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特表2023-518732エチレンコポリマー、及びエチレンコポリマーを製造するための触媒組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】エチレンコポリマー、及びエチレンコポリマーを製造するための触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/18 20060101AFI20230426BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
C08F210/18
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555818
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2021056489
(87)【国際公開番号】W WO2021185737
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】20163397.1
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20163685.9
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511242409
【氏名又は名称】アランセオ・ネザーランズ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラファエレ・ベルナルド
(72)【発明者】
【氏名】ヘラルドゥス・ファン・ドレマーレ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウテル・ファン・メーレンドンク
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・ヴィントミュラー
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AS15R
4J100AS15S
4J100CA06
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA19
4J100FA04
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA41
4J128AA02
4J128AB01
4J128AC10
4J128AC28
4J128AD02
4J128AD06
4J128AD11
4J128AD13
4J128AD16
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC15B
4J128EA02
4J128EB02
4J128EB04
4J128EB18
4J128EC07
4J128ED01
4J128ED02
4J128ED06
4J128ED09
4J128EF03
4J128EF06
4J128FA02
4J128FA08
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA06
4J128GA16
4J128GA26
(57)【要約】
エチレンと、少なくとも1つのC~C20-α-オレフィンと、少なくとも1つの非共役ジエンと、少なくとも1つの二重重合性ジエンとから誘導される繰り返し単位を含むコポリマーであって、上記コポリマーが、(i)≦0.5の強度比Dを有し、(ii)分子量分布(MWD)≧Rであり、ここで、Rは、コポリマーの分岐指数g’(III)に依存し、g’(III)が≦0.90の場合、Rは-27.7×g’(III)+29.2であり;g’(III)が>0.90及び0.99以下の場合、Rは4.3である、コポリマーを提供する。このようなコポリマーを製造するための、少なくとも2つの異なる金属錯体を含む触媒組成物、上記触媒組成物の製造方法、上記コポリマーの製造方法、及び上記コポリマーを用いて得られる物品も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレン、
(b)少なくとも1つのC~C20α-オレフィン、
(c)少なくとも1つの二重重合性ジエン、
(d)前記二重重合性ジエン以外の6~30個の炭素原子を有する少なくとも1つの非共役ジエン
から誘導される繰り返し単位を含むコポリマーであって、
前記コポリマーが、
(i)C13-NMR分光法によって測定して0.5以下の強度比Dと、
(ii)5°~50°の分岐指数Δδ(ここで、Δδは、125℃における動的機械分析(DMA)によって、0.1rad/sの周波数で測定される位相角δと、100rad/sの周波数で測定される位相角δとの間の差である)と;
(iii)0.50~0.99の間の分岐指数g’(III)と、
(iv)R以上である分子量分布(MWD)(ここで、Rは前記コポリマーの分岐指数g’(III)に依存し、g’(III)が0.90以上である場合、Rは-27.7×g’(III)+29.2であり;g’(III)が0.90を超えて0.99までの場合、Rは4.3である)と、
を有し、
g’(III)及び前記分子量分布は、ゲル浸透サイズ排除クロマトグラフィーによって求められ、
前記コポリマーは、30重量%~85重量%までのエチレンから誘導される単位と、5~80重量%のC~C20α-オレフィンから誘導される単位と、2重量%~20重量%の前記二重重合性ジエン以外の非共役ジエンから誘導される単位とを含み、前記重量%は、100重量%である前記コポリマーの全重量を基準としており、
前記少なくとも1つの二重重合性ジエンが、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロペンタン、1,5-ジビニルシクロオクタン、1-アリル-4-ビニルシクロヘキサン、1,4ジアリルシクロヘキサン、1-アリル-5-ビニルシクロオクタン、1,5-ジアリルシクロオクタン、1-アリル-4-イソプロペニル-シクロヘキサン、1-イソプロペニル-4-ビニルシクロヘキサン及び1-イソプロペニル-3-ビニルシクロペンタン、ジシクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、2,5-ノルボルナジエン、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、コポリマー。
【請求項2】
g’(III)が、0.70~0.98又は0.80~0.97であり、位相角差Δδが、5°~35°の間、好ましくは10°~30°の間であることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
前記MWDが、4.5~50の間であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
前記強度比Dが、0.02~0.4までの範囲内である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記C~C20α-オレフィンが、プロピレンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
6~30個の炭素原子を有する前記非共役ジエンが、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、及びそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項7】
2重量%~6.7重量%の非共役ジエンから誘導される単位を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記少なくとも1つのC~C20-α-オレフィンが、プロピレンを含み、前記少なくとも1つの非共役ジエンが、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)を含み、前記少なくとも1つの二重重合性ジエンモノマーが、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項9】
前記少なくとも1つの二重重合性ジエンが、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)を含み、VNBから誘導される単位の含有量が、0.05重量%~5重量%又は0.5重量%~5重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項10】
第1の金属錯体及び第2の金属錯体を用いる重合によって得られる請求項1~9のいずれか一項に記載のコポリマーであって、
前記第1の金属錯体が、式(1):
CyLMZ (1)
に対応し、
式中、
Cyは、ハロゲンと、1~20個の炭素原子を含む芳香族又は脂肪族の直鎖又は分岐又は環状の残基と、からなる群から好ましくは選択される1つ以上の置換基を含んでいてよい、シクロペンタジエニル配位子であり;
Mは、チタン、ハフニウム、又はジルコニウムから選択され;
Zは、ハロゲン、C1~10アルキル基、C7~20アラルキル基、C6~20アリール基、C1~20炭化水素で置換されたアミノ基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;
pは、1又は2、好ましくは2であり;
Lは、式(2):
【化1】
(式中、配位子Lは、そのイミン窒素原子を介して金属Mに共融結合し、Subは、非置換であるか、又はハロゲン及びC~Cアルキル基から選択される置換基で置換されてよい、C~C20アルキル残基又はC~C20アリール残基であり;Subは、一般式-NRを表し、R及びRは、独立して、脂肪族C~C20ヒドロカルビル残基、ハロゲン化C~C20脂肪族ヒドロカルビル残基、芳香族C~C20ヒドロカルビル残基、及びハロゲン化芳香族C~C20ヒドロカルビル残基からなる群から選択されるか、又はRはR若しくはSubとともに複素環式環を形成する)
に従う配位子であるか、又は
Lは、一般式(2b):
【化2】
(式中、このアミジン含有配位子は、イミン窒素原子Nを介して金属Mに共有結合し;Sは、-CH-単位であり、tは、整数であり、1、2、3、又は4を表し、Subは、Subをアミン窒素原子Nに結合させる14族原子を含む、脂肪族又は芳香族の環状又は直鎖の置換基を表し、Subは、2つの炭素原子がsp又はsp混成していてもよいC単位であり、前記C単位は、例えば、1つ以上のハロゲン原子によって、又は1つ以上のC~C10アルキル基若しくはC~C10アルコキシ基によって置換されていてもよい)
に対応し;
前記第2の金属錯体は、ビスインデニル錯体であり、式(3):
J-Ind-MX (3);
〔式中、
Indは、金属Mへと結合し、結合基Jを介して互いにさらに連結する2つのインデニル配位子を表し;前記インデニル配位子は、置換されていても非置換であってもよく、好ましくは非置換であり;
Jは、前記2つのインデニル配位子(In)を連結する二価の架橋基を表し;ここでJは、(a)環状単位(R J’)(式中、それぞれのJ’は独立してC又はSiでありJ’は好ましくはSiであり、nは1又は2であり、それぞれのRは、独立して、C~C20の置換又は非置換ヒドロカルビルであり、但し、2つ以上のRは、互いに結合して、少なくとも1つのJ’を含む飽和又は部分飽和又は芳香族の環又は縮合環構造を形成する)、及び(b)非環状単位R J’(式中、それぞれのRは独立して、水素、非置換であっても置換されていてもよいC~C直鎖又は分岐のヒドロカルビルから選択され、それぞれのJ’は独立して、C又はSiであり、J’は好ましくはSiである)から選択され;
Mは、チタン、ハフニウム又はジルコニウムから選択され;
それぞれのXは独立して、ハロゲン、C1~10アルキル基、C7~20アラルキル基、C6~20アリール基、及びC1~20炭化水素で置換されたアミノ基からなる群から選択される一価のアニオン性配位子である〕
に対応する、コポリマー。
【請求項11】
式(1)中、
Cyは、非置換又は置換インデニル配位子、少なくとも3つのメチル基、好ましくは5つのメチル基を有する置換シクロペンタジエニル配位子、又は式(2e):
【化3】
(式(2e)中、
及びRは、個別に、水素、ハロゲン、C~C10アルキル、C~C10シクロアルキル、及び、非置換であるか又はC~C-アルキル若しくはC~C-ジアルキルアミノで置換されたフェニルからなる群から選択されるか、又は
及びRは、それらが結合するチオフェン環の2つの二重結合炭素原子と一緒に、非置換であるか又はC~C-アルキルで置換された脂肪族C~C-シクロアルケン環を形成し、
、R、及びRは、個別に、水素、C~Cアルキル、フェニル、並びにC~C-アルキル及び/又はハロゲンで置換されたフェニルの群から選択され;
Mはチタンであり、pは2であり、Zはメチル又はベンジルであり、好ましくは両方のZがメチルである)
に対応するS複素環式配位子から選択され、
Subは、フェニル、並びにハロゲン及びC~Cアルキルから選択される少なくとも1つの、好ましくは2つの置換基を有するフェニルから選択され;
Subは、-NRを表し、R及びRは、独立して、脂肪族C~C20ヒドロカルビル、ハロゲン化C~C20脂肪族ヒドロカルビルからなる群から選択されるか、又はRは、R又はSubと一緒に複素環式環を形成し、好ましくはSubがジアルキルアミド及びピペリジニルから選択される、請求項10に記載のコポリマー。
【請求項12】
式(3)中、
Mは、ジルコニウムを表し、
両方のXは、C~C10アルキル基から選択され、より好ましくは両方のXが同じものであり、最も好ましくは両方のXがメチルであり、
両方のインデニル配位子Indは、非置換であるか、又は置換されており、1~3個の炭素原子を有する1~7個のアルキル置換基を有し、
Jは、直鎖又は分岐であるが環状ではなく、好ましくはJは、(HC)Si、(HSi、(HSi、HC、HCHC、(HC)C、(HSi、(HSiから選択され、最も好ましくはJは(HC)Siである、
請求項10又は11に記載のコポリマー。
【請求項13】
エチレンと、前記少なくとも1つのC3~20-α-オレフィンと、前記少なくとも1つの非共役ジエンと、前記少なくとも1つの二重重合性ジエンモノマーとを、少なくとも1つの第1の金属錯体の存在下で共重合させる工程を含み、前記第1及び第2の金属錯体が請求項10~12のいずれか一項に記載のものである、請求項1~12のいずれか一項に記載のエチレンコポリマーを製造するための方法。
【請求項14】
少なくとも1つの活性化剤(b)、及び場合により少なくとも1つの捕捉剤(c)の存在下をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コポリマーが、少なくとも部分的に硬化している、請求項1~12のいずれか一項に記載のコポリマーを含む押出物品。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか一項に記載のコポリマーを、好ましくは少なくとも部分的に硬化した形態で含むコンパウンドを提供する工程と、少なくとも1つのダイを通して前記コンパウンドを押し出す工程とを含む、押出物品の製造方法。
【請求項17】
請求項10~12のいずれか一項で定義された第1及び第2の金属錯体を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改善された押出特性を有するエラストマー性エチレンコポリマーに関する。本開示はさらに、上記コポリマーを製造するための触媒混合物及び重合方法に関する。本開示は、上記コポリマーを用いて製造した押出物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマー性エチレンコポリマーは、一般にコンパウンドの形態で加工される。すなわち、コポリマーは、1つ以上の充填剤及びその他の任意選択の成分と混合されて、いわゆるコンパウンドが形成される。多くの場合、所望の良好な機械的性質、例えば高い引張強度及び低い圧縮永久ひずみなどを結果として有するエチレンコポリマーは、それらの加工のために強い力を加える必要があるために加工が困難な又は加工に費用がかかるコンパウンドをもたらす。
【0003】
この問題を克服する方法の1つは、コンパウンドに種々の成分を加えることによって、コンパウンドの粘度を低下させる試みに集中している。1つのコポリマーを用いる代わりに、例えばより低いムーニー粘度の1つ以上のコポリマーを加えることにより、異なるムーニー粘度のコポリマーのブレンドが、コンパウンドの粘度の低下のために用いられている。この方法は、ポリマーを調製した後にそれらのポリマーをブレンドすること、又は重合中にそれらをブレンドして、いわゆる「その場ブレンド」又は「反応器ブレンド」を得ることを含む。別の方法は、潤滑剤(「プロセス油」)としてコンパウンドに油を加えること、又は「油展」エチレンコポリマーを得るための「エクステンダー油」として油を加えることのいずれかを含む。エクステンダー油は、例えばポリマーを単離する前の製造プロセス中にポリマーにエクステンダー油を加えることによって、ポリマー構造中に組み込まれる。これらの方法によってコンパウンドの粘度を低下させることができるが、これらの方法は一般に、コンパウンドの機械的性能の低下を犠牲にし得る。
【0004】
別の方法は、エチレンコポリマーを製造するために、従来使用されているチーグラー・ナッタ触媒の代わりとなる新規触媒の開発に集中している。この新世代の触媒は、メタロセン錯体又はポストメタロセン錯体などの分子金属有機錯体をベースとしており、重合中のポリマー構造、特にポリマーの分岐パターン及び微細構造をより十分に制御することができる。異なるメタロセン触媒は、異なるポリマー構造を形成することができ、エチレンコポリマーの製造に用いられるモノマーに対して異なる重合活性を有し得る。メタロセンをベースとする触媒は、エチレンポリマー主鎖中へのコモノマーの組入れに関して種々の活性を示す。非共役ジエンの組入れに関する高い活性が報告されているメタロセン触媒は、(特許文献1)に記載されている。これらの種類の触媒を用いて良好な機械的性質を示すエチレンコポリマーを調製できることが分かったが、引張強度、圧縮永久ひずみなどの良好な機械性質を有するだけでなく、改善された押出挙動も有するコンパウンドを得ることが可能なエチレンコポリマーの提供が依然として必要とされている。有利には、このようなポリマーは低コストで製造可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/090418 A1号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特殊なモノマー組成及びポリマー構造のポリマーが、良好な機械的性質を有するだけでなく、表面欠陥を示さずに押出成形によって加工され得ることを見出した。このようなポリマーは、制御された構造と、それらの分子量分布に依存して、規定された分岐レベルとを有する。これらのポリマーは、エチレン、少なくとも1つのC~C20-α-オレフィン、少なくとも1つの非共役ジエン、及び少なくとも1つの二重重合性ジエンから誘導される単位を含み、モノマーの重合を、第1の遷移金属触媒及び第2の金属触媒の存在下、及び場合により1つ以上の活性化剤の存在下、及び場合により1つ以上の捕捉剤の存在下で行うことによって得ることができる。
【0007】
したがって、一態様では、(a)エチレン、(b)少なくとも1つのC~C20α-オレフィン、(c)少なくとも1つの二重重合性ジエン、(d)二重重合性ジエン以外の6~30個の炭素原子を有する少なくとも1つの非共役ジエン、から誘導される繰り返し単位を含むコポリマーであって、上記コポリマーが、
(i)C13-NMR分光法によって測定して≦0.5の強度比Dと、
(ii)5~50の分岐指数Δδ(ここで、Δδは、125℃における動的機械分析(DMA)により0.1rad/sの周波数で測定される位相角δと、100rad/sの周波数で測定される位相角δとの間の差である)と;
(iii)0.50~0.99の間の分岐指数g’(III)と、
(iv)≧Rである分子量分布(MWD)〔Rはコポリマーの分岐指数g’(III)に依存し、g’(III)が≦0.90の場合、Rは-27.7×g’(III)+29.2であり;g’(III)が>0.90及び0.99以下の場合、Rは4.3である〕と、
を有し、
g’(III)及び分子量分布は、ゲル浸透サイズ排除クロマトグラフィーによって求められ、
上記コポリマーは、30重量%~85重量%のエチレンから誘導される単位と、5~80重量%のC~C20α-オレフィンから誘導される単位と、2重量%~20重量%の二重重合性ジエン以外の非共役ジエンから誘導される単位とを含み、ここで、重量%は、100重量%であるポリマーの全重量を基準としており、
少なくとも1つの二重重合性ジエンは、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロペンタン、1,5-ジビニルシクロオクタン、1-アリル-4-ビニルシクロ-ヘキサン、1,4ジアリルシクロヘキサン、1-アリル-5-ビニルシクロオクタン、1,5-ジアリルシクロオクタン、1-アリル-4-イソプロペニル-シクロヘキサン、1-イソプロペニル-4-ビニルシクロヘキサン及び1-イソプロペニル-3-ビニルシクロペンタン、ジシクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、2,5-ノルボルナジエン、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、
コポリマーが提供される。
【0008】
別の一態様では、エチレンと、少なくとも1つのC3~20-α-オレフィンと、少なくとも1つの非共役ジエンと、少なくとも1つの二重重合性ジエンモノマーとを、少なくとも1つの第1の金属錯体(第1の金属錯体及び第2の金属錯体)の存在下で共重合させる工程を含むコポリマーの製造方法であって、
第1の金属錯体は、式(1):
CyLMZ (1)
に対応し、ここで、
Cyは、ハロゲンと、1~20個の炭素原子を含む芳香族又は脂肪族で直鎖又は分岐又は環状の残基と、からなる群から好ましくは選択される1つ以上の置換基を含むことができるシクロペンタジエニル配位子であり;
Mは、チタン、ハフニウム、又はジルコニウムから選択され;
Zは、ハロゲン、C1~10アルキル基、C7~20アラルキル基、C6~20アリール基、C1~20炭化水素で置換されたアミノ基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;
pは、1又は2、好ましくは2であり、
Lは、式(2):
【化1】
(式中、配位子Lは、そのイミン窒素原子を介して金属Mに共融結合しており、Subは、非置換、又はハロゲン及びC~Cアルキル基から選択される置換基で置換されていてもよい、C~C20アルキル残基又はC~C20アリール残基であり;Subは、一般式-NRを表し、R及びRは、独立して、脂肪族C~C20ヒドロカルビル残基、ハロゲン化C~C20脂肪族ヒドロカルビル残基、芳香族C~C20ヒドロカルビル残基、及びハロゲン化芳香族C~C20ヒドロカルビル残基からなる群から選択されるか、又はRはR若しくはSubと一緒に複素環式環を形成する)
による配位子であるか、又は
Lは、一般式(2b):
【化2】
(式中、アミジン含有配位子は、イミン窒素原子Nを介して金属Mに共有結合しており;Sは、-CH-単位であり、tは、整数であり、1、2、3、及び4を表し、Subは、Subをアミン窒素原子Nに結合させる14族原子を含む脂肪族又は芳香族の環状又は直鎖の置換基を表し、Subは、2つの炭素原子がsp又はsp混成することができるC単位であり、このC単位は、例えば、1つ以上のハロゲン原子によって、又は1つ以上のC~C10アルキル基若しくはC~C10アルコキシ基によって置換されていてもよい)
に対応し;
第2の金属錯体は、ビスインデニル錯体であり、式(3):
J-Ind-MX (3);
に対応し、ここで、
Indは、金属Mへと結合し、結合基Jを介して互いにさらに連結する2つのインデニル配位子を表し;上記インデニル配位子は、置換されていても非置換であってよく、好ましくは非置換であり;
Jは、上記2つのインデニル配位子(In)を連結する二価の架橋基を表し;ここでJは、(a)環状単位(R J’)(式中、それぞれのJ’は独立してC又はSiであり、J’は好ましくはSiであり、nは1又は2であり、それぞれのRは、独立して、C~C20置換又は非置換ヒドロカルビルであり、但し、2つ以上のRは、一緒に結合して、少なくとも1つのJ’を含む飽和又は部分飽和又は芳香族の環又は縮合環構造を形成している)、及び(b)非環状単位R J’(式中、それぞれのRは独立して、水素、非置換であっても置換されていてもよいC~C直鎖又は分岐のヒドロカルビルから選択され、それぞれのJ’は独立して、C又はSiであり、J’は好ましくはSiである)から選択され;
Mは、チタン、ハフニウム又はジルコニウムから選択され;
それぞれのXは独立して、ハロゲン、C1~10アルキル基、C7~20アラルキル基、C6~20アリール基、及びC1~20炭化水素で置換されたアミノ基からなる群から選択される一価のアニオン性配位子である、
製造方法が提供される。
【0009】
別の一態様では、上記コポリマーが少なくとも部分的に硬化している、上記コポリマーを含む押出物品が提供される。
【0010】
別の一態様では、上記コポリマー、好ましくは少なくとも部分的に硬化した形態の上記コポリマーを含むコンパウンドを提供する工程と、少なくとも1つのダイを通してコンパウンドを押し出す工程とを含む、押出物品の製造方法が提供される。
【0011】
さらに別の一態様では、第1及び第2の金属錯体を含む組成物が提供される。
【0012】
これよりコポリマー、触媒、及びコポリマーの製造方法、触媒、及びコポリマーの用途について、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】押出実験で得られたコポリマーコンパウンドの押出ストリップの写真である。
図2】押出実験に使用されるGarveyプロファイルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、複数の規格を用いることができる。特に指定がなければ、これらの規格は2020年3月1日に有効であった版で用いられる。例えば、規格が期限切れとなっているため、その日付において有効な版が存在しない場合、2020年3月1日に最も近い日付に有効な版が参照される。
【0015】
以下の説明では、組成物又はポリマーの成分の量は、「重量パーセント」、「wt.%」、又は「重量%」によって示すことができる。「重量パーセント」、「wt.%」、又は「重量%」という用語は、同義で使用され、それぞれ100%である組成物又はポリマーの全重量を基準としている。これは、組成物又はポリマーの種々の成分の総量が100重量%になることを意味する。
【0016】
本開示によるコポリマーは、エチレンと、少なくとも3つのさらなるコモノマーとのコポリマーである。これは、コポリマーがエチレンと、少なくとも3つのさらなるコモノマーとから誘導される繰り返し単位を含むことを意味する。好ましくは、コポリマーは、少なくとも30重量パーセント(重量%)及び最大85重量%のエチレンから誘導される単位を含む。より好ましくは、本開示によるコポリマーは、41~80重量%、最も好ましくは45~74重量%のエチレンから誘導される単位を含む。重量パーセント値は、コポリマーの全重量を基準としている。
【0017】
エチレンから誘導される単位に加えて、本開示によるコポリマーは、(i)1つ以上のC~C20-α-オレフィン、好ましくはC~C12-α-オレフィン、(ii)少なくとも1つの非共役ジエン、及び(iii)少なくとも1つの二重重合性ジエンから誘導される繰り返し単位を有する。
【0018】
~C20-α-オレフィン
~C20-α-オレフィン(本明細書では「C~C20アルファオレフィン」とも呼ばれる)は、3~20個の炭素原子を含み、1つの脂肪族炭素-炭素二重結合を有するオレフィンである。二重結合は、オレフィンの前端(アルファ位)に配置される。α-オレフィンは、芳香族又は脂肪族、直鎖、分岐、又は環状であってよい。例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、及び12-エチル-1-テトラデセンが挙げられる。アルファオレフィンは、組み合わせで用いることができる。好ましいアルファ-オレフィンは、脂肪族C~C12α-オレフィン、より好ましくは脂肪族直鎖C~Cα-オレフィン、最も好ましくはプロピレン(Cα-オレフィン)及び1-ブテン(Cα-オレフィン)である。プロピレンが最も好ましい。
【0019】
好ましくは、コポリマーは、最大80重量%、より好ましくは最大50重量%のC~C20α-オレフィンから誘導される単位を含む(すべての重量パーセント値(重量%)はコポリマーの全重量を基準とする)。好ましくはコポリマーは、合計5~80重量%の、C~C20α-オレフィンから誘導される単位、より好ましくは合計15~45重量%又は25~45重量%の、C~C20α-オレフィンから誘導される単位を含む。好ましくはコポリマーは、5~80重量%、より好ましくは15~45重量%、最も好ましくは25~45重量%の、プロピレンから誘導される単位を含む(すべての重量パーセント値(重量%)はコポリマーの総量を基準とする)。
【0020】
非共役ジエン
非共役ジエンは、少なくとも2つの二重結合を含むポリエンであり、これらの二重結合は、鎖、環、環構造、又はそれらの組み合わせの中で非共役である。ポリエンは、環内及び/又は環外の二重結合を有することができ、置換基を有しない場合も、同じ又は異なる種類の置換基を有する場合もある。複数の二重結合は、少なくとも2つの炭素原子によって分離される。かなりの程度まで、非共役二重結合の一方のみが、重合触媒によって変換される。したがって、非共役ジエンは、ポリマー中に硬化部位を提供することができる。
【0021】
非共役ジエンは、好ましくは脂肪族、より好ましくは脂環式及び脂肪族である。
【0022】
適切な非共役ジエンとしては、芳香族ポリエン、脂肪族ポリエン、及び脂環式ポリエン、好ましくは6~30個の炭素原子を有するポリエン(C~C30-ポリエン、より好ましくはC~C30-ジエン)が挙げられる。非共役ジエンの具体例としては、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-エチル-1,4-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘプタジエン、5-エチル-1,4-ヘプタジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、5-エチル-1,5-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,4-オクタジエン、4-エチル-1,4-オクタジエン、5-エチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,5-オクタジエン、5-エチル-1,5-オクタジエン、6-エチル-1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、6-メチル-1,6-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、6-エチル-1,6-オクタジエン、6-プロピル-1,6-オクタジエン、6-ブチル-1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,4-ノナジエン、4-エチル-1,4-ノナジエン、5-エチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,5-ノナジエン、5-エチル-1,5-ノナジエン、6-エチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,6-ノナジエン、6-エチル-1,6-ノナジエン、7-エチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,7-ノナジエン、8-メチル-1,7-ノナジエン、7-エチル-1,7-ノナジエン、5-メチル-1,4-デカジエン、5-エチル-1,4-デカジエン、5-メチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,5-デカジエン、5-エチル-1,5-デカジエン、6-エチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,6-デカジエン、6-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,6-デカジエン、7-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,7-デカジエン、7-エチル-1,7-デカジエン、8-エチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,8-デカジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、8-エチル-1,8-デカジエン、1,5,9-デカトリエン、6-メチル-1,6-ウンデカジエン、9-メチル-1,8-ウンデカジエン、ジシクロペンタジエン、及びそれらの混合物が挙げられる。ジシクロペンタジエンは、二重重合性ジエンとして又は非共役ジエンとして使用することができ、その場合、ジシクロペンタジエンは、少なくとも1つの二重重合性ジエン又は少なくとも1つの非共役ジエンとの組み合わせて使用される。
【0023】
好ましい非共役ジエンとしては、脂環式ポリエンが挙げられる。脂環式ジエンは、少なくとも1つの環状単位を有する。好ましい一実施形態では、非共役ジエンは、少なくとも1つの環内二重結合及び場合により少なくとも1つの環外二重結合を有するポリエンから選択される。好ましい例としては、ジシクロペンタジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン、及び5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)が挙げられ、ENBが特に好ましい。
【0024】
芳香族非共役ポリエンの例としては、ビニルベンゼン(その異性体を含む)及びビニルイソプロペニルベンゼン(その異性体を含む)が挙げられる。
【0025】
本開示の典型的な一実施形態では、コポリマーは、20重量%以下の、1つ以上の非共役ジエンから誘導される単位を含む。好ましい一実施形態では、コポリマーは、2~12重量%の、1つ以上の非共役ジエンから誘導される単位を含む。好ましい一実施形態では、コポリマーは、最大20%重量%のENBからの単位、より好ましくは2~12重量%のENBから誘導される単位、又は3.5~6.7重量%のENBから誘導される単位を含む(すべての重量%はコポリマーの全重量を基準とする)。
【0026】
二重重合性ジエン
二重重合性ジエンは、両方の不飽和部位が配位触媒(例えばチーグラー・ナッタバナジウム触媒又はメタロセン型触媒)によって重合可能な、ビニル置換脂肪族単環式及び非共役ジエン、ビニル置換二環式及び非共役脂肪族ジエン、アルファ-オメガ直鎖ジエン及び非共役ジエンから選択される。したがって、二重重合性モノマーは、重合中にポリマー分岐を形成することができる。二重重合性ジエンの例としては、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロペンタン、1,5-ジビニルシクロオクタン、1-アリル-4-ビニルシクロ-ヘキサン、1,4ジアリルシクロヘキサン、1-アリル-5-ビニルシクロオクタン、1,5-ジアリルシクロオクタン、1-アリル-4-イソプロペニル-シクロヘキサン、1-イソプロペニル-4-ビニルシクロヘキサン及び1-イソプロペニル-3-ビニルシクロペンタン、ジシクロペンタジエン、並びに1,4-シクロヘキサジエンが挙げられる。非共役ビニルノルボルネン及びC~C12アルファオメガ直鎖ジエン(例えば、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン,1,9-デカジエン、1,10ウンデカジエン、1,11ドデカジエン)が好ましい。二重重合性ジエンは、13~17族のヘテロ原子、例えばO、S、N、P、Cl、F、I、Br、又はそれらの組み合わせを含む少なくとも1つの基でさらに置換されていてもよい。
【0027】
本開示の好ましい一実施形態では、二重重合性ジエンは、2,5-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、1,7-オクタジエン、及び1,9-デカジエンから選択され、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)が最も好ましい。
【0028】
好ましくは、本開示のコポリマーは、0.05重量%~5重量%、より好ましくは0.10重量%~3重量%又は0.2重量%~1.2重量%又は少なくとも0.5から5重量%まで又は3重量%まで又は1.2重量%までの1つ以上の二重重合性ジエン、より好ましくはVNBから誘導される単位を含む(すべての重量パーセント値は、コポリマーの全重量を基準とする)。
【0029】
好ましい一実施形態では、本開示のコポリマーは、5-エチリデン-2-ノルボルネン及び5-ビニルノルボルネンから誘導される単位を含む。より好ましい一実施形態では、コポリマーは、エチレン、プロピレン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、及び5-ビニル-2-ノルボルネンから誘導される単位を含む。
【0030】
強度比(Intensity Ratio)
強度比(本明細書では「D」と略記される)は、ポリマーの微細構造、特に、C~C20アルファオレフィンのポリマー主鎖中への組入れの領域規則性(region-regularity)に関する尺度の1つであり、例えば、参照により本明細書に援用されるKoda及びKawasakiの欧州特許出願公開第10 88 836 A1号明細書に記載されている。強度比は、C~C20アルファ-オレフィンから選ばれる異なる位置にあるCH-単位の、ポリマー主鎖中の第3級炭素原子に対する比率を表している。これは、以下のプロピレンからのCH-単位の異なる配置を示している。
【化3】
【0031】
CH-単位は、2つの第3級炭素原子に隣接していてよいし(本明細書では「Sαα」と記載される)、又は1つの第2級炭素原子及び1つの第3級炭素原子とに隣接していてもよい(本明細書では「Sαβ」と記載される)。
【0032】
13C-NMRスペクトルにおいて、これらの(Sαα)及び(Sαβ)炭素単位によって、スペクトルの異なる位置での信号が得られる。例えば、一方の信号(Sαα)は、2つの第3級炭素原子に隣接したCHの信号となり、他方の信号(Sαβ)は、1つの第3級炭素原子及び1つの第2級炭素原子に隣接したCHの信号となる。炭素原子Sαβの信号の強度の、炭素原子Sααの信号の強度に対する比から、強度比Dが得られる。Dの値が大きいほど、α-オレフィンの結合の配向の位置不規則性が高くなり、ポリマー鎖中のα-オレフィンの2,1組入れが多くなる。Dの値が小さいほど、α-オレフィンの結合配向の位置規則性が高くなり、ポリマー鎖中のα-オレフィンの2,1組入れが少なくなる。
【0033】
チーグラー・ナッタ触媒(すなわち、遷移金属、特にバナジウムのハロゲン化物をベースとする非メタロセン型触媒)を用いて得られるエチレンコポリマーは、0.5を超える強度比Dを有すると考えられる。したがって、0.5以下の強度比Dは、ポリマーがチーグラー・ナッタ触媒を用いずに得られ、例えば、メタロセン型触媒によって得られたものであることを意味する。本明細書において使用される場合、「メタロセン型触媒」は、金属が少なくとも1つの環状配位子、好ましくは少なくとも1つのシクロペンタジエニル配位子又は少なくとも1つのインデニル配位子に結合する有機金属触媒を意味する。
【0034】
本開示によるエチレンコポリマーは、0.5以下の強度比Dを有するので、チーグラー・ナッタ触媒を用いることによっては得られない。本開示によるエチレンコポリマーは、第1及び第2の金属錯体の組み合わせによって得ることができ、第2及び第1の触媒の両方がメタロセン型触媒であり、例えば本明細書に記載の第1及び第2の触媒である。典型的には、本開示によるエチレンコポリマーは、強度比が0.5以下、例えば0.01~0.4以下、又は0.03~0.3、又は0.05~0.02、又は0.06を超え0.4以下である。
【0035】
分子量分布(MWD)及びg’(III)
分子量分布(MWD)は、コポリマーの重量平均モル質量(Mw)の数平均モル質量に対する比であり、すなわちMWD=Mw/Mnである。MWDは、ゲル浸透サイズ排除クロマトグラフィー(GPC-SEC)によって求めることができる。
【0036】
良好な押出特性、特に表面効果が低下しないか又は低下する押出は、MWDと分岐度との間に特定の関係を有するポリマーによって実現できることが分かっている。本開示によるコポリマーは、それらの分岐レベルによっても変動する分子量分布(MWD)を有する。本開示によるポリマーのMWDは、Rの値以上となる。Rの値は、g’(III)の値によって変動する。g’(III)は、分岐指数であり、Evensらの国際特許出願の国際公開第99/00434A1号パンフレット(これに記載される参考文献も含めて参照により本明細書に援用される)に記載されるようにポリマー構造中の分岐度を示している。
【0037】
したがって、本開示によるポリマーの分子量分布は、パラメーターg’(III)によって求められるポリマー構造中の分岐度に依存する。パラメーターg’(III)は、流体力学半径に基づくポリマーの分岐の指標の1つである。分岐度がより大きいと、g’(III)がより小さくなる。g’(III)が≦0.90の場合、Rは、g’(III)の値に(-27.7)を乗じ、さらに29.2を足した結果から求められ、すなわちRは-27.7×g’(III)+29.2である。g’(III)が0.90を超え0.99以下の場合、Rは4.3である。
【0038】
【数1】
は、式:g’(III)=([η]/[η]1+α
により求められ、式中、[η]は、dl/gの単位でのエチレンコポリマーの測定された重量平均(又はバルク)固有粘度であり;[η]は、dL/gの単位での同じエチレン-α-オレフィン組成物の線状コポリマーの見掛けの重量平均(又はバルク)固有粘度である。
【0039】
αは、Mark Houwink指数である。理想的な溶媒中の線状ポリマーの場合、αは0.725である。本明細書において用いられるようにg`(III)を求めるためには、1+αは1.725である。
【0040】
一実施形態では、本開示のコポリマーは、約0.50~0.99のg’(III)に対応する分岐度を有する。本開示の別の一実施形態では、コポリマーは、0.70~0.98のg’(III)に対応する分岐度を有する。別の一実施形態でがm本開示によるコポリマーは、0.75~0.95、又は0.80~0.97のg’(III)に対応する分岐度を有する。
【0041】
別の一実施形態では、本開示のコポリマーは、これとは別に、又はこれに加えて、4.1を超えるMWDを有する。一実施形態では、本開示のコポリマーは、4.2~120、又は4.2~50又は4.2~10のMWDを有する。一実施形態では、本開示のコポリマーは、少なくとも4.2又は少なくとも4.5、例えば4.0~9.5のMWDを有する。
【0042】
本開示によるコポリマーは、100℃においてML1+4で20ムーニー単位(MU)から、150℃においてML1+8で120MUまでのムーニー粘度を有する。一実施形態では本開示によるコポリマーは、150℃においてML1+8でムーニー粘度56~120を有する。一実施形態では、本開示によるコポリマーは、125℃においてML1+4で20~90のムーニー粘度、又は100℃においてML1+4で20~90のムーニー粘度を有する。
【0043】
本開示によるエチレン-α-オレフィンコポリマーは、好ましくは少なくとも40,000g/mol、特に40,000~800,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0044】
好ましくは、本開示によるエチレン-α-オレフィンコポリマーは、2~50の間のΔδ、より好ましくは5~35の間又は10~30の間のΔδで分岐する。度の単位で表されるΔδは、125℃において動的機械分光法(DMS)によって測定される、0.1rad/sの周波数における位相角δと、100rad/sの周波数における位相角δとの間の差である。したがって、分岐パラメーターΔδは、溶融状態又は流体状態におけるポリマーの分岐の指標の1つである。
【0045】
触媒
本開示によるコポリマーは、第1の金属錯体及び第2の金属錯体の存在下でモノマーを重合させることによって得ることができる。好ましくは、金属錯体は、組み合わせて使用される。しかし、これらの金属錯体を用いた重合は、逐次的に、例えば、最初に第1の金属触媒の存在下、続いて第2の金属錯体の存在下で重合させることによって行うか、あるいは、第1の金属錯体の存在下で重合を行い、別に第2の金属錯体の存在下で重合を行い、続いてこれら別々の反応混合物を組み合わせて、例えば反応器ブレンドを得ることによって行うことができる。
【0046】
第1の金属錯体
第1の金属錯体は、メタロセン触媒を含み、これは式(1):
CyLMZ (1)、
に対応し、ここで、
Cyは、好ましくは、ハロゲンと、1~20個の炭素原子を含む芳香族又は脂肪族で直鎖又は分岐又は環状の残基と、からなる群から選択される1つ以上の置換基を含むシクロペンタジエニル配位子であり;
Mは、4族金属であり、
Zは、アニオン性配位子であり、
pは、1又は2、好ましくは2であり、及び
Lは、式(2):
【化4】
による配位子である。
【0047】
配位子Lは、そのイミン窒素原子を介して金属Mに共有結合する。式(2)のSubは、Subをイミン炭素原子に結合させる14族原子、好ましくは炭素原子を含む置換基である。式(2)のSubは、Subをイミン炭素原子に結合させる15族のヘテロ原子、好ましくは窒素原子を含む置換基である。好ましい一実施形態では、Lは、アミニデート(aminidate)である。
【0048】
第1の金属錯体の化学構造を示すため、以下の金属錯体が、式(2a)の化学構造によって特定される。ここで、Cyはペンタメチルシクロペンタジエニル配位子であり、Mはチタンであり、pは2であり、Zはどちらもメチル(Me)であり、Lは式(2)によるものである。
【化5】
【0049】
第1の金属錯体(触媒A)の好ましい実施形態
M:
好ましい一実施形態では、式(1)のMは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)又はハフニウム(Hf)、より好ましくはチタンを表す。
【0050】
Z:
好ましい一実施形態では、Zは、ハロゲン、C1~10アルキル基、C7~20アラルキル基、C6~20アリール基、又はC1~20炭化水素で置換されたアミノ基からなる群から選択される。より好ましくは、Zは、ハロゲン原子及びC1~10アルキル基から選択される。最も好ましくは、Zは、Cl、F、Br、メチル、ベンジル、メチルトリメチルシリル、フェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、N,N-ジメチルアミノフェニル、ビス-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、パーフルオロフェニル、トリアルキルシリルフェニル、ビス(トリアルキルシリル)フェニル、及びトリス(トリアルキルシリル)フェニルからなる群から選択される。最も好ましくは、Zはメチル又はベンジルである。pが2である場合、Zは、同じものであってよいし、又は上記残基の組み合わせから選択することができる。好ましい一実施形態では、pは2であり、両方の残基Zは同じものであり、好ましくは両方がメチルである。
【0051】
L:
好ましい一実施形態では、式(2)のSubは、置換又は非置換のC~C20アリール残基又は置換又は非置換のC~C20アルキル残基から選択される。好ましくはSubは、置換又は非置換のC~C20アリール残基から選択される。好ましくは、Subは、フェニル、少なくとも1つ、好ましくは2つの置換基であって、ハロゲン及びアルキル、好ましくはメチル基から選択される置換基を有するフェニルから選択される。好ましくはSubは、2,6-ジメチルフェニル、2,6-ジクロロフェニル、又は2,6-ジフルオロフェニルから選択される。本開示の別の一実施形態では、式(2)のSubは、C~C20アルキル残基を表す。このようなアルキル残基の典型的な例としては、1~20個の炭素原子を有する直鎖、分岐、又は環状のアルキル残基が挙げられる。これらのアルキル残基は、非置換であってよいし、又はハロゲン、アミド、シリル、若しくはC~C20アリール基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基で置換されてもよい。好ましい一実施形態では、Subは、メチル、ヘキシル、シクロヘキシル、イソプロピル、tert-ブチル、ベンジル、トリフルオロメチル、2,6-ジメチルベンジル、2,6-ジフルオロベンジル、又は2,6-ジフルオロベンジルを表す。
【0052】
好ましい一実施形態では、式(2)のSubは、一般式-NRを示し、R及びRは、独立して、脂肪族C~C20ヒドロカルビル、ハロゲン化C~C20脂肪族ヒドロカルビル、芳香族C~C20ヒドロカルビル、及びハロゲン化芳香族C~C20ヒドロカルビル残基からなる群から選択されるか、又はRは場合によりR又はSubと一緒に複素環式環を形成する。一実施形態では、Subは脂肪族で直鎖の残基である。Subの好ましい例としては、ジアルキルアミド、好ましくはジメチルアミド、ジエチルアミド、ジイソプロピルアミド、又はピペリジニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
Lの具体例としては.N,N-ジメチルアセトイミドアミジネート、N,N-ジイソプロピルアセトイミドアミジネート、ジイソプロピルアセトイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシルアセトイミドアミジネート、N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチルアセトイミドアミジネート、N,N-ジメチルイソブチルイミドアミジネート、N,N-ジイソプロピルイソブチルイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシルイソブチルイミドアミジネート、N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチルイソブチルイミドアミジネート、N,N-ジメチルシクロヘキサンカルボキシイミドアミジネート、N,N-ジイソプロピルシクロヘキサンカルボキシイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシルシクロヘキサンカルボキシイミドアミジネート、N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチルシクロヘキサンカルボキシイミドアミジネート、N,N-ジメチルピバルイミドアミジネート、N,N-ジイソプロピルピバルイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシルピバルイミドアミジネート、N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチルピバルイミドアミジネート、2,2,2-トリフルオロ-N,N-ジメチルアセトイミドアミジネート、2,2,2-トリフルオロ-N,N-ジイソプロピルアセトイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシル-2,2,2-トリフルオロアセトイミドアミジネート、N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチル-2,2,2-トリフルオロアセトイミドアミジネート、2-(フェニル)-N,N-ジメチルアセトイミドアミジネート、2-(フェニル)-N,N-ジイソプロピルアセトイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシル-2-(フェニル)アセトイミドアミジネート、2-(フェニル)-N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチルアセトイミドアミジネート、2-(2,6-ジメチルフェニル)-N,N-ジメチルアセトイミドアミジネート、2-(2,6-ジメチルフェニル)-N,N-ジイソプロピルアセトイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシル-2-(2,6-ジメチルフェニル)アセトイミドアミジネート、N,2-ビス(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチルアセトイミドアミジネート、2-(2,6-ジフルオロフェニル)-N,N-ジメチルアセトイミドアミジネート、2-(2,6-ジフルオロフェニル)-N,N-ジイソプロピルアセトイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシル-2-(2,6-ジフルオロフェニル)アセトイミドアミジネート、2-(2,6-ジフルオロフェニル)-N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチル-アセトイミドアミジネート、N,N-ジメチルベンズイミドアミジネート、N,N-ジイソプロピルベンズイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシルベンズイミドアミジネート、N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチルベンズイミドアミジネート、N,N-ジメチル-1-ナフトイミドアミジネート、N,N-ジイソプロピル-1-ナフトイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシル-1-ナフトイミドアミジネート、N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチル-1-ナフトイミドアミジネート、N,N,2,6-テトラメチルベンズイミドアミジネート、N,N-ジイソプロピル-2,6-ジメチルベンズイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシル-2,6-ジメチルベンズイミドアミジネート、N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチル-2,6-ジメチルベンズイミドアミジネート、2,6-ジフルオロ-N,N-ジメチルベンズイミドアミジネート、2,6-ジフルオロ-N,N-ジイソプロピル-ベンズイミドアミジネート、N,N-ジシクロヘキシル-2,6-ジフルオロベンズイミドアミジネート、N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチル-2,6-ジフルオロベンズイミドアミジネート、2,6-ジクロロ-N,N-ジメチルベンズイミドアミジネート、2,6-ジクロロ-N,N-ジイソプロピルベンズイミドアミジネート、2,6-ジクロロ-N,N-ジシクロヘキシルベンズイミドアミジネート、2,6-ジクロロ-N-(2,6-ジメチルフェニル)-N-エチルベンズイミドアミジネートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい例は、2,6-ジフルオロ-N,N-ピペリジニルベンズアミジネート、2,4-ジフルオロ-N,N-ジイソプロピルベンズ-イミドアミジネート、2,4,6-トリフルオロ-N,N-ジイソプロピルベンズ-イミドアミジネート、3,5-ジフルオロ-N,N-ジイソプロピルベンズイミドアミジネート、ペンタフルオロ-N,N-ジイソプロピルベンズ-イミドアミジネート、2,6-ジフルオロ-N,N-ジイソプロピルベンズ-イミドアミジネート、及びN,N-ジイソプロピルベンズイミドアミジネートである。
【0054】
本開示の別の好ましい一実施形態によると、Lは、一般式(2b):
【化6】
(式中、このアミジン含有配位子は、イミン窒素原子Nを介して金属Mに共有結合しており;Sは-CH-単位であり、tは整数であり、1、2、3、及び4を表す。好ましくはtは1又は2であり、より好ましくはtは1である)
に対応する。
【0055】
式(2b)のSubは、Subをアミン窒素原子Nに結合させる14族原子を含む脂肪族又は芳香族の環状又は直鎖の置換基を表す。
【0056】
本開示の好ましい一実施形態では、Subは独立して、1~20個の炭素原子を有する、アルキル、アルケニル、及びアルキニル残基、又は、6~20個の炭素原子を有する芳香族残基から選択される。それぞれの場合で、残基は、非置換であってよいし、又はハロゲン、アミド、シリル、若しくはアリール基で置換されてもよい。Subの例としては、メチル、n-プロピル、i-プロピル、tert-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロヘプチル、オクチル、シクロオクチル、シクロドデシル、オクタデシル、アダマンチル、1-ブテニル、2-ブテニル、プロペニル、非置換フェニル、又は置換フェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくはSubは、フェニル、ナフチル、2,6-ジメチルフェニル、2,6-ジクロロフェニル、又は2,6-ジフルオロフェニルを表す。
【0057】
式(2b)のSubは、2つの炭素原子がsp又はsp混成していてよいC単位である。場合により、C単位は、1つ以上のハロゲン原子によって、又は1つ以上のC~C10アルキル基若しくはC~C10アルコキシ基によって置換されていてよい。
【0058】
本開示の別の好ましい一実施形態では、Lは一般式2c)
【化7】
に対応し、ここで、R~Rは、同じもの又は異なるものであり、それぞれが水素原子、ハロゲン原子、C~C10アルキル基、又はC~C10アルコキシ基を表し、上記アルキル基及びアルコキシ基は、置換されてもよく、1つ以上のハロゲンを含むことができ、S、t、及びSubは、前述ものと同じ意味を有する。
【0059】
本開示の別の一実施形態では、Lは、一般式2d):
【化8】
に対応し、ここで、R~Rは、同じもの又は異なるものであり、それぞれが水素原子、ハロゲン原子、場合により置換されていてもよいC~C10アルキル基、場合により置換されていてもよいC~C10アルコキシ基を表し、又は隣接するR~Rは連結して、場合により置換されていてよい、好ましくは非置換である芳香族環を形成することができ、S、t、及びSubは、前述ものと同じ意味を有する。好ましいR~Rの典型的な例は水素及びフッ素である。
【0060】
本開示の好ましい一実施形態では、Lは、R~Rのそれぞれが水素原子を表す一般形態2c)に対応し、又はLは、R~Rのそれぞれが水素原子を表す、若しくはRがフッ素原子である一般式2d)に対応する。この好ましい実施形態によると、Subは、メチル、n-プロピル、i-プロピル、tert-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロヘプチル、オクチル、シクロオクチル、シクロドデシル、オクタデシル、アダマンチル、1-ブテニル、2-ブテニル、プロペニル、フェニル、ナフチル、2,6-ジメチルフェニル、2,6-ジクロロフェニル、又は2,6-ジフルオロフェニルから選択され、tは1である。
【0061】
Cy:
Cyは、置換シクロペンタジエニル配位子である。この配位子は、1つ以上の置換基を含むことができる。典型的にはこの配位子の5員炭素環は、通常、金属へのη-配位の採用におけるπ型結合によって金属に結合する。置換基は、好ましくは、ハロゲンと、1~20個の炭素原子を含む芳香族又は脂肪族で直鎖又は分岐又は環状の残基とからなる群から選択される。
【0062】
一実施形態では、シクロペンタジエニル配位子は、少なくとも1つの環状基で置換されてよい。一実施形態では、シクロペンタジエニル配位子は、環状置換基によって置換されて、例えばインデニル配位子を形成する。このインデニル配位子は、例えば、ハロゲンと、1~20個の炭素原子を含む芳香族とからなる群から選択される脂肪族で直鎖とからなる群から選択される分岐と、からなる群から選択される環状の残基からなる群から選択される置換基によって置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0063】
一実施形態では、シクロペンタジエニル配位子は、少なくとも1つの複素環式置換基、好ましくはS複素環式置換基によって置換され、式(2e):
【化9】
に対応し、ここで、
及びRは、個別に、水素、ハロゲン、アルキル、C~C10シクロアルキル、及び非置換であるか又はC~C10-アルキル若しくはC~C-ジアルキルアミノで置換されたC~C10アリール、特にC~C-アルキル置換で置換されたフェニルの群から選択され、又は
及びRは、それらが結合するチオフェン環の2つの二重結合炭素原子と一緒に、非置換又はC~C-アルキルで置換された脂肪族C~C-シクロアルケン環を形成し、
、R、及びRは、個別に、水素、C~Cアルキル、非置換であるか若しくはC~C-アルキル及び/又はハロゲン、特に塩素又はフッ素で置換されたC~C10-アリール、特にC~C-アルキルで置換されたフェニルの群から選択される。このような実施形態の例は、Berthoudらの国際公開第2019/129502号パンフレット(参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0064】
好ましい一実施形態では、Cyは、少なくとも3つのメチル基で置換されたシクロペンタジエニル配位子である。これは、環の3つの水素がメチル基で置換されていることを意味し、言い換えると、この配位子は3つのメチル基を有することができる。Cyは、これに加えて、又はこれとは別に、置換基R及びRを有していてよい。
【0065】
は、好ましくは、ハロゲン、特にF、Cl、及びBr、又は、1~20個の炭素原子、例えば1~10個の炭素原子、又は1~6個の炭素原子又は1~3個の炭素原子を有する芳香族若しくは脂肪族で直鎖若しくは分岐の残基を意味する。これらの残基は、これらの残基は、非置換であるか又は置換された炭化水素残基であってよい。好ましくは残基は非置換である。非置換の炭化水素残基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、アリル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、3-ペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルシクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、イソプロピルドデシル、アダマンチル、ノルボルニル、トリシクロ[5.2.1.0]デシル、又はアリール基、例えばフェニル、ベンジル、メチルフェニル、トリメチルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ナフチル、ブチルフェニル、及びブチルジメチルフェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
置換された残基中の置換基の典型的な例としては、ヘテロ原子含有炭化水素残基、ハロゲン、特にF、Cl、及びBr、及びハロゲン含有炭化水素が挙げられる。ヘテロ原子含有炭化水素は、典型的には15族又は16族の元素、例えばN、P、O、及びSを含む。具体例としては、フルオロフェニル、トリフルオロメチルフェニル、及びフルオロメチル、ジフルオロメチル、及びトリフルオロメチル、N,N-ジメチルアミノベンジル、N,N-ジメチルアミノメチル、メトキシメチル、ジフェニルホスフィノメチル、アミノエチル、及び硫黄複素環が挙げられる。好ましくは、Rは、非置換であるか、又はフルオロ置換されており、より好ましくは、Rはメチルである。
【0067】
は、好ましくは、1~20個の炭素原子、例えば1~10個の炭素原子、又は1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含む置換又は非置換の炭化水素残基を表す。このような炭化水素残基としては、脂肪族で直鎖又は分岐の炭化水素基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、アリル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、3-ペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルシクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、イソプロピルドデシル、アダマンチル、ノルボルニル、トリシクロ[5.2.1.0]デシルが挙げられる。直鎖又は分岐の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ベンジル、メチルフェニル、トリメチルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ナフチル、ブチルフェニル、又はブチルジメチルフェニルが挙げられる。一実施形態では、Rはメチルである。この残基は置換されてもよい。置換基としては、ハロゲン、特にF、Cl、及びBrが挙げられる。具体例としては、フルオロフェニル、トリフルオロメチルフェニル、並びにフルオロメチル、ジフルオロメチル、及びトリフルオロメチルが挙げられる。置換基としては、ヘテロ原子含有炭化水素も挙げられ、これらのヘテロ原子は、15族及び16族の元素、例えば窒素、リン、酸素、及び硫黄である。ヘテロ原子含有置換基の具体例としては、N,N-ジメチルアミノベンジル、N,N-ジメチルアミノメチル、メトキシメチル、ジフェニルホスフィノメチル、シアノエチル、及び硫黄複素環が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、Rは置換されていない。
【0068】
好ましい一実施形態では、Rは、1~10個の炭素原子を含む非置換の炭化水素残基であり、Rはメチル基を表す。より好ましい一実施形態では、Rはメチルであり、Rは、C~C炭化水素基又はフルオロフェニルである。最も好ましくはR及びRの両方がどちらもメチルである。
【0069】
好ましい一実施形態では、Cyはインデニル配位子であり、好ましくはこのインデニル配位子は置換されていない。別の好ましい一実施形態では、Cyはシクロペンタジエニル配位子である。好ましくは、このシクロペンタジエニル配位子は置換されており、前述の残基R及びRを含む。好ましくはCyは、前述の残基R及びRに加えて3つのメチル基を含むシクロペンタジエニル配位子である。より好ましい一実施形態では、Cyは、3つのメチル基を含み、及びR及びRもメチル基であるシクロペンタジエニル配位子である。
【0070】
本開示の好ましい一実施形態では、第1の金属錯体は式(1)に対応し、ここで、
MはTiであり、
Zは、塩素、好ましくはC~C-アルキル、より好ましくはメチルからなる群から選択され、
pは2であり、
Cyは、シクロペンタジエニル又はインデニル配位子、好ましくは、フルオロフェニル基で置換された、又は1つがRによるものである4つのメチル基で好ましくは置換されたシクロペンタジエニルであり、Rは、水素及びC~C脂肪族基、好ましくはメチルから選択され、
Lは、N,N-ジアルキルアリールアミジネートからなる群から選択され、好ましくはN,N-ジイソプロピルベンズアミジネート、2,6-ジフルオロ-N,N-ジイソプロピルベンズアミジネート、2,6-ジフルオロ-N,N-ピペリジニルベンズアミジネートから選択される。
【0071】
式(1)による第1の金属錯体の特に好ましい例としては、((CHCp-Ti-(CH)(NC(Ph)(NC10)、Ind-Ti-(Cl)(NC(Ph)(NC10N)、Cp-Ti-Cl(NC(Ph)(iPrN)、((CHCp-Ti-(CH)(NC(2,6-CCl)(N((CH(CH、((C)Cp-Ti-(CH)(NC(2,6-C)(N((CH(CH、((C)Cp-Ti-(CH)(NC(2,6-C)(N((CH(CH、Ind-Ti-(CH)(NC(2,6-C)(N((CH(CH、((CHCp-Ti-(CH)(NC(2,6-C)(N((CH(CHが挙げられる。
【0072】
上記式中、「Cp」はシクロペンタジエニルを意味し、「Ph」はフェニルを意味し、「Ind」はインデニルを意味し、「iPr」はイソプロピルを意味する。
【0073】
第2の金属錯体
第2の金属錯体は、2つのインデニル配位子を有する架橋4族遷移金属メタロセン触媒を含み、本明細書では「ビスインデニル金属錯体」とも呼ばれる。このような金属錯体は、本明細書ではビスインデニルメタロセン化合物とも呼ばれる。2つのインデニル配位子は、両方が非置換であってよいし、又は両方が置換されてもよいし、又は一方が置換され、一方が置換されていなくてもよい。好ましくは、両方のインデニル配位子は同じものである。
【0074】
第2の金属触媒は式(3):
J-Ind-MX (3)
で表すことができる。
【0075】
式(3)中、Jは二価の架橋基を表す。架橋基は、好ましくは架橋基のC原子又はSi原子によって、2つのインデニル配位子を連結する。好ましくは、架橋基は、インデニル配位子の2つの5員環のそれぞれからの炭素原子に結合する。架橋基は、直鎖又は分岐の炭化水素基、又は1つ以上のヘテロ原子、例えば1つ以上のSi原子、酸素原子、若しくはそれらの組み合わせを含む直鎖又は分岐の炭化水素基であってよい。
【0076】
Mは、4族の遷移金属(例えば、チタン、ハフニウム、又はジルコニウム、好ましくはジルコニウム)である。
【0077】
それぞれのXは、独立して一価のアニオン性配位子であるか、又は2つのXが連結して金属原子に結合して金属環状環を形成するか、又は2つのXが連結してキレート配位子、ジエン配位子、若しくはアルキリデン配位子を形成するかである。それぞれのXは、独立して、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、水素化物、アミド、アルコキシド、硫化物、リン化物、ハロゲン化物、ジエン類、アミン類、ホスフィン類、エーテル類、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。2つのXは、縮合環又は環構造の一部を形成していてもよい。特定の実施形態では、それぞれのXは、独立して、ハロゲン化物及びC1~C5アルキル基から選択される。例えば、それぞれのXは、クロロ、ブロモ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はペンチル基であってよい。
【0078】
好ましい一実施形態では、それぞれのXは、独立して、ハロゲン、C1~10アルキル基、C7~20アラルキル基、C6~20アリール基、C1~20炭化水素置換アミノ基からなる群から選択される。好ましい一実施形態では、それぞれのXはメチル基である。
【0079】
Indは、金属Mへと結合し、結合基Jを介して互いにさらに連結している2つのインデニル配位子を表す。インデニル配位子は、置換されていても非置換であってもよく、好ましくは非置換である。
【0080】
斜視図では、第2の金属触媒は式(3’):
【化10】
で表すことができる。
【0081】
式(3’)中、J、M、及びXは、式(3)で前述したものと同じ意味及び好ましさを有する。2つのインデニル配位子のそれぞれのR、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素、C~C20の置換又は非置換ヒドロカルビルから選択される。好ましい一実施形態では、それぞれのインデニル配位子のそれぞれのR、R、R、R、R、及びRは水素であり、すなわち、インデニル配位子は非置換である。
【0082】
一実施形態では、Jは環状単位である。このような一実施形態では、Jは、式(R J’)で表され、ここで、それぞれのJ’は独立してC又はSiであり(J’は好ましくはSiである)、nは1又は2であり、それぞれのRは、独立して、C~C20置換又は非置換ヒドロカルビルであり、但し、2つ以上のRは互いに連結して、少なくとも1つのJ’を含む飽和又は部分飽和又は芳香族の環状又は縮合環構造を形成する。Rの特定の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニルシクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、イソプロピルドデシル、アダマンチル、ノルボルニル、トリシクロ[5.2.1.0]デシルが挙げられる。これらの基は、芳香族であってもよく、そのようなものとしてアリール基を挙げることもできる。アリール基の具体例としては、フェニル、ベンジル、メチルフェニル、トリメチルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ナフチル、ブチルフェニル、及びブチルジメチルフェニルが挙げられる。置換基としては、ハロゲン、特にF、Cl、及びBrが挙げられる。(ハロゲンで)置換されたR基の具体例としては、フルオロフェニル、及びトリフルオロメチルフェニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ヘテロ原子含有置換基の具体例としては、例えば、N,N-ジメチルアミノベンジル、ジフェニルホスフィノメチル、及び硫黄複素環が挙げられる。
【0083】
J’がケイ素である場合のJの特定の例としては、シクロペンタメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレンなどが挙げられる。J’が炭素である場合のJ基の特定の例としては、シクロプロパンジイル、シクロブタンジイル、シクロペンタンジイル、シクロヘキサンジイルなどが挙げられる。環状架橋基を有するこのような金属錯体は、例えば、ビニル末端の鎖末端が形成されることが報告される国際公開第2016/114914 A1号パンフレットに記載されている。しかし、本開示の別の利点として、ビニル末端の鎖末端の形成は、本開示によるポリマーの生成には必要ではない。これによって、ポリマーの生成及び分子量の制御のために使用できる連鎖移動剤の種類の自由度がより高くなる。
【0084】
好ましい一実施形態では、架橋基Jは、直鎖又は分岐の単位であるが、環状単位ではない。このような一実施形態では、Jは式R J’で表され、ここで、それぞれのRは、独立して水素、非置換でも置換されてもよいC~C直鎖又は分岐のヒドロカルビルから選択される。非置換のRの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、アリル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、3-ペンチル、sec-ペンチル、tert-ペンチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ヒドロカルビルは、例えば1つ以上のハロゲン、特にF、Cl、及びBrで置換されてもよい。具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換基としては、窒素、リン、酸素、及び硫黄などの15族及び16族の元素から選択される1つ以上のヘテロ原子を含む炭化水素置換基も挙げられる。このような置換基の具体例としては、例えば、N,N-ジメチルアミノメチル、メトキシメチル、シアノエチル及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
J’は、C又はSi、好ましくはSiである。より好ましくはJは、(HC)Si、(HSi、(HSi、HC、HCHC、(HC)C、(HSi、(HSiから選択され、及び最も好ましくは、Jは(HC)Siである。
【0086】
好ましい一実施形態では、両方のXは、C~C10アルキル基から選択され、より好ましくは両方のXは同じものであり、最も好ましくは両方のXはメチルである。この好ましい実施形態では、Mはジルコニウムから選択され、それぞれのインデニル配位子は、1~3個の炭素原子を有する1~7個のアルキル置換基を含み、より好ましくは、それぞれのインデニル配位子は置換されない。この好ましい実施形態では、Jは、直鎖又は分岐であるが環状ではなく、より好ましくはJは、(HC)Si、(HSi、(HSi、HC、HCHC、(HC)C、(HSi、(HSiから選択され、最も好ましくはJは(HC)Siである。
【0087】
触媒化合物は、rac型又はmeso型であってよい。
【0088】
触媒組成物
好ましくは、第1及び第2の金属錯体は、組み合わせて用いられる。これらは、第1及び第2の金属錯体の両方を含む触媒組成物として用いることができる。或いは、第1及び第2の金属錯体は、同じ組成物中では用いられず、別々の組成物として用いることができる。好ましくは、第1及び第2の金属錯体が組み合わされて、それらを含む1つの触媒組成物となる。
【0089】
第1の金属錯体と第2の金属錯体との比は、第1の金属錯体の4族金属が、第2の触媒錯体の4族金属に対してあるモル率となるように調節されてもよい。好ましくは、第1の金属錯体の4族金属の、第2の金属錯体の4族金属に対するモル比は、1:0.1~1:100、特に1:0.2~1:80、より好ましくは1:0.5~1:10である。本開示の好ましい一実施形態では、その触媒混合物は、第1の金属錯体の4族金属の、第2の触媒錯体の4族金属に対するモル比が約1:1~1:3となるような量で第1及び第2の金属錯体を含む。
【0090】
触媒組成物は、さらなる触媒を含むこともできる。好ましくは、本開示による触媒混合物は、触媒混合物の全重量を基準として、95重量%を超え、特に99重量%を超える第1の金属錯体及び第2の金属錯体を含む。
【0091】
1つ以上の活性化剤(b)、及び場合により1つ以上の捕捉剤(c)を、触媒組成物中に用いることができ、又は例えば触媒混合物にモノマーを供給する前若しくは供給とともに、それらを別に加えることができる。
【0092】
当技術分野において周知のシングルサイト触媒用の活性化剤(b)を用いることができる。活性化剤は、多くの場合、ホウ素又はアルミニウムなどの13族原子を含む。
【0093】
好ましい一実施形態では、活性化剤(b)は、ボラン(C1)、ボレート(C2又はC3)から選択される。好ましくは、C1、C2、及びC3による1つ以上の活性化剤の組み合わせが、(c)による1つ以上の捕捉剤と組み合わせて用いられる。
【0094】
適切なホウ素活性化剤(C1)は、一般式BQで表すことができる。
【0095】
(C2)による適切なボレート活性化剤は、一般式G(BQ)で表すことができる。
【0096】
(C3)による適切なボレート活性化剤は、一般式(J-H)(BQ)で表すことができる。
【0097】
(C1)による活性化剤において、Bはホウ素であり、Q~Qは、置換又は非置換のアリール基、好ましくはフェニル基である。適切な置換基としては、ハロゲン、好ましくはフッ化物、及びC~C40ヒドロカルビル、好ましくはC~C20アルキル、又は芳香族が挙げられるが、これらに限定されるものではない。(C1)による活性化剤の具体例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4-トリフルオロフェニル)ボラン、フェニル-ビス(ペンタフルオロフェニル)ボランなどが挙げられ、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランが最も好ましい。
【0098】
(C2)による活性化剤において、Gは、無機又は有機のカチオンであり、Bはホウ素であり、Q~Qは、(C1)におけるものと同じであり、Qも置換又は非置換のアリール基、好ましくは置換又は非置換のフェニルである。置換基としては、ハロゲン、好ましくはフッ化物、及びC~C40ヒドロカルビル、好ましくはC~C20アルキル、又は芳香族が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ボレート基(BQ)の具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4-トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。Gの具体例としては、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀カチオンなどが挙げられる。有機カチオンGの具体例としては、トリフェニルメチルカチオンなどが挙げられる。Gは、好ましくはカルベニウムカチオン、特に好ましくはトリフェニルメチルカチオンである。
【0099】
(C3)による活性化剤において、Jは中性ルイス塩基を表し、(J-H)はブレンステッド酸を表し、Bはホウ素であり、Q~Q及びボレート基(BQ)の両方は(C2)におけるものと同じである。ブレンステッド酸(J-H)の具体例としては、トリアルキル置換アンモニウム、N,N-ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどが挙げられる。(C3)による活性化剤の具体例としては、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)-ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチル-フェニル)ボレート、N,N-ジメチル-アニリニウムテトラキス(ペンタフルオロ-フェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウム-テトラキス(3,5-ビストリフルオロメチル-フェニル)ボレート、ジイソプロピル-アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシル-アンモニウムテトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)-ホスホニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、トリ(n-ブチル)アンモニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート又はN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが最も好ましい。
【0100】
好ましくは、ホウ素含有活性化剤は、(C2)による活性化剤から選択され、より好ましくはトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチル-テトラキス(2,3,4-トリフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びトリフェニル-メチル-テトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートからなる群から選択される。最も好ましくは、活性化剤は、トリフェニル-メチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含む。
【0101】
捕捉剤(c)は、触媒に対して毒性である不純物と反応し、したがって触媒の寿命を延ばすことができる化合物である。
【0102】
本開示の別の好ましい一実施形態では、捕捉剤(c)は、1族~13族の金属若しくは半金属のヒドロカルビル、又は15族若しくは16族の原子を含む少なくとも1つの立体障害化合物とのその反応生成物である。好ましくは、立体障害化合物の15族又は16族の原子はプロトンを有する。具体例としては、その異性体を含めたブチルリチウム、ジヒドロカルビルマグネシウム、及びヒドロカルビル亜鉛、並びに、立体障害化合物又はHF、HCl、HBrなどの酸とのそれらの反応生成物が挙げられる。
【0103】
別の好ましい一実施形態では、捕捉剤(c)としては、1つ以上の有機アルミニウム化合物(E)が挙げられる。(E)による有機アルミニウム化合物は、活性化剤として機能することもできるが、これらは本明細書では捕捉剤と呼ばれる。
【0104】
適切な有機アルミニウム系捕捉剤(E)としては、炭素-アルミニウム結合を有する化合物が挙げられる。(E)による適切な捕捉剤の例としては、好ましくは(E1)~(E4)による有機アルミニウムが挙げられる。
【0105】
(E1)による捕捉剤は、一般式T AlZ3-aで表される有機アルミニウム化合物である。
【0106】
(E2)による捕捉剤は、一般式{-Al(T)-O-}で表される構造を有する環状アルミノキサンである。
【0107】
(E3)による捕捉剤は、一般式T{-Al(T)-O-}AlT で表される直鎖アルミノキサンである。
【0108】
(E4)による捕捉剤は、アルキルアルミノキサン、好ましくはメチルアルミノキサン(MAO)である。
【0109】
上記式中、T、T、及びTのそれぞれは炭化水素基であり、それぞれのT、T、及びTは、同じ場合も異なる場合もある。Zは水素原子又はハロゲン原子を表し、すべてのZは、同じ場合も異なる場合もある。「a」は、0<a≦3を満たす数を表し、「b」は2以上の整数であり、「c」は1以上の整数である。
【0110】
(E1)、(E2)、又は(E3)中の炭化水素基は、好ましくは1~8個の炭素原子を有する炭化水素基、より好ましくはアルキル基である。
【0111】
(E1)による有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリアルキルアルミニウム、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなど;塩化ジアルキルアルミニウム、例えば、塩化ジメチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、塩化ジプロピルアルミニウム、塩化ジイソブチルアルミニウム、塩化ジヘキシルアルミニウムなど;二塩化アルキルアルミニウム、例えば、二塩化メチルアルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、二塩化プロピルアルミニウム、二塩化イソブチルアルミニウム、二塩化ヘキシルアルミニウムなど;水素化ジアルキルアルミニウム、例えば、水素化ジメチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジプロピルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウムなどが挙げられる。トリアルキルアルミニウムが好ましく、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、及びトリオクチルアルミニウム(TOA)が最も好ましい。
【0112】
(E2)及び(E3)による環状又は直鎖アルミノキサンの具体例としては、T及びTが、互いに独立して、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基などのアルキル基であり、bが2以上の整数であり、cが1以上の整数であるものが挙げられる。好ましくは、T及びTは、メチル基又はイソブチル基を表し、及びbは2~40であり、cは1~40である。(E4)の具体例としては、メチルアルミノキサン(MAO)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0113】
本開示の好ましい一実施形態では、C1、C2、又はC3による少なくとも1つの活性化剤と、(E)による少なくとも1つの捕捉剤との組み合わせが重合に用いられる。(E)による好ましい捕捉剤としては、(E1)の捕捉剤及びMAOが挙げられる。好ましくは、(E)による少なくとも1つの別の捕捉剤が、15族又は16族のヘテロ原子(好ましくはO、N、P、及びSの原子、より好ましくはO及びNのヘテロ原子)を含む立体障害炭化水素、好ましくは立体障害フェノールと組み合わせて用いられる。立体障害炭化水素の具体例としては、tert-ブタノール、イソプロパノール、トリフェニルカルビノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルアニリン、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルアニリン、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルアニリン、ジイソプロピルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジフェニルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
好ましい組み合わせとしては、トリフェニルカルベニウムテトラキス-パーフルオロフェニルボレートトリイソブチルアルミニウム、4-メチル-2,6-tertブチルフェノールが挙げられる。
【0115】
使用される第1及び第2の金属錯体:捕捉剤のモル比は、好ましくは0.1:1000~0.1:10の範囲、より好ましくは0.1:1000~0.1:300の範囲、最も好ましくは0.1:500~1:100の範囲である。
【0116】
使用される活性化剤の第1及び第2の金属錯体に対するモル比は、好ましくは5:1~1:1の範囲である。
【0117】
重合方法
本開示によるコポリマーは、エチレンと、少なくとも1つのC3~20-α-オレフィンと、少なくとも1つの非共役ジエンと、少なくとも1つの二重重合性ジエンモノマーとの、前述の第1及び第2の金属錯体の存在下での共重合を含む方法によって調製することができる。
【0118】
重合は、気相中、スラリー中、又は不活性溶媒、好ましくは炭化水素溶媒中の溶液中で行うことができる。
【0119】
この重合は、様々な重合ゾーン内で行うことができる。重合ゾーンは、重合が行われる容器であり、バッチ反応器又は連続反応器のいずれであってもよい。複数の反応器が用いられる場合(例えば直列又は並列で接続された複数の反応器)、それぞれの反応器が別々の重合ゾーンと見なされる。
【0120】
第1及び第2の金属錯体は、活性化剤とあらかじめ混合しておくことができ、あるいは重合ゾーン内で混合することができる。同様に、第1及び第2の金属錯体を、あらかじめ混合して、一緒に重合ゾーンに供給することができ、あるいはその場での混合のために別々に加えることができる。このため、添加及び混合は、連続的であってもバッチ方式であってもよく、同じ又は異なる活性化剤をそれぞれの触媒系に使用することができる。
【0121】
好ましい溶媒としては、1つ以上の炭化水素溶媒が挙げられる。適切な溶媒としては、C5~12炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタメチルヘプタン、水素化ナフサ、それらの異性体及び混合物が挙げられる。重合は、形成される生成物により10~250℃の温度で行うことができる。最も好ましくは、重合は、溶液中で行われる場合、50℃を超える温度で行われる。
【0122】
好ましい一実施形態では、重合は、ポリマーの分子量を制御するための1つ以上の連鎖移動剤の使用を含む。好ましい連鎖移動剤としては水素(H)が挙げられる。
【0123】
配合されたポリマー組成物
本明細書において提供されるコポリマーは、硬化剤の存在下で硬化(架橋)させることができる。すなわち、コポリマーは硬化性である。
【0124】
本開示の別の一実施形態では、本明細書において製造されるポリマー組成物は、1つ以上の追加のポリマー及び/又は添加剤をさらに含み、それによって配合されたポリマー組成物が形成される。例えば、種々の実施形態のプロセスは、本開示によるエチレンコポリマーと、1つ以上の追加のポリマー成分及び/又は添加剤とをブレンドすることをさらに含むことができる。一般に、従来のEP又はEPDM配合物に適切なあらゆる追加のポリマー成分及び/又はあらゆる添加剤又は別の追加の成分が、配合に適切となるであろう。適切な添加剤としては、EPDM配合物などのエラストマー配合物の技術分野において周知の添加剤が挙げられる。添加剤の例としては:エクステンダー油;可塑剤;加工助剤、例えば、脂肪酸、ワックスなど;酸化防止剤(例えば、商品名IRGANOX 1010又はIRGANOX 1076で市販されるものなどのヒンダードフェノール類);ホスフィット類(例えば、商品名IRGAFOS 168で市販されるもの);硬化剤又は架橋剤(酸化亜鉛、過酸化物、フェノール樹脂などの硬化剤及び助剤のいずれか又は両方);充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー、シリカなど);オゾン劣化防止剤;スコーチ防止剤;非粘着性添加剤;粘着付与剤(ポリブテン、テルペン樹脂、脂肪族及び芳香族の炭化水素樹脂、アルカリ金属及びグリセロールのステアレート、並びに水素化ロジンなど);UV安定剤;熱安定剤;アンチブロッキング剤;離型剤;帯電防止剤;顔料;着色剤;染料;タルク;並びに当技術分野において周知の他の添加剤のあらゆる1つ以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。「エクステンダー油」は、炭素及び水素を含み25℃において液体である化合物を意味する。エクステンダー油としては、種々のパラフィン及びパラフィンブレンド、脱芳香族脂肪族炭化水素、高純度炭化水素流体、ポリアルファオレフィン、ポリブテン、鉱油などが挙げられる。上記コンパウンドは硬化性であってよい。上記コンパウンドは硬化させることもでき、すなわちこれらは1つ以上の硬化剤を含み、硬化反応が行われていてよい。
【0125】
用途
本開示によるエチレンコポリマー(それらのコンパウンドを含む)は、EP又はEPDMコポリマーに適切なあらゆる用途を含む種々の最終用途に使用することができる。本開示によるエチレンコポリマー(それらのコンパウンドを含む)は、押出成形に特に適切となることができ、特に押出物品を製造するために、1つ以上のダイへと押出すことができる。
【実施例
【0126】
試験方法
コモノマーの組成
C2/C3比についてはASTM D3900(改訂日付2017年)に準拠し、プレスしたポリマーフィルムのジエン含有量についてはASTM D6047(改訂日付2017年)に準拠して、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を用いてコポリマーの組成を求めた。
【0127】
位相角測定
パラメーターΔδを用いて、Montech MDR 3000移動ダイレオメーターによる位相角測定によって、ポリマーの分岐を求めた。Δδ(度の単位で表される)は、125℃における動的機械分析(DMA)により0.1rad/sの周波数で測定される位相角δと、100rad/sの周波数で測定される位相角δとの間の差である。Δδは、ポリマー構造中の長鎖分岐の存在の尺度の1つである。Δδの値が小さいほど、多くの長鎖分岐がポリマー中に存在し、参照により本明細書に援用されることが、H.C.BooijによるKautschuk + Gummi Kunststoffe,Vol.44,No.2,pages 128-130,1991によって紹介されている。
【0128】
示差粘度測定法を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-DV)
Polymer Characterization S.A, Valencia,SpainのPolymer Char GPCを使用して、示差粘度測定法を用いたゲル浸透サイズ排除クロマトグラフィー(GPC/SEC-DV)によって、分岐度g’(III)を求めるための分子量分布(MWD)及び固有粘度を求めた。サイズ排除クロマトグラフには、オンライン粘度計(Polymer CharV-400粘度計)と、オンライン赤外線検出器(IR5 MCT)と、3つのAGILENT PL OLEXISカラム(7.5×300mm)と、Polymer Charオートサンプラーとを取り付けた。ポリエチレン(PE)標準物質を用いて、システムの汎用較正を行った。
【0129】
ポリマー試料をPolymerCharオートサンプラーのバイアル中に秤量した(0.3~1.3mg/mlの範囲の濃度)。オートサンプラー中で、上記バイアルには、1g/lのジ-terブチルパラクレゾール(DBPC)で安定化させた溶媒(1,2,4-トリクロロベンゼン)が自動的に充填された。試料を高温オーブン(160℃)中に4時間維持した。この溶解時間の後、試料は、カラム上に注入する前に、インラインフィルターによる濾過が自動的に行われた。このクロマトグラフシステムを、160℃で動作させた。1,2,4-トリクロロベンゼン溶離液の流量は1.0mL/分であった。このクロマトグラフは、濃度用の内蔵オンライン赤外線検出器(IR5 MCT)と、内蔵PolymerCharオンライン粘度計とを備えていた。
【0130】
分岐度g’(III)を求めるために、示差粘度測定法を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-DV)によって、エチレンコポリマーの重量平均固有粘度[η]を求めた。
【0131】
試験したエチレンコポリマーのα-オレフィンに関して、線状ポリエチレン基準ポリマーの粘度を、Th.G.Scholte,N.L.J.Meijerink,H.M.Schoffeleers,A.M.G.Brands,J.of Appl.Pol.Sci.,Vol,29,3763-3782(1984)、及びEvensらの国際特許出願の国際公開第99/00434A1号パンフレット(両方が参照により本明細書に援用される)において開発された原理に従って補正することによって、同じエチレン-α-オレフィン組成の線状基準コポリマーの見掛けの重量平均粘度[η]を求めた。分岐度は、コポリマーの分子量(M)と固有粘度[η]との間の関係を与えるMark-Houwinkの式:
[η]=KM
によって求めることができる。ここで、K及びaはMark-Houwingパラメーターであり、これらは個別のポリマー-溶媒系に依存して決定される。長鎖分岐を有しない純粋なコポリマーの場合、log(η)とlog(M)との間の関係は、線形関係で表される。長鎖分岐によって、log(η)とlog(M)との間の線形関係からの逸脱が生じる。分岐度が増加すると、log(η)とlog(M)との間の関係の線形性が小さくなる。サイズ排除クロマトグラフィーと示差粘度測定法との組み合わせ(SEC-DV)を用いて、エラストマー性コポリマーの分子量分布(MWD)及び分岐度を求めることができる。汎用較正によると、主要なlog([η]×M)対保持容量=一定である([η]は固有粘度を表し、Mは分子量であり、「i」は、SEC-DVクロマトグラムにおけるi番目の溶出分画である)。
【0132】
実験のMark-Houwinkの式を、基準として用いられる線状ポリマーのMark-Houwinkの式と比較すると、分岐度に関する情報が得られる。分岐は、α-オレフィン又はポリエンの1つの分子の組入れによって生じる枝よりも長いポリマー鎖中の枝であると理解される。
【0133】
基準のMark Houwinkの式は、ポリマーの平均エチレン/α-オレフィン組成に依存する。参照により本明細書に援用されるTh.G.Scholte,N.L.J.Meijerink,H.M.Schoffeleers,A.M.G.Brands,J.of Appl.Pol.Sci.,Vol,29,3763 3782(1984)によると、線状エチレン-プロピレン(EP)基準コポリマーのMark-Houwinkの式に関して:
[η]=(1-1/3W3)(l+α)PE(Mv
が維持され、ここで:[η]は、試験したエチレンコポリマーのものに対応するエチレン/α-オレフィン組成を有する線状コポリマーの見掛けの重量平均固有粘度(単位dl/g)であり;
PEは、線状ポリエチレン(PE)のMark-Houwink定数であり;
aは、線状ポリオレフィンコポリマーのMark-Houwink定数であり;
Mvは:
【数2】
で定義される見掛けの粘度平均分子量であり、
ここで:
は、溶出分画iに属する重量分率であり、
は、溶出分画iの見掛けの分子量である。
【0134】
PE及びaは、SEC-DVにおいて用いられる溶媒及び温度について実験的に求められる(KPEは、135℃において1,2,4-トリクロロベンゼン中で測定して4.06×10-4であり、aは135℃において1,2,4トリクロロベンゼン中で測定して0.725である)。Mvは、同じ分子量の線状PE基準ポリマーから求められる。
【0135】
α-オレフィンとしてプロピレンを有するエチレンコポリマーの場合、W3はプロピレンの重量分率である。W3は、式:W3=C3/(C3+C2)により計算され、ここでC2及びC3は、それぞれエチレンコポリマーのエチレン含有量及びプロピレン含有量(質量%の単位)を表す。二重重合性モノマー及び非共役ジエンモノマーの量は少なく、それらの存在は[η]の決定に関しては無視される。別のα-オレフィン単位も存在する場合、それらの量も無視され、計算は、前述のようにプロピレン含有量に基づく。プロピレン以外のα-オレフィンコポリマーを有しプロピレンを有しないエチレンコポリマーの場合、[η]の値は、上記引用のTh.G.Scholteらの前述の論文に示される指針により補正される。
【0136】
ムーニー粘度
コポリマー試料のムーニー粘度は、Perfonより提供された二軸延伸PP(厚さ20μm)フィルムを用いて改訂日付2015年のISO289に準拠して測定した。測定条件は、125℃においてML(1+4)であった。
【0137】
コンパウンドのムーニー粘度(100℃におけるML(1+4)の測定条件)は、DIN53523-3(NatureFlex NP/28μmを使用、Putz Folien,D-65232 Taunusstein Wehen製造)に準拠して測定した。
【0138】
強度比(D)
13C NMRによって強度比を求めた。コポリマー試料を100℃においてCCl中に溶解させ、DBPC(ジ-tertブチルパラクレゾール)を安定剤として加えた。100℃に加熱した10mmのプローブヘッドを取り付けた、500MHz(13Cの場合は125MHz)で操作されるBruker Avance分光計上で13C NMRスペクトルを記録した。標準パワーゲート(登録商標)デカップリングパルスシーケンスを使用した。20秒の緩和遅延で、合計で512スキャンを行った。Bruker TopSpin 3を用いてデータを処理した。フーリエ変換のために、1Hzの線幅拡大を使用した。2つの第3級炭素原子のすぐ近くのCH-基(Sαα)及び1つの第3級炭素原子と1つの第2級原子とのすぐ近くのCH-基(Sαβ)のピーク強度の比から強度比Dを計算した。C~C20α-オレフィンとしてのプロピレンの場合、炭素原子Sαβの信号は、34.7ppm及び35.6ppmにおける共鳴の合計であった。炭素原子Sααの信号は42~48ppmであった。この領域内に幾つかのジエンの信号が現れることもあるので、このようなジエンからの信号の補正を行った。炭素原子Sαβの信号の面積(積分)を炭素原子Sααの信号の面積(積分)で割ると、いわゆる強度比Dが得られる。計算はベースラインを補正した積分を用いて行い、ベースラインの補正は、対象領域の周囲で手作業で行った。
【0139】
Cat A
第1の触媒(Cat A)は、一般式((CHCp-Ti-(CH)(NC(2,6-C)(N((CH(CHであり、又はMeCpTiMe(NC(2,6-FPh)(PrN)と略記されるアミジナトチタン錯体であり、「Me」は「メチル」を表し、Prは「イソプロピル」を表す。国際公開第2005/090418 A1号パンフレット(参照により本明細書に援用される)の化合物10Mに記載されるように触媒を調製した。
【0140】
臭化メチルマグネシウムの溶液(16.5mL、ジエチルエーテル中の3.0M溶液、49.5mmol)を、MeCpTiCl(NC(2,6-FPh)(iPrN)(12.18g、24.7mmol)のトルエン(100mL)中の溶液に-78℃において加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液から溶媒を減圧下で除去した。残留物にヘキサン(100mL)を加えて粉砕して、10.9gの純生成物を黄色粉末(97%)として得た。これらの結晶は、H NMR(300MHz)(CDCI) δ(ppm):7.8(d pent,1H)、7.0(dd,2H)、4.0(bs,1H) 3,8(sept,1H)、1.9(s,15H)、1.8(d,6H)、1.3(d,6H)、0.0(s,6H)、及び13C-NMR(75.5MHz)(CDCI) δ(ppm):157.3(dd,J=248Hz及びJ=8Hz)、146.5、127.1(t,J=10Hz)、118.7,1 17.2(t,J=25Hz)、110.3(m)、50.5、47.1、45.9、20.1、19.4、10.3によって特徴づけられた。
【0141】
Cat B
第2の結晶(Cat B)は、ジルコニウムメタロセン触媒MeSi(Ind)ZrMeであり、ここで、「Me」は「メチル」を表し、「Ind」は「インデニル」配位子を表す。この触媒は、Spalek et alii,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.28(1989),no.11、及びBochmann et alii,Organometallics,vol 13,No.6,1994により合成した。
【0142】
実施例1、2及び3(E1、E2、E3)
実施例E1、E2、及びE3のポリマーを得るための重合を以下のように行った。重合は、直列に接続された2つの液体を満たした溶液重合反応器内で行った。両方の反応器の容積は3リットルであった。水、酸素、及び極性化合物などの触媒を殺す不純物を除去するために種々の吸収媒体と接触させることによって、供給流を精製した。プロセスは、すべての供給流において連続であった。あらかじめ混合した溶媒(65℃~70℃沸点範囲のヘキサン異性体の混合物)、プロペン、エチレン、ジエン、二重重合性ジエンモノマー、水素、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、及び2,6-ジterブチル-4-メチル-フェノール(BHT)は、反応器に供給する前にあらかじめ冷却した。第1及び第2の金属錯体の混合物を含む溶液(CAT A/CAT B)と、テトラキス-パーフルオロフェニルホウ酸トリフェニルカルベニウム活性化剤の溶液(TBF20)とを別々に反応器に供給した。TIBA/BHTのモル比は1/1であり、TIBAの供給速度は1.2mmol/時であった。モル比TBF20/(Cat A+Cat B)は2/1であった。全圧力は20bargであった。さらなる詳細は表1中に示している。表1に示すような所望のポリマームーニー粘度が実現されるように水素の供給を調節した。圧力は20bargに維持した。ポリマー溶液は、排出ラインを介して第2の反応器から取り出し、そこでイソプロパノール中のIrganox(登録商標)1076の溶液を加えてさらなる重合反応を停止させ、ポリマーを安定化させた。続いて、連続水蒸気蒸留工程によって残留するモノマー及び溶媒を除去して、ポリマークラムを得た。
【0143】
得られたEPDMポリマーは、ミル上でバッチ方式で乾燥させた。
【0144】
EPDMポリマーE1、E2、及びE3の組成及び性質も表1中に示している。これらのEPDMポリマーは、広いMWD及び顕著な分岐を有した。
【0145】
【表1】
【0146】
表1において、T1は反応器1内の温度であり、T2は反応器2内の温度であり、Prodは、グラム/時の単位でのポリマー生成速度を意味し、C2はエチレンから誘導される単位を意味する。ポリマーの残りはプロピレンから誘導される単位で構成された。
【0147】
表2に示されるように、前述のように調製したポリマー(実施例1及び2、E1、E2、E3)と、同様のコモノマー組成であるが異なる調製が行われ、異なるミクロ構造及びマクロ構造を有するEPDMポリマー(比較例1~3、C1、C2、C3及びC4)とを比較した。C2及びC3のコポリマーはチーグラー・ナッタ触媒を用いて調製した。C1のコポリマーは触媒Aのみを用いて調製した。C4のコポリマーは、モノシクロペンタジエニルチタン触媒(CHCH(CHCp-Ti-(CH(NC(2,6-C)NC10)とモノインデニル-チタン錯体[(インデニル)-Ti(CH(NC(C)(N((CH(CH]との組み合わせを第2の金属錯体として用いて調製した。強度比は測定しなかったが、0.5未満であると考えられる。
【0148】
【表2】
【0149】
コンパウンドの調製及び性質
ポリマーC1~C4、E1、E2、及びE3を使用し、表3に列挙した成分を使用して、コンパウンドを作製した。これらのコンパウンドは、密閉式ミキサー(Harburg-Freudenberger Maschinenbau GmbHのGK1,5 E1;ラム圧力8bar、50rpm、72%の充填度、及び全混合時間5分)上で調製した。硬化系は、オープンミル(200mmのロール直径;20rpm、40℃のロール温度、及び摩擦1.22)上で加えた。
【0150】
【表3】
【0151】
これらのコンパウンドに対して、機械的性質及び弾性的性質の試験を行った。コンパウンドから試験板(2mm及び6mmの厚さ)を準備し、t90値(t90は、レオメーター測定中に最大トルクの90%に到達するまでの時間である)の1.1倍及び1.25倍に相当する時間の間180℃でプレス硬化させた。これらのコンパウンドに対して、コンパウンドのムーニー粘度及びΔSの試験を行った。DIN 53529に準拠してレオメトリーデータ(ΔS=180℃におけるトルク差MH-ML)を得た。硬化した試料について、圧縮永久ひずみ(CS)、破断時引張強度(TS)、及び破断時伸び(EB)の試験を行った。圧縮永久ひずみ(CS)はDIN ISO 815に準拠して求めた。ショアA硬度(H)はDIN ISO 7629-1に準拠して求めた。破断時引張強度(TS)及び破断時伸び(EB)はDIN ISO 37に準拠して求めた。結果を表4中に示す。
【0152】
【表4】
【0153】
押出実験:
以下の設定により、Brabender 19mm押出機中、Garveyプロファイル(図2に示される、ダイ直径4mm)に通して未加硫のコンパウンドから形材を押し出した:
・ハウジング/金型、及びスクリューの温度=100℃
・測定時間=60秒
・ロール速度=50rpm
・ノズル直径=4mm
【0154】
押出実験で得られた押出ストリップを図1中に示す。コポリマーE1から形成された形材(図1中の形材a))、E2から形成された形材(図1中の形材b))、及びE3から形成された形材(図1中の形材f))は、高品質であり、滑らかな表面を有した。比較用ポリマーC1、C2、及びC3を用いて得られた形材は、あまり滑らかではない表面を有し、種々の表面欠陥を示した(図1中に示される形材c)、d)、及びe))。C4からは、E1及びE2と同様の性質の押出物が得られたが(図1中には示していない)、より高い分岐密度(より小さいΔδ)及びより高いジエン(ENB)含有量を有し(表2を比較)、したがったはるかに高い製造コストを有した。
【0155】
本開示によるポリマー及び比較用ポリマーから作製したコンパウンドの機械的性質は、大きく異なることはなく、両方の場合で十分であるが(表4を比較)、本開示によるポリマーは、押出試験(図1を比較)で確認されるようにはるかに改善された押出挙動を有し、及び/又は低い製造コストで製造できたことを、上記実験は示している。
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図1d)】
図1e)】
図1f)】
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレン、
(b)少なくとも1つのC~C20α-オレフィン、
(c)少なくとも1つの二重重合性ジエン、
(d)前記二重重合性ジエン以外の6~30個の炭素原子を有する少なくとも1つの非共役ジエン
から誘導される繰り返し単位を含むコポリマーであって、
前記コポリマーが、
(i)C13-NMR分光法によって測定して0.5以下の強度比Dと、
(ii)5°~50°の分岐指数Δδ(ここで、Δδは、125℃における動的機械分析(DMA)によって、0.1rad/sの周波数で測定される位相角δと、100rad/sの周波数で測定される位相角δとの間の差である)と;
(iii)0.50~0.99の間の分岐指数g’(III)と、
(iv)R以上である分子量分布(MWD)(ここで、Rは前記コポリマーの分岐指数g’(III)に依存し、g’(III)が0.90以上である場合、Rは-27.7×g’(III)+29.2であり;g’(III)が0.90を超えて0.99までの場合、Rは4.3である)と、
を有し、
g’(III)及び前記分子量分布は、ゲル浸透サイズ排除クロマトグラフィーによって求められ、
前記コポリマーは、30重量%~85重量%までのエチレンから誘導される単位と、5~80重量%のC~C20α-オレフィンから誘導される単位と、2重量%~20重量%の前記二重重合性ジエン以外の非共役ジエンから誘導される単位とを含み、前記重量%は、100重量%である前記コポリマーの全重量を基準としており、
前記少なくとも1つの二重重合性ジエンが、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロペンタン、1,5-ジビニルシクロオクタン、1-アリル-4-ビニルシクロヘキサン、1,4ジアリルシクロヘキサン、1-アリル-5-ビニルシクロオクタン、1,5-ジアリルシクロオクタン、1-アリル-4-イソプロペニル-シクロヘキサン、1-イソプロペニル-4-ビニルシクロヘキサン及び1-イソプロペニル-3-ビニルシクロペンタン、ジシクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、2,5-ノルボルナジエン、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、コポリマー。
【請求項2】
g’(III)が、0.70~0.98又は0.80~0.97であり、位相角差Δδが、5°~35°の間であることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
前記MWDが、4.5~50の間であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
前記強度比Dが、0.02~0.4までの範囲内である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記C~C20α-オレフィンが、プロピレンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
6~30個の炭素原子を有する前記非共役ジエンが、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、及びそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項7】
2重量%~6.7重量%の非共役ジエンから誘導される単位を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記少なくとも1つのC~C20-α-オレフィンが、プロピレンを含み、前記少なくとも1つの非共役ジエンが、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)を含み、前記少なくとも1つの二重重合性ジエンモノマーが、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項9】
前記少なくとも1つの二重重合性ジエンが、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)を含み、VNBから誘導される単位の含有量が、0.05重量%~5重量%又は0.5重量%~5重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項10】
第1の金属錯体及び第2の金属錯体を用いる重合によって得られる請求項1~9のいずれか一項に記載のコポリマーであって、
前記第1の金属錯体が、式(1):
CyLMZ (1)
に対応し、
式中、
Cyは、ハロゲンと、1~20個の炭素原子を含む芳香族又は脂肪族の直鎖又は分岐又は環状の残基と、からなる群から選択される1つ以上の置換基を含んでいてよい、シクロペンタジエニル配位子であるか、又は、
Cyは、非置換又は置換インデニル配位子、少なくとも3つのメチル基を有する置換シクロペンタジエニル配位子、又は式(2e):
【化3】
(式(2e)中、
及びR は、個別に、水素、ハロゲン、C ~C 10 アルキル、C ~C 10 シクロアルキル、及び、非置換であるか又はC ~C -アルキル若しくはC ~C -ジアルキルアミノで置換されたフェニルからなる群から選択されるか、又は
及びR は、それらが結合するチオフェン環の2つの二重結合炭素原子と一緒に、非置換であるか又はC ~C -アルキルで置換された脂肪族C ~C -シクロアルケン環を形成し、
、R 、及びR は、個別に、水素、C ~C アルキル、フェニル、並びにC ~C -アルキル及び/又はハロゲンで置換されたフェニルの群から選択され;
Mはチタンであり、pは2であり、Zはメチル又はベンジルである)
に対応するS複素環式配位子から選択され、
Mは、チタン、ハフニウム、又はジルコニウムから選択され;
Zは、ハロゲン、C1~10アルキル基、C7~20アラルキル基、C6~20アリール基、C1~20炭化水素で置換されたアミノ基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオン性配位子であり;
pは、1又は2であり;
Lは、式(2):
【化1】
(式中、配位子Lは、そのイミン窒素原子を介して金属Mに共融結合し、Subは、非置換であるか、又はハロゲン及びC~Cアルキル基から選択される置換基で置換されてよい、C~C20アルキル残基又はC~C20アリール残基であり;Subは、一般式-NRを表し、R及びRは、独立して、脂肪族C~C20ヒドロカルビル残基、ハロゲン化C~C20脂肪族ヒドロカルビル残基、芳香族C~C20ヒドロカルビル残基、及びハロゲン化芳香族C~C20ヒドロカルビル残基からなる群から選択されるか、又はRはR若しくはSubとともに複素環式環を形成する)
に従う配位子であるか、又は
Lは、一般式(2b):
【化2】
(式中、このアミジン含有配位子は、イミン窒素原子Nを介して金属Mに共有結合し;Sは、-CH-単位であり、tは、整数であり、1、2、3、又は4を表し、Subは、Subをアミン窒素原子Nに結合させる14族原子を含む、脂肪族又は芳香族の環状又は直鎖の置換基を表し、Subは、2つの炭素原子がsp又はsp混成していてもよいC単位であり、前記C単位は、1つ以上のハロゲン原子によって、又は1つ以上のC~C10アルキル基若しくはC~C10アルコキシ基によって置換されていてもよい)
に対応し;
前記第2の金属錯体は、ビスインデニル錯体であり、式(3):
J-Ind-MX (3);
〔式中、
Indは、金属Mへと結合し、結合基Jを介して互いにさらに連結する2つのインデニル配位子を表し;前記インデニル配位子は、置換されていても非置換であってもよく;
Jは、前記2つのインデニル配位子(In)を連結する二価の架橋基を表し;ここでJは、(a)環状単位(R J’)(式中、それぞれのJ’は独立してC又はSiであり、nは1又は2であり、それぞれのRは、独立して、C~C20の置換又は非置換ヒドロカルビルであり、但し、2つ以上のRは、互いに結合して、少なくとも1つのJ’を含む飽和又は部分飽和又は芳香族の環又は縮合環構造を形成する)、及び(b)非環状単位R J’(式中、それぞれのRは独立して、水素、非置換であっても置換されていてもよいC~C直鎖又は分岐のヒドロカルビルから選択され、それぞれのJ’は独立して、C又はSiである)から選択され;
Mは、チタン、ハフニウム又はジルコニウムから選択され;
それぞれのXは独立して、ハロゲン、C1~10アルキル基、C7~20アラルキル基、C6~20アリール基、及びC1~20炭化水素で置換されたアミノ基からなる群から選択される一価のアニオン性配位子である〕
に対応する、コポリマー。
【請求項11】
式(3)中、
Mは、ジルコニウムを表し、
両方のXは、C~C10アルキル基から選択され、
両方のインデニル配位子Indは、非置換であるか、又は置換されており、1~3個の炭素原子を有する1~7個のアルキル置換基を有し、
Jは、直鎖又は分岐であるが環状ではなく、Jは、(HC)Si、(HSi、(HSi、HC、HCHC、(HC)C、(HSi、及び(HSiから選択される
請求項10に記載のコポリマー。
【請求項12】
エチレンと、前記少なくとも1つのC3~20-α-オレフィンと、前記少なくとも1つの非共役ジエンと、前記少なくとも1つの二重重合性ジエンモノマーとを、少なくとも1つの第1の金属錯体の存在下で共重合させる工程を含み、前記第1及び第2の金属錯体が請求項10又は11に記載のものである、請求項1~11のいずれか一項に記載のコポリマーを製造するための方法。
【請求項13】
少なくとも1つの活性化剤(b)、及び場合により少なくとも1つの捕捉剤(c)の存在下をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コポリマーが、少なくとも部分的に硬化している、請求項1~11のいずれか一項に記載のコポリマーを含む押出物品。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載のコポリマーを含むコンパウンドを提供する工程と、少なくとも1つのダイを通して前記コンパウンドを押し出す工程とを含む、押出物品の製造方法。
【請求項16】
請求項10又は11で定義された第1及び第2の金属錯体を含む、組成物。
【国際調査報告】