(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】ナノセルロースを含むフィルムを作製するための方法及びナノセルロースを含むフィルム
(51)【国際特許分類】
D21F 3/02 20060101AFI20230426BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20230426BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20230426BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230426BHJP
【FI】
D21F3/02
D21H11/18
D21H15/02
C08J5/18 CEP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556507
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 IB2021052359
(87)【国際公開番号】W WO2021191771
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ニーレン, オットー
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン, イスト
(72)【発明者】
【氏名】ラフコ, ジョアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ピーコ, リク
【テーマコード(参考)】
4F071
4L055
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AH04
4F071BA06
4F071BB02
4F071BB03
4F071BC01
4F071BC12
4L055AF09
4L055AF46
4L055CE36
4L055CE71
4L055CE79
4L055CF23
4L055CF26
4L055EA08
4L055EA12
4L055FA09
4L055FA14
4L055FA30
(57)【要約】
本発明は、ナノセルロースを含むフィルムを作製するための方法であって、全乾燥重量に基づいて50~100重量%のナノセルロースを含む懸濁液を提供することと、非多孔性支持体上に前記懸濁液の繊維ウェブを形成することと、ウェブ側第1の表面及び反対側の第2の表面を含むプレス布を提供することであって、前記プレス布が前記ウェブ側第1の表面に織られた表面構造を有するように、前記プレス布が、前記ウェブ側第1の表面を提供する層としてプレス布内に配置された織られた第1の布層を含む、ウェブ側第1の表面及び反対側の第2の表面を含むプレス布を提供することと、前記プレス布の前記ウェブ側表面を、前記ウェブに直接接触して適用することと、前記プレス布と前記非多孔性支持体との間に配置された前記ウェブを、プレス装置を通して導くことによって前記ウェブを湿式プレスすることと、前記フィルムを形成するために、脱水されたウェブを乾燥させることとを含む、方法に関する。本発明はさらに、前記方法から作製されるフィルムに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノセルロースを含むフィルムを作製するための方法であって、
全乾燥重量に基づいて50重量%~100重量%のナノセルロースを含む懸濁液を提供する工程と、
非多孔性支持体上に前記懸濁液の繊維ウェブを形成する工程であって、前記形成された繊維ウェブが1~25重量%の乾燥含有量を有する、繊維ウェブを形成する工程と、
ウェブ側第1の表面及び反対側の第2の表面を有するプレス布を提供する工程であって、前記プレス布が少なくとも織られた第1の布層を含み、前記織られた第1の布層が複数の糸で織られており、前記プレス布が前記ウェブ側第1の表面に織られた表面構造を有するように、前記織られた第1の布層が前記ウェブ側第1の表面を提供する層としてプレス布内に配置されている、プレス布を提供する工程と、
前記プレス布の前記ウェブ側第1の表面を、前記繊維ウェブに直接接触して適用する工程と、
脱水されたウェブを形成するために、前記プレス布と前記非多孔性支持体との間に配置された前記繊維ウェブを、プレス装置を通して導くことによって前記繊維ウェブを湿式プレスする工程と、
前記フィルムを形成するために、脱水されたウェブを乾燥させる工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の糸がポリマー糸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の糸が、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアラミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレア及びそれらの共重合体からなる合成ポリマーの群から選択される少なくとも1つの合成ポリマーのポリマー糸を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のポリマー糸が、ポリエステル糸又はポリプロピレン糸を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のポリマー糸が少なくとも第1の合成ポリマーの糸及び第2の合成ポリマーの糸を含み、前記第1及び第2の合成ポリマーが前記合成ポリマーの群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のポリマー糸が、ポリエステル糸及びポリプロピレン糸を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
糸の少なくとも80%、好ましくは糸の少なくとも90%がポリエステル糸又はポリプロピレン糸である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記織られた第1の布層の織目がサテン織り、平織り、又は綾織りである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の糸が、マルチフィラメント糸である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記織られた第1の布層が6000未満、好ましくは5000未満、最も好ましくは4000未満のデニールを有する糸で織られており、前記織られた第1の布層が、5cm
-1を超える、好ましくは10cm
-1を超える、より好ましくは15cm
-1を超える、最も好ましくは20cm
-1を超える緯糸密度と、20cm
-1を超える、好ましくは30cm
-1を超える、より好ましくは40cm
-1を超える経糸密度とを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
支持装置が前記プレス布の前記第2の表面に配置され、支持装置が1つ若しくは複数の支持布及び/又は1つ若しくは複数のプレスフェルトを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
支持装置がプレスフェルトからなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維ウェブが、キャスティングによって形成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プレス装置において使用される圧力が0.1~150バールである、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プレス装置がベルトプレスである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記非多孔性支持体が、金属支持体又はプラスチック支持体である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記金属支持体が金属ベルトである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記繊維ウェブが、前記湿式プレス工程に入るときに10~99℃の温度を有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維ウェブが、前記湿式プレス工程に入るときに3~25重量%の乾燥含有量を有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記繊維ウェブが、前記プレス装置内での脱水後に15~80重量%の乾燥含有量を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記プレス布の前記ウェブ側第1の表面を、前記繊維ウェブに直接接触して適用する前記工程の前に、前記繊維ウェブを予備乾燥する工程が先行する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記繊維ウェブを予備乾燥する前記工程が、前記プレス布の前記ウェブ側第1の表面を、前記繊維ウェブに直接接触して適用する工程の前に、前記繊維ウェブの乾燥含有量がエバポレーションによって少なくとも1重量%増加するように加熱によって前記繊維ウェブを乾燥させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
スムージングプレスにおいて前記脱水されたウェブを平滑にする工程をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるナノセルロースを含むフィルム。
【請求項25】
EN13676:2001に従って、≦1ピンホール/m
2を有する、請求項24に記載のフィルム。
【請求項26】
ASTM D-3985に従って、23℃、50%RHで、10cc/m
2/24h未満、好ましくは5cc/m
2/24h未満、最も好ましくは3cc/m
2/24h未満の酸素透過率(OTR)値を有する、請求項24又は25に記載のフィルム。
【請求項27】
乾燥時に10~60gsmの坪量を有する、請求項24から26のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項28】
乾燥時に10~60μmの厚さを有する、請求項24から27のいずれか一項に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノセルロースを含むフィルムを作製するための方法に関する。さらに、本発明は、本方法によって得ることができるナノセルロースを含むフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)などの大量のナノセルロースを含むフィルムは、良好な強度及び酸素バリア性を有することが知られている。これは、例えば、Syverud、「Strength and barrier properties of MFC films」、Cellulose 2009 16:75-85に記載されており、15~30gsmの坪量を有するMFCフィルムが作製され、強度及びバリア性が調査された。
【0003】
しかしながら、ナノセルロースフィルムの作製中、ナノセルロースの特徴的な特性のために、フィルムを高速及び高エネルギー効率で脱水及び作製することは容易ではない。例えば、ナノセルロースは、非常に良好な保水性と関連しており、これは高い脱水耐性を提供する。
【0004】
ナノセルロースフィルムが、例えばバリアとして使用される場合、フィルムが、バリア性に悪影響を及ぼすピンホール又は他の欠陥を有さないことが重大である。ナノセルロースフィルムの表面が滑らかであることも重要であり得る。
【0005】
ウェットレイド技術は、ナノセルロースフィルムの作製、すなわちナノセルロースを含む完成紙料をワイヤ上で脱水するために使用することができる。しかしながら、特により微細なグレードのナノセルロースが利用される場合、ウェットレイド技術によって、良好なバリア性で、高い作製速度でナノセルロースフィルムを作製することは困難である。フィルムのバリア及び光学特性に悪影響を及ぼすことになるワイヤマークを得ることは容易である。さらに、ワイヤを使用する場合、完成紙料中に存在する小さなフィブリルの良好な保持を得ることは困難である。
【0006】
フィルムキャスティング法、すなわち、例えばプラスチック又は金属支持体などの非多孔性支持体上へのフィルムのキャスティングを使用し、次いで、例えば蒸発乾燥でフィルムをゆっくり乾燥させることによってナノセルロースフィルムを作製することも可能である。キャスティング法は、良好なバリア性を有する非常に滑らかな表面を有するナノセルロースフィルムを作製することが示されている。しかしながら、この方法は、商業規模での作製には非経済的であり、遅く、非効率的である。これは、とりわけ、キャストされたフィルムの固形分を効率的に増加させることが困難であるためであり、すなわち、水又は排水の迅速な除去は、フィルム(及びネットワーク)形成を乱すことなしには困難である。最も重要なことには、蒸発乾燥と組み合わせた適用時(キャスティング時)の低い固形分は、高いエネルギー消費を引き起こす。
【0007】
したがって、酸素バリア性などの良好なバリア性を有するナノセルロースフィルムの作製のための方法の改善の余地がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、良好な酸素バリア性などのバリア性を有するナノセルロースを含むフィルムを効率的に作製するための改善された方法であって、先行技術の方法の欠点の少なくともいくつかを排除又は緩和する方法を提供することである。
【0009】
本発明は、添付の独立請求項によって定義される。実施形態は、添付の従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【0010】
本発明は、ナノセルロースを含むフィルムを作製するための方法であって、
全乾燥重量に基づいて50重量%~100重量%のナノセルロースを含む懸濁液を提供する工程と、
非多孔性支持体上に前記懸濁液の繊維ウェブを形成する工程であって、
前記形成された繊維ウェブが1~25重量%の乾燥含有量を有する工程と、
ウェブ側第1の表面及び反対側の第2の表面を有するプレス布を提供する工程であって、前記プレス布が少なくとも織られた第1の布層を含み、前記織られた第1の布層が複数の糸で織られており、前記プレス布が前記ウェブ側第1の表面に織られた表面構造を有するように、前記織られた第1の布層が前記ウェブ側第1の表面を提供する層としてプレス布内に配置されている工程と、
前記プレス布の前記ウェブ側第1の表面を、前記繊維ウェブに直接接触して適用する工程と、
脱水されたウェブを形成するために、前記プレス布と前記非多孔性支持体との間に配置された前記繊維ウェブを、プレス装置を通して導くことによって前記繊維ウェブを湿式プレスする工程と、
前記フィルムを形成するために、脱水されたウェブを乾燥させる工程と
を含む、方法に関する。
【0011】
驚くべきことに、ウェブをプレス装置を通して導く前に、織られた第1の布層を含むプレス布のウェブ側第1の表面をウェブに接触するように適用することによって、非多孔性支持体上に形成された大量のナノセルロースを含むウェブを脱水することが可能であることが見出され、この織られた第1の布層は、プレス布がウェブ側第1の表面に織られた表面構造を有するように、ウェブ側第1の表面を提供する層としてプレス布内に配置されている。
【0012】
したがって、驚くべきことに、ウェブをプレス装置を通して導く前に、プレス布の織られた表面構造を繊維ウェブに直接接触して適用することによって、非多孔性支持体上に形成された大量のナノセルロースを含むウェブを脱水することが可能であることが見出された。したがって、驚くべきことに、本開示による方法によって大量のナノセルロースを含むウェブを脱水し、フィルムを作製することが可能である、すなわち、本開示による方法によって連続フィルムを得ることが可能であることが見出された。
【0013】
より具体的には、驚くべきことに、本開示による方法によって、繊維ウェブがプレス布に部分的に又は完全に付着することなく、大量のナノセルロースを含むウェブを脱水することが可能であることが見出された。これにより、繊維ウェブへの穴、ピンホール、又は他の損傷の形成を防止することができる。したがって、このようにして、効率的に繊維ウェブを脱水することが可能であり、これは、作製されたフィルムが良好なバリア性を有すると同時に脱水速度を増加させることができることにつながる。
【0014】
上述したように、第1の布層は、織られている、すなわち、織られた第1の布層である。織られた第1の布層は、芯(すなわち、詰綿材料)も他の充填材料も含まない。
【0015】
さらに、上述したように、織られた第1の布層は、プレス布がウェブ側第1の表面に織られた表面構造を有するように、ウェブ側第1の表面を提供する層としてプレス布に配置される。したがって、プレス布のウェブ側第1の表面を構成する第1の布層の表面には、芯表面層(又は他の表面層)は、配置されない。しかしながら、1つ又は複数の芯表面層(又は他の表面層)は、ウェブ側第1の表面の反対側の第1の布層の表面に配置されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、織られた第1の布層の複数の糸は、ポリマー糸を含む。したがって、織られた第1の布層は、複数のポリマー糸で織られている織られた構造を含んでもよい。
【0017】
複数の糸は、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアラミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレア、及びそれらの共重合体からなる合成ポリマーの群から選択される少なくとも1つの合成ポリマーのポリマー糸を含んでもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数のポリマー糸は、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアラミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレア、及びそれらの共重合体からなる合成ポリマーの群から選択される第1の合成ポリマーの糸を少なくとも含む。例えば、複数のポリマー糸は、ポリエステル糸又はポリプロピレン糸を含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、複数のポリマー糸は、第1の合成ポリマーの糸及び第2の合成ポリマーの糸を少なくとも含み、第1及び第2の合成ポリマーは、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアラミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレア、及びそれらの共重合体からなる合成ポリマーの群から選択される。例えば、複数のポリマー糸は、ポリエステル糸及びポリプロピレン糸を含んでもよい。
【0020】
例えば、糸の少なくとも80%、好ましくは糸の少なくとも90%は、ポリエステル又はポリプロピレン糸とすることができる。
【0021】
合成ポリマーの糸を使用することにより、形成されたフィルムの平滑性をさらに改善することができる。合成ポリマーの糸を使用することはまた、プレス布の耐久性及び/又は弾性に有利であり得る。
いくつかの実施形態では、織られた第1の布層の織目は、サテン織り、平織り、又は綾織りである。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数の糸は、マルチフィラメント糸である。マルチフィラメント糸を使用することにより、繊維ウェブと直接接触して当てられる織られた第1の布層の表面(すなわち、プレス布のウェブ側第1の表面)の平滑性を改善することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、織られた第1の布層は、6000未満、好ましくは5000未満、最も好ましくは4000未満のデニールを有する糸で織られており、織られた第1の布層は、5cm-1を超える、好ましくは10cm-1を超える、より好ましくは15cm-1を超える、最も好ましくは20cm-1を超える緯糸密度と、20cm-1を超える、好ましくは30cm-1を超える、より好ましくは40cm-1を超える経糸密度とを有する。特定の範囲内のデニールを有する糸の使用並びにそれぞれ特定の範囲内の緯糸密度及び経糸密度の使用は、織られた第1の布層の緻密な織られた構造が得られること、すなわち、プレス布のウェブ側表面の緻密な織られた表面構造も得られることを暗示する。
【0024】
特にプレス初期においては、ナノセルロースを含有する繊維ウェブは、ゲル状の状態であり、ずり減粘挙動を示す。上記のプレス布の緻密な表面構造は、繊維ウェブ中の材料がプレス布の細孔及び開口部に侵入するのを防ぐのを改善することが見出された。それにより、繊維ウェブが部分的に又は完全にプレス布に付着し、繊維ウェブの穴、ピンホール又は他の損傷を引き起こすことがさらに防止される。さらに、繊維ウェブがプレス布に付着すると、繊維ウェブは、プレス布が繊維ウェブから分離されるべき点で支持体から部分的に又は完全に分離され得る。したがって、上記に従って緻密な表面構造を使用することにより、作製されたフィルムのバリア性をさらに改善することができると同時に、繊維ウェブの脱水の効率をさらに改善することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、支持装置がプレス布の第2の表面に配置される。支持装置は、1つ若しくは複数の芯材料層及び/又は1つ若しくは複数の支持布及び/又は1つ若しくは複数のプレスフェルトを含む。例えば、支持装置は、プレスフェルトから構成されてもよい。支持装置を含むことにより、強度、弾性、弾力、圧縮性、及び保水能力の向上に関連するプレス布装置をもたらすことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、繊維ウェブは、キャストコーティングなどのキャスティングによって形成される。驚くべきことに、本開示による方法によって、支持体上のキャストコーティングされた懸濁液の脱水を増加させることが可能であることが見出された。したがって、本開示による方法によれば、キャスティングを用いて良好なバリア性フィルムを高速に作製することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、プレス装置で使用される圧力は、0.1~150バールである。プレス装置での処理中、プレス装置で使用される圧力は、徐々に上昇することが好ましい。プレス装置内の圧力を徐々に又は段階的に増加させることによって、ウェブの脱水が改善され、すなわち、最終フィルムのバリア性を破壊することなく、より高い乾燥含有量を有するウェブを作製することができる。
【0028】
プレス装置は、好ましくはベルトプレス又は延長シュープレス設計であり、非多孔性支持体は、好ましくは金属ベルトなどの金属支持体である。代替的に、非多孔性支持体は、ポリマー/プラスチック支持体とすることができる。
【0029】
湿った繊維ウェブは、好ましくは、プレス布が接触するように当てられる前に加熱される。このようにして、繊維ウェブの温度及び固形分が増加し、繊維ウェブのその後の脱水をさらに改善する。いくつかの実施形態では、湿った繊維ウェブは、湿式プレス工程に入るときに10~99℃の温度を有する。湿った繊維ウェブの温度を上昇させることにより、水の粘度を下げることができ、これは脱水作用を助けることになる。湿式プレス部の前に湿ったウェブの固形分を増加させることにより、プレス布のウェブ側第1の表面と接触する湿った繊維ウェブの表面、又は繊維ウェブ全体がより粘性になり、プレス布の細孔へのその浸透を低減又は回避することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、繊維ウェブは、湿式プレス工程に入るときに3~25重量%の乾燥含有量を有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、繊維ウェブは、プレス装置内での脱水後、15~80重量%の乾燥含有量を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、プレス布のウェブ側第1の表面を繊維ウェブに直接接触して適用する工程の前に、繊維ウェブを予備乾燥する工程が行われる。いくつかの実施形態では、繊維ウェブを予備乾燥する工程は、前記プレス布の前記ウェブ側第1の表面を、前記繊維ウェブに直接接触して適用する工程の前に、前記繊維ウェブの乾燥含有量がエバポレーションによって少なくとも1重量%増加するように加熱によって前記繊維ウェブを乾燥させることを含む。したがって、これらの実施形態では、繊維ウェブは、非多孔性支持体上での繊維ウェブの形成後であるが、プレス布を適用する前に予備乾燥される。例えば、加熱は、非多孔性支持体を加熱することによって行われてもよく、すなわち、加熱された非多孔性支持体が予備乾燥工程において利用されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、方法は、スムージングプレスで前記脱水ウェブを平滑にする工程をさらに含む。
【0034】
本発明はさらに、上記の方法によって得ることができるナノセルロースを含むフィルムに関する。
【0035】
いくつかの実施形態では、本開示の方法によって得られるフィルムは、コーティングされておらず、10~60gsmの坪量を有する場合、EN13676:2001に従って、≦1ピンホール/m2を有する。
【0036】
本開示の方法によって得られるフィルムは、ASTM D-3985に従って、23℃、50%RH(相対湿度)で、10cc/m2/24h未満、好ましくは5cc/m2/24h未満、最も好ましくは3cc/m2/24h未満の酸素透過率(OTR)値を有し得る。本開示の方法によって得られるフィルムは、乾燥時に10~60gsm、好ましくは15~50gsmの坪量を有し得、乾燥時に10~60μm、好ましくは15~50μmの厚さを有し得る。本開示の方法によって得られるフィルムは、DIN53147に従って、80%を超える透明性を有し得る。結果として、本開示の方法によって、良好な酸素バリアフィルムなどの酸素バリア性を有する大量のナノセルロースを含む薄いフィルムを作製することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ナノセルロースを含むフィルムを作製するための方法であって、
全乾燥重量に基づいて50重量%~100重量%のナノセルロースを含む懸濁液を提供する工程と、
非多孔性支持体上に前記懸濁液の繊維ウェブを形成する工程であって、
前記形成された繊維ウェブが1~25重量%の乾燥含有量を有する工程と、
ウェブ側第1の表面及び反対側の第2の表面を有するプレス布を提供する工程であって、前記プレス布が少なくとも織られた第1の布層を含み、前記織られた第1の布層が複数の糸で織られており、前記プレス布が前記ウェブ側第1の表面に織られた表面構造を有するように、前記織られた第1の布層が前記ウェブ側第1の表面を提供する層としてプレス布内に配置されている工程と、
前記プレス布の前記ウェブ側第1の表面を、前記繊維ウェブに直接接触して適用する工程と、
脱水されたウェブを形成するために、前記プレス布と前記非多孔性支持体との間に配置された前記繊維ウェブを、プレス装置を通して導くことによって前記繊維ウェブを湿式プレスする工程と、
前記フィルムを形成するために、脱水されたウェブを乾燥させる工程と
を含む、方法が提供される。
【0038】
驚くべきことに、ウェブ側表面に織られた表面構造を含むプレス布を、ウェブと直接接触して当て、続いてウェブをプレス装置を通して導くによって、非多孔性支持体上に形成された大量のナノセルロースを含むウェブを改善された方法で脱水することが可能であることが見出された。上述のように、プレス布は、少なくとも織られた第1の布層を含み、織られた第1の布層は、複数の糸で織られており、織られた第1の布層は、プレス布がウェブ側第1の表面に織られた表面構造を有するように、ウェブ側第1の表面を提供する層としてプレス布に配置されている。プレス布のウェブ側第1の表面、すなわち織られた表面構造は、繊維ウェブと直接接触して当てられ、プレス布と非多孔性支持体との間に配置された繊維ウェブは、プレス装置を通して導かれる。
【0039】
本発明による方法により、ウェブを良好かつ非常に効率的に脱水することが可能であり、さらに脱水された繊維ウェブから良好なバリア性を有するフィルムを作製することが可能である。驚くべきことに、ウェブ側表面に織られた表面構造を有するプレス布を使用し、続いてプレス装置で処理することにより、ウェブ又は作製されたフィルムのバリア性を低下させることなく、大量のナノセルロースを含むウェブを高い作製速度(例えば、蒸発乾燥の使用と比較して)で脱水することが可能になることが見出された。
【0040】
さらに、驚くべきことに、プレス布の織られた表面構造(及び織られた第1の布層の残りの部分)は、プレス布の脱水効率に悪影響を及ぼさない、すなわち、プレス作用においてナノセルロースウェブが首尾よく脱水されるように水を通過させることができることが見出された。
【0041】
また、驚くべきことに、ナノセルロースによるプレス布の織られた表面構造(及び織られた第1の布層の残りの部分)の目詰まりが制限又は回避されることが見出された。したがって、ナノセルロースのフィブリルがプレス布内に少なくとも実質的に移動し、プレス布の目詰まりを引き起こすことなく、繊維ウェブの脱水が可能になる。プレス布の目詰まりを回避することは、プレス布の洗浄要求が低減されることを暗示する。
【0042】
大量のナノセルロースを含むウェブの脱水は、良好なバリア性を有するフィルムを作製するための、すなわち製品のバリア性に影響を及ぼすことになる、ピンホール又は他のでこぼこなどの欠陥の数が限られた製品を作製するための最も挑戦的なプロセス工程の1つである。したがって、貧弱なバリア性を回避するために、脱水が良好に行われることが重要である。したがって、バリア性を低下させることなく、大量のナノセルロースを含むウェブの脱水工程の作製速度を高めることを可能にすることは非常に困難であった。
【0043】
上述のように、懸濁液は、全乾燥重量に基づいて、50重量%~100重量%、好ましくは70重量%~100重量%のナノセルロースを含む。したがって、脱水された繊維ウェブから作製されたフィルムは、大量のナノセルロース、好ましくは70~100重量%のナノセルロースを含み、これは、最終的なコーティング層が添加される前のフィルム自体のナノセルロースの量に関連がある。
【0044】
上述のように、繊維ウェブは、その上で繊維ウェブがプレス装置を通して導かれる非多孔性支持体上に形成される。好ましくは、繊維ウェブは、支持体上への懸濁液のキャスティング、例えばキャストコーティングによって支持体上に形成される。しかしながら、代替的に、繊維ウェブは、ブレード、スプレー、ロッド、又はカーテンコーティングなどの当該技術分野での任意の他の従来のコーティング技術によって支持体上に形成することができる。
【0045】
驚くべきことに、本開示による方法によって、支持体上のキャスティングされた懸濁液の脱水を増加させることが可能であることが見出された。したがって、本開示による方法によれば、キャスティングを用いて平滑で良好なバリア性フィルムを高速に作製することができる。
【0046】
したがって、本明細書に開示される方法は、作製されたフィルムの良好なバリア性が提供される(すなわち、劣化していない)と同時に、キャスティングライン上でのより高い動作速度、キャスティングライン乾燥機の長さの短縮、及び乾燥エネルギー消費の大幅なエネルギー節約を可能にする。
【0047】
均一な繊維ウェブが形成されるように支持体に懸濁液を塗布することが重要であり、これは、繊維ウェブが可能な限り均一であり、可能な限り均一な厚さであることを意味する。塗布される繊維ウェブの厚さは、例えば、塗布時に40~6000μm又は60~3000μm又は70~2000μm又は100~2000μmとすることができる。形成された繊維ウェブは、形成時(すなわち、支持体への塗布中又は支持体への塗布直後)に1~25重量%、好ましくは2~20重量%、最も好ましくは3~15重量%の乾燥含有量を有する。
【0048】
繊維ウェブが形成される支持体(基材)は、非多孔性支持体である。これは、好ましくは滑らかな表面を有し、ポリマー/プラスチック支持体又は金属支持体とすることができる。好ましくは、支持体は、金属支持体であり、すなわち支持体は金属から作られている。例えば、金属支持体は、金属ベルトである。金属支持体は、ウェブが支持体に当てられる前又は直後に、好ましくは30℃を超える、好ましくは30~150℃の間、より好ましくは45~150℃の間、さらにより好ましくは60~100℃の間の温度に加熱される。支持体、したがって当てられたウェブ上の温度を上昇させることにより、プレス装置におけるウェブの脱水の効率をさらに高めることが可能であることが見出された。
【0049】
プレス布とは、透過性であり、水を吸収することによって、又は布を通して水を除去することを可能にすることによって、ウェブから水を除去することを可能にする布を意味する。
【0050】
上述したように、本開示による方法で利用されるプレス布は、ウェブ側第1の表面及び反対側の第2の表面を含む。プレス布のウェブ側第1の表面は、脱水される繊維ウェブと接触するように意図されたプレス布の表面である。
【0051】
さらに、プレス布は、少なくとも織られている第1の布層を含む、すなわち、織られた第1の布層を含む。織られた第1の布層は、芯(すなわち、詰綿材料)も他の充填材料も含まない。したがって、第1の布層の織られた構造は、詰綿材料も他の充填材料も有さない織られた構造である。したがって、繊維ウェブと直接接触して当てられる織られた第1の布層の表面構造は、詰綿材料も他の充填材料も含まない。織られた第1の布層は、プレス布がウェブ側第1の表面に織られた表面構造を有するように、ウェブ側第1の表面を提供する層としてプレス布に配置される。したがって、織られた第1の布層は、ウェブ側表面構造を提供するプレス布の層を構成する、すなわち、それは、その表面の1つが、繊維ウェブに接触するように配置されたプレス布の外面であるウェブ側第1の表面を構成するように配置されている。
【0052】
したがって、プレス布は、1つの層、すなわち織られた第1の布層によって構成されてもよい。したがって、一実施形態では、プレス布は、織られた第1の布層からなる。この実施形態では、織られた第1の布層は、プレス布のウェブ側第1の表面と反対側の第2の表面の両方を提供し、すなわち、プレス布のウェブ側第1の表面は、織られた第1の布層の一方の表面によって構成され、プレス布の反対側の第2の表面は、織られた第1の布層の反対側の他方の表面によって構成される。
【0053】
しかしながら、代替的に、プレス布は、第1の布層に加えて、1つ若しくは複数のさらなる布層及び/又は1つ若しくは複数の芯材料層を含んでもよい。その場合、プレス布の層は、織り合わされるか、又は積層構造若しくは複合構造に配置されてもよい。その場合、1つ若しくは複数のさらなる布層及び/又は1つ若しくは複数の芯材料層は、織られた第1の布層が最外層として置かれるように、すなわちウェブ側第1の表面を提供するように配置される。さらなる布層の1つ又は複数は、織られた第1の布層と同じ特性を有してもよい。代替的に、1つ又は複数のさらなる布層は、第1の布層とは異なる特性を有してもよく、任意の適切なプレス布材料のものとすることができる。さらなる布層の1つ又は複数は、織られた層とすることができるが、代替的に、合成詰綿材料の芯を有する、織られた又は不織のベースを有してもよい。1つ又は複数のさらなる布層が織られている場合、それらは、織られた第1の布層とは異なる特性を有し得る、例えば、異なる織目及び/又は異なる材料のものであり得る。
【0054】
織られた第1の布層は、複数の糸で織られており、これらは、ポリマー糸を含んでもよく、又はポリマー糸からなってもよい。したがって、それは、複数のポリマー糸で織られてもよく、すなわち、それは、複数のポリマー糸で織られている織られた構造を含むか又はそれからなってもよい。
【0055】
さらに、ポリマー糸は、1つ又は複数の合成ポリマーの糸とすることができる。したがって、織られた第1の布層は、1つ又は複数の合成ポリマーの糸で織られてもよく、すなわち、織られた第1の布層は、1つ又は複数の合成ポリマーの糸の織られた構造を含むか、又はそれからなってもよい。例えば、織られた第1の布層は、1種類のみの合成ポリマーの糸で織られていてもよい。しかしながら、代替的に、織られた第1の布層は、2つ以上(3、4、5など)の異なる合成ポリマーの糸で織られていてもよく、すなわち、少なくとも第1の合成ポリマーの糸と第2の合成ポリマーの糸とで織られていてもよい。
【0056】
合成ポリマーは、抄紙機布の糸に使用される任意の既知の適切な合成ポリマーとすることができる。例えば、合成ポリマーは、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアラミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリエーテルケトン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリウレア、及びそれらの共重合体からなる合成ポリマーの群から選択され得る。好ましくは、合成ポリマーは、ポリエステル又はポリプロピレンである。代替的に、綿又はレーヨンを糸の材料として使用することができる。
【0057】
したがって、織られた第1の布層は、例えば、ポリエステル糸又はポリプロピレン糸で織られていてもよい。代替的に、織られた第1の布層は、例えば、ポリエステル糸とポリプロピレン糸との組合せ、ポリエステル糸と上記の群の1つ若しくは複数の他の合成ポリマーの糸との組合せ、又はポリプロピレン糸と上記の群の1つ若しくは複数の他の合成ポリマーの糸との組合せで織られていてもよい。例えば、糸の少なくとも80%、好ましくは糸の少なくとも90%は、ポリエステル糸又はポリプロピレン糸である。
【0058】
織られた第1の布層は、長手方向糸及び横方向糸で織られていてもよい。織られた第1の布層の織目は、任意の適切な織り方のものであってもよく、例えば、サテン織り、平織り、又は綾織りとすることができる。
【0059】
織られた第1の布層は、無端状に織られてもよく、又は平坦に織られて接合されてもよく、又は継ぎ目若しくは布を無端形態に配置するための当該技術分野で公知の他の技術を用いて無端形態に作られてもよい。
【0060】
好ましくは、織られた第1の布層の複数の糸は、マルチフィラメント糸である。個々のマルチフィラメント糸のフィラメントは、好ましくは、各個々の糸が1つの材料、例えば1つの合成ポリマーのみを含むように、同じ材料、例えば同じ合成ポリマーのものである。しかしながら、代替的に、個々のマルチフィラメント糸のフィラメントは、2つ以上の異なる材料、例えば2つ以上の異なる合成ポリマーのものとすることができる。さらに代替的に、織られた第1の布層の糸は、モノフィラメント糸とすることができる。
【0061】
一実施形態では、織られた第1の布層の織目は、サテン織りであり、糸の少なくとも80%、好ましくは糸の少なくとも90%は、ポリエステル又はポリプロピレン糸である。したがって、この実施形態では、糸の少なくとも80%、又は糸の少なくとも90%、又は糸の100%がポリエステルのものとすることができる。代替的に、糸の少なくとも80%、又は糸の少なくとも90%、又は糸の100%がポリプロピレンのものとすることができる。さらに代替的には、糸の少なくとも80%、又は糸の少なくとも90%、又は糸の100%は、ポリエステル又はポリプロピレンのいずれかのものとすることができる(すなわち、ポリエステルの糸及びポリプロピレンの糸が存在する)。本実施形態では、糸は、好ましくは、マルチフィラメント糸である。
【0062】
一実施形態では、織られた第1の布層の織目は、平織りであり、糸の少なくとも80%、好ましくは糸の少なくとも90%は、ポリエステル又はポリプロピレン糸である。したがって、この実施形態では、糸の少なくとも80%、又は糸の少なくとも90%、又は糸の100%がポリエステルのものとすることができる。代替的に、糸の少なくとも80%、又は糸の少なくとも90%、又は糸の100%がポリプロピレンのものとすることができる。さらに代替的には、糸の少なくとも80%、又は糸の少なくとも90%、又は糸の100%は、ポリエステル又はポリプロピレンのいずれかのものとすることができる(すなわち、ポリエステルの糸及びポリプロピレンの糸が存在する)。本実施形態では、糸は、好ましくは、マルチフィラメント糸である。
【0063】
好ましくは、織られた第1の布層の糸デニール、緯糸密度及び経糸密度は、緻密な織られた構造が提供されるように選択される。例えば、織られた第1の布層は、6000未満、好ましくは5000未満、より好ましくは4000未満のデニールを有する糸で織られていてもよい。好ましくは、デニールは10超、最も好ましくは20超である。緯糸密度は、5cm-1超、好ましくは10cm-1超、より好ましくは15cm-1超、最も好ましくは20cm-1超であってもよく、経糸密度は、20cm-1超、好ましくは30cm-1超、最も好ましくは40cm-1超とすることができる。特定の範囲内のデニールを有する糸の使用並びにそれぞれ特定の範囲内の緯糸密度及び経糸密度の使用は、緻密な織られた構造が得られること、すなわち、ウェブ側表面の緻密な表面構造も得られることを暗示する。
【0064】
織られた第1の布層の厚さは、例えば、0.05~2mm、又は好ましくは0.1~1mmとすることができる。
【0065】
例えば、織られた第1の布層の坪量は、30~1900g/m2又は60~1400g/m2とすることができる。
【0066】
さらに、支持装置がプレス布の第2の表面に配置され得る。支持装置は、プレス布を繊維ウェブに接触するように適用する前、適用する後、又は適用するときに、プレス布の第2の表面に配置され得る。いくつかの実施形態では、支持装置は、積層構造又は複合構造などで、プレス布の第2の表面に取り付けられる。支持装置は、1つ若しくは複数の芯材料層及び/又は支持布及び/又は1つ若しくは複数のプレスフェルトを含んでもよい。1つ又は複数の支持布は、上記のプレス布、すなわち織られた第1の布層を含むプレス布に対応してもよく、又は異なる特性を有してもよい。支持布は、任意の適切な布によって構成されてもよい。2つ以上の支持布がある場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0067】
プレスフェルトとは、透過性であり、水を吸収することによって、又はフェルトを通して水を除去することを可能にすることによって、ウェブから水を除去することを可能にするフェルトを意味する。任意の既知のプレスフェルト、例えば、紙又は板紙ウェブを脱水するために使用されるプレスフェルトを使用することができる。プレスフェルトは、詰綿材料、例えば合成詰綿材料の芯を有する、織られた又は不織のベースを有してもよい。
【0068】
一実施形態では、支持装置は、プレスフェルトからなり、すなわちプレスフェルトがプレス布の第2の表面上に配置されるか、又はそれに取り付けられる。一実施形態では、支持装置は、支持布及びプレスフェルトからなり、プレスフェルトは、好ましくは最外層として配置される。
【0069】
プレス布は、好ましくは、プレス装置を通して導かれる前に少なくとも20cm、繊維ウェブに当てられる、すなわち繊維ウェブに直接接触して当てられる。プレス布は、繊維ウェブがプレス装置を通して導かれる前に、20cm~5メートル、さらにより好ましくは50cm~3メートルの距離で繊維ウェブに当てられることが好ましい。プレス装置を通して導かれる前に繊維ウェブに当てられるとき、プレス布に外圧が使用されないことが好ましい。支持体、繊維ウェブ及びプレス布をロールの周りに巻き付け、このようにして小さな脱水圧力を生成することが可能であり得るが、あまり高い圧力を使用しないことが重要であり、ニップロールの使用による圧力を使用することはできない。プレス装置内の脱水を増加させる前に、本開示によるプレス布の使用をある距離で組み合わせることにより、ウェブの脱水を改善することができ、プレス布内に移動するナノセルロースのフィブリルによるプレス布の目詰まりをさらに抑制することができる。加えて、プレス装置で使用される圧力を増加させ、脱水プロセスの速度を増加させることが可能であり得る。
【0070】
プレス装置とは、繊維ウェブがそこを通して導かれ、したがってプレス及び脱水されるニップを形成する装置を意味する。プレス装置は、好ましくは、延長されたニップを含み、プレス装置は、ベルトプレスであることが好ましい。ベルトプレスは、金属ベルト及びロールを含み、ウェブの脱水は、金属ベルトとロールとの間にウェブ及びプレス布を適用することによって行われる。ベルトプレス内の繊維ウェブをベルトプレスのロールの直径の少なくとも20%の距離にわたって処理することによってニップの長さを増加させることが好ましい場合がある。ウェブから作製されるフィルムのバリア性を低下させることなく、繊維ウェブの脱水のニップ長を長くすることが可能であり、さらに脱水速度を高めることができることが見出された。プレス装置は、2つ以上のニップを含んでもよい。
【0071】
プレス装置で使用される圧力は、好ましくは0.1~150バール、好ましくは0.5~100バール、さらにより好ましくは1~60バール、さらにより好ましくは1~50バールである。プレス装置内の圧力を徐々に増加させることが好ましい場合がある。プレス装置の開始時に0.5~10バールの間の圧力を使用し、圧力を5~20バールまで徐々に増加させ、その後任意選択で圧力を10~20バールまでさらに増加させ、その後任意選択で圧力を20~50バールまで増加させることが好ましい。増加した圧力は、同じ圧力ニップ、例えば、拡張ニップで行われてもよく、又はプレス装置は、2つ以上のニップを含んでもよい。
【0072】
ウェブは、好ましくは、湿式プレスのために少なくとも20m/分、好ましくは100m/分超、さらにより好ましくは200m/分超の速度でプレス装置を通して導かれる。本発明により、作製されたフィルムの良好なバリア性が提供されると同時に、大量のナノセルロースを含む繊維ウェブを脱水するための作製速度を高めることが可能であることが見出された。したがって、脱水は、良好なバリア性を有するナノセルロースフィルムを作製するための最も困難なプロセス工程であることが多いので、フィルム全体の作製速度も改善することができ、はるかに費用効率の高い方法で良好なバリア性を有するナノセルロースフィルムを作製することを可能にする。
【0073】
プレス装置を有する1つ又は複数のプレス部を利用することができる。したがって、異なるプレス部内の2つのプレス布など、本開示による2つ以上のプレス布を利用することができる。2つ以上のプレス布が利用される場合、異なるプレス布は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、第1のプレス布は、低い透水性を有することができ、第2のプレス布は、高い水吸収特性を有することができる。
【0074】
繊維ウェブは、好ましくは、プレス布が接触するように当てられる前に加熱される。このようにして、繊維ウェブの温度及び固形分が増加し、繊維ウェブのその後の脱水をさらに改善する。増加した熱が、任意の既知の方法を使用して加えられてもよい。繊維ウェブは、好ましくは10~99℃、好ましくは50~95℃の温度まで加熱される。
【0075】
湿式プレス工程に入るときの繊維ウェブの乾燥含有量は、好ましくは3~25重量%、より好ましくは4~20重量%、最も好ましくは5~15重量%である。プレス装置での脱水後の繊維ウェブの乾燥含有量は、好ましくは15~80重量%、より好ましくは20~60重量%である。
【0076】
プレス装置での脱水後、フィルムを形成するために、脱水されたウェブを乾燥させる。脱水されたウェブの乾燥は、ウェブが適切な乾燥含有量を有するために、任意の従来の方法での、例えば追加のプレス若しくは従来のシリンダー乾燥による、真空を使用することによる、及び/又は熱風を使用することによる乾燥及び/又はさらなる脱水を含んでもよい。フィルムは、好ましくは、95重量%を超える乾燥含有量を有する。例えばカレンダー加工によってフィルムを作製するために、当業者に公知の任意の方法で脱水ウェブを処理することも可能であり得る。
【0077】
プレス装置内での脱水後、脱水されたウェブ上のプレス布マーキングを除去し、したがって平滑性を改善するために、スムージングプレスを任意選択で使用することができる。スムージングプレスは、非フェルトニップとすることができる。スムージングプレスによる平滑化は、乾燥工程の前に行われてもよく、すなわち、脱水されたウェブは、乾燥の前に平滑化されてもよい。代替的に、スムージングプレスによる平滑化は、乾燥工程の乾燥サブ工程間に行われてもよい。例えば、乾燥工程は、第1の乾燥サブ工程及び第2の乾燥サブ工程を含んでもよく、平滑化は、第1の乾燥サブ工程と第2の乾燥サブ工程との間に行われてもよい。
【0078】
脱水されたウェブの乾燥後に提供されるフィルムは、ASTM D-3985に従って、23℃、50%RHで、10cc/m2/24h未満、好ましくは5cc/m2/24h未満、最も好ましくは3cc/m2/24h未満の酸素透過率(OTR)値を有し得る。提供される乾燥フィルムの坪量は、10~60gsm、好ましくは15~50gsmとすることができる。提供される乾燥フィルムの厚さは、乾燥時に10~60μm、好ましくは15~50μmとすることができる。フィルムの厚さは、必要な特性に応じて選択することができる。形成されたフィルムは、好ましくは、高い平滑性及び良好なバリア性(例えば、ガス/酸素、芳香、光など)を有する薄い半透明又は透明フィルムである。
【0079】
プレス布は、プレス装置を通して導かれ、脱水されたウェブから分離された後、洗浄され、脱水されてもよい。
【0080】
プレス布のウェブ側第1の表面を繊維ウェブに直接接触して適用する工程の前に、繊維ウェブを予備乾燥する工程が行われてもよい。したがって、繊維ウェブを支持体上に形成した後であるが、プレス布を適用する前に、繊維ウェブを予備乾燥する工程を行うことができる。乾燥含有量に応じて、予備乾燥工程を行う必要があり得る。例えば、乾燥含有量が1~25重量%、又は3~15重量%又は3~10重量%である場合、予備乾燥工程を行う必要があり得る。例えば、予備乾燥は、エバポレーション、熱風による衝突乾燥、IR、マイクロ波、熱加熱、又は当該技術分野で周知の任意の他の方法によって行うことができる。
【0081】
例えば、繊維ウェブを予備乾燥する工程は、前記プレス布の前記ウェブ側第1の表面を、前記繊維ウェブに直接接触して適用する工程の前に、前記繊維ウェブの乾燥含有量がエバポレーションによって少なくとも1重量%増加するように加熱によって前記繊維ウェブを乾燥させることを含んでもよい。次いで、繊維ウェブは、非多孔性支持体上での繊維ウェブの形成後であるが、プレス布を適用する前に予備乾燥される。例えば、加熱は、非多孔性支持体を加熱することによって行われてもよく、すなわち、加熱された非多孔性支持体が予備乾燥工程において利用されてもよい。
【0082】
フィルムとは、本明細書では、良好なガス、芳香又はグリース若しくはオイルバリア性、好ましくは上記OTR値による酸素バリア性などの酸素バリア性を有する薄い基材を意味する。
【0083】
ナノセルロースに加えて、懸濁液、したがって得られたフィルムは、より長いセルロース繊維、広葉樹繊維又は針葉樹繊維、好ましくはクラフトパルプ針葉樹繊維も含んでもよい。フィルムはまた、顔料、可塑剤、湿潤剤、粘度修飾剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)、保持化学物質、デンプンなどの他の添加剤を含んでもよい。フィルムは、粘土、好ましくはベントナイトなどの鉱物を含んでもよい。フィルムは、1~50重量%、より好ましくは2~30重量%のベントナイトを含むことが好ましい場合がある。フィルムのベントナイト含有量を増加させることにより、ウェブの乾燥含有量を増加させることが可能であることが見出された。添加剤は、繊維ウェブを形成するために使用される懸濁液に含まれてもよく、又は形成後に繊維ウェブに添加されてもよい。
【0084】
本開示の方法は、乾燥工程後に、好ましくは20%未満の乾燥度で、形成されたフィルムを基材から剥離する工程をさらに含んでもよい。これにより、自立したフィルムが形成される。したがって、本開示の方法は、自立したナノセルロースフィルムの作製の方法であり得る。
【0085】
上述のように、繊維ウェブが形成される支持体は、金属又はプラスチック支持体とすることができる。次いで、この方法は、支持体から形成されたフィルムを剥離して、自立したナノセルロースフィルムを提供する工程をさらに含んでもよい。
【0086】
本発明は、上記の方法によって得られるナノセルロースを含むフィルムにも関する。フィルムは、好ましくは、ASTM D-3985に従って、23℃、50%RHで、10cc/m2/24h未満、好ましくは5cc/m2/24h未満、最も好ましくは3cc/m2/24h未満の酸素透過率(OTR)値を有する。フィルムは、乾燥時に、好ましくは10~60gsm、より好ましくは15~50gsmの坪量を有する。フィルムの厚さは、乾燥時に、好ましくは10~60μm、より好ましくは15~50μmである。フィルムの厚さは、必要な特性に応じて選択することができる。本発明によるフィルムは、好ましくは、高い平滑性及び良好なバリア性(例えば、ガス/酸素、芳香、光など)を有する薄い半透明又は透明フィルムである。フィルムは、DIN53147に従って、80%を超える透明性を有し得る。好ましくは、フィルムは、コーティングされておらず、10~60gsmの坪量を有する場合、EN13676:2001に従って、≦1ピンホール/m2を有する。
【0087】
本開示による方法によって得られる自立したフィルムは、紙製品及び板紙製品のいずれかの表面に当てられてもよい。
【0088】
ナノセルロースフィルムはまた、透明又は半透明であり得る自立したパウチ又はバッグなどの可撓性包装材料の一部であり得る。したがって、本開示によるナノセルロースフィルムは、穀類などの乾燥食品を包装する際の箱の袋材として使用することができる。さらに、本開示によるナノセルロースフィルムは、包装基材として、紙、板紙若しくはプラスチックのラミネート材料として、及び/又は使い捨て電子機器用の基材として使用することができる。ナノセルロースフィルムはまた、例えば、クロージャ、蓋又はラベルに含まれてもよい。ナノセルロースフィルムは、箱、バッグ、包装フィルム、カップ、容器、トレイ、ボトルなどの任意の種類のパッケージに組み込むことができる。
【0089】
ナノセルロースは、部分的又は完全にフィブリル化したセルロース又はリグノセルロース繊維を含む。遊離したフィブリルは、1000nm未満の直径を有するが、実際のフィブリルの直径又は粒径分布及び/又はアスペクト比(長さ/幅)は、供給源及び製造方法に依存する。最小のフィブリルは、基本フィブリルと呼ばれ、約2~4nmの直径を有する(例えば、Chinga-Carrasco,G.,Cellulose fibres,nanofibrils and microfibrils:The morphological sequence of MFC components from plant physiology and fibre technology point of view,Nanoscale research letters 2011,6:417を参照されたい。)が、ミクロフィブリルとしても定義される基本フィブリルの凝集形態は、例えば、拡張精製プロセス又は圧力降下分解プロセス(Fengel,D.,Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides,Tappi J.,March 1970,Vol53,No.3)を使用することによってMFCを作るときに得られる主生成物であることが一般的である。
【0090】
ナノセルロースには、セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース(NFC)、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、セルロースナノフィラメント、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、ミクロフィブリル凝集体、及びセルロースミクロフィブリル凝集体などの種々の同義語がある。
【0091】
シングルパス又はマルチパス精製、前加水分解又は酵素処理、その後の精製又は高剪断崩壊又はフィブリルの遊離などの、ナノセルロースを作るための様々な方法が存在する。
【0092】
ナノセルロース製造をエネルギー効率的かつ持続可能にするためには、通常、1つ又はいくつかの前処理工程が必要である。したがって、利用されるパルプのセルロース繊維は、例えば、繊維を加水分解若しくは膨潤させるために、又はヘミセルロース若しくはリグニンの量を減少させるために、例えば酵素的又は化学的に前処理されてもよい。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学的に修飾されてもよく、その結果、セルロース分子は、元の又は天然のセルロースに見出される以外の(又はそれ以上の)官能基を含有する。そのような基としては、とりわけ、カルボキシメチル(CM)、アルデヒド及び/若しくはカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)又はホスホリル基が挙げられる。上記の方法の1つで修飾又は酸化された後、繊維をナノセルロース又はナノフィブリルサイズのフィブリルに分解することがより容易である。
【0093】
ナノセルロースは、いくつかのヘミセルロースを含有し得、その量は植物源に依存する。繊維の機械的崩壊は、リファイナ、グラインダ、ホモジナイザ、コロイダ、摩擦グラインダ、一軸又は二軸押出機、超音波ソニケータ、マイクロフルイダイザ、マクロフルイダイザ又はフルイダイザ型ホモジナイザなどのフルイダイザなどの適切な装置を用いて行われる。ナノセルロース製造方法に応じて、生成物は、木材繊維又は製紙プロセスに存在する微粉、又はナノ結晶セルロース、又は他の化学物質も含有し得る。生成物は、効率的にフィブリル化されていない様々な量のミクロンサイズの繊維粒子も含有し得る。
【0094】
ナノセルロースは、広葉樹繊維及び針葉樹繊維の両方からの木材セルロース繊維から作製することができる。それはまた、微生物源、麦わらパルプ、竹、バガス、又は他の非木材繊維源などの農業繊維から作ることもできる。これは、好ましくは、未使用繊維からのパルプを含むパルプ、例えば、機械パルプ、化学パルプ及び/又は熱機械パルプから作られる。それはまた、破れた紙又は再生紙から作ることもできる。ナノセルロースという用語は、実質ナノセルロース及びBNC(細菌ナノセルロース)を含む。ナノセルロースは、植物繊維、例えば、サトウダイコン又はジャガイモベースのナノセルロースから得ることもできる。
【0095】
上記のナノセルロースの定義には、ISO/TS20477:2017規格におけるナノセルロースの定義が含まれるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0096】
以下に従って4つの異なるプレス布装置を提供した。プレス布装置のいくつかで利用されたプレスフェルトは、従来の抄紙機プレスフェルトであった。
【0097】
プレス布装置1:
ウェブ側にポリエステルマルチフィラメント糸(通気性125l/dm2分、経糸密度120cm-1、緯糸密度:40cm-1、5ハーネスサテン織り)の107g/m2のサテン布の単一層(厚さ0.18mm)と、裏側に従来の抄紙機プレスフェルトとを含むプレス布装置。
【0098】
プレス布装置2:
ウェブ側にポリエステルマルチフィラメント糸(カレンダー加工、通気性2l/dm2分、糸密度14cm-1、平織り)の800g/m2の濾布の単一層(厚さ0.85mm)を含むプレス布装置。
【0099】
プレス布装置3:
ポリプロピレンマルチフィラメント糸(カレンダー加工、通気性2l/dm2分、糸密度14cm-1、平織り)の585g/m2の濾布の単一層(厚さ0.80mm)を含むプレス布装置。
【0100】
プレス布装置4:
ウェブ側にポリプロピレンマルチフィラメント糸(カレンダー加工、通気性2l/dm2分、糸密度14cm-1、平織り)の585g/m2の濾布の単一層(厚さ0.80mm)と、裏側に従来の抄紙機プレスフェルトとを含むプレス布装置。
【0101】
全乾燥重量に基づいて87%のナノセルロース及び13%のソルビトールを含む懸濁液を金属支持体上にキャストコーティングして、繊維ウェブを形成した。キャスティング中の懸濁液の乾燥含有量は、3~3.5%であった。形成された繊維ウェブの乾燥含有量は、予備乾燥工程において熱風による衝突乾燥によって3~3.5%から5.5~8.5%に上昇した。
【0102】
次いで、形成され、予備乾燥された繊維ウェブを、異なる実験(実験1~6)において、上述のそれぞれのプレス布装置のウェブ側面をウェブと接触させるように適用することによって、金属支持体上に湿式プレスした。ウェブ及びそれぞれのプレス布装置を静的実験室プレス装置でプレスした。以下の表1に見られるように、それぞれのプレス布装置がウェブに当てられ(すなわち、ウェブと接触させられ)、湿式プレスが開始されたときのウェブの異なる固形分を実験で利用した(「出発固形分」)。さらに、以下の表1に見られるように、プレスパルス中の異なる最大圧力(「最大圧力(バール)」)及びプレス装置での湿式プレス(脱水)後の異なる固形分(「最終固形分」)を実験で利用した。
【0103】
湿式プレスが終了した後、ナノセルロースフィルムを形成するために、熱風衝突による追加の乾燥を適用した。
【0104】
ウェブのピンホール数は、湿式プレス(脱水)後及び最終乾燥後に目視検査によってカウントした。さらに、脱水後及び最終乾燥後のそれぞれのプレス布装置におけるナノセルロースの存在を目視検査によって決定した。
【0105】
表1の結果から分かるように、ウェブ側に織られた層(すなわち、ウェsブ側の織られた表面構造)を有するプレス布装置を利用し、キャストコーティングされたナノセルロースウェブの大量の水を減少させるために圧力を加えることが可能であり、依然として良好なバリア性を有するナノセルロースフィルムを作製することが可能であった。さらに、プレス布装置の目詰まりが回避された。
【0106】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すると、他の修正及び変形が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、そのような他の修正及び変形が行われ得ることは明らかである。
【国際調査報告】