(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】シクロスポリン誘導体の調製
(51)【国際特許分類】
C07K 7/66 20060101AFI20230426BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20230426BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
C07K7/66
A61K38/13
A61P37/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556477
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-03
(86)【国際出願番号】 CN2021083016
(87)【国際公開番号】W WO2021190604
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/081295
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/078391
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521313500
【氏名又は名称】ファーサイト メディカル テクノロジー (シャンハイ) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FARSIGHT MEDICAL TECHNOLOGY (SHANGHAI) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】マック, チン‐ポン
(72)【発明者】
【氏名】マー, ファシュー
(72)【発明者】
【氏名】リー, ダオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ユー, シャオ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA06
4C084BA24
4C084DA11
4C084NA20
4C084ZB08
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA01
4H045BA16
4H045BA35
4H045EA20
4H045EA22
4H045FA31
4H045GA40
(57)【要約】
本発明は、シクロスポリン誘導体の調製のための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1a
(式中
R
aは、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル又はn-プロピルであり、
R
1及びR
2は、独立して、H、C
1~C
6アルキルから選択されるか、又はR
1及びR
2は共に結合して、C
3~C
6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環を形成し、
R
3及びR
4は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換C
1~C
6アルキル、アリール、置換アリール、ベンジル、カルボニル、カルボキシル、スルホニルから選択されるか、又はR
3及びR
4は共に結合して、C
3~C
6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環を形成し、
R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換C
1~C
6アルキルから選択されるか、又はR
5及びR
6は共に結合して、C
3~C
6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環を形成する)、
の化合物又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法であって、
前記方法が、式2aの化合物を、銅塩及びハロゲン化トリアルキルシリルの存在下でアミノアルコールと反応させる工程を含み
前記式2aの化合物が、以下:
(式中、R
aは、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル及びn-プロピルから選択され、
R
bは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである)
であり、
前記アミノアルコールが式3:
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、式1aについて定義される通りである)
のものである、方法。
【請求項2】
前記方法が、式1b
の化合物又はその薬学的に許容され得る塩の調製のためのものであり、
前記方法が式2bの化合物を、銅塩及びハロゲン化トリアルキルシリルの存在下でアミノアルコールと反応させる工程を含み、
前記式2bの化合物が、以下:
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
bが、例えばピリジン、ピリミジン、ピラジン、チアゾール、オキサゾール、ベンゾチアゾール及びベンズイミダゾールから選択されるヘテロアリール又は置換ヘテロアリール置換基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記式2aの化合物が、以下:
であり、R
aが、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル及びn-プロピルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記式2bの化合物が、以下:
であり、R
aが、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル及びn-プロピルから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
R
1及びR
2が両方とも水素である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
R
1又はR
2の少なくとも1つがC
1~C
6アルキル、例えばメチルである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
R
1及びR
2が共に結合して、C
3~C
6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環、又は好ましくはC
3~C
6シクロアルキル環、例えばシクロプロピルを形成する、請求項1~6に記載の方法。
【請求項9】
R
aがエチルである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
R
3及びR
4の少なくとも1つがメチルであるか、又はR
3及びR
4が両方ともメチルである、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
R
3及びR
4の少なくとも1つがカルボニル又はカルボキシル(例えば、tert-ブトキシカルボニル)置換基である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
R
3及びR
4が共に結合して、C
3~C
6シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成する、請求項1~9に記載の方法。
【請求項13】
R
5及びR
6の少なくとも1つが水素であるか、又はR
5及びR
6の両方が水素である、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
R
5がC
1~C
6アルキル(例えば、メチル)であり、R
6がHである、請求項1~12に記載の方法。
【請求項15】
前記式2a又は2bの化合物を3~5当量の前記アミノアルコールと反応させる、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記アミノアルコールがジメチルアミノエタノールである、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記式2a又は2bの化合物を、3~4当量の銅塩の存在下で前記アミノアルコールと反応させる、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記式2a又は2bの化合物を、1.8~2.4当量のハロゲン化トリアルキルシリルの存在下で前記アミノアルコールと反応させる、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ハロゲン化トリアルキルシリルが塩化トリメチルシリルである、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記銅塩が銅(II)塩である、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記銅塩が銅トリフラートである、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記式2a又は2bの化合物を、2.4当量の塩化トリメチルシリル及び3.6当量の銅トリフラートの存在下で、4.2当量の前記アミノアルコールと反応させる、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法であって、
前記方法は、化合物2
を、銅塩及びハロゲン化トリアルキルシリルの存在下で、ジメチルアミノエタノールと反応させる工程を含む、方法。
【請求項24】
化合物2を3~5当量のジメチルアミノエタノールと反応させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記銅塩が銅(II)塩であり、任意に、前記銅塩が銅トリフラートである、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
化合物2を、3~4当量の前記銅塩、例えば銅トリフラートの存在下でジメチルアミノエタノールと反応させる、請求項23~25に記載の方法。
【請求項27】
前記ハロゲン化トリアルキルシリルが塩化トリメチルシリルである、請求項23~26に記載の方法。
【請求項28】
化合物2を、1.8~2.4当量の前記ハロゲン化トリアルキルシリル、例えば塩化トリメチルシリルの存在下でジメチルアミノエタノールと反応させる、請求項23~27に記載の方法。
【請求項29】
化合物2を、2.4当量の塩化トリメチルシリル及び3.6当量の銅トリフラートの存在下で、4.2当量の前記ジメチルアミノエタノールと反応させる、請求項23~28に記載の方法。
【請求項30】
反応溶媒がTHFである、請求項1~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記反応が室温で行われる、請求項1~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記反応がモレキュラーシーブの非存在下で行われる、請求項1~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
化合物1又はその塩の調製のための方法であって、
前記方法が、
a)塩基の存在下で、シクロスポリンAとジスルフィド化合物(例えばピリジルジスルフィド)とを反応させる工程、
b)工程a)の生成物を、銅塩、例えば、銅トリフラート、及びハロゲン化トリアルキルシリル、例えば、塩化トリメチルシリル、の存在下で、ジメチルアミノエタノールと反応させる工程、
を含む、方法。
【請求項34】
工程b)が、請求項23~32に記載の反応条件のいずれか1つ又は組み合わせの下で行われる、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
シクロスポリンAは、その免疫抑制特性で周知の化合物である。サルコシン残基に修飾を有する誘導体を含むシクロスポリンAの誘導体も合成され、それらの生物学的特性について調査されている。
【0002】
例えば、米国特許第6,583,265号には、サルコシン置換を有するシクロスポリン化合物の調製が記載されている。サルコシン位置で「-O-R3」置換基で置換されたシクロスポリン化合物は、サルコシン置換基「-S-R2」を交換することによって調製することができ、そのような交換反応は金属塩、ルイス酸、又はブレンステッド酸によって行われることが記載されている。化合物[D-Sar-(2-N,N-ジメチルアミノエトキシ))3]-シクロスポリンの調製に関して、これは、N,N-ジメチル-アミノエタノールと3-(メルカプトベンズチアゾール-2-イルチオ)-シクロスポリンとをカンファースルホン酸の存在下で反応させることによって調製され得ることが開示されている。米国特許第6,583,265号は、この化合物の調製の収率を記載していない。
【0003】
国際公開第2019/016572号はまた、この化合物、化合物1の調製方法を開示している。
【0004】
国際公開第2019/016572号によれば、化合物1は、銅トリフラート及びモレキュラーシーブの存在下で、チオピリジルシクロスポリンA中間体とジメチルアミノエタノールとの反応によって得ることができる。この方法は、米国特許第6,583,265号の方法論に従った場合に観察される不十分な再現性を克服することが記載されている。モレキュラーシーブは乾燥剤として使用される。しかしながら、モレキュラーシーブは実験室環境で使用され得るが、生産規模の方法には好ましくもなく実用的でもない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、化合物1及び関連類縁体を製造するための改善されたスケーラブルな方法を提供することである。本発明の更なる目的は、本発明の以下の説明、実施例及び特許請求の範囲に基づいて明らかになるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,583,265号
【特許文献2】国際公開第2019/016572号
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本発明は、式1a
の化合物又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法を提供し、
該方法は、式2a
の化合物を銅塩(例えば、銅トリフラート)及びハロゲン化トリアルキルシリルの存在下でアミノアルコールと反応させる工程を含む。
【0008】
更なる態様では、本発明は、化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法を提供し、
該方法は、化合物2
を、銅塩、例えば銅トリフラート及びトリメチルアルキルハライド(例えば塩化トリメチルシリル)の存在下で、ジメチルアミノエタノールと反応させる工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の態様では、本開示は、式1a
(式中
R
aは、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル又はn-プロピルであり、
R
1及びR
2は、独立して、H、C
1~C
6アルキルから選択されるか、又はR
1及びR
2は共に結合して、C
3~C
6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環を形成し、
R
3及びR
4は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換C
1~C
6アルキル、アリール、置換アリール、ベンジル、カルボニル、カルボキシル、スルホニルから選択されるか、又はR
3及びR
4は共に結合して、C
3~C
6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環を形成し、
R
5及びR
6は、独立して、H、C
1~C
6アルキル、置換C
1~C
6アルキルから選択されるか、又はR
5及びR
6は共に結合して、C
3~C
6シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環を形成する)
の化合物又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法であって、
該方法が、式2aの化合物を、銅塩及びハロゲン化トリアルキルシリルの存在下でアミノアルコールと反応させる工程を含み
式2aの化合物が、以下:
(式中、R
aは、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル及びn-プロピルから選択され、
R
bは、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールである)
であり、
アミノアルコールが、式3
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、式1について定義される通りである)
のものである、方法に関する。
【0010】
一実施形態では、本開示によるシクロスポリン化合物、中間体又は前駆体化合物は、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つ又は組み合わせで定義されるような大環状環の3位のサルコシン残基に置換基を含むシクロスポリンA化合物(Raはエチルである)である。他の実施形態では、本開示によるシクロスポリン化合物は、3位に置換基、すなわち本明細書に記載の実施形態のいずれか1つ又は組み合わせについて定義されるサルコシン残基を含む、シクロスポリンC化合物(Raは1-ヒドロキシエチルである)、シクロスポリンD化合物(Raはイソプロピルである)、又はシクロスポリンG化合物(Raはn-プロピルである)である。
【0011】
本明細書で使用される位置ナンバリングは、シクロスポリンのコアに特徴的な11アミノ酸残基の一般的に使用される命名法及び番号割り当てを指す。シクロスポリンAを基準として、アミノ酸残基は以下のようにナンバリングされ得る:メチル-ブテニル-トレオニン(MeBmt(1)と略され得る)、アミノ酪酸(2))、サルコシン(Sar(3)と略され得る)、N-メチルロイシン(4)、バリン(5)、N-メチルロイシン(6)、アラニン(7)、D-アラニン(8)、N-メチルロイシン(9)、N-メチルロイシン(10)、N-メチルバリン(11)。
【0012】
更なる態様では、本開示は、式1b
の化合物又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法に関し、
該方法は、式2bの化合物を、銅塩及びハロゲン化トリアルキルシリルの存在下でアミノアルコールと反応させる工程を含み、
式2bの化合物は、以下:
である。
【0013】
本明細書で使用される「H」という用語は、水素を指す。本明細書で使用される「C1~C6アルキル」という用語は、任意の異性体配置の1~6個の炭素原子を含む飽和又は不飽和アルキル炭化水素部分として定義される。直鎖の直鎖アルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、1-ペンチル、n-ヘキシルが含まれる。分枝アルキル(すなわち、分岐C3~C6アルキル)、例えばイソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-ペンチル、3-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル及びヘキシルの異性体も含まれる。「C1~C6アルキル」の定義内に更に含まれるのは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等の環状異性体である。不飽和C1~C6アルキルの例としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニル、並びに例えば1個以上の二重結合を含む他のアルケニル又はアルキレン部分、例えばペンタジエニルが挙げられるが、これらに限定されない。「C3~C6」という用語は、同様に理解されるべきであるが、3~6個の炭素原子の範囲を含む部分を表す。
【0014】
一実施形態では、C1~C6アルキル置換基は、上記で定義したような非置換炭化水素部分である。任意の実施形態では、C1~C6アルキルは、1個以上の置換基で置換されていてもよく、それにより、1個以上の水素原子は、当該置換基又は水素以外の部分との結合で置き換えられる。
【0015】
置換アルキル(例えば置換C1~C6アルキル)のような「置換(された)」という用語は、1個以上の水素が、独立して、少なくとも1個以上の(例えば、2個、3個、又はそれ以上)置換基、例えばハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル(-OH)、C1~C6アルコキシル、アミノ(-NH2)、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボニル、カルボキシルアルコキシカルボニル、アリール及びヘテロアリールで置換されている部分又はラジカルを指し得る。
【0016】
「ハロゲン」という用語は、「ハロ」又は「ハロゲン化物」と交換可能であり、クロロ、ブロモ、ヨード又はフルオロ原子を指し得る。「ハロアルキル」は、1個以上の水素原子が1個以上のハロゲン原子によって置き換えられているアルキル置換基を指す。ハロアルキルの例は、トリフルオロメチル等のトリフルオロアルキルである。
【0017】
「ヒドロキシル」という用語は、-OHラジカルを指す。いくつかの実施形態では、水素は、例えば当技術分野内のヒドロキシ保護基で置換されてもよい。「アルコキシル」等の用語は、アルキル化ヒドロキシル置換基、すなわち水素がアルキル基で置き換えられていることを意味する。「C1~C6アルコキシ」は、ヒドロキシ水素を上記で定義したようなC1~C6アルキルで置き換えることを指す。例としては、メトキシ、イソプロポキシ、フェノキシ又はt-ブトキシが挙げられる。
【0018】
「アミノ」という用語は、-NH2ラジカルを指し得る。いくつかの実施形態では、水素は、例えば保護基、又はアルキル等の1個以上の更なる置換基で置換されてもよい。「モノアルキルアミノ」という用語は、水素の1つがアルキル、例えば上記で定義されたようなC1~C6アルキル(すなわち、-NHR(式中、Rはアルキルである))で置き換えられているアミノラジカルを指す。「ジアルキルアミノ」は、両方の水素が独立してアルキル(すなわち、-NRR’であり、ここで、R及びR’はアルキルであり、同じ(例えばジメチルアミノ)であっても異なっていてもよい)で置き換えられるアミノラジカルを指す。「チオアルキル」は、ラジカル-SR’’を指し得、式中、R’’は、アルキル、例えば上記で定義されるようなC1~C6アルキルである。「カルボニル」という用語は、ラジカル-C(O)-Rcを指し得、式中、Rcは、水素、アルキル、アリール、ヘタリール、ヒドロキシ、アルコキシ(例えば、-OCH3)、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル等から選択され得る。「アルコキシカルボニル」又は「カルボキシル」という用語は、ラジカル-OC(O)-Rcを指し得、ここで、Rcは、アルキル(例えば、C1~C6アルキル、例えば、メチル、tert-ブチル)、アリール、ヘタリール、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル等から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、2つの隣接するR1及びR2置換基(又は隣接するR5又はR6置換基)は、共に環、例えばC3~C6シクロアルキル環を形成するように共に結合されてもよい。本明細書で使用される「シクロアルキル」は、飽和又は不飽和の非芳香族炭化水素環である。隣接するR1及びR2置換基(又は隣接するR5又はR6置換基)が共に環を形成することによって形成される部分の例は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルである。一実施形態では、2つの隣接するR1及びR2置換基(又は隣接するR5又はR6置換基)が結合してシクロプロピル環を形成する。
【0020】
「ヘテロ」という用語は、化合物又は置換基を説明するために使用される場合、1個以上の炭素原子が酸素、窒素又は硫黄原子で置き換えられていることを意味する。本開示の更なる実施形態では、R1及びR2等の隣接する置換基、又は置換基R5及びR6が共に結合して、ヘテロシクロアルキル環、例えばC3~C6ヘテロシクロアルキル環を形成する。別段の指示がない限り、「ヘテロシクロアルキル」は、環構造の少なくとも一部を形成し、少なくとも1個以上の炭素原子が酸素、窒素又は硫黄原子で置き換えられている(及び3~6個の炭素原子を含むC3~C6ヘテロシクロアルキルの場合)飽和又は不飽和の非芳香族環を指す。例えば、置換基R1及びR2又は置換基R5及びR6は、共に結合して、少なくとも1つのヘテロ原子を含む4員、5員又は6員の飽和非芳香族環を形成してもよい。ヘテロシクロアルキル環は、O、N又はSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み得る。
【0021】
式1a、1b、2a又は2bの化合物の置換基Raは、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル及びn-プロピルから選択され得る。一実施形態では、Raは、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル及びn-プロピルからなる群から選択される。別の実施形態では、Raはエチルである。
【0022】
開示される方法の一実施形態では、本明細書の式で定義されるR1及びR2は両方とも水素である。別の実施形態では、R1又はR2の少なくとも1つは、C1~C6アルキル、例えばメチルである。更なる実施形態では、本明細書で定義される式のR5及びR6の少なくとも1つは水素である。あるいは、R5及びR6は両方とも水素である。本開示による方法の更に別の実施形態では、R5はC1~C6アルキル(例えば、メチル)であり、R6はH(水素)である。更なる実施形態では、R1 R2、R5及びR6は全て水素として選択される。
【0023】
本開示による実施形態では、式のR3及びR4は、H、C1~C6アルキル、置換C1~C6アルキル、アリール、置換アリール、ベンジル、カルボニル、カルボキシル、スルホニルから独立して選択されるか、又はR3及びR4は共に結合して、C3~C6シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成する。好ましい実施形態では、R3及びR4は両方とも-CH3(メチル)である。本方法の別の実施形態では、本明細書の式に定義されるR3及びR4の少なくとも1つはメチルである。なお更なる実施形態では、R3及びR4の少なくとも1つは、カルボニル、又はカルボキシル置換基、例えばtert-ブトキシカルボニル、又は窒素基を保護するために使用することができるが、窒素原子の更なる官能化のために後で除去することができる類似のものである。
【0024】
別の実施形態では、R3及びR4が共に結合して、C3~C6シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環を形成する。例えば、置換基R3及びR4は、4員、5員又は6員の飽和非芳香族環を形成するために共に結合されてもよい。本発明の式の化合物に関連して、互いに結合する隣接するR3及びR4置換基によって形成されるシクロアルキル環は、例えば、アゼチジン、ピロリジン又はピペリジンを含み得る。ヘテロシクロアルキル環は、環構造の少なくとも一部を形成する飽和又は不飽和の非芳香族環であってもよく、少なくとも1個以上の炭素原子が、R3及びR4が結合している窒素に加えて、酸素、窒素又は硫黄原子によって置き換えられている。置換基R3及びR4は、共に結合して、それらが結合している窒素原子に対する少なくとも1つの更なるヘテロ原子、例えば、O、N又はSから選択される少なくとも1つの更なるヘテロ原子を含む4員、5員又は6員飽和非芳香族環を形成してもよい。一実施形態では、R3及びR4は、モルホリン残基を形成するように共に結合される。任意の実施形態では、R3及びR4によって形成されるシクロアルキル又はヘテロシクロアルキル部分は、1個以上の水素原子が当該置換基との結合で置き換えられている、上で定義したような1個以上の置換基で置換されていてもよい。
【0025】
本発明で定義されるハロゲン化トリアルキルシリルは、式R7R8R9SiX(式中、R7、R8、R9はアルキル置換基(例えば、C1~C6アルキル)から選択され、Xはハロゲン化物、好ましくは塩化物である)で定義される化合物であり得る。一実施形態では、R7、R8、R9は同じアルキル置換基である。好ましい実施形態では、本開示による方法で使用されるハロゲン化トリアルキルシリルは、塩化トリメチルシリル(TMSCl、又は(CH3)SiCl)である。一実施形態では、式2a又は2bの化合物を、1.0~3当量又は1.8~2.4当量のハロゲン化トリアルキルシリル、例えば塩化トリメチルシリルの存在下で、本明細書で定義される式3のアミノアルコールと反応させることができる。別の実施形態では、記載された反応過程は、1.8~2.4当量のハロゲン化トリアルキルシリル、例えば塩化トリメチルシリルの存在下で実施され得る。
【0026】
TMSCl(塩化トリメチルシリル)等のハロゲン化トリアルキルシリルの使用は、所望の反応生成物の転化率及び収率を増加させること、及び特に加水分解付加物、例えばSar-3-ヒドロキシシクロスポリンの形成に対する出発物質(例えば、化合物2、又は式2a若しくは2bの化合物)の損失を減少させることがわかった。驚くべきことに、反応は、結果として、モレキュラーシーブ(例えば、3Å又は4Å)又は同様のタイプの乾燥剤の非存在下で行われ得る。
【0027】
式2a又は2bの化合物を、3~5当量の式3
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、本明細書で定義される通りである)のアミノアルコールと反応させることができる。一実施形態では、式2a又は2bの化合物を、4~5当量のアミノアルコールと反応させる。
【0028】
一実施形態では、アミノアルコール化合物はアミノエタノール化合物であり、式中、R5、R6、R1及びR2は水素として選択される。好ましい実施形態では、アミノアルコールはジメチルアミノエタノールである。他の実施形態では、R3又はR4の少なくとも1つは、C1~C6アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルから選択される。他の実施形態では、R3又はR4の少なくとも1つは、より不安定な置換基、例えばカルボニル又はカルボキシル残基から選択することができ、これらは、例えばアミノ置換基の更なる官能化のために、下流の処理工程で任意に除去することができる。
【0029】
本明細書に開示される方法によれば、式2a若しくは2bの化合物、又は化合物2を、銅塩の存在下で式3のアミノアルコール化合物と反応させる。銅塩は、銅(II)塩であってもよい。好ましい実施形態では、銅塩は銅トリフラートである。銅塩、例えば銅トリフラートは、好ましくは実質的に無水であり、方法の一実施形態では、反応に使用する前に前処理に供して、任意に高温下で、例えば真空乾燥によって任意の微量の残留水又は酸を除去することができる。
【0030】
本開示による方法の一実施形態では、式2a又は2bの化合物を、3~4当量の銅塩の存在下でアミノアルコールと反応させる。好ましい実施形態では、本開示による方法で使用される銅塩は、銅トリフラートである。一実施形態では、方法で使用される銅塩(例えば、銅トリフラート)の量は、式2a又は2bの化合物に対して3.6当量である。
【0031】
本明細書に開示される方法の具体的な一実施形態では、式1a又は1bの化合物は、1.8~2.4当量(例えば、2.4当量)の塩化トリメチルシリル及び3~4当量(例えば、3.6当量)の銅トリフラートの存在下で、式2a又は2bの化合物と3~5当量(例えば、4.2当量)の式3のアミノアルコールとの反応によって調製される。
【0032】
式2a又は2bの化合物に関して、置換基Rbは、アリール、置換アリール、又はヘテロアリール又は置換ヘテロアリールであり得る。
【0033】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、1つ(単環式)又はそれを超える(例えば二環式)芳香環を有する炭素環系を指し、例としては、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル等が挙げられ得るが、これらに限定されない。アリール環ラジカルは、その環原子のいずれか1つで式2a又は2bの硫黄原子に結合していてもよい。「置換」アリールという用語は、アリール部分又はラジカルを指し、1個以上の水素原子が、独立して、C1~C6アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル(-OH)、C1~C6アルコキシル、アミノ(-NH2)、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシルアルコキシカルボニル、アリール及びヘテロアリールを含むがこれらに限定されない少なくとも1個以上の(例えば、2個、3個、又はそれ以上)置換基で置き換えられている。置換基は、化合物に結合していないアリール部分の環原子のいずれか1つを特徴とし得る。
【0034】
「ヘテロアリール」という用語は、環原子の1つがS、O及びNから選択される少なくとも1個の原子で置き換えられており、残りの原子が炭素である1個以上(例えば、二環式)の芳香環を有する環状芳香環系を指す。環状芳香族環系は、例えば、5~10個の環原子を含んでもよく、1個、2個又はそれ以上の環を含んでもよい。「置換ヘテロアリール」は、1個以上の水素原子が、独立して、本明細書で定義されるような少なくとも1個以上の(例えば、2個、3個、又はそれ以上)置換基で置き換えられているヘテロアリール部分を指す。ヘテロアリールラジカルは、化合物の環原子のいずれかで化合物に結合していてもよい。ヘテロアリール置換基の例としては、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、チアゾール、オキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、フラン、キノリン、ピラゾール及びイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されず、これらは任意に置換されていてもよい。
【0035】
本発明による方法の更なる実施形態では、式1a、1bの化合物又は化合物1の調製方法は、銅塩、例えば銅トリフラート及びハロゲン化トリアルキルシリルの存在下で式2aの化合物をアミノアルコールと反応させる工程を含んでもよく、化合物は、以下:
(式中、R
aは、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル及びn-プロピルから選択され、アミノアルコール化合物及びハロゲン化トリアルキルシリルは、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つ又は組み合わせに従って定義される)である。好ましくは、R
aはエチルである。関連する実施形態では、銅塩は銅トリフラートであり、ハロゲン化トリアルキルシリルは塩化トリメチルシリルである。
【0036】
本発明による方法の更に別の実施形態では、式1a、1bの化合物又は化合物1の調製方法は、銅塩、及びハロゲン化トリアルキルシリルの存在下で式2bの化合物をアミノアルコールと反応させる工程を含んでもよく、化合物は、以下:
(式中、R
aは、エチル、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル及びn-プロピルから選択され、アミノアルコール化合物及びハロゲン化トリアルキルシリルは、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つ又は組み合わせに従って定義される)である。好ましくは、R
aはエチルである。関連する実施形態では、銅塩は銅トリフラートであり、ハロゲン化トリアルキルシリルは塩化トリメチルシリルである。
【0037】
本開示は、さらに、化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩の調製のための方法であって、
方法は、化合物2
を、銅塩及びハロゲン化トリアルキルシリルの存在下で、ジメチルアミノエタノールと反応させる工程を含む、方法に関する。
【0038】
この方法の好ましい実施形態では、銅塩は、銅トリフラート等の銅(II)塩であり、ハロゲン化トリアルキルシリルは塩化トリメチルシリルである。
【0039】
この方法の別の実施形態では、3~5当量のジメチルアミノエタノールを化合物2と反応させる。別の実施形態では、4~5当量のジメチルアミノエタノールが使用される。使用される銅塩、例えば銅トリフラートの量は、3~4当量であり得る。特定の実施形態では、反応過程で使用される銅塩、例えば銅トリフラートの量は3.6当量である。更なる実施形態では、化合物2を、1.8~2.4当量のハロゲン化トリアルキルシリル、例えば塩化トリメチルシリルの存在下でジメチルアミノエタノールと反応させる。
【0040】
この方法の具体的な実施形態では、化合物2を、2.4当量の塩化トリメチルシリル及び3.6当量の銅トリフラートの存在下において、4.2当量のジメチルアミノエタノールと反応させる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「当量」という用語は、化合物2、又は式2a若しくは2bの化合物に対するモル当量を指す。
【0042】
本発明による方法は、一実施形態では、反応溶媒又は媒体として無水THF(テトラヒドロフラン)中で行われる。反応は、不活性雰囲気下で行ってもよい。反応は室温条件(例えば20~25℃)で行ってもよい。好ましくは、反応は実質的に無水条件下で行われる。任意に、試薬、中間体又は出発物質のいずれか1つを乾燥又は処理して、反応過程に導入する前に微量の水を除去することができる。
【0043】
更なる態様では、本開示は、式1aの化合物又は式1bの化合物、化合物1又はその塩の調製のための方法に関し、該方法は、
a)塩基の存在下で、シクロスポリンAとジスルフィド化合物(例えばピリジルジスルフィド)とを反応させる工程、及び
b)工程a)の生成物を、銅塩及びハロゲン化トリアルキルシリルの存在下で、ジメチルアミノエタノールと反応させる工程、を含む。
【0044】
当該方法において、工程b)は、本明細書で定義される反応条件のいずれか1つ又は組み合わせの下で、及び式1a、1bの化合物1のいずれか、又は実施例に記載される化合物のいずれか1つの調製のために実施され得る。当該方法が式1a又は1bの化合物の調製に関するものであり、Raがエチルではないが、1-ヒドロキシエチル、イソプロピル及びn-プロピルから選択される場合、工程a)のシクロスポリンAを必要に応じてシクロスポリンC、D又はGで置き換えることができる。
【0045】
本開示の化合物及び中間体は、様々な立体異性体形態及び混合物で存在し得る。式に指定又は図示される立体中心に加えて、本開示は、それらのエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体又は他の混合物、並びに多形、溶媒和物、水和物、錯体、遊離形態又は塩形態も含み得る。別段の指示がない限り、式に指定も図示もされていない、又は具体的に指定/記載されていない1個以上の不斉中心を含む本開示の範囲内の化合物は、全てのエナンチオマー、ジアステレオマー、又はそれらの混合物、ラセミ体若しくはその他のものも含み得る。当技術分野で周知の方法によって決定される、任意の光学的に純粋な又は立体化学的に純粋な立体異性体、並びに立体異性体の任意の組み合わせの使用も含まれ得る。任意に、本発明の化合物はまた、それらの同位体、例えば、原子が重水素を有する水素又は炭素-13を有する炭素等の同位体で置き換えられた化合物を含んでもよい。
【0046】
本明細書で定義されるように、薬学的に許容され得る化合物は、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではなく、許容可能であり、ヒトにおける医薬使用に適合する化合物である。薬学的に許容され得る塩は、その生物学的特性を保持し、非毒性であり、薬学的使用に適合する化合物の塩である。
【0047】
化合物1、又は式1a若しくは1bの化合物は、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つ又は組み合わせによる方法によって得ることができる。化合物1の調製について記載される一般的な方法は、他の又は関連するシクロスポリン類縁体の調製にも適用され得る。これらは、例えば、最初にシクロスポリン化合物(例えば、シクロスポリンC、D、G、又は他の類縁体)をジピリジルジスルフィドと反応させてチオピリジル中間体(2’-(2-チオピリジル)-Sar]3-シクロスポリンC、又はD、又はG等)を形成する工程、続いて、本明細書に記載の実施形態による、銅塩、例えば銅トリフラート及びハロゲン化トリアルキルシリル(TMSCl等)の存在下で、この中間体とアミノアルコール化合物との反応を含む第2の工程を含む方法によって調製され得る。
【0048】
更なる態様では、上記の実施形態のいずれか1つ又は組み合わせで定義される方法(すなわち、化合物1、又は式1a若しくは1bの化合物)によって調製された化合物は、疾患又は医学的状態の予防及び/又は治療に使用され得る。それらは、疾患又は病状を予防及び/又は治療するための医薬品の製造に更に使用され得る。疾患又は状態の例としては、細胞、組織又は器官の損傷に関連する疾患又は状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
以下の実施例は、本発明を説明する役割を果たすが、これらは、本発明の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
実施例
【0050】
実施例1-化合物1の調製
工程1:化合物2又は[2’-(2-チオピリジル)-Sar]
3-シクロスポリンA)は、国際公開第2019/016572号に記載されている一般的な方法に従ってシクロスポリンAから調製することができる。
【0051】
工程2:化合物1を調製するための化合物2とジメチルアミノエタノールとの反応を、表1に概説されるように種々の条件下で実行し、HPLCによって分析した。
【0052】
無水THF中の化合物2(純度97.8%)及びジメチルアミノエタノールの溶液を調製し、不活性雰囲気下、無水THF中の銅トリフラート(真空乾燥)、及び存在する場合はモレキュラーシーブ又は更なる試薬の懸濁液に添加した。使用前に、銅トリフラート、モレキュラーシーブを、例えば真空下で乾燥させた。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌し、その後、反応混合物をHPLCによって分析した。
【0053】
【0054】
化合物1は、乾燥剤(表1、エントリ番号1)としてモレキュラーシーブの存在下で当技術分野による方法を使用して調製することができるが、かなりの量の化合物2が副生成物(A)としてSar-3-ヒドロキシシクロスポリンAに変換されることが観察された。大量の望ましくない副生成物の生成は、コストの観点から、また追加の精製負荷のために望ましくない。
【0055】
しかしながら、反応過程からモレキュラーシーブを省いても、ヒドロキシ付加物への変換は減少しなかった(表1、エントリ番号2参照)。しかしながら、予想外にも、ハロゲン化トリアルキルシリル化合物、すなわち、試薬としての塩化トリメチルシリル(TMSCl)の添加が、化合物2の化合物1への変換の効率を改善することができることが見出された(表1、エントリ番号4参照)。対照的に、水捕捉剤として塩化アセチルを使用すると、反応速度が低下し、更にヒドロキシ副生成物Aの形成の減少に関して影響を及ぼさなかった(表1、エントリ番号3参照)。
【0056】
1.8~2.4当量の塩化トリメチルシリル(TMSCl)を反応混合物に添加すると、乾燥剤としてモレキュラーシーブが存在しない場合であっても、化合物2から化合物1への変換効率が改善されることが見出された。約10%未満のヒドロキシシクロスポリン副生成物Aが反応過程で形成されることが観察された(表2参照)。
【0057】
【0058】
モレキュラーシーブと比較して、TMSClの存在下で行われた比較反応の実行で改善された反応プロファイルが観察され(表3を参照)、これらの反応を、化合物2及び反応試薬の同じバッチを用いて行った。反応は実質的に無水条件下で行った。反応を実施する前に、化合物2を真空下60℃で乾燥させ、Cu(OTf)2及びモレキュラーシーブ(4Å)を真空下120℃で4時間乾燥させた。
【0059】
反応1:化合物2及びジメチルアミノエタノールのTHF中溶液を、Cu(OTf)2及びTHFを含有するフラスコに0℃で添加した。TMSClを添加し、反応混合物を室温に加温し、16時間撹拌した。
【0060】
反応2:化合物2及びジメチルアミノエタノールのTHF中溶液を、Cu(OTf)2及び4Åモレキュラーシーブを含むTHF中フラスコに0℃で添加した。反応混合物を室温に加温し、16時間撹拌した。
【0061】
反応を2連で行った。粗反応混合物をHPLC(Thermo Hypersil GOLD(商標)、直径250×4.6mm、粒径5μm、カラム温度40℃、A相:1000mLのH2O+0.5mLのギ酸/B相:1000mLのアセトニトリル+0.5mLのギ酸)によって分析した。
【0062】
【0063】
化合物2からのヒドロキシシクロスポリン副生成物の形成は、分子ふるいの代わりにTMSClを添加剤として使用した場合に有意に減少することが観察された。
【0064】
実施例2-化合物1の調製(100gスケール)
【0065】
THF中の化合物2(100g)及びジメチルアミノエタノール(28.54g、4.3当量)の溶液を、無水THF中のCu(OTf)2(乾燥、99.26g、3.6当量)及び塩化トリメチルシリル(19.88g、2.4当量)を含む反応容器に加えた(総体積1000mL)。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。16時間後、反応混合物を水でクエンチした。粗反応混合物をHPLC(HPLC結果:66.3%の化合物1、6.1%のA及び3.5%のB、並びに0%の化合物2)によって分析した。
【0066】
水相をi-PrOAcで抽出した。有機相をリンゴ酸水溶液で2回洗浄した。水相を合わせ、pH値を8に調整し、i-PrOAcで再度抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィーによって精製して、75.22gの化合物1を得た(収率76.5%)(特性評価は文献、例えば国際公開第2019/016572号A1に一致する;1H-NMR(400 MHz CDCl3,δ(ppm)):6.01、サルコシン共鳴。
【0067】
実施例3-シクロスポリン類縁体の調製
【0068】
実施例2の化合物1の調製について記載される手順を一般的に適用して、他のアミノアルコール中間体に基づく類縁体化合物を調製した(表4参照)。粗反応混合物のLC-MS分析は、全ての反応において、形成されたヒドロキシシクロスポリンA副生成物の量が低いままであることを実証した。
【0069】
【0070】
追加の化合物を、実施例2の方法論に基づいて以下のように調製する:
Cu(OTf)
2触媒(5.0g、16.39mmol)をTHF 15mLに入れ、0℃に冷却する。35mLのTHF中の化合物2(5.0g、3.81mmol)及びアミノアルコール化合物G25(1.9g、16.39mmol)の溶液をフラスコに加えた。TMSCl(1.0g、9.15mmol)を最後に混合物に滴下した。次いで、混合物を20~25℃で撹拌した。16時間後、反応混合物を150mLの水に注ぎ入れた。K
2CO
3水溶液を添加してpHを10に調整した。i-PrOAc(50ml)を混合物に添加し、不溶性物を濾別した。濾液をi-PrOAc(50mL*2)で抽出した。有機相をリンゴ酸水溶液で2回洗浄した。水相を合わせ、pH値を8に調整し、i-PrOAcで再度抽出した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して1.4gの化合物3を得た。生成物をクロマトグラフィーによって更に精製した。化合物3((
1H-NMR(400MHz CDCl
3,δ(ppm)):5.90,サルコシン残基);HRMSエレクトロスプレー(M+1)1317.80;1318.70;同位体分布による質量1316.94(100%)、1317.94(73.5%))。
【0071】
化合物4を、化合物2とアミノアルコール化合物H25との反応によって類似の条件下で調製した。化合物4((
1H-NMR(400 MHz CDCl
3,δ(ppm)):5.82,サルコシン残基);HRMSエレクトロスプレー(M+1)1315.70;1316.60;同位体分布による質量:1314.93(100%),1315.93(73.5%))。
【0072】
化合物5:2(1g)及びR1(338.2mg)のTHF20mL中撹拌溶液に、最初にフラスコにu(OTf)
2(1g)をN
2下、0℃で添加した後、TMSCl(198 mg)を添加した。次いで、混合物をN
2下、室温で16時間撹拌した。得られた混合物を20mLの水に注ぎ、次いで、20mLのi-PrOAcを添加した。水相を、K
2CO
3水溶液の添加によってpH8.0に調整した。水相を分離し、別のi-PrOAc部分によって抽出した。合わせた有機相をリンゴ酸水溶液(水20mL中リンゴ酸840mg)で2回洗浄した。相の分離後、K
2CO
3水溶液を添加して水相をpH8.0に調整した。次いで、水溶液を20mLのi-PrOAcで2回抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮して、340mgの所望の化合物5を得た。化合物5:((
1H-NMR(400 MHz CDCl
3,δ(ppm)):6.08,サルコシン残基);HRMSエレクトロスプレー(M+1)1303.7;1304.6;同位体分布による質量:1302.93(100%),1303.93(72.5%))。
【0073】
化合物6を、化合物2及びR2から化合物5について上記の一般的な方法に従って同様に調製し、クロマトグラフィーによる更なる精製後に得た。化合物6((
1H-NMR(400 MHz CDCl
3,δ(ppm)):6.31,サルコシン残基);HRMSエレクトロスプレー(M+1)1303.4、1304.6;同位体分布による質量:1302.93(100%);1303.93(72.5%))。
【国際調査報告】