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特表2023-518616新規なイオン伝導性チャネル融合サブユニット及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-02
(54)【発明の名称】新規なイオン伝導性チャネル融合サブユニット及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230425BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230425BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20230425BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230425BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230425BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230425BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230425BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230425BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20230425BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C07K14/435
C07K14/47
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/02
G01N33/50 Z
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500118
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2021056529
(87)【国際公開番号】W WO2021185759
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】20163892.1
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515010235
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド ボルドー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE BORDEAUX
【住所又は居所原語表記】35, Place Pey Berland, F-33000 Bordeaux, France
(71)【出願人】
【識別番号】515011944
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】512183817
【氏名又は名称】アンスティテュ ポリテクニーク ド ボルドー
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT POLYTECHNIQUE DE BORDEAUX
【住所又は居所原語表記】1 avenue du Docteur Albert Schweitzer, 33400 TALENCE,France
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ペルシュランシエ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】コンパン,ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ラッセンドレン,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ,マチアス
(72)【発明者】
【氏名】シャップ,ヤン
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
4B063
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043EA01
2G043FA03
2G045CB01
2G045DB07
2G045GC15
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR58
4B063QS28
4B063QS39
4B063QX10
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045CA50
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、プローブに結合したイオン伝導性チャネルサブユニットを含むチャネル融合サブユニットであって、
前記プローブは、少なくとも1つの生物発光ドナー分子及び少なくとも1つの蛍光アクセプター分子にその間で結合したイオンセンサーを含み、
前記プローブは、前記チャネルサブユニットのN末端に、C末端に又は細胞内若しくは細胞外ループ内に前記生物発光ドナー分子又は前記蛍光アクセプター分子のいずれかを介して結合し、
前記生物発光ドナー分子及び前記蛍光アクセプター分子は、該生物発光ドナー分子の発光スペクトルが該蛍光アクセプター分子の吸収スペクトルと重複することにより、生物発光エネルギードナーと蛍光アクセプターとの間での非放射性双極子-双極子カップリングによる非放射エネルギー移動が可能であるように選択されている、
チャネル融合サブユニットに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブに結合したイオン伝導性チャネルサブユニットを含むチャネル融合サブユニットであって、
前記プローブは、少なくとも1つの生物発光ドナー分子及び少なくとも1つの蛍光アクセプター分子にその間で結合したイオンセンサーを含み、
前記プローブは、前記チャネルサブユニットのN末端に、C末端に又は細胞内若しくは細胞外ループ内に前記生物発光ドナー分子又は前記蛍光アクセプター分子のいずれかを介して結合し、
前記生物発光ドナー分子及び前記蛍光アクセプター分子は、該生物発光ドナー分子の発光スペクトルが該蛍光アクセプター分子の吸収スペクトルと重複することにより、生物発光エネルギードナーと蛍光アクセプターとの間での非放射性双極子-双極子カップリングによる非放射エネルギー移動が可能であるように選択されている、
チャネル融合サブユニット。
【請求項2】
前記イオン伝導性チャネルサブユニットが電位依存性イオンチャネル又はリガンド依存性イオンチャネルである、請求項1に記載のチャネル融合サブユニット。
【請求項3】
前記イオンセンサーがカルシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、クロライドイオンに対するセンサー又はイオン強度に対するセンサーである、請求項1又は2に記載のチャネル融合サブユニット。
【請求項4】
前記イオンセンサーが、カルシウム結合性タンパク質、例えばトロポニンCカルシウム感受性ドメイン若しくはカルモジュリンカルシウム結合性タンパク質、カリウム結合性タンパク質(KBP)、ナトリウム結合性タンパク質、例えばNhAs-1タンパク質、又はクロライド結合性タンパク質から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のチャネル融合サブユニット。
【請求項5】
前記イオン伝導性チャネルサブユニットと前記プローブとの間にリンカーを更に含む請求項1~4のいずれか1項に記載のチャネル融合サブユニット。
【請求項6】
前記生物発光ドナー分子が、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、ホタル(Firefly)ルシフェラーゼ、腔腸動物(Coelenterate)ルシフェラーゼ、北米グローワーム(North American glow worm)ルシフェラーゼ、コメツキムシ(click beetle)ルシフェラーゼ、レイルロールワーム(railroad worm)ルシフェラーゼ、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ、エクオリン(Aequorin)、ヒカリキノコバエ(Arachnocampa)ルシフェラーゼ、深海エビ トゲオキヒオドシエビ(Oplophorus gracilirostris)に由来するナノルシフェラーゼ(Nanoluciferase)、又はそれらの生物学的に活性なバリアント若しくはフラグメント、GLuc、NanoLuc (NLuc)、MLuc7、HtLuc、LoLuc、PaLuc1、PaLuc2、MpLucl、McLucl、MaLuc1、MoLuc1、MoLuc2、MLuc39、PsLucl、LocLucl-3、HtLuc2 Renilla、TurboLucl6 (TLuc)、又はそのホモログ若しくはオルソログ又はそれらの変異体又は機能的誘導体から選択されるルシフェラーゼである、請求項1~5のいずれか1項に記載のチャネル融合サブユニット。
【請求項7】
前記生物発光ドナー分子が、β-ガラクトシダーゼ、ラクタマーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-グルクロニダーゼ又はβ-グルコシダーゼから選択される非ルシフェラーゼ生物発光タンパク質である、請求項1~5のいずれか1項に記載のチャネル融合サブユニット。
【請求項8】
前記蛍光アクセプター分子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、緑色蛍光タンパク質のバリアント(GFP10)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、増強GFP(EGFP)、増強CFP(ECFP)、増強YFP(EYFP)、GFPS65T、mAmetrine、LSS-mOrange、LSS-mKate、エメラルド、トパーズ、GFPuv、不安定化EGFP(dEGFP)、不安定化ECFP(dECFP)、不安定化EYFP(dEYFP)、HcRed、t-HcRed、DsRed、DsRed2、mRFPl、ポシロポリン、ウミシイタケ(Renilla)GFP、モンスター(Monster)GFP、paGFP、カエデ(Kaede)タンパク質、ニシナメクジウオ(Branchiostoma lanceolatum)のmNeonGreen又はフィコビリタンパク質(Phycobiliprotein)、又は前記のいづれか1つの生物学的に活性なバリアント若しくはそのフラグメント、TagCFP、mTagCFP2、Czurite、ECFP2、mKalamal、シリウス(Sirius)、サファイア(Sapphire)、T-サファイア(T-Sapphire)、ECFP、セルリアン(Cerulean)、SCFP3C、mTurquoise、mTurquoise2、単量体Midoriishi-Cyan、TagCFP、mTFPl、EGFP、エメラルド、スーパーフォルダー(Superfolder)GFP、単量体Czami Green、TagGFP2、mUKG、mWasabi、クローバー(Clover)、シトリン(Citrine)、ビーナス(Venus)、SYFP2、TagYFP、単量体Kusabira-Orange、ιηΚΟκ、mK02、mOrange、mOrange2、mRaspberry、mCherry、mStrawberry、mScarlet、mTangerine、tdTomato、TagRFP、TagRFP-T、mCpple、mRuby、mRuby2、mPlum、HcRed-Tandem、mKate2、mNeptune、NirFP、TagRFP657、IFP1.4及びiRFP又は前記のいずれか1つの生物学的に活性なバリアント若しくはフラグメントから選択される非ルシフェラーゼ生物発光タンパク質である、請求項1~7のいずれか1項に記載のチャネル融合サブユニット。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のチャネル融合サブユニットを発現する組換え細胞。
【請求項10】
チャネルを通るイオンフラックスをモジュレートし得る候補化合物をスクリーニングする方法であって、
候補化合物を請求項9に記載の組換え細胞と接触させること、
前記生物発光ドナー分子の基質を提供すること、及び
生物発光共鳴エネルギー移動の変動を測定すること
を含む方法。
【請求項11】
プローブに結合したイオン伝導性チャネルサブユニットを含むチャネル融合サブユニットをコードするヌクレオチド配列を含む核酸であって、
前記プローブは、少なくとも1つの生物発光ドナー分子及び少なくとも1つのタンパク質蛍光アクセプター分子にその間で結合したイオンセンサーを含み、
前記イオンセンサーは、前記チャネルサブユニットにより輸送されるイオンの存在下でコンホメーション変化を受けるように構成され、
前記プローブは、前記チャネルサブユニットのN末端に、C末端に又は細胞内若しくは細胞外ループ内に前記生物発光ドナー分子又は前記タンパク質蛍光アクセプター分子のいずれかを介して結合し、
前記生物発光ドナー分子及び前記タンパク質蛍光アクセプター分子は、該生物発光ドナー分子の発光スペクトルが該蛍光アクセプター分子の吸収スペクトルと重複し、該生物発光ドナー分子により送達される光エネルギーが該蛍光アクセプター分子を励起し得る波長であるように選択されている、
核酸。
【請求項12】
前記イオン伝導性チャネルサブユニットが電位依存性イオンチャネル又はリガンド依存性イオンチャネルであり、前記イオンセンサーがカルシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、クロライドイオンに対するセンサー又はイオン強度に対するセンサーであり、場合により、前記イオン伝導性チャネルサブユニットをコードするヌクレオチド配列と前記プローブをコードするヌクレオチド配列との間にリンカー配列を更に含む請求項11に記載のチャネル融合サブユニット。
【請求項13】
前記イオンセンサーが、トロポニンCカルシウム感受性ドメイン又はカルモジュリンカルシウム結合性タンパク質、カリウム結合性タンパク質(KBP)、ナトリウム結合性タンパク質、例えばNhAs-1タンパク質、又はクロライド結合性タンパク質から選択される、請求項11又は12に記載の核酸。
【請求項14】
前記生物発光ドナー分子が、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、ホタル(Firefly)ルシフェラーゼ、腔腸動物(Coelenterate)ルシフェラーゼ、北米グローワーム(North American glow worm)ルシフェラーゼ、コメツキムシ(click beetle)ルシフェラーゼ、レイルロールワーム(railroad worm)ルシフェラーゼ、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ、エクオリン(Aequorin)、ヒカリキノコバエ(Arachnocampa)ルシフェラーゼ、深海エビ トゲオキヒオドシエビ(Oplophorus gracilirostris)に由来するナノルシフェラーゼ(Nanoluciferase)、又はそれらの生物学的に活性なバリアント若しくはフラグメント、GLuc、NanoLuc (NLuc)、MLuc7、HtLuc、LoLuc、PaLuc1、PaLuc2、MpLucl、McLucl、MaLuc1、MoLuc1、MoLuc2、MLuc39、PsLucl、LocLucl-3、HtLuc2 Renilla、TurboLucl6 (TLuc)、又はそのホモログ若しくはオルソログ又はそれらの変異体又は機能的誘導体から選択されるルシフェラーゼである、請求項11~13のいずれか1項に記載のチャネル融合サブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1]本発明は、一般に、新規なイオン伝導性チャネル融合サブユニット及び/又は新規なイオン伝導性チャネル融合物、該チャネル融合物及びチャネルサブユニット融合物をコードする核酸、該チャネル融合物及びチャネルサブユニット融合物を含むアミノ酸配列、組換え細胞及び発現ベクター、並びに、特にイオン伝導性チャネルの阻害剤又は活性化剤をスクリーニングするためのハイスループットスクリーニング(HTS)法のためのそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[2]ヒトを含む高等生物の生命は、無数の多様な細胞プロセスを同期させる電気及び化学シグナルの迅速且つ効率的な伝達を必要とする。動植物細胞の内部は、外部に対して電気的に負である。この電位差の大きさは一般に5~90mVであり、この電位のほとんどは細胞膜を横切って発生するものである。所与の細胞の膜電位差は、電気化学勾配を作り出して維持するイオン輸送体及びチャネルの活性と、イオンが原形質膜を横切って流れることを可能にするイオンチャネル、受動拡散及び他の因子の活性とのバランスによって設定される。電気シグナルは、細胞機能にとって極めて重要であり、全ての生細胞の膜を横切り体内に存在する荷電原子(イオン)に対して透過性である特殊なタンパク質群であるイオンチャネル又はイオン伝導性チャネルによって主に媒介される。単純な意味で、イオン伝導性チャネルは、「オン」(開)状態と「オフ」(閉)状態との間で切り替わることにより細胞膜を横切る電流の通過を制御することによって刺激に応答するので、トランジスタの生物学的等価物とみなすことができる。そうすることで、イオン伝導性チャネルは、細胞の電気的状態を制御し、心臓の拍動、筋肉の収縮及び神経系における情報処理のような基本的プロセスを可能にする。イオン伝導性チャネルは細胞膜を横切るイオンの移動を可能にするので、それらは生体系内の電気的シグナル伝達の全領域を完全に担っている。さらに、イオンチャネルは、カルシウムの流れを可能にすることによって直接的に、又は膜電位をモジュレートすることによって間接的に、細胞内カルシウム濃度に影響を及ぼし;これは、ひいては、エネルギー産生、シナプス伝達、筋収縮、ホルモン分泌及び遺伝子転写を含む種々の機能を制御する。
【0003】
[3]具体的には、イオン伝導性チャネルは、ある特定のタイプのイオンがその電気化学勾配によってチャネルを通過することを可能にして細胞の原形質膜間のわずかな電圧差を制御する孔形成タンパク質として定義することができる。これらのイオン伝導性チャネルは、全ての生細胞の細胞膜に存在する。イオン伝導性チャネルは、イオンの種類に応じて、クロライドイオンチャネルファミリー、カリウムイオンチャネルファミリー、ナトリウムイオンチャネルファミリー、カルシウムイオンチャネルファミリー、プロトンチャネルファミリー及びユニバーサルイオンチャネルファミリーに分類することができる。
【0004】
[4]多くの生理学的プロセスにおけるイオン伝導性チャネルの中心的且つ重要な役割を考慮すると、それらは、広範囲の疾患状態における介入について莫大な可能性のある標的クラスを表す。実際、多数のイオン伝導性チャネル薬物クラス(例えば、カルシウムアンタゴニスト、ナトリウムチャネル遮断薬、γ-アミノ酪酸又はGABA受容体増強剤及びスルホニル尿素)の市場への導入が成功したことにより、イオン伝導性チャネルが有効な薬物標的としてしっかりと確立された。しかしながら、「分子前時代」に発見されたほとんどの市販のイオン伝導性チャネル薬、すなわち第1世代イオンチャネル薬は、比較的非選択的であり、しばしば用量制限副作用を示し、100%有効であることは稀である。したがって、より選択性が高く、副作用がより少なく有効性が向上した、イオン伝導性チャネルを標的とする、改良されたイオン伝導性チャネル薬物、すなわち新世代のイオンチャネル薬が明らかに必要とされている。いくつかの疾患がイオン伝導性チャネル機能に関連付けられている。例えば、中枢神経系におけるイオン伝導性チャネル機能不全から生じる疾患としては、不安、うつ病、てんかん、不眠、記憶障害及び慢性疼痛が挙げられる。イオン伝導性チャネル機能障害から生じる他の疾患としては、心不整脈及びII型糖尿病が挙げられる。
【0005】
[5]イオン伝導性チャネルの活性を測定するために開発された初期の方法は、生細胞の記録に基づいていた。目的のイオン伝導性チャネルの過剰発現がこのようなアプローチではしばしば必要となり、これは、細胞の生理学的状態を変化させ、チャネル活性について予測不可能な結果をもたらす。これは、多くの場合、細胞に対する毒性及びそれらのアポトーシスをもたらす。これらの方法において、イオンチャネルの活性は、主にパッチクランプ又は蛍光によって測定された。
【0006】
[6]パッチクランプシステムは、電気生理学に基づく測定を含む。電極は細胞内に浸漬され、参照電極は当該細胞を含む溶液の外側にある。イオンがチャネルを通過すると、電流が膜を横切って発生し、電極によって測定される。チャネルが非機能的であるか、又は化合物によって遮断される場合、電流は記録されない。蛍光ベースのシステムは、イオン特異的(又はpH依存性)蛍光分子を使用する。しかし、このようなイオン特異的蛍光分子は、全てのイオンについて存在するわけではない。細胞ベースの方法の欠点を克服するために、依然としてパッチクランプ又は蛍光測定に基づくセルフリーの方法が開発されている。これらのセルフリーの方法では、イオン伝導性チャネルは、おそらくマイクロ流体プラットフォームにおける、モデル膜、例えば、液滴界面二重層(DIB)において発現させ、精製され、再構成される。
【0007】
[7]治療のための新しい標的及びイオンチャネルを標的とする新しい医薬化合物を発見するために、自動化されたハイスループットアッセイによって多数の化合物の化学ライブラリーをスクリーニングできることが有用である。しかしながら、上記の細胞ベースの方法又はセルフリーの方法は、ハイスループットスクリーニング(HTS)を容易にしないという制限を有する。実際、ほとんどの現行のHTS方法は、典型的にはマイクロ流体デバイス又はミリ流体デバイスにおける、流動下の化合物を伴う。したがって、これは、電極の使用に起因するパッチクランプ法の使用を排除する。パッチクランプ法の主な制限は、スループットが低いことである。典型的には、高度な訓練を受けたオペレーター1人がパッチクランプ法を使用して1日あたり試験することができる化合物は10種類未満である。さらに、この技術は自動化が容易ではなく、広範な分析を必要とする複雑な結果が得られる。蛍光ベースの方法の使用はまた、蛍光スメアが、基本的にノイズを生成し読み出し情報を制限する蛍光化合物の流動下で観察されるので、簡便ではない。
【0008】
[8]蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)及び生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)技術は、創薬及びHTS法のために、タンパク質-タンパク質相互作用をモニターするために開発されている。
【0009】
[9]国際公開第WO2016/131832号は、チャネルサブユニットのC末端又はN末端のいずれかで生物発光ドナー分子及び蛍光アクセプター分子に融合した一過性受容体電位(TRP)チャネルサブユニットを含む、第1世代の分子内BRETプローブを記載している。そのようなBRETプローブは、生細胞における一過性受容体電位(TRP)チャネル構造コンホメーション変化及びTRPチャネル活性化をモニタリングすることを可能にした。しかしながら、これらの第1世代のBRETプローブは、イオンチャネルのコンホメーションの変化を測定することにおいてのみ効率的であるが、イオンチャネルのコンホメーションの変化は必ずしも実際の活性化又は阻害に関連しないので、それらは必ずしも信頼できる形でイオン伝導性チャネルの実際の活性化又は阻害を示すわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[10]したがって、薬物の発見率を増加させるための1つの課題は、HTS法において膜に埋め込まれたチャネルを通るイオンの通過を測定することを可能にする方法を提供することであった。したがって、本願は、BRET技術を使用してイオンの実際の通過を測定することによってイオン伝導性チャネルの活性化又は阻害を確実に測定することを可能にする新規なBRETプローブ、並びに薬物スクリーニング及びシグナル伝達経路のマッピングのためのこれらの新たなプローブの使用方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[11]本発明は、新規な融合タンパク質をコードする核酸、及びイオン伝導性チャネル融合物又は新規なイオン伝導性チャネル融合サブユニットを含む新規な融合タンパク質に関する。これらの融合物は、少なくとも1つの生物発光ドナー分子及び少なくとも1つの蛍光アクセプター分子にその間で結合又は挟まれたイオンセンサーを含むプローブに、C末端に、N末端に、又は細胞内若しくは細胞外ループ内に結合したイオン伝導性チャネル又はそのサブユニットを含み、イオンセンサーは、チャネルサブユニットにより輸送されるイオンの存在下でコンホメーション変化を受けるように構成されている。
【0012】
[12]本発明はまた、新規なイオン伝導性チャネル融合物又は新規なイオン伝導性チャネル融合サブユニットをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター、このような発現ベクターを含む組換え細胞、イオンチャネルサブユニットの製造方法、並びに前記方法によって得ることができる融合タンパク質及び融合サブユニットに関する。
[13]本発明はさらに、生物発光共鳴エネルギー移動の変動を測定することによってイオン伝導性チャネルを通るイオンフラックスをモジュレートし、したがって前記チャネルを活性化及び/又は阻害し得る候補化合物をスクリーニングする方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一例として推定6回膜貫通ドメインカルシウムチャネルを用いる新規な分子内BRETプローブの概略図である。両配向でLuc及びYFPによって挟まれたセンサーは、チャネルのC末端に融合されている。チャネルのN末端へのイオンBRETバイオセンサーの融合も構築される。
図2図2は、目的のチャネルのC末端に融合したイオンに感受性があるBRETプローブを介して、開口中のチャネルを通って拡散するイオンの量を測定することによって、TRPチャネル(6つの膜貫通ドメイン)の活性を測定することを可能にする新規なBRETプローブの概略図である。開いたチャネルの孔をイオンが通過する間、イオンは細胞質に向かって拡散し、目的のチャネルに融合したBRETプローブによって孔の出口で捕捉される。BRETプローブはコンホメーション変化を受け、それがBRETシグナルの測定に反映される。基Luc及びYFPは、イオンセンサーのいずれの側に配置されていてもよく、及び/又は目的のチャネルのN末端に融合されていてもよい。
図3図3は、開口中のチャネルを通過してP2X受容体のC末端テールに融合したBRETプローブに結合しているカルシウムイオンの検出を介して、P2Xチャネル(2つの膜貫通ドメイン)の活性を測定することを可能にする第2世代のBRETプローブの概略図である。開いたチャネルの孔をカルシウムイオンが通過する間、細胞質に向かって拡散しているイオンは、目的のチャネルに融合したBRETプローブによって孔の出口で捕捉される。このBRETプローブは、イオンの結合によって引き起こされるコンホメーション変化を受け、これは、BRETシグナルの増加に反映される。
図4図4:TRPV1-nLuc-calflux-YFP若しくはTRPV1-nLuc-calflux-mNeonGreenプローブ、TRPV1-nLuc-calflux D13A/D51A-YFP(TRPV1-nLuc-CalfluxD>A-YFP)プローブ又はnLuc-Calflux-mNeonGreenプローブ単独をTRPV1なし(A)又はTRPV1あり(B)で一過性に発現するHEK293T細胞において測定したCapsaicine(CAPS)及びイオノマイシン(IONO)に対する用量応答。
図5図5は、SK3-nLuc-KBP-mNeonGreenプローブ(A)及びイオノマイシンの存在下でのチャネルの活性化中に得られたBRETシグナルの測定値(B)の概略図である。
図6図6は、P2X2-nLuc-Calflux-YFPプローブ(A)又はnLuc-Calflux-YFPプローブ(B)又はTRPV1-nLuc-Calflux-YFPプローブ(C)を一過性に発現するHEK293T細胞において測定されたATPの用量応答を示す。セレンテラジンHの添加の5分後に、漸増用量のATPで細胞を刺激する。読取りの最後に、TRPV1のアゴニストであるカプサイシン(CAPS)で細胞を刺激する。これらのデータにより、本発明者らは、用量応答を生成し、ATP(D)に対するP2X2-nLuc-Calflux-YFPプローブのEC50を決定することができた。
図7図7:NR1-nLuc-Calflux-YFPプローブを単独(A)又はNR2A(B)若しくはNR2B(C)サブユニットと同時発現させて一過性に発現するHEK293T細胞において測定されたNMDAの用量応答。セレンテラジンHの添加の4分後に、漸増用量のNMDAで細胞を刺激する。これらのデータを用いて、本発明者らは、用量応答を生成し、NR2A又はNR2Bサブユニットを含むヘテロマー受容体のNMDAについてのEC50を決定した(D)。
図8図8は、mNeon-Calflux-nLuc-hTRPV1 BRETプローブの特性決定を示す。A)mNeon-Calflux-nLuc-hTRPV1 BRETプローブを発現するHEK293T細胞に対する10μM CAPSの効果の動態測定。CAPSを30秒で注入した。データは、5回の独立した実験のうちの1回を表す。B)hTRPV1-nLuc-Calflux-sYFP2又はhTRPV1-nLuc-CalfluxD/A-sYFP2 BRETプローブを発現するHEK293T細胞において測定されたCAPS誘導性BRET変化の用量応答曲線。C)10μMのTRPV1アンタゴニストAMG517の非存在下又は存在下でmNeon-Calflux-nLuc-hTRPV1 BRETプローブを発現するHEK293T細胞において測定されたCAPS誘導性BRET変化の用量応答曲線。D)漸増量の様々なTRPV1アゴニストの存在下でmNeon-Calflux-nLuc-hTRPV1 BRETプローブを発現するHEK293T細胞において測定されたBRET変化の用量応答曲線。E)漸増量の様々なTRPV1アンタゴニストの存在下でmNeon-Calflux-nLuc-hTRPV1 BRETプローブを発現するHEK293T細胞において測定されたBRET変化の用量応答曲線。データは、少なくとも3回の独立した実験の平均を表す。
図9図9は、(A)10μMのTRPV4アンタゴニストHC067047で前処理されたか、又は前処理されていないHEK293T細胞において一過性に発現したmNeon-Calflux-nLuc-hTRPV4 BRETプローブの活性化を誘発するTRPV4アゴニストGSK1016790Aの用量応答曲線を示す。B)10μMのTRPM8アンタゴニストM8Bハイドロクロライドで前処理されたか、又は前処理されていないHEK293T細胞において一過性に発現したmNeon-Calflux-nLuc-hTRPM8 BRETプローブの活性化を誘発するTRPM8アゴニストWS12の用量応答曲線。C)HEK293T細胞において一過性に発現したmNeon-Calflux-nLuc-PIEZO1 BRETプローブの活性化を誘発するPIEZO1アゴニストYODA1の用量応答曲線。データは、少なくとも3回の独立した実験の平均を表す。
図10図10は、(A)HEK293T細胞において一過性に発現したmNeon-Calflux-nLuc-hTRPV1 BRETプローブを活性化するための、漸増量のTREK1アゴニストBL1249又は生理食塩水緩衝液単独の効果の動態測定を示す。B)mNeon-Calflux-nLuc-KiR6.1 BRETプローブを一過性に発現するHEK293T細胞から測定されたBRETに対するKCl注入の効果の動態測定。C)mNeon-SOFI-nLuc-NaV1.8 BRETプローブを一過性に発現するHEK293T細胞から測定されたBRETに対するデルタメトリン注入の効果の動態測定。
図11図11は、ヒト(h)又はマウス(m)P2X-mNeonGreen-CalFlux-NanoLuc BRETプローブ(NG-CF-NL)を発現するHEK293T細胞において測定されたATP又はBzATP誘導性BRET変化の用量応答曲線を示す。hP2X1、hPX3及びhP2X6サブユニットについてのデータは、これらのサブユニットがあまりに速く脱感作するか、又は機能的ホモマー受容体を形成しないので、表されない。値は、各プローブについて個々に測定された最大効力に対して規格化されており、3回の独立した実験の平均を表す。
図12図12は、ラットGluA1-NLuc-CalFlux-YFP BRETプローブ(NL-CF-YFP)を発現するHEK293T細胞において測定されたグルタミン酸誘導性BRET変化の用量応答曲線を示す。値は、最大効力に対して規格化されており、3回の独立した実験の平均を表す。
図13図13:Cys-ループ受容体ファミリー活性の追跡を可能にするバイオセンサー。カチオン性受容体(A)の第2の細胞内ループへのNG-CF-NL又はNL-CF-YFPプローブの挿入は、ニコチン性受容体(B)又はセロトニン受容体(C)の活性を追跡することを可能にする。YPetClと呼ばれるBRETプローブも、細胞内アニオン性フラックスを感知するために開発された(D及びF)。GABARho1サブユニットの第2の細胞内ループに挿入されると、このプローブにより、GABA受容体(G)の活性の追跡が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[27]本発明において利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び分子クローニングの技術は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技術は、出典、例えば、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989), T. A. Brown (editor), Essential Molecular Biology:A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D. M. Glover and B. D. Hames (editors), DNA Cloning:A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995 and 1996), and F. M. Ausubelら(editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988, including all updates until present), Ed Harlow and David Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988), and J. E. Coliganら(editors) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons(現在までの全ての更新を含む)の文献全体にわたって記載及び説明されている。
【0015】
[28]「生物発光ドナー分子」との用語は、好適な基質に対する作用、又は外部供給源によるそれ自体の励起のいずれかの後に発光を生成することができる任意の分子を指す。
[29]「蛍光アクセプター分子」との用語は、生物発光ドナー分子の活性の結果として放出されたエネルギーを受容し、それを光エネルギーとして再放出することができる任意の化合物を指す。
[30]生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)は、生物発光ドナー分子と任意の好適な蛍光アクセプター分子との間のエネルギーの非放射移動に基づく近接アッセイを指す。非放射移動とは、ドナーによる光の放出を伴わない、エネルギードナーからエネルギーアクセプターへのエネルギーの移動を意味する。
【0016】
[31]「空間位置」との用語は、電位依存性イオンチャネルへの化合物結合の結果として、又は特定の物理的パラメータの変化の結果として変化する、アクセプター分子に対する生物発光ドナー分子の三次元配置を指す。
[32]「双極子配向」との用語は、三次元空間におけるそれらの配向に対する、ドナー分子及び/又はアクセプター分子のいずれかに関連する双極子モーメントの三次元空間における方向を指す。双極子モーメントは、分子全体にわたる電荷の変動の結果である。結果として生じる共鳴エネルギー移動は、励起された生物発光ドナーから近接した蛍光アクセプター分子へ量子エネルギーが非放射的に移動する電磁現象である。
【0017】
[33]「共鳴エネルギー移動」との用語は、エネルギー移動が分子間双極子-双極子カップリングによるものであること、すなわち、このプロセスがフォトンの放出及び再吸収を伴わないことを指す。ドナーは、典型的には、アクセプター分子の吸収スペクトルと重複するより短い波長で発光する。
[34]「タンパク質-タンパク質相互作用」又は「結合」との用語は、解離定数Kdが好ましくは10-5M、より好ましくは10-7M、最も好ましくは10-9M以下である2つのタンパク質の特異的相補的認識及び会合を指す。
【0018】
[35]モジュレーター、アクチベーター又は阻害剤は、細胞内のイオンチャネルの機能的活性を変えることができる任意の薬剤であり、チャネルオープナー(機能的アゴニスト)、チャネルブロッカー(機能的アンタゴニスト)を表し得る。
[36]本明細書中で使用される場合、「融合チャネルユニット」又は「融合チャネル」との用語は、一般的に、2つ以上のアミノ酸配列から構成されるポリペプチド又はタンパク質チャネル又はチャネルサブユニットを指し、ここで、各アミノ酸配列は、タンパク質又はその一部をコードし、該2つ以上のアミノ酸配列は、天然では連結されていることが見出されず、当該2つ以上のアミノ酸配列は、ペプチド結合によって物理的に連結されている。
【0019】
[37]本明細書で使用される場合、「ドメイン」との用語は、全タンパク質より少なくとも2アミノ酸少なく、少なくとも全タンパク質の生物学的活性を保持するタンパク質の領域を指す。ドメインは、長さが10~1000アミノ酸、例えば50~60アミノ酸、100~400アミノ酸又は200~300アミノ酸のサイズの範囲であり得る。ドメインとは、完全タンパク質の機能単位であって、該完全タンパク質の生物学的活性を有する機能単位を指す。例えば、本発明による有用なタンパク質のドメインは、タンパク質の、第2のタンパク質に結合する領域を指し得る。
【0020】
[38]「より感受性」との用語は、生物発光ドナー分子と蛍光アクセプター分子との間の共鳴エネルギー移動比の変化がより大きいことを指す。
[39]「接触させること」との用語は、イオン伝導性チャネルを活性化又は阻害することができ、したがって新世代のBRETプローブを使用してHTS法によってスクリーニングすることができる候補分子、一連の候補分子、及び/又はサンプルの添加を指す。
【0021】
[40]「実質的に精製された」又は「精製された」とは、イオン伝導性チャネル又はチャネルサブユニットが、1つ又は複数の脂質、核酸、他のポリペプチド、又はその天然状態で関係している他の夾雑分子から分離されていることを意味する。実質的に精製されたポリペプチドは、天然に関係している他の成分を少なくとも60%含まないことが好ましく、少なくとも75%含まないことがより好ましく、少なくとも90%含まないことがさらに好ましい。
【0022】
[41]本明細書で使用される場合、「細胞膜」調製物は、細胞脂質膜の調製物を指し、非膜結合細胞構成要素の少なくとも一部(すなわち、少なくとも10%、好ましくはそれ以上)がホモジネートから除去されているという点で、細胞ホモジネートとは異なる。「膜結合(した)」とは、脂質膜に組み込まれているか、又は脂質膜に組み込まれている成分と物理的に結合しているかのいずれかであるポリペプチドを指す。
【0023】
[42]「ポリペプチド」及び「タンパク質」との用語は、一般に区別なく使用され、非アミノ酸基の付加によって修飾されていてもいなくてもよい単一ポリペプチド鎖を指す。このようなポリペプチド鎖は、他のポリペプチド若しくはタンパク質又は他の分子、例えば、補因子と会合し得ることが理解される。「タンパク質」及び「ポリペプチド」との用語は、本明細書中で使用される場合、本明細書中に記載のポリペプチドのバリアント、変異体、生物学的に活性なフラグメント、改変体、アナログ及び/又は誘導体も含む。
【0024】
[43]ポリペプチドの同一性%は、ギャップ挿入ペナルティーが5であり、ギャップ伸長ペナルティーが0.3であるGAP分析(GCGプログラム)によって決定される。クエリー配列は少なくとも25アミノ酸長であり、GAP分析は、少なくとも25アミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。より好ましくは、クエリー配列は少なくとも50アミノ酸長であり、GAP分析は、少なくとも50アミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。より好ましくは、クエリー配列は少なくとも100アミノ酸長であり、GAP分析は、少なくとも100アミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。さらにより好ましくは、クエリー配列は少なくとも250アミノ酸長であり、GAP分析は、少なくとも250アミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。さらにより好ましくは、GAP分析は、2つの配列をそれらの全長にわたって整列させる。
【0025】
[44]本明細書中で使用される場合、「生物学的に活性なフラグメント」は、本明細書中に記載されるようなポリペプチドの一部であり、これは全長ポリペプチドの規定された活性を維持する。例えば、電位依存性イオンサブユニットの生物学的に活性なフラグメントは、標的化合物に結合して、結果としてコンホメーション変化をもたらすことができるはずである。生物学的に活性なフラグメントは、規定された活性を維持する限り、任意のサイズである可能性がある。好ましくは、生物学的に活性なフラグメントは、少なくとも150アミノ酸長、より好ましくは少なくとも250アミノ酸長である。
【0026】
[45]本明細書中で使用される場合、「生物学的に活性なバリアント」は、天然に存在する分子及び/又は規定された分子とは1つ又は複数のアミノ酸だけ異なるが、生物学的に活性なフラグメントについて上記に規定されるような規定された活性を維持する分子である。生物学的に活性なバリアントは、典型的には、天然に存在する分子及び/又は規定された分子に対して、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、そしてさらにより好ましくは少なくとも99%同一である。
【0027】
[46]規定されたポリペプチド又はポリヌクレオチドに関して、上記で提供されたものより高い同一性%の数値が、好ましい実施形態を包含することが理解される。したがって、最小の同一性%の数値に照らして適用可能な場合、ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、関連する指定されたアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、さらにより好ましくは少なくとも99.9%同一であるアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0028】
[47]「単離されたポリヌクレオチド」(DNA、RNA、又はこれらの組合せを含み、一本鎖又は二本鎖であり、センス配向又はアンチセンス配向であるか、あるいは両方の組合せである)は、そのネイティブな状態で会合又は連結しているポリヌクレオチド配列から少なくとも部分的に分離されているポリヌクレオチドを意味する。好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは、それらが天然に会合している他の成分を少なくとも60%含まず、好ましくは少なくとも75%含まず、最も好ましくは少なくとも90%含まない。
[48]本明細書中で使用される場合、「決定すること」、「測定すること」、「評価すること」、及び「アッセイすること」との用語は、区別なく使用され、定量的決定及び定性的決定の両方を含む。
【0029】
[49]本明細書中で使用される場合、「組換えベクター」とは、異種核酸をその発現又は複製のいずれかのための細胞に導入するために使用される孤立遺伝因子を指す。このようなビヒクルの選択及び使用は、十分に当業者の技術の範囲内である。組換え発現ベクターは、調節配列、例えば、当該核酸の発現をもたらすことができるプロモーター領域に作動可能に連結された核酸を発現することができるベクターを含む。したがって、発現ベクターは、組換えDNA構築物又は組換えRNA構築物、例えば、プラスミド、ファージ、組換えウイルス、又は適切な宿主細胞へ導入するとクローン化核酸の発現を生じる他のベクターを指す。適切な発現ベクターは当業者に周知であり、エピソームのままであるもの又は宿主細胞ゲノムに組み込まれるものを含む、真核細胞及び/又は原核細胞において複製可能なものを含む。
【0030】
[50]「イオン伝導性チャネル」との用語は、刺激に応答して開閉して特定の小イオンの流れをゲーティングすることが知られている、全ての細胞の脂質膜中のイオン透過性孔を指すものとする。実際、全ての細胞の脂質二重膜は、イオン及び水の流動に対してほとんど不透過性である障壁を形成する。膜内に存在するのは、イオンチャネル又はイオン伝導性チャネルと呼ばれるタンパク質ファミリーであり、これらはイオンフラックスのための選択的経路を提供する。したがって、そのようなイオン伝導性チャネルは、イオン選択性チャネル、例えば、ナトリウム-、カリウム-、カルシウム-、クロライド-選択性又は非選択性チャネルである。
【0031】
[51]イオン伝導性チャネルを通るイオンフラックスは、細胞の脱分極に寄与し、膜電位をより正にし、細胞質調節シグナル伝達を生成する。例えば、イオンチャネルによって生成される制御されたコンダクタンスは、細胞間シグナル伝達及び神経興奮性に必要である。興奮性細胞の脱分極時に開くイオンチャネル群は、電位開口型/電位依存型として分類され、神経、筋肉及び心臓組織における電気的活動を担う。例えば、ニューロンにおいて、電位開口型ナトリウムイオン(Na+)チャネルを通って流れるイオン電流は、急速なスパイク様活動電位を担う。活動電位の間、大部分のNa+チャネルは非常に短い時間だけ開口する。これらの短時間の開口は、一過性のNa+電流をもたらす。しかしながら、電位開口型Na+チャネルのサブセットは、急速に閉鎖せず、比較的長い間開口したままである。したがって、これらのチャネルは、持続性Na+電流を生成する。一過性のNa+電流と持続性のNa+電流との間のバランスは、神経系全体にわたる正常な生理学的機能及び電気的シグナル伝達を維持するために重要である。
【0032】
[52]過去50年にわたって、ますます多くの疾患が、イオン伝導性チャネルの調節不全に起因することが示されている。このクラスの疾患は、チャネル病と呼ばれている。ニューロンが不適切にシグナルを発すると正常な機能が破壊されるので、異常な持続性ナトリウム電流は、多くのチャネル病の発症又は進行に寄与する可能性がある。例えば、異常な持続性ナトリウム電流は、例えば、神経障害、神経変性疾患、運動障害、心不整脈、てんかん性痙攣、神経細胞死、行動障害及び認知症等を含む有害な現象を誘導すると考えられている。例えば、てんかんに包含される神経障害の場合、種々の型の遺伝性てんかんにおけるような遺伝的欠損のために本質的に不安定であるニューロンから、又は代謝異常、例えば、低血糖又はアルコールによって不安定にされたニューロンから生じる短い電気的「ストーム」が存在する可能性がある。他の場合において、当該かかる異常放出は、頭部損傷又は脳腫瘍によって引き起こされるてんかんを有する患者におけるように、脳の局所領域に由来する可能性がある。虚血性傷害、例えば、脳虚血及び心筋虚血の場合、持続性のナトリウムチャネル発現又は活性が増加しているニューロンから生じる電気的活性が長引く可能性がある。そのような異常な電気的活性は、ニューロン死を引き起こすか、又はそれに寄与する可能性があり、それは個体の衰弱性損傷又は死につながる可能性がある。異常な電気的活性はまた、神経変性障害、例えば、これに限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症に寄与する可能性がある。したがって、異常な持続性ナトリウム電流は、ナトリウムに対する正常な細胞膜貫通勾配を崩壊させ、ナトリウム-カルシウム交換体の逆作動をもたらし、軸索を損傷する細胞内カルシウム流入をもたらすことによって、病的状態の発症又は進行に寄与する可能性がある。したがって、正常な電位開口型(一過性)ナトリウム電流の任意の低減と比較して、持続性電流を媒介することができるナトリウムチャネルの発現又は活性の選択的低減は、持続性ナトリウム電流の増加に伴うチャネル病を処置するのに有用である可能性がある。
【0033】
[53]したがって、チャネル病を処置するのに有用な持続性イオンチャネルモジュレーター、阻害剤又はアクチベーターのいずれかを同定するために使用することができる新たなスクリーニング方法が必要とされている。本発明は、イオンチャネルモジュレーター、アクチベーター又は阻害剤を同定するためのハイスループットスクリーニングを提供することによって、この必要性を満たす。
【0034】
[54]タンパク質-タンパク質相互作用を評価するための1つの技術は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく。FRETは、エネルギーの非放射移動、すなわちフォトンの放出なしに起こり、エネルギーのドナーとエネルギーのアクセプターとの間の双極子-双極子相互作用をもたらすエネルギーの移動に基づく近接アッセイである。FRETにおいて、1つの励起状態のフルオロフォアドナーは、そのエネルギーを基底状態の蛍光アクセプター分子に移動させ、これが活性化される。活性化に続いて、アクセプターは、独自の波長でフォトンを放出することによって、基底状態に戻る。エネルギー移動効率は、ドナーとアクセプターとの間の距離、スペクトル重複の程度、及びアクセプター双極子とドナー双極子との相対的配向に依存する。
【0035】
[55]TN-XLと名付けられたFRETベースのカルシウムバイオセンサーを用いたニューロン電位開口型Nタイプ(Cav2.2)カルシウムに関する実験が過去に行われてきた(Tayら, (Nature Communications, Vol, 3; 778, 2012)参照)。著者らは、トロポニンベースのTN-XL(光学的な、遺伝子によりコードされたカルシウムイオンインジケーター)が、CaV2.2 Ca2+チャネルの主要サブユニットのカルボキシ末端にTN-XLを融合させる特定のアプローチを使用してこの環境に標的化された場合に、Ca2+に応答し得るか否かを調査した。これらの実験は、イオン伝導性チャネルの活性を測定するための信頼できる有用な手段を提供することができなかった。実際、TN-XL応答性を計測するために、TIRFイメージングを使用して、単一細胞CFP及びFRET蛍光シグナルを測定しなければならなかった。ここで、これらのシグナルの比は、Ca2+の慣習的なセンサー読み出し情報を提供する。さらに、表層膜におけるTN-XLシグナル対ノイズ比を改善するために、TIRF顕微鏡観察を利用して、表面付近のCaV2.2/TN-XLチャネルのみを選択的に照射し、これにより、不完全に標的化された細胞内チャネルからのバックグラウンドシグナルを減衰させなければならなかった。さらに、細胞内Ca2+の上昇を容易にするために、上昇した10mM細胞外Ca2+と共に内部Ca2+緩衝化(1mM EGTA)のような追加の工程を採用した。研究のさらなる制限は、TIRF体積中の表層膜への活性CaV2.2/TN-XLチャネルの不完全な標的化に関するものであり、静的なバックグラウンド蛍光の近似補正を必要とした。このような補正における潜在的な誤差は、カルシウムスパイクの決定を粗い近似推定値とし、したがって、このような技術はHTSには全く適していない。
【0036】
[56]よって、この研究は、融合構築物単独に基づく直接的且つ単純な方法の代わりに、TIRF/パッチクランプ電気生理学及びCaV2.2/TN-XL融合の複雑な統合を必要とする、FRETベースのカルシウムバイオセンサーを使用する場合に遭遇する複雑さ及び困難さを明らかにした。
【0037】
[57]FRET技術の代替は、BRET技術である。BRET法は、ドナーが生物発光分子であるFRETの方法と類似している。したがって、外部からの励起源が不要で、それによって、細胞/組織の光退色及び自己蛍光の不都合が回避される。典型的には、使用する生物発光ドナーはルシフェラーゼであってもよく、アクセプターはFRETのものと類似の任意の好適なフルオロフォアであってもよい。ルシフェラーゼの使用は、基質の添加が生物発光放出を開始し、したがって生物発光ドナーと蛍光アクセプターとの間の共鳴エネルギー移動をもたらすので、照明の必要性を回避する。FRET及びBRETの両方の移動効率はまた、ドナーとアクセプターとの間のスペクトル重複又は部分的スペクトル重複の程度、ドナーの発光双極子とアクセプターの吸収双極子との間の相対的配向、及びドナーとアクセプターとの間の距離に依存し、さらに、新規な融合構築物においてドナーとアクセプターとの間に戦略的に配置されたイオンセンサーの効力に依存する。したがって、当業者には、類似のBRETベースのイオンバイオセンサーが類似の結果をもたらし、したがって、創薬又はHTS法に利用することができないことが予想されている。
【0038】
[58]FRETを用いた以前の教示及び実験とは対照的に、本出願人は、驚くべきことに、イオンフラックス、したがってイオン伝導性チャネルの実際の活性化又は阻害を正確且つ信頼できる様式で評価するために、BRETベースのイオンセンサーを構築し、使用することが可能であることを初めて示した。本出願人は、新たなBRETプローブが、優れた効率でイオン伝導性チャネルを標的とするスクリーニングシステムに、特に、さらなる分析、例えば、パッチクランプ実験等を必要としないHTS法に使用できることを示した。
【0039】
[59]したがって、本発明は、プローブに結合したイオン伝導性チャネルサブユニットを含む新規なイオン伝導性チャネルタンパク質サブユニット融合物に関し、このプローブは、少なくとも1つの生物発光ドナー分子及び少なくとも1つの蛍光アクセプター分子にその間で結合又は「挟まれた」イオンセンサーを含む。当該プローブは、チャネルサブユニットに、必要に応じてリンカーを介して、そのC末端で、そのN末端で、又は細胞内若しくは細胞外ループ内に、生物発光ドナー分子又は蛍光アクセプター分子のいずれかに結合していてもよい。イオンセンサーは、チャネルサブユニットによって輸送されるイオンの存在下でコンホメーション変化を受けるように構成されている。生物発光ドナー分子及び蛍光アクセプター分子は、生物発光ドナー分子の発光スペクトルがアクセプター分子の吸収スペクトルと重複するように選択され、非放射性双極子-双極子カップリングを介した生物発光エネルギードナーと蛍光アクセプターとの間の非放射エネルギー移動を可能にする。したがって、新規なチャネルタンパク質融合サブユニットは、イオン伝導性チャネルを通るイオンの実際の通過を測定することによって、前記チャネルの活性化、阻害又は調節を検出するための新規なBRETプローブとして使用してもよい。
【0040】
[60]本発明はまた、上記のような融合サブユニットの組立てから得られる新規なイオン伝導性チャネル融合物に関する。したがって、このような新規なイオン伝導性チャネルタンパク質融合物は、少なくとも1つの生物発光ドナー分子と少なくとも1つの蛍光アクセプター分子との間に挟まれたイオンセンサーをそれ自体が含むプローブに、サブユニットのC末端に、N末端に、又は細胞内若しくは細胞外ループ内のいずれかに結合した1つ又は複数のサブユニットを含み得る。イオンセンサーは、チャネル融合物によって輸送されるイオンの存在下でコンホメーション変化を受けるように構成されている。好ましくは、イオン伝導性チャネルタンパク質融合物の全てのサブユニットは、チャネルサブユニット融合物であり得る。上記のように、生物発光ドナー分子及び蛍光アクセプター分子は、生物発光ドナー分子の発光スペクトルがアクセプター分子の吸収スペクトルと重複するように選択され、非放射性双極子-双極子カップリングを介した生物発光エネルギードナーと蛍光アクセプターとの間の非放射エネルギー移動を可能にする。したがって、新規なチャネルタンパク質融合物は、イオン伝導性チャネルを通るイオンの実際の通過を測定することによって、前記チャネルの活性化、阻害又は調節を検出するための新規なBRETプローブとして使用してもよい。
【0041】
[61]本発明はまた、プローブに結合したイオン伝導性チャネルのサブユニットを含むチャネル融合サブユニットをコードするヌクレオチド配列に関し、このプローブ自体は、少なくとも生物発光ドナー分子及び少なくとも蛍光アクセプター分子にその間で結合したイオンセンサーを含む。上記のように、イオンセンサーは、チャネルサブユニットによって輸送されるイオンの存在下でコンホメーション変化を受けるように構成され、当該プローブは、生物発光ドナー分子又はタンパク質蛍光アクセプター分子のいずれかを介して、前記チャネルサブユニットのN末端若しくはC末端に、又は細胞内若しくは細胞外ループ内に結合している。本発明によるヌクレオチド配列又は構築物は、必要に応じて、イオン伝導性チャネルサブユニットをコードするヌクレオチド配列とプローブをコードするヌクレオチド配列との間にリンカー配列をさらに含んでもよい。
【0042】
[62]ほとんどのイオンチャネルがそのような共通の三次元構造を有するので、全ての既知のイオン伝導性チャネルは本発明の範囲内である。典型的には、これらのイオン伝導性チャネルは、少なくとも3つの機能ドメインを有する:イオン伝導性孔に対応する第1のドメイン、すなわち、通過するイオンと通過しないイオンとを区別する選択性フィルタ;ゲートに対応する第2のドメイン、すなわち、伝導性孔を開閉することができるチャネルの一部;及び電位変化又は化学信号に応答する刺激の検出器に対応する第3のドメイン。したがって、刺激の検出器は、典型的にはチャネルゲートにカップリングして、それらが孔を開閉する確率を制御する。
【0043】
[63]チャネルは、それぞれが原形質膜を少なくとも2回通過するサブユニットによって形成される。種々のサブユニットが集合して、チャネルを形成する。チャネルが、同じサブユニットのホモマーアセンブリによって形成されるか、又はアルファサブユニットと他のサブユニットたるヘテロマーサブユニット若しくはホモマーサブユニットとのヘテロマーの組合せによって形成されるかは、チャネルタイプに依存する。組み立てられたチャネルの中心には、イオン、例えば、Na+、K+、Ca2+、及び/又はCl-が膜を横切って流れることを可能にする狭い開口である孔がある。孔は、選択されたイオンに対する透過性を担っている。
【0044】
[64]したがって、イオン伝導性チャネルは、原形質膜において組織化されるいくつかのサブユニットから構成されて、カチオン又はアニオンが移動することができる孔を作り出す。イオン伝導性チャネルは、ゲーティング、すなわちチャネルを開閉するものによって分類してもよく、特に電位依存性イオンチャネル又はリガンド依存性イオンチャネルを含んでもよい。電位開口型イオンチャネルは、原形質膜を横切る電位勾配に依存して活性化/不活化するが、リガンド開口型イオンチャネルは、チャネルへのリガンドの結合に依存して活性化/不活化する。
【0045】
[65]電位依存性イオンチャネルは、膜を横切る電圧によって制御される高速でイオンを伝導する膜タンパク質である。したがって、これらのチャネルタンパク質は、特定のイオン、例えば、カルシウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、又はクロライドイオンに対して選択的である。最も研究され、よく知られているのは、電位開口型Na+、K+、及びCa2+チャネルである。それらは、一般に、中心孔を、類似の電荷選択性を有するチャネルのための高度に保存された孔ライニング残基と共に有する、4つの相同又は非相同サブユニットによって形成されるいくつかの共通の四量体構造配置;荷電膜電圧センサーを使用する共通のゲーティング戦略;並びにチャネルタンパク質輸送及び機能を調節する補助サブユニットを共有する。例えば、4つの非相同サブユニットから構成されるチャネルは、K+チャネルを含むか、又は4つの相同ドメインから構成されるチャネルは、Na+及びCa2+チャネルを含む。サブユニット又はドメインの各々は、6つの膜貫通セグメント及び孔ループを有する。第5及び第6の膜貫通セグメント(S5及びS6)及び孔ループは、イオン伝導を担っている。これらの中で顕著なものは、電気的興奮性細胞の活動電位及び急速なカルシウムシグナル伝達の基礎となる電位開口型Na+、K+、及びCa2+チャネルである。Na+チャネルの速い電位依存性開口は、刺激を脱分極することによって急激な閾値で開始される0/1(all-or-nothing)の興奮、及び活動電位が軸索又は筋線維に沿って伝播するときの興奮の再生的拡散を説明する。
【0046】
[66]いくつかは、わずかな正電荷を有する電圧センサードメインを保持するが、せいぜい弱い電位依存性しかないものもある。これらの中には、環状ヌクレオチド感受性(CNG)チャネル及びTRPファミリーの非選択性カチオンチャネルが含まれる。CNGチャンネルは脊椎動物の光伝達及び嗅覚に役立つ。TRPファミリーは、無脊椎動物の光伝達において、並びに暑さ、寒さ、唐辛子、マスタード、ショウガ、及びおそらく接触、圧力、及び運動を検出する感覚受容器において役立つ多様な形態を含む。別のファミリーのイオンチャネルである内向き整流性K+チャネルは、電位センサードメインを有さないが、電位開口型K+チャネルと同じ配列同一性及びイオン選択性有する孔形成ドメインを有する。
[67]電位依存性イオンチャネルは、創薬の標的として実績があり、多くのイオンチャネルモジュレーターが、現在、疼痛、てんかん、高血圧及び他の疾患状態の処置のために臨床使用されている。それらは、体液分泌、電解質バランス、並びに生体エネルギー及び膜興奮性を含む必須の生理学的機能のための分子基盤を含む。
【0047】
[68]電位依存性イオンチャネルは、ゲーティング状態と呼ばれるいくつかの異なるコンホメーション状態で存在することが知られている。電位開口型イオンチャネルは、3つのゲート状態、閉口(イオン透過なし)、開口(イオンフラックスが起こる)及び不活化(イオン透過なし;チャネルは脱分極によって開口し得ない)のうちの1つで存在するとみなすことができるが、いくつかのチャネルは不活化状態を示さないことに注意すべきである。ゲーティング状態間の遷移は電位依存性であり、任意の所与の時間において、これらのゲーティング状態間に平衡が存在し、各状態で存在するチャネルの割合は細胞膜電位に依存する。多くの電位依存性イオンチャネルモジュレーターは、特定のゲーティング状態に優先的に結合することが示されている。例えば、電位開口型ナトリウムチャネル遮断薬ラモトリギンは、開口状態及び不活化状態の脳ナトリウムチャネルタンパク質に結合すると考えられている。特定のゲーティング状態への優先的な結合は、イオンチャネルモジュレーターに対するチャネル親和性の増加によって、又は単にチャネル上のその結合部位への薬物のアクセス改善によって生じ得る。
【0048】
[69]本発明の範囲内にある電位開口型イオンチャネルの完全な説明を以下の表にする。
【0049】
【表1-1】

【表1-2】
【0050】
【表2-1】

【表2-2】
【0051】
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8-1】

【表8-2】

【表8-3】

【表8-4】

【表8-5】
【0057】
【表9-1】

【表9-2】
【0058】
【表10-1】

【表10-2】
【0059】
【表11】
【0060】
[70]一般にリガンド開口型イオンチャネル(LIC、LGIC)又はイオンチャネル型受容体とも呼ばれるリガンド依存性イオンチャネルは、選択されたイオン、例えば、Na+、K+、Ca2+及び/又はCl-の流れが化学的メッセンジャー、すなわちリガンドの結合に応答して膜を通過することを可能にする孔を含有する膜内在性タンパク質群である。
【0061】
[71]したがって、これらのチャネルは、細胞外であり、リガンド結合ドメインを含む第4のドメインを含む。このようなリガンドは、例えば、神経伝達物質であり得る。シナプス前ニューロンが興奮すると、小胞からシナプス間隙に神経伝達物質が放出される。次いで、神経伝達物質は、シナプス後ニューロン上に位置するレセプターに結合し、イオンチャネルのコンホメーション変化を引き起こし、そして活性化又は抑制の際に、細胞膜を横切るイオンの流れを導く。これは、ひいては、興奮性レセプター応答についての脱分極、又は抑制性応答についての過分極のいずれかを生じる。シナプス後に位置するこれらのチャネルの機能は、シナプス前に放出された神経伝達物質の化学シグナルをシナプス後電気シグナルに直接且つ非常に速く変換することである。
【0062】
[72]これらのリガンド開口型イオンチャネルは、それらが伝導するイオンのタイプ、例えば、アニオン性又はカチオン性に関して細分され、そしてさらに内因性リガンドによって規定されるファミリーに細分される。それらは、アセチルコリン受容体、5-HT3受容体、イオンチャネル型グルタミン酸受容体及びP2X受容体を含むカチオン選択的受容体と、GABAA受容体、グリシン受容体及び亜鉛活性化チャネルを含むアニオン選択的受容体とを含む。立体配置に関して、ニコチン性アセチルコリン受容体、5-HT3受容体、GABAA(γ-アミノ酪酸A)受容体、グリシン受容体、及びさらなる亜鉛活性化チャネルは、五量体構造であり、それらの構成サブユニットのN末端細胞外ドメイン中の2つのシステイン残基間のジスルフィド結合によって形成される残基の規定ループの存在のために、Cysループ受容体と呼ばれることが多い。イオンチャネル型グルタミン酸受容体及びP2X受容体は、それぞれ四量体構造及び三量体構造である。細胞外N末端リガンド結合ドメイン中の結合部位は、アセチルコリン(AcCh)、セロトニン、グリシン、グルタミン酸及びγ-アミノ酪酸(GABA)等を含む特定の内因性リガンドに対する受容体特異性をそれらに与える。
【0063】
[73]5-HT3受容体又は5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体は、内因性カチオン選択性を形成する4つのTMサブユニットの五量体として存在する。5-HT3A(https://www.uniprot.org/uniprot/P46098)、5-HT3B(https://www.uniprot.org/uniprot/P46098)、5-HT3C(https://www.uniprot.org/uniprot/Q8WXA8)、5-HT3D(https://www.uniprot.org/uniprot/Q70Z44)、5-HT3E(https://www.uniprot.org/uniprot/A5X5Y0)を含む5つのヒト5-HT3受容体サブユニットがクローン化されており、5-HT3Aのホモオリゴマーアセンブリ並びに5-HT3A及び5-HT3Bサブユニットのヘテロオリゴマーアセンブリが完全に特徴付けられている(5-HT3A及び5-HT3AB受容体)。5-HT3Cサブユニット並びに5-HT3D及び5-HT3Eサブユニットは、5-HT3Bサブユニットと同様に、機能的ホモマーを形成しないが、5-HT3Aサブユニットと組み合わさって、薬理学的プロファイルではなくその機能的発現に影響を及ぼす。セロトニン受容体は、興奮性及び抑制性神経伝達の両方を媒介する中枢及び末梢神経系に見出されるGタンパク質共役型受容体及びリガンド開口型イオンチャネル群である。それらは、それらの天然リガンドとして作用する神経伝達物質セロトニンによって活性化され、グルタミン酸、GABA、ドーパミン、エピネフリン/ノルエピネフリン、及びアセチルコリンを含む多くの神経伝達物質、並びに多くのホルモン、例えば、オキシトシン、プロラクチン、バソプレシン、コルチゾール、コルチコトロピン、及びサブスタンスPの放出をモジュレートする。これらの受容体は、種々の生物学的及び神経学的プロセス、例えば、攻撃性、不安、食欲、認知、学習、記憶、気分、悪心、及び睡眠に影響を及ぼす。
【0064】
[74]亜鉛活性化イオンチャネル(ZAC)は、ZAC1、L2m LICZ、LICZ1(https://www.uniprot.org/uniprot/Q401N2)としても知られている。ZACは、cysループファミリーのカチオン透過性リガンド開口型イオンチャネルを形成する。このチャンネルは、Na+、K+及びCs+に対してイクイパーミアブル(equipermeable)であるが、Ca2+及びMg2+に対して不透過性である内因性カチオン選択性チャンネルを形成する4つの膜貫通サブユニットのホモ五量体として存在する可能性が最も高い。ZACは、前立腺、甲状腺、気管、肺、脳(成人及び胎児)、脊髄、骨格筋、心臓、胎盤、膵臓、肝臓、腎臓及び胃で発現している。ZACの内因性リガンドはZn2+であると考えられるが、ZACは自発的に活性化することも見出されている。
【0065】
[75]GABAA(ガンマアミノ酪酸A)受容体又はチャネルは、イオンチャネル型受容体である。それらは、6つのアルファサブユニット:α1~α6サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/P14867、P47869、P34903、P48169、P31644、Q16445)と、3つのベータサブユニット:β1~β3サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/P14867、P47870、P28472)と、3つのガンマサブユニット:γ1~γ3サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/Q8N1C3、P18507、Q99928)と、1つのデルタ(δ)サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/O14764)と、1つのイプシロン(ε)サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/P78334)と、1つのパイ(π)サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/O00591)と、1つのシータ(θ)サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/Q9UN88)と、3つのローサブユニット:ρ1~ρ3)受容体サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/P24046、P28476、A8MPY1)とを含む4つの膜貫通サブユニットの五量体として存在する。多くのGABAA受容体サブタイプは、化学量論2α.2β.1γを有するα-、β-及びγ-サブユニットを含有する。しかしながら、CNSにおいて、α1β2γ2ヘテロオリゴマーは、CNSにおけるGABAAレセプターの最大の集団を構成し、α2β3γ2及びα3β3γ2アイソフォームがこれに続く。現在、11種の天然型GABAA受容体、すなわち、α1β2γ2、α1βγ2、α3βγ2、α4βγ2、α4β2δ、α4β3δ、α5βγ2、α6βγ2、α6β2δ、α6β3δ及びρが、最終的に同定されたものとして分類されている。内因性リガンドはγ-アミノ酪酸(GABA)であり、これは中枢神経系における主な抑制性神経伝達物質である。活性化されると、GABAA受容体は、その孔を通してクロライド(Cl-)を選択的に伝導する。ムシモール、ガボキサドール、ビククリン、ベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン、アルプラゾラム、ジアゼパム、及びピクロトキシンを含むいくつかの抑制薬が同定されている。
【0066】
[76]グリシン受容体は、GlyR又はGLRiとも呼ばれ、アミノ酸神経伝達物質であるグリシンの受容体である。GlyRは、クロライド電流によってその効果を生じるイオンチャネル型受容体である。受容体は、αサブユニットのホモ五量体、又は2α及び3βサブユニットの複合体のいずれかとして発現している。グリシン受容体サブユニットα1~α3及びβのアミノ酸配列は、https://www.uniprot.org/uniprot/P23415、P23416、O75311、及びP48167にそれぞれ提供されている。それは、中枢神経系において最も広く分布している抑制性受容体の1つであり、様々な生理学的プロセスにおいて、特に脊髄及び脳幹における抑制性神経伝達の媒介において重要な役割を有する。当該受容体は、グリシン、β-アラニン及びタウリンを含む一連の単純なアミノ酸によって活性化することができ、そして高親和性競合的アンタゴニストストリキニーネによって選択的に遮断することができる。カフェインは、GlyRの競合的アンタゴニストである。
【0067】
[77]イオンチャネル型グルタミン酸受容体は、神経伝達物質であるグルタミン酸に結合する。それらは、サブユニットアセンブリに関与する細胞外アミノ末端ドメイン(ATD)、グルタミン酸に結合する細胞外リガンド結合ドメイン(LBD)、及びイオンチャネルを形成する膜貫通ドメイン(TMD)からなる各サブユニットを有する四量体を形成する。四量体の各サブユニットは、クラムシェル様形状を形成する2つのLBDセクションによって形成された、グルタミン酸に対する結合部位を有する。四量体中のこれらの部位のうちの2つのみが、イオンチャネルを開くために占有されている必要がある。イオンチャネル型グルタミン酸受容体は、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)、AMPA(α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソオキサゾールプロピオン酸)及びカイニン酸受容体クラスのメンバーを含む。
【0068】
[78]NMDA受容体は、GluN1(https://www.uniprot.org/uniprot/Q05586)、GluN2A(https://www.uniprot.org/uniprot/Q12879)、GluN2B(https://www.uniprot.org/uniprot/Q13224)、GluN2C、GluN2D(https://www.uniprot.org/uniprot/Q12879)、GluN3A(https://www.uniprot.org/uniprot/Q8TCU5)及びGluN3B(https://www.uniprot.org/uniprot/O60391)サブユニットを含むヘテロマーとして集合する。AMPA受容体はGluA1、GluA2、GluA3、及びGluA4サブユニットを含むホモマー、又はヘテロマーとして集合する。カイニン酸受容体はGluK1サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/P39086)、GluK2サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/ Q13002)又はGluK3サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/Q13003)のホモマーとして発現する可能性がある。GluK1-3サブユニットはまた、ヘテロ四量体、例えばGluK1/K2に集合することができる。
【0069】
[79]P2X受容体は、細胞外ヌクレオチドATPの結合に応答して開口するATP開口型チャネルである。それらは、細胞内側に位置するC末端及びN末端を有する2つの膜貫通ドメインを有する三量体を形成し、Na+、K+及びCa2+をゲーティングする。天然のP2X受容体は、P2X1~7サブユニット(https://www.uniprot.org/uniprot/P51575、Q9UBL9、P56373、Q99571、Q93086、O15547、Q99572)を含むホモ三量体又はヘテロ三量体のいずれかとして存在し得る。
【0070】
[80]ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は、タンパク質サブユニットの五量体(典型的には、ααβγδ)からなるCysループファミリーのメンバーである。サブユニットは、ACHRA(https://www.uniprot.org/uniprot/P02708)と呼ばれるクラスアルファ(α1~α10)、ACHRB(https://www.uniprot.org/uniprot/P11230)と呼ばれるクラスベータ(β1~β4)、クラスガンマ(γ)又はACHRG(https://www.uniprot.org/uniprot/P07510)、クラスデルタ(δ)又はACHRD(https://www.uniprot.org/uniprot/Q07001)、クラスイプシロン(ε)又はACHRE(https://www.uniprot.org/uniprot/Q04844)であり得る。アセチルコリンの結合部位は、各アルファサブユニットの界面上にある。アセチルコリンが結合すると、受容体の立体配置が変化し、約3オングストロームに狭まっていた孔が約8オングストロームに広がり、イオンが通過できるようになる。この孔は、Na+イオンが電気化学勾配に従って細胞内に流れ込むことを可能にする。十分な数のチャネルが一度に開くと、Na+イオンによって運ばれる正電荷の内向き流がシナプス後膜を十分に脱分極させて活動電位を発生させる。nAChRは、神経伝達物質アセチルコリン及び薬物、例えば、アゴニストニコチンに応答する。それらは、中枢神経系及び末梢神経系、筋肉、並びに多くの生物の多くの他の組織において見出される。神経筋接合部において、それらは、筋収縮を制御する運動神経-筋肉伝達のための筋肉における主要な受容体である。末梢神経系では、それらは、交感神経系及び副交感神経系内のシナプス前細胞からシナプス後細胞に出力シグナルを伝達し、それらは、骨格筋上に見出される受容体であり、放出されるアセチルコリンを受容して筋収縮のためのシグナルを伝達するものである。
【0071】
[81]したがって、本発明によれば、イオン伝導性チャネル融合サブユニットは、少なくとも1つの生物発光ドナー分子と少なくとも1つの蛍光アクセプター分子との間に挟まれたイオンセンサーを含むプローブにC末端又はN末端で結合又はカップリングした、上記のようなリガンド依存性イオンチャネル又は電位依存性イオンチャネルのいずれかのイオン伝導性チャネルのサブユニットである。あるいは、生物発光ドナー及び蛍光アクセプター分子によって挟まれたイオンセンサーはまた、イオン伝導性チャネルサブユニットの細胞内ループ内又は細胞外ループ内に挿入されていてもよい。前記イオン伝導性チャネルのサブユニットが細胞で発現する場合、それらは、したがって、再集合して本発明によるHTS法のために使用され得る活性なイオン伝導性チャネル融合タンパク質を形成し得る。このようなチャネル融合タンパク質は、同じタイプのサブユニットによって形成され得、ホモポリマーチャネル(ホモ二量体、ホモ四量体等)であるか、又は異なるタイプのサブユニットによって形成され得、ヘテロポリマーチャネル(ヘテロ二量体、ヘテロ四量体等)である。
【0072】
[82]生物発光ドナー分子及び蛍光アクセプター分子は、生物発光ドナー分子の発光スペクトルがアクセプター分子の吸収スペクトルと重複するように選択され、そのため、生物発光ドナー分子によって送達される光エネルギーは、アクセプター分子を励起することができる波長であり、したがって、非放射性双極子-双極子カップリングを介した生物発光エネルギードナーと蛍光アクセプターとの間の非放射エネルギー移動を可能にする。
【0073】
[83]生物発光ドナーとは、好適な基質に作用して化学エネルギーを光エネルギーに変換することができる任意の部分を指す。例えば、それは、基質を活性化された生成物に変換する酵素を指してもよい。ここで、活性化生成物は、その後、緩和に際してエネルギーを放出する。(基質に対する生物発光タンパク質の活性により生成された)活性化生成物は、生物発光タンパク質が生じる発光の供給源であり、この発光がアクセプター分子に移動する。
【0074】
[84]いくつかの生物発光ドナー分子が、本発明において使用され得る。発光システムは知られており、細菌、原生動物、腔腸動物、軟体動物、魚、ヤスデ、ハエ、真菌、蠕虫、甲殻類、及び甲虫、特にピロフォルス(Pyrophorus)属のコメツキムシ、並びにフォチナス(Photinus)属、フォトゥリス(Photuris)属、及びルシオラ(Luciola)属のホタルを含む多くの発光生物から単離されている。生物発光を示す更なる生物は、国際公開WO00/024878及びWO99/049019に列挙されている。
【0075】
[85]1つの十分に特徴付けられた例は、ルシフェラーゼとして公知のクラスのタンパク質である。ルシフェラーゼタンパク質は、特定の生化学物質であるルシフェリン(天然に存在する基質)が、ルシフェラーゼ活性を有する酵素によって酸化されるエネルギー生成化学反応を触媒する。細菌、藻類、真菌、昆虫、魚及び他の海洋形態の種を含む原核生物及び真核生物の両方は、この様式で光エネルギーを放出することができ、それぞれが特異的なルシフェラーゼ活性及びルシフェリンを有し、これらは他の生物のものとは化学的に異なっている。ルシフェリン/ルシフェラーゼ系は、形態、化学及び機能において非常に多様である。例えば、いくつかの細菌及びキノコによって示されるように、連続的な化学発光を容易にするルシフェラーゼ活性、及び渦鞭毛藻類の場合のように、散発的な発光又は刺激誘導性の発光を容易にするように適合されたルシフェラーゼ活性が存在する。化学エネルギーの光エネルギーへの変換を伴う現象として、生物発光は生きている生物に限定されず、生物の存在も必要としない。それは単に、ある段階で生物学的触媒に由来したルシフェラーゼ活性を必要とする化学発光反応の一種である。したがって、必須の活性及び化学物質の保存又は構築が、生物発光現象を生じさせる手段を得るのに十分である。
【0076】
[86]このような生物発光ドナー分子は、例えば、当該分野で周知のルシフェラーゼであり得る。ルシフェラーゼは、発光反応、例えば生物発光反応を触媒する酵素又はオキシゲナーゼである。
[87]全ての公知の種類のルシフェラーゼ(天然に存在するルシフェラーゼ又は変異したルシフェラーゼのいずれか)は、本発明の範囲内に包含される。
【0077】
[88]ルシフェラーゼ活性を有する生物発光タンパク質の例は、米国特許第5,229,285号、同第5,219,737号、同第5,843,746号、同第5,196,524号、及び同第5,670,356号に見出すことができる。最も広く使用されているルシフェラーゼの2つは以下の通りである:(i)セレンテラジンを基質として使用し、480nmで発光する35kDaタンパク質であるウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ(R. reniformis由来);及び(ii)ルシフェリンを基質として使用し、560nmで発光する61kDaタンパク質であるホタル(Firefly)ルシフェラーゼ(Photinus pyralis由来)。
【0078】
[89]生物発光ドナー分子は、ウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、腔腸動物(Coelenterate)ルシフェラーゼ、北米グローワーム(North American glow worm)ルシフェラーゼ、コメツキムシ(click beetle)ルシフェラーゼ、レイルロールワーム(railroad worm)ルシフェラーゼ、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ、エクオリン(Aequorin)、ヒカリキノコバエ(Arachnocampa)ルシフェラーゼ、カイアシ類(copepods)例えば、Gaussia princeps、Pleuromamma abdominalis、Metridia pacifica、Metridia curticauda、Metridia asymmetrica、Metridia okhotensis、Metridia longa、Lucicutia ovaliformis、Heterorhabdus tanneri、Pleuromamma scutullataに由来するルシフェラーゼ、又はそれらの生物学的に活性なバリアント若しくはフラグメントから選択されるルシフェラーゼであってもよい。
[90]本発明に従って使用するためのルシフェラーゼの分子量範囲の好ましい選択は、15~70kDa、又は15~60kDa、又は15~50kDa、又は15~40kDa、又は15~30kDaの範囲であり得る。
【0079】
[91]好ましいルシフェラーゼの中では、GLuc、NanoLuc (NLuc)、MLuc7、HtLuc、LoLuc、PaLuc1、PaLuc2、MpLuc1、McLuc1、MaLuc1、MoLuc1、MoLuc2、MLuc39、PsLucl、LocLuc1-3、HtLuc2 Renilla、TurboLuc16 (Tluc)又はそのホモログ若しくはオルソログ又はそれらの変異体又は機能的誘導体を挙げることができる。種々の実施形態において、ルシフェラーゼの変異体又は機能的誘導体は、当該変異体又は機能的誘導体が由来する生物発光活性の少なくとも100%、90%、80%、70%、60%又は50%を保持している。Takenakaら(Mol Biol Evol 29(6): 1669-1681, 2012)に記載されているように、カイアシ類ルシフェラーゼは2つのドメインを含み、各ドメインは種々のルシフェラーゼにわたって保存配列を含む。いくつかの実施形態では、Takenakaらによって記載されたドメイン1及び2の各々においてコンセンサス配列C-x(3)-C-L-x(2)-L-x(4)-C-x(8)-P-x-R-C(配列番号2437)を含む任意のルシフェラーゼは、本明細書中に記載の方法において使用してもよい。
【0080】
[92]最も好ましいルシフェラーゼとしては、S. Inouyeら(FEBS Letters, 481 (2000) 19-25)に記載されているように、深海エビ トゲオキヒオドシエビ(Oplophorus gracilirostris)から抽出されたルシフェラーゼの19kDaサブユニットに由来するタンパク質であり、第2のサブユニットが35kDaタンパク質であるナノルシフェラーゼを挙げることができる。このナノルシフェラーゼは、Promega社によってNanoLuc(登録商標)の商品名で販売されており、Hall M.ら(ACS Chem. Biol. 2012, 7, 1848-1857)及び国際公開WO2012/061530に記載されているように、新規な基質(フリマジン又はビスデオキシセレンテラジン並びに6h-f-セレンテラジン)を利用して、高強度のグロータイプ発光を生じる。
【0081】
[93]代替的な非ルシフェラーゼ生物発光分子は、好適な基質に作用して発光シグナルを生成することができる任意の酵素であり得る。このような酵素の具体例としては、β-ガラクトシダーゼ、ラクタマーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-グルクロニダーゼ、又はβ-グルコシダーゼが挙げられる。これらの酵素のための合成発光基質は、当該分野で周知であり、会社、例えば、Tropix Inc. (Bedford, MA, USA)から市販されている。
【0082】
[94]例として、いくつかの生物発光ドナー分子を以下の表12に列挙した。
【表12】
【0083】
[95]生物発光ドナー分子の基質の選択は、生物発光タンパク質によって生成される光の波長及び強度に影響を及ぼす可能性がある。広く知られている基質はセレンテラジンであり、これは刺胞動物(cnidarian)、カイアシ類、毛顎動物(chaetognaths)、有櫛動物(ctenophores)、十脚目エビ(decapod shrimps)、ミスドシュリンプ(mysid shrimp)、放散虫(radiolarians)及び一部の魚類分類群に存在する。例えば、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼについては、418~512nmの間の発光をもたらすセレンテラジン類似体/誘導体が利用可能である。セレンテラジン類似体/誘導体(400A、DeepBlueC)は、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼによって400nmで発光することが記載されている(WO01/46691)。セレンテラジン類似体/誘導体の他の例としては、EnduRen及びViviRenが挙げられる。
【0084】
[96]ルシフェリンは、生物発光が可能な生物において見出される発光生物色素であり、酵素ルシフェラーゼの存在下で酸化されて、オキシルシフェリン及びエネルギーを光の形態で生成する。ルシフェリン、又は2-(6-ヒドロキシベンゾチアゾール-2-イル)-2-チアゾリン-4-カルボン酸は、ホタルPhotinus pyralisから最初に単離された。それ以来、種々の形態のルシフェリンが種々の生物から、主に海洋から、例えば魚及びイカから発見され、研究されてきたが、多くは例えばワーム(worm)、甲虫類及び種々の他の昆虫において同定されてきた。
【0085】
[97]少なくとも5つの一般的なタイプのルシフェリンが存在し、これらは各々化学的に異なり、広範囲の異なる補助因子を用いる化学的及び構造的に異なるルシフェラーゼによって触媒される。1つ目は、ホタルルシフェラーゼの基質であるホタルルシフェリンであり、これは触媒作用のためにATPを必要とする(EC 1.13.12.7)。2つ目は、長鎖アルデヒド及び還元型リン酸リボフラビンからなる、一部のイカ及び魚にも見出される細菌ルシフェリンである。細菌ルシフェラーゼはFMNH依存性である。3つ目は、渦鞭毛藻類(dinoflagellates)(海洋プランクトン)(夜間の海洋リン光を担う生物)中に見出されるテトラピロール系クロロフィル誘導体である渦鞭毛藻類(dinoflagellate)ルシフェリンである。渦鞭毛藻類(dinoflagellate)ルシフェラーゼは渦鞭毛藻類(dinoflagellate)ルシフェリンの酸化を触媒し、3つの同一の触媒活性ドメインからなる。4つ目は、イミダゾロピラジンヴァルグリン(imidazolopyrazine vargulin)であり、これは、特定のカイムシ類(ostracods)及び深海魚、例えば、アンコウ類(Porichthys)において見出される。最後は、タンパク質エクオリン(Aequorin)の発光体であるセレンテラジン(イミダゾールピラジン)であり、放散虫(radiolarians)、有櫛動物(ctenophores)、刺胞動物(cnidarians)、イカ、カイアシ類、毛顎動物(chaetognaths)、魚及びエビに見出される。
【0086】
[98]タンパク質又は非タンパク質性のいずれかのいくつかのアクセプター分子が、本発明による分子内の新規なBRETプローブにおいて使用され得る。
【0087】
[99]アクセプタータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、緑色蛍光タンパク質のバリアント(例えば、GFP10)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、増強GFP(EGFP)、増強CFP(ECFP)、増強YFP(EYFP)、GFPS65T、mAmetrine、LSS-mOrange、LSS-mKate、エメラルド、トパーズ、GFPuv、不安定化EGFP(dEGFP)、不安定化ECFP(dECFP)、不安定化EYFP(dEYFP)、HcRed、t-HcRed、DsRed、DsRed2、mRFPl、ポシロポリン、ウミシイタケ(Renilla)GFP、モンスター(Monster)GFP、paGFP、カエデ(Kaede)タンパク質、フィコビリタンパク質(Phycobiliprotein)、TagCFP、mTagCFP2、Czurite、ECFP2、mKalamal、シリウス(Sirius)、サファイア(Sapphire)、T-サファイア(T-Sapphire)、ECFP、セルリアン(Cerulean)、SCFP3C、mTurquoise、mTurquoise2、単量体Midoriishi-Cyan、TagCFP、mTFPl、EGFP、エメラルド、スーパーフォルダー(Superfolder)GFP、単量体Czami Green、TagGFP2、mUKG、mWasabi、クローバー(Clover)、シトリン(Citrine)、ビーナス(Venus)、SYFP2、TagYFP、単量体Kusabira-Orange、ιηΚΟκ、mK02、mOrange、mOrange2、mRaspberry、mCherry、mStrawberry、mScarlet、mTangerine、tdTomato、TagRFP、TagRFP-T、mCpple、mRuby、mRuby2、mPlum、HcRed-Tandem、mKate2、mNeptune、NirFP、TagRFP657、IFP1.4及びiRFP又は前記のいずれか1つの生物学的に活性なバリアント若しくはフラグメントを含む。
【0088】
[100]最も頻繁に使用される生物発光又はフルオロフォアは、オワンクラゲ(Aequorea victoria)由来の緑色蛍光タンパク質、並びに例えば、変異誘発及びキメラタンパク質技術によって得られる多数の他のバリアント(GFP)である。GFPは、それらの発色団の特有の成分に基づいて分類され、各クラスは、異なる励起及び発光波長を有する:クラス1、中性フェノール及びアニオン性フェノラートの野生型混合物:クラス2、フェノラートアニオン:クラス3、中性フェノール:クラス4、スタックした(stacked)s電子系を有するフェノラートアニオン:クラス5、インドール:クラス6、イミダゾール:及びクラス7、フェニル。
【0089】
[101]好ましい蛍光分子又は蛍光アクセプター分子は、mNeonGreenであってもよく、これは、頭索類ニシナメクジウオ(Branchiostoma lanceolatum)からの四量体蛍光タンパクに由来する単量体黄緑色蛍光タンパク質であり、「最も明るい単量体緑色又は黄色蛍光タンパク質」と評されている。以前に開発されたmNeonGreen単量体タンパク質を、ここでは野生型mNeonGreenと呼ぶ。野生型タンパク質と比較して光安定性及び蛍光が改善されたmNeonGreenバリアントも本明細書中に含まれる。例えば、V52H、D53E、N65Y、E69M又はE69Q、A110Q、S131I又はS131C、T139R、S143D、K152H、A158P、T164Q、S166K、A169G、W172P、S175E、K177M、T178L、T188D又はT188E、K190T、T194K、G196K又はG196E、N197D、S203C、T204Q、T208H、N218D、及びY226Fから選択される1つ又は複数の変異を含む、国際公開第WO2019/055498号に報告されている配列番号65の野生型mNeonGreenのmNeonGreenバリアントを参照されたい。
【0090】
[102]他の代表的なアクセプター分子としては、限定はされないが、以下を含むことができる:sgGFP、sgBFP、BFP青色シフトGFP(Y66H)、シアンGFP、DsRed、単量体RFP、EBFP、ECFP、GFP(S65T)、GFP赤色シフト(rsGFP)、非UV励起(wtGFP)、UV励起(wtGFP)、GFPuv、HcRed、rsGFP、サファイアGFP、sgBFP(商標)、sgBFP(商標)(スーパーグローBFP)、sgGFP(商標)、sgGFP(商標)(スーパーグローGFP)、イエローGFP、半導体ナノ粒子(例えばラマンナノ粒子)、1,5IAEDANS;1,8-ANS;4-メチルウンベリフェロン;5-カルボキシ-2,7-ジクロロフルオレセイン;5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM);5-カルボキシナフトフルオレセイン;5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA);5-FAM(5-カルボキシフルオレセイン);5-HAT(ヒドロキシトリプタミン);5-ヒドロキシトリプタミン(HAT);5-ROX(カルボキシ-X-ローダミン);5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン);6-カルボキシローダミン6G;6-CR 6G;6-JOE;7-アミノ-4-メチルクマリン;7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD);7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン;9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン;ABQ;酸フクシン;ACMA(9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン);アクリジンオレンジ;アクリジンレッド;アクリジンイエロー;アクリフラビン;Acriflavin Feulgen SITSA;エクオリン(発光タンパク質);AFP(自己蛍光タンパク質;Quantum Biotechnologies);Alexa Fluor 350(商標);Alexa Fluor 430(商標);Alexa Fluor 488(商標);Alexa Fluor 532(商標);Alexa Fluor 546(商標);Alexa Fluor 568(商標);Alexa Fluor 594(商標);Alexa Fluor 633(商標);Alexa Fluor 647(商標);Alexa Fluor 660(商標);Alexa Fluor 680(商標);アリザリンコンプレキソン;アリザリンレッド;アロフィコシアニン(APC);AMC、AMCA-S;AMCA(アミノメチルクマリン);AMCA-X;アミノアクチノマイシンD;アミノクマリン;アミノメチルクマリン(AMCA);アニリンブルー;アントラシルステアレート;APC(アロフィコシアニン);APC-Cy7;APTRA-BTC;APTS;アストラゾンブリリアントレッド4G;アストラゾンオレンジR;アストラゾンRed 6B;アストラゾンイエロー7GLL;アタブリン;ATTO-TAG(商標)CBQCA;ATTO-TAG(商標)FQ;オーラミン;Aurophosphine G;Aurophosphine;BAO 9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール);BCECF(高pH);BCECF(低pH);ベルベリンスルフェート;β-ラクタマーゼ;ビマン;ビスベンズアミド;ビスベンズイミド(Hoechst);ビス-BTC;Blancophor FFG;BlancophorSV;BOBO(商標)-1;BOBO(商標)-3;Bodipy 492/515;Bodipy 493/503;Bodipy 500/510;Bodipy 505/515;Bodipy 530/550;Bodipy 542/563;Bodipy 558/568;Bodipy 564/570;Bodipy 576/589;Bodipy 581/591;Bodipy 630/650-X;Bodipy 650/665-X;Bodipy 665/676;Bodipy F1;Bodipy FL ATP;Bodipy Fl-Ceramide;Bodipy R6G SE;Bodipy TMR;Bodipy TMR-Xコンジュゲート;Bodipy TMR-X、SE;Bodipy TR;Bodipy TR ATP;Bodipy TR-X SE;BO-PRO(商標)-1;BO-PRO(商標)-3;ブリリアント・スルフフラビンFF;BTC;BTC-5N;カルセイン;カルセインブルー;カルシウムクリムゾン(商標);カルシウムグリーン;カルシウムグリーン-1 Ca2+染料;カルシウムグリーン-2 Ca2+;カルシウムグリーン-5N Ca2+;カルシウムグリーン-C18 Ca2+;カルシウムオレンジ;カルコフロールホワイト;カルボキシ-X-ローダミン(5-ROX);Cascade Blue(商標);Cascade Yellow;カテコールアミン;CCF2(GeneBlazer);CFDA;クロロフィル;クロモマイシンA;クロモマイシンA;CL-NERF;CMFDA;クマリンファロイジン;C-フィコシアニン;CPMメチルクマリン;CTC;CTCホルマザン;Cy2(商標);Cy3.18;Cy3.5(商標);Cy3(商標);Cy5.18;Cy5.5(商標);Cy5(商標);Cy7(商標);環式AMPフルオロセンサー(FiCRhR);ダブシル;ダンシル;ダンシルアミン;ダンシルカダベリン;ダンシルクロライド;ダンシルDHPE;ダンシルフルオライド;DAPI;Dapoxyl;Dapoxyl 2;Dapoxyl 3'DCFDA;DCFH(ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート);DDAO;DHR(ジヒドロローダミン123);Di-4-ANEPPS;Di-8-ANEPPS(非比);DiA(4-Di-16-ASP);ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(DCFH);DiD-親油性トレーサー;DiD(DilC18(5));DIDS;ジヒドロローダミン123(DHR);Dil(DilC18(3));ジニトロフェノール;DiO(DiOC18(3));DiR;DiR(DilC18(7));DM-NERF(高pH);DNP;ドーパミン;DTAF;DY-630-NHS;DY-635-NHS;ELF97;エオシン;エリスロシン;エリスロシンITC;エチジウムブロミド;エチジウムホモダイマー1(EthD-1);ユーキライシン;EukoLight;塩化ユーロピウム(III);EYFP;ファストブルー;FDA;Feulgen(パラローザニリン);FIF(ホルムアルデヒド誘導性蛍光);FITC;フラゾオレンジ;Fluo-3;Fluo-4;フルオレセイン(FITC);フルオレセインジアセテート;フルオロ-エメラルド;フルオロ-金(ヒドロキシスチルバミジン);Fluor-Ruby;FluorX;FM 1-43(商標);FM 4-46;Fura Red(商標)(高pH);Fura Red(商標)/Fluo-3;Fura-2;Fura-2/BCECF;Genacryl Brilliant Red B;Genacryl Brilliant Yellow 10GF;Genacryl Pink 3G;Genacryl Yellow 5GF;GeneBlazer(CCF2);グロキサン酸(Gloxalic Acid);Granular blue;
ヘマトポルフィリン;Hoechst 33258;Hoechst 33342;Hoechst 34580;HPTS;ヒドロキシクマリン;ヒドロキシスチルバミジン(FluoroGold);ヒドロキシトリプタミン;Indo-1、高カルシウム;Indo-1、低カルシウム;インドジカルボシアニン(DiD);インドトリカルボシアニン(DiR);Intrawhite Cf;JC-1;JO-JO-1;JO-PRO-1;LaserPro;Laurodan;LDS 751(DNA);LDS 751(RNA);Leucophor PAF;Leucophor SF;Leucophor WS;リサミンローダミン;リサミンローダミンB;カルセイン/エチジウムホモダイマー;LOLO-1;LO-PRO-1;ルシファーイエロー;ライソトラッカーブルー;ライソトラッカーブルーホワイト;ライソトラッカーグリーン;ライソトラッカーレッド;ライソトラッカーイエロー;LysoSensor Blue;LysoSensor Green;LysoSensor Yellow/Blue;マググリーン;マグダラレッド(Phloxin B);Mag-Fura Red;Mag-Fura-2;Mag-Fura-5;Mag-Indo-1;マグネシウムグリーン;マグネシウムオレンジ;マラカイトグリーン;Marina Blue;マキシロンブリリアントフラビン10 GFF;マキシロンブリリアントフラビン8 GFF;メロシアニン;メトキシクマリン;Mitotracker Green FM;Mitotracker Orange;Mitotracker Red;ミトラマイシン;モノブロモビマン;モノブロモビマン(mBBr-GSH);モノクロロビマン;MPS(メチルグリーンピロニンスチルベン);NBD;NBDアミン;ナイルレッド;ニトロベンズオキサジドール;ノルアドレナリン;ヌクレアファストレッド;ヌクレアイエロー;Nylosan Brilliant lavin E8G;Oregon Green;Oregon Green 488-X;Oregon Green(商標);Oregon Green(商標)488;Oregon Green(商標)500;Oregon Green(商標)514;Pacific Blue;Pararosaniline(Feulgen);PBFI;PE-Cy5;PE-Cy7;PerCP;PerCP-Cy5.5;PE-Texas Red [Red 613];Phloxin B(マグダラレッド);Phorwite AR;Phorwite BKL;Phorwite Rev;Phorwite RPA;ホスフィン3R;PhotoResist;フィコエリスリンB[PE];フィコエリスリンR[PE];PKH26(Sigma);PKH67;PMIA;ポントクロムブルーブラック;POPO-1;POPO-3;PO-PRO-1;PO-PRO-3;プリムリン;Procion Yellow;ヨウ化プロピジウム(PI);PyMPO;ピレン;ピロニン;ピロニンB;パイロザールブリリアントフラビン7GF;QSY 7;キナクリンマスタード;Red 613 [PE-TexasRed];レゾルフィン;RH 414;Rhod-2;ローダミン;ローダミン110;ローダミン123;ローダミン5GLD;ローダミン6G;ローダミンB;ローダミンB200;ローダミンBエクストラ;ローダミンBB;ローダミンBG;ローダミングリーン;ローダミンファリシジン;ローダミンファロイジン;ローダミンレッド;ローダミンWT;ローズベンガル;R-フィコシアニン;R-フィコエリスリン(PE);S65A;S65C;S65L;S65T;SBFI;セロトニン;セブロンブリリアントレッド2B;セブロンブリリアントレッド4G;セブロンブリリアントレッドB;セブロンオレンジ;セブロンイエローL;SITS;SITS(プリムリン);SITS(スチルベンイソチオスルホン酸);SNAFLカルセイン;SNAFL-1;SNAFL-2;SNARFカルセイン;SNARF1;ナトリウムグリーン;SpectrumAqua;SpectrumGreen;SpectrumOrange;Spectrum Red;SPQ(6-メトキシ-N-(3-スルホプロピル)キノリニウム);スチルベン;スルホローダミンB can C;スルホローダミンエクストラ;SYTO 11;SYTO 12;SYTO 13;SYTO 14;SYTO 15;SYTO 16;SYTO 17;SYTO 18;SYTO 20;SYTO 21;SYTO 22;SYTO 23;SYTO 24;SYTO 25;SYTO 40;SYTO 41;SYTO 42;SYTO 43;SYTO 44;SYTO45;SYTO 59;SYTO 60;SYTO 61;SYTO 62;SYTO 63;SYTO 64;SYTO 80;SYTO 81;SYTO 82;SYTO 83;SYTO 84;SYTO 85;SYTOX Blue;SYTOX Green;SYTOX Orange;テトラサイクリン;テトラメチルローダミン(TRITC);Texas Red(商標);Texas Red X(商標)コンジュゲート;チアジカルボシアニン(DiSC3);チアジンレッドR;チアゾールオレンジ;チオフラビン5;チオフラビンS;チオフラビンTCN;Thiolyte;チオゾールオレンジ;Tinopol CBS(Calcofluor White);TMR;TO-PRO-1;TO-PRO-3;TO-PRO-5;TOTO-1;TOTO-3;TriColor(PE-Cy5);TRITCテトラメチルローダミンイソチオシアネート;True Blue;TrueRed;Ultralite;Uranine B;Uvitex SFC;WW 781;X-ローダミン;XRITC;キシレンオレンジ;Y66F;Y66H;Y66W;YO-PRO-1;YO-PRO-3;YOYO-1;YOYO-3、Sybr Green、チアゾールオレンジ(相互キレート色素)、又はそれらの組合せ。
【0091】
[103]あるいは、アクセプター分子は、蛍光ナノクリスタルであってもよい。ナノクリスタルは、光分解に対する耐性、改善された輝度、非毒性、及びいくつかのプロセスの同時モニタリングを可能にするサイズ依存性の狭い発光スペクトルを含む、蛍光標識として有機分子と比べていくつかの利点を有する。さらに、ナノクリスタルの吸収スペクトルは、第1のピークより上で連続的であり、全てのサイズと、したがって全ての色とを単一の励起波長で励起することを可能にする。
【0092】
[104]アクセプター分子はまた、蛍光ミクロスフェアであってもよい。これらは、典型的にはポリマーから作製され、ポリマーマトリックスに組み込まれた蛍光分子(例えば、フルオレセインGFP又はYFP)を含有し、これは、様々な試薬にコンジュゲートすることができる。蛍光ミクロスフェアは、内部又は表面上で標識され得る。内部標識は、典型的には狭い蛍光発光スペクトルを有する非常に明るく安定な粒子を生成する。内部標識では、表面基は、リガンド(例えば、タンパク質)をビーズの表面にコンジュゲートするために利用可能なままである。内部標識されたビーズは、光退色に対してより高い耐性を示すので、画像化適用において広範に使用される。
【0093】
[105]生物発光ドナー分子及び蛍光アクセプター分子の複数の組合せを使用して、試験される阻害剤候補又はアクチベーター候補の検出の感度を増加させ得る。RETに好適な対合を決定する際に考慮すべき基準は、生物発光ドナー分子の発光/蛍光スペクトルと比較したアクセプター分子の相対的な発光/蛍光スペクトルである。生物発光タンパク質の発光スペクトルは、アクセプター分子の吸収スペクトルと重複しており、そのため生物発光タンパク質発光からの光エネルギーが、アクセプター分子を励起することができ、且つ、2つの分子が互いに対して適切な近接及び配向にある場合にアクセプター分子の蛍光を促進するような波長である。良好な分光特性、例えば輝度、光安定性も考慮してもよい。
【0094】
[106]元のBRETシステムは、ドナーとしてウミシイタケルシフェラーゼ、アクセプターとしてEYFP(又はTopaz)、及び基質としてセレンテラジン誘導体を使用する。これらの成分をBRETアッセイで組み合わせると、最大光は、生物発光タンパク質については475~485nmの範囲に、アクセプター分子については525~535nmの範囲に生成され、40~60nmのスペクトル分解能が得られる。ウミシイタケルシフェラーゼは、GFP発光に実質的に重複する広い発光ピークを生成し、これはひいては、システムのシグナル対ノイズの減少に寄与する。種々のセレンテラジン誘導体が当該分野で知られており、これには、ウミシイタケルシフェラーゼ活性の結果として種々の波長(野生型セレンテラジンによって生成されるものとは異なる波長)で光を生成する、coel400aが含まれる。当業者は、ドナーの発光ピークが変化したので、その波長で光を吸収し、それによって効率的なエネルギー移動を可能にするアクセプター分子を選択することが必要であることを理解するであろう。ドナーの発光とアクセプターの光吸収ピークとの間のスペクトル重複は、とりわけ、効率的なエネルギー移動のための条件の1つである。クラス3及び1のGFPは、400nmで光を吸収し、505~511nmの間で再発光することが知られている。これは、約111nmのドナー発光とアクセプター発光との間の波長差をもたらす。
【0095】
[107]本発明による分子内BRETプローブでの使用に好適な生物発光ドナー及び蛍光アクセプター分子の好ましい選択には、NanoLuc及びmNeonGreenの組合せが含まれる。
[108]当業者が理解するように、生物発光ドナー分子及び蛍光アクセプター分子は、蛍光アクセプター分子に対する生物発光ドナー分子の位置及び/又は双極子配向に空間的変化の結果としてイオンセンサー及び/又はイオン伝導性チャネルサブユニットを活性にするように挿入される。イオンチャネル、イオンセンサープローブ、生物発光ドナー分子及び蛍光アクセプター分子の空間的配置は、結果として得られる融合チャネルタンパク質が機能的であるようなものである。エネルギー移動は主に以下に依存する:(i)ドナー分子及びアクセプター分子のそれぞれの発光スペクトルと励起スペクトルとの間の重複、及び(ii)ドナー分子とアクセプター分子との間の約100オングストローム(Å)の近接性。BRETにおけるドナー分子は、化学発光を介して光を生成するため、小動物のイメージングに適している。さらに、BRETシステムは、外部光励起源を使用せず、シグナル対ノイズ比が低いために、生きている対象に潜在的により高い感度を提供する。
【0096】
[109]本発明によるプローブに使用されるイオンセンサーは、カルシウム、カリウム、ナトリウム、クロライドイオンを受容するセンサー、又はイオン強度を受容する任意のセンサーである。それは、例えば、カルシウム、カリウム、ナトリウム、クロライドイオン等を含むシグナルイオンの存在及びレベルに応答性又は感受性があるか、又はこれらを検出/感知することができる感知ドメイン又は感受性ドメインを表す。次いで、センサー又は感知ドメインは、典型的には、シグナルイオン若しくは分子の結合又は細胞内条件の変化に応答してコンホメーションを変化させる。
[110]したがって、本発明による分子内BRETプローブは、生細胞におけるイオンチャネル構造のコンホメーション変化及びイオンチャネル活性化をモニターするのに有用である。
【0097】
[111]本発明によれば、当該イオンセンサーは、カルシウム結合性タンパク質、例えばトロポニンCカルシウム結合性ドメイン若しくはカルモジュリンカルシウム結合性タンパク質、カリウム結合性タンパク質(KBP)、ナトリウム結合性タンパク質、例えばNhAs-1タンパク質、又はクロライド結合性タンパク質から選択されていてもよい。
[112]カルシウム感知タンパク質又はカルシウム結合性タンパク質は、当該分野で周知であり、そしてそれらは、セカンドメッセンジャー系において作用する任意のタンパク質であってもよい。例えば、カルモジュリン、カルネキシン、カルレティキュリン及びゲルゾリンを挙げることができる。
【0098】
[113]カルモジュリン(CaM)(カルシウム調節タンパク質の略語)は、全ての真核細胞で発現する多機能中間体カルシウム結合性メッセンジャータンパク質である。これは、二次メッセンジャーCa2+の細胞内標的であり、Ca2+の結合は、カルモジュリンの活性化に必要である。一旦Ca2+に結合すると、カルモジュリンは、種々の標的タンパク質、例えば、キナーゼ又はホスファターゼとのその相互作用を改変することによって、カルシウムシグナル伝達経路の一部として作用する。
[114]カルネキシン(CNX)は、小胞体の67kDaの内在性タンパク質(抗体の供給源に依存して、ウェスタンブロッティングにおいて90kDa、80kDa、又は75kDaのバンドとして様々に現れる)である。これは、大きな(50kDa)N末端カルシウム結合性内腔ドメイン、単一の膜貫通ヘリックス及び短い(90残基)酸性細胞質尾部からなる。
【0099】
[115]カルレギュリン、CRP55、CaBP3、 カルセケストリン様タンパク質、及び小胞体常在タンパク質60(ERp60)としても知られるカルレティキュリンは、ヒトにおいてCALR遺伝子によってコードされるタンパク質である。カルレティキュリンは、Ca2+イオンに結合してそれを不活性にする多機能性可溶性タンパク質である。Ca2+は、低親和性であるが高容量で結合しており、シグナル時に放出される可能性がある。カルレティキュリンは、小胞体(ER)に会合した貯蔵コンパートメントに位置し、ER常在タンパク質と考えられている。
[116]ゲルゾリンは、アクチンフィラメントの集合及び解体の重要な調節因子であるアクチン結合性タンパク質である。ゲルゾリンは、ほぼ100%の効率で切断するので、アクチン切断ゲルゾリン/スーパーファミリーの最も強力なメンバーの1つである。
【0100】
[117]カリウムセンサー又はカリウム結合性タンパク質も当技術分野で周知であり、それには、正に荷電したカリウムイオンに結合し、正に荷電したカリウムイオンがカリウムセンサーに結合すると検出可能なシグナルを生成することができる任意のカリウムセンサータンパク質が含まれ得る。K+の結合は、例えば、カリウムセンサーにおけるコンホメーションシフトを誘導し、次いで、シグナル伝達ドメインが検出可能なシグナルを生成することを可能にし得る。好ましくは、K+のカリウムセンサーへの結合は、ペプチドのコンホメーションシフトを誘導することができ、次いでシグナル伝達ドメインは検出可能なシグナルを生成することができる。好ましい実施形態では、カリウムセンサーは、Ashrafら(Structure 2016, May 3; 24(5) 741-9)によって記載されるようなKBPのアミノ酸配列を含む。K+結合性タンパク質(KBP)はYgaUとしても知られており、Escherichia coli由来の可溶性16kDa細胞質タンパク質を特徴とする。これは、高度に特異的なK+結合タンパク質であり、高レベルの外部Kの存在下での正常な増殖に必要とされる。カリウムイオンは、BONドメインに排他的に結合し、これは、結合時にコンホメーション変化を受ける。KBPは、BONドメインと相互作用し得るLysMドメインをさらに含む。
【0101】
[118]ナトリウムイオン結合タンパク質又はナトリウムセンサーは、例えば、ナトリウムイオン(Na+)に結合し、それを隔絶することを特徴とするタンパク質である、nhaS遺伝子産物、NhaSを含んでいてもよい。NhaSを含むナトリウムイオン結合タンパク質の機能的フラグメントも範囲内に含まれ、そのフラグメントは、ナトリウムイオンに結合する能力によって特徴付けられ、例えば、米国特許第5346815A号を参照されたい。
【0102】
[119]クロライド結合性タンパク質又はクロライドセンサーは、例えば、OEC、カメレオン(Chameleon)、及び他のクロライド要求性酵素を含み得る。OECのポリペプチド構造は、とりわけColeman W.J. (Photosynth Res (1990) 23: 1. https://doi.org/10.1007/BF00030059)によって広範に記載されている。クロライドバイオセンサー、例えば、YFPベースのクロライドバイオセンサーカメレオンは、Arosioら(Front Cell Neurosci. 2014;8:258. 2014 Aug 29. doi:10.3389/fncel.2014.00258)及びWattsら(April 10, 2012, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0035373)によって記載されているように、24アミノ酸の柔軟なポリペプチドリンカーによって連結された2つの蛍光タンパク質、CFP及びTopazからなる。場合によっては、アクセプターはクロライド感受性を示し、したがって、クロライドセンサーは、そのような場合、当該アクセプター自体であってもよい。これに関して、本発明者らは、Zhong Sら(2014 Jun 5;9(6):e99095. doi: 10.1371/journal.pone.0099095)によって記載されているような増強されたクロライド感受性も示す遺伝子改変されたYFP光安定性蛍光タンパク質であるYFP-H148Qを引用してもよい。したがって、そのような改変されたYFPは、蛍光アクセプター分子として、及びクロライドイオンフラックスによるイオン伝導性チャネルの活性化又は阻害を研究するためのイオンクロライドセンサーとして使用してもよい。
【0103】
[120]したがって、本発明は、イオンの通過、したがって上記のようなイオン伝導性チャネルの実際の活性化又は阻害を探索するための有用なツールを提供する。結果として、そのようなイオン伝導性チャネルの異なるBRET-バイオセンサーを多重化することによって、分子内の新規なBRETプローブは、したがって、種々の候補を確実かつ迅速に試験する可能性を提供する。
【0104】
[121]イオンチャネル機能のハイスループットスクリーニングには、生細胞におけるイオンチャネル活性を報告する高感度で単純なアッセイ及び機器が必要である。したがって、本発明は、プローブに結合したイオン伝導性チャネルサブユニットを含むチャネル融合サブユニットをコードするヌクレオチド配列を含む核酸又はポリヌクレオチドであって、
前記プローブは、少なくとも1つの生物発光ドナー分子及び少なくとも1つのタンパク質蛍光アクセプター分子にその間で結合したイオンセンサーを含み、
前記イオンセンサーは、前記チャネルサブユニットにより輸送されるイオンの存在下でコンホメーション変化を受けるように構成され、
前記プローブは、前記チャネルサブユニットのN末端に、C末端に又は細胞内若しくは細胞外ループ内に前記生物発光ドナー分子又は前記タンパク質蛍光アクセプター分子のいずれかを介して結合し、
前記生物発光ドナー分子及び前記タンパク質蛍光アクセプター分子は、該生物発光ドナー分子の発光スペクトルが該蛍光アクセプター分子の吸収スペクトルと重複し、該生物発光ドナー分子により送達される光エネルギーが該蛍光アクセプター分子を励起し得る波長であるように選択されている、
核酸又はポリヌクレオチドに関する。
【0105】
[122]本発明の核酸又はポリヌクレオチドは、いくつかの市販の発現ベクターに挿入されていてもよい。非限定的な例としては、原核生物プラスミドベクター、例えば、pUCシリーズ、pBluescript(Stratagene)、pETシリーズの発現ベクター(Novagen)又はpCRTOPO(Invitrogen)、並びに哺乳動物細胞における発現に適合するベクター、例えば、pREP(Invitrogen)、pcDNA3(Invitrogen)、pCEP4(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO-pSV2neo、pBPV-1、pdBPVMMTneo、pRSVgpt、pRSVneo、pSV2-dhfr、pIZD35、pLXIN、pSIR(Clontech)、pIRES-EGFP(Clontech)、pEAK-10(Edge Biosystems)、pTriEx-Hygro(Novagen)及びpCINeo(Promega)が挙げられる。Pichia pastorisに好適なプラスミドベクターの例としては、例えば、プラスミドpAO815、pPIC9K及びpPIC3.5K(全てInvitrogen)が挙げられる。上記で言及した本発明の核酸又はポリヌクレオチドはまた、別のポリヌクレオチドとの翻訳融合物が生成されるようにベクターに挿入されていてもよい。他のポリヌクレオチドは、例えば、可溶性を増加させ得る、及び/又は融合タンパク質の精製を容易にし得るタンパク質をコードしていてもよい。非限定的な例としては、pET32、pET41、pET43が挙げられる。ベクターはまた、正確なタンパク質フォールディングを容易にする1つ又は複数のシャペロンをコードするさらなる発現可能なポリヌクレオチドを含有していてもよい。好適な細菌発現宿主は、例えば、BL21(例えば、BL21(DE3)、BL21(DE3)PlysS、BL21(DE3)RIL、BL21(DE3)PRARE)又はRosetta(登録商標)に由来する株を含む。好ましい実施形態では、本発明による発現ベクターは、真核宿主細胞を形質転換し、前記TRPチャネル融合サブユニットの安定な又は一過性の発現をもたらすことができるDNA又はRNAベクターであり、前記ベクターは、プラスミド、ウイルス、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AVV)、レンチウイルス、エプスタイン-バー、単純ヘルペス、パピローマ、ポリオーマ、レトロ、SV40、ワクシニア、任意のレトロウイルスベクター、インフルエンザウイルスベクター、及びネイキッドDNAを含む他の非ウイルスベクター、又はリポソームである。
【0106】
[123]原核又は真核細胞における発現を確実にする転写調節因子(発現カセットの一部)は、当業者に周知である。これらの因子は、転写の開始を確実にする調節配列(例えば、翻訳開始コドン、プロモーター、エンハンサー、及び/又はインスレーター)、配列内リボソーム進入部位(IRES)、並びに必要に応じて、転写の終結及び転写物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。さらなる調節エレメントとしては、転写エンハンサー及び翻訳エンハンサー、並びに/又は天然に関連するプロモーター領域若しくは異種プロモーター領域が挙げられ得る。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、このような発現制御配列に作動可能に連結され、原核細胞又は真核細胞における発現を可能にする。ベクターは、さらなる調節エレメントとして分泌シグナルをコードするヌクレオチド配列をさらに含んでもよい。このような配列は、当業者に周知である。さらに、使用する発現系に依存して、本発明のポリヌクレオチドのコード配列に、発現したポリペプチドを細胞コンパートメントに誘導することができるリーダー配列が付加されていてもよい。このようなリーダー配列は、当該分野で周知である。
【0107】
[124]転写の開始を確実にする調節エレメントの可能な例としては、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40-プロモーター、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、lacZプロモーター、ヒト伸長因子1α-プロモーター、CMVエンハンサー、CaM-キナーゼプロモーター、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcMNPV)多角体プロモーター又はSV40-エンハンサーが挙げられる。原核生物における発現については、例えばtac-lac-プロモーター、lacUV5又はtrpプロモーターを含む多数のプロモーターが記載されている。原核生物及び真核生物細胞におけるさらなる調節エレメントの例としては、ポリヌクレオチドの下流における、転写終結シグナル、例えば、SV40-ポリA部位又はtk-ポリA部位又はSV40、lacZ及びAcMNPV多角体ポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0108】
[125]本発明はさらに、上記のようなイオン伝導性チャネル融合ユニットの発現のための発現ベクターを含有する組換え宿主細胞であって、
前記ベクターは、プローブに結合したイオン伝導性チャネルのサブユニットを含むチャネル融合サブユニットをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むポリヌクレオチドを含有し、
前記プローブは、少なくとも1つの生物発光ドナー分子及び少なくとも1つのタンパク質蛍光アクセプター分子にその間で結合したイオンセンサーを含み、
前記イオンセンサーは、前記チャネルサブユニットにより輸送されるイオンの存在下でコンホメーション変化を受けるように構成され、
前記プローブは、前記チャネルサブユニットのN末端に、C末端に又は細胞内若しくは細胞外ループ内に前記生物発光ドナー分子又は前記タンパク質蛍光アクセプター分子のいずれかを介して結合し、
前記生物発光ドナー分子及び前記タンパク質蛍光アクセプター分子は、該生物発光ドナー分子の発光スペクトルが該蛍光アクセプター分子の吸収スペクトルと重複し、該生物発光ドナー分子により送達される光エネルギーが該蛍光アクセプター分子を励起し得る波長であるように選択されている、
組換え宿主細胞に関する。
【0109】
[126]したがって、本発明による組換え細胞は、上記のようなイオンチャネル融合サブユニットのポリヌクレオチド構築物を含有するように遺伝子操作されている。細胞又は宿主は、任意の原核細胞又は真核細胞であってもよく、好ましくは、安定な細胞株であり得る。好適な真核生物宿主は、哺乳動物細胞、両生類細胞、魚類細胞、昆虫細胞、真菌細胞又は植物細胞であり得る。真核細胞は、昆虫細胞、例えば、Spodoptera frugiperda細胞、酵母細胞、例えば、Saccharomyces cerevisiae又はPichia pastoris細胞、真菌細胞、例えば、Aspergillus細胞又は脊椎動物細胞であってもよい。適切な原核生物は、E.coli(例えば、E.coli株HB101、DH5a、XL1Blue、Y1090及びJM101)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescens、Burkholderia glumae、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas stutzeri、Streptomyces lividans、Lactococcus lactis、Mycobacterium smegmatis又はBacillus subtilisであり得る。
【0110】
[127]したがって、本発明による組換え宿主細胞は、発現ベクターを含み、前記チャネル融合サブユニットが発現しており、インビトロ及びインビボで他のホモマー又はヘテロマーチャネルサブユニットと共集合して機能的融合チャネルを形成することができる。本発明は、本発明による前記組換え細胞を培養すること、及び前記チャネル融合サブユニットを発現させることを含む、上記のような前記チャネル融合サブユニットの製造プロセスを具現化する。
【0111】
[128]本発明はまた、生物発光ドナー分子をコードするヌクレオチド配列と少なくとも1つの蛍光アクセプター分子をコードするヌクレオチド配列との間に配置されたイオンセンサーヌクレオチド配列と組み合わせてか、又はそれにカップリング若しくは結合した少なくともイオンチャネルサブユニットを含むセルフリーの組成物及びアッセイに関する。前記セルフリーの組成物は、上記のようなイオンチャネル融合ユニット又は機能的融合チャネルを含み、前記融合サブユニットは、脂質二重層、好ましくはリポソームの二重層に埋め込まれている。そのような脂質二重層は、共通の疎水性二重層内部及び2つの親水性表面を有する、典型的には両親媒性の2つの層を含む。当該脂質二重層は、天然に存在するか又は人工のものである可能性がある。このような脂質二重層は、電位依存性イオンチャネル融合サブユニットが挿入された、例えば哺乳動物又は酵母の細胞膜に由来する細胞膜又は生体膜であり得る。
【0112】
[129]細胞からセルフリーの組成物を調製するための方法は、当該分野で周知であり、上記のように組換え細胞を得ること、及び細胞の膜を破壊することにある。これらの方法は、一般に、凍結及び融解の反復サイクル、粉砕、超音波処理装置における超音波での細胞の処理、均質化、及びフレンチプレスの使用、界面活性剤及び/又は酵素の添加、ガラスビーズ溶解、分画遠心法、並びに様々な勾配媒体を使用するいくつかの密度勾配手順を含む。これらの技術は、とりわけ、「Current Protocols in Protein Science」; John E. Caligan; Ben M. Dunn; Hidde L. Ploegh; David W. Speicher; Paul T. Wingfield; Wiley and Sons)に詳細に記載されている。細胞膜抽出物を単離又は調製するために、これらの方法の組合せが通常採用される。一般に、細胞は、機械的手段によるか、又は界面活性剤を使用するかのいずれかで溶解され、そして膜画分は、分画遠心法を介して単離される。本発明による組換え細胞を含有するリポソームは、水中でタンパク質を発現する細胞のリン脂質膜を、例えば超音波処理によって破壊することによって作製し得る。リン脂質は、水溶液のコアを含有するリポソーム球に再集合する。低剪断速度であれば、多くの層を有する多重膜リポソームが生成される。連続した高剪断超音波処理は、本発明の適用により適した、より小さな単層リポソームを形成する。
【0113】
[130]本発明はさらに、試験化合物がイオン伝導性チャネルのリガンドとして機能するか否かを評価する方法であって、(i)プローブに結合したイオン伝導性チャネルサブユニットをコードするヌクレオチド配列を含む細胞を提供すること、ここで
前記プローブは、少なくとも1つの生物発光ドナー分子及び少なくとも1つの蛍光アクセプター分子にその間で結合したイオンセンサーを含み、
前記プローブは、前記チャネルサブユニットのN末端に、又はC末端に又は細胞内若しくは細胞外ループ内に前記生物発光ドナー分子又は前記蛍光アクセプター分子のいずれかを介して結合し、
前記生物発光ドナー分子及び前記蛍光アクセプター分子は、該生物発光ドナー分子の発光スペクトルが該蛍光アクセプター分子の吸収スペクトルと重複することにより、生物発光エネルギードナーと蛍光アクセプターとの間での非放射性双極子-双極子カップリングによる非放射エネルギー移動が可能であるように選択されており、
(ii)前記細胞を試験化合物と接触させること、及び
(iii)結果としての反応又は相互作用及び出力を決定すること
を含む方法を提供する。
【0114】
[131]化合物候補をリアルタイムでスクリーニングする方法は、イオンフラックス、したがってイオン伝導性チャネルの活性化又は阻害を測定することを可能にし、当該候補を本発明による組換え宿主細胞又はセルフリーの組成物と接触させることと、生物発光ドナー分子の基質を提供することと、(iii)BRETシグナルの変動を測定することとを含む。このような方法は、イオン伝導性チャネルのアゴニスト又はアンタゴニストをリアルタイムでスクリーニングすることを可能にする。
[132]さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸若しくはポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の組換え細胞若しくは宿主細胞、又は本発明のセルフリーの組成物若しくは組成物、及び/又は本発明のバイオセンサーを含む、イオン伝導性チャネルのアゴニスト又は阻害剤化合物候補をスクリーニングするためのキットを提供する。
【0115】
[133]本出願を通して、種々の参考文献が参照され、これらの刊行物の開示内容は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれ、本発明が属する技術分野の状態をより完全に記載する。
【実施例
【0116】
実施例1:第2世代の分子内プローブの構築
図1に示されるような分子内の新規なBRETプローブを、YFP及びLucによって挟まれ、いくつかのイオン伝導性チャネルの細胞内末端に融合したイオン結合タンパク質を使用して、電位開口型イオンチャネル孔の微小環境におけるイオンフラックスを測定するために構築した。
【0117】
実施例1.1:カリウム結合性BRETプローブの構築
K+感受性の、遺伝子にコードされた生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)ベースのプローブを、Ashrafら(2016) (Structure 2016, May 3; 24(5) 741-9)に記載されているように、終止コドンなしで、5'末端でナノルシフェラーゼ(nanoluciferase)をコードするcDNAに融合し、3'末端でmNeon緑色蛍光タンパク質をコードするcDNAに融合して、NanoLuc-KBP-mNeonGreen BRETプローブを得るか、又は5'末端でmNeonGreenをコードするcDNAに融合し、3'末端でナノルシフェラーゼタンパク質をコードするcDNAに融合して、NanoLuc-KBP-mNeonGreen BRETプローブを得るように、KBPのアミノ酸配列をコードするcDNAをクローニングすることによって構築した。N末端アクセプター又はドナータンパク質間のペプチドスペーサーは、センサーの操作性にとって重要ではない。したがって、RMQDAペプチドスペーサーを、必要に応じて、N末端アクセプター又はドナータンパクとKBPタンパク質との間に付加してもよく、PLAELペプチドスペーサーを、KBPタンパク質とC末端ドナー又はアクセプタータンパク質との間に付加する。
【0118】
実施例1.2:イオン強度感受性BRETプローブの構築
イオン強度感受性の、遺伝子にコードされた生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)ベースのプローブを、Liu B.ら(2017) (ACS Chem. Biol. 2017, 12, 2510-2514)に記載され、5'末端でナノルシフェラーゼをコードするcDNAに融合し、3'末端でmNeon緑色蛍光タンパク質をコードするcDNAに融合して、NanoLuc-KBP-mNeonGreen BRETプローブを得るか、又は5'末端でmNeonGreenをコードするcDNAに融合し、3'末端でナノルシフェラーゼタンパク質をコードするcDNAに融合して、NanoLuc-SOFI-mNeonGreen BRETプローブを得るように、本明細書においてSOFIと称されるイオン強度センサー配列をコードするcDNAをクローニングすることによって構築した。N末端アクセプター又はドナータンパク質間のペプチドスペーサーは、センサーの操作性にとって重要ではない。したがって、RMQDAペプチドスペーサーを、必要に応じて、N末端アクセプター又はドナータンパクとcalfluxタンパク質との間に付加してもよく、PLAELペプチドスペーサーを、calfluxタンパク質とC末端ドナー又はアクセプタータンパク質との間に付加する。
【0119】
実施例1.3:カルシウム結合性BRETプローブの構築
Ca2+感受性の、遺伝子にコードされた生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)ベースのプローブを、Yang J.ら(2016) (Nature Communication, 2016, 27;7:13268. doi: 10.1038/ncomms13268)に記載されているように、終止コドンなしで、5'末端でナノルシフェラーゼ(nanoluciferase)をコードするcDNAに融合し、3'末端でmNeon緑色蛍光タンパク質をコードするcDNAに融合して、NanoLuc-calflux-mNeonGreen BRETプローブを得るか、又は5'末端でmNeonGreenをコードするcDNAに融合し、3'末端でナノルシフェラーゼ(nanoluciferase)タンパク質をコードするcDNAに融合して、NanoLuc-calflux-mNeonGreen BRETプローブを得るように、calfluxのアミノ酸配列をコードするcDNAをクローニングすることによって構築した。N末端アクセプター又はドナータンパク質間のペプチドスペーサーは、センサーの操作性にとって重要ではない。したがって、RMQDAペプチドスペーサーを、必要に応じて、N末端アクセプター又はドナータンパクとcalfluxタンパク質との間に付加してもよく、PLAELペプチドスペーサーを、calfluxタンパク質とC末端ドナー又はアクセプタータンパク質との間に付加する。
【0120】
実施例1.4:クロライド結合性BRETプローブの構築
クロライド感受性の、遺伝子にコードされた生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)ベースのプローブを、YFP又はYFPバリアントのアミノ酸配列をコードするcDNAを、その3'末端でナノルシフェラーゼをコードするcDNAに融合してクローニングし、クロライド感受性を付与する点突然変異をYFP構築物に導入することによって構築した(例えば、Galiettaら, FEBS letters, 2001, Jun 22;499(3):220-4. DOI:10.1016/s0014-5793(01)02561-3によって記載されているような突然変異H148Q及びI152L)。
【0121】
実施例2:センサーベースのBRETプローブを担持する発現ベクター
標的哺乳動物細胞におけるこのタンパク質の発現は、BRET技術を用いた、目的のチャネル及びイオンセンサーを含む融合タンパク質をコードするcDNAを含む発現ベクターのトランスフェクションによって可能になる。
標的とされた哺乳動物細胞におけるベクターの一過性又は安定な発現は、本発明によるBRETプローブによる標的とされたチャネルの活性の直接測定を可能にした。このタンパク質は、ルシフェラーゼ基質、例えば、セレンテラジンH(Celenterazine H)の添加中にシグナル(光)の放出を可能にした。ルシフェラーゼは当該基質の酸化を触媒した。この生化学反応は、ルシフェラーゼ/基質対に特徴的な波長で発光を生じる。ルシフェラーゼ/基質対の発光スペクトルに適合する励起スペクトルを有するアクセプターが、適切な配向に近接している場合、エネルギーの非放射移動(BRETシグナル)がドナーとアクセプターとの間で生じる。このエネルギー移動は、その発光波長でのアクセプターの蛍光によって特徴付けられる(図2)。典型的には、ドナーと適合するアクセプターとの間でエネルギーを移動させるために、2つの基は、互いから約10nmの距離になければならず、これは、相互作用のタンパク質-タンパク質に適合した距離である。
【0122】
実施例3:TRPV1チャネルを標的とするカルシウム感受性BRETプローブ
分子内BRETプローブ:hTRPV1-nLuc-Calflux-YFPを調製し、ここでヒトタンパク質TRPV1をコードするDNA配列がC末端でカルシウムセンサーに融合し、前記センサーはナノルシフェラーゼとYFP又はmNeonGreenとの間に挟まれている(Calflux probe, Yang J.らNature Communication, 2016, 27;7:13268. doi: 10.1038/ncomms13268.)。
本出願人は、プローブhTRPV1-nLuc-Calflux-YFP(又はmNeonGreen)の基底BRETシグナルが、TRPV1の主要アゴニストであるカプサシン(CAPS)による細胞の活性化に加えて用量依存的にモジュレートされることを示した(図4A)。
【0123】
この活性化は、以下の理由により、TRPV1を横切るイオンの通過に絶対的に特異的であった。
-TRPV1アンタゴニストであるAMG517は、CAPSに対する用量応答を右にシフトさせ、予想通りの競合阻害を示した(図4A)。
-nLuc-Calflux-YFPプローブは、TRPV1に融合されずに単独で発現させた場合、同時発現したTRPV1イオンチャネルの非存在下ではCAPSによる刺激に応答しなかった(図4A)。
【0124】
-Calfluxプローブをカルシウムに対して非感受性にする二重突然変異を含有するhTRPV1-nLuc-Calflux D13A/D51A-YFPプローブは、CAPS刺激に応答しなかった。この対照は、TRPV1チャネル上のCAPSによって誘導されるコンホメーション変化が、観察されたBRETシグナルの増加に関与しなかったことを示すのに重要であった(図4A)。
-イオノマイシン(カルシウムイオノフォア)を使用することによる細胞へのカルシウムの非特異的拡散は、遊離nLuc-Calflux-mNeonGreenプローブで測定した場合、BRETシグナルの用量依存的増加を引き起こさなかったが、TRPV-nLuc-Calflux-mNeonGreenプローブで得られたシグナルのわずかな増加を引き起こしただけであった(図4B)。
【0125】
これらのデータは、TRPV1チャネルを標的とする本明細書中に記載のBRETプローブが、TRPV1チャネルを横切るイオンの通過を特異的に反映し、したがってTRPV1の実際の活性を反映したことを明確に証明した。
この用量応答曲線の分析は、CAPSが328±33nMのEC50でTRPV1活性化を誘導することを示し、パッチクランプを用いた科学文献に見られるものと類似した薬理学的特性を有するCAPSに対するBRETプローブの感受性を示した。
【0126】
実施例4:カナル(canal)KCa2.3を標的とするセンサーベースのBRETプローブ
ルシフェラーゼとmNeonGreenとの間に挟まれたカリウムセンサー(タンパク質KBP、Ashrafet KUら, 2016, Structure 24, 741-749)にSK3チャネルのcDNAをカップリングすることによって、カリウムチャネルSK3(KCa2.3)の活性を測定するために、新規なBRETプローブを構築した(SK3-nLuc-KBP-mNeonGreen、図5A参照)。
SKチャネルは、細胞質カルシウム濃度の増加によって活性化されるカリウムチャネルのファミリーである。SK3チャネルの開口は、カリウムイオンの電気化学勾配に従って、開口した孔を通って拡散するカリウムイオンの小さな外向き流を誘導する。カルシウムの細胞質ゾルの増加を誘導するために、異なる濃度でイオノマイシンを添加した後、次いでSK3チャネルを活性化すると、SK3-nLuc-KBP-mNeonGreenプローブを発現するHEK293T細胞において測定されたBRETシグナルが減少し、細胞外へのカリウムの流出が示された(図5B)。BRETセンサーは、公開されているKBPに基づくが(Bischof Hら, 2017, Nat Commun. 8(1):1422)、このセンサーは、本発明において提示されるようにチャネルの活性を特異的に測定するためにチャネルにカップリングさせなかった。
【0127】
実施例5:受容体P2X2を標的とするセンサーベースのBRETプローブ
本発明者らは、rP2X2-nLuc-Calflux-YFPプローブを構築したが、ここで、ラットタンパク質P2X2をコードするDNA配列が、ナノルシフェラーゼとYFP又はmNeonGreenとの間に挟まれているカルシウムセンサーにC末端で融合されている(Calflux probe, Yang J.ら, Nature Communication, 2016, 27;7:13268. doi: 10.1038/ncomms13268.)。
本発明者らは、rP2X2-nLuc-Calflux-YFP(又はmNeonGreen)の基底BRETシグナルが、P2X2の天然アゴニストであるATPによる細胞の活性化後に用量依存的にモジュレートされたことを示すことができた(図6A)。この活性化は、以下の理由により、P2X2を通るイオンの通過に特異的である。
【0128】
1/nLuc-Calflux-YFPプローブをP2X2に融合させずに単独で発現させた場合、BRETプローブはATP刺激に応答しない(図6B)。
2/nLuc-Calflux-YFPプローブがTRPV1チャネルに融合している場合、このプローブは、ATP刺激に応答しないが(図6C)、TRPV1のアゴニストであるカプサイシン(CAPS)刺激に応答する。
用量応答曲線の分析は、ATPが888±274 nMのEC50でP2X2-NLuc-CalFlux-YFPプローブを活性化したことを示し、これは、P2X2 BRETプローブを活性化するATP効力が、従来技術を使用した科学文献に見られるような天然P2X2を活性化するATP効力と類似していることを示す。
【0129】
実施例6:NMDA受容体を標的とするセンサーベースのBRETプローブ
本発明者らは、NR1サブユニットのcDNAをBRETセンサーnLuc-Calflux-YFPにカップリングすることによって、NMDA受容体の活性を測定することを可能にする新規なBRETプローブを構築した(図7)。NMDA受容体は、2つのNR1サブユニット及び2つのNR2又はNR3サブユニットを含むヘテロ四量体である。別々に発現したサブユニットNR1、NR2又はNR3は、機能的受容体を形成することができない。
【0130】
本発明者らは、BRETプローブNR1-nLuc-Calflux-YFP単独を発現させた場合に生成されるBRETシグナルが安定であり、漸増用量のNMDAによってモジュレートされないことを示すことができた(図7A)。しかしながら、このプローブとサブユニットNR2A(図7B)又はNR2B(図7C)との同時発現により、機能的受容体が生成され、NMDAによる細胞の刺激後にNR1-nLuc-Calflux-YFP及びNR2Aサブユニットを同時発現するHEK293T細胞においてシグナルの増加が観察された。
【0131】
用量応答曲線の分析は、NMDAがNR1-nLuc-Calflux-YFP/NR2A及びNR1-nLuc-Calflux-YFP/NR2Bイオンチャネルをそれぞれ79.7μM+/-17.2μM及び12.3+/-7.32μMのEC50で活性化したことを示した。これらのデータは、科学文献と完全に一致しており、したがって、NR2Aサブユニットを含むヘテロマー受容体は、NR2Bサブユニットを含む受容体よりもNMDAに対して感受性が低いことを示している。
【0132】
実施例7:カルシウム透過性カチオンチャネルTRPM8を標的とするセンサーベースのBRETプローブ
分子内BRETプローブ:hTRPM8-nLuc-Calflux-YFPを調製し、ここでヒトタンパク質TRPM8をコードするDNA配列がC末端でcalfluxベースのカルシウムBRETセンサーに融合し、前記センサーはナノルシフェラーゼとYFP又はmNeonGreenとの間に挟まれている。
【0133】
実施例8:カルシウム透過性カチオンチャネルTRPV4を標的とするセンサーベースのBRETプローブ
分子内BRETプローブ:hTRPV4-nLuc-Calflux-YFPを調製し、ここでヒトタンパク質TRPV4をコードするDNA配列がC末端でcalfluxベースのカルシウムBRETセンサーに融合している。
【0134】
実施例9:ナトリウムチャネルNav1.7を標的とするセンサーベースのBRETプローブ
分子内BRETプローブ:Nav1.7-nLuc-SOFI-YFPを調製し、ここでヒトタンパク質TRPV4をコードするDNA配列がC末端でSOFIベースのイオン強度BRETセンサーに融合している。
【0135】
実施例10:カリウムチャネルKv7.1を標的とするセンサーベースのBRETプローブ
分子内BRETプローブ:Kv7.1-nLuc-KBP-YFPを調製し、ここでヒトタンパク質TRPV4をコードするDNA配列がC末端でKBPベースのカリウムBRETセンサーに融合している。
【0136】
実施例11:1つのクロライドチャネルLRRC8Aを標的とするセンサーベースのBRETプローブ
分子内BRETプローブ:LRRC8A-nLuc-YFP H148Q;I152Lを調製し、ここでヒトタンパク質LRRC8AをコードするDNA配列は、C末端で、NanoLuc及びクロライド感受性YFP変異体を含むクロライドベースのBRETセンサー(YFP H148Q;I152L)に融合している。
【0137】
実施例12:TRPV1イオンチャネルを標的とするカルシウムセンサーベースのBRETプローブを用いたTRPV1を通るカルシウムイオン流の評価
実施例3において上述したように、分子内BRETバイオセンサープローブhTRPV1-nLuc-Calflux-mNeonGreenを調製し、ここでヒトタンパク質TRPV1をコードするDNA配列がC末端でカルシウムセンサーに融合し、前記センサーはナノルシフェラーゼとmNeonGreenとの間に挟まれている(Calflux probe, Yang J.ら, Nature Communication, 2016, 27;7:13268. doi: 10.1038/ncomms13268.)。
【0138】
mNeonGreen-Calflux-nLuc-hTRPV1 BRETバイオセンサーを発現するHEK293T細胞を、BRET分析のために処理した。静止状態で測定された基底BRETは、原型TRPV1アゴニストカプサイシン(CAPS)への曝露後に一次動態で劇的に増加したが、内因性P2Y受容体の活性化を介して細胞内ストアからのカルシウム放出を誘発することが知られているATPへの曝露後にわずかに且つ一過性に増加しただけであった(図8A)。これらの結果は、mNeonGreen-Calflux-nLuc-hTRPV1 BRETバイオセンサーが、TRPV1を介してセルに入るカルシウムを特異的にプローブすることができ、セル内のカルシウム上昇によってわずかに活性化されるだけであることを示す。測定されたCAPS誘導性BRET増加がTRPV1イオンチャネルの四次構造へのコンホメーション変化に関連しないことを除外するために、本発明者らは、カルシウム非感受性変異型Calfluxレポーター(D13A及びD51A)を含むhTRPV1-nLuc-Calflux D/A-sYFP2 BRETプローブを使用した。この変異型BRETプローブを発現する細胞では、CAPS活性化後にBRET増加を有意に検出することができなかったので(図8B)、本発明者らは、TRPV1に融合したCalfluxベースのBRETバイオセンサーが、TRPV1孔の細胞質内へのナノ環境におけるカルシウムイオン量の変動に効果的に応答していると結論付けた。次に、本発明者らは、内因性又は過剰発現TRPV1を発現する細胞に対するパッチクランプ又はカルシウムフラックス測定を使用して、アゴニスト誘導性BRET増加が用量依存的であり、半最大応答(図8C)が文献に報告されているものと一致することを立証した。リガンドによって促進されるBRET変化の薬理学的選択性は、CAPS効力のより高い値へのシフトによって示されるように(図8C)、周知のTRPV1競合的アンタゴニストであるAMG517がCAPS誘導性BRET増加を阻害したので、効果の競合的性質によってさらに実証された。本発明者らはまた、mNeonGreen-Calflux-nLuc-hTRPV1 BRETバイオセンサーが、異なる効力を示すと予想される既知のTRPV1アゴニストとアンタゴニストとを識別することができるかどうかを検討した。これらの実験では、mNeonGreen-Calflux-nLuc-hTRPV1 BRETバイオセンサーを一過性に発現するHEK293T細胞に、漸増量の4つのTRPV1アゴニスト(図8D)で、又は漸増量の種々のTRPV1アンタゴニスト(図8E)で挑んだ。各試験化合物について、本発明者らは、TRPV1を活性化するか、又はCAPS誘導性TRPV1活性化を阻害する試験リガンドの既知の能力と相関する用量依存的BRET調節を測定することができた。重要なことに、TRPV4の既知の特異的アンタゴニストであるRN1734は、CAPS活性化TRPV1を阻害できなかった。全体として、これらのデータは、両方のプローブ立体配置におけるアゴニスト促進BRET変化が、生細胞におけるTRPV1チャネルの活性化に対応することを強く示唆する。
【0139】
実施例13:これらのイオンチャネルを標的とするカルシウムセンサーベースのBRETプローブを使用した、TRPV4、TRPM8及びPIEZO1を通るカルシウムイオン流の評価
実施例7及び8で上述したように、分子内BRETバイオセンサープローブhTRPM8-nLuc-Calflux-mGreen及びhTRPV4-nLuc-Calflux-mGreenを調製し、ここで、ヒトタンパク質TRPM8をコードするDNA配列は、C末端において、calfluxベースのカルシウムBRETセンサーに融合されており、前記センサーはナノルシフェラーゼとmNeonGreenとの間に挟まれている。
【0140】
他のイオンチャネルに融合したカルシウムセンサーベースのBRETプローブの概念を例示及び検証するために、本発明者らはまず、2つの他のTRPイオンチャネル、TRPV4及びTRPM8の活性もそのようなBRETプローブを使用して測定することができるかどうかを評価した。図9A及び9Bに示されるように、mNeonGreen-Calflux-nLuc-hTRPV4及びmNeonGreen-Calflux-nLuc-hTRPM8 BRETプローブを一過性に発現するHEK293T細胞について測定されたBRETシグナルは、それぞれTRPV4及びTRPM8の2つの特異的アゴニストであるGSK1016790A及びWS12の細胞培養培地への添加後に用量依存的に増加した。測定された半最大応答は、TRPV4又はTRPM8を一過性に発現する細胞に対するパッチクランプ又はカルシウムフラックス測定を用いた文献に報告されたものと一致した。リガンドによって促進されるBRET変化の薬理学的選択性は、それぞれTRPV4及びTRPM8の2つの周知の競合的アンタゴニストであるHC060747及びM8Bの両方が、対応するアゴニスト効力をより高い値に右方シフトさせたので、効果の競合的性質によってさらに実証された。全体的に見て、これらのデータは、TRPV4及びTRPM8 BRETプローブにおけるアゴニスト促進BRET変化が、生細胞におけるこれら2つのイオンチャネルの活性化に対応することを強く示唆する。
【0141】
次いで、本発明者らは、TRPV1、TRPV4及びTRPM8を用いて得られた結果によれば、PIEZO1のN末端先端が、他者によって示唆されるように細胞質内に位置する場合、PIEZO1チャネルを通るカルシウム流を評価するのに有用であるはずであるmNeonGreen-Calflux-nLuc-PIEZO1 BRETプローブを構築した。図9Cに示されるように、mNeonG-Calflux-nLuc-PIEZO1 BRETプローブを一過性に発現するHEK293T細胞で測定されたBRETシグナルは、漸増量の、PIEZO1の既知のアゴニストであるYODA1を細胞培養培地に添加した後、用量依存的に増加した。これにより、PIEZO1を標的とする本発明者らのカルシウムセンサーベースのBRETプローブの機能性が立証される。
【0142】
実施例14:TREK1、KiR6.1、及びNaV1.8チャネルを標的とするカルシウムセンサーベースのBRETプローブを使用した、非TRPイオンチャネルを通るカリウム及びナトリウムイオン流の評価
イオンセンサーベースのBRETプローブが他のタイプのイオンチャネルをプローブするのに有用である可能性があることをさらに実証するために、本発明者らは、mNeon-KBP-nLuc-TREK1及びmNeon-KBP-nLuc-KiR6.1(KBPカリウムセンサーをmNeonGreenとNanoLucとの間に挟み、TREK1及びKiR6.1カリウムチャネルの両方のN末端に融合させた)、並びにmNeon-SOFI-nLuc-NaV1.8 BRETプローブ(イオン強度センサーをmNeonGreenとnanoLucとの間に挟み、テトロドトキシン(TTX)耐性電位開口型ナトリウムチャネルNaV1.8のN末端に融合させた)を構築した。TREK1BRETプローブを、化学アクチベーターBL1249を使用して活性化した。Kir6.1BRETプローブを、KClを用いて活性化した。脱分極後、強い外向きカリウム電流がHEK293T細胞において生じることが知られている。したがって、細胞外カリウムイオンは、異所的に発現した内向き整流イオンチャネル、例えば、KiR6.1を介して細胞に再進入し、それによってKiRイオンチャネルの細胞内近傍におけるカリウムの局所濃度を増加させることが予想される。NaV1.8を、テトロドトキシン耐性ナトリウムチャネルの開口状態を延長することが知られているピレスロイド毒素であるデルタメトリンの存在下で活性化した。漸増量のBL1249を用いたTREK1の反復活性化は、mNeon-KBP-nLuc-TREK1 BRETプローブを用いて測定された基底BRETを用量依存的に増加させたが、そのような効果は、モック(mock)活性化条件を使用して検出することができなかった(図10A)。BRETシグナルの増加は、BL1241によるTREK1の反復活性化後に、TREK1孔の細胞質微小環境中のカリウム濃度が増加することを示す。驚くべきことではあるが、それにもかかわらず、この観察結果は、TREK1が、カリウムを細胞外に漏出させることによって細胞膜の過分極を誘発し、したがって、細胞内カリウム濃度を低下させて細胞外カリウム濃度と平衡するようにすることを考えれば説明できる。その条件では、カリウムがTREK1開口孔を通って内向きに流れることが示されており、これは本発明者らの観察と一致する。予想通り、DMSO単独でのモック(mock)活性化は、TREK1 BRETプローブの活性化を誘導できなかった(図10A)。本発明者らはさらに、KCl脱分極が、mNeon-KBP-nLuc-KiR6.1を発現するHEK293T細胞について測定されるBRETシグナルの増加を誘発し得ることを評価することができ(図10B)、これもまた、KiR6.1イオンチャネルの既知の内向き整流活性と一致した。最後に、デルタメトリンは、mNeon-SOFI-nLuc-NaV1.8を発現するHEK293T細胞について測定されたBRETシグナルの減少を誘発することに成功し(図10C)、これは、細胞質側のNaV1.8孔微小環境においてイオン強度が増加していることを示しており、ナトリウムがNaV1.8イオンチャネル孔を通じてその開口に続いて内向きに流れているという考えと一致している。全体的に見て、これらの結果は、分子内BRETバイオセンサーが、TRP-イオンチャネルファミリーだけでなく、種々のイオンチャネルファミリーに属するイオンチャネルのゲーティング中に生じるコンホメーション変化をプローブすることができることを立証する。
【0143】
実施例15:全てのP2X受容体を標的とするセンサーベースのBRETプローブ
本発明者らは、7つのヒト又はマウスP2XサブユニットをコードするDNA配列が、ナノルシフェラーゼ(nanoluciferase)とmNeonGreenとの間に挟まれたcalfluxカルシウムセンサーにC末端で個々に融合されている、ヒト及びマウスP2X-NeonGreen-Calflux-nLucプローブを構築した(図11左パネル)。本発明者らは、hP2X2、hP2X4、hP2X5、hP2X7及びmP2X4-NeonGreen-Calflux-nLucプローブの基底BRETシグナルが、ATP(又はhP2X7についてはBz-ATP、図11右パネル)による細胞の活性化後に用量依存的にモジュレートされたことを示すことができた。
【0144】
用量応答曲線の分析は、ATP又はBzATPが、科学文献に見出され、従来技術を使用して測定された天然P2Xを活性化するATP又はBzATP効力と類似したEC50(hP2X2,4,5,7及びmP2X4についてそれぞれ1.63+/-0.18、0.49+/-0.06、0.48+/-0,07、49.00+/-11.51μM)でP2X-NeonGreen-Calflux-nLucプローブを活性化したことを示した。
【0145】
実施例16:AMPA(GluA1)受容体を標的とするセンサーベースのBRETプローブ
本発明者らは、サブユニットGluA1のcDNAをBRETセンサーnLuc-Calflux-YFPにカップリングすることによって、GluA1受容体の活性を測定することを可能にする第2世代BRETプローブを構築した(図12、左パネル)。グルタミン酸によるAMPA受容体脱感作を遮断するために、本発明者らは、先に記載したようにL497Y点突然変異を導入した(Stern-Bach Y, Russo S, Neuman M, and Rosenmund C (1998) A point mutation in the glutamate binding site blocks desensitization of AMPA receptors. Neuron 21:907-918)。
【0146】
本発明者らは、BRETプローブGluA1-L497Y-nLuc-Calflux-YFP単独を発現させた場合に生成されるBRETシグナルが安定であり、漸増用量のグルタミン酸によってモジュレートされることを示すことができた(図12、右パネル)。用量応答曲線の分析は、グルタミン酸が8.98+/-1.019μMのEC50でバイオセンサーを活性化したことを示した。これらのデータは、HEK293細胞におけるパッチクランプ記録によって得られたグルタミン酸に対するホモマーGluA1-L497Y受容体の親和性を報告する科学文献と一致している。
【0147】
実施例17:Cysループ受容体ファミリーを標的とするセンサーベースのBRETプローブ
本発明者らは、カチオン性及びアニオン性Cysループ受容体の活性を測定することを可能にする第2世代BRETプローブを構築した。
カチオン性受容体については、本発明者らは、センサーNLuc-CalFlux-sYFP2(NL-CF-YFP)又はNeonGreen-Calflux-nLuc(NG-CF-NL)のcDNAを、それぞれ5-HT3A受容体又はアルファ-4及びベータ-2ニコチン性受容体の第2の細胞内ループに挿入した(図13A)。本発明者らは、BRETプローブ5-HT3A-NL-CF-YFP(図13C)又はNG-CF-NLに融合したアルファ-4及びベータ-2ニコチン性サブユニットの組合せ(図13B)を発現する場合に生成されるBRETシグナルが安定であり、それぞれのアゴニスト刺激によってモジュレートされることを示すことができた。
【0148】
本発明者らはまた、YFPのクロライド感受性バリアント(YFP Chlore又はYPetCl)のcDNAをnLucのcDNAに融合させることによってアニオンフラックスを感知することを可能にするBRETプローブを開発した(図13D)。HEK細胞において発現した場合、このプローブは、低浸透圧チャレンジ後にVRACチャネル開口によって生成されるアニオン流入を検出することができる(図13F)。このプローブに基づいて、本発明者らは、アニオン性GABA受容体の活性を測定することを可能にするバイオセンサーを作製した。本発明者らは、YPetClセンサーのcDNAをGABARho1サブユニットの第2の細胞内ループに挿入した(図13E)。本発明者らは、タグ付けされていないGABARho1サブユニットと組み合わせてか又は組み合わせずにBRETプローブを発現する場合に生成されるBRETシグナルが安定であり、GABA刺激によってモジュレートされることを示すことができた(図13G)。
図1
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【国際調査報告】