(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】微細構造化止血剤
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20230426BHJP
A61L 31/08 20060101ALI20230426BHJP
A61L 31/10 20060101ALI20230426BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20230426BHJP
A61L 31/00 20060101ALI20230426BHJP
A61K 36/744 20060101ALI20230426BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230426BHJP
A61K 35/14 20150101ALI20230426BHJP
【FI】
A61B17/00
A61L31/08
A61L31/10
A61L31/16
A61L31/00
A61K36/744
A61P7/04
A61K35/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556188
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 US2021022589
(87)【国際公開番号】W WO2021188559
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513326370
【氏名又は名称】ビーブイダブリュ ホールディング エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルーシェール,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ミルボッカー,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C081
4C087
4C088
4C160
【Fターム(参考)】
4C081AC16
4C081BA11
4C081CD122
4C081CD152
4C081CD31
4C081CE03
4C087AA01
4C087DA02
4C087DA14
4C087NA20
4C087ZA51
4C088AB14
4C088AC04
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA53
4C160CC40
(57)【要約】
微細構造化止血剤は、それぞれが1つ以上の長さスケールを特徴とする微細構造(302、306、308、310)の複数の層から構成される、階層的微細構造化表面(300)を含む。本発明の微細構造化止血剤は、血液凝固の時間を短縮し、凝固の形態を制御し、形態学的観点から凝固機能を評価するための新規な診断プラットフォームを提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液凝固を促進するためのデバイスであって、
階層的に配置された微細構造化表面を含み、前記階層的配置が2~3の間のフラクタル次元を有するように構成され、前記微細構造化表面が、血液と接触したときに血栓形成を促進するように構成されている、
デバイス。
【請求項2】
前記フラクタル次元が2.06~2.08の間である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記階層的に配置された微細構造化表面が、少なくとも第1の表面テクスチャおよび第2の表面テクスチャを含み、前記第2の表面テクスチャが前記第1の表面テクスチャ上に階層的に配置されており、前記少なくとも2つの表面テクスチャが複数の空間的に分布した表面エネルギー勾配を生成するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記階層的に配置された微細構造化表面が、第3の表面テクスチャをさらに含み、前記第3の表面テクスチャが前記第2の表面テクスチャ上に階層的に配置されており、前記第1の表面テクスチャが、三角格子状に配置され、少なくとも400ミクロンの高さを有し、前記第2の表面テクスチャが直径25ミクロン、高さ45ミクロンであり、前記第3の表面テクスチャが直径5ミクロン、高さ15ミクロンである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の表面テクスチャおよび前記第3の表面テクスチャがそれぞれ、三角格子状に配置されている、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第3の表面テクスチャが、縦溝付きの垂直面をさらに含み、各縦溝が幅5ミクロンを有する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記階層的に配置された微細構造化表面が、階層的微細構造配置を欠く表面と比較して短縮された活性化部分トロンボプラスチン時間を有するように構成されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項8】
血液成分を分離するためのデバイスであって、
階層的に配置された微細構造化表面を含み、前記階層的に配置された微細構造化表面が、第1の別個の表面および第2の別個の表面を含み、前記第1および第2の別個の表面がそれぞれ中心を有し、前記第1の別個の表面の中心が前記第2の別個の表面の中心から少なくとも50ミクロンに位置し、前記第1の別個の表面が、実質的に固体を含む第1の血液成分を局在化させるように構成され、前記第2の別個の表面が、実質的に流体を含む第2の血液成分を局在化させるように構成されている、
デバイス。
【請求項9】
前記第1の別個の表面が階層的に配置された少なくとも2つの微細構造化テクスチャを含み、前記第1の別個の表面が第1のフラクタル次元を有し、前記第2の別個の表面が階層的に配置された少なくとも2つの微細構造化テクスチャを含み、前記第2の別個の表面が第2のフラクタル次元を有し、前記第2の別個の表面が毛細管作用によって前記第2の血液成分を除去するように構成されている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の別個の表面および前記第2の別個の表面が、前記階層的に配置された微細構造化表面が、階層的微細構造配置を欠く表面と比較して短縮された活性化部分トロンボプラスチン時間を有するように協力する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
血液凝固を促進するためのデバイスであって、
表面を含み、前記表面が、階層的微細構造および化学凝固剤を含み、前記化学凝固剤が前記微細構造に架橋されている、
デバイス。
【請求項12】
前記化学凝固剤がクチナシ果実エキスを含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記化学凝固剤がコラーゲン/ゼラチンの遊離アミノ基を含み、前記表面が少なくとも1つのアルデヒド基を含有するポリマー基材を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記化学凝固剤が少なくとも1つの酸化多糖を含む、請求項11に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般に、出血の周術期停止、規定された血餅形態を促進することによる凝固欠損の補正、および凝固形態の評価に有用な診断表面として有用なデバイスおよび方法に関する。そのようなデバイスおよび方法は、外科的処置、術後癒着の防止、開存性管腔の維持、および凝固病変の定量に有用である。さらに、そのような止血デバイスは、薬学的に誘発された凝固欠損の局所的回復に有用である。より詳細には、本開示は、超滑り性および超接着性デバイスをもたらす多機能階層的微細構造および3次元固定界面ドメイン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
凝固経路の変化は、血餅伝播の結果において重要な役割を果たす。発生中のフィブリン塊の構造-機能関係は、正常な血餅成長と比較して、環境、治療、および疾患などの多くの因子によって影響を受けることが知られている。場合によっては、環境因子が疾患因子による欠損を補うことができる。
【0003】
フィブリン塊の一次微細構造は、絡み合って分岐したフィブリン繊維の不規則なネットワークからなる。より細い繊維は、分岐点の数が増加したネットワークと関連しており、血栓塞栓性疾患との公知の関連を有するより高密度で透過性の低い血餅を作り出す。この観察は、微細構造化表面が、止血剤/インプラントの階層構造をフィブリン繊維の所望の分岐比に適合させることによって、血餅の構造を誘導する役割を果たし得ることを示唆している。
【0004】
フィブリン微細構造が変化した血餅は、フィブリン溶解に対して異なる感受性を示し、血餅の透過性は、フィブリンネットワーク分解酵素であるプラスミンの活性の律速因子である。
【0005】
適切にパターン化された動脈ステントは、血餅が形成された場合、血餅の透過性を変化させることができ、これにより、組織プラスミンアクチベータ、および/またはウロキナーゼプラスミンアクチベータが3次元フィブリンネットワークを通って移動し、チモーゲンプラスミノーゲンを線維溶解性プラスミンに活性化する能力を補助または妨害し得る。
【0006】
血液凝固は、固体および液体のフラクタルおよび階層的ドメインの形成を伴うことが知られている。これらのドメインは、多くのサイズスケールで自己相似的に繰り返し生じる表面エネルギーの差に対応することが発見されている。さらに、階層的に配置された交互の高エネルギー領域と低エネルギー領域でパターン化された固体表面は、自然凝固微細構造を予想することによって凝固時間を有意に延長および/または短縮させ得ることが予想外に見出された。
【0007】
その場合、生体組織に生じた欠損による血流の急速な停止という問題を克服するために微細構造化表面が必要とされる。
【0008】
さらに、血餅の質および転帰に対する治療操作および疾患の影響をモニターすることができる、正常な凝固のための「健康指標」に関して機能的バイオマーカーを提供する必要性が高まっている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、一実施形態では、血液凝固を促進するためのデバイスを提供する。デバイス
は、2~3の間のフラクタル次元を有するように構成された階層的に配置された微細構造化表面を含むことができ、この微細構造化表面は、血液と接触したときに血栓形成を促進するように構成されている。いくつかの実施形態では、デバイスは、2.06~2.08の間のフラクタル次元を含むことができる。さらに他の実施形態では、デバイスは、2.07のフラクタル次元を含むことができる。
【0010】
一実施形態では、デバイスは、少なくとも第1の表面テクスチャおよび第2の表面テクスチャを含む階層的に配置された微細構造化表面を含むことができる。この階層的配置により、第2の表面テクスチャを第1の表面テクスチャ上に配置することができる。さらに、少なくとも2つの表面テクスチャは、複数の空間的に分布した表面エネルギー勾配を生成するように構成することができる。
【0011】
一実施形態では、階層的に配置された微細構造化表面は、第3の表面テクスチャをさらに含み、この第3の表面テクスチャは、第2の表面テクスチャ上に階層的に配置されている。さらに、第1の表面テクスチャは、三角格子状に配置され、少なくとも400ミクロンの高さを含むことができる。第2の表面テクスチャは、直径25ミクロンであり、高さ45ミクロンであり得る。第3の表面テクスチャは、直径5ミクロンであり、高さ15ミクロンであり得る。一実施形態では、第2の表面テクスチャおよび第3の表面テクスチャはまた、それぞれ、第1の表面テクスチャと同様に、三角格子状に配置されてもよい。
【0012】
一実施形態では、第3の表面テクスチャは、縦溝付きの垂直面をさらに含んでもよく、各縦溝は幅5ミクロンを有し得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、階層的に配置された微細構造化表面は、階層的微細構造配置を欠く表面と比較して短縮された活性化部分トロンボプラスチン時間を有するように構成されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、血液成分を分離するためのデバイスは、階層的に配置された微細構造化表面を含むことができ、この階層的に配置された微細構造化表面は、第1の別個の表面および第2の別個の表面を含むことができる。第1および第2の別個の表面はそれぞれ中心を有してもよく、第1の別個の表面の中心は、第2の別個の表面の中心から少なくとも50ミクロンに位置してもよい。第1の別個の表面は、実質的に固体を含む第1の血液成分を局在化させるように構成することができ、第2の別個の表面は、実質的に流体を含む第2の血液成分を局在化させるように構成することができる。
【0015】
一実施形態では、第1の別個の表面は、階層的に配置された少なくとも2つの微細構造化テクスチャを含むことができる。第1の別個の表面は、第1のフラクタル次元を有する。第2の別個の表面は、階層的に配置された少なくとも2つの微細構造化テクスチャを含むことができ、この第2の別個の表面は、第2のフラクタル次元を有する。いくつかの実施形態では、第2の別個の表面は、毛細管作用によって第2の血液成分を除去するように構成することができる。
【0016】
一実施形態では、第1の別個の表面および第2の別個の表面は、階層的に配置された微細構造化表面が、階層的微細構造配置を欠く表面と比較して短縮された活性化部分トロンボプラスチン時間を有し得るように協力することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、血液凝固を促進するためのデバイスは、階層的微細構造および化学凝固剤を有し得る表面を含み得る。化学凝固剤は、微細構造に架橋されていてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、化学凝固剤は、クチナシ果実エキス(Gardenia fruit extract)、コラーゲン/ゼラチンの遊離アミノ基、および/または少なくとも1つの酸化多糖を含み得る。いくつかの実施形態では、表面は、少なくとも1つのアルデヒド基を含有するポリマー基材を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、階層的に配置された微細構造化表面の一実施形態である。
【
図2】
図2は、相互貫入縦溝を有する階層的に配置された微細構造化表面の一実施形態である。
【
図3】
図3は、本開示の階層的に配置された微細構造化表面の一実施形態の斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示の階層的に配置された微細構造化表面の別の実施形態の斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の階層的に配置された微細構造化表面の一実施形態の側面図である。
【
図6】
図6は、本開示の階層的に配置された微細構造化表面の別の実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、本開示の実施形態を詳細に参照し、その1つ以上の図面を本明細書に記載する。各図は、本開示の説明のために提供され、限定するものではない。実際、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の教示に対して様々な修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として図示または説明された特徴を別の実施形態と共に使用して、さらに別の実施形態を得ることができる。
【0021】
したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入るような修正および変形を包含することが意図されている。本開示の他の目的、特徴、および態様は、以下の詳細な説明に開示されているか、または以下の詳細な説明から明らかである。当業者であれば、本考察は例示的な実施形態の説明にすぎず、本開示のより広い態様を限定する意図のものではないことを理解されよう。
【0022】
本明細書で使用される場合、「微視的」という用語は、その形状を決定するために任意の観測面から見たときに肉眼に対して視覚補助を必要とする程十分に小さい寸法の機構を含むと理解される。正常な視力は、最小の認識可能な文字が、網膜上で弧の高低角(angular height)5分に対する場合であると見なされる。典型的な作業距離250 mm(約10インチ)において、正常視力では、この対象物の横方向寸法は0.36 mm(約0.0145インチ)となる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「微細構造」という用語は、機構の少なくとも2つの寸法が微視的である機構の構成を含むと理解される。一例として、機構のトポロジカルな断面図は、微視的であり得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「寸法機構(dimensional feature)」という用語は、特定の範囲のサイズを有する、微細構造表面の本体から突出する機構を含むと理解される。例えば、半径10~20ミクロンおよび高さ30~40ミクロンを有するピラーの寸法機構は、半径80~100ミクロンおよび高さ80~125ミクロンを有するピラーの別の寸法機構とは区別される。一般に、寸法機構の体積は10倍以上異なる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「正の機構」という用語は、微細構造化成形ツール、微細構造化ライナー、微細構造化バッキング、または微細構造化感圧接着層の本体から突出する機構を含むと理解される。
【0026】
本明細書で使用される場合、「負の機構」という用語は、微細構造化成形ツール、微細構造化ライナー、微細構造化バッキング、または微細構造化感圧接着層の本体内へ陥没した機構を含むと理解される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「吸引態様」という用語は、毛細管運動を生成することができる負の機構を含むと理解される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「エンボス加工可能」という用語は、特に機械的手段によって、その表面の一部を浮き上がらせ、その表面の他の部分を彫り下げさせる基材層の能力を含むと理解される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「基材層」という用語は、エンボス加工、成形、印刷、およびキャスティングによって微細構造を受け入れることができ、微細構造が基材層と一体になる、熱可塑性物質またはポリマーなどの滑らかで平坦な平面片を含むと理解される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「濡れ」という用語は、表面上に広がり、表面を流体と密接に接触させることを含むと理解される。親水性表面上の水性流体は濡れであり得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、「脱濡れ」という用語は、表面との密接な接触から収縮する流体を含むことと理解される。疎水性表面上の水性流体は脱濡れであり得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「多機能微細構造」という用語は、表面が標的表面と接触すると微細構造化表面上に発生する液体、固体、および/またはガスドメインを含むと理解される。これらのドメインは、2つの表面間の界面における微細構造化表面および標的表面の表面エネルギーを低下させることができる。界面は、2つの表面を分離するために界面にエネルギーを供給する必要がある低エネルギー界面の形成によって接着性にされ得る。ドメイン形成に関与する物理力としては、ファンデルワールス力、ゼロ点場との量子相互作用から生じるカシミール力、分子間力、ロンドン分散力、デバイ力、ケーソム力、および水素結合を挙げることができる。接着性微細構造とは、表面塗布により標的表面を把持させる任意の化学反応性物質を指すものではない。
【0033】
本明細書で使用される場合、「恒久的に再配置可能な多機能微細構造化表面」という用語は、所与の標的基材への接着強度が適用条件下で経時的に実質的に変化し得ない再配置可能な微細構造化表面を含むと理解される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「一時的に再配置可能な多機能微細構造化表面」という用語は、時間、圧力、または温度と共に接着を構築する再配置可能な微細構造化表面を含むと理解される。この現象は、微細構造化接着剤と標的表面との間の界面が徐々に薄くなり、解離のエネルギーを増加させる「吸引効果」と呼ばれることがある。
【0035】
本明細書で使用される場合、「解離エネルギー」という用語は、微細構造と、離れて界面で接合された標的表面との表面エネルギーの差を含むと理解される。解離エネルギーは、本開示内の接着度の定量的尺度であると理解される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「標的基材」という用語は、感圧微細構造化接着剤が意図
された目的のために塗布され得る表面を含むと理解される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「排除ゾーン」という用語は、表面と水との間の領域を含むと理解され、表面の親水性に起因して、表面テクスチャまたは化学的特性のいずれかに起因して、水は、水ではないイオンおよび分子を熱力学的に排除することができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「構造化水」という用語は、溶液中の水分子が遷移六角形をとる水の状態を含むと理解され、それは水と固体表面との間の表面エネルギーおよび表面化学によって強化および維持され得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「毛細管作用」(毛管現象、毛細管運動、毛細管上昇、毛細管効果、または吸上)という用語は、重力のような外力の助けを借りずに、または外力に逆らってさえ、液体が狭い空間を流れる能力を含むと理解される。一例として、この効果は、ペイントブラシの毛の間、細い管、紙およびプラスターなどの多孔質材料、砂および液化炭素繊維などのいくつかの非多孔質材料、またはセル内での液体の吸い上げに見ることができる。これは、液体と周囲の固体表面との間の分子間力に起因して生じると理解される。管の直径が十分に小さい場合、表面張力と、液体と容器の壁との間の接着力との組み合わせが液体を推進するように作用し得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ピッチ」という用語は、2つの隣接する微細構造間の中心間距離を含むと理解される。
【0041】
一般に、本出願のデバイスは階層的に微細構造化されており、これは、微細機構が、異なる機構サイズの集合によって定義され得ることを意味する。例えば、ピラーは、直径約1~5ミクロンを含むことができ、直径約25~50ミクロンを有するピラーの別のセットの上面に配置することができる。この構成は、複雑なピラー(階層的に配置された複数のピラーセット)と呼ぶこともでき、毛細管機能を有するくぼみを含む毛細管床上に配置することができる。
【0042】
これらの微細構造化階層表面は、疎水性ドメイン(低表面エネルギー)および親水性ドメイン(高表面エネルギー)を近接して、または並置して提示することができ、複合液体界面を親水性ゾーンおよび疎水性ゾーンに自己分化させ得ることが判定されている。これらのタイプの微細構造階層表面は、Wenzel-Cassieゾーンを作製することができ、ゾーンの一部は親水性(Wenzel)であり得、他の部分は疎水性(Cassie)であり得る。Wenzel-Cassieゾーンは、油ベースの水溶液、微粒子および水を含む複合流体、および/または空気/液体複合流体に概括することができる。
【0043】
本出願のデバイス上のWenzel-Cassieゾーンは、血液接触用途において特に有用であり得る。Cassieゾーンは、血液とデバイス表面との間に大きな接触角を作り出すことができるが、Wenzelゾーンは、水などの親水性成分を吸い取ることができる。血液接触用途などのいくつかの実施形態では、微細構造化表面に接触する血液の液滴が流体ピンニングを受けることができ、赤血球および他の微粒子が血液量および血漿中に濃縮され得(Cassieゾーン)、水性成分が毛細管作用によって吸い取られ得る(Wenzelゾーン)。
【0044】
毛細管作用による血液のピンニングおよび濃縮の結果は、血液を濃縮し、凝固をより迅速にし、高密度の形態にすることができる。巨視的には、微細構造デバイスは、出血面上で「吸い込み」、したがって血流を止めることが分かる。いくつかの実施形態では、血流の停止は、実際の凝固の前に引き起こされ得る。毛細管作用の程度は、急速な出血面がより少ない出血面よりも積極的にピンニングされ得るように、出血流量に合わせて調整する
ことができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示の止血剤は、中央でより多くの血液がピンニングされ、周囲でより多くの血漿が吸い取られ得る。そのような異方性は、微細構造のサイズおよび/またはピッチを変化させること、ならびにプラズマ活性化またはイオン化合物によるコーティングなどの表面処理によって表面の表面エネルギーに影響を及ぼすことによって達成され得る。あるいは、活性化表面は、基材材料のナノ構造の生成によって達成されてもよい。例えば、基材表面は、ナノ粒子の堆積を含む何らかの機械的方法で摩耗、化学的溶解、または分解され得る。
【0046】
表面エネルギーはまた、マイクロ電極の埋め込みによって局所的に調整することができ、その後、表面エネルギーを可逆的に変化させるために外部源によって帯電させることができる。電解性化合物は、それらが血液を伝導すると、化合物が電流を流し、電荷を別個の表面に蓄積させ得るように使用することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、凝固および/または血栓形成を促進するために、微細機構のサイズおよびピッチを選択することができる。一実施形態では、凝固は1ミクロンのスケールで開始し得る。次いで、これらの小規模の血栓は、特徴的なスケールで組み合わせて、より大きな血栓を形成することができる。特徴的な寸法にわたるこの進展は、凝固カスケードの特徴である。微細構造化表面の階層構造を凝固カスケードの特徴的な寸法に一致させることによって、凝固を増強することができる。凝固が、不規則な流体状態から規則的な繊維状固体状態への相転移と見なし得ることを理解されたい。局所表面エネルギーのパターンは、液体血液から固体血栓への相転移を触媒し得る。
【0048】
疾患または医薬品によって変更される凝固機序については、いくつかの実施形態では、特徴的な凝固寸法が変化し得る。凝固動態のこの形態学的変化は、分岐比として表すことができ、ある長さおよび直径の繊維は優先的に分岐するが、異なる長さおよび/または直径の別の繊維は分岐しにくいことがある。繊維が分岐すると、それらの幾何学的形状はフラクタルになり得る。ここで、フラクタル幾何学的形状とは、2次元平面幾何学的形状と3次元体積幾何学的形状との間の部分的幾何学的形状を指す。分岐部が高密度であるほど、幾何学的形状は2次元平面に近くなる。
【0049】
凝固の形態学的挙動を認識することにより、より良好な止血剤を設計すること、および特定の凝固動態を補正する止血剤を設計することが可能になり得る。さらに、特定の凝固動態の血液に曝露された微細テクスチャ化表面のアレイは、1つのパターン化表面上で凝固相転移を起こすことができ、他の表面では起こらない。異なるフラクタル次元の微細構造化表面上の凝固時間を観察することにより、患者の凝固状態を診断するための定量的手段を提供することができる。
【0050】
したがって、本開示の実施形態は、3つのカテゴリー:1)正常な凝固促進フラクタル次元を有する止血剤、2)異なるフラクタル次元を有する損なわれた凝固経路を触媒する止血剤、および3)凝固経路のフラクタル次元を測定する診断表面、に分類することができる。これらの実施形態は、さらに別の実施形態のために化学凝固剤と組み合わせてもよい。
【0051】
本開示の実施形態は、微細構造化表面が、結果として生じる血栓の形態を能動的に誘導し得ることを認識することによって、さらに強化することができる。低分岐比の血栓は、より拡散し、多孔性であり、容易に溶解し得る。高分岐比の血栓は、より高密度であり、流体浸透に対して不浸透性であり、構造的に堅固であり得る。微細構造化表面が流動する血液と接触している実施形態では、微細構造化表面は、血栓形成に抵抗し、血栓が形成さ
れても拡散した血栓形成を促進する材料から構成されてもよい。この実施形態では、微細構造化表面は血栓形成に抵抗することができ、血栓形成が生じたとしても、血栓形成を容易に再吸収される構成に導くことができる。例えば、拡散したフィブリン構造の形成は内皮化を促進することができ、これはその後、強力に抗血栓性になり得る。内皮細胞は、血栓形成を阻止し得る一酸化窒素を放出することが知られている。
【0052】
本発明の一実施形態は、特定の分岐比を有する微細構造化表面である。
図1を参照すると、階層的微細構造表面100は、大きな微細機構102、中程度の微細機構104、および小さな微細機構106を含む階層的微細機構によって画定される分岐比を有する。いくつかの実施形態では、個々の大きな微細機構102は、中心間1000ミクロンのピッチを含むことができ、個々の中程度の微細機構104は、中心間100ミクロンのピッチを含むことができ、個々の小さな微細機構106は、中心間10ミクロンのピッチを含むことができる。小さい微細機構106は、中程度の微細機構104の上面108に配置することができる。中程度の微細機構104は、大きな微細機構102の上面110に配置することができる。いくつかの実施形態では、基準線112は、大きい微細機構の高さ114が中程度の微細機構104の高さ116の10倍であり、中程度の微細機構104の高さ116が小さい微細機構108の高さ118の10倍である分岐比を画定することができる。基準線112は、フラクタル次元2.1=2+連続する長さの比を画定することができ、ここで2は微細構造のない表面の次元である。正常な凝固のフラクタル次元は約2.07である。
【0053】
いくつかの実施形態では、フラクタル次元は微細機構の形状に依存しない場合があることが理解されよう。円筒形のピラーの代わりに、正方形のピラー、または任意の多角形のピラーを使用することができる。微細機構の周りに配置された角度がより大きい実施形態では、微細機構の表面エネルギーが高くなり得る。縦溝付きまたはフィン付き側面構造を有する微細機構は、Wenzel-Cassie構造の構築に特に有用であり得る。例えば、
図2を参照すると、Wenzel-Cassie微細構造200が上面図で示されており、その上に階層的に配置されたより小さい微細機構204がある大きな微細機構202によって画定され得る。いくつかの実施形態では、大きな微細機構202は縦溝206を含むことができ、隣接する大きな微細機構は、領域208に示すように相互貫入する縦溝を有することができる。縦溝の相互貫入により、領域208は親水性であり得る。この実施形態の親水性に起因して、流体は、毛細管作用によりチャネル210の下方に引き出され得る。あるいは、互いに近接して、例えば少なくとも2ミクロンで配置されたより小さい微細機構204を有する実施形態では、相互貫入領域208は疎水性であり得る。この構成により、血液の液滴212(破線で示す)は、血漿および赤血球から構成されていてもよく、赤血球を大きな微細機構202の上面2018に濃縮させることができ、血漿はチャネル210に引き込まれ、したがって血小板などの血液成分が濃縮され、凝固欠損を補うことができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、Wenzel-Cassie微細構造200を有する微細構造止血剤は、血漿が界面表面から吸い取られときに微細構造表面を組織表面の方向に引っ張ることによって能動的血流を停止させることができる。あるいは、そのようなパターンは、血液を液体成分と固体成分とに分離し、それらを互いに対して隔離するために使用することができる。
【0055】
本開示の止血剤は、コラーゲンおよび/またはアルデヒド含有ポリマーを含むまたは含まない、フィブリン系シーラント組成物などの化学凝固剤と併せて使用することもできる。フィブリン系シーラントを、アルデヒド基を有する微細構造化ポリマーに架橋すると、シーラント強度の増加したトロンビン形成が促進され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、フィブリンシーラントのフィブリノーゲン成分は、限外濾過によって濃縮された凍結沈殿物に由来し得る。フィブリノーゲン成分は、約1~100mg/ml、特に50~75mg/mlのフィブリノーゲン含有量を含み得る。フィブリノーゲンの量は、階層的に配置された微細構造化止血剤の微細構造の表面エネルギーおよび表面エネルギー勾配に依存し得る。
【0057】
血栓形成を担う架橋は、コラーゲン/ゼラチンの遊離アミノ基とポリマー中のアルデヒド基との間のシッフ塩基形成によって形成され得る。いくつかの実施形態では、微細構造化ポリマーは多糖類を含み得る。一実施形態での使用に適した多糖の一例は、重合デキストランである。別の実施形態では、酸化された重合デキストランまたはキサンタンが使用され得る。
【0058】
本開示に含まれる酸化多糖類は、溶液中の酸化デキストランであることが好ましい。しかしながら、適切な粘度、分子量、および酸化特性を有する他の多糖類も、様々な実施形態で使用することができる。
【0059】
創傷包帯の製造に使用される酸化デキストランの分子量は、好ましくは500万ダルトン未満、より好ましくは1万ダルトン~10万ダルトンであり得る。いくつかの実施形態では、デキストランの水溶液の粘度は、例えば、2%溶液では(30サイクルで操作されるブルックフィールドLVT粘度計を使用して測定した場合)0.1~1Pasであり得る。
【0060】
デキストランの酸化は、当業者に周知の反応である。例えば、過ヨウ素酸ナトリウムなどの過ヨウ素酸塩の水溶液で処理することによって、酸化を好都合に得ることができる。酸化の目的は、ポリマーベースの微細構造化表面上に反応性ジアルデヒド残基の形成を生じさせることであり得る。
【0061】
上記の酸化手順を使用してもよいが、ジアルデヒド残基の形成をもたらす他の酸化方法も他の実施形態で可能であり得ることを当業者は理解すべきである。例えば、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒中の過ヨウ素酸または四酢酸鉛で処理するためのいくつかの実施形態が、酸化を引き起こすことができる。酸化後、酸化デキストランを簡便に精製し、古典的な精製方法によって低分子量反応成分から分離することができる。これを達成するための例としては、限定するものではないが、沈殿(例えば、アセトン、メタノールまたはイソプロパノールの添加による)または透析、限外濾過、またはゲル浸透クロマトグラフィー、その後の凍結乾燥が挙げられる。
【0062】
コラーゲンまたはゼラチンと酸化デキストランとの間の架橋は、コラーゲン/ゼラチン上に(特にそのリジン残基上に)存在する遊離アミノ基と、酸化デキストランおよびフィブリノーゲン上のジアルデヒド残基との間のいわゆるシッフ塩基結合の形成によってその場で達成され得る。これらの反応は、高い表面エネルギー勾配の存在によって触媒され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、この反応は、水性フィブリンシーラント媒体を形成し得る血液の存在下で開始され、架橋の速度および程度は様々なパラメータに依存し得る。パラメータは、コラーゲン/ゼラチンの種類、酸化デキストランの濃度、ジアルデヒド置換の程度および分子量、pH、緩衝剤の種類、および/または反応媒体中の電解質の存在を含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、酸化デキストランの微細構造表面の被覆率は、好ましくは1%~25%であり得る。いくつかの実施形態では、コラーゲン/ゼラチンおよび酸化デキ
ストランの濃度は、好ましくは約1%~約25%、より好ましくは5~15%、さらにより好ましくは8~12%であり得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、化学凝固剤は、血小板が微細構造化止血剤の微細構造内に濃縮される場に展開される1つ以上の他の物質を含み得る。例えば、それらは、血小板と共に存在した1つ以上の物質を含み得る。いくつかの実施形態では、化学添加剤はまた、リン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの1つ以上の塩、および任意の他の塩、またはこれらの2つ以上の任意の組み合わせを含むことができる。
【0066】
他の例示的な物質、限定するものではないが、単糖類および二糖類(例えば、マルトース、デキストロース、マンノース、トレハロース、スクロース、スクロースのポリマー、グルコース)などの糖類;Ficoll-70およびFicoll-400などのポリ糖;グリセロール;トリグリセリド;多糖類;脂質;デキストラン;ポリビニルピロリドン(PVP);デンプン;ヒドロキシエチルデンプン(HES);などが微細構造化表面の様々な実施形態に存在してもよい。
【0067】
いくつかの実施形態は、ヒトまたは動物源に由来する生体分子、例えば、ポリペプチド(例えば、ウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミンなどのアルブミン)、カゼイン、ラミニン、フィブリノーゲンなどを含み得る。
【0068】
本開示の微細構造化止血剤のいくつかの実施形態は、階層的に配置された微細構造を含み得る。この構成により、血小板に加えて血小板微粒子を濃縮することができる。そのような実施形態では、濃縮された血小板は、組成物中に粒子、特に血小板または血小板由来粒子の総数の約10%~約60%を含み得る。例えば、血小板は、約10%~約50%の粒子、約20%~約50%の粒子、または約30%~約40%の粒子を含み得る。
【0069】
他の実施形態では、血液中の血小板粒子の約70%が階層表面上で濃縮され得、そこでは血液が典型的な血小板のサイズの粒子を保持する。したがって、いくつかの実施形態では、粒子の最大約70%が、微細構造化止血剤の特定の平面に存在する濃縮された血小板である。したがって、微細構造化止血剤の濃縮領域は、70%の血小板および30%の微粒子、60%の血小板および40%の微粒子、50%の血小板および50%の微粒子、40%の血小板および60%の微粒子、20%の血小板および80%の微粒子、または10%の血小板および90%の微粒子を含み得る。
【0070】
当然のことながら、上記の範囲または量のいずれかの内の任意の特定の全ての数の血小板または微粒子が本開示によって企図される。当業者は、血小板および微粒子の量の多数の可能な組み合わせをそれぞれ直ちに認識すると思われるので、本明細書においてそれぞれを具体的に開示する必要はない。
【0071】
微細構造化止血剤の血小板濃縮領域を、少なくとも1つの糖類を含み得る塩緩衝液でコーティングして、緩衝化血小板含有領域を得ることができる。塩緩衝液は、緩衝液中にある間、血小板の少なくとも大部分を無傷の機能的状態に維持する任意の緩衝液であり得る。緩衝液は、血小板を約6~8、より好ましくは約6.2~約7.8のpHに維持し得る。塩緩衝液は、血小板が自然に遭遇する塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などを含む塩、およびそのような塩の組み合わせを含む等張塩緩衝液であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、微細構造表面は、血小板が自然に接触することのない1つ以上の塩を含んでもよい。緩衝液中の(1または複数の)塩の独自性は、血小板に対して毒性であり、緩衝液中にある間、血小板の少なくとも大部分を無傷の機能的状態に維持する
ことができない量で存在すべきではない。同様に、緩衝成分は、血小板に対して非毒性であり、本開示の方法の間に組成物が曝露される温度で組成物に適切な緩衝能力を提供する任意の緩衝液であり得る。
【0073】
緩衝液としては、HEPES、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、およびTBSなどのTris系緩衝液などの市販されている公知の生体適合性の緩衝液のいずれかを挙げることができる。同様に、それは以下の緩衝液の1つ以上を含み得る:プロパン-1,2,3トリカルボン酸(トリカルバリル);ベンゼンペンタカルボン酸;マレイン酸;2,2-ジメチルコハク酸;EDTA;3,3-ジメチルグルタル酸;ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノ-トリス(ヒドロキシメチル)-メタン(BIS-TRIS);ベンゼンヘキサカルボン酸(メリト);N-(2-アセトアミド)イミノ-二酢酸(ADA);ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸;ピロリン酸;1,1-シクロペンタン二酢酸(3,3テトラメチレングルタル酸);1,40ピペラジンビス-(エタンスルホン酸)(PIPES);N-(2-アセトアミド)-2-アムノエタンスルホン酸(ACES);1,1-シクロヘキサンジ酢酸;3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸(EMTA;ENDCA);イミダゾール;2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド(CHOLAMINE);N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES);2-メチルプロパン-1,2,3トリカルボン酸(ベータ-メチルトリカルバリル);2-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS);リン酸;N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アンミノエタンスルホン酸(TES);N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(HEPES)。さらに、緩衝系は、pH4~pH8の範囲で緩衝能を提供することができる。
【0074】
以下の実施例は、例示的であるが限定的ではないことを意味する。
【実施例1】
【0075】
パターンA
図3を参照すると、微細構造化止血表面300が示されており、これは正弦波表面302および複雑なピラー304を含む。いくつかの実施形態では、正弦波表面は、三角格子を含むように配置することができる。いくつかの実施形態では、正弦波ピークは、一方のピークから隣接するピークまで測定して1000ミクロンのピッチを有することができ、正弦波ピークは400ミクロンのピーク高さを含むことができる。複雑なピラー304は、ベースピラー306およびより小さいピラー308から構成されてもよく、より小さいピラーは縦溝310を含んでもよい(
図3aを参照されたい)。ベースピラー306は、直径25ミクロンであり、高さ45ミクロンであり得る。さらに、ベースピラー306は、一方のピラーの中心から隣接するピラーの中心まで測定して75ミクロンのピッチを有することができ、三角格子状にさらに配置することができる。より小さいピラー308は、ベースピラー306の上面上に三角格子状に配置することができ、より小さいピラー308は、15ミクロンのピッチで直径5ミクロンおよび高さ15ミクロンであってよい。縦溝310は、断面が三角形であり得、5ミクロンの幅および/または高さを含んでもよい。
【実施例2】
【0076】
パターンB
図4を参照すると、微細構造化止血表面400は、1000ミクロンのピッチで三角格子上に、高さ400ミクロンを含み得る正弦波微細構造402を含み得る。止血表面400に、長手方向平行溝404および横方向平行溝406を載せることができ、溝404、406は直交して配置されてもよい。いくつかの実施形態では、溝404、406は、中心から中心へ50ミクロンのピッチで幅25ミクロンを有することができる。長手方向溝
404は、いくつかの実施形態では50ミクロンの深さを含むことができる。横方向溝406は、いくつかの実施形態では100ミクロンの深さを含むことができる。いくつかの実施形態では、溝404、406は、各溝の深さの配置がピラー408を作り出すように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ピラー408は、長さおよび幅が25ミクロンの正方形であってもよい。いくつかの実施形態では、ピラー408の上面を機械加工して、その上に配置されたより小さいピラー412を提供することができる。いくつかの実施形態では、より小さいピラー412は、幅5ミクロンおよび10ミクロンのピッチを含むことができる。いくつかの実施形態では、より小さいピラー412は、正方格子、三角格子、またはランダムに配置されてもよい。
【実施例3】
【0077】
微細構造により促進される止血の実証
目的:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は、出血障害を調査するため、および抗トロンビンを活性化しながら第X因子およびトロンビンを阻害し得るヘパリンなどの抗凝固薬を服用している患者をモニターするために行われる試験である。aPTTは、上記の実施例1および2に開示されている実施形態のテクスチャ化表面構造の関数として測定することができる。
【0078】
微細構造化止血剤がヘパリンの効果を局所的に逆転させることができるかどうかを決定するためにヘパリンを添加した(0.018IU/100cc血液)。
【0079】
方法:新鮮なウシ血液を得て脱灰し、試験開始前に凝固を防止した。血液をバイアルに収集し、0.01Mクエン酸塩を添加することによって脱灰した。血漿を分離し、遠心分離によって取り置いた。試験時に、血漿をカルシウムイオンと混合して、凝固カスケードの固有経路を開始した。カオリン(水和ケイ酸アルミニウム)を添加してカスケードを活性化した。カオリンは、接触依存性第XII因子を活性化する。部分トロンボプラスチン時間は、血餅が形成されるのにかかる時間であり、秒単位で測定される。通常、試料は滑らかなガラス表面で35秒で凝固する。
【0080】
被験物質:(0.1cc活性化血液)
【0081】
実施例1の実施形態-ポリプロピレン
【0082】
実施例2の実施形態-ポリプロピレン
【0083】
結果:ガラスと微細構造化表面を比較すると、血餅形成のプロセスは、小さな血餅の島の形成と共に進行するようであり、その後、それらは互いに接合して巨視的な血餅を形成する。
【0084】
これらの結果に基づいて、(撹拌するのではなく)静止環境で、ヘパリンを含まないより大きな血餅を研究した。ガラス上では、正常な血液凝固は、いくつかのサイズスケールにわたって生じる一連の固相形成を介して進行するように見える。これは、一般に1ミクロンレベルで開始し得るフラクタル次元作用のエビデンスである。これらの島は、10~25ミクロンの島に接合し、次いで1000ミクロンスケールで1つに融合する。
【0085】
ヘパリン添加血の場合、これらの島を形成せず、むしろ構造形成のない試験体積全体のゲルを形成する。
【0086】
少なくとも一部の構造が1000ミクロンの寸法を含む微細構造化表面は、凝固スケールの全範囲にわたる血餅の組織化を支援し得る。
【表1】
【0087】
ガラス上の正常血液の凝固は、フラクタル次元スケーリング則によって進展し得る。ヘパリン添加血の凝固は同じ次元でスケーリングしないと思われ、血液体積全体が同じ時間でゲル化し得る。その結果、繊維状の塊ではなく、非晶質の血餅塊が生じる。
【0088】
撹拌されたヘパリン添加血は、ガラスと比較して微細構造化表面上で改善されたトロンボプラスチン時間をもたらした。凝固が階層的微細構造によって誘導される場合、ヘパリン添加血に対して凝固形態は通常のフラクタル次元スケーリング則に戻ることができる。
【実施例4】
【0089】
パターンC
図5を参照すると、複雑なピラー表面500は、複雑なピラー502で構成される。複雑なピラー502は、ベースピラー504およびより小さいピラー506で構成される。ベースピラー504は、三角格子上に配置され、100ミクロンのピッチを含むことができる。ベースピラー504はまた、直径40ミクロンを有することができる。より小さいピラー506は、ベースピラー504の上面508上に階層的に配置することができる。より小さいピラー506はまた、三角格子で配置され、10ミクロンのピッチを有することができる。より小さいピラー506は、直径5ミクロンを有することができる。
【実施例5】
【0090】
微細構造により促進される止血の実証
目的:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は、出血障害を調査するため、および抗トロンビンを活性化しながら第X因子およびトロンビンを阻害し得るヘパリンなどの抗凝固薬を服用している患者をモニターするために行われる試験である。aPTTは、テクスチャ化表面およびクチナシ果実エキス(Gardenia fruit extract)(凝固剤)の関数として測定される。
【0091】
方法:新鮮なウシ血液を得て脱灰し、試験を開始する前に凝固を防止した。血液をバイアルに収集し、0.01M クエン酸塩を添加することによって脱灰した。血漿を分離し、遠心分離によって取り置いた。試験時に、血漿をカルシウムイオンと混合して、凝固カスケードの固有経路を開始した。カオリン(水和ケイ酸アルミニウム)を添加してカスケードを活性化した。カオリンは、接触依存性第XII因子を活性化する。部分トロンボプラスチン時間は、血餅が形成されるのにかかる時間であり、秒単位で測定される。通常、試料は滑らかなガラス表面で35秒で凝固する。
【0092】
被験物質:(0.1 cc活性化血漿)
【0093】
1% w/wのクチナシエキス含有および非含有のガラスプレート;1% w/wのクチナシエキス含有および非含有のポリプロピレンを用いた実施例1の実施形態;1% w/wのクチナシエキス含有および非含有のポリプロピレンを用いた実施例4の実施形態。
【0094】
【実施例6】
【0095】
複合微細構造化止血剤
いくつかの実施形態では、複合微細構造化止血剤を使用して、出血表面から血清を除去し、創傷-デバイス界面付近で血小板および赤血球を濃縮することによって凝固欠損を補正することができる。
【0096】
図6を参照すると、複合微細構造化止血剤600が示されている。止血剤600は、電界紡糸繊維604から構成され得る第1の構成要素602を含み得る。電界紡糸繊維は、いくつかの実施形態では、修正パターンC(実施例4)であり得る第2の表面606上に均一に分布されてもよい。電界紡糸繊維は、直径5ミクロンを有する軸方向断面608と、直径30ミクロンを有するビーズ付断面610とで構成され得る。電界紡糸構成要素602は、1~2ミクロンの多孔度を含むことができる。好ましくは、電界紡糸繊維602は、親水性ポリマーで構成することができる。一実施形態では、例えば、電界紡糸繊維602は、吸収性ポリウレタンを含むことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、微細構造化止血剤600は、血液の液滴612が液体血清614および固体616で構成されていてよく、微細構造化止血剤600と接触するように使用され得る。固体616は、赤血球、血小板、および/または微粒子を含み得る。第1の構成要素602は、大きなピラー606と毛細管接触を有することができる。液体血清614は、大きなピラー606の間に引き込まれ、固体616は、小さなピラー618上に蓄積し得る。この配置は、第1の構成要素602内に固体616を固定化し、血栓形成を促進し得るWenzel-Cassie界面を表し得る。液体血清614は、第1の構成要素604から第2の構成要素606に引き離されてもよい。
【0098】
流体成分は、創傷部位の遠位のかなり大きな表面にわたる遠位蒸発に起因して、血栓形成から連続的に流出させることができる。場合により、隔離のために創傷部位の遠位に毛細管リザーバを作製することができる。
【実施例7】
【0099】
パターンD
いくつかの実施形態では、複合微細構造化止血剤を使用して、凝固が起こる時間を短縮することによって創傷出血を減少させることができる。一実施形態では、この効果は、出血表面から血清を除去し、創傷-デバイス界面付近で血小板および赤血球を濃縮することによって引き起こすことができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、止血デバイスは、その上に階層的微細構造が配置された表面を含み得る。一実施形態では、階層的微細構造は、第1のピラーおよび第2のピラーを含むことができ、第2のピラーは、第1のピラーの周りに配置される。第1のピラーは、高さ200ミクロン、直径100ミクロン、およびピッチ200ミクロンの円形断面を有し
得る。第2のピラーは、高さ20ミクロン、直径10ミクロン、およびピッチ20ミクロンの円形断面を有し得る。本実施形態を出血が生じる切開部または創傷部位に適用すると、階層的微細構造を有さない表面よりも速い速度で出血が停止する。
【実施例8】
【0101】
パターンE
いくつかの実施形態では、微細構造化止血剤は、微細構造化表面を取り囲む電界紡糸フレームを利用し得る。一実施形態では、止血剤のフレームは、厚さ500ミクロンであり得る5ミクロンPET繊維を含み得る。フレームは、PLAバッキング上に配置されてもよい。PLAバッキングは、第1のピラーおよび第2のピラーを有し、第2のピラーが第1のピラーの周りに配置された階層的微細構造を含み得る。第1のピラーは、高さ200ミクロン、直径100ミクロン、およびピッチ200ミクロンの円形断面を有し得る。第2のピラーは、高さ20ミクロン、直径10ミクロン、およびピッチ20ミクロンの円形断面を有し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、上記に開示された電界紡糸フレームおよび微細構造化デバイスは、血液と接触し、約2分以内に凝固を引き起こすことができる。さらに、血液は微細構造化層を通って流れ続け、次いで電界紡糸フレームに接触し、止血剤を標的界面に「吸い込み」、所定の位置で凝固させることができる。いくつかの実施形態では、ブローフロー(blow flow)は逆行でき、切開孔または創傷を通して逆流させることができる。
【0103】
したがって、新規で有用な微細構造化止血剤の本開示の特定の実施形態を説明してきたが、そのような参照は、以下の特許請求の範囲に記載される場合を除いて、本開示の範囲に対する限定として解釈されることを意図しない。
【国際調査報告】