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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】GLP-1の投薬レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/26 20060101AFI20230426BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230426BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230426BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20230426BHJP
   C07K 14/605 20060101ALI20230426BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61K38/26
A61P3/04 ZNA
A61P1/16
A61P3/10
A61K38/28
A61K31/155
C07K14/605
C07K14/575
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543415
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2020072554
(87)【国際公開番号】W WO2021142736
(87)【国際公開日】2021-07-22
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.BRIJ
3.SPAN
4.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】513243561
【氏名又は名称】上海仁会生物制▲やく▼股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI BENEMAE PHARMACEUTICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No.916 Ziping Road,Zhoupu Town,Pudong New Area,Shanghai 200321,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】サン,フイチン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ハイ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ジチァン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,シァンカン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084DB34
4C084DB35
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZC351
4C084ZC352
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA05
4C206ZA70
4C206ZA75
4C206ZC35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA18
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045EA27
4H045FA33
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、GLP-1および/またはGLP-1類似体の投薬レジメンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における糖尿病、肥満、体重過多、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および/または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療のための投薬レジメンであって、
第1の有効量のGLP-1およびGLP-1類似体からなる群から選択される1つ以上の第1の有効成分を前記対象に投与することであって、前記第1の有効量が、連続して投与されるか、または約15分以下の、約30分以下の、約1時間以下の、約2時間以下の、約3時間以下の、もしくは約4時間以下、約5時間以下の、または約6時間以下の2回の連続投与の間の間隔で断続的に投与される、投与することと、
第2の有効量のGLP-1およびGLP-1類似体からなる群から選択される1つ以上の第2の有効成分を、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回前記対象に投与して、前記対象における糖尿病、肥満、体重過多、NAFLD、および/またはNASHを治療もしくは予防することと、を含む、投薬レジメン。
【請求項2】
前記対象が、糖尿病、肥満、体重過多、NAFLD、および/もしくはNASHを有するか、または糖尿病、肥満、体重過多、NAFLD、および/もしくはNASHを有するリスクが高い、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項3】
前記GLP-1類似体が、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)、およびGLP-1(7-35)からなる群から選択される、請求項1または2に記載の投薬レジメン。
【請求項4】
第3の有効量の、インスリン、インスリン類似体、およびメトホルミンからなる群から選択される1つ以上の第3の有効成分を、前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項5】
前記インスリン類似体が、速効型インスリンおよび長時間作用型インスリンからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項6】
前記有効量(U)の前記インスリンおよび/またはインスリン類似体と前記有効量(mg)の前記GLP-1および/またはGLP-1類似体とが、10:1~800:1、約30:1~約500:1、約50:1~約250:1、約70:1~約220:1、または約100:1~約200:1の比で、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、または約800:1の比で投与される、請求項4または5に記載の投薬レジメン。
【請求項7】
前記GLP-1および/またはGLP-1類似体の1日総投薬量が、約100μg~約1,000μg、約200μg~約900μg、約300μg~約800μg、約400μg~約700μg、約480μg~約600μgである、請求項1~6のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項8】
前記第1の有効量の前記GLP-1および/またはGLP-1類似体の1日総投薬量と前記第2の有効量の前記GLP-1および/またはGLP-1類似体の1日総投薬量とが、約1、約0.1~約10、約0.5~約5、約0.7~約2、約0.8~約1.5、または約0.9~約1.2の比を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項9】
前記第1の有効量の前記GLP-1および/またはGLP-1類似体が、一定または可変の投薬速度で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項10】
前記第2の有効量の前記GLP-1および/またはGLP-1類似体が、各投与において同じまたは異なる投与量で投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項11】
前記第2の有効量の前記GLP-1および/またはGLP-1類似体が、食前または食後の約0.5分~約30分、約1分~約15分、約2分~約10分、約3分~約7分、または約5分に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
GLP-1は、全身に分布するGLP-1受容体、特に膵臓のインスリン分泌β細胞に作用するインスリン分泌性ペプチドである。天然型のGLP-1は、食事後に腸のL細胞により分泌され、インスリン分泌の強力なペプチド刺激因子である。GLP-1は、2型糖尿病の潜在的な治療法である。Holst,Physiol.Rev.87:1409-1439(2007)。GLP-1は、C末端アミドを含むGLP-1(7-36)とC末端遊離カルボキシル基を含むGLP-1(7-37)の2つの活性型を人体に有している。循環に入ると、GLP-1はジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)によって急速に分解され、半減期は約2分と短くなる。Kieffer et al.,Endocrinology 136:3585-3596(1995)。GLP-1およびその類似体は、血糖の制御に対する効果に加えて、体重減少の誘発、胃内容排出の遅延、および満腹感の増加に効果があることが分かっている。Monami et al.,Exp.Diabetes Res.2012:672658(2012)。FDAは、2014年12月にSaxenda(リラグルチド3mg)を承認したが、これは、GLP-1類似体の最初のNDAアプリケーションであり、少なくとも2型糖尿病などの過体重に関連する少なくとも1つの疾患または状態を有する肥満の成人の低カロリーの食事および身体活動の増加で補完される長期的な体重管理である。GLP-1類似体の有効性をさらに改善するために継続的な努力がなされている。本開示は、本明細書に開示されるGLP-1および/またはGLP-1類似体のレジメンを提供する。
【発明の概要】
【0002】
一態様では、対象における1型および2型糖尿病、肥満、体重過多、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および/または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの糖尿病の治療のための投薬レジメンが提供される。投薬レジメンは、第1の有効量の本明細書に開示されるGLP-1およびGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))からなる群から選択される1つ以上の第1の有効成分を対象に投与することと、第2の有効量の本明細書に開示されるGLP-1およびGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))からなる群から選択される1つ以上の第2の有効成分を対象に、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与することと、を含む。1つ以上の第1の有効成分および1つ以上の第2の有効成分は、同じであってもよく、部分的に異なってもよく(例えば、1つ以上であるが、第1および第2の有効成分のすべてが同じではない)、または完全に異なってもよい。
【0003】
第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、一定または可変の投薬速度で投与され得る。ある特定の実施形態では、第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、連続的に投与され得る。ある特定の実施形態では、第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、約15分以下の、約30分以下の、約1時間以下の、約2時間以下の、約3時間以下の、もしくは約4時間以下、約5時間以下の、または約6時間以下の2回の連続投与の間の間隔で断続的に投与され得る。ある特定の実施形態では、第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、約10μg/日~約12,000μg/日、約100μg/日~約4,800μg/日、約300μg/日~約9,000μg/日、約500μg/日~約8,000μg/日、約1mg/日~約5mg/日、または約3mg/日~約7mg/日の1日投与量で投与され得る。ある特定の実施形態では、第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、約1μg/時~約500μg/時、約2μg/時から約400μg/時、約3μg/時~約200μg/時、約4μg/時~約300μg/時、約5μg/時~約100μg/時、約10μg/時~約80μg/時、または約12.5μg/時~約50μg/時の1時間ごとの投与速度で投与され得る。
【0004】
第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、食事と一緒に投与され得る。ある特定の実施形態では、第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、食前約45分から食後約45分まで、食前約30分から食後約30分まで、食前約15分から食後約15分まで、食前約10分から食後約10分まで、または食前約5分から食後約5分までの時間範囲内で投与され得る。ある特定の実施形態では、第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体は、食前または食後の約0.5分~約30分、約1分~約15分、約2分~約10分、約3分~約7分、または約5分に投与される。第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の投薬量は、各投与について同じであっても異なっていてもよい。ある特定の実施形態では、第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の1回の投与は、約10μg~約500μg、約50μg~約300μg、または約100μg~約200μgであり得る。
【0005】
いくつかの実施形態では、GLP-1類似体は、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)、およびGLP-1(7-35)からなる群から選択される。特に明記しない限り、GLP-1およびGLP-1類似体は、C末端遊離カルボキシル基またはC末端アミド基を有し得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、対象に、第3の有効量の1つ以上の第3の有効成分、例えば、インスリン、インスリン類似体、メトホルミン、またはそれらの組み合わせを投与することをさらに含む。ある特定の実施形態では、1つ以上の第3の有効成分は、GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の1つ以上の投与と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、第3の有効成分は、超速効型インスリン(例えば、インスリンリスプロ、インスリンアスパート、インスリングルリシン)および長時間作用型インスリン(例えば、インスリングラルギン、インスリンデグルデク、およびインスリンデテミル)からなる群から選択されるインスリン類似体である。いくつかの実施形態では、有効量(U)のインスリンおよび/またはインスリン類似体と有効量(mg)のGLP-1および/またはGLP-1類似体とは、約10:1~約800:1(インスリングラルギン(U):ベイナグルチド(mg))、約30:1~約500:1、約50:1~約250:1、約70:1~約220:1、または約100:1~約200:1の比で、例えば、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、または約800:1の比で投与される。いくつかの実施形態では、インスリン類似体(例えば、インスリングラルギン)は、約2U/日~約100U/日、約6U/日~約60U/日、約12U/日~約40U/日、約20U/日~約30U/日、または約15U/日の投薬量で投与され得る。
【0007】
いくつかの実施形態では、GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))および/または1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)を含む薬学的組成物は、投与装置(例えば、注入器ペン、ポンプ)に事前装填されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示されるのは、対象において1型および2型糖尿病、肥満、体重過多、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、および/または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの糖尿病の治療のための投薬レジメンであり、第1の有効量の本明細書に開示されるGLP-1およびGLP-1類似体からなる群から選択される1つ以上の第1の有効成分を対象に投与することと、第2の有効量の本明細書に開示されるGLP-1およびGLP-1類似体からなる群から選択される1つ以上の第2の有効成分を、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回対象に投与することと、を含む。例えば、本明細書に開示される実施例に提供されるように、投薬レジメンの実施形態は、治療された対象においてHbA1cおよび体重の著しい減少を達成した。1つ以上の第1の有効成分および1つ以上の第2の有効成分は、同じであってもよく、部分的に異なってもよく(例えば、1つ以上であるが、第1および第2の有効成分のすべてが同じではない)、または完全に異なってもよい。
【0009】
ある特定の実施形態では、投薬レジメンは、対象に、第3の有効量の1つ以上の第3の有効成分、例えば、インスリン、インスリン類似体、メトホルミン、およびそれらの組み合わせを投与することをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、GLP-1および/もしくはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))ならびに/または1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリングラルギンなどのインする類似体)を含む薬学的組成物は、投与装置(例えば、注入器ペン、ポンプ)に事前装填されている。
【0011】
本開示の文脈において、GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、GLP-1(7-36))ならびに/または1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)を含む薬学的組成物の「治療有効量」または「有効量」という句は、本明細書で使用される場合、1型および2型糖尿病、肥満、体重過多、NAFLD、ならびに/またはNASHなどの糖尿病を治療するなどの、対象において所望の治療効果を作り出す薬学的組成物の量である。ある特定の実施形態では、治療有効量は、最大の治療効果をもたら薬学的組成物の量である。他の実施形態では、治療有効量は、最大治療効果よりも少ない治療効果をもたらす。例えば、治療有効量は、最大の治療効果をもたらす投薬量に関連する1つ以上の副作用を回避しながら治療効果を生み出す量であってもよい。いくつかの実施形態において、治療有効量は、治療効果をもたらす最小量である。特定の組成物の治療有効量は、治療組成物の特性(例えば、活性、薬物動態、薬力学、および生物学的利用能)、対象の生理学的状態(例えば、年齢、体重、性別、疾患の種類および病期、病歴、一般的な体調、所定の投薬量に対する反応性、ならびにその他の現在の投薬)、組成物中の任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、および保存剤の性質、ならびに投与経路を含むがそれらに限定されない、様々な因子に基づいて変動する。臨床および薬理学分野の当業者は、日常的な実験により、すなわち、医薬組成物の投与に対する対象の反応をモニタリングし、それに応じて投薬量を調整することにより、治療有効量を決定することができる。追加のガイダンスについては、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Pharmaceutical Press,London,2012、およびGoodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,12th Edition,McGraw-Hill,New York,NY,2011を参照されたく、その開示全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0012】
「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、および「治療(treatment)」という用語は、状態に関して本明細書において使用される場合、状態を部分的または完全に緩和する、状態を防止する、状態の発生もしくは再発の可能性を低下させる、状態の進行もしくは発達を遅延させる、または病状に関連する1つ以上の症状の発達を排除、軽減もしくは遅延させることを指す。
【0013】
「対象」という用語は、本明細書において使用される場合、哺乳動物対象、好ましくはヒトを指す。ある特定の実施形態では、対象は、1型および2型糖尿病、肥満、体重過多、NAFLD、および/もしくはNASHなどの糖尿病と診断されているか、または1型および2型糖尿病、肥満、体重過多、NAFLD、および/もしくはNASHなどの糖尿病を発症するリスクが高い。「対象」および「患者」という語句は、本明細書では同義的に使用され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、GLP-1類似体は、GLP-1(7-37)、GLP-1(7-36)、およびGLP-1(7-35)からなる群から選択される。特に明記しない限り、GLP-1およびGLP-1類似体は、C末端遊離カルボキシル基またはC末端アミド基を有し得る。例えば、GLP-1類似体は、His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg(配列番号1)の配列を有する組換えヒトGLP-1(7-36)ペプチドで有り得、この開示においてベイナグルチドと呼ばれ得る。ベイナグルチドは、C1492253946の分子式を有し、分子量は3,298.7である。ベイナグルチドは、天然型のNHが組換えペプチドのOH基で置き換えられた内因性のアミド化を除く、循環型GLP-1の活性型と本質的に同じである。ベイナグルチドは、C末端遊離カルボキシル基を含む。他の実施形態において、GLP-1(7-35)またはGLP-1(7-37)は、開示された技術で使用され得る。C末端遊離カルボキシル基を有するGLP-1(7-35)およびC末端遊離カルボキシル基を有するGLP-1(7-37)の配列は以下のとおりである:
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly(配列番号2)、および
His-Ala-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Val-Ser-Ser-Tyr-Leu-Glu-Gly-Gln-Ala-Ala-Lys-Glu-Phe-Ile-Ala-Trp-Leu-Val-Lys-Gly-Arg-Gly(配列番号3)。
【0015】
ある特定の実施形態では、第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、一定または可変の投薬速度で投与され得る。ある特定の実施形態では、第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、連続的に投与され得る。ある特定の実施形態では、第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、約15分以下の、約30分以下の、約1時間以下、約2時間以下の、約3時間以下の、もしくは約4時間以下の、約5時間以下の、または約6時間以下の2回の連続投与の間の間隔で断続的に投与され得る。ある特定の実施形態では、第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、約10μg/日~約12,000μg/日、約100μg/日~約4,800μg/日、約300μg/日~約9,000μg/日、約500μg/日~約8,000μg/日、約1mg/日~約5mg/日、または約3mg/日~約7mg/日の1日投与量で投与され得る。ある特定の実施形態では、第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、約1μg/時~約500μg/時、約2μg/時から約400μg/時、約3μg/時~約200μg/時、約4μg/時~約300μg/時、約5μg/時~約100μg/時、約10μg/時~約80μg/時、または約12.5μg/時~約50μg/時の1時間ごとの投与速度で投与され得る。
【0016】
ある特定の実施形態では、第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、食事と一緒に投与され得る。ある特定の実施形態では、第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、食前約45分から食後約45分まで、食前約30分から食後約30分まで、食前約15分から食後約15分まで、食前約10分から食後約10分まで、または食前約5分から食後約5分までの時間範囲内で投与され得る。ある特定の実施形態では、第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体は、食前または食後の約0.5分~約30分、約1分~約15分、約2分~約10分、約3分~約7分、または約5分に投与される。第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の投薬量は、各投与について同じであっても異なっていてもよい。ある特定の実施形態では、第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の1回の投与は、約10μg~約500μg、約50μg~約300μg、または約100μg~約200μgであり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の1日総投薬量は、約40μg~約14,000μg、約40μg~約13,500μg、約50μg~約14,000μg、約50μg~約13,500μg、約40μg~約12,030μg、約50μg~約12,040μg、約2,010μg~約14,000μg、約1,510μg~約13,500μg、約250μg~約6,000μg、約250μg~約5,700μg、約300μg~約6,000μg、約300μg~約5,700μg、約480μg~約700μg、約480μg~約600μg、約540μg~約700μg、または約540μg~約600μgであり得る。ある特定の実施形態では、第1の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体の1日総投薬量、および第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体の1日総投薬量は、約1~約10:6、約1:12~約1:1.5、約3.2~約4、約1:9~約1:2、約16:3~約24、約1:2,000~約6、約1:3~約400、約1:1,500~約1:4、約300~約4:5、約1:2、約1:1、約2:1、約4:1、約3:1、約6:1、約12:1、約24:1、約48:1、約96:1、約1:96、約1:48、約1:32、約1:24、約1:12、約1:6、約1:3、または約1:4の比(第1の有効量/日:第2の有効量/日)を有し得る。
【0018】
ある特定の実施形態では、1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)は、GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の1つ以上の投与と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)の投与前、投与中、または投与後に投与され得る。いくつかの実施形態では、第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)の投与とGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))との間の間隔は、約1分~約30分、約5分~約25分、約10~約20分、または約15分であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、1つ以上の第3の有効成分は、インスリンおよび/またはインスリン類似体を含む。ある特定の実施形態では、インスリン類似体は、超速効型インスリン(例えば、インスリンリスプロ、インスリンアスパート、インスリングルリシン)および長時間作用型インスリン(例えば、インスリングラルギン、インスリンデグルデク、およびインスリンデテミル)からなる群から選択される。
【0020】
有効量(U)のインスリンおよび/またはインスリン類似体と有効量(mg)のGLP-1および/またはGLP-1類似体とは、約10:1および約800:1、約30:1~約500:1、約50:1~約250:1、約70:1~約220:1、または約100:1~約200:1の比で、例えば、約10:1、約20:1、約30:1、約40:1、約50:1、約60:1、約60:1、約70:1、約80:1、約90:1、約100:1、約150:1、約200:1、約250:1、約300:1、約350:1、約400:1、約450:1、約500:1、約550:1、約600:1、約650:1、約700:1、約750:1、または約800:1の比で組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、インスリン類似体(例えば、インスリングラルギン)は、約2U/日~約100U/日、約6U/日~約60U/日、約12U/日~約40U/日、約20U/日~約30U/日、または約15U/日の範囲で投与される。
【0021】
いくつかの実施形態では、1つ以上の第3の有効成分は、メトホルミンを含む。いくつかの実施形態では、メトホルミンは、約50mg/日~約3,000mg/日、約100mg/日~約2500mg/日、約500mg/日~約2000mg/日、約1,000mg/日~約1,500mg/日、または約1,000mg/日~約2,000mg/日の範囲で投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、1つ以上の第3の有効成分は、メトホルミンと、インスリン、およびインスリン類似体からなる群から選択される1つ以上の有効成分との両方を含む。
【0023】
GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の1つ以上の投与と組み合わせて投与される複数の第3の有効成分がある場合(併用投与)、複数の第3の有効成分のうちの1つ以上は、同じまたは異なる投与量で各併用投与において投与され得る。
【0024】
ある特定の実施形態では、投薬レジメンは、第1の有効量のGLP-1(7-36)(例えば、ベイナグルチド)を対象に投与することと、第2の有効量のGLP-1(7-36)(例えば、ベイナグルチド)を食事一緒に対象に投与することと、を含み、第1の有効量のGLP-1(7-36)(例えば、ベイナグルチド)が、約0.1mg~約4.8mgの1日の投与量で投与され、第2の有効量のGLP-1(7-36)(例えば、ベイナグルチド)が、1回の投与当たり約0.02mg~約0.3mgの投与量で、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回で投与される。第1の有効量のGLP-1(7-36)(例えば、ベイナグルチド)は、連続的または断続的に投与され得る。例えば、第1の有効量のGLP-1(7-36)(例えば、ベイナグルチド)は、約0.003mg/時~約0.2mg/時の一定または可変の速度で、連続的または断続的に、約15分以下の、約30分以下の、約1時間以下の、約2時間以下の、約3時間以下の、もしくは約4時間以下の、約5時間以下の、または約6時間以下の2回の連続的な投与の間の間隔で投与され得る。
【0025】
1)GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))ならびに2)1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)のいずれかまたは両方に加えて、本明細書に開示される薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、および/または組成物の所望のpH範囲維持するための緩衝液(例えば、ヒスチジン-塩酸(ヒスチジン-HCl)、クエン酸ナトリウム-クエン酸、リン酸一水素二ナトリウム-クエン酸、NaOH-クエン酸、酢酸ナトリウム-酢酸(NaAC-HAC)、コハク酸塩-コハク酸、乳酸塩-乳酸、グルタミン酸塩-グルタミン酸、リンゴ酸-リンゴ酸、安息香酸塩-安息香酸、酒石酸塩-酒石酸、またはグリシン-塩酸(Gly-HCl)、またはそれらの任意お組み合わせ)塩を含有し得る。薬学的組成物のための追加の成分は、保存剤(例えば、フェノール、ベンジルアルコール、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、エチルp-ヒドロキシベンゾエート、プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、ブチルp-ヒドロキシベンゾエート、クロロブタノール、2-フェノキシエタノール、2-フェネチルアルコール、塩化ベンザルコニウム(臭化物)、メルチオレートまたはそれらの任意の組み合わせ)、等張剤(ポリオール、塩化ナトリウム、糖またはそれらの任意の組み合わせ;ここで、ポリオールは、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、キシリトール、グリセリン、プロピレングリコールまたはそれらの任意の組み合わせであり、糖はスクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、グルコースまたはそれらの任意の組み合わせである)、および溶解促進剤(例えば、Tween20、Tween40、Tween80、Span20、Span40、Span80、Poloxamer188、PluronicF68、Brij35、デキストラン-20、PEG400、PEG1000、PEG1500、PEG2000、プロピレングリコールまたはそれらの任意の組み合わせ)を含み得る。
【0026】
薬学的組成物は、特定の投与経路に適して製剤化される。例えば、薬学的組成物は、皮下もしくは静脈内に注射することができ、または注入もしくは経口投与によって投与することができる。いくつかの実施形態では、1)GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))と2)1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)の両方は、同時投与用の単一組成物に製剤化される。いくつかの実施形態では、1)GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))ならびに2)1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)は、1)GLP-1および/またはGLP-1類似体ならびに2)1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)の異なる用量または比が同時または連続投与に組み合わせることができるように2つの別個の組成物に製剤化される。例えば、GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))は、1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)の投与前、投与中、または投与後に投与され得る。別の例では、1)第2の有効量のGLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))ならびに2)1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)は、様々な組み合わせで、1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回送達され得る。例えば、1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)の1回の投与の後に、GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の1回以上の投与が続き、逆もまた同様である。1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)またはGLP-1(および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の複数回投与が実施される場合、毎回同じ用量を対象に投与する必要はない。第1の用量の1)GLP-1および/もしくはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))ならびに/または2)1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)を投与し、次いで、第1の用量に応答する患者の血糖レベルに応じて、その後の用量をより高くまたはより低く調整するか、または1)GLP-1および/もしくはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))ならびに2)1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)のいずれかまたは両方の用量をスキップすることも可能である。
【0027】
また開示されるのは、1)GLP-1および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))と、2)1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)と、3)これらの使用説明書と、を含むキットである。GLP-1(および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))および1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)は、単一組成物または2つの別個の組成物に含まれてもよい。GLP-1(および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))および1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)が2つの別個の組成物で提供される場合、これらは、様々な組み合わせで同時にまたは連続的に投与されてもよい。例えば、説明書は、GLP-1(および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))と1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)のどちらを、最初に、どの用量で投与されるか、それぞれのどれほどの用量が1日に投与されるか、ならびに必要に応じて、ユーザーが、初期血糖値および初回投与に応答した血糖値に基づいて、送達用量の最適な組み合わせを選択することができるように、1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)の1回の投与後に、GLP-1(および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))の1回以上の投与が続くべきであるか、その逆も同様であるべきかを提供するであろう。この目的のために、GLP-1(および/またはGLP-1類似体(例えば、ベイナグルチドなどのGLP-1(7-36))と1つ以上の第3の有効成分(例えば、インスリンおよび/またはインスリン類似体および/またはメトホルミン)とは、ユーザーがそれぞれの2つ以上を組み合わせて増量した所望の投与量を達成することができるように、小容量で提供され得る。
【0028】
以下の実施例は、請求される発明および本明細書に記載の実施形態をより良く例示するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特定の材料が言及される場合、それは単に例示を目的としており、本発明を限定することを意図しない。当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な等価物、変更、および修正が実現され得ることが明らかであり、そのような等価の実施形態は本明細書に含まれることが理解されるであろう。さらに、本開示で引用されるすべての参考文献は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
実施例1:2型糖尿病患者におけるメトホルミンの経口投与と組み合わせたベイナグルチドの皮下投与の有効性
この実施例は、2型糖尿病患者におけるメトホルミンの経口投与と組み合わせた食前のベイナグルチドの皮下投与の治療効果を実証する。
【0030】
患者の適格基準
選択基準(ある場合)は次のとおりである:世界保健機関の2型糖尿病の診断基準(WHO、1999)を満たし、≧1,000mg/日の投与量で経口メトホルミン治療を受け、治療関連の有害事象(例えば、嘔吐)なしに少なくとも3か月間安定しており、自発的にインフォームドコンセントに署名し、以下の基準:
●年齢:30~75歳、
●疾患経過:6か月~10年、
●糖化ヘモグロビン(HbA1c):7.0%~10.0%、を満たす2型糖尿病患者。
【0031】
除外基準(ある場合)は次のとおりである:1型糖尿病の患者であること、妊娠中の女性と授乳中の母親であること、収縮期血圧>160mmHgおよび/または拡張期血圧>100mmHgであること、インスリン療法中または重度の急性慢性合併症を伴うこと、前庭、血液、および心臓の病気を有していること、肝臓および腎臓の機能障害を有していること(正常値上限の2倍を超えるトランスアミナーゼまたはCr>133μmol/L)、胃腸疾患があるか、または最近グルコース代謝に影響を与える薬を投与されたこと、精神障害のために異常な判断をして、協力できないこと。
【0032】
方法
無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験では、メトホルミン単剤療法で治療された2型糖尿病の42人の患者を、無作為に治療群と対照群に、各群に21人の患者を含むように分けた。すべての患者は、元の投与量でメトホルミン(グルコファージ(Glucophage)、Bristol-Myers Squibbから購入)を投与された。200μgのベイナグルチド(Benemaeから、治療群)またはプラセボ(Benemae、対照群)を、3回の食事のそれぞれの前に1回皮下注射によって患者に投与し(600μg/日)、12週間の治療後に追跡調査した。
【0033】
有効性指標
糖化ヘモグロビン(HbA1c)、空腹時血糖、食後2時間血糖、BMI、およびその他の有効性指標を測定した。
【0034】
12週間の治療後の結果
治療群のHbA1cは1.17%減少した(治療前7.97%、治療後6.8%)(P<0.01)。空腹時血糖は1.98ミリモル/L減少し(治療前9.43ミリモル/L、治療後7.45ミリモル/L)、食後血糖は4.18ミリモル/L減少した(治療前15.2ミリモル/L、治療後11.02ミリモル)(P<0.01)。
【0035】
治療群における治療後のHbA1cと空腹時血糖の両方は、治療前の指標と比較して有意な減少を示し、対照群と比較してさらに有意な減少を示した(P<0.05)。
【0036】
治療群と対照群の両方でBMIの有意な減少が見られたが(P<0.05)、2つの群の間に統計的差異はなかった(P>0.05)。
【0037】
実施例2:2型糖尿病の肥満/体重過多の患者におけるベイナグルチドの連続皮下投与の有効性
この実施例は、2型糖尿病の肥満および体重過多の患者におけるベイナグルチド投薬レジメンの実施形態の効果を実証する。
【0038】
ベイナグルチド投薬レジメンには、1)皮下ポンプを介した12.5μg/時(300μg/日)のベイナグルチドの連続皮下投与、2)1日3回の食事の各々の5分前に100μgの用量でのベイナグルチドの1回皮下投与、ならびに3)インスリングラルギンおよび/またはメトホルミンの任意選択の投与が含まれた。
【0039】
治療を受けた患者は、2型糖尿病の短期間の疾患経過にいて肥満/体重過多であった。2人の患者は女性であり、4人の患者は男性であった。患者は30~55歳で、0~5年の疾患経過を示し、糖化ヘモグロビンは9%~12%であり、BMIは26~30kg/mであった。
【0040】
3人の患者は、ベイナグルチドの単剤療法で治療された。3人の患者は、ベイナグルチドと1つまたは2つの第3の有効成分(メトホルミン、またはメトホルミンとグラルギン)との併用療法で治療された。糖化ヘモグロビン(HbA1c)および体重を測定した。
【0041】
患者は、本明細書に記載のベイナグルチド投薬レジメン、単独で、または1つ以上の第3の有効成分と組み合わせて治療された。一部の患者は、バイナグルチド治療を開始する直前の1週間、インスリン(1日投与量0.5u/kg)ポンプ治療単独またはメトホルミン(0.5g tid(1日3回))との併用で治療された。治療を受けた患者は、本明細書に記載された治療後に、有意な体重減少および/またはHbA1cの減少を示した。
【0042】
【表1】
【0043】
1.投薬レジメンによるベイナグルチド単剤療法で治療された患者
3人の患者(患者1、5、および6)は、本明細書に記載の投薬レジメンに従って、ベイナグルチド単剤療法で治療された。
【0044】
1.1.患者1
患者1は53歳の女性の肥満の2型糖尿病患者で、高脂血症および脂肪肝を有していた。治療前に、患者は、9.4%のHbA1c値、および61kgの体重を有していた。
【0045】
患者は、アトルバスタチンカルシウム(20mg qn(毎晩))、アスピリン腸溶性コーティング錠(100mg qd(毎日))、メトホルミン(グルコファージ、0.5g tid)と組み合わせたインスリンポンプ治療(インスリン0.5u/kg)で1週間治療され、その後、1か月間のバイナグルチド単剤療法を受けた。
【0046】
1.2.患者5
患者5は、42歳の女性の肥満の2型糖尿病患者であった。治療前に、患者は、7.3%のHbA1c値、および80kgの体重を有していた。
【0047】
患者は、ベイナグルチドの単剤療法で1か月間治療された。
【0048】
1.3.患者6
患者6は、34歳の女性の肥満の2型糖尿病患者で、高脂血症、高尿酸血症、および異常肝機能を有していた。治療前に、患者は、9.7%のHbA1c値、および85kgの体重を有していた。
【0049】
患者はインスリンポンプ治療(0.5U/kg)で1週間治療され、続いてバイナグルチド単剤療法(0.6mg/日)で1か月治療された。
【0050】
2.ベイナグルチド-メトホルミン併用療法で治療された患者
2.1.患者2
患者2は、38歳の男性の肥満の2型糖尿病患者で、脂肪肝も有していた。治療前に、患者は、8.8%のHbA1c値、および99kgの体重を有していた。
【0051】
患者は、Essentiale(456mg tid)とインスリンポンプ治療で1週間治療され、次いでベイナグルチド+メタホルミン(0.5mg tid)併用療法で1か月治療された。患者の体重は、1か月の治療後に99kgから93kgに減少した。
【0052】
2.2.患者3
患者3は、37歳の男性の肥満の2型糖尿病患者で、2型糖尿病性ケトーシス、高脂血症および脂肪肝も有していた。治療前に、患者は、12.3%のHbA1c値、および88kgの体重を有していた。
【0053】
患者は、インスリン(0.5u/kg)ポンプ増感剤低血糖治療で1週間治療され、次いでベイナグルチド+メタホルミン(0.5g tid)併用療法で1か月間治療された。患者の体重は、88kgから83kgに減少した。
【0054】
3.ベイナグルチド-メトホルミン併用療法で治療された患者
3.1.患者4
患者4は、36歳の男性の肥満の2型糖尿病患者で、高脂血症および糖尿病性網膜症を有していた。治療前に、患者は、9.3%のHbA1c値、および80kgの体重を有していた。
【0055】
患者は、インスリン(0.5u/kg)ポンプ増感剤低血糖治療で1週間治療され、次いでベイナグルチド+インスリングラルギン(就寝前16単位sc)-メタホルミン(0.5g tid)併用療法で1か月間治療された。
【0056】
この実施例のベイナグルチド投薬レジメン(連続的、300μg/日;食事前に100μg tid)の単独で、または第3の有効成分(例えば、メトホルミン、またはメトホルミンとインスリングラルギン)と組み合わせてのいずれかで治療された患者は、1か月の治療過程でHbA1cの減少および/または体重の減少を達成した。
【配列表】
2023518645000001.app
【国際調査報告】