長年用いられている。興味深い用途には、透過性かつ通気性のあるマスクまたは顔マスクとしての使用がある。そうした高性能なテキスタイルは、最適な透過性および通気性特性をもたらすために開発が続けられている。近年、ナノファイバーの形でナノ技術が導入されている。動機としては、最大の通気性に達することによって優れたろ過効率を有するフィルタ層を合成するのにナノファイバーを用いることができるというよく知られた事実がある。しかし、極度に小さいファイバー径および脆弱なナノファイバーのため、より頑強な多層テキスタイルに達するためには、得られる多層テキスタイルの安定性を増大させなければならない。
【0003】
WO2016128844から、得られる透過性複合多層テキスタイルの少なくとも1層を生成するのにエレクトロスピニングを用いることが知られている。ナノファイバーを有する少なくとも1層をエレクトロスピニングした後、この層は、カバー層として用いられる2つのファブリック層の間に配置される。カバー層は、非織層であるべきで、ナノファイバー層は、カバー層上にエレクトロスピニングされるべきである。エレクトロスピニングは、WO2016128844に詳細が記載され、カバー層上へのナノファイバー層の被覆ステップすらエレクトロスピニングを介して行われる。
【0004】
科学論文に関して、エレクトロスピニングを介して半透過性空気フィルタを作成する可能性に関するいくつかの文献が、科学論文に見つかった。Xiaらにおいて[Xia T、Bian Y、Zhang L、Chen C.エレクトロスピニングされたナノファイバーフィルタの圧力降下と面速の関係。Energy Build。2018;158:987-999]、透過性ナノファイバー膜を作成する可能性が提示され、そうした要素を用いて高い粒子除去効率を比較的低い空気抵抗と組み合わせる可能性が説明される。ナノファイバーベースの透過性空気フィルタの生成をスケールアップする初期のアプローチは、Xuら[Xu J、Liu C、Hsu PCら。高効率透過性空気フィルタ用のエレクトロスピニングされたナノファイバーフィルムのロールツーロール転写。Nano Lett。2016;16(2):1270-1275]に報告されている。
【0005】
しかしながら、ろ過、透過性、通気性、および頑強性などのあらゆる関連態様において適切な性質を有する透過性顔マスクのコスト効率の高い合成に対する説得力のある解決策はいまだ提案されていない。
【発明の概要】
【0006】
発明の主題は、透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイル、そのような多層テキスタイルの生成方法、および顔マスクの一部としてのそうした多層テキスタイルの使用を提供することである。
【0007】
透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイルは、後に例えば、適切な機械的安定性を有し個人用保護具の欧州規格である欧州規則EN14683またはEN149:2001+A1:2009に準拠しているシースルーの顔マスクを製造するように設計されなくてはならない。前述の重要な特徴の全て、すなわちろ過効率、飛沫耐性、および快適性において良好な性能を有するコスト効率の高い、透過性顔マスクを実現するための技術的解決策はまだ開示されていない。
【0008】
発明は、本質的に、透過性高分子フィルタとして多層テキスタイルを提供し、それは、その空隙の小さなサイズおよび調整可能なファイバー表面特性によりマイクロ粒子およびナノ粒子に向けても大きなろ過能力を有し、主たる標的は、0.5~3ミクロンの範囲の細菌である。材料は、空気および他の流体から広範囲の有害な細菌および汚染物質を除去可能な、様々な種類の透過性フィルタを製造するのに用いることができる。
【0009】
発明の様々な態様のさらなる理解は、以下に簡潔に記載される関連図面と併せて以下の詳細な説明を参照して得ることができる。
異なるように記載された実施形態では、同じ部分は同じ参照記号または同じ構成要素名称で提供され、記載全体に含まれる開示は、同じ参照記号または同じ構成要素記号を有する同じ部分に類似的に適用可能であり得ることに留意すべきである。
【0010】
発明の主題の好ましい例示的な実施形態が、添付図面と併せて以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1a】概略セットアップを示す、パターン化コレクタ上でのエレクトロスピニングおよび次に続く熱/圧力処理ならびに冷却ステップを有する、エレクトロスピニングされたナノファイバー層およびマイクロファイバーを備える支持層の生成方法の概略図である。
図1b】2つの層を有する図1aによる方法を用いて得られたパターン化多層テキスタイルの概略断面図である。
図1c】1つのナノファイバー層が2つの支持層の間に挟まれた多層テキスタイルの概略断面図である。
図1d図1cのサンプルによる当方実験室において合成された例の上面図としての走査電子顕微鏡像である。
図2a】概略セットアップを有する、変更された生成方法の概略図である。
図2b】ナノファイバー層、支持層、およびパターン化層の固体領域を有する、図2aによる方法で得られたパターン化多層テキスタイルの概略断面図である。
図2c】ナノファイバー層および支持層の2つの二重層がパターン化層を挟んでいる多層テキスタイルの概略断面図である。
図2d】倍率を拡大している、図2aに示している方法によって合成された例の上面図としての走査電子顕微鏡像である。
図2e】倍率を拡大している、図2aに示している方法によって合成された例の上面図としての走査電子顕微鏡像である。
図3a】測定セットアップの概略図である。
図3b】得られる透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイルの写真、および300~800nmの波長範囲の透過率曲線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
少なくとも100nmを下回る、特に50nmを下回る直径の極薄ナノファイバーを有する少なくとも1つのナノファイバー層11、および、優先的に1~5μmの直径のより大きくより頑強なマイクロファイバーを備える少なくとも1つの半透過性支持層12のサンドイッチ構造を備える透過性複合多層テキスタイル1が開示されている。ナノファイバー層11および支持層12の少なくとも1つの単層が用いられ、各々は、生成セットアップ0のベルト2上で、エレクトロスピニングステップIにおいて互いの上でエレクトロスピニングされる。
【0013】
層11、12を構成しているファイバーのサイズは、光散乱を低減させ透過性を高めるように最適化されている。最適なファイバーサイズは、光散乱のミー理論を用いて構成された予測にしたがって選択されている。散乱される光の量は、入射光の波長よりも著しく小さいまたは大きい直径のファイバーにおいてより低い。したがって、当方の戦略は、それぞれがろ過および機械的性質の原因となる異なるサイズの低散乱ファイバーを備える多層テキスタイルに基づく。
【0014】
エレクトロスピニングステップ1後、熱機械処理ステップIIの形での後続の第2のステップIIが多層複合体に適用される。多層複合体は、少なくとも1つの圧搾ロール30を有する、プレス3をまたは最も好ましくはカレンダー3を通過する。
【0015】
-少なくとも1000N/cm2、最も好ましくは1500N/cm2以上の圧力p1、および
-少なくとも70℃、最も好ましくは80℃以上の温度T1を、
最大1桁の秒数、好ましくは10秒以上、最も好ましくは30秒の時間間隔Δtの間、加えることによって、
図1bに示すように、ナノファイバー層11のナノファイバーと支持層12のマイクロファイバーは、具体的な場所で一体に融合されて固体領域Dsとなり、それは高い透過性を有する。使用材料およびファイバーの厚さに応じて、固体領域Dsの透過性は、他の領域よりも高い。
【0016】
固体領域Dsは、層11、12の間に強固な結合点を提供し、機械安定性および透過性を大幅に向上させる。第1の方法によれば、エレクトロスピニング装置のコレクタは、面内に具体的なパターンの閉領域および開領域を有し、テンプレートとしても機能するだろう。適切なパターン化コレクタは、金属メッシュまたは穴あき金属シートであり得る。産業規模では、コレクタは、便利には、パターンを各層11、12、そして最終的な多層テキスタイル1に転写可能とするために、ベルト2に一体化され得る。
【0017】
典型的な設計では、多層テキスタイル1は、面内整列されたファイバーによって構成された領域が、ファイバーの融合によって形成された連続固体ネットワークに埋め込まれているパターンを提示する。結果として、エレクトロスピニング装置のコレクタのパターンに対応するパターンを有する融合されたパターン化多層構造が存在する。異なる層11、12の接続領域は、パターンによって形成される。熱プレスおよびパターニングは、パターン化コレクタ上でのエレクトロスピニングステップIおよび後続の熱機械処理ステップIIの結果である。
【0018】
後続ステップにおいて、冷却ステップIIIが、熱機械処理ステップIIによるT1およびp1を下回る温度T2および圧力patで実行される。温度T2は、T1を十分に下回り、特に30℃を下回る室温程度である。圧力patは、プレス/カレンダー3を過ぎた後、得られる多層テキスタイル1上での大気圧である。
【0019】
パターン化され融合された少なくとも部分的に接続されたナノファイバー層11および支持層12を有する、得られる多層テキスタイル1は、次いで、さらに処理され得るまたはロール4上で巻き上げられ得る。
【0020】
パターン化構造を示す透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイル1の概略例が図1bに示される。パターンは、通気性およびろ過を与えるナノファイバー層11および支持層12のより高い透過性および繊維状領域を特徴とする、ナノファイバー層11および支持層12の固体領域Dsを備える。
【0021】
ファイバーは、上述のように融合された、キトサン/ポリカプロラクトンのナノファイバーのナノファイバー層11およびポリエステル/ポリウレタンのマイクロファイバーの支持層12によって構成された多層構造で構築される。
【0022】
より好ましい例では、キトサン/ポリカプロラクトンのナノファイバーのナノファイバー層11は、図1cに概略的に示すように、ポリエステル/ポリウレタンのマイクロファイバーの2つの保護支持層12、12’の間に埋め込まれている。全3層11、12、12’は、上述のように、エレクトロスピニングデバイスの特殊導電性コレクタ上で連続してスピンされ、続いて、熱機械処理ステップIIを介して変更されて、固体領域Dsを生成した。
【0023】
図1cの例は、上述のように生成された。サンプルは、同封された顕微鏡像の図1dによる構造を示す。多層テキスタイル1’の固体領域Dsは、明確に視認でき、エレクトロスピニング装置のコレクタのパターンに対応する。
【0024】
ナノファイバー層11および支持層12の厚さは、多層テキスタイル1に様々な性質を提供するように調整、選択され得、適切なものであり得る。ファイバーは、後続ステップでエレクトロスピニングされて、多層アーキテクチャを便利に構築する。エレクトロスピニングステップIのシーケンスの最後では、コレクタの開領域および閉領域にわたって異なるファイバー密度を備える多層シートが形成される。多層テキスタイル1は次いで、熱機械処理ステップIIで熱プレスされる。このステップIIは、カレンダー処理を介して産業規模で便利に行われ得る。熱と圧力の組み合わされた効果により、コレクタの閉領域と接触するポリマー繊維が固体圧縮フィルムに変形され、一方、コレクタの開領域の上部で、ファイバー形態は保たれる。このステージの最後で、パターン化多層テキスタイル1が形成される。ナノファイバー層11のナノファイバーおよび支持層12のマイクロファイバーのファイバー形態は、固体領域Dsの横の構造体の開領域上に到達または延在しており、そこでは、それらは互いと区別され得る。
熱機械処理ステップIIは、異なる層11、11’、12、12’、13を同時に結合する(以下で開示するように)こと、および、パターン化多層テキスタイル1に固体領域Dsを有するパターンを生成することを可能とし、それにより、透過性および機械抵抗が増大する。
【0025】
少なくとも1つのナノファイバー層11および少なくとも1つの支持層12のナノファイバーおよびマイクロファイバーの連続ネットワークに埋め込まれた固体領域Dsを実現することにより、固体領域Dsのサイズ、形状、密度、および空間的配置は、多層テキスタイル1の最終的外観およびバリア性質を調整するように変更することができる。
【0026】
より高い頑強性を実現するために、上述の記載に基づいて、透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイル1’’ももたらすように生成方法が変えられた。このわずかに変更されたプロセスにより、そうした多層テキスタイル1’’の産業的な生成が達成される。
【0027】
生成方法は、上記のように、ベルト2およびエレクトロスピニング装置のコレクタ上の少なくとも1つのナノファイバー層11およびマイクロファイバーを有する少なくとも1つの支持層12のエレクトロスピニングステップIから開始する。このとき、コレクタは、プレスパターンを示す必要はない。エレクトロスピニングされた層11、12はさらに運ばれ、さらなるパターン化層13または多孔質基体13が、好ましくは図2aに示すようなロールからもたらされる。この前に、3つの層11、12、13は、プレス3またはカレンダー3に供給され、そこで、層11、12、13は、熱機械処理ステップIIにおける熱/圧力処理にさらされる。
【0028】
-少なくとも1000N/cm2、最も好ましくは1500N/cm2以上の圧力p1、および
-少なくとも70℃、最も好ましくは80℃以上の温度T1を、
最大1桁の秒数、好ましくは10秒以上、最も好ましくは30秒の時間間隔Δtの間、加えることによって、
ナノファイバー層11のナノファイバーと支持層12のマイクロファイバーとパターン化層13の材料は、一体に融合されて、パターン化層13の閉領域に固体領域Dsを形成し、それは高い透過性を有する。
【0029】
使用材料およびファイバーの厚さに応じて、固体領域Dsの透過性は、他の領域よりも高い。
【0030】
パターン化層/多孔質基体層13の導入により、ナノファイバー層11と支持層12は、パターン化層/多孔層13の表面で接続される。
【0031】
パターン化層/多孔質基体層13は、開口および接続ウェブを備える、パターン130を有する高分子メッシュとして形成される。パターン化層/多孔質基体層13は、織布またはフリースであり得、20ミクロン以上、特に約50ミクロン~200ミクロンの直径を有するファイバーを備え、接続ウェブを形成する。パターン化層/多孔質基体層13の表面の少なくとも30%は開いているべきであり、多様な開口を形成している。パターン130は、規則的であることが最も好ましいが、不規則にも形成され得る。
【0032】
パターン化層/多孔質基体層13はまた、開口としていくつもの貫通孔および接続ウェブとして格子状構造を有する熱可塑性材料の箔として形成することもでき、表面の少なくとも30%が開いているべきである。貫通孔の開口は、格子状構造の接続ウェブが20ミクロン以上、特に50ミクロン以上よりも広くなるように選択されなくてはならない。
【0033】
パターン化層13は、後に可能な限り高い透過性を実現するように、半透過性または透過性でなくてはならない。そうしたパターン化層13は、エレクトロスピニングステップIの後、熱機械処理ステップIIの前に導入され、消失形状として層11、12にさらに成型が行われる。
【0034】
パターン化層13上のまたは内のパターン130および熱機械処理ステップIIにより、ナノファイバー層11および支持層12は、図2bに示すように、グリッド接続部でまたはパターン化層13の格子状構造の閉領域で融合される。
【0035】
ナノファイバー層11、11’および支持層12、12’の2つの二重層がパターン化層13を囲み互いとそしてパターン化層13と融合された場合、図2cの概略図による多層テキスタイル1’’’が実現される。当方は、SEM画像の図2dおよび2eに示されるそうした多層テキスタイル1’’’を、上記の方法で生成した。
【0036】
上述のようなT1、p1での熱機械処理ステップIIおよびT2、patでの後続の冷却ステップIIIにより、固体領域Dsが形成される。この場合、パターン化層13は、得られる多層テキスタイル1に残る。パターン130は、層11、12のナノファイバーとマイクロファイバーの融合位置を構築する。パターン化層/多孔質基体層13は、消失形状として用いられ、ナノファイバーおよびマイクロファイバーも、パターン化層/多孔質基体層13に永久的に取り付けられる。ここに記載された融合された接続は、異なる層を永久的に接続している。
【0037】
固体領域Dsの得られるパターンまたはパターンの島部は両方の製造プロセスにおいて類似しているが、第1の手順は、パターン化層13を導入することなく実行することができる。
【0038】
キトサン/ポリカプロラクトンのナノファイバーを備えるナノファイバー層11、11’およびポリエステル/ポリウレタンのマイクロファイバーを備える支持層12、12’の使用が特に好ましい。
【0039】
開示された方法は、50%より大きい、一般にサンプルを介して透過された可視スペクトルにおける入射電磁力の割合である透過率T%を有する多層テキスタイル1、1’、1’’、1’’’をもたらしている。最も好ましくは、一部の領域の選択的な溶融を備えた熱機械処理ステップIの後の最終的な多層テキスタイル1、1’、1’’、1’’’の透過率は、60%より大きくあるべきである。
【0040】
個々の各層11、11’、12、12’、13は、可視光の20%しか遮断または散乱しなければならず、それは、可視スペクトルにおける入射光子の80%は、吸収または屈折されることなく膜を横断することができることを意味する。透過率(T%)は、λ=555nmで80%より大きくなくてはならない。555nmの光波長は、人間の視覚の最大感度に対応するものであり、したがって、この具体的な波長におけるT%は特に、当方が対象とした用途に関連がある。
【0041】
実施において、以下の結果の達成が可能であった。
-直径50nmのナノファイバーを有するナノファイバー層11:T%>90
-直径1~2μmのマイクロファイバーを有する支持層12:T%>80
-織られた市販の高分子メッシュとしてのパターン化層13:変更前はT%=70、熱プレスによる変更後はT%=80。
【0042】
最終的な全体のまたは全般の多層テキスタイル1、1’、1’’、1’’’の透過率は、個々の層の生成物によって与えられる。ファイバーを一部の領域において選択的に溶融し、固体領域Dsを実現することによって、当方は、個々の構成要素11、11’、12、12’、13の合計によって与えられる透過率の値よりも大きい透過率の値を達成することができる。
【0043】
エレクトロスピニング装置のコレクタのパターンのパターン島部またはパターン化層13のパターン130のパターン島部のサイズおよびそれと共に後の固体領域Dsの横幅は、1cm~10nmの間、好ましくは1mm~1μmの間、より好ましくは、その最大のポイントで100μm~10μmの間で変わり得る。
【0044】
100μm未満の最大寸法を有するパターン島部は、裸眼では実質上不可視であり、均質な見た目の多層テキスタイル1を生成するという利点を有する。パターン島部は、規則的なパターンまたは不規則なパターンにしたがって配置され得る。パターンは、多層テキスタイル1を通して均質であり得、または、多層テキスタイル1もしくは後の顔マスクの様々な領域に具体的な特性を与えるようなパターン島部集中の勾配を提示し得る。
【0045】
全パターン島部およびそれと共に得られる固体領域Dsの表面は、多層テキスタイル1の全表面の5%~95%、好ましくは15%~85%、より好ましくは30%~70%の値を構成すべきである。
【0046】
圧縮高分子領域それぞれの固体領域Dsの厚さは、フィルム組成に加えて調整され得る。固体領域Dsの厚さは、100nm~0.1cm、好ましくは1μm~1mm、より好ましくは10μm~100μmの間で変わり得る。
【0047】
多層テキスタイル1、1’、1’’、1’’’は、顔マスクの一部として用いられ得る。そうした多層テキスタイル1、1’、1’’、1’’’はまた、ろ過膜としてまたは包装材としてろ過用途でも用いられ得る。
【0048】
ナノファイバー層11および/または支持層12に、キトサン-ポリカプロラクトン混合物を用いることが最も好ましい。キトサンは広く利用可能であり、生分解性であり、再生可能であり、様々なバイオマスから抽出することができる。キトサンは、非細胞毒性であり、固有の抗菌特性を包含し、エレクトロスピニングされ得る。さらに、大量の極性アミノ基を特徴とする特殊な分子構造は、ろ過効率を高めることが期待される。ポリカプロラクトンも、高い生体適合性および生分解性を有する。キトサンベースの機能性多層テキスタイル1は、高い透過性を有し(T>90%)、低減された空隙サイズは、有望なろ過特性と関連している。
【0049】
主な限界は、これらの小さなファイバーの機械的安定性に見受けられ得、したがって、当方は、支持層12におけるより大きな支持ファイバーを発見した。当方が開発した支持ファイバーは、ポリラクチド、ポリウレタン、およびそれらの混合物に基づく。そうした支持ファイバーは、適切な機械的特性を有する。低結晶性および大きな直径は、光散乱を最小化する。興味深いことに、両方の高分子は、生分解性である。
【0050】
ポリ乳酸は、でんぷん、再生可能な原料から全体が生成され、ポリウレタンは、化石原料および再生可能原料の両方を用いて合成される。要約すると、当方は、ファイバーのサイズ、加えてそれらの界面化学および結晶性を制御することを可能とする配合を開発した。
【0051】
これらの臨界パラメータを制御することによって、当方は、透過性、機械特性、およびろ過効率を高めた/両立した。全ての高分子は生分解性であり、したがって、最終的な生成物は、埋め立て地に置かれたりまたは環境中に飛散された場合、環境への影響は限定されるだろう(例えば、永続的なマイクロプラスチックを生成しない)。さらに、原料の大部分も、自動的にではないが潜在的に、再生可能なリソースから生成され、カーボンフットプリントを低減させる。
【0052】
同様の実施結果を、高分子化学および工学のよく知られている原則を適用する多くの異なる高分子または高分子の組み合わせで得ることができる。実質的に、透過性フィルムおよび/またはファイバーへ成形可能な任意の高分子または高分子の組み合わせを潜在的に用いることができる。材料の特性を最適化するために、原料の重量の最大30%を構成し得る適切な添加物(硬化剤、可塑剤、界面活性剤、清澄剤など)を用いることも便利である。
【0053】
フィルムおよびファイバー生成に適切な高分子は以下を含み得る。
-ポリオレフィン:LDPE、HDPE、PP、PS、PAN、PVC、...
-ポリエステル:PET、PLA、PCL、PHA、PHB、...
-ポリカーボネート:PC、...
-ポリエーテル:PEG、PEO、...
-ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド:PA(例えばナイロン)、PI、PAr(例えばKevlar)、...
-ポリウレタン:PU、TPU、...
-シリコンポリマー:PDMS、...
-雑ポリマー:PVA、PVP、PMMA、PVAc、...
-セルロースおよびその誘導体:エチルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、...
-他の天然ポリマー:ヘミセルロース、キチン、キトサン、でんぷん、コラーゲン(ゼラチン)、...
【0054】
異なる層11、12、12’、13に、生体適合性の、生分解性の、かつ抗菌性の熱可塑性ポリマーを用いることが最も有利である。
【0055】
異なる層11、11’、12、12’、13のポリマー混合物は、少なくとも1種類の熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、弾性ポリマー、または熱可塑性エラストマーポリマーによって構成される。テキスタイルに所望の最終的な性質を推測するために、混合物および複合材を形成する1つより多いポリマーが用いられ得る。
【0056】
エレクトロスピニングによって生成された、単層よりも多い層、ナノファイバー層11、支持層12、12’、および/またはパターン化層13に、2つ以上の異なる種類のファイバーが存在し得る。上述の生成方法の他の部分は適切に用いられ得る。固体領域Dsの形成は、最も重要な特徴である。
【0057】
ここで開示されているマスクへの適用は、衛生マスク、顔マスク、外科手術用マスクまたは異なる分野の適用における手術用マスクである。また、保護衣も、審美的理由で透明であり得る。外科用ドレープは、より良く患者をモニタリングすることを可能にするため透明であるべきである。
他の用途は、ウィンドウスクリーン、半透明なウィンドウスクリーンまたは微粒子(PM2.5、PM10)のろ過作用を有するヘイズウィンドウスクリーンとしての使用である。
【0058】
そうした複合多層テキスタイル1はまた、特殊な包装用途のための高い通気性のある、空気透過性の半透過性膜として、包装材料としても用いられ得る。これらの複合多層テキスタイルは、エアロゾル液滴、花粉、細菌、胞子を防ぐが、製品を見ることそして非常に高い蒸発性を可能とする。
当業者は、光透過性の判定のためのセットアップを把握している。ここで、透過性は、AgilentのUV-vis分光光度計「Cary 4000」を用いて透過率を測定することによって定量化された。サンプルは通常、1cmのアパーチャマスクを有する固体サンプルホルダ(Agilent)を用いて入射光に直交的に配置される。もちろん、興味深い波長範囲で機能している最大数平方センチのアパーチャマスクを有する一般的な光学分光計を用いて類似の測定が可能である。
【0059】
実践では、透過性フィルタ1は、主に2つの部分から構成される。すなわち、ろ過要素としてのエレクトロスピニングされたナノファイバーマット11、および市販のPLAメッシュ12でつくられる支持材料である。最終生成物の透過性を増大させるために、PLAメッシュは、120℃で30秒プレスされ、50barの圧力が加えられた。本来のPLAメッシュは、エレクトロスピニングプロセス中のファイバーの沈着を防ぐ帯電防止特性を本質的に有する。したがって、帯電防止物質として機能している皮膚融和性界面活性剤(TWEEN 80)が、エタノール中1.0%重量の溶液を用いる浸漬被覆技術によってメッシュを被覆するために選択された。その後、そのように調製された基体(プレスされたPLA+TWEEN 80)は、Elmarcoのパイロット規模エレクトロスピニング装置「Nanospider」を用いて、ポリアミド-11(PA11)のエレクトロスピニングされたナノファイバーの薄膜(約0.1g/m)で直接被覆された。アニソールギ酸中6%重量の溶液を用いて、平均直径72±29nmのファイバーを取得した。
【0060】
図3aに示すように自家製のセットアップを用いてろ過効率が測定された。各テストにおいて用いられたのは以下である。
直径46mmの円形試験片;直径20~2000nmの中和された糖粒子を構成するエアロゾル;
試験片を通る一定の気流8L/分(気流速度8cm/s)を生成したポンプシステム;
試験片を通って拡散しているエアロゾルの濃度を測定した(リアルタイム)粒子分析器「Cambustion DMS500」。粒子ろ過効率は、パーセンテージで与えられ、フィルタシステムを用いた場合のエアロゾル濃度とフィルタシステムを用いない場合のエアロゾル濃度の比較によって、粒子の定常状態流を達成後(おおよそ3分後)に判定される。
透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイル1のPLA-PA11システムは、中和されたフルクトース粒子エアロゾルに対して良好なろ過効率を示した。それは、1μmの泳動粒子直径の場合、>90%である。
【0061】
医療用顔マスクに対してEN-14683:2019規格にしたがって空気透過性が評価された。空気透過性は、27cm/sの流れを加えることによって測定された試験材料の圧力降下に関連する。透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイル1のPLA-PA11フィルタは、9Pa/cmの圧力降下を示した(タイプIおよびIIの医療用顔マスクの限界は、EN-14683:2019によれば40Pa/cmである)。透過性は、AgilentのUV-vis分光光度計「Cary 4000」を用いてフィルタの透過率を測定することによって定量化された。サンプルは、1cmのアパーチャマスクを有する固体サンプルホルダ(Agilent)を用いて入射光に直交的に配置される。空気が100%の透過率を有すると仮定すると、今回は、透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイル1のPLA-PA11フィルタは、λ=555nmで76%の透過率を有する(可視光は、約400から800nmに及ぶ)。下の図において、透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイル1のPLA-PA11サンプルの写真が、図3bにおけるUV-visスペクトルと一緒に報告される。
【0062】
参照番号の一覧
0 生成セットアップ
1 透過性複合ナノファイバーベースの多層テキスタイル/膜
11 ナノファイバー層(直径100nm未満)
12、12’ マイクロファイバーを有する支持層(直径1~2ミクロン)
13 パターン化層/多孔質基体層(織物である/メルトスピニングされた/メルトブローされた/開口を有する箔)
130 パターン
2 ベルト(エレクトロスピニング装置のコレクタが、ベルトの一部を形成し得る)
3 プレス/カレンダー
30 プレスロール
4 ロール(多層テキスタイル用の)
I エレクトロスピニングステップ
II 熱機械処理ステップ(T1、p1)
III 冷却ステップ(T2、pat)
Ds固体領域(横方向厚さ1μm~100μm、横幅10μm~100μm)
図1a-1b】
図1c
図1d
図2a-2b】
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
【国際調査報告】