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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ワクチン開発のための修飾mRNA
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/50 20060101AFI20230426BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230426BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230426BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230426BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230426BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230426BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
C12N15/50
C12P19/34 A ZNA
A61K47/68
A61K47/54
A61K31/7088
A61P31/12
A61P31/14
A61K39/39
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022555970
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021057083
(87)【国際公開番号】W WO2021186028
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】20164276.6
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20194571.4
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509122120
【氏名又は名称】ベースクリック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリシュムス,トーマス
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B064AF27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD30
4B064DA01
4C076AA95
4C076CC35
4C076CC41
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZB33
4C085AA03
4C085AA38
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF24
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明の修飾メッセンジャーRMA(mRNA)は、そのORF内に抗原(例えば、ウイルスタンパク質、かかるウイルスタンパク質の免疫学的に活性な部分、又は抗がんタンパク質又はエピトープ)をコードし、少なくとも1つのヌクレオチドにおいてアルキン又はアジド修飾の少なくとも1つを含有する。本発明のmRNAによってコードされる好ましいウイルスタンパク質は、コロナウイルスタンパク質、特にSARS-CoV-2の核タンパク質Nである。修飾mRNA又はかかるmRNAを含む医薬組成物は、ウイルス感染に対するワクチン接種のための方法において特に有用であり、またSTINGアンタゴニストなどのアジュバントの添加は、個体における免疫応答、したがってワクチン接種効率をさらに増強する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原、例えばウイルスタンパク質、かかるウイルスタンパク質の免疫学的に活性な部分又は抗がんタンパク質又はエピトープをそのORF内でコードする修飾メッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのヌクレオチドにおいてアルキン又はアジド修飾のうちの少なくとも1つを含有し、該修飾mRNAが、該修飾mRNAと、対応して修飾されたアルキン又はアジド含有機能性分子とのクリック反応によって導入された少なくとも1つの機能性分子を含有し、該機能性分子が、免疫担当細胞、特にMHC1ペプチド提示細胞を標的とする細胞特異的標的化基又はリガンドであることを特徴とする、修飾メッセンジャーRNA(mRNA)。
【請求項2】
ウイルスタンパク質が、コロナウイルスタンパク質、好ましくはコロナウイルス核タンパク質、最も好ましくはSARS-CoV-2の核タンパク質N及びエンベロープタンパク質Eのうちの一方又は両方である、請求項1に記載の修飾mRNA。
【請求項3】
5'-キャップ構造、5'-非翻訳領域(5'-UTR)、オープンリーディングフレーム領域(ORF)、3'-非翻訳領域(3'-UTR)及びポリ(A)テール領域を含み、ORF、5'-UTR、3'-UTR及びポリ(A)テール領域のうちの少なくとも1つ内の少なくとも1つのヌクレオチドにおいてアルキン又はアジド修飾のうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の修飾mRNA。
【請求項4】
a)ORF及びUTR、
b)ORF、UTR及びポリ(A)テール、又は
c)ポリ(A)テールのみ
に修飾ヌクレオチドを含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項5】
4つの標準型のヌクレオチド(AMP、CMP、GMP、UMP)のうちの少なくとも1つが、部分的又は完全に修飾されている、例えば、ウラシル又はアデニンでエチニル、エテニル、テトラジン又はアジド修飾されている、好ましくはウラシル又はアデニンでエチニル又はアジド修飾されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項6】
少なくとも1つのヌクレオチドがアルキン修飾されており、少なくとも1つのヌクレオチドがアジド修飾されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項7】
4つの標準型のヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、修飾形態で、非修飾形態に対して1:100~10:1、好ましくは1:10~1:10又は1:1の比で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項8】
別の方法で修飾された天然又は人工ヌクレオチド、好ましくはエテニル-ウリジン、プソイドウリジン又はN1-メチルプソイドウリジンを含有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項9】
修飾mRNAと、対応して修飾されたアルキン又はアジド含有機能性分子(複数可)とのクリック反応によって導入されたさらなる機能性分子(複数可)を含有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項10】
さらなる機能性分子が、mRNAの半減期を増大する、mRNAの発現を増強する、又はアジュバントとして作用する物質である、請求項9に記載の修飾mRNA。
【請求項11】
機能性分子が、糖部分、脂肪酸部分、細胞種特異的抗体又はかかる抗体の断片、特に抗CD20若しくは抗CD19抗体又は抗体断片である、請求項1から10のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項12】
糖部分が、マンノース及び/又はN-アセチルガラクトサミンを含む、請求項11に記載の修飾mRNA。
【請求項13】
機能性分子が、1つ以上の結合された糖部分を含むリンカー分子を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項14】
機能性分子が、MHC1ペプチド提示細胞、リンパ球又は肥満細胞を標的とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項15】
カチオン性又はポリカチオン性化合物と複合体形成している、少なくとも1つのヌクレオチドにおいて少なくとも1つのアルキン又はアジド修飾を含有する修飾RNA又は請求項1から14のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の修飾mRNAを生成するための方法であって、前記方法が、DNA鋳型からmRNAをin vitro転写すること、或いは、原核若しくは真核宿主細胞を使用する発酵プロセスを実施して発現ベクター中に含まれるDNA鋳型を発現させることを含み、前記方法が、mRNA転写に必要なRNAポリメラーゼ及び4つの標準型のヌクレオチドを含有するヌクレオチド混合物の存在下で実施され、ヌクレオチド混合物において4種のヌクレオチドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が、アルキン又はアジド修飾を含有するように修飾されている、方法。
【請求項17】
ポリ(A)テールにアルキン又はアジド修飾を含有する修飾mRNAを生成するための方法であって、ATPの存在下でmRNA上のポリ(A)テールでポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を実施することを含み、ATPが、アデノシンで少なくとも部分的にアルキン又はアジド修飾されている、方法。
【請求項18】
クリック反応を実施する条件下で、1つ以上の対応してアルキン又はアジド修飾された機能性分子を添加して、請求項9から13のいずれか一項に記載の修飾mRNAを生成することをさらに含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
活性薬剤としての請求項1から15のいずれか一項に記載の修飾mRNAを含む、場合により、薬学的に許容されるアジュバント若しくは賦形剤と組み合わせて、及び/又は薬学的に許容される担体中に含有されて含む、医薬組成物。
【請求項20】
アジュバントが、STING受容体アゴニストである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
mRNAベースの治療及び/又は予防適用において使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項19若しくは20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
治療及び/又は予防適用が、ウイルス感染に対する、特にコロナウイルス感染に対する、最も好ましくはSARS-CoV-2感染に対するワクチン接種を含む、請求項21に記載の治療及び/又は予防適用において使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項19若しくは20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
ヒト又は動物における請求項21に記載の予防適用において使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項19若しくは20に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1から15のいずれか一項に記載の修飾mRNAの生成及び/又は送達のためのキット。
【請求項25】
ウイルス感染に対する、特にコロナウイルス感染に対する、最も好ましくはSARS-CoV-2感染に対する個体のワクチン接種のための方法であって、かかる個体に有効量の請求項1から15のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項19若しくは20に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのORF内に抗原(例えば、ウイルスタンパク質、かかるウイルスタンパク質の免疫学的に活性な部分、又は抗がんタンパク質又はエピトープ)をコードするアルキン及び/又はアジド修飾メッセンジャーRMA(mRNA)に関する。本発明はさらに、かかる修飾mRNAの生成方法、修飾mRNAの生成及び/又は送達のためのキット、修飾mRNAを含む医薬組成物、並びに、かかる修飾mRNAの使用に関する。抗原、特にSARS-CoV-2により引き起こされるものなどのウイルス感染に対するワクチン接種方法は、本発明のさらなる特に重要な態様である。ワクチン接種方法の第2の重要な部分は、免疫応答刺激剤、特にインターフェロン遺伝子の刺激因子(Stimulator of interferon genes: STING)受容体を刺激するためのアゴニストの使用である。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスの流行(epidemics)/パンデミック(pandemics)に関する現在の問題は表面タンパク質(スパイクタンパク質(S)及び膜糖タンパク質(M))の高い変動性であり、これは、侵入メカニズム及び表面受容体への結合においてさえも変動をもたらす。第二に、表面タンパク質S及びMにおけるコロナ株の高い突然変異率又は存在する変動性はそれぞれ新しいコロナウイルスをもたらし、これによって、最初の感染後でさえ免疫系を回避する。これらの問題は、一般的なワクチン開発プログラムの失敗をもたらした。一方、ほとんどのコロナウイルス株は、ワクチン接種プログラムを陳腐化させる重篤な疾患を引き起こさない。しかし、SARS、MERS及び現在のCOVID-19は、非常に危険なウイルス株によって引き起こされ、COVID-19の場合も容易に伝播される。
【0003】
ウイルス感染に対する免疫応答は、3つのステップを特徴とする:
1.補体系を介した最初の応答(=自然(innate)免疫応答);
2.中和抗体形成(IgA及びIgG)をもたらす受容体媒介性免疫応答;
3.ほとんどの場合、T細胞媒介性反応が起こり、感染細胞を根絶する;
【0004】
最後の2つの免疫応答ステップはまた、一般に、記憶免疫細胞に生涯免疫原性を付与する。
【0005】
正常なワクチン開発(弱毒化又は不活化ウイルス)は、SARS及びMERSワクチン開発において失敗したので、おそらく、COVID-19免疫化開発においても失敗するのであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的はCOVID-19ウイルス感染に対して個体を効果的に免疫することができるワクチンを提供するための新しいアプローチを開発することであったが、しかし、将来起こり得る他のウイルス及び課題にワクチンを容易に適応させる選択肢も提供することであった。
【0007】
メッセンジャーRNA(mRNA)は、細胞のDNAから転写され、生物の細胞内のリボソームでアミノ酸配列、つまりタンパク質に翻訳される鋳型分子である。コードされたタンパク質の発現レベルを制御するために、mRNAは、アミノ酸配列をコードする遺伝情報を含む実際のオープンリーディングフレーム(ORF)に隣接して非翻訳領域(UTR)を有する。このようなUTRは、それぞれ5'-UTR及び3'-UTRと呼ばれ、開始コドンの前及び終止コドンの後に位置するmRNAの部分(section)である。さらにmRNAは、核からのmRNAの輸送、翻訳を促進し、そしてある程度mRNAを分解から保護する、アデニンヌクレオチドの長い配列であるポリ(A)テール領域を含む。
【0008】
mRNAは、その化学的及び生化学的性質によって、通常、細胞内で数分以内に分解されるため、特定のタンパク質の発現は、通常、一過的なプロセスである。さらに、ポリアニオン性のmRNA分子は、細胞膜を通過するのにあまり適しておらず、それによってmRNAの外部送達は極めて困難である。
【0009】
mRNAに関連するこれらの課題にもかかわらず、近年の科学的及び技術的進歩によって、mRNAは新規な薬品クラスの有望な候補となった。Sahin U. et al., Nat.Publ.Gr. 13, 759-780 (2014)にmRNAベースの治療薬及び薬品開発の概要が紹介されている。mRNAは、例えば、抗体や酵素のようなタンパク質のin vivo生成を引き起こすために使用され、又は、例えば特異的なエピトープを発現することによって、若しくは構造的mRNA部分に対する自然免疫応答によって免疫応答を刺激するために使用される。例えば、RIG-1はRNAの5'-三リン酸末端に結合すると共に、シグナルカスケードを引き起こし、その結果、転写因子が活性化すると共に、抗ウイルス応答の一環としてサイトカインが放出される。免疫応答の刺激のためのmRNAの適用は、がん、AIDSを治療し、ほぼあらゆる疾患に対するワクチンを生成するための新規アプローチにおいて使用できる(Pardi, N. et al., Nat.Publ.Gr. 543, 248-251 (2017)及びSchlake T. et al., RNA Biol. 9, 1319-30 (2012)を参照)。これらの興味深い発展の鍵は、翻訳効率の改善された安定化mRNAの頑強なin vitro生成、及び特殊なトランスフェクション製剤を用いた、細胞へのその送達である。
【0010】
図1のa)は、A. Wadhwa et al., Pharmaceutics 2020, 12(2)からの描写を示し、LNP担体送達(図1のb))との差異を可視化するためにbaseclick GmbHによって修飾され、遺伝情報のキャリアとしてインビトロ転写されたmRNAを提供することに基づくmRNA療法の背後にある指針原理を表し、したがって、生物がそれ自体の治癒を発達させることを可能にする。ワクチン接種では、特定の抗原をコードするmRNAを用いて免疫応答を生じさせる。
【0011】
mRNAの安定性と翻訳効率はいくつかの因子に依存している。特にmRNAの両端にある非翻訳領域は重要な役割を果たしている。真核生物のタンパク質発現では、5'末端のキャップ構造及び3'末端のポリ(A)テールは、どちらもmRNAの安定性を高め、タンパク質の発現を増強する。さらに、5'-UTRは、翻訳に必要なリボソーム結合部位を含み、3'-UTRは、二次構造をとって安定性を改善し、翻訳に影響を与えるRNA配列を含む。さらに、修飾天然(例えばN1-メチルプソイドウリジン)及び人工ヌクレオチドを組み込んで、mRNAの安定性を改善し、mRNAの翻訳を増強することができる(Svitkin Y.V. et al., Nucleic Acids Research, Vol. 45, No. 10, 6023-6036 (2017))。
【0012】
細胞へのmRNAの送達は、細胞膜との融合のための脂質と、オリゴヌクレオチド骨格の負電荷を中和するためのカチオンとを含む混合物を提供することによって達成することができる。mRNA送達を最適化し、臨床試験のために十分なin vivo安定性を付与するために、特殊な製剤が作製されている。静脈内投与されるmRNA製剤のほとんどは、肝細胞に取り込まれ、肝細胞で発現する。これは肝臓が脂肪酸代謝に主要な役割を果たしているという事実によっており、したがって、mRNA製剤の高脂質含量によって、器官特異的な標的化効果が表れる。しかしながら、ほとんどの場合、肝臓は望ましい標的ではなく、したがって、例えば脾臓のような免疫応答に関与する器官に標的化するために脂質製剤を改変する努力がなされている(Kranz L.M. et al., Nature 534, 396-401 (2016))。あるいは、標的化を可能にするために、免疫系の細胞(例えば、リンパ球)を患者の血液から単離し、mRNAの適用をex vivoで行うこともできる。ごく最近になって、抗体断片修飾脂質製剤を用いたmRNAの組織特異的な標的化が開示された(Moffett H.F. et al., Nat. Commun. 8, 389 (2017))。
【0013】
mRNAの直接的又は間接的な(つまり、細胞のex vivoトランスフェクション及びそのようなトランスフェクトされた細胞を患者に戻すことによる)治療適用性に関する以前の進歩及び発展にもかかわらず、中でもmRNAの安定性をさらに改善し、治療薬又は薬品としてのその使用において新たな選択肢を開発することが、WO2019/121803に開示の発明によって取り組まれた課題である。例えばワクチン製造及びがん治療において、mRNAの免疫刺激効果を活用する(exploiting)ためのさらなる選択肢を探索することは、本発明によって取り組まれる現在進行中の研究の別の課題である。
【0014】
SARS-CoV-19のスパイクタンパク質(S)に対するmRNAベースのワクチンを開発するための様々なグループ及び企業の最近の努力は、脂質ナノ粒子(LNP)に封入されたそれぞれのmRNAの送達に依存する。しかしながら、LNPの適用は問題があると考えられ、また、スパイクタンパク質はウイルス抗原の最も効果的な選択ではないかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、世界中で現在遭遇しているパンデミアによって引き起こされる課題に対する代替的かつ改善された解決策を提供することを目的とする。本発明は、とりわけ、流行性及びパンデミックウイルスアウトブレイクによる現在及び将来の課題に対する免疫を提供することを目的とする、新規なmRNAベースのワクチン及びワクチン接種方法に関する。
【0016】
第1の態様では、本発明は、抗原、例えばウイルスタンパク質、かかるウイルスタンパク質の免疫学的に活性な部分又は抗がんタンパク質又はエピトープをそのORF内でコードする修飾メッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのヌクレオチドにおいてアルキン又はアジド修飾のうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする、修飾mRNAに関する。
【0017】
第2の態様では、本発明は、本発明の修飾mRNAを生成するための方法を提供し、前記方法は、DNA鋳型からmRNAをin vitro転写すること、或いは、原核若しくは真核宿主細胞を使用する発酵プロセスを実施して発現ベクター中に含まれるDNA鋳型を発現させることを含み、前記方法が、mRNA転写に必要なRNAポリメラーゼ及び4つの標準型のヌクレオチドを含有するヌクレオチド混合物の存在下で実施され、ヌクレオチド混合物において4種のヌクレオチドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が、アルキン又はアジド修飾を含有するように修飾されている。
【0018】
本発明の第3の態様は、活性薬剤としての本発明に係る修飾mRNAを含む、場合により、薬学的に許容されるアジュバント若しくは賦形剤と組み合わせて、及び/又は薬学的に許容される担体中に含有されて含む、医薬組成物に関する。
【0019】
本発明の第4の態様は、mRNAベースの治療及び/又は予防適用において使用するための、本発明に係る修飾mRNA又は医薬組成物を提供する。
【0020】
本発明の第5の態様は、本発明の修飾mRNAの生成及び/又は送達のためのキットに関する。
【0021】
本発明の第6の態様は、ウイルス感染に対する、特にコロナウイルス感染に対する、最も好ましくはSARS-CoV-2感染に対する個体のワクチン接種のための方法であり、該方法は、かかる個体に有効量の本発明の修飾mRNA又は医薬組成物を投与することを含む。本発明のこの第6の態様の文脈におけるさらなる重要な実施形態は、生物における抗原提示と並行して免疫応答を刺激するための方法である。免疫刺激のための有力な候補は、細胞性の、インターフェロン遺伝子の刺激因子(Stimulator of interferon genes: STING)受容体である。細胞におけるSTING受容体の機能は、環状ジヌクレオチド、特にグアノシン一リン酸及びアデノシン一リン酸(cGAMP)によって制御される。c-di-AMP、c-diGMP、IACS-8779などの薬物又は化学物質は生物において増強された免疫応答を誘導し、本発明の修飾mRNA構築物によって生じる抗原に対する免疫応答の改善をもたらすことができる。
【0022】
(発明の詳細な説明及び好適な実施形態)
本発明は、いわゆる「クリックケミストリー」又はその要素を採用し、この技術をmRNA分子の修飾に適用して、改善された安定性及び細胞特異的標的化を付与し、及び/又は、とりわけmRNAワクチン技術における、特に本発明のワクチン/医薬組成物におけるアジュバントとしてのSTINGアゴニストの適用と組み合わせた、このような修飾mRNA分子の使用を提供する。
【0023】
クリックケミストリーは、Sharpless及びMeldalのグループによって2001/2002年に規定された概念である(Sharpless, K.B. et al., Angew. Chem. 2002, 114, 2708、Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 2596、Meldal, M. et al., J. Org. Chem. 2002, 67, 3057)。それ以来、特に1, 2, 3-トリアゾールが得られるアジドとアルキンとの銅触媒反応(1, 3-双極子ヒュスゲン(Huisgen)付加環化のバリエーション(R. Huisgen, 1,3-Dipolar Cycloaddition Chemistry (Ed.: A. Padwa), Wiley, New York, 1984))は、クリック反応を行うために非常に広く用いられる方法となった。その穏やかな条件と高い効率の結果、この反応には、例えば、様々な目的のためのDNA標識など、生物学及び材料科学において、無数の用途が見出された(Gramlich, P.M.A. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 8350)。
【0024】
これに関連して、WO 2019/063803 A1が具体的に参照され、その開示内容はとりわけ、修飾mRNA、かかる修飾mRNAを生成するための方法、並びに、クリック反応を実施するための条件、試薬及び方法に関する限り、本発明の目的のために含まれる。銅触媒クリック反応に加えて、銅が不要の生体直交型の方法も開発されており、このような方法は全て、本発明においても採用することができる。例えば、歪み促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)(I.S. Marks et al., Bioconjug Chem. 2011 22(7): 1259-1263)又は逆電子要請型ディールス・アルダー(Diels-Alder)環付加(iEDDA)(D. Ganz et al., RSC Chem. Biol. 2020 1 (3): 86-97)は、本発明において、単独で又は銅触媒クリックケミストリー(CuAAC)との併用で、いずれにおいても使用することができる。特に、細胞培養又は生体内においてin vivoで標識反応を行うことが望ましい場合には、これらの方法は有毒物質や外部触媒の使用を必要としないため、SPAAC又はiEDDAを用いてこのような反応を行うのが好ましい。したがって、以下又はWO 2019/063803への上記参照による限り、本発明の範囲内で、本発明のすべての態様及び実施形態について、アルキン及びアジド修飾が検討又は言及され、これらの用語はまた、そのようなバイオ直交クリック反応において使用される試薬、とりわけアルケン、好ましくはトランス-シクロオクテン、及びテトラジンを含むと理解されるべきである。
【0025】
クリックケミストリーは、目的の生体分子にレポーター分子又は標識を結合させるのを容易にすると共に、このような生体分子を同定し、位置を特定し(locating)、特性を明らかにするのに非常に強力なツールとなる。例えば、この方法によって、標的生体分子の分離及び精製を可能にするためのアンカー分子の、又は、分光定量のための蛍光プローブの含有及び結合が可能になる。これまで、クリックケミストリーを基礎原理として使用する多くの用途が開発されてきた。次世代シークエンスは、この技術の恩恵を受けるこのような用途の1つであり、いわゆる「骨格模倣体(backbone mimics)」(つまり、銅触媒アジド-アルキン付加環化(CuACC)によって生成され得るホスホジエステル結合の非天然の代替物)の形成が、例えば、DNA断片とアダプター配列を連結するために使用される。ホスホジエステル結合の代わりにトリアゾール環が存在するにもかかわらず、このような骨格模倣体は、PCR又は逆転写のようなポリメラーゼ駆動型のDNA又はRNA調製方法の許容可能な基質である。細胞増殖の検出は、クリックケミストリーのさらなる応用分野である。通常適用される方法としては、複製中に、細胞にBrdU又は放射性ヌクレオシド類似体のいずれかを添加し、DNAへのそれらの組み込みを検出することが挙げられる。しかしながら、放射能に関係する方法はかなり遅く、迅速でハイスループットな研究には適さず、また、放射能が関係するために不便である。BrdUを検出するには、抗BrdU抗体と変性条件の適用が必要であり、標本の構造の劣化につながる。EdU-clickアッセイの開発は、DNA複製反応においてチミジン類似体である5-エチニル-2'-デオキシウリジンを含むことによって、そのような制限を克服した。抗体の代わりにクリックケミストリーによる検出は、選択的で、単純、生体直交的であり、組み込まれたヌクレオシドの検出にDNAの変性を必要としない。
【0026】
mRNAのin vitro転写の間、又はmRNAを生成するための発酵プロセスの間に、アルキン及び/又はアジド修飾ヌクレオチドを導入して、対応して修飾されたmRNAを得ることが可能であることが以前に発見された(例えばWO2019/121803)。アルキン修飾若しくはアジド修飾又は上述したような他の修飾は、mRNAに含まれる全てのエレメントに又はいくつかのエレメントにのみ含めることができ、UTR、ORF及びポリ(A)テールのうち少なくとも1つの領域に含める必要がある。キャップ構造の変化はeIF4E、eIF4F及びeIF4Gのような開始因子の効率的な結合を妨害し、したがって翻訳効率を劇的に低下させ得るため、5'キャップ構造は、好ましくは、このようなアルキン又はアジド修飾を含まない。このような修飾の存在は、一方ではmRNAを安定化させ、他方では、クリックケミストリーによる、組織又は細胞特異的なリガンド又は標的化分子の結合のための特異的なアンカー部位を提供する。したがって、mRNAの修飾は、mRNA分子の高い安定性を提供するだけでなく、治療又は予防用途、特に免疫/ワクチン接種における特定の器官又は細胞型へのmRNAの標的化送達の新たな選択肢も提供する。そのORF内に、抗原、例えばウイルスタンパク質、かかるウイルスタンパク質の免疫学的に活性な部分又は抗がんタンパク質若しくはエピトープをコードし、かつ少なくとも1つのヌクレオチドにおいてアルキン又はアジド修飾の少なくとも1つを含む、対応して修飾されたmRNAは、本発明の第一の主題である。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、mRNAは、コロナウイルスタンパク質、好ましくはコロナウイルス(核)タンパク質、最も好ましくはSARS-CoV-2の核タンパク質(ヌクレオタンパク質)N及びエンベロープタンパク質Eのうちの少なくとも1つ、又はそれらの免疫学的に活性な部分をコードする。図2はSARS-CoV-2ウイルス粒子を示し、関連する構成要素を指摘する。
【0028】
本発明の文脈において、用語「免疫学的に活性な」は、一次免疫応答を生じさせ、同じ抗原に対するその後の免疫応答を誘発する免疫記憶も提供する、タンパク質の部分又はエピトープを含むことが意図される。
【0029】
in vitro転写法の間、あるいは原核生物若しくは真核生物での発酵によるmRNA生成の間に、どの型のヌクレオチド(1又は複数)がアルキン又はアジド修飾形態で含まれるかによっては、得られる修飾mRNAは5'-UTRや3'-UTR、ORFだけでなくポリ(A)テール領域にも修飾を含むことができる。当業者に明らかなように、例えば、修飾CTP、GTP及びUTPのうちの1つ以上を含むと、UTR及びORF内の修飾が起こり、一方、修飾ATPを追加で含むと、ポリ(A)テール領域にも修飾が起こる。転写の間にアルキン及び/又はアジド修飾ATPのみを含むと、UTR、ORF及びポリ(A)テール領域に修飾が起こる。
【0030】
本発明のmRNA内でのアルキン又はアジド修飾ヌクレオチドの存在によって引き起こされる重大な負の影響は観察されていない。反応に含まれる修飾ヌクレオチドの量に依存して、in vitro及びin vivo転写の効率は、非修飾ヌクレオチドのみが反応混合物中に存在する場合と同程度か、又はわずかに低下し得る。さらに、mRNAの修飾は、リボソームでのタンパク質生成の間、mRNAの翻訳を損なわないようである。状況に応じて、in vitro転写反応又は発酵プロセスに含まれるべき修飾ヌクレオチドの量は、最大のmRNA収率又は最大の修飾のいずれかが提供されるように調整することができる。例えば、特定の細胞及び細胞受容体に標的化するためには、所望の効果を達成するためにそれぞれのリガンド分子を1つ又は少数のみ含めば十分である一方、最大効率のために、より多くのリガンド分子を含むことも可能である。
【0031】
後で詳細に説明するが、アルキン又はアジド修飾ヌクレオチドの含有はmRNAの安定化効果をもつ。本発明の修飾の安定化効果は、そのような修飾が完全長のmRNA分子上に分布している場合に最も顕著であることが期待される。このような場合、続くクリックケミストリーによる機能性分子の結合もまた、mRNA分子全体にわたって一様に起こり、増強された安定化効果を提供することさえできる。
【0032】
しかしながら、本発明の状況及び標的化細胞内で抗原を効率的に発現させることによる個体の意図した免疫の状況において、かかる機能性分子の含有を、タンパク質発現の間の続くmRNAの翻訳に関与しないmRNA分子の一部分に制限することが重要であろう。そのような目的のためには、特に長い若しくはかさ高い、標識又は機能性分子(リガンド若しくは標的化分子など)の存在によって、リボソーム活性が損なわれないことが確実であるポリ(A)テール領域にのみ修飾ヌクレオチドを含めることが望ましい可能性がある。
【0033】
したがって、本発明は、ポリ(A)テール領域のみにアルキン又はアジド修飾を含む修飾mRNAも提供する。鋳型DNAのin vitro転写又は発酵プロセスの間にアルキン又はアジド修飾ヌクレオチドを含む代わりに、ポリ(A)ポリメラーゼ及びアルキン又はアジド修飾ATPの存在下で付加反応を行うことにより、任意の所望のmRNAに対してポリ(A)テール領域のみにおける修飾を達成することができる。
【0034】
本発明の修飾mRNAにおけるアルキン又はアジド修飾の量及び型を制御することにより、任意の意図する用途に関して、目的の分子の酵素後の結合(post-enzymatic attachment)のための所要な及び実効可能な選択肢及び安定化を付与するために、得られたmRNAを簡便かつ容易に適用することが可能である。
【0035】
本発明において、アジド又はアルキン修飾は、それぞれのヌクレオチドのリボース単位の2'位又は核酸塩基に含まれ得る。非常に特殊な場合には、リボースの3'位にこの修飾を含むヌクレオチドを含めることも可能である。このような場合、酵素的ポリ(A)付加反応は修飾ヌクレオチドを1つ含むと停止する。図3は、リボースの3'位に修飾を有するリボヌクレオチドがポリ(A)ポリメラーゼ反応中に付加される、本発明の好ましい実施形態を示す。このような場合、分子の3'末端に修飾を有するmRNA分子が得られ、次いで、これを修飾して、クリック反応を介して機能性分子又はリガンドを含めることができる。
【0036】
本発明のこの態様の別の好適な実施形態において、修飾mRNAは、UTR、ORF、及び、場合によってはポリ(A)テール領域のうち、少なくとも1つの領域内の少なくとも1つのヌクレオチドにおいて、核酸塩基又は2'リボース位にアルキン及び/又はアジド修飾を含み、さらに、ポリ(A)テールにおいてリボースの3'位にチェーンターミネーションのアルキン又はアジド修飾を含む。
【0037】
別の好ましい実施形態において、本発明のmRNAは、ポリ(A)テール領域に3'リボース位でのチェーンターミネーションのアルキン又はアジド修飾を含まない。
【0038】
本発明のmRNAに含まれる修飾ヌクレオチドは、天然ヌクレオチド、特に、アデニン、シトシン、グアニン若しくはウラシル塩基を持つ標準ヌクレオチドの1つに由来してもよく、又は、別の天然ヌクレオチドの修飾(例えば、プソイドウリジン誘導体)であっても、又は、転写及び/若しくは翻訳、並びに生じた修飾mRNAの機能に負の影響を及ぼさない非天然分子(例えば、F. Eggert, S. Kath-Schorr, Chem. Commun., 2016, 52, 7284-7287)でさえあってもよい。好ましくは、修飾ヌクレオチドは、天然ヌクレオチド又はmRNA内の天然ヌクレオチドに由来する。
【0039】
クリック反応に適したアルキン基及びアジド基は当業者に知られていると共に利用可能であり、そのような全ての基を用いて、本発明における修飾ヌクレオチド及び修飾mRNAを調製することができる。アルキン修飾ヌクレオチドは、好ましくはエチニル又はエテニル修飾ヌクレオチドであり、より好ましくは5-エチニルウリジンリン酸又は7-エチニル-7-デアザアデニンリン酸、又はシクロオクチニル修飾ヌクレオチド(SPAACクリック反応のため)である。原理的には、より高級のアルキン修飾ヌクレオチド、特にプロピニル又はブチニル修飾ヌクレオチド、さらにはC-C三重結合を含む環系を採用することも可能であるが、適当なアルキン分子を選択する際には、例えば、転写又はポリ(A)ポリメラーゼ反応効率及びタンパク質へのmRNAのさらなる翻訳に対する負の影響の可能性を考慮しなければならないであろう。
【0040】
本発明で有用なヌクレオチドに対するアジド修飾は、例えば、アルキル部分が好ましくは低級アルキル基、特にメチル基、エチル基又はプロピル基であるアジドアルキル基も含むことができる。アジド修飾ヌクレオチドとして、好ましくは5-(3-アジドプロピル)-ウリジンリン酸、又は8-アジドアデニンリン酸が本発明のmRNAに含まれることが考えられる。ポリ(A)付加反応の停止を引き起こすアジド修飾ヌクレオチドの例は、3'-アジド-2', 3'-ジデオキシアデニンリン酸である。
【0041】
原則として、少なくとも1種類の修飾ヌクレオチドの全てのヌクレオチドが、アルキン若しくはアジド修飾、好ましくはエチニル、シクロオクチニル若しくはエテニル修飾、又はアジド若しくはテトラジン修飾されていてもよいし、又は代わりに、そのようなヌクレオチドの一部のみが修飾形態で存在してもよい。本発明の好ましい実施形態において、所望の修飾及び修飾の割合(rate)に依存して、種々のヌクレオチドの修飾形態対非修飾形態の比率は、1:100~10:1、好ましくは1:10~10:1、さらに好ましくは1:4~4:1、また好ましくは1:2~2:1の範囲であり得る。好ましくは、修飾ヌクレオチド対非修飾ヌクレオチドの1:1、1:4又は1:10の組み合わせが本発明のmRNAに含まれる。
【0042】
上述のように、本発明の修飾mRNA中にアルキン又はアジド修飾ヌクレオチド又は核酸塩基が存在すると、安定化効果が付与される。一方では、エンドリボヌクレアーゼの攻撃は内部修飾によってある程度制限されている。ポリ(A)ポリメラーゼに基づく3'末端への修飾ATPの付加の間のポリ(A)テール領域の伸長は、さらなる安定化効果につながる。エキソリボヌクレアーゼによるmRNA分子の攻撃と分解は、RNAの両端で起こる。本発明のmRNAは、5'末端にキャップを含み、その側での分解からの保護を提供する。さらに3'末端に修飾アデノシンヌクレオチドを含むと、3'から5'方向のエキソリボヌクレアーゼの攻撃が妨げられ、分解がコアmRNA、特にORFに到達するのが遅延するため、さらなる防御が付与される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、機能性分子を、対応して修飾されたアルキン又はアジドを含む機能性分子とのクリック反応によって、修飾mRNAに導入することができる。ヌクレオチド修飾に関して、機能性基(functional group)の修飾に関してもまた、適切なアルキン及びアジド基は当業者に知られており、そのような基のための好ましい例は、上記のように適用可能である。ヌクレオチドの修飾に関しても、機能性分子の修飾に関しても、アルキン又はアジドという用語は広く理解される。すなわち、SPAAC及びiEDDA反応について説明したアルケン又はテトラジン又はシクロオクチニル修飾も含まれるものとする。修飾mRNA内のアルキン修飾ヌクレオチドとアジドを含む機能性分子との反応、又は、本発明の修飾mRNA内のアジド修飾ヌクレオチドとアルキンを含む機能性分子との反応は、クリック反応を実施する条件下で行い、すると、mRNAと機能性分子との間の連結を形成する五員複素環1, 2, 3-トリアゾール部分の形成が起こる。本発明において、アルキンを含む機能性分子という用語は、SPAAC又はiEDDA反応及び生体直交連結反応によるin vivo標識において特に考慮されてきたシクロオクチンのようなC-C三重結合を含む環系も包含する。
【0044】
機能性分子の種類及び大きさは、意図する用途によって決まる。クリック反応によって修飾mRNAに含まれる機能性分子は制限されず、好ましくは、特定の組織若しくは細胞、例えばがん組織及び細胞、又は、免疫担当細胞、又は特にMCH1ペプチド提示細胞、リンパ球若しくは肥満細胞へのmRNAの標的化取り込みを媒介する細胞又は組織特異的なリガンドである。機能性分子は、mRNAをその細胞表面に結合若しくはアンカーすることを可能にする。このような細胞又は組織特異的な標的化は、例えば、特異的な抗体若しくは抗体断片、ペプチド、糖部分、低分子(例えば、葉酸)又は脂肪酸部分を、細胞又は組織特異的なリガンドとして用いることによって達成することができる。それぞれの物質は、多数の標的化用途について記載されており、当業者に利用可能である。いくつかの好ましい例示的な標的化分子は、細胞特異的な受容体(例えば、上皮成長因子受容体のような)を標的とする抗体若しくは抗体断片、特に抗CD20若しくは抗CD19抗体若しくはその断片、又は受容体リガンド、葉酸受容体を標的とする葉酸、内在性低密度リポタンパク質受容体を標的とするアポリポタンパク質、又は、内在性カンナビノイド受容体を標的とするアラキドン酸である。また、アミノ酸配列RGD又は類似の配列は、細胞接着を媒介することが見出されており、これもまた、本発明において好ましいリガンドと考えられる。
【0045】
さらに好ましい機能性分子又は細胞若しくは組織特異的リガンドとしては、図4に示されるような糖部分が含まれる。リガンド分子は、好ましくはスペーサーを介してアルキン又はアジドクリック反応部分に連結された1つ以上の糖部分を含む。そのようなスペーサーは、直鎖又は分枝鎖であり得、両方の場合において、1つ又は複数の糖部分が1つ以上の鎖末端に結合され得る。好ましい実施形態では、糖部分が、アルドース、特にグルコース、ガラクトース及びマンノース;ケトース、特にフルクトース;並びに糖誘導体、特にN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)から選択される。そのようなリガンドは、特定の種類の細胞、特に免疫系の細胞、好ましくはそのMHCを介してペプチドを提示する細胞、好ましくはMCH1、特にリンパ球又は肥満細胞の標的化及びトランスフェクションを容易にするので、トランスフェクション剤として作用することができる。糖部分、特にマンノース及びGalNAcは、C型レクチンによる受容体認識を可能にする。
【0046】
リンカーを介してアジド又はアルキンクリック部分に結合した糖部分を含む、そのような機能性部分を生成するためのプロセスは、図5及び6に例示的に示される。しかしながら、他の糖部分、並びに異なるスペーサー分子及びアルキン又はアジド部分を含めることができる。このようなリガンドを用いたmRNAワクチンの開発を図7に模式的に示す。
【0047】
mRNAに結合する機能性分子の存在は、ヌクレアーゼ分解に対するmRNAの安定性をさらに高めることができ、mRNA内の天然ヌクレオチドの少なくとも1つの、アルキン又はアジド修飾類似体への部分的な及び完全な置換、並びにそれへの機能性分子の結合によっても、mRNA分子の翻訳が妨害されないことが示されている。
【0048】
アルキン修飾又はアジド修飾ヌクレオチドのいずれかの含有に加えて、本発明の修飾mRNAは、少なくとも1つのヌクレオチドを部分的な又は完全なアルキン修飾形態で含み、少なくとも1つの別のヌクレオチドを部分的な又は完全なアジド修飾形態で含むことも可能である。さらなる選択肢は、少なくとも1種類のヌクレオチドを、部分的な又は完全なアルキン修飾形態で、及び、部分的な又は完全なアジド修飾形態で含むmRNAである。このようなmRNAは2つの異なるアンカー修飾を含み、これには下流の酵素後クリック反応で異なる機能性分子が結合できる。例えば、このような特定の実施形態に限定するものではないが、第1のアルキン修飾された細胞特異的な標的化基、及び第2の異なるアジド修飾された標的化基を結合させることができ、結果として、細胞標的化の最大の特異性及び/又は効率性並びに細胞へのmRNA取り込みを提供する、本発明の修飾mRNAの別の好ましい実施形態となる。
【0049】
また、少なくとも、1つのアジド修飾ヌクレオチド及び1つのアルキン修飾ヌクレオチドを含む修飾mRNAを提供することも、本発明において好ましく、また可能であり、ここでは、例えば、アジド修飾ヌクレオチドにおいて、機能性分子が、生体直交反応(例えば、in vitroでのSPAAC)によって結合されているが、アルキン修飾ヌクレオチドは、CuAAC反応による下流のin vitro標識反応に利用可能である。CuAAC反応条件を二重標識mRNA(アルキン及びアジドの官能基(function)を含む)に適用すればmRNAを環化することが可能であり、これは、例えば自己スプライシングイントロン(DOI: 10.1038/s41467-018-05096-6)の使用に代わる貴重な選択肢である。
【0050】
例えば、本発明の修飾mRNAは、UTR及びORFにおいて1種の修飾を含み、ポリ(A)テールにおいてのみ別の修飾を含むことも考えられる。このような修飾は、最初に1つ以上の第1の型の修飾ヌクレオチドを導入する転写反応を行い、次に第2の型の修飾を含むATPを用いたポリ(A)ポリメラーゼ反応を後に行うことで実施することができる。
【0051】
本発明において、数々の修飾及び修飾の組み合わせが可能であることは、当業者には明らかであろう。さらに、mRNA分子上のアルキン及び/又はアジド修飾の存在に基づいて異なる機能性基を含むことも可能であり、それどころか、異なる適切に修飾された機能性分子をクリック反応条件下で連続的に付加することによっても可能である。したがって、本発明は、修飾mRNAを最適な方法で意図する用途に適合するための膨大な数の選択肢及び簡便なモジュール性(modularity)を提供する。
【0052】
アルキン及び/又はアジド修飾ヌクレオチドを含むことを除けば、本発明において、一般に、ヌクレオチドにおける他の修飾は、そのような他の修飾がmRNA生成又は結果として生じるmRNAの意図する使用に悪影響を及ぼさない限り、その意図する使用を考えた場合に許容できない(つまり、その修飾が本発明における修飾mRNAと適合する)程度まで許される。mRNAに含めることができるこのような他の修飾ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の例としては、プソイドウリジン-5'-三リン酸(プソイドUTP)であるがエテニルウリジンもまた考えられる。プソイドウリジン(又は5'-リボシルウラシル)は、最初に発見された修飾リボヌクレオシドであった。最も豊富に存在する天然修飾RNA塩基であり、しばしばRNAにおける「第5ヌクレオシド」と呼ばれる。それは、トランスファーRNA、リボソームRNA及び核内低分子(small nuclear)RNAのような構造的RNAに見られ得る。プソイドウリジンは塩基スタッキング及び翻訳を増強することが示されている。さらに、プソイドウリジン-5'-三リン酸は、ヌクレアーゼ安定性の上昇及び内在免疫受容体とin vitro転写RNAとの相互作用の変化のような有利なmRNA特性を付与することができる。プソイドUTP及びさらに修飾されたヌクレオチド(N1-メチルプソイドウリジン及び5-メチルシチジン-5'-三リン酸など)のmRNAへの組み込みは、培養下並びにin vivoでの自然免疫活性化を低下させ、同時に翻訳を増強することが示されている(B. Li et al., Bioconjugate Chemistry, 2016, 27, 849-853及びY. Svitkin et al., Nucleic Acid Research, 2017, 45, 6023-6036)。したがって、本明細書で前述したように、これら及び他の適切で適合性のあるヌクレオチド、ヌクレオチド類似体又は非天然分子、例えばまたエテニルウリジンを、アルキン若しくはアジド修飾形態又は非修飾形態で含むことは、本発明のさらなる選択肢であり、好ましい実施形態である。
【0053】
本発明において、本発明の修飾mRNAは、特定の用途において必要な又は存在するのが好ましい物質と一緒に使用することができる。例えば、ワクチンとしてのin vivo投与において、細胞によるmRNA取り込みを容易にする物質をmRNAと組み合わせることが好ましい。脂質製剤及びナノキャリア(例えば、前述のMoffett et al.に記載)を、本発明におけるそれぞれの組成物及び製剤に含めることができる。したがって、本発明のさらなる主題は、修飾mRNAと上記の他の物質の少なくとも1つとを含む物質の混合物、又は、修飾mRNA及び他の適当な物質の少なくとも1つが、その後の併用のために異なる容器で提供される部品のキット(キットオブパーツ)である。
【0054】
WO2010/037408には、好ましくは、カチオン性又はポリカチオン性化合物と複合体化した少なくとも1つのmRNAを含むアジュバント成分と、治療上活性のあるタンパク質、抗原、アレルゲン及び/又は抗体を少なくとも1つコードする少なくとも1つの遊離(つまり、非複合体化)mRNAとを含む免疫刺激組成物が記載されている。
【0055】
この文脈において、本発明の修飾RNAと、アジュバントとして作用するさらなる修飾mRNAとの組合せもまた適用することができる。また、そのような使用のためには、本発明によって提供される細胞への特異的な標的化及び送達の可能性を利用することができるだけでなく、本明細書で先に開示されたような修飾によって(m)RNAに付与される安定化も利用することができる。
【0056】
本発明の別の主題は、本発明の修飾mRNAの製造方法である。第一の方法によれば、mRNAは、mRNA転写に必要な少なくとも4つの標準型のヌクレオチド(ATP、CTP、GTP、UTP)を含むヌクレオチド混合物、及び、任意により、例えば、N1-メチルプソイドウリジン三リン酸のような、天然修飾ヌクレオチド、又は適当な人工ヌクレオチドさえも含むヌクレオチド混合物、並びにRNAポリメラーゼ(通常はT3、T7又はSP6 RNAポリメラーゼ)の存在下で、鋳型DNAからin vitroで転写される。さらに、翻訳効率を改善するためには、真核生物においては5'-キャップ構造(例えば7-メチルグアニル酸)を生成することが重要である。標準ヌクレオチド、天然修飾ヌクレオチド類似体又は適当な人工ヌクレオチド類似体のうち少なくとも1つの少なくとも一部は、ヌクレオチドにアルキン又はアジド修飾を含むように修飾される。
【0057】
どの種類のヌクレオチドがその方法に使用されるかによって、UTR及びORFのみにおいて(修飾CTP、GTP若しくはUTP、又はそれらの類似体で)、又は、UTR、ORF及びポリ(A)テールの全てにおいて(修飾ATPを単独で、又は、修飾CTP、GTP若しくはUTP又はそれらの類似体のうち1つ以上との組み合わせで)修飾が行われる。
【0058】
in vitro mRNA転写法(IVT)及びポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を行うための条件及び方法は、当業者によく知られている(例えば、Cao, G.J et al, N. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1992, 89, 10380-10384及びKrieg, P. A. et al,. Nucl. Acids Res. 1984, 12, 7057-7070)。
【0059】
このような条件及び方法は、十分な収量の修飾mRNAが得られる限り、特に重要ではない。この文脈において、最初に記載した方法で使われる鋳型DNAの種類も特に重要ではない。通常、転写されるDNAは、適当なプラスミドに含まれるが、線形形態で使用してもよい。さらに、鋳型DNAは、通常、プロモーター配列、特にT3、T7又はSP6プロモーター配列を含む。
【0060】
本発明の修飾mRNAの製造方法の間に、得られたmRNAが周知の方法を用いてキャップされることが好ましい(Muthukrishnan, S., et al, Nature 1975, 255, 33-37)。キャップするために必要な反応物質は市販されており、例えば、A.R.C.A.(P1-(5'-(3'-O-メチル)-7-メチル-グアノシル)P3-(5'-(グアノシル))三リン酸、キャップ類似体)である(Peng, Z.-H. et al, Org. Lett. 2002, 4(2), 161-164)。アルキン修飾ヌクレオチドとして、好ましくは、エチニル修飾ヌクレオチドが、最も好ましくは、5-エチニルUTP又は7-エチニル-7-デアザATPがこの方法に含まれる。アジド修飾ヌクレオチドとして、好ましくは、5-(3-アジドプロピル)UTP、3'-アジド-2', 3'-ジデオキシATP(3'末端でのみ)又は8-アジドATPが用いられる。
【0061】
本発明において、T7 RNAポリメラーゼを用いて転写プロセスを行い、微生物を用いた効率的な鋳型生成、ベクターの線形化後の続くin vitro転写のために適当なベクター中に鋳型DNAを準備することが好ましい。
【0062】
in vitro転写法の代わりとして、本発明のmRNAを生成するための原核生物又は真核生物系における発酵プロセスも、本発明の文脈に含まれる。この目的のために、通常、適当な発現ベクター(好ましくは、RNAポリメラーゼプロモーターの制御下に目的のDNAを含むプラスミド)に含まれる鋳型DNAを宿主細胞又は微生物に導入し、上記のようなそれぞれのヌクレオシド又はヌクレオチドプロドラッグが(十分な細胞取り込みを可能にするために)培養培地に含まれる。発酵的RNA産生は、当業者に知られている(例えば、Hungaro et al. (J Food Sci Technol. 2013 Oct; 50(5): 958-964)を参照)。
【0063】
このような具体的な方法に制限されるものではないが、例示目的で、発酵によるアルキン、アジド及びクリック修飾mRNAの生成について、細菌系においてより詳細に記載する:RNAポリメラーゼプロモーターの制御下に目的のmRNAをコードする鋳型DNAは、細菌細胞に導入される。これは、プラスミドのトランスフェクションによって行われることが好ましい。配列の設計は重要であり、好ましくは、所望のmRNAの生成に必要ないくつかの要素:RNAポリメラーゼプロモーター(例えば、T7又はSP6プロモーター);目的のオープンリーディングフレーム(ORF);及び、好ましくは、またポリ(A)領域をコードする配列(好ましくは、100~120 ntの長さ)を全て含む。さらに、このプラスミドは、複製起点、並びに細胞培養における制御された増殖及び増幅のための選択マーカーを含む。外部化合物の添加に際してmRNAの発現を選択的に誘導するために、そのオープンリーディングフレームのための遺伝子調節エレメント(例えば、lacオペロン)を有することが好ましい。重要なのはポリ(A)領域であり、精製の際にmRNAを他の全てのRNA(例えば、細菌のmRNA、tRNA及びrRNA)から識別し、またmRNA産物に十分な安定性及び翻訳効率を提供するために必要である。しかしながら、mRNAの発酵的生成の後に、本発明の文脈内で記載されるようなポリメラーゼA付加反応によって、ポリ(A)テール領域を導入してもよく、又は比較的短いポリ(A)テールを伸長、修飾することもまた、可能である。
【0064】
アルキン又はアジド修飾ヌクレオシドは増殖培地に添加され、トランスポーター又は受動的な機構によって細菌細胞に取り込まれる(J. Ye, B. van den Berg, EMBO journal, 2004, 23, 3187-3195)。細胞内でこれらのヌクレオシドは、キナーゼによって対応する三リン酸へとリン酸化され、mRNAに組み込まれ得る。ヌクレオシドの一リン酸化は遅いプロセスであるため、ヌクレオシドの一リン酸プロドラッグを供給して細胞内ヌクレオチド濃度を高めることが可能である(ソホスブビルの場合と同様)。
【0065】
アジド修飾mRNAの場合、生体直交型化学を用いたクリック反応、例えば、歪み促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)を細胞培養において行うことができる。したがって、シクロオクチン修飾タグ/標識又は機能性分子を培地に添加するのが好ましい。
【0066】
その後、配列内に修飾ヌクレオシドを含む新たに合成されたmRNAを、例えば、特定の樹脂及び/又はビーズに結合したポリ(T)オリゴヌクレオチド(例えば、Sigma AldrichのmRNA単離キット(cat No: 000000011741985001)のもの)を使用することにより精製する。
【0067】
原核細胞のmRNAは、ポリ(A)領域を含まないか、含んでいる場合でも20ntより長くないこと、それが、樹脂及び/又はビーズに結合したポリ(T)オリゴヌクレオチドに取り込まれ、したがって、原核生物mRNAから所望のmRNAの効率的な分離を可能にするのに十分ではないことがよく知られている。したがって、ポリ(A)テール領域を持たない、又は十分に長いポリ(a)テール領域を持たない発酵的に生成されたmRNAは、クロロホルムフェノール抽出、沈殿、及び、続くイオン交換クロマトグラフィーによる、粗製の細胞RNAの精製によって、他の公知の方法によって精製される必要がある。
【0068】
細菌株(例えば、大腸菌BL21(DE))は、RNAポリメラーゼ(例えば、T7 RNAポリメラーゼ)をゲノムDNAにインテグレートする(integrate)必要がある(例えば、DE3株)。その後、T7プロモーターを含むプラスミドが形質転換され、細菌細胞内でのin vivo転写中にアルキン又はアジド修飾ヌクレオシドを導入することができる場合には、mRNAの生成が可能である。
【0069】
原核生物のmRNAが5'CAP構造を欠いていることもよく知られている。本発明の修飾mRNAのこの重要な要素は、mRNAの精製後に導入するか、又は、細菌細胞を、真核生物キャッピング酵素を発現する別のプラスミドと共形質転換することによって、同時に導入することができる。
【0070】
さらなる代替策として、固相又はホスホロアミダイト合成によって本発明の修飾mRNAを生成することが可能であり、また、上記のように修飾ヌクレオチドを含むことが可能である。特に、(m)RNAがアジュバントとしての使用を意図しており、そのような目的でより短い分子又は非コード配列が考えられる場合には、合成による調製は簡便かつ効率的であり得る。それぞれの方法は当業者に利用可能であり、例えば、Marshall, W. S. et al. Curr. Opin. Chem. Biol. 2004, Vol. 8, No. 3, 222-229に記載されている。
【0071】
本発明の第二の方法は、まず、任意の適当な方法によって目的のmRNAを準備し、ポリ(A)ポリメラーゼ付加反応において、修飾アルキン又はアジド修飾ATP(又は類似体)を付加することによって、ポリ(A)テール領域のみでの修飾を可能にする。このようなポリ(A)ポリメラーゼ付加反応及び適当な条件は当業者によく知られており、それぞれの反応キットが市販されている。
【0072】
上記の第一及び第二の方法は、本発明の修飾mRNAを提供するために別々に使用することができるが、in vitro転写又は合成的mRNA生成、及びポリ(A)ポリメラーゼ付加反応の組み合わせを用いて、mRNA転写段階の間に、UTR、ORF及びポリ(A)テールに修飾アルキン及び/又はアジド修飾ヌクレオチドを含むことも可能である。第二の方法、つまりポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を追加的に行うことにより、ポリ(A)テールのさらなる伸長を達成することができ、ここで、ATPは、少なくとも部分的には、アルキン又はアジド修飾形態で(場合によっては、第一の方法によって導入される修飾とは異なる修飾形態で)含まれる。
【0073】
ポリ(A)テール領域の有無にかかわらず、原核生物におけるmRNAの発酵的生成の場合には、このようなポリ(A)テールを提供するために、又は既存のポリ(A)テール領域を伸長するために、ポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を含めることも可能である。このような実施形態において、その反応のための修飾されたアデニンヌクレオシド又はアデニンヌクレオチドプロドラッグを栄養培地中に含むことが好ましい選択肢である。あるいは、mRNA発酵プロセスのための修飾ヌクレオシド三リン酸は、ヌクレオチドトランスポータータンパク質の発現を使用して(D. A. Malyshev, K. Dhami, T. Lavergne, T. Chen, N. Dai, J. M. Foster, I. R. Correa, Jr., F. E. Romesberg, Nature 2014, 509, 385-388.)、又は供給培地に人工分子トランスポーターを添加することによって(Zbigniew Zawada et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 9891-9895)、直接内在化され得る。
【0074】
本発明のmRNA製造方法は、1種類の修飾ヌクレオチドのみを用いて、又は所望のアルキン若しくはアジド修飾を含む1つ以上のヌクレオチドを含むことで行うことができる。本発明において、1種類又は2種類の同様に修飾されたヌクレオチド、最も好ましくはアルキン又はアジド修飾されたウラシル又はアデニンを含むことが好ましい。アルキン修飾に関する限りでは、エチニル基は、その大きさにより、転写反応に最も負の影響を与えにくく、これを含むことが最も好ましい。
【0075】
本発明の別の好ましい実施形態では、ヌクレオチド混合物と共に2つの異なる修飾をされたヌクレオチドが転写中に含まれる。このようなプロセスの結果、アルキン及びアジド修飾を含む修飾mRNA分子が生じる。
【0076】
転写若しくは発酵の間に、又はポリ(A)ポリメラーゼ反応によって含まれる修飾ヌクレオチドの量に関して、特に制限は観察されない。理論的には、in vitro転写法で採用される全てのヌクレオチドは、アルキン又はアジド修飾核酸塩基を含むように修飾することができる。しかしながら、1種類又は2種類の修飾ヌクレオチドを使用すること、並びに、そのようなヌクレオチドを修飾形態及び非修飾形態で含めることも好ましい。所望の修飾割合に応じて、種々のヌクレオチドの修飾形態対非修飾形態を、1:100~10:1、好ましくは1:10~10:1、さらに好ましくは1:4~4:1又は1:2~2:1の比率で含むことが好ましい。最も好ましくは、修飾形態でのみ存在することができる修飾ヌクレオチドを1種類のみ採用するか、又は上述の比率で非修飾形態と組み合わせて採用することができる。好ましくは、修飾ヌクレオチド対非修飾ヌクレオチドが1:1、1:2又は1:10の組み合わせで提供される。
【0077】
修飾ヌクレオチド導入の比率は、本発明のmRNAに存在する修飾の数に対応する。したがって、mRNA内の又は様々な部分(つまり、UTR及びORF、若しくは、UTR、ORF及びポリ(A)テール、若しくは、ポリ(A)テール単独)内の修飾ヌクレオシド対非修飾ヌクレオシドの比率も、好ましくは1:100~10:1、より好ましくは1:10~10:1、さらに好ましくは1:4~4:1又は1:2若しくは2:1、並びに、最も好ましくは1:1、1:2又は1:10である。
【0078】
mRNAの安定性を改善し、生成されたmRNAの翻訳を増強するために、異なる修飾をされた天然ヌクレオチド(例えば、プソイドウリジン若しくはN1-メチル-プソイドウリジン)、及び/又は人工ヌクレオチド若しくはヌクレオチド誘導体を含むことがさらに可能であり、望ましいことがある。異なる修飾をされたヌクレオチド、及びin vitro転写の間のそれらのmRNAへの組み込みに関するさらなる情報は、Svitkin, Y.V. et al., Nucleic Acids Research 2017, Vol. 45, No. 10, 6023-6036から得ることができる。
【0079】
in vitro mRNA転写によって、既存の目的のmRNA上でのポリ(A)ポリメラーゼ付加反応によって、発酵プロセスによって、又は完全に合成的に生成され、アルキン又はアジド修飾のうち少なくとも1つを含む本発明の修飾mRNAは、クリック反応によってさらに修飾され、他の目的の分子、特に上で既に説明したような機能性分子を組み込むことができる。リンパ球、特に肥満細胞などのMHC1ペプチド提示細胞を標的とする細胞特異的な標的化基又はリガンドを組み込むことが特に好ましい。そのような機能性分子又はリガンドは上記でより詳細に記載されており、例えば、糖部分、脂肪酸部分、細胞型特異的抗体又はその断片、例えば、抗CD20又は抗CD19抗体又はその断片であり得る。
【0080】
ポリ(A)ポリメラーゼによって、アジド又はアルキン修飾ATP又はATP誘導体がmRNAに付加されたとき、ポリ(A)テール領域のみでの選択的修飾が上記のように達成される。この修飾されたポリ(A)テールのその後のクリック標識は、翻訳にはわずかな影響しか及ぼさず(この配列は翻訳されないため)、例えば、上で説明したように、mRNAの標的化取り込みを媒介する、又はヌクレアーゼ分解に対するmRNA安定性を増加させる組織特異的リガンドに使用することができる。特に、非常に大きな分子又は他の理由により翻訳を損なう分子を結合させたい場合には、ポリ(A)テールによる共役が、好ましいか、又は必須のアプローチでさえあり得る。
【0081】
クリック反応は当業者によく知られており、前掲のSharpless et al.及びMeldal et al.に一般的に言及されている。クリック反応の全体的な条件は、これらの文献に記載されており、Himo F. et al., J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 210-216における開示にさらに言及されており、これは、好ましい銅触媒アジド-アルキン付加環化(CuAAC)に関連する。クリック反応の条件及び反応物質に関して、欧州特許第2 416 878 B1号及び欧州特許出願第17 194 093号にも言及され、ここでは、クリック結合反応において第一の分子を第二の分子に共役させるための好ましい方法が記載されている。この文脈において、銅触媒クリック反応は、反応混合物中に二価金属カチオンの存在下で行うことが好ましく、最も好ましくはMg2+の存在下で行うことが好ましい。
【0082】
上述の文献には、DNA分子の結合におけるクリック反応が記載されているが、一般的に、本発明において同じ条件を適用することができる。したがって、クリック反応は、不均一なCu (I)触媒の存在下で実施することが好ましい。さらに、クリック反応の効率を改善するためのCu (I)の安定化リガンド及び/又は有機溶媒、特にDMSO、及び/又は二価カチオンを含むことが好ましい(例えば、PCT/EP2018/076495号に開示されているように)。
【0083】
さらに好ましい実施形態では、クリック反応は、本発明の修飾mRNAと関連して前述したように、歪み促進型アジド-アルキン付加環化(SPAAC)として行われる。CuAAC又はSPAAC反応の厳密な条件は、当業者に公知の基本要件が観察される限り、個々の状況に適合することができる。上述したように、SPAACは細胞の内部で行うこともできる。このような細胞にアルキン又はアジド修飾された標識を導入することは、修飾mRNAを細胞にトランスフェクションした後に、例えば細胞内のmRNAの位置をモニターするために有用であり得る。
【0084】
本発明は、mRNAに安定化効果を付与する修飾を含む修飾mRNA分子を、モジュール式で高効率で生成することを可能にする。修飾はまた、他の物質及び分子がクリック反応によって連結され得るアンカー分子としても有用である。このようなクリック反応は、転写反応とは別に、その下流で行うことが好ましく、特に、転写反応がそれによって完全に途絶されるであろう、大型でかさ高い目的の分子をmRNAに結合する場合に非常に有利である。
【0085】
したがって、本発明のmRNA及びその製造方法は、治療又はワクチン調製における特定の使用のために、改善された細胞又は組織特異的な標的化及び送達を提供するように修飾することができる、安定化され、カスタムに(customarily)修飾されたmRNAを生成するための容易で信頼性の高い方法を初めて提供する。
【0086】
本発明の修飾mRNAは個体に直接適用することができる。したがって、本発明のさらなる主題は、本発明の修飾mRNAを活性剤として含む医薬組成物である。すでに述べたように、mRNAベースの治療薬は最近重要な研究課題となっている。治療剤としてのmRNAの多数の用途が記載されており(例えば、Sahin et al、Schlake et al.及びKranz et al、全て前掲)、本発明の修飾mRNAは、このような用途の全てに使用できるばかりでなく、それらに利点及び改良を提供することさえできる。修飾mRNAの安定性の増強に基づいて、さらに、好ましくは存在する標的化基又は組織若しくは細胞特異的リガンドに基づいて、様々な問題を解決することができる。安定性の増強に起因して、例えば、非修飾mRNAと比較して、タンパク質への翻訳が延長する。さらに、組織若しくは細胞標的化基の存在は、治療的又は免疫原性処置の高い特異性及び標的化投与を可能にする。
【0087】
本発明に係る医薬組成物は、好ましくはmRNAワクチンとして適用される。ワクチン接種は、免疫応答を誘導するためのin situタンパク質発現に基づいて達成される。本発明の修飾mRNAから任意のタンパク質を発現することができるので、本医薬組成物は、所望の免疫応答に関して最大の柔軟性(flexibility)を提供することができる。また、修飾mRNAを用いることにより、様々なタンパク質成分又は不活性化されたウイルス粒子をも生成することが必要である従来の方法と比較して、非常に迅速な免疫代替策が提供される。従来の方法では通常、異なる製造方法を行うことが必要だが、本発明を用いると、感染性因子に関係する異なるタンパク質又はタンパク質部分をコードする様々なmRNAを、同じ調製方法で製造することができる。mRNAワクチン接種による免疫化は、単回のワクチン接種及び低用量のmRNAのみを用いることによってさえ達成可能である。DNAワクチンとは対照的に、RNAワクチンは核膜を通過する必要はなく、それどころか、細胞膜を通過して細胞質に到達するだけで十分である。mRNAワクチンの開発に関するさらなる情報は、例えば、前掲のSchlake et al.において開示されており、本発明においても適用可能である。本発明の修飾mRNAを含む医薬組成物は、予防的及び治療的ワクチンとして採用することができる。このワクチンは、あらゆる種類の病原体(例えば、最近注目されているジカウイルスのようなウイルス)に対するもの(Pardi et al.、前掲)、よりさらに現在関連するものとして、重篤な呼吸器疾患を生じるRNAウイルス、例えばコロナウイルス、特にSARS-CoV-2に対するものとすることができる。
【0088】
外因性病原体に対するワクチン接種に加えて、本発明の医薬組成物は、がん免疫治療において免疫系を刺激するために、又は抗腫瘍ワクチンとして使用することもできる。特に、樹状細胞又はマクロファージへの全身性RNA送達は、前掲のKranz et al.に記載されているように、がん免疫治療のための抗ウイルス防御機構を活用する可能性を提供する。例えば、マクロファージ又は樹状細胞を、特定の種類のがんにおいて又はそれに特異的なタンパク質を発現するmRNAで標的化することは、MHC分子によるそのようなタンパク質の一部の提示につながり、強力かつ特異的な免疫応答を誘発する。したがって、本発明の修飾mRNAは、抗原をコードするmRNAの薬理学においても使用することができる。
【0089】
RNAベースの免疫治療及びワクチン接種においては、免疫刺激性医薬組成物中に上記のような(m)RNAアジュバントを含むことが特に好ましい。アジュバントは、自然免疫応答の刺激を提供し、したがって、免疫治療効果をさらに増強する。この文脈において、本発明の修飾mRNA及び(m)RNAアジュバントは、同じ又は類似の配列を有し、同じタンパク質をコードすることさえできる。一方、非コード(m)RNAアジュバント又は異なるタンパク質若しくはペプチドをコードする(m)RNAアジュバントもまた、所望のアジュバント効果を達成するために組み合わせることができる。
【0090】
本発明の特に好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容されるアジュバント及び/又は担体を含む。本発明の特に好ましい実施形態では、組成物はアジュバントとしてSTING受容体アゴニストを含む。
【0091】
インターフェロン遺伝子の刺激因子(Stimulator of Interferon Genes:STING)は、ヒトにおけるTMEM173遺伝子によってコードされる膜貫通タンパク質である。このタンパク質は、細胞質DNAセンサー(CDS)及びI型インターフェロンシグナル伝達におけるアダプタータンパク質として働く受容体である。それは、細胞内病原体に対する抗ウイルス応答及び自然免疫応答に関与する下流の転写因子を活性化することが示されている。いくつかのウイルスは、STING依存性自然免疫応答を活性化することが示されている(Wikipedia, “Stimulator of interferon genes”を参照されたい)。このような受容体を活性化する分子は、最近の刊行物に記載されている。かかるSTINGアゴニストとしては、環状ジヌクレオチド(CDN)、例えば環状ジ-AMP(cGAS)又は環状GMP-AMP(cGAMP)などが挙げられる(Glen N. Barber, Nat Rev Immunol. 2015 December; 15(12);760-770, doi: 10.1038/nri3921;Li et al., Journal of Hematology & Oncology, https://doi.org/10.1186/s13045-019-0721-x)。また、DNA分子又は断片はSTINGに結合し、応答を誘発し得る。そのようなアゴニストによって誘発されるSTINGシグナル伝達はDNAウイルス及びレトロウイルスに対する免疫を促進し、RNAウイルスの複製を抑制し、適応性抗腫瘍免疫を促進することもできる。STING経路は、ひとたび誘発されると、感染細胞又は損傷細胞を貪食する免疫細胞を誘引することができる自然免疫応答を生じる(Glen N. Barber、前掲)。
【0092】
本発明の文脈内では、上記のようなSTINGアゴニスト、しかしながら、STINGを活性化する他の分子もまた、本発明の医薬組成物又はワクチンに含まれ、さらに高い免疫応答を誘発し、免疫記憶を確実にするために、本発明の修飾mRNAと共に投与される好ましいアジュバントである。
【0093】
さらなるアジュバントとして、好ましくはSTING受容体アゴニストに加えて、mRNAは、カチオン性若しくはポリカチオン性化合物と複合体化され得る。さらに好ましい実施形態において、医薬組成物は、mRNAを分解からさらに保護する複合化剤を含む。複合化剤は、細胞による取り込み及びタンパク質への同時翻訳(concurrent translation)を改善し、増強し得る。複合化剤として、脂質又はポリマーがこの医薬組成物に含まれてもよい。さらに好ましい実施形態において、医薬組成物は、リポソームに封入された修飾mRNAを含んでもよい。
【0094】
さらに好ましい実施形態では、医薬組成物はカチオン性脂質を含む。サイトゾルへの核酸の送達をさらに改善する薬剤もまた、好ましくは、本発明の医薬組成物に含まれ得る。このような薬剤は、特定の送達経路へと合わせることができる。要約すれば、本発明の医薬組成物は、本発明の修飾mRNAを活性剤として含む一方で、活性物質の安定性をさらに改善し、標的細胞の細胞質への送達を増強し、かつ、他の補完的又は相乗的効果を提供するための任意のさらなる物質並びに上述したアジュバント、賦形剤及び担体の任意の組み合わせを含むことができる。
【0095】
本発明のなおさらなる主題は、本発明の修飾mRNAを調製するためのキットである。このようなキットは、in vitro転写法、発酵プロセス、又はポリ(A)ポリメラーゼ付加反応によって修飾mRNAを調製するために必要な様々な物質を含む。かかるキットは、RNAポリメラーゼ及び/又はポリ(A)ポリメラーゼ、アルキン又はアジド修飾ヌクレオチド及び非修飾ヌクレオチド、並びに、場合によって、さらなる緩衝物質及び溶媒、又はこの方法に必要なさらなる物質のいずれかの組み合わせを含む。好ましい実施形態では、アルキン及び/又はアジド修飾された機能性分子、並びに、修飾mRNAと機能性分子との間のクリック反応を行うのに必要な物質も含まれる。また、本発明の修飾mRNAを完全に合成的に生成するためのキットは、本発明のさらなる主題である。必要な物質は、別々の容器に入れて提供してもよいし、又は、そのような混合した物質間で有害反応が起こらない限り混合してもよい。このような部分のキット(キットオブパーツ)に含まれる様々な物質に関しては、本発明の修飾mRNA及びそのような修飾mRNAを調製方法に関連して、上記に言及されている。修飾された(m)RNAアジュバントの製造に関する限り、このようなキットは、好ましい実施形態によって(m)RNAと複合体を形成するために使用されるカチオン性又はポリカチオン性化合物も含むことが好ましい。本発明のキットはまた、ex vivo又はin vivoでの、本発明の修飾mRNAの細胞への送達を容易にするさらなる物質を含んでもよい。
【0096】
好ましい実施形態において、キットは、好ましくはクリック反応によって導入される機能性分子を含む本発明の修飾mRNAを少なくとも1つを含むか、又は、修飾mRNA及びアルキン若しくはアジド修飾された機能性分子、並びに、任意に他のクリック試薬を別々の容器で提供する。
【0097】
本発明のさらなる実施形態では、修飾mRNAを患者に送達するためのキットは、mRNA、及び好ましくは(m)RNAアジュバントも含み、いずれも本発明に従って修飾される。修飾mRNA及び修飾された(m)RNAアジュバントは、1つの単一容器又は別々の容器に入れることができ、いずれも、場合によっては、クリック反応によって既に結合されているか、又は後でクリック反応を行うために別々の容器に存在する、アルキン若しくはアジド修飾された標識若しくは機能性分子を含んでもよい。キットはさらに、他の医薬的に許容可能な担体及びアジュバントを、これもまた、別々の容器中で、又はキットの少なくとも1つの他の成分と混合して、含んでもよい。特に好ましいアジュバントは、上述したSTINGアゴニストである。
【0098】
キットに、本発明の修飾mRNAの調製又は使用を容易にする物質を、多くの異なる組み合わせで含めることができることは、当業者には明らかであろう。本発明において上述した全ての実施形態及びそのバリエーションは、ここに記載したキットにも適用可能である。本発明の目的のために、物質の全ての適当な組み合せが含まれる。
【0099】
本発明のさらなる態様は、治療及び/又は予防適用(用途)における使用のための、上記のそれぞれの修飾mRNA又は医薬組成物である。好ましくは、そのような適用(用途)は、ウイルス感染、特にコロナウイルス感染、最も好ましくはSARS-CoV-2感染に対するワクチン接種のための使用を含む。ワクチン接種の文脈における予防適用は、ヒト及び動物の使用のためである。
【0100】
したがって、さらなる態様において、本発明は、ウイルス感染、特にコロナウイルス感染、最も重要なことにはSARS-CoV-2による現在の脅威に対する個体のワクチン接種のための方法を提供する。本発明の方法は、有効量の修飾mRNA又は医薬組成物/ワクチンを個体に投与することを含む。
【0101】
特に、例えばSARS-CoV-2分離株Wuhan-Hu-1についてGenBank登録MN908947.3に開示されているような、SARS-CoV-2タンパク質N及び/又はタンパク質E、又はわずかに修飾された配列をコードする修飾mRNAと、STINGアゴニストとの組み合わせが使用される場合、非常に効果的な免疫化が得られる。この文脈において、ウイルスタンパク質をコードする修飾mRNA及びSTINGアゴニストアジュバントは、1つの単一製剤で一緒に適用され得るか、又は別個の投与剤形で連続的に適用され得る。本発明の非常に好ましい実施形態において、ウイルスタンパク質(複数可)をコードするmRNAは、上に記載され、図3及び7に示されるように、マンノース-クリック-リンカー又はGalNAc-クリックリンカーに連結される。このようなmRNAワクチンについて、細胞の非常に効率的なトランスフェクション及びウイルスタンパク質の発現を検出することができた。
【0102】
本出願の文脈において、医薬組成物又はワクチンの投与は、全ての通常の方法で、特に経皮的又は筋肉内的に実施することができる。
【0103】
要約すると、本発明は、ウイルスタンパク質又は抗がんタンパク質又はそれらの部分若しくはエピトープをコードする修飾mRNAが、抗ウイルスワクチン又は抗がんワクチンを提供するために効率的に使用され得るという本発明者らの発見に基づく。本発明のmRNA内に含まれる修飾は非常に特異的な細胞標的化及び効率的な送達又は細胞トランスフェクションを可能にし、LNPを使用しなくても、ウイルス又は抗がんタンパク質の信頼できる発現をもたらす。また、修飾に起因して、mRNAはより安定であり、したがって、コードされたタンパク質へのインビボ翻訳のためにより長く利用可能である。ウイルス又は抗がんタンパク質によるこの攻撃に応答して、免疫系は免疫応答を生じる。応答は、アジュバント、特にSTING受容体アゴニストの添加によって増強することもできる。したがって、本発明は膨大な数の感染性生物に対するワクチン生成のためのツールボックスの開発のための固い基礎を提供するが、免疫学的がん治療方法においても使用するためのものである。
【0104】
本発明のmRNAに関して本開示において提供されるすべての情報及び特徴は、そのようなmRNAを含有する医薬組成物の文脈において等しく適用され、逆もまた同様であることを理解されたい。同じ考察が、本発明のmRNAの生成方法、mRNAを含む使用及び方法、並びに本発明のキットにも当てはまる。したがって、たとえ明示的に繰り返されていなくても、本発明の一態様について記載したすべての実施形態は、他の実施形態にも同様に適用可能である。
【0105】
図面及び以下の実施例は、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1A図1Aは、A. Wadhwaら、Pharmaceutics 2020年、12巻(2号)からの描写を示し、in vitroで転写されたmRNAを、脂質ナノ粒子(LNP)によって送達される遺伝情報のキャリアとして提供し、ひいては、生物がその自身の治癒を発達させることを可能にすることに基づく、mRNA療法の背後にある基本原理を表す。ワクチン接種では、特定の抗原をコードするmRNAを使用して免疫応答を生成する。
図1B図1Bは、修飾mRNAによる非LNP標的化ワクチンを表す。
図2図2は、コロナウイルスSARS-CoV粒子の概略図である(Peirisら、2003から引用)。
図3図3は、修飾ワクチンmRNAの概略図である。
図4A図4A及び4Bは、トランスフェクト剤(糖-クリック-リンカー)の構造を示す。
図4B図4A及び4Bは、トランスフェクト剤(糖-クリック-リンカー)の構造を示す。
図5図5は、マンノース-及びGalNAc-クリック-リンカーの構造及びその生成を示す。
図6-1】図6は、さらなるマンノース-クリック-リンカー及びその生成を示す。
図6-2】図6は、さらなるマンノース-クリック-リンカー及びその生成を示す。
図7図7は、mRNAワクチンの開発を示す。
図8A図8A及び8Bは、SARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質又はエンベロープタンパク質の配列を含有するプラスミドPstiA-120のマップを示す。
図8B図8A及び8Bは、SARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質又はエンベロープタンパク質の配列を含有するプラスミドPstiA-120のマップを示す。
図9図9は、エンベロープ(E)及びヌクレオカプシド(N)タンパク質のプラスミド及びmRNAの分析のためのアガロースゲルを示す。レーン2~4:N-E及び対照としてYFPを含有する直線化されたpStiA120。レーン5~6:N-遺伝子のmRNA。レーン7~8:E遺伝子のmRNA。レーン9~10:YFP対照のmRNA。
図10A図10は、A)アジド修飾mRNA、B)化合物1、C)室温で3時間のインキュベーション後のクリック生成物のHPLクロマトグラムを示す。
図10B図10は、A)アジド修飾mRNA、B)化合物1、C)室温で3時間のインキュベーション後のクリック生成物のHPLクロマトグラムを示す。
図10C図10は、A)アジド修飾mRNA、B)化合物1、C)室温で3時間のインキュベーション後のクリック生成物のHPLクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0107】
[実施例1]
SARS-CoV-2のN及びEタンパク質をコードするプラスミドの調製
新規コロナウイルス、SARS-CoV-2のヌクレオカプシド(N)及びエンベロープ(E)タンパク質のコード配列(NCBI GenBank:MN908947.3、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2分離株Wuhan-Hu-1、完全ゲノムhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/MN908947)を、対応するmRNAの生成のためにベクター中に導入した。以前にすでに使用された(S.Croceら、ChemBioChem 2020年、21)ベクターPstIA-120を、Gybosnアセンブリーマスターミックス(New England Biolabs)を製造業者の使用説明書に従って使用して強化型緑色蛍光タンパク質(eGFP)オープンリーディングフレーム(ORF)を、SARS-CoV-2のN及びE ORFと置き換えることによって改変した。Gybsonアセンブリーに必要なN、E及び4つのプライマーの配列をEurofins Genomicsから注文した(表1)。
【0108】
入手した2つのプラスミド(E及びN)約100ngを、製造業者の推奨に従って5-アルファ大腸菌(Escherichia coli)細胞(NEB)に形質転換し、次いでそれを使用して選択マーカーとして50μg/mLのカナマイシンを含有するLB培地(10g/Lトリプトン、5g/L酵母抽出物、10g/L NaCl)20mLに接種した。次いで、plasmid plus midi精製キット(Qiagen)を製造業者の使用説明書に従って使用して、プラスミドを単離した。次いで、得られた2つのプラスミドをSangerシーケンシング(Eurofins)によってシーケンシングし、最終的な突然変異を、Q5部位直接突然変異誘発キットの製造業者の使用説明書に従って直接部位突然変異誘発によって修正した。Eプラスミド中の1つの突然変異及びNプラスミド中の3つの突然変異を、表2で報告されたプライマーを使用して修正した。
【0109】
得られたプラスミドを、次いで、BspQ1制限酵素(NEB)を製造業者の推奨に従って使用して直線化した。これは、ポリAテールをコードする配列の直後で終わる直線DNA鋳型をもたらす。ナノフォトメーター測定(A260/A280比)及びアガロースゲル電気泳動によって、DNA鋳型の純度を評価した。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
[実施例2]
タンパク質N及びEをコードするmRNAの生成
mRNA生成は、T7 RNAポリメラーゼを使用して実施例1において得られたプラスミドの直鎖バージョンからのin vitro転写によって実施した。
【0113】
50μLの最終反応容量において、転写バッファー(40mM Tris-HCl、pH7.9、6mM MgCl2、4mMスペルミジン、10mM DTT)中に、20ユニットのT7 RNAポリメラーゼ(THERMO FISHER)、1μgの直鎖鋳型DNA及びいくつかのヌクレオチドを合わせた。
【0114】
【表3】
【0115】
転写反応物を、37℃で2時間インキュベートし、次いで、2ユニットのDNアーゼI(THERMO FISHER)を添加し、37℃で15分間インキュベートして、DNA鋳型を消化し、その除去を容易にした。mRNAを、製造業者の使用説明書(QIAGEN)に従ってスピンカラム法によって精製した。
【0116】
1μgのプラスミドから、約12μgのmRNAが生成される。
【0117】
mRNAは、リボソーム結合部位(rbs)を有する5'非翻訳領域(UTR)、タンパク質のオープンリーディングフレーム(ORF)、ヒトベータグロブリン3'UTRの2つの繰り返し配列及びポリ(A)テールからなる3'UTRから構成される。N mRNAは、1730ntから構成され、E mRNAは、700ntから構成される。スピンカラム法(Quiagen)を使用して精製した後、ナノドロップ及びアガロースゲル分析によって、mRNAの品質を引き続き決定した。結果は、図9に示されている。
【0118】
[実施例3]
mRNAの3'アジド標識及びマンノース修飾
25μLの反応容量において、反応バッファー(20mM Tris-HCl、pH7.0、0.6mM MnCl2、20μM EDTA、200μM DTT、10μg/mLアセチル化BSA、10%グリセロール)中に、600ユニットの酵母ポリ(A)ポリメラーゼ、10μgのmRNA及び3'-アジド-2',3'-ddATP(0.5mMの最終濃度)を合わせた。混合物を、37℃で20分間インキュベートした。mRNAを製造業者の使用説明書(Qiagen)に従ってスピンカラム法によって精製した。
【0119】
マンノースベースのトランスフェクション剤合成
【0120】
【化1】
【0121】
化合物1.100μLのDMFに4-アミノフェニル-3,6-ジ-O-(α-D-マンノピラノシル)-α-D-マンノピラノシド(10mg、16.8μmol、1当量)を溶解した。DBCO-PEG5-NHS(23.3mg、33.6μmol、2当量)及びEt3N(7μL、50.7μmol、3当量)を添加し、溶液を室温で1時間撹拌した。溶媒を真空除去し、逆相分取HPLCによって粗材料を精製して、1を35%の収率(7mg、5.96μmol)で得た。
【0122】
SPAACのモデルシステム
歪み促進型アジド-アルキン環化付加の効率を証明するために、5'アジドを含有する短いRNAオリゴヌクレオチド(31マー)をモデル鋳型として使用した。30μLの総反応容量において、4μgのRNAオリゴ及び2nmolの化合物1を合わせ、室温で3時間インキュベートし、得られた生成物をHPLCによって分析した(図10)。
【0123】
SPAACによるmRNAワクチンの生成
クリック標識が実施された場合には、30μLの総反応容量において10μgの精製アジドmRNA、2nmolの化合物1を合わせた。反応混合物を室温で一晩インキュベートし、次いで、製造業者の使用説明書(Qiagen)に従ってスピンカラム法を使用して清浄した。
【0124】
図10は、SpAAC修飾反応のHPLクロマトグラムを示す。パートAにおいて、より高いピークはアジド修飾mRNAを表し、より小さいピークは、未修飾オリゴヌクレオチドを表す。パートBにおけるピークは、DBCO 3-マンノース構造を表し、パートCは、未反応オリゴヌクレオチド、室温で2時間のインキュベーション後のクリックされた生成物及び残存するDBCO 3-マンノース構造を示す。HPLCクロマトグラムは、95%より多い変換を示す。
【0125】
以下の項目も本明細書において開示される:
【0126】
項目1:
抗原、例えばウイルスタンパク質、そのようなウイルスタンパク質の免疫学的に活性な部分又は抗がんタンパク質又はエピトープをそのORF内でコードする修飾メッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのヌクレオチドにおいてアルキン又はアジド修飾のうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする、修飾メッセンジャーRNA(mRNA)。
【0127】
項目2:
ウイルスタンパク質が、コロナウイルスタンパク質、好ましくはコロナウイルス核タンパク質、最も好ましくはSARS-CoV-2の核タンパク質N及びエンベロープタンパク質Eのうちの一方又は両方である、項目1に記載の修飾mRNA。
【0128】
項目3:
5'-キャップ構造、5'-非翻訳領域(5'-UTR)、オープンリーディングフレーム領域(ORF)、3'-非翻訳領域(3'-UTR)及びポリ(A)テール領域を含み、ORF、5'-UTR、3'-UTR及びポリ(A)テール領域のうちの少なくとも1つ内の少なくとも1つのヌクレオチドにおいてアルキン又はアジド修飾のうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする、項目1又は2に記載の修飾mRNA。
【0129】
項目4:
a)ORF及びUTR、
b)ORF、UTR及びポリ(A)テール、又は
c)ポリ(A)テールのみ
に修飾ヌクレオチドを含有することを特徴とする、項目1~3のいずれか1つに記載の修飾mRNA。
【0130】
項目5:
4つの標準型のヌクレオチド(AMP、CMP、GMP、UMP)のうちの少なくとも1つが、部分的又は完全に修飾されている、好ましくはウラシル又はアデニンでエチニル又はアジド修飾されている、項目1~4のいずれか1つに記載の修飾mRNA。
【0131】
項目6:
少なくとも1つのヌクレオチドがアルキン修飾されており、少なくとも1つのヌクレオチドがアジド修飾されている、項目1~5のいずれか1つに記載の修飾mRNA。
【0132】
項目7:
4つの標準型のヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、修飾形態で、非修飾形態に対して1:100~10:1、好ましくは1:10~1:10又は1:1の比で存在する、前記項目のうちのいずれか1つに記載の修飾mRNA。
【0133】
項目8:
別の方法で修飾された天然又は人工ヌクレオチド、好ましくはプソイドウリジン又はN1-メチルプソイドウリジンを含有する、前記項目のうちのいずれか1つに記載の修飾mRNA。
【0134】
項目9:
修飾mRNAと、対応して修飾されたアルキン又はアジド含有機能性分子(複数可)とのクリック反応によって導入された機能性分子(複数可)を含有する、前記項目のうちのいずれか1つに記載の修飾mRNA。
【0135】
項目10:
機能性分子が、mRNAの半減期を増大する、mRNAの発現を増強する、アジュバントとして作用する、又は細胞特異的標的化基若しくはリガンドである物質である、項目9に記載の修飾mRNA。
【0136】
項目11:
機能性分子が、糖部分、脂肪酸部分、細胞種特異的抗体又はかかる抗体の断片、特に抗CD20若しくは抗CD19抗体又は抗体断片である、項目9又は10に記載の修飾mRNA。
【0137】
項目12:
糖部分が、マンノース及び/又はN-アセチルガラクトサミンを含む、項目11に記載の修飾mRNA。
【0138】
項目13:
機能性分子が、1つ以上の結合された糖部分を含むリンカー分子を含む、項目9~12のいずれか1つに記載の修飾mRNA。
【0139】
項目14:
機能性分子が、リンパ球、特にMHC1ペプチド提示細胞、例えば、肥満細胞を標的とする、項目9~13のいずれか1つに記載の修飾mRNA。
【0140】
項目15:
カチオン性又はポリカチオン性化合物と複合体形成している、少なくとも1つのヌクレオチドにおいて少なくとも1つのアルキン又はアジド修飾を含有する修飾RNA又は項目1~14のいずれか1つに記載の修飾mRNA。
【0141】
項目16:
前記項目のうちのいずれか1つに記載の修飾mRNAを生成方法するための方法であって、前記方法が、DNA鋳型からmRNAをin vitro転写すること、或いは、原核又は真核宿主細胞を使用する発酵プロセスを実施して発現ベクター中に含まれるDNA鋳型を発現させることを含み、前記方法が、mRNA転写に必要なRNAポリメラーゼ及び4つの標準型のヌクレオチドを含有するヌクレオチド混合物の存在下で実施され、ヌクレオチド混合物において4種のヌクレオチドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が、アルキン又はアジド修飾を含有するように修飾されている、方法。
【0142】
項目17:
ポリ(A)テールにアルキン又はアジド修飾を含有する修飾mRNAを生成するための方法であって、ATPの存在下でmRNA上のポリ(A)テールでポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を実施することを含み、ATPが、アデノシンで少なくとも部分的にアルキン又はアジド修飾されている、方法。
【0143】
項目18:
クリック反応を実施する条件下で、1つ以上の対応してアルキン又はアジド修飾された機能性分子を添加して、項目9~13のいずれか1つに記載の修飾mRNAを生成することをさらに含む、項目16又は17に記載の方法。
【0144】
項目19:
活性薬剤としての項目1~15のいずれか1つに記載の修飾mRNAを含む、場合により、薬学的に許容されるアジュバント若しくは賦形剤と組み合わせて、及び/又は薬学的に許容される担体中に含有されて含む、医薬組成物。
【0145】
項目20:
アジュバントが、STING受容体アゴニストである、項目19に記載の医薬組成物。
【0146】
項目21:
mRNAベースの治療及び/又は予防適用において使用するための、項目1~5のいずれか1つに記載の修飾mRNA又は項目19若しくは20に記載の医薬組成物。
【0147】
項目22:
治療及び/又は予防適用が、ウイルス感染に対する、特にコロナウイルス感染に対する、最も好ましくはSARS-CoV-2感染に対するワクチン接種を含む、項目21に記載の治療及び/又は予防適用において使用するための、項目1~15のいずれか1つに記載の修飾mRNA又は項目19若しくは20に記載の医薬組成物。
【0148】
項目23:
ヒト又は動物における項目21に記載の予防適用において使用するための、項目1~15のいずれか1つに記載の修飾mRNA又は項目19若しくは20に記載の医薬組成物。
【0149】
項目24:
項目1~15のいずれか1つに記載の修飾mRNAの生成及び/又は送達のためのキット。
【0150】
項目25:
ウイルス感染に対する、特にコロナウイルス感染に対する、最も好ましくはSARS-CoV-2感染に対する個体のワクチン接種のための方法であって、かかる個体に有効量の項目1~15のいずれか1つに記載の修飾mRNA又は項目19若しくは20に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
【配列表】
2023518739000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2の核タンパク質NをそのORF内でコードする修飾メッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのヌクレオチドにおいてアルキン又はアジド修飾のうちの少なくとも1つを含有し、該修飾mRNAが、該修飾mRNAと、対応して修飾されたアルキン又はアジド含有機能性分子とのクリック反応によって導入された少なくとも1つの機能性分子を含有し、該機能性分子が、免疫担当細胞、特にMHC1ペプチド提示細胞を標的とする細胞特異的標的化基又はリガンドであることを特徴とする、修飾メッセンジャーRNA(mRNA)。
【請求項2】
5'-キャップ構造、5'-非翻訳領域(5'-UTR)、オープンリーディングフレーム領域(ORF)、3'-非翻訳領域(3'-UTR)及びポリ(A)テール領域を含み、ORF、5'-UTR、3'-UTR及びポリ(A)テール領域のうちの少なくとも1つ内の少なくとも1つのヌクレオチドにおいてアルキン又はアジド修飾のうちの少なくとも1つを含有することを特徴とする、請求項1に記載の修飾mRNA。
【請求項3】
a)ORF及びUTR、
b)ORF、UTR及びポリ(A)テール、又は
c)ポリ(A)テールのみ
に修飾ヌクレオチドを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の修飾mRNA。
【請求項4】
4つの標準型のヌクレオチド(AMP、CMP、GMP、UMP)のうちの少なくとも1つが、部分的又は完全に修飾されている、例えば、ウラシル又はアデニンでエチニル、エテニル、テトラジン又はアジド修飾されている、好ましくはウラシル又はアデニンでエチニル又はアジド修飾されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項5】
少なくとも1つのヌクレオチドがアルキン修飾されており、少なくとも1つのヌクレオチドがアジド修飾されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項6】
4つの標準型のヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、修飾形態で、非修飾形態に対して1:100~10:1、好ましくは1:10~1:10又は1:1の比で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項7】
別の方法で修飾された天然又は人工ヌクレオチド、好ましくはエテニル-ウリジン、プソイドウリジン又はN1-メチルプソイドウリジンを含有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項8】
修飾mRNAと、対応して修飾されたアルキン又はアジド含有機能性分子(複数可)とのクリック反応によって導入されたさらなる機能性分子(複数可)を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項9】
さらなる機能性分子が、mRNAの半減期を増大する、mRNAの発現を増強する、又はアジュバントとして作用する物質である、請求項8に記載の修飾mRNA。
【請求項10】
機能性分子が、糖部分、脂肪酸部分、細胞種特異的抗体又はかかる抗体の断片、特に抗CD20若しくは抗CD19抗体又は抗体断片である、請求項1から9のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項11】
糖部分が、マンノース及び/又はN-アセチルガラクトサミンを含む、請求項10に記載の修飾mRNA。
【請求項12】
機能性分子が、1つ以上の結合された糖部分を含むリンカー分子を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項13】
機能性分子が、MHC1ペプチド提示細胞、リンパ球又は肥満細胞を標的とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項14】
カチオン性又はポリカチオン性化合物と複合体形成している、少なくとも1つのヌクレオチドにおいて少なくとも1つのアルキン又はアジド修飾を含有する修飾RNA又は請求項1から13のいずれか一項に記載の修飾mRNA。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の修飾mRNAを生成するための方法であって、前記方法が、DNA鋳型からmRNAをin vitro転写すること、或いは、原核若しくは真核宿主細胞を使用する発酵プロセスを実施して発現ベクター中に含まれるDNA鋳型を発現させることを含み、前記方法が、mRNA転写に必要なRNAポリメラーゼ及び4つの標準型のヌクレオチドを含有するヌクレオチド混合物の存在下で実施され、ヌクレオチド混合物において4種のヌクレオチドのうちの少なくとも1つの少なくとも一部が、アルキン又はアジド修飾を含有するように修飾されている、方法。
【請求項16】
ポリ(A)テールにアルキン又はアジド修飾を含有する修飾mRNAを生成するための方法であって、ATPの存在下でmRNA上のポリ(A)テールでポリ(A)ポリメラーゼ付加反応を実施することを含み、ATPが、アデノシンで少なくとも部分的にアルキン又はアジド修飾されている、方法。
【請求項17】
クリック反応を実施する条件下で、1つ以上の対応してアルキン又はアジド修飾された機能性分子を添加して、請求項8から12のいずれか一項に記載の修飾mRNAを生成することをさらに含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
活性薬剤としての請求項1から14のいずれか一項に記載の修飾mRNAを含む、場合により、薬学的に許容されるアジュバント若しくは賦形剤と組み合わせて、及び/又は薬学的に許容される担体中に含有されて含む、医薬組成物。
【請求項19】
アジュバントが、STING受容体アゴニストである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
mRNAベースの治療及び/又は予防適用において使用するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項18若しくは19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
治療及び/又は予防適用が、ウイルス感染に対する、特にコロナウイルス感染に対する、最も好ましくはSARS-CoV-2感染に対するワクチン接種を含む、請求項20に記載の治療及び/又は予防適用において使用するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項18若しくは19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
ヒト又は動物における請求項20に記載の予防適用において使用するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項18若しくは19に記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項1から14のいずれか一項に記載の修飾mRNAの生成及び/又は送達のためのキット。
【請求項24】
ウイルス感染に対する、特にコロナウイルス感染に対する、最も好ましくはSARS-CoV-2感染に対する個体のワクチン接種のための方法であって、かかる個体に有効量の請求項1から14のいずれか一項に記載の修飾mRNA又は請求項18若しくは19に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【国際調査報告】