(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】スケーラブル量子コンピューティングのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06N 10/40 20220101AFI20230426BHJP
H10N 60/10 20230101ALI20230426BHJP
【FI】
G06N10/40
H10N60/10 K ZAA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554857
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 US2021024134
(87)【国際公開番号】W WO2021195368
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507209207
【氏名又は名称】ディー-ウェイブ システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,リチャード,ジー.
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AA00
4M113AC06
4M113AC08
4M113AC45
4M113AD02
4M113AD18
4M113AD21
(57)【要約】
超伝導回路は、4量子ビット偶数パリティスタビライザにより連通可能に結合された4つの超伝導量子ビットを含む。4量子ビット偶数パリティスタビライザは超伝導スタビライザループ及び4つのインダクタンスを含み、各インダクタンスは、4つの超伝導量子ビットのそれぞれの1つの超伝導量子ビットのインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合される。4量子ビット偶数パリティスタビライザはまた、超伝導ループへ連通可能に結合されたパリティ執行超伝導量子ビットを含む。量子プロセッサは、4量子ビット偶数パリティスタビライザにより連通可能に結合された4つのジョセフソンパラメトリック増幅器を含む。ジョセフソンパラメトリック増幅器は、複合化複合ジョセフソン接合により連通可能に結合された対の超伝導マイクロ波共振器を含む。4量子ビット偶数パリティスタビライザは、超伝導ループ、4つのジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの1つのジョセフソンパラメトリック増幅器のインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合された4つのインダクタンス、及び超伝導ループへ連通可能に結合されたパリティ執行ジョセフソンパラメトリック増幅器を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジョセフソンパラメトリック増幅器を含む超伝導回路であって:前記ジョセフソンパラメトリック増幅器は:
一対の超伝導共振器;
前記一対の超伝導共振器間で超伝導的電気的に連通可能に結合された複合化複合ジョセフソン接合;及び
前記複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合された第1の制御回路を含む、超伝導回路。
【請求項2】
前記第1の制御回路は前記複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される、請求項1に記載の超伝導回路。
【請求項3】
前記第1の制御回路は:
前記ジョセフソンパラメトリック増幅器の前記複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたアナログDC電流バイアス;
前記ジョセフソンパラメトリック増幅器の前記複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたディジタル/アナログ変換器(DAC);及び
第1のチューニング可能相互インダクタンスへ連通可能に結合された第1のマイクロ波ドライブを含み、
前記第1のチューニング可能相互インダクタンスは前記ジョセフソンパラメトリック増幅器の前記複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合される、請求項1に記載の超伝導回路。
【請求項4】
前記第1の制御回路の前記第1のチューニング可能相互インダクタンスは前記ジョセフソンパラメトリック増幅器の前記複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される、請求項3に記載の超伝導回路。
【請求項5】
前記第1の制御回路の前記アナログDC電流バイアス及び前記DACは前記ジョセフソンパラメトリック増幅器の前記複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される、請求項3に記載の超伝導回路。
【請求項6】
前記第1のチューニング可能相互インダクタンスは複合ジョセフソン接合により遮断される超伝導ループを含む、請求項3に記載の超伝導回路。
【請求項7】
前記第1の制御回路は、第1の角周波数において共振ドライブを介し及び第2の角周波数においてパラメトリックドライブを介し実効ハミルトニアンのX項及びZ項の強さを制御するように動作可能であり、前記第2の角周波数は前記第1の角周波数の2倍と時間依存デチューニング周波数との差に等しい、請求項3に記載の超伝導回路。
【請求項8】
前記超伝導回路は第2の制御回路をさらに含み、前記第2の制御回路は第2のチューニング可能相互インダクタンスへ連通可能に結合された第2のマイクロ波ドライブを含み、前記第2のチューニング可能相互インダクタンスは前記ジョセフソンパラメトリック増幅器の前記複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合される、請求項3に記載の超伝導回路。
【請求項9】
前記第2の制御回路は前記複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される、請求項8に記載の超伝導回路。
【請求項10】
前記第2の制御回路の前記第2のチューニング可能相互インダクタンスは前記ジョセフソンパラメトリック増幅器の前記複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される、請求項8に記載の超伝導回路。
【請求項11】
前記第2のチューニング可能相互インダクタンスは複合ジョセフソン接合により遮断される超伝導ループを含む、請求項8に記載の超伝導回路。
【請求項12】
前記一対の超伝導共振器の各共振器は超伝導マイクロ波共振器である、請求項1に記載の超伝導回路。
【請求項13】
前記超伝導マイクロ波共振器は同軸伝送線路共振器である、請求項12に記載の超伝導回路。
【請求項14】
前記超伝導マイクロ波共振器は、互いに直列に電気的に連通可能に結合された複数のLC回路を含むラダー回路である、請求項12に記載の超伝導回路。
【請求項15】
ディジタルプロセッサと超伝導回路とを含むハイブリッドコンピューティングシステムであって、前記超伝導回路は少なくとも1つのジョセフソンパラメトリック増幅器、共振ドライブ及びパラメトリックドライブを含む、ハイブリッドコンピューティングシステムの操作方法であって、
前記共振ドライブの第1の角周波数を前記ディジタルプロセッサにより設定すること;
前記パラメトリックドライブの第2の角周波数を前記ディジタルプロセッサにより設定することであって、前記第2の角周波数は前記第1の角周波数の2倍とデチューニング周波数との差に等しい、設定すること;及び
前記デチューニング周波数を変更することにより前記超伝導回路の実効ハミルトニアンのX項及びZ項の強さを前記ディジタルプロセッサにより制御することを含む方法。
【請求項16】
第1、第2、第3、及び第4の超伝導量子ビットを含む超伝導回路であって、前記第1、第2、第3、及び第4の量子ビットは4量子ビット偶数パリティスタビライザにより連通可能に結合される、超伝導回路。
【請求項17】
前記4量子ビット偶数パリティスタビライザは、
第1の臨界温度以下で超伝導性である材料を含む超伝導スタビライザループ;
前記超伝導スタビライザループの第1のインダクタンスであって、前記第1の超伝導量子ビットのインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合された第1のインダクタンス;
前記超伝導スタビライザループの第2のインダクタンスであって、前記第2の超伝導量子ビットのインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合された第2のインダクタンス;
前記超伝導スタビライザループの第3のインダクタンスであって、前記第3の超伝導量子ビットのインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合された第3のインダクタンス;
前記超伝導スタビライザループの第4のインダクタンスであって、前記第4の超伝導量子ビットのインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合された第4のインダクタンス;及び
前記超伝導ループへ連通可能に結合されたパリティ執行超伝導量子ビットを含む、請求項16に記載の超伝導回路。
【請求項18】
前記第1、第2、第3、第4、及びパリティ執行超伝導量子ビットのそれぞれは超伝導磁束量子ビットである、請求項17に記載の超伝導回路。
【請求項19】
前記第1、第2、第3、及び第4の超伝導磁束量子ビットのそれぞれはそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合を含む、請求項18に記載の超伝導回路。
【請求項20】
前記第1、第2、第3、及び第4の超伝導磁束量子ビットのそれぞれはそれぞれの超伝導量子ビットループを含み、前記それぞれの超伝導量子ビットループは第2の臨界温度以下で超伝導性である材料を含み;各超伝導量子ビットループはそれぞれの交差部を含む、請求項18に記載の超伝導回路。
【請求項21】
前記パリティ執行超伝導磁束量子ビットは完全電気化学的CJJ結合デバイスにより前記超伝導ループへ連通可能に結合される、請求項18に記載の超伝導回路。
【請求項22】
第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器を含む量子プロセッサであって、前記第1、第2、第3、及び第4のパラメトリック増幅器は4量子ビット偶数パリティスタビライザにより互いに連通可能に結合される、量子プロセッサ。
【請求項23】
前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれはそれぞれの対の超伝導マイクロ波共振器を含み、前記それぞれの対の超伝導マイクロ波共振器の各超伝導マイクロ波共振器は複合化複合ジョセフソン接合により互いに連通可能に結合される、請求項22に記載の量子プロセッサ。
【請求項24】
前記4量子ビット偶数パリティスタビライザは、
臨界温度以下で超伝導性である材料を含む超伝導ループであって、交差部を含む超伝導ループ;
前記超伝導ループの第1、第2、第3、及び第4のインダクタンスであって、それぞれが、それぞれのジョセフソンパラメトリック増幅器のインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合される第1、第2、第3、及び第4のインダクタンス;及び
パリティ執行ジョセフソンパラメトリック増幅器を含み、
前記パリティ執行ジョセフソンパラメトリック増幅器は前記超伝導ループへ連通可能に結合される、請求項22に記載の量子プロセッサ。
【請求項25】
前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれは、
それぞれの複合化複合ジョセフソン接合;及び
前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたそれぞれの第1の制御回路を含む、請求項23に記載の量子プロセッサ。
【請求項26】
各それぞれの第1の制御回路は、前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される、請求項25に記載の量子プロセッサ。
【請求項27】
各それぞれの第1の制御回路は:
前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたアナログDC電流バイアス;
前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたディジタル/アナログ変換器(DAC);及び
それぞれの第1のチューニング可能相互インダクタンスへ連通可能に結合されたそれぞれの第1のマイクロ波ドライブを含み、
前記それぞれの第1のチューニング可能相互インダクタンスは、前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合される、請求項25に記載の量子プロセッサ。
【請求項28】
前記それぞれの第1の制御回路の各第1の制御回路の前記それぞれの第1のチューニング可能相互インダクタンスは、前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される、請求項27に記載の量子プロセッサ。
【請求項29】
前記アナログDC電流バイアスのそれぞれ及び前記それぞれの第1の制御回路の前記DACのそれぞれは、前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される、請求項27に記載の量子プロセッサ。
【請求項30】
前記それぞれの第1のチューニング可能相互インダクタンスのそれぞれは複合ジョセフソン接合により遮断される超伝導ループを含む、請求項27に記載の量子プロセッサ。
【請求項31】
各それぞれの第1の制御回路は、第1の角周波数において共振ドライブを介し及び第2の角周波数においてパラメトリックドライブを介し実効ハミルトニアンのX項及びZ項の強さを制御するように動作可能であり、前記第2の角周波数は前記第1の角周波数の2倍と時間依存デチューニング周波数との差に等しい、請求項27に記載の量子プロセッサ。
【請求項32】
前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれはさらに、それぞれの第2の制御回路を含み、
各それぞれの第2の制御回路はそれぞれの第2のチューニング可能相互インダクタンスへ連通可能に結合されたそれぞれの第2のマイクロ波ドライブを含み、
各それぞれの第2のチューニング可能相互インダクタンスは、前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合される、請求項27に記載の量子プロセッサ。
【請求項33】
各それぞれの第2の制御回路は、前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される、請求項32に記載の量子プロセッサ。
【請求項34】
前記それぞれの第2の制御回路の各それぞれの第2チューニング可能相互インダクタンスは、前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される、請求項32に記載の量子プロセッサ。
【請求項35】
各それぞれの第2のチューニング可能相互インダクタンスは複合ジョセフソン接合により遮断される超伝導ループを含む、請求項32に記載の量子プロセッサ。
【請求項36】
前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの対の超伝導共振器の各共振器は超伝導マイクロ波共振器である、請求項23に記載の量子プロセッサ。
【請求項37】
前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの対の前記超伝導マイクロ波共振器のそれぞれは同軸伝送線路共振器である、請求項36に記載の量子プロセッサ。
【請求項38】
前記第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器の前記それぞれの対の各超伝導マイクロ波共振器は、互いに直列に電気的に連通可能に結合された複数のLC回路を含むラダー回路である、請求項36に記載の量子プロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、一般的にはスケーラブル量子コンピューティングのためのシステム及び方法に関し、特に、デバイス間の制御及び連通可能結合を提供するための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
超伝導プロセッサ
コンピュータプロセッサは、アナログプロセッサ例えば超伝導量子プロセッサなどの量子プロセッサの形式を取り得る。超伝導量子プロセッサは多数の量子ビット(例えば、2以上の超伝導量子ビット)及び関連する局所バイアスデバイスを含み得る。本システム、方法及び装置に関連し使用され得る例示的量子プロセッサのさらなる詳細と実施形態は米国特許第7,533,068号、米国特許8,195,596号、米国特許第8,190,548号及びPCT特許出願US/2009/037984号に記載されている。
【0003】
超伝導プロセッサは、量子コンピューティングを目的としないプロセッサであって例えば古典的コンピュータプロセッサの動作を律則する原理により動作するプロセッサであり得る。
【0004】
コンピューティングシステムは通常、量子プロセッサ及び/又は古典的プロセッサを含み得る。コンピューティングシステムは、量子プロセッサ及び古典的プロセッサを含むハイブリッドシステムであり得る。いくつかの実装形態では、量子プロセッサ及び古典的プロセッサの少なくとも1つは超伝導プロセッサである。
【0005】
超伝導量子ビット
超伝導量子プロセッサは超伝導量子ビットを含み得る。超伝導量子ビットは超伝導材料(例えばアルミニウム及び/又はニオブ)で超伝導集積回路内に形成され得る。
【0006】
超伝導量子ビットは、情報を量子ビットで符号化するために使用される物理的性質により分類され得る。例えば、超伝導量子ビットは電荷量子ビット、磁束量子ビット及び位相量子ビットへ分類され得る。電荷量子ビットは、情報を量子ビットの帯電状態で格納し操作し得る。磁束量子ビットは、情報を量子ビットの一部を通る磁束に関係する変数で格納し操作し得る。位相量子ビットは、情報を、量子ビットの2つの領域間の超伝導位相の差に関係する変数で格納し操作し得る。ハイブリッドデバイスは電荷、磁束及び位相自由度のうちの2つ以上を使用し得る。
【0007】
超伝導量子ビットは通常、少なくとも1つのジョセフソン接合を含む。ジョセフソン接合は、そうでなければ連続的である超伝導電流経路内の小さな遮断部であり、通常は、2つの超伝導電極間に挟まれた薄い絶縁障壁により実現される。ジョセフソン接合は3層即ち「トライレイヤ:trilayer」構造として形成され得る。超伝導量子ビットは例えば米国特許第7,876,248号、米国特許第8,035,540号及び米国特許第8,098,179号にさらに説明されている。
【0008】
超伝導磁束量子ビットのいくつかの実装形態は、少なくとも1つのジョセフソン接合により遮断される超伝導ループ(本出願では量子ビットループとも呼ばれる)を含む。いくつかの実装形態は、互いに直列及び/又は並列に接続された複数の超伝導ループを含む。いくつかの実装形態は、互いに直列又は並列に接続された複数のジョセフソン接合を含む。
【0009】
互いに並列に接続された一対のジョセフソン接合は複合ジョセフソン接合(CJJ:compound Josephson junction)と呼ばれる。CJJの振る舞いは互いに並列に接続された複数の抵抗器の振る舞いが単一実効抵抗としてモデル化され得るやり方と同様な単一実効ジョセフソン接合としてモデル化され得るということが理解される。
【0010】
構成ジョセフソン接合のうちの少なくとも1つ自体が複合ジョセフソン接合である複合ジョセフソン接合は本出願では複合化複合ジョセフソン接合(CCJJ:compound-compound Josephson junction)と呼ばれる。
【0011】
量子プロセッサのハミルトン的説明
本システム及びデバイスのいくつかの実装態様によると、量子プロセッサは断熱量子計算及び/又は量子アニーリングを行うように設計され得る。一般的ハミルトン問題は、対角単一量子ビット項に比例した第1の成分と対角多量子ビット項に比例した第2の成分とを含み、そして例えば次のように表現され得る:
【数1】
ここで、Nは量子ビットの数を表し、σ
i
zはi番目の量子ビットのパウリz行列であり、h
iは量子ビットの無次元局所場であり、J
ijは量子ビット間の結合であり、εはH
Pの固有エネルギースケールである。
【0012】
項σi
zは対角単一量子ビット項の一例であり、そして項σi
zσj
zは対角2量子ビット項の一例である。ハミルトニアンは例えば超伝導量子ビットの実装により物理的に実現され得る。
【0013】
関連技術及びそれに関連する制限の前述の例は、例示的でありしたがって排他的でないように意図されている。関連技術の他の制限は、本明細書を読みそして添付図面を研究すると当業者に明らかになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
概要
超伝導回路は、ジョセフソンパラメトリック増幅器を含むものとして要約され得、ジョセフソンパラメトリック増幅器は、一対の超伝導共振器;一対の超伝導共振器間に超伝導的電気的に連通可能に結合された複合化複合ジョセフソン接合;及び複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合された第1の制御回路を含む。
【0015】
いくつかの実装形態では、第1の制御回路は複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される。
【0016】
いくつかの実装形態では、第1の制御回路は、ジョセフソンパラメトリック増幅器の複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたアナログDC電流バイアス;ジョセフソンパラメトリック増幅器の複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたディジタル/アナログ変換器(DAC);及び第1のチューニング可能相互インダクタンスへ連通可能に結合された第1のマイクロ波ドライブを含み、第1のチューニング可能相互インダクタンスはジョセフソンパラメトリック増幅器の複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合される。いくつかの実装形態では、第1の制御回路の第1のチューニング可能相互インダクタンスは、ジョセフソンパラメトリック増幅器の複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される。いくつかの実装形態では、第1の制御回路のアナログDC電流バイアス及びDACはジョセフソンパラメトリック増幅器の複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される。いくつかの実装形態では、第1のチューニング可能相互インダクタンスは複合ジョセフソン接合により遮断される超伝導ループを含む。
【0017】
いくつかの実装形態では、第1の制御回路は、第1の角周波数において共振ドライブを介しそして第2の角周波数においてパラメトリックドライブを介し実効ハミルトニアンのX項及びZ項の強さを制御するように動作可能であり、第2の角周波数は第1の角周波数の2倍と時間依存デチューニング周波数との差に等しい。
【0018】
いくつかの実装形態では、超伝導回路は、第2のチューニング可能相互インダクタンスへ連通可能に結合された第2のマイクロ波ドライブを含む第2の制御回路をさらに含み、第2のチューニング可能相互インダクタンスはジョセフソンパラメトリック増幅器の複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合される。いくつかの実装形態では、第2の制御回路は複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される。いくつかの実装形態では、第2の制御回路の第2のチューニング可能相互インダクタンスはジョセフソンパラメトリック増幅器の複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合される。いくつかの実装形態では、第2のチューニング可能相互インダクタンスは複合ジョセフソン接合により遮断される超伝導ループを含む。
【0019】
いくつかの実装形態では、一対の超伝導共振器の各共振器は超伝導マイクロ波共振器である。いくつかの実装形態では、超伝導マイクロ波共振器は同軸伝送線路共振器である。いくつかの実装形態では、超伝導マイクロ波共振器は、互いに直列に電気的に連通可能に結合された複数のLC回路を含むラダー回路である。
【0020】
ハイブリッドコンピューティングシステムの操作方法は、ディジタルプロセッサ、少なくとも1つのジョセフソンパラメトリック増幅器を含む超伝導回路、共振ドライブ、及びパラメトリックドライブを含むことと要約され得る。本方法は、共振ドライブの第1の角周波数をディジタルプロセッサにより設定すること;パラメトリックドライブの第2の角周波数をディジタルプロセッサにより設定することであって、第2の角周波数は第1の角周波数の2倍とデチューニング周波数との差に等しい、設定すること;及びデチューニング周波数を変更することにより超伝導回路の実効ハミルトニアンのX項及びZ項の強さをディジタルプロセッサにより制御することを含む。
【0021】
超伝導回路は、第1、第2、第3、及び第4の超伝導量子ビットを含むものと要約され得、第1、第2、第3、及び第4の量子ビットは4量子ビット偶数パリティスタビライザにより連通可能に結合される。いくつかの実装形態では、4量子ビット偶数パリティスタビライザは、第1の臨界温度以下で超伝導性である材料を含む超伝導スタビライザループ;超伝導スタビライザループの第1のインダクタンスであって、第1の超伝導量子ビットのインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合された第1のインダクタンス;超伝導スタビライザループの第2のインダクタンスであって、第2の超伝導量子ビットのインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合された第2のインダクタンス;超伝導スタビライザループの第3のインダクタンスであって、第3の超伝導量子ビットのインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合された第3のインダクタンス;超伝導スタビライザループの第4のインダクタンスであって第4の超伝導量子ビットのインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合された第4のインダクタンス;及びパリティ執行(parity-enforcing)超伝導量子ビットを含み、パリティ執行量子ビットは超伝導ループへ連通可能に結合される。
【0022】
いくつかの実装形態では、第1、第2、第3、第4、及びパリティ執行超伝導量子ビットのそれぞれは超伝導磁束量子ビットである。いくつかの実装形態では、第1、第2、第3、及び第4の超伝導磁束量子ビットのそれぞれはそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合を含む。いくつかの実装形態では、第1、第2、第3、及び第4の超伝導磁束量子ビットのそれぞれはそれぞれの超伝導量子ビットループを含み、それぞれの超伝導量子ビットループは第2の臨界温度以下で超伝導性である材料を含み;各超伝導量子ビットループはそれぞれの交差部を含む。いくつかの実装形態では、パリティ執行超伝導磁束量子ビットは完全電気化学的CJJ結合デバイスにより超伝導ループへ連通可能に結合される。
【0023】
量子プロセッサは第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器を含むものと要約され得、第1、第2、第3、及び第4のパラメトリック増幅器は4量子ビット偶数パリティスタビライザにより互いに連通可能に結合される。いくつかの実装形態では、第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれはそれぞれの対の超伝導マイクロ波共振器を含み、それぞれの対の超伝導マイクロ波共振器の各超伝導マイクロ波共振器は複合化複合ジョセフソン接合により互いに連通可能に結合される。いくつかの実装形態では、4量子ビット偶数パリティスタビライザは、臨界温度以下で超伝導性である材料を含む超伝導ループ;交差部を含む超伝導ループ;超伝導ループの第1、第2、第3、及び第4のインダクタンスであって、それぞれが、それぞれのジョセフソンパラメトリック増幅器のインダクタンスへ誘導的に連通可能に結合される第1、第2、第3、及び第4のインダクタンス;及びパリティ執行ジョセフソンパラメトリック増幅器を含み、パリティ執行ジョセフソンパラメトリック増幅器は超伝導ループへ連通可能に結合される。いくつかの実装形態では、第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれは、それぞれの複合化複合ジョセフソン接合、及び第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたそれぞれの第1の制御回路を含む。各それぞれの第1の制御回路は、第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合され得る。各それぞれの第1の制御回路は、第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたアナログDC電流バイアス、第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたディジタル/アナログ変換器(DAC)、及び第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合されたそれぞれの第1のチューニング可能相互インダクタンスへ連通可能に結合されたそれぞれの第1のマイクロ波ドライブを含み得る。それぞれの第1の制御回路の各第1の制御回路のそれぞれの第1のチューニング可能相互インダクタンスは、第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合され得る。アナログDC電流バイアスのそれぞれ及びそれぞれの第1の制御回路のDACのそれぞれは、第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合され得る。それぞれの第1のチューニング可能相互インダクタンスのそれぞれは複合ジョセフソン接合により遮断される超伝導ループを含み得る。各それぞれの第1の制御回路は、第1の角周波数において共振ドライブを介しそして第2の角周波数においてパラメトリックドライブを介し実効ハミルトニアンのX項及びZ項の強さを制御するように動作可能であり得、第2の角周波数は第1の角周波数の2倍と時間依存デチューニング周波数との差に等しい。第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれはさらに、それぞれの第2の制御回路を含み得、各それぞれの第2の制御回路はそれぞれの第2のチューニング可能相互インダクタンスへ連通可能に結合されたそれぞれの第2のマイクロ波ドライブを含み、各それぞれの第2のチューニング可能相互インダクタンスは、第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ連通可能に結合される。各それぞれの第2の制御回路は、第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合され得る。それぞれの第2の制御回路の各それぞれの第2のチューニング可能相互インダクタンスは、第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの複合化複合ジョセフソン接合へ誘導的に連通可能に結合され得る。各それぞれの第2のチューニング可能相互インダクタンスは複合ジョセフソン接合により遮断される超伝導ループを含み得る。第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの対の超伝導共振器の各共振器は超伝導マイクロ波共振器であり得る。第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの対の超伝導共振器内の超伝導マイクロ波共振器のそれぞれは同軸伝送線路共振器であり得る。第1、第2、第3、及び第4のジョセフソンパラメトリック増幅器のそれぞれの対の超伝導共振器内の各超伝導マイクロ波共振器は、互いに直列に電気的に連通可能に結合された複数のLC回路を含むラダー回路であり得る。
【0024】
図面のいくつかの図の簡単な説明
添付図面では、同一参照符号は同様の素子又は行為を識別する。添付図面内の素子の寸法及び相対位置は必ずしも原寸に比例して描かれていない。例えば、様々な素子の形状及び角度は必ずしも原寸に比例して描かれていなく、これらの素子のいくつかは図面読み易さを改善するために任意に拡大され位置決めされ得る。さらに、描かれる素子の特定形状は、特定素子の実際の形状に関するいかなる情報も伝えるように必ずしも意図されていなく、添付図面における認識の容易さのためにもっぱら選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】4量子ビット偶数パリティスタビライザの例示的実装形態の概略図である。
【
図1B】4量子ビット偶数パリティスタビライザの別の例示的実装形態の概略図である。
【
図2】
図1Bの4量子ビットスタビライザを含む回路の例示的実装形態の概略図である。
【
図3】ジョセフソンパラメトリック増幅器(JPA:Josephson parametric amplifier)の例示的実装形態の概略図である。
【
図4】量子アニーリングプラットホームを構築するために使用され得るビルディングブロックの例示的実装形態の概略図である。
【
図5】量子アニーリングプラットホームを構築するために使用され得るビルディングブロックの別の例示的実装形態の概略図である。
【
図6】スケーラブル制御バイアスを有するスケーラブルJPAを含む回路の例示的実装形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
以下の説明では、いくつかの特定詳細が、様々な開示実装形態の完全な理解を提供するために説明される。しかし、当業者は、実装形態がこれらの特定詳細のうちの1つ又は複数の特定詳細無しに、又は他の方法、部品、材料等により実現され得るということを認識することになる。他の事例では、コンピュータシステム、サーバコンピュータ、及び/又は通信ネットワークに関連する周知の構造は、実装形態の説明を不必要に曖昧にしないように図示又は説明されなかった。
【0027】
文脈が必要としない限り、以下の本明細書と特許請求の範囲とを通じて、用語「含む:comprising」は、「含む:including」と同義であり、包括的又は開放的である(すなわち、追加、非列挙素子又は方法行為を排除しない)。
【0028】
本明細書全体にわたる「一実装形態」又は「実装形態」への参照は、当該実装形態に関連して説明される特定の機能、構造、又は特徴が少なくとも1つの実装形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所における語句「一実装形態では」又は「実装形態では」の出現は、必ずしもすべてが同じ実装形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実装形態では任意の好適なやり方で組み合わせられ得る。
【0029】
本明細書と添付特許請求の範囲とにおいて使用されるように、単数形式の冠詞及び不定冠詞は、文脈が明らかに規定しない限り、複数の参照物を含む。用語「又は」は文脈が別途明確に規定しない限り「及び/又は」を含む意味で概して採用されるということにも留意すべきである。
【0030】
本明細書に提供される開示の標題及び要約書は便宜のためだけのものであって、実装形態の範囲又は意味を解釈するものではない。
【0031】
スケーラブル結合
多量子ビット相互作用は2局所相互作用を含み得る。多量子ビット相互作用はまたk局所相互作用を含み得る。ここでk>2。
【0032】
量子アニーリングに好適な1つのアーキテクチャは、例えばLechner W. et al., A QUANTUM ANNEALING ARCHITECTURE WITH ALL-TO-ALL CONNECTIVITY FROM LOCAL INTERACTIONS, Sci. Adv. 2015;1:e1500838(本出願ではLHZアーキテクチャ及びLHZ方式と様々に呼ばれる)において説明されている。4局所結合デバイス(例えば4つの論理量子ビット間の連通可能結合を提供する非線形結合デバイス)の直接的実装は挑戦的であり得る。例えば、4局所結合デバイスを使用することにより量子ビット相互作用をチューニングする行為は困難であるということが判り得、そして実現可能な相互作用エネルギーの大きさは実際には、望む大きさより弱くなり得る。
【0033】
4量子ビット偶数パリティスタビライザを実装するための1つの手法は1つ又は複数の補助量子ビットを使用することである。離散化された2局所結合及び1局所バイアスの空間にわたる探索は、縮退基底状態である8つの可能な偶数パリティ論理量子ビット状態を生じる構成を明らかにし得る。
【0034】
図1Aは4量子ビット偶数パリティスタビライザ100aの例示的実装形態の概略図である。スタビライザ100aは4量子ビット偶数パリティスタビライザの6量子ビット実装形態の例示的構成である。
【0035】
スタビライザ100aは4つの論理量子ビット102、104、106、108を含む。いくつかの実装形態では、論理量子ビット(例えば論理量子ビット102、104、106、108のうちの1つ)は、2つ以上の物理的量子ビットと、物理的量子ビット間の少なくとも1つの連通可能結合デバイスとを含む。
【0036】
スタビライザ100aは2つの補助量子ビット110、112を含む。補助量子ビット110、112は偶数パリティを執行することに寄与し得る。
【0037】
スタビライザ100aは、+1又は-1のいずれかである2局所相互作用を使用することにより実装され得る。8重縮退基底状態と第1の励起状態との間のエネルギー間隔は例えば値2を取り得る。
【0038】
図1Aでは、量子ビット間の強磁性結合は実線により指示され、量子ビット間の反強磁性結合は点線により指示される。
【0039】
スタビライザ100aは、論理量子ビット102、104間の強磁性(FM:ferromagnetic)結合114、論理量子ビット104、106間の反強磁性(AFM:anti-ferromagnetic)結合116、論理量子ビット106、108間の反強磁性(AFM)結合118、及び論理量子ビット108、102間のFM結合120を含む。スタビライザ100aは、補助量子ビット112と論理量子ビット102との間のFM結合122、及び補助量子ビット112と論理量子ビット104、106、108のそれぞれとの間のAFM結合124、126、128を含む。スタビライザ100aは、補助量子ビット110と論理量子ビット102との間のFM結合130、及び補助量子ビット110と論理量子ビット104、106、108のそれぞれとの間のAFM結合132、134、136を含む。スタビライザ100aはまた、補助量子ビット110、112間のFM結合138を含む。スタビライザ100aはまた、論理量子ビット102、106間のFM結合140を含む。
【0040】
図1Bは4量子ビット偶数パリティスタビライザ100bの別の例示的実装形態の概略図である。スタビライザ100bは4つの論理量子ビット142、144、146、148を含む。スタビライザ100bは
図1Aのスタビライザ100aのより単純な実装形態である。スタビライザ100bにおいて、
図1Aの補助量子ビット110、112は単一補助量子ビット150により置換される。
【0041】
図1Bでは、量子ビット間の強磁性結合は実線により指示され、量子ビット間の反強磁性結合は点線により指示される。
【0042】
スタビライザ100bは、論理量子ビット142、144間の強磁性(FM)結合152、論理量子ビット144、146間及び146、148間の反強磁性(AFM)結合154及び156それぞれ、及び論理量子ビット148、142間のFM結合158を含む。スタビライザ100bは、論理量子ビット144、148間のAFM結合160及び論理量子ビット142、146間のFM結合162を含む。
【0043】
スタビライザ100bは、補助量子ビット150と論理量子ビット142との間のFM結合164、及び補助量子ビット150と論理量子ビット144、146、148それぞれとの間のAFM結合166、168、170を含む。
【0044】
図1Bに示す例示的実装形態では、補助量子ビット150と論理量子ビット142、144、146、148のそれぞれとの間の結合164、166、168、170の強さはそれぞれ、
図1Aの補助量子ビット110、112のそれぞれと論理量子ビットの102、104、106、108との間の結合の2倍の強さ、そして論理量子ビット142、144、146、148のそれぞれの対間の結合152、154、156、158、160、162の各結合の2倍の強さである。
【0045】
結合の強さは結合を表す線の太さにより
図1Bに示される。例えば、結合164を表す線は結合152を表す線の太さの2倍である。
【0046】
図1Bのスタビライザ100bの相互作用ハミルトニアンは以下のように表現され得る:
【数2】
ここで、ξ(1)=-1、そうでなければξ(i)=+1。
【0047】
量子ビット及び4量子ビットスタビライザを有する回路
LHZアーキテクチャの欠点は、アーキテクチャの実用的実装形態が論理量子ビット間の高い接続性を必要し得るということである。例えば、4量子ビットスタビライザ(例えば
図1Bのスタビライザ100b)を有する論理量子ビットの2次元正方格子では、各論理量子ビットは、論理量子ビット当たり合計12個の結合のために、4つの最近隣量子ビット、4つの次の最近隣量子ビット、及び4つの補助量子ビットへ連通可能に結合され得る。
【0048】
論理量子ビット間の必要接続性を低減するいくつかのやり方がある。
図1Bを参照すると、論理量子ビット142、144、146、148間の結合及び補助量子ビット150と論理量子ビット142、144、146、148との間の結合は大きさが対称であり得る。そうであれば、論理量子ビット142、144、146、148と補助量子ビット150とは、対結合を実現するために単一線形結合デバイスにより連通可能に結合され得る。
【0049】
図2は
図1Bの4量子ビットスタビライザ100bを含む回路200の例示的実装形態の概略図である。回路200では、4つの論理量子ビット202、204、206、208と補助量子ビット210とが、対結合を実現するために単一線形結合デバイス212により連通可能に結合される。
【0050】
論理量子ビット202、204、206、208のそれぞれは超伝導ループ214、216、218、220をそれぞれ含む。超伝導ループ214、216、218、220のそれぞれは、臨界温度以下で超伝導性である材料を含む。
【0051】
超伝導ループ214、216、218、220のそれぞれは交差部222、224、226、228をそれぞれ含む。回路200の交差状配置では、交差部222、224、226、228は、論理量子ビット202との相互作用の符号を論理量子ビット204、206、208と補助量子ビット210との間の相互作用の符号に対して変更し得る。
【0052】
超伝導ループの一部の180°面外回転によりトポロジー的に形成された超伝導ループは、本出願では交差部付き超伝導ループと呼ばれる。交差部の一方の側の超伝導ループを通る電流はループ周囲を時計回り方向に流れ、交差部の他方の側の超伝導ループを通る電流はループ周囲を反時計回り方向に流れる。互いに交差する超伝導ループの2つのセグメントは交差部において互いに電気化学的に絶縁される。
【0053】
システムのハミルトン相互作用は以下のように表現され得る:
【数3】
結合デバイスが感受性X
1
cを有する線形性であると仮定すると、結合デバイスの永久電流演算子は以下のように表現され得る:
【数4】
ここで、
【数5】
はi番目量子ビットの永久電流演算子である。これらの式を組み合わせることにより、ハミルトン相互作用
【数6】
は以下のように表現され得る:
【数7】
以下の値を選択することで所望結果を達成し得る:
-M
c1=M
c2=M
c3=M
c4≡M
cq>0
及び
M
cp│I
p
p│=2M
cq│I
q
p│
【0054】
図2を再び参照すると、超伝導ループ214、216、218、220のそれぞれは、複合化複合ジョセフソン接合(CCJJ)230、232、234、236によりそれぞれ遮断される。
【0055】
図2の例示的実装形態では、補助量子ビット210(本出願ではパリティ執行量子ビットとも呼ばれる)は完全電気化学的CJJ結合デバイスにより結合デバイス212へ連通可能に結合される。他の実装形態では、補助量子ビット210は異なる種類の量子ビットである。他の実装形態では、補助量子ビット210は、結合デバイス212との異なる形式の連通可能結合を有する。
【0056】
プローブ量子ビットの説明に関しては例えば米国特許第10,068,180号を参照。電気化学的CJJ結合デバイスの説明に関しては例えば国際PCT公開番号国際公開第2019126396A1号を参照。
【0057】
回路200は、論理量子ビット当たり4つの(4)結合だけによりLHZアーキテクチャを生成するためにタイル化され得る。
【0058】
4ビットパリティ執行器を使用する回路(
図2の回路200など)は、従来の4局所相互作用を使用する回路を上回る利点を有し得る。例えば、4ビットパリティ執行器は、従来の4局所相互作用より強い実効4局所相互作用を有するように構成された一組の2局所相互作用を使用することにより実装され得る。
【0059】
ジョセフソンパラメトリック増幅器
例えば回路のリアクタンスを正弦波的に変更することにより高周波入力信号を増幅するデバイスであるパラメトリック増幅器が通常、当該技術分野において使用される。縮退パラメトリック増幅器は、過剰雑音を導入することなく信号の同相成分及び直角成分の1つを増幅し得る(少なくとも原理的に)位相感知増幅器である。パラメトリック増幅器はジョセフソン接合の非線形インダクタンスに基づき得る。パラメトリック増幅器のアプリケーションは、超伝導回路を使用する量子情報処理の分野における量子限定(quantum-limited)増幅を含み得る。
【0060】
ジョセフソンパラメトリック増幅器は、DC SQUID(超伝導量子干渉デバイス:Superconducting Quantum Interference Device)により終端される超伝導伝送線路共振器を含み得る。
【0061】
一手法では、ポンプ(本出願ではドライブとも呼ばれる)が、ジョセフソン接合を通る電流を直接変調するために使用される。別の手法(例えばT. Yamamoto et al., FLUX-DRIVEN JOSEPHSON PARAMETRIC AMPLIFIER, arXiv: 0808.1386v参照)では、ポンプは、DC SQUIDを通る磁束を変調するために使用される。超伝導伝送線路共振器の共振周波数はDC SQUIDへも印可されるDC磁束により制御され得る。ポンプ及び入力信号は様々なポートへ印可され、そしてポンプ周波数は共振周波数の2倍であるので、ポンプから出力信号を分離することは非常に簡単であり得る。
【0062】
図3はジョセフソンパラメトリック増幅器300の例示的実装形態の概略図である。JPA300はDC SQUID 304により終端される超伝導伝送線路共振器302を含む。ポンプ306はDC SQUID 304を通る電流を変調するために使用される。
【0063】
入力信号308が超伝導伝送線路共振器302のポート310へ印可され得る。出力信号312が超伝導伝送線路共振器302のポート310において提供され得る。超伝導伝送線路共振器302はインダクタンス314a、314b、314c及び容量316a、316b、316cを含み、各対のインダクタンス及び容量(例えばインダクタンス314a及び容量316aで形成された対)がLC回路を形成する。超伝導伝送線路共振器302は直列の追加LC回路(
図3に示さず)を含み得る。
【0064】
DC SQUID 304は複合ジョセフソン接合(CJJ)318(点線を使用することにより
図3に示される)を含む。CJJ318はジョセフソン接合320a、320bを含む。ジョセフソン接合320a、320bのそれぞれはそれぞれの固有容量を有し得る(
図3に示すように、但し明瞭性のために
図3では言及されない)。
【0065】
超伝導伝送線路共振器302はさらに結合容量322を含む。
【0066】
JPAを使用する量子アニーリングプラットホーム
Ising問題は2光子駆動Kerr非線形共振器(本出願ではKNRとも呼ばれる)のネットワーク内でコード化され得る。単一Isingスピンは、駆動周波数で回転するフレーム内に2光子駆動KNRの2倍縮退固有空間を構成し得る反対位相を有する2つのコヒーレント状態へマッピングされ得る。
【0067】
量子アニーラの1つの回路量子電気力学(QED:quantum electrodynamics)実装形態では、KNRは、磁束ポンピング型SQUID(超伝導量子干渉デバイス)により終端される超伝導マイクロ波共振器として実現される。磁束ポンピング型SQUIDの非線形インダクタンスはKerr非線形性を誘起し得、そして2光子ドライブは、超伝導マイクロ波共振器の共振周波数の2倍周波数において磁束ポンピング型SQUIDを磁束ポンピングすることにより生成され得る。
【0068】
ジョセフソンパラメトリック増幅器(JPA)は磁束ポンピング型SQUIDにより終端される超伝導マイクロ波共振器として同様に実現され得るので、この文脈では、KNRはJPAと等価であると考えられ得る。一実装形態では、JPAのSQUIDループは、チューニング可能振幅及び周波数を有する磁束ポンプにより駆動される。
【0069】
いくつかの回路実装形態では、KNRのネットワークは、対線形結合を使用することにより構築され得るが、単一サイトドライブだけを依然として必要とする。
【0070】
当該のいくつかの最適化問題は多数のIsingスピン間の制御可能長距離相互作用を使用することにより表され得るがハードウエア実装形態で実現するためには挑戦的課題であり得る。長距離相互作用は、本出願では問題グラフの非隣接ノード間の相互作用を指す。1つの手法は、局所相互作用だけによりIsing問題をグラフ上へマッピングし得る方式(本出願ではLHZ方式と呼ばれる)を使用することである。LHZ方式の説明に関しては、例えばLechner W. et al., A QUANTUM ANNEALING ARCHITECTURE WITH ALL-TO-ALL CONNECTIVITY FROM LOCAL INTERACTIONS, Sci. Adv. 2015;1:e1500838を参照。
【0071】
LHZ方式は、例えば物理的スピンを2光子駆動KNRの固有基底(eigenbasis)内に埋め込むことにより実施され得る(固有基底は固有ベクトルからなるベクトル空間の基底である)。上述のように、KNRは磁束ポンピング型SQUIDにより終端される超伝導マイクロ波共振器として実現され得る。
【0072】
S. Puri et al., QUANTUM ANNEALING WITH ALL-TO-ALL CONNECTED NONLINEAR OSCILLATORS, Nature Communications (2017)は、ジョセフソン接合(JJ)により結合される4つのJPAを含む例示的物理的実現を説明する。JJの非線形性は4つのJPA間の4体結合(four-body coupling)を誘起し得る。
【0073】
量子アニーリングプラットホームは、例えば単一ジョセフソン接合(JJ)を介し相互作用する4つのJPAのグループから構築され得る。グループ内の各JPAは、グループ内の他の3つのJPAに対し異なる共振周波数を有し得る。4つのJPA及び結合JJの各グループは本出願ではビルディングブロックと呼ばれる。
【0074】
図4は量子アニーリングプラットホームを構築するために使用され得るビルディングブロック400の例示的実装形態の概略図である。ビルディングブロック400はJJ410により連通可能に結合された4つのJPA402、404、406、408を含む。
【0075】
JPA402は複合ジョセフソン接合(CJJ)420により連通可能に結合された2つの結合容量412、414及び2つの共振器416、418を含む。JPA404はCJJ430により連通可能に結合された2つの結合容量422、424及び2つの共振器426、428を含む。JPA406はCJJ440により連通可能に結合された2つの結合容量432、434及び2つの共振器436、438を含む。JPA408はCJJ450により連通可能に結合された2つの結合容量442、444及び2つの共振器446、448を含む。
【0076】
JPA及び4つの量子ビットスタビライザを有する回路
図2の回路200は超伝導磁束量子ビットを使用するLHZアーキテクチャの実装形態を示すが、JPAは超伝導磁束量子ビットの代わりに使用され得る。
【0077】
図5は量子アニーリングプラットホームを構築するために使用され得るビルディングブロック500の別の例示的実装形態の概略図である。ビルディングブロック500は4つのJPA502、504、506、508を含み、補助JPA510は対結合を実現するために単一線形結合デバイス512により連通可能に結合される。結合デバイス512は超伝導ループ514を含む。超伝導ループ514は臨界温度以下で超伝導である材料を含む。超伝導ループ514は交差部516を含む。
【0078】
JPA502は複合化複合ジョセフソン接合(CCJJ)522により連通可能に結合された2つの共振器518、520を含む。JPA504はCCJJ528により連通可能に結合された2つの共振器524、526を含む。JPA506はCCJJ534により連通可能に結合された2つの共振器530、532を含む。JPA508はCCJJ540により連通可能に結合された2つの共振器536、538を含む。
【0079】
結合デバイス512は、それぞれが4つのJPAのそれぞれの1つへ誘導的に連通可能に結合される4つの誘導性インターフェース542、544、546、548を含む。誘導性インターフェース542、544、546、548は
図5の例示的実装形態では変圧器として示される。各変圧器は一対のインダクタンス(すなわち超伝導ループ514を遮断する1つのインダクタンス、及びJPAの共振器のうちの1つの共振器(例えばJPA502の共振器520)とJPAのCCJJのうちの1つのCCJJ(例えばJPA502のCCJJ522)との間で電気的に連通可能に結合された別のインダクタンス)を含む。JPA内のJPAの概して中央近くである位置(それぞれの電流プロファイルが最強である又は少なくともより強い)に結合デバイス512と各JPAとの間の誘導結合を有することが有益であり得る。
【0080】
別の実施形態では、誘導性インターフェース542、544、546、548は、超伝導ループ514を遮断する1つのインダクタンスと共振器のうちの1つの共振器(例えばJPA502の共振器520)の同軸伝送線路の内部導体の別のインダクタンスとを含む。
【0081】
補助JPA510は複合化複合ジョセフソン接合(CCJJ)554により連通可能に結合された2つの共振器550、552を含む。
図5の例示的実装形態では、補助JPA510(本出願ではパリティ執行JPAとも呼ばれる)は誘導性インターフェース556により結合デバイス512へ連通可能に結合される。他の実装形態では、補助JPA510は、結合デバイス512と連通可能に結合する異なる形式を有する。
【0082】
スケーラブルJPA制御
大規模量子アニーリングプラットホームを実現するために、本出願に説明されるようなスケーラブル制御バイアスを有するスケーラブルJPAを実装することが有益であり得る。本出願において説明されるシステム及び方法はまた、有利には、複合ジョセフソン接合(CJJ)又は複合化複合ジョセフソン接合(CCJJ)(互いに平行に配置された一対のCJJを含む)によりJPAを結合する単一ジョセフソン接合(例えば
図4のJJ410)を置換することを含み得る。
【0083】
CCJJは、製作時の変動の存在に対しより頑強であり得、そして必要に応じ構成CJJ間に接合非対称性を導入するようにチューニングされ得る。CCJJの各CJJは、例えばアナログDC電流バイアスとDAC(ディジタルアナログ変換器)により供給されるバイアスとの組み合わせによりバイアスされ得る。
【0084】
JPAの超伝導マイクロ波共振器の共振周波数はアナログDC電流バイアスとDACにより供給されるバイアスとの組み合わせを使用することによりチューニングされ得る。
【0085】
本出願において説明されるシステム及び方法はa)実効ハミルトニアンのX及びZ項の強さを制御するように動作可能な回路、及びb)例えば較正中のJPAの分光測定を容易にするように動作可能な回路を含む。
【0086】
本出願において説明されるシステム及び方法はJPAのスケーラブル結合を含む。
【0087】
図6はスケーラブル制御バイアスを有するスケーラブルJPAを含む回路600の例示的実装形態の概略図である。回路600は結合容量602、604を含む。回路600内の容量602、604を結合する場所はまた、どこで他のデバイス及び/又は回路が回路600へ連通可能に結合され得るかを指示する。
【0088】
回路600はJPA606を含む。JPA606は共振器608、610及び複合化複合ジョセフソン接合(CCJJ)612を含む。共振器608、610は両方ともCCJJ612へ連通可能に結合される。共振器608、610のそれぞれは、互いに直列に電気的に連通可能に結合された2つ以上のそれぞれのLC回路(例えばLC回路614、
図6では明瞭性のためにただ1つが言及される)を含む。LC回路614は、インダクタンス616と、アース端子620へ電気的に連通可能に結合されたコンデンサ618とを含む。
【0089】
回路600は制御回路622(本出願ではCNTL-XZ622とも呼ばれる)を含む。CNTL-XZ622は、角周波数ωp=2ωr-δ0(t)及びωrそれぞれにおいてパラメトリックドライブ及び共振ドライブを介し実効ハミルトニアンのX項及びZ項の強さを制御するために使用され得る。関数δ0(t)は本出願ではデチューニング関数と呼ばれ、そして時間の関数であり得る。デチューニング関数は、共振器を「共振外れ」にし得る。例えば、共振器はアニーリング中に共振状態に持ってこられ得る。デチューニング関数はアニーリングスケジュールを定義し得る。デチューニング関数は単調関数であっても非単調関数であってもよい。
【0090】
図2のJPA202のCJJ220は有利には
図6の回路600内のCCJJ612により置換される。CCJJ612は、a)構成ジョセフソン接合の製作時の変動を補償するように、そしてb)回路600の動作及び/又は較正のために必要に応じ接合非対称性を意図的に導入するように使用され得る。
【0091】
CCJJ612は、第1の対の誘導性インターフェース626、628によるアナログDC電流バイアス624と第2の対の誘導性インターフェース632、634によるディジタル/アナログ変換器(DAC)630との組み合わせによりチューニングされ得る。
【0092】
マイクロ波ドライブ636はチューニング可能相互インダクタンス638を介しCCJJ612へ連通可能に結合される。チューニング可能相互インダクタンス638はCJJ642により遮断される超伝導ループ640を含む。チューニング可能相互インダクタンス638は、マイクロ波ドライブ636への誘導性インターフェース644とCCJJ612への第3の対の誘導性インターフェース646、648とを有する。
【0093】
いくつかの実装形態では、第1の対の誘導性インターフェース626、628、第2の対の誘導性インターフェース632、634及び第3の対の誘導性インターフェース646、648の各対はそれぞれの単一誘導性インターフェース(本出願では変圧器とも呼ばれる)により置換され得る。単一誘導性インターフェースよりむしろ一対の誘導性インターフェースを有する利点は、一対の誘導性インターフェースがCCJJ612に対し鏡面対称であり得るということである。
【0094】
いくつかの実装形態では、第1の対の誘導性インターフェース626、628、第2の対の誘導性インターフェース632、634及び第3の対の誘導性インターフェース646、648の少なくとも一対はCCJJ612に対して鏡面対称である。一対の誘導性インターフェースにおける誘導性インターフェースの鏡面対称は、不平衡位相及び/又は意図せぬバイアスの大きさを削除又は少なくとも低減し得る。
【0095】
チューニング可能相互インダクタンス638の機能は、マイクロ波ドライブ636と標的デバイスとの間の結合強度のデバイス毎調整を容易にすることである。デバイス毎調整は有利には、製作及び/又はインピーダンス不整合時の変動を補償するために使用され得る。チューニング可能相互インダクタンス638は、CJJ642へ適用されるアナログ電流バイアスとDAC(
図6に示さず)により供給されるバイアスとの組み合わせを有し得る。
【0096】
回路600は制御回路650(本出願ではCNTL-Xとも呼ばれる)を含む。CNTL-Xは、インターフェース658を介しCCJJ612へ誘導結合されるチューニング可能相互インダクタンス656へインターフェース654を介し誘導結合されたマイクロ波ドライブ652を含む。チューニング可能相互インダクタンス656はCJJ660を含む。チューニング可能相互インダクタンス656は、CJJ660へ適用されるアナログ電流バイアスとDAC(
図6に示さず)により供給されるバイアスとの組み合わせを有し得る。
【0097】
上述の方法、処理、又は技術は1つ又は複数の非一時的プロセッサ可読媒体上に格納される一連のプロセッサ読み取り可能命令により実施される可能性がある。上述の方法、処理、又は技術方法のいくつかの例は、その動作をプログラム又はそうでなければ制御する断熱量子コンピュータ又は量子アニーラ又はシステムなどの特殊デバイス(例えば少なくとも1つのディジタルプロセッサを含むコンピュータ)により部分的に行われる。上述の方法、処理、又は技術は様々な行為を含み得るが、当業者は、代替例ではいくつかの行為が省略され得る及び/又は追加行為が加えられ得るということを認識することになる。当業者は、行為の示された順序は、例示的目的のためだけに示されており、代替例においては変わり得るということを認識することになる。上述の方法、処理、又は技術の例示的行為又は操作のいくつかは反復的に行われる。上述の方法、処理、又は技術のいくつかは各反復中に、複数の反復後に、又はすべての反復の終わりに行われ得る。
【0098】
要約書に記載のものを含む示された実装形態の上記説明は、網羅的であるように意図されていない、又は実装形態を開示された精密な形式に限定するように意図されていない。特定実装形態及び例は例示目的のために本明細書では説明されるが、当業者により認識されるように本開示の精神と範囲から逸脱することなく様々な同等の修正がなされ得る。様々な実装形態の本明細書において提供される教示は、上に一般的に説明された量子計算の例示的方法に必ずしも適用されるのではなく、量子計算の他のシステム、方法に適用され得る。
【0099】
上述の様々な実装形態は別の実装形態を提供するために組み合わせられ得る。本明細書において参照された及び/又はアプリケーションデータシート内に列挙された共通して移譲された限定しないが2020年3月27日申請の米国特許出願公開第63/001,014号を含む米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、及び外国特許出願のすべてはその全体を参照により本明細書に援用する。
【0100】
これら及び他の変更は上記詳細説明に照らし上記実装形態に対しなされ得る。一般的に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は特許請求の範囲を本明細書と特許請求の範囲に開示された特定の実装形態に限定するものと解釈すべきではなく、このような特許請求の範囲の権利を付与される等価物の全範囲と共にすべての可能な実装形態を含むように解釈されるべきである。したがって、本特許請求の範囲は本開示により制限されない。
【国際調査報告】