(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】自律車両システムのための車両制御方式
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20230426BHJP
G08G 1/0968 20060101ALI20230426BHJP
B60W 30/165 20200101ALI20230426BHJP
【FI】
G01C21/26 A
G08G1/0968 B
B60W30/165
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554344
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 US2021023106
(87)【国際公開番号】W WO2021188872
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522354274
【氏名又は名称】グライドウェイズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー、パトリック
【テーマコード(参考)】
2F129
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129CC15
2F129CC20
2F129DD10
2F129DD13
2F129DD21
2F129DD22
2F129DD45
2F129EE52
2F129EE78
2F129GG17
2F129GG18
3D241BA02
5H181AA01
5H181AA06
5H181AA07
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181CC17
5H181FF14
(57)【要約】
複数の車両を道路に沿ってナビゲートする方法は、第1の車両において、第1の移動位置目標に追従することによって道路の区間に沿ってナビゲートするステップであって、第1の移動位置目標が、道路の区間に沿った位置を時間の関数として定義する第1の追跡関数に従って決定される、ステップと、第2の車両において、第2の移動位置目標に追従することによって道路の区間に沿ってナビゲートするステップであって、第2の移動位置目標が、道路の区間に沿った位置を時間の関数として定義する第2の追跡関数に従って決定される、ステップとを含む。第1の車両及び第2の車両が道路の区間に沿ってナビゲートするとき、第1の車両と第2の車両との間の距離は変化し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両を道路に沿ってナビゲートする方法であって、
第1の車両において、第1の移動位置目標に追従することによって道路の区間に沿ってナビゲートするステップであって、前記第1の移動位置目標が、前記道路の前記区間に沿った位置を時間の関数として定義する第1の追跡関数に従って決定される、ステップと、
第2の車両において、第2の移動位置目標に追従することによって前記道路の前記区間に沿ってナビゲートするステップであって、前記第2の移動位置目標が、前記道路の前記区間に沿った位置を時間の関数として定義する第2の追跡関数に従って決定される、ステップと
を含み、
前記第1の車両及び前記第2の車両が前記道路の前記区間に沿ってナビゲートするとき、前記第1の車両と前記第2の車両との間の距離が変化する、方法。
【請求項2】
前記第1の車両及び前記第2の車両が前記道路の前記区間に沿ってナビゲートするとき、前記第1の車両と前記第2の車両との間の時間間隔が一定のままである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
所与の時間における前記第1の車両と前記第2の車両との間の前記時間間隔が、前記第1の追跡関数及び前記第2の追跡関数によって定義され、
前記所与の時間における前記第1の車両と前記第2の車両との間の前記距離が、前記第1の追跡関数及び前記第2の追跡関数によって定義される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の車両と前記第2の車両との間の時間間隔が、規定の最小値より上に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の車両が前記道路の前記区間に沿ってナビゲートするとき、前記第1の車両が前記第1の移動位置目標を算出し、
前記第2の車両が前記道路の前記区間に沿ってナビゲートするとき、前記第2の車両が前記第2の移動位置目標を算出する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の車両が、基準クロックに同期された第1のクロックを含み、
前記第1の車両が、前記第1のクロックからの時間を使用して前記第1の移動位置目標を算出し、
前記第2の車両が、前記基準クロックと同期された第2のクロックを含み、
前記第2の車両が、前記第2のクロックからの時間を使用して前記第2の移動位置目標を算出する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
道路に対して定義された移動位置目標に追従することによって前記道路に沿って自律的にナビゲートするように構成された複数の車両を含む輸送システムであって、
前記道路の合流エリアの上流の位置における車両の存在又は不在を検出するように構成された車両存在検出器であって、所定の時間の間に前記位置に車両が不在であることが、前記道路に沿った利用可能な車両位置を示す、車両存在検出器と、
前記車両を前進させるように構成された駆動システム、
前記車両を操縦するように構成された操縦システム、及び
前記利用可能な車両位置を示す情報を前記車両存在検出器から受信し、
前記利用可能な車両位置を示す前記情報を受信したことに応答して、前記利用可能な車両位置に関連付けられた追跡関数を複数の追跡関数候補から選択し、
前記駆動システム及び前記操縦システムに、前記利用可能な車両位置で前記車両を前記道路に合流させ、
前記駆動システム及び前記操縦システムに、前記選択された追跡関数に従って前記道路に沿って前記車両をナビゲートさせる
ように構成された車両コントローラ
を備える車両と
を含む、輸送システム。
【請求項8】
前記複数の追跡関数候補のうちの少なくとも2つが、前記道路に沿った2台の車両間の可変の距離及び前記2台の車両間の一定の時間間隔を定義する、請求項7に記載の輸送システム。
【請求項9】
前記車両存在検出器が、前記車両とワイヤレスで通信して、前記利用可能な車両位置を示す前記情報を送信する、請求項8に記載の輸送システム。
【請求項10】
前記利用可能な車両位置を示す前記情報が、
前記利用可能な車両位置の座標と、
時間と
を含む、請求項9に記載の輸送システム。
【請求項11】
前記追跡関数を選択する前記動作が、前記利用可能な車両位置を前記利用可能な車両位置が検出された時間に相関させる追跡関数を選択することを含む、請求項8に記載の輸送システム。
【請求項12】
前記車両コントローラが、基準クロックに同期された第1のクロックをさらに備え、
前記車両存在検出器が、前記基準クロックに同期された第2のクロックを備える、請求項8に記載の輸送システム。
【請求項13】
前記道路に沿ってナビゲートする複数の追加の車両をさらに含み、それぞれの追加の車両が、前記複数の追跡関数候補の異なるそれぞれの追跡関数に従ってナビゲートする、請求項8に記載の輸送システム。
【請求項14】
前記複数の追跡関数候補の各追跡関数が、前記道路に沿った位置を時間の関数として定義し、
前記車両及びそれぞれの追加の車両が、前記複数の追跡関数候補を記憶する、請求項13に記載の輸送システム。
【請求項15】
第1の車両制御方式に関連付けられた第1の区分及び第2の車両制御方式に関連付けられた第2の区分を有する道路に沿って自律的にナビゲートするように構成された複数の車両を含む輸送システムであって、
前記車両を前進させるように構成された駆動システムと、
前記車両を操縦するように構成された操縦システムと、
道路の第1の区分から前記道路の第2の区分への移行を検出することであって、前記道路の前記第1の区分が隊列走行方式に関連付けられ、前記道路の前記第2の区分が移動位置目標車両制御方式に関連付けられる、検出すること、
前記車両が前記道路の前記第1の区分から前記道路の前記第2の区分に進入する時間を決定すること、
前記車両が前記道路の前記第2の区分に進入する前記時間、及び
前記道路の前記第2の区分の開始位置
に関連付けられた追跡関数を複数の追跡関数候補から選択すること、並びに
前記駆動システム及び前記操縦システムに、前記選択された追跡関数に従って前記道路の前記第2の区分に沿って前記車両をナビゲートさせること
を行うように構成された車両コントローラと
を備える車両
を含む、輸送システム。
【請求項16】
前記車両が第1の車両であり、
前記車両コントローラが、前記道路の前記第2の区分に進入する前に、前記隊列走行方式に従って前記第1の車両を前記道路の前記第1の区分に沿ってナビゲートするようにさらに構成され、
前記隊列走行方式に従って前記第1の車両をナビゲートすることが、
前記第1の車両の前方にある第2の車両の速さの変化を検出すること、及び
前記第2の車両の速さの前記変化を検出したことに応答して前記第1の車両の速さを変更すること
を含む、請求項15に記載の輸送システム。
【請求項17】
前記車両コントローラが、閉ループ位置制御を使用して、前記選択された追跡関数によって示される位置に前記車両を維持する、請求項15に記載の輸送システム。
【請求項18】
前記車両が、前記道路の前記第1の区分から前記道路の前記第2の区分への前記移行の場所を示す情報を記憶し、
前記車両コントローラが、前記車両の場所と、前記移行の前記場所を示す前記記憶された情報とに少なくとも部分的に基づいて、前記道路の前記第1の区分から前記道路の前記第2の区分への前記移行を検出する、請求項15に記載の輸送システム。
【請求項19】
前記輸送システムが、前記道路の前記第1の区分から前記道路の前記第2の区分への前記移行を示す検出可能な構成要素をさらに含み、
前記車両がセンサを備え、
前記道路の前記第1の区分から前記道路の前記第2の区分への前記移行を検出する前記動作が、前記検出可能な構成要素を前記センサによって検出することを含む、請求項15に記載の輸送システム。
【請求項20】
前記検出可能な構成要素が前記道路に埋め込まれている、請求項19に記載の輸送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許協力条約特許出願は、2020年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/992,739号に対する優先権を主張するものであり、上記特許出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
記載された実施例は、一般に、車両に関し、より詳細には、自律車両の動作を道路に沿って制御するための車両制御方式に関する。
【背景技術】
【0003】
車、トラック、バン、バス、路面電車などの車両は、現代社会において広く普及している。車、トラック、及びバンは、比較的少人数の乗員を輸送する個人輸送のために頻繁に使用されており、バス、路面電車、及び他の大型車両は、公共交通機関のために頻繁に使用されている。車両は、荷物輸送又は他の目的にも使用され得る。このような車両は、地上道路、橋、高速道路、高架道路、又は他のタイプの車両通行権のある道路(vehicle rights-of-way)を含み得る道路上で運転され得る。無人車両又は自律車両により、輸送を必要とする場合に個人が車両を手動で動作させる必要がなくなる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
複数の車両を道路に沿ってナビゲートする方法は、第1の車両において、第1の移動位置目標に追従することによって道路の区間に沿ってナビゲートするステップであって、第1の移動位置目標が、道路の区間に沿った位置を時間の関数として定義する第1の追跡関数に従って決定される、ステップと、第2の車両において、第2の移動位置目標に追従することによって道路の区間に沿ってナビゲートするステップであって、第2の移動位置目標が、道路の区間に沿った位置を時間の関数として定義する第2の追跡関数に従って決定される、ステップとを含み得る。第1の車両及び第2の車両が道路の区間に沿ってナビゲートするとき、第1の車両と第2の車両との間の距離は変化し得る。第1の車両と第2の車両との間の時間間隔は、規定の最小値より上に維持され得る。
【0005】
第1の車両及び第2の車両が道路の区間に沿ってナビゲートするとき、第1の車両と第2の車両との間の時間間隔は一定のままであり得る。所与の時間における第1の車両と第2の車両との間の時間間隔は、第1の追跡関数及び第2の追跡関数によって定義され得、所与の時間における第1の車両と第2の車両との間の距離は、第1の追跡関数及び第2の追跡関数によって定義され得る。
【0006】
第1の車両が道路の区間に沿ってナビゲートするとき、第1の車両は第1の移動位置目標を算出し得、第2の車両が道路の区間に沿ってナビゲートするとき、第2の車両は第2の移動位置目標を算出し得る。第1の車両は、基準クロックに同期された第1のクロックを含み得、第1の車両は、第1のクロックからの時間を使用して第1の移動位置目標を算出し得、第2の車両は、基準クロックと同期された第2のクロックを含み得、第2の車両は、第2のクロックからの時間を使用して第2の移動位置目標を算出し得る。
【0007】
輸送システムは、道路に対して定義された移動位置目標に追従することによって道路に沿って自律的にナビゲートするように構成された複数の車両を含み得る。輸送システムは、道路の合流エリアの上流の位置における車両の存在又は不在を検出するように構成された車両存在検出器を含み得、所定の時間の間に上記位置に車両が不在であることは、道路に沿った利用可能な車両位置を示す。輸送システムは、車両も含み得る。車両は、車両を前進させるように構成された駆動システムと、車両を操縦するように構成された操縦システムと、利用可能な車両位置を示す情報を車両存在検出器から受信し、利用可能な車両位置を示す情報を受信したことに応答して、利用可能な車両位置に関連付けられた追跡関数を複数の追跡関数候補から選択し、駆動システム及び操縦システムに、利用可能な車両位置で車両を道路に合流させ、駆動システム及び操縦システムに、選択された追跡関数に従って道路に沿って車両をナビゲートさせるように構成された車両コントローラとを含み得る。
【0008】
複数の追跡関数候補のうちの少なくとも2つは、道路に沿った2台の車両間の可変の距離及び2台の車両間の一定の時間間隔を定義し得る。車両存在検出器は、車両とワイヤレスで通信して、利用可能な車両位置を示す情報を送信し得る。利用可能な車両位置を示す情報は、利用可能な車両位置の座標と、時間とを含み得る。
【0009】
追跡関数を選択する動作は、利用可能な車両位置を利用可能な車両位置が検出された時間に相関させる追跡関数を選択することを含み得る。車両コントローラは、基準クロックに同期された第1のクロックをさらに含み得、車両存在検出器は、基準クロックに同期された第2のクロックを含み得る。
【0010】
輸送システムは、道路に沿ってナビゲートする複数の追加の車両をさらに含み得、それぞれの追加の車両は、複数の追跡関数候補の異なるそれぞれの追跡関数に従ってナビゲートする。複数の追跡関数候補の各追跡関数は、道路に沿った位置を時間の関数として定義し得、車両及びそれぞれの追加の車両は、複数の追跡関数候補を記憶し得る。
【0011】
輸送システムは、第1の車両制御方式に関連付けられた第1の区分及び第2の車両制御方式に関連付けられた第2の区分を有する道路に沿って自律的にナビゲートするように構成された複数の車両を含み得る。輸送システムは、車両を前進させるように構成された駆動システムと、車両を操縦するように構成された操縦システムと、車両コントローラとを含む車両を含み得る。車両コントローラは、道路の第1の区分から道路の第2の区分への移行を検出するように構成され得、道路の第1の区分は隊列走行(platooning)方式に関連付けられ、道路の第2の区分は移動位置目標車両制御方式に関連付けられる。車両コントローラはまた、車両が道路の第1の区分から道路の第2の区分に進入する時間を決定し、車両が道路の第2の区分に進入する時間、及び道路の第2の区分の開始位置に関連付けられた追跡関数を複数の追跡関数候補から選択し、駆動システム及び操縦システムに、選択された追跡関数に従って道路の第2の区分に沿って車両をナビゲートさせるように構成され得る。
【0012】
車両は、第1の車両であり得、車両コントローラは、道路の第2の区分に進入する前に、隊列走行方式に従って第1の車両を道路の第1の区分に沿ってナビゲートするようにさらに構成され得る。隊列走行方式に従って第1の車両をナビゲートすることは、第1の車両の前方にある第2の車両の速さの変化を検出すること、及び第2の車両の速さの変化を検出したことに応答して第1の車両の速さを変更することを含み得る。
【0013】
車両コントローラは、閉ループ位置制御を使用して、選択された追跡関数によって示される位置に車両を維持し得る。車両は、道路の第1の区分から道路の第2の区分への移行の場所を示す情報を記憶し得、車両コントローラは、車両の場所と、移行の場所を示す記憶された情報とに少なくとも部分的に基づいて、道路の第1の区分から道路の第2の区分への移行を検出し得る。
【0014】
輸送システムは、道路の第1の区分から道路の第2の区分への移行を示す検出可能な構成要素をさらに含み得、車両は、センサを含み得、道路の第1の区分から道路の第2の区分への移行を検出する動作は、検出可能な構成要素をセンサによって検出すること含み得る。検出可能な構成要素は、道路に埋め込まれ得る。
【0015】
以下の詳細な説明を添付の図面と併用することにより本開示を容易に理解することができ、同様の参照番号は同様の構造要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2A】移動位置目標制御方式を採用する道路の実例の一部分を示す図である。
【
図2B】道路上の車両位置の実例を図示した、所与の時間における
図2Aの道路の一部分を示す図である。
【
図2C】道路上の車両位置の実例を図示した、別の時間における
図2Aの道路の一部分を示す図である。
【
図2D】道路上の車両位置の実例を図示した、さらに別の時間における
図2Aの道路の一部分を示す図である。
【
図3A】道路ジャンクションの実例及び関連する車両制御方式を示す図である。
【
図3B】道路ジャンクションの実例及び関連する車両制御方式を示す図である。
【
図3C】道路ジャンクションの実例及び関連する車両制御方式を示す図である。
【
図3D】道路ジャンクションの実例及び関連する車両制御方式を示す図である。
【
図3E】道路ジャンクションの実例及び関連する車両制御方式を示す図である。
【
図3F】道路ジャンクションの実例及び関連する車両制御方式を示す図である。
【
図4A】時間に対する道路の区分に沿った車両の位置を定義する追跡関数の実例のプロットを示す図である。
【
図4B】時間に対する道路の区分に沿った車両の位置を定義する追跡関数の実例のプロットを示す図である。
【
図5】移動位置目標制御方式における車間距離の実例を図示した、道路の実例の一部分を示す図である。
【
図6A】道路の区分に使用され得る隊列走行方式の実例の動作を示す図である。
【
図6B】道路の区分に使用され得る隊列走行方式の実例の動作を示す図である。
【
図6C】道路の区分に使用され得る隊列走行方式の実例の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付の図面に示された代表的な実施例について詳細に言及する。以下の説明が実施例を1つの好ましい実施例に限定することを意図したものではないことを理解されたい。それとは反対に、添付の特許請求の範囲によって定義される記載された実施例の趣旨及び範囲内に含まれ得る代替物、修正物、及び均等物を対象とすることを意図している。
【0018】
本明細書の実施例は、概して、道路に沿って乗員及び/又は貨物を輸送するために多数の車両が自律的に運転され得る輸送システムを対象とする。例えば、輸送システム又はサービスは、事前設定された場所若しくは停留所又は動的に選択された(例えば、スマートフォンを介して人によって選択された)場所のいずれかにおいて乗員を乗降させるために道路に沿って動作する車両群を提供し得る。「道路」という用語は、本明細書で使用される場合、移動車両を支持する構造体を指すことがある。
【0019】
しかしながら、車両の自律動作は複雑なタスクであり、道路上の車両によって採用される特定の技法又は方式は、個々の車だけでなくシステム全体の動作にも著しい影響を与え得る。例えば、いくつかの車両制御方式は、システムの動作及び/若しくは効率に悪影響を与える交通渋滞若しくは他の障害の発生又は伝播に影響を受けやすい可能性がある。したがって、道路に対して適切な1つ又は複数の車両制御方式を規定することは、システムの円滑且つ効率的な動作を確保するのに役立ち得る。
【0020】
本明細書に記載の車両制御方式の一実例は、道路に沿って移動し自律車両の目標(又は位置設定点)として機能する仮想位置目標(本明細書では移動位置目標又は単に位置目標と呼ぶ)を規定する。車両が、このタイプの制御方式を利用する道路区分に沿って進行している場合、車両は、特定の移動位置目標に割り当てられるか又は他の方法で関連付けられ得、車両は、その実際の位置と移動位置目標の位置との間の誤差を最小限に抑えるように、その速さ及び/又は進行方向を調整し得る。その道路区分上にある各車両は、異なる移動位置目標に割り当てられるか又は他の方法で関連付けられ得、移動位置目標は、車両が互いに安全な距離を保つように、(例えば、道路に沿った位置を時間と関連付ける関数によって)事前決定され得る。この方法では、道路上の個々の車両の場所及び道路区分に沿った車両の全体的な流れが厳密に制御され得、それによって、交通渋滞、衝突などのリスクを低減する。車両が移動位置目標に追従することによってナビゲートするという車両制御方式は、本明細書で使用される場合、移動位置目標車両制御方式と呼ばれ得る。
【0021】
しかしながら、本明細書に記載の輸送システムの道路は、大きく、複雑であり得るため、システムの異なる区分に沿って異なる車両制御方式を採用することにより利益を得ることができる。例えば、道路のいくつかの区分に沿っては、車両が複数の車両の隊列又はグループを自律的に形成するように構成される第1の車両制御方式が採用され得、道路の他の区分に沿っては、移動位置目標車両制御方式などの第2の車両制御方式が採用され得る。本明細書では、そのような車両制御方式の実例、及び交差点、合流点、ジャンクションなどにおいて様々な異なる車両制御方式間で移行するための技法について説明する。
【0022】
本明細書に記載の輸送システムは、特定の道路区分に対して規定された特定の車両制御方式に従って独立して動作するように構成され得るとともに、輸送システムの構成要素(例えば、輸送システム内の車両)にコマンドを発行する又は他の方法で制御することができる輸送システム・コントローラによって直接制御又は誘導される対象となり得る、専用タイプの車両(又はいくつかの専用タイプの車両)を含むか又はそれを用いて動作され得る。車両制御方式は、本明細書で使用される場合、車両によって、輸送システム・コントローラによって、車両と輸送システム・コントローラとの組合せによって、又は任意の他の好適な構成要素、コンピュータ、サーバ、コントローラ、若しくはその組合せを使用して実行され得る。
【0023】
図1は、本明細書に記載の実施例による自律車両108用の道路100の区間を示す。
図1に示す道路の区間は、典型的な都市又は郊外の環境内の地面に示されているが、これは限定することを意味するものではない。実際には、道路は、全体又は一部が建物内にある、道路から離れている、高架構造物上にある、地下にあるなどの、田舎地域を含む任意の環境又は場所に配置され得る。道路100は、道路100に沿ってナビゲートする複数の四輪車両108とともに示されている。車両108は、道路100で使用するために特別に設計された自律車両又は半自律車両であり得る。道路100で使用するためのある例示的なタイプの車両について
図7A~
図9Bを参照して説明されているが、本明細書に記載の車両の代わりに又はそれに加えて他のタイプの車両が道路100に沿って運転され得る。
図1に示す道路100の区分はごく一部分であり得、道路100は、直線路、曲がり角、交差点、橋、トンネル、搭乗区域、駐車施設などを含む複数の区分を含み得る。効率的な車両動作を容易にするために、異なる区分で異なる車両制御方式が使用され得る。例えば、幹線道路に沿っては、移動位置目標車両制御方式が採用され得、入口ランプ、搭乗区域などに沿っては、隊列走行(又は他の)方式が採用され得る。
【0024】
図2Aは、道路200の少なくとも一部分に沿って移動位置目標制御方式を採用する道路200の一部分の実例を示す。道路200の一部分は、第1の区分208と、合流エリア212で第1の区分208と合流する第2の区分210とを含み得る。第1の区分208は、移動位置目標制御方式に関連付けられ得、第2の区分210は、移動位置目標制御方式、隊列走行方式、又は任意の他の好適な車両制御方式に関連付けられ得る。
【0025】
移動位置目標制御方式では、道路上の車両は、道路200に沿って仮想的に移動する仮想位置目標202(例えば、202-1、...、202-n)に追従するように構成される。例えば、仮想位置目標202(本明細書では単に位置目標とも呼ぶ)は、道路に沿って移動する仮想コンテナとして概念化され得、車両は、道路に沿ってナビゲートする際にその仮想コンテナの「中に」留まるよう試みることになる。この方法では、位置目標202が道路に沿って移動する様式が、道路に対して事前定義され得、位置目標移動制御方式に従って道路に沿って走行するいずれの車両も、予測可能な所定の様式で(例えば、位置目標によって事前定義されている位置、速さ、進行方向などで)移動することになる。この制御方式は、車両が、所定の車両の流れ/パターンを提供する「仮想コンテナ」内に留まるように構成されるので、交通渋滞又は他の予測不可能な交通状況を回避するのにも役立つ。
図2Aに示すように、位置目標202は、矢印204によって示される方向に沿って移動する。
【0026】
本明細書に記載されているように、位置目標は、道路区分にわたって固定された速さ又は固定分離距離を有する必要はない。むしろ、そのようなパラメータは、輸送システムの様々なニーズに対応するように変化し得る。例えば、位置目標の速度は、道路区分の曲がり角の周辺で変化(例えば、減少)し得、位置目標間の距離も、曲がり角の周辺で変化(例えば、減少)し得る。移動位置目標制御方式で速さ及び/又は追従距離が変化する場合でも、車両の流量は道路のその区分に沿って一定のままであり得、したがって、システムの定常状態の動作が可能になり、停滞(backup)又は他の非定常状態の状況が回避される。
【0027】
位置目標202は、任意の好適な様式で定義され得る。例えば、
図4A~
図4Bに関して本明細書に記載されているように、位置目標202は、道路に沿った位置を時間の関数として定義する関数によって定義され得る。各車両は、所与の時間における位置目標の場所をそれぞれ独立して特定できるように、関数を記憶するか又は他の方法で関数にアクセスし得る。この様式では、車両は、追従しようとしている位置目標の位置を、その位置目標の位置をリモート・ソース(例えば、リモート・サーバ又はリモート・コントローラ)から送信する必要なく、独立して特定し得る。別の実例として、位置目標202は、波形(例えば、進行波)によって定義され得、波形の最小値及び/又は最大値が位置目標を定義する。
【0028】
仮想位置目標に「追従する」車両は、本明細書で使用される場合、車両の位置を仮想位置目標に(又は位置目標からの固定オフセットに)維持しようとする車両を指し、車両が位置目標の後ろにある必要はない。例えば、車両は、車両の実際の位置と位置目標の位置との間の誤差を最小限に抑えるよう試みる閉ループ位置コントローラを使用することによって位置目標に「追従」し得る。したがって、位置目標が道路に沿って(仮想的に)移動すると、車両は、車両を位置目標とほぼ一致したままにさせるように車両自体を操縦して前進させることになる。閉ループ位置制御において予期されるように、車両の実際の位置は、設定点(ここでは位置目標)からわずかに外れる可能性があり、そのため、システムの通常の動作中、実際の位置と設定点は、厳密には同等でない可能性がある。したがって、位置目標に追従すること、位置目標を追跡すること、又は他の方法で位置目標と合致した状態を維持することは、そのような偶発的な位置誤差の可能性を含むと理解される。
【0029】
さらに、車両の位置及び仮想位置目標の位置は、任意の好適な様式で定義され得る。一実例では、位置目標は1次元点によって定義され得、車両の位置は、車両上の固定位置にある(例えば、車両の幾何学的中心、荷降ろし後の車両の重心、車両の最前点などにある)1次元点に対応し得る。他の例では、位置目標は、輸送システム内の車両の形状に対応する2次元形状によって定義され得、車両の位置は、車両の外周又は外側の境界として定義され得る。そのような事例では、車両は、車両の外周を位置目標の2次元形状(例えば、矩形)内に維持するよう試みることによって位置目標に追従するように構成され得る。車両の位置及び位置目標を定義するための他の技法も企図され得る。
【0030】
図2Bは、車両214-1、214-2、214-3、及び214-4が道路200に沿って進行している時間t
0における道路200の一部分を示す。
図2Bに示すように、各車両はそれぞれの位置目標と一致する(例えば、車両214-1は位置目標202-1と一致し、車両214-2は位置目標202-2と一致する)。車両は、位置目標が道路200に沿って方向204に移動すると、車両のそれぞれの位置目標に追従するように構成され得る。例えば、上記のように、車両214は、位置目標202の位置が車両の位置設定点として使用される閉ループ位置制御方式を実装し得、車両214は、位置目標と車両の実際の位置との間の誤差を最小限に抑える又は低減するよう試みることによって位置目標202に追従する。
【0031】
本明細書でより詳細に説明するように、位置目標の位置は、絶対位置座標(例えば、緯度と経度の座標)、又は任意の他の好適なタイプの変数であり得る。いくつかの事例では、車両は、道路の地図又は他の表現を記憶し得、位置目標の位置は、距離又は長さのパラメータとして表現され得る。この技法は、車両が操縦制御を速さ制御から少なくとも部分的に切り離すことを可能にし、それによって、位置目標に追従する動作を簡素化し得る。例えば、閉ループ位置コントローラは、設定点と車両位置との間の誤差を最小限に抑えるように、操縦システムから独立して(例えば、車両の駆動システムを介して)車両の速さを制御し得る。一方、操縦システムは、車両が道路上のどこにあるかに基づいて、また道路の地図に従って、車両の車輪の角度を制御し得る(又は他の方法で車両を操縦し得る)。この方法では、道路の地図によって経路がすでに定義されているので、閉ループ位置コントローラがその現在の位置とその位置目標との間の新規の経路を算出する必要はない。
【0032】
図2Cは、車両214-1、214-2、214-3、及び214-4が位置目標の移動に従って道路に沿って進んだ、時間t
1における道路200の一部分を示す。例えば、車両214-1は、位置目標202-1と協調して進んでいる。
図2Cは、(
図2Aに示され、車両214-1によって占有されている)位置目標202-1のすぐ後ろにある位置目標を表す新しい位置目標216も示す。特に、車両は位置目標に追従しているので、車両は道路に沿って進行するときに互いに集結しない。例えば、車両214-3と車両214-4との間の利用可能な車両位置(位置目標218)は、これらの車両が道路に沿ってナビゲートしている間は利用可能で占有されていないままである(例えば、後続車両214-3は、先行車両(leading vehicle)214-4に追いつくように試みることはなく、その関連する位置目標に関連付けられたままである)。
【0033】
図2Cは、道路の第2の区分210上の車両214-5も示す。車両214-5は、道路の第1の区分208に進入する準備をしている可能性がある。第2の区分210は、移動位置目標制御方式に関連付けられていない可能性があり、車両214-5は、第1の区分208に安全に合流し、適切な移動位置目標に追従することを開始しなければならない。
【0034】
安全に合流するためには、車両214-5は、占有されていない追従すべき位置目標(例えば、占有されていない、したがって利用可能な車両位置を表す位置目標218)を選択しなければならない。占有されていない位置目標が識別されると、車両214-5は、第1の区分208に進入し、選択された位置目標に追従することを開始し得る。
【0035】
車両214-5は、任意の好適な方法で利用可能な車両位置を決定し得る。いくつかの事例では、輸送システムは、道路上の車両の存在又は不在を検出するように構成された車両存在検出器を含み得る。例えば、車両存在検出器206は、その場所に車両が存在するか不在であるかを検出し得る。図示のように、車両存在検出器206は、合流エリア212の上流に位置している。したがって、車両存在検出器206からの車両存在情報は、合流エリア212で合流しようとする車両によって、利用可能な車両場所を識別するために使用され得る。車両存在検出器206は、道路上の位置における車両の存在又は不在を検知することができる任意の好適なシステム及び/又は構成要素であり得るか又はそれらを含み得る。例えば、車両存在検出器206は、所与の場所に車両が存在するか不在であるかを判定するための、光学センサ、カメラ、磁気センサ、超音波センサ、重量ベースのセンサなどであり得るか又はそれらを採用し得る。
【0036】
車両存在検出器206は、その位置における車両の存在又は不在に関する情報を、近くの車両及び/又は輸送システム・コントローラ全体に直接送信し得る。車両存在検出器206は、様々なタイプの情報を送信するか又は別の方法で提供し得る。例えば、いくつかの事例では、車両存在検出器206は、単純な存在/不在データを送信する。そのような事例では、車両及び/又は輸送システムのコントローラは、次いで、センサからの存在/不在データ、時間、及び場所を使用して、どの位置目標が占有されており、どの位置目標が占有されていないかを判定し得る。センサからの時間及び場所は、センサ自体によって送信され得るか、又は受信側の車両若しくはコンピュータ・システムによって、(存在/不在データとともにセンサによって送信され得る)センサの一意の識別子を使用して検索され得る。いくつかの事例では、車両存在検出器206(及び/又は任意の関連するコンピュータ・システム)は、位置目標が占有されているか占有されていないかを判定し、位置目標の占有ステータスを車両及び/又は輸送システム・コントローラに送信し得る。
【0037】
車両存在検出器206は、所与の場所における車両の存在又は不在を判定し得るが、その情報だけでは、車両214-5などの車両が道路に合流できるかどうか及びどのように合流できるかを判定するのに十分ではない場合がある。例えば、直接隣接した位置目標上の車両はその車両間に間隙を有するが、その車両間に有効な位置目標はない。したがって、車両間の間隙が有効な位置目標を包含するか又は有効な位置目標に対応し、それによって利用可能な車両位置を構成しているかどうかが判定されなければならない。この判定は、様々な方法で行われ得る。例えば、車両間のある一定の距離又は持続時間の間隙(例えば、有効且つ占有されていない位置目標を包含する程度に十分に大きい間隙)を検出したことに応答して、利用可能な車両位置が識別され得る。別の実例として、道路上に車両が所定の時間不在であると検出したことに応答して、利用可能な車両位置が識別され得る。さらに別の実例として、既知の位置目標が車両存在検出器206を通過しているときに車両が不在であると検出したことに応答して、利用可能な車両位置が識別され得る。前述の実例では、車両の存在及び/又は不在を検出する動作は、車両存在検出器206を使用して実行され得、車両が不在であることが、利用可能な車両位置に対応するかどうか又は利用可能な車両位置を示すかどうかを判定する動作は、車両存在検出器206、1つ若しくは複数の車両、輸送システム・コントローラ、又は任意の他の好適なデバイス若しくはシステムによって実行され得る。利用可能な車両位置を決定及び/又は識別するための他の技術も企図される。
【0038】
車両存在検出器206が、存在又は不在データだけでなく利用可能な車両位置に関する情報も送信するように構成されている場合、車両存在検出器206は、位置目標が占有されているか占有されていないかを判定するために、位置目標を定義する関数を記憶するか又は別の方法でそれにアクセスし得る。
【0039】
いくつかの事例では、コンピュータ・システム(例えば、集中型又は分散型の輸送システム・コントローラ)は、道路に沿った車両の場所を追跡し得、道路上の車両の位置及び道路上の利用可能な車両位置をシステム内の1つ又は複数の車両にブロードキャストし得る。コンピュータ・システムはまた、移動位置目標制御方式を採用する道路区分に進入している車両に位置目標を割り当て得る。コンピュータ・システムは、道路内又は道路沿いのセンサ(例えば、光学センサ、カメラ、磁気センサ、超音波センサ、重量ベースのセンサ)を使用して、車両自体から場所情報を受信することによって(例えば、各車両は、その場所をコンピュータ・システムに自己報告する)、又は任意の他の好適な追跡技法を使用して、車両の場所を追跡し得る。
【0040】
いくつかの事例では、道路上にあり移動位置目標制御方式の下で動作している車両は、車両自体の場所、車両が追従している位置目標、他の近くの車両の場所、隣接する位置目標上の車両の存在又は不在などを、他の車両及び/又は輸送システムのシステム・コントローラに送信する。いくつかの事例では、そのような情報は、車両間で直接共有される。例えば、
図2Cを参照すると、車両214-4は、車両214-4の位置及び位置目標218上に車両が不在であることを示す情報を車両214-5に送信し得る。
【0041】
利用可能な車両位置が識別されると、合流車両214-5は、利用可能な車両位置に関連付けられた追跡関数を複数の追跡関数候補から選択し得る。例えば、本明細書に記載されているように、利用可能な車両位置は位置目標に対応し得、位置目標は、時間に対する位置目標の位置を定義する固有の追跡関数によって定義され得るか又はその追跡関数に関連付けられ得る。したがって、本明細書に記載されているように、合流車両214-5は、利用可能な車両位置が検出された位置、及びそれが検出された時間などの情報を使用して、利用可能な車両位置に対応する追跡関数を決定し得る。追跡関数が選択されると(また、そうすることが安全である場合)、合流車両214-5は、利用可能な車両位置で道路の第1の区分208に合流し得る。合流すると、車両214-5は、選択された追跡関数に従って、道路に沿ってナビゲートする。
【0042】
図2Dは、道路200の第1の区間208に合流し、位置目標218に追従し始めているときの車両214-5を示す。
図2Dに示すように、第1の区間208に合流する動作は、車両214-5が閉ループ位置制御方式を開始して、車両214-5を適切な合流速さまで加速させて位置目標218に集結させることを含み得る。合流動作の一部としての第1の区分内への操縦は、道路の他の区分に沿った操縦と同様の様式で実行され得る。例えば、車両214-5は、(第1の区分208及び第2の区分210を含む)道路の地図又は他の表現を記憶し得、地図及び車両の位置と一致する経路に沿って操縦するように構成され得る。別の実例では、車両214-5は、車両214-5を第2の区分210上のその位置から位置目標218まで導くとともに指定された道路境界内に留まるような経路(進行方向、操縦角度、速度、加速度、又は他のパラメータを含む)を決定し得る。
【0043】
車両214-5は、合流中、様々な技法を使用して安全な合流動作を確保し得る。例えば、車両214-5は、他の車両の場所、車両自体と他の車両との間の距離、他の近くの車両の接近する速さ及び/又は方向などを決定し得る。車両214-5は、合流中に車両自体と他の車両との間の安全なクリアランス、接近する速さなどを維持するために、そのような情報を使用して、加速するか、減速するか、又は進行方向若しくは位置を変更し得る。車両214-5は、車載センサ(例えば、LIDAR、レーダ、超音波センサ、光学センサ、カメラ、赤外線センサなど)を使用して、そのようなパラメータを検出又は決定し得る。
【0044】
輸送システムの道路は、道路区分間に様々な異なるタイプのジャンクションを必要とし得る。例えば、道路は、入口ランプ、出口ランプ、車両の速さが増加又は減少する区分、2つの交通流が合流しなければならないエリアなどを含み得る。システムの円滑且つ効率的な動作を容易にするために、道路における様々なタイプのジャンクションに対して制御戦略が定義され得る。より詳細には、車両、より具体的には移動位置目標制御戦略がジャンクションでどのように挙動するかを事前定義することによって、道路の設計及び運用が容易にされ得る。
【0045】
図3A~
図3Fは、輸送システムにおいて使用され得るジャンクションのいくつかの実例を示す。例えば、
図3Aは、第2の区分304が第1の区分302に合流する入口ランプ・ジャンクション300を示す。第1の区分302は、移動位置目標制御方式に関連付けられ得、第2の区分304は、移動位置目標制御方式以外の制御方式(例えば、隊列走行方式)に関連付けられ得る。車両が入口ランプ・ジャンクションに遭遇すると、車両は所定のルーチンに従って動作する。例えば、第1の区分302上の車両は、(方向308に移動する移動位置目標306によって示された)移動位置目標制御方式に従って動作し、第2の区分304上の車両は、第1の区分302に合流するときに移動位置目標制御方式に移行する。このような挙動は事前決定され得るので、通常の動作状況下では、システム内の各車両は、他の車両がそれらの挙動に従って動作すると予期することができる。
【0046】
図3Bは、第2の区分314が第1の区分312から外へ合流している出口ランプ・ジャンクション310を示す。第1の区分312は、移動位置目標制御方式に関連付けられ得、第2の区分314は、移動位置目標制御方式以外の制御方式(例えば、隊列走行方式)に関連付けられ得る。車両が出口ランプ・ジャンクションに遭遇すると、車両は所定のルーチンに従って動作する。例えば、第1の区分312上の車両は、(方向318に移動する移動位置目標316によって示された)移動位置目標制御方式に従って動作し、第1の区分312を退出する車両は、第1の区分312を退出して第2の区分314に入るときに移動位置目標制御方式から異なる車両制御方式に移行する。いくつかの事例では、第1の区分312を退出する過程にある間、退出車両は、退出車両が第1の区分312に沿った交通の流れから完全に外れるまで、先行車両と後続車両との間に同じ距離を維持しようと試み得る。
【0047】
図3Cは、第1の区分324が第2の区分325と連結し、第1の区分324及び第2の区分325からの車両の流れが第3の区分322に沿って続く(方向327に移動する)ジャンクション320を示す。第1の区分324、第2の区分325、及び第3の区分322はすべて、移動位置目標制御方式に関連付けられ得る。停滞又は他の非定常状態の流れ状況を引き起こすことなく、第1の区分324からの車両の流れと第2の区分325からの車両の流れをともに連結させるには、第3の区分322の流量は、第1の区分324と第2の区分325との合計流量と実質的に同等である必要があり得る。別の言い方をすれば、第1の区分324の車両流量は、第3の区分322の車両流量の半分であり得、第2の区分325の車両流量もまた、第3の区分322の車両流量の半分であり得る。
図3Cにおいて、この条件は、第1の区分324が、第2の区分325の位置目標328を収容するのに十分な間隔を伴う位置目標326を有することによって示されている。この方法では、第1の区分と第2の区分の車両の流れは、停滞も減速もなしに合流することができる。さらに、第1の区分324及び第2の区分325上の車両の速さは、車両の流れが連結され、それらが第3の区分322に沿ってナビゲートしている後も同じままであり得る。
【0048】
位置目標326及び328は、第1の区分324の位置目標326が第2の区分325の位置目標328を位置目標326間の既存の間隙に収容するように、ずらして配置され得る。ジャンクション320のすべての区分の車両制御方式は、位置目標326、328、及び329の位置並びに速さを含めて事前決定されているので、(合流を実現するために車両を大幅に減速又は加速する必要なしに)車両の流れの継続的で途切れのない合流が継続的に維持され得る。
【0049】
図3D~
図3Fは、異なる車両制御方式を有する2つの区分が隣接し合う移行ジャンクション330、340、及び350を示す。これらのジャンクションにおいて車両がある区分から次の区分に境界を横断すると、車両はある車両制御方式から別の車両制御方式に移行する。例えば、
図3Dは、移行ジャンクション330を示しており、この移行ジャンクション330では、第1の区分332は、移動位置目標制御方式以外の車両制御方式に関連付けられ、第2の区分334は、(道路に沿って方向338に移動する)位置目標336によって示すように、移動位置目標制御方式に関連付けられる。車両が第1の区分332と第2の区分334との間の境界339に接近すると、車両は移動位置目標制御方式への移行を予測する。例えば、いくつかの事例では、車両が境界339までの閾値距離内に来たとき、車両は、境界339を横断するときに利用可能で好適となる位置目標及び関連する追跡関数を決定する。車両が境界を横断すると、車両は、移動位置目標制御方式に従って動作を開始し、選択された追跡関数によって定義された移動位置目標に追従する。いくつかの事例では、車両は、車両と境界339との間に他の車両がなくなるまで、移動位置目標方式に移行しない。そのような車両が存在する場合、それらの車両が第2の区分に進入するまで、車両は減速及び/又は停止しなければならない。どの位置目標及び/又は追跡関数が利用可能であるかを決定し、第2の区分334への安全且つ効率的な移行を容易にするために、(上記のような)車両存在検出器又は他の技法が使用され得る。区分間の境界は、道路内又は道路沿いの検出可能な物質など(例えば、磁石、金属、光信号又はビーコン、標識など)の検出可能な構成要素であり得るか又はそれらを含み得る。
【0050】
図3Eは、移行ジャンクション340を示しており、この移行ジャンクション340では、第1の区分342は、(道路に沿って方向348に移動する位置目標346によって示すように)移動位置目標制御方式に関連付けられ、第2の区分344は、移動位置目標制御方式以外の車両方式(例えば、隊列走行方式)に関連付けられる。車両が第1の区分342と第2の区分344との間の境界349に接近すると、車両は、移動位置目標制御方式からの移行を予測する。例えば、車両が境界349を横断すると、車両は、追跡関数の位置目標の追従を停止し、最高速さ制限までで先行車両の後ろの追従距離又は車頭間隔(headway)を維持しようと試みることなどによって、異なる制御方式に従ってナビゲートを開始する。
【0051】
図3Fは、移行ジャンクション350を示しており、この移行ジャンクション350では、第1の区分352及び第2の区分354は、移動位置目標制御方式に関連付けられているが、それぞれが異なる車両運動パラメータ(例えば、異なる速さ)を有する。例えば、
図3Fは、第1の速さで方向357に移動する位置目標355を有する第1の区分352と、第1の速さとは異なる(例えば、より速い)第2の速さで方向358に移動する位置目標356を有する第2の区分354とを示す。車両が境界359までの閾値距離内に来たとき、車両は、境界359を横断するときに利用可能で好適となる位置目標及び関連する追跡関数を決定する。車両が境界を横断すると、車両は、第2の移動位置目標制御方式に従って動作を開始し、選択された追跡関数によって定義された移動位置目標に追従する。停滞、交通渋滞、又は他の非定常状態の動作状況を回避するために、移行ジャンクション350の第1の区分及び第2の区分(並びに他の同様の移行ジャンクション)の車両制御方式は、同じ車両流量を有するように構成され得る。他の事例では、車両流量が下流方向に沿ってのみ増加する限り、車両流量は変化し得る(例えば、車両が道路を出るまで又は道路が終了するまで、車両が道路に沿って進行するにつれて、流量は増加するだけである)。
【0052】
上記のように、車両は、車両が追従している移動位置目標の場所を特定するために、追跡関数を使用し得る。追跡関数は、多数の方法で定義され得る。
図4A~
図4Bは、追跡関数の実例、及び追跡関数が道路上の複数の車両の位置関係をどのように定義するかを示す。上記のように、車両は、所与の追跡関数に割り当てられ得る。車両への追跡関数の割り当ては、車両自体、輸送システム・コントローラ、別の車両によって、又は任意の他の好適な様式で行われ得る。
【0053】
図4Aは、道路の区間に沿った長さ対時間のプロット400を示す。理解を容易にするために、プロット400のy軸は、絶対位置(例えば、緯度と経度の座標)ではなく、道路に沿った長さ位置を表す。したがって、
図4Aに示すプロットは、車両に操縦及び加速の指示を提供するために道路の地図又は他の表現と併せて使用される追跡関数に関連付けられ得る。絶対位置を時間に相関させる追跡関数などの他のタイプの追跡関数も使用され得る。
【0054】
プロット400は、第1の追跡関数Ft1、第2の追跡関数Ft2、及び第3の追跡関数Ft3を示す。追跡関数の非線形性は、道路の表現された区間に沿った車両の速さの変動を示す。したがって、追跡関数は、単純な定速プロファイルよりも複雑な速さプロファイルを定義し得る。これは、異なる半径及び/若しくはバンク角度の曲がり角、丘、トンネル、合流ゾーン又は他の道路ジャンクションなどの特徴を含む複雑な道路の状況において特に有用であり得る。そのような事例では、定速追跡関数の速さはその道路に必要な最も遅い速さに設定される必要があるので、定速追跡関数は、安全ではなく且つ/又は非効率的であり得る。(例えば、安全上の理由から道路の曲がり角が非常に遅い速さを必要とする場合、定速関数は、そのようにすることが安全である区分であってもその遅い速さを超えることはできない)。
【0055】
追跡関数は、道路区分に対して、その区分上の各車両が別個の追跡関数に追従するように事前定義され得る。この様式では、追跡関数によって車両間の間隙が定義及び事前決定されることになり、したがって、車両間の衝突又は他の相互作用を回避するのに役立つ。例えば、時間t1において、車両追従関数Ft1は長さ位置L1にあり、車両追従関数Ft2は長さ位置L2にあり、車両追従関数Ft3は長さ位置L3にある。追跡関数を位置コントローラ(例えば、閉ループ位置コントローラ)への入力又は位置コントローラの設定点として使用することによって、車両は、車両の位置をその割り当てられた追跡関数によって示された位置に維持することができる。
【0056】
上記のように、追跡関数は、隣接する車両間の固定距離を維持しない場合がある。むしろ、追跡関数は、隣接する車両間の固定時間を維持し得る。別の言い方をすれば、車両は、車両の速さに関係なく、例えば互いに2秒差の状態のままであり得る。このような条件下では、速さが上がるにつれて車両間の距離が長くなる。距離間隔ではなく固定の(又は少なくとも所定の)時間間隔を使用して車両間の間隙を定義することは、システム全体の効率に貢献する。より詳細には、固定距離ベースの間隔は、道路に沿って必要とされる最大の安全な間隙サイズを選択することを必要とし、最終的には道路の低速区間において車両間に不必要に大きな間隙が発生する。本明細書に記載されているように、安全のために、車両間の時間間隔は、閾値又は規定の最小値以上に維持され得る。
【0057】
図4Bは、車両間の距離が変化し得る間に、隣接する追跡関数間の時間間隔がどのように一定のままであり得るかを示す。例えば、代表的な時間間隔402、404、406、408、及び410の長さ又はサイズが等しいことは、追跡関数間の時間間隔が、道路の長さ(又は少なくとも道路の区分)にわたって固定又は一定であり得ることを実証している。距離間隔D
1及びD
2の(それぞれ時間t
1及びt
2における)サイズが異なることは、車両が道路に沿って進行するにつれて、隣接する車両間の距離が変化し得ることを示している。別の言い方をすれば、2台の車両が2つの追跡関数に従って道路に沿って進行するとき、2つの追跡関数が、その2台の車両間の可変距離を定義し得る。
【0058】
いくつかの事例では、道路の追跡関数は、リアルタイムで変更又は調整され得る。これは、例えば、気象状況又は道路状況、交通状況などに変化があるときに行われ得る。例えば、乾燥した気象状況下では安全である車両間の時間間隔が、雨天状況では十分でない場合がある。したがって、輸送システムでは、車両は、気象状況、道路状況の変化、道路上のがれき、人、又は他の物体の存在など、輸送システムに影響を与える状況(又は状況の変化)を検出したことに応答して追跡関数を修正する必要があり得る。いくつかの事例では、追跡関数の複数のセットが事前定義され、車両は、検出された状況に応じて、あるセットから別のセットに変更するように(例えば、輸送システム・コントローラによって)指示され得る。他の事例では、車両は、(例えば、追跡関数における定数の値を変更することによって)車両の既存の追跡関数を修正して車両間の時間間隔を増加又は減少させるように(例えば、輸送システム・コントローラによって)指示され得る。道路に関連付けられた追跡関数を変更するための他の技法も可能である。
【0059】
いくつかの事例では、輸送システムは、2台の車両間の時間間隔について規定の最小値を有する。例えば、2台の車両間の最小時間間隔は、約1秒、約2秒、約5秒、又は任意の他の好適な値であり得る。規定の最小時間間隔は、車両のブレーキ性能、車両の利用可能な牽引力、道路の設計(例えば、道路の曲率半径及び道路勾配など)などを含むがこれらに限定されない輸送システムの構成要素の特性に少なくとも部分的に基づいて定義され得る。規定の最小時間間隔は、システム全体にわたり得る。いくつかの事例では、システム全体にわたる規定の最小時間間隔の代わりに又はそれに加えて、局所的な且つ/又は一時的な最小時間間隔が規定され得る。例えば、道路のある一定の区間は、異なる最小時間間隔を有し得る(例えば、道路の異なる区間は、異なる気象状況又は路面状況、異なる道路レイアウトなどを有し得、したがって、異なる最小時間間隔を有し得る)。別の実例として、ある一定の状況により、システム全体に異なる最小時間間隔が与えられ得る(例えば、システム全体にわたる気象事象により、安全上又は他の理由から、より大きい規定の最小時間間隔が設けられ得る)。
【0060】
追跡関数への変更は、車両が交通渋滞、衝突、又は他の問題を引き起こすことなく秩序立った(例えば、順次的な)様式で新しい追跡関数に適応できるように、(例えば、車が道路区分間のある一定の境界を横断するときに)道路ジャンクションで行われるように構成され得る。
【0061】
道路上のすべての車両が位置目標を正確に追跡していること保証するには、すべての車両が、同期されたクロック・システムを使用して動作しなければならない。例えば、2台の車両のクロックが同じ時間を有していない場合、それらの車両は、その追跡関数に対して正しい位置にない可能性がある。したがって、車両はそれぞれ、他の車両のクロック、及び/又は(輸送システム・コントローラ、中央サーバ、公的にアクセス可能なクロック・サービスなどに関連付けられ得る)基準クロックと同期されたクロックを含み得る。
【0062】
図5は、車両間の時間間隔は一定のままである一方で車両間の物理的距離がどのように異なり得るかを示した、道路の区分500を示す。例えば、目標位置508と目標位置510との間の距離502は、目標位置508及び目標位置510の道路の直線部分に沿ったそれらの場所における速さに起因した、2秒時間間隔を表し得る。目標位置が道路の曲がり角に接近して進入すると、目標位置は、曲がっている間の乗員の快適性及び/又は車両の安全性を維持するために減速し得る。車両の速さが低下するにつれて、車両間の物理的距離も、一定の時間間隔を維持しながら減少し得る。したがって、例えば、目標位置512と目標位置514との間の距離504は、その距離504が距離502より短い場合でも、同じ2秒時間間隔を表し得る。同様に、目標位置516と目標位置518との間の距離506は、その距離506が距離502及び距離504より短い場合でも、同じ2秒時間間隔を表し得る。車両が角を出て加速し始めると、目標位置間の物理的距離は、再び増加して目標位置間の一定の時間間隔を維持し得る。前述のように、物理的距離は車両が進行している速さに合わせてより厳密に調整され得るので、一定の物理的距離を維持する場合と比較して、時間間隔を一定に維持することにより、道路に沿って車両をより密集させることが可能になる。
【0063】
移動位置目標車両制御方式は、道路の一部の区分に沿って使用され得るが、道路のすべての区分に好適であるとは限らない可能性がある。例えば、一部の区分は、非定常状態の交通流を処理する能力を必要とし得る。実例としては、車両が利用可能な車両位置を待つ必要があり得る入口ランプ、及び車両の流れが予測不可能であり得る且つ/又はユーザの要求によって駆動され得る搭乗エリアが含まれ得る。これらの理由又は他の理由により、道路の一部の区分は、隊列走行方式などの別の車両制御方式に従って動作するように構成され得る。
【0064】
いくつかの事例では、ある一定の状況が検出された又は別の方法で満たされたことに応答して、道路の同じ区分が、車両制御方式間で移行し得る。例えば、ある一定の道路状況(例えば、濡れた状況又は滑りやすい状況、道路上のがれき、道路上の予期しない車両又は他の交通など)が検出されたことに応答して、道路の区分は、移動位置目標制御方式から隊列走行方式に移行し得る。このような状況が発生した場合、輸送システムは、1つ又は複数の区分の車両制御方式を変更し得る(例えば、移動位置目標制御方式から隊列走行制御方式へ移行する)。
【0065】
図6A~
図6Cは、道路の区分に使用され得る隊列走行方式の一実例の動作を示す。これらの図における隊列走行方式は、車両が自己組織化して隊列(例えば、一緒に進行する車両のグループであり、グループ内では後続車両は先行車両の行動に対して反応を示す)を成す技法を表す。一実例では、自己組織化して隊列を成すことは、車両の小さい方の隊列が大きい方の隊列よりも速く進行するという規則を規定することによって実現される。この方法では、(1台の車両の隊列を含む)小さい方の隊列は、常に、道路に沿ってより遠くにある大きい方の隊列との分離距離を縮める傾向があり、道路が十分に長い場合は大きい方の隊列に追いつく。さらに、大きい方の隊列にグループ化することによって、道路に沿ってより多くの間隙及びより大きい間隙が形成される傾向があり、他の車両が交通の流れに合流する機会を増やすことが可能になる。
【0066】
図6Aは、1台の車両を有する第1の隊列602、3台の車両を有する第2の隊列604、及び5台の車両を有する第3の隊列606の3つの隊列を有する、道路の区分600を示す。
図6Aは、時間t
0における隊列を示す。上記のように、小さい方の隊列は、小さい方の隊列が大きい方の隊列に追いつき連結できるように、大きい方の隊列よりも速く進行し得る。したがって、第1の隊列、第2の隊列、及び第3の隊列は、速度(例えば、速さ)V
1、V
2、及びV
3でそれぞれ進行し得、V
1はV
2よりも大きく、V
2はV
3よりも大きい。
【0067】
図6Bは、隊列の相対速度によって第1の隊列602がどのように第2の隊列604に追いつき連結したかを示した、時間t
1における道路の区分600を示す。連結すると、第1の隊列602は、その速さを変更して第2の隊列604の速さ(例えば、V
2)に一致させる。
図6Bは、速さV
2が大きいことに起因して、第2の隊列604が第3の隊列606までの距離を縮めたことも示している。
図6Cは、第2の隊列604がどのように第3の隊列606に追いついて連結したかを示した、t
2における道路の区分600を示す。第2の隊列604が連結すると、すべての車両が第3の隊列606の速さV
3に従って進行する。
【0068】
一実例では、n台の車両を有する隊列の速さは、方程式
【数1】
によって定義され得、ここで、v
minは、道路の区分(及び任意選択として道路全体)に対して定義された規定の最低許容速さであり、v
maxは、道路の区分(及び任意選択として道路全体)に対して定義された最高許容速さである。v
max及びv
minの値は、安全性の考慮事項、道路の構成、車両の能力などに基づいて、道路に対して規定され得る。道路に合流する際に停止から加速するとき、道路を出るために減速するとき、緊急事態においてなどの特定の操作中に、車両がv
min未満まで減速し得ることが理解されよう。
【0069】
上記の方程式は、所与の車両数の隊列サイズを有する車両にのみ適用され得、大きい方の隊列は、(特定の値に設定され得る又は異なる方程式若しくは一連の考慮事項によって定義され得る)異なる速さで進行する。いくつかの事例では、上記の方程式は5台以下の車両を有する隊列に適用され、6台以上の車両を有する隊列は規定の最低隊列速さで進行する。しかしながら、隊列で進行する車両は、通常の動作中に発生し得る先頭車両(lead vehicle)の速さの変化に対応するために、通常の運用中に速さをいくらか落とす能力を保持する必要があるため、最小隊列速さはvminよりも大きくなる可能性がある。例えば、車両は、通常の運転条件下で道路のvminを超える速さを維持するように構成され得る。しかしながら、隊列がvminで走行しており、(例えば、道路の障害物又は何らかの他の理由により)先頭車両がたまたま減速した場合、後続車両は、(すでにvminで進行しており、それ以上の減速はプログラムで制限されているので)それ以上減速することができない可能性がある。最低隊列速さをvminより上に設定すると、車両が隊列にいるときに減速することができ、規定の最低車両速さvminによって安全でない状態で制限されないよう保証できるので、この問題が軽減される。
【0070】
隊列走行方式は、最大隊列サイズも規定又は定義し得る。例えば、隊列は、最大で10台の車両、6台の車両、5台の車両、又は任意の他の好適なサイズに制限され得る。いくつかの事例では、最大隊列サイズは、状況及び/又は環境に基づいて変化し得る。例えば、道路の異なる区分は、異なる最大隊列サイズを有し得る。別の実例として、気象状況の変化が、輸送システムに最大隊列サイズを変更させる場合がある。隊列サイズが最大隊列サイズより大きい場合、隊列は、それぞれ最大隊列サイズ以下である複数の隊列に分離され得る。車両は、車両間で通信して、どの車両が異なる隊列に分かれるべきかを決定し得る。代替として又は追加として、システム・コントローラは、どの車両が異なる隊列に分かれるべきかを示す指示を車両に送信し得る。小さい方の(したがって、速い方の)隊列が、すでに最大隊列サイズである大きい方の隊列に追いつく場合、小さい方の隊列は先行隊列の速さまで減速し得る(また、小さい方の隊列と大きい方の隊列との間に一定の分離距離を維持し得る)。
【0071】
隊列走行方式は、(最小間隔として使用され得る)隊列間の目標間隔(目標隊列間隔と呼ぶ)及び隊列内の車両間の目標間隔(目標車両間隔と呼ぶ)も定義し得る。隊列内の車両間の目標車両間隔は、距離間隔(例えば、3.048m(10フィート)、9.144m(30フィート)、又は任意の他の好適な値)、又は時間間隔(例えば、1秒、2秒、3秒、又は任意の他の好適な値)として定義され得る。時間間隔を使用すると、一度に道路を安全にナビゲートし得る車両の台数を最大化するのに役立ち得る。目標隊列間隔は、隊列内の車両間の目標間隔のある一定の倍数として定義され得る。例えば、隊列間の目標隊列間隔は、目標車両間隔の約1.5倍、目標車両間隔の1.8倍、目標車両間隔の2.0倍、目標車両間隔の3.0倍、又は任意の他の好適な値であり得る。
【0072】
上述のように、隊列走行方式に従って動作する車両は、互いに通信して、隊列に連結するべきか新しい隊列を形成するべきかを判定し得る。例えば、各車両は、道路上の真正面にある車両と通信するように構成され得る。車両は、光通信システム、無線ベースの通信システムなどのような通信を容易にするワイヤレス車車間通信システムを含み得る。車車間通信は、ある車両から別の車両への直接通信であり得、又は、1つ又は複数の他のサーバ、コンピュータ、コントローラ、通信システム若しくはプロバイダなどを介して、メッセージが中継され得る。
【0073】
各車両は、前方の車両の台数に関する情報を次の車両に要求するように構成され得、照会された車両は、そのような要求に応答するように構成され得る。例えば、先行車両のすぐ後ろにいる後続車両は、先行車両の前方にあり次の車両と一定の時間間隔(例えば、目標車両間隔)だけ離れている車両の台数について、先行車両に照会し得る。先行車両が最大隊列サイズよりも多い数を報告した場合、後続車両は、その速さを落として先行車両までのその距離を伸ばす。いくつかの事例では、後続車両は、目標隊列間隔になるまでその速さを落とし、次いで、前方の隊列内の車両数が変化するまで目標隊列間隔で間隔を維持しようと試みる。
【0074】
後続車両が先行車両から最大隊列サイズよりも多い数を受け取った場合、後続車両は、さらなる後続車両からの同様の照会に対して、(すぐ前方に車がなく、事実上隊列の先頭であることを示す)数値ゼロを報告することによって直ちに応答を開始し得る。これは、後続車両が隊列間隔までの分離距離をまだ物理的に伸ばしていない場合でも、後続車両が新しい隊列を開始すべきであると検出した直後に行われ得る。後続車両が、新しい隊列の先頭であると判定した直後に数値ゼロを報告しなかった場合、さらなる後続車両はそれぞれ、(すぐ前方に車両が多すぎるとそれぞれが判断して)実質的に同時に減速しようと試みる可能性があり、これにより、場合によってはシステムにおいて不必要な減速又は間隙が生じる可能性がある。
【0075】
いくつかの事例では、照会を前方の車両に向けて送る代わりに(又はそれに加えて)、照会を追従車両又は後続車両に送ることができる。例えば、後続車両が前方の車両の台数について先行車両に照会する代わりに(又はそれに加えて)、先行車両が、先行車両の後方にあり一定の時間間隔(例えば、目標車両間隔)だけ離れている車両の台数について後続車両に照会し得る。後続車両から1つ又は複数の応答を受信すると、先頭車両はそれに応じて速さを調整し得る。例えば、台数が最大隊列サイズより多いことを示す応答を先行車両が受信した場合、先頭車両は、先頭車両(及び、任意選択として、いくつかの追従車両)が新しい隊列を編成できるように、その速さを調整し得る(例えば、その速さを上げる)。
【0076】
このような通信は、先行車両が道路を通る速さを決定するのを容易にするためにも使用され得る。例えば、上述のように、隊列は、隊列内の車両の台数に基づいて異なる速さで進行し得る。そのような事例では、先行車両は、後続車両の台数に関する照会への応答に基づいてその速さを調整し得る。例えば、後続車両の台数が最大隊列サイズよりも少ない場合、先行車両は、最低隊列速さよりも速い速さで進行し得、後続車両の台数が最大隊列サイズである場合、先行車両は、最低隊列速さで進行し得る。先行車両は、(上記のように)隊列サイズを隊列速さに関連付ける方程式に従ってその速さを加速又は減速することによって、後続車両の台数の変化に対応し得る。
【0077】
本明細書に記載の車両制御方式は、多数の車両が乗員及び/又は貨物を道路に沿って輸送するために自律的に動作し得る輸送システムとともに又はその輸送システムによって使用され得る。例えば、輸送システム又は輸送サービスは、道路に沿って動作する車両群を提供し得る。このような輸送システム内の車両は、本明細書に記載の1つ又は複数の車両方式(例えば、隊列走行方式、移動位置目標方式など)に従って、自律的に動作するように構成され得る。「自律的」という用語は、本明細書で使用される場合、人間のオペレータによる継続的な手動制御なしに車両が動作できるモード又は方式を指すことがある。例えば、無人車両は、車両の速さ及び方向を制御する自動式の駆動システム及び操縦システムのシステムを使用して道路に沿ってナビゲートし得る。いくつかの事例では、車両は、乗員による操縦、速さ、又は方向の制御を必要とせず、乗員がアクセス可能なアクセル・ペダル及びブレーキ・ペダル、操縦ハンドル、及び他の手動制御装置などの制御装置を排除し得る。いくつかの事例では、車両は、保守、緊急オーバーライドなどに使用され得る手動駆動制御装置を含み得る。このような制御装置は、隠されているか、格納されているか、又は別の方法で、通常の車両動作中にユーザが直接アクセスできない状態であり得る。例えば、これらは、訓練を受けたオペレータ、保守担当者などのみがアクセスできるように設計され得る。
【0078】
自律動作は、車両若しくは輸送システム全体の人間による又は手動による動作すべてを排除する必要はない。例えば、人間のオペレータは、安全性、利便性、テスト、又は他の目的で車両の動作に介入することが可能であり得る。このような介入は、人間の運転者が車両を制御する場合などに車両に対して局所的に行われ得るか、又はオペレータが遠隔制御システムを介して車両にコマンドを送信する場合などに遠隔的に行われ得る。同様に、車両のいくつかの態様は、車両の乗員によって制御され得る。例えば、車両の乗員は、目標の目的地、ルート、速さを選択する、ドア及び/又は窓の動作を制御するなどし得る。したがって、「自律的」及び「自律動作」という用語が必ずしも個々の車両又は輸送システム全体の人間の介入又は動作のすべてを排除するわけではないことが理解されよう。
【0079】
輸送システム内の車両は、様々なセンサ、カメラ、通信システム、プロセッサ、及び/又は自律動作を容易にするのに役立つ他の構成要素若しくはシステムを含み得る。例えば、車両は、道路に埋め込まれた磁石又は他のマーカを検出するセンサ・アレイを含み得、この磁石又は他のマーカは、車両が道路上のその場所、位置、及び/又は方向を特定するのに役立つ。車両は、光通信システムなどのワイヤレス車車間通信システムも含み得、これにより車両は、車両のブレーキ状態、隊列内の前方にいる車両の台数、加速状態、車両の次の操作(例えば、右折、左折、予定された停止)、車両の積載物(例えば、人間又は貨物)の数又は種類などの動作パラメータを相互に通知することが可能になる。車両は、輸送システムに対する管理命令及び制御権限を有する輸送システム・コントローラとの通信を容易にするワイヤレス通信システムも含み得る。
【0080】
輸送システム内の車両は、輸送システムの動作及び利便性を高めるように設計され得る。例えば、輸送システムの主な目的は、快適で、利便性の高い、迅速で、効率的な個人輸送を提供することであり得る。個人の快適さを提供するために、車両は、乗員の出入りが容易になるように設計され得、十分な足元スペース及び頭上スペースを備えた快適な座席配置を有し得る。車両を便利な高さに配置して水平に保つのに役立つように、また変化する負荷重量の全範囲にわたって快適な乗り心地を確保するために、車両は、快適な乗り心地及び動的に調整可能なパラメータを提供する高度なサスペンション・システムも有し得る。
【0081】
従来の個人用自動車は、主に一方向のみに動作するように設計されている。これは、運転者が前進方向を向いており、長距離を後進で運転することは一般的に安全ではない又は必要ではないという事実が原因の1つである。しかしながら、人間が車両の動作をリアルタイムで直接制御していない自律車両では、車両が双方向に動作できることは有利であり得る。例えば、本明細書に記載の輸送システム内の車両は実質的に対称であり得、その結果、車両には視覚的又は機械的に明確な前部又は後部がない。さらに、車両のどちらの端部が進行方向を向いていても車両が実質的に同じように動作できるように、車輪は十分に独立して制御され得る。この対称的な設計は、いくつかの利点をもたらす。例えば、行程を開始する前に車両が「前進方向」を向くようにUターン又は車両を方向転換するための他の操作を行う必要がなくなる可能性があるので、車両はより狭い空間で操作することが可能になり得る。
【0082】
図7A及び
図7Bは、本明細書に記載の輸送システムで使用され得る四輪道路車両700(本明細書では単に「車両」と呼ぶ)の実例の斜視図である。
図7A~
図7Bは、車両700の対称性及び双方向性を示す。具体的には、車両700は、
図7Aの最前部に示されている第1の端部702、及び
図7Bの最前部に示されている第2の端部704を定義する。いくつかの実例では、図示のように、第1の端部702と第2の端部704は実質的に同一である。さらに、車両700は、いずれかの端部が進行方向を向いた状態で駆動できるように構成され得る。例えば、車両700が矢印714によって示す方向に進行しているときは、第1の端部702が車両700の前端部であり、車両700が矢印712によって示す方向に進行しているときは、第2の端部704が車両700の前端部である。
【0083】
車両700は、車輪706(例えば、車輪706-1~706-4)も含み得る。車輪706は、車両の端部への近さに応じて対を成し得る。したがって、車輪706-1、706-3は、車両の第1の端部702に近接して位置しており、車輪706の第1の対と呼ばれ得、車輪706-2、706-4は、車両の第2の端部704に近接して位置しており、車輪706の第2の対と呼ばれ得る。車輪の各対は、少なくとも1つのモータ(例えば、車両の駆動システム又は駆動システムの一部であり得る電気モータ)によって駆動され得、車輪の各対は、車両を操縦することが可能であり得る。車輪の各対は、車両を操縦するために回転することが可能であるので、車両は、進行方向に関係なく同様の運転特性及びハンドリング特性を有し得る。いくつかの事例では、車両は、所与の時間に1対の車輪のみが車両700を操縦する二輪操縦モードで動作し得る。そのような事例では、進行方向が変わると、車両700を操縦する特定の車輪対が変わり得る。他の事例では、車両は、車両を操縦するために車輪が協調して動作する四輪操縦モードで動作し得る。四輪操縦モードでは、実行されている操縦操作及び/又は車両の速さに応じて、車輪対が同じ方向又は反対方向のいずれかに回転し得る。
【0084】
車両700は、乗員及び他の積載物(例えば、荷物、手荷物、貨物)を車両700の内部に配置できるようにするために開くドア708、710も含み得る。本明細書でより詳細に説明するドア708、710は、これらのドアがそれぞれ2つの対向する側面区分を画定するように車両の上部を覆って延在し得る。例えば、各ドアは、車両の第1の側にある側面区分と、車両の第2の対向する側にある別の側面区分とを画定する。ドアはそれぞれ、側面区分間に延在して車両の屋根(又は上面)の一部を画定する屋根区分も画定する。いくつかの事例では、ドア708、710は、断面が逆「U」字形に似ており、キャノピー・ドアと呼ばれ得る。ドアの側面区分及び屋根区分は、ドアのすべての構成要素(例えば、側面区分及び屋根区分)が互いに協調して動くように剛性の構造ユニットとして形成され得る。いくつかの事例では、ドア708、710は、モノリシック構造から形成された一体型シェル又はドア・シャシーを含む。一体型シェル又はドア・シャシーは、例えば、ガラス繊維、炭素複合体、及び/又は他の軽量複合材料を含む複合シート又は構造から形成され得る。
【0085】
車両700は、車両700並びに車両のシステム及び/又はサブシステムの動作を制御する車両コントローラも含み得る。例えば、車両コントローラは、車両の駆動システム(例えば、モータ、モータ・コントローラ、ギアボックス、トランスミッションなど)、操縦システム、サスペンション・システム、ドアなどを制御して、1つ又は複数の車両制御方式に従って道路に沿って車両をナビゲートすることを含む車両の動作を容易にする。車両コントローラはまた、他の車両、輸送システム・コントローラ、車両存在検出器、又は輸送システムの他の構成要素と通信するように構成され得る。例えば、車両コントローラは、他の車両から、隊列内のそれらの車両の位置、速さ、近づいてくる速さ又は方向の変化などに関する情報を受信するように構成され得る。車両コントローラはまた、車両存在検出器から、利用可能な車両位置に関する情報を受信するように構成され得る。車両コントローラは、コンピュータ、プロセッサ、メモリ、回路、又は任意の他の好適なハードウェア構成要素を含み得、車両の他のシステムと相互接続して、本明細書に記載の動作及び他の車両動作を容易にし得る。
【0086】
図8A及び
図8Bは、ドア708、710が開いた状態の車両700の側面図及び斜視図である。ドア708、710はそれぞれ2つの対向する側面区分及び屋根区分を画定するので、ドア708、710が開かれると、途切れのない内部空間802が現れ得る。
図8A及び
図8Bで示す実例では、ドア708、710が開かれると、ドア708とドア710との間に、車両700の一方の側から他方の側まで延在する開放区間が画定され得る。これにより、車両700の両側の乗員による車両700への妨げのない出入りが可能になり得る。ドア708、710が開いているときに頭上構造がないため、乗員は、頭上のクリアランスの制限なしに車両700を横切って歩くことが可能になり得る。
【0087】
車両700は、車両700の両端部に配置されて互いに対面し得る座席804も含み得る。図示のように、車両は2つの座席804を含むが、他の数の座席及び他の座席配置も可能である(例えば、0席、1席、3席など)。いくつかの事例では、車椅子、ベビーカー、自転車、又は荷物がより簡単に車両700に配置され得るように、座席804は、取り外されるか、折りたたまれるか、又は収納され得る。
【0088】
本明細書に記載の輸送システムで使用するための車両700などの車両は、安全で快適な動作並びに製造及び保守の容易さに配慮して設計され得る。これらの利点を実現するために、車両は、車両の構造上及び動作上の構成要素(例えば、モータ、サスペンション、バッテリなど)の多くを含むとともに地面に対して低く配置されたフレーム構造体を有するように設計され得る。車体構造体は、フレーム構造体に取り付けられるか又は固定され得る。
図9は、フレーム構造体及び車体構造体の構成の一実例を示した、車両700の一実施例であり得る車両の部分分解図を示す。後述するように、フレーム構造体と比較的軽量な車体構造体とを低い位置で組み合わせることで、非常に低重心な車両が実現し、これにより車両の安全性及びハンドリングが向上する。例えば、低重心であると、車両が傾斜した路面、風荷重、急な曲がり角などに遭遇したときに車両が横転する危険性が低下するとともに、曲がっている間又は他の操作中の車両の車体の横揺れが低減する。さらに、モータ、バッテリ、車両コントローラ、センサ(例えば、道路に取り付けられた磁石又は他のマーカを検出するセンサ)など車両の動作構成要素の多くをフレーム構造体(例えば、
図9のフレーム構造体904)上に配置することによって、製造及び修理が簡素化され得る。
【0089】
図9は、車両700の一実施例であり得る車両900の部分分解図である。車両700の詳細は車両900にも同様に適用可能であり得るので、ここでは繰り返さない。車両900は、ドア(例えば、上述のドア708、710)及び他の車体構成要素を含み得る車体構造体902と、車体構造体902が取り付けられるフレーム構造体904とを含み得る。
【0090】
フレーム構造体904は、車両の駆動構成要素、サスペンション構成要素、及び操縦構成要素を含み得る。例えば、フレーム構造体904は、(車輪取付具、車軸、又はハブを画定し又は含み得る、
図9で点912として表された)車輪サスペンション・システムと、操縦システムと、駆動モータと、任意選択としてモータ・コントローラとを含み得る。車輪は、車輪取付具、車軸、ハブなどを介して車輪サスペンション・システムに取り付けられ得る。駆動モータは、車輪を独立して又は互いに協調して駆動する1つ又は複数の駆動モータを含み得る。駆動モータは、フレーム構造体904に取り付けられた電源(例えば、バッテリ)から電力を受け取り得る。駆動モータ用のモータ・コントローラも、フレーム構造体904に取り付けられ得る。
【0091】
サスペンション・システムは、任意の好適なタイプのサスペンション・システムであり得る。いくつかの事例では、サスペンション・システムは、各車輪の独立したサスペンション・システムを含む。例えば、サスペンション・システムは、ダブル・ウィッシュボーン式トーションバー・サスペンション・システムであり得る。サスペンション・システムはまた、車両が静止している間又は移動している間に車高、サスペンション・プリロード、ダンピング、又は他のサスペンション・パラメータを制御するなどのために、動的に調整可能であり得る。スイング・アクスル・サスペンション、スライディング・ピラー・サスペンション、マクファーソン・ストラット・サスペンションなどの他のサスペンション・システムも企図される。さらに、スプリング機能及びダンピング機能は、コイル・スプリング、リーフ・スプリング、空気スプリング、ハイドロニューマチック・スプリング、磁気粘性緩衝器などの任意の好適な構成要素又はシステムによって提供され得る。サスペンション・システムは、乗員にとって望ましい体験を維持するように路面(例えば、上記のような道路)の起伏と合わせて動作するように構成され得る。
【0092】
フレーム構造体904は、車両を操縦するために車輪が回転すること可能にする操縦システムも含み得る。いくつかの事例では、車輪は、独立して操縦可能であり得るか、又は車両の通常の動作中に常に実質的に同じ方向を向くように(例えば、操縦ラックを介して)リンクされ得る。さらに、これにより車両は、四輪操縦方式を使用すること、及び二輪操縦方式と四輪操縦方式とを交互に行うことが可能になる。
【0093】
フレーム構造体904は、バッテリ、モータ、及び車両のドアを開閉するための機構などの構成要素、(コンピュータ又は他の処理ユニットを含む)制御システムなどを含み得る。
【0094】
図9は、車両及びフレーム構造体の構成の実例を示す。しかしながら、他の構成も可能である。また、
図9に示すフレーム構造体及び車体構造体は、これらの構成要素の概略的な表現として意図されており、これらの構成要素は、明瞭にするために
図9から省略された他の構造体を含み得る。車体構造体とフレーム構造体との間では、
図9に明示的に表現されているもの以外に追加の構造的接続及び統合が行われ得る。例えば、車体構造体のドアを開閉するドア機構の構成要素は、ドアとフレーム構造体との両方に接合され得る。
【0095】
前述の説明では、記載された実施例の完全な理解を提供するために、説明を目的として特定の専門語を使用した。しかしながら、記載された実施例を実施するために特定の詳細が必要とされないことは、当業者には明らかであろう。したがって、本明細書に記載された特定の実施例についての前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されたものである。これらは、網羅的であることも、実施例を開示された正確な形式に限定することも目的としていない。上記の教示を考慮して多くの修正及び変形が可能であることは、当業者には明らかであろう。例えば、本明細書で開示された方法又はプロセスについて、特定の順序で実行される特定の動作を参照して説明及び示してきたが、本開示の教示から逸脱することなく、これらの動作を組み合わせて、細分化して、又は並べ替えて、同等の方法又はプロセスを形成することができる。さらに、一実施例に関して本明細書に記載された構造、特徴、構成要素、材料、ステップ、プロセスなどは、その実施例から省略され得るか又は他の実施例に組み込まれ得る。さらに、本明細書では、「道路」という用語は、移動する車両を支持する構造体を指すために使用されているが、本明細書に記載の道路は、「道路」という用語に関連し得る、法律、規制、輸送規則などで使用され得るような定義、基準、又は要件に必ずしも準拠するわけではない。したがって、本明細書に記載の道路は、必ずしも従来の「道路」と同じ特徴及び/又は構造を提供する必要はない(実際、提供しない場合もある)。当然ながら、本明細書に記載の道路は、適用されるあらゆるすべての法律、安全規則、又は乗員、近くにいる人、オペレータ、建設業者、保守要員などの安全のための他の規則に準拠し得る。
【国際調査報告】