(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】局所適用エストリド組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/85 20060101AFI20230426BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230426BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20230426BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20230426BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230426BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230426BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230426BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230426BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230426BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230426BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230426BHJP
C07C 69/003 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
A61K8/85
A61Q19/00
A61Q13/00 101
A61Q15/00
A61Q1/00
A61K8/37
A61K8/31
A61K8/92
A61K8/34
A61K8/891
A61K47/34
C07C69/003 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552738
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 FR2021050440
(87)【国際公開番号】W WO2021186131
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522178393
【氏名又は名称】トタルエナジーズ・ワンテック
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】デルフィン クローゼ
(72)【発明者】
【氏名】アリス リモジェス
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン スウォボダ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4H006
【Fターム(参考)】
4C076EE24
4C083AA121
4C083AC011
4C083AC061
4C083AC171
4C083AC331
4C083AC352
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083BB01
4C083BB21
4C083BB41
4C083BB45
4C083BB47
4C083BB48
4C083CC03
4C083CC11
4C083CC17
4C083EE06
4C083EE10
4C083KK02
4H006AA01
4H006AB12
4H006KC12
(57)【要約】
本発明は、化粧品又は医薬品の局所適用のための知覚特性が改善されたエストリドエステル組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酸エストリド組成物(C3)を得るために、触媒の存在下で、飽和脂肪酸組成物(C1)と不飽和脂肪酸組成物(C2)とを付加反応させる工程と、
b)任意選択で、処理された酸エストリド組成物(C3bis)を得るために、酸エストリド組成物(C3)から不飽和脂肪酸及び/若しくは飽和脂肪酸を除去する処理工程並びに/又は酸モノエストリドを該酸エストリド組成物(C3)中に存在する該酸ポリエストリドから分離する分離工程と、
c)エストリドエステル組成物(C5)を得るために、該酸エストリド組成物(C3)の酸エストリド又はもしあれば該処理された酸エストリド組成物(C3bis)の酸エストリドを、炭素原子数2~6の直鎖若しくは分岐アルコールの1つ以上を含むアルコール組成物(C4)を用いてエステル化反応させる工程と、
を含むプロセスによって得られるエストリドエステル組成物であって、
前記飽和脂肪酸組成物(C1)が、炭素原子数10~20の飽和脂肪酸を含み、
前記不飽和脂肪酸組成物(C2)が、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して、炭素原子数8~22のモノ不飽和脂肪酸を少なくとも85重量%含む、エストリドエステル組成物。
【請求項2】
処理された酸エストリド組成物(C3bis)を得るために、前記酸エストリド組成物(C3)が、好ましくは分子蒸留によって、不飽和脂肪酸及び/又は飽和脂肪酸を除去する処理工程を受けることを特徴とする、請求項1に記載のエストリドエステル組成物。
【請求項3】
前記酸エストリド組成物(C3)又はもしあれば(C3bis)が、前記酸エストリド組成物中に存在する前記酸モノエストリドを前記酸ポリエストリドから分離する分離工程を受けることを特徴とする、請求項1又は2に記載のエストリドエステル組成物。
【請求項4】
前記エステル化反応の終了時に、前記エストリドエステル組成物(C5)が、好ましくは分子蒸留によって、アルコールを除去する処理工程を受けることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のエストリドエステル組成物。
【請求項5】
少なくとも式(I):
【化1】
の化合物を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のエストリドエステル組成物。
(式中、
R
1は炭素原子数1~19の直鎖又は分岐アルキレンラジカルであり、
R
2は水素原子又は炭素原子数1~19の直鎖又は分岐アルキルラジカルであり、
R
3は炭素原子数2~6の直鎖又は分岐アルキルラジカルであり、
R
4は炭素原子数9~19の直鎖又は分岐アルキルラジカルであり、
xは0又は1に等しい整数であり、
ここで、ラジカルR
1及びR
2の炭素原子数の合計は5~19の範囲であることが理解
され、
nは0以上の整数である。)
【請求項6】
前記エストリドエステル組成物の総重量に対して、式(I)の化合物を少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%含有することを特徴とする、請求項5に記載のエストリドエステル組成物。
【請求項7】
NF EN ISO 3961法に従って測定された、12g/ヨウ素100g以下、好ましくは10g/ヨウ素100g以下、より好ましくは1~10g/ヨウ素100gのヨウ素価を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のエストリドエステル組成物。
【請求項8】
1.0~1.3のエストリド価を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のエストリドエステル組成物。
【請求項9】
化粧品組成物、好ましくは化粧品組成物のエモリエント剤としての、請求項1~8のいずれか一項に記載のエストリドエステル組成物の使用。
【請求項10】
化粧品組成物であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つのエストリドエステル組成物と、
少なくとも1つの脂肪物質及び/又は少なくとも1つの化粧品添加剤であって、前記脂肪物質及び前記化粧品添加剤が請求項1~8のいずれか一項に記載のエストリドエステルとは異なるものである、脂肪物質及び化粧品添加剤と、
を含む、化粧品組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の化粧品組成物であって、前記化粧品組成物の総重量に対して、
1~80重量%、好ましくは5~50重量%のエストリドエステル組成物と、
1~80重量%、好ましくは20~60重量%の炭化水素油、植物油、植物バター、脂肪エーテル及びアルコール、油性エステル、アルカン及びシリコーン油から選択されるエストリド以外の脂肪物質と、
0.1~30重量%、好ましくは1~20重量%の界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、香料、着色料、充填剤、増粘剤、痩身剤及びこれらの混合物から選択される化粧品添加物と、
を含む、化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然由来の原料から得られる、化粧品、皮膚科学又は医薬品用途のエストリドエステル組成物に関する。
【0002】
本発明はさらに、化粧品又は医薬品組成物におけるエモリエント剤としてのエストリドエステル組成物を、特に皮膚、唇、爪、毛髪又は頭皮への局所適用のために前記化粧品又は医薬品組成物の知覚特性を改善するための使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
化粧品、皮膚科学及び薬学の市場では、製品の処方に対して生物由来の成分への要求がますます高まっている。近年、生物由来の有効成分、乳化剤、植物油が強力に開発され、広く市場に出回っている一方で、100%有機由来のエモリエント剤はまだ少ない。
【0004】
現在、化粧品に使用されているエモリエント剤は、石油化学由来のイソパラフィン(主にイソドデカン及びイソヘキサデカン)、ホワイトオイル、シリコーンオイル、植物油などのエステル系オイル(合成又は天然を問わず)である。イソパラフィン、ホワイトオイル、シリコーンオイルは、非常に安定で無臭であるため広く流通しているが、再生可能な資源に由来するものではない。シクロメチコンなどの揮発性シリコーンは、皮膚に無害なエモリエント剤及び溶剤と長い間考えられてきたが(International Journal of Toxicology, Vol. 10, no. 1, pp.
9-19, 1991)、近年、環境やヒトへの健康にさえも及ぼすそれらの潜在的な悪影響についての懸念が指摘されている(特にオクタメチルシクロテトラシロキサン)。
【0005】
最近では、エステル系オイルも開発されている。
【0006】
文書WO 2013/009471には、化粧品用途のエストリド組成物が記載されており、エストリドは、不飽和脂肪酸から、及び飽和脂肪酸から得られる。
【0007】
本発明の目的は、物理化学的性質及び知覚特性が改善された局所用組成物を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる主題は、その使用に適した特性を有する安定な局所用組成物を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、生物(非石油化学)由来の原料、特に100%生物由来の原料から得られるであろう組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
a)エストリド酸組成物(C3)を得るために、触媒の存在下で、飽和脂肪酸組成物(C1)と不飽和脂肪酸組成物(C2)とを付加反応させる工程、及び
b)任意選択で、処理された酸エストリド組成物(C3bis)を得るために、エストリド酸組成物(C3)から不飽和脂肪酸及び/若しくは飽和脂肪酸を除去する処理工程並びに/又はモノエストリド酸をエストリド酸組成物(C3)中に存在するポリエストリド酸から分離する分離工程、並びに
c)エストリドエステル組成物(C5)を得るために、該酸エストリド組成物(C3)の酸エストリド又はもしあれば該処理された酸エストリド組成物(C3bis)の酸エストリドを、炭素原子数2~6の直鎖若しくは分岐アルコールの1つ以上を含むアルコール
組成物(C4)を用いてエステル化反応させる工程
を含むプロセスによって得られるエストリドエステル組成物であって、
前記飽和脂肪酸組成物(C1)が、炭素原子数10~20の飽和脂肪モノ酸を含み、
前記不飽和脂肪酸組成物(C2)が、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して、炭素原子数8~22のモノ不飽和脂肪モノ酸を少なくとも85重量%含む、エストリドエステル組成物。
【0011】
一実施形態によれば、処理されたエストリド酸組成物(C3bis)を得るために、本発明によるエストリドエステル組成物(C3)は、好ましくは分子蒸留によって、不飽和脂肪酸及び/又は飽和脂肪酸を除去する処理工程を受けることを特徴とする。
【0012】
一実施形態によれば、本発明によるエストリドエステル組成物は、エストリド酸組成物(C3)又はもしあれば(C3bis)が、モノエストリド酸をエストリド酸組成物に存在するポリエストリド酸から分離する分離工程を受けることを特徴とする。一実施形態によれば、本発明によるエストリドエステル組成物は、エステル化反応の終了時に、エストリドエステル組成物(C5)が、好ましくは分子蒸留によって、アルコールを除去する処理工程を受けることを特徴とする。
【0013】
一実施形態によれば、本発明によるエストリドエステル組成物は、少なくとも式(I):
【化1】
の化合物を含むことを特徴とする。
(式中、
R
1は炭素原子数1~17の直鎖又は分岐アルキレンラジカルのいずれかであり、
R
2は水素原子又は炭素原子数1~17の直鎖又は分岐アルキルラジカルのいずれかであり、
R
3は炭素原子数2~6の直鎖又は分岐アルキルラジカルのいずれかであり、
R
4は炭素原子数9~19の直鎖又は分岐アルキルラジカルのいずれかであり、
xは0又は1に等しい整数であり、
ここで、ラジカルR
1及びR
2の炭素原子数の合計は5~17の範囲であることが理解され、
nは0以上の整数である。)
【0014】
一実施形態によれば、本発明によるエストリドエステル組成物は、エストリドエステル組成物の総重量に対して、式(I)の化合物を少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%含有することを特徴とする。
【0015】
一実施形態によれば、本発明によるエストリドエステル組成物は、NF EN ISO
3961法に従って測定された、12g/ヨウ素100g以下、好ましくは10g/ヨウ素100g以下、より好ましくは1~10g/ヨウ素100gのヨウ素価を有することを特徴とする。
【0016】
本発明はさらに、化粧品組成物、好ましくは化粧品組成物のエモリエント剤としての、本発明によるエストリドエステル組成物の使用に関する。
【0017】
本発明はさらに、
本発明による少なくとも1つのエストリドエステル組成物と、
少なくとも1つの脂肪物質及び/又は少なくとも1つの化粧品添加剤であって、前記脂肪物質及び前記化粧品添加剤が本発明によるエストリドエステルとは異なるものである、脂肪物質及び化粧品添加剤と
を含む化粧品組成物に関する。
【0018】
一実施形態によれば、本発明による化粧品組成物は、化粧品組成物の総重量に対して、
1~80重量%、好ましくは5~50重量%のエストリドエステル組成物と、
1~80重量%、好ましくは20~60重量%の炭化水素油、植物油、植物バター、脂肪エーテル及びアルコール、油性エステル、アルカン及びシリコーン油から選択されるエストリドとは異なる脂肪物質と、
0.1~30重量%、好ましくは1~20重量%の界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、香料、着色料、充填剤、増粘剤、痩身剤及びこれらの混合物から選択される化粧品添加物と、
を含む。
【0019】
本発明により、局所適用、特に化粧品、皮膚科学又は医薬品用途に適した、知覚特性が改善された100%生物(非石油化学)由来の組成物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、
a)酸エストリド組成物(C3)を得るために、触媒の存在下で、飽和脂肪酸組成物(C1)と不飽和脂肪酸組成物(C2)とを付加反応させる工程、及び
b)任意選択で、処理された酸エストリド組成物(C3bis)を得るために、酸エストリド組成物(C3)から不飽和脂肪酸及び/若しくは飽和脂肪酸を除去する処理工程並びに/又は酸モノエストリドを酸エストリド組成物(C3)中に存在する酸ポリエストリドから分離する分離工程、並びに
c)エストリドエステル組成物(C5)を得るために、酸エストリド組成物(C3)の酸エストリド又はもしあれば処理された酸エストリド組成物(C3bis)の酸エストリドを、炭素原子数2~6の直鎖若しくは分岐アルコールのいずれかの1つ以上を含むアルコール組成物(C4)を用いてエステル化反応させる工程
を含むプロセスによって得られるエステルの形態のエストリド組成物であって、
前記飽和脂肪酸組成物(C1)が、炭素原子数10~20の飽和脂肪モノ酸を含み、
前記不飽和脂肪酸組成物(C2)が、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して、炭素原子数8~22のモノ不飽和脂肪酸を少なくとも85重量%含むエストリド組成物に関する。
【0021】
好ましくは、エストリドを調製するプロセスは、工程a)に記載の付加反応と異なり、工程c)に記載のエステル化反応と異なる反応を含まない。
【0022】
好ましくは、本発明によるエストリドエステル組成物は、
a)酸エストリド組成物(C3)を得るために、触媒の存在下で、飽和脂肪酸組成物(C1)と不飽和脂肪酸組成物(C2)とを付加反応させる工程、及び
b)任意選択で、処理された酸エストリド組成物(C3bis)を得るために、酸エストリド組成物(C3)から不飽和脂肪酸及び/若しくは飽和脂肪酸を除去する処理工程並
びに/又は酸モノエストリドを酸エストリド組成物(C3)中に存在する酸ポリエストリドから分離する分離工程、並びに
c)エストリドエステル組成物(C5)を得るために、酸エストリド組成物(C3)の酸エストリド又はもしあれば処理された酸エストリド組成物(C3bis)の酸エストリドを、炭素原子数2~6の直鎖若しくは分岐アルコールのいずれかの1つ以上を含むアルコール組成物(C4)を用いてエステル化反応させる工程
を含むプロセスによって得られ、
前記飽和脂肪酸組成物(C1)が、炭素原子数10~20の飽和脂肪モノ酸を含み、
前記不飽和脂肪酸組成物(C2)が、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して、炭素原子数8~22のモノ不飽和脂肪酸を少なくとも85重量%含む。
【0023】
本発明で定義する「エストリド」とは、酸又はエステルなどの不飽和化合物の炭素-炭素二重結合にカルボン酸官能基が付加する反応から生じる生成物を指す。本発明における「エストリド」という用語は、「モノエストリド」及び「ポリエストリド」の両方を指すものとする。
【0024】
本発明で定義する「モノエストリド」とは、飽和脂肪酸の酸性官能基と不飽和酸のオレフィン官能基又はエステルとの単一付加反応で生じるエストリドを指す。モノエストリドは、不飽和化合物の酸又はエステル形態に応じて、酸形態またはエステル形態であり得る。次いで、本発明の範囲に属するモノエストリドエステルを得るために、酸形態のモノエストリドをエステル化することができる。
【0025】
本発明で定義する「ポリエストリド」は、少なくとも2つの不飽和化合物(酸又はエステル形態)の間の反応、続いて任意選択で飽和酸との反応から生じる生成物を指す。ポリエストリドは、不飽和化合物の酸又はエステル形態に応じて、酸形態またはエステル形態であり得る。次いで、本発明の範囲に属するポリエストリドエステルを得るために、酸形態のポリエストリドをエステル化することができる。
【0026】
予備的事項として、本明細書及び以下の特許請求の範囲において、「間に含まれる」という表現は、引用された限界を含むものとして理解されなければならないことに留意されたい。
【0027】
(飽和脂肪酸組成(C1))
本発明によるエストリド組成物は、炭素原子数10~20の直鎖又は分岐脂肪酸のいずれかを少なくとも1つ含む飽和脂肪酸組成物(C1)から得ることができる。
【0028】
好ましくは、飽和脂肪酸組成物(C1)は、炭素原子数10~16、好ましくは炭素原子数11~14の飽和脂肪酸を少なくとも1つ含む。
【0029】
好ましくは、飽和脂肪酸組成物(C1)は、炭素原子数10~20、好ましくは炭素原子数10~16、好ましくは炭素原子数11~14の直鎖又は分岐飽和脂肪モノ酸のいずれかを少なくとも1つ含む。
【0030】
好ましくは、飽和脂肪酸組成物(C1)は、炭素原子数10~20、好ましくは炭素原子数10~16、好ましくは炭素原子数11~14の直鎖飽和脂肪モノ酸を少なくとも1つ含む。
【0031】
好ましくは、飽和脂肪酸組成物(C1)は、炭素原子数10~20、好ましくは炭素原子数10~16、好ましくは炭素原子数11~14の飽和脂肪モノ酸を、飽和脂肪酸組成物(C1)の総重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%
、より好ましくは少なくとも90重量%、有利には少なくとも95重量%、さらには少なくとも98重量%含む。
【0032】
好ましくは、飽和脂肪酸組成物(C1)は、炭素原子数10~20、好ましくは炭素原子数10~16、好ましくは炭素原子数11~14の同飽和脂肪モノ酸を、飽和脂肪酸組成物(C1)の総重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、有利には少なくとも95重量%、さらには少なくとも98重量%含む。
【0033】
一実施形態によれば、飽和脂肪酸組成物(C1)は、式(2)に対応する少なくとも1つの飽和脂肪酸を、飽和脂肪酸組成物(C1)の総重量に対して、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%の式(2):
【化2】
に対応する同飽和脂肪酸を含む。
(式中、R4は、炭素原子数9~19の直鎖又は分岐一価アルキルラジカルのいずれか、好ましくは炭素原子数9~15の直鎖又は分岐アルキルのいずれか、有利には炭素原子数10~13の直鎖アルキルを表わす。)
【0034】
一実施形態によれば、飽和脂肪酸組成物(C1)は、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸及びそれらの混合物から、好ましくはウンデカン酸、ラウリン酸及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの酸を含む。
【0035】
好ましくは、本発明で使用される飽和脂肪酸組成物(C1)は、飽和脂肪酸組成物(C1)の総重量に対して、炭素原子数11~14の飽和脂肪酸を少なくとも85重量%、好ましくは炭素原子数11~14の飽和脂肪酸を少なくとも90重量%、さらに好ましくは炭素原子数11~14の飽和脂肪酸を少なくとも95重量%含む。
【0036】
好ましくは、本発明で使用される飽和脂肪酸組成物(C1)は、飽和脂肪酸組成物(C1)の総重量に対して、炭素原子数11~14の同飽和脂肪酸を少なくとも85重量%、好ましくは炭素原子数11~14の同飽和脂肪酸を少なくとも90重量%、さらに好ましくは炭素原子数11~14の同飽和脂肪酸を少なくとも95重量%含む。
【0037】
飽和脂肪酸組成物(C1)は、市販されているものであり得る。
【0038】
(不飽和脂肪酸組成(C2))
本発明によるエストリド組成物は、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して、炭素原子数8~22のモノ不飽和脂肪酸を少なくとも85重量%、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して含む不飽和脂肪酸組成物から得られる。
【0039】
好ましくは、不飽和脂肪酸組成物は、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して、炭素原子数8~22のモノ不飽和脂肪酸を少なくとも90重量%、不飽和脂肪酸組成物の総重量に対して含む。
【0040】
好ましくは、モノ不飽和脂肪酸組成物のモノ不飽和脂肪酸は、炭素原子数10~22、好ましくは炭素原子数14~22、より好ましくは炭素原子数16~18のモノ不飽和脂
肪酸から選択される。
【0041】
モノ不飽和脂肪酸組成物のモノ不飽和脂肪酸は直鎖状又は分岐状のいずれであり得、好ましくはモノ不飽和脂肪酸組成物のモノ不飽和脂肪酸は末端位置に位置しない不飽和を有する直鎖状の酸である。
【0042】
一実施形態によれば、不飽和脂肪酸組成物は、植物性油又は動物性油のいずれかから得られる。
【0043】
好ましくは、不飽和脂肪酸組成物(C2)は、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して、炭素原子数8~22の同モノ不飽和脂肪酸を少なくとも85重量%、好ましくは炭素原子数14~22の同モノ不飽和脂肪酸を少なくとも85重量%、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して含む。同モノ不飽和脂肪酸は、複数の位置異性体及び/又は複数の配置異性体の形態であり得ることに留意すべきである。
【0044】
本発明によって定義されるように、2つの化合物が同じ実験式を有さない場合、2つの化合物は「異なる」と言われる。一例として、2つのシス/トランス異性体又は2つの位置異性体は、本発明によって定義されるように、異なる化合物ではない。2つの位置異性体は、炭化水素鎖上の炭素-炭素二重結合の位置が異なる。
【0045】
典型的には、不飽和脂肪酸組成物中の不飽和脂肪酸は、酸性官能基及び炭素-炭素二重結合以外の官能基を含まないモノ酸である。
【0046】
一実施形態によれば、不飽和脂肪酸組成物(C2)は、式(3):
【化3】
又は式(4):
【化4】
に対応する少なくとも1つの不飽和脂肪酸を含む。
(式中、
R1は、水素原子又は炭素原子数1~16、好ましくは炭素原子数4~14の直鎖若しくは分岐一価アルキルラジカルのいずれかを表し、有利にはR1は水素原子又は炭素原子数5~12の直鎖アルキルを表し、
R2は、炭素原子数1~16の直鎖又は分岐二価アルキレンラジカルのいずれか、好ましくは炭素原子数3~13の直鎖又は分岐アルキレンのいずれか、有利には炭素原子数4~11の直鎖アルキレンを表わし、
ここで、R
1及びR
2の炭素原子数の合計は5~19の範囲であることが理解される。)
【0047】
例えば式(3)及び式(4)に示されるように、2つのシス/トランス異性体は、反応媒体中で平衡状態にあり得ることに留意すべきである。
【0048】
本発明によるエストリド組成物を得るために使用される不飽和脂肪酸組成物(C2)は、少なくとも2つの異なる不飽和脂肪酸の混合物を含み得る。不飽和脂肪酸組成物が少なくとも2つの異なる不飽和酸の混合物を含む場合、前記組成物は、不飽和酸組成物(C2)の総重量に対して、同酸及び/又はその異性体を好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、有利には少なくとも85重量%含む。
【0049】
一実施形態によれば、不飽和脂肪酸組成物(C2)は、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して、オレイン酸及び/又はそのトランス異性体を好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらには少なくとも88重量%の割合で含む。不飽和脂肪酸組成物の天然又は合成源に応じて、本発明で使用する場合、前記不飽和化合物はそのシス型及び/又はそのトランス型であり得る。
【0050】
一実施形態によれば、本発明で使用される不飽和脂肪酸組成物(C2)は、不飽和脂肪酸組成物(C2)の総重量に対して、ポリ不飽和酸を8重量%未満、好ましくはポリ不飽和酸を5重量%未満、さらには3重量%未満含む。
【0051】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明で使用される不飽和脂肪酸組成物(C2)は、モノ不飽和化合物に富む油に由来し、好ましくは、本発明は、ポリ不飽和化合物を実質的に又は完全に含まない不飽和脂肪酸組成物を使用する。植物由来の不飽和化合物のうち、酸、トール油、菜種油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ピーナッツ油、亜麻仁油、コプラ油、オリーブ油、パーム油、綿油、コーン油、獣脂油、ラード油、パーム核油、大豆油、スカッシュ種子油、ブドウ種子油、アルガン油、ホホバ油、ゴマ油、ナッツ油、ヘーゼルナッツ油、キリ油、米油及び交配種又は遺伝子組み換え種からの同様の油から選択することが可能である。
【0052】
動物由来の不飽和化合物の中には、海洋動物、魚類又は海洋哺乳類由来の脂肪酸並びに馬、牛及び豚の脂肪などの陸上動物由来の脂肪を含めることができる。
【0053】
(付加反応(工程a)の実施)
本発明によるエストリドは、酸エストリド組成物(C3)を得るために、触媒の存在下で、飽和脂肪酸組成物(C1)と不飽和脂肪酸組成物(C2)とを付加反応させることからなる第1工程によって得られる。
【0054】
そのような反応は、少なくとも1つのエストリドを形成するための、飽和脂肪酸の酸性官能基と酸又はエステル形態の不飽和化合物の炭素-炭素二重結合との間の付加反応である。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、付加反応(工程a)は、20~120℃の範囲、好ましくは30~100℃の範囲、有利には40~90℃の範囲の温度で実施される。
【0056】
工程a)は、連続的若しくは半連続的に又はバッチで実施することができる。
【0057】
一実施形態によれば、本発明のプロセスは、組成物(C1)及び組成物(C2)を、バッチ式(全ての試薬を同時添加)又は分別式(2つの組成物(C1)又は(C2)の一方を他の組成物に徐々に添加)で添加することを伴う。
【0058】
一実施形態によれば、付加反応は、以下の条件の1つ以上に従って実施される:
不飽和化合物と飽和脂肪酸とのモル比が1/10~1/1、好ましくは1/8~1/4の範囲であること;
不飽和化合物と触媒とのモル比が1/0.1~1/1、好ましくは1/0.15~1/0.5であること。
【0059】
反応の進行は、当業者に知られている方法に従って、炎イオン化検出器に接続されたガスクロマトグラフィー(GC-FID)によりモニターすることができる。
【0060】
触媒は、例えば、以下のものから選択することができる:
- 過塩素酸、
- 式(5):RSO
3H又はそのスルホン酸塩形態の触媒であって、任意選択で担持
された触媒(Rは水素原子又は炭素原子数1~18の直鎖、分岐又は環状炭化水素ラジカルであり、任意選択で1つ以上のヘテロ原子、例えば窒素、フッ素、酸素、硫黄、シリコンで置換されている)、
- 式CF
3SO
3
-M
+のトリフラート(トリフルオロメチルスルホネート)(Mは
ビスマス、銅、アルミニウム及び鉄から選択される金属を表す)並びに
- 式(6):
【化5】
のポリマー形態の触媒
(式中、q及びrは独立して、1~15の0でない数を表す。)
【0061】
本発明で使用することのできる触媒は、市販されている。
【0062】
本発明で使用される触媒は、均一系触媒又は不均一系触媒のいずれであってもよい。
【0063】
不均一系触媒が関与する場合、それはポリマー形態の触媒(例えば、式(6)の触媒)であってもよいし、又は触媒(例えば、式(5)の触媒)は、アルミナ、シリカなどから選択され得る材料に担持されていてもよい。
【0064】
一実施形態によれば、エストリド組成物(C3)は、このようにして得られたエストリド組成物から触媒を分離する分離工程の最後に得られる。
【0065】
一実施形態によれば、エストリドを得るプロセスは、処理された酸エストリド組成物(C3bis)を得るために、酸エストリド組成物(C3)中に存在する不飽和脂肪酸及び/若しくは飽和脂肪酸を除去する処理工程並びに/又は酸モノエストリドを酸エストリド組成物(C3)中に存在する酸ポリエストリドから分離する分離工程を含む。
【0066】
不飽和脂肪酸及び/又は飽和脂肪酸を除去する処理工程は、真空下で行うか否かを問わず、分子蒸留とすることができる。
【0067】
酸モノエストリドを酸ポリエストリドから分離する分離工程は、真空蒸留、例えばマイヤーズ蒸留又は分子蒸留とすることができる。
【0068】
上記分離工程は、上記処理工程の前後いずれに実施してもよい。
【0069】
酸エストリド組成物(C3)又は(C3bis)は、モノエストリド及び/又はポリエストリドを含み得る。
【0070】
酸エストリド組成物(C3)又は(C3bis)は、典型的には、式(7):
【化6】
の少なくとも1つのエストリドを含む。
(式中、
R1は、水素原子又は炭素原子数1~16、好ましくは炭素原子数4~14の直鎖若しくは分岐一価アルキルラジカルのいずれかを表し、有利にはR1は水素原子又は炭素原子数5~12の直鎖アルキルを表し、
R2は、炭素原子数1~16の直鎖又は分岐二価アルキレンラジカルのいずれか、好ましくは炭素原子数3~13の直鎖又は分岐アルキレンのいずれか、有利には炭素原子数4~11の直鎖アルキレンを表わし、
ここで、R
1及びR
2の炭素原子数の合計は5~19の範囲であることが理解され、
xは0又は1に等しく、
nは0以上の整数である。)
【0071】
一実施形態では、エストリド組成物(C3bis)は、モノエストリドをポリエストリドから分離した後に得られる。この実施形態では、エストリド組成物(C3bis)は、典型的には、式(8):
【化7】
のモノエストリドを少なくとも60重量%含む。
(式中、
R1は、水素原子又は炭素原子数1~16、好ましくは炭素原子数4~14の直鎖若しくは分岐一価アルキルラジカルのいずれかを表し、有利にはR1は水素原子又は炭素原子数5~12の直鎖アルキルを表し、
R2は、炭素原子数1~16の直鎖又は分岐二価アルキレンラジカルのいずれか、好ましくは炭素原子数3~13の直鎖又は分岐アルキレンのいずれか、有利には炭素原子数4~11の直鎖アルキレンを表わし、
ここで、R
1及びR
2の炭素原子数の合計は5~19の範囲であることが理解され、
xは0又は1に等しい。)
【0072】
式(8)の化合物は、nが0に等しい式(7)の化合物に相当する。
【0073】
(アルコール組成(C4))
本発明によるエストリド組成物は、酸エストリド組成物(C3)又はもしあれば処理された酸エストリド組成物(C3bis)をアルコール組成物(C4)でエステル化することによって得られるエストリドエステル形態の組成物である。
【0074】
アルコール組成物(C4)は、炭素原子数2~6のアルコールを少なくとも1つ含む。
【0075】
好ましくは、組成物(C4)は、炭素原子数2~6、好ましくは炭素原子数3~6又はさらに炭素原子数4~5の直鎖状又は分岐状のいずれか、好ましくは分岐脂肪族モノアルコールを少なくとも1つ含む。
【0076】
好ましくは、エステル化は、アルコール組成物の総重量に対して、炭素原子数2~6のアルコールを少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらには少なくとも95重量%含むアルコール組成物(C4)を使用して実施される。
【0077】
好ましくは、エステル化は、アルコール組成物の総重量に対して、炭素原子数2~6の同アルコールを少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらには少なくとも95重量%含むアルコール組成物(C4)を使用して実施される。
【0078】
好ましくは、エステル化は、アルコール組成物の総重量に対して、炭素原子数4~5の同アルコールを少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらには少なくとも95重量%含むアルコール組成物(C4)を使用して実施される。
【0079】
アルコール組成物(C4)のアルコールは、好ましくは生物由来のものである。
【0080】
(エステル化反応(工程c))
このように、エストリドエステル組成物(C5)は、酸エストリド組成物(C3)又はもしあれば(C3bis)のエステル化反応後に得られる。
【0081】
エステル化工程は、当業者によく知られている任意の方法に従って実施することができる。エステル化反応は、付加反応(工程a))に使用される触媒と同じ触媒を使用して実施してもよいし、異なる触媒であってもよい。好ましくは、同じ触媒であろう。
【0082】
したがって、触媒は、付加反応の文脈で上述した特徴の1つ以上を有することができる。
【0083】
エストリドエステル組成物(C5)は、典型的には、少なくとも1つの式(1):
【化8】
のエストリドエステルを含む。
(式中、
R
1は炭素原子数1~16の直鎖又は分岐アルキレンラジカルのいずれかであり、
R
2は水素原子又は炭素原子数1~16の直鎖又は分岐アルキルラジカルのいずれかであり、
R
3は炭素原子数2~6の直鎖又は分岐アルキルラジカルのいずれかであり、
R
4は炭素原子数7~19の直鎖又は分岐アルキルラジカルのいずれかであり、
xは0又は1に等しい整数であり、
ここで、ラジカルR
1及びR
2の炭素原子数の合計は5~19の範囲であることが理解され、
nは0以上の整数である。)
【0084】
エストリドエステル組成物(C5)は、モノエストリドをポリエストリドから分離するための分離工程を受けることができる(特にそのような分離がエステル化工程の前に行われなかった場合)。
【0085】
一実施形態によれば、エストリドを得る工程は、処理されたエストリドエステル組成物(C5bis)を得るために、エストリドエステル組成物(C5)中に存在する不飽和脂肪酸エステル及び/若しくは飽和脂肪酸エステルを除去する処理工程並びに/又はエステルモノエストリドを酸エステル組成物(C5)中に存在するエステルポリエストリドから分離する分離工程を含む。
【0086】
不飽和脂肪酸エステル及び/又は飽和脂肪酸エステルを除去する処理工程は、真空下で行うか否かを問わず、分子蒸留とすることができる。
【0087】
モノエストリドエステルをポリエストリドエステルから分離する分離工程は、真空蒸留、例えばマイヤーズ蒸留又は分子蒸留とすることができる。
【0088】
上記分離工程は、上記処理工程の前後いずれに実施してもよい。
【0089】
そのような実施形態によれば、処理されたエストリドエステル組成物(C5bis)は、好ましくは式(9):
【化9】
に対応するモノエストリドを少なくとも60重量%含む。
(式中、
R
1は炭素原子数1~16の直鎖又は分岐アルキレンラジカルのいずれかであり、
R
2は水素原子又は炭素原子数1~16の直鎖又は分岐アルキルラジカルのいずれかであり、
R
3は炭素原子数2~6の直鎖又は分岐アルキルラジカルのいずれかであり、
R
4は炭素原子数7~19の直鎖又は分岐アルキルラジカルのいずれかであり、
xは0又は1に等しい整数であり、
ここで、ラジカルR
1及びR
2の炭素原子数の合計は5~19の範囲であることが理解される。)
【0090】
式(9)の化合物は、nが0に等しい式(1)の化合物に相当する。
【0091】
好ましくは、式(9)の化合物において、
- R1は、水素原子又は炭素原子数4~14の直鎖若しくは分岐一価アルキルラジカ
ルのいずれかを表し、有利にはR1は水素原子又は炭素原子数5~12の直鎖アルキルを表し、
- R2は、炭素原子数3~13の直鎖又は分岐二価アルキレンラジカルのいずれか、
有利には炭素原子数4~11の直鎖アルキレンを表わし、
ここで、R1及びR2の炭素原子数の合計は8~19、有利には12~19の範囲であることが理解される。
【0092】
好ましくは、エストリドエステル組成物は、エストリドエステル組成物(C5)又はもしあれば(C5bis)を水素化する後続工程を含まないプロセスによって得られる。
【0093】
エストリドエステル組成物(C5)又は処理されたエストリドエステル(C5bis)は、触媒の分離後にプロセスから得られる組成物を指すことになる。
【0094】
プロセスの進行、特に付加反応の進行は、当業者に知られている方法に従って、炎イオン化検出器に接続されたガスクロマトグラフィー(GC-FID)によりモニターすることができる。
【0095】
本発明において定義されるように、変換率とは、反応した不飽和化合物の重量%での量をいい、選択率とは、形成された生成物の総重量に対する、形成されたモノエストリドの重量%での量をいう(したがって、選択率の計算には、反応物も触媒も考慮されない)。
【0096】
特定の実施形態によれば、不飽和酸組成物(C2)はオレイン酸を少なくとも85重量%含み、飽和脂肪酸組成物(C1)は炭素原子数10~14の直鎖脂肪酸を少なくとも70重量%含み、アルコール組成物(C4)は炭素原子数4~6の分岐アルコールを少なくとも70重量%含む。
【0097】
そのような実施形態によれば、エストリドエステル組成物(C5)は、式(10):
【化10】
のエストリドを少なくとも70重量%含む。
(式中、
R
1は炭素原子数1~14の直鎖アルキレンラジカルであり、
R
2は水素原子又は炭素原子数1~14の直鎖若しくは分岐アルキルラジカルのいずれかであり、
R
3は炭素原子数4~6の分岐アルキルラジカルであり、
R
4は炭素原子数9~13の直鎖アルキルラジカルであり、
xは0又は1に等しい整数であり、
ここで、ラジカルR
1及びR
2の炭素原子数の合計は15に等しいと理解され、
nは0以上の整数である。)
【0098】
好ましくは、エストリド組成物(C5)又はもしあれば(C5bis)は、NF EN
ISO 3961法に従って測定された、12g/ヨウ素100g以下、好ましくは10g/ヨウ素100g以下、より好ましくは1~10g/ヨウ素100gのヨウ素価を有する。本発明による製造プロセスは、低いヨウ素値を得るために使用することができ、それゆえ、その後の水素化工程を必要としない。
【0099】
好ましくは、エストリド組成物(C5)は、1.0~1.3、好ましくは1.0~1.2の範囲のエストリド数を有する。モノエストリドをポリエストリドから分離しない場合でも、エストリドエステル組成物(C5)は、好ましくは1.0~1.3、さらには1.0~1.2の範囲のエストリド数を有することに留意されたい。
【0100】
エストリドエステル組成物を調製するプロセスが、モノエストリドをポリエストリドから分離する工程を伴う場合、このように処理されたエストリドエステル組成物は、1.0~1.1の範囲、好ましくは約1.0のエストリド数を有することになる。
【0101】
エストリド数は、NMR分析により測定することができる。
【0102】
本発明によるエストリドエステル組成物(C5)又はもしあれば(C5bis)は、有利には、OECD306法に従って測定された、28日での生分解度が、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、有利には少なくとも80%である。
【0103】
本発明によるエストリドエステル組成物(C5)又はもしあれば(C5bis)は、有利には、生物(非石油化学)由来の炭素濃度(生物炭素濃度ともいう)を、炭素の総重量に対して、少なくとも90重量%含む。生物炭素濃度は、ASTM D6866規格に従って測定することができる。
【0104】
再生可能材料又は生物材料は、炭素が大気からの光合成によって(ヒトの時間スケールで)最近固定されたCO2に由来する有機材料である。生物材料(100%天然由来の炭素)は、同位体比14C/12Cが10-12より大きく、通常は約1.2×10-12であるのに対し、化石材料(石油化学製品)の同位体比はゼロに等しい。実際には、同位体である14Cは大気中で形成され、光合成によって、長くとも数十年の時間スケールに従って統合される。14Cの半減期は5,730年である。したがって、光合成に由来する物質、すなわち一般的な植物は、必然的に同位体14Cの濃度が最大となる。生物材料又は生物炭素の濃度の測定は、ASTM D 6866-12、方法B(ASTM D 6866-06)及びASTM D 7026(ASTM D 7026-04)という規格に従って行われる。
【0105】
(用途)
本発明によるエストリド組成物は、局所適用のための化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物として使用することができる。
【0106】
本発明によるエストリド組成物は、非刺激性、低臭性及び生分解性組成物を提供する。
【0107】
本発明によるエストリド組成物は、安定した局所用組成物を得るために使用することができる。
【0108】
さらに、本発明によるエストリド組成物は、柔らかく栄養のある仕上がり(手触り)のため、エモリエントである。
【0109】
本発明によるエストリド組成物は、局所用組成物において、ジメチコン又はポリイソブテンなどのシリコーン系成分の代わりに使用することができる。
【0110】
エストリド組成物の固有組成によるその物理化学的及び官能的特性の改善に加えて、本発明によるエストリド組成物は、化粧品、皮膚科学又は医薬分野で従来使用されている他の脂肪物質と良好な混和性を有する。
【0111】
特に、本発明によるエストリド組成物は、生物又は石油化学由来の炭化水素油、植物油、植物バター、脂肪エーテル及びアルコール、油性エステル(エストリド以外)、アルカン及びシリコーン油を含む群から選択される脂肪性物質と良好な混和性を示す。
【0112】
本発明の主題はまた、本発明によるエストリド組成物の局所適用のための化粧品、皮膚科学又は医薬品用途である。
【0113】
本発明のさらなる主題は、スキンケア製品(セラム、クリーム、バームなど)、衛生製品、サンケア/アフターサン製品、メイク落とし製品、香料製品、制汗製品としての本発明によるエストリド組成物の化粧品、皮膚科学又は医薬品としての使用である。
【0114】
本発明のさらなる主題は、本発明によるエストリド組成物を皮膚、爪、唇、頭皮又は毛髪に適用する少なくとも1つの工程を含む、皮膚治療のための化粧品的、皮膚科学的又は医薬的方法である。
【0115】
最後に、本発明はさらに、本発明によるエストリド組成物を、皮膚、爪、唇、頭皮又は毛髪に、好ましくは塗布することによって適用する少なくとも1つの工程を含む美容処理プロセスを包含する。
【0116】
(化粧品、皮膚科学及び医薬組成物)
本発明のさらなる主題は、本発明によるエストリド組成物と、少なくとも1つの添加剤及び/又は少なくとも1つの脂肪物質とを含む局所用組成物であり、前記添加剤及び前記脂肪物質は互いに異なるものである、エストリド組成物の成分とは別個のものである。
【0117】
脂肪物質は、生物又は石油化学由来の炭化水素油、植物油、植物バター、エーテル及び脂肪族アルコール、油性エステル(エストリドとは異なる)、アルカン及びシリコーン油から選択することができる。
【0118】
炭化水素油は、石油化学プロセスから生じる脂肪物質である。例として、鉱油、イソパラフィン、ワックス、パラフィン、ポリイソブテン又はポリデセンを挙げることができる。
【0119】
植物油の例としては、特に小麦胚芽油、ひまわり油、ブドウ種子油、ゴマ油、コーン油、アンズ、ヒマシ油、シア油、アボカド油、オリーブ油、大豆油、スイートアーモンド油、パーム油、菜種油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカダミア油、ホホバ油、アルファルファ油、ケシ種子油、カボチャ種子油、ゴマ油、カボチャ油、菜種油、カシス油、月見草油、キビ油、大麦油、キノア油、ライ麦油、ベニバナ油、キャンドルナッツ油、パッションフラワー油、ジャコウバラ油又はツバキ油が挙げられる。植物性バターは、植物油と同じ性質を持つ脂肪物質である。両者の違いは、バターが常温で固体であることである。さらに、植物油とは異なり、バターを抽出する原料(パルプ、種子又はアーモンド)は、脂肪を抽出するために粉砕された後、加熱される。植物油と同様に、バターも精製することで保存性を高め、臭気を中和し、色及び粘度を改善することができる。抗酸化物質が豊富で栄養価が高く、植物性バターの化粧品としての特性は、皮膚の弾力性を向上させ、表皮に保護膜を残すことで外部からの攻撃から保護し、その結果脱水を減らし、皮膚の天然のハイドロリピド膜を再生させることで修復し鎮静させることができる。植物性バターの例としては、特にシアバター、ココアバター、マンゴーバター、ショレアバター及びオリーブバターが挙げられる。
【0120】
エーテル及び脂肪族アルコールは長鎖の脂肪質のワックス状物質であり、特に皮膜形成、エモリエント、保湿、軟化及び保護特性などの優れた特性を備える。保湿オイル及び乳化剤としても機能する。脂肪族アルコール又はエーテルの例は、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、アウリルアルコール、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、ジカプリリルエーテル、ステアリルエーテル又はオクチルドデカノール(INCI名で識別される)である。
【0121】
油性エステル又はエステル化油(本発明のエストリドとは異なる)は、脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの長鎖を有する酸)とアルコール(脂肪族アルコール又はグリセロールなどのポリオール)との反応の生成物である。そのような油は、パルミチン酸イソプロピルの場合のように、石油化学から生じる物質を含み得る。油性エステルの例は、カプリルカプリン酸トリグリセリド、ココカプリル酸カプレート、エルカ酸オレイル、リノール酸オレイル、オレイン酸デシル又はミリスチン酸PPG-3ベンジルエーテル(そのINCI名で識別される)である。
【0122】
シリコーン油又はポリシロキサン油は、少なくとも1つのケイ素原子、特に少なくとも1つのSi-O基を含む油を意味すると理解される。シリコーン油として、フェニルプロピルジメチルシロキシシリケート、ジメチコン又はシクロペンタシロキサン(そのINCI名で識別される)を特に挙げることができる。
【0123】
脂肪物質及びエストリド組成物とは異なる添加剤は、考慮される分野、特に化粧品、皮
膚科学又は医薬分野で通常使用される任意のアジュバント又は添加剤から選択することが可能である。もちろん、当業者は、本発明によるエモリエント組成物に本質的に関連する有利な特性が、意図された添加によって変化しないか、又は実質的に変化しないように、本発明による組成物の可能な添加物を選択することに注意を払うであろう。含有され得る従来のアジュバント(アジュバントの水溶性又は脂溶性の性質に依存する)の中で、特にアニオン性起泡性界面活性剤(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルリン酸ナトリウム、トリデセス硫酸ナトリウムなど)、両性起泡性界面活性剤(アルキルベタイン、コアンホジ酢酸二ナトリウムなど)又はHLBが10を超える非イオン性起泡性界面活性剤(POE/PPG/POE、アルキルポリグルコシド、ポリグリセリル-3-ヒドロキシラウリルエーテルなど);防腐剤;金属イオン封鎖剤(EDTA);酸化防止剤;香料;可溶性染料、顔料、真珠層などの着色料;つや消し、テンソル、美白又は角質除去用充填剤;親水性又は親油性のいずれかの皮膚の美容特性を改善する効果を有する化粧品有効成分;電解質;親水性又は親油性、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性、増粘、ゲル化又は分散ポリマー;カフェインなどの痩身剤;蛍光増白剤;抗脂漏薬;ビタミンA(レチノール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB5(パンテノール)、ビタミンB3(ナイアシンアミド)などの水溶性又は脂溶性ビタミン、前記ビタミン類の誘導体(特にエステル);及びこれらの混合物などを挙げることができる。そのような様々な化粧品用アジュバントの量は、対象分野で従来から使用されているものであり、例えば、化粧品組成物は、組成物の総重量に対して0.01~20重量%の範囲の全体濃度の添加剤を含む。
【0124】
本発明の化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物が皮膚科学又は医薬品組成物である場合は常に、前記組成物は1つ以上の治療有効成分を含み得る。本発明の皮膚科学又は医薬品組成物に使用できる活性剤としては、例えば、日焼け止め;防腐剤;2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(又はトリクロサン)、3,4,4’-トリクロロカルバニリド(又はトリクロカルバン)などの抗菌活性剤;過酸化ベンゾイル又はナイアシン(ビタミンPP)などの抗菌剤;及びこれらの混合物などを挙げることができる。
【0125】
そのような化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物は、生理学的に許容される媒体、すなわち、有害な副作用がなく、特に、使用者が許容できない赤み、熱感、つっぱり感又はヒリヒリ感を生じない媒体を含む。
【0126】
一実施形態によれば、化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物は、本発明によるエストリド組成物の濃度を、化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物の総重量に対して、0.5~80%、好ましくは1~50%、有利には5~30%の範囲で有する。
【0127】
本発明の一実施形態によれば、化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物は、化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物の総重量に対して、
本発明によるエストリド組成物を0.5~80重量%、好ましくは1~50重量%、有利には5~30重量%、
脂肪物質を0~90重量%、好ましくは5~80重量%、有利には10~70重量%、好ましくは20~60重量%、有利には30~50重量%、
添加剤を0~20重量%、
治療有効成分を0~20重量%含み、
ここで、組成物は、少なくとも1つの添加剤又は少なくとも1つの脂肪物質を含むことが理解される。
【0128】
本発明の一実施形態によれば、化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物は、化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物の総重量に対して、
本発明によるエストリド組成物を0.5~80重量%、好ましくは1~50重量%、有利には5~30重量%、
生物又は石油化学由来の炭化水素油、植物油、植物バター、脂肪エーテル及びアルコール、油性エステル(エストリドとは異なる)、アルカン及びシリコーン油から選択される脂肪物質を0~90重量%、好ましくは5~80重量%、有利には10~70重量%、好ましくは20~60重量%、有利には30~50重量%、
HLBが10を超えるアニオン性、両性又は非イオン性の起泡性界面活性剤;防腐剤;金属イオン封鎖剤;酸化防止剤;香料;着色料;つや消し、引き締め、美白又は角質除去用充填剤;親水性又は親油性のいずれかの皮膚の美容特性を改善する効果を有する化粧品有効成分;電解質;親水性又は親油性、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両性、増粘、ゲル化又は分散ポリマー;痩身剤;蛍光増白剤;抗脂漏薬;及びそれらの混合物から選択される添加剤を0~20重量%、
任意選択で治療有効成分を0~20重量%含み、
ここで、組成物は、少なくとも1つの添加剤又は少なくとも1つの脂肪物質を含むことが理解される。
【0129】
したがって、本発明による化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物は、無水組成物、油中水型(W/O)エマルジョン、水中油型(O/W)エマルジョン又は多重エマルジョン(特にW/O/W又はO/W)などのエマルジョン、ナノエマルジョン又はさらには分散液であり得る。
【0130】
本発明による化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物は、可変的に柔軟なクリーム又は噴霧可能なエマルジョンの形態である。それは、例えば、メイク落とし用又は皮膚、唇のクレンジング用組成物、アフターサン組成物、皮膚マッサージ用組成物、シャワーバーム組成物、制汗剤組成物、マスク組成物、修復バーム組成物、顔及び手の両方のスクラブ並びに/又は角質除去組成物(それが角質除去粒子を含む場合)、メイクアップ組成物、シェービング組成物、アフターシェーブバーム組成物、香料組成物、拭き取り用組成物又はさらには噴霧可能組成物であり得る。
【0131】
本発明による化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物はさらに、それが少なくとも1つの日焼け止めを含む場合、日焼け止め組成物とすることができる。
【0132】
本発明による化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物は、それが美容効果のみを提供する場合、化粧品組成物である。典型的には、本発明による化粧品組成物は、治療活性剤を含まない。
【0133】
反対に、本発明による化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物は、それが治療効果を提供する場合、皮膚科学又は医薬品組成物である。典型的には、本発明による皮膚科学又は医薬品組成物は、例えば日焼け止め;ビタミンA(レチノール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB5(パンテノール)、ビタミンB3(ナイアシンアミド)、前記ビタミンの誘導体(特にエステル)及びそれらの混合物などの水溶性又は脂溶性ビタミン;防腐剤;2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(又はトリクロサン)、3,4,4’-トリクロロカルバニリド(又はトリクロカルバン)などの抗菌活性剤;過酸化ベンゾイル、ナイアシン(ビタミンPP);及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの治療活性剤を含む。
【0134】
(化粧品、皮膚科学又は医薬品組成物の用途)
本発明のさらなる主題は、局所適用、例えば皮膚、爪、唇、頭皮又は毛髪への適用のための、上記で定義したような組成物の化粧品的、皮膚科学的又は医薬的使用である。
【0135】
本発明のさらなる主題は、スキンケア製品(セラム、クリーム、バームなど)として、衛生製品として、サンケア/アフターサン製品として、メイクアップ製品として、メイク落とし製品として、香料製品として、制汗製品としての、上記定義の組成物の化粧、皮膚科学又は医薬的使用である。
【0136】
本発明の別のさらなる主題は、皮膚、爪、唇、頭皮又は毛髪を治療するための化粧品、皮膚科学又は医薬プロセスであって、上記に定義した皮膚科学又は医薬品を皮膚、爪、唇、頭皮又は毛髪に適用する少なくとも1つの工程を含むものである。
【0137】
本発明の組成物はさらに、上記のもの以外の他の成分又は他の相を含む化粧品組成物、皮膚科学組成物又は医薬品組成物の製剤化に使用することができる。これは特に、ケア、衛生又はメイクアップ組成物の製剤化に関連し得る。
【実施例】
【0138】
以下、本明細書において、実施例は本発明の例示として与えられ、その範囲を限定するものでは決してない。
【0139】
(実施例1:エストリド組成物の調製)
実施例では、調製したエストリド組成物について記載する。
【0140】
以下の飽和脂肪酸組成を使用した:
-AGSat1=AGSat1の総重量に対して、ラウリン酸が95重量%超、
-AGSat2=AGSat2の総重量に対して、ヘプタン酸が95重量%超、
-AGSat3=AGSat3の総重量に対して、ノナン酸が95重量%超。
【0141】
以下の不飽和脂肪酸組成を使用した:
- AGinsat1=AGinsat1の総重量に対して、オレイン酸が少なくとも
90重量%、ポリ不飽和化合 物が3重量%未満、
- AGinsat2=AGinsat2の総重量に対して、オレイン酸が88重量%
、ポリ不飽和化合物が3~8重量%、
- AGinsat3=AGinsat3の総重量に対して、オレイン酸が83重量%
、ポリ不飽和化合物が3~10重量%。
【0142】
以下のアルコール組成を使用した:
- OH1=OH1の総重量に対して、3-メチルブタノールが95重量%超、
- OH2=OH2の総重量に対して、2-オクタノールが95重量%超
- OH3=OH3の総重量に対して、2-エチルヘキサノールが95重量%超。
【0143】
エストリドエステル組成物は2つのプロセスに従って調製され、一方はモノエストリドのポリエストリドからの分離を使用し、他方はそのような分離を使用しない。
【0144】
使用する触媒は過塩素酸である。
【0145】
調製プロセスは、以下の工程を含む:
(A)酸エステル組成物を得るために、触媒の存在下、60℃の温度で、飽和脂肪酸組成物と不飽和脂肪酸組成物とを付加反応させる工程、及び
(b)任意選択で、処理された酸エストリド組成物を得るために、酸モノエストリドを酸ポリエストリドから分離する真空蒸留分離工程、及び
(c)エストリドエステル組成物を得るために、アルコール組成物(C4)を用いて、30℃の温度で、酸エストリド組成物(C3)の酸エストリドをエステル化反応させる工
程。
【0146】
以下のテーブル2に、調製した全てのエストリドの組成を示す。
【表1】
【0147】
(実施例2:エストリド組成物の知覚特性の評価)
実施例1で調製したエストリドエステル組成物を試験し、知覚特性を評価した。
【0148】
5人の審査員によって、生成物を知覚的に評価した。この5人のうち、3人はエステティックの学位を持つ。
【0149】
調査にあたっては、事前に評価基準を厳密に定義し、パネリストに提示した。その基準は、以下のように定義された。
浸透性:製品を塗布すると、すぐに消えた。皮膚に残留物を残さなかった。
皮膚の明るさ:明るい=いったん製品を塗布すると、皮膚が明るくなった。
臭気:塗布後、塗布部位の臭気評価を行った。
刺激性:塗布後、製品を塗布した部位の刺激性評価を行った。
クリーミー:製品を塗布したときに滑らかでなく、ベタベタする場合、ザラザラする(ソフトの反対)とした。
べたつき:製品の塗布後、皮膚にべたつきが残った。
【0150】
パネルによる知覚及び官能分析は、前腕の裏側に試験する各組成物をスパチュラで同量付着させ、指を使って製品を塗布することで行われた。塗布量は、同じテスターで再現可能であった。
【0151】
知覚分析はすべて、隔離された部屋で盲検で行われた。パネルの一員ではない者が、検査する製品のサンプルを5mlのプラスチック瓶に用意し、1~5までのラベルを貼った。ラベルには名前を書かず、番号だけがパネルの目印となる。
【0152】
その結果をテーブル3に示す。
- 皮膚への浸透性:製品が十分に浸透した場合、結果はOKであり、製品が十分に浸
透しなかった場合、結果はNot-OKである;
- 明るさ:製品が明るい場合、結果はOKであり、製品が明るくない場合、結果はN
ot-OKである;
- 臭気:製品に強い臭気がなかった場合、結果はOKであり、製品に強い臭気があっ
た場合、結果はNot-OKである;
- 刺激性:製品が刺激性でなかった場合、結果はOKであり、刺激性である場合、結
果はNot-OKである;
- ザラザラ感:製品が滑らかである(きしまない)場合、結果はOKであり、製品が
滑らかでなかった(きしむ)場合、結果はNot-OKである;
- 皮膚に脂が付着する感覚:製品が脂っこい感覚を残さなかった場合、結果はOKで
あり、製品が脂っこい感覚を残した場合、結果はNot-OKである。
【表2】
【0153】
テーブル3の結果から、本発明によるエストリド組成物は、比較エストリド組成物よりも優れた知覚特性を有することがわかる。
【国際調査報告】