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特表2023-518742抗インターフェロンγ抗体を検出するための免疫クロマトグラフィーによる方法及びキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】抗インターフェロンγ抗体を検出するための免疫クロマトグラフィーによる方法及びキット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230426BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/543 501A
G01N33/543 541Z
G01N33/543 575
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555985
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 TH2021000029
(87)【国際公開番号】W WO2022005408
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】2001003762
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516115647
【氏名又は名称】マヒドン ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】520498309
【氏名又は名称】チェンマイ・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】タヤピワタナ,チャッチャイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤサムト,アンパ
(72)【発明者】
【氏名】コチャカーン,ワシラ
(72)【発明者】
【氏名】トンクム,ウィラヤ
(72)【発明者】
【氏名】サッカーチョンフォプ,スパチャイ
(72)【発明者】
【氏名】ポルポン,ナッタポン
(72)【発明者】
【氏名】ポーンプラシット,ラウィワン
(72)【発明者】
【氏名】トンカムウィトーン,ワンウィサ
(72)【発明者】
【氏名】チャイチャナン,ジラパン
(72)【発明者】
【氏名】カオプラブ,ジャルワン
(72)【発明者】
【氏名】チャンプラダブ,チョンニカム
(57)【要約】
本開示は、対象から得た体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体の存在を検出するための装置を提供する。上述の装置は、体液サンプルを含む溶媒相を付着させるためのサンプル領域と、ビオチンで標識した第1組換えIFN-γ、及びシグナリング部分を連結した第1抗体を含む複数の第1複合体を含浸させた反応領域であって、第1抗体は、標識ビオチンに結合することで第1複合体を形成するように第1組換えIFN-γにカップリングする、反応領域と、複数の第2組換えIFN-γを固定させた試験領域とを含むことができる。サンプル領域、反応領域、及び試験領域は、クロマトグラフィーの固相の第1端部から第2端部へと連続して配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から得た体液サンプルにおける抗インターフェロンγ抗体の存在を検出するための装置であって、
前記体液サンプルを含む溶媒相を付着させるためのサンプル領域と、
ビオチンで標識した第1組換えインターフェロンγ、及びシグナル部分を連結した第1抗体を含む複数の第1複合体を含浸させた反応領域であって、前記第1抗体は、標識した前記ビオチンに結合することで前記第1複合体を形成するように前記第1組換えインターフェロンγにカップリングする、反応領域と、
複数の第2組換えインターフェロンγを固定させた試験領域とを含み、
前記サンプル領域、前記反応領域、及び前記試験領域は、クロマトグラフィーの固相の第1端部から第2端部へと連続して配置され、
前記溶媒相は、前記体液サンプルに存在する前記抗インターフェロンγ抗体と共に前記固相の前記第1端部から前記第2端部へと移動して、前記第1複合体が、前記反応領域において前記抗インターフェロンγ抗体に連結して第2複合体を形成し、前記第1複合体と前記第2複合体とが前記試験領域にさらに移動して、前記第2複合体が固定した前記第2組換えインターフェロンγに結合して第1視覚シグナルを提供し、
前記試験領域において得られた前記第1視覚シグナルは、前記体液サンプルにおける前記抗インターフェロンγ抗体の存在を示す、装置。
【請求項2】
そこに固着されるとともに前記第1抗体に結合するように構成された基質を含み、前記クロマトグラフィーの固相において前記試験領域の後に隣接して配置される、コントロール領域をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記試験領域において結合していない前記第1複合体及び前記第2複合体は前記コントロール領域にさらに移動し、前記第1複合体及び前記第2複合体が前記第1抗体によって前記基質に結合して、第2視覚シグナルを提供する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記コントロール領域の一端部につながって、前記第2端部の少なくとも一部を形成する、吸収要素をさらに含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記吸収要素は、セルロース繊維シート、ろ紙、及びパルプのいずれか1つ又は組合せである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第2組換えIFN-γ及び/又は前記基質は合成膜に固定される、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記第1抗体は抗ビオチン抗体である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記シグナル部分はAuNP、蛍光物質、又は量子ドットである、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記抗インターフェロンγはIgG、IgM、又はIgAのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
固定した前記第2組換えインターフェロンγと前記第1複合体とは、1:1~1:10のモル比である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
固定した前記第2組換えインターフェロンγと前記基質とは、1:2~1:10のモル比である、請求項2に記載の装置。
【請求項12】
対象から得た体液サンプルにおける抗インターフェロンγ抗体の存在を検出するための方法であって、
サンプル領域において前記体液サンプルを含む溶媒相を付着させるステップと、
前記体液サンプルに存在する抗インターフェロンγ抗体と共に前記溶媒相を反応領域に誘導し、前記反応領域は、ビオチンで標識した第1組換えインターフェロンγ、及びシグナル部分を連結した第1抗体を含む複数の第1複合体を含浸させており、前記第1抗体は、標識した前記ビオチンに結合することで前記第1複合体を形成するように前記第1組換えインターフェロンγにカップリングし、前記第1複合体は、前記反応領域において前記抗インターフェロンγ抗体に連結して第2複合体を形成するように構成される、ステップと、
前記溶媒相を、形成した前記第2複合体及び前記第1複合体と共に、複数の第2組換えインターフェロンγを固定した試験領域にさらに移動させるように誘導し、前記第2複合体は固定した前記第2組換えインターフェロンγに結合して、第1視覚シグナルを提供するように構成される、ステップとを含み、
前記サンプル領域、前記反応領域、及び前記試験領域は、クロマトグラフィーの固相の第1端部から第2端部へと連続して配置され、
前記試験領域において得られた前記第1視覚シグナルは、前記体液サンプルにおける前記抗インターフェロンγ抗体の存在を示す、方法。
【請求項13】
前記溶媒相を、そこに固着するとともに前記第1抗体に結合するように構成された基質を含むコントロール領域にさらに移動させるように誘導し、前記コントロール領域は、前記クロマトグラフィーの固相において前記試験領域の後に隣接して配置され、前記試験領域において結合していない前記第1複合体及び前記第2複合体は前記コントロール領域に移動し、前記第1複合体及び前記第2複合体が前記第1抗体によって前記基質に結合して、第2視覚シグナルを提供するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2組換えインターフェロンγ及び/又は前記基質は合成膜に固定される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記シグナル部分はAuNP、蛍光物質、又は量子ドットである、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象から得た生物学的サンプル、好ましくは体液サンプルにおける任意の抗インターフェロンγ(IFN-γ)抗体の存在を検出するための免疫クロマトグラフィーに基づく試験装置に関する。さらに、本開示はまた、免疫クロマトグラフィーによる手法に基づき、対象の生物学的サンプルにおける任意の抗IFN-γ抗体の存在を検出するための方法を提供する。本開示の装置及び方法は、抗IFN-γ抗体の存在を検出するために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンγ(IFN-γ)は、CD4+Tヘルパー細胞型1(Th1)リンパ球、CD8+細胞傷害性リンパ球、及びNK細胞によって作り出される自然免疫及び特異的免疫の活性化に必要とされるサイトカインである。B細胞、NKT、プロフェッショナルな抗原提示細胞(APC)などの細胞は、IFN-γを分泌することができる。インターフェロンは、外来微生物の侵入に対して細胞を守り、ヒト免疫系における種々の機序を調節し、ウイルス、抑制、及び発がんの活性化を阻害する(非特許文献1、非特許文献2)。また、以前の研究により、IFN-γが抗ウイルス活性を有することが示された。したがって、これは、抗ウイルス処置を開発するための理想的な候補として、十分に研究されている。さらに、IFN-γはまた、抗がん作用を有することも分かっている。その機序は十分に理解されていないが、IFN-γは、細胞分裂時に正常な細胞及びがん細胞の両方に阻害作用を示している。がん細胞が正常な細胞よりも速く分裂することを考慮すると、IFN-γの阻害作用は、さらなるがん細胞の攻撃においてナチュラルキラー細胞に直接的に影響を与えながら、がん細胞に大きな影響を持つと予想される。
【0003】
さらに、IFN-γはまた、そのモノクローナル抗体を作製するため動物における刺激に使用されており、このモノクローナル抗体は、その後、結核感染の診断のための酵素結合免疫吸着法(ELISA)システム又はインターフェロンγ遊離アッセイ(IGRA)に使用される(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。IFN-γは、基礎研究目的、及び診断用キットの製造を含む医薬開発目的の研究の両方で使用されている。しかしながら、抗IFN-γ抗体のモノクローナル抗体を使用して製造した診断用キットは、生産コストが高いため高価になり得る。組換えインターフェロンγ(組換えIFN-γ)は、大腸菌(E.coli)細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、原生動物細胞、又は植物細胞の少なくとも1つを使用するシステムにおいて産生することができる。それにもかかわらず、細菌を使用する産生システムが、一般に比較的低い産生コストで最も高い産生量を得られることが知られている。
【0004】
近年、医療上の診断及びスクリーニングを支援するため、IFN-γを試験及び検出する方法が開発されている。例えば、特許文献1は、IFN-γに対する抗体を公開しており、これは、使用する2つの抗体がIFN-γ分子の別の位置に結合して、IFN-γ検出を行うものである、二重抗体サンドイッチELISAに基づくELISAシステムに使用できる。上述の特許文献1に公開されている抗体が実際にIFN-γに対して作用する抗体を検出する目的を果たすにもかかわらず、使用するプラットフォームは、簡便且つユーザーに配慮しているとは考えにくい。患者において抗IFN-γ抗体をスクリーニングするため、マイクロタイタープレート、フローサイトメトリー、様々な試薬などを使用して、上述の特許文献1に公開されたような一般的なELISAを行う必要性により、実験室環境外、及び/又は熟練した実験の技術者が存在しない場合において、同様の試験が実行不可能になり得る。したがって、許容可能な実行時間内で信頼性の高い結果をもたらすことができるとともに、未熟な作業員が実験ツールを利用しなくてもそうした試験を行える代わりのプラットフォームが、大きく評価されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第103869084号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Miller CH,Maher SG,Young HA.Clinical use of interferon-gamma.Ann N Y Acad Sci.2009;1182:69-79
【非特許文献2】Schroder K,Hertzog PJ,Ravasi T,Hume DA.Interferon-gamma: an overview of signals, mechanisms and functions.J Leukoc Biol.2004;75:163-89
【非特許文献3】Alfa MJ,Dembinski JJ,Jay FT.Production of monoclonal antibodies against recombinant human interferon-gamma:screening of hybridomas without purified antigen.Hybridoma.1987;6:509-520
【非特許文献4】Novick D,Eshhar Z,Fischer DG,Friedlander J,Rubinstein M.Monoclonal antibodies to human interferon-gamma:production,affinity purification and radioimmunoassay.EMBO J.1983;2:1527-1530
【非特許文献5】Tsiouris SJ,Coetzee D,Toro PL,Austin J,Stein Z,El-Sadr W.Sensitivity analysis and potential uses of a novel gamma interferon release assay for diagnosis of tuberculosis.J Clin Microbiol.2006;44:2844-2850
【発明の概要】
【0007】
本開示は、対象から得た血液サンプルなどの体液サンプル中の抗IFN-γ抗体の存在を検出するための装置又は試験キットを提供することを狙いとする。好ましくは、開示の装置又は試験キットは、必要な結果を得るように免疫クロマトグラフィー方法において機能する。
【0008】
本開示のさらなる目的は、いずれの実験ツールも使用せずに実験室環境外で試験結果をもたらすことができる、抗IFN-γ抗体をスクリーニングするための試験キットを提供することである。したがって、開示の試験キットは、一般的なELISAプラットフォームと比較して、ユーザーに配慮したものである。
【0009】
また、本開示の他の目的は、抗IFN-γ抗体をスクリーニングするため、比較的低コストで製造可能な試験キットを提供することを狙いとする。特に、開示の試験キットの作製に使用するIFN-γは、適合する細胞株において発現して採取される組換えペプチドである。
【0010】
本開示の他の目的は、組換えIFN-γを含む免疫クロマトグラフィープラットフォームを使用して体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体の存在をスクリーニングするための方法に関する。
【0011】
本開示の一態様は、対象から得た体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体の存在を検出するための装置に関する。一般に、上述の装置は、体液サンプルを含む溶媒相を付着させるためのサンプル領域と、ビオチンで標識した第1組換えIFN-γ、及びシグナル部分を連結した第1抗体を含む複数の第1複合体を含浸させた反応領域であって、第1抗体は、標識したビオチンに結合することで第1複合体を形成するように第1組換えIFN-γにカップリングする、反応領域と、複数の第2組換えIFN-γを固定させた試験領域とを含む。好ましくは、サンプル領域、反応領域、及び試験領域は、クロマトグラフィーの固相の第1端部から第2端部へと連続して配置される。
【0012】
開示の装置の多くの実施形態では、溶媒相は、体液サンプルに存在する抗IFN-γ抗体と共に固相の第1端部から第2端部へと移動して、第1複合体が、反応領域において抗IFN-γ抗体に連結して第2複合体を形成し、第1複合体と第2複合体とが試験領域にさらに移動して、第2複合体が固定した第2組換えIFN-γに結合して第1視覚シグナルを提供するようになる。試験領域において得られた第1視覚シグナルは、体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体の存在を示す。
【0013】
さらなる実施形態では、開示の装置は、そこに固着するとともに第1抗体に結合するように構成された基質を含むコントロール領域をさらに含む。コントロール領域は、クロマトグラフィーの固相において試験領域の後及び試験領域に隣接して配置される。
【0014】
開示の装置のさらなる実施形態では、試験領域において結合していない第1複合体及び第2複合体はコントロール領域にさらに移動し、第1複合体及び第2複合体が第1抗体によって基質に結合して、第2視覚シグナルを提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、開示の装置は、コントロール領域の一端部につながって、第2端部の少なくとも一部を形成する吸収要素をさらに含む。好ましくは吸収剤は、セルロース繊維シート、ろ紙、及びパルプのいずれか1つ又は組合せである。
【0016】
開示の装置の一部の実施形態において、第2組換えIFN-γ及び/又は基質は合成膜に固定されている。
【0017】
さらなる実施形態において、開示の装置のシグナル部分は金ナノ粒子(AuNP)、蛍光物質、又は量子ドットである。
【0018】
本開示のさらなる態様は、対象から得た体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体の存在を検出するための方法に関する。上述の方法は、実質的に、サンプル領域において体液サンプルを含む溶媒相を付着させるステップと、体液サンプルに存在する抗IFN-γ抗体と共に溶媒相を反応領域に誘導し、該反応領域は、ビオチンで標識した第1組換えIFN-γ、及びシグナル部分を連結した第1抗体を含む複数の第1複合体を含浸させており、該第1抗体は、標識したビオチンに結合することで第1複合体を形成するように第1組換えIFN-γにカップリングし、該第1複合体は、反応領域において抗IFN-γ抗体に連結して第2複合体を形成するように構成される、ステップと、溶媒相を、形成した第2複合体及び第1複合体と共に、複数の第2組換えIFN-γを固定した試験領域にさらに移動させるように誘導し、該第2複合体は固定した第2組換えIFN-γに結合して、第1視覚シグナルを提供するように構成される、ステップとを含む。好ましくは、サンプル領域、反応領域、及び試験領域は、クロマトグラフィーの固相の第1端部から第2端部へと連続して配置される。
【0019】
開示の方法のいくつかの実施形態において、試験領域において得られた第1視覚シグナルは、体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体の存在を示す。
【0020】
さらなる実施形態では、開示の方法は、そこに固着するとともに第1抗体に結合するように構成された基質を含むコントロール領域にさらに移動させるように、溶媒相を誘導し、該コントロール領域は、クロマトグラフィーの固相において試験領域の後に隣接して配置され、試験領域において結合していない第1複合体及び第2複合体はコントロール領域に移動し、第1複合体及び第2複合体が第1抗体によって基質に結合して、第2視覚シグナルを提供する、ステップをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、二重抗原サンドイッチELISAに基づく、対象から得た生物学的サンプルにおける抗IFN-γ抗体を検出するための開示の装置及び方法に使用する、全体的な原理の模式図である。
図2図2は、(a)開示の装置の一実施形態における全体的な配置、及び提供する該装置の各構成、(b)陽性の結果、及び(c)陰性の結果を示す、本開示の模式図である。
図3図3は、抗hisタグmAbを使用した間接ELISAによる組換えIFN-γ分析の結果を示すグラフである。
図4図4は、抗IFN-γ mAbを使用した間接ELISAによる組換えIFN-γ分析の結果を示すグラフである。
図5図5は、二重抗体サンドイッチELISAによる組換えインターフェロンγの二量体分析の結果を示すグラフである。
図6図6は、活性AOID群(A)及び不活性AOID群(I)を用いた間接ELISAによる20人のAOID患者の血清における抗IFN-γ検出の結果を示すグラフである。
図7図7は、活性AOID群(A)及び不活性AOID群(I)を用いた、0.17のカットオフ値の二重抗原サンドイッチELISAによる20人のAOID患者の血清における抗IFN-γ検出の結果を示すグラフである。
図8図8は、活性AOID群(A)及び不活性AOID群(I)を用いた、ノーマライズODにおける間接ELISAと二重抗原サンドイッチELISAとの間の、20人のAOID患者の血清における抗IFN-γ検出の比較を示すグラフである。
図9図9は、直接ドットブロットアッセイを行うことによる、コロイド金(CGC)で標識したヤギ抗ビオチンとビオチン標識IFN-γとの複合体のシグナル取得を示す。(a)ヤギ抗ビオチンCGCと、1、10、及び100μg/mLの範囲の異なる濃度のビオチン標識IFN-γとの反応後の陽性の視覚ドットを示す。(b)1、10、及び100μg/mLの範囲の異なる濃度のビオチン標識IFN-γに、組換えIFN-γを滴下した後の陰性の視覚ドットを示す。(ウサギ抗ヤギIgG及びPBSを、それぞれ陽性コントロール及び陰性コントロールとして使用する)
図10図10は、それぞれリン酸緩衝食塩液(コントロール)、プールした陽性血清(1~5)、及びプールした陰性血清(6~10)に対して行った浸漬試験による、1.0mg/mL及び0.5mg/mLの濃度の組換えIFN-γを試験領域の試験ラインにコーティングした、本開示の装置の一実施形態の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示は、好ましい実施形態において、及び添付の発明を実施するための形態及び図面を参照して記載する。しかしながら、発明を実施するための形態が本開示の好ましい実施形態及び図面に言及することは、種々の開示の実施形態の説明を容易にするためのみであることが理解され、当業者が添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく種々の変形を考案し得るということが想定される。
【0023】
本明細書において使用するとき、「実施形態において」という表現は、必ずしもすべての実施形態においてではなく一部の実施形態においてを意味する。
【0024】
本明細書で使用するとき、成分の濃度、条件、他の測定値などの文脈における、「ほぼ」又は「約」という用語は、記載した値の+/-5%、又は記載した値の+/-4%、又は記載した値の+/-3%、又は記載した値の+/-2%、又は記載した値の+/-1%、又は記載した値の+/-0.5%、又は記載した値の+/-0%を意味する。
【0025】
本明細書において発明を実施するための形態にわたって使用する「検出可能な部分」、「シグナル部分」、「レポート部分」、及び/又は「レポーター」という用語は、形成された抗原-抗体複合体の存在を示して、標的化合物、分子の存在、試験した対象の病状を確認するため、デバイス又は肉眼のいずれかで検出可能なシグナルを放出することができる化合物を指す。シグナルは、低周波数、又はELISA若しくはそこから派生して変更した任意の他の方法のような基質-酵素活性による色彩変化の形態であり得る。
【0026】
「組換えインターフェロンγ」及び「組換えIFN-γ」という用語は、IFN-γを分泌又は産生できるようにした、1つ以上の操作細胞株から採取した人工IFN-γを指すように、本明細書にわたって互換的に使用される。
【0027】
図1及び図2を参照すると、本開示の一態様は、対象から得た体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体(30)の存在を検出するための装置を対象としている。抗IFN-γ抗体(30)はIgG、IgM、又はIgAのものとすることができる。実質的に、上述の装置は、体液サンプルを含む溶媒相を付着させるためのサンプル領域(1)と、ビオチンで標識した第1組換えIFN-γ(10)、及びシグナル部分を連結した第1抗体(20)を含む複数の第1複合体を含浸させ、該第1抗体(20)は、標識したビオチンに結合することで第1複合体を形成するように第1組換えIFN-γ(10)にカップリングする、反応領域(2)又はコンジュゲート領域と、複数の第2組換えIFN-γ(40)を固定させた試験領域(3)とを含む。好ましくは、第1抗体(20)(抗ビオチン抗体)とシグナル部分とは、0.1~0.5mg:0.5~5.0mLの比である。
【0028】
好ましくは、サンプル領域(1)、反応領域(2)、及び試験領域(3)は、図2に示すようにクロマトグラフィーの固相の第1端部から第2端部へと連続して配置される。本開示におけるクロマトグラフィーの固相は、体液サンプルを保持する溶媒相を、サンプル領域(1)から反応領域(2)を通過して試験領域(3)へと移動させて、クロマトグラフィー毛管作用に基づいて連続的かつ自然に抗体ELISAを行うことができるように、様々な材料を使用して構成した複合材料とすることができる。溶媒相及び標的の抗IFN-γ抗体は、存在する場合、固相において画定した各領域に予め配置した種々の試薬と接触して反応するように構成される。固相は、好ましくは、第1端部及び第2端部を有する基層を形成するセルロース又はプラスチックのストリップ、試験領域(3)及び試験領域(3)に隣接する任意のコントロール領域(4)を設けるため、基層表面の一部に重なる合成膜、並びに開示の装置を使用する反応時間終了までに第2端部に達する過剰な溶媒相を吸収するため第2端部周りに組み込まれる吸収材料を含む。特に、組換えIFN-γは、試験領域(3)内の試験ラインにおいて0.1~1.0μgの量で合成膜に固定される。一部の実施形態において、合成膜はガラス繊維からから作製される。開示の装置における試験領域(3)の前の反応領域(2)の表面において、開示の装置を使用して試験した任意の生物学的サンプルに見受けられる抗IFN-γ抗体(30)に即座に結合するように、第1複合体を含浸させる又は配置する。サンプル領域(1)に関して、これは開示の装置の第1端部又は第1端部の一部を形成する。試験を開始する及び/又は抗IFN-γ抗体を検出するため、対象の体液、又は体液と1つ以上の緩衝液との混合物であり得る溶媒相を、そこに付着させる。一部の実施形態において、体液は、対象の血液サンプル又は血清サンプルとすることができる。体液は、溶媒相をサンプル領域(1)に付着させる際、二重抗体サンドイッチELISAを行うため、希釈するか又は他の試薬と混合してもよい。開示の装置の一部の実施形態において、ろ過要素をサンプル領域(1)に備えて、体液に見受けられるいくつかの大きな細胞成分が第2端部に移動しないように捕らえることができる。これらの細胞成分は、反応又は試験の終了時に得られる結果に影響し得る。
【0029】
図2に示すように、溶媒相は、好ましくは、体液サンプルに存在する抗IFN-γ抗体(30)と共に固相の第1端部から第2端部へと移動して、第1複合体が、反応領域(2)において抗IFN-γ抗体(30)に連結して第2複合体を形成するようになる。作製する固相の材料及び形状、並びに寸法に起因して、溶媒相は、クロマトグラフィー毛管作用の影響のもと、第1端部から第2端部へと移動する。反応領域(2)を通過した後、いずれの抗IFN-γ抗体(30)にも結合していない第1複合体、及び形成された第2複合体は、試験領域(3)にさらに移動して、第2複合体は、即座に第1視覚シグナルを提供するため、固定した第2組換えIFN-γ(40)に結合する。さらに具体的には、存在する場合、体液サンプルに存在する抗IFN-γ抗体は、それぞれ第1組換えIFN-γ(10)及び第2組換えIFN-γに免疫学的にカップリングすることができる対の結合部位を有する。試験領域(3)の試験ラインにおいて視覚的に検出可能なシグナルを放出するため、反応領域(2)に移動した抗IFN-γ抗体(30)は、その一方の結合部位を、反応領域(2)に予め配置された第1複合体に組み込まれた第1組換えIFN-γ(10)と反応させて、第2複合体を生じさせることになる。反応領域(2)の後、未反応又は未結合の第1複合体と第2複合体とは、溶媒相と共に、クロマトグラフィー毛管作用のもと、試験領域(3)にさらに移動する。試験領域(3)において、形成した第2複合体において既に一方の結合部位を第1組換えIFN-γ(10)に連結させた抗IFN-γ抗体の他方の結合部位は、試験領域(3)の試験ラインに固着又は固定した第2組換えIFN-γ(40)に免疫学的に連結する。試験ラインにおいて固着した第2組換えIFN-γに結合することによって第2複合体を固定させることで、第1抗体(20)に標識したシグナル部分は試験ラインにおいて濃縮されて、それにより、好ましくは、試験した体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体(30)の検出を裏付ける肉眼又は適合するシグナルリーダーによって見る又は観察するために十分に強力なシグナルを、蓄積させて放出する。好ましくは、固定した第2組換えIFN-γ(40)と第1複合体とは、1:1~1:10のモル比である。
【0030】
一部の実施形態において、シグナル部分は金ナノ粒子(AuNP)であって、シグナル部分を備えた第1抗体(20)がAuNP標識抗ビオチン抗体(20)となる。試験領域(3)において第1視覚シグナルを得ることは、体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体(30)の存在を示す。あるいは、体液サンプルはいずれの抗IFN-γ抗体(30)も有さず、試験領域(3)は、開示の装置における試験ランの終了後でも第1視覚シグナルを有さないということもある。開示の装置のいくつかの実施形態において、シグナル部分は、金属粒子(すなわちAuNP又はコロイド金、金/銀、白金など)、蛍光物質、又は量子ドットから選択することができる。
【0031】
上述のように、開示の装置は、固相において試験領域(3)に続くコントロール領域(4)をさらに含むことができる。コントロール領域(4)も試験領域(3)のように合成膜に配置されることを留意しておくことが重要である。合成膜の平面により、図2に示すような第1抗体(20)又は抗ビオチン抗体に親和性を有する基質(50)が、試験ラインにおける第2組換えIFN-γ(40)の永続的な配置と類似してコントロール領域(4)内のコントロールラインに永続的に固着されるということが可能になる。より具体的には、開示の装置は、そこに固着されるとともに第1抗体(20)に結合するように構成された基質(50)を含むコントロール領域(4)をさらに含み、コントロール領域(4)は、クロマトグラフィーの固相において試験領域(3)の後に隣接して配置されている。いくつかの実施形態では、基質(50)は、0.5~1.0μgの量でコントロールライン(4)に固定したウサギ抗ヤギIgGとすることができる一方、第1抗体(20)は、基質(50)が第1抗体に対する必要な免疫学的親和性を有するように、ヤギ由来のものである。より具体的には、開示の装置の一部の実施形態は、第1複合体を反応領域又はコンジュゲート領域(2)に含浸させる前に第1複合体を形成するため、1~500μg/mLの濃度のビオチン標識IFN-γ(10)と反応するように、AuNP標識ヤギ抗ビオチン又は第1抗体(20)を0.1~0.5mgの量で有する。試験領域(3)の後、試験領域(3)において結合していない第1複合体及び第2複合体はコントロール領域(4)にさらに移動して、第1複合体及び第2複合体が第1抗体(20)によって基質(50)に結合して、第2視覚シグナルを提供する。ここでも、シグナル部分はコントロールラインで濃縮されて、濃縮されたシグナル部分が、肉眼又は適合するシグナルリーダーによって検出可能である十分に強力なシグナルを蓄積させて提供する。試験した体液において抗IFN-γ抗体(30)が存在しない場合でも、反応領域(2)からの第1複合体は、固着した第2組換えIFN-γ(40)に結合することなく、ゆえに第1視覚シグナルを得ずに、溶媒と共に、必ず試験領域(3)を通って流れて、コントロール領域(4)に達してそれに固着した基質(50)によって捕捉される。より好ましくは、コントロールラインは、試験した体液サンプルにおける抗IFN-γの存在にかかわらず、第2視覚シグナルを得るように、又は、第1視覚シグナルの欠如若しくは抗IFN-γの検出に関して得た陰性の結果が開示の装置の欠陥によってもたらされたものではないことを確認するように構成される。コントロールラインは、開示の装置における負のコントロールとして機能する。
【0032】
一部の実施形態では、基質(50)は、コントロールライン又はコントロール領域(4)において接触する第1抗体(20)を含む第1複合体及び/又は第2複合体を効率的に捕捉するため、第1抗体(20)に対して免疫学的に有効な第2抗体とすることができる。より好ましくは、固定した第2組換えIFN-γ(40)と基質(50)とは、1:2~1:10のモル比である。
【0033】
多くの実施形態では、開示の装置は、合成膜の一端部が、サンプル領域(1)、及びサンプル領域(1)と試験領域(3)との間に挿入された反応領域(2)に重なり合うようにプラスチック又は紙のストリップに重ねられた、試験領域(3)の試験ライン及びコントロール領域(4)のコントロールラインを有する合成膜を有する。さらに、溶媒相が通過する平面のフリースペースには、溶媒相と共に通過する試薬及び/又は細胞化合物に対して化学的に不活性の環境を作り出す、コーティング(60)の層がさらに重ねられている。コーティング(60)の層は、好ましくは、非特異的シグナル遮断タンパク質から作製される。例えば、コーティングは、合成膜の表面にコーティング前にPBSに溶解される、ウシ血清アルブミン及び/又は脱脂乳のリン酸化タンパク質から構成することができる。
【0034】
上述のように、本開示の装置の一部の実施形態は、コントロール領域(4)の一端部につながって、第2端部の少なくとも一部を形成する吸収要素をさらに含むことができる。第2端部における吸収剤の存在により、第2端部に達する過剰な溶媒相を吸収することに加えて、溶媒相及び他の試薬を第2端部に向かって流すようにする、毛管作用を高めることができる。好ましくは、吸収剤は、セルロース繊維シート、ろ紙、及びパルプのいずれか1つ又は組合せである。
【0035】
本開示の他の態様は、対象から得た体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体(30)の存在を検出するための方法である。好ましくは、上述の方法は、サンプル領域(1)において体液サンプルを含む溶媒相を付着させるステップと、体液サンプルに存在する抗IFN-γ抗体と共に溶媒相を反応領域(2)に誘導し、該反応領域(2)は、ビオチンで標識した第1組換えIFN-γ(10)、及びシグナル部分を連結した第1抗体(20)を含む複数の第1複合体を含浸させており、該第1抗体(20)は、標識したビオチンに結合することで第1複合体を形成するように第1組換えIFN-γ(10)にカップリングし、該第1複合体は、反応領域(2)において抗IFN-γ抗体に連結して第2複合体を形成するように構成される、ステップと、溶媒相を、形成した第2複合体及び第1複合体と共に、複数の第2組換えIFN-γ(40)を固定した試験領域(3)にさらに移動させるように誘導し、該第2複合体は固定した第2組換えIFN-γ(40)に結合して、第1視覚シグナルを提供するように構成される、ステップとを含む。好ましくは、サンプル領域(1)、反応領域(2)、及び試験領域(3)は、クロマトグラフィーの固相の第1端部から第2端部へと連続して配置される。誘導するステップは、溶媒相をサンプル領域(1)において付着させる際、クロマトグラフィーの固相のクロマトグラフィー毛管作用の影響のもと、自然に行われるということに留意することが重要である。また、試験領域(3)において得た第1視覚シグナルは、体液サンプルにおける抗IFN-γ抗体(30)の存在を示す。
【0036】
上述したように、溶媒相及び標的の抗IFN-γ抗体は、存在する場合、固相において画定した各領域に予め配置した種々の試薬と接触して反応するように構成される。固相は、好ましくは、第1端部及び第2端部を有する基層を形成するセルロース又はプラスチックのストリップ、試験領域(3)及び試験領域(3)に隣接する任意のコントロール領域(4)を設けるため、基層表面の一部に重なる合成膜、並びに開示の方法の終了までに第2端部に達する過剰な溶媒相を吸収するため第2端部周りに組み込まれる吸収材料を含む。特に、組換えIFN-γは、0.1~1.0μgの量で試験領域(3)内の試験ラインにおける合成膜に固定される。開示の装置における試験領域(3)の前の反応領域(2)の表面において、試験した任意の生物学的サンプルに見受けられる抗IFN-γ抗体(30)に即座に結合するように、第1複合体を含浸させる又は配置する。試験を開始する及び/又は抗IFN-γ抗体を検出するため、対象の体液、又は体液と1つ以上の緩衝液との混合物であり得る溶媒相を、そこに付着させる。一部の実施形態において、体液は、対象の血液サンプル又は血清サンプルとすることができる。開示の方法は、溶媒相をサンプル領域(1)に付着させる際、二重抗体サンドイッチELISAを行うため、体液を希釈するか又は他の試薬と混合する、前処理ステップをさらに含むことができる。さらなる実施形態では、開示の方法は、体液に見受けられるいくらかの大きな細胞成分を捕らえるためサンプル領域(1)に備え得る、ろ過要素を使用して、体液サンプルをろ過するステップをさらに含む。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、開示の方法は、そこに固着するとともに第1抗体に結合するように構成された基質(50)を含むコントロール領域(4)にさらに移動させるように、溶媒相を誘導するステップをさらに含む。コントロール領域(4)は、クロマトグラフィーの固相において試験領域(3)の後に隣接して配置され、試験領域(3)において結合していない第1複合体及び第2複合体は、溶媒相と共に、必然的にコントロール領域(4)に移動する。基質に対する免疫学的親和性に起因して、第1複合体及び第2複合体が第1抗体(20)によって基質(50)に結合して、第2視覚シグナルを提供する。特に、試験領域(3)において結合していない第1複合体及び第2複合体はコントロール領域(4)にさらに移動して、第1複合体及び第2複合体が第1抗体(20)によって基質(50)に結合して、第2視覚シグナルを提供する。シグナル部分はコントロールラインで濃縮されて、濃縮されたシグナル部分が、肉眼又は適合するシグナルリーダーによって検出可能である十分に強力なシグナルを蓄積させて提供する。試験した体液において抗IFN-γ抗体(30)が存在しない場合でも、反応領域(2)からの第1複合体は、固着した第2組換えIFN-γ(40)に結合することなく、ゆえに第1視覚シグナルを得ずに、溶媒と共に、必ず試験領域(3)を通って流れて、コントロール領域(4)に達してそれに固着した基質(50)によって捕捉される。より好ましくは、コントロールラインは、試験した体液サンプルにおける抗IFN-γの存在にかかわらず、第2視覚シグナルを得るように、又は、第1視覚シグナルの欠如若しくは抗IFN-γの検出に関して得た陰性の結果が、クロマトグラフィーの固相若しくは試薬の異常、若しくは開示の方法を不適切に行ったことによってもたらされたものではないことを確認するように構成される。さらなる実施形態では、第2組換えIFN-γ(40)及び/又は基質(50)は、開示の方法において合成膜に固定されている。
【0038】
開示の方法の多くの実施形態では、シグナル部分はAuNP、蛍光物質、又は量子ドットである。
【0039】
以下の実施例は、本明細書に記載する特定の実施形態に本開示を限定するという意図なく、本開示をさらに記載することを目的としている。
【実施例
【0040】
実施例1
IFN-γ産生を試験するため、間接ELISAを行った。マイクロタイタープレートを、ウェルあたり50μLの組換えIFN-γでコーティングし、保湿チャンバ内において4℃で一晩インキュベートした。以下のステップを室温で行った。コーティングしたウェルを、PBS中の0.05%のTween20で3回洗浄し、200μLのブロッキング溶液(2%の脱脂乳を含むPBS)で1時間ブロッキングした。5回の洗浄後、50μLのマウス抗HisタグmAbを添加して、1時間インキュベートした。5回の洗浄後、50μLのHRPコンジュゲートヤギ抗マウス免疫グロブリンを添加して、1時間インキュベートした。反応をTMB基質によって生じさせ、1NのHCIによって停止した。吸光度をELISAリーダーによって450nmにおいて測定した。
【0041】
図3は、抗hisタグmAbを使用した間接ELISAによる組換えIFN-γ分析の結果を示す。組換えIFN-γを調製し、ELISAを使用して確認した。組換えIFN-γコーティングウェルは、マウス抗HisタグmAbでプローブした際、陽性のシグナルを示した。この結果は、可溶、封入体、リフォールディング形態を含むIFN-γタンパク質が、マウス抗hisタグ抗体と反応することを示唆した。しかしながら、一部の条件におけるIFN-γ調製物は異なる結合活性を示した。
【0042】
図4は、抗IFN-γ mAb及びHRPで標識したヤギ抗マウスIgを使用した間接ELISAによる組換えIFN-γ分析の結果を示す。この結果は、可溶、封入体、リフォールディング形態を含むIFN-γタンパク質が、マウス抗IFN-γ mAb抗体と反応することを示唆した。
【0043】
可溶形態で調製した組換えIFN-γと、封入体(IB)を溶解したIFN-γタンパク質とを、両方の抗体で標識したとき、光学密度(OD)が450nmにおけるほぼすべての試験において検出されることが見受けられる。しかし、PBS緩衝液に溶解したIFN-γ可溶化タンパク質は、概して非常に低いOD検出を示した。
【0044】
IBを溶解して精製したタンパク質調製物において、抗hisタグmAb及び抗IFN-γ mAbの結合活性を観察した。観察結果は、試験結果が試験条件によってわずかな違いを示し得るものの、可溶形態のIFN-γタンパク質の調製物と同様であった。
【0045】
実施例2
形成した可溶IFN-γ及びリフォールディングIFN-γを含むIFN-γの二量体特性を試験するため、二重抗体サンドイッチELISAを行った。マイクロタイタープレートを、ウェルあたり50μLのマウス抗IFN-γクローンB27(pH9.6の重炭酸緩衝液中で0.5μg/mL)でコーティングし、保湿チャンバ内において4℃で一晩インキュベートした。以下のステップを室温で行った。コーティングしたウェルを、PBS中の0.05%のTween20で3回洗浄し、200μLのブロッキング溶液(1%の脱脂乳を含むPBS)で1時間ブロッキングした。5回の洗浄後、50μLの0.5μg/mLビオチン標識マウス抗IFN-γクローンB27を添加して、1時間インキュベートした。5回の洗浄後、50μLの1:10,000希釈のストレプトアビジン-HRPを添加して、1時間インキュベートした。反応をTMB基質によって生じさせ、1NのHCIによって停止した。吸光度をELISAリーダーによって450nmにおいて測定した。
【0046】
図5は、二重抗体サンドイッチELISAによる、可溶形態及び封入体(IB)溶液として調製した組換えインターフェロンγの二量体分析を、作製したタンパク質サンプルにおいて行ったことを示す。最も低い光学密度(OD)を有するPBS緩衝液中のIFN-γ可溶化タンパク質を除いて、高光学密度(OD)を観察した。
【0047】
この結果は、すべての可溶及びIBの組換えインターフェロンγが二量体タンパク質であるが、PBS緩衝液中のIFN-γ可溶化タンパク質のみが最も小さい二量体化特性を有することを示す。したがって、様々なサンプルのインターフェロンγタンパク質が異なる二量体化特性を有している。
【0048】
実施例3
二重抗原サンドイッチELISAによる抗インターフェロンγ検出の方法を得た後、二重抗原サンドイッチELISAによる、20人の成人発症性の免疫不全症(AOID)患者(標準の間接ELISAによって陽性の結果を確認)の血清における抗インターフェロンγ検出のため、20人の実際の患者の血清を使用して、試験を行い、結果を標準の間接ELISAと比較した。
【0049】
マイクロプレートウェルを、10μg/mLの濃度で、ウェルあたり50μLの、精製したインターフェロンγでコーティングし、4℃で16~18時間、加湿ボックス内に置いた。リン酸緩衝食塩液(PBS)中の0.05%のTween20でプレートを5回洗浄し、軽くたたいて乾燥させた後、ウェルあたり200μLでPBS中の2%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いたブロッキング溶液を添加し、プレートを室温で1時間、加湿ボックスに保管した。
【0050】
20人すべてのAOID患者における個々の血清を、PBS中の2%BSAで1:100希釈に調製してから、プレートを、PBS中の0.05%のTween20で洗浄し、軽くたたいて乾燥させた。1:1000、1:500、及び1:100希釈の強力に陽性の血清を、ウェルあたり50μLで添加し、プレートを室温で1時間、加湿ボックスに保管し、プレートをPBS中の0.05%のTween20で5回洗浄して、軽くたたいて乾燥させた。
【0051】
1μg/mLの濃度のビオチン標識IFN-γを、ウェルあたり50μLでマイクロプレートに添加し、プレートを室温で1時間、加湿ボックスに保管した。プレートを、高ストリンジェンシーの洗浄緩衝液で5回洗浄し、軽くたたいて乾燥させた後、1:5000希釈のHRP抗ビオチンmAbを、ウェルあたり50μLで添加し、プレートを室温で1時間、加湿ボックスに保管した。その後、プレートを、PBS中の0.05%のTween20で5回洗浄した。プレートを乾燥させた後、HRP反応のため、50μLのTMB基質(3,3′,5,5′-テトラメチルベンジジン)をウェルごとに添加した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とTMBとの反応を、6NのHCLをウェルあたり50μL添加して、15分で停止させた。450nmでの光学密度(OD450)をELISAマイクロプレートリーダーで測定した。
【0052】
図6は、抗IFN-γ自己抗体の検出のため、標準/従来の方法である間接ELISAを適用したAOID患者の試験結果を示す。活性(n=6)又は不活性(n=14)疾患のいずれかの、20人のAOID患者の血清のうち、すべてが陽性である。
【0053】
同じ20人のAOID患者における抗IFN-γ自己抗体の検出のため、二重抗原サンドイッチELISA法を適用することにおいて、血清希釈は1:100を選択した。反応を15分で停止し、OD値を450nmで測定し、活性群(A)(n=6)又は不活性群(I)(n=14)のいずれかの各患者は、上述の方法による抗インターフェロンγ抗体検出において異なる陽性の結果を示しており、この結果は重症度に相関するわけではない。さらに、陽性の結果を決定するためのしきい値を、平均が0.17である、個々の血清のバックグラウンド値から得たカットオフ値から考慮し、図7に示すように、20人の患者におけるすべての陽性の結果をもたらした。
【0054】
間接ELISA及び二重抗原サンドイッチELISAの両方の方法の比較において、図8に示すようにODデータをノーマライズした。両方の方法から得た結果が各患者において類似したことが観察され得る。患者I002を除いて、二重抗原サンドイッチELISA技術による結果は、間接ELISAのものよりも高い値をもたらし、これは、IgM又はIgAであり得る、IgGではない他の種類の抗インターフェロンγ抗体の存在によるものであり得る。
【0055】
実施例4
二重抗体サンドイッチELISAに基づいて機能する本開示の装置又は試験キットの一実施形態の作製は、以下のプロセスを含むことができる。

A.試験領域(3)において組換えIFN-γを固定し、及びコントロール領域(4)において金ナノ粒子標識抗ビオチン(20)の特異的基質を固定し、組換えIFN-γ及び基質の両方を合成膜に固着し、合成膜の空き領域をコーティング(60)で覆う。
B.反応領域(2)においてビオチン標識IFN-γ(10)とカップリングした金ナノ粒子標識抗ビオチン(又は第1抗体)(20)を含む複数の第1複合体を含浸させ、ビオチン標識IFN-γ(10)は、血清サンプルに存在するいずれかの抗IFN-γ抗体と自然に結合して、陽性の結果を得る。
C.プラスチックストリップ又クロマトグラフィーの固相の中央においてプロセスAから得た試験領域(3)及びコントロール領域(4)を含む合成膜を配置することによって試験キットを作製する。反応領域に隣接する合成膜の端部は、各領域の端部が互いに物理的に接触するように、結合領域(2)の一端部でつながる。上述のストリップは、重なり合うようにコントロール領域(4)の一端部につながる吸着材料を組み込んだ接触領域(5)をさらに含むことができる。
【0056】
実施例5
コロイド金コンジュゲーション(CGC)を検証し、開示の実施形態に使用するビオチンで標識した第1組換えインターフェロンγ又はビオチン標識IFN-γの濃度を最適化するため、コロイド金で標識したヤギ抗ビオチンを、100、10、及び1μg/mLの異なる3つの濃度のビオチン標識IFN-γに適用して、直接ドットブロットアッセイを行い、10μg/mLウサギ抗ヤギIgGを陽性コントロールとし、PBSを陰性コントロールとした。図9aに示すように、赤紫色又は暗紫色のドットが、ビオチン標識IFN-γをコーティング/固定した領域又は部分にのみ現れた。したがって、CGC標識した抗ビオチンは、開示の実施形態においてレポート又はシグナリングに特異的に機能する。一方で、組換えIFN-γを、ビオチン標識IFN-γに適用したとき、図9bに示すように、赤紫色又は暗紫色のドットは現れない。
【0057】
図10は、サンプルにおける抗インターフェロンγ抗体の有無を検出するための本開示の実施形態の精度を示す写真であり、試験領域及びコントロール領域における2つの視覚シグナルが、5つすべての陽性血清(1~5)において観察される一方、コントロール領域は単独で陰性血清(6~10)において可視化された。
【0058】
本開示は、本明細書において広範に記載するとともに、以下において記載する、その構造、方法、又は他の必須の特徴から逸脱することなく、他の特定の態様においても実現され得る。記載の実施形態は、あらゆる点で例示としてのみ考慮され、限定するものではない。したがって、本開示の範囲は、上述の発明を実施する形態の記載ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の同等物の趣旨及び範囲内に該当するすべての変更は、その範囲内に包含される。
【0059】
参照符号の説明
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】