(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】脳障害を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20230426BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230426BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230426BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230426BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230426BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P25/16
A61P9/00
A61P25/28
A61P25/00
A61K38/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538393
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 US2020066179
(87)【国際公開番号】W WO2021127541
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178131
【氏名又は名称】ニューロネイザル, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522246463
【氏名又は名称】バーク ニューロロジカル インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, ダグラス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ラタン, ラジブ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドショー, トーマス アイ.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA15
4C084BA23
4C084DC31
4C084MA13
4C084MA59
4C084NA10
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA361
4C084ZA362
4C206AA01
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4C206JA58
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA79
4C206NA10
4C206ZA02
4C206ZA16
4C206ZA36
(57)【要約】
本開示は、鼻腔内の鼻から脳への投与によりN-アセチルシステイン(NAC)を投与する方法を記載する。鼻腔内のNACの鼻から脳への投与の効果は、分析技術、例えば、磁気共鳴分光法(MRS)を使用してモニタリングすることができる。一部の実施形態では、鼻腔内の鼻から脳へのNACは、状態、例えば脳傷害を処置するために使用することができる。本発明は、例えば、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、前記対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、前記鼻腔内投与により、治療有効量の前記NACまたはその前記同族体を前記鼻から前記脳に提供し、前記対象が、前記鼻腔内投与の際に、前記NACまたはその前記同族体に実質的に全身曝露されない、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、前記対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、前記鼻腔内投与により、治療有効量の前記NACまたはその前記同族体を前記鼻から前記脳に提供し、前記対象が、前記鼻腔内投与の際に、前記NACまたはその前記同族体に実質的に全身曝露されない、方法。
【請求項2】
前記脳障害が、脳震盪である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脳障害が、脳震盪後症候群である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記脳障害が、軽度外傷性脳傷害である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脳障害が、外傷性脳傷害である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脳障害が、競技活動に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記脳障害が、神経変性疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記脳障害が、認知症である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記脳障害が、年齢関連性である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記脳障害が、パーキンソン病である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記脳障害が、脳卒中である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記同族体が、グルタチオン(GSH)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記用量の実質的にすべてが、前記対象の血液脳関門を通過することなく前記脳に入る、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記NACまたはその前記同族体が、前記鼻腔内投与後に、前記対象の嗅上皮を通過し、次に、前記嗅上皮を通過した後、前記NACまたはその前記同族体が、前記対象の嗅神経に入り、次に、前記嗅神経を通過した後、前記NACまたはその前記同族体が前記脳に入る、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記NACまたはその前記同族体が、前記鼻腔内投与後に、前記対象の嗅上皮を通過し、次に、前記嗅上皮を通過した後、前記NACまたはその前記同族体が、前記対象の嗅神経に入り、次に、前記嗅神経を通過した後、前記NACまたはその前記同族体が前記対象の脳脊髄液に入り、次に前記NACが前記脳に入る、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記NACまたはその前記同族体が、前記鼻腔内投与後に、前記対象の呼吸上皮を通過し、次に、前記呼吸上皮を通過した後、前記NACまたはその前記同族体が、前記対象の三叉神経を通過し、次に、前記三叉神経を通過した後、次に、前記NACまたはその前記同族体が前記脳に入る、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記治療有効量が、約1mg/kg~約10mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記治療有効量が、約100mg~約400mgである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記用量が、鼻ポンプを使用して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記用量が、アトマイザーを使用して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記用量が、ネブライザーを使用して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記用量の実質的にすべてが、前記対象の鼻腔に入る、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年2月5日出願の米国仮出願第62/970,254号および2019年12月18日出願の米国仮出願第62/949,640号の利益を主張しており、これらの仮出願は、それらの全体が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
軽度外傷性脳傷害(mTBI)としても知られるの脳震盪は、脳に伝わった機械的侵襲に起因する、脳機能の一過性の臨床的に検出可能な変化である。N-アセチルシステイン(NAC)は、抗酸化物質、脳グルタチオン(GSH)前駆体、ならびに神経興奮毒性および神経炎症の阻害剤として作用し、TBI後神経毒性を処置するために使用することができる。
【0003】
参照による援用
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により組み込まれることがあたかも具体的かつ個々に示されているのと同程度に、参考として本明細書に援用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本明細書では、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、対象が、鼻腔内投与の際に、NACまたはその同族体に実質的に全身曝露されない、方法が開示される。
【0005】
本明細書では、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステインNACまたはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体の実質的にすべてが、対象の血液脳関門を通過することなく脳に入る、方法が開示される。
【0006】
本明細書では、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステインNACまたはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACを鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が脳に入る、方法が開示される。
【0007】
本明細書では、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステインNACまたはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の脳脊髄液に入り、次に、NACまたはその同族体が脳に入る、方法が開示される。
【0008】
本明細書では、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻にN-アセチルシステインNACまたはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、NACが対象の三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、次に、NACが脳に入る、方法が開示される。
【0009】
本明細書では、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻にN-アセチルシステインNACまたはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、呼吸上皮または嗅上皮を通過し、NACが鼻の吻側移動流経路を移動し、次に、吻側移動流経路を移動した後、脳に入る、方法がさらに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1のパネルAは、鼻神経支配を示す。
図1のパネルBは、薬物送達の鼻から脳への経路、ならびに体循環および血液脳関門を移動する、鼻から血液、血液から脳への経路を示す。
【0011】
【
図2】
図2は、鼻から直接、脳への薬物輸送に関連する、重要な解剖学的構造および神経を示す、ヒトの鼻および脳の横断面を示す。
【0012】
【
図3】
図3は、本明細書において開示されている薬物の経鼻投与後の様々な経路を示す。
【0013】
【
図4】
図4は、本明細書において開示されている治療薬の鼻から脳への異なる直接的な輸送機構を示す。
【0014】
【
図5】
図5は、各解剖学的経路に関して、鼻から脳への直接送達が、細胞の横もしくは周囲であるが外側の大きな流れ(細胞外経路)によって、またはニューロンを介した細胞内経路によって、または他の支持する細胞を横切ってもしくはそれに沿って起こることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
軽度外傷性脳傷害(mTBI)としても公知の脳震盪は、脳に伝わった機械的侵襲により生じる、脳機能の一過性の臨床的に検出可能な変化である。N-アセチルシステインNACは、抗酸化物質、脳グルタチオン(GSH)前駆体、ならびに神経興奮毒性および神経炎症の阻害剤として作用し、TBI後神経毒性を処置するために使用することができる。
【0016】
NACは、グルタチオン上昇生合成をもたらすL-システインの低分子前駆体である。NACは、フリーラジカル、例えば、酸素フリーラジカルのスカベンジャーとして直接作用する、強力な抗酸化物質である。NACは、活性酸素種(ROS)のクエンチング、酸化的反応性金属イオンのキレート化、抗炎症、およびシスチン-グルタミン酸アンチポーターを介する神経調節を含めた様々な生化学的および薬理学的作用機序により、急性および慢性中枢神経系(CNS)障害に対して様々な多面的な有益な効果を有する。NACはまた、内因性抗酸化物質グルタチオン(GSH)の濃度およびバイオアベイラビリティー、抗興奮毒性活性、ならびに重金属キレート活性を増大することができる。
【0017】
NAC、NAC同族体およびNAC誘導体は、ヒトおよび前臨床的な動物モデルでは、外傷性脳傷害(TBI)を含めた、脳傷害および脳障害の急性および慢性の限局性びまん型において有益な効果を示すことができる。NACの薬理学的特性は、NACのシステインおよび還元型GSHへの代謝変換に由来し、これらは、傷害性神経興奮毒性、酸化的損傷および炎症からの保護をもたらす。NACは、システイン-グルタミン酸輸送体のための基質であるシステインを生成することによって、神経興奮毒性からの保護をもたらす。しかし、NACは、高い初回通過肝代謝および血液脳関門(BBB)を通過する不確かな輸送のために、全身的な利用可能性に乏しく、経口バイオアベイラビリティーに乏しい。NACの容易に入手可能な水溶液の耐容量-体積は、多くの場合、十分なレベルの測定される脳の透過性および/または生物活性を達成することができない。本明細書では、鼻腔内(IN)の鼻から脳への直接送達を使用する、中枢神経系(CNS)にNACまたはGSHを投与する方法が、提供される。
【0018】
一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステインNACまたはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、対象が、鼻腔内投与の際に、NACまたはその同族体に実質的に全身曝露されない、方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステインNACまたはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体の実質的にすべてが、対象の血液脳関門を通過することなく脳に入る、方法を提供する。
【0019】
一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステインNACまたはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACを鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が脳に入る、方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステインNACまたはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の脳脊髄液に入り、次に、NACまたはその同族体が脳に入る、方法を提供する。
【0020】
一部の実施形態では、本開示は、必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻にN-アセチルシステインNACまたはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、NACが対象の三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、次に、NACが脳に入る、方法を提供する。
本開示の化合物
【0021】
NACは、アセトアミノフェン誘発性肝不全を処置するため、および嚢胞性線維症または慢性閉塞性肺疾患を有する、粘液の濃い個体を和らげるために使用される、グルタチオンプロドラッグである。NACは、静脈内に、口から、またはミストとして吸入することにより、摂取することができる。NACの一般的副作用には、NACを経口投与する場合の悪心および嘔吐が含まれる。NACはまた、皮膚発赤およびそう痒、ならびに非免疫タイプのアナフィラキシーを引き起こす場合がある。NACは、複数の推定上の作用標的を有し、NACは、CNSに浸透しにくい。NACは、用量依存的に、悪心および嘔吐を引き起こし、気管支けいれんを誘発し、凝血を遅延し、神経毒性を誘発することが報告されている。これらの問題は、出血性脳卒中を有する患者に問題を生じる場合がある。
【0022】
本開示は、ある状態を処置するための少なくとも1つの化合物または薬学的に許容されるその塩の使用を記載する。一部の実施形態では、化合物は、N-アセチルシステインNAC、NACアミド(NACA)、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはNACデンドリマー(D-NAC)、または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、化合物は、NACプロドラッグまたは薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、化合物は、NACである。一部の実施形態では、化合物は、NAC誘導体である。一部の実施形態では、NAC誘導体は、GSHである。
【化1】
【0023】
一部の実施形態では、化合物は、NACデンドリマーである。デンドリマー-NAC(D-NAC)は、NACがジスルフィド連結によってデンドリマーの表面に共有結合している、デンドリマーコンジュゲートである。一部の実施形態では、D-NACは、ポリアミドアミン(PAMAM)ヒドロキシルデンドリマーを含む。一部の実施形態では、D-NACは、硫酸ポリグリセロールデンドリマーを含む。一部の実施形態では、D-NACは、ポリアミンデンドリマーを含む。一部の実施形態では、D-NACは、ポリアミドデンドリマーを含む。一部の実施形態では、D-NACは、リンカーを含む。一部の実施形態では、GABAは、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)リンカーを含む。一部の実施形態では、D-NACは、スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)リンカーを含む。
【0024】
一部の実施形態では、D-NACは、式:
【化2】
を有する。
【0025】
一部の実施形態では、D-NACは、式:
【化3】
を有する。
本開示の化合物の純度
【0026】
本開示の任意の化合物(例えば、NAC、NAC同族体またはNAC誘導体)は、精製することができる。本開示の化合物(例えば、NAC、NAC同族体またはNAC誘導体)は、薬物と指定され得る。本明細書に記載される化合物は、少なくとも1%純粋、少なくとも2%純粋、少なくとも3%純粋、少なくとも4%純粋、少なくとも5%純粋、少なくとも6%純粋、少なくとも7%純粋、少なくとも8%純粋、少なくとも9%純粋、少なくとも10%純粋、少なくとも11%純粋、少なくとも12%純粋、少なくとも13%純粋、少なくとも14%純粋、少なくとも15%純粋、少なくとも16%純粋、少なくとも17%純粋、少なくとも18%純粋、少なくとも19%純粋、少なくとも20%純粋、少なくとも21%純粋、少なくとも22%純粋、少なくとも23%純粋、少なくとも24%純粋、少なくとも25%純粋、少なくとも26%純粋、少なくとも27%純粋、少なくとも28%純粋、少なくとも29%純粋、少なくとも30%純粋、少なくとも31%純粋、少なくとも32%純粋、少なくとも33%純粋、少なくとも34%純粋、少なくとも35%純粋、少なくとも36%純粋、少なくとも37%純粋、少なくとも38%純粋、少なくとも39%純粋、少なくとも40%純粋、少なくとも41%純粋、少なくとも42%純粋、少なくとも43%純粋、少なくとも44%純粋、少なくとも45%純粋、少なくとも46%純粋、少なくとも47%純粋、少なくとも48%純粋、少なくとも49%純粋、少なくとも50%純粋、少なくとも51%純粋、少なくとも52%純粋、少なくとも53%純粋、少なくとも54%純粋、少なくとも55%純粋、少なくとも56%純粋、少なくとも57%純粋、少なくとも58%純粋、少なくとも59%純粋、少なくとも60%純粋、少なくとも61%純粋、少なくとも62%純粋、少なくとも63%純粋、少なくとも64%純粋、少なくとも65%純粋、少なくとも66%純粋、少なくとも67%純粋、少なくとも68%純粋、少なくとも69%純粋、少なくとも70%純粋、少なくとも71%純粋、少なくとも72%純粋、少なくとも73%純粋、少なくとも74%純粋、少なくとも75%純粋、少なくとも76%純粋、少なくとも77%純粋、少なくとも78%純粋、少なくとも79%純粋、少なくとも80%純粋、少なくとも81%純粋、少なくとも82%純粋、少なくとも83%純粋、少なくとも84%純粋、少なくとも85%純粋、少なくとも86%純粋、少なくとも87%純粋、少なくとも88%純粋、少なくとも89%純粋、少なくとも90%純粋、少なくとも91%純粋、少なくとも92%純粋、少なくとも93%純粋、少なくとも94%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも96%純粋、少なくとも97%純粋、少なくとも98%純粋、少なくとも99%純粋、少なくとも99.1%純粋、少なくとも99.2%純粋、少なくとも99.3%純粋、少なくとも99.4%純粋、少なくとも99.5%純粋、少なくとも99.6%純粋、少なくとも99.7%純粋、少なくとも99.8%純粋、または少なくとも99.9%純粋であり得る。
鼻腔内の鼻から脳への送達
【0027】
本明細書において実証されている通り、鼻腔は、鼻粘膜が薬学的に活性な分子の効率的な吸収をもたらすので、薬物送達にとって好適である。鼻腔の最上部は、脳の近傍に位置し、脳に突き出た神経を内包する。したがって、血液脳関門を迂回する有用な戦略は、鼻から脳への薬物の送達である(本明細書において、「鼻から脳へ」または「N2B」と呼ばれる)。鼻から脳への薬物投与経路は、嗅神経および/または三叉神経を介して、脳に物質を送達する。鼻から脳への送達は、低分子薬物、ペプチドまたはタンパク質、幹細胞、ウイルスおよびヌクレオチドを送達するために使用することができる。
【0028】
したがって、鼻粘膜に堆積する薬学的に活性な低分子(例えば、NACまたはGSH)または生物学的分子(例えば、ペプチド)は、1つまたは複数の多重代替経路または相補経路によって、CNSに直接、移動することができる。CNS送達の有効性は、堆積の解剖学的部位、薬物または生物剤の分子特徴、製剤、および考慮される動物種に依存し得る。鼻から脳への送達は、適切な患者の服薬遵守により、侵襲性が最小限となり得る。
【0029】
本明細書では、急性または慢性脳障害による傷害に感受性の高い、またはこれを受けた脳の1つまたは複数の領域への、本開示の化合物の鼻から脳への送達を最適化するための、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NACの鼻腔内投与の使用が、開示される。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NACの鼻腔内の鼻から脳への送達は、脳傷害を予防する、その発症の可能性を低下させる、脳傷害を遅延させるまたは改善することができる。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NACの鼻腔内の鼻から脳への送達は、脳傷害に関連する徴候、症状または能力障害を改善または予防することができる。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NACの鼻腔内の鼻から脳への送達は、処置抵抗性うつ病の徴候または症状を改善または予防することができる。一部の実施形態では、NAC同族体は、GSHである。
【0030】
また本明細書では、活性物質を排出する体循環を回避すると同時に、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NACの脳への直接輸送を促進し、これによって、全身的配置(disposition)を回避する、送達デバイスおよび製剤が開示される。一部の実施形態では、本開示の送達デバイスおよび製剤は、NACの直接輸送を促進する。一部の実施形態では、本開示の送達デバイスおよび製剤は、GSHの直接輸送を促進する。本開示の鼻腔内NACまたはGSH製剤は、鼻から脳への薬物輸送の解剖学的経路に特異的な門脈へのNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NACの進入を容易にするよう設計されている。一部の実施形態では、本開示の鼻腔内NACまたはGSH製剤により、より高い濃度のNACまたはGSHを鼻粘膜表面に送達することを可能にすることによって、鼻から脳への薬物輸送によるNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NACの進入が最大化される。一部の実施形態では、本開示の鼻腔内NACまたはGSH製剤により、粘膜繊毛クリアランスおよび体循環を介する排出によって、鼻により送達されるNACまたはGSHの局所喪失を最小化することによって、鼻から脳への薬物輸送によるNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体(例えば、GSH)またはD-NACの進入が最大化される。一部の実施形態では、本開示の鼻腔内NACまたはGSH製剤により、鼻腔の内部を覆っている粘液障壁を介する送達、ならびにNACおよびGSHの固有の粘膜溶解特徴からの送達機構の利益を増大することによって、鼻から脳への薬物輸送によるNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体(例えば、GSH)またはD-NACの進入が最大化される。一部の実施形態では、本開示の鼻腔内NACまたはGSH製剤により、鼻上皮細胞を介するもしくはこれらの細胞間の輸送を増強することによって、または脳に突き出た神経細胞を取り囲む空間への取り込み量を増加させることによって、鼻から脳への薬物輸送によるNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体(例えば、GSH)またはD-NACの進入が最大化される。
【0031】
図1Aは、鼻神経支配を示す。
図1Bは、化合物送達の鼻から脳への経路、ならびに体循環および血液脳関門を移動する、鼻から血液、血液から脳への経路を示す。
図1Bに示されている一部の実施形態では、鼻から脳への送達は、嗅覚路を介して媒介される。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に、嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、化合物は嗅神経を通過し、次に、嗅神経を通過した後、化合物は脳に入る。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、化合物は嗅神経を通過し、次に、嗅神経を通過した後、化合物は脳脊髄液に入り、次に、脳脊髄液に入った後、化合物は脳に入る。一部の実施形態では、化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、化合物は嗅神経を通過し、次に、嗅神経を通過した後、化合物は、脳脊髄液を通り抜けることなく脳に直接入る。
【0032】
図1Bに示されている一部の実施形態では、鼻から脳への送達は、三叉神経経路を介して媒介される。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、化合物は三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、化合物は脳に入る。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、化合物は三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、化合物は脳脊髄液に入り、次に、脳脊髄液に入った後、化合物は脳に入る。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、化合物は三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、化合物は、脳脊髄液を通り抜けることなく脳に直接入る。
【0033】
図2は、鼻から直接、脳への化合物輸送に関連する、重要な解剖学的構造および神経を示す、ヒトの鼻および脳の横断面を示す。
図3は、本明細書で開示される化合物の経鼻投与後の3つの異なる経路を示す。これらを介して化合物が非血液由来の経路によって脳に到達する複数の鼻腔面、輸送プロセス、および解剖学的コンパートメントが示されている。化合物の鼻から脳への送達は、血液脳関門を通過する送達の血液由来経路が回避され、血液脳関門を通過する送達の血液由来経路とは区別される(
図3、断続線の四角形で示されている)。
図3に示されている一部の実施形態では、鼻から脳への送達は、嗅覚路を介して媒介される。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、化合物はくも膜下腔を通過する。本明細書で開示される化合物は、傍細胞輸送によってくも膜下腔に入ることができる。さらにまたは代替的に、化合物は、経細胞輸送によってくも膜下腔に入ることができる。次に、くも膜下腔に入った後、化合物は脳脊髄液に入り、次に、脳脊髄液に入った後、化合物は脳に入る。
図3に示されている一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、化合物は嗅神経を通過し、次に、嗅神経を通過した後、化合物は、軸索輸送機構により嗅球に入る。次に、嗅球に入った後、化合物は脳に入る。
図3に示されている一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、化合物は嗅神経を通過し、次に、嗅神経を通過した後、化合物は、軸索輸送機構により脳幹に入る。次に、脳幹に入った後、化合物は脳に入る。
【0034】
図3に示されている一部の実施形態では、鼻から脳への送達は、三叉神経経路を介して媒介される。一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、化合物は三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、化合物は、軸索輸送機構により嗅球に入る。次に、嗅球に入った後、化合物は脳に入る。
図3に示されている一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、化合物は三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、化合物は、軸索輸送機構により脳幹に入る。次に、脳幹に入った後、化合物は脳に入る。
図3に示されている一部の実施形態では、本明細書で開示される化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、鼻腔に投与され、次に呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、化合物は三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、化合物は、軸索輸送機構により嗅球に入る。次に、嗅球に入った後、化合物は脳に入る。
図3に示されている一部の実施形態では、本開示の化合物は、鼻腔に投与され、次に呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、化合物は三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、化合物は、軸索輸送機構により脳幹に入る。次に、脳幹に入った後、化合物は脳に入る。
【0035】
図4は、治療薬の異なる鼻から脳への直接的な輸送機構を示しており、この輸送機構により、脳の様々な領域への治療薬の様々な分布がもたらされ得る。
【0036】
様々な種におけるCNSへの直接的な標的進入の鼻から脳への門脈には、1)リンパ管、静脈血管および動脈血管に沿った、および局所的な血管内向流動静脈吻合を横切る局所的な血管周囲流;2)脳神経に沿ったニューロンおよびニューロン周囲の輸送;3)胚発生後持続性の吻側移動流に沿った篩板を介する輸送;および4)脳脊髄液(CSF)および/または脈絡叢を介する流れが含まれる。鼻から脳への経路は、体循環を迂回し、血液脳関門の要素を回避し、脳内の特定の領域または部分構造に化合物を選択的に送達する。脳内の特定の領域および部分構造は、mTBI(すなわち、脳震盪)またはパーキンソン病などの脳障害の様々なタイプに選択的に関与し得る。
【0037】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、投与後、嗅覚路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、本開示の化合物は、投与後、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、本開示の化合物は、血液脳関門を通り抜けない。一部の実施形態では、化合物を受ける対象は、化合物に実質的に全身曝露されない。一部の実施形態では、化合物の一部は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の別の一部は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約1%~約99%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約99%~約1%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約5%~約95%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約95%~約5%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約10%~約90%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約90%~約10%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約15%~約85%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約85%~約15%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約20%~約80%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約80%~約20%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約25%~約75%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約75%~約25%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約30%~約70%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約70%~約30%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約35%~約65%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約65%~約35%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約40%~約60%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約60%~約40%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約55%~約45%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約45%~約55%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。一部の実施形態では、化合物の約50%は、嗅覚路を介して輸送され得、化合物の約50%は、三叉神経経路を介して輸送され得る。
【0038】
一部の実施形態では、化合物は、嗅覚路および三叉神経経路を介して、約1:99、約2:98、約3:97、約4:96、約5:95、約6:94、約7:93、約8:92、約9:91、約10:90、約11:89、約12:88、約13:87、約14:86、約15:85、約16:84、約17:83、約18:82、約19:81、約20:80、約21:79、約22:78、約23:77、約24:76、約25:75、約26:74、約27:73、約28:72、約29:71、約30:70、約31:69、約32:68、約33:67、約34:66、約35:65、約36:64、約37:63、約38:62、約39:61、約40:60、約41:59、約42:58、約43:57、約44:56、約45:55、約46:54、約47:53、約48:52、約49:51、約50:50、約51:49、約52:48、約53:47、約54:46、約55:45、約56:44、約57:43、約58:42、約59:41、約60:40、約61:39、約62:38、約63:37、約64:36、約65:35、約66:34、約67:33、約68:32、約69:31、約70:30、約71:29、約72:28、約73:27、約74:26、約75:25、約76:24、約77:23、約78:22、約69:21、約80:20、約81:19、約82:18、約83:17、約84:16、約85:15、約86:14、約87:13、約88:12、約89:11、約90:10、約91:9、約92:8、約93:7、約94:6、約95:5、約96:4、約97:3、約98:2または約99:1の嗅覚:三叉神経の比で輸送され得る。
【0039】
一部の実施形態では、本開示の化合物(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)は、体循環に入らない。したがって、一部の実施形態では、対象は、本開示の化合物に実質的に全身曝露されない。一部の実施形態では、本開示の化合物は、血液脳関門を通過しない。一部の実施形態では、本開示の化合物は、鼻腔に投与され、次に呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、化合物は、体循環に入ることなく三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、化合物は、体循環に入ることも血液脳関門を通過することもなく、脳に入る。
【0040】
一部の実施形態では、対象は、本開示の化合物に実質的に全身曝露されないが、投与された化合物の量の一部は、体循環に入ることができる。一部の実施形態では、呼吸上皮に入る化合物の用量は、部分的に体循環に入る。一部の実施形態では、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%もしくは約20%、またはそれよりも多くが、体循環に入る。一部の実施形態では、化合物の約50%未満が、体循環に入る。一部の実施形態では、化合物の約40%未満が、体循環に入る。一部の実施形態では、化合物の約30%未満が、体循環に入る。一部の実施形態では、化合物の約20%未満が、体循環に入る。一部の実施形態では、化合物の約10%未満が、体循環に入る。一部の実施形態では、化合物の約5%未満が、体循環に入る。一部の実施形態では、化合物の約1%未満が、体循環に入る。
【0041】
一部の実施形態では、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%もしくは約20%、またはそれよりも多くが、血液脳関門を通過する。一部の実施形態では、化合物の約50%未満が、血液脳関門を通過する。一部の実施形態では、化合物の約40%未満が、血液脳関門を通過する。一部の実施形態では、化合物の約30%未満が、血液脳関門を通過する。一部の実施形態では、化合物の約20%未満が、血液脳関門を通過する。一部の実施形態では、化合物の約10%未満が、血液脳関門を通過する。一部の実施形態では、化合物の約5%未満が、血液脳関門を通過する。一部の実施形態では、化合物の約1%未満が、血液脳関門を通過する。
治療法
【0042】
本開示は、脳障害を処置するための化合物および方法の使用を記載する。本開示はまた、高い初回通過肝代謝を回避し、血液脳関門を回避すると同時に、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NACをCNSに直接、標的化する技術を記載する。一部の実施形態では、本開示の化合物および方法は、脳障害を処置するために使用することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物および方法は、脳傷害を処置するために使用することができる。一部の実施形態では、脳障害は、脳損傷、例えば外傷性脳傷害に起因する脳損傷の形態であり得る。一部の実施形態では、脳障害は、神経系の障害であり得る。脳、脊髄または他の神経における構造的、生化学的または電気的異常は、様々な症状をもたらすおそれがある。神経学的障害から生じる症状の例には、麻痺、筋力低下、協調運動不全、感覚喪失、発作、錯乱、疼痛および意識レベルの変化が含まれる。
【0043】
本開示の化合物および方法は、CNS状態を処置するために使用することができる。CNS障害は、集合的にCNSを形成する脳または脊髄の構造または機能に影響を及ぼす、神経学的障害の群である。本開示は、外傷性脳傷害、軽度外傷性脳傷害、脳震盪、軽度脳震盪、脳震盪後症候群、感染症、変性(例えば、変性脊椎障害)、構造的欠損(例えば、無脳症、尿道下裂、二分脊椎症、小脳回症、多小脳回症、両側前頭頭頂多小脳回症または厚脳回症(pachgyria))、腫瘍、自己免疫障害または脳卒中によって引き起こされるCNS障害を処置するための化合物および方法を記載する。一部の実施形態では、本開示は、外傷性脳傷害を処置するための本開示の化合物および方法を記載する。一部の実施形態では、本開示は、軽度外傷性脳傷害を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、くも膜下出血を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、脳震盪を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、軽度脳震盪を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、脳震盪後症候群を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。
【0044】
一部の実施形態では、本開示は、脳卒中を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。脳卒中は、脳への血流の低下が細胞死をもたらす病状である。2つの主なタイプの脳卒中は、血流の欠乏から生じる虚血性脳卒中、および出血から生じる出血性脳卒中である。脳卒中の徴候および症状には、身体の片側を動かすまたは感じることができなくなること、理解または発話の問題、および片目の失明が含まれる。一部の実施形態では、本開示は、出血性脳卒中を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、ICH脳卒中を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。
【0045】
一部の実施形態では、本開示は、脳損傷を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、脳損傷は、外傷性脳傷害などの急性事象に起因する脳傷害が原因である。急性事象に起因する脳傷害は、時として、原発性脳傷害と呼ばれる。一部の実施形態では、本開示は、外傷性脳傷害を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、軽度外傷性脳傷害を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。急性事象に起因する脳傷害は、例えば、落下、暴力、事故、児童虐待、運動傷害および爆発による爆傷に起因する頭への打撃によって引き起こされ得る。一部の実施形態では、本開示は、脳震盪を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、軽度脳震盪を処置するための本開示の化合物の使用を記載する。
【0046】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、原発性脳傷害に起因する後続する続発性脳傷害による脳損傷を処置するために使用される。続発性脳傷害は、原発性脳傷害の後、数時間~数日の期間をかけて進展する変化を含むことができる。続発性脳傷害は、脳組織のさらなる破壊の一因となる、脳における細胞、化学、組織または血管の変化のカスケードを含む。
【0047】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、グルタミン酸、グルタミン酸受容体リガンド、低酸素模倣剤、一酸化窒素発生剤、アポトーシス誘導剤、ステロイド、塩化アンモニウム、毒性化合物またはATP産生を妨害する薬剤などの、続発性脳損傷または神経変性に関与する薬剤への曝露に起因する脳傷害を処置するために使用される。一部の実施形態では、本開示の化合物は、感染症、毒素、ならびに快楽を得るための薬物、市販薬および/または処方箋薬の過度な薬物使用などの、慢性感作による脳損傷を処置するために使用される。
【0048】
一部の実施形態では、本開示の化合物および方法は、軍人、例えば、戦地での兵士、とりわけ外傷性脳傷害および/または外傷性脳傷害に起因する続発性脳損傷に罹患している兵士を処置するために使用することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物および方法は、外傷性脳傷害を処置するために使用することができ、かつ/または外傷性脳傷害に起因する続発性脳損傷は、本開示の化合物を兵士に投与することによって、例えば、本開示の化合物を戦地またはテロリストの攻撃の脅威下にある/その現場における救急医療隊員および/または兵士に供給することによって処置することができ、その結果、化合物は、兵士が外傷性脳傷害を経験した後に可能な限り速やかに部位に投与され得る。本開示の化合物および方法はまた、以下に限定されないが、脳損傷を引き起こすおそれのあるテロリストの攻撃および任意の他の不運な出来事を含めた、凶悪犯罪の犠牲者である市民を処置するために使用することができる。本開示の組成物による処置は、テロリストの攻撃、他の犯罪および事故を含めた、戦闘行為のために罹患した外傷性脳傷害の後遺症おいて現在、発生している能力障害の発生頻度を低下させることができる。
【0049】
一部の実施形態では、本開示の化合物はまた、能力障害またはてんかんなどの重大傷害を含めた、交通事故(例えば、自動車事故および非自動車事故)、運動傷害、仕事に関連する事故、家庭内事故、児童虐待、家庭内暴力および銃創などの、国内で発生したものによる、脳傷害に罹患している個体を処置するために使用することができる。一部の実施形態では、化合物は、高い発生頻度のCNS損傷を有するコンタクトスポーツのために予防的に与えられる。
【0050】
一部の実施形態では、本開示は、脳葉(例えば、大脳基底核、小脳または脳幹)損傷、前頭葉損傷、頭頂葉損傷、側頭葉損傷または後頭葉損傷などの脳の特定の領域における脳損傷を処置するための化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、失語症(言語)、書字障害(筆記)、構音障害(発話)、失行(運動順序のパターン)、失認(物事または人の特定)、または健忘症(記憶)のタイプによる脳機能不全を処置するための化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、脊髄障害、末梢神経障害および他の末梢神経系障害、脳神経障害(例えば、三叉神経痛)、自律神経系障害(例えば、自律神経障害、多系統萎縮症)、または発作障害(すなわち、てんかん)を処置するための化合物の使用を記載する。
【0051】
一部の実施形態では、本開示は、本態性振戦、筋萎縮性側索硬化症、トゥーレット症候群、多発性硬化症および様々なタイプの末梢神経障害などの、中枢および末梢神経系の運動障害を処置するための化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、睡眠障害(例えば、ナルコレプシー)、片頭痛および他のタイプの頭痛、または中枢神経障害を処置するための化合物の使用を記載する。一部の実施形態では、本開示は、注意欠陥多動性障害、自閉症または強迫性障害などの精神神経系疾病を処置するための化合物の使用を記載する。
【0052】
一部の実施形態では、本開示は、神経変性疾患を処置するための化合物の使用を記載する。一般に、中枢神経系の疾患は、神経変性と呼ばれ、徐々に発症する進行性の神経細胞死を特徴とする。一部の実施形態では、神経変性疾患は、遺伝性であり、優性遺伝または劣性遺伝のどちらかである。一部の実施形態では、神経変性疾患は、散発的に起こる。本開示の化合物は、脳損傷、例えば、機械的傷害、疾患、感染症、毒の感作、および快楽を得るための薬物、市販薬または処方箋薬を含めた過度な薬物の使用に起因する脳損傷を処置することができる。
【0053】
一部の実施形態では、本開示の化合物および本明細書で開示される方法は、神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ルーゲーリック病、多発性硬化症、自己免疫障害、ピック病、びまん性レビー小体病、進行性核上性麻痺(スチール-リチャードソン症候群)、多系統変性(シャイ-ドレーガー症候群)、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症、変性運動失調症、皮質基底変性(cortical basal degeneration)、グアム島のALS-パーキンソン-認知症複合、亜急性硬化性全脳炎、シヌクレイノパチー、原発性進行性失語症、線条体黒質変性症、マチャド-ジョセフ病/3型脊髄小脳失調症およびオリーブ橋小脳変性、ジル・ドゥ・ラ・トゥーレット病、球麻痺および仮性球麻痺、脊髄性筋萎縮症および球脊髄性筋萎縮症(ケネディ病)、原発性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、ウェルドニッヒホフマン病、クーゲルベルクウェランダー病、テイ-サックス病、サンドホフ病、家族性痙性病、ヴォールファルト-クーゲルベルクウェランダー病、痙性対麻痺、進行性多巣性白質脳症、プリオン病(クロイツフェルト-ヤコブ病を含む)、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー病、クールー病および致死性家族性不眠症を処置するために使用することができる。一部の実施形態では、神経系疾患はパーキンソン病である。
【0054】
一部の実施形態では、本開示の方法は、必要とする対象の脳における脳障害を処置することができ、方法は、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、対象が、鼻腔内投与の際に、NACまたはその同族体に実質的に全身曝露されない。
【0055】
一部の実施形態では、本開示の方法は、必要とする対象の脳における脳障害を処置することができ、方法は、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体の実質的にすべてが、対象の血液脳関門を通過することなく脳に入る。
【0056】
一部の実施形態では、本開示の方法は、必要とする対象の脳における脳障害を処置することができ、方法は、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACを鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が脳に入る。
【0057】
一部の実施形態では、本開示の方法は、必要とする対象の脳を処置することができ、方法は、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の脳脊髄液に入り、次に、NACまたはその同族体が脳に入る。
【0058】
一部の実施形態では、本開示の方法は、必要とする対象の脳における脳障害を処置することができ、方法は、対象の鼻にN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、NACが対象の三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、次に、NACが脳に入る。
【0059】
一部の実施形態では、本開示の方法は、脳震盪である脳障害を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、脳震盪後症候群である脳障害を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、軽度外傷性脳傷害である脳障害を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、外傷性脳傷害である脳障害を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、競技活動に関連する脳障害を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、神経変性疾患である脳障害を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、認知症である脳障害を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、年齢関連性である脳障害を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、パーキンソン病である脳障害を処置することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、脳卒中である脳障害を処置することができる。
【0060】
一部の実施形態では、NAC同族体は、GSHである。一部の実施形態では、用量の実質的にすべてが、対象の血液脳関門を通過することなく脳に入る。
【0061】
一部の実施形態では、NACまたはその同族体は、鼻腔内投与後に、対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体は、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体は脳に入る。一部の実施形態では、NACまたはその同族体は、鼻腔内投与後に、対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体は、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体は対象の脳脊髄液に入り、次にNACは脳に入る。一部の実施形態では、NACまたはその同族体は、鼻腔内投与後に、対象の呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、NACまたはその同族体は、対象の三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、次に、NACまたはその同族体は脳に入る。
【0062】
一部の実施形態では、治療有効量は、約1mg/kg~約10mg/kgである。一部の実施形態では、治療有効量は、約100mg~約400mgである。一部の実施形態では、用量は、鼻ポンプを使用して投与される。一部の実施形態では、用量は、アトマイザーを使用して投与される。一部の実施形態では、用量は、ネブライザーを使用して投与される。一部の実施形態では、用量の実質的にすべてが、対象の鼻腔に入る。
医薬組成物
【0063】
本開示は、本明細書に記載される脳傷害またはCNS状態を処置するため、対象に投与され得る、NAC、NACA、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるそれらの塩を含む、医薬組成物を記載する。本開示の医薬組成物は、本明細書に記載される任意の医薬化合物の、担体、安定剤、希釈剤、分散化剤、懸濁化剤、増粘剤および/または賦形剤などの他の化学的構成成分との組合せであり得る。医薬組成物は、生物への化合物の投与を促進する。医薬組成物は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、経口、非経口、眼、皮下、経皮、経鼻、膣および局所投与を含めた、様々な形態および経路によって、医薬組成物として治療有効量で投与され得る。医薬組成物は、局所的に、例えば、必要に応じて、デポもしくは徐放性製剤またはインプラントによる、器官への化合物の直接注射により投与することができる。
【0064】
本開示の化合物は、鼻腔内投与され得、溶液剤、懸濁剤、蒸気剤または散剤などの様々な吸入可能な組成物に製剤化され得る。鼻腔用医薬組成物は、可溶化剤、安定剤、浸透圧促進剤、緩衝剤および保存剤を含むことができる。
【0065】
本明細書で提供される処置または使用の方法を実施することにおいて、治療有効量の本明細書に記載される化合物は、処置される疾患または状態を有する対象に、医薬組成物で投与される。一部の実施形態では、対象は、ヒトなどの哺乳動物である。治療有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および相対的な健康状態、使用される化合物の効力、ならびに他の因子に応じて、幅広く変わり得る。本開示の化合物は、単一で、または混合物の構成成分としての1種もしくは複数の治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0066】
本開示の医薬組成物は、活性化合物の、薬学的に使用され得る調製物への加工を容易にする、賦形剤および助剤を含む1種または複数の生理的に許容される担体を使用して製剤化され得る。製剤は、選択される投与経路に応じて、修正することができる。本明細書に記載される化合物を含む医薬組成物は、例えば、混合、溶解、乳化、被包、封入または圧縮プロセスによって製造することができる。
【0067】
本開示の医薬組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、および遊離塩基または薬学的に許容される塩形態としての本明細書に記載される化合物を含むことができる。医薬組成物は、可溶化剤、安定剤、浸透圧促進剤、緩衝剤および保存剤を含有することができる。
【0068】
本明細書で記載される化合物を含む組成物の調製のための方法は、化合物を1種もまたは複数の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体と共に製剤化して、固体、半固体または液体組成物を形成するステップを含む。固体組成物には、例えば、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤およびカシェ剤が含まれる。液体組成物には、例えば、化合物が溶解している溶液剤、化合物を含むエマルション剤、または本明細書で開示される化合物を含むリポソーム、ミセルもしくはナノ粒子を含有する溶液剤が含まれる。半固体組成物には、例えば、ゲル剤、懸濁剤およびクリーム剤が含まれる。組成物は、液体の溶液剤もしくは懸濁剤中に、使用前の液体中の溶液剤もしくは懸濁剤に好適な固体形態で、またはエマルション剤として存在することができる。これらの組成物はまた、少量の非毒性の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および他の薬学的に許容される添加剤を含有することができる。
【0069】
本開示における使用に好適な剤形の非限定的な例には、液剤、散剤、ゲル剤、ナノ懸濁剤、ナノ粒子剤、ミクロゲル剤、水性または油性懸濁剤、エマルション剤、およびそれらの任意の組合せが含まれる。
【0070】
本開示の鼻腔用製剤における使用に好適な薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例には、以下に限定されないが、粘膜付着性賦形剤、吸着強化剤および保存剤が含まれる。
【0071】
一部の実施形態では、組成物は、粘膜付着性賦形剤を含む。粘膜付着性賦形剤は、低分子、オリゴマー分子またはポリマーを含む。一部の実施形態では、粘膜付着性分子は、負に荷電したムチンと相互作用を構築するよう、正に荷電している。粘液は、ムチンファミリーのタンパク質および水から主になる。ムチンは、上皮細胞の頂端表面に結合している。これらの作用剤は、このようなムチンに結合した細胞に付着すると、粘膜における滞留を延長し、こうして、薬物の取り込みを改善する。粘膜付着性化合物の例には、以下に限定されないが、キトサン(N-アセチル-D-グルコサミンとグルコサミンとのコポリマー)、キトサン誘導体(例えば、N-トリメチルキトサン、カルボキシル化キトサン)、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カルボポール、カルボキシメチルセルロースおよびポリアクリル酸が含まれる。
【0072】
一部の実施形態では、組成物は、吸着強化剤を含む。浸透および吸収を改善する賦形剤は、例えば、シクロデキストリン、胆汁酸塩、ラウレス-9サルフェート、フシデート誘導体(fusidate derivate)、脂肪酸、親水性ポリマーおよび界面活性剤である。一部の実施形態では、メチル化β-シクロデキストリンは、薬物と包接錯体を形成するので、水溶性に乏しい親油性薬物の吸収を増強するために使用される。
【0073】
鼻用薬物製剤の安定性を延長するため、保存剤を使用することができる。保存剤の非限定的な例には、親油性保存剤、例えば、クロロブトール、ヒドロキシベンゾエート、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート(propylhxdroxybenzoate)、クロロクレゾール、エデテートおよび塩化ベンザルコニウムが含まれる。
【0074】
一部の実施形態では、製剤は、固体または半固体形態、例えば、ヒドロゲルの形態にある。ヒドロゲルの例には、キトサン、カルボポール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはポリビニルアルコールを含む組成物が含まれる。半固形製剤は、粘度がより高いために、嗅裂を標的とすることができ、その粘膜は、逆さままたは直立状態のどちらかに向く。
【0075】
一部の実施形態では、組成物は、粒子形態にある。一部の実施形態では、組成物は、ナノ粒子の形態にある。薬物送達系としてのナノ粒子の使用により、治療剤の制御された部位特異的送達が可能となる。ナノ粒子は、薬物の被包により、生物学的または化学的分解から薬物を保護し、血液脳関門におけるP糖タンパク質輸送体などの薬物排出機構を回避する一助となることができる。薬物送達のためのナノ粒子およびミクロ粒子の使用により、環境的な影響から薬物を遮蔽することによって、制御薬物放出および持続薬物放出などのいくつかの利益がもたらされる。薬物送達系のためのナノ担体には、以下に限定されないが、ポリマーナノ粒子、脂質ナノ粒子および無機ナノ粒子が含まれる。ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)およびそれらのポリマーであるポリ(ラクチド-co-グリコリド)酸(PLGA)としての生分解性薬物担体が、鼻腔内送達における使用に好適である。
【0076】
一部の実施形態では、組成物は、脂質をベースとする組成物である。脂質をベースとする組成物は、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、脂肪酸およびワックスなどの脂質をベースとする担体を含むことができる。ナノ構造化脂質担体は、固体状態および液体状態の脂質のブレンドから構成され得る。
【0077】
本開示の組成物は、例えば、即時放出形態であり得る。即時放出製剤は、化合物が迅速に作用することが可能となるよう製剤化することができる。即時放出製剤の非限定的な例は、易溶解性製剤を含む。
【0078】
薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995)、Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975、Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980、およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見出すことができ、それらは、それぞれその全体が参照により組み込まれる。
【0079】
本明細書に記載される医薬組成物は、正確な投薬量の単回投与に好適な単位剤形にあり得る。単位剤形では、製剤は、適切な量の1つまたは複数の化合物を含有する単位用量に分割される。単位投薬量は、別々の量の製剤を含有するパッケージの形態にあり得る。非限定的な例は、パッケージングされた注射剤、バイアルまたはアンプルである。水性懸濁液組成物は、単回用量の再密閉不可能な容器にパッケージングされ得る。多回用量の再密閉可能な容器を、例えば、保存剤と組み合わせて、または保存剤なしに使用することができる。注射のための製剤は、単位剤形で、例えば、アンプルで、または保存剤を含む多回用量用容器で提供され得る。
【0080】
本明細書で提供される医薬組成物は、他の治療、例えば、化学療法、放射線、外科手術、抗炎症剤および選択したビタミンと併せて投与することができる。他の薬剤は、医薬組成物の前、その後、またはそれと同時に投与することができる。
【0081】
意図された投与方式に応じて、医薬組成物は、例えば、正確な投薬量の単回投与に好適な単位剤形の、例えば、錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、ローション剤、クリーム剤またはゲル剤などの固体、半固体または液体剤形の形態にあり得る。
【0082】
固体組成物の場合、非毒性の固体担体には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウムが含まれる。
【0083】
化合物は、リポソーム技術によって送達することができる。薬物担体としてのリポソームの使用により、化合物の治療指数を向上することができる。リポソームは、天然リン脂質から構成され、界面活性剤特性(例えば、卵ホスファチジルエタノールアミン)との混合脂質鎖を含有することができる。リポソーム設計は、非健康な組織に付着させるための表面リガンドを用いることができる。リポソームの非限定的な例には、多重層小胞(MLV)、小型単層小胞(SUV)、および大型単層小胞(LUV)が含まれる。リポソームの物理化学特性は、投与部位における生物学的障壁および滞留により浸透を最適化するよう、ならびに早過ぎる分解および非標的組織への毒性を発症する可能性を低減するようモジュレートされ得る。
【0084】
最適なリポソーム特性は、投与経路に依存する:サイズの大きなリポソームは、局所注射時に良好な滞留を示し、サイズの小さなリポソームは、受動標的化を実現するのにより適する。PEG化によって、肝臓および脾臓によるリポソームの取り込み量が低下し、循環時間が増大し、透過性および滞留性亢進(EPR)効果により、炎症部位での局在化が増大する。さらに、リポソーム表面は、被包薬物の特定の標的細胞への選択的送達を実現するよう修飾され得る。標的リガンドの非限定的な例には、モノクローナル抗体、ビタミン、ペプチド、および疾患に関連する細胞表面に集中する受容体に特異的な多糖が含まれる。
【0085】
本開示における使用に好適な剤形の非限定的な例には、液剤、エリキシル剤、ナノ懸濁剤、水性または油性懸濁剤、液滴剤、シロップ剤、およびそれらの任意の組合せが含まれる。本開示における使用に好適な薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例には、造粒剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、流動促進剤、付着防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗酸化物質、ガム、コーティング剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、可塑剤、保存剤、懸濁化剤、乳化剤、植物セルロース材料および球形化剤、ならびにそれらの任意の組合せが含まれる。
【0086】
本開示の医薬組成物は、水溶液の形態であってよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、水溶液中に、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、または約25%~約30%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、水溶液中に、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、または約30%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、水溶液中に、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、または約20%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、水溶液中に、約15%のNAC、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、水溶液中に、約20%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、水溶液中に、約25%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。
【0087】
本開示の医薬組成物は、乾燥粉末の形態であってよい。一部の実施形態では、医薬組成物は、乾燥粉末製剤中に、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、または約25%~約30%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、乾燥粉末製剤中に、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、または約30%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、乾燥粉末製剤中に、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、または約20%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、水溶液中に、約15%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、乾燥粉末製剤中に、約20%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、乾燥粉末製剤中に、約25%のNAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を含むことができる。
【0088】
本開示の組成物は、キットとしてパッケージングすることができる。一部の実施形態では、キットは、組成物の投与/使用に関する書面の使用説明書を含む。書面の資料は、例えばラベルであってよい。書面の資料は、投与の条件および方法を示すことができる。使用説明書は、対象および監督する医師に、治療の投与からの最適な臨床アウトカムを達成するための最良の指針を提供する。書面の資料は、ラベルであってよい。一部の実施形態では、ラベルは、監督機関、例えば米国食品医薬局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、または他の監督機関によって承認することができる。
投与方式
【0089】
本開示の化合物は、嗅上皮または呼吸上皮において、化合物の曝露を増大させるために鼻腔に送達され得る。一部の実施形態では、化合物は、指定速度で鼻腔に噴射され得る。一部の実施形態では、化合物は、鼻腔内噴霧剤として投与され得る。一部の実施形態では、化合物は、好適な噴射剤およびアジュバントを用いて加圧されたエアロゾル容器中にパッケージングされ得る。一部の実施形態では、噴射剤は流体であり得る。流体は、液体、ガスまたはそれらの組合せであり得る。一部の実施形態では、噴射剤はガス(例えば、窒素またはクロロフルオロカーボン(chloroflourocarbon)である。一部の実施形態では、噴射剤は、加圧空気(例えば、周囲空気)である。一部の実施形態では、噴射剤は液体である。
【0090】
一部の実施形態では、噴射剤は、プロパン、ブタンまたはイソブテンなどの炭化水素噴射剤である。一部の実施形態では、噴射剤は、HFA、HFA227、HFA134a、HFA-FPまたはHFA-BPなどのヒドロフルオロアルカン(HFA)である。一部の実施形態では、エアロゾル製剤は、粘膜付着剤、吸着強化剤、共溶媒、安定剤、界面活性剤、抗酸化物質、保存剤、滑沢剤およびpH調節剤などの他の成分を含むことができる。エアロゾル製剤は、定量用量吸入器を使用して投与することができる。定量用量吸入器は、加圧小型容器、および/または作動時に噴射剤もしくはエアロゾル製剤を計るための絞り弁を備えることができる。
【0091】
本開示の化合物は、噴霧可能な粉末として投与することができる。一部の実施形態では、化合物は、吸入可能な乾燥粉末として投与され得る。一部の実施形態では、粉末製剤は、モノサッカライド(例えば、グルコース、アラビノース)、ジサッカライド(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴサッカライドまたはポリサッカライド(例えば、デキストラン、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)またはそれらの任意の組合せなどの薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。一部の実施形態では、化合物は、溶液、懸濁液または乾燥粉末として投与され得る。一部の実施形態では、化合物は、ネブライザーまたはアトマイザーを使用する非加圧形態で投与され得る。
【0092】
鼻腔用医薬組成物としての本開示の化合物の送達は、より少ない全身薬物曝露およびより少ない副作用をもたらすことができる。一部の実施形態では、化合物の送達は、全身薬物曝露をもたらさない。一部の実施形態では、全身薬物曝露がより少ない、または全身薬物曝露が全くないと、出血、胃腸管の副作用、肝臓毒性、流体保持もしくは浮腫、好中球減少もしくは白血球減少、貧血または感染症のリスクを低下させることができる。一部の実施形態では、全身薬物曝露がより少ない、または全身薬物曝露が全くないと、悪心、嘔吐または下痢などの胃腸管の副作用のリスクを低下させることができる。
【0093】
本開示の化合物は、鼻腔内送達デバイスを使用して鼻腔に直接、投与することができる。一部の実施形態では、化合物は、蒸気または点滴の形態で鼻腔内投与することができる。一部の実施形態では、化合物は、リナイルカテーテル(rhinyle catheter)、多回用量滴下器具、単回用量ピペットまたは蒸気吸入器などの、鼻腔内送達デバイスを使用して投与することができる。一部の実施形態では、化合物は、スクイーズボトル、多回用量用定量用量噴霧ポンプ、単回もしくは二回用量用噴霧ポンプ、または二方向多回用量噴霧ポンプを使用して送達することができる。一部の実施形態では、化合物は、アトマイザーを使用して送達することができる。一部の実施形態では、化合物は、ネブライザーを使用して送達することができる。一部の実施形態では、鼻腔内送達デバイスは、噴射剤用の容器、製剤用の容器または拡散器を備えることができる。一部の実施形態では、鼻腔内送達デバイスは、噴射剤を拡散するための拡散器を備えることができる。一部の実施形態では、拡散器は、製剤を保持するよう構成されている製剤用の容器に接続され得る。一部の実施形態では、拡散器は、噴射剤を保持するよう構成されている、噴射剤用の容器(例えば、加圧噴射剤用の容器)に接続され得る。一部の実施形態では、製剤用の容器および噴射剤用の容器は、同一容器である。一部の実施形態では、製剤用の容器は、噴射剤用の容器とは異なる。一部の実施形態では、噴射剤は、推進力をもたらすか、または製剤用の容器から製剤を噴出するよう強く押すためのビヒクルとして働くことができる。一部の実施形態では、製剤用の容器はノズルに接続されている。一部の実施形態では、噴射剤に由来する推進力または押出しは、製剤用の容器およびノズルから製剤を噴出することが可能である。
【0094】
一部の実施形態では、拡散器は、多孔質であり得る。一部の実施形態では、細孔は、サイズおよび形状が均一であり得る。一部の実施形態では、拡散器の細孔は、サイズおよび形状が不均一である。一部の実施形態では、拡散器は、均一な多孔質である。一部の実施形態では、拡散器は、不均一な多孔質である。一部の実施形態では、噴射剤は細孔を通り抜けるが、細孔は製剤を通さない。
【0095】
一部の実施形態では、拡散器は噴射剤に接続されている。一部の実施形態では、拡散器は、噴射剤用の容器を出る液体噴射剤をガス状噴射剤に変換することができる。一部の実施形態では、拡散器は、生じたガスを昇温することができる。一部の実施形態では、拡散器を通るガス噴射剤の通路は、ガス噴射剤を昇温することができる。
【0096】
拡散器との接触の後、拡散された噴射剤は、製剤用の容器内の製剤と接触することができる。拡散した噴射剤および製剤は、噴射剤がノズルから製剤用の容器内の製剤を噴射すると、互いに接触することができる。エアロゾル化した製剤、噴射剤またはそれらの組合せが、ノズルから出る。一部の実施形態では、ノズルは、対象の鼻腔に指定長さまで挿入される。一部の実施形態では、ノズルは、鼻孔から対象の鼻腔に指定長さまで挿入される個別の吸入管となるよう構成されている。一部の実施形態では、鼻孔から対象の鼻腔までの指定長さは、少なくとも約0.1cm、約0.2cm、約0.3cm、約0.4cm、約0.5cm、約0.6cm、約0.7cm、約0.8cm、約0.9cm、約1.0cm、約1.1cm、約1.2cm、約1.3cm、約1.4cm、約1.5cm、約1.6cm、約1.7cm、約1.8cm、約1.9cm、約2.0cm、約2.1cm、約2.2cm、約2.3cm、約2.4cm、約2.5cm、またはそれよりも長くてもよい。一部の実施形態では、鼻孔から対象の鼻腔までの指定長さは、約0.1cm、約0.2cm、約0.3cm、約0.4cm、約0.5cm、約0.6cm、約0.7cm、約0.8cm、約0.9cm、約1.0cm、約1.1cm、約1.2cm、約1.3cm、約1.4cm、約1.5cm、約1.6cm、約1.7cm、約1.8cm、約1.9cm、約2.0cm、約2.1cm、約2.2cm、約2.3cm、約2.4cm、約2.5cmであり得る。一部の実施形態では、鼻孔から対象の鼻腔までの指定長さは、最大で約2.5cm、約2.4cm、約2.3cm、約2.2cm、約2.1cm、約2.0cm、約1.9cm、約1.8cm、約1.7cm、約1.6cm、約1.5cm、約1.4cm、約1.3cm、約1.2cm、約1.1cm、約1.0cm、約0.9cm、約0.8cm、約0.7cm、約0.6cm、約0.5cm、約0.4cm、約0.3cm、約0.2cm、約0.1cm、またはそれ未満であり得る。一部の実施形態では、製剤は、鼻孔から少なくとも約1cm、約2cm、約3cm、約4cm、約5cm、約6cm、約7cm、約8cm、約9cm、約10cmまたはそれよりも長い距離に到達し得る。一部の実施形態では、製剤は、鼻孔から約1cm、約2cm、約3cm、約4cm、約5cm、約6cm、約7cm、約8cm、約9cmまたは約10cmの距離に到達し得る。一部の実施形態では、製剤は、鼻孔から最大で、約15cm、約14cm、約13cm、約12cm、約11cm、約10cm、約9cm、約8cm、約7cm、約6cm、約5cm、約4cm、約3cm、約2cm、約1cm、またはそれよりも短い距離に到達し得る。
【0097】
一部の実施形態では、鼻腔内送達デバイスは、対象の鼻を収容するよう機能する鼻照準ガイドを備えることができる。一部の実施形態では、鼻照準ガイドは、対象の嗅覚領域にノズルを照準するよう構成されている。一部の実施形態では、鼻腔内送達デバイスは、対象の中隔への接触に順応するよう構成されている中隔照準ガイドを備える。一部の実施形態では、鼻腔内送達デバイスは、対象の上唇を収容するよう構成されている上唇照準ガイドを備える。
【0098】
一部の実施形態では、化合物は、粉末形態で鼻腔内投与することができる。一部の実施形態では、化合物は、機械式散剤噴霧器、呼吸動作式吸入器または吹送器を使用して送達することができる。一部の実施形態では、化合物は、機械式散剤噴霧デバイスを使用して送達することができる。一部の実施形態では、化合物は、多回用量散剤吸入器、単回用量または二回用量カプセル式吸入器、または鼻吹送器を使用して送達することができる。一部の実施形態では、化合物は、吹送器、または呼吸を動力源とする二方向送達システムを使用して送達することができる。
【0099】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、鼻腔内送達デバイスを使用して鼻腔に直接、投与することができる。一部の実施形態では、少なくとも1つの治療有効用量の化合物は、鼻腔内送達デバイスを使用して送達される。一部の実施形態では、少なくとも1つの治療有効用量の化合物は、嗅上皮または呼吸上皮に送達される。
【0100】
一部の実施形態では、用量の実質的にすべてが、対象の鼻腔に入る。一部の実施形態では、用量の少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%が、対象の鼻腔に入る。一部の実施形態では、用量の約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約100%が、対象の鼻腔に入る。一部の実施形態では、用量の最大で約100%、約95%、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%、約65%、約60%、約55%、約50%またはそれ未満が、対象の鼻腔に入る。
投薬
【0101】
本明細書に記載される医薬組成物は、正確な投薬量の単回投与に好適な単位剤形にあり得る。単位剤形では、製剤は、1つまたは複数の化合物の適切な量を含有する単位用量に分割される。単位投薬量は、別々の量の製剤を含有するパッケージの形態であってよい。非限定的な例は、バイアルまたはアンプル中の液剤である。水性懸濁液組成物は、単回用量の再密封できない容器にパッケージングすることができる。多回用量の再密封できる容器は、例えば保存剤と組み合わせて使用することができる。非経口注射のための製剤は、単位剤形で、例えばアンプルで、または保存剤を伴う多回用量容器で提示することができる。
【0102】
本明細書に記載される化合物は、約1mg/kg~約5mg/kg、約1mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約25mg/kg、約10mg/kg~約50mg/kg、約10mg/kg~約75mg/kg、約10mg/kg~約100mg/kg、約50mg/kg~約125mg/kg、約50mg/kg~約150mg/kg、約50mg/kg~約175mg/kg、約50mg/kg~約200mg/kg、約100mg/kg~約225mg/kg、約100mg/kg~約250mg/kg、約100mg/kg~約275mg/kg、約100mg/kg~約300mg/kg、約150mg/kg~約325mg/kg、約150mg/kg~約350mg/kg、約150mg/kg~約375mg/kg、約150mg/kg~約400mg/kg、約250mg/kg~約425mg/kg、約250mg/kg~約450mg/kgまたは約250mg/kg~約500mg/kgの範囲で、組成物中で対象に投与することができる。
【0103】
一部の実施形態では、化合物は、約5mg/kg~約50mg/kg、250mg/kg~約2000mg/kg、約10mg/kg~約800mg/kg、約50mg/kg~約400mg/kg、約100mg/kg~約300mg/kgまたは約150mg/kg~約200mg/kgの範囲の量で投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約20mg/kg~約400mg/kgの範囲で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約20mg/kg~約240mg/kgの範囲で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約75mg/kg~約150mg/kgの範囲で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約75mg/kg~約150mg/kgの範囲で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約100mg/kg~約150mg/kgの範囲で組成物中に存在することができる。
【0104】
一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約75mg/kgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約100mg/kgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約150mg/kgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約200mg/kgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約250mg/kgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約400mg/kgの量で組成物中に存在することができる。
【0105】
本明細書に記載される化合物は、組成物中に、約1mg~約2000mg、約100mg~約2000mg、約10mg~約2000mg、約5mg~約1000mg、約10mg~約500mg、約50mg~約250mg、約100mg~約200mg、約1mg~約50mg、約50mg~約100mg、約100mg~約150mg、約150mg~約200mg、約200mg~約250mg、約250mg~約300mg、約300mg~約350mg、約350mg~約400mg、約400mg~約450mg、約450mg~約500mg、約500mg~約550mg、約550mg~約600mg、約600mg~約650mg、約650mg~約700mg、約700mg~約750mg、約750mg~約800mg、約800mg~約850mg、約850mg~約900mg、約900mg~約950mg、または約950mg~約1000mgの範囲で存在することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、約100mg~約400mgの治療有効量を投与する。
【0106】
本明細書に記載される化合物は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1900mg、約1950mgまたは約2000mgの量で組成物中に存在することができる。
【0107】
一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約100mg、約120mg、約140mg、約160mg、約180mg、約200mg、約220mg、約240mg、約260mg、約280mgまたは約300mgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約150mgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約170mgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約280mgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約300mgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約350mgの量で組成物中に存在することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、約400mgの量で組成物中に存在することができる。
【0108】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、約1mg/kg~約10mg/kgの量で、組成物で対象に投与することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物は、約1~50mg/kgの量で、組成物で対象に投与することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物は、約1~75mg/kgの量で、組成物で対象に投与することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物は、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kgまたは約10mg/kgの量で、組成物で対象に投与することができる。
【0109】
本明細書に記載される化合物は、組成物中に、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mg、約1050mg、約1100mg、約1150mg、約1200mg、約1250mg、約1300mg、約1350mg、約1400mg、約1450mg、約1500mg、約1550mg、約1600mg、約1650mg、約1700mg、約1750mg、約1800mg、約1850mg、約1900mg、約1950mg、または約2000mgの量で存在することができる。
【0110】
一部の実施形態では、投薬量は、等量で各鼻孔に投与される。一部の実施形態では、約0.1mL、約0.2mL、約0.3mL、約0.4mL、約0.5mL、約0.6mL、約0.7mL、約0.8mL、約0.9mLまたは約1.0mLの医薬組成物が、対象の各鼻孔に投与される。一部の実施形態では、0.25mLの医薬組成物が、投薬1回当たり各鼻孔に投与される。一部の実施形態では、0.5mLの医薬組成物が、投薬1回当たり各鼻孔に投与される。
【0111】
一部の実施形態では、投薬は、各鼻孔に反復して、化合物の量を増加させる。一部の実施形態では、医薬組成物の第1の投薬量は、対象の鼻孔当たり約0.1mL、約0.2mL、約0.3mL、約0.4mL、約0.5mL、約0.6mL、約0.7mL、約0.8mL、約0.9mLまたは約1.0mLである。一部の実施形態では、フォローアップ投薬量は、医薬組成物の第1の投薬量と同じ量である。一部の実施形態では、フォローアップ投薬量は、医薬組成物の第1の投薬量と異なる量である。一部の実施形態では、フォローアップ投薬量は、医薬組成物の第1の投薬量よりも少ない量である。一部の実施形態では、フォローアップ投薬量は、医薬組成物の第1の投薬量よりも多い量である。
【0112】
一部の実施形態では、0.5mLの医薬組成物が、投薬1回当たり各鼻孔に投与され、投薬は、一定期間の後に反復されて、合計で鼻孔当たり1mLの医薬組成物が投与される。一部の実施形態では、フォローアップ用量は、第1の用量の投与の約5分後に投与される。一部の実施形態では、0.5mLの医薬組成物が、投薬1回当たり各鼻孔に投与され、投薬は、一定期間の後にそれぞれ2回、反復されて、合計で鼻孔当たり1mLの医薬組成物が投与される。
【0113】
本明細書に記載される治療剤は、疾患または状態の発生前、その間、またはその後に投与することができ、治療剤を含有する組成物の投与のタイミングは、様々となり得る。一部の実施形態では、組成物は、疾患または状態の発生の可能性を低下させるために、予防薬として使用することができ、状態または疾患の傾向を有する対象に、連続的に投与することができる。組成物は、症状の開始中、またはその後可能な限り速やかに、対象に投与することができる。治療剤の投与は、症状開始の最初の48時間以内、症状開始の最初の24時間以内、症状開始の最初の6時間以内、または症状開始の3時間以内に開始することができる。初期投与は、本明細書に記載される任意の製剤を使用し、本明細書に記載される任意の経路などの実用的な任意の経路を介することができる。治療剤は、疾患または状態の開始が検出されるか、または疑われた後、可能な限り速やかに、例えば、約1カ月間~約3カ月間など、疾患の処置に必要な期間、投与することができる。処置の期間は、各対象に対して様々となり得る。
【0114】
本開示の化合物または医薬組成物は、1回よりも多く投与することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物または医薬組成物は、1日1回投与することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物または医薬組成物は、1日2回投与することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物または医薬組成物は、1日3回投与することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物または医薬組成物を投与することができ、投与は、少なくとも1回、反復することができる。一部の実施形態では、化合物または医薬組成物の投与は、1回、反復することができる。一部の実施形態では、化合物または医薬組成物の投与は、2回、反復することができる。一部の実施形態では、化合物または医薬組成物の投与は、3回、反復することができる。
【0115】
一部の実施形態では、化合物または医薬組成物の投与は、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日または約31日後に反復することができる。一部の実施形態では、化合物または医薬組成物の投与は、約7日後に反復することができる。一部の実施形態では、化合物または医薬組成物の投与は、約14日後に反復することができる。
【0116】
一部の実施形態では、対象が、脳傷害、例えば外傷性脳傷害を経験した後、可能な限り早く、治療剤(例えば、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体またはD-NAC)を投与することが賢明である。一部の実施形態では、外傷性脳傷害、および/または外傷性脳傷害に起因する続発性脳損傷は、本開示の化合物および組成物を兵士に投与することによって処置することができ、化合物は、兵士が外傷性脳傷害を経験した後、可能な限り速やかに部位に投与することができる。一部の実施形態では、化合物または組成物は、脳傷害の開始の、約1分、約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、約40分、約45分、約50分、約55分または約1時間後に投与される。
併用療法
【0117】
本開示の化合物または医薬組成物は、少なくとも1種の追加の治療剤と共に投与することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物または医薬組成物は、1種の追加の治療剤と共に投与することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物または医薬組成物は、2種の追加の治療剤と共に投与することができる。一部の実施形態では、本開示の化合物または医薬組成物は、3種の追加の治療剤と共に投与することができる。
【0118】
複数の治療剤を、任意の順序で、または同時に投与することができる。一部の実施形態では、本発明の化合物は、別の治療剤による処置と組み合わせて、その前またはその後に投与される。同時の場合、複数の治療剤は、統合された単一形態で、または複数の形態で、例えば複数の別個の丸剤として提供することができる。薬剤は、単一パッケージまたは複数のパッケージに、一緒にまたは別個にパッケージングすることができる。治療剤の1つまたはすべてが、多回用量で与えることができる。同時ではない場合、多回用量間のタイミングは、約1カ月もの期間まで様々となり得る。
【0119】
一部の実施形態では、治療剤は、5-リポゲナーゼ(lipogenase)活性化タンパク質(FLAP)阻害薬である。一部の実施形態では、FLAP阻害薬は、MK-866(L663536)、キフラポン(quiflapon)(MK-591)、フィボフラポン(fiboflapon)(GSK2190915、AM-803)、ベリフラポン(BAY X1005、DG-031)、AM679、または薬学的に許容されるその塩である。一部の実施形態では、治療剤は、グルタチオンである。一部の実施形態では、治療剤は、グルタチオンで装飾されたナノ粒子である。
【0120】
一部の実施形態では、治療剤は、カテプシンB阻害薬である。一部の実施形態では、カテプシンB阻害薬は、アンチパインジヒドロクロリド、CA-074、CA-074メチルエステル、カルパイン阻害薬I、カルパイン阻害薬II、キモスタチン、シスタチン、E-64、ロイペプチントリフルオロ酢酸塩、プロカテプシンBフラグメント、Z-Leu-Leu-Leuフルオロメチルケトンである。一部の実施形態では、カテプシンB阻害薬は、アンチパインジヒドロクロリドである。一部の実施形態では、カテプシンB阻害薬は、CA-074である。一部の実施形態では、カテプシンB阻害薬は、シスタチンである。一部の実施形態では、カテプシンB阻害薬は、キモスタチンである。
【0121】
一部の実施形態では、治療剤は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬である。一部の実施形態では、PARP阻害薬は、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、パミパリブ、ルカパリブ、CEP9722、E7016、イニパリブ、または3-アミノベンズアミドである。一部の実施形態では、PARP阻害薬は、オラパリブである。一部の実施形態では、PARP阻害薬は、ルカパリブである。一部の実施形態では、PARP阻害薬は、ニラパリブである。一部の実施形態では、PARP阻害薬は、タラゾパリブである。
【0122】
一部の実施形態では、治療剤は、プロベネシドである。一部の実施形態では、治療剤は、フェンセリンである。一部の実施形態では、治療剤は、ドーパミン作用剤である。
治療効果
【0123】
NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を変化させることができる。一部の実施形態では、脳領域は、大脳、脳幹、小脳、脳橋、髄質、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉、左背側線条体、後頭葉皮質または背外側前頭前野(DLPF)である。一部の実施形態では、脳領域は、後頭葉である。一部の実施形態では、脳領域は、後頭葉皮質である。一部の実施形態では、脳領域は、小脳である。一部の実施形態では、脳領域は、DLPFである。
【0124】
一部の実施形態では、投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を約20%~約300%増大した。一部の実施形態では、投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、約45%~約50%、約50%~約55%、約55%~約60%、約60%~約65%、約65%~約70%、約70%~約75%、約75%~約80%、約80%~約85%、約85%~約90%、約90%~約95%、または約95%~約100%増大した。一部の実施形態では、投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を約100%~約110%、約110%~約120%、約120%~約140%、約140%~約160%、約160%~約180%、約180%~約200%、約200%~約220%、約220%~約240%、約240%~約260%、約260%~約280%、または約280%~約300%増大した。
【0125】
一部の実施形態では、投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約110%、約120%、約130%、約140%、約150%、約160%、約170%、約180%、約190%、約200%、約210%、約220%、約230%、約240%、約250%、約260%、約270%、約280%、約290%、または約300%増大した。一部の実施形態では、投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を約20%増大した。一部の実施形態では、投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を約50%増大した。一部の実施形態では、投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を約100%増大した。一部の実施形態では、投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を約150%増大した。一部の実施形態では、投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物の濃度を約200%増大した。
【0126】
一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物/水比をモジュレートする。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のGSH/水比をモジュレートする。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のGSH/水比を増大する。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のNAA/水比をモジュレートする。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のNAA/水比を増大する。
【0127】
一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳の領域内のGSH/水比を約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/水比を約10%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/水比を約20%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/水比を約30%増大する。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳の領域内のGSH/水比を約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/水比を約10%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/水比を約20%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/水比を約30%低減する。
【0128】
一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳の領域内のNAA/水比を約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/水比を約10%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/水比を約20%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/水比を約30%増大する。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳の領域内のNAA/水比を約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/水比を約10%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/水比を約20%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/水比を約30%低減する。
【0129】
一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のNAC神経代謝産物/クレアチン比をモジュレートする。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のGSH/クレアチン比をモジュレートする。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のGSH/クレアチン比を増大する。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のNAA/クレアチン比をモジュレートする。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳領域内のNAA/クレアチン比を増大する。
【0130】
一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳の領域内のGSH/クレアチン比を約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/クレアチン比を約10%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/クレアチン比を約20%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/クレアチン比を約30%増大する。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳の領域内のGSH/クレアチン比を約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/クレアチン比を約10%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/クレアチン比を約20%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のGSH/クレアチン比を約30%低減する。
【0131】
一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳の領域内のNAA/クレアチン比を約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/クレアチン比を約10%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/クレアチン比を約20%増大する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/クレアチン比を約30%増大する。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳の領域内のNAA/クレアチン比を約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/クレアチン比を約10%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/クレアチン比を約20%低減する。一部の実施形態では、投与することは、脳の領域内のNAA/クレアチン比を約30%低減する。
【0132】
一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳の領域内のGSH/クレアチン比を増大し、NAA/クレアチン比を低減することができる。一部の実施形態では、NAC、NACA、NAC誘導体、NAC代謝産物、NAC同族体もしくはD-NAC、または薬学的に許容されるその塩を投与することは、脳の領域内のGSH/クレアチン比を約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%増大し、NAA/クレアチン比を約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%低減することができる。
対象
【0133】
本明細書において開示されている対象は、例えば、高齢者、成人、青年、思春期前の青年、子供、幼児、乳児、新生児および非ヒト動物であり得る。一部の実施形態では、対象は患者である。
臨床査定ツール
【0134】
本明細書では、鼻腔内NACまたはGSHの取り込み量を定量および測定するための方法が、開示される。一部の実施形態では、鼻から脳へのNACまたはGSH投与は、直接的な連続脳脊髄液(CSF)モニタリング、数学式モデリング、またはCNS内の局所薬物もしくは代謝産物レベルを非侵襲的にモニタリングすることができる他の分析技術を使用して測定される。一部の実施形態では、対象において、局所CNS媒介性NACまたはGSH生物活性を反映する生理学的現象を、鼻から脳へのNACまたはGSH投与後に測定して、鼻から脳への送達を立証または較正する。一部の実施形態では、鼻から脳へのNACまたはGSH投与は、ポジトロン放出断層法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)、ガンマシンチグラフィー、バイオ発光イメージング(BLI)、蛍光イメージング(FLI)、超音波イメージングおよび超音波変換器、コンピューター断層撮影法、光学イメージング、核磁気共鳴(NMR)技法、例えば磁気共鳴分光法(MRS)もしくは磁気共鳴画像法(MRI)、またはそれらの組合せを使用して定量および測定される。
【0135】
一部の実施形態では、鼻から脳へのNACまたはGSH投与は、MRSまたはMRIを使用して定量および測定される。MRIは、三次元の詳細な高度の解剖学的空間画像および精巧な軟部組織のコントラストを生成するための、強力磁石を利用する非電離型イメージング技術である。MRIにおける画像コントラストは、生物学的組織の固有の特性に基づく(例えば、プロトン含有量、縦方向の回復時間、横方向の緩和時間)。一部の実施形態では、造影剤、例えば、ガドリニウムをベースとする造影剤(例えば、ガドリニウム-ジエチレントリアミン-五酢酸(Gd-DTPA))および鉄含有剤を、コントラスト強調および画像輝度増強に利用することができる。MRIは、静的イメージングに加え、様々な潅流技術を使用して、動的情報を収集することができる。一部の実施形態では、潅流技術は、動的磁化率コントラスト、ダイナミックコントラストエンハンスメントまたは動脈スピン標識化を含むことができる。一部の実施形態では、鼻から脳へのNACまたはGSH投与を定量および測定するために、電離放射線を使用しない分析技術であるMRSを単独で、またはMRIと組み合わせて使用することができる。
【0136】
いくつかのツールもまた利用して、CNS状態の臨床的および神経心理学的特色を診断および査定することができる。一部の実施形態では、標準的な身体的および神経学的検査、および神経精神測定試験を使用して、CNS状態を有する対象を診断および査定することができる。
【0137】
バイオマーカーおよびイメージング:電気生理学的技術、イメージング技術および血液検査を使用して、対象のCNS状態を査定することができる。事象関連電位(EPR)は、永久的または認知的な作業に時間を固定した、コンピューター処理された脳波(EEG)シグナルを評価するために使用することができる。一部の実施形態では、コンピューター断層撮影法(CT)および磁気共鳴画像法(MRI)を使用して、CNS状態の進行を診断または追跡することができる。一部の実施形態では、拡散テンソルイメージングを使用して、CNS状態の進行を診断または追跡することができる。
【0138】
一部の実施形態では、MRIを使用して、脳における代謝産物のレベルを決定し、CNS疾患の進行を査定することができる。一部の実施形態では、MRIを使用して、N-アセチルアスパラギン酸、乳酸、グルタミン酸、ガンマ-アミノ酪酸およびグルタチオンなどの、μモル/gの範囲の代謝産物レベルを定量することができる。
【0139】
脳震盪後の症状スコア(PCSS):PCSSスコアは、7ポイントスケールで対象における脳震盪の症状を評価するために使用することができる22項目を含む。0は、症状なしに対応し、6は、重症症状に対応する。PCSSスコアは、11歳およびそれより上の対象において、臨床的に診断された脳震盪を有する個体を特定すること、および回復の長期化を予測することに使用することができる。
【0140】
グレードに分けられた症状チェックリスト(GSC):GSCは、7ポイントスケールでスコア化される16項目を含む。GSCスケールは、13歳およびそれより上の対象に適用可能であり、三因子構成(認知、身体および神経行動学)を組み込む。
【0141】
標準化脳震盪査定ツール(SCAT):SCATは、GCS、記憶査定のためのMaddocksの質問、PCSS、ならびに他の神経学的および認知検査などの他の査定スケールを組み込む標準化ツールである。
【0142】
即時脳震盪後査定および認知検査(ImPACT):ImPACTは、人口統計データ、神経心理学的検査およびPCSSなどの3つの構成要素を含む、コンピューター化検査バッテリーである。ImPACTは、認知(例えば、注意力、処理速度、衝動性および反応時間)の査定を含む。ImPACTは、mTBI症状のためのスケールとの組合せにおいて、81.9%の感度および89.4%の特異度を有する。
【0143】
King-Devickスケール:King-Devickスケールは、頭部傷害後に急性的に施行される簡単な試験であり、この試験では、対象は、試験カード上の文字および数のパターンを読み取らなければならない。King-Devickスケールは、言語、注意力および眼球運動を査定するものであり、これらのすべてが、例えば脳震盪後のCNS状態において損なわれるおそれがある。
【実施例】
【0144】
(実施例1)
鼻腔内NACの脳内バイオアベイラビリティーおよび安全性の第I相研究
単一施設での単盲検オープンラベルの6つのパートによる第1相研究を、健康なボランティアで実施して、IN NACの脳内バイオアベイラビリティー、安全性、および忍容性を、NAC由来の神経代謝産物の1H-MRS測定を利用して査定する。NAC由来の神経代謝産物の脳内バイオアベイラビリティーを、3つの用量のIN NACについて査定し、IN GSHの効果と比較する。加えて、様々な製剤、投薬デバイスおよびIN投与中の体位決めの効果を評価する。NACの相対的な脳内バイオアベイラビリティーを、IN、IV、または経口投与によるNACの投与後に測定する。IN、IV、または経口投与によるNACの7日間の反復投薬の効果を、1H-MRSを使用して決定する。
【0145】
測定値は、IN NACの単回漸増反復投薬の研究中に、NAC由来の脳内代謝産物の投薬前および投薬後の1H-MRSによって得る。また、NAC(遊離および全体)、システイン、GSHの血中レベルおよびGSH/GSSG比を得、脳脊髄液(CSF)NACの測定値を、7日間の反復投薬の前および後に得る。安全性および忍容性を、有害事象、身体的神経学的検査での知見、臨床検査結果、心電図(ECG)での知見、および鼻の忍容性についての特定の査定の報告により査定する。
【0146】
研究の各パートでは、参加者は、1日目のIP投与の28日前までに開始されるスクリーニングを受ける。対象は、研究に特異的な任意の手順または査定を受ける前に、インフォームドコンセント書式(ICF)に署名するよう求められる。組み入れおよび除外基準に基づいて、研究に適任である参加者が登録される。研究の各パートにおいて、安全性を、有害事象(AE)の査定、脆弱性査定採点ツール(VAS-T)、および修正全鼻症状(TNSS-M)スコア、心電図(ECG)結果、バイタルサイン、身体および神経学的検査、血液検査、ならびに尿検査によってモニタリングする。
【0147】
単回用量のIN GSHおよび単回漸増用量のIN NACの薬物動態(PK)および薬力学的(PK)特性を、1)背外側前頭前野(DLPF)、後頭葉および線条体におけるボクセルの水またはクレアチン共鳴に対する比として表される、GSHおよびNACのN-システイニル共鳴ならびにNACおよびN-アセチルアスパラギン酸(NAA)のN-アセチル共鳴の1H-MRS測定値、ならびに2)GSH、遊離および全NAC、システインの末梢血濃度、ならびにRBCのGSH/GSSH比によって査定される通り、NAC由来の神経代謝産物に対する用量の効果を測定することによって決定する。研究の各パートにおいて、MRS分析を完了し、PK試料を、投薬前、ならびに投薬の1、3、6および24時間後に採取する。
【0148】
異なる投薬条件、製剤下で、様々なデバイスおよびIP投与中の参加者の体位決めを使用して投与したIN NACの効果を、MRSを使用して目的のボクセルにおけるNAC由来の神経代謝産物を測定することによって決定する。IN NACの1日2回による7日間の投薬の、1)目的のボクセルにおける前述のNAC由来の神経代謝産物、2)CSFのNACレベル、ならびに3)GSH、遊離および全NAC、システインの末梢血濃度、ならびにRBCのGSH/GSSH比の、MRSにより決定されたレベルに対する効果を測定する。
【0149】
参加者集団:研究を、インフォームドコンセント時に含まれた72人の健康な男性および女性ボランティアで実施する。妊娠の可能性がある女性(WOCBP)は含まれてもよく、スクリーニングからフォローアップ期間を含めた研究完了までの研究中、およびIPの最終投薬後少なくとも90日間は、避妊要件に従う。WOCBPは、スクリーニング時およびIPの投与前に、妊娠反応検査の陰性を実証しなければならない。スクリーニングから研究完了までの、各参加者の最大関与期間は、およそ64~78日間である。
【0150】
組み入れ基準:1)インフォームドコンセント時に健康な、両端の値を含み18~45歳の間のボランティア;2)病歴、身体検査、バイタルサイン、臨床検査、およびECGによって決定される一般健康状態が良好であること。治験責任者(PI)または指定された医師によって臨床的有意性がないものとして判断された、単離された範囲外の値は、許可することができる。この決定についての理論的根拠は、参加者の原資料に記録されなければならない;3)スクリーニング時に、両端の値を含み50~120kgの範囲の体重および両端の値を含み19~28kg/m2の肥満度指数(BMI)を有していること;4)IP投与前24時間およびすべての他の外来診療の来院前24時間、アルコール摂取を控えることに同意すること;5)PIおよびスポンサーの医療モニターによって承認される場合を除いて、IP投与前14日間以内および研究期間中、処方薬(受胎調節を除く)の使用しないことに同意すること;6)医療モニターによって承認される場合を除いて、IP投与前14日間以内から7日目のフォローアップ来院まで、市販(OTC)医薬品(コルチコステロイド、アスピリン、疼痛医薬品、うっ血除去薬、抗ヒスタミン薬を含む)および漢方医薬品(セイヨウオトギリソウを含む)を使用しないことに同意すること。パラセタモール(最大2g/日)の随時使用は許容される;7)スクリーニング期間の開始から28日目のフォローアップまで、衝突を伴う競技への参加を控えることに同意すること;8)WOCBPは、スクリーニングから、フォローアップ期間を含めた研究完了まで、妊娠してはならず、許容される高度に有効な二重バリア避妊法を使用しなければならない。二重バリア避妊法とは、コンドームの使用(男性または女性、自己申告による)、および以下の1つの形態と定義される:確立されているホルモン避妊法(例えば、経口避妊ピル[OCP]、長時間作用性の埋め込み型ホルモン、注射用ホルモン、膣リングまたは子宮内デバイス[IUD])、スクリーニングの少なくとも6カ月前の避妊手術(例えば、卵管閉塞術、子宮摘出術、両側卵管摘除術、または両側卵巣摘出術)の文書証拠。同性間関係にあるか、または性的関係が全くない(異性との性交渉の禁欲、自己申告による)WOCBPは、避妊法を使用しないことが彼女らの好ましい通常のライフスタイルである場合、避妊法を使用する必要はない。これらのWOCBPは、スクリーニングから、研究薬物の最終投薬後90日までに、異性関係を始めるかまたは始める計画がある場合、前述の許容される高度に有効な避妊方法を使用することに同意しなければならない。WOCBPは、スクリーニング時および-1日目に妊娠検査の陰性を有し、研究を通して、必要に応じて追加の妊娠検査を進んで受けなければならない。
【0151】
妊娠の可能性がない女性(非WOCBP)は、閉経後、≧12カ月でなければならない。閉経後状態は、無月経女性参加者のためのスクリーニング時に、卵胞刺激ホルモン(FSH)レベルの検査により≧40IU/mLで確認される。非WOCBPは、避妊法を使用する必要はない。周期的禁欲(例えば、カレンダー、排卵、症状体温、排卵後法)および膣外射精は、高度に有効な受胎調節方法とは考えられていない。WOCBPとの性的関係に関与する男性参加者は、スクリーニングから、研究薬物の最終投薬後少なくとも90日間まで、許容される高度に有効な二重バリア避妊方法を使用しなければならない。二重バリア避妊法は、コンドームの使用(男性または女性、自己申告による)として、およびWOCBPについては、OCP、長時間作用性の埋め込み型ホルモン、注射用ホルモン、膣リングもしくはIUD(自己申告による)、または避妊手術(例えば、卵管閉塞術、子宮摘出術、両側卵管摘除術、または両側卵巣摘出術)を受けていることを含めた有効な避妊の使用(自己申告による)として定義される。
【0152】
同性間関係にあるか、または性的関係が全くない(異性との性交渉の禁欲、自己申告による)男性は、避妊法を使用しないことが彼らの好ましい通常のライフスタイルである場合、避妊法を使用する必要はない。これらの男性は、スクリーニングから、研究薬物の最終投薬後90日間までに、WOCBPとの異性関係を始めるかまたは始める計画がある場合、前述の許容される高度に有効な避妊方法を使用することに同意しなければならない。
【0153】
除外基準:1)スクリーニング時に妊娠中または授乳中である女性;2)鼻中隔の公知の偏位である鼻腔の変形、急性もしくは慢性副鼻腔炎、または鼻腔および/もしくは鼻咽頭の最近(<5年)の手術歴を有する;3)過去5年以内の発作またはてんかんの病歴;4)中程度から重症の外傷性脳傷害の病歴;5)過去1年以内の脳震盪の病歴;6)現在、心血管、神経、筋骨格、血液、呼吸器、皮膚、肝臓もしくは新生物疾患または免疫不全状態(それらに限定されない)を含めた、研究者が参加者を除外すべきと考える任意の臨床的に有意な医学的疾病または医学的障害の病歴を有している;7)研究への参加を妨げるおそれがある精神医学的または行動学的状態;8)IP投与前14日以内の感冒を含めた急性上気道疾病、またはスクリーニングの1カ月以内に重病を有していたもしくは入院していた;9)スクリーニングの12週間以内の大手術;10)IP投与前4週間以内およびフォローアップ期間を含めた研究の最後までに、待機的手術を受ける計画がある任意の参加者;11)スクリーニング時にHIV抗体、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、またはC型肝炎ウイルス(HCV)抗体についての血清学的検査の陽性;12)最近のアルコールまたは薬物乱用歴(過去6カ月以内);13)投薬前3カ月以内にタバコまたは関連製品を喫煙していた;14)スクリーニング時および/または研究中の任意の時点で、それらに限定されるものではないが、コカイン、カンナビノイド、アンフェタミン、ベンゾジアゼピン、オピエート、三環系抗うつ薬、およびメタドンを含めた乱用物質についての尿中薬物検査が陽性である。参加者は、研究者の裁量で、陽性の結果の後に1回、再スクリーニングすることができる;15)スクリーニング時および/または研究中の任意の時点で、アルコール呼気検査が陽性である。患者は、1日目のIP投与および研究査定日の前少なくとも24時間、アルコールを控えるよう求められる;16)1日当たり平均でおよそ500mg/日を超えるカフェイン(茶もしくはコーヒー5杯、またはソーダもしくは他のカフェイン入り製品8缶に含有される)を消費している;17)スクリーニング前60日以内に献血した;18)医薬品の一定の使用を必要とする活性薬物および/もしくは食品アレルギーもしくは他の活性なアレルギー性疾患の病歴、または重症アレルギー反応、血管浮腫もしくはアナフィラキシーの病歴を有している;19)IP投与の30日または5半減期(いずれかのより長い方)以内に、デバイスまたは治験薬剤を含めた任意の他の実験的治療を受けていた;20)それらに限定されるものではないが、外科手術ステープル、ペースメーカー、鋼製IUDなどを含めた取り外し不可能な金属インプラントの存在、閉所恐怖症または任意の他の禁忌症に起因して、MRIスキャンを受けることができない。
統計方法
【0154】
薬物動態:ベースラインから投薬後の各時点までの標的代謝産物のMRSスペクトルの変化および薬物動態査定(遊離および全NAC、システインおよびGSHの濃度、ならびにGSH/GSSG比、ならびにCSFのNACレベル)を、記述統計学を使用してまとめる。
【0155】
安全性および忍容性:参加者は、0の値が非常に良好な忍容性を示し、10の値が非常に低い忍容性を示す視覚的アナログスケール(VAS)を使用して、研究中に数回、IP忍容性について評定する。対象はまた、TNSS-Mを完了し、それによって、5つの特定の鼻症状(すなわち、うっ血、鼻汁、そう痒、疼痛および無痛性の灼熱感)を0~3スケールで査定する。TNSS-Mで「3」(重症)としてスコア化された項目だけを、有害事象として報告する。
【0156】
有害事象は、医薬品規制用語集(MedDRA(登録商標))の最新版を使用してコード化される。報告者の用語、優先使用語(PT)、器官別大分類(SOC)、重症度およびIPとの関係を含めた、参加者別のAEデータの一覧を提供する。処置下で発現した有害事象(TEAE)を経験した参加者の数、および個々のTEAEの数を、SOC、PT、ならびに重症度およびIPとの関係によってまとめる。臨床検査評価、バイタルサイン査定、およびECGパラメーターを、スケジュールされた来院ごとにまとめる。プロトコールにより特定された各時点におけるベースラインからの変化の概要を提示する。
【0157】
薬歴および併用医薬品は、研究開始時に入手可能な世界保健機関(WHO)薬物辞書の最新版を使用してコード化され、参加者によって列挙され、解剖治療化学(ATC)(レベル2)を使用する処置および優先使用名称によってまとめられる。病歴、妊娠/FSH検査、尿中薬物スクリーニング/アルコール呼気検査、身体および神経学的検査、ならびに血清学(HIV、B型肝炎およびC型肝炎スクリーニング)は、参加者によって列挙される。
【0158】
主要目的:研究の主要目的は、健康な成人ボランティアにおけるNAC由来の代謝マーカーのベースラインからの変化のプロトン磁気共鳴分光法(1H-MRS)査定を使用して、鼻腔内(IN)NACの脳内バイオアベイラビリティーを査定することである。
【0159】
副次的目的:研究の副次的目的には、以下が含まれる。1)IN NACの安全性および忍容性を査定すること、2)IN NACの時間経過および局所CNS薬力学的活性を査定すること、3)IN GSHに対してIN NACの薬物動態および薬力学的活性を比較すること、4)IN NACの鼻から脳への最適な送達について、治験薬(IP)投与中のデバイスおよび体位決めを比較すること、5)IN投薬を複数回反復した後の、IN NACの局所CNS薬力学的活性および安全性および忍容性を査定すること、ならびに6)IN投与後の血液および脳脊髄液(CSF)中のNACの薬物動態プロファイルを査定すること。
【0160】
スクリーニング不適格:スクリーニング不適格とは、臨床研究への参加に同意しているが、その後登録されなかったボランティアと定義される。スクリーニング不適格参加者の透明性のある報告が、確実に臨床試験報告に関する統合基準の公開要件を満たし、規制当局からの質問に応答するようにするために、最小限の一連のスクリーニング不適格情報が必要である。最小限の情報には、スクリーニング不適格の詳細、適格性基準、および任意の重篤な有害事象(SAE)が含まれる。この研究への参加基準を満たしていない(スクリーニング不適格)個体は、研究者の判断に基づいて、医療モニター(MM)と協議の上で再スクリーニングされる。研究の募集期間内に再スクリーニングが可能である。再スクリーニングを受けた参加者は、初期スクリーニングと同じ参加者数で割り当てられる。
【0161】
参加者交代:インフォームドコンセント書式(ICF)に署名し登録されているが、IPを受けていない参加者は、交代させられる場合がある。ICFに署名し登録され、IPを受けているが、その後離脱するか、または研究から離脱させられるもしくは中止されられる参加者は、スポンサーの裁量で交代させられる。
【0162】
参加者離脱基準:参加者は、研究参加への同意をいつでも取り下げることができる。参加者が同意を取り下げる場合、離脱同意の日付および理由を記述する。参加者は、必要なすべての査定が完了し、退院することが安全である研究者がみなすまで、院内に留まることが推奨される。参加者データは、同意の取り下げの日まで、分析に含まれる。
【0163】
離脱の主な理由を特定し、離脱日と共に適切なeCRFで記録する。適用される規則に従って、参加者は、いつでもいかなる理由でも、将来的な医療を受ける権利を損なうことなく、研究から離脱する権利を有する。参加者が、AEが原因で離脱する場合、研究者は、AEが解消されるかまたは安定化するまで、参加者が適切なフォローアップケアを受けられるよう手配する。解消されないAEは、スケジュールされたフォローアップ最終来院まで、またはさらなるフォローアップがそれ以上示されないことをPIおよびMMが決定するまで追跡される。AEに加えて、研究からの参加者の解任の他の理由には、同意の取り下げ、研究者もしくはスポンサーによる管理上の決定、プロトコールの逸脱、または参加者の不履行が含まれる場合があるが、それらに限定されない。
【0164】
参加者が研究からの離脱を求めるまたは決定する場合、離脱日まで可能な限り完全に、観察を、特に列挙された主要および副次的目的を完了し、報告するためのあらゆる努力がなされる。可能であればいつでも、研究完了前に中止するすべての参加者について、フォローアップ来院について列挙されたものを含めた検査および評価を実施する。
【0165】
参加者終了基準:個々の参加者の早期終了の理由には、プロトコールの逸脱もしくは参加者の不履行(適切な電子症例報告書[eCRF]で特定しなければならない);妊娠;重篤もしくは重症AE;研究者もしくはスポンサーによる管理上の決定;死亡;または他のもの(特定しなければならない)が含まれる場合がある。
【0166】
ロストフォローアップ:参加者は、スケジュールされた来院のうちの1つに戻って来られず、研究スタッフによって連絡が取れない場合、ロストフォローアップと考えられる。参加者が、必要な研究来院のために戻って来られない場合、以下の行動が取られる。施設は、参加者に連絡を取るよう試み、2日以内にできなかった来院をリスケジュールし、割り当てられた来院スケジュールを維持する重要性について参加者にカウンセリングし、参加者が研究を継続したいかどうかを確認する。参加者がロストフォローアップとみなされる前に、研究者または被指名人は、参加者との連絡を回復するためのあらゆる努力を行う(3回の電話連絡、ならびに電子メールおよびテキストメッセージによる連絡)。これらの連絡の試みは、参加者の医療記録または研究ファイルに記述される。参加者は、スタッフが参加者と連絡が取れない場合、ロストフォローアップという主な理由で研究から離脱したと考えられる。
(実施例2)
治験薬、投薬量、および投与方式
【0167】
参加者は、NACのIP製剤および投薬量の1つまたは複数を受ける。脳内GSHのおよそ13%の増大をもたらすIN NACの用量は、最小有効用量と考えられる。
【0168】
鼻腔内NAC:NACのIN投与では、吸入のための20%NAC水溶液または当量を、以下の用量で鼻腔内投与する。i)100mg(0.5mL)-投薬1回当たり各鼻孔におよそ0.25mL、ii)200mg(1.0mL)-投薬1回当たり各鼻孔におよそ0.50mL、またはiii)400mg(2.0mL)-各鼻孔に1回およそ0.50mLで、5分後に投与を反復する。20%NAC溶液は、4mLまたは30mLガラスバイアル中、無色透明溶液として供給される。溶液は、200mg/mL(20%w/v)のアセチルシステインを、エデト酸二ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび水と共に含有する。生成物は、pH調整のために塩酸を含有することもできる。pHは、6.0~7.5の範囲に維持する。NACの20%溶液を、a)Teleflex LMA(登録商標)MAD Nasal(商標)鼻腔内粘膜噴霧デバイス、またはb)Aptar CPS 5mL鼻ポンプの2つのデバイスの一方により投与する。
【0169】
鼻腔内GSH:GSHのIN投与では、20%GSH水溶液または当量を、200mg(1.0mL)の用量で、各鼻孔におよそ0.50mLを鼻腔内投与する。IN GSHは、Teleflex MADデバイスを使用して投与する。
【0170】
経口NAC:NACの経口投与では、200mg/mLのNAC溶液(20%w/v)を使用する。経口投与のためのNACは、20mLの20%NAC溶液を60mLのダイエットソフトドリンクで希釈することによって調製し、それによって5%溶液中4,000mgのNACの用量を提供する。
【0171】
IV NAC:注射のための200mg/mLのNAC溶液または当量を、IV投与のために使用する。150mg/kgのNACに等価な量のNAC溶液を、200mLの0.45%生理食塩水溶液で希釈し、1時間にわたってIVによって投与する。200mg/mLのNAC(アセチルシステイン)注射液を、30mLバイアル中、20%w/vアセチルシステインを含有する無色透明の滅菌溶液として提供する。溶液は、pH調整のための水酸化ナトリウムおよび注射用の滅菌水も含有する。
【0172】
投与のためのデバイス:IPは、1)LMA(登録商標)MAD Nasal(商標)鼻腔内粘膜噴霧デバイス、または2)Aptar CPS 5mL鼻ポンプを使用して投与する。
【0173】
治験薬の貯蔵:吸入のためのアセチルシステイン20%溶液を受け取ったら、光から保護されたエリアにおいて制御された室温で貯蔵し、25℃未満の温度で維持する。開封したバイアルに残った未希釈溶液は、冷蔵下で貯蔵し、96時間以内に使用する。GSH溶液は、制御された室温で貯蔵する。未開封のIV NAC溶液は、制御された室温で貯蔵し、既に開封したIN NACバイアルは、IV投与には使用しない。
(実施例3)
研究評価および測定
【0174】
薬力学的査定:薬力学的査定には、健康なボランティアへのIN NACの単回投薬後、投薬の1、3、6および24時間後に1H-MRSを使用する、3つの脳領域(すなわち、後頭葉皮質、線条体およびDLPF)におけるNAC由来の神経代謝産物の濃度のベースラインからの変化が含まれる。
【0175】
1H-MRS分析は、レンズ核、後頭葉皮質、および背外側前頭前野(DLPF)のレベルで左背側線条体に置かれた3.0cm×3.0cm×2.5cmのボクセルを使用して実施する。J変調スピンエコー差法は、ボクセル1つ当たり12.5分の取得時間の間に240の交互的励起(合計480)を使用して、70msのエコー時間(TE)および1500msの反復時間(TR)で実施する。一対の周波数選択的逆パルスを、標準ポイント分解分光法に挿入し、3.28ppmのグルタチオンα-システイニル共鳴の酸化形態の励起を回避しながら、4.56ppmのグルタチオンα-システイニル共鳴の還元形態の周波数で交互スキャンに適用する。結果として生じる2つのGSHの逆サブスペクトルを減算することにより、2.98ppmのGSHβ-システイニル共鳴だけからなる1H-MRSが得られる。32チャネルフェーズドアレイコイルGSHデータを、各レシーバーコイル要素からの非抑制ボクセル組織水シグナルを使用して、単一規定時間領域の自由誘導減衰シグナルと合わせて、必要とされる相対的フェーズドアレイコイル感度を誘導する。代謝産物濃度は、レーベンバーグ-マーカート非線形最小二乗法アルゴリズムを使用して、各共鳴をガウス-ローレンツ曲線関数に周波数ドメインでフィッティングすることによって得られた個々のスペクトルピークの面積を計算することによって推定する。
【0176】
薬物動態査定:薬物動態査定には、IN NACまたはGSH投与の1、3、6および24時間後のGSH、システイン、遊離および全NACの末梢血測定値、ならびに還元GSH対酸化GSH比(GSH/GSSG比)、ならびに研究のパート5および6におけるIP投与の6時間後に腰椎穿刺により得られたCSFのNACレベルが含まれる。
【0177】
血液PK試料収集:血液PK試料は、可能な限り、査定スケジュールの特定された各時点におけるMRSデータの取得の直前に収集する。血液PKは、遊離および全NAC、システインおよびGSHの濃度、ならびにGSH/GSSG比を測定する。GSH/GSSGは、質量分析計(MS)に接続した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、全血中で測定する。NAC、CysおよびGSHの全タンパク質結合および全タンパク質非結合濃度は、妥当性を検証されたHPLC-MSアッセイを使用して、血漿中で測定する。
【0178】
薬力学的エンドポイント:ベースライン、ならびにIN NACの1、3および6時間後の、目的の3つの領域(後頭葉皮質、線条体、DLPF)におけるNAC由来の脳内代謝産物のMRSを、記述統計学を使用してまとめる。ベースラインから各投薬後の測定までの変化を、記述的にまとめる。先験的な推論による統計試験は計画されない。目的の脳領域およびMRSのタイミングは、初期結果に基づいて修正される。
【0179】
薬物動態エンドポイント:標的代謝産物の定量化できる濃度の記述的要約を、特定された時点について報告して、遊離および全NAC、システインおよびGSHの濃度、ならびに還元GSH対酸化GSH比(GSH/GSSG)を査定する。
【0180】
安全性および忍容性:薬歴および併用医薬品、AE、臨床検査評価、バイタルサイン、ECG、ならびに他の安全性査定を含めたすべての安全性査定を、安全性解析集団を使用してまとめる。
【0181】
薬歴および併用医薬品:薬歴および併用医薬品は、研究の開始時に入手可能なWHO薬物辞書の最新版を使用してコード化される。薬歴および併用医薬品は、参加者によって列挙され、ATC(レベル2)を使用する処置および優先使用名称によってまとめられる。
【0182】
有害事象:利用可能なMedDRA(登録商標)の最新版を使用してコード化される有害事象。報告者の用語、PT、SOC、重症度およびIPとの関係を含めた、参加者別のAEデータの一覧を提供する。TEAEを経験している参加者の数および個々のTEAEの数を、SOC、PT、重症度およびIPとの関係によってまとめる。
【0183】
他の安全性査定:参加者によって列挙される他の安全性査定には、病歴、妊娠検査、尿中薬物スクリーニング、アルコール呼気検査、身体および神経学的検査、ならびに血清学(例えば、HIV、B型肝炎、C型肝炎)が含まれる。
【0184】
安全性パラメーター:研究手順を、査定スケジュールに記述される通り完了する。参加者が、特定された時間枠以内に来院することができない場合、研究者または被指名人は、適切なスケジューリングについて、スポンサーのMMまたは適切な被指名人と議論する。安全への懸念の緊急評価に必要な、スケジュール外の任意の手順は、スケジュールされたすべての日常的手順に優先する。
【0185】
人口統計および病歴:病歴(例えば、併用医薬品、アルコールおよび喫煙状態、ならびに薬物使用)、生年月日、年齢(数え)、性別、民族性、および人種を、スクリーニング時に記録する。
【0186】
バイタルサイン:バイタルサイン(例えば、血圧[収縮期および拡張期]、脈拍数、呼吸数、および体温)を列挙し、プロトコールにより特定された収集時点にまとめる。観察されたベースラインからの変化を、プロトコールにより特定された各収集時点にまとめる。バイタルサインの測定時間が採血と同時である場合、バイタルサインは、可能であればスケジュールされた採血の前に取って、採血が、プロトコールにおいて特定された時間枠内に確実に行われるようにする。必要であるとみなされる場合、追加のバイタルサインを他の時間に取る。
【0187】
体重および身長:身長および体重を、スクリーニング時に測定し、BMIを計算するために使用する。BMIは、参加者のキログラムでの体重を、参加者のメートルでの身長の二乗で割ることによって計算する(kg/m2)。体重および身長は、参加者の靴およびジャケットまたはコートを脱いだ状態で得る。
【0188】
身体および神経学的検査:全身の簡単な身体および神経学的検査は、査定スケジュールの特定された時点において、有資格医師によって実施される。全身の身体検査には、全体的外観、頭部、耳、目、鼻、喉、歯の状態、甲状腺、胸部(心臓、肺)、腹部、皮膚、神経、四肢、背部、頸部、筋骨格、およびリンパ節が含まれる。神経学的検査には、精神状態および脳神経機能、運動および感覚系、歩行/協調運動、ならびに深部腱反射の査定が含まれる。簡単な身体検査には、任意の過去の知見に基づく、頭部、耳、目、鼻、喉、胸部(心臓、肺)、腹部、皮膚、筋骨格、ならびにリンパ節および任意の関連系が含まれる。簡単な神経学的検査には、眼球運動、顔の対称性、上肢漂動、協調運動(指鼻および踵-つま先試験)および深部腱反射の査定が含まれる。身体および神経学的検査は、研究者によって必要とみなされる場合、スケジュール外の様々な時点で実施される。
【0189】
忍容性査定:参加者は、研究中の特定された時間において、非常に良好な忍容性を示す0の値および非常に低い忍容性を示す10の値を用いるVAS-Tを使用して、IP忍容性について評定する。参加者はまた、TNSS-Mを完了し、それによって、5つの特定の鼻症状(うっ血、鼻汁、そう痒、疼痛および無痛性の灼熱感)を0~3スケールで査定する。TNSS-Mで「3」(重症)としてスコア化された項目だけを、有害事象として報告する。
【0190】
心電図:ECG値を列挙し、プロトコールにより特定された収集時点にまとめる。観察されたベースラインからの変化を、プロトコールにより特定された各収集時点にまとめる。12誘導ECGを、査定スケジュールに記述されている時点に取る。必要であるとみなされる場合、追加のECGモニタリングを他の時間に実施する。ECGは、バイタルサインの前に、仰臥位の参加者で実施する。参加者は、読取りを行う前に少なくとも5分間、仰臥位にある。すべてのECGトレーシングが、PIまたは被指名人によって再評価される。ECGモニタリングの時間が採血と同時である場合、ECGを、スケジュールされた採血の前に行うと同時に、採血が、プロトコールにおいて特定された時間枠内に確実に行われるようにする。
【0191】
臨床検査評価:血液学、血液生化学および尿検査を含めた臨床検査評価を列挙し、プロトコールにより特定された各収集時点にまとめる。観察されたベースラインの臨床検査データからの変化を、プロトコールにより特定された各収集時点にまとめる。安全性臨床検査(血液学、血液生化学、および尿検査)のための血液試料を、査定スケジュールの特定された時点に採取する。参加者の臨床状態に基づいて必要であるとみなされる場合、追加の臨床検査を他の時間に実施する。
【0192】
検査される血液学的パラメーターは、ヘモグロビン(HGB);ヘマトクリット(HCT);赤血球(RBC);血小板(PLAT);好酸球(ESN)、好中球(NEUT)、好塩基球(BASO)、リンパ球(LYM)、および単球(MONO)を含めた白血球分画である。検査される血液生化学パラメーターは、尿素(BUN)、クレアチニン(CREAT)、総ビリルビン(BILI)および直接ビリルビン(BILIDIR)、尿酸(URATE)、アルブミン(ALB)、グロブリン(GLOBUL)、アルカリホスファターゼ(ALP)、クレアチンキナーゼ(CK)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ガンマ-GT(GGT)、グルコース(GLU)、ナトリウム(NA)、カリウム(K)、カルシウム(CA)、クロライド(CL)、リン(PHOS)、炭酸水素(BICARB)、ならびに乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)である。
【0193】
尿検査:尿検査試験(尿試験紙)を、各参加者に実施する。検尿を、スクリーニング時に実施する。タンパク質、血液、亜硝酸塩または白血球エステラーゼについて異常性が認められる場合(研究者の裁量で)、赤血球、白血球細胞、細菌および円柱の顕微鏡検査を実施する。検査されるべき巨視的尿検査パラメーターは、pH(PH)、比重(SPGRAV)、クレアチニン(CREATININE)、タンパク質(PROT)、グルコース(GLUC)、ケトン(KETONES)、総ビリルビン(BILI)、潜血(OCCBLD)、亜硝酸塩(NITRITE)、ウロビリノーゲン(UROBIL)、および白血球(WBC)である。
【0194】
ウイルス血清学:HBsAg、抗HCVおよびHIV抗体検査を、スクリーニング時に実施する。
【0195】
尿中薬物スクリーニングおよびアルコール呼気検査:尿中薬物スクリーニングを、スクリーニング時、1日目の投薬の前、および7日目のフォローアップ来院時に実施する。尿中薬物スクリーニングには、コカイン、カンナビノイド、アンフェタミン、ベンゾジアゼピン、オピエート、三環系抗うつ薬およびメタドンが含まれるが、それらに限定されない。アルコール呼気検査を、スクリーニング時、1日目の投薬の前、および7日目のフォローアップ来院時に実施する。
【0196】
妊娠反応検査および卵胞刺激ホルモン検査:血清妊娠検査を、WOCBPについてだけスクリーニング来院時に実施する。尿妊娠検査を、1日目の投薬前に実施する。結果が陽性である場合、確認のために血清検査を実施する。妊娠の可能性がない女性は、閉経後でなくてはならない(少なくとも12カ月間の周期的月経期間の休止と定義される)。閉経後状態は、スクリーニング時に、FSHレベルの検査により≧40IU/mLで確認される。
【0197】
有害なおよび重篤な有害事象:AEは、同意時からフォローアップ来院の完了まで、すべての参加者について報告される。重篤な有害事象は、同意時からフォローアップ来院の完了まで、すべての参加者(登録済みおよび未登録)について報告される。同意時から投薬までに報告された有害事象は、処置前のAEとして記録される。処置により現れたAE(TEAE)は、IPの初回投与からフォローアップ来院まで、または処置に関係するとみなされたAEのための30日間のフォローアップ期間まで評価される。最終フォローアップ時に進行中の有害事象は、AEのeCRFページに、回復せず/解消せずとしてマークを付けられる。自発的に申し出られ、問い合わせられたすべてのAE、ならびに観察されたAEは、参加者の医療記録およびeCRFに記録される。
【0198】
AEとは、この処置との因果関係を有すると考えられるかどうかに関わらず、ヒトにおける医薬製品の使用と関連して生じる任意の事象、副作用、または他の不都合な医療上の出来事である。AEは、医薬製品と関係すると考えられるかどうかに関わらず、医薬製品の使用と時間的に関連する臨床的に有意な異常臨床検査知見、症状、または疾患を含むことができる、任意の好ましくない意図せぬ徴候であってよい。
【0199】
AEの定義を満たす事象には、1)状態の頻度および/または強度の増大のいずれかを含む、既存の慢性または間欠性状態の増悪、2)たとえ研究開始前に存在していたとしても、IP投与後に検出または診断された、報告期間中に生じる新しい状態、3)疑わしい相互作用の徴候、症状、または臨床的後遺症、ならびに4)IPまたは併用医薬品のいずれかの疑わしい過剰投薬の徴候、症状、または臨床的後遺症(過剰投薬自体はAE/SAEとして報告される)が含まれる。
【0200】
AEの定義を満たさない事象には、1)医学的または外科的手技(例えば、内視鏡検査、虫垂切除術)、手技に至る状態は、AEの基準を満たす場合、AEとして報告される、2)不都合な医療上の出来事が生じなかった状況(例えば、社会的および/または便宜的入院)、および3)研究の開始時において存在するかまたは検出された、悪化しない既存の疾患または状態の予想される日常的ゆらぎが含まれる。報告または観察によるAEの証拠がある場合、研究者または被指名人は、以下の情報:開始および回復の時間、重症度、重篤度、因果関係/研究処置との関係、IPに関して取られた行動、AEに関して取られた行動、ならびにアウトカムをさらに評価し、記録する。TNSS-Mで「3」(重症)としてスコア化された項目だけを、有害事象として報告する。
【0201】
有害事象の重症度:AEの重症度は、研究者によって、以下の1つとしてグレードに分けられる。1)軽度(グレード1):通常、一過性であり、ごく最小限の処置または治療介入を必要とし得るタイプのAE。事象は、一般に、日常生活の通常の活動を妨害しない、2)中程度(グレード2):通常、追加の特定の治療介入で軽減されるタイプのAE。事象は、日常生活の通常の活動を妨害し、不快感を引き起こすが、研究参加者に対する著しいまたは永久的な害のリスクを有していない、3)重症(グレード3):日常生活の通常の活動を妨害するか、または臨床状態に著しく影響を及ぼすか、または集中的治療介入を必要とし得るタイプのAE、4)生命を脅かす(グレード4):参加者を差し迫った死亡リスクにさらすタイプのAE、および5)死亡(グレード5):死亡をもたらす事象。
【0202】
有害事象の因果関係:研究者は、IPと各AEの発生の間の関係を査定する。各AEとIPの関係の研究者による査定は、原資料およびeCRFに記録される。適切な場合、病歴、併用治療、他のリスク因子、および事象のIPとの時間関係などの別の原因が考えられ、調査される。以下の定義は、要因のグレードの割当ての一助にするための一般的指針である。1)無関係:事象が、参加者の環境もしくは臨床状態、治療介入、または参加者に投与された併用薬物などの他の因子と明らかに関係している。これは特に、事象が、IPを用いる処置の開始前に生じる場合に当てはまる、2)可能性がない:時間的関連、参加者の病歴、および/または周囲の事情が、観察された事象にIPが関連していた可能性が低いようなものである。併存疾病、病状の進行もしくは出現、または投与された併用薬物に対する反応を含めた他の状態は、事象を説明すると思われる、3)可能性がある:事象が、IP投与時からの妥当な時系列に従うか、またはIPに対する公知の応答に従っているが、参加者の臨床状態、他の治療介入、または参加者に投与された併用薬物などの他の因子によって生じた可能性がある、4)可能性が高い:事象が、IP投与時からの妥当な時系列に従い、かつIPに対する公知の応答に従い、参加者の臨床状態、他の治療介入、または参加者に投与された併用薬物などの他の因子によっては合理的に説明することができない、ならびに5)確定的:事象が、IPの投与時からの妥当な時系列に従うか、または中止すると制御により緩解するか、または参加者の臨床状態の公知の特徴によっては説明することができない。
【0203】
予測可能:MMは、AEが予測されるかまたは予測されないかを決定するのに関与する。事象の性質、重症度、または頻度が、リスク情報と一致しない場合、AEは予測されなかったと考えられる。
【0204】
アウトカム:AEのアウトカムは、以下の通りAEのeCRFに記録される。回復した/解消した、回復中/解消中、回復した/解消したが後遺症を伴う、回復せず/解消せず、致命的、および不明。
【0205】
重篤な有害事象の定義:SAEは、任意の研究段階中に(すなわちベースライン、処置、またはフォローアップ)、任意の用量のIPにおいて生じるAEであり、以下の1つまたは複数を満たす。死亡をもたらすこと、すぐに生命を脅かすこと、入院患者の再入院または既存の入院の延長を必要とすること、持続的なまたは著しい能力障害または不能状態をもたらすこと、先天性異常または先天性欠損をもたらすこと、参加者を危険にさらし得るか、または先に列挙したアウトカムの1つを防止するために医療介入を必要とし得る、重要な医学的事象であること。AEは、研究者またはスポンサーのいずれかの意見により、発生が、参加者を差し迫った死亡リスクにさらす場合、「生命を脅かす」と考えられる。SAEは、より重症形態で生じていたら、死亡を引き起こしていたかもしれないAEは含まない。
【0206】
重篤な有害事象の通知:すべてのSAEは、施設調査チームが、該当の規制当局および施設内倫理委員会にSAEを緊急報告するための要件を満たす事象を承知した時間から、24時間以内に報告される。初期報告は、SAE報告書式を完了し、研究設立時に提供された、割り当てられたプロジェクトの電子メールアドレスに電子メールで送信することによって達成される。SAE書式および電子メール送信の完了が不可能である場合、電話による報告が求められ、完了したSAE書式は、最初の機会に電子メールで送信されなければならない。電話によるSAEの初期通知は、施設調査チームが、最初に事象を承知した時間から24時間以内に、前述のSAE報告書式を使用して書面で確認される。SAEに関するさらなる情報が入手可能になる場合、このようなフォローアップ情報は、新しいSAE報告書式で記述され、フォローアップ報告としてマークを付けられ、精査され、報告書式の最下部にあるアドレスに電子メールで送信される。
【0207】
SAEの事象における研究からの離脱および取られる治療対策は、研究者の裁量で行われる。研究の中止についての十分な説明は、参加者の医療記録およびCRFで行われる。スポンサーまたは彼らの被指名人は、ある特定の事象を関連規制当局に通知する責任がある。研究者にも、臨床試験中に生じる、予期されなかった薬物に関係するすべての重篤な事象が通知される。治験施設は、必要に応じて、これらの追加のSAEをそのIRB/ECに通知する責任がある。
【0208】
臨床検査異常、ならびに有害事象および重篤な有害事象としての他の異常な査定:異常臨床検査知見(例えば血液生化学および血液学)または他の異常な査定(例えばECGおよびバイタルサイン)自体は、AEとして報告されない。しかし、PIおよび/もしくは代理人によって臨床的に有意であるとみなされる、または徴候および/もしくは症状と関連している異常知見は、それらがAEの定義を満たす場合、既に記載されている通りAEとして記録される(重篤とされる基準を満たす場合、SAEとして記録される)。同意後に検出されるか、またはベースライン時に存在し、同意後に悪化している、臨床的に有意な異常臨床検査または他の異常知見は、AE(重篤な場合はSAE)として含まれる。研究者は、異常臨床検査知見または他の異常な査定が臨床的に有意であるかどうかの決定において、医学的および科学的判断を行う。臨床的に有意であると考えられるためには、異常性は、臨床的に明らかな徴候もしくは症状と関連しているか、または近いうちに明らかな徴候もしくは症状をもたらす可能性がある。臨床症状がない場合の、臨床的に有意な臨床検査異常性は、参加者を危険にさらす場合があり、直接的な結果を防止するための介入を必要とする場合がある。例えば、著しく低い血清グルコース濃度は、昏睡またはけいれんを伴うことはないものの、このような後遺症を防止するためにグルコース投与を必要とする重要性があり得る。
【0209】
有害事象を記録する:参加者によって自発的にかつ/もしくは研究員からのオープンクエスチョンに応答して報告された、または観察によって明らかになった有害事象は、研究者の通常の臨床診療に従って、治験施設における研究中にeCRFのAEページに記録される。SAEを構成するか、またはIPの投与中止をもたらす異常値は、AEとして報告され、記録されなければならない。AEおよびSAEに関する情報は、同意時から研究の最後まで収集される。AE用語は、可能な場合には標準医学用語で報告される。AEごとに、研究者は、開始(日時)、回復(日時)、強度、因果関係、取られた行動、重篤なアウトカム(適用できる場合)、およびAEにより参加者が研究を中止したかどうかを評価し、報告する。研究中に生じるAEは、参加者の医療記録に、AEのeCRFおよびSAE報告書式で記述される。SAE報告が完了した場合、関連臨床検査データは、SAE書式で、好ましくはベースライン値および臨床検査報告のコピーと共に記録される。
【0210】
異常査定が重篤であるとの基準を満たす場合、SAE書式も完了される。分かっている場合は診断、または診断が不明の場合は臨床徴候もしくは症状を使用して、AE/SAEページを完了する。診断が不明、および臨床徴候または症状が存在しない場合には、異常知見が記録される。
【0211】
有害事象および重篤な有害事象のフォローアップ:IPに関係する、関係するかもしれない、または関係する可能性があるとみなされるすべてのAEおよびSAEは、回復まで、状態が安定するまで、事象がその他の点で説明されるまで、または参加者が死亡するもしくはロストフォローアップまで、追跡される。研究者は、AE/SAEの性質および/または因果関係をできるだけ完全に解明するために示され得る任意の補足的調査を、フォローアップが確実に含むようにする責任がある。追加の臨床検査または調査または他の医療専門家によるコンサルテーションも含まれる。スポンサーは、研究者が、補足的測定および/または評価を実施するか、またはその遂行を手配するよう、要求することができる。研究への参加中または認識されているフォローアップ期間中に、参加者が死亡した場合、スポンサーには、病理組織診断を含めた任意の死後知見のコピーが提供される。
【0212】
妊娠:妊娠反応検査は、査定スケジュール通り、スクリーニング時および1日目にすべてのWOCBPで実施され、妊娠結果は、eCRFに取り込まれる。すべてのWOCBPは、治験中の任意の時間において妊娠している可能性があると疑われる場合(例えば、月経期間の喪失または遅延)、すぐに研究者に連絡するように指示される。男性参加者は、研究処置期間中、子供の父親になったと疑われる場合、すぐに研究者に連絡する。可能であれば、パートナーの妊娠は、アウトカムを決定するために追跡される(出産まで)。万一妊娠した場合、妊娠を報告し、妊娠書式を記録しなければならない。IPが、避妊薬の有効性を妨害していたという疑いがある場合を除いて、妊娠はAEとはみなされない。研究者は、妊娠が分かって24時間以内に、スポンサー/割り当てられた被指名人に、詳細を妊娠書式で報告する。参加者が臨床試験から離脱するまたは臨床試験を終了することに同意するとしても、研究者は、すべての妊娠のプロセスおよび結果をフォローアップし、記述する。
男性参加者の女性パートナーが、治験に登録している間に妊娠した場合、妊娠が緊急報告に関する基準を満たすかどうかに関係なく、妊娠書式を完了し、臨床研究組織(CRO)に即座に送付する。流産(自発的、偶発的、または治療的)も報告される。先天性異常/先天性欠損は、常にSAE基準を満たし、したがって、既に記載されているSAEを報告するためのプロセスを使用して、SAEとして迅速に報告される。妊娠書式は、妊娠のアウトカムを反映するように更新される。研究者は、AEが生じていなくても、研究者が妊娠を承知して24時間以内に、任意の妊娠(男性参加者のパートナーの妊娠を含む)を妊娠報告書式で報告する。
(実施例4)
単回漸増用量研究
【0213】
単回漸増用量研究を、単盲検研究として、処置の割当てに対して盲検にされた研究参加者で実施する。MRS研究の再評価および解釈を提供する放射線科医は、処置の割当て、投与されるIP、MRSのタイミングおよびIP投与の他の詳細に対して盲検にされる。20人の対象を、2つの投薬コホートの一方に、1:1様式で無作為化する。
【0214】
IN NACおよびIN GSHを、Teleflex MADデバイスを使用して投与する。被験薬、IN GSH 200mg、ならびにIN NAC 100、200および400mgは、外観が同一の経鼻投与デバイスで供給される。投薬手順は、NACおよびGSHについて200mg用量(各鼻孔1回0.5mL)で同一である。投薬手順は、NAC 100mg用量については各鼻孔に0.25mL、NAC 400mg用量については各鼻孔に0.5mlを2回である。参加者は、4回連続の被験薬の投薬を受け、各投薬間の間隔は1週間である。その他の点では、対象は、処置の割当てに対して盲検にされる。
【0215】
20人の健康なボランティアを、7日間隔で8、15および22日目に与えられる、低用量のIN NAC(100mg)またはIN GSH 200mgのいずれかに続いて、段階的に増大する逐次的な単回用量のIN NAC 200mgおよびIN NAC 400mgからなる2つのレジメンのうちの1つに、1:1比で無作為化する(表1)。コホート1Aは、IN GSH 200mg、続いて1週間間隔で、IN NAC 100mg、IN NAC 200mgおよびIN NAC 400mgの連続投薬を受ける。コホート1Bは、IN NAC 100mg、続いて1週間間隔で、IN GSH 200mg、IN NAC 200mgおよびIN NAC 400mgの連続投薬を受ける。NACおよびGSHは共に、20%水溶液として投与される。被験薬の各投薬日に、MRSを実施し、被験薬を投与する前、ならびにその1、3、6および24時間後に血液試料を収集して、GSH、システイン、遊離および全NACの末梢血濃度、ならびにRBGのGSH/GSSG比を決定する。
【表1】
【0216】
NAC由来の神経代謝産物の相対レベルのベースラインからの変化を、単回用量のIN NACまたはIN GSH、続いて1週間間隔での単回漸増用量のIN NACの投与後に査定し、またPK臨床検査の末梢血測定の変化も査定する。
【0217】
参加者は、ベースライン走査から最終の6時間の走査まで、可能な限り横臥位を維持するよう求められる。安全性および忍容性を、表2に概説される通りモニタリングする。忍容性が許容される場合、参加者は、計画された次の被験薬の投薬に進む。処置を制限する有害効果を経験している参加者は、研究を中止し、次の投薬には進まない。参加者は、IPの最終投薬の7日後にフォローアップ来院のために戻り(30日目±3日)、安全性査定のために51日目(±2日)にフォローアップのための電話連絡を受ける。
【表2-1】
【表2-2】
(実施例5)
鼻から脳へのNACの投与。
【0218】
商業的に承認されたNAC用量および製剤の単回および反復鼻腔内(IN)送達による、正常なヒトボランティアでの研究は、承認された鼻送達デバイスを使用して実施する。既存のNAC用量の鼻から脳への送達、製剤および送達デバイスは、脳NACおよびGSHの投薬後の上昇レベルを決定することによって比較する。脳NACおよびGSHレベルの上昇は、磁気共鳴分光法(MRS)を使用して、様々な時点および脳の様々な領域において決定する(例えば、投薬後、1時間、3時間および6時間)。送達デバイスおよび製剤は、体循環による希釈または排出を回避しながら、脳への物質送達の有効性および忍容性を最大化するよう構成されている。
【0219】
様々な鼻腔内送達デバイスは、そのカーゴを鼻腔の1つまたは複数の異なる領域に送達するように設計されている。一部の実施形態では、鼻腔内送達デバイスは、嗅神経によって神経支配されている嗅覚領域にカーゴを送達するよう設計されている。一部の実施形態では、鼻腔内送達デバイスは、三叉神経によって神経支配される呼吸領域にカーゴを送達するよう設計されている。一部の実施形態では、鼻腔内送達デバイスは、吻側移動流経路によって中断された篩板にカーゴを送達するよう設計されている。
【0220】
異なるデバイスおよび/またはデバイス構成を用いた脳へのNACの送達の時間的および空間的パターンを比較する実験を使用して、薬物送達に関与する解剖学的経路を決定する。一部の実施形態では、解剖学的経路は嗅覚流である。一部の実施形態では、解剖学的経路は、三叉神経流である。一部の実施形態では、解剖学的経路は、吻側移動流である。異なるデバイスおよび/またはデバイス構成を用いた脳へのNACの送達の時間的および空間的パターンを比較する実験を使用して、薬物送達に関与する細胞経路を決定する。一部の実施形態では、細胞経路は、細胞外経路である。一部の実施形態では、細胞経路は、細胞内経路である。一部の実施形態では、細胞内経路は、神経内経路である。一部の実施形態では、細胞内経路は、経細胞経路である。本開示の化合物の送達経路を決定する際に、解剖学的経路または細胞経路を利用し、脳障害によって影響を受けた脳の特定の領域を標的とするように、デバイスおよび製剤を改変することができる。
【0221】
図5は、各解剖学的経路に関して、鼻から脳への直接送達が、細胞の横もしくは周囲であるが外側の大きな流れ(細胞外経路)によって、またはニューロンを介した細胞内経路によって、または他の支持する細胞を横切ってもしくはそれに沿って起こることを示す。略称SUS:支持細胞;OSN:嗅覚神経;OEC:嗅覚鞘細胞;GOB:球状基底細胞;HBC:水平基底細胞;BG:ボーマン腺;CP:篩板;OB:嗅球;ZO:閉鎖帯;CL:クローディン;OC:オクルディン。
【0222】
IN NAC投薬の総合的な忍容性は、最初に、既存の10%~20%NAC水溶液製剤の濃度、様々なIN体積の忍容性、および承認されたデバイス(例えば、Teleflex LMA(登録商標)MAD鼻粘膜アトマイザー、Aptar UDS/BDS、OptiNose呼吸によって駆動する二方向デバイス)の容量によって制限される。
【0223】
アッセイ感度およびPDを測定するため、脳のNAC+GSHレベルの上昇を2つのポジティブ対照:1)十分に忍容される標準化された用量のIN GSHによって生じる脳のGSHレベルの上昇;または2)証明された薬力学的(PD)に有効なNACのIV注入によって生じるNAC+GSHレベルの上昇と比較する。脳のMRS NAC+GSHレベルに及ぼすNACの効果を、爆発後の震えの症状を改善するために使用される反復経口NAC投薬レジメンによって達成される脳のMRS NAC+GSHレベルに対して較正する。
【0224】
NACの投与前に脳のGSHレベルを測定することにより、脳NAC+GSH上昇能に関してNACの単回漸増IN用量を試験する。利用可能な製剤およびデバイスの組合せを使用して、試験用量のIN NACの投与後に、選択された時間におけるNAC+GSHレベルを最大耐量まで測定する。
【0225】
マウスにおける脳のGSHおよびGSH/グルタチオンジスルフィド(G-SSG)レベルの薬物動態(PK)/PD研究、ならびに安定標識されたNACの漸増IN投薬後の脳薬物曝露を、過度な薬物曝露なしに効果的な脳の抗酸化保護が起こることを確認するように設計する。安定標識されたNACの漸増IN投薬後の脳GSHおよびGSH/GSSGレベル、ならびに脳NAC曝露のPK/PD研究を非ヒト霊長類の種で再現する。非ヒト霊長類の種の研究結果を使用して、ヒトの鼻から脳への送達を予測する。正常なヒトボランティアにおける爆発後の脳震盪において、IN GSH送達の脳GSHレベル(非侵襲的MRSによって測定)および/または成功を収めた経口NACレジメンのNAC+GSHレベルを再現する、またはこれらを超えるNAC+GSHレベルをもたらすIN NAC投薬量および製剤を決定するために、ヒトPD研究を選択する。
【0226】
PD有効なIN NAC用量を、承認済みの臨床試験結果、ならびに追加の承認および検証後の臨床エンドポイントを使用して、爆発曝露を有する対象および/またはmTBIを経験している他の対象における研究に取り入れる。補助的な研究をこの研究に組み込む。補助的な研究はMRSを用いて、脳の標準領域またはmTBI損傷に関連する脳の領域をイメージングして、GSHレベルまたは他の推定上のバイオマーカー、例えば、NAC処置前のグルタミン酸レベルの上昇、ならびにIN NAC処置中およびその後のNAC+GSHレベルを決定する。
(実施例6)
鼻から脳へのGSHの投与。
【0227】
鼻から脳への送達を促進するための鼻腔へのGSH投与を、鼻腔内の特定の領域にGSHを送達するように体系的に変更および微調整する。鼻から脳への移動経路の1つまたは複数を利用する。
【0228】
様々な粒子または液滴サイズに適応し、様々なプルーム特性(plume characteristics)を有することができ、かつ鼻腔内の解剖学的分布を制御することができる専用の鼻送達デバイスが、鼻腔内GSH投与に使用される。専用鼻送達デバイスを使用して、様々なGSH製剤を投与し、鼻腔の特定の領域内でのバイオアベイラビリティーを促進および強化して、CNSの特定の領域へのGSH送達を改善または標的化する。GSH製剤は、生体適合性、忍容性、体積、安定性、使いやすさ、および薬物/製剤/デバイスの組合せの製造コストに合わせて最適化される。
【0229】
本開示のGSH製剤の投与時の脳内のGSHレベルは、投薬の1時間、3時間および6時間後に測定する。送達デバイスおよび製剤は、体循環による希釈または排出を回避しながら、脳への物質送達の有効性および忍容性を最大化するよう構成されている。GSHを健康なヒトボランティア、および脳震盪またはパーキンソン病などの神経系疾患を有する患者に投与する。
(実施例7)
磁気共鳴分光法を使用する鼻から脳へのNACまたはGSH送達の測定。
【0230】
健康なヒトボランティア、および脳震盪またはパーキンソン病などの神経系疾患を有する患者において、鼻から脳へのNACまたはGSH送達を定量および測定する。脳内に神経系疾患または構造上の欠陥のない対象の鼻腔の様々な領域に、NACまたはGSHを鼻腔内投与する。健康な対象における鼻腔内NACまたはGSHの取り込み量は、磁気共鳴画像法(MRI)を使用して査定する。磁気共鳴分光法(MRS)を使用して、詳細な時空間マッピングにより脳の特定の領域へのNACまたはGSHの送達を測定する。局所的な脳のGSHを投薬後に数回測定して、CNSの領域における鼻腔内NAC由来のGSH上昇の局所的および時間的パターンを実証する。
【0231】
鼻から脳へのGSHを対照として使用する。本開示のNACまたはGSH製剤の投与時の脳内のGSHレベルは、投薬の1時間、3時間および6時間後に測定する。
【0232】
予備的な結果に基づいて、脳構造内のNACに由来するGSHの薬力学的(PD)な局所的および時間的プロファイルを単回および反復投薬後の鼻腔内の用量、製剤および局所送達に関して特徴付ける。
(実施例8)
軍関係の外傷性脳傷害を有する対象への鼻腔内の鼻から脳へのNACの投与。
【0233】
戦闘に起因する軍関係の頭部傷害を有する兵士に、20%水性NACを含む医薬組成物を提供する。製剤を鼻腔内投与し、NACの鼻から脳への送達を実現する。0.25mLのNAC製剤をTeleflex LMA(登録商標)MAD Nasal(商標)鼻腔内粘膜噴霧デバイスを使用して対象の鼻孔1つ当たり投与する(合計で0.5mL)。
【0234】
兵士における鼻腔内NACの取り込み量は、詳細な時空間マッピングにより、脳の特定の領域におけるMRSを使用して査定する。局所的な脳のGSHを投薬後に数回測定して、CNSの領域における鼻腔内NAC由来のGSH上昇の局所的および時間的パターンを実証する。
実施形態
【0235】
以下の非限定的な実施形態は、本発明の説明的な例を提供するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0236】
実施形態1.必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、対象が、鼻腔内投与の際に、NACまたはその同族体に実質的に全身曝露されない、方法。
【0237】
実施形態2.脳障害が、脳震盪である、実施形態1の方法。
【0238】
実施形態3.脳障害が、脳震盪後症候群である、実施形態1の方法。
【0239】
実施形態4.脳障害が、軽度外傷性脳傷害である、実施形態1の方法。
【0240】
実施形態5.脳障害が、外傷性脳傷害である、実施形態1の方法。
【0241】
実施形態6.脳障害が、競技活動に関連する、実施形態1の方法。
【0242】
実施形態7.脳障害が、神経変性疾患である、実施形態1の方法。
【0243】
実施形態8.脳障害が、認知症である、実施形態1の方法。
【0244】
実施形態9.脳障害が、年齢関連性である、実施形態1の方法。
【0245】
実施形態10.脳障害が、パーキンソン病である、実施形態1の方法。
【0246】
実施形態11.脳障害が、脳卒中である、実施形態1の方法。
【0247】
実施形態12.同族体が、グルタチオン(GSH)である、実施形態1~11のいずれか1つの方法。
【0248】
実施形態13.用量の実質的にすべてが、対象の血液脳関門を通過することなく脳に入る、実施形態1~12のいずれか1つの方法。
【0249】
実施形態14.NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に、対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が脳に入る、実施形態1~13のいずれか1つの方法。
【0250】
実施形態15.NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に、対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が対象の脳脊髄液に入り、次にNACが脳に入る、実施形態1~13のいずれか1つの方法。
【0251】
実施形態16.NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に、対象の呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、次に、NACまたはその同族体が脳に入る、実施形態1~13のいずれか1つの方法。
【0252】
実施形態17.治療有効量が、約1mg/kg~約10mg/kgである、実施形態1~16のいずれか1つの方法。
【0253】
実施形態18.治療有効量が、約100mg~約400mgである、実施形態1~17のいずれか1つの方法。
【0254】
実施形態19.用量が、鼻ポンプを使用して投与される、実施形態1~18のいずれか1つの方法。
【0255】
実施形態20.用量が、アトマイザーを使用して投与される、実施形態1~19のいずれか1つの方法。
【0256】
実施形態21.用量が、ネブライザーを使用して投与される、実施形態1~19のいずれか1つの方法。
【0257】
実施形態22.用量の実質的にすべてが、対象の鼻腔に入る、実施形態1~21のいずれか1つの方法。
【0258】
実施形態23.必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体の実質的にすべてが、対象の血液脳関門を通過することなく脳に入る、方法。
【0259】
実施形態24.脳障害が、脳震盪である、実施形態23の方法。
【0260】
実施形態25.脳障害が、脳震盪後症候群である、実施形態23の方法。
【0261】
実施形態26.脳障害が、軽度外傷性脳傷害である、実施形態23の方法。
【0262】
実施形態27.脳障害が、外傷性脳傷害である、実施形態23の方法。
【0263】
実施形態28.脳障害が、神経変性疾患である、実施形態23の方法。
【0264】
実施形態29.脳障害が、競技活動に関連する、実施形態23の方法。
【0265】
実施形態30.脳障害が、認知症である、実施形態23の方法。
【0266】
実施形態31.脳障害が、年齢関連性である、実施形態23の方法。
【0267】
実施形態32.脳障害が、パーキンソン病である、実施形態23の方法。
【0268】
実施形態33.脳障害が、脳卒中である、実施形態23の方法。
【0269】
実施形態34.同族体が、グルタチオン(GSH)である、実施形態23~33のいずれか1つの方法。
【0270】
実施形態35.NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に、対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が脳に入る、実施形態23~34のいずれか1つの方法。
【0271】
実施形態36.NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に、対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が対象の脳脊髄液に入り、次にNACが脳に入る、実施形態23~34のいずれか1つの方法。
【0272】
実施形態37.NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に、対象の呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、次に、NACまたはその同族体が脳に入る、実施形態23~34のいずれか1つの方法。
【0273】
実施形態38.治療有効量が、約1mg/kg~約10mg/kgである、実施形態23~37のいずれか1つの方法。
【0274】
実施形態39.治療有効量が、約100mg~約400mgである、実施形態23~38のいずれか1つの方法。
【0275】
実施形態40.用量が、鼻ポンプを使用して投与される、実施形態23~39のいずれか1つの方法。
【0276】
実施形態41.用量が、アトマイザーを使用して投与される、実施形態23~39のいずれか1つの方法。
【0277】
実施形態42.用量が、ネブライザーを使用して投与される、実施形態23~39のいずれか1つの方法。
【0278】
実施形態43.用量の実質的にすべてが、対象の鼻腔に入る、実施形態23~42のいずれか1つの方法。
【0279】
実施形態44.必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACを鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が脳に入る、方法。
【0280】
実施形態45.脳障害が、脳震盪である、実施形態44の方法。
【0281】
実施形態46.脳障害が、脳震盪後症候群である、実施形態44の方法。
【0282】
実施形態47.脳障害が、軽度外傷性脳傷害である、実施形態44の方法。
【0283】
実施形態48.脳障害が、外傷性脳傷害である、実施形態44の方法。
【0284】
実施形態49.脳障害が、神経変性疾患である、実施形態44の方法。
【0285】
実施形態50.脳障害が、競技活動に関連する、実施形態44の方法。
【0286】
実施形態51.脳障害が、認知症である、実施形態44の方法。
【0287】
実施形態52.脳障害が、年齢関連性である、実施形態44の方法。
【0288】
実施形態53.脳障害が、パーキンソン病である、実施形態44の方法。
【0289】
実施形態54.脳障害が、脳卒中である、実施形態44の方法。
【0290】
実施形態55.同族体が、グルタチオン(GSH)である、実施形態44~54のいずれか1つの方法。
【0291】
実施形態56.用量の実質的にすべてが、対象の血液脳関門を通過することなく脳に入る、実施形態44~55のいずれか1つの方法。
【0292】
実施形態57.治療有効量が、約1mg/kg~約10mg/kgである、実施形態44~56のいずれか1つの方法。
【0293】
実施形態58.治療有効量が、約100mg~約400mgである、実施形態44~57のいずれか1つの方法。
【0294】
実施形態59.用量が、鼻ポンプを使用して投与される、実施形態44~58のいずれか1つの方法。
【0295】
実施形態60.用量が、アトマイザーを使用して投与される、実施形態44~58のいずれか1つの方法。
【0296】
実施形態61.用量が、ネブライザーを使用して投与される、実施形態44~58のいずれか1つの方法。
【0297】
実施形態62.用量の実質的にすべてが、対象の鼻腔に入る、実施形態44~61のいずれか1つの方法。
【0298】
実施形態63.必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻に所定用量のN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の嗅上皮を通過し、次に、嗅上皮を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の嗅神経に入り、次に、嗅神経を通過した後、NACまたはその同族体が、対象の脳脊髄液に入り、次に、NACまたはその同族体が脳に入る、方法。
【0299】
実施形態64.脳障害が、脳震盪である、実施形態63の方法。
【0300】
実施形態65.脳障害が、脳震盪後症候群である、実施形態63の方法。
【0301】
実施形態66.脳障害が、軽度外傷性脳傷害である、実施形態63の方法。
【0302】
実施形態67.脳障害が、外傷性脳傷害である、実施形態63の方法。
【0303】
実施形態68.脳障害が、神経変性疾患である、実施形態63の方法。
【0304】
実施形態69.脳障害が、競技活動に関連する、実施形態63の方法。
【0305】
実施形態70.脳障害が、認知症である、実施形態63の方法。
【0306】
実施形態71.脳障害が、年齢連関連性である、実施形態63の方法。
【0307】
実施形態72.脳障害が、パーキンソン病である、実施形態63の方法。
【0308】
実施形態73.脳障害が、脳卒中である、実施形態63の方法。
【0309】
実施形態74.同族体が、グルタチオン(GSH)である、実施形態63~73のいずれか1つの方法。
【0310】
実施形態75.用量の実質的にすべてが、対象の鼻腔に入る、実施形態63~74のいずれか1つの方法。
【0311】
実施形態76.治療有効量が、約1mg/kg~約10mg/kgである、実施形態63~75のいずれか1つの方法。
【0312】
実施形態77.治療有効量が、約100mg~約400mgである、実施形態63~76のいずれか1つの方法。
【0313】
実施形態78.用量が、鼻ポンプを使用して投与される、実施形態63~77のいずれか1つの方法。
【0314】
実施形態79.用量が、アトマイザーを使用して投与される、実施形態63~77のいずれか1つの方法。
【0315】
実施形態80.用量が、ネブライザーを使用して投与される、実施形態63~77のいずれか1つの方法。
【0316】
実施形態81.用量の実質的にすべてが、対象の鼻腔に入る、実施形態63~80のいずれか1つの方法。
【0317】
実施形態82.必要とする対象の脳における脳障害を処置する方法であって、対象の鼻にN-アセチルシステイン(NAC)またはその同族体を鼻腔内投与するステップを含み、鼻腔内投与により、治療有効量のNACまたはその同族体を鼻から脳に提供し、NACまたはその同族体が、鼻腔内投与後に対象の呼吸上皮を通過し、次に、呼吸上皮を通過した後、NACが対象の三叉神経を通過し、次に、三叉神経を通過した後、次に、NACが脳に入る、方法。
【0318】
実施形態83.脳障害が、脳震盪である、実施形態82の方法。
【0319】
実施形態84.脳障害が、脳震盪後症候群である、実施形態82の方法。
【0320】
実施形態85.脳障害が、軽度外傷性脳傷害である、実施形態82の方法。
【0321】
実施形態86.脳障害が、外傷性脳傷害である、実施形態82の方法。
【0322】
実施形態87.脳障害が、神経変性疾患である、実施形態82の方法。
【0323】
実施形態88.脳障害が、競技活動に関連する、実施形態82の方法。
【0324】
実施形態89.脳障害が、認知症である、実施形態82の方法。
【0325】
実施形態90.脳障害が、年齢関連性である、実施形態82の方法。
【0326】
実施形態91.脳障害が、パーキンソン病である、実施形態82の方法。
【0327】
実施形態92.脳障害が、脳卒中である、実施形態82の方法。
【0328】
実施形態93.同族体が、グルタチオン(GSH)である、実施形態82~92のいずれか1つの方法。
【0329】
実施形態94.用量の実質的にすべてが、対象の鼻腔に入る、実施形態82~93のいずれか1つの方法。
【0330】
実施形態95.治療有効量が、約1mg/kg~約10mg/kgである、実施形態82~94のいずれか1つの方法。
【0331】
実施形態96.治療有効量が、約100mg~約400mgである、実施形態82~95のいずれか1つの方法。
【0332】
実施形態97.用量が、鼻ポンプを使用して投与される、実施形態82~96のいずれか1つの方法。
【0333】
実施形態98.用量が、アトマイザーを使用して投与される、実施形態82~96のいずれか1つの方法。
【0334】
実施形態99.用量が、ネブライザーを使用して投与される、実施形態82~96のいずれか1つの方法。
【0335】
実施形態100.用量の実質的にすべてが、対象の鼻腔に入る、実施形態82~99のいずれか1つの方法。
【国際調査報告】