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特表2023-518738抗生物質耐性のための迅速スクリーニング及び治療レジメン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】抗生物質耐性のための迅速スクリーニング及び治療レジメン
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/18 20060101AFI20230426BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20230426BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230426BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20230426BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20230426BHJP
【FI】
C12Q1/18
C12Q1/06
G01N33/483 E
G01N27/02 D
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555885
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 GB2021050694
(87)【国際公開番号】W WO2021186196
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】2004021.8
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519258068
【氏名又は名称】セクレタリー オブ ステート フォー ヘルス アンド ソーシャル ケア
【氏名又は名称原語表記】SECRETARY OF STATE FOR HEALTH AND SOCIAL CARE
(71)【出願人】
【識別番号】500125788
【氏名又は名称】ユニバーシティ、オブ、サウサンプトン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHAMPTON
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】サットン,ジョン マーク
(72)【発明者】
【氏名】ハインド,シャーロット
(72)【発明者】
【氏名】モーガン,ハウウェル
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー,ダニエル
【テーマコード(参考)】
2G045
2G060
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G045CB21
2G045FA34
2G045FA37
2G045GC22
2G045JA03
2G060AA05
2G060AA15
2G060AA19
2G060AD06
2G060AF03
2G060AF06
2G060AG11
2G060FA11
2G060HA02
2G060JA07
2G060KA09
4B029AA07
4B029BB02
4B029FA02
4B029FA03
4B029FA07
4B063QA06
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QQ10
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR75
4B063QR79
4B063QX04
(57)【要約】
ファージ、抗菌ペプチドを含む抗菌剤の迅速感受性試験、及び抗菌媒介性血清殺菌アッセイの迅速分析のためにインピーダンスフローサイトメトリーを使用する方法が提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤感受性試験の方法であって:
1つ以上の抗菌剤に曝露された微生物の第1の試料を含む、電解質中に懸濁された微生物の1つ以上の試料の調製することと;
前記第1の試料をインピーダンスフローサイトメーターに通過させて、前記抗菌剤に曝露された前記微生物のインピーダンス値の1つ以上の成分を表す第1のインピーダンス信号を取得することと;
前記第1のインピーダンス信号と参照インピーダンス信号とを比較することと;
前記第1のインピーダンス信号と前記参照インピーダンス信号との間の任意の差に基づいて、前記抗菌剤に対する前記微生物の感受性を決定することと、を含み、
前記抗菌剤は、ファージ、血清成分、免疫系成分、及び抗菌ペプチドの群から選択される1つ以上であり、
好ましくは、前記抗菌ペプチドは膜透過性ペプチド、膜破壊性ペプチド、又は細孔形成性ペプチド抗菌剤である、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の抗菌剤に曝露されていない前記微生物の第2の試料を調製することと、前記第2の試料を前記インピーダンスフローサイトメーターに通過させて、前記曝露されていない微生物の前記インピーダンス値の1つ以上の成分を表す第2のインピーダンス信号を取得することと、を含み、前記第2のインピーダンス信号は前記参照インピーダンス信号である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照信号は、前記第1のインピーダンス信号に含まれる前記インピーダンス値の1つ以上の成分についての所定の値であり、場合により、前記成分は、電気半径及び/又は電気的不透明度であり、好ましくは、前記参照インピーダンス信号は閾値であり、前記感受性を決定することは、前記第1のインピーダンス信号を前記閾値と比較することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
異なる濃度の前記1つ以上の抗菌剤に各々曝露された前記微生物の追加の試料を調製することと;
追加の各試料を前記インピーダンスフローサイトメーターに通過させて、対応する追加のインピーダンス信号を取得することと;
追加の各インピーダンス信号を前記第1のインピーダンス信号と比較することと;
前記参照インピーダンス信号と前記第1及び追加のインピーダンス信号との間の任意の差に基づいて、前記微生物が感受性である前記1つ以上の抗菌剤の最小濃度を決定することと、をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
微生物の前記試料を調製することが、前記第1の試料、前記第2の試料、及び任意の追加の試料のための前記微生物を、ある体積の電解質中に含めて、単一の試料を生成することと、前記1つ以上の抗菌剤を前記単一の試料に添加することと、を含み、前記方法が:
前記単一の試料を前記インピーダンスフローサイトメーターに通過させることと;
前記単一の試料の前記通過中に2つ以上の時間間隔で前記単一の試料のインピーダンス信号を取得することであって、第1の時間間隔での前記インピーダンス信号は前記第1のインピーダンス信号であり、第2の時間間隔での前記インピーダンス信号は前記第2のインピーダンス信号であり;後の時間間隔でのインピーダンス信号は追加のインピーダンス信号である、取得することと;
前記決定が前記インピーダンス信号間の任意の差に基づくように、前記比較及び前記決定において前記追加のインピーダンス信号を含めることと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
微生物の前記試料を調製することが、前記第1の試料及び任意の追加の試料のための前記微生物を、ある体積の電解質中に含めて、単一の試料を生成することを含み、前記方法が:
前記単一の試料を前記インピーダンスフローサイトメーターに通過させることと;
前記単一の試料の通過中に第1の時間間隔でインピーダンス信号を取得することであって、これは前記参照インピーダンス信号である、取得することと;
前記第1の時間間隔の後に前記単一の試料に1つ以上の抗菌剤を添加することと;
前記単一の試料の通過中に1つ以上の追加の時間間隔においてさらなるインピーダンス信号を取得することであって、前記第1の時間間隔の後の第2の時間間隔における前記インピーダンス信号が前記第1のインピーダンス信号であり、後の時間間隔におけるインピーダンス信号が追加のインピーダンス信号である、取得することと;
前記決定が前記インピーダンス信号間の任意の差に基づくように、前記比較及び前記決定において前記追加のインピーダンス信号を含めることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の試料が、前記微生物のブレークポイント分析における使用のために予め規定された濃度の前記抗菌剤に曝露された前記微生物を含み、前記感受性を決定することが、前記微生物を、前記抗菌剤に対して感受性、非感受性、耐性、又は非耐性であると分類することを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の試料中の前記抗菌剤の濃度が、前記微生物が前記抗菌剤に対して感受性又は非感受性であること示すように予め規定された濃度であり、前記方法がさらに:
前記抗菌剤に曝露された前記微生物の第3の試料を、前記微生物が前記抗菌剤に対して耐性又は非耐性であることを示すように予め規定された前記第1の試料よりも高い濃度で調製することと;
前記第3の試料を前記インピーダンスフローサイトメーターに通過させて、前記曝露された微生物の前記インピーダンス値の1つ以上の成分を表す第3のインピーダンス信号を取得することと;
前記参照インピーダンス信号と前記第3のインピーダンス信号とを比較することと;を含み、
前記感受性を決定することが、前記参照インピーダンス信号と前記第1のインピーダンス信号との間の任意の差に基づいて前記微生物を感受性又は非感受性として分類することと、前記参照インピーダンス信号と前記第3のインピーダンス信号との間の任意の差に基づいて前記微生物を耐性又は非耐性に分類することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記インピーダンス値の前記成分が、微生物のサイズ、微生物の形状、微生物の壁構造、及び微生物の内部構造のうちの1つ以上を示す、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記インピーダンス値が前記微生物の形状を示すように、前記インピーダンスフローサイトメーターを通る前記試料通過の方向に対して2つ以上の方向に沿って配置された電流経路を使用して前記インピーダンス信号を取得することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記インピーダンスフローサイトメーターを通る試料通過の方向に対して2つ以上の方向に沿って配置された電流経路を使用して前記インピーダンス信号を取得することを含み、異なる方向を有する電流経路を使用して取得されたインピーダンス信号を比較することによって前記微生物の剛性を推定することをさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
2つ以上の周波数で前記インピーダンス信号を取得することを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ビーズなどの非生物学的粒子を各試料に添加して、前記試料、及び/又は前記インピーダンスフローサイトメーターの操作における変動の補償に使用するための前記インピーダンス信号における参照情報を提供することを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記インピーダンス信号内の前記微生物と前記非生物学的粒子とを区別し、及び/又は前記試料中の前記微生物と任意の異なる微生物種とを区別するために、前記インピーダンス信号の位相及び/又は大きさを決定することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記位相及び/又は大きさの情報を使用して、前記インピーダンスフローサイトメーターから得られるインピーダンス信号の分解能を改善することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
インピーダンスフローサイトメトリーの方法であって:
電解質中に懸濁された粒子を含む流体の試料をフローチャネルに沿って流すことと;
前記流体を通る電流経路に電気信号を印加することであって、前記電流経路は、少なくとも第1の電流経路と、第2の電流経路と、さらなる第1の電流経路と、さらなる第2の電流経路とを備え、前記第1の電流経路及び前記さらなる第1の電流経路に印加される前記電気信号は、周波数、大きさ及び位相を有し、前記第2の電流経路及び前記さらなる第2の電流経路に印加される前記電気信号は、前記第1の電流経路及び前記第2の電流経路に印加される前記電気信号と実質的に等しい周波数及び大きさ並びに逆位相を有する、印加することと;
前記電流経路における電流を検出することと;
前記第1の電流経路及び前記第2の電流経路において検出された電流の合計を表す第1の加算信号と、前記さらなる第1の電流経路及び前記さらなる第2の電流経路において検出された電流の合計を表す第2の加算信号とを生成することと;
前記第1の加算信号と前記第2の加算信号との間の差を表す差動信号を取得することと、を含み、
前記粒子は微生物であり、前記微生物は、ファージ、血清成分、免疫系成分、及び抗菌ペプチドの群から選択される1つ以上の抗菌剤に曝露されており、好ましくは、前記抗菌ペプチドは膜透過性ペプチド、膜破壊性ペプチド、又は細孔形成性ペプチド抗菌剤である、方法。
【請求項17】
前記差動信号から、前記粒子のインピーダンス値の1つ以上の成分を表すインピーダンス信号を計算することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記粒子のインピーダンス値の前記1つ以上の成分をグラフ上にプロットして、粒子の集団の分布を示すことをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記集団の前記分布の境界を示す輪郭を前記グラフ上に確立することをさらに含み、場合により、前記境界は、データ点の主要な割合を囲み、前記割合は、外れている測定値が除外されるように、99%、95%、90%、75%、又は50%である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
差動信号を取得し、流体のさらなる試料についてインピーダンス信号を計算して、前記さらなる試料中の粒子についてのインピーダンス値のグラフをプロットすることと、前記さらなる試料中の前記粒子の集団の分布を前記輪郭と比較して、前記試料中の前記粒子と前記さらなる試料中の前記粒子との間の任意の差を同定することと、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記試料中の前記粒子及び前記さらなる試料中の前記粒子が同じ微生物の2つの群であり、前記試料中の前記微生物が抗菌剤に曝露されておらず、前記さらなる試料中の前記微生物が抗菌剤に曝露されており、前記試料中の前記粒子と前記第2の試料中の前記粒子との間の差の同定が、前記抗菌剤に対する前記微生物の感受性を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
差動信号を取得し、追加のさらなる試料についてインピーダンス信号を計算することをさらに含み、さらなる試料の各々が、(a)異なる濃度の同じ抗菌剤であって、それにより、差の同定が前記微生物が感受性である前記抗菌剤の最小濃度を示す、抗菌剤、又は(b)異なる抗菌剤のいずれかに曝露された同じ微生物の群を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記試料中の前記粒子及び前記さらなる試料中の前記粒子が同じ試料のサブ試料中の微生物であり、前記試料が前記微生物が曝露される抗菌剤を含み、前記差動信号は前記試料が前記フローチャネルに沿って連続的に流れている間の2つ以上の時間間隔について取得され、各時間間隔は異なるサブ試料に対応し、前記抗菌剤への前記微生物の曝露の直後の時間をカバーする第1の時間間隔が、前記微生物が前記抗菌剤によって影響を受けないサブ試料に対応するとして指定される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記インピーダンス値の前記1つ以上の成分が、前記電気信号の単一の周波数に対する前記インピーダンス値の大きさ及び位相を含む、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記電気信号の前記周波数が少なくとも2つの周波数成分を含み、前記インピーダンス値の前記1つ以上の成分が、第1の周波数成分における前記インピーダンス値の大きさと、第2の周波数成分における前記インピーダンス値の大きさとを含む、請求項18~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の周波数成分が低周波数を含み、前記第2の周波数成分が前記低周波数よりも高い高周波数を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の周波数成分が10MHz以下の周波数であり、前記第2の周波数成分が10MHz以上の周波数である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
任意の差を同定することが、微生物サイズの変化を示す、前記低周波数でのインピーダンス値の分布の変化を同定することを含む、請求項20、21、22又は23に従属する場合の請求項26又は請求項27に記載の方法。
【請求項29】
任意の差を同定することが、微生物の形態の変化を示す、前記高周波数でのインピーダンス値の分布の変化を同定することを含む、請求項20、21、22又は23に従属する場合の請求項26又は請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記差動信号、又は計算される場合には前記インピーダンス信号を分析して、前記電流経路を流れる粒子の存在によって引き起こされることが知られるパターンを同定することと、前記パターンの発生数を計数して、前記試料中の粒子の数を決定することと、をさらに含む、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項31】
前記差動信号、又は計算される場合には前記インピーダンス信号の大きさを測定することと、前記測定された大きさから前記粒子のサイズを計算することと、をさらに含む、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項32】
前記電流経路が、前記フローチャネルに沿った前記流体試料の流れの方向に対して実質的に横断する、請求項16~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記電流経路が、前記フローチャネルに沿った前記流体試料の流れの方向に実質的に沿っている、請求項16~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の電流経路及び前記第2の電流経路の一方、並びに前記さらなる第1の電流経路及び前記さらなる第2の電流経路の一方が、前記フローチャネルに沿った前記流体試料の流れの方向に対して実質的に横断し、前記第1の電流経路及び前記第2の電流経路の他方、並びに前記さらなる第1の電流経路及び前記さらなる第2の電流経路の他方が、前記フローチャネルに沿った前記流体試料の流れの方向に実質的に沿っている、請求項16~31のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、インピーダンスフローサイトメトリーの方法、例えば、抗菌剤感受性を決定するためのインピーダンスフローサイトメトリーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌剤耐性(AMR)は、微生物がそれに対して使用される抗菌剤の有害作用を回避、修正、又は適応する能力である。特に懸念されるのは、耐性細菌の増加及び世界的な拡散であり、これは、現在、世界の人々の健康及び富に対する主要な脅威として認識されている。感染が疑われる場合、医師は、効果的な治療を迅速に提供することを目的として、抗菌剤を直ちに処方することが多い。しかしながら、多くの場合、抗菌剤は、必要とされないか、又は感染を引き起こす特定の生物にとって不適切である。1つの注目すべき問題は、耐性メカニズムの存在のために無効である抗菌剤による細菌感染の治療である。これは、感染が持続し、重篤度が増加し、おそらく他の患者に広がることを意味し得る。潜在的に無効な抗菌剤を迅速に処方する主な理由は、抗菌剤耐性形質をチェックするための実験室試験が、患者が最初に治療を受けるときに、抗菌剤処方において通知するのに有用であるには、あまりにも遅すぎることである。
【0003】
典型的には、抗菌剤感受性試験は、液体培養物中又は固体寒天プレート上の抗菌剤の存在下での微生物増殖を測定する。ディスク拡散試験(又はEtestと呼ばれるこの試験原理の定量的変形)として知られる一般的な試験は、微生物培養物を一晩増殖させて試料を得、次いでこれを寒天プレート上に置くことを必要とする。既知の濃度の抗菌剤を含有するディスク又はストリップを寒天プレート上に置き、抗菌剤を含有するディスク又はストリップに近い微生物増殖の阻害を、長いインキュベーション期間後に測定する。ブロス微量希釈法は、異なる濃度の抗菌剤を含む液体培養物中の微生物の増殖を測定して、微生物の増殖が阻害される抗菌濃度(最小阻害濃度、又はMICとして知られる)を決定する。ブロス微量希釈MIC法は、自動化された実験装置を用いて実施することができる。これらの従来のアッセイは、微生物の集団の増殖を経時的に測定し、実施するのに何時間もかかる。したがって、その指針が最も重要である場合には、感染の初期段階で処方を通知又は指導するために結果を使用することはできない。
【0004】
微生物の集団を測定するこれらの従来の試験の代替として、抗菌剤に曝露された単一の微生物の光学特性を分析することは、従来の試験で測定された抗菌剤感受性と密接に相関するが、1時間未満のより短い時間枠内であることが実証されている(国際公開第2012/164547号)。一般に、微生物の集団は、一定の期間、典型的には30分間、抗菌剤に曝露される。次いで、微生物を遠心分離によって洗浄して抗菌剤を除去し、薬剤に対する感受性を示すために使用することができる特定の膜透過性蛍光色素で染色する。微生物の光学特性は、粒子サイズを示す、前方に微生物から散乱された光と、微生物に対応する蛍光信号とを検出する光学フローサイトメーターを用いて測定される。光学データは、色素で染色されているが抗菌剤に曝露されていない、同じ微生物試料の集団から得られたデータと比較される。2つの試料からのデータの差は、微生物が薬剤に感受性であるかどうかを示す。さらに、一連の異なる抗菌剤濃度への試料の曝露を用いて、微生物増殖を効果的に阻害するのに必要な抗菌剤の最小用量を決定する。光学サイトメトリーには、多くの欠点がある。色素の使用は、典型的には、手順において1つ以上の洗浄工程を必要とし、これは、試験手順を小型化及び自動化するための範囲を制限する。色素の添加前の洗浄による抗菌剤の除去は、その時点で抗菌処理を中断し、その結果、単一の試料に対する抗菌効果の経時的な連続測定を妨げる。光学サイトメーターは、かさばり、非常に高価であり、光学分析ゾーン内に微生物を正確に位置付けるために、流体力学的及び/又は音響的集束などの操作技術を必要とする。蛍光色素も高価である。したがって、光学サイトメトリーは、必要な時点での抗菌剤感受性の分析にはあまり適していない。
【0005】
したがって、抗菌剤感受性試験の分析の速度を高め、コストを低減することができ、ひいては適切な抗菌剤処方を導くことができる新しいアプローチが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
態様及び実施形態は、添付の特許請求の範囲に示されている。
【0007】
本明細書で提供されるのは、電解質中に懸濁された微生物の1つ以上の試料を調製することであって、1つ以上の抗菌剤に曝露された微生物の第1の試料を含む、調製することと、第1の試料をインピーダンスフローサイトメーターに通して、抗菌剤に曝露された微生物のインピーダンス値の1つ以上の成分を表す第1のインピーダンス信号を取得することと、第1のインピーダンス信号と参照インピーダンス信号とを比較することと、第1のインピーダンス信号と参照インピーダンス信号との間の任意の差に基づいて、抗菌剤に対する微生物の感受性を決定することと、を含む、抗菌剤感受性試験のための方法であり、抗菌剤は、ファージ、血清成分、免疫系成分、及び抗菌ペプチドの群から選択される1つ以上であり、好ましくは、前記抗菌ペプチドが膜透過性ペプチド、膜破壊性ペプチド、又は細孔形成性ペプチド抗菌剤である。参照信号は、抗菌剤に曝露された微生物の第2の試料を調製し、第2の試料をインピーダンスフローサイトメーターに通して、曝露された微生物のインピーダンス値の1つ以上の成分を表す第2のインピーダンス信号を取得することによって得ることができる。参照信号は、第1のインピーダンス信号に含まれるインピーダンス値の1つ以上の成分についての所定の値であってもよく、場合により、成分は、電気的サイズ(実施例では、散布図上のX軸)及び/又は電気的不透明度(実施例では、散布図上のY軸)である。参照インピーダンス信号は、閾値であり得、前記感受性を決定することは、第1のインピーダンス信号を閾値と比較することを含み得る。
【0008】
本明細書に記載される特定の実施形態の態様によれば、電解質中に懸濁された微生物の試料を調製することであって、抗菌剤に曝露されていない微生物の第1の試料と、抗菌剤に曝露された微生物の第2の試料とを含む、調製することと、第1の試料をインピーダンスフローサイトメーターに通して、曝露されていない微生物のインピーダンス値の1つ以上の成分を表す第1のインピーダンス信号を取得することと、第2の試料をインピーダンスフローサイトメーターに通して、曝露された微生物のインピーダンス値の1つ以上の成分を表す第2のインピーダンス信号を取得することと、第1のインピーダンス信号と第2のインピーダンス信号とを比較することと、第1のインピーダンス信号と第2のインピーダンス信号との間の任意の差に基づいて、微生物の抗菌剤に対する感受性を決定することと、を含む、抗菌剤感受性試験の方法が提供され、粒子が微生物であり、前記微生物がファージ、血清成分、免疫系成分、及び抗菌ペプチドの群から選択される抗菌剤に曝露されており、好ましくは、前記抗菌ペプチドが膜透過性ペプチド、膜破壊性ペプチド、又は細孔形成性ペプチド抗菌剤である。
【0009】
本明細書に記載される特定の実施形態の態様によれば、電解質中に懸濁された粒子を含む流体の試料をフローチャネルに沿って流すことと、流体を通る電流経路に電気信号を印加することであって、電流経路は、少なくとも第1の電流経路と、第2の電流経路と、さらなる第1の電流経路と、さらなる第2の電流経路とを備え、第1の電流経路及びさらなる第1の電流経路に印加される電気信号は、周波数、大きさ、及び位相を有し、第2の電流経路及びさらなる第2の電流経路に印加される電気信号は、第1の電流経路及び第2の電流経路に印加される電気信号と実質的に等しい周波数及び大きさ、並びに逆位相を有する、印加することと、電流経路における電流を検出することと、第1の電流経路及び第2の電流経路において検出された電流の合計を表す第1の加算信号と、さらなる第1の電流経路及びさらなる第2の電流経路において検出された電流の合計を表す第2の加算信号とを生成することと、第1の加算信号と第2の加算信号との間の差を表す差動信号を取得することと、を含む、インピーダンスフローサイトメトリーの方法が提供され、粒子が微生物であり、前記微生物がファージ、血清成分、免疫系成分、及び抗菌ペプチドの群から選択される抗菌剤に曝露されており、好ましくは、前記抗菌ペプチドが膜透過性ペプチド、膜破壊性ペプチド、又は細孔形成性ペプチド抗菌剤である。
【0010】
特定の実施形態のこれらの態様及びさらなる態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、互いに組み合わされてもよく、独立請求項の特徴は、請求項に明示的に記載されたもの以外の組み合わせで組み合わされてもよいことが理解されるであろう。さらに、本明細書に記載されるアプローチは、以下に記載されるような特定の実施形態に限定されず、本明細書に提示される特徴の任意の適切な組み合わせを含み、企図する。例えば、方法は、適宜、以下に記載される様々な特徴のうちの任意の1つ又は複数を含む、本明細書に記載されるアプローチに従って提供され得る。
【0011】
図面の簡単な説明
本発明をより良く理解し、それがどのように実施され得るかを示すために、ここで、例として添付の図面を参照する:
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、例示的なインピーダンスフローサイトメトリー装置の概略断面側面図を示す;
図2図2は、図1の装置の一部の概略断面側面図を示す;
図3図3(a)~(c)は、図1及び2の装置で測定された、時間に対する電流及び時間に対する差動電流のグラフを示す;
図4図4は、代替電極配置の第1の実施例によるインピーダンスフローサイトメーターのための電極及び回路構成の概略断面側面図を示す;
図5図5(a)~(c)は、図4の装置を用いた方法により測定された、時間に対する加算電流及び時間に対する差動加算電流のグラフを示す;
図6図6は、第2の実施例によるインピーダンスフローサイトメーターのための電極及び回路構成の概略断面側面図を示す;
図7図7は、第3の実施例によるインピーダンスフローサイトメーターのための電極及び回路構成の概略断面側面図を示す;
図8図8は、別の実施例によるインピーダンスフローサイトメーターのための電極及び回路構成の概略断面側面図を示す;
図9図9(a)及び(b)は、低周波数及び高周波数における電場と細胞との相互作用の概略図を示す;
図10図10(a)、(b)、(c)及び(d)は、本開示の実施例によるインピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて2つの周波数で細菌細胞試料から記録されたインピーダンスデータの例示的な散布図を示し、感受性及び耐性細菌株に対する抗菌効果を示す;
図11図11(a)及び(b)は、本開示の実施例によるインピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて2つの周波数で細菌細胞試料から記録されたインピーダンスデータの例示的な散布図を示し、感受性細菌に対する抗菌剤のさらなる効果を示す。
図12図12(a)及び(b)は、本開示の実施例によるインピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて1つの周波数で細菌細胞試料から記録されたインピーダンスの大きさ及び位相データの例示的な散布図を示す;
図13図13(a)及び(b)は、本開示の実施例によるインピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて、2つの周波数で細菌細胞試料から記録されたインピーダンスの大きさ及び位相データの例示的な散布図を示す;
図14図14(a)~(f)は、本開示の実施例によるインピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて2つの周波数で細菌細胞試料から記録されたインピーダンスデータの例示的な散布図を示し、感受性細菌株に対する異なる濃度の抗菌濃度の効果を示す;
図15図15(a)~(d)は、本開示の実施例によるインピーダンスフローサイトメトリー方法で得られた、抗菌曝露の濃度によるいくつかの細菌細胞特性の変動のグラフを示す;
図16-1】図16は、本開示の実施例によるインピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて、抗菌剤に曝露された細菌の単一の試料から経時的に連続的に記録されたインピーダンスデータの散布図のシーケンスを示す。各プロットは、時間=0から時間=28分までの1分ウインドウを表す。Y軸は、0.6~1.0まで0.2の増分でマークした電気的不透明度(|Z40MHz|/|Z5MHz|)を示す。X軸は、1.5~3まで0.5の増分でマークした電気半径|Z1/3 5MHz|を示す;
図16-2】図16は、本開示の実施例によるインピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて、抗菌剤に曝露された細菌の単一の試料から経時的に連続的に記録されたインピーダンスデータの散布図のシーケンスを示す。各プロットは、時間=0から時間=28分までの1分ウインドウを表す。Y軸は、0.6~1.0まで0.2の増分でマークした電気的不透明度(|Z40MHz|/|Z5MHz|)を示す。X軸は、1.5~3まで0.5の増分でマークした電気半径|Z1/3 5MHz|を示す;
図17図17は、異なる向きの電流経路を有する実施例によるインピーダンスフローサイトメーターのための電極及び回路構成の概略断面側面図を示す;
図18図18は、図17の実施例のような装置においてインピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて得られたインピーダンスの大きさのデータの例示的な散布図を示す;
図19図19は、インピーダンスフローサイトメトリーを用いて測定された、感受性及び耐性のブレークポイント分析のために予め規定された濃度で抗生物質で処理された細菌細胞集団の結果の棒グラフを示す;
図20図20は、所定のブレークポイント分析濃度で様々な抗生物質に曝露された多様な細菌細胞試料から記録されたインピーダンスデータの散布図を、各試料の対応する細胞集団の棒グラフと共に示す;
図21図21は、ファージAb_2で処理したA.バウマニ(A.baumannii)のA.感受性(NCTC 13302)及びB.非感受性(NCTC 10303)株の細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルの時間経過を示す。散布図は、15分(T15)、30分(T30)、45分(T45)、60分(T60)、75分(T75)及び90分(T90)で個々の細菌について測定したインピーダンスの分布を示す。Y軸は、0~1の範囲の0.5の増分での電気的位相(40MHz)を示す。X軸は、1から3.5まで0.5の増分でマークした電気半径(||Z|1/3 5MHz|)を示す;
図22図22は、耐性株(各時間で左側に黒色で示す)と比較した感受性株(各時間で右側に灰色で示す)についての総細胞数の減少(A)及び細胞サイズの増加(B)を示す;
図23図23は、1時間の時間経過にわたる、微生物の感受性集団を高ファージ濃度で処理した効果を示す。細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルを、0(T0)、15(T15)、30(T30)、45(T45)及び60分(T60)で得た。図23Aは、高ファージ濃度で処理した後の感受性株の試料から得られた細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルを示す。図23Bは、ファージで処理されなかった同じ感受性株の試料から得られた細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルを示す。Y軸は、0~1の範囲にわたる0.5の増分での電気的位相(40MHz)を示す。X軸は、1~3.5まで0.5の増分でマークした電気半径(||Z|1/3 5MHz|)を示す;
図24図24は、60分の時間経過にわたる、ファージ感染なしの同じ株(各時点で左側に黒色で示す)と比較した、ファージで処理した感受性細菌株(各時点で右側に灰色で示す)についての総細胞数の減少(A)及び細胞サイズの増加(B)を示す;
図25A図25は、潜在的な臨床単離物のファージ感受性を決定するために使用される細菌インピーダンスフローサイトメトリーデータを示す。A.90分の処理後の、対照(上段、ファージなし)と比較した、ファージAb_1(第2列)、Ab_2(第3列)及びPa_1(最終列)で処理された株の個々の細菌から得られたインピーダンス測定値の分布を示す散布図。Y軸は、0.6~1.0まで0.2の増分でマークした電気的不透明度(|Z40MHz|/|Z5MHz|)を示す。X軸は、1.0から3.5まで0.5の増分でマークした電気半径|Z1/3 5MHz|を示す。
図25B図25は、潜在的な臨床単離物のファージ感受性を決定するために使用される細菌インピーダンスフローサイトメトリーデータを示す。B.データ分析は、各株-ファージ組み合わせについての、対照のパーセンテージとしての総細胞数(上パネル)及び対照のパーセンテージとしての輪郭領域内の細胞数(下パネル)の両方を示す:ファージPa_1(左の列);ファージAb_1(中央の列);及びファージAb_2(右の列);
図26A図26は、異なるタイプの抗菌ペプチドが、超阻害濃度では細菌インピーダンスの急速な変化を引き起こすが、亜阻害濃度では引き起こさないことを示す。図26Aは、カチオン性AMP(cAMP)及びαヘリックスペプチド(メリチン)に対する大腸菌(E.Coli)NCTC 12923の感受性を示し、図26Bは、大腸菌(E.coli)NCTC 13368の感受性を示す。散布図は、対照と比較した、ペプチドで処理された株の個々の細菌から得られたインピーダンス測定値の分布を示す。Y軸は、0.6~1.0まで0.2の増分でマークした電気的不透明度(|Z40MHz|/|Z5MHz|)を示す。X軸は、1.0~3.5まで0.5の増分でマークした電気半径|Z1/3 5MHz|を示す。データ分析は、各株-ペプチド組み合わせについての、対照のパーセンテージとしての総細胞数(上パネル)及び対照のパーセンテージとしての輪郭領域内の細胞数(下パネル)の両方を示す。
図26B図26は、異なるタイプの抗菌ペプチドが、超阻害濃度では細菌インピーダンスの急速な変化を引き起こすが、亜阻害濃度では引き起こさないことを示す。図26Aは、カチオン性AMP(cAMP)及びαヘリックスペプチド(メリチン)に対する大腸菌(E.Coli)NCTC 12923の感受性を示し、図26Bは、大腸菌(E.coli)NCTC 13368の感受性を示す。散布図は、対照と比較した、ペプチドで処理された株の個々の細菌から得られたインピーダンス測定値の分布を示す。Y軸は、0.6~1.0まで0.2の増分でマークした電気的不透明度(|Z40MHz|/|Z5MHz|)を示す。X軸は、1.0~3.5まで0.5の増分でマークした電気半径|Z1/3 5MHz|を示す。データ分析は、各株-ペプチド組み合わせについての、対照のパーセンテージとしての総細胞数(上パネル)及び対照のパーセンテージとしての輪郭領域内の細胞数(下パネル)の両方を示す。
図27】(A)未処理(ゲート領域内に307細胞)、又は異なる感染多重度のファージで処理した、A.バウマニ(A.baumannii)(NCTC 13302)から得られた2時間の増殖後のインピーダンス測定値の分布を示す散布図:(B)MOI=1、ゲート領域内に144細胞;(C)MOI=0.1、ゲート領域内に317細胞;D MOI=0.01、ゲート領域内に333細胞。Y軸は、0.4~1.2まで0.2の増分でマークした電気的不透明度(|Z40MHz|/|Z5MHz|)を示す。X軸は、1.0から3.5まで0.5の増分でマークした電気半径|Z1/3 5MHz|を示す。ゲート領域は、未処理集団の50%を囲む輪郭によって囲まれた領域である。
図28図28は、1のMOI(濃い灰色、左から2番目の列)、0.1のMOI(中間灰色、左から3番目の列)、及び0.01のMOI(薄い灰色、右側の列)で処理された集団についてのA:30分(Y軸:輪郭内の0~10000細胞);B:1時間(Y軸:輪郭内の0~1600細胞);C 1時間30分(Y軸:輪郭内の0~2000細胞);D 2時間(Y軸:輪郭内の0~350細胞)の時点での、未処理の細胞集団(黒色、左の第1の列)と比較した細胞数の変動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
特定の例及び実施形態の態様及び特徴が、本明細書で論じられ/説明される。特定の例及び実施形態のいくつかの態様及び特徴は、従来通りに実施され得、これらは、簡潔さのために詳細に論じ/説明されない。したがって、詳細に説明されない、本明細書で論じられる装置及び方法の態様及び特徴は、そのような態様及び特徴を実施するための任意の従来の技法に従って実施され得ることが理解されるであろう。
【0014】
ディスク拡散、ブロス微量希釈、及び光学フローサイトメトリーは、抗菌剤に対する微生物の感受性を決定するための試験手順の例である。そのような試験又はアッセイは、抗菌剤感受性試験(test)又は試験(testing)(AST)と呼ぶことができる。本開示は、インピーダンスフローサイトメトリーを使用する、この目的及び他の目的のための代替手順の使用を提案する。この技術は、装置を使用して、マイクロ流体チャネル内を流れる個々の粒子の電気的特性、具体的には、周波数依存インピーダンスを測定する。抗菌剤(antimicrobial agent)(抗菌剤(antimicrobial)、抗生物質)への曝露は、微生物(細菌など)の懸濁液のインピーダンス特性を変化させ得ることが見出されている。マイクロ流体チャネルを通して流れる単一の微生物のインピーダンスの変化を検出するためのインピーダンスフローサイトメトリーの使用が、試験中の抗菌剤又は抗菌剤の組み合わせに対する微生物の感受性の決定のために提案される。本明細書に記載の方法は、試験される微生物の感受性に関するデータを迅速に(例えば、30分以内、1時間以内又は2時間以内に)提供することができる。結果は、現在使用されているゴールドスタンダード試験と同じ、微生物を死滅させるか、又は微生物の増殖を防止する抗菌剤の能力に関する情報を与え、治療選択肢についての結論により迅速に到達することを可能にする。結果は、耐性予測を可能にし得る抗菌特性及び集団特性の作用のメカニズム及び速度に関するより多くの情報を提供する。「ゴールドスタンダード」試験は、自動化された両方の微生物学のために最低6~8時間、より一般的には、プレート上のコロニー/プラークの発生のための最初の培養から16~20時間、又はゆっくりと増殖する細菌のために48~72時間を要する、日常的な培養に基づく方法を含む。各測定は、単一の微生物の特性を反映するので、検出限界は既存の試験よりも改善される。本明細書に記載される方法の改善された結果までの時間は、個々の患者のためのファージ療法などの抗菌療法を調整する際の利点を提供し、ファージなどの抗菌剤が感受性臨床単離物上でのみ使用されることを確実にするのを助けることができる。バクテリオファージは、多剤耐性(MDR)感染症、特にグラム陰性菌によって引き起こされる多剤耐性(MDR)感染症の治療のための代替療法を提供する。ファージ療法を使用する際の1つの課題は、例えば、同じ種又はある範囲の種からの単離物のいずれかを標的とするために、特定のファージ、又は複数のファージを含む製剤(ファージカクテルとしても知られる)による治療に対する病原体の感受性をいかに迅速に評価するかである。MDR感染症に罹患している患者にとって時間は特に重要である。本発明の方法は、ファージなどの抗菌剤に対する臨床単離物の感受性を、例えば、60分未満若しくは約60分で、約15分で、又は15分超で迅速に同定することができるという利点を有する。
【0015】
本開示の目的のために、抗菌剤又は抗菌剤は、微生物の1つ以上の株を死滅させるか、又はその増殖を阻害する任意の薬剤であると考えられる。
【0016】
抗菌剤の例は、抗生物質、抗真菌薬及び抗ウイルス薬である。抗生物質は、細菌を死滅させる(殺菌性)又は増殖を阻害する(静菌性)薬剤である。抗生物質は、微生物細胞壁の合成又は完全性を破壊すること、タンパク質翻訳を遮断すること、細胞内での核酸複製、修復又は維持を防止すること、必須分子(例えば、葉酸、コレステロール)の合成を防止すること、及び膜構造を撹乱させることを含むが、これらに限定されない、多くの異なるメカニズムのうちの1つによって作用し得る。抗生物質のクラスの例は、アミノグリコシド、アンサマイシン、アゾール、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、エキノカンディン、糖ペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサゾリジノン、ペニシリン、プレウロムチリン(Pleuromutilin)キノロン、フルオロキノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、トリメトプリムであるが、他の抗生物質及び抗菌剤は除外されない。セフロスポリン、ペニシリン及びカルバペネムは、有効性を改善するためにβ-ラクタマーゼ阻害剤と共製剤化することができる。
【0017】
抗菌剤は、抗生物質、抗真菌薬及び抗ウイルス薬を除外することができる。抗菌剤は、アミノグリコシド、アンサマイシン、アゾール、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、エキノカンディン、糖ペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサゾリジノン、ペニシリン、プレウロムチリンンキノロン、フルオロキノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、トリメトプリムのうちの1つ以上を除外することができる。抗菌剤は、糖ペプチド及びリポペプチドを除外することができる。抗菌剤は、非抗生物質を含むことができる。
【0018】
抗菌剤は、バクテリオファージ(ファージとしても知られる)などのウイルスを含むことができる。バクテリオファージなどのウイルスは、抗生物質よりも特異的であり、微生物(例えば、細菌)の1つの特異的株を標的することができる。したがって、抗菌剤は、2つ以上のファージを含むことができる。2つ以上のファージを、個々のファージのパネル又は異なるファージの混合物(ファージカクテルとしても知られる)の形態で提示することができる。1つ以上のファージを試験することができる。ファージの1つ以上のカクテルを試験することができる。回収中の患者から採取した試料は、同じ株に感染した他の患者を治癒させるために使用できる適切なファージを含むことがある。
【0019】
抗菌剤は、抗菌(antimicrobial)ペプチド、例えば、抗菌(anti-bacterial)ペプチド、例えば、膜透過性、膜破壊性又は細孔形成性ペプチド抗菌剤を含むことができる。抗菌ペプチド(宿主防御ペプチドと呼ばれることがある)は、バクテリオシン、ランチペプチド、ピオシン、ファージ由来エンドリシン、エンドペプチダーゼ、ポリミキシン及びムラリティックタンパク質(例えば、アルチリシン)を含むことができる。それはまた、反復カチオン性アミノ酸(アルギニン又はリジン)又は他のカチオン性化合物、例えばポリアミン(例えばスペルミジン)又は類似のアプローチに基づく合成抗菌ペプチドを含むことができる。抗菌ペプチドは、典型的には20~50アミノ酸長である線状抗菌ペプチドであり得、プレウロシジン及び/又はメリチンを含み得る。線状抗菌ペプチドは、5、10、15、又は20アミノ酸から50、70、又は100アミノ酸長までであり得る。ペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸及びそれらの組み合わせからなり得る。環状ペプチド及びタンパク質中に日常的に見出されない誘導体化又はアミノ酸を有するペプチドも含まれる。抗菌ペプチドは、環状ペプチド及び/又は誘導体化されたアミノ酸又はタンパク質中に日常的に見出されないアミノ酸を有するペプチドを除外することができる。抗菌剤は、ケモカイン及び宿主防御ペプチド(これらの分子の全体又は短縮誘導体のいずれかを含む)を含む自然免疫系の成分を含むことができる。抗菌剤は、モノクローナル抗体、例えば種特異的モノクローナル抗体などの抗体を含むことができる。抗菌剤は、患者、例えばヒト患者、例えば薬剤耐性細菌に感染し得る患者又は微生物による感染から回復している患者からの血清を含むことができる。抗菌剤は、ファージ、血清成分、免疫系成分、及び抗菌ペプチドの群から選択される1つ以上であり得、好ましくは、前記抗菌ペプチドは、膜透過性ペプチド、膜破壊性ペプチド、又は細孔形成性ペプチド抗菌剤である。抗菌剤は、ファージ、血清成分、免疫系成分、及び抗菌ペプチドの群から選択される1つ以上であり得、好ましくは、前記抗菌ペプチドは、線状抗菌ペプチド、膜透過性ペプチド、膜破壊性ペプチド、若しくは細孔形成性ペプチドであり、及び/又は抗菌ペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸、及びそれらの組み合わせからなり、より好ましくは、抗菌剤は、糖ペプチド又はリポペプチドではない。
【0020】
本開示の目的のために、微生物は、その単細胞形態又は細胞のコロニーで存在し得る微視的生物であると考えられる。微生物の例としては、細菌、ウイルス及び真菌(酵母及びカビを含む)が挙げられる。
【0021】
ファージなどの抗菌剤は、臨床用途のために調製することができる。ファージ、例えばファージAb_1、ファージAb_2又はファージPa_1などの単一の抗菌剤を使用することができる。抗菌剤のパネル、例えば、ファージのパネル、尿路感染症などの特定の症状に関連する特定の原因物質を標的とすることが知られているファージのセットなどを使用することができる。各抗菌剤、例えばファージは、1つ以上の感染性因子の別個の試料と混合することができる。抗菌剤のパネルは、インピーダンスサイトメーターと直接接続することができる複数のウェル又はチャネルを含むデバイス内に収容することができる。各抗菌剤は、各感染性因子と混合することができ、感受性は、例えば、感受性のマトリックスを生成するために、細菌インピーダンスフローサイトメトリーによって測定することができる。データは、抗菌剤、例えばファージの組み合わせを同定するために使用することができ、これは多数の感染性因子、例えば多剤耐性単離物を同時に処理するために使用することができる。2つ以上のファージ(「ファージカクテル」)を、感染性因子の同じ試料と混合することができる。好ましいファージには、例えばミオウイルス科(Myoviridae)ファミリー及び/又はシフォウイルス科(Siphoviridae)ファミリー由来の溶菌ファージが含まれる。抗生物質感受性及びファージ感受性インピーダンスアッセイは、感染の治療に非常に有効であるファージ及び抗生物質の相乗的組み合わせを同定ために、混合によって組み合わせることができる。公知のファージファミリーのいずれかからのファージ(シフォウイルス科(Siphoviridae)、ミオウイルス科(Myoviridae)、ポドウイルス科(Podoviridae)、アッカーマンウイルス科(Ackermannviridae)、イノウイルス科(Inoviridae)、レビウイルス科(Leviviridae)、ミクロウイルス科(Microviridae)、シストウイルス科(Cystoviridae)のファミリーからのファージを含むが、これらに限定されない)との間の相乗効果は、任意の抗生物質(アミノグリコシド、セファロスポリン、ペニシリン、カルバペネム、テトラサイクリン、(フルオロ)キノロン、オキサゾリジノン、マクロライド、リンコマイシン、糖ペプチド、スルホンアミド、プレウロムチリンを含むが、これらに限定されない)で観察され得る。特に好ましい組み合わせには、溶菌ファージと、一般にグラム陰性菌に浸透しない抗生物質(例えば、リファンピシン、ノボビオシン、バンコマイシン、リネゾリド、ホスホマイシン)が含まれる。
【0022】
感染性因子(微生物)が同定される。同定は、臨床試料からの単離を含むことができる。臨床試料は、尿、血液及び/又は他の無菌部位液、脳脊髄液(CSFF)、滑液、又は創傷から採取された試料を含むことができる。感染性因子は、臨床試料中で直接アッセイすることができる。臨床試料は、処理工程、例えば遠心分離、細胞の溶解又は細胞の濾過、例えば細胞(例えば、赤血球及び/又は白血球及び/又は血小板)を除去するための処理を受けてもよい。臨床試料は、標準的な微生物学的技術を用いて、例えば、特定の生物のための選択プレート上にプレーティングされ得る。同定は、Maldi-Tof、又は1つ以上の他の細菌IDシステムの使用を含むことができる。細菌IDシステムには、EPIストリップ、自動化細菌IDプラットフォーム(例えば、Vitekシステム、Biomerieux)、従来のアッセイ方法(グラム染色)、代謝試験(オキシダーゼ染色)、及び種特異的プライマーを用いたPCRなどの遺伝子型方法が含まれる。同定はまた、患者の症状に基づく原因物質、例えば、尿路感染症の場合の大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、及び/又はプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)などの腸内細菌科(Enterobacteriaeae)の仮同定を含むことができる。
【0023】
微生物は、細菌であってもよい。試料から細菌を単離又は継代培養するために、工程、例えば、ポリカチオン性又はポリアニオン性ビーズ、種特異的抗体又は一般的な細菌捕捉リガンド(例えば、マンノース結合レクチン、ポリミキシン誘導体、バンコマイシン誘導体)でコーティングされたビーズなどの物理化学的又は生化学的原理を用いたビーズ上の細菌の捕捉が用いられてもよい。他の捕捉又は分離方法は、機械的濾過又は捕捉などの物理的効果、及び音響、磁気、電気又は光学技術に基づくものを含む。微生物、例えば細菌の試料、例えばプレートから採取したものをファージと混合する。混合物を、例えば、10分間以上、15分間以上、20分間以上、約30分間、約45分間、50分間まで、約1時間、90分間までインキュベートする。好ましくは、試料を約15分間インキュベートする。より好ましくは、試料を30分間インキュベートする。最も好ましくは、試料を約1時間インキュベートする。試料は、本明細書に記載の方法のいずれかを用いてインピーダンスサイトメーターで評価される。試料は、1つ以上のインピーダンス信号を取得するために、本明細書に記載の方法のいずれかを用いてインピーダンスサイトメーターで評価される。本明細書に記載のインピーダンスフローサイトメトリー方法では、データ、例えばインピーダンス測定値が個々の粒子、例えば細菌などの微生物について収集される。したがって、インピーダンス信号は、1つ以上の粒子のインピーダンス測定値を含むことができる。インピーダンスプロファイルは、一組の粒子、例えば、細菌の集団に対する一組のインピーダンスデータ又は測定値である。インキュベーションは、インピーダンスサイトメーター上で直接(例えば、時間経過を決定するために)、又はサイトメーター上への自動化された試料ローディングを伴うインキュベーター中で行うことができる。試料をサイトメーターの外側でインキュベートし、一定時間にインピーダンスサイトメーターで評価することができる(終点決定)。好ましい微生物には、多剤耐性(MDR)細菌、例えばESKAPE群のメンバー(エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、エンテロバクター属(Enterobacter spp)又は腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の他のメンバー、大腸菌(Escherichia coli))、薬剤耐性淋菌(Neisseria gonorrhoea)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotophomonas maltophilia)、又はバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)/セノセパシア(cenocepacia)複合体、より好ましくはAバウマニ(A baunannii)及び/又は緑膿菌(P.aeruginosa)、例えば:Aバウマニ(A baunannii)株NCTC 10303、NCTC 13302、ATCC 17978、ATCC 17978 ColR、及び緑膿菌(P.aeruginosa)株PAO1の1つ以上が含まれる。
【0024】
参照データ及び参照プロファイルを生成するために、未処理微生物の対照試料を評価することもできる。ファージに対する感受性を示す微生物のプロファイルの側面を評価する。評価は、プロファイルにおける差の決定を含む、処理微生物のプロファイルと参照プロファイルとの比較を含み得る。評価は、人工知能及び機械学習を使用するソフトウェアアルゴリズムを用いて自動的に実行され、又は単純な散布図に基づいて実行され得る。参照プロファイルは、同じ生物の未処理試料のプロファイルであり得る。参照プロファイルは、より早い時点での微生物の処理試料のプロファイルであり得る。参照プロファイルは、モデルプロファイル、例えば、同じ生物の試料から以前に取得されたもの、又は生物の平均若しくは標準プロファイル、例えば、複数の未処理試料又は複数の処理試料から以前に取得されたデータから計算されたものであり得る。
【0025】
既知の数のファージ(プラーク形成単位として定義される)を既知の数の細菌と混合するファージの連続希釈を使用し、プロファイルを評価することができる。ファージに対する感受性を示す微生物のプロファイルの側面を改変することができるファージの最低濃度は、治療に必要なファージの数を導くのに役立つ、感染の効率(時には、プレーティングの効率と呼ばれる)の測定を可能にする。これは、細菌の増殖を妨げる最小濃度を決定するために抗生物質に使用されるMIC決定と同様の方法で使用され得る。細菌に対するファージの固定濃度も試験に使用することができ、濃度は、患者の感染部位に送達され、維持され得るファージの数に基づいて定義される。これは、抗生物質に対する細菌の耐性又は感受性を決定するために使用される臨床的ブレークポイント閾値に類似している。
【0026】
評価は、電気的不透明度を決定することを含むことができる。電気的不透明度は、インピーダンス、例えば|ZHighfrequency|/|Zlowfrequency|から計算することができ、例えば|ZHighfrequency|は、10MHzを超える周波数で測定され、|Zlowfrequency|は、|Z40MHz|/|Z5MHz|のような10MHzより低い周波数で測定される。評価は、電気的サイズを決定することを含み得る。例えば、電気半径は、インピーダンスから、例えば|Z1/3 5MHz|として計算することができる。評価は、位相を決定することを含み得る。評価は、対照集団、例えば正常な未処理細菌の集団のパーセンテージ、例えば95%を囲む輪郭の外に位置する細胞の割合を決定することを含み得る。評価は、対照集団、例えば正常な未処理細菌の集団のパーセンテージ、例えば95%を囲む輪郭内に位置する細胞の数及び/又は割合を決定することを含み得る。評価は、対照集団の50%を囲む輪郭内に位置する細胞の数及び/又は割合を決定することを含み得る。輪郭は、対照集団の50%、75%、80%、90%又は95%を囲み得る。
【0027】
細菌インピーダンスフローサイトメトリーアッセイを用いて、慢性感染症、例えば表4、列3に列挙された慢性疾患における除菌のための狭域治療において、例えば、表4、列1に列挙された病原体を標的とするために使用することができるファージを同定することができる。
【0028】
血清殺菌アッセイを実施するための方法が提供される。本明細書に記載のインピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて、例えば患者の血液から、目的の病原体である微生物を死滅させる血清の能力を評価することができる。本方法は、例えば、微生物を死滅させることができる血清中の抗体又は他の成分のレベルを評価することができる。他の成分としては、例えば回復した患者において血液中を循環する抗生物質又はファージを挙げることができる。抗体は、天然に存在する抗体であってもよく、又は能動若しくは受動免疫の結果として生成されてもよい。アッセイは、抗生物質及び/又はファージを含むがこれらに限定されない、1つ以上の他の抗菌剤との血清死滅の組み合わせを評価するために使用することができる。例えば、1mL当たり5.5×10コロニー形成単位(CFU)などの微生物の特定の濃度を達成するために、場合により微生物及び/又は希釈物の濃度を増大させるためのインキュベーション後に、例えばプレートから採取した微生物、例えば細菌の試料を、血清、又は血清と抗生物質及び/又はファージなどの1つ以上の抗菌剤を含む混合物と混合する。混合物を、例えば、10分間以上、15分間以上、20分間以上、50分間まで、又は好ましくは1時間インキュベートする。明細書に記載の細菌インピーダンスフローサイトメトリー方法のいずれかを用いて、試料を本インピーダンスサイトメーターで評価する。未処理の微生物又は処理された微生物の、時間経過の初期、例えば、微生物を抗菌剤と混合してから10分以内の参照又は対照試料も、参照データ及び参照プロファイルを生成するために評価することができる。抗菌ペプチドに対する感受性を示す微生物のプロファイルの側面が評価される。
【0029】
インピーダンスフローサイトメトリーを用いて、抗菌ペプチドの有効性を決定するための方法が提供される。例えば、微生物の濃度を増加させるために、場合によりインキュベーション後にプレートから採取された微生物、例えば細菌の試料を、抗菌ペプチドと混合する。この混合物を、例えば、20分間以上、30分間、50分間まで、又は好ましくは1時間インキュベートする。試料を、本明細書に記載の方法のいずれかを用いてインピーダンスサイトメーターで評価する。未処理微生物の対照試料も評価して、対照データ及び対照プロファイルを生成することができる。抗菌ペプチドに対する感受性を示す微生物のプロファイルの側面が評価される。抗菌ペプチドの有効性のプロファイルは、相乗的相互作用を決定するために抗生物質感受性試験と組み合わせて使用することができる。これは、抗生物質が通常グラム陰性菌に侵入することができない場合、及び膜透過性ペプチドである抗菌ペプチドとの組み合わせが、侵入に対するこの障壁を克服する場合に、特に関連し得る。特に有効な組み合わせとしては、リファンピシン、リネゾリド、ホスホマイシン、ノボビオシン、バンコマイシンを含むリストから選択される抗生物質と共に使用されるカチオン性抗菌ペプチド又は他の膜透過性ペプチドが挙げられる。
【0030】
図1は、比較的単純な形式を有する、インピーダンスフローサイトメトリーのための装置の第1の実施例の簡略化された概略断面側面図を示す。この装置は、典型的には、基板上に堆積された様々な層から形成され、必要な構造を形成するためにフォトリソグラフィなどの技術を使用してパターン化されたマイクロ流体デバイスとして構築されている。マイクロフルイディクスの分野は、小規模、典型的にはサブミリメートル、言い換えればマイクロミリメートル以下の規模で閉じ込められるか又は制限される流体の挙動、制御、及び操作に関する。生物学的及び医学的分野並びに他の努力分野において、試料試験の目的のために基板上の層から構築されるマイクロ流体デバイスは、「ラボオンチップ」デバイスと呼ばれることがある。図1の実施例では、デバイス10は、ガラス材料の下部層16aと上部層16bとの間に挟まれたエポキシ系ネガティブフォトレジストである、SU8などのフォトレジスト材料の層14内に形成されたマイクロ流体フローチャネル12を備える。上部ガラス層16a内の開口は、チャネル12への入口18と、チャネル12からの出口20とを画定する。流体試料22は、入口18においてチャネル12内に供給されてチャネル12に沿って(図1の点線矢印で示す)出口20に流れ、ここで流体試料は廃棄物24として除去若しくは排出されるか、又はさらなる分析のために収集される。試料22は、任意の好都合な方法、例えば注射器26から入口18への注入によって、チャネル12内に提供することができる。チャネルのボア又はオリフィス内の粒子を中心に置くために、シースフローを用い又は用いなくてもよい。誘電泳動、音響、慣性、又は粘弾性技術などの他のメカニズムを使用して、流れ中の粒子を集束させることができる。
【0031】
試料22は、実施される試験の性質に応じて、電解質(電解液)中に懸濁された細胞、細菌、微生物又は他の生物学的粒子(例えば、藻類、エキソソーム、ウイルス又は小胞など)又は非生物学的粒子(例えば、液滴、ビーズ、コロイド、粉塵又は金属断片など)であり得る粒子を含む。ASTの場合、粒子は、抗菌剤に曝露された又は曝露されていない微生物である。細胞の通過に適応するために、チャネルは、約40μmの高さ及び約40μmの幅の流れ方向(入口から出口まで)を横切る方向の断面を有することができる。より一般的には、チャネル寸法は、1~100μmの範囲であり得る。断面は、正方形であってもなくてもよい。
【0032】
デバイス10は、チャネル12の底壁及び頂壁上に作製された第1及び第2の対の電極をさらに備える。電極の各対は、電圧電極30及び測定電極32を備える。図1の図示される例では、電圧電極30は、チャネル12の頂壁上にあり、測定電極32は、チャネル12の底壁上にあるが、これらの位置は逆であってもよい。第1の電極対は、チャネル12内の上流位置に位置し、第2の電極対は下流位置に位置し、その結果、試料中の粒子は、第2の電極対の前に第1の電極対を通過する。電極は、微生物及び細菌を分析するために、1~100μm程度、例えば10~40μmの寸法を有することができるが、チャネルサイズに応じて、より大きい又はより小さいサイズも可能である。
【0033】
電圧電極30は、1つ以上の周波数成分f、f、f...を生成することができる単一の電圧源34で駆動される。したがって、両方の電圧電極30は、大きさ、周波数、及び位相がほぼ等しい同じ電圧を提供する。各対の2つの電極30、32は、フローチャネル12内を流れる試料22の電解液の存在下で、電圧電極30から測定電極32までのフローチャネル12を横切る電流経路を提供又は画定する。これらの電流経路を流れる電流は、測定電極32において検出される。第1の測定電極で検出された電流I1及び第2の測定電極で検出された電流I2は、各々別個の電流-電圧変換器34に送られる。変換器の出力は、差動増幅器36に送られて、2つの電流経路、すなわちI2-I1(又は好ましい場合には、I1-I2)における電流間の差を表す差動信号が得られる。さらなる電子機器(例えば、回路、ロックイン増幅器38、プロセッサ40)は、差動信号を受信し、それからインピーダンスの測定値を決定する。この出力又はインピーダンス信号は、実数(Re)成分及び虚数(Im)成分、又は好ましくは、大きさ|Z|及び位相θの成分に従ってインピーダンス測定値を分離することができる。電極対の電極間を通過する粒子は、測定電極で検出される電流を変化させ、これは、最終インピーダンス信号に反映される。したがって、粒子の存在、及び粒子の特性は、インピーダンス信号から推定され得る。
【0034】
2対の電極を含むことにより、2つの測定可能な電流が得られ、上述の操作の差動モードが可能になり、ノイズ及びアーチファクトが低減される。差動信号の目的は、図2及び図3を参照して理解することができる。
【0035】
図2は、フローチャネル12を横切って配置された2つの電極対を含む、図1のデバイスの一部の概略拡大図を示す。AST手順において微生物である粒子42は、チャネル12に沿って流れる流体中に懸濁されている。図3は、インピーダンス測定中の経時的な検出電流のグラフを示す。図3(a)は、第1測定電極32aによって検出された電流I1を示す。図3(b)は、第2測定電極32bによって検出された電流I2を示す。図3(c)は、差動増幅器(又は差動信号を決定することができる他の回路)から得られた差動信号を示し、2つの電流I2-I1の間の差を表す。
【0036】
時間t0において、粒子42は、チャネル内にあるが、電極にはまだ遭遇していない。したがって、両方の測定電極32a、32bは、同じ電圧(名目上)が両方の電流経路に供給されるので、実質的に同じ、非ゼロの電流を検出する。したがって、差動信号は、実質的にゼロである。後の時間t1において、粒子42は、第1の電極対の電極30a、32aの間を通過する。これは、第1の電流経路における電流の流れを妨げ、図3(a)に示すように、検出されたI1が低下する。第2の電流I2は、粒子42によってほとんど影響を受けない。したがって、図3(c)に示すように、粒子42が第1の電極対30a、32aを通過するにつれて、差動信号I2-I1が正となる。次いで、時間t2において、粒子は、第1の電極対30a、32aの後と、第2の電極対30b、32bの前の中間点にあり、したがって、両方の電流は再びほぼ等しく、差動信号はゼロに戻る。時刻t3において、粒子42は、第2の電極対30b、32bに到達し、第2の電流経路における電流の流れを妨げる。したがって、t3において、第1の電流I1は、その完全な値を有し(図3(a)参照)、第2の電流I2は、低下した値を有する(図3(b)参照、差動信号は負になる(図3(c)参照)。時間t4において、粒子42は、電極によって画定される測定領域又はゾーンから流出しており、いずれの電流経路も粒子42によって影響を受けず、差動信号は再びゼロである。作動信号の適切な処理を実行して、粒子のインピーダンスを推定することができる。粒子のサイズ、構造、形状、及び組成は、そのインピーダンス特性を決定し、したがって、それが、電極対によって画定される電流経路内の電流、及び差動信号に及ぼす影響を決定する。微生物が感受性である抗菌剤への微生物の曝露は、そのインピーダンス特性が変更されるように、微生物のサイズ、構造、形状及び/又は組成を変更する。これは、差動信号に反映される。したがって、抗菌剤に曝露された微生物の試料からの差動信号、又は差動信号に由来するインピーダンス信号と、抗菌剤に曝露されていない微生物の試料からのそれとの比較は、微生物がその薬剤に対して感受性を有するかどうかを示すことができる。したがって、ASTは、インピーダンスフローサイトメトリーを用いて達成することができる。抗菌処理によって改変される特定の細胞特性は、周波数依存応答を示し、したがって、適切な単一又は複数の周波数成分を有する電圧の利用、及び異なる周波数におけるインピーダンス応答を抽出するための差動信号の処理は、感受性についてのさらなる情報を明らかにすることができる。インピーダンスフローサイトメトリーは、ASTのための他の技術を超える利点を提供する。例えば、それは、ディスク拡散及びブロス微量希釈ASTよりもはるかに速く、微生物の先験的知識を必要としない。さらに、本方法は、光学サイトメトリーに頻繁に使用される高価な色素の添加を必要とせず、微生物を抗菌剤に曝露した後に必要な洗浄工程も必要とせず、したがって、インピーダンスフローサイトメトリーは、ASTのための他の技術よりも安価であり、より迅速であり得る。これはまた、時間依存性の変化を決定できるように、抗菌剤の存在下で実施することができる。
【0037】
2つの電流経路における電流は、典型的には、懸濁電解質の導電率、チャネル及び電極の寸法、並びに印加電圧信号に応じて、1~10mAの範囲である。しかしながら、(哺乳動物細胞よりも小さい)微生物又は細菌細胞のサイズの通過粒子によって生成される電流の変化は、約1μA~1nA、すなわち、約1000~100万分の1の範囲内である(図3(a)~(c)における電流プロットは、縮尺通りではないことに留意されたい)。したがって、差動信号は、小さい大きさを有し、比較的雑音の影響を受けやすい。差動信号の信号対雑音比を最大にするために、電圧電極に印加される電圧は、可能な限り高くすることができ、電流-電圧変換器における利得を最大にすることができる。しかしながら、印加電圧が増加することにつれて、I1及びI2の各々は、比例して増加し、これは、電流-電圧変換器及び差動増幅器におけるクリッピングをもたらす。全体として、非ゼロ電流は、使用可能な最大電圧及び利得を制限し、これは次にデバイスの感度を制限する。インピーダンスフローサイトメトリーを用いて微生物を測定するための別のアプローチは、電極間の電流経路を短くするようにチャネルサイズを縮小することであり、その結果、小サイズの微生物は、(チャネルサイズに対する微生物のサイズがより大きいので)検出電流に対して比例してより大きな影響を有する。しかしながら、より狭いチャネルは閉塞しやすく、またチャネル内の背圧を増加させ、これはそれがチャネルサイズの4乗に対応するためである。
【0038】
したがって、図1の実施例のようなインピーダンスフローサイトメーターは、ASTのために微生物及び細菌試料のような小さなサイズの粒子を測定する場合に、いくつかの制限を有する。それにもかかわらず、有用なASTデータを得ることができる。電極を通過するマイクロ流体の流れは、個々の微生物の検出及び測定を可能にし、その結果、微生物の計数を達成することができ、試料中の微生物の集団内の個々の粒子についてのデータを取得し、全集団について分析することができる。ASTのための様々な測定技術を、他の例のインピーダンスフローサイトメーターに関して以下でより詳細に説明する;これらはまた、図1のような装置、又は他のインピーダンスフローサイトメトリー装置を用いて実施することができる。
【0039】
本開示は、改善された感度及び性能を提供することができるインピーダンスフローサイトメーターのための代替設計の例を説明する。それは、大径チャネル(より小さいチャネルサイズは排除されないが)において、細菌及び/又は細胞などの小粒子(又は実際には、任意の生物学的又は非生物学的粒子)を含む試料を正確に測定するための方法において使用され得る。デバイスは、マイクロ流体チャネルを通る電流経路を生成するように配置された電極を備え、電極は、改善された測定感度を提供するように構成及び駆動される。したがって、インピーダンスフローサイトメトリーは、細菌粒子並びに他の生物学的及び非生物学的粒子に対するAST及び他の測定、試験及びアッセイに使用することができる。しかしながら、この装置は、はるかに広い用途を有し、適切に構成された電極を通過してチャネル内を流れるように電解液中に懸濁させることができる任意のタイプの粒子についてのインピーダンス情報を得るために使用することができる。
【0040】
図4は、実施例配置による、電極を有するフローチャネルの概略断面側面図を示す。チャネル及び電極は、図1に示すようなマイクロ流体チップ構造で具体化されてもよいが、他の構造及び構成が代わりに使用されてもよい。チャネル12は、この実施例では、合計8つの関連する電極を有する。各電極は、フローチャネル12内を流れる試料流体と接触するようにフローチャネル12の内面上にある。代替的に、電極は電解試料流体からわずかに離れていてもよい。
【0041】
電極は、第1の電極群50及び第2の電極群52として構成されている。電極は、電気信号(電流又は電圧)を印加するための信号電極又は測定電極のいずれかとして構成され、チャネル12内を流れる流体を通る電流経路を提供するように対で配置されている。第1の電極群50及び第2の電極群52の各々は、信号電極から測定電極への第1の電流経路と、異なる信号電極から測定電極への第2の電流経路とを提供する。本実施例では、これらの電極の各々は、別個の要素である。したがって、各電極群は、4つの電極を備え、デバイスは、合計8つの電極を備える。第1の電極群50は、チャネル12の下方の第1の測定電極62aと第1の電流経路I3を形成するチャネル12の上方の第1の信号電極60aと、チャネル12の下方の第2の測定電極66aと第2の電流経路I4を形成するチャネル12の上方の第2の信号電極64aとを備える。第2の電極群52は、チャネル12の下方のさらなる第1の測定電極62bとさらなる第1の電流経路I6を形成するチャネル12の上方のさらなる第1の信号電極60bと、チャネル12の下方のさらなる第2の測定電極66bとさらなる第2の電流経路I7を形成するチャネル12の上方のさらなる第2の信号電極64bとを備える。この実施例では、電極は、フローチャネル長さに沿って対で配置され、その結果、さらなる第2の電流経路は、第1の電流経路の下流にある第2の電流経路の下流にあるさらなる第1の電流経路の下流にある。
【0042】
第1の電極群50内で、第1の信号電極60aは、特定の大きさ、位相、及び周波数組成(1つ以上の周波数)を有する第1の電圧+Vで駆動される。対照的に、第2の信号電極64aは、第1の電圧+Vと同じ大きさ及び周波数組成を有するが、第1の電圧と位相が180°(πラジアン)ずれる第2の電圧-Vで駆動される。
【0043】
第2の電極群52の信号電極は、第1の電極群50の対応する信号電極と同じ電圧で駆動される。したがって、さらなる第1の信号電極60bは+Vで駆動され、さらなる第2の信号電極は-Vで駆動され、大きさ及び周波数は、第1の電極群50の第1及び第2の電圧と同一である。図4の実施例では、これは、+Vを生成する第1の電圧源70から第1の信号電極60a及びさらなる第1の信号電極60bを供給し、-Vを生成する別個の第2の電圧源72から第2の信号電極64a及びさらなる第2の信号電極64bを供給することによって達成される。
【0044】
大きさ及び周波数が絶対的に同一であることは必須ではなく、現実世界の条件では、いくつかの小さな差異が生じる可能性が高いことに留意されたい。したがって、この文脈における「同じ」及び「同一」などの用語は、限定するものではなく、電圧特性が例えば、本明細書に記載されるような有意な出力信号を達成するために許容可能であると当業者が理解するであろう境界内で、類似するか又はほぼ、実質的に若しくは名目上同じである構成を含むことが意図される。
【0045】
同様に、正確に180°の位相差は必須ではなく、位相は180°の領域において他の量だけ異なり得る。したがって、2つの電圧の位相は、「反対」であると考えることができ、この場合、これは、位相差が本明細書に記載されるような有意な出力信号を達成するために許容可能であると当業者が理解するであろう境界内で、180°(πラジアン)に近いか又はほぼ、実質的に若しくは名目上180°(πラジアン)である構成を含むことが意図される。
【0046】
この実施例では、信号電極は電圧源からの指定された電圧で駆動されるので、電圧電極であると考えることができる。他の実施例では、信号電極は、電流源からの特定の電流で駆動されてもよい。したがって、用語「信号電極」は、これらの電極が記載されるような周波数、大きさ、及び位相差を有する電気信号を提供し、電圧信号又は電流信号であり得るように、両方の代替形態を含むことが意図される。様々な実施例のいずれにおいても、電圧源及び電圧電極は、電流源及び電流電極で置換されてもよく、又はその逆であってもよい。同様に、電圧の印加は、より一般的には、電源の選択に応じて電圧又は電流であり得る「電気信号」の印加として理解することができる。
【0047】
測定電極は、第1の電極群50と第2の電極群52からの測定値間の差を示す差動信号を生成する回路で構成されている。図4に示すように、これは、本実施例では、第1の電流経路において(第1の測定電極62aによって)検出された電流I3を、第2の電流経路において(第2の測定電極66aによって)検出された電流I4と加算又は結合して、加算信号I5を生成することによって実施される。第1の電極群からのこの第1の加算信号I5は、電流-電圧変換器34aに送られる。同様に、さらなる第1の電流経路において(さらなる第1の測定電極62bによって)検出された電流I6は、さらなる第2の電流経路において(さらなる第2の測定電極66bによって)検出された電流I7と加算又は結合されて、加算信号I8を生成する。第2の電極群からのこの第2の加算信号I8は、別の電流-電圧変換器34bに送られる。代替構成では、回路は加算又は結合の前に電流-電圧変換を実施するように構成され得ることに留意されたい。いずれの場合も、第1の電極群50の第1及び第2の電流経路における電流の加算を表す第1の加算信号I5と、第2の電極群52の第1及び第2の電流経路における電流の加算を表す第2の加算信号I8とは、第1の加算信号と第2の加算信号との間の差を表す差動信号を決定するように構成されたさらなる回路に送られる。図4の実施例では、これは差動増幅器36を含む。次いで、差動信号は、適切な処理回路又は電子機器を使用して処理されて、差動信号から、試料流体のインピーダンス特性(properties)又は特性(characteristics)を示すインピーダンス信号を計算することができ、このインピーダンス信号は、必然的に、試料流体中の任意の粒子のインピーダンス特性(properties)又は特性(characteristics)を含む。このことから、試料流体中の微生物に対する抗菌剤の効果は、抗菌剤で処理されていない、又は異なるタイプ若しくは量の抗菌剤で処理された同じ微生物の試料からのインピーダンスの測定値と比較することによって同定することができる。例えば、差動信号は、本明細書及び以下でさらに説明するように、流体及び/又は細胞のインピーダンス信号、インピーダンス値、インピーダンス特性(properties)及び特性(characteristics)、及び/又は細胞数を決定する目的で差動信号を処理するように構成されたプロセッサに入力され得る。回路及び処理は、単純な電気接続、論理ゲート、増幅器及び中央処理ユニットを含む、ハードウェア、ファームウェア及びソフトウェアの任意の適切な構成又は組み合わせを用いて実施され得る。単一のプロセッサ又は同様の処理電子機器若しくは回路を使用して、例えば、単一の基板又はチップ上に実装され得る関連する電極を有する複数のフローチャネルから得られる複数の差動信号を処理することができる。このように構成された装置は、複数の試料について簡単に同時測定を得ることを可能にする。微生物試験の文脈において、これは、未処理微生物の参照試料が処理試料と同時に測定されることを可能にし、又は特定の微生物の複数の試料を異なる抗菌剤で試験することを可能にし、又は特定の微生物の複数の試料を異なる濃度の同じ抗菌剤で試験して、いわゆる最小阻害濃度を決定することを可能にし得る。作動信号の導出は図5から理解することができ、図5は、2つの加算信号(a)及び(b)と、対応する作動信号(c)についての電流対時間のグラフを示す。
【0048】
図4は、第1の電極群50の上流に位置し、電極によって画定される測定領域に入ろうとしている、フローチャネル12内の細菌細胞などの粒子42を示す。時間t5までに、粒子42は全ての電極を通過し、測定領域を出た。図5のグラフは、t0及びt5の前の後続の時間t1~t4における様々な信号を示す。便宜上及び簡単にするために、流体試料は、電極の電場が存在するゾーンである測定領域内に一度に1つの粒子のみを提供することを意図する、流体チャネルに沿った細胞濃度及び流速を有してもよい。
【0049】
t0において、粒子42は測定領域の外側にあり、電流経路のいずれとも相互作用しない。したがって、第1の電極群50において、第1の測定電極62aは、第2の測定電極66aによって検出された第2の電流経路における電流I4と同じ大きさであるが逆相である第1の電流経路における電流I3を検出する。したがって、I3とI4は互いに打ち消し合い、それらの和はゼロ(又は信号電極によって供給される電気信号のわずかな差を考えると、ほぼゼロ)であり、図5(a)のように、t0でゼロの第1の加算信号I5を与える。同様に、第2の電極群52において、さらなる第1の測定電極62bにおける電流I6は、さらなる第2の測定電極66bにおける電流I7と等しいが逆であり、その結果、それらの和もほぼゼロであり、図5(b)に示すようにゼロの第2の加算信号I8を与える。したがって、図5(c)に示すように、t0において、差動信号I8-I5もゼロである。したがって、装置によって測定される「バックグラウンド」信号は、粒子が存在しない場合、実質的にゼロ値であり、2つのゼロ値測定値の差から得られる。したがって、電圧電極に印加される電圧は、検出された信号が変換器34又は差動増幅器36においてクリッピングを受けることなく、高い値まで上昇させることができ、したがって、測定感度は電圧源の能力内で最大化することができる。
【0050】
時間t1において、粒子は、第1の信号電極60aと第1の測定電極62aとの間にあり、したがって、第1の電流経路における電流の流れを妨げる。そのため、I3は低減される。第2の信号電極64aと第2の測定電極66aとの間の第2の電流経路における電流I4は、以前と同様に残る。したがって、I3+I4である第1の加算信号I5も低減される。第2の電極群からのI6+I7である第2の加算信号I8は、これらの電流経路のいずれにも粒子が存在しないので、ほぼゼロのままである。したがって、差動信号I8-I5は、I5の低減された値のために正になる。t2において、粒子42は、第2の信号電極64aと第2の測定電極66aとの間に移動している。第1の電流経路内の電流I3は、その前の値に戻り、第2の電流経路内の電流I4は、粒子42の存在によって低減される。しかしながら、図5(a)に示すように、第2の信号電極は負の駆動電圧を有し、そのため第1の加算信号I5=I3+I4が正になることを想起されたい。第2の加算信号I8は、ほぼゼロのままである。したがって、差動信号I8-I5は、t2において負になる。
【0051】
時間t3及びその後時間t4において、粒子は第2の電極群52に入り、t3において、さらなる第1の電流経路I6と相互作用し、次いで、t4において、さらなる第2の電流経路I7と相互作用する。さらなる第1の電流経路I6は、第1の電流経路I2と同じ電圧供給を有し、さらなる第2の電流経路I7は、第2の電流経路I4と同じ電圧供給を有するので、第2の加算信号は、第1の加算信号が時間t1及びt2において示したのと同じ形状を時間t3及びt4において辿り、t3において負になり、t4において正になる。一方、第1の加算信号I5は、第1の電極群に対応する測定領域の部分に粒子が存在しないので、これらの時間の間、ゼロのままである。したがって、図5(c)に示すように、t3において、差動信号I8-I5は負になり、その後、t4において正になる。
【0052】
t5において、粒子は測定領域を離れているので、4つの電流経路は、全て乱されていない。両方の加算信号は実質的にゼロであり、時間t0におけるようにゼロ値の差動信号を与える。
【0053】
図5(c)に示す、差動信号が続く曲線の特定の形状に留意されたい。2つの電極群50、52及び群を伴う4対の電極のチャネル長さに沿った順次配列は、チャネル長さに沿った信号電極の正及び負の電圧の交互配列と共に、粒子が測定領域に沿って通過するときに、正、次いで負、次いで正よりも負の特徴を経時的に示す対応する差動信号を与える。この形状は、図1の装置からの差動信号よりもノイズと比較してより明確であり、したがって、(信号処理技術を用いて)より容易に区別することができる。これにより、信号対雑音比が向上し、感度がさらに向上する。
【0054】
差動信号は、代替的に、好ましい場合には、I5-I8として計算されてもよく、すなわち、第1の加算信号から第2の加算信号を引いてもよい。いずれの場合も、差動信号は、加算された信号間の差を表し、粒子のインピーダンス特性は、それから決定することができる。これは、以下でさらに説明する実施例にも適用可能である。
【0055】
この電極構成(及び同じ結果を可能にする同様の構成)及びその改善された性能は、大きなチャネル内を流れる細菌などの小さな粒子について有意なインピーダンス測定値を得ることを可能にする。これは、チャネルの閉塞のリスクを低減し、そのような装置を、現実世界の環境及び状況においてより有用にする。細菌細胞は、典型的には、0.2~2μmのサイズの範囲である。「大きなチャネル」とは、流体の流れ方向を横切る平面におけるチャネルの寸法が約10~50μmの範囲、例えば20μmであることを意味する。一例として、チャネルは、約40μmの実質的に等しい幅及び高さを有する正方形の断面(例えば、フォトリソグラフィによる層状構成及び形成から生じる)を有することができる。代替的に、チャネルは、上に装置が形成される基板の平面及び流れの方向に直交し、電圧電極から測定電極への電流フローチャネルに平行な、約10~50μm、例えば約20μmの高さを有してもよく、横断方向(幅)寸法は、より大きい。約10μmの細胞を横切って測定するのに適した100~1000μmの範囲のより小さい寸法を有するチャネル、又はミリメートルスケールの粒子に適合することができるさらにより大きいチャネルなど、他の寸法も使用することができる。
【0056】
他の電極構成を使用して、試料流体中の粒子のインピーダンス特性を推定することができる同じ又は同様の信号を取得することができる。各々がほぼ等しいがほぼ反対の電圧で駆動される第1の電流経路及び第2の電流経路を提供する第1の電極群及び第2の電極群を備える多様な構成が可能である。群内では、第1の電流経路及び第2の電流経路は、図4のように、チャネルの流れ方向に沿って異なる位置にあってもよい。第1の電極群及び第2の電極群も、図4のように、チャネルの流れ方向に沿って異なる位置にあってもよい。各群の電極は、物理的に一緒に群化される必要はないが、他の群の電極間に分散されてもよい。
【0057】
図6は、図4と同じ要素を含む第2の実施例を概略断面側面図に示す。したがって、フローチャネル12を横切って4つの対として配置された4つの信号電極及び4つの測定電極を備える8つの電極が含まれる。しかしながら、この実施例では、各電極群の信号電極は、フローチャネルに沿って交互に配置されている。したがって、フローチャネル12に沿って順に、測定領域は、最初に、第1の電流経路I3を与える第1の信号電極60a及びその第1の測定電極62aと、第2に、さらなる第1の電流経路I6を与える第1の信号電極60b及びそのさらなる第1の測定電極62bと、第3に、さらなる第2の電流経路I7を与える第2の信号電極64b及びそのさらなる第2の測定電極66bと、最後に、第2の電流経路I4を与える第2の信号電極64a及びその第2の測定電極66aとを備える。第1の電流経路I3及び第2の電流経路I4は、第1の加算信号I5のために結合され、さらなる第1の電流経路I6及びさらなる第2の電流経路I7は、前述のように、第2の加算信号I8のために結合される。測定領域を横断する粒子についての差動信号の時間進展は、図5(c)に示されるものとは異なる形状になる-それは、正、次いで負、次いで正、次いで負の特徴を含むが、適切なフィルタリング及び/又は信号処理によってノイズと区別することができる。
【0058】
図4及び図6の実施例は、両方とも、第1の電気信号を各群の第1の信号電極に供給し、反対の第2の電気信号を各群の第2の信号電極に供給するための別個の電圧源(又は電流源)を備える。信号電極は、電圧源の一方の側に接続され、他方の側は、グランドに接続される。
【0059】
図7は、全ての信号電極を駆動するために単一の電圧源を使用することによって簡略化される代替実施例の概略断面側面図を示す。この例は、図6の実施例と同じように配置された8つの電極を備える。単一の電圧源71が全ての信号電極を駆動する。各電極群の第1の信号電極60a、60bは、電圧源71の正側に接続されて+Vを受け、各電極群の第2の信号電極64a、64bは、電圧源71の負側に接続されて-Vを受ける。
【0060】
上述のように、装置は、信号電極に印加される電圧又は電流を使用して駆動されてもよい。図8は、図4の実施例と同様に構成されるが、電圧源の代わりに電流源を使用する実施例装置を示す。構成要素はその他は同じであるので、ここでは詳細に説明しない。第1の電流源80は、第1及び第2の電極群50、52の各々の第1の信号電極60a、60bに、大きさ、位相及び周波数組成を有する電流を提供する。第2の電流源82は、各電極群50、52の第2の信号電極64a、64bに実質的に同じ大きさ及び位相を有する電流を提供するが、これは、第1の電流源80からの電流と比較して、反対又はほぼ反対の位相を有する(2つの電流間の位相差は、約180°又はπラジアンである)という点で負である。各電極群50、52の測定電極62a、66a、62b、66bからの加算信号を表す電圧V1及びV2が差動増幅器36に入力されて、差動信号を決定することができる。
【0061】
電極及び結果として生じる電流経路のための他の構成も可能である。典型的には、電極は、層状マイクロ流体構造の従来の作製の制約のために、フローチャネルの上方及び下方にあるが、これは動作に必須ではなく、装置は、他の配向でフローチャネルの周りに配置された電極を用いて構成されてもよい。一例では、正及び負の信号電極は、図6の実施例のように隣接して配置されてもよいが、図6の配置とは反対に、第1の群の測定電極が2つの中央測定電極として配置され、第2の群の測定電極が2つの外側測定電極として配置されてもよい。これまでの実施例は、全て、フローチャネルの上部に信号電極を備え、フローチャネルの底部に測定電極を備えていた。しかしながら、これは限定ではなく、電極のいずれかを、おそらく電圧源又は電流源(電気信号源)及び測定回路とそれらを接続する際の便宜に従って、いずれかの位置に配置することができる。例えば、信号電極及び測定電極の1つ以上の対の電極は、測定電極がチャネルの上方にあり、信号電極がチャネルの下方にあるように、反対に配置されてもよい。さらに、個々の電極は、例えばそれらの電極が物理的に隣接している場合に、2つの個々の電極の機能を果たすより大きな電極に組み合わされてもよい。図4の実施例を考慮すると、第1の電極群における第1の測定電極及び第2の測定電極は、隣接し、第2の電極群におけるさらなる第1の測定電極及びさらなる第2の測定電極は、隣接し、第1及び第2の測定電極から下流にある。これにより、第1及び第2の測定電極を、第1の電流経路及び第2の電流経路の両方から電流を収集する組み合わされた単一の電極と置き換えることができ、その結果、その出力は、既に、第1の電極群からの結合又は加算された信号である。同様に、さらなる第1の測定電極及びさらなる第2の測定電極は、第2の電極群の第1及び第2の電流経路を表す加算信号を出力する組み合わされた単一の電極によって置き換えることができる。信号電極も、単一のより大きな電極に組み合わされてよい。これまでに記載した電極群内では、信号電極は、その群の2つの電流経路に異なる反対の電気信号(電圧又は電流)を印加する2つの電極を含む。そのため、群内の信号電極を組み合わせることができない。しかしながら、同じ電圧又は電流(名目上)が、2つの異なる電極群内の対応する正及び負の信号電極に印加され、信号電極が電極群にわたって組み合わされるか、又は共有される範囲を与える。これまでのところ、実施例は、流体の流れ方向に対してほぼ横断する方向に流体チャネルを通過する電流経路を提供するように対にされた電極を備えており、これは、対にされた電極がチャネルの両側に配置されることによって達成される。しかしながら、これは必須ではなく、電流経路は、懸濁粒子が電圧電極から発する電界と相互作用し、それにより電流経路内の電流の流れを修正することを可能にする任意の配置で、別様に配置されてもよい。例えば、電極は、信号電極及び測定電極がチャネルの上側及び下側に沿って交互に配置されるが、同じタイプの電極に対向して配置されるように配置することができる。したがって、同じ電気信号を生成する信号電極は、互いに反対であり、電界は、チャネル長の方向に沿って隣接する測定電極に向けられる。そのような構成は、チャネルを通る流体の流れ方向に実質的に沿った、又はそれに平行である電流経路を提供する。電極は平面状であってもよく、これは、層で作製されるチップベースのデバイスにおいて好都合であるが、これは必須ではない。例えば、電極は、例えば、パイプ又はチューブから形成される、円形又は楕円形の断面であってもよい、チャネルを順次包囲するリング又はカラーとして形成されてもよい。
【0062】
さらなる実施例では、さらなる電流経路を提供するために、電極の数を増加させることができる。これは、差動信号のパターンの特有の性質を増加させ、ノイズからの分離を容易にし、それにより感度を改善する。電極群の数は2つとして維持され、各群内で、余分の電極が追加の第1及び第2の電流経路を提供する。粒子インピーダンス信号は、加算信号及び/又は差動信号におけるピーク及びトラフの高さ関連特徴から抽出することができる。これは、例えば、ピーク及び/又はトラフの振幅を測定することによって、又は信号の形状を既知の特性を有する粒子について得られたテンプレートに一致させることによって達成することができる。加算信号及び/又は最終的な差動信号におけるピーク及びトラフのシーケンスは、信号電極の相対的なシーケンスを選択することによって設計することができる。信号処理数学から、いくつかの信号形状が他のものよりも固有であることが知られており、その結果、フローチャネルに沿った電極の適切なシーケンスによって、改善された信号対雑音比を得ることができる。
【0063】
上述のように、インピーダンスフローサイトメトリー装置の様々な記載された実施例は、ASTなどの細菌及び微生物試料の測定に適用可能であり、図4~8の実施例は、有意なデータを得るのに十分な測定感度で小粒子を処理することができるので、図1~3の実施例と比較してこの目的のために特に有益である。したがって、本開示のインピーダンスフローサイトメーター及びそれらの使用は、微生物感染の改善された診断及び抗菌剤の処方のための用途を有する。さらに、図4~8の実施例では、装置のフローチャネルは、典型的な細菌細胞サイズよりも著しく大きい寸法を有することができ、したがって、このタイプの装置は、典型的には、細菌細胞よりも大きいサイズを有する非細菌細胞の試料の測定、又はある範囲の粒子サイズを含有する混合試料、及び実際に、非生物起源の粒子の測定にも有用である。
【0064】
次に、インピーダンスフローサイトメトリーを用いて実施することができる様々な例示的な測定技術及び手順について説明する。説明は、図4~8の実施例などの装置を参照してなされるが、一般に、これらの方法及び同様の方法は、図1~3の実施例などの装置を使用して実施されてもよい。
【0065】
インピーダンスフローサイトメトリー装置によって生成される差動信号は、特定の形状(その正確な詳細は、信号形状又はパターンの独自性を高めるように選択することができる、様々な電極の順序に依存する)を有し、したがって、単純なレベルでは、装置は、粒子又は細胞計数のために使用され得る。差動信号の処理は、測定領域を通る粒子の通過から生じる信号の特定の形状の全発生の単純な同定及び計数を含むことができる。これは、通常の細胞の計数に使用することができるが、抗菌剤に対する生物学的感受性の同定にも適用可能である。いくつかの抗菌剤は、微生物の構造的完全性を破壊することによって作用し、その結果、微生物の株がこのタイプの抗菌剤に感受性である場合、抗菌剤への試料の曝露は、試料中の微生物の集団を経時的に減少させる。これは、正確に体積測定された試料中の処理された微生物の数を計数し、それを特定の時点又は一連の時点における未処理の微生物の試料の計数と比較することによって同定することができる。このタイプの単純な分析は、流体試料中の粒子のインピーダンスの実際の値の詳細な計算又は分析を必要としない場合があり、差動信号からインピーダンス信号を導出する必要がない場合があり、又はインピーダンス信号から粒子のインピーダンス値、特性(property)又は特性(characteristics)を同定する必要がない場合がある。
【0066】
しかしながら、インピーダンス信号の分析は、細胞についての付加的な価値のある情報、及び特に抗菌剤に対する微生物感受性を明らかにすることができる。本開示による方法は、最小限の工程数で、単純且つ迅速な様式で、細胞及び細菌を含む生物学的及び非生物学的粒子に関する情報を明らかにすることができる、インピーダンスに基づく 様々な測定を行うことを可能にする。
【0067】
異なるクラスの抗菌剤は異なる作用モードを有し、微生物において異なる生物物理学的変化を生じる。上述のように、いくつかの抗菌剤は、微生物の構造的完全性を破壊し、それによって、正確な試料体積中の粒子数を介して検出することができる集団サイズを減少させる。他の抗菌剤は、細胞壁合成を阻害することによって作用し、これは、細胞体積(サイズ)の全体的な増加をもたらし得る。細胞壁又は細胞膜特性自体が変化する場合があり(例えば、厚さ、電気的若しくは材料特性、又は多孔性の変化など)、内部細胞構造又は組成が変化する場合がある。これらの様々な特性-細胞サイズ、細胞壁/膜特性、内部特性-は、全て、細胞のインピーダンス特性又は値に寄与する。したがって、試料中の粒子のインピーダンスの測定は、細胞の特性を明らかにすることができる。抗菌剤で処理された及び処理されていない微生物の試料の測定値間を比較して、任意の差異を同定することによって、特性が抗菌曝露によって変化し、抗菌剤への測定可能な感受性を示すか否かを明らかにすることができる。試料中の粒子のインピーダンスの測定はまた、1つ以上の特性、又は1つ以上の特性の変化を引き起こす抗菌剤の作用モードを明らかにすることができる。抗菌剤は、サイトメトリー測定のために試料中に残存することができ、又は好ましい場合には、測定前に洗浄によって除去することができる。しかしながら、除去の必要性はなく、これは、必要な色素を添加する前に試料から抗菌剤を除去することが典型的に必要である光学サイトメトリー技術と比較して、本明細書の方法の有益な態様である。感受性を決定するために、インピーダンス測定に反映される1つ以上の特性の変化に対する閾値レベルを設定することができる。抗菌剤に曝露されていない及び暴露された微生物サンプルからのインピーダンス信号間の比較が、変化量が閾値以上であることを示す場合、感受性を認識することができる。閾値は、例えば、測定された特性のサイズの変化に対する閾値、又は例えば、その変化を示す試料中の微生物の数に対する閾値であってもよい。
【0068】
単純なレベルでは、図5(c)に一例を示す、本明細書に記載の装置を使用して得られる差動信号の大きさは、粒径に依存する。より大きい粒子は、フローチャネル内の電場に対してより大きな効果を有し又は電場と相互作用し、したがって電流の流れはより低減され、より低い電流が測定電極で検出される。したがって、差動信号は、より小さい粒子の場合よりも大きい振幅のピーク及びトラフを含むことになる。したがって、曝露された微生物からの測定値と、曝露されていない微生物からの測定値との比較は、前者の測定値からの差動信号が後者の試料よりも大きな振幅特徴を示す場合、抗菌剤感受性を明らかにし得る。この分析のために差動信号を直接考慮するか、又は差動信号から対応するインピーダンス値を計算することができる。
【0069】
インピーダンス値を考慮する場合、インピーダンスは、2つの部分又は成分、実数部及び虚数部、又はより有用には、大きさ|Z|及び位相θを含むことを想起されたい。これらの成分の任意の値又は組み合わせを分析して、試料流体中の粒子の特性を調べることができる。さらに、粒子と電場との相互作用の性質は、電場の周波数に依存する。したがって、異なる周波数又は2つ以上の周波数で測定することによって、異なるインピーダンス結果を得ることができ、これらは粒子の異なる特性を明らかにすることができる。測定は、1つの周波数で微生物の1つの試料を研究し、第2の周波数で同じ微生物の別の試料を研究することによって、異なる電圧又は電流源を信号電極に接続することによって、又は異なる周波数を信号電極に出力するように信号源を設定することによって行われ得る。しかしながら、より便利には、信号電極を駆動するために使用される信号源は、同時に2つ以上の周波数を出力するように構成され得る。差動信号又はそれから導出されるインピーダンス信号の適切なフィルタリング及び/又は処理を実行して、記録された測定値における異なる周波数成分を分離することができ、それにより、1つ以上のインピーダンス成分(例えば、大きさ及び/又は位相)を各周波数成分について得ることができる。
【0070】
図9は、粒子(細胞)と異なる周波数の電場との相互作用の表現を示す。電解液中に懸濁された細胞42は、信号電極と測定電極との間のフローチャネル中に存在するような電場(破線によって示される)中にある。図9(a)では、周波数は低く、これは約10MHz以下の範囲、例えば約1MHz又は約5MHzの周波数を意味する。このレジームでは、電場は細胞42の周りを通過し(電場線が細胞内を透過せず、細胞の周りに迂回されることに留意されたい)、測定されたインピーダンス信号は、細胞の電気的体積(細胞の物理的サイズを表す)を反映する。したがって、測定されたインピーダンスの大きさの立方根|Z|1/3は、おおよそ電気半径を反映する。図9(b)では、周波数は高く、これは低周波数よりも高い周波数、例えば、約10MHzよりも高い、例えば約40MHzの周波数を意味する。このレジームでは、電場は、細胞42の壁(膜)を横切って容量結合する(電界線が比較的乱されずに細胞を通過することに留意されたい)。この効果は、測定されたインピーダンス信号が細胞壁及び/又は膜の電気的特性及び/又は細胞内部の細胞質特性を反映することである。これは、「電気的不透明度」と称することができる。したがって、2つの細胞間のこれらの特性の差は、高周波数での測定されたインピーダンス間の差として明らかである。高及び低周波数の有用な値は、他の細胞タイプ、他の粒子タイプ、及び/又は懸濁電解質の異なる導電率についてのこれらの実施例の値とは異なるか、又は著しく異なることに留意されたい。例えば、生理学的媒体と同様の導電率を有する懸濁媒体中の非細菌細胞については、約1MHz、細菌細胞については、約10MHzの高周波数の値が適切であり得る。低周波数は、一般に電場が粒子を透過しない周波数であり、そこから粒子に関するサイズ情報を推定することができる。高周波数は、選択された低周波数よりも高く、電場が細胞壁を横切って結合し、細胞の膜及び壁に依存する特性を調べることを可能にする周波数である。はるかに高い周波数(非細菌細胞については約5MHz以上、細菌については約50MHz以上、本開示の高周波数領域内にあると考えられる)で、内部構造及び成分部分を測定することができる。
【0071】
したがって、粒子の特性に依存するその同じ粒子の異なる周波数での測定の間に区別があり(特に、上記で定義された低周波数と高周波数との間)、それらの特性についての情報を推定することができる。懸濁電解液の導電率及び誘電率を含む他のパラメーターもまた、区別に影響を及ぼすが、装置及び試験レジーム又はプロトコルの特徴であるこのパラメーター及び他のパラメーターは、複数の測定にわたって一定に保つことができ、したがって、比較分析に影響を及ぼさない。
【0072】
測定値は、高周波数又は低周波数であり得る単一の周波数のみで取得されてもよく、又は2つ以上の周波数、典型的には、順次又は同時の2つの周波数で取得されてもよい。
【0073】
2つの周波数に対するアプローチは、個々の粒子について、低周波数におけるインピーダンス(大きさ、位相、実数又は虚数成分)、及び高周波数におけるインピーダンスを計算することである。これらの値を、同じ試料中の他の粒子の値と共にグラフ上にプロットして、散布図を生成する。電気半径又は電気体積を示す低周波数インピーダンスの大きさを、グラフのx軸上にプロットし得、高周波数インピーダンスの大きさをグラフのy軸上にプロットし得る。代替的に、y軸は、低周波数値に対する高周波数値の比をプロットし、それによって、不透明度を細胞サイズに正規化することができ、これは、「電気的不透明度」と称される。
【0074】
本明細書に提示される図において、散布図(scatter plot)(散布図(scattergram)とも称される)中の各点は、粒子の数を表す色を有し、黒は1つの粒子を表し、粒子の数が増加することにつれて、点の色がより薄い灰色になる。したがって、薄い色は、より高い強度(多数の粒子)を示し、より暗い色は、より低い強度(より少数の粒子)を示す。
【0075】
図10は、4つの例示的な散布図を示している。図10(a)は、抗菌剤で処理されていない細菌株についての測定値を示す。測定は、5MHzの低周波数と40MHzの高周波数の2つの周波数で得られた。低周波数における各細胞のインピーダンス値、|Z|5MHzは、x軸上にプロットされ、高周波数における各細胞の正規化されたインピーダンス値、|Z|40MHz/|Z|5MHzは、y軸上にプロットされる。各データ点は、試料中の個々の粒子に対応する。較正/参照の目的のために、試料は、細菌サイズに広く匹敵し得る既知のサイズ、及び既知の誘電特性(既知のインピーダンス特性)の一定量のプラスチックマイクロビーズを含んだ。ビーズは、単一のビーズについて、1の高周波数値及び1.5の低周波数値を中心としてグラフ上に現れる。ダブレット及びトリプレット群に一緒に固着したビーズは、主ビーズ集団の右側に、より高い低周波数値でより小さい集団として現れる。しかしながら、全てのビーズは、試料中の細菌細胞を表すデータ点から十分に分離されている。これらは、約1.6~2.4の低周波数範囲にわたって広がる、約0.75の高周波数値を中心とする。細菌集団の大部分の位置を示すために、閉じた実線が細菌データ点の上に重ね合わされる。この実線は、輪郭線又は境界、又はゲートとみなすことができ、異なる試料からの測定値を比較するのに有用である。これは、細菌の全てのデータ点、又は99%、95%、90%、75%、若しくは50%などのデータ点の主要な割合を包含するように描くことができ、したがって、外れた測定値は除外される。既知の統計技術を利用して、輪郭を配置し、大きさを決めることができる。
【0076】
図10(b)は、この実施例ではβ-ラクタムと呼ばれる抗菌クラスからの抗菌剤と30分間インキュベートした同じ細菌株の試料についての測定値を示す。抗菌剤はプラスチック材料に影響を与えないため、ビーズのデータ点は図10(a)から変更されない。しかしながら、細菌のデータは、低周波数では、より高いインピーダンス値に大きくシフトしており、約2.1~3の範囲を占め、高周波数では、より低いインピーダンス値にいくらかシフトしており、約0.7を中心とする。図10(a)の実線の輪郭線を図10(b)に示す。実線内にはほとんどデータ点がなく、事実上、細菌集団全体が抗菌剤によって実質的に改変されていることを示している。より大きい低周波数値へのシフトは、増加した電気半径を示し、より小さい高周波数値へのシフトは、内部細胞構造及び/又は細胞壁の変化を示す。したがって、本発明者らは、抗菌剤が細菌に対して測定可能な効果を有し、したがって細菌がその特定の抗菌剤に感受性であると推定する。β-ラクタム抗菌剤は、細胞壁合成を阻害するため、図10(b)に示すように、細菌の体積(大きさ、直径)を増加させる全体的な効果を有する。
【0077】
図10(c)及び図10(d)は、曝露及び曝露されていない細菌及びプラスチックビーズの試料についての2つのさらなる散布図を示し、細菌は、図10(a)及び図10(b)のものとは異なる株である。図10(c)は、抗菌剤に曝露されていない細菌の試料のデータを示す。前述のように、細菌集団の周りに輪郭線が描かれている。図10(d)は、β-ラクタム抗菌剤に対する曝露後の細菌の試料のデータを示す。図10(c)との差はほとんど見られず、ほぼ全細菌集団が輪郭線の内側に留まっている。したがって、本発明者らは、抗菌剤が細菌に対して測定可能な効果を有していたとしても、ほとんど有していなかったことを推定することができる。試験された株は、この特定の濃度で抗菌剤に対して耐性であると結論付けられる。
【0078】
上記のように、他のクラスの抗菌剤は、微生物に対して異なる効果を有する。微生物の集団が特定の抗菌剤に感受性であるかどうかを決定するために、3つの異なるパラメーターのいずれか又は全てをインピーダンス測定から評価することができる。細胞サイズの変化は、より低い周波数での応答の変化によって示され(図10(a)~(d)のx軸)、細胞壁/細胞内部特性の変化は、より高い周波数での応答の変化によって示される(図10(a)~(d)のy軸)。粒子としてもはや登録されない程度までの、抗菌剤による細胞構造の損傷から生じる全粒子集団の減少は、正確に測定された体積における粒子数の減少によって示される。これらの各変化は、図10(a)~(d)に示すように、輪郭内のより少ない数のデータ点を生成し、これは、細胞サイズ若しくは壁/内部構造が変化する場合、データ点が輪郭外に移動するため、又は細胞の完全性が損なわれる場合、データ点が除去されるためである。したがって、曝露された微生物集団及び曝露されていない微生物集団についての同じ輪郭線内のデータ点の数の比較を用いて、感受性を同定することができる。特定の抗菌濃度での感受性を表す測定基準は、曝露されていない試料について描かれた輪郭の内側にある曝露された試料中の微生物の数又は割合として定義することができる。例えば、図10(b)では、輪郭内に残っている細胞はごくわずかであり、測定基準は0%に近いので、細菌は、その濃度で抗菌剤に感受性である。図10(d)では、細胞の大部分が輪郭の内側にあり、測定基準は100%に近いので、細菌は抗菌剤に耐性である。
【0079】
図11(a)及び(b)は、細菌を破壊することによって総細胞数を減少させる抗菌剤に対する感受性を示すいくつかの例示的な散布図を示す。各プロットについて、図10のグラフと同様に、低周波数における各細胞の電気半径|Z5MHz1/3は、x軸上にプロットされ、高周波数における各細胞の正規化されたインピーダンス値|Z|40MHz/|Z|5MHzは、y軸上にプロットされる。図11(a)は、細菌の集団を含む曝露されていない試料からのインピーダンス測定値を示し、集団の大部分を包含するように描かれた輪郭線又はゲート、及びより高い高周波数応答での参照ビーズの集団を有する。図11(b)は、曝露された集団からのインピーダンス測定値を示す。データのx-y位置は、輪郭外のデータ点がほとんどないので、曝露細菌についてあまり移動していないが、全細胞数は、曝露されていない試料と比較して輪郭内のデータ点の数が少ないことによって示されるように、実質的に減少している。したがって、細菌は、特定の抗菌剤に対して感受性であると分類される。
【0080】
ここまでの例示的なデータは、装置内の信号電極に印加される信号に対して高周波数及び低周波数を使用して得られたものである。しかしながら、結果は、1つの周波数のみで測定することによっても得ることができる。次いで、インピーダンス位相に対してインピーダンスの大きさをプロットすることによって、微生物集団の散布図を作成することができる。
【0081】
図12は、40MHzの高周波数でのみ得られたデータの2つのさらなる例示的な散布図を示す。各グラフのx軸は、40MHzで測定された電気半径(インピーダンスの大きさの立方根)をプロットする。各グラフのy軸は、40MHzで測定されたインピーダンス信号の位相をプロットする。前述のように、プラスチックマイクロビーズが試料に含まれ、これらは、約1の位相値で現れる。0.7付近のより低い位相値のデータ点は細菌を示し、したがって、位相測定値は、細菌とビーズとを容易に区別することができる。図12(a)は、抗菌剤で処理されていない細菌の試料のプロットを示す。集団について測定された電気半径は、約1.5~2.1の範囲である。図12(b)は、抗菌剤に曝露された同じ細菌の試料のプロットを示す。細菌集団は、より高いx軸値にシフトしており、約1.8~2.7の範囲をカバーしている。有効な抗菌剤への曝露は、細菌の細胞サイズを変化させることができることが知られているので、本発明者らは、細菌株が適用された抗菌剤に感受性であると推定する。
【0082】
位相値を見ることによってビーズの集団から細菌の集団を容易に区別する能力に合わせて、位相はまた、異なる微生物が異なるサイズ及び/又は形状及び/又は形態を有する場合、1つの試料内の異なる微生物の集団又は亜集団(群又は亜群)を区別するか、又はその存在を同定するために使用できることに留意されたい。異なる微生物は、最初に試料中に存在してもよく、又は抗菌剤の効果から生じてもよい。例えば、いくつかの薬剤は、より大きい、より小さい、及び中間の持続細胞の亜集団を生成する効果で、細胞サイズを変化させる。
【0083】
さらなる代替として、異なる周波数におけるインピーダンスの位相及び大きさの値を組み合わせることができる。図13は、5MHz及び40MHzで得られたデータのさらなる例示的な散布図を示す。図12のグラフと同様に、図13のグラフはy軸上に40MHzでの位相をプロットしている。しかしながら、x軸は、5MHzの低周波数での電気半径を示す。図13(a)は、抗菌剤未処理の細菌の試料からの測定値を示し、図13(b)は、細菌が感受性を有する抗菌剤で処理された同じ細菌の試料からの測定値を示す。細菌及び抗菌剤は、図12のデータと同じである。両方の試料は、1付近の位相値を有する参照ビーズを含んでいた。図12のデータと同様に、細菌はビーズと容易に区別され、0.7付近のより低い位相値を有する。位相データは同じ高周波数ついて得られているので、位相値は図12と同じであることに留意されたい。再度、前述のように、処理された細菌は、細胞サイズの増加を引き起こす抗菌剤に対する感受性から生じる、より大きい値の電気半径へのシフトを示す。この実施例では、細胞サイズの明らかな増加は図12よりも大きく、約2.1~3の範囲の値であることに留意されたい。これは、高周波数測定よりも低周波数測定に対する細胞サイズの感度が高いためである。
【0084】
これらの結果から、本開示による方法は、1つの周波数で、又は2つ以上の周波数で、第1及び第2の信号電極に電気信号(電圧又は電流)を印加するために使用され得ることが理解され得る。したがって、本方法を実行するために使用される装置は、1つの周波数、又は2つ以上の周波数を生成するように動作可能な1つ以上の電気信号源を備え得る。1つの周波数は、高周波数であってもよいし、低周波数であってもよい。2つ以上の周波数は、1つは高い、1つは低い2つの周波数を含むことができる。高周波数は、約10MHz以上、例えば10~1000MHzの範囲、例えば40MHzであってもよい。いくつかの用途では、約10GHzまでの周波数など、さらに高い周波数が有用であり得る。低周波数は、高周波数よりも小さく、10MHz以下、例えば1~10MHzの範囲、例えば5MHzであってもよい。しかしながら、他の及び/又は追加の周波数は排除されず、特定の用途を参照して選択することができる。同様に、低周波数と高周波数との比は、用途に応じて大きく変化し得る。
【0085】
上述のように、例えば図10、11、12、及び13に関連して、本開示による方法は、選択された抗菌剤に曝露された微生物の試料からの測定値(ここで微生物は、差動信号及び場合により差動信号に由来するインピーダンス信号を取得するために、電解質中に懸濁されて本明細書に記載されるような電極の配置を通過する流体を提供する粒子である)、及び、抗菌剤に曝露されていない同じ微生物の試料からの別の測定値を得ることと、2つの測定値を比較することと、を含むことができる。曝露されていない微生物集団は、曝露された集団が比較される参照として使用される。2つの測定値間の有意差は、微生物が選択された抗菌剤に感受性であることを示し得る。測定値は、個々の微生物に対応するデータ点の散布図に配置することができ、曝露されていない微生物の集団の周りの輪郭線を参照することによって差を評価することができる。閾値は、例えば、抗菌曝露が、輪郭線内に捕捉された曝露微生物の数又は割合を閾値未満にする場合、感受性が推定されるように設定され得る。2つの試料を得るために、一群の細菌を、電解質中に懸濁させる前又は懸濁させた後に、半分に分けてもよく;半分を抗菌剤と共に、もう半分を抗菌剤なしで、設定時間、例えば30分間インキュベートする。次いで、参照プラスチックビーズを必要に応じて添加することができ、両方の試料を記載されるような装置に通過させて差動信号を取得し、そこからインピーダンスデータを導出することができる。
【0086】
しかしながら、抗菌剤感受性をより詳細に定量化することがより有用であり得る。実際には、感受性は、微生物株が所与の濃度の抗菌剤に対して感受性又は耐性であるか否かとして、より一般的に定義される。非常に高い濃度では、ほとんどの抗菌剤は微生物を克服するが、そのような高い濃度は、人体において安全に又は実際的に達成可能ではない場合がある。このアプローチの下で、微生物株の集団に対して顕著な阻害効果を有すると考えられる最低濃度である最小阻害濃度、すなわちMICを定義することができる。次いで、MICが人体において達成可能であるかどうか、したがって、その特定の抗菌剤が、特定の微生物によって引き起こされる感染と戦うために使用できるかどうかを決定することができる。したがって、MICを決定するために、様々な濃度の抗菌剤に対する微生物の応答を測定できることが有用である。本開示による方法は、その単純さのために、この決定を可能にするのによく適している。
【0087】
これまでの説明に沿った方法は、微生物の試料を3つ以上の群に分割し、前述のように、参照試料として機能する曝露されていない群を含む各群を、異なる濃度の抗菌剤に曝露することによって拡張することができる。このようにしてMICを決定することができ、又はMICについて以前に確立された値を検証又は再試験することができる。MICを評価するために、類似の濃度の微生物の群又は集団を、様々な抗菌濃度(通常は、対照又は参照濃度0、臨床的に関連するMICであると考えられる濃度、及びMICのいずれかの側の2つ以上の濃度(又は希釈物))でインキュベートする。したがって、微生物の試料は6つの群に分けられ、これらの各々がインピーダンス測定を受ける。
【0088】
一例として、MIC評価を実施するための微生物試料は、プレートから微生物のコロニーを採取し、トリプチカーゼソイブロス(TSB)などの適切な培地中でコロニーを一晩インキュベートして培養物を生成することを含み得る。培養物をミューラーヒントンブロス(MHB)で5×10細胞/mLに希釈し、37℃で30分間インキュベートして、活発に分裂する培養物を得る。この活発に分裂する培養物のアリコート(950μL)を、各々が50μLのMHB及び抗生物質メロペネムなどの抗菌剤の用量を含む7本の予熱試験管の各々に添加して、0、0.25、0.5、1、2、4及び8mg/Lの一組の最終抗菌濃度を得る。試験管を30分間インキュベートし(抗生物質曝露)、次いでハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中で1回洗浄し、続いてHBSS中で1:10に希釈する。各試料に直径1.5μmの参照ビーズを添加し(10/mL)、次いで、例えば、注射器を用いて試料をサイトメーター装置に30μL/分の速度で3分間導入することによって、上述のようにインピーダンスフローサイトメトリー測定を行うことができる。
【0089】
図14は、一連の6つの抗菌剤濃度に暴露された6群の細菌のインピーダンス測定の6つの散布図を示す。この実施例では、濃度は、グラフに示すように0μg/mL(対照)、及び0.5、1、2、4及び8μg/mLであり、2μg/mLは、試験される細菌に対する抗菌剤の既知の所定のMICである。図14(a)は、抗菌剤に曝露されていない対照又は参照群を示し、ゲート輪郭は、大部分のデータ点を包含するように細菌集団の周りに描かれている。より低い抗菌濃度(図14(b)~(d))については、データ点が輪郭から外れていないので、細菌は耐性であると見ることができる。4μg/mL及び8μg/mLの濃度でのみ、観察される輪郭からの有意なシフトがある(図10(e)及び(f))。これらの測定のために、データは、5MHzの低周波数及び40MHzの高周波数の2つの周波数で得られた。低周波数における各細胞のインピーダンス値|Z|5MHzは、x軸上にプロットされ、高周波数における各細胞の正規化されたインピーダンス値|Z|40MHz/|Z|5MHzは、y軸上にプロットされる。
【0090】
議論されるように、微生物株が耐性を欠く抗菌剤への曝露から生じる生物物理学的特性の測定された「シフト」は、曝露されていない集団からのインピーダンス測定値の分布をマークする輪郭内の細胞数の変化として識別可能であり、細胞サイズの変化、細胞壁/膜特性の変化、及び/又は細胞数の減少、又はこれらの組み合わせを含む、多くの異なる方法で定量化され得る。
【0091】
図15は、異なる抗菌濃度への曝露後の10種の異なる細菌株についてのこれらの特性の測定値を要約するグラフを示し、様々な特性の値は、本開示による方法によって得られたインピーダンス測定値から決定される。図15(a)は、抗菌剤濃度(x軸)に対する参照細胞数に対して正規化された総細胞数(y軸)を示す。図15(b)は、抗菌剤濃度(x軸)に対する参照数に対して正規化された輪郭ゲート内の細胞数(y軸)を示す(したがって、図15(a)の総細胞数と同様である)。図15(c)は、抗菌剤濃度(x軸)に対する参照細胞サイズに対して正規化された細胞サイズ(y軸)を示す。図15(d)は、抗菌濃度(x軸)に対する参照不透明度に対して正規化された不透明度(y軸)を示す。線Aの群は、抗菌剤に対して高度に耐性であることが知られている細菌に対応し、したがって、特性は、より高い濃度でさえあまり影響されず、線は大部分が水平のままである。線Bの群は、中程度の耐性を有する株を示し、したがって、特性は、より高い濃度でのみ変化し、線は、より高い濃度で水平から逸脱する。線Cの群は、抗菌剤に対して高度に感受性であることが知られている株を示し、したがって、特性は、非常に低い濃度でさえ変化し、線は、濃度がゼロを超えるとすぐに水平から逸脱する。これらの4つの異なるグラフは、細菌の感受性の定量的決定を行うために、別々に又は一緒に使用することができる。一例として、図15(a)のC群の総細菌数は、0.25μg/mlでより低い(そのため、細菌はこの濃度で感受性である)が、B群の線は、4μg/mlで細胞数の減少を示すのみである。図15(c)に示す細胞サイズでも同様の傾向が確認できる。適切なMICを決定するために、閾値を定義することができる。例えば、抗菌剤が有効であるとみなされるためには、細胞サイズが110%以上に増加しなければならないことを必要とし得る;この変化を生じさせる濃度がMICとみなされる。異なる抗菌剤及び異なる微生物は、異なるプロファイルを有し、感受性を定量化し、各単離物/抗菌剤濃度について感受性又は耐性の決定を行うために、様々な特性の異なる閾値をもたらす。データは、感受性の測定のための標準的な技術に対して分析/相関付け及び/又は較正することができる。
【0092】
光学サイトメトリーの技術の欠点は、必要な色素を添加する前に、多くの場合、洗浄工程によって試料から抗菌剤を除去しなければならないことである。これは、色素が微生物の増殖を妨げ得るためである。したがって、試料は、洗浄時に抗菌剤効果を捕捉するだけであり、光学測定は、「スナップショット」のみを提供する。これは、異なるインキュベーション時間の後に洗浄された多数の各試料を調製することなく、経時的な抗菌剤の進展効果を研究することを妨げ、これは不便であり、且つ色素の高価な性質のために高価である。この後者の点は、異なる抗菌濃度での複数の試料の必要性のために、光学サイトメトリーを介してMICを評価することを高価にするであろう。
【0093】
本明細書に記載されるインピーダンスフローサイトメトリーの方法は、単一の微生物試料からの連続インピーダンス測定を可能にすることによってこの問題に対処し、その結果、薬剤の抗菌効果の進展を評価することができる。これを達成するために、上記のようなインピーダンス測定装置を通過させる流体として、増殖培地などの電解質溶液中に単一の微生物集団を調製し、抗菌剤を微生物に適用し、試料中に残留させる。微生物及び抗菌剤を含む流体を、抗菌剤の添加後すぐに、例えば最初の1分以内に、第1のインピーダンス測定値を記録することができるように、装置フローチャネルに迅速に通過させる。この時間スケールでは、抗菌剤は微生物に対して測定可能な効果を有さないことがあり、したがって、微生物は抗菌剤に曝露されていないと考えることができ、この第1の測定は、曝露されていない微生物試料からの測定に対応する参照測定値とすることができる。フローチャネルを通る流体の通過は、大きな試料からの連続抽出によって、又はより小さな試料からの流体の再循環によって、一定の速度で維持され、複数の測定値が各々、特定の時間、例えば最初の参照測定の1分後の間隔で得られる。代替的に、測定値は連続的に取得されてもよく、結果は、1分間隔など、連続する期間又はビン内に収集されたデータに分割されてもよい。全測定時間にわたって、抗菌剤は微生物に作用し続け、その経時的な効果は、異なる測定値を比較することによって決定することができる。各時間間隔に対応する試料の部分は、サブ試料とみなすことができ、各サブ試料についてインピーダンス測定値が収集される。場合によっては、例えば、抗菌剤が微生物に迅速に作用する場合、試料に対する測定が始まった後に、抗菌剤を試料に添加することが望ましい場合がある。これにより、第1の測定値を曝露されていない微生物からの参照測定値とすることができる。これを達成するために、単一の微生物集団を、増殖培地などの電解質溶液中で調製して、上述したインピーダンス測定装置に通過させる流体を得ることができる。1つ又は複数の測定値が取得され、次いで、抗菌剤が流体に添加される。次いで、測定は、上述したように、曝露された試料上で継続する。
【0094】
図16は、インピーダンス測定値を得るために、40MHzの高周波数と5MHzの低周波数を用いてこのように取得したデータの散布図のシーケンスを示す。細菌の集団を抗菌剤に曝露し、26分間にわたって連続的に測定し、得られたインピーダンスデータを1分間隔に対応するビンに分離し、グラフにプロットした。試料流体は、先の実施例と同様に、各グラフの左上に集団群として現れるプラスチックマイクロビーズを含んだ。左上のプロットは、未曝露の細菌についての参照又は対照データとして指定される、最初の1分(0~1分の時間)に収集されたデータを示す。輪郭線又はゲートが、このグラフの曝露されていない細菌集団の周りに描かれ、次いで、後の各グラフで複製され、その結果、細菌の経時的な変化を同定することができる。グラフのシーケンスの研究により、約15分後に、細菌集団が、輪郭線から顕著に外れ始めることが明らかとなる。したがって、本発明者らは、細菌が特定の抗菌剤に感受性であると推定することができる。26分後、ほぼ全集団が輪郭から外れた。移動は、より高い低周波数値に向かい、これは細胞サイズの増加を示し、またより低い高周波数値に向かい、これは抗菌剤が細菌細胞壁又はその内部構造の特性も変化させることを示す。
【0095】
図17は、電極の代替配置を有する、さらなる例示的な装置を示す。いくつかの前述の実施例におけるように、各々が第1の電流経路及び第2の電流経路を備える2つの群において、4つの電流経路を画定するために、8つの電極が提供されている。しかしながら、前述の実施例は単一のシステム内に1つの電流経路配向のみを含んでいたが、図17の実施例は、電流経路の2つの配向を含み、これにより、試料中の粒子について追加の情報を決定することが可能になる。
【0096】
特に、この装置は、第1の電極群50及び第2の電極群52の各々において、流体の流れ方向に対して実質的に横断する電流経路と、流体の流れ方向に対して実質的に平行である電流経路とが存在するように構成されている。第1の電極群50では、電圧源70から+Vが供給される第1の信号電極60aがチャネルの上方に、チャネルの下方の第1の測定電極62aに対向して配置されて、流れ方向を横断する第1の電流経路を画定し、そこから電流I4が測定される。電圧源72から-Vが供給される第2の信号電極64aは、チャネルの下方に配置され、同等にチャネルの下方の第2の測定電極66aに隣接して、流れ方向に平行な第2の電流経路を画定し、そこから電流I3が測定される。前述のように、I3とI4は結合されて、第1の電極群50からの第1の加算信号I5を生成する。同様に、第2の電極群52では、さらなる第1の信号電極60bがさらなる第1の測定電極62bに対向して、横断方向の第1の電流経路I6を画定し、さらなる第2の信号電極64bがさらなる第2の測定電極66bに隣接して、平行な第2の電流経路I7を画定する。I6とI7は結合されて第2の加算信号I8を生成し、前述の実施例と同様に、加算信号は、電流-電圧変換器34a、34b及び差動増幅器36によって処理されて、差動信号を決定する。
【0097】
同じフローチャネルに沿って異なる向きの電流経路を設けることにより、粒子形状に関する情報を明らかにすることができる。いかなる粒子も存在しない場合、様々な電流経路の大きさは、ほぼ等しく、前述のようにほぼゼロに加算される。球状又はほぼ球状の粒子の存在下では、図1~9に関して説明したように、横断方向の電流経路について測定されたインピーダンス信号は、平行な電流経路について測定されたインピーダンス信号とほぼ同じ大きさを有する。しかしながら、粒子42aが細長い棒状の細菌(例えば、桿菌)などの非球状である場合、これは、異なる量で2つの電流経路方向と相互作用し、異なるサイズの信号を与える。細長い粒子がその最長軸をチャネル流れ方向に沿って配置された場合、細長い粒子は、平行な電流経路におけるよりも横断方向の電流経路においてより大きな変化を生成する。したがって、電極群内の2つの電流経路から導出される加算信号は、球状粒子と比較して細長い粒子について異なり、その差は、粒子形状が球と異なる程度(言い換えれば、その偏心又は伸びの程度)に関連する。したがって、2つの異なる向きの電流経路(横断方向の経路及び平行な経路など)から加算信号を取得することは、粒子の偏心又は形状に関する情報を示すことができる差動信号を提供する。これは、桿菌(桿体)と球菌(球体)などの異なるタイプの細菌を区別するため、又は細菌の鎖を同定するために有用である。さらに、それは、β-ラクタム抗菌剤での処理の場合のように、分割周期の間に停止された粒子を同定することによって、ASTの測定を増強するように使用することができる。例えば、異なる濃度のβ-ラクタム抗菌剤で細胞を処理すると、異なる且つ区別される形態学的形態をもたらすことが知られている。初期ブロック点で作用する抗菌剤は、ダンベル形状を与えるが、後の時間において影響を与えるものは、レモン形状の細胞を与える。MJ Pucci et al, Bacteriology 165 682-688, 1986。
【0098】
粒子の外形は、他の特性を明らかにすることができる。例えば、サイトメーターチャネルを通る試料流体の流れが十分な剪断応力を生じさせる場合、細胞は、チャネルに沿って移動することにつれて変形又は押しつぶされ得る。より柔らかい細胞は、より堅い細胞よりも変形され、より大きな程度の偏心を獲得する。したがって、細胞の偏心を検出するために異なる向きの電流経路を使用する図17の実施例のような構成をさらに使用して、粒子の機械的特性を区別又は決定することができる。より柔らかい粒子は、流れによって誘発される異なる形状のために、より堅い粒子とは異なる加算信号及び差動信号を生成する。微生物種に対する抗菌剤の作用も、機械的特性の変化を生じ得る。
【0099】
電極は、図17に示されるものとは異なる順序で流れ方向に沿って電流経路の2つの向きを提供するように配置され得ることに留意されたい。
【0100】
図18は、2つの異なる細胞タイプから得られたインピーダンスデータの散布図を示す。前述のように、各データ点は試料中の単一の粒子を表す。縦軸は、1つ以上の平行電流経路からのインピーダンス測定値を、1つ以上の横断方向電流経路からのインピーダンス測定値で割ることによって得られる「変形能」尺度を示す。横軸は、細胞サイズを近似する2つの測定方向からのインピーダンス信号を平均することによって得られる、粒子の電気直径を示す。代替的に、直径は、図12に関して議論した電気半径の測定値に沿って取得され得る。測定値は、球形を有するB3Z細胞の2つの群について得られた。1群は、グルタルアルデヒドによる固定処理により修飾して、膜剛性を増加させた。測定は、細胞の両方の群を含有する単一の試料、又は各々が1つの群を含有する2つの試料で行うことができることに留意されたい。したがって、2つの群の細胞は、異なる機械的特性を有し、2つの十分に分離された集団として散布図上に現れる。7μmビーズの参照集団の測定も示す。より堅く固定された細胞は、チャネルに沿った流体の流れにおいて実質的に球状のままであり、したがって、2つの直交電流経路について測定されたインピーダンス信号は同様である。したがって、これらの細胞の変形能は、1の任意単位に近いものとして測定される。対照的に、固定されていない細胞は、流れによって変形し、チャネル方向に沿って伸びる。したがって、チャネル方向に沿って測定されたインピーダンス信号は、チャネルにわたる測定値と比較して低減され、変形能測定値は、1AU未満に低減される。この実施例では、約0.5AUで測定されている。このように、個々の細胞及び細胞集団の機械的特性を同定することができ、異なる細胞集団を互いに区別することができる。
【0101】
最小阻害濃度(MIC)を決定することによって抗菌剤感受性を評価する技術は、記載されたインピーダンスフローサイトメトリー方法を用いてこれをどのように実施するかの指示と共に、上記に記載されている。代替技術は、細菌試料を1つ又は2つの濃度の抗菌剤(抗生物質)に曝露し、抗菌剤に対する試料の応答に応じて、感受性/非感受性(S/NS)、耐性/非耐性(R/NR)、又は中間の耐性に分類する、ブレークポイント分析の技術である。応答は、記載のインピーダンスフローサイトメトリーを用いて測定することができる。
【0102】
ブレークポイント分析では、細菌は、米国のClinical & Laboratory Standards Institute(CLSI)及びEuropean Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing(EUCAST)などの標準機関によって表にされる、1つ又は2つの予め規定された濃度の抗生物質で評価される。分析を実施するために、細菌増殖を、S/NSの境界を設定する第1の濃度Xで評価する。細菌が増殖しない(すなわち、試験試料中の細菌数が増加しない)場合、それらは抗生物質に対して感受性であると分類される。細菌が増殖する場合、それらは抗生物質に感受性でないと分類される。さらに、細菌の増殖を、濃度Xよりも高く、R/NRの境界を設定する第2の濃度Yで評価することができる。細菌が増殖する場合、それらは抗生物質に対して耐性であると分類され、細菌が増殖しない場合、それらは耐性でないと分類される。濃度X及び濃度Yの値は、細菌の株及び抗生物質のタイプに依存する。細菌のいくつかの株は、濃度X(又はそれ以上)で増殖するが、濃度Yでは増殖しない場合があり、これらは、耐性ではないが、感受性でもないとして分類され、一般に中間の耐性と称される特徴である。いくつかの抗生物質及びいくつかの細菌種については、中間領域が存在せず、言い換えれば、濃度X及び濃度Yは等しく、ただ1つの濃度での試験が必要である。いずれの場合も、抗生物質に曝露されていない細菌の試料はまた、上述した参照集団ゲート又は輪郭を得るためにインピーダンスフローサイトメトリーを用いて試験される。
【0103】
非限定的な例として、インピーダンスフローサイトメトリーに基づくブレークポイント分析のための試料を、以下の様式で調製することができる。細菌の3つのコロニーをプレートから選択し、3mLのMHBに添加する。この試料をボルテックスして、細菌をブロス中に再懸濁し、次いで、MHB中5×10細胞/mLの濃度に希釈する。次いで、試料を30分間インキュベートして、活発に分裂する培養物を得る。500μLのアリコートを、例えば現在のEUCASTガイドラインに従って、臨床的ブレークポイント(S/NS及び/又はR/NR)で最終抗生物質濃度を各々有する500μLの予熱MHBを含む試験管に添加する。これらは、0mg/Lの対照試料と共に、抗生物質メロペネムについて2mg/L(S/NS)及び16mg/L(R/NR)、又はシプロフロキサシンについて1mg/L、又はゲンタマイシンについて8mg/L、又はコリスチンについて4mg/L、又はセフタジジム、アモキシシリン/クラブラン酸及びセフォキシチンについて8mg/Lであり得る。各試験官を30分間インキュベートした後(抗生物質曝露)、試料をHBSS中で1:10のレベルに希釈し、1.5μmの参照ビーズを添加する。次いで、試料をインピーダンスフローサイトメトリー装置に、30μL/分の速度で、2分間の測定期間にわたって通過させ得る。
【0104】
図19は、ブレークポイント分析を行うためにインピーダンスフローサイトメトリーを用いて測定された例示的なデータの棒グラフを示す。11種の異なる細菌株を抗生物質メロペネムに曝露した。チャートは、各株について、抗生物質への曝露後に参照ゲート又は輪郭(細菌の曝露されていない試料について測定された)内に残っている細菌集団のパーセンテージを示す。図19(a)は、感受性/非感受性(S/NS)ブレークポイントのデータを示し、抗生物質濃度は2mg/Lであり、図19(b)は、耐性/非耐性(R/NR)ブレークポイントのデータを示し、抗生物質濃度は16mg/Lである。細菌は、KP(肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia))、EC(大腸菌(Escherichia coli))、ACB(アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii))及びPAE(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))として標識される。棒グラフは、平均値±標準偏差を示す(N=3;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、p値は独立試料のスチューデントt検定を用いて得られた(片側))。棒グラフの陰影は、ブロス微量希釈の従来の技術によって決定された感受性及び耐性であり、より濃い棒グラフは耐性株であり、より薄い棒グラフは感受性株である。これらの指定と、対照ゲート内の細胞の測定されたパーセンテージとの間に良好な一致があり、インピーダンスフローサイトメトリーが、ブレークポイント分析を実施するための正確な技術であることを示している。各グラフにおける中間の陰影の棒グラフは、カルバペネムに耐性であるKPのカルバペネマーゼ陰性株であるKP(CNCR)についてのものである。
【0105】
図20は、各散布図の見出しに示される異なる抗生物質に曝露された3種の細菌、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(KP)、大腸菌(Escherichia coli)(EC)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(SA)の耐性及び感受性株について、インピーダンスフローサイトメトリーを用いて得られたデータの一組の散布図を示す。様々な抗生物質は、細胞サイズ、形状、構造及び/又は数を変化させる異なる作用機序を有し、インピーダンスフローサイトメトリーによって検出することができる異なるインピーダンス応答をもたらす。これは、ゲート輪郭に対する細胞集団を示すデータ点の様々な異なる動きから理解することができる。耐性細菌は抗生物質の影響を受けないので、集団は、ほぼゲート輪郭内に留まる。感受性細菌は抗生物質の影響を受けるので、ゲート輪郭のサイズ、形状及び位置に関して集団が変化する。抗生物質濃度は、様々な細菌株/抗生物質の組み合わせについてのR/NRブレークポイント濃度であった。
【0106】
抗生物質コリスチン、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、セフタジジム及びCo-アモキシクラブについての散布図は、電気的不透明度(上記で説明したように低周波数インピーダンスに正規化された測定高周波数インピーダンス(40MHz)である)に対する電気的細胞サイズ又は半径(上記で説明したように測定低周波数(5MHz)インピーダンスの立方根である)として示される。セフォキシチンについての散布図は、測定高周波数(40MHz)位相インピーダンスに対する電気的細胞サイズとして示されており、これは、この測定がセフォキシチンの特定の抗生物質機構に対する耐性と感受性の間により明確な差を与えるためである。
【0107】
また、図20には、図19のものと同様の棒グラフが含まれており、各細菌/抗生物質の組み合わせについて、ゲート輪郭内に残っている細胞のパーセンテージを示している。再び、より濃い陰影及びより薄い陰影は、各々、従来のブロス微量希釈によって決定された耐性及び感受性に対応し、インピーダンスフローサイトメトリーを用いて同等の結果を得ることができることを示す。
【0108】
ファージ感受性を特に考慮すると、インピーダンスサイトメトリーデータから明らかであり、細菌単離物が任意の所与のファージに感受性であるかどうかを決定する際の重要な考慮事項である、ファージ感染中に起こる多くの分子事象が存在する。この分子事象には、ファージの細胞への最初の結合(例えば、不透明度の変化)、ファージデポリメラーゼの単独又はファージリシンとの組み合わせのいずれかの効果による細菌外膜及びペプチドグリカン層の緩み(例えば、不透明度の変化;電気半径の変化)、細菌細胞内での子孫ファージの複製及び生成(例えば、細菌が膨潤するときの電気半径の増加)、細胞質膜の選択的透過化及びプロトンモチーフ力の破壊をもたらすファージホリンの効果(例えば、不透明度の変化)、ファージリシンによって媒介される細胞溶解及び破裂(例えば、不透明度の変化;インピーダンス信号の総数の減少)、増殖の阻害(例えば、非感染対照試料又は参照と比較した細胞インピーダンス信号の減少)が含まれるが、これらに限定されない。これらの事象のうちの1つ以上は、本発明の方法を用いて調べることができる。各分子事象は、不透明度、電気体積、電気半径、インピーダンス信号の総数を含む1つ以上の特性の変化をもたらし得る。重要なことに、これらの事象の多くは、細菌膜に対するファージ又は他の抗菌剤の直接的な影響を評価することができない他の光学/蛍光フローサイトメトリー方法からは明らかではない。これらの重要な事象は、治療のための特定のファージ又はファージカクテルの適合性についての決定を行うために臨床医又は他の医師が使用することができる先行技術の方法のアウトプットの一部ではないが、本発明の方法は、そのための証拠を提供することができる。細菌インピーダンスフローサイトメトリー方法は、単一の細菌における物理的事象を見るので、細菌代謝による培地の変化を測定する他の電気インピーダンス技術の場合には明らかでない情報も提供する。これは、ファージに対する感受性のより迅速な評価と、治療のための特定のファージの選択の基礎となるより詳細な分析の両方を可能にする。重要なことに、これは、集団中に本質的に存在するか(しばしばヘテロ耐性と呼ばれる)、又は選択圧のために経時的に出現し得る、集団中のファージ耐性細菌細胞の低頻度の存在を含む。個々の細菌のレベルでの変化を観察することができることは、集団全体を代表する代謝変化を測定すること(低頻度の変化に比較的敏感ではない可能性がある)に比べて非常に好ましい。
【0109】
同様に、抗菌ペプチドに関しては、インピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて多数の事象を観察することができる。これらには、細胞への結合(例えば、不透明度の変化)、LPS層、外膜又はペプチドグリカンの破壊(例えば、不透明度の変化)、プロトン原動力の漏出又は散逸のいずれかをもたらす内膜の透過化(例えば、不透明度の変化;対照に対するインピーダンス信号の損失)、及び細胞溶解(例えば、全体又は対照に対する細胞インピーダンス信号の数の減少)、増殖の阻害(例えば、未処理の対照又は参照に対するインピーダンス信号の数の減少)が含まれるが、これらに限定されない。これらの事象のうちの1つ以上は、本発明の方法を用いて調べることができる。各分子事象は、不透明度、電気体積、電気半径、インピーダンス信号の総数を含む1つ以上の特性の変化をもたらし得る。同様の考慮事項は、上述したように、他の方法と比較して、細菌インピーダンスフローサイトメトリーを用いて抗菌ペプチド活性をモニタリングすることに関連する。重要なことに、これらの事象の多くは、細菌膜に対する抗菌ペプチドの直接的な影響を評価することができない他の光学/蛍光フローサイトメトリー方法からは明らかではない。これは、抗菌ペプチドに対する感受性のより迅速な評価と、治療のための特定の抗菌ペプチドの選択の基礎となるより詳細な分析の両方を可能にする。重要なことに、これは、集団中の耐性細菌細胞の低頻度の存在を同定することができることを含む。
【0110】
本明細書の実施例及び実施形態によるインピーダンスフローサイトメトリー方法は、多くの利点を提供する。試験及び測定は、迅速に、及び改善された感度で、特に細菌などのより小さい粒子について実施することができ、したがって、この方法は、AST及び他の微生物アッセイに有用である。この方法を実施するのに適した装置は、大量生産に適したチップベースの形式のように、コンパクトであり、潜在的に携帯可能であり、安価であり、また複数の同時試験のための拡張性を有する。抗菌剤に対する微生物の感受性を試験する状況では、色素又は他の標識媒体は必要としないので、試験は迅速且つ単純であり、また安価であり得る。これはまた、典型的には、光学サイトメトリーなどの色素ベースの試験手順において可能ではない長期間にわたる抗菌剤に対する任意の所与の試料の応答の連続的モニタリングを可能にする。
【0111】
インピーダンスフローサイトメトリーによって提供される改善された試験速度の一例として、尿路感染症を呈し、この状態の従来の標準治療として抗生物質co-アモキシクラブを直ちに処方される集中治療病棟の患者の場合を考える。患者試料は病院微生物学ユニット内での試験のために送られ、試料の収集から約16時間かかる細菌の一晩の培養後、単離物は、例えばBruker製のBiotyperシステムを使用して大腸菌(E.coli)として同定され、これはさらに2時間程度かかる。この同定は、より適切であると考えられるタイプへの抗生物質の変更をもたらし得、その後、患者の観察が細菌が抗生物質に対して耐性であるかどうかを示し、さらなる抗生物質の変更が必要とされ得る、1日程度のさらなる期間が続く。対照的に、1つ以上の抗生物質タイプを用いて16時間のマークで実施されるインピーダンスフローサイトメーターを使用する迅速ASTは、わずか30分の期間で細菌が感受性である抗生物質を同定することができ、その結果、処方を最適化することができる。例えば、大腸菌(E.coli)株は、co-アモキシクラブに耐性であるが、メロペネムに感受性であることが見出され得る。
【0112】
本明細書に記載される方法は、非生物起源の粒子を測定及び分析するために使用することができ、したがって実施例は、より一般的には、粒子インピーダンス測定方法とみなすことができ、これは、生物学的粒子(特に、細菌であっても又はなくてもよい細胞)若しくは非生物学的粒子、又は任意の粒子タイプで使用するために構成された(例えば、その寸法に関して)装置を使用して実施され得る。用語「インピーダンスフローサイトメトリー」、「インピーダンスフローサイトメトリー方法」、「インピーダンスフローサイトメーター」及び「インピーダンスフローサイトメトリー装置」は、粒子の性質にかかわらず、本明細書に記載される任意の方法及び装置をカバーすることが意図されるが、いくつかの実施例では、AST及びMIC決定のためのインピーダンスフローサイトメトリーなど、粒子タイプが関連する。本開示は、この点に関して限定されない。
【0113】
インピーダンスフローサイトメトリーを用いて、色素を含まない細菌の電気的(インピーダンス)特性を測定することができる。この技術は、生物の表現型応答を直接測定することができ、色素とのインキュベーションを必要としない。さらに、この技術は、コンパクトでスケーラブルな装置上で実施することができ、その結果、複数のチャネルを有するチップのカスタム設計を使用して、いくつかの測定を並行して行うことができる。電気的特性を時間の関数として連続的に測定して、抗菌剤に対する応答の進展を決定することができる。これは、測定前に色素が洗い流されるので、通常、色素を使用して行われない。
【0114】
慢性疾患を引き起こす細菌の改善された予防又は制御のための予防的ファージ療法
ファージ療法を用いて、慢性疾患を引き起こす微生物を予防又は制御することができる。ファージ療法は、ファージが特定の種を標的とするので、特定の生物を、マイクロバイオームとの干渉を低減して標的とすることができるという利点を有する。細菌インピーダンスフローサイトメトリーを用いて、特定の慢性状態に寄与する微生物が感受性であるファージを同定することができる。急性及び慢性状態に関連する以下の微生物は、本明細書に記載の方法を用いて適切なファージ療法を同定することができる可能な標的である。
【0115】
B.フラジリス(B.fragilis)株は、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)毒素、すなわちBFTと命名されたメタロプロテアーゼエンテロトキシンをコードする遺伝要素を有する。毒素保有株、すなわち腸毒素原性B.フラジリス(B.fragilis)(ETBF)は、小児及び成人において急性及び慢性の腸疾患を引き起こす5,6
【0116】
外毒素を分泌する腸内細菌エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)は、アルコール性肝炎の重要な寄与因子である。
【0117】
様々な著者による研究は、コリバクチン産生腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の存在を結腸直腸癌と関連づけている。8~10。ファージは、結腸直腸癌の予防及び/又は治療に関与することが提案されている16~18
【0118】
フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)は、腸11の潰瘍性大腸炎、大腸癌12の発生、及び様々な形態の癌治療13における治療失敗と関連している。ファージは、F.ヌクレアタム(F.nucleatum)14のために単離されており、バイオフィルム15を破壊することが示されている。
【0119】
K.オキシトカ(K.oxytoca)は、ヒト腸管の常在菌であるが、ペニシリンを服用している一部の患者では、この病原性共生生物の増殖は、抗生物質関連出血性大腸炎(AAHC)を引き起こし、その原因物質は、チリバリンと称されるPBD誘導体である。
【0120】
コリン及びカルニチンの代謝に関連する遺伝子を有する、及び/又はヒト2~4における心血管疾患に関連するトリメチルアミンを生成する、ガンマプロテオ細菌の様々な種の個々の株(例えば、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロビデンシア属(Providencia spp)、シトロバクター属(Citrobacter spp))。
【0121】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、バークホルデリア・セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)、バークホルデリア・マルチボランス(Burkholderia multivorans)、アクロモバクター属(Achromobacter spp.) パンドラエア属(Pandoraea spp)及びラルストニア属(Ralstonia spp.)種は全て、嚢胞性線維症を有する患者の慢性感染/長期コロニー形成に関連する。
【実施例
【0122】
実施例1:細菌インピーダンスフローサイトメトリー(BIC)を用いたファージ感受性の評価;単一ファージ調製物
1.1 細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルを決定するための方法
プロトコルは、例えば、TSA又は選択プレート上にプレーティングされ、37℃で一晩増殖された臨床試料からの細菌を使用する。好ましくは、プレートは使用前に新たに培養される。3つのコロニーをプレートから採取し、3mLのブロスに接種し、振盪しながら37℃で30分間インキュベートする。実験に使用した細菌の数を正規化するために、増殖培養物をMcFarland Standardsと比較することができる。好ましくは、200μLの培養物を790μLのPBS+10μLのサイズ標準ビーズのストック(1mLのPBS中で希釈された1μLのビーズストック)中で希釈することによって、細菌インピーダンスフローサイトメトリープラットフォーム上で細胞計数を行う。15μLの試料中の細胞の数を、スクリプト「ImpedanceGUI_V1」の細菌インピーダンスフローサイトメトリー「細胞数」関数を用いて計算した。これにより、ml当たりのコロニー形成単位(CFU)の数の計算が可能となる。細菌を5.5×10CFU/mLの開始濃度に希釈する。細菌を12mLのアリコートに希釈し、次いでファージ感受性の評価のために4×3mLアリコートに分離した。
【0123】
標準的な方法を用いてファージ調製物を調製し、ストックを0.2μmフィルターを通して濾過し、及び/又は細菌培養上清からのPEG沈殿を用いて部分的に精製した。ファージを、実施例2に記載の標準的な微生物学的方法を用いて滴定し、4℃で作業ストックとして維持した。適切な濃度のファージを、細菌に過剰のファージが存在するように細菌懸濁液に添加する。典型的には、ファージは10~100倍の感染多重度(ファージ対細菌)で添加される。ファージ及び細菌を含む培養物を、分析前に、静的インキュベーター中、37℃で90分間までインキュベートした。
【0124】
インキュベーションの終わりに、試料を細菌インピーダンスフローサイトメトリーによって分析する。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
1.2 データの分析及び解釈。
この方法によって得られたデータは、図21~24に示すように、個々のファージ/細菌の組み合わせの感受性プロファイルにおける明確な差異を示す。
【0128】
図21は、ファージAb_2で処理されたA.バウマニ(A.baumannii)のA.感受性(NCTC 13302)及びB.非感受性(NCTC 10303)株の細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルの時間経過を示す。散布図は、15分(T15)~90分(T90)で個々の細菌について測定されたインピーダンスの分布を示す。低い感染多重度(MoI 0.1;10細菌に対して1ファージ)を使用したことを除いて、標準的な方法に従った。電気半径測定値における広がりは、感受性試料において増加する。感受性試料の平均及びモード電気半径も増加した。電気半径結果の広がり又は特定の位相、例えば0.5を中心とする、若しくは特定の位相における測定のコホートについての半径の平均値を含む閾値試験は、感受性株、例えばA.バウマニ(A.baumannii)(NCTC 13302)と非感受性株、例えばA.バウマニ(A.baumannii)(NCTC 10303)とを区別することができる。細菌インピーダンスサイトメトリープロファイルは、例えばマイクロビーズとは異なる位相及び不透明度を有する。これを用いて、他の成分、例えばマイクロビーズを、既知の位相を有する細菌プロファイルから区別することができる。
【0129】
図22は、図21に示したデータの分析を棒グラフとして示す。図21に示したデータの分析は、耐性株(各時点でハッチングなしで左側に示される)と比較して、感受性株(各時点でハッチングありで右側に示される)において、15分での細胞数に対するパーセンテージ増加として表される、総細胞数(A)の有意な減少を実証する。90分間のインキュベーションでは、感受性集団のわずかな残存増加が観察され、これは、集団中の全ての細菌がファージに感染しているわけではないというシナリオを反映しており、この実験で使用された低MoI(0.1)と一致している。データをさらに分析して、正常な未処理細菌集団(B)の95%を囲む輪郭内に位置する細胞の割合を示した。これはさらに、細胞の電気半径の増加を反映する(細菌細胞体積の増加を示す)、感受性株を有する輪郭からの生存細菌の移動を示す。これは、A.バウマニ(A.baumannii)の耐性株では観察されず、輪郭内でゲートされた細胞の数は、時間経過中に急速に増加し続け、増加した体積を有する細胞の有意な数は観察されなかった。
【0130】
図23は、A.バウマニ(A.baumannii)NCTC 13302の感受性株の集団を高ファージ濃度(0(T0)~60分(T60)までの時間経過にわたってMoI=10)で処理した効果を評価するために実施された実験で得られた細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルを示す。図23Aは、高ファージ濃度で処理した後の感受性株の試料から得られた細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルを示す。図23Bは、ファージで処理されなかった同じ感受性株の試料から得られた細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルを示す。
【0131】
図24は、MoI 10でのファージAb_2によるNCTC 13302の感染からの、図23Aに示したデータの分析を示す。データは、両方とも同時間インキュベートされた未処理対照培養物(各時点でハッチングなしでRHSに示される)と比較して、総生菌数の減少(A)、及び増加した細胞サイズを示す、30分以内の輪郭領域からのファージ処理細菌の急速な移動(B)(各時点でハッチングありでLHSに示される)を示す。
【0132】
データは、感受性株のファージ感染が単独で、又は対照集団の95パーセンタイルによって定義される輪郭内の細胞数の減少と組み合わせて、生菌数の減少に関連することを示す。この対照集団は、ファージ処理集団と並行してインキュベートされた対照培養物に基づいて、又はファージ処理試料のT0試料を対照として使用することによって、定義することができる。輪郭領域からの移動は、細胞の電気半径の増加を示すX軸上のシフトを示し、これは、細胞体積の間接的な尺度である。感受性細菌でのみ見られるこの移動パターンは、細胞内でのファージの増殖によるものであり、最終的には、その破裂及びファージ子孫の放出をもたらす。この表現型は、感受性細胞において高MoIでのファージ添加の15分以内に観察され、これは臨床単離物の感受性を同定するのに十分であることを意味し得る。これは、例えば、急速に増殖する細菌種について、15~120分の結果に至る時間の細菌インピーダンスフローサイトメトリーに基づくファージ感受性試験を与える。マイコバクテリウム(Mycobacterium)などの増殖が遅い又は非常に遅い細菌については、感受性測定にかかる時間は、4時間又は8時間に延長する必要があり得る。
【0133】
1.3 個々のファージストックを使用する細菌株感受性マトリックスの作製。
ファージに対する細菌単離物の感受性を迅速に評価するための細菌インピーダンスフローサイトメトリー試験の有用性を検証するために、可能なファージ処理を知らせるためのマトリックスアプローチを検証するための試験を行った。アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の4つの薬剤耐性単離物、及び場合によっては多剤耐性単離物を、上述した標準プロトコルに従って3つのファージ調製物の各々とインキュベートし、感受性を細菌インピーダンスフローサイトメトリーによって測定した。以下のマトリックスは、ファージの各々に対する異なる単離物の感受性を示す。データは、多数の多剤耐性単離物を同時に処理することができるファージの組み合わせを同定するために使用することができる。
【0134】
【表3】
【0135】
図25.臨床単離物の感受性マトリックスの開発を支持する細菌インピーダンスフローサイトメトリーを用いて作成されたデータ。A.90分の処理後に、対照(ファージなし)と比較して、ファージAb_1、Ab_2及びPa_1で処理された株の個々の細菌から得られたインピーダンス測定値の分布を示す散布図。B.データ分析は、各株-ファージの組み合わせについて、総細胞数及び輪郭領域内の細胞数の両方を示す。特定のファージに対する特定の株の感受性を実証する際には、どちらのパラメーターも重要であり得、両方を組み合わせて使用して、ファージの特性をさらに描写することができる。データは、少なくとも2回の反復実験を表す。
【0136】
このデータは、汎薬剤耐性感染症の患者を治療するために使用され得る、病院の研究施設内で保持され得るようなファージのストックに対する異なる単離物の宿主特異性を迅速に規定する能力を示す。上記の例では、MDR株NCTC 13302と同様の臨床単離物に感染した患者を、ファージAb_1及びAb_2の両方を含むファージカクテル調製物で治療することができる。逆に、ATCC 17978と同様の感染を有する患者は、ファージAb_2でのみ治療されるであろう。患者内に存在するか、又は抗生物質若しくはファージ療法のいずれかの間に出現する可能性がある、ATCC 17978 ColR株(コリスチン耐性)などのファージ耐性細菌単離物は、試験したファージのいずれにも不応性であろう。患者が参照株PAO1と同様の緑膿菌(P.aeruginosa)単離物による感染を有する場合、これはファージPa_1による治療に応答する可能性が高い。
【0137】
実施例2:日常的な微生物学によるファージ感受性を評価するための比較方法。
細菌インピーダンスフローサイトメトリープラットフォームが存在しない場合、バクテリオファージに対する臨床株の感受性は、古典的な微生物学的方法によって決定することができる。このような試験では、臨床試料由来のものなどの、十分に単離された細菌(時点0;T0)を含むプレートを使用して、TSB又はLB中の目的の株の液体培養物を構成し、37℃で一晩増殖させる(約T18h(時間))。これらの培養物を新鮮な培地に継代培養し、約1時間増殖させ(T19h)、バクテリオファージを添加する。次いで、細菌-ファージ試料を、37℃で少なくとも1時間、静的条件下でインキュベートする(T20)。10mMのMgSOを添加した0.4~0.5w/v%のアガロースを有するTSBを含む上層寒天をマイクロ波中で融解し、温度を約50℃に平衡化する。約4mlの上層寒天を、細菌-ファージ懸濁液及び適切な細菌のみ、及びファージのみの対照に添加し、これを予熱TSA又はLBプレート上に直ちに注ぐ。固化させた後(約1時間;T21h)、プレートを倒立させ、一晩インキュベートして(T約36h)、細菌の芝生を成長させる。感受性の細菌株は、細菌のファージ誘導性溶解によって引き起こされる細菌芝生におけるプラーク(穴)の形成によって同定される。部分的に除去された又は「濁った」プラークは、ファージが細菌染色体に組み込まれて、テンペレートファージ(プロファージ)感染を形成したことを示し得る。プラーク内のマイクロコロニーは、ファージ感染中の耐性の出現を示し得る。非感受性株は、細菌の芝生内でプラーク形成を示さないであろう。
【0138】
感受性の評価に要する時間の長さ、典型的には約36時間とは別に、ファージ感受性を決定する古典的な方法は労働集約的であり、ファージ感受性を正確に決定することは、プレート上のプラークの存在を見て解釈するのに有意な訓練を必要とし得る。同様に、ファージ感染に対する耐性の出現の同定は困難であり、解釈の余地がある可能性がある。
【0139】
実施例3:細菌インピーダンスサイトメトリーを用いたファージ感受性の評価;ファージカクテル。
実施例1.3に記載されている個々のファージ感受性のためのマトリックスと同様の方法で、治療会社によって生成されたか、又は社内ストックから確立されたファージカクテルを、細菌インピーダンスフローサイトメトリーを用いて評価することもできる。ファージカクテルの使用は、所与のファージに感染し得る単一種の単離物の限られた範囲を反映し;これは、典型的には、任意の所与のファージについて単離物の50%未満である。ファージカクテルとして定義される異なるファージの混合物をこのシナリオで使用して、調製物によって死滅する臨床単離物の数を増加させることができる。典型的には、ファージカクテルは特定の標的種からの臨床単離物の90%超に感染し、死滅させることができるが、全ての単離物ではない。この方法は、エンドユーザー/臨床医が関連するファージカクテルの最初のダウンセレクションを可能にする最初の細菌IDを有する場合に、おそらく最も効果的であるが、これは、その試料中の可能性のある病原体の推定診断に基づいて、臨床試料から直接的にこの方法を使用する可能性を排除しない(例えば、大腸菌(Escherichia coli)又は肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)は、複雑性尿路感染症の原因である可能性が高い)。この場合、細菌単離物は、1つ以上のファージカクテルと共にインキュベートされ、カクテル自体は、異なる種の単離物に対する活性の異なる範囲を有する2つ以上のバクテリオファージからなる。このようなカクテルは、個々の成分ファージよりも、臨床単離物の感染及び溶解のためのより広い組み合わせカバレージを有することが期待されるであろう。場合により、ファージカクテルは、マイクロ流体デバイス又は他の反応ハウジング中で凍結乾燥され又は別様に保存され、それによりファージ感受性アッセイは、細菌インピーダンスフローサイトメトリーリーダーを用いて自動化され得る。細菌単離物は、本質的に実施例1に記載されるように調製され、細菌懸濁液はデバイス上のファージと共にインキュベートされる。適切なインキュベーション時間、通常90分後、細菌インピーダンス測定を行い、データを分析して、ファージカクテルに対する感受性についての簡単な読み取りを得る。使用される測定基準は、総細胞数の減少、参照プロファイル内の輪郭内の細菌数の減少、例えば、未処理集団の95%、電気半径(細胞体積)の変化を示す散布図のX軸に沿った細菌の移動、及び/又は細菌膜(膜誘電率)の電気的不透明度の変化を示すY軸上の移動を含むことができる。評価は、前述の評価方法のうちの1つ以上に従って実施することができる。この情報は、ファージカクテルを使用して、感染又は後の実施例に記載される除菌アプローチの1つのための治療を誘発するために使用され得る。
【0140】
場合により、ファージカクテルと細菌単離物との間のインキュベーションを延長して、治療中の耐性発生の可能性を評価することができる。これもまた、第2の分析が8時間後などの長期インキュベーション後に自動的に行われるように、マイクロ流体デバイスから自動化され得る。
【0141】
実施例4:細菌インピーダンスフローサイトメトリーファージ感受性評価が、抗生物質感受性の事前決定の有無にかかわらず、臨床でどのように使用されるかを詳述するワークフロー
現在の臨床診療では、バクテリオファージによる治療は、感染症をうまく治療することができる利用可能な抗生物質が存在しないシナリオにおいてのみ使用される。この種の使用は、コンパッショネートファージ療法(cP)又は救急治験薬(eIND)の使用と称されるが、患者が本質的に治療不能な感染症に感染した場合にますます一般的になっている1~4。ファージ療法の第1線の治療選択肢への移行は、将来生じる可能性が高い。本発明は、特定の臨床的適応症のための迅速(<4時間)な、証拠に基づく狭域治療への移行を可能にするので、バクテリオファージの第1線の使用の支援における現在の方法を超える大きな改善である。この「セラノスティック」様式アプローチは、細菌同定の要素を組み込み、これは、当技術分野において公知の細菌同定のための技術を使用することができ、又は患者によって提示される症状若しくは公知の臨床環境などの他の因子に基づくことができ、規定された種特異的ファージカクテルを用いた臨床単離物のファージ溶解によって評価され、その後のそのファージカクテルを用いた患者の治療と組み合わせられる。このアプローチは、大部分の抗生物質クラスで起こることが知られている大規模な変化及び比較的無差別の殺傷と比較して、病原体指向の治療で有意に変化するとは予想されない患者のマイクロバイオームに有意な利益を有する。
【0142】
いずれの状況においても、個々のファージ調製物又はファージカクテルは、病院の微生物学研究室などの治療施設内に保持され、未解消の感染症を有する患者の治療のために配備され得る。ファージ療法の使用の1つの非限定的な例は、以下の通りである。
a. 患者は感染症を呈する。その例は、尿路感染症、細菌性肺炎、移植デバイスに関連する感染症又は敗血症を含む(これらに限定されない)。
b. 日常的な微生物学的評価、例えば、抗菌剤感受性試験及び原因生物の同定のために患者から体液の試料を採取する。
c. 例えば英国のNICEガイドラインに基づいて、標準治療として認識されている1つ以上の抗生物質で患者を治療する。これらの抗生物質は24~48時間以内に感染を解消することができず、患者の状態は悪化し続ける。
d. 微生物学的結果は、MALDI-TOF(Bruker、Biotyper)又はグラム染色若しくは遺伝子分析(DNA配列決定又はDNAハイブリダイゼーション又はPCRなど)などの技術を用いて、細菌の種を同定する。この情報は、提示後約12~16時間以内に利用可能であり、その間、患者は、(c)に記載されるように治療され得る。細菌は、ESKAPEE群のメンバー(エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、エンテロバクター属(Enterobacter spp)、又は腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の他のメンバー、大腸菌(Escherichia coli))、薬剤耐性淋菌(Neisseria gonorrhoea)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotophomonas maltophilia)、又はバークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)/セノセパシア(cenocepacia)複合体を含むがこれらに限定されない広範囲の病原体の1つであり得る。
e. 抗生物質感受性試験の結果は、実施された場合、臨床医が利用できるさらなる治療選択肢の範囲を知らせる。標準的なディスク拡散法又はブロス希釈法を用いたデータは、単離物が大多数の標準治療抗生物質、又は場合によっては、全ての抗生物質に耐性であることを示す。
f. 臨床細菌単離物の抗生物質感受性が多剤/汎薬剤耐性であることが示されたら、又は種の同定に基づいて、本質的に実施例1に記載の方法に従って、ファージ感受性インピーダンスアッセイを実施する。2時間以内に得られる結果は、臨床単離物がファージ/ファージカクテルに感受性であり、治療が開始されることを確認する。
【0143】
ファージ感受性インピーダンスアッセイは、疾患の提示、患者における臨床症状、及び特定の臨床状況における感染の既知の疫学に基づいて細菌IDが完了した後に、開始することができる。
【0144】
インピーダンスフローサイトメトリーを使用するファージ感受性アッセイは、同じインピーダンス分析技術を使用して実施される細菌抗生物質感受性試験と組み合わせることができる。これは、約4時間以内に、単離物の抗生物質感受性、及び必要であれば、ファージ感受性の両方の決定を可能にするであろう。
【0145】
抗生物質感受性及びファージ感受性インピーダンスアッセイを組み合わせて、感染の治療に非常に有効であるファージ及び抗生物質の相乗的組み合わせを確認することができる。このタイプの相互作用は、ファージ及び抗生物質感受性測定に使用される古典的な微生物学的方法などの他の手段によっては確認されないであろう。公知のファージファミリーのいずれかからのファージ(シフォウイルス科(Siphoviridae)、ミオウイルス科(Myoviridae)、ポドウイルス科(Podoviridae)、アッカーマンウイルス科(Ackermannviridae)、イノウイルス科(Inoviridae)、レビウイルス科(Leviviridae)、ミクロウイルス科(Microviridae)、シストウイルス科(Cystoviridae)のファミリーからのファージを含むがこれらに限定されない)との間の相乗効果は、任意の抗生物質(アミノグリコシド、セファロスポリン、ペニシリン、カルバペネム、テトラサイクリン、ポリミキシン、(フルオロ)キノロン、オキサゾリジノン、マクロライド、リンコマイシン、糖ペプチド、スルホンアミド、プレウロムチリンを含むがこれらに限定されない)で観察され得るが、特に好ましい相乗的相互作用は、溶菌ファージと、一般にグラム陰性菌に浸透しない抗生物質(例えば、リファンピシン、ノボビオシン、バンコマイシン、リネゾリド、ホスホマイシン)との間で観察され得る。
【0146】
単一のタイプのファージ又は異なるファージの混合物を治療として使用することができ、ファージ感受性インピーダンスアッセイを用いて、治療の有効性をモニターし、治療に対する耐性の出現を評価することができる。
【0147】
インピーダンスアッセイを用いて、ファージ療法の経時的な有効性をモニターすることができる。アッセイ結果を使用して、治療の有効性を知らせ、ファージライブラリーを動的に修正又は改変して、例えば、耐性又はさらなる感染の出現を考慮に入れるために、治療を最適化することができる。
【0148】
実施例5:臨床試料中の細菌におけるファージ感受性の直接検出;例えば、尿試料からの尿路感染症の検出。
感染の迅速な診断を促進するために、細菌インピーダンスフローサイトメトリーを患者試料に直接使用することができる。このアプローチの1つの反復は、例えば、尿試料からの尿路感染症、腎盂腎炎、又はカテーテル関連尿路感染症(CAUTI)におけるファージ感受性の直接測定である。この症例における推定診断は、感染が腸内細菌科、最も一般的には、大腸菌(E.coli)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)の種によって引き起こされることであり、この診断は、局所的な疫学及び特定の臨床症状(発熱、尿中の白血球エステラーゼ陽性)によって裏付けられ得る。これにより、迅速なファージ感受性試験を、これらの生物の各々に特異的なファージ/ファージカクテルを用いて実施することが可能になる。
【0149】
インピーダンスアッセイを用いて、例えば、>10cfu/ml尿に基づいて尿路感染を定義する現在の臨床ガイダンスに準拠するように、尿試料中の細菌レベルを決定するための最初の数を決定することができる。必要に応じて、尿試料を希釈することができる(例えば、培地、緩衝液、電解質又は水、例えばトリプシンソイブロスTSB)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はミューラーヒントンブロスで)。希釈後の濃度は、約5×10cfu/mlであり得る。試料を各標的種に特異的なファージ又はファージカクテル調製物と混合し、試料を標的細菌に適切な条件下で(典型的には、振盪しながら又は振盪せずに、好気的条件下で約37℃で30分間)インキュベートする。インキュベーションの時間は、例えば15~120分の範囲であり得るが、細菌及びファージに応じてより短く又はより長くなり得る。インキュベーションの時間は、少なくとも10分、又は15分以上であり得る。
【0150】
インピーダンスファージ感受性試験の結果により、臨床医は、ファージの全身(静脈内)投与又は尿路へのファージの直接注入のいずれかによって、ファージ調製物による患者の治療を開始することができる。治療の有効性は、患者の症状の解消、尿中のcfuの減少、白血球エステラーゼなどの感染の二次測定(secondary measures)の減少、試料中の白血球数の減少を含む多数の異なる応答に基づいて評価されるであろう。
【0151】
場合により、プロトコルは、正確な出発濃度に希釈する前に、細菌を尿から単離又は濃縮する手段を含むことができる。これは、ポイント・オブ・ケア(Point of Care)で、又は診療所若しくは試験研究室で行うことができる。これには、物理的-化学的又は生化学的原理を用いるビーズ上の細菌の捕捉、例えばポリカチオン性又はポリアニオン性ビーズ、種特異的抗体でコーティングされたビーズ又は一般的細菌捕捉リガンド(例えばマンノース結合レクチン、ポリミキシン誘導体、バンコマイシン誘導体)が含まれるが、これらに限定されない。他の捕捉又は分離方法は、機械的濾過又は捕捉などの物理的効果、及び音響、磁気、電気又は光学技術に基づくものを含む。
【0152】
実施例6:臨床試料、例えば血液及び他の無菌部位液において直接測定される、細菌におけるファージ感受性の検出。
臨床試料中の細菌の濃度は、ファージ感受性の直接測定を可能にするには低すぎる場合があり、細菌の濃度は、ファージ感受性を決定するのに十分な細胞を提供するために、例えばインキュベーション、選択的捕捉又は濾過によって増加させる必要がある場合がある。敗血症の診断のための現在の標準治療は、培養に基づいており、身体の少なくとも2つの独立した部位から血液試料を採取し、好気性生物又は嫌気性生物のいずれかの存在について37℃で培養する。多数の自動化システムを使用して、血液中の任意の細菌の増殖を連続的に測定することができる。これらには、試料の光学密度の変化、試料のインピーダンス変化、酸素の利用、二酸化炭素の生成、培養物のヘッドスペース内の揮発性ガスの変化、又は他の生物物理学的若しくは生化学的若しくは化学的方法が含まれる(ただし、これらに限定されない)。いずれの場合でも、これらの方法によって同定された陽性の血液培養物は、10~10cfu/ml以上の濃度を有すると予想され得る。これらの濃度では、ファージ感受性を直接分析することが可能であろう。アッセイを実行するために、陽性血液培養物を処理して、例えば遠心分離、血液の溶解、細胞の濾過又は任意の他の手段を介して細胞(赤血球及び白血球及び血小板を含む)を除去することができる。血液試料を細菌増殖培地と混合し、ファージ感受性をインピーダンスフローサイトメトリーによって測定することができる。評価のためのファージパネルの選択は、敗血症を引き起こす可能性が高い生物の多様な範囲を反映している可能性がある。例えば、複数のファージカクテルを感受性プロファイルについて試験することができる。場合により、MBT Sepsityper IVDキット(Biotyper、Bruker)などの血液ボトルからの迅速な細菌IDを使用して、ファージ感受性インピーダンスプロトコルの開始前に陽性血液培養物中の病原体を同定することができる。
【0153】
場合により、分析の前に血液培養物から細菌を単離又は継代培養するために、追加の工程を導入してもよい。これは、ポイント・オブ・ケアで、又は診療所若しくは試験研究室で行うことができる。これには、物理的-化学的又は生化学的原理を用いるビーズ上の細菌の捕捉、例えばポリカチオン性又はポリアニオン性ビーズ、種特異的抗体でコーティングされたビーズ又は一般的細菌捕捉リガンド(例えばマンノース結合レクチン、ポリミキシン誘導体、バンコマイシン誘導体)が含まれるが、これらに限定されない。他の捕捉又は分離方法は、機械的濾過又は捕捉などの物理的効果、及び音響、磁気、電気又は光学技術に基づくものを含む。
【0154】
同様のアプローチは、脳脊髄液(CSF)、滑液、又は創傷から採取された試料などの他の臨床試料に使用することができる。増殖及び/又は選択的細菌捕捉は、インピーダンスフローサイトメトリーで測定することができる材料を提供することができる。
【0155】
実施例7:例えば嚢胞性線維症のための、除菌療法のためのファージの迅速スクリーニング
バクテリオファージの種特異的性質は、除菌のための狭域治療の基礎として用いることができる。このようなアプローチは、細菌の特定の種の獲得又は存在が病理の特定の要素と関連する慢性状態において利用され得る。代替的に、ファージ療法は、特定の細菌の存在が治療選択肢に悪影響を及ぼす場合に使用することができる。このアプローチは、ヒト及び動物における広範囲の慢性状態に使用することができる。表4は、これらの状態の非限定的な例を病原体と共に示す。
【0156】
【表4】
【0157】
嚢胞性線維症又は他の慢性肺疾患の場合、多くの細菌種のうちの1つが、患者の転帰不良と関連している。これらの種は、インピーダンスフローサイトメトリーに基づいて選択されたバクテリオファージ療法で標的とすることができる。この技術は、感受性を迅速に評価するために使用され、治療の迅速な開始を可能にする。アッセイは、多数の種/株に対するスクリーニングを促進するために、ハイスループット形式で提供することができる。標的種には、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)/セノセパシア(cenocepacia)/マルチボランス(multivorans)、アクロモバクター属(Achromobacter spp.) パンドラエア属(Pandoraea spp)及びラルストニア属(Ralstonia spp.)が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0158】
試験プロトコルの非限定的な例を以下に示す。
【0159】
患者は、嚢胞性線維症又は他の慢性肺感染症を呈し、例えば、強制痰又は細気管支肺胞洗浄(BAL)の試料が採取されている。
【0160】
場合により、日常的な微生物学的方法を用いて試料を評価してもよく、選択培地を使用して細菌を培養して目的の種を濃縮し、必要に応じて種の同定を行う。
【0161】
BAL試料を増殖培地と混合し、試料を単一ファージ単離物又はファージカクテルのいずれかと一定時間(典型的には30~120分であるが、より短くても又は長くてもよい)インキュベートする。
【0162】
他の実施例としては、ファージ又はファージカクテルを96ウェルプレートに分注し、様々な種をカバーし、様々な種選択性を示すファージ調製物を用いることが挙げられる。これは、様々な液体ハンドリングシステムを使用して、細菌インピーダンスアッセイとインターフェースすることができる。
【0163】
ファージ又はファージカクテルに対する臨床単離物の感受性は、インピーダンスフローサイトメトリーを用いて決定される。アッセイがBAL試料に対して直接実施される場合、1つ以上のファージ調製物は、試料内の1つ以上の病原体に影響を及ぼすであろう。これは、細菌の物理化学的特性の変化に関連する電気的特性の変化によって示されるであろう。
【0164】
1つ以上のファージ又はファージカクテルが患者の除菌のために使用されて、慢性感染患者の健康に悪影響を及ぼす重大な結果をもたらす病原体を有意に低減又は根絶するであろう。これは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の最初の提示時にCF患者に一般的に使用されるが、様々な病原体に適しているであろう。
【0165】
代替アッセイでは、ファージベースの根絶療法を1つ以上の抗生物質と組み合わせることができる。選択されたファージを含めることによって利益を得るであろう除菌療法の一例は、噴霧コリスチンと経口シプロフロキサシンとの3ヶ月間の併用治療である。
【0166】
インピーダンスサイトメトリーを用いて、ファージに対する感受性の経時的な変化を追跡することによって、根絶療法の成功をモニターすることができる。この情報を使用して、コロニー形成又は耐性の出現における変化に対処するために、ファージライブラリーを改変することができる。
【0167】
実施例8:腸内除菌処理のためのファージの同定
一連の慢性疾患の発症における腸内コロニー形成の重要性の認識が高まっており;その例の非網羅的なリストは表4に概説されている。特定の病原体を腸から選択的に除去することは、それらが十分な選択性を有していないので、狭域抗生物質を使用しても、現在のところ不可能である。腸内又は他のマイクロバイオームを選択的に除菌するためのファージ療法は、これらの課題に対する潜在的な解決策であるが、これはファージ/ファージカクテルの迅速且つハイスループットのスクリーニングを可能にする技術の利用可能性に依存する。細菌インピーダンスフローサイトメトリーは、そのような技術の一例であり、選択的治療の基礎としてファージ感受性の迅速且つハイスループットの同定の両方を可能にする。このアプローチに適したワークフローを以下に示す。
a. 表4に提供される非網羅的リストによって表される、広範囲の慢性状態に関連する症状を示す患者から糞便試料を収集する。
b. 試料を選択プレート上で培養して、ファージベースの排除療法の標的である標的病原体を濃縮する。細菌を細菌増殖培地中に懸濁し、ファージ/ファージカクテルと共に所定の期間インキュベートする。
c. 特定のファージ調製物に対する標的生物の感受性を、細菌インピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて決定する。患者が保有する特定の標的株に対して有効であるファージを、治療における使用のために調製する。ファージカクテルを、腸の酸性環境からファージを保護するカプセル化法を用いて経口投与する。代替的に、ファージ調製物を小腸若しくは大腸又はGI管内の他の位置に直接送達する。
d. ファージベースの排除療法の有効性は、病原体の存在又は毒性/有害遺伝子産物を製造する株のより良性の株への置き換えをモニターするための反復糞便サンプリング及び選択的培養によって評価することができる。
e. 場合により、ファージベースの排除療法は、1つ以上のプロバイオティクスの治療的使用と併せて実施されてもよい。
f. 場合により、ファージベースの排除療法は、ゲムシタビンなどの化合物を使用する癌療法の前にシチジンデアミナーゼの形態を発現する特定の種(例えば、肺炎桿菌(K.pneumoniae))を選択的に排除する場合と同様に、根底にある慢性状態を治療するためのその後の療法のための先駆物である。この形態の酵素は、化学療法薬を不活性化してその活性を低下させ、したがって排除療法は、潜在的に、様々な膵臓癌及び肺癌の治療転帰を改善する。
【0168】
実施例9:慢性疾患に関連する病原体を排除するための糞便移植材料の前処理
糞便移植は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)によって引き起こされる疾患の再発発作のための非常に効果的な治療であることが証明されており、現在、腸炎29、慢性肝臓疾患30及び過敏性腸疾患31を含むがこれらに限定されない一連の他の慢性状態のために探索されている。腸からの問題のある細菌の選択的排除を詳述する実施例と同様の方法で、同様のファージベースの排除アプローチを、大腸への移植前に糞便移植材料と共に使用することができる。これは、有害な結果と関連している慢性病を引き起こす細菌を再導入することに関連する潜在的な課題を未然に防ぐ32。これは、いくつかの場合、スクリーニングによって達成することができるが、問題の細菌を選択的に根絶する能力は、糞便移植アプローチの柔軟性及び有効性を増加させる。
【0169】
このワークフローは、糞便物質をエクスビボで取り扱い、移植前に特定の細菌種を排除するように選択されたファージで処理することを除いて、上述した腸内排除の例(実施例8)と本質的に同じである。
【0170】
実施例10:耐性破壊因子のファージ送達が抗生物質に対する感受性を媒介するために必須である感染症の治療。
ファージは、細菌内で遺伝子の発現が必要とされる、一連の抗菌剤及び抗生物質破壊因子の送達ビヒクルとしてますます使用されている。遺伝的にコードされる抗菌剤の例としては、小酸可溶性胞子タンパク質33、転写因子デコイ34、及び例えば、β-ラクタマーゼ阻害剤、排出ポンプ発現のモジュレーターなどの様々な抗生物質耐性破壊因子を挙げることができる。抗菌剤としてのこれらの分子の有効性は、標的種に感染するファージの能力に依存し、したがって、ファージ感受性を迅速に決定する必要性が残っている。
【0171】
方法の一例は、以下の通りである:感染部位からの臨床単離物を、抗菌遺伝子を保有する遺伝子操作されたファージ又は送達ベクターの基礎であるベースファージのいずれかと混合する。ファージの標的とのインキュベーションは、前述のように実施され、細菌インピーダンスが測定され、分析される。いずれかのファージ媒介性溶解を示す結果を、以前に見られたように分析する。抗菌遺伝子の発現までの時間は、迅速アッセイ形式が遺伝子発現の効果を測定しないことを意味し得る。それが寄与する場合、インピーダンス測定は、遺伝子に基づく抗菌効果も反映するであろう。場合により、抗生物質耐性に影響を及ぼす遺伝子の効果は、抗生物質及びファージ媒介性感染の存在下でのみ発揮されるであろう。
【0172】
実施例11.
1.臨床状況における血清殺菌アッセイの使用
血清殺菌アッセイを用いて、患者の血液が目的の病原体を死滅させる能力を評価する。これは、天然に存在する抗体レベル、又は能動(ワクチン接種)若しくは受動(予め形成された抗体による免疫療法)免疫化のいずれかによって生成された抗体のいずれかを評価するための一連のアッセイにおいて使用され得る。この活性は、病原体に対する患者の防御の不可欠な部分を形成し、多くの場合、他の治療(例えば、抗生物質、ファージ)と併せて作用するであろう。このタイプの測定は、心内膜炎、髄膜炎、人工関節感染、又は骨髄炎において観察され得るような、感染が末梢に存在しない創傷に存在し得る状況において特に重要であり得る。同様に、好中球減少症又は他の免疫不全患者の感染において、これらのタイプの活性を測定することが重要であり得る。
【0173】
これらは、抗体媒介性殺傷の状況において価値のあるアッセイであるが、それらは、一次読み取りとして臨床状況において日常的に使用されない。これは、これらのアッセイを実施することの困難さ、及びリアルタイムデータを提供することができる(すなわち、外部の実験室分析に依存しない標準化された方法の欠如を反映する。典型的には24時間を超えるが、増殖の遅い種については潜在的に48~72時間までの生菌の存在及び計数のための培養ベースの実験室分析も、本方法の有用性を制限する。このアッセイは、感染を引き起こす標的病原体を十分に死滅させ、しばしば希釈係数(例えば、1:8、1:16)として表される患者の血清の最低希釈を測定する。
【0174】
場合により、血清殺菌アッセイの有効性を使用して、抗生物質及び血清死滅の組み合わせを評価することができ、ここで、抗生物質は、アッセイが実施される前に規定された濃度で血清に添加される。このことは、概念的には、抗体媒介性殺傷に相補的な方法で作用する抗生物質の開発及び使用を支持する。
【0175】
細菌インピーダンスフローサイトメトリーアッセイを用いて、臨床的意思決定を支援するために、迅速且つ患者に近い状況で、血清殺菌活性を測定することができる。臨床状況においてアッセイと共に使用され得るワークフローを以下に示す。
a. 患者は、心臓手術後に、例えば潜在的な心内膜炎に関連する感染を診療所で呈する。感染を引き起こす病原体は、培養に基づく方法又は分子的方法のいずれかによって同定される。病原体は、ブドウ球菌(Staphylococcus)種、連鎖球菌(Streptococcus)種又は腸球菌(Enterococcus)種を含むがこれらに限定されない、一連の病原体のうちの1つであり得る。
b. プレートから3つのコロニーを採取することによって、カチオン調整ミューラーヒントンブロス中で病原体の培養物を調製する。細菌の濃度を約5×10cfu/mlに補正する。
c. 標準限外濾過ヒト血清中で希釈した等量の患者血清に細菌を添加し、細菌/血清を、5% COの存在下、37℃で1時間インキュベートする。
d. 試料中の生菌の数と、死滅前の血清媒介性細菌溶解を示し得るインピーダンスプロファイルの任意の変化との両方を測定する、細菌インピーダンスアッセイを用いて試料を評価する。試料と未処理の細菌集団との比較はまた、抗体結合の同定を可能にするであろう。
e. 試料中の細菌の>99.5%を死滅させる血清力価は、臨床転帰の可能性を示し得る;高いピーク力価(例えば、必要な速度で死滅させるのに陽性の1:32希釈)を有する患者は、低いピーク力価(例えば、1:2希釈以上)を有する患者よりも感染を除去することができる可能性が高い。この情報を使用して、治療選択肢を修正し、又は外科的介入の選択肢を調べることができる。
f. 場合により、本方法を用いて、特定の病原体に対する抗体の血清濃度を増加させて、防御的な殺菌性抗体応答を生じさせることを目的とする、ワクチン接種プログラムの有効性をモニターすることができる。この場合、ワクチン接種前及び接種後の患者からの血清試料を連続的に希釈し、上述したように標的病原体と共にインキュベートする。細菌インピーダンスフローサイトメトリーアッセイを実施し、生細胞の数を定量化する。ワクチン接種後の抗体力価の増加は、患者血清のより高い希釈(例えば、ワクチン接種前の1:8と比較して1:128)で達成される満足な死滅と相関するであろう。
g. 場合により、細菌インピーダンスフローサイトメトリー方法は、多剤耐性病原体(例えば、緑膿菌(P.aeruginosa)35)を標的とする治療である、受動的に投与された抗体の血清レベルのモニタリングを可能にする迅速な読み取りを提供するであろう。この場合、上述した方法は、標的株を効果的に死滅させる血清希釈が所定の閾値を超えて維持されることを確実にするために、モノクローナル抗体産物の投与を最適化するために使用されるであろう。これは、細菌の広がりを効果的に最小限に抑え、及び/又は細菌による任意の毒素若しくは内毒素の産生によって引き起こされる細胞毒性を防止するのに十分な循環抗体が存在することを確実にする。
【0176】
実施例12:細菌インピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて、細菌死滅を達成する膜透過性ペプチド抗菌剤の有効性を決定する。
抗菌ペプチド(宿主防御ペプチドと称されることもある)、バクテリオシン、ランチペプチド、ピオシン、ファージ由来エンドリシン、エンドペプチダーゼ及びムラリティックタンパク質(例えば、アルチリシン)は、全て、新しい抗菌剤の開発のための候補として提案されている。これらの生物製剤の多くは、狭域活性を有し、マイクロバイオームを潜在的に損傷する広域活性を有するのではなく、特定の種の細菌に特異的であるように調整することができる。これは、ファージ療法が使用される方法とよく似ているので、細菌インピーダンスフローサイトメトリー方法との自然な相乗効果がある。
【0177】
異なる膜透過性ペプチド抗菌剤の有効性を決定するための方法は、実施例1と本質的に同じである。簡単に述べると、臨床試料(例えば、疑わしいUTIからの尿試料)からの細菌を担持するプレートからトリプトンソイブロス(TSB)中にコロニーを採取し、30分間インキュベートした後、膜透過性ペプチド抗菌調製物を添加する。インキュベーションは、典型的には、振盪しながら37℃で実施される。細菌をTSB中で約5×10cfu/mlの濃度に希釈し、カチオン性抗菌ペプチド(cAMP)の代表的な例、例えば、プレウロシジン及びα-ヘリカル細孔形成ペプチド(メリチン)を添加する。濃度は、抗菌性ブレークポイント決定のために臨床的に使用され得るように、2つの株の最小阻害濃度に及ぶように選択される。場合により、細菌インピーダンスフローサイトメトリー方法を用いて、最小阻害濃度の測定値を生成してもよく、又は抵抗性/感受性ブレークポイントに基づいて固定濃度を使用する。試料を37℃の静的インキュベーター中、37℃で30又は60分間インキュベートする。各時点での集団を、細菌インピーダンスフローサイトメトリーを用いて分析し、データを収集し、分析して、生細胞数と、同じ種の対照集団又は未処理集団のパーセンテージを囲む輪郭からの細胞集団の任意の移動の両方を測定する。
【0178】
試験した両方のペプチドは、迅速な殺菌殺傷を生じ、膜破壊(両方のペプチド)及び1つ以上の細胞内標的(cAMPのみ)との相互作用を介して、4時間以内に生菌数の>5-log減少をもたらす。測定された時点で、輪郭内に残る細菌の数の時間依存性を同定することが可能であり、散布図における移動は、ペプチドによって引き起こされる膜破壊と一致する。これは、研究で使用された高濃度及び低濃度のペプチドに対する集団の応答を明確に区別し、これは、2つのペプチドに対する細菌の相対的感受性と一致する。
【0179】
臨床状況で使用される場合、これは、感染を引き起こす株の感受性の迅速な決定を可能にし、これらのペプチドを用いた直接的な治療のための情報を提供するであろう。
【0180】
図26は、異なるタイプの抗菌ペプチドが超阻害濃度では細菌インピーダンスの急速な変化を引き起こすが、亜阻害濃度では引き起こさないことを示している。2つの異なるタイプの抗菌ペプチド、カチオン性AMP(cAMP;膜透過性ペプチド、フユヒラメからのプレウロシジンのD-アミノ酸バージョン)及びαヘリカルペプチド(メリチン;細孔形成ペプチド)を、大腸菌(Escherichia coli)(NCTC 12923)及び肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(NCTC 13368)と共に、超阻害(高;cAMP 16μg/ml及びメリチン128μg/ml)及び亜阻害(低;cAMP 0.25μg/ml及びメリチン4μg/ml)濃度で30又は60分間インキュベートした。集団の細菌インピーダンスを測定した。散布図は、試験したペプチド及び種の両方を用いて、30分以内に、未処理集団によって規定される輪郭からの細菌の急速な移動を超阻害濃度で示すが、亜阻害濃度では示さない。NCTC 13368は、NCTC 12923よりもメリチンに対する感受性が低いことを示すが、結果は、試験した濃度でのcAMPについて同等である。結果は、本発明者らが独立して行った少なくとも2つの実験の典型である。本明細書に記載される様々な実施形態は、特許請求される特徴の理解及び教示を助けるためにのみ提示される。これらの実施形態は、実施形態の代表的なサンプルとしてのみ提供され、網羅的及び/又は排他的ではない。本明細書に記載される利点、実施形態、実施例、機能、特徴、構造、及び/又は他の態様は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲、又は特許請求の範囲の均等物に対する限定とみなされるべきではなく、特許請求される本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、修正が行われ得ることを理解するべきである。本発明の様々な実施形態は、本明細書に具体的に記載されるもの以外の、開示される要素、成分、特徴、部分、工程、手段などの適切な組み合わせを適切に含み、又はそれらから構成され、又はそれらから本質的に構成され得る。加えて、本開示は、現在特許請求されていないが、将来特許請求され得る他の発明を含み得る。
【0181】
実施例13.A.バウマニ(A.baumannii)(NCTC 13302)を、0.01、0.1、又は1の感染多重度(MOI)を使用したことを除いて、本質的に実施例1に記載のようにファージとインキュベートした。細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルを、未処理試料及び処理試料について30分毎に2時間測定した。図27は、未処理又はファージで処理した試料についてのA.バウマニ(A.baumannii)(NCTC 13302)の処理2時間後の細菌インピーダンスフローサイトメトリープロファイルを示す。散布図は、未処理試料(A、MOI=0)及び1(B)、0.1(C)又は0.01(D)のMOIで処理された試料中の個々の細菌について測定されたインピーダンスの分布を示す。各時点で未処理集団の50%を包含する輪郭を計算した。この輪郭内の個々の細菌の数を、各MOI(0、0.01、0.1、1)について計数した。図28は、A:30分;B:1時間;C:1時間30分;D:2時間の時点で、1のMOI(濃い灰色)、0.1のMOI(中間の灰色)及び0.01のMOI(薄い灰色)で処理された集団について、未処理の細胞集団(黒色)と比較した細胞数の変動を示す。1のMOIで接種された集団は各時点で減少を示すが、1未満のMOIで接種された集団は、最初は未処理集団と比較してわずかに減少し、次いで、少なくとも未処理集団のレベルに戻る。
【0182】
実施例14:ファージ又は抗菌ペプチドのいずれかに対する耐性出現の評価。
細菌単離物の治療に対するファージ又はファージカクテルの適合性を決定する際の重要な要素は、耐性が治療中に急速に現れ、治療結果に悪影響を及ぼす可能性があるかどうかの評価である。
【0183】
この場合、細菌の臨床単離物を、本質的に実施例1に記載したようにファージと共にインキュベートする。ファージ感受性の最初の評価は、急速に増殖する細菌及び短い潜伏期間を有するファージについて、90分又は120分以内に行われ得る。長期間にわたって細菌インピーダンスフローサイトメトリー値を評価し続け、この場合、インピーダンスプロファイルを6時間まで毎時測定し、データを初期読み取り値と比較することによって、対照、未処理又は参照集団から同定されたゲート領域内に残存する細菌の集団中にサブセットが存在するかどうかを確認することが可能である。新たな子孫ファージの生成及び再感染のラウンドにもかかわらず、この輪郭内の細菌の数が増加する場合、これは、治療のためのこのファージの選択を安全でないものにする耐性につながる突然変異を示している可能性が高い。同様の効果が、例えば実施例13において、低い感染多重度(MOI<1)のファージが投与され、ゲート領域内の細菌数が最初の減少後に増加する場合に観察される。
【0184】
この耐性の出現は、インピーダンスフローサイトメトリーのような単一の細菌レベルの分析において、他の技術で達成できるよりもはるかに早い時点で明らかである。これは、治療のためのファージの適合性について、より正確でタイムリーな決定がなされることを可能にする。
【0185】
低頻度の耐性ファージを同じ株の一般的に感受性のある集団にスパイクすることによって、天然のファージ耐性出現のこの状況をシミュレートすることが可能である。
【0186】
実施例12のように処理した細菌集団を4~6時間かけて連続的にサンプリングすることによって、抗菌ペプチドに対する耐性の出現を評価するために同様のアプローチをとることができる。これもまた、特定の臨床単離物及び臨床症状の治療戦略について決定するのに役立つであろう。
【0187】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11(a)】
図11(b)】
図12
図13
図14(a)】
図14(b)】
図14(c)】
図14(d)】
図14(e)】
図14(f)】
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図16-1】
図16-2】
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図26B
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【国際調査報告】