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特表2023-518872深層学習を使用した集団PK/PD連結パラメータの分析
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(54)【発明の名称】深層学習を使用した集団PK/PD連結パラメータの分析
(51)【国際特許分類】
   G16C 20/30 20190101AFI20230426BHJP
【FI】
G16C20/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557914
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 US2021024257
(87)【国際公開番号】W WO2021195448
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】62/994,701
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジェームス
(57)【要約】
薬物動態学的および薬力学的効果に関連する連結パラメータのセットを予測するための方法およびシステム。1つ以上のプロセッサは、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを受信する。1つ以上のプロセッサは、集団データセットを、PKデータ密度画像およびPDデータ密度画像を含む複数のデータ密度画像に変換する。1つ以上のプロセッサは、複数のデータ密度画像を使用して連結パラメータのセットを予測する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物動態学的および薬力学的効果に関連する連結パラメータのセットを予測するための方法であって、
1つ以上のプロセッサによって、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを受信することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記集団データセットを、PKデータ密度画像およびPDデータ密度画像を含む複数のデータ密度画像に変換することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記複数のデータ密度画像を使用して前記連結パラメータのセットを予測することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記PKデータ密度画像が、ビニング強度画像であり、前記ビニング強度画像の少なくとも一部における各画素値が、選択された用量効果および選択された時点に対応するデータ点の密度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PDデータ密度画像が、ビニング強度画像であり、前記ビニング強度画像の少なくとも一部における各画素値が、選択された用量効果および選択された時点に対応するデータ点の密度を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記連結パラメータのセットが、勾配、最大半量有効濃度(EC50)、または最大効果(Emax)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のプロセッサによって、前記PKデータ密度画像を使用してPKパラメータのセットを予測することであって、前記PKパラメータのセットが、曲線下面積(AUC)、最小濃度(Cmin)、または最大濃度(Cmax)のうちの少なくとも1つを含む、PKパラメータのセットを予測することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記予測することが、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記複数のデータ密度画像および深層学習システムを使用して前記連結パラメータのセットを予測することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記深層学習システムが、ニューラルネットワークシステムを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記深層学習システムが、少なくとも1つの畳み込みニューラルネットワークを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記連結パラメータのセットを予測することにおいて使用される深層学習システムを訓練することであって、シミュレートされたPKデータセットおよびシミュレートされたPDデータセットを使用して実行される、深層学習システムを訓練することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
薬物動態学的および薬力学的効果に関連する連結パラメータのセットを予測するためのシステムであって、
集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを記憶するためのデータストアと、
前記データストアに通信可能に接続されたコンピューティングデバイスであって、
前記集団データセットを受信し、前記集団データセットを、PKデータ密度画像およびPDデータ密度画像を含む複数のデータ密度画像に変換するように構成されるデータマネージャと、
前記複数のデータ密度画像を使用して前記連結パラメータのセットを予測するように構成される予測システムと、を備えるコンピューティングデバイスと、
前記コンピューティングデバイスに通信可能に接続され、前記連結パラメータのセットのうちの各連結パラメータの予測値を含むレポートを表示するように構成されるディスプレイシステムと、を備える、システム。
【請求項11】
前記PKデータ密度画像が、ビニング強度画像であり、前記ビニング強度画像の少なくとも一部における各画素値が、選択された用量効果および選択された時点に対応するデータ点の密度を示す、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記PDデータ密度画像が、ビニング強度画像であり、前記ビニング強度画像の少なくとも一部における各画素値が、選択された用量効果および選択された時点に対応するデータ点の密度を示す、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記連結パラメータのセットが、勾配、最大半量有効濃度(EC50)、または最大効果(Emax)のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記予測システムが、前記PKデータ密度画像を使用してPKパラメータのセットを予測するようにさらに構成され、前記PKパラメータのセットが、曲線下面積(AUC)、最小濃度(Cmin)、または最大濃度(Cmax)のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記予測システムが、深層学習システムを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記深層学習システムが、ニューラルネットワークシステムを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記深層学習システムが、少なくとも1つの畳み込みニューラルネットワークを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記予測システムが、
深層学習システムと、
シミュレートされたPKデータセットおよびシミュレートされたPDデータセットを使用して前記深層学習システムを訓練するように構成される訓練モジュールと、を備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
薬物動態学的および薬力学的効果に関連する連結パラメータのセットを予測するための方法であって、
1つ以上のプロセッサによって、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを受信することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記集団データセットを、PKビニング強度画像およびPDビニング強度画像を含む複数のビニング強度画像に変換することと、
前記1つ以上のプロセッサによって、前記複数のビニング強度画像と、少なくとも1つのニューラルネットワークを備える深層学習システムとを使用して前記連結パラメータのセットを予測することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記連結パラメータのセットが、勾配、最大半量有効濃度(EC50)、または最大効果(Emax)のうちの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
この説明は、一般に、治療薬の薬理特性を推定または予測するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、治療薬の集団薬物動態特性および薬力学特性を正確に推定または予測するための機械学習ベースのシステムおよび方法が本明細書に開示される。
【背景技術】
【0002】
背景
新薬(例えば、治療薬)の開発は、多くの分野の進歩によって推進されている。そのような分野は、創薬、バイオテクノロジー、ならびにインビボおよびインビトロ薬理学的/毒物学的特性評価技術を含む。新たな治療薬が実験室の分子またはタンパク質から病院/診療所または地元薬局の新たな製品になる前に、治療薬に関連する有効性、投与、安全性、および副作用に関して様々な疑問に答える必要がある。これらの種類の質問に答えることは、典型的には、新たな薬物候補の様々な面を研究するように慎重に設計された一連の臨床試験を含む。
【0003】
薬物動態(PK)および薬力学(PD)は、典型的には数学的モデリングを含む治療開発に関連する科学分野である。一般的な用語では、PK(またはpK)は、「身体が薬物に対して行うこと」として記載され、PD(またはpD)は、「薬物が身体に対して行うこと」として記載されることが多い。より具体的には、PKは、一旦投与され、吸収、分布、代謝および排泄または排出(ADME)の4つの身体過程に供されると、身体が薬物にどのように作用するかをモデル化することに焦点を合わせることができる。これは、一般に、または時間の関数として身体の様々な領域における体内濃度をモデル化することによって達成されることができる。PDは、これらのモデル化された薬物濃度を、それらの効果を評価するために特別に設計されたPDモデルを介して特定の薬物効果に結び付けることを目的とする。したがって、PK/PDモデリングは、全身薬物濃度動態を結果として生じる薬物効果に経時的に結び付けることができる。そのようなモデリングは、様々な投与計画に応答した様々な生理学的効果(例えば、腫瘍細胞数、血小板数、好中球数など)の時間経過の説明および予測を可能にする。
【0004】
PK/PD評価のための従来の数学的モデリング方法論は、ループ内の様々なステップに関与する人間の判断により、モデル評価および精密化の反復を必要とすることがある。これは、時間および労働集約的であり得る。そのような既存の数学的アルゴリズムの例は、期待値最大化、遺伝的アルゴリズム、および散乱探索を含む。これらの技術は最適化ベースであってもよく、これは、実際には、モデルを作成する科学者が重大な試行錯誤を伴う多くの関数および勾配評価を実行することを意味することができる。したがって、PKおよびPDをモデル化するためにこれらの既存の数学的技術を効果的に使用することは、かなりの量のノウハウおよび計算時間を必要とする。ノウハウの前提条件および計算リソース要件は、非専門家ユーザのためのPK、PDおよびPK/PDモデリングの広範な採用に向かう経路に沿った重大な障害を表す。
【発明の概要】
【0005】
概要
1つ以上の実施形態では、薬物動態学的および薬力学的効果に関連する連結パラメータのセットを予測するための方法が提供される。1つ以上のプロセッサは、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを受信する。1つ以上のプロセッサは、集団データセットを、PKデータ密度画像およびPDデータ密度画像を含む複数のデータ密度画像に変換する。1つ以上のプロセッサは、複数のデータ密度画像を使用して連結パラメータのセットを予測する。
【0006】
1つ以上の実施形態では、薬物動態学的および薬力学的効果に関連する連結パラメータのセットを予測するためのシステムが提供される。システムは、データストレージと、データストレージに通信可能に接続されたコンピューティングデバイスと、コンピューティングデバイスに通信可能に接続されたディスプレイシステムとを備える。データストレージは、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを記憶するように構成される。コンピューティングデバイスは、データマネージャおよび予測システムを備える。データマネージャは、集団データセットを受信し、集団データセットを、PKデータ密度画像およびPDデータ密度画像を含む複数のデータ密度画像に変換するように構成される。予測システムは、複数のデータ密度画像を使用して連結パラメータのセットを予測するように構成される。ディスプレイシステムは、連結パラメータのセットのうちの各連結パラメータの予測値を含むレポートを表示するように構成される。
【0007】
1つ以上の実施形態では、薬物動態学的および薬力学的効果に関連する連結パラメータのセットを予測するための方法が提供される。1つ以上のプロセッサは、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを受信する。1つ以上のプロセッサは、集団データセットを、PKビニング強度画像およびPDビニング強度画像を含む複数のビニング強度画像に変換する。1つ以上のプロセッサは、複数のビニング強度画像と、少なくとも1つのニューラルネットワークを備える深層学習システムとを使用して連結パラメータのセットを予測する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書に開示された原理およびその利点のより完全な理解のために、ここで添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
【0009】
図1】1つ以上の例示的実施形態にかかる薬物動態(PK)/薬力学(PD)評価システムのブロック図である。
【0010】
図2】様々な実施形態にかかる予測ワークフローの概略図である。
【0011】
図3】様々な実施形態にかかる図2の深層学習システムの構成の一例の概略図である。
【0012】
図4】様々な実施形態にかかる、集団(PK/PD)データセットに基づいて連結パラメータのセットを予測する方法のフローチャートである。
【0013】
図5】様々な実施形態にかかる、集団PK/PDデータセットに基づいて連結パラメータのセットを予測する方法のフローチャートである。
【0014】
図6】様々な実施形態にかかる、集団PK/PDデータセットに基づいて連結パラメータのセットを予測するように深層学習システムを訓練するための方法のフローチャートである。
【0015】
図7】様々な実施形態にかかる集団データセットのシミュレーションを示す概略図である。
【0016】
図8】様々な実施形態にかかる例示的な訓練ワークフローの図である。
【0017】
図9】様々な実施形態にかかる様々な形態の区画モデリングの一連のプロットの図である。
【0018】
図10】様々な実施形態にかかる上述した方法論を使用してPKおよびPD効果に関連する連結パラメータを推定する精度を実証するプロットの図である。
【0019】
図11】様々な実施形態にかかる、コンピュータシステムを示すブロック図である。
【0020】
図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、図面内の物体は必ずしも互いに一定の縮尺で描かれているわけではないことを理解されたい。図面は、本明細書に開示される装置、システム、および方法の様々な実施形態に明瞭さおよび理解をもたらすことを意図した描写である。可能な限り、同じまたは同様の部分を指すために図面全体を通して同じ参照符号が使用される。さらに、図面は、本教示の範囲を決して限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
I.概要
薬物動態/薬力学(PK/PD)の原理は、様々な治療薬(または薬物)の用量-濃度-効果関係を理解し、そのような治療薬に適切なプロトコル(例えば、投与量、スケジュールなど)を選択するための十分に確立された定量的フレームワークとなっている。本明細書で使用される場合、PK/PDは、PK、PD、またはその双方を指すことができる。集団PK/PDモデリングは、被験者(または患者)集団に関する薬物動態、薬力学、またはその双方の研究を指す。集団PK/PDを理解することは、被験者(または患者)の特性とその後に治療開発に使用されることができるPK/PDの差との間の関連を理解することを含むことができる。例えば、集団PK/PDが使用されて、薬物療法をカスタマイズすることができる。集団についてPK/PDを分析するとき、同じ被験者からの複数の試料は一般に必要とされないため、そのような集団ベースの分析は、例えば、限定されないが、広く地理的に分布している被験者を含む被験者群などの、試験がより困難である傾向がある被験者群を評価するのに役立つことができる。
【0022】
PK/PDおよび特に集団PK/PDを分析するための現在利用可能な方法論は、計算集約的であり、時間がかかり、および/または一定レベルの知識および/または経験を必要とすることがある。例えば、現在利用可能ないくつかの方法論は、モデル評価および改良の複数の反復を必要とする可能性があるモデリング方法論を使用し、プロセス全体内の様々なステップにおいて人間の介入が含まれる。そのようなモデリング方法論に関与する時間、計算能力、ならびに技術的知識および/または専門知識は、リアルタイムアプリケーション、非技術ユーザによる使用、またはその双方のためにこれらのモデリング方法論を採用することに対する障害を提示する可能性がある。
【0023】
したがって、本明細書は、人間の介入を低減した(または、様々な場合において、ゼロ)集団PK/PDを迅速、効率的および正確に分析するための機械学習ベースまたは深層学習ベースのシステムおよび方法の様々な例示的な実施形態を記載する。本明細書に記載される実施形態は、集団薬物動態学および/または治療薬の特性を推定または予測することを可能にする。しかしながら、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、薬物動態学および薬力学におけるそれらの適用に具体的に言及しているが、それらは、トキシコキネティクスおよびトキシコダイナミクスなどの他の類似の分野にも等しく適用可能であることを理解されたい。
【0024】
本明細書に記載される実施形態は、集団データセットを、その後、PKおよびPD効果を関連させる1つ以上の連結パラメータを予測するために処理されることができるデータ密度画像に変換するための方法およびシステムを提供する。集団データセットは、例えば、少なくとも1つの集団PKデータセット(例えば、臨床集団PKデータセット)および少なくとも1つの集団PDデータセット(例えば、臨床集団PDデータセット)を含むことができる。集団PKデータセットは、集団において観察されたPK効果に関するデータを提供し、一方、集団PDデータセットは、集団において観察されたPD効果に関するデータを提供する。前述のように、PK効果は、身体内の薬物(例えば、薬物濃度)に対する用量効果または身体の効果を指すことができる。PD効果は、薬物効果(または身体に対する薬物の効果)を指すことができ、用量効果に依存することができる。
【0025】
データ密度画像は、例えば、限定されないが、少なくとも1つのPKデータ密度画像および少なくとも1つのPDデータ密度画像を含むことができる。データ密度画像は、特定のデータ点(例えば、薬物濃度などのPK値または好中球数などのPD値)が集団データセット内で発生した回数またはインスタンス(すなわち、密度)の指示を提供する。1つ以上のPKデータ密度画像および1つ以上のPDデータ密度画像は、1つ以上の連結パラメータを予測するために使用される。これらの1つ以上の連結パラメータは、PK効果とPD効果との間の関係を表す。連結パラメータの例は、これらに限定されないが、勾配、最大薬物効果(Emax)、および最大半量有効濃度(EC50)を含む勾配は、用量効果に対する薬物効果(例えば、薬物濃度)を示す。最大薬物効果Emaxは、高い薬物濃度における薬物の最大効果である。最大半量有効濃度EC50は、薬物の最大効果または最大半量効果の50%を提供する薬物濃度である。連結パラメータは、PDパラメータと呼ばれることもある。
【0026】
様々な実施形態では、1つ以上の連結パラメータを予測するための1つ以上の方法およびシステムが提供される。集団PKデータセットおよび集団PDデータセットを含む集団データセットが受信されることができる。集団データセットは、異なる時点にわたって複数の被験者について得られたデータを含むことができ、多くの場合、複数の研究または臨床試験からプールされることができる。集団データセットは、複数のデータ密度画像に変換されることができる。データ密度画像は、例えば、PKデータ密度画像およびPDデータ密度画像を含む。データ密度画像は、少なくとも1つの連結パラメータの値を予測するために処理される。いくつかの実施形態では、この予測は、深層学習システムを介して行われる。深層学習システムは、例えば、1つ以上の連結パラメータを予測するために使用される1つ以上のニューラルネットワークモデルを含むことができる。連結パラメータは、集団PKデータセットおよび集団PDデータセットの双方からのデータを連結するかまたは他の様態で関連付けるパラメータである。1つ以上の実施形態では、データ密度画像は、PK効果(例えば、薬物濃度)に対するPD効果を定義する勾配を決定するために使用される。他の実施形態では、代替的にまたは追加的に、1つ以上の他の種類の連結パラメータが予測されてもよい。
【0027】
集団におけるPD効果とPK効果との間の関係を理解することは、治療薬の開発、その治療薬の特定の個体へのカスタマイズ、治療薬の臨床試験の開発、治療薬の改変またはより新たなバージョンの開発、何らかの他のタイプの治療薬に基づく開発作業、またはそれらの組み合わせにとって非常に有益であり得る。
【0028】
II.深層学習を使用した連結パラメータの予測
図1は、1つ以上の例示的実施形態にかかる薬物動態(PK)/薬力学(PD)評価システム100のブロック図である。PK/PD評価システム100は、集団における薬物(例えば、治療薬)の投与から生じるPK効果およびPD効果を評価するために使用されることができる。様々な実施形態では、PK/PD評価システム100は、観察されたデータに基づいて訓練され、次いで、1つ以上のPKパラメータ、1つ以上の連結パラメータ、またはそれらの組み合わせを予測するために使用される。
【0029】
PK/PD評価システム100は、限定されないが、研究環境、臨床試験環境、薬物開発環境、病院環境、または何らかの他の種類の環境を含む様々な環境において使用されることができる。PK/PD評価システム100は、入力データ101を受信および処理して、入力データ101に基づく情報を記述および/または含有するレポート102を生成することができる。
【0030】
PK/PD評価システム100は、コンピューティングプラットフォーム103と、データストレージ104と、ディスプレイシステム106とを含む。コンピューティングプラットフォーム103は、様々な形態をとることができる。1つ以上の実施形態では、コンピューティングプラットフォーム103は、互いに通信する単一のコンピュータ(またはコンピュータシステム)または複数のコンピュータを含む。他の例では、コンピューティングプラットフォーム103は、クラウドコンピューティングプラットフォームの形態をとる。いくつかの実施形態では、コンピューティングプラットフォーム103は、コンピューティングデバイス/分析サーバと呼ばれる。いくつかの実施形態では、コンピューティングプラットフォーム103は、ワークステーション、メインフレームコンピュータ、分散コンピューティングノード(「クラウドコンピューティング」または分散ネットワーキングシステムの一部)、パーソナルコンピュータ、モバイルデバイスなどとすることができる。
【0031】
データストレージ104およびディスプレイシステム106は、それぞれ、コンピューティングプラットフォーム103と通信する。データストレージ104は、限定されないが、「ハードワイヤード」物理ネットワーク接続(例えば、インターネット、LAN、WAN、VPNなど)または無線ネットワーク接続(例えば、Wi-Fi、WLANなど)のいずれかとすることができるネットワーク接続などの様々な方法でコンピューティングプラットフォーム103に通信可能に接続されることができる。
【0032】
いくつかの例では、データストレージ104、ディスプレイシステム106、またはその双方は、コンピューティングプラットフォーム103の一部と見なされるか、そうでなければ統合されてもよい。したがって、いくつかの例では、コンピューティングプラットフォーム103、データストレージ104、およびディスプレイシステム106は、互いに通信する別個の構成要素であってもよいが、他の例では、これらの構成要素のいくつかの組み合わせが一緒に統合されてもよい。
【0033】
PK/PD評価システム100は、コンピューティングプラットフォーム103に実装されたデータマネージャ108および予測システム110を含む。データマネージャ108および予測システム110のそれぞれは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせを使用して実装される。データマネージャ108は、例えば、訓練データシミュレーションエンジン、画像レンダリングエンジン、またはその双方を含むことができる。予測システム110は、連結パラメータ予測エンジン(または集団連結パラメータ予測エンジンまたはPK/PD連結パラメータ予測エンジン)とも呼ばれることがある。
【0034】
PK/PD評価システム100の様々な構成要素またはエンジンは、特定の用途またはシステムアーキテクチャの要件に応じて、単一のエンジン、構成要素、またはモジュールに組み合わせられるか、または折り畳まれることができることを理解されたい。さらに、様々な実施形態では、データストレージ104、データマネージャ108、予測システム110、またはそれらの組み合わせは、特定のアプリケーションまたはシステムアーキテクチャによって必要とされる追加のエンジンまたは構成要素を備えることができる。
【0035】
様々な実施形態では、データマネージャ108は、入力データ101を受信または取得する。入力データ101は、データストレージ104から取得されてもよく、他の何らかのソースから受信されてもよく、またはそれらの組み合わせであってもよい。入力データ101は、1人以上の被験者からの1つ以上の試料を介して生成されていてもよい。例えば、試料分析器112は、1つ以上の通信リンクを介して(例えば、シリアルバス、無線ネットワーク接続などを介して)データストレージ104に通信可能に接続されることができる。試料分析器112は、複数の被験者を含む検査集団とも呼ばれることがある集団114からの血液試料を分析するように構成されることができる。これらの試料から様々な時系列データセットが生成され、その後の処理のためにデータストレージ104に記憶されることができる。例えば、試料分析器112は、処理のためにデータストレージ104に記憶される集団114の集団データセット116を生成することができる。集団データセット116は、例えば、限定されないが、集団PKデータセット118および集団PDデータセット120を含むことができる。集団PKデータセット118は、例えば、各データ点が集団114の様々な被験者についてある時点(例えば、薬物の投与後の特定の日、時間、または他の単位時間)における被験者における用量効果(例えば、薬物濃度)を識別するデータ点を含むことができる。集団PDデータセット120は、例えば、各データ点が集団114の様々な被験者についてある時点(例えば、薬物の投与後の特定の日、時間、または他の単位時間)における被験者における薬物効果(例えば、好中球数など)を識別するデータ点を含むことができる。
【0036】
データマネージャ108は、入力データ101をデータ密度画像134に変換する。データ密度画像134は、少なくとも1つのPKデータ密度画像および少なくとも1つのPDデータ密度画像を含む。データ密度画像134が訓練データ122のために生成されるとき、それらは、シミュレートされたデータ密度画像と呼ばれることがある。データ密度画像は、選択された用量効果および選択された時点に対応する入力データ101内のデータ点の密度に関する情報を提供する画像または表現である。
【0037】
例えば、データ強度画像は、ビニング強度画像の少なくとも一部における各画素値が、選択された効果(例えば、PK-用量効果について、PD-薬物効果について)および選択された時点に対応するデータ点の密度を示すビニング強度画像の形態をとることができる。いくつかの実施形態では、ビニング強度画像では、データ値は、効果(例えば、PK-用量効果について、PD-薬物効果について)、時点、またはその双方に関して「ビン」に配置されることができる。例えば、選択された間隔を有する値を有する時点は、その間隔を表す値(例えば、中心値)によって置き換えられることができる。これは、一連のビンを形成する範囲にわたって複数の間隔で繰り返されてもよい。選択された間隔を有する値を有する効果値(例えば、薬物濃度値、好中球数値など)は、その間隔を表す値(例えば、中心値)によって置き換えられることができる。これは、一連のビンを形成する範囲にわたって複数の間隔で繰り返されてもよい。他の実施形態では、データ密度画像134は、入力データ101の何らかの他のタイプの量子化表現の形態をとることができる。
【0038】
データマネージャ108は、処理のためにデータ密度画像134を予測システム110に送信する。予測システム110は、機械学習または深層学習システムである。1つ以上の実施形態では、予測システム110は、ニューラルネットワークシステム111を含む。ニューラルネットワークシステム111は、1つ以上のニューラルネットワークモデルを含む。例えば、ニューラルネットワークシステム111は、訓練モジュール126および予測モジュール128を含むことができる。ニューラルネットワークシステム111が訓練されているとき、訓練モジュール126は、訓練データ122に基づいて生成されたデータ密度画像134を処理することができる。訓練されると、ニューラルネットワークシステム111は、実際には、集団データセット116に基づいて生成されたデータ密度画像134に基づいて、連結パラメータ130のセット、PKパラメータ132のセット、またはその双方を予測するために使用されることができる。したがって、ニューラルネットワークシステム111に提供されるデータ密度画像134のタイプは、ニューラルネットワークシステム111が訓練モードにあるか予測モードにあるかに応じて異なる形態をとることができる。
【0039】
連結パラメータ130のセットは、例えば、勾配、最大半量有効濃度(EC50)、または最大効果(Emax)のうちの少なくとも1つを含むことができる。勾配は、用量効果に対する薬物効果(例えば、薬物濃度)を示す。一例として、増殖前駆細胞の薬物効果に関連する勾配は、薬物濃度の増加が増殖前駆細胞の合成をどの程度阻害するかを記載することができる。最大薬物効果Emaxは、高い薬物濃度における薬物の最大効果である。最大半量有効濃度EC50は、薬物の最大効果または最大半量効果の50%を提供する薬物濃度である。集団114に関して、連結パラメータ130のセットの連結パラメータは、パラメータの算術平均(または平均)、中央値、標準偏差、または他の集団ベースの記述統計メトリックとすることができる。例えば、勾配は、平均勾配、中央値勾配、または集団114に関連する勾配値を表す他の何らかの勾配値とすることができる。いくつかの実施形態では、連結パラメータ130のセットは、PDパラメータのセットとも呼ばれることがある。
【0040】
PKパラメータのセット132は、例えば、曲線下面積(AUC)、最小濃度(Cmin)、最大濃度(Cmax)、Cmaxに到達するまでの時間(Tmax)、排出半減期(t1/2)、平均滞留時間(MRT)、最後の測定可能な濃度(CLast)(例えば、次の用量の前)、CLastに到達するまでの時間(TLast)、または別のPKパラメータのうちの少なくとも1つを含むことができる。集団114に関して、PKパラメータのセット132のPKパラメータは、パラメータの算術平均(または平均)、中央値、標準偏差、または別の集団ベースの記述統計学的メトリックとすることができる。例えば、AUCは、平均AUC、中央値AUC、または集団114についての集団PKデータセット118に対応するAUCを表す何らかの他のAUC値とすることができる。別の例として、Cminは、平均Cmin、中央値Cmin、または集団PKデータセット118に関連するCmin値を表す何らかの他のCmin値とすることができる。
【0041】
これらの1つ以上のパラメータが予測された後、予測システム110は、ディスプレイシステム106に表示されることができるレポート102を生成することができる。いくつかの実施形態におけるディスプレイシステム106は、コンピューティングプラットフォーム103に通信可能に接続されたクライアント端末136に実装されてもよい。様々な実施形態では、クライアント端末136は、シンクライアントコンピューティングデバイスとすることができる。様々な実施形態では、クライアント端末136は、データストレージ104、データマネージャ108、予測システム110、またはそれらの組み合わせの動作を制御するために使用されることができるウェブブラウザ(例えば、インターネットエクスプローラ(商標)、ファイアボックス(商標)、サファリ(商標)など)を有するパーソナルコンピューティング装置とすることができる。
【0042】
レポート102は、例えば、連結パラメータ130のセット、PKパラメータ132のセット、またはその双方の値を含むことができる。1つ以上の例では、レポート102は、予測されたPK時間経過に基づく1つ以上の推奨される行動を含むことができる。
【0043】
図2は、様々な実施形態にかかる予測ワークフローの概略図である。予測ワークフロー200は、図1のPK/PD評価システム100を使用して連結パラメータのセットの予測が実装されることができる方法の一例である。予測ワークフロー200は、集団PKデータセット202および集団PDデータセット204をそれぞれPKデータ密度画像206およびPDデータ密度画像208に変換することを含む。集団PKデータセット202および集団PDデータセット204は、図1の集団PKデータセット118および集団PDデータセット120の実装の例である。PKデータ密度画像206およびPDデータ密度画像208は、図1のデータ密度画像134の実装の一例である。
【0044】
PKデータ密度画像206およびPDデータ密度画像208は、双方とも、図1の予測システム110の実装の一例である深層学習システム210に入力されることができる。深層学習システム210は、PKデータ密度画像206およびPDデータ密度画像208を処理して、連結パラメータ212のセットを予測する。連結パラメータ212のセットは、勾配、最大薬物効果(Emax)、最大半量有効濃度(EC50)、または集団PKデータセット202と集団PDデータセット204との間の関係を記述する別の連結パラメータのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0045】
図3は、様々な実施形態にかかる図2の深層学習システム210の構成の一例の概略図である。1つ以上の実施形態では、深層学習システム210は、少なくとも4つのニューラルネットワーク、すなわち、ニューラルネットワーク302、ニューラルネットワーク304、ニューラルネットワーク306、およびニューラルネットワーク308を含む。他の実施形態では、深層学習システム210は、ニューラルネットワークのいくつかの他の数または構成を含んでもよい。1つ以上の実施形態では、ニューラルネットワーク302、ニューラルネットワーク304、ニューラルネットワーク306、およびニューラルネットワーク308のうちの1つ以上は、畳み込みニューラルネットワークである。
【0046】
ニューラルネットワーク302は、処理のためにPKデータ密度画像206を受信することができる。ニューラルネットワーク304は、処理のためにPDデータ密度画像208を受信することができる。1つ以上の実施形態では、PKデータ密度画像206およびPDデータ密度画像208は、ビニング強度画像である。例えば、PKデータ密度画像206は、特定の薬物濃度(濃度間隔または範囲または「ビン」)および特定の時点(または時間間隔または「ビン」)の画素または画素群が、その特定の薬物濃度(濃度間隔または範囲または「ビン」)および特定の時点(または時間間隔または「ビン」)の密度(例えば、インスタンスの数)を表す強度を有するビニング強度画像とすることができる。例えば、所与の画素または画素群の強度が高いほど、同じ時点(または同じ期間、時間間隔、もしくは時間ビン)について同じ薬物濃度(または同じ間隔またはビン内の薬物濃度)が測定されたインスタンスの数(例えば、被験者の数)が多くなる。
【0047】
ニューラルネットワーク302は、PKデータ密度画像206を処理してPKモデル出力310を生成する。ニューラルネットワーク304は、PDデータ密度画像208を処理してPDモデル出力312を生成する。1つ以上の実施形態では、PKモデル出力310およびPDモデル出力312は、それぞれ、ニューラルネットワーク302およびニューラルネットワーク304のモデルパラメータである。他の実施形態では、PKモデル出力310およびPDモデル出力312は、それぞれ、PKデータ密度画像206およびPDデータ密度画像208に対応する何らかの他のタイプの出力である。1つ以上の実施形態では、PKモデル出力310およびPDモデル出力312は、ベクトルの形態をとる。
【0048】
PKモデル出力310は、入力としてニューラルネットワーク306に送信されることができる。1つ以上の実施形態では、ニューラルネットワーク306は、全結合ニューラルネットワークである。ニューラルネットワーク306は、PKモデル出力310を処理し、出力としてPKパラメータのセット314を生成する。PKパラメータ314のセットは、例えば、曲線下面積(AUC)、最小濃度(Cmin)または最大濃度(Cmax)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0049】
1つ以上の実施形態では、PKモデル出力310およびPDモデル出力312の双方がマージユニット316に送られて、ニューラルネットワーク308に送られるマージ入力318を形成する。マージユニット316は、例えば、カテネーションネットワークまたはユニットを使用して実装されることができる。いくつかの実施形態では、PKモデル出力310およびPDモデル出力312は、入力としてニューラルネットワーク308に直接送られ、ニューラルネットワーク308内で何らかの方法でマージまたは連鎖または連結される。1つ以上の実施形態では、ニューラルネットワーク308は、多層知覚ネットワークである。
【0050】
ニューラルネットワーク308は、その入力(例えば、マージ入力318またはPKモデル出力310およびPDモデル出力312の双方)を処理して、図2において前述したように連結パラメータ212のセットを生成する。いくつかの実施形態では、PKパラメータ314のセットおよび連結パラメータ212のセットは、マージされて、深層学習システム210によって予測された様々なPKおよび連結パラメータの値を含む最終出力ベクトルを形成する。
【0051】
III.連結パラメータのセットを予測するための例示的な方法
図4は、様々な実施形態にかかる、集団(PK/PD)データセットに基づいて連結パラメータのセットを予測する方法のフローチャートである。いくつかの実施形態では、方法400は、図1に記載されるPK/PD評価システム100によって実装されることができる。
【0052】
ステップ402は、1つ以上のプロセッサによって、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを受信することを含む。集団PKデータセットは、例えば、用量効果(例えば、薬物濃度)時系列データを含むことができる。集団PDデータセットは、例えば、薬物効果(例えば、好中球数)時系列データを含むことができる。
【0053】
ステップ404は、1つ以上のプロセッサによって、集団データセットを、PKデータ密度画像およびPDデータ密度画像を含む複数のデータ密度画像に変換することを含む。1つ以上の実施形態では、PKデータ密度画像およびPDデータ密度画像は、ビニング強度画像である。1つ以上の実施形態では、PKデータ密度画像は、ビニング強度画像であり、ビニング強度画像の少なくとも一部における各画素値は、選択された用量効果および選択された時点に対応するデータ点の密度を示す。1つ以上の実施形態では、PDデータ密度画像は、ビニング強度画像の少なくとも一部における各画素値が、選択された用量効果および選択された時点に対応するデータ点の密度を示すビニング強度画像である。
【0054】
ステップ406は、1つ以上のプロセッサによって、複数のデータ密度画像を使用して連結パラメータのセットを予測することを含む。連結パラメータのセット内の連結パラメータは、集団PKデータセットと集団PDデータセットとの対応関係を提供するか、そうでなければそれらを連結する。1つ以上の実施形態では、連結パラメータのセットは、勾配、最大半量有効濃度(EC50)、または最大効果(Emax)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0055】
図5は、様々な実施形態にかかる、集団PK/PDデータセットに基づいて連結パラメータのセットを予測する方法のフローチャートである。いくつかの実施形態では、方法500は、図1に記載されるPK/PD評価システム100によって実装されることができる。
【0056】
ステップ502は、シミュレートされた薬物動態(PK)データセットおよびシミュレートされた薬力学(PD)データセットを含むシミュレートされた集団データセットを使用して、1つ以上のプロセッサによって深層学習システムを訓練することを含む。シミュレートされたPKデータセットおよびシミュレートされたPDデータセットは、様々な方法で、モデルの任意の数または組み合わせを使用して生成された集団レベルのデータセットとすることができる。
【0057】
ステップ504は、1つ以上のプロセッサによって、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを受信することを含む。いくつかの実施形態では、集団データセットは、現実のデータセットまたは臨床データセットであってもよい。
【0058】
ステップ506は、1つ以上のプロセッサによって、集団データセットを、PKビニング強度画像およびPDビニング強度画像を含む複数のビニング強度画像に変換することを含む。ビニング強度画像は、それぞれ、所与の画素の値が、選択された時点の選択された効果について(例えば、PK-用量効果について、PD-薬物効果について)そのビニング強度画像が生成されたデータセット内のデータ点の密度を示す画素を含む。
【0059】
ステップ508は、1つ以上のプロセッサによって、複数のビニング強度画像および深層学習システムを使用して連結パラメータのセットを予測することを含む。連結パラメータのセットは、勾配、最大半量有効濃度(EC50)、または最大効果(Emax)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0060】
IV.シミュレートされた集団PKおよびPDデータを使用した深層学習システムの訓練
図6は、様々な実施形態にかかる、集団PK/PDデータセットに基づいて連結パラメータのセットを予測するように深層学習システムを訓練するための方法600のフローチャートである。方法600は、図5のステップ502が実行されることができる方法の一例である。さらに、方法600は、図1に記載されるPK/PD評価システム100によって実装されることができる。
【0061】
ステップ602は、シミュレートされた薬物動態(PK)データセットおよびシミュレートされた薬力学(PD)データセットを含むシミュレートされた集団訓練を受信することを含む。シミュレートされたPKデータセットおよびシミュレートされたPDデータセットは、様々な方法で、モデルの任意の数または組み合わせを使用して生成された集団レベルのデータセットとすることができる。
【0062】
ステップ604は、シミュレートされた集団データセットを、シミュレートされたPKデータ密度画像およびシミュレートされたPDデータ密度画像を含む複数のシミュレートされたデータ密度画像に変換することを含む。複数のシミュレートされたデータ密度画像は、例えば、ビニング強度画像を含むことができる。
【0063】
ステップ606は、複数のシミュレートされたデータ密度画像に基づいて少なくとも連結パラメータのセットを含むパラメータのセットを予測するように深層学習システムを訓練することを含む。ステップ606は、様々な方法で実行されることができる。1つ以上の実施形態では、ステップ606は、訓練を可能にするために深層学習システムの自己組織化ニューラルネットワークを初期化することを含むことができる。
【0064】
図7は、様々な実施形態にかかる集団データセットのシミュレーションを示す概略図である。シミュレーションPKモデル700およびシミュレーションPDモデル702が使用されて、それぞれ、シミュレートされたPKデータセット704およびシミュレートされたPDデータセット706を生成することができる。シミュレーションPKモデル700およびシミュレーションPDモデル702は、1つ以上の治療薬(薬物)に関連する効果に基づいてこれらのシミュレートされたデータセットを生成することができる。
【0065】
シミュレートされたPKデータセット704はまた、シミュレートされた集団PKデータセットと呼ばれることがあり、シミュレートされたPDデータセット706はまた、シミュレートされた集団PDデータセットと呼ばれることがある。例えば、シミュレートされたPKデータセット704は、経時的な(例えば、離散的な時点に関して)薬物濃度をシミュレートすることができる。シミュレートされたPDデータセット706は、経時的な(例えば、離散的な時点に関して)薬物効果(例えば、好中球数または何らかの他の効果)をシミュレートすることができる。シミュレートされたPKデータセット704およびシミュレートされたPDデータセット706は、それぞれ、サンプリング時間708およびサンプリング時間710に基づいて時系列データセットとして生成される。1つ以上の実施形態では、サンプリング時間708およびサンプリング時間710は、同じであるか、または整合される。
【0066】
シミュレーションPKモデル700およびシミュレーションPDモデル702のそれぞれは、対応するシミュレーションモデルが1つ以上の離散時系列(または時系列データセット)を生成するように、モデルパラメータを用いてカスタマイズされることができる。各離散時系列は、シミュレートされた試験被験者に対する治療薬の1回のシミュレートされた投与についてのデータ(例えば、PKまたはPD)を表すことができる。1つ以上の実施形態では、シミュレートされたPKデータセット704およびシミュレートされたPDデータセット706は、それぞれ、シミュレートされた集団についての複数の時系列を含む。いくつかの実施形態では、シミュレーションPKモデル700、シミュレーションPDモデル702または双方は、シミュレートされたPKデータセット704、シミュレートされたPDデータセット706または双方をそれぞれ形成するために、シミュレートされたデータを現実のデータ点または臨床データ点によって補う。
【0067】
シミュレーションPDモデル702は、様々な方法で実装されることができる。1つ以上の実施形態では、シミュレーションPDモデル702は、1区画モデル、2区画モデル、ミカエリス・メンテン2区画モデル、または別のタイプのモデルのうちの少なくとも1つを使用して実装されることができる。
【0068】
PK1区画モデルの場合、シミュレーションPKモデル700のモデルパラメータは、限定されないが、中央区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度、1つ以上の他のタイプのパラメータ、またはそれらの組み合わせを含むようにカスタマイズされることができる。PK2区画モデルの場合、シミュレーションPKモデル700のモデルパラメータは、限定されないが、中央区画の分布容積、周辺区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度、中央区画と周辺区画との間の区画間クリアランス、1つ以上の他のタイプのモデルパラメータ、またはそれらの組み合わせを含むようにカスタマイズされることができる。
【0069】
ミカエリス・メンテンPK2区画モデルの場合、シミュレーションPKモデル700のモデルパラメータは、限定されないが、中央区画の分布容積、周辺区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度、中央区画と周辺区画との間の区画間クリアランス、非線形クリアランス機構に関連するミカエリス・メンテン定数、1つ以上の他のタイプのモデルパラメータ、またはそれらの組み合わせを含むようにカスタマイズされることができる。
【0070】
シミュレーションPDモデル702は、様々な方法で実装されることができる。例えば、シミュレーションPDモデル702は、間接応答モデル(すなわち、阻害kin、阻害kout、刺激kin、刺激kout、またはそれらの組み合わせ)、生物相モデル、信号伝達モデル、または何らかの他のタイプのシミュレーションモデルのうちの少なくとも1つを使用して実装されることができる。
【0071】
シミュレートされたPKデータセット704およびシミュレートされたPDデータセット706は、それぞれ、図2における集団PKデータセット202および集団PDデータセット204のPKデータ密度画像206およびPDデータ密度画像208への変換と同様の方法で、シミュレートされたデータ密度画像(例えば、ビニング強度画像)に変換されることができる。図2に記載された深層学習システム210は、これらのシミュレートされたデータ密度画像を使用して訓練されることができる。
【0072】
図8は、様々な実施形態にかかる例示的な訓練ワークフロー800の図である。訓練ワークフロー800は、シミュレートされたPKデータがどのように生成され、使用されて訓練データセットを作成することができるかの高レベルの図である。
【0073】
本明細書に示すように、シミュレートされた時系列濃度データ802は、1種類以上のPK区画モデルを用いて生成される。これは、最初に(入力によって)1つ以上のPK区画モデルのシミュレーションパラメータを設定し、次いでPK区画モデルのシミュレーションを実行して、1つ以上の既存または潜在的な将来の治療薬のシミュレーション時系列濃度データ802を生成することを含む。
【0074】
PK区画モデルのシミュレーションパラメータの例は、限定されないが、以下を含む:投与スキーム(例えば、皮下、経口、静脈内など)、分子クラス(例えば、小分子または大分子)、分子種(例えば、薬物、mAbs、タンパク質、酵素など)、区画モデル特異的パラメータ(例えば、中央区画の分布容積、吸収定数、脱離定数など)、モデル化種(例えば、哺乳動物、げっ歯類、ヒト、非ヒト霊長類など)、モデル化種人口統計(例えば、年齢、体重、性別など)、ベースラインアルブミン、ベースライン腫瘍サイズなど。
【0075】
様々な実施形態では、1区画モデルが使用されて、時系列濃度データ802をシミュレートすることができる。PK1区画モデルの場合、設定されることができる区画パラメータは、これらに限定されないが、中央区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度などを含む。
【0076】
様々な実施形態では、2区画モデルが使用されて、時系列濃度データ802をシミュレートすることができる。PK2区画モデルの場合、設定されることができる区画パラメータは、これらに限定されないが、中央区画の分布容積、周辺区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度、中央区画と周辺区画との間の区画間クリアランスなどを含む。
【0077】
様々な実施形態では、ミカエリス・メンテンPK2区画モデルが使用されて、時系列濃度データ802をシミュレートすることができる。ミカエリス・メンテンPK2区画モデルの場合、設定されることができる区画パラメータは、限定されないが、以下を含む:中央区画の分布容積、周辺区画の分布容積、中央区画への吸収速度、中央区画からの除去速度、中央区画と周辺区画との間の区画間クリアランス、非線形クリアランス機構に関連するミカエリス・メンテン定数など。
【0078】
シミュレートされた時系列濃度データ802が生成された後、これはまばらにサンプリングされ806、シミュレートされた時系列濃度訓練データセット808のサブセットを形成し、シミュレートされた時系列濃度訓練データセット808のそれぞれは、非区画分析(NCA)804を使用してさらに処理され、それらの対応するシミュレートされたPKパラメータ値810を計算する。シミュレートされたPKパラメータ値のタイプの例は、限定されないが、以下を含む:AUC、Cmax、Cmin、Ctrough、Tmax、MRT、TLast、またはt1/2
【0079】
図9は、様々な実施形態にかかる様々な形態の区画モデリングのための一連のプロット900の図である。一連のプロット900は、様々な実施形態にしたがって、訓練データセットを形成するためにNCAを使用して予測されたPKパラメータと結合された時系列濃度データをシミュレートするために区画モデリングが使用されることができる方法を示している。
【0080】
図9に示す例では、3つの異なる区画モデル(すなわち、1区画910、2区画912および2区画ミカエリス・メンテン914)が使用されて、シミュレートされた時系列濃度データセット902を生成した。シミュレートされた時系列濃度データセット902に対する投与スキームの効果を示すために、異なる治療投与スキーム設定(すなわち、ボーラス906および経口/皮下908)を使用して同じ区画モデルシミュレーションを実行した。
【0081】
上述したように、シミュレートされた時系列濃度データセット902が生成された後、それらは、NCAを使用してさらに処理され、それらの対応するシミュレートされたPKパラメータ値904を計算する。様々な実施形態では、シミュレートされた時系列濃度データセットは、1つ以上の既存のまたは潜在的な将来の治療薬のものである。
【0082】
V.実験結果
本明細書に開示される改善されたシステムおよび方法が、作用物質(例えば、薬物)についての集団PK/PD連結パラメータ値を予測するための従来のアプローチと比較された。
【0083】
図10は、様々な実施形態にかかる上述した方法論を使用してPKおよびPD効果に関連する連結パラメータを推定する精度を実証するプロット1000の図である。プロット1000に示すように、「真の」連結パラメータ値(例えば、集団PK/PD連結パラメータ値)は、1000個の試料について上記開示された画像ベースのNN予測方法論によって生成された「推定」または「予測」連結パラメータ値に対してプロットされた。プロット1000では、連結パラメータは勾配であり、これは、薬物効果対薬物濃度を関係付けている。プロット1000は、真の勾配と推定勾配とが勾配値の全範囲にわたって互いに密接に相関していたことを示している。したがって、本明細書に記載された画像ベースのNN予測方法論は、ある範囲の連結パラメータ値にわたってPKおよびPDを関係付ける連結パラメータを正確に推定または予測することができる。
【0084】
VI.コンピュータ実装システム
図11は、様々な実施形態にかかる、コンピュータシステムを示すブロック図である。コンピュータシステム1100は、図1のコンピューティングデバイス93についての実装の一例とすることができる。本教示の様々な実施形態では、コンピュータシステム1100は、情報を通信するためのバス1102または他の通信機構と、情報を処理するためのバス1102に結合されたプロセッサ1104とを含むことができる。様々な実施形態では、コンピュータシステム1100はまた、プロセッサ1104によって実行される命令を決定するためにバス1102に結合された、ランダムアクセスメモリ(RAM)1106または他の動的記憶デバイスとすることができるメモリを含むことができる。メモリはまた、プロセッサ1104によって実行される命令の実行中に一時変数または他の中間情報を記憶するために使用されることができる。様々な実施形態では、コンピュータシステム1100は、プロセッサ1104のための静的情報および命令を記憶するためにバス1102に結合された読み出し専用メモリ(ROM)1108または他の静的記憶デバイスをさらに含むことができる。磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶デバイス1110が設けられ、情報および命令を記憶するためにバス1102に結合されることができる。
【0085】
様々な実施形態では、コンピュータシステム1100は、バス1102を介して、コンピュータユーザに情報を表示するために、陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ1112に結合されることができる。英数字および他のキーを含む入力デバイス1114は、情報およびコマンド選択をプロセッサ1104に通信するためにバス1102に結合されることができる。別の種類のユーザ入力デバイスは、プロセッサ1104に方向情報およびコマンド選択を通信し、ディスプレイ1112上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御装置1116である。この入力デバイス1114は、典型的には、装置が平面内の位置を指定することを可能にする第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)の2軸の2自由度を有する。しかしながら、3次元(x、yおよびz)カーソル移動を考慮する入力デバイス1114も本明細書で企図されることを理解されたい。
【0086】
本教示の特定の実施と一致して、結果は、メモリ1106に含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行するプロセッサ1104に応答して、コンピュータシステム1100によって提供されることができる。そのような命令は、記憶デバイス1110などの別のコンピュータ可読媒体またはコンピュータ可読記憶媒体からメモリ1106に読み込まれることができる。メモリ1106に含まれる命令のシーケンスの実行は、プロセッサ1104に本明細書に記載されるプロセスを実行させることができる。あるいは、本教示を実装するために、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて、ハードワイヤード回路が使用されることができる。したがって、本教示の実装形態は、ハードウェア回路とソフトウェアとの特定の組み合わせに限定されない。
【0087】
本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」(例えば、データストア、データストレージなど)または「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、実行のためにプロセッサ1104に命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる。不揮発性媒体の例は、これらに限定されないが、記憶デバイス1110などの光学、固体、磁気ディスクを含むことができる。揮発性媒体の例は、これに限定されないが、メモリ1106などのダイナミックメモリを含むことができる。伝送媒体の例は、これらに限定されないが、バス1102を備えるワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含むことができる。
【0088】
コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、孔のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、およびEPROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の有形媒体を含む。
【0089】
コンピュータ可読媒体に加えて、命令またはデータは、実行のためにコンピュータシステム1100のプロセッサ1104に1つ以上の命令のシーケンスを提供するために、通信装置またはシステムに含まれる伝送媒体上の信号として提供されることができる。例えば、通信装置は、命令およびデータを示す信号を有するトランシーバを含むことができる。命令およびデータは、1つ以上のプロセッサに、本明細書の開示に概説される機能を実装させるように構成される。データ通信伝送接続の代表的な例は、これらに限定されないが、電話モデム接続、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、赤外線データ接続、NFC接続などを含むことができる。
【0090】
本明細書に記載されるフローチャート、図、および付随する開示は、コンピュータシステム1100をスタンドアロンデバイスとして使用して、またはクラウドコンピューティングネットワークなどの共有コンピュータ処理リソースの分散ネットワーク上で実装されることができることを理解されたい。
【0091】
本明細書に記載される方法論は、用途に応じて様々な手段によって実装されることができる。例えば、これらの方法は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装されることができる。ハードウェア実装の場合、処理ユニットは、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書に記載された機能を実行するように設計された他の電子ユニット、および/またはそれらの組み合わせ内に実装されることができる。
【0092】
様々な実施形態では、本教示の方法は、C、C++、Pythonなどのような従来のプログラミング言語で書かれたファームウェアおよび/またはソフトウェアプログラムおよびアプリケーションとして実装されてもよい。ファームウェアおよび/またはソフトウェアとして実装される場合、本明細書に記載される実施形態は、コンピュータに上述した方法を実行させるためのプログラムが記憶された非一時的コンピュータ可読媒体上に実装されることができる。本明細書に記載される様々なエンジンは、コンピュータシステム1100などのコンピュータシステム上に提供されることができ、それによってプロセッサ1104は、メモリ構成要素1106/1108/1110および入力デバイス1114を介して提供されるユーザ入力のいずれか一方またはそれらの組み合わせによって提供される命令にしたがって、これらのエンジンによって提供される分析および決定を実行することを理解されたい。
【0093】
VII.例示的な実施形態
様々な例示的な実施形態が本明細書に記載される。
【0094】
1つ以上の実施形態では、薬物動態学的および薬力学的効果に関連する連結パラメータのセットを予測するためのシステムが提供される。システムは、データストレージと、データストレージに通信可能に接続されたコンピューティングデバイスと、コンピューティングデバイスに通信可能に接続されたディスプレイシステムとを備える。データストレージは、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを記憶するように構成される。コンピューティングデバイスは、データマネージャおよび予測システムを備える。データマネージャは、集団データセットを受信し、集団データセットを、PKデータ密度画像およびPDデータ密度画像を含む複数のデータ密度画像に変換するように構成される。予測システムは、複数のデータ密度画像を使用して連結パラメータのセットを予測するように構成される。ディスプレイシステムは、連結パラメータのセットのうちの各連結パラメータの予測値を含むレポートを表示するように構成される。
【0095】
1つ以上の実施形態では、集団連結パラメータ値を予測するためのコンピュータ命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体は、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを受信し、集団データセットを、PKデータ密度画像およびPDデータ密度画像を含む複数のデータ密度画像に変換し、複数のデータ密度画像を使用して連結パラメータのセットを予測するための命令を含む。
【0096】
1つ以上の実施形態では、集団連結パラメータ値を予測するためのコンピュータ命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体は、集団薬物動態(PK)データセットおよび集団薬力学(PD)データセットを含む集団データセットを受信し、集団データセットを、PKビニング強度画像およびPDビニング強度画像を含む複数のビニング強度画像に変換し、複数のビニング強度画像と、少なくとも1つのニューラルネットワークを備える深層学習システムとを使用して、連結パラメータのセットを予測するための命令を含む。
【0097】
1つ以上の実施形態では、1つ以上の連結パラメータを予測するように深層学習システムを訓練するための方法が提供される。本方法は、シミュレートされた薬物動態(PK)データセットおよびシミュレートされた薬力学(PD)データセットを含むシミュレートされた集団訓練を受信することを含む。シミュレートされたPKデータセットおよびシミュレートされたPDデータセットは、様々な方法で、モデルの任意の数または組み合わせを使用して生成された集団レベルのデータセットとすることができる。本方法は、シミュレートされた集団データセットを、シミュレートされたPKデータ密度画像およびシミュレートされたPDデータ密度画像を含む複数のシミュレートされたデータ密度画像に変換することを含む。本方法は、複数のシミュレートされたデータ密度画像に基づいて少なくとも連結パラメータのセットを含むパラメータのセットを予測するように深層学習システムを訓練することを含む。
【0098】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の例示的な実施形態のPKデータ密度画像は、ビニング強度画像の少なくとも一部における各画素値が選択された用量効果および選択された時点に対応するデータ点の密度を示すビニング強度画像である。
【0099】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の例示的な実施形態のPDデータ密度画像は、ビニング強度画像の少なくとも一部における各画素値が選択された用量効果および選択された時点に対応するデータ点の密度を示すビニング強度画像である。
【0100】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の例示的な実施形態の連結パラメータのセットは、勾配、最大半量有効濃度(EC50)または最大効果(Emax)のうちの少なくとも1つを含む。
【0101】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の例示的な方法の実施形態は、1つ以上のプロセッサによって、PKデータ密度画像を使用してPKパラメータのセットを予測することを含み、PKパラメータのセットは、曲線下面積(AUC)、最小濃度(Cmin)または最大濃度(Cmax)のうちの少なくとも1つを含む。
【0102】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される例示的な方法の実施形態の1つ以上における連結パラメータのセットを予測することは、1つ以上のプロセッサによって、複数のデータ密度画像および深層学習システムを使用して連結パラメータのセットを予測することを含む。
【0103】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の例示的な実施形態の深層学習システムは、ニューラルネットワークシステムを含む。
【0104】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の例示的な実施形態の深層学習システムは、少なくとも1つの畳み込みニューラルネットワークを含む。
【0105】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の例示的な実施形態は、連結パラメータのセットを予測することにおいて使用される深層学習システムを訓練することであって、シミュレートされたPKデータセットおよびシミュレートされたPDデータセットを使用して実行される、深層学習システムを訓練することを含む。
【0106】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の例示的な実施形態のデータストレージおよびコンピューティングデバイスは、一体化された装置の一部である。
【0107】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の例示的な実施形態のデータストレージは、本明細書に記載される1つ以上の例示的な実施形態のコンピューティングデバイスとは異なるデバイスによってホストされる。
【0108】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の例示的な実施形態のデータストレージおよびコンピューティングデバイスは、分散ネットワークシステムの一部である。
【0109】
VIII.さらなる考察
本明細書に記載される教示は、本明細書に記載される例示的な実施形態および用途またはそれらの動作方法に限定されない。さらに、本明細書におけるセクションの区分は、単に検討を容易にするためのものであり、説明された要素の任意の組み合わせを限定するものではない。様々な実施形態を説明することにおいて、本明細書は、特定の一連のステップとして方法および/またはプロセスを提示している場合がある。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載される特定の順序のステップに依存しない限り、方法またはプロセスは、記載の特定の順序のステップに限定されるべきではなく、当業者は、順序が変更されてもよく、依然として様々な実施形態の趣旨および範囲内にあることを容易に理解することができる。さらに、要素のリスト(例えば、要素a、b、c)が参照される場合、そのような参照は、それ自体で列挙された要素のいずれか1つ、列挙された要素の全てよりも少ない要素の任意の組み合わせ、および/または列挙された要素の全ての組み合わせを含むことが意図される。
【0110】
図は、簡略化されたまたは部分的な図を示すことができ、図の要素の寸法は、誇張されているか、または比例していない場合がある。さらに、本明細書では、「の上にある(on)」、「に取り付けられている(attached to)」、「に接続されている(connected to)」、「に結合されている(coupled to)」という用語または同様の用語が使用される場合、一方の要素が他方の要素の上に直接あるか、他方の要素に直接取り付けられているか、他方の要素に接続されているか、または他方の要素に結合されているか、または一方の要素と他方の要素との間に1つ以上の介在要素が存在するかにかかわらず、一方の要素(例えば、材料、層、基板などである)は、他方の要素「の上にある」、「に取り付けられている」、「に接続されている」、または「に結合されている」ことができる。
【0111】
特に定義されない限り、本明細書に記載される本教示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の必要がない限り、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれるものとする。一般に、本明細書に記載された化学、生化学、分子生物学、薬理学および毒物学に関連して利用される命名法およびその技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されるものである。
【0112】
本明細書で使用される場合、「実質的に」は、意図された目的のために機能するのに十分であることを意味する。したがって、「実質的に」という用語は、当業者によって予想されるが、全体的な性能にそれほど影響しないような、絶対的または完全な状態、寸法、測定値、結果などからの微細な、僅かな変動を考慮する。数値、または数値として表されることのできるパラメータもしくは特性に関して使用される場合、「実質的に」とは、10パーセント以内を意味する。
【0113】
「複数」という用語は、2つ以上を意味する。
【0114】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上とすることができる。
【0115】
本明細書で使用される場合、「曲線下面積」(AUC)という語句は、投与後時間の関数としての対象血漿中の治療(薬物)濃度の変動を表す曲線の面積を指すことができる。
【0116】
本明細書で使用される場合、「最大濃度」(Cmax)という語句は、薬物が投与された後で第2の用量の投与前に、治療薬(薬物)が身体の特定の区画または試験領域において達成する最大(またはピーク)血清濃度を指すことができる。
【0117】
本明細書で使用される場合、「最小濃度」(Cmin)または「トラフ濃度」(Ctrough)という語句は、治療薬(薬物)が、薬物が投与された後、第2の用量の投与前に、身体の特定の区画または試験領域において達成する最小(またはピーク)血清濃度を指すことができる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「最大濃度の時間」(Tmax)という用語は、治療(薬物)用量が投与された後、次の用量が投与される前に最大濃度に到達する時間を指すことができる。
【0119】
本明細書で使用される場合、「半減期」(t1/2)という用語は、血漿中の治療薬(薬物)の濃度がその定常状態値の半分に到達するのにかかる時間を指すことができる。
【0120】
本明細書で使用される場合、「最小阻害濃度」(MIC)という語句は、インビトロで微生物の増殖を完全に阻害する抗生物質の最低濃度を指すことができる。
【0121】
本明細書で使用される場合、「最大有効濃度」(Emax)という語句は、治療薬(薬物)によって提供される最大薬理効果を指すことができる。
【0122】
本明細書で使用される場合、「最大半量有効濃度」(EC50)という語句は、最大薬理効果の50%が達成される治療薬(薬物)の濃度を指すことができる。
【0123】
本明細書で使用される場合、「区画モデル」または「区画モデリング」という語句は、身体の異なる領域における治療薬の濃度をモデリングすることによって、試験被験者における合成または天然の治療薬(薬物)のPKパラメータ(ADMEを示す)を予測するために使用される1つ以上の数学的モデリング技術を指すことができる。これらの数学的モデル内で、身体の異なる領域は、治療薬が同じように作用すると仮定することができる区画と呼ばれる部分に分割されることができる。
【0124】
本明細書で使用される場合、「非区画モデル」(NCA)という語句は、試験被験者に投与された治療薬(薬物)のPKパラメータ(ADMEを示す)を予測するために使用される1つ以上のモデル非依存性の技術(身体区画に関する仮定に依存しないことを意味する)を指すことができる。NCAは、測定された薬物濃度の時間経過から治療薬(薬物)のPKパラメータの計算を可能にする。
【0125】
本明細書で使用される場合、「生物学的」または「高分子治療薬」は、治療効果を有するタンパク質および他の生物学的高分子を指すことができる。
【0126】
本明細書で使用される場合、「治療化合物」または「小分子治療薬」は、900ダルトン未満の比較的低い分子量を有する生物学的プロセスに影響を及ぼす任意の有機化合物を指すことができる。
【0127】
本明細書で使用される場合、「人工ニューラルネットワーク」または「ニューラルネットワーク」(NN)は、数学的アルゴリズムまたは計算モデルを指すことができる。ニューラルネットワークは、非線形ユニットの1つ以上の層を使用して、受信した入力の出力を予測することができる。いくつかのニューラルネットワークは、出力層に加えて1つ以上の隠れ層を含む。各隠れ層の出力は、ネットワーク内の次の層、すなわち、次の隠れ層または出力層への入力として使用される。ネットワークの各層は、各パラメータのセットの現在の値にしたがって、受信した入力から出力を生成する。
【0128】
ニューラルネットワークは、2つの方法で情報を処理することができる:それが訓練されているとき、それは「学習モード」にあってもよく、それが学習したことを実際に使用するとき、それは「推論(または予測)モード」にあってもよい。ニューラルネットワークは、出力が訓練データの出力と一致するように、ネットワークが中間隠れ層内の個々のノードの重み係数を調整する(その挙動を修正する)ことを可能にするバックプロパゲーションと呼ばれるフィードバックプロセスを通じて学習することができる。換言すれば、ニューラルネットワークは、訓練データ(学習例)を受信し、新たな範囲または入力のセットが提示された場合であっても、正しい出力に到達する方法を自動的に学習することができる。ニューラルネットワークの種類の例は、これらに限定されないが、以下を含む:フィードフォワードニューラルネットワーク(FNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)、モジュール型ニューラルネットワーク(MNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、ResNet(残差ニューラルネットワーク)など。
【0129】
したがって、本教示は、様々な実施形態に関連して説明されているが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。逆に、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、改変物、および均等物を包含する。
図1
図2
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【国際調査報告】