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特表2023-518870腫瘍の突然変異型の同定における赤血球核酸の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】腫瘍の突然変異型の同定における赤血球核酸の使用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20230426BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALI20230426BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230426BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230426BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230426BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6874 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/574 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557911
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2021074035
(87)【国際公開番号】W WO2021190124
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】202010208852.5
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521208929
【氏名又は名称】エムワイ-バイオメド、テクノロジー(グアンゾウ)、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MY-BIOMED TECHNOLOGY(GUANGZHOU) CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チーハン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ウェイイェン
(72)【発明者】
【氏名】トン,イェンジョン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA17
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、赤血球核における突然変異を検出することによって腫瘍を診断するための方法、および対応するキットを提供する。本発明における方法およびキットは、腫瘍発生および/または突然変異型を正確に同定し、腫瘍を正確に診断することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球中の標的核酸を検出するように構成される核酸検出試薬セットを含むキットであって、
赤血球中の標的核酸の検出結果に基づいて、腫瘍の発生および/または突然変異型を同定するように構成されることを特徴とする、
キット。
【請求項2】
前記キットは、
(1)同定された突然変異に基づいて、腫瘍の陽性鑑別診断に使用する、また
(2)同定された腫瘍の突然変異型に基づいて、検出対象の腫瘍分子タイピングを判定する、また
(3)同定された腫瘍の突然変異型に基づいて、臨床投薬をガイドするように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記標的核酸が、陽性鑑別診断対象集団から抽出されたものであることを特徴とする、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記腫瘍の発生および/または突然変異型を同定することが、EGFR、KRAS、NRAS、NTRK、BRAF、HER2、MET、ALK、ROS-1、RET、BRAC1/2、PTEN、TP53、PIK3CA、RHBDF2、BLM、PALB2、CTHRC1、ASCC1、MSR1、ALDH2、ADH1B、CYP2E1、およびGSTM1からなる群から選択される遺伝子に生じる突然変異を同定することを含むことを特徴とする、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
腫瘍の発生および/または突然変異型を同定するための核酸サンプルであって、赤血球由来の核酸であることを特徴とする、核酸サンプル。
【請求項6】
腫瘍の発生および/または突然変異型を同定するための核酸サンプルを調製する方法であって、
(1)全血から赤血球を単離するステップと、
(2)ステップ(1)で得られた赤血球から核酸を抽出し、核酸サンプルを調製するステップとを含むことを特徴とする、
方法。
【請求項7】
腫瘍の発生および/または突然変異型を同定するためのキットを製造するための核酸検出試薬セットの使用であって、赤血球中の核酸を検出するように構成されることを特徴とする、核酸検出試薬セットの使用。
【請求項8】
前記核酸検出試薬セットを使用して赤血球中の核酸を検出することは、
(a)検出対象の赤血球由来の核酸サンプルを調製するステップと、
(b)その核酸サンプル中の1種または複数種の腫瘍特異的遺伝子突然変異を検出するステップとを含むことを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
ステップ(b)において、標的核酸の遺伝子配列を検出することにより、標的核酸の配列情報を得た後、得られた配列情報に基づいて、腫瘍の発生および/または突然変異型を同定することを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記核酸サンプルが腫瘍患者からの核酸サンプルであることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記腫瘍特異的遺伝子突然変異が、EGFR、KRAS、NRAS、NTRK、BRAF、HER2、MET、ALK、ROS-1、RET、BRAC1/2、PTEN、TP53、PIK3CA、RHBDF2、BLM、PALB2、CTHRC1、ASCC1、MSR1、ALDH2、ADH1B、CYP2E1、およびGSTM1からなる群から選択される遺伝子に生じる突然変異を含むことを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項12】
腫瘍の発生および/または突然変異型を同定する方法であって、
(a)検出対象の赤血球由来の核酸サンプルを提供するステップと、
(b)その核酸サンプル中の1種または複数種の腫瘍特異的遺伝子突然変異を検出するステップとを含むことを特徴とする、
方法。
【請求項13】
ステップ(b)において、標的核酸の遺伝子配列を検出することにより、標的核酸の配列情報を得た後、ステップ(b)において測定された配列情報に基づいて、腫瘍の発生および/または突然変異型を判定することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸サンプルが腫瘍患者からの核酸サンプルであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記腫瘍特異的遺伝子突然変異が、EGFR、KRAS、NRAS、NTRK、BRAF、HER2、MET、ALK、ROS-1、RET、BRAC1/2、PTEN、TP53、PIK3CA、RHBDF2、BLM、PALB2、CTHRC1、ASCC1、MSR1、ALDH2、ADH1B、CYP2E1、およびGSTM1からなる群から選択される遺伝子に生じる突然変異を含むことを特徴とする、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2020年03月23日に出願された、出願番号202010208852.5の中国特許出願「腫瘍の突然変異型の同定における赤血球核酸の使用」の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、生物学的検出の分野に関し、具体的には、腫瘍の発生および/または突然変異型の同定における赤血球核酸の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子診断のコストが大幅に下がることにつれて、遺伝子診断技術は臨床に徐々に移行していく。遺伝子診断の情報を利用した精密医療が臨床的に多く行われている。精密医療は、次世代の診療技術として、従来の診療方法よりも大きな技術的利点を有する。精密医療は、例えば、遺伝子配列決定によって癌の突然変異遺伝子を見つけ、対症薬を迅速に決定し、患者が様々な治療方法を試みる時間を省き、治療効果を向上させることができるなど、従来の治療手段と比較して、精密さと便利さのある利点を有する。遺伝子診断サンプルは、主に組織および体液(血液を含む)に由来する。臨床腫瘍学の実践は、腫瘍組織を生検により切除して、腫瘍に関連する遺伝子変化を分析することに依存する。腫瘍組織生検は、現在の癌診断のための絶対的基準であり、癌治療のための重要なツールであるが、近年、単一の生検組織から得られる情報は、空間的および時間的に限られた腫瘍のスナップショットを提供し、疾患の不均一性を反映することができない傾向があることが明らかになっている。さらに、腫瘍生検の侵襲性は、重複サンプリングに制限を課す。
【0004】
液体生検は、非侵襲的腫瘍分析およびモニタリングにおいて有望なツールであると考えられている。数十年にわたり、血液は、腫瘍関連遺伝子の豊富な供給源であり、1)白血球、循環がん細胞(circulating tumor cells、CTC)及び循環内皮細胞(circulatingendothelial cells、CEC)を含む単球画分、2)細胞外小胞(extracellular vesicles、EV)、細胞外遊離DNA(cell-free DNA、cfDNA)及び遊離RNA(cell-free RNA、cfRNA)、血漿タンパク質及び代謝物、並びに腫瘍教育血小板(tumor-educated platelets、TEP)を含む血漿及び血清を含む。これらの生体分子及び生体資源は、原発腫瘍の腫瘍の発生及び全身作用の一部(例えば、CTC、CEC、EV、cfRNA及びTEP)であるか、又は腫瘍細胞のアポトーシス及び壊死の間における受動放出(例えば、cfDNA)にのみ起因し、しかも大部分が血漿にあるか、又は白血球に由来すると考えられる。しかしながら、上記液体生検技術の対象は、血液中の含有量が非常に低く、一方で、cfDNAは癌細胞に由来するものが極めて少なく、免疫細胞及びその他の正常細胞に由来するものが多く、それによって液体生検の感度や正確さが低い。
【0005】
現在の液体生検技術に基づく変異検出は、主に腫瘍の分子タイピングおよび臨床投薬指導のために使用される。しかし、以上の技術的限界を受けて、臨床的ニーズを満たす高感度検出を提供することができず、腫瘍の発生及び再発の初期で特に困難であった。また血清由来のcfDNAは非腫瘍アポトーシス細胞及び免疫細胞由来の突然変異を有しており、腫瘍の鑑別診断に用いることもできない。
したがって、操作が簡単で、豊富な供給源を有し、感度および正確さが臨床的需要を満たすことができる新たな腫瘍特異的突然変異検出技術の開発が切望されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、腫瘍の発生および/または突然変異型を同定するためのキットおよび方法を提供することである。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術的手段を提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、赤血球中の標的核酸を検出するように構成される核酸検出試薬セットを含むキットを提供する。
【0009】
別の好ましい例では、前記キットは、赤血球中の標的核酸の検出結果に基づいて、腫瘍の発生および/または突然変異型を同定するように構成される。
【0010】
別の好ましい例では、キットは、
(1)同定された腫瘍の突然変異型に基づいて、臨床投薬をガイドする、また
(2)同定された腫瘍の突然変異型に基づいて、検出対象の腫瘍分子タイピングを判定する、また
(3)同定された突然変異に基づいて、腫瘍の陽性鑑別診断に使用するように構成される。
【0011】
別の好ましい例では、前記核酸検出試薬セットは、赤血球溶解剤を含む。
【0012】
別の好ましい例では、前記核酸検出試薬セットは、赤血球分離試薬をさらに含む。
【0013】
別の好ましい例では、前記核酸検出試薬セットは、核酸抽出試薬をさらに含む。
【0014】
別の好ましい例では、前記核酸抽出試薬がDNA抽出試薬またはRNA抽出試薬である。
【0015】
別の好ましい例では、前記標的核酸は腫瘍特異的遺伝子突然変異である。
【0016】
別の好ましい例では、前記標的核酸は腫瘍細胞に由来する。
【0017】
別の好ましい例では、前記試薬セットは、標的核酸に特異的なプローブおよび/またはプライマーを含む。
【0018】
別の好ましい例では、前記試薬セットは、PCR技術、crisper/cas技術(例えば、crisper/cas12技術)、免疫蛍光検査法、高性能配列解読(NGS)技術の1種または複数種のための使用に適している。
【0019】
別の好ましい例では、前記試薬セットは、前記標的核酸を特異的に増幅するプライマーを含む。
【0020】
別の好ましい例では、前記キットは、前記試薬セットが赤血球中の核酸を検出するために使用されること、及び前記キットが腫瘍の突然変異型を同定するために使用されることを示す説明書をさらに含む。
【0021】
別の好ましい例では、前記腫瘍は悪性腫瘍である。
【0022】
別の好ましい例では、前記悪性腫瘍は、悪性固形腫瘍または血液腫瘍である。
【0023】
別の好ましい例では、前記悪性固形腫瘍が、肺がん、乳がん、食道がん、胃がん、甲状腺がん、肝がん、膵がん、前立腺がん、子宮頸がんおよび大腸がんからなる群から選択される1種または複数種である。
【0024】
別の好ましい例では、前記キットの使用方法は、
(a)検出対象の赤血球由来の核酸サンプルを提供するステップと、
(b)その核酸サンプル中の1種または複数種の腫瘍特異的遺伝子突然変異を検出するステップとを含む。
【0025】
別の好ましい例では、ステップ(b)において、標的核酸の遺伝子配列を検出することにより、標的核酸の配列情報を得る。
【0026】
別の好ましい例では、前記キットの使用方法は、
(c)ステップ(b)で測定された標的核酸の配列情報に基づいて、腫瘍の突然変異型を判定するステップをさらに含む。
【0027】
別の好ましい例では、前記標的核酸は腫瘍細胞に由来する。例えば、腫瘍細胞中の標的核酸断片は、何らかの経路で赤血球内に取り込まれ、赤血球内で検出される。
【0028】
本発明の第2の態様は、腫瘍の突然変異型の同定、又は腫瘍の陽性識別診断(腫瘍の発生の同定)のための核酸サンプルであって、赤血球由来の核酸である核酸サンプルを提供する。
【0029】
別の好ましい例では、前記核酸はDNAおよび/またはRNAである。
【0030】
別の好ましい例では、前記核酸は、溶解後に赤血球を抽出して調製された核酸である。
【0031】
別の好ましい例では、前記核酸サンプルは腫瘍患者の核酸サンプルである。
【0032】
別の好ましい例では、前記核酸サンプルは、腫瘍細胞に由来する核酸を含む。
【0033】
別の好ましい例では、前記核酸サンプル中の核酸は、腫瘍特異的遺伝子突然変異を含む。
【0034】
本発明の第3の態様は、腫瘍の突然変異型を同定するための核酸サンプルを調製する方法であって、
(1)全血から赤血球を単離するステップと、
(2)ステップ(1)で得られた赤血球から核酸を抽出し、核酸サンプルを調製するステップとを含む方法を提供する。
【0035】
別の好ましい例では、前記ステップ(1)は、
(1a)抗凝血処理された全血を遠心分離して血漿を除去し、赤血球含有沈澱物を得ることと、
(1b)ステップ(1a)で得られた赤血球含有沈澱物をリンパ球分離液で処理し、遠心分離して有核細胞を除去し、赤血球を得ることとを含む。
【0036】
別の好ましい例では、前記ステップ(2)において、ステップ(1)で得られた赤血球を赤血球溶解液で溶解し、遠心分離した後に上清を採取し、該上清から核酸を抽出することにより、前記核酸サンプルを調製する。
【0037】
本発明の第4の態様は、腫瘍の発生および/または突然変異型を同定するためのキットを製造するための核酸検出試薬セットの使用であって、赤血球中の核酸を検出するように構成される核酸検出試薬セットの使用を提供する。
【0038】
別の好ましい例では、前記検出は、
(a)検出対象の赤血球由来の核酸サンプルを調製するステップと、
(b)その核酸サンプル中の1種または複数種の腫瘍特異的遺伝子突然変異を検出するステップとを含む。
【0039】
別の好ましい例では、ステップ(b)において、標的核酸の遺伝子配列を検出することにより、標的核酸の配列情報を得る。
【0040】
別の好ましい例では、前記キットの使用方法は、
ステップ(b)で測定された標的核酸の配列情報に基づいて、腫瘍の発生および/または突然変異型を判定するステップを含む。
【0041】
別の好ましい例では、前記核酸はDNAおよび/またはRNAである。
【0042】
別の好ましい例では、前記核酸は、溶解後に赤血球を抽出して調製された核酸である。
【0043】
別の好ましい例では、前記核酸サンプルは腫瘍患者の核酸サンプルである。
【0044】
別の好ましい例では、前記核酸試料は、腫瘍細胞に由来する核酸を含む。
【0045】
別の好ましい例では、前記核酸サンプル中の核酸は、腫瘍特異的遺伝子突然変異を含む。
【0046】
別の好ましい例では、前記腫瘍が、肺がん、乳がん、食道がん、胃がん、甲状腺がん、肝がん、膵がん、前立腺がん、子宮頸がんおよび大腸がんからなる群から選択される1種または複数種である。
【0047】
別の好ましい例では、前記核酸検出試薬セットは、赤血球溶解剤を含む。
【0048】
別の好ましい例では、前記核酸検出試薬セットは、赤血球分離試薬をさらに含む。
【0049】
別の好ましい例では、前記核酸検出試薬セットは、核酸抽出試薬をさらに含む。
【0050】
別の好ましい例では、前記核酸抽出試薬がDNA抽出試薬またはRNA抽出試薬である。
【0051】
別の好ましい例では、前記標的核酸は腫瘍特異的遺伝子突然変異である。
【0052】
別の好ましい例では、前記標的核酸は腫瘍細胞に由来する。
【0053】
別の好ましい例では、前記試薬セットは、標的核酸に特異的なプローブおよび/またはプライマーを含む。
【0054】
別の好ましい例では、前記検出は、高性能配列解読技術によって達成される。
【0055】
別の好ましい例では、前記検出はPCR技術によって達成される。
【0056】
別の好ましい例では、前記検出は、crisper/cas12技術によって達成される。
【0057】
別の好ましい例では、前記検出は、免疫蛍光検査法によって達成される。
【0058】
別の好ましい例では、前記腫瘍特異的遺伝子突然変異は、
EGFR、KRAS、NRAS、NTRK、BRAF、HER2、MET、ALK、ROS-1、RET、BRAC1/2、PTEN、TP53、PIK3CA、RHBDF2、BLM、PALB2、CTHRC1、ASCC1、MSR1、ALDH2、ADH1B、CYP2E1およびGSTM1からなる群から選択される遺伝子に生じる突然変異を含む。
【0059】
本発明の第5の態様は、腫瘍の発生および/または突然変異型を同定する方法であって、
(a)検出対象の赤血球由来の核酸サンプルを提供するステップと、
(b)その核酸サンプル中の1種または複数種の腫瘍特異的遺伝子突然変異を検出するステップとを含む方法を提供する。
【0060】
別の好ましい例では、前記ステップ(b)において、標的核酸の遺伝子配列を検出することにより、標的核酸の配列情報を得た後、前記ステップ(b)において測定された配列情報に基づいて、腫瘍の発生および/または突然変異型を判定する。
【0061】
別の好ましい例では、前記キットの使用方法は、
(c)ステップ(b)で測定された標的核酸の配列情報に基づいて、腫瘍の発生および/または突然変異型を判定するステップを含む。
【0062】
別の好ましい例では、前記腫瘍が、肺がん、乳がん、食道がん、胃がん、甲状腺がん、肝がん、膵がん、前立腺がん、子宮頸がんおよび大腸がんからなる群から選択される1種または複数種である。
【0063】
別の好ましい例では、前記検出は、高性能配列解読技術によって達成される。
【0064】
別の好ましい例では、前記検出はPCR技術によって達成される。
【0065】
別の好ましい例では、前記検出は、crisper/cas12技術によって達成される。
【0066】
別の好ましい例では、前記検出は、免疫蛍光検査法によって達成される。
【0067】
別の好ましい例では、前記腫瘍特異的遺伝子突然変異は、
EGFR、KRAS、NRAS、NTRK、BRAF、HER2、MET、ALK、ROS-1、RET、BRAC1/2、PTEN、TP53、PIK3CA、RHBDF2、BLM、PALB2、CTHRC1、ASCC1、MSR1、ALDH2、ADH1B、CYP2E1およびGSTM1からなる群から選択される遺伝子に生じる突然変異を含む。
【0068】
本発明の範囲内で、本発明の上記技術的特徴および以下(例えば、実施例)に具体的に記載される技術的特徴を互いに組み合わせることにより、新規または好ましい技術形態を形成することができることを理解されるべきである。幅に限れば、ここで詳しく説明しな
い。
【発明を実施するための形態】
【0069】
現在の先行文献は、赤血球がDNAを有しないか、またはいずれのRNAを合成することもできない無核細胞として働くことを示し、本明細書で使用される「赤血球」および「成熟赤血球」は互換的に使用され得る。本発明者らは、長期間の鋭意研究および臨床実践の基礎を通じて、意外にも、腫瘍患者の赤血球由来の核酸サンプルが腫瘍特異的遺伝子突然変異を含有することを発見した。これを基に、本発明者らは、腫瘍の突然変異型を同定するためのキット及び方法を開発した。当該腫瘍には、肺がん、乳がん、食道がん、胃がん、甲状腺がん、肝がん、膵がん、前立腺がん、子宮頸がんおよび大腸がんなどの様々な癌が含まれる。本発明は、腫瘍の発生および/または突然変異型を同定するのに重要な適用価値を有する。
【0070】
用語
標的核酸
本発明において、「標的核酸」という用語は、当該技術分野で一般的な腫瘍特異的遺伝子突然変異である、検出者(通常は医療従事者)が検出を予定している標的核酸を指す。
【0071】
遺伝子突然変異
本発明において、「遺伝子突然変異」又は「突然変異」という用語は、遺伝子断片の再配列、欠失、転座又は融合、並びにヌクレオチドの置換等を含む。
【0072】
陽性鑑別診断
本発明において、「陽性鑑別診断」、「腫瘍陽性鑑別診断」や「腫瘍の発生を同定する」という用語は、腫瘍特異的遺伝子突然変異を検出することにより腫瘍の存在を確認すること、および/または、腫瘍の治療後経過観察を行った患者の腫瘍特異的遺伝子突然変異を検出することにより、腫瘍が再発したか否かを判定するとともに腫瘍特異的遺伝子突然変異を更新すること等を意味する。
【0073】
陽性鑑別診断対象集団
本発明において、「陽性鑑別診断対象集団」という用語は、腫瘍治療を受けることを意図した腫瘍患者または腫瘍リスクの高い集団および/または腫瘍治療後の経過観察を必要とする集団を含む。
【0074】
本発明において、腫瘍特異的遺伝子突然変異には、以下からなる群から選択される1種または複数種の遺伝子突然変異が含まれるが、これらに限定されない
【0075】
【表1-1】
【0076】
【表1-2】
【0077】
【表1-3】
【0078】
【表1-4】
【0079】
別の好ましい例では、前記複数種は少なくとも2種であり、好ましくは2~500種であり、好ましくは2~300種であり、好ましくは2~200種であり、好ましくは2~100種であり、好ましくは2~50種類または2~10種である。
【0080】
別の好ましい例では、前記腫瘍は、悪性固形腫瘍または血液腫瘍である。
【0081】
別の好ましい例では、前記悪性固形腫瘍が、肺がん、乳がん、食道がん、胃がん、甲状腺がん、肝がん、膵がん、前立腺がん、子宮頸がんおよび大腸がんからなる群から選択される1種または複数種である。
【0082】
本発明に用いるように、「赤血球中の核酸」又は「赤血球由来の核酸」という用語は、赤血球から抽出され得る核酸を意味する。本発明者らは、驚くべきことに、癌細胞に生じる遺伝子突然変異が赤血球中の核酸で検出され得ることを発見し、したがって、癌細胞の遺伝子突然変異が赤血球に移入され得ることを実証した。これに基づき、腫瘍の突然変異型は、赤血球における腫瘍特異的遺伝子突然変異を検出することによって同定され得る。
【0083】
本発明では、赤血球由来の核酸中の標的核酸の遺伝子配列を検出することにより、標的核酸の配列情報を取得した後、その配列情報に基づいて、腫瘍の突然変異型を判定する。標的核酸の遺伝子配列を検出する手段は、配列決定技術を用いて標的核酸を配列決定することにより、標的核酸のヌクレオチド配列を得ること、並び他の手段を用いて標的核酸中の遺伝子突然変異を特異的に検出し、特定の遺伝子突然変異の有無を判定すること(例えば、遺伝子突然変異部位を特異的に増幅するPCRにより、核酸サンプル中の遺伝子突然変異の有無を検出すること)を含む。したがって、本発明において「配列情報」という用語は、「塩基配列」を指してもよいし、「特定の遺伝子突然変異の有無」を指してもよい。標的核酸の遺伝子配列を検出する方法は高性能配列解読技術、PCR技術、crisper/cas12技術、免疫蛍光検査法等を含むが、これらに限定されない。
【0084】
本発明に記載の高性能配列解読技術は、当該技術分野で現在知られている高性能配列解
読技術のいずれかであり得る。
【0085】
「高性能配列解読技術」という用語はまた、「次世代」シークエンシング技術(「Next-generation」sequencing technology、NGSと略記)とも呼ばれ、数十万から数百万本のDNA分子を一度に並列に配列決定できること、および一般的に解読長さが短いことなどを指標としている。主に、大規模な並列シグネチャシーケンス(Massively Parallel Signature Sequencing、MPSS)、ポリメラーゼクローニング(Polony Sequencing)、454パイロシークエンス(454pyrosequencing)、Illumina(Solexa) sequencing、ABI SOLiD sequencing、イオン半導体シーケンシング(Ion semiconductor sequencing)、DNAナノボールシークエンシング(DNA nanoball
sequencing)などがある。
【0086】
本発明に記載のPCR技術は、RT-PCR、qRT-PCR、ddPCRなどのような、当該技術分野で現在知られているPCR技術のいずれかを含む。
【0087】
PCRは、鋳型DNA、プライマー、4種のデオキシヌクレオチドの存在下でDNAポリメラーゼの酵素反応に依存して、増幅されるDNA断片とその両側に相補的なオリゴヌクレオチド鎖プライマーを「高温変性-低温アニーリング-プライマー伸長」の3段階の反応を複数回繰り返し、DNA断片の数を指数関数的に増加させ、短時間で本発明者らが必要とする特定の遺伝子断片を大量に得るインビトロDNA増幅技術である。PCR技術は、RT-PCR、qRT-PCR、デジタルPCR、勾配PCR、マルチプレックスPCR、タッチダウンPCR、ネスティドPCRなどの他の技術と組み合わせて使用されることが多い。
【0088】
本発明に記載のcrisper/cas12技術は、当該技術分野で現在知られている特定の操作方法またはステップのいずれかであってもよい。
【0089】
本発明に記載の免疫蛍光検査法は、当該技術分野で現在知られている特定の操作方法またはステップのいずれかであってもよい。
【0090】
本発明において、「一」、「一つ」、「その」や「当該」という用語は、単数の個体のみを意味するものではなく、特定の実施形態を説明するために使用され得る一般的なクラスを含む。
【0091】
本発明において、「検出対象」または「試験者」という用語は、動物、特に哺乳動物、例えばヒト(腫瘍患者を含む)を指す。
【0092】
本発明において、「癌」及び「悪性腫瘍」という用語は、互換的に使用され得る。
【0093】
本発明において、「癌患者」という用語は、本発明に記載の癌を有するヒトまたは他の動物を指す。
【0094】
本発明において、「対照者」という用語は、正常者(または健常者と呼ばれる)または非癌患者である。
【0095】
前記正常者(または健常者と呼ばれる)は、疾患に罹患していない試験者を指す。
【0096】
本明細書において挙げるEGFRなどの遺伝子名は、当技術分野において公知の意味を
有し、かつ最も広い意味で理解されるべきであるが、特定のヌクレオチド配列に限定されるものではない。例えば、ヒトEGFRのcDNA配列は、遺伝子突然変異などの理由により、異なる試験者において、その遺伝子が1つまたは複数のヌクレオチドの置換、付加または欠失を有し、野生型遺伝子と実質的に同じ機能を有する可能性があることが当業者に理解される。これらの変異体遺伝子は、EGFR遺伝子と依然として考えられている。
【0097】
本発明の方法では、1つまたは複数の腫瘍特異的遺伝子突然変異、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上を同時に検出することができる。複数の悪性腫瘍特異的遺伝子突然変異を同時に検出することが、診断正確さをさらに高めることに寄与することが、当業者に理解されるであろう。
【0098】
本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、特に明記しない限り、当業者によって一般的に理解される意味を有するべきである。一般に、本明細書で使用される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸化学に関する命名法及びその技術は、当技術分野において周知であり、一般に使用される。
【0099】
本明細書で使用される方法及び技術は、特に明記しない限り、当技術分野における公知の従来方法、並びに本明細書で記載又は引用される様々な参考文献に記載される方法に従って一般的に行われる。
【0100】
腫瘍発生および/または突然変異型の同定
本発明によるキットは、赤血球中の1種または複数種の腫瘍特異的遺伝子突然変異を検出するために使用することができ、さらに、特定の遺伝子突然変異の存在の有無に応じて腫瘍の陽性鑑別診断および腫瘍の分子型に使用することができる。
【0101】
一般に、確定診断を受けた腫瘍患者は、臨床的に臨床投薬をガイドするために腫瘍の突然変異型を検出する必要がある。したがって、本発明のキット及び方法を用いて、腫瘍の突然変異型を検出することができ、極めて高い感度及び正確さを有する。
【0102】
本発明に記載の赤血球内の核酸は、赤血球内の任意の形態のRNA(例えばmRNA、MicroRNAなど)および/またはDNA(例えばcDNA、環状DNAなど)を含み、本発明では赤血球由来の核酸とも呼ぶ。
【0103】
前記核酸は、先行技術の1種または複数種の遺伝子に対応するRNA(例えば、mRNAなど)および/またはDNAであってよい。
【0104】
別の好ましい例では、前記核酸は腫瘍特異的突然変異を含む。
【0105】
別の好ましい例では、前記核酸は腫瘍細胞に由来する。
【0106】
核酸検出試薬セット及びキット
本発明による赤血球中の標的核酸を検出するための核酸検出試薬セットは、赤血球分離試薬、核酸抽出試薬等を含み得る。赤血球分離試薬は、全血から赤血球を分離するために用いられる試薬であり、PBS緩衝液、Ficollリンパ球分離液を含むが、これらに限定されない。核酸抽出試薬は、赤血球溶解液、及び当技術分野における従来のDNA又はRNA抽出試薬を含むが、これらに限定されない。
【0107】
本発明による赤血球中の標的核酸を検出するためのキットは、上記核酸検出試薬セットを含み、該キット中に、該核酸検出試薬セット中の各試薬が空間的に区別可能な態様で分布されている。そのキットは、本発明のキットの腫瘍診断における使用、及び核酸検出試
薬セットを用いて赤血球から核酸サンプルを調製するステップについて記載した説明書をさらに含む。
【0108】
本発明の主な利点は、
赤血球中の腫瘍組織に由来する核酸(例えば、RNAおよび/またはDNA)を検出対象とすることが、サンプリングが便利で、操作が簡単で、検出コストが低いという利点を有することを含め、非常に大きな優勢を有し、しかも腫瘍突然変異に対して検出を行い、感度が高く、正確さが高いことである。
【実施例
【0109】
以下、具体的な実施例を参照しつつ、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではないことを理解されるべきである。以下の実施例において具体的な条件を記載していない実験方法は、従来の条件によるもの、あるいは製造メーカが推奨する条件によるものである。特に明記しない限り、百分率、重量百分率および重量部である。以下の実施例で用いた実験材料および試薬は、特に明記しない限り、商業的供給源から入手することができる。
【0110】
試薬:
RNase阻害剤(Takara、商品番号2313B(A×5))
Trizol(Invitrogen、商品番号15596026)
【0111】
機器:
遠心分離機(Thermo Fisher、商品番号75007204)
PCR装置(ABI7300リアルタイム蛍光定量PCR装置、7300リアルタイムPCRシステム)
高性能配列解読装置(Illumina、HiSeq(登録商標)4000)
【0112】
実施例1 赤血球(RBC)由来の核酸サンプルの調製
1、試薬
PBS緩衝液(試料数*4mL):PBS緩衝液は、現場調製して使用される(DEPC水で調製される)(Gibco PBS、Thermo Scientific、商品番号10010023、容量500mL)(PBS緩衝液、Boster Biological Technology co., Itd.から購入、商品番号AR0030)Ficollリンパ球分離液(試料数*3mL)、(ヒトリンパ球分離液、Dakewe
Biotech Co., Ltd.から購入、商品名:達優、商品番号7111011/711101X、容量100mL)
DEPC水
ドライアイス
【0113】
2、器具及び消耗品
低温遠心分離可能な小型高速遠心分離機(1.5ml EPチューブ遠心分離)
Thermo Scientific Heraeus Multifuge X1R低温高速遠心分離機(15ml遠心分離管)
フルセットのピペット1000ul/200ul/100ul/20ul/10ul/2.5ul
フルセットのピペットチップ(DNA/RNase free)1000ul/200ul/10ul
15ml遠心チューブ(=試料数)、1.5ml EPチューブ(=5*試料数、3個のRBC用、2個の血清用)(DNA/RNase free)
eppendorfチューブ棚、15ml遠心チューブ棚、1.5ml EPチューブ収
納ボックス、サンプルバッグ、フォームボックス、シーリングフィルム、手袋、マジックペン
【0114】
3、実験操作
全血分離ステップ
(1)全血を貯蔵した抗凝固管を遠心分離機に入れ、4℃、150gで、10分間遠心分離した。終了後、直ちに遠心分離を開放して室温に戻した。
(2)遠心上清を1mlピペットで吸引し捨てた。
(3)RBC沈殿物にPBS 2mlを加え、ピペットで軽くピペッティングして均一に混ぜてRBCを希釈した。
(4)その後、Ficollリンパ球分離液3mlを入れた15mlの遠心分離管を傾け、管壁に沿ってリンパ球分離液面の上層に希釈したRBCを穏やかに加えた(RBCの沈降を避けるため、軽く操作した)。
(5)800g、25℃の常温で、15分間遠心分離した。
(6)RBCより上の上清全部を1mLピペットで吸引して捨て、他の有核細胞がRBC層に落下しないように軽く操作するように注意した。
(7)RBC沈殿物に等容量のPBS (1.5~2ml)を添加し、ピペットで軽くピペッティングして均一に混ぜてRBCを希釈し、チューブの先端壁の濃い赤がすべて明るい赤になると、均一に混合されたことを示す。
(8)150g、25℃の常温で、15分間遠心分離し、20分間かけた。
(9)上清をピペットで吸引して捨て、下層の沈殿物が比較的純粋なRBCであり、1.5mlのRNase-free EPチューブにRBCを分注し、RBC試料として、-80℃の冷蔵庫で保存して使用に備えた。
【0115】
RBC試料に適量の赤血球溶解液(赤血球のみを膨潤して破れ、他の細胞を膨潤して破れない)を加え、再度遠心分離して、上清を純粋な赤血球内容物として取り、さらにDNA又はRNA抽出キット(DNA抽出キット、例えばQIAGENのQIAamp(登録商標) Circulating核酸キット;RNA抽出キット、例えばTIANGEN
Biotech (Beijing) Co., Ltd.の高効的な血液総RNA抽出キット(DP443))を用いて、キットの説明書に従って抽出を行うことで、赤血球由来の核酸サンプルを得た。
【0116】
実施例2 肺がんの検出
本発明の方法及びキットを用いて、臨床的に確定診断された肺腺がん症例23例、炎症性偽腫瘍症例2例、肺扁平上皮がん症例2例、胸腺腫症例1例を含む28例の患者について腫瘍特異的突然変異検出を行った。
【0117】
赤血球(RBC)由来の核酸サンプルの調製方法は、実施例1を参考にした。
【0118】
組織由来の核酸サンプルの調製方法は、当技術分野における常法であり、例えば、キット(GeneRead(登録商標) DNA FFPE Kit、Qiagen)を用いて調製することができる。
【0119】
血清由来の核酸サンプルの調製方法は、当技術分野における常法であり、例えば、キット(QIAamp(登録商標) Circulating Nucleic Acid Kit、Qiagen)を用いて調製することができる。
【0120】
上記で調製した組織由来の核酸サンプルをNGSシークエンシング(高性能配列解読装置(Illumina、HiSeq(登録商標)4000))によってEGFR遺伝子突然変異分析に供した。Geneseeqハイブリッドエンリッチメントプローブ(GEN
ESEEQ Technology Inc.)を用いて、すでに作成されたDNAライブラリーに対して、目的の遺伝子ターゲットの濃縮および増幅を行い、DNA捕捉プローブをライブラリーにハイブリダイズさせることと、捕捉ライブラリーの生成物を洗浄および回収することと、捕捉ライブラリーをストレプトアビジン磁気ビーズに結合させることと、磁気ビーズ捕捉ライブラリーを洗浄し、非特異的に結合したライブラリーを除去することとを含む。捕捉されたライブラリーはIlluminaキットの説明書の操作ステップに従って、Illumina HiSeq(登録商標)4000高性能配列解読プラットホーム上にロードし、DNAがキットのフローセル上でDNAクラスターを形成し、配列解読プラットホームが単一塩基合成後一時停止、蛍光検出、合成回復のサイクルによって、DNAの高性能配列解読を完了した。
【0121】
赤血球(RBC)由来の核酸サンプルが、それぞれNGSシークエンシング及びqPCR検出を実施され、NGSシークエンシングのステップは上記の通りである。qPCRの検出は、Therascreen(登録商標) EGFR RGQ PCRキット又はTherascreen(登録商標) KRAS RGQ PCRキット(QIAGEN)を用いて行った。
【0122】
血清由来の核酸サンプルに対して、血清ctDNAのNGSシークエンシング(高性能配列解読装置(Illumina、HiSeq(登録商標)4000))を実施した。
【0123】
検出結果は、下記表に示す通りであり、NGSシークエンシングを用いて腫瘍特異的突然変異の検出を行ったところ、赤血球由来の核酸サンプルに対する検出結果と腫瘍組織由来の核酸サンプルに対する検出結果が100%一致し、且つ全ての非腫瘍サンプルにいずれの突然変異も検出しなかったことを示している。また、血清ctDNAを用いたNGSシークエンシング検出では、腫瘍特異的突然変異は9%(1/11)しか検出されなかった。従って、本発明の赤血球由来の核酸サンプルは、完全に組織由来の核酸サンプルの代わりに腫瘍診断の核酸サンプルとして使用することができ、しかも、正確さが高く、感度が高く、サンプリングが便利で、安全性がより優れるという優勢を有する。
【0124】
また、赤血球由来の核酸サンプルをqPCRの方法を用いて検出し、検出された10個の陽性サンプルのいずれにおいても、腫瘍特異的突然変異を正確に検出することができた。本発明の方法を用いて調製された赤血球由来の核酸サンプルは、品質が優れ、qPCR方法による腫瘍診断にも使用でき、腫瘍診断のコストをさらに低減することを示す
【0125】
【表2-1】
【0126】
【表2-2】
【0127】
従来技術は、tDNA(腫瘍組織)を絶対的基準対照として、ctDNA(血液サンプル)を用いてEGFR腫瘍突然変異を検出(検出プラットホーム:Ion二世代シークエンサー(Life Technologies))する感度及び一致率が共に低く、臨床診断のニーズに応えることが困難であることを示している。本発明のキット及び方法は、赤血球由来の核酸サンプルで検出を行い、腫瘍突然変異検出の感度及び一致率を飛躍的に向上させ、予期せぬ技術的効果を得る。
【0128】
実施例3 結腸直腸腫瘍サンプルの検出
腫瘍特異的突然変異の検出は、結腸直腸腫瘍術後の患者(部分小腸内視鏡手術患者と生検患者とを含む)の血液サンプルについて行い、同時に、同じ患者の血液サンプルについて通常のctDNA法による腫瘍特異的突然変異の検出を行い、その腫瘍組織サンプルの突然変異の検出結果とそれぞれ対照を行った。このうち臨床的に確定診断を受けた結腸癌症例13例、直腸癌症例5例、良性病変症例7例(結腸腺腫、炎症性腸ポリープ、化生性ポリープを含む)が含まれる。
【0129】
具体的な検出プロセスが、実施例2を参考にして、検出した結果を下記表2に示す。その結果から、結腸直腸腫瘍特異的突然変異の検出がNGSシークエンシングにより行われたところ、赤血球由来の核酸サンプルに対する検出結果と腫瘍組織由来の核酸サンプルに対する検出結果とが100%一致し、且つ全ての非腫瘍サンプルにいずれの突然変異も検出しなかったことを示している。従って、本発明の赤血球由来の核酸サンプルは、完全に組織由来の核酸サンプルの代わりに腫瘍診断の核酸サンプルとして使用することができ、しかも、正確さが高く、感度が高く、サンプリングが便利で、安全性がより優れるという優勢を有する。
【0130】
また、赤血球由来の核酸サンプルをqPCRの方法を用いて検出し、検出された7個の陽性サンプルのいずれにおいても、腫瘍特異的突然変異を正確に検出することができた。本発明の方法を用いて調製された赤血球由来の核酸サンプルは、品質が優れ、qPCR方法による腫瘍診断にも使用でき、腫瘍診断のコストをさらに低減することを示す
【0131】
【表3】
【0132】
実施例4 乳腺腫瘍サンプルの検出
腫瘍特異的突然変異の検出は、乳腺腫瘍術後の患者(針生検患者を含む)の血液サンプルについて行い、同時に、同じ患者の血液サンプルについて通常のctDNA法による腫瘍特異的突然変異の検出を行い、その腫瘍組織サンプルの突然変異の検出結果とそれぞれ対照を行った。このうち臨床的に確定診断を受けた乳がん症例19例、良性病変症例6例(乳房線維腺腫および乳房嚢胞性過形成を含む)が含まれる。
【0133】
具体的な検出プロセスが、実施例2を参考にして、検出した結果を下記表3に示す。乳腺腫瘍特異的突然変異の検出がNGSシークエンシングにより行われたところ、赤血球由来の核酸サンプルに対する検出結果と腫瘍組織由来の核酸サンプルに対する検出結果とが100%一致したことを示している。従って、本発明の赤血球由来の核酸サンプルは、完全に組織由来の核酸サンプルの代わりに腫瘍診断の核酸サンプルとして使用することができ、しかも、正確さが高く、感度が高く、サンプリングが便利で、安全性がより優れるという優勢を有する。
【0134】
また、赤血球由来の核酸サンプルをqPCRの方法を用いて検出し、検出された9個の陽性サンプルのいずれにおいても、腫瘍特異的突然変異を正確に検出することができた。本発明の方法を用いて調製された赤血球由来の核酸サンプルは、品質が優れ、qPCR方法による腫瘍診断にも使用でき、腫瘍診断のコストをさらに低減することを示す
【0135】
【表4-1】
【0136】
【表4-2】
【0137】
実施例5 食道腫瘍サンプルの検出
腫瘍特異的突然変異の検出は、食道腫瘍術後の患者(部分食道内視鏡手術患者と生検患者とを含む)の血液サンプルについて行い、同時に、同じ患者の血液サンプルについて通常のctDNA法による腫瘍特異的突然変異の検出を行い、その腫瘍組織サンプルの突然変異の検出結果とそれぞれ対照を行った。このうち臨床的に確定診断を受けた食道上皮がん症例12例、噴門がん症例3例、食道腺がん症例1例および食道平滑筋腫症例2例(良性)が含まれる。
【0138】
具体的な検出プロセスが、実施例2を参考にして、検出した結果を下記表4に示す。食道腫瘍特異的突然変異の検出がNGSシークエンシングにより行われたところ、赤血球由来の核酸サンプルに対する検出結果と腫瘍組織由来の核酸サンプルに対する検出結果とが100%一致し、且つ全ての非腫瘍サンプルにいずれの突然変異も検出しなかったことを示している。従って、本発明の赤血球由来の核酸サンプルは、完全に組織由来の核酸サンプルの代わりに腫瘍診断の核酸サンプルとして使用することができ、しかも、正確さが高く、感度が高く、サンプリングが便利で、安全性がより優れるという優勢を有する。
【0139】
また、赤血球由来の核酸サンプルをqPCRの方法を用いて検出し、腫瘍特異的突然変異を正確に検出することもできた。本発明の方法を用いて調製された赤血球由来の核酸サンプルは、品質が優れ、qPCR方法による腫瘍診断にも使用でき、腫瘍診断のコストをさらに低減することを示す
【0140】
【表5】
【0141】
本発明に記載された全ての文献は、あたかも各文献が参照により個別に援用されたかのように、参照により本出願に援用される。さらに、当業者は、本発明の上述の教示を読んだ後、本発明に対して様々な変動または修正を行うことができ、それらの同等の態様は、同様に、本出願に添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内に入ることを理解されるべきである。
【国際調査報告】